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2017.9.17 精神障害者・ハンセン病患者に対する差別と最近の人権軽視への歩み (2017年9月21、24日、10月10日に追加あり)
  

(図の説明:左のグラフのように、精神病床の平均在院日数は日本が著しく高い。また、真ん中のグラフのように、統合失調症入院患者への向精神病薬投与量も日本が著しく高く、自閉症と診断される人もうなぎ上りに増えている。これは、日本人には特に重度の精神障害者が多いというわけではなく、診断と入院及び薬の投与方針の問題だろう)

  

(図の説明:左のグラフのように、ADHDと診断される子どももどんどん増え、子どもへの使用に関する安全性は疑問であるにもかかわらず、メチルフェニードの子どもへの処方が著しく増えている。これに加えて睡眠薬の処方も日本で著しく高いため、精神科の診断と睡眠薬を含む薬剤使用の妥当性について再検討する必要がある)

(1)精神障害者・知的障害者について
1)精神障害者を殺人犯になり易い人と理解するのは間違っていること
 植松容疑者が措置入院からの退院後に相模原市障害者施設「津久井やまゆり園」の入所者19人を殺害した事件を受けて、*1-1、*1-2のように、厚労省は、責任能力の有無を調べていると報道されている。これは、刑法第39条に、「①心神喪失者の行為は、罰しない」「②心神耗弱者の行為は、その刑を減軽する」という古い規定があり、心神喪失者・心神耗弱者の定義が不明確であるにもかかわらず、精神障害者や精神障害の病歴のある人がこれにあたると非科学的に決めつけているからで、これは大多数の精神障害者に対する人権侵害である。

 しかし、植松容疑者の障害者殺害事件は精神障害が理由ではないため、精神障害者に対する監視強化等は福祉目的ではなく意味のない防犯目的の差別である。私は、①精神障害者が引っ越せば、その自治体に支援計画と呼ぶ監視計画を引き継ぐ(精神障害者と殺人犯を結び付けて監視する人権侵害) ②自治体・警察・病院が参加する協議会を設置して病気の個人情報を共有する(精神障害者と犯罪者とを結び付けて個人情報を開示する人権侵害) ③障害者差別解消法の理念を啓発(共生社会の推進) ④障害者の地域生活を支援(共生社会の推進)のうち、①②は精神障害者への言われなき差別を助長して、③④をやりにくくするものだと考える。

 そして、*1-4のように、東京都港区で厚労省のキャリア官僚女性が弟に包丁で刺されて死亡した事件も、弟は精神疾患での通院歴があり、警視庁が男の責任能力の有無を調べていると報道されているが、これは刑法第39条の規定を根拠としており、このような報道が続けば「精神障害者=殺人犯予備軍」という先入観ができる。

 さらに、*1-5では、埼玉県熊谷市で小学生2人を含む6人が殺害された事件で、強盗殺人などの罪で起訴されたペルー人のナカダ・ルデナ・バイロン・ジョナタン被告について弁護側が請求して実施された精神鑑定では、さいたま地検の鑑定と異なり、「精神疾患がある」という診断結果が出たそうだが、弁護側も罪を軽減するために刑法第39条をよく使い、冤罪の際にも刑法第39条を使ってうやむやにすることがあるのは、「殺人犯=精神疾患」というイメージを一般の人につけるという意味で、精神障害者に対する差別を醸成する人権侵害である。

 そのため、今回の厚労省の精神障害者と殺人犯を関連付けて精神障害者を監視するという再発防止策は、精神障害者に対する差別や人権侵害を無くすために、これまで培われてきた精神科の歴史に逆行する程度の低いものである。

2)知的障害者施設「津久井やまゆり園」について
 神奈川県の「津久井やまゆり園」を再生する案が、*1-3のように持ち上がり、入所者の意思を尊重したものだとも評価されたそうだが、知的障害者である入所者も、自宅から離れた交通の便の悪い場所で滅多に家族にも会えず積極的に集団生活をしたかったわけではないだろう。

 そのため、公聴会で、「入所者の意向を聞くべきだ」「時代錯誤だ」との批判が続出し、大規模施設の建て替え案が撤回されたのはよかった。私は、セキュリティーが悪く、当直の職員が身をもって防衛することもなく、植松被告が殺人するに任せておいた他の職員の意識にも疑問を感じている。

3)「殺人犯=精神障害者」というイメージの社会では、精神障害者の雇用が進まないこと
 *1-6のように、佐賀労働局と佐賀県は、佐賀県の経営者協会など経済4団体に、障害者の積極的な雇用を要請したそうだが、ここで言う障害者に精神障害者は入っているのだろうか?

 「殺人犯=精神障害者」というイメージがついた社会では、トライアル雇用など労働条件の悪い雇用でも難しいと思われるが、それが政府とメディアがまき散らした精神障害者差別の大きな問題点なのである。

(2)“発達障害”について
 最近、*2-1のように、“発達障害”として、「落ち着きがない注意欠陥・多動性障害(ADHD)」「読み書きや計算など特定分野が苦手な学習障害(LD)」「対人関係をうまく築けず、限られた対象にこだわる傾向(アスペルガー症候群)」など、何でも異常だと言うことが多いが、言語や知能に遅れがなければ周囲の“常識的”な大人が理解できなくても全く問題ない。

 何故なら、将来、周囲の“常識的”な大人には想像もつかないことを行って“常識”を変える人物かも知れず、別の面でとびぬけた能力を持っている人かも知れないからである。

 にもかかわらず、*2-2のように、いちいち発達障害として病気扱いし、*2-3のように、全国学力テストの結果として文科省に報告さえせず、一人前と見做さないでいると、本当にその子の将来性をつぶしてしまう。そのため、何でも異常だとしてしまう最近の子どもへの扱いは問題であり、人権侵害である。

(3)ハンセン病患者に対する差別
 *3のように、国がハンセン病患者に対する不要な隔離政策を行い、司法が加担して「密室の法廷」で死刑判決を下し、ハンセン病患者の人権が無視された差別助長の歴史に対し、国は、元患者らを差別や偏見の中に置き続けて精神的苦痛を与えたり、人生を台無しにしたりした責任をとって損害賠償すべきだ。

 しかし、現在でも、国は「精神障害者=殺人犯、犯罪者予備軍」というレッテルを張って監視することにより、病気の人に対する人権侵害の過ちを繰り返そうとしているわけである。

<精神障害者と殺人犯の関連付け>
*1-1:http://digital.asahi.com/articles/ASJD924FDJD9UBQU001.html (朝日新聞 2016年12月9日) 措置入院中から 退院後の支援計画
 相模原市の障害者施設「津久井やまゆり園」で入所者19人が殺害された事件を受けて、厚生労働省は8日、再発防止策の報告書を公表した。精神保健福祉法に基づく措置入院中から都道府県や政令指定市が支援計画を作成。植松聖(さとし)容疑者(26)の退院後に事件が発生したことから、自治体や医療機関が連携して退院後も患者を孤立させない仕組みをつくることが柱だ。
■厚労省 相模原事件 再発防止策
 有識者9人による厚労省の検証・再発防止策検討チーム(座長=山本輝之成城大教授)がまとめた。厚労省は報告書を踏まえ、精神保健福祉法改正案を来年の通常国会に提出する方針。報告書では、措置入院を決める都道府県や政令指定市に対し、すべての患者について入院中から退院後の支援計画づくりを求めた。計画に盛り込む支援内容は入院先の病院や居住する自治体の職員による「調整会議」で検討。会議には患者本人や家族の参加も促す。現行法では退院後の支援体制が定まっていないため、退院後もチームで支援を続けられるようにする狙いだ。患者が転居した場合には支援計画を自治体間で引き継ぐことも明記した。
■「監視強化」の懸念も
 相模原市の事件を受けた厚生労働省の再発防止策は、措置入院患者の退院後の継続支援に重点を置いた。ただ、障害者の監視が強まることへの懸念は残った。東京都内の診療所で働く精神保健福祉士の男性(50)は、自治体や医療機関などによるチームで連携することで、継続支援をしやすくなると評価している。治療を拒否する患者は多く、措置入院と通院中断を繰り返し、通院を続けるようになって症状が安定する人もいるためだという。「治療継続の重要性を患者本人が自覚できる働きかけが必要で、ネットワークが大切になる」。一方、自身も精神障害者という「全国『精神病』者集団」運営委員の桐原尚之さんは、現行の措置入院について「『社会防衛的』に運用されることがあり、多くの精神障害者のトラウマになっている」と指摘。事件の再発防止を理由にした退院後の継続支援であることから、「福祉目的ではなく防犯目的であることは自明だ。精神障害者を監視する方向に秩序化されるのではないか」と心配する。こうした懸念に対し、報告書をまとめた厚労省の検証・再発防止策検討チームの山本輝之座長(成城大教授)は記者会見で「あくまでも退院後、孤立せず安心して暮らせる支援体制を築くもので、精神障害者の利益にもなる」と強調した。退院後にいつまで支援は続くのか――。報告書は「国が一定の目安を示す」として方向性を示さなかった。患者の症状によって期間が異なるうえ、長くなれば自治体の負担が増えるため調整がつかなかった。厚労省が別途議論を進め、年度内に結論を出す予定だ。事件における警察の対応については「法令に沿ったもの」と触れるにとどめ、再発防止につながる検証結果などは明らかにされなかった。
■再発防止策のポイント
【入院中の対応】
・国が心理検査や薬物使用に対応するガイドラインを作成し、それに基づいて治療
・都道府県や政令指定市が病院職員らを交えた「調整会議」などの意見を参考に退院後の支援計画を作成
【退院後の対応】
・保健所を持つ自治体が支援計画に基づいて支援
・患者が引っ越せば、その自治体に支援計画を引き継ぐ
・自治体や警察、病院が参加する協議会を設置し、情報を共有
【共生社会の推進】
・障害者差別解消法の理念を啓発
・障害者の地域生活を支援

*1-2:http://digital.asahi.com/articles/ASJCF6286JCFUTFL002.html
(朝日新聞 2016年11月14日) 措置入院の患者情報、自治体間で共有へ 厚労省の原案
 相模原市の障害者施設で入所者19人が刺殺された事件で、厚生労働省は措置入院をした患者の個人情報を共有できるような制度改正を盛り込んだ再発防止策の原案をまとめた。自治体間の連携強化が狙いで、14日の検証・再発防止策検討チーム(座長=山本輝之成城大教授)で提示。11月中にも最終報告書を公表する。植松聖(さとし)容疑者(26)は退院後、「東京都八王子市で家族と同居する」としていたが、相模原市と八王子市は連携できていなかった。個人情報は原則、自治体間で共有できない。そこで措置入院について定めた精神保健福祉法を改正し、特例的に患者の精神症状や住所地などの個人情報を共有できるようにする。原案には、措置入院を決めた都道府県や政令指定市が、患者の入院中から家族らの情報も踏まえて中長期的な支援計画をつくる方針も盛り込んだ。この計画をもとに、患者が居住する自治体が退院後の生活や治療の相談にのる。病院は相談員を選び、患者の地域での生活に目を配る。また、警察や病院、自治体が地域ごとに集まる協議会を設け、措置入院を決める際の仕組みを強化。措置入院や退院を判断する精神保健指定医の研修には、薬物に関する課程を加える。原案に対して検討チームでは「(措置入院患者は)年間7千人ほどいるので、自治体や病院の負担が大きい」などの意見が出た。

*1-3:http://www.tokyo-np.co.jp/article/kanagawa/list/201709/CK2017090602000178.html(東京新聞2017年9月6日)【神奈川】やまゆり園再生案 入所者の意思尊重 評価
 昨年七月に殺傷事件があった知的障害者施設「津久井やまゆり園」(相模原市緑区)の再生基本構想案の説明会が五日、横浜市神奈川区で開かれ、全七回の説明会が終了した。この間、入所者の意思を尊重して居住先を決める仕組みを評価する意見が目立った一方、建て替え後も指定管理者が運営することに懸念を示す声もあった。神奈川区の説明会には、障害者団体の関係者ら約六十人が出席。「時間をかけて入所者の意思確認をする考えが盛り込まれて良かった」などと、構想案を前向きに捉える人が多かった。県が一月、定員百五十人規模での現地建て替えを発表した際の公聴会では、「入所者の意向を聞くべきだ」「時代錯誤だ」と批判が続出。県は大規模施設の建て替え案を撤回するとともに、入所者の意思を二年がかりで確認する仕組みを構想案の柱の一つにした。ただ、家族からは不安も漏2016年12月8日、措置入院患者の退院後の継続支援(支援と呼ぶ監視)という再発防止策を公表した。

*1-4:https://headlines.yahoo.co.jp/videonews/ann?a=20170813-00000013-ann-soci (Yahoo 2017/8/13) 死因は出血性ショック 厚労省女性キャリア官僚刺殺
 東京・港区で厚生労働省のキャリア官僚の女性が弟に包丁で刺されて死亡した事件で、女性の死因が腹を刺されたことによる「出血性ショック」だったことが新たに分かりました。52歳の男は12日午前5時半ごろ、自宅マンションで、姉の厚労省関東信越厚生局長・北島智子さん(56)の腹を包丁で刺し、殺害した疑いで13日朝、送検されました。その後の警視庁への取材で、北島さんは腹を複数回刺されたことによる「出血性ショック」で死亡していたことが新たに分かりました。男は「私がやりました」と容疑を認めています。男には精神疾患での通院歴があり、警視庁は、男の責任能力の有無を含めて当時の状況を調べています。北島さんは男と同居する母親の介助のため、事件前夜から泊まりにきていたということです。

*1-5:http://www.saga-s.co.jp/news/national/10201/462726 (佐賀新聞 2017年9月12日) ペルー人被告「精神疾患」の診断、埼玉・熊谷6人殺害事件で再鑑定
 埼玉県熊谷市で2015年9月14~16日、小学生2人を含む6人が殺害された事件で、強盗殺人などの罪で起訴されたペルー人のナカダ・ルデナ・バイロン・ジョナタン被告(32)について弁護側が請求し実施された精神鑑定で、「精神疾患がある」との診断結果が出たことが12日、関係者への取材で分かった。さいたま地検が起訴前に実施した鑑定では「精神疾患なし」と診断されていた。裁判はさいたま地裁で年度内にも始まる見通し。異なる鑑定結果が出たことで、刑事責任能力が主な争点になる。事件は間もなく発生から2年となる。ナカダ被告は逮捕後の県警の調べに不可解な説明もみられた。

