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2017.8.10 EPAと農林漁業、農協と農業改革、食料自給率、地域振興など (2017年8月11、12、13、16、18、20、21、22、24、26、28、31日、9月1、2、3、8、9、15日追加)

(図の説明:日本では大型の田植機は増えてきたが、その他の作物での自動化は進んでいない。その理由には、大型機械導入を前提とした田畑の区割りになっていないこと、農機の価格が高すぎることなどがあるが、これは農協の努力を超えており、これまでの国の政策の問題が大きい)


  日本の耕作放棄地      オーストラリアの放牧と機械化された搾乳風景

(図の説明:国は、主食米に多額の補助金をつけ耕作面積を制限しながら、他の作物への転作を促さなかったため耕作放棄地が増えた。一方で、豪州の畜産は、右の写真のように大規模な放牧で行われており、日本も飼料用米に多額の補助金をつけるよりも賢い土地の使い方がある筈だ)

(1)JAの改革
1)JAさがの持株会社発足
 JAさがは、自己改革の目玉として全国の地域農協で初めて、2017年7月21日に、*1-1のように、農産物加工や購買生活関連といったグループ会社9社を傘下に置く持株会社2社を設立し、当面は中期の企画・戦略策定、総務管理部門の集約に注力して、業務の効率化・商品開発等に力を入れるそうだ。私は、農業者の共同体である農協を株式会社化するのではなく、農協の下に持株会社をつけるのがあるべき姿だと考えている。

 ちなみに、持株会社制度と連結納税制度は、私がフランスの事例の経験から1995年前後に経産省に提案し、持株会社制度が1997年に解禁され、連結納税制度は2002年度の『税制改正大綱』で100%子会社、孫会社などに限って実施されることになったものだ。

 そして、持株会社の下に、①企画部門 ②総務管理会社 ③食品会社 ④人材派遣会社 などをつければ、①は全体を見渡して企画立案でき、②はそのことに熟練した人が関係会社の総務・経理をまとめて面倒見ることによって効率的で質の高い仕事ができるとともに、受託料をもらって農業者の会計・管理を受託することもでき、③は加工・販売を行う食品会社と合弁企業を作れば、お互いのノウハウをつぎ込んで経営する最先端の組織を作って生産性を上げることができ、④は繁忙期に人材派遣を行えば、農業者の所得増大・農業生産の拡大・地域の活性化に繋げることができる。

 そのため、JAさがの大島組合長が全国から注目を集める取り組みであることを強調して「絶対に成功させなければならない」と強い決意を語られたのは心強いし、頑張って欲しい。

2)JA全中次期副会長にJA佐賀中央会の金原会長内定
 このように、佐賀県のJAは先進的な試みを率先して取り入れたため、*1-2のように、全中副会長にJA佐賀中央会会長金原氏が内定した。次は、持株会社での実績を携えて、JA全中次期会長になれれば嬉しいと考える。

3)JA全農の新執行部
 JA全農の新執行部が始動し、*1-3のように、長澤会長は「『全ては組合員のために』の姿勢を貫き、全農の自己改革を完遂する」と強調されたそうだ。私も、産地再生、生産基盤作り、新技術駆使、業務提携などを含む生産力・販売力の強化、生産資材の引き下げなど、農業者の所得向上と地域再生を目的として自己改革すればよいと考える。なお、農家所得増大のためとして特殊な資材の引き下げのみに固執するのは、政府がやるようなことではない。

 また、農業は、同じ地域に存在し土地所有者が同じであるという意味で林業と関係が深く、同じ食品であるという意味で水産業とも関係が深い。そのため、漁協や森林組合も持株会社形式で会社を作り、食品会社など協働した方がよいケースでは合弁会社にした方が販売力がより強化できるので、地元の公認会計士・税理士とケースに応じた相談をした上で、具体的な対応を決めるのがよいと考える。

(2)JA全厚連とJAバンクについて
1)JA全厚連について
 農家は共働きが一般的で妻の働きも所得に直結するため、JAは、*1-4のように、医療・介護を行う全厚連をもっている。そして、今回、その会長にJA長野厚生連会長の雨宮氏、副会長にJA愛知厚生連会長の前田氏、理事長に中央コンピュータシステム社長の中村純誠氏が選任されたそうだ。

 私は、医療・介護を一体としたコンピュータシステムによる管理は、効率化や生産性の向上に役立つと思うが、これまで連続して行われてきた医療費・介護費の削減によって赤字になった病院や介護施設が多いと思われるため、その対応も重要だと考える。

2)JAバンクについて
 2008年のリーマンショック時には、みずほ銀行等の一般銀行と並んで農林中央金庫がアメリカのサブプライム住宅ローン(所定基準を満たさない顧客への貸付に対しては、より高い利率をとるローン)に融資し、借り手が破たんして大損していたので、私は本当にショックを受けた。

 何故なら、サブプライム層が破たんしても、家は資産としてアメリカに残るが、日本の金融機関は単に損をしただけで、リスクが高い割に還元が少ない外国への融資に農村から集めた資金を出して大損していたからである。ちなみに、この時、地方では、投資すべき案件は多いのに投資が行われないため、生産性が上がらないという悪循環の状況だった。

 しかし、JAバンクの貯金額は、*1-5のように、100兆円を超えたため、是非、豊富な資金力を生かして農業への融資拡大や地域重視で必要な投資をしてもらいたい。何故なら、そうすることが、今後の生産性の向上・販売力の強化・地域振興に繋がり、農村の魅力を増して人口回帰に資するからである。

(3)政府が進める農業改革について
 中野吉実JA全農前会長が、*2-1に述べられているとおり、政府・与党が主導する農協改革は、「農協=悪い岩盤=農家とは利益相反関係にある」という誤った前提で叫ばれた。そして、提示された改革理由は、農機・化学肥料・農薬などの高価格への対応だったが、それらの高価格は農協よりも生産者の独占や寡占によるところが大きく、安価な有機肥料の利用・減農薬・農協と競争関係にある他の店舗からの購入などで解決できるものが多い。そのため、政府が既定路線にしている全農の株式会社化とは結びつかないものだ。

 にもかかわらず、*2-2のように、農水省は8月中旬から農協改革の進捗状況調査に乗り出し、改革の重点を、①農産物の高値販売や生産資材の安値調達に向けた取り組み ②組合員の経営支援 ③改革を進めるための組織体制整備 とし、それが具体的にどの程度進んでいるかを確認して改善を働き掛けるそうだ。農水省は「JAと同じ目線で対話して課題の解決策などを探り、自己改革の実践を後押したい」と言っているそうだが、都会育ちの農水省職員なら、同じ目線どころか現場に同行して教えていただく形で調査すべきで、経営の専門家ではない官の口出しは経営を悪化させる懸念さえある。

 その点は、現場をよく知っている知事会も懸念しており、*2-3のように、全国知事会は2017年7月27日に盛岡市で会議を開き、農業振興を柱とした「地域経済の好循環の拡大に向けた提言」を採択した。そして、農業振興を地域社会の基盤と位置付け、政府が定めた「農業競争力強化プログラム」を進めるに当たっては、農業・農村の実情を十分踏まえるよう求めたそうで、これには私も賛成だ。

 しかし、安倍改造内閣の斎藤農相(経産省出身)は、*2-4のように、2017年8月7日に、JA全中を訪問し、引き続き安倍政権が進める農業・農協改革への協力を呼び掛けたそうだ。しかし、出向いてちょっと話したくらいで現場の問題点を正しく把握してよい改革案を提示できるわけがないため、結果ありきの話し合いにならないようにしてもらいたい。そして、斎藤農相が本気で農業改革に取り組みたければ、状況が全く異なる北海道・東北・北陸・中部・都市近郊・中国・四国・九州・沖縄・離島などの農業現場を回り、その地域でどういう農業が行われ、何に困っているのかを調査した上で、外国にも負けない生産性や販売力を持ち、土地を有効に利用して農家所得を増大させ、農業の魅力を作って積極的な担い手を増やす方法を考えるべきである。

 なお、経産省は、自動農機具やコンピューター制御の温室など優秀な農機を安価に生産して提供するよう知恵を絞って欲しい。そうすれば、その農機はどの国でも重宝され、輸出可能でもある。なお、私は、報酬をもらって仕事でやっているわけではないので、*2-5の農業強化法は見ていないが、議論を聞く限り、良い方向に改革されているようには見えない。

(4)EPAについて
1)EPAとその交渉内容
 私は、安全規制等の国家主権を放棄することになるTPPには反対だったが、EPAには賛成だった。何故なら、TPPの参加国は広大な農地を持つ国が多くて太刀打ちできそうもないが、EPAの参加国は広大な農地を持っているわけではないのに知恵と工夫で生産しているので、主権を放棄しない自由貿易が前提なら、日本の農業が学ぶところは大きいと考えたからである。

 そのため、*3-2のように、交渉中に情報開示を行うことはその分野の専門家が見て意見を述べるために必要で、日本が相手国並みにも情報開示を行わないのは、交渉官が国民に見せられるような交渉をしておらず、国民には背信行為の結果ありきの交渉をしている証拠だろう。

2)自由度を高めさえすればよいのではないこと
 日経新聞の論調は、*3-1のように、いつも経済の一体化を主張し、農業の将来を考えるためにも自由度を高めるべきだとする。しかし、そのEPA交渉では、自動車と酪農製品(特にチーズ)のバーター的な関税削減を巡って、交渉が最後まで難航したのだそうだ。

 そのうち自動車については、EUとEPAを結んでいる韓国車が無税で輸出できるのに、日本車は10%の関税が課されてハンディであるため、自動車の関税撤廃は日欧EPAの大きな目的の一つだったそうだが、日本は人件費が高く、全体として高コスト構造になっているため、日本のグローバル企業は、人件費が安くて労働の質の良い東欧で生産することが多い。また、現在では、自動車もEVで遅れ始めているため、環境規制や本体価格の問題を抜きにして、関税だけで売れ行きがよくなるとは思えない。

 一方、農業については、TPPを超える乳製品(特にチーズ)の関税削減が問題となり、出荷先にかかわらず加工用生乳はすべて補給金の対象となるそうだが、今まで指定団体に出荷しなければ加工用生乳に対する補給金が支給されなかったというのは、食料不足時代の食糧管理のやり方のようで、TPPやEPAとは関係なく、変えていなければならなかった問題だろう。

 私は、欧州産のチーズは美味しく、種類も豊富で、よく工夫されていると思うが、日本産の食品も冷凍ピザのような中食にまで加工したり、健康志向を加えたりすれば、欧州では見られない商品ができると考える。そのため、欧州の人の口に合わせながらも、手間が省けて美味しく、健康に良い新しい食品に進化させれば、日本産チーズは関税0でもやれるのではないだろうか。

 また、*3-1には、最先端にいるフロンティア農業者の自由度を高め、フロンティアを広げる政策が必要として、米の減反政策廃止が提言されている。しかし、そもそも主食用米ばかり作っても、その需要は日本国内が殆どであるため、だぶついて価格が低下し、生産したこと自体が無駄になりそうだ。これは、経済学における典型的な市場の失敗の例で、昔から世界中で起こっていることのようである。かといって、多額の補助金を使って飼料米生産に誘導するのも、甚だしい無駄遣いだ。

 そのため、私は、足りない産品を作るように転作すればよいと思うのだが、「日本の農家は、どうして米ばかり作りたがり、足りない産品に転作しないのか?」と問うと、「米を作れば機械化でき、何かと楽で兼業農家でもできるから」という答えが、(特に東北の農家から)返ってくる。私は、ここが問題の本質で、他の産品に転作しても損をせず、機械化でき、保険や作業システムを整えて、兼業しなくても生活できる所得を得られるようにすべきだと考える。そうすれば、余剰な米ばかりを作りたがり、耕作放棄地を増やしながら、食料自給率は低いという日本の変なシステムを変えられると思うが、これは決して農協だけの責任ではない。

 なお、EPAやTPPについては、*3-3のように、「経済規模が大きく自由化度が高いのが優れているとの論調は経済学的に間違いだ」とする注目すべき意見もある。

3)食料自給率と安全保障

  
世界の人口増加 食糧不足の発生リスク拡大 主要先進国の食料自給率 日本の食料自給率

(図の説明:一番左と左から2番目の図のように、世界人口は2050年には95億人になることが予想されており、気候変動による生産減も起こる。そのため、右から2番目のグラフのように、どの先進国も農業を疎かにはしておらず食料自給率が高いが、日本だけ著しく低い。その日本の食料自給率は、一番右の図のように、1975~1990年の間はほぼ横ばいだったが、1990年以降は下降の一途を辿っており、政府が「国民の命と健康を守る」と言うのは白々しく聞こえる)

 *3-1は、「日本農業が活路を見いだすには、市場を世界に求めなければならず、そのためには関税なき貿易が必要で、それを前提に日本の農業の構築を考えなければ、農業の産業としての独り立ちは見えてこない」としている。

 しかし、*3-4、*3-5のように、食料自給率は減り、食料の安定供給を果たす「食料安全保障」はさらにおぼつかなくなった。それについての拙い言い訳は不要であり、食料はカロリーだけでは不十分であるとともに、価格だけでは話にならないことは、中等教育以上で栄養学を学んだ人(殆ど女性)なら常識だ。

 なお、*3-4の「低自給率を強調するよりも、消費者に選ばれる農産物をつくり、輸入に対抗できる競争力を磨いていけば、おのずと国内農業の供給力が高まるのではないか」という部分は、世界人口の予測と世界の食糧事情を無視し、農業生産を行うには生産基盤や日進月歩する機械・技術・種子が必要であることを無視した、驚くべき楽観論である。

<JAさがの持株会社発足>
*1-1:http://www.saga-s.co.jp/column/economy/22901/448475 (佐賀新聞 2017年7月22日) JAさが持ち株会社発足 効率化進め商品開発強化、地域農協初自己改革の目玉
 JAさが(大島信之組合長)は21日、農産物加工や購買生活関連といったグループ会社9社を傘下に置く持ち株会社2社を設立した。業務の効率化を進めて商品開発などに力を入れる。8月1日から業務を始め、当面は中期的な企画・戦略の策定と、総務管理部門の集約に注力する。持ち株会社化は、「農協の一員としての自覚とガバナンス(企業統治)の強化」「事業統合によるコストダウン」「会社の枠を越えた商品開発」の3点を主眼に置く。政府・与党が農協改革に力を入れる中、農業者の所得増大、生産の拡大、地域の活性化につなげようと、JAさがが自己改革の目玉として、全国の地域農協で初めて打ち出した。設立したのは、「JAさが食品ホールディングス(HD)」と「JAさがアグリ・ライフホールディングス(HD)」。JAさがグループ15社のうち9社がぶら下がる。食品HDは、JAフーズさがとジェイエイビバレッジ佐賀、JAさが富士町加工食品の3社を傘下に置く。社長には大島組合長が就き、大手からのOEM(相手先ブランドによる生産)のほか、独自ブランドを開発し、地域の農畜産物を全国に発信する。宅配や通販事業などにも取り組む。アグリ・ライフHDの傘下には、JA建設クリエイトさがやJAオート佐賀など6社が入る。タマネギやミカンの収穫など農家の人手が足りない繁忙期に人的支援をしたり、農業経営に参画して農地を活用したりして、担い手育成に努める予定。JAさがの中村直己副組合長が社長を務める。2016年度のグループ15社の総売上高は約680億円。持ち株会社の傘下に入っていない残り6社については引き続き、HD編入に向けた準備、検討を進める。佐賀市の県JA会館で行われた設立総会で、JA佐賀中央会の金原壽秀会長は「それぞれがさらにもう一段パワーアップして、農家、組合員、地域の評価をいただけるように飛躍を遂げてほしい」とあいさつ。大島組合長は、全国から注目を集める取り組みであることを強調し、「絶対に成功させなければならない」と強い決意を語った。

*1-2:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/450623 (佐賀新聞 2017年7月30日) 金原氏、全中副会長に JA佐賀中央会会長、県出身者で初 来月正式決定
 全国農業協同組合中央会(JA全中)の次期副会長に、JA佐賀中央会の金原壽秀会長(67)=杵島郡江北町=が内定したことが29日、分かった。JAグループの独立的な総合指導機関であるJA全中の副会長に県出身者が就任するのは初めて。8月10日の全中臨時総会で正式に決定する。
金原氏はJAさがの理事や常務理事を経て、2014年から組合長を1期務めた。6月30日の通常総会でJA佐賀中央会の会長に就任した。中央会の前会長である中野吉實氏(69)は11年から今年7月25日まで2期6年、全国農業協同組合連合会(JA全農)の会長を務めた。佐賀の中央会トップが2代続けてJA全国組織の要職を務めることになる。JA全中の次期会長にはJA和歌山中央会の中家徹会長が内定。もう一人の副会長には、中家氏と会長選で競ったJA東京中央会の須藤正敏会長が就く見込み。

*1-3:https://www.agrinews.co.jp/p41464.html (日本農業新聞論説 2017年7月27日) 全農新体制と改革 結集こそ組織の「底力」
 JA全農の新執行部が始動した。陣容は「改革加速内閣」とも言えよう。営農経済事業を担う全農は、系統組織のいわば“心臓部”だ。役割発揮はJA自己改革の成否に直結する。事業改革の年次計画に沿った着実な実践と、内外への「見える化」が欠かせない。組織の結集力と求心力こそが大きな鍵を握る。新執行部の使命は、会見で長澤豊会長が強調した「『全ては組合員のために』の姿勢を貫き、全農の自己改革を完遂する」ことに尽きる。最終ゴールは、農業者の所得向上を通じた元気な地域の復活だ。全農はこれまでも多様な事業改革を実施してきた。いま力を入れるべきことは、改革加速化と併せ、農業者の営農と経営にどう結び付くのかの「見える化」である。組織内外への広報強化は、経済事業への組合員の理解と納得にもつながる。理不尽な全農批判の防波堤ともなる。「全ては組合員のために」は、何のための組織なのかを改めて自らに問う原点回帰宣言でもあろう。産地再生、生産基盤づくり、新技術の駆使、新たな業務提携も含む販売力強化、生産資材の引き下げ。農業者の所得向上と地域再生にはトータルコストの引き下げが重要だ。資材下げなど一分野だけをあげつらうのは見当違いだ。その意味では、全農が全国55JAと取り組むモデル事業は、今後の総合的なコスト下げに向けて全国展開の礎となり得る。「ゴーゴー作戦」として、地域農業再生への旗振り役を果たしてもらいたい。意欲的な数値目標を掲げた全農の事業改革年次計画だが、滑り出しはほぼ予定通り。だが、本番はこれからと言っていい。年次計画は年を追うごとに大きな目標値となっているだけに、この1、2年が正念場となる。自己改革完遂へ残された時間は少ない。政府・与党の改革フォローアップや2019年5月とされる改革集中期間の最終期限も2年を切った。代表理事体制も一新した。新理事長の神出元一氏はこれまで専務として全農改革に関わり、政府・与党との調整の陣頭指揮を担ってきた。専務となった岩城晴哉氏は外食大手・スシローと業務提携するなど、米・園芸の販売事業強化を進めた。もう一人の山崎周二氏は改革の本丸となった生産資材引き下げなど、購買事業見直しの具体案を取りまとめた。改革加速化に期待したい。一方で、農政改革では政府の責任こそが問われなければならない。民間組織の全農ばかりに改革努力を迫るのは間違いだ。通常国会冒頭での安倍晋三首相の施政方針演説に大きな違和感を覚える。「農政新時代」の項目で「農家のための全農改革」を挙げた。首相自ら民間組織の具体名を挙げることは極めて異例だ。政権による「全農先行」改革の意図が透けて見える。政府は全農自己改革を後押しする姿勢に徹するべきだ。

*1-4:https://www.agrinews.co.jp/p41476.html (日本農業新聞 2017年7月28日) 全厚連 会長に雨宮氏(長野)
 JA全厚連は27日、東京都内で通常総会後に経営管理委員会を開き、会長に雨宮勇氏(JA長野厚生連会長)を選任した。空席になっていた副会長には前田隆氏(JA愛知厚生連会長)を選任した。加倉井豊邦会長は同日付で退任した。理事長に、中村純誠氏(中央コンピュータシステム社長)を選任。総会では、経営管理委員16人を選任し、そのうち9人が新任した。任期は2020年度の通常総会終了まで。

*1-5:https://www.agrinews.co.jp/p41520.html (日本農業新聞論説 2017年8月2日) 農協貯金100兆突破 協同組合こそ明日開く
 JAバンクの貯金額が100兆円の大台を超えた。計画目標よりも1年前倒しの達成は、組織結集力の結果である。大台達成を契機に、いま一度、地域や農業の足元を見直し、協同組合金融の特色を確認したい。根底には、組合員目線に立ち地域重視で利用者第一の考え方がある。JAの総合力の発揮こそが持続可能な社会づくりの「明日」を開くはずだ。金融の根幹は「信用」である。信用事業と言われる理由だ。貯金額が100兆円を突破したのは、JAバンクへの組合員・利用者の「信用」の表れである。健全経営の徹底や万が一の事態へのセーフティーネット(安全網)の整備など、金融機関として安全・安心が評価されてきた結果とも言えよう。農林中央金庫のリテール事業本部長を務める大竹和彦専務は、日本農業新聞のインタビューで「JAの総合事業、地域での人と人とのつながりこそが他金融機関にない強さ」と強調。協同組合金融の特色発揮が、揺るぎない「信用」につながっている。運動体でもあるJAグループは、目標を掲げた組織展開に強みを持つ。100兆円達成も運動の成果の一つだ。歴史をさかのぼれば、協同組合は信用事業の確立と重なる。組合運営の原則を制定した英国のロッチデール公正先駆者組合設立は1844年。日本はその1年前の43年、江戸時代に二宮尊徳が基金をつくり困窮した農民に無利子で貸し出す報徳社をつくった。協同組合の原点の一つである。尊徳は600もの村落で協同の精神で地域復興を果たす。JAバンクを束ねる農林中金は、6年後に創業100周年を迎える。前身の産業組合中央金庫は関東大震災の直後、1923年末から営業を開始した。協同組合金融は地域の復興・再生の歴史と共に歩み発展してきた。こうした歴史的な経過をしっかり踏まえたい。今後の課題は「ポスト100兆円」の戦略だ。少子高齢化、日銀のマイナス金利の影響などで、金融業界は大きな岐路に立つ。地域金融機関を中心に合従連衡の動きが活発化してきた。系統信用事業も、地域単位では次の目標を検討するだろうが、数値で全国一本の“旗”を掲げる時代とは明らかに異なる。時代の変化を踏まえ農林中金は、JA全農や関連企業との連携を強め、食農ビジネスを本格化させている。豊富な資金力を生かした農業融資の拡大、担い手育成は喫緊の課題だ。「食と農、地域の振興のためにできることは何でもやる」と食農法人営業本部長を務める宮園雅敬副理事長。新たな一手として、組合員の資産形成のため投資信託などを推進する「JAバンク資産形成推進部」を新設した。「ポスト100兆円」をどうするのか。模索は続くが、基本路線は営農経済事業をはじめ地域に根付くJAの総合力、相互扶助を歴史的な原点とした協同組合金融の強さのはずだ。

<政府が進める農業改革>
*2-1:https://mainichi.jp/articles/20170730/ddm/008/020/116000c (毎日新聞 2017年7月30日) 中野吉実・JA全農前会長:農協への圧力、再燃を懸念
 全国農業協同組合連合会(JA全農)会長を今月退任した中野吉実氏(69)が29日までに共同通信のインタビューに応じ、政府、与党が主導した農協改革を「(日本農業が低迷する現状を踏まえ)誰かを悪者にしないと駄目だったのだろう」と振り返り、改革が再燃し農協への圧力が強まりかねないとの懸念を示した。JA全農の株式会社への移行は「絶対すべきでない」と強く否定した。2011年7月から2期6年にわたる在任中、政府の規制改革推進会議などから組織縮小やコメ全量買い取りなどを求められたほか、自民党の小泉進次郎農林部会長から組合員に提供する農機や肥料などが高すぎるとして改革を迫られた。中野氏は、農家の所得向上を目指すとの方向性は政府と一致しているとした上で、「農協が力を付け、組合員に還元できるようにしていく」ことが重要だと指摘した。在任中の成果として17年3月に自己改革をまとめたことや、コメの安定的な出荷先確保のため回転ずしチェーン大手「あきんどスシロー」の持ち株会社に出資したことを挙げた。その上で「農協と農家が一緒に努力し生産性を高めていくことが所得向上につながる」との認識を示した。政府、与党で議論されたJA全農の株式会社化に関しては「海外では農協が株式会社化した後、穀物メジャーに買収された例がある。農家を守る立場の組織がなくなったら元も子もない」と改めて反対を表明した。政府は18年産米から生産調整(減反)を廃止するが、「米価が下がらないようJAグループが各地の収穫量を配分する。それができることが前提だ」とし、コメ農家に大きな影響は出ないとした。
■ことば:全国農業協同組合連合会(JA全農)
 JAグループで商社機能を担う全国組織。肥料や農薬といった生産資材を農家に供給するほか、農産物を集めて販売する。事業収益は大手商社に匹敵。政府、与党が改革の方針を昨年11月にまとめたことを受け、今年3月に資材価格引き下げなどに向けた自己改革案を策定した。

*2-2:https://www.agrinews.co.jp/p41525.html (日本農業新聞 2017年8月3日) 農協改革 中旬から進捗調査 月内にも進捗調査 各県1JAを行脚 農水省
 農水省は全国のJAを対象に、農協改革の進捗状況の調査に乗り出すことが分かった。各地のJAに担当者を派遣。改革の重点となる農産物の高値販売や生産資材の安値調達などが具体的にどの程度進んでいるかを確認し、改善を働き掛ける。今年度は試行的に各都道府県の1JAを対象に調査を実施する方針で、8月中にも始める。2014年6月の農協改革に関する与党取りまとめでは、5年間を「農協改革集中推進期間」として、JAに自己改革の実行を強く求めている。既に同期間の中間年を迎える中、改革の実践を加速させる必要があるとみて、今回の調査に乗り出す。特に重点的に調査するのは、(1)農産物の高値販売や生産資材の安値調達に向けた取り組み(2)組合員の経営支援(3)改革を進めるための組織の体制整備――の3項目。都道府県の担当者と共にJAに出向き、JAが事業計画などに盛り込んだ目標数値など具体的な指標に照らし合わせて、取り組みが進んでいるかどうかを聞き取る。思うように成果が上がっていない取り組みについて、何が課題かをJAとの間で共有、同省から先進事例を紹介するなどで改善策を探る。都道府県は意見聴取後も、特定した課題について、JAの解決に向けた取り組みの進捗を確認し、改革の着実な進展を促す。こうした一連の流れを今年度、試行的に実施、検証し、来年度以降の対応を検討する。同省は「JAと同じ目線で対話して課題の解決策などを探り、自己改革の実践を後押したい」という。16年4月に施行された改正農協法では、農協の事業目的に、農業者の所得増大に最大限配慮することを掲げ、JAに営農経済事業の強化を求めている。こうした中、JAグループは16年度からの3年間を自己改革の集中期間として自己改革の実践を進めている。同省が各都道府県の1JAを試行的に調査することに対し、JA全中は「自己改革に取り組んでいるJAの実態を見て、理解してもらうには良い機会だ」と話している。

*2-3:https://www.agrinews.co.jp/p41471.html (日本農業新聞 2017年7月28日) 現場踏まえ対応を 農業競争力プログラム 全国知事会
 全国知事会は27日、盛岡市で全国知事会議を開き、農業振興を柱とした「地域経済の好循環の拡大に向けた提言」を採択した。農業振興を地域社会の基盤と位置付け、提言5項目のうち2項目を農業関連とした。政府が昨年決めた「農業競争力強化プログラム」を進めるに当たって、農業・農村の実情を十分踏まえるよう求めた。改革を急進的に進める政府に対し、くぎを刺した格好だ。日欧経済連携協定(EPA)をはじめ、国内農業への影響に懸念を示し、丁寧な情報提供を求めるとした。会議には「地方から日本を変える」をテーマに、全国都道府県の首長が参加した。政府が2016年11月に決めた同プログラムでは、生産資材の引き下げや全農改革、卸売市場法の見直しを提起。政府はこれに沿って農業改革を進めている。提言では、地域間格差の是正や、多様性に満ちあふれた地域の創出に取り組むべきとした。その上で、プログラムに関する制度設計について、地域の農業・農村の実情を十分踏まえるよう求めた。地域の農業者が意欲と希望を持って営農に取り組めるようにすべきとした。国際貿易交渉を巡っては、日欧EPAをはじめ国内農林水産業への影響が懸念されると指摘。全ての貿易交渉で、重要品目に対する必要な国境措置を確保することが必要と提起した。交渉の進捗(しんちょく)や国内の影響についての情報提供を丁寧にするよう求めた。米、大豆など主要農作物種子法(種子法)の廃止に際して、今後も生産者に良質で安価な種子の供給と普及ができるよう、財政措置の確保を要望した。国産種子の海外流出の防止などの措置も求めた。この他、農業分野では担い手らの人材育成、農地集積、ICT(情報通信技術)をはじめとするスマート農業、鳥獣害防止対策について国の支援の充実を提起。資材の価格低減、所得向上への支援策、輸出促進策の強化も必要とした。会議では、国と地方を挙げて「防災庁」の創設に取り組むことや、東京一極集中の是正などについて議論、提言した。災害に強い国土づくりを進める「岩手宣言」も採択した。

*2-4:http://qbiz.jp/article/115975/1/ (西日本新聞 2017年8月7日) 農相、改革継続に協力要請 就任直後異例のJA訪問
 斎藤健農相は7日、全国農業協同組合中央会(JA全中)を訪問し、奥野長衛会長や中家徹次期会長らに対して引き続き安倍政権が進める農業・農協改革への協力を呼び掛けた。就任直後の農相がJA首脳を訪ねるのは異例。自民党の農林部会長や農林水産副大臣を歴任して農協改革を主導し、3日に農相に就任した。10日にJA全中の次期会長に選出される中家氏は政権の改革に距離を置く慎重派とみられており、自ら出向くことで話し合いを重ねていく姿勢を示した。面会では、JA全中に加え、全国農業協同組合連合会(JA全農)、農林中央金庫などJAグループ幹部が顔をそろえた。奥野氏は「本来ならこちらが伺うのが筋」と謝意を表明し、斎藤氏は「日本の農業が厳しいという状況認識を共有できれば、農家の皆さんが前向きに取り組める環境づくりに向け、いい関係で前進ができる」と述べた。面会後、報道陣に対して奥野氏は「大臣としての農業に対する強い思いから、自らこちらに足を運ばれた。官僚の経験を生かし、いろいろ課題を提起していただくことになる」と語った。中家氏も「問題があったときには話し合いをして互いに理解し合うのが大事」との認識を示した。

*2-5:https://www.agrinews.co.jp/p41511.html (日本農業新聞 2017年8月1日) 農業強化法が施行 改革推進丁寧に
 農業生産資材価格の引き下げや農産物流通の合理化に向けた構造改革を進める農業競争力強化支援法が1日施行される。農水省は、卸売市場法の抜本改革など規制・規格の見直しや資材の開発促進、直販の促進といった改革を実行に移す。同省が、生産性の低さや機能不全を問題視する米卸や飼料メーカーには業界再編をてこ入れする。同時に、JA全農の改革の実行を促す方針だ。いずれも生産現場に密接に関わる課題だけに、具体化には、多様な農家の声を踏まえた丁寧な議論が欠かせない。同法は、5月に成立。資材価格下げや農産物流通の合理化に向けて①国が講じるべき施策②業界再編や事業参入に向けた支援措置――を定めたのが柱。同省は今後の政策展開は一義的に行政の仕事として「与党の了承を取る必要はなく、農水省の権限で粛々と進めればよい」(同省幹部)としている。だが、法律上は国の政策の方向性を示す抽象的な文言にとどまる。施行を受け、同省は、法律が定める国内外の農業資材供給や農産物流通の実態調査に着手。この結果を踏まえて2019年8月までに施策見直しを検討する。同省は昨年、日本の肥料などが韓国に比べて割高とする調査結果をまとめ、全農に改革を迫った経緯がある。だが、殊更に価格差だけを取り上げれば、品質の劣化を招く恐れがある。農業全体の構造や品質格差を踏まえた冷静な分析が必要だ。参院農林水産委員会は、協同組合の本来機能である共同購入や共同販売の機能の強化、民間事業者の自発的な取り組みの尊重を求める付帯決議を採択した。今後の法律運用では、政府による過剰な民間干渉につながらないか国会による監視が求められる。

<EPAについて>
*3-1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20170801&ng=DGKKZO19451050R30C17A7KE8000 (日経新聞 2017.8.1) 日欧EPAの課題(下)農業の将来 考える好機に、最先端分野、自由度高めよ 本間正義・西南学院大学教授(1951年生まれ。アイオワ州立大博士。専門は農業経済学。東大名誉教授)
ポイント
○チーズの低関税輸入枠設定の影響小さい
○日本農業は関税なき貿易で世界に活路を
○コメの減反政策廃止や農地政策改革急げ
 日本と欧州連合(EU)の経済連携協定(EPA)交渉が大枠合意した。米国が環太平洋経済連携協定(TPP)から離脱し、自由貿易の推進に暗雲がたち込めていただけに、この合意の意義は大きい。また貿易だけでなく、グローバル化時代の包括的な経済活動のルールづくりを目指すTPPと目的を一にする。世界の国内総生産(GDP)の28%、世界貿易の37%を占める両地域のEPA実現に向けた大きな一歩を歓迎したい。日欧EPAの交渉でも、またぞろ農産物が焦点の一つとされた。だがTPPでの合意が基礎となっていることや、欧州の関心の低いコメが除外されていること、日本からも日本酒などの食品輸出の拡大が見込めることなどもあり、国内の反応は関係者を除けば比較的冷静だったといえる。とはいえ、自動車と酪農製品、特にチーズの関税削減を巡っては最後まで交渉が難航した。日本にとって自動車の関税撤廃は日欧EPAの大きな目的の一つだった。EUとEPAを結んでいる韓国の自動車が無税で域内に輸出できるのに対し、日本の自動車には10%の関税が課され、大きなハンディとなっていた。一方、EUが求めてきたのはTPPを超える乳製品、特にチーズの関税削減だった。金額でみると、日本からEUへの自動車輸出額は1兆2494億円(2016年)に対し、EUからのチーズ輸入額は378億円(同)にすぎない。従ってこの両者をバーター(交換取引)にしたとみるのは適当ではない。日EUともに包括的なEPA締結に十分大きなメリットを見いだした結果と解釈すべきだろう。EUが今回の交渉でチーズにこだわる理由はあった。EUは15年3月末、30年以上継続してきた生乳クオータ(割り当て)制度を廃止した。加盟各国に生乳供給の上限を課す制度だが、これを自由化し市場志向性を高め、乳製品の需要増大が見込める国際市場で活路を見いだそうとした。しかしEUが輸出増を期待したロシアは、欧米がウクライナ問題で科した経済制裁に対抗し、欧米からの農畜産物の輸入禁止措置を継続している。このためEUは別の市場を求め輸出戦略を練り直しており、途上国への輸出拡大とともにEPAを通じた日本市場の開放が重要課題だった。表は、合意したEUからの主な農産物の関税削減の内容を示したものだ。焦点だったチーズは、TPPでは関税を維持したカマンベールやモッツァレラなどソフト系チーズを一括して新たに低関税輸入枠を設けた。この枠内関税率は徐々に削減し、16年目に撤廃するとしている。輸入枠は初年度2万トンから、16年目に3万1千トンに拡大する。EUからのソフト系チーズ輸入量は2万トン(16年)程度であり、輸入枠は現状に比べ16年で1.5倍に拡大するだけなので、大きな影響はあるまい。またチーズは差別化できる製品であり、国内でも様々な取り組みが展開されている。輸入品に対抗できる日本ブランドのチーズが多く生み出されることを期待したい。さらに生乳の流通制度改革も進行中だ。これまで全国を10地域に分けて、各地域の指定団体に出荷しなければ加工用の生乳に対する補給金は支給されなかったが、出荷先にかかわらず、加工用の生乳はすべて補給金の対象となる。また補給金受給のためには指定団体に原則全量委託することを義務付けていたが、これも部分委託が可能となる。従って個々の農家や農家グループの創意工夫を乳製品の生産に生かせる道が広がる。日欧EPAの合意は、英国のEU離脱決定や米トランプ政権の誕生で挫折しかかった自由貿易の方向を、決して後戻りさせてはならないという両地域の強い政治的意志でもある。今後、他のEPAや新たな交渉を通じ貿易の拡大と経済活動に関するルールの共通化が進展していくと予想される。その際、交渉結果に一喜一憂するのでなく、日本農業も国境措置に依存しない体制を築くことが重要だ。先ごろ日本経済調査協議会は、元農水事務次官の高木勇樹氏を委員長とする食料産業調査研究委員会がまとめた提言「日本農業の20年後を問う」を公表した。筆者はこの委員会で主査を務めた。これから20年後の日本農業をどう考えるか。少子高齢化・人口減少で日本の国内市場は確実に縮小する。一方、浮き沈みはあるにせよ、グローバル化の波は今後も間違いなく押し寄せてくる。これらの条件の下で日本農業が活路を見いだすには、市場を世界に求めなければならない。それには関税なき貿易が必要だ。この関税なき世界を前提に日本農業の構築を考えなければ、農業の産業としての独り立ちは見えてこない。日本の農家数は経営体でみて過去20年間で毎年平均して6万戸減少している。このままいけば20年後には10万戸を切ることになる。それでも各農家(経営体)が年間1億円規模の生産を担えば、日本農業は10兆円の生産額を維持できる。そうした方向に向かうにはどのような政策が望ましいのか。真っ先に必要な政策は最先端にいるフロンティア農業者の自由度を高め、フロンティアを広げる政策である。第1にコメの減反政策の廃止だ。政府は生産割り当てをやめると言うが、多額の補助金で飼料米生産に誘導し、主食米生産を制限し高価格を維持する政策を継続する。小規模兼業農家が維持され、大規模農家の生産拡大が阻害される。第2に農地政策の改革だ。現行農地法は農地を生産資源として活用するというより、農地所有者の権利を守ることを目的としている。農業内での権利移動を前提とするために、リースは認められても、農外の株式会社が農地を保有することは禁じられている。第3に耕作地が何カ所、何十カ所にも分散している非効率な経営の解消だ。農地のリースや所有を自由化しても耕作地が細切れでは生産効率は上がらない。地域で連坦(れんたん)化してひと続きの耕作面積を確保するために、孤島的に別経営をしている農地を周囲と一体化し、耕作を統合する仕組みが必要となる。農地の流動化のためには、農地の利用に応じた税制の整備などが有効だと考えられる。フロンティアは海外での販売戦略でも広げる必要がある。概して日本の農業関係者は海外でのマーティングが不得手だ。農産物の品質の高さのアピールが足りない。それは日本の農業者がいまだにプロダクトアウト(作り手優先)の姿勢から抜けきらず、消費者ニーズを取り込むマーケットインの姿勢に切り替えられずにいることに通じる。和食がユネスコ無形文化遺産になっている今日、世界に日本の農と食を広範にアピールするチャンスだ。今回の日欧EPAで日本酒の関税が撤廃され、欧州への輸出拡大が期待される。日本酒をフランスワイン並みのブランドに育て、それに合う和食とその魅力を伝える好機でもある。一方で、農業はその生産プロセスそのものが付加価値を生む。農作業はそれ自体が面白い。また工夫により様々なアクティビティーに展開可能でもある。農業の魅力を都市住民に伝え、農業体験をより手軽にできるような体制づくりは、これからの農業のあり方の一つとしても重要だ。農業が20年後に自立した産業となるには、国内海外を問わず今何をすべきか、国民全体での活発な議論を期待したい。

*3-2:https://www.agrinews.co.jp/p41351.html (日本農業新聞 2017年7月12日) EPA 情報開示に差 EUは協定文案一部公開
 欧州連合(EU)との経済連携協定(EPA)の大枠合意を受け、欧州委員会が日本政府が開示していない協定文案の一部を公開していることが分かった。一方、日本政府は文案が固まっていないとして公表しない方針で、日欧の情報開示の差が露呈した。民進党など野党は、情報開示に後ろ向きな日本政府の姿勢を問題視し、欧州と同水準の開示を求める方針だ。欧州委員会は日欧首脳が大枠合意を発表した6日付けで、ホームページに投資やサービス、電子商取引、紛争解決などに関する協定文案の一部や欧州側の提案を掲載。最終案ではないと断りながら「交渉への公衆の関心の高まりを考慮」して開示したと説明している。一方、日本の外務省は同日開かれた民進党の会合で「テキストが固まっておらず、最終調整する必要があるので、今の時点で公表に至っていない」と開示しない理由を説明した。民進党の会合では、出席議員から「情報公開には(日欧で)互いに同じ対応するのではないのか」(玉木雄一郎氏)など、情報開示に後ろ向きな政府の姿勢を質す意見が相次いだ。協定案を巡り、交渉の経過を含めて国民に積極的に開示しようとする欧州側と、内容が固まるまでは国民に知らせるべきではないとする日本政府の対応の違いが浮き彫りになった。交渉における情報開示の少なさは、農業関係者からも不満の声が相次いで挙がっており、今後の政府の説明に注目が集まっている。

*3-3:https://www.agrinews.co.jp/p41449.html (日本農業新聞 2017年7月25日) EPAの経済学分析 貿易ゆがみ損失も大 東京大学大学院教授 鈴木宣弘氏
 日欧経済連携協定(EPA)は国内総生産(GDP)で世界の約3割を占め、全体で95%超の関税撤廃率で、日本の農林水産物の関税撤廃率も82%で環太平洋連携協定(TPP)並みに高いとして、「経済規模が大きく自由化度が高い」のが優れているとの論調は経済学的には間違いである。そもそも自由貿易協定(FTA)は「悪い仲間づくり」のようなもので、A君は好きだから関税なくしてあげるがB君は嫌いだから関税をかけるというものである。仲間だけに差別的な優遇措置を取るのがFTAだから、「経済規模が大きく自由化度が高い」方が貿易が大きくゆがめられ、「仲間外れ」になる域外国の損失は大きくなる。われわれの試算では、日欧EPAによって締め出される域外国の損失は23億1600万ドルで、日欧のメリットの17億6200万ドルより大きい。しかも、自由化度が高いほど、締め出される域外国の損失は大きくなるから、農産物のような高関税品目は除外した方が域外国の損失は緩和できる。われわれの試算では、域外国の損失は23億1600万ドルから16億2300万ドルに減少する。さらに、日本にとっても、農産物を自由化しない方が、日本全体の経済的利益は、11億2600万ドルから21億3200万ドルに増加する。高関税の農産物を欧州連合(EU)だけに関税撤廃すると、例えば、最も安く輸入できる中国からの輸入が差別的な関税撤廃によってEUに取って代わる「貿易転換効果」によって、消費者の利益はあまり増えず、生産者の損失と失う関税収入の合計の方が大きくなってしまうからである。このように、FTAは、仲間外れになった国は損失を被るし、域内国も貿易が歪曲されて損失が生じることなどから、日本では、長年、政府も国際経済学者も世界貿易機関(WTO)を優先し、FTAを否定してきた。ところが、2000年ごろから、日本政府がFTA推進にかじを切り出すと、みるみるうちに、同じ学者がFTAやTPPを礼賛し始めた。しかも、「農産物を例外にしてはいけない」と主張したい人たちにとっては、日本にとっても、域外国にとっても、農産物を除外する方がベターだ、という試算結果は不都合なので、そういう数値は表に出ないように極力隠されてきた。経済学者の良識、経済学の真理とは何なのかが問われている。

*3-4:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20170621&ng=DGKKZO17910830Q7A620C1EE8000 (日経新聞 2017.6.21) 経済:骨太診断(6)消えた「食料安全保障」 農家、保護より自立促す
 経済財政運営の基本方針(骨太の方針)の「攻めの農林水産業の展開」を見ると、2016年の骨太の方針にあった「食料安全保障の確立」の文言が消えている。農林水産省関係者によると、食糧安保を象徴するものは「食料自給率」。食料の安定供給を果たす責務を国が放棄するわけではないが、食料自給率を重要な指標として位置づけるのを見直しつつある状況の表れだ。食料自給率は、国内で消費する食品がどれだけ国産の材料で賄われているかを表す。供給熱量で換算するカロリーベースで2015年度は39%。主要先進国の中で最低水準にあることが「手厚い農業予算が必要」(農業団体幹部)との主張を支えてきた。ただ、カロリーベースの食料自給率は野菜をつくっても上向きにくいなどの問題が指摘される。生産額ベースになれば66%まで引き上がるのも、「(カロリーベースが)むやみに危機を高める指標になっている」(農水省OB)との見方を強めている。生産額ベースも下落傾向にあり、食料の安定供給を懸念する主張に根拠がないわけではない。ただ、ことさら低自給率を強調するより、消費者に選ばれる農産物をつくり、輸入に対抗できる競争力を磨いていけば、おのずと国内農業の供給力が高まるのではないか。安倍政権が自民党の小泉進次郎農林部会長らの主導で農協改革に乗り出したのも、保護農政から脱却する狙いが強いからだ。日本の農村を守る適度な予算の配分は必要だが、自立できる強い農家を各地にどれだけつくり出せるかという視点が欠かせない。

*3-5:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20170810&ng=DGKKASFS09H3O_Z00C17A8EE8000 (日経新聞 2017.8.10) 食料自給率、38%に低下 昨年度、23年ぶり水準 小麦の生産減
農林水産省は9日、2016年度の食料自給率(カロリーベース)が38%だったと発表した。コメが不作だった1993年度の37%に次ぐ低水準。北海道を襲った台風などの影響で、小麦やテンサイの生産量が落ち込んだ。政府は2025年度までに自給率を45%に高めるという目標を掲げている。しかし09年度を最後に40%台には届いておらず、目標達成の道筋は見えない。カロリーベースの自給率は、コメや小麦といった穀物の供給量に左右されやすい。政府は輸入品が多い畜産飼料を国産に置き換えようと、飼料用米の増産に力を注ぐ。しかし草を食べる牛の飼料にコメを配合してもその割合には限界があり、自給率の押し上げ効果は乏しい。単価の高い野菜や畜産物などの動向が影響する生産額ベースの自給率は15年度に比べて2ポイント増の68%だった。野菜や果実で輸入が減り、国内生産が増えた。生産額ベースは2年連続で上昇した。

<農林漁業とエネルギー>
PS(2017.8.11、16追加):私も、*4-1の「太陽光などの再生可能エネルギーで作った電気でEVを動かすシステム」が、CO2はじめ排気ガスを0にできるため、最もよいと考える。なお、日経新聞は「フランスは原子力発電の比率が高いので、CO2を出さない」としているが、フランスは、2015年7月22日に制定した「エネルギー転換法」で、①原子力発電所の大幅削減 ②化石燃料消費の廃止 ③再生可能エネルギーへのシフト ④石油由来廃棄物の大幅削減 などを決め、マクロン新大統領も、*4-2のように、エネルギー・環境政策をさらに推し進めるとして、国民議会(下院、定数577)選挙で大勝した。そして、その中には、農業分野の環境改善や輸送分野のエネルギー効率改善なども入っている。
 日本でも、*4-3-1、*4-3-2、*4-3-3のように、平成26年5月1日に、農山漁村で自然再生可能エネルギー(太陽光、風力、小水力、地熱、バイオマス等)を積極的に活用する「農山漁村再生可能エネルギー法(http://www.maff.go.jp/j/shokusan/renewable/energy/pdf/re_ene1.pdf)」が施行され、地域の所得向上・農山漁村の活性化・農林漁業の振興などを進め、再生可能エネルギーの地産地消により、地域内での経済循環を構築する方向性が示された。そのため、農林漁業は、機器を電動化して自然エネルギーで自家発電するのが近未来の姿になる。従って、全農は、持ち株会社の下に自然エネルギーによる発電子会社(仮名:全農自然エナジー)をつければよいだろう。
 やはり、*4-4のように、日経新聞は経済教室で、慶大卒・東大院博士課程満期退学・災害情報論専門の関谷氏に、「偽ニュースを考える」として「①市場に流通している福島県産の農作物・海産物は徹底した検査をして、99.99%がND(検査機器が設定した検出限界より大きい値の放射性物質が検出されなかったこと)で安全確認されている」「②NDとは生産者・流通業者・消費者の間で流通上の許容量のデファクトスタンダード(事実上の基準)として結果的に合意した値」「③現在、このNDの状態でも風評被害により経済被害が起きている」「④流通業者・農業関係者の中に、まだ福島県産の農産物に多くの消費者が不安を抱いていると思い込んでいる人も多い」「⑤福島県の農林水産物についての情報発信は、検査結果に関する広報が十分ではなく、おいしさをアピールするブランド戦略や広告が中心となっている」と書かせている。
 しかし、①②にも書かれているとおり、ND(検査機器が設定した検出限界より大きい値の放射性物質が検出されなかったこと)は、生産者・流通業者・消費者の間で流通上の許容量の事実上の基準として人為的に合意した値にすぎず、長期間食しても健康を害さないことが証明された値ではない。そのため、NDだから安全確認されたとは言えず、④のように、流通業者・農業関係者・消費者に疑念を抱いている人がいる方が尤もであり、③のように、これを風評被害と断じることこそ無知である。また、放射能で汚染されても味は変わらないため、「おいしさをアピールすればよい」と考えている人には、もともとこの問題を論じる資格がない。そして、⑤のように、この検査でNDであったことをアピールしても「だから長期間食しても健康を害さないのか」は依然としてわからず、薬剤と同様、安全性が不明なら摂取しないのが常道だ。さらに、“災害情報論の専門家”というのが何を勉強してきた人かは不明だが、東大の教官でもこのようなことを断じる知識があるとは限らないことをわきまえるべきである。
 なお、*4-5のように、東京電力は、市民の反対と福島の不安に応えず、2016年9月にフクイチの1号機建屋カバーを外した。チェルノブイリでは、原発からの放射性物質の飛散を防ぐために、旧ソ連が国家の威信をかけて石棺を突貫工事で完成させ、30年を経て石棺の老朽化により再び飛散の危険があるため、2千億円をかけてさらに石棺を覆うシェルターを完成させたにもかかわらず、フクイチは、青天井で放射性物質が飛散し放題の状態になったのである。そして、これらは、「差別」や「感情論」などという否定のための誹謗中傷にもめげず、「女性自身」はじめ環境意識のある女性によって多く主張されていることを忘れてはならない。

   
都道府県別食料自給率     フクイチ事故の状況と“除染”後のフレコンバッグ

(図の説明:一番左の都道府県別食料自給率で福島県は85%と高い方だったが、原発事故後の福島県の農産物や海産物は0ではない放射性物質を含み、安全でなくなった《まさか、これをフェイク・ニュースとは言わないでしょうね》。その上、他の原発も食料自給率の高い地域(農林漁業地帯)に建設されているため、エネルギーに原発を使うのはコストが高い上、食料自給率にも影響し、亡国へのパスポートである)

*4-1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20170811&ng=DGKKZO19918370R10C17A8MM8000 (日経新聞 2017.8.11) EV大転換(下)これが持続可能な未来だ さらば石油、世界も揺れる
 7月上旬に横浜で開かれた太陽光発電の見本市。目玉は米テスラだった。「太陽光で作った電気を蓄電池でためて電気自動車(EV)で使う。これが持続可能な未来だ」。テスラのカート・ケルティ・シニアディレクターはこう語った。
●一気通貫めざす
 テスラは2月に社名から「モーターズ」を外した。16年に太陽光発電の米ベンチャーを買収。EV用電池に加え据え置き型蓄電池にも事業を広げる。創業者、イーロン・マスク氏の狙いは発電からEVまで一気通貫のエネルギーインフラを作ることにある。なぜそこまでするのか。「発電時の二酸化炭素(CO2)排出量まで考えれば、エンジン車はEVとの差がなくなる」。ある国内自動車メーカー幹部はこう主張する。背景にあるのは「ウェル・トゥー・ホイール」(油井から車輪)という考え方。燃料を作る段階からトータルの環境負荷を見る発想だ。国立環境研究所の調査では、ガソリン車に対するEVのCO2削減率はフランスで90%。一方、中国では15%減にとどまる。フランスは原子力発電の比率が高いのに対し、中国は7割以上をCO2を多く排出する石炭火力発電に依存するためだ。いくらEVを増やしても、エネルギー源から変えなければ根本的な地球温暖化対策につながらない。EVシフトの先には太陽光発電など再生可能エネルギーの拡大が待ち受ける。多くの企業がそのことに気がつき動き始めている。北欧では米IBMや独シーメンスなどが連携し、風力発電による電力をEVに供給するシステムの整備が進む。日本でも一部自治体で同じような実証実験が進むが、「欧州では既に商用段階に入っている」(日本IBMの川井秀之スマートエネルギーソリューション部長)。石油メジャーも「変身」に動く。仏トタルは低炭素の液化天然ガス(LNG)などガスの生産量が発熱量ベースで原油を超えた。仏電池メーカーを買収し再生エネ事業の拡大にも走る。自動車に素材、そしてエネルギーまで産業構造を大きく変えようとしているEVへの大転換。それは世界の秩序にも影響を与える。
●試される産油国
  「40年には1日に800万バレルの石油需要が減る」。米調査会社ブルームバーグ・ニュー・エナジー・ファイナンスはEVシフトの影響をこう予測する。800万バレルは石油輸出国機構(OPEC)の1日の生産量の4分の1に相当する。世界の石油消費量の65%は自動車など輸送用が占める。発電用途は全体の4%程度。自動車用の落ち込みを補うのは難しい。各国が協調して需給調整するOPECの戦略が成り立たなくなるかもしれない」。日本エネルギー経済研究所の田中浩一郎中東研究センター長は指摘する。需要減により協調が崩れれば、次世代産業にカジを切れるかどうかで産油国間の格差が広がる。不安定な中東に新たな不協和音を生みかねない。EVへの大転換は地政学に大きな影響を与える可能性もある。

*4-2:https://sustainablejapan.jp/2017/05/12/macrons-energy-policy/26778 (Sustainable Japan 2017/5/12) 【環境】フランスのエマニュエル・マクロン新大統領のエネルギー・環境政策の骨子
 5月7日のフランス大統領選挙で勝利を収めたエマニュエル・マクロン元経済・産業・デジタル大臣。5月14日に第25代フランス大統領に就任します。フランスでは、社会党を与党とする現オランド大統領政権時代に、環境・エネルギー政策の大転換がありました。その最たる例が2015年7月22日に制定された「エネルギー転換法」。この法律では、フランスの電力の代名詞であった原子力発電所の大幅削減、化石燃料消費の廃止、再生可能エネルギーへのシフト、石油由来廃棄物の大幅削減、企業及び金融機関に対する気候変動関連情報開示制度など、世界初の政策を大規模に盛り込みました。同時に政府の公的年金でもESG投資が大規模に推進されました。これまで欧州の環境先進国と言えば、ドイツやイギリス、または北欧という印象が強かった近年。フランスは後塵を拝していましたが、このオランド政権時代に、欧州、そして世界の「トップクラス」へと躍進しました。その中、関心が集まるのが、マクロン新大統領のエネルギー・環境政策です。マクロン新大統領は今回、無党派として立候補し、極右と言われる国民戦線のマリーヌ・ル・ペン候補だけでなく、フランス二大政党である社会党のブノワ・アモン候補、共和党のフランソワ・フィヨン候補とも選挙戦を競いました。選挙戦中には、現政権与党の社会党幹部が、自党の候補ではなく、マクロン新大統領を支持するという事態も発生しました。なぜマクロン氏には社会党の支持が集まっているのか。その背景には、マクロン新大統領の経歴が関係しています。マクロン新大統領は、2004年にフランスの名門大学、国立行政学院(ENA)を卒業後、フランス財務省に就職。国家官僚として勤務する一方、政治家を志し、社会党へ入党します。その後、2008年に財務省から、英国老舗資本家であるロスチャイルド家の中核投資銀行であるロチルド&Cie銀行に転職。投資銀行家としてのキャリアを積み、2010年には社会党を離党し、無党派として政治家を目指す姿勢に転向します。マクロン氏が、最初に政権入りするのが、2012年。当時就任したばかりのオランド大統領に招聘され、大統領府副事務総長としてオランド大統領に側近の地位を得ます。そして2014年、オランド政権の経済・産業・デジタル大臣に任命された後、今回の大統領選挙出馬を視野に2016年8月に大臣を辞任。そして、39歳の若さで大統領選挙に勝利。このように、マクロン新大統領は、無党派ながらも現オランド政権を支えてきました。マクロン氏は、2010年に社会党を離党した背景について、「私は社会主義者ではない」とし、右派・左派を超越した政治を目指したい考えを訴えています。さて、このマクロン新大統領の環境・エネルギー政策はどう展開されていくでしょうか。マクロン新大統領は、選挙期間中に、すでに自身の「環境・エネルギー政策」の骨子を表明しています。大きな柱は、現オランド政権のエネルギー・環境政策を「さらに推し進める」というものになっています。
<電力>
•2025年までに原子力発電比率を2025年までに現在の67%から50%に削減
•国営電力会社EDFが業績が大幅に低下している原子力発電会社アレヴァを救済合併
•2022年までに石炭火力発電を2022年までに全て廃止
•フランス領内での石油・ガス採掘を全て禁止
•2030年までにエネルギー消費に占める再生可能エネルギー割合を現在の約15%から32%に引き上げ
•2030年までに発電量に占める再生可能エネルギー割合を現在の約18%から40%に引き上げ
•再生可能エネルギーと環境保全分野に150億ユーロ(約1.8兆円)を投資
•再生可能エネルギー発電の設備容量を26GW分を新たに追加
<交通燃料>
•ガソリンとともにディーゼル燃料に対する増税を実施し、石油燃料の消費を抑制
•2040年までに化石燃料自動車を廃止する将来構想を提示
•電気自動車向けの充電スタンド設置に対する政府支援
<エネルギー効率>
•不動産分野のエネルギー効率改善のため、低所得家庭に対し40億ユーロ、政府施設に対し40億ユーロを助成
•農業分野の環境改善と地域農業協働促進のため50億ユーロを助成
•輸送分野のエネルギー効率改善のため、50億ユーロを助成
•EUの排出権取引制度に対し、フランス国内では下限価格を設定する意向を表明(2020年までに1t当たり56ユーロ、2023年までに100ユーロ)
 再生可能エネルギー推進では、すでにEUからの助成が決定しています。大統領選挙の前の5月10日、EUの行政府である欧州委員会が、再生可能エネルギー発電所建設プロジェクト合計17GW分に対する約13億ユーロ(約1,600億円)の助成金給付を承認しました。そのうち、15GW分は陸上小型風力発電所(最大3MWで6基以内)。残りは、小型太陽光発電所(100kW以内)が2.1GWと、下水発生ガスを用いた廃ガス火力発電所が1ヶ所です。マクロン新大統領はこれらの野心的な政策を実現できるのか。それは今後の国会運営にかかっています。無党派で出馬したマクロン新大統領は、現在国会内に1議席も有していません。マクロン氏は当選後、支持団体をもとに新政党「レピュブリック・アン・マルシェ(共和国前進)」を設立。6月11日から18日に行われる国民議会(下院、定数577)選挙に向け、428人の公認候補を発表しました。社会党の下院議員24人もマクロン新党公認候補として出馬します。一方、半数以上の候補が新人候補であり、選挙戦は容易ではありません。マクロン新大統領は、従来の政党には依存しない政権運営を目指すため既存の政治との訣別を掲げ、有権者に支持を訴えています。マクロン新大統領が打ち上げたエネルギー・環境政策が花開くか。次の下院選挙が帰趨を決します。

*4-3-1:http://www.maff.go.jp/j/shokusan/renewable/energy/ (農林水産省) 再生可能エネルギーの導入促進
 私たちの身のまわりには、土地や水、風、熱、生物資源等が豊富に存在しています。有限でいずれは枯渇する化石燃料などと違い、これらは、自然の活動などによって絶えず再生・供給されており、環境にやさしく、地球温暖化防止にも役立つものとして注目を集めています。農山漁村において、これらのエネルギー(太陽光、風力、小水力、地熱、バイオマスなど)を積極的に有効活用することで、地域の所得の向上等を通じ、農山漁村の活性化につなげることが可能となります。農林水産省は、再生可能エネルギーの導入を通じて、農山漁村の活性化と農林漁業の振興を一体的に進めていきます。

*4-3-2:http://www.maff.go.jp/j/shokusan/renewable/energy/sinkou.html (農林水産省) 農山漁村の再生可能エネルギー振興策について
 農山漁村における再生可能エネルギー振興策について、固定価格買取制度の活用等による発電の取組と併せて、再生可能エネルギー熱の利用や、電力小売全面自由化を捉えた再生可能エネルギーの地産地消の取組による地域内経済循環の構築等、今後推進すべき方向性の一例を紹介します。

*4-3-3:http://www.maff.go.jp/j/shokusan/renewable/energy/houritu.html (農林水産省) 農山漁村再生可能エネルギー法
 平成25年11月15日に農林漁業の健全な発展と調和のとれた再生可能エネルギー電気の発電の促進に関する法律(農山漁村再生可能エネルギー法)が成立し、11月22日に公布され、平成26年5月1日に施行されました。この法律は、農山漁村における再生可能エネルギー発電設備の整備について、農林漁業上の土地利用等との調整を適正に行うとともに、地域の農林漁業の健全な発展に資する取組を併せて行うこととすることにより、農林漁業の健全な発展と調和のとれた再生可能エネルギー発電を促進し、農山漁村の活性化を図るものです。この法律の条文や概要等につきましては、以下のリンク(http://www.maff.go.jp/j/shokusan/renewable/energy/pdf/re_ene1.pdf 等)を御参照下さい。

*4-4:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20170816&ng=DGKKZO20000960V10C17A8KE8000 (日経新聞 2017.8.16) 経済教室:経済教室偽ニュースを考える(下)周知不足が風評被害拡大、流通や行政にも課題多く 関谷直也・東京大学特任准教授(1975年生まれ。慶大卒、東大院博士課程満期退学。専門は災害情報論)
ポイント
○安全確認されても経済的被害が止まらず
○消費者の不安和らぐも供給側に思い込み
○ブランド戦略優先し検査体制のPR不足
 風評被害とはもともと原子力分野において、放射性物質による汚染がない状況で食品や土地が忌避されることとして問題となってきた。過去の事例をまとめると、風評被害とは、ある社会問題(事件、事故、環境汚染、災害、不況など)が報道されることによって、本来「安全」とされるもの(食品、商品、土地、企業など)を人々が危険視し、消費、観光、取引をやめることなどによって引き起こされる経済的被害を指す。環境汚染や食中毒などの危険性のあるものや、安全でないものが売れないのは当然である。それとは別に「安全であるにもかかわらず売れない」からこそ問題となる現象が風評被害である。2011年の東京電力福島第1原子力発電所の事故と、その後の福島県産の食品に関する消費者の購買行動を例に、風評被害のメカニズムと解消に向けた対応策を論じたい。原発事故の直後の段階では、公的には政府が定めた放射線量の基準値以下ならば安全であるとして、この基準値以下で人々が商品を買わないことや、福島県を訪れないことで生じる経済被害が「風評被害」とされた。事故直後は出荷制限された農産物も多く存在し、実際に放射性物質が検出されることもあったため、風評被害か実害かは議論が分かれるところであった。だが、放射性物質のセシウム134はすでに半減期(約2年)が過ぎ、空間線量や農作物の放射性物質の含有量は大幅に低下してきている。汚染の状況も把握され、空間線量も明らかにされてきた。カリウムを含んだ肥料をまくなどの吸収抑制策の成果もあり、農作物に含まれる放射性物質の値は下がり、昨年度の放射性物質モニタリング検査結果では野菜2870点、果実923点、肉類3791点、野生・栽培キノコ796点はすべて基準値以下である。しかも市場に流通している福島県産の農作物は徹底した検査がされている。米は毎年、約1000万袋全量が調査されているが、15年と16年は放射性物質が基準値を超えたものはなく、99.99%が不検出を意味する「ND」であった。海産物についても昨年度は8766件が調査され、全て基準値以下だった。現在、10魚種の出荷制限が続いているが、魚種や海域を絞った試験操業は拡大している。NDとは正確には、検査機器の設定した検出限界より大きい値の放射性物質が検出されなかったという意味で、生産者や流通業者、消費者の間で、流通上の許容量のデファクトスタンダード(事実上の基準)として結果的に合意した値である。現在の風評被害は、このNDの状態であっても生じる経済被害のことだといえる。さらに、社会状況や消費者の心理状況も大きく変化している。福島第1原発は廃炉の見通しが立っていないものの、避難指示区域は縮小してきている。筆者らが実施したアンケート調査の結果を比べると、福島県産の購入を拒否する人の割合は減ってきており、とくに福島県内で消費者の意識の変化が大きく、拒否する人の割合は12%にまで減った(図参照)。放射性物質に関して不安が薄らいだ理由としては、「基準値を超えた品目は出荷制限がなされている」「放射性物質が検出されなくなってきている」など、検査体制の充実による信頼感が生まれてきたことが大きいと考えられる。筆者らのこれまでのアンケート調査でも繰り返しこれらの結果が得られている。福島の風評被害の焦点は現在、人々の不安や心理の問題から、流通の問題へと変化している。流通業者や農業関係者の中に、いまだ「福島県産の農産物に多くの消費者が不安を抱いている」と思い込んでいる人も多い。社会心理学で言う、周囲の意見を正確に認識できない「意見分布の無知」という現象である。人々への影響力の大きいソーシャルメディアでも、ユーザーが見たい情報を選択的にみる「フィルターバブル」と称される現象が起きている。一般の関心は低下しているものの、ネット上では強い関心を持つ人が多くの意見を書き込むため、「放射能の問題の有無について、いまだに論争が続いている」という印象を持つ人も少なくない。さらに福島県産の農産物の安全性は確認されてきているにもかかわらず、(1)流通が長期間滞ったことで他産地の商品に置き換わり、販路が途絶えた(2)安全なことが分かっているうえ、安価でおいしいので業務用とされることが多い(3)震災後の混乱を経験した仲卸や小売店が福島県産の回復に消極的――といった問題がある。これらが総じて現在の風評被害の最も大きな課題であるといえよう。福島の風評被害の問題はすでに次のステージに入っている。放射能などに関する「科学」的な理解の問題や、リスクに関する情報を社会で共有する「リスクコミュニケーション」の問題でもなければ、行政に対する不信感の問題でもない。「事実」がきちんと周知されていないというPRの問題である。筆者らの統計的な分析でも、購買行動に大きく影響を与えるのは「検査結果」や「検査体制」である。「福島県内では米に関して全量全袋検査が行われている」ことの周知率は、福島県内では79.0%に達しているのに対し、県外は40.8%にすぎない。「食品への含有放射性物質の検査でもほとんどがNDである」ことの周知率は県内では50.3%にもなるが、県外では17.3%しかない。図で紹介したように、福島県産の食品の購入状況が県内と県外で異なっているのは、全量全袋検査やスクリーニングなどの検査体制や、ほとんどがNDという検査結果について、事実の周知に差があるためと考えられる。福島県外では汚染対策などへの関心の低下により周知度が低く、食品に対する不安感の低減が遅れているとみられる。検査体制や結果について事実が周知されなければ、これ以上の消費の回復は望めない。現在の福島県の農林水産物についての情報発信は、検査結果に関する広報が十分ではない段階にもかかわらず、「おいしさ」をアピールするブランド戦略や広告が中心となっている。だが産地間競争が増すなかで、他地域も栽培技術の開発やマーケティングに熱心に取り組んでおり、おいしさのアピールだけでは風評被害の払拭は望めない。そしりを恐れずにいえば、現代社会では消費の選択の自由がある。福島県産を心情的に拒否する人がいても、それはやむを得ない。だが、少なくとも今の福島県の検査体制や検査結果の事実を知った上で、福島県産を拒否する合理的な根拠はすでにないことは理解される必要がある。福島第1原発事故の事例に限らず、「風評被害」という社会問題は単に消費者の不安感だけが原因なのではない。メディアの報道姿勢、人々の安全認識、安全基準の設定、市場流通、産地間競争、復興時の情報発信などが複雑に絡み合った問題である。多義的であり、時間の経過と共に変化するといえる。それゆえに風評被害は単なるリスクコミュニケーションや広告だけで解決できるものではない。課題から目を背けず、社会問題としての風評被害の事実を正確に把握し、事実をきちんと知ることが解決策につながるのである。

*4-5:http://blog.goo.ne.jp/kimito39/e/24433de21832131caeb66f361abde4fa 木村結、東電株主代表訴訟事務局長
「女性自身 2017年4月4日号」(光文社)引用記事
 昨年9月、市民の反対と福島の不安に応えず、東京電力(以下、東電)は福島第一原子力発電所1号機の建屋カバーを外した。東電は放射性物質には飛散防止剤を使うので心配はないと説明していた。しかし、「女性自身」編集部が原子力規制庁のデータを検証したところ、福島県双葉郡では2017年1月の放射性セシウム134が770ベクレル/立方メートル、137が4700で合算5470ベクレル/立方メートル。カバーを外す前の2016年9月と比べると約65倍に急増していた。東京都新宿区では約4.5倍、神奈川県茅ヶ崎市では約9倍、群馬県前橋市では約13倍、千葉県市川市で約5倍となった。これは東電の怠慢であると同時に国民の安全を守らなければならない国の怠慢であり、全国各地で定点観測している規制庁は数値を知りながら警告せず放置していたことになる。1986年に福島原発と同じくレベル7の事故を起こしたチェルノブイリ原発は30年経って石棺にヒビが入り放射能漏れを起こしたため、ドーム型の覆いを施したが、これは100年持つという。チェルノブイリではデブリ(=原子炉から解け落ちて鉄や金属とともに固まった核燃料。非常に高い放射線量を持つ)を取り出すことはまだ不可能と考えているということ。ところが日本は再稼働をしたいばかりに事故を起こした原発から無理にデブリを取り出し、何が何でも廃炉が可能と言いたいようだ。それは取りも直さず作業員に多大なる被ばくを強い、無理やり帰還させた福島の住民をも被ばくさせるだけでなく、全国民も知らないうちに被ばくさせられているということ。このような原発推進ありきの政治を一刻も早く終わりにしないと日本は世界の核のゴミ捨て場になってしまう。 
-----(引用ここまで)--------
 政府・原子力ムラはこの記事の否定に躍起ですが、1号機に限らずガレキ撤去のたびに周辺の線量が跳ね上がることは以前から観測されており、何の不思議もありません。しかも溶融燃料が格納容器の底を突き抜けて地下に沈下しており、地下水と接触して大量の放射性蒸気も噴き上げています。今さら騒ぐこともない当たり前の事実です。口汚く「女性自身」を罵っている連中は、何一つ科学的なデータや根拠を示すことはしません。チェルノブイリ原発からの放射性物質の飛散を防ぐために、旧ソ連は国家の威信をかけて石棺を突貫工事で完成させました。30年を経て石棺の老朽化により再び飛散の危険があるため、さらに2千億円もかけてこのたびそれを覆うシェルターを完成させたのです。石棺も何もない青天井の福島第一原発(1F)からは放射性物質は飛散し放題です。風が吹けば大量の放射性微粒子が舞うのです。こんな当たり前のことをデマだと騒いで否定する連中は頭がおかしいとしか言いようがありません。今月1Fを見学したNYタイムズの記者たちが防護服・マスクをしていたのも、きちんとした理由があるのです。被ばくをしたくなければ、1Fから放射性物質が飛んでこない地域に避難移住するしかありません。「女性自身」には、誹謗中傷にめげず今後もぜひ真実を伝え続けてほしいと思います。読んで応援しましょう。

<人材派遣会社>
PS(2017年8月12日追加):全農の人材派遣子会社が、*5のように、リレー方式で農繁期の地域を渡り歩いたり、加工に携わったりする人を雇用して派遣すれば、働く人にとっては、①正規社員になれば生活が安定する ②多様な農業を体験できる ③定年後の高齢者・外国人などの雇用の受け皿が増える などのメリットがあり、派遣を受ける農家や加工会社にとっては、④繁忙期のみ人を増やすことができる というメリットがある。
 そして、①は被用者にとってプラスであり、②は農業に従事し始めたばかりの人や外国人にとってよい経験となり、③は雇用が増える効果がある。また、私は、この時の賃金の支払い方は、時間給だけでなく成果給を入れるのが効率を上げるポイントだと考える。何故なら、1時間あたりのみで賃金を決めるのではなく、収穫一箱あたりでも賃金を決めると、能率の良い人ほど短時間で多く稼ぐことができるため能率を上げる動機付けができ、賃金の決め方によっては双方にとってプラスになるからである。

*5:https://www.agrinews.co.jp/p40280.html (日本農業新聞 2017年3月3日)北海道-愛媛-沖縄で農作業 3JAがリレー方式 アルバイト周年確保 即戦力、人材情報を共有
 愛媛県のJAにしうわと沖縄県のJAおきなわ、北海道のJAふらのは、農繁期の労働力確保へ、アルバイトをリレー方式でつなぐ事業に乗り出した。農繁期がずれる3JAを、アルバイトが1年間渡り歩くイメージで、一定の農作業経験を積んだ即戦力として期待できる。2016年度は各JAが連携先のJAで人材募集をかけた。17年度からは他JAの加入も検討する。産地維持にアルバイトは必須なだけに、人材情報を共有するなど連携を強化し、人材確保につなげる。各JAがアルバイトに聞き取り調査などをしたところ、提携するJAでも農作業をしている事例が多く、リレー方式による連携を決めた。アルバイトの1年間の流れはこうだ。11月10日から12月20日ごろまでJAにしうわでミカンの収穫や選果場での選別作業をする。その後、JAおきなわで12月中旬から翌年3月までサトウキビの収穫や製糖作業に従事。JAふらので4~10月までメロンの品質管理やミニトマト、スイカの定植と管理、収穫を担う。各JAでは年々、アルバイト不足が深刻化している。JAおきなわは15年度、必要な約250人が集まらず一般の派遣会社を利用した。派遣会社を通じた場合は紹介料などもあり、直接募集するアルバイトより2割以上高いという。同JAは「1人でも多くリピーターを増やしたい」と連携による人材確保に期待する。JAふらのは年々、必要な採用人数に達する時期が遅くなっている。これまで4月末までに120人を確保できたが、近年は5月下旬にずれ込む。同JAの子会社で農作業支援サービスを展開するアグリプランによると、今年は2月末までで15、16人の採用しか決まっていない。「前年は同時期に約20人が決まり、状況は悪化している」と嘆く。JAにしうわ管内のアルバイトの採用人数は年々増えている。16年度は前年を2割近く上回る212人を農家が雇用した。「将来的に労働力の確保の要望は高まる」とみる。連携により、農作業経験がある優良なアルバイトの確保につなげる。新規の場合は作業効率が悪いことや働く姿勢に個人差があるため、事前にJA間で情報を共有し、有望な人材を確保する。アグリプランは「農業は他のバイトに比べ、雇用主と向かい合ってやりとりをする機会が多い。事前に参加者の個性を知ることは重要」と強調する。今後は連携JAの拡大も検討する。JAにしうわは「アルバイトにとっても選択肢が増えれば、さまざまな働き方ができるようになる」と強調する。

<脱原発・脱化石燃料と農林漁業の貢献>
PS(2017年8月13日追加):地球温暖化対策の推進に関する法律(http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H10/H10HO117.html)の第21条1項には「都道府県・市町村は、温室効果ガスの排出量削減や吸収作用の保全・強化のため措置計画を策定する」と定められており、3項には「その区域の自然的社会的条件に応じて温室効果ガスの排出の抑制等を行うための施策(太陽光、風力その他の再生可能エネルギーの利用、都市機能集約、公共交通機関利用者の利便増進など)を行う」等々が定められている。また、農山漁村の活性化と再生可能エネルギーによる発電推進を目的として、「農山漁村再生可能エネルギー法(http://www.maff.go.jp/j/shokusan/renewable/energy/pdf/re_ene1.pdf)」も制定されているため、農山漁村で発電して市町村の上下水道に併設した送電線で電力を集め、鉄道の敷地に(超電導)電線を敷設して大量消費地に送るシステムにすると、*6の脱原発・脱化石燃料と電線の地中化が比較的安価に実現できる。
 これにより、外国に支払う燃料費が不要になるとともに、農林漁業に再生可能エネルギー発電機器を補助して所得を下支えすることにより、農林水産物への永遠の補助金を削減することが可能になり、送電した組織には送電料収入が入る。こうなると、2014年の日本の原油輸入額13.9兆円(GDP比2.9%)のうちの燃料の割合が92%の12.9兆円であるため、この外国への支払いが次第になくなって国内で廻るようになり、こういう構造改革をしていくと消費税増税や子ども保険の徴収を行わなくても必要な社会保障ができるようになる。そして、これまでこういう改革ができなかったのは縦割りの別省庁の管轄だったからで、これこそ政治主導でやるべきなのだ。
 なお、日本もEV化を進めるために、東京オリンピックを期限として東京都が東京23区内へのEVや燃料電池車以外の乗り入れを禁止すれば、瞬く間にあらゆる車種の環境車への変換が進み、空港や道路で排気ガスに燻されることがなくなり、世界に驚きを与えるだろう。また、東京だけでなく、奈良・京都・大阪・札幌・福岡やその他の観光地もそうすればよいと考える。

*6:http://digital.asahi.com/articles/DA3S13084985.html (朝日新聞社説 2017年8月13日) エネルギー基本計画 「脱原発」土台に再構築を
 電気や熱などのエネルギーをどう使い、まかなっていくか。その大枠を示す国のエネルギー基本計画について、経済産業省が見直し論議を始めた。世耕弘成経産相は「基本的に骨格は変えない」と語った。しかし、小幅な手直しで済む状況ではない。今の計画は、国民の多くが再稼働に反対する原発を基幹電源とするなど、疑問が多い。世界に目を向けると、先進国を中心とした原子力離れに加え、地球温暖化対策のパリ協定発効に伴う脱石炭火力の動き、風力・太陽光など再生可能エネルギーの急速な普及といった変化の大きな波が起きている。日本でも将来像を描き直す必要がある。まず土台に据えるべきは脱原発だ。温暖化防止との両立はたやすくはないが、省エネ・再エネの進化でハードルは下がってきた。経済性や安定供給にも目配りしながら、道筋を探らなくてはならない。
■偽りの「原発低減」
 14年に閣議決定された今の計画にはまやかしがある。福島第一原発の事故を受けて、「原発依存度を可能な限り低減する」との表現を盛り込んだが、一方で原発を「重要なベースロード電源」と位置づけた。新規制基準に沿って再稼働を進める方針も明記し、実際に各地で再稼働が進んでいる。計画をもとに経産省が15年にまとめたエネルギー需給見通しは、原発回帰の姿勢がさらに鮮明だ。30年度に発電量の2割を原発でまかなうと想定する。30基ほどが動く計算で、再稼働だけでなく古い原発の運転延長か建て替えも多く必要になる。だが、原発政策に中立的な専門家からも「現実からかけ離れている」と批判が出ている。事故後、原発に懐疑的な世論や安全対策のコスト増など、内外で逆風が強まっているからだ。原発から出る「核のごみ」の処分も依然、日本を含め大半の国で解決のめどが立たない。先進国を中心に原発の全廃や大幅削減をめざす動きが広がっている。次の基本計画では、原発を基幹電源とするのをやめるべきだ。「依存度低減」を空証文にせず、優先課題に据える。そして、どんな取り組みが必要かを検討し、行程を具体的に示さねばならない。
■温暖化防止と両立を
 脱原発と温暖化対策を同時に進めるには、省エネを徹底し、再エネを大幅に増やすことが解になる。コストの高さなどが課題とされてきたが、最近は可能性が開けつつある。省エネでは、経済成長を追求しつつエネルギー消費を抑えるのが先進国の主流だ。ITを使った機器の効率的な制御や電力の需要調整など、技術革新が起きている。かつて石油危機を克服した時のように、政策支援と規制で民間の対応を強く促す必要がある。再エネについては、現計画も「導入を最大限加速」とうたう。ここ数年で太陽光は急増したが、風力は伸び悩む。発電量に占める再エネの割合は1割台半ばで、欧州諸国に水をあけられている。本格的な普及には障害の解消が急務だ。たとえば、送電線の容量に余裕がない地域でも、再エネで作った電気をもっと流せるように、設備の運用改善や、必要な増強投資を促す費用負担ルールが求められる。世界では風力や太陽光は発電コストが大きく下がり、火力や原子力と対等に競争できる地域が広がっている。日本はまだ割高で、設置から運用まで効率化に知恵を絞らねばならない。再エネは発電費用を電気料金に上乗せする制度によって普及してきたが、今後は国民負担を抑える仕組みづくりも大切になる。一方、福島の事故後に止まった原発の代役として急増した火力発電は、再エネ拡大に合わせて着実に減らしていくべきだ。現計画は、低コストの石炭火力を原発と並ぶ基幹電源と位置づけ、民間の新設計画も目白押しだ。しかし、二酸化炭素の排出が特に多いため、海外では依存度を下げる動きが急だ。火力では環境性に優れる天然ガスを優先する必要がある。
■世界の潮流見誤るな
 今回の計画見直しでは、議論の進め方にも問題がある。経産省は審議会に加え、長期戦略を話し合う有識者会議を設ける。二つの会議の顔ぶれは、今の政策を支持する識者や企業幹部らが並び、脱原発や再エネの徹底を唱える人は一握りだ。これで実のある議論になるだろうか。海外の動向や技術、経済性に詳しい専門家を交え、幅広い観点での検討が欠かせない。資源に乏しい日本では、エネルギーの安定供給を重視してきた。その視点は必要だが、原発を軸に政策を組み立てる硬直的な姿勢につながった面がある。世界の電力投資先は、すでに火力や原子力から再エネに主役が交代した。国際的な潮流に背を向けず、エネルギー政策の転換を急がなくてはならない。

