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2016,10,27, Thursday
発展段階別 $と購買力平価による アジアの購買力平価による 日本の 一人当たりGDP成長率 GDPの比較 一人当たりGDP推移 平均世帯所得 (グラフの説明:既にGDPが大きくなっている先進国ほど「一人当たりGDP成長率(「一人当たりGDP」ではない)」は低い。また、物価の高い日本では購買力平価によるGDPの順位は$ベースの順位より低くなっており、アジアの中で比較しても日本の購買力平価による一人当たりGDPは高くない。さらに、日本の平均世帯所得は減少しており、特に高齢者世帯で低い) ASEAN諸国の人口ピラミッド 世界の人口推移 日本の人口推移 (グラフの説明:ASEAN諸国をはじめとするアジアの他国では、まだピラミッド型の人口構成をしており、次第に日本に近いつぼ型になるだろう。そして、開発途上国で人口増加が止まるまで世界人口は増え続け、2011年の世界人口は70億人で、2050年には93億人になりそうだ。どの国も産業革命後に急速に人口が増加し始めたのは、物資が豊富になって栄養が行きわたり、衛生状態がよくなるとともに、医療が普及したからだと言われているが、人口がピークになっている現在の日本と同様、人口増加の終息後は各国とも人口減に転じ、次第に高齢化社会になっていくと考えられる) (1)日本の経済学者がノーベル経済学賞を獲得するには・・ 1)私がこの解を書ける理由 私は人間の遺伝や進化(今で言う生命科学)に関心を持って東大理科Ⅱ類に入り、女性が結婚しつつやりたい研究をして大学で昇進できる可能性の低さに愕然としながら医学部保健学科(今から40年以上前に環境の研究をしていた)に進学し、人類生態学・環境・疫学等を勉強し卒業した後に、公認会計士・税理士に転向して仕事を続けてきたので、本気で生物系と経済学・法律の勉強をした経験がある。そのため、両方のアプローチを比較して、日本人がノーベル経済学賞を受賞できない理由を書けるので書く。 例えば環境を例にとると、ヒトが生きる環境を悪化させる要因は多く、複数の物質が反応し合って複合汚染を起こす化学物質や単体でも人体に重大な害を与える放射性物質・有機水銀のような物質もあり、特定するのは一苦労だ。そのような中、ヒトに与えている害の原因を求めるには、注目する要因と背景となる要因の相関関係を多変量解析して発生している事実と比較する方法があるが、考慮すべき要因が多いためすっきりした解が得られないことが多い。 一方、経済学は、人間の意思決定と行動から生じる社会現象を簡単な数式やグラフで説明しており、私はそれを初めて勉強した時には理論の美しさに感動したが、不変と看做して無視する“与件”が多すぎて、実際の社会現象を実証的に説明することはできていない。それが、現在、日本で語られている経済学の欠点で、つまり科学になっていないのだ。 そのため、「①マクロ経済はミクロの経済行動の総計である」「②公害・環境は無視できない重要な要素となった」「③技術進歩を無視することはできない」「④食料・資源・地球環境は、地球上での人口増加・経済拡大の限界を意味する」などを前提とし、これまでの経済学では無視していたものも考慮し、社会調査に基づいて日本で起こっている現象を実証主義によって数式で説明すれば、課題先進国である日本の経済学者は、世界の課題に大きく貢献し、ノーベル経済学賞候補になれると考える。 2)日本人がノーベル経済学賞を獲得できない理由 産経新聞は、*1-1で、経済学賞は日本人が獲得したことのない唯一のノーベル賞だが、ノーベル賞受賞者は「①米国の有名大学を拠点に活動している」「②ノーベル賞を受賞するには米国で論文を積極的に発表し、その論文を世界の研究者が頻繁に引用する必要がある」「③功績に追随する人が一派をなしている」「④日本人は米国の主流派に大きな影響力を持つ研究者が少ない」などとしている。しかし、ノーベル経済学賞の選考はスウェーデン王立科学アカデミーが行うため、英語で論文を発表し、それを世界の研究者が読んで頻繁に引用する必要はあるが、米国の主流派か否かは関係ないと思われる。そのため、他分野の日本人ノーベル賞受賞者が日本で活動した人も多いことを考えれば、①②③④は泣きごとにすぎない。 また、日経新聞も、*1-2で「英語力の壁」「インパクト不足」を上げているが、世界の研究者がその論文の存在を知って引用するためには英語で記載されていることが必要条件ではあるが、内容が先進的で新しい解を導いており魅力的でなければ、世界の研究者が引用する理由がなくインパクトも小さい。しかし、日本の経済学者には、それがないのである。なお、アメリカの文化・歴史・社会背景を理解していない日本人がアメリカで研究した経済学は、それらを理解しているアメリカ人がアメリカで研究した経済学よりも背景に詳しくない分だけ考察が浅く、インパクトのある内容にはなりにくいと思われる。 そこで、私は、「経済学の新分野を開拓した、あるいは既存の分野に新しい視点を取り入れて経済学を革新したと多くの経済学者が認識する理論を造る」には、課題先進国日本で、社会調査に基づいた実証主義により問題を解明して経済学の理論を造れば、地球に貢献する大きな流れができ、評価力のある人から評価され得ると考える。 なお、東京大学経済学研究科でゲーム理論の人気が高いそうだが、観念的で単純化しすぎた理論だけでは実際の経済事象を説明することができないため、その功績は限られるだろう。 (2)GDPの算出方法による歪んだ実態把握 1)GDP(国内総生産)について GDPは、国内で新しく生産された財・サービスの合計で、経済活動の規模や動向を総合的に示す指標として用いられる。また、GDPには名目と実質があり、実質GDP(名目GDP/《1+物価上昇率》)は、名目GDPから物価変動の影響を除いたものだ。 また、GDP等の経済実態を把握する方法は経済統計だが、*2のように、GDP統計の把握の仕方が古く、実際に生産しているものがGDPに入っていなかったりして、GDP統計に基づいた政策決定を誤らせるという問題点が指摘されている。そのため、総務相の高市早苗氏が個人消費の新指標を開発する研究会を立ち上げられたのはよいことだ。 私自身は、日本のGDPは製造業中心で、医療・介護・保育・教育・ハウスキーピングなどの20~21世紀型サービスが十分に算定・評価されておらず、このことが政策におけるこれらのサービスの軽視に繋がっていると考える。しかし、2014年の統計では、日本のGDPの構造は、第三次産業(サービス業)が74%と最も大きく、次に第二次産業(製造業)24.9%、最後に第一次産業(農林水産業)1.2%となっており、日本はモノを作って輸出するのに適した国ではなくなっているのだ。 2)GDP成長率(いわゆる経済成長率)について GDP成長率とは、GDPの変化率(g=GDP、t=時間として、dg/dt)のことで、変化率であるため、本来、プラスの場合もマイナスの場合もありうる。しかし、経済を語る文系の人は、微分・積分を知らない人が多く、GDP成長率と名付けたこともあって、GDPの成長に子の成長のような特殊な積極的意味を付加している。しかし、感情の入らない科学用語としては、「GDP変化率」が適切だ。 また、「GDP変化率」と表現すると、人口が減少してGDPの総計が減っても、一人当たりGDPが増え、一人一人がより豊かな生活を送れるようになっていれば問題ないことがわかる。 (3)伊勢志摩サミットで世界に向けて語られた日本の政策の誤り 1)財政出動 日米欧の主要7カ国(G7)が4月26、27日に、*3-1のように、首脳会議(伊勢志摩サミット)を三重県で開き、その最大のテーマを「マクロ経済政策の協調」とし、「①原油価格の下落」「②中国をはじめとした新興国の経済低迷」を理由に、財政出動での内需拡大を求めたそうだ。 しかし、原油価格下落は日本にとってはマイナスではなく、中国のGDP成長率の鈍化はリーマンショック後に金融緩和して世界経済を支えた中国の出口戦略によるものであるため、外国のせいにして新たな財政出動を合理化するのは正しくない。 むしろ、日本は東日本大震災、熊本地震、鳥取地震等からの復興や東京オリンピックの準備などで既に莫大な財政出動を余儀なくされているため、景気対策のためにこれ以上の財政出動をしなければならない理由はなく、*3-2のように、無駄な財政支出をやめ財政出動に慎重なメルケル独首相の見解の方が正しいと、私は考える。 2)金融緩和 日本は結論ありきの消費税率10%への引き上げのため、*2のように、デフレ脱却と称する金融緩和のインフレ政策を行い、貨幣価値を下げることによって国の借金を実質で目減りさせ、株価や土地の価格を上げ、グローバル企業の利益を増やしたが、これによって国民は実質賃金や実質債権価値が下落し、実質賃金下落の効果として雇用は増えたものの生産年齢人口でも生活の苦しくなった人が多い。まして年金生活者は、年金給付の実質目減りと介護保険料の負担増で生活できない人も出ている。 これは、日本の政治が経済学のマネタリズムを御都合主義で利用して過度の金融緩和というインフレ政策を行い、声の小さな国民にしわ寄せした結果であるため、私は、これを日本国憲法(第11条基本的人権、第25条生存権、第29条財産権)違反だと考える。 また、*3-3のように、先進国の金融緩和政策の長期化に伴う低金利の副作用への警戒感が急浮上しているが、いくら金融緩和したり低金利にしたりしても、最終需要者の国民から消費財の購入資金を奪っているため、それを供給する企業の健全な投資も起こらないのが当然だ。ただし、低金利を利用して本当に必要なインフラに投資すれば、その後の生産性向上に資するし、ゼロ金利を利用して政府が国債を借り換えすれば、年間20兆円に及ぶ国債の利払いを抑えることが可能だ。 3)生産性の上昇 麻生財務相は、*3-4のように、「生産性上昇で低成長克服を」と述べておられるが、確かに生産性を高める技術進歩と構造改革は重要だが、電力自由化後も原発への国費の無駄遣いが続いたり、新電力に原発の廃炉費用を負担させようとするなど、国内での自由競争を阻害する政策が多すぎる。そのため、「経済成長(GDPの変化率をプラスにすること)が善である」と述べているが、どういう状態をゴールとして、いかなる方法で、何のためにGDPを拡大させたいのかという最も重要な展望を考え直すべきだ。 私自身は、日本国憲法に書かれていることが、まさに日本が目指すべきゴールであり、これは条文を読めばわかることで、日本国憲法が外国から強制されたか否かは問わないと考える。 (4)年金削減と介護サービスの削減は伸ばすべき消費を抑えたのだということ 1)年金について 年金は高齢者の生活の糧であり、これを不当に侵害しなければ、高齢者が必要とするものを購入することによって、人口における高齢者の割合が著しく増加する課題先進国日本で、新たに起こる需要に対応する供給が確立してきた筈のものである。 そのため、*4-1のように、年金を受け取るのに必要な加入期間(受給資格期間)を25年から10年に短縮し、無年金となっていた64万人を新たに年金を受け取れるようにしたことは、公正な方向への変更であり歓迎だが、本当は、年金保険料を支払ったことのある人なら加入期間にかかわらず誰にでも受給資格を与え、年金加入期間と保険料支払い額に応じて支給額を調整するのが公正だと私は考える。 なお、*4-2のように、厚労省は年金の試算において、会社員の夫と専業主婦のモデルケースで2013年度の厚生年金の所得代替率を62.6%と過大に試算していたが、賃金と年金をいずれも手取りで計算し直すと所得代替率は53.9%に低下し、税・社会保険料を含めて計算すると所得代替率は50.9%にまで下がるとのことだ。しかし、まだ夫と専業主婦の2人世帯のモデルケースしか試算しておらず、どちらか1人になれば年金額はさらに減少する上、高齢者は生産年齢人口の50%程度の収入があれば生活できるとしているのも不可解であり、今後、高齢者が生活できない状況は頻繁に起こりそうだ。 2)介護制度について 介護制度も、高齢化・核家族化が進んだ現在、生存権を護るために必要なもので、高齢者や障害者にとっては生きるために必要不可欠なものであるため、介護制度を改悪すれば介護制度の存在意義が怪しくなる。もう一方の見方をすれば、高齢化・少子化した日本では、介護サービスは真に必要とされるサービスであり、これを抑制することは、本物の需要を抑えて真に必要なサービスの供給を発展させるのを妨げたものだ。 そのため、*4-3のように、介護と言えばサービスを縮小して現役世代の負担を減らすことばかりを主張するのではなく、現役世代は介護を自分でしなくてよくなった分だけ確実に負担軽減されていることを考慮し、まだ十分に供給されたこともない介護サービスの削減ばかりを唱えずに、必要な需要は供給できるよう、働く生産年齢人口は全員、医療保険と同様に介護保険料を負担するようにすべきである。 <日本人がノーベル経済学賞を獲得できない理由> *1-1:http://www.sankei.com/politics/news/161011/plt1610110054-n1.html (産経新聞 2016.10.11) 日本人はなぜノーベル経済学賞を獲得できないのか…米主流派、英語が壁? 2016年のノーベル経済学賞は米国の経済学者2人が受賞し、日本人で最有力視された米プリンストン大の清滝信宏教授(61)は今年も受賞を逃した。経済学賞は日本人が獲得したことのない唯一のノーベル賞。米国の学界が「主流派」として幅をきかす中、英語力のハンディもあり、日本人は受賞の“地歩”を築けていないのが実情だ。ノーベル経済学賞は、市場の役割を重視する米国主流派の系譜を引く学者が相次ぎ受賞している。2010~16年の受賞者14人中12人が米国の大学教授や名誉教授だ。背景には現代経済学の主流派の多くが、米国の有名大学を拠点に活動していることがある。このため、ノーベル賞を受賞するには、米国で論文を積極的に発表している▽その論文を世界の研究者が頻繁に引用している▽功績に追随する人が一派をなしている-などの条件が必要とされる。日本人に関しては「米国の主流派に大きな影響力を持つ研究者は少ない」(内閣府経済社会総合研究所の堀雅博上席主任研究官)。語学力の壁もあって説得力ある論文の執筆や人脈作りが難しく、受賞の条件を満たせないとの見方がある。この点、毎年候補に名前の挙がる清滝氏は米国に足場を持つまれな存在だ。また14年に死去した宇沢弘文・元東大名誉教授も数理経済学の業績で受賞に近いとされた。ただ、米国から日本に帰国後の1970年代、社会運動にのめりこみ、主流派に批判的となったことが受賞を最終的に不可能にしたといわれる。日本人の受賞を目指すのであれば、若手研究者が米国で腰を据えて研究できる環境整備や、米国から優秀な指導者を招き、日本の学界を底上げする取り組みが求められそうだ。 *1-2:http://www.nikkei.com/article/DGXLASGH05H0Y_V01C16A0000000/?dg=1&nf=1 (日経新聞 2016/10/10) ノーベル経済学賞、日本人が受賞する条件 今年のノーベル経済学賞は、米ハーバード大学のオリバー・ハート教授、米マサチューセッツ工科大学(MIT)のベント・ホルムストロム教授の受賞が決まった。ノーベル賞の歴史の中で、日本人が受賞していないのは経済学賞だけで、今年も受賞を逃した。日本人の経済学者が世界で評価され、ノーベル賞を受賞するためには何が必要なのか。 ■「英語力の壁」やインパクト不足 昨年夏に死去した青木昌彦氏(米スタンフォード大名誉教授)の生前の活躍ぶりを示す著書が9月、書店に並んだ。タイトルは「比較制度分析のフロンティア」(青木昌彦・岡崎哲二・神取道宏監修)。世界各国の経済学会の連合体である国際経済学会連合(IEA)の会長を2008年から11年まで務めた青木氏が企画し、11年に北京で開いた世界大会での発表の中から、青木氏が厳選した論文を邦訳した。IEAの初代会長はジョセフ・シュンペーター。以来、ポール・サムエルソン、ケネス・アロー、アマルティア・セン、ロバート・ソローら世界を代表する経済学者が会長を務めてきた。ちなみに青木氏の後任はジョセフ・スティグリッツ米コロンビア大教授(11~14年)である。青木氏は、人々の行動を左右する慣習などを「制度」と定義し、ゲーム理論の手法を使って各国の経済構造の違いを解明した。歴史や文化の中ではぐくまれる「制度」と、経済学の中でもとりわけ「純粋理論」の色彩が濃い「ゲーム理論」。対極にあるようにもみえる両者を結びつけて独自の理論を展開する、斬新な着想が世界の経済学界で高く評価された。人脈づくりにも熱心で、青木氏を中心に世界の研究者の強力なネットワークができあがっていた。「ノーベル経済学賞を受賞する資格があり、本人も狙っていた」(今井賢一・スタンフォード大名誉シニアフェロー)と評される青木氏のような存在は、残念ながら現在の日本には見当たらない。「比較制度分析のフロンティア」には、清滝信宏・米プリンストン大教授の「金融制約へのメカニズムデザイン・アプローチ」と題する論文も収録されている。引用された論文数を基準にノーベル賞候補を毎年発表している米トムソン・ロイターは10年、清滝氏を経済学賞の候補に選んだ。日本人が初受賞するなら清滝氏と関係者は口をそろえる。清滝氏の名前がよく挙がるのは、世界で認められている日本人がごく限られているためでもある。世界で評価される条件は何か。日本人の経済学者たちに尋ねると、ほぼ同じ回答が返ってくる。 (1)アメリカン・エコノミック・レビュー、エコノメトリカ、ジャーナル・オブ・ポリティカル・エコノミーなど「トップジャーナル」と呼ばれる論文誌に投稿し、多くの論文が掲載される。 (2)論文が世界の経済学者の間で注目され、他の論文に引用される。 (3)論文に関連するテーマに取り組む研究者が増え、経済学界に大きな流れができる。 (4)経済学の新分野を開拓した、あるいは既存の分野に新しい視点を取り入れて経済学を革新したと、多くの経済学者が認識する。何をすればよいのかは十分わかっていても、実行できないのはなぜか。依田高典・京大教授は「英語力の壁」を挙げる。数理経済学が全盛だった頃は、数学が得意な日本人学者が活躍する余地が大きく、ノーベル経済学賞の有力候補と呼ばれた宇沢弘文氏(東大名誉教授)らのスターが生まれた。応用経済学が主流となった現在、トップジャーナルのレフェリーを納得させる論理を展開するのは難しいとみる日本人学者は多い。岡崎哲二・東大教授が日本人学者に欠けているとみるのは「新しい問題を発見し、大きな流れをつくっていく力」。トップジャーナルへの掲載を目指してこつこつと努力し、成果を上げている学者は増えてきたものの、経済学界に大きなインパクトを与えるほどの勢いはない。 ■海外との人材交流も乏しく この点でよく指摘される問題が、特定の分野への研究者の集中だ。例えば東京大学の場合、経済学研究科の大学院生の間で最も人気が高いのはゲーム理論。ゲーム理論が専門でトップジャーナルへの論文掲載の実績がある教授陣が在籍しているため、世界で活躍したいと考える若手研究者がゲーム理論に殺到している。論文を量産しないと大学に職を得にくいという就職事情も影響しているようだ。ゲーム理論は確かに最先端分野の一つではあるが、今後も「成長分野」であり続けるのかどうか。「ゲーム理論の論文を積み上げても、経済学の革新に貢献したと評価されるのは難しいのではないか」と懸念する声もある。 <政府統計> *2:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20160920&ng=DGKKASFS16H0X_W6A910C1PE8000 (日経新聞 2016.9.20) 統計大論争(1)GDP信用できない ふたりの“教授”が霞が関を震撼させている。やり玉にあげるのは政府統計。追及の手が緩む気配はない。ふたりの教授は毎週金曜日、午後3時からみっちり2時間、官僚とゼミを開く。物価変動の影響をみるデフレーターの算出方法をただし、生産性の分析の仕方を問う。専門用語が飛び交う。「自分が呼び出されるのはいつだ」。統計を扱う官僚は戦々恐々とする。ゼミの教授は大阪学院大教授の三輪芳朗(68)。もうひとりの「教授」は所属する自民党岸田派でついた異名、行政改革相の山本幸三(68)だ。ふたりは東大教授だった経済学者、小宮隆太郎(87)の門下生。1年先輩の三輪が後輩である山本の大臣補佐官を引き受けた。勉強会で統計の不備をただすのは主に三輪の役回りだ。三輪が書いた「よりよい政策と研究を実現するための経済統計の改善に向けて」は官僚必読の論文。ふたりの教授は正確な統計を生かし、誤りのない政策決定に導くという思いを共有する。勉強会には若手国会議員も顔を出す。教授を中心にした統計論議は騒がしさを増している。 □ □ 山本は旧大蔵省出身で、宮沢喜一の蔵相秘書官も務めた。政界入り後は日銀にデフレ脱却を迫ってきた。筋金入りのリフレ派だ。やや異端視される存在だったが、旧民主党政権時、今の首相、安倍晋三(61)に金融緩和の必要性を説いた。安倍は首相復帰後、アベノミクスの第1の矢に「大胆な金融政策」を据えた。山本がアベノミクスの「生みの親」と主張するゆえんだ。そんな山本が閣僚に就くや、真っ先に矛先を向けたのが政府統計だった。就任2日目の8月4日。「ぜひやりたいのは、政府の経済統計の整理統合」「日本のGDP(国内総生産)統計はどこまで信用していいかわからない」。消費統計の不備などから経済の実情がつかめないと持論をぶった。「景気がいまひとつなのを統計のせいにするのか」。内閣府は真意をいぶかった。だが、この夏、異論を唱えたのは山本だけでなかった。日銀職員2人が7月、GDPの算出方法に疑問を投げかける論文を公表したのだ。2014年度の名目GDPが内閣府の公表額(490兆円)より約30兆円多い519兆円だったと指摘。実質成長率は内閣府のマイナス0.9%でなく、2.4%と主張した。内閣府内には反論文書を出すべきだとの意見も出たが、最後は「論評に値しない」と切って捨てた。一部の研究者やエコノミストが援軍に回った。「消費増税があったのに、14年度のプラス成長はにわかに信じがたい」。内閣府を勇気づけた。内閣府も統計の機能不全を否定しない。実質GDPは15年7~9月期に速報値のマイナスから改定値でプラスに転じるなど、数字のぶれが信頼性を下げている。消費統計もネット販売を加味せず、若年層の購買行動を捕捉できていない。それでも「今ある統計を作るのに精いっぱい。改善の人手も予算も足りない」(内閣府)。 □ □ 統計への厳しい視線を感じ、重い腰をあげたのは総務省だ。9月15日夕、総務相の高市早苗(55)は大学教授やエコノミストら約15人を集め、個人消費の新指標を開発する研究会を立ち上げた。高市は「政府統計が新たな地平をひらくための挑戦の場」と意気込んだ。1時間半の会議終了後にはみずから参加者を見送る熱の入れようだった。これまでも消費統計の刷新を探る動きはあったが、めぼしい成果はない。研究会では有識者から総務省の本気度を問う声もあがった。「(すべてのものがインターネットでつながる)IoT時代に沿った、新たな政府統計を作りたいと思います」。総務省消費統計課長の阿向泰二郎(46)は退路を断った。日本最初の政党内閣を組織した大隈重信。総務省は統計の礎を築いたとたたえる。大隈は1916年、全省庁に発した内閣訓令第1号で統計の重要性を訴えた。「其の調査は、迅速精確にして実用に適するものたるを要す」。正確なデータが国の政策づくりに不可欠と喝破した。今、100年前の大隈の訓示をかみしめる時が来ている。 ◇ 経済の実態をつかむのは難しい。統計という物差しが古び、精度が低ければ、なおさらだ。愚直に数字を積み上げるだけで日本の今はとらえられない。(敬称略) <世界経済と伊勢志摩サミット> *3-1:http://www.nikkei.com/article/DGXLZO00288580Q6A430C1970M00/?dg=1&nf=1 (日経新聞 2016/5/3) 世界経済占う「伊勢志摩」 サミットの焦点と歴史 日米欧の主要7カ国(G7)は26、27両日、各国首脳が一堂に会する主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)を三重県で開く。日本で開くサミットは8年ぶり6回目。首脳同士が同時通訳を介して直接、さまざまな世界の難題を話し合う首脳外交のひのき舞台だ。議長として安倍晋三首相の力量も問われる。 ■最大のテーマは マクロ経済政策の協調探る サミットは主要国の首脳が世界の重要課題を話し合うため年1回開く国際会議だ。初会合は1975年11月。石油ショックへの対応を話し合うため、先進6カ国首脳がフランス・パリ郊外のランブイエ城に集まった。メンバーは日本、米国、英国、フランス、西ドイツ、イタリア。76年にカナダが加わり「G7」(Group of Seven)と呼ばれるようになった。98年にロシアを加えて「G8」になったが、2014年にクリミア半島の併合を強行したロシアを外し、この年からG7の枠組みに戻った。毎年の議題は大きく政治と経済に分かれる。今年は世界経済の先行きに不透明感が増すなか、G7が一致してマクロ経済政策で協調姿勢を打ち出せるかが最大の焦点だ。原油価格の下落を引き金に、昨年来、これまで世界経済をけん引していた中国をはじめとした新興国の経済が低迷。収縮しつつある世界経済を下支えするには、G7や新興国に財政出動での内需拡大が求められている。ただ財政規律を重視するドイツは財政出動に慎重だ。サミットでの世界経済の議論が、17年4月に迫った消費税率10%への引き上げを延期するかどうかの安倍晋三首相の判断に影響するとの声も多い。内需拡大で一致するなら、消費増税は消費や投資拡大の足かせになるとの見方だ。富裕層や有力政治家らのタックスヘイブン(租税回避地)での節税の実態を明らかにした「パナマ文書」を巡る問題を受け、課税逃れ対策の取り組み強化も話し合う。政治分野では、過激派組織「イスラム国」(IS)による相次ぐテロや、シリア内戦による欧州への難民流出問題が大きなテーマになる。G7がどこまで具体的な処方箋を示せるかが注目点だ。4月に広島で開いたG7外相会合では、サミットで「具体的な施策を含むテロ対策行動計画を作成する」とした。テロリストやテロ組織の資金の流れに関する情報や、航空機の乗客情報を共有する仕組みづくりなどが課題だ。日本政府としては「アジアで8年ぶりに開くサミット」(安倍首相)で、アジア地域の問題も重点的に取り上げる。特に核実験や弾道ミサイル発射を強行した北朝鮮への対応や、人工島造成など南シナ海での海洋進出を強める中国への対応が焦点だ。G7外相会合では中国の活動を念頭に「挑発的な一方的行動に強い反対を表明する」と明記した声明をまとめた。首脳宣言でけん制のトーンをどう強めるかが注目だ。議長国の日本としてはサミットを通じ、安倍政権が国際協力の柱に据えるアジアでの「質の高いインフラ投資」の促進や、目玉政策である「女性活躍の推進」も国際社会にアピールしたい。エボラ出血熱や中南米でジカ熱が流行していることを踏まえ、感染症対策など保健衛生分野での貢献策も打ち出す。サミットに先立ち、財務相・中央銀行総裁など計8つの閣僚会合を開き、各分野でグローバルな課題を話し合う。サミット閉幕後に発表する「首脳宣言」に反映する。 ■なぜ「G7」で開催 民主主義など価値観共有 サミットの主要議題は、その時々の国際情勢を映す。1975年の初会合は経済問題が議題で、当初は経済政策が中心だった。