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2021.7.22~29 身近に起こっている地球温暖化の影響 (2021年7月30、31日、8月1、2《図》、7、10、11、13日追加)
(1)地球温暖化の影響で増える自然災害
1)洪水の多発とダム決壊の恐れ
イ)欧州の「100年ぶり」の豪雨 ← これから頻繁に起こるのでは?


  2021.7.16Yahoo    2021.7.17News Week     2021.7.17NHK

(図の説明:2021年7月16日、欧州西部を襲った記録的豪雨で河川が氾濫して発生した洪水)

 欧州西部を襲った記録的豪雨で、*1-1-1のように、水位の上昇が続いて河川が氾濫し、洪水が発生して住宅が押し流されるなどの大規模な被害が発生し、7月16日時点で、ドイツ・ベルギー・オランダで約1,300人の安否が確認されず、死者が120人を超えたそうだ。

 また、ケルン当局の報道官は「ネットワークが完全に遮断され、インフラは完全に破壊された。病院は患者を受け入れられなくなっている」とし、ドイツ政府は700人を超える軍隊を動員して救援にあたっているが、ダムが決壊すれば下流地域が一段の洪水に見舞われる恐れがあるとして放流も試みているとのことである。

 気象学者は、「気候変動の影響でジェットストリームの流れが変わったため、今回の豪雨が引き起こされた」と指摘し、欧州委員会のフォンデアライエン委員長も、「今回の洪水の規模を踏まえると気候変動が影響していることは明らかなので、迅速に対応する必要がある」という考えを示しているそうだ。

ロ)中国河南省は「1000年に1度」の暴雨 ← これから頻繁に起こると思うが・・


   2021.7.22Ameblo      2021.7.21BBC       2021.7.21Yahoo

(図の説明:中国河南省の記録的大雨で、左図は、地下鉄が浸水した様子、中央の図は、街中の様子、右図は、亀裂が生じて決壊する恐れがあるとされる満タンのダムの様子)

 中国河南省でも、7月17日以降に記録的な大雨が続き、*1-1-2のように、鄭州市で地下鉄が浸水するなどして7月21日までに少なくとも計16人が死亡して10万人が避難し、鄭州の気象局は「1000年に1度の暴雨」だとして警戒を呼びかけているそうだ。

 鄭州市では、7月17日以降の3日間で年間雨量に匹敵する617ミリの雨量を計測し、20日午後6時頃に、雨水が地下鉄構内への浸水を防ぐ遮水壁を越えて線路まで流れ込み、市内の地下鉄全線が運行停止となって、500人余りが避難したが逃げ遅れた12人が死亡した。このほか、家屋の倒壊等によっても4人が死亡したそうだ。

 また、*1-1-3のように、駅や道路が冠水し、住民1万人以上が避難を余儀なくされ、人口約9400万人の河南省に最高レベルの気象警報が発令されている。さらに、洛陽市のダムに20メートルほどの亀裂が生じて決壊する恐れも出ており、同地域には兵士が配備されいるが、軍は「いつ決壊してもおかしくない」と警告したそうだ。

 同地域では少なくとも今後24時間は土砂降りの雨が続くと予想されており、洪水発生の原因は複合的であるものの気候変動による気温上昇は激しい降雨のきっかけになる。

2)気温の上昇に伴う海面の上昇
イ)氷河の融解

   
    2020.1.16朝日新聞     2019.12.24日本気象協会  2019.9.25毎日新聞

(図の説明:左図は、世界の気温の推移を、1951~1980年の平均気温を基準として1880~2020年の年間平均気温についてグラフにしたもので、初めは低かった気温が近年になって急速に上がり、全体で約1°C上がっているが、上昇幅は新興国が市場参入して多くの化石燃料を使い始めた時期に大きくなっている。中央の図は、日本の気温が1981~2010年の平均を基準として年間平均でどれだけ高かったか低かったかを1899~2019年についてグラフにしたもので、マイナス部分が多いように見えるが、実際には1889年と比較して2019年は2°C近く上昇している。世界の気温上昇に伴って海水温も上がり、右図のように、1950年と比較すると2020年には既に30~40cmは海面上昇しており、これは見た目の実感と一致している)