*1-6:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/460108 (佐賀新聞 2017年9月2日) 障害者の積極雇用を 労働局と県が要請
■経済4団体に
 9月の障害者雇用支援月間に合わせて、佐賀労働局と佐賀県は1日、県経営者協会など経済4団体に、障害者の積極的な雇用を要請した。他の要請先は県商工会議所連合会、県中小企業団体中央会、県商工会連合会。松森靖佐賀労働局長は県経営者協会で、前年度の県内のハローワークにおける障害者の就職件数が8年連続で増加した点を踏まえつつ、「精神障害者雇用が全体に占める割合が7・3%にとどまっている。積極的な採用を」と促した。協会側は「トライアル雇用などの多様な手段を使いながら、障害者雇用の機運を高めていきたい」と応じた。県内の障害者雇用率は2・43%で全国5位(昨年6月現在)。法定雇用率達成企業の割合は73・1%で6年連続で全国トップを維持している。

<発達障害>
*2-1:http://www.asahi.com/topics/word/%E7%99%BA%E9%81%94%E9%9A%9C%E5%AE%B3.html
(朝日新聞 2013年2月27日) 発達障害
 生まれながらの脳の機能障害が原因と考えられ、犯罪など反社会的な行動に直接結びつくことはないとされる。落ち着きがない注意欠陥・多動性障害(ADHD)、読み書きや計算など特定分野が苦手な学習障害(LD)などがある。アスペルガー症候群は対人関係をうまく築けず、限られた対象にこだわる傾向がみられるが、言語や知能に遅れがなく、周囲が障害を見過ごすケースも少なくない。文部科学省の調査(2012年12月)は、小中学校の通常学級の子の6.5%に発達障害の可能性があるとしている。

*2-2:http://www.nishinippon.co.jp/nnp/lifestyle/article/302604 (西日本新聞 2017年1月20日) 発達障害、進学先と連携を 総務省が文科、厚労両省に勧告
 総務省行政評価局は20日、自閉症やアスペルガー症候群などの発達障害を抱える児童・生徒に対する個人別の支援計画を、進学時に引き継ぐ仕組みが不十分だとして、文部科学省と厚生労働省に改善を勧告した。全国の計42施設を抽出した調査で、中学は卒業生の15%、高校は6%しか進学先へ計画を引き継いでいなかった。小学校は79%、保育所は35%、幼稚園は47%だった。計画の作成対象が施設ごとに異なる実態も判明。文科省の通知などは「必要に応じて」計画をつくるよう学校側に求めているが、医師の診断書を必要としたり、特別支援学級の児童に絞ったりというケースもあった。

*2-3:https://ryukyushimpo.jp/news/entry-570430.html (琉球新報 2017年8月30日) <“学力向上”の現場>障がいある子、全国学力テストを問う、全国学力・学習状況調査、全国学テ
◆点に入れないで/「手の掛かる子」対象外に
 「標準的な学力が身に付いていないなら、入れなくていい」。沖縄県内南部のある小学校で昨年、発達障がいがある生徒が受けた全国学力テストの結果を、文科省に報告しなくていいと管理職が断言した。担任らは「子どもたちの実力を把握するための調査なのだから出すべきだ」と主張したが、通らなかったという。文部科学省によると全国学テの対象は該当学年の学習内容を履修できている全児童・生徒。知的障がいの診断が付くと対象外にされるが「学習内容を履修できているか」の判断は学校に任される。診断が付いていないグレーゾーンや、発達障がいがある児童・生徒を一律に対象から外したり、点数によって選択したりすることが、少なくない県内学校で行われている。情緒障がいやADHD、学習障害などがある児童・生徒が、通常学級に在籍しながら必要に応じて別教室で指導を受ける「通級指導教室」。県内の設置数は右肩上がりで、2017年には過去最多を記録した。通う子どもたちに知的障がいはないが、一斉授業では力を伸ばしにくく、教科などによって得手不得手が出る場合もある。「通級の子どもは、学テを受けても結果は文科省に出さない」と多くの教員が口をそろえる。県は「数人の調査結果を抜いても学校の平均正答率は大きく上下しない。点数が悪いからと、結果を報告しないことは考えにくい」と否定するが、現場教員は「平均点が取れるなら入れて、取れないなら入れなくていいと言われることもある」と明かす。学テの目的は「義務教育の機会均等と水準の維持向上」だ。だがわずかな点差を競い合う中で、全ての子どもの学習を保障するはずの「学力向上」の現場から、平均から外れる子どもたちが排除されている。「誰かの指示というより慣例」で通級学級の児童の結果を除外すると説明していた若手の小学校教諭は、記者と話をするうち「学力向上の対象に通級の児童が入る認識がなかった。恐ろしいことをしていたのかもしれない」と表情を変えた。

<ハンセン病患者差別>
*3:https://www.nishinippon.co.jp/nnp/syasetu/article/354631/ (西日本新聞 2017年8月30日 ) ハンセン病差別 司法が加担した罪を問う
 「密室の法廷」で下された死刑判決は妥当だったのか、重大な疑義があるのに司法が検証を拒むのは不当-として、国家賠償を求める訴訟が熊本地裁に起こされた。ハンセン病患者の誤った隔離政策に司法が加担し、差別を助長した歴史を踏まえ、国はこの訴えを重く受け止めるべきだ。訴えたのは熊本県でハンセン病患者とされた男性が殺人罪などで死刑判決を受け執行された「菊池事件」を巡り、裁判のやり直しを求めてきた支援者の元患者らだ。隔離施設内に設けられた「特別法廷」で裁かれた男性について、元患者らは差別的な扱いを受けた冤罪(えんざい)の疑いが強いとして、検察自らが刑事訴訟法に基づき「公益の代表者」として再審を請求すべきだと主張してきた。しかし、最高検は「再審の事由がない」とこれを拒み、元患者らは差別や偏見の被害回復を求める権利が侵害され、精神的苦痛を被ったと訴えている。再審の道が開かれない中で、国賠訴訟を通じて事件の真相に迫るのが狙いだ。熊本県の元役場職員を殺害するなどした罪に問われた男性は一貫して無罪を主張しながらも1962年、3度目の再審請求が棄却された翌日に死刑が執行された。最大の問題は、人権尊重や裁判の公開をうたった憲法に反した疑いが強い特別法廷である。最高裁が1948~72年に開廷を認めた事例は全国で95件に上る。最高検は今年3月、隔離法廷に関与したこと自体は認め、最高裁や日弁連に続き謝罪した。菊池事件は特別法廷で下された唯一の死刑事案とされる。元患者らの弁護団は冤罪の新証拠などを示すとともに、特別法廷の違憲性を明らかにしていく方針という。ハンセン病問題は、国の隔離政策を違憲とした2001年の熊本地裁判決(確定)後、元患者の救済策が進む一方、今も差別と偏見に苦しむ家族が国を集団提訴するなど、全面解決にはほど遠い。菊池事件が問うのは人権侵害に対する司法全体としての姿勢だ。真相を闇に葬ってはならない。

<共謀罪と個人情報運用も人権侵害の方向>
PS(2017年9月21日追加):*4-1のように、犯罪を計画段階で逮捕でき、そのためには監視社会になる「共謀罪」法案も国民の反対を無視して可決された。これは、安倍首相が人権侵害を好む人なのでは全くなく、官僚機構やそれに便乗して民主主義(国民主権)の理念を護るためではなく他の目的のために働く国会議員やメディアに原因がある。そのため、誰が首相になっても余程の気概と力がなければ「共謀罪」の廃止はできないと思われる。
 また、*4-2のように、総務省は、①個人が健康状態や購買履歴等の情報を一括で企業に預けて報酬やポイントを得る仕組みを作り ②データを預かる事業者は個人情報を匿名化した上で情報が欲しい企業に提供できるようにする とのことだが、民間企業の利用によって歯止めがなくなる上、個人から同意を取る形で次第に個人の選択の余地もなくなるため、この規制緩和は個人情報の過度な開示や利用による人権侵害に繋がる。
 つまり、近年は、民主主義や人権尊重の歴史に逆行する改革が次々と行われているのだ。

*4-1:http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201709/CK2017091602000145.html (東京新聞 2017年9月16日) 【社会】「共謀罪」廃止へ集結 「監視を恐れず」「改憲つながる恐れ」
 犯罪を計画段階で処罰する「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ改正組織犯罪処罰法の廃止を目指す市民団体や法律家団体などでつくる「共謀罪廃止のための連絡会」は十五日、東京都千代田区の日比谷野外音楽堂で「共謀罪は廃止できる!9・15大集会」を開いた。約三千人(主催者発表)が参加し、「共謀罪は絶対廃止」などと声を上げた。連絡会は今月七日、「SEALDs(シールズ)」の元メンバーらがつくった「未来のための公共」や日本消費者連盟など十四団体が結成した。アムネスティ・インターナショナル日本の山口薫さんは「今、市民活動は危機にさらされている。法は施行されたが廃止できる。監視を恐れず、萎縮せず活動したい」と話した。「共謀罪対策弁護団」の三澤麻衣子事務局長は多くの弁護士で、摘発された場合の対策や予防を考えるとした。世田谷区の会社員横山淳さん(46)は「共謀罪の強行採決はひどかった。計画段階で捕まり、監視社会が進む。改憲の流れにもつなげられるのでは」と話した。民進党など野党四党の国会議員らは、二十八日からの臨時国会への廃止法案の提出を明らかにした。

*4-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20170828&ng=DGKKASFS25H54_X20C17A8MM8000 (日経新聞 2017.8.27) 個人情報 運用を一任、総務省、利用増へ事業者認定 データ利用先を自由に
 総務省は個人が健康状態や購買履歴などの情報を一括で企業に預け、ビジネスに役立ててもらって報酬を得る仕組みを作る。2020年をめどに、情報を預かって運用する事業者への認定制度を設ける。個人にとってはデータを預けて、その先の利用を運用者に任せる「簡易型」の仕組みだ。データの運用先まで個人が選ぶ「厳格型」と合わせて、政府は個人データをビジネスに利用する制度を整える。ビジネスに個人データを活用する仕組みは、実際に情報を使う企業まで個人が指定する「情報銀行(総合・経済面きょうのことば)」も政府内で検討が進んでいる。総務省が取り組むのは、運用者が一定のルールのもとで個人のデータを自由に利用できる仕組み。個人情報のビジネス利用は2本柱で設計が進む。総務省は新たな仕組みを「情報信託」と呼んで整理する。データを扱う事業者はIT(情報技術)系の企業やシンクタンクを想定する。個人はあらかじめ病院や銀行、旅行会社などのデータベースを事業者に指定し、病歴や資産情報、渡航履歴などの情報に運用担当者がアクセスできるようにする。データの開示範囲は個人が設定する。データを預かる事業者は個人情報を匿名化したうえで、情報を欲しい企業に提供する。医療や観光、金融といった企業のニーズを見込む。データをもらう企業は対価を払い、一部を特定のサービスに使えるポイントなどの形で個人に還元する。個人情報を適切に管理するため、データを運用する事業者に対し、民間が設立する団体による認定制度を導入する方針だ。提供元の個人との間ではデータを漏洩しない、提供先の企業との間では個人データを不正に使わない、などの約款を交わすことを義務付ける。18年度予算の概算要求に実験費用を盛り込む。政府はIT総合戦略本部を中心に、個人が預ける情報を管理・運用する仕組みとして「情報銀行」を検討している。ただ、「どの企業にどのデータを提供する」といった具合にデータの提供先まで個人が指定する方法が議論されている。銀行方式は最終的にデータを使う企業が分かる。個人に詳細なデータを出してもらうかわりに、大きなポイントを出すといった個別の設計をしやすい。総務省の方式はデータ運用の自由がある一方、個人がデータ提供をためらう可能性はある。政府は個人の使い勝手に応じて2案を設け、流通の仕組み作りを進める。日本は海外と比べて個人データの外部提供への抵抗感が強いとの調査もある。信託方式はデータ管理のルール作りとともに、認定制度の信頼を高めることが課題になる。

<子どもへの人権侵害>
PS(2017年9月24日追加):*5-1のように、1000人あたりの向精神薬の処方件数を算出し、年齢層ごとの処方件数の経年変化を統計解析で比較したところ、2002年~2004年と2008年~2010年の比較で、13歳~18歳のADHD治療薬使用が2.49倍、統合失調症などに使う抗精神病薬が1.43倍、抗うつ薬が1.31倍と増加し、小学生でもADHD治療薬が1.84倍、抗精神病薬が1.58倍となっており、病気も効果も安全性も確立していないのに子どもへの適応外処方や多剤併用が浮上しているのだ。また、*5-2のように、以前はADHDという名前の病気はなく、子どもに元気があるのは当たり前で、そういう人が大人になってもやはり元気に仕事をしているため、「子どもに落ち着きがないから、ADHDが疑われる」などとして、すぐ子どもを異常扱いして薬漬けにするのは疑問が多い。