ソ連のアフガニスタン侵攻を受けた80年のベネチア・サミットから「西側の結束」を確認する政治討議に比重が移った。地域紛争や環境問題など議題は広がり、2000年代以降は地球温暖化やテロ対策といったグローバルな課題が目立つ。ロシアは冷戦終結後に加わったが、2014年からG7がロシアの参加を停止。再び自由や民主主義などの価値観を共有する国だけの集まりとなり「話し合いは格段にスムーズになった」(外務省幹部)。その分、G7の結束力が高まったと言える。共通の価値観を土台にすることで、中国の挑発行為も話しやすくなった。南シナ海や東シナ海への海洋進出で「法の支配」に反するような動きは、どの国も賛意を示せない。かつては中国をサミットに加える構想も浮かんだが、いまは消えている。世界でみると裕福なG7のテーマは、新興・途上国が今後直面する課題にもなる。高齢化や医療、女性活躍など課題を先取りして世界の議論をリードする役割もある。サミットは国際社会の中で常に存在意義を問われてきた。最近では08年のリーマン・ショックの後。世界経済を揺るがす事態の発信源が米国だったことに加え、日本や欧州各国の経済も大きく傷み、国際社会への影響力を一時は失った。代わりに存在感を高めたのが20カ国・地域(G20)。G7にブラジル、中国、インド、ロシア、韓国、インドネシアなどを加えた枠組みだ。首脳会議はリーマン・ショック後にブッシュ前米大統領の呼びかけで始まった。金融規制や監督など危機の再発防止策をまとめ、ギリシャ危機を受けた10年には財政健全化策を議論した。ただ先進国と新興国の利害が対立することも多く、協調はなかなか難しい。現在は新興国経済が軒並み伸び悩む。G20だと発言する人数が多すぎて突っ込んだ議論ができない問題も明確になり、再びG7に注目が集まっている。 ■国際社会への影響力は 閉幕の「首脳宣言」カギ サミットがどこまで国際社会に影響力を与えられるかは、閉幕時に打ち出す首脳宣言がカギを握る。そろって具体的なメッセージを打ち出せば、その後の国際社会の流れに道筋が付く。逆にいかにG7とはいえ、打ち出すメッセージがバラバラでは影響力は維持できない。例えば1979年の東京サミットは第2次石油ショックへの対応で、石油消費・輸入上限目標を国別に具体的数値で示すことで合意した。83年のウィリアムズバーグ・サミットは、米国による西欧へのミサイル配備の是非が議題になり、激論の末に中曽根康弘首相が必要性を主張。ソ連への対抗姿勢を示した。2008年の北海道・洞爺湖サミットでは、50年までに世界全体の温暖化ガスを半減する長期目標に合意。目標設定に慎重だった米国を巻き込み、環境問題を前進させた。今回のサミットでは、欧州で社会不安の原因となっている中東からの難民問題で、欧州の緊迫感を日米が共有できずにいるとの見方は多い。ロシアや中国との距離感でも温度差を抱える。G7の結束を打ち出せるかどうかは議長である安倍晋三首相の力量次第だ。かつて1年ごとに首相が交代し、「日本の首相は毎回サミット初参加」という時代と異なり、安倍氏は今回でサミット参加が5回目と経験も豊富だ。G7が再び結束を強められるか。安倍氏の役割は大きい。 *3-2:http://www.nikkei.com/article/DGXMZO01960380V00C16A5I00000/?dg=1&nf=1 (日経新聞 2016/5/5)メルケル独首相、財政出動にゼロ回答、日本との対立避け、温和な表現 ドイツが日本の期待に応えて財政出動に踏み切るかが焦点となっていた4日の日独首脳会談。安倍晋三首相との話し合いを終えて共同記者会見に臨んだメルケル独首相は成長戦略について「詳細は日本で議論する」と語った。文字通りに受け止めれば、ドイツが新たな景気刺激策を講じることに理解を示したかに見える。だが発言を丹念に追えばゼロ回答なのは明かだ。わざわざベルリンを訪れた安倍首相のメンツをつぶさないように温和な表現に終始し、日本との対立を避けるという配慮を見せた。会見で安倍首相は「機動的な財政出動が求められている」と語った。これをメルケル首相は否定しなかったどころか「投資、構造改革、適切な金融政策の3つが必要だ」と呼応した。だが新たな補正予算を組んで、景気刺激に乗り出すつもりはない。ドイツ政府が4日夜に公表したプレスリリースを読めば真意が分かる。「主要7カ国(G7)首脳会議の準備=メルケル首相、訪独の安倍首相と会談」と題された報道資料で、財政政策には一言も触れなかった。具体的に書き込まれたのは日本と欧州連合(EU)の自由貿易協定(FTA)やテロ対策。肝心の財政は素通りしたのである。共同会見の発言からもゼロ回答がにじみ出た。「大勢の難民がドイツに流入したことで内需が刺激された。さらにFTAで成長を高め、世界経済に貢献する」。行間から読み取れるのは、難民対策やFTAというのがドイツの成長戦略で、新たな景気対策は検討しないというメッセージである。なぜメルケル首相は頭ごなしに財政出動を拒否しなかったのか。理由はいくつかある。ひとつはドイツの政治情勢だ。ドイツは財政黒字だが、難民対策で歳出は膨らんでいる。しかも来秋に連邦議会(下院)選挙を控え、教育など重点政策には予算を厚めに配分せざるを得ない。外から見れば緊縮派でも、実際にはドイツなりに財政拡大しているのである。このタイミングで財政政策を「不要」とは言えない。ふたつ目は日本への配慮。わざわざ訪独し、構造改革にも言及した安倍首相を追い返すようならドイツの度量が疑われる。「大人の対応」で亀裂を目立たなくしたということだろう。メルケル首相は2013年にアベノミクスを公然と批判し、昨年3月は日中韓で争う歴史認識問題に注文をつけた。今回は対立する政策があっても事を荒立てず、無難にやり過ごした。裏返すと真正面から議論し、G7を舞台に財政・経済政策で協調するという発想はない。対日政策の優先順位も低い。英国のEU離脱や難民危機、それに極右の台頭をどう抑え込むかという域内の問題でメルケル首相は手いっぱい。日独首脳会談について地元メディアは小さく報じただけだった。 *3-3:http://qbiz.jp/article/95611/1/ (西日本新聞 2016年10月8日) 低金利の副作用警戒が浮上 IMFC開幕 国際通貨基金(IMF)の運営方針を決める国際通貨金融委員会(IMFC)が米首都ワシントンで7日午後(日本時間8日午前)に開幕し、世界経済が直面する課題を議論した。6日の20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議に続く一連の国際会議で、先進国の金融緩和政策の長期化に伴う低金利の副作用への警戒感が急浮上している。資金の運用で利益を十分に上げるのが難しくなり、銀行の経営不安や年金の収益悪化を招く恐れがあるためだ。各国の金融政策頼みは岐路を迎えている。会議に出席した日銀の黒田東彦総裁は7日の記者会見で「金融政策だけではバランスの取れた成長につなげるのは難しい」と述べた。IMFのラガルド専務理事は6日の記者会見で「銀行や保険会社、年金ファンドのビジネスモデルを見ると、ゼロ金利近辺での運用で苦しい事態に陥っている」と述べ、金融政策への過度な依存に警鐘を鳴らした。日米欧は長らく緩和策を継続してきたが、成長率は低迷する。「経済の体温」である物価は上がらず、緩和の限界と低金利の弊害が指摘され始め、6日のG20でも、低金利が銀行や年金基金に及ぼす悪影響の度合いを巡って議論が交わされた。銀行は顧客から集めたお金をより高い金利で運用することで利益を得ており、低金利で利ざやが縮小する弊害を無視できなくなってきた。日本では、年金に収入を依存する高齢者の暮らしを脅かしかねない。IMFCでも、低金利の長期化が世界経済や銀行に与えるリスクを議論。オーストラリアはIMFCに提出した声明で「低金利で金融は脆弱さを増す。過度に金融政策に頼るのは避ける必要がある」と強調した。一方、アルゼンチンは低金利で調達した資金をインフラ投資などに充てれば経済が底上げできると主張。G20やIMFCを契機に、低金利の評価を巡る議論が国際社会で活発になりそうだ。 *3-4:http://qbiz.jp/article/95613/1/ (西日本新聞 2016年10月8日) 生産性上昇で低成長克服を 世界経済で麻生財務相 麻生太郎財務相は7日夜(日本時間8日午前)、米首都ワシントンで記者会見し、「世界経済には不確実性が存在するが、過度な悲観論に陥ることなく適切に対処することが重要だ」と述べ、低成長克服へ生産性を高める構造改革に取り組む重要性を強調した。ルー米財務長官との会談では「世界経済や為替市場など幅広いテーマについて意見交換した」と説明。財務省同行筋によると、環太平洋連携協定(TPP)の重要性を強調し、臨時国会で成立させると伝えたという。米財務省によると、ルー財務長官も米議会でのTPPの速やかな承認と発効に向けて努力すると強調。麻生氏に対して、輸出増を狙って通貨価値を意図的に引き下げる通貨安競争を回避するとした20カ国・地域(G20)の合意を守ることが重要だと伝えたという。麻生氏は会見で世界貿易の減速に関して「要因をしっかり把握し対処することが大事だ」と指摘した。保護主義の台頭を念頭に「自由貿易の障害を除去する行動が求められる」と語った。米大統領選が世界経済に与える影響については「うかつに言えない」と言及を避けた。同席した黒田東彦日銀総裁は日銀が金融政策の枠組みを変更したことに対する他国の反応を問われ「日銀の政策は以前から十分な理解が得られており、新たな政策枠組みについて特段の意見は聞かれなかった」と述べた。 <年金・介護> *4-1:http://www.saga-s.co.jp/news/national/10201/368667 (佐賀新聞 2016年10月21日) 無年金64万人を救済、法案、今国会成立へ 無年金の人を救済するため、年金を受け取るのに必要な加入期間(受給資格期間)を25年から10年に短縮する年金機能強化法改正案は21日、今国会で成立する見通しとなった。同日に衆院厚生労働委員会で審議入りした。野党も賛成の意向のため、早ければ来週にも衆院を通過する。成立すれば、来年10月にも約64万人が新たに年金を受け取れるようになる。一方、支給額の抑制を強化する年金制度改革法案には、民進党が反発を強めており、審議入りのめどが立たない状況が続いている。 *4-2:http://digital.asahi.com/articles/ASJBP73Z4JBPUTFK01S.html?iref=comtop_favorite_03(朝日新聞 2016年10月21日)年金試算、不適切な計算式を使用 塩崎厚労相が認める 厚生労働省が年金の試算で不適切な計算方式を使い、現役世代の平均的な収入に対する年金額の割合(所得代替率)が高く算出されるようになっていた。塩崎恭久厚労相が21日の衆院厚労委員会で明らかにした。政府は厚生年金の所得代替率について「50%以上を維持」と公約しているが、将来的に割り込む可能性が高くなった。年金の試算は5年に1度、時々の経済情勢に応じて年金制度を見直す財政検証で行う。厚労省は所得代替率を計算する際に、分母となる現役世代の収入は税や社会保険料を除いた手取りとし、分子の高齢者の年金は税や社会保険料を含めた収入としていた。21日の衆院厚労委では、民進党の長妻昭氏の質問に対し、塩崎氏は年金の試算について「役割を果たしていないこともありうる」と述べ、不十分だと認めた。その上で「次期財政検証に向けて議論する」として、2019年度の財政検証の際に新しい計算方式を検討する考えを示した。会社員の夫と専業主婦の2人のモデルケースでは、13年度の厚生年金の所得代替率は62・6%とされている。厚労省によれば、仮にいずれも手取りで計算すれば53・9%に低下。いずれも税や社会保険料を含めると50・9%になるという。実質賃金が上がり続け、経済成長率が実質0・4%のプラスが続くという前提では、43年度の所得代替率は50・6%と試算されている。厚労省は計算方式を変えた場合の試算を明らかにしていないが、13年度の再計算後の下げ幅から見ると50%を割り込みそうだ。所得代替率は欧米では税や社会保険料を両方含めるか、両方除外して算出するのが一般的だという。安倍晋三首相は1月の衆院本会議で「新たに年金を受給される方の所得代替率は50%が確保されることを確認している」と強調している。 ◇ 〈所得代替率〉 現役世代の平均的な収入に対する年金額の割合。最新の財政検証では、厚生年金に入る会社員と専業主婦の「モデル夫婦」が14年度に65歳になった場合、年金を受け取り始めるときは月21万8千円と試算。現役世代の平均的な収入の62・7%とした。43年度に65歳となる夫婦は50・6%になると見込んでいる。 *4-3:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20161022&ng=DGKKZO08673770S6A021C1EA1000 (日経新聞社説 2016.10.22) 将来を見据えた介護保険の改革いそげ 介護保険制度の改革議論が難航している。介護が必要な度合いの低い軽度者向けサービスの縮小が焦点だったが、厚生労働省は大きな改革を見送る方向だ。大きな改革は利用者にいたみをもたらす。改革案を議論している厚労省の審議会でも、選挙が近いのではと浮足立つ与党内でも、反対意見が強い。厚労省はそうした声に配慮したようだ。ただ、介護が必要な高齢者は増え続ける。2025年には団塊の世代が、要介護状態になりやすいとされる75歳以上の後期高齢者になる。このままでは莫大な介護費用が必要になりかねない。コストを抑えて持続可能な仕組みを整えるのに残された時間は、実は少ない。その場しのぎではない改革の議論を急ぐべきだ。在宅の要介護者向け訪問介護サービスには、身体介護と生活援助の2種類がある。身体介護は食事や排せつの世話などだ。生活援助は調理や掃除、洗濯などを指す。軽度者はこのうち生活援助を多く利用する傾向がある。生活援助サービスがないと困る人はいるだろう。その一方で「がんばれば自分でできることまでヘルパーにやってもらうので、かえって状態が悪くなっている」といった指摘も絶えない。14年の前回改革では、要介護状態になる手前の要支援者に対するサービスの一部について、介護保険による全国一律の給付から市町村独自のものに切りかえることが決まった。生活援助的なサービスは各自治体の判断でボランティアやNPOなどを活用し、効率化しようとの考えだった。今回の議論でも、軽度者の生活援助サービスについては市町村の独自事業に切りかえる案が出された。しかし「自治体の態勢が整わない」ことなどを理由に見送る方向が、早々と固まりつつある。代わって、生活援助サービスを提供する事業者に支払う報酬を引き下げる案などが浮上している。だが、報酬引き下げだけで増え続ける軽度要介護者に対応していけるのか、疑問だ。自治体へのサービス移管も視野に、さらなる効率化は避けられないのではないか。保険を使わず自費で生活援助サービスを購入しやすい環境も、整えたい。社会保障制度のなかで最も急激に費用が膨らむと予想されているのは介護だ。改革の手をこまねいてはならない。 <中高年人口の増加と需要構造の変化> PS(2016年10月29日追加):第三次産業(サービス業)が74%と最も大きい日本の需要構造(=供給構造)はどう変わったのかと言えば、*5-2のように、65歳以上の高齢者が住民の半数以上を占める集落が、2015年4月には1万5568に上っている。また、*5-3のように、女性の3割超が65歳以上となり、ネットの活用が60代に広がっており、ネットショッピングを利用した65歳以上の世帯は13.6%となって過去最高を更新し、購入した商品・サービスはパック旅行、食料品、健康食品・サプリメント・贈答品等で、本当かどうかはわからないが64歳以下の世帯より多く支出しているそうだ。これは、現在の65歳以上は高卒以上が多く、職場で普通にパソコンを駆使していた購買意欲の高い層だからだろう。 一方で、*5-1のように、井筒屋の社長(男性)が、「流行のボタンを押せていないから、消費が振るわない」と述べておられるが、実際は、中高年人口の割合が高い時代に消費の対象を若い女性のみに据え、人口の多い中高年世代を無視しているのが販売が振るわない原因だと考えられる。購買経験を積んだ中高年女性は、流行や面白いだけのものは買わず、質のよいものを選ぶため、本来は百貨店に販売機会が多い筈だが、私の経験でも百貨店の品揃えは細身・小型の若年女性中心で中高年女性の魅力を引き出す衣料品が少なく、あっても野暮ったかったり、少し良いと非常に高い価格設定になっていたりする。そのため、顧客の大半が女性で女性従業員が多い小売やデパートは、女性を馬鹿にせず女性管理職や女性社長を増やして、本物のニーズを発掘するのが良いと思う。なお、中高年者のニーズを察して満たせるためには、接客する従業員にも同世代の経験豊富な人がいた方がよい。 *5-1:http://qbiz.jp/article/96279/1/ (西日本新聞 2016年10月21日) 「流行のボタンを押せていない」 井筒屋・影山英雄社長(10月11日) 消費が振るわない。しかし、それは、小売り側が需要を喚起できていない表れではないか。そんな流通の「心構え」を示すような一言を、全国の政令市で最も高齢化率(1月1日現在で28・6%)が高い北九州市に本拠を置くデパート、井筒屋のトップが発した。中間期としては8年連続の減収となった井筒屋。主力の衣料品が振るわず、関連商品も含めて前年に比べ8億円の減少と足を引っ張った。高齢化や人口減に歯止めがかからず、地域経済の先行きが見通せない。さらに、ライバルの福岡都市圏は商業集積が進むばかり。そこに、天候不順も重なった。不振の理由を挙げれば、枚挙にいとまがない。そんな厳しい環境下でのことだった。4月下旬〜5月上旬にかけ、小倉井筒屋(北九州市小倉北区)であるイベントを開いたところ、商品が飛ぶように売れ、完売も相次いだという。その商品とは、マスキングテープ。スマートフォンのケースに独自のデザインをあしらうなど、若い女性に人気のアイテムだ。売れ筋の単価は1個200〜300円と安いながらも、1カ月にも満たない期間中の売り上げは2千万円に上った。10月11日。2016年8月中間決算の記者会見に臨んだ影山英雄社長は、こう語った。「面白いものには人が来てくれる。(われわれは)まだ流行のボタンを押せていないということ」。期待か、自省か。潜在需要を感じさせつつ、それを引き出せていない地場デパートトップの重みのある一言だった。井筒屋が今後、どんな流行のボタンを押すのか。「百貨店といえば衣料品」という従来の枠から脱した発想が必要かもしれない。 *5-2:http://www.saga-s.co.jp/news/national/10201/358375 (佐賀新聞 2016年9月21日) 高齢者半数の集落1万5千、15年、5年で1・5倍 65歳以上の高齢者が住民の半数以上を占める過疎地域の集落は、2015年4月時点で1万5568に上ることが21日、国土交通、総務両省の調査で分かった。10年度の前回調査から約5千の増加。調査対象の集落全体に占める割合も15・5%から20・6%に上昇した。過疎地域の高齢化が進行し、共同体の維持が困難な「限界集落」とも呼ばれる集落が増えている実態が浮き彫りになった。調査は、過疎法の指定地域などがある1028市町村にアンケートを実施。調査対象の集落は7万5662で、今回から離島なども加わったため前回(6万4954)から大幅に増えた。 *5-3:http://qbiz.jp/article/94318/1/ (西日本新聞 2016年9月19日) 女性の3割、65歳以上に 敬老の日、総務省推計 敬老の日を前に総務省が18日発表した人口推計によると、女性の総人口に占める65歳以上の高齢者の割合が9月15日時点で30・1%となり、初めて3割を超えた。男性は24・3%。男女を合わせると前年から0・6ポイント増の27・3%だった。65歳以上人口は73万人増の3461万人で、割合、人数とも過去最高を更新した。女性の総人口に占める65歳以上の割合は2001年に20%を上回り、09年に25%を超えた。今年の65歳以上人口は、女性が前年より38万人増えて1962万人、男性は35万人増の1499万人だった。後期高齢者医療制度の対象となる75歳以上は1697万人で総人口の13・4%。女性が1037万人、男性は660万人だった。推計は、15年国勢調査の人口速報集計を基に、その後の出生・死亡者数から算出した。日本の高齢者の割合は欧米主要6カ国との比較でも最も高く、22・7%のイタリア、21・4%のドイツを上回った。1995年以降の伸び幅も日本は12・7ポイントに達した。イタリアの6・2ポイント、ドイツの6・0ポイントを大きく引き離しており、日本の高齢化が急速に進んでいることを改めて示した。また労働力調査によると、15年に職に就いていた高齢者は730万人と12年連続で増え、過去最多を更新した。約半数の360万人が企業などに雇用されていて、このうち74・2%に当たる267万人がアルバイトやパートといった非正規雇用だった。就業率は21・7%で、米国18・2%、カナダ12・8%を上回るなど、欧米6カ国より高かった。男女別では男性が30・3%、女性が15・0%だった。 ◇ ◇ ●ネットの活用 60代に広がり 総務省の家計調査によると、世帯主が60〜69歳の2人以上世帯が、2015年にインターネット接続料として使った金額は年間で約2万5千円だった。5年前より約5千円多く、29歳以下の世帯と肩を並べた。ネット普及の世代格差が縮小していることがうかがえる。またネットを旅行予約や食品購入などに活用していることも分かった。家計消費状況調査では、ネットショッピングを利用した65歳以上の世帯(単身を除く)も15年に13・6%となって過去最高を更新。05年の3・8%から大きく伸びている。ネットで購入した商品・サービスのうち、パック旅行などに使った金額の割合が最も高く、全体の22・5%。次いで食料品の16・4%だった。健康食品やサプリメント、贈答品も、64歳以下の世帯より支出した金額の割合が高かった。総務省の担当者は「レンタカーやホテルの予約など、レジャーの手配にネットを活用している実態がうかがえる」と説明している。 PS(2016年10月29日追加):*6のように、ドイツのメルケル首相がフクシマの惨状を目にして脱原発に転換したのも、安価でクリーンなエネルギーを開発・普及するための英断だと私は考えるが、それに対して日本人が、「なぜそんなに福島の事故を恐れるの?」と問うのは、無知で恥ずかしすぎる。何故、それに気がつかないのだろう? *6:http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2016102902000192.html (東京新聞 2016年10月29日) 【社説】ドイツの大転換 民意こそエンジンだ ドイツでは電力消費量の三割をすでに、再生可能エネルギーで賄っている。シュタインマイヤー外相の手記は訴えてくるようだ。「エネルギー大転換」のクリーンなエンジンは「民意」であると。3・11の年。ちょうどハロウィーンのころにドイツを取材した。「原発はいらない」と書かれた黄色い旗が、カボチャの飾りとともに目についた。フライブルクやミュンヘンの街頭で手当たり次第に聞いてみた。「なぜこんなに、福島の事故を恐れるの?」。異口同音に問い返された。「福島は日本じゃないの?」。ドイツの反核、反原発の歴史は深い。東西冷戦の最前線で核ミサイルを目の前に突きつけられた恐怖は、国民的トラウマ(心的外傷)と言っていい。そして一九八六年のチェルノブイリ原発事故。千二百キロ離れたドイツにも放射能が降り注ぎ、食卓から牛乳やキノコが消えた。「母親が沈み込んでいた。あんなの、もうたくさんだ」とミュンヘンの青年が吐き捨てるように言った。ドイツは原発事故の当事者にはなっていない。だが、ドイツ市民には原発事故の当事者という自覚が強い。二〇〇〇年にはすでに、時のシュレーダー政権が脱原発の方針を打ち出していた。3・11の前年、メルケル首相は運転寿命延長による原発の再浮上を図ったが、フクシマの惨状を目にして急転換。原子力の専門家以外で構成する倫理委員会の意見を優先させて、二二年までに全原発の段階的廃止を決めた。メルケル首相が恐れたのは、チェルノブイリやフクシマの再来を正しく恐れる民意である。一方、欧州では、日本とは段違いに温暖化への危機感が強い。昨年末のパリ協定は、石油、石炭など化石燃料の時代の終わりを予言した。とはいえ原発はそれ以上に恐ろしい。生命が大切ならば、再生可能エネなのである。環境や倫理だけではない。福島や温暖化への危機感をバネにした再生可能エネへの大転換には、やがてそれが巨大な世界市場を形成するとの読みもある。だから大手電力を含む経済界も、連邦政府の方針を受け入れざるを得ないのだ。「国民の八割以上が再生可能エネルギーの拡大に賛同しています」。シュタインマイヤー外相の手記の行間、浮かんできたのはやはり、あの言葉。「福島は日本じゃないの?」 PS2016年10月31日追加):*7-1のように、高島と池島で若者がハッサクやヤギを利用しているそうだ。離島は、海・田畑・山が近くにあり、海も本土とは比べ物にならないくらい美しいため、シチリア島のようにハッサクをレモン・オリーブ・アーモンド・ブドウに変えたり、山羊を羊・牛に変えたり、カレイだけでなくウニ・アワビも養殖したりすれば、稼げる事業を行うことができる。現在は、*5-2のように、日本全体では高齢者が半数以上を占める集落が1万5千もあり、若者が住み着いて何かを始めるのに協力する人も多い。また、デザイン・染色・絵画・音楽なども、美しい日本の風景を写し取った方が、都会のコンクリートの中で醜いアニメに興じているよりも世界の人々に訴えられる作品を作り出すことができ、自己実現する方が仮装して初めて自己表現できる状況にいるよりもずっと面白いだろう。 そこで、*7-2のハロウィンだが、発祥地の外国ではかわいい子どもの祭りであるにもかかわらず、日本では成人が醜いおばけ姿の仮装大会に興じている(同じことはディズ二ーランドでも起こっている)。これは、普段、一人の大人として発言することのできない人が、仮装して初めて何かに反抗して自分を出したつもりになっている幼稚さとこれまで触れてきたものの貧しさによる美意識の退化に見える。 佐賀県馬渡島 春の北アルプス 渋谷でのハロウィン仮装姿 *7-1:http://qbiz.jp/article/97053/1/ (西日本新聞 2016年10月31日) 閉山の島再生、若者が一歩 長崎 懸命の荒れ地対策 世界文化遺産の高島炭坑がある高島(長崎市)と九州最後の炭鉱があった池島(同)で、急速な人口減少のため荒れ地が増えている状況を打開しようと、魚や動物を活用した取り組みが始まった。雑草刈りや間伐の人手が不足する中、知恵を絞り出したのは30歳前後の若手たち。「何とか島の荒廃に歯止めをかけたい」と力を込める。 ●高島…未利用のハッサク餌に 1986年に閉山した高島は、68年のピーク時に約1万8千人が暮らしていたが、現在は384人(今年9月末)。閉山後、当時の高島町が地域振興策として「島民や観光客が収穫できる果樹を植えよう」と炭鉱住宅跡など広範囲にハッサクを植えた。だが、過疎化がさらに進んで通路などに草木が生い茂り、多くのハッサクが収穫も管理もされていなかった。市と漁協が出資する長崎高島水産センターに昨春入社した永田晋作さん(27)は高島出身。