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2018.6.22 原発に固執する資本生産性の低さと国民負担 (2018年6月23、24、25、26、27日、7月5、11、12、22、24、26日に追加あり)
  
         2017.12.14、2018.6.10西日本新聞

    
   Livedoor       2018.6.14西日本新聞       世界の発電コスト低減

(1)フクイチ事故のその後
1)事故を起こした原発の状況
 *1-1-1のように、東京電力は原発事故から7年後の2018年1月19日、初めてフクイチ2号機で格納容器底部に燃料集合体の一部が落下しているのを確認したそうで、これまで2号機はデブリの多くが圧力容器内に残り、一部が圧力容器の底を抜け格納容器の底部付近に落ちたと推定されていて確認していなかったそうだ。そして、残りの燃料集合体が何処に飛散したかは明らかにしておらず、その楽観論には呆れる。

 また、*1-1-2のように、3号機は覆うだけで2537日(約7年)もかかったそうで、その間は放射性物質をまき散らし続け、廃炉に30~40年かかるそうだが、その上、*1-1-3のように、また原子炉建屋を覆うカバー屋根を解体し、2020年度に貯蔵プールから核燃料を取り出すそうだ。そのため、その間は、3号機に残っている核燃料が、再度、露出状態になる。

 さらに、*1-1-4のように、2号機の核燃料を取り出すためとして、東京電力は2号機の原子炉建屋壁面に開口部を設ける工事を始めたが、2号機の使用済核燃料の取り出し開始は、速くても2023年度だそうだ。

 つまり、チェルノブイリ以上の爆発事故を起こしながら、東京電力と経産省は、放射性物質を迅速に閉じ込めず、のんびり拡散させている点が、ロシア以上に人権侵害なのである。

2)除染後の放射線量と除染土の扱い
 また、事故後の避難の範囲も狭すぎたが、*1-2-1のように、除染もいい加減で、2017年9〜10月に飯舘村・浪江町の避難指示解除区域で毎時0.2〜0.8マイクロシーベルトあり、政府目標の0.23マイクロシーベルトを超えていたそうだ。しかし、一般住民の許容被曝線量は世界基準では年間1ミリシーベルト(0.11マイクロシーベルト/時)以下であるため、日本基準(年間2ミリシーベルト《0.23マイクロシーベルト/時》以下)にはごまかしがある。

 その上、*1-2-2のように、環境省が農地造成に除染土を再利用する方針を出したのには驚いた。園芸作物は土ごと購入する場合もあり、そのうち境界が曖昧になって農作物の生産に使われるかもしれないため、せっかく大金をかけて集めた除染土を農地造成に利用して汚染を全国にばら撒くというのは、その感覚が疑われる。

   
        フクイチ1、3号基の爆発と直後の様子         放射性物質の飛散

(2)原発のツケ
 フクイチ事故から約6年後の2016年12月1日、政府の高速炉開発会議は、*2-1のように、「政府の高速炉開発会議は、約1兆円の国費をかけて20年以上殆ど運転できなかったもんじゅ廃炉が検討されている高速増殖原型炉もんじゅに代わって、より実用化に近い実証炉を国内に建設する」という方針を公表したそうだ。しかし、1兆円もかければ再エネは軌道に乗せることができるため、コストがかかる上、エネルギー自給率にも資さない原発にこれ以上の国費をつぎ込むのは無駄遣いである。

 さらに、*2-2-1は、「日本政府は、日立製作所が英国で進める原発新設事業に対して3兆円規模の債務保証をする」と書いているが、これは国民に3兆円規模(消費税1%分以上)の損失リスクを負わせることであり、とんでもない。そのため、*2-2-2のように、日立製作所の方が撤退も視野に英政府と事業継続に向けた最終協議に入るそうだが、日立は経済合理性から撤退したいのに日本政府が前のめりになっているように見える。残念なことに、*2-2-3のように、英政府も前のめりで日立と事業推進に向けた覚書を結んだそうだが、日立は、ここで撤退するのが最も安上がりだろう。

 また、*2-3の日印原子力協定でも、インドで原発事故が発生した際には電力会社がメーカーに賠償請求できるという(本当は当然の)法律があり、メーカーは巨額の賠償責任を問われる恐れがあるため、原発のコストは再エネより安いという論拠は成立しない。

 このように、民間企業が原発を輸出するにあたって国民にツケを回すことには、*2-4のように、国民の理解が得られる筈がない。そして、日本政府が強力な支援策を検討している資金は、国民の生活を支える社会保障を減らしながら国民負担を増やして得た金なのである。

(3)原発再稼働
 断続的に噴火している新燃岳や250年ぶりに噴火したえびの高原(硫黄山)など、活発な火山活動を続ける宮崎、鹿児島県境の霧島連山の地下に、最大15キロに及ぶ大規模なマグマだまりのあることが、*3-1のように、気象庁などの解析でわかっている。そして、これは、川内原発のすぐ東側だ。

 しかし、*3-2のように、玄海町議会は原発増設を国の計画に明記することを要求する意見書を可決しており、これなら、コストが決して低くないことが明らかになった原発は、再エネのコストが下がっている現在、国策ではなく町策にすぎない。そして、町策は、周囲に迷惑をかけない賢いものを考えるべきである。

 そして、周囲のあらゆる反対を押し切り、*3-3のように、九電は川内原発1、2号機、玄海3、4号機を再稼働したが、加圧水型でも爆発の危険性はかわらず、使用済核燃料が保管プールに水につかっただけで満杯になっていることにもかわりはない。これでは、せっかく福岡市郊外のベッドタウンとして機能できる位置にあっても、周囲に住む人が減るのは当然のことである。

 なお、私は、エネルギーのためなら公害を出しても景観を悪くしても許されるという19世紀・20世紀の発想には組しない。そして、*3-4のように、関係者が、「太陽光発電は晴天の昼間に発電量が増える一方、夜間は発電しないなど不安定な電源」などと10年1日の如く同じことを述べ、「従って、原発4基の稼働が実現したので、今秋の連休にも太陽光発電事業者の出力制御に踏み切る」というのは、世界の潮流に逆行しており、あまりにも愚鈍だ。

 そして、これが、せっかく最先端の事業のタネがあっても事業化すれば成功しない典型例で、日本では事業を起こすことはハイリスク・ローリターンであるため、起業が少ないのである。

<フクイチその後>
*1-1-1:https://www.shikoku-np.co.jp/national/science_environmental/20180119000633 (四国新聞 2018/1/19) 福島2号機で溶融核燃料初確認/第1原発調査、炉心から落下
 東京電力は19日、福島第1原発2号機でカメラ付きのパイプを使い、原子炉格納容器内部を調査した。格納容器底部に燃料集合体の一部が落下しているのを確認し、その周辺で見つかった堆積物は溶け落ちた核燃料(デブリ)と断定した。2号機でデブリを確認したのは初めて。記者会見した東電の木元崇宏原子力・立地本部長代理は「デブリで原子炉圧力容器の底部に穴が開き、中から燃料集合体が落下した。デブリに間違いないだろう」と述べた。これまでの解析では、2号機ではデブリの多くが圧力容器内に残り、一部が圧力容器の底を抜け、格納容器の底部付近に落ちたと推定されていた。

*1-1-2:https://digital.asahi.com/articles/ASL3D62XML3DUGTB00N.html?iref=comtop_8_01 (朝日新聞 2018年3月18日) 3号機、覆うだけで2537日 廃炉作業、厳しい道のり
 東京電力福島第一原発は2011年3月12日から15日の間に3度、爆発した。放射性物質をまき散らし、大地や水、人々の暮らしは今も深い傷を負っている。4号機の使用済み核燃料取り出しに続き、3号機では爆発から2537日目の2月21日、ようやく核燃料を運び出す準備が整った。「3号機廃炉作業所長」を務める鹿島の岡田信哉さん(54)はこの日、最上階で、半円柱のカバー(長さ約60メートル、高さ約18メートル)の最後の一片がはめ込まれ、燃料プールが覆い隠されるのを見守った。プール内の燃料は566体。カバーはこれらを取り出す際、放射性物質の飛散を防ぐために不可欠な設備だ。高さ36メートルの現場にはいつものように、ZARDの「負けないで」のメロディーが流れるエレベーターで昇ってきた。岡田さんは7年近く、約100人の部下を率い、高線量のがれきと格闘してきた。原発事故から10日後、本社(東京)に呼ばれ、3号機のカバー設置を検討するメンバーに入った。当時は東電柏崎刈羽原発(新潟)の工事事務所長で、その豊富な経験が買われた。初めて見た3号機の建屋は、めちゃくちゃに壊れた鉄骨やコンクリートが屋上で折り重なっていた。放射線量は最大で毎時2シーベルト(3~4時間で致死量に達する)を超える地点も。屋上のがれきを取り除き、プールを覆うカバーを設置しようにも、大型クレーンを建屋に近づけなければ何も始まらない。まずは建屋周辺の舗装に取りかかった。大型クレーンに耐えられるよう採石を1メートルほど積み上げ、その上に鉄板を敷いた。放射線を遮断する特別仕様の重機で作業を進めた。時に胸ポケットに入った「APD」(線量計)から高音の警報が鳴る。3回目が「現場から出る支度を」という合図。1班十数人での交代作業だが、至る所で音が鳴った。「自分か他人かわからない時もあった」。11年秋から屋上のがれき撤去に取りかかった。使用する大型クレーンは2基で、約100メートルのアームで狙うのは、山積するコンクリートや鉄骨のがれき。作業上の特徴は「遠隔操作」と「3Dを使ったシミュレーション(解析)」だ。クレーンは無人で、現場から約500メートル離れた免震重要棟から遠隔で行った。無人重機の運転席にはカメラやマイクが設置され、現場の状況が映像と音で確認できる。だから免震棟の一室からでも、運転席にいる感覚で操作できるという。もう一つがシミュレーションだ。入り組んだがれきの取り出しは戦略的に行われた。まず本社で3D画像や模型を使って現場を再現し、解析する。この鉄骨をここから切り込むとこう動く、ここを切ると反対側に倒れるかもしれない、といった予測だ。そのデータをもとに、現場ではアームの先端に付けた「フォーク(つかむ)」「カッター(切る)」「バケット(すくう)」「ペンチ(つまむ)」の4種類の機器を駆使し、がれきを地上に下ろした。がれきは重さ5キロの鉄板だったり、数トンの鉄骨だったり。「今日は2個、3個取れたとか、そんな報告を受けるような地道な作業が続いた」。がれきの撤去を終え、昨夏からカバーの設置作業を進めてきた。燃料の取り出しは今秋にも始まるが、その主体は東芝に移る。「うまくバトンタッチしたい」。岡田さんらは今、燃料取り出しに向けた道路の整備などにあたっている。この先も難路が続く。燃料取り出しは遠隔操作で2年ほどかかる。格納容器に溶け落ちた燃料(デブリ)の回収はそれからで、その方法はまだ決まってない。福島での単身生活は7年になる。中学生だった息子は大学生になった。岡田さんは「こんなに時間がかかるとは思いもしなかった。できればまた廃炉に関わっていきたい」と話した。7年間で取り除いたがれきは、25メートルプールで10杯ほど、約3200立方メートルに上った。
〈東京電力福島第一原発の廃炉計画〉 国と東京電力がつくる福島第一原発の廃炉工程表は、終了を2011年12月から30~40年後としている。大きく3期に分け、使用済み核燃料の取り出し開始までを1期(2年以内)、デブリの取り出しが開始されるまでを2期(10年以内)、以降を3期としている。1期は13年11月に4号機で作業が始まったのを機に終了。現在の2期に移行している。デブリの取り出しが始まると3期に入るが、時期は未定だ。

*1-1-3:https://www.nikkei.com/article/DGXLASGG28H03_Y5A720C1MM0000/ (日経新聞 2015/7/28) 福島第1原発1号機、解体に着手 カバー屋根取り外し
 東京電力は28日、福島第1原子力発電所1号機の原子炉建屋を覆うカバーの本格的な解体作業に着手した。まず屋根を取り外し、2016年度中の解体完了を目指す。20年度に始める貯蔵プールからの核燃料の取り出しに向け、1号機の廃炉工程が前進する。1号機では11年3月の事故の際に水素爆発が発生し、建屋が大破した。放射性物質が飛び散るのを防ぐため、11年10月に建屋全体を覆うカバーを設置した。28日早朝の作業では、屋根に6枚並ぶパネル(1枚あたり幅約7メートル、長さ約42メートル)のうち中央にある1枚をクレーンで取り外した。年内にもすべて撤去する。側面なども含め、1年以上かけて解体を終える計画だ。解体後は建屋内に散乱するがれきなどを撤去し、貯蔵プールに392体残る核燃料搬出に備える。カバーはもともと13~14年度に解体する計画だったが、作業に伴う放射性物質の飛散対策などに時間がかかり、大幅に遅れた。東電は今年5月に屋根の撤去に着手する予定だったが、建屋内の放射性物質の拡散を防ぐために設置したシートがずれているのが見つかり、延期していた。

*1-1-4:https://www.kahoku.co.jp/tohokunews/201804/20180417_63021.html (河北新報 2018年04月17日) <福島第1>2号機「燃料」取り出しへ 壁面に穴開け開始
 東京電力は16日、福島第1原発2号機の原子炉建屋壁面に開口部を設ける工事を始めた。6月までに穴を開け、ロボットなどで内部を調査。2023年度を目指す使用済み核燃料の取り出し開始につなげる。壁内側の空間放射線量は、12年6月時点で毎時880ミリシーベルトと非常に高い。放射性物質の飛散を防ぐため、工事は壁面に密接して新設した「前室」(幅23メートル、奥行き17メートル、高さ10メートル)の内部で実施。初日は技術者が立ち会い、厚さ20センチのコンクリート壁の3カ所を直径11センチの円柱状にくりぬいた。17日も6カ所で行う。開口部は使用済み燃料プール上部に通じる場所に設け、大きさは幅5メートル、高さ7メートル。壁を取り壊す際は重機を遠隔操作する。2号機は水素爆発せず、建屋上部が残っている。東電は建屋上部を解体して天井クレーンを設置し、燃料取り出しを進める計画。

*1-2-1:http://qbiz.jp/article/129054/1/ (西日本新聞 2018年3月2日) 除染後も目標の3倍 飯舘の放射線量、上昇地点も 民間調査
 福島県飯舘村の民家とその周辺では除染後も、東京電力福島第1原発事故後に政府が長期目標としている被ばく線量の約3倍の放射線量が計測され、1年前より上がっている場所もあったなどとする調査結果を1日、環境保護団体グリーンピースが発表した。調査は、2017年9〜10月に飯舘村と浪江町の避難指示が解除された地域などで実施、民家や森など計数万カ所で測定した。飯舘村の民家6軒では毎時0・2〜0・8マイクロシーベルトで、ほとんどが政府の目標を1時間当たりの空間放射線量に換算した同0・23マイクロシーベルトを超えた。周囲に森林が少ない村役場近くの1軒は16年の調査時から放射線量が下がっていたが、除染していない森林が周囲にある5軒は16年とほとんど変化がなかった。中には上がっている場所もあった。

*1-2-2:https://www.nikkei.com/article/DGKKZO31313110T00C18A6CR8000/ (日経新聞 2018/6/4) 農地造成にも除染土再利用 環境省方針
 環境省は3日までに、東京電力福島第1原発事故に伴う除染で生じた土を、園芸作物などを植える農地の造成にも再利用する方針を決めた。除染土の再利用に関する基本方針に新たな用途先として追加した。食用作物の農地は想定していない。工事中の作業員や周辺住民の被ばく線量が年間1ミリシーベルト以下になるよう、除染土1キログラムに含まれる放射性セシウム濃度を制限。くぼ地をならす作業に1年間継続して関わる場合は除染土1キログラム当たり5千ベクレル以下、1年のうち半年なら8千ベクレル以下とした。除染土は、最終的に厚さ50センチ以上の別の土で覆い、そこに花などを植える。福島県飯舘村の帰還困難区域で今年行う実証試験にも適用。村内の除染土を区域内に運び込んで分別し、5千ベクレル以下の土で農地を造成し花などの試験栽培を行う想定だ。

<原発のツケ>
*2-1:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12684302.html (朝日新聞 2016年12月1日) もんじゅ後継、国内に実証炉 開発体制、18年めど 政府会議方針
 政府の高速炉開発会議は30日、廃炉が検討されている高速増殖原型炉もんじゅに代わり、より実用化に近い実証炉を国内に建設するなどとする開発方針の骨子を公表した。2018年をめどに約10年間の開発体制を固める。約1兆円の国費をかけ、20年以上ほとんど運転できなかったもんじゅの反省は生かされず、高速炉開発ありきの議論が進む。会議は世耕弘成経済産業相が議長。松野博一文部科学相や日本原子力研究開発機構、電気事業連合会、三菱重工業がメンバー。骨子では、もんじゅを再運転した場合に得られる技術的な成果を「ほかの方法でも代替可能」と評価。蓄積された成果は活用するとしつつ、廃炉にしても実証炉建設への影響はないと結論づけた。もんじゅについて政府は廃炉を含め抜本的な見直しを決めている。高速炉は「実験炉」「原型炉」「実証炉」と進み、「商用炉」で実用化する。安全性の確認や発電技術の確立など、原型炉もんじゅで終えるべき課題を残し、次の実証炉に進む形だ。政府は、もんじゅを廃炉にした場合でも、フランスが30年ごろの運転開始を目指す実証炉「ASTRID(アストリッド)」計画に協力することで高速炉開発を維持するとしてきた。だが同会議は、エネルギー政策の根幹とされてきた核燃料サイクル事業の施設を不確実性のある海外の計画だけに頼るのはリスクがあるとの批判も考慮し、国内での実証炉開発を明示した。実証炉の建設時期や場所は未定。来年初めから実務レベルの作業グループを置き工程表策定を進める。骨子にはアストリッド計画を補完する施設として、原子力機構の高速増殖実験炉「常陽」やナトリウム研究施設「AtheNa(アテナ)」(いずれも茨城県)などの国内研究施設も示された。

*2-2-1:https://www.sankei.com/economy/news/180111/ecn1801110051-n1.html (産経新聞 2018.1.11) 日立の英原発計画、日英政府が支援 事業費3兆円確保へ
 日立製作所が英国で進める原発新設事業に対し、日本の3メガバンクが政府の債務保証を受けたうえで融資を行う方針が固まった。政府系の国際協力銀行(JBIC)も融資を行うほか、日本政策投資銀行が出資で参加する。政府は総額3兆円規模とされる事業費確保に向けた支援を進め、原発輸出を後押しする。日立は2012年に買収した英原発子会社ホライズン・ニュークリア・パワーを通じ、英西部アングルシー島で20年代前半の稼働を目指し、原発2基の新設計画を進めている。事業費は融資と出資で調達する。融資はJBICが軸となり、メガ3行も各千数百億円出す方向だ。民間分は政府が全額出資する日本貿易保険が債務保証する。出資は日立と政投銀が実施。大手電力会社にも打診している。英国の政府や銀行からの支援も受ける。日立は最終判断を19年に下す。米原発事業の損失で経営危機に陥った東芝を反面教師に、ホライズンを連結子会社から外せない場合は計画を断念する考え。政府支援には日立が抱え込むリスクを抑制する効果があるが、巨額損失が出た場合には国民負担が発生する懸念が大きくなる。

*2-2-2:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO29996700Z20C18A4MM8000/ (日経新聞 2018年4月29日) 日立、英政府と原発巡り最終協議へ 撤退も視野
 日立製作所が英国で建設を目指す原子力発電プロジェクトを巡って、英政府と事業継続に向けた最終協議に入ることがわかった。2020年代前半の稼働を見込むが、安全基準の強化で総事業費は約3兆円に膨らむ。リスクを抑えたい日立は中西宏明会長が近く渡英し、英政府の直接出資などを求めてメイ首相と交渉する。決裂すれば事業から撤退する方針だ。協議の行方は日本の原発産業だけでなく、日英両国の原発政策にも大きな影響を及ぼす。中西氏は週内にメイ氏と会談し、英中部アングルシー島で計画する原発新設事業について協議する。12年に現地事業会社の全株を890億円で買い取り、総額2千億円程度を投じて原子炉の設計や工事準備を進めてきた。17年末には英当局から炉の設計認証を受け、19年に予定する着工へ最終段階に入っている。関係者によると、4月下旬には英政府が「日英それぞれの政府・企業連合、日立が事業に各3千億円ずつ出資する」案を示してきたという。これまで英政府は原発新設プロジェクトへの直接出資に後ろ向きだったとされ、日立は直談判で英政府の出資確約と事業継続に必要な一段の支援策を求める見通しだ。日立が危機感を強めたのは、今年2月下旬だ。「公式文書で回答がなければ、ウィズドロー(撤退)します」。日立側が英政府に伝えたという。何度も期限を設け、英政府へ投融資など具体的な支援策を要請してきたが「口約束」にとどまってきたためだ。4月末現在も文書を交わす正式合意に至っていない。日立の英国事業については、16年に日英政府も協力の覚書を交わした。だが支援策を固める作業が難航。水面下の折衝は2年近く続くが、なお2つの溝が埋まらない。第一が英政府がどれだけ事業に関与するかだ。「19年までに事業を連結対象から外せなければ、着工しない」。日立は100%子会社となっている事業会社に英政府や現地企業に出資してもらうことで、出資比率を50%未満まで下げられるよう求めてきた。工事遅延などで巨額の損失が発生すれば、日立が100%かぶることになるからだ。だが英政府も財政悪化で「巨額投資に応える余裕がない」と主張する。原発推進派とされるメイ氏だが、欧州連合(EU)離脱交渉に追われるほか、支持率低下で議会の風当たりも強い。「日本政府と覚書を交わした16年から状況は一変した」(英政府関係者)。4月下旬に英国側が示した日英と日立で総額9千億円を出し合う枠組みは一定の譲歩案だった。しかし、これでも英国の出資比率は33.3%。日立や日本政府内では日本側が事業の主導権を握ることへの警戒感も強い。約2兆円と想定される事業に必要な借入金を巡っても、英政府がどれだけ保証を付けるか折り合えていない状況だ。建設後の電力買い取り価格を巡る議論も続く。日立は運営会社としても発電事業に関与する方針で、高い単価での政府買い取り保証を求めている。建設後の採算悪化を避け、長期間にわたって安定運営するためだ。だが英政府が提示している買い取り価格は、日立が求める水準より約2割低いもよう。英政府はフランスや中国が主導する英南西部の原発事業に高い買い取り価格を保証したが、高すぎて市民が払う電力料金は跳ね上がりかねない。世論の反発を招いており「日立にも高い保証を出すのは難しい」という立場だ。日立はメイ氏との直談判で妥協案を探るとみられる。支援を求めるのは「原発はリスクが大きく、民間企業だけで背負えなくなった」(幹部)とみるからだ。メイ氏自身も日立への支援に前向きとされ、交渉次第で支援策が進む可能性はある。11年3月の東日本大震災以降、世界的に安全基準を引き上げる動きが相次ぐ。関連メーカーや建設会社の安全対策費も急増しており、16年末には東芝の子会社だった米ウエスチングハウス(WH)で総額7千億円に及ぶ巨額損失が発覚した。日立の英原発プロジェクトも総事業費が当初の2倍となる3兆円に跳ね上がったとされる。誰が原発コストの負担をかぶるのか。仮に交渉が不調に終われば、日英ともに打撃は大きい。既存発電所の老朽化が進む英国は、今後10基以上の原発を新設して電力需要を賄う計画。日立の事業が頓挫すれば、エネルギー政策の見直しを迫られかねない。原発輸出を成長戦略に掲げてきた日本も、日立案件には政府の融資保証を付けて推す方針だ。三菱重工業のトルコ案件が大幅に遅れるなど各地で日本勢の苦戦が目立つだけに、日立の事業が難航すれば影響は関連メーカーに幅広く及ぶ。世界的に原発事業の難しさが浮き彫りになっている。

*2-2-3:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO3136307004062018MM8000/ (日経新聞 2018/6/5) 日立、英原発の推進で覚書 英政府と基本合意
 日立製作所は英国で進める原子力発電所の建設計画を巡り、英政府と事業推進に向けた覚書を結んだ。英政府との間で資金負担の内訳などで基本合意した。日立は2020年代前半の稼働を目指し、必要な許認可取得など原発新設の準備を進める。19年中の最終契約に向け、原発事業のリスク回避策などを詰める。英政府は現地の4日夕方(日本時間5日未明)にも覚書を結んだ旨の声明を公表する見通し。日立は5月28日開催の取締役会で、英中部アングルシー島で進める2基の原発の新設計画を継続する方針を確認し、英政府との間で覚書締結に向けた調整を続けてきた。日立は4月以降、英政府との間で、事業撤退も視野に入れた大詰めの交渉を進めてきた。5月3日には中西宏明会長がメイ英首相とロンドンで会談した。英政府は総事業費3兆円超のうち2兆円を超える融資を全額負担する支援策を表明。事業費のうち、原発の開発会社に対する9千億円の出資について、日立と日英の政府・企業連合の3者が3千億円ずつを投資する案も示した。原発新設が計画通りに進まなかった場合の損失リスクへの備えでも合意した。日立と日英の両政府・企業連合が各1500億円ずつを拠出する。建設計画の遅れなどの不測の事態が起きた際に資本に転換できる債券などを検討している。これらの条件を固めたことで、日立と英政府は覚書締結にこぎ着けた。日立は原発を新設するかどうかを19年に最終決定する。日立社内にはなお慎重論も根強く、原発リスクを軽減することへの要望が強い。最終契約に向け、なお残る条件を英政府と詰める。1つは英政府による電力の買い取り価格の水準だ。原発運営の事業採算に直結するため、日立は高い価格での買い取りを求めている。一方、英国にとっては電力料金を支払う住民負担につながるため、慎重な交渉が続いている。2つ目は原発事故など不慮の事態が起きた場合の損害賠償責任で、日立と英政府は引き続き協議を続けるもよう。企業連合に出資する参加企業もまだ確定しておらず、日立などは参加企業を募っている。

*2-3:https://mainichi.jp/articles/20170608/k00/00m/010/134000c (毎日新聞 2017年6月7日) 日印原子力協定:原発輸出、増すリスク
 政府は日印原子力協定の締結によって、原発輸出の拡大を目指す。しかし、福島第1原発事故後に原発の建設費用が上昇するなど海外事業のリスクは高まっており、米原発子会社の破綻で東芝が経営危機に陥るなど、日本企業による積極展開の機運はしぼんでいる。福島事故後に国内での新設が困難となる中、日本政府は成長戦略の一環として原発をインフラ輸出の柱に位置づけ、各国との協定締結を進めてきた。電力不足によって今後の新規建設ラッシュが見込めるインドは有望な市場だ。だが、インドには原発事故が発生した際、電力会社がメーカーに賠償請求できる法律があり、巨額の賠償責任を問われる恐れがある。日本メーカーは「インドは巨大な市場だが、賠償法の問題があり、今後の状況を注視していく」(三菱重工業)などと、期待の一方で、慎重な姿勢も目立つ。東芝子会社の米ウェスチングハウスは、米国での原発建設費用の高騰が破綻の引き金になるなど、事業リスクは増している。龍谷大学の大島堅一教授(環境経済学)は「再生可能エネルギーは費用も下がり、投資が拡大している。原発の退潮は明らかで、無理のある協定だ」と批判している。

*2-4:https://digital.asahi.com/articles/DA3S13323241.html (朝日新聞社説 2018年1月21日) 原発輸出 国民にツケを回すのか 
 苦境の原発産業を支えるために、国が高いリスクを肩代わりする。そんなやり方に、国民の理解が得られるだろうか。日立製作所が英国で計画する原発の建設・運営事業に対し、日本政府が資金面で強力な支援策を検討している。だが、福島第一原発の事故後、安全規制の強化で建設費が膨らむなど、世界的に原発ビジネスのリスクは大きくなっている。東芝が米国で失敗し、経営危機に陥ったことは記憶に新しい。万が一、大事故を起こした時の賠償責任の重さは、東京電力がまざまざと見せつけた。日立の事業がうまくいかなければ、支援をする政府系機関が巨額の損失を被り、最終的に国民にツケが回りかねない。政府は前のめりの姿勢を改め、リスクの大きさや政策上の必要性を慎重に見極めるべきだ。計画では、日立の子会社が原発を建設し、20年代半ばに運転を始める。現時点で3兆円ほどと見込まれる事業費は、日英の金融機関からの融資や新たに募るパートナー企業の出資などでまかなう想定だ。日立は採算性を見極めた上で、建設するかどうかを来年にも最終判断する。この計画に対しては、日本の大手銀行は慎重な一方で、「官」の肩入れが際立つ。政府系の国際協力銀行が数千億円を融資するほか、数千億円と見込む民間銀行による融資の全額を貿易保険制度の対象とし、返済を国が実質的に保証する方向で調整している。日本政策投資銀行も出資に加わるとみられる。ここまで政府が後押しするのは、原発産業を守る思惑があるからだ。福島の事故以降、国内では原発の新設が見込めず、経済産業省やメーカー、電力大手は、技術や人材の維持をにらんで海外市場に期待する。
だが、原発輸出はあくまでビジネスであることを忘れてはならない。リスクは、事業を手がける民間企業が負うのが本来の姿だ。それを国が引き受けるというなら、社会にとって有益であることが前提になる。国民の多くを納得させられるような意義はあるだろうか。政権と経済界は、原発などインフラ輸出の推進で足並みをそろえてきた。日立会長の中西宏明氏が近く経団連の会長に就くだけに、今回の支援策が合理性を欠けば、官民のもたれあいだと見られるだろう。そもそも、福島の事故を起こした日本が原発を海外に売ることには、根本的な疑問もある。政府や関係機関は、幅広い観点から検討を尽くし、国民に丁寧に説明しなければならない。

<原発再稼働>
*3-1:http://qbiz.jp/article/135439/1/ (西日本新聞 2018年6月10日) 霧島連山に大規模マグマだまり 気象庁など解析 最大で長さ15キロ、幅7キロ
 2011年以降、断続的に噴火する新燃岳(しんもえだけ)や、今年4月に250年ぶりに噴火したえびの高原(硫黄山)など活発な火山活動を続ける宮崎、鹿児島県境の霧島連山の地下に、最大15キロに及ぶ大規模なマグマだまりがあることが、気象庁気象研究所(茨城県つくば市)などの研究グループの解析で明らかになった。新燃岳の噴火を受けて国や大学、自治体などの観測網が強化され、豊富なデータが利用可能になったことが地下構造の解明につながった。研究グループには東京大の地震研究所と京都大の火山研究センターが参加。11年4月〜13年12月に霧島連山周辺に広がる37地点の地震計からノイズのような微細な地震波を大量に収集し、地盤の固さによって速度が変わる地震波の性質を利用して解析した。大規模マグマだまりは、海面を基準にして深さ5〜7キロ付近を頂点とし、御鉢から北西方向に長さ10〜15キロ、最大幅が7キロ、厚みが少なくとも5キロ以上あるとされる。同様の解析手法で明らかになった長野、群馬県境にある浅間山のマグマだまりの範囲(長さ7〜8キロ)を上回っている。これまでは衛星利用測位システム(GPS)を使った地殻変動の観測から、新燃岳噴火の前後に膨張収縮するエリアがえびの岳の地下深くにあり、これがマグマだまりとされていた。解析を担当した気象研究所火山研究部の長岡優研究官は「地殻変動が起こっていたエリアは、大規模なマグマだまりから新燃岳へマグマを供給する出口部分と考えられる」と指摘する。11年の新燃岳噴火を受けて気象庁や各大学、周辺自治体などが地震計やGPS、傾斜計、監視カメラなどを増強。観測装置は80を超え、噴火前の2倍以上となった。火山活動がより詳細に把握できるようになり、さらなる構造解明も期待される。長岡研究官は「マグマだまりが霧島山全体に広がっていることから、活動予測のためには御鉢周辺などより広い範囲での観測や研究が必要になる」と話している。

*3-2:http://qbiz.jp/article/129284/1/ (西日本新聞 2018年3月7日) 玄海町議会「原発増設を」 国計画に明記要求 意見書案可決へ
 九州電力玄海原発が立地する佐賀県玄海町議会が、年内にも改定される国のエネルギー基本計画に原発の新増設を明記するよう求める意見書案を3月議会で取りまとめることが分かった。19日の本会議に提出する。全町議10人が原発推進派のため可決される見通し。町議会総務文教委員会(5人)が5日、国へ意見書提出を求める請願を全会一致で採択。脇山伸太郎委員長は「原発立地町の責任に鑑みて、国のエネルギー政策に関する意見書を作りたい。内容は作成中でコメントは控える」と話した。意見書案が可決されれば政府に提出する。原発の新増設や建て替え(リプレース)について、岸本英雄町長は昨年12月議会で「リプレースはいずれ強い選択肢になる」と述べたが、山口祥義知事は否定的な見解を示している。請願は、商工団体などで組織する一般社団法人「原子力国民会議」(東京)が昨年末から、玄海町を含む五つの原発立地自治体などに送付。国に対して基本計画に新増設の明記を求める内容で、関西電力高浜原発が立地する福井県高浜町議会が昨年12月議会で同様の意見書を可決した。エネルギー基本計画は現在、改定に向けて経済産業省の有識者会議で議論されている。2014年4月に策定された現行の基本計画は、原子力を「重要なベースロード電源」とし、原子力規制委員会の新規制基準に適合した場合、再稼働を進める方針を明記。ただし、原発の新増設やリプレースに関する表記はない。30年度の原発の電源構成比率を20〜22%とする中期目標の実現へ向け、新増設も検討課題となっている。
   ◇   ◇
●「現実的でない」町民疑問の声
 九州電力玄海原発3号機(佐賀県玄海町)の再稼働が今月下旬に控える中、国のエネルギー基本計画に原発の新増設を明記するよう求める町議会の動きが明らかになった6日、町内の原発賛成派と反対派の住民の双方から疑問の声が上がった。同町の漁業渡辺一夫さん(71)は「使える物は使おうという再稼働はしょうがないが、新増設は現実的に厳しいだろう」と指摘。「反対派からは福島であれだけの事故が起きたと言われる。議会に反対する人がいないためかもしれないが、もう少し慎重にするべきだ」と注文した。一方、同町の公務員小野政信さん(61)は「1号機が廃炉になる損失を補う考えだろうが、福島の現実を見たら再稼働ですら、とんでもないこと。新増設なんて考えられない」と町議会の姿勢を批判した。

*3-3:http://qbiz.jp/article/135851/1/ (西日本新聞 2018年6月17日) 九電 原発4基体制に 玄海4号機 6年半ぶり再稼働
 九州電力は16日、玄海原発4号機(佐賀県玄海町)を再稼働させた。定期検査で運転を停止した2011年12月以来、稼働するのは約6年半ぶり。東京電力福島第1原発事故を受けた新規制基準施行後、九電は川内原発1、2号機(鹿児島県薩摩川内市)、玄海3号機を既に再稼働しており、玄海4号機を加えて当面の経営目標としていた原発4基体制が整うことになる。安全対策を強化した新規制基準下で再稼働した原発は全国9基目。いずれも加圧水型で、今後は福島第1原発と同じ沸騰水型の審査と再稼働が焦点となる。玄海原発内の中央制御室ではこの日朝から運転員など約20人が作業。午前11時、原子炉内の核分裂を抑える制御棒を遠隔操作で引き抜き、原子炉を起動させた。16日深夜に核分裂が安定的に続く「臨界」に達した。20日に発電と送電を開始予定。順調に進めば7月中旬に営業運転に入る。玄海4号機は3号機とともに使用済み核燃料の処理が課題。保管プールの空き容量が少ないが、処理を担う日本原燃(青森県)の工場は操業の見通しが立たず、搬出できない状態での再稼働となる。九電はプールの容量増強や金属製容器に入れ陸上で一時保管する「乾式貯蔵」を検討している。玄海原発では、1号機で廃炉作業が始まっている一方、21年に運転期限の40年を迎える2号機について九電はまだ方針を決めていない。今後は、存廃の判断が注目される。地域の理解も課題だ。事故時の避難計画が必要な周辺30キロ圏の3県8市町のうち、4市が避難計画の実効性などを問題視して再稼働に反対を表明している。16日には原発前などで反原発団体の抗議活動があった。玄海4号機は17年1月に新規制基準に適合。5月24日にも再稼働する予定だったが、原子炉の冷却水を循環させるポンプの一部で異常が発生。緊急点検と修理作業を実施し、工程が約3週間遅れた。

*3-4:http://www.saga-s.co.jp/articles/-/231896 (佐賀新聞 2018.6.17) 太陽光出力制御、今秋にも、九電、原発4基稼働実現で
 東松浦郡玄海町の九州電力玄海原発4号機が16日に再稼働し、太陽光発電の普及が進む九州で原発が4基動く環境が整った。電力供給力が大幅に増えるため、九電が、今秋の連休にも太陽光発電事業者の出力制御に踏み切る事態が現実味を帯びる。出力制御が頻発すれば太陽光事業者の収支に影響が出るのは必至だ。電力需要が少ない時期に供給が大幅に上回れば広域的な停電を引き起こす恐れがあり、電力会社に出力抑制が認められている。ただ、これまで離島では実施例があるが、九州本土といった広域で行えば全国で初となる。太陽光発電は晴天の昼間に発電量が増える一方、夜間は発電しないなど不安定な電源で電力会社にとって扱いにくい。九電はこれまでも火力発電の稼働率の調整や、揚水発電所で昼間に水をくみ上げて夜間に発電するなどしてきたが、さらに上回ると見込まれる場合、事前に太陽光事業者に対し出力制御を指示する。連休中などはオフィスや工場の電力需要が下がるほか、家庭などで冷暖房も使わなければ電力需要は下がる。九電によると、今年4~5月の大型連休中は供給電力に占める太陽光の割合が一時81%を超えた。今秋には川内原発1、2号機(鹿児島県薩摩川内市)や玄海3、4号機がいずれも稼働している見通しだ。九電関係者は「原発が4基動き、電力需要が少なく晴天といった条件がそろえば、制御をすることになるだろう」と分析している。

<再生エネへのエネルギー転換へ>
PS(2018/6/23、27追加):川内原発の地元で世論調査を行った結果、*4-1のように、再エネへの移行を望む県民の強い意識が明らかになったそうだ。特に鹿児島県は、火山や地震で原発が危険な反面、地熱発電は期待できるため、再生エネの主力電源化を国より先行して実施すればよいと考える。また、玄海原発の周辺地域とされている唐津市は、原発事故が起これば1分以内に汚染され、帰還困難区域になる場所も多いため、リスクを負う以上、*4-2のように、原発の地元として「地元同意」の対象になるのが当然である。
 なお、*4-3のように、使用済核燃料の最終処分場所も決まっておらず、現在は原発建屋内の使用済核燃料プールに水につかっただけで大量に保管されており、九電は燃料の間隔を詰めるリラッキングや乾式貯蔵施設を検討しているそうだ。しかし、これは、原発周辺住民の安全性について、原発建設時よりも規制緩和された取り扱いであり、とても見過ごすことはできない。