*5-1:https://yomidr.yomiuri.co.jp/article/20150120-OYTEW54767/ (読売新聞 2015年1月20日) 「子供に向精神薬処方増」のなぜ?
 1月13日の朝刊社会面で、「子供に向精神薬処方増」のニュースを書いた。臨床現場では以前から指摘されていた傾向が、初の全国調査で確かめられたのだ。いささか硬い内容になるが、子どもへの投薬を考える上で重要なデータが多く含まれているので、今回は調査結果を詳しく紹介してみたい。調査を行ったのは、医療経済研究機構研究員の奥村泰之さん、神奈川県立こども医療センター児童思春期精神科医師の藤田純一さん、国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所薬物依存研究部室長の松本俊彦さん。2002年~2010年の外来患者(18歳以下)の診療報酬明細書と調剤報酬明細書の一部、計23万3399件をもとに、1000人あたりの向精神薬の処方件数などを算出し、統計解析で年齢層ごとの処方件数の経年変化などを比較した。2002年~2004年と2008年~2010年を比較すると、13歳~18歳では、注意欠如・多動症に使うADHD治療薬が2・49倍、統合失調症などに使う抗精神病薬が1・43倍、抗うつ薬が1・31倍と増加した。2008年~2010年の同年代の人口1000人あたりの処方件数は、抗不安薬・睡眠薬が4・8件、抗精神病薬が3・9件、抗うつ薬が3件、気分安定薬が3件だった。小学生(6歳~12歳)への向精神薬処方も増え、2002年~2004年と2008年~2010年の比較では、ADHD治療薬が1・84倍、抗精神病薬が1・58倍となった。依存性のあるベンゾジアゼピン系薬剤を中心とする抗不安薬・睡眠薬は、この年代では0・67倍と減少した。同年代の人口1000人あたりの処方件数は、気分安定薬が3・6件、ADHD治療薬が1・5件、抗精神病薬が1・2件、抗うつ薬が1・2件だった。件数は少ないが、0歳から5歳の幼児に対しても、抗精神病薬などの処方が確認された。処方件数増加の背景について、調査報告書は、受診者数の増加(厚生労働省の患者調査では、未成年の精神疾患受診者数は2002年に9万5000人、2008年は14万8000人)や、思春期外来の増加(2001年は523施設、2009年は1746施設)、ADHD治療薬など新薬の承認、などの影響を挙げている。
●適応外処方と多剤併用の問題も浮上
 果たして診断や投薬は適切に行われているのだろうか。過剰診断や誤診、不適切投薬の症例はないのか。診療報酬明細書などを基にした今回の統計調査では、個々の状況が分からず、処方が適正か否かの判断はできない。だが、疑問点はいくつも浮かび上がる。特に、処方件数が増えている向精神薬の多くが、子どもに対しては「適応外」であることは認識しておく必要がある。現在使われているADHD治療薬は、子どもに対する臨床試験を行って適応(6歳以上)を得ているが、抗精神病薬や抗うつ薬、抗不安薬・睡眠薬などは、子どもを対象とした大規模な臨床試験が日本では行われておらず、有効性や安全性の確認が十分ではない。このような向精神薬の添付文書(薬の説明書。インターネットで簡単に読める)には、子ども(小児)への投与について、「安全性は確立していない」「使用経験がない」などの記述があるので、関心のある方は確認していただきたい。子どもへの薬の適応外処方は、向精神薬以外にも行われることが多く、すぐに「悪」と決めつけることはできない。本物の薬か偽の薬を、ランダムにグループ分けした子どもたちに飲ませ、効果を比較する臨床試験への抵抗感が日本では根強く、実施しにくい事情もある。大切な子どもたちを、薬の「実験」に巻き込みたくないのだ。しかし一方で、成長期の脳に作用する向精神薬が、「安全性は確立していない」「使用経験がない」とされながらも、実際には使用が拡大している。子どもたちを守りたいがゆえに、子どもたちを未知のリスクにさらす。そんな矛盾した状況が生じているのだ。子どもに対する臨床試験が行われなければ、副作用の種類や発生頻度は分からず、市販後の副作用調査も徹底されないなど、被害を組織的に防ぐ手立てが乏しくなってしまう。さらに、深刻な問題が起こった時の救済策も、適応外処方の場合は不十分になりかねず、善意で処方した医師が責任を問われる可能性もある。このような状況で、誰が得をするというのだろうか。この調査でもう一つ注目したいのが、一人の子どもに異なる向精神薬を複数処方する例が多いという指摘だ。向精神薬が、他の種類の向精神薬と併用される割合は、気分安定薬で93%、抗うつ薬で77%、抗不安薬・睡眠薬で62%、抗精神病薬で61%に上った。言い方を変えると、例えば抗精神病薬を処方される子どもの61%は、抗不安薬・睡眠薬や抗うつ薬など、他の種類の向精神薬も併用処方されている、ということになる。調査報告書は「この数値は欧米と比べて著しく高い」と指摘し、欧米での未成年への向精神薬併用処方割合について、米国19%、オランダ9%、ドイツ6%という数字を示した。医療提供体制の違いや調査対象の等質性などの点から、この結果だけで「安易に『わが国では、向精神薬の不適切な多剤併用処方の割合が異様に高い』と結論づけるのには慎重であるべき」と注意を求めたが、「今後、わが国の多剤併用処方の割合が欧米よりも高くなる理由について、検討していく必要がある」とした。当然の指摘だろう。日本では以前から、成人患者に対して抗精神病薬を何種類も使う多剤大量処方が続き、国際的にも問題視されてきた。ベンゾジアゼピン系薬剤を漫然と長期間処方され、常用量依存に苦しむ人も多い。カウンセリング技術の未熟さや診療時間の短さ、マンパワーの少なさなど様々な事情から、薬に過度に頼る医師が多いのだ。そして更に、過剰な処方が子どもたちにも及んでいるとすれば、早急に歯止めをかけなければならない。日本の子どもへの多剤併用処方や適応外処方は、どのような根拠で、どのような必要に迫られて行われているのか。処方医や患者、家族を対象とした詳細な実態調査が求められている。

*5-2:http://healthpress.jp/2015/07/adhd-1.html (Health Press 2015.7.8) 覚せい剤に似た性質を持つADHD薬。子どもへの処方は本当に害はないのか?
 近年、ADHD(注意欠陥・多動性障害)など発達障害と診断される子どもが増えている。ADHDの特徴は、集中力や注意力に欠けたり、衝動性や多動性が見られたりすることだ。詳しい原因はわかっていないが、脳の機能障害ではないかといわれている。しかし、以前はADHDという名前の病気はなく、"元気があること"はその子どもの個性だと思われていた。そして、そうした子どもたちも、たいていは成長するにしたがって落ち着いて生活できるようになっていた。今は病気というレッテルを貼られ、薬漬けにされる時代だ。メディアでこの病気が取り上げられるようになると、「この子も落ち着きがないのでADHDではないか」と、親や教師など周囲の大人が心配し、子どもを受診させるケースが多くなった。また、少しでも兆候があるとADHDとみなし、脳の中枢神経に作用する強い向精神薬を処方する医師も増えている。
●向精神薬を服用していた米銃撃事件犯の少年たち
 この向精神薬の代表的な薬のひとつに、リタリン(塩酸メチルフェニデートの一般製剤)がある。すでに、スウェーデンでは1960年代後半に同剤の発売が禁止されており、1970年代にはヘロインと同等の依存性があると指摘されていた。それにもかかわらず、アメリカではADHDの特効薬として患者への投与を継続。また、子どもへの投与だけではなく、大人の間でも「活動的になり仕事や家事がはかどる」という理由で、急激に広まっていった。リタリン生産量は1990~1999年に全世界で700%という高い伸びを示し、その9割がアメリカで使用されていた。だがそうしたなか、少年たちによる銃乱射事件が学校内で多発する。彼らは学習機能障害と診断され、リタリンなどの向精神薬を投薬されていた。コロラド州ではその後、厳密な検査を行わず安易に診断を下されたADHDの子どもに対して、リタリンを強制投与することを禁止した。日本において、ADHDはリタリンの適応外であったものの、うつ病の患者に処方されてきた。だが、2007年、ある男性が複数の病院を受診して安易にリタリンを処方され、同剤の依存に陥り自殺するという事件が起こる。このことからうつ病も適応外となり、ナルコレプシーのみの適応となった。2008年からは登録された専門医にしか処方できなくなっている。現在、日本でADHDと診断された子どもに処方されるのは、コンサータ(メチルフェニデート徐放剤*)という薬だ。しかし、このコンサータには覚せい剤に似た性質があるため、承認にあたって"コンサータ錠適正流通管理委員会"を設置し、処方できる医師や調剤できる薬局を登録制にするという厳しい規制が設けられた。また、薬局はリストにない場合は拒否しなければならないなど、流通・処方状態の管理がしっかり行われている。このように、子どものADHDに処方される薬は、厳重な規制を必要とする危険な薬だ。これを子どもに与え続けて、果たして悪影響がないといいきれるのだろうか。ADHDが疑われるからといって子どもを安易に薬漬けにしてしまう医療には、疑問を持たざるを得ない。何らかの弊害が起こらないよう、親をはじめとする周囲の大人たちが、子どもに投与される薬には、どのようなリスクがあるのかを十分理解するべきである。
○徐放剤:成分の放出を遅くし、服用回数を減らせるように開発された薬。血中濃度を長時間一定にすることで、副作用を回避できる。

<精神障害者差別>
PS(2017年10月10日追加):*6-1のように、「①ラスベガスで銃乱射事件があった」「②容疑者の動機は謎に包まれている」「③米ABCは事件の数カ月前から容疑者の精神状態が悪化していたと報じた」と朝日新聞が報道し、日本の多くのメディアは、「原因は米国が銃社会であることだ」としているが、①は事実であるとしても、②の動機は、容疑者の弟が「最近、金額の大きなカケをしていた」と証言していることから、私は「カケで破産するほどの大損をしてラスベガスに恨みを持った」のが動機ではないかと考える。しかし、この容疑者の弟の証言は相手にされず、③のように「容疑者は精神状態が悪化していた」ということになっており、この「精神状態の悪化」の定義は全く曖昧で、それが銃乱射を行う動機になるとは思えない。にもかかわらず、こういう報道が堂々となされることは、国連の「障害者権利条約」や日本の「障害者基本法」「障害者差別解消法」などに反しており、精神障害者への差別を助長して社会参加をやりにくくするとともに、その尊厳を無視する見識の低いものである。
 そのような中、*6-2のように、「農福連携」して農業を障害者雇用の場とする取り組みが始まっている。私は、衆議院議員時代(2005~2009年)に、伊万里市の障害者福祉施設で精神障害者が有田焼の絵付けをしているのを視察したことがあるが、この仕事は自閉症でも問題なく、集中する分だけ出来は上々で、高級品を作らせればそれにも対応できそうに思われた。

*6-1:http://digital.asahi.com/articles/ASKB55F2ZKB5UHBI018.html (朝日新聞 2017年10月6日) ラスベガス銃乱射容疑者、精神状態悪化か 米報道
 米史上最悪の銃乱射事件を起こしたスティーブン・パドック容疑者(64)の動機は、いぜん謎に包まれている。解明のかぎを握ると思われた交際相手の女性(62)は帰国後、「全く知らない」と困惑した。容疑者の精神状態が悪化していたとの報道も出ているが、なおはっきりしない。「こんな事件を計画していたとは全く考えられなかった」。女性が4日、事件後初めて弁護士を通じて出した声明には、突然捜査対象となった困惑とともに、容疑者への思いがにじんだ。「親切で思いやりのある、静かな人だった。私は彼を愛していて、将来をともにすることを望んでいた」。容疑者は、事件前に女性にフィリピンに帰るための航空券を買い与えていた。女性は9月15日に日本を経由してマニラに到着。その後、容疑者から「フィリピンの家族のために家を買うお金」として10万ドルの入金があった。米メディアによると、女性が容疑者と知り合ったのは、地元のカジノだった。女性は接客担当をしており、度々訪れる容疑者と親しくなり、交際を始めた。ネバダ州の地元紙リノ・ガゼット・ジャーナルによると、女性は容疑者と知り合った当時、別の男性と結婚していたという。2013年、女性は夫と暮らしていた家を出て、パドック容疑者が所有していた同州リノのアパートに引っ越した。それから2年後、女性は夫と離婚した。女性が元夫と暮らしていた当時の隣人は「家でパーティーをしたり、近所の子どもたちを家に泊めてあげたりしていた。近隣の皆に好かれ、とてもすてきな女性だった。家族に会いによくフィリピンへ往復していた」と話し、事件に衝撃を受けていたという。しかし、容疑者と暮らし始めてから、女性の近隣の人は全く違った印象を語る。「2人とも見た覚えがない」。事件直前まで2人が暮らしていた家の隣人はそう話す。他の近隣住民も、つきあいのあった人はほとんどいなかった。オーストラリアに住む女性の姉妹は米NBCの取材に「彼女は何も知らぬままフィリピンに行かされた。(容疑者が)計画を邪魔されたくないと思ったのだろう」と涙ながらに訴えた。一方、米ABCは4日、事件関係者の話として、容疑者は事件の数カ月前から精神状態が悪化していたと報じた。体重が減り、身なりも汚くなり、女性の元夫に対する妄想にとりつかれていたという。確たる動機が見えぬまま、捜査関係者のいらだちは高まっている。ラスベガス警察のロンバルド保安官は4日の会見で「1人で全てやったとは信じがたい」と話し、協力者がいた可能性も視野に入れていることを示唆した。同保安官は、容疑者が9月下旬に高層コンドミニアムの一室を予約していたことも明らかにした。その時期、今回の事件と同じように、ここから見下ろせる場所で別の音楽祭が開かれていた。警察は「理由は不明」としているが、容疑者が当初、この音楽祭を狙おうとした可能性もある。ラスベガス警察は、これまで事件での死者を59人としていたが、自殺した容疑者を除く58人に訂正。けが人も489人とした。