幼少期に親がハッサクを取って食べていたことを思い出し、昨秋から伐採を兼ねて収穫した。果汁を飼料に混ぜて養殖ヒラメに与え続けると、臭みが消え、ハッサクの香りが付いたため、今月17日から一般に売り出した。「収穫するためには間伐が必要で、結果的に荒れ地対策になる。『はっさくヒラメ』がヒットし、島民や観光客に草刈りをしようという機運も高まってほしい」と生まれ育った島への思いを強くする。 ●池島…ヤギ飼い除草に一役 池島炭鉱は2001年11月に閉山した。1970年に約7700人だった島の人口は、今年9月で159人に。こちらも除草作業が追いつかず、荒れ地の拡大やイノシシの繁殖が懸念された。そこで有志が同7月、ヤギ2匹を飼い始めた。発案したのは、池島を含めた長崎市外海地区の地域おこしに関わる嶋田純人さん(37)。島民が小屋などを準備し、生い茂る雑草を食べさせたところ、少しずつ減っているという。嶋田さんは東京都出身。都の職員だった昨年夏に旅行で訪れ、人の良い土地柄を気に入った半面、地方の厳しい現実を知った。「地方に支えられて都市がある。行政サービスに携わってきた者として助けたい」と昨年秋に移住してきた。島では道路や建物の老朽化など課題も多い。それでも「ヤギは餌代がかからないし、島民や観光客の癒やしの存在にもなっている」と前を向く。2匹の名前は「けん」と「めい」。島民らの「懸命」な思いを込めた。 *7-2:http://digital.asahi.com/articles/ASJBV72XMJBVUTIL049.html (朝日新聞 2016年10月28日) ハロウィーン、渋谷厳戒 初のホコ天・更衣室設置… ハロウィーンの「本番」10月31日が近づいてきた。今年はイベントが開かれる期間が4日間と長く、この間のイベントは、最も盛り上がる東京・渋谷だけで100件近くある。一方で、ゴミやトイレ、騒乱など年々、規模とともに問題も増えており、地元や警視庁は厳戒態勢。今年初めて渋谷駅近くを歩行者天国にし、混乱を防ぐ。 ■4日で催し100件 31日は月曜日にあたるため、ハロウィーン関連のイベントは前の週の金曜日から予定されている。 渋谷区の担当者は「人がいつ集まるか読めない」と嘆く。区は28日から11月1日まで、仮装のための更衣室や仮設トイレを渋谷駅周辺に設け、案内などのため、駅周辺に職員やボランティアを計120人置く。特に、トイレは深刻だ。昨年の10月31日前後、区には「トイレに入れない」「街中で尿のにおいがする」といった苦情が相次いだ。百貨店などのトイレで若者が仮装するために着替えたり、メイクしたりしたため、買い物客がトイレを使えなくなったからだ。外で用を足す人もおり、繁華街一帯では異臭が漂ったという。区は今年、渋谷駅周辺の3カ所に仮設トイレを置き、ゴミ集積所も増やす。さらに人だかりを分散させようと、区観光協会は駅から少し離れた代々木公園で31日、イベントを開く。参加者が放置するゴミも難題だ。区と地元商店街などは11月1日の朝に、約500人で繁華街のゴミ拾いをする。区によると、昨年のハロウィーンに関連する一般ゴミの収集量は2・3トンにのぼった。 ■DJポリス出動 多くの人出を見込む警視庁は28~31日の4日間、混雑に応じて渋谷駅近くの車道を開放し、歩行者天国にする。ハロウィーンの警備で車の通行を制限するのは初めてだ。大勢の若者が歩道からあふれ、事故につながることを防ぐためで、仮装した人が集まり始める午後7時以降を想定している。歩行者天国は、駅前のスクランブル交差点の先からファッションビル「SHIBUYA109」をはさんだ文化村通りの約300メートルと、道玄坂の約250メートル。交差点と地下鉄の出入り口は規制しない。駅周辺の3カ所で検問も行う。不審な車の侵入や暴走行為を阻止するためだ。渋谷署員に加え、機動隊の爆発物処理班や銃器対策部隊も出てテロを警戒。現場の警察官は頭に小型カメラをつけ、映像を警視庁本部に送る。英語、中国語、韓国語に自動翻訳できる拡声機を使い、集まった人が転ばないように誘導する。車上からマイクで呼びかける「DJポリス」も出動する。昨年の10月31日は土曜日で、夜に数千人が渋谷駅周辺に殺到し、警視庁は交差点周辺を数百人態勢で警備した。痴漢のほか、機動隊員に殴りかかったり、商店街のガラスを割ったりした容疑で計3人が現行犯逮捕された。警視庁は今年も最大で数百人規模を動員し、土曜、日曜にあたる29、30日の夕方以降を中心に警戒を強める。鎌谷陽之警備1課長は「集まる人数が予測しにくく、チャレンジングな警備になる」と話す。(池田良、小林太一) ◇ 〈日本でのハロウィーン〉 ハロウィーンは古代ヨーロッパのケルト民族の収穫祭が起源。米国では10月31日、仮装した子どもたちが「トリック・オア・トリート」と菓子をもらいにまわる習慣が文化となった。日本では2010年ごろから、仮装して「非日常」を楽しむ意味合いで人気が高まった。「日本記念日協会」によると、今年のハロウィーンの推計市場規模は前年比約10%増の約1345億円。バレンタインの約1340億円を初めて上回るとみられる。マーケティング会社「マクロミル」が首都圏の10~40代の1千人を対象に調査したところ、「仮装する」は28%。「仮装してお出かけする街」では渋谷が40%、2位の六本木は17%だった。 PS(2016年11月1日追加):主権者が政治を理解せず幼稚でいるのは、自分の利益のために政治を利用しようとする人にとっては願ってもないことで、例えば介護される立場になりながら現役並みに所得の高い高齢者はいないにもかかわらず、*8-1のようなヒューマニズムと根拠に欠けた政策を提案する人もいる。なお、介護される人が配偶者であったとしても、介護されるようになれば家事負担が困難になるため世帯が困窮するのは同じだ。そのような中、*8-2のように、「コストが安くて安全だ」と主張してきた原発が起こした事故の損害賠償や除染費用の超過分を国費で負担するよう、電気事業連合会の元気な人たちが政府に要望しているのは、税金の使い方の優先順位に関する認識が間違っているだろう。これまで、大手電力会社は総括原価方式で優遇されて莫大な資産を形成してきているので、電力自由化に向け送電会社を作って株式を上場するなど、独自の資金調達方法やビジネスがいくらでもあり、そんなことも自分で考えつかないようでは社会貢献できる企業にはなれない。 *8-1:http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2016103101002294.html (東京新聞 2016年11月1日) 介護保険、3割負担案が浮上 高所得の高齢者対象に 介護保険制度の見直しで、現役並みに所得の高い高齢者を対象に、サービス利用時の自己負担を3割に引き上げる案が政府内で浮上していることが31日、分かった。増え続ける介護給付費の抑制が目的。実施する場合、来年の通常国会に提出予定の介護保険法改正案に盛り込むことになる。ただ、介護保険の自己負担は制度スタートから一律1割で、昨年8月から一定以上の所得(単身で年金収入だけの場合年収280万円以上)がある人を対象に2割にしたばかり。浮上しているのは、2割負担の人の一部をさらに引き上げる内容。高齢者からの反発は必至で、調整は難航しそうだ。 *8-2:http://mainichi.jp/articles/20161004/k00/00e/020/174000c (毎日新聞 2016年10月4日) 福島原発、8兆円負担増 電事連、国費求める 電力業界団体の電気事業連合会(電事連)が、東京電力福島第1原発事故の損害賠償・除染費用について、東電を含む大手電力各社の負担額が当初計画を約8兆円上回るとの試算をまとめ、超過分を国費で負担するよう政府に非公式に要望していることが4日明らかになった。政府はこれまで「賠償・除染費用は原則的に原発事業者の負担」との立場を取ってきており、慎重に検討するとみられる。福島第1原発事故の賠償・除染費用は、(1)国がいつでも現金に換えられる「交付国債」を原子力損害賠償・廃炉等支援機構(国の認可法人)に渡す(2)東電は機構から必要な資金の交付を受け、賠償・除染に充てる(3)機構は後に東電を含む大手電力から負担金を受け取り、国に返済する−−という仕組み。賠償分は東電と他の大手電力が分担▽除染費用は機構が持つ東電株の売却益を充当▽中間貯蔵施設の費用は電源開発促進税で賄うことになっている。政府は2013年、賠償費用5.4兆円▽除染費用2.5兆円▽中間貯蔵施設の建設費などを1.1兆円と見込み、機構への資金交付の上限を9兆円とした。だが、関係者によると、電事連は、賠償費用が見通しより2.6兆円増の8兆円、除染費用が4.5兆円増の7兆円になると試算。また、東電株売却益も株価下落で1兆円減少し、合計で8.1兆円の資金が不足すると見積もっている。大手電力各社は「除染費用は東電株の売却益で賄えず、最終的に電力各社が負担を迫られる」とみている。一方、原発再稼働の停滞や、電力小売り自由化による競争激化などから大手電力の経営環境が悪化したとして、賠償・除染費用の超過分の政府負担を求めた。福島第1原発の廃炉費用を巡っては、東電が2兆円を工面しているが、数兆円規模の財源不足も予想される。東電ホールディングスは7月、廃炉費用などの負担支援を政府に求めている。今回の電事連の要望に廃炉費用は含まれていない。政府は福島第1原発の賠償や廃炉費用の負担について、5日から始める「東京電力改革・1F問題委員会」などで議論することにしており、電事連の要望も今後協議される可能性がある。 ●解説 事故つけ回し「無責任」 電気事業連合会が東電福島第1原発事故の賠償・除染費用の超過分を国に負担するよう要望した。だが、大手電力各社はこれまで「原発のコストは安い」と説明してきた。事故のつけを国に求める姿勢は、「無責任」との批判が免れない。電力各社には「原発は『国策民営』で推進されてきたのに、事故が起きたときは事業者が責任を取らされる」との不満がある。東電以外の大手には「東電の事故の責任を負わされるのは理不尽」との思いもある。だが、大手電力は原発稼働で巨額の利益を上げてきた。原発の「安全神話」に寄りかかり、事故対策を怠ってきた面は否定できない。福島第1原発事故に伴う賠償・除染費用が膨大な額に達する見通しになったからといって、国に負担を押しつけるのは筋が通らない。国が負担を引き受ければ、最終的に税金が投入され、国民負担につながる。福島第1原発事故の処理費用は、国が原子力損害賠償・廃炉等支援機構を通じていったん立て替えるが、最終的に電力各社が負担する仕組みだ。この制度の趣旨にも大きく反する。 PS(2016.11.2追加):*9-1に書かれているように、日銀は金融政策決定会合で、物価上昇率2%の目標達成時期の見通しを「2018年度頃」に先送りし、黒田総裁は、2013年4月に始めた大規模な金融緩和で2%の物価上昇目標(生鮮食品を除く)を達成することを目指したが断念し、達成できなかった原因を「①消費増税後の景気低迷」「②原油安」「③新興国経済の減速」といった環境変化によるものとした。しかし、②は原油高でコストプッシュインフレーションが起き、国民資産が海外に多く流出して国民生活が困窮しても物価さえ上昇すればよいという逆の発想であるし、①は消費税率に影響されない(結果として売り手が消費税を負担する)生鮮食品を除けば、消費増税後に物価が上がり、それに伴って需要が減るのは当然のことだ。また、③は景気を下支えしていた中国の金融緩和が出口に向かったため支えが弱くなったということで、文句を言いながらの中国頼みだったのだ。 一方、物価上昇・年金削減・介護負担増などで消費者の可処分所得を減らし、原発再稼働のために電力自由化という大改革を骨抜きにして自然エネルギーが普及するのを妨げたことは、エネルギー改革や民間投資による技術進歩と生産性向上を阻害した。そのかわりに、投資1円当たりの生産性向上が低い公共投資を増やしたため、全体の生産性は上がらなかったのである。つまり、国民には、気分でモノを買えるような人が少なくなっているので、需要増による物価上昇がなかったのは当然だったのである。 なお、*9-2の日銀法第二条に定められているように、本来、日本銀行は物価の安定を通じて国民経済を健全に発展させることを理念としている。しかし、その日銀が物価上昇(インフレ)目標を持って金融緩和を続けたことにより、実質資産や実質収入が減り、国民は将来にも不安を感じたので、消費を増やすどころか節約してできるだけ貯蓄せざるを得なかったのだ。そして、これは経済学の原則どおりであるため、やってみなくてもわかることだった。 実質家計収入と消費支出 2015.6.12日経新聞 2016.11.2日経新聞 2016.10.20東京新聞 *9-1:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12638027.html (朝日新聞 2016年11月2日) 物価2%目標、任期中断念 黒田日銀「18年度ごろ」 日本銀行は1日の金融政策決定会合で、物価上昇率2%の目標達成時期の見通しを「2017年度中」から「18年度ごろ」に先送りした。黒田東彦総裁は13年4月に始めた大規模な金融緩和で、2%の2年程度での達成を目指したが、18年4月までとなる任期中の達成を事実上断念することになった。物価目標の達成時期の先送りは今年3度目で、大規模緩和開始からは5度目となる。日銀は会合で、3カ月に1度まとめる「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」の物価上昇率(生鮮食品を除く)の見通しを下方修正した。16年度平均は7月時点の見通しのプラス0・1%からマイナス0・1%に、17年度は1・7%から1・5%に、18年度は1・9%から1・7%にそれぞれ引き下げた。黒田総裁は記者会見で、目標を達成できなかったことは「残念ではある」とし、任期中に達成できない責任は「物価がどうなるかということと私自身の任期に特別な関係はない」と言及を避けた。日銀は13年に政府と2%の早期達成を約束したとして、「早期実現に適切な政策を決定し実行することに尽きる」とし、任期中に達成できなくても、日銀として目標実現を目指す必要性を強調した。日銀は9月の会合で、物価目標が達成できなかった原因は、消費増税後の景気低迷や原油安、新興国経済の減速だったと検証し、政策の重点を、市場に流すお金の量の拡大から長期金利の操作に切り替えた。黒田総裁は会見で、目標が達成できなかった理由は「検証に詳しく書いている」と繰り返し、「世界共通の事象が影響している。欧米の中央銀行の予測も後ずれしている」と主張した。また、追加の金融緩和は見送った。黒田総裁は「企業や家計の両部門で、所得から支出への前向きなメカニズムは維持されている」と説明した。 <解説>異次元緩和の「敗北宣言」 日本銀行が「2%インフレ目標」を黒田総裁の5年間の任期中には達成できない、と初めて認めた。事実上、異次元緩和の「敗北宣言」に等しい。2年間で2%の目標を達成し、デフレから脱却する――。黒田総裁は3年半前、そう高らかに宣言して登場し、アベノミクスの第1の矢を担った。「今後は物価が上がる」というインフレ期待を生めば、早めに投資や消費をしようとする動きが広がって経済が活性化し、賃金も上がるというシナリオを描いた。しかし現実はそうはならなかった。最近は物価上昇率はマイナスが続き、経済成長率も低水準にとどまる。相変わらず消費はさえず、賃上げも期待通りには広がっていない。日銀は物価が上がらない原因を、(1)原油価格の下落(2)新興国経済の不調(3)消費増税の影響といった環境変化によるものとしてきた。とはいえ、5年間でも無理だとしたら、もはや環境を理由にはできないのではないか。政策手法に問題があるか、目標自体が間違っていると考えるべきだ。黒田総裁は記者会見で、今の政策を続ければ今後物価は上がると主張した。緩和策を支持する安倍晋三首相に配慮せざるをえない事情もあるのだろう。日銀の金融緩和の規模はケタ外れだ。市場への資金投入量は国内総生産(GDP)比で8割に達し、2割ほどにとどめている米欧をはるかに上回る。将来、緩和を縮小する「出口」では、金利の急上昇などの副作用が予想され、日銀はそうしたショックにも備えなければならない。黒田総裁は目標を任期中に達成できず、政策の正常化は「ポスト黒田」も視野に入れた、日本経済の長期的な課題となっている。 *9-2:http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H09/H09HO089.html 日本銀行法 (平成九年六月十八日法律第八十九号、最終改正:平成二三年六月二四日法律第七四号) 第一章 総則 (目的) 第一条 日本銀行は、我が国の中央銀行として、銀行券を発行するとともに、通貨及び金融の調節を行うことを目的とする。 2 日本銀行は、前項に規定するもののほか、銀行その他の金融機関の間で行われる資金決済の円滑の確保を図り、もって信用秩序の維持に資することを目的とする。 (通貨及び金融の調節の理念) 第二条 日本銀行は、通貨及び金融の調節を行うに当たっては、物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資することをもって、その理念とする。 (日本銀行の自主性の尊重及び透明性の確保) 第三条 日本銀行の通貨及び金融の調節における自主性は、尊重されなければならない。 2 日本銀行は、通貨及び金融の調節に関する意思決定の内容及び過程を国民に明らかにするよう努めなければならない。 (政府との関係) 第四条 日本銀行は、その行う通貨及び金融の調節が経済政策の一環をなすものであることを踏まえ、それが政府の経済政策の基本方針と整合的なものとなるよう、常に政府と連絡を密にし、十分な意思疎通を図らなければならない。 (業務の公共性及びその運営の自主性) 第五条 日本銀行は、その業務及び財産の公共性にかんがみ、適正かつ効率的に業務を運営するよう努めなければならない。 2 この法律の運用に当たっては、日本銀行の業務運営における自主性は、十分配慮されなければならない。 (以下略)
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2016,10,09, Sunday
TPPの範囲 TPPに関する 交渉参加に関する TPPによる 政府と野党の主張 決議 生産減少額 2015.11.26朝日新聞 2015.11.18日本農業新聞 2016/3/30及び10/11日本農業新聞 TPP関連施策 攻めと護りに分けた施策 2016年度の農林水産関係予算 (図表の説明:農業者が海外に販路を広げる方法は多いため、TPPは必要条件ではない。にもかかわらず、国会決議を無視し、農業はじめ日本へのデメリットを過小評価してTPPに驀進するのは問題が大きく、後で後悔しても取り返しがつかない。また、交渉結果とその正確な影響を示して国会で議論されていないため、国民の納得は得られていない。なお、TPP対策として行われる施策は、強い農業を作るためにはTPPとは関係なく必要なものも多く、予算は大きいが無駄遣いになりそうな項目もあるので、全体としてどれだけの予算を農業・TPP対策としてつぎ込み、どれだけの効果があったかの検証が必要だ) (1)「破壊すれば創造に繋がる」というのは甘すぎる *1-1のように、神戸大学の三品教授(専門は経営戦略論)が「破壊を伴う創造行為が産業競争力を左右する」とし、①日本の産業競争力起死回生の鍵は創造的破壊 ②生産現場は強いが大変化には対処できない ③米産業はネットワーク経済で強みを発揮している ④なぜ日本の絶頂期は一瞬で終わってしまったのか ⑤国はもはや産業競争力のけん引役とはなり得ない 等々、書いておられる。 しかし、①については、常日頃から必要な改革・改善はやり続けなければならず(英語は、Continuing improvement)、それを怠って破壊すれば新しいものが創造されると考えるのは甘すぎ、次に創造するものの形が見えていなければ破壊されただけに終わって創造はできない(ピンチをチャンスに変えることはできない)。また、次に創造するものは、当然のことながら実需で裏付けられていなければ成功しない。そして、国が実需を決めることはできないため、⑤のとおり、日本は、国主導で産業競争力の牽引を行う段階ではないのである。 また、②については、製造業は国の重点産業とされ、国民の安い賃金と勤勉さに支えられて国際的にも強かったが、重点産業とされなかった産業や公的資金で支えられてきた産業は生産性が低い。しかし、現在では日本国民の賃金は安くなく、高コスト構造も残ったままで、他に賃金の安い多くの国が製造業に参入してきたため、製造業も比較優位ではなくなったのである。さらに、日本の製造現場は優秀だが、狭い範囲の改善はできても経営意思決定を伴う改革はできないので、国民の人口構成や環境変化に伴う需要の変化に合った製品にシフトする大きな改革は、営業を踏まえた経営からしかできない。 ③は、日本でも経済のネットワーク化は既に進んでおり、そのネットワークは国境を超えているが、ネットワーク化の必要性は個々の経営体で異なり、ネットワーク化を進めさえすればよいわけではない。 また、④の日本の絶頂期が一瞬で終わってしまった理由は、i)日本は共産主義や朝鮮戦争で市場経済において競争相手なき生産者を担うことができたという千載一遇の幸運の下にあったが、その時代が終わり、それらの国々が安い賃金で競争相手として参入してきたこと ii)日本は幸運の下で工業生産において比較優位の輸出国になっていたが、それを他国と異なる技術力・勤勉さを持っている結果と勘違いして傲慢に振舞い、速やかに環境変化に対応せずに蓄えを費やしたこと iii)そのため低賃金で高い生産性を持つ振興国に太刀打ちできなくなったこと iv)それでも産業構造を変えずに同じスキームを続けようとしていること 等であり、政治・行政・経済学者・経営学者・経営者等のリーダーが問題なのである。 このような中、*1-2のように、米国では、次期大統領候補がTPPへの反対姿勢を示して発効への道筋が不透明になっているのに、日本政府は妥協を重ねて交渉をまとめた上、TPPの承認を急いで発効への機運を高め、他国の手続きを後押しするとのことである。もともと、TPPの発案者は日本の経産省で、事実に即してよく考えられたスキームではなく、一体化しさえすればグローバル化して輸出入が増えるという安易な思い付きで締結を進めているため、交渉内容や根拠は、開示して議論するに堪えるシロモノではなく、破壊しさえすれば創造できると考えている恐るべき政策なのである。 そのため、破壊されれば後戻りできない農地を有する農業分野に反対や慎重が多く、与党はTPPで予想されるメリットとデメリット、デメリットに対する対策とその効果を検証して、TPP参加への当否を決めるべきである。なお、*1-2にも、TPPで関税をなくしたり引き下げたりすれば製造業の輸出が活発になるかの如き記載があるが、実際にはTPPにより食品の輸入が増え、食品安全基準における主権を失い、生産コストの高い日本から外国への製造業の製品輸出は増えず、農業で独り負けして食料自給率を減らすだけだと思われる。 それでも、*1-3-1のように、首相が「TPP協定の承認案と関連法案の早期成立を目指し、他国に先駆けて国会で協定を承認して早期発効に弾みをつけるのが、自由貿易で経済発展を遂げたわが国の使命」などとしているのは、古い発想から抜け出せない経産省(経済界はその下部団体)の言いなりになっているためだが、このように役人(官)を使うどころか使われる人が連続して議員に当選して大臣や首相になっていくのが、日本の民主主義の未熟な点である。 また、*1-3-2は、「民進党にも隠れ賛成派がいるため、TPP反対に歯切れが悪い」と書いているが、民進党にも経産省系の議員や農業の育成より低価格の農産物という都市部出身の議員や製造業出身の議員はおり、自民党と同様だろう。しかし、本当に国益を護り、日本の将来に悔いを残さないか否かは、正確に日本語に訳された黒塗りでない資料を基に、影響調査や議論を行ってから判断すべきだ。 (2)農水省がTPP対策に3453億円もの補正予算を計上したが・・ *1-4-1のように、農水省は8月23日、農林水産関係の総額を5739億円とする2016年度第2次補正予算案を自民党の農林関係合同会議に示して了承され、これは、2015年度補正予算を43%上回る大幅増だそうだ。このうちTPP関連対策に2015年度11%増の3453億円、土地改良(農業農村整備)関連事業に同77%増の1752億円を確保したそうだが、TPP対策で総計いくら使って何をし、どういう効果があったのかを、明らかにすべきだ。 また、*1-4-2のように、9月27日、農林水産省は国内外での農産物の販売促進に充てるために、TPP対策の一環として農家から拠出金を集めるという論点を自民党の会合で示したそうだが、原発の販促は首相まで海外訪問して熱心に取り組み、経産省が製造業の販促をするのは無償であるのに、農水省が農産物の販促のためにTPP対策の一環として農家から拠出金を集めるのはおかしい。 (3)TPPは、日本政府(経産省)の主導だが、ぶっ壊すだけであること *2-1のように、TPPの経済効果について、米国は日本への農産物輸出増を約4,000億円と試算し、日本政府は米国以外の影響も含めて日本での生産減少額は1,300億~2,100億円に留まると試算している。品目別では、米国は米の対日輸出額が23%増えるとし、日本は生産減少額は0としており、牛肉も米国は対日輸出が923億円増とし、日本は生産減少額は311億~625億円としているため、日本は影響を過小評価していると言われている。 農水省は、「A.米国の輸出額が増えても他国産と置き換わる場合もあり、米国の輸出増がそのまま日本の生産減には繋がらない」「B.影響を緩和する国内対策を日本の試算に織り込んでTPP対策の効果が発揮されたという前提で生産量は維持できる」「C.米の場合は米国とオーストラリアに合計7万8400トンの国別輸入枠を設けるが、同量の国産米を備蓄で吸収するなどで影響はない」などが差の理由だとしているが、Aは甘すぎ、Bは対策の効果が不明であるうちに試算に織り込むのはおかしく、Cは一時的に備蓄してもそれが出荷される時が必ずあるのでタイムラグにすぎない。 そのため、*2-2のように、JA長野県グループは街宣車でTPPの情報公開等を訴える活動を始め、秋の臨時国会での審議に向けて、「国民への丁寧な説明と十分な審議を求めます」「TPPは農業農村、保険医療、食の安全、雇用など、私たちの生活に大きな影響を及ぼす恐れがあります」などのメッセージを流しているが、これは、TPPによってこれまで作り上げてきた農地や農業を打ちのめされる可能性の高い人たちとして当然のことである。 このような状況の中、*2-3のように、TPPの審議日程が窮屈であるため強行採決の可能性もあるとのことだが、*2-4のように、十分な情報開示もなく、試算は甘く、そのため本当の議論が深まらず、農家も国民も納得していないのである。そのような状況で、TPP発効を見据えた農業“改革”を行うのは、農家にとっても国民にとっても不幸だ。そして、この間、TPPに関わったKey Personは、甘利経済再生担当相(神奈川13区)、斎藤自民党農林部会長(千葉7区、経産省出身)、石原TPP担当相(東京8区)、小泉自民党農林部会長(神奈川11区)など、農業に殆ど関わりのない地域を地元とし、農業に関する知識のない人たちが多いため、この人事で国益を考慮した交渉をしたとは思えない。 