<国政の方針と教育財源>
PS(2017年8月18、20日追加):*7-1のように、福島第一原発の廃炉のため国は既に1000億円超の税金を投入し、電力ばかり食って効果の上がらない汚染水対策や調査ロボットの開発費に使ったそうで、経産省が原発事故処理にまでたかって予算を獲得していることがわかる。さらに、東芝の失敗を見てもなお、*7-2のように、日立の英国子会社はスペインのテクナトム社と提携して原発新設に携わる作業員の育成や原発の運営・保守に繋げるそうで、*7-3のように、米政府代表でさえ「パリ協定」の完全履行を求める内容を含む閣僚宣言を採択したにもかかわらず、日本の経産省幹部は、①石炭火力発電所の新増設 ②国外での削減貢献分の算入 ③目標を引き下げるか原発を新設するかの選択 などを主張しているのだ。
 しかし、私は、②については、環境省の「国内の努力だけで達成すべき」というのが正しく、①③ではなく、環境に配慮した製品への代替こそが経済成長のKeyになると考える。そのため、韓国でも、*7-4のように、現代自動車が、1回の水素充填で580キロメートル走る新型FCVを2018年に韓国と欧米市場に投入し、1回のフル充電で390キロメートル走るEVも発売する予定とのことであり、この調子では、太陽光発電は中国製か台湾製、EVやFCVは中国製か韓国製が優れたブランドになり、日本は国が大きな補助をして実質マイナス価格で原発か石炭火力発電機器を売るしかなくなりそうだ。
 さらに、上のような莫大な無駄遣いを放置しつつ、*7-5のように、高等教育の無償化や福祉については、必ず財源問題が主張される。そして、政府は有力な2案(①全国民を対象に在学中は授業料を取らず、卒業後に所得に応じて拠出金の形で納付する案 ②一定の所得制限をした上で給付型奨学金を拡張する案)に絞って検討を進める方針だそうだが、教育・福祉の財源は、国内にある自然再生エネルギーで発電すれば容易に出てくるため、国立・公立大学の授業料は(無料である必要はない)せいぜい月額1万円を上限とし、奨学金は親の所得とは関係なく必要とする学生には支払うべきである。また、そうすることによって、補助金にぶら下がった仕事をするのではなく、報酬以上の付加価値を自らつけられる教育をすべきだ。
 なお、*7-6のように、日経新聞は社説で「①全員入学に近づいて大半の大学が学力による学生の選抜機能を失っている」「②このまま門戸を広げれば大学の質が低下する」「③必要なのは量的拡大より国際競争力の強化と規模の適正化だ」「④そのため外部評価に応じた資金配分が必要だ」としている。私は、大学まで無償化する必要はないと思うが、大学を卒業することにより社会貢献が多くなる学生に少ない費用で教育したり、奨学金を出したりするのは理にかなっていると考える。その際、大学の立場から見れば、①②は、選抜して間口を狭くしさえすれば質が上がるわけではなく、教育のゆとり化やスポーツ重視で高校までに得ている知識が少なく思考力が弱くなっている生徒をいくら選抜しても限界があり、少なくとも高校までの内容を身に着けていなければ大学の授業についていけない。そのため、大学はじめ試験者は、選抜者の顔色や空気を読んで相手が気に入る答えをする能力だけが鍛えられる推薦を廃止し、知識や思考力を測る試験に変えるべきだと考える。また、③の国際化が必要なのは、実は国際競争をしている第一線の人材だけで、職業によっては国際競争は少ないが専門教育を受けることが必要なものもある。そのため、望む人が大学に行けるようになったのはよいことで、今後は、知識を更新したい社会人の再教育や医療・看護・介護、工学、農学などの外国人への門戸拡大が必要だ。そして、日本の大学が勉学に困難を極める開発途上国の若者を受け入れるようになれば、結果は日本にも戻ってくる。④については、外部評価の公正性を担保した上でなら評価に応じた資金配分に異存はないが、日本人は(教育のせいか)将来を見据えた公正な評価ができないのが問題なのである。


  2017.8.18日経新聞     2011.11.13東京新聞      凍土遮水壁
      
*7-1:http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201708/CK2017081402000112.html (東京新聞 2017年8月14日) 【社会】福島第一 廃炉に税金1000億円超 7月まで本紙集計
 東京電力福島第一原発事故の廃炉作業で、国が直接、税金を投入した額が一千億円を超えたことが、本紙の集計で分かった。汚染水対策や調査ロボットの開発費などに使われている。今後も溶け落ちた核燃料の取り出し工法の開発費などが必要になり、金額がさらに大きく膨らむのは必至だ。廃炉費用は東電が負担するのが原則だが、経済産業省資源エネルギー庁によると「技術的に難易度が高い」ことを基準に、税金を投入する事業を選定しているという。担当者は「福島の早い復興のため、国が対策を立てることが必要」と話す。本紙は、エネ庁が公表している廃炉作業に関する入札や補助金などの書類を分析した。廃炉作業への税金投入は二〇一二年度からスタート。今年七月までに支出が確定した業務は百十六件で、金額は発注ベースで計約千百七十二億六千万円に上った。事業別では、建屋周辺の地下を凍らせ、汚染水の増加を防ぐ凍土遮水壁が、設計などを含め約三百五十七億八千万円。全体の三割を占め、大手ゼネコンの鹿島と東電が受注した。ロボット開発など、1~3号機の原子炉格納容器内の調査費は約八十八億四千万円だった。福島第一の原子炉を製造した東芝と日立GEニュークリア・エナジーのほか、三菱重工業と国際廃炉研究開発機構(IRID)が受注した。受注額が最も多いのは、IRIDの約五百十五億九千万円。IRIDは東芝などの原子炉メーカーや電力会社などで構成する。国は、原発事故の処理費用を二十一兆五千億円と試算。このうち、原則東電負担となる廃炉費用は八兆円とされている。除染で出た汚染土を三十年間保管する中間貯蔵施設は国の負担だが、賠償費用は主に東電や電力会社、除染費用も東電の負担が原則だ。

*7-2:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20170720&ng=DGKKASDZ19IOJ_Q7A720C1EAF000 (日経新聞 2017.7.20) 日立の英子会社が提携 スペイン原発関連と
 日立製作所は英国の原子力発電事業開発子会社ホライズン・ニュークリア・パワーがスペインの原発関連エンジニアリング会社であるテクナトム社と提携したと発表した。英国中部のアングルシー島で進める原発新設に携わる作業員を育成し、確実な原発の運営・保守につなげる。

*7-3:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20170818&ng=DGKKZO20106770X10C17A8EE8000  (日経新聞 2017.8.18) 経済:エネルギー再考 論点を探る(下)50年目標、具体化か素通りか 温暖化対策、省庁間で溝
 7月半ば、ニューヨークでの「持続可能な開発目標(SDGs)」閣僚級会合。地球温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」の完全履行を求める内容を含む閣僚宣言を採択した直後、米政府代表は言い放った。「米国は協定に関する部分とはかかわりを持たない」
●米抜きでも歩み
 ほぼすべての国が参加するパリ協定。温暖化ガスの2割弱を排出する米国の離脱表明が衝撃だったのは確かだが、欧州連合(EU)や中国など主要国が歩みを止める兆しはない。7月、独ハンブルクでの20カ国・地域(G20)首脳会議で、米を除く各国は「パリ協定は撤回できない」と宣言。仏英は2040年からガソリン・ディーゼル車の販売を禁止し電気自動車などを優遇すると発表した。再生可能エネルギーの普及を急ぐドイツやカナダを含め、各国の念頭には「産業革命前からの気温上昇を2度未満にする」との協定に盛られた目標がある。カギになるのが50年をメドとする長期の削減戦略。仏独などは基本対策とともに国連に提出済みだ。各国は対応が経済成長につながるとみる。経済協力開発機構(OECD)によると、G20が温暖化防止に取り組めば50年時点で成長を約5%押し上げる。30年までに年平均6兆9000億ドルの投資が必要になる。
●石炭火力やり玉
 一方の日本。50年に80%減という長期計画を閣議決定したが、国連に出せていない。政府内調整が難しいためで、特に温暖化対策を推進する経済産業、環境両省の足並みがそろわない。「どんどん設置されれば二酸化炭素(CO2)の削減はできない」。中川雅治環境相は約40ある石炭火力発電所の新増設計画をやり玉にあげる。中部電力の計画に待ったをかけるなど影響が出ているが、経済産業省は「電力安定供給に石炭火力は必要」との立場だ。80%減を巡り、環境省は国内の努力だけで達成すべきだと訴えるが、経産省は国外での削減貢献分も算入するよう主張。対策を示す報告書も別々にまとめた。地球環境産業技術研究機構(RITE)の分析によると、国内だけで80%減を実現するには電源構成の4割以上が原子力になる。1割強はガス発電だが、排出されるCO2を回収する装置をつける。残りは再生可能エネルギーだ。このシナリオではCO2を1トン減らすのに60万円以上かかり、原発の新設も必要になる。経産省は30日、50年を見据えた有識者会議の初会合を開く。経産省幹部は「目標を引き下げるか原発を新設するかの選択になるかもしれない」と言う。将来像を詰めて具体化するか素通りするか。温暖化対策への本気度も問われる。

*7-4:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20170818&ng=DGKKASDX17H0I_X10C17A8FFE000 (日経新聞 2017.8.18) 現代自が新型燃料電池車 航続距離39%増 欧米でも来年投入
 韓国の現代自動車は17日、新型の燃料電池車(FCV)を公開した。2018年の第1四半期(1~3月)に韓国で発売するのを皮切りに、欧米市場などにも投入する。現行モデルと同じ多目的スポーツ車(SUV)型で、航続距離は現行比39%延びるという。18年に航続距離を2倍にした電気自動車(EV)を発売することも公表した。現代自にとって2代目になるFCVは、水素と酸素を化学反応させて電気をつくる燃料電池スタックや水素供給装置などの中核部品を全面的に見直した。化学反応から推力を得るシステムの効率を60%と現行比約5ポイント上げ、1回の水素充填で走る距離を580キロメートルに延ばす。モーターの出力は163馬力でトヨタ自動車のFCV「ミライ」(154馬力)を若干上回る。欧米とオーストラリアで「18年後半の発売を見込み、中国販売も検討する」(現代自幹部)とする。FCV市場で先行するトヨタなどを追撃する。ハイブリッド車(HV)などを含む環境対応車を20年までに現在の14車種から31車種に増やす方針も明らかにした。EVは1回のフル充電で390キロメートル走るSUV型を来年前半に出す。また、現代自は航続距離が500キロメートルのEV開発に着手したことも明かした。

*7-5:http://digital.asahi.com/articles/DA3S13091724.html?_requesturl=articles/DA3S13091724.html&rm=150 (朝日新聞 2017年8月18日) 高等教育無償化2案 卒業後に拠出金納付・給付型奨学金を拡張
 安倍政権が掲げる大学などの無償化について、政府は、有力な2案に絞って検討を進める方針を固めた。全国民を対象に在学中は授業料を取らず、卒業後に所得に応じて拠出金の形で納付する案と、一定の所得制限をした上で給付型奨学金を拡張する案の二つ。ただいずれの案でも、数兆円規模で必要ともされる財源の確保策には現時点では踏み込んでおらず、検討が難航する可能性も残る。意欲があれば大学や専修学校に進学できるようにし、高等教育への機会均等の確保を図るのがねらい。政権の目玉政策「人づくり革命」を具体化するため、9月に初会合を予定する「人生100年時代構想会議」で大学改革と合わせて議論を開始。関係法案をまとめ、2020年4月からの新制度の施行を目指す。第1案は、オーストラリアの高等教育拠出金制度「HECS(ヘックス)」を参考にする。在学中の授業料などを全額、公費で負担する代わりに、卒業してから所得に応じて拠出金を納めてもらう。「高等教育費は保護者が負担する」という原則を「社会が共同で支える」考え方に転換するものだ。拠出金は、卒業者がその時点の所得に応じて社会に貢献してもらうという位置づけだが、拠出金のあり方や額などによっては、奨学金の貸与を受けて返済するのと変わらなくなる可能性もあり、慎重な制度設計が不可欠になる。第2案の「給付型奨学金の拡張」は今年度、先行実施された給付型奨学金制度がもとになる。この制度では最終的に、年6万人程度が返済不要の奨学金を受ける見込み。日本学生支援機構が貸与し、返済義務がある奨学生(15年度で約132万人)に比べてまだまだ少ないため、拡張を検討する。しかし、所得制限をかけることで、高等教育をすべての国民に等しく開かれたものにするという考え方からは離れることになる。財源をどうするかも課題だ。新たな借金(国債)で賄うことになれば、将来世代に負担を先送りすることになりかねず、構想会議や政府部内でも激しい議論を招きそうだ。
■高等教育無償化の二つの案
◇日本版HECS(高等教育拠出金制度)
 【対象】 全国民
 【在学中】授業料は無償
 【卒業後】所得に応じて拠出金を納付
◇給付型奨学金の拡張
 【対象】 一部(所得制限あり)
 【在学中】現行制度では、授業料は減免制度で対応
 【卒業後】返還の必要なし

*7-6:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20170820&ng=DGKKZO20171740Z10C17A8EA1000 (日経新聞社説 2017.8.20) 
 政府は高等教育の無償化の検討を始めた。だが、私立大学の約40%が定員割れし、大半の大学が学力による学生の選抜機能を失っている。現状のまま無償化で門戸を広げれば、大学の一層の質の低下は避けられない。必要なのは、量的拡大よりも国際競争力の強化だ。人材育成や研究の中核を担う「公共財」としての価値をいかに高めるのか。長期的な視野に立ち、抜本的な大学改革に乗り出す時だ。
●規模適正化が課題に
 まず、検討すべきは大学の規模の適正化だ。バブル経済崩壊後の低成長、少子化時代に、大学はその数、入学定員を増やし続けた。その結果、志願者の90%超が進学する「全入」に近づいた。水ぶくれした大学が限られた予算を奪い合い、国全体としての教育・研究の投資効率を低下させてはいないか。18歳人口のピークは1992年度の205万人。直近は120万人で、2040年には88万人と予測される。現在の大学数は780。92年に比べ18歳人口は約40%減ったが、大学数は約50%、入学定員も約25%それぞれ増加した。今の大学進学率、入学定員が維持されると仮定すると、20年後には十数万人規模の供給過剰になる。入学定員1000人の大学が100校以上不要となる計算だ。1980年代に18歳人口が減少した米国では、大学が入学者数を抑制し、選抜機能を維持した。新入生の減少で大学は授業料を引き上げたが、連邦政府は貸与奨学金と寄付制度の拡充という支援策を講じた。少子化が進む韓国では現在、大学を5段階にランク分けし、評価下位大学に定員削減を求める荒療治を始めた。日本でもようやく規模適正化の議論が始まった。少子化による教員採用減が確実な国立大の教員養成大学・学部に対し、文部科学省の有識者会議は定員削減や他大学との機能集約・統合を求める報告書案を示した。妥当な判断だ。20年後には日本の労働人口の約49%が人工知能やロボットなどにより代替可能という民間調査がある。産業別就業者の推計なども参考に今後は、国公私立の設置形態の別を問わず、入学定員の総枠の削減を視野に、時代に適合した学部の重点化を図るべきだ。政府は東京23区内の私立大の定員増を今後認めない方針を決めた。若者の東京一極集中を是正する目的だが「木を見て森を見ず」の感が否めない。問題はむしろ学生の選抜機能を失い教育の質の低下が懸念される地方の小規模大学だ。大学間の単位互換や校地の共有化など、地域教育の中核となるような統合・再編が望まれる。大学の数や入学定員が急増したのは、「事前規制から事後チェックへ」という政府の規制緩和策が大学設置基準にも及び、一定の要件を満たせば新規開設が認められるようになったからだ。規制緩和の本質は、新規参入を促す一方、質の低いサービスは市場から淘汰される仕組みにある。しかし、大学の経営や教育水準をチェックするため2004年度に文科省が導入した「認証評価制度」がうまく機能していない。
●評価に応じ傾斜配分を
 大学基準協会などの機関が評価結果を公表しているが、社会的にほとんど認知されていない。財務省の財政制度等審議会は、主に規模や定員の充足率に応じ交付する私立大の補助金を評価結果に連動させ傾斜配分すべきだと提言。学術論文の数や学生の就職実績なども勘案すべきだと指摘する。どんな評価指標が妥当かは議論の余地があるが、公費の使途や効果の「見える化」は国民的な要請だ。評価機能の拡充も課題だ。その点、気になる動きがある。評価機関によって経営や教育が「不適格」とされた地方の私立大が公立大に衣替えするなど、定員割れの私大を地方交付税で救済する事例が相次いでいる。納税者の観点からは、違和感がある。日本の大学の国際的評価が総じて低調なのは、密度の低い教育を量的に拡大してきたからだ。高等教育無償化の前提は、各大学が入学金や授業料が公費で充当されるにふさわしい公的価値を持つことを、社会に証明することにある。国はまず、定員を戦略的に削減し教育の質を高める大学を支援するなど規模適正化と、外部評価に応じた資金配分に着手すべきだ。

<21世紀の農林漁業へ>
PS(2017年8月21、22、24、26日追加):現在の森林環境税は、都道府県が森林整備の目的で徴収する法定外目的税だ。しかし、この仕組では森林面積が広くて人口の少ない地域が二酸化炭素吸収源で水源である森林を整備することになるため、*8-1のように、国が森林環境税を新設しようとしているのは実現すべきだ。問題はどう配分するかで、私は、森林・田園・緑地帯・藻場などの面積に比例して都道府県・市町村の役割に応じて両方に交付すればよく、そのためには都道府県・市町村の役割分担を明確にする必要があると考える。そうすれば、森林・田園・緑地帯・藻場などを護ることが、直接的な地域の収入にもなる。
 なお、農業は、*8-2のように、熊本県山鹿市が民間企業と協力して最適な温度と湿度を保った無菌室で蚕を飼育し、桑の葉を人工飼料に加工することによって年24回の繭の生産を可能にして養蚕業の再興に乗り出し、「山鹿シルク」のブランドを確立させて世界のシルク産業の拠点にするそうだ。そのシルクの使用目的は、製糸、医療・医薬品、化粧品開発などだが、日本の技術の粋を尽くしたシルクのブランドイメージを作るためには、「山鹿シルク」よりも「日本シルク」「九州シルク」のようなもっと大きなブランド名の方がよいと考える。
 また、*8-3のように、鹿児島県十島村では、輸入品の多い神棚のサカキを栽培する新しい組合が生まれたり、島の特性や気候を活かして野生のヤギを出荷したり、バナナの栽培が始まったりしている。さらに、*8-4のように、佐賀県伊万里市南波多町にブドウや梨の収穫体験ができる観光農園が開園したそうだが、現代の最大の贅沢は自分で選んだ採れたての野菜や果実でジャムを作ったり料理を作ったりすることで、それが贅沢である理由は、大都会ではそれができにくいからだ。
 菓子とガムを生産していた「九州グリコ」が、*8-5のように解散し、従業員のうち非正規社員211人が雇用契約を更新されず、跡地の活用も未定だそうだ。跡地(佐賀市鍋島町大字蛎久、3万1520平方メートル)は神野公園の前にあるため、工場よりも付加価値の高い使い方ができるが、私は残った人で土地価格の安い場所に引っ越し、残った機械や技術を活用して、ケーキと洋菓子のメーカーをすればよいと考える。何故なら、この頃、馬鹿の一つ覚えのように生クリームのケーキしかなく、私はアマゾンを通して広島のケーキ屋さんからバタークリームのケーキを購入しているくらいで、ケーキも冷凍して運べば遠くからでも運ぶことができ、解凍すればできたてのようになるからだ。その際、戦後の「菓子でさえあればよい」という発想は捨て、フランスの一流パティシエを招いて作るのがよいだろう。そのケーキ・洋菓子の材料は、小麦粉・米粉・牛乳・果物・野菜など佐賀県に豊富にあり、6次産業化しての輸出も可能である。
 なお、最近は、*8-6のように、惣菜が売れている。その理由は、1~2人暮らしの家族では、いろいろな材料を買って手作りするよりも、できあがった中食を買う方が安くつき手間も省けるからだが、「九州グリコ」の元従業員のように、衛生的に食品を作ることに慣れている人は、そちらへの転用も可能だろう。しかし、この際も、惣菜だから味・栄養価・品質が一段落ちたり高くついたりしてもよいというわけではなく、手作り以上の味・栄養価・品質を出して合理的な価格で売るのが、継続的にヒットするコツである。
 また、*8-7のように、西日本新聞が「パスタ・菓子 本場の味に対抗できるか」という記事を書いているが、私は「ゆで時間が短い」「束になっている」などの理由で、国産スパゲティを買うことが多いため、国産も十分に太刀打ちできると考える。さらに、カルシウム・鉄・ビタミンなどを配合して付加価値を増し、調理を簡単にするための美味しいトマトピューレや冷凍海産物があると、売り上げがさらに上がると思われる。


 これからの課題 福岡県の森林環境税に関する説明   熊本県山鹿市のシルク  
                           2017.8.16佐賀新聞

(図の説明:2050年の世界人口は95億人となり、今のまま構造改革をしなければ、食料・水・エネルギー・資源が不足する事態となる。そのため、我が国も持続可能な社会を意識して、食料・エネルギーの自給率を上げておくことが必要だ。さらに、持続可能にするためには、国内の自然を壊さず、公害を出さずに、国内資源を十分に活用できるようにしておく必要があるため、環境税の徴収による環境維持は重要である。さらに、農林漁業に生物学・生態学の最先端の知識を導入して、担い手が誇りを持ち、豊かな生活ができる産業にしなければならない)

*8-1:http://qbiz.jp/article/116766/1/ (西日本新聞 2017年8月20日) 森林環境税、都道府県にも税収を 知事会「整備に関与不可欠」主張
 市町村の森林整備費を賄うため政府、与党が新設を検討している「森林環境税」について、全国知事会が「森林整備は都道府県の関与が不可欠」として、税収の一部を配分するよう働き掛けを強めている。ただ都道府県に配れば、取り分が減る市町村からは反発も予想される。年末の税制改正大綱の取りまとめに向け、議論が過熱しそうだ。森林環境税は、所有者が分からない森林の増加や林業の担い手不足が問題になる中、地域の実情に最も詳しい市町村が私有林の間伐を代行する財源を確保するために検討が始まった。個人住民税に上乗せして徴収し、国が森林面積などに応じて市町村に配分する仕組みが想定されている。これに対し、7月に盛岡市で開かれた全国知事会議では「都道府県が関わらないと森林整備はできない」(佐竹敬久秋田県知事)、「林業の専門職員が少ない市町村だけでは厳しい」(尾崎正直高知県知事)といった声が噴出した。会議では、都道府県が市町村への間伐事業の指導や林業技術者を派遣することなどを念頭に「税収は役割分担に応じて配分すべきだ」との提言を採択した。

*8-2:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/455475 (佐賀新聞 2017年8月16日) シルク産業 世界拠点へ 熊本・山鹿市に巨大養蚕工場
■耕作放棄地桑畑に転換 製糸、化粧品開発も視野
 かつて養蚕が盛んだった熊本県山鹿市は、民間企業と協力して養蚕業の再興に乗り出した。市内の廃校跡には世界最大級の養蚕工場が建設され、耕作放棄地約25ヘクタールは桑畑に生まれ変わった。「山鹿シルク」のブランドを確立させ、世界のシルク産業拠点となることで地域経済の活性化を狙う。今年4月、熊本県北部の山あいの地に延べ床面積約4170平方メートルの養蚕工場が完成し、5月に稼働を始めた。総工費は約23億円。最適な温度と湿度を保った無菌室で蚕を飼育し、病気から守る。桑の葉を人工飼料に加工する設備もあり、通常は葉の収穫に合わせて年3回程度の繭生産が、通年で24回可能となった。取り組みのきっかけは、工場を運営する市内の農業生産法人「あつまる山鹿シルク」側の提案だった。市は2014年12月、同社と新養蚕産業構想に関する協定を締結。同社による養蚕工場建設や桑畑造成の計画が具体化した。土地の有効活用や雇用創出につながると、市は用地選定や桑畑へのアクセス道路の沿道整備といった面から支えた。3年以内に国内最大産地の群馬県に匹敵する年約50トンの繭生産を目指す。現時点で、地元を中心に約20人の雇用が生まれている。あつまる山鹿シルクの島田裕太専務(37)は「徐々に生産量を増やしたい」と意気込む。一方、取り組みはまだスタート地点。市は、製糸工場建設や、繭のタンパク質を活用した医療・医薬品、化粧品開発も展望する。大手商社などと連携し、情報発信や販路開拓を強化。構想名をIT産業の聖地、米カリフォルニア州シリコンバレーになぞらえた「SILK on VALLEY(シルク・オン・バレー)」とし、関連産業の集積を図りたい考えだ。市によると、県内には昭和初期、約7万軒の養蚕農家があった。しかし、安価な輸入品の増加や、高齢化に伴う廃業により衰退し、14年には市内の2軒を含め県内で5軒にまで減った。養蚕業再興の成否はこれからだ。山鹿市は熊本の近代養蚕業の開祖とされる長野濬平(しゅんぺい)の出身地。中嶋憲正市長(67)は「広がりの大きい産業が山鹿の地から生まれれば、市民の誇りや希望につながる」と話している。

*8-3:https://www.agrinews.co.jp/p41655.html (日本農業新聞 2017年8月19日) [にぎわいの地] 島で生きる 鹿児島県十島村(下) なりわい育む“家族” 移住者の夢村民が応援
●サカキ特産化組合つくる 
 シャツに記された文字は「悪」。フェリーが港に着岸すると、高齢者から若者までそろいの服を着て港で積荷の作業に励む。命綱である生活物資を島に運び入れる作業だ。収入を得るための出荷物も皆で送り出す。家族のような一体感。それが、悪石島(鹿児島県十島村)の特徴だ。36世帯78人が暮らす。昨年、神棚に備えるサカキを栽培する新しい出荷組合が生まれた。名古屋市出身の西澤慶彦さん(20)、東京都出身の太田有哉さん(21)ら都会育ちの“ヨソモノ”と地元農家12人が団結。手間が掛からず台風に強いサカキ。組合長で自治会長の有川和則さん(65)は「ヨソモノじゃなくて家族と思っている。サカキは将来の収入の種。若者を島に残すため金をつくる仕組みを皆でつくる」と知恵を絞る。
●野生のヤギで新ビジネスを
 ここ数年、島には夢を抱いて新しい農業に挑戦する若者が移住する。必ずしも全員が夢を持ってやってきたわけでない。中には都会で傷ついた若者たちも。島で生きるため、移住後、夢を見付ける。大人たちが団結し、若者の夢を育み、支える。野生のヤギの生体出荷を始めた太田さん。「牛の草をヤギが食べて島民を困らせている。土砂崩れの原因にもなる。一石二鳥のビジネスでしょ」。少し自慢そうに構想を明かす。ここまで何かに本気になって挑戦したことは、初めてだ。太田さんは農林漁業のイベントで有川さんと知り合い、西澤さんを誘って3年前に移住した。家事が苦手で、売店もない島の生活は苦労の連続。遅刻などでたびたび島民に怒られる。「けんかするのも怒るのも家族だから。本気で僕を育ててくれている」。心の中で島民に、感謝している。病気になってもライフラインが壊れても、助け合って応急処置するしかない離島。西澤さんは「誰かが勝ち残るのではなく皆で生きていく感覚を島で初めて知った」と語る。ゲーム漬けで孤独だった高校生活。皆で支え合う家族的な島の雰囲気に、生きる居場所を見つけた。村で成人式を挙げた西澤さん。将来も島で生きていく術(すべ)を懸命に模索する。サカキ、スナップエンドウ、バナナなど新たな特産品で生計を立てようと必死だ。早朝から夕刻まで、畑へ。
●団結と温かさ一体感が支え
 高知県から移住し、漁業とバナナを栽培する鎌倉秀成さん(38)は「夢を持って生きることができる島。家族のように受け入れてくれる温かさが、生きる励み」と感謝する。若者の夢は、島民の夢でもある。畜産農家の有川俊江さん(59)は「島を選んでくれて心からうれしい。絶対、島に残ってほしい」と願う。手伝えることがないか、いつも考えているという。悪石島の名の由来は諸説ある。農家の有川安美さん(84)は隠し財宝を悪人から守るために先祖が命名したと聞いて育った。終戦も長く知らず島で生きてきた有川さん。「島に来てくれて夢に向かって頑張る若い人は、悪石島の財宝のよう。自分たちが財宝を守っていきたい」と決意する。誰もがわが事として、移住してきた若者の挑戦を応援している。本当に定住できるかは、これからにかかっているからだ。発想力を生かし挑戦する若者たちの移住。人口は増え、悪石島には保育園も近くでき、島は確実に変わった。その変化の道のりは、時に摩擦も生じる。十島村の住民は、新しい風を受け止めながら、島を残す歴史をつむいでいく。
キャンペーン「若者力」への感想、ご意見をお寄せ下さい。ファクス03(3257)7221。メールアドレスはwakamonoryoku@agrinews.co.jp。フェイスブック「日本農業新聞若者力」も開設中。

*8-4:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10105/456578 (佐賀新聞 2017年8月21日) 伊万里に観光フルーツ園 9月30日まで
■ブドウやナシ収穫体験
 「フルーツの里」の伊万里市南波多町で20日、特産のブドウや梨の収穫体験ができる観光農園が開園した。今年はブドウ、ナシともに品質が上々で、家族連れの観光客がもぎたてをかごに入れながら笑みを浮かべていた。9月30日まで。地元農家でつくる観光農業推進協議会(池田徳和会長)が毎年町内5カ所の園地を開放しており、今年で41回目。初日は高瀬ぶどう園で開園式があり、池田会長は「猛暑の影響が危ぶまれたが、ここ数日の涼しさで着色も酸切れもよく、抜群の食味」と太鼓判を押した。ナシも好天で玉太りが良好となり、「近年では一番の出来栄え」という。入園無料で、持ち帰り料金は巨峰1キロ1000円、シャインマスカットは2000円。ナシ(豊水・新高)は1キロ500円。開園時間は午前9時から午後5時。問い合わせは「道の駅伊万里ふるさと村」、電話0955(24)2252へ。

*8-5:http://qbiz.jp/article/116868/1/ (佐賀新聞 2017年8月22日) 九州グリコが解散へ 2018年12月に菓子生産停止
●江崎グリコ創業の地「特別な思い」
 江崎グリコ(大阪市)は21日、菓子とガムの生産子会社「九州グリコ」(佐賀市)の生産を来年12月に停止し、会社を2019年1月に解散すると発表した。工場の老朽化と販売不振が理由。乳製品などの生産子会社「広島グリコ乳業」(広島市)も来年10月に解散し、それぞれ生産は国内17工場に集約する。九州では、グループ工場が乳製品などを製造する「佐賀グリコ乳業」(佐賀市)のみとなり、菓子製造から撤退する。江崎グリコによると、九州グリコの従業員は262人。うち正社員51人は他工場に転籍させるが、パートなど非正規社員211人は雇用契約を更新しない。跡地(3万1520平方メートル)の活用は未定。九州グリコは1953年に九州工場として操業を開始し、01年に現地法人化した。菓子の「チーザ」とガム類を生産し、17年3月期の売上高は11億6900万円とピークの09年3月期から半減したという。佐賀県は江崎グリコの創業者江崎利一の出身地。有明海のカキの煮汁をヒントにキャラメルのグリコを製品化したといい、九州グリコの干貝(ひがい)博彦社長は「(佐賀県には)特別な思いがある」とコメントを出した。

*8-6:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/457446 (佐賀新聞 2017年8月24日) 総菜ポテトサラダ出荷元O157不検出 埼玉
 埼玉県熊谷市のスーパーに入る「でりしゃす籠原店」などで7、8日にポテトサラダを買って食べた14人が腹痛などを訴え、県は23日までに10人の検体からO157が検出されたと発表した。群馬県高崎市は23日、出荷元の同市の食品加工工場にあったサンプルを調べた結果、菌は検出されなかったと発表した。立ち入り調査で感染者が食べたのと同じ製造日のものを持ち帰り検査していた。高崎市によると、埼玉県からの依頼で21日と23日に調査し、製造工程を確認。感染者の食べたサラダは5~7日に製造され、6、7日に群馬、埼玉、栃木の34店舗に計約590キロ出荷されていた。5日と7日の製造分は菌が検出されなかったが、調理器具などの検査結果が24日以降に出る見込み。市は「原材料の衛生状態などに問題はなく、管理上明らかに不適切な点は確認できなかった」としている。工場は19日から操業自粛中という。埼玉県によると、総菜店を運営する群馬県太田市の「フレッシュコーポレーション」は、同工場から袋詰めのポテトサラダを仕入れ、ハムやリンゴをまぜて販売していた。

*8-7:http://qbiz.jp/article/115782/1/ (西日本新聞 2017年8月26日) 【よく分かる日欧EPA】その5:パスタ・菓子 本場の味に対抗できるか
 「今でも国産は太刀打ちできないのに、先は厳しい」。経済連携協定(EPA)で欧州連合(EU)産スパゲティやマカロニの関税が11年目になくなると決まり、国内メーカーでつくる日本パスタ協会(東京)の担当者は肩を落とす。協会によると、消費者の国産志向は強いが「パスタに限ってはイタリア、ギリシャ産が好まれる」。形や食感の種類が豊富な輸入品には国産と価格が大差ないものもあり、2016年は輸入量が国内生産量を上回った。1キロ当たり30円の関税がゼロになれば、本場のブランドがさらに浸透する。パスタ協会は原料の小麦輸入時に事実上の関税がかかり、高値で調達せざるを得ない仕組みの見直しを求めている。加工食品では、菓子の関税も軒並み撤廃される。チョコレート菓子の関税は現在10%。詰め合わせだと数千円はするベルギーのチョコ「ゴディバ」といった高級品ほど恩恵は大きくなる。国内メーカーには、EU産と日ごろ食べる国産菓子とはすみ分け可能との見方が多い。ただ、乳酸菌入りのチョコを手掛ける不二家は「今後も付加価値のある製品開発に力を注ぐ必要がある」と輸入増加に気を引き締めており、新商品の投入競争が活発になりそうだ。
   ◇   ◇
日欧EPAで貿易や投資のルールがどう変わるのか。暮らしや産業への影響を中心に解説する。

<漁業について>
PS(2017年8月24、26、28日追加):一般の人に海は水面しか見えていないため変わっていないように感じるだろうが、実際には水中のいたるところに生物が生息し生態系があって、人間はそれを利用しているわけである。わかりやすい例では、*9-1のように、ウニは食べ物の海藻が少なければ身が入らず商品にならない。また、海藻が減って砂漠のようになった海を「磯焼け」と呼び、「磯焼け」の主な原因は海水温の上昇で生物が増えて海藻が食べ尽くされることと書かれているが、海水温上昇の原因は地球温暖化だけではなく原発の温排水や海底火山の噴火もあり、海藻の生育にも適切な海水温があるため、「磯焼け」する原因は多い。その結果、食べる身のないウニが増えるため海藻は重要なのである。ただし、ウニの場合は身のないウニを捕獲して陸上の植物や藻類のユーグレナなどで安い飼料を作って養殖することが可能だと私は考える。
 そのような中、*9-5のように、原子力規制委員会は、2017年8月25日に九電が再稼働を目指している玄海原発3号機(佐賀県玄海町)の「工事計画」を認可したそうだ。原発が稼働すると、温排水により海が暖められて正常な生態系が壊れるとともに、原発を冷やすために大量の海水とともに海の生物の幼生を吸い込んで煮殺して排出する。これも藻場の衰退や漁獲高減少の原因であるにもかかわらず、原発を再稼働させるなど何を考えているのかと言いたい。
 しかし、*9-2は、「①三陸沖での漁獲量が減っているのは、中国が公海で大量に獲っているのもあるが、資源の枯渇も原因だ」「②日本の水産業が抱える問題の縮図が、東日本大震災が起きた三陸にある」「③震災により廃業した漁業者が増え、高齢化と後継者不足が顕著に表れている」「④より厳しく確実に水産資源を管理し、地球環境だけでなく漁業者の生活にとっても持続可能な漁業を実現すべき」などとしている。しかし、①の中国が公海で大量に獲って資源が枯渇しそうなのは事実だが、②③の東日本大震災で原発事故が起きた三陸沖はいろいろな意味で漁業に適さない海になっているという特殊事情があるため、他の要因と混同させるのはよくない。また、④については、日本の漁船は既に網目を大きくして幼魚は逃げられるようにし、漁業者の数も減っているため、日本の水産資源管理を厳しくするよりは他国にも同様の規制を促すとともに、海の環境を守ることの方が重要だ。そして、その結果は食料自給率に影響する。
 さらに、*9-3のように、「第6あおい丸」が優良な漁場である長崎県壱岐沖で海砂を採取した後、平戸沖を経由して諫早市久山港に向かう途中の平戸沖で沈没した。対馬や壱岐沖ではイカ釣りなどの漁業が盛んだが、海砂を取ると砂の中に産み付けられた魚介類の卵を一緒に吸い込むため、不漁の一因になっていると言われている。そのため、一石二鳥になるよう、海砂ではなく、埋まってしまったダムの底や天井川の川底の砂をとるべきで、日本はこのように漁業を持続可能にするための国を挙げての努力が行われていないのだ。
 その上、*9-4のように、ロシアは北方領土を経済特区に指定し、「先行発展地域」に指定するそうで、日本政府の言う「特別な制度」にどういう意味があるのかは不明だが、日本政府は現在最もやるべきことを考えていなかったため、北方領土を返還してもらうこともできず、“共同経済活動”だけを行って北方領土を諦めることになったらしいのは、悲しくも阿保らしい。
 そのため、このような漁業上の理由からも、*9-6の高知新聞による「エネルギー計画は、脱原発を明確にすべきだ」という意見及び*9-7の山陽新聞による「エネルギー計画、現実踏まえ抜本見直しを」という意見に全く賛成だ。

  
                  *9-1より
(図の説明:ウニの漁獲高は、左のグラフのように年々減少している。その原因は、①中央の写真のように、えさとなる海藻がなくなる磯焼けをしていること ②それにより、右の写真のように、餌不足のウニに食用部分の身が入らないこと などである)

*9-1:https://abematimes.com/posts/2467906 (Abema Times 2017.6.2) 寿司屋からウニが消える?漁獲量を減少させる「磯焼け」とは
玄界灘に面した新三重漁港をはじめ、長崎県は全国4番目の漁獲量を誇るウニの好漁場だ。しかし近年、ウニの漁獲量は年々減少しているという。中には身の入っていないウニもあった。原因は「磯焼け」だ。海岸に生えているコンブやワカメなどの海藻が減少、不毛の状態となってしまう現象だ。磯焼けの海で獲れるウニは、身入りが悪く、売り物にはならない。長崎県のウニの漁獲量は1970年代後半には4000トン以上を記録していたが、現在はその10分の1程度にまで落ち込んでいる。福岡市中央区にある「うにと海老の専門店 魚魚魚」の島津料理長によると、価格も高騰、1キロ5000円~1万円の幅で変動しているという。30年以上全国各地の海に潜り「磯焼け」を研究、水産庁の「磯焼け対策ガイドライン」策定にも携わった東京海洋大学の藤田大介准教授は、「磯焼け」の主な原因は温暖化による水温上昇が引き金となって生物の活動が活発化し、海藻が食べ尽くされてしまったことだと話す。さらに、気候変動で大型の台風や時化の発生が増え、海藻が引き剥がされ枯れてしまうのだ。 また、ウニそのものも「磯焼け」の原因になってしまっている。飢餓に強く、食料がない場合は生殖せずに生きていこうとするのだという。「磯焼け」の海で取れた、身の入っていないウニは、精巣・卵巣の部分の成長を抑えているウニということだ。「実は東日本大震災の直後、養殖施設が流れてしまったことで潮通しが非常に良くり、海藻にとってプラスに働いた。その後に生まれたウニたちが食べ盛りになっていて、今、大いに暴れている。そこで水温が高くなると、ますます海藻を食べてしまう」(藤田准教授)。長崎の漁師たちも手をこまねいていたわけではない。漁協では、ウニの移植で磯焼けの解消を図っている。ウニを普通の藻場に移し、磯焼けが進行した場所には海藻を移植、繁殖を促している。また、藤田准教授は「北海道では冬のエサがない時期にイタドリの葉っぱを与えるという試みもあった。エサに困るところはそういう努力もしている」と、不要になった野菜を使った養殖の可能性も示唆した。将来、私たちが美味しいウニを食べられなくなる日が来てしまうのだろうか。藤田氏は「磯焼け対策の中でも、一般市民ができることはまだまだあると。ダイバーの方は写真を撮って記録していただくとか、陸上で手伝えることもあると思う。参加していただければと思う」とした。

*9-2:http://www.nikkei.com/article/DGXMZO19950560U7A810C1I00000/?n_cid=MELMG002 (日経新聞 2017/8/16) 市場で買う魚がない 減り続ける水産資源、三陸沖の不都合な真実(上)
 ノルウェー近海、北米東海岸と並び世界三大漁場のひとつといわれる三陸沖。親潮と黒潮がぶつかる潮目でとれる豊富な種類の魚介類は、長らく日本人の食生活を支えてきた。しかし今、三陸沖での漁獲量が減っている。宮城県北部の気仙沼湾。最も奥まったところにある鹿折地区に、18社の水産加工会社が名を連ねる気仙沼鹿折加工協同組合(気仙沼市)がある。地元の加工業者が事業コストを減らすために設けた7000トンの大型冷蔵庫が低い音を響かせる。
■細る漁獲量
 しかし組合は冷蔵庫の稼働率を高めるのに苦労している。2016年末の時点で稼働率は6割ほど。本来は魚で冷蔵庫の棚を埋めたいところだが、やむなく組合企業から海藻類を集め、やっとのことでフル稼働に近づけた。「サンマやカツオなど、気仙沼で揚がる主要な魚種がとれなくなっている」。当初の計画通りに漁獲量が上がらず、組合の細谷薫事務局長は頭を悩ませる。組合企業で缶詰などを製造するミヤカン(気仙沼市)で原料・直販を担当する三浦謙一氏は、最近魚市場に買い出しに行っても何も買わずに帰ってくることが増えた。「水揚げそのものがない場合が多く、揚がっていても高くて入札で落とせない」。サンマの缶詰は同社の主力商品の一つだ。だが16年の日本のサンマ漁獲量は約11.4万トンと、水産庁が統計を取り始めた1977年以降の最低を記録した。気仙沼魚市場には16年10月時点では5700トンのサンマが揚がり、1キログラムあたり188円の値が付いた。03年10月と比べると量は約半分に、価格はほぼ4倍に跳ね上がっている。ミヤカンの寺田正志社長は「台湾や中国などが公海でたくさんとっているのもあるが、資源そのものの枯渇も原因だ。ここ2年ほどは小さいものしか揚がらない」と嘆く。
■漁業大国は過去のモノに
 「6本目ェ!」「はい7本目ェ!」。午前3時、宮城県東部の石巻湾。東松島市の漁師、大友康弘氏が海からはえ縄を手際よく船上にたぐり寄せる。縄の先の針をくわえた旬のスズキは甲板の上でバタバタと力強い音を立て抵抗する。大友氏は釣ったスズキの水揚げ量を記録し、岩手大学の石村学志准教授に報告する取り組みを2年前から始めた。水産資源学が専門の石村准教授のもとでスズキの資源量を科学的に調べ、どのくらいの漁獲量なら資源の回復と漁業が両立し得るか、その水準をはじき出すのが狙いだ。石巻湾のスズキは長く漸減傾向にあった。ところが11年の東日本大震災から4年間、湾内ではスズキ漁が取りやめになり、資源量が大きく回復したという。「スズキが増えた今がチャンスだ。この資源水準を保てる漁のやり方を探したい」。大友氏は過去に記録していた水揚げ量の資料も含め計7年分のデータを石村准教授に渡している。「日本は漁業大国」。世界各国の水揚げ高と比べれば、そんな言葉が過去のものだということは一目瞭然だ。国連食糧農業機関(FAO)によると、日本はかつて他国を大きく引き離していたが、1984年の1159万トンをピークに右肩下がり。中国、ペルー、米国、インド、インドネシアに抜かれ、現時点では6位まで下がった。特に三陸地方の主要漁港である八戸、宮古、釜石、大船渡、気仙沼、女川、石巻、塩釜の8港の水揚げ高は、03年に55万トンだったのが15年には42万トンにまで減少。東日本大震災が起きる前から減少傾向は続いている。水産庁によると、日本周辺の主要な48魚種79系群(系群は一つの魚種の中で産卵場、産卵期、回遊経路などが同じ集団を指す)のうち、16年9月時点で実に半数の資源量が低位にあり、3割超は資源量が中位にあるという。資源量が低位にある魚種にはマサバやスケトウダラ、ズワイガニやトラフグなどが挙げられている。スズキ以外のこうした日本の食卓になじみ深い魚種についても、大友氏は警鐘を鳴らす。「今の発達した漁業技術をもってすれば、この石巻湾内のあらゆる魚を取り尽くすのはいとも簡単なことだ」
■漁業者は利益上げにくく
 漁獲量の減少により、漁業者や水産加工会社は利益を上げにくくなっている。特に日本の漁業生産額の約6割を占める沿岸漁業では個人経営が多く、原油の高騰なども所得に大きく響いている。15年時点の沿岸漁船漁師の平均漁労所得は年261万円と漁業だけで生活するには困難な水準だ。収入が低いため若い漁業者も集まりにくく、後継者不足と高齢化が深刻化している。
日本の水産業が抱える問題の縮図が、東日本大震災が起きた三陸にある。震災により廃業した漁業者が増え、高齢化と後継者不足がより顕著に表れている。全国の漁業経営体の数は13年に9万4507件と03年から28%減少したが、宮城・岩手の両県では計5676件と、同じ10年間で41%も減っている。
――より厳しく確実に水産資源を管理し、地球環境だけでなく漁業者の生活にとっても持続可能な漁業を実現する――。国や漁業関係者のあいだで、漁業大国の名を名実ともに取り戻すための挑戦が始まろうとしている。

*9-3:http://qbiz.jp/article/116928/1/ (西日本新聞 2017年8月22日) 長崎・平戸沖で砂運搬船が沈没 2人不明1人心肺停止
●停泊中、3人は漁船に救助される
 22日午前3時40分ごろ、長崎県平戸市沖で長崎市平野町の「葵新建設」所属の台船を押す押し船「第6あおい丸」(98トン)が遭難信号を出した後、沈没した。佐世保海上保安部によると、乗船していた男性6人のうち4人が救助されたが、航海士大浦作美さん(59)=福岡市南区大橋3丁目=の死亡が確認された。2人が行方不明となっている。救助された他の3人はいずれも意識があるという。行方不明になっているのは、船長の竹谷和浩さん(48)=長崎県新上五島町七目郷、航海士丸山勝広さん(46)=同県平戸市生月町山田免。第7管区海上保安本部(北九州)が捜索している。海保などによると、第6あおい丸は台船の「第8あをい丸」と連結して運航。長崎県・壱岐沖で砂を採取した後、平戸沖を経由し、同県諫早市の久山港に向かう途中で、現場付近でいかりを下ろして停泊していたという。台船もともに沈み、救助された4人は台船に乗っていたという。海保によると、現場は平戸島北東約4キロの海上で、当時は晴れており海は穏やかだったという。乗組員の一人は「船が浸水して急に傾き、6人が海に投げ出された」などと説明している。他に救助されたのは、機関長森律雄さん(66)=平戸市、航海士森元徳さん(55)=同、機関士笹山安彦さん(48)=長崎市。笹山さんは近くの漁船に救助され、2人の森さんは海保が救助したという。
●過去にも転覆・沈没
 長崎県沖では、これまでにも船の転覆・沈没事故がたびたび起きている。
五島列島沖では1993年2月、巻き網漁船「第7蛭子(えびす)丸」(80トン)が転覆して沈没、乗組員19人が行方不明になった。同年7月には、佐世保市沖で巻き網漁船「第21金光丸」(14トン)と砂利運搬船「龍玉丸」(683トン)が衝突、金光丸が沈没して9人が死亡した。2009年4月には平戸市沖で、巻き網漁船「第11大栄丸」(135トン)が沈没して船長ら12人が犠牲になった。その10日後には、五島市沖で巻き網漁船「有漁丸」(19トン)が座礁・沈没。10年1月にも同市沖で底引き網漁船「第2山田丸」(113トン)が沈没、10人が死亡した。15年9月には、対馬市沖でイカ釣り漁船「第5住吉丸」(10トン)など5隻が転覆し、5人が死亡している。大きな事故が起こるたび、漁業者や行政は事故防止策の見直しを進めてきた。ただ、後継者不足や魚価低迷で老朽化した船の新造が難しいなど、事故の背景には漁業が直面する厳しい現状を指摘する声もある。

*9-4:http://www.tokyo-np.co.jp/article/world/list/201708/CK2017082402000123.html (東京新聞 2017年8月24日) 【国際】ロシア、北方領土を特区指定 共同経済活動影響か
 タス通信によれば、ロシアのメドベージェフ首相は二十三日、訪問先の極東サハリン州で、南クリール諸島(北方領土)を、外国企業の誘致などを目的としたロシアの経済特区「先行発展地域」に指定する決定に署名した。日本政府は、北方領土で双方の法的立場を害さない「特別な制度」での共同経済活動実現を目指してロシア政府と協議中。一方的ともいえる特区指定は、共同経済活動の実現に否定的な影響を及ぼす可能性がある。日ロは現在、観光や養殖など共同経済活動の事業案絞り込みを進めるが、ロシア側は「特別な制度」をめぐる協議には消極的とされる。九月上旬に極東ウラジオストクで予定される日ロ首脳会談を前に、特区指定で日本をけん制する狙いもあるとみられる。先行発展地域には税制優遇措置などがあり極東地域では十八番目。メドベージェフ氏は「漁業やインフラ整備に役立ち、地域の発展を後押しする」と強調した。共同経済活動を巡って、ロシアの経済関係者からは「日本が特区に参加する形で進めるべきだ」との意見がある。一方、ロシアが指定した特区での経済活動は、北方領土でのロシアの主権を認めることになる。日本側が創設を求める「特別な制度」とは矛盾し、日本側としては受け入れ困難。

*9-5:http://qbiz.jp/article/117302/1/ (西日本新聞 2017年8月26日) 九州の原発:玄海原発3号機の工事計画認可 再稼働は越年も
 原子力規制委員会は25日、九州電力が再稼働を目指す玄海原発3号機(佐賀県玄海町)について、設備の詳細設計をまとめた「工事計画」を認可した。九電は、設備性能を現地で確認する「使用前検査」を28日にも申請する。工事計画の審査が長引いたため、今秋を想定していた再稼働は12月以降にずれ込む見通しで、越年の可能性が出ている。再稼働には使用前検査に加え、運転管理体制を定めた「保安規定」の認可も必要。一連の手続きに4、5カ月程度を要するとみられる。九電は25日、「引き続き国の審査に真(しん)摯(し)かつ丁寧に対応する」とコメントした。玄海原発3、4号機は1月に新規制基準の適合性審査に合格した。九電は3号機を先行して再稼働する方針。4号機は工事計画の審査が続いており、九電の補正書提出を受け、3号機に続いて認可される見通し。

*9-6:http://www.kochinews.co.jp/article/121389/ (高知新聞 2017.8.28) 【エネルギー計画】脱原発を明確にすべきだ
 国の中長期的なエネルギー政策の指針となる「エネルギー基本計画」の改定に向け、経済産業省が作業に入った。有識者の意見を聞きながら年度内にもまとめる方針だ。最大の焦点はやはり原発の方向性になる。国民が納得のいく、しっかりとした論議を求めたい。現計画は2014年4月に策定された。東京電力福島第1原発事故後初の改定で、事故の反省と教訓を前面に打ち出したが、矛盾が目立つ内容というしかない。序文で「震災前に描いていたエネルギー戦略は白紙から見直し、原発依存度を可能な限り低減する」と強調する一方で、その原発を石炭火力や水力とともに安定供給を図る「ベースロード電源」に位置付けた。事故後に停止した全国の原発の再稼働を進める方針も掲げている。旧民主党政権は事故後、脱原発の声の高まりを受け、「30年代の原発ゼロ」を打ち出していた。政権交代で後を継いだ安倍政権がそれを転換し、「原発回帰」を掲げたといっていいだろう。国民の声を無視し、アベノミクスの実現を優先したとの批判もある。15年には30年度の電源構成比率を決め、原発を「20~22%」とした。世界各国が積極的に導入している再生可能エネルギーの位置付けは「22~24%」にとどまっている。政府の原発依存の姿勢は明らかだ。しかも、原発の電源構成比率2割以上を実現するには、いま停止中の原発の再稼働を進め、老朽化した原発の運転期間延長や建て替えが前提になる。福島第1原発事故後に改正された原子炉等規制法は、原発の運転期間を原則40年としているが、原子力規制委員会が認めれば、特例で1回に限り20年の延長ができる。に2基が延長審査に合格しており、原発事故を教訓に設けられた運転期間制限の形骸化が早くも懸念されている。建て替えとなれば脱原発はさらに遠のく。世耕経産相は、計画改定について「(計画の)骨格を変える段階にない」と述べている。電源構成目標の達成方法を論議したいという。ひとたび原発の過酷事故が起これば、復興がいかに難しいかは被災地が示している。福島第1原発はいまもって廃炉の具体的な見通しが立たず、事故対策費は約22兆円に上るとの試算もある。原発は極めてリスクが高く、他の発電方法と比べコスト競争力に勝るとも言えなくなっている。何より多くの国民が脱原発を望んでいる。一足飛びにはいかないにしても、政府は中長期の戦略である新計画で脱原発を明確に打ち出し、その道筋を探るべきだ。地球温暖化防止も含め、再生可能エネルギーの導入にもっと汗をかく必要がある。福島の事故責任の一端は、「安全神話」に陥り、過酷事故への備えが不十分だった政府にもあると、現計画も記している。まやかしのような計画や政策を続けてはならない。

*9-7:http://www.sanyonews.jp/article/587277/1/ (山陽新聞 2017年8月28日) エネルギー計画 現実踏まえ抜本見直しを
 国の中長期的なエネルギー政策の指針となる「エネルギー基本計画」の見直し議論が経済産業省の有識者会議でスタートした。2014年の現行計画の決定以降、エネルギーや環境を巡る状況は変化している。抜本的な見直しに踏み出すべき点は少なくないはずだ。ところが、世耕弘成経産相は大幅見直しに慎重な姿勢を示している。原発について現計画は「依存度を可能な限り低減する」としつつ、「重要なベースロード電源」とも位置付けている。30年度の「電源構成」目標では、原発が20~22%を担うとした。東京電力福島第1原発の事故を受けて、脱原発を望む多数の国民の思いを反映しておらず、逆に原発回帰路線を鮮明に打ち出したものとなった。原発で約2割をまかなうためには既存の42基の多くで再稼働が必要となる。「例外」とされたはずの運転期間の40年制限を超えた延長もしなければ達成できず、実現性には疑問符が付こう。老朽原発の運転データはまだ少なく、トラブル増加を招く恐れも指摘されている。計画が示された14年以降、再稼働した原発は5基にとどまっている。新潟県の柏崎刈羽原発を巡る地元同意の難航など、再稼働が容易でないことも示されている。目標が現実に即したものになるよう、丁寧な議論が必要だ。もう一つの焦点が再生可能エネルギーである。現行計画は「導入を最大限加速する」とうたい、目標を22~24%(水力含む)としている。再生エネは原発事故後、日本でも育ちつつあるとはいえ、水力を除いた太陽光、風力などは6%にとどまる。26%を占めるスペイン、25%のドイツなどの欧州各国と比べれば立ち遅れは明らかだ。日本が再生エネの課題に挙げる発電コストの高さについて欧州では、市場拡大による設備価格の低下などにより火力、原子力と同等か割安の水準を実現している。昨年秋には、地球温暖化防止のための新たな枠組み・パリ協定が発効した。日本は温室効果ガス排出量を50年に13年比で80%削減する目標を掲げ、先進各国も思い切った目標を設定した。多くの国で再生エネ拡大を目標達成手段の柱に据え、技術革新やインフラへの投資が相次いで、ビジネスチャンスともなっている。経済面からも乗り遅れないようにしたい。現行計画で推進を掲げている核燃料サイクル政策の根本的な見直しも急務だ。政府は昨年末、トラブル続きの高速増殖原型炉もんじゅの廃炉を決めた。政府は後継となる高速炉の開発を進めるというが、サイクル政策の延命にも限界があろう。日本のエネルギー政策が時代に取り残されることのないよう、政府は現実を直視し、計画を練り直していくことが求められる。

<では、次に進もう>
PS(2017.8.28追加):10-1のように、準天頂衛星「みちびき」を使えば、既存のGPSと併用して最小6cmの誤差で位置を測ることができ、正確な測位で農機の自動走行ができるようになるというのはすごいが、確かに道路を移動中も安全に自動運転して欲しい。
 また、*10-2-1のように、水田の給排水を自動化して水管理時間を8割減少させ、遠隔操作できるのようにしたというのも素晴らしい。このような中、*10-2-2のように、地震や豪雨で多くの溜池が決壊したそうだが、この際、どうしても必要な溜池と地下水や下水浄化水で代替できる溜池を選別したらどうだろうか。このうち下水浄化水は、現在では飲めるほどまで浄化できるそうだが、窒素・リン酸・カリウムを少し残して肥料の節約をすることも可能だ。
 さらに、*10-3のように、「農家・漁師をスターにする」として、早稲田・慶應など首都圏8大学の学生編集部が生産者の生の声を月間約2万の読者に届けているのは面白いが、販売はマーケティングで、自動農機はロボットであるため、いろいろな学部の学生が農林漁業の現場を体験して、スマートに問題解決する方法を考えれば有意義だと思われる。

*10-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20170828&ng=DGKKZO20441280Y7A820C1PE8000 (日経新聞社説 2017.8.28) 衛星生かし精密農業の推進を
 衛星画像やIT(情報技術)を利用し、農業生産の効率向上をめざす「精密農業」が米国で広がっている。日本でも担い手が不足する農業の改革は待ったなしで、準天頂衛星「みちびき」を使う日本版GPS(全地球測位システム)を最大限活用すべきだ。米国では東京ドーム400~500個分もの農地を数人で経営する場合もあり、精密農業による効率化のニーズが高い。GPS受信機、収量計測装置などを搭載し、自動運転も可能なトラクターやコンバインが増えている。日本の農地は規模が小さいが生産性向上などの課題は米国と共通しており、学ぶべき点は多い。米モンサントはGPSの位置情報を使い農地の区画ごとの雨量、収量などをスマートフォン(スマホ)画面の地図上にわかりやすくカラー表示するサービスを始めた。気象情報会社を買収し観測やデータ解析のノウハウを得た。近年は局地的豪雨が増え、隣接地でも雨量が異なる場合がある。同じように育てた同一品種でも、収量が少ないこともある。スマホなどで常に実態を把握できれば、区画ごとに収穫時期をずらしたり品種を替えたりするのに役立つ。日本はみちびき1~3号機の打ち上げに成功し、今年度中に4基目が上がる予定だ。既存のGPS信号と併用して最小6センチメートル程度の誤差で位置を測れるようになる。精密農業の普及につながる新サービスを展開する好機だ。正確な測位で農機の自動走行の安全性は高まる。農林水産省は今年3月、人間が近くで監視しながら、農地でトラクターなどを無人で自動走行させる際の安全指針を出した。今後は遠隔操作での無人走行や、農地に隣接した一般道の走行も検討すべきだろう。測位情報は他の衛星の画像、気象、地形、地質などの多様なデータと組み合わせてこそ使い道が広がる。斬新なアイデアをもつ企業がこれらを素早く入手して事業に生かせるよう、関係省庁が連携して仕組みづくりを進めてほしい。

*10-2-1:https://www.agrinews.co.jp/p41733.html (日本農業新聞 2017年8月28日) 水田給排水を自動化 管理時間8割減 遠隔操作装置+アプリ 農研機構
 農研機構農村工学研究部門は、スマートフォン(スマホ)などで水田の給排水を自動設定し、水管理の時間を8割減らすシステムを開発した。給水バルブと排水口に遠隔操作装置を取り付け、圃場(ほじょう)に行かなくても水深が制御できる。給排水の両方を自動化したのは日本初で、今年度中に市販化の予定。水稲の労働時間の3割を占める水管理を軽減し、農地を集積する担い手を支援する。研究は内閣府の戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)の一環。遠隔操作装置はソーラーパネルやアンテナ、モーターなどを組み合わせて作り、給水バルブと排水口の両方に使える。電波で開閉し、各社のバルブに後付けできる。この他、水深を感知するセンサー、電波の基地局などを設置する。制御の仕組みは、センサーが水深の変化を感知すると自動で給排水を調節し、元の水位に戻す。水位の設定は専用のアプリを使いスマホやタブレット、パソコンでできる。アプリでは水位や気温の確認もできる。省力の他、豪雨で急に増水したときも有効だ。20アール区画で実証試験をしたところ、水管理の年間の労働時間は3時間と、慣行水田の15時間に比べて8割減った。無駄なかけ流しが減るため、使う用水量を50%に節約する効果もあった。システムは年度内に国内メーカーから発売される予定だ。価格は基地局が1台20万~30万円、バルブを動かす装置(給水、排水共通)が同10万円。サーバーの利用料が1カ月当たり2000~4000円ほどを見込む。同部門は「農地の集積で分散した水田が増える中、担い手の省力効果は大きい」と説明する。品種などから水管理が自動で分かり、収量や品質が向上できる仕組みも開発中だ。

*10-2-2:https://www.agrinews.co.jp/p41729.html (日本農業新聞論説 2017年8月27日) ため池 総点検 防災強化へ再整備急げ
 地震や豪雨で決壊するため池が続発している。釣りなど娯楽中の死亡事故も続く。政府は農業用水の確保に欠かせぬため池の再整備を急ぎ、防災機能と安全性を高める必要がある。ため池は、西日本を中心に全国に約20万カ所ある。主に雨の降水量が少ない地域で農業用水を確保するために人工的に造られた。洪水調節や土砂流出を防止する効果に加え、生物の生息・生育の場所の保全、地域の憩いの場の提供など、多面的な機能もある。2ヘクタール以上の農地をカバーするため池は約6万カ所あり、このうち7割が江戸時代以前に造られた。取水施設などでの老朽化が進んでいる。多くは地元の水利組合や土地改良区、農家などが管理する。農家の減少や高齢化から管理が行き届かず、堤の崩れや排水部の詰まりなどが起きている。農水省の調査によると、下流に住宅や公共施設のあり、決壊すると大きな被害が予想される「防災重点ため池」は、1万カ所を上回った。近年は都市化や混住化が進み、事故の危険性が増している。安全性が確認できない3391カ所に対する詳しい調査を地方公共団体が行うが、整備を急ぐ必要がある。最近10年のため池被災は、7割が豪雨、3割が地震で決壊や流失している。7月の九州北部豪雨災害で大きな被害を受けた福岡県朝倉市では、市内のため池108カ所の1割に当たる11カ所が流出・決壊した。こうしたため池の復旧を急ぐとともに、耐震性を高め、洪水防止策を強めるなど、安全性の強化を急ぐことが肝要だ。ため池を抱える地域では、農家が減る中で受益農家にかかる工事費用の負担が重く、改修工事の合意形成も容易ではない。政府がしっかり支援すべきだ。農水省は農村地域防災減災事業(508億円)に含まれているとするが、心もとない。現場のニーズに応えられるように予算を確保し、改修工事などをしやすくしたい。また、補助率を高めるなど農家負担を減らす方法も改修を後押しするはずだ。ため池での死亡事故は増加傾向にある。2016年度は26件で32人が亡くなった。60歳以上の高齢者が多く、例年水利用が多くなる5月から9月にかけて多発している。ため池を管理する土地改良区や個人は、安全管理に対する意識を高めるとともに、監視を強める必要がある。死亡事故には、釣りなどの娯楽中の事故も多い。夏休み期間の子どもたちが危険な箇所に立ち入らないように注意喚起したり、安全柵を設置したりする対策も進めるべきだ。また、管理作業中の事故も多い。高齢者の作業は特に注意する必要がある。農山村は人口減少と高齢化が進んでいる。ほったらかしにしたままのため池はないか。地域のみんなで点検し、必要な整備を急ぐことが大事だ。政府は、こうした取り組みを全力で支援すべきである。

*10-3:https://www.agrinews.co.jp/p41724.html (日本農業新聞 2017年8月27日) 若者力:[食農応援隊 大学生リポート](9) 長期密着し“スター”育成 首都圏8大学の学生が編集 農家の生の声を発信するWEBサイト 日本食べるタイムス
 「タケノコ王」って知っていますか? 目印はピンク色のタンクトップ。全国放送のテレビ番組で準レギュラーとしても活躍するタケノコ農家、風岡直宏さんです。2年前、無名だった風岡さんの情報発信を「日本食べるタイムス」(以下食べタイ)が引き受け、彼が“農家スター”になるまで伴走しました。今では彼の下にファンがサインを求めて訪れ、タケノコの産直販売は大盛況です。食べタイは、農家の生の声を発信するWEBサイトです。コンセプトは「農家・漁師をスターにする」。早稲田、慶應など首都圏8大学の学生編集部20人が、全国約200人の生産者の生の声を、月間約2万の読者に届けています。大量の情報の中に埋もれてしまった農家のブログやSNS(インターネット交流サイト)投稿を掘り起こしたり、学生が現地で取材したりして記事を発信しています。何度も現場に通い、一緒に農作業をすることもあります。このような長期密着・仕事体験型の取材は、学生だからこそできる発信方法です。登録生産者からは「過去最高の売り上げになった」「ここで働かせてほしい、と若者に志願された」などと反響をいただいています。われこそは、という農家、推したい農家さんがいる農業関係者の皆さん、ぜひ食べタイにご連絡ください。登録は無料です。(代表・森山健太=早稲田大学)
*キャンペーン「若者力」への感想、ご意見をお寄せ下さい。ファクス03(3257)7221。メールアドレスはwakamonoryoku@agrinews.co.jp。フェイスブック「日本農業新聞若者力」も開設中。

<お粗末な日本の食料政策>
PS(2017年8月31日、9月1日追加):*11-1の「①食料自給率が38%にダウンしたから、1ポイント上げるために、ご飯をもう一口食べろ」「②日々の食卓に、ちょっと工夫しろ」という指示を出すような意識の低い人が人がリーダーでは困るのである。何故なら、①は、現在は、*11-2、*11-3のように、健康上の理由で栄養バランスを考えて糖質・炭水化物を控えている時代だからであり、供給者が需要に合わせて生産を調整するのではなく、できたものを食べるように需要者に注文を付けるというのは市場主義にも反するからである。また、斎藤健農相の「消費者が意識を持ってもらうことが重要」「子や孫のことを考えて食料自給率向上に目を向けてほしい」というのも呆れたもので、消費者は十分に意識が高いからこそ栄養バランスを考えて糖質を抑え、放射性物質が混入している可能性のある食品を控えているのであり、政府の方がよほど意識が低いのだ。そんなことも、言われなければわからないのですか?
 なお、*11-4のように、全ての加工食品に原材料の原産地表示を義務付ける改正食品表示基準が9月1日に施行されるが、5年も猶予期間があり、完全施行は2022年4月からだそうだ。これは、政府はしぶしぶこの法律を施行するという意味で、実質的には2022年3月までは施行されないということだ。それも、国名だけの表示なら、安全基準の緩い日本産は買わないことになるが、まさか国名だけの表示ではないでしょうね。
 さらに、*11-5のように、TPP署名11カ国は2017年8月30日にシドニーで首席交渉官会合を行い、日本は議論を主導する立場なので関税分野の見直しを提案しにくく、最終的には米国のTPP復帰を促して12カ国での発効を目指すのだそうだ。しかし、オーストラリアは優秀な農業国で原発はなく、赤身で脂肪の少ない牛肉や乳製品が安いため日本の消費者は嬉しいが、日本の農業には不利である。それでも日本政府は、まともな交渉もせずに議論を「主導」し、このTPP条約が締結されれば食料自給率がさらに下がるが、それでもTPP条約の締結は麻生副総理の言われる「結果を出した」ことになるのですか?

*11-1:https://www.agrinews.co.jp/p41748.html (日本農業新聞 2017年8月29日) 食料自給率 38%にダウン +1ポイント作戦始動 ご飯もう一口、国産豆腐は月に2丁… 日々の食卓 ちょっと 工夫を
 ご飯を1日もう一口、国産豆腐を月に2丁――。食料自給率を1ポイント上げるため に必要な国民の食事量の一例だ。2016年度の食料自給率(カロリーベース)は38%と、先進国の中で最低水準にまで落ち込んだ。半世紀前の73%から半減し、もはや国民の食と命を自国で守れない危機的な状況にある。自給率向上へ国民一人一人がどんなことをすればよいのか? 誰でも簡単にできる「1ポイント上げる」ためのちょっとした工夫を紹介する。農水省が提示する食料自給率を1ポイント向上させる方策によると、全国民が、ご飯を1日にもう一口(17グラム)食べるだけで1ポイント自給率が向上する。「国産米粉パンを月に6枚(400グラム)食べる」「国産大豆100%の豆腐を月に2丁食べる」「国産小麦100%のうどんを月に2玉食べる」などでも向上する。これら全て実現できれば、4ポイント向上する計算だ。日常の食事を増やすわけでなく、国産の農産物を選ぶことで自給率が上がる。国産の比率が高いのが米を使ったメニューだ。おにぎり1個98%、にぎりずし75%、親子丼70%など、米料理の自給率は高い。ただ、和食を多く食べれば自給率の向上に直結するかというと、そう単純ではない。原料の輸入割合が高いそばやうどんでは自給率は下がり、「エビの天ぷらそば」は24%まで低下する。本みりん(98%)、かつおだし(69%)などだしの自給率は高いが、しょうゆ(23%)、エビ(5%)などの低さが自給率を下げる要因だ。しかし、国産のそば粉や小麦粉を使うと自給率は向上する。ソバの自給率22%の中で、国産そば粉を使ったそばを提供する東京・上野の「はなみずき」店主、弘田千秋さん(43)は「国産のそば粉は、海外産と味が違う」と国産にこだわる理由を明かす。そば粉を100%国産にすれば、天ぷらそばの自給率は71%まで上昇する。最近ではラーメン用やちゃんぽん用、パスタ用など小麦の品種開発が進んでおり、こうした品種が広がれば自給率向上に貢献しそうだ。農水省は自給率への意識を高めてもらおうと、インターネット上で、料理の自給率を計算するソフトを公開。ハンバーグ(14%)、ねぎとろ丼(82%)といったメニューや、家庭で作る料理の食材を選んで入力すれば、食料自給率を算出できる。
●国民が危機感を共有
 食料自給率は、国民の平均カロリー摂取量のうち、国産食材で得られるカロリーの割合を示す。16年度は国民1人が1日当たり2429キロカロリーを摂取しており、このうち国産食材からの摂取は913キロカロリーにとどまる。国民の摂取カロリーの割合で最も多いのは米(自給率98%)、次いで畜産物(同16%)、油脂類(同3%)。この3品目だけで摂取カロリーの全体の半分を超える。4番目に多いのは小麦(12%)だ。同省によると、自給率の高い米の消費が減る一方で、飼料を海外に依存している肉類や油脂類、小麦製品の消費量が増え、自給率を下げる要因となっている。食の洋風化や油脂類・小麦の輸入増などが、自給率低下をもたらしている。少子高齢化で国内の食市場そのものが縮小している状況を踏まえ、斎藤健農相は「消費者が意識を持ってもらうことが重要。子や孫のことを考えて食料自給率向上に目を向けてほしい」と危機感を示す。

*11-2:https://mainichi.jp/articles/20170719/ddl/k37/040/330000c (毎日新聞 2017年7月19日) 糖尿病:治療「中断」17.1% 県、491機関の患者を調査 /香川
●「仕事」理由、重症化の傾向
 仕事の忙しさや症状がなかったことなどから糖尿病の治療を中断した経験を持つ人が患者の17・1%いることが、県の調査で分かった。若い患者ほど中断経験があり、40歳以下では24・8%と4人に1人近くに上った。中断経験者は重症化しやすい傾向もあり、県は治療継続のために地域や職場、医療が連携する必要性を指摘している。昨年の人口動態調査(概数)によると、人口10万人あたりの糖尿病死亡率は14・1人で、全国平均(10・8人)を上回り、全都道府県でワースト9位となっている。調査は2008年度に続いて2回目。生活習慣から発症が多いとされる「2型糖尿病」患者を治療する491の内科や専門医療機関を対象に、60歳以下の患者について昨年12月に実施。226機関が1367人(男882人、女482人、性別不明3人)分を回答した。受診のきっかけは、46・1%が健康診断で、35・7%は妊娠や交通事故などの診察や治療だった。糖尿病の症状が出て受診した患者も15・2%いた。だが、すぐに受診したのは78・5%。受診しなかった理由(複数回答)では、▽「特に症状もなく必要はないと思った」59・8%▽「仕事や用事で時間が取れなかった」42・4%▽「生活習慣を変え自分で改善できると思った」30・8%--などだった。17・1%の患者で治療の中断経験があった。男性は18・5%で、女性の14・7%を上回った。中断理由(複数回答)では、男性の47・7%が「仕事が忙しいので通院できなかった」を挙げたが、女性は22・4%だった。女性は「症状がなかった」が29・9%で最多だった。治療継続のために必要なことは、男性は「職場の理解」が31・4%、女性は「家庭の理解」が36・9%だった。治療を中断後に再開した患者は、網膜症や腎症、神経障害といった糖尿病合併症の併発率が中断しなかった患者と比べて3・2~2・6倍に達した。また、40歳以下の患者の86・8%が肥満だったが、41歳以上50歳以下は74・4%、51歳以上は64・4%にとどまった。食事、運動療法を続け、年配者ほど効果が出ているためとみられるという。他の医療機関との連携状況では、歯科医との連携が24・6%と低かった。県健康福祉総務課の担当者は「歯周病と糖尿病には高い相関関係のあることが分かっているが、歯科医との連携が低かった。症状がなくても治療の必要があるといった知識の普及を進めたい」と話している。

*11-3:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/459618 (佐賀新聞 2017年8月31日) くら寿司が糖質制限メニュー
■シャリは大根酢漬け
 回転ずしチェーン「くら寿司」を運営するくらコーポレーションは29日、すしの酢飯の代わりに大根の酢漬けを使った「シャリ野菜」など、業界で初めて糖質制限に対応したメニューを発表した。31日から全国の店舗で販売する。ご飯など炭水化物に多い糖質の摂取量を減らす「糖質制限」の人気に着目し、若い女性などの集客増を目指す。一方、「かっぱ寿司」を運営するカッパ・クリエイトが期間、時間帯限定の食べ放題サービスを28日から対象店舗を拡大して実施するなど、回転ずし業界各社は激化する競争での勝ち残りへ知恵を絞っている。シャリ野菜は酢飯を使った通常のすしと比べて糖質を最大88%カットした。すしネタはエビやビントロなど4種類。酢飯の量を半分にした商品も用意し、価格は108円。担当者は「糖質を気にせずに野菜と一緒においしく食べてもらいたい」とアピールする。かっぱ寿司の食べ放題は今後も実施店舗を変えて継続する方針で、担当者は「大学生や家族連れなど幅広い層に利用してもらいたい」と話す。「スシロー」を展開するあきんどスシローは、国内の天然魚の活用や、海外産食材の調達多様化を進めている。

*11-4:http://qbiz.jp/article/117878/1/ (西日本新聞 2017年9月1日) 全加工食品に原産地表示 きょうから義務化
 全ての加工食品に原材料の原産地表示を義務付ける改正食品表示基準が1日、施行された。メーカーや販売店が表示を変更する準備ができるよう猶予期間が設けられ、2022年4月から完全施行される。内閣府・消費者委員会が8月、改正案を首相に答申していた。輸入食品の増加が見込まれる中、消費者が購入の際に参考にできるようになるほか、国産品のブランド力向上などの効果を狙う。
22年4月以降、虚偽の原産地表示をした食品を販売した個人に、2年以下の懲役または200万円以下の罰金、法人には行為者への罰のほか、1億円以下の罰金が科せられる。

*11-5:https://www.agrinews.co.jp/p41765.html (日本農業新聞 2017年8月31日) 日本 見直し提案せず TPP11首席会合終了
 環太平洋連携協定(TPP)署名11カ国は30日、オーストラリア・シドニーで3日間の首席交渉官会合の日程を終えた。知的財産分野の見直しでは一致したが、その他の分野で各国から修正要望が続出。日本は農業関係者が要望する農産品関税の見直しを提案しなかったもようだ。次回は9月後半に再び日本で首席交渉官会合を開く。
●米国要求項目 棚上げ
 12カ国で合意した内容のどの部分を見直すか具体的に議論した。米国が要求した項目について、いったん凍結し棚上げすることで米国のTPP復帰を促し、最終的に12カ国での発効を目指す。しかし、米国に復帰の兆しは見えず、先行きは依然不透明だ。交渉関係者によると、焦点の関税分野の見直しについては、各国から要望が出なかった。日本の農業関係者は、乳製品の輸入枠など米国の参加を前提にした合意内容の見直しを求めているが、日本は今回見直し提案をしなかったもようだ。日本は議論を主導する立場のため、「各国が慎重な関税分野の見直しを率先して提案しにくい」(交渉筋)。政府は米国の焦りを引き出すため11カ国での発効を急ぎたい考えだが、米国の2国間交渉で追加の農産品の市場開放を求められるとの警戒感は農業関係者に根強く、日本国内の意見調整も難航しそうだ。今回の会合で、実質8年の医薬品のデータ保護期間については凍結する方向でおおむね一致した。議論を主導する日本とオーストラリア、ニュージーランドはTPPの自由化水準を下げないよう協定の内容の見直しを極力少なくしたい考え。ただ、投資などルール分野の修正要望が続出。国内調整が引き続き必要な国もあり、見直し項目を絞り込みきれなかった。11月のアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議までの合意を目指し、来月の首席交渉官会合で検討を継続する。


PS(2017年9月2、3日追加):*12-1のように、JA全中が「らくらくWeb簿記システム」を本格始動し、経理・税務申告書類や源泉徴収票の作成・経営コンサルなどに役立てるのは、不得意な作業から農業者を解放し、質の高い生産・販売に専念できる基盤になるため、大きな進歩だ。また、*12-2のような直売所での販売、*12-3のような林業、不動産、その他所得を経理や税務申告に正確に反映させ、日報や月報を出して経営管理することも容易になって農家の意欲増大に繋がる。この時、一つだけ懸念があるのは、農協に全サービスを依存する結果、農協が農家を支配することが可能になることだが、この問題は、政府が行っているような農協の弱体化で解決すべきではなく、その他の主体が同様以上のサービスを行って農協と切磋琢磨し、農業者がよりよいサービスを選択できるようにすることが重要なのだ。
 なお、*13について、JAグループが、2019年4月に自己改革の評価を把握するために、全国1000万人超の正・准組合員全てを対象にアンケート調査を実施するのは大変よいと思うが、客観的で役立つ情報を得るためには、JAの役職員が訪問するよりも郵送・匿名で、期待・クレーム・要望などを言いやすい状態にして年に一度くらい調査し、継続的に改善していくことが重要だと考える。さらに、調査する際には、国際的なコンサルティング・ファームを利用して海外と比較すれば、これまで考え付かなかったような解決策が提案される可能性が高い。
 また、*14のように、事務作業も自動化が進んでいるため、農協自体も人材を組合員に役立つ営農支援や販売、顧客対応などの業務により手厚く配置して生産性を上げることが可能になった。もちろん、RPAをブラックボックス化するのではなく、その仕組を理解している人が業務を把握しておく必要はあるが、組織全体として生産性を上げることができるわけである。

*12-1:https://www.agrinews.co.jp/p41769.html (日本農業新聞 2017年9月1日) 「Web簿記」本格始動 申告支援 経営指導も 全中
 JA全中は、担い手への経営コンサル機能を強化するため、税務申告書類を効率的に作成できる「らくらくWeb簿記システム」を本格始動した。中央会・JA向けシステムで、農業者の事務負担を軽減するとともに、税務申告で集約する販売、購買事業データや信用事業の資金情報を活用し、担い手への経営戦略のアドバイスに役立てる。8月にはJA群馬中央会が導入した。今後は、各県の判断を踏まえ、活用を進める方針だ。同システムは、静岡県農協電算センターが開発。2017年度、全中が保守管理を引き受けて全国の情報を管理するシステムを構築した。具体的には、システムで農業所得や不動産所得の情報を管理できる。貯金の入出金や販売精算などの情報を入力すれば自動的に青色申告や白色申告で使う決算書や、収支計算書などの書類の作成も可能。農業法人などの従業員向け源泉徴収票も作れる。それらの情報を、経営分析に活用する。JA管内の農業者の経営状況との比較を踏まえてアドバイスできる他、経済事業で取引の際に使うシステムと連動させ、日頃の実績を帳票などに反映できる。生産や販売、購買、資金対応、労務管理など各分野での個別提案を目指す。将来的には、集約した経営情報を全国規模で分析し、地域、品目別の提案も視野に入れる。全中は「JAの各事業での連携を重視したシステムであり、事業間連携にもつながる」(JA情報システム対策部)と強調する。JA自己改革では、大規模化する担い手経営体との信頼関係の構築の強化を目指しており、システムの活用で、その取り組みを加速する。JAの総合事業の強みを発揮し、担い手経営体を支援する。

*12-2:https://www.agrinews.co.jp/p41753.html (日本農業新聞論説 2017年8月30日) 広がるJA直売所 課題克服し魅力磨こう
 JA直売所が着実に増えている。地元産の安心感や新鮮さで消費者に受け入れられ、生産者の所得増にもつながった。日本農業新聞の調査によると、2016年度は売上高10億円を超える大規模店が15年前と比べ10倍になった。ただ、直売所の乱立で競争は激しく、出荷者の高齢化で品ぞろえも厳しさを増す。品ぞろえはもちろん魅力ある直売所づくりに向け、JAグループの結集力が求められている。消費者にとって直売所の魅力は、地元産の安心感、収穫後すぐに店頭に並ぶ鮮度の良さ、それに流通ルートの短さによる低価格の三拍子がそろっていること。JA直売所が急増したのは直売所設置が決議された1997年の21回JA全国大会以降だ。この動きは、日本農業新聞の調査でも明らかになった。調査は、本紙掲載記事などを参考に、売上高5億円以上と推定される133店を対象に実施し、110店から回答があった。それによると9割の直売所が、20年前のJA全国大会以降に開設した。特に、7割の店は、21世紀に入ってからの10年間にオープンした。当時、JA合併が急激に進み、広域JAが管内各地に次々に設置したことや、先行JAのノウハウが近隣JAに伝授されたことも急増に拍車を掛けた。その結果、15年前の01年度にわずか4店だった年間売上高10億円を超える直売所は、今回の調査で39店と10倍に増えた。福岡県JA糸島の「伊都菜彩」(41億円)、和歌山県JA紀の里の「めっけもん広場」(28億円)、愛媛県JAおちいまばりの「さいさいきて屋」(22億円)など20億円を超える店が6店もあった。地域別でも5億円以上の店舗は、関東や東海だけでなく、東北から九州まで全国各地に広がっている。直売所によって「生産者の所得向上」に9割、「消費者に好評」に7割が効果あったと回答。農家だけでなく地域住民にも人気だった。同時に、出荷者の高齢化や品ぞろえの確保が課題として浮かび上がった。農水省の調査(15年度)によると、全国2万3600カ所の直売所のうちJA直売所は2000店。ライバル店の増加で、開店から7、8年で売上高は横ばいとなり、各店とも売り上げ維持に懸命となる。最大の課題は、野菜を中心とする地場産品の確保だ。1直売所で500人ほどいる出荷会員は、年々、高齢化が進む。さらにスーパーのインショップなどの増加で、農家の出荷先はJA直売所以外にも広がる。これに対しJAは、直売所出荷者を育てる農業塾、営農指導部署と連携した新作物講習会、遠距離地区向けの集荷便などさまざまな取り組みを進めており、評価したい。地域に密着し豊富な品ぞろえで魅力あるJA直売所を育てるため、出荷者である組合員も含めて、JAグループ一丸となった積極的な取り組みを期待する。