*6-2:http://special.nikkeibp.co.jp/NBO/businessfarm/bizseed/05/ (日経BP 2017.2.28) キーワードは“ノウフク”、浸透し始めた「農福連携」、「働き手」が欲しい農と「働く場」を求める福祉、両者のニーズが合致
 「農福連携」と呼ばれる取り組みが活発化している。農業を福祉の現場に取り入れる試みは従来からあるが、どちらかというと障がい者支援が中心だ。引きこもりやニートなどの生活困窮者への支援は、それほど多くなかった。最近になって、生活困窮者の支援にも手が広がる。また、農作物の生産・加工・販売を広く手掛けたり、農家からのニーズに応じて農作業の委託請負をしたりする法人が少しずつ増えている。一般にはまだそれほど馴染みがないが、「農福連携」という言葉がじわじわと浸透し始めている。農福連携とは、文字通り、農業の現場と福祉の現場が連携することだ。具体的には、障がい者や生活困窮者などの社会的に弱い立場にいる人たちが、農園で畑仕事に従事したり、農産物の加工・販売をしたりして、自分の働く場所と居場所を手に入れる取り組みを指すことが多い。農業の現場では、高齢化などにより担い手の減少が止まらず労働力不足が悩みの種だ。一方の福祉サイドでは、障がい者・生活困窮者の働く場所がなかなか見つからない。農業の「働き手がいない」という問題と、福祉の「働く場がない」という問題を解決し、補完してくれるのが農福連携というわけだ。
●農福連携のシンポジウムやフォーラム、マルシェ
 最近、農福連携を冠したシンポジウムやフォーラム、マルシェなどの催しが頻繁に開かれるようになった。農業・福祉関係者だけでなく、行政や一般の人も巻き込みながら、大きなうねりになろうとしている。この2月14日には、農林水産省の政策研究機関である農林水産研究所主催の「農福連携」シンポジウムが開催された。「農業を通じた障害者就労。生活困窮者等の自立支援と農業・農村の活性化」というテーマが掲げられ、障がい者や引きこもり、ニートなどを実際に引き受けている事業者をはじめとして、農業関係者、行政の担当者、自治体、研究機関など多くの人たちが集結。農福連携の最前線について報告が行われ、活発な議論が交わされた。3月には農福連携の取り組みを全国レベルで推し進める「全国農福連携推進協議会」が設立される。ここに全国の福祉事業所や農家、行政や研究者、企業など、多くの賛同者が参加する。行政の側でも、該当省庁でもある農林水産省と厚生労働省の関心度は高い。協力しながら、積極的に連携を推し進めている。「農福連携マルシェ」などはその一例だろう。2015年6月に初のマルシェを霞が関で開催。2016年5月には官庁街を出て東京・有楽町、その後全国規模で開かれている。予算面でも、両省庁に農福連携を意識したものが少しずつ目立つようになってきた。
●取り組みには2つの方向がある
 一般社団法人JA共済総合研究所主任研究員で、長らく農福連携分野の研究を先導してきた濱田健司氏は、今、農福連携の取り組みとして大きく2つの方向があると分析する。1つは、障がい者や生活困窮者が身を寄せる福祉関係の事業者が取得したり借りたりした農地で農業生産を行う方向だ。生産だけでなく、できた農産物の加工・製造や販売まで手掛けるところも多い。もう1つは、農家や農業生産法人などに対して農作業の請負契約を結ぶというもの。こちらは、障がい者や生活困窮者が農業側の田畑やハウスに出向いて、いわゆる施設外就労として農作業に従事する。直接生産を手掛ける事業者の中には、独自の工夫で、持続可能な事業にしているところもある。代表例は、農福連携のパイオニアとしても知られる農事組合法人「共働学舎新得農場」だ。共働学舎は、北海道十勝地方・新得町に約120ha(120万㎡)の農地を構え、酪農、チーズや有機野菜の生産、工芸品づくりなどを行っている。ここには障がいを持つ人をはじめ、引きこもりやホームレスなど、様々な困難を背負った人たちが集まり共同生活をしながら農業生産・販売を行う。ここで生産されるチーズなどの農産物や工芸品はその品質の高さで知られ、学舎の経営にも寄与する。共働学舎の総売上高は約2億2千万円にのぼり、代表宮嶋望氏によれば「生活に必要な経費は賄えるほど」だという。後者でよく知られている取り組みは、特定非営利活動法人(NPO法人)香川県社会就労センター協議会の例だ。生産者と同協議会が農作業の請負契約を結んで、協議会から障がい者施設に作業の参加を募集・依頼する。農作業の対価として工賃が支払われる。請け負う農作業は、野菜類の苗の植え付けから収穫、除草、出荷調整に至るまで多種多様だ。協議会を中心として、障がい者施設と地域行政、JA、生産者の間で協力し合う仕組みを構築し、上手に連携している例といえる。生活困窮者への支援をする団体も増えている。厚生労働省が2015年4月にスタートさせた「生活困窮者自立支援制度」の中には、生活困窮者に対する就労訓練事業を行う社会福祉法人や生活協同組合で条件を満たすところに対して、支援をする仕組みがある。内容も地域によって違ってくるが、固定資産税や不動産取得税などの一部を非課税にする措置や、事業を立ち上げる時の経費の補助、自治体による商品の優先発注がある。農林水産省でも、いわゆる「福祉農園地域支援事業」という、福祉農園の全国展開を支援する事業を進めている。平成29年度の予算でも、同様の施策が取られていて、「農山漁村振興交付金」といわれるものの中に、福祉農園を支援する枠が設けられた。こちらはNPO法人、民間企業、一般社団法人も申請できる。
●生活困窮者への就労訓練の場としても注目
 こうした制度の充実に伴って、引きこもりやニートなどの生活困窮者に対して就労訓練をする団体が今後増えてきそうだ。ホームレスの就農支援プログラムを手掛けるところも出てきている。JA共済総合研究所の濱田氏は、こうした一連の動きを、「単なる社会貢献や福祉という範疇を超えて、障がい者や生活困窮者はいまや農業にとって必要な人材だと見る動きだ」と語る。担い手不足に悩む農業の現場からのニーズは今後ますます高まってくるだろう。社会的な弱者といわれる人たちが、農業を通じて働く場と収入を得て自立できれば、それだけ社会保障費の削減につながる。同時に、農業の衰退にも一定の歯止めがかかり、生産の拡大に寄与する可能性もある。もちろん解決しなければいけない問題は山ほどある。現在のセーフティネットにアプローチできなかったり、しなかったりする人もまだまだ多い。受け入れる側の意識や体制もまだまだだ。しかし、農福連携には大きな可能性が秘められている。今後の進展に大きな期待がかかっている。

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2017.9.12 日本に現存する差別とその目的 (2017年9月12、14、17、25、26、28、29、30日追加)
 
    高齢者人口の割合       年金受給年齢の引き上げと継続雇用
                      2017.9.7日経新聞

  
 日本人の平均余命  支えられるべき高齢者 外国人労働者  女性労働のM字カーブ 
                              2017.9.9日経新聞

(1)高齢者に対する差別
 日本老年学会と日本老年医学会は、*1-1-1のように、現在は「65歳以上」とされる高齢者の定義を「75歳以上」に引き上げるべきだと国に提言した。私も、65歳時点の平均余命は男性19歳、女性24歳と長く、75歳時点の平均余命でも男性12歳、女性15歳で、医療の進歩や健康意識の高まりで高齢者が若返った状態で平均寿命が延び続けていることを考えると、高齢者は75歳からとし、65~74歳はできるだけ社会の支え手になってもらうのがよいと考える。

 ただし、その際、高齢者に対して雇用差別を行ってはならず、平均余命や平均寿命に男女差・個人差があることも考慮すれば、職種や個人によって仕事が続けられる上限は異なるため、定年ではなく客観的評価(しかし、日本人はこれが苦手なのが問題なのである)でFairに報酬を決めて、働けるようにするのが良いだろう。

 一方、*1-1-2のように、医療制度や人口統計上の区分で「高齢者=65歳以上」が定着しているのに、公務員の定年を60歳から65歳に引き上げることに反対意見があり、役職定年の導入に取り組むべきだとしているが、これは高齢者差別そのものであるため、役職は仕事の遂行能力で決めるべきである。

 また、*1-1-3のように、60歳定年後も希望者全員を雇用することを企業に義務付ける高年齢者雇用安定法改正案の成立に対し、企業は継続雇用の対象者を能力などで絞り込めなくなるため負担増に備えて対応を急いでいると書かれているが、これも働く以上は年齢で差別すべきではないと考える。そして、第一生命経済研究所の熊野首席エコノミストの「人件費の増加を防ぐため能力の高い高齢者の賃金まで企業が一律に抑制しかねない」という警鐘は現実で、人口が減り働き手が減ると言いながら、高齢者の雇用が若年者の雇用を食うと言うのはおかしい。

 つまり、私は、公務員であれ、民間企業のサラリーマンであれ、仕事をこなせる人は気持ちよく働けるようにすべきであり、年齢や性別による差別に合理性はないのに、若い男性しか働かせない状態にしているのはむしろマイナスであって、日本で自動車、家電・パソコンの説明書、銀行の書類等が高齢者や女性に扱いにくい仕様になっている原因だと考える。

(2)社会保障に関する政治・行政・メディアの主張の不合理
1)“子ども保険”創設の主張について
 幼児教育・保育の無償化を目指し、*1-2-1のように、自民党は「子ども保険」の創設を提言しているそうだが、「子ども保険」はリスクも便益もない人からも保険料を徴収するため保険ではなく、公的保険として創るべきでない。小泉氏は「子どもがいなくても年金、医療、介護の受け手となるが、その持続可能性を担保するのは若い人だ」としているが、社会保障には消費税増税か子ども保険による新たな負担が必要で、その他の膨大な無駄は垂れ流しのままでよいとする広報ばかりを受けて育った日本の若者が、真摯に高齢者に寄り添った政策を作ったり介護したりする人材になるわけがないため、外国人労働者の方がよいということになるだろう。

 そしてまさに、*1-2-2のように、「若者に比べて高齢者を優遇する“シルバー民主主義”が財政を悪化させてきたが、政治家は投票所に足を運んでくれる人の意向を気にするため、選挙制度を変えて、“ドメイン投票”や“余命投票”が真剣に議論されている」と言う人まで出てきており、これは底の浅すぎる解釈で、日本国憲法で定められた普通選挙、基本的人権の尊重、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利などを無視している。さらに、「政治家が高齢者の意向を勝手に忖度しているだけ」「新たな人気取り」などとしているのは、(ここでは長く書かないが)我が国の周回遅れの社会保障と本物の財政改革の遅れに対する合理化にすぎない。

2)介護保険制度について
 *1-2-3に、「我が国の介護保険は膨張しており、介護施設や在宅サービスの給付費は総額約9兆円に上り、2025年度には2倍以上のおよそ20兆円に膨らむ見込みで、週2回、月10回程度の訪問が常識的だ」と書かれている。しかし、自宅療養をする人に月101回(1日3.4回)は不自然ではなく容体によるため、最高利用回数が月30回というのを威張る必要はない。

 そして、ムダを生む理由の一つは「安さだ」とも書かれているが、介護保険制度はすべての人にリスクと便益があるのに、介護保険料は「40歳以上~死亡時」まで支払わなければならない。一方で、医療保険制度は世帯主が支払義務者で40歳以下でも支払っているのであり、私は「子ども保険」を創るよりも介護保険料の支払義務者を医療保険と同じ世帯主とし、保険料の支払者・受益者の年齢制限をなくすのが筋だと考える。そうすれば、病児保育も介護で賄える。

 なお、「生活援助サービスは無駄」とも書かれているが、高齢や病気で家事ができない場合は、生活援助サービスがなければ施設に入らなければならず、QOL(Quality of Life)が低くなると同時に、施設の建設コストもかかる。そのため、「回数を増やすとコスト意識が甘くなる」などと言うのは、家事が知識と体力を要し失敗の許されない労働であって、85歳の高齢者には大変な仕事であることを知らない人の主張である。

 また、*1-2-3では、サービス付き高齢者住宅(以下、サ高住)等での在宅サービスが問題視されているが、自宅を離れてサ高住に住まなければならなくなった高齢者がどういう人であるかの丁寧な考察がない。つまり、サ高住で介護保険の給付が増えるのは当然で、そのため介護サービスの内容は障害の程度に応じて専門家が判定しており、認められているケアを100%受けても足りない程度の設定になっているのである。

 このように、メディアが「高齢者は金持ちで社会保障などする必要のない人」「若者の負担になるだけの存在」などという宣伝を熱心に行った結果、*1-2-4のように、二度と稼げない高齢者から、息子を語って大金を奪うなどという詐取が増えた。私は、「子どもだとしても、甘やかしすぎだ」「見ず知らずの人に、そんな大金をよく渡すものだ」などと驚くことが多いが、詐欺は騙した人が悪いのであって騙された人が悪いわけではないため、警察は、気を付けるように広報するだけではなく、犯人を逮捕して厳罰に処し、犯罪の予防に繋げるべきである。

(3)外国人労働者に対する差別
 佐賀県は、2016年に、*2-1のように外国人数が前年比13%増の5,140人で伸び率では全国の都道府県でトップになり、県が受け入れ態勢づくりに取り組んで、「壁」の突破に努めているそうだ。

 しかし、政府は、トランプ政権の移民政策を批判する割には、*2-2、*2-3のように、技能実習でも最長3年しか働けず労働条件が悪く、国家戦略特区で認めた農業の外国専門人材も日本で働ける期間を通算3年に制限するなど、外国人労働者に対する差別的扱いを行っている。ちなみに、最長3年では、仕事を覚えたところで帰国するため、労働力として頼みにならない。そして、農業だけではなく、加工・販売・輸出入・製品企画などで、日本人労働者と同じ条件で働けることを「差別のない状態」と言うのである。

(4)高度専門職差別と女性差別
1)高度専門職に対する差別
 *3-1のように、労働基準法を改め、「残業代ゼロ」制度を作って“高度プロフェッショナル”と呼ばれる人をそれに当てはめる制度は、他の法案と一括化して出し直すのではなく、①“高度プロフェッショナル”と呼んでいる人は本当に高度プロフェッショナルなのか ②“高度プロフェッショナル”なら、残業代をゼロにするのが適切な理由は何か などについて、立法理由を明確に説明すべきである。

 しかし、私は、労働時間を自己管理できて報酬もそこそこに高い管理職に残業代がつかないことで十分であり、“高度プロフェッショナル”という職種を分けて残業代をゼロにするのは不適切だと考える。何故なら、努力して“高度プロフェッショナル”になると、プラスどころかマイナスになる社会システムにしては、智の時代に対応できないからだ。そして、現在、博士課程を修了してポスドクになっている人も同じである。

2)女性に対する差別
 *3-2のように、日本女性には、谷が緩やかになったとはいえ、まだM字カーブがある。そのM字カーブは欧米にはないが、それは保育施設が整っているだけではなく、ナニーやメイドを雇って子どもを見させることもできるからである(ただし、日本でこういうことをすると批判する人すらいる)。そのため、優秀な日本女性は、欧米に留学している間や欧米に転勤している間に子ども作る人が多く、そうした方がやり易いと言われている。

 そのM字カーブが、近年は米欧とほぼ遜色のない形に近づいたそうだが、女性は労働条件が悪く、昇進も困難であるため、賃金が低い。その理由は、生産年齢人口の男性を中心に据えて、多くの女性を補助的労働力と捉えているからにほかならない。

<高齢者差別>
*1-1-1:https://www.nikkei.com/article/DGKKASDG05H6Y_V00C17A1EA1000/ (日経新聞 2017/1/6) 「高齢者は75歳から」 学会が提言 65~74歳は社会の支え手
 日本老年学会と日本老年医学会は5日、現在は「65歳以上」とされる高齢者の定義を「75歳以上」に引き上げるべきだとする国への提言を発表した。心身が健康な高年齢者が増えたためで、65~74歳は「准高齢者」とし、社会の支え手として捉え直すべきだとしている。社会保障や雇用制度をめぐる議論に影響を与える可能性がある。提言をまとめるに当たり、両学会は高年齢者の様々な健康データを解析。日本老年医学会副理事長の秋下雅弘東京大学教授によると、医療の進歩や健康意識の高まりで現在の高齢者は10~20年前に比べ5~10歳若返った状態にあるという。提言は、前期高齢者とされる現在の65~74歳は「心身の健康が保たれ、活発な社会活動が可能な人が大多数」と分析。健康な間は仕事を続けたり、ボランティアに参加したりするなど、支えられる側から支える側に回る必要があるとした。この世代を過ぎた75~89歳を高齢者と定義し、平均寿命を超えた90歳以上を「超高齢者」と呼ぶのが妥当だとしている。2016年9月の総務省の推計によると、65歳以上は人口の約27%。高齢者を75歳以上とした場合、約13%と半減する。日本では「65歳以上を高齢者とする」と定めた法律はないが、医療制度や人口統計上の区分などで「高齢者=65歳以上」が定着している。高齢者を65歳以上と定義した1956年の国連の報告書が契機とされる。海外でも60歳以上や65歳以上を高齢者とする国が多い。ただ、56年に男性63.59歳、女性67.54歳だった日本の平均寿命は2015年にそれぞれ80.79歳、87.05歳に延びた。内閣府の14年度の意識調査では、高齢者だと考える年齢は男性が「70歳以上」(31.3%)、女性は「75歳以上」(29.9%)が最多。65歳以上が高齢者だと答えたのは男性が7.1%、女性は5.7%にとどまった。