   
30年以内の大地震発生         地熱発電とその資源分布

*4-1:https://373news.com/_column/syasetu.php?storyid=92345 (南日本新聞 2018/5/8) [原発世論調査] 再生エネへの転換を急げ
 調査で浮かび上がったのは、原発再稼働に対する賛否にかかわらず、再生可能エネルギーへの移行を望む県民の強い意識である。国や県は再生エネへの転換を積極的に進めるべきだ。南日本新聞社は九州電力川内原発について電話世論調査を行った。再稼働の賛否では「よくなかった」「どちらかといえばよくなかった」が計50.0%、「よかった」「どちらかといえばよかった」は合わせて43.7%だった。注目したいのが、それぞれの理由(複数回答)である。再稼働に否定的な理由は「できるだけ早く再生可能エネルギーに移行すべき」が最多の45.0%、次が「福島の事故原因が究明されていない」の33.5%だ。肯定派の理由も、「再生可能エネルギーへの移行まで当面必要」が43.7%で最も多く、2番目の「雇用、経済活動、地域の活性化維持に不可欠」の41.6%をわずかに上回った。今後の原発政策についての考えは、「すぐにやめるべき」「できるだけ早くやめるべき」を合わせると6割に迫る。再生エネへの期待と脱原発の支持は、根強いものがあると受け止めたい。県は、2018年度から5年間で取り組む再生エネ施策の指針となる新ビジョンを公表している。意義や目標を県民に丁寧に説明し、導入を促進してもらいたい。一方、国が示す再生エネの将来像は、まだまだ物足りないと言わざるを得ない。政府は先月、対象期間を30年から50年までに拡大した新しいエネルギー計画の骨子案を有識者会議に示した。再生エネの主力電源化を進めると明記したことは前進だ。だが、30年度の発電割合を原発20~22%、再生エネ22~24%とする方針は変更せず、50年の新たな数値目標も示さなかった。原発を「重要なベースロード電源」と位置づける考えは変えていない一方で、新増設については盛り込んでいない。これでは原発の在り方についても、曖昧にしたままといえよう。経済産業省によると、15年の再生エネの発電比率は英国25.9%、ドイツ30.6%に対し、日本は16年で15.3%と見劣りする。日本は温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」で、50年に温室効果ガスを8割削減する国際公約を掲げている。夏に閣議決定されるエネルギー基本計画で再生エネ推進の道筋を明確にできるか。国際社会も注目しているはずだ。

*4-2:http://qbiz.jp/article/136262/1/ (西日本新聞 2018年6月23日) 唐津市が「地元同意」要求へ 玄海原発巡り、市長意向
 九州電力玄海原発(佐賀県玄海町)の「地元同意」の範囲が県と同町に限られていることを巡り、町に隣接する同県唐津市の峰達郎市長は22日、市議会原発対策特別委員会で対象に同市も含めるよう求める考えを明らかにした。地元同意については3月、日本原子力発電東海第2原発(茨城県東海村)の再稼働と運転延長に関し、半径30キロ圏内の5市が加えられた。これを受け特別委も運転延長などで同意範囲の拡大を議論していた。峰市長は「5キロ圏も30キロ圏も人口は唐津市が玄海町より多い。(7月の玄海町長選後に)新町長と話の場を設けたい」と述べた。これに対し特別委に招致されていた九電立地コミュニケーション本部の八木繁部長は「(玄海と)東海第2とはリンクしない」と慎重な立場だった。

*4-3:http://www.saga-s.co.jp/articles/-/235911 (佐賀新聞 2018年6月27日) 玄海3、4号機 使用済み燃料対策「時間がない」 九電、危機感示す、県議会原子力特別委
 佐賀県議会の原子力安全・防災対策等特別委員会(八谷克幸委員長、11人)は26日、九州電力の幹部を参考人招致し、再稼働した玄海原発3、4号機(東松浦郡玄海町)の使用済み燃料対策や保守体制についてただした。九電幹部は使用済み燃料対策について「時間がない」と危機感を示しながらも、原子力規制委員会への申請や着工の時期については4号機の使用前検査が完了していないことなどを理由に「検討中」とするにとどめた。玄海原発の使用済み燃料は3号機が約7年、1、2号機とプールを共用する4号機が約5年で容量を超える見込み。九電は対策として燃料の間隔を詰めて貯蔵量を増やすリラッキングや、特殊な金属製の容器に入れて空冷する乾式貯蔵施設を検討している。現状を問われた山元春義取締役は「社内で詰めている状況で、(原子力)規制庁に相談する前の段階」と説明。東京電力ホールディングスと日本原子力発電が今年12月までに運用開始を目指している中間貯蔵施設(青森県むつ市)については、林田道生立地コミュニケーション本部副本部長が「活用は検討していない」と述べた。3号機で3月末に発生した2次系配管からの蒸気漏れに対し「明らかにさびが確認でき、現場の意識に問題があるのでは」と九電の保守・点検体制を疑問視する質疑も相次いだ。林田副本部長は「一つの担当課だけでなく、週に1回程度の会議体で情報を共有している」と改善策を説明。異常事態は全て自治体に連絡するよう安全協定を改定すべきではという意見には、否定的な見解を示した。2015年に再稼働した川内原発1、2号機(鹿児島県)と合わせ、九電の原発が4基体制となったことで、管内電源の約3割を原発が占めるという見通しも示された。

<“空気” は読むだけのものか?>
PS(2018/6/24追加):私のことを、「“空気”が読めない(略して“KY”)」と批判したド阿呆な週刊誌があった。しかし、私は、「空気が読めない」のではなく、①“空気”を読んでも、間違っていれば勇気を持ってその“空気”を変え ②間違った“空気”でも、いちいち対応していると大変なので小さな問題なら無視している だけであり、他の人にも自己保身だけを考えるのではなく、淀んだ空気は勇気を持って変える努力をして欲しいと考えているのだ。
 また、 “空気”とは、1)どの範囲の“空気”かも定義しなければならないし 2)大勢の“空気”は善と限れるか についても考慮すべきだ。そのうち、1)については、身の回りや日本国内だけの空気を見ればよいわけではなく、2)については、差別やいじめのように、大勢で誤った行動をしている場合には、自分1人しかいなくても勇気を出して変えなければならない。そして、推薦入学世代の日本人には、その判断力・勇気・正義感が不足しているように思う。
 なお、無視すべき“空気”か、変えなければならない“空気”か、同調すべき“空気”かを判断するには、知識・経験・正義感・勇気などの総合力が必要で、それは教育や仕事を通じた研鑽の賜物であるため、*5の論調は的外れである。しかし、そもそも「空気を読む」という発想自体が、言わなくてもわかる同質性を前提としており、主体性にも欠ける。

*5:https://www.nikkei.com/article/DGXLASDG21HAE_R20C17A9CR8000/ (日経新聞 2017/9/21) 必要な言葉の能力、「空気を読む」が大幅増 国語世論調査
 21日発表の文化庁の国語世論調査では「空気を読む」傾向が強まっていることが明らかになった。「これからの時代に特に必要な言葉の知識や能力」として「相手や場面を認識する能力」と回答した割合は19%で、2002年度の7%から大幅に増え、最も多い「説明したり発表したりする能力」(21%)に迫った。意見の表明や議論についての意識を聞いた質問では、人と意見が違うときに「なるべく事を荒立てないで収めたい方だ」という人の割合が62%で、同様の質問をした08年度より10ポイント高まった。交流サイト(SNS)などで特定の個人の投稿が拡散され、主に批判的なコメントが集まる「炎上」については「目撃した際に書き込みや拡散をするか」との問いに「(大体・たまに)すると思う」と答えた人の割合は3%にとどまった。年齢別で最も高いのは20代で、11%が「すると思う」と答えた。一方、言葉について困っていることや気になることを尋ねる質問(複数回答)には「流行語や新しい言葉の意味が分からない」と答えた人の割合が56%で、10年度より14ポイント高くなった。「年の離れた人たちが使っている言葉の意味が分からない」という人も31%と9ポイント増え、年代が上がると増える傾向があった。日本大の田中ゆかり教授は「(1980年前後生まれ以降を指す)デジタルネーティブ世代と高齢層の間では(言葉の)崖のようなものができつつある」とみている。

<玄海町・唐津市の新産業>
PS(2018/6/25追加):*6のように、各地で養蚕を先端技術でよみがえらせる取り組みが進んでいるそうだが、玄海町にもかつては桑畑があり、養蚕が下火になってからはタバコ栽培を行っている。しかし、タバコも健康に悪く、(遅ればせながら)日本でも禁止の方向にあるため、私は、玄海町は原発を辞めて山鹿市のような先端技術の養蚕を行い、医薬品や化粧品を九大・久光製薬・唐津市にある化粧品会社などと協力して作ってはどうかと考える。その方が高付加価値で、21世紀らしいスマートさがあるだろう。


    桑畑        山鹿市、蚕の無菌栽培      遺伝子組み替え蚕の大量栽培

*6:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO32129650S8A620C1ML0000/?nf=1 (日経新聞 2018/6/24) ハイテクが紡ぐ「蚕業革命」 通年生産・光る糸・医薬
 かつて日本の近代化を支えた養蚕を先端技術でよみがえらせる取り組みが各地で進んでいる。熊本県ではクリーンルームを備えた世界最大級の工場で繭の量産が始まり、新潟県や群馬県などの企業や農家は遺伝子組み換え技術を応用して光る生糸や化粧品・医薬品をつくり出そうとしている。政府も「蚕業(さんぎょう)革命」として後押しする。熊本県北部の山鹿市の廃校跡地。2017年に完成した洗練された外観の建物で繭の量産が始まった。求人案内のあつまるホールディングス(HD、熊本市)が約23億円を投じて建設した世界最大級の養蚕工場だ。延べ床面積は約4千平方メートル。高品質のシルクの原料を効率的に大量供給し、生産性向上を目指す。カイコは伝統的な飼育法では餌になる新鮮な桑の葉を確保できる春から秋に年3回程度しか繭が取れない。餌やりや掃除は手間がかかり、感染症にかかりやすい難点もある。ところが、あつまるHDの島田裕太常務執行役員は新工場で「年間を通して高品質の繭を出荷する」と強調する。熊本大学物質生命化学科の太田広人特任准教授らと連携し、カイコが1年を通じて食べ、餌やりの手間も減らせる人工飼料を開発している。近くの山頂の耕作放棄地に設けた25万平方メートルの桑畑で無農薬栽培した桑の葉を乾燥保存し、特殊な添加剤を加えて与える。工場は無菌のクリーンルームで感染症の危険もなくした。カイコにとり快適な温度や湿度も保つ。カイコは現在30万頭を飼い、できあがる繭を集める収繭(しゅうけん)も毎月手掛け始めた。3年で3千万頭とし、繭の生産量を年間50トンと国内最大の群馬県を上回る規模に増やす。高品質のシルクの原料を安定供給する体制を築き、「化粧品やバイオ医薬品などに応用範囲を広げる」(島田常務執行役員)。山鹿市の中嶋憲正市長は「新たな産業を生み出す大きな可能性がある」とみて、桑畑の候補地の紹介や廃校跡の提供などさまざまな形で事業を支援してきた。有数の産地だった山鹿市での養蚕復活へ、今後も「シルク産業に関連する研究施設の誘致など全面的に応援していく」方針だ。農林水産省によると、養蚕農家はピークの1930年に約220万戸あったが、現在は約350戸に激減し、高齢化も著しい。しかし、飼育管理方法の向上や遺伝子組み換え技術の応用により、新たな可能性が開けてきた。農水省は「農山漁村にバイオ産業と雇用を生み出せる」とみて蚕業革命と名付けたプロジェクトを各地で支援する。着物の手入れなどを手掛ける、きものブレイン(新潟県十日町市)も繭の通年生産に挑む。カイコに無菌状態で特殊なホルモンなどを加えた餌を与え生育を早める。現在の飼育数は養蚕に参入した3年前の3倍の180万頭に達する。岡元松男社長は「1300年の織物の歴史がある十日町で新たなシルク産業を生み出す」と意気込む。京ちりめんの産地、京都府京丹後市は市内の廃校の一角で京都工芸繊維大と連携してカイコを大量に育てる研究を進めている。現在3万~4万の飼育頭数を今秋には20万に引き上げる計画だ。生産設備のエム・エー・シー(新潟県上越市)は新潟県妙高市でカイコ4万頭の飼育を始めた。これらもクリーンルームなど生産管理手法を生かす。遺伝子組み換え技術などを用いて養蚕から新たな価値を生み出そうという動きも活発になってきた。群馬県の農家では17年、緑に発色する蛍光シルクを生み出す遺伝子組み換えカイコの飼育が始まった。組み換え生物を規制するカルタヘナ法に基づく農林水産相の承認を得て、「初めて研究室の外で飼育する」(農水省)取り組みだ。衣服のほか、光る壁紙などさまざまな生活用品への利用を見込む。群馬県蚕糸技術センター(前橋市)は青やオレンジ色に蛍光したり、色乗りが良くなったりするシルクの試験飼育も進める。シルク化粧品製造のアーダン(鹿児島県奄美市)は、生体になじみやすいなどシルクの特性を生かした独自技術で特許を取得した。繭に含まれるシルクフィブロインというたんぱく質を使い、傷口が直りやすく傷も残りにくい軟こうやフィルムの開発を進めている。遺伝子組み換えカイコを使い、一段と効果的な塗り薬も開発する。18年から奄美大島の1万8千平方メートルの畑で地元特産の島桑(しまぐわ)の栽培も始めた。同社の藤原義博・研究開発室長は「かつて栄えた奄美の養蚕で地域経済を活性化させたい」と話す。
■収益確保、需要開拓カギ
 「カイコの技術で日本は世界のトップランナー」。農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構、茨城県つくば市)の門野敬子・新産業開拓研究領域長は強調する。養蚕が伝わった1~2世紀以降、飼育や品種改良の工夫が積み重ねられ、基礎的な研究の成果も相当の厚みがあるという。2000年にはカイコの遺伝子組み換えに農研機構が世界で初めて成功。組み換えを生かした研究開発に弾みが付いた。企業では日東紡グループが血液診断薬、免疫生物研究所が化粧品原料の保湿成分を製品化。蛍光色を持つ生糸を使ったウエディングドレスなども登場している。1つの繭から取れる糸の長さは千メートル強。細さは0.01~0.02ミリだが同じ重さの鉄線より切れにくい。主成分がたんぱく質であり、人体から異物として排除されにくいといった利点もある。繊維のほかにも、医薬品関連など多方面の企業から「問い合わせが入ってくる」(門野領域長)という。ただ、先端分野でも中国などの追い上げが急で、「シルク産業の先行きは決してバラ色ではない」と京都工芸繊維大学の森肇教授は指摘する。中国からさえ新興国へ生産が移り、価格の国際競争は極めて厳しい。独自性があっても光る糸など新素材がどれだけ受け入れられるかは不透明だ。先端シルクの含有量を調節して価格を抑えたり、医薬など高付加価値品の比重を高めたりして、収益を確保しつつニーズを切り開く戦略も求められる。

<ゼロ・エミッションへの転換>
PS(2018年6月26日追加):*7-1のように、東京都の小池知事は温暖化ガス削減に向けて、都内の新車販売に占める排ガスゼロ車の割合を、2030年までに5割へ引き上げる方針を出されたが、私は、これを野心的だとは思わない。何故なら、日本のEV(日産自動車)・FCV(三菱自動車)は、世界のZEV(Zero Emission Vehicle)の先駆けだったにもかかわらず、メディアやガソリン関係の会社をはじめとする抵抗勢力の妨害によって遅れ、現在では中国はじめ各国の後塵を拝しているからだ。そのため、東京都は、2020年のオリンピック時には、ZEV以外の都内への乗り入れを禁止するくらいの措置をとってもよく、そうすれば乗用車・トラック・バスなどのZEV化が一気に進んで、ZEVの製造コストが下がる。なお、奈良・京都のような歴史的建造物を有する地域も、排気ガスによる汚れを防ぐため、同様の規制をした方がよいと考える。
 また、ガソリン需要の低減に伴い、*7-2のように、ガソリンスタンドは廃業が相次いでいるそうだが、ガソリンスタンドの役に立つ部分は残して、洗車や自動車用・家庭用の(タンクに充填された)燃料電池交換など、臨機応変に新たなニーズに対応すればよいだろう。

*7-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180626&ng=DGKKZO32183000V20C18A6L83000 (日経新聞 2018年6月26日) 都、排ガスゼロ車5割目標 国へ対抗意識鮮明に
 東京都の小池百合子知事は温暖化ガスの削減に向け、環境に配慮した自動車の新たな普及目標を打ち出した。都内の新車販売に占める排ガスゼロ車の割合を、2030年までに5割へ引き上げる。国の目標の3割を大幅に上回る野心的な数値だ。かつて自身が主導した「クールビズ」のようなムーブメントの再来を狙うが、課題は多い。「『ゼブ』を流行語大賞にしたい」。5月下旬、小池知事は日産自動車の電気自動車(EV)「リーフ」のフォーラムで訴えた。ゼブ(ZEV)とは、EVや燃料電池車(FCV)などの排ガスゼロ車を意味するZero Emission Vehicleの略。メーカー関係者にはなじみがあっても、一般には知られていない。都の推定によると、17年度の排ガスゼロ車の新車販売比率は都内で約2%にとどまる。EVの普及を妨げているのはエネルギーに使う電池の問題が大きい。リーフの航続距離は400キロメートルでガソリン車と開きがある。「街乗り」には適しているが、充電を忘れると長距離ドライブは難しい。小池知事は「メーカーにはペダルを踏んで頂きたい」と、さらなる技術開発を促した。普及を進めていくためには、充電施設の整備も不可欠になる。都内にはガソリンスタンドが約1千カ所あるが、EVの急速充電が可能な施設は270カ所ほど。しかも、充電器を1、2台しか備えていない施設も多い。FCVの燃料補給に必要となる水素ステーションに至っては都内で14カ所しかない。それでも小池知事があえて野心的な目標を掲げるのは、国への対抗意識がありそうだ。新車販売に占める排ガスゼロ車の目標は国が30%なのに対し、都は50%。受動喫煙防止対策で国を上回る規制方針を掲げたのと同様だ。都幹部は「施策を担当する環境局には、知事から期待とともにプレッシャーがかかっているようだ」と明かす。都はマンションに充電設備を設置する際の補助を始めたほか、都営バス車両にFCVの導入を進めるなど対応を急ぐが、独自の取り組みだけでは限度がある。今後、都民や企業の賛同や協力を地道に取り付けていくことが求められる。小池知事は8月に4年任期の折り返しを迎える。かつて環境相も経験し、環境政策は最も得意と自負する分野の一つだ。排ガスゼロ車の普及を目指した取り組みは、「環境の小池」を強くアピールし、再選戦略につなげようとする思惑もみえる。

*7-2:http://qbiz.jp/article/136361/1/ (西日本新聞 2018年6月26日) 廃業GSを解体せず活用 コインランドリーや車販売店に 屋根や駐車空間を生かし
 九州各地で廃業が相次ぐガソリンスタンド(GS)の跡地を、新たな店舗として活用する動きがさらに広がっている。建物を解体すると多額のコストがかかるため、屋根や事務所をそのまま利用。幹線道路沿いにあり駐車スペースも広いなど、GS特有の立地を生かしている。一方で残ったGSの拠点網をどう維持するか課題も多い。「大型トラックなども入れるよう道路からの間口が広く、お客さまが出入りしやすい」と説明するのは、コインランドリーを運営するWASHハウス(宮崎市)。同社は現在、九州の7カ所でGS跡地に出店。そのうち大分県と宮崎県の2カ所は、屋根や事務所などの建物をそのまま使っている。屋根が広く、雨天でも洗濯物がぬれずに済むなどのメリットがある。毎月1〜2回、子どもの布団の洗濯で挾間店(大分県由布市)を利用する近所の主婦(40)は、「屋根で日陰があり、暑い日も車の中で待てる」と話す。福岡市博多区の国道3号沿いにある福岡夜間救急動物病院も、2004年にGS跡地を活用して開業。幹線道路沿いで、遠方から駆け込む人にも屋根が目立つことなどが出店の決め手になったという。
   ◇    ◇
 GS運営会社も、跡地を活用した別業態の店舗運営に乗り出している。大分県と宮崎県でGS87店舗を運営する東九州石油(大分市)は、14年に新古車の販売業務を開始。16年には、閉店した大分県由布市挾間町のGSを、自動車販売店に改装した。通常、GSを更地に戻すには、地下にあるタンクや、店を囲む高さ2メートルの防火壁などの撤去費用が数百万から1千万円近くかかる。そのため同社も防火壁や事務所、洗車機はそのまま活用。敷地内に販売車を並べ、事務所は商談ルームに改装した。管理部本部の竹内誠治課長は「GSで給油していただいたお客さまに、車の買い替えから洗車、車検、保険手続きまで一括して請け負うことでサービスを強化したい」と話す。
   ◇    ◇
 GSの転換が続く背景には、ガソリンの需要減によるGS運営会社の経営悪化がある。自動車の燃費が向上したのに加え、11年の消防法改正で、古い地下タンクの改修が義務付けられたことも、廃業を加速させた。資源エネルギー庁によると、九州の給油所数は1994年度末の8223カ所から毎年減少し、16年度末には4369カ所とほぼ半減した。建物や地下タンクの撤去費用を出せないGSの中には、「休業」扱いで何年も閉店したままの店も少なくない。一方で、地域のインフラとしてGSの店舗網の維持も求められている。GSの経営改善を後押しするため、経済産業省は現在、規制緩和を検討。収益力向上のため、コンビニ併設などサービスの多角化や、電気自動車(EV)の充電設備や燃料電池車への水素供給など次世代燃料への対応、IT活用による人手不足解消などを後押しする方針だ。

<原発の高コスト体質>
PS(2018年7月5日追加):*8-1のように、世界では再エネのコストが下がり、再エネの短所と言われていたことも解決しつつあるのに、「エネルギー基本計画」で原発を「ベースロード電源」と位置付け、原発依存度をフクイチ以前に戻そうとしているのは、日本特有の思考停止であり、技術進歩の邪魔をしているものである。また、*8-2のように、原発は発電ゼロでも維持管理に膨大な人手を要し、使用済核燃料の保管にも資金と人手を要するものだ。

*8-1:https://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-753138.html (琉球新報社説 2018年7月5日)  エネルギー計画 見せかけだけの原発低減
 中長期のエネルギー政策の指針となる「エネルギー基本計画」を政府が閣議決定した。原子力発電については、2014年の前計画同様、可能な限り依存度を低減させる―とうたいながら、エネルギー供給の安定性に寄与する「ベースロード電源」と位置付けている。11年3月11日の福島第1原発事故によって明白になったのは原子力の制御技術に重大な不備があることだ。事故はいまなお収束に至らず、避難指示の対象は約2万4千人に上る。原発周辺住民の多くは「絶対安全」と力説する政府や東京電力の宣伝を信じた揚げ句、住まいや生活の糧を奪われ、健康を脅かされた。「国策詐欺」の被害者と言っていい。原発の安全性に対する不信感がある中で、政府は30年度の電源構成比率を15年に決定、原発は20~22%とした。エネルギー基本計画は、その実現を目指す方針を盛り込んでいる。原発の発電割合を見ると、東日本大震災前の10年度は25・1%だったが、原発事故を機に急落し16年度は1・7%にすぎない。20~22%の目標値は現状から比べると大幅な増大になる。経済産業省資源エネルギー庁がホームページに公開した資料「新しいエネルギー基本計画の概要」には、震災前と30年度(目標)の電源構成比率が記され、16年度の数値には触れていない。「依存度を低減させる」というのは表向きで、実際は、原発事故以前の水準に近づけようとしている。まるで「羊頭狗肉(ようとうくにく)」だ。政府は、原子力規制委員会の新規制基準に適合した原発について再稼働を進める方針だが、目標の実現には30基程度を稼働させる必要があり、非現実的との指摘がある。本音では、原発の新増設も視野に入れているのだろう。もともと10年のエネルギー基本計画では30年までに14基以上の原発を増設すると明記していた。原発の運転に伴い生成される猛毒のプルトニウムは「地獄の王の元素」と呼ばれる。プルトニウム239の場合、放射能が半分になる半減期は約2万4千年。気が遠くなるほどの年月だ。これほどの長い間、どうやって核のごみを管理できるのか。原発は、短期的には経済上のメリットをもたらすかもしれないが、放射能を完全に制御する技術が確立されていない中では、子々孫々に災いの種を残すだけだ。新たなエネルギー基本計画が、太陽光、風力、バイオマス、水力、地熱などの再生可能エネルギーを「主力電源化」すると明記したのは当然の流れと言えよう。日本の再生エネへの取り組みは欧州などに比べて立ち遅れている。集中的に研究開発を進めることで、真の意味で「原発依存度の低減」を実現すべきだ。

*8-2:https://digital.asahi.com/articles/DA3S13392314.html (朝日新聞 2018年3月8日) 発電ゼロ、人手は膨大 未稼働原発、千人単位で連日作業
 発電ゼロの原発に、5年間で計5兆円超ものお金が電気代からつぎ込まれていた。核燃料を扱う特殊な施設。止まっていても再稼働が見通せなくても、維持・管理には毎日数千人単位の人手が必要だ。東日本大震災で原子炉建屋にひびが入った東北電力女川原発(宮城県)。3基とも震災以降、一度も動いていない。しかし原発内では毎日、東北電やプラントメーカー、建設業者の作業員ら計約2千人が働いている。震災前より数百~1千人ほど多いという。3基はいずれも「定期検査中」の位置づけだ。原発は止まっていても、法令に基づき約1年に1度、安全維持のための検査が義務づけられている。防潮堤のかさ上げなど安全対策工事も加わる。女川原発の神田貴生・報道担当課長は「順番に1基ずつ止める通常の定期検査より、同時に止まっている今の方が作業は多い」と説明する。3基は運転開始から16~33年。女川3基と東通原発1号機(青森県)に費やした「原子力発電費」は2016年度、940億円だった。神田課長は「適合性審査が進む2号機に続き、1、3号機も準備が整えば審査の申請を考えたい」と話す。総発電量で世界最大規模の東京電力柏崎刈羽原発(新潟県)。福島第一原発事故の処理にあたる東電にとって、6、7号機の再稼働は会社の命運を握る。構内では約6千人が作業する。12年の全基停止から6年、作業員数は変わらない。東電によると、発電していなくても機器の保守や点検があり、防潮堤や貯水池、軽油の地下タンクの整備など一連の安全対策工事(6800億円)が続く。平日は毎朝、入構する車両で正門前に渋滞ができる。地元の電気設備業「品田電業社」(従業員35人)は、社員6人が同原発構内で作業している。品田史夫社長(44)は「安全対策工事で、売り上げに占める原発の割合は増えた」と話す一方、同工事の完了を見越し、「再稼働すれば東電は原発の設備投資を増やすはず」と期待を寄せる。
<電力各社でつくる電気事業連合会の話> エネルギー自給率が極めて低い日本の実情を考えれば、原子力を含めた多様なオプションを持っておくべきだ。このため電力各社は原発の安全確保に万全を期すため必要となる経営資源を投入し、対策及び設備の維持管理を行っている。安全が確認されたプラントについては立地地域をはじめ、広く社会の理解を得た上で、有効活用していきたいと考えている。
■<視点>現実みすえた選択必要
 平均すれば年に1兆円。福島原発事故後、中堅国の国家予算に匹敵する金額が毎年、発電ゼロの原発に費やされてきた。いまだ5万人超が避難する原発事故から7年近く。原子力規制委員会の審査は厳格化し、小型で老朽化した原発ほど再稼働のメリットは小さくなった。それでも電力各社は「いったん再稼働すれば効率的」と、維持費をかけ続けている。変化の兆しもある。関電は昨年12月、大飯1、2号機(福井県)の廃炉を決めた。再稼働には安全対策費がかさみ、大型炉でも採算が合わないと判断したとみられる。廃炉を選んでも費用はかかるが、原子力発電費から切り離され、支出の使途や日程は明確になる。原発には自然災害リスクや放射性廃棄物の最終処分という未解決の問題がある。世論調査でも再稼働に反対の意見が多い。発電ゼロで維持費を投じ続け、再稼働を求めるのか、廃炉か。厳しい選別が迫られている。

<健康被害等の大きなコスト>
PS(2018年7月11日追加):*9-1のように、東京電力福島第1原発事故の後、福島県内の全ての子ども38万人を対象に実施している甲状腺検査は2011年度に開始され、2018年に4巡目が始まって、これまでがんと確定したのは162人、疑いが36人いるが、これにも11人の集計漏れがあり、甲状腺癌の発生率は高い。
 放射線の人体への影響は、*9-2のように、2015年8月25日に休刊に追い込まれた月間宝島が2015年4月号に記載しているとおり、1)周産期死亡率の上昇 2)小児甲状腺癌の発症率上昇 3)白血病・その他の癌の年齢調整発症率上昇 4)急性心筋梗塞の年齢調整死亡率上昇 などがある。そして、*9-3のように、チェルノブイリ原発事故のケースに基づいて、原因分析も既に行われている。そのため、放射性物質が人体や動植物に与える影響を知らせることは、福島県の人への差別ではなく、正当な注意を行うための重要な情報であり、放射性物質の影響を過小評価すれば、大人も子どもも、いきとどいた健康診断や病気を発症した場合の正確な補償が行われないというむごい事態になる。
 それにもかかわらず、「不安を煽る」として、生物に対する膨大なコストを測定する正確な疫学調査も行わず、*9-4のように、経産省主導で次世代原子炉を官民共同開発し、「冷却に水ではなくガスを使うため非常時も水蒸気爆発を起こす懸念がない」などとしているのはあまりにも馬鹿げた無駄遣いである。原子炉を冷却した後の高温で放射脳を帯びた大量のガスは空気中に排出するのだろうが、それでは緊急時どころか平時から原発周辺では放射性物質関連の病気が多発することになり、気温も上がるからだ。



   
               2015.3.24、2015.3.9宝島ほか
                
*9-1:http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2018070701001949.html (東京新聞 2018年7月7日) 福島の甲状腺がん集計漏れ11人 検査の信頼性揺らぐ
 東京電力福島第1原発事故の後、福島県が県内全ての子ども約38万人を対象に実施している甲状腺検査で、集計から漏れていた甲状腺がん患者が11人いることが7日、関係者への取材で分かった。事故当時4歳以下も1人いた。県内で多く見つかっている子どもの甲状腺がんと事故との因果関係を調べる検査の信頼性が揺らいだ格好だ。福島市で8日に開かれる県の「県民健康調査」検討委員会の部会で報告される。県の検査は2011年度に開始、今年5月から4巡目が始まった。これまでがんと確定したのは162人、疑いは36人に上る。

*9-2:http://blog.takarajima.tkj.jp/archives/2015-03.html (宝島 2015年3月25日) 福島県の汚染地帯で新たな異変発覚!「胎児」「赤ちゃん」の死亡がなぜ多発するのか?~誰も書けなかった福島原発事故の健康被害 【第6回 後編】~
 最新2013年の「人口動態統計」データを入手した取材班は、高い放射能汚染に晒されている「17の市町村」で、周産期死亡率が急上昇している事実に辿り着いた。ジャーナリストが自力で行なう「原発事故による健康への影響調査」最終回!
■小児甲状腺ガン、急性心筋梗塞「汚染17市町村」で同時多発
 福島第一原発事故発生当時、18歳以下だった福島県民の人口は36万7707人。そのうち、14年12月末時点で甲状腺ガン、またはその疑いがある子どもの合計は117人である。この数字をもとに、福島県全体の小児甲状腺ガン発症率を計算してみると、10万人当たり31.8人となる。これでも相当な発症率であり、十分「多発」といえる。14年度の検査で新たに「甲状腺ガン、またはその疑いがある」と判定されたのは8人だが、そのうちの6人が「汚染17市町村」の子どもたちである。「汚染17市町村」における小児甲状腺ガン発症率を計算してみると、同33.0人と県平均を上回り、より多発していることがわかった。「汚染17市町村」では、急性心筋梗塞も多発している。【図5】は、同地域における過去5年間の「急性心筋梗塞」年齢調整死亡率を求めたものだ。最新13年の年齢調整死亡率は、福島県全体(同27.54人)を上回る同29.14人。おまけにこの数値は、12年(同29.97人)から“高止まり”している。つまり「汚染17市町村」が、福島県全体の同死亡率を押し上げていた。周産期死亡率、小児甲状腺ガン発症率、さらには急性心筋梗塞年齢調整死亡率のいずれもが、「汚染17市町村」で高くなる。これは、福島第一原発事故による「健康被害」そのものではないのか。それとも、偶然の一致なのか。本誌取材班は、東京電力を取材した。同社への質問は、
①原発事故発生後の「福島県における周産期死亡率の上昇」は、原発事故の影響によるものと
  考えるか。
②原発事故発生後の「汚染17市町村における周産期死亡率の上昇」は、原発事故の影響による
  ものと考えるか。
③「汚染17市町村」で周産期死亡率と急性心筋梗塞年齢調整死亡率がともに上昇していること
  は、この中に、被曝による「健康被害」が内包されている可能性を強く示唆している。
  これに対する見解をお聞きしたい。
という3点である。取材依頼書を送ったところ、東京電力広報部から電話がかかってきた。
       *
「(記事を)読む方が、心配になったりするような内容ではないんでしょうかね?」
─「心配になる内容」とは?
「質問書をいただいた限りだと、『震災以降、率が上がっている』といったところで、特に不安を煽るような内容になったりするのかなと、個人的に思ったものですから」
─「不安を煽る」とはどういうことでしょうか?質問した内容はすべて、国が公表したデータなど、事実(ファクト)に基づくものです。
「ファクトですか」
─はい。
「国等(とう)にも当社と同様にお聞きになった上で、記事にされるんでしょうかね?」
─はい。そうです。
      *
 その後、同社広報部からファクスで次のような“回答”が送られてきた。「人口動態統計での各死亡率等についての数値の変化については、さまざまな要因が複合的に関係していると思われ、それら変化と福島原子力事故との関係については、当社として分かりかねます」。しかし、「分かりかねる」で済む話ではない。そもそも、日本国民の「不安を煽る」不始末を仕出かしたのは東京電力なのである。それを棚に上げ、事実を指摘されただけで「不安を煽る」などという感情的かつ非科学的あるいは非論理的な言葉で因縁をつけてくるとは、不見識も甚だしい。自分の会社の不始末が「国民の不安を煽っている」という自覚と反省が不十分なようだ。猛省を促したい。<東京電力は、原因究明を「県民健康調査」に丸投げした>
■環境省「放射線健康管理」の正体を暴く
 続いて、国民の健康問題を所管する厚生労働省に尋ねた。
      *
「それは、環境省のほうに聞いていただく話かと思います」
─原発事故による住民の健康問題は、環境省に一本化されていると?
「そうですね」
      *
 ご指名に基づき、環境省を取材する。面談での取材は「国会対応のため、担当者の時間が取れない」との理由で頑なに拒まれ、質問への回答は、同省総合環境政策局環境保健部放射線健康管理担当参事官室よりメールで寄せられた。回答は以下のとおり。
「昨年12月22 日に公表された、『東京電力福島第一原子力発電所事故に伴う住民の健康管理のあり方に関する専門家会議』の中間取りまとめによれば、
●放射線被ばくにより遺伝性影響の増加が識別されるとは予想されないと判断する。
●さらに、今般の事故による住民の被ばく線量に鑑みると、不妊、胎児への影響のほか、心血管疾患、白内障を含む確定的影響(組織反応)が今後増加することも予想されない。とされています」。環境省は、たとえ周産期死亡率や急性心筋梗塞年齢調整死亡率が増加したとしても、それは原発事故の影響ではない─とした。その根拠は「専門家会議の中間取りまとめ」が、原発事故の影響でそうした疾患が増加することを予想していないからなのだという。ちなみに、「専門家会議」を所管しているのは、この回答の発信元である同省の「放射線健康管理担当参事官室」である。科学の権威たちが揃って予想だにしないことが起きたのが福島第一原発事故だったはずだが、あくまで「予想」に固執する環境省は同じ轍(てつ)を踏みそうだ。もちろん、科学が重視すべきは「予想」より「現実」である。環境省の説が正しいとすれば、原因は別のところにあることになり、それを明らかにするのが科学であり、それは環境省が拠りどころとする「専門家会議」の仕事のはずだ。だが、その原因を特定しないまま、環境省は端から全否定しようとするのである。なぜ、環境省は現実から目を逸らし、真正面から向き合おうとしないのか。身も蓋もない言い方だが、環境省が現実に目を向けることができないのは、昨年12月に出したばかりの「中間取りまとめ」を、環境省自身が否定することになりかねないからなのである。つまり、本誌取材班の検証で明らかになった「汚染17市町村」での周産期死亡率や急性心筋梗塞年齢調整死亡率の増加の事実は、「専門家会議の中間取りまとめ」の「予想」結果を根底から覆しつつ「権威」を失墜させ、その贋物性を白日の下に曝け出してしまうものだった。「中間取りまとめ」が予想していない疾患の増加はすべて「原発事故の健康被害ではない」として、頭ごなしに否定する環境省の姿勢は、かつて「日本の原発は事故を起こさない」と盛んに喧伝してきた電力御用学者たちの姿を彷彿とさせる。2012年7月に出された国会事故調(東京電力福島原子力発電所事故調査委員会)の報告書は、「歴代の規制当局と東電との関係においては、規制する立場とされる立場の『逆転関係』が起き、規制当局は電力事業者の『虜』となっていた。その結果、原子力安全についての監視・監督機能が崩壊していた」としていた。環境省もまた、電気事業者の「虜」となっているようだ。そう言われて悔しければ、「現実に向き合う」ほかに名誉挽回の道はない。このように不甲斐なく、頼りにならない環境省のおかげで、このままでは「汚染17市町村」での“健康異変”は十把一絡(じっぱひとから)げにされ、かつて「水俣病」が発覚当初に奇病扱いされたように、原因不明の奇病「福島病」とされてしまいそうである。メチル水銀中毒である「水俣病」に地域の名前が付けられたのは、加害企業の責任をごまかすべく御用学者が暗躍し、「砒素(ひそ)中毒説」などを唱えたことにより、原因究明が遅れたことが原因だった。これにより、病気に地域名が付けられ、被害者救済も大幅に遅れることになったのである。従って、「汚染17市町村」で多発する病気に「福島」の名が冠されるようになった時の原因と責任は、すべて環境省にある。(『宝島』2015年4月号)