なお、小泉自民党農林部会長が強く求めている全農の株式会社化も、そうしなければならない必然性がないため根拠を説明することはできず、農薬や肥料などの生産資材価格を政治が決めるのは市場主義に反している。そのため、自由競争を促すのがあるべき姿だ。 そして、佐賀県の場合は、私が国会議員となった2005年からすぐに、公認会計士として多くの日本系・外資系企業の製造業・サービス業を見てきた目で佐賀県の農業を見て改革案を出し、全農はじめ農協が協力して農業改革にとりかかり、すでに必要な改革は進んでいるのだ。そのため、全農の中野会長(佐賀県の農協出身)が言われる「方向に間違いはない」「改革には既に鋭意取り組んでいる」というのは本当であり、農地の大規模化、機械化、米以外への転作などの改革が遅れているのは東北であって、九州では進んでおり地域差があるため、日本全国を一緒にひっくり返せばよいわけではないのである。 (4)全農“改革”の不合理 全農改革を進捗管理するとして、*3-1のように、資材価格引き下げや農産物の流通構造の改革を議論しているのは、20年以上も時代遅れだ。資材価格は競争の自由度を増せばよく、*3-2、*3-3のように、化学肥料を韓国から買ってコストを下げるだけの発想では、日本の農産物は栄養価も味も悪くなり、農地が荒れることは経験済である。 それよりも、*3-5のように、今まで捨てていたものを有機肥料として活用すれば、農業だけでなく漁業にも役立ち、その地域や作物に合った堆肥をつくることもできる。ちなみに、佐賀県の場合は、肉牛の排泄物を肥料として使い、化学肥料は土壌を計って足りないものを補充するようにしてコスト削減しており、りっぱな作物ができている。そして、これらは、何も知らない人がめくらめっぽうに壊すのではなく、それなりの知識のある人が工夫し、地域を総動員して初めて行い得るものである。 <愚かな“農業改革”> *1-1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20160920&ng=DGKKZO07382980X10C16A9KE8000 (日経新聞 2016.9.20) 日本の産業競争力(上)創造的破壊、起死回生の鍵、強い経営で攻勢に転じよ 三品和広 神戸大学教授 (1959年生まれ。ハーバード大企業経済学博士。専門は経営戦略論) ポイント ○生産現場は強いが大変化には対処できず ○米産業はネットワークの経済で強み発揮 ○破壊を伴う創造行為が産業競争力を左右 産業競争力という概念が脚光を浴びるようになったのは1980年前後のことだ。日本で製造されたテレビや自動車が欧米諸国の市場を席巻し、貿易摩擦を引き起こし始めた時期にほかならない。ハイテクの最先端に位置する半導体メモリーのDRAMの品質で日本製が米国製を上回るというリポートを米ヒューレット・パッカードが公表、衝撃が走ったのも80年のことだ。予想外の展開に遭遇して、欧米諸国が産業競争力の分析に乗り出したのも無理はない。以下では日本の絶頂期と、それに続く衰退のプロセスに関する一つの解釈を述べる。日本の急伸が世界の意表を突いたのは、日本が保護貿易や為替管理と決別してから15年ほどしか経過していなかったからだ。決別当初は、日本の市場は輸入品に制圧され、企業は買収されるという悲観論が渦巻いていた。それが杞憂(きゆう)だったとわかるころには石油ショックが勃発し企業倒産が相次いだことから、新たな悲観論が日本を覆いつくした。日本製品が貿易摩擦を引き起こすなど、誰も夢想だにしなかったはずだ。競争力という概念が国次元ではなく、また企業次元でもなく、中間の産業次元に設定されたのは、明確な理由による。いくら日本が注目を集めたといっても、農業のように後進性の目立つ産業があった。企業次元に転じてトヨタ自動車を俎上(そじょう)に載せても、やはり住宅のように競争力に劣る事業がある。これに対し日本の競争力が目立った産業では、例外を見つけるのが難しかった。テレビではソニーや松下電器産業(現パナソニック)のみならず下位の三洋電機や日本ビクターですら、自動車ではトヨタのみならず下位のスズキやいすゞ自動車ですら、DRAMでは東芝やNECのみならず下位のシャープや沖電気工業ですら、競争力を発揮した。この事実が世界を驚かせた。しかし日本の絶頂期は長く続かない。いまやテレビとDRAMで産業競争力を誇るのは韓国で、日本企業は事業縮小・撤退を余儀なくされた。自動車でも日産自動車、マツダ、三菱自動車が外資に救済を仰ぐ事態を迎え、もはや産業競争力は死語と化した観がある。なぜ日本の絶頂期は一瞬で終わってしまったのか。そもそも日本の産業競争力は、生産現場や実務組織に根源を置いていた。新卒採用した社員を比較的狭い守備範囲に張り付けることで、真面目に働く人間なら誰でも練度が上がっていく体制を構築し、そこに人事考課と昇進制度を入れて社員の間で息の長い競争を促していく。さらに歩幅の小さな定期異動により社員が思考停止に陥る危険性を排除したうえで、それでも起きかねないミスを稟議(りんぎ)で組織的に潰していく。こうした工夫は、一方で目に見えるモノの設計や製造において大きな威力を発揮するが、他方で目に見えない犠牲を伴った。そこには経営人材の育つ余地がなく、最強の管理人材が経営にあたる結果、大きな変化に対処できなくなってしまったのである。この弱点を米国は鋭く看破して、反攻策を周到に準備した。やれ現地生産、やれ市場開放、やれ内需拡大と高飛車の要求を積み重ね、それに円高誘導やココム(対共産圏輸出統制委員会)規制を絡めて日本の霞が関と産業界を横から揺さぶるというのが、その骨子だ。反攻が一巡すると、仕掛けた米国も驚くほど、日本企業の経営は暴走、または迷走し始めた。その経緯については拙著「戦略暴走」(2010年)で触れている。米国は国際政治力を駆使して、グローバリゼーションの時代を呼び込む策も打っていた。新たに新興国市場の開拓が競争の焦点になると、経営上のボトルネックはモノづくりから販路にシフトする。過去の経験が生きない展開の中で、日本企業は大挙して安易な合弁契約に走り、新興国で悪戦苦闘を強いられた。執拗な波状攻撃を受けて、日本は産業競争力を著しく低下させた。個社次元で耐え抜いたのはトヨタくらいだ。企業経営はモノづくりだけでは成立せず、先行きが不透明になるほど、または多面攻撃を受けるほど、経営が浮沈を分けてしまう。そこに80年代の日本は致命的な弱点を抱えていたことを、われわれは反省材料とすべきであろう。ただし反省材料はもう一つある。反攻に転じた日本を米国が封じ込めるという第二幕が控えているからだ。そこで彼らが武器としたのはインフォメーション・スーパーハイウエー構想だった。これは副大統領になる前のアル・ゴア上院議員が提唱していたもので、最終的にインターネットの一般開放に結実した。米国の起死回生の一手により、世界を支配する原理は「規模の経済」から「ネットワークの経済」に移行した。同じモノを大量につくって安くするより、同じプラットフォームを多くの人々が使うことで生まれる便益が企業間競争の行方を左右し始めると、戦略の要衝は大きくシフトする。チャンスの窓が開いている期間は短く、初動で結果が決まってしまう。プラットフォーム間の短期決戦を制したのはいまのところグーグル、フェイスブック、アップル、アマゾン・ドット・コムなど米国ベンチャー勢に限られる。こうした変化を日本も看過していたわけではない。ハイビジョン映像用のMUSEデコーダー(信号変復調器)、総合デジタル通信網(ISDN)、第5世代コンピューターなど、国が資金を注ぎ込んで技術革新を先導しようとしたが、軒並み失敗に終わった。テレビ産業や自動車産業も日本流の「イノベーション」、すなわち技術革新に再起を懸けたが、薄型テレビやハイブリッドカーは救世主となり得なかった。薄型テレビを主導したシャープは台湾企業の救済を仰ぐに至り、ハイブリッドカーは米国市場で占有率3%台に到達したあたりで頭打ちとなっている。国はもはや産業競争力のけん引役とはなり得ない。社員間の公平な競争を入社後四半世紀も引っ張る日本の大企業も、しかりである。なぜならば、いま世界を席巻するイノベーションは破壊を伴う創造行為で、純然たる技術革新とは一線を画しているからだ。例えばアップルはデジタルカメラ、ビデオ、電子辞書、電卓、携帯電話、携帯情報端末(PDA)など、日本が得意としてきた産業多数を破壊した。破壊の標的となっている産業に身を置く企業が正面から対抗すれば、身の丈が縮むことは避けられない。それどころか過去に雇用した人々を抱え続ける企業は防戦に打って出ざるを得ない。護送船団の先頭に立つ国も同類だ。エレクトロニクスを押し流した創造的破壊の波は、既に自動車や産業機械に矛先を向けている。その次は医療や農業や物流に襲いかかる気配が濃厚だ。守勢をとっても勝ち目は見えない。しからば、破壊の標的を自ら断ち切り、攻勢をとる展開に持ち込むほうが得策であろう。そのためには、まずは実務の強さに経営の強靱(きょうじん)さを併せ持つよう日本企業自体を創造的に破壊する必要がある。一連のガバナンス(統治)改革で、その作業は緒に就いた。水面下では、新たな日本企業を一から興す作業も静かに始まっている。あとはどこに起死回生の一手を求めるかだ。そこで妙手が出れば日本が産業競争力を回復する日は意外と近いのかもしれない。 *1-2:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12589160.html (朝日新聞社説 2016年10月3日) TPPと国会 不安解消へ審議尽くせ 交渉を主導した米国では、民主、共和両党の次期大統領候補がそろってTPPへの反対姿勢を示し、発効への道筋は不透明になっている。そんな中で、日本の国会ではTPP承認案と関連法案の審議が本格化する。政府・与党はTPP承認を急ぐ構えだ。発効への機運を高めて他国の手続きを後押ししつつ、米国で高まる再交渉論を牽制(けんせい)するのが狙いだ。野党側は、農業分野などを懸念する民進党をはじめ反対・慎重論が強い。TPPをめぐっては今春の通常国会で審議入りしたが、議論が深まらないまま継続審議になった。いま、あえて審議を再開するというのなら、今後の暮らしや農業など国内業界に予想される影響について、丁寧にかつ徹底的に議論する必要がある。衆院TPP特別委員会の理事を務める自民党議員が「強行採決という形で実現するよう頑張る」と発言し、辞任する騒動があった。「承認ありき」で数の力を頼むことは許されない。与党は肝に銘じてほしい。そのうえで、野党を含めて望みたいのは、TPPで予想されるデメリットとその対策をしっかりと検証することだ。TPPの対象は幅広い。貿易を活発にするためにモノの関税をなくしたり、引き下げたりする。投資や金融、小売りなどのサービス分野の規制を減らす。著作権や特許、労働に関する規定も各国で歩調を合わせる。通商国家として発展してきた日本にとって、グローバル化への対応は避けられない。ただ、各国が妥協を重ねて交渉をまとめただけに、分野や項目ごとにプラスとマイナスが入り交じるのも確かだ。生活の安全・安心が脅かされないか、国内業界が打撃を受けて雇用が失われないか、といった不安は根強い。代表例が農業だろう。農林水産物の8割にあたる約2千品目の関税が撤廃され、ほかの品目の多くも引き下げられる。海外産の輸入が増えるのは必至で、消費者の食卓への不安のほか、農家の反対も続いている。政府は昨年末にまとめた分析で、コメへの影響について「(直前に決めた)対策の効果で、国内の生産量は減らない」と結論づけた。影響があるから対策を打つのに、順番が逆だ。政府をただし、情報公開を徹底させる。TPPの負の側面と向き合い、政府の対策が必要かつ十分かどうかを考える。そんな国会審議を求める。賛否の結論ありきの論戦は不毛だ。 *1-3-1:http://qbiz.jp/article/95543/1/ (西日本新聞 2016年10月7日) 首相、TPP他国に先駆け承認を 関係閣僚会議で 環太平洋連携協定(TPP)に関する関係閣僚会議が7日、首相官邸で開かれ、協定の承認案と関連法案の早期成立を目指すことを確認した。出席した安倍晋三首相は「他国に先駆けて国会で協定を承認し、早期発効に弾みをつける。自由貿易で経済発展を遂げたわが国の使命と確信している。この国会でやり遂げなくてはいけない」と述べた。承認案と関連法案は衆院特別委員会での審議入りを控えている。閣僚会議ではTPPを担当する石原伸晃経済再生担当相が、会談した各国要人と再協議を行わないことで一致したと報告した。石原氏は会議後の記者会見で、米大統領選で共和、民主両党の候補がTPPに反対していることに関連し「日本が率先して(承認を)行うことで、オバマ大統領による議会承認を後押しする」と述べた。TPPに関する関係閣僚会議は昨年9月以来。政府が機運を高めようとしているほか、経済界からも早期承認の要望が出ている。 *1-3-2:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20161005&ng=DGKKZO08017530V01C16A0PP8000 (日経新聞 2016.10.5)民進、歯切れ悪いTPP反対、党内に隠れ賛成派も 今国会の焦点は、環太平洋経済連携協定(TPP)承認案の行方に移る。野党第1党の民進党は国内の農産物保護が不十分で、自動車産業などへの利点も少ないなどと主張し反対する。党内には推進派もいるが、発言力のある反対派に配慮せざるを得ない党内事情もある。歯切れの悪い印象はぬぐえない。民進党は3月の結党時に「経済連携協定によって自由貿易を推進する」との立場を掲げた。しかし、安倍政権が合意した協定案は「国益が守れたとは評価できない」との考え方に立つ。最大の反対理由は、牛肉・豚肉など農林水産物の重要品目の保護を求めた衆参農水委員会の決議との整合性だ。決議では重要品目を「聖域」と位置づけ、10年を超す段階的な関税撤廃も認めないなどとした。民進党は牛肉・豚肉の大幅な関税引き下げなど「聖域として守れた水準ではない」(大串博志政調会長)との立場だ。自動車分野で得た「成果の乏しさ」も強調する。完成車の対米輸出で関税撤廃まで約30年の期間を設けたことを「関税には触らないと言っているに等しい結果」と批判。政府が輸出増の試算を示せていないことも問題視。大串氏は4日の記者会見で「攻めきったとはいえない」と語った。3つ目は「交渉過程が情報開示されていない」との主張だ。先の通常国会中に示された日米の交渉録は全面的に黒塗りだった。TPP参加判断の根拠となった政府の国内農業への影響試算についても正確性を疑問視している。交渉前に3兆円と見積もった農林水産物の生産額減少が、大筋合意後の農林水産省試算では最大2100億円にまで圧縮された経緯が不透明だとしている。党内事情も大きい。党の見解はTPP推進派と反対派が混在する党内の「最大公約数」で意見を集約しただけとの見方もある。9月末に開いた細野豪志代表代行のグループ会合では「農村ではなく都市部でどう説明するのか」などの意見が相次いだ。自動車関連企業が集積する中部地方選出の議員は「民進党の主張は話にならない」と言い切る。旧民主党政権下では当時の野田佳彦首相(現民進幹事長)が、党内反対派を押し切って関係国との事前協議入りを決めた経緯があり、これも民進党の見解の分かりにくさにつながっている。 *1-4-1:https://www.agrinews.co.jp/p38505.html (日本農業新聞 2016年8月23日) 総額5739億円 4割増 TPP対策に3453億 補正予算農水関係 農水省は23日、農林水産関係の総額を5739億円とする2016年度第2次補正予算案を、自民党の農林関係合同会議に示し、了承された。2015年度補正予算を43%上回る大幅増。このうち環太平洋連携協定(TPP)関連対策には同11%増の3453億円、土地改良(農業農村整備)関連事業は同77%増の1752億円を確保した。24日に閣議決定する。目玉と位置付ける「中山間地域所得向上支援対策」には、300億円を計上した。内訳は、中山間地域で収益性の高い農産物に取り組む際の計画策定に5億円、計画に基づく基盤整備に70億円、施設整備に25億円。また、産地パワーアップ事業と畜産クラスター事業の優先枠各50億円、土地改良事業の優先枠100億円と組み合わせる。輸出力の強化策には270億円。そのうち空港や港に近い卸売市場のコンテナヤード(集積場)など、国内外の輸出拠点の整備が203億円を占める。農林水産分野のイノベーション(技術革新)推進にも117億円を計上する。TPP対策のうち産地パワーアップ事業に570億円、畜産クラスター事業には685億円を計上。いずれも前年度を1割超上回る。また、農地のさらなる大区画や汎用(はんよう)化に370億円、水田の畑地化や畑地・樹園地の高機能化に496億円、草地整備にも94億円を盛り込んだ。この他、飼料用米の拡大に伴い、水田活用の直接支払交付金の財源を144億円積み増す。熊本地震などの災害復旧等事業には713億円を計上した。大幅増額を受け、自民党の西川公也農林水産戦略調査会長は会合で「すばらしい補正予算ができた」と指摘。今月末に概算要求する17年度予算でも、万全な金額を確保したい方針を強調した。. *1-4-2:http://qbiz.jp/article/94797/1/ (西日本新聞 2016年9月27日) TPP対策、農家から拠出金も 強制徴収で販売促進制度を法制化 農林水産省は27日、環太平洋連携協定(TPP)対策の一環として、農家から拠出金を集め、国内外での農産物の販売促進に充てる「チェックオフ制度」の論点を自民党の会合で示した。制度を法制化する場合は、拠出金の強制徴収が避けられないとの考えだ。拠出金の強制徴収は、恩恵へのただ乗りを防止し、制度の公平性を確保するのが狙い。しかし、お金を納付しない場合は、罰則の適用も考えられるため、制度導入には一定の負担を強いられる農家から幅広い理解を得る必要がありそうだ。農水省が会合で示した資料によると、米国などで導入されているチェックオフ制度は、集めたお金の使い道を、国内外での販売促進や、調査研究などに充てると法令で決めている。日本で導入する場合は、強制徴収に見合うお金の使い道や、金額を定める必要があると説明した。お金を強制徴収される農家の同意が不可欠とも指摘した。海外では、法制化の際に品目ごとの業界団体が自ら農家に説明しているほか、業界の任意の仕組みから始め、業界内の合意形成に取り組んでいるとした。会合後、この検討課題を担当する福田達夫衆院議員は記者団に「(日本では)養豚業界が熱心だ。まずは業界がどういうことをやりたいのか提案してほしい。まだ段階として詰まっていないところがある」と述べた。 <TPPは日本政府主導であること> *2-1:http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=37594 (日本農業新聞 2016/5/21) TPP試算 日米で大きな開き 国内対策 効果に疑問も 環太平洋連携協定(TPP)の経済効果をまとめた日米両政府の試算が出そろった。米国は日本への農産物輸出が約4000億円増えるとはじくが、日本は米国以外の影響も含めて生産減少額は1300億~2100億円にとどまると見込む。日本政府の試算には、以前から影響を過小評価しているとの指摘もあり、試算について一層丁寧な説明が不可欠だ。米国の政府機関・国際貿易委員会は18日、TPPが米国経済に与える影響を分析した報告書を出した。品目別に見ると、米国の試算では米の対日輸出額は23%増えるが、日本の試算では生産減少額はゼロ。牛肉も、米国の試算で対日輸出は923億円増えるが、日本の試算では生産減少額が311億~625億円で差がある。米国の輸出額が増えても他国産に置き換わる場合もあるため、輸出増加がそのまま日本の生産額減少につながるわけではない。だが、影響を緩和する国内対策を日本の試算に織り込んでいることが試算の差の大きな理由だ。日本政府がまとめた影響試算では、関税撤廃・引き下げによる国産価格低下の影響だけを見ている。コスト削減などのTPP対策の効果が発揮されたという前提で生産量は維持できるとする。例えば米は、米国とオーストラリアに合計7万8400トンの国別輸入枠を設けるが、同量の国産米を備蓄で吸収することなどを理由に影響はないとする。一方、米国の試算ではこうした対策を織り込んでいない。日米の違いについて農水省は「前提が異なるため、単純に比較できない」とする。TPP対策を行うことが既に決まっているため、対策の効果を入れない状態で再試算する考えはない考えも度々示している。ただ、対策の効果が具体的に見えない段階で試算に織り込むのは適当ではなく「過小評価」との批判が野党から出ている。 *2-2:https://www.agrinews.co.jp/p38582.html (日本農業新聞 2016年9月2日) TPP情報開示 十分な審議訴え 街宣車県内リレー JA長野県グループ JA長野県グループは1日、街宣車で環太平洋連携協定(TPP)の情報公開などを訴える活動を始めた。2台の軽トラックが県内JAをリレーして、9日まで各地を巡回。秋の臨時国会での審議に向け、県民にアピールする。街宣車は、荷台に「国民への丁寧な説明と十分な審議を求めます」などと描いた看板を掲示。スピーカーからは「TPPは農業農村、保険医療、食の安全、雇用など、私たちの生活に大きな影響を及ぼす恐れがあります」などのメッセージを繰り返し流す。同日、長野市のJAビルを出発した街宣車は、県東部のJA長野八ケ岳と県南部のJAみなみ信州に引き渡された。今後、各JAが街宣車を引き継ぐ。9日には、同グループと生協など38団体でつくる連絡会が同市内でTPP学習会を開催。街宣車は、この会場をゴールに県内を走る。JA長野中央会は「TPPは農業の問題だけにとどまらない。県民の皆さんに一緒に考えましょう、と伝えたい」(農政対策課)と意気込む。. *2-3:https://www.agrinews.co.jp/p38540.html (日本農業新聞 2016年8月27日) TPP 審議日程 窮屈に 強行採決の可能性 政府与党 環太平洋連携協定(TPP)承認案の審議が、9月召集の臨時国会で再開する。11月8日の米大統領選までの衆院通過を目指す政府・与党。だが民進党代表選の影響で召集日は26日にずれ込む見通し。審議日程が窮屈になり、強行採決の可能性もある。政府・与党は、臨時国会を9月13日に召集し、TPPの審議時間を確保する構えだった。だが民進党代表選が15日に設定され、26日召集で調整せざるを得なくなった。同党の新執行部が決まらなければ、事実上、審議が進められないためだ。約2週間のずれ込みだが、政府・与党には「かなり痛い」(政府筋)。米大統領選候補がTPP反対を強調する中、「大統領選までに衆院を通過させ、日本が承認する見通しを付ける」(同)ことで、米国の早期批准を促す考えがあるからだ。26日召集になれば、2016年度第2次補正予算案の審議などを優先し、衆院TPP特別委員会の審議再開は、10月中旬にずれ込むとみられる。参院選でTPP反対を掲げた民進、共産などの野党の厳しい追及は必至で、11月8日までに衆院通過が「微妙」(自民党幹部)な情勢だ。円滑な審議に向け、自民党は臨時国会で衆院TPP特別委員長を西川公也氏から塩谷立氏に代える。通常国会では、西川氏の著作とされる「TPP内幕本」が審議停滞の一因となったためだ。審議日程を野党と調整する筆頭理事も森山裕前農相に交代し、万全を期す。与党側は、衆院通過までに、通常国会(約23時間)と合算して40時間程度の審議を想定する。だが野党はゼロからやり直すとの考え。8月に就任した山本有二農相らのTPPへの答弁能力も未知数で、政府・与党内には「与党だけで強行採決もやむを得ない」との指摘もある。 *2-4:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/359145 (佐賀新聞 2016年9月24日) 「TPP議論不十分」 全農・中野会長、国に疑問 環太平洋連携協定(TPP)の承認案・関連法案審議が焦点となる臨時国会(26日召集)を前に、全国農業協同組合連合会(全農)会長を務める中野吉實JA佐賀中央会会長は、佐賀新聞社のインタビューに応じた。早期成立を目指す政府、与党の姿勢に対し、「議論は尽くされておらず、国の主張を農業関係に押し付けようという風潮があるようだ」と疑問を呈した。通常国会で政府がTPP関連文書をほとんど黒塗りで開示したことに触れ、「黒塗り資料では議論は深まらない。農家も納得していない」と批判し、十分に議論するようくぎを刺した。TPP発効を見据えた農業改革の一環で、小泉進次郎自民党農林部会長が強く求めている全農の株式会社化には、海外企業から買収される懸念を示し「株式会社化の強制は断固反対と言わざるを得ない」と明言した。農薬や肥料など生産資材価格を巡る自民党プロジェクトチームとの議論については、「改革に後ろ向きと言われるが、自己改革には鋭意取り組んでいる」と強調した。 <全農“改革”> *3-1:https://www.agrinews.co.jp/39043?page=2 (日本農業新聞 2016年9月30日) 全農改革を進捗管理 来週にも提言 業界再編へ法整備 規制改革推進会議 政府・与党は11月に取りまとめる環太平洋連携協定(TPP)中長期対策の一環で、資材価格引き下げや農産物の流通構造の改革を議論している。29日にはこうした農業改革を集中議論する未来投資会議の「ローカルアベノミクスの深化」会合と規制改革推進会議の農業ワーキンググループ(WG)が合同会議を開き、WG座長の金丸恭文フューチャー社長が検討方向の試案を示した。試案は、両会議による提言のたたき台となる。試案では、資材価格の低減などへ関連企業の競争を促すため、業界再編が必要だと強調。再編を起こす「重要なツール」として、全農の資材の仕入れや農産物販売の改革を位置付けた。改革を促すため、規制改革推進会議による農協改革の進捗管理の一環として、全農の組織体制の見直しや役職員の意識改革、外部人材の活用などを重視して管理していくとした。業界再編に向けては、税制支援などを措置する産業競争力強化法や、公正取引委員会の監視強化など独占禁止法の活用も促した。改革の着実な推進を担保する法制度を、次期通常国会で検討することも求めた。両会議の提言を受け、自民党農林水産業骨太方針策定プロジェクトチームを中心に、具体策の検討が加速する見通しだ。一方でJAグループも、全農が扱う肥料の銘柄数を絞り込むことで工場の集約化につなげるなど、業界再編を目指す方針を既に掲げている。ただ、政府・与党内には、改革の踏み込みを求める声も強い。11月のTPP中長期対策の取りまとめ以降も、規制改革推進会議の進捗管理を通じて、全農を中心とするJAグループの改革の実践に、厳しい目が向けられる構図が続きそうだ。. *3-2:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20160907&ng=DGKKZO06959210X00C16A9MM8000 (日経新聞 2016.9.7) 農業改革、肥料値下げ促す JA全農が高コスト批判に対応 銘柄数半減 全国農業協同組合連合会(JA全農)は、国際的にみて割高との批判が強い肥料や農機の生産コスト削減策を打ち出す。コメ農家が使う肥料の銘柄をいまの約2000種から半分に減らし、1品種あたりの生産量を増やして値下げにつなげる。