*12-3:https://www.agrinews.co.jp/p41719.html (日本農業新聞論説 2017年8月26日) 稼げる林業経営 担い手への集約対策を
 わが国の林業政策が2018年度から新段階に進みそうだ。政府が掲げる「林業の成長産業化」の具体策として、林野庁が新たな林業経営の在り方の検討に入っている。年内に結論をまとめ、来年度の政府予算と制度改正で新対策を打ち出す。山持ち林家が林業経営を担い手に任せる代わりに、木材収入の一部をいわば借地料としてもらう。その仕組みをうまく作ることが重要になろう。「林業の成長産業化」は安倍政権が3年前に掲げたが、推進の具体策に欠けていた。政府は本腰を入れ、新対策の方向を6月に公表した未来投資戦略でこう記した。「森林の管理経営を、意欲ある持続的な林業経営者に集積・集約化する」。林業経営を集約型にして、稼げる林業を目指す方向に異論はない。一方で、条件不利地の林業に向かない森林の管理は「市町村等が行う新たな仕組みを検討」として、公的管理を強める。併せて、昨年末に与党が今年度税制改正大綱で示した森林環境税について、将来導入した際に市町村主体の森林整備の財源に充てる手法を検討していく。政府の新対策はつまり二段構えだ。稼げる林業を目指すとともに、それが困難な森林の管理は市町村に責任を持ってもらう。地元の森林を林業向けと保全管理向けに区分けするのは、市町村の役目になろう。市町村は現在、今年4月施行の改正森林法で義務付けられた林地台帳作成へ、森林の所有者・境界の特定を進めている。条件不利地の森林管理だけでなく、林業向けの森林をまとめ、担い手に集積推進する自覚と責任が求められる。林業経営の担い手には、自立林家の他、森林組合と林業事業者がなるのが現実的だろう。だが現在、両者とも再造林から伐採までの施業請負が大半で、経営責任を伴わない。ここから大きく踏み出し、いわば借地の林業経営を積極的にやれる制度作りが、政策的に必要となる。借地型の林業経営では、収益確保の努力を迫られる。施業効率化に向け、高性能機械導入や、主伐とコンテナ苗を使った植林の一貫作業化などが進むはずだ。伐採木の販売努力を含めた生産性向上こそが、稼げる林業実現の道となる。林業での借地料は定期的な支払いが難しく、伐採木収入の一部の充当が妥当だろう。林家と担い手の双方が納得できる仕組みが肝要となる。林家は「林業はもうからない」と嘆き、赤字経営も実際多い。それだけに、森林の所有と経営を分離し、必ず収入が得られる借地型は安心感を持てるのではないか。わが国の人工林の半分が主伐期を迎えており、伐採して活用する推進政策が急がれる。日本と欧州連合(EU)との経済連携協定(EPA)大枠合意による林産物の輸入関税の段階的撤廃の打撃を乗り越え、林業の成長産業化を達成するには、稼げる林業を全力で築くしかない。

*13:https://www.agrinews.co.jp/p41775.html (日本農業新聞 2017年9月2日) JAグループ 19年に全組合員調査 自己改革評価把握 実践加速、全JAも
 JAグループは、現在進めている自己改革への評価を把握するため、全国1000万人超の正・准組合員全てを対象にしたアンケートを2019年4月に実施する。全組合員調査はJAグループ初の試み。併せて、全JA調査も行い、自己改革の取り組み実績をまとめる。節目を設定し、高評価の獲得を目標にして改革を加速させる。各JAは、評価や実績を基に一層の改革案などを検討し、次期中期計画を策定する。全組合員調査は、全JAの役職員が正・准組合員の全戸を訪問。農産物の販売事業や生産資材の購買事業、営農指導への期待度や満足度などをアンケート形式で調べる。全国のJAの組合員数は正・准合わせて1037万人(15年度)。JA全中によると、全国の組合員全てを対象に調査を行うのは初めてだ。一方、全JA調査はこれまでも毎年実施しているが、調査項目を見直す。例えば、ある事業について「何割のJAが取り組んだか」から「何人の組合員が利用したか」などに変更。組合員目線で、自己改革がどこまで進んだかを定量的に把握できるようにする。全組合員調査に合わせ、19年4月1日を基準日に19年度の調査を実施する。JAグループは15年の第27回JA全国大会の決議を受け、農業者の所得増大などに向けた「創造的自己改革」を進めている。同大会決議の実践期間は18年度までで、各JAがつくる自己改革の工程表も18年度を区切りとする。このため19年4月を自己改革の一定の節目とし、全組合員・全JA調査で評価や実績を把握することにした。政府の規制改革推進会議が、19年5月末を「農協改革集中推進期間」の期限としていることも考慮した。調査で把握した改革の実績や評価を踏まえ、全国のJAは19年度からの一層の取り組みを検討し、次期中期計画を策定する。中期計画には、総合事業を継続するか信用事業の代理店化を選択するかの判断なども盛り込む。信連や農林中央金庫による手数料水準の提示を受け、JAは信用事業の運営体制の在り方を検討し、19年5月までに結論を出すことにしているためだ。ただ全中は、総合事業を展開した方が農業者の所得増大や農業生産の拡大に有利とみて、多くのJAが総合事業の継続を選ぶと見込む。自己改革の実績や評価、それを踏まえた今後の計画は対外的にも発信する。全中は、こうした一連の取り組み方針を理事会で決めた。全中の比嘉政浩専務は「自己改革に終わりはないが、明確な節目をつくることで改革を加速化する」と強調。「全組合員調査で高い評価を得ることを一つの目標にして、JAグループを挙げて取り組む必要がある」と話す。

*14:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20170903&ng=DGKKZO20699380S7A900C1EA5000 (日経新聞 2017.9.3) 事務作業も自動化進む、第一生命やオリックス、「ロボ」ソフトで労働時間削減
 オフィスの作業を自動化するソフトウエアが日本で浸透し始めた。データ入力など人手に頼っていた単純作業を自動的に処理することからロボットと呼ばれ、第一生命保険は最大で150人相当の業務を代替する。人手不足の深刻化や働き方改革で労働時間の削減を急ぐ大手企業が次々に導入している。生産性を引き上げて、貴重な人材を顧客対応や企画部門に厚く配置する動きにつながりそうだ。パソコンを使った定型的な繰り返し作業を担うのが「RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)」と呼ばれるソフト。米オートメーションエニウェアや英ユーアイパスなど欧米企業が先行し、2年ほど前から日本企業で利用が広がり始めた。紙ベースのデータを光学式文字読み取り装置(OCR)で読み取ってデジタル情報として基幹システムに入力したり、ウェブの画面から数値をコピーしてエクセルにペーストしたりするような作業を担う。あらかじめ操作を設定しておけば、検索やデータの取得、入力、確認などの作業を人間と同じ手順で処理する。オリックスグループは10月末からRPAで担う仕事を増やす。これまでレンタカーの予約情報を基幹システムに登録する業務で使用してきた。外部の旅行サイトなどから受け付けると目視で確認して入力し直す必要があり煩雑な作業が伴った。RPAでは時間当たりの処理件数が人手に比べ8倍になり、ミスもなくなったという。この結果を受け、生命保険や不動産などグループ各社が導入を予定する。これまでの子会社1社から全社にRPAの利用を広げる。第一生命は試験的に使っていたRPAを10月から本格稼働する。社内で自動化に切り替える作業を募り2千以上、年間30万時間分の業務が候補に挙がった。従業員150人分に相当する。可能な業務から順次、RPAのソフトで代替していく。例えば保険金請求の処理業務を担当する社員を決める割り振りに使う。疾病や事故の内容によってスキルの程度を含めて対応する社員をあらかじめ分類し、自動的に仕事を振り分ける。人手で年間1000時間かかる作業を代替する見込み。日本RPA協会の調査ではRPA利用企業の97%で適用した業務の処理時間が半分以下になった。KPMGコンサルティングは単純作業に従事する労働力を4~7割減らせるとみている。電通も年末までに300の業務でRPAを導入する。自動化により月間で5万8千時間分の労働時間の削減を目指す。既に各種メディアの視聴率のデータを取得、入力する業務に使用済み。長時間労働問題を受けて進める働き方改革の一環として活用範囲を広げる。日本の時間あたり労働生産性は経済協力開発機構(OECD)加盟35カ国中20位で、かねて単純作業の見直しが必要と指摘されてきた。RPAソフトの機能が上がるのと並行して働き方改革の機運も高まり、関心を示す企業が増えた。単純作業を減らせば生産性は上がり、働く意欲の向上も見込める。第一生命は営業や海外事業などの部門に再配置したい考えだ。米調査会社トラクティカによると、ソフト利用や関連コンサルなど世界のRPA市場は2025年に51億ドル(約5600億円)と16年の30倍以上に増える。仕事が効率よく進み、企業のコストが下がるとの期待が高まる一方、25年までに世界で1億人の知的労働者の仕事がRPAに置き換わるとの試算もある。RPAは作業内容を社内で誰かが把握していないと、データの取得先のフォーマットが変わるなど環境が変化した場合も従来と同じやり方で作業を続け、業務が混乱する恐れがある。ソフトバンクはRPAソフトに操作を設定する人員や使用している業務を一元的に把握して、RPAに仕事を任せきりにしないよう管理している。


PS(2017年9月8日追加):*15-1のように、全農が、農家所得の増大や農業生産の拡大に向け、実需者への直接販売拡大のために営業開発部を設置するそうでよいと思うが、国内外の需要の変化に応じて持続的に新製品を出したり製品の改善を続けたりするのは、他産業ではこれまでもやってきたことなので遅すぎたくらいだ。なお、最近は、インターネット通販の利用で望む産地から直接買う消費者が増えたため、努力する生産者には利益獲得のチャンスが増えた。今後は、例えばデパ地下の惣菜などの業務用食材も相手の仕様に合わせて産地で下ごしらえして販売すれば、①ゴミまで都会に輸送しないため輸送コストを下げ ②人件費の安い産地で新鮮で安価な製品を作ることができ ③需要者の要求が手に取るようにわかるため今後の生産計画に役立ち ④地方で付加価値をつけるので地方の所得を増加させることもでき ⑤ゴミになる部分は地方で養殖魚の餌や肥料に再利用できるので、よりよくなると考える。
 なお、日本は農畜産物の輸出額が非常に小さいが、*15-2のように、JA全農は、香港で日本産農畜産物に特化した特設サイトを開設して、ネット通販をはじめとするEC事業を展開するそうだ。私は、合理的な価格で販売すれば売上が増えると思うが、品揃えの充実と量の確保は欠かせないだろう。そのような中、熊本県のJA菊池は、*15-3のように、牛の繁殖拠点を整備して年間500頭の増産を目指し、安く供給することで農家の手取りを増やす考えだそうだ。
 ところで近年、日本では野生鳥獣の数が増えたので、*15-4のように、鹿・イノシシなどの野生鳥獣を捕獲した狩猟者に支払う「鳥獣被害防止総合対策交付金」ができた。しかし、捕獲した野生鳥獣は、尻尾を切って写真を添えれば助成金をもらえるため捨てられることが多く、これでは、人間はあまりにも不遜で命を無駄にしていると言わざるを得ない。しかし、野生鳥獣の肉は、脂肪が少なく蛋白質が豊富で健康的であるため、適切に料理すれば家畜より価値の高いごちそうにもなる。そのため、*15-5のように、何とかしてジビエとして活用すべきだ。
 さらに、*15-6のように、九州から欧米へ続々と米粉が輸出され始めたのは希望多きことだが、米粉は、*15-7のように、菓子、パン、麺などの様々な用途に使うことができ、米粉のパンは固くならないなどの長所がある上、フォー(ベトナムの麺:爽やかで美味しい)は米粉でしかできない麺であるため、農水省が「戦略作物」として生産拡大を支援したり用途別に支援したりするのはバラマキであるとともに、市場を歪める大きなお世話になるだろう。

<全農の経済事業>
*15-1:https://www.agrinews.co.jp/p41785.html (日本農業新聞論説 2017年9月3日) 全農が営業新部署 直販拡大へフル活動を
 実践2年目となるJAグループの自己改革が9月で半年を迎える。経済事業を担うJA全農は、農家所得の増大や農業生産の拡大の実現に向け1日、営業開発部を設置、販売力強化の取り組みを加速する。実需者への直接販売拡大を狙う実働部隊に位置付ける。消費や販売形態の変化など市場動向に即応した機能アップが成否の鍵を握る。営業開発部は政府の「農林水産業・地域の活力創造プラン」への対応を実践するため、司令塔としての役割も担う。精米や青果など従来、縦割りに進めてきた営業活動を品目の垣根を取り払って横断的に実施する。新たな取引先の開拓や取扱品目の拡大が使命だ。併せて、実需者ニーズを産地に伝え、生産から加工・流通、販売までをつなぐ全農としてのバリューチェーン構築を目指す。その際に意識しなければならないのは、消費構造や販売形態の変化だ。最近の動向を見ると、生活の多様化に合わせ、市場では業務用需要が伸び、並行してインターネット通販の利用が増えている。さらに、作り手の論理を優先させる「プロダクトアウト」から、消費者ニーズを重要とする「マーケットイン」を意識した事業展開が強まっている。単にモノを売るだけにとどまらず、実需者ニーズを捉えた付加価値のある商品の企画・開発が求められている。こうした時代の流れをくみ、全農は従来の取引先であるスーパーや生協に加え、コンビニエンスストアや外食・中食業者、インターネット通販、ドラッグストアなど幅広い分野の実需者をターゲットにリスト化。取引先ごとに横断的なチームをつくり、新たな品目の売り込みと新規顧客の開拓を進める。直販事業を拡大するには、消費構造の変化への対応が重要だ。その一つが電子商取引(EC)だ。野村総合研究所が昨春公表したインターネット利用者を対象にした調査によると、3000円以下のちょっとした買い物でもネットを使う実態が浮き彫りになった。利用層も若者だけでなく中高年層に広がり、生活に定着している。農産物の販路の拡大・新規開拓には、既存の事業モデルの見直しと併せて、EC戦略を磨き上げることが欠かせない。全農は3月に決めた事業改革の年次計画で、2024年度の直接販売の割合を米で9割、園芸品目で取扱額の過半の5500億円という意欲的な目標を据えた。7月下旬の通常総代会の時点での実行状況はほぼ計画通りとしている。米の買い取りは2017年度計画の30万トンを超えたという。実績の積み上げへ新部署の果たす役割は大きい。有効に機能すれば、産地を巻き込んだ栽培や商品開発という好循環を作り出すことにもつながる。目に見える成果が問われる改革の必達。

<農畜産物の輸出>
*15-2:https://www.agrinews.co.jp/41743?page=2 (日本農業新聞 2017年8月29日) 全農、香港で通販事業 最大級サイトと連携 農畜産物輸出拡大
 JA全農は、日本の農林水産物・食品の最大の輸出先である香港で、ネット通販をはじめとする電子商取引(EC)事業を展開する。香港最大級の通販サイト「HKTVmall(HKTV)」などと連携し、日本産農畜産物に特化した特設サイトを開設したと、28日に発表した。百貨店など実店舗に加え、ネット通販を積極的に活用することで、消費者に直接売り込める期待がある。ネット通販は利便性が強みで、日本産農畜産物の新たな顧客層を獲得し、輸出拡大を狙う。輸出事業の拡大へ全農は4月、輸出対策部を新設。実務を子会社のJA全農インターナショナルに集約するなどの体制を整備し、産地づくりやCA(大気調整)コンテナなどを活用した試験輸送、国・地域別の輸出戦略の策定などに動く。9月1日に「営業開発部」を設置して取り組みを強化し、新たな販売網としてネット通販戦略の構築を進める。今回の仕組みは、HKTVに加え、国内外で料理教室などを展開する「ABCクッキングスタジオ(ABC)」とも連携する。国内から米や肉、果実など農畜産物を調達する全農と、食材を生かす調理方法などを紹介するABC、販売を担うHKTVがそれぞれの強みを生かし、香港の家庭などに日本産農畜産物を届ける。物流は、全農が既に構築している現地の青果や食肉などの卸をはじめ、取引先との仕組みを生かす。香港は他国に比べて輸入規制が少ないため、日本にとって幅広い品目を輸出しやすい。輸出戦略でも最重点地域で、現地では日系の総合スーパーや高級スーパーなどを中心に日本産農畜産物や加工品の取り扱いが広がり、消費者の購入機会が増えている。ネット通販で利便性が高まり、新たな顧客層の獲得に期待が大きい。取扱品目は、現時点で米、青果、牛肉、豚肉など。今後、販売状況を見ながら、品ぞろえの充実を検討する考えだ。全農は「香港の消費者ニーズを捉え、商品を広げていきたい」(輸出対策部)としている。

*15-3:https://www.agrinews.co.jp/p41799.html (日本農業新聞 2017年9月5日) 繁殖拠点を整備 管内で和子牛安く提供 熊本・JA菊池が新方式
 熊本県のJA菊池は、和牛子牛を増やすためキャトルブリーディングステーション(CBS)を整備した。生まれた子牛は市場に出荷せず、管内の生産者に安く譲る全国初の方式を導入する。子牛高騰に苦しむ肥育農家の経営改善につなげる狙いだ。西日本最大の酪農地帯である利点を生かし、管内の酪農家から乳用牛を預かって受精卵移植(ET)で和牛子牛を生ませる。JAが所有する繁殖和牛にも子牛を生ませ、3年後をめどに合計で年間500頭の増産を目指す。4日に菊池市に完成したCBSで竣工式を開いた。和牛と乳用牛を合わせて常時850頭を飼養。効率化のため哺乳ロボットや発情発見器などを完備する。国の畜産クラスター事業を利用し、総額約9億5000万円を投じて整備した。JAが所有する最大200頭の和牛に人工授精(AI)で子牛を年間180頭生ませる他、預かった酪農家の乳用牛最大240頭にETを施し、同140頭生産する。加えて、管内の酪農家組織の乳用牛300頭にもETで同180頭生ませる。受精卵はJAが用意し、代金も負担する。黒毛和種だけでなく褐毛和種(あか牛)も生産する他、生乳の生産基盤を守るため乳用後継牛の確保にも活用する。酪農家から預かる乳用牛は1日700円程度で管理を請け負う。生まれた和牛子牛は生後1週間程度で酪農家から全て買い取る。受精卵や引き取った後の管理にかかるJAの費用を勘案し、価格はスモール牛(3、4カ月齢)の市場相場の半額程度を想定する。生まれた子牛はCBSである程度育成した後、全頭を管内の肥育農家に供給する。市場出荷せず確実に管内にとどまるようにする。価格は県内市場の相場より1頭5万円ほど安くする方針。繁殖農家への影響も考慮して決めるが、一定程度安くし、採算ぎりぎりの状態にある肥育経営の改善につなげる。JAによると生産した子牛を市場出荷せずに安く供給する施設は「全国でも例がない」(畜産企画課)という。JAの正職員3人と嘱託職員3人が主に作業に当たる。獣医師1人と、哺育や育成などを担当するパート16~18人を確保するめどもついた。CBSは宿泊可能で、新規就農者らの研修施設としての役割も果たす。酪農と肉用牛肥育・繁殖の全てに対応する。JAの三角修組合長は「和牛子牛の不足と相場高騰は農家個人では解決できない問題だ。JAが子牛を生産して安く供給することで、農家の手取りを増やす。乳用牛を預かることで、酪農家の負担軽減にもつなげる」と強調する。

*15-4:https://www.agrinews.co.jp/p41783.html (日本農業新聞 2017年9月3日) 鳥獣対策交付金 捕獲確認を厳格化 不正防止へ 来年4月 尻尾と写真 必ず
 イノシシなどの野生鳥獣を捕獲した狩猟者に支払う国の「鳥獣被害防止総合対策交付金」について、農水省は交付ルールを厳しくする。実際に野生鳥獣を捕獲したかどうか地方自治体が書類で確認する場合、写真に加え、証拠として尻尾の提出を義務付ける。交付金の不正受給防止が狙いで、10月をめどに交付金の実施要領を改正。周知期間を設けた上で、2018年4月から施行する。同交付金は、市町村の認定を受けた狩猟者を対象に、鹿やイノシシなどの捕獲に最大1頭8000円を助成する仕組み。実際に捕獲したかどうかの確認は、市町村職員や都道府県職員が実際に捕獲現場に出向く「現地確認」、狩猟者が市町村や都道府県に証拠を提出する「書類確認」がある。書類確認の証拠は写真だけでもよいルールになっている。だが、3月に兵庫県と鹿児島県で証拠写真で不正が発覚。撮影地点を変えるなどして1頭の個体を使い回し、実績よりも多く捕獲したように見せかけ、交付金を多く受け取っていた。新しい交付ルールでは確認作業について、「現地確認」か、処理加工施設への持ち込み時の「搬入確認」を基本とする。これらが難しいケースだけ書類確認を認める。書類確認の内容も厳しくする。証拠として写真に加え、尻尾の提出も義務付ける。証拠を尻尾に統一することで、耳や牙など複数の証拠部位を使って1頭の個体で複数回申請されることを防ぐ。証拠写真は個体の向きを「右向き」に統一し、向きを変えて複数個体に見せかける不正を防ぐ。現地確認でも、尻尾を回収したりスプレーで着色したりすることを義務付け、個体の使い回しを防ぐ。野生鳥獣による農産物被害(15年度)は176億円。高水準にあり、捕獲は欠かせない。同省は今回の見直しで不正受給の再発を防ぎ、交付金を着実に執行していきたい考えだ。

*15-5:http://qbiz.jp/article/118256/1/ (西日本新聞 2017年9月7日) 夢の「ジビエカー」初導入 捨てる有害獣の肉、活用可能に

   

 捕獲したイノシシやシカなどの有害鳥獣を有効に活用しようと、高知県檮原(ゆすはら)町が、移動式のジビエ(野生鳥獣肉)解体処理車「ジビエカー」を全国で初めて導入した。処理場まで遠く、これまで廃棄せざるを得なかった捕獲獣をその場で解体、冷蔵運搬することが可能。業界内で「夢のような車」との声が上がっている。檮原町では昨年度、ハンターらが農作物に被害を与えるイノシシやシカを約1500頭捕獲。その数は2008年度の約10倍に膨れ上がっており、自家消費されるもの以外の大半が山中に捨てられているという。ジビエカーは箱型の荷台を備えた2トントラック(全長約6・5メートル)で、1台2175万円。日本ジビエ振興協会(長野県)
 機械化された日本の田植え  中国の小麦刈り取り      米国の消毒
と長野トヨタ自動車が共同開発し、これまで宮崎県などで実証実験が行われてきた。本格導入は檮原町が初めてだ。最大でイノシシやシカ5頭分の枝肉を冷蔵・冷凍保管できる冷蔵室や、皮や内臓を取り除いて殺菌できる解体室を完備。捕獲現場に出向いてすぐに1次処理できるため鮮度が保たれ、臭みの少ない良質な肉が得られる。解体で出た臓器や汚水を現場に残さないなど、環境にも配慮した。今後は高知県が中山間地域の拠点として設置する同町の集落活動センターが、地元猟友会と協力して運用する。来年3月には町内にジビエ専用の食肉処理施設も完成予定。ジビエカーと連動すれば年間400〜500頭を食肉用に加工、出荷できる見込みだ。同町の矢野富夫町長は「山に捨てていたものが収入に変わり、雇用も生まれる」と期待する。

<米粉>
*15-6:http://qbiz.jp/article/118122/1/ (西日本新聞 2017年9月6日) 米粉輸出、九州から欧米へ続々 グルテンフリー人気受け 農業振興へ国も支援
 国産のコメを原料にした米粉を欧米に輸出する業者が、九州で相次いで登場している。欧米では小麦粉に含まれるタンパク質「グルテン」が症状を引き起こす「セリアック病」への警戒から、米粉などグルテンフリー(グルテンを含まない)食品人気が広がる。輸出の拡大は国内農業の振興につながることから、農林水産省も注目している。熊本製粉(熊本市)は2015年2月、米国への米粉輸出を始めた。まずは家庭用から手掛け、16年11月には業務用に拡大。米国のグルテンフリー認証機関の認証を15年1月に取得した上での取り組みだ。同社などによると、米国はセリアック病の患者が多い上、グルテンフリー食品を健康にいいと評価する消費者が増加。浦郷弘昭取締役は「米国のグルテンフリー食品市場の規模は約6千億円と大きく、現地の市場調査で自社の米粉が高く評価されたため、参入できると判断した」と話す。輸出する米粉は大半で熊本産のコメを使い、独自の製粉技術で生産。浦郷氏は「当社の米粉で作ったパンは、米国の既存のものよりふっくらと仕上がる」と胸を張る。「輸出は始めたばかりだが手応えは感じている。知名度を上げ、より浸透していきたい」という。和菓子の材料として米粉を長年製造している小城製粉(鹿児島県薩摩川内市)は、14年11月からドイツに輸出。現地の商社を通じ、顧客はフランスにも広がっているという。「これまでに約25トン輸出したがもっと伸ばしたい」と能勢勝哉社長。9月にドイツ・ハンブルクに販売拠点を設け、米粉素材のパンや菓子も製造、販売する計画だ。「製品をパン用やパイ用などに分け、欧州でも『おいしい』と評価を頂いている。課題は価格の高さだが、価値を一層PRし欧州各地に販路を広げたい」という。農林水産省は輸出を後押しするため、NPO法人国内産米粉促進ネットワーク(東京)が今秋に欧州で計画する米粉のPR活動を支援する。

*15-7:https://www.agrinews.co.jp/p41797.html (日本農業新聞 2017年9月5日) 米粉 用途別に支援 農水省18年度 品種実証や設備
 農水省は2018年度、今春に示した米粉の用途別基準や米粉の特性を踏まえた生産をする産地とそれを活用する実需の支援に乗り出す。菓子、パン、麺と三つの用途区分はアミロース含有率で決まる。新事業では、それぞれに合った品種の栽培実証や栽培マニュアル作りなどを促す。用途などを意識して販売する製造業者も支援する。多様な商品化を後押しし、米粉用米の需要拡大につなげる。農水省が18年度予算概算要求に盛り込んだ「戦略作物生産拡大支援事業」(1億3000万円)の中で支援する。同省は3月、「米粉の用途別基準」を発表した。米粉のアミロース含量は、菓子・料理用で20%未満、パン用で15%以上・25%未満、麺用で20%以上と三つに分けた。こうしたアミロース含量は品種や栽培管理で変わるため、実需に応じた生産には統一した技術を確立する必要がある。しかし産地にそうしたノウハウはないのが現状だ。そこであまり普及していない高アミロース品種の導入や、栽培のマニュアル化といった産地の取り組みを支援。例えば高アミロース品種には「モミロマン」「越のかおり」などがある。産地と連携する業者に対しても、小麦アレルギー患者から需要の高いノングルテン米粉を製造する設備や小麦粉製品の混入防止対策などを支援する。同省は「高アミロースを必要とする米粉の麺はまだ利用が少なく、事業で需要を広げたい。ノングルテン米粉は小麦アレルギーの多い欧米などへ輸出も見込める」(穀物課)と期待する。同省は米粉用米について、25年度に13年度比で約5倍となる10万トンの生産努力目標を掲げるが、国内需要量は約2万3000トンでここ数年はほぼ横ばい。農水省は米粉用米を戦略作物と位置付け、水田活用の直接支払交付金で飼料用米と並ぶ水準で助成している。

<本当の改革の進め方>
PS(2017年9月10日追加):*16-1の農水省の元事務次官で農林中金総合研究所理事長の皆川氏の話の内容は良いと思うが、①日本は人口減少という大きな課題に直面している ②貿易立国として世界のものづくりを担うのは難しい ③農業は2次、3次産業までの付加価値を足すと、GDP(国内総生産)の1割を稼いでいる ④地域社会を支え続ける意味でも、農業やその関連産業には大きな可能性がある ⑤家業としての農業経営の持続可能性がなくなっていることは否定できない とされていることに関して、①②は、一人当たりの国土や財産が増えるのでよい点も多く、女性・高齢者・障害者など、これまで生産年齢人口の健常男性に道をあけるために雇用から外されていた人に雇用の機会を与えるので悪いことばかりではない。さらに、③④については、食料自給率や環境維持を考慮すれば、GDPには載らない農林漁業の重要性もある。また、⑤については、家業としての経営は農業だけでなく製造業にもあり(トヨタ、ホンダ、有田焼、唐津焼など)、オーナー会社やベンチャー企業は、経営者によっては将来性ある意思決定を迅速に行えるので強みになることも多い。
 また、生産物の種類を増やせば、これまで輸入品しかなかった産物を国内産に回帰させたり、生産革命で消費者が高すぎて買わなかった産品を買えるようにしたりできるため、日本の市場規模は小さくなるとは限らない。しかし、輸出で他流試合をするのは、外貨を稼ぐだけではなく、日本産の価値を客観的に知って改善を続けるために重要である。
 なお、競争に勝つための連携目的で準組合員や非農家理事を作ったり、全農の持株会社が他産業とジョイントベンチャー子会社を作ったりする必要も出てくるため、*16-2に書かれているとおり、実態を知らない人が「上から改革」で准組合員を規制するのはもってのほかだ。そして、農林中金の役割は、農村から集めた資金を、改革・改善のために資金を必要とする地方の農林業に提供できる卓越した視野と金融技術を持つことなのである。

*16-1:http://www.saga-s.co.jp/column/economy/22901/461886 (佐賀新聞 2017年9月9日) 農業の複合化避けられず 多様な連携で地域貢献を、農林中金総合研究所 皆川理事長講演
 佐賀県内のJAグループ役員を対象にしたセミナーが佐賀市で開かれた。農水省の元事務次官で農林中金総合研究所理事長の皆川芳嗣氏が、人口減少が進む今後の日本における農業の可能性、JAが果たすべき役割について語った。要旨を紹介する。日本は人口減少という大きな課題に直面し、かつてのように貿易立国として世界のものづくりを担うのは難しい。金融、技術も国を引っ張るだけの産業にはなり得ない。では農業はどうか。数年前にTPP(環太平洋連携協定)の議論で、「農業は日本のGDP(国内総生産)のたかだか1・5%しかない」と言った政治家がいた。だが、フランスやアメリカでもGDPに占める1次産業の割合は1~2%。あんなに農村を抱えている中国でも10%しかない。1・5%はあくまで原料の世界。2次、3次産業まで付加価値を足すと、生産額ベースで国の1割を農業から派生した分野が稼いでいる。地方に行くと、そのウエイトはさらに高い。地域社会を支え続ける意味でも、農業やその関連産業には大きな可能性がある。ただ、家業としての農業経営の持続可能性がなくなっていることは否定できない。後継者が成り立つ事業にするには、規模拡大や複合化はある程度避けて通れない。労働のピークを経営の中でどう分散させられるか、マネジメントをJAも一緒になって取り組まなければならない。農地基盤の条件整備、農地の権利問題といったことも今後、JAがやる必要があるだろう。日本の市場規模は必ず小さくなる。地域にこだわりつつ、“他流試合”に挑むのも大事だ。福岡と東京のJAさが系統の店(季楽)は、他の地域の需要を食って佐賀の農産物が売れている。外に打って出る取り組みを加速させる必要がある。東アジアは必ず成長し、消費社会になる。インバウンドを生かさない手はない。地域全体を良くするためには、いろんな人たちと連携し、包み込むという考えが重要だ。JR九州の「ななつ星in九州」は、九州の風土と皆さんが丹精込めて作った食材がなければ成功しなかった。旅をする理由はその場所でいろんなものを食べたり、体験したりできるから。連携相手としてもっと深くつながれるのではないか。農業と福祉の連携もある。農業分野の一部でも、JAから福祉サイドに手を差し伸べるのは大きな社会的意義がある。障害者雇用は日本の企業の責務だが、企業本体の業務で雇用の場を提供することが難しい場合もある。企業が特例子会社をつくり、その子会社の事業として農業や園芸に取り組めば、法定雇用の人数に組み込める制度がある。農業のノウハウや販路を生かし、地域のためにより積極的に役割を果たすJAにしていただければありがたい。

*16-2:https://www.agrinews.co.jp/p41762.html (日本農業新聞論説 2017年8月31日) JA組織基盤強化 組合員と共に未来開く
 JA自己改革の要諦は、組合員との結び付きを強め、その成果を「見える化」することに尽きる。多様化する組合員の「姿」をつかみ、理念や課題を共有し、共に農と地域の未来を開いていこう。政府主導の一連の農協改革は、総合事業を弱め、地域のライフライン機能を損ねる方向で進んでいる。対してJAグループが進める創造的自己改革は、「食と農を基軸として地域に根差した協同組合」を目指す。課題克服の「解」は常に現場にある。「上から改革」ではなく、「現場からの改革」でなければ真の自己改革はできない。JAグループの目標は、農業者の所得増大、豊かで暮らしやすい地域社会の実現だ。それには、共に歩む正組合員・准組合員とのつながりが欠かせない。JAを支える土台が揺らいでは改革などなし得ない。組織基盤を強め、JAが組合員、地域住民にとって、なくてはならない存在になることが改革集中期間に問われている。JA全中、JC総研が東西2カ所で開いた「JA組織基盤強化フォーラム」は、そうした問題意識に貫かれ、先進事例報告や識者提言など示唆に富む内容だった。フォーラムで問われたのは、多様な組合員の営農・生活実態、JA組織・事業・経営への関与の度合いを把握できているかだ。徹底した意向調査でJAの「強み」「弱み」を知り、きめ細かく組合員の要望に応えることが求められている。組合員と言っても、JA事業や地域農業を支えた親世代の正組合員、高齢化で販売の一線を退いた正組合員、後継者世代のJAに対する意識も一様ではない。既に数の上では正組合員を上回る准組合員にしても、単なる事業利用者から就農意欲のある人、JA運営参画を目指す自覚的な人までさまざまだ。組織基盤強化とは、多様化する組合員と直接向き合い、信頼を深めることにほかならない。正組合員には、営農・経済改革の果実をスピード感を持って届けることだ。経営者は明確なビジョンを掲げ、全ての職員は渉外であり、広報担当だという自覚と当事者意識を持とう。あらゆる場面で職員は、具体的な目標、手段を自らの言葉で語れるよう「人材力」を磨こう。准組合員への対応も総合事業の将来を左右する。政府が准組合員の事業利用規制問題を調査・検討する2021年3月末までに、「利用者」から「パートナー」「応援団」へと結び付きを強めることだ。准組合員は、総会への議決権などJA経営に直接参加する「共益権」はないが、さまざまな機会を捉え、参加・参画を促そう。支店の協同活動、総合ポイント制の活用、農業祭、食農教育、家庭菜園指導、健康講座など日頃の交流が理解と関係を深める。自己改革の進捗を政府から問われたときに、全ての組合員が「わがJA」と胸を張れるようにしたい。

<合理的な農業交付金>
PS(2017年9月15日追加):*17に、①主食用米以外の米作りを進めて水田の生産機能を維持するのは、食料自給率向上と食料安全保障に寄与する ②農水省は2018年度農林水産予算で飼料米助成や産地交付金など水田活用の直接支払交付金として3,304億円を要求した ③財務省や一部マスコミなどからは「財政負担が大きい」と疑問視する意見が出ている ④水田活用交付金は自給率向上の“要石”だ 等が書かれている。
 しかし、このうち①④は、転作するのに水田と米以外の選択肢を持たず、本来なら他の付加価値の高い作物を作ることができる場所で水田を維持するために、②のように膨大な予算を要求していることが問題なのである。つまり、別の不足している付加価値の高い作物を作って合理的な経営をすれば、国からの補助金はいらず、他産業はそうやって利益を出しているのだ。そのため、③のように、財務省が財政支出の負担が大きいというのは当たり前で、国民負担を増やさずに教育や福祉を充実させるには、一人前の生産年齢人口の大人には原則としてだらだらと補助金を出さずに自立してもらうしかない。ただ、農林漁業の場合は、環境や食糧安全保障にも寄与しているため、環境税その他から貢献度に見合った補助金を出すのは合理的である。

*17:https://www.agrinews.co.jp/p41901.html (日本農業新聞論説 2017年9月14日) 水田活用交付金 自給率向上の“要石”だ
 米価を上げるのに税金を投入するのは問題だという意見をしばしば聞く。それは皮相的な見方だ。主食用米以外への作物転換で需要に見合った米作りを進め、併せて水田の生産機能を維持するのは、食料自給率向上と食料安全保障に寄与する。農水省は2018年度農林水産予算で飼料米助成や産地交付金など水田活用の直接支払交付金として3304億円を要求した。この点に関し財務省や一部マスコミなどから「財政負担が大きい」と疑問視する意見が出ている。米価にようやく上向き傾向が見られるだけに、転作予算を“影の米価維持対策”に見立てて、批判を強める気配が感じられる。年末までの予算編成過程では、総額や助成単価の水準を巡り、財務省と農水省の厳しい綱引きが想定される。水田面積243万ヘクタールは全耕地面積447万ヘクタールの5割強に相当する。農地面積が減少する中、この貴重な生産機能を将来にわたって維持することは、脆弱(ぜいじゃく)化するわが国の食料安全保障上極めて重要である。毎年8万トンに及ぶ米の需要減が今後も見込まれる中、〈生産調整の強化↓需給緩和・米価下落↓耕作放棄地の拡大↓食料供給力の低下〉の悪循環を食い止めなければならない。最終的には国民・消費者の食を脅かす事態となる。15年度からの新しい食料・農業・農村基本計画を決定したのは安倍内閣であり、食料自給率の引き上げ目標を民主党政権が設定した50%(カロリーベース)から45%に下げた。現実的な目標に修正し、向上を目指すというのが理由だった。しかし、自給率は16年に1ポイント下落し38%にまで落ち込んだ。この目標設定に関わった食料・農業・農村政策審議会の中嶋康博会長は本紙のインタビューで「自給率が上がる姿が見えてこない。ほぼ全ての農産物が自給率を下げる要因になっている」と厳しい認識を示した。政府・与党はこの事実を重く受け止めなければならない。産地交付金や飼料米助成は、主食用米以外に作付け転換することで、需要に応じた米作りによる安定供給と水田機能の維持という二つの目標を実現する政策である。財政負担が小さくないのは事実だが、現状ではこれに代わる政策展開は見いだせない。斎藤健農相の肝いりで動きだす米の輸出拡大プロジェクトは、19年で米加工品を含めて10万トンという量である。これさえ実現は簡単なことではない。納税者の理解を得ながら、農家が主食用米以外を選択できる環境を整えるしかない。水田という持続可能性の高い生産装置を守ることは、食料自給率の向上と併せ、国土の保全や災害時の洪水防止といった多面的機能の発揮にもつながる。食料自給率低下を機に、審議会はわが国の食料安全保障の在り方を見詰め直し、危うい現状を発信し、広く国民理解を得る取り組みをしてはどうか。

| 農林漁業::2015.10~ | 07:39 PM | comments (x) | trackback (x) |
2017.5.1 農業のイノベーションと労働力について (2017年5月2、5、7、9、11、12日追加)
   
 日本における     耕地面積の     日本農業の課題    田畑の区割り
大規模農家の比率    規模別農家数

(図の説明:一番左と左から2番目のグラフのように、日本の農家は一戸当たりの耕地面積が小さくて大型機械が入りにくいため、これが穀倉地帯での生産性や農家所得を下げる原因となっている。そのため、右から2番目の図のように、農業の就業人口が減るのを機会に耕地をまとめ区割りを大きくして大型の農業機械が入りやすいようにすると、すべての問題が解決する。その方法として、①農業生産法人の設立 ②パートナーシップ ③集落営農 等が考えられるわけだ)

(1)JAの組織改革について
1)JAさがの分社化戦略
 JAさがは、*1-1のように、持株会社2社を年度内に新設し、農産物加工等のグループ会社15社のうち9社を傘下に置くそうで、進んだ組織になる。また、総務・経理などの業務を一元化し、人件費削減や商品開発強化に繋げるのなら、総務・経理を独立した会社にして、公認会計士・税理士・社会保険労務士・ITの専門家などに緊密なアドバイスを受けながら、希望する農家の会計・税務を受託したり、繁忙期に人材を派遣したりすることも可能だ。そうすると、総務・経理部門は単なるコストセンターではなく、収益獲得能力も持つことになる。

 また、持株会社の下で子会社として独立させると、*1-1に書かれているとおり、給与体系や規定を違えることも可能だ。本社から子会社に異動させられる職員もいるが、子会社の方が本社より成長した会社もあり、例えばNTTは本体より子会社であるNTTドコモやNTTコミュニケーションの方が成長会社になった。

 なお、外部出資者がいる会社は100%子会社ではないので、現在は連結納税の対象にならないが、その外部出資者との間に販売協力や技術協力があるケースもあるため、節税のためだけに必ず100%子会社にしなければならないということはない。

2)農協への国の“経営指導”
 私は、*1-2のうち、農協の買い取り販売拡大や生産資材価格の引下げなど、国が民間経営の箸の上げ下ろしまで指導するのはいかがなものかと思う。何故なら、国の“有識者会議”は、地域によって異なる農業の状況を分析し、理解した上で解決策を提示しているわけではないからだ。また、需要と供給に応じて価格は決まるため、①どれだけの分量を ②どういう形で ③誰に ④いくらで販売するか は、生産者や関連事業体の経営意思決定によるものであり、統制社会でなければ自由であるべきだからである。

 さらに、生産資材も、農協から化学肥料を買わなくても他から買うこともでき、耕畜連携すれば安い価格で有機肥料を手に入れることも可能であるため、そういう状況の中でどういう意思決定をするかは、農家や地域の工夫次第なのだ。また、事前契約に基づいて確実な出荷を行うなど、国が考えるよりも先を行く工夫も多いため、国は民間の工夫を邪魔しないように気を付けながらサポートすべきである。

 なお、近年まで日本の農業は輸出を眼中に入れていなかったが、*4-1のように、輸出し始めるとその成長率は高い。しかし、農産物を輸出するにあたっての品種の保護は、*4-3のように始まったばかりで、特許権を持てるような優良品種も誰でも栽培できる。しかし、穀物や種のある果物を生で輸出すれば、特許権があっても保護には限界があるため、いま出盛りの南米の葡萄が比較的安価で味もよく種のない品種であることに、私は感心している。また、*4-2のように、加工して出荷する方法もあるだろう。

(2)米作を優遇する農業政策はやめるべきであること
1)二毛作農家の不利益
 「我が国は、米が主食」と言う人が多いが、米だけで身体を維持する栄養素を賄えるわけではない。そのため、炭水化物・脂肪・糖などの取りすぎに注意しながら栄養バランスのよい食事をするのが近年の常識であり、主食・副食の区別はなくなったと考えるべきだ。そこで、農家は地域の気候にあった多様な作物を作ることが、食料自給率を上げるために必要不可欠であるにもかかわらず、需要が減った米に固執していれば米が余って米価が下がるのは必然である。

 しかし政府は、*1-3のように、2017年度から飼料用米などの“戦略作物”への助成を優先し、二毛作の助成金は産地交付金に組み込まれて8割になり、二毛作を行っている農家の所得が減る恐れがあるとして、二毛作が盛んな西南暖地の関係者が心配しているそうだ。日本中で耕作放棄地が増えている中、西南暖地は二毛作により100%を超える耕地利用率を誇って食料自給率や農業に貢献しているのだから、褒められることはあっても飼料用米より不利な扱いを受ける理由はないだろう。

 さらに、“戦略作物”とされた飼料用米は、米作用の機械しか持っていない兼業農家の要請で始まったもので、家畜の飼料としては米が最も栄養価が高くて安価なわけではないため、専業農家が作る他の作物への助成を減らしてまで助成すべきものではない。にもかかわらず、自給率の低い麦や大豆への助成を減らして、飼料用米への助成を増やす農政は間違っている。

2)大豆の収量低迷


  2017.4.22佐賀新聞(*1-4)    ブラジルの大豆栽培     北海道の栽培

 佐賀県が転作の基幹作物としている大豆の収量は、*1-4のように低迷しているそうで、がっかりだ。何故なら、私が蛋白質が豊富で需要の多い大豆に転作しようと呼びかけて、2005~2010年頃には、日本一の収量を誇っていたからである。

 大豆不作の理由は、①播種期の豪雨 ②記録的な猛暑による生育不良 ③生産の大規模化で農地管理が行き届かなくなったこと などが挙げられており、佐賀県農産課は「④高温乾燥による生育不良も響いた」としているが、上の写真の北海道、ブラジルの大豆畑は佐賀県の大豆畑よりずっと大規模で、機械化により生産性も高いため、①~④は解決可能であり、文明国で口にすべき理由ではないだろう。

 なお、遺伝子組み換えでない国産大豆は、安全性の観点から需要が多いため、農地管理や機械化、品種改良などで効率的な収量アップに繋げて欲しいが、安全性が高くても収穫に苦労の多い遺伝子組み換えでない国産大豆を生産し続けられるためには、*2-4のように、遺伝子組み換え(GM)食品の混入割合を欧州連合(EU)同様、加工食品まで全て表示を義務付け、少しくらい高くても消費者が選択できるようにすることが必要不可欠であり、何でも規制緩和しさえすればよいわけではない。

(3)生物由来の肥料と病中害の抑制
 *2-1のように、熊本県阿蘇地域の野草に病害抑制効果のある拮抗菌が含まれ、病害抑制効果のあることが佐賀大学の研究で分かり、阿蘇地域世界農業遺産推進協会が野草の利用促進を強化しており、農家も活用に意欲的だそうだ。

 確かに野草は強いため、このほかにも有効な物質を含んでいたり、有益な微生物が繁殖したりするのは想像に難くなく、生物由来の資源で安価に施肥と病気の抑制ができるのは素晴らしい。

(4)資源として利用されていなかったものを資源化する

 
   世界の竹生育地  日本の都道府県別森林面積   竹林  スペイン製手袋(山羊皮)

 日本で竹が繁茂するのは上のように暖かい地域で、森林を侵食するため邪魔者とされることが多かったが、*2-2のように、放置竹林を資源として活用する方法が開発され、①竹の繊維を使ったプラスチック材料 ②タケノコの観光農園 ③竹蒸気抽出液 等ができるようになった。

 また、*2-3のように、鹿は、繁殖しすぎて田畑を荒らすようになったため、害獣として頭数管理をしているが、食肉処理後の鹿皮や角を使い、ブックカバーやキーホルダーなどの雑貨作りが挑戦されているそうだ。しかし、まだ余った鹿皮の活用程度のものなので、スペインやフランスのデザイナーを使えば、牛皮よりも薄くて軽く柔らかい高級鹿皮製品ができると思われる。

(5)他国の生産方法を参照する
 
スペインのオリーブ畑   同枇杷畑   同イベリコ豚の飼育風景   同施設園芸

1)ハイテク化
 九州は、*3-1のように、人口・面積ともオランダと同程度だが、オランダの農作物輸出量は米国に次いで世界2位だそうだ。私は、植物工場で作られたような形だけで栄養価の低い野菜を食べるのは勧めないが、①農業のハイテク化 ②農地の大規模化 は必要だろう。作物の集約化は、連作被害もあるので状況によると考える。

 また、*3-2のように、オランダの施設園芸の生産性は日本の6倍もあるそうで、植物生理学からトマト栽培のLEDの青と赤の最適比率を調べており、エペ・フーベリンク准教授は、大分県で稼働しているパプリカのガラスハウスについて、「モダンだったが、収穫量はオランダの半分。オランダのハウスをただ日本に移設するだけでは不十分で、設置する場所の地形、気候などに適合した温室に改良することが必要だ」と指摘したそうだ。通気口からの病害虫の侵入を防ぐためには、通気口に換気扇につけるようなフィルターをつければよいだろう。
 
 さらに、*3-3のように、九重町ではパプリカの栽培に温泉熱も利用しており、地中熱や温泉熱の利用も可能であるため、この辺はエンジニアの出番だ。

 なお、スペインもEUでは農産物の輸出が多い国で、スーパーに入るとオリーブオイルは5L単位で売られ、果物も安くて豊富であり、イベリコ豚は美味しく、全体として豊かさを感じた。また、*3-4のように、スペイン国王フェリペ6世が来日され、日本との関係を強化することになったため、日本の農業者もヨーロッパの農業を視察に行き、オランダ・スペインの農業や農産品輸出のやり方を参考にするのがよいと考える。

2)労働力
 日本では、農業の話をすると、必ず農業従事者の高齢化と後継者難がネックだと言われるが、*5-1のように、農山漁村に移住してみたいとする都市住民の割合は既に3割を超え、自然環境に恵まれ、子育てに適しているという理由で、田園回帰の意向が広がっている。

 ただし、これらの若者は、農村の封建的・保守的な文化が好きなのではなく、豊かな自然や食を評価しているのであるため、農村は、封建性・保守性をなくしながら魅力ある仕事を創れば、若者の転出を減らし、転入を増やして、農業の後継者もできることになる。

 さらに、*5-2のように、自動車工場では既に外国人が貴重な戦力になっており、和食居酒屋でも外国人が活躍しているにもかかわらず、日本はまだ外国人の単純労働者を技能実習生としてしか受け入れていない。そのため、日本政府は、アメリカやイギリスを批判する前に、自国の外国人労働者の受入態勢を整え、労働力が足りない分野に配置できるようにすべきだ。

<農業政策とJA組織改革>
*1-1:http://qbiz.jp/article/106852/1/
(西日本新聞 2017年4月4日) JAさが、持ち株会社設立 地域農協初 年度内に9社傘下に
 佐賀県農業協同組合(JAさが、金原寿秀組合長)は3日、持ち株会社2社を本年度内に新設し、農産物加工などのグループ会社15社のうち9社を傘下に置く再編計画を明らかにした。総務や経理などの業務を一元化して効率化し、人件費削減や商品開発強化につなげる。JAさがによると、地域農協による持ち株会社設立は全国初。再編計画は3月27日の臨時総代会で決定した。当初は合併を検討したが、給与体系や規定が異なり調整に時間がかかるため持ち株会社化を選択した。新設する持ち株会社は「アグリ・生活関連」と「食品加工関連」。それぞれ、自動車販売のJAオート佐賀や葬祭事業のJAセレモニーさがなど6社▽JAさが富士町加工食品やJAフーズさがなど3社−を傘下とする。外部の出資者がいるグループ会社は100%の出資を目指し、持ち株会社への編入を検討する。原寿男常務理事は「重複する業務を見直し、生産拡大や農業者の所得増大につなげたい」と話した。

*1-2:https://www.agrinews.co.jp/p40563.html (日本農業新聞 2017年4月7日) 役割明示 販売、購買で工程表 自己改革行動計画 全農・JA 
 JA全中は6日、昨秋決めた自己改革の方針「『魅力増す農業・農村』の実現に向けたJAグループの取り組みと提案」に基づく行動計画をまとめた。JA全農の事業改革方針を反映させ、直接・買い取り販売の拡大や生産資材価格の引き下げなど重点的な取り組みについてJA段階までの具体策や工程表を盛り込んだ。全農だけでなく、JAグループ一体で農業所得の増大に向けた改革を実行していく。「重点事項等具体策」として、6日の理事会で確認した。今後、各JAでも工程表や行動計画に反映させる。奥野長衛会長は同日の会見で「農家の理解がないと前に進まない。(全農の改革方針を)現場にどういう形で下ろし、どう実践していくかが、これから求められる」と述べた。米の買い取り販売は、全農やJAが実需者への販売推進を踏まえて生産者にニーズを伝え、取り扱い条件を提案。全農は、事前契約の実施時期を生産する前年に早める。JAは事前契約に基づく確実な出荷へ、生産者との出荷契約の履行を徹底する。いずれも2017年度に始める。青果は全農とJAが連携し、販売力があり戦略を共有できるパートナー市場を選別。卸売市場を通じた販売を従来の無条件委託販売から、取引先を明確にして数量や価格を事前に決める予約相対販売に転換する。輸出はグループ全体で19年度までに金額で340億円超を目指す。全農とJAが協力しリレー出荷体制を整備。17年度はイチゴや柿で取り組む。肥料の共同購入はグループ全体で、事前予約注文を基に入札などで最も有利な価格や購入先を決める方式に転換、価格を引き下げる。全農とJAは18年の春肥からの転換を生産者に周知する。JAは銘柄集約した集中購買品目の事前予約注文をまとめ、全農に積み上げる。農薬は、品目を集約し価格を引き下げる。全農が水稲除草剤を中心に絞り込んだ重点品目を、JAは18年用の防除暦や注文書に掲載し、推進する。17年度から始める。資材価格の「見える化」も進める。17年度中にJAは資材価格や商品特性などをホームページ(HP)などに掲載し分かりやすい価格体系に見直す。全中はこうしたJAのHPを全中のHPにリンクさせ、グループ全体の環境を整備する。

*1-3:https://www.agrinews.co.jp/p40604.html?page=1 (日本農業新聞 2017年4月13日) 二毛作助成目減り 困惑 西南暖地には打撃 補正予算で財源確保を
 水田のフル活用を支える二毛作助成の単価が目減りし、所得が減る恐れがあるとして、農家から不安の声が相次いでいる。2017年度から同助成が産地交付金に組み込まれ、配分が8割にとどまる恐れがあるためだ。米・麦の二毛作が最も盛んな福岡県では、農家の手取りが10アール当たり約3000円減るとの試算もある。同県糸島市で裏作麦を30ヘクタール生産する元全国稲作経営者会議会長の井田磯弘さん(79)は「米価が安定せず、ただでさえ利益が薄い。助成が減れば土地利用型農業は維持できない」と困惑する。農水省は16年度まで、水田活用の直接支払交付金で二毛作助成(10アール1万5000円)の枠を確保していた。これに財務省は昨年、同助成について「取り組みはほぼ定着している」として全廃を要求。農水省は17年度、同助成を産地交付金に組み込んだ。産地交付金は、当初分として8割を配分し、残り2割はいったん国が留保し、深掘りへの対応や飼料用米などの戦略作物への助成を優先して10月に配分する方式だ。飼料用米などの生産が全国的に増えれば、追加配分で二毛作助成に充てる額が減ることになる。福岡県の関係者は、二毛作助成に充てる額が県内で最大7.4億円減る恐れがあると試算。単価は従来に比べ10アール3000円ほど減って1万2000円ほどになるとみる。農水省によると、16年度は留保分の全てを戦略作物助成に使っており、追加配分は「全国的な飼料用米の増産傾向を考えると期待できない」(JA福岡中央会)との見方が強い。井田さんの経営では、仮に産地交付金の留保分の追加払いがない場合、所得が100万円近く減る計算で、大規模な担い手ほど打撃も大きい。地域農業全体にも影響が心配され、補正予算で財源を確保するよう求める。産地交付金で留保した2割分について、農水省は「全て戦略作物助成に回るとは限らない」と説明。仮に産地交付金の追加配分がなかった場合も「福岡県も含め深掘りを達成した地域の戦略作物助成に回るため、現場に損はない」(穀物課)と説明する。ただ、福岡中央会や県などは「二毛作が盛んな西南暖地には打撃になる」として、地域特性を踏まえた目配りを求める。

*1-4:http://www.saga-s.co.jp/column/economy/22901/423685 (佐賀新聞 2017年4月22日) 大豆収量低迷 大規模化、管理行き届かず、16年産反収、ピーク時の半分
 佐賀県が転作の基幹作物とする大豆の収量が低迷している。2016年産の県産大豆の10アール当たり収量(反収)は148キロで、ピーク時の02年産(293キロ)から半減。かつては日本一を争ってきたものの、減少に歯止めが掛からず、全国14位に落ち込んだ。集中豪雨や記録的な猛暑による生育不良が主な要因だが、生産の大規模化で農地管理が行き届かなくなっていることも影響している。「播種(種まき)は時間との戦いだが、作付面積が広く、雨のたびにさらにずれ込んでいく」。小城市芦刈町の7~11ヘクタールほどの農地で大豆を栽培する平野裕さん(45)は頭を抱える。播種の適期は7月上旬の10日間ほど。梅雨の貴重な晴れ間を生かしての作業となるが、最近はゲリラ豪雨などの天候不順も重なり、「作業は年々難しくなっている」と平野さん。以前よりも収量が落ち込んでいるという。昨年は7月下旬から8月にかけて、最高気温35度以上の猛暑日が続いた。梅雨明け後に終日雨が降ったのは1日だけで、県農産課は「高温乾燥による生育不良も響いた」と分析する。県産大豆の反収は、07年産から13年産まで200キロ台で推移。08年産からは4年連続で全国トップになった。水田を水稲作と麦・大豆の転作作物で交互に利用するブロックローテーション(田畑輪換方式)で連作障害を抑えてきたが、11年産から6年連続で前年実績を割り込み、この2年間は全国平均も下回っている。反収減の背景には、生産者の高齢化や担い手不足による農地の規模拡大もある。「作業効率を優先せざるを得ないため、排水対策などの技術面や農地の管理が行き届かない生産者が増えている」と県農産課。県やJAは昨年から専門職員による巡回指導を強化、土壌の改良や播種作業を容易にする重機の導入も推進している。遺伝子組み換え作物など外国産に対する安全性への不安などから、国産大豆の需要は高い。県産は豆腐の原料として全国トップクラスの評価も受けており、県農産課の永渕和浩課長は「農地管理を徹底することで天候の影響もある程度低減できる。収量アップにつながる体制をつくっていきたい」と話している。

<技術革新と資源化>
*2-1:https://www.agrinews.co.jp/p40077.html (日本農業新聞 2017年2月5日) 野草から拮抗菌大量に 病害抑制 利用を促進 世界農業遺産の熊本・阿蘇
 世界農業遺産に認定された熊本県阿蘇地域の野草に、病害抑制効果がある大量の拮抗(きっこう)菌が含まれ、病害抑制効果があることが佐賀大学の研究で分かった。野ざらしにした野草に多く、野草をマルチに使ったハウスにも高密度に拮抗菌が生息していた。阿蘇地域世界農業遺産推進協会はその成果を生かし、野草の利用促進活動を強化した。農家も活用に意欲的だ。阿蘇には約2万2000ヘクタールの草原があり、希少植物が生息する生物多様性を維持している。県やJA、関係市町村などで組織した協議会が国連食糧農業機関(FAO)に申請し2013年、「阿蘇の草原の維持と持続的農業」が世界農業遺産に認定された。刈った野草は牛の餌や堆肥に利用する。同協会は、農家の間で「野草堆肥を使うと作物に病気が出ない」と言われていたことを確かめるため、佐賀大学農学部の染谷孝教授に研究を委託した。すると野外に積んだ野草や野草ロールから、病原菌を抑える拮抗菌の放線菌とバチルス属菌が大量に見つかり、野草をマルチし5年以上連作したトマトハウスにも高密度に生息していた。野草ロールは堆肥ではないが、堆肥と同等以上の細菌がおり、優れた微生物資材であることが分かった。染谷教授は「屋内に保管したものは良い菌がいなかった。雨ざらしにするのがいいようだ」と話す。同協会は世界遺産を次世代に継承するアクションプランの柱の一つに、耕種農家による野草利用の新たなシステムづくりを据える。採草と堆肥化に労力がかかる、野草価格が高いといった課題を解決するため、草原再生オペレーター組合を支援し採草面積を2倍以上に増やして、野草のストックヤードの建設や堆肥センターの拡充などで低コスト化と利用促進を目指す。草原再生オペレーター組合で採草に活躍しつつ、トマト栽培に利用する農家の竹辺大作さん(39)は「野草はトマトの病害予防に役立っている手応えがある。草原を守るため、採草活動に力を入れたい」と言う。

*2-2:http://qbiz.jp/article/105433/1/ (西日本新聞 2017年3月19日) 放置竹林を資源に活用する方策とは? 福岡で活動する産学の識者に聞いた
 里山を荒らす「厄介もの」となっている福岡県久留米市高良山の放置竹林を、肥料や手入れ不要で多様な用途を持つバイオマス(生物資源)として活用しようと、NPO法人「筑後川流域連携倶楽部」による「竹林と経済の両立塾」が始まった。竹の持つ可能性について、事務局の山村公人さん(50)と、竹繊維を使ったプラスチック材料を開発した九州工業大大学院生命体工学研究科(北九州市)の西田治男教授(61)=高分子化学=に聞いた。
−竹繊維プラスチック材料の開発の経緯は。
 西田「私はもともとバイオマスを原料とするバイオプラスチックの研究者。福岡県八女市は竹繊維とトウモロコシを原料にしたバイオプラスチックの食器を小中学校の給食に使用しており、私に『食器の強度を高めてほしい』と要望してきたのがきっかけとなった。普通のプラスチックに竹繊維を混ぜた方が強度が増すのではと調べたところ、竹繊維にはおもしろい性質があることに気付いた。微粉末化した竹繊維をプラスチックに30〜50%配合すると、曲げ強度が倍増するほか、熱による膨張も10分の1程度に抑えられる。静電気を帯びにくい性質もあり、非常に優れた工業素材となる」
−どのような手法で竹を繊維に。
 西田「これまで竹は粉砕が難しく、工業利用に適していなかった。そこで、約200度の高温水蒸気を当てるだけで細かく粉砕し、繊維を取り出す方法を新たに開発した。八女市と九州工業大、企業が連携して設立したバンブーテクノ(同市立花町)では、市内の竹林から回収した竹を竹微粉末に加工。竹粉とプラスチック複合材を使ったコンテナや溝ふたなどを製品化し販売している」
−「両立塾」でバンブーテクノを見学したが、どのような可能性を感じたか。
 山村「200度程度の水蒸気があれば竹微粉末ができると聞き、町中の小さな工場から水蒸気を買い、処理機を設置して加工できるのではないかと感じた。夢みたいな話だが、近所の竹を運んできて処理する小規模なプラントも可能では」
 西田「一から水蒸気を作り出すとなると、かなりのコストになる。現在の竹微粉末の価格も水蒸気のコストがかなりの部分を占める。これが大規模な工場やごみ処理場などの廃熱が利用できるようになると一気に値段を下げることができるようになるだろう」
−竹粉末の工業利用の課題は。
 西田「現在の竹微粉末生産量は月約1トン。工業製品を一つ作るには最低でも月100トンの年間1200トンが必要で、まずはこの量を生産できる態勢を目指すこと。製品化には、竹の伐採から粉末化、プラと混ぜ合わせるコンパウンティングという工程が必要。安定した製品供給のためには2社以上の企業での生産が求められる」
 山村「バンブーテクノがすでに商品化している竹プラスチックのコンテナを、環境問題に敏感な生活協同組合などの買い物かごや配達用のコンテナに取り入れてもらえることができるのではないか。最初から大きな量を目指すのではなく、小さなことから実績を積み上げていけるのでは」
−手応えをどう感じたか。
 山村「タケノコの観光農園ともに竹プラスチックも十分有望な事業になると実感した。東京五輪に向け、環境に優しい商品として売り出していけるのでは。みんなで知恵を出し合い、何が商品化できるのか考えていきたい。そのためのマーケティング会社の設立も必要になってくる」
−今後の取り組みは。
 山村「来年度は林野庁の複数の補助事業を申請し、官民挙げての取り組みとしていきたい。放置竹林の問題は久留米だけに限らず九州全体の問題。地元住民と里山が共生する仕組みを考えなければならない。私自身も広川町で観光タケノコ園を経営する夢を持っており、伐採した竹も利用していきたい」
 西田「竹微粉末の製造工程の副産物で竹蒸気抽出液ができる。いわゆる竹酢液だが、200度の低温で処理するため有害なタールが含まれておらず、皮膚につけても安全で入浴剤としても利用できる。竹微粉末とともに、魅力ある素材としてアピールしていきたい」

*2-3:https://www.agrinews.co.jp/p40574.html (日本農業新聞 2017年4月9日) 鹿皮や角で雑貨作り 食害 知ってほしい 静岡県伊豆市 猪股学さん
 静岡県伊豆市の地域おこし協力隊、猪股学さん(34)は、食肉処理後の鹿の皮や角を使い、ブックカバーやキーホルダーなどの雑貨作りに挑戦している。閉園した幼稚園をアトリエとして、元デザイナーのキャリアを生かしながら商品デザインや縫製をして販売する。猪股さんは「商品を通じて伊豆の鹿被害について考えてほしい」と訴える。猪股さんは山梨県出身で、元々ジュエリーデザイナーとして甲府市で働いていた。その頃に、直営の鹿肉加工施設から出る皮や角の処理に悩んでいた伊豆市が、これらを有効活用するための地域おこし協力隊を募集。デザイナーとしてのキャリアが生かせると考えて応募し、2016年から伊豆市に移住して活動を始めた。使うのは市内で捕獲され、食肉処理をした後に余った鹿の皮や角。業者になめし加工してもらい、裁断や縫製して商品にする。野生の鹿のため、皮にはダニがかんだ傷やけがによる染みもある。猪股さんは「これも鹿が生きた証し。個性として楽しんでもらいたい」と話す。ブックカバーや名刺入れ、ピアスやネックレスなど現在までに10種類ほどの商品を開発。昨秋から「mori―kara」のブランド名で販売を始め、現在は市内のセレクトショップやイベントなどで販売している。今後は首都圏や静岡市内などに販路を広げる計画だ。猪股さんは「伊豆は海のイメージが強いが、鹿による食害で周辺農家は悩んでいる。商品を通して、実情を伝えていく」と意気込む。

*2-4:https://www.agrinews.co.jp/p40698.html (日本農業新聞 2017年4月25日) GM表示見直し着手 混入割合引き下げ焦点 消費者庁
 消費者庁は、遺伝子組み換え(GM)食品の表示制度の在り方で有識者による検討会を立ち上げ、表示対象の拡大を視野に議論に着手する。現行制度は2001年4月にスタートし、この間の分析技術の精度向上や、GM作物の栽培拡大・流通の変化などを踏まえる。表示義務がない混入割合は、現行は5%未満と他国に比べて緩く、どこまで狭められるかが大きな焦点だ。より詳しい表示ができれば、消費者の商品選びに役立ち、国産農産物に追い風になるとみられる。初会合を26日に開き、17年度内に取りまとめる予定だ。
●厳格化で国産追い風
 現行制度は大豆、トウモロコシ、ジャガイモ、ナタネ、綿実、アルファルファ、テンサイ、パパイアの8種類の農産物に表示を義務付けている。それらを原材料とする豆腐、納豆、みそ、スナック菓子など33食品も表示の対象。ただ、GM作物の使用重量が小さく、原材料に占める割合が上位4位以下や5%未満であれば、表示する義務はない。5%未満で線引きすることには、当時から消費者団体などから緩いとの指摘があったが、「意図せざる混入」として認められた。一方、欧州連合(EU)ではGM作物を使った加工食品の全てを対象に、表示を原則義務付けている。「意図せざる混入」が許されるのは0.9%未満まで。韓国は3%未満で、日本よりは厳しい。しょうゆ、油、でんぷんから加工される果糖ブドウ糖液糖などは、現在は任意表示にとどまる。加工工程でGM作物のDNAやタンパク質が分解されるなどして検出できないという理由だ。それらの原料の大豆、ナタネ、トウモロコシは、米国やカナダなど主産国でGM比率が9割台に達しており、義務表示を求める声が消費者団体などに強い。消費者庁は「必要とあれば、検討会の中で議論する」との構え。検討を左右するのは、技術的な課題に加え、表示拡大に対する各業界、団体の主張だ。消費者団体の関係者は「消費者が情報を手に入れる幅が広がる」と期待する声が上がる。一方で「分析による設備投資などで加工業者のコストが膨らみ、商品価格に転嫁される恐れもある」と消費者の負担増加を懸念する見方もある。加工業からは冷静な受け止めも聞かれる。関係者は、大きな影響はないと予測し、「多くの業者が既に分析技術を高めている。『意図せざる混入』を引き下げられても対応できるだろう」と指摘する。国内農家からは、消費者がGM食品を改めて考えるきっかけになると期待する声が上がる。北海道恵庭市の大豆生産者は「消費者の食への意識が高まり、厳しい基準で生産された国産大豆に関心を持ってほしい」と話す。世界のGM作物の作付面積は、1996年に170万ヘクタールだったが、現行の表示制度ができた01年には5260万ヘクタール、15年で1億7970万ヘクタールと急増している。26日の検討会では、消費者庁がGM表示に関する海外の状況と消費者アンケートの結果を報告し、今後の検討会の進め方などを議論する予定だ。

<他国の生産方法参照>
*3-1:http://qbiz.jp/article/102549/1/ (西日本新聞 2017年1月30日) 【九州農業の生産額は全国の2割】成長のヒントはある国に…
 「九州は1割経済」と言われるが、「2割経済」を誇る産業もある。農業だ。
■生産額は1・6兆円
 日本政策投資銀行九州支店のリポートによると、生産額は1・6兆円で、全国8・4兆円の19%を占める(2011年時点)。九州は「豊かな自然と温暖な気候を生かして農業、特に野菜・果物・畜産が盛ん」とした上で、「日本における農産物供給基地としての役割を担っている」と位置づけた。ただ、成長を遂げるには、ある国のノウハウを学ぶ必要があることを提案している。それは、オランダだ。人口、面積ともに九州と同程度のオランダ。それなのに、農作物輸出量が米国に次いで世界第2位となっている。
■ハイテク化する農業
 政投銀のリポートのタイトルは「九州における植物工場などハイテク農業の成長産業化に向けた課題と展望」。「農業先進国からハイテク化による競争力強化の手法を学んではいかがだろうか」と呼びかけ、オランダの事例を紹介している。高い国際競争力の理由について、リポートは「環境制御型施設園芸(太陽光型植物工場)に関する技術が発達していることが主因」と分析する。例えば、トマト。「面積当たりで3〜5倍、労働時間当たりで8倍も日本より生産性が高い」という。さらに「農地の大規模化」や「作物の集約化」もオランダ農業の強みらしい。韓国の成功事例も紹介していたが、背景にはやはりオランダが存在していた。植物工場で栽培したパプリカを日本向けに大量に輸出しているが、技術の後ろ盾はオランダ農業だった。韓国は「技術やノウハウをオランダから丸ごと導入し、農業のハイテク化を推進した」というのだ。
■オランダ方式に鍵が
 九州農業も、着実な成長が読み取れる。農林水産省によると、15年の九州農業の生産額は1兆7541億円。全国(8兆8631億円)の19・8%で、リポートで報告された11年時点から、金額も割合も拡大している。ただ、喜んでばかりはいられない。リポートで生産額が1・6兆円と同規模の「鉄鋼」は、全国(18・2兆円)に占める割合が約9%にとどまっていた。つまり、農業は鉄鋼に比べると、まだまだ「分母」が小さいというわけだ。リポートでは、「国内の他地域と同様、農業従事者の高齢化や後継者難、国際競争力の弱さなど、農業に内在する課題は深刻」との指摘もあった。九州農業が、全国の農業生産額をけん引しながら「2割経済」をさらに突破できるか。オランダ方式にそのヒントがあるのかもしれない。

*3-2:http://qbiz.jp/article/108137/1/ (西日本新聞 2017年4月22日) 施設園芸オランダに学べ 生産性は日本の6倍も 最適な環境創出が鍵
 施設園芸先進国のオランダの手法を参考にして、農業の生産性を高めようと、農林水産省が施設園芸の支援に力を入れている。九州でもオランダの技術を導入した施設が稼働しているが、“本家”との違いはどうか。3月にオランダを訪れ、最先端の園芸技術を取材した。施設園芸分野で世界トップレベルの研究を誇るワーヘニンゲン大学。オランダ中部にあり、案内された研究用ガラスハウスに入ると、赤紫色の発光ダイオード(LED)がネオン街のように輝いていた。「トマト栽培にとってLEDの青と赤の比率はどの程度が理想かを調べている」。解説するのはエペ・フーベリンク准教授。植物生理学が専門だ。執筆を一部担当した書籍「トマト オランダの多収技術と理論」は日本語版も出ている。今年1月末から2月上旬にかけて来日し、農研機構の研究者と一緒に、複数の「次世代施設園芸拠点」を視察した。大分県九重町で昨年4月から稼働しているパプリカ生産のガラスハウス(栽培面積2・4ヘクタール)も視察先の一つだった。准教授は大分の施設について「モダンだったが、収穫量はオランダの半分。オランダのハウスをただ日本に移設するだけでは不十分」と指摘した。准教授によると、オランダのハウスは通気口が少ない。大分の施設も同じだったが、日本の気候だと通気口が不足して換気が十分にできていないという。「設置する場所の地形、気候などに適合した温室に改良することが必要」と准教授。大分の施設を運営するタカヒコアグロビジネスの松尾崇史専務は「通気口を増やすと病害虫侵入のリスクも高まる。どう対応するか研究中」と話す。農水省は「日本の環境に合わせる重要性は十分認識している」と受け止める。
   ■    ■
 農水省は2013〜16年度、民間が全国10カ所で手掛けた次世代施設園芸拠点の整備に対し、補助金を支出。各拠点はオランダ式の大規模ガラスハウスや、ハイテクによる環境制御の仕組みを導入。補助金総額は111億円に上る。「安倍氏もちょうど、このあたりに立ちました」。オランダ西部にあるバルスター社。3・4ヘクタールの広大なガラスハウス内で経営者のウィボ・バルスターさんは、14年3月に安倍晋三首相の視察を受け入れたことに触れ、中を案内した。肌寒い季節だったが、ハウス内は25度で、バルスターさんは半袖姿。天井までの高さは約6メートルで、見上げると、透明なガラスの向こうの青空が鮮やかだった。パプリカの収穫量は1平方メートル当たり年間で約40キロという。日本の6倍ほどで、バルスターさんは「うちはオランダの中でも生産性が高い」と胸を張る。オランダの園芸施設はビニールハウスでなく、ガラスハウスが一般的。日本より安価な天然ガスで沸かした湯を流すパイプをハウス内に張り巡らせて暖房を得ている。さらに気温、湿度、二酸化炭素濃度などが最適になるように、ハイテク機器などで制御しているのが特徴だ。バルスターさんは生産性が高い理由について「企業秘密」と詳しく説明してくれなかった。「立派なハウスを設けても、それを活用するための知識がなければ、利益は得られない。日本に対し協力したい」と話していた。

*3-3:http://qbiz.jp/article/105837/1/ (西日本新聞 2017年3月18日) 温泉熱でパプリカ栽培 九州最大、オランダの手法導入 九重町で建設業子会社
*写真:パプリカ生産のガラスハウス
 温泉熱と高度な環境制御技術を利用して、パプリカを生産する大規模園芸施設が大分県九重町で稼働している。施設の随所に、園芸先進国であるオランダの手法を導入。栽培面積は2・4ヘクタールで年間400トンの出荷を見込み、2億4千万円を売り上げる計画。大分県によると、パプリカ栽培施設としては九州最大。脱燃油とハイテクで、収益性の高い農業を目指しており、今後の成果が注目される。総合建設業「タカフジ」(大分市)の子会社「タカヒコアグロビジネス」(九重町)が経営。2・4ヘクタールの栽培室に加え、育苗室0・3ヘクタール、出荷センター、熱交換システムを備える。昨年4月から稼働を始めた。熱交換システムは、事業地内に湧き出る温泉の熱で、施設内を巡る循環水を加温する装置。タカフジが開発した。栽培室と育苗室には、循環水が流れる直径10センチほどの管が延べ数十キロにわたって血管のように張り巡らされている。管からの放熱で暖房装置の役目を果たし、冬でも室内の気温を20度前後で維持する。
   ■    ■
 栽培室と育苗室は、オランダで一般的なガラスハウス(高さ約7メートル)を採用。ビニールハウスよりも耐久性や採光性に優れているという。室内の気温、湿度、二酸化炭素(CO2)濃度、日射量、養液量は、パプリカの生育に最適であるよう、センサーや霧の噴射装置などで自動的に制御している。これもオランダ仕様だ。農林水産省が全国10カ所で整備を支援した次世代施設園芸拠点の一つ。温泉掘削費も含む総整備費約16億円のうち、約5億8千万円を農水省が補助した。
   ■    ■
 販売先は市場に頼らず、百貨店や生協、病院食業者などを独自で開拓。収穫は昨年7月末からで、周年安定供給を目指している。今のところ予定通りの生産という。暖房もこれまで、厳しい寒さがそれほどなく、温泉の熱で全て賄えており、重油の使用はゼロ。農水省が要件とする「化石燃料の使用量を5年後までにおおむね3割以上削減する」を楽にクリアしている状況だ。ただタカヒコアグロビジネスの松尾崇史専務は「パプリカの年間生産量はオランダは1平方メートル当たり40キロ以上だが、うちの当面の目標は16キロ。栽培技術向上に努め、オランダに追い付きたい」と話している。

*3-4:http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2017040601001699.html (東京新聞 2017年4月6日) 【政治】首相、スペイン国王と懇談 外交150年へ関係強化
 安倍晋三首相は6日、国賓として来日中のスペイン国王フェリペ6世夫妻と東京・元赤坂の迎賓館で懇談し、両国の外交関係樹立150周年に当たる来年に向け両国関係を強化する考えで一致した。首相は「世界平和と発展のため貢献していく大切なパートナーだ」と強調。国王は「国民同士の距離を縮めることも非常に重要だ」と応じた。首相と国王は懇談後、若者らが相手国で働きながら勉強できるワーキングホリデーなどに関する協力文書の交換式に立ち会った。その後、国王夫妻は首相夫妻が主催する夕食会にも出席。サッカーのスペイン1部リーグ、エイバルの乾貴士選手も参加した。

<農産品の輸出>
*4-1:https://www.agrinews.co.jp/p40078.html (日本農業新聞 2017年2月5日) 和牛輸出 アジア・欧州向け強化 対米は高関税が壁 全農グループ
 JA全農グループは和牛肉の輸出拡大を強化している。2020年度に500トンの目標を掲げ、5年間で約1.8倍に増やす考えだ。輸出が増えたことで、米国では日本産牛肉に設定している低関税枠(200トン)を超える情勢。枠を上回る輸出には高い関税が適用されるためこれまでの勢いを維持できなくなる可能性があり、アジアや欧州、中東への輸出を強めるなど攻勢をかける。全農は需要拡大が見込めるアジアや欧州への輸出に注力する。香港、シンガポールは現在も主要な輸出先になっているが、国内消費は飽和状態に近く、競合他社とのシェア争いをしているのが現状だ。そこで、タイやフィリピン、ベトナムといった、今後の経済成長が見込まれる新興国の高所得者向けの需要拡大を期待する。欧州では14年に牛肉の輸出が解禁され、和食人気、食の安全・安心志向を背景に潜在需要が高いとみる。和牛の食べ方などを通じた魅力発信を進め、市場開拓を狙う。全農は昨年、農林中央金庫と英国の食品卸を買収。現地の実需ニーズを見極めて直販体制を構築し、輸出を強めていく考えだ。中東も国内消費だけでなく、世界の観光客需要に期待する。一方、米国は現在、日本産の牛肉に200トンを上限とする低関税輸入枠を置く。枠内の関税は1キロ当たり4.4セント(約5円)だが、200トンを超えると26.4%の関税がかかる仕組みだ。日本全体の16年の対米輸出量は244トンで、200トンを超えた。全農グループの米国への輸出割合も高く、年間2割程度伸びていたが「高関税がかかると輸出の伸びは厳しく、様子見の状況」(全農畜産総合対策部)。トランプ米大統領の就任で、先行きも不透明だ。多様な部位の現地加工による商品化を通じた輸出拡大も目指す。輸出する牛肉はブロックのため、使い勝手が悪いケースもある。現地で食肉加工施設を設置し、カットやスライスして提供、多様な販売先を開拓する。全農は「拡大を達成するには、親日で食文化が近い台湾などの輸出解禁は不可欠」と強調する。

*4-2:https://www.agrinews.co.jp/p40037.html
(日本農業新聞 2017年1月31日) 加工用需要拡大へ 青森:桃 宮城:リンゴ
 果実の加工需要を掘り起こそうという動きが、ジュース以外でも広がっている。青森県のJА津軽みらいは、菓子や料理の材料として桃をピューレやシロップ漬け向けに出荷。2016年産の出荷量は約5トンで、当初の5倍に増えた。宮城県は、加工向けのリンゴ「サワールージュ」の菓子利用を推進。複数店舗の協力を得て1カ月間、同品種を使った菓子を販売し販路を開拓した。実需との連携が重要な鍵を握っている。
●ピューレ、シロップ漬けに
 JА津軽みらい管内では79人が約15ヘクタールで桃を栽培する。リンゴ農家に果樹の複合経営を促すため、桃を導入した。規格外品は、ピューレやシロップ漬けの製造を業者に委託し、ケーキやソフトクリームなどの原料として菓子店を中心に販売する。売り先の一つ、青森県土産販売(青森市)は、桃のピューレを年間約200キロ調達する。16年4月には「ピンクカレー」を商品化。11月末まで約2万個売れ、同社の主力商品となった。JAは県外にも販路を広げ、東京のジェラート店からピューレ約800キロ、ホテルからシロップ漬け約500キロの注文が来た。加工向けの農家手取り価格は10キロ約1000円。ピューレやシロップ漬けを始める前の11年の同約290円の3倍以上となった。JАもも生産協議会の会長を務め、平川市でリンゴ2・3ヘクタール、桃70アールを生産する木村俊雄さん(70)は「1次加工品の販売は所得確保につながる」と実感する。
●菓子利用や料理素材向け
 宮城県は、独自に育成したリンゴ「サワールージュ」を加工向け品種と位置付け、菓子のPRに力を入れる。13年度から毎年、10月の1カ月間、仙台市内の洋菓子店やホテルと協力し、同品種を使った菓子を販売する。16年度は9業者が参加。当初の3倍に拡大した。洋菓子店のガトーめぐろは同品種のアップルパイを販売。1カ月の期間中、1日20個を作り、全日完売した。同社の目黒栄治社長は「サワールージュは酸味が強く、果肉が硬いため煮崩れしにくい。今後も調達量を増やしたい」と評価する。県内では現在、同品種を約100人が1・5ヘクタールで生産する。菓子需要の拡大を背景に、栽培が始まった11年度当初の10アールから15倍に拡大し、16年度の出荷量は2トンとなった。県は「菓子需要を拡大していくには実需者との連携が欠かせない。今後も協力店を増やしたい」(農産園芸環境課)と展望する。
●「国産」「地元産」実需者にPRを
*果実のマーケティングに詳しい弘前大学の成田拓未准教授の話
 生鮮果実の消費量が減る中、業務用需要は果樹農家の所得を確保する上で重要な販路になる。国産果実は、菓子の付加価値を高めることにつながる。今後も加工向けの国産果実の需要は増えるだろう。産地は、洋菓子店など実需者に対し、国産や地元産をPRすれば新たな商機も出てくる。

*4-3:https://www.agrinews.co.jp/40720?page=2 (日本農業新聞 2017年4月27日) 海外で品種登録支援 無断栽培を防止 知財計画 政府方針
 政府は26日、農産物の輸出促進へ、海外での日本の農産物の品種登録への支援を強化する方針を明らかにした。品種登録によって国内の品種の育成者が種苗や収穫物を販売する権利を保護し、海外で無断栽培される事態を防ぐ。来月にも改訂する政府の知的財産推進計画に盛り込む。政府は同日に開いた知的財産戦略本部の会合で、同計画の素案を示した。柱の一つに「攻めの農林水産業・食料産業を支える知財活用・強化」を掲げ、農業分野での知的財産の活用に向けた施策を、従来の計画よりも大幅に拡充する。主にアジア向けに輸出が伸びているブドウ「シャインマスカット」は農研機構が開発したが、中国で品種登録をしなかったことから無断栽培が拡大。アジア各国で日本産と中国産が競合する懸念が指摘されている。イチゴやサクランボ、カーネーションなどでも無断栽培の事例が起きている。こうしたことから政府は、国内の育成者が海外で品種登録を出願する際の支援策を同計画に盛り込む方針だ。品種登録が迅速に進むよう、国内での品種登録の審査結果を海外の登録機関に無償で提供する取り組みや、品種登録後に無断栽培が発覚するなど権利が侵害された場合の支援策などを盛り込む。輸出促進では他に、地理的表示(GI)の海外での保護や、日本発の農業生産工程管理(GAP)認証の普及なども進める。湿度や土壌水分などさまざまな情報をセンサーで読み取り、温室を自動制御するなどICT(情報通信技術)の普及へ、国内でICTの標準的な規格を作るといった取り組みも盛り込む。同日の会合では委員から「農業でこれだけ具体的に明記したのは重要だ」と素案を評価する声や、日本の地名を冠した商品が海外で売られているとして、「現地の商標を取り消す費用の助成制度が必要だ」との声が上がるなどした。