*9-3:https://www.windfarm.co.jp/blog/blog_kaze/post-7051 (中村ブログ2011/10/12より抜粋)
  最近、セシウムの毒性に関する大変重要な冊子が、茨城大学名誉教授久保田護氏により翻訳、自費出版されました。元ゴメリ医大学長、バンダジェフスキー博士の『人体に入った放射性セシウムの医学的生物学的影響―チェルノブイリの教訓セシウム137による内臓の病変と対策―』です。(この本は売り切れて、新しい本『放射性セシウムが人体に与える医学的生物学的影響: チェルノブイリ・原発事故被曝の病理データ』(合同出版社)が出ています)。食物中のセシウム摂取による内部被曝の研究がほとんどない中、バンダジェフスキー博士は、大学病院で死亡した患者を解剖し、心臓、腎臓、肝臓などに蓄積したセシウム137の量と臓器の細胞組織の変化との環境を調べ、体内のセシウム137による被曝は低線量でも危険との結論に達しました。
以下に要点をまとめます。
【体全体への影響】
*セシウム137の体内における慢性被曝により、細胞の発育と活力プロセスがゆがめられ、体内器官(心臓、肝臓、腎臓)の不調の原因になる。
*大抵いくつかの器官が同時に放射線の毒作用を受け、代謝機能不全を引き起こす。
*セシウムの濃度に応じて、活力機構の破壊、たんぱく質の破壊が導かれ、組織発育が阻害される。
*セシウムの影響による体の病理変化は、合併症状を示し、長寿命体内放射能症候群(SLIR)といわれる。SLIRは、セシウムが体内に入ったときに現れ、その程度は入った量と時間とに相関する。
*SLIRは、血管、内分泌、免疫、生殖、消化、排尿、胆汁の系における組織的機能変化で明らかになっている。
*SLIRを引き起こすセシウムの量は、年齢、性別、系の機能の状態に依存するが、体内放射能レベルが50Bq/kg以上の子供は機関や系にかなりの病理変化を持っていた。心筋における代謝不調は20Bq/kgで記録された。
*汚染地帯、非汚染地帯の双方で、わずかな量の体内セシウムであっても、心臓、肝臓、腎臓をはじめとする生命維持に必要な器官への毒性効果が見られる。
【心臓への影響】
*生命維持に必要な多くの系で乱れが生じるが、その最初は心臓血管系である。心筋のように、細胞増殖が無視できるかまったくない器官や組織は、代謝プロセスや膜細胞組織に大きな影響が生じるため、最大の損傷を受ける。
*ミンスクの子供は20Bq/kg以上のセシウム137濃度を持ち、85%が心電図に病理変化を記録している。
*ミンスクの子供で、まれに体内放射能が認められない場合もあるが、その25%に心電図変化がある。このように濃度が低くても、心筋に重大な代謝変化を起こすのに十分である。
【血管系への影響】
*血管系が侵され、高血圧が幼児期からも見られることがある。
*セシウムは血管壁の抗血栓活性を減退させる。
*血管系の病理学的変化は、脳、心臓、腎臓、その他の機関の細胞の破壊を導く。
*体内のセシウム濃度の高い子供の間で、白血球の数の減少が見られた。最初に減ったのがバチルス核好中球と単球であり、同時にリンパ球の数が増大した。
*動物実験では、絶対的赤血球数と相対的核好中白血球の数の減少が起きた。
*40キュリー/km2以上の地域から汚染の少ない地域に移住した子供の骨髄球の生理状態が回復したことは注目に値する。
【腎臓への影響】
*セシウムは腎臓機能を破壊し、他の器官への毒作用や動脈高血圧をもたらす。ゴメリにおける突然死の89%が腎臓破壊を伴っている。
*腎臓もセシウムの影響を強く受けるが、放射線による腎臓の症状は特徴がある。また病気の進行が早く、悪性の動脈高血圧がしばしば急速に進む。2-3年すると、腎臓の損傷は慢性腎機能不全、脳と心臓との合併症、ハイパーニトロゲンミアを進展させる。
【肝臓への影響】
*肝臓においては、胎児肝臓病や肝硬変のような厳しい病理学的プロセスが導かれる。
*免疫系の損傷により、汚染地ではウィルス性肝炎が増大し、肝臓の機能不全と肝臓ガンの原因となっている。
【甲状腺への影響】
*セシウムは、甲状腺異常にヨウ素との相乗関係を持って寄与し、自己免疫甲状腺炎や甲状腺ガンの原因となる。
【母体と胎児への影響】
*セシウムは女性の生殖系の内分泌系機能の乱れをもたらし、不妊の重要因子となりえる。また、妊婦と胎児両方でホルモンの不調の原因となる。
*月経サイクルの不調、子宮筋腫、性器の炎症も見られる。
*母乳を通じ、母体は汚染が低くなるが、子供にセシウム汚染は移行する。多くの系がこの時期に作られるので、子供の体に悪影響を与える。
*1998年のゴメリ州での死亡率は14%に達したが、出生率は9%(発育不全と先天的障害者含む)だった。妊娠初期における胎児の死亡率がかなり高かった。
*セシウムは胎児の肝臓病を引き起こし、その場合胎児は肝臓に限らず、前進の代謝の乱れが生じる。
【免疫系への影響】
*免疫不全により、結核が増加している。
*免疫系の障害が、体内放射能に起因することは、中性白血球の食作用能力の減退で証明されている。
【神経系への影響】
*神経系は体内放射能に真っ先に反応する。脳の各部位、特に大脳半球に影響を及ぼし、さまざまな発育不良に反映される。
*生命維持に不可欠なアミンや神経に作用するアミノ酸の内部被曝による変動は外部被曝と比べ、顕著である。
*セシウム137の体内量と自律神経系の機能障害は相関する。
*動物実験で発情期のメスに神経反応の組織障害が起こる。
*ウクライナの学者は、大脳の差半球で辺縁系小胞体組織の異常があると述べている。
【消化器系】
*セシウムが体内に長期間入っている子供に、慢性胃腸病を引き起こす。
【視覚器官】
*ベトカとスベチロビッチ(15―40キュリー/km2)に住んでいる子供では、子供の視覚器官の変化はそれぞれ93.4%と94.6%だった。
*白内障発生率とセシウム137の量に明白な正比例関係が見られた。
【相乗作用】
*セシウムの影響は、ニコチン、アルコール、ハイポダイナミアと相乗して憎悪される。
【男女差】
*セシウムは男性により多く取り込まれやすく、女性より男性により強い影響が出ており、より多くのガン、心臓血管不調、寿命の低下が見られる。
【疫学調査】
*1976年と1995年のベラルーシの比較。悪性の腎臓腫瘍が男4倍以上、女2.8倍以上。悪性膀胱腫瘍が男2倍以上、女1.9倍以上。悪性甲状線腫瘍が男3.4倍以上 女5.6倍以上。悪性結腸腫瘍は男女とも2.1倍以上。
*ゴメリ州では腎臓ガンは男5倍、女3.76倍。甲状線ガンは男5倍、女10倍となった。
【セシウム排出製剤】
*セシウムの排出に、カリエイ土を加えたペクチン製剤のペクトパルは最も将来性がある製剤のひとつだが、セシウムが人体に入るのを防ぐほうが、それを排出したり乱れた代謝を正常にするより容易なことを心に留めるべきである。
     *      *      *
「チェルノブイリ原発事故による健康被害は、甲状腺ガンだけ」というのがウソだということが様々なデータや証言、動画などから明らかになっている。
★チェルノブイリによる放射能災害  国際共同研究報告書
ウクライナにおける事故影響の概要 から抜粋 
ドミトロ・M・グロジンスキー:ウクライナ科学アカデミー・細胞生物学遺伝子工学研究所(ウクライナ)
 穀物,野菜,牧草,果物,牛乳,乳製品,肉そして卵までもが放射能で汚染され,その汚染は時には,それらの食物を廃棄しなければならないほど強いものであった。ウクライナ人全体の被曝は主として,チェルノブイリ事故後に強制避難させられた地域以外の放射能汚染によってもたらされた。
<放射線生態学的影響>
 チェルノブイリ事故による放射線生態学的影響の主なものは以下のとおりである。
1、厖大な核分裂生成物が大気中に放出され,生態系に侵入した.放射能は,地上の生態系のあらゆる部分に拡がり,結果的に,微生物,きのこ,植物,昆虫,その他の動物,そして人間まで,すべての生き物が放射能で汚染された。
2、 放射能は地下水に移動し,また表層の水をも汚染した。
3、放射能が食物連鎖に入り込み,人間に達した.大人も子供も,また人間の周囲にあるあらゆるものが放射能で汚染された.たとえば,キエフ中心部の樹木の葉は,1986年に7万~40万Bq/kgの放射能を含んでいた。
4、放射能が生物圏に侵入したため,多数の人間を含めて,すべての生き物に対して,被曝を与えることとなった.チェルノブイリ原発事故の放射性降下物から人間が被曝する経路には次の3つがある.第1に,地表に沈着した放射性物質からの外部被曝,第2に,大気中を漂う放射性物質の吸入,第3に,汚染した食べ物を食べることである.全体の被曝の中で,汚染した食べ物を食べることから生じる被曝が特に大きい.外部被曝に比べて内部被曝の方が,はるかに高い生物学的な影響をおよぼすことにも注意しておこう。
5、天然のバックグラウンド以上に被曝することは,人間にさまざまな病気を引き起こすし,放射能汚染地域の動植物群の状態を変化させる。
<子供たちの健康状態>
 チェルノブイリ事故で被曝した子供では,1987年から1996年まで慢性疾患がたえず増加してきた.表14は,チェルノブイリ被災地域の子供の発病率と罹病率の値である。この約10年間で,罹病率は2.1倍に,発病率は2.5倍に増加した.罹病率の増加が最も激しいのは,腫瘍,先天的欠陥,血液,造血器系の病気であった.最も罹病率が高いのは,第3グループ(厳重な放射線管理下の住民)の子供たちである.同じ期間において,ウクライナ全体の子供の罹病率は,20.8%減少していることを指摘しておく。このように,被災地域の子供たちの罹病率は,全ウクライナ平均での子供の罹病率をはるかに超えている。同じ期間に,先天的欠陥の発生率は5.7倍に,循環器系および造血器系の罹病率は5.4倍に増加している。他の地域の子供に比べ,問題の子供たちのガン発生率も明らかに大きい.被災地域の子供の,腫瘍発生率は1987年からの10年間で3.6倍に増加している.ガンの種類によって,その死亡率の増加傾向は,必ずしも一定していない.しかし,汚染地域の子供のガン死亡率は,他の地域の子供よりも大きくなっている.

*9-4:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180711&ng=DGKKZO32841680Q8A710C1MM8000 (日経新聞 2018年7月11日) 次世代原子炉、官民で 年度内に協議体 安全・コスト減に力
 官民が共同で次世代の原子炉の開発に乗り出す。経済産業省は2018年度中をめどに、電力大手や原子炉メーカーなどが参加する協議体を作る検討に入った。より安全性を高めた低コストの原子炉の開発や事業化で連携する。東日本大震災後、国内の原発の稼働は落ち込んでいる。各社が協力する場を設けて新設を後押しし、業界再編の布石にすることも狙う。3日に閣議決定した新たなエネルギー基本計画では、原子力を今後も重要な電源として活用していく方針を示したが、活用に向けた具体策は先送りしていた。原発の新増設や建て替えを進めやすくするため、官民で協力する体制を整える。国内では2011年の東京電力・福島第1原発の事故後にすべての原発が停止。再稼働したのは関西電力や九州電力などの計9基のみだ。経産省は2030年の電源構成について原発で20~22%をめざすが、30基程度の稼働が必要となる。現在の大型炉は100万キロワット規模など大量の発電が可能だが、建設や安全対策の投資がかさむ。官民が共同で開発する次世代炉は、大型炉の改良のほか出力が10万~30万キロワット程度の小型炉も検討する。大型炉の建設費は1兆円規模だが、数千億円に抑えられる。「高温ガス炉」は冷却に水ではなくガスを使うため非常時も水蒸気爆発を起こす懸念がない。国内の原発は稼働から数十年が経過しているものが多いが、次世代炉は最新の制御技術などを導入。緊急時に被害が広がりにくいシステムを備える。経産省は電力大手各社に協議体への参画を打診する。東京電力ホールディングス(HD)や関西電力は国の要請があれば前向きに検討する方向だ。三菱重工業や日立製作所など原子炉メーカー、原発の建設を担うゼネコンにも参加を促す。国内の原発は大震災前のように稼働基数が増えず廃炉のコストも増える。次世代炉を実用化しても使用済み燃料の負担は残り、大手電力9社が別々に手がけていくのは厳しいとの見方もある。経産省は水素や高性能な蓄電池、分散型エネルギーなど、他の分野でも官民で連携する枠組みをつくる。原発の再稼働には慎重な世論もある。原発一辺倒でなく幅広い技術の研究開発に取り組み、エネルギーを安定供給できる体制をめざす。

<漁業の低迷理由は?>
PS(2018年7月12日):水産業は、良質の蛋白質を摂取するために重要で、我が国では優位性の高い産業である筈だが、*10のように、漁獲高は一貫して減少し、海面漁業の生産量はピーク時の3割・養殖業がやっと横ばいだそうだ。
 そして、海面漁業が九州、全国ともに減少している要因は、「1)海洋環境の変動などによる資源量の減少のためか」「2)業務ではなく調査していないため分からない」と書かれているが、1)の海洋環境変動には、海水温が上がって海藻はじめ海中の食物連鎖が維持できにくくなっていることがあり、その理由には、①地球温暖化 ②原発温排水の影響 ③海底火山噴火の活発化などが考えられる。そのほか、公海における他国の漁獲高上昇や日本における燃油価格高騰・賃金上昇で漁業が成り立たなくなり、廃業が増えて後継者も少ないことなど、2)のように、業務でないから調査しないわけには決していかず、しっかり調査して問題解決すべきである。何故なら、日本人も、ITやアニメや製造業だけを行い、食品は輸入して食べていけるわけではないからだ。

*10:http://qbiz.jp/article/136703/1/ (西日本新聞 2018年6月30日) 「漁獲」九州も減少傾向 山岡知且・九州農政局生産流通消費統計課長 漁業ピークの3割 養殖横ばい 17年86万トン全国2割
 沿岸に黒潮と対馬海流が流れ、サバ、アジ、イワシなどの豊かな漁場に恵まれている九州。漁業や養殖業が盛んで、生産量は全国の約2割を占めている。ただ海洋環境の変動などによる資源量の減少のためか、海面漁業の漁獲量は全国と同様に減少傾向だ。九州における海面漁業・養殖業の生産量調査を担当する九州農政局生産流通消費統計課の山岡知且(ともあき)課長に生産量の推移や特徴などを聞いた。九州の海面漁業・養殖業の生産量について1956年から調査を続けている。最新データの2017年は速報値で85万7725トン。うち海面漁業の漁獲量は56万6739トン(全体の66・1%)。海面養殖業の収穫量は29万986トン(33・9%)となっている。全国の生産量は424万2300トンで、うち海面漁業と海面養殖業はそれぞれ325て万7700トン(全体の76・8%)と98万4600トン(23・2%)。全国に占める九州の割合は生産量全体で20・2%。海面漁業17・4%、養殖業29・6%だ。九州は人口や面積、経済規模が全国のほぼ1割で「1割経済」と言われるが、漁業分野はこれを大きく上回り、活発に展開されていることを数字が物語っている。九州で漁獲量が多い上位5魚種は(1)サバ類約13万9千トン(2)イワシ類約12万7千トン(3)アジ類約8万8千トン(4)マグロ類約3万9千トン(5)カツオ類約2万7千トン−の順。県別では長崎県が約31万7千トンでダントツ。2番手は宮崎県の約9万7千トンとなっている。ただ海面漁業は九州、全国ともに減少傾向だ。九州の17年はピーク時(1988年、約191万5千トン)の29・6%、全国はピーク時(84年、1150万トン)の28・3%と、いずれも過去最高時の3割程度に落ち込んでいる。減少傾向の要因については私たちの業務では調査していないため、分からない。一方、九州の海面養殖業は2008年の32万811トンが過去最高で、ここ30年は24万〜32万トンの間で推移している。17年の種類別は板ノリが15万6730トン(主産地は佐賀、福岡、熊本)、ブリが6万4132トン(主産地は鹿児島、大分、宮崎)。カンパチは鹿児島だけで1万8299トンある。

<どうして国民にマイナスの政策が多いのだろう?>
PS(2018年7月22日追加):「カジノを解禁してギャンブル依存症対策を行う」というのは、「麻薬を解禁して麻薬依存症対策を行う」とか「山崩れしそうな山の山肌に砂防ダムがあるから安全だと信じる」などと同様、大きな流れを小さな人工物で食い止めようとするもので意味がないだろう。そのため、私は、*11と同様、カジノ解禁が日本全体の経済成長に繋がるとは思えず、カジノ解禁は生産年齢人口減少時代に廃人のようになる日本人を増やして国力を削ぐと考える。また、IRによる観光立国はむしろ観光の質を落とし、日本は歴史・地理・自然を活かした観光をテーマにした方が日本らしくて質が高く、世界の評価が上がると思われる。

*11:https://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-766295.html (琉球新報社説 2018年7月22日) カジノ法成立 国民不幸にして金儲けか
 カジノ解禁を含む統合型リゾート施設(IR)整備法が国会で可決、成立した。カジノを刑法の賭博罪の対象から除外する同法を根拠に、政府は2020年代半ばにも民間によるカジノ開業を目指す。IR整備法といっても実際は賭博合法化法だ。賭博を認める法律がなぜ必要なのか。強い疑問が残る。ギャンブル依存症の拡大や治安悪化が懸念され、国民の不安は根強い。6月の共同通信の世論調査では69%が「今国会で成立させる必要はない」と回答している。カジノ解禁への理解は進んでいない。それにもかかわらず、あまりにも拙速に成立させた。世論軽視の強行と言わざるを得ない。政府は昨年3月、ギャンブル依存症の実態把握のための成人2200人を対象にした初の面接調査の結果を発表した。回答した993人のうち生涯で依存症の経験が疑われる人は2・7%だった。一方、各国のギャンブル依存症が疑われる人の割合は、調査対象数や調査方法にばらつきがあるものの、米国や韓国など11カ国と香港では0・2~2・4%だった。つまり日本はギャンブル依存症の割合が各国と比べても高い水準にある。国内で依存症経験が疑われる人は320万人に上るとの推計もある。そこにカジノを解禁すれば、依存症の割合がさらに高まるのは目に見えている。法案では依存症対策として、日本人のカジノ入場にマイナンバーカードを使った本人確認を義務付け、週3回、月10回という上限を設定している。安易な利用を減らそうと入場料6千円を徴収するほか、国が事業者を厳しく監督する免許制度も導入するとしている。しかし年間120日まで入場できる仕組みで依存症の歯止めになるのか。極めて疑問だ。政府はカジノを含むIRによる観光立国をアピールする。しかし訪日外国人客は過去6年間で4・6倍と急拡大している。カジノに頼る必要などない。むしろカジノ客の7~8割は日本人が占めるとの民間や自治体の推計もある。安倍晋三首相は「IRが日本全体の経済成長につながる」と主張する。しかし政府は「現時点では経済効果額の試算はできない」と説明する。数字の裏付けのない経済効果をアピールされても、判断のしようがない。政府は賭博を刑法で処罰してきた根拠に立ち返るべきだ。最高裁の判例では賭博について「国民をして怠惰浪費の弊風を生ぜしめ健康で文化的な社会の基礎を成す勤労の美風を害する」などと示している。カジノ合法化の法律を成立させるべきではなかった。政府は国民を不幸にさらしてでも金儲けを優先させようというのか。そうでないというのなら、早期に廃止すべきだ。

<もう環境を犠牲にしてよい時代ではない>
PS(2018.7.24追加):*12に、防衛大臣が来佐したと書かれているが、大臣が何度も訪問すれば公害が起こらなくなるわけではない。また、佐賀県では、海産物は重要な産物であるため、海を汚染する可能性のある施設を誘致して交付金をもらうスキームを作るべきではない。そのため、オスプレイを配備すると仮定しても、合理的な場所は佐賀空港ではないだろう。

*12:http://www.saga-s.co.jp/articles/-/249548 (佐賀新聞 2018.7.24) 防衛相来佐 県と佐賀市、漁協の三者、異なる反応
 小野寺五典防衛相が佐賀県を訪れ、佐賀空港への自衛隊輸送機オスプレイ配備計画に関する交渉が再開した23日、県と佐賀市、県有明海漁協は異なる反応を示した。神埼市での陸上自衛隊ヘリコプター墜落事故の対応を含めて一定の評価をした山口祥義知事に対し、市と漁協は従来の慎重な立場を崩さなかった。
○県・議会
 佐賀県民の信頼回復と不安解消の重要性に何度も触れながら、オスプレイの安全性に問題がないことを強調した小野寺防衛相の説明に対し、山口祥義知事は「今後、精査・確認する」と冷静に受け止めつつ「一定の説明があった」と評価した。オスプレイの安全性に関する情報連絡のルールづくりが可能かどうか尋ねるなど、従来より踏み込んだ姿勢をにじませた。防衛省側の説明後、山口知事は神埼市で墜落した陸自ヘリと同型機の取り扱いと、県内でのオスプレイの訓練について確認を求めた。ヘリ事故の原因究明と再発防止が図られるまでは、同型機を佐賀空港に移駐しないと答えた小野寺氏に対し、山口知事は「大臣の言葉を重く受け止める」と述べた。過去に米軍機の事故原因になった空中給油などの訓練を有明海や県内上空では実施しないとの説明には「厳しい訓練、リスクを伴う訓練は実施しないということか」と念を押した。オスプレイを受け入れるかどうかの判断時期については、報道陣に「安全性と(漁業振興や補償の枠組みで国と)漁業者をつなぐという2点について、ある程度整理がついたタイミング」と答え、県議会などで発言していた「しかるべき時期」という考え方を具体的に示した。県議会では、応対した指山清範副議長がヘリ墜落事故について「目達原駐屯地は地域住民や吉野ヶ里町、上峰町と寄り添って信頼関係を築き上げてきた。その中での事故は非常に残念だし、遺憾と言わざるを得ない」とし、「しっかり原因を究明して報告してほしい」と求めた。
●「国の事業に不信感」組合長
○有明海漁協
 オスプレイ配備計画で、駐屯地建設予定地の地権者の多くが所属する佐賀県有明海漁協。徳永重昭組合長は「県営空港なので県の判断が必要」と述べ、今後、要請があれば協議自体には応じる考えを示した。一方で、長崎県の諫早湾干拓事業をはじめとする国の事業への漁業者の不信感は依然根強いとし、「ほとんどの人が今のような計画では駄目だという認識は持っていると思う」と述べた。約15分の会談で、小野寺防衛相はノリ養殖やコノシロ漁への影響、万一の事故の際の対応に配慮する考えを説明した。漁協側は、配備計画への漁業者の不安を伝え、自衛隊との共用を禁止した公害防止協定を「解釈」の問題で片付けないようくぎを刺した。配備計画に関して昨年に開かれた地権者説明会や漁協全支所の意見聴取では、計画への反対意見が大勢を占めた。徳永組合長は会談後、漁業者の心境の変化を尋ねる報道陣の質問に「そのままでしょうね」と答えた。諫早湾干拓事業の開門問題に絡む訴訟で、福岡高裁が30日、開門を命じた確定判決を無効化する判決を出す可能性に触れた上で「漁業者からいろんな反発は出るだろう」と、配備計画への影響を推し量った。また、県内から「いま返事をしないと、よそ(の県)から取られるよ」という声が聞こえてくると切り出し、「それくらいの考えだったら持ってくるなと言いたい」と強調した。
●「公害協定重い」市長 「情報提供密に」議会
○佐賀市・議会
 小野寺五典防衛相は佐賀市役所で23日、秀島敏行市長、武藤恭博議長らと相次いで会談した。自衛隊との共用を禁じる「公害防止協定」の取り扱いを持ち出した秀島市長とのやりとりでは、小野寺氏は終始硬い表情だったが、オスプレイ受け入れの「容認決議」をした市議会では一転してにこやかな表情を見せた。
秀島市長との面会は10分足らずだった。小野寺氏は「まだ県の判断が出ていないので、その判断を仰ぎつつ、同時並行で説明したい」と理解を求めた。秀島市長は「(要請があった)4年前に『困惑』という言葉を使ったが、その気持ちは今も変わっていない」とした上で、公害防止協定が結ばれた経緯を挙げて「約束というのは行政にとって大変重要なものだ。協定の立会人の立場を引き継ぐのが私だ」と述べた。会談後、秀島市長は「4年間動かなかったのは、そう簡単に動くような約束事ではなかったということ。誰が来ようとも約束事が大切だと、地元の者として捉えている」と話した。昨年12月に佐賀空港への配備を容認する決議を賛成多数で可決した佐賀市議会では、小野寺氏が自ら決議に触れて「後押しする決議で、日本の安全保障についてしっかりとご判断をいただいた」と感謝した。武藤議長らは緊密な情報の提供を求めた。
●「オスプレイ危険」市民団体抗議
 自衛隊輸送機オスプレイの佐賀空港への配備計画に反対する市民団体は23日、佐賀県庁前で抗議活動を行った。小野寺五典防衛相の来佐に対し、約80人が「危険なオスプレイを飛ばすな」「神埼市の自衛隊ヘリ墜落事故は原因が分からず、まだ終わっていない」などと反発した。参加者は横断幕やのぼりを手にして「防衛省は断念しろ」などと声を合わせた。小野寺氏が乗った車が県庁に入る際には「帰れ」と怒号を上げた。県平和運動センター副議長の松永憲明佐賀市議は「相次ぐオスプレイの事故の検証は米軍任せ。日本の主権が及んでいない状況が許されていいのか」と批判した。計画に反対している「住民の会」の古賀初次会長(佐賀市川副町)は「ヘリ事故の影響は続いているのに大臣が訪問するなんて、住民の気持ちを踏みにじっている」と憤った。その上で「オスプレイが配備されれば、施設からの排水などで有明海のノリ養殖に被害が出てしまう」と強い懸念を示した。
●「協議再開早い」 陸自ヘリ墜落の神埼
 神埼市千代田町に陸上自衛隊目達原駐屯地(神埼郡吉野ヶ里町)所属の戦闘ヘリが墜落した事故から半年が経過するのを前に、小野寺五典防衛相が佐賀県を訪れ、オスプレイ配備計画の協議再開を申し入れた。事故現場の地元住民は、原因究明途上での協議再開に複雑な思いを抱く。「タイミングははっきり言って早い」。事故現場で区長を務める樋口邦敏さん(68)は憤りを隠せない。8月5日で事故から半年を迎える。防衛省が6月に公表した事故の中間報告では、最終的な原因究明には至っていない。「オスプレイは別件かもしれないけど、国の思うようにされているようで…。ちょっと強引じゃないだろうか」。一方、松本茂幸神埼市長は配備の賛否は明言しなかったが「国防上必要であれば(配備は)やむを得ないのでは」とした上で、ヘリ事故で協議が中断していたことに触れ「だからといって(計画を)止めてしまうと国民の安全が守られない」と指摘。協議再開に理解を示した。

<国内資源開発の重要性>
PS(2018年7月26日追加):*13-1の日本の海洋資源である石油・天然ガスを掘削する会社こそ、最初は国費で援助しても伸ばすべきだった。その理由は、①シェールオイルは安価でも外国に支払う金であり、日本のエネルギー自給率を上げないこと ②*13-2のように、エネルギーがすべて水素や電力に変わったとしても、化学工業に石油・天然ガスは必要であること などだ。そして、経産省が、このような近視眼的で世界の産業振興を見ていない政策を採ることこそが国民経済の足を引っ張っているのであるため、現状維持(実際には現状維持もできない)や過去への回帰(世界が前進している時に日本だけ後退する)志向はやめるべきである。

  
  賃金推移国際比較   1人当たり国民総所得国際比較   実質・名目賃金推移   

(図の説明:日本は、再エネやEVで世界の先頭だったにもかかわらず、馬鹿げたバックラッシュが多いため、他国に後れをとった。しかし、これは一例であり、賢い選択と予算配分を行わないのが、一人当たり国民所得が先進国中最低である原因だ。また、日本だけ、賃金が下降傾向である。もちろん、実質賃金も上がっていない)

*13-1:https://www.asahi.com/articles/DA3S13606419.html#MainInner (朝日新聞 2018年7月26日) 海の石油・ガス掘削、苦境 シェールオイル本格化で一転
 「会社が苦しいのは分かっていたが、まさか破綻(はたん)するとは……」。6月29日、東京・秋葉原で開かれた日本海洋掘削の株主総会。出席した株主の男性がため息をついたのも無理はない。東京地裁に会社更生法の適用を申請したのは、総会の1週間前のことだった。同社は、海洋資源である石油や天然ガスの掘削を日本で唯一手がける専門会社。「リグ」と呼ばれる巨大な掘削装置で世界中の海底に眠る資源を取り出すのが仕事だ。高度成長期の1968年に石油開発公団(現・石油資源開発)や三菱鉱業(現・三菱マテリアル)などが出資して設立され、2009年に東証1部に上場した。主力のリグ「ジャッキアップ型」は35階建てのビルに相当する高さで、100人以上のクルーが寝泊まりする。資源メジャーと呼ばれる石油開発企業などから依頼を受けて油田を掘り、その工賃が収入になる。リグは1基あたり数百億円。受注を続けながら購入やリースにかかる費用を支払う形で、5基ほどを運用してきた。世界で初めて海底地下のメタンハイドレートからガスを掘り出すことに成功した海洋研究開発機構の地球深部探査船「ちきゅう」もリグの一種で、子会社が運用を受託している。転機は05年ごろに訪れた。中国やブラジルなど新興国の成長に伴い原油の需要が急増。相場は過熱し、08年の原油価格は1999年の約5倍になった。14年3月期には過去最高の売上高を記録。受注が増えると見込んで拡大路線にかじを切り、14年秋にリグを10基に増やすことを決めたが、直後に原油市場に異変が起きた。米国でシェールオイルの生産が本格化し、15年の原油価格は2年前の5割ほどに急落。資源メジャーによる海洋開発需要も落ち込んだ。かつては原油価格が下がっても1~2年すれば回復し、受注も戻るのが常だった。「過去の経験に頼った投資判断のミス。シェールオイルの出現で原油市場のメカニズムが変わった」(広報)。低迷が3年も続いたのは想定外だった。16年3月期に純損益が赤字に転落。その後も赤字幅は拡大し、18年3月期に155億円の債務超過に陥った。4月下旬に記者会見した市川祐一郎社長(当時)は退任の意向を表明し、スポンサーを探して再建への道筋をつけると述べた。この時点では、債権者の同意によって再建計画をまとめる「私的整理」を目指していた。だが、経営の先行きについて金融機関など大口債権者の見方は厳しく、再建計画をまとめるには至らなかった。7月下旬に迫っていたリグに関する費用の支払いができない見込みになり、法的整理を選択せざるをえなくなった。設立にかかわった大株主2社も支援には消極的で、ともに増資を見送った。筆頭株主の石油資源開発は「原油価格の低迷で弊社も業績は良くない。もともとべったりの関係ではない」(広報)と素っ気ない。2位株主の三菱マテリアルも「石油は国際情勢の影響を大きく受けるし、先行きがどうなるか読みづらい」(首脳)と慎重だった。原油価格は昨年以降、復調気配にある。破綻後に社長に昇格した安井泰朗氏は、受注が増えていることを理由に再建への自信をにじませるが、シェールオイルの生産量が読み切れているわけではなく、原油価格が急落する恐れは残る。石油の調達先が多角化し、掘削への期待も高まってはいない。株主総会の終了後、別の男性株主は漏らした。「なかなかスポンサーが見つからないという事実は、この会社への期待感が薄いことを表している。技術を生かせる新たな仕事を探さないと生き残れない」

*13-2:http://qbiz.jp/article/138100/1/ (西日本新聞 2018年7月26日) 水素タウン再始動 東京五輪後の選手村で活用 北九州で実証実験開始
 北九州市とガス・エネルギー関連事業を展開する岩谷産業(大阪市)は、水素を活用したエネルギー供給の実証実験を7月から、「北九州水素タウン」(北九州市市八幡東区東田地区)で再開した。2020年の東京オリンピック・パラリンピック大会後の選手村地区で、東京都による水素エネルギー供給事業が本格始動することを受け、都市部で実証実験が可能な国内唯一の立地条件を生かし、実証実験に取り組む。北九州水素タウンは1・2キロのパイプラインを備える。実証実験では、パイプラインを使って水素漏れを検知するセンサーの開発に取り組み、既に住人が居住している東田地区の「水素燃料電池実証住宅」で、最新型の燃料電池の耐久性を検証するなどする。選手村地区でのエネルギー供給事業は、現地に水素ステーションを設置し、燃料電池バスや自動車に供給したり、住宅での発電に活用したりして、水素を生かした街づくりを進める。北九州水素タウンでは、2010〜14年度に新日鉄住金八幡製鉄所で発生した水素をパイプラインに流し、商業施設などに設置した燃料電池で発電する世界初の試みに取り組んだ経緯がある。市関係者は「東京五輪を契機に『環境都市』としての取り組みを世界にアピールし、水素ビジネスに取り組む企業に実証フィールドが北九州にあることを周知していきたい」と意気込む。

| 資源・エネルギー::2017.1~ | 11:39 AM | comments (x) | trackback (x) |
2018.1.15 新エネルギーと新技術 (2018年1月15、16、17、18、19、21、22、23、24、27、28、29日に追加あり)
 太陽 あけまして、おめでとうございます。今年も、よろしくお願いします。 

(1)即時脱原発の必要性
 経産省が原発新設の議論に着手し、東京電力は原子力事業を安定的に続けるため、国に経営環境の整備を求めているそうだ。しかし、原発ほど金のかかるエネルギーはなく、著しい公害を垂れ流した企業自身が責任を持たないビジネスは他にない。そのため、これでも目が覚めずに原発の再稼働や新設を進めるのであれば、ビジョンなき日本は世界の敗者になるという*1-2の見解に、私は、全く同感だ。エネルギー基本計画で、原発を「重要なベースロード電源」としている経産省の先見の明のなさこそが、日本経済の重大なリスクである。

 そのような中、*1-1のように、脱原発・自然エネルギー推進の民間団体「原発ゼロ・自然エネルギー推進連盟(原自連)」が、国内原発の即時廃止を目指す「原発ゼロ・自然エネルギー基本法案」の骨子を発表し、顧問の小泉元首相と同じく顧問の細川元首相が、国会内で記者会見された。私も、原自連会長で城南信用金庫顧問の吉原毅氏と同様、「自然エネルギーへの転換は経済界にとってもビジネスチャンスであり、テロで原発が狙われることもなくなる」と考える。さらに、日本国内で自然エネルギー技術を磨いておくことは、今後、東南アジア、アラビア、アフリカ諸国が、自由主義経済の中に新興プレイヤーとして参加してくる時に、売れるものができるという意味で重要である。

 なお、経団連の次期会長に内定した原発メーカー日立製作所の中西会長は、日立製作所が英国で進める原発事業に融資額1兆1千億円に対する債務保証(=問題が起こったら日本国民の税金を投入するということ)を日本政府からしてもらうため、「再稼働は必須」などと日本政府の言いなりになるだろう。しかし、日立は、みやぎ生活協同組合・宮城県富谷市と水素社会構築を推進する実験を行い、太陽光発電由来の電力で水を電気分解して水素を製造するサプライチェーン構築に向けた実証をするそうで、これは環境省の「平成29年度地域連携・低炭素水素技術実証事業」に採択されているのだ。つまり、エネルギーに関しては、過去と決別した選択と集中を行うべき時が来ているのである。

(2)持たざる人々にとっての太陽光発電とゼロエネルギー住宅



(図の説明:一番左のグラフのように、世界の太陽光発電導入量は自然な等比級数を描いて増加しているが、日本の太陽光発電導入量は自然でない低迷を続けており、恣意的に導入が抑えられていることがわかる。また、太陽光発電の発電コストも、他国と比較して2倍前後の高止まりで、日本の太陽光発電システムのコストはヨーロッパの1.8倍に近い。しかし、太陽光発電は、先進国だけでなく、電気が引かれていなかった地域でも容易に取り入れることができ、生活を一変させることができるものであるため、日本も決して疎かにすべきではない)



(図の説明:著しい省エネを実現する方法に地中熱を利用したヒートポンプがあり、これは世界で使用可能だ。そして、これは、住宅のみならず施設園芸《ハウス栽培》にも使うべきである)

 昼は太陽が照りつけ、夜は漆黒の闇が訪れていたタンザニアの農村地帯で、*1-3のように、日本で技術開発された太陽光発電とLEDが活躍し、住民の生活を変えた。次に新興国となる11億人の人口を擁するアフリカやインド北部のピパルガオン村で、大規模発電所を飛ばして太陽光発電等の自然エネルギーが使われるのは、これまで先進国と言われていた国を追い越す可能性さえ秘めている。しかし、日本も、既得権益者の妨害によって、これまで“持たざる国”だった地域よりも遅れるのは避けるべきである。

 なお、その気になれば、太陽光発電装置で充電したランタンを25円で貸し出すことができるのに、日本では太陽光発電による電力は高いと言われ続け、太陽光発電装置の価格が高止まりしているのは恣意的だろう。

 さらに、*1-4のように、アルジェリアは、東京大学の鯉沼客員教授らが提唱したサハラ砂漠の砂から生産した結晶シリコンを太陽電池パネルに利用して、日照の豊富な北アフリカで大規模な太陽光発電を展開する「サハラ・ソーラー・ブリーダー(SSB)」に軸足を移すそうだ。確かに、その国に豊富にある資源を使って開発するのが最も賢い。SSBには、アルジェリアの国営電気ガス公社傘下の関連企業など複数の現地企業が参加の意向を表明し、ドイツの関連企業や日米欧の金融機関が関心を寄せているそうだが、こういうベンチャー企業は将来性があるだろう。

 他に、日本の技術のうちインド・アラビア・アフリカ等で人気が出そうなのは、*1-5のゼロエネルギー住宅だ。これらの地域では、太陽光発電による電気エネルギーから家庭の消費量を引いても、エネルギー収支はゼロどころかプラスになると思われる。しかし、日本製は、ちょっといいと非常に高価なため、輸出では外国製に負けるのが問題だ。

(3)これまで持たなかった人々が選択するEV
 世界の自動車市場で新興国が台頭し、*2-1のように、インドの2017年の新車販売台数は401万台となってドイツを抜き、世界第4位に浮上したそうだ。これは、インドの人口が世界第2位の約13億4,000万人であることを考えれば当然で、インドの自動車保有台数は今後も増え続けるだろう。そして、2020年には日本も抜くとみられており、これらの国が大気汚染を引き起こす化石燃料車を使う選択肢はない。

 また、世界最大の中国市場も、2017年の新車販売台数が2,887万8,900台で電気自動車(EV)などの販売が約5割伸びたそうだが、中国もインドと同様に化石燃料車を使用する選択肢はない。ちなみに、2017年の世界全体の自動車販売台数は9,451万台で、中国・インドの2カ国で世界の1/3を占めるそうで、中国政府は、購入補助金・ナンバープレートの発給・メーカーへのEV販売の義務付けなどでEVを優遇して新エネルギー車を伸ばし、今後は、EVの購入者が充電切れを心配する「走行距離不安症」にならないよう、*2-2のとおり、2020年までにEV充電施設を480万カ所設置するそうだ。私は、駐車場に、デザインよく太陽光発電Roofを取り付けて、EVの充電施設と連結すれば、無料に近い安さでEVに充電できると考える。

 さらに、自動車先進国のアメリカでも、北米国際自動車ショー(通称デトロイトショー)で、*2-3のように、EV化・自動運転化の波がショーの雰囲気を変えつつあるそうだ。

 EVの「走行距離不安症」を煽った張本人の日本でも、*2-4のように、トヨタとマツダが設立したEVの基盤技術を開発する新会社にスズキ、スバル、ダイハツ、日野自動車の4社が参加し、各社の知見を共有して開発を加速しつつ、コストを抑えるそうだ。しかし、自動車のEV化は、1995年前後に夫の学会に同伴してインドに行き、当時のインドを見て私が経産省に提言したものであるため、海外勢の方が先行して今頃あせっていること自体がおかしく、その原因を改めなければ他の先進技術でも同じことが起こるのである。なお、*2-5のように、三菱自動車もEVを大幅に拡充することにしたのは、移動手段を徹底してEVか燃料電池に変更し、その動力を国産の自然再生可能エネルギー由来に変えるにあたって選択肢が増えるため良いことだ。

(4)電力自由化とエネルギー新時代



(図の説明:農業も太陽光発電とハイブリッドで収益を上げることができ、地域によっては風力発電も使えるだろう。風力発電を使う際は、3枚羽の大型発電機より、大型発電機と同等の力を出す小型で安価な製品を作るのがよく、これは理論的に可能だ)



(図の説明:九州大学は、一番左の図のように、輪の中を風が通ると強くなる風レンズ風車を開発した。真ん中の図のように、養殖場などに設置し、漁船も電動化して、漁業は発電とハイブリッドで収益を挙げられるようにすれば、いろいろな問題が同時に解決するだろう。なお、洋上風力発電も、コスト削減を行い、環境を考えながら行うべきであることは他と同じだ)

 日本でも、電力自由化により、誰でも電力を販売することができるようになったため、*3-1のように、久留米商工会議所の若手経営者が新電力会社「くるめエネルギー」を設立して、2018年春のサービス開始を目指しているそうだ。私も、大手電力会社に電気料金を払って資金が地域外に流れるよりも、市内の電力会社に電気料金を払って地域内で資金を循環させ、市の税収増に繋げた方が地域にとってよいに違いないと考える。また、商工会議所青年部なら、付随サービスに関する工夫にも長けていそうであるため、社長が「一番の目的は地方創生。各地の青年部からも注目されており、全国のモデルケースになりたい」と語っておられるのは楽しみだ。