肥料や農機など農業資材をめぐっては、環太平洋経済連携協定(TPP)への対応策を話し合う自民党のプロジェクトチーム(委員長・小泉進次郎農林部会長)がJA全農に値下げを強く求めている。JAグループが近く公表する改革案は、TPP参加をにらんで農業の高コスト体質の改善を迫る政府・自民党の批判をかわす狙いもある。国内でコメ向けの肥料を製造するメーカーは約3000社にのぼる。JA全農はこうしたメーカーから肥料を買い取り、地域の農協を通じて農家に販売している。JA全農が扱うコメ向け肥料は地域限定品など約2300種に及ぶ。成分や効果が似通った製品が異なる銘柄で売られているケースも目立つ。肥料メーカーは少量多品種の生産体制をとるため、JA全農への卸価格はどうしても高くなる。JA全農はメーカーから買い取る銘柄の数を「半分あるいはそれ以下」(幹部)に抑えて卸価格の引き下げを促す。肥料代が安くなれば、農家の生産コストは下がる。農林水産省も銘柄数の増加に歯止めをかける制度改正を検討する。JA系の肥料メーカーのなかには銘柄の削減でJA全農との取引が減り、経営が苦しくなるところも出てくるとみられる。「業界再編のきっかけになる」(業界関係者)との見方は多い。農水省によると、韓国のある肥料メーカーは生産能力136万トンに対し、銘柄数は52。一方、日本のあるメーカーでは生産能力31万トンに対し、銘柄数は500近い。日本の肥料価格は平均で韓国の2倍に達している。JA全農は生産コストの2割を占める農機でも調達方法を見直す。大規模な農業法人と連携し、安価なコンバインやトラクターを農機メーカーから共同購入する仕組みをつくる。大規模な農業法人はコスト削減を狙って簡素な農機を購入する傾向があるが、JA全農での扱いは不十分だった。また農薬では開発費を抑えたジェネリック農薬の発売を検討する。 *3-3:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20161004&ng=DGKKZO07931020T01C16A0KE8000 (日経新聞 201.10.4) 農業の効率化と地方創生(3)化学肥料で穀物単収6~10倍に 東京大学准教授 川島博之 第2次世界大戦が終わったころから農業の効率が飛躍的に向上しました。効率向上の要因は農薬、農業機械など色々ありますが、最大の功労者は空気中の窒素から作る化学肥料です。農作物の生産量を増やすには、(1)農地面積を広げる(2)単位面積当たりの収穫量(単収)を増やす――の2つの方法があります。人類が農業を始めてから長い間、単収はほぼ一定でした。人類は農地面積を広げることに注力し、それが土地の奪い合いにつながりました。現在でも領土問題は戦争の最大の原因ですが、それは人類に農地が重要だというメッセージが刻み込まれているためでしょう。19世紀に土壌中の窒素含有量を増やすと、穀物単収が増えることが分かりました。欧州では農地に窒素を供給する方法として、チリで採掘された硝石が使われました。しかし、地下資源には限りがあるため、19世紀末の欧州では、硝石を掘り尽くすと食料危機になると心配されていました。その悩みを解決したのが空気中の窒素から化学肥料を作る技術です。20世紀初頭のドイツで開発され、開発者の名前にちなんでハーバー・ボッシュ法といいます。空気が原料なので、いくらでも生産できます。化学肥料は著しい効果を発揮しました。人類が農耕を始めてから長い間、穀物単収は1ヘクタール当たり1トン程度でした。一生懸命に耕し、苦労して堆肥や厩肥(きゅうひ)を投入しても、同2トン程度にしかなりませんでした。それが、化学肥料を投入すると目を見張るような速度で増加し、現在、先進国では穀物単収は同6~10トン程度になっています。あまりにも化学肥料が効いたため、化学肥料に不信感を抱く人々もいます。副作用もあると考え、従来型農法である有機農業に取り組んだりしています。しかし、化学肥料なしでは、現在の世界の73億人もの人口を扶養できません。もし、化学肥料を全く使用しなければ、地球上にはその半分ぐらいの人々しか生きることができないでしょう。一方、アフリカなどの発展途上国でも先進国並みに化学肥料が使われるようになれば、地球は現在の2倍の人口でも楽に扶養できると思います。 *3-4:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B7%9D%E5%B3%B6%E5%8D%9A%E4%B9%8B 川島博之氏の略歴のみ引用:東京都生まれ。1977年東京水産大学卒業、1983年東京大学大学院工学系研究科博士課程単位取得の上退学。東京大学生産技術研究所助手、農林水産省農業環境技術研究所主任研究官、ロンドン大学客員研究員などを経て、現在、東京大学大学院農学生命科学研究科准教授。 *3-5:http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=37949 (日本農業新聞 2016/6/18) 大地と海 連携 ホタテの天敵・ヒトデを堆肥化 北海道・JAつべつ×網走、西網走2漁協 漁師の悩みを農家が解決する試みが、北海道北東部の津別町で始まっている。キーワードは「ヒトデ」。特産のホタテを食い荒らす天敵を、堆肥にして作物を育てようという作戦だ。ヒトデの処分費用、堆肥の原料コスト双方が削減できる。堆肥化に挑むのはJAつべつ。来年から本格的に畑作に利用する。漁協と共に川の水質を守る植樹活動にも取り組み、大地と海をつなぐ活動を展開する。農家と漁師が手を組んだのは、網走湖の汚染問題が背景にある。湖には網走川の淡水が流れ込んでいるが、2001年の台風で農地の土砂が流出し、湖が汚染されて真っ赤になり、漁業を脅かした経緯がある。そこでJAと網走、西網走2漁協が話し合いを重ね、11年に「網走川流域農業・漁業連携推進協議会(だいちとうみの会)」を立ち上げ、流域の環境保全に乗り出した。「農業と漁業がしっかり手を組んで地域を支えていかなければならない。われわれには上流域としての大きな責任がある」と、同協議会副幹事長を務める酪農家、山田照夫さん(69)は意義を強調する。双方の問題解決につながる試みの一つが、ヒトデの堆肥化だ。ヒトデはオホーツク海の特産であるホタテを食べるため、漁協にとっては天敵。年間600トンものヒトデが大発生することもあり、漁師の悩みの種だ。そこでJAは13年から、ヒトデの堆肥化を考え始めた。ホタテと共に水揚げされた20トンほどのヒトデを搬入し、樹皮を発酵させたバーク堆肥を混ぜることで、完熟堆肥を作ることに成功した。試しにテンサイの畑に施用したところ、収量や品質は問題ないことが分かった。漁協は従来、ヒトデの処分を1キロ15~20円で業者に頼んでいた。600トンを処理すれば、費用は最大で1200万円にも上る。堆肥化が軌道に乗れば、この膨大な処分費用の削減につながる。JA側も堆肥の原料コストを削減でき、互いにメリットになる。JA営農部の有岡敏也部長は「ジャガイモなど他の作物にヒトデ堆肥を使っても、収量や品質には問題ないだろう」と手応えをつかんだ。漁師の間では「ヒトデには虫が嫌がる成分がある」と言われており、堆肥にもその効果が表れればさらにメリットが生まれる。今年は秋にヒトデを搬入して堆肥化し、17年産の作付けから本格活用する計画だ。 ●植樹、清掃も 協議会は毎年、植樹活動にも取り組んでいる。「大地と海をつなぐ植樹」と題し、14日には農家と漁師ら130人が参加し、アオダモやハンノキなど300本以上を植えた。こうした活動の結果、網走川流域の網走市、美幌町、大空町の農業関係者も集まる場になり、女性部からも参加する。26日には4市町で流域の一斉清掃事業も開かれる。協議会の新谷哲章幹事長は「土壌環境や水質への視線は今後さらに厳しくなってくる。漁業、農業が経済を支える町が多い道内で、モデルとなる取り組みにしていきたい」と先を見据える。 PS(2016.10.10追加):*4に、「①酪農家が、補助金の関係で原料生乳の販売先を自由に選べない」「②企業による農地の実質所有解禁は国家戦略特区だけの例外にしてはならない」「③生産性の低い農業資材メーカーの再編などを支援する新法の制定を提言した」「④重要なのは公正で自由な競争が安くて優れた商品やサービスを生む環境を整えることだ」と書かれているが、このうち①は、農業者の政治活動を農協が行うのではなく、農業者の政治連盟を作ることで解決するだろう。また、②は農業生産法人を作ることにより既に解決されており、本当に農業をやろうとする企業は、JR九州のように農業生産法人の子会社を作って既に農業に参入している。にもかかわらず株式会社でなければ農業ができないなどとする企業が農業に参入することは(理由を長くは書かないが)むしろ弊害の方が大きい。さらに、農業機械価格が高すぎるのは問題だが、その原因は機械メーカー等の独占・寡占であるため、③のように政府がメーカーの再編などを支援する新法を制定するのは逆効果であり、④のように公正で自由な競争を行って外国からでも自由に機械や資材を購入できるよう、公正取引委員会がしっかり働くのが筋である。 *4:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20161010&ng=DGKKZO08196920Q6A011C1PE8000 (日経新聞社説 2016.10.10) 自由な競争で農業の成長力を高めよう 安倍晋三首相は今国会の所信表明演説で、生産から流通、加工まで農業分野の構造改革を進める決意を表明した。農業の競争力を高めるために肝心なのは、成長を阻む旧弊や横並びの保護策を見直し、企業の新規参入を活発にして創意工夫を引き出すことだ。改革を加速してもらいたい。安倍政権は農業協同組合制度の改革などで一定の成果をあげた。しかし、農業分野には旧態依然とした制度が残る。たとえば酪農家は事実上、原料生乳の販売先を自由に選べない。50年も前に制定された暫定措置法が存続し、生乳を原則すべて地域ごとの「指定団体」に出荷しないと補助金がもらえない仕組みだからだ。政府の規制改革会議は5月にまとめた答申で規制緩和の結論を先送りしている。新たに発足した規制改革推進会議は、今秋まとめる改革策で自由な競争環境の実現を提言してほしい。農林水産省の統計でコメの生産額は2014年で1兆4370億円、生乳は6979億円と農産物の1、2位を占める。しかし、03年と比べるとコメの生産額は38%減り、生乳も2%弱の増加にとどまる。トマト(22%増)やレタス(31%増)に比べ成長力は劣る。競争力の弱い農産物は手厚い保護で守る。そんな競争を排除する横並びの保護政策が成長を阻害してきた結果だ。これでは将来の展望が描けない。企業による農地の実質所有解禁は国家戦略特区だけの例外にしてはならない。成長を後押しする競争には企業の新規参入が不可欠だ。規制改革推進会議と未来投資会議は6日に合同会合を開き、生産性の低い農業資材メーカーの再編などを支援する新法の制定を提言した。農業資機材の価格や農産物の流通コストの高さが農業所得の拡大を阻む要因とみており、再編で効率化を促す狙いがある。非効率な企業の再編は必要だ。ただ、より重要なのは公正で自由な競争が安くて優れた商品やサービスを生む環境を整えることだ。これまで大部分の農家は肥料や農薬、農業機械を地域の農協から購入してきた。一般の消費財のように価格の安さやサービスの内容を農家に訴求し、競う環境が実現すれば再編はおのずと進む。農業分野に自由な競争を阻害する構造問題はないか、公正取引委員会もこれまで以上に目を光らせてほしい。 PS(2016.10.10追加):*5のように、麻生財務相は、「①自由貿易には大いなる意義があると強調し」「②保護主義の広がりに強い懸念を示し」「③過度な悲観論に陥ることなく、潜在成長率の引き上げに正面から取り組むと指摘した」そうだが、グローバル企業は、既に自由貿易ではなく相手国に生産及び販売拠点を作っているので、①は30年ほど古いテーゼだ。しかし、自国の柱になる産業を保護・育成することは必要であるため、②は必ずしもそうとは言えない。さらに、③は、何もないところから出発する開発途上国と異なり、先進国のGDPの成長率が低いのは当然であって、現在の日本は、国民一人一人の豊かさ(購買力平価による一人当たりGDP)を比較して、これを増加させなければならない時期なのである。そのため、財務相がこのような発言をすることこそ、悲観要因だ。 発展段階別 $と購買力平価による アジアの購買力平価による 先進国の 一人当たりGDP成長率 GDP比較 一人当たりGDP 食料自給率推移 (グラフの説明:先進国ほど「一人当たりGDP成長率(「一人当たりGDP」ではない)」は低い。また、物価の高い日本では購買力平価によるGDPの順位が$ベースより低く、アジアの中で比較しても日本の購買力平価による一人当たりGDPは高くない。さらに、先進国の中で、日本の食料自給率は著しく低い) *5:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20161008&ng=DGKKASDF08H02_Y6A001C1MM0000 (日経新聞 2016.10.8) TPP推進を確認 麻生財務相、米長官と会談 麻生太郎財務相は米ワシントンで7日、米国のルー財務長官と会談し、環太平洋経済連携協定(TPP)の実現に向けた取り組みを互いに進めていくことを確認した。麻生財務相は会談後、日銀の黒田東彦総裁と開いた会見で、「自由貿易には大いなる意義がある」と強調し、保護主義の広がりに強い懸念を示した。麻生財務相は会見で、過度な悲観論に陥ることなく「潜在成長率の引き上げに正面から取り組む」とも指摘した。働き方改革などの構造改革や生産性の向上につながるインフラ整備などを進める考えを表明。さらに、デフレ脱却を確実にするためには「継続的に賃金を上昇させることが極めて重要だ」と述べた。20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議では金融緩和が長期化することの副作用が議論された。黒田総裁は会見で「金融政策だけでバランスのとれた成長につながるというのは難しい」と指摘。「財政政策、構造政策といったあらゆる政策手段を用いてバランスのとれた成長を実現していくという考え方が共有された」と説明した。 PS(2016年10月13日追加):*6-1のように、JR九州ファーム(本社:佐賀県鳥栖市)が長崎県松浦市で大規模にアスパラガスの生産を行い、一般主婦・警察官・建築会社出身の人を雇用しているのは面白いが、環境意識の高さを示す洗練されたJR九州のロゴがあった方が世界で周知されやすいと考える。また、雇用された主婦は需要者の要望をキャッチしやすく、建築会社経験者はあちこちの現場で人や機械を廻して仕事を進めるのが得意で、警察官経験者は警備を任せられ、元JR職員は時間に几帳面など、前職による得意技もありそうだ。なお、*6-2で、JR九州の青柳社長が、「今後、鉄道と相乗効果のある事業に進出したい」と言っておられるが、その地域はリアス式海岸の美しい場所であるため、農林漁業の現場自体を鉄道と相乗効果のある観光地にすることもできそうだ。また、「赤字ローカル線を絶対に廃線にしないとは言い切れない」とも言っておられるが、駅ビルや高架下を充実して使うことにより便利な街づくりを進めることができ、そこから膨大な収益を上げることもできるため、JR九州の場合は、まず既に所有している資産をスマートに有効活用するのが最も安全確実な収益獲得方法だと思われる。また、赤字ローカル線は赤字になる理由があるため、その理由を精査して解決するのが資産を壊さない方法だ。 *6-1:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/364999 (佐賀新聞 2016年10月11日) JR九州、長崎・松浦で営農 アスパラ特産に 長崎県松浦市にあるJR九州ファーム(鳥栖市)の農場で今年、アスパラガスが初めて収穫された。同社は九州最大のアスパラガス農場にしたい考えで、担い手不足に悩む地元は企業的な農業経営を通じた生産力アップ、特産品化に期待している。ただ、外部からの参入を不安視する声もあり、同社は地域との連携を密にする姿勢を打ち出している。 ▽自慢 長崎県のアスパラガス生産量は全国4位。北部に位置する松浦市は土壌に豊富なミネラルを含み、ほどよい甘みと苦みが特徴だ。しかし、高齢化で栽培農家が減少。JR九州ファームは昨年5月、市と農業参入に関する協定を結んだ。海に近い地区に土地を借り、アスパラガス用のハウスは現在12棟。この秋から23棟に拡張し、栽培面積は3・3ヘクタールになる。別に露地栽培でブロッコリーも育てる。今年は10月までにアスパラガス25トンの収穫を予定。2019年には約100トンに増やすのが目標だ。農業経験のない主婦、元警察官ら地元の17人を採用。建築会社から転身した松本敏光さん(61)は「農業をしたいと思っていた。自分が手入れしたものを食べてもらえることが幸せ」と話す。同社は地元のJAながさき西海から資材や営農指導の支援を受け、収穫した約7割を出荷。残りは福岡市にある直営店「八百屋の九ちゃん」などで売る。 ▽期待 JR九州は10年4月、大分市でニラ栽培に参入したのを皮切りに、九州各地で営農を開始。長崎県への参入は松浦市が初めてだ。松浦市のアスパラガス農家は減少傾向にあり、市の担当者は「大規模経営で産地強化と雇用拡大が見込める。ブランド化を進め、特産品にしてほしい」と期待する。一方、地元には「国土の保全も担う農業と利益を追求する企業は水と油。企業はもうからないと撤退する」と心配する声もある。今回の参入では第1希望だった土地の関係者に反対され、場所を変更。現在の農場でも地元住民から夏場のホタルを守るよう求められたため、蛍光灯などでガを駆除する「防ガ灯」の使用も諦めた。それでもJR九州ファーム松浦事業所の森崎崇所長(40)は「農業も鉄道も地元との関わりがあって成り立つ」と地元の声を尊重する方針を強調。地権者との交流にも積極的に参加しており「不安を抱く地域の人々に寄り添い、信頼につなげたい」と話している。 *6-2:http://qbiz.jp/article/95799/1/ (西日本新聞 2016年10月13日) 上場後、赤字ローカル線「絶対に廃線にしないとは言い切れない」 JR九州青柳社長に聞く 25日に株式上場するJR九州の青柳俊彦社長が12日、報道各社の共同インタビューに応じ「上場することで、スピーディーで大胆な展開ができるようになる。今まで取り組んでいなかった事業にもチャレンジしていきたい」と述べた。主なやりとりは次の通り。 −上場で何が変わるか。 「100%株主だった独立行政法人の鉄道・運輸機構から解放される。責任は重くなるが、経営判断のスピードは速まる」 −上場後、鉄道事業の収支が改善する見込みは。 「JR九州グループにとって永遠の課題だ。収入の増加とコスト削減を、これまで以上に積極的に展開していきたい」 −赤字ローカル線の運営についての考えは。 「昨年、国会で上場後も路線を維持することを宣言した。効率化に向けて積極的に廃線にする考えはない。ただし、絶対に廃線にしないとは言い切れない。路線の使命が終われば検討せざるを得ない」 −今後、新たにチャレンジしたい事業は。 「イメージはまだないが、鉄道との相乗効果がある事業が望ましい」 −海外での事業展開はどう進めるか。 「アジアでマンションやホテル事業をしたいと考えている。東京に進出してきたように、海外にも出て行きたい」 PS(2016年10月14日追加):JR九州の豪華寝台列車「ななつ星in九州」は、車両が豪華であるだけでなく、食事や列車内の調度もその地域トップの産物を使っているのが人気の秘密だ。また、*7のように、JR西日本のトワイライトエクスプレス瑞風が「美しい日本をホテルが走る」をコンセプトにしているのも魅力的で、乗り換えなどの手間なくポイントとなる地域を周遊できるメリットがある。しかし、ななつ星も、3泊4日コースで1人当たり最高95万円などという超豪華コースだけでなく、同じコースをホテルを使って周遊した場合と同程度の金額のコースも作った方が日本人や外国人の観光客が増えると思われる。 *7:http://mainichi.jp/articles/20161014/k00/00e/020/176000c (毎日新聞 2016年10月14日) JR九州運行開始から3年 予約20倍超の人気 JR九州の豪華寝台列車「ななつ星in九州」が運行開始から15日で3年を迎える。高額な乗車料金にもかかわらず、予約平均倍率は20倍超の人気ぶりを継続。上場を控えるJR九州の知名度向上にも大きく貢献した。一方、来春にはJR東日本や西日本も豪華寝台列車を投入予定で、各社間の競争が激しくなりそうだ。「高い価格でも価値を感じていただけている」。当初から運行に携わるJR九州クルーズトレイン本部の仲義雄次長は手応えを語る。ななつ星には今年9月末までで、延べ7297人が乗車。直近の予約平均倍率は24倍に達し、再乗車を希望する客も2割に上っており、人気は衰えない。支持される理由は豪華さだけでなく、きめ細やかなサービスにある。訓練を重ねたクルー(乗務員)が最高の笑顔で迎え、沿線住民も盛んに手や旗を振って歓迎する。温かいもてなしに乗客は感激し、最終日には多くが涙を流して列車との別れを惜しむ。ななつ星を追いかけるようにJR2社も来春、豪華寝台列車を相次いで投入する。JR西日本のトワイライトエクスプレス瑞風(みずかぜ)は「美しい日本をホテルが走る」がコンセプト。車両には風や香りを体感できる展望デッキを設ける。JR東日本のトランスイート四季島(しきしま)は、高級車フェラーリを手がけた奥山清行氏がデザインを担当した。制作費50億円の車両は、淡い金色の外観やガラス張りの展望車が特徴だ。いずれも富裕層や外国人客の獲得を狙う。両社の動きについて、ななつ星の生みの親であるJR九州の唐池恒二会長は「鉄道業界の刺激につながったことは素直にうれしい」とし、ライバル登場についても「(豪華寝台列車に)乗りたいと思う層が拡大する。私どものお客さんが奪われるという危惧は全くない」と強気だ。ななつ星は来年3月の出発分から体験コース充実を理由に5度目の値上げに踏み切る。3泊4日コースで1人当たり最高95万円となり、高額と話題となった運行当初(同55万円)から7割も跳ね上がった計算だ。顧客の選択肢が広がる中で、価格に見合ったサービスを提供し続けることができるかが、ななつ星4年目のカギになりそうだ。 PS(2016年10月15日追加):どうも官制合併は、①大きくなりさえすればよいと考えている ②寡占や独占状態にしたがる など、経済原則や経営合理性からはずれたものが多いが、*8の九州を中心とする離島を結ぶ地域航空会社の統合なら、JR九州が航空会社を作って統合し、列車との接続をよくして離島の価値を上げつつ、空への進出を計るのがよいと、私は考える。 *8:http://qbiz.jp/article/96017/1/ (西日本新聞 2016年10月15日) 離島結ぶ地域航空会社の統合検討 国交省、大手2社に要請 国土交通省がANAホールディングス(HD)と日本航空に対し、離島などを結ぶ地域航空会社の統合を検討するよう求めたことが15日、分かった。燃料の調達や機体の整備などでコストを削減し、地域の航空網を維持する狙いがある。国交省は地元自治体の意見も聞き来年夏までに統合計画をまとめたい意向だが、ANAHDと日航は慎重に検討するもようだ。統合を検討するのは北海道エアシステム(札幌市)、ANAウイングス(東京都)、オリエンタルエアブリッジ(長崎県大村市)、天草エアライン(熊本県天草市)、日本エアコミューター(鹿児島県霧島市)の5社。各社はそれぞれANAHDや日航と資本や業務の提携関係がある。国交省では、地域航空会社を傘下に収める持ち株会社を設立したり、経営規模のより大きな会社が小さな会社を合併したりする案などが浮上している。5社はいずれも30〜70席程度のプロペラ機を中心に運航し、北海道や九州の離島を結んでいる。各社はともに路線の利用率が低く、経営基盤は弱い。保有する機体が少なく、整備や乗務員の養成にかかるコストも高くなる傾向がある。主に100席以上の大型機を運航するANAHDや日航から機体の融通を受けることも難しい。このため国交省は同じ課題を抱える地域航空会社が連携し、効率化する必要があると判断した。ただ、ANAHDと日航は競合関係にあり、地元の自治体や企業も地域航空会社に出資している。このため国交省は関係者の意見を聞き、統合に関する課題の洗い出しを進める。 PS(2016年10月24日追加):*9-1のように、SBS米を商社が扱う理由は、「安い」「自社のビジネスが増える」にほかならない。そして、輸出国も日本の消費者に合わせた製品を最低コストで生産する工夫をしており、(自民党農林族のベテラン議員が中国に視察に行った時、中国産コシヒカリと日本産コシヒカリを食べ比べて区別がつかなかったように)味だけを比べれば国内産が勝るとは限らない。そのため、産出地・遺伝子組み換えの有無・使用した農薬・食品添加物などに関する表示は、消費者の選択を可能にするため、最低限必要なのである。 なお、*9-2の「都会だから食料自給率が低い」という見解は成立せず、日本の食料自給率は先進国の中でも際立って低く、それもカロリーだけを比較するのは一面的で、本来は主要な栄養素の自給率を示すべきだ。また、「コメの消費拡大が鍵で、需要面の政策が必要」というような見解の人は議員・行政(殆どが栄養学の“え”の字も知らない男性)にも多いが、供給を需要に合わせるのが財・サービスを販売するには当然であり、「供給が余るから重要を増やす政策が必要」などとして糖尿病患者を増やすのは逆である。にもかかわらず、このような発想で農業政策を行い、余っても米に固執しながら減反してきたため、日本の農業政策は失敗したのだ。 政府と大学教員 SBS米の価格偽装 TPPで争点 先進国の食料自給率 嗜好の変化 の会の試算 201610.23 となりそうな 国際比較 2016.10.24 日本農業新聞 食品安全基準 西日本新聞 *9-1:https://www.agrinews.co.jp/p39269.html (日本農業新聞 2016年10月23日) SBS米扱う理由 商社「安いから」 相場は国産の2割安 本紙聞き取り調査 輸入米の売買同時入札(SBS)取引を巡って日本農業新聞は、商社に聞き取り調査を行い、回答を得た全社が輸入米を扱う理由に「国産米より安いから」を挙げた。取引する米の相場は「国産品より2割安」が最も多かった。SBS米の「調整金」を使った価格偽装問題に対し、今月7日に農水省が公表した調査結果は、実需者への販売価格に十分踏み込まないまま、「国産相場への影響はない」と結論付けた。“安さありき”で取引される実態と、同省見解との間には大きなずれがある。国会での徹底審議が求められる。 ●国の見解と食い違い 調査は、今月13~21日にSBS参加資格を持つ全24の商社を対象に聞き取り、11商社(設問への一部回答も含む)の回答をまとめた。「輸入米を扱う理由」には、11商社全てが「国産米より安いから」と答えた。長い輸送時間で劣化しやすく、炊飯時に割れやすいなど品質面で見劣りする点も織り込んだ回答だ。タイ産の香り米などでは料理適性が調達基準になるが、まれなケースだった。米卸を通じた輸入米の売り先は、外食・中食といった業務筋が中心。企業や福祉施設向けの給食事業者もあった。安さを優先し、原産地表示が目立たない場面で採用されていた。単一銘柄での使用は少なく国産米とのブレンドが中心だった。