<労働力>
*5-1:https://www.agrinews.co.jp/p40119.html (日本農業新聞 2017年2月10日) 都市住民 農村へ移住3割が関心 総務省調査
 総務省が9日公表した調査で、農山漁村に移住してみたいとする都市住民の割合が3割を超え、田園回帰の意向が広がっていることが明らかになった。移住したい理由には「気候や自然環境に恵まれている」が47%と最も多い。農山漁村地域が子育てに適しているとした割合は23%で、若い世代ほど高かった。同省の「田園回帰に関する調査研究会」に示した。東京都内や政令指定都市の20~64歳の3116人に1月にインターネット調査した。農山漁村への移住の意向は、「条件が合えば移住してみてもよい」(24%)、「いずれは移住したい」(5%)、「移住する予定がある」(1%)で合わせて3割に上った。20代(38%)、30代(36%)の割合が高く、男性の方が移住希望の割合が高かった。移住希望がある人に移住のタイミングを聞いたところ、「条件が整えばすぐにでも」が20%に上った。「自分または配偶者が退職したら」が23%だった。研究会委員を務める鳥取大学の筒井一伸准教授は「田園回帰の傾向が改めて把握できた。移住したい層が確認できたので、仕事の確保を中心にどういう条件を現場で組み立てていくかヒントが見えてきた」と分析する。

*5-2:http://qbiz.jp/article/106654/1/ (西日本新聞 2017年3月31日) 【新移民時代 変わる仕事場】(1)レクサス生産に外国人が「貴重な戦力」
 「世界一有名なトヨタの車を造るのはうれしいね」。自動車部品製造のテクノスマイル(福岡県宮若市)の工場。ミャンマーからの技能実習生テ・アウン・テさん(22)は、大型機械のそばに立ち、一つの部品を作る作業を担当する。ミャンマー中部マグウェイ出身。「家は農民で、お金がなくて車は買えない。けど車は大好き」。作った部品は近くのトヨタ自動車九州の工場で、日本が誇る最高級車「レクサス」の車輪上部に組み付けられる。タイヤがはねた小石の音が車内に響かないようにする高級車向けの部品だ。テクノスマイルは2008年に実習生を受け入れ始めた。当初は技術伝承の「国際貢献」が理由だったが、今は工場で働く42人のうち17人が実習生。幹部は「自動車メーカーが日給1万3千〜1万4千円で求人しても人員確保に苦労する。コスト削減を迫られる下請けの賃金では、日本人は集まらない」と打ち明ける。
   ■    ■
 自動車生産設備製造の福設(宮若市)では、ベトナム出身の技術者グエン・トゥアン・ブゥさん(26)が真剣な表情でパソコン画面に向かっていた。3D設計ソフトを使って製図しているのは「レクサス」などを生み出すトヨタ自動車九州の生産設備だ。ベトナムの大学を卒業後に「日本の製造現場を学びたい」と来日。専門技術が評価されて派遣社員として働いていたが、昨年会社に請われて正社員採用。日本人と同等の給料で働く。現在は9人の設計担当者のうち2人がベトナム出身者だ。「国内で技術者が不足する中で貴重な戦力。さらにベトナム出身の人材を増やしたい」。井上貞夫会長(68)の期待は大きい。日本の「ものづくり」をけん引する自動車産業。巨大なピラミッド構造のあらゆる階層を外国人が支え、彼らの携わった「日本車」が九州から世界中に輸出されている。
   ■    ■
 「らっしゃいませー」。平日の午後7時すぎ、JR博多駅に近い和食居酒屋。調理場から威勢のいい声が響いた。声の主はアルバイトのベトナムからの男性留学生(22)だ。焼き鳥、刺し身、からしれんこんもお手の物。調理をこなし、別の従業員が仕上げたギョーザ鍋には「違う。たっぷり」と指導。博多万能ねぎを土鍋に盛り付けてみせた。手を抜かない仕事ぶりに「働く姿勢は日本人のお手本で、社員になってほしい」と店長(41)。無形文化遺産の「和食」も、海外人材が中心になりうる。店舗の運営会社は、福岡県中小企業経営者協会連合会が計画する、海外の若者に日本語学校の学費を貸す事業に参画を予定している。昨春、日本人の新卒入社は0人。留学生が将来入社し、幹部として海外展開を手掛ける夢を描く。一方、「労働と留学が一体の契約」として摘発された宮崎県の法人の事例もある。給料面や職業選択の自由への配慮も欠かさないつもりだが…。社長(61)は「海外人材なくして、今後企業はうまく回らなくなる」と危機感を隠さない。
   ×    ×
 少子高齢化が進み、労働力人口が減少する日本。世界第3位の経済大国・日本の企業は、外国からの労働者、専門技術者、高度人材なくしては成り立たなくなろうとしている。この現実に、私たちは対応できているのだろうか。「新 移民時代」第6部は、外国人との共生を模索する「変わる仕事場」を訪ねた。


PS(2017年5月2日追加): *6-1のように、日本国内の外国人労働者が100万人を超し、外国人労働者は九州でも貴重な戦力となっている様子が、西日本新聞の九州主要企業104社へのアンケートでわかった。つまり、九州主要企業では、社員かパート・アルバイトに外国人を採用している企業が約7割(70社)を占め、うち4割が採用拡大を考えているとのことである。
 ここ数年、*6-2のように、日本では30年遅れの“働かない改革”が主張され、若者に「働きすぎてはいけない」という意識を定着させすぎて悪影響を与えているが、現在は1980年代とは異なり、日本人労働者の平均労働時間は既にアメリカよりも短く、労働生産性も低く、問題になっている残業時間制限は季節性のある企業の事情を考慮したものであるため、それ以下にしたければ、残業時間上限の詳細は個々の企業別労働組合で決めればよいことである。ただし、職種や年収によって「脱時間給」「裁量労働制」などとするのは、同じ人間であり、異常な長時間労働やプレッシャーは誰でも同じように健康を害することからおかしい。
 そのような中、*6-3のように、徳島県のJA東とくしまが管内の若手農家と共同出資して農業生産法人を設立し、農地を集積して耕作放棄地対策を進めながら、付加価値の高い米作り等を推進するそうだ。若手農家が参画しやすい経営体づくりをして大規模化すれば、資金力・生産性を上昇させ、農業生産法人で労働者を雇うこともできるようになるだろう。

    
 年間労働時間国際比較(厚労省)   日本の年間労働時間の減少  2017.5.2日経新聞 


 2016.4.3   産業別外国人雇用   国籍別外国人労働者   2017.5.2西日本新聞  
 佐賀新聞   事業所割合(厚労省)   (厚労省)

*6-1:http://qbiz.jp/article/108738/1/ (西日本新聞 2017年5月2日) 「外国人」九州企業7割が採用、うち4割は「拡大」方針 104社アンケート
 西日本新聞の九州の主要企業104社アンケートで、社員かパート・アルバイトに外国人を採用している企業が約7割(70社)を占め、うち4割が採用拡大を考えていることが分かった。理由として、海外事業展開や訪日外国人対応に加え、2割の企業が「人手不足で日本人が集まらない」と回答。政府に就労ビザ要件の緩和や日本語学習支援を求める声が多かった。国内の外国人労働者が100万人を超す中、九州でも貴重な戦力となっている実態が浮き彫りになった。外国人を採用中の企業のうち、社員としての雇用は59社、パート・アルバイトは33社。今後の方針として外国人の人数減少を検討している企業はゼロだった。採用理由(複数回答)は、多い順に(1)海外での事業展開のため=20社(2)訪日外国人に対応するため=19社(3)海外企業との提携や交渉のため=15社(4)人手不足で日本人が集まらないため=14社(5)高度な技術を持っているため=8社−などだった。外国人の社員やパート・アルバイトがゼロの30社のうち、9社が「採用を検討している」と答えた。外国人の採用について政府や行政機関に求める政策を複数回答で尋ねたところ、「就労ビザ要件の緩和」と「外国人就労者への日本語学習支援」がともに28社で最多。次いで「留学生の就労制限(週28時間以内)の緩和」が22社、「高度外国人材の受け入れ促進」が14社に上った。「単純労働ビザの解禁」を挙げた企業も11社あった。外国人採用拡大への政策を促す声の一方、外国人技能実習生などを受け入れる企業の中には「海外の送り出し機関のチェック体制強化」や「ビザ審査の厳格化」を求める企業もあった。調査は4月に160社を対象に実施し、104社から有効回答があった。

*6-2:http://www.nikkei.com/article/DGXKZO15975270S7A500C1PP8000/ (日経新聞 2017/5/2) 残業規制、脱時間給とセット 働き方改革、連合苦悩
 安倍晋三首相が「最大のチャレンジ」と位置付けた働き方改革。労使代表らがメンバーの「働き方改革実現会議」は3月末、約半年間の議論を経て残業時間の上限規制などを盛り込んだ実行計画をまとめた。秋の臨時国会ではいよいよ立法段階に入るが、改革の旗振り役だった連合の顔色がなぜかさえない。月平均60時間、年間では720時間とし、焦点の繁忙月の特例は100時間未満とした残業時間規制の最終案。「100時間はあり得ない」としてきた連合の意向を踏まえた首相要請で決まったもので、労働基準法70年の歴史で初の大改革となる。連合にとっても悲願だったはずだ。しかし、実行計画をとりまとめた3月28日の実現会議の終了後、連合の神津里季生会長は厳しい表情を浮かべて記者団に語った。「今のままで法案が通るのは反対だ」。連合の要求を反映させた残業時間規制案となったにもかかわらず、わざわざ苦言を呈したのには理由があった。神津氏が問題にしたのは実行計画に盛り込まれた一文だ。労働時間ではなく仕事の成果に応じて賃金を支払う「脱時間給制度」の導入を柱とする労基法改正案に触れ「国会での早期成立を図る」と明記した。同法案は野党や連合が「残業代ゼロ法案」と批判。審議されないまま約2年たなざらしになっている。その法案を政府は今国会での成立を見送り、今回の残業時間規制を盛り込んだ労基法改正案と一体で秋の臨時国会で審議する方針だ。残業時間規制とともに、時間にとらわれない働き方も認め、企業側が懸念する労働の生産性の低下を防ぐ狙いだ。批判の多い脱時間給導入だけで労基法を改正するより世論の理解を得やすいとの判断もある。残業時間規制という成果を勝ち取った神津氏だが、脱時間給制度は「長時間労働を助長し、残業時間規制とは矛盾する」との立場。しかし、一体審議となれば残業規制の導入を求めてきた立場から法案審議への明確な反対を唱えにくい。さらに連合を悩ませるのは支持政党である民進党が残業時間規制を巡り、繁忙月の例外を100時間未満とすることにした今回の案に「長すぎる」として反対の立場を示していることだ。脱原発などで関係は既にぎくしゃくしているが、これ以上溝が深まるのは避けたいところだ。脱時間給制度と残業時間規制を別々の法案として審議し、民進党も残業時間規制には賛成に回ってくれるのが連合にとってはベストシナリオ。しかし政府は連合の立場を承知のうえでパッケージ案を突きつける構えだ。民進党が政府案に賛成しないのも連合が一番分かっている。

*6-3:https://www.agrinews.co.jp/p40758.html (日本農業新聞 2017年5月2日) 若手農家と法人設立 特栽米生産を振興 農地集積し放棄地対策も JA東とくしまが共同出資
 徳島県のJA東とくしまは管内の若手農家らと共同出資して、農地所有適格法人(農業生産法人)を設立した。共同出資という深いつながりで連携し、付加価値の高い米作りを推進する。法人に農地を集積し、耕作放棄地対策も進める。農家とJAが共同出資して農業生産法人を設立するのは珍しい。新法人は「ほのか株式会社」。地域の農家5人とJAで組織する。年齢構成は30代が2人、60代が1人、70代が2人。代表は、小松島市で米やトマト、小松菜などを生産し、社員20人がいる「樫山農園」専務の樫山直樹さん(38)が務める。若手農家を中心に、地域で栽培面積の広い生産者の元に農地を集積し、農業振興に貢献する。JAは法人に職員1人を派遣する。参加農家の合計面積は70ヘクタール。条件不利地に点在する農地の利活用を進めたいJAと、規模拡大したい農家の思いが合致した。法人は、構成農家が既に取り組む特別栽培米の生産振興の他、酒造好適米や飼料用米を組み合わせ、有利販売に結び付ける。米の乾燥・調製を行うライスセンターを建設することなどで、150ヘクタールまで拡大可能。県の農地中間管理機構を利用し、農地集積を進める。将来的にはトマトの作付け拡大も視野に入れる。JAは、今回の法人設立だけにとどまらず、来年度には野菜の生産法人を立ち上げる予定。直売所と連携して地産地消を進める。収益性の高い野菜と組み合わせた施策で、農家手取りの向上を図り、地域活性化につなげる。JAは今回の法人立ち上げから、地域で勢いのある若手農家との結び付きを一層強めていく。将来的には、若手農家が参画しやすい環境をつくるための経営体づくりを目指す。荒井義之組合長は「自己改革の一歩先を行く事例をつくりたかった。担い手を育てるだけでなく、担い手と共に農業をしていくことが、地域貢献につながる」と強調する。


PS(2017年5月5日追加):アメリカと通商交渉すると、(経産省が発信源かも知れないが)乱暴な規制緩和要求をされる。そのため、「モノを輸出するには相手国の需要にあったモノを作らなければならない」という当たり前の主張ができる国とだけなら、TPPを行っても制度破壊が少なくて済み、それでも、なし崩し的制度破壊が行われないように気を付けることは重要だ。その点、*7-1のオーストラリア・ニュージーランドは、日本とは季節が逆の農業国で農業技術が進んでおり、日本の農業を無作法に侵食する程度は低い。そこで、これらの国と(TPPではなく)FTAを発効し、例えば福島県の帰還困難区域に当たる地域の農業者が移住して農業を行えば、日本の需要にあった農産物を逆の季節に作ることも容易だろう。
 なお、*7-2のように、TPP交渉の開始以降、確かに農業政策には理念が見られず、浅薄な通商ゲームの“カード”にされているため、「国内に、何故農業が必要か」について国民的議論を行い、農業を守る政策を行うことが必要だ。

*7-1:http://qbiz.jp/article/108837/1/ (西日本新聞 2017年5月4日) TPP、5カ国先行発効案が浮上 11カ国難航で日豪やNZ
環太平洋連携協定(TPP)を巡り、離脱した米国を除く11カ国のうち、5カ国以上で先行発効させる案が浮上していることが3日分かった。早期発効を主導したい日本やオーストラリア、ニュージーランドなどが検討している。11カ国はカナダのトロントで2日午後(日本時間3日未明)、首席交渉官会合を開き、米国抜きの発効に向けた議論を始めた。日本は最小限の変更による早期発効を主張したが、問題点を指摘する国が相次ぎ、難航は避けられない見通しだ。発効に積極的な国の交渉関係者は取材に対し「5カ国での発効でも構わない」と明言した。5カ国程度の場合、日本などのほか、貿易自由化に積極的なシンガポールやブルネイといった国の参加が想定される。2日の会合では、規模が大きい米国市場への輸出を期待していたベトナムやマレーシアなどが、米国抜きの発効に難色を示したとみられる。日本などは消極的な国に翻意を働き掛ける方針だが、議論が行き詰まると、5カ国以上で先行発効させる案が有力になりそうだ。その場合も、TPPの経済効果は当初の想定より大幅に縮小する可能性が高い。先行発効は、保護主義の動きを強める米トランプ政権に、アジア太平洋地域の貿易や投資ルールの確立を目指すTPPの意義の再認識を促す狙いもあるとみられる。発効させた後、米国を含む残りの国が加われる仕組みも整えたい意向だ。首席会合は2日間の日程で、米国抜きの発効に向けた道筋を模索。3日午前に2日目の議論をし、3日午後に閉幕した。今月20、21日のアジア太平洋経済協力会議(APEC)貿易相会合に合わせて開くTPP閣僚会合の声明案なども協議した。11カ国での発効に消極的なベトナムなどのほか、中南米4カ国の貿易自由化の枠組み「太平洋同盟」に参加しているチリやペルーも積極的な姿勢を示していない。カナダとメキシコは、北米自由貿易協定(NAFTA)再交渉での米国の出方次第でTPPに集中できなくなる可能性があり、態度を決めかねているとされる。

*7-2:https://www.agrinews.co.jp/p40779.html (日本農業新聞論説 2017年5月4日) 理念薄い通商政策 農業守る国民的議論を
 政府が通商政策で農業をどう守ろうとしているのかが見えない。最近では、環太平洋連携協定(TPP)から離脱した米国にあくまで復帰を呼び掛ける従来方針を転換し、米国抜きTPPにかじを切った。米国との2国間交渉を避けたい意向がうかがえるが、戦術論に明け暮れていないか。理念が伝わらない。過去の政権は交渉入り前、農業を守る国民的な合意づくりに注力したが、現政権にはそれがないのだ。理念づくりが急がれる。「多様な農業の共存」。2000年に政府が世界貿易機関(WTO)交渉に際して掲げた日本提案の理念だ。ウルグアイ・ラウンド交渉で農業批判が上がった反省から、国内農業を守る理由を明確に打ち出した。食料安全保障や農業の多面的機能を維持することが消費者にも必要だと説き、公正な貿易ルールを目指す方針を示した。04年に政府がアジア各国との経済連携協定(EPA)交渉に臨んだ際には、「みどりのEPA推進戦略」をまとめた。タイなどは農産物の対日輸出に強い意欲を示していたが、日本は相手国の農村の貧困解消に力を貸すことを提案。アジア地域の農業発展の在り方について、「自由化と協力のバランス」を確保することが重要だとして折り合った。しかしTPPでは、こうした次元の議論がなかった。重要品目の聖域確保を目指した国会決議は、文字通り国会の提案で、政府は決議を自らの理念として語っていない。交渉合意後は、「TPP対策を措置するから国内農業に影響はない」という答弁に終始した。重要品目を一部関税撤廃したにもかかわらずだ。この論法に従えば、今後の交渉でも対策を打てばどう決着しようと問題ない、となる恐れがある。譲れぬ一線をいくら議論したところで、無意味になりかねない。さらに深刻なのは、農業を守る国民合意どころか、農業攻撃が政府内からやまないことだ。国際競争力を高めるべきとの理由で、地域を支えてきたJAに抜本改革を繰り返し迫り、いまだに規制改革論議が続く。農家所得を高める自己改革は必要だが、そうした域を超えた過剰介入と言っていい。産業としての農業論一辺倒で、過去の国民合意で重視した食料安全保障や農業の多面的機能の維持といった視点が軽視されていないか。改めて、WTO日本提案が“農政の憲法”である食料・農業・農村基本法を制定する国民的議論の中から生まれたことを思い出したい。現政権の一面的な農政は、「食料」「農村」という柱を高く評価した“憲法”の理念からもそれているように映る。浅薄な農業観で国内に批判を抱え、通商交渉でどうやって他国とわたり合っていくというのか。これからまた交渉が本格化しようとしている。今こそ政府は、農業を守る理念について懐の深い国民的議論を起こしていくべきだ。


PS(2017年5月7日追加):サラリーマンである士族社会と違って、農漁村では女性も自宅近くでずっと働いており、働けない女性の方がむしろ肩身が狭かったため、*8-1は、これまでの女性の活躍や貢献を過小評価している。そもそも、元祖“道の駅”は、リヤカーで新鮮な野菜や魚を売り歩いていた農家や漁家のおばさんたちだった。しかし、問題は、*8-2のように、重労働していたにもかかわらず女性の地位が低く、女性認定農業者は4.6%、JAの女性役員は7.5%、女性農業委員は7.4%と10%にも届かないことで、これは男性中心・女性蔑視の文化が原因だったのであって女性自身が垣根を作って閉じこもっていたのではないことを、ここで明確にしておく。そして、このように何でも女性のせいにする文化(このため「責任転嫁《責任を嫁に擦り付けること》」という熟語がある)も卒業しなければ、女性の地位は上がらない。
 私は、女性が農業や加工に主体的に参入することで、皿の上に盛った料理まで見据え、簡便性や栄養価を考えた無駄のない野菜や惣菜が出てきたと感じている。例えば、大根・小松菜などのつまみ菜は、それらの間引きした苗だが、ミネラル・ビタミン・食物繊維を含み、コラーゲンの生成を促してシミ・そばかすを防ぐビタミンCが豊富で、アリルイソチオシアネートによる血栓防止効果や、グルコシノレートによる解毒作用強化・抗がん効果、食物繊維による整腸作用・生活習慣病予防効果も期待できるそうだ。これから勢いよく成長しようとする植物がこれらを含んでいるのは容易に想像できるが、これまで間引きした野菜を売ることなど考えられていなかったのではないだろうか。買う方は、切る手間が省け、一人前の味をしているつまみ菜を、感心しながら買っている次第だ。

*8-1:https://www.agrinews.co.jp/p40799.html (日本農業新聞論説 2017年5月7日) 若手女性の起業 垣根を越え飛び出そう
 個人で起業活動を始める若手女性農業者が増えている。日本農業新聞が4月に始めた企画「の・えるSTAR(スター)」(日曜付「女性のページ」)では、直販、加工はもちろん、子育て女性を雇用する農場の設立、カフェの出店など、多彩に奮闘する女性が登場する。従来の経営スタイルを超え、夢の実現にまい進する彼女たちは常にアンテナを張り、交流を広げる中で一線を越えていく。地域の新たな活力として期待したい。農水省がまとめた2014年度の農村女性による起業数(15年3月現在)は、個別経営が4939件と全体の52%を占め、初めてグループ経営の数を上回った。特に39歳以下の個別経営が165件と2年前の前回調査より21%増えており、若手の躍進が目立つ。女性の社会進出の進展や、インターネット販売、インターネット交流サイト(SNS)の活用により、個人が活動しやすい状況が農村部でも広がっていると言えよう。「の・えるスター」に登場する女性たちを突き動かすのは、「今の状況を変えたい」という率直な思いだ。「もぎ取り体験では1週間しか客を呼べない」「子育てママが働けない」「畑に机を置くだけの直売所では人が呼べない」などである。悩みの解決へアンテナを張り、交流を広げ、時に業種の垣根も越えて連携へ動きだす。伝統野菜の知名度不足に悩む女性は、行きつけのラーメン店主に「レストラン」の夢を語る中から、店舗貸しの提案を受けて弁当販売を始めた。ブドウもぎ取り園の集客を模索する女性は、農水省の「農業女子プロジェクト」に参加、観光サービス会社との提携に乗り出した。県の普及指導員から助成事業の助言を受けた女性は、集客方法から売り上げの見込み額まで示す計画書を作成。審査に通り、直売所出店にこぎ着けた。一歩を踏み出すきっかけとなったのは、自ら動いて得た「つながり」である。もちろん、いいことばかりではない。限定販売に徹したり、投資を抑えたりなどの工夫をしても、経営がうまくいかないこともあるだろう。農村の因習という壁もある。若手女性農業者の発表の場では「農村はまだまだ男社会。女性が営業活動するには制約がある」「家族の理解を得られず家を空けられない女性は少なくない」といった声が出る。それでも、思いがあるならぜひ挑戦してほしい。動けば必ず共感し、支援してくれる人がいるはずだ。今後、経営が発展すれば、新たな課題が出てくるだろう。人手や賃金の確保、多様な消費者ニーズへの対応などである。地域との連携や食育、福祉といった広がりも求められる。柔軟な発想で挑む彼女たちが、地域にどんな活力をもたらすのか楽しみである。思いを実現するチャンスは、いろんなところに転がっているはずだ。

*8-2:https://www.agrinews.co.jp/p40297.html (日本農業新聞 2017年3月5日) 農山漁村女性の日 発展の鍵握る活躍期待
 3月10日は「農山漁村女性の日」。この日を前後して、農山漁村女性の社会参画促進や地位向上へ、さまざまな啓発行事が行われる。女性は農業従事者の約半数を占め、農村社会と農業の発展に欠かせない存在だ。農業経営が6次産業化を進める中、生産者であり、かつ生活者と消費者の視点も併せ持つ女性の役割は、ますます重要さを増していくはずだ。その役割の価値を見つめ直すきっかけにしよう。農業経営やJAなどの方針決定の場へ、女性の参画が増えている。農水省の調査によると、女性の認定農業者は2016年3月で1万1241人と前年より429人増えた。12年から毎年400人以上増え続けている。JA女性役員は1305人(16年7月)で、全役員に占める割合は7.5%と前年比0.3ポイント増。女性農業委員も2636人(15年9月)で、全委員に占める割合は7.4%と同0.1ポイント増となった。農水省の「農業女子プロジェクト」も4年目を迎え、農業女子メンバーは、今では500人を超える。企業と提携して商品を開発したり、教育機関と組んで学生に就農を促したりと活動が盛んだ。ことし初めて、農業女子の取り組みを表彰するイベントを開いてPRを強める。ただ、社会参画への進み方は遅い。女性認定農業者が増えているとはいえ、全体の4.6%だ。JA女性役員、女性農業委員も、第4次男女共同参画基本計画で共に早期目標に掲げる10%には届かない。「役員になり外出が増えると、夫が嫌な顔をする」「男性役員ばかりの中で意見が通らない」。JA女性役員からは、そういった不満の声が上がる。一方、組織化せず活動の自由度が高く見える農業女子の集まりの中でさえ「出掛けるには家族の許可がいる」と悩む声を聞く。家族経営が主流で、かつ男性が中心となっている農村社会の閉鎖的な構図が、依然としてうかがえる。女性農業者が真に活躍し、能力を発揮するにはまだ厚い壁があるのだ。家族の後押しはもちろん、活動を受け止める男性らがさらに理解を深める必要がある。日本政策金融公庫が16年に発表した調査では、女性が経営に関与している経営体は、関与していない経営体よりも経常利益の増加率が2倍以上高かった。特に、女性が6次産業化や営業・販売を担当している経営体で、経常利益の増加率が高い傾向にあった。買い物好きでコミュニケーション能力が高い女性だからこそ、的確に消費者ニーズを把握できていることの表れだ。農業収益を増やし、経営発展の鍵を握るのは女性農業者だ。「農山漁村女性の日」が3月10日とされたのは、女性の三つの能力である知恵、技、経験をトータル(10)に発揮してほしい――との願いが込められている。もっと活躍できる社会へ、家族、地域挙げて環境整備を急ぐべきだ。


PS(2017年5月9日追加):*9のように、もちろん小さくたっていい。だから、最初の「図の説明」にも、「耕地面積が小さく大型機械が入りにくいのは、穀倉地帯での生産性や農家所得を下げる原因になっている」としか書いておらず、すべての農業で面積だけが競争力の源泉だとは書いていないのだ。しかし、中山間地などで面積を広げられず、少ない面積で所得をあげなければならない場合は、少量でも利益のあがる付加価値の高い農産物を作ったり、ブランド化や差別化をしたり、他の資源と組み合わせたり、6次産業化したり、環境維持活動をして日当をもらったりなど、さまざまな工夫をする必要がある。その理由は、利益を増やすには、生産コストを下げるか、付加価値を上げるか、その他で稼ぐかしかないからだ。
 ただし、日本の財政は苦しく国民の財布は一つであるため、物価を上げ、福祉や教育を減らし、国民負担を増やして、健康な生産年齢人口の人に渡す補助金だけは永久に確保しようなどという甘えはやめて欲しい。つまり、自立できるのなら、違法でない限り何をやってもよいのだ。

*9:http://qbiz.jp/article/108970/1/ (西日本新聞 2017年5月9日) 小さくたっていいじゃないか
 雑誌編集部に勤務後、2008年入社。地域報道センター、福岡西支局、佐賀総局を経て経済部。顔つきからか九州出身によく間違われる が、東京出身(八王子ですが)。「成長産業」の候補として国が大規模化や企業化といった「改革」を押し進める農業。そんな農政の方向とは異なる小規模な農業の在り方を考える「小農学会」のシンポジウムが4月下旬に福岡市であった。農家や農業関係者約100人が集まって意見を交わした。この学会、九州の農家や研究者が中心になって呼び掛けて2015年に発足した。シンポジウムは昨年に続いて2回目で、参加者は1回目よりも40人ほど増加。東北や関東からも参加があった。つまり、大規模化を目指す農業に違和感を抱く人が各地に少なからずいるということだと思う。農林水産省の15年度の資料によると、日本の農家1戸当たりの耕地面積は2・5ヘクタール。放牧の畜産などを含む数字とはいえ、EUは16・1ヘクタール、米国は175・6ヘクタール。オーストラリアは2845・9ヘクタールとその差は圧倒的だ。稲作に絞った農水省の14年の資料で比べても、日本のコメ農家の平均は1・4ヘクタール。これに対し、米国の典型的なコメ生産地とされるカリフォルニアでは約320ヘクタールだ。10アール(1反)当たりの生産コストは日本が3・5倍高いという。国は農業の「競争力強化」を掲げるが、世界市場を見据えたとき、どこまでこの差を埋めるというのか。もちろん、ある程度の農地集約や効率化は必要だ。しかし、日本の農地は約4割が中山間地。広大な平地が続く外国とは事情が違う。効率化だけを追求したら、中山間地の農地は不要になってしまう。その先にあるのは、荒れ果てた農地に覆われた農山村の姿だ。「集落を守るためには、小農をつぶさないことだ」。シンポジウムで実践事例を報告した福智町の農家は力を込めた。集落の71軒の農家の中で専業農家は6軒。小規模の兼業農家も、農地を守る立派な担い手だ。特に中山間地の農地は水源かん養や国土保全などの役割も大きい。荒廃すると、その影響は都市部の住民の暮らしにも及ぶということだ。農業は「成長力のある産業」だと思うし、大規模化も一つの方策だ。しかし、進む道はいくつもあっていい。小農学会の活動がこれからどう広がっていくのか注目したい。


PS(2017年5月11日追加): *10-1のように、営農指導の担当者を増員して担い手農家に出向く体制を増強したのは、今後は新規就農者が増え、利益率の高い農業が求められるためよいと考える。また、*10-2のように、①東京農大合格者の女性割合が52.8%と半数を超え、全国大学の農学系学科に在籍する女子学生の割合は2016年度45%で、30年前の1986年度15%と比べて3倍となり ②女性は農村に活気をもたらし、収益性を向上させるとの調査結果もあるため ③農水省女性活躍推進室の久保室長が、「女性が職業の一つとして農業を選べる流れをつくり、農業の成長産業化を図る」 としているのは、やっと与謝野晶子の言う「山動く日ぞ来る」という状態が来たのだと思う。しかし、高等教育を受けても、就職時や就農時に差別されて意思決定できる立場に行けなければ女性が増えた効果は薄くなるため、今後は認定農業者やJA役員等の女性割合を母集団に見合ったものにすべきだろう。
 
*10-1:https://www.agrinews.co.jp/p40835.html (日本農業新聞 2017年5月11日) 営農指導に人員シフト 資材配送拠点を再編 引き取りは5%引き 大阪・JAいずみの
 大阪府のJAいずみのは、購買と営農指導の部門をまたいだ人員配置見直しや資材配送拠点の再編を通じ、農家に出向く体制の強化に乗り出した。資材の予約購買で、従来の配送に加え、引き取り方式を2017年度にスタート。配送にかかっていた購買部門の人員を減らし、営農指導の担当者を増員して担い手に出向く体制を増強した。両部門が連携しながら、農家の所得向上に向けた提案活動に力を入れる。
●出向く体制を強化 部門連携で提案に力
 これまで、資材の配送拠点を岸和田市の営農総合センターの購買店舗に集約していた。ただ管内は4市1町と広域で、配送に往復2時間かかる場所もある。特に繁忙期は配送に労力が割かれ、十分な提案活動ができない課題があった。資材配送の効率化と提案活動の強化に向け、配送拠点を、より組合員に近い各購買店舗に再編。地域ごとの5店舗に引き取りに来てもらう方式を4月に始めた。引き取りの場合、肥料、農薬の価格を5%引きし、農家にとってもメリットがある形にしたことで、7割の組合員が引き取りに転換したという。今後、9割ほどまで高めていきたい考えだ。水稲の資材で引き取りを利用した樋口忠俊さん(69)は「資材価格は収益面にすぐ反映されるので、安くなるのは助かる」と話した。今後は、農家に直接出向いての資材の提案活動や、各購買店舗の品ぞろえの見直し、店内広告(POP)の充実など、配送以外の業務にも注力し、農家のニーズに応えていく考えだ。購買事業の効率化を、営農指導事業の強化にもつなげる。配送などにかかっていた人員を減らし、営農指導担当者を2人増員した。地域農業の担い手に出向くJA担当者(愛称TAC=タック)体制を整え、認定農業者らのサポートを強化する。一連の改革は、地域営農ビジョンに沿った16年度からの第3次総合3カ年計画の営農経済事業改革の柱で、自己改革の一環でもある。JA営農経済部の信貴正憲部長は「農家の所得向上と農業生産の拡大に向けた起爆剤にしたい」と強調する。

*10-2:https://www.agrinews.co.jp/p40828.html (日本農業新聞 2017年5月11日) 農業系女子増加 東京農大の合格者 女性過半に 「現場で活動」「就職の幅」魅力 農村での活躍期待
 農業が、今や女子学生憧れの業界に――。大学農学部や農業高校に進学する女性が増え、農学系女子を「ノケジョ」と呼ぶ造語も登場。東京農業大学の今年度の入学試験で初めて、合格者比率で女子が男子を上回った。女性は農村に活気をもたらし、収益性を向上させるとの調査結果もあり、ノケジョ躍進に期待が集まる。神奈川県伊勢原市にある東京農業大学の農場で9日、2年生の農場実習が野菜、果樹、花きの3コースで実施された。女子学生もこの日は、ジャージやつなぎ姿で土や緑と向き合い農作業に汗を流した。実習に参加した田川真子さん(19)は、実家が長崎県の兼業農家。自身が入院した時、祖父が持参した花に感動して農業を継ごうと決意。指導者になる夢を抱き「地元の耕作放棄地を何とかしたい」と笑顔で話す。横浜市の仲田萌夏さん(19)は、農家以外の出身だが、植物の育種に興味を持ち「生花店や花き卸、種苗会社など、植物に関わる仕事に就きたい」と、胸を膨らませる。同大では、2017年度入試で合格者に占める女性の割合が52・8%と男女比が逆転。同大入試センターの藤枝隆センター長は「おそらく開学以来初めて」とみる。これまで農学部は「ダサい」「汚い」とのイメージを持たれていた面もある。しかし近年は「生命科学や環境問題、地方創生など、社会問題の解決手段として認知度が高まってきた」(藤枝センター長)。女性が増える要因について藤枝センター長は「女性は社会のトレンドに対し、男性より敏感で感性がいい」と分析。さらに「座学中心の文系学部より現場で活動する農学部に魅力を感じ、さらに就職面では農業や食品関連、公務員など幅広い選択肢がある」とみる。「ダイコン踊り」に象徴される男性的な同大のイメージは、今や昔話だ。
●共同参画で成長産業に
 女性の力に着目する農水省は、13年度「農業女子プロジェクト」を発足。昨年度からは女性の就農を促そうと、同大と東京都内の女子高校をモデルに新企画に着手した。先輩の女性農業者との交流、農業の魅力発信などを仕掛け、女性の就農意欲と働きやすい環境づくりを進める。同省女性活躍推進室の久保香代子室長は「女性が職業の一つとして農業を選べる流れをつくり、農業の成長産業化を図る」と意欲を示す。もちろん、誰もが就農するわけではない。同大では、多くが食品企業や公務員などへの就職を希望する。同大キャリアセンターは「就農や農業法人への就職意向は増えているが、他の企業と比べ、労働に応じた給与の水準が低いのが課題」とみる。女性が農業経営に参画すると、収益向上につながるとの調査結果もある。日本政策金融公庫によると、女性が経営に関与している経営体と関与しない経営体を比べると、経常利益の増加率が70ポイント高い。女性が営業や販売部門を担当する経営体は関与しない経営体と比べ収益性の伸び率に5倍の差があるとの結果もある。
●学生割合3倍に
 文部科学省によると、全国の大学農学系学科に在籍する女子学生の割合は2016年度が45%で、30年前の1986年度(15%)と比べ3倍になった。農業高校、高校の農学系学科も16年度は49%と、男女比が1対1に。農水省の調査では、学校を卒業して新規就農(雇用含む)した20代以下に占める女性比率も増加。15年は26%と、07年(17%)より大きく増え、若い女性の就農志向は鮮明だ。


PS(2017年5月12日追加):*11は、進歩ではあるもののまだ生産者側の論理で、消費者が購買しなければ販売できないのだということを忘れてはならない。その消費者は、単に「国産か否か」ではなく、①減農薬で有害物質が残っていないか ②有機肥料を使用しているか ③遺伝子組み換えにより害虫も寄り付かなくなった農産物に、人間にとって有害な物質は生成されていないのか ④農産品なら収穫地域 ⑤海産物なら漁獲海域 などを、外食・中食も含めて知りたいと思っている。そして、表示がなく状況がわからなければ、安全性を重視して外国産を選択したり、その産品は使わないという意思決定をしたりする自由もある。そのため、消費者が知りたい情報は表示し、表示されて困るような環境汚染には気を付けるべきなのだ。

   
       遺伝子組換作物について             農薬について

(図の説明:生産コストを下げることができるため遺伝子組換作物の割合は上がっているが、遺伝子組換後の作物が生成する物質を直接食べても人間には無害だという証明はされていないものが多い。そのため、少し高い価格を出しても遺伝子組換でない作物からできた商品を購入するか否かの判断は消費者に任せられるのだが、その判断をするためには遺伝子組換作物混入割合の情報が必要であるにもかかわらず、日本の表示義務はEUと比較して甘い。また、農薬使用量も、日本はヨーロッパ諸国よりもかなり多い)

*11:http://qbiz.jp/article/109290/1/ (西日本新聞 2017年5月12日) お総菜や弁当、外食も原産地表示を 九経連が義務化を求める提言
 九州経済連合会のワーキンググループ(WG、座長・山尾政博広島大大学院教授)は11日、弁当店などの「中食」と外食について原料原産地表示の義務化を求める提言をまとめた。九経連として30日に承認後、6月にも農林水産省と消費者庁に提出する。提言は、中食・外食が使う食材全てに原料原産地表示の義務化を一律に求めるのではなく「段階的に表示していくことが望ましい」と指摘。義務化の対象食材を牛肉、豚肉、鶏肉、サーモン、ウナギ、マグロ、フグ、ヒラメの八つに絞った。対象事業者については公平を期すため、全ての中食・外食事業者とした。食品の原材料の原産地表示は現在、食品表示法に基づき、生鮮食品と加工食品の一部が義務化の対象となっている。さらに政府は数年後、全ての加工食品で原則的に義務化する方針。ただ、外食と中食の一部は対象外で、消費者の国産選択が難しい状況という。このため九経連は、生産や流通などの関係者を集めてWGをつくり、1月から提言を検討してきた。

| 農林漁業::2015.10~ | 12:56 PM | comments (x) | trackback (x) |
2016.10.9 TPPや農協叩きでは農業の生産性は向上せず、農林水産業の付加価値向上、生産性向上、輸出増には普段からの継続的改善(Continuing improvement)が重要なのである。 (2016年10月10、13、14、15、24、26日、11月1、2日に追加あり)

     TPPの範囲           TPPに関する     交渉参加に関する   TPPによる 
                       政府と野党の主張       決議       生産減少額
     
2015.11.26朝日新聞  2015.11.18日本農業新聞  2016/3/30及び10/11日本農業新聞
   TPP関連施策      攻めと護りに分けた施策     2016年度の農林水産関係予算 

(図表の説明:農業者が海外に販路を広げる方法は多いため、TPPは必要条件ではない。にもかかわらず、国会決議を無視し、農業はじめ日本へのデメリットを過小評価してTPPに驀進するのは問題が大きく、後で後悔しても取り返しがつかない。また、交渉結果とその正確な影響を示して国会で議論されていないため、国民の納得は得られていない。なお、TPP対策として行われる施策は、強い農業を作るためにはTPPとは関係なく必要なものも多く、予算は大きいが無駄遣いになりそうな項目もあるので、全体としてどれだけの予算を農業・TPP対策としてつぎ込み、どれだけの効果があったかの検証が必要だ)

(1)「破壊すれば創造に繋がる」というのは甘すぎる
 *1-1のように、神戸大学の三品教授(専門は経営戦略論)が「破壊を伴う創造行為が産業競争力を左右する」とし、①日本の産業競争力起死回生の鍵は創造的破壊 ②生産現場は強いが大変化には対処できない ③米産業はネットワーク経済で強みを発揮している ④なぜ日本の絶頂期は一瞬で終わってしまったのか ⑤国はもはや産業競争力のけん引役とはなり得ない 等々、書いておられる。

 しかし、①については、常日頃から必要な改革・改善はやり続けなければならず(英語は、Continuing improvement)、それを怠って破壊すれば新しいものが創造されると考えるのは甘すぎ、次に創造するものの形が見えていなければ破壊されただけに終わって創造はできない(ピンチをチャンスに変えることはできない)。また、次に創造するものは、当然のことながら実需で裏付けられていなければ成功しない。そして、国が実需を決めることはできないため、⑤のとおり、日本は、国主導で産業競争力の牽引を行う段階ではないのである。

 また、②については、製造業は国の重点産業とされ、国民の安い賃金と勤勉さに支えられて国際的にも強かったが、重点産業とされなかった産業や公的資金で支えられてきた産業は生産性が低い。しかし、現在では日本国民の賃金は安くなく、高コスト構造も残ったままで、他に賃金の安い多くの国が製造業に参入してきたため、製造業も比較優位ではなくなったのである。さらに、日本の製造現場は優秀だが、狭い範囲の改善はできても経営意思決定を伴う改革はできないので、国民の人口構成や環境変化に伴う需要の変化に合った製品にシフトする大きな改革は、営業を踏まえた経営からしかできない。

 ③は、日本でも経済のネットワーク化は既に進んでおり、そのネットワークは国境を超えているが、ネットワーク化の必要性は個々の経営体で異なり、ネットワーク化を進めさえすればよいわけではない。

 また、④の日本の絶頂期が一瞬で終わってしまった理由は、i)日本は共産主義や朝鮮戦争で市場経済において競争相手なき生産者を担うことができたという千載一遇の幸運の下にあったが、その時代が終わり、それらの国々が安い賃金で競争相手として参入してきたこと ii)日本は幸運の下で工業生産において比較優位の輸出国になっていたが、それを他国と異なる技術力・勤勉さを持っている結果と勘違いして傲慢に振舞い、速やかに環境変化に対応せずに蓄えを費やしたこと iii)そのため低賃金で高い生産性を持つ振興国に太刀打ちできなくなったこと iv)それでも産業構造を変えずに同じスキームを続けようとしていること 等であり、政治・行政・経済学者・経営学者・経営者等のリーダーが問題なのである。

 このような中、*1-2のように、米国では、次期大統領候補がTPPへの反対姿勢を示して発効への道筋が不透明になっているのに、日本政府は妥協を重ねて交渉をまとめた上、TPPの承認を急いで発効への機運を高め、他国の手続きを後押しするとのことである。もともと、TPPの発案者は日本の経産省で、事実に即してよく考えられたスキームではなく、一体化しさえすればグローバル化して輸出入が増えるという安易な思い付きで締結を進めているため、交渉内容や根拠は、開示して議論するに堪えるシロモノではなく、破壊しさえすれば創造できると考えている恐るべき政策なのである。

 そのため、破壊されれば後戻りできない農地を有する農業分野に反対や慎重が多く、与党はTPPで予想されるメリットとデメリット、デメリットに対する対策とその効果を検証して、TPP参加への当否を決めるべきである。なお、*1-2にも、TPPで関税をなくしたり引き下げたりすれば製造業の輸出が活発になるかの如き記載があるが、実際にはTPPにより食品の輸入が増え、食品安全基準における主権を失い、生産コストの高い日本から外国への製造業の製品輸出は増えず、農業で独り負けして食料自給率を減らすだけだと思われる。

 それでも、*1-3-1のように、首相が「TPP協定の承認案と関連法案の早期成立を目指し、他国に先駆けて国会で協定を承認して早期発効に弾みをつけるのが、自由貿易で経済発展を遂げたわが国の使命」などとしているのは、古い発想から抜け出せない経産省(経済界はその下部団体)の言いなりになっているためだが、このように役人(官)を使うどころか使われる人が連続して議員に当選して大臣や首相になっていくのが、日本の民主主義の未熟な点である。

 また、*1-3-2は、「民進党にも隠れ賛成派がいるため、TPP反対に歯切れが悪い」と書いているが、民進党にも経産省系の議員や農業の育成より低価格の農産物という都市部出身の議員や製造業出身の議員はおり、自民党と同様だろう。しかし、本当に国益を護り、日本の将来に悔いを残さないか否かは、正確に日本語に訳された黒塗りでない資料を基に、影響調査や議論を行ってから判断すべきだ。

(2)農水省がTPP対策に3453億円もの補正予算を計上したが・・
 *1-4-1のように、農水省は8月23日、農林水産関係の総額を5739億円とする2016年度第2次補正予算案を自民党の農林関係合同会議に示して了承され、これは、2015年度補正予算を43%上回る大幅増だそうだ。このうちTPP関連対策に2015年度11%増の3453億円、土地改良(農業農村整備)関連事業に同77%増の1752億円を確保したそうだが、TPP対策で総計いくら使って何をし、どういう効果があったのかを、明らかにすべきだ。

 また、*1-4-2のように、9月27日、農林水産省は国内外での農産物の販売促進に充てるために、TPP対策の一環として農家から拠出金を集めるという論点を自民党の会合で示したそうだが、原発の販促は首相まで海外訪問して熱心に取り組み、経産省が製造業の販促をするのは無償であるのに、農水省が農産物の販促のためにTPP対策の一環として農家から拠出金を集めるのはおかしい。

(3)TPPは、日本政府(経産省)の主導だが、ぶっ壊すだけであること
 *2-1のように、TPPの経済効果について、米国は日本への農産物輸出増を約4,000億円と試算し、日本政府は米国以外の影響も含めて日本での生産減少額は1,300億~2,100億円に留まると試算している。品目別では、米国は米の対日輸出額が23%増えるとし、日本は生産減少額は0としており、牛肉も米国は対日輸出が923億円増とし、日本は生産減少額は311億~625億円としているため、日本は影響を過小評価していると言われている。

 農水省は、「A.米国の輸出額が増えても他国産と置き換わる場合もあり、米国の輸出増がそのまま日本の生産減には繋がらない」「B.影響を緩和する国内対策を日本の試算に織り込んでTPP対策の効果が発揮されたという前提で生産量は維持できる」「C.米の場合は米国とオーストラリアに合計7万8400トンの国別輸入枠を設けるが、同量の国産米を備蓄で吸収するなどで影響はない」などが差の理由だとしているが、Aは甘すぎ、Bは対策の効果が不明であるうちに試算に織り込むのはおかしく、Cは一時的に備蓄してもそれが出荷される時が必ずあるのでタイムラグにすぎない。

 そのため、*2-2のように、JA長野県グループは街宣車でTPPの情報公開等を訴える活動を始め、秋の臨時国会での審議に向けて、「国民への丁寧な説明と十分な審議を求めます」「TPPは農業農村、保険医療、食の安全、雇用など、私たちの生活に大きな影響を及ぼす恐れがあります」などのメッセージを流しているが、これは、TPPによってこれまで作り上げてきた農地や農業を打ちのめされる可能性の高い人たちとして当然のことである。

 このような状況の中、*2-3のように、TPPの審議日程が窮屈であるため強行採決の可能性もあるとのことだが、*2-4のように、十分な情報開示もなく、試算は甘く、そのため本当の議論が深まらず、農家も国民も納得していないのである。そのような状況で、TPP発効を見据えた農業“改革”を行うのは、農家にとっても国民にとっても不幸だ。そして、この間、TPPに関わったKey Personは、甘利経済再生担当相(神奈川13区)、斎藤自民党農林部会長(千葉7区、経産省出身)、石原TPP担当相(東京8区)、小泉自民党農林部会長(神奈川11区)など、農業に殆ど関わりのない地域を地元とし、農業に関する知識のない人たちが多いため、この人事で国益を考慮した交渉をしたとは思えない。

 なお、小泉自民党農林部会長が強く求めている全農の株式会社化も、そうしなければならない必然性がないため根拠を説明することはできず、農薬や肥料などの生産資材価格を政治が決めるのは市場主義に反している。そのため、自由競争を促すのがあるべき姿だ。

 そして、佐賀県の場合は、私が国会議員となった2005年からすぐに、公認会計士として多くの日本系・外資系企業の製造業・サービス業を見てきた目で佐賀県の農業を見て改革案を出し、全農はじめ農協が協力して農業改革にとりかかり、すでに必要な改革は進んでいるのだ。そのため、全農の中野会長(佐賀県の農協出身)が言われる「方向に間違いはない」「改革には既に鋭意取り組んでいる」というのは本当であり、農地の大規模化、機械化、米以外への転作などの改革が遅れているのは東北であって、九州では進んでおり地域差があるため、日本全国を一緒にひっくり返せばよいわけではないのである。

(4)全農“改革”の不合理
 全農改革を進捗管理するとして、*3-1のように、資材価格引き下げや農産物の流通構造の改革を議論しているのは、20年以上も時代遅れだ。資材価格は競争の自由度を増せばよく、*3-2、*3-3のように、化学肥料を韓国から買ってコストを下げるだけの発想では、日本の農産物は栄養価も味も悪くなり、農地が荒れることは経験済である。

 それよりも、*3-5のように、今まで捨てていたものを有機肥料として活用すれば、農業だけでなく漁業にも役立ち、その地域や作物に合った堆肥をつくることもできる。ちなみに、佐賀県の場合は、肉牛の排泄物を肥料として使い、化学肥料は土壌を計って足りないものを補充するようにしてコスト削減しており、りっぱな作物ができている。そして、これらは、何も知らない人がめくらめっぽうに壊すのではなく、それなりの知識のある人が工夫し、地域を総動員して初めて行い得るものである。

<愚かな“農業改革”>
*1-1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20160920&ng=DGKKZO07382980X10C16A9KE8000 (日経新聞 2016.9.20) 日本の産業競争力(上)創造的破壊、起死回生の鍵、強い経営で攻勢に転じよ 三品和広 神戸大学教授 (1959年生まれ。ハーバード大企業経済学博士。専門は経営戦略論)
ポイント
○生産現場は強いが大変化には対処できず
○米産業はネットワークの経済で強み発揮
○破壊を伴う創造行為が産業競争力を左右
 産業競争力という概念が脚光を浴びるようになったのは1980年前後のことだ。日本で製造されたテレビや自動車が欧米諸国の市場を席巻し、貿易摩擦を引き起こし始めた時期にほかならない。ハイテクの最先端に位置する半導体メモリーのDRAMの品質で日本製が米国製を上回るというリポートを米ヒューレット・パッカードが公表、衝撃が走ったのも80年のことだ。予想外の展開に遭遇して、欧米諸国が産業競争力の分析に乗り出したのも無理はない。以下では日本の絶頂期と、それに続く衰退のプロセスに関する一つの解釈を述べる。日本の急伸が世界の意表を突いたのは、日本が保護貿易や為替管理と決別してから15年ほどしか経過していなかったからだ。決別当初は、日本の市場は輸入品に制圧され、企業は買収されるという悲観論が渦巻いていた。それが杞憂(きゆう)だったとわかるころには石油ショックが勃発し企業倒産が相次いだことから、新たな悲観論が日本を覆いつくした。日本製品が貿易摩擦を引き起こすなど、誰も夢想だにしなかったはずだ。競争力という概念が国次元ではなく、また企業次元でもなく、中間の産業次元に設定されたのは、明確な理由による。いくら日本が注目を集めたといっても、農業のように後進性の目立つ産業があった。企業次元に転じてトヨタ自動車を俎上(そじょう)に載せても、やはり住宅のように競争力に劣る事業がある。これに対し日本の競争力が目立った産業では、例外を見つけるのが難しかった。テレビではソニーや松下電器産業(現パナソニック)のみならず下位の三洋電機や日本ビクターですら、自動車ではトヨタのみならず下位のスズキやいすゞ自動車ですら、DRAMでは東芝やNECのみならず下位のシャープや沖電気工業ですら、競争力を発揮した。この事実が世界を驚かせた。しかし日本の絶頂期は長く続かない。いまやテレビとDRAMで産業競争力を誇るのは韓国で、日本企業は事業縮小・撤退を余儀なくされた。自動車でも日産自動車、マツダ、三菱自動車が外資に救済を仰ぐ事態を迎え、もはや産業競争力は死語と化した観がある。なぜ日本の絶頂期は一瞬で終わってしまったのか。そもそも日本の産業競争力は、生産現場や実務組織に根源を置いていた。新卒採用した社員を比較的狭い守備範囲に張り付けることで、真面目に働く人間なら誰でも練度が上がっていく体制を構築し、そこに人事考課と昇進制度を入れて社員の間で息の長い競争を促していく。さらに歩幅の小さな定期異動により社員が思考停止に陥る危険性を排除したうえで、それでも起きかねないミスを稟議(りんぎ)で組織的に潰していく。こうした工夫は、一方で目に見えるモノの設計や製造において大きな威力を発揮するが、他方で目に見えない犠牲を伴った。そこには経営人材の育つ余地がなく、最強の管理人材が経営にあたる結果、大きな変化に対処できなくなってしまったのである。この弱点を米国は鋭く看破して、反攻策を周到に準備した。やれ現地生産、やれ市場開放、やれ内需拡大と高飛車の要求を積み重ね、それに円高誘導やココム(対共産圏輸出統制委員会)規制を絡めて日本の霞が関と産業界を横から揺さぶるというのが、その骨子だ。反攻が一巡すると、仕掛けた米国も驚くほど、日本企業の経営は暴走、または迷走し始めた。その経緯については拙著「戦略暴走」(2010年)で触れている。米国は国際政治力を駆使して、グローバリゼーションの時代を呼び込む策も打っていた。新たに新興国市場の開拓が競争の焦点になると、経営上のボトルネックはモノづくりから販路にシフトする。過去の経験が生きない展開の中で、日本企業は大挙して安易な合弁契約に走り、新興国で悪戦苦闘を強いられた。執拗な波状攻撃を受けて、日本は産業競争力を著しく低下させた。個社次元で耐え抜いたのはトヨタくらいだ。企業経営はモノづくりだけでは成立せず、先行きが不透明になるほど、または多面攻撃を受けるほど、経営が浮沈を分けてしまう。そこに80年代の日本は致命的な弱点を抱えていたことを、われわれは反省材料とすべきであろう。ただし反省材料はもう一つある。反攻に転じた日本を米国が封じ込めるという第二幕が控えているからだ。そこで彼らが武器としたのはインフォメーション・スーパーハイウエー構想だった。これは副大統領になる前のアル・ゴア上院議員が提唱していたもので、最終的にインターネットの一般開放に結実した。米国の起死回生の一手により、世界を支配する原理は「規模の経済」から「ネットワークの経済」に移行した。同じモノを大量につくって安くするより、同じプラットフォームを多くの人々が使うことで生まれる便益が企業間競争の行方を左右し始めると、戦略の要衝は大きくシフトする。チャンスの窓が開いている期間は短く、初動で結果が決まってしまう。プラットフォーム間の短期決戦を制したのはいまのところグーグル、フェイスブック、アップル、アマゾン・ドット・コムなど米国ベンチャー勢に限られる。こうした変化を日本も看過していたわけではない。ハイビジョン映像用のMUSEデコーダー(信号変復調器)、総合デジタル通信網(ISDN)、第5世代コンピューターなど、国が資金を注ぎ込んで技術革新を先導しようとしたが、軒並み失敗に終わった。テレビ産業や自動車産業も日本流の「イノベーション」、すなわち技術革新に再起を懸けたが、薄型テレビやハイブリッドカーは救世主となり得なかった。薄型テレビを主導したシャープは台湾企業の救済を仰ぐに至り、ハイブリッドカーは米国市場で占有率3%台に到達したあたりで頭打ちとなっている。国はもはや産業競争力のけん引役とはなり得ない。社員間の公平な競争を入社後四半世紀も引っ張る日本の大企業も、しかりである。なぜならば、いま世界を席巻するイノベーションは破壊を伴う創造行為で、純然たる技術革新とは一線を画しているからだ。例えばアップルはデジタルカメラ、ビデオ、電子辞書、電卓、携帯電話、携帯情報端末(PDA)など、日本が得意としてきた産業多数を破壊した。破壊の標的となっている産業に身を置く企業が正面から対抗すれば、身の丈が縮むことは避けられない。それどころか過去に雇用した人々を抱え続ける企業は防戦に打って出ざるを得ない。護送船団の先頭に立つ国も同類だ。エレクトロニクスを押し流した創造的破壊の波は、既に自動車や産業機械に矛先を向けている。その次は医療や農業や物流に襲いかかる気配が濃厚だ。守勢をとっても勝ち目は見えない。しからば、破壊の標的を自ら断ち切り、攻勢をとる展開に持ち込むほうが得策であろう。そのためには、まずは実務の強さに経営の強靱(きょうじん)さを併せ持つよう日本企業自体を創造的に破壊する必要がある。一連のガバナンス(統治)改革で、その作業は緒に就いた。水面下では、新たな日本企業を一から興す作業も静かに始まっている。あとはどこに起死回生の一手を求めるかだ。そこで妙手が出れば日本が産業競争力を回復する日は意外と近いのかもしれない。

*1-2:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12589160.html
(朝日新聞社説 2016年10月3日) TPPと国会 不安解消へ審議尽くせ
 交渉を主導した米国では、民主、共和両党の次期大統領候補がそろってTPPへの反対姿勢を示し、発効への道筋は不透明になっている。そんな中で、日本の国会ではTPP承認案と関連法案の審議が本格化する。政府・与党はTPP承認を急ぐ構えだ。発効への機運を高めて他国の手続きを後押ししつつ、米国で高まる再交渉論を牽制(けんせい)するのが狙いだ。野党側は、農業分野などを懸念する民進党をはじめ反対・慎重論が強い。TPPをめぐっては今春の通常国会で審議入りしたが、議論が深まらないまま継続審議になった。いま、あえて審議を再開するというのなら、今後の暮らしや農業など国内業界に予想される影響について、丁寧にかつ徹底的に議論する必要がある。衆院TPP特別委員会の理事を務める自民党議員が「強行採決という形で実現するよう頑張る」と発言し、辞任する騒動があった。「承認ありき」で数の力を頼むことは許されない。与党は肝に銘じてほしい。そのうえで、野党を含めて望みたいのは、TPPで予想されるデメリットとその対策をしっかりと検証することだ。TPPの対象は幅広い。貿易を活発にするためにモノの関税をなくしたり、引き下げたりする。投資や金融、小売りなどのサービス分野の規制を減らす。著作権や特許、労働に関する規定も各国で歩調を合わせる。通商国家として発展してきた日本にとって、グローバル化への対応は避けられない。ただ、各国が妥協を重ねて交渉をまとめただけに、分野や項目ごとにプラスとマイナスが入り交じるのも確かだ。生活の安全・安心が脅かされないか、国内業界が打撃を受けて雇用が失われないか、といった不安は根強い。代表例が農業だろう。農林水産物の8割にあたる約2千品目の関税が撤廃され、ほかの品目の多くも引き下げられる。海外産の輸入が増えるのは必至で、消費者の食卓への不安のほか、農家の反対も続いている。政府は昨年末にまとめた分析で、コメへの影響について「(直前に決めた)対策の効果で、国内の生産量は減らない」と結論づけた。影響があるから対策を打つのに、順番が逆だ。政府をただし、情報公開を徹底させる。TPPの負の側面と向き合い、政府の対策が必要かつ十分かどうかを考える。そんな国会審議を求める。賛否の結論ありきの論戦は不毛だ。

*1-3-1:http://qbiz.jp/article/95543/1/
(西日本新聞 2016年10月7日) 首相、TPP他国に先駆け承認を 関係閣僚会議で
 環太平洋連携協定(TPP)に関する関係閣僚会議が7日、首相官邸で開かれ、協定の承認案と関連法案の早期成立を目指すことを確認した。出席した安倍晋三首相は「他国に先駆けて国会で協定を承認し、早期発効に弾みをつける。自由貿易で経済発展を遂げたわが国の使命と確信している。この国会でやり遂げなくてはいけない」と述べた。承認案と関連法案は衆院特別委員会での審議入りを控えている。閣僚会議ではTPPを担当する石原伸晃経済再生担当相が、会談した各国要人と再協議を行わないことで一致したと報告した。石原氏は会議後の記者会見で、米大統領選で共和、民主両党の候補がTPPに反対していることに関連し「日本が率先して(承認を)行うことで、オバマ大統領による議会承認を後押しする」と述べた。TPPに関する関係閣僚会議は昨年9月以来。政府が機運を高めようとしているほか、経済界からも早期承認の要望が出ている。

*1-3-2:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20161005&ng=DGKKZO08017530V01C16A0PP8000 (日経新聞 2016.10.5)民進、歯切れ悪いTPP反対、党内に隠れ賛成派も
 今国会の焦点は、環太平洋経済連携協定(TPP)承認案の行方に移る。野党第1党の民進党は国内の農産物保護が不十分で、自動車産業などへの利点も少ないなどと主張し反対する。党内には推進派もいるが、発言力のある反対派に配慮せざるを得ない党内事情もある。歯切れの悪い印象はぬぐえない。民進党は3月の結党時に「経済連携協定によって自由貿易を推進する」との立場を掲げた。しかし、安倍政権が合意した協定案は「国益が守れたとは評価できない」との考え方に立つ。最大の反対理由は、牛肉・豚肉など農林水産物の重要品目の保護を求めた衆参農水委員会の決議との整合性だ。決議では重要品目を「聖域」と位置づけ、10年を超す段階的な関税撤廃も認めないなどとした。民進党は牛肉・豚肉の大幅な関税引き下げなど「聖域として守れた水準ではない」(大串博志政調会長)との立場だ。自動車分野で得た「成果の乏しさ」も強調する。完成車の対米輸出で関税撤廃まで約30年の期間を設けたことを「関税には触らないと言っているに等しい結果」と批判。政府が輸出増の試算を示せていないことも問題視。大串氏は4日の記者会見で「攻めきったとはいえない」と語った。3つ目は「交渉過程が情報開示されていない」との主張だ。先の通常国会中に示された日米の交渉録は全面的に黒塗りだった。TPP参加判断の根拠となった政府の国内農業への影響試算についても正確性を疑問視している。交渉前に3兆円と見積もった農林水産物の生産額減少が、大筋合意後の農林水産省試算では最大2100億円にまで圧縮された経緯が不透明だとしている。党内事情も大きい。党の見解はTPP推進派と反対派が混在する党内の「最大公約数」で意見を集約しただけとの見方もある。9月末に開いた細野豪志代表代行のグループ会合では「農村ではなく都市部でどう説明するのか」などの意見が相次いだ。自動車関連企業が集積する中部地方選出の議員は「民進党の主張は話にならない」と言い切る。旧民主党政権下では当時の野田佳彦首相(現民進幹事長)が、党内反対派を押し切って関係国との事前協議入りを決めた経緯があり、これも民進党の見解の分かりにくさにつながっている。

*1-4-1:https://www.agrinews.co.jp/p38505.html (日本農業新聞 2016年8月23日) 総額5739億円 4割増 TPP対策に3453億 補正予算農水関係
 農水省は23日、農林水産関係の総額を5739億円とする2016年度第2次補正予算案を、自民党の農林関係合同会議に示し、了承された。2015年度補正予算を43%上回る大幅増。このうち環太平洋連携協定(TPP)関連対策には同11%増の3453億円、土地改良(農業農村整備)関連事業は同77%増の1752億円を確保した。24日に閣議決定する。目玉と位置付ける「中山間地域所得向上支援対策」には、300億円を計上した。内訳は、中山間地域で収益性の高い農産物に取り組む際の計画策定に5億円、計画に基づく基盤整備に70億円、施設整備に25億円。また、産地パワーアップ事業と畜産クラスター事業の優先枠各50億円、土地改良事業の優先枠100億円と組み合わせる。輸出力の強化策には270億円。そのうち空港や港に近い卸売市場のコンテナヤード(集積場)など、国内外の輸出拠点の整備が203億円を占める。農林水産分野のイノベーション(技術革新)推進にも117億円を計上する。TPP対策のうち産地パワーアップ事業に570億円、畜産クラスター事業には685億円を計上。いずれも前年度を1割超上回る。また、農地のさらなる大区画や汎用(はんよう)化に370億円、水田の畑地化や畑地・樹園地の高機能化に496億円、草地整備にも94億円を盛り込んだ。この他、飼料用米の拡大に伴い、水田活用の直接支払交付金の財源を144億円積み増す。熊本地震などの災害復旧等事業には713億円を計上した。大幅増額を受け、自民党の西川公也農林水産戦略調査会長は会合で「すばらしい補正予算ができた」と指摘。今月末に概算要求する17年度予算でも、万全な金額を確保したい方針を強調した。.

*1-4-2:http://qbiz.jp/article/94797/1/ (西日本新聞 2016年9月27日) TPP対策、農家から拠出金も 強制徴収で販売促進制度を法制化
 農林水産省は27日、環太平洋連携協定(TPP)対策の一環として、農家から拠出金を集め、国内外での農産物の販売促進に充てる「チェックオフ制度」の論点を自民党の会合で示した。制度を法制化する場合は、拠出金の強制徴収が避けられないとの考えだ。拠出金の強制徴収は、恩恵へのただ乗りを防止し、制度の公平性を確保するのが狙い。しかし、お金を納付しない場合は、罰則の適用も考えられるため、制度導入には一定の負担を強いられる農家から幅広い理解を得る必要がありそうだ。農水省が会合で示した資料によると、米国などで導入されているチェックオフ制度は、集めたお金の使い道を、国内外での販売促進や、調査研究などに充てると法令で決めている。日本で導入する場合は、強制徴収に見合うお金の使い道や、金額を定める必要があると説明した。お金を強制徴収される農家の同意が不可欠とも指摘した。海外では、法制化の際に品目ごとの業界団体が自ら農家に説明しているほか、業界の任意の仕組みから始め、業界内の合意形成に取り組んでいるとした。会合後、この検討課題を担当する福田達夫衆院議員は記者団に「(日本では)養豚業界が熱心だ。まずは業界がどういうことをやりたいのか提案してほしい。まだ段階として詰まっていないところがある」と述べた。

<TPPは日本政府主導であること>
*2-1:http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=37594
(日本農業新聞 2016/5/21) TPP試算 日米で大きな開き 国内対策 効果に疑問も
 環太平洋連携協定(TPP)の経済効果をまとめた日米両政府の試算が出そろった。米国は日本への農産物輸出が約4000億円増えるとはじくが、日本は米国以外の影響も含めて生産減少額は1300億~2100億円にとどまると見込む。日本政府の試算には、以前から影響を過小評価しているとの指摘もあり、試算について一層丁寧な説明が不可欠だ。米国の政府機関・国際貿易委員会は18日、TPPが米国経済に与える影響を分析した報告書を出した。品目別に見ると、米国の試算では米の対日輸出額は23%増えるが、日本の試算では生産減少額はゼロ。牛肉も、米国の試算で対日輸出は923億円増えるが、日本の試算では生産減少額が311億~625億円で差がある。米国の輸出額が増えても他国産に置き換わる場合もあるため、輸出増加がそのまま日本の生産額減少につながるわけではない。だが、影響を緩和する国内対策を日本の試算に織り込んでいることが試算の差の大きな理由だ。日本政府がまとめた影響試算では、関税撤廃・引き下げによる国産価格低下の影響だけを見ている。コスト削減などのTPP対策の効果が発揮されたという前提で生産量は維持できるとする。例えば米は、米国とオーストラリアに合計7万8400トンの国別輸入枠を設けるが、同量の国産米を備蓄で吸収することなどを理由に影響はないとする。一方、米国の試算ではこうした対策を織り込んでいない。日米の違いについて農水省は「前提が異なるため、単純に比較できない」とする。TPP対策を行うことが既に決まっているため、対策の効果を入れない状態で再試算する考えはない考えも度々示している。ただ、対策の効果が具体的に見えない段階で試算に織り込むのは適当ではなく「過小評価」との批判が野党から出ている。

*2-2:https://www.agrinews.co.jp/p38582.html (日本農業新聞 2016年9月2日) TPP情報開示 十分な審議訴え 街宣車県内リレー JA長野県グループ
 JA長野県グループは1日、街宣車で環太平洋連携協定(TPP)の情報公開などを訴える活動を始めた。2台の軽トラックが県内JAをリレーして、9日まで各地を巡回。秋の臨時国会での審議に向け、県民にアピールする。街宣車は、荷台に「国民への丁寧な説明と十分な審議を求めます」などと描いた看板を掲示。スピーカーからは「TPPは農業農村、保険医療、食の安全、雇用など、私たちの生活に大きな影響を及ぼす恐れがあります」などのメッセージを繰り返し流す。同日、長野市のJAビルを出発した街宣車は、県東部のJA長野八ケ岳と県南部のJAみなみ信州に引き渡された。今後、各JAが街宣車を引き継ぐ。9日には、同グループと生協など38団体でつくる連絡会が同市内でTPP学習会を開催。街宣車は、この会場をゴールに県内を走る。JA長野中央会は「TPPは農業の問題だけにとどまらない。県民の皆さんに一緒に考えましょう、と伝えたい」(農政対策課)と意気込む。.

*2-3:https://www.agrinews.co.jp/p38540.html (日本農業新聞 2016年8月27日) TPP 審議日程 窮屈に 強行採決の可能性 政府与党
 環太平洋連携協定(TPP)承認案の審議が、9月召集の臨時国会で再開する。11月8日の米大統領選までの衆院通過を目指す政府・与党。だが民進党代表選の影響で召集日は26日にずれ込む見通し。審議日程が窮屈になり、強行採決の可能性もある。政府・与党は、臨時国会を9月13日に召集し、TPPの審議時間を確保する構えだった。だが民進党代表選が15日に設定され、26日召集で調整せざるを得なくなった。同党の新執行部が決まらなければ、事実上、審議が進められないためだ。約2週間のずれ込みだが、政府・与党には「かなり痛い」(政府筋)。米大統領選候補がTPP反対を強調する中、「大統領選までに衆院を通過させ、日本が承認する見通しを付ける」(同)ことで、米国の早期批准を促す考えがあるからだ。26日召集になれば、2016年度第2次補正予算案の審議などを優先し、衆院TPP特別委員会の審議再開は、10月中旬にずれ込むとみられる。参院選でTPP反対を掲げた民進、共産などの野党の厳しい追及は必至で、11月8日までに衆院通過が「微妙」(自民党幹部)な情勢だ。円滑な審議に向け、自民党は臨時国会で衆院TPP特別委員長を西川公也氏から塩谷立氏に代える。通常国会では、西川氏の著作とされる「TPP内幕本」が審議停滞の一因となったためだ。審議日程を野党と調整する筆頭理事も森山裕前農相に交代し、万全を期す。与党側は、衆院通過までに、通常国会(約23時間)と合算して40時間程度の審議を想定する。だが野党はゼロからやり直すとの考え。8月に就任した山本有二農相らのTPPへの答弁能力も未知数で、政府・与党内には「与党だけで強行採決もやむを得ない」との指摘もある。

*2-4:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/359145
(佐賀新聞 2016年9月24日) 「TPP議論不十分」 全農・中野会長、国に疑問
 環太平洋連携協定(TPP)の承認案・関連法案審議が焦点となる臨時国会(26日召集)を前に、全国農業協同組合連合会(全農)会長を務める中野吉實JA佐賀中央会会長は、佐賀新聞社のインタビューに応じた。早期成立を目指す政府、与党の姿勢に対し、「議論は尽くされておらず、国の主張を農業関係に押し付けようという風潮があるようだ」と疑問を呈した。通常国会で政府がTPP関連文書をほとんど黒塗りで開示したことに触れ、「黒塗り資料では議論は深まらない。農家も納得していない」と批判し、十分に議論するようくぎを刺した。TPP発効を見据えた農業改革の一環で、小泉進次郎自民党農林部会長が強く求めている全農の株式会社化には、海外企業から買収される懸念を示し「株式会社化の強制は断固反対と言わざるを得ない」と明言した。農薬や肥料など生産資材価格を巡る自民党プロジェクトチームとの議論については、「改革に後ろ向きと言われるが、自己改革には鋭意取り組んでいる」と強調した。

<全農“改革”>
*3-1:https://www.agrinews.co.jp/39043?page=2 (日本農業新聞 2016年9月30日) 全農改革を進捗管理 来週にも提言 業界再編へ法整備 規制改革推進会議
 政府・与党は11月に取りまとめる環太平洋連携協定(TPP)中長期対策の一環で、資材価格引き下げや農産物の流通構造の改革を議論している。29日にはこうした農業改革を集中議論する未来投資会議の「ローカルアベノミクスの深化」会合と規制改革推進会議の農業ワーキンググループ(WG)が合同会議を開き、WG座長の金丸恭文フューチャー社長が検討方向の試案を示した。試案は、両会議による提言のたたき台となる。試案では、資材価格の低減などへ関連企業の競争を促すため、業界再編が必要だと強調。再編を起こす「重要なツール」として、全農の資材の仕入れや農産物販売の改革を位置付けた。改革を促すため、規制改革推進会議による農協改革の進捗管理の一環として、全農の組織体制の見直しや役職員の意識改革、外部人材の活用などを重視して管理していくとした。業界再編に向けては、税制支援などを措置する産業競争力強化法や、公正取引委員会の監視強化など独占禁止法の活用も促した。改革の着実な推進を担保する法制度を、次期通常国会で検討することも求めた。両会議の提言を受け、自民党農林水産業骨太方針策定プロジェクトチームを中心に、具体策の検討が加速する見通しだ。一方でJAグループも、全農が扱う肥料の銘柄数を絞り込むことで工場の集約化につなげるなど、業界再編を目指す方針を既に掲げている。ただ、政府・与党内には、改革の踏み込みを求める声も強い。11月のTPP中長期対策の取りまとめ以降も、規制改革推進会議の進捗管理を通じて、全農を中心とするJAグループの改革の実践に、厳しい目が向けられる構図が続きそうだ。.