 それでは、どうやって発電するのかと言えば、太陽光発電はもちろんのこと、*3-2のように、北九州市は、響灘地区に洋上風力発電の風車組み立てや専用積み出し岸壁などを整備する方針を固めたそうだ。しかし、私は、3枚羽の大型風車は効率が悪い上に景観を害するため、上の図のように、3枚羽の数倍のパワーが出る小型風車を開発した方が賢明だと考えている。また、魚や海苔の養殖施設に合わせて建設すれば、漁業者が船を電力船にして充電した上、ハイブリッドで収入を得ることが可能になるため、多くの問題が解決するだろう。

 しかし、*3-3、*3-4のように、日本では、経産省が「①同じ地域で複数の事業者が巨額の投資で送電線を作るのは社会全体として非効率なので、送配電事業は大手電力会社の独占が今後も続く」「②東日本と西日本をまたぐ送電は、電力の周波数が異なる」「③再生可能エネルギーの発電量の変動が・・・」などと言っている。しかし、②③のように、技術的にはすぐ解決できることを長期間解決しないのは、まさに①のように、大手電力会社の独占状態で甘えているからであり、独占や寡占など競争のない状態が経済を非効率にして悪影響を与えるというのは経済学の常識だ。日本の経産省はそんなことを知ってか知らずか(私は前者だと思うが)、日本経済の正常な発展を邪魔するので、困るわけである。

(5)伊方原発差止仮処分に関する広島高裁決定について
1)伊方原発差止仮処分
 広島高裁は、*4-1のとおり、四電に対し、周辺住民の人格権侵害に基づいて、2018年9月30日まで伊方原発3号機原子炉の運転差止を命じる仮処分決定を言い渡し、これは初めての高裁での原子炉運転停止を命ずる決定で意義深いそうだ。そして、この決定の根拠は、阿蘇の噴火は過去最大の噴火(約9万年前)規模を想定すべきで、その時は火砕流が伊方原発敷地に到達した可能性が小さいとは言えず、より小さな規模の噴火の際の降下物の層厚や大気中濃度の想定も過小評価であると認め、伊方原発の立地は不適であるとしている。

 また、この決定は、国民の人格権に基づき、国民を放射性物質の危険から守るという観点から司法の果たすべき役割を見据えてなされた画期的なものでもあり、ここで示された火砕流噴火に関する判断は九州、四国、北海道、東北の原子力施設に、降下火砕物に関する判断は、他の全ての原子力施設に当てはまるため、政府はこの決定を受けて速やかに原発を廃止して再生可能エネルギーを普及させ、これまで原発が立地してきた地域は原発に依存することなく自律的発展ができるように必要な支援を行うことを求めるとしており、私も全く同感だ。

 この決定に対しては、*4-2の東京新聞は、仮処分の効力が2018年9月末で切れることを指摘しつつ好意的であり、*4-3の西日本新聞は「九州にも警鐘鳴らす判断」としており、*4-4の南日本新聞(川内原発の地元)も「火山噴火は、九電川内原発の近隣住民も共通して抱く懸念材料だ」としており、*4-5の愛媛新聞は社説で「ある程度の安全で許されるといった、住民の不安に向き合わない乱暴な論理は決して容認できない」としている。

 それでも、*4-6で西日本新聞が記載しているように、九電玄海原発の再稼働を巡って、「神戸製鋼の製品データ改ざんがあっても玄海再稼働に問題はない」と九電社長が佐賀県知事に報告しているが、いくら細かな安全対策を積み重ねても、原発が事故を起こしたら終わりであることを、地元住民は忘れてはならない。

<脱原発と世界の潮流>
*1-1:http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201801/CK2018011102000129.html (東京新聞 2018年1月11日) 【政治】原発即時ゼロ法案 小泉元首相ら野党連携へ
 脱原発や自然エネルギーを推進する民間団体「原発ゼロ・自然エネルギー推進連盟(原自連)」は十日、国内原発の即時廃止を目指す「原発ゼロ・自然エネルギー基本法案」の骨子を発表した。国会内で記者会見した顧問の小泉純一郎元首相は「安倍政権で原発ゼロを進めるのは難しい」と断言し、他の勢力を結集し脱原発を進める意欲を強調した。同様の法案提出を目指す立憲民主党など野党も連携する意向で、国会内外で脱原発に向けた法案提出の機運が高まった。法案の「基本方針」には、運転中の原発を直ちに停止し、停止中の原発は今後一切稼働させないと明記。原発の新増設も認めず、核燃料サイクル事業からの撤退も盛り込んだ。今後は太陽光や風力などの自然エネルギーに全面転換し、二〇三〇年までに全電力の50%以上、五〇年までに100%を目標に掲げる。国には「責務」として、目標の達成に必要な措置を求めた。今後、各政党に法案への賛同を促し、二十二日に召集予定の通常国会への提出を目指す。脱原発を巡っては、立憲民主党が同様の法案提出を目指す。原自連は法案発表後、立憲民主幹部らと意見交換して連携を確認。今後、希望の党など野党各党との意見交換も予定する。安倍政権は原発再稼働を進めてきたが、東京電力福島第一原発事故から三月で七年を迎えるのを前に、政党と民間との間で脱原発を目指す連携が再び強まる。小泉氏は十日の会見で、「自民党には安倍晋三首相が(原発政策を)進めているから仕方ないなという議員が多いだけ。来るべき首相が原発ゼロを進める方針を出せば、がらっと変わる。野党がどう出るかだ」とも指摘し、自民党総裁選や国政選挙での原発政策の争点化に期待を寄せた。原自連会長で城南信用金庫顧問の吉原毅氏も会見で自然エネルギーへの転換に関して「経済界としても大ビジネスチャンス。テロで原発が狙われることもなくなる」と訴えた。原自連は昨年四月に発足し、二百以上の民間団体や企業などが加盟。十日の会見には小泉氏とともに顧問を務める細川護熙(もりひろ)元首相らも出席した。
◆経団連次期会長「再稼働は必須」
 国内の原発四十基のうち、現在稼働しているのは関西電力高浜原発3、4号機(福井県)と、九州電力川内(せんだい)原発1、2号機(鹿児島県)の計四基。政府は原発を「重要なベースロード電源」と位置付け、他の原発も再稼働させる方針。経済界も「再稼働は必須」と安倍政権に歩調を合わせる。稼働中とは別の十基について、原子力規制委員会が新規制基準に適合していると判断し、このうち関電大飯原発3、4号機(福井県)と九電玄海原発3、4号機(佐賀県)が三月以降に再稼働する見通し。一方、適合と判断された四国電力伊方原発3号機(愛媛県)については先月、広島高裁から今年九月末までの運転を禁じる仮処分命令が出された。伊方を含めて全国十四の原発を巡り、運転差し止めを求める訴訟が起こされている。菅義偉(すがよしひで)官房長官は十日の記者会見で「安全性の確認された原発のみ、地域の理解を得ながら再稼働を進める政府の一貫した方針は変わらない」と強調した。経団連の次期会長に内定した原発メーカー日立製作所の中西宏明会長も九日、再稼働は必須との考えを記者団に示した。

*1-2:https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20171216-00096494-playboyz-pol (Yahoo、週刊プレイボーイ 2017.12.16) 「原発の新設」で日本は世界の敗者になる──安倍政権と原子力ムラの呆れたやり口とは?
 国民に原発への根強い抵抗感があるなか、安倍政権が原発の新設に動き出したという。『週刊プレイボーイ』でコラム「古賀政経塾!!」を連載中の経済産業省元幹部官僚・古賀茂明氏が落胆する、安倍政権や原子力ムラのやり口とは――?
     * * *
 慌ただしい年の瀬に、目立たないが気になるニュースがふたつ流れた。ひとつは国の「エネルギー基本計画」見直しのなかで、「経産省が原発新設の議論に着手した」というニュース。もうひとつは「東京電力が原子力事業を今後も安定的に続けるため、国に経営環境整備を求めた」というニュースだ。まず原発新設のニュースについて。安倍政権は2014年に「エネルギー基本計画」を策定し、原発を国の「重要なベースロード電源」と位置づけた。それを前提に、翌15年には30年度の電源構成で、原発の比率20~22%を目指すことを決めた。この数字の意味することは原発の新・増設である。なぜか? 原発は運転期間40年で廃炉にするというのが基本原則だ。これを忠実に実行すると、30年の原発シェアは15%までに下がる。20~22%のシェアを死守するには、40年廃炉をやめて、古い原発をどんどん運転延長することが必要だが、安全対策などの費用がかさむので、延長できない原発も多く、どうしても原発の新・増設が必要となるのだ。ただ、国民に根強い抵抗感があるなかで原発の新設を言いだせば、内閣支持率が急落する恐れがある。そのため、安倍政権はこの議論を封印し、「原発を新設するのか?」と問われても「現時点では考えていない」などと、うやむやにやり過ごしてきた。そして、ふたつ目の東電のニュース。「経営環境整備を求めた」とは、つまり原発ビジネスで東電に赤字が出ないように様々な支援措置を講じてくれということだ。具体的には、固定価格買取制度や赤字補填(ほてん)制度のように絶対に損をしない仕組みや、事故を起こしたときの損害賠償を1兆円程度に抑えて、あとは国が責任を取る仕組みなどが考えられる。その財源はもちろん税金。とんでもない話だ。そもそも、発電コストが安いという理由から、原発は「重要なベースロード電源」に選ばれたはずだった。しかし、安全対策コストの増加などで、その神話は崩れ去っている。廃炉費用なども含めれば、原発の発電コストは火力などのほかの電源に比べると、逆に割高になっているというのが実情だ。本来なら、エネルギー基本計画見直しのプロセスで、原発を「重要なベースロード電源」から外すのが妥当なのだが、安倍政権も原子力ムラも、どうしても原発を維持したい。そこで「原発はベースロード電源を担う大切な存在だから、たとえコスト高でも国が税金を投入して守るべき」という倒錯した論理をひねり出し、東電に政府支援を要請させたというわけだ。このふたつのニュースは、安倍政権の支持率を下げる要因となる可能性が高い。だが、10月の総選挙で大勝し、安倍政権の基盤は再び強化された。しかも、19年の参院選まで2年間、国政選挙がない。今なら不人気政策を決めても選挙までに国民は忘れるーーおそらくそんな判断が働いたのだろう。原発から再生可能エネルギーへと急速にシフトする世界の潮流のなかで、いまだに原発にこだわる日本。ビジョンなき国家は没落する。このままだと日本は近い将来、世界のエネルギー産業市場で敗者になることは確実だ。安倍政権や原子力ムラのやり口には、本当に呆れ果てるばかりだ。
●古賀茂明(こが・しげあき)
1955年生まれ、長崎県出身。経済産業省の元官僚。霞が関の改革派のリーダーだったが、民主党政権と対立して11年に退官。新著は『日本中枢の狂謀』(講談社)。ウェブサイト『Synapse』にて動画「古賀茂明の時事・政策リテラシー向上ゼミ」を配信中

*1-3:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180103&ng=DGKKZO25284640S8A100C1MM8000 (日経新聞 2018.1.3) (2)持たざる11億人、市場に 技術と低価格の「光」
 昼は太陽が照りつけても、夜は漆黒の闇が訪れるタンザニアの農村地帯。ワッシャ(東京・台東)の秋田智司最高経営責任者(CEO)は充電した発光ダイオード(LED)ランタンを手に村々を回る。「ランタンの使い心地はどう?」。「生活が変わったよ。料金がもっと下がるとよいね」
●25円で貸し出し
 個人商店に設置した太陽光発電装置で充電したランタンを1泊2日で貸し出すレンタルの料金は500タンザニアシリング(約25円)。この地域の低所得者層の平均月収である60ドル(約6800円)でも何とか払える額だ。人々は明かりのほか、携帯電話の充電などに使う。低料金を実現したのはインターネットなどの技術を活用したからだ。太陽光発電には制御装置を付け、ネットを通じて発電量や充電回数を遠隔管理。使った電気代は商店からモバイル送金サービス「Mペサ」で受け取る。これまで150万人に電力を提供している。独シーメンスの創業者、ヴェルナー・フォン・ジーメンスが実用的な発電機を発明してから150年あまり。これまでの多くの技術と同様に電気も先進国から世界に広まってきた。だが現実には電気のない生活をする人が世界に11億人もいる。その“持たざる人たち”の状況が変わりつつある。ネットなど新技術を駆使し、新しい発想を取り入れ、商品やサービスの価格を大幅に低下。所得の低い新興国でも使いやすくすることで、これまで世界とつながっていなかった人たちも世界市場に入るようになった。インド北部のピパルガオン村で電力を供給するのはOMCパワーだ。小型太陽光装置が携帯電話の基地局に電力を供給。加えて周辺1~2キロメートルに住む住民にも一部電力を供給する。主力の基地局向けが安定しているため、近隣住民には電力料金を安く提供できる。「物理的な分散化とデジタル的な統合化が同時進行する新しいグローバリゼーションの動きが加速している」とボストン・コンサルティング・グループ(BCG)の木山聡パートナーはみる。電気だけではない。ネットを使えない人は40億人、金融サービスを利用できない成人は20億人いる。ケニアで生まれたMペサは携帯電話で送金できる利便性が受け、利用者は3千万人を超えた。欧州にも広がる。基礎インフラがないからこそ、困難を乗り越える技術が生まれ、これまでとは逆に先進国にも普及する。
●緑の革命めざす
 シンガポールの大手商社オラム・インターナショナルが目指すのは創業の地アフリカでの「緑の革命」。ガボンの農園でドローンを飛ばし、農作物の発育を監視するほか、ビッグデータを使って肥料散布などをアドバイスするIT支援を実施。食料自給率が低いアフリカを変え、世界の農業も変革するかもしれない。技術と低価格が灯(とも)す「光」。持たざる人が市場に加われば、世界の経済成長をけん引する大きな力になる。

*1-4:http://www.arsvi.com/i/2alg2012.htm#20120725 (日経ビジネス 2012年7月23日号) サハラで発電、日本が存在感
 サハラ砂漠の再生可能エネルギー計画が転機を迎えている。アルジェリアは、日本提唱の太陽光発電構想に軸足を移す。砂漠の砂から太陽電池用のシリコンを作る技術に注目した。
「国力のある我々は、自由にパートナーを選べる立場にある。デザーテックのようなプロジェクトに加わるには細心の注意が必要だ。歴史的な軋轢がなく、技術力を持つ日本と協力したいというのが国内の共通認識だ」。こう明言するのは、シド・アリ・ケトランジ駐日アルジェリア大使だ。デザーテックは、欧州が提唱する巨大な再生可能エネルギープロジェクト。アフリカの砂漠地帯に太陽熱や風力による大規模な発電施設を建設し、欧州など近隣地域の電力需要を賄おうとする壮大な構想だ。2050年までの総投資額は40兆円とも言われる。国土の大半がサハラ砂漠で石油、ガスなどの資源に恵まれるアルジェリアは、立地的にも財源的にもデザーテック構想の“カギ”を握る。そのアルジェリアが現在高い関心を寄せるのが、東京大学の鯉沼秀臣客員教授らが提唱した太陽光発電計画「サハラ・ソーラー・ブリーダー(SSB)」だ。SSBは、サハラ砂漠に無尽蔵に存在する砂から生産した結晶シリコンを太陽電池パネルに利用し、日照の豊富な北アフリカ地域で大規模な太陽光発電所を展開する構想。将来的には、超電導ケーブルを使って欧州など周辺国に送電することも視野に入れている。最大の売りは、太陽電池用のシリコンを潤沢に確保できることなどから、低コストでの発電が可能になることだ。アルジェリアにとっては、材料やプラントなど関連産業への波及効果が大きいという利点もある。日本からは東大などが研究チームに参加し、2010年から科学技術振興機構(JST)と国際協力機構(JICA)が資金助成を始めた。アルジェリアは現在、オラン工科大学など3拠点でSSB向けに1000平方メートル級の実験施設を建設中だ。砂に含まれるシリコン成分を高純度化する実験も始めた。SSBには、アルジェリアの国営電気ガス公社傘下の関連企業など複数の現地企業が参加の意向を表明。ドイツの太陽電池関連企業や、日米欧の金融機関も関心を寄せている。
●周辺国でも高まる関心
 アルジェリアは、民間や海外の資金を合わせ、2030年までに再エネ関連に10兆円弱を投じる計画。だが、独シーメンスなど欧州が旗を振るデザーテックに対しては、資金拠出だけを担わされかねないとの警戒感が根強く、不参加の方針だ。一方、SSBで日本と組めば、アルジェリアはシリコンの精製技術や太陽電池パネルの生産技術などを導入できるとの思惑がある。同国の世論も変わりつつある。今年5月、現地の有力紙リベルテは、「SSBがデザーテックに取って代わる」と題した記事を掲載。「デザーテックを拒否した我が国の関心は、日本との共同プロジェクトであるSSBに向かっている」と論じた。「太陽熱」から「太陽光」に軸足を移す流れは、アルジェリアに限らない。アフリカ諸国では先進国の協力で多くの太陽熱発電事業が動いているが、技術やコストの面で予想以上に問題が多く、壁にぶつかっている。SSBの関係者は「(日本と共同で太陽熱発電を展開する)チュニジアでもSSBへの切り替えを探る動きがあるほか、エジプトやモロッコでも関心が高い」と話す。ただ、SSBにも課題はある。アルジェリアは、シリコン生産から太陽電池の製造まで一貫して手がけるため、日本の大手プラント会社やシリコンメーカーに協力を要請中。しかし、今のところ日本企業の参加意欲は高まっていないようだ。民間の資金や技術を呼び込めるかどうかが、砂漠の一大構想の成否を分けそうだ。

*1-5:https://www.nikkei.com/article/DGKKZO09713420Y6A111C1L31000/ (日経新聞 2016/11/19) ゼロエネルギー住宅(ZEH)とは
▼ゼロエネルギー住宅(ZEH) 家庭のエネルギー消費量から太陽光パネルなどで発電したエネルギーを差し引き、エネルギー収支を実質ゼロにした住宅。断熱性の高い窓や壁などの外皮性能を高めることで省エネ化を実現する。屋根の面積が狭いなど制約のある場合に実質ゼロに近づけた住宅は「ニアリーZEH」と呼ばれる。政府は20年までに新築住宅の半数以上をZEHとする目標を掲げる。

<EV>
*2-1:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO25570090R10C18A1MM8000/?n_cid=NMAIL006 (日経新聞 2018/1/11) インド車市場、独を抜き中米日に次ぐ 17年400万台
 世界の自動車市場で新興国が台頭している。インドの2017年の新車販売台数は401万台となり、ドイツを抜き世界4位に浮上した。20年にも日本を抜くとみられる。世界最大の中国市場では17年、電気自動車(EV)などの販売が約5割伸びた。新興国の自動車市場は台数増加だけでなく技術革新でも世界の主戦場となりつつある。インド自動車工業会(SIAM)が11日発表した17年12月の販売は前年同月比14%増の32万2074台だった。17年通年は前年比10%増の約401万台となり過去最高を更新した。インドの人口は世界2位の約13億4000万人で若年層比率も高い。英IHSマークイットの予想ではインド市場は今後も年率1割近い成長が続き、20年にも日本を抜き世界3位に浮上する。インドの自動車市場は10年で2倍になった。背景には経済成長に伴う所得の拡大がある。世界銀行によるとインドの16年の1人当たり国内総生産(GDP)は約1700ドルで07年(約1020ドル)に比べ7割増えた。中国で車の需要が爆発的に伸びたのは1人当たりGDPが3000ドルを超えてから。インドは3000ドルに満たないものの、農村部を中心に増えている初めて車を買う層が全体の約3割を占めるとされる。全体の8割を占める乗用車では、最大手マルチ・スズキが前年比15%増の160万台超となりシェアは49.6%と前年より2.6ポイント高まった。インドでは14年のモディ政権発足以来、16年度(16年4月~17年3月)まで実質GDPは7%台の高成長が続いた。17年度は新税導入の影響などで5~6%台の成長率にとどまったが、18年度は成長率が高まるとの見方が強い。インフレ率も足元で1~4%台の低水準で推移しており消費者の購買力が高まっている。ただ道路の整備が追いつかず首都ニューデリーなどでは渋滞が慢性化している。今後の成長にはインフラの整備が課題になる。一方、中国汽車工業協会は11日、17年の新車販売台数が前年比3.0%増の2887万8900台だったと発表した。英IHSマークイットの予想では17年の世界全体の販売台数は9451万台。中印2カ国で世界販売の3分の1を占める。中国ではEVを中心とする新エネルギー車が53.3%増の77万7千台と大きく伸びた。北京や上海などの大都市が渋滞緩和のためにナンバープレートの発給制限を強化しており、ナンバープレートを取得しやすい新エネ車の購入に向かう消費者が多い。購入補助金もプラスに働く。新エネ車で中国1位の比亜迪(BYD)のEV「e5」は北京で価格の3割に相当する補助金を得られる。中国政府は19年から一定比率の新エネ車の製造・販売をメーカーに義務付ける制度を導入し、20年に200万台の販売を計画する。日米欧の自動車メーカーが相次いで中国でのEV投入計画を発表しており、需要拡大を見込んで現地の車載電池メーカーによる開発や増産の投資が活発になっている。

*2-2:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO24215740U7A201C1000000/ (Financial Times、日経新聞 2017/12/4) 中国、20年までにEV充電施設480万カ所設置
 中国政府は、電気自動車(EV)の購入者がEVの充電切れを心配する「走行距離不安症」にならないようにするため、2020年までに車両数に見合った充電ステーションを設置する。中国は20年までに480万の充電設備や充電ステーションを設置する予定。中国国務院(政府)は先月、巨額の投資を行うことを改めて表明した。平安証券のアナリストは、この計画を達成するには総額1240億元(約2兆1000億円)の投資が必要となり、その全てでなくても大半を国の財源に頼ることになると話す。これはキプロスの国内総生産(GDP)にほぼ匹敵する。中国の充電設備・充電ステーションの数は9月末時点で19万ほどで、これでも世界のどの国よりも多いが、3年後の目標設置数に比べればほんのわずかでしかない。米国には4万4000の充電設備と1万6000の充電ステーションが設置されている。十分な数の充電ステーションを設置することは、EVの購買意欲を高めるカギと考えられている。EVは「中国製造2025」として知られる産業振興策の柱でもある。中国はEVを含む10のハイテク経済部門を指定し、それらの部門で25年までに世界市場を支配するか、市場の中心的存在になることを目指している。米ゴールドマン・サックスによると、中国は16年に世界のEVの45%を生産したが、30年までにその比率を60%に拡大するとみられている。
■ハイブリッド車に充電せず
 中国では今年、政府が車1台あたり最大6万元という多額の補助金を支給していることが寄与してEVの販売が急速に伸びているが、今後は補助金の引き下げが予想される。EV購入を検討する際の懸念事項として消費者から最も多く聞かれるのが、走行途中で充電切れになってしまうことへの不安だ。米コンサルティング会社アリックスパートナーズの関係者は、出身地の上海では多くの人々がバッテリーとエンジンの両方で走るハイブリッド車を買っているが、購入者が充電することはめったにないと話す。上海ではEVを購入すると補助金が得られ、ナンバープレートも無料で入手できるが、エンジン車の場合はこれが制限される。また、この関係者は「ハイブリッド車を持つほとんどの人が実際には従来のエンジンで走っている」とした上で、「上海でもまだ充電ステーションを探すのに苦労する。個人で駐車スペースかガレージを確保し、充電設備を自分で設置しなければならない状況だ」と話した。(2017年12月4日付 英フィナンシャル・タイムズ紙 https://www.ft.com/)

*2-3:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO25667900U8A110C1000000/ (日経新聞 2018/1/14) 「大型車の祭典」にも自動運転の波 北米自動車ショー
 15日に本格的な開幕を控える北米国際自動車ショー(通称デトロイトショー)でプレス発表会が米ゼネラル・モーターズ(GM)を先陣に始まった。自動車メーカーは通常、年初の世界最大の家電見本市CESで自動運転などの近未来技術、長期のサービス戦略を発表し、その翌週のデトロイトショーでは北米市場向けの大型車やスポーツ車のコンセプトモデルなど直近の戦略を発表する。だが、EV・自動運転化の波がショーの雰囲気を変えつつある。米ゼネラル・モーターズのメアリー・バーラCEOは13日、「2019年にハンドルのない自動車を出すことは完全自動運転への大きな一歩になる」と述べた。米ミシガン州デトロイト市で国際自動車ショーが開幕するのに先立ち、報道陣に語った。

*2-4:http://qbiz.jp/article/125498/1/ (西日本新聞 2017年12月31日) トヨタEV新会社に4社が参加 スズキ、スバルなど
 トヨタ自動車とマツダなどが設立した電気自動車(EV)の基盤技術を開発する新会社に、スズキとSUBARU(スバル)、トヨタグループのダイハツ工業、日野自動車の計4社が参加を決めたことが31日、分かった。各社の知見を共有して開発を加速し、コストも抑える狙い。EVで先行する海外勢に対抗する。4社は2018年1月以降に各5人程度を派遣し、新会社の技術者は計約60人となる。4社は当面出資せず、開発状況によって資本参加を検討するという。新会社にはトヨタが90%、マツダとトヨタグループの自動車部品大手デンソーが5%ずつ出資している。スズキとダイハツは小型車、スバルは中型車が主力。日野は商用車を手掛けている。新会社は幅広い車種に活用できる技術開発を図る。新会社はEVの車体の基本骨格や制御システムなどを20年ごろに確立することを目指しており、各社がそれぞれ市販車に応用する。

*2-5:http://qbiz.jp/article/125509/1/ (西日本新聞 2018年1月2日) 三菱自動車、EVを大幅拡充へ SUVや小型車、世界展開
 三菱自動車が電気自動車(EV)を大幅拡充する方針を固めたことが2日分かった。2020年以降に発売することを既に決定している軽自動車とスポーツタイプ多目的車(SUV)「RVR」の2車種に加え、別のSUVや小型車のEV発売を検討。中国や東南アジアでも売り出し、電動車両を世界で展開する。三菱自は09年、他社に先駆けてEVの軽自動車「アイ・ミーブ」の量産を始め、電動車両で先行している。欧州や中国をはじめ各国で環境規制が強まっている状況を踏まえ、EVやプラグインハイブリッド車(PHV)の車種を増やす。同社幹部は、各国の環境規制への対応には「EVが2車種では足りない」と指摘した。大型車はEVにすると大量の電池が必要になり価格も高くなるため、小型で短距離の移動に適した車両を中心に拡大する方向だ。三菱自は日本や欧州、米国で既に電動車両を販売している。成長が見込まれる中国にはEVを2車種以上投入し、東南アジアではPHVやEVを売り出す。時期は未定だが、できるだけ早期に発売したい考えだ。企業連合を組む日産自動車やルノーとの協力も広げ、EVの性能向上の鍵を握る電池開発などでも連携する。

<電力自由化と電力新時代>
*3-1:http://qbiz.jp/article/125592/1/ (西日本新聞 2018年1月5日) 電力新時代:電力で久留米を活性化 若手経営者ら結集し新会社 収益の一部で公園や防犯整備
 福岡県久留米市の久留米商工会議所青年部の若手経営者たちが、新電力会社「くるめエネルギー」(安丸真一社長)を設立、2018年春のサービス開始を目指している。地域活性化の観点から、収益の一部をインフラ整備に充てたり、契約者に還元したりする「地域還元型」経営が特徴。商議所青年部を母体とする新電力は全国初という。くるめエネルギーは、青年部の有志14社が共同出資して17年6月に設立。九州電力や卸電力市場から安価な電力を仕入れ、市内の一般家庭や事業所に、九電より2〜5%安く提供する。久留米市内で支出される電力料金は年200億〜250億円で、多くが九電や大手の新電力に支払われているという。くるめエネルギーに契約を切り替えることで「流出していたお金を市内で循環させ、市の税収増にもつなげたい」(安丸社長)との狙いがある。年明けから、市内の事業所を対象に小口の出資を募集。飲食店や宿泊施設といった出資事業所を利用した電力契約者が、割引などを受けられるサービスを展開する。出資事業所の負担にならないよう、サービス分は同社が広告費などの形で穴埋めするという。収益を公園や街灯、防犯カメラなどのインフラ整備に充てるほか、電力使用状況を活用した高齢者見守りサービスの計画もある。1年目の契約目標は、工場やオフィスなど消費電力が多い「高圧」200件、主に家庭、商店向けの「低圧」2千件。安丸社長は「一番の目的は地方創生。各地の青年部からも注目されており、全国のモデルケースになりたい」と語った。

*3-2:http://qbiz.jp/article/125593/1/ (西日本新聞 2018年1月5日)電力新時代:北九州市を洋上風力の製造・搬出拠点に 響灘地区に基地港湾整備 アジア初、海外市場視野
 北九州市が響灘地区(若松区)に、洋上風力発電の風車の組み立てや専用の積み出し岸壁などを整備する方針を固めたことが分かった。2021年度までの完成を目指す。洋上風力発電に特化した「基地港湾」はアジアで初めてで、市は製鉄や自動車に次ぐ北九州の主力産業に育てたい考え。欧州で先行している洋上風力発電はアジアでも普及が見込まれ、韓国や台湾などの海外市場もにらみながら整備を急ぐ。市によると、約40ヘクタールの用地を埋め立て中で、工事は18年度末に完了する。その後、発電事業者や部材メーカーなどの意見を踏まえ、100メートルを超える部材を置く保管場▽数百トンの重みに耐えられる組み立て作業場▽風車を洋上に設置する特殊作業船が横付けできる岸壁−などを整備する。隣接地に関連企業の事業用地も用意する方針。欧州で主力の出力5千キロワットの風車は羽根を含めた全長が約150メートルで、本体と羽根、発電機を合わせた総重量は千トンを超える。風車は陸上で組み立ててから洋上に運ぶため、海に近い場所に広い用地が必要になる。響灘地区には、風車の部材メーカー「日本ロバロ」(東京)やメンテナンス会社「北拓」(北海道)が既に進出。市は特殊作業船を持つ建設会社の誘致に向けて交渉を進めており、風力発電の製造から国内外への搬出までを一貫して担う拠点化を目指す。響灘の洋上では、九州電力子会社の九電みらいエナジーなどが、5千キロワットの風車を最大44基設置する事業に近く着手する予定もある。国内の風力発電の総出力は17年3月時点で、計画段階を含め1410万キロワット。市は、30年に国内のエネルギー需要の5%に当たる2930万キロワットが風力で賄われ、うち4割近い1040万キロワット(5千キロワットの設備で2080基)が洋上機になると見込み、全国に先駆けて「基地港湾」の整備に乗り出す。洋上風力発電の部品は自動車並みの2万〜3万点あり、産業としての裾野が広く、市は「地元企業が持つ技術が生かせ、波及効果も大きい」とメリットを強調している。

*3-3:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20171222&ng=DGKKZO24945640S7A221C1EA2000 (日経新聞 2017.12.22)電力自由化 送配電は大手独占続く
▽…大手電力会社が地域独占していた電力制度を見直し、新規参入者などが自由に発電したり電力を売ったりするようにすること。国際水準から比較して割高だった日本の電力料金の低下などをめざし、政府は1990年代半ばから段階的に自由化を進めてきた。発電事業への参入は95年に認めた。▽…小売事業は2000年から工場など大規模な需要家への販売を対象に解禁。16年4月には家庭向けの販売にも広がり、全面自由化した。現在は発電事業には約600社・団体、小売事業には約450社・団体が参入している。一方、電力を需要家に届ける送配電事業は電力大手の独占が今後も続く。同じ地域で複数の事業者が巨額の投資で送電線を作るのは社会全体として非効率だからだ。▽…東日本と西日本をまたぐ送電は、電力の周波数が異なるため変換装置を通す必要がある。東日本大震災の際は装置の容量不足で送電が滞ったが、設備増強が進んでいる。再生可能エネルギーの発電量の変動を補う電力は災害時より少なく、融通に支障はない。

*3-4:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180109&ng=DGKKZO25434160Y8A100C1NN1000 (2018.1.9) 電力融通へ新市場、地域越え入札可能 経産省、20年度開設めざす
 電力会社が送配電の際、需給に応じて必要な予備の電力を融通し合える新市場をつくる。大手電力が地域ごとに入札で購入していたが、全国から入札で安く買えるようにする。東京電力ホールディングスなど大手4社が連携を決めており、経済産業省は基盤となる市場整備を後押しし、他の電力大手を含む連携拡大を促す。2020年度の開設をめざしている。地域を越えた電力融通を巡っては、東電、関西電力、中部電力、北陸電力が大筋で合意済み。新市場づくりには、この4社に加え他の大手6社も参画する方向で調整している。沖縄電力は地理的に融通できないため、経産省は最終的に9社に連携が拡大することをめざす。電力会社が送配電をする際、需給の変動によって送る電力の品質にあたる「周波数」にぶれが生じる。質の良い電気を維持するには周波数を安定させる必要があり、ぶれを調整するために予備の電力を使っている。いまは大手電力が域内で個別に入札を実施し、自前の電源(発電)会社や新規参入の事業者(新電力)などから調達している。政府はエネルギー基本計画で、再生可能エネルギーの導入拡大をめざしている。16年度に発電量全体の15%程度だった比率を30年度に22~24%に高める計画。時間帯や天候で発電量が変動しやすい太陽光や風力発電の普及が進めば、予備電力の必要性が高まる。経産省は電力会社が相互に融通できる市場をつくり、再生エネ事業拡大の基盤整備にもつなげる。新設する「需給調整市場」では、例えば関電が管内で電力の必要性が高まれば、管内か管外かに関係なく価格などの条件が良い会社から予備電力を調達できるようになる。他の大手だけでなく新電力からも調達できる。全国的な入札で安く調達できれば、購入者側のコスト削減につながる。市場で融通できる予備電力の種類や量は段階的に増やしていく。市場の運営は電力会社が主体的に担うしくみを検討。代表会社を選び、システムの整備を始める。システムの仕様やどういった種類の予備電力を扱うかなど市場運営の詳細については、国が関与する電力広域的運営推進機関などに逐次報告しながら、協議を進める。同機関は市場開設後に運用を点検する役割も担う。これまで必要な予備電力の把握や、それに応じた調達を細かく決める機能は、大手電力会社の「中央給電指令所」と呼ばれる司令塔が地域ごとに担ってきた。経産省は市場を通じて、瞬時に全国的に需給を調整できる体制の構築をめざす。送配電事業の連携をテコに、大手各社に他の事業での協力拡大も促す。

<伊方原発差止仮処分広島高裁決定>
*4-1:https://www.nichibenren.or.jp/activity/document/statement/year/2017/171213.html (2017年12月13日 日本弁護士連合会会長 中本和洋) 伊方原発差止仮処分広島高裁決定に対する会長声明
 本日、広島高等裁判所は、四国電力株式会社に対し、伊方原子力発電所(以下「伊方原発」という。)3号機の原子炉について、周辺住民の人格権侵害に基づき、運転の差止めを命じる仮処分決定を言い渡した。
これまで、福井地方裁判所が、2014年5月に大飯原子力発電所3、4号機の運転差止めを命じる判決を言い渡し、2015年4月には高浜原子力発電所(以下「高浜原発」という。)3、4号機の運転差止めを命じる仮処分決定を言い渡した。また、大津地方裁判所でも2016年3月に高浜原発3、4号機の運転差止めを命じる仮処分決定を言い渡している。これらはいずれも地方裁判所での判決・決定であり、今回、初めて高等裁判所において仮処分の請求を認容し、2018年9月30日まで原子炉の運転の停止を命ずる決定を言い渡したことは、極めて意義のあることである。今回の決定は、原子力規制委員会の定めた火山ガイドの評価手順に従い、伊方原発から130キロに位置する阿蘇カルデラについて原子炉の運用期間中に火山の活動性が十分小さいと判断することはできず、噴火規模を推定することもできないから、過去最大の阿蘇4噴火(約9万年前)の噴火規模(火山噴火指数7)を想定すべきで、阿蘇4噴火時の火砕流が伊方原発敷地に到達した可能性が十分小さいと評価することはできないから、伊方原発の立地は不適であると判断したものである。同様の事実は、川内原子力発電所に関する福岡高等裁判所宮崎支部決定(2016年4月6日)や、本決定の原決定である広島地方裁判所決定(2017年3月30日)においても認定されていたが、原子力発電所(以下「原発」という。)の運用期間中に破局噴火が発生する可能性が示されない限り、これを停止させることは社会通念に反すると判断して、住民の請求を認めなかった。しかし、本決定は、原子力規制委員会が最新の科学技術的知見に基づいて定めた火山ガイドが考慮すべきと定めた自然災害について、社会通念を根拠に限定解釈をして、判断基準の枠組みを変えることは、原子炉等規制法及びその委任を受けて制定された新規制基準の趣旨に反すると判断した。さらに、火砕流噴火よりも小さい規模の噴火の際の降下火砕物の層厚と、大気中濃度の想定も過小評価であると認め、運転の差止めを認めたものである。本決定は、国民の生存を基礎とする人格権に基づき、国民を放射性物質の危険から守るという観点から、司法の果たすべき役割を見据えてなされた、画期的決定であり、ここで示された火砕流噴火に関する判断は九州、四国、北海道、東北の原子力施設に、降下火砕物に関する判断は、他の全ての原子力施設に当てはまる。当連合会は、2013年の人権擁護大会において、いまだに福島第一原発事故の原因が解明されておらず、同事故のような事態の再発を防止する目処が立っていないこと等から、原子力発電所の再稼働を認めず、速やかに廃止すること等を内容とする決議を採択している。本決定は、この当連合会の見解と基本的認識を共通にするものであり、高く評価する。当連合会は、四国電力株式会社に対し、本決定を尊重することを求めるとともに、政府に対して、本決定を受けて従来のエネルギー政策を改め、できる限り速やかに原発を廃止し、再生可能エネルギーを飛躍的に普及させ、これまで原発が立地してきた地域が原発に依存することなく自律的発展ができるよう、必要な支援を行うことを求めるものである。

*4-2:http://genpatsu.tokyo-np.co.jp/page/detail/631 (東京新聞 2017年12月14日) 伊方3号に高裁が停止命令 「阿蘇噴火、火砕流の危険」 広島地裁判断を覆す
 四国電力伊方原発3号機(愛媛県伊方町)の運転差し止めを求め、広島市の住民らが申し立てた仮処分の抗告審で、広島高裁は13日、運転を差し止める決定をした。直ちに効力を持ち、対象期間は来年9月30日まで。3号機は定期検査中で、四国電が来年1月に稼働を再開する計画は事実上不可能となり、政府や電力会社の原発再稼働方針には再び大きな打撃となった。
●解説/巨大リスクに重い判断 火山以外にもリスク山積の伊方原発
 原発が高温の火砕流に巻き込まれればたちまち危機に陥り、想定以上に火山灰が積もれば非常用設備や事故収束作業にも大きな支障が出る。ひとたび原発で重大事故が起きれば、その被害は広範囲かつ長期間にわたる。広島高裁が原発の巨大な潜在リスクに向き合い、来年九月末までの期間限定ながら四国電力伊方原発3号機の再稼働にストップをかけた。新規制基準「適合」と判断し、再稼働を認めた原子力規制委員会にも「不合理」を突きつけた。伊方原発が抱えるリスクは火山ばかりではない。日本一細長いとされる佐田岬半島を分断する立地そのものがリスクだ。切り立った崖に囲まれた半島だけに、原発敷地は狭く、四国電は非常用資材の置き場に苦労し、対策拠点も新基準を満たすぎりぎりのスペース。万一の際、応援を送ろうにも国道から原発へは急傾斜地で、拡幅工事中の県道はいまだ狭い地点が残る。半島各地の集落を訪ねたが、尾根筋の国道からは、もろい岩肌の細い山道しか通じていない集落が多かった。漁師からは「地震と原発事故が同時に起きたら、取り残されるだろう」との声が聞かれた。そんな状況は置き去りのままだ。
●今後の展開は?
 広島高裁は、四国電力伊方原発3号機の運転禁止の仮処分決定の効力を来年9月30日までと区切った。今後どのような展開が予想されるのでしょうか。四国電力は近く、同高裁に異議を申し立てると同時に、仮処分の執行停止も求める方針。今回の判断を決めた野々上友之(ののうえ・ともゆき)裁判長は今月下旬に定年退官となり、別の裁判長が審理する見通しだ。異議が認められない場合、四国電は最高裁まで争う機会がある。運転禁止の仮処分を勝ち取った住民たちは、運転差し止め訴訟も広島地裁に起こしている。仮処分の効力が続いている間に、地裁でどんな判決が出ても、判決が確定しない間は原則として仮処分の効力は続く。この間、四国電は伊方3号機を再稼働できない。しかし四国電力が勝訴した場合、「仮処分の決定時とは事情が変わった」ことを理由に、広島高裁に仮処分の取り消しを求めることができる。いずれにしても、仮処分の効力は来年9月末で切れる。その後、住民側が引き続き運転禁止の司法の命令を得たい場合は、あらためて地裁に仮処分を申し立てることになる。