*1-1-2:https://www.nikkei.com/article/DGXKZO20949810Y7A900C1EA1000/ (日経新聞社説 2017/9/9) 公務員の定年延長には十分な議論が要る
 安倍内閣は公務員の定年をいまの60歳から65歳に引き上げる方針だ。国や地方自治体の財政事情が厳しいなか、総人件費が膨らまないか、心配になる。民間で定着している役職定年の導入などに取り組むのが先決であり、拙速に定年延長を進めれば社会の反発は免れないのではないか。国家公務員法は定年を原則60歳と明記しており、地方公務員もこれに準拠する。定年の延長には法改正が必要で、政府は6月に「公務員の定年引き上げに関する検討会」(座長・古谷一之官房副長官補)を発足させた。早ければ来年、法案を国会に提出し、2019年度から段階的に定年を引き上げる構えだ。年金支給開始年齢が65歳になったことで、60歳からの5年間をどうやって生活すればよいのかと不安を訴える公務員が多い。内閣人事局はそう説明する。しかし、そのための措置を政府はすでに講じている。公務員が再任用を希望したら必ずそうする、と閣議決定しているのである。これは民間企業の多くが導入している再雇用制度と大差ない。再任用から定年延長へ、なぜ急いで移行させるのか。十分な説明が求められる。公務員の給与体系は民間に比べて恵まれている。成果主義が導入されたとはいえ、最低の評価を受け続けても給与が増えないだけで減りはしない。役職定年がないので、いちどたどり着いたポストの給与が定年まで続く。検討会は定年延長とセットで役職定年の導入を検討しているらしいが、役職定年は民間ではとうに常識で、周回遅れの感がある。そもそも長年の課題である公務員と民間の年金格差がなお残っている。こうした課題を早く片付けるべきだ。いまのご時世に公務員の総数を増やすことは考えられない。定年を延長すれば新規採用の抑制は不可避だ。それで組織の活力を維持できるかどうかも、疑問点だ。ベテランのノウハウの継承は大事だが、官が人材を抱え続ければ政府が目指す労働力の流動性の増大をさまたげる要因ともなる。再任用では定年前よりも給与水準が下がるのが普通だ。そうしないための定年延長であり、公務員だけがいい思いをしようとしている。そんなふうに有権者に受けとめられたら、政治への不信はますます増大することになる。

*1-1-3:https://www.nikkei.com/article/DGXNASDF2800Y_Y2A820C1EA2000/ (日経新聞 2012/8/28) 65歳まで雇用、企業身構え 義務付け法 29日成立
 60歳の定年後も希望者全員を雇用することを企業に義務付ける高年齢者雇用安定法改正案が29日、成立する。来年4月から厚生年金の受給開始年齢が引き上げられるのに対応し、定年後に年金も給料も受け取れない人が増えるのを防ぐ狙い。2025年度には65歳までの雇用を義務づける。企業は継続雇用の対象者を能力などで絞り込めなくなるため、負担増に備え対応を急いでいる。28日の参院厚生労働委員会で民主、自民、公明などの賛成多数で可決。29日に参院本会議で可決、成立する見通しだ。会社員が加入する厚生年金(報酬比例部分)は現在60歳から受け取れるが、男性は13年度に61歳からとなり、以降3年ごとに1歳上がって25年度には65歳開始となる。現在、企業の82.6%(約10万9千社)は継続雇用制度を持ち、定年後も希望者を雇用している。ただ、その5割強は労使協定の基準を満たす人に対象を絞っている。労働政策研究・研修機構によると、健康状態や出勤率・勤務態度のほか、約5割の企業が業績評価も基準に使っている。改正法は企業が労使協定で対象者を選別することを禁じる。ただ、企業の負担が重くなり過ぎないよう、厚生労働相の諮問機関である労働政策審議会で指針を作り、勤務態度や心身の健康状態が著しく悪い人は対象から外せるようにする。継続雇用する対象者の範囲は年金の受給開始年齢の引き上げに合わせて広げ、受給開始が65歳となる25年度には65歳まで希望者全員の雇用を求める。指導や助言に従わない企業名は公表する。11年6月の厚生労働省の調査では、過去1年に定年を迎えた約43万人のうち10万人以上は継続雇用を希望しなかった。年金の受給年齢が上がると定年後もしばらく年金を受け取れなくなるため、来春以降は希望者は増えると考えられる。みずほ総合研究所の試算では、継続雇用を希望しなかった人と希望しても離職していた人が全員、継続雇用されると賃金総額は来年度に4千億円増える。25年度には1.9兆円増え、総人件費を約1%押し上げる。コスト増以上に、能力の低い従業員も雇用しなくてはならず労働生産性が下がると懸念する声も多い。第一生命経済研究所の熊野英生首席エコノミストは「人件費の増加を防ぐため能力の高い高齢者の賃金まで企業が一律に抑制しかねない」と警鐘を鳴らす。高齢者の雇用が増える結果、企業が若年者の雇用を抑える可能性もある。「高齢者と若者のワークシェアなど柔軟な働き方を進めていく必要がある」と高年齢者雇用コンサルティングの金山驍社会保険労務士は指摘している。

*1-2-1:http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201709/CK2017091202000117.html (東京新聞 2017年9月12日) 子育て「共助で」 「こども保険」提言の小泉氏
 幼児教育・保育の無償化を目指す新制度「こども保険」の創設を提言した自民党の小泉進次郎筆頭副幹事長=写真、小平哲章撮影=は十一日、本紙のインタビューに答え「親の自助だけに子育てを委ねるのは難しい。急速に人口が減っている中で、優先すべきは人生前半の教育だ。共助の仕組みである保険がかなう」と必要性を強調した。こども保険は、厚生年金と国民年金の保険料に一定額を上乗せし、児童手当の増額などに充てる制度。税金でなく「社会保険方式」で財源を確保するのが特徴だ。小泉氏らは約一兆七千億円あれば、実質無償化になると試算する。だが、負担が現役世代に限られることや、子どものいない世帯はサービスを受けられない点が課題と指摘され、自民党内にも反対論が強い。小泉氏は「子どもがいなくても年金、医療、介護の受け手となる。その持続可能性を担保するのは若い人だ」と指摘。二年後に予定される消費税増税の増収分を財源にすべきだとの意見には「政治的な困難、待ったなしの子どもの問題を考えたら現実的なのはこども保険だ」と反論した。こども保険は二〇一六年二月、小泉氏を中心に自民党の若手議員が参加した「二〇二〇年以降の経済財政構想小委員会」が議論に着手。今年三月に導入を促す提言をまとめた。四月に政調会長を委員長とする特命委員会に格上げされた。

*1-2-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20170828&ng=DGKKZO20438380X20C17A8NN1000 (日経新聞 2017.8.28) 忖度しすぎ?シルバー民主主義、高齢者を優遇、財政悪化 負担増、受け入れる素地
 年金は少しでも多く、医療・介護や税の負担は少しでも小さく――。若者に比べて高齢者を優遇する「シルバー民主主義」政策が財政を悪化させてきた。お年寄りがこれからますます増えるなか、目先の痛みを強いる財政再建など、とても支持を得られない。だがこうした常識を覆す研究が出てきた。諦めるのはまだ早い。お年寄りの政治への影響力は大きい。直近3回の衆議院選挙の平均投票率は20代が39%なのに対し、60代は75%だった。2025年には、有権者の6割が50歳以上になる。病院の窓口負担を増やしたり、年金の給付額を減らしたりするのは難しくなるというのが霞が関や永田町の常識だ。
●利害・公共心カギ
 政治家は投票所に足を運んでくれる人の意向を気にする。それなら選挙制度を変えるしかない。そこで親が子どもの分まで投票する「ドメイン投票」や、年齢が若いほど1票の価値を高める「余命投票」などが真剣に議論されてきた。しかし、本当に単純な世代間対立で語れるのかと異議を唱える研究が最近、出てきた。鶴光太郎慶大教授らが全国の6128人に税制と社会保障に関する考え方を聞いたところ「増税をして社会保障を拡大する必要がある」とした人が20代では29%で、60代では40%だった。高齢になるほど高くなる。高齢者はすでに社会保障の恩恵を受けており、実利の面から増税と社会保障充実の組み合わせを選んだ可能性がある。一方、20代で最も支持を集めたのは「増税をせず社会保障を拡大する」というただ乗りで、35%を占めた。高齢者に比べてすぐに社会保障の恩恵を感じにくいため、増税への支持が少ないようだ。調査では政府やまわりの人への信頼が低く、ゴミのポイ捨てや年金の不正受給などに目をつぶる「公共心の低い人」ほどただ乗り政策を選ぶ傾向もあった。財務総合政策研究所の広光俊昭氏は仮想の国の財政政策について、負担を30年後に先送りするか、現世代と将来世代が分かち合うかを10~70代の447人に聞いた。先送りは、30年後に付加価値税(消費税に相当)が10%から25%に、年金給付が月10万円から5万円になる。分かち合いは付加価値税が20%、年金給付は7万円の状態がずっと続く。30代は67%が、60代は54%が分かち合いを支持。「将来世代」役を1人置いて討議をすると、分かち合いを選ぶ割合はさらに高まった。広光氏は「政策選択には個人的な利害と公共的な判断が併存して働く」とみる。
●若者の理解課題
 「政治家が高齢者の意向を勝手に忖度(そんたく)しているだけ。きちんと説明すれば高齢者もある程度の負担増を受け入れる」。「シルバー民主主義」(中公新書)を書いた八代尚宏・昭和女子大学特命教授はいう。
ただ、お年寄りの理解を得ても財政再建のハードルは高い。莫大な国の借金が若者の不安につながっている。鶴氏は「若い人でも目先の利益を重視する傾向がある」と話す。教育年数が短く、時間あたりの所得水準が低い人ほど、小さな負担で大きな受益を求めがちという。世界的に所得格差の不満が高まるなか、新たな人気取りは財政再建をより難しくする。

*1-2-3:https://www.nikkei.com/article/DGXLASDC08H39_Y7A900C1MM8000/?dg=1&nf=1 (日経新聞 2017/9/10) 介護費膨張 3つの温床 25年度に20兆円、ムダの解消急務
 介護保険が膨張している。介護施設や在宅サービスの給付費は総額約9兆円に上り、2025年度には2倍以上のおよそ20兆円に膨らむ見込みだ。給付の伸びは高齢化だけでは説明しがたく、サービスのムダにつながる3つの温床が浮かび上がってきた。「お肉はこのくらいでいいですか」。横浜市金沢区の団地。ヘルパーの藤田博美さん(62)が菅野茂さん(81)に尋ねながら料理する。訪問は週2回。「体の状態が悪いとき、言わなくても分かってくれる」と菅野さん。利用するのは生活援助と呼ぶサービスで、全国の平均的な利用回数は月10回程度。菅野さんのように常識的なケースが多くを占めるが「家政婦代わりに使われて本人の自立につながらない」(神奈川県の中堅介護事業者)との指摘が絶えない。北海道標茶町101回、大阪市98回……。財務省が6月まとめた調査には生活援助のひと月当たりの利用ケースで驚くような数字が並んだ。介護の取り組みが先進的とされる埼玉県和光市では月平均わずか6.7回で最高利用回数も30回だ。
■安い自己負担
 標茶町によると、101回利用したお年寄りは軽い認知症を患うなどして手厚い世話が必須だ。こうしたやむを得ないケースもあるが、全国でみれば要介護度や居住環境が同じでも自治体格差が大きく広がっている。ムダを生む理由の一つは「安さ」だ。例えば生活援助なら1回約2千円。自己負担は原則1割の200円ほど。最低でも1時間925円ほどかかる民間の家事代行サービスより格段に手軽だ。軽い介助が必要な要介護1なら保険給付の月額限度額は17万~19万円程度で、上限内で何度でも利用可能。コスト意識が甘くなり生活の「援助」に使うという本来の目的を逸脱しやすい。財務省幹部は「あまりにずさんな使い方が増えた。来年度改定で厳格に対応する」という。政府内ではサービス利用の上限制導入などが課題に浮上している。介護保険の給付費は国や自治体による公費と40歳以上からの保険料(労使折半)でまかなう仕組みだ。健康保険組合連合会によると13年度から17年度にかけて労使を合わせた保険料は7千円近く増え、年9万円に迫る。15~25年の要介護の認定者数の伸びは3割強を見込むが、保険からの給付費総額は2倍になる。高齢化で重度の認定者が増える面もあるが、財務省などはムダ遣いなどの非効率が広がってきた影響だと分析している。
■規制に抜け道
 保険対象の施設などには国の総量規制があるが、ここにも死角がある。その一つがサービス付き高齢者住宅(サ高住)などによる需要の囲い込みだ。サ高住自体は一種の賃貸住宅で保険の枠外。ところが運営者の企業などがサ高住に住むお年寄り向けに自社系列の事業者を使い、頻繁な在宅サービスを供給するケースも急増した。大阪府が昨年12月公表した調査では、府内のサ高住や有料老人ホームでは給付限度額の9割前後を消化していた。全国平均は約4~6割だ。この6年で府内にサ高住などの施設数が3倍に拡大した結果、その施設と在宅などのサービスが抱き合わせで増えていたのだ。
■監視難しく
 では介護サービスの内容を定めるケアプランを厳しくすればいいかといえば、それも困難だ。ここに3つ目のムダの温床がある。介護保険の運営主体の市町村にはプランを精査して見直しを迫る権限がない。介護事業所の経営者は「ケアマネジャーと事業者が結託すれば過剰サービスは防ぎようがない」と明かす。介護保険には今年度から収入が多い人ほど多く保険料を負担する「総報酬割」が段階導入される。大企業を中心に約1300万人は負担増の見込みで、高所得者を中心に現役へのしわ寄せは拡大の一途だ。焦点は政府と与党が年末にかけてまとめる来年度の介護報酬改定だ。「要介護度が低い人向けサービスを定額制にしたり、事業者が回数を抑えたりする動機付けが必要」。日本総合研究所の西沢和彦氏は指摘する。例えば現行は状況が改善して要介護度が下がると介護報酬も下がり、事業者の経営が苦しくなる。そこで自立を後押しした事業者には努力に報いて報酬を上乗せすれば、ムダ遣いを直す余地が生まれる。近年の介護費用の伸び率は医療や団塊の世代が受給し始めた年金を大きく上回る。介護の効率化を進めながら質の高いサービスの担い手のやる気を引き出せるか。介護保険は改革を先送りできないところまで来ている。