*3-2:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20160907&ng=DGKKZO06959210X00C16A9MM8000 (日経新聞 2016.9.7) 農業改革、肥料値下げ促す JA全農が高コスト批判に対応 銘柄数半減
 全国農業協同組合連合会(JA全農)は、国際的にみて割高との批判が強い肥料や農機の生産コスト削減策を打ち出す。コメ農家が使う肥料の銘柄をいまの約2000種から半分に減らし、1品種あたりの生産量を増やして値下げにつなげる。肥料や農機など農業資材をめぐっては、環太平洋経済連携協定(TPP)への対応策を話し合う自民党のプロジェクトチーム(委員長・小泉進次郎農林部会長)がJA全農に値下げを強く求めている。JAグループが近く公表する改革案は、TPP参加をにらんで農業の高コスト体質の改善を迫る政府・自民党の批判をかわす狙いもある。国内でコメ向けの肥料を製造するメーカーは約3000社にのぼる。JA全農はこうしたメーカーから肥料を買い取り、地域の農協を通じて農家に販売している。JA全農が扱うコメ向け肥料は地域限定品など約2300種に及ぶ。成分や効果が似通った製品が異なる銘柄で売られているケースも目立つ。肥料メーカーは少量多品種の生産体制をとるため、JA全農への卸価格はどうしても高くなる。JA全農はメーカーから買い取る銘柄の数を「半分あるいはそれ以下」(幹部)に抑えて卸価格の引き下げを促す。肥料代が安くなれば、農家の生産コストは下がる。農林水産省も銘柄数の増加に歯止めをかける制度改正を検討する。JA系の肥料メーカーのなかには銘柄の削減でJA全農との取引が減り、経営が苦しくなるところも出てくるとみられる。「業界再編のきっかけになる」(業界関係者)との見方は多い。農水省によると、韓国のある肥料メーカーは生産能力136万トンに対し、銘柄数は52。一方、日本のあるメーカーでは生産能力31万トンに対し、銘柄数は500近い。日本の肥料価格は平均で韓国の2倍に達している。JA全農は生産コストの2割を占める農機でも調達方法を見直す。大規模な農業法人と連携し、安価なコンバインやトラクターを農機メーカーから共同購入する仕組みをつくる。大規模な農業法人はコスト削減を狙って簡素な農機を購入する傾向があるが、JA全農での扱いは不十分だった。また農薬では開発費を抑えたジェネリック農薬の発売を検討する。

*3-3:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20161004&ng=DGKKZO07931020T01C16A0KE8000 (日経新聞 201.10.4) 農業の効率化と地方創生(3)化学肥料で穀物単収6~10倍に 東京大学准教授 川島博之
 第2次世界大戦が終わったころから農業の効率が飛躍的に向上しました。効率向上の要因は農薬、農業機械など色々ありますが、最大の功労者は空気中の窒素から作る化学肥料です。農作物の生産量を増やすには、(1)農地面積を広げる(2)単位面積当たりの収穫量(単収)を増やす――の2つの方法があります。人類が農業を始めてから長い間、単収はほぼ一定でした。人類は農地面積を広げることに注力し、それが土地の奪い合いにつながりました。現在でも領土問題は戦争の最大の原因ですが、それは人類に農地が重要だというメッセージが刻み込まれているためでしょう。19世紀に土壌中の窒素含有量を増やすと、穀物単収が増えることが分かりました。欧州では農地に窒素を供給する方法として、チリで採掘された硝石が使われました。しかし、地下資源には限りがあるため、19世紀末の欧州では、硝石を掘り尽くすと食料危機になると心配されていました。その悩みを解決したのが空気中の窒素から化学肥料を作る技術です。20世紀初頭のドイツで開発され、開発者の名前にちなんでハーバー・ボッシュ法といいます。空気が原料なので、いくらでも生産できます。化学肥料は著しい効果を発揮しました。人類が農耕を始めてから長い間、穀物単収は1ヘクタール当たり1トン程度でした。一生懸命に耕し、苦労して堆肥や厩肥(きゅうひ)を投入しても、同2トン程度にしかなりませんでした。それが、化学肥料を投入すると目を見張るような速度で増加し、現在、先進国では穀物単収は同6~10トン程度になっています。あまりにも化学肥料が効いたため、化学肥料に不信感を抱く人々もいます。副作用もあると考え、従来型農法である有機農業に取り組んだりしています。しかし、化学肥料なしでは、現在の世界の73億人もの人口を扶養できません。もし、化学肥料を全く使用しなければ、地球上にはその半分ぐらいの人々しか生きることができないでしょう。一方、アフリカなどの発展途上国でも先進国並みに化学肥料が使われるようになれば、地球は現在の2倍の人口でも楽に扶養できると思います。

*3-4:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B7%9D%E5%B3%B6%E5%8D%9A%E4%B9%8B 川島博之氏の略歴のみ引用:東京都生まれ。1977年東京水産大学卒業、1983年東京大学大学院工学系研究科博士課程単位取得の上退学。東京大学生産技術研究所助手、農林水産省農業環境技術研究所主任研究官、ロンドン大学客員研究員などを経て、現在、東京大学大学院農学生命科学研究科准教授。

*3-5:http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=37949 (日本農業新聞 2016/6/18) 大地と海 連携 ホタテの天敵・ヒトデを堆肥化 北海道・JAつべつ×網走、西網走2漁協
 漁師の悩みを農家が解決する試みが、北海道北東部の津別町で始まっている。キーワードは「ヒトデ」。特産のホタテを食い荒らす天敵を、堆肥にして作物を育てようという作戦だ。ヒトデの処分費用、堆肥の原料コスト双方が削減できる。堆肥化に挑むのはJAつべつ。来年から本格的に畑作に利用する。漁協と共に川の水質を守る植樹活動にも取り組み、大地と海をつなぐ活動を展開する。農家と漁師が手を組んだのは、網走湖の汚染問題が背景にある。湖には網走川の淡水が流れ込んでいるが、2001年の台風で農地の土砂が流出し、湖が汚染されて真っ赤になり、漁業を脅かした経緯がある。そこでJAと網走、西網走2漁協が話し合いを重ね、11年に「網走川流域農業・漁業連携推進協議会(だいちとうみの会)」を立ち上げ、流域の環境保全に乗り出した。「農業と漁業がしっかり手を組んで地域を支えていかなければならない。われわれには上流域としての大きな責任がある」と、同協議会副幹事長を務める酪農家、山田照夫さん(69)は意義を強調する。双方の問題解決につながる試みの一つが、ヒトデの堆肥化だ。ヒトデはオホーツク海の特産であるホタテを食べるため、漁協にとっては天敵。年間600トンものヒトデが大発生することもあり、漁師の悩みの種だ。そこでJAは13年から、ヒトデの堆肥化を考え始めた。ホタテと共に水揚げされた20トンほどのヒトデを搬入し、樹皮を発酵させたバーク堆肥を混ぜることで、完熟堆肥を作ることに成功した。試しにテンサイの畑に施用したところ、収量や品質は問題ないことが分かった。漁協は従来、ヒトデの処分を1キロ15~20円で業者に頼んでいた。600トンを処理すれば、費用は最大で1200万円にも上る。堆肥化が軌道に乗れば、この膨大な処分費用の削減につながる。JA側も堆肥の原料コストを削減でき、互いにメリットになる。JA営農部の有岡敏也部長は「ジャガイモなど他の作物にヒトデ堆肥を使っても、収量や品質には問題ないだろう」と手応えをつかんだ。漁師の間では「ヒトデには虫が嫌がる成分がある」と言われており、堆肥にもその効果が表れればさらにメリットが生まれる。今年は秋にヒトデを搬入して堆肥化し、17年産の作付けから本格活用する計画だ。
●植樹、清掃も
 協議会は毎年、植樹活動にも取り組んでいる。「大地と海をつなぐ植樹」と題し、14日には農家と漁師ら130人が参加し、アオダモやハンノキなど300本以上を植えた。こうした活動の結果、網走川流域の網走市、美幌町、大空町の農業関係者も集まる場になり、女性部からも参加する。26日には4市町で流域の一斉清掃事業も開かれる。協議会の新谷哲章幹事長は「土壌環境や水質への視線は今後さらに厳しくなってくる。漁業、農業が経済を支える町が多い道内で、モデルとなる取り組みにしていきたい」と先を見据える。


PS(2016.10.10追加):*4に、「①酪農家が、補助金の関係で原料生乳の販売先を自由に選べない」「②企業による農地の実質所有解禁は国家戦略特区だけの例外にしてはならない」「③生産性の低い農業資材メーカーの再編などを支援する新法の制定を提言した」「④重要なのは公正で自由な競争が安くて優れた商品やサービスを生む環境を整えることだ」と書かれているが、このうち①は、農業者の政治活動を農協が行うのではなく、農業者の政治連盟を作ることで解決するだろう。また、②は農業生産法人を作ることにより既に解決されており、本当に農業をやろうとする企業は、JR九州のように農業生産法人の子会社を作って既に農業に参入している。にもかかわらず株式会社でなければ農業ができないなどとする企業が農業に参入することは(理由を長くは書かないが)むしろ弊害の方が大きい。さらに、農業機械価格が高すぎるのは問題だが、その原因は機械メーカー等の独占・寡占であるため、③のように政府がメーカーの再編などを支援する新法を制定するのは逆効果であり、④のように公正で自由な競争を行って外国からでも自由に機械や資材を購入できるよう、公正取引委員会がしっかり働くのが筋である。

*4:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20161010&ng=DGKKZO08196920Q6A011C1PE8000 (日経新聞社説 2016.10.10) 自由な競争で農業の成長力を高めよう
 安倍晋三首相は今国会の所信表明演説で、生産から流通、加工まで農業分野の構造改革を進める決意を表明した。農業の競争力を高めるために肝心なのは、成長を阻む旧弊や横並びの保護策を見直し、企業の新規参入を活発にして創意工夫を引き出すことだ。改革を加速してもらいたい。安倍政権は農業協同組合制度の改革などで一定の成果をあげた。しかし、農業分野には旧態依然とした制度が残る。たとえば酪農家は事実上、原料生乳の販売先を自由に選べない。50年も前に制定された暫定措置法が存続し、生乳を原則すべて地域ごとの「指定団体」に出荷しないと補助金がもらえない仕組みだからだ。政府の規制改革会議は5月にまとめた答申で規制緩和の結論を先送りしている。新たに発足した規制改革推進会議は、今秋まとめる改革策で自由な競争環境の実現を提言してほしい。農林水産省の統計でコメの生産額は2014年で1兆4370億円、生乳は6979億円と農産物の1、2位を占める。しかし、03年と比べるとコメの生産額は38%減り、生乳も2%弱の増加にとどまる。トマト(22%増)やレタス(31%増)に比べ成長力は劣る。競争力の弱い農産物は手厚い保護で守る。そんな競争を排除する横並びの保護政策が成長を阻害してきた結果だ。これでは将来の展望が描けない。企業による農地の実質所有解禁は国家戦略特区だけの例外にしてはならない。成長を後押しする競争には企業の新規参入が不可欠だ。規制改革推進会議と未来投資会議は6日に合同会合を開き、生産性の低い農業資材メーカーの再編などを支援する新法の制定を提言した。農業資機材の価格や農産物の流通コストの高さが農業所得の拡大を阻む要因とみており、再編で効率化を促す狙いがある。非効率な企業の再編は必要だ。ただ、より重要なのは公正で自由な競争が安くて優れた商品やサービスを生む環境を整えることだ。これまで大部分の農家は肥料や農薬、農業機械を地域の農協から購入してきた。一般の消費財のように価格の安さやサービスの内容を農家に訴求し、競う環境が実現すれば再編はおのずと進む。農業分野に自由な競争を阻害する構造問題はないか、公正取引委員会もこれまで以上に目を光らせてほしい。


PS(2016.10.10追加):*5のように、麻生財務相は、「①自由貿易には大いなる意義があると強調し」「②保護主義の広がりに強い懸念を示し」「③過度な悲観論に陥ることなく、潜在成長率の引き上げに正面から取り組むと指摘した」そうだが、グローバル企業は、既に自由貿易ではなく相手国に生産及び販売拠点を作っているので、①は30年ほど古いテーゼだ。しかし、自国の柱になる産業を保護・育成することは必要であるため、②は必ずしもそうとは言えない。さらに、③は、何もないところから出発する開発途上国と異なり、先進国のGDPの成長率が低いのは当然であって、現在の日本は、国民一人一人の豊かさ(購買力平価による一人当たりGDP)を比較して、これを増加させなければならない時期なのである。そのため、財務相がこのような発言をすることこそ、悲観要因だ。


   発展段階別     $と購買力平価による アジアの購買力平価による    先進国の
一人当たりGDP成長率    GDP比較        一人当たりGDP      食料自給率推移

(グラフの説明:先進国ほど「一人当たりGDP成長率(「一人当たりGDP」ではない)」は低い。また、物価の高い日本では購買力平価によるGDPの順位が$ベースより低く、アジアの中で比較しても日本の購買力平価による一人当たりGDPは高くない。さらに、先進国の中で、日本の食料自給率は著しく低い)

*5:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20161008&ng=DGKKASDF08H02_Y6A001C1MM0000 (日経新聞 2016.10.8) TPP推進を確認 麻生財務相、米長官と会談
 麻生太郎財務相は米ワシントンで7日、米国のルー財務長官と会談し、環太平洋経済連携協定(TPP)の実現に向けた取り組みを互いに進めていくことを確認した。麻生財務相は会談後、日銀の黒田東彦総裁と開いた会見で、「自由貿易には大いなる意義がある」と強調し、保護主義の広がりに強い懸念を示した。麻生財務相は会見で、過度な悲観論に陥ることなく「潜在成長率の引き上げに正面から取り組む」とも指摘した。働き方改革などの構造改革や生産性の向上につながるインフラ整備などを進める考えを表明。さらに、デフレ脱却を確実にするためには「継続的に賃金を上昇させることが極めて重要だ」と述べた。20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議では金融緩和が長期化することの副作用が議論された。黒田総裁は会見で「金融政策だけでバランスのとれた成長につながるというのは難しい」と指摘。「財政政策、構造政策といったあらゆる政策手段を用いてバランスのとれた成長を実現していくという考え方が共有された」と説明した。


PS(2016年10月13日追加):*6-1のように、JR九州ファーム(本社:佐賀県鳥栖市)が長崎県松浦市で大規模にアスパラガスの生産を行い、一般主婦・警察官・建築会社出身の人を雇用しているのは面白いが、環境意識の高さを示す洗練されたJR九州のロゴがあった方が世界で周知されやすいと考える。また、雇用された主婦は需要者の要望をキャッチしやすく、建築会社経験者はあちこちの現場で人や機械を廻して仕事を進めるのが得意で、警察官経験者は警備を任せられ、元JR職員は時間に几帳面など、前職による得意技もありそうだ。なお、*6-2で、JR九州の青柳社長が、「今後、鉄道と相乗効果のある事業に進出したい」と言っておられるが、その地域はリアス式海岸の美しい場所であるため、農林漁業の現場自体を鉄道と相乗効果のある観光地にすることもできそうだ。また、「赤字ローカル線を絶対に廃線にしないとは言い切れない」とも言っておられるが、駅ビルや高架下を充実して使うことにより便利な街づくりを進めることができ、そこから膨大な収益を上げることもできるため、JR九州の場合は、まず既に所有している資産をスマートに有効活用するのが最も安全確実な収益獲得方法だと思われる。また、赤字ローカル線は赤字になる理由があるため、その理由を精査して解決するのが資産を壊さない方法だ。

*6-1:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/364999
(佐賀新聞 2016年10月11日) JR九州、長崎・松浦で営農 アスパラ特産に
 長崎県松浦市にあるJR九州ファーム(鳥栖市)の農場で今年、アスパラガスが初めて収穫された。同社は九州最大のアスパラガス農場にしたい考えで、担い手不足に悩む地元は企業的な農業経営を通じた生産力アップ、特産品化に期待している。ただ、外部からの参入を不安視する声もあり、同社は地域との連携を密にする姿勢を打ち出している。
▽自慢
 長崎県のアスパラガス生産量は全国4位。北部に位置する松浦市は土壌に豊富なミネラルを含み、ほどよい甘みと苦みが特徴だ。しかし、高齢化で栽培農家が減少。JR九州ファームは昨年5月、市と農業参入に関する協定を結んだ。海に近い地区に土地を借り、アスパラガス用のハウスは現在12棟。この秋から23棟に拡張し、栽培面積は3・3ヘクタールになる。別に露地栽培でブロッコリーも育てる。今年は10月までにアスパラガス25トンの収穫を予定。2019年には約100トンに増やすのが目標だ。農業経験のない主婦、元警察官ら地元の17人を採用。建築会社から転身した松本敏光さん(61)は「農業をしたいと思っていた。自分が手入れしたものを食べてもらえることが幸せ」と話す。同社は地元のJAながさき西海から資材や営農指導の支援を受け、収穫した約7割を出荷。残りは福岡市にある直営店「八百屋の九ちゃん」などで売る。
▽期待
 JR九州は10年4月、大分市でニラ栽培に参入したのを皮切りに、九州各地で営農を開始。長崎県への参入は松浦市が初めてだ。松浦市のアスパラガス農家は減少傾向にあり、市の担当者は「大規模経営で産地強化と雇用拡大が見込める。ブランド化を進め、特産品にしてほしい」と期待する。一方、地元には「国土の保全も担う農業と利益を追求する企業は水と油。企業はもうからないと撤退する」と心配する声もある。今回の参入では第1希望だった土地の関係者に反対され、場所を変更。現在の農場でも地元住民から夏場のホタルを守るよう求められたため、蛍光灯などでガを駆除する「防ガ灯」の使用も諦めた。それでもJR九州ファーム松浦事業所の森崎崇所長(40)は「農業も鉄道も地元との関わりがあって成り立つ」と地元の声を尊重する方針を強調。地権者との交流にも積極的に参加しており「不安を抱く地域の人々に寄り添い、信頼につなげたい」と話している。

*6-2:http://qbiz.jp/article/95799/1/ (西日本新聞 2016年10月13日) 上場後、赤字ローカル線「絶対に廃線にしないとは言い切れない」 JR九州青柳社長に聞く
 25日に株式上場するJR九州の青柳俊彦社長が12日、報道各社の共同インタビューに応じ「上場することで、スピーディーで大胆な展開ができるようになる。今まで取り組んでいなかった事業にもチャレンジしていきたい」と述べた。主なやりとりは次の通り。
−上場で何が変わるか。
 「100%株主だった独立行政法人の鉄道・運輸機構から解放される。責任は重くなるが、経営判断のスピードは速まる」
−上場後、鉄道事業の収支が改善する見込みは。
 「JR九州グループにとって永遠の課題だ。収入の増加とコスト削減を、これまで以上に積極的に展開していきたい」
−赤字ローカル線の運営についての考えは。
 「昨年、国会で上場後も路線を維持することを宣言した。効率化に向けて積極的に廃線にする考えはない。ただし、絶対に廃線にしないとは言い切れない。路線の使命が終われば検討せざるを得ない」
−今後、新たにチャレンジしたい事業は。
 「イメージはまだないが、鉄道との相乗効果がある事業が望ましい」
−海外での事業展開はどう進めるか。
 「アジアでマンションやホテル事業をしたいと考えている。東京に進出してきたように、海外にも出て行きたい」


PS(2016年10月14日追加):JR九州の豪華寝台列車「ななつ星in九州」は、車両が豪華であるだけでなく、食事や列車内の調度もその地域トップの産物を使っているのが人気の秘密だ。また、*7のように、JR西日本のトワイライトエクスプレス瑞風が「美しい日本をホテルが走る」をコンセプトにしているのも魅力的で、乗り換えなどの手間なくポイントとなる地域を周遊できるメリットがある。しかし、ななつ星も、3泊4日コースで1人当たり最高95万円などという超豪華コースだけでなく、同じコースをホテルを使って周遊した場合と同程度の金額のコースも作った方が日本人や外国人の観光客が増えると思われる。

*7:http://mainichi.jp/articles/20161014/k00/00e/020/176000c
(毎日新聞 2016年10月14日) JR九州運行開始から3年 予約20倍超の人気
 JR九州の豪華寝台列車「ななつ星in九州」が運行開始から15日で3年を迎える。高額な乗車料金にもかかわらず、予約平均倍率は20倍超の人気ぶりを継続。上場を控えるJR九州の知名度向上にも大きく貢献した。一方、来春にはJR東日本や西日本も豪華寝台列車を投入予定で、各社間の競争が激しくなりそうだ。「高い価格でも価値を感じていただけている」。当初から運行に携わるJR九州クルーズトレイン本部の仲義雄次長は手応えを語る。ななつ星には今年9月末までで、延べ7297人が乗車。直近の予約平均倍率は24倍に達し、再乗車を希望する客も2割に上っており、人気は衰えない。支持される理由は豪華さだけでなく、きめ細やかなサービスにある。訓練を重ねたクルー(乗務員)が最高の笑顔で迎え、沿線住民も盛んに手や旗を振って歓迎する。温かいもてなしに乗客は感激し、最終日には多くが涙を流して列車との別れを惜しむ。ななつ星を追いかけるようにJR2社も来春、豪華寝台列車を相次いで投入する。JR西日本のトワイライトエクスプレス瑞風(みずかぜ)は「美しい日本をホテルが走る」がコンセプト。車両には風や香りを体感できる展望デッキを設ける。JR東日本のトランスイート四季島(しきしま)は、高級車フェラーリを手がけた奥山清行氏がデザインを担当した。制作費50億円の車両は、淡い金色の外観やガラス張りの展望車が特徴だ。いずれも富裕層や外国人客の獲得を狙う。両社の動きについて、ななつ星の生みの親であるJR九州の唐池恒二会長は「鉄道業界の刺激につながったことは素直にうれしい」とし、ライバル登場についても「(豪華寝台列車に)乗りたいと思う層が拡大する。私どものお客さんが奪われるという危惧は全くない」と強気だ。ななつ星は来年3月の出発分から体験コース充実を理由に5度目の値上げに踏み切る。3泊4日コースで1人当たり最高95万円となり、高額と話題となった運行当初(同55万円)から7割も跳ね上がった計算だ。顧客の選択肢が広がる中で、価格に見合ったサービスを提供し続けることができるかが、ななつ星4年目のカギになりそうだ。


PS(2016年10月15日追加):どうも官制合併は、①大きくなりさえすればよいと考えている ②寡占や独占状態にしたがる など、経済原則や経営合理性からはずれたものが多いが、*8の九州を中心とする離島を結ぶ地域航空会社の統合なら、JR九州が航空会社を作って統合し、列車との接続をよくして離島の価値を上げつつ、空への進出を計るのがよいと、私は考える。

*8:http://qbiz.jp/article/96017/1/
(西日本新聞 2016年10月15日) 離島結ぶ地域航空会社の統合検討 国交省、大手2社に要請
 国土交通省がANAホールディングス(HD)と日本航空に対し、離島などを結ぶ地域航空会社の統合を検討するよう求めたことが15日、分かった。燃料の調達や機体の整備などでコストを削減し、地域の航空網を維持する狙いがある。国交省は地元自治体の意見も聞き来年夏までに統合計画をまとめたい意向だが、ANAHDと日航は慎重に検討するもようだ。統合を検討するのは北海道エアシステム(札幌市)、ANAウイングス(東京都)、オリエンタルエアブリッジ(長崎県大村市)、天草エアライン(熊本県天草市)、日本エアコミューター(鹿児島県霧島市)の5社。各社はそれぞれANAHDや日航と資本や業務の提携関係がある。国交省では、地域航空会社を傘下に収める持ち株会社を設立したり、経営規模のより大きな会社が小さな会社を合併したりする案などが浮上している。5社はいずれも30〜70席程度のプロペラ機を中心に運航し、北海道や九州の離島を結んでいる。各社はともに路線の利用率が低く、経営基盤は弱い。保有する機体が少なく、整備や乗務員の養成にかかるコストも高くなる傾向がある。主に100席以上の大型機を運航するANAHDや日航から機体の融通を受けることも難しい。このため国交省は同じ課題を抱える地域航空会社が連携し、効率化する必要があると判断した。ただ、ANAHDと日航は競合関係にあり、地元の自治体や企業も地域航空会社に出資している。このため国交省は関係者の意見を聞き、統合に関する課題の洗い出しを進める。


PS(2016年10月24日追加):*9-1のように、SBS米を商社が扱う理由は、「安い」「自社のビジネスが増える」にほかならない。そして、輸出国も日本の消費者に合わせた製品を最低コストで生産する工夫をしており、(自民党農林族のベテラン議員が中国に視察に行った時、中国産コシヒカリと日本産コシヒカリを食べ比べて区別がつかなかったように)味だけを比べれば国内産が勝るとは限らない。そのため、産出地・遺伝子組み換えの有無・使用した農薬・食品添加物などに関する表示は、消費者の選択を可能にするため、最低限必要なのである。
 なお、*9-2の「都会だから食料自給率が低い」という見解は成立せず、日本の食料自給率は先進国の中でも際立って低く、それもカロリーだけを比較するのは一面的で、本来は主要な栄養素の自給率を示すべきだ。また、「コメの消費拡大が鍵で、需要面の政策が必要」というような見解の人は議員・行政(殆どが栄養学の“え”の字も知らない男性)にも多いが、供給を需要に合わせるのが財・サービスを販売するには当然であり、「供給が余るから重要を増やす政策が必要」などとして糖尿病患者を増やすのは逆である。にもかかわらず、このような発想で農業政策を行い、余っても米に固執しながら減反してきたため、日本の農業政策は失敗したのだ。


政府と大学教員 SBS米の価格偽装  TPPで争点   先進国の食料自給率   嗜好の変化
 の会の試算    201610.23     となりそうな      国際比較       2016.10.24 
            日本農業新聞    食品安全基準                   西日本新聞

*9-1:https://www.agrinews.co.jp/p39269.html (日本農業新聞 2016年10月23日) SBS米扱う理由 商社「安いから」 相場は国産の2割安 本紙聞き取り調査
 輸入米の売買同時入札(SBS)取引を巡って日本農業新聞は、商社に聞き取り調査を行い、回答を得た全社が輸入米を扱う理由に「国産米より安いから」を挙げた。取引する米の相場は「国産品より2割安」が最も多かった。SBS米の「調整金」を使った価格偽装問題に対し、今月7日に農水省が公表した調査結果は、実需者への販売価格に十分踏み込まないまま、「国産相場への影響はない」と結論付けた。“安さありき”で取引される実態と、同省見解との間には大きなずれがある。国会での徹底審議が求められる。
●国の見解と食い違い
 調査は、今月13~21日にSBS参加資格を持つ全24の商社を対象に聞き取り、11商社(設問への一部回答も含む)の回答をまとめた。「輸入米を扱う理由」には、11商社全てが「国産米より安いから」と答えた。長い輸送時間で劣化しやすく、炊飯時に割れやすいなど品質面で見劣りする点も織り込んだ回答だ。タイ産の香り米などでは料理適性が調達基準になるが、まれなケースだった。米卸を通じた輸入米の売り先は、外食・中食といった業務筋が中心。企業や福祉施設向けの給食事業者もあった。安さを優先し、原産地表示が目立たない場面で採用されていた。単一銘柄での使用は少なく国産米とのブレンドが中心だった。実際に取引する輸入米の相場観は、国産米より「2割安」が4社と最も多く、「1割安」が2社と続いた。米国産やオーストラリア産より一段安い中国産を想定し、「4割安」とする回答もあった。近年、同省が公表するSBSの売り渡し価格は、国内業務市場で競合する国産B銘柄と接近するケースが目立つ。だが、同価格ではSBS米の魅力はなく、「公表される価格と実際の取引価格は、明らかに乖離(かいり)している」(大手商社)との受け止めが業者に広がっていた。調整金について商社は「農水省が定める売り渡し価格の最低ラインをクリアし、実需が求める安い水準で販売するための手法」(中堅)と受け止める。そうした使途を打ち消すために同省が挙げる「米卸が商社に支払う“逆調整金”もある」という事例は、「取扱量が少ない銘柄を試験輸入する場合など限定的」(大手商社)とみる。SBS売渡価格に米卸の手数料などを加算した実需への販売価格は、複数社が「1キロ当たり200円がボーダーライン」とみている。その水準を下回ると、実需の調達意欲が高まる傾向にあるという。14、15年度のSBS入札の不調は、国産米が大幅に値下がり、B銘柄を輸入米並みの価格で調達できたことが影響していたとみられる。

*9-2:http://qbiz.jp/article/96476/1/ (西日本新聞 2016年10月24日) 【福岡県の食料自給率20%】九州で唯一、全国の39%を下回るワケ
 国内で供給される食料のうち、国産で賄われる割合を示す食料自給率(カロリーベース)。日本は39%と先進7カ国(G7)で最も低く、食料の多くを輸入に頼っている実態があらためて分かる。さらに、これを都道府県別にみると、福岡県の“お寒い”状況が浮かぶ。自給率は九州で最低の20%。しかも唯一、全国の39%を下回る。
■胃袋は多いのに品目は低カロリー?
 直近は2014年度(概算値)のデータだ。それによると、九州の他6県は、佐賀90%▽鹿児島84%▽宮崎67%▽熊本59%▽大分48%▽長崎44%−の順で高く、全国の39%を下回っている県は一つもない。なぜ福岡だけ、食料供給が“ぜい弱”なのか。農林水産省のある職員はこう解説する。「福岡はそれなりの農業県だが、それ以上に人口(約510万人)が多いからだ」。つまり、胃袋の数が多く、供給が追いつかない、というわけだ。栽培品目に着目する意見もある。福岡県の農政担当者は「カロリーが低いお茶やイチゴなどの生産に力を入れていることも影響している」と分析する。確かに、野菜や果実に比べカロリーが高いコメの産地は上位に並ぶ。全国では、1位は北海道だ。自給率208%は北海道“二つ分”のカロリー供給力を誇る。全国の農地面積の4分の1超を占め、酪農の生乳や、畑作のばれいしょ、小麦の生産も盛んだ。2位以下は米どころが目立つ。秋田190%▽山形141%▽青森123%▽岩手111%▽新潟105%―が100%を超え、余剰分を他県へ“輸出”できる供給力を持っていることを意味する。逆に、自給率が低いのは、東京と大阪が1%と同率ワースト1位。続いて神奈川の2%がワースト3位で、「一ケタ」はこの3都府県のみ。いずれも大都市で、福岡の20%も、九州で都市化が進んだ表れかもしれない。
■コメ消費拡大が鍵、需要面の政策も
 都道府県別の食料自給率について、農水省は「2025年度末までに全国で45%」とする政府目標達成に向け、「地域ごとの取り組みを推進する参考データにしてほしい」と説明する。とはいえ、コメの生産を増やそうにも、簡単ではない。農水省は米価下落を防ごうと、生産調整(減反)を進めている。各都道府県に、上限となる生産数量を割り振り、過剰生産をしないよう要求。これを守らない生産者には、麦や大豆の転作助成金を支払っていない。食料自給率は1965年は73%だった。それが、経済成長とともに、右肩下がりに下がってきた経緯がある。背景には、日本人の食生活の変化を指摘する声もある。食の「欧米化」が進み、コメ中心の食事はパンやパスタ、卵、肉など、いずれも輸入に頼る食品へシフトした。畜産は、牛や豚、鶏といった家畜を国内で飼育しているものの、その飼料の大半を輸入に頼っているため、自給率は低いままだ。「米離れ」の実態は、1人当たりの年間コメ消費量をみると、明らかだ。1962年度の118キロをピークに、現在(2015年度)は54・6キロと半分以下になっている。コメは日本が唯一自給できる主食。その消費が増えれば、おのずと自給率も上がり、輸入への依存度も下がる。農水省は自給率アップについて「(麦や大豆など)コメ以外の農産物の生産量を増やして対応してほしい」というが、そもそもコメの消費拡大をどう進めるのか。需要面で実効性ある政策を示す必要もありそうだ。


PS(2016年10月26日追加):農業において種子は最も重要で、開発者に特許権があるにもかかわらず、何年もかけて開発した種子を技術提供として簡単に外国に渡しているのが我が国の現状だ。しかし、それを改めなければ外国産との差別化はできず、日本で種子の開発をする民間はなくなるだろう。

*10:https://www.agrinews.co.jp/p39282.html (日本農業新聞 2016年10月25日) 野菜種子を国産化 海外品より発芽率高く 福岡市の種苗メーカー
種苗メーカーの西日本タネセンター(福岡市)が、野菜種子の国産化に乗り出す。流通する種の大半が海外産の中、管理が行き届いた国内施設で育てて品質を高める。価格は海外品より高くなるが、発芽率は高まるため、種を買う農家の採算性はトータルで改善すると同センターは見込む。キュウリ、トウガンなど70~80種を栽培し、年内にもJAや種苗店へ販売する。日本種苗協会は「種子を本格的に国産化する事業は初めてではないか」と指摘する。福岡市内の3ヘクタールの農地に建てた6メートル×20メートルのハウス43棟で採種用の植物を育てる。ハウスでは1種類の採種を完全に終えた後、別の品種の栽培に移る。同センターによると、屋外中心の海外の圃場(ほじょう)は虫害や他品種との交雑、異物混入といったリスクがあり、「正品率の低さが課題だった」(諸岡譲代表)という。ハウス室内の温度やかん水は専門の社員が管理する。収穫した種子は消毒、選別した後、発芽率が高まるように種の外皮を研磨する。生産した種子の8割はグループ会社の中原採種場(同市)が販売を担う。県や農研機構などが育成した品種は同センターが直接JAなどに販売する。山口県と同県のJA下関が共同開発した小ネギ「YSG1号」などは山口県内の複数のJAと契約し、全量販売する予定だ。日本種苗協会によると国内に流通する種(F1種)の9割は海外産とみられる。気温などの栽培適性、農地の確保のしやすさ、人件費の安さが理由だ。ただ、異常気象や人件費アップなど海外の生産条件が今より悪化する恐れが高まっており、同センターは「国産化が安定供給につながる」と事業の将来性を見込む。同センターは今後、耕作放棄地を活用しながら規模拡大を進める計画だ。2020年までに農家委託を含め、県内外20ヘクタールにハウス計300棟まで増やす。扱う品種も段階的に増やす。消えそうな固定種や在来種の保存も進める考えだ。種子の海外輸出も想定する。同センターのハウスを今月、視察した佐賀県の職員は「近場で安定的に種子が供給される環境が整うようであれば、県内で使える品種があるか、検討したい」と期待する。事業化に当たっては、6次産業化などを後押しする農林漁業成長産業化支援機構(A―FIVE)やサブファンドが8000万円を出資した。


PS(2016.10.26追加):木質バイオマス発電は、限られた資源である木材チップを燃やして発電するシステムで、これが21世紀の日本で進められるのには驚かざるを得ない。また、農地を売却して製造業・運送業・倉庫業などの5業種の建屋に用途を変える場合は地主農家が所得控除を受けられるようにするというのは、日本でしかできない農業のための農地を、外国で簡単に肩代わりできる製造業に転用するということで、何の工場かにもよるが50年も前のスキームだ。さらに「食の安全意識の高まりから室内で野菜をつくる植物工場」と書かれているが、確かに農薬は使わないものの、限られた栄養素のみを溶かした水耕栽培で人工光による「形だけ野菜」を、誰が、どこで食べるのか、呆れてモノが言えない。

*11:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20161026&ng=DGKKASFS24H4L_W6A021C1MM0000 (日経新聞 2016.10.26) 農地転用 税優遇広く、バイオマスや植物工場 製造業中心を転換
 農林水産省は農地を売却する農家への税制優遇を拡大する。全国で広がる木質バイオマス発電所や植物工場を運営する企業に売却する際にも所得税を軽くする方針だ。運営企業には固定資産税の軽減も検討する。現行制度で優遇を受けられるのは製造業などに転用した場合に限られる。産業構造の変化を踏まえ、新たな産業を誘致して農村で就労機会を増やす狙いだ。年末の与党の税制調査会の議論を経て実施を目指す。併せて2017年の通常国会に農村地域工業等導入促進法(農工法)の改正案を出す。現在は農地を売却して製造業や運送業、倉庫業など5業種の建屋などに用途を変える場合に限り、地主の農家は800万円を上限に所得控除が受けられる。一般的に農地転用は厳しく制限されるが、農工法のもとで例外が認められている。農水省は既存の5業種に加え、木材チップなどを燃料にするバイオマス発電所や植物工場、農家レストランなど農林業と関わりがある場合も税優遇の対象とする。追加業種を限定せず、広く対象に加える案もある。農家への優遇措置を広げるとともに、農工法が対象とする場所でバイオマス発電所などを運営する企業の進出も支援する。日本政策金融公庫の低利融資を受けられるようにするほか、新たに導入する機械設備の固定資産税を3年間は2分の1にする方向だ。農工法はコメ余りに悩んでいた農家の振興策として1971年に制定された。だが農地転用の有力な受け皿だった製造業は円高などで海外への生産シフトを加速させてきた。2015年の国内の工場立地面積はピークだったバブル期の4分の1まで減少。農工法に基づいて工業団地を整備するケースは1970年代に年間200件を超えることもあったが、2015年にはわずか1件にとどまった。代わって存在感を増しているのが農林業系の産業だ。11年の東京電力福島第1原子力発電所事故後に生じた電力不足の解消を狙ってバイオマス発電所の建設が相次いでおり、全国の認定容量は原発1.5基分に達した。食の安全意識の高まりから室内で野菜をつくる植物工場も全国300カ所を超え、地場産業としての期待が高まりつつある。バイオマス発電所や植物工場などの広がりは農工法制定時には想定されていなかった。農水省は新しい産業の誘致を通じ、農村での雇用機会の拡大につなげたい考えだ。


PS(2016年11月1、2日追加):*12-1に書かれているように、TPPが発効されれば、かつての不平等条約と同様、日本の農業や国民生活に打撃があるにもかかわらず、政府が自分もわかっておらず口当たりが良いだけの答弁を繰り返して採決に進もうとしているのは論外だ。なお、*12-2の鹿児島県鶏卵販売農協の経営の行き詰まりはもったいなく、①フクイチ事故で、放射能汚染の心配がない九州の農産物は付加価値がついているため全国区のスーパーや百貨店に販路を拡大する ②「飼料の高騰、高騰」と騒がなくてもよいように、材料は多いので安くて質の良い飼料を工夫して近くで作る などを行えば、経営が改善した上、飼料も販売できるようになると考える。また、*12-3のように、人口が減少して一人一人が豊かになる社会の休耕田や耕作放棄地の使い方には、佐賀県みやき町で秋咲きのヒマワリが咲いて観光名所になり、近くでこだわりの農産物を販売しているように、風景の美しさと食へのこだわりの両方を満足させる企画もある。 

*12-1:http://qbiz.jp/article/97095/1/ (西日本新聞 2016年10月31日) 「TPP反対」650人が気勢 JA福岡など福岡市で集会
 環太平洋連携協定(TPP)をめぐる衆院の論戦が大詰めを迎える中、JAグループ福岡などは29日、福岡市・天神のエルガーラホールで「TPP断固反対 農業政策要請 県農業者集会」を開いた。JA組合員(農業者)ら約650人が参加。「TPPが発効されれば、将来のわが国の農業のみならず、国民生活に対して大きな懸念を残す」などとするTPP反対の決議を採択した。JA福岡中央会の倉重博文会長はあいさつで、最近の国会審議に関して「野党の質問は丁寧だが、受け答えする政府側がはっきりしない。TPPは秘密主義だ」と批判。「(TPP承認案と関連法案について)急いで採決に向かっていることが全く分からない」と述べた。また、集会に参加した県選出の自民党国会議員らに対し、「TPPの合意内容が、農林水産分野の重要5項目などの聖域確保を求めた国会決議を満たしているとは考えられない。協定内容を十分に精査し、さらなる情報開示などを行うこと」などを要請。参加者は「TPP断固反対」と書かれた旗を掲げた後、「頑張ろう」と声を上げて集会を締めくくった。

*12-2:http://qbiz.jp/article/97174/1/
(西日本新聞 2016年11月1日) 鹿児島県鶏卵販売農協が2回目の決済も不調
 東京商工リサーチ鹿児島支店によると、鹿児島県内の養鶏農家でつくる「鹿児島県鶏卵販売農業協同組合」(鹿児島市)が2回目の決済も不調となり、経営が行き詰まっていることが分かった。事実上の倒産で、負債総額は約8億円の見込みになるという。同支店によると、同農協は1973年に採卵養鶏農家が共同出資して設立した。組合員となる農家が生産した鶏卵をスーパーなどに販売し、最盛期は売上高15億円を超えたという。しかし、卵の価格が低迷した上、飼料が高騰し、事業環境が悪化。資金繰りが悪化し、取引先への支払いを予定していた9月30日と10月20日の決済がそれぞれ不調に終わったという。

*12-3:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/372599 (佐賀新聞 2016年11月2日) 秋の棚田大輪10万本 みやき町の山田ひまわり園
 佐賀県みやき町簑原山田地区の「山田ひまわり園」で、秋に咲くヒマワリが見頃を迎えている。中山間地の棚田を活用した会場内には約10万本の黄色い花が咲き誇り、赤く色づいたケイトウとのコントラストが来場者の目を楽しませている。27日まで。地区住民でつくる山田地区中山間地組合が、耕作放棄地対策とにぎわいづくりを目的に2001年から取り組んでいる。昔ながらの石積みの棚田が残る約6千平方メートルの園内に、8月中旬から種をまいて準備を進めた。10月中旬から開花し、約2メートルの高さまで育った茎の先端に太陽に似た大輪の花を咲かせている。家族で訪れた西津博幸さん(47)は「インスタグラムで見て初めて訪れた。迫力があってきれいで、涼しいから子連れでもいいですね」と幼い我が子を抱きかかえながらほほ笑んだ。近年は観光バスのコースに組み込まれることも増え、長年の目標だった「来場者1万人」を2014年に達成。昨年は1万3千人が訪れた。今年は10日前後まで見頃が続くという。組合代表の眞子生次さん(69)は「棚田が荒れないよう守り続けるための活動だったが、ここまでの観光名所になった」と目を細める。場所は県道31号と136号が交わる綾部東交差点から北に約1・7キロ。開園時間は午前10時~午後4時半。大人1人100円の協力金を呼び掛けている。組合員らが手掛けた米などの農産物も販売する。問い合わせはみやき町観光協会、電話0942(96)4208。

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2016.9.17 豊洲市場・首都圏の生鮮食料品と産地の対応 (2016/9/19、20、21、22、24、27、2016/10/1、15に追加あり)
   
  2016.9.11   豊洲市場の位置      2016.9.17          豊洲市場の状況
   Yahoo                      日経新聞

  
                 豊洲市場の欠点  上         2016.9.17   豊洲の海面との差
(魚を冷やす氷も、浄化した海水で創った方がいいのでは?)   日経新聞

(1)首都圏の食品が集積する豊洲市場の現状を、驚きを持って見た 
 小池百合子氏が東京都知事になられてから、豊洲市場への移転について立ち止まって検証してみたら、*1-1のように、豊洲市場の主要3施設の地下空洞が公開されたら、床一面に水がたまっており、完成から4カ月で深さが20cmに達した場所もあったそうだ。

 深さが最大で20cmある豊洲市場の地下空間の水たまりは、*1-2のように、日本の環境基準以下だそうで、東京都によると、*1-4のように、建設業者から施設を引き渡された2016年5月末の時点では地下の空洞に水はなく、水たまりは6月以降にできたと書かれている。しかし、これほど短期間に大きな瑕疵が現れる工法をとったことは、設計者や建設業者など建設を受託したプロ集団にも責任がある。

 しかし、*1-4では、水が酸性かアルカリ性かということしか調べていない上、*1-3のように、日数をかけてもヒ素と六価クロムしか検出できなかったというのは水質検査のレベルが低すぎ、水俣病の原因物質が有機水銀であることをつきとめた東大薬学部に委託すれば、その水に含まれる成分と濃度のリストは数日で作れる筈だ。また、海水の可能性もある上、現在は、フクイチから漏れたセシウムやストロンチウムが川から東京湾に注ぎ込んでいるため、放射性物質等の測定も必要だ。

 私が、ここまですべきだと書くのは、*1-6のように、豊洲はもともと海だった所にゴミを埋めて陸地を造った海抜1m~2mの場所だからである。その前提で6月以降に水たまりができた理由を考えれば、横にだけコンクリートの護岸を造っても、圧力差で地下から水が上がってくるため、2m掘って海抜0m近くになっていた場所が大潮・高潮で海抜以下となり、水圧によって深い所で20cmの水が溜まったのだと考えられる。そうすると、この水は、もともとゴミだった土壌を通ってきた海水であり、何が含まれているかわからず、危険であるため、地下空間を造るのなら徹底して防水すべきだったのだ。

 しかし、平時は、徹底して防水した地下空間にすれば何とかなるにしても、4.5mの盛り土をしたところでも、5mの津波が来ればマンホールから水が噴きあがってアウトになる。そのため、そこにいる人たちが、どう避難する計画なのかは疑問だ。

(2)豊洲市場の安全性を「再評価する」という都の専門家会議
 都の専門家会議は、*1-5のように、2008年に土壌汚染対策として盛り土を提言した当時のメンバーで、豊洲市場の盛り土をめぐり、前提条件が変わったことを受けて、現状を再評価するそうだ。「今から盛り土をするのは難しいため、盛り土がない中でどうするのかを議論する」とされているが、その費用及び豊洲市場移転の遅延損害金は、どこが負担するのだろうか。

 また、国の環境基準以下なら何が出ても安全なわけではないため、私も、小池知事同様、豊洲市場の問題は徹底して経緯と安全性を明確にしてもらいたい。そして、これは、単に東京だけでなく、豊洲市場を利用する地域全体の問題だ。

(3)産地の安全を保つ努力を知るべき
i)安全と衛生
 *2-1のように、EUは漁船から水揚げされてから流通に至る段階まで厳しい基準を満たした水産物しか域内への輸入を認めておらず、アジアの新興国でも衛生意識が高まり、輸出促進には衛生基準の引き上げが不可欠になっているそうだ。しかし、輸出のために衛生基準を引き上げなければならないほど、日本国内の衛生基準(安全基準)は低かったのだ・・。

 なお、現在、「におわない魚」が人気だそうだが、産地ではもともと生臭さを感じるほど死んでから時間の経過した魚は食べないし、魚臭さは魚の味のうちだと私は思っている。しかし、*2-2のように、みかんやレモンの香りをつけたり、エサに大豆カスなどの植物性たんぱく質を増やしたり、うまみを補うチキンミールや脱臭効果のある茶の粉末を大量に加えたりした養殖魚も出荷され始めているそうだ。

ii)魚は新鮮さが命
 日本全国で害獣と言われたクラゲだが、*2-3のように、中国では高級食材として需要があり、(私の提案で)輸出量が増えて高値を付けていた有明海のビゼンクラゲは、一時は有明海の“救世主”となったが、中国景気の失速による価格下落で現在はピンチだそうだ。しかし、簡単に調理できるように(例えば「野菜や蒸し鳥と一緒にたれをかけるだけ」など)加工してセットにすれば(6次産業化)、日本の家庭でも前菜として人気が出るだろう。

 つまり、共働きが増え専業主婦の割合が減っている現在では、女性は魚をおろせたり、美味しいだしをとれたりすることに誇りを持つのではなく、ゴミや洗い物を少なくしながら手軽に美味しいものを食べたいという価値観に変化しているため、魚は水揚げしたらすぐに産地で加工し、獲れたての美味しさを閉じ込めた製品にして送った方が喜ばれると考える。

 また、豊洲市場がこういう具合であれば、豊洲市場を通していない食品の方が安全ブランドの価値が高くなるため、産地で細胞を壊さない冷凍にしたり、半調理したりして、消費者が選択できるように獲れた海域を明示したラベルを貼って送った方がよい。

<豊洲市場の現状に驚き>
*1-1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20160917&ng=DGKKASFB16HFG_W6A910C1EA1000 (日経新聞 2016.9.17) 一面に水、漂う臭気 豊洲地下空洞公開、青果棟、砕石層むき出し
 豊洲市場(東京都江東区)の主要3施設の地下空洞が16日、報道陣に初めて公開された。床一面に水がたまっており、完成から4カ月で、深さが20センチに達した場所もあった。共産党都議団の発表によると、水に含まれる化学物質は環境基準以下だったが、地下空洞がつくられた経緯が不透明で、安全対策の検証は長期化も予想される。階段を下りていくと泥の臭いがしてきた。「地下ピットに入る場合は原則2名以上とする」。酸欠や閉じ込めへの注意を促す触れ書きを横目にドアをくぐると、青果棟の地下に広大な暗闇が目の前に広がった。室内に明かりはなく、懐中電灯を手に慎重に歩を進めると、一面水浸しの床が眼前に飛び込んできた。空間の高さは5メートルほどの場所もあれば、かがまないと歩けない狭い地点もあった。都は同市場の施設の地下には盛り土だけでなくコンクリート床も計画していなかった。今回、公開されたのは水産卸売場棟、水産仲卸売場棟など3施設。このうち青果棟では床のかなりの部分で、砕石層がむき出しになっていた。暗く、奥まで見渡せない室内は、20~30人は優に入れる広さがある。じめじめと湿気が多く天井も結露し、泥やカビのような臭いが全体に充満。人が通るとすぐににごる水たまりの側には、大気の成分を調べるためとみられる機器も置かれていた。水産卸売場棟や水産仲卸売場棟の地下でも、深さ数センチの水たまりが一面にできていた。いずれの建物の地下にも配管が縦横無尽に張り巡らされており、その上に土ぼこりなどがたまっていた。地下空間の水について都は「8月の大雨でたまった。外構工事が半ばで地下の側壁から水が浸透した」とみている。13日以降の都の水質調査で16日までに回収できた分は、関係者によると、ベンゼンやシアンなどの有害物質の濃度は環境基準値以下だったという。

*1-2:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20160917&ng=DGKKZO07373620X10C16A9MM8000 (日経新聞 2016.9.17) 豊洲の地下空洞 水たまり、深さ最大20センチ
 築地市場(東京・中央)の移転予定先である豊洲市場(同・江東)の建物の地下が空洞となっている問題で、東京都は16日、主要3施設の地下部分を報道陣に公開した。床には深い所で20センチの水がたまっていた。雨水か地下水かは不明という。都によると5月に建設会社が引き渡した時には水はなかった。共産党都議団は16日、青果棟の水からヒ素が検出されたが、環境基準以下だったと発表した。

*1-3:http://digital.asahi.com/articles/ASJ9K3GLYJ9KUTIL00R.html?iref=comtop_8_03 (朝日新聞 2016年9月17日) 建物地下の水、微量のヒ素と六価クロム検出 豊洲市場
 豊洲市場(東京都江東区)の建物の地下にたまっていた水について、都は17日、水質調査結果を発表した。環境基準を下回る微量のヒ素と六価クロムが検出されたが、ベンゼンやシアン化合物などは検出されなかった。13日に主な3棟の地下で採った水を検査したという。専門家会議座長の平田健正(たてまさ)氏は会見で「(検出された数値は)全然問題ない」と話し、ヒ素が検出されたことから「地下水の影響が出ている可能性がある」と指摘した。結果によると、ヒ素は環境基準(1リットルあたり0・01ミリグラム)に対し最大で0・003ミリグラム、六価クロムは基準(1リットルあたり0・05ミリグラム)に対し0・005ミリグラムがそれぞれ検出された。

*1-4:http://headlines.yahoo.co.jp/videonews/fnn?a=20160915-00000370-fnn-soci (フジテレビ系FNN 2016年9月15日) 豊洲新市場地下空洞に水たまり 小池都知事、専門家会議再招集へ
東京・築地市場の移転先となる豊洲市場の土壌汚染対策をめぐる問題で、市場の建物の地下にある空洞にたまった水は、2016年6月以降にたまったとみられることがわかった。都は、早急に水質調査を行う考え。豊洲市場の主要施設の地下が、都の独断で盛り土(もりど)がされず、空洞になっていた問題で、14日、公明党や共産党の都議団が現場を視察し、水産卸売場棟や青果棟など3つの施設で、多いところでは、20cm近くの深さの水がたまっていることがわかった。東京都によると、建設業者から施設を引き渡された2016年5月末の時点では、空洞に水はなく、水たまりは、6月以降にできたものとみられる。14日、水を採取した共産党都議団が調べたところ、水は、強アルカリ性だったということで、専門家からは、人体への影響も懸念されるとの指摘が出ている。日本環境学会元会長の畑 明郎氏は、「弱アルカリ温泉では、pH8~9くらいですね。それよりも、もっと強いので、皮膚は表面が溶けますから、痛くなるし、飲むとまずいですね。魚なんかは死んじゃいますね」と話した。一方、小池都知事は15日、専門家会議を再招集することを明らかにしたほか、地下の空洞について、さらにくわしく調べる必要性を強調した。小池知事は、「水質だけでなくてですね、地下の大気などもよく調べていかないと、正しい分析にはならない」と述べた。東京都は、すでに水の調査を行っており、小池知事は、空気の調査についても、早急に行う考え。

*1-5:http://digital.asahi.com/articles/ASJ9K36LJJ9KUTIL00L.html
(朝日新聞 2016年9月17日) 豊洲市場の安全性「再評価する」 都の専門家会議が会見
 東京都の築地市場(中央区)が移転を予定する豊洲市場(江東区)の「盛り土」をめぐる問題で、都の「専門家会議」の委員らが17日に会見し、「前提条件が変わった。現状を見て再評価する」と述べた。2008年に土壌汚染対策として「盛り土」を提言した当時のメンバーで、当時の想定と異なる地下空間の安全性を検証する。08年当時の座長だった平田健正(たてまさ)・放送大学和歌山学習センター所長らが会見した。「(今から)盛り土をするのは難しい。盛り土がない中でどうするのかを議論する」などと話し、必要な改善策も検討する考えを示した。結論を出す時期については、「いつまでというのは、予想がつかない」と述べるにとどめた。会議は平田氏のほかに、いずれも当時の委員だった駒井武・東北大院教授と内山巌雄・京都大名誉教授も参加する。当時、環境基準を大きく上回る有害物質が検出されたため、「敷地全体で汚染の可能性がある土を入れ替えて盛り土をする」と提言。しかし、都は提言を無視する形で施設を設計し、建設を進めた。盛り土がなかった問題を小池百合子都知事が10日に公表し、「提言からの変更について、都が専門家会議に意見を求める手続きを怠った」と指摘。都の要請で会議を再開し、盛り土がない現状での安全性を検証することになった。危険性が認められる場合、改修策も検討する。都はこれまでの経緯や市場の移転について検証する有識者のプロジェクトチームも今月発足させており、専門家会議には、チームの座長を務める小島敏郎・青山学院大教授もオブザーバーとして加わる。小島氏も会見に出席し、豊洲への移転時期について「少し(時間が)かかりそう」と長期化を示唆した。小池百合子知事は16日(日本時間17日)、パラリンピック閉会式出席のために出張中のリオデジャネイロで取材に応じ、豊洲市場の問題について「徹底して客観的に、これまでなにがあったのかを明確にしたい。それを踏まえたうえで、それぞれのご専門の方々からの意見を待ちたい」と述べた。

*1-6:http://blogs.yahoo.co.jp/konchanni/54595284.html
(Yahooブログ 2014/7/30) 豊洲で、海抜の話しするのは、禁句です。
豊洲のららぽーとに買い物に、先日行きました。どこの道にも、案内板にも、海抜何メートルという表示がありません。私の住む東京都港区は、どこの電柱にも案内板にも、ここは海抜何メートルですとあります。しかし、ここ、江東区豊洲町には、高層マンション、学校もたくさんできているのに、その開示がありません。これは、危険ですね。防災上も。なぜ、開示が示されないのか? 考えられることは、住民が馬鹿なんですね。この地域に5000万円のローンを銀行から組んで暮らしている人たちからすれば、資産価値が下がりますから。しかし、事実は、知らさなければなりません。他の地域から買い物しに来た客たちの命を守るためにもです。ここ、豊洲は今は道路も幅広く、綺麗な個装マンションが建ち並んでいる地域で、一部の会社員、主婦層=私はバカたちと思います(環境問題に疎い、見かけにこだわる人達)が、ここの街のアスファルトの下は、ヘドロとゴミの有害物質の土壌?です。もともとは、海でした。今、築地市場移転問題で揺れていますが、これは、豊洲などのこの地の土壌が有害物質で汚染れているから、口の中に入る築地市場の移転に反対する市場関係者も少なくないわけです。また、この豊洲地域の海抜は、0mから2mです。ここの自治体に代わって、示しておきます。ここに、あんぜんに暮らす価値が本当にあるのか?疑問です。高い価格のマンションを買って・・・・・。

<生鮮食品の安全性>
*2-1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20160515&ng=DGKKASFS13H64_U6A510C1NN1000 (日経新聞 2016.5.15) 水産物輸出へ拠点港 水産庁方針 20年度までに80カ所
 水産庁は2020年度までに水産物の欧米やアジアへの輸出を担う強化漁港を全国で70~80カ所整備する。欧州連合(EU)などの厳しい輸入基準を満たせるように、水揚げから出荷までを衛生的に管理できる設備の導入を急ぐ。海外での日本食ブームや健康志向を追い風に、20年の水産物輸出額を15年比3割増の3500億円に引き上げることを目指す。16年度末までに閣議決定する漁港整備の長期計画にこうした方向性を盛り込む。水産庁は16年度から(1)水産物の取扱量が原則5000トン以上(2)ホタテやサケなど養殖用水産物の取扱量が原則1000トン以上――のいずれかを満たす漁港を「流通・輸出拠点漁港」とする方針を打ち出した。だが該当する約150カ所のうち、高度な衛生管理体制で出荷できる漁港は八戸港(青森県)や枕崎港(鹿児島県)など2割にとどまっている。これを20年度までに5割に引き上げる。具体的にはアジア向けのホタテ輸出が期待できる北海道北東部の漁港などが対象になる見通し。東日本大震災で甚大な被害を受けた女川港(宮城県)なども含まれる可能性がある。EUは漁船から水揚げされてから流通に至る段階まで厳しい基準を満たした水産物しか域内への輸入を認めていない。水産需要が膨らむアジアの新興国でも衛生意識が高まり、輸出促進には衛生基準の引き上げが不可欠になっている。15年度の農林水産物・食品の輸出額は前年比2割増の7452億円と、3年連続で過去最高を更新した。世界的な日本食ブームや健康志向の高まりを背景に、海外の富裕層から水産物の引き合いが増えている。

*2-2:http://digital.asahi.com/articles/ASJ5M43L5J5MUTIL017.html?iref=com_alist_8_01 (朝日新聞 2016年6月19日) におわない魚、食卓で人気 エサ工夫、フルーツの香りも
 魚臭さを抑えた「におわない魚」が人気だ。みかんやレモンの香りをつけた「フルーツ魚」を売り出す地域も増えている。魚離れが進むなか、新しい需要の掘り起こしにつながるのか。総合スーパー「イトーヨーカドー大森店」(東京都大田区)の鮮魚売り場。「におわない」のシールが貼られたブリの切り身を買った近所の主婦原早知子さん(32)は「くせがなくて最初食べたときは驚きました。お肉みたいにジューシーで気に入っています」。一般的なブリより1割ほど高いが、月に3回ほど買うという。開発したのは、クロマグロなどの養殖に力を入れる近畿大学の有路昌彦教授(41)。食べても魚臭さはほとんど感じさせない一方で、脂の乗りは中トロ並みの平均20%以上。濃厚な味が口に広がる。5年がかりで商品化し、大学が支援する「食縁」(本社・和歌山県新宮市)が今年1月から関西や関東の一部の店に卸し始めた。「におわない」理由は主にエサにある。一般的なエサの配合飼料には、成長に不可欠なたんぱく質として魚粉が4~6割ほど含まれるが、魚臭さの元になるため、配合を28%に削減。一方で大豆カスなどの植物性たんぱく質を増やし、うまみを補うチキンミール、脱臭効果のある茶の粉末を大量に加えたという。「内臓と接して本来、エサのにおいがつきやすいはずの腹身もほぼ無臭にできた」と有路教授は言う。開発の背景にあるのが、魚臭さや調理の手間を敬遠する消費者の魚離れだ。農林水産省の調べでは、1人当たりの魚介類消費量は2011年度に肉類に逆転され、14年度は約27キロと、ピークの01年度から約13キロ減った。有路教授は国内で養殖が最も盛んなブリに着目。エサとともに、においの元となる体表の酸化を防ぐ真空パックも民間企業と開発した。「ブリ特有のにおいを好む人も多いが、消費拡大のためには苦手な人の市場開拓が大事。よりにおいに敏感な海外への輸出増にもつなげたい」と期待する。
■みかん香るブリも
 「フルーツ魚」もエサに柑橘(かんきつ)などを混ぜて魚臭さを抑え、香りをつける。養殖業が盛んな西日本で次々と商品化されている。回転ずし「無添くら寿司」を展開するくらコーポレーション(本社・堺市)は12年、みかんの皮と果汁をエサに混ぜた愛媛県の「みかんブリ」のにぎりの提供を始めた。食べると、みかんの風味が口に残る。担当者は「さっぱりした後味が人気で、魚嫌いの子どもも食べてくれる。通常の養殖ブリの1・5倍の売れ行きです」。今では「みかんサーモン」や「すだちしまあじ」など10種類のネタを、フェアや月替わり商品として出しているという。フルーツ魚の生みの親は高知大学の深田陽久准教授(魚類栄養生理学)。柚子(ゆず)に含まれるポリフェノールの抗酸化作用に注目し、エサに加えたところ、身の変色が抑えられるだけでなく、香りもつくことを発見した。07年に鹿児島県の地元漁協が深田准教授の協力を得て「柚子鰤(ぶり)王」の販売を開始。果皮と果汁をエサに10%ほど加えて20~30回魚に与え、柑橘の香気成分「リモネン」を人間の感知できる最低量の約20倍、身に蓄積させているという。全国海水養魚協会の調べでは、少なくとも8県に23種類のフルーツ魚がある(昨年12月時点)。消費者にも浸透し始め、大分県の「かぼすブリ」の15年度の出荷量は512トンで、販売を始めた10年度の90トンから急増している。とはいえ、フルーツ魚のシェアは養殖魚全体でみればわずかなもの。「におい」のある本来の魚の販売が安定経営には大事なため、大々的にPRするのは難しい。深田准教授は「養殖でしか作れないおいしい魚が増えることで、養殖魚の評価が高まり、業界の活性化につながる。魚を好きになるきっかけになってほしい」と期待する。

*2-3:http://qbiz.jp/article/92489/1/ (西日本新聞 2016年8月17日) ビゼンクラゲの価格が急落 中国景気失速で有明海の“救世主”がピンチ
 有明海漁業の救世主的存在だったビゼンクラゲの取引価格が大幅に下落している。中国で高級食材として需要があり、輸出量が増えて高値を付けていたが、中国経済の失速で需要が落ち込んだとみられる。有明海では取れなくなったタイラギなどに代わる貴重な収入源で、県内の漁業者から心配する声が出ている。ビゼンクラゲは傘の直径50〜70センチで、大物は重さ約30キロ。昔は引っ掛かると漁網が破れる厄介者とされていたが、ここ10年は中華料理の前菜や酢の物の食材として、国内外の業者による取引が活発化。乱獲を防ぐため、福岡、佐賀両県の有明海区漁業調整委員会は昨年、7〜10月だけ漁を解禁する規制を始めた。ところが、県有明海漁協大浦支所によると、今年の取引額は1キロ230円前後で低迷。14年の500円、15年の350円と比べ半値近くになっている。今夏の水揚げ量は昨年と同水準でだぶついているわけではなく、クラゲ専門商社くら研(神奈川県茅ケ崎市)の福田金男社長は「中国の景気失速が原因。ぜいたく品の消費は落ち込み、安物を求める傾向が価格を押し下げている」とみる。ノリ養殖も営む太良町の漁業渋谷浩之さん(45)は「クラゲ漁は重くて肉体的にきついが、不作気味のノリ養殖を補う大切な仕事。このまま低価格が続けば、燃料費も割に合わなくなる」と気をもむ。九州農政局佐賀支局によると、クラゲを主に示す「その他の水産動物類」の県内の水揚げ量は11年まで年間30〜100トン前後だったが、取引の活発化や個体数の増加で12年は3500トンと爆発的に拡大、13年は5488トン、14年も3230トンで推移してきた。一方、タイラギは有明海の環境異変で戦後最長の4季連続休漁が続いている。


PS(2016/9/19追加):*3-1、*3-2で、東京都は生鮮食料品を扱う市場開設者としての食品安全性に関する責任感や金銭感覚が欠けていることがわかった。しかし、「①この建物に約5,900億円もの建設費を支払わされた被害者としての都民」「②市場を機能させている民間企業の卸・仲卸」だけでなく、「③東京都が承認しなければ小売店や食品企業はせりに参加できないという時代遅れの市場制度」「④生産者の利益」「⑤消費者の利益」も考えられるべきである。つまり、第一次産業の生産者は、市場を通すことで自由な価格付けができず、卸・仲卸に手数料を支払う分だけ消費者がその製品に対して支払った金額から受け取る収入が減らされる。そのため、間に立っている卸・仲卸・小売は、よほど役立つ仕事をしているのでなければ第一次産業の寄生虫となり、役立つ仕事をしているか否かはニーズによって決まるため、取引の自由を認めた上で卸・仲卸数の調整がなされるべきである。
 私は、衆議院議員をしていた2005~2009年の間、地元の全農協・漁協を廻って話を聞き、第一次産業は利益率が低いため大規模化・機械化・機械価格の低減・燃費削減等によるコスト削減が必要だと理解したが、同時に、市場を通さず直接消費者に販売することで生産者の利益が増え工夫も生まれるので、生産者が道の駅や小売店と直接取引することが重要だと考え、これを進めてきた。そして、道の駅に出された生鮮食料品は、新鮮さ・安さ・品質などで市場を通した規格品よりも人気があり、道の駅や小売店による生産者からの直接仕入れは増加しているのである。
 従って、地方の市場はそれぞれ存在理由があるのでその地方で考えればよいが、東京都は確かに11ある市場の整理統合が不可避だろう。そこであぶれた仲卸の人材は、知識・経験・ネットワークを持っているため、大規模小売店や食品企業の生鮮食料品仕入れのプロ、もしくは生産者のアドバイザーとして働けばよいと思う。

    
2016.9.18日経新聞   2016.9.18日経新聞    第一次産業製品の  2016.9.18日経新聞
 市場開設者の責任       豊洲市場          卸売市場経由率    仲卸業者数の推移

*3-1:http://www.nikkei.com/article/DGXMZO07231360U6A910C1000000/?dg=1 (日経新聞 2016/9/18) 豊洲騒動にみる市場開設者の怠慢  編集委員 志田富雄
 東京都の小池百合子知事は8月末、11月2日に予定していた築地市場の閉鎖と同7日の豊洲市場開業を当面延期すると発表しました。2011年の決定から曲折を繰り返した豊洲市場への移転は、最後の最後で「待った」がかかったのです。さらに、ここにきて汚染土壌対策として専門家が求めた「盛り土」工事が主要な建物の地下で実施されていなかった事実が共産党都議団の調査で明らかになりました。これまでの東京都の説明は事実上、嘘だったことになります。こうした築地移転をめぐる一連の騒動は、卸売市場の役割や仕組み、現在の卸売市場が直面する課題に目を向けることで理解が深まります。マグロの初セリや場外市場での買い物を通じて築地の名前は国内外に浸透し、外国人観光客も多く訪れます。ただ、その役割をきちんと説明できる人は少ないかもしれません。今回はそこを解説してみましょう。
■全国64の中央卸売市場、東京都に11開設
 築地市場などの卸売市場には、中央卸売市場と地方卸売市場があります。14年度時点で全国に1092ある地方卸売市場の開設は企業や農業協同組合でも可能ですが、食品流通の根幹を担う中央卸売市場の開設者は卸売市場法によって自治体と決められています。とりわけ東京都は15年度で全国に64ある中央卸売市場のうち、11の市場を開設しています。そこには取引金額で全国最大の築地市場のほか、野菜や果物、花の取引を主力とする大田市場、芝浦の食肉市場があります。これらの市場は設置場所や開設者が東京都とはいえ、卸売市場としての役割は全国区です。市場開設者としての東京都の責任は自治体の中でも突出して重いのです。今回の騒動をみると、東京都には市場開設者としての責任感が欠けているとしか思えません。建設資金の税金を払った都民も被害者ですが、直接的な影響を受けるのは市場に参加する卸や仲卸会社の人たちです。卸売市場を開設し、適切に運営するのは東京都です。ただ、市場を機能させるのはそこに参加する民間企業の卸や仲卸です。卸売市場では卸が仕入れてきた食品を仲卸が買い付け、それを小売店や外食店に売ります。その過程で、卸と仲卸の間でマグロなどのせりが行われるのです。東京都が承認すれば小売りや食品企業なども買い手としてせりに参加することができます。卸売市場には全国の食品を集めて分配し、公正な価格を決める役割があります。開設者である東京都が「築地は老朽化したので、豊洲に引っ越します」と決めれば“店子(たなこ)”である卸や仲卸はそれに従うか、豊洲での営業をあきらめる(多くの仲卸の場合は廃業)しかありません。ところが、引っ越しの準備をほぼ終え、新居の冷蔵庫のスイッチも入れた(家庭の冷蔵庫と違い、冷やし込みには長い時間がかかります)と思いきや今度は「新居の安全チェックがまだなので引っ越しはしばらく延期。新たな引っ越し時期は年明けに決めます」と言われたのです。これだけでも上から目線で、店子はかちんときます。追い打ちをかけるように「新居の安全対策がこれまでの説明と違ってました」と言われれば、移転を推進してきた企業の幹部さえ怒り心頭なのは当然のことです。市場関係者の話では、年末に向けて取引量が増える11月の引っ越しを提案したのも東京都です。築地市場の跡地では20年の東京五輪で幹線道路として使う「環状2号」の工事をしなければならず、道路の建設計画から逆算して移転時期を決めたとみられています。しかし、豊洲市場の安全性の最終確認が間に合わないとして、小池知事は移転延期の根拠としました。築地市場の移転をめぐっては、これまでも曲折がありました。開設は1935年ですから、すでに80年代には老朽化や場内の狭さなどが問題になり、大井への移転や築地での再整備計画などが持ち上がりました。築地での再整備は工事に着手したのですが、市場の営業を続けながらの工事という同時並行が困難なことが分かり、工事は中断。東京都は01年に豊洲への移転を決めました。ところが、東京ガスの工場があった移転先の土壌から高濃度の有害物質が見つかり、都は汚染対策工事にとりかかりました。土壌をきれいな土と入れ替える対策で、これが都の説明と違うと問題になっているものです。その間、店子も「豊洲移転派」と「築地派」に分かれて激しい議論が続きました。とりわけ、豊洲への移転に難色を示す企業が多かったのは仲卸です。築地市場に参加する卸会社には大都魚類、東都水産、中央魚類、築地魚市場といった上場企業もあります。一方、仲卸は零細な中小企業がほとんどです。東京都の調べで中央卸売市場の仲卸は14年末時点で1164社と89年から35%減少。存続する仲卸も3期連続で経常損失となるなど東京都の決めた財務基準に抵触する比率が6割に及びます。仲卸には1000万円ほどかかるとされる引っ越し費用を捻出できないところも多く、これが移転反対の一因になっています。
■仲卸の経営改善へ役割果たせず
 卸売市場法では市場開設者の自治体や卸会社の許可権限は政府(農林水産大臣)が持ち、仲卸の許可権限は自治体にあります。東京都は仲卸各社の経営状況をチェックし、市場の円滑な運営に努めなければならないのです。多くの仲卸の経営が揺らいでいる現状も、東京都は十分に責任を果たしていないといえます。12年には仲卸の団体の間で、移転派の組合員が移転に慎重な理事長に解職請求を突きつけた騒動もありました。今回の移転延期と土壌汚染対策の不備発覚により、時計の針が逆戻りし、移転をめぐり市場が再び割れる懸念があるのです。ただし、このまま築地市場を存続させることは本質的な問題解決につながりません。築地市場の老朽化は目に余るものがあります。大規模な地震などが起きなくても、天井の崩落などによって働く人たちに被害が及ぶ危険性もあります。手狭な場内でターレーと呼ばれる運搬車による人身事故も後を絶ちません。今回の騒動では、築地市場もアスベストなどの問題を抱えている事実に焦点が当たりました。少なくとも東京都は市場開設者として築地など11市場についても豊洲と同様、有害物質を厳しくチェックして情報を公開する必要があるでしょう。築地市場を見学したことのある読者なら分かると思いますが、築地は間仕切りの少ない開放型の施設です。もちろん卸や仲卸はそれぞれ冷蔵庫を持っていますが、市場全体として厳格な温度管理は不可能です。政府は卸売市場の整備方針として温度管理を徹底するコールドチェーンをつくることをめざしています。現状維持では、こうした市場の近代化も足踏みしてしまいます。移転の前途には暗雲が広がりましたが、かといって振り出しに戻ることもできないです。
■進む地盤沈下、11市場の整理統合は不可避
 そもそも東京都は長い間、老朽化した市場の改善を放置していたのです。移転延期の期間がどれくらいになるかは分かりません。しかし、長期化するだけ食品流通は築地(卸売市場)を離れ、地盤沈下が進むのです。宿題はそれだけではありません。東京都には11、全国では64の中央卸売市場があると説明しましたが、数が多すぎるのです。交通網が整備されていなかった時代と違い、今では青森県でとれた「大間のマグロ」や大分県でとれた「関さば」もすぐに築地市場にトラックで運ばれるようになりました。買い手では大規模なスーパーや外食チェーンが台頭し、卸売市場を通さない産地との直接取引も増えています。水産物の卸売市場経由率は98年度の71%台から13年度には54%台まで低下しています。卸や仲卸は扱う商品の金額の中から収入を得ますから、卸売市場の取扱金額が減れば収入は減り、経営は苦しくなります。先に指摘した仲卸の経営問題です。東京都は11市場の整理統合にまったく手を付けていません。これも責任の放棄です。東京都などの自治体は政府と連携し、卸売市場の整理統合を加速しながら、市場の近代化を進める必要があります。それには施設だけでなく、取引制度を食品流通の変化に合わせる規制緩和も必要です。これを契機に、中央卸売市場の民営化推進も検討してほしいと思います。

*3-2:http://www.sankei.com/life/news/160830/lif1608300029-n1.html (産経新聞 2016.8.30) 総事業費1・5倍 維持費1日700万円 延期で都民にさらなる負担の可能性
 11月7日に計画されている東京都の築地市場(中央区)の豊洲市場(江東区)への移転について、小池百合子知事が疑問視するのは、移転先の豊洲市場の総事業費が平成23年度の約3900億円から約1・5倍となる約5900億円に膨れ上がった点だ。だが、移転を延期しても豊洲市場の空調などに維持費がかかる上、11月移転に向け準備を進めてきた関連業者から補償も求められかねない。財政負担はさらに拡大の可能性が高く、小池氏は難しいかじ取りを迫られそうだ。都の説明によると、豊洲市場の建設費は、資材・人件費の高騰などで、23年度に行った試算時の約2・8倍の2747億円に増加したほか、土壌汚染対策費も約1・5倍の858億円に膨張するなど、最終的な総事業費は約5884億円に及ぶと見込まれている。膨らんだ事業費について小池氏は今月16日、「こんなに天井知らずに高くなっていいのか。非常に疑問に思う」と不信感をあらわにし、自身が設置する都政改革本部で検証する考えを示していた。


PS(2016.9.20追加):*4-1のように、毎日新聞は、2016年9月18日、「『建物下の空洞は土壌汚染が再び見つかった場合に備えて、パワーショベルが作業できる場所とする目的でつくられた』と都幹部が毎日新聞の取材に証言した」と報じている。しかし、最初、東京都の担当部局は「配管などのために空洞を設けた」と説明していた。次に、*4-2のように、日経新聞が、2016年9月20日、「都は2008年、有識者会議に『建物下に汚染地下水浄化の作業空間を確保する』と説明しつつ、詳細な内容は伝えていなかった」と報じている。しかし、汚染された地下水を浄化して何に使うのだろうか。市場で使用するのなら、汚染されていない海水を管で遠くから採取してきて浄化するか、水道水を使うべきで、ここの土壌から出た地下水を使用するなどもってのほかである。そして、こういうことを言われなければわからないような人が給料をもらって担当しているのがおかしく、都民はじめ市場利用者に多大な迷惑をかけている。

 
      2016.9.11東京新聞     2016.9.18  2016.9.20    豊洲市場の地下水
                          毎日新聞    日経新聞
*4-1:http://mainichi.jp/articles/20160918/k00/00m/040/105000c
(毎日新聞 2016年9月18日) 豊洲市場、空洞は汚染対処用…「再発時、重機搬入」
●都幹部が証言
 東京都の築地市場(中央区)からの移転が延期された豊洲市場(江東区)の主要建物下に土壌汚染対策の盛り土がされなかった問題で、建物下の空洞は土壌汚染が再び見つかった場合に備え、パワーショベルが作業できる場所とする目的でつくられたことが分かった。都幹部が毎日新聞の取材に証言した。担当部局の都中央卸売市場は問題発覚後、配管などのために空洞を設けたと説明しており、本当の理由が隠されていた疑いが強くなった。豊洲市場では2007〜09年、地下水や土壌などから環境基準値を大幅に上回るベンゼンが検出された。土壌汚染対策を検討する外部有識者の「専門家会議」と、専門家会議が対策として提言した敷地全体の盛り土の工法を検討する「技術会議」が相次いで開かれ、都議会でも豊洲移転の可否が議論されていた。都幹部によると、都中央卸売市場内には「対策は十分だが、万が一、土壌汚染問題が再発した場合のリスクヘッジ(危険回避)を講じておく必要があるのではないか」との声が根強くあった。「有害物質が出たら、土を掘り起こして作業をしなければならない」との指摘もあり、パワーショベルが入れる空間を確保することになったという。建物下に盛り土がなかった事実の発覚以降、都中央卸売市場は床下の高さ4.5メートルの空洞は配管や電気設備の敷設のためだったと繰り返し説明してきた。しかし、この都幹部は「配管などのためなら高さ1メートルもあればいい。4.5メートルという高さは、建築の常識ではあり得ない」と指摘した。別の元局長級幹部は、都中央卸売市場が事実を公表しなかった背景について「『パワーショベルを入れるため』と明かせば、『土壌汚染対策は万全ではないのか』という話になる。問題が広がらないようにと考えるのは、事務方特有の発想だ」と説明した。一方で「盛り土よりコストが高いとも考えられ、手抜き工事とかコスト削減目的とかではなく、真剣に検討した結果だったのではないか」と述べた。

*4-2:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20160920&ng=DGKKASDG19H27_Z10C16A9CR8000 (日経新聞 2016.9.20) 都「地下水浄化の作業空間」 豊洲市場、有識者に詳細伝えず
 豊洲市場(東京・江東)の建物地下が空洞になっている問題で都が2008年、有識者会議に「(建物下に)地下水浄化の作業空間を確保する」と説明しつつ、詳細な内容は伝えていなかったことが19日分かった。会議の議事録によると、その後の質疑でも都側の回答はあいまいで、有識者との間で認識が食い違ったままだった。小池百合子知事が設置したプロジェクトチーム座長の小島敏郎青山学院大教授は17日の記者会見で、「(議事録に)不思議なやりとりがある」と指摘していた。同市場の土壌汚染対策を巡っては08年7月、「専門家会議」が全敷地に4.5メートルの盛り土をするよう提言。ただ都は地下利用を検討、同年12月に具体的な工法についての「技術会議」で初めて説明した。都は「地下水管理について」の文書で将来的に土壌汚染対策法が改正され、同市場が同法の指定区域になるケースを想定。「汚染地下水の浄化が可能となるよう、建物下に作業空間を確保するなどの措置」を講じる方針を示した。ただ作業空間の大きさや配置など詳細は説明されないまま、有識者側は了承した。土壌汚染対策工事を終えた14年11月の技術会議で都は断面図のイメージを提出。だが建物下はグレーに塗られただけで注釈はなかった。盛り土用の購入土の少なさに気付いた有識者が理由を尋ねると、都の担当者は「建築敷地以外のところを盛り土した」と答弁した。答弁の趣旨は伝わらず、有識者が「4.5メートルは土が積んであるのか」と改めて問うたが、担当者は「はい」と回答。そのまま質疑は終わった。


PS(2016.9.21追加):*5-1に「①日本の正社員の長時間労働は法規制の緩さだけが原因ではない→従って、残業や休日労働が認められる現行制度を見直せ」「②労働生産性が低いことも大きな理由→従って、政府は働く人の生産性向上の支援にも力を入れるべきで、就業者の1時間あたり付加価値は日本は米国の6割強であるため、脱時間給や裁量労働制が有効」「③転職が簡単ではないため、過重労働を我慢している人もいる→従って、転職しやすい柔軟な労働市場を整備すべき」「④長時間労働の是正は女性の就業や男性の子育て参加を促す上でも重要」と書かれている。
 しかし、①②は産業によって大きく異なり、豊洲市場の事例のように、最も生産性・付加価値が低いのは中央省庁を含む役所であって、低いのみならずマイナスのことさえある。さらに、「時間をかけるのがよい」という価値観もあって、1週間で結論が出る話に1年かけたり、③のような1~2年で解決できる事象を25~30年も議論していたりする。次に生産性が低いのは景気対策のカンフル剤として支出される公共事業で、生産性・付加価値が低いだけでなくマイナスのこともある。つまり、生産性の向上や長時間労働の是正を強く主張しているのは経営などしたことも考えたこともない役所であり、生産性や付加価値の低い行動を長く続けられるのは、実は税金で賄われる組織と独占企業・寡占企業だけなのである。
 なお、付加価値は、小売業・飲食業・観光業・病院(特に救急医療)のように、休日や夜も営業していることにより高まるものも多いため、①をどの産業にも当てはめるのは役所の横暴であり、そもそも共働きの女性が増えている現在、役所も8時~17時ではなく、少なくとも窓口は20時くらいまで空いていて欲しい。そして、これは、組織内の長すぎる文書の簡略化や人材のローテーションで問題なく行い得る。
 また、*5-2のように、出産・育児で離職しがちな医師を支援しようと、九大病院がフルタイムで働くことが難しくなった女性医師らを年収100万円程度で非常勤として雇用し(この制度がないよりはよいが、可哀想な境遇だ)、診察や研修に携わって将来復職しやすくする制度を行っているとのことだが、他の専門職と同様、一人前になるため一生懸命に修行すべき期間と子育て期間は重なるため、国が「子育ても仕事も自分で行うべき」という方針でいる限り、本来は難しい仕事をこなせる優秀な女性ほど遣り甲斐をなくして離職する結果となる。従って、家事や子育てを夫婦の仕事と決めつけず、外国と同様、ハウスキーパーや外部サービスを容易に使えるシステムを作る方が、働く男女を助けることになる。

*5-1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20160921&ng=DGKKZO07470560R20C16A9EA1000 (日経新聞社説 2016.9.21) 多面的な政策で正したい長時間労働
 問題を解決するときは最初に原因を洗い出し、ひとつひとつ手を打っていく必要がある。長時間労働の是正も同じだ。政府は残業時間に上限を設けることを考えているが、日本の正社員の長時間労働は法規制の緩さだけが原因ではない。労働生産性が低いことも大きな理由だ。転職が簡単ではないため、過重労働を我慢している人もいるだろう。長時間労働の是正は女性の就業や男性の子育て参加を促すうえでも重要だ。労働時間規制以外の点にも目を向け、多面的な対策で効果をあげるよう政府に求めたい。日本の正社員の年間労働時間は2000時間超で高止まりしている。厚生労働省は残業時間の上限規制について、有識者による検討会を発足させて議論を始めた。企業の労使が協定を結べば、残業や休日労働が認められる現行制度を見直す。今は協定に特別条項を付ければ事実上、青天井で残業時間を延ばせる。政府はこの仕組みを改め、一定の制限を設ける方向という。これは妥当だろう。併せて政府は働く人の生産性向上の支援にも力を入れるべきだ。就業者が1時間あたりに生み出す付加価値は、日本生産性本部によると日本は2014年に41.3ドルで、米国の6割強にとどまる。主要7カ国のなかでは最も低い。生産性を上げれば労働時間を短縮しやすくなる。労働時間ではなく成果に対して賃金を払う「脱時間給」の導入や、働く時間の配分を本人にゆだねる裁量労働制の拡大は、メリハリをつけた働き方を広げる効果が見込める。それらを盛り込んだ労働基準法改正案を26日召集の臨時国会でぜひ成立させるべきだ。ロボット、ドローン(小型無人機)や人工知能は生産性向上の強力な武器になる。普及には規制のあり方の見直しも課題になろう。会社から命じられる仕事の量が多すぎるなら、それを拒否できるように、転職がしやすい柔軟な労働市場を整備する必要もある。求人企業と求職者の橋渡しをする職業紹介業務をもっと民間企業が担えるようにする規制の見直しなどが求められる。長時間労働の是正には一人ひとりの職務の明確化や仕事の進め方の見直しなど、企業の取り組みが重要になるが、政策面でもやるべきことは多い。政府は必要な政策を総動員すべきだ。

*5-2:http://qbiz.jp/article/94327/1/%E4%B9%9D%E5%A4%A7%20%E5%A5%B3%E6%80%A7%E5%8C%BB%E5%B8%AB/ (西日本新聞 2016年9月20日) 育児や出産 医師の復職支援10年 九大病院プロジェクト 20日記念講演会
 出産、育児で離職しがちな医師を支援しようと、九州大学病院(福岡市東区)が取り組む「きらめきプロジェクト」が今年で10年目を迎えた。フルタイムで働くことが難しくなった女性医師らを非常勤として雇用し、診察や研修に携わってもらい、将来的に復職しやすくする取り組み。多くが職場復帰を果たしており、初年度からサポートする樗木(ちしゃき)晶子九大教授(62)は「今後も精力的に続けたい」と意気込んでいる。プロジェクトは2007年から、国の大学改革推進事業の一環としてスタートし、事業終了後も九大が独自に継続している。毎年、男女を問わず、非常勤を希望する医師や歯科医師を募集。雇われたスタッフは週に1回程度、同病院で診察や研究に携わるほか、月1回のミーティングで情報交換をしたり、年度末の発表会などを行ったりしている。年収は100万円程度。15年度までに約40人(延べ92人)を雇用。うち約20人がフルタイムで職場に復帰し、同病院や国立病院で管理職(部長)を務める女性もいるという。プロジェクトの発足当時、九大病院でも離職する女性が増えていた。出産などで休職した場合、「定員に枠がある医局に迷惑を掛ける」との理由で離職を選択するケースが多かったという。全国的に医者不足が叫ばれている中で、一度離職すると、それまで研究してきた専門分野への復帰が難しく「せっかくの優秀な人材が戻ってこられなかった」と樗木氏は振り返る。非常勤スタッフとして働く医師たちは「年収は少なくても、働ける喜び、名誉をみな感じている」という。10年を記念し、20日午後1時から、九大医学部の百年講堂で講演会も開催。活動報告のほか、水田祥代福岡学園理事長らの講演もある。一般参加可。入場無料。プロジェクト事務局=092(642)5203。


PS(2016.9.22追加):メディアは政治家には大したことのない事象まで騒ぐが、役人の責任となると、*6-1のように、あらゆる手法で曖昧にされ、メディアも追及の手を緩める。しかし、2007年以降に中央卸売市場長が5人いるとしても、「盛り土がなかったとの認識はなかった」というのは、食の安全に関する認識がなかったということであり、卸売市場長の役目を果たしていない。また、2年毎に異動させて担当者を変え、ど素人を担当者にして時間の無駄遣いをさせた上、質の低い仕事になるのも役所人事の問題点である。そのため、部課長級で判断して市場長や知事に説明していなかったことも問題だが、契約書を作ったり、それにサインしたり、稟議書にハンコを押したりして多額の予算をつけながら、建設内容のポイントを掴んでおらず、建設現場に何度も行かなかったというのなら、それ自体も問われるべきである。
 なお、*6-2のように、共産党都議団が、21日に豊洲市場の主要建物付近の地上部に地下空洞に通じる重機の搬入口を見つけ、都議会公明党も同様の搬入口を確認したそうだ。共産党・公明党の都議はよくやっているが、これまで都議でさえ地下空間の存在を知らず、推理小説のように探しているのは全くおかしい。私は、この地下空間は、厚いコンクリートで密閉すれば、水素燃料による自家発電装置や蓄電池などの機械・備品を置いたり、地下鉄と同様に水を一時的に溜めるプールとして使用したりなど、有効活用することも可能だと考えるが、都はまず正確な開示を行うべきだ。

*6-1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20160922&ng=DGKKASFB21HDY_R20C16A9EA2000 (日経新聞 2016.9.22) 都知事、豊洲問題の追加調査を指示
 豊洲市場(東京・江東)で盛り土をしていなかった問題で、東京都の小池百合子知事は21日、都幹部から経緯の検証結果の報告を受け、追加調査を指示した。責任の所在が不明確などの理由から不十分と判断した。28日の都議会開会をめどに最終結果をまとめるように求めた。都は盛り土を同市場の土壌汚染対策の目玉としてきた。にもかかわらず、建物の地下が空洞に変更になった経緯が明らかでなく、副知事を中心に調査してきた。小池知事は21日夜、記者団に、「(同日受けた報告は)時系列的に歴史年表みたいな形でまとめてある。その時、誰が関わって何を決めたのかについて今まとめてもらっている」と語った。さらに「仲間でずっとやってきたので厳しいことが聞きにくいのだろう。都庁でアマアマで調査結果を出したのではかえってマイナスになる」と話した。検証結果は公表されていないが、日本経済新聞の取材でも不透明な点が多い。誰が判断したのか? 豊洲の土壌汚染が大きな問題になった2007年以降、豊洲問題の都の責任者である中央卸売市場長は5人いるが、いずれも「盛り土がなかったとの認識はなかった」と語る。重要政策の変更にもかかわらず、責任者に十分説明せず、部課長級で判断した可能性がある。いつ変更した? 都は11年8月、豊洲市場の土壌対策の工事契約を結んでいる。石原慎太郎知事(当時)の押印があり、建物の下に盛り土はしないという内容だった。地下を空間にする案は出ては消えた。08年11月、土壌汚染対策の工法を検討する「技術会議」に都は地下空間を整備する案を示していた。ただ、11年3月、都議会の委員会で当時の担当部長は「敷地全体にわたり、きれいな土で盛り土を行う」と答弁している。なぜ変更した? 地下が空洞になっている理由について、現在の都の担当者は「配管の整備や修繕作業のためのスペースが必要」と説明する。比留間英人・元中央卸売市場長は「(在任中)地下水をモニタリングするスペースは必要と考えられていた」と語る。盛り土をしなかったこととコストの関連も焦点だ。

*6-2:http://mainichi.jp/articles/20160922/k00/00m/040/075000c (毎日新聞 2016年9月21日) 豊洲市場、.空洞に通じる重機搬入口が見つかる
 共産党都議団は21日、豊洲市場の主要建物付近の地上部に、地下の空洞に通じる重機の搬入口が見つかったと発表した。市場担当者から説明を受け、21日に敷地外から目視で確認したという。都議会公明党も21日に同様の搬入口を確認した。共産党によると、水産仲卸売場棟の搬入口の大きさは縦約3メートル、横約6メートルで、コンクリート製のふたでふさがれている。都の担当者は「建物下の空洞に分解した重機を降ろすために設置した」とし、大がかりな工事を想定していることを明らかにしたという。青果棟、水産卸売場棟にも同規模の搬入口があった。共産党は「汚染が見つかった場合に掘り返すためだとすれば、これまでの『世界一安全な土』という説明はどうなるのか。地下空間に関わることが隠されていたことは重大で、都は全面的に公表すべきだ」としている。


PS(2016年9月24日追加):*7-1のように、豊洲市場の土壌汚染対策を検討する「専門家会議」の平田座長が、9月24日、「豊洲市場の空洞に溜まった水は雨水ではなく地下水」と判断し、「地下水管理システムで地下水位および水質を管理し始めれば問題ない」と言っておられるが、*7-2、*7-3に書かれている井戸で、この埋立地の地下水の水位・水質を管理できると考えるのは甘い。何故なら、湧き出ている地下水は雨水以外にはあり得ないと断定しているが、下図に書かれている不透水層は岩盤やコンクリートででもなければ不透とは言えず、本当は下から海水が上がってきている可能性が高いからだ。もし地下水管理システムで地下水位および水質を管理できると言うのなら、今、やってみればよいだろう。また、下図で、海水の水位が砕石層より下に描かれているのは、豊洲の標高から考えて嘘である。
 さらに、*7-1のように、都議会公明党が実施した水質調査でシアン化合物が検出されたことについては、「直ちに人体に影響を与えるものではない」とされているが、食の安全確保には、環境基準以下で直ちに人体に影響を与えないという程度では不十分だ。