*4-3:https://www.nishinippon.co.jp/nnp/syasetu/article/380222/ (西日本新聞 2017年12月14日) 伊方原発差し止め 九州にも警鐘鳴らす判断
 数多くの活火山を擁する火山国に立地する原発の安全性を、厳しく問う司法判断といえよう。
四国電力伊方原発3号機(愛媛県伊方町)の運転差し止めを求めて、広島市の住民らが申し立てた仮処分の即時抗告審で、広島高裁が申し立てを却下した広島地裁の決定を覆し、来年9月30日まで運転を差し止める決定をした。定期検査中の伊方3号機は現在停止中で、来年1月の運転再開に影響が出るのは必至の情勢だ。四国電は高裁に異議申し立ての手続きを取る方針という。東京電力の福島第1原発事故後、仮処分で原発を止める司法判断は3件目だが、高裁段階では今回が初めてだ。他の原発訴訟にも影響を与えるだろう。抗告審では、福島原発事故後に原子力規制委員会が策定した新規制基準や地震、火山噴火時の影響などが主な争点になった。決定理由で特筆すべきは、規制委が火山の危険性について新規制基準に適合するとした判断を不合理とした点だ。原発が熊本県・阿蘇山から約130キロの距離にある点を重視し、大規模噴火が起きた際に「火砕流が到達する可能性が小さいとは評価できず、立地には適さない」と判断した。阿蘇や桜島などの活火山を抱え、九州電力玄海原発(佐賀県玄海町)と同川内原発(鹿児島県薩摩川内市)が立地する九州にも、改めて警鐘を鳴らした形だ。原発立地自治体以外の住民による差し止め請求を認めた点にも注目したい。高裁は伊方原発で重大事故が起きれば、広島市など海を挟んだ近隣の市民も放射性物質によって生命身体に重大な被害を受ける恐れがあると結論付けた。ひとたび福島原発のような重大事故が起きれば、その被害は想定を超えて広範囲に及ぶことを私たちは思い知らされた。原発周辺に暮らす人々の懸念や不安に応える住民目線の判断ともいえよう。政府や電力会社は今回の広島高裁決定を真摯(しんし)に受け止め、火山噴火に対する原発の安全対策についてもさらなる充実を図るべきだ。

*4-4:http://373news.com/_column/syasetu.php?storyid=89073 (南日本新聞 2017年12月14日) [伊方差し止め] 火山を巡る議論に一石
 東京電力福島第1原発事故後、原発の再稼働や運転を禁じる高裁段階の判断は初めてである。四国電力と政府は、上級審の決定を重く受け止めるべきだ。四国電力伊方原発3号機(愛媛県伊方町)の運転差し止めを求め、広島市の住民らが申し立てた仮処分の即時抗告審で広島高裁は、運転を差し止める決定をした。期間は来年9月30日までで、現在定期検査中の3号機が来年1月に再開する計画は、事実上不可能となった。福島原発事故の原因解明が十分とは言えない中、住民の不安を受け止め、原発再稼働に前のめりな政府の方針にも疑問を突きつけた司法判断といえる。注目は、火山と原発の立地を巡る議論に一石を投じたことだ。野々上友之裁判長は、熊本県・阿蘇カルデラで大規模噴火が起きた際に約130キロの距離にあることを重視し「火砕流が到達する可能性が小さいとは評価できず、立地には適さない」と判断した。その上で、原子力規制委員会が新規制基準に適合するとしたのは不合理で「住民らの生命、身体に対する具体的な危険の恐れが推定される」と結論づけた。火山以外は新基準や規制委の適合性判断に合理性があるとした。火山噴火は、九州電力川内原発の近隣住民も共通して抱く懸念材料である。高裁は、原発の火山対策について規制委に再考を求めたといえよう。伊方3号機の運転差し止めを求める仮処分の申し立ては、立地する愛媛県にとどまらず、広島、大分、山口県にも広がった。背景にあるのは、稼働中の関西電力高浜3、4号機を停止させた大津地裁決定だ。その後、大阪高裁で取り消されたが、広域被害の恐れを指摘したことで、立地県外の住民の主張でも認められることが広く知られた。福島原発事故を顧みれば、広い地域の住民が事故時の影響を心配する声を上げるのは当然だろう。伊方原発周辺では、南海トラフ巨大地震や、長大な活断層「中央構造線断層帯」が近くを通っていることを懸念する声もある。さらに、細長い半島の付け根に原発が立地し、事故時の避難計画の実効性への不安も根強い。松山地裁の却下決定を受けた高松高裁の即時抗告審と大分地裁、山口地裁岩国支部が今後どんな決定を下すか、注目される。四国電は広島高裁に異議申し立ての手続きを取る方針だ。だが、決定を軽視することなく、住民の疑念とあらためて誠実に向き合うところから始めるべきだ。

*4-5:https://www.ehime-np.co.jp/article/news201712148763 (愛媛新聞社説 2017年12月14日) 伊方3号機差し止め 噴火の危険重視した司法の警告
 危険性の評価に不十分な点がある限り、原発を動かしてはならない―。高裁の全国初の差し止め決定が発した「警告」は、極めて重い。松山市と広島市の住民が四国電力伊方原発3号機の運転差し止めを求めた仮処分申請の即時抗告審で、広島高裁は火山の及ぼす危険性を重く見て、運転を差し止める決定をした。3月の広島地裁決定は、原発には「極めて高度な安全性」は求められておらず、最新の科学的知見を基にした災害予測で安全を確保すれば「社会が容認する」とした。ある程度の安全で許されるといった、住民の不安に向き合わない乱暴な論理は決して容認できない。7月の松山地裁決定でもその論を踏襲、司法の独立性が危惧されていた。流れを変え、命を守る司法の責務を果たす決定を評価する。判断の焦点は、火山の危険性だった。野々上友之裁判長は、熊本県・阿蘇カルデラで大規模噴火が起きた際に「火砕流が到達する可能性が小さいとは評価できず、立地には適さない」と判断。四電の想定を過小と指摘し「原子力規制委員会の判断は不合理」で「住民らの生命、身体に対する具体的な危険の恐れが推定される」と断じた。規制委の火山影響評価が不合理だという点については、昨年の九州電力川内1、2号機差し止め仮処分を巡る福岡高裁宮崎支部の決定でも示されていた。火山灰が及ぼす危険についても九電玄海3、4号機など各地の原発で指摘されている。安全性が立証されない以上、運転を差し止めると踏み込んだことで、他の原発にも多大な影響を及ぼそう。決定は、予測不可能な自然災害に対しても可能な限りの安全策を求めたもので、基本姿勢を問うたと言える。国や電力会社は指摘を肝に銘じ、つぶさに検証し直さなければならない。また、原発から約100㌔離れた広島市の住民にも広域被害の恐れを認めた点も意義深い。関西電力高浜3、4号機に関して昨年、大津地裁が半径70㌔圏に当たる滋賀県の住民の申し立てを認めた決定より、さらに範囲が拡大した。立地自治体以外でも事故の当事者であることは東京電力福島第1原発事故で明らかになっており、「地元」の同意があれば再稼働できる仕組みや避難計画も早急に再検討する必要がある。伊方原発に関しては愛媛、香川、大分、山口の4県の地裁や高裁で仮処分申請や訴訟を審理中だ。丁寧に審理し、全国の原発をも見直す契機にしたい。福島の取り返しのつかない事故で「想定外の事態」という言い訳が通用しないことを思い知って、6年9カ月。原点に立ち返るべき時機である。被爆地広島で、放射性物質に苦しむ人々をこれ以上出さないための判断が下された。その重みを、国と電力会社は胸に刻み、原発ありきのエネルギー政策を根本から転換しなければならない。

*4-6:http://qbiz.jp/article/126001/1/ (西日本新聞 2018年1月12日) 神鋼データ改ざんでも玄海再稼働「問題なし」 九電社長が知事に報告
 九州電力玄海原発(佐賀県玄海町)の再稼働を巡り、山口祥義知事は11日、県庁で瓜生道明社長と会談した。瓜生社長は、神戸製鋼所の製品データ改ざん問題について「問題ない」と述べ、3号機が3月、4号機が5月とする再稼働時期に影響はないとの考えを示した。瓜生社長は、玄海原発で使われている製品の安全性や神鋼側の検査工程を確認したことを報告。「再稼働に向けた工程にとらわれず、安全性を確認しながら対応する」と述べた。山口知事は、継続的な安全対策や情報開示を要請し「県民の厳しい目が注がれているという意識を持っていただきたい」と話した。瓜生社長は、玄海町の岸本英雄町長と唐津市の峰達郎市長とも会談した。


PS(2018.1.15追加):*5-1のように、欧州勢も鮮明にEVシフトしているのに、*5-2のように、ベトナム政府が、せっかく三菱自動車とEVを共同開発して車産業の成長を狙っている時に、今更プラグインハイブリッド車をベトナム側に提供するというのは、三菱自動車はベトナム政府を舐めすぎている。こういう提案しかしないのであれば、私がベトナム政府の高官だったら、組む相手を欧州勢に変更して、電力は豊富な自然エネルギーを開発する。

*5-1:https://www.nikkei.com/article/DGXLASDC12H2T_S7A910C1EA1000/?dg=1&nf=1 (日経新聞 2017/9/12) 欧州勢のEVシフト鮮明 独自動車ショー開幕
 ドイツでフランクフルト国際自動車ショーが12日、開幕した。欧州最大手、独フォルクスワーゲン(VW)は約300ある全車種に電気自動車(EV)かハイブリッド車(HV)のモデルをそろえることを表明した。ガソリン・ディーゼル車禁止の方針を打ち出す国が増えるなか、EVが主役になる時代の到来を印象づけた。何本もの電気ケーブルをつなぐパフォーマンスのあとに、舞台に音もなく現れたのは独ダイムラーの「EQA」。現在のメルセデス・ベンツブランドの入門車「Aクラス」に相当するEVだ。ディーター・ツェッチェ社長は「すべての車種で電動化モデルを選べるようにする」と強調した。傘下の小型車ブランド「スマート」では欧州と北米で全ての車種をEVに切り替えるほか、2018年には主力の中型車「Cクラス」に相当するEQCも発表する。独BMWは電動車専用シリーズで3車種目となる「iビジョンダイナミクス」を発表した。小型車「i3」とスポーツ車「i8」の中間に位置する中型クーペで、1回の充電で走れる距離は600キロメートルに達する。19年に発売する「ミニ」のEV版も公開し、EVの品ぞろえを25年までに12車種に広げる。排ガス不正で世界のEVシフトの引き金を引いたVWは、25年までに独アウディなどグループ全体で50車種以上のEVを投入する。これまで表明していた30車種から一気に増やした。HV化とともに、全ての車種の電動化を進める。30年までの開発などにかかる投資は200億ユーロ(約2兆6千億円)で、これとは別に電池の調達に500億ユーロ規模を費やす。日本勢ではホンダが量産型EV「アーバンEVコンセプト」を世界初公開した。欧州で販売している小型車「ジャズ(日本名フィット)」よりも小さく、都市部での移動に向く。八郷隆弘社長は「このモデルをベースにしたEVを19年に欧州で発売する」と語った。ホンダは今後、欧州で発売する全ての新型車にはEVやHVなど電動車モデルも用意する。30年までに世界販売の3分の2をEVやHVなどの電動車にする方針だ。各社がEV強化をアピールする背景には温暖化や大気汚染の防止へガソリン車やディーゼル車の規制強化を各国が考えていることがある。欧州各国だけでなく中国政府もガソリン車やディーゼル車の製造・販売を禁止する方針で導入時期の検討に入った。英調査会社IHSマークイットのラインハルト・ショールシュ氏は「EVに投資するかどうかではなく、どのように投資するかの段階に入っている」と話す。従来の自動車と同様に、いかに使いやすく魅力的なEVを安い価格で提供できるかの勝負になってきた。ただ日米欧大手への対抗が難しかった中国が自動車産業を育成しようとEVシフトに傾くのとは異なり、長くディーゼルを主力販売車種に据えていた欧州勢にとっては、急速なEVシフトは簡単ではない。これまで内燃機関に多額の投資をし、多くの関連資産を持つ。ダイムラーのツェッチェ社長は「一晩で1つの技術を禁止するのは、環境に対しても悪影響」と規制強化の流れをけん制した。VWのマティアス・ミュラー社長は「ガソリン・ディーゼル車からEVまですべてを手がける」と強調した。

*5-2:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO25678240V10C18A1MM0000/?n_cid=NMAIL006 (日経新聞 2018/1/15) ベトナム政府、三菱自とEV共同開発 車産業成長狙う
 ベトナム政府と三菱自動車は電気自動車(EV)の研究開発で提携する。ベトナム政府は国内自動車産業の育成、三菱自は今後拡大するエコカー市場の取り込みにそれぞれつなげたい考えだ。ベトナムは中間所得層の増加で自動車販売が伸びる一方、排ガスや石炭火力発電所の増加で大気汚染も進んでおり、環境負荷の小さいEVの生産拡大をめざす。15日午後、ベトナム商工省と三菱自が覚書を結ぶ。現地の道路や渋滞状況、充電インフラの実情に合ったEVを共同で研究する。三菱自は現地生産も視野に入れているもようだ。同社は共同研究に先立ち、プラグインハイブリッド車(PHV)の「アウトランダー」をベトナム側に提供する。ベトナムでは足元でEVやハイブリッド車はほとんど普及していない。ただ、電圧が200ボルト以上で家庭での充電が容易という。道が狭いため三菱自の「アイ・ミーブ」のような小型のEVが適しているとみている。ベトナム電力公社はこのほど中部ダナンに初のEVの充電ステーションを設置した。初の国産車製造に取り組む不動産最大手ビングループも、EVの開発を進めている。ベトナムは2020年の工業立国を国家的目標に掲げ、自動車産業を柱の一つとしている。17年の新車販売は過去最高だった前年に比べ10%減の27万2750台となったが、18年1月の輸入関税撤廃を前に買い控えが広がるという特殊要因があったためだ。富裕層や中間層の自動車購入は確実に高まっており、ベトナム商工省は25年には新車販売が現在の2倍超の年60万台に達すると予想している。ベトナムでは自動車のほか、4000万台以上普及しているバイクの排ガスで大気汚染が悪化。近い将来の電力不足が見込まれ、ベトナム政府は石炭火力発電所の建設を急いでおり、大気汚染のさらなる悪化が懸念されている。


PS(2018年1月16、17《図》、18《図》、19、21、22日追加):豪雪地帯で高齢者が雪おろしをして命を落としたり、雪おろしをする若者がいなかったりする事態は、私が衆議院議員をしていた2005~2009年の間にも起こり、国の予算から除雪費を出していたが、それから10年経過した今でも同じことが言われ、改善されていないことに驚きを感じる。雪おろしは生産性の低い危険な仕事で、国が毎年多額の除雪予算をつけるのももったいないため、除雪をしなくてもよいシステムにすべきだ。例えば、雪が一定の重さになると屋根が温まり屋根に接している部分の雪を溶かして積もった雪をすべり落としたり、その雪が通路などの危険な場所に落ちないよう屋根の傾斜を変えたりすれば、一回の支出で積雪の悩みがなくなる。そのため、*6-1のように、HPに積雪重量を示しても対応する人がいなければあまり意味がなく、電熱システムを人が住む家の屋根に取り付けた方が効果的だと思われた。
 なお、*6-2のように、「草刈りは何も生み出さないのに、時間ばかり奪われる」として、草刈りロボが開発されるそうだが、できれば何かを生み出した方が生産性が上がるため、耕作放棄地に、*6-3のような牧草を作って酪農家に放牧させるシステムにし、それ用のロボットを作った方がよいと思われる。そうすれば、飼料を100%自給でき、餌代が少ないため優良経営になり、製品が脂質過多にならない。また、*6-4の、水田の除草に機械を使うか、アイガモを使うかの選択は、どちらが生産性が上がるかの問題だが、私は、アイガモを使った方が副産物もでき、生産性が高いのではないかと考える。

    

(図の説明:「電熱システムにしたら電気代が高い」と言う人が必ずいるので、ここで片屋根大容量太陽光発電を備え付けた家(1番左)と天窓のある家(左から2番目、3番目)を紹介しておく。家は、太陽光の欲しい場所もあり、片屋根の向こう側は天窓に使えそうだ。また、1番右のように、道路に太陽光発電を設置している国もある)


    光ファイバー照明とその原理   「ひまわり」による自然光の採取方法と使用

(図の説明:1番左と左から2番目のように、光ファイバーで自然の太陽光を照明したい場所に導くこともでき、左から3番目の図のように、「ひまわり」で太陽光を室内に導いて、1番右と右から2番目の写真のように、室内でサンゴや植物を育てることも可能だ。そのため、建築学科の学生は、諸外国の例も参考にし、新しい技術を使って《もしくは作って》、雪国や暑い国の街づくりを設計し、卒論や修論の題材にしたらどうだろうか?)

*6-1:https://www.agrinews.co.jp/p42964.html (日本農業新聞 2018年1月10日) 除雪 今でしょ 「雪おろシグナル」 運用開始 新潟県 HPに
 新潟県は9日、積雪時に屋根の雪下ろし作業をするかどうかの判断に役立つ積雪重量計測システム「雪おろシグナル」の運用を始めた。ホームページ(HP)上の地図に県内の積雪状況を「重さ」で表示する仕組みで、防災科学技術研究所と新潟大学、京都大学が共同開発した。建物が倒壊する危険性を赤、黄、緑などの色別に示し、除雪の適時を判断できる。システムは県のHPから閲覧できる。現在の積雪重量の度合いに応じて色分けして示し、最小値と最大値も表示する。建物倒壊の可能性がどの程度か、雪下ろしの基準となる積雪深1メートル以上になるのか、建築基準法に沿った積雪深を下回る量かなどを判断できる。直近30日間の重量データも確認できる。同研究所は今後、全国の降雪地域での活用も目指す。総務省消防庁の調べでは、2016年11月~17年3月末に全国で140棟の空き家が雪による全壊、半壊、一部破損などの被害を受けており、県は降雪による空き家の損壊事故を憂慮。「空き家の所有者がこのシステムで雪下ろしの必要な時期を把握し、対応してもらいたい」と期待する。

*6-2:http://qbiz.jp/article/126424/1/ (西日本新聞 2018年1月19日) 農地守れ!草刈り ロボ 福岡の企業と産総研開発へ 自動走行、放棄地増加防ぐ
 国立研究開発法人産業技術総合研究所(産総研)は農機メーカー「筑水キャニコム」(福岡県うきは市)などと共同で、自動走行して草刈りをする電動ロボットの研究開発に乗り出した。人手が足りない中山間地で耕作放棄地が増えており、草刈りの効率化で農地を守る狙い。2019年度に試作機を完成させ、実用化を目指す。中山間地では耕作放棄地に草が茂り、そこにすみついたイノシシなどが周辺の田畑を荒らしている。農業者の耕作意欲が奪われ、さらなる放棄地を生む悪循環に陥っているという。こうした状況を受け、産総研が、草刈り機の製造技術や販売ルートを持つ筑水キャニコムに研究開発の協力を呼び掛けた。ロボットは、周囲360度を撮影できる搭載カメラの映像を解析し、独自の周辺地図を作製する技術を活用。この地図に草刈りの範囲を指定すると、自動的に経路を決め、車輪で移動しながら草を刈る仕組み。中山間地特有の小規模な農地でも使えるように、縦、横、高さとも50センチ以下と小型化を図る。1回の充電で2時間程度の作業時間を目指し、価格も50万円以下に抑える。現段階では、不整地でも横転せずに移動し、安定的に草刈り作業ができるようになったが、リモコンでの操作が必要。今後、産総研を中心に自律制御装置の開発を進め、この装置を搭載したロボットを岡山県の棚田で実証する。筑水キャニコムの開発担当者は「草刈りは何も生み出さないのに、時間ばかりが奪われると農業者のぼやきを聞いている。作業の負担を軽くしたい」としている。

*6-3:https://ryukyushimpo.jp/news/entry-650298.html (琉球新報 2018年1月21日) 小谷あゆみの「はいたいコラム」:太陽は仕事仲間
 島んちゅの皆さん、はいたい~! 北海道中標津町の酪農のカリスマ!三友盛行さん(72)のお話を聞いてきました。三友さんは牧草地の面積に見合う頭数だけ牛を放牧する「マイペース酪農」を提唱する酪農家で、同名の著作をお持ちです。現在、三友牧場の搾乳牛は30頭。何千頭規模のメガファームもある北海道で、なぜこの小さな牧場主がカリスマと呼ばれるのでしょう。答えはズバリ優良経営! 放牧なので購入飼料は使わず、設備投資も極力控える方法で、他の牧場を圧倒する利益率を上げているのです。酪農教室が開かれた茨城の新利根牧場で三友さんは、牛たちの体型から健康状態を読み取り、草地に点在する牛糞(ふん)の分解度合いから微生物の働きを推察し、生き物の声を人間の言葉に変えて解説してくれました。中でも私が感動したのは、三友さんが太陽のことを何度も「太陽さん」と呼んだことです。牧場内の「土、草、牛」の生命循環に太陽光は欠かせません。太陽は牧場経営にとって、日照・乾燥部門を請け負う「仕事仲間」なのです。私たちが取引先の社名をさん付けで呼ぶように、放牧酪農家は太陽を呼び捨てにせず、敬意を払って呼ぶのでした。取引先が太陽さんだなんて、すてきじゃありませんか。おおらかで太っ腹で明るい太陽さんは、納品が遅れることも、他社に乗り換えることもないどころか、請求書もありません。ときどき連絡なく引きこもることはありますが、そのときは雨さんが別の恵みを牧場にもたらします。三友さんいわく、太陽さんによく働いてもらえるようにするのが人間の仕事。雨を恨まず恵みの雨にするために人の仕事はあるとのことでした。予定を前倒しして次の草の種まきを終えてさえいれば、降る雨は恵みになります。管理できない自然界の力を最大限生かせるよう段取りすることが、人間に残された仕事。そうすれば土も草も牛も、みんな生き生き、健やかに成長します。マイペース酪農とは、みんなが力を発揮し合うサステイナブルな連携! 持続可能な生産と消費が求められる時代、これはあらゆる仕事や人間関係に共通した考えです。仲間が力を発揮しやすいように私はどれだけ努力できているか。少なくとも締め切りを守らなくちゃ。琉球新報さ~ん、いつもありがとう~!
*小谷あゆみ:農業ジャーナリスト、フリーアナウンサー。兵庫県生まれ・高知県育ち。NHK介護百人一首司会。介護・福祉、食・農業をテーマに講演などで活躍。野菜を作るベジアナとして農の多様性を提唱、全国の農村を回る。

*6-4:http://qbiz.jp/article/126526/1/ (西日本新聞 2018年1月22日) アイガモに強力ライバル? 稲だけ残す水田除草機 福岡の企業開発
 アイガモに強力なライバル登場? 水田の稲は傷めず、雑草だけを一掃する水田除草機を農業機械メーカー「オーレック」(福岡県広川町)が開発した。広い面積を短時間で処理でき、除草剤を使わなくて済む。有機栽培で除草を担ってきたアイガモに代わる新たな戦力となりそうだ。日光を遮り土中の養分も奪う雑草は、米の収穫量や品質を左右する。夏の除草は重労働で農家の高齢化とともに大きな課題となっている。従来の機械は稲が並ぶ列の間はある程度除草できたが、稲と稲の間まで取り去るのは難しく、ほとんどの農家は除草剤を利用。無農薬や有機栽培では、手作業やアイガモの働きに頼るしかなく、規模拡大の障壁にもなっていた。同社は「農家の負担軽減と食の安全安心」のため、15年前に水田除草機の開発を始めた。昨年完成した「ウィードマン」は、雑草が稲より地表近くに根を張ることに着目。回転式の棒で深さ約1センチの土中をすくって雑草だけをからめ取り、土に混ぜ込む業界初のシステムで特許出願している。1反(約990平方メートル)の作業時間は約25分で、収穫までに2、3回の除草で済むという。雑草が成長しすぎた状態でも除草でき、作業時期に幅を持たせられるため、複数の農家で機械を共有してコストを抑えることも可能。既に試験販売を始めている。開発チームリーダー鈴木祥一さん(37)は「有機栽培の手間を減らして規模拡大を後押しできる。大規模農家の省力化や、除草剤をやめることで米の付加価値アップにもつながる」と期待している。


PS(2018年1月19、21日追加):*7-1のように、九州の離島(長崎県の壱岐・対馬、鹿児島県の種子島・徳之島・沖永良部島・与論島など)では、2014年の半ばに送配電網に接続できる連系可能量を上回る規模の発電設備が稼働したため、九電は再エネ発電設備の送配電網への接続申し込みを約1年間保留し、蓄電設備の増強はしなかった。そして、現在も、接続可能量を超えるとして、再エネ発電設備の送配電網への接続申し込みの2/3程度しか接続していない(http://www.kyuden.co.jp/effort_renewable-energy_ritou.html 参照)。しかし、九州の離島は太陽光・風力発電の適地が多いので、クリーンな再エネだけで100%以上の電力を賄って経済を潤すことができると同時に、再エネ電力の供給を増やすこともできるため、経産省や大手電力会社は再生エネ発電を進めるべく工夫すべきなのだが、現在はその反対で公共の利益に反している。そのため、*7-2のような電力会社が、電力小売りに参入して再エネを使った新電力への切り替えを進めるのはよいことだ。
 また、*7-3のように、長崎県佐世保市が、福岡県みやま市の電力会社「みやまスマートエネルギー」に続いて、周辺市町と連携した広域の新電力会社設立を進めているそうだ。今後、農漁業において自然再生可能エネルギーによる発電が増えることが予想され、地方自治体自身もゴミ焼却などの電源を持つため、自治体が率先して(水道料金並みの)安い電力を供給することは、その地域の住みやすさや産業集積に繋がる。

 
     *7-1図1        *7-1図2       2015年の状況
(図の説明:九電は、長崎県・鹿児島県の離島6島で、自社の火力発電所の最低出力を確保するため、太陽光・風力による発電設備の接続申し込みを保留し、離島の再生可能エネルギー普及にブレーキをかけている)

 
    ゴミ焼却発電       地中熱の利用      各種の太陽光発電
(図の説明:地方自治体は、1番左の図のようなゴミの燃焼発電、真ん中の図のような地中熱発電、1番右のようなさまざまな太陽光発電、その他の自然エネルギーによる発電のツールを持っており、これらを有効利用して税外収入を得れば、地方税の税率を下げたり、教育・福祉を充実したりすることができ、その地域の住みやすさや産業集積に影響する)

*7-1:http://www.itmedia.co.jp/smartjapan/articles/1407/30/news018.html (スマートジャパン 2014年7月30日) 電力供給サービス:太陽光や風力の接続申し込みを1年間保留、九州の離島に大きな制約
 九州電力は長崎県と鹿児島県の離島6島を対象に、太陽光や風力による発電設備の接続申し込みを約1年間にわたって保留することを決めた。島内の主力電源である内燃力発電所の最低出力を確保するためで、離島における再生可能エネルギーの普及に大きなブレーキがかかることは確実だ。対象になる6島は長崎県の壱岐と対馬のほか、鹿児島県の種子島、徳之島、沖永良部島、与論島である。再生可能エネルギーによる発電設備を送配電網に接続するための事前相談・事前検討・接続契約申し込みの回答が、7月26日から約1年間にわたって保留される。住宅用の太陽光発電設備も含む厳しい措置になる。6島のうち、すでに種子島では送配電網に接続できる連系可能量を上回る規模の発電設備が稼働している。さらに今後の予定量を加えると連系可能量を3700kWも超過してしまう(図1)。九州電力は種子島をはじめ連系可能量が限界に近づいている6つの島で、既存の発電設備の出力状況と島内の需要変動を検証しながら、今後1年程度をかけて連系可能量の引き上げを検討することにした。種子島を例にとると、主力の電源として島内の2カ所に内燃力発電所が稼働中で、合計出力は最大で4万500kWになる。このうち最低でも9000kWの出力を維持する必要がある。一方で太陽光の発電量が最大になる昼間の電力需要は、最も少ない場合には1万6000kW程度しかない(図2)。需要と供給のバランスをとるためには、太陽光や風力の出力を7000kW程度に抑える必要があるが、2014年5月末の時点で9000kWを超える発電設備が送配電網に接続されている。実際にはすべての設備が同時に最大の出力を発揮することはなく、九州電力の想定では8500kW程度までならば接続して問題なく運用できる。種子島の送配電網には国の実証事業で出力3000kWの蓄電池が設置されていて、天候による太陽光や風力の出力変動を吸収することは可能だ。ただし定常的に余剰電力を調整するには容量が足りない。今のところ九州電力には蓄電池を増強する計画はなく、発電事業者に依存しているのが現状である。離島では電力需要が小さいために、石油を燃料にしてディーゼルエンジンで発電する内燃力を採用するのが一般的だ。発電コストが高く、CO2のほかに有害物質の排出量も多いことから、自然環境を保護するうえでも再生可能エネルギーの導入拡大が求められている。九州電力が1年間も接続申し込みを保留することは、企業や家庭が再生可能エネルギーを導入する機運を大きく損ねかねない。こうした状態になるまで対策を実施しなかった国の責任も問われる。国民が賛同しない原子力発電所の安全対策に多大な時間とコストをかけるよりも、再生可能エネルギーの導入が必要な地域の送配電網の増強を優先すべきではないか。

*7-2:http://qbiz.jp/article/126415/1/ (西日本新聞 2018年1月19日) 自治体支援のホープが電力小売りに参入へ
 自治体向けサービスなどを展開する「ホープ」(福岡市)は、電力販売事業に参入すると発表した。経費削減を目指す自治体や取引企業向けに電力を供給し、収益力の向上を図る。ホープは、自治体の広報紙やホームページなどの広告枠販売や、情報冊子の作成などを手掛ける。2017年6月期には800程度の自治体と契約実績があり、新電力への切り替えを検討する自治体に売り込む。取引企業には広告とセットで販売する。日本卸電力取引所から調達した電力を供給する。昨年11月、経済産業省に小売電気事業の登録を申請した。手続き完了後に本格的に事業を始める。ホープの17年6月期の売上高は17億7400万円。約5年後には売上高100億円規模を目指しており、今後も自治体に特化した新規サービスを打ち出す方針。

*7-3:http://qbiz.jp/article/126270/1/ (西日本新聞 2018年1月21日) 長崎・佐世保市、新電力会社を検討 県境越え連携、参入へ 行政サービス相乗効果期待
 電力小売り自由化で自治体の電気事業参入が進む中、長崎県佐世保市は県境を越えた周辺市町と連携し、2019年4月の発足を目指す「連携中枢都市圏」をにらみ、広域での新電力会社(PPS)設立を検討している。市は既に会社設立に向けた動きを進めており、今後、中枢都市圏からどの程度の賛同が得られるかが課題となる。広域化で行政サービスの向上を目指す中枢都市圏の協議には中核市の佐世保市をはじめ県北と佐賀県西部の14市町が参加している。佐世保市はPPS設立で自然エネルギーなどで生み出した電力の小売りを圏域内で行い、エネルギーの地産地消や他の行政サービスとの相乗効果などを期待。市によると、これまで2県の11市町がPPS設立に向けた協議に参加しており、中枢都市圏での設立参入は前例がないという。中枢都市圏での協議を促進しようと、市は9日、先進的に取り組む福岡県みやま市の電力会社「みやまスマートエネルギー」の磯部達社長らを招いて講演会を開いた。同社は同市が55%出資し設立。市内の大規模太陽光発電所(メガソーラー)などで発電した電力を買い取り、公共施設や家庭向けに販売している。磯部社長は、売電契約を結んだ家庭に配布したタブレット端末を活用し、電気の利用状況から高齢者の見守りを行ったり、地域の行事や防災情報を配信したりしている事例を紹介。収益をコミュニティー施設の運営に充てるなど「電力料金の低減やエネルギーの地産地消だけでなく、収益を地域の課題解決に活用できる」と利点を訴えた。佐世保市はPPS設立に向け、同社などにコンサルティング業務を委託。今後、各市町の電力利用状況の分析や収益の活用方法の検討などを進める。


<地熱の利用>
PS(2018年1月23日追加):*8-1のように、日本には火山が多く、今日、草津の白根山が噴火した。また、*8-2のように、熊本県水俣市では、茶園跡約3.3ヘクタールに出力約1.8メガワットのメガソーラーを設置し、ご当地エネルギーの売電収益で熊本地震の復興や水俣地域の振興を後押しするそうだが、私は、農地として使いながらソーラー発電した方がよいと考える。また、日本は、地震・津波・断層・火山の多い国で原発には全く向かないが、草津のように地熱は豊富であるため、熊本県も阿蘇山を利用して地熱発電すればいいのではないだろうか?

   
      西日本新聞2018年1月23日(*8-1)より         阿蘇噴火

*8-1:http://qbiz.jp/article/126647/1/ (西日本新聞 2018年1月23日) 草津白根山が噴火、十数人負傷 スキー場で雪崩発生か
●訓練中の自衛隊員も6人けが
 23日午前9時59分ごろ、群馬県と長野県の境にある草津白根山の本白根山(2171メートル)が噴火した。草津白根山で噴火が確認されたのは1983年以来。消防によると、噴石などにより10人が負傷した。けがの程度は不明。雪崩も発生したとの情報もあり、陸上自衛隊は、現場付近で訓練していた6人が巻き込まれて、けがをしたとしている。一方、捜査関係者によると、群馬県草津町にある草津国際スキー場付近でのけが人は12人に上り、うち2人が重体としており、県や警察などが詳しい状況を調べている。同町役場によると死者や行方不明者は確認されていないとしている。消防によると、草津白根山の麓にある草津国際スキー場で、噴石がゴンドラに当たり、割れたガラスで乗客4人がけがをしたと通報があった。レストハウスの一部の屋根も噴石で突き破られているという。スキー場の事務所には、職員から「雪崩が発生したようだ」とする連絡もあり、スキー客約80人がレストハウスに避難したとしている。山頂で孤立している人がいるとの情報もあり、救出に向かっている。陸自は、群馬県の相馬原駐屯地に司令部を置く第12旅団所属の複数の隊員が、スキー訓練中に雪崩に巻き込まれた。このうち4人が骨折し、2人が重傷を負った。雪崩に埋まった民間人1人を救出したという。草津観光公社によると、スキー場のロープウエーの山頂駅と山麓駅に複数のけが人を含むスキー客や従業員が避難している。東京電力によるとスキー場周辺の11戸が停電した。気象庁は23日、火口周辺警報を発表し、噴火警戒レベルを3(入山規制)に引き上げ、本白根山の鏡池付近から2キロの範囲では飛散する大きな噴石などに警戒するよう呼び掛けた。草津白根山では、2014年に火山性地震が増加し山体の膨張が観測されるなど火山活動が活発化したが、活動は低下したとみられていた。首相官邸は、危機管理センターに官邸連絡室を設けて、情報収集に当たった。
●スキー施設の屋根にも穴
 噴石が屋根を突き破り、避難を迫られたスキー客らは不安を募らせた。噴火した草津白根山に近く雪崩も発生した群馬県草津町の草津国際スキー場では23日、スタッフらが、けが人の有無といった情報収集や避難誘導などの対応に追われた。警察の誘導を受け、スキー客ら約100人が麓にあるレストハウスに避難した。レストハウスの責任者によると、客が「山頂の方で噴火があったようだ」と話していたという。別の建物には飛んできた噴石が屋根を突き破った。スキー客を乗せたロープウエーのゴンドラも噴石で窓ガラスが割れ、けが人も出たという。草津観光公社によると、ロープウエーの山頂駅と山麓駅にはスキー客や従業員が逃げ込んだ。取材に応じたスキー場の男性スタッフは雪崩が発生した直後からリフトを全て止め、客には避難を促したと説明。停電も発生し、ロープウエーも止まったが、予備電源を利用して動かし、乗客を運んだという。この日は関東地方を襲った大雪の影響で例年よりもスキー客は少なかったという。「けが人がいるというが、まだ状況が分かっていない。午前9時から通常営業をしていたので、お客がいたと思う」と慌てた様子だった。群馬県の草津町や嬬恋村には対策本部が設置され、職員らが情報収集に当たった。草津白根山の麓にある草津温泉の協同組合によると、今のところ噴火の影響はなく、宿泊客は落ち着いているという。西吾妻福祉病院(群馬県長野原町)には、県内の他の病院から派遣された災害派遣医療チーム(DMAT)も待機。病院の担当者は正午すぎに「搬送されたのは今のところ1人だけだが、医師約20人態勢で受け入れ準備を整えている」と話した。
■草津白根山 群馬県と長野県の境にあり、全国に50ある常時観測火山の一つ。西端部に白根山(2160メートル)、本白根山(2171メートル)などが南北に並ぶ。気象庁によると、近年の噴火活動はすべて水蒸気爆発で、泥流を生じやすい。2014年以降、湯釜火口の湖水で火山ガス由来の成分の濃度が上昇していたが、17年に入り低下傾向が続いていた。

*8-2:http://qbiz.jp/article/126607/1/ (西日本新聞 2018年1月23日) 太陽光売電 水俣に基金 今秋創設 ご当地エネ協など参加 復興や地域振興 後押し
 大規模太陽光発電所(メガソーラー)などの売電収益で、熊本地震からの復興や水俣地域の振興を後押しする「熊本水俣再生基金(仮称)」の設立に向けた発起人集会が22日、熊本県水俣市であった。地域主体の再生可能エネルギー導入を支援する「全国ご当地エネルギー協会」(東京)やグリーンコープ生協くまもとなどが参加。今年秋ごろの基金創設を申し合わせた。同協会は同市薄原の茶園跡約3・3ヘクタールに出力約1・8メガワットのメガソーラーを設置し、21日に稼働を始めた。協会によると、年間約1千万円の売却益が見込まれ、このうち200万〜300万円を基金の原資にする。これとは別に、グリーンコープが配送センターの屋根などに設置した太陽光発電の売却益も年間約90万円を基金に繰り入れる予定。集会では「地域の再生に役立てていく」とする設立趣意書を採択。地域活性化や、再生可能エネルギーの普及に取り組む住民や団体に交付する目的で基金を運用することを確認した。今後、準備委員会で本格的に検討する。出席した認定NPO法人「環境エネルギー政策研究所」の飯田哲也所長は、水俣病と東京電力福島第1原発事故の経験を踏まえ、「日本の影の歴史に光を当てていく事業にしたい」と話した。

<電源構成の見直し>
PS(2018年1月24日追加):*9-1、*9-2に書かれているとおり、再生可能エネルギーは、機器の大量生産と進歩で発電コストが急速に低下して普及している実績があるため、エネルギー基本計画に定められた恣意的で先見の明のない“電源構成バランス”は速やかに見直すべきだ。また、2016年度の原発比率は2%であるため、ただちに原発比率を0にすることも容易である。にもかかわらず、国がなかなか動かない場合は、地方自治体や農協・漁協が、「ご当地エネルギー」で地域創成を行いながら、動き始めて実績を重ねるのがよいだろう。