*1-2-4:https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170907-00000022-kyt-l25 (京都新聞 2017/9/7) 息子をかたり490万円詐取 大津の女性被害
 滋賀県警大津署は7日、大津市内の女性(68)が息子をかたる男に490万円をだまし取られたと発表した。
同署によると、5日から6日にかけ、女性宅に息子を名乗る男から「友人と投資をやっていて、友人が会社の金に手を出した。500万円の示談金が必要」と電話があった。女性は大阪府高槻市内で、弁護士の代理を名乗る男に現金を手渡したという。

<外国人労働者差別>
*2-1:http://qbiz.jp/article/117249/1/ (西日本新聞 2017年9月3日) 佐賀県、外国人受け入れへ態勢着々 在住者13%増、伸び率全国トップ
 佐賀県内在住の外国人数が、2016年は前年比13%増の5140人で、伸び率では全国の都道府県でトップになった。県は今後の増加を見据え、日本語教室の開設を後押しするなど受け入れ態勢づくりに取り組んでいる。全国ではごみ分別の理解不足などから住民トラブルに陥ったり、犯罪に巻き込まれたりするケースも後を絶たないが、山口祥義知事は「官民で多文化共生を進めたい」と話す。県によると、県内在住者のうち、技能実習生が1863人で前年より426人増えた。留学生も前年比87人増の744人。この両者で全体の増加(604人)の約85%を占め、伸び率を押し上げた。コンビニや工場などの労働現場は人手不足に陥っており、技能実習生は「引く手あまた」(福岡県内の機械部品メーカー)の状態。県によると、多くが製造現場で働いており、今後も増える見通しという。このため、県は外国人の受け入れの課題や対策などの助言を政策に反映させようと、国際交流の有識者や関係者を招き、2015年4月に国際戦略本部会議をスタート。8月24日に6回目の会議を開き、「外国人住民への生活支援」をテーマに約20人が論議した。この日の会議では、日本で暮らす外国人を支援する東京のNPO法人国際活動市民中心(通称CINGA=シンガ)のコーディネーター新居(にい)みどりさんが、「外国人の在住には法律と言葉、心の『三つの壁』がある」と指摘。具体的には(1)夫の暴力で骨折しながら「逃げたら在留資格を失って子どもに会えなくなる」と逃避できない(2)東日本大震災で「タカダイ(高台)」の言葉の意味が分からず避難が遅れて被災した(3)マンションの隣人から「怖い」と敬遠され孤立した−といった事例を報告した。県によると、県内には日本語での会話に支援が必要な小中高校生が50人いるといい、子ども世代へのサポートも欠かせないという。県は「佐賀モデル」として、市民ボランティアによる日本語教室開設を会場費の助成などで後押ししており、現在、13教室が運営されている。本年度からは専任のコーディネーターも1人配置し、「壁」の突破に努めている。

*2-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20170909&ng=DGKKASFS06H5G_X00C17A9MM8000 (日経新聞 2017/9/9) 外国人就農、通算3年 特区で延長 総労働時間には上限
 政府は国家戦略特区で認めた農業の外国専門人材について、日本で働ける期間を通算で3年とする方針だ。技能実習制度で働く場合は最長3年だが、特区では農繁期だけ働く場合などは初めて来日してから3年を超えても働くことを認める。年間総労働時間の上限も設け過重労働を防ぐ。外国人材の活用で、高齢化などで担い手不足に悩む地方農業の活性化を狙う。農業での外国人受け入れを盛り込んだ改正国家戦略特区法が6月に成立したことを受け、受け入れの詳細をまとめた指針や政令を近く公表する。自治体の間で農業分野の外国人活用に対する関心は高く、すでに特区に指定されている愛知県のほか長崎県や茨城県、群馬県昭和村、秋田県大潟村などが関心を示している。政府は年末をめどに特区を追加指定する方針で、これらの自治体が選ばれれば、農業での外国人活用が広がる。政府・与党内には特区に限らず全国で認めるべきだとの声もある。農業で受け入れる外国人は満18歳以上で、1年以上の実務経験がある人材に限る。農業に従事するうえで必要な日本語が話せることも条件とした。派遣会社が雇用契約を結び、過去5年以内に労働者を雇用した経験がある農業生産法人などに派遣する。生産法人が直接雇用することは認めない。期間は通算で3年だ。例えば春から夏にかけて半年だけ日本で働くケースでは、初来日から6年目まで就労できる。農作業のほか加工や販売にも携わったり、複数の生産法人で働いたりすることもできる。派遣会社には日本人労働者と同等以上の報酬を払うことを義務付ける。指針などとは別に、法令の解釈通知を通じて年間の総労働時間の上限を決める。

*2-3:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/461590 (佐賀新聞 2017年9月8日) 外国人実習生の労働条件改善を 市民団体、県に要請
 労働組合や患者団体などでつくる「はたらくもののいのちと健康を守るネットワークさが」は7日、外国人技能実習生の労働条件の改善などを求める要請書を佐賀県に提出した。実習生の長時間労働や賃金の未払いなどの違法な労働実態の調査や、実習生に対応できる相談窓口を設けることなど4項目を求めた。要請書を手渡した東島浩幸弁護士は「外国人技能実習生の制度は『奴隷労働』と国際的にも批判されている。窓口の設置や、通訳をつけて対応するといった相談体制の充実に取り組んでほしい」と強調した。県産業人材課の担当者は「国が所管しているため、(県では)取り組みを進められない項目もある。対応できる部分は関係課に報告したい」と話した。団体側はアスベストを使用した建物の所在を掲載したハザードマップの作成も求めた。

<高度専門職差別と女性差別>
*3-1:http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201709/CK2017090902000140.html (東京新聞 2017年9月9日) 【政治】働き方法案に「共謀罪」・安保法の手法 「残業代ゼロ」根幹残し一括化
秋の臨時国会に提出される「働き方改革」関連法案のうち、労働基準法を改めて「残業代ゼロ」制度(高度プロフェッショナル制度)を創設する部分は、継続審議となっている法案を取り下げ、他の法案と一括化して出し直す。かつての「共謀罪」法や安全保障関連法と似通う手法だ。「残業代ゼロ」制度は、高収入の一部専門職を労働時間規制から外す。政府はこれを柱とした労基法改正案を二〇一五年の通常国会に提出したが、一度も審議入りしていない。法案要綱では、関連法案のうち「残業代ゼロ」を導入する労基法改正案は、休日確保措置などが新たに盛り込まれたが、従来の法案と根幹部分は変わらない。批判が強い法案の内容を微修正して出し直すやり方は「共謀罪」法と重なる。「共謀罪」法案は〇三、〇四、〇五年に国会提出され、「人権侵害につながる」との懸念が出て廃案に。安倍政権は構成要件を一部変更した上で罪名を「テロ等準備罪」に変え、今年六月に成立させた。また、今回の法案は残業時間の上限規制や正社員と非正社員の待遇差縮小など、性格の異なる法案と一括化して提出する。審議時間を短縮するのが狙いで、「残業代ゼロ」など個別の制度の是非を巡る審議が不十分になる可能性がある。多くの法案と抱き合わせる手法は、一五年九月に成立した安保関連法と似ている。同法も、集団的自衛権行使を可能にする武力攻撃事態法、地球規模で米軍を支援可能にする重要影響事態安全確保法など十本を一本化し、批判を受けた。政府が提出した法案を自ら取り下げるのも異例。二〇〇〇年以降では、衆参の多数派が異なる「ねじれ国会」で成立を断念するなど計八法案だけだ。一橋大大学院法学研究科の只野雅人教授(憲法、議会制度)は「政治的な思惑から法案を一括化することは、審議の充実という観点から問題がある。賛否が分かれる法案は個別に提出し、別々に議論すべきだ」と話す。 

*3-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20170909&ng=DGKKASDF29H17_Y7A900C1MM8000 (日経新聞 2017.9.9) M字カーブ 「谷」緩やかに、30~40代女性の離職に歯止め
女性の就労が増えている。労働力としてみなされる女性の割合を示すグラフをみると、30~40歳代の部分が顕著に落ち込む「M字カーブ」と呼ばれる特徴が薄れ、米国や欧州各国などに似通ってきた。育児休業など企業側の制度整備が進んだことや働く意欲を持つ人が増えたことが大きいが、待機児童の解消はなお道半ばだ。働きやすさと労働の質を高めるさらなる工夫がいる。デイサービス(通所介護)大手のツクイは従業員の75%が女性だ。働き手の確保のため介護施設内に託児所を設け、0~2歳児の子供が5人いる。ある従業員は「休憩時間をつかって子供の様子を見に行けるので安心」と語った。総務省の7月の調査によると15~64歳人口に占める女性の労働力の割合(労働力率)は69.7%で、働く女性は着実に増えてきた。年代別ではM字の谷に相当する35~44歳の労働力率が前年同月比0.7ポイント増の75.3%。10年前の2007年7月と比べると全ての年代で上昇し、全体的に底上げされている。
●米欧に近づく
 15年時点では米国や英国、北欧地域とは大きく異なるカーブを描いていた日本。近年は米欧とほぼ遜色のない形に近づいており、女性の労働市場は歴史的な構造変化を遂げつつある。女性の就労が加速した最大の理由は、企業が離職防止に取り組んできたことだ。女性の育休取得率はやや低下傾向にあるとはいえ8割超で推移している。育休中の生活を支える政府の育児休業給付金の受給件数は、06年度の13万件から16年度の32万7千件へと2倍以上に増えた。高齢化で15~64歳の生産年齢人口はこの10年で700万人以上も減った。その一方で実際に働いている労働力人口をみると同じ時期におよそ50万人増えた。女性だけに限れば約200万人増え、M字の底を押し上げるのに大きく貢献したことがわかる。働き口も高齢化でニーズの強まる医療・福祉業など裾野が大きく広がっている。大和総研の鈴木準政策調査部長は25~44歳女性の就業率について「このままのペースで伸びれば22年には80%に到達する」と話す。国立社会保障・人口問題研究所の試算をもとに計算すると22年に25~44歳女性の就業者数は16年と比べて200万人以上減る見通しだが、就業率が80%に上がることで減少幅は46万人で済む。政策努力などでさらにこの比率を高めることができれば、減少を食い止めることができるかもしれない。もっとも楽観的な見方を戒める声も目立つ。第一生命経済研究所の柵山順子氏は「M字カーブの完全解消には保育所不足などがハードルになるだろう」と分析する。ここ数年で女性の就労が政府の想定以上のテンポで進み、待機児童は減るどころか2万6千人強に膨らんだ。政府は22万人の保育枠を追加整備する方針だが、都市部の整備が遅れるミスマッチを解消するのはやさしくない。
●賃金は伸び鈍く
 生産年齢人口の急激な減少が進む中で女性の就労をさらに後押しするには企業の一段の取り組みも重要だ。オリックスは配偶者の転勤で現在の勤務地で仕事が続けられない場合、勤務エリアを変更できる制度を昨年3月に導入。配偶者の転勤で退職を選ぶ社員も多かったが「キャリアを途中で諦めなくてすむので好評だ」(同社)。ユニ・チャームは全社員を対象に在宅勤務を導入。ネスレ日本は昨年に在宅勤務の制約を緩和し、上司の許可があれば理由に関係なく会社以外で勤務できるようにした。経済成長の土台を確かなものにするにはM字カーブを解消し、労働力を底上げするのは理想的な方向だ。とはいえ夫の収入が低迷するなどしてやむを得ずパートなどで働きに出る女性もまだ多く、賃金の伸びは鈍い。さらに女性の就労を後押しするには育児休業などの整備を加速させるのはもちろん、生産性向上と賃上げなどで働き手に報いる努力が必要だ。離職者向けの再就職支援、学び直しの機会の提供など、様々な手立てを講じることも欠かせない。

<サービス付き住宅>
PS(2017年9月12日追加):*4のように、訪問サービス付き高齢者向け集合住宅に大手不動産などの参入が相次いでいるそうだが、私の叔父が入っている横浜市のサ高住には食堂があり、栄養管理した食事が出されて介護付きであるため、便利だ。中では、書道や軽い体操などのコースもあるが、高齢者が若い頃に流行っていた音楽や映画などもやると心が元気になってよいと思われる。なお、訪問サービスの内容に介護だけでなく、家事サービスを加えて間取りを広くすれば、高齢者だけではなく、独身者、共働き家庭、子育て家庭にも便利な住宅になりそうだ。

*4:http://digital.asahi.com/articles/ASK945D0FK94UTLZ00G.html?iref=comtop_list_biz_f03(朝日新聞 2017年9月9日)「サ高住」銘柄に熱視線 大手不動産など参入相次ぐ
 「足腰が元気なうちに『終の棲家(すみか)』となる新築物件に移り住もう」。郊外の持ち家を処分して都心の超高層マンションに引っ越すシニア層が増えています。一方で、看護・介護の訪問サービス付きの高齢者向け集合住宅、いわゆる「サ高住」が高い関心を集めています。利用者の需要も全国レベルで拡大。事業者向けの税制優遇や融資制度など、国や自治体が促進施策を充実させて、参入企業も増えています。登録物件をオンラインで公開する高齢者住宅推進機構によると、有料老人ホームも含めた「サ高住」は7月末時点で、全国6697棟、21万8851戸。この4年で棟数、戸数とも倍増しました。政府は共同住宅、寮、ホテル、老人ホーム、賃貸住宅など既存施設の改修を呼びかけていますが、補助事業全体に占める改修物件の割合は少なく、大半は民間企業が医療・社会福祉法人と手を組んで開発した新築物件です。「サ高住」事業に参入している民間企業で有名なのは、学研ホールディングス系の学研ココファン。神奈川県を中心に全国で117事業所を展開しています。最近勢いがあるのは、大手損害保険のSOMPOホールディングス。「メッセージ」「ワタミの介護」と介護事業者を相次いで買収し、新築物件を供給しています。大手不動産の参入も目立ちます。賃貸アパート受託など、サブリース事業を手掛ける企業が、入居者への転貸目的で働きかけを強めそう。「サ高住」は株式市場のテーマとしても今後、注目の的になる可能性があります。