  
  人工島にある豊洲市場     豊洲市場の地下水概念図(×)    井戸による地下水管理(×
                            *7-3より
*7-1:http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160924-00000036-mai-soci (毎日新聞 2016年9月24日) <豊洲市場>平田座長「空洞の水は雨水でなく地下水と判断」
◇水産卸売場棟の建物下の空洞を視察
 東京都の豊洲市場の土壌汚染対策を検討する外部有識者の「専門家会議」の平田座長は24日に水産卸売場棟の建物下の空洞を視察し、豊洲市場の空洞にたまった水は雨水ではなく、「地下水であると判断される」との見解を示した。都議会公明党が14日に採取し実施した水質調査でシアン化合物が検出されたことについては、「直ちに人体に影響を与えるものではないと考えられる」とした。

*7-2:http://www.shijou.metro.tokyo.jp/toyosu/dojou/taisaku/outline/step/step08/
(東京都中央卸売市場) 盛土と井戸の設置
 調査により安全性を確認した盛土等を使って、計画地盤の高さまで盛土します。(このことにより、A.P.+2mより上は、全てきれいな土となります。) 盛土した後、地下水管理用の井戸を設置します。
●地下水管理用井戸
 市場施設完成後は、地下水管理システムにより、敷地全域の地下水位および水質を管理します。今回の工事では井戸の設置まで行います。
●地下水管理システムの概要
 敷地全域の地下水位および水質を管理します。観測井戸で測定したデータをもとに、自動で揚水ポンプを稼働させるなど、地下水位をリアルタイムに監視・制御します。常時は管理推移より0.2m低く地下水位を維持することで、大雨、集中豪雨時の雨水貯留機能も備えます。

*7-3:http://ameblo.jp/kazue-fgeewara/entry-12201552847.html (マスメディア報道のメソドロジー 2016.9.19) 洲市場の地下空間問題の最大の問題点/マスメディアの悪意報道
 実は私、地盤内の物質移動現象に関する専門知識をちょっぴり有している(笑)のであえて言わせていただきます。豊洲市場の「地下空間問題」の最大の問題点は何かといえば、物質の移動現象のイロハも知らずに安全性を判定することなど到底できない素人の皆さん(例えば建築エコノミストやら経済評論家やら弁護士やら元政治家やら元競馬評論家やら自称ジャーナリストやら司会者やら)が、ワイドショーなどのマスメディアで、まるで物質移動分野の権威のように安全だとか危険だとか根も葉もない結論をアテズッポで語っていることであると私は考えます(笑)。根拠薄弱な言説や非論理的な言説をもって東京都を理不尽に締め上げるような態度は既に常軌を逸している悪意報道であると思います。今回の問題で東京都が正当に批判されるのは当然であると考えますが、不当な批判をするのは厳に慎むべきです。これらの人物は、テレビの視聴者が専門知識を持っていないことをよいことにして、かなり浅くいい加減な言説を連発してミスリードを続けています。この記事では、このようなマスメディアや運動家がほとんど理解していない【地盤内浸透流 groundwater flow】による【物質移動 mass transfer】についてエレメンタリーな知識を紹介した上で豊洲市場の地下空間における【浸出水(たまり水)seepage】の発生メカニズムについて考察してみたいと思います。
●豊洲市場の地下水環境
 まず、物質移動について紹介する前に豊洲市場における地下水環境について簡単に紹介しておきたいと思います。豊洲市場の【地下水環境 groundwater conditions】を概念的に示すと次の図のようになります。都が発行している[工事概要パンフレット] [豊洲新市場の土壌汚染対策工事の概要資料] [専門家会議の提言]も理解に役立つものと考えます。非常に簡潔に言えば、豊洲市場では、不透水層よりも上部にある層のうち2mを掘削除去すると同時に2m以深の地盤についても高濃度の部分を除去し、下部の砕石層を含む4.5m高さの【盛土(もりど) Embankment】を行ったと言えます。地下水のモニタリングは7回実施されていますが、その[結果]を見れば、いずれの汚染物質も基準値以下に抑えられており、土壌汚染対策が有効に機能していることがわかります。過去7回の調査の結果に観測値のトレンド(時間平均)の変化は認められず、8回目の観測結果の確認を理由にした小池都知事の移転延期には工学的な有意性はほとんどないものと考えます。ちなみに、調査サイトに仮想のメッシュを設定して調査を実施する方法をグリッドシステムと言います。これにより、調査を系統的に行うとともに調査の偏りを除去して見落としを防止することができます。豊洲のような大規模なサイトにおいて10mメッシュで詳細調査するのは極めて異例なものであり、極めて丁寧な調査が実施されていると言えます。このような形で安全性が確認されれば、[地下水制御システム]によって地下水面の位置が制御され、汚染物質の地表への到達が抑止されることになります。
●汚染物質の移動現象と豊洲市場への影響
 自然界において、地下水に溶存(溶けている)あるいは混在(溶けていない)する気体・液体・固体を移動させているのは、基本的に【移流 advection】【分散 dispersion】【拡散 diffusion】という現象です。それぞれの現象が豊洲市場における汚染物質の移動にあたってどのような影響を与えるか考えてみたいと思います。
●移流
 移流とは地下水の流れに乗って物質が移動する現象です。したがって、その移動は地下水が流れる速さである【流速 flow velocity】に影響を受けることになります。地盤内の地下水が流れる空隙を【水みち water pathway】と言います。土の場合は土の粒子の間の空隙が主な水みちであり、岩やコンクリートの場合には亀裂の空隙が主な水みちとなります(岩やコンクリートは空隙が存在する率が低いため粒子間を通る流れに対して亀裂内を通る流れが卓越します)。この空隙の大きさによって【ダルシーの法則 Darcy's law】における【透水係数 hydraulic conductivity】(水の通りやすさ)が決まりますが、盛土材料の場合、透水係数はどんなに大きくても0.001cm/秒程度であるといえます。この数値に、【動水勾配 hydraulic gradient】(ある場所とある場所の水位換算された水圧の差をある場所とある場所の距離で割った値)をかけると【平均流速 averaged flow velocity】を求めることができます。移流による汚染物質の移動速度はこの平均流速あるいはそれ以下の値であると言えます。ここで、重要なのは豊洲の地下水は埋立地を取り囲むように設置された遮水壁によって水平方向の流速が生じない地下水環境である【不透水境界 impermeable boundary】となっていることです。豊洲の【地下水位 GWL】は【涵養(かんよう) Cultivation】(雨水などによる外部からの水の供給)によって鉛直方向に上昇することになりますが、この場合、涵養は敷地全体にわたって一様に生じるため、水平方向の動水勾配は極めて小さい値になります。もし仮にエリアを囲んでいる遮水壁に沿って水位が瞬間的に5m上昇するという絶対にありえない最悪の地下水圧分布が生じたとしても埋立地中心までの最短距離は200mあるので動水勾配は5/200=0.025であり、このときの地下水流速は0.00025cm/秒という速度になります。これは1時間にすると約1mm、1日にするとたった2cmという流速です。こんなにあり得ないような地下水圧分布が仮に1年間続いたとしても年間の水平移動量は約8mであるといえます。豊洲の汚染評価のグリッドシステムの幅は10mですので、隣り合う観測井戸でも変化が検出されないことになります。なお、透水性が高い砕石層部においては流速は大きくなります。仮に1cm/秒と仮定すると、上述の地下水圧分布の場合、1時間に1mの流速で水平方向に進むことになります。ただし、この場合水の鉛直方向の移動は下方に進むため、未掘削部の帯水層に存在する可能性がある汚染物質が砕石層部を移動する可能性はありません。砕石層部を移動する水はすべてクリーンな水であると言えます。このように、移流現象によって汚染物質が短期間に水平方向に大きく移動する可能性は極めて低いと言えます。通常の地下水環境を考えれば、100年にわたる長期間であっても移流現象に起因する汚染物質の顕著な水平移動は考え難いと言えます。一方で鉛直方向における地下水の移動は水位の変動によって確実に生じます。しかしながら、豊洲市場においては、揚水井戸(地下水をくみ上げる井戸)を利用して地下水位がA.P.1.8mの標高よりも高くならないように【地下水制御 groundwater control】されることになります。したがって、地下水制御が正常に機能している場合には、移流による鉛直方向への汚染物質の移動も発生することはないと言えます。ところで、移流現象としてもう一つ考えておかなければならないことがあります。それは、土粒子間の間隙における表面張力の作用によって液体が吸い上げられる【毛細管現象 capillary action】という物理現象です。この現象は粒子径が大きい場合には発生しないので、豊洲市場では未掘削部の上部に粒子径が大きい砕石層を設置して現象の発生を防止しています。常識的には、この砕石層の存在によって毛細管現象による水位上昇が発生することはないと考えられます。
●分散
 地下水の通り道である地盤内の水みちは必ずしも直線状ではなく、複雑な形をしています。このため、地下水の流れはこれらの間隙を回り道をしながら一定の方位に進んでいくことになります。このときの回り道の広がり(水みちのばらつき度合)を分散と言い、物質の濃度が場所によってはらつくことになります。この分散の広がりを示す係数としては、流れの進行方向に定義される【縦分散長 longitudinal dispersion coefficient】と進行に垂直な方向に定義される【横分散長 lateral dispersion coefficient】があります。豊洲のような土質地盤において、縦分散長は移動距離の1/10程度、横分散長は縦分散長の1/10程度であることが知られています。つまり、分散が汚染物の移動に影響を与える程度は移流の影響の1/10程度であり、今回の場合はほぼ無視できるものと考えられます。
●拡散
 拡散は流体の分子の運動によって物質が移動して拡がっていく現象です。例えば水にインクを静かに入れたときに徐々に広がっていく現象がこの拡散にあたります。拡散現象は、【濃度勾配】(異なる場所の濃度の違いをその距離で割った量)が【流束 flux】(流量)に比例するという【フィックの法則 Fick's laws of diffusion】に従います。このときの比例定数は【拡散係数 diffusion coefficient】と呼ばれますが、豊洲で検討の対象となっているヒ素や六価クロムの水中における拡散係数は約10-9m2/秒という値です。この値が具体的にどの程度のものかと言えば、10cm離れた場所の濃度が変化するのに4ヶ月近くかかる値です(フィックの第2法則)。このように、豊洲サイトにおいて、拡散現象によって汚染物質が短期間に大きく移動する可能性は極めて低いと言えます。地下水位を制御する地下水環境を考えれば、拡散現象に起因して汚染物質が地表に到達することは考え難いと言えます。一方、揮発性のベンゼンは気体であるため、その水中の拡散速度は非常に速いと言えます。しかしながら、土の粒子の間に存在するベンゼンが自由に水中を上昇してくるかと言えば答えはノーです。土粒子内では【毛管圧 capillary pressure】が作用するために鉛直方向の動水勾配が1以上の時には漏気が発生しないことが知られています。これは、[Aberg]の研究によるものであり、地下水制御の実務ではすでにこの現象が利用されています。また、JOGMECが波方と倉敷に建設した水封式LPG地下貯蔵タンクの建設事例では、鉛直方向の動水勾配が0.5でもプロパンの漏気が発生しないことが実証されています。ベンゼンの蒸気圧は20℃で10kPa程度あるので、1m程度の水深を確保すればそれだけでベンゼンを封じ込めることが可能であると言えます。以上、移流・分散・拡散という物質移動の各観点から豊洲市場の地下水環境を考察した場合、豊洲市場の地下水制御の考え方は妥当なものであり、地下水制御システムが妥当にオペレーションされた場合には、汚染物質が短期間に急激に移動して市場に影響を与える可能性は極めて低いと言えます。移流・分散・拡散の数値解析手法としては【オイラリアン=ラグランジアン法 Eulerian-Lagrangian method】による飽和不飽和浸透流解析がありますが、この問題はこのような数値解析を実施する必要がないほどの自明な問題であると言えます。
●豊洲市場の地下空間における「たまり水」の水文学的考察
 ここでは、ここまでに示してきた基本的状況を踏まえた上で、豊洲市場の地下空間における浸出水(たまり水)について水文学的に考察してみたいと思います。豊洲市場の地下空間に水が浸入したシナリオとしては、地表水浸透説と地下水浸透説の2つの可能性があります。
●地表水浸透説
 豊洲市場建屋の地下空間内のたまり水の原因として、雨水等の地表水が地盤内を浸透して地下空間に浸出した可能性があります。基本的に豊洲市場建屋の地下空間は地下水位よりも上にあると考えられます。一般に、地下水位よりも下の部分の地盤は【飽和帯 saturated zone】、地下水よりも上の部分の地盤は【不飽和帯 unsaturated zone / vadose zone】と呼ばれますが、この説では、大気圧よりも低い不飽和帯の水が地下空間に浸入したと考えるものです。この説が真である場合、豊洲市場の地下水環境は保持されていると言えますが、逆に地下空間部における建物の構造に問題があったということになります(笑)。建物内に浸出している水の量は少なくなく、盛土と地下空間を結ぶ明瞭な水路がない限りこのような状況が生じる可能性は極めて低いと言えます。さて、その水路が具体的に何かということですが、コンクリートの接合部の欠陥といった企業体の施工不良である可能性は極めて低いと言えます。この現象は各棟で生じていますが、各棟の企業体(清水JV、大成JV、鹿島JV)がそろいもそろって信じられないような施工不良を起こす確率は極めて低いと考えられるからです。この場合、水路となる可能性があるのが未掘削土と盛土の間にある高透水性の砕石層です。報道において、この砕石層が地下空間内で露出していたことが確認されています。透水係数が0.001cm/秒程度の未掘削土の上部に高透水性の砕石層が存在する条件下において、多量の降雨などで一時的に大きな涵養が生じた場合、もう一つの地下水面が形成されることが十分に考えられます。これは「二重地下水面」と呼ばれます。私が考えるに、8月中旬の積算約300mm(30cm)の雨によって未掘削土の地下水面の上部に砕石層を含む飽和帯が一時的に形成され、その地下水面が空洞の底面よりも高くなったため、砕石層から地下空間内に水が浸入し、たまり水が生じた可能性があると考えています。この場合、たまり水から検出された微量なヒ素・六価クロムは砕石層下面に存在したものが移流によって運搬されてきたものと考えられます。このケースが真である場合には東京都としての対応は、地下空間の下面に遮水製のシートを設置した上でコンクリートを底面に打設すればよいと考えられます。また、この際には、二重地下水面が生じないように砕石層から揚水できるポンプを取り付けることが重要です。もちろん既存の地下水制御システムで対処可能であれば、ポンプは不要となります。
●地下水浸透説
 豊洲市場建屋の地下空間内のたまり水の原因として、雨水等の地表水が地盤内を浸透して地下水の水位を押し上げて、最終的に地下空間の底面よりも高い位置となったため、地下水が地下空間に浸入したと考えるものです。この説が真である場合、良い知らせと悪い知らせがあります。まずは精神衛生上、悪い知らせの方から説明しますと(笑)、今回の降雨において地下水制御システムが有効に機能していなかったということです。情報によれば、最近まで地下水制御システムは運用していなかったということです。この場合、揚水ができずに地下水面が上昇するのは当然起こり得る状況であり、今回それが起こってしまったということです。もしも、今回仮に基準値を上回る汚染物質が検出されていたとしたら、その時点で大金をかけて設置した盛土にも同様の汚染物質が到達したと考えられ、不飽和帯の毛細管現象によって地表に汚染物質が将来到達するシナリオを検討する必要もあったと考えらえます。東京都は、盛土の存在を一瞬で無意味にする可能性もあったこのような杜撰なオペレ―ションを猛省すべきであると考えられます。次に、良い知らせの方ですが、今回たまり水から検出されたヒ素・六価クロムは基準値を下回る微量なものであり、おおむねこれまでに実施されてきたモニタリング調査結果と整合するものでした。これが何を意味するかと言えば、豊洲の地下水は広範囲にわたって、十分に浄化されているということです。地下水制御システムを運用していなかった東京都は盛土という高額なアセットを一気に無意味化するリスクを冒すという恐ろしいほど大きな失策を演じましたが、その結果、逆に豊洲市場の地下が安全であることが判明したということになります(笑)。このケースが真である場合には東京都としての対応は簡単です。地下空間の下面に遮水製のシートを設置した上でコンクリートを底面に打設すればよいと考えられます。ポンプは基本的に不要です。
なお、コンクリートで下面処理を行うことを前提とした場合、地下空間の存在自体は水文学的に問題があるものではありません。専門家会議で問題視されたベンゼンについて、基本的に現在の地下水位1m以浅のベンゼンは既に大気中に放出されているものと考えられ、1m以深のベンゼンはAbergの理論に従って水封されていると考えられるからです。当時の専門家会議でこのgas entry pressureの議論がなされなかったことは専門家の資質としてかなり問題があると私は思います。さらに言えば、東京都は専門家会議の提案を厳守する必要はありません。専門家会議の提案はあくまでも参考意見であり、最終的な意思決定は科学的根拠に基づいて東京都が行い、政治家が責任を持てばよいことです。建設の実務において、専門委員会の提案が却下されるのはごく普通のことであり、これを金科玉条のような拘束力があるものと考えているマスメディアはあまりにもナイーヴな「超」がつくほど世間知らずであると考えます。
●おわりに
 東京都は今回の原因が地表水浸透なのか地下水浸透なのかを科学的に判定し、対策工を迅速に行う必要があると考えます。地表水浸透なのか地下水浸透なのかを判定するには、過去半年程度の地下水位の時系列の観測データが重要になるものと考えられます。オイラリアン=ラグランジアン法による飽和不飽和浸透流による移流・分散・拡散解析を実施すれば、自ずと答えは出るはずです。
いずれにしても、「羽鳥慎一モーニングショー」や「新報道2001」のようなド素人の皆さんが科学的な内容を評価して国民を過度に不安視させる有害なおバカ番組(笑)は国民の批判の対象となるべきであると考えます。都民を中心に国民は今こそ冷静で科学的な議論を行うことが必要であると考えます。
東京都が基本的情報を公表しないことは民主主義社会にとって問題があると考えられます。ただし、なぜ東京都が情報を公開しないかということについても考える必要があると思います。東京都が情報を公開しない理由としては次の2つが考えられます。
(1) 自らの行動が招いた不都合な状況が明らかとなって社会から正当な批判を受けることを回避するため。
(2) 自らの行動がマスメディアや反対運動家の不当な宣伝により社会から不当な批判を受けることを回避するため。
このうち(1)は自明なことですが、(2)はあまり指摘されていません。例えば、原子力関連の事業者(例えば電力会社やJAEA)が何かの安全対策を実施すると、マスメディアや反対運動家は「何か問題があるから安全対策が必要なのであろう」として現状を常に否定してきました。今回も「羽鳥慎一モーニングショー」でテレビ朝日のコメンテイターがまったく同じことを言っていました。これはバックフィットの考え方まで否定するものであり、このような権力者の発言によって事業者は萎縮し、必要な安全対策もとれなくなる事例が過去に何例もあるとされています。私たち国民にとって重要なことは、今回の東京都の運営について批判することが必要であると同時に、マスメディアや運動家の非論理的な言説についても厳しく批判することが必要であると考える次第です。


PS(2016年9月27日):下の写真のうち公明新聞のものは地下水にさざ波がたっており、これは人が入った時にできる報知新聞の波とは異なっている。そして、この波は、汽水域で潮が満ちる際、海水が川に上がってくる時に見かけるのと同じ形だ。つまり、公明新聞の写真は、潮が満ちる時に水が波の元の方向から流れ込んでいることを示し、その他の波のない写真は潮が引く時に水面が静かに下がって行く際のものと考えられる。そのため、水の成分と時間による深さの違いを確認すれば、これが潮の満ち引きと関係していることが分かるはずだ。なお、これを繰り返せば、東京湾の水で土壌が洗われるかも知れないので、水の成分検査を続けながらしばらく変化をみるのがよいと思う。


 2016.9.17朝日新聞  地下空間のある場所  2016.9.15報知新聞   2016.9.24公明新聞 

*8:https://www.komei.or.jp/news/detail/20160924_21429
(公明新聞 2016年9月24日) 豊洲市場 新たに1棟で水たまり
 東京都議会公明党「豊洲市場整備問題対策プロジェクトチーム(PT)」の上野和彦座長らは23日、豊洲市場(都内江東区)を訪れ、生鮮食品などを扱う加工パッケージ棟と管理施設棟の地下空間を調査したほか、両施設の地下に重機などを入れるための搬入口なども視察した。同PTの緊急調査は今回で3回目。都は土壌汚染対策として盛り土を行うと説明しながら、実際には行っていなかった主要建物のうち、加工パッケージ棟と管理施設棟の地下空間を初めて公開した。加工パッケージ棟地下の床は、厚さ10~20センチのコンクリートが敷設されている。一行は、広範囲に水がたまり、深いところで最大23センチほどの水位になっていることを確認し、その水を採取した。管理施設棟の地下は、水のたまりがなく照明も完備されていた。調査を終えた同PTは都議会内で記者会見を行い、上野座長は、加工パッケージ棟地下のたまった水について、「降雨で地下水が上昇してきたもの」と指摘。その上で「採取した水は成分の分析を専門機関に依頼した」と述べた。


PS(2016年10月1日追加):*9のように、東京都庁は、豊洲市場の問題で、①食品安全の意識が薄い ②多額の予算を使いながら費用対効果を考えていない ③2年毎に担当者が交代し、責任を持って全うできていない ④ポストを増やすために細かく部署を分け、全貌を見えなくすると同時に、無責任体制を助長している などの決して言い訳できないガバナンスの欠如が明るみに出た。そのうち、②③④は、税金で運営する中央省庁や他の地方自治体にも多かれ少なかれあることで、これをなくさなければ税金の無駄遣いや役所の生産性の低さを変えることはできない。そして、このように大きな無駄使いをしながら、教育や保育・医療・介護などの福祉には消費税を上げなければ財源がないと言うのである。
 また、①は、役所に男性が多く女性がいても発言権がなかったり、食品の安全性や環境について同時に考えることのできる知識を教育課程で身につけさせず、「空気」を読んでそれに流されることを良しとする人間を育てたことが原因だと考える。

*9:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12586085.html (朝日新聞 2016年10月1日) 「都のガバナンス欠如」 豊洲盛り土なし、知事「流れの中で」 調査、責任者特定できず
 東京都の築地市場(中央区)が移転する予定の豊洲市場(江東区)の主要施設の下に土壌汚染対策の盛り土がない問題で、小池百合子知事は30日の記者会見で、「責任者を特定することは難しい」とする調査結果を発表した。「今回の事態を招いたのはガバナンス(内部統制)と責任感の欠如」と厳しく批判。巨大組織に構造的な問題があるとして、縦割り打破などの組織改革に取り組む方針を示した。会見では、都の調査チームがまとめた自己検証報告書の内容を小池氏が説明。いつ、どの時点で誰が盛り土をしないことを決めたのか▽なぜ、都議会や都民への説明責任を果たせなかったか、の2点を最重要ポイントとして挙げた。盛り土なしの決定については、2008年の技術部門での内部検討から、13年2月の実施設計完了にかけ、五つの段階で決まった過程を示したが、責任者は特定できなかった。都民への説明責任の欠如は、土壌汚染対策の土木担当と建物の建築担当の縦割りによる連携不足や、ずさんな引き継ぎなど、組織運営に不備があったとした。この結論に小池氏は「いつ誰が、という点は、ピンポイントで指し示すのは難しい。流れの中で、空気の中で進んでいった。それぞれの段階で責務が生じる」と述べた。敷地全体に盛り土をしたとの説明を続けたことは「誰も気づかず、チェックさえなかったという恥ずかしい状況」とした。小池氏に続き、地下空間を設ける設計を進めた11~12年当時の中央卸売市場長だった中西充現副知事や岸本良一・現中央卸売市場長らが会見し、謝罪。2人は「盛り土の上に建物があると思っていた。理解が足りなかった」と述べ、部門トップとして「責任を痛感している」と繰り返した。今回の調査結果について小池氏は「一定の評価はするが不十分」として、ヒアリングを続ける考えを示した。都政改革本部内の情報公開調査チームが今後、内部告発を受け付ける公益通報制度を充実させ、調査を続ける。また、部門間の縦割りや形だけの決裁で責任の所在があいまいだったことが原因だとして、重要な課題を部門をまたいで共有する「都庁マネジメント本部」も設置する。


PS(2016年10月15日):私も、近くに同じような建造物を次から次に造る東京オリンピックの無制限な金の使い方に呆れて、他にやるべきことがあるだろうと思っていた。そのため、*10のように、宮城県で復興五輪として施設を整備するのなら、地震・津波で失われた施設や前にはなかった施設を整備する予算になるため、国の復興予算を使ってよいと考える。なお、選手村が分かれるため、ボートの選手が他国や他競技の選手と交流できなくなるという苦情があるようだが、それなら復興五輪なのだから、ヨット、陸上、体操などいくつかの競技を宮城県で行えばよいだろう。

*10:http://digital.asahi.com/articles/ASJBH5FPXJBHUTIL00Y.html?iref=comtop_list_nat_n01 (朝日新聞 2016年10月15日) ボート会場経費「宮城なら3~4割に抑制」 県が試算
 宮城県の村井嘉浩知事は15日、2020年東京五輪・パラリンピックのボート・カヌー会場を現行案の東京都内から同県内に変えた場合、経費を約3~4割に抑えられるとの試算を示した。小池百合子・東京都知事も同日に現地を視察し、「復興五輪」の意義を強調。両知事が足並みをそろえて宮城開催へ加速しているが、競技団体などの反発も強まっている。村井氏によると、長沼ボート場(宮城県登米市)を会場とした場合、経費は「150億~200億円」と試算。借金や国の補助、復興のために寄せられた寄付などを充てる考えを示した。都が491億円かけて東京湾岸に新設する「海の森水上競技場」を会場とする今の計画より割安と訴えており、「小池氏に(判断を)任せたい」とした。村井氏はこの日、長沼開催を疑問視する大会組織委員会に反論。組織委が12日に挙げた、選手村が分かれてしまう▽会場への輸送手段が乏しい▽宿泊施設が不足――などの「九つの問題点」に対し、「仮設住宅の再利用で選手村を確保」「新幹線利用などで移動の負担軽減」「隣接する町の大規模ホテルを利用」などと全てについて回答を示した。また、組織委が14日、小池氏が他県知事と会談したことを「水面下で話し合うのは極めて不透明」と批判したことに、村井氏は「『長沼ありき』ではなかった。いちゃもんをつけている」と反論した。小池氏は先月13日に村井氏と会い、長沼開催について意見交換したことを明かしている。小池氏は15日午後、登米市を訪ね、村井氏の案内でリフォーム済みの仮設住宅や長沼ボート場などを視察。「『復興五輪』はパワフルなメッセージ」と話し、長沼開催に前向きな姿勢をみせた。五輪開催に関する村井氏との会談は、先月以降、この日で少なくとも3回目だ。ただ、長沼開催について、視察に同行した日本ボート協会側からは「環境アセスメントなどの手続きに時間がかかり、間に合わない」など否定的な声があがった。また、小池氏は同日、変更先の別候補となっている彩湖(埼玉県)での開催をめぐって、同県の上田清司知事と認識が食い違ったことについて「(自身の)就任直後のお祝いの席で聞いた」と発言。上田氏が誘致しない意向を示していたと、改めて説明した。(桑原紀彦、末崎毅、野村周平)
■大会組織委員会が示した宮城・長沼会場の九つの問題点と宮城県の反論
①分村には五輪だけで1300人以上の宿泊機能などが必要→仮設住宅の再利用などで対応
②パラリンピックへのバリアフリー対応→会場内にバリアフリー対応道路などを整備
③輸送に難あり→長沼では毎春、2万人が来場するマラソン大会の開催実績あり
④会場に斜面が多く、整備が困難→標高の高い部分は切り土して平地を確保
⑤電力・通信系のインフラが未整備→会場近隣にNTTの光回線が引かれており、整備可能
⑥観客らの宿泊施設不足→隣接する南三陸町や仙台市内のホテル利用可
⑦選手の移動などに負担大→成田空港からの乗り継ぎ便や新幹線を使えば、過度の負担とはいえない
⑧費用増大の可能性→東京都の試算(351億円)より低く抑えられる見込み
⑨レガシー(遺産)が残らない→恒久施設中心に整備。五輪後は高校総体などに活用。仮設費用は組織委が負担すべきだ

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2016.5.6 日米安保条約の代償として農業を差し出した(?)TPP交渉と、その交渉を守った特定秘密保護法 (2016年5月7、8日に追加あり)

   2016.5.5     2016.5.4    ナスの         自動搾乳機      菅平の牧場
  日本農業新聞    日経新聞   自動摘み取り機      (アメリカ)
 
 熊本・大分を中心とする大地震報道の陰に隠れて、メディア上で議論されなくなったことは多いが、今日は、そのうちの環太平洋経済連携協定(TPP)交渉について記載する。

(1)TPP交渉と政府の姿勢
 環太平洋経済連携協定(TPP)の承認案と関連法案の衆院特別委員会での審議は、*1-1、*1-2のように、どこまでが秘密にする交渉過程に当たるかや秘密にしなければならない理由が明確でないのに、交渉資料は国会に全て黒塗りで提出され(海苔弁と言われた)、内容が分からないため審議できない状態だった。私も、交渉に関する情報開示がなければ、交渉の妥当性に関する国会決議はできないと考える。

 これに対し、自民党の国会対策委員長は、「公開しないという国と国との約束は絶対に逸脱できない」としているが、これでは自民党議員でも交渉の内容がわからず、国会決議でも賛否は言えない筈で、これらの対応は国会軽視である。なお、ニュージーランド政府は書簡のひな形を公開しているため、情報公開請求をすれば他の民主主義国の政府なら、ある程度、交渉内容を公開するに違いない。そのため、こここそメディアのネットワークが活躍すべき場所である。

 このTPP交渉は、最初は神奈川県選出の甘利前TPP担当相が顔になり、その後は東京都選出の石原担当相が顔になり、農業とは殆ど関係のない地域から選出され農業に詳しくない議員が担当した。そのため、この人事を見れば、妥結の結果ありきでシビアな交渉はしておらず、日本側には開示できるほどの資料はないと判断される。

 そのため、*1-3のように、大島衆院議長(青森県選出、自民党)が、環太平洋連携協定(TPP)の承認案と関連法案を、参議院議員選挙が終わった後の秋の臨時国会で成立させる意向をすでに米議会に伝達したというのは、農業をはじめとするどの産業にとっても重要な問題を、国民には何も開示せず、参議院議員選挙の争点ともせずに、選挙後の忘れた頃に議決すればよいとしているのであり、これは自民党議員がよく言う「民主主義国(=主権在民)と価値観を同じくする」ものではない。

(2)特定秘密保護法について
 TPPの交渉資料をすべて全て黒塗りにして国会に提出し、内容が分からないため国民の代表である国会議員がまともな審議をできない状態にしている根拠法は、*2-1、*2-2のように、TPPの交渉前の2014年12月に無理に施行された特定秘密保護法である。これにより、政府(自民党よりは官)は、理由を付ければ国民に知られたくない情報を特定秘密に指定して開示せず、政府にとって都合の悪い人も特定秘密保護法違反で逮捕して投獄することができるようにしていたのである。

 なお、この特定秘密保護法を根拠に、*2-3のように、公務員の“適性評価”を行ったが、プライバシーを侵害されるなどの理由で、38人が拒否している。

(3)TPP条約が締結された場合の影響
 環太平洋連携協定(TPP)が発効すれば、*3-1のように、宮崎県は農林生産686億円減1.5万人の雇用減となり、佐賀県は、*3-2のように、県内主要の農水産物15品目の生産額は最大13億8千万円減少すると試算している。佐賀県は、コメは輸入米の増加分を政府が買い取って備蓄するため影響ないとしているが、その備蓄がいつどのような形で放出されるのか、毎年買い取るとしている税金は誰が払うのかが大きな問題だと私は考える。

 福岡県でのTPPの影響は、*3-3のように、福岡県が試算した金額の17倍に当たることを、TPP反対ネットが公表している。確かに、国は「輸入増加分を備蓄するため影響額はゼロ」としているが、鈴木教授のように「(備蓄分は)順次市場に出てくる」とするのが自然であり、対策も正確な影響額を出してから議論するのが本筋だ。

 *3-4のように、農林水産予算総額は、TPPに加入しても前年度より1億円多いだけというのは驚きだが、2兆3091億円という大きな金額である。私は、食用米の自給率が100%を超えているのに他の食用作物に転作せず、水田活用直接支払交付金を支払ってまで飼料用米を支援するのはいかがなものかと思うが、現在は米が最も栽培しやすく、これまで持っている機械を使って兼業農家でも栽培できるからとのことである。しかし、転作のリスクと労力をかけて自給率の低い作物に転作する農家に対して、それに見合った交付金を支払う方が妥当だと考える。

 もちろん、農業農村整備を行い、農業の付加価値や生産性を上げて、農業を成長産業化するのは必要なことで、これは、TPPに入るか否かを問わない。しかし、(4)の理由で、日本政府がやっていることは、付加価値を上げるどころか下げている。

(4)日本の農業は差別化できず、付加価値が下がること
1)新品種の特許権流出
 農産物の収量や味は品種によるところが大きく、農業の場合は、これを主に公的機関が行っている。それにもかかわらず、農水省は、*4-1のように、野菜や果樹などの新品種を外国政府が栽培試験する手間を省き、審査期間の短縮に繋げるそうだ。もちろん、私企業が開発した新品種を輸出するのは自由だが、公的機関が高いコストと長い期間をかけて開発した新品種を、簡単に海外で生産できるようにすれば、日本の農産物は差別化できず、安価な海外製品に負けることになる。ここに、品種は農産物を差別化するための重要な資産であり、特許権は長い方がよいという考慮はあるのだろうか?

2)米の付加価値の低下
 「ナラシ」という言葉は経済学から程遠い用語であるため私は嫌いなのだが、*4-2のように、米の価格下落に対して支払われるナラシ(収入減少影響緩和対策)が、2015年産には全国的に発動される見通しだそうだ。しかし、自給率100%を超えているのに何が何でも米を生産すれば、供給過剰になって価格が下がるのは当然であり、その一方で、足りずに輸入に頼っている作物もいくらでもあるのに、そちらに転作するよりも米の方が手厚い補償を受けられるのでは、誰も米から離れないと考える。

3)「日本産は安全」という付加価値は健在か?
i) 遺伝子組換植物について
 *4-3のように、日経新聞は、2016年5月4日、「遺伝子組み換えやゲノム編集は品種改良の延長上にあり、速すぎる技術の進歩を消費者が不安に感じているので、消費者も食の安全について知識を身につける必要がある」などと、自分はわかっているが消費者が理解できずに感情的な不安を感じているのだとする傲慢なことを書いているが、私は、ゲノム編集や品種改良についてよく理解して述べている。

 その上で、ビタミンCや昆布のうまみを生むグルタミン酸のように、製法が違っても成分が同じで環境に遺伝子組換植物をまき散らさないものならよいが、農薬を使わなくても害虫がつかない遺伝子組換植物を人間が長期間食べても安全か否かは注意する必要がある上、その花粉が環境にまき散らされれば害虫は数年で抵抗力を持つように進化するため、さらに強い害虫駆除性を持つ遺伝子組換をしなければ効かなくなる。その上、ゲノム編集された遺伝子を検査で見つけるのは難しいため、私は人間の食物としてはこれを禁止するのが最善で、それによっても安全性で差別化できると考えている。

ii)放射能汚染について
 東日本大震災に伴うフクイチ事故によって日本産農産物や食品の輸出は、*4-4のように、香港、台湾、米国など多くの国・地域などで輸入制限措置が続いており、「美味しくさえあればいいだろう」として、この輸入制限措置を「風評被害」と断じる姿勢は、日本の安全性への意識の低さを露呈している。そのため、日本の安全ブランドを、さらに損ねる結果となっている。

 そして、この安全性への危惧は、外国人だけが持っているのではなく、日本人も持っているため、*4-5のように、原産地表示を拡大し、加工品は主原料の原産地を明記して選択可能にすることが、誰にとっても必要不可欠なのである。

iii)BSEについて
 日本では、国内初のBSE感染牛が確認された直後から、(私の提案で)BSEの全頭検査をしていたが、アメリカに合わせる形で平成25年7月1日から「48か月齢超」のみの検査とし、各自治体で自主的に全頭検査を行っていたものも全国統一して「48か月齢超」を対象とする検査に変えられた。

 その結果、最低に合わせることとなり、より高い安全性という付加価値で差別化することができなくなったため、それなら価格が安い方がよいという選択になるだろう(http://www.gov-online.go.jp/useful/article/201308/2.html参照)。

3)農業機械価格の高さが、農業の生産性向上を阻んでいること
 *4-6に、「①暗闇の中のビニールハウスでロボットが働き、目のような2つの高性能カメラが熟度を判断して甘くなった粒だけを選んで収穫し、農家が目覚めると朝イチで出荷できる」「②その収穫ロボは4千万円と高い」「③ロボットは、農林漁業の生産性を上げる」「④クラウドファンディングで資金を3カ月で集めた」等が記載されている。

 そのうち、①については、センサーで糖度を計って摘み、サイズ毎に分けてパックづめまでするロボットもあるため、高性能カメラが色を見て熟度を判断しているくらいでは、まだ遅れている。また、②については、農業機械は少しよいと大変高価で、農業補助金は農家に行くのではなく機械に行っているのではないかと思うくらいなので、日本は先端の機械を高い価格に据え置いて普及を阻む慣習を早く改めるべきだ。そうしなければ、工業で追い付いてきた近隣諸国に追い越されるだろう。

 なお、③はそのとおりであるため、私は2005年~2009年の衆議院議員時代にロボットを作成している大学の研究チームと交流して農林漁業用のロボットを作るよう要請していたが、この時、大学の研究チームは農林漁業のニーズをあまり知らず、趣味的なロボットを作りがちであることがわかった。そのため、ロボット技術者に農林漁業のフィールドでの実習場を提供し、農林業者や漁業者の方からニーズを言うことも必要だと考える。

 また、④は、同じ志を持つ人がITで瞬時に集まる新しい形のファンディングであるため、成功すればよいと思う。

<TPP交渉と政府の姿勢>
*1-1:http://digital.asahi.com/articles/ASJ455V3NJ45UTFK016.html (朝日新聞 2016年4月5日) TPP交渉資料、全て黒塗りで公開 内容分からず 自民
 環太平洋経済連携協定(TPP)の承認案と関連法案の衆院特別委員会での審議をめぐり、自民党は5日、民進党が求めていた政府の交渉資料を、特別委の理事懇談会に提出した。ただ、全て黒塗りされ、内容は分からない状態だった。民進は、情報開示がないと十分な審議ができないとして、甘利明・前TPP相とフロマン米通商代表部代表の会談記録の提出を要求。自民は5日、首相官邸への報告用に論点をまとめた資料を提出したが、全て黒塗りされ、「TPPブルネイ交渉会合 平成25年9月」などというタイトルだけが上から貼り付けられていた。自民の佐藤勉国会対策委員長は記者団に「公開しないという国と国との約束は絶対に逸脱できない。それ(黒塗り)でもという話があった」と説明。民進の近藤洋介・特別委筆頭理事は「ここまで黒いと思っていなかった。政府の説明を徹底的に求める」と述べた。資料提出を受け、与野党は、特別委で6日に承認案などの趣旨説明、7、8の両日に安倍晋三首相も出席して質疑を行うことで合意。自民は、首席交渉官だった鶴岡公二氏の参考人招致にも応じた。

*1-2:http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=36901 (日本農業新聞 2016/4/8) 激論TPP国会 「保秘」線引きで応酬 米の影響 見解分かれる
 7日の衆院TPP特別委員会では、民進党が交渉過程に関する情報開示を強く求めたが、政府側は「交渉過程は原則、非公開」と応じず、押し問答が続いた。どこまでが秘密にする交渉過程に当たるかや、秘密にしなければならない理由は、必ずしも明確にならなかった。今後の審議でも秘密の“線引き”が争点になりそうだ。民進党の玉木雄一郎氏(香川)が「本当に国益にかなう交渉をしたのかどうかは交渉過程も吟味しなければ判断できない」と指摘。交渉が終結していることを踏まえ「出せる情報は出してほしい」と求めた。石原伸晃TPP担当相は「(交渉過程に関することは)コメントを差し控えたい」と開示しない方針を繰り返した。ただ、開示できない理由については「秘密保護に関する書簡がある」「外交交渉上の原則」などと答弁が定まらなかった。環太平洋連携協定(TPP)交渉参加国は、秘密保護に関する書簡を交わしており、政府が交渉過程を明かさない根拠になっている。書簡のひな形はニュージーランド政府が公開していたが、書簡の原文は開示されていない。石原氏は「書簡の内容を含めて交渉上のやりとりを外部に出さない」としたが、「書簡自体を秘密にするのは過度な秘密主義ではないか」(玉木氏)など追及が続いた。民進党の柿沢未途氏(東京)は、甘利明・前TPP担当相が交渉中に、米をめぐる米国との駆け引きの一部を明かしていたとし、秘密の範囲の曖昧さを指摘した。一方、民進党の福島伸享氏(比例北関東)は、米国などに認めた、米の国別輸入枠について「屈辱的な内容だ」と追及。「需要のある安い(米国産)米が入ってきたら日本の米の値段が下がるのは当たり前だ」とし、国産米価格への影響に懸念を示した。森山裕農相は「(輸入米は)国産米の価格水準を見据えて流通している」と指摘。「(輸入米の)数量規模が数万トンにとどまる以上、基本的に大きな変化はない」とし国産米価格への影響は小さいと反論した。日本は、3年度中2年度で枠数量が消化されなかった場合に、国が設定する最低マークアップ(輸入差益)を一時的に引き下げる約束を米国とオーストラリアとの間で交わしている。森山農相は「円滑な入札手続きを行うため」と説明したが、福島氏は「(枠の)全量を輸入する仕組みになっている」と譲らず、見方が割れた。

*1-3:http://qbiz.jp/article/86044/1/
(西日本新聞 2016年4月30日) 臨時国会でTPP承認と大島氏 米議会に意向を伝達
 訪米中の大島理森衆院議長は29日、ワシントンでライアン米下院議長と会談し、環太平洋連携協定(TPP)の承認案と関連法案に関し、秋に想定される臨時国会での成立を図る意向を伝達した。会談後の記者会見で明らかにした。自民党は26日、今国会での成立断念を野党に伝えた。民進、共産、社民、生活の野党4党は廃案を要求。国会で紛糾している案件に関し大島氏が米議会に伝達したことに対して、野党から反発が出る可能性がある。大島氏はライアン氏との会談で「今国会では結論は出せないが、たぶん秋の国会では結論を出すようになるのではないか」と伝えた。大島氏によると、米議会の進捗状況の説明を求めたが、ライアン氏は承認時期に関する明確な見通しを示さなかった。オバマ米政権はTPPの年内承認を議会に促しているが、議会では賛否両論があるため、11月の大統領選や上下両院の選挙後に先送りされる可能性が強まっている。

<特定秘密保護法について>
*2-1:http://mainichi.jp/articles/20160404/ddm/004/010/007000c
(毎日新聞 2016年4月4日) 国会監視機関報告 「原則」盾に情報閉ざされ
 特定秘密保護法に基づき指定された特定秘密をチェックする衆参両院の情報監視審査会が3月30日に公表した初の年次報告書からは、秘密を指定した行政機関に対する質疑で、情報を引き出すのに四苦八苦した様子がうかがえる。衆参両院に設けられ、携帯電話の電波を遮断する専用の部屋で、審査会は開かれた。委員は部屋の中でしか書類の閲覧を許されず、メモを取っても持ち出せない。ところが、衆院の審査会の額賀福志郎会長(自民党)によると、省庁幹部の対応は「最初、従来の常任委員会の政府答弁みたいだった」という。委員の「2015年1月に発生したIS(過激派組織『イスラム国』)による邦人殺害テロ事件の関係で特定秘密に指定した文書は存在するか」との質問に、外務省幹部の回答は「個別事案が特定秘密に該当するかどうかを公にすることは、外国の政府等との信頼を損なう恐れがある」とそっけなかった。特に外国から提供された情報は「第三者には情報を渡さない」原則を盾にシャットアウトされた。参院の審査会も同様で、参院の報告書は原則を口実に必要以上の情報隠しがされないよう「適用基準の明確化を図ること」とくぎを刺した。情報管理の専門家からは、与党主導の審査会運営を懸念する声が聞かれた。審査会は衆参とも会派の議席数に応じて委員が割り当てられるため、与野党比率は衆院で6対2、参院で5対3。参院では昨年12月、野党側から出た政府への秘密文書の提出要求が賛成少数で否決され、民主党(現・民進党)の大野元裕委員は「疑義があれば見てみるべきなのに」と悔しがった。情報公開クリアリングハウスの三木由希子理事長は「秘密提出要求は現在の『委員の過半数の賛成』から、『3分の1以上の賛成』に緩和しては」と提言する。国会の仕組みに詳しい南部義典・元慶応大講師(憲法)は「与野党委員の逆転を考えてもいい。机上の空論と言われそうだが、自民党には野党に転落した場合、チェックができるのか想像してほしい」と話す。審査会には常時監視の「調査」のほか、常任委員会の要請を受けて特定秘密をチェックする「審査」機能があるが、昨年中は行われなかった。南部氏は「3月の安全保障関連法施行に伴う特定秘密があるはずだが、常任委員会では議論できない。それを審査会が審査すべきだ」と指摘した。

*2-2:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20160504&ng=DGKKZO00374320U6A500C1PE8000 (日経新聞社説 2016.5.4) 特定秘密への懸念を深める政府の対応
 外交や防衛などにかかわる秘密が漏れたら、国の安全が脅かされてしまう――。政府はそんな理由から、重要情報の漏洩に厳罰を科す特定秘密保護法を2014年12月に施行した。この法案をめぐっては当初から、政府が秘密を抱え込み、国民の「知る権利」が損なわれかねないという指摘があった。施行から約1年半。政府の対応をみると、この懸念は和らぐどころか、むしろ深まっている。特定秘密とは、外部に漏れれば国の安全保障がいちじるしく脅かされかねない情報のことだ。政府がこれに指定した情報は、15年末時点で443件。文書にして27万2020点にのぼる。この制度は正しく運用されれば、国の安全に役立つ。しかし政府に乱用されたら、本来、国民が知るべき情報までお蔵入りし、表に出てこなくなってしまう。そうならないよう、衆参両院には情報監視審査会が設けられ、特定秘密の指定が適切かどうか、チェックすることになっている。審査会は3月末、初めてとなる15年の年次報告書を公表した。その内容から浮かび上がる制度の実態には不安を禁じ得ない。それによると、審査会は15年、外務省や防衛省など10機関が指定した特定秘密382件(約18万9千点)について、聞き取り調査などで実態をつかもうとした。だが、政府側は協力的とはいえず、詳しい説明を拒み続けた。たとえば、政府が提出した特定秘密の項目リストは、「国家安全保障会議の議論の結論」や「日米安保協力に関する検討、協議」などあいまいな表題が多く、約18万9千点の文書については一覧表も出てこなかったという。これでは、指定が適切かどうかを審査するどころか、どんなテーマが特定秘密に含まれているのかすら分からない。審査会は結局、開示を求める特定秘密を絞りきれず、提出を要求した文書は数点にとどまった。政府が慎重な対応に終始したのは、情報漏れへの不安からだろう。だが、審査会は非公開であり、メンバーの国会議員は守秘義務を負っている。特定秘密を漏らせば懲罰の対象にもなり得る。情報がきちんと開示されなければ、国の政策を検証し、教訓をくみ取り、生かしていくことはできない。政府は態度を改め、審査会にもっと協力する義務がある。

*2-3:http://www.saga-s.co.jp/news/national/10201/305173
(佐賀新聞 2016年4月26日) 公務員の適性評価、38人が拒否、秘密保護法で政府報告書
 政府は26日の閣議で、2015年の特定秘密保護法の運用に関する報告書を決定した。秘密を扱う公務員らの身辺を調べる「適性評価」の対象となったのは9万6714人で、拒否した職員らが38人だったと明記した。拒否理由は記述がなく不明。家族の個人情報まで収集する評価手法に関し、プライバシー侵害を懸念した結果とみられる。同日中に国会提出する。前回報告書は14年12月10日の施行日から同月末の22日間だけを対象にしており、1年間通しての運用状況や、適性評価を拒んだ職員らの数が明らかになったのは初めて。評価の結果、1人が不適格と判断された。

<TPPの影響>
*3-1:http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=35986 (日本農業新聞 2016/1/16) 農林生産686億円減1.5万人の雇用減も 宮崎中央会がTPP試算
 TPP交渉の大筋合意を受け、JA宮崎中央会は県内の農業と関連産業への影響試算を独自にまとめた。政府の国内対策を考慮せず、関税の撤廃・削減などによる直接的な影響だけを前提とした。発効から16年目までに農林産物の生産額が約686億円減少すると推計。関連産業を含め1万4642人の雇用が失われるとの見通しも示した。対象は産出額50位以内で、関税が撤廃・削減されたり、低関税枠が設けられたりする品目。関税削減分だけ輸入価格が下落し、国産価格も同程度下落すると予測した。畜産への打撃が最も大きく、産出額上位3品目のブロイラーと肉用牛、豚は約533億円の減少を見込んだ。特に豚は産出額の6割に当たる約280億円、肉用牛も3割に当たる約154億円が減少するとした。関連産業への影響もまとめた。農林業を含む全産業の生産減少額は約1094億円と推計。就業者は農林業の1万1248人を含め、全産業で1万4642人減少すると試算した。中央会の森永利幸会長は「政府は国内対策で所得が確保され、国内生産を維持できると説明しているが、農家は大きな懸念を抱いている。今後、今秋までの継続課題となった国内対策について、現場の声が反映されるよう、強く要請していく」と強調する。

*3-2:http://qbiz.jp/article/79718/1/ (西日本新聞 2016年01月30日) TPP発効、最大13億8000万円減 佐賀県が主要15品目試算
 佐賀県は環太平洋連携協定(TPP)が発効すれば県内主要の農水産物15品目の生産額は最大13億8千万円減少するとの試算を明らかにした。国のTPP経済効果分析を基に算出した。28日の県TPP対策本部会議で報告した。国の分析は農林水産物33品目の生産額が全国で1300億〜2100億円減少するとしていた。県の試算では、県産品も牛肉2億1千万〜4億2千万円▽小麦2億5千万円▽豚肉1億2千万〜2億2千万円−の順で影響が大きかった。コメは輸入米の増加分を政府が買い取って備蓄するため「影響はない」とした。ノリもTPP参加国からの輸入実績がなく影響ないとみるが、ノリは韓国などが今後参加すれば影響を受ける可能性もある。山口祥義知事は「数字にどのくらいの意味があるのか。(生産)現場の不安や懸念にしっかりと対応していくことが大事だ」と述べた。

*3-3:http://qbiz.jp/article/84122/1/
(西日本新聞 2016年4月5日) 福岡のTPP影響、県試算の17倍 TPP反対ネット公表
 環太平洋連携協定(TPP)に反対するJA福岡中央会などでつくる「TPP反対福岡ネット」は、東京大大学院の鈴木宣弘教授がまとめた福岡県内の影響試算を公表した。農林水産業の生産減少額は259億〜311億円程度。国の試算を踏まえて県が発表した額の約17倍に上る。国は国内対策の効果を差し引いているが、鈴木教授はTPPの影響自体を試算した。対象は国が33品目で、鈴木教授は57品目。コメについて、国は輸入増加分は備蓄するため影響を「ゼロ」としているが、鈴木教授は「順次市場に出てくることを織り込み、備蓄が増えれば流通価格も下がる。価格が下がれば生産量も減る」として約30億円とした。鈴木教授は「影響額を出してから対策を議論するべきで、生産性の向上などを入れて試算するのはむちゃくちゃだ」と国の姿勢を批判した。

*3-4:http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=36794 (日本農業新聞 2016/3/30)農林水産関係2.3兆円 TPP 来月5日審議入り 16年度予算成立
 2016年度予算が29日成立した。農林水産予算の総額は前年度当初より1億円多い2兆3091億円。飼料用米などを支援する水田活用の直接支払交付金や農業農村整備事業を増額し、米政策や農業の成長産業化をはじめとする農政改革を進める。環太平洋連携協定(TPP)大筋合意を受けて最初の当初予算となる。財政当局の削減圧力が強かったが、TPPに対する農業者の不安を払拭(ふっしょく)するため、前年度当初を1億円上回る形で決着した。TPP対策を中心に農林水産関係で4008億円を計上した15年度補正予算を合わせれば2兆7100億円となる。森山裕農相は29日の閣議後会見で「(農家の)将来への意欲を後押しできるよう、省を挙げて現場に親身に寄り添った丁寧な説明を行う。必要な取り組みが着実に推進されるように努めていきたい」と述べた。16年度予算の目玉となる農業農村整備事業は3820億円を計上し、前年度当初を232億円上回った。水利施設の老朽化対策や防災・減災事業に重点的に対応する。もう一つの目玉となる主食用米の需給安定に向けた飼料用米、麦・大豆などの転作支援では、水田活用の直接支払交付金に3078億円を計上した。前年度当初比308億円の大幅増で、農水省は16年産の生産調整達成に必要な額を確保できたとしている。予算成立後の後半国会の焦点となるTPPをめぐっては、4月5日の衆院本会議で承認案と関連法案の審議が始まる。与野党が29日の衆院議院運営委員会理事会で決めた。安倍晋三首相と関係閣僚が出席し、政府による趣旨説明と各党の質疑を行う。石原伸晃TPP担当相は同日の閣議後会見で「日本が率先して動き、発効に向けての雰囲気をつくっていく上で、審議が非常に重要なものになる」と語った。

<日本の農業は差別化できなくなる>
*4-1:http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=37337
(日本農業新聞 2016/5/3) 海外でも 品種登録 種苗輸出、価格下げ 農水省が支援策
 農水省は、野菜や果樹などの新品種について、海外での品種登録の支援に乗り出した。日本で試験栽培した際のデータを無償で提供し、外国政府が栽培試験する手間を省き、審査期間の短縮につなげる。中小の種苗業者や農家が外国で品種登録する手続きを手助けすることも検討している。種苗の輸出に弾みを付けて生産量を増やし、種苗価格の低減につなげたい考えだ。植物新品種の育成者は、品種登録により「育成者権」が認められている。育成者の権利を保護することで優れた品種の開発を促すためだ。「植物の新品種の保護に関する国際条約(UPOV)」では、新品種として海外で登録できる植物は国内発売から4年以内、果樹は6年以内となっている。その期間を過ぎると品種登録できず、海外に持ち出されて日本の品種が栽培されていたとしても対処できない。日本への逆輸入や輸出促進への影響が懸念され、実際に静岡県が育成したイチゴ「紅ほっぺ」が中国で栽培される事例も起きている。このため農水省は3月、日本からの品種登録出願数が多いオーストラリアやブラジル、ニュージーランド、スイスの4カ国と、日本で試験栽培したデータを無償提供することで合意した。日本の業者がこの4カ国で品種登録をする際、果樹であれば7、8年かかる審査期間を大幅短縮でき、栽培試験にかかる年間数十万円とされる審査料を支払う必要もなくなる。今後、欧州連合(EU)、ベトナムなどにも順次拡大する予定だ。同省は、中小の種苗業者や農家に対して、開発した新品種を外国政府に品種登録出願する際、申請書類の書き方や申請方法などを情報提供することも検討している。海外で日本の新品種の育成者権を保護することで、種苗の生産拡大に加え、農産物の輸出拡大にもつなげたい考えだ。種苗価格の低減には、生産量を増やすことが欠かせない。ただ、日本国内の市場規模は2000億~3000億円と推計され、これ以上の拡大も見込み難いため、いかに輸出を伸ばすかが重要になる。政府が今秋にまとめる環太平洋連携協定(TPP)の中長期対策では、生産資材価格の引き下げが目玉になる。今回、導入する海外での品種登録支援は、資材低減を進めるための具体策の一つにもなる。

*4-2:http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=37373 (日本農業新聞 2016/5/5) 米ナラシ 全国で発動 相場上向き補填圧縮 農家収入は目減り 15年産本紙試算
 米の価格下落に支払われる収入減少影響緩和対策(ナラシ対策)が、2015年産は全国的に発動される見通しであることが、日本農業新聞の試算で分かった。米価は14年産より値上がりしたものの、補填額は全銘柄で前年より小さくなり、米の販売金額と合わせた農家収入は多くが前年を下回る結果となった。米価は依然、過去3番目に低い水準で、再生産が難しい状況から脱していない。農水省が公表する相対取引価格(昨年9月~今年3月)を基に、主産地の17産地・銘柄を試算した。60キロ当たり補填額は茨城「コシヒカリ」が1404円、宮城「ひとめぼれ」が677円になるなど、420~1400円の範囲だった。全銘柄平均では820円となった。実際に国から農家に支払われる金額は、都道府県別に作付け上位3銘柄の割合などを踏まえて面積当たりで算出する。農家ごとの10アール収量、大豆や麦などの販売収入によって変わる。農水省によると、14年産は全国平均で60キロ当たり約2480円が交付された。一方で15年産の補填額は減少し、販売収入と合わせた農家収入は8割近い銘柄で前年より減っている。この農家収入が、生産費(14年産の全算入生産費)を割り込む産地が、8割近くあることも分かった。ただ、北海道や新潟など、稲作の大規模化が進む一部地域では上回った。産地からは「米価水準がまだ十分に上がっていない。生産コスト削減に加え、需給改善に引き続き取り組み、農家所得を確保することが欠かせない」(東日本のJA)と声が上がる。15年産では、飼料用米の作付け推進で米価が上昇。相対取引価格は全銘柄平均で1万3178円と前年比1割上げたが、多くの農家経営が安定する水準にはまだ届いていない。

*4-3:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20160504&ng=DGKKASM108H0D_T00C16A5MM8000 (日経新聞 2016.5.4) 次代に伝えたい(1)新技術と安心どう両立 消費者と判断材料共有
 今年2月、マルハニチロがタイから輸入した缶詰から国内でまだ認められていない遺伝子組み換えパパイアが見つかった。長年、同じ製造者から輸入していたが「干ばつで製造者が別の農家からパパイアを仕入れたら混じった」(マルハニチロ)という。中国では未認可の遺伝子組み換えのコメの栽培が広がっている。昨年6月、日本向けのビーフンから遺伝子組み換え米の成分が見つかる事例が2件起きた。
●検査年3.3万件超
 遺伝子組み換え食品の登場から約20年。日本モンサントなどバイテク情報普及会は年間約3100万トンの日本の穀物輸入量のうち、飼料用トウモロコシなどを中心に約1700万トンが遺伝子組み換えと推計する。国内で商用生産はなく、国の安全性審査を経て輸入する。食用油やしょうゆなど加工食品にも使われ、今や日本の食に欠かせない。これまで安全の防波堤の役割は横浜検疫所輸入食品・検疫検査センター(横浜市)などが果たしてきた。全国から輸入食品のサンプルが届き、2014年度の検査実績は3万3千件を超す。遺伝子組み換えだけでなく残留農薬や有害物質も調べ、水際で日本の食を守る。食の安全を脅かしかねない新たな技術とそれを見抜く検査の「いたちごっこ」。それも限界に近い。バイオ技術の進歩は急だ。次の革新はゲノム(全遺伝情報)の狙った部位に突然変異を起こす「ゲノム編集」。政府も芽に毒の無いジャガイモや大収量のコメを研究し始めた。自然界で起こる突然変異と同じ程度の変化にとどめれば「ゲノム編集を検査で見つけるのは難しい」と国立医薬品食品衛生研究所の近藤一成生化学部長(53)は認める。
●品種改良の延長
 食品添加物の世界では遺伝子を組み換えた微生物の活用が広がる。ビタミンCや昆布のうまみを生むグルタミン酸も作れる。製法はこれまでと違っても成分は同じ。製法を変えても条件を満たせば特別な審査は要らず企業も「知的財産、競合他社の観点から具体的な製造方法は答えられない」(味の素)のが現実だ。食と農の歴史は人間が自然を征服し、野生の動植物をよりおいしく、より多く収穫できるように努力を積み重ねた歩みでもある。その中核には品種改良があり、遺伝子組み換えやゲノム編集もその延長にある。しかし、速すぎる技術の進歩を消費者が不安に感じていたらどうだろうか。解の一つは企業や農家が消費者の求める製法や原材料の情報を開示し、情報の不釣り合いをなくしたうえで消費者の選択に委ねる――つまり信頼関係を築いて市場の力を使うことだ。世界保健機関(WHO)の宮城島一明食品安全・人畜共通感染症部長(55)は「リスクコミュニケーションに誰が手間をかけるかを考えねばならない」と話す。企業や農家任せでなく消費者も食の安全について知識を身につけ、安全の向上に伴うコスト負担を受け入れる覚悟が求められる。

 最終部は「食と農」の未来を見据えた課題と解を考える。

*4-4:http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=36529
(日本農業新聞 2016/3/6) いまだ続く輸入規制 緩和、撤廃へ交渉急務 日本産の農産物・食品
 東日本大震災に伴う東京電力福島第1原子力発電所事故発生から5年。日本産の農産物・食品輸出は「風評被害」の影響が続いている。香港や台湾、米国などの国・地域が依然、輸入制限措置を講じており、日本政府が掲げる輸出増の機運に水を差しかねない状況だ。今後も「科学的根拠」に基づく輸入規制の緩和、撤廃へ政府間での粘り強い交渉が求められている。原発事故の影響で農林水産物や食品の輸出額は2011年、12年と連続で前年を下回った。各国が日本産に対し、輸入停止などの厳しい規制を設けた。13年からは検疫規制の緩和に向けた官民の努力が実を結び、輸出額は徐々に回復。15年には、前年に比べ2割増の7452億円と過去最高を達成。13、14、15年と3年連続で前年の水準を上回り、政府が目標に掲げる1兆円が見えてきた。一方で、被災地を中心とした特定の都県に対して香港や台湾、米国、中国などは輸入停止など厳しい規制を設けている。輸入を認めても、政府が作成した放射性物質の検査証明書や産地証明書の提示が必要となっている。例えば最大輸出先の香港は、福島や茨城、栃木、群馬、千葉5県の野菜や果実、牛乳などの輸入を停止。台湾は、同5県産の全ての食品の輸入を停止している。厳しい規制が残る香港や台湾。消費者は、日本産をどう見ているか。1月に香港や台湾で日本産リンゴの消費動向を調査した弘前大学の黄孝春教授によると、「ごく一部の消費者を除き、大半の消費者は日本産の食品は安全でおいしいと考えていることが分かった。日本産に対する風評被害は、ほぼ見られなかった」と指摘。海外の消費者の段階では、日本産に対しておおむね好意的に評価していることがうかがえた。海外で焼き肉店を展開するJA全農ミートフーズは「台湾などでは、いまだに特定地域からの牛肉などの輸入を停止している」と実情を話す。その上で政府に対し「輸出規制の緩和・撤廃を働き掛ける一方、全国から日本産の良質な牛肉を輸出できる体制整備を急いでほしい」(海外事業推進課)としている。

*4-5:http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=35835
(日本農業新聞 2015/12/28)原産地表示 拡大を TPPで輸入増見込み 国産扱う加工業者
 国産の農畜産物を原料に使う加工業者から、原料原産地表示の拡大を求める声が強まっている。環太平洋連携協定(TPP)による関税撤廃・削減で、原料となる農畜産物や加工品の輸入増が見込まれるためだ。原料原産地表示は輸入品との差別化につながり食料自給率にも貢献する。ただ、輸入品を原料に使う多くの加工業者からは反発も予想される。北海道芽室町の(株)日本罐詰は、大手食品業者からOEM(相手先ブランドによる生産)を請け負い、缶詰や冷凍食品、レトルト食品を製造する。年商73億円を誇る十勝地方屈指の大企業だ。原料の野菜は全て道産にこだわり、農家1000戸と同社が種子や肥料も調達する直接契約を締結。スイートコーンやインゲンなどを仕入れる。同社の高岡隆常務は「原料には絶対の自信がある。原料を海外の野菜に切り替えれば、十勝に存在する意味を失う」と言い切る。TPPで仮に輸入品と国産との価格差が急激に拡大すれば、社の経営には大きな脅威となる。原料の仕入れ価格はこれ以上は下げられず、製造過程でのコスト削減には限界がある。このため、同社営業部の後藤智成係長は「原料の産地が表示される利点は大きい。明確に付加価値を高められ、消費者が価格だけでなく産地で選択するようになる」と期待する。消費者庁はTPP対策として11月、加工食品の原料原産地表示の拡大に向けた検討に着手した。同庁は「TPP大筋合意を受け、輸入品急増に対する国民の不安払拭(ふっしょく)のため拡大を検討する」(食品表示企画課)と説明。ただ、有識者会議の日程など具体的な検討スケジュールは決まっていない。加工食品の原料原産地表示の拡大は、国内産地や消費者団体が強く要望してきたが、これまで検討は先送りされてきた。加工業者にとって包装や印刷の切り替え、季節によって調達国を変える場合などコストや手間を要するためだ。今後も拡大に向けた検討では難航が予想される。原料は表示義務のない加工品が多く、消費者は国産と誤認しやすい状況が続いている。ギョーザなどを製造する長野県塩尻市の美勢商事の野本孝典副社長は「企業側の論理で考えるべき問題ではない。原料原産地表示は消費者の貴重な判断材料となる」と求める。JA全農食品品質表示管理・コンプライアンス部の立石幸一部長は「現状のままではTPPで国産を扱う加工業者は淘汰(とうた)される。日本農業と消費者のためにも表示拡大は不可欠で、食料自給率向上にも欠かせない」と指摘する。
<メモ> 加工食品の原料原産地表示
 生鮮食品は原産国の表示が義務付けられているが、加工食品の原料の原産国を表示する義務は一部に限られる。現在は乾燥きのこ類や餅、緑茶飲料といった22の食品群と農産物漬物など個別の品質表示基準がある4品目にとどまる。

*4-6:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20160505&ng=DGKKZO01950500U6A500C1MM8000 (日経新聞 2016.5.5) 次代に伝えたい(2) ロボ導入、24時間農場 生産性向上へ先端技術
 宮城県南部の山元町。夜7時すぎ、暗闇にかすむビニールハウスから「カシャカシャ」と機械音が漏れる。なかをのぞくと身長1.5メートルほどのロボットが真っ赤なイチゴを収穫していた。
●起きたら即出荷
 ライトの瞬きで位置を確かめ、目のような2つの高性能カメラが熟度を判断。甘くなった粒だけを選んでアームを優しく伸ばす。ぐっすり眠った農家が目覚めると朝イチで出荷できる。農業設備メーカーのシブヤ精機(松山市)などが開発した収穫ロボは4千万円と「まだ高い」(宮城県の農家)が実証試験が進む。イチゴ栽培の労働時間は1千平方メートルあたり2100時間と手間のかかるコメと比べても80倍だ。甘く形の良い日本産はアジアの富裕層がブランド品扱いするが、農家の負担は大きい。日本の農業の生産性は海外に比べ低いとされる。ロボットは、その壁の扉を開く可能性を秘めている。鳥取県境港市の沖合に銀ザケ養殖のいけすが並ぶ。海中のセンサーを魚がつつくと餌がパラパラと落ちていく。日本水産の自動給餌ロボだ。空腹と習慣で魚はすぐに仕組みを覚える。台風のときでも食べたい量だけ。海を汚すことも少ない。日の出と共に働き、日没や悪天候で終わりにする――。そんな時間軸を先端技術が変える。ロボと二人三脚で働けば、農地や漁場はコンビニエンスストアのように「24時間営業」だ。日本の就農者は6割以上が65歳以上。米国の2倍の水準だ。農水産ロボは限りあるヒトや土地の生産性を最大限に引き出す力を秘める。農業技術革新工学研究センターの手島司主任研究員(41)は「農家のパートナーになり新しい農業の形を生むだろう」と話す。先端技術は「作る」を変えるだけではない。「売る」まで含めた強い農業に向けて意識改革も促す。千葉県柏市でコメや小麦を作る染谷茂さん(66)はクボタ製の自動走行トラクターを導入した。運転管理システムに100万円かかったが「販売量から逆算して生産計画を立てた。商品量の確保に必要な効率化投資になる」と踏み切った。経営感覚を養ったのは仲間と始めた株式会社方式の直売場だ。「価格も会社で決める。自分で売るから成長の方向が見えてきた」
●ネットで開墾費
 日本の耕作放棄地は富山県の広さと同じ約42万ヘクタール。海外の安価な農作物の流入で農地の荒廃が広がる懸念もあるなか、愛媛県大洲市の山中で10年以上放置されていた農地が生き返った。重機で木の根を取り除くなど約130万円かかった費用の調達先は農協や金融機関ではない。ネットで作物の成長を見守る全国140人の出資者たちだ。まとめ役はベンチャー企業のテレファーム(松山市)。企画や理念に賛同する消費者から小口の事業資金を募るクラウドファンディングの手法で資金は3カ月で集まった。先端技術に加え、ヒトとヒトを結ぶネットワークが農業に新たな資金の流れを生む。農を変える企業は動き出している。


<日本で生産性が上がらないその他の理由>
PS(2016.5.7追加):*5-1のように、経産省傘下の経団連と九経連は、ずっと「電力の安定供給や料金負担の増大に不安を感じている企業が多いので一刻も早い原発再稼働を求める」としてきた。そして、「太陽光発電は、コスト高で安定性がない」という風評被害を流し続けて世界の太陽光発電トップランナーであるシャープを海外企業に売り渡したのである。しかし、他国の企業はこのようなことに左右されずにすむため、*5-2のように、着実に太陽光発電のコスト削減を進め、周辺機器も準備してきた。そして、現在は、*5-3のように、電気自動車で経費を節減した上、環境にも配慮できる時代になったので、*5-4のように、家庭・工場・農場などで太陽光発電を利用して自家発電し、電気自動車を充電するのが、最も経済的で持続可能な時代になったのである。
 つまり、日本で生産性が上がらない大きな理由の一つは、先見の明がなく先進的な技術を理解せずに妨害する人が、行政・メディア・経済界・政治の重要な地位の多くに就いていることなのだ。

    
2016.5.7日経新聞  電気軽トラック   原発事故後の対応    経産省のエネルギーミックス  

*5-1:http://qbiz.jp/article/32465/1/ (西日本新聞 2014年2月20日) 経団連と九経連が懇談会 エネ分野などで意見交換
 経団連と九州経済連合会は19日、福岡市で第66回九州経済懇談会を開き、「九州が動き、日本経済の好循環を実現する」をテーマに、エネルギー、社会基盤整備、医療介護、観光、道州制などさまざまな課題について意見を交わした。両役員など約210人が参加した。意見交換で九経連の大野芳雄副会長(鹿児島銀行相談役)は、原発が停止している現状に「(電力の安定供給や料金負担の増大に)不安を感じている企業が多い。安全性が確認された原発については一刻も早い再稼働が求められる」と強調。竹島和幸副会長(西日本鉄道会長)は「アジアの活力を取り込む空港、港湾の整備が必要だ」と述べ、福岡空港の滑走路増設の早期実現などを要望した。道州制をめぐっては本田正寛理事(西日本シティ銀行会長)が「九州は(道州制論議の)先進地。メリットや課題について地域の理解を深めることが重要だ」と主張。道州制基本法案の早期提出実現に向け、経団連が政府への働き掛けを強めることを求めた。経団連側は九経連側の主張に理解を示し、両団体の連携を強める方針を確認。麻生泰九経連会長(麻生セメント社長)は「(経団連との関係を)心強く思っている。これから実行と実績づくりに取り組みたい」と総括した。懇談会終了後に会場に駆け付けた米倉弘昌経団連会長(住友化学会長)は会見で「九州は工業、農業、観光と非常に明るい地方。強いリーダーシップを発揮する麻生会長に期待している」と述べた。

*5-2:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20160507&ng=DGKKZO02014790W6A500C1TI1000 (日経新聞 2016.5.7) 太陽光パネル 住宅に照準、保守拠点倍増やセット販売 価格下落、普及に弾み メガソーラーは市場縮小
 太陽光パネルメーカー各社が家庭向けの営業に注力している。地元に強い工事会社と組んで保守拠点を倍増させたり、周辺機器とのセット商品を売り出したりする動きが相次ぐ。売電目的のメガソーラー(大規模太陽光発電所)からつくった電気の買い取り価格下落を受け、住宅用が主戦場となっている。パネルの価格も下落傾向にあり、普及に弾みがつきそうだ。太陽光パネル世界3位のカナディアン・ソーラー(カナダ)は6月、保守拠点を現在の2倍の約300カ所に増やす。納入した太陽光発電システムにトラブルが発生したときに技術者を早期に派遣できるようにする。地方の電気工事会社など業務の委託先拡大を急ぐ。太陽光パネルとセットで販売する関連機器の性能を無償で保証する期間も従来より5年延長し、15年間とした。韓国メーカーのハンファQセルズは年内にも住宅向け営業員を現在の倍となる100人体制にする。中国、四国地方では支店も開設する。世界最大手のトリナ・ソーラー(中国)は月内に太陽光パネルと設置に使う架台、電力変換装置などがセットとなった住宅向け商品を売り出す。国内の太陽光パネル市場に占める海外メーカー製は5割以上を占めるが、住宅用に限ると2割未満とみられる。住宅用では営業拠点の少なさや認知度の低さが壁になっていた。住宅用太陽光発電の導入費用は現在、1キロワット当たり35万円前後とみられる。この2年間で1割強下がった。一般的な出力4キロワットの場合、工事代も含め導入費用は新築で現在150万円ほどが相場となる。低価格品に強い海外勢が家庭向けに本格参入することで今後、導入費用が安くなる可能性が高い。埼玉県の50代の男性は「太陽光発電と蓄電池などをうまく組み合わせれば光熱費を減らせる」という。国内勢も拡販に注力している。三菱電機は発電ロスを減らし、出力を高めた住宅用太陽光パネルを6月に発売する。東芝グループは太陽光発電と連携可能な電力変換装置、住宅用蓄電池をセットにした製品を売り出す。京セラも同じ屋根の面積に同社従来品より3割多く敷き詰めることができるパネルの販売を始めた。シャープが事業縮小を検討課題とするなか、内外のメーカーの間で需要取り込みに向けた競争が激しさを増している。

*5-3:http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=36898 (日本農業新聞 2016/4/8) 電気自動車 農村を快走 充電環境ぐんと充実 エコ 経費節減も もちろん 
 電気モーターを動力源とし、ガソリンを使わない電気自動車(EV)が農村で、じわりと浸透してきた。JAの店舗や農産物直売所でも急速充電ができるようになるなど環境が整備されたことから、EVを所有する農家が年々増加。初期投資はガソリン車以上にかかるものの、乗り換えた農家は、環境に優しいだけでなく経費節減につながると効果を実感している。車を利用して4年。ブルーべリーのプリンなど農産加工品の配達で、1日に150キロ近く走行することもある。環境への配慮が購入のきっかけだが、今では「大幅な経費節減になった」と実感する。充電は主に道の駅や購入先のメーカー、家などで済ませる。電気代など維持費は推定で年間3万~4万円。燃料代で年間約40万~50万円が浮いた計算だ。オイル交換の必要がなく、車検費用も半分以下だ。初期費用は約380万円と、ガソリン車に比べて高いが「元は取れた」とみる。しかも近隣の給油所は近年減っていることから「電気自動車は便利だ」と痛感する。心配だったのは走行距離だが、最近は道の駅やサービスエリアに充電器の設置が進み、途中で急速充電しながら約470キロ先の札幌市まで高速道路を使って行けるようになった。横田さんは「小まめに充電すればよく、不自由さは感じない。賢く使って経費を抑えられた」と喜ぶ。公用車に電気自動車を導入したり、急速充電器を設置したりするJAも増えている。東京都JAマインズ、静岡県JAおおいがわ、滋賀県JA草津市、JA鳥取中央などでは直売所や本店に急速充電器を設置。買い物や食事、JAで用事を済ませる間に充電できる体制を整えた。佐賀県JAからつが運営する直売所「唐津うまかもん市場」も急速充電器を設置。事務担当の坂本輝憲さん(39)は「充電を目的に来てくれるお客さんもいて、直売所のPRになっている」と歓迎する。
●JA店舗や直売所でも
  次世代自動車振興センターによると、EVの保有台数は2009年度末(9000台)以降、年々増えて、14年度末には全国で7万台を超えた。1回フル充電した時の走行距離は100~300キロ、30分の急速充電ができる車種が一般的だ。200ボルトの家庭用電源を使うと8時間前後でフル充電できる。購入への補助事業もあるが、初期投資がかかるため、誰もが「お得」というわけではない。同センター次世代自動車部の荻野法一課長によると「車を多用し、小まめに充電できる環境がある」農家にお薦めという。充電器の普及状況を調べる「GOGOEV」によると、充電器の設置場所は急速・普通合わせて約1万7800カ所と、年々増加している。一方、給油所は14年度末で3万3510カ所(経済産業省調べ)。ここ20年間で、半数近くの約2万7000もの給油所が消えた。それだけに荻野課長は「充電環境が整ってきた電気自動車は、農村部でさらに広がる可能性がある」と見通す。(尾原浩子)

*5-4:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20160507&ng=DGKKZO02014830W6A500C1TI1000 (日経新聞 2016.5.7) 住宅用市場、20年度に2倍
 太陽光パネルメーカーが住宅用にシフトする背景には売電目的のメガソーラー(大規模太陽光発電所)を中心とした「太陽光バブル」がはじけたことがある。2012年に太陽光でつくった電気を割高な固定価格で買い取る制度が導入されたことを受け、産業用の需要は急拡大した。だが買い取り価格が高すぎてバブルが発生したとの指摘が相次ぎ、この4年間で政府は産業用の買い取り価格は4割程度引き下げた。調査会社の富士経済によると、産業用太陽光発電システムの市場規模は20年度に430万キロワット(出力ベース)と15年度より4割強減る見込みだ。一方、住宅用の市場規模は20年度に200万キロワット(出力ベース)。15年度の2倍強になると予測している。


PS(2016/5/8追加):*6-1のように、世界農業者機構(WFO)総会で、アジア地域の新理事にJA全中の奥野会長が選ばれ、農協は、突然、世界に踏み出した。動物(人間を含む)は、食料が不足すると自分が生き延びるために殺し合いを始めるため、食料の確保は安全保障に重要であり、アフリカその他の後進地域でも、日本の農業技術・6次産業化・太陽光発電システムなど、使える技術は多いだろう。
 また、*6-2のように、世界農業者機構(WFO)は初めての女性会長を出し、そのグレカ会長が、①農家組織の代表をほぼ男性が占めている ②多くの労働を抱えているのは実は女性 ③その苦労を訴える声が届いていない ④女性が十分な教育を受けることで自らを表現する自信を持つのが重要 と強調しておられるのは、現代日本でも言えることであり共感できる。

*6-1:http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=37386
(日本農業新聞 2016/5/7)所得増大 各国連携を アジア理事に奥野氏 WFO総会
 ザンビア・リビングストンで開催中の世界農業者機構(WFO)総会は5日(現地時間)の本会議で、情報共有を強化するなど今後の取り組み方針を議論した。併せて、アジア地域の新たな理事にJA全中の奥野長衛会長を選んだ。一方、4日の開会からこれまでの議論では、飢餓撲滅などの目標達成へ、食料安全保障の確立や農業の所得増大を共通課題に、各国農家の連携を深めるべきだとの発言が相次いでいる。WFO総会は「成長のための協力」をテーマに開幕した。5日は、2018年から10年間の戦略プランの策定に向け協議した。欧米の団体から、戦略の具体化に向け会員間の情報共有を迅速、密にすべきだとの声が相次いだ。奥野会長もWFOは設立段階から体制を充実させる段階に入ったとして、具体的な取り組み計画の策定を要請した。その上で「組織を強くすることは情報を共有することだ。ボトムアップ、トップダウンの双方の情報のやりとりが必要だ」と訴えた。一方、初日はザンビアのルビンダ農畜産業相が出席。飢餓の撲滅へ食料増産が迫られる一方、「若者は農業への関心が薄く、農家は高齢化、減少しているジレンマにある」と指摘。飢餓や貧困に苦しむ小規模農家の所得増へ、農産加工など付加価値の向上も課題だと訴えた。同国出身でWFOのエブリン・グレカ会長は、こうした農業の担い手不足や所得向上は、各国団体の共通課題だとして「われわれには差異を打ち消す大きな共通点がある。飢えのない世界へ、各国の農家が活動を続けていく意義は大きい」と呼び掛けた。アフリカの農業団体からも「小規模農家の発展には、農協が役割を発揮し商業的な生産を広げる必要がある」(東アフリカ農業者連盟)、「小規模農家の生産物をいかに販売網に乗せるかが課題だ」(マグレブ北アフリカ農業者連盟)との声が上がった。最終日の6日には農家の所得増やそれを支える政策への意思反映へどう取り組むべきかなどについて、各国の農業団体代表が討議する。

*6-2:http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=37388 (日本農業新聞 2016/5/7) 女性参画 積極的発信を 鈴木全国女性協会長とグレカWFO会長が会談
 JA全国女性組織協議会の鈴木春美会長は5日(現地時間)、世界農業者機構(WFO)の初の女性会長、エブリン・グレカ氏とザンビア・リビングストンで会談した。組織への女性参画についてグレカ会長は、家庭での役割を果たしながらも、自らの考えを積極的に対外的に発信する重要性を強調。鈴木会長は、組織に参画した先でいかに役割を発揮するかが今後、より問われるとの考えを示した。鈴木会長は、4日からのWFO総会にJAグループ代表団の一員として出席するため、当地を訪れている。グレカ会長はザンビア全国農業者連盟の会長も務め、昨年のWFO総会で会長に選出された。息子2人を育てながら養豚やトウモロコシ、大豆などを経営する。グレカ会長は、農家組織の代表をほぼ男性で占めている実態がある半面、「多くの労働を抱えているのは実は女性。その苦労を訴える声が届いていないのではないか」と、抱えていた疑問を指摘。女性が十分な学習を受けることで「自らを表現する自信を持つのが重要だ」と強調した。積極的に組織活動に参画し意見を述べ続けた自身の経験を踏まえ、「女性が組織を率いた方が良いという評価が広がる結果につながった」と述べた。鈴木会長は同協議会の新たな3カ年計画でも「ふみ出す勇気」を掲げたことを説明し「勇気を持ち、例えば、JAの総代や理事または農業委員になってみることが大切だ」と指摘。JA理事などへの登用に関して数値目標を掲げ、女性参画を進めていることも挙げた上で「役員になった人数だけでなく、その組織でどう女性が役割を発揮するかも重要になる」と述べた。

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2016.2.14 ふるさと納税とそのお礼 (2016年2月16日、18日、3月4日に追加あり)
    
2016.2.6西日本新聞(*2)  2014年上位    2015年上位    田んぼの白サギ

    
ツルの越冬地 鹿児島県出水市のツル      蔵王の白鳥          天草のイルカ

(1)2014年と2015年のふるさと納税額順位
 (私の提案でできた)ふるさと納税は、*1に書かれているように、2014年は長崎県平戸市が約13億円でトップだったが、2015年は宮崎県都城市が約35億超を集めてトップとなり、2位は静岡県焼津市の約35億円、3位は長崎県平戸市の約27億円となるそうだ。