*9-1:https://kumanichi.com/column/syasetsu/310164/ (熊本日日新聞 2018年1月18日) エネルギー基本計画 電源構成の見直し必要だ
 経済産業省の有識者会議は2014年に閣議決定された現行のエネルギー基本計画の見直し作業を進めている。今春にも改定案がまとまる予定だ。いまだに収束の見通しさえない東京電力福島第1原発事故から間もなく7年。世界のエネルギーを巡る情勢が激しく変化する中、時代と世論の要請に応えるものとしなければならない。問題点の一つは、現行計画に基づいて15年に決められた電源構成の扱いだ。電源構成では、30年度の原子力による発電比率を20~22%とすることを目指すとしている。16年度の原発比率は2%なので大幅な引き上げになる。だが、原発事故以降、安全対策や維持管理のコストが高騰する中で廃炉が進んでいるため、運転期間の延長や新増設を行わないと達成できないとする専門家が多い。安倍晋三首相はことあるごとに原発依存度の低減を口にし、基本計画も依存度の可能な限りの低減が「エネルギー政策を再構築するための出発点」だとしている。そうであれば、原発の新増設まで行わないと達成できないとの見方もある現在の目標は過大すぎる。一方、再生可能エネルギーは、総発電量に占める割合が16年度に13%程度にまで増えたことを考えれば、30年度に22~24%にするとの目標は小さすぎる。地球温暖化防止のためのパリ協定が採択され、世界で石炭火力削減が急速に進み、日本も大幅な排出削減を迫られている。26%という石炭火力の比率も見直しが必要だろう。そもそも電源構成では今後、電力消費量が大きく増えると見込んでいるが、日本の電力消費量は原発事故以降、減少傾向にあり、現実と目標の隔たりも大きい。改定に際しては、電源構成が時代の流れに沿っているかの検討が欠かせないはずだが、残念ながら経産省は早々に電源構成は見直さないと表明している。しかも議論は経産省が選んだ委員による審議会の場に限られている。メンバーは経産省に近い研究者や大企業、経済団体の代表が中心で、環境保護団体などを含めて多くの利害関係者の意見が反映される形には程遠い。確かに再生可能エネルギーの割合を増やすのは簡単ではない。現在は大半が水力発電で、太陽光や風力は原発の代替電源として期待を集めるものの、天候に発電量が左右される。国際水準と比べて割高な発電コストの引き下げも課題だ。小泉純一郎元首相らが発表した「原発ゼロ・自然エネルギー基本法案」も、「再生可能エネルギーの発電を50年までに100%に」を掲げているが、具体的な工程表づくりは今からだ。地球温暖化対策と表裏一体であり、今後の社会や経済の在り方に大きな影響を与えるエネルギー基本計画の見直しを、限られた人々だけでの議論による小手先の修正に終わらせてはならない。国会だけに任せるのではなく、多くの市民が参加できるような議論と意思決定の場も必要ではないか。

*9-2:http://www.the-miyanichi.co.jp/shasetsu/_30321.html (宮崎日日新聞社説 2018年1月24日) エネルギー計画改定
◆原発比率引き上げは疑問だ◆
 2014年に閣議決定された現行のエネルギー基本計画の見直し作業が進んでいる。いまだに収束の見通しさえない東京電力福島第1原発事故から間もなく7年。世界のエネルギーを巡る情勢が激しく変化する中、時代と世論の要請に応えるものとしなければならないが、現在の議論はその進め方も内容もそれには程遠い。国の将来を左右する重要なエネルギー政策の議論を通り一遍のものに終わらせることなく、透明性の高い形で計画をまとめることが必要だ。
●現実と大きな隔たり
 問題点の一つは、現行計画に基づいて15年に決められた電源構成の扱いだ。電源構成では、30年度の原子力による発電比率を20~22%とすることを目指すとしている。15年の原発比率は1%強なので、大幅な引き上げとなる。だが、原発事故以降、廃炉が進んでいるため、運転期間の延長や新増設まで行わないと達成できない、とする専門家が多い。安倍晋三首相はことあるごとに原発依存度の低減を口にし、基本計画も冒頭で依存度の可能な限りの低減が「エネルギー政策を再構築するための出発点」だとしているのだから、この過大な目標は見直すべきだろう。逆に発電コストの急速な低下を背景に再生可能エネルギーの比率が15%程度まで増えたことを考えれば、30年度に22~24%にする目標は小さすぎる。地球温暖化防止のためのパリ協定が採択され、世界各国で石炭火力削減が急速に進み始め、日本も大幅な排出削減を迫られている。26%という石炭火力比率も見直しが必要だろう。そもそも電源構成では今後、電力消費量が大きく増えると見込んでいるが、日本の電力消費量は原発事故以降、減少傾向にあり、現実と目標との隔たりも大きい。
●市民参加の議論必要
 時代の流れにそぐわなくなった電源構成を見直すことが必要だが、経済産業省は早々に電源構成は見直さないことを表明。現在の議論はこの目標を達成するために何が必要かという矮小(わいしょう)化されたものに終始している。しかも議論は、経産省が選んだ委員による審議会の場に限られている。安倍首相のエネルギー問題や地球温暖化に関する発言もほとんどなく、政治的なリーダーシップが示されているとも思えない。一方で、立憲民主党は通常国会に30年までの全ての発電用原子炉廃止を政府目標とする法案の提出を目指しており、小泉純一郎元首相が顧問を務める民間団体が「原発ゼロ・自然エネルギー基本法案」の骨子を発表するなどの動きもある。今後の社会や経済の在り方に大きな影響を与えるエネルギー基本計画の見直しを、限られた人々だけでの議論による小手先の修正に終わらせることは許されない。国会での真剣な論争が欠かせない。多くの市民が参加できるような議論と意思決定の場も早急につくる必要がある。


PS(2018年1月27日追加):*10-1のように、中国は、英仏と同様、ガソリン車やディーゼル車の製造・販売を禁止してEVにシフトし、*10-2のように、韓国の現代自動車が航続距離を39%増やした新型燃料電池車(FCV)を欧米でも2018年に投入しようとしている時に、*10-3のように、JR九州が省エネ近郊型交流電車と蓄電池搭載のハイブリッド車両走行試験を2018年度から始めるのは遅れすぎている。何故なら、①鉄道をFCVかEVにすれば、架線のない場所でも排気ガスフリーで走れる上 ②これまで架線があった場所でも架線やパンタグラフのメンテナンスコストが節約でき ③連続した広い敷地を持つ鉄道会社が自家発電するのは容易であるため燃料代を0にできる からだ。なお、JR九州は列車の色に赤や橙をよく使っているが、これは、ただでさえ暑い九州の夏に極めて暑苦しく見えるため、世界に通用する爽やかなデザインにした方がよい。


        *10-3より           日本初のEV(左)とFCV(右)

*10-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20170912&ng=DGKKZO21011180S7A910C1MM8000 (日経新聞 2017.9.12) 中国、ガソリン車禁止へ、英仏に追随、時期検討 最大市場、EVシフト
 中国政府はガソリン車やディーゼル車の製造・販売を禁止する方針だ。英仏が7月に2040年までの禁止を表明したことに追随し、導入時期の検討に入った。電気自動車(EV)を中心とする新エネルギー車(NEV)に自動車産業の軸足を移す。世界最大の自動車市場である中国の動きは、大手自動車メーカーの成長戦略や世界のEV市場に影響を与えるのが確実だ。中国天津市で開かれた自動車産業のフォーラムで、工業情報化省の辛国斌次官が9日に「複数の国がガソリン車やディーゼル車の製造販売のロードマップを明らかにしたが、工業情報化省も研究に着手した。将来は関係部門と一緒に我が国のロードマップを作っていくだろう」と述べた。中国政府はEVやプラグインハイブリッド車(PHV)を中心とするNEVに注力する方針を示しており、その一環とみられる。4月に発表した中長期計画では16年に50万台にとどまったNEVの販売を25年に従来計画の2倍弱にあたる700万台に上方修正した。中国政府がガソリン車などの製造・販売の禁止検討に着手する背景には、北京など多くの都市で大気汚染が深刻になっている事情がある。さらに、ガソリン車などでは日米欧の大手メーカーに対抗することが難しいため、NEVで世界を代表する中国企業をつくり出す思惑も透ける。中国の自動車メーカーの業界団体幹部はNEVの振興策について「国内企業の保護が目的ではない」と指摘する。中国政府が最大で1台当たり100万円程度の補助金を出しても、16年の販売台数は全体の2%にも満たなかった。NEVのテコ入れを狙い、中国政府は外資大手にNEVに限り従来認めていなかった3社目の合弁を解禁しブランド力を持つNEVを開発させる方針。18年からは自動車メーカーに、一定比率のNEVの製造販売を義務付ける規則を導入する方向で調整を進めている。中国の16年の新車販売台数は2800万台。米国の1.6倍、日本の5.6倍に達するため、世界の大手メーカーもNEV分野に力を入れる方針だ。中国市場でシェアを争う独フォルクスワーゲン(VW)と米フォード・モーターはNEVの3社目の合弁を決めた。米EV大手のテスラも中国での現地製造を検討している。日本勢も日産自動車やトヨタ自動車が現地生産や新型車の投入など対応を加速する構えだ。中国政府は4月に外資系自動車メーカーが同国で製造合弁する際の出資規制を緩和する方針を表明した。25年を目標に50%と定めた出資上限を引き上げる方針。ガソリン車の製造販売規制が新たな中国企業の優遇策とならないように、自動車分野の外資規制緩和の確実な実行が求められることになりそうだ。

*10-2:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20170818&ng=DGKKASDX17H0I_X10C17A8FFE000 (日経新聞 2017.8.18) 現代自が新型燃料電池車 航続距離39%増 欧米でも来年投入
 韓国の現代自動車は17日、新型の燃料電池車(FCV)を公開した。2018年の第1四半期(1~3月)に韓国で発売するのを皮切りに、欧米市場などにも投入する。現行モデルと同じ多目的スポーツ車(SUV)型で、航続距離は現行比39%延びるという。18年に航続距離を2倍にした電気自動車(EV)を発売することも公表した。現代自にとって2代目になるFCVは、水素と酸素を化学反応させて電気をつくる燃料電池スタックや水素供給装置などの中核部品を全面的に見直した。化学反応から推力を得るシステムの効率を60%と現行比約5ポイント上げ、1回の水素充填で走る距離を580キロメートルに延ばす。モーターの出力は163馬力でトヨタ自動車のFCV「ミライ」(154馬力)を若干上回る。欧米とオーストラリアで「18年後半の発売を見込み、中国販売も検討する」(現代自幹部)とする。FCV市場で先行するトヨタなどを追撃する。ハイブリッド車(HV)などを含む環境対応車を20年までに現在の14車種から31車種に増やす方針も明らかにした。EVは1回のフル充電で390キロメートル走るSUV型を来年前半に出す。また、現代自は航続距離が500キロメートルのEV開発に着手したことも明かした。

*10-3:http://qbiz.jp/article/126930/1/ (西日本新聞 2018年1月27日) JR九州が省エネ新車両の走行試験へ 福岡、長崎で2車種
 JR九州は26日、省エネ型の近郊型交流電車と、蓄電池を搭載したハイブリッド車両の2車種の走行試験を2018年度から始めると発表した。6カ月以上の走行試験を行い、2019年の営業運転を目指す。近郊型電車の821系は高性能の半導体SiC(シリコンカーバイド)を搭載。旧国鉄時代から使用している415系と比べ、消費電力量を約7割低減できるという。福岡県を中心に3両2編成を導入する。ハイブリッド車両のYC1系はディーゼルエンジンで発電機を動かし、蓄電池も併用してモーターで走行する。ブレーキ時に発生する電力を蓄えることで、エネルギーを有効に活用できるという。従来の気動車と比べて燃料消費量を約2割低減する。長崎県を中心に2両1編成を入れる。青柳俊彦社長は「ハイブリッド車両はメンテナンスのコストも削減できると思う」と期待を込めた。


PS(2018年1月28、29日追加):*11-1のように、工学分野での九大の研究はめざましいため、糸島市と九大が「サイエンスパーク構想」を発表したのは大変良い。また、*11-2の癌の免疫療法のように、副作用が殆どなく確実に癌を消去できる方法を開発し、早々に合理的な価格で実用に供することが望まれる。そのため、研究所を集積するにあたっては、シンガポール等の事例を参考に、日本人研究者や日本企業の研究所に限らず、世界からよいものを集めるのがよいだろう。

      
          免疫療法が癌に効く原理        *11-2 *11-3

(図の説明:一番左の図のように、癌細胞は細胞分裂の失敗などで常にできているが、免疫が強いうちは免疫細胞に攻撃され除外されるため問題にならず、これが若い人に癌が少ない理由である。また、癌細胞は自らの細胞が変異したものであるため、正常細胞と区別がつきにくかったり、免疫細胞の攻撃をかわす仕組みを備えていたりする。そのため、癌細胞の特徴を覚えさせ癌細胞のみを攻撃するようにした樹状細胞療法ができたわけだが(左から2番目、3番目の図)、このように少し変異した自分自身の細胞を見逃すことなく攻撃し、正常細胞は攻撃しないという性質が必要であるため、私は、*11-3のように、他人の免疫細胞や化学療法で副作用なく癌細胞を殺すのは難しいと考えている)

*11-1:http://qbiz.jp/article/126562/1/ (西日本新聞 2018年1月28日) 【点検 糸島の課題】1.28 市長・市議選(2) 九大連携 研究所集積へ本格始動
 若いパワーと頭脳の集積を地域の未来につなげる時が来た。九州大学の伊都キャンパス(糸島市東部と福岡市西区)への移転は今秋に完了予定。約1万9千人の学生と教職員が集う「知の拠点」が整い、本格的に動きだす。糸島市は2010年に九大と連携協力協定を結び、九大の研究に1件最大100万円を助成する事業を始めた。テーマは市民や九大、市職員から募集。糸島観光ガイドブックの英語版作成では、九大の留学生の視点を取り入れた。市内にある「白糸の滝」での小水力発電導入では、施設の構造などの助言を受けた。市地域振興課の浦志素彦課長は「九大の知的、人的資源は『宝』だ」と話す。連携事業は今では年間100件以上。15年度には小学校の土曜授業で、学生が研究テーマを分かりやすく伝える「九大寺子屋」が始まった。児童の学習意欲向上を期待し、本年度は5校で実施している。一方で課題もある。市職員からは「九大の研究を事業化して雇用を生みだすなど、地元経済の活力につなげる点では足りていない」との声が漏れる。市と九大が1月に発表した「サイエンスパーク構想」は、そんな課題の克服につながる可能性を秘める。キャンパス近隣に、九大の基礎研究を応用する民間研究所群を誘致し、企業や工場の集積を図る構想だ。うまくいけば卒業生や市民の雇用も期待できる。九大の若山正人副学長は会見で「最初に糸島市が構想に興味を示してくれた」と語った。一方で「企業が来ないと成立しない」とも。九大や糸島市の魅力を国内外に発信できるかが成功への鍵になる。サイエンスパークは国内に20超ある。山形県鶴岡市は01年に慶応大先端生命科学研究所を誘致し、人工繊維などの6社が起業した。市の貸し研究室は満室だ。企業関係者は「行政が長期的視点で基礎研究に投資を続けたことや、失敗を恐れず挑戦する雰囲気が成功につながった」という。市と九大は18年度末までに、構想実現の可否や企業の進出可能性などを見極める。新たな活力を呼び込めるか、手腕が試される。

*11-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180128&ng=DGKKZO26182150W8A120C1MY1000 (日経新聞 2018年1月28日) がんVS免疫療法 攻防100年、高コストや副作用が課題
 ウイルスや細菌などの病原体から身を守る免疫の仕組みを利用する「がん免疫療法」が注目されている。免疫をがん治療に生かす研究は100年を超す歴史があるが、科学的に治療効果を認められたものはほとんどなく、これまでは異端視されていた。状況を変えたのは2つの新しい技術の登場で、手術、放射線、抗がん剤などの薬物治療に次ぐ「第4の治療法」として定着しつつある。19世紀末、米ニューヨークの病院で、がん患者が溶血性連鎖球菌(溶連菌)に感染し高熱を出した。熱が下がって一命をとりとめると、不思議なことが起きていた。がんが縮小していたのだ。外科医ウィリアム・コーリーは急性症状を伴う感染症にかかったがん患者で似た症例があると気づき、殺した細菌を感染させてみたところ、がんが消える患者もいた。毒性の強い細菌に感染することで免疫が刺激され、がん細胞も攻撃したとみられる。コーリーの手法はがん免疫療法の先がけといわれる。だが副作用で命を落とす患者も多く、定着しなかった。免疫が再び注目されるのは1950年代後半だ。ノーベル生理学・医学賞を受賞したフランク・バーネット氏が「免疫が日々発生するがん細胞を殺し、がんを未然に防いでいる」という説を提唱。60年代以降、結核予防ワクチンのBCGを使う治療法や丸山ワクチンが登場した。その後、免疫細胞にがんを攻撃するよう伝えて活性化するサイトカインという物質や免疫の司令塔となる樹状細胞を利用する方法、ペプチドと呼ぶたんぱく質断片を使うワクチンなども試みられた。効果があると科学的に認められるには、いずれも数多くの患者を対象にした臨床試験(治験)が必要だ。しかも、抗がん剤など従来の治療を受けた患者らと比べて、治療成績がよくなることを示さなければならない。免疫療法でそうした効果を証明できたものはほとんどなかった。「がん細胞は免疫を巧妙にかいくぐっているからだ」と長崎大学の池田裕明教授は説明する。「免疫を活性化する手法ばかり研究していた」ことが失敗の原因とみる。20世紀末、がんが免疫の攻撃を逃れる仕組みの研究が進んだ。その中で見つかったのが「免疫チェックポイント分子」と呼ぶたんぱく質だ。免疫は暴走すると自身の正常な細胞も攻撃してしまうため、普段はアクセルとブレーキで制御されている。がん細胞はこの仕組みを悪用し、免疫にブレーキをかけて攻撃を中止させる。チェックポイント分子の「CTLA―4」や「PD―1」の働きが解明され、2010年代前半にその働きを阻害する薬が開発された。免疫細胞は攻撃力を取り戻してがん細胞を殺す。皮膚のがんの一種の悪性黒色腫で高い治療成績を上げ、肺がんや腎臓がんなどでも国内承認された。CTLA―4を発見した米テキサス州立大学のジェームズ・アリソン教授、PD―1を突き止めた京都大学の本庶佑特別教授はノーベル賞の有力候補といわれる。注目を集める新しい治療法はもうひとつある。「遺伝子改変T細胞療法」だ。患者から免疫細胞のT細胞を取り出し、がん細胞を見つけると活性化して増殖する機能を遺伝子操作で組み込む。増やしたうえで患者の体内に戻すと、免疫細胞はがんが消えるまで増殖する。大阪大学の保仙直毅准教授は「免疫のアクセルを踏みっぱなしにする治療法だ」と説明する。がんを見つけるセンサーに「キメラ抗原受容体(CAR)」を使うタイプはT細胞と組み合わせて「CAR―T細胞療法」とも呼ばれる。新潟大学の今井千速准教授らが米国留学中の04年に論文発表し、スイスの製薬大手ノバルティスが実用化。17年8月、一部の白血病を対象に米国で承認された。治療効果は抜群で、1回の点滴で7~9割の患者でがん細胞が消え、専門家らを驚かせた。日本でも近く実用化される見通しだ。2つのがん免疫療法にも課題はある。免疫チェックポイント阻害剤が効くのは承認されたがんのうちの2~3割の患者で、数百万円という高い投薬費も問題になった。CAR―T療法は塊を作る「固形がん」には効果が薄いとされる。過剰な免疫反応による発熱や呼吸不全などの副作用もある。遺伝子操作や細胞の培養にコストがかかり、治療費は5000万円を超す。課題の克服を目指す研究も国内外で進んでいる。がん免疫療法はこれからが本番だ。

*11-3:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180128&ng=DGKKZO26238720X20C18A1EA4000 (日経新聞 2018年1月28日) がんゲノム医療、企業が地ならし 遺伝子調べ最適治療選ぶ、中外やコニカミノルタ、支援サービス相次ぎ参入
 日本の製薬会社や医療機器メーカーがゲノム(全遺伝情報)を調べて最適な治療法を選ぶ「がんゲノム医療」の関連事業に相次ぎ乗り出す。政府ががん対策の指針でがんゲノム医療を柱に据えたことで、医療機関向けにサービスを始める動きが広がり始めた。保険適用が進めば一般的な医療として普及する環境が整う見込みだ。がんのゲノム医療は患者のがん組織などを採取してがん関連遺伝子を大量に調べる。その異常に合わせ、どんな薬を投与すれば効果的な治療となるかを選択する。国内では2015年から大学病院で順次始まった。技術を持つ企業も限られてきたが、大手の参入意欲が高まることで医療機関も利用しやすくなる。中外製薬は2018年中にがん診断事業に参入する方針。親会社のスイス・ロシュの診断子会社ファンデーション・メディシンの固形がん診断サービスの提供を目指す。17年11月、米食品医薬品局(FDA)からゲノム解析サービスとして初の承認を得ている。日本で医師が患者から採取したがん組織を米国に送り、ファンデーション・メディシンで遺伝子を調べる。がんは遺伝子が傷ついて変異すると発症する場合がある。変異した遺伝子の種類により同じがん種でも効果がある薬が変わる。約320種の遺伝子変異を一度に調べ、医師に効果的な薬の情報を届ける。日本政府内ではがんのゲノム遺伝子解析サービスを18年にも薬事承認の対象にするための議論が進んでいる。投薬で効果が得られる確度が上がれば余分な治療薬の使用も減るため、保険適用となる公算が大きい。中外が提供するサービスも米国では1回50万円以上かかるとみられる。日本では自由診療により患者負担が大きいままでは浸透させるのは難しく、中外は適用取得を最優先する。コニカミノルタも18年度に国内でがんの遺伝子診断事業を始める。乳がんや大腸がんの最適な治療や予防方法を血液や唾液から分析する。17年10月に産業革新機構と共同で約900億円を投じて買収した米アンブリー・ジェネティクスの技術を活用する。化学品メーカーのJSRはがんゲノム医療市場の拡大をにらみ、400億円で創薬支援の米社を買収する。18年6月をメドに完全子会社にするクラウン・バイオサイエンス・インターナショナルは、がん患者の遺伝子情報を約3000件集めたデータベースを持つ。この中から製薬会社の求めに応じて遺伝子情報を提供する。がんの種類や患者の遺伝子に応じた最適な新薬を作る際に活用してもらう。政府は昨秋、17~22年度までのがん対策の指針である「第3期がん対策推進基本計画」を閣議決定した。遺伝情報に基づく診断・治療をがん対策の中心にすると位置づけた。これまでのように臓器ごとのがん種に対応するのではなく、患者の遺伝子の異常に応じて治療法を決めることを目指している。これによって大手企業の参入が相次げばサービス価格が低下し、精度も高まることが期待される。

| 資源・エネルギー::2017.1~ | 11:48 AM | comments (x) | trackback (x) |
2017.1.31 東芝の7,000億円規模の原発関連損失と原子力及び再生可能エネルギーの今後について (2017年2月1日、2、13、15、17日に追加あり)

米国原子力発電のコスト 世界のエネルギー フランスのソーラーロード エチオピアの 
 2017.1.20東京新聞   コスト推移   Newsweek2017.1.17 ソーラーキオスク     

  
 南アフリカのソーラー空港 アフリカのソーラー航空機  スイス船籍のソーラー船

(図の説明:原子力発電のコストは上がり、太陽光発電のコストは規模の拡大により下がって、2016年には風力発電よりも低くなった。今後は、太陽光発電の原材料変化によるコストダウンも見込まれる中、フランスでは太陽光発電を埋め込んだ道路ができ、道路で発電できるようになった。また、アフリカでは、電線の引かれている地域が限られているため、太陽光発電等に依る分散発電には大きな意味がある。さらに、ソーラー空港・ソーラー航空機・ソーラー船は、太陽光発電の将来性の大きさを感じさせる)

(1)東芝の経営意思決定における失敗と損失 ← 原発への固執は、会社を破綻させること
 東芝は、*1-1、*1-3のように、4,800億円と見込まれていた損失額が7,000億円になりそうなため、債務超過を回避する目的で、世界シェアの高い半導体事業を分社化してつくる新会社の株式を一部売却するのだそうだ。そして、綱川社長は、*1-4のように、2017年1月27日に原発事業の海外建設工事から撤退する等の方針を表明し、「原発事業はエネルギー事業のなかで最注力としていたが変える」と強調したそうだ。

 東芝の家電や太陽光発電機器は優れているため、私は東芝の失敗とその後の「選択と集中」に関する経営意思決定を残念だと思っていたが、東芝の原発事業からの撤退が、フクイチの後にすぐ決定されていれば、損失はずっと少なかったと思う。また、東芝の主導権は50%超の株式を保有していれば確実に維持できるため、株式は金もうけ目的で会社を買って転売する投資ファンドではなく、協業することによってシナジー効果を得られる他業種の製造会社に売却すれば、前向きの効果が得られると考える。

 なお、東芝が、S&W社を275億円で買収して数千億円もの損失を出した理由について、*1-2は、東芝の子会社である米ウェスチングハウスが1年前に原発建設会社S&W社を買収し、米規制当局の安全規制強化等で建設コストが膨らんだので生じたとしている。しかし、私には、フクイチの後、世界が原発から手を引こうとしている時に、純資産額を約105億円も超える価格で原発関連会社を買収し、買収後に純資産額がマイナス数千億円に達したのは、リーダーが世界の潮流を見誤って甘い意思決定をしたからとしか思われない。さらに、ウェスチングハウスとS&W社は、今回の損失を予見した上で、原発から撤退するに当たって、日本企業の東芝に損失を負わせた可能性すらある。

 また、*1-3に、「7,000億円」という数字は、世界の4大監査法人の一つで老舗監査法人のプライスウォーターハウスクーパース(PwC)の米国事務所がウェスチングハウスに対して示した数字だと書かれているが、これが監査であり、顧問先企業の損失を冷静に把握して監査に反映させなければ、後で株主・投資家・債権者などに対して、監査法人は会社と連帯責任を負うことになるのである。

 それらの総合的な結果として、米格付け会社のスタンダード・アンド・プアーズは、東芝の格付けを「シングルBマイナス」から「トリプルCプラス」に引き下げたそうだ。

(2)フクイチとその後の状況
 フクイチでは、*2-1のように、昨年の透視調査で核燃料の大部分が原子炉圧力容器内に残っていると推定されていた2号機に、事故から約6年経ってカメラを入れて見たところ、溶けた核燃料のような塊が飛び散っている様子が見え、核燃料取り出しや廃炉の困難さがわかったのだそうだ。そして、1号機と3号機は、核燃料の大部分が原子炉圧力容器内に残ってもいないようだ。

 溶けた核燃料が原子炉の外に出た事故は、これまで旧ソ連のチェルノブイリ原発事故だけで、事故から30年経過した今でも取り出しに着手していない。東電などは、2018年度に溶けた核燃料の取り出し方法を決め、2021年にも着手するとしているが、事故から約6年経って核燃料かもしれない姿の一部を見ただけで、広がりも、量も、状態も公表していないのである。

 1~3号機を合わせて、放射性物質が大気中に放出された量については、*2-2のように、ノルウェーの研究チームが、日本政府が2011年6月に発表した推定放出量よりもずっと多いと報告している。これは、世界各地で観測された放射能データを組み合わせて、大気中の放射性物質の量と流れを推定した結果だそうだ。

 さらに、日本政府の主張とは異なり、4号機の使用済み核燃料プールからも大量のセシウム137が放出されていたと報告しており、もっと迅速に対応していれば、これほど大量の放射性物質が放出されずにすんだかもしれないと述べており、私もそのとおりだと思う。そして、原子炉から何が放出されたのかがより重要で、それには原子炉内で何が起きたのかを厳密に知らなければならないが、それがまだ明らかにされていないのである。

 なお、*2-2に、「3月14日の午後、風向きが変わって陸に向かって吹き始め、セシウム137が東北南部から中部地方にまで広がり、15日夜から16日未明にかけて雨が降った栃木県と群馬県の山間部では土壌から比較的高濃度の放射性物質が検出された」と書かれているが、埼玉県では15日夕方からぽつぽつと雨が降り、その時外出していた私の傘は、後に放射線量が非常に高いことがわかった。これは、あらかじめ予報されていれば、外出を控えたり、傘を洗ったりなどの対応ができた筈のものである。

 原発事故による放射能汚染廃棄物は、焼却しても放射性物質が空中に飛び散るためさらに問題なのだが、*2-3には、汚染牧草をすき込んで牧草の堆肥化をすると書かれている。なお、国の指定基準(1キロ当たり8000ベクレル)以下の廃棄物なら何をしてもよいのかと言えば、放射性物質は総量が重要であるため、「400ベクレル以下の牧草はすき込み、400ベクレルを超えるものも堆肥に混ぜ込むことで、ほとんど焼却しないで済む」などというのは、「放射性物質は閉じ込める」という原則的対応からかけ離れた判断なのだ。

 政府は、*2-4のように、福島の復興指針を改定し、除染費用は東電が負担するとの原則を転換して「帰還困難区域」の除染に国費を投入することを閣議決定し、同区域に5年後をめどに避難指示の解除を目指す「特定復興拠点」を設け、除染費用として2017年度予算に約300億円計上するそうだ。これは、フクイチの放射性物質への対応すら決まっていないのに、放射性物質をあまりにも甘く見た決定だ。

 さらに、*2-5のとおり、原発の廃炉費用の一部は、原発を所有しない新電力にも負担させるなどの費用負担をさせ、送電網の使用料として徴収することにしたそうだが、既存の電力会社が積立不足にした過去費用を関係のない新電力に負担させると、電力市場を歪めて市場の自由化に逆行する。それではどういう解決策があるかについては、総括原価方式で消費者の負担によって作ってきた大手電力会社の送電網を別会社化し、シナジー効果の出る会社に出資してもらい、それで得た資金を廃炉費用に充てるのがまっとうな方法だろう。

 その上、*2-6のとおり、1兆円超の資金を投じても稼働のメドが立たなかった高速炉開発を進める方針にしたそうだが、原発事故のリスクは0ではなく、一度起これば取り返しのつかない事態になることが明らかで、再生可能エネルギーの進歩も著しいため、核燃料サイクルは凍結や断念も視野に根本的に再考すべきであり、被爆国としての責任は原爆廃止へのリーダーシップを発揮することだと考える。

 なお、*2-7のように、原発の発電費用を研究してきた立命館大学の大島教授が、原発で一キロワット時の電力をつくるために必要な費用を、実際原価で13.1円と試算し、水力発電11.0円、石炭火力12.3円、LNG火力13.7円など他の発電方法よりも高いとしている。しかし、大島教授も原発と水力・火力の比較しかできていない。これは、「再生可能エネルギーは高い」という神話を信奉し続け、再生可能エネルギーの研究に水を差し続けた日本の政府・メディアの一つ一つの行動の総合的結末である。

(3)世界の再生可能エネルギーの進歩と日本の遅れ
 「太陽光発電の発電コストが石炭火力発電以下になり、長年"コスト高"というデメリットを抱えてきた太陽光発電が、近年、技術の進化と規模の経済性で、コスト競争力のある発電方式となりつつあることが明らかになった」と、*3-1に書かれている。

 太陽光発電は化石燃料を必要とせず、発電時に温室効果ガスや騒音・振動を発生させない、環境負荷の低い発電方式だが、日本では、発電設備のコストが高いと批判ばかりされ、あまり推進されなかった。

 しかし、世界経済フォーラムの報告書によると、オーストラリア、ブラジル、チリ、メキシコなどの世界30カ国以上で、太陽光発電のコストは既に石炭火力以下になったそうだ。日本では太陽光発電のデメリットばかりが強調されて普及が進まなかった結果、発電効率の改善や発電設備の廉価化が進まず、日本のシャープが世界で最初に商品化したにもかかわらず、シャープは破綻しそうになり、台湾企業に買収されて日本企業ではなくなった。これが、日本の政治やメディアの悪い点なのである。

 よい例は、2016年12月、世界で初めてフランスで完成したソーラーパネルを敷設した道路だ。道路は広い面積を持っているため発電量が多く、電気自動車の充電にも適している。また、2015年12月の国連気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)に続き、2016年4月には、インド、オーストラリア、フランス、エチオピア、ブラジルを含む25カ国が、太陽光発電に関する研究開発や普及のために1兆ドル(約114兆円)投資することで合意したとのことだ。

 世界の自然エネルギー導入量は、*3-2のように、過去数年で急速に拡大し、風力発電は5億kW、太陽光発電は3億kW近くに達したそうだ。また、導入量以上に画期的なのは、コストが劇的な低下を続け、風力発電は1kWhあたり3.0セント、太陽光発電も1kWhあたり2.42セントという水準に至り、条件に恵まれた地域の太陽光発電は、火力発電だけでなく、風力発電よりも安くなっていることである。

 「パリ協定」は、今世紀後半には世界の温室効果ガス排出量を実質的にゼロにすることを決め、そのためには、化石燃料から自然エネルギーへの全面的な転換が必要で、現在では、世界のトップ企業が、自らの企業の使う電力を率先して100%自然エネルギーに転換する「RE100」に取組んでいるそうだ。

 「RE100」には、欧米だけでなくインド・中国の企業も参加しているが、日本企業は参加しておらず、日本での自然エネルギー導入が遅れている中で、「RE100」の目標を掲げることに二の足を踏んでいる状況なのだそうだ。パリ協定が発効し脱炭素への転換が求められる中、世界規模でビジネスを展開する企業には、温室効果ガスの排出を大幅に削減すること、その取組として自然エネルギー100%をめざすことが、マーケットでのその企業の評価を左右するようなり、世界の多くのトップ企業が「RE100」に参加しているのは、この動向を熟知しているからだそうである。

 日本のエネルギー政策は、自然エネルギーの導入に消極的であるのみならず、石炭火力の大量の新増設を可能にするなど、「パリ協定」後の世界の流れに逆行している上、送電網を管理する電力会社が自然エネルギーの接続や有効利用に制限を加えるなど、自然エネルギーのコスト低下を阻む多くの障害を作っている。

 また、「ベースロード電源市場の創設」という名目で、原子力や石炭火力の利用を進める政策を経産省が導入するなど、「工業国に公害はつきものだ」「100%完全なことはあり得ない」などの誤った信念を持つリーダーの環境意識の低さと、「空気は汚してもよいが、現在の空気(それも身の廻りのみ)を読むのが最も重要」と考える人々の意識の低さが、日本の環境技術開発の妨げになってきたことは明らかだ。

<東芝の失敗と損失>
*1-1:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12767261.html (朝日新聞 2017年1月27日) 東芝、入札2月上旬にも 損失7000億円見込み 半導体分社
 米国の原発事業で巨額損失を計上する見通しとなった東芝は、半導体事業を分社化してつくる新会社の株式の一部売却に向け、売却先を決める入札を来月上旬にも実施する方針だ。今月27日に開く取締役会で分社化を正式に決め、3月末の臨時株主総会で必要な決議を得る予定だ。現時点で損失額は7千億円前後に拡大する見通しになっている。関係者によると、東芝は当初、損失額を4800億円と見込んでいたが、米国で損失額の確定作業を進める担当部署から、2千億円程度増えるとの見通しが伝えられているという。半導体の分社化では、新会社の株式の2割弱を手放す方向で調整しており、少なくとも2千億円程度の売却益を見込む。2割弱にとどめるのは、新会社が他社の持ち分法適用会社になるのを避け、東芝の主導権を維持するためとみられる。また、東芝のNAND(ナンド)型フラッシュメモリー事業は世界シェアが2割を超える。米ウエスタンデジタル(WD)のような同業大手の場合、出資比率が高くなると独占禁止法上の審査が必要になり、売却に時間がかかる恐れがある。確定作業を進めている米原発事業の損失額次第では、売却する株式の割合を増やす可能性も残る。損失額は、来月14日の昨年4~12月期決算発表と同時に公表する方針。東芝の自己資本は昨年9月末時点で約3600億円しかなく、販売が好調なフラッシュメモリーを軸とした半導体事業の分社化・株式売却が、債務超過の回避策の柱となる見込み。2017年3月期の債務超過を避けるには3月末までに売却益を得る必要があり、入札手続きを急ぐ。入札には、米WDに加え、キヤノンなどの取引先、英ペルミラ、米ベインキャピタルといった投資ファンドなど10社程度が関心を示している。27日の取締役会では、事業や資産の売却、投資の抑制などの対策も議論する見通し。上場グループ会社の株式売却を検討するほか、16年度下半期に約600億円を使う予定だったリストラを先送りするなどして支出を抑える方針。本業での利益の上ぶれなども含め、3千億円規模の損失対策を計画している。

*1-2:http://mainichi.jp/premier/business/articles/20170106/biz/00m/010/001000c
(毎日新聞 2017年1月10日) 「275億円の買収で東芝損失数千億円?」の大疑問
●「数千億円損失?」への疑問(1)
 自社の事業でいきなり「数千億円の損失の可能性」が出てきたら、どんな経営者も平静ではいられないだろう。東芝が昨年12月末に発表した子会社の米原子力大手ウェスチングハウスをめぐる問題は、綱川智・東芝社長ら経営陣にとって降って湧いたような衝撃の出来事だったに違いない。なぜ、こんな事態になったのか。問題は、1年前にウェスチングハウスが原発建設会社、S&W社を買収したことで生じた。ウェスチングハウスは、S&W社とともに、米国で電力会社2社から発注を受けて原発4基の建設を進めてきた。総額2兆円にのぼるプロジェクトで、ウェスチングハウスが原発の設計や主要機器を供給し、S&W社が実際の建設作業にあたる分担だった。4基は当初、2016年に2基、17年に1基、19年に1基というスケジュールで運転開始する予定だった。ところが米規制当局の安全規制強化などの対応で完成が遅れ、運転開始予定は19年に2基、20年に2基になった。規制強化と完成遅れで建設コストは膨らみ、ウェスチングハウスと電力会社が負担をめぐり互いに訴え合う事態になっていた。また、ウェスチングハウスとS&W社も同様にコスト負担をめぐって争っていた。
●買収先は売上高2000億円の企業
 そうしたなか、ウェスチングハウスは15年12月、S&W社を買収した。買収額は2億2900万ドル(当時の為替レートで約275億円)。S&W社の年間売上高は約2000億円。ウェスチングハウスはこの規模の企業を、少額で買収したことになる。ウェスチングハウスは、買収でS&W社との争いについて双方が取り下げ、同時に電力会社との訴訟や争いについても取り下げることで和解に達したと説明した。買収時のS&W社の純資産の査定額は公表されていないが、1億4200万ドル(約170億円)だったと推定される。東芝とウェスチングハウスは、買収額から純資産額を引いた8700万ドル(約105億円)を「のれん」として資産に計上することになった。のれんの資産計上は、S&W社が将来、利益を上げることを前提にしている。ところがそこに大きな落とし穴があった。純資産額が170億円どころか、マイナス数千億円にのぼる可能性が出てきたというのだ。これは次の事情による。
●新たな下請け会社の見積もり
 ウェスチングハウスは買収後、新たに別の米大手エンジニアリング会社を原発建設の下請け会社として現地で工事にあたらせることにした。S&W社の建設作業者は、この下請け会社に移管されることになった。下請け会社は改めて完成までの建設コストの見積もりを行った。そして10月にウェスチングハウスに見積もりの結果を提出した。ウェスチングハウスが精査したところ、それまで想定していた建設コストを大幅に上回ったというのだ。膨らんだ建設コストを前提にすると、S&W社の収支はこの先、大幅に悪化する。この結果、純資産額が、数千億円のマイナスになる可能性が出てきたというのだ。米国での原発事業で数千億円規模の損失が出る可能性があるとして、膨らんだ建設コストのリスクをなぜ、ウェスチングハウスがすべて背負うことになったのか。買収時にS&W社や電力会社との争いを取り下げたことに問題はなかったのか。買収契約に危険を回避する項目を盛り込むことは考えなかったのか。さまざまな疑問が湧いてくる。その疑問の先に生じてくるのは、ウェスチングハウスは本当に今回のリスクを予見できなかったのかという問いだ。そして「数千億円の損失リスク」は、S&W社固有の問題ではなく、原発新設プロジェクトでウェスチングハウス自身が抱えてきたリスクではないのか、という根本の疑問である。