実際に取引する輸入米の相場観は、国産米より「2割安」が4社と最も多く、「1割安」が2社と続いた。米国産やオーストラリア産より一段安い中国産を想定し、「4割安」とする回答もあった。近年、同省が公表するSBSの売り渡し価格は、国内業務市場で競合する国産B銘柄と接近するケースが目立つ。だが、同価格ではSBS米の魅力はなく、「公表される価格と実際の取引価格は、明らかに乖離(かいり)している」(大手商社)との受け止めが業者に広がっていた。調整金について商社は「農水省が定める売り渡し価格の最低ラインをクリアし、実需が求める安い水準で販売するための手法」(中堅)と受け止める。そうした使途を打ち消すために同省が挙げる「米卸が商社に支払う“逆調整金”もある」という事例は、「取扱量が少ない銘柄を試験輸入する場合など限定的」(大手商社)とみる。SBS売渡価格に米卸の手数料などを加算した実需への販売価格は、複数社が「1キロ当たり200円がボーダーライン」とみている。その水準を下回ると、実需の調達意欲が高まる傾向にあるという。14、15年度のSBS入札の不調は、国産米が大幅に値下がり、B銘柄を輸入米並みの価格で調達できたことが影響していたとみられる。 *9-2:http://qbiz.jp/article/96476/1/ (西日本新聞 2016年10月24日) 【福岡県の食料自給率20%】九州で唯一、全国の39%を下回るワケ 国内で供給される食料のうち、国産で賄われる割合を示す食料自給率(カロリーベース)。日本は39%と先進7カ国(G7)で最も低く、食料の多くを輸入に頼っている実態があらためて分かる。さらに、これを都道府県別にみると、福岡県の“お寒い”状況が浮かぶ。自給率は九州で最低の20%。しかも唯一、全国の39%を下回る。 ■胃袋は多いのに品目は低カロリー? 直近は2014年度(概算値)のデータだ。それによると、九州の他6県は、佐賀90%▽鹿児島84%▽宮崎67%▽熊本59%▽大分48%▽長崎44%−の順で高く、全国の39%を下回っている県は一つもない。なぜ福岡だけ、食料供給が“ぜい弱”なのか。農林水産省のある職員はこう解説する。「福岡はそれなりの農業県だが、それ以上に人口(約510万人)が多いからだ」。つまり、胃袋の数が多く、供給が追いつかない、というわけだ。栽培品目に着目する意見もある。福岡県の農政担当者は「カロリーが低いお茶やイチゴなどの生産に力を入れていることも影響している」と分析する。確かに、野菜や果実に比べカロリーが高いコメの産地は上位に並ぶ。全国では、1位は北海道だ。自給率208%は北海道“二つ分”のカロリー供給力を誇る。全国の農地面積の4分の1超を占め、酪農の生乳や、畑作のばれいしょ、小麦の生産も盛んだ。2位以下は米どころが目立つ。秋田190%▽山形141%▽青森123%▽岩手111%▽新潟105%―が100%を超え、余剰分を他県へ“輸出”できる供給力を持っていることを意味する。逆に、自給率が低いのは、東京と大阪が1%と同率ワースト1位。続いて神奈川の2%がワースト3位で、「一ケタ」はこの3都府県のみ。いずれも大都市で、福岡の20%も、九州で都市化が進んだ表れかもしれない。 ■コメ消費拡大が鍵、需要面の政策も 都道府県別の食料自給率について、農水省は「2025年度末までに全国で45%」とする政府目標達成に向け、「地域ごとの取り組みを推進する参考データにしてほしい」と説明する。とはいえ、コメの生産を増やそうにも、簡単ではない。農水省は米価下落を防ごうと、生産調整(減反)を進めている。各都道府県に、上限となる生産数量を割り振り、過剰生産をしないよう要求。これを守らない生産者には、麦や大豆の転作助成金を支払っていない。食料自給率は1965年は73%だった。それが、経済成長とともに、右肩下がりに下がってきた経緯がある。背景には、日本人の食生活の変化を指摘する声もある。食の「欧米化」が進み、コメ中心の食事はパンやパスタ、卵、肉など、いずれも輸入に頼る食品へシフトした。畜産は、牛や豚、鶏といった家畜を国内で飼育しているものの、その飼料の大半を輸入に頼っているため、自給率は低いままだ。「米離れ」の実態は、1人当たりの年間コメ消費量をみると、明らかだ。1962年度の118キロをピークに、現在(2015年度)は54・6キロと半分以下になっている。コメは日本が唯一自給できる主食。その消費が増えれば、おのずと自給率も上がり、輸入への依存度も下がる。農水省は自給率アップについて「(麦や大豆など)コメ以外の農産物の生産量を増やして対応してほしい」というが、そもそもコメの消費拡大をどう進めるのか。需要面で実効性ある政策を示す必要もありそうだ。 PS(2016年10月26日追加):農業において種子は最も重要で、開発者に特許権があるにもかかわらず、何年もかけて開発した種子を技術提供として簡単に外国に渡しているのが我が国の現状だ。しかし、それを改めなければ外国産との差別化はできず、日本で種子の開発をする民間はなくなるだろう。 *10:https://www.agrinews.co.jp/p39282.html (日本農業新聞 2016年10月25日) 野菜種子を国産化 海外品より発芽率高く 福岡市の種苗メーカー 種苗メーカーの西日本タネセンター(福岡市)が、野菜種子の国産化に乗り出す。流通する種の大半が海外産の中、管理が行き届いた国内施設で育てて品質を高める。価格は海外品より高くなるが、発芽率は高まるため、種を買う農家の採算性はトータルで改善すると同センターは見込む。キュウリ、トウガンなど70~80種を栽培し、年内にもJAや種苗店へ販売する。日本種苗協会は「種子を本格的に国産化する事業は初めてではないか」と指摘する。福岡市内の3ヘクタールの農地に建てた6メートル×20メートルのハウス43棟で採種用の植物を育てる。ハウスでは1種類の採種を完全に終えた後、別の品種の栽培に移る。同センターによると、屋外中心の海外の圃場(ほじょう)は虫害や他品種との交雑、異物混入といったリスクがあり、「正品率の低さが課題だった」(諸岡譲代表)という。ハウス室内の温度やかん水は専門の社員が管理する。収穫した種子は消毒、選別した後、発芽率が高まるように種の外皮を研磨する。生産した種子の8割はグループ会社の中原採種場(同市)が販売を担う。県や農研機構などが育成した品種は同センターが直接JAなどに販売する。山口県と同県のJA下関が共同開発した小ネギ「YSG1号」などは山口県内の複数のJAと契約し、全量販売する予定だ。日本種苗協会によると国内に流通する種(F1種)の9割は海外産とみられる。気温などの栽培適性、農地の確保のしやすさ、人件費の安さが理由だ。ただ、異常気象や人件費アップなど海外の生産条件が今より悪化する恐れが高まっており、同センターは「国産化が安定供給につながる」と事業の将来性を見込む。同センターは今後、耕作放棄地を活用しながら規模拡大を進める計画だ。2020年までに農家委託を含め、県内外20ヘクタールにハウス計300棟まで増やす。扱う品種も段階的に増やす。消えそうな固定種や在来種の保存も進める考えだ。種子の海外輸出も想定する。同センターのハウスを今月、視察した佐賀県の職員は「近場で安定的に種子が供給される環境が整うようであれば、県内で使える品種があるか、検討したい」と期待する。事業化に当たっては、6次産業化などを後押しする農林漁業成長産業化支援機構(A―FIVE)やサブファンドが8000万円を出資した。 PS(2016.10.26追加):木質バイオマス発電は、限られた資源である木材チップを燃やして発電するシステムで、これが21世紀の日本で進められるのには驚かざるを得ない。また、農地を売却して製造業・運送業・倉庫業などの5業種の建屋に用途を変える場合は地主農家が所得控除を受けられるようにするというのは、日本でしかできない農業のための農地を、外国で簡単に肩代わりできる製造業に転用するということで、何の工場かにもよるが50年も前のスキームだ。さらに「食の安全意識の高まりから室内で野菜をつくる植物工場」と書かれているが、確かに農薬は使わないものの、限られた栄養素のみを溶かした水耕栽培で人工光による「形だけ野菜」を、誰が、どこで食べるのか、呆れてモノが言えない。 *11:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20161026&ng=DGKKASFS24H4L_W6A021C1MM0000 (日経新聞 2016.10.26) 農地転用 税優遇広く、バイオマスや植物工場 製造業中心を転換 農林水産省は農地を売却する農家への税制優遇を拡大する。全国で広がる木質バイオマス発電所や植物工場を運営する企業に売却する際にも所得税を軽くする方針だ。運営企業には固定資産税の軽減も検討する。現行制度で優遇を受けられるのは製造業などに転用した場合に限られる。産業構造の変化を踏まえ、新たな産業を誘致して農村で就労機会を増やす狙いだ。年末の与党の税制調査会の議論を経て実施を目指す。併せて2017年の通常国会に農村地域工業等導入促進法(農工法)の改正案を出す。現在は農地を売却して製造業や運送業、倉庫業など5業種の建屋などに用途を変える場合に限り、地主の農家は800万円を上限に所得控除が受けられる。一般的に農地転用は厳しく制限されるが、農工法のもとで例外が認められている。農水省は既存の5業種に加え、木材チップなどを燃料にするバイオマス発電所や植物工場、農家レストランなど農林業と関わりがある場合も税優遇の対象とする。追加業種を限定せず、広く対象に加える案もある。農家への優遇措置を広げるとともに、農工法が対象とする場所でバイオマス発電所などを運営する企業の進出も支援する。日本政策金融公庫の低利融資を受けられるようにするほか、新たに導入する機械設備の固定資産税を3年間は2分の1にする方向だ。農工法はコメ余りに悩んでいた農家の振興策として1971年に制定された。だが農地転用の有力な受け皿だった製造業は円高などで海外への生産シフトを加速させてきた。2015年の国内の工場立地面積はピークだったバブル期の4分の1まで減少。農工法に基づいて工業団地を整備するケースは1970年代に年間200件を超えることもあったが、2015年にはわずか1件にとどまった。代わって存在感を増しているのが農林業系の産業だ。11年の東京電力福島第1原子力発電所事故後に生じた電力不足の解消を狙ってバイオマス発電所の建設が相次いでおり、全国の認定容量は原発1.5基分に達した。食の安全意識の高まりから室内で野菜をつくる植物工場も全国300カ所を超え、地場産業としての期待が高まりつつある。バイオマス発電所や植物工場などの広がりは農工法制定時には想定されていなかった。農水省は新しい産業の誘致を通じ、農村での雇用機会の拡大につなげたい考えだ。 PS(2016年11月1、2日追加):*12-1に書かれているように、TPPが発効されれば、かつての不平等条約と同様、日本の農業や国民生活に打撃があるにもかかわらず、政府が自分もわかっておらず口当たりが良いだけの答弁を繰り返して採決に進もうとしているのは論外だ。なお、*12-2の鹿児島県鶏卵販売農協の経営の行き詰まりはもったいなく、①フクイチ事故で、放射能汚染の心配がない九州の農産物は付加価値がついているため全国区のスーパーや百貨店に販路を拡大する ②「飼料の高騰、高騰」と騒がなくてもよいように、材料は多いので安くて質の良い飼料を工夫して近くで作る などを行えば、経営が改善した上、飼料も販売できるようになると考える。また、*12-3のように、人口が減少して一人一人が豊かになる社会の休耕田や耕作放棄地の使い方には、佐賀県みやき町で秋咲きのヒマワリが咲いて観光名所になり、近くでこだわりの農産物を販売しているように、風景の美しさと食へのこだわりの両方を満足させる企画もある。 *12-1:http://qbiz.jp/article/97095/1/ (西日本新聞 2016年10月31日) 「TPP反対」650人が気勢 JA福岡など福岡市で集会 環太平洋連携協定(TPP)をめぐる衆院の論戦が大詰めを迎える中、JAグループ福岡などは29日、福岡市・天神のエルガーラホールで「TPP断固反対 農業政策要請 県農業者集会」を開いた。JA組合員(農業者)ら約650人が参加。「TPPが発効されれば、将来のわが国の農業のみならず、国民生活に対して大きな懸念を残す」などとするTPP反対の決議を採択した。JA福岡中央会の倉重博文会長はあいさつで、最近の国会審議に関して「野党の質問は丁寧だが、受け答えする政府側がはっきりしない。TPPは秘密主義だ」と批判。「(TPP承認案と関連法案について)急いで採決に向かっていることが全く分からない」と述べた。また、集会に参加した県選出の自民党国会議員らに対し、「TPPの合意内容が、農林水産分野の重要5項目などの聖域確保を求めた国会決議を満たしているとは考えられない。協定内容を十分に精査し、さらなる情報開示などを行うこと」などを要請。参加者は「TPP断固反対」と書かれた旗を掲げた後、「頑張ろう」と声を上げて集会を締めくくった。 *12-2:http://qbiz.jp/article/97174/1/ (西日本新聞 2016年11月1日) 鹿児島県鶏卵販売農協が2回目の決済も不調 東京商工リサーチ鹿児島支店によると、鹿児島県内の養鶏農家でつくる「鹿児島県鶏卵販売農業協同組合」(鹿児島市)が2回目の決済も不調となり、経営が行き詰まっていることが分かった。事実上の倒産で、負債総額は約8億円の見込みになるという。同支店によると、同農協は1973年に採卵養鶏農家が共同出資して設立した。組合員となる農家が生産した鶏卵をスーパーなどに販売し、最盛期は売上高15億円を超えたという。しかし、卵の価格が低迷した上、飼料が高騰し、事業環境が悪化。資金繰りが悪化し、取引先への支払いを予定していた9月30日と10月20日の決済がそれぞれ不調に終わったという。 *12-3:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/372599 (佐賀新聞 2016年11月2日) 秋の棚田大輪10万本 みやき町の山田ひまわり園 佐賀県みやき町簑原山田地区の「山田ひまわり園」で、秋に咲くヒマワリが見頃を迎えている。中山間地の棚田を活用した会場内には約10万本の黄色い花が咲き誇り、赤く色づいたケイトウとのコントラストが来場者の目を楽しませている。27日まで。地区住民でつくる山田地区中山間地組合が、耕作放棄地対策とにぎわいづくりを目的に2001年から取り組んでいる。昔ながらの石積みの棚田が残る約6千平方メートルの園内に、8月中旬から種をまいて準備を進めた。10月中旬から開花し、約2メートルの高さまで育った茎の先端に太陽に似た大輪の花を咲かせている。家族で訪れた西津博幸さん(47)は「インスタグラムで見て初めて訪れた。迫力があってきれいで、涼しいから子連れでもいいですね」と幼い我が子を抱きかかえながらほほ笑んだ。近年は観光バスのコースに組み込まれることも増え、長年の目標だった「来場者1万人」を2014年に達成。昨年は1万3千人が訪れた。今年は10日前後まで見頃が続くという。組合代表の眞子生次さん(69)は「棚田が荒れないよう守り続けるための活動だったが、ここまでの観光名所になった」と目を細める。場所は県道31号と136号が交わる綾部東交差点から北に約1・7キロ。開園時間は午前10時~午後4時半。大人1人100円の協力金を呼び掛けている。組合員らが手掛けた米などの農産物も販売する。問い合わせはみやき町観光協会、電話0942(96)4208。
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2016,10,02, Sunday
2016.2.10 2016.10.1goo 各国の削減目標 2016.9.30東京新聞(原発の現状) 朝日新聞 (日本は情けない) 2016.9.30 2016.9.30毎日新聞(公立学校の全国学力テストの結果) 上位県 日経新聞 (1)無知と不見識による政策判断ミス *1-1のように、欧州連合(EU)は、2016年9月30日に「パリ協定」への締結を決め、インドも発効の条件を満たして締結する予定であるため、「パリ協定」は10月に発効する見込みだそうだ。日本は、(私の提案で)1997年に採択された京都議定書をまとめた国なのだが、その後、無知で不見識なバックラッシュによって環境政策は後戻りし、パリ協定もこの臨時国会でやっと審議する予定だ。つまり、形だけ決めても実行するまでに時間をかけることで形骸化させる政策によって、日本は存在感を示すどころか、日本とは関係なくパリ協定の発効が決まったのである。 一方、*1-2のように、今世紀後半に温室効果ガス排出の「実質ゼロ」を目指すパリ協定を、米中は9月3日に締結し、「国際的信用にかかわる(ユンケル欧州委員長)」として欧州連合(EU)も、9月30日にEUと一部加盟国が先行締結する「例外的措置」を決めた。日本は、「締結は米中の動きを見てから」などと、いつものとおり他に遅れて初めてあわてて追随する姿勢であるため(これが官主主義の限界)、そのような国が意思決定に参加できずに蚊帳の外に置かれて存在感がなくなるのは当然のことなのである。 1)EVの例 *2-1のように、欧州の自動車大手はディーゼル車から電気自動車(EV)へのシフトを強め、独フォルクスワーゲン(VW)は2016年9月29日に開幕したパリ国際自動車ショーで、1回の充電で最長600キロメートルを走れるコンセプト車を発表した。また、独ダイムラーはEV向け新ブランド「EQ」を立ち上げると表明し、第1弾として1回の充電で最長500キロメートルを走れるコンセプト車を公開した。 しかし、トヨタをはじめ日本車はプラグインハイブリッド車(PHV)が中心で、電気だけで走れる距離は現行車の60キロメートルにすぎず、PHVはガソリン車でもあるため、EV車の長所を活かした設計ができない。また、日本では、電池の容量が小さいというEVに関する悪い宣伝が行き過ぎていたため電池の改良が進まず、次世代エコカーの本命を乗用車まで燃料電池車(FCV)とし、水素燃料の供給施設はコスト高で少なく、大いに出遅れている。そのため、科学的に正しい判断に基づいて迅速な行動をとる欧州勢が、先端技術の標準づくりをするのは当然のこととなる。 EVへの転換も私の提案で始まったのでよく知っているのだが、EVへの転換の目的は新興国まで含めた排気ガスの抑制であり、それを燃費さえよければよいと考えて燃費規制(排ガス規制ではない)にした政治・行政や不正をしてまでディーゼルエンジンで乗り切ろうと考えた自動車会社は不見識だったのだ。 なお、*2-2のように、北京モーターショーの会場もEVのオンパレードとなり、中国が日本企業を巻き込んで世界ナンバーワンのEV大国になる可能性が極めて高くなったそうだ。中国は、アメリカのZEV法(ゼロ・エミッション・ヴィークル規制法:排気ガス規制法)の中国版を作ったそうで、燃費規制ではなく排ガス規制があるべき規制であるため、これが世界に受け入れられるのは時間の問題だ。日本政府(経産省)や日本のメーカーは、自動車の排気ガスでいぶされて気分が悪くなっている人や排気ガスで汚れた道路をよく見るべきだったのである。 また、三菱自動車は最初の燃料電池車を創ったにもかかわらず日の目を見ることなく、*2-3のように、燃費規制に合わせるため、ディーゼルエンジン車の燃費測定で不正を行っている。さらに、再測定でも不正があり、統計データのとり方すら知らない人が都合のよいデータを集めて結果を出しているのではないかと思われるほどだ。もしそうなら、統計学や数学などの基礎学力に問題がある。 2)エネルギーの例 *3-1のように、他のエネルギー源と比較してコスト高で事故時の環境汚染が大きすぎる原発市場は世界でしぼむ。そのため、日立、東芝、三菱重工は核燃事業を統合することで調整している。 にもかかわらず、*3-2のように、原発再稼働を進める経産省の意向を追い風に、国民負担を求めたい電力会社側の理屈で、内閣府の専門部会が議論を本格化させるとのことだ。そして、経団連でエネルギー対策を担当する加藤氏が、「原子力を積極的に推進してきたことに基づき、国の補償を求める」と述べたそうだが、原子力を推進していた時には、国民は「原発は安全でコストの安い夢の電源だ」と聞かされていたのだから、事実と異なる説明をして原子力を推進した者が正しい責任者である。 なお、国は、東京電力福島第一原発の事故後に見直したエネルギー基本計画で、原子力を「重要なベースロード電源」と位置づけ、廃炉費用を電力自由化で新規参入した小売業者にも負担させる方針だ。しかし、これは、電力自由化を骨抜きにして原発より優れた電源が普及するのを邪魔し、新しい技術や新規企業の発展を阻害するやり方であって、経済学の基礎知識がなく、日本の再生可能エネルギーをEVと同じ運命にするものだ。 (2)教育における学力の軽視 なぜ我が国で、(1)のような驚くべき判断が続くのかについては、書くと反感を感じる人がいるだろうが書かなければわからないので書くと、*4-3で代表されるように、全国学力テストをすることにさえ反対する人がいるくらい、学力を軽視しているからである(ただし、この程度の調査に数十億円かかるというのは、豊洲市場や東京オリンピックの経費と同様、高すぎる)。そのため、私は運動や芸術と同様、英・数・国・社・理くらいの「学力コンクール」はしばしばやるべきで、学校のみならず個人の上位者も氏名を発表して遣り甲斐を出すべきだと考える。何故なら、(1)で書いたことは、大学教養レベルの物理・数学・経済学の範囲内であり、これらがわかっていれば直ちに理解でき、わかっていなければ理解できないことだが、それを支えているのは小学校から高校までの学力だからだ。 また、*4-1には、「①国語と算数・数学しかテストしていないこと」「②各地で学力の底上げが続いたという文科省の分析」「③国語では目的に応じて自分の考えを明確にしながら読んだり、根拠を示して書いたりする問題に課題があり、算数・数学でもグラフから情報を読み取って記述する問題などに間違いが目立った」と書かれている。 しかし、①については、国語と算数・数学しかテストしないということは、国語と算数・数学しか重要科目として真剣に勉強していないということだろうが、それでは③のように自分の考えを明確にしながら読んだり、根拠を示して書いたりすることはバックグラウンドの知識がないためできないのが当たり前であり、グラフから情報を読み取って記述することもまた同じである。②は、その範囲では各地で頑張ったということなので、全国学力テストは無駄ではなかったということだ。 なお、*4-2にも、やりとりや表現を理解する力や根拠を示して書く力などに引き続き課題が残ったと書かれているが、やりとりや表現を理解する力は国語だけの問題ではなく背景の知識が必要であり、根拠を示して書くことは(根拠にならないことを根拠のように書いているメディアも含めて)日本人の多くが不得意とすることだが、本来は普段から大人とのコミュニケーションの中で訓練されていくべきものである。 そのような中、*4-4のように、沖縄県内の公立小学校は、国語A、算数Bの平均正答率が初めて全国平均を上回り、4教科全てで全国平均を超え、算数Aは、都道府県別で4位になったそうだ。公立中学校は、全教科の平均正答率で全国平均との差を縮め、国語Bは都道府県別で45位と、初めて最下位から抜け出すなどの改善傾向がうかがえたそうで、頑張ったことに敬意を表したい。 <政策における致命的な判断ミス> *1-1:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12586084.html (朝日新聞 2016年10月1日) パリ協定、来月発効 温暖化対策 EUが締結決定 地球温暖化対策の新しい国際ルール「パリ協定」が11月に発効する。欧州連合(EU)が30日、環境相理事会で協定締結を決めた。3日に始まる欧州議会で承認する。インドも締結する予定で発効の条件を満たし、30日目に自動的に発効する。日本は開会中の臨時国会で審議する予定だが、日本を待たずに発効が決まった。協定は、すべての国が二酸化炭素(CO2)などの削減にとりくむことを定めた温暖化対策のルール。産業革命以降の気温上昇を2度未満に抑え、今世紀後半の温室効果ガス排出を「実質ゼロ」にすることを目指す。55カ国以上が締結し、総排出量が全体の55%以上になることが発効の条件だった。国連によると、9月30日時点の締結国は米国や中国、ブラジル、北朝鮮など61カ国、排出量の割合は47・8%。EUは国内手続きを終えた加盟国とともに締結する。現時点では独仏など7カ国で排出量は4・6%、2日に締結する世界第4位の排出量国インドの4・1%を加えると排出量の条件を満たす。11月7日までに発効する可能性が高く、この日からモロッコで開かれる国連気候変動会議(COP22)で、パリ協定の第1回締約国会合が開かれ、実施ルールづくりなどを協議する。日本は温室効果ガス排出量が世界の約3・8%を占め、世界5位の排出国。5月にあったG7伊勢志摩サミットで議長国を務め、協定の年内発効を目指すことを首脳宣言に盛り込んだ。だが、締結の国内手続きが遅れており、存在感を示せていない。安倍晋三首相は29日、参院代表質問で協定締結について開会中の臨時国会で審議する方針を示したが、審議日程は決まっていない。 *1-2:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12585975.html (朝日新聞 2016年10月1日) パリ協定、日本出遅れ 早期発効、審議追いつかず 今世紀後半に温室効果ガス排出の「実質ゼロ」を目指すパリ協定が、11月に発効する。採択から1年足らずという国際条約としては異例の早さとなった。まだ締結できていない日本の存在感は薄れるばかりだ。1997年に採択された「京都議定書」は発効までに7年かかった。昨年12月に採択されたパリ協定は当初、各国の国内手続きと、実施ルール作りの時間を考えて、2018年ごろの発効が見込まれていた。しかし、世界の排出量の約38%を占める米中が9月3日に締結し、各国の動きが加速。欧州連合(EU)も、「国際的信用にかかわる」(ユンケル欧州委員長)として、30日にEUと一部の加盟国が先行締結する「例外的な措置」を決めた。国連のナバロ事務総長特別顧問は「各国が競っている。これだけ加盟国の多い協定では最速の発効だ」。パリ協定が、各国が自主目標に向けて対策を取る仕組みのため、先進国に削減目標を課して達成を義務づけた京都議定書よりも緩い枠組みだったことも、締結のハードルを下げた。「締結は米中の動きを見てから」と、承認案の審議を来年の通常国会で行う構えだった日本政府。想定外の早さに開会中の臨時国会に提出を前倒しするが、審議日程は決まっていない。早期発効で、11月7日に始まる国連気候変動会議(COP22)では、パリ協定の第1回締約国会合が開かれ、実施ルール作りを議論する。日本の締結が間に合わなければ、意思決定に参加できず、蚊帳の外に置かれる。 <EVの事例> *2-1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20160930&ng=DGKKZO07807540Z20C16A9TI1000 (日経新聞 2016.9.30) VW、背水のEVシフト パリ自動車ショー開幕、排ガス不正/燃費規制強化 欧州、脱ディーゼルの波 欧州自動車大手がディーゼル車から電気自動車(EV)へのシフトを強めている。