 そして、*2のように、2015年度のふるさと納税総額は、2014年度の389億円の3倍を超す1500億円に達する見込みで、ブームを盛り上げているのはお礼の特産品であり、全体の8割を超す約1500自治体が地域ブランドの肉や海産物、地酒、菓子、工芸品などの返礼品を用意し、寄付した人は好みの物が選べるとのことである。

 「お礼を渡すのは本来の趣旨から外れており、邪道」と言う人もいるが、商工会や自治体が推薦するその地域の特産品をお礼にすれば、その自治体への寄付が増えて財源が潤うだけでなく、その特産品の価値が知られて知名度が上がり、地元業者の販路拡大に繋がるため、一石二鳥の効果があると、私は考えている。なお、地域の特産品は、地元の人が考えている以上に、都会で喜ばれるものが多い。

(2)ふるさと納税をしてみて感じたこと
 2015年は、私も夫の所得からふるさと納税した。いろいろやった結果、玄海町と小城市は、納税後の手続きが速やかで気合が入っており、これも人気の秘密だろうと思われた。伊万里市、唐津市、太良町は少し遅かったが、米、伊万里牛、佐賀牛、みかん、海産物などのお礼の品は美味しかった。伊万里市は、鍋島焼などのお礼の品もあったが、もう少し日常的に使うお茶碗などの品ぞろえがあればと感じた。

 夫の所得から納税するので、当然、長野県松本市と塩尻市も見たが、どちらも農林水産物やその加工品を今一つ活かしていないと思われた。長野県出身で首都圏に在住している人には、松本城の無料入場券よりも、米、信州蕎麦、りんご、葡萄、とれたて野菜、信州味噌、漬物、ハチミツ、ジャム、おやき、もち、信州サーモン、鯉の味噌づけ、木曽漆器などの方が人気が出ると、私は思う。

    
 みやき町、佐賀牛    伊万里鶏      平戸干物        小城米     唐津みかん
                          <お礼の品の例>
(3)こんなお礼も・・!
 *3のように、佐賀県に50万円以上寄付すると、佐賀市にあるホテルニューオータニ佐賀で開かれる「知事感謝の夕べ」に招かれて、佐賀県産アスパラガス、有明海・玄界灘産の魚介類、佐賀牛、有明鶏など佐賀県自慢の食材を使ったおいしい料理を食べながら、知事と歓談できるそうだ。

 他の地域に出た佐賀県出身の人は、現在の佐賀県の状況や方針を聞く機会が少ないため、佐賀県知事と食事をしながらそのような歓談ができるのは貴重であり、よく考えたと思うが、50万円以上の寄付というのは高すぎて、該当者が極端に限られるのではないだろうか。

*1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20160210&ng=DGKKASDG09H9N_Z00C16A2CR8000 (日経新聞 2016.2.10) ふるさと納税、トップは宮崎・都城市35億円 昨年、減税拡大で大幅増の自治体多く
 2015年に「ふるさと納税」が一番多かった自治体は宮崎県都城市で、寄付額が35億2718万円に上ったことが9日、分かった。ふるさと納税のポータルサイト「ふるさとチョイス」がまとめた。寄付額は、14年にトップだった長崎県平戸市の約13億円の2.8倍だった。15年の2位は静岡県焼津市の34億9280万円、3位は平戸市の26億7716万円。4月から減税対象の寄付額の上限が2倍に引き上げられた効果で、大幅に増加している自治体が目立った。都城市は、特産の宮崎牛や地元の焼酎を中心とした特典が人気を集め、繰り返し寄付をする人が増えているという。担当者は「地元業者の販路拡大にもつながっており、大きな経済効果が出ている」と話す。焼津市は14年10月から特典を始め、現在はマグロなどを中心に500種類以上をそろえる。担当者は「当初は3億円程度と予想していた。想定以上だ」と話した。平戸市は海産物の詰め合わせの特典が人気で、発送まで半年以上かかるものもあるという。4位は山形県天童市、5位は長崎県佐世保市だった。順位と金額は、ふるさとチョイスがアクセス数の多い自治体に問い合わせて集計した。

*2:http://qbiz.jp/article/80232/1/
(西日本新聞 2016年2月6日) ふるさと納税急増1500億円 15年度推計、特産品の返礼人気
 出身地や応援したい自治体に寄付をすると、居住地の住民税が減額される「ふるさと納税」の2015年度の総額は、前年度の3倍を超す1500億円に達する見通しであることが分かった。寄付の返礼品が人気を集めていることや、制度改正で利用しやすくなったことが要因とみられる。総務省によると、15年度上半期(4〜9月)の寄付額は453億円で、前年度同期の約4倍。既に14年度1年間の389億円を上回っている。例年、年度後半に増加する傾向があり、15年度下半期も同じようなペースで伸びれば、年度総額は1500億円に達すると推計される。ブームを盛り上げているのは寄付のお礼の特産品。全体の8割を超す約1500自治体が地域ブランドの肉や海産物、地酒、菓子、工芸品などの返礼品を用意しており、寄付した人は好みの物が選べる。自治体への寄付が増えれば自主財源が潤うだけでなく、特産品の知名度が上がり、地域経済にもメリットがある。総務省は15年度から制度を見直し、税の控除が受けられる寄付額の上限を2倍に引き上げた。寄付先が5自治体までなら、給与所得者は確定申告の手続きが不要になった。ふるさと納税は08年度、都市と地方の税収格差是正などを目的に始まった。初年度の寄付額は81億円、東日本大震災後の11年度は121億円だったが、14年度から急増している。

*3:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/278780
(佐賀新聞 2016年2月14日) 知事、ふるさと納税に食事でお礼
 ふるさと納税で県へ50万円以上寄付した人を招待した「知事感謝の夕べ」が13日、佐賀市のホテルニューオータニ佐賀で開かれた。関東や県内の5組11人が県産品を使ったおいしい料理を食べながら、山口祥義知事と歓談した。同夕べは、多額の寄付をしてくれた個人に感謝の気持ちを伝えようと初めて開催。ふるさと納税のお礼として知事と会食する取り組みは全国的にも珍しく、昨年7~12月に50万円以上を寄付した13人のうち、5人が参加を希望した。会では、山口知事が「熱い思いのふるさと納税ありがとうございました。いろんな話をしてアドバイスももらいたい」とあいさつ。参加者は、県産アスパラガスや有明海・玄界灘産の魚介類、佐賀牛、有明鶏など県自慢の食材を舌鼓を打ちながら、山口知事との会話を楽しんだ。県へのふるさと納税は2012年度1588万円、13年度3032万円、14年度4488万円と推移。昨年7月に佐賀牛など県産品をお礼としてもらえる制度ができてから急激に伸び、15年度は5億4144万円(昨年12月末現在)となっている。


PS(2016年2月16日、18日追加):*4-1、*4-2の「サイトウ・キネン・フェスティバル松本(現セイジ・オザワ松本フェスティバル)」は、ふるさと納税の使い道でチョイスできるようにし、このような市民の取り組みを支援して芸術を育てる方法もあるし、無理してチケットを入手して東京から聞きに行く人も少なくないため、よい席をふるさと納税のお礼にするのも良く、ふるさと納税制度の使い方はいろいろある。

*4-1:http://www.saga-s.co.jp/news/national/10201/279282
(佐賀新聞 2016年2月16日) 小澤征爾さんにグラミー賞、最優秀オペラ録音部門
 世界最高峰の音楽の祭典「第58回グラミー賞」の発表・授賞式が15日(日本時間16日)、米ロサンゼルスで開かれ、日本からは指揮者の小澤征爾さん(80)が最優秀オペラ録音部門で受賞した。小澤さんの受賞作品は2013年に長野県で開かれた音楽祭「サイトウ・キネン・フェスティバル松本(現セイジ・オザワ松本フェスティバル)」で指揮した歌劇「こどもと魔法」を収めたアルバムで、演奏はサイトウ・キネン・オーケストラ。小澤さんは1960年代からたびたびグラミー賞の候補になっていたが、小澤さん名義のアルバムが受賞したのは初めてという。

*4-2:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12214183.html
(朝日新聞社説 2016年2月18日) 文化と地域 息長い市民参加の開花
 受賞作には、長野県松本市で開かれた「サイトウ・キネン・フェスティバル松本」で上演した歌劇「こどもと魔法」が収録されている。地元のアマチュア歌手や子どもたちも参加した。小澤さんはきのうの記者会見で「みんなでつくったものがこういう形になり、松本でやってよかった」と語った。小澤さんが総監督を務めるこの音楽祭は、松本市で1992年から毎年開かれている。昨年、「セイジ・オザワ松本フェスティバル」に改称した。海外から著名な音楽家が多く訪れる一方、小中学生向け演奏会にも力を入れる。例年、9万近い人たちが音楽に触れる。市民の参加も活発だ。チケットを買う行列を整理したり、そばを打って海外からのゲストをもてなしたりと、様々な場面で音楽祭を応援する。松本市は市役所に「国際音楽祭推進課」を置き、14年は総予算約8億円のうち1億3千万円を負担した。市の調査では、音楽祭は地域の誇りとなり、子どもたちの芸術への関心の高まりや、地域のイメージアップに貢献している。経済効果は10億円を超えるという。有名人を招く地方イベントは珍しくないが、継続する催しは限られる。一過性のにぎわいではなく、文化として浸透するには、幅広い市民の参加意識と愛着が重要だ。松本市の例は各地の参考になるだろう。地方を拠点にした国際芸術祭の先駆けは、演出家の鈴木忠志さんが82年に始めた「利賀フェスティバル」(富山県南砺市)だ。山深い地に世界的な演劇人が集う催しは今日まで続く。昨夏は約1万人の観客を集め、市は、芸術と産業振興とを結びつける努力も始めた。埼玉県の「彩の国さいたま芸術劇場」では、演出家の蜷川幸雄さんが主宰する平均77歳の劇団「さいたまゴールド・シアター」が10周年を迎える。「生活者の老い」を表現に昇華し、海外でも高い評価を得る。〈芸術家+地元の人々の理解と参加+行政の支援〉という足し算に、長い時間を乗じる「かけ算」によって、文化は地域の財産になる。今、各地をリードしている大御所たちを継ぐ人を育てることも含めて、大事なのは、やはり息長い取り組みである。そんな試みが広がるといい。


PS(2016年2月18日追加): *5-1、*5-2のように、下水に含まれる成分を有効活用して、家畜・養殖魚の飼料や肥料を作るこの取り組みにも、私は一票を入れたい。これも、ふるさと納税の使い道でチョイスできるようにすれば、寄付金が集まって佐賀市の支出分くらいは出るのではないだろうか。

   
   佐賀市の下水処理システム         *5-2より          *5-1より

*5-1:http://qbiz.jp/article/80931/1/
(西日本新聞 2016年2月18日) ミドリムシ培養施設が稼働 佐賀市、下水のCO2有効利用検証
 下水処理時に発生するバイオガスから抽出した二酸化炭素(CO2)と処理水を使って、藻類ミドリムシを培養する佐賀市と民間企業の共同事業の実証施設が、全国で初めて市下水浄化センター(同市西与賀町)内に完成し17日、稼働を始めた。事業は、下水汚泥を減らす過程で生じるCO2や下水処理水が含む窒素やリンを、ミドリムシの培養に活用する。官民の6団体が進め、CO2の回収技術を持つ東芝や、藻類の培養や活用を手掛ける東京のベンチャー企業「ユーグレナ」などが参加している。施設は、CO2の分離・回収装置や藻類培養設備などで構成。広さ約470平方メートルの藻類培養設備は、ミドリムシの光合成に必要な採光のための透明な壁の建屋に千リットルの培養槽9基を配置。バイオガスから抽出したCO2を供給し、ミドリムシの安定的な培養に必要なCO2濃度や気温、光量などを検証する。ミドリムシは家畜や養殖魚向けの飼料、肥料としての活用を探る。同日あった式典で、秀島敏行市長は「自然環境の改善のため貢献できれば」と期待。ユーグレナの出雲充社長は取材に「バイオテクノロジーは急激に進歩しており、何としても成功させたい」と意気込みを語った。

*5-2:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/280031
(佐賀新聞 2016年2月18日) 全国初の藻類培養施設が佐賀市で稼働、下水からCO2回収
 佐賀市や東芝など6者による下水処理で発生する二酸化炭素(CO2)を分離、回収して藻類培養に利用する全国初の実証施設が17日、市下水浄化センター内に完成、稼働を始めた。下水処理に伴う環境負荷を減らすとともに、高付加価値資源として注目される藻類の培養技術の確立・品質向上を研究する。事業には佐賀市、東芝、ユーグレナ、日環特殊、日水コン、日本下水道事業団の6者が参加している。国土交通省のプロジェクトの一環で事業費は10億円。下水処理過程で発生するバイオガスからCO2を分離・供給し、藻類の光合成を促進して培養する技術の確立を検証する。培養施設は470平方メートルの敷地内にあり、1千リットルの培養槽が9槽ある。隣接する種株培養槽から本培養槽に移し、CO2や窒素、リンを含んだ脱水分離液を供給して培養を促す。窒素やリンを含む培養液は、赤潮の発生原因となるため通常は再処理して排水するが、藻類に供給することで窒素、リンが低減される。藻類は食品、燃料などに利用できるため、食糧やエネルギー分野で注目されている。施設の落成式で秀島敏行市長は「地球環境の改善に向かって努力しないといけない時代になっている。佐賀の取り組みが全国に広がってほしい」と述べた。


PS(2016年3月4日追加):*6-1の環境保全型農業は、農業や野生鳥獣のみならず水産業にも重要で、以前は沢山いた日本鰻が天然記念物に近くなったのは、川を汚染したり、川に堰をつくって遡上を妨げたりしたからだ。また、*6-2のように、ハチなどの生物が農業にもたらす利益は年間約4,700億円に上り、リンゴ、サクランボ、ウメなど果樹栽培への貢献が大きいそうだ。しかし、最近は、ハチミツも百花混合より、レンゲ、クローバー、アカシア、菜の花、蕎麦、サクラ、ウメ、ミカン、メロン、ローズマリー、タイムなどの花種別に分けた方が花や果物の香りがして付加価値が高いため、地域単位でハチを使って受粉すれば、高付加価値のハチミツという副産物もできるだろう。

   
  *6-1より       清流のヤマメ             ボラ           遡上中のウナギ

*6-1:http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=36503
(日本農業新聞 2016/3/4) 安全・安心志向を重視 環境保全型農業 農林水産省調査
 農薬や化学肥料を一切使わない有機農産物や、5割以上減らした特別栽培農産物などに取り組む農業者の4割が、今後生産を拡大する意向であることが農水省の調査で分かった。安全・安心を求める消費者ニーズを背景に、「エコ栽培」に力を入れようとする農業者が依然少なくない。有機や特別栽培農産物の需要が今後「拡大する」と答えた流通加工業者も約5割に上った。同省が2014年にまとめた「有機農業の推進に関する基本的な方針」によると、現在の有機農業の取り組み面積の割合は、全国の耕地面積のわずか0.4%程度。同方針では18年度までに1%に倍増させる目標を掲げており、この達成には生産拡大のペースを引き上げることが必要になる。調査は農薬や化学肥料の使用を減らす環境保全型農業に対する、生産現場の意識を把握するのが目的。昨年11月に農業者モニター1269人を対象にアンケートを取り、9割から回答を得た。
・5年後に拡大4割
 環境保全型農業に取り組む農業者450人のうち、おおむね5年後に規模拡大する意向を示したのは30%に達した。その理由として「消費者の信頼を高めたい」との回答が70%と最多で、「より良い農産物を提供したい」(52%)が続いた。また全体の規模は「現状維持」するが、環境保全型農業の割合を増やしたいと考える農業者も全体の12%いた。同省は「拡大できなくても高単価を魅力に感じ、有機や特別栽培の割合を増やそうとする意欲が高まっている」とみる。同省は流通加工業者と消費者にも環境保全型農業への意識調査を実施。流通加工業者で有機農産物を取り扱い中か、取り扱う意向を示したのは63%、特別栽培農産物では72%となり、販売意欲が高いことが分かった。消費者の購入理由として、約9割が安全面を重視しているとした。

*6-2:http://qbiz.jp/article/81170/1/ (西日本新聞 2016年2月22日) 生物の貢献4700億円 授粉のハチ、コウモリ、サル… 農業環境技術研 年間試算
 花粉を運び、受粉に貢献するハチなどの生物が日本の農業にもたらす利益は年間約4700億円に上るとの試算を、農業環境技術研究所(茨城県つくば市)の研究グループが22日までにまとめた。このうち約70%が野生生物によるもので、リンゴやサクランボ、ウメなど果樹栽培への貢献が大きい。花粉を運ぶ生物の経済的価値を、野生も含めて全国規模で推定した初の例。同研究所の小沼明弘主任研究員は「欧米ではミツバチなどの減少が問題になっている。日本でもこのようなことが起こると農業生産量の減少や生産コストの増加につながる恐れがある」として保護の重要性を訴えた。グループは2013年の都道府県別の農業生産額や、各種の作物が実を付けるのに、昆虫などによる授粉にどれだけ依存しているかを調べたデータなどから、花粉を運ぶ生物の農業生産への経済的な貢献額を試算。総額は約4731億円で農作物の総生産額の8・3%。果樹のほかメロンやスイカ、トマトやナス生産への貢献が大きかった。都道府県別ではリンゴ生産への貢献度が高い青森県が約592億円と最高。2位はサクランボなどの山形の約412億円、3位はカボチャやメロンなどの北海道の約378億円で以下、長野(リンゴなど)、茨城(メロンや野菜など)、熊本(メロンやスイカなど)の順だった。人間が飼育するセイヨウミツバチとマルハナバチの貢献が計約1056億円だったのに対し、昆虫を中心とした野生生物の貢献が約3330億円と大きく、保護するメリットが大きいことが示された。

| 農林漁業::2015.10~ | 03:32 PM | comments (x) | trackback (x) |
2015.10.17 日本における林業の振興について (2015/10/18、20、2016/9/10、12追加)
     
      下草刈り 上     林業女子     集められた材木       機械によるカット
 (牛・羊・山羊などの家畜では、駄目?)  
     
国産材・外材価格 現在の林業   イギリスの家具      フランスの家具     ドイツの室内

 TPP、安全保障法制、原発再稼働、辺野古の埋め立てなど、問題を指摘しなければならない話題は多いが、今日は、せっかく日本に大量にある資源を無駄にしている林業について、公認会計士として第二次・第三次産業を監査・税務で数多く見てきた私が、佐賀県の森林組合や材木店を廻って悩みを聞き、気がついたことを書く。その状況は、多少の違いがあっても他地域でも似ているだろう。

(1)林業の歴史
 林業は、*1-1のように、1950~60年代は戦後復興と高度経済成長を支える花形産業だったが、伐採し過ぎて60年代後半には日本産木材の価格が高くなり、また高度成長で人件費も高騰したため、安価な外材輸入に押され、日本の林業は衰退産業となった。しかし、伐採後の森に針葉樹の植林を続けてきた成果が出て、現在では、日本には、60億立方メートルの森林蓄積があり、これは世界最大の林業国、ドイツの2倍だそうだ。

 しかし、現在、日本の木材は外国産に比べてコスト競争力がないと言われて、あまり使われていない。一方で、森林の所有者は間伐などの手入れをするには収入よりもコストが高くなり、手入れもせずに放っておく人が多いため、森林環境税を徴収して、私有林の手入れに補助している地方自治体も多い。

 そのような中、現在では、日本産スギ丸太の価格は米国産ツガの半値近くで、人材も、欧州の主要林業国オーストリアでは林業機械の作業員に支払われる人件費は3万円/日超で日本の2倍近いが、オーストリアの林業家は利益を確保しながら森を健全に維持しているので、日本でも、機械を使って生産性を上げたり、外国人労働者を雇用したりして、問題解決すべきである。

 しかし、木材を燃やしてエネルギーを作るのは、最も付加価値の低い森林資源の使い方であるため、もっと木材の付加価値を高くする使い方を研究すべきだ。日本にとって、林業の衰退による森林の荒廃は二酸化炭素(CO2)の吸収量を下げ、治山・治水で災害に弱い山を作り、水産業の漁獲高を減らすため、健康な森林を維持しながら持続可能な伐採を行い、建築資材や家具などの付加価値の高い製品を、できるだけ機械化して作る6次産業化が最善の道だろう。

(2)森林復活と木材産業の振興
 日本が行うべき林業は、*1-2のような「スマート林業」で、人材不足は女性やこれまで林業が盛んだったタイ、マレーシア、インドネシアなどからの外国人を使う方法がある。また、女性は最終製品の選択者でもあるため、女性を使うと、林業や植林に対して今までなかったような新しい発想が得られるのではないかと思う。また、ITで間伐、伐採、管理計画を立てて効率化するのはよい考えだが、何十年もかかって育てた木を燃やして発電するのは、余程の屑でない限りもったいない。

 なお、佐賀銀行は、*1-3のように、緑化事業に取り組む公益財団法人「さが緑の基金」に120万円寄付し、佐賀県の里山づくりなどに貢献するそうだ。緑の基金は、来年、有田焼創業400年を迎える西松浦郡有田町でモミジなど400本を陶山神社に植えたり、唐津市厳木町笹原峠や佐賀市富士町中原地区で里山整備を進めたりするそうだが、このような企業の社会貢献は有価証券報告書に記載させたり、環境企業の認定マークを交付したりして、後押しするのがよいと考える。

 さらに、現在は放置された竹林が拡大して森林の荒廃に繋がっているが、竹の間伐材を炭化させて商品化するだけではなく、竹も資源と考えて高級食材の包装や道具・家具に使う等の工夫が望まれる。

(3)21世紀の木材産業は、コストを下げて付加価値を上げるしかない

   
            日本の家具                  学校の机・椅子    こんな素敵な色も・・

1)建物や家具の部品加工を機械化してコストを下げる
 日本で林業を行う以上、高い技術を導入し、加工は機械化すべきだ。例えば、上の写真の学校で使う机や椅子の例では、現状の金属・プラスティックを使った机や椅子ではあまりにも可哀想なので、ぬくもりがあり、自然の香りがする木材に交換していけばよいと思う。

 しかし、昔の形や白木に戻るのではなく、姿勢をよくするデザインの椅子やIT時代にあった便利な机を徹底して医学的・工学的にデザインし、そのデザインに合わせて木材を機械でカットし、素敵な色をつけて大量生産すればよい。この方法は、他の家具や建材でも、輸出品を大量に作るのに応用できる。

2)その他の技術開発
 *2-1のように、産学連携で取り組んだ全国の大学5校による環境住宅の実証実験を兼ねたコンペティション「エネマネハウス」が開催され、各大学は新興国での水資源の再利用を可能にする住宅システムや、地方の林業活性化へ合板木材を外壁に使う施工方法などを競うそうだ。芝浦工大のテーマは国内の木材需要の押し上げだそうだが、今後は、建材だけでなく家具の設計・デザインもして欲しい。

 なお、*2-2のように、諸富家具・建具が産地復活を懸けアジアへ進出しているが、私は、家具も、一度職人がデザインすれば、機械で作れるパーツも多く、それが多ければ多いほど、安価で大量に作って輸出することが可能だと考えている。また、*2-3の大川も、いつまでも近場の人だけを対象にしているのではなく、技術と地の利を活かして輸出という次のステージに進んだ方がよいだろう。

3)木材の品種改良
 現在は、生物学が進んで、植物の品種改良も早くなっている。そのため、家具や建材に適した色、硬さ、木目の木を栽培することも、やろうと思えばできる。

<日本の林業>
*1-1:http://www.nikkei.com/article/DGXNASDD010AA_R00C11A7000000/
(日経新聞 2011/7/4) 「今後40年間は有望」説も 持続可能な日本の“もうかる”林業
 日本で林業が「もうからない産業」の代表格のように言われて久しい。1950~60年代は戦後復興と高度経済成長を支える花形産業だったが、60年代後半になると状況が一変。安い外材の輸入に押され、人件費の高騰とともに、きつい作業を嫌う若者の増加で就業人口が減り、もうからない衰退産業になった。こうしたストーリーが「常識」として定着していた感がある。だが、近年、こうした常識を覆すような研究や事例が相次いで浮上し、林業関係者や森林を守る非営利組織(NPO)などで議論の的となっている。その内容を精査すると、日本の林業は今「もうかる林業」へ生まれ変わる転換点にあるのかもしれない、と思わせるものが多い。そんな議論の最先端を垣間見たのが6月9日、「我が国の森林・林業再生をいかに進めるか」をテーマに東京で開かれた「震災復興支援フォーラム」だった。「現在の日本には60億立方メートルもの森林蓄積がある。世界最大の林業国、ドイツの2倍もの規模で、我々は宝の山の上にいるようなものだ」。基調講演をした内閣官房国家戦略室の梶山恵司・内閣審議官は、日本の山林の有望性をこう説明した。「日本林業はよみがえる」という著作もある梶山氏は、4月に公布された改正森林法で推進する「森林・林業再生プラン」の策定などに携わった森林・林業問題のスペシャリストだ。森林蓄積とは、木材用として使える立木がどれだけ山林に残存しているかを示す。日本は森林蓄積が20億立方メートルしかなかった高度経済成長期の60年代前半に、毎年6000万立方メートルを伐採し続けたことで「木材資源を、ほぼ刈り尽くしてしまった」(梶山氏)。当時の木材需要は年1億立方メートルもあったとされ、この不足分を補うため外材の輸入が自由化された。伐採後の森に針葉樹の植林を続けてきた日本だが、材木用途で伐採に堪えるようになるまで、長きにわたり利益の出ない「蓄積の時代」をさまよってきた。その間、戦後すぐには全国で45万人いた林業の担い手は、現在5万人を切るまでに激減。うち65歳以上の就業者が3割近くと高齢化も進んだ。だが、梶山氏は、安い外材や人件費高騰といった林業疲弊の原因とされる要因も、「従来の常識を冷静な目で見直せばチャンスがあると分かるはず」と強調する。例えば、日本の木材は外国産に比べ「コスト競争力がない」という指摘。国産材で最も一般的なスギ丸太材の1立方メートルあたりの価格は90年以降、流通量の多い米国産ツガ丸太材に比べて安く推移している。現状ではスギ丸太の価格はツガの半値近くの水準で低迷しており、コスト競争力がないとは言い難い。高い人件費についても同様だ。前述の梶山氏の著作によれば、欧州の主要林業国、オーストリアでは伐採などに使う林業機械の作業員に支払われる人件費は1時間あたり29ユーロ(約3400円)。1日では3万円超にもなり、日本に比べて2倍近いという。それでいてオーストリアの林業家はきちんと利益を確保しながら森を健全に維持している。日本でも、小規模な林業家が利益を出しながら山林を管理し健全に保っていく方式を編み出したグループがある。高知県中部を流れる仁淀川。四万十川に匹敵するきれいな流れにアユが豊かなこの川の流域で、「兼業型自伐林家」の有効性を証明したのが特定非営利活動法人(NPO法人)、土佐の森・救援隊だ。「山林所有者のほとんどが近くの農村部に住み、山を守りたがっている。かといって伐採を業者に頼めばコストがかかりすぎて赤字になる。自分で木を切って売れば、実はそんなにコストがかからず山の管理もできることが分かったんです」。土佐の森・救援隊の中嶋健造事務局長が説明する。山林や農地を持ちながら定職に就いている兼業農家が、週末などの空いている時間に自分の山林の樹木を切り出し、特に間伐材を売却することで「晩酌代や小遣い銭を得ながら、山を健全に保っていく」(中嶋氏)という取り組みだ。仁淀川流域で同NPO法人に登録する自伐林家は現在、40人余りいるという。所有する山で間引くべき木をチェーンソーで伐採し、これを2メートルほどの長さに切り、軽トラックで製材所などに運んで売る。スギなら1立方メートルあたり約1万円、ヒノキなら同2万円程度になり、所有する山林の規模が小さくても月に数十万円の収入を得ている林家もいるという。間伐や間伐材の搬出に補助金を出す自治体も多く、「兼業の農家・林家にとっては結構な副収入となっている」と中嶋氏は説明する。険しく奥深い山では何人かがグループで作業する。手ごわい搬出作業の手間を省くため、同NPOは20万円ほどで導入可能な「土佐の森方式・軽架線」というツールを開発した。山の上にある木と、下にある木にワイヤ使って架線を張り、林内作業車のウインチと滑車を使って伐採した丸太を運び出す。こうした「土佐の森方式」は全国に広がりつつあり、現時点で10市町村以上が導入済みだ。さらに30の自治体が導入を検討中とされる。特に木質系のバイオマス(生物資源)エネルギーを活用するシステムを導入した自治体では間伐材収集の有効な手段となっており、林家の安定した収入につながるケースが多いという。中嶋氏は「ドイツでは45万の林業事業体が存在し、その8割超が個人経営。うち6割が農家であり、民宿や酪農などと兼業している例が多い」と解説する。梶山氏らが策定した「森林・林業再生プラン」でも、その要諦は「いかに森林を健全に保ち、持続可能な林業を日本に定着させるか」だ。「規律のない、単なる資金を出すだけの補助金を見直す」ことも掲げている。林業事業者だけでなく、ドイツなど欧州に多い高度な知識と豊かな経験を持つ「フォレスター(森林経営専門家)」などの人材も育成して豊かで健全な森の実現をめざす。同プランでは、伐採などの作業を集約する「大規模化のメリット」にも触れているが、一方で土佐の森方式のように「個人として山林を管理する方式を面的に広めた方が、かえって効率がよい」(中嶋氏)という意見もある。国土の約7割が森林という日本にとって、林業の衰退による森林の荒廃は二酸化炭素(CO2)の吸収量を下げ、治山・治水の面でも災害に弱い山を生み出すなどの大きな問題につながる。梶山氏によると、現在の日本の森林を健全に保つには毎年5000万立方メートルの伐採が必要で、それだけ切っても年間1億立方メートル分ずつ森林蓄積は増えていくという。「人材とともに持続可能な森林を育成すれば、今後40~50年はまともな林業を日本に根付かせることができる」。仮に年間5000万立方メートルの木々を国内消費すれば、木材の国内自給率は50%になると試算されている。こんな豊かな資源を抱えた日本の山を見直す時期は、確かに今しかないかもしれない。

*1-2:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20151017&ng=DGKKASDJ30H0D_X11C15A0MM0000 (日経新聞 2015.10.17) スマート林業 伸び盛り、伐採計画や管理、ITで効率化 人手不足に対応
 IT(情報技術)を活用した「スマート林業」が広がってきた。森林の測量データを解析してデータベースを構築したり、地理情報システム(GIS)で森林管理を効率化したりする取り組みだ。戦後の大規模な植林が伐採期に入っているが、人手不足の影響で未開発な部分も多い。ITを駆使して伐採を効率化し、林業活性化やコスト削減につなげる。住友林業は航空計測などを手掛ける中日本航空(愛知県豊山町)やデータ解析をする企業と組み、ITを使った林業経営コンサルティングを本格化する。ヘリコプターからレーザーを照射して木の本数や密度などを測り、測量データや写真を解析。データベースを構築して、自治体などが森林経営をするときの指針づくりに役立てる。データベースは常に更新して精度を高めていくという。7月から岡山県真庭市で伐採計画の指針づくりに向けた調査を始めた。まず5700ヘクタールの森林を対象とし、今後範囲を広げる。市ではバイオマス発電所や直交集成板(CLT)の工場が竣工し木材需要が高まっている。効率的な伐採で重要なのが調査や測量だ。伐採に適した木がどこにあり、どんな状態なのかを事前に知ることができれば、必要な人材や機材をピンポイントで投入できる。従来は調査や測量を人海戦術に頼ってきた。GISを使った取り組みも目立つ。GISはコンピューターで座標などの地理情報を作成して保管する仕組み。電子地図と組み合わせて使う。東京大学は測量システムのジツタ(松山市)などと組み、GISを使った測量を始めた。3D(3次元)スキャンシステムを活用して木の本数、形状などを測定する。従来の方法と比べると、作業効率は3倍以上になる。釜石地方森林組合(岩手県釜石市)は実際にこの仕組みを使って森林を調査した。データ量は現在の方法と比べて3~4倍になった。料金は1ヘクタール18万円程度と高い。だが「普及が進めば料金の下げも見込め、データ量の増加を考えれば調査コストの削減につながる」(同組合)という。戦後の植林材が伐採期に入り、出荷可能な蓄積量が増えているが伐採は進んでいない。林野庁によると、日本の森林面積は2500万ヘクタール。木の量に換算して49億立方メートルと10年前比で2割増えている。だが実際に伐採、利用されているのは約2500万立方メートルと1%未満にすぎないという。人手不足の影響が大きい。総務省の統計では木を伐採して運搬する林業従事者は2012年時点で7万人程度。1990年に比べて3割少ない。スマート林業はこうした人手不足を補い林業を活性化する狙いがある。運搬機械の機能も高まってきた。イワフジ工業(岩手県奥州市)は、森林にワイヤを張って伐採した木を運ぶ「タワーヤーダ」と呼ぶ機械を開発した。現在は1本のワイヤに木を1本ずつつるして運ぶ機械が多いが、枝分かれした複数のワイヤで複数の丸太を運べる。16年にも販売を始める予定だ。これまで運搬量は1日30立方メートルだったが、50立方メートルまで増やせる。国内の丸太需要は増加傾向にある。合板メーカーが国産スギを材料として使う比率を高めているほか、全国でバイオマス発電所の稼働も相次ぐ。14年の国内丸太生産量は1991万3000立方メートルと前年と比べて1.4%増えている。

*1-3:ttp://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/239955
(佐賀新聞 2015年10月16日) 佐銀、緑の基金に120万円を寄付、「エコ定期」で
 佐賀銀行は15日、緑化事業に取り組む公益財団法人さが緑の基金に120万円を寄付した。公募で選定された佐賀県内3カ所の里山づくりなどに活用される。エコ定期預金額の0・025%相当額を寄付した。緑の基金は、有田焼創業400年を来年迎える西松浦郡有田町でモミジなど400本を陶山神社に植え、唐津市厳木町笹原峠や佐賀市富士町中原地区で里山整備も進める。県庁の贈呈式で村木利雄佐賀銀行会長が「預金者の思いがこもっているので有効に活用を」と目録を手渡し、基金の理事長を務める和泉惠之県土づくり本部長が謝辞を述べた。放置された竹林が拡大し、森林の荒廃につながっている現状に話題が及んだ。村木会長は、竹の間伐材を炭化させて商品化する産業の推進に期待を寄せた。佐賀銀行の基金への寄付は2009年から続き、総額は2029万円。福岡、長崎両県でも取り組み、3県での合計は3836万円に上る。

<技術開発>
*2-1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20151016&ng=DGKKZO92860600V11C15A0L83000 (日経新聞2015.10.16)環境住宅 5大学競う 産学連携、横浜であすから実験
 横浜・みなとみらい(MM)21地区で17日から、全国の大学5校による環境住宅の実証実験を兼ねたコンペティション「エネマネハウス」が開催される。住建会社などが協力した産学連携の取り組み。各大学は新興国での水資源の再利用を可能にする住宅システムや、地方の林業活性化へ合板木材を外壁に使う施工方法などを競う。環境住宅への意識を高め、製品化や海外展開を促す。立命館大は将来的な国内の住宅市場の縮小を見込み、「水」を前面に押し出した住宅システムの輸出を目指す。使用済みの水を自宅に備えた浄化槽などでろ過、風呂水やトイレなどで再利用するのが目標だ。全体の再利用システムは約15年ごとに更新が必要だが、「浄化槽は半永久的に使える」(同大学)という。見据えるのはアジアなど新興国の水ビジネス市場だ。特に日本企業も多く進出するバングラデシュではヒ素による水質汚染が深刻な問題となっており、水資源の確保が課題となっている。新興国のインフラ未整備のエリアへの展開をにらむ。早稲田大学も新興国市場を視野に、熟練工でなくても高い精度で建築できる施工方法を開発した。東南アジアでは素人でも工程に参加する「ハーフビルド」と呼ばれる工法が主流なため、比較的容易に仕上げができるよう作った木造大型パネルを採用したという。地方の林業、建築業の活性化を目指す大学もある。芝浦工業大学のテーマは国内の木材需要の押し上げ。外壁に使用例の少ない「CLT」と呼ばれる木材を採用。住宅の外壁としてはセメントが一般的だが「外壁材として木材の利用を進めたい」との考えから、従来は廃棄処分となることの多かった建築資材の再利用を打ち出した。エネマネハウスは17日から11月1日まで開催する。

*2-2:http://qbiz.jp/article/72169/1/
(西日本新聞 2015年10月6日) 【伝統産業の挑戦】諸富家具・建具 産地復活懸けアジアへ
 木の香りが漂う展示場。テーブルの感触を確かめながら「日本で丁寧に作った家具をアピールしたい」。諸富家具振興協同組合の理事長でレグナテック(佐賀市)の樺島雄大(たけひろ)社長(49)は言う。9月、台湾に店舗を出した。台北市の目抜き通りの約150平方メートル。テーブルやいす、木製の小物などを並べる。ターゲットはマンション住民や飲食店だ。最初の1年は来店客の声に耳を傾け、売れ筋を探る。樺島社長は「好調なアジア経済を見据え、早い段階で手を打ちたかった」と語る。親族が台湾で仕事をしていることもあり、進出を決めた。同社製品だけでなく、他の組合員の商品も置く予定だ。組合加盟の平田椅子製作所(佐賀市)も2014年2月、シンガポールに出展。ショールームの一角でいすを数点展示する。平田尚士社長(48)は「少しずつ注文が入っている」と声を弾ませる。諸富家具の各社がアジアに展開している背景には、産地全体の厳しい状況がある。組合によると、1993年度のピーク時に約210億円あった販売額は、04年度に3分の1の59億円に減少。少しずつ回復しているが、13年度は73億円にとどまる。かつて50社いた組合員も現在32社。輸入品との価格差や、大型家具を持たないライフスタイルの浸透で、苦戦が続く。大手家具店では8割が海外産の店もあり、樺島社長は「まさに(世界各国の家具が集う)オリンピック」と苦笑する。逆に言えば「海外から商品が来るなら、こちらが攻めてもいい」というわけだ。国内向けでも、組合の販促活動が活発になっている。5年前から、佐賀県内の道の駅で2週間ずつ商品を展示。佐賀市内の小学校には木製の机やいすを納入している。東京や大阪、福岡でも展示会を開く。「時代と生む良品」をブランドスローガンに「上質の木で作った、本物の家具を届けたい」と樺島社長は力を込めた。
    ◇   ◇
 九州各地に根差した伝統産業。国指定や県指定の伝統的工芸品などの産地を訪ね、新たな挑戦を紹介する。九州経済面で随時掲載する。

*2-3:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10105/238444
(佐賀新聞 2015年10月11日) 大川木工まつり、独自の家具1万点ずらり
 家具産地の大川市で10日、「第66回大川木工まつり」が始まった。メーン会場の大川産業会館では、メーカー200社が独自のデザインや素材による家具約1万点を直売。工場直送で普段より安く購入できるとあって、大勢の家族連れなどが詰めかけている。12日まで。県内メーカーでは、レグナテック(佐賀市諸富町)が本年度のグッドデザイン賞に選ばれたコートスタンドなどのシリーズ作を限定販売。平田椅子製作所(同)も食卓やリビングなどで使える新作のいすを発表、来年1月の本格出荷に向けてアピールした。同社の平田尚士社長は「作り手と消費者がダイレクトに結びつく数少ない機会」と来場に期待した。自宅を新築し、ダイニングセット目当てに来場した40代の夫婦は「長く使うものなので、素材や使い心地をじっくりとみて決めたい」と会場をくまなく回っていた。会場周辺では、屋台村やステージイベントのほか、アンケートに答え、総額300万円相当の家具が当たる抽選会、親子木工教室などの体験企画もある。問い合わせは同まつり実行委事務局(大川商工会議所内)、電話0944(86)2171。


PS(2015/10/18追加):*3-1のように、御嶽山麓などの森はもともと薬草の宝庫であるため、付近の耕作放棄地を活用して薬草を栽培すれば、高付加価値の生産物を作れそうだ。また、長野県の森はクマザサがどこにでもあるが、これも、下の写真や*3-2のように、付加価値がつけられそうである。

    
  森の中のクマザサの群生     クマザサの殺菌効果を利用した包装    クマザサと綿混紡の 
                                                    抗菌タオル
*3-1:http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=34949 (日本農業新聞 2015/10/9) 薬草で放棄地 再生 “新食材”育成プロジェクト始動 民宿の逸品料理に 長野県木曽町
 御嶽山麓の長野県木曽町で、増える耕作放棄地を活用しようと、薬草の栽培が始まった。同町は今年から薬草を育てるプロジェクトを立ち上げ、町の試験農場で土地に合った薬草を探している。収穫した薬草をそのまま薬向けに販売するには、まだ十分な収量がない上、薬事法に対応した販売も求められるため、まずは新たな食材として栽培を進めていく考えだ。
●農家の知識醸成 お試し栽培提案
 プロジェクトのリーダーの都竹亜耶さん(36)は、2011年に地域おこし協力隊として東京から同町に移住した。御嶽山麓は古来から薬草の宝庫だったことに着目、「耕作放棄地の活用と、かつての薬草文化や知識を子どもたちに伝え食育につなげたい」と薬草栽培を思いついた。まずは5アールの畑で「カミツレ(カモミール)」などハーブ10種類の栽培から始め、5月には山から採取した薬草を追加。現在は合わせて約30種類を栽培する。月に1回、地元の農家を試験農場に招き、「薬草を試しに作ってみませんか」と栽培を勧めている。一方で毒性の強い薬草も多く、十分な知識がないと危険な場合もある。このため試験農場では黄色い花が特徴のキンポウゲ科の「キツネノボタン」など、間違って食べると死に至るような危険な薬草も栽培、農家に知識を伝えている。薬草栽培の指導に当たる特定非営利活動法人(NPO法人)自然科学研究所の小谷宗司代表は、胃腸を整える効果がある「センブリ」や、滋養強壮剤として市販される酒の原料になる「イカリソウ」などが土地に合うと提案、試験農場で栽培を始めた。都竹さんは「御嶽山噴火から1年が過ぎたが、もがきながらも、町に合った薬草栽培を通じて地域を元気にしたい。道の駅や地元の民宿で薬草を食材として使ってもらえば、町おこしにつながるのではないか」と構想を練る。

*3-2:http://sasaland.com/blog/150608/ 
薬がなかった時代から「クマザサ」は大活躍の働き者だった!!
 中国最古の薬物書「神農本草経」にも漢方薬として紹介されているほど、遠い昔から健康を支えてきたクマザサ。外界から離れ、霞を食べて生きてきたといわれる不老長寿の「仙人」は、実はクマザサを食べていたと伝えられてもいます。このほか、クマザサは李時珍の記した『本草網目』にも「じゃく」として収載されています。その中で、クマザサは次のように述べられています。
  気 味……甘し、寒にして毒なし
  主 治……男女の吐血、嘔血、下血、小便渋滞、喉痺、腫瘍を治す
 日本でも昔からクマザサは生活の中で広く使われていました。その昔、山仕事や旅の途中で食べるおにぎりや餅を包んだのは、クマザサの葉です。また、笹団子、笹あめ、笹寿司、笹酒、チマキ……防腐作用や殺菌効果の高いクマザサを使った食べ物は、昔からこんなにたくさんあったのです。今ほどたくさんの薬がなかった昔、人々は民間治療薬で病気や怪我を治していました。そこで大活躍したのはクマザサでした。東北地方では胃腸病、高血圧、ぜんそく、風邪の時にクマザサのせんじ薬を飲んでいたと言います。また、やけどや切り傷、湿疹にあせも、虫さされ、はては口臭や体臭を消すことにまで、暮らしに深く浸透していたのです。


PS(2015/10/20追加):山の幸には、*4のように、植物だけでなく、現在は増えすぎた野生動物の肉(ジビエ)もある。ジビエは、脂肪が少なく蛋白質が豊富で美容と健康によいため、捕獲した野生動物を食肉利用する割合が低いのはもったいないことである。なお、下の写真の(長野県)木曽漆器も、食洗機対応、手入れの簡単化、絵柄、住まいとの調和、コストダウンなど、21世紀の生活にマッチするように改良すれば、輪島漆器ほど高すぎないため日本人が買い安く、輸出も可能だろう。そのため、2020年までに現代化を終え、*4-2の東京オリンピックで選手村の食器に採用されるようにして、選手が帰る時には、使っていた食器を記念に持ち帰らせれば、世界への宣伝にもなると考える。

   
              木曽漆器 (*一番よいものを掲載したとは限りません)

*4-1:http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=35014
(日本農業新聞 2015/10/15) 捕獲獣の運搬ネック 関係団体を意見聴取 自民ジビエ議連
 自民党の鳥獣食肉利活用推進議員連盟(ジビエ議連、会長=石破茂地方創生担当相)は14日、野生の鳥獣肉(ジビエ)の供給や販売を手掛ける関係団体から取り組み事例を聴き取った。北海道と長野県は、ジビエのブランド化に成果を挙げるものの、捕獲した野生動物を食肉利用している割合が低い実態を説明した。食肉処理施設への運搬に時間と労力がかかり、搬入が進んでいないのが課題とし、捕獲した個体の効率的な回収への支援を求めた。北海道はエゾシカ対策に力を入れ、2014年度の捕獲数は13万6000頭と、10年度より2割強増えたと報告。一方で、ジビエとしての活用は15%前後にとどまったままで、食肉での利用は進んでいないことを明らかにした。長野県もニホンジカの食肉利用率は5%未満にとどまるとした。その背景として、農水省は捕獲から1、2時間たった個体は食用に適さなくなり、運搬に時間がかかると食肉利用が困難になると説明。出席した議員からは「加工しながら移動できる手段も考えないと、施設への搬入が進まない」との意見が出た。石破会長はじめ議連メンバーは同日、東京都内で開かれたジビエ料理の試食会に参加し、鹿肉を使ったハンバーガーやカレーライスを試食した。同議連は11月に現地視察を予定しており、今回出た意見も踏まえてジビエの振興策をまとめる予定。課題を整理し、来年1月までに示す構えだ。

*4-2:http://qbiz.jp/article/73129/1/
(西日本新聞 2015年10月20日) 「五輪施設に国産木材活用を」 遠藤氏、積極検討要請
 政府は20日、2020年東京五輪・パラリンピック関連施設での国産木材の活用策を検討するワーキングチームの初会合を東京都内で開いた。遠藤利明五輪相は「木の持つ柔らかさや、日本のおもてなしの文化を発信する機会だ。木材を最大限利用する方向で進めてほしい」と述べ、積極的な議論を求めた。国産木材の活用は林業の活性化につながるとして、自治体も期待を寄せる。木材の板を直角に重ね合わせ、耐震性や断熱性に優れる「直交集成板」などの建材利用が念頭にある。政府は8月にまとめた新国立競技場の整備計画で、仕様のうち「特に配慮すべき事項」として木材の活用を盛り込んだ。


PS(2016.9.10追加):*5のように、「森を守る」として子供に「皮むき間伐」の“面白さ(?)”を教えるなどというのは、ゆとり教育・アニメ世代・コンクリート街育ちの大人の限界だと思う。何故なら、植物も生き物であり、せっかく誰かが植えた財産でもあるにもかかわらず、残酷な殺し方を面白いと教えた上に、無駄をしているからである。森を守ることを子どもに教えるのなら、間伐した後に植林したり、森の生き物や食物連鎖を教えたりし、間伐は伐採させても危険でない年齢になって、もしくは大人がついて行い、有効利用する方法をこそ教えるべきだ。しかし、そもそも植林する時に同種の木を密集させすぎて植えているため、一本一本の木の成長が遅く、頻繁に間伐しなければ育たない森になっているのである。

    
      *5より       間伐の必要性       子供の間伐        間伐材の利用    

*5:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20160909&ng=DGKKZO07055810Z00C16A9NZBP00 (日経新聞 2016.9.9) 森を守る 主役は子供、「皮むき間伐」で山林管理 林業体験、自然考える契機
 子供たちが林業を体験するイベントが各地で盛んになっている。重機を使わず、誰でも簡単に取り組める間伐作業などを通じて、森を守ることの大切さを学ぶ。森林の荒廃は年々深刻になっており、イベントの主催者らは「楽しみながら、自然環境を考える機会にしてほしい」と期待する。台風一過の晴天が広がった8月23日、東京都八王子市西部の山林に子供たちの明るい声が響き渡った。「こっちのほうがうまくむけたよ」「もっとむきたい」。山林の整備や間伐イベントの企画を手掛ける「森と踊る」(同市)が主催した「きらめ樹体験会」には都内や神奈川県などから15人の親子が参加。同社が管理する区画で、スギやヒノキの「皮むき間伐」を体験した。
●日当たりを改善
 スギの表皮にナタや竹べらで切れ目を入れ、めくれた部分を力を合わせて引っ張る。「メリメリ」という音とともに表皮が一気にはがれた。つるつるの地肌が現れると、子供たちは思わず「おお」という歓声を上げた。スギやヒノキは水を吸い上げる春から夏に表皮をはがすと、1年ほどで枯れる。この性質を利用したのが皮むき間伐。一般的な間伐は、チェーンソーや重機を使って不要な木を切り倒すが、皮むき間伐は力のない子供でも簡単に取り組める。皮をむいて枯れた木は水分が抜けて軽くなり、切り倒した後、人力で簡単に運べるのも利点だ。間伐をしない森林は日光が届かず、地面には植物が育ちにくい。間伐後は日当たりが改善し、3年ほどたつと数十種類の植物が観察できるようになる。「森と踊る」取締役の村上右次さん(49)らが森林管理が持つこうした意味を分かりやすく説明していた。八王子市の浅野英子さん(44)は娘の杏樹マリさん(9)とともに参加。英子さんは「ふつうに生活していたら絶対できない貴重な体験。簡単で面白い作業で娘も喜んでいる」と声を弾ませた。英子さんはもともと林業に関心があり、子供と一緒に参加できるイベントを探していた。ただ、千葉県や静岡県など遠方での開催が多く、「東京にもこれだけ森があるのにもったいない」と感じていたところ、ネット上できらめ樹体験会の告知を発見したという。「森と踊る」はこれまで八王子市や奥多摩町などで約20回の体験会を開き、600本以上の木をむいてきた。多い回には160人ほどが参加し、親子連れを中心にリピーターも多い。
●森林放置深刻に
 国内の人工林は終戦前後に植えられたスギやヒノキが多く、伐採期を迎えている。ただ、安価な輸入木材に押され、価格が下落。採算が合わずに管理が行き届かなくなった放置林の増加が深刻化している。「森と踊る」の村上さんは「ほとんどの山が手入れができずに荒れ放題だ。そういう山の現状を知ってもらうきっかけにもしたい」と話す。代表の三木一弥さん(46)は機械メーカーに勤めていたが、水処理関係の仕事に携わって森林管理の仕事に関心を持ち、2年前に脱サラ。静岡県内のNPOのイベントで「皮むき間伐」を知った。「東京でも子供が参加できるこんな活動ができないか」と考え、「森と踊る」を立ち上げたという。三木さんは「林業の現状は厳しいが、イベントを通じて子供たちの意識が少しでも変わり、森の再生につなげられたらいい」と話している。


PS(2016年9月6日):最近は、木材カットをコンピューター制御で精密に行ったり、集成材にして強度を増したりすることもできるため、木造建築の強度を上げつつ、容易に大量生産できるようになった。そして、住宅は自動車と同じく波及効果が大きいため、耐震性が強くて省エネ・自家発電装備のゼロエミッション住宅なら、*6のように国内販売だけでなく輸出しても売れるだろう。

*6:http://qbiz.jp/article/93570/1/
(西日本新聞 2016年9月6日) 積水ハウス、ブランド材でマイホーム 飫肥杉など地元木材活用
 積水ハウスが、飫肥(おび)杉(宮崎県)や秋田杉(秋田県)といったブランド材の産地と手を組んで国産材の活用を進めている。各地で地元の木材を使ったマイホームを提案し、木造住宅全体の年間売上高を2016年1月期の1454億円から中長期的に2千億円規模に引き上げる目標。地産地消を促して林業の活性化にも一役買う狙いだ。積水ハウスは「シャーウッド」のブランドで木造一戸建て住宅を1995年から展開。当初は北欧からの輸入材が大半だったが、国内の二酸化炭素(CO2)削減といった環境面に配慮して徐々に国産材の利用を拡大。今年4月に国内のブランド材を柱など主要部分に使用した新商品「グラヴィス リアン」を発売した。これまでに10県の木材産地や加工業者と連携し、供給体制を整えた。宮崎と秋田のほかは、岩手、埼玉、長野、岐阜、奈良、岡山、愛媛、高知の各県。柱の部材には産地を表示して、身近に感じてもらえるような工夫をした。北海道と静岡県の木材も使えるように調整を進めており、今後も順次広げる方針だ。林野庁の試算によると、国産材の半分以上が建築向けに使用されているとみられ、住宅への利用拡大が進めば林業の活性化にも弾みがつく。積水ハウスの担当者は「肌触りや匂いの良さを前面に押し出して販売を伸ばし、国産材の利用を増やしていきたい」と話している。

☆この記述をするにあたって私が使った知識は、経済学、経営学、税制、栄養学、心理学、生物学、
  生態学、日本史、世界史などです。

| 農林漁業::2014.8~2015.10 | 04:56 PM | comments (x) | trackback (x) |
2015.4.14 農政について ← 「実現性がないから目標を下げる」「検証できない曖昧なことを目標にする」という発想は、科学的ではなく無責任である。 (2015.4.14に追加あり)
     
主な国の食料自給率推移 先進国の食料自給率比較      世界の人口推移

      
    日本の人口推移        カロリーベース    カロリーベースと生産額ベース
                       の食料自給率        の食料自給率
(1)農協改革の経過とその妥当性
1)農協監査について
①会計監査
 *1-1に書かれているように、農協監査は、これまでJA全中の監査部門であるJA全国監査機構が行っていたのを、会計監査に関しては公認会計士監査を義務付け、JA全国監査機構を外出しして新設される監査法人と、一般監査法人から農協が選ぶ「選択制」に変更するそうだ。そして、信用事業を行う貯金量200億円以上の農協等については、信金・信組等と同様、公認会計士による会計監査を義務付けることになったとのことである。

 ここまでの問題点は、貯金量200億円未満の地域農協は、監査を受けずに破綻して預金者に迷惑をかけるものが出やすくなり、その農協に預金している農業者や地域住民が保護されないということだ。そのため、信用事業を行う地域農協は、農協自体もしくは信用事業を合併して一定規模以上とし、必ず会計監査を受けるようにすべきだ。私は、気候や作物の似た農協が合併し、集めた預金はその地域で貸し付けを行うのが、営農方法や信用供与に関するノウハウが蓄積しやすいため、地域振興にもプラスになるのではないかと考えている。

 *1-1に、「外出しした監査法人は、会計監査チームと業務監査チームを分ければ、監査法人内で同一の農協に対し、会計監査と業務監査(コンサル)の両方を行うことが可能」とされているが、これは、監査法人では禁止されている。何故なら、業務監査をコンサルと解釈しているのであれば、コンサルティングチームと監査チームが同一組織に属していれば、コンサルの結果が監査意見に影響を与えるため、独立性のある監査ができないからである。しかし、そもそも業務監査はコンサルではなく業務に関する監査であるため、農協内部にいて毎回理事会に出席したり、いつでも内部統制をチェックできたりする立場にいなければできず、それを外部監査人が行うのは困難なのである。

 このように、監査は、組織の維持運営を公明正大かつ適切に行うためのツールであるため、「(監査を受けると損だから)現在の農協監査はイコールフッティングではない」といった消極的な批判は当たらず、(細かく理由は書ききれないが)優秀な監査や正確な会計に基づくコンサルティングを受けるのは、国内だけでなく海外展開するのにも有意義であり、この改正の良し悪しは使い方によるのである。

 例えば、ビッグ4などの監査を受けていれば、ビッグ4は、オーストラリア・ニュージーランド、南北アメリカ、ヨーロッパ、アジアなどでも長く監査を行い、豊富な事例と均質な横のネットワークを持っているため、世界のBest Practiceを集めて今後の改善に資するアドバイスを行うことができる。また、地域で開業している公認会計士の監査を受ければ、地域の事情に詳しく、地域愛がある上、ビッグ4と比較して安価であろう。そのため、農業所得や農家所得を向上させるためには、各種の監査法人やビッグ4系列のコンサルティング会社、マッキンゼー、ボストン、アクセンチュアなどのコンサルティング専門会社を、農協の負担が増えないというだけではなく、攻めの目的で使いこなすのがよい。

 上のような事情から、私は、農協以外の監査はできないが農協の業務監査に慣れている農協監査士やこれまでJA全国監査機構に所属していた公認会計士の一部は、農業協同組合中央会の中に内部監査部を作って残り、農協が正確で適法な経理や運営を行うことは担保した上で、その上のステップの外部監査やコンサルティングを安く受けられるようにするのがよいと考える。

②業務監査
 *1-1は、「業務監査はコンサルと看做す」としているが、上に記載した通り、業務監査は業務の妥当性や適法性を監査するものでコンサルではないため、業務監査は、業務監査担当理事を責任者として、内部監査部門が行うのが適切であり、それ自体が重要な役割を果たすものである。

 そして、農協の販売力の強化、6次産業化、輸出拡大などを図るためには、必要に応じてビッグ4系列のコンサルティング会社やマッキンゼー、ボストンなどのプロフェッショナル集団を、もちろん農協の自由意思で使いこなすことが望まれる。

2)中央会について
①全国中央会
 *1-2によれば、「全国中央会は、2019年3月31日までに一般社団法人に移行し、“農業協同組合中央会”と称し、会員の意思の代表、会員相互間の総合調整などを行う」とされているが、これまでも組合の主は組合員であるため、そういう組織だったのである。むしろ、株式会社にすれば、主は株主であるため、組合員はさておき株主利益のために行動する会社となるのだ。

②都道府県中央会
 i)新組織は、会員の要請を踏まえた経営相談・監査、会員の意思の代表、会員相互間の総合
  調整を行うとされているが、これは前からそれに近いため、改革の理由にはならない。
 ii)2019年3月31日までの間に農業協同組合連合会に移行し、移行した農業協同組合連合会
  は、「農業協同組合中央会」と称することができるので、これまでの全国中央会は、農業協同
  組合中央会の東京本部になればよいと考える。
 iii)都道府県中央会から移行した農業協同組合連合会が、会員の要請を踏まえた監査の事業
  を行う場合は、農水省令で定める資格を有する者を当該事業に従事させなければならない
  こととするというのは、意味不明だ。

3)准組合員の利用規制について
 組織の構成員を誰にするかは、その組織の都合で自由に決めるべきことである。そのため、銀行など他の組織のために農協の「准組合員の利用量規制」をするなど、成長を妨げる悪い規制の典型である。そのため、准組合員の利用量規制などはすべきではない。

4)その他
 このような状況であるため、*1-2のように、佐賀県内の農業関係者に、「全中は、なぜ妥協して農協改革案を容認したのか」という戸惑いが広がったのは理解できるが、監査に関しては、JA全国監査機構による監査が例外的な監査であり、監査導入初期に妥協して入れられたものであることから、監査法人監査に移行して、(1)1)のようにプロフェッショナルを活用すれば、農業が成長産業化して、農業所得や農家所得が増えると私も考える。

 しかし、(1)2)の中央会廃止や(1)3)の准組合員利用規制に関しては、私的組合の経営に口を出し、マイナスの効果の方が大きいため、上のような解決をするのがよいと思う。(申し訳ないが)東北や北陸は知らないが、私が衆議院議員をしていた佐賀県は、唐津・伊万里をはじめ全県を挙げて、農畜産物のブランド化や生産コストの削減に努めてきたため、周回遅れの“改革のための改革”を行ったり、農協を”改革イメージのためのスケープゴート”にされたりするのは迷惑なのである。また、農協の専門性・情報収集力・組織力があれば、国が意見を聞くのはよりよい方法であるため、国が農協の意見を聞くのは、どのような形であれ重要だ。

 従って、*1-3に書かれている“農協法改正案”に対する野党の修正は、「農業所得の増大だけでなく、農家所得の増大にも配慮しながら農業の成長産業化を行う」「これまでの中央会は都道府県中央会と合併して内部監査部門を持つ」「私的組合であるJAの理事構成に口を出させない」「どこであれ株式会社化を強制しない」「准組合員など私的組合の構成員に規制を設けない」などが必要である。

 なお、維新の党は株式会社しか知らないのか、農協の株式会社化にこだわっているが、農協を株式会社化すれば、農家の所得が増え、農業の成長産業化が進む理由は説明できない筈である。

(2)萬歳会長の辞任について
 このような中、*2-1のように、JA全中の萬歳章会長が4月9日、農協法改正案の閣議決定を節目に、今後のJAグループの自己改革や新しい全中づくりを新体制で進めるのが適切と判断して、全中会長を辞任したそうだ。萬歳会長はJA新潟みらい会長やJA新潟中央会会長などを務めた方で、環太平洋連携協定(TPP)交渉や米の生産調整の見直しなどの農政課題に当たってきた。

 そして、*2-2のように、農業所得の増大、組合員の所得向上、地域農業の活性化、地域活性化に向けて、10月に開かれるJA全国大会に向けた議案作りが始まっており、後任の会長に自己改革の実現を託したそうだ。上のグラフのように、グローバルでは急激な人口増加が進む中で、農業はますます重要な産業となっていくため、妥協することなく食料自給率や農産品輸出額を上げてもらいたい。

 一方、*2-3のように、日経新聞は、「圧力団体、農協の終焉」と報道している。そして、その理由を、「①全中の行動原理の根に、日本は食料難で規模の小さい農家がたくさんいるという終戦直後の農業構造を掲げている」「②食料供給を錦の御旗に掲げて組合員の数の力をバックに政治に圧力をかけてきた」「③最近ではTPPへの反対運動がその象徴だ」「④輸入農産物の増加も重なって食品価格が低迷した」「⑤経営環境の悪化を受け、意欲のある農家は規模を拡大し、法人化して農協から離れていった」「⑥古い圧力団体の体質を改め、真に農業に貢献できる組織になれるか。周囲の見方を変えるには全中自らの変革力が問われる」などとしている。

 しかし、1994年に食管法が廃止され、私が知っている農協はとうに①を卒業しているため、①は20年遅れの状況把握だ。また、②の食料供給はグローバルでは人口増加が進み、新興国も工業化している中、*4-2にも触れられているように大切なことである。さらに③は、私がこのブログの環太平洋連携協定(TPP)のカテゴリーでずっと述べてきたとおり、農業だけではなく日本の主権の問題であり、国民生活や農業をスケープゴートに差し出して拙い外交・防衛政策をカバーするのは、日本国憲法に照らしてもうやめるべき時だ。そして、④については、日本の農業は高品質化とブランド化で乗り切り、現在では(既に海外移転済の)製造業よりも輸出増が見込まれる。また、⑤についても、法人化して農協から離れてやれる人は既にやっており、食品会社で農業に参入している企業も多いため、20年遅れの現状認識だ。最後に、⑥に至っては、事実を踏まえない人が誹謗中傷するための念仏のような常套句で、これが今回の農協改革の本心であるため、強く対処しなければならない。

(3)TPPについて
 TPPがよいことであるかのように書いている新聞があるため、*3の「TPP交渉 何だったのか国会決議」という記事を紹介しておく。私も、余って困っている米を輸入拡大する必要はなく、国内産の米も転作すべきだと考える。これが、国民から選ばれた国会議員の多数派の意見であり、農業の崩壊は地方創生にも食料自給率にも逆行して、一般市民のためにも国益にもならない。「これを機会に何かが起こるだろう」などという超楽観論があるが、そのような無責任な態度で政策を作るべきではないのだ。

(4)食料自給率と食料自給力の違い及び目標変更の意味について
1)食料自給率とは
 食料自給率とは、国内で消費される食料のうち、国内産で賄われている割合で、以下の種類があるが(ウィキペディア Wikipediaより)、私は、太平洋戦争中ではあるまいし、栄養状態を良好に保てるイ)が必要だと考えている。
イ)品目別自給率:個別の品目毎の自給率で、品目の重量を使用
 国内の生産量(重量ベース)÷国内の消費量(重量ベース)
ロ)総合食料自給率:個別の品目毎ではなく、国の総合的な自給率で、2種類がある
 i)カロリーベースの食料自給率
   国民1人1日当たりの国内生産カロリー÷国民1人1日当たりの供給カロリー
   *供給カロリー=国産供給カロリー+輸入供給カロリー+ロス廃棄カロリー
 ii)生産額ベースの食料自給率
   国内の食料総生産額÷国内で消費する食料の総生産額
   *「生産額=価格×生産量」で品目毎の生産額を算出して合計し、一国の食料生産額を求める。

 しかし、これまでは、カロリーベースの食料自給率しか目標にしておらず、それでも疑問を感じなかったのは、為政者が栄養学について基礎知識もない男性ばかりで「腹いっぱいにさえなればいい」という発想だったからだ。また、「日本は生産額ベースの食料自給率は高い」とも言われるが、それは食料価格が高いからにすぎず、生産額ベースの食料自給率は、健康に生きていけるだけの食料生産を保障する指標ではない。

2)食料自給力とは
 *4-1、*4-2、*4-3に書かれている食料自給力は、「今ある農地などをすべて活用したときの潜在的な生産能力である」と新たに示す食料・農業・農村基本計画に定義するのだそうだ。

 しかし、生産要素は、農地だけではなく、労働力、種子、肥料、機械、資金など多岐にわたり、そのうちのボトルネックになるものが生産量を決めるため、普段から生産していないものを生産しようとしても予定(空想)どおりに生産することなどできない。そのため、食料自給力とは、生産の仕組みを考えない人が、机上で創造した空想上の生産力にすぎないのである。

3)食料自給率から食料自給力への目標変更の意味
 これらの農政変更を行う結果、*4-1、*4-2に書かれているように、農水省が、今後10年の長期指針である「食料・農業・農村基本計画」の見直しに向けた骨子案を示し、世界的な食料不足などの緊急事態に対応できるようにするために、国内農業の潜在的な生産能力を示す指標「食料自給力」を新たにつくる方針を明記しなければならないほど、日本の食料自給率は下がるのである。しかし、これは、(4)2)に記載したとおり、食料安全保障上、慰めにもならない空想上の生産力にすぎない。

 食料安全保障上は、まず国民が健康で豊かに過ごせる品目別自給率100%を目指し、輸出や生産の都合でそうならない場所を正確に把握して、どういう形で代替するのかを一つ一つ検討すべきなのである。本当の食料政策は、そういう具体的な過程を経てのみ作れる筈だ。

 なお、*4-3には、人口減少と高齢化で市場縮小と記載されているが、国民が必要とする食料は農地や生産基盤だけで作れるものではないため、日本及び地球の適正人口も考えなければならないことを、上のグラフを参考に重ねて述べておきたい。

<“農協改革”の経過>
*1-1:http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=32008
(日本農業新聞 2015/2/10) 政府・自民党とJAグループ
 政府・自民党とJA全中は9日、通常国会に関連法案を提出する農協改革の骨格について合意した。公明党も大筋で了承した。単位JAへの監査について、公認会計士による会計監査を義務付け、JA全中の監査部門(JA全国監査機構)を分離して新設する監査法人と、一般の監査法人から選ぶ「選択制」に変更するのが柱。一方、分離後の全中は2019年3月末までに一般社団法人に移行するが、農協法上の付則で代表・総合調整機能などを担うと位置付ける。JAグループの大きな転換点となる。規制改革会議が求めていた准組合員の利用量規制は見送るなど、与党農林幹部による調整で急進的な改革案を一定程度押し戻し、JAグループ側とも歩み寄った。ただ組織変更が焦点となった改革が、政府が目的とする農家所得の向上にどう結びつくのか、農村社会にどのような影響をもたらすのかは不透明さも残す。具体的な法案の策定や国会審議の中で丁寧な説明が求められる。自民党農林幹部が8日に全中の萬歳章会長と会談するなど最終調整。9日に同党農協改革等法案検討プロジェクトチーム(PT、吉川貴盛座長)の会合を開き、改革の骨格を決めた。准組合員の利用量規制の見送りや監査法人への移行の際の配慮など、JAグループの要望が一部取り入れられたことを踏まえ、全中も同日、役員会を開いて受け入れを決めた。今後、自民党と公明党との協議を経て、政府は関連法案を3月中にも提出する見通しだ。改革の骨格では、信用金庫や信用組合などと同条件としてJA批判を避けるため、貯金量200億円以上のJAに公認会計士による会計監査を義務付ける。全中は全国監査機構を分離し、公認会計士法に基づく監査法人を新設。現在は全中の監査が義務付けられている単位JAが、この監査法人か一般の監査法人かを選ぶ「選択制」とする。業務監査はコンサルとみなし、JAが必要に応じて受けるかどうかを判断する。ただ新たな監査法人は、担当者を分けることなどで、同じJAに対して会計監査と業務監査を共に行えるようにする。農協監査士は(1)新たな監査法人で監査業務を行える(2)公認会計士試験に合格した場合は実務経験期間の免除など円滑に資格を取得できる――よう配慮を規定する。だが新たな監査法人をめぐっては、うまく移行できるかどうか事務的な協議が続いている。このため同法人の円滑な設立と業務運営を確保し、JAが負担を増やさずに確実に会計監査を受けられるよう政府が配慮すると規定。課題解決のため農水省や金融庁、全中、日本公認会計士協会による協議の場も設ける。また新制度が機能するかを確認するため、全中が一般社団法人に移行する19年3月末までは、JAが現行の全中監査か公認会計士監査を選べるようにする。政府・自民党は、この間に一部のJAが一般の監査法人の監査を受け、問題がないかを実証する考えだ。全中は19年3月31日までに、一般社団法人に移行する。ただ政府・自民党は、農協法の付則で、JAグループの代表機能や総合調整機能を担うよう位置付ける方針。都道府県の中央会は同日までに、農協法上の連合会に転換し、代表機能や総合調整機能、経営相談、貯金量200億円未満のJAの監査といった業務を行う。全中、都道府県中央会ともに「中央会」の名称は維持する。准組合員の利用量規制は、JAグループや与党内の強い反発を受け、今回は見送った。ただ法律の施行後5年間、正組合員と准組合員の利用実態や農協改革の実行状況を調査。その後規制の在り方をどうするか、あらためて慎重に決定する。吉川座長は同日のPTで「検討の結果、利用量規制が入らないこともあり得る」と語った。
●農協改革の骨格(全文)
 政府・自民党が、9日決定した農協改革の骨格(監査、中央会、准組合員関連)は次の通り。
1、会計監査については、
 農協が信用事業を、イコールフッティング(競争条件の同一化)でないといった批判を受けることなく、安定して継続できるようにするため、信用事業を行う農協(貯金量200億円以上の農協)等については、信金・信組等と同様、公認会計士による会計監査を義務付ける。
〇このため、全国中央会は、全国中央会の内部組織である全国監査機構を外出しして、公認会計士法に基づく監査法人を新設し、農協は当該監査法人または他の監査法人の監査を受けることとなる。
〇なお、当該監査法人は、同一の農協に対して、会計監査と業務監査の両方を行うこと(監査法人内で会計監査チームと業務監査チームを分けることを条件)が可能である。
〇政府は、全国監査機構の外出しによる監査法人の円滑な設立と業務運営が確保でき、農協が負担を増やさずに確実に会計監査を受けられるよう配慮する旨、規定する。
〇政府は、農協監査士について、当該監査法人等における農協に対する監査業務に従事できるように配慮するとともに、公認会計士試験に合格した場合に円滑に公認会計士資格を取得できるように運用上配慮する旨、規定する。
〇政府は、以上のような問題の迅速かつ適切な解決を図るため、関係省庁、日本公認会計士協会および全国中央会による協議の場を設ける旨、規定する。
〇全国中央会の新組織への移行等によりその監査業務が終了する時期までは、新しい会計監査制度への移行のための準備期間として、農協は全国中央会監査か公認会計士監査のいずれかを選べることとする。
2、業務監査(コンサル)については、
 農協の販売力の強化、6次産業化、輸出拡大等を図るために、必要なときに自由にコンサルを選ぶことができるようにするため、農協の任意とする。
3、都道府県中央会については、
(1)新組織は、会員の要請を踏まえた経営相談・監査、会員の意思の代表、会員相互間の総合調整という業務を行うこととする。
(2)2019年3月31日までの間に、農業協同組合連合会に移行する。
(3)移行した農業協同組合連合会は、「農業協同組合中央会」と称することができるように法的な手当てを行う。
(4)都道府県中央会から移行した農業協同組合連合会が、会員の要請を踏まえた監査の事業を行う場合は、農水省令で定める資格を有する者を当該事業に従事させなければならないこととする。
4、全国中央会については、
(1)19年3月31日までの間に、会員の意思の代表、会員相互間の総合調整などを行う一般社団法人に移行する。
(2)移行した一般社団法人は、「農業協同組合中央会」と称することができるように法的な手当てを行う。
5、准組合員の利用量規制のあり方については、直ちには決めず、5年間正組合員および准組合員の利用実態並びに農協改革の実行状況の調査を行い、慎重に決定する。

*1-2:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/154991
(佐賀新聞 2015年2月10日) 「全中なぜ妥協」県内関係者に戸惑い 農協改革案容認
 政府と自民党が9日に骨格を決めた農協改革について、県内の農業関係者に戸惑いが広がった。政府は全国農業協同組合中央会(JA全中)の組織改編による農業の成長産業化を主張するが、農協側は実効性を疑問視する。交渉がヤマ場を迎える環太平洋連携協定(TPP)の反対運動への影響を懸念する声も出ている。「JA全中はなぜ妥協したのだろう」。JA佐賀市中央の木塚公雄組合長は首をかしげ「全中の業務監査があったから農協がつぶれたり、職員が過ちを犯したりしなかった」。公認会計士による外部監査は数百万円負担が増える試算があり、不安も口にした。受け入れの背景に准組合員の事業利用制限の先送りがあるという指摘に、JA伊万里の岩永康則組合長は「全中もここが落としどころと考えたのだろう。ただ、こうした駆け引きをする政府のやり方はどうなのか」。当初は農協事業の分離案も検討されたことから「TPP交渉を控えており、農協の金融共済部門を外資に差し出す懸念がぬぐえた訳ではない」と警戒する。佐賀牛を含めて農畜産物のブランド化、生産コスト削減に努めてきたJAからつ。才田安俊組合長は「農家の所得向上のため、いろいろ取り組んできた。政府は実態を見ているのか」。JAさが組合長でJA佐賀中央会の金原壽秀副会長も「無味乾燥の改革のための改革」と批判。全中が国に意見する「建議」の権限を失う危険性を挙げ「結局、TPPへの異論を封じたいだけではないか。農政運動はこれまで通りできるが、今後の対策を検討したい」と述べた。生産者の受け止め方はさまざま。「今回の改革が農家にどんな影響をもたらすか分からない」と佐賀市のコメ農家(42)。神埼郡吉野ヶ里町の大規模農家(65)は「農協が大きくなり、生産者と距離ができたきらいはある。これを機に農家のための農協という原点に戻り、自ら改革を進めて」と注文した。

*1-3:http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=32852
(日本農業新聞 2015/4/4) 農協法 改正案を国会提出 野党は修正求める構え
 政府は3日、農協法改正案を閣議決定し、国会に提出した。JAの理事構成を見直し、JA事業運営の原則に「農業所得の増大に最大限の配慮をしなければならない」ことを明確化。農協法上の中央会制度は廃止し、JAに公認会計士監査を導入する。国会審議は統一地方選後の5月以降、本格化する見通し。改革の目的とした農業所得の増大につながるのか、監査制度をはじめJAに混乱をもたらさない仕組みにできるのかとの声もあり、国会審議では政府の丁寧な説明が求められそうだ。林芳正農相は同日の閣議後会見で「地域農協が農業者と力を合わせ、有利販売などに全力投球できるような環境を整備するのが目的だ」と述べ、農業の成長産業化につなげる考えを示した。改正案では2019年9月末までに全中は一般社団法人に、都道府県中央会は連合会にそれぞれ移行。JAの理事構成で例外を認めつつ原則、過半数を認定農業者や販売・経営のプロにすることや、全農の株式会社化を可能にする規定を盛り込んだ。一方、民主党は、准組合員を含めた地域社会を支える協同組合としての規定も置く必要があるなどとし政府案の修正を求める構え。維新の党も農協の株式会社化などを進める改革案を出している。中央会の組織変更に伴い、固定資産税などで課税が強化される恐れもある。政府は16年度の税制改正で対応を決める方針で、今後の議論に注視が必要だ。農業委員の公選制廃止など農業委員会法の改正案、農地を所有できる法人の要件緩和などを定める農地法の改正案もそれぞれ閣議決定した。 

<萬歳会長の辞任>
*2-1:http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=32924
(日本農業新聞 2015/4/10) 萬歳会長が辞意 農協法改革案「区切り」に JA全中
 JA全中の萬歳章会長は9日、全中会長を辞任する考えを表明した。農協法改正案の閣議決定を節目に、今後のJAグループの自己改革や新しい全中づくりを新体制で進めるのが適切と判断した。8月の臨時総会で後任会長を決める運びだ。萬歳会長は同日の全中理事会で辞意を表明し、その後の定例会見で明らかにした。政府が農協法改正案を3日に閣議決定したことが退任を決断する「一つの区切り」になったと説明。「自己改革を実践していくため、新会長の下で流れをつくってほしい。前向きな姿勢で結論を出した」と述べた。任期は2017年8月まで残していた。萬歳会長は「一切相談はしていない」と、自らの判断で辞任を決めたことを強調。「この立場(全中会長)になった段階から、いろいろな区切りの中で決断することもあり得ると思っていた」と語った。農協改革や米政策の見直しなどの課題に対応するためにも「力を合わせることが原点だ」と組合員に結集を呼び掛けた。新会長の選出手続きは、5月の全中理事会で正式に決める。萬歳会長はJA新潟みらい会長やJA新潟中央会会長などを務め、11年8月に第13代の全中会長に就任。東日本大震災からの復興を最優先課題に挙げつつ、環太平洋連携協定(TPP)交渉や米の生産調整の見直しなど、農政課題に当たってきた。農協改革の議論が活発化する中で14年8月に会長に再任、JAグループの「自己改革」を取りまとめ、政府・与党との折衝に臨み、今年2月には全中の一般社団化など「経験したことのない組織の大転換」(萬歳会長)が求められる農協改革の骨子に合意した。会見では冨士重夫専務も健康上の理由で退任することを明らかにした。「激動の時代だったが、さまざまな方々に支えられた」と述べた。後任の学経理事候補にJA改革対策部の金井健総括部長を選んだことも報告。新たな執行部体制は5月の臨時総会、理事会で決める。
[解説] 自己改革 実践へ結束を 
 萬歳章会長は辞意の理由を記者から問われ、新たな体制でJA改革の実践に臨むためとの考えを強調、政府・与党による農協改革の結果を受けた引責辞任ではないと説明した。突然の表明はJA関係者を驚かせたが、農業所得増大や地域活性化という命題のため、JAグループは結束して自己改革に臨まなければならない。萬歳会長は、中央会が新たな組織に移行するに当たり、全中を新しい執行体制にすべきだと判断したという。当然のことながら後任の会長は、単位JAのための改革を着実に進める責務を負う。農政改革やTPP交渉といった課題も残っており、停滞は許されない。JAグループは、組合員や地域のための組織であり、その役割を発揮し続けることが重要だ。今年10月には3年に1度のJA全国大会を控え、議案づくりも本格化している。そのために揺らぐことなく、自らの改革に取り組まねばならない。

*2-2:http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=32934
(日本農業新聞 2015/4/10) 全中会長辞意 組織結集し難局に臨め
 JA全中の萬歳章会長が辞意を表明した。農協法改正案が閣議決定され、法案審議に付されることを区切りとした。JAグループは課題山積の渦中にある。農業所得の増大と地域活性化に向けた自己改革に遅滞は許されない。既に10月のJA全国大会に向けた議案作りが始まっている。組合員の負託に応えるため、全中は執行体制を強固なものにし、組織一丸となって難局に臨むべきだ。9日の記者会見で萬歳会長は「組合員のため、新しい中央会の在り方を、新会長の下でつくってほしい」と述べ、後任の会長に自己改革の実現を託した。8月の臨時総会での交代で、任期を2年残しての退任となる。農業、農協の大変革期に、萬歳会長は常に組合員視点で難しいかじ取りをしてきただけに、その労を多としたい。だが、農協法改正の国会審議、大詰めを迎える環太平洋連携協定(TPP)交渉など、組織内外の課題は待ったなしだ。全中専務の5月退任も重なっているだけに、遅滞のない円滑な業務執行を求めたい。何より、緊張感とスピード感を持って、自己改革の実現に取り組んでいかなければならない。萬歳会長は7日に安倍晋三首相と会談した際、政府が改革の柱に掲げる農業所得の増大と地域の活性化を挙げ、これらの実現に向けて「自己改革を精いっぱい、組合員のために進めたい」と決意を示した。安倍首相も「目的は同じだ」と応じたが、問題はその実効性だ。農協法改正案の本格的な国会審議は統一地方選挙後になる見込みだ。組合員の所得向上、地域農業の活性化や地域振興につながる建設的な議論を求めたい。JA監査の公認会計士監査への変更、全中と都道府県中央会の新組織移行など組織改編を通じて、こうした目的が達成できるのかを注視したい。法改正論議と並行して、JAグループの自己改革の取り組みを加速させなければならない。萬歳会長は、次期執行部にも自己改革に果敢に挑戦するよう求めたが、まさにその実践こそが農協の将来を左右することになるだろう。農協改革をめぐっては急進的な改革論が、組合員やJAに混乱や不安を招いた。萬歳会長は、現場の実態を踏まえていない議論に対し、協同組合への理解不足を指摘してきた。JAグループの広報活動が足りなかった反省点もある。グローバル化が進む中で、協同組合セクターはますます重要となってくる。新たな中央会にはその役割と責任を果たしてもらいたい。JAグループが掲げる「食と農を基軸として地域に根差した協同組合」をどう実現していくか。総合事業を展開するJAは組織浮沈の正念場を迎える。全中の果たす役割、使命も重い。萬歳会長が、繰り返し訴えた組合員のための自己改革を組織一丸となって遂行していかなければ未来は開けない。

*2-3:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20150410&ng=DGKKASGH09H2B_Z00C15A4EA2000 (日経新聞 2015.4.10) 「圧力団体」農協の終焉
 農協の幹部にとっても寝耳に水の辞任劇だった。東京・大手町のJAビル37階で9日午前、全中の理事会が開かれた。議題は環太平洋経済連携協定(TPP)や米価問題など。司会は万歳会長だ。開始から1時間余り。議題がつきたところで、万歳氏が突然立ち上がった。「農協法の改正案が閣議決定されたことを区切りに辞任します」。「いま辞任って言わなかったか」。会場が騒然とするなか、万歳氏は無言で部屋を後にした。区切りがついた――。この言葉は、たんに農協法の改正にとどまらない重い意味を持つ。戦後から最近までずっと続いてきた農業と農政の終焉(しゅうえん)だ。全中の行動原理の根っこにあるのが「日本は食料難で、規模の小さい農家がたくさんいる」という終戦直後の農業構造だ。食料供給を錦の御旗に掲げ、組合員の数の力をバックに政治に圧力をかけてきた。旧食糧管理制度時代は財政資金で農家を守るための米価闘争、最近ではTPPへの反対運動がその象徴だ。現実の農業はすでに大きく変質した。日本はまだ食べられるのに捨てられる食品ロスが年に数百万トン出る飽食の国になり、輸入農産物の増加も重なって食品価格が低迷。経営環境の悪化を受け、意欲のある農家は規模を拡大し、法人化して農協から離れていった。これに対応し、農政も「小さくて弱い農家」の保護からの脱皮を模索した。自民党が政権に復帰した後はその流れに拍車がかかった。将来性のある農家に田畑を集める農地バンクを創設し、コメの生産調整(減反)の廃止を決めるなどの手を打った。だが全中は行動パターンを変えられず、社団法人化という形で弱体化に追い込まれた。全中に存在意義がないわけではない。補助金を中心に農業制度は複雑で、変革期にあって今後も様々な見直しが予想される。それをきちんと理解し、約700の地域農協に伝えるなど果たすべき役割は十分にある。古い圧力団体の体質を改め、真に農業に貢献できる組織になれるか。周囲の見方を変えるには全中自らの変革力が問われる。