*1-3:http://mainichi.jp/premier/business/articles/20170125/biz/00m/010/017000c (毎日新聞 2017年1月27日) 「東芝7000億円損失」で銀行・取引先に広がる疑心
●半導体事業の入札(1)
 東芝問題が激しく動いている。大手各紙は1月中旬、東芝の子会社である米ウェスチングハウスの原発事業で生じる損失の規模について「最大7000億円」という記事を一斉に報道した。さらに、毎日新聞は1月26日、損失額が「6800億円程度」と詳細な数字を報じた。一方、東芝の主力事業である半導体部門を分社化し、株式の2割弱を売却する方向で入札の手続きが始まったことも各紙で報じられた。いったい東芝に何が起きているのか。損失の規模について「最大7000億円」とされた点について、まず解説しよう。東芝は昨年12月末に、ウェスチングハウスが進めている米国の原子力発電所建設で追加コストが発生し、数千億円の損失が生じる可能性があると発表した。1月に入って、「損失額は4000億~5000億円」という情報が流れた。さらに1月19日に「最大7000億円」という記事が出たのだ。
●「7000億円」は米会計事務所が示した数字!?
 4000億円から7000億円まで大きな開きがあるが、これはどういう数字なのか。「7000億円」は、米国の会計事務所プライスウォーターハウスクーパース(PwC)がウェスチングハウスに対して示している数字だと関係者は説明する。これに対し、ウェスチングハウス側は4000億円から5000億円程度を主張しており、両者の間で協議が続いている、というのだ。PwCは世界4大会計事務所の一つ。4大事務所のなかでも筆頭格だ。日本ではPwCあらた監査法人と提携している。不正会計の発覚で、それまで東芝の監査を担当していた新日本監査法人は16年3月期限りで監査を降りた。その後釜は、PwCあらた監査法人になった。それと同時に、ウェスチングハウスの会計監査は、新日本監査法人と提携していたアーンスト・アンド・ヤング(EY)から、PwCに交代した。ウェスチングハウスは米原子力事業の損失について、そのPwCの監査を受けているのだ。
●東芝は2月14日に確定値を公表
 東芝の不正会計問題をめぐっては、「監査法人はなぜ見過ごしたのか」と批判の声が上がった。注目度の高い案件であり、PwCは厳しい監査に臨んでいると言われる。その結果が「7000億円」という主張になっている可能性がある。ただ、この数値も流動的だと言われている。東芝の正式な発表が遅れているなかで、額が少しずつ膨らんできた。銀行や取引先に疑心暗鬼が広がらないわけがない。東芝は1月24日、プレスリリースを出し、損失額の確定や、第3四半期決算数値について2月14日に公表することを明らかにした。その際、合わせて損失発生の原因と再発防止策についても報告するという。公表日を示すことで沈静化を図ったとみられる。
●格付け会社が再び格下げ
 そのプレスリリースが出た同じ1月24日、米格付け会社のスタンダード・アンド・プアーズが、東芝の長期会社格付けを「シングルBマイナス」から「トリプルCプラス」に1段階引き下げた。シングルBもトリプルCも「投機的」な位置づけだ。今後も格下げ方向であることは変わらないという。2017年1月25日付の毎日新聞東京朝刊  スタンダード・アンド・プアーズは格下げの理由として、「株主資本の大幅な毀損(きそん)が不可避と推定されることから、債務履行を長期的に継続することに対する不透明感が従来より強まった」と説明している。そして、こうした動きの一方で、東芝の主力事業である半導体部門を分社化し、一部株式を入札で外部に売却する手続きが始まった。売却先候補として、投資ファンドや事業会社の名前がキヤノンなど10社以上上がっているのである。

*1-4:http://digital.asahi.com/articles/ASK1W5FT8K1WULFA025.html?iref=comtop_list_biz_n04(朝日新聞 2017年1月27日)東芝、海外の原発建設から撤退へ 社長「あり方見直す」
 東芝は27日、米国で巨額損失を計上する見通しとなった原発事業について、海外の建設工事から撤退するなど、大幅に見直す方針を表明した。同事業で損失が急拡大する事態の再発を避ける狙い。半導体事業の分社化も27日の取締役会で正式決定。2017年3月期の債務超過回避を目指し、入札手続きを急ぐ。この日記者会見した綱川智社長は、原発事業について「エネルギー(事業)のなかで最注力としたが、変えていく」「海外事業は今後のあり方を見直していく」と強調した。巨額の損失をなかなか把握できなかった反省から、社長直属の事業に変更して管理を強化。今後の受注では、設計や原子炉の製造・納入などに専念し、コストが見通しにくい建設工事から手を引いて「リスク遮断する」(綱川社長)。30年度までに海外で原発45基以上の受注を見込む従来計画も、基数を含めて見直す方針を示した。半導体事業では、スマートフォンなどに使われる主力のNAND(ナンド)型フラッシュメモリー事業(従業員約9千人)を分社化。3月下旬の臨時株主総会で株主の承認を得て同月末に実施する予定。新会社の株式の一部売却は「20%未満が基本」(綱川社長)としている。米原発事業での損失額は、現時点での精査では7千億円前後に拡大する見通し。東芝は昨年4~12月期決算を発表する来月14日に、確定した損失額を公表する。半導体事業の分社化で2千億円超の利益を見込むが、債務超過が回避できるかどうかについて、綱川社長は「それ(回避)に向けて資本増強をあらゆる手段でとりたい」などと述べるにとどめ、資本増強策や原発事業見直しの詳細は、来月14日に説明する考えを繰り返し強調した。

(フクイチとその後の状況)
*2-1:http://digital.asahi.com/articles/ASK1Z5Q0KK1ZULBJ00F.html?iref=comtop_8_07 (朝日新聞 2017年1月31日) 核燃料?飛散、取り出し困難 チェルノブイリ以来の事態
 東電は宇宙線を利用した昨年の透視調査で、2号機の核燃料は大部分が原子炉圧力容器の中に残っていると推定していた。圧力容器直下にカメラを入れても、溶け落ちた核燃料が見える可能性は低いとみていた。だが、カメラの視野には、溶けた核燃料のような塊がそこかしこに飛び散っている様子が浮かび上がった。そこから分かることは、これからの核燃料取り出しや廃炉の困難さだ。溶けた核燃料が原子炉の外に出た事故は、これまで旧ソ連のチェルノブイリ原発事故以外にない。チェルノブイリ原発では、事故後30年が経過した今も、取り出しに着手していない。東電などは、2018年度に溶けた核燃料の取り出し方法を決め、21年にも着手するとしている。だが、事故から約6年で、核燃料かもしれない姿の一部が見えただけだ。広がりも、量も、状態もわからない。核燃料や、核燃料がこびりついた金属をどう切り出すのか。作業員の被曝(ひばく)をどう抑えるのか。取り出した燃料をどこに保管し、いつ処分するのか。3基がメルトダウンした世界でも例のない廃炉作業は、まだ、何一つ決まっていない。

*2-2:http://www.natureasia.com/ja-jp/nature/specials/contents/earthquake/id/nature-news-102711#fig1 (Nature 2011年10月27日号 Geoff Brumfiel) 放射性物質はどのくらい放出された?
 ノルウェーの研究チームにより、新たに福島第一原発事故で大気中に放出された放射性物質の総量が計算され、政府が6月に発表した推定放出量よりもずっと多いという報告があった。世界各地で観測された放射能データを組み合わせて大気中の放射性物質の量とその流れを推定した結果、福島第一原子力発電所の事故では、政府の推定よりもはるかに大量の放射性物質が放出されていたという研究が、Atmospheric Chemistry and Physics に発表された1。さらに、日本政府の主張とは裏腹に、4号機の使用済み核燃料プールから大量のセシウム137(半減期が長く、長期にわたって環境を汚染する物質)が放出されていたとも報告しており、もっと迅速に対応していれば、これほど大量の放射性物質が放出されずにすんだかもしれないと述べている。論文はオンライン掲載され、現在、公開査読を受けている。研究チームを率いたのは、ノルウェー大気研究所(シェラー)の大気科学者 Andreas Stohl だ。Stohl は、自分たちの分析は、これまで行われてきた福島第一原発から放出された放射性物質の量についての調査研究の中で、最も包括的なものであると自負している。スウェーデン防衛研究所(ストックホルム)の大気モデル作成の専門家 Lars-Erik De Geer は、今回の研究には関与していないが、「非常に価値のある成果です」と評価している。オンライン特集 原発事故による放射性物質の放出過程の再現は、日本国内をはじめ世界各地にある数十か所の放射性核種モニタリングステーションで観測されたデータに基づいて行われた。その多くは、包括的核実験禁止条約機構(オーストリア:ウィーン)が核実験の監視のために運用している世界規模での観測ネットワークに属する。このデータに、カナダ、日本、ヨーロッパの独立観測ステーションのデータも付け加え、これらをヨーロッパと米国が保管している広域気象データと組み合わせた。ただし、Stohl は、自分たちが作成したモデルは完全にはほど遠いものだとして注意を促している。原発事故発生直後の測定データが非常に少ないうえ、一部のモニタリングポストは放射能汚染がひどく、信頼できるデータが得られなかったからである。より重要なのは、原子炉から何が放出されたのかを知るためには、原子炉内で何が起きたのかを厳密に知らなければならないのだが、いまだ明らかになっておらず、永久に謎のままかもしれないという事実である。「チェルノブイリ事故から25年後もたった今でも、その推定値は不確かな部分が非常に多いのです」と Stohl は言う。それでも、今回の研究は、福島第一原発事故を全般的に調査したものであり、De Geer は、「Stohl らは真に地球規模の視点から、現在入手できるかぎりのデータを利用して推定しています」と話す。
●政府の発表
 3月11日の地震後に原発で起こった出来事については、すでに日本の研究者たちが詳細な経緯を推定している。福島第一原発電の6機の原子炉が激しい揺れに見舞われた50分後、巨大津波が襲来し、緊急時に原子炉を冷却するための非常用ディーゼル発電機が破壊された。それから数日の間に、地震発生時に稼働していた3機の原子炉が過熱して水素ガスを発生し、次々に水素爆発を起こした。定期点検のために停止していた4号機では、核燃料は使用済み核燃料プールに貯蔵されていたが、3月14日にこのプールが過熱し、おそらく数日にわたり建屋内で火災が発生した。一方で、原発から放出された放射性物質の量の解明は、事故の経過の再現に比べてはるかに難しい。政府が6月に発表した『原子力安全に関するIAEA閣僚会議に対する日本国政府の報告書 ―東京電力福島原子力発電所の事故について―』では、今回の事故により放出されたセシウム137は1.5×1016ベクレル(Bq)、キセノン133は1.1×1019Bqと推定している2。セシウム137は半減期30年の放射性核種で、原発事故による長期的汚染のほとんどの原因となっている。一方、キセノン133はウラン235の崩壊によって放出される半減期約5日の放射性核種であり、原発事故や核実験の際、初期に観測される。ところが、Stohl らが原発事故の再現結果に基づいて推定した放出キセノン133の量は1.7×1019Bq、セシウム137の量は3.5×1016 Bqで、政府の見積もりよりキセノンが約1.5倍、セシウムが約2倍となった。キセノン133の放出量は、チェルノブイリの総放出量1.4×1019Bqよりも多いことになる。だが、De Geer によれば、チェルノブイリでは爆発した原子炉が1機であったのに対して、福島の事故では3機も水素爆発したことで説明できるという。また、キセノン133は生体や環境に吸収されないため、健康に深刻な影響を及ぼすおそれはない。 問題なのは、数十年にわたり環境に残存するセシウム137だ。Stohl らのモデルの値は、チェルノブイリ事故での放出量の約1/2に相当する。De Geer は、このような高い値が出たことを懸念している。今後、セシウム137が人々の健康に及ぼす影響を明らかにするためには、現在行われている地表での測定を進めていくしかない。Stohl は、自分たちの推定値が政府の発表と食い違いっているのは、今回の調査ではより多くのデータを使用したことが原因の1つであるという。政府の推定の基礎となったデータは、主として日本国内のモニタリングポストによるものであり3、風に乗って太平洋を越え、北米やヨーロッパに到達した膨大な量の放射性物質は考慮されていないのだ。神戸大学の放射線物理学者で、福島周辺の土壌汚染を測定している山内知也(やまうちともや)は、「事故の本当の規模と特徴を明らかにするためには、太平洋上に出ていった放射性物質も検討する必要があります」と言う。Stohl は、政府の依頼を受けて公式な推定値を出した研究チームを非難しているのではない。むしろ、「できるだけ早く結果を出す必要があったのでしょう」と慮っている。群馬大学の火山学者で、自らも原発事故のモデルを作成した早川由紀夫(はやかわゆきお)は、「確かにこの数値だけを見れば、両者は大きく違うでしょう。けれども、どちらのモデルにもまだまだ不確実な要素があり、実際には2つの推定は非常に近いのかもしれませんね」と言う。さらに、Stohl らは、4号機の使用済み核燃料プールに貯蔵されていた核燃料が、莫大な量のセシウム137を放出していた可能性を指摘している。政府はこれまで、プールからは放射性物質はほとんど漏れ出していないと主張してきた。しかし、研究チームのモデルでは、プールへの放水をきっかけに原発からのセシウム137の放出が激減したことが、はっきり示されている(図「原発事故の経過」参照)。つまり、もっと早い段階から4号機プールへの放水を行っていれば、放射性物質の放出をもっと抑制できたかもしれないのだ。しかし、政府は、使用済み核燃料プール自体に大きな損傷はなく、使用済み核燃料が重大な汚染源になったとは考えられないと主張している。政府による公式推定値の算出にかかわった日本原子力研究開発機構(茨城県東海村)の茅野政道(ちのまさみち)は、「4号機から放出された放射性物質は多くはなかったと思います」と言う。だが De Geer は、核燃料プールの関与を含めた今回の新しい分析は、「説得力があるように見えます」と語る。さらに今回の分析は、もう1つ新たなデータを提示している。地震の直後、津波が福島第一原発に襲いかかる前から、キセノン133が漏れ始めていたというのだ。つまり、原発は、津波が襲来する前から、地震によって損傷していたことになる。政府の報告書でも、福島第一原発電を襲った揺れの大きさが、原発設計時に想定されていた揺れを上回っていたことを認めている。反原発の活動家は、以前から、政府が原発を認可する際に地質学的な危険を十分に考慮していないと主張しており(Nature 448, 392-393; 2007)、今回のキセノンの大量放出は、原発の安全性についての評価方法の再考を促すことになるかもしれないと、山内は言う。この事故で、首都圏はどうだったのか。実は、原発事故により甚大な被害を受けるおそれがあった。事故直後の数日間は、風は海に向かって吹いていたが、3月14日の午後、風向きが変わって陸に向かって吹き始め、セシウム137が東北南部から中部地方にまで広がっていった(図「放射性物質の拡散」参照)。実際、15日夜から16日未明にかけて雨が降った栃木県と群馬県の山間部では、のちに土壌から比較的高濃度の放射性物質が検出された。一方、首都圏では、そうした高濃度の放射性物質が上空を通過したときに、たまたま雨が降らなかったことが幸いした。「この時期に雨が降っていたら、東京も今よりずっと深刻な事態になっていたかもしれません」と Stohl は言う。(編集部註:ただし、(独)国立環境研究所の空間線量測定とシミュレーションによれば、21日から22日にかけても放射性物質が南関東に流れ込んだことが示されている。このときは、雨が降っていたため、南関東でも一部の地域で比較的高い線量が観測されていると思われる。)

*2-3:http://mainichi.jp/articles/20161229/ddl/k04/040/044000c (毎日新聞 2016年12月29日) 東日本大震災 .福島第1原発事故 放射能汚染廃棄物 焼却以外の「出口」模索 反対2市、すき込みや堆肥化/宮城
 東京電力福島第1原発事故による放射能汚染廃棄物の試験焼却を協議した27日の市町村長会議は「半年以内に再協議する」と結論を先送りした。この席で県が求める「年明けからの実施」に異を唱えた登米市の布施孝尚市長は28日の取材に、近く汚染牧草のすき込み実証実験を始める意向を明らかにした。会議で焼却反対を明言した栗原市も牧草の堆肥(たいひ)化を続ける方針で、汚染廃棄物の処理問題に独自の「出口」を描いたことが県方針に反する自治体の主張に結びついたといえる。布施市長は会議で、すき込みの検証作業を進める考えを示し「いましばらく時間をいただきたい」と発言した。登米市にある国の指定基準(1キロ当たり8000ベクレル)以下の廃棄物約4700トンのうち約3500トンは、堆肥化やすき込みが許容される同400ベクレル以下。布施市長によると、市役所内部で検討したところ、「400ベクレル以下の牧草はすき込み、400ベクレルを超えるものも堆肥に混ぜ込むことで、ほとんどを焼却しないで済む」との見通しがたったという。市関係の草地でさまざまな条件を設定しながら、牧草をすき込む準備もほぼ終了した。検証がまとまる時期に関連して「『半年以内』は知事のお考えであり、牧草の最初の収穫が間に合うかわからない。(次回市町村長会議までに)十分検証ができなければ、期間の延長を求めることもある」と述べた。一方、栗原市は12月議会で汚染牧草の堆肥化を本格的に進めるための予算案を認められなかったが、年度内に一部を修正し改めて提案する構えだ。販売を含め、堆肥の利用方法も検討に入るという。県議の一人は「一斉焼却に固執するのではなく、地域ごとに実情にあった出口を模索することが必要。県もそのために必要な支援策を国に働きかけるべきだ」と話す。

*2-4:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/388663 (佐賀新聞 2016年12月21日) 福島除染に国費300億円 復興指針閣議決定、2017年度帰還困難区域で
 政府は20日、東京電力福島第1原発事故で多大な被害を受けた福島の復興指針を改定し、閣議決定した。除染費用は東電が負担するとの原則を転換し「帰還困難区域」の除染に国費を投入。同区域に5年後をめどに避難指示の解除を目指す「特定復興拠点」を設け、除染費用として2017年度予算に約300億円を計上する。同区域で本格的な除染はされておらず、方針決定は初めて。関連法改正案を来年の通常国会に提出する。安倍晋三首相は官邸で開かれた原子力災害対策本部会議で「一日も早い福島の復興、再生に向け、道筋を具体化していただきたい」と述べた。改定指針は政府内での有識者を交えた検討会や国会での議論を経ていない。国民負担による東電救済との見方が多く、批判も予想される。同拠点の除染費用は5年間で3千億円規模の見通しだが整備が遅れればさらに増額する可能性がある。国費投入の背景には、費用が当初の政府試算の2兆5千億円から4兆円に拡大したことがある。試算には、放射線量が高い帰還困難区域の除染費用は含まれていない。除染関連の特別措置法は「費用は東電負担」と定めており、国費投入はできない仕組み。このため政府は、復興拠点に居住できるようにするインフラ整備に、周辺の表土のはぎ取りや樹木の伐採などの作業を組み込み、事実上の除染を「公共事業」と位置付ける。この枠組みが東電救済との批判をかわすため、福島復興再生特別措置法を改正して必要な措置ができるようにする。改定指針では、復興拠点以外の帰還困難区域も将来的な住民帰還を目指すとしている。国費での除染が増えれば、国民負担は数兆円規模に上る恐れもある。国費負担の理由については、帰還困難区域には長期間戻れないとの前提で東電が住民に賠償してきたとして、改定指針に「東電に求償せず国が負担する」と明記した。

*2-5:http://megalodon.jp/2016-1211-2210-32/ibarakinews.jp/hp/hpdetail.php?elem=ronsetu (茨城新聞論説 2016年12月11日) 原発廃炉の費用負担 電力市場をゆがめるな
 経済産業省の委員会は、原発事故の賠償金や電力会社が原発早期廃炉を決めた場合に生じる費用の一部を、原発を所有しない新電力にも負担させるなどの提言案をまとめた。経産省はこれを基に2017年度から順次、政策化することを目指す。費用は、既存の電力会社が所有する送電網の使用料(託送料)の形で徴収する方針で、最終的には電気料金に上乗せされて消費者負担となる。これは原発を所有する電力会社や事故を起こした東京電力への露骨な支援策だ。始まったばかりの電力市場の全面自由化の流れに逆行し、市場をゆがめる政策は受け入れがたい。経産省が公表した試算では、東京電力福島第1原発事故の損害賠償の費用は当初の見込みの5兆4千億円から7兆9千億円に拡大する。これまで、費用は東京電力や原発を所有する既存電力会社が負担してきたのだが、経産省は増加分2兆5千億円のうち2400億円を新電力に負担させる方針だ。経産省はまた、事故を起こしていない原発を、電力会社が当初の予定より早く廃炉にした場合に生じる費用の一部負担も新電力に求める。「過去にすべての需要家が安い原発の電力を利用してきたから」というのが広範囲の負担を求める理由だが、これらの費用は、原発運転で利益を得てきた電力会社が負担すべきものである。その原則をないがしろにし、消費者負担を求めることは、競争の中で不利になりつつある原発を所有する既存電力会社への保護策にほかならない。原発の利益はすべて享受し、経営上の判断の誤りによって生じたコストは消費者に転嫁するということが、市民の支持を得られるとは思えない。ただでも不透明な託送料への安易な上乗せを認めれば、今後に予想される賠償費用のさらなる増大などによって、電気料金が際限なく上昇するリスクも生まれる。経産省は、原発や石炭火力などからの電気を供出させ、新電力に優先的に供給する「ベースロード電源市場」を創設する方針だ。原発関連の費用負担に反対する新電力への懐柔策だろうが、これも、生まれたばかりの自由な電力市場をゆがめる政策だ。「原発と無縁な電気を使いたい」との消費者の希望に応え、原発の電力に手を出さない新電力は何のメリットも享受できずに、託送料を通じた負担だけを背負わされることになる。電力システム改革は、既存電力会社が送電網も所有する現在の仕組みを改めて、送電網を独立した企業の所有とし、すべての発電事業者が公平なルールの下でそこに電力を供給するという透明性の高い競争環境を確保することが筋だ。政府や電力会社は「原発の発電コストは安い」と主張するのだから、他の発電手法と公平な形で競争をしても何の問題もないはずだ。そもそも今回の議論の在り方自体に大きな問題がある。経産省が原発に好意的な識者や関連業界の代表を勝手に選んだ委員会で議論が進められ、一部は非公開で行われた。消費者を含めた広い議論への参加はおろか、国会の関与すらまったくないまま、国の将来を左右するエネルギー政策上の重要な改変を決めることは許されない。

*2-6:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12771846.html
(朝日新聞社説 2017年1月30日) 核燃料サイクル 再処理工場を動かすな
 高速増殖原型炉「もんじゅ」の廃炉が昨年末に決まった。計画から半世紀、1兆円超の資金を投じてもフル稼働のメドが立たなかっただけに、当然の帰結である。しかし政府は成算もないまま、再び高速炉開発を進める方針を決めた。原子力工学者らからなる国の原子力委員会は今月、新たな高速炉開発ではコスト面の課題を重視するべきで、急ぐ必要はないという趣旨の見解をまとめた。もんじゅの二の舞いを恐れての警告である。この高速炉ももんじゅ同様、核燃料サイクルの中核に位置づけられる。通常の原発の使用済み核燃料を再処理してプルトニウムを取り出し、それを高速炉などで燃やすという構想だ。プルトニウムは原爆の原料になる。高速炉の実用化が見通せない以上、危険なプルトニウムを増やすべきではない。青森県六ケ所村では使用済み燃料の再処理工場が建設中で、2018年度上期に稼働する予定だが、操業を中止すべきだ。その上で、核燃料サイクル全体について、凍結や断念も視野に、根本的に再考することを政府に求める。将来世代を含む国民への責任が問われている。
■経済性に疑問符
 天然のウランを加工して作った燃料を原発で燃やし、使用済み燃料はすべて再処理する。取り出したプルトニウムをウランと混ぜたMOX燃料にする。政府は長年、そうした全量再処理路線を掲げてきた。最大の誤算は、ウランが枯渇する心配は当分ないとわかり、価格も安定していることだ。六ケ所再処理工場の建設費は93年の着工以来、2兆2千億円に達する。完工時期は20回以上、延期されてきた。トラブル続きで稼働の先延ばしを重ねたもんじゅと同じ構図だ。大手電力など原子力事業者の共同子会社である日本原燃が建設主体で、費用は電気料金でまかなわれてきた。建設費を含む総事業費は約12兆6千億円と見積もられている。再処理の手間がいるMOX燃料が高くつくのは明白だ。経済性を重くみた米英独などは高速炉から撤退し、プルトニウムはもっぱら廃棄物扱いしている。プルトニウムには核兵器拡散問題がつきまとう。高速炉開発を続けているのが、ロシアや中国、フランス、インドと核保有国ばかりなのは偶然ではない。日本は国内の研究施設や英仏への委託で見切り発車的に再処理を進めてきた。計算上、原爆6千発分に当たる約48トンものプルトニウムを持っている。
■被爆国としての責任
 余剰なプルトニウムは持たないという核不拡散の国際規範に照らし、とりわけ唯一の戦争被爆国として、早急に保有量を減らすことが求められている。MOX燃料を原発で燃やすプルサーマル発電もあるが、四国電力の伊方原発3号機で実施されているだけで、プルトニウムは年に0・1トンほどしか減らない。原発の再稼働がどんどん進み、プルサーマルが広がるという見込みも立っていない。日本のプルトニウム現有量は六ケ所村の工場が約8年フル稼働した時の生産量にあたる。消費が進まないまま工場を動かせば、日本の核不拡散や核廃絶への姿勢まで疑われかねない。安全面の懸念も残る。六ケ所工場には使用済み燃料が3千トン近くある。大規模な火災や核分裂の連鎖反応が起きれば、放射性物質の放出リスクは原発以上とも言われる。昨年12月以降、原燃社内での安全上の虚偽報告や非常用発電機の故障、雨水の流入、核燃料物質の不適切保管が次々に発覚した。
■しがらみ超え再考を
 もんじゅ廃炉を待つまでもなく、サイクル構想には大きな無理があった。福島第一原発の事故後、長く原子力政策の司令塔役を務めてきた原子力委員会はサイクルの費用を試算し、再処理工場を稼働しないことも含めて政策の選択肢を検討する議論に踏み込もうとした。だが、原子力委の権限縮小や政権交代があり、実を結ばなかった。民主党政権下で「責任を持って議論する」(革新的エネルギー・環境戦略)とされたサイクル政策は、安倍政権下では「再処理やプルサーマル等を推進する」(エネルギー基本計画)と先祖返りしている。原子力委は今月の見解の中で、サイクル政策に「戦略的柔軟性の確保」を求め、使用済み核燃料を再処理せず長期保管する中間貯蔵の強化を推した。再処理・サイクル路線への慎重姿勢が強くにじむ。核燃料サイクルの抜本見直しは簡単ではない。国のエネルギー政策に直結し、関連施設がある各地の地域づくりにも影響する。青森県は再処理を条件に使用済み燃料を受け入れてきた。それでも今、立ち止まらなければ、国民全体が大きなつけを背負うことになりかねない。もんじゅ廃炉という、部分的な手直しですませてはならない。

*2-7:http://www.tokyo-np.co.jp/article/economics/list/201612/CK2016121102000125.html?ref=hourly (東京新聞 2016年12月11日) 経済:事故処理費増え「原発は高い」 立命館大教授・大島堅一氏に聞く
 原発の発電費用を研究してきた立命館大学国際関係学部の大島堅一教授が、原発で一キロワット時(エアコン一時間分)の電力量をつくるために必要な費用を、実際にかかってきた費用を基に「一三・一円」と試算した。政府が九日にまとめた福島第一原発の処理費用二一・五兆円を反映した。本紙のインタビューで、政府の「最大でも一〇・四円で、さまざまな発電方法の中で最も安い」とする試算を「架空の前提に基づくため実態を反映していない」と否定した。大島氏は「原発は高い」と説明する。現実に東京電力は必要な費用を払えない状態のため、「資本主義のルールに従って破綻処理したうえ、株主にも責任をとらせて財産を処分、それでもお金が足りない場合は国が責任を持って税金などを充てるべきだ」と提言。ほかの大手電力会社の原発への支援策もやめるべきだと指摘した。立命館大国際関係学部の大島堅一教授が試算した方法は明快だ。原発の建設費や投じられてきた税金、福島第一原発の賠償に充てられたお金など、実際にかかった費用を積み上げ、原発が過去につくった発電量で割った。すると、一キロワット時当たりの発電費用は一二・三円だった。さらに、経済産業省が九日、原発の事故処理費が二一・五兆円へと倍増する試算を示したため、これを反映させると一三・一円になったという。一方、経産省はこの二一・五兆円を考慮しても、原発の発電費用は一〇・二~一〇・四円にとどまると計算した。二〇一五年に試算した一〇・一円とほぼ変わらず、水力発電(一一・〇円)などほかの発電方法を下回って最も安いとの説明を続ける。経産省と財界人らでつくる「東京電力改革・1F(福島第一原発)問題委員会」の伊藤邦雄委員長(一橋大大学院特任教授)も「原発は最も効率的な発電方法だ」と語る。委員会の議論では「事故があっても安いということをもっと広報するべきだ」という意見があったという。この食い違いについて、大島氏は「政府の試算は『モデルプラント方式』といって、建設費の安い原発が事故もなく順調に稼働し続けるという理想的なシナリオを描いた計算。だから実際にかかった費用をそのまま反映するのではなく、仮定を置いて数字を変えるので安く見せるよう操作できる」と指摘する。例えば、日本の原発は稼働年数が平均三十年の時点で三基の炉心が溶融する「過酷事故」が起きた。十年に一基で事故が起きる確率だ。しかし政府試算は事故はほとんど起きない前提。このため福島第一原発にかかる費用がいくら膨らんでも、政府の試算にはほぼ影響しない。国民負担が増えているのに、政府が「原発は安い」と主張し続けるからくりはここにある。また、震災後は原発に厳しい安全対策が求められるようになり、建設費は世界的に高騰している。しかし、政府試算の前提は従来の建設費と同じ。大島氏は「政府試算の建設費の前提を、英国で新設されるヒンクリーポイント原発の建設費に置き換えただけでも、発電費用は一七・四円に跳ね上がる」と分析する。石炭火力(一二・三円)はもちろん、液化天然ガス(LNG)火力(一三・七円)より高くなる。ほかにも、政府が着手しようとしている次世代の原子炉「高速炉」の開発に投じられる税金は規模すらつかめない状態で、政府試算に反映されている金額を大幅に超えることは確実だ。大島氏は「原発は高い」と断言。「原発を続けるという選択肢があってもいいが、そのためには『原発は安い』という架空のシナリオではなく、客観的なデータを国民に示して判断を仰ぐべきだ」と語った。
<おおしま・けんいち> 一橋大大学院経済学研究科博士後期課程単位取得退学、高崎経済大経済学部助教授などを経て現職。専門は環境経済学。著書に「原発のコスト」(岩波書店)など。

<世界の再生可能エネルギーと日本>
*3-1:http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2017/01/post-6741.php (Newsweek 2017.1.17)太陽光発電の発電コストが石炭火力発電以下に。ソーラーが「お得」な時代へ
<長年"コスト高"という大きなデメリットを抱えてきた太陽光発電が、近年、技術の進化と規模の経済性で、コスト競争力のある発電方式となりつつあることが明らかになった>
 太陽光発電は、化石燃料を必要とせず、発電時に温室効果ガスや騒音、振動などが発生しない、環境負荷の低い再生可能エネルギーの発電方式だが、発電設備のコストが比較的高いため、発電量あたりのコストが従来の火力発電に比べて高くなりがちであった。このように長年"コスト高"という大きなデメリットを抱えてきた太陽光発電だが、近年、技術の進化などに伴って、コスト競争力のある発電方式となりつつあることが明らかになっている。
●世界30カ国以上で、太陽光発電コストは石炭火力発電以下に
 世界経済フォーラムの報告書では、オーストラリア、ブラジル、チリ、メキシコなど、世界30カ国以上で、太陽光発電の発電コストが、石炭火力発電以下に低下しており、2020年頃までに、同様の現象が世界の約3分の2の国々に広がると予測している。発電所の設計、建設から運用、廃止までのコストを総発電量で割った「均等化発電原価(LCOE)」で比較すると、石炭火力発電では、メガワット時のコストが100ドル前後で推移してきた一方、太陽光発電は、10年前の600ドルから100ドル以下へと6分の1にまで縮小した。太陽光発電の発電コストが低下した要因として、発電効率の改善と発電設備の廉価化が挙げられる。米国の国立再生可能エネルギー研究所(NREL)によると、ソーラーパネルの変換効率は、20年前の15%から、現在、46%にまで上昇。また、生産プロセスの改善や規模の経済性により、発電設備の製造コストが大幅に削減され、太陽光発電の発電コストを押し下げている。太陽光発電の発電コスト低下は、新興国でも顕著に認められる。ブルームバーグ・ニュー・エナジー・ファイナンス(BNEF)によると、中国、インド、ブラジルなど、非OECD加盟国58カ国では、2016年時点で、太陽光発電導入コストが165万ドル/MWとなり、風力エネルギーをわずかに下回った。また南米チリでは、太陽光発電業者が29.1ドル/MWhの条件で政府と売電契約を設定した事例が話題となっている。
●フランスで世界で初めて、ソーラーパネルを敷設した道路が完成
 規模を問わず、発電効率が一定な太陽光発電は、大規模な発電所からスマートフォン向けの充電器まで、様々に導入できるのも特徴だ。たとえば、フランスでは、2016年12月、世界で初めて、ソーラーパネルを敷設した道路が完成。英国では、2017年1月から、電車の側面にソーラーパネルを装着し、太陽光エネルギーを電力として利用する調査プロジェクトが始動している。いわずもがな、地球温暖化防止の観点からも、太陽光発電は有力な発電方式だ。2015年12月の国連気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)に続き、2016年4月には、インド、オーストラリア、フランス、エチオピア、ブラジルを含む25カ国が、太陽光発電に関する研究開発や普及のために1兆ドル(約114兆円)を投資することで合意した。太陽光発電のコスト競争力が高まるにつれて、先進国、新興国を問わず、日射量の多い国・地域を中心に、太陽光発電への投資が多様に増え、太陽光エネルギーの活用は、ますます広がっていきそうだ。

*3-2:http://www.renewable-ei.org/column/column_20170105.php (自然エネルギー財団常務理事 大野輝之 2017年1月5日) 自然エネルギーが脱炭素社会への扉を開く―2017年、自然エネルギー100%への転換を日本からも
●自然エネルギー発展の画期となった2016年
 世界の自然エネルギー導入量は過去数年、急速に拡大してきました。2016年末の導入量はまだ明らかになっていませんが、風力発電は5億kW、太陽光発電は3億kW近くに達したのではないかと見込まれます。5年前の2011年末と比較すると、風力は2倍以上、太陽光は4倍以上という高い水準です。昨年の自然エネルギーの発展に関して、導入量の大きさ以上に画期的だったのは、そのコストが劇的な低下を続けたことです。風力発電は、既に昨年1月にモロッコで行われた入札で1kWhあたり3.0セントというレベルまで低下していましたが、太陽光発電も昨年中に世界各地で行われた入札で、次々に最安値を更新し、9月にアブダビで行われた入札では、2.42セントという水準に至りました。今や日照時間など条件に恵まれた地域では、太陽光発電は従来からの火力発電だけでなく、風力発電よりも安い電源になっているのです。自然エネルギーの発電コストの低下は今後も続くと予測されています。国際再生エネルギー機関(IRENA)が昨年6月に公表した報告書(“THE POWER TO CHANGE”)では、2015年から2025年までに、大規模太陽光発電の導入コストは、世界平均で57%下落するとしています。
●世界のトップ企業は自然エネルギー100%をめざす
 昨年11月に発効した「パリ協定」は、今世紀後半には世界の温室効果ガスの排出量を実質的にゼロにすることを決めています。排出ゼロを達成するためには、エネルギー利用の効率化とともに、使用するエネルギーを化石燃料から自然エネルギーに全面的に転換する必要があります。今、世界のトップ企業の中で広がっているのは、自らの企業の使う電力を、率先して100%自然エネルギーに転換する「RE100」という取組みです。「RE100」には、アップル、グーグル、フェイスブックなどのIT企業やゴールドマンサックスやバンクオブアメリカなどの金融機関、更にはGM、コカコーラ、ヒューレットパッカードなどの名だたる世界のトップ企業が80社以上も参加しています。グーグルが今年中には100%の達成を見込むなど、これらの企業は積極的な自然エネルギー開発や調達を進めています。
●2017年:日本の未来を開くエネルギー政策への転換を
 「RE100」には、欧米だけでなくインドや中国の企業も参加していますが、残念ながら現在までのところ、日本企業は参加していません。日本企業の中にも、自然エネルギー100%を目指そうとしている会社はあるのですが、日本での自然エネルギー導入が立ち遅れている中で、「RE100」の目標を掲げることに二の足を踏んでいる状況です。パリ協定が発効し脱炭素への転換が求められる中で、世界規模でビジネスを展開する企業には、温室効果ガスの排出を大幅に削減すること、その代表的な取組として自然エネルギー100%をめざすことが、マーケットでのその企業の評価を左右するようなってきています。世界の多くのトップ企業が「RE100」に参加しているのは、こうした動向を熟知しているからに他なりません。また冒頭に見たように、欧米などでは自然エネルギーコストが安くなってきているため、自然エネルギー100%への転換が経済的にも大きな負担を伴うものではなくなってきているのです。日本のエネルギー政策は自然エネルギーの導入に消極的であるだけでなく、石炭火力発電の大量の新増設を可能にするなど、「パリ協定」後の世界の流れに逆行しています。送電網を管理する電力会社が、自然エネルギーの接続や有効利用に制限を加えるなど、日本には自然エネルギーのコスト低下を阻む様々な障害が残っています。一方、「ベースロード電源市場の創設」という名目で、石炭火力の利用を進める政策も導入されようとしています。エネルギー政策を転換し、日本の企業が石炭火力からの電力を利用しないで済むようにすること、自然エネルギー100%への転換を容易にできるようにすることは、脱炭素経済への転換が進む世界で日本企業が活躍するためにも必要になってきています。毎年恒例の自然エネルギー財団の国際シンポジウム"REvision"は、今年は3月8日に「自然エネルギーが切り拓く未来」をテーマに開催いたします。世界各地でビジネスが自然エネルギーの導入を先導している状況をお伝えしようと思っています。"REvision 2017"などのシンポジウムの開催、様々な調査研究の実施、アジアスーパーグリッドの実現をめざす共同の取組など、自然エネルギー財団は、本年も、日本と世界のエネルギー転換を進める活動に取り組んでいきます。