<開発力・技術力とそれを支える国民>
PS(2017年9月14日追加):*5-1のように、佐賀新聞は2015年度の国民医療費が42兆円に達し、これは、高齢化に加えてオプジーボなどの超高額薬の保険適用が影響したものだと報道している。高齢化によって有病者が増えるのは自然だが、薬の飲ませすぎもあるのではないかと思われ、オプジーボの価格も、図のように、英国・米国では日本の約1/5と1/2だったので、厚労省の価格決定や過度な使用範囲の制限が問題なのだと思われる。何故なら、原理から考えると、オプジーボは、どの癌にも効き広範に使用できるのが当たり前だからだ。
 また、*5-2-1のように、英国・フランスに続き中国がガソリン車・ディーゼル車の廃止に向けた検討に入り、環境規制を強化するため、自動車大手は電気自動車(EV)の開発を急いでいるそうだ。しかし、日本の「リーフ」は、いつまでも「市街地で短い距離を走るなど、中国では独自の使われ方がある」などと、排気ガスを出さないのだから少しくらい不便でも我慢しろという態度だ。しかし、EVは、①排ガスが出ない ②静か ③操作性がよい ④燃料費がいらない など、ガソリン車と比べて欠点がないから売れるのであって、ドイツのVWは、*5-2-2のように、2030年までにEVに200億ユーロ(約2兆6千億円)を超える投資を行う計画を発表し、2025年までには80車種の新型車両を投入する方針にしたそうだ。なお、開発を始めて20年以上経過している日本は、とっくの昔にそれをクリアしていなければならない時期なのである。そして、こういう意思決定を速やかに行えるためには、文系の人もこの程度の理系の知識は必須であるため、それを高校卒業までに教えておかなければ国力をそぐことになる。
 そのため、*5-3のように、私企業である日立が英国に建設する原発に、同じく私企業である日本の銀行が融資する建設資金を、日本政府が全額補償して膨大な偶発債務を引き受け、昔帰りの技術に固執するなどという馬鹿な税金の使い方を止めさせつつ、幼児教育の無償化もよいが、それに先立って小学校への入学年齢の3歳への引下げを行い、いろいろなことを高校卒業までにマスターしておけるようにすることが必要だと考える。

   
   2017.9.13佐賀新聞      日米英の価格比較    2016.11.2朝日新聞

*5-1:http://www.saga-s.co.jp/news/national/10201/462976 (佐賀新聞 2017年9月13日) 15年度国民医療費42兆円、過去最高、高額薬が影響
 厚生労働省は13日、2015年度に病気やけがの治療で全国の医療機関に支払われた医療費の総額(国民医療費)が、前年度比1兆5573億円増(3・8%増)の42兆3644億円だったと発表した。国民1人当たりでは1万2200円増(3・8%増)の33万3300円。いずれも9年連続で過去最高を更新した。高齢化の進行に加え、がん治療薬「オプジーボ」など超高額薬の保険適用が相次いだことが要因。国民医療費が国民所得に占める割合は10・9%。年代別では、65歳以上の高齢者向けが25兆1276億円で59・3%を占めた。

*5-2-1:http://qbiz.jp/article/118672/1/ (西日本新聞 2017年9月13日) EVシフト急加速 英仏中、ガソリン車廃止検討
 英国やフランスに続き中国がガソリン車とディーゼル車の廃止に向けて検討に入った。環境規制の強化を受け、自動車大手は電気自動車(EV)の開発を急ぐ。割高な生産コストや基幹部品である電池の安定調達がEV転換への課題となる。「フォルクスワーゲン(VW)の歴史に新たな幕が開こうとしている」。フランクフルト自動車ショー開幕を前にした11日、ミュラー会長は環境規制に対応したEVを含む電動化投資戦略を発表。2030年までにグループで200億ユーロ(約2兆6千億円)超を投じる計画をぶち上げた。欧州に続いて、中国政府はEVをはじめとする新エネルギー車の普及を加速させる。EVの主戦場になると予想される中国市場で、日系メーカーは攻勢をかける構えだ。先行する日産自動車は18〜19年に複数のEVを投入する方針で、今月披露した新型「リーフ」の発売も検討する。西川広人社長は「市街地で短い距離を走るなど、中国では独自の使われ方がある」とし、現地で受け入れやすい商品展開を狙う。現地主導で開発するホンダは18年に新型EVを投入する予定。出遅れるトヨタ自動車も19年をめどにEVモデルを既存車種に設定する考えだ。規制強化をいち早く打ち出した欧州では、低燃費を売りにしたディーゼル車からの撤退が進む。ホンダは18年に欧州で売り出すスポーツタイプ多目的車の新型「CR−V」にディーゼル車の設定をなくす方針。SUBARU(スバル)は20年をめどにディーゼル車販売を取りやめる見通しだ。ある日系メーカー首脳は「環境対応車の主役にディーゼル車が今後座ることはない」と断言する。ただ、EVはエンジン車に比べると依然として割高感があり、販売が政府の補助金に頼っている面は否めない。さらに、基幹部品のリチウムイオン電池に使われるレアメタル(希少金属)の生産は中国やアフリカ、ロシアなど少数の国に偏っており「安定調達がネックになってくる」(日産幹部)との懸念もある。国際エネルギー機関(IEA)は、世界の新車販売に占めるEVの割合は35年でも1割程度だと予想。住商アビーム自動車総合研究所の大森真也社長は、EVの普及見通しについて、エンジン車の乗り入れが将来禁止されそうな都市部で存在感を示すなど「すみ分けが鍵となる」と指摘する。

*5-2-2:http://qbiz.jp/article/118559/1/ (西日本新聞 2017年9月12日) VW、電動車両に2・6兆円投資 80車種投入へ
 ドイツ自動車大手フォルクスワーゲン(VW)は11日、グループで2030年までに電気自動車(EV)など車の電動化に200億ユーロ(約2兆6千億円)を超える投資を行う計画を発表した。25年までに80車種の新型車両を投入する方針だ。VWの排ガス規制逃れによる欧州でのディーゼル車離れや、市場シェアが高い中国の大気汚染規制の動きに対応する。欧州最大級の国際自動車ショーが12日にドイツ・フランクフルトで開幕するのを前に、ミュラー会長が公表した。車に搭載する電池性能の向上のほか、工場設備や充電設備を整備する。80車種のうちEVが約50車種、プラグインハイブリッド車(PHV)が約30車種になるという。グループのブランド全300車種に電動化モデルを最低一つそろえる。ミュラー氏は「自動車産業の(電動化への)変換は止められない。VWがそれを主導する」と語った。また、VW傘下の高級車アウディは11日、ハンドルやペダルがない完全自動運転によるEVの試作車を公開した。1回の充電で800キロまで走行できることを想定している。具体的な実用化の時期は未定。

*5-3:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20170902&ng=DGKKASFS01H5T_R00C17A9MM8000 (日経新聞 2017.9.2) 政府、原発融資を全額補償、まず英の2基 貿易保険で邦銀に
 政府は日立製作所が英国に建設する原子力発電所について、日本のメガバンクが融資する建設資金を日本貿易保険(NEXI)を通じて全額補償する。先進国向け案件の貸し倒れリスクを国が全て引き受けるのは異例の措置だ。国内の原発新増設が難しい中、国が全面的な支援に乗り出してメガバンクなどの協力を引き出す狙い。インフラ輸出は中国など新興国勢との競争が激しくなっており、国が他のインフラ案件でも支援拡充に動く公算が大きい。安倍晋三首相は8月31日にメイ英首相と会談し、原発建設の協力推進を確認した。貿易保険(総合2面きょうのことば)の補償対象は日立子会社のホライズン・ニュークリア・パワーが受注した、英中部ウィルファで計画中の原発2基だ。両政府と日立は事務レベルで資金支援の枠組みを詰めて2019年中の着工を目指している。試算によると、事業費は2基で2兆円超だ。英政府と日立、日本政策投資銀行、国際協力銀行(JBIC)が投融資を実施する見込みだが、巨額な資金を調達するには民間融資が不可欠になっている。NEXIは通常、民間融資が焦げ付いた場合に備えた保険を提供し、融資額の90~95%を補償する。今回の英国案件については全額を補償する方向で邦銀と協議に入る。原発事業は東京電力福島第1原発事故以降に安全対策費が膨らみやすく、三菱東京UFJ銀行やみずほ銀行も貸し倒れリスクが大きいと判断しNEXIの全額補償を条件にしていた。過去に途上国向けで全額補償したことはあるが、先進国では例外的な措置だ。数十年程度の長期融資などが補償の条件になる見込みだ。原発事故などが発生した場合、三菱UFJ、みずほ両行は第三者から原発事業への貸し手責任に関して訴訟を起こされるリスクもある。両行は損害賠償に関する日英両政府間の協議などを見極めたうえで最終判断する。国が資金支援で前面に立つのは大きなリスクとも隣り合わせだ。原発建設は徹底した安全対策で工程が長引く傾向にあり事業費が想定を上回るケースも後を絶たない。貸し倒れになったりすればNEXIやJBICのバランスシートを直撃し、税金投入を通じた資本増強が不可避になる。最終的に多額の国民負担が発生する危険を冒しながらインフラ輸出を推進することの是非についても議論が活発になりそうだ。一方で中国は国有企業を中心に国を挙げて大型のインフラ輸出を加速させており、日本も対抗上、相応のリスクを取らなければ激しい受注レースで生き残れない現実もある。英政府は15年、英南東部で中国製の原子炉を先進国では初めて導入することを決めた。安倍政権は今回、全額補償措置などと引き換えに英国側にも官民での資金支援を手厚くするよう要請する。

<福岡市の再開発と自動車>
PS(2017年9月17日追加):日本で5番目に多い人口約153万人を擁する福岡市で、*6-1のように、建物の高さ制限を緩和しているのは新しい街づくりが進み易くなってよいが、次はオフィスや商店を高くなったビルに集めて、広い自動車道・自転車専用道・歩道などを備えた緑多き安全な街づくりをして欲しい。なお、排ガスの出る自動車が通らなければ、ビルの中を通る道路や高速道路を作ることも可能だ。また、福岡市は市内に空港があって便利な街だが、航空法の規制緩和は危ないので、空港を能古島か糸島半島に移転してはどうかと考える。現在は北九州空港もできているため、福岡空港は西に移動してもよいのではないだろうか。
 さらに、*6-2のように、我が国では、現在の一般車を前提として高齢者の免許返納を進め、高齢者の運転を制限しているが、免許返納して外出できなくなってから認知症になる高齢者も多いため、何でも禁止するのではなく、自動運転車や運転支援車など、自動車の方を迅速に改良すべきだ。

*6-1:http://qbiz.jp/article/118957/1/ (西日本新聞 2017年9月17日) ウオーターフロント地区も高さ緩和 福岡市都心部再開発 上限100メートル、国が最終調整
 福岡市都心部の再開発を促進する一連の建物の高さ上限緩和で、国が博多港中央・博多両ふ頭のウオーターフロント(WF)地区について、現行から最大30メートル引き上げて高さ上限を最高点で約100メートルとする方向で最終調整していることが16日、分かった。高さ上限緩和を巡っては、国が「天神明治通り地区」(中央区)で渡辺通りを挟んで西側は一律約115メートル、東側は約99メートルを最高点とするレベルまで大幅に引き上げる方針を既に固めており、月内にもWF地区と合わせて正式に決定する見通し。福岡市は天神、JR博多駅周辺、WFの3地区を「都市成長の軸となるトライアングル(三角形)」と位置付け、民間を中心としたビルの新築・建て替えを誘導するため、国に対し国家戦略特区による航空法の規制緩和を要望している。7月には、天神に隣接する旧大名小跡地(中央区)の高さ上限が地上26階建て相当の約115メートルまで緩和されたばかりで、都心再生に向けた環境整備が急ピッチで進みだした形だ。WF地区は、海外からの大型クルーズ船の発着地点として注目が高まっており、市は民間活力を生かして高級ホテルや大型ホール、商業施設を集積する再整備計画を検討している。WF地区の建物の高さ上限は現在、福岡サンパレス付近で約70メートルなどとなっている。市は、地区内の博多ポートタワー(高さ約100メートル)と同じ高さを最高点とする規制緩和を求めていた。実現すれば、地上22階建て相当のビルの建築が可能となり、WF地区の再整備計画の追い風となりそうだ。また、市はJR博多駅周辺地区についても、現行の高さ上限約50メートルを最高約60メートル(地上13階建て相当)まで引き上げることを要望しており、国との協議が続いている。

*6-2:https://ryukyushimpo.jp/kyodo/entry-572995.html (琉球新報 2017年9月12日)75歳以上の免許返納14万件 改正道交法、事故対策に一定効果
 75歳以上の高齢運転者への認知機能検査を強化した改正道交法は、12日で施行半年となった。高齢者の事故が依然として高水準な一方、1~7月の運転免許証の自主返納は14万件を超え、死亡事故も減少するなど一定の効果があった。警察庁は運転できる車種や地域、時間帯を限定した「限定免許」の導入も検討するなど、さらに事故防止の取り組みを進めていく。警察庁によると、75歳以上の1~7月の免許自主返納は14万3261件(暫定値)で、昨年1年間の16万2341件を上回る勢い。過失の重い「第1当事者」となった死亡事故も1~7月に219件で、過去10年間で最少だった。

<教育は国の礎なのに>
PS(2017年9月25、26日追加):明治時代から「教育は国の礎だ」として小学校から大学まで整備してきたことは、我が国の経済発展に大いに寄与した。今、そのうちの義務教育を3歳から18歳までとして無償化し、現代に必要な基礎的知識や技能を義務教育で身に着けられるようにすることは、無駄遣いでもバラマキでもなく、必要な教育を国民全体に行き渡らせ、生産性を向上させるために必要なことである。にもかかわらず、*7-1のように、「教育無償化」「保育」と言えば、「財源として消費税増税やこども保険が必要だ」とか「バラマキだ」などという批判が出るのは間違っている。バラマキは、景気対策と称して生産年齢人口の成人が働く産業に支払う多額の支出や補助金であり、教育レベルを高めることは、国から補助してもらわなければならない人を減らして税金を多く支払う人を増やすものであるため、消費税以外の税収を財源として優先的に支出しても何ら問題ない。
 また、外国では海底油田から原油を採掘しており、日本の排他的経済水域(EEZ)にも地下資源が埋蔵されていることがわかっていたのに、*7-2のように、海底鉱物採掘は2020年代の半ば頃しか商用化できないそうで、経産省の判断の悪さと生産性の低さが問題である。遅れ馳せでも海底鉱物資源を大量採掘することに成功したのはよいが、海底資源は国有財産であるため、国交省・財務省は国の収入として教育・福祉・国の借金返済に貢献するスキームを作るべきだ。