<TPPについて>
*3:http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=31867
(日本農業新聞 2015/1/31) TPP交渉 何だったのか国会決議
 「国会決議は何だったのか」「聖域を守るのは国民との約束だ」――。政府が環太平洋連携協定(TPP)交渉の日米協議で、ミニマムアクセス(最低輸入機会=MA)の枠外で米国産主食用米の特別輸入枠の新設を検討していることに対し、米価下落に苦しむ米産地からは怒りの声が続出した。さらに米国は牛肉関税の大幅引き下げも要求してきており、国会決議で「聖域」とした米や牛肉を守りきれるのか、現場の不安は募っている。
●米 輸入拡大許されない
 「聖域を守るという、国民との約束ではなかったのか。ばかにされている気持ち。政府にはがっかりだ」と憤るのは、栃木県那珂川町で水稲や稲発酵粗飼料用稲(WCS)など12ヘクタールを経営する古橋晃一さん(46)。2014年産米の価格下落で販売収入は、前年の6割ほどに落ち込んだ。再生産価格を大幅に下回り「生活すら厳しい」。米国のごり押しで輸入米が増えれば「一層の価格下落は間違いない。輸入拡大は許されない」。佐賀県白石町で水稲7ヘクタールを手掛ける田中秀範さん(65)も「妥協は約束違反だ」と怒り心頭だ。国会決議や公約に反するだけでなく、地方創生にも逆行するとして「統一地方選や参院選で反発が出ることになる」とくぎを刺す。輸入拡大の影響は大規模農家ほど大きい。北海道栗山町で水稲105ヘクタールを経営する農業法人・(有)粒里(つぶり)の大西勝博代表(61)は「国が本当に農業を守ろうとしているのか」と問う。低米価に加え円安による資材高も追い打ちをかけ、今でさえ経営は厳しい。「主食用米の輸入枠が拡大されれば、14年産米の価格さえ維持するのは危うい。営農継続はできなくなる」と主張する。岩手県花巻市で、米や小麦などを33ヘクタールで栽培する集落営農組織・鳥喰生産協業組合長の大和章利さん(66)も同様だ。14年産は資材代を払えるか心配になるほど低米価に苦しんだ。政府の農業改革に沿って農地集約や低コスト化などの強い農業づくりを進めても「経営は立ちゆかない」。国会決議の順守を強く求める。ブランド米産地にも激震が走った。新潟県魚沼市のJA北魚沼水稲部会部会長の佐藤清二さん(79)は「どこにこの怒りをぶつけていいのか分からないが、政府の対応はでたらめだ」と怒り心頭だ。生産調整で飼料用米生産を推進しつつも、米国産米の輸入を拡大するのは「明らかに矛盾している」と指摘する。島根県大田市で1集落1農場を実践する農事組合法人百姓天国の事務局長、三島賢三さん(63)は「次世代に稲作を引き継がなくてはいけない大事なときに、なぜ輸入米を増やすのか。所得倍増の政策とは相反する」と政府の姿勢に疑問を投げ掛ける。
●牛肉 米国に市場奪われる
 米国が牛肉関税の大幅引き下げを求めているという一報は、肉牛産地に衝撃をもたらした。「十勝若牛」として乳雄の肉を出荷する北海道清水町の吉田哲郎さん(37)は「JAと協力して切り開いた市場が、安い米国産に奪われかねない」と懸念。赤身肉のおいしさをアピールし、肉質を上げて対抗するしかないが「飼料などコストが上がる中、簡単なことじゃない。このままでは負けてしまう」と不安がる。宮崎県小林市で黒毛和種350頭を肥育する平野文宏さん(41)は「消費者が安価な米国産に走るのではないか」と不安視。現状では国産和牛は輸入牛肉と競合しないと考えるが「輸入拡大に伴い、国産和牛の値まで下がらないか、心配だ」と漏らす。

<食料自給率と食料自給力の違い>
*4-1:http://www3.nhk.or.jp/news/html/20150223/k10015654951000.html
(NHK 2015年2月23日) 「食料自給力」を新たな指標に
 農林水産省は、来月をめどに閣議決定される今後10年の農業政策の方針を示す「基本計画」に、今ある農地などをすべて活用したときの潜在的な生産能力を示す「食料自給力」を新たな指標として設ける方針です。農林水産省は、今後10年の農業政策の方針を示す「食料・農業・農村基本計画」の策定を進めていて、来月をめどに閣議決定したいとしています。新たに示す基本計画には、今ある農地などをすべて活用したときの潜在的な生産能力を、「食料自給力」という新たな指標として設ける方針です。食料自給力は、食料の生産の割合を、栄養バランスを考慮した場合やいも類を中心に作付けした場合など4つのパターンに分けたうえで、それらの食料が最大限生産された場合の数値をカロリーに換算し、それぞれ毎年公表することにしています。農林水産省はこれまで、現状の国産の割合を「食料自給率」として毎年公表していますが、目標を下回る状況が続いています。このため、新年度から食料自給力も合わせて公表することで、食料の安定供給の確保に向けた国民的な議論を深めたいとしています。

*4-2:http://qbiz.jp/article/55884/1/
(西日本新聞 2015年2月13日) 食料自給力の新指標策定へ 農政の長期指針に明記
 農林水産省は13日、新たな農政を検討する審議会の会合を開き、今後10年の長期指針である「食料・農業・農村基本計画」の見直しに向けた骨子案を示した。世界的な食料不足などの緊急事態に対応できるようにするため、国内農業の潜在的な生産能力を示す指標「食料自給力」を新たにつくる方針を明記した。食料安全保障の議論で供給力の目安として新指標を活用する方針。その試算次第では、生産能力を維持するために必要な農地の確保策なども検討課題になりそうだ。2月下旬にも開く次回会合で新計画の原案を議論。政府は審議会の答申を受けて現行計画を5年ぶりに改定し、3月中に閣議決定する予定だ。食料自給力は、国内の農地面積や農業従事者数、農業技術に着目し、これらを最大限使った場合、どれくらいの生産能力があるかを表す指標。新計画では複数の指標を提示する見通しだ。骨子案では、国内で消費する食料を国内産でどの程度賄えているかを示す「食料自給率」に関しても2025年度に向けた目標を設定するとした。現行計画は20年度のカロリーベースの自給率目標を50%と設定したが、13年度で39%と目標との隔たりが大きい点を考慮し、今回は実現可能な目標を設定する方針だ。課題である農業再生に向けては、農地をまとめて意欲的な農家に貸し出す農地中間管理機構を活用し、担い手農家への農地集積を進める。海外需要を取り込むため、農林水産物・食品の輸出を拡大し、農業所得の増大を後押しする。新規就農や企業の参入も推進、農業を活性化していく。このほか、政府が今国会に農協改革の関連法案を提出することに歩調を合わせる形で、農協など農業団体の事業や組織見直しを進めるとした。

*4-3:http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=32207(日本農業新聞2015/2/24)人口減少・高齢化時代の基本計画 市場縮小へ対応が鍵 「自給力」指標を新設
 新たな食料・農業・農村基本計画の3月の決定に向け、議論が大詰めを迎えている。日本の人口が減少局面に入って策定される基本計画となり、生産基盤の弱体化、国内市場の縮小、農村集落の低下という重要課題にどう対応するかが大きな焦点になる。また、食料の潜在的な生産能力を示す「食料自給力」の指標も今回、新設する。基本計画は今後10年の中長期的な農政の方向性を位置付けるものだけに、慎重な議論が求められる。基本計画は5年に1度見直す。食料・農業・農村政策審議会企画部会で議論が続き、3月中に取りまとめる。民主党政権下で策定した現行計画から自公政権に移り、新たな基本計画では米政策改革の実施や担い手への農地集積をはじめとする農政改革を柱に位置付けた。次回の企画部会で原案が示される予定だ。
●担い手集積へ農地バンク
 人口減少と高齢化により担い手不足が深刻化する中、生産基盤の立て直しが急務になっている。このため、新規就農者の確保を進める。法人化を進め、就農だけでなく法人への就職というルートも重視する。ただ、担い手の育成は現実的には簡単でない。今回、構造展望では確保すべき担い手の人数以上に、担い手が農地をカバーしていく割合を高めていくことを重視する方針だ。今年度から動きだした農地中間管理機構(農地集積バンク)は、その大きな手段となる。バンクをフル活用し、担い手への農地集積割合を現状の6割から、今後10年間に8割に高める目標を設定した。農地集積を通じて農作業を効率化し、生産コストも削減していく。政府目標で担い手の米生産費は、現状の全国平均から4割減水準を10年後に実現すると掲げた。こうした取り組みで農家所得の倍増目標にも近づけていく。
●地域の維持に「基幹集落」
 農村では、人口減少・高齢化が都市に先駆けて進み、単独で農地や農業用施設などの資源の維持が困難になってきている。農村の振興には、いかに地域コミュニティーを維持し、農村の資源を守っていくのかが大きな鍵を握る。そこで同省が基本計画に盛り込む柱は大きく二つ。一つが地域コミュニティーを維持ししていくための「集落間のネットワーク化」だ。これは小学校区程度の範囲で、複数集落の中から「基幹集落」を定め、そこに農産物の出荷拠点や加工所などを整備する構想。この基幹集落に周辺集落の農家は通い、農産物を出荷したり6次産業化に取り組んだりする。15年度予算に必要額を計上し、事業に乗り出している。もう一つの柱が、農地や農業用施設といった農村の資源を守るための共同活動を支援する、多面的機能支払制度の着実な推進だ。担い手への農地集積を加速する半面、担い手の負荷も重くなるため、地域で担い手を支えていく重要性も増している。同制度は既に法案化されたが、基本計画の柱に位置付けることによって、予算的にもより安定的に制度運用ができる環境を整える狙いもある。
●需要の創出で輸出に活路
 日本全体の人口減少は、農産物を買ってくれる消費者が減少することも意味する。このため新たな需要の開拓も基本計画の大きな課題だ。経済成長が著しい新興国などへの農林水産物・食品の輸出促進に今まで以上に力を入れる。政府は現在の輸出額6000億円を2020年までに1兆円に増やす目標を掲げており、品目別の輸出拡大戦略を点検しながら達成を目指す。また、6次化による付加価値向上も進める。こうした取り組みで、新しい需要を生み出し、農家の所得向上にもつなげていく考えだ。国内需要の減少は、農政改革の柱である米政策改革の理由にもなった。主食用米の消費が減少する一方、生産が頭打ちの麦・大豆だけでは転作をこなしていくことが難しいと予想され、水田維持のために飼料用米の推進を打ち出した。基本計画には、飼料米、米粉用米、麦、大豆などの転作作物について、水田活用の直接支払交付金などを通じて生産努力目標の「確実な達成」を目指すことを盛り込む方向。財政当局が飼料用米の支援単価を引き下げたい意向を示したことから、基本計画に位置付けることで安定的な財政支援を確実にしたい狙いだ。
●生産基盤強化待ったなし
 新たな基本計画では「食料自給力」を初めて指標化する。「自給力」は、(1)農地・農業用水などの農業資源(2)農業技術(3)農業就業者――の3要素から構成されることから、国内生産基盤そのもののと言っていい。ただ、それぞれの要素とも弱体化が心配されている。農地面積は1960年に607万ヘクタールあったが、2013年には454万ヘクタールとなり25%も減った。荒廃農地も27万ヘクタール(12年)に達している。農業技術を示す生産性は、品目別の10アール当たり収量、畜種別の1頭当たり生産量とも増加傾向が頭打ち状態にある。そして農業者は、219万人のうち65歳以上の高齢者の割合は58%と過半を超え、10年後にはさらに労働力不足が顕在化しそうだ。生産基盤の立て直しは待ったなしで、今回「自給力」に焦点を当てたことは、生産者団体も賛同している。ただ、指標化に向けた議論に入ると、疑問が出始めた。農水省が「生産転換に要する期間は考慮しない」「生産に必要な労働力は確保されている」といった非現実的な前提条件を置くとし、何のための指標なのか分からなくなってきている。生産者団体からは「実際に作物を生産し、食料自給率を高めていくことの軽視につながらないか」との疑念も聞かれる。


PS(2015.4.14追加): *5のように、飼料用米増産を呼び掛けるために農水省幹部が単位JAの組合長を直接訪ねて意見交換するのは誤りだ。その理由は、飼料米への転作は、すでに水田や稲作機械を所有している農家に転作を促すためのものであり、Bestの転作ではないからだ。Bestの転作は、人間の食料向けには、本当に必要であるにもかかわらず足りていない大豆や小麦等への転作であり、家畜飼料の自給率向上が目的であれば、飼料としてBestな作物への転作である。つまり、飼料用米への転作は、それしかできない地域向けのSecond Bestの転作にすぎないため、どこにでもそれを押し付けるべく補助金をつけるのはよくないわけである。

*5:http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=32983
(日本農業新聞 2015/4/14) 飼料米増産へ地方行脚 組合長ら直接訪問 農水省の部課長
 農水省は、飼料用米増産を呼び掛けようと、本省幹部が単位JAの組合長を直接訪ねて意見交換する異例の地方行脚を始めた。産地ごとに飼料用米を作った場合の所得試算を示し、メリットを分かりやすく伝える。6月末までの約3カ月間、米の主産地を重点的に回り、飼料用米の本作化に弾みを付けたい考えだ。2015年産の米価下落の懸念が強まる中、JAグループは主食用米の需給安定の切り札と位置付ける飼料用米を前年比3倍超の60万トンに増やす方針。10年後に10倍に増やす目標を掲げる政府にとって目標達成の成否を占う重要な年となる。同省が展開する地方行脚は「飼料用米推進キャラバン」。米を担当する同省農産部の部課長らが4班を編成、米の主産地や主食用米の過剰作付けが多い産地を中心に回る。より生産者に近いJA組合長から課題を吸い上げるとともに、飼料用米栽培のメリットを直接伝え、円滑な増産につなげる。キャラバンでは、地域ごとに複数JAの組合長に集まってもらい、約2時間意見交換する。14年産で主食用米と飼料用米をそれぞれ作った場合の所得試算を産地ごとに用意して説明。飼料用米の手厚い助成が長続きしないという生産現場の不安解消のため、その生産拡大が閣議決定され、政府全体の方針に格上げされたことも伝える。キャラバンは先週末の青森県を皮切りに始めた。現時点で意見交換を計画するのは17道県の約80JAに上り、さらに増える見通しだ。生産者が作付けを確定する「営農計画書」を国に提出する6月末まで続ける。飼料用米本作化に向けて同省は「とにかく足で稼ぐしかない。ぎりぎりまで徹底してやる」(穀物課)と意気込む。

| 農林漁業::2014.8~2015.10 | 11:48 AM | comments (x) | trackback (x) |
2015.3.3 大塚家具のお家騒動をプラスに解決する方法
   
                        大塚家具の製品

(1)大塚家具創業者一族の経営方針の違いと父娘の大げんか
 *1-1、*1-2のように、家具インテリア大手の大塚家具の創業者、大塚勝久会長(71)と社長の久美子氏が、販売手法をめぐって父娘で対立し、互いに相手に退陣要求していることが、メディアで報道された。親の後を継いだ子が経営方針の違いで親と喧嘩するケースはよくあるが、株主を巻き込み、メディアで報道される大規模なものは初めて見た。

 なお、*1-3では、創業者会長の大塚勝久氏が、「騒動が大きくなれば企業価値が毀損し、会社の存続にかかわる」としたそうだが、実際には、*2のように「株主総会に向けて委任状争奪戦が続いているため、双方の大株主が株式を買い増すのではないかという思惑と、配当利回りに着目した個人などの買いが入って、大塚家具の株価は市場で大幅続伸した」とのことで、私は、メディアで報道された久美子氏自身の話も大きな影響を与えたと考えている。

 大塚勝久氏は、長男で取締役の勝之氏(45)らとともに東京都内で会見に臨み、「(久美子氏が勝久氏らを外す)取締役の選任議案を独断的にまとめた」「悪い子どもを持った」と述べ、同席したほかの幹部も、「(久美子氏は前回社長を務めた2009年からの5年間)業績を残せなかった」と指摘し、勝久氏らは、さらに一族の資産管理会社の株式について久美子氏が虚偽の名義移転をしていたとして、株を返すよう求める民事訴訟を東京地裁に起こしたそうだ。

 大塚勝久氏と久美子氏の対立の理由は、*1-3、*1-4によれば、販売手法をめぐるもので、勝久氏が来店客を会員にして従業員が付き添ってまとめ買いを促す手法を主張しているのに対し、久美子氏は「消費者の購買スタイルは単品買いに変わり、受け付けや接客に客が抵抗を感じているため勝久氏が続けてきた『会員制』などの営業手法を見直す」としている。

(2)これは組織再編(会社分割)でうまく解決する事例だ
 私は、創業者である大塚勝久氏が、これまで会員制で従業員が付き添い、まとめ買いを促す手法で成功したのは、結婚や新築で家具をまとめ買いする需要が多く、高度成長期で資金にもゆとりがあったからであろうと考える。しかし、少子化と低成長経済で少なくなったとはいえ、現在でもそういう需要はあるため、その売り方をなくす必要はないだろう。

 また、久美子氏の「消費者の購買スタイルは単品買いに変わり、受け付けや接客に客が抵抗を感じている」というのも、現在は消費者が多様で、自分のセンスを信じて安くて良いものを比較して買う人も増えたということであり、勝久氏と久美子氏のやり方は、相手にする消費者や購買局面が異なるだけで、デパート、スーパー、インターネット通販の存在が両立するのと同様、両立するものだ。そのため、それぞれを別会社にして、販売する品にあった会社名をつけ、立地場所によって適した店舗を分け、従業員もそれぞれの売り方に適した人を分けて、シナジー効果を出しながらやった方がよいと考える。

 これは、NTTが、本体に固定電話部門を残し、携帯電話部門とインターネット部門を子会社にして外に出したのと同じ組織再編で、現在、私たちは、固定電話、携帯電話、インターネットのいずれも使っているが、NTTグループの事業利益は携帯電話部門が一番上がっていると聞いている。

(3)家具と日本産木材について
 大塚家具のHPを見ると、*3-1のように、大塚家具は、材料として主にシベリア産のタモを使用しているとのことだが、現在、日本は戦後植林した木が伐採期を迎え、政府を先頭にして間伐も進めており、日本産木材を比較的安価に使うことが可能になっている。

 また、林業を再生させるために、日本産木材を使うことが奨励されており、*3-2の大分県日田市の事例や、*3-3の福岡県産材を使った大川家具などは、そのよい事例だ。そして、今後は、他の地域も同様の取り組みを始めると思われるため、ヨーロッパやアジアへの輸出も視野に、どこに輸出しても通用する家具の新製品を開発して販売する子会社も作ればよいと考える。

<父娘の経営方針の違いと大規模なけんか>
*1-1:http://digital.asahi.com/articles/DA3S11600791.html
(朝日新聞 2015年2月14日) 大塚家具会長、取締役退任へ
 家具インテリア大手の大塚家具の創業者、大塚勝久会長(71)が3月に開催予定の株主総会で取締役を退くことが分かった。勝久氏は、長女の久美子氏(46)が社長を解任された昨年7月から社長を兼務したが、久美子氏は今年1月に社長に復帰していた。大塚家具が13日公表した取締役の候補者に、勝久会長の名前がなかった。候補者は取締役会の過半数の賛成で決めたが、勝久氏を含む複数の取締役は賛成しなかったという。広報担当者は「勝久氏と久美子氏に経営方針の違いがあった」と述べた。勝久氏は1969年に実質的な前身である大塚家具センターを設けた。

*1-2:http://digital.asahi.com/articles/DA3S11607014.html
(朝日新聞 2015年2月18日) 大塚家具、お家騒動再び 会長、長女を社長から外す提案
 家具インテリア大手の大塚家具の創業者、大塚勝久会長(71)が、3月開催予定の株主総会に自らを取締役候補とする株主提案をしたことがわかった。長女で現社長の久美子氏(46)を候補者から外し、会社の提案と真っ向から対立している。勝久氏が提案した取締役の候補者には長男の勝之取締役(45)の名前もある。大塚家具は「経営を再び混乱させる」として17日に反対意見を発表した。勝久氏は創業以来、来店客に名前や住所を登録してもらって接客する「会員制」を販売手法の中心にすえてきた。業績不振を受けて、これを変えようとした久美子氏と勝久氏が対立。社長だった久美子氏は昨年7月に解任されたが、今年1月に復帰している。勝久氏は昨年6月末時点で株式の約18%を握り、株主総会で委任状争奪戦になる可能性もありそうだ。

*1-3:http://digital.asahi.com/articles/ASH2T7QZVH2TULFA031.html
(朝日新聞 2015年2月26日) 大塚家具、販売手法めぐり父娘が対立 互いに退陣要求
 創業者会長と長女の社長が対立する家具インテリア大手の大塚家具で、大塚勝久会長(71)が25日夜に記者会見し、勝久氏の退任を求める久美子社長(47)に対し、「騒動が大きくなれば企業価値が毀損(きそん)し、会社の存続にかかわる」と辞任を要求した。3月27日の株主総会に向けて、株主の委任状争奪戦に乗り出す方針だ。勝久氏は、長男で取締役の勝之氏(45)らとともに東京都内で会見に臨んだ。株主総会にあたり、「(久美子氏が勝久氏らを外す)取締役の選任議案を独断的にまとめた」と批判した。「悪い子どもを持った」とも述べた。同席したほかの幹部も、久美子氏が前回社長を務めた2009年からの5年間について「業績を残せなかった」と指摘した。父娘の対立は、消費増税後の需要低迷などで業績が悪化していた2014年7月、会長の勝久氏らが社長の久美子氏を解任し、勝久氏が社長を兼務したことで表面化した。その後、久美子氏は1月28日の取締役会で社長に復帰し、勝久氏は社長の兼務を解かれた。この時の舞台裏について、同席した幹部は25日の会見で「社長の兼務を解く議案が出され、取締役7人のうち4対3で可決された。突然のクーデターだった」と明かした。さらに勝久氏らは、一族の資産管理会社の株式について久美子氏が虚偽の名義移転をしていたとして、株を返すよう求める民事訴訟を25日に東京地裁に起こした。勝久氏と久美子氏は販売手法をめぐり対立。来店客を会員にし、従業員が付き添ってまとめ買いを促す勝久氏の手法に対して、久美子氏は「消費者の購買スタイルは単品買いに変わった」「受け付けや接客に客が抵抗を感じている」と批判する。途中で社長が久美子氏から勝久氏に代わった14年12月期決算が4年ぶりの営業赤字に転落したことで、対立に拍車がかかった。久美子氏側も、勝久氏を取締役から外す議案を株主総会に出す。両者の提案は株主総会にかけられ、委任状争奪戦に向けて両者とも大株主の説得に動くとみられている。有価証券報告書によると、筆頭株主の勝久氏の昨年6月末時点の株式保有比率は18%。米投資ファンドのブランデス・インベストメント・パートナーズも10%以上持つほか、保険会社などが大株主に名を連ねる。久美子氏は26日に記者会見を開く。
     ◇
 大塚家具 本社は東京都江東区。1969年に大塚家具センターとして埼玉県で創業した。店は東京や大阪、名古屋、福岡などに16店。2014年12月期の売上高は555億円、営業損益は4億円の赤字。従業員は1749人。ジャスダック上場。

*1-4:http://digital.asahi.com/articles/ASH2V46BHH2VULFA00H.html
(朝日新聞 2015年2月26日) 大塚家具の父娘対決、久美子社長が会見 「父が損失」
 創業者会長と長女の社長が対立する家具インテリア大手の大塚家具で、大塚久美子社長(47)は26日、対立が表面化後、初めての記者会見を開いた。「創業者から離れなければならない、ぎりぎりのタイミング」と述べて、勝久会長(71)の退任を改めて求めた。
●大塚家具、販売手法めぐり父娘が対立 互いに退陣要求
 途中で社長が久美子氏から勝久氏に代わった2014年12月期は、4年ぶりの営業赤字になった。赤字の責任は久美子氏にあると主張する勝久氏側に対し、久美子氏は会見で「(勝久氏が社長を兼ねた)下期に大きな損失を出した」と反論した。そのうえで久美子氏は、勝久氏が続けてきた「会員制」などの営業手法を見直し、17年12月期の営業利益を19億円まで伸ばす中期経営計画を説明。15年12月期の配当予想は、従来の40円から80円に引き上げた。3月27日に予定される株主総会に向けて両者は委任状争奪戦を展開する。敗れて退任に追い込まれるのは、どちらなのか。勝久氏は自身と妻千代子氏らの保有株20%強を確保したとみられる。一方の久美子氏は、妹の舞子氏が代表を務める大塚家の資産管理会社「ききょう企画」の持つ株式など約10%を押さえたもようだ。ただ、「ききょう企画」の保有株のうち約7%分は久美子氏が違法な手段で支配している、と勝久氏は主張。自身に返すよう求め、民事訴訟を東京地裁に25日付で起こした。久美子氏は経営者にふさわしくないと印象づけることで、委任状争奪戦で優位に立つ狙いもあるようだ。久美子氏は「事実認識に誤りがある」と反論している。大塚家具の大株主には米投資ファンド「ブランデス・インベストメント・パートナーズ」や日本生命保険、東京海上日動火災なども名を連ねており、こうした株主が、社長と会長のいずれの側につくのかも注目されている。勝久氏は26日夜、久美子氏が記者会見したことを踏まえ、「非常に残念。経営を安定化させるため決意を新たにした」とのコメントを発表。委任状争奪戦の勝利に意欲を示した。

<大塚家具の株価続伸>
*2:http://www.nikkei.com/article/DGXLASGD27H52_X20C15A2DTA000/
(日経新聞 2015/2/27) 大塚家具株、連日のストップ高 一時21%上昇
 27日の東京株式市場で大塚家具の株価が大幅続伸した。一時前日比300円(21%)高の1705円と、前日に続き制限値幅の上限(ストップ高)まで買われる場面があった。2015年12月期の年間配当を従来予想より40円多い80円(前期は40円)にすると25日の取引終了後に発表したことが引き続き手掛かりとなっている。大塚家具の経営を巡り、大塚久美子社長と実父で創業者の大塚勝久会長との対立が深まり、3月27日の株主総会に向けて委任状争奪戦が続いている。市場では「双方の大株主が株式を買い増すのではないかという思惑が買いを誘った」(松井証券の窪田朋一郎シニアマーケットアナリスト)との指摘も聞かれた。27日の終値は238円(17%)高の1643円だった。増配発表から2日間で49%上昇したが、予想配当利回りは約4.9%と比較的高く、配当利回りに着目した個人などの買いも入ったとみられている。

<家具と木材について>
*3-1:http://kagu.otsukac.co.jp/contents/ki_no_ohanashi_01_tamo.php
(木のお話 タモのお話) タモの特性・用途
 タモはとても柔軟性があり、歪みが生じにくい木材で曲げ加工に最も適しています。また、野球のバットにも使われるように頑丈さも持ち合わせています。このため多くの椅子やテーブル、キャビネットなどの家具に用いられます。見栄えが良いのに比較的値段が手ごろな点も人気の秘訣のようです。タモの生育地は日本の北海道や中国、樺太やシベリアなどの寒い地域です。大塚のタモは主にシベリア産の[タモアッシュ]と言う品種を使用しています。タモアッシュは乾燥性や加工性も良好で家具はもちろんスポーツ製品、建築造作など多方面にわたって利用されています。美しい木目はとても人気があり、珍重されている木材です。また、板目が高級木材の欅[けやき]と似ていることから日本人に好まれる木材の一つで、高級材と並ぶ美しさを持ち合わせているため、いつの時代も人気が衰えない木材なんです。

*3-2:http://qbiz.jp/article/56670/1/ (西日本新聞 2015年2月26日) 家具ポイント制導入や日田材拡販へ協議会 日田市の新年度事業案
 大分県日田市は2015年度一般会計当初予算案と「地方創生」関連事業を前倒して盛り込んだ14年度一般会計補正予算案を発表した。4月から実施予定の事業の中から、注目の取り組みを紹介する。
   ※    ※   
 基幹産業の林業を活性化させるため、市は3月策定予定の「新しい日田の森林・林業・木材産業振興ビジョン」に基づき、川上(山づくり)から川下(林業・木材産業の振興)まで一体的な施策を展開する。目玉の一つが、日田材の需要拡大を目指した木づかい促進事業(6365万円)だ。日田材を使った住宅の新築やリフォームに対し、条件を満たせば、日田材か日田家具と交換できるポイントをプレゼントする。これまでは日田材の支給だけだった。家具ポイント制の導入は初めて。交換できる家具を紹介したカタログを製作する予定だ。また同事業では「木の香る店舗を増やそう」(市林業振興課)と、店舗の内外装に木を使用するリフォームについても費用の一部を補助することにしているという。日田材ブランド化促進事業(106万円)も目玉だ。中小の製材業者などでつくる「日田材拡販協議会」を発足させ、大手のハウスメーカーなどに日田材を売り込むため、供給量を確保して共同販売できる仕組みづくりを検討してもらう。同事業では木工関係者らでつくる「ひた杉デザイン会議」も創設する。デザイナーやまちづくりに取り組む市民を交え、建築用材以外の活用策を考える。日田材のブランド化を目指し、早ければ今夏にもスタートさせたい考えだ。森林整備では、樹齢45年以上の樹木伐採を促すため、伐採後の植栽や下刈りにかかる費用の補助率を上げるなどして、山林所有者の負担軽減を図る森林整備総合対策事業(1億円)などを盛り込んだ。

*3-3:http://qbiz.jp/article/55713/1/
(西日本新聞 2015年2月12日) 福岡県産材家具の展示会を開催 12日から福岡市で
 福岡県産材を使った家具の展示会が12、13日、福岡市・天神のアクロス福岡である。県産材の利用拡大につなげようと、大川家具関連の組合でつくる大川インテリア振興センターと県が企画。デスクや書棚など約50点を展示するほか、12日には県産材を積極的に採用している栃木県鹿沼市の担当者が講演する。無料。午前10時〜午後5時(13日は午後4時まで)。同センター=0944(87)0035。

| 農林漁業::2014.8~2015.10 | 02:51 PM | comments (x) | trackback (x) |
2015.2.9 農協改革について (2015.2.10に追加あり)
     
    2014.1.4    2015.2.5   2015.2.5 2015.1.14   2014.11.7
    日経新聞     朝日新聞              農業新聞 

(1)農協改革の必要性は何か(私が考える最適解)
 日経新聞は、2015年1月4日、上の左図のようにピラミッド型に農協組織を表現し、①JA全中は3年後に任意団体に転換 ②JA全農は株式会社化 ③都道府県毎の地方中央会は原則5年で任意団体に転換 ④全国700の地域農協の競争促進 を行うべきだとしている。

 しかし、私は、この図から、金融部門の農林中金と保険部門のJA共済連は、他の事業と経理をごっちゃにしてはならないため、中央会の下にあってもよいが、それぞれを別会社にして監査法人の外部監査を受ける必要があると考える。一方、JA全農をどういう形態にするかは、JAが業務をやりやすく、組合員に最大の利益があがるようにすればよいのであり、JA自身が決めるべきことだ。また、協同組合は、組合員が出資者で一番上であるため、この図を逆にした逆三角形が正しい図であり、日経新聞は議論の出発点を誤っている。

 組織で情報が上下左右に正確に伝達され、迅速かつ的確な対応を可能にするためには、なるべくフラットで伝達経路が短い方がよく、適正規模というものもある。そのため、朝日新聞の2015年2月5日の香川県の役割分担事例と比較して考えれば、営農指導等の実業を行っているJA香川県とは別にJA香川中央会とJA全中があるが、JA全中の監査部を監査法人として独立させ、JA全中と各県中央会は合併して、ここに情報提供、経営指導、全国レベルの方針決定のすべてを任せるのがよいと考える。なお、監査は独立性を要するため、監査法人は法律上、経営指導を行うことはできない。その理由は、自分が経営指導したものに不適正意見は書けないため、監査の独立性を害するからである。また、業務についても、外部の人には不確実性が高く何とも言えない場合が多いため、監査法人は業務監査もできない。

 そのため、これまで監査機構で経営指導をしていた農協監査士の多くと公認会計士の何人かはJA中央会に残って内部監査部を作り、内部監査(業務監査を含む)と経営指導に従事することができるよう農協法で定めるのがよいと考える。何故なら、内部監査や業務監査をしっかり行っていれば、組織に規律を持たせる効果があるとともに、外部監査のコストを抑えることができ、多くの外資系企業や日本企業にも内部監査部門はあるからだ。

 また、*1-1、*1-2で、安倍首相が、「①このままでは農業が衰退するから抜本改革を断行する」「②地域農協を主役とし、創意工夫を生かして農業を 成長産業に変える」「③競争力ある農家を育てるには、中央会が持つ指導・監査権の廃止が不可欠」「④JA全中は脇役に徹していただきたい」とされていることについて、①は農業の衰退は製造業重視の国策によるところが大きく農協の責任ではない上、②は地域農協を主役にしさえすれば創意工夫ができるとは思えず、日本全国や国際競争という視野を持つためには③も当たらず、④は真中のグラフのように今までやりにくかったとする地域農協が殆どないことから見て言いがかりのように思われる。そして、全国に700近くある地域農協同士を競争させても国際競争に勝つことはできず、大切なのは地域の特性を活かし、近隣地域は協力し、情報を駆使して、コストダウンとブランド化を進める経営戦略を実行することなのである。

 *1-3に、日経新聞は佐賀県知事選の結果を受け参院自民党で農協改革への慎重論が相次いだと書いているが、農協の力を甘く見すぎているのは、その選挙力だけではなく実行力もである。何故なら、佐賀県の農協には、2005~2009年の私が衆議院議員だった期間、役に立つ最前線の情報を送り続けていたため、日本でも早くから農協のイニシアティブで大規模化によるコストダウンや転作、農産物のブランド化が行われていたからで、よい経営戦略を立てるには、質の良い情報の入手が重要なのだ。

 日本農業新聞は、*1-4のように、「全中の指導・監査権、准組合員制度などの抜本見直しは『農協解体』につながり断じて容認できない」としている。私は、監査については、前述の通り、中央会(全国+都道府県)に内部監査(業務監査を含む)を行う内部監査部を作って、その内部監査を農協法で規定すれば、内部統制がしっかりした組織の外部監査は費用を安くでき、よりよくなると考える。

 また、「①全中監査がJAの経営の自由度を奪っている実態はあるのか」「②公認会計士監査だとなぜ農業所得向上につながるのか」「③准組合員の利用制限は、むしろJA事業の総合力を弱め地域振興に逆行するのではないか」「④JA全農の株式会社化でどの共同経済行為が独占禁止法の違反になるか」のうち、①については、監査は利害関係者に必要な正確さを求めるものであり、大きな不正や過誤を行う自由は奪うが組織には必要なものであり、監査が経営の自由度を奪うという指摘は不適切である。また、②については、農林中金(金融)とJA共済連(保険)を別会社にして監査法人の外部監査を受けることにより、破綻して預金者や共済参加者に損害を与えるのを防ぐことができ、預金者の安心感が増せば預金量も増えるからである。さらに、事業部門である全農や地域農協も、一般監査法人の監査を受けることにより同業他社の管理方法に関する情報を得たり、製造業やサービス業の水準まで管理水準を上げたりすることも可能になる。しかし、③は顧客や組合員構成に国が口を出すのは、農協及び農業にとってマイナスでしかなく、④の独占禁止法違反なら電力会社の地域独占、郵便局の親書配達の独占、航空会社の寡占の方が重要であるにもかかわらず、全農にのみ言うのは変であり、根拠にも乏しい。

 そのため、*1-5の意見もあり、ここに長くは引用しないが、読んでおくべきだ。そして、農業者の所得増大、農業生産の拡大、地域活性化の3つの基本目標に向けて自主自立の協同組合として「農業と地域のために全力を尽くす」とするJAグループの11月6日の「JAグループの自己改革」は重視すべきだ。そのためにも、*1-6の合意は、上述のように対応するのがよいと考える。

 まだ、この文章をブログにアップしないうちに、日経新聞から*1-7の「農協改革 JA全中、受け入れ決定へ 社団法人に転換」という記事が入ったが、JA全中に内部監査(業務監査を含む)、経営指導を行う部門を作り、都道府県毎の地方中央会と合併するという提案に変更はない。このようにして、外部監査と内部監査・経営指導は分けるべきで、中央会は内部監査等の適正な費用を徴収してよいと考える。

    
    2015.2.7農業新聞             2015.2.7  2015.2.9  2015.2.6
                                  日経新聞        農業新聞
(2)農協改革、その他の論点
1)準組合員の制限は、私的組織に対する無用な口出しである
 *3-1のように、朝日新聞が「全国農業協同組合中央会が、農協への監査権を廃止する政府の農協改革案を受け入れる方向で最終調整に入り、准組合員を制限する改革案には反対する」としている。

 しかし、准組合員の制限に関することは、何かを譲るから認めるというような「条件闘争」にすべきものではなく、よそから口出しすべきものでもない。ただ、農林中央金庫や共済保険は、全中の支配下にあっても、組合員や準組合員など加入している人の資産保全のために、それぞれ別会社にして外部監査を受けるべきなのである。

 *3-2の日経新聞にも、「政府は全中が改革を拒んだ場合、農家でない准組合員が農協に大量加入している問題に切り込む姿勢を示していたが、全中も歩み寄ったことで、規制の導入は見送る」と書かれているが、このように関係のないことを交換条件にするなどというのは、人の一生をかけた営業努力をゲームの論理で遊びのように考えており、幼稚すぎて話にならない上、とうてい許されるものではない。

2)全農の株式会社化も自己判断でよい
 *4のように、自民党は1月23日、全国農業協同組合連合会(JA全農)の株式会社化を現時点では見送る方針を表明したそうだが、どういう組織形態で事業を行うかは、政治的に決めるべきではなく、組合員にとって最も使いやすいようにすべきである。そして、経済界との連携は、取引したい企業が全農や目的の農家に取引条件を示してアクセスすればよいのであり、全農の営業形態は全農に任せるべきだ。

 なお、「農業に詳しい人でなければ(監査は)難しいのではないか」という指摘については、日本以外(アメリカ、オーストラリア、ヨーロッパ、その他)では、農業に関する国際会計基準を使っており、通常の監査法人と公認会計士が農業主体の監査を行っていることを付け加えておく。

3)農地に関する権限移譲について
 *5-1、*5-3のように、地方団体が農地転用権限を市町村に移譲するよう求めているが、地方に権限を移譲すれば、どの地域も製造業の誘致や宅地開発を行いたがり、日本全体としては必要以上に転用されて、その結果、必要な農地の確保にも支障が出ると、私も考える。

 また、*5-2の企業の農地取得についても、2009年の農地法改正で、リース方式による農地集積を加速させていくと明確にしているため、私はリース方式で十分だと考える。何故なら、西鉄が悪いわけではないが、一例として、*5-4のように、営農されずに耕作放棄地になれば、結局は不可逆的に市街地や住宅地が広がるからである。しかし、我が国では、人口減、空き家、食料自給率の低さが問題なのだ。

(3)農産品の輸出入とTPPについて
 アベノミクスの第3の矢は、これから需要が伸びるフロンティアの領域で生産を増やすことである。その点、農林漁業は、①これまで製造業ほどには生産性を上げていなかったこと ②世界では人口増で日本の農産物の輸出可能性は大であること ③技術が進歩したこと などから、有力な第3の矢であり、現在の制度でも製造業よりも輸出が伸びているのだ。そのため、*6-1のように、農林水産物や食品の輸出促進などの施策を行うのは有益だが、*6-2のように、日本で余っている米をTPPでアメリカから輸入拡大して備蓄にまわすなど、気配りのない稚拙な外交の尻拭いとして無駄遣いするにもほどがある。

 つまり、アベノミクスの第3の矢である農林水産物の輸出は、TPPの変な妥協でこれまでの努力を台無しにされ、農協や農家の自助努力も政争の具にされ踏みにじられた感があり、情けない限りなのである。

<農協改革の必要性はあるのか>
*1-1:http://digital.asahi.com/articles/DA3S11555227.html
(朝日新聞 2015年1月17日) 首相「全中は脇役に」 全中「組合員は支持」 農協改革めぐり応酬
 安倍晋三首相は16日、成長戦略の目玉に据える農協改革について「このままでは農業が衰退する。抜本改革を断行していく決意だ」と強い意欲を示した。政府の改革案に反対する全国農業協同組合中央会(全中)を名指しで批判。一方、全中側も簡単には引かない姿勢で両者に大きなあつれきが生じている。安倍首相は中東への外遊に出発する直前、羽田空港で「農業を成長産業に変えていく。中央会には脇役に徹していただきたい」と記者団に語った。政権はアベノミクス「第3の矢」として農業などの「岩盤規制」改革を掲げる。競争力のある農家を育てるには、中央会が持つ指導・監査権の廃止が不可欠と考え、26日召集の通常国会に改革関連法案を提出する方針だ。これに対し、全中の万歳章会長は15日の記者会見で「JA監査は農協を支える最も効果的な監査制度で、多くの組合員から支持されている」と主張。さらに「(政府の改革案で)どう農家の所得向上につながるのか説明がつかない」とも批判した。

*1-2:http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=31664
(日本農業新聞 2015/1/17) 「抜本改革断行する」 与党、JAの慎重論けん制 首相
 安倍晋三首相は16日、農協改革について「抜本改革を断行する決意だ」とあらためて強調した。首相官邸主導の急進的な改革に反発する与党やJAグループをけん制する狙いとみられる。ただ、焦点となっているJA全中による監査廃止には問題点が多い。政府と与党による激しい綱引きになるのは避けられない。安倍首相はこの日、農協改革について「抜本改革を断行していく決意だ。地域の農協を主役とし、創意工夫を生かして農業を 成長産業に変えていくため 全力投球できるようにしていきたい」と強調。JA全中について「脇役に徹してもらいたい」とも語った。中東歴訪に先立ち、羽田空港で記者団の取材に語った。政府は農協法改正案を通常国会に提出する方針。官邸側は農協を岩盤規制の象徴とみなして抜本改革にこだわり、特に全中による単位農協の監査権限の廃止を強く迫っている。こうした方針に変わりがないことをあらためて強調した格好で、菅義偉官房長官も同日の会見で「まさに抜本的な改革を行っていく」と語った。西川公也農相も同日の会見で、与党やJAグループとの丁寧な協議を重ねる考えを示した一方で「監査法人、これが非常に望ましい形だ」と述べ、全中の監査権限を廃止し、公認会計士による監査を導入すべきとの考えをあらためて示した。農協改革をめぐっては自民党は来週からプロジェクトチームの会合を集中的に開き、農協法改正案の議論を本格化させる。安倍首相らの発言には与党内の慎重論を抑え込みたい思惑もありそうだが、与党側の反発は依然として強い。全中監査廃止には単協の経済的負担が増すなどの課題が多い上、なぜ廃止するのか目的がはっきりしない。政府は農政の大目標に農業所得向上を掲げるが、「全中監査の廃止がどう農業所得向上に結び付くのか見えない」(自民党農林議員)。これまで政府側から明快な説明はなく、この日も「地域農協が主役となって農業の成長産業化に全力投球できるように」(菅氏)などと抽象論にとどまり、今後の議論で大きな論点の一つになりそうだ。西川農相も、同日の会見で全中の監査権限廃止が農業の所得向上につながる理由を問われたが、明快な説明はなかった。

*1-3:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20150116&ng=DGKKASFS15H5E_V10C15A1PP8000 (日経新聞2015.1.16)農協改革 参院自民に慎重論、統一選での票離れ危惧
 安倍晋三首相が進める農業協同組合(農協)改革を巡り、参院自民党を中心に慎重論が広がってきた。JAグループの推薦候補が与党推薦候補を破った先の佐賀県知事選を踏まえ、4月の統一地方選や来夏の参院選での農業票離れを危惧する声が出ている。自民党は20日から農協法改正案のとりまとめに向けた党内調整を本格化させるが先送り論も浮上している。
◆佐賀敗北「甘く見すぎ」 「しっかり問題意識を持って党の議論に加わらないと禍根を残す」。15日の参院自民党の有志会合では、農協改革への慎重論が相次いだ。「農協改革をやれば統一地方選はぼろ負けする」と、法案とりまとめの先送りを求める意見も出た。参院自民幹部は佐賀県知事選の敗北について「農協の力を甘く見すぎた」と述べ、農協改革を断行する官邸や党執行部の対応を批判した。JAグループは昨年12月の衆院選の公示前、候補者に「JAグループの自己改革案を尊重する」との誓約を求める踏み絵を迫った。党三役経験者の一人は「今後も同じような政治的手法を使ってくるかもしれない」と警戒する。公明党は「色々な声を謙虚に受け止め、今後の対応に生かすことが重要だ」(山口那津男代表)と、性急な改革には距離を置く。一方、官邸サイドは「佐賀県知事選の敗北は影響ない。改革は進める」(首相周辺)と強気だ。首相は26日召集の通常国会を「改革断行国会」と位置づけており、農協改革はその目玉。党内外の反対を受け、修正や先送りをすれば「改革後退」と受け取られかねない。
◆党幹部「必ず通常国会で」 首相に近い稲田朋美自民党政調会長は15日、都内での講演で「農協改革は反対論が多く、党内ではほとんど孤立無援だ」と改革の難しさを吐露しつつも「必ず通常国会で通していきたい」と意気込んだ。農家らに理解を深めてもらうため、稲田氏は17日に地元福井で農協改革の説明会を開く。改革に反対する全国農業協同組合中央会(JA全中)や県中央会を通さず、地域農協などと直接交渉してこの場を設けた。「地域農協の創意工夫を促し販売力を強める」という改革の利点を訴える。農協改革を巡る党内議論は、20日に開く党政調会の作業部会から本格化する。農林族が積極的にかかわる作業部会は2月中の取りまとめを目指し、連日開催する。政府は4月の統一地方選前に農協法改正案を通常国会に提出する方針だ。ただ自民党内には「農家の所得向上策とセットで改革すべきだ」と、予算対応を改革の見返りに求める意見や「改革の一部を参院選後に法案化しては」との声もある。

*1-4:http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=31864
(日本農業新聞 2015/1/31) 農協改革攻防 解体招く法改正許すな
 農協改革の骨格づくりが週をまたぎ最終局面を迎える。論点はまだ多岐にわたり、政府は合理的な説明ができていない。全中の指導・監査権、准組合員制度などの抜本見直しは「農協解体」につながり断じて容認できない。当事者の理解と納得が得られない法改正に正当性はない。政府は結論ありきの態度を改め、JAグループの自己改革を踏まえ、事実と実態に基づき虚心に与党協議に臨むべきだ。農協改革をめぐっては政府の前のめりな姿勢が際立つ。安倍晋三首相自ら予算委員会で、農協法に位置付けられた中央会制度に疑問を示すなど、急進改革に意欲を見せる。2月12日の施政方針演説で、農協改革に切り込む政治姿勢をアピールするため、法改正作業を急いでいるとしかみえない。政府・与党は論点整理を基に、来週中にも決着を図る意向だとされるが、与党内、農業団体の反論を封じ込め、拙速に決めるなら国会、国民軽視と言わざるを得ない。熟議の民主主義と程遠く、農業現場のさらなる不信を招く。この間の与党協議、国会審議でも論点への疑問は解けていない。全中監査がJAの経営の自由度を奪っている実態はあるのか。公認会計士監査だとなぜ農業所得向上につながるのか。准組合員の利用制限は、むしろJA事業の総合力を弱め地域振興に逆行するのではないか。JA全農の株式会社化でどの共同経済行為が独占禁止法の違反になるのか、などだ。JA理事会構成など未消化な重要論点も多く、見切り発車は許されない。政府はこれらの疑問に明解に答えていない。いや根拠がなく答えられないのではないか。全中監査権や准組合員制度に議論を矮小(わいしょう)化するのは、JAグループの一体性を分断し、総合力を弱体化させることで政治的・経済的影響力をそぎ、アグリビジネスや外資による農業市場への一層の参入を促す狙いがあるのではないか。事実、政府の規制改革会議と歩調を合わせるかのように、在日米国商工会議所がJA改革の意見書を提出し、JA金融事業への金融庁規制の適用を求め、員外利用規制、准組合員制度、独禁法適用除外などの見直しを迫っている。安倍政権の成長戦略と規制改革は一体のものである。その典型が准組合員の事業利用制限で、事実上の「信用・共済事業分離」につながる。こうした文脈で農協改革を捉えれば、行き着くところは「農協解体」で、JAグループの金融、共済事業などをグローバル資本市場に差し出すことになるだろう。JAグループはいま、農業者の所得増大と豊かな地域社会づくりを掲げて、自己改革に取り組んでいる。総合事業の展開には、中央会の指導・監査など農協法上の位置付けが欠かせないことを実証し、理解を求める努力も必要だ。JAの特質、事業実態を踏まえ、自己改革に沿った法案づくりを求める。

*1-5:http://www.jacom.or.jp/proposal/proposal/2014/proposal141125-25884.php
【農業・農協改革、その狙いと背景】組合員目線から批判を 規制改革会議の改革論 増田佳昭・滋賀県立大学教授・「地方創生」を担う地域のための農協
  ・地域農業の困難増す「農業者だけの農協」
  ・決して甘くない自治監査
  ・組合員は喜ばない乱暴な改革明らか
 JAグループは11月6日、「JAグループの自己改革」を決定し公表した。農業者の所得増大、農業生産の拡大、地域の活性化の3つの基本目標に向けて自主自立の協同組合として「農業と地域のために全力を尽くす」改革を打ち出した。これに対して政府の規制改革会議は12日「意見」を公表、農協法から中央会規定を削除するなどの提起を行った。規制改革会議の意見はいまだ政府としての方針ではないがその問題点を徹底的に検証する必要がある。今回は滋賀県立大学の増田佳昭教授に緊急に問題点を執筆してもらった。増田教授は農業、農村の実態に生きる「組合員目線」からの検証が重要と説く。
<誰のためにもならない現実離れした形式論>
◆「地方創生」を担う地域のための農協
 11月6日、総合審議会の「中間とりまとめ」を受けて、全国農協中央会は「JAグループの自己改革について」を発表した。12日には規制改革会議が、「農業協同組合の見直しに関する意見」を発表、両者は中央会のあり方を中心に、「ガチで」ぶつかり合う様相だ。焦点は中央会問題に絞られているようにみえるが、農業協同組合のあり方に関する理念の対立は明確である。規制改革会議(いや農水省というべきか)は、農業協同組合を「農業者の組合」に純化する方向で大幅な制度の「刈り込み」を志向しているようだ。准組合員の利用率制限しかり、信用・共済事業分離しかりである。これに対して、JAグループの描く農協の姿は「食と農を基軸として地域に根ざした協同組合」であり、その姿勢は「農業と地域のために全力を尽くす」である。いま、存亡の危機にある「地域」のために、農業者、組合員とともに役に立つ存在になろうというわけである。この点では、客観的にみてもJAグループに理があると思う。高齢化と人口減少の本格化で、地方の経済、社会は息も絶え絶えである。政府でさえ「まち・ひと・しごと」、「だれもが安心して暮らすことができる地域づくり」を掲げて、「地方創生」に取り組まざるをえない今日である。これまで、農村地域に多様な組合員組織を重層的に持ち、ライフライン的店舗を構え、地域の福祉や文化、仕事づくりに実績を上げてきた農協から非農業分野を切り離してしまって、いったい誰が現場の「地方創生」を担うのだろうか。規制改革会議答申は「生協」や「社会医療法人」への移行をあげているが、いかにも官僚的形式論である。そもそも、農業はそれぞれの地域の社会や経済と密接な関係を持っている。だからこそ、1999年の食料・農業・農村基本法は、従来の「農業」の枠を拡大し、「農業者を含めた地域住民の生活の場で農業が営まれていることにより、農業の持続的な発展の基盤たる役割を果たしている」として、「農業の生産条件の整備、生活環境の整備その他の福祉の向上」という「農村振興」の課題を掲げたのである。そうした基本法の理念や方向に対して、いま進められようとしている農協法の農業純化志向がいかにずれていることか。
◆地域農業の困難増す「農業者だけの農協」
 それでは、農水省の考える農協の農業純化の先に、輝ける日本農業の姿が描けるのだろうか。正直に言えば、他国に比べても大幅に見劣りする現下の農業政策の下で明るい未来など描きようもない。「農業・農村所得倍増」、「輸出倍増」だのと威勢のいい言葉が並べ立てられるその下で、日々の農業経営の存立に必死に努力しているのが大多数の農業者の実情だ。農業協同組合のもともとの姿は、そうした農業経営が力を合わせて自らを防衛するためにつくったいわば自主的な「自衛組織」である。そんな自衛組織に対して、「しっかり儲けて利益を組合員に還元しなさい」などとお説教するのは、そもそも間違っているのである。ましてや、農業政策の責任を放棄し、農業がうまくいかないのは農業者と農協が努力しないからだとばかりに、責任を農協に押しつけるなど、為政者として恥を知るべきであろう。そもそも、農水省は農協の構成員を農業者に絞り込み、いったい何を農協にやらせようというのだろうか。そのような新しい農協に結集する農業者に助成を集中しようというのだろうか。あるいは「農業者の農協」に対して何らかの優遇措置を講じようというのだろうか。いや、昨今の農政を見れば、そんなことはとてもありえないだろう。 とすれば、農業純化した農協に対して、あとは勝手にやりなさいとばかりに、これまた「自助努力」を促すだけではないのか。何のことはない、農協法第1条の目的をたてに、農協組織と事業を「刈り込む」だけの形式論理の「改革」に終始するのではないか。農協の組合員を農業者に絞り込んだからといって、農業者組合員は喜ばないし、現在農協未利用の法人等が喜んで農協を利用するとも思えない。農業者組合員にとっては、准組合員利用制限と信共事業分離で専門農協化した経営基盤薄弱な農協経営を押しつけられることになり、営農指導事業の弱体化も明らかだ。そんな農協を組合員は望むのだろうか。現に農協を利用している農業者組合員が本当に求めているのは何か。それは、農業者組合員が抱えている営農上の課題にしっかりと応えてくれる農協だ。それは「農業者の組合」に純化したからできるというものではない。それぞれの農協が組合員とともにしっかりと考え、努力するべきことなのである。為政者が描く「農業者だけの農協」では、むしろ農業者の困難が増すと考えるべきだ。組合員の期待には、農業者の経営を守るための政策、制度要求も当然含まれる。米価暴落、乳価はじめ各種農産物価格の低迷、それらに対して、個々の農業者ができることは限られている。力を合わせて制度環境の改善を求めることは、大事なことだし当然のことだ。中央会組織の解体、連合組織否定の単協主体論、農協組織解体論は、本来必要な農業者の政治力を決定的に弱めることになるだろう。
◆決して甘くない自治監査
 中央会監査についてふれておきたい。中央会による監査は独立性を欠くとか、真の意味での外部監査といえないというのだが、本当にそうだろうか。グループ自治としておこなわれる中央会監査において、もしも身内に甘い監査をしたならばその影響は中央会のみならずグループ全体の信頼を毀損することになる。その意味で、自治監査は「甘い監査」に対して抑制的にならざるを得ないのである。これに対して規制改革会議が主張する「外部監査」はどうか。外部の会計監査人は市場に多数存在しており、会社はそれらを自由に選択することができる。さらに、会計監査人は監査対象から監査報酬を得るのであるから、完全な第三者として監査に臨むわけではない。会社側は厳しい指摘をしない監査人を選任し、監査人は来年度の契約を得るために、監査に手心を加えるという可能性は存在する。外部監査だから独立性を有するというのも、これまた形式論理なのである。ドイツ協同組合法においても、協同組合への監査連合会による監査の義務づけを一時廃止したことがあるが、その際に連合会監査を受けない「野生の協同組合」の経営破綻が頻発し、再び協同組合の監査連合会への強制加入を復活させて現在に至っている(多木誠一郎『協同組合における外部監査の研究』)。中央会監査は、協同組合という特質を踏まえて会計のみならず組織運営にまで及び広範な監査が可能である。しかも、単協に中央会監査を義務づけることで、中央会は単年度契約の外部監査人と違って、安定的な立場で組合に適切な監査を実施することが可能なのである。それに加えて、平成8年の農協法改正ですでに公認会計士による中央会監査への関与が法定化されており、公認会計士が中央会監査に関わる方式が作られている。これまでの法改正経過や実際の監査の現実に目をつぶって、何が何でも中央会監査を否定しようというのは、乱暴な議論だろう。
◆組合員は喜ばない乱暴な改革明らか
 規制改革会議の主張を一言で表せば、空虚な形式論理の羅列である。農業純化論自体も農協法第1条から形式的に導かれたものであって、実際の農協の姿や地域のニーズといった現実から乖離した観念的な形式論理である。また、上述のように外部監査の絶対視も形式論理に過ぎない。さらに、今回の中央会解体論の根拠となっている「単位農協の自由な活動を促進するため」という大義名分さえも現実離れした形式論理である。単協の自由な活動を保障するために、中央会を農協法から削除し、「単協が自主的に組織する純粋な民間組織」にし、「全中監査の義務づけを廃止」するというのだが、実情を知る立場からいえば、中央会がそれほどの統制力を有しているか、大いに疑問である。中央会の存在ゆえに単協が自由に活動できないなどというのは、ほとんど虚構に近い。かりに中央会に統制力があるとしても、その統制力の根源は監督官庁による統制であり、中央会はその代位、代行が中心である。規制改革をいうなら、事細かに口を出してきた監督官庁のそれを問題視すべきだとの意見もむべなるかなである。はっきり言って、今回の規制改革会議の農協改革論は、担い手農業者も含めて、組合員が喜ぶような改革でないことは明らかである。いわば農協批判者による農協批判者のための改革論でしかない。何よりも組合員目線で、この乱暴な改革案を批判していく必要があるだろう。

*1-6:http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=31988
(日本農業新聞 2015/2/8) 農協改革で最終調整 政府・自民
 農協改革をめぐり、政府・自民党は8日、JA全中の萬歳章会長と東京都内で会談するなどし、法制度の骨格づくりに向けて最終調整した。関係者によると、准組合員の事業利用規制の導入については、今回は見送る方向が固まった。全中の監査部門(JA全国監査機構)を分離して公認会計士法に基づく監査法人を新設する案などでは調整が続いているもようだ。全中は9日に理事会を開き、対応を協議する。自民党は9日に農協改革等法案検討プロジェクトチーム(PT、吉川貴盛座長)の会合を開き、法制度の骨格案について了承を得たい考えだ。

*1-7:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20150209&ng=DGKKZO82976590Z00C15A2MM0000 (日経新聞 2015.2.9)農協改革 JA全中、受け入れ決定へ 社団法人に転換
 安倍晋三首相が意欲を示す農業協同組合(農協)改革を巡り、政府・自民党と全国農業協同組合中央会(JA全中)の折衝が大筋で決着した。全国約700の地域農協に対するJA全中の監査・指導権を廃止し、2019年3月末までに一般社団法人に転換する。JA全中は9日午後の理事会で正式に受け入れを決める見通しだ。自民党の農林関係議員とJA全中の万歳章会長、農林水産省幹部が8日夜に都内で会談。万歳会長は政府の改革案を大筋で受け入れる考えを伝えた。自民党は9日午後、全所属議員が参加できる農林部会など合同会議を開く。谷垣禎一幹事長や稲田朋美政調会長も出席して最終的な党内手続きを進め、同日中にも了承する。公明党も9日にも容認する運びだ。首相は12日に予定する国会での施政方針演説で、農協改革案の骨格を表明する。政府は今国会に改革案を明記した農協法改正案を提出する。目玉は地域農協の自立に向けてJA全中の監査・指導権をなくすことだ。JA全中が一般社団法人になる19年3月末までは地域農協は試行的に公認会計士の監査も受けられるようにし、同年4月以降は全中の監査部門を監査法人として分離し公認会計士による外部監査に一本化する。地域農協は民間の監査法人と、JA全中を母体とする監査法人から選ぶようになる。法案には全中が一般社団法人になった後も地域農協の総合調整を担うと付則に盛り込む。農協の間の連絡や調整業務を担う点が盛り込まれる。

<JAの自己改革案>
*2:http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=30667 (日本農業新聞 2014/11/7)JAグループの自己改革具体策 中央会、農協法措置を 監査などに機能集約
 JA全中は6日の理事会で、JAグループ自己改革の具体策を決めた。農業者の所得増大と農業生産の拡大、地域の活性化を基本目標に据えた。中央会制度では、JAの自由な挑戦を後押しするよう機能を経営相談・監査など三つに集約し、この機能を責任を持って発揮するには「農協法上に措置することが必要」と明記した。JA改革では、担い手育成などを進める1000億円規模の支援策の創設を打ち出した。自らの改革とするため8月に全中会長の諮問機関、総合審議会で議論を開始。10月24日の中間取りまとめを踏まえて決めた。与党は年内に農協法改正案を取りまとめるもよう。JAグループはこれを基に政府・与党に働きかける。自己改革は中央会制度について、JAの定款を一律的に規制する模範定款例など農協法上の統制的な権限を廃止し、JAの意思で地方や全国段階に中央会を設置できる制度にすることを提起した。新たな中央会の機能として、JAの創意工夫を支えて経営相談や健全経営を保つための「経営相談・監査」、意見を取りまとめるなどの「代表機能」、JA間や連合会間の連絡・調整などの「総合調整機能」の三つに集約する。JA改革をめぐって、農家を支える職能組合とともに、地域社会を支える地域組合としての役割も発揮する考えを示した。こうした役割の農協法上への位置づけを検討するよう提案した。販売・購買事業は、組合員の多様な要望に応える方式に転換する。JAの業務執行体制の強化に向け、農業法人や若手、女性農家らの理事を増やしたり、販売や経営の専門家を事業に生かしたりすることも盛り込んだ。
●担い手育成へ1000億円
 全国連によるJA支援として「農業所得増大・地域活性化応援プログラム」を創設する。2018年度までの5年間で事業費は1000億円規模。JAが担い手に対して行う農機リース事業や経営相談、就農希望者を受け入れる農家への助成などに活用する。全農の株式会社化に ついては「会員総代の合意形成が前提」とした上で独禁法の適用除外が外れた場合の影響などを引き続き検討するとした。JA中央会・全国機関会長会議は同日、JAグループの自己改革の実現に向け決議した。
●必ずやり遂げる 全中会長
 JA全中の萬歳章会長は6日に開いた記者会見で、JAグループの「自己改革」について「自主自立の協同組合組織であるJAが、自らの組織改革を自らの手で必ずやり遂げる強い決意でまとめた」と強調した。「自己改革」を基に政府、与党へ働きかけ、農協法改正への意思反映を目指す考えも述べた。萬歳会長は、政府が農協改革の推進を含む規制改革実施計画の中で、JA系統の検討内容も踏まえるとしていることを指摘。「われわれの思いに理解を求めていく」と今後、政府、与党への働きかけに注力する考えを強調した。今後の対応では、「自己改革」を踏まえた政府、与党側の方針を受けて、全中会長の諮問機関である総合審議会を再開させる。審議会でさらなる課題などを検討し、今年度内に答申し、「自己改革」の改訂やその具体化につなげるとした。会見にはJA全農の中野吉實会長、JA共済連の市村幸太郎会長、農林中金の河野良雄理事長も出席した。

<準組合員制限は、無用な口出し>
*3-1:http://digital.asahi.com/articles/DA3S11590501.html?_requesturl=articles%2FDA3S11590501.html&iref=comkiji_txt_end_s_kjid_DA3S11590501
(朝日新聞 2015年2月7日) 全中、監査権廃止容認へ 准組合員制限には反対 農協改革
 農協グループの司令塔である全国農業協同組合中央会(全中)は、農協への監査権を廃止する政府の農協改革案を受け入れる方向で最終調整に入った。農協の収益源である金融事業を守るため、農家ではない組合員(准組合員)を制限する改革案には反対する。週明けの決着をめざし、「条件闘争」に転換する。全中の万歳章会長は6日、自民党の農林関係の幹部議員らと会い、事務的に詰めるべき点を伝えた。事実上の方針転換だ。関係者によると、全中、全国農業協同組合連合会(全農)や農林中央金庫など、主要グループの首脳が集まった5日の会議で、全中の監査権の廃止は受け入れる代わり、組合員の利用条件などについては見直さないよう求める意見が多く出た。その後の都道府県代表者の会議で、全中幹部が「全中の監査権を維持するか、准組合員の利用制限を選ぶかを政府・与党が迫っている」と説明したのに対し「利用制限だけは避けるべきだ」との意見が多数を占めた。全中の法的位置づけなどについてはほとんど議論にならなかったという。准組合員は、住宅・自動車ローンや共済(保険)といった金融事業を利用する農家ではない組合員。農協がある地域に住んだり、働いていたりして、3千~1万円程度の出資金を払えば、准組合員としてサービスを利用できる。2012年度で農家である正組合員が461万人いるのに対し、准組合員は536万人にのぼる。全国の農協の事業総利益(約1兆9千億円)の7割近くを金融事業が占める。准組合員の資格が厳しくなると、ローンなどの利用が抑えられ、収益状況が大幅に悪化する可能性が高い。政府・与党と全中は週末も調整し、10日には農協改革案を決着させたい考え。全中は5年かけて一般社団法人になる公算が大きい。

*3-2:http://www.nikkei.com/article/DGXLASFK08H0N_Y5A200C1000000/?dg=1
(日経新聞 2015/2/8) 農協改革、大筋決着 JA全中が政府案容認
 全国約700の地域農協の競争と創意工夫を促す農協改革を巡り、政府・自民党と全国農業協同組合中央会(JA全中)の折衝が8日夜、大筋決着したことがわかった。地域農協を束ねるJA全中の監査・指導権をなくし、2019年3月末までに一般社団法人に転換する。1954年に始まった中央会制度をほぼ60年ぶりに見直し、地域農協の自立につなげる。自民党の農林系議員とJA全中の万歳章会長、農林水産省幹部が8日夜、都内のホテルで会談した。万歳会長は政府の改革案を大筋受け入れる考えを表明。9日午後に全中幹部が集まり、正式決定する段取りも示した。政府はいまの国会に農業協同組合法改正案を提出し、JA全中の監査・指導権をなくす。2019年3月末までに一般社団法人に移行させる。全中の統制をなくし、地域農協の組合長が経営感覚を磨き、競い合って生産性を高めるように促したい考え。JA全中は農協改革に反対の構えだった。だが、一般社団法人に転換した後も、農協法の付則に全中の役割を明記する譲歩案を政府側が示し、受け入れた。農協の間の連絡や調整業務を担う点が盛り込まれる。地域農協への事実上の統制につながらないか、注目点になりそうだ。全中が一般社団法人になると地域農協への監査権限がなくなり、全中の監査部門は新たに監査法人として再出発する。地域農協は既存の監査法人か全中を母体とする監査法人を選べるようになる。政府は全中が改革を拒んだ場合、農家でない「准組合員」が農協に大量加入している問題に切り込む姿勢を示していたが、全中も歩み寄ったことで、規制の導入は見送る。

<全農の株式会社化も不要>
*4:http://qbiz.jp/article/54394/1/
(西日本新聞 2015年1月23日) JA全農の株式会社化見送り表明 自民会合、対立鮮明
 自民党は23日、農協改革を議論する会合を開き、農協グループから意見を聞いた。全国農業協同組合連合会(JA全農)は、焦点の株式会社化を現時点では見送る方針を表明した。20日から続いた会合では、農協改革をめぐり推進派と慎重派の溝が一段と鮮明になった。自民党は来週も会合を開き、農業者へのヒアリングを実施。最大の論点である地域農協に対する全国農業協同組合中央会(JA全中)の監査について議論する。政府は2月上旬にも関連法改正案の骨格を固める考えだ。農産物の販売を手掛けるJA全農の在り方では、与党が昨年6月に経済界との連携をしやすくするよう、現在の協同組合組織から株式会社に転換できるよう法律を整備する方針を打ち出した。しかしJA全農は、企業との提携などに関して「現組織でもかなりの部分の対応が可能だ」として、当面は株式会社に転換しないとの考えを示した。出席議員からは「営業力強化のために株式会社になるべきだ」との発言があった。一方で「株式会社になってしまったら(特定組合員のための組織という)協同組合の論理が否定される」と反対する意見も出た。4日間続いた議論では、JA全中による農協監査をめぐり賛否が激突した。「現行監査が優れているのなら(公認会計士監査を導入して)自由にしても選ばれる」として、JA全中の監査を義務付けるのをやめるべきだとの声が上がった。だが「農業に詳しい人でなければ難しいのではないか」と、制度の維持を求める意見も多かった。JA全中の万歳章会長も「改革の真の目的は何なのか、現場で混乱が生じている」と強気の姿勢を崩さなかった。一方、農家でなくても農協事業を自由に活用できる准組合員の利用規制に関しては、23日の会合でも「正組合員だけでは経営を維持できない」といった慎重な意見が相次いだ。

<農地権限移譲について>
*5-1:http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=30431
(日本農業新聞 2014/10/24) 農地権限移譲に慎重 総量確保で影響懸念 地方6団体と農相面会
 農地に関する権限の地方移譲をめぐり、西川公也農相は23日、東京・霞が関の農水省で全国知事会など地方6団体の代表と面会した。地方団体側は転用権限を市町村に移譲するよう求めたが、西川農相は必要な農地確保に支障が出る懸念があることから慎重に対応する考えを伝えた。政府は年内に結論を出す方針で、同省と地方団体側の綱引きは今後、さらに激しくなりそうだ。農地制度見直しについて、政府は昨年12月に方針を閣議決定した。2009年の改正農地法付則に沿い、14年をめどに地方分権と農地確保の観点から検討し、必要な措置を講じるとし、内閣府の専門家部会が議論を重ねている。総合的な街づくりの中で農地を商業向けなどにも開発したい地方6団体は、4ヘクタール超は農相としている農地転用の許可権限を市町村に移譲するよう要望。国が設定する農地総量確保目標を市町村が決める仕組みに見直すことも求めている。農水省は農地総量確保目標については、より市町村の意向をくんで設定する仕組みに見直す方針。ただ、農地転用の許可権限移譲は、地元の地権者や進出企業の意向の影響を受けにくい国や都道府県が判断する必要があるとして慎重で、議論の焦点となっている。この日、西川農相と面会した全国知事会の鈴木英敬三重県知事、全国市長会の小林眞青森県八戸市長、全国町村会の杉本博文福井県池田町長は、全国6団体の要望への理解を求めた。西川農相は「原則は昨年12月の閣議決定で進んでいかざるを得ない」と強調。閣議決定にある農地確保の観点から、転用権限移譲などには慎重に対応する考えを示した。一方で農村での6次産業化を促進するための農地転用には柔軟に対応したい意向も示した。食品産業などを念頭に、税制面などで優遇措置を講じる農村地域工業導入促進法や工業再配置法を活用して「周辺産業を農村に呼び込みたいといま検討している」と述べた。

*5-2:http://image.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=29055
(日本農業新聞 2014/7/31) [規制改革の論点 11] 法人(2)要件再検討 企業農地取得慎重に
 政府の規制改革実施計画では、農業生産法人の見直しで今回見送った要件緩和などについて、あらためて検討することを明記した。企業の農地取得をめぐる議論が再燃する恐れがある。今回の政府決定で、企業の農地取得は認めなかった。2009年の農地法改正で、リース方式による農地集積を加速させていくと明確にしているからだ。今年度に創設した農地中間管理機構もリース方式を土台にしており、安倍政権もこの方向性を踏襲、発展させている。ただ、経済界などからは企業の農地取得にこだわる声が依然強い。規制改革会議の農業ワーキング・グループが5月に打ち出した提案では、リース方式で参入した企業を念頭に、農業生産を継続している実績が一定あれば、農地を所有できる農業生産法人になれるようにすべきだと求めていた。産業競争力会議の農業分科会も4月の提案で「新しい農地改革」が今後の農政改革の最重点事項だと指摘。「企業がより集積した農地を取得しやすいような制度的枠組みを構築」する必要性を強調している。規制改革実施計画では、農地中間管理機構法の5年後見直しに合わせ、一層の農業生産法人要件の緩和や農地制度の見直しを検討、結論を得るとした。企業の農地取得には、撤退や転用で農地が耕作放棄や産廃置き場にされる懸念を払拭(ふっしょく)できないことから、国による農地没収など現状回復手法を確立することが前提だとしている。ただ、リース方式でも最長50年間借りることができる。リースに比べ農地の取得代金は高くつき、農業分科会の新浪剛史主査自ら「企業が農地を保有すると資本効率が低くなる」と認める。農地取得でなければならないとする理由には疑問が残るだけに、5年後見直しでも極めて慎重な検討が求められる。

*5-3:http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=31651
(日本農業新聞 2015/1/16) 対応方針、月内閣議決定へ 農地制度は保留 地方分権会議
 政府は15日、地方分権改革有識者会議に分権改革の対応方針案を示し、了承された。与党との調整を経て1月中の閣議決定を目指す。法改正が必要なものについては26日召集の通常国会に一括法案を提出する。ただ、全国知事会など地方6団体が強く要望していた農地制度に関する権限委譲への対応は、農水省と折衝中だとして示さなかった。今後、同会議の下に設置した農地・農村部会で結論を出し、閣議決定までに方針案に加える。現行の農地制度では、4ヘクタールを超える農地転用には農相の許可を要し、2ヘクタール超4ヘクタール以下は農相との協議が必要。地方6団体は、許可権限の市町村への移譲や農相との協議廃止を強く求めているが、農水省は、食料の安定供給を担う立場から権限委譲に慎重で、調整が難航している。会議では、富山市の森雅志市長が「農地制度の見直しは『まち・ひと・しごと創生』のための地方分権改革の最重要課題だ」として地方6団体の要望実現を求める意見を提出。鳥取県の平井伸治知事や愛媛県松前町の白石勝也町長らも同様の要求をしたという。この日示した対応方針案には、保安林の指定・解除権限の都道府県への一部移譲や、農業委員の公選制の廃止など、農林水産業関連で約40の案件への対応を盛り込んだ。農家レストランの農用地区域内への設置については「(規制改革を先行して行う)国家戦略特区制度の下で、可能な限り速やかに効果を検証し、全国適用を検討する」とした。また、これらを含め全国の自治体から寄せられた提案への対応結果を公表した。535件の提案のうち、実現・対応できるとしたのは15日時点で283件(52.9%)だった。

*5-4:http://qbiz.jp/article/52980/1/
(西日本新聞 2015年1月3日) 西鉄、耕作放棄地に住宅団地 大牟田線沿線で開発事業
 西日本鉄道(福岡市)が、福岡県の天神大牟田線沿線にある耕作放棄地の宅地開発事業に乗り出すことが分かった。営農されずに荒廃が進む土地に一戸建て住宅の団地を建設し、周囲の環境保全と沿線のにぎわい創出を目指す。農地所有者の要請を受け、宅地への転用手続きから販売まで一貫して手掛ける。農林水産省などによると、放棄地から住宅団地を開発する事業は全国的にも珍しい。福岡市・天神と福岡県大牟田市を結ぶ大牟田線(95・1キロ)の沿線で、住宅地としての人気が高い筑紫野、太宰府、小郡の3市の水田地帯などが候補地。農地として今後利用される見通しが乏しい中小規模の土地を複数の所有者から購入し、これらをまとめて50戸(1万5千平方メートル)から500戸(15万平方メートル)の住宅団地開発を目指す。農地法などで定められた転用の法的手続きや地元との協議・調整、宅地造成、住宅建設、販売などを一貫して担う。地元自治体や周辺住民と道路や公園などの整備計画についても協議し、県知事の許可を得て開発する。すでに地元不動産業者から放棄地の情報提供を受ける体制を整えた。第1弾となるのは、3市内にあるかつての水田約3万平方メートルに100戸程度の住宅団地を造成する事業。所有者十数人から相談を受け、地元自治体などと農地転用に向けた協議を進める。2015年度に造成工事に着手、16年度に区画販売を始める計画だ。西鉄はこれまで一戸建て宅地約1万2千区画を販売してきた。耕作放棄地の宅地開発は「通常の開発より時間と労力がかかり利益は少なくなるが、地元に根ざした鉄道会社にしかできない事業だ」(幹部)としており、今後5年以内に5カ所程度の開発を目指す。耕作放棄地は全国で増加し、都市部でも深刻化。病害虫や鳥獣害の発生、廃棄物不法投棄、火災発生などで周辺住民にも悪影響を与える恐れがある。中村学園大の甲斐諭学長(農業経済学)は「大牟田線沿線は農家ではない土地持ちが多い。また、米価下落で経済的にも営農が厳しくなっている」と指摘。放棄地の宅地化は「人口が過密になる福岡市だけでなく、沿線の街の発展にもつながるので意義がある」と評価している。

<農産品の輸出入とTPPについて>
*6-1:http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=31652
(日本農業新聞 2015/1/16) 検疫協議を加速へ 重点品目中心に輸出促進 農水省
 農水省は15日、攻めの農林水産業実行本部の第4回会合を開いた。2014年度補正予算案、15年度予算案が閣議決定されたことを受け、農林水産物・食品の輸出促進など攻めの農林水産業の施策を実行し加速させる。輸出解禁に向けた各国との動植物検疫協議については、同省の国別品目別輸出戦略に位置付けられた重点国・品目を中心に加速させることを確認した。政府は20年までに輸出額を1兆円に増やす目標を立てており、輸出の壁になっている検疫問題の解決が課題だ。会議では、これまでの検疫協議で米国向け温州ミカンやオーストラリア向けブドウ、欧州連合(EU)やインドネシア向け牛肉の輸出が解禁されたと報告。今後はタイ向けかんきつ類、ベトナム向けリンゴ、台湾やオーストラリア 向け牛肉などについて 積極的に検疫協議を進めることを確認した。この他、宮崎、山口両県で鳥インフルエンザが発生したことを受けて、同病のまん延を防止するために、香港やシンガポールなど各国が、発生県や日本全体からの家きん肉・卵の輸入を停止しているとの報告があった。日本はこうした国との検疫協議を行い、輸出再開を目指している。同本部では、政府・与党の「農林水産業・地域の活力創造プラン」を実行に移して、農家所得を向上させる具体策を検討する。本部長を務める西川公也農相は、同日の会議で「それぞれの品目や分野が持つ課題をしっかり議論し、課題解決に向けた施策を整理した上で、農業者の 皆さんに分かる言葉で伝えてほしい」と出席した省幹部に呼び掛けた。

*6-2:http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=31789
(日本農業新聞 2015/1/26) 米輸入拡大を 調製品含め20万トン規模 TPPで米国
 環太平洋連携協定(TPP)交渉の日米協議で、米側が同国産米の輸入拡大を20万トン規模で求めていることが分かった。日本は拒否しているが、国内需給への影響を抑えることを前提に、一定量の輸入を増やす案も検討しているもようだ。だが、米は数万トン程度の需給緩和でも大きく値下がりする。政府には国会決議を踏まえた交渉が強く求められる。米側は、昨年11月にオバマ大統領が安倍晋三首相に輸入拡大を直接求めるなど、米に強い関心を示し続けている。日本は現在、年間77万トンのミニマムアクセス(最低輸入機会=MA)米のうち、36万トン程度を米国から既に輸入している。だが交渉筋によると、米国は売買同時入札方式(SBS)で輸入する主食用米を中心に、調製品なども含め 20万トン規模の輸入拡大を要求。日本側は「法外な水準」(政府関係者)として拒否し、(1)国内で主食 用米の生産調整を行っている(2)生産数量目標は 減り続けている――ことなどを説明して理解を求めている。ただ政府内では、譲歩案も検討している。主食用米の需給への影響を抑える措置を前提に、数万トン程度の受け 入れが可能か探っているもようだ。牛肉や豚肉をはじめ他の重要品目の関税率とセーフガード(緊急輸入制限措置)、自動車の安全基準や自動車部品の関税といった要素と合わせ、米側と交渉を続けている。


PS(2015.2.10追加):*7のように、2014年の農林水産物輸出額(速報値)が前年比11・1%増の6117億円となったというように、農林水産物の輸出が過去最高を更新できたのは、時系列から見ても明らかに、全中の力を弱めることが目的の農協改革があったからではなく、これまで農協が農産品の品質を管理して「日本産農産物」の安全性と質の高さをブランド化してきたからであり、これに大きく水を差したのが、フクシマ原発事故による放射性物質汚染であったという事実を決して忘れてはならない。ちなみに、私も外国産の牛肉を買う時は、原発がなく、BSEが発生したこともないオーストラリア産にしている。
 また、「農産物の輸出=和食の優秀さ」というのも日本人独特の島国根性的な自意識過剰であり、有明海で邪魔ものにしていた「くらげ」も、干クラゲにして中国に輸出することにより立派に稼いでいる。つまり、和食だけではなく、相手国の食生活に合った食品の生産も可能であり、これも輸出に貢献するのだ。

*7:http://qbiz.jp/article/55605/1/
(西日本新聞 2015年2月10日) 農林水産輸出が最高更新、14年 初の6千億円台、輸入規制緩み
 農林水産省が10日発表した2014年の農林水産物の輸出額(速報値)は、前年比11・1%増の6117億円となった。過去最高だった13年の5505億円を上回り、初めて6千億円台に達した。円安の影響や海外での和食ブームに加え、東京電力福島第1原発事故後に各国で導入された日本産食品の輸入規制が徐々に緩和、撤廃されたことも貢献した。安倍政権は、農林水産物の輸出額を20年までに1兆円にする目標を掲げており、農協改革などと一体で国内農家の競争力を強化していく方針だ。原発事故後、放射性物質による汚染を懸念し、50カ国・地域以上が日本産食品に対する規制を強化。11年の輸出額は前年比8・3%減の4511億円に落ち込み、12年も4497億円だった。その後、日本の要請に応じて、オーストラリアが輸入規制を撤廃するなど規制緩和の動きが拡大。円安で日本産食品の割安感が強まったこともあり、輸出額は13年から増加に転じた。14年の輸出額の内訳は、農産物が13・8%増の3570億円、木材などの林産物が38・5%増の211億円、水産物は5・4%増の2337億円だった。国・地域別では、中国やカナダ、米国、欧州連合(EU)向けが大幅に増加。リンゴや牛肉、緑茶、真珠などが引き続き好調だった。中国などで需要がある丸太は約2・2倍と大きく伸びた。加工品も集計対象に含まれており、14年は和食を象徴するみそやしょうゆも増加。EUで日本産の人気が高まっているウイスキーは47・0%増だった。農水省は、官民のPR活動で和食が海外メディアで取り上げられる機会が増えたことも貢献したとみており「円安の影響だけでなく、日本産食品への実需が高まった」と分析している。

| 農林漁業::2014.8~2015.10 | 05:33 PM | comments (x) | trackback (x) |

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