<強引な原発再稼働への動き>
PS(2017年2月1日追加):日本農業新聞が、*4-1に、「世界はパリ協定の下、既に地球温暖化防止へ動きだしている」「日本も再生可能エネルギーに軸足を移さなければ世界の潮流から取り残される」「日本が昨年決めた2030年度の電源構成は、天然ガス27%(13年度43%)、石炭26%(同30%)、再エネ22~24%(同11%)、原子力20~22%(同1%)、石油3%(同15%)であり、石炭火力と原発依存が鮮明で、時代を見誤っている」と記載しているのは、全くそのとおりだ。
 また、*4-2のように、「運転中や運転可能な全国の商用原発42基のうち40基で、重要設備である中央制御室の空調換気配管の詳細な点検が行われていなかったことが、電力9社と日本原子力発電への取材で分かった」とのことで、これは原発事故や放射性物資の危険性を無視したあまりにも杜撰な行動だ。しかし、*4-3のように、玄海原発3、4号機は新基準で「適合」とされ、これは全国で6例目だそうだ。国会議員選挙では、「経済」「補助金」「ばらまき予算」を前面に出して闘うため、脱原発を主にして選択する人は多くないが、原発再稼働の賛否のみを問えば反対する人の方が多い。
 そのため、*4-4のように、「玄海原発プルサーマルと全基をみんなで止める裁判の会」は、司法を使って再稼働を止めようとしている。今後、玄海原発の再稼働は「地元同意」の手続に入るが、*4-5のように、唐津市長選で初当選した元県議の峰達郎氏が「地元同意」の範囲について、「佐賀県伊万里市や福岡県糸島市など周辺自治体と連携して、国に避難や屋内退避が必要となる半径30キロ圏への拡大を要請する」という意向を明らかにされたのは尤もで、事故時に被害を受ける範囲を考えればまだ狭いくらいである。

*4-1:https://www.agrinews.co.jp/p39774.html
(日本農業新聞論説 2016年12月27日) 地球温暖化防止 再エネ立国へ転換急げ
 世界は先月発効したパリ協定の下で、地球温暖化防止へ動きだしている。目標は「脱炭素」社会で、今世紀後半に二酸化炭素(CO2)など温室効果ガス排出を実質ゼロにする。ドイツ、北米各国は既に脱炭素への長期計画を国連に提出した。だが、日本はその検討を始めたばかりだ。安全で脱炭素の切り札の再生可能エネルギーに早く軸足を移さないと、世界の潮流から置き去りにされてしまう。世界と日本の平均気温は今年も観測史上最高となった。温暖化によって、熱波、干ばつ、洪水など異常気象による災禍は地球上で枚挙にいとまがない。パリ協定は、今世紀末の気温上昇を産業革命以前と比べ2度未満に抑える目標を設定した。正確には「2度を十分下回る」という表現で、追求目標1.5度未満が真意といえる。実現手段が脱炭素化だ。CO2排出を森林などの吸収と同等にまで減らし、差し引きゼロにする。同協定は2020年以降の枠組みだが、事前に温室ガス削減の30年目標の上積みと長期計画を各国に求めている。米国は50年までの長期計画を先月提出。電源構成の再エネ比率を55%に高め、温室ガス80%削減を目指す。トランプ次期大統領は自国経済優先で協定離脱を示唆したが、選挙後は軟化している。ドイツは80~95%削減を明示。原発全廃と再エネ推進を先導する環境先進国の気概がある。カナダも80%削減を表明した。それに比べ、日本の消極性が際立つ。50年目標80%削減という民主党政権下での閣議決定があるが、自民党政権下ではたなざらし状態だ。パリ協定での日本の30年目標は26%削減にとどまる。政府に上積み修正する気配はなく、まして80%削減達成への道筋は見えない。日本が硬直的なのは、昨年決めた30年度の電源構成に固執するからだ。構成は天然ガス27%(13年度43%)、石炭26%(同30%)、再エネ22~24%(同11%)、原子力20~22%(同1%)、石油3%(同15%)と石炭火力と原発依存が鮮明だ。これをベースにする限り、温室ガス削減目標も変えようがない。CO2を多く出す石炭火力依存の日本は先月、国際環境団体から批判の化石賞を受け面目をつぶした。原発依存も潮流に逆行している。世界では安全・経済性両面での懸念から原発離れが目立つ。わが国で進む石炭火力発電の新増設も、原発関連の高速増殖原型炉「もんじゅ」廃炉後の次世代実証炉開発も時代性を見誤っている。クリーンで安全、新ビジネスとしても有望な再エネにこそ投資すべきだ。脱炭素への長期計画の検討を経済産業省と環境省が今夏から進めている。政府の全体検討は来年度以降と遅いが、再エネ加速による温室ガス大幅削減を打ち出す決断を求めたい。再エネ立国を目指せば、地方創生を含めた持続可能な経済・社会づくりと、地球温暖化を防ぐ国際貢献の両方ができる。

*4-2:http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170115-00000014-jij-soci (時事通信 2017/1/15) 原発40基、詳細点検せず=配管腐食、再稼働の川内・伊方も―電力各社
 運転中や運転可能な全国の商用原発42基のうち40基で、重要設備である中央制御室の空調換気配管の詳細な点検が行われていなかったことが14日、原発を保有する電力9社と日本原子力発電への取材で分かった。中国電力島根原発2号機(松江市)の換気配管では腐食による穴が多数見つかっており、事故が起きた場合に機能を維持できない恐れがある。中国電は昨年12月、運転開始後初めて島根2号機で配管に巻かれた保温材を外し、腐食や穴を発見。必要な機能を満たしていないと判断し、原子力規制委員会に報告した。再稼働した九州電力川内原発1、2号機(鹿児島県)や関西電力高浜原発3、4号機(福井県)、四国電力伊方原発3号機(愛媛県)の点検でも保温材を外していない。点検方法は各社の判断に委ねられており、規制委は全国の原発の実態を確認する。中央制御室は原発を運転・監視する中枢施設で、運転員が24時間常駐する。通常は配管を通じて外気を取り入れ換気するが、事故発生時には外気を遮断し、機密性を保つ機能が求められる。原発を保有する各社によると、島根2号機と北陸電力志賀原発1号機(石川県)を除く40基で、保温材を外さないまま配管の外観点検が行われていた。40基には東京電力福島第2原発の4基も含まれる。外気取り入れ口付近の目視点検や異音検査などが実施された例はあったが、配管の保温材を全て外した上での目視確認は行っていなかった。一方、北陸電は2003年に志賀1号機の配管でさびを発見。保温材を外して点検し、08年に取り換えた。規制委は島根2号機で見つかった腐食について「規制基準に抵触する可能性がある」とみている。中国電は「海に近いため塩分を含んだ空気が配管に流れ込み、腐食が進んだ可能性がある」と説明している。日本の原発は発電用タービンを回した蒸気を海水で冷却し循環させるため、海辺に立地している。40基の内訳は北海道電力泊原発1~3号機、東北電力東通原発1号機、同女川原発1~3号機、東京電力福島第2原発1~4号機、同柏崎刈羽原発1~7号機、中部電力浜岡原発3~5号機、北陸電力志賀原発2号機、関西電力美浜原発3号機、同大飯原発1~4号機、同高浜原発1~4号機、四国電力伊方原発2、3号機、九州電力玄海原発2~4号機、同川内原発1、2号機、日本原子力発電東海第2原発、同敦賀原発2号機。

*4-3:http://qbiz.jp/article/101937/1/ (西日本新聞 2017年1月18日) 玄海3、4号機が新基準で「適合」決定 全国6例目
●再稼働は早くても夏以降
 原子力規制委員会は18日午前の定例会合で、九州電力が再稼働を目指す玄海原発3、4号機(佐賀県玄海町)の安全対策について、原発の新規制基準を満たすとする「審査書」を全会一致で正式決定した。残る審査手続きや地元同意手続きが必要なため、再稼働は早くても今夏以降となる見通しだ。審査書の正式決定は、既に再稼働した九電の川内原発1、2号機(鹿児島県薩摩川内市)などに続いて全国6例目、九電の原発では2例目となった。審査書は、規制委が昨年11月に審査書案を作成した後、一般公募した意見を踏まえて取りまとめた。内容は審査書案と大筋で変わらず、想定される最大の地震の揺れ「基準地震動」は620ガル、津波の高さは約4メートルとした上で、重大事故対策や基本的な設計方針が東京電力福島第1原発事故後の新基準に「適合している」と結論付けた。規制委は今後、施設の詳細設計をまとめた「工事計画」、運転管理体制を定めた「保安規定」の認可の可否を審査する。再稼働に対する地元同意の範囲を巡っては、国が基準を示しておらず、九電は立地自治体の佐賀県と玄海町の同意で再稼働したい考え。山口祥義知事は住民理解などを条件に容認する意向を示唆し、岸本英雄町長は一貫して賛成している。ただ同県内では複数の自治体の首長が再稼働に反対しており、同意を得るべき自治体の拡大を求める声も上がっている。玄海3号機は1994年3月、4号機は97年7月に運転開始。ともに出力は118万キロワット。3号機はプルトニウム・ウラン混合酸化物(MOX)燃料を使うプルサーマル発電を行う。2基の審査は、九電が新基準の施行直後の2013年7月に申請していた。

*4-4:http://qbiz.jp/article/101796/1/ (西日本新聞 2017年1月17日) 玄海原発差し止め 仮処分審尋が結審  年度内に決定か
 九州電力玄海原発(佐賀県玄海町)3、4号機が耐震性などの基準を満たしていないとして、住民団体が運転再開差し止めを求めた仮処分の第24回審尋が16日、佐賀地裁であり、結審した。地裁は双方の当事者に対し、決定の2週間前に期日を通知する。原告は、佐賀市の「玄海原発プルサーマルと全基をみんなで止める裁判の会」(石丸初美代表)の236人。2011年7月に3号機の差し止め仮処分を申し立て、昨年10月には4号機についても追加申請して非公開の審尋を続けてきた。立川毅裁判長は「主張と立証の関係は本日で終了する」として審尋を終結。裁判の会は、年度内に決定が出るとみている。3、4号機を巡っては、安全対策が新規制基準を満たしているとして、18日に原子力規制委員会が審査書を正式決定する予定。地元同意などを経て運転再開の手続きに入る。

*4-5:http://qbiz.jp/article/102680/1/ (西日本新聞 2017年1月31日) 「地元同意」拡大要求へ 玄海原発再稼働 糸島、伊万里と連携 唐津市長選当選の峰氏
 佐賀県唐津市長選で初当選した元県議の峰達郎氏(56)は30日、隣接する玄海町の九州電力玄海原発の再稼働に向けた「地元同意」の範囲について、同県伊万里市や福岡県糸島市など周辺自治体と連携し、国に拡大を要請する意向を明らかにした。地元同意の範囲は法令の定めがなく、再稼働を先行した鹿児島などの3県はいずれも立地自治体と県に限定。玄海原発も玄海町と佐賀県だけとなる可能性が高い。玄海3、4号機については原子力規制委員会が18日、新規制基準に適合するとした審査書を決定し、国は玄海町と県に再稼働の方針を伝達。地元同意に焦点が移っている。峰氏は、唐津市の一部が玄海原発の5キロ圏にあることを念頭に「立地町、県と同じ立場にないことがどうしても納得できない」と強調した。また、国が福島原発事故後、緊急時に避難や屋内退避が必要となる範囲を半径30キロ圏の緊急防護措置区域(UPZ)に拡大したことを踏まえ、「UPZで考えれば唐津も伊万里も糸島(福岡県)も一緒。国がつくったなら、それなりに対応してほしい」と述べ、30キロ圏にある3県8市町で連携して国に要請する考えを示した。一方、九電との安全協定については「事前了解権は欲しいが、今後の検討課題としたい」と述べるにとどめた。
●市長給与減提案へ
 唐津市長選から一夜明けた30日、初当選した元県議の峰達郎氏(56)は、公約に掲げた市長給与の2割削減を新年度当初予算案に盛り込む意向を明らかにした。同市町田の事務所で記者団の取材に答えた。峰氏は給与削減のほか、就任初年度に取り組む施策として機構改革を挙げ「全国から特別顧問のような方を3〜5人招いて市長室をつくり、市政に外からの空気を入れていきたい」との構想を語った。官製談合事件、現職市長の政治献金問題で傷ついた市政の信頼回復を図るため「これまでの既得権益と決別する」と訴えてきた峰氏は「年間100億円前後の公共工事費が使われているが、有効に使われているか見えていない。就任後はしっかり見極めたい」とし、市庁舎建て替えについても再検証する考えを示した。公約としていた支所機能の強化に関しては「機能の検証、職員配置の再構築が必要。市民センターの統廃合という形になるかもしれない。センター長には決裁権を持たせる」と述べた。当選から一夜明けた感想を問われると「いよいよ変わると信じていると激励を受けた。公約の具現化を期待されている。3万を超える方から支持をいただき、涙が出ないほど身の引き締まる思いだ」と語り、激戦を振り返って「唐津市は一つにならないと発展できない。選挙後はノーサイドでやっていかなければならない」と融和を呼び掛けた。

<技術進歩を正確に伝えない世論操作>
PS(2017年2月2日追加):日本では、*5のように、電力の需要と供給が一致しなければならないとして太陽光発電の出力を制御しているが、余った電力は、蓄電したり、水素社会に向けて水から水素を作るのに使ったりする方が賢い。何故なら、①太陽光発電システムを十分に稼働させて発電コストを下げ ②水素社会に向けて水から水素と同時に酸素を作って販売することで、空気中の酸素が薄くなるという「公害」を防ぐことができるからだ。そのためには、電力会社は定款を変更して電力以外のものも売れるようにするか、水素や酸素などのガス製造部門を切り出して子会社化しなければならないが・・。

*5:http://qbiz.jp/article/102856/1/ (西日本新聞 2017年2月2日) 太陽光出力を正確に予測 九電、システム実用化目指す 無駄な制御回避へ
 九州電力が、太陽光発電の出力を2、3時間前に予測するシステムの実証実験を進めている。毎日の電力の需要と供給などの運用計画を策定するため、現在は前日に出力を予測している。システムが実用化すれば、当日の天候によって出力が大きく変動する太陽光の発電量予測の精度が高まる。太陽光発電が増加する中、無駄な出力制御を回避し、より多くの電力を受け入れられるようになる。システムは、九電と気象会社、大手電機メーカーが共同で開発。昨年9月に試験的な運用を始めた。今後1、2年の試験運用を経て、実用化を目指す。九電は現在、前日午前10時の気象予測の画像と日照量に基づき、翌日の太陽光発電の出力を予測し、電力の需給計画を決定。その後、当日午前4時の気象予測で修正し、管内の需給が一致するようにしている。しかし、現在のシステムでは、太陽光発電量の予測と実績に差が生まれる。例えば2015年秋には、予想外の晴天となり、電力消費のピーク時に実績が予測を2倍以上も上回る日があった。火力発電所の出力を落とすなどして需給を調整したという。一方、秋雨前線の予測が外れて太陽光発電が大幅に不足し、火力発電所の出力を増やして対応することもあった。新たなシステムでは、当日の2、3時間先の気象予測データを解析し、日中に出力予測を細かく修正し続けることが可能。実績と予測の誤差を縮めることで、時間に余裕を持って火力発電の出力を調整できる。九電管内の太陽光発電の接続量は、単純計算で大型原発約6基分に相当する668万キロワット(16年11月末時点)。太陽光パネルの設置が増え続ければ出力の実績と予測の差はさらに広がるが、新システムで出力予測の精度が上がれば、無駄な出力制御を要請する事態も回避することが可能になるという。九電電力輸送本部の深川文博給電計画グループ長は「雲が急に発生した場合など予測が当たらないこともまだある。さらに工夫し、精度を上げたい」と意気込んでいる。

<脱原発へ>
PS(2017年2月13日追加):*6-1のように、世界が原発の危険を認識した中、フクイチ事故を起こした日本の経産省が米と原発の売り込みを提案することを検討しているとのことだが、日本政府のこのような誤った方針が東芝などの損失を膨らませた一因だ。これは、第二次世界大戦が航空戦の時代になっていたにもかかわらず、巨艦を建造して「不沈艦(実際にはあり得ない)」などと言っていたのと変わりない。また、経産省は「2030年までに新興国を中心に世界で30~330基の原発が新設される」などとしているが、それでは世界の原発事故発生リスクは非常に高いものになる。そのため、*6-2の台湾政府は脱原発法を成立させ、*6-3のベトナム・リトアニア政府も原発計画を撤回し、インド・トルコでも反対運動が起こっているのだ。なお、*6-4のように、民進党が「原発ゼロ基本法案(仮称)」に「2030年ゼロ」を明記するそうだが、省エネ・再エネ技術が進んだ現在、「2025年までのなるべく早い時期に脱原発」とするのが八方によいと考える。大手電力会社の社員にとっても、この方が次の東電や東芝にならずにすみ、経営資源を新エネルギーに集中させることができるため、メリットがあるだろう。

*6-1:http://www.tokyo-np.co.jp/article/economics/list/201702/CK2017020802000131.html (東京新聞 2017年2月8日) 【経済】米と原発売り込みを提案へ 世界が危険認識、損失膨らむ中
 世耕弘成経済産業相は七日の記者会見で、日米首脳会談に合わせて訪米する考えを示した。政府は世耕経産相も会談に同席する方向で調整しており、米国に対して、新興国への原発の共同売り込みなどを提案することを検討している。しかし福島第一原発の事故を受けて原発の市場は世界的に縮小し、原発産業では損失が相次いでいる。専門家は「原発を売り込んで資金を稼ぐシナリオは現実的ではない」と疑問視している。原発の共同売り込みは、日本が首脳会談で提示を目指す経済協力のための政策集「日米成長雇用イニシアチブ」の原案に載っており、「十年間で五百億ドル(五兆円超)の市場を開拓」するとされている。国内の原発メーカーのうち東芝と日立製作所は米国の企業と組んでおり、日米双方に利益があることをアピールする。しかし福島第一原発の事故により米国や欧州で安全のための規制が強まり、建設費は世界的に高騰。建設が止まったり、白紙撤回になる例が相次いでいる。さらに米国のシェール革命により、原油など火力発電の燃料価格が長期にわたって安定するめどが立ち、原発の市場は縮小しつつある。このため東芝は米国の原発関連事業で七千億円規模の損失を見込み、原発の建設から撤退することも検討中。日立も米国での研究開発をやめ、七百億円の損失を計上する。それでも世耕経産相は三日の記者会見で「世界各国で、原発を新設しようという動きはたくさんある」と述べ、原発輸出を進める考え。経産省は国際原子力機関(IAEA)の見通しなどから「二〇三〇年までに新興国を中心に世界で三十~三百三十基の原発が新設される」などとみている。しかし、ベトナム政府が住民の反対や財政難から原発計画を撤回するなど、新興国でも新設は難しくなっている。九州国際大の中野洋一教授(国際経済学)は「福島第一原発の事故で世界に危険性が知られ、価格面でも再生可能エネルギーや火力に見劣りするようになった。米国の威を借りて原発を売り込んでも、受注は難しいだろう」と指摘した。

*6-2:http://mainichi.jp/articles/20170112/k00/00m/030/068000c
(毎日新聞 2017年1月11日) 台湾、「脱原発法」成立 「25年までに全て停止」
 台湾の蔡英文政権が2025年までに脱原発を実現するため提案した電気事業法改正案が11日夜、立法院(国会)の本会議で、可決・成立した。改正法には「25年までに原発の運転を全て停止する」との条文が盛り込まれた。改正法は、原発分の電力を代替する再生可能エネルギーの普及など電力改革を行う内容。脱原発が実現すればアジアでは初となる。東京電力福島第1原発事故後、台湾では反原発の機運が高まっていた。蔡総統は総統選前から「25年までに非核家園(原発のない郷土)」の実現を掲げてきた。台湾では、完成した原発3カ所の原子炉6基(2基は停止、1基は点検中)が18年から25年までに順次40年の運転期間が終わる。日本企業が原子炉などを輸出し「日の丸原発」とも呼ばれた第4原発は14年に建設が凍結されている。蔡政権は運転延長や新規稼働を認めず、脱原発を達成する狙いだ。代替として再エネの普及拡大を目指し、電源構成で再エネ比率を現在4%から25年に20%まで大幅に引き上げ、再エネ事業への民間参加を促す。蘭嶼島にある低レベル放射性廃棄物貯蔵施設の移転計画も進める。しかし産業界を中心に電力供給の不安定化や電力価格の高騰を招きかねないと懸念の声も相次ぐ。

*6-3:http://blogos.com/article/205962/ (THE BIG ISSUE JAPAN 302号 2017年1月1日発売) ベトナム、原発計画中止 リトアニア、計画凍結 日本の脱原発への政策転換必至
●90年代からオールジャパン体制でこぎ着けた受注がご破算
ベトナム国会が原発立地計画を中止する政府提案を11月22日に可決した。ベトナム政府は電力需要に応える切り札として、2009年に4基の原発を建設する計画を承認し14年に着工する予定だった。しかし、当初案は資金難や人材不足で延期が繰り返されてきていた。また、11年の福島原発事故の教訓を生かし、津波対策として予定地をやや内陸へ移動する計画変更も行っていた。予定地は、風光明媚で漁業や果樹生産の盛んな南部ニントゥアン省ニンハイ県タイアン村だった。直前の計画では、第一原発2基は28年に、第2原発2基は29年に稼働、第一原発はロシア、第2原発は日本が受注、各100万キロワットで、計400万キロワットの設備となる予定だった。中止の理由は、福島原発事故を受けて建設コストが2倍に高騰したことに加えて、同国の財政悪化が重なったからだ。また、住民の反対の強まりや、コストをさらに大きく引き上げる要因にもなる原発の使用済燃料の処理・処分の未解決問題も指摘された。原発に代えて、今後は再生可能エネルギーやガス火力などを導入するという。マスコミのインタビューに応じたレ・ホン・ティン科学技術環境委員会副主任は「勇気ある撤退」と評価している。日本はこれまでベトナムの原発建設計画を受注すべく、90年代から原子力産業協会を中心に働きかけを繰り返してきた。2010年には「国際原子力開発(株)」を設立し、オールジャパン体制を作って臨んだ。同社は電力9社と原子力メーカー3社に、09年に政府出資で設立された「(株)産業革新機構」が株主となり設立された会社である。ロシア、韓国、中国、フランスなどの企業と受注を競う中で、ようやく合意にこぎ着け、11年9月に第2原発建設の協力覚え書きを取り交わした。同社の活動はベトナムに限定されており、同国向けに設立された会社だと言える。そんな万全の態勢で臨んだが、計画は中止となった。
●リトアニア、6割の国民が反対、日本の原子力産業界は大打撃
 また、リトアニアでも原発計画が凍結された。同国はEUに加盟する時点で、旧ソ連製の古いイグナリナ原発を廃止。09年、その敷地に隣接して新たなヴィサギナス原発建設が計画された。この建設を受注したのが日立製作所だ。12年6月21日に議会が承認、正式契約は周辺国の合意を得てからではあるが、政府による契約がほぼ固まった。事業規模は約4千億円、合計出力は最大340万キロワット、建設は2基になりそうだった。ところが、福島原発事故を受けて原発建設への反対が強まる中、野党が原発計画の是非を問う国民投票議案を提出、国民投票が12年10月に実施された。結果は建設反対が6割を超えたが、この国民投票は法的拘束力を持たず、政府は計画を中止しなかった。しかし、同時に行われた議会選挙で社会民主党が勝利し、次期首相候補は建設計画の見直しを明言。ここにきて正式に計画が凍結されることとなった。原発が市場で競争力を持つようになるか、電力供給の上で必要になるまでの間は凍結される。市場競争力は望めず、事実上の計画撤回と見てよい。国内での原発建設計画が停滞する中、輸出に活路を見いだそうと日本の原子力産業界は海外での活動を活発化させてきた。両国の撤退が原子力産業界にとって大打撃となるのは必至だ。9月に原子力関係閣僚会議が「もんじゅ」廃止の方向を決めた。再稼働は住民の反対や裁判所の決定で電力会社の期待に反してさほど進んでいない。さらに電力自由化の中で競争力を失う原発に対して、政府はさまざまな保護政策を講じ、福島原発事故の賠償や廃炉の費用を国民に転嫁しようとしている。それでも原発が以前のように復活することはないだろう。 17年にはエネルギー基本計画の改訂議論がスタートするが、今回の撤退を受けて、原子力政策の抜本的な見直しを検討するべきだ。

*6-4:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12778780.html?ref=pcviewpage (朝日新聞 2017年2月3日) 30年に「原発ゼロ」、民進法案に明記へ 「30年代」から前倒し
 民進党のエネルギー・環境調査会(会長・玄葉光一郎元外相)は2日、検討中の「原発ゼロ基本法案」(仮称)に「2030年ゼロ」を明記する考えを示した。従来の「30年代ゼロ」を実質9年前倒しする。蓮舫代表が3月の党大会で打ち出せるよう調整に入る。この日、同調査会役員会で玄葉氏が原案として示した。役員十数人で議論し、「賛成の方が多かった」(玄葉氏)。今後、党所属国会議員が参加する総会を開き、今月内に正式決定する。従来方針の「30年代ゼロ」は民主党政権時の12年に決定。党内の原発容認派に配慮し幅を持たせた。今回「30年ゼロ」へ早める背景には、13年9月から約2年続いた全原発停止の状況でも電力不足は起こらなかった事実がある。玄葉氏は記者団に、「電力をめぐる状況は変わった。省エネ技術や再生エネルギーも進んでいる」と話し、これらの推進も明記する方向。原発を利用し続ける方針の安倍政権との対立軸にする。また、原子力規制委員会の安全確認を得た原発の再稼働を条件付きで容認するとした従来方針も、要件をさらに厳しくする案が浮上している。


<メディアの質>
PS(2017年2月15日追加):*7-1に、「①新聞の発行部数は減少に歯止めがかかっていない」「②ネットを使うことにより、マスメディアを通さず個人も情報発信できるようになった」「③ソーシャルメディアにより、メディアは多数の中の一つでしかなくなった」「④ローカルは市場が小さく、広告モデルでの収益に限界がある。発行エリア以外からの収益を模索しているが、どう考えるか」と書かれている。
 私は、①の理由は、新聞が真実を追求せず、行政の広報機関と化して記事の内容に責任を持たないことにあり、②のように、本人やわかっている個人がリスクを侵して真実の情報を発信した場合には、それに内容で負けるのだと考える。ネットがなかった時代は、人々はマスメディアからしか情報を得ることができなかったが、現在は、②③のように、個人も情報を発信でき、人々は多方面から情報を入手できるようになったからだ。そして、人々が真実を求めて検索する時代になり、日本では、特に原発事故以来、行政の広報機関をして人々の側に立たなかったメディアへの信頼がなくなった。そのような中、私は、全国紙だけでなく、原発は東京新聞・河北新報・福島民友・西日本新聞・佐賀新聞、辺野古は琉球新報・沖縄タイムス、農業は日本農業新聞の記事を多く参考にした。そのため、④については、地方紙もデジタルで全国に読者を作ればよく、その方がいろいろな立場の人の考え方を知り易くなり、デジタル版に動画をつければテレビ報道も容易であるため、報道は大競争の時代に入ったのだと考える。
 なお、日本のメディアが経産省の広報機関をして国民を馬鹿にした情報を出している間に、*7-2のように、世界では自然エネルギーによる電力の普及が進んだ。そして、オランダ鉄道は、*7-3のように年明けから風力発電で全列車を運行しており、コストダウンが進んだことは間違いない。

*7-1:http://qbiz.jp/article/103658/1/
(西日新聞 2017年2月15日) 地方紙は生き残れるか ジャービス米教授、発想の転換促す
●IT先進国、米にも事例なし、ジャーナリズムを「サービス」に
 従来のビジネスモデルや伝え方に固執するメディアは淘汰される―。ジャーナリズムの将来に関する論考が世界的に注目を集める米ニューヨーク市立大のジェフ・ジャービス教授は、こう断言した。そして、特に地方紙について、その生き残りに向けた処方箋は「コミュニティーに耳を傾け、役立つサービスを提供すること」だという。部数減が続き、苦闘する地方紙の一記者として、その言葉の意味を考えた。ジャービス氏は米ローカルメディアの経験が豊富で、日本でも昨年発刊された「デジタル・ジャーナリズムは稼げるか」(東洋経済新報社刊)の著者として注目された人物。1月27日、東京都で開かれた「Media×Tech 2017」(Yahoo!ニュース・日経電子版主催)にネット中継で基調講演し、「ローカルメディアはどう生き残るか」と題したセッションにも参加した。イベントはメディアの今を受け止め、その将来を模索することを目的に初開催。地方紙や雑誌、ネットメディアなど幅広い分野の責任者が議論を深めた。
■「マス」のビジネスモデル殺した
 「ネットが殺したのは、マスメディアのビジネスモデルだ。マス、という考え方そのものもなくした」。ジャービス氏は基調講演の冒頭で、こう指摘した。今はツイッターを使うことで一個人でも影響力を行使できる。そうした手法で、マスメディアを通さずに情報発信でき、そこで関心がある人同士を見つけて、ともに行動することもできるようになった。マスメディアが出す情報はかつては手間がかかり、高価だったが、その希少性が失われている、という指摘だ。ジャービス氏は「マスメディアは、もっと人と人との関係性によって立つ存在にならなければならない」として、ジャーナリズムを「サービス」と考える発想への転換を促す。読者を「マス(集合体)」としてではなく、「個人」として捉え直すことから始めるべきだという。若い母親や商店主、それぞれのコミュニティーに耳を傾け、役立つサービスを提供することが重要だと説明した。
■単なるコンテンツ販売には限界
 「一つの製品を垂れ流しにするのではなく、たくさんの製品をつくっておく。まず自分たちのアイデアを見せるのではなく、ニーズを把握するところから始める。その上で何ができるのかを考える。それは新しいやり方で難しいが、大きな企業が小さく考えることのきっかけになると思う。それが新しいニュース組織の始まりだ」。ジャービス氏は収益について「単に(購読料として)コンテンツを販売するだけなら限界がある。メンバーから収益を取ることが重要で、そのほかに広告もあるし、イベントも活用できる」と指摘する。そして最後に、トランプ新政権についてこう言及した。「フェイクニュースには失望している。残念ながらトランプ氏が大統領になってしまった。しかし一方でフェイクニュースがあれだけ広まったということは、彼らがわれわれより、よりよい形で人々にリーチできたということでもある。シェアするのはその内容に共感するからであって、マスメディアはそこから学ばないといけない」。「コミュニティーのニーズをもっと聞くことはできる。ソーシャルメディアの存在によって、私たち(メディア)は希少な存在ではなく、多くあるうちの一つでしかなくなった。ジャーナリストになるのは、昔より大変になっていると言えるだろう」。来場者からは「ニュース記事はコンテンツではなくサービスだ、という指摘は理解できた。そこにはどのような技術が必要なのか」という質問があった。ジャービス氏は「やり方はいろいろある。フェイスブックなどの既存ツールを使うこともできる。(従来の)外向きジャーナリズムは世界で起きていることを伝えて世界を変えようとしている。そうではなく、コミュニティーの細かなニーズを満たすのが、内向きのジャーナリズム。それはネットの力でなせると思う」と答えた。
■加速する部数減への対応策は
 新聞の発行部数は減少に歯止めがかかっていない。日本新聞協会の調べでは、2000年10月に約5370万部あった新聞発行部数(朝夕刊セットを1部として計算)は2016年10月時点で約4327万部。16年間で1000万部以上減少したことになる。さらに減少率も2000年代前半は1%未満だったが、2010年以降は1~3%程度と高まっており、部数減が加速していることもうかがえる。こうした状況の中で、地方メディアはどのような取り組みが求められるのか。イベントでは、西日本新聞メディアラボの吉村康祐社長(福岡市)、十勝毎日新聞社(北海道)の林浩史社長が登壇し、その取り組みを紹介した。西日本新聞メディアラボは、西日本新聞社のデジタル部門的な存在。昨年は紙面企画と連動して「子ども貧困」対策に力を注ぎ、ヤフー・ニュースなどを経由して全国に伝えた。その結果、「子ども食堂」の支援に約1,100万円が集まった。そのほか、地元地銀の福岡銀行と業務提携してフィンテック事業(ITを活用した新たな金融サービス)や、情報コンテンツのウェブサイト「mymo」を展開。さらに九州のブロガーなど45の情報発信者を集めて、「九州を理解できる」キュレーションサイト「piQ」を運営している。一方、十勝毎日新聞社ではフェイスブックなどのSNSを活用して情報を集め、災害の紙面づくりに役立てようとしている。将来像について林氏は、こう説明した。「さらにハイパーローカルな存在を目指す。十勝は狭いので、『友達の友達は友達』という状況。権利の問題はあるが、人々の生活や一生を記録していく新聞をつくりたい。今は出生時も結婚時もお悔やみでも記事にしている。デジタルではさらに踏み込んで、人の一生を記録できるメディアにしたいと考えている」。両社の取り組みは、ジャービス氏の言う「コミュニティー」に着目しており、方向性としては間違っていないようだ。ローカルメディアの取り組みについて、吉村氏はジャービス氏に「ローカルは市場が小さく、広告モデルでの収益には限界がある。発行エリア以外からの収益を模索しているが、どう考えるか」と質問。ジャービス氏はこのように答えた。「市場以上に届けたいのなら、特別な商品が必要だ。特定のスポーツチームとか、エリアとか。オーディエンス(読者)と広告が結びついていないといけない。地方(地元)向けにやることと全国でやることを分けてほしい」
■苦しくても自らやるしかない
 印象的だったのは、米国の地方紙の事例を尋ねられたジャービス氏の反応。「2人に比べれば遅れているので、話すことはない」というものだった。地方紙は、よって立つ地域の人々と生きていくほかに方法はない。これまでも日本の各地方紙は「紙」を使ってさまざまな手法を駆使してきた。本紙以外にもフリーペーパーを発行したり、イベントを実施したりしながら、読者の囲い込みに力を注いできた。その意味では「コミュニティー」に目を向けてきたことは間違いない。ただ、それはあくまで「紙」の販売を主眼とするものだった。日本の新聞社がホームページの運営を始めてすでに20年以上が過ぎた。デジタルというツールを使い、コミュニティーとどのように接していけば、ビジネスモデルとして成り立つのか。ジャービス氏が言うように、米国より日本の地方紙の方が先進的であるとするなら、苦しくても自分たちで具体策を練るしかない、ということなのだ。

*7-2:http://www.renewable-ei.org/column/column_20160614.php (自然エネルギー財団理事長 トーマス・コーベリエル、自然エネルギー財団研究員 ロマン・ジスラー 2016年6月14日) 連載コラム 自然エネルギー・アップデート、世界の素晴らしい進歩から目をそらすな
 日本のエネルギー業界は、発電のためにウランと石炭のどちらを輸入するべきか議論しているようだが、世界の国々は、別の素晴らしい解決策をとっている。ここ数カ月間に発表されたデータを見れば、このことは明らかだ。2015年の米国の発電データが発表され、2010年比で目覚ましい進展があったことが明らかになった。化石燃料による電力は150TWh(1,500億kWh)以上減少し、原子力も10TWh(100億kWh)減少した。成長したのは自然エネルギーによる電力で、2015年には2010年比で約135TWh(1,350億kWh)増加した。今年第1四半期における化石燃料の新規導入量は18MW(1.8万kW)であった。一方、自然エネルギーの新規導入量は1,291MW(129.1万kW)で、化石燃料の70倍以上増加した。英国では、今年第1四半期に、風力による電力供給量が石炭火力を上回った。風力の電力供給量が2.3TWh(23億kWh)だったのに対し、石炭火力は1.8TWh(18億kWh)にすぎなかった。5月9日には、1882年以来初めて、石炭火力による電力が英国の電力系統に全く供給されない瞬間が訪れたと報じられた。さらに、太陽光の電力供給量が石炭火力を上回る日が1週間続いた*。ポルトガルは早くから風力発電を利用しており、風力の新規導入はポルトガルで最もコストの低い発電オプションとなっている。2015年には自然エネルギーが同国の電力消費量のほぼ半分を賄った。そして今年5月初め、ポルトガルは4日間連続で自然エネルギー100%を達成したことを報告している。このように、世界のさまざまな国で自然エネルギーが主流になってきた事例がたくさんある。ここまで発展できたのは、自然エネルギー開発に多額の支出が必要だったときに、多くの資金を産業界に投じる先駆的な国々があったおかげである。米国では開発の多くが軍の研究プログラムとして実施された。中国では、自然エネルギー支出が経済をさらに成長させるための一手段と考えられてきた。そしてドイツでは、多くの費用が必要となる原子炉事故のリスクを軽減するための手段の一つであった。このような大胆な取り組みの結果、自然エネルギーは今や世界中のほとんどの国で、競争力のある価格で利用できるようになった。2年前から、風力は世界の多くの地域で最もコストの低い新電源となっている。また昨年はいくつかの国で、太陽光が新たな電力供給のための競争に勝利を収めた。最近の最も素晴らしい成果は、ドバイで800MW(80万kW)の太陽光発電の応札価格が1kWhあたり3円となったことである。太陽光発電の価格がわずか18カ月で半分になったことになる。日本の太陽エネルギー量はドバイの半分にすぎないため、日本でのコストがドバイと同程度まで低下することはないだろうが、2倍以上である必要もない。世界の自然エネルギーは発展し続けており、日本が石炭やウランの輸入に代わって国産エネルギー源である自然エネルギーを導入する機会は、ますます拡大している。
* 更新情報:2016年5月、英国における太陽光発電推定量は1,336GWh(13.36億kWh)にのぼり、石炭火力の893 GWh(8.93億kWh)を50%も上回った。http://www.carbonbrief.org/analysis-solar-beats-coal-over-a-whole-month-in-uk-for-first-time

*7-3:http://www.saga-s.co.jp/news/national/10201/395693
(佐賀新聞 2017年1月16日) 風力発電で全列車を運行、オランダ鉄道、年明けから世界初
 オランダ最大の旅客列車運行会社、オランダ鉄道(NS)は年明けから、風力発電の電気のみで全列車を運行し始めた。同国全土で毎日約60万人が「風力電車」で移動しているといい、NSなどは世界初の快挙だと強調。「風車の国」の面目躍如と言えそうだ。NSは2015年、同国電力会社エネコと共同で、風力発電だけで列車を走らせるプロジェクトを開始。16年には既に全列車の75%が風力の電気で動いていた。NSは年間、人口約80万人の首都アムステルダムの全世帯合計とほぼ同じ電力量を消費。欧州メディアによると、NSは毎日約5500本の列車を走らせている。

<自然エネルギーの実力>
PS(2017年2月17日追加):*8のように、日本が「100%自然エネルギー」を実現すれば、投入する設備費用を差し引いても、燃料代節約などで84兆円の「得」になるそうだが、それは技術の普及・進歩によって前倒しが可能だ。そして、その効果は、①地球環境への好影響 ②環境技術の進歩 ③外国に支払っていた燃料コスト削減による企業利益率や税収の増加 ④設備導入時の前向きな投資増による資本生産性向上と景気上昇 ⑤国民生活の豊かさ実現 等で、100%の解である。そのため、「100%の解はあり得ない」「実現は遠い未来のことだ」などと決めつけるのは、自分で自分の首を絞める行為だ。

*8:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12799670.html (朝日新聞 2017年2月16日) 自然エネ100%、日本で実現すると「84兆円お得」 WWFジャパン試算
 世界自然保護基金(WWF)ジャパンは16日、日本が2050年までに石炭や石油などの化石燃料に頼らない「100%自然エネルギー」を実現すれば、必要な設備費用を投入しても、燃料代節約などで84兆円の「得」になるとの試算を発表する。地球温暖化対策の国際ルール「パリ協定」がめざす脱炭素社会は実現可能だとしている。試算によれば、10~50年の約40年間で、設備費用は産業部門や家庭での省エネに191兆円、太陽光などの自然エネルギーの導入に174兆円の計365兆円が必要な一方、化石燃料の消費が減って449兆円の節約になるという。温室効果ガスの排出量は10年に比べて95%削減できるとした。現在ある技術が広く普及すれば、エネルギー需要は10年比で47%減らせると試算。すべて自然エネルギーで賄えるとし、国内の気象データから太陽光と風力の発電量は2対1の割合が望ましいとした。30年ごろから自然エネルギー発電で余った電力から水素をつくって活用すると想定している。昨年発効したパリ協定では、各国が温暖化対策の長期戦略を国連に提出するよう求められている。日本は環境省と経済産業省がそれぞれに素案をまとめている。WWFジャパンは、政府に長期戦略の早期策定を求めている。

| 資源・エネルギー::2017.1~ | 02:24 PM | comments (x) | trackback (x) |

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