先頭を行くのが排ガス不正問題で揺れた独フォルクスワーゲン(VW)だ。29日に開幕したパリ国際自動車ショーでは1回の充電で最長600キロメートルを走れるコンセプト車を発表。燃費規制強化も受け、背水の陣でEV開発を急ぐ。独ダイムラーなども同じ波に乗り、欧州発の新たなエコカー競争が始まる。「20世紀のベストセラーとなった『ビートル』や『ゴルフ』と同様、自動車産業に次の変革をもたらすモデルになる」。VWブランド乗用車部門トップのヘルベルト・ディース氏が会場で胸を張り、世界で初めて披露したのがコンセプトEV「I.D.」だ。開発中のEV専用プラットホーム(車台)「MEB」を採用し、2020年に生産を始める。電池など主要部品の配置を柔軟に組みかえられ、様々な派生モデルを造れる。部品共通化で量産効果を引き出し、「発売時にはゴルフ並みの価格に抑える」(ディース氏)。 ●販売比率25%へ VWは25年までに30車種以上のEVを投入し、グループ年間販売台数に占めるEV比率を現状の1%から最大25%に引き上げる計画だ。かつてはクリーンディーゼルでエコカー競争を主導しようとしたが、1年前に発覚した排ガス試験の不正問題が歴史的な方針転換の引き金を引いた。だが欧州勢のEVシフトはVWにとどまらない。背景にあるのは燃費規制の強化だ。欧州連合(EU)は最も厳しく、21年に走行距離1キロメートルあたりの二酸化炭素(CO2)排出量を15年規制値より約3割減らす必要がある。三井物産戦略研究所の西野浩介産業調査第一室長は「ディーゼル車の進化だけで数値目標を達成するのは困難だ」と指摘する。 ●新ブランド公開 独ダイムラーはEV向け新ブランド「EQ」を立ち上げると表明。第1弾として1回の充電で最長500キロメートルを走れるコンセプト車を公開した。独オペルや仏ルノーも新型EVを披露した。欧州勢は部品生産や充電インフラの投資も急ぐ。ダイムラーは独化学大手と共同出資した電池企業を14年に完全子会社にし、今年3月には5億ユーロ(約570億円)で第2工場を建設することを決めた。ドイツではEV普及のために官民が折半出資で総額10億ユーロを拠出し、うち3億ユーロで17~20年に計1万5千カ所の充電スタンドを整備する。日本車大手は欧州でのEVシフトにやや距離を置く。トヨタ自動車が披露したのは今冬に日本で売り出すプラグインハイブリッド車(PHV)「プリウスPHV」。ガソリンを使わず電気だけで走れる距離は現行車の2倍強の60キロメートル。日常生活ではほぼEVとして利用できる点を訴えるが、純粋なEVとは異なる。そもそもトヨタ、ホンダは燃料電池車(FCV)を次世代エコカーの本命に据えている。「電動化」という点では一致するものの、水素をエネルギーとするためEVとは違うインフラが必要だ。欧州は現在、新車販売の約5割をディーゼル車が占めるが、次世代車はEV、PHV、FCVの三つどもえの競争となりそうだ。欧州勢は先端技術のデファクトスタンダード(事実上の標準)づくりにたけている。そのEVシフトのスピード感を甘く見ていると、日本車大手は思わぬ劣勢に立たされる可能性がある。 *2-2:http://autoc-one.jp/special/2695104/ (オートックワン 2016年5月3日) 電気自動車(EV)で日本の自動車メーカーが中国メーカーに負ける日が近い!? ●北京ショーが再びEVで大盛り上がり 北京モーターショーの会場内は、EVのオンパレードになった。事態をよく呑み込めていない、口の悪い日本メディアは「どうせ、欧米や日本の技術のパクリでしょ」と嘲笑う。しかし、今回の中国でのEV盛況ぶりは、そんないい加減なものではない。それどころか、中国が日本企業を巻き込み世界ナンバーワンのEV大国にのし上がる可能性が極めて高くなってきた。「ちょっと、それって、言い過ぎじゃない?」と思われる方も多いかもしれない。だが、これが現実。筆者の個人的な観測ではなく、日系自動車メーカーの幹部や技術者たちの「本音」なのだ。中国でのEV事情を振り返ってみると、最初に盛り上がりを見せたのは2000年代後半だった。この頃は、中国は新興国のBRICs(ブラジル、ロシア、インド、チャイナ)の一角として、GDP(国民総生産)の伸び率が毎年二桁となる、急激な経済成長を続けていた。それに伴い、沿岸部の大都市圏を中心として、自動車の需要が急増。あと一歩で、アメリカを抜いて生産、販売それぞれで世界ナンバーワンの座につきそうな勢いだった。この時期、筆者は中国各地で日系や中国地場の自動車メーカーや部品メーカーを取材して回ったが、どこも「作っても作っても間に合わないほど売れる」と嬉しい悲鳴を上げ、工場の増設や新設が相次いでいた。 ●中国が新EV政策でアメリカと手を組む? そうした国の成長を象徴するように、国際的なイベントが目白押しだった。2008年の北京オリンピック、2010年の上海万博、そして同年に広州で開催されたアジア競技大会の3イベントで、中国政府は「新しい中国」のイメージアップを繰り広げた。その一環として、EVがあった。「十城千両」と呼ばれる施策によって、10の大都市でそれぞれ1000台以上のEVを数年間で普及させるとした。その後、対象の都市の数は25まで拡大した。北京オリンピックや上海万博では、電池交換式のEVバスが走り、広州にほど近い深センを本拠とするEVベンチャーのBYDが脚光を浴びた。しかし、「十城千両」は2013年頃、突如終わってしまった。その理由は、地方都市の官僚がEV普及の重要性をよく理解しておらず、EVに関する規制緩和や事務手続きで大幅な遅れが生じ、普及台数が伸び悩んだためと言われている。ところが、2014年秋になると、中国政府は何の前触れもなく、「新たなるEV政策」を発表。以前は、販売奨励金の対象が地方自治体や企業を中心としていたが、それを個人向けに拡大したのだ。さらに、「アメリカと手を組む」という大胆な行動に出た。これには、それまでEV技術で世界をリードしてきた日系自動車メーカーも強烈な衝撃を受けた。 ●中国でついに始まる「NEV」ってなんだ? 「アメリカと手を組んだ」とは、どういう意味か?それは、アメリカのZEV法の中国版を作ったということだ。ZEV法とは、ゼロ・エミッション・ヴィークル規制法。米カリフォルニア州の環境局による大気保全委員会(CARB)が規定する法律だ。カリフォルニア州は南部のロサンゼルス周辺の大気汚染が酷く、その改善策として、世界一厳しい排気ガス規制の一環として、1990年にZEV法を施行した。ここでは、EVやプラグインハイブリッド車、さらに燃料電池車などの電動車の普及台数を、同州内でガソリン車の販売台数の多い自動車メーカー毎に指定した。もし、この指定台数を達成できないと、各自動車メーカーのガソリン車の販売台数1台あたり、30万円程度と推測される巨額のペナルティが課せられる。こうした厳しいZEV法は、アメリカの他の州にも影響を与えている。自動車メーカーにとっては、アメリカは90年代~2000年代にかけて、世界ナンバーワンの自動車販売国。そのなかで、州別売上ランキングナンバーワンがカリフォルニア州だ。そのため、日系メーカーにとっても、EVや燃料電池車を開発する際、まずは「ZEV法ありき」で開発を進めてきたというのがEV開発の実態だ。そうした世界自動車産業の図式を、中国が参考にしたのだ。 ●日本メーカーは当面は「プラグインハイブリッド」 具体的にどうしたかというと、CARBに対する学術的なサポートをしている、カリフォリニア大学デービス校(UCD)に対して、中国の国立自動車研究所(CATARC)と一緒に中国版のZEV法を作って欲しいと、中国政府がアメリカ政府に持ち掛けたのだ。そうして生まれたのが、NEV法(ニュー・エネルギー・ヴィークル規制法)だ。そのNEV法が2016年に入って、具体的な内容が徐々に明らかになり、自動車メーカー各社は情報収集に躍起になっている。つまり、EVや燃料電池車などの電動車について、自動車メーカーが気にするのは、世界一の自動車製造・販売国の中国と、第二位のアメリカだ、ということ。この2国のみが、電動車の販売台数に対する厳しいペナルティを課すからだ。一方、日本の場合、こうした厳しい規定がない。あるのは、経済産業省が自動車産業界と連携してまとめた「次世代戦略2014」のなかで、ざっくりとした「達成目標」を提示しているだけだ。日本政府としては、自動車産業の自主性に任せるものであって、政府が強制的に指導するのは“いかがなものか”と「逃げ腰」である。そんな弱気の日本を尻目に、中国はアメリカとタッグを組んで、EVの本格普及に乗り出す構えだ。だが、日系メーカーの一部では「前回の十城千両で痛い目にあったから、少し様子を見たい」という声が聞かれる。 その結果として、日系メーカーは当面は「プラグインハイブリッド車止まり」の事業戦略しか公表していない。こんな弱腰で、本当に大丈夫なのか?気がつけば、EV産業界は中国とアメリカに牛耳られてしまうのではないのか?そんな強い危機感を、北京で感じた。 *2-3:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12586093.html (朝日新聞 2016年10月1日) 再発防止策を公表 三菱自燃費再測定不正 三菱自動車は9月30日、燃費不正発覚後にデータを再測定した際にも不正があったと国から指摘された問題について、再発防止策を公表した。相次ぐ不祥事のたびに講じてきた再発防止策はうまくいかなかっただけに、資本業務提携を結んだ日産自動車の支援の下で、実効性を持たせられるかが問われる。三菱自の益子修会長兼社長が30日、国土交通省を訪れ、再発防止策を報告した。報告後、報道陣に「長い道のりだが、信頼を回復したい」と述べた。再測定をめぐる問題で8月末から販売を自粛していた8車種は10月1日から売り出す。三菱自は4月に軽自動車4車種の燃費不正が発覚した後、軽以外の9車種の燃費を再測定した。その際、法令の「グレーゾーン」を突く形で、有利な数値を選び出すプログラムを使って燃費を計算。その後、国交省の測定で、9車種のうち8車種で燃費がカタログより最大8・8%悪いことがわかり、国交省は「常軌を逸する事態」と批判した。三菱自は6月に23項目の再発防止策を公表したが、今回、8項目を追加した。不正の温床となった「開発本部」の見直しが柱で、開発本部の中間管理職を減らして風通しをよくし、燃費計算に使うプログラムの改訂に当たる専門委員会も新設することにした。三菱自は2000年、04年にリコール隠しが発覚。経営危機に陥り、三菱グループの資金支援で再建を図った。専門性の高い多くの技術者が退職し、組織が「たこつぼ化」した。燃費不正を受けて設けられた特別調査委員会は、こうした閉鎖性が「不正行為が法規に違反していることへの意識が極めて希薄」な企業文化を生んだと分析した。三菱自は10月、日産の出資を受けて傘下に入る。仏ルノーから送り込まれた日産のカルロス・ゴーン社長は、たこつぼ化した部門を横断するチームをつくって再建に成功した。経験を生かせるかが、再建のカギを握る。 <エネルギーの事例> *3-1:http://www.tokyo-np.co.jp/article/economics/list/201609/CK2016093002000126.html (東京新聞 2016年9月30日) 世界でしぼむ原発市場 日立、東芝、三菱重が核燃事業統合へ 日立製作所と東芝、三菱重工業の三社が原発の燃料製造事業を統合することで調整していることが二十九日、分かった。東京電力福島第一原発の事故の影響で国内の原発はほとんど稼働せず財務が悪化しており、来春を目指した統合で経費節減などを目指す。しかし、原発産業をめぐる経営環境は国内外で厳しさが増しており、狙い通りの効果を上げるのは難しい状況だ。統合を検討している三社は、日立、東芝、三菱重が直接出資する二社と、東芝傘下の米ウェスチングハウス・エレクトリック(WH)などが出資する一社。安倍政権は原発の再稼働を急ぐが、国民負担を増やす議論が始まるなど矛盾や課題が山積している。安倍首相はインドやトルコなど海外に原発を売り込むが、原発産業は世界でも厳しさを増している。欧州ではドイツが脱原発の方針を決定。フランスは原発大手アレバが開発した原子炉に相次いでトラブルが発生し、二〇一五年度まで五年連続で純損益が赤字になり、政府が支援に乗り出している。英国は二酸化炭素(CO2)の排出を抑えるため原発の新設を決めたが、事業者の採算割れを防ぐため一キロワット時当たり一二・二一円(一ポンド=一三二円換算)の収入を保証する仕組みを導入。市場で取引される電力価格(一キロワット時当たり五・五円程度)の二倍を超え、足りない分は国民が負担する状態だ。米国では採掘困難な地層から石油や天然ガスが得られるようになったシェール革命で火力発電が安くなり、コストに劣る原発の廃炉が相次ぎ決まっている。新興国では原発の増加が見込まれている。だが、世界の原子力産業を調査する市民グループによると、中国では原発への投資額は再生可能エネルギーの二割弱。インドでも一二年以降、風力の発電量が原発を上回る傾向が続いている。加えて、原発には金銭以外のリスクもある。使い終わった核燃料など「核のごみ(高レベル放射性廃棄物)」は数万年におよぶ長期の管理が必要なため、民間企業は責任を負いきれず、各国とも処分に頭を悩ませている。名古屋大情報文化学部の高村ゆかり教授は「採算面や金銭に換算できないリスクがあるという側面を見ると、原発産業を民間ビジネスとして成り立たせるのは難しい」と話している。 *3-2:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12587832.html (朝日新聞 2016年10月2日) 原発事故、責任負うのは 事業者賠償に上限案 原発事故の賠償責任を国民も負うべきか――。内閣府の専門部会が議論を本格化させる。背景には、原発再稼働を進める政権の意向を追い風に、国民にも負担を求めたい電力会社側の理屈がある。だが、事業者が「有限責任」になったら安全への意識が薄れ、対策が手薄になりかねないと指摘する専門家もいる。 ■賛成派「国策、国も負担を」 「原子力を積極的に推進してきたことに基づき、国の補償を求める」。5月の専門部会で、経団連でエネルギー対策を担当する加藤泰彦氏(三井造船会長)が述べた。オブザーバー参加の電気事業連合会も同調しつつ、自由化が進んで原発費用のすべてを電気料金でまかなえる総括原価方式がなくなったら、原発事故時の負担額を予測できない懸念を示した。これまで電力業界は「原発のコストは安い」と主張してきたが、賠償負担が重くなったらコストがどれだけ高くなるかの言及はなかった。国は、東京電力福島第一原発の事故後に見直したエネルギー基本計画で、原子力を「重要なベースロード電源」と位置づけた。いずれの意見も、これらを理由に国も事故の補償を担うべきだとの考えだ。部会では業界以外からも、テレビ番組のコメンテーターとしても知られる住田裕子弁護士が「(事業者への)絶大な許認可権限や監督権が国にはある。国の責任を一歩進めるべきだ」と主張。いまの原子力損害賠償法では国の援助があいまいで、具体化すべきだとの考えに立った。 ■慎重派「安全おろそかに」 ただ、事業者の有限責任化には慎重論も根強い。環境法や賠償制度に詳しい大塚直・早大教授は、無限責任の維持を強調した。国も負担する制度を採り入れると「安全に対する事業者の投資がおろそかになる可能性がある」というのが主張の柱だ。また、消費者団体役員の辰巳菊子氏は、原発事業について「利益はすべて事業者にいき、事故時だけ国に負担を求める話は納得しがたい」と指摘した。法曹界も有限責任に反対の立場だ。日本弁護士連合会は8月、賠償制度の見直しについて「そもそも(事故を起こすなどの)不法行為の法制度で賠償の責任が限定されることはない」とする意見書を公表した。事業者負担を限定すると、賠償制度が持つ「事故の再発を防ぐ機能」も失われるとしている。 ■無限責任の原則、なし崩しの恐れ 一方、福島の事故をみると、無限責任がなし崩しになる恐れがある。 国は2013年度末、賠償や除染にかかる費用として、東電への貸し付けを5兆円から9兆円に増額した。しかし、その後も費用がかさみ、当面の廃炉費用を含めると計20兆円近くに膨らみそうだ。東電は7月、今後も増える廃炉費用を負担しきれないとして、国にさらなる支援を求めた。経済産業省も具体的に支援策の検討を始め、電力自由化で新規参入した小売業者にも負担を求める方針だ。全国の消費者の負担が重くなれば、福島事故が有限責任の先行例になり、賠償制度の見直しにも影響しかねない。 ■原発事故の事業者責任の論点 <有限責任> ・事業者の安全意識が低下しないか ・過失度合いで負担額を決めると賠償手続きが煩雑化 ・国の負担割合をあらかじめ決めるのは困難 ・国民の理解が得られるか <無限責任> ・現行の民間保険や政府補償では備えが過小 ・事業者が巨額債務を抱える問題が残る ・国の援助のあり方 <教育―学力の軽視> *4-1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20160930&ng=DGKKASDG22H5H_Z20C16A9EA2000 (日経新聞 2016.9.30) 学力テスト、地域差縮小続く 下位県の成績向上 応用力に課題 文部科学省は29日、全国の小学6年と中学3年を対象にした2016年度の全国学力・学習状況調査(全国学力テスト、学テ)の結果を公表した。平均正答率で、下位自治体と全国平均や上位との差は初回だった07年度と比べて縮まっており、文科省は「各地で学力の底上げが続いた成果」と分析している。 今年4月、全国の国公私立の小中学校2万9千校に在籍する207万人が国語、算数・数学で受け、それぞれに知識を問うA問題と活用力を測るB問題が出題された。各回の全国平均を100として正答率が低い3県と比較したところ、07年度に3.7ポイントあった中学数学Bの差が今回は2.0ポイントに改善。上位と下位の差も縮まった。小学校の算数Bを除く小中7科目で07年度より数値が向上し、15年度と比べても5科目で改善した。平均正答率はこれまでと同様、B問題で低かった。国語では目的に応じて自分の考えを明確にしながら読んだり、根拠を示して書いたりする問題に課題があり、算数・数学でもグラフから情報を読み取って記述する問題などに間違いが目立った。都道府県別の平均正答率(公立)では、小学校の4科目のうち3科目で石川が最も高かった。中学では秋田と福井がそれぞれ2科目でトップとなり、上位の顔ぶれは例年と大きく変わらなかった。低迷が続いていた沖縄は、初めて小学校の全科目で全国平均を上回った。学テは教育委員会や学校現場が結果から子供の課題を把握し、指導改善につなげることを目的に07年度に始まり、今回で10年目。当初は全員参加方式で民主党政権下に抽出方式となり、自民党の政権復帰に伴い13年度から全員参加に戻った。全員参加は今回で4年連続だが、今年4月の熊本地震の影響で熊本県の全小中学校と宮崎、大分両県の一部は後日実施となり、結果は全国集計に反映されなかった。文科省は当初8月25日に今回の結果を公表する予定だったが、中学校分の採点などを受託した業者の集計にミスがあり公表が1カ月以上遅れた。 *4-2:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20160930&ng=DGKKZO07808290Z20C16A9M13300 (日経新聞 2016.9.30) 「深い学び」なお途上 小6・中3学力テスト結果 2016年度の全国学力・学習状況調査(全国学力テスト、学テ)は基礎知識の定着に一定の改善がみられたものの、やりとりや表現を理解する力や根拠を示して書く力などに引き続き課題が残った。次期学習指導要領で掲げられる「深い学び」の実践に向け、各教科の専門家からは指導のさらなる工夫を求める声が上がっている。 *4-3:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20161002&ng=DGKKZO07902070S6A001C1PE8000 (日経新聞社説 2016.10.2) 学力テスト10年の総括を 年中行事のように漫然と続けるのではなく、その功罪を総括して今後のあり方を考えるべきだ。導入から10年目を迎えた全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)のことである。調査は小学校6年生と中学校3年生を対象に、文部科学省が2007年度から始めた。国語、算数・数学は毎年実施。12年度からは理科が3年に1度行われ、19年度をめどに中3の英語も加わる。民主党政権下の一時期は抽出調査だったが、基本的には「毎年・全員参加」で調査は繰り返されてきた。学習成果の検証を通して授業改革や制度見直しに役立てるのが大きな目的だという。小6、中3の子どもの大半が取り組むテストを続けてきたことで詳細な学力データが積み重なり、学校での指導に生かす試みが広がってきたのは確かである。学力と家庭状況との関連もくっきり浮かび上がっている。そうした意義は理解できるが、だからといって数十億円もの費用をかけた悉皆(しっかい)調査が本当に毎年必要かどうか、当初からの疑問は拭えていない。「基礎的な知識は身についているが応用力には不十分」といった調査結果が示す課題は、毎年ほとんど同じだ。先日公表された今年度のテスト結果をみても、同様の傾向が浮かび上がっている。調査の本来の目的である全体的な学力傾向を把握するには抽出調査でこと足りよう。全数調査を実施するにしても数年に1度にする手もあるはずだ。実際に理科は3年に1度の実施である。「毎年・全員参加」の大きな弊害は、過去問題を勉強させるなど「学力コンクール」化が止まらないことである。このため文科省は今回から、都道府県別の平均正答率について表向きは小数点以下の数値を四捨五入して示した。弥縫(びほう)策を講じるよりも、この10年を検証して制度を見直すのが本筋だろう。このままでは走り出したら止まらない公共事業と同じではないか。 *4-4:http://ryukyushimpo.jp/news/entry-366771.html (琉球新報 2016年9月30日) 小6 全教科平均超え 全国学力テスト 中3も差縮める 全国学力テスト全国学力・学習状況調査文部科学省 文部科学省は29日、小学6年生と中学3年生を対象に4月19日に実施した2016年度全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)の結果を公表した。県内の公立小学校は、国語A、算数Bの平均正答率が初めて全国平均を上回り、4教科全てで全国平均を超えた。算数Aは、都道府県別で4位となった。県内公立中学校は、全教科の平均正答率で全国平均との差を縮め、国語Bは都道府県別で45位と、初めて最下位から抜け出すなど改善傾向がうかがえる。県内小学校の平均正答率は、国語Aが73・4%(全国平均72・9%)で、都道府県別では21位。国語Bは58・1%(同57・8%)で21位。算数Aは80・7%(同77・6%)で4位。算数Bは47・7%(同47・2%)で11位だった。前年度の平均正答率と比べると、国語Aで4・1ポイント、算数Aで3・0ポイント、算数Bで3・0ポイント上がった。国語Bは9・2ポイント下がった。県内中学校の平均正答率は、国語A71・3%(同75・6%)、国語B63・1%(同66・5%)、数学A54・3%(同62・2%)、数学B37・0%(同44・1%)。全国平均との差は国語Aでマイナス4・3ポイント(前年度マイナス5・8ポイント)、国語Bがマイナス3・4ポイント(同マイナス4・5ポイント)、数学Aでマイナス7・9ポイント(同マイナス8・6ポイント)、数学Bがマイナス7・1ポイント(同マイナス7・6ポイント)と、いずれも差を縮めた。都道府県別の平均正答率は国語Bが45位、残り3教科は最下位だった。前年度の平均正答率と比べると国語Aで1・3ポイント、国語Bで1・8ポイント、数学Bで3ポイント上昇した。数学Aは1・5ポイント減だった。今回の調査には、県内の公立小学校260校1万5109人、公立中学校147校1万4751人が参加した。熊本地震の影響により4月19日の実施を見送った熊本県の全小中学校と宮崎、大分両県の一部学校は結果集計を見送った。 <人材育成のための教育環境整備> PS(2016年10月4日):東京都は、オリンピックや豊洲市場に相場以上の金をかけているが、*5-1のように、人材を育てる教育施設(保育・公教育・学童保育を含む)の整備は疎かで、未だに待機児童が多い上、現在の施設は子どもの居場所として質が悪すぎる。そのため、私は、0~2歳児を保育の対象とし、3歳児以上は義務教育として小学校で教育しながら育てるのが、今後の人材育成のためによいと考える。なお、保育の質は、佐賀県の*5-2の事例のように、居場所としての施設もケアの内容も工夫されている質の良い保育園ができている反面、東京都は、*5-3のようにその両方が欠けている。そして、オリンピックなどの一時的なイベントで相場以上の予算をかけて無駄遣いするよりも、教育施設を整備する方がよほど重要であり、将来への投資になるにもかかわらず、このような予算の使い方になる理由が最も重要な問題なのである。 豊洲市場の建設費 オリンピック会場建設費の国際及び国内比較 2016.9.16朝日新聞 2015.7.10Yahoo *5-1:http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201607/CK2016072002000135.html (東京新聞 2016年7月20日) 都内の待機児童8466人 減少から再び増加 東京都内で認可保育所に入れず、行政のほかの保育サービスでも預け先が見つからない待機児童は、今年四月一日時点で前年より六百五十二人増え、八千四百六十六人に上ることが分かった。現行基準で統計を取り始めた二〇〇二年以降、最多だった一四年(八千六百七十二人)に次ぐ多さ。都が十九日、各区市町村の集計を基に発表した。都によると、四月現在で認可保育所は前年より百五十八カ所増え、定員も一万三千六百三十五人増の二十三万三百三十四人だった。前年は減少した待機児童数が再び増加したことは、施設整備などの対策が、保育ニーズの伸びに追いついていないことを示している。都は主な要因として、人口増加や共働き家庭が増えていることを挙げる。認可保育所などの利用申込者数は二十六万三千五百十八人で、就学前児童人口に占める割合が41・3%と、初めて四割を超えた。認可以外も含めた保育サービスを利用する児童数は、前年より一万四千百九十二人増え、二十六万千七百五人で過去最多だった。年齢別の待機児童数は一歳児が四千四百四十七人と最も多く、ゼロ歳児が二千七十二人、二歳児が千四百八十五人と続く。区市町村別では、世田谷区の千百九十八人が最多。続いて江戸川区の三百九十七人、板橋区の三百七十六人。前年からの待機児童の増加数が大きかったのは、中央区の百四十四人、荒川区の百十六人、江東区の百十人の順だった。待機児童 保護者の仕事や病気で、認可保育施設に入れる条件を満たしているのに、定員超過などで入所できない乳幼児のこと。都市部に集中し、0~2歳児が多い。昨年4月時点で2万3000人を上回り、5年ぶりに増加した。保護者が育児休業中などの理由で、自治体が計上していない潜在的な待機児童はさらに約6万人いる。用地不足などで施設整備が追い付かず、保育士の確保も課題となっている。 *5-2:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10105/359511 (佐賀新聞 2016年9月25日) 待機児童問題改善へ 保育園起工式、定員75人 人口増加が続き、保育所の入所待ちをする「待機児童」が県内で最も多い鳥栖市で23日、保育所の起工式があった。社会福祉法人健翔会(門司健理事長)が同市田代本町に建設する「あいりす保育園」で、定員は75人。鳥栖市内では来春までにあと2保育所の建設が予定されており、待機児童問題の改善を目指す。あいりす保育園は敷地面積3300平方メートルに、木のぬくもりが感じられる木造平屋建て園舎(建物面積740平方メートル)を建設し、園庭810平方メートルなどを整備する。園舎には未就園の子どもと保護者の交流の場となる子育て支援センターや学童保育を併設する。総事業費は2億3千万円。式には市や福祉、園の関係者らが出席した。門司理事長(83)は「100年先を見るとまず教育が大事になる。教育と保育の両方に力を入れ、たくましい子どもを育てたい」とあいさつした。同法人はすでにレインボー保育園(同市桜町)と虹の子保育園(同市古野町)を運営しており、今回が3園目になる。建設地に隣接して同法人のデイサービス施設やケアハウスがあり、利用者のお年寄りや地元と交流を図りながら運営する。同園では今後、保育士の確保を急ぐ。市によると、今春の待機児童は5人で、希望の保育所に入れないなどの理由による「隠れ待機児童」は約180人とみている。あいりす保育園の他に、来春までに鳥栖西中校区に定員71人と80人の保育所が建設され、市内の定員は226人増える予定。 *5-3:http://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/400/243476.html (NHK 2016年4月22日) 日本総研 主任研究員 池本 美香 保育園に落ちたというブログが国会で取り上げられたことをきっかけに、待機児童問題がこれまでになく注目を集めています。待機児童数は7年連続で2万人を超えています。政府は2001年に「待機児童ゼロ」を打ち出し、この10年で保育所の定員は50万人も増えました。しかし、それ以上に、共働きや一人親など、保育所を必要とする子どもが増えています。政府は先月末、緊急的な待機児童解消策を打ち出しましたが、その内容は、国の基準より手厚い保育を行っている自治体に、基準を緩和して一人でも多く子どもを受け入れるよう要請する、といったもので、安全の確保や活動の豊かさといった「質」の低下が懸念されています。ただでさえ、短期間に保育所を増やしてきたため、現場では経験の浅い保育士が増えていて、保育士による虐待や保育所での死亡事故など、深刻な事例も報道されています。毎年10数人の子どもが保育施設で亡くなっており、この10年間に死亡した子どもはあわせて150人近くに上っています。特に国や自治体が認可も補助もしていない認可外保育施設において、死亡事故が多くなっています。私自身も5年前に息子が待機児童となり、認可外保育施設に預けるしかなく、その質が本当に心配でした。その後認可保育所に入ることができましたが、階段から落ちて頭を打ったり、アレルギーのある食材を食べてじんましんがでたりと、認可保育所なら安心というわけではありません。認可保育所でも、治療に要する期間が30日以上の重篤な事故が、昨年4月から12月の間に342件も報告されています。保育所に入れても、その質に不安があれば、親は安心して働けません。入れる保育所があっても、預ける気になれないと職場復帰をあきらめる人もいます。待機児童問題については、量の拡大だけでなく、保育の「質」の維持、向上に向けた検討が不可欠です。海外ではすでに、保育の質を確保するための取り組みが活発化しています。その背景には2つのきっかけがあります。一つは、国連で子どもの権利条約が採択されたこと、もう一つはノーベル経済学賞を受賞したシカゴ大学のヘックマン教授が「保育への投資はリターンが大きい」という研究結果を出したことです。一つ目の子どもの権利条約は、安全・安心に加え、教育、遊びやレクリエーション、意見表明など、子どもに幅広い権利を認めるものです。海外ではこの条約に沿って政策が検討されているため、保育政策についても「働く親が子どもを預ける場所があるか」ではなく、まず「保育が子どもにとってふさわしいものとなっているか」が検討されます。すべての乳幼児に質の高い教育を保障するという観点から、保育所を学校と同列の教育機関と位置づけ、学校を担当する省庁が保育所を所管する国も増えています。親の仕事の有無にかかわらず、すべての子どもに保育所を利用する権利があり、親の所得にかかわらず利用できるように、幼児教育の無償化を進める国もあります。保育の質が重視されることとなったもう一つのきっかけは、幼児期の教育の質が、学校教育の効率性を左右するというヘックマン教授の研究です。質の高い幼児教育を受けた子どもは、その後の学力が高いことや、成人したあとの所得が高いことなどがわかりました。これは幼児教育を通じて意欲や自尊心、創造性などの非認知能力が高まるためだと考えられています。成人になってから事後的に補助するよりも、予防的に幼児期に投資する方が、財政への負担が少ないと考えられるようになっています。ヘックマン教授の研究を背景に、海外では保育の質向上のための財源の確保に国民の合意が得られ、幼児教育への公的投資が増えています。では、具体的に、海外ではどのようにして保育の質を確保しているのでしょうか。日本ではあまり検討されていない取り組みを3つご紹介します。第一に、保育士の処遇です。日本の保育士の平均賃金(認可保育所の保育士の約3分の1を占める公立保育所を除く)は、小学校教員の7割弱と少なく、月額で10万円以上も差があります。全産業平均と比べても、大きく下回っています。これに対して海外では、保育士も教育者としての専門性や、子どもの安全に対する責任といった高度な役割を果たしているとみなされ、幼児期と小学校で教員の賃金格差が小さくなっています。こうした高度な役割を果たせる保育士の育成に向けて、保育士に免許の更新を義務付けたり、保育士養成校の質をチェックする国もあります。第二に、園の運営についての評価です。日本では国が自治体に対して、年に一度は園を訪問して質をチェックするよう求めていますが、施設数が急増している自治体では数年に一度の訪問しか行われていません。外部の専門家による第三者評価も、義務付けではないため、2013年度に第三者評価を受けた保育所は5%にすぎません。これに対して海外では、国の評価機関が全国すべての施設を定期的に訪問して評価し、その結果をホームページで一元的に公表する取り組みがあります。たとえばイギリスでは、すべての園の評価レポートがホームページに掲載されていて、親にとって、保育所選びの際の貴重な情報源となっています。全国の園の評価結果が国に集約されるため、全国の保育の質の変化や地域別の状況も把握でき、政策の見直しにも役立ちます。好事例もホームページで紹介されるので、各園がそれを見て自らの運営の改善を図ることもできます。第三に、親の参画です。海外では、国の評価機関による訪問だけで質を確保することは難しいため、保育の質にもっとも関心が高い親に、日常的に保育の質をチェックしてもらうという考え方が見られます。親の役割として、気になることがあればすぐに園と相談すること、それでも気になることがあれば、自治体や評価機関に伝えることが期待されています。親の代表と職員の代表が定期的に集まる運営委員会を、すべての園に設置するよう求め、親の意見やアイディアを質の向上に活かそうとする国もあります。さらには、保育士不足や財源不足を補うために、親が交替で保育士の補助をしたり、大掃除や施設の修繕を親たちで行う例もあります。こうした親の参画は、親同士が親しくなるきっかけにもなっています。日本は保育の質を、保育士の努力だけで確保しようとする傾向も見られますが、海外の動向をふまえれば、保育の質を高めるためには、保育士の養成の在り方や賃金水準を見直すことが必要です。さらには、実質的に子どもにふさわしい保育が提供されているか、外部の専門家による評価をすべての園に義務付けることや、保育の質の向上に親の力を積極的に活かすことも期待されます。海外では、保育を子どもにとってふさわしいものとするために、実にきめ細かな配慮が見られます。保育士を採用する際に、過去の犯罪歴などをチェックすることが、多くの国で義務付けられています。園の活動に対して、子どもが意見を表明する権利を、法律に記載する国まであります。財源の制約から質の話を後回しにして、目先の待機児童解消に取り組むより、より長期的な視野を持って、子どもの権利や効果的な公的投資の視点から、すべての子どもに質の高い保育を保障する方向に、舵を切ることが求められます。また、その方がむしろ、財源確保に向けた合意を得やすいという面もあると思います。 PS(2016年10月6日追加):*6-1のような化学メーカーで出る水素の活用はよいが、*6-2の三菱重工MRJの5度目の納入延期は情けない。そして、ライバルはブラジルのエンブラエル社だそうだが、三菱重工がMRJを水素燃料で設計していればonly oneであり、他国の飛行機と同列の競争をせず引っ張りだこになった筈である。現在の飛行機は大量の排気ガスと大きな騒音を出すため、これを出さない燃料電池飛行機を作れば競争の土俵が変わったのだが、技術力だけでなく先見の明もないのだろう。 *6-1:http://qbiz.jp/article/95324/1/ (西日本新聞 2016年10月6日) 水素活用へ実証実験 山口・下関市、化学メーカーと連携 山口県下関市は本年度から、同県周南市の化学メーカーや同市、県などと連携し、水素を使った燃料電池自動車などの実証実験「低炭素水素技術実証事業」に取り組む。年末までに下関水産会館跡地(下関市大和町)に簡易型水素供給設備(水素ステーション)の設置工事に着手し、2017〜19年度に実証実験を実施する予定。市環境政策課によると、周南市の化学メーカー「トクヤマ」「東ソー」などから発生する未利用分で高純度の水素を液化し、下関市内に輸送。水素ステーションに貯蔵し、市の燃料電池車や、下関漁港内のフォークリフト用に使用。純水素型燃料電池にも水素を供給し、漁港内の入浴施設や食堂にも活用する。環境省の委託事業で事業費は15億円で、このうち市の負担は約3億円。市環境政策課は「水素社会の到来を見据え、温室効果ガス削減とエネルギー問題を同時に解決できる水素技術の普及に向けて、取り組みを進めたい」としている。 *6-2:http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20161005-00000004-wordleaf-bus_all (Yahoo 2016年10月6日) 三菱重工のMRJが5度目の納入延期になる公算、プロジェクトは大丈夫? 初の国産ジェット旅客機である三菱重工のMRJが5度目の納入延期になる公算が高まってきました。これ以上、納入が遅れると、収益面でかなり厳しい状況に追い込まれます。MRJのプロジェクトは大丈夫なのでしょうか。 ●5度目の納入延期を検討 三菱重工の航空機製造子会社である三菱航空機は、MRJについて5度目の納入延期を検討しています。当初は2013年の納入を目標としていましたが、初飛行の前に3回ほど開発スケジュールが延長され、初飛行に成功した2015年11月時点では2017年の納入を目指していました。しかし、開発スケジュールはさらに遅れ、その後は2018年半ばをメドに開発を進めてきました。2016年8月には、米国での試験飛行のため日本を飛び立った同機が空調システムの不具合などで2度日本に引き返すというトラブルが発生。3度目のトライでようやく米国への移送を完了しています。MRJは今後、機体の型式証明を取得するため、累計で2500時間に及ぶ飛行試験を実施する必要があります。この試験をクリアすれば、晴れて2018年半ばの納入にこぎ着けることができたはずなのですが、今度は別の問題が浮上してきました。量産に際して設計変更が必要なことが明らかとなり、開発スケジュールがさらに伸びる可能性が出てきたのです。 ●ライバルはブラジル・エンブラエル社 新しい航空機を開発するにあたってトラブルはつきものであり、何度も遅延すること自体に問題があるわけではありません。しかしビジネスにおける収益面を考えるとそうも言っていられません。MRJの開発費は当初1800億円程度を見込んでいましたが、金額は大幅に膨らみ、現在では4000億円に達しているともいわれています。MRJの現時点における目標販売数は1000機となっており、仮予約を含めても約400機の受注しか取れていません。1000機を販売することができても収益的には厳しいといわれていますから、受注がこれ以上伸びないという状況になった場合には、かなりの赤字を覚悟する必要も出てきます。スケジュールが遅れることの最大の問題は、ライバルであるブラジル・エンブラエル社の最新鋭機納入のタイミングが刻々と近づいていることです。同社はMRJの競合となる機体の納入を2020年に開始する予定ですが、MRJはエンブラエルより2年納入が早いことがセールスポイントでした。しかし、このアドバンテージがなくなってしまうと、MRJはエンブラエルと直接戦わなければなりません。エンブラエルは新規参入の三菱と異なり、豊富な納入実績がありますから、直接、競合するという状況になった場合には、三菱の苦戦が予想されます。三菱重工の経営陣は、当初から黒字化には10年かかるとの見通しを示しています。5度目の納入延期となった場合には、さらに長期戦を強いられることになります。 PS(2016/10/7追加):東京オリンピックと同様、*7の大阪万博にも呆れてモノが言えない。何故なら、日本(特に東京、大阪)は、施設が整っておらず外国での認知度も低い開発途上国ではないため、このようなイベントで無駄遣いをし、国民をないがしろにして国威発揚すべき段階ではなく、本物の豊かさを実現していく段階だからだ。また、東京オリンピックと大阪万博の組み合わせも50年前と同じことの繰り返しで呆れる。そのうち、江戸時代や明治維新をもう一度やろうということになるのではないか? *7:http://www.nikkei.com/article/DGXLASHC21H7F_R20C16A9AC8000/ (日経新聞 2016/9/22) 大阪万博へ100ヘクタール確保 府・市、夢洲集約を正式決定 大阪府が2025年の誘致を目指す国際博覧会(万博)の会場候補地について、府と大阪市は21日、人工島の夢洲(ゆめしま、大阪市此花区)に集約すると正式に決めた。埋め立て済み用地のほか、西側の廃棄物埋立処分場などを活用し会場に必要とされる100ヘクタールを確保。府・市が誘致するカジノを含むIR(統合型リゾート)用地も最大70ヘクタール生み出せるとした。現在は工事が進んでいない南側の約100ヘクタールについては、IRの進出動向をにらみ最大30ヘクタール程度埋め立て可能とした。目標とする3千万人の来場者を会場に輸送するため、大阪市営地下鉄中央線の延伸を開催に間に合わせる。シャトルバスなどの往来のため、夢洲に渡る橋も拡幅する。松井一郎府知事は方針決定後、記者団に「エンターテインメントを柱に大阪のにぎわいを実現できる」と強調。吉村洋文市長は「万博とIRで相乗効果が出せるようにしたい」と話した。 PS(2016年10月7日追加):道路際の住民や車に乗っている人は、もともと車両通行時の騒音や振動に悩まされてきたため、*8のように、せっかく静かに走れるようになったEV・HVに「車両接近通報装置」の設置を義務付ける規制は全く愚かで、日本でしか通用しないガラパゴス規制になるだろう。障害者・高齢者・一般人及び自転車が事故に巻き込まれないようにするためには、①道を広くして歩道・自転車道を設置する ②車に自動停止装置を付ける ③車の運転者が気をつける などが有効で、日本の街づくりにおける道路計画のなさは、国土交通省及び地方自治体の思考停止に依るところが大きい。 *8:http://www.saga-s.co.jp/news/national/10201/364063 (佐賀新聞 2016年10月7日) HV接近音、装置義務付け、18年以降の新型車対象 国土交通省は7日、道路運送車両法の保安基準を改正し、走行音が静かなハイブリッド車(HV)や電気自動車(EV)の接近を歩行者に音で知らせる「車両接近通報装置」について、2018年3月以降の新型車への設置を義務付けた。視覚障害者やお年寄りが接近に気付かず、事故に巻き込まれるケースがあるためで、現在は認められている通報音の停止機能も禁止する。現在販売されている車種は、20年10月から適用する。中古車は対象外となる。通報装置は、市販されているHVやEVに標準装備されているが、メーカーごとに音量や音質が異なり、歩行者に分かりづらいといった問題もあった。 PS(2016年10月11日追加):いつものとおり廻りを見てバスに乗り遅れないようにあわてて行動するパターンで遅れ馳せだが、*9のように、「パリ協定」の批准案を閣議決定したのはよかった。今後は、これに沿って自然エネルギーによるCO2削減計画を作ることが必要で、乗り物は速やかに電動か燃料電池に変えれば、環境と資源の課題が同時に解決する。例えば、2020年の東京オリンピック開催時以降は、東京23区内などの都市部はEVか燃料電池車しか走らせないようにする思いきった施策を行えば、大きくCO2を削減でき、都市のヒートアイランド現象を緩和でき、次の技術に繋がって、景気もよくなる。 *9:http://www.saga-s.co.jp/news/national/10201/364925 (佐賀新聞 2016年10月11日) パリ協定批准を閣議決定、国会審議で承認目指す 政府は11日、地球温暖化対策の新たな国際枠組み「パリ協定」の批准案を閣議決定した。近く国会提出し、衆参両院の承認を得て、モロッコで国連の気候変動枠組み条約第22回締約国会議(COP22)が始まる11月7日までの批准を目指す。ただ環太平洋連携協定(TPP)を巡る与野党攻防のあおりを受けて審議が後回しになる懸念もある。パリ協定はすでに米国や中国、欧州連合(EU)諸国、カナダ、ブラジルなどが批准。批准55カ国以上、世界の温室効果ガス排出量に占める比率が55%以上という発効要件をクリアし、11月4日の発効が決まっている。 <太陽光発電の例> PS(2016.10.18追加):太陽光発電の開発も、公認会計士の携帯品であるシャープの電卓をヒントに、私が経産省に提案して1995年頃に始まったもので、一直線に進んでいれば日本がトップになって多くの特許を得ていた筈だが、日本では太陽光発電に対するいちゃもんや妨害が多くて進展せず、シャープは鴻海に買収され、パナソニックも、*10-1のように国内不振を補うために米テスラと共同生産して海外に活路を見出すこととなった。これにより、日本発の技術も中国とアメリカで発展することになったが、こういうことの積み重ねが日本企業の利益率を低くし、イノベーションによる経済発展を邪魔しているのだ。 こうなる理由は、政治・行政・経営・メディアに多い文系の人材が科学に弱すぎる上、私がこのようなことを書くと「女のくせに謙虚でなく生意気だから、あいつの言うことは絶対やらない」と考える人が少なからずいることで、このように科学的でも公正でもない判断基準で物事を決める人がリーダーになっていることが重大な問題なのである。そのため、文系学部も大学入試や大学教育において、数学・物理学・化学・生物学をはじめとする科学の科目を増やすことが、有能なリーダーを育成するにあたって必要不可欠だ。 なお、*10-2のように、インドネシアでは、新エネ振興補助金は既存の電力会社ではなく政府が出しており、来年も継続する方針だそうで、インドネシアの方が着実に新エネルギーが伸びそうだ。 *10-1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20161018&ng=DGKKZO08478550X11C16A0TJC000 (日経新聞 2016.10.18) 太陽光パネル、海外に活路 パナソニック、米テスラと共同生産 販売網活用、国内不振補う パナソニックが太陽電池事業の立て直しを目指し、電気自動車(EV)メーカーの米テスラモーターズと協業することが17日分かった。2017年にも米国で太陽光パネルを共同生産する方針だ。テスラが買収予定の米住宅用太陽光パネル最大手、ソーラーシティの全米に広がる販売網を活用する。海外に活路を求め、販売減が続く国内を補う狙いだ。協業はテスラが同日発表した。テスラが買収を公表しているソーラーシティが建設中の工場(ニューヨーク州)で、パナソニックが開発した太陽光パネルを生産するほか、生産技術の指導などでも協力する見通し。投資額は数百億円に上るもようだが、パナソニックはその一部も負担するとみられる。17年の生産開始を目指す。パナソニックにとってテスラグループの販路を使って太陽光パネルを拡販できる利点がある。パナソニックは16年度の海外での販売量を前年度の約2倍の10万キロワットと全販売量の2割にまで引き上げる目標を掲げる。米国では太陽光パネルの販売代理店と相次いで提携している。背景には国内での不振がある。パナソニックが住宅向けでシェア首位に立つ国内市場は、太陽光発電の買い取り価格の下落で市況が悪化。同社の太陽電池を含むエネルギー事業の15年度の売上高は14年度比11%減の3671億円に落ち込んだ。1~8月の太陽電池事業の売上高も前年同期比4~5割減ったもようだ。販売減は生産にも影を落とす。16年2月から稼働を停止する二色の浜工場(大阪府貝塚市)は今秋の再開を予定していたが、来春にずれこみそうだ。海外市場の開拓が不可欠の中、太陽光発電事業に注力するテスラとの協業はパナソニックにとって設備投資の資金負担などが見込まれ、リスクを抱える面もあるが起爆剤となる可能性もある。両社はEVに使うリチウムイオン電池の工場も共同建設しており、11月にも量産を始める予定だ。テスラの新型車の受注が好調で、投資計画を前倒しにするなど、関係は深い。 *10-2:http://qbiz.jp/article/96151/1/ (西日本新聞 2016年10月18日) インドネシア 新エネ振興補助金、政府は来年も継続方針 インドネシアのエネルギー・鉱物資源省は、新・再生可能エネルギー振興に向けた補助金の拠出を来年も継続する方針を固めた。補助金額は、約1兆1,000億ルピア(約88億2,600万円)。17日付インベストール・デイリーが伝えた。同省新・再生可能エネルギー局のリダ局長は、補助金には新・再生可能エネルギーの買い取り価格と国営電力PLNの電力生産コストとの差額分を補うことで、PLNによる買い取りを促進する重要な目的があると説明。国会は先に、企業に対する支援は補助金にふさわしくないとして却下する方針を示していた。国会第7委員会(エネルギー鉱物資源関連)との会合では、同補助金を通常の電力補助金と合算することにも同意し、合算しない場合でも同補助金の運用はPLNが行うことを確認した。同補助金の内訳は、小水力発電が5,200億ルピア(電力供給量30万2,420キロワット)、太陽光発電が2,050億ルピア(12万5,000キロワット)、バイオマス発電が3,020億ルピア(4万2,800キロワット)、バイオガス発電が383億ルピア(6,200キロワット)、ごみ焼却発電が77億ルピア(1,600キロワット)となっている。リダ局長は、今月25日付で電力価格と太陽光発電事業入札に関するエネ鉱相令『16年第19号』を公布する予定と表明。同相令の公布後に、全国で発電容量が合計25万キロワットとなる太陽光発電事業の入札を実施する計画とした。 PS(2016.10.30追加):*11に、都道府県立などの公立中高一貫校で学年を超えた前倒し学習などの学力対策が広がっており、約6割が中学で高校の学習内容を教え、進学率も一般の公立高より高いそうでよいことである。何故なら、私立の進学校は前からそうで、東大の場合、入学する時に東大教養レベルの知識を持っている人も少なくなく、授業料の高い私立でなければそれができないとすれば、経済的事情で進学の可能性が左右されたり、男女別学しかなかったり、中高一貫の私立校がない地方の生徒は不利になったりするからだ。しかし、そのように勉強すると「“ゆとり”ある楽しい学校生活ができない」と主張する人もいる。私は経験があるが、そのように勉強しても読書・習い事・遊び・スポーツなどをする時間は十分あり、暇の多い時期から必要な学識を身につけ始めることで、むしろゆとりを持って学ぶことができ、さらに大人になって使用する考え方や知識を短期間で詰め込むことなく、身につけることができる。そのため、下のように、近年は公立中高一貫校だけでなく、公立小中一貫校も増えており、歓迎だ。 2013.10.25朝日新聞 *11:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12633538.html (朝日新聞 2016年10月30日) (教育考差点)公立一貫校、進む前倒し学習 都道府県立など公立の中高一貫校で、学年を超えた前倒し学習などの学力対策が広がっている。朝日新聞が全国の一貫校にアンケートした結果、約6割が中学で高校の学習内容を教えていた。進学率も一般の公立高より高く、学校数はこの10年で2倍に増えている。公立中高一貫校は、(1)一つの学校で6年の一貫教育を行う中等教育学校(2)同じ自治体が設置した中高を接続し、中学から高校に入試なしで進める併設型(3)中高で生徒間の交流などをする連携型――に分類できる。アンケートは9~10月、一貫教育を進めやすい中等教育学校と併設型の計118校を対象に行い、105校(89・0%)が回答。このうち中学段階で高校の学習内容を教え始める学校は65校(61・9%)だった。前倒し学習は私立では進学校を中心に一般的に行われているが、公立の一貫校でも広がっている実態がわかる。中等教育学校と併設型は学校教育法施行規則に基づき、中高の学習内容の入れ替えが可能だ。中学3年時に高校の内容を教える例が多いが、鹿児島県立楠隼(なんしゅん)中学・高校は中1の11月から国数英で高校の内容に触れていた。1週間の平均的な授業時間数も一般の公立校より多い。高校でみると、一貫校は1コマ50分換算で33~35コマが72校(68・6%)で最多だったが、公立高全体では30~32コマが69・2%(昨年度の文部科学省調査)で最も多い。一貫校の今春の卒業生のうち、大学・短大に現役で合格して進学した割合は平均77・9%。公立高全体の平均50・1%(文科省調査)を大きく上回った。公立中高一貫校は旧文部省が1999年、ゆとりある6年間の学校生活の実現や進路の選択肢を増やすことなどを目的に、自治体が設置できる制度を開始。中等教育学校と併設型は2000年度には3校だったが06年度には59校、今年度は計118校になっている。10校を設置した東京都教育委員会の担当者は「経済的事情などから公立を選びたい人はおり、一貫校の門戸を広げる必要があると考えた。将来のリーダーを育成したい」と話す。
| 教育・研究開発::2014.8~2016.11 | 11:12 AM | comments (x) | trackback (x) |
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