*7-1:http://qbiz.jp/article/119372/1/ (西日本新聞 2017年9月25日) 財政健全化の目標先送り 人づくり2兆円、ばらまき批判も
 衆院解散・総選挙を決断した安倍晋三首相は25日、「人づくり革命」に2兆円を投じる方針を掲げ、政策パッケージを年内に策定するよう関係閣僚に指示した。2020年度までに3〜5歳児の幼稚園・保育所の家計負担を全て無償とし、0〜2歳も低所得世帯に絞って無償化する。財源には消費税増税分の一部を転用する方針。基礎的財政収支を20年度に黒字にする財政健全化目標の先送りを事実上認めた。19年10月に予定する消費税率8%から10%への引き上げでは、増収分のうち4兆円を「社会保障の安定化」として借金抑制に充てる計画だったが、使途見直しにより財政再建は後回しとなる。無償化で家計は助かる一方、選挙での票獲得を狙った「ばらまき」との批判も強まりそうだ。首相は25日の記者会見で財政目標の20年度達成は「困難」と説明。黒字化自体は引き続き目指すと強調したが、具体的な時期は示さなかった。人づくり革命では、低所得世帯の大学生を対象に17年度から一部導入した給付型奨学金の支給額を大幅に増やすことや、授業料減免の拡充を表明。待機児童の解消に向け、32万人分の保育の受け皿を22年度まで5年間で整備する計画を前倒しし、20年度末までに完了する方針も打ち出した。幼児教育・保育の無償化はこれまで低所得世帯を中心に段階的に進めてきた。年収を問わず全て無償化するには約7300億円の追加費用が必要になる。首相は財源の大半を消費税で賄うとした上で、企業と従業員が負担する「こども保険」の導入是非も引き続き検討すると述べた。企業の設備投資などを促す「生産性革命」についても年内に政策パッケージを策定する。20年度までの3年間を集中投資期間とし「税制、予算、規制改革を総動員」(安倍首相)する方針だ。

*7-2:http://qbiz.jp/article/119459/1/(西日本新聞 2017年9月26日) 海底鉱物、大量採掘に成功 20年半ば、商用化目指す
 経済産業省と石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)は26日、海底にある鉱物資源を船で大量採掘することに世界で初めて成功したと発表した。沖縄県近海では海底から熱水と一緒に噴き出した金属が堆積してできる「海底熱水鉱床」の存在が相次いで確認されており、2020年代半ばごろの商用化を目指す。海底熱水鉱床には亜鉛、鉛のほか、金や銅などの資源が含まれている。今年8月中旬〜9月下旬、沖縄近海に投入した採掘機で海底約1600メートルの鉱床を細かく砕き、ポンプで海水とともに船に吸い上げる方式で試験を実施して成功した。今回採掘した鉱床には日本の年間使用量に相当する亜鉛が存在すると分析しているという。沖縄近海の排他的経済水域(EEZ)内では過去3年間で6カ所の鉱床が見つかっており、今後も新たな鉱床が発見される可能性が高い。日本は鉱物を輸入に頼っており、経産省は「生産性の高い採掘方法を確立し、十分な埋蔵量が確認できれば資源産出国になれる可能性がある」と期待している。18年度に経済性評価を実施する予定だ。

<保育・学童保育の質について>
PS(2017年9月28日追加):*8のように、放課後学童保育は必要で、これは量だけでなく質も重要だ。私は、退職後の教諭が予習・復習を手伝ったり、エンジニア出身者が遊びを兼ねて工作を手伝ったりなどすると、子どものうちから知らず知らずのうちに役に立つ能力が身につき、興味がわいてよいと考える。

*8:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/466972 (佐賀新聞 2017年9月28日) 学童保育、定員501人増 新設や余裕教室活用
 9月定例佐賀県議会は27日、総務、文教厚生、農林水産商工、県土整備・警察の各常任委員会の質疑を行った。共働きやひとり親家庭の小学生を預かる放課後児童クラブ(学童保育)の待機児童が増え続け、5月現在で235人に上っている問題で、県こども未来課は、市町がクラブを新設したり、余裕教室など既存施設を改修したりすることで、本年度中に定員が501人増える見込みを示した。放課後に安心して過ごせる生活の場としての放課後児童クラブを質・量ともに充実することが課題となっている。待機児童問題や、職員の処遇改善などについて、徳光清孝議員(県民ネット)が聞いた。定員増により、待機児童が出ている6市町中、佐賀市を除く5市町は施設面では待機児童を受け入れることができる見通しだが、一方で放課後児童支援員の不足も深刻化しており、「『待機児童が解消される見通し』とまでは言えない」(こども未来課)という。152人と県内で待機児童が最も多い佐賀市の定員増は50にとどまる。支援員の資質向上や処遇改善の質問に、藤本武こども未来課長は「子どもたちが安心して放課後を過ごすため、放課後児童支援員が果たす役割は大きい。市町と連携し、支援員が働きやすい環境づくり、質の向上に努めたい」と答弁した。過熱する部活動や教職員の負担軽減の観点では、武藤明美議員(共産)と古賀陽三議員(自民)が取り組みを尋ねた。牛島徹保健体育課長らは中学校の部活動に関し、「県内統一の休養日を設定する方向で調整している」と述べた。部活動の過熱化にブレーキをかけるとともに、教員の負担軽減を図る。10月初旬にも通知する。6月時点では佐賀市など6市町の教育委員会が休養日を独自に設定している。


<希望の党の小池氏への期待>
PS(2017年9月29日追加):*9-1、*9-2のように、高齢世帯の4分の1が貧困状態にあり、その生活水準は「生活保護以下」である。これは、スーパーでちょっと気を付けて庶民の高齢者の買い物かごを見ていればすぐにわかることで、買いたくても金がないから買えないのだ。にもかかわらず、経済政策は、①物価上昇を目的に金融緩和して貨幣の購買力や資産価値を低下させ ②ゼロ金利にして金融資産からの収入を無くし ③年金を削減し ④介護保険料などの負担は増やし ⑤消費税増税を自己目的化して他の工夫はせず ⑥教育・福祉の財源は消費税しかないかのような論調をはびこらせて高齢者いじめをしており、目に余る。
 そのため、安倍首相の「消費税収の使い道の変更」が衆議院選挙の争点になっているのだが、実際には、*9-3、*9-4の原発は、何十兆円もの予算を使いながら激しい公害を出すシロモノで、速やかに「原発ゼロ」にすれば多額の原発予算を削減して本物の地域再生や教育・福祉にまわすことができるため、希望の党の小池百合子氏には、具体的に、「速やかな原発ゼロと自然エネルギーへの転換」「消費税凍結」「脱世襲政治」を前面に掲げて欲しいと考える。

*9-1:http://qbiz.jp/article/118821/1/ (西日本新聞 2017年9月15日) 高齢世帯の4分の1が貧困状態 「生活保護未満」立命館大教授分析
●独居女性では2人に1人 
 65歳以上の高齢者がいる世帯の貧困率は2016年時点で27・0%−。厚生労働省の国民生活基礎調査を基にした立命館大の唐鎌直義教授(経済学)の独自分析で、こうした結果が明らかになった。1人暮らしの女性は特に深刻で、2人に1人が生活保護の水準を下回る収入で暮らしている。高齢者世帯の貧困率は上昇しており、その背景について唐鎌教授は年金受給額の減少を指摘している。唐鎌教授は、全国約29万世帯を対象に所得や家計支出などを調べた16年の国民生活基礎調査のデータから高齢者世帯の所得状況を分析。平均的な生活保護費(1人世帯で月額約12万円と想定)に租税免除などの影響を加味し、生活保護受給者と同等の生活水準になる世帯年収を1人世帯160万円▽2人世帯226万円▽3人世帯277万円▽4人世帯320万円と設定。この基準に満たない世帯の割合を貧困率として算出した。分析によると、1人世帯の貧困率が特に高く、女性56・2%、男性36・3%。2人世帯でも2割を超え、高齢者と未婚の子の世帯は26・3%、夫婦世帯は21・2%だった。高齢者世帯全体の貧困率は27・0%で、以前まとめた09年調査の分析結果と比較すると2・3ポイント増加。この間、貧困世帯は156万世帯以上増えて約653万世帯に、人数で見れば1・3倍の約833万6千人になった計算だ。背景について唐鎌教授は「公的年金の給付額が低下したため」と指摘。国立社会保障・人口問題研究所の統計から割り出した高齢者1人当たりの年金受給額は「(直近の調査結果である)14年度は年間約161万8千円で、09年度に比べ14万円減っていた」と説明する。国民生活基礎調査は、1986年から毎年実施。全国から無作為に対象世帯を抽出し、回答結果から全体数を推計している。3年ごとの大規模調査の年は、子どもの貧困率も公表しているが、高齢者の貧困率については算出していない。子どもの貧困率は、平均所得の半分に満たない家庭で暮らす子どもの割合で、今回の分析はこの基準と異なるが、唐鎌教授は「子どもだけでなく高齢者の貧困も深刻。生活保護受給者は今後さらに増えるだろう。これ以上の年金引き下げはやめるべきだ」と強調した。

*9-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20170929&ng=DGKKASGF28H0R_Y7A920C1EE8000 (日経新聞 2017.9.29) 市場、財政悪化を警戒、国債の信用リスク高まる、消費増税の扱い懸念
 金融市場で日本の財政悪化への警戒感が高まっている。日本国債の信用力を映すクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)の保証料率が数日で急上昇し、約1年2カ月ぶりの高水準をつけた。長期金利もおよそ2カ月ぶりの水準まで上がった。衆院選を前に、安倍晋三首相をはじめ、どの政党が勝っても財政再建の道は険しいという見方が広がる。安倍首相は選挙の争点に「消費税収の使い道の変更」を掲げる。2019年10月に予定する10%への消費増税の際、もともと借金返済にあてる予定だった税収の一部を、幼児教育の無償化などに回す方針だ。基礎的財政収支(プライマリーバランス)を20年度に黒字化する目標も「達成は困難」としている。市場が意識するのは、首相の発言や動向だけではない。「希望の党」代表の小池百合子東京都知事は景気が回復するまで「増税は凍結する」と唱える。民進党はこの希望の党に事実上合流する。市場関係者は消費増税の行方を注視しつつ「自民・公明両党もそうだが、他党も輪をかけて財政拡張路線ではないか」と警戒している。具体的な市場の動きとしては、情報会社マークイットによると、日本国債の信用力を映すCDSの保証料率がここ数日で急上昇した。市場がよりリスクを意識すると、CDSの需要が高まり保証料率が上がる仕組みだ。料率は衆院解散観測さえなかった今月初めまでは0.3%程度。足元で0.4%前後と16年7月以来の水準まで上がった。長期金利も上がっている。新発10年物国債利回りは28日、国債を売る投資家が増え一時0.075%と約2カ月ぶりの高水準を付けた。この10日で0.03%上昇しており、40年物国債など償還までの期間が長い超長期債で金利上昇が目立つ。欧米の金利上昇が主因だが、メリルリンチ日本証券の大崎秀一氏は「日本の財政悪化懸念もあって投資家の買い意欲が鈍っている」と指摘する。国債の格付けにも不安は連鎖する。欧米の格付け会社は変更しない方針だが、格付投資情報センター(R&I)は28日、首相の財政健全化目標の先送り表明を受けて「政策運営の信頼感を損ね、見通しに対する懸念を高める事態だ」との見解を示した。R&Iは現在、国債の格付けの先行き見通しを「ネガティブ」(弱含み)とする。仮にここからさらなる格下げとなれば、地方自治体が発行する債券や社債などにも影響が広がる可能性もある。政府系金融機関や地方自治体が発行する債券の格付けは、日本国債をもとに決まる。たとえば日本の金融機関などの信用度が下がると、外貨を調達する際の金利が高くなる場合も発生し得る。市場関係者はこぞって「少なくとも選挙が終わるまで不透明感はぬぐえない」と語る。選挙戦で与党も野党も「痛みを伴う改革」よりも、景気刺激に重きを置く政策に傾きやすいとみる。金利動向をはじめ市場にも緊張感が当面残りそうだ。

*9-3:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20170929&ng=DGKKASFS28H67_Y7A920C1EA1001 (日経新聞 2017.9.29) エネ政策 原発再稼働で対立
 原発政策でも溝は深い。自民党は原発について安全性の確保を前提として、季節や天候、昼夜を問わず安定的に発電できる「ベースロード電源」として活用すると主張。原子力規制委員会の基準を条件に原発再稼働を進める方針を示す。一方の小池氏は28日の会見で、新たな原発の新設は難しいと説き「30年までに原発はゼロにもっていくためにどういう工程があるか検討したい」と表明。「原発ゼロ」に慎重な連合を名指しし「膝をつき合わせて真剣に考えたい」と述べた。原発ゼロには代替エネルギーの確保が必要。エネルギーの輸入を増やすならコストがかかる。実体経済にどの程度の影響を与えてゼロを目指すのか、デメリットへの言及は乏しい。小池氏は「原発ゼロ」を唱える小泉純一郎元首相と近く、人気をとりこむ思惑も透ける。

*9-4:http://qbiz.jp/article/119749/1/ (西日本新聞 2017年9月30日) 九州の原発:玄海3号機にMOX燃料16体を装填方針 九電
 九州電力の山元春義取締役は29日、来年1月の再稼働を目指す玄海原発3号機(佐賀県玄海町)について、今年12月に想定する核燃料の装填(そうてん)時に、プルトニウム・ウラン混合酸化物(MOX)燃料16体を使用する方針を示した。MOX燃料数は東京電力福島第1原発事故前と同じになる。29日の佐賀県議会で説明した。九電は2009年、国内で初めてMOX燃料を使ったプルサーマル発電を玄海3号機で始めた。再稼働でもプルサーマル発電を行う計画。山元氏によると、16体は3号機が10年12月の定期検査で運転停止するまで使用していた。停止中に福島原発事故が起き、保管していたが、再稼働に向け「もう1回入れる」という。さらに16体とは別に、新たなMOX燃料を「20体準備している」と説明。装填数を増やすなど今後については「検討している」とするにとどめた。

| 経済・雇用::2016.8~2017.12 | 04:56 PM | comments (x) | trackback (x) |

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