   
  2021.7.22Gooddo     2021.7.21AmericanView    2018.11.15産経新聞
                    氷河の後退
(図の説明:気温が上がると海面が上昇する理由は、左図のように、極地の氷が解けたり、中央の図のように、山間部の氷河が解けて後退したりするからだ。右図は、北極海の氷が解け、北極海を通行しやすくなった場合の航路短縮のメリットを記載しているが、海面上昇で国土が狭くなったり、インフラが使えなくなったりするディメリットは考慮されていないようだ)

 *1-2-1のように、カナダ・フランス・スイス・ノルウェーの研究者が、NASAの衛星「Terra(テラ)」に搭載したカメラで世界各地21万カ所以上の氷河の写真を撮影し、20年分の衛星写真をまとめて、2000年から2004年にかけては年間2,270億メートルトンの氷河が失われ、2015~2019年には年間2,980億トンが解けて、このままのペースで融解が続けば、今世紀半ばには多くの氷河が完全に失われる可能性があると、『Nature』に掲載したそうだ。

 論文は、この変化の原因に温暖化や降水量の増加を挙げており、溶けて河川や海に注ぎ込んだ水の量は、過去20年間に観測された海面上昇分の約5分の1に相当するとしているが、過去20年間に観測された海面上昇分の約1/5にすぎないのなら、残りの4/5はどこから来たのか?

 日本でも、海面上昇は重大問題で、これまで標高の低かった地域は海抜以下になって下水の排水が困難となり、洪水も起こり易くなる。中国で地下鉄に水が流れ込んだ例は、東京・大阪でも他人事ではなく、これ以上、海抜の低い地域に人口を密集させて、そこに地下鉄をはじめとするインフラを集中投資することは意味が問われるようになった。

 氷河が減ると、氷河をバッファとして比較的低く保たれてきた海水温はさらに上がりやすくなり、急速に溶ける氷河の水は北インドでは狭い渓谷を下ってふたつのダムに到達し、200人が亡くなる事故という環境災害を引き起こした。そして、国連の気候変動に関する政府間パネルが2018年に発表した報告書は、その凄まじい洪水や地滑りが高山で起きやすくなっている原因を温暖な気候にあると指摘している。

ロ)2020年は日本も世界も平均気温が史上最高で、豪雨・異常高温が相次いだ

  
    RBBTODAY COM        日生基礎研究所       日生基礎研究所

(図の説明:左図のように、世界人口は産業革命後に急速に伸びはじめ、現在は70億人程度だ。また、中央の図のように、日本の人口は太平洋戦争後の経済成長期に都市に集中し始め、三大都市圏それも東京圏に住む人口が著しく増えて、今では都市しか知らない人の割合も多くなった。右図は、2019~2020年の社会的移動による人口増加の割合で、これらの複合的要因が都市におけるヒートアイランド現象の原因となっている)

 2020年夏以降は太平洋の中部・東部の海面水温が平年より低くなるラニーニャ現象が発生して2020年末から2021年にかけては寒い冬になったが、英国気象庁によると、2021年の世界の気温は2015年以降の数年間よりはラニーニャ現象の影響で少し涼しくなるものの、1850~1900年の平均よりは約1度高く、長期的な温暖化傾向に変わりはないとのことである。

 また、*1-2-3によると、都市部ではヒートアイランド現象による気温上昇が別途加味されるが、日本全体の気温の推移を確認する場合は都市部を除いた地点の全国をまんべんなく抽出して調べたところ、日本の平均気温は昭和元年から令和元年(1926~2019年)の94年間で1.4度上昇し、猛暑日も平成以降急激に増えて2010年代の10年間は1980年代と比較すると日数が4.6倍になるそうだ。

 その上、都市部は建築物・舗装道路・人工排熱等の影響で気温が上がりやすく、ヒートアイランド現象が起こるため、全国平均よりも気温の上昇が大きく、年間猛暑日も明確に多いそうだが、これも体感と一致している。

(2)それではどうすればよいのか
1)都市の構造を変える

   
     東京(日本)         大阪(日本)        福岡(日本)

(図の説明:左図は、東京の空中写真だ。スカイツリーの近くを流れる空を映して青く見えているのは隅田川で、下水道で処理しきれなくなった場合は汚水も流すため、近くで見ると濁っていてきれいでない。また、東京の地面は、殆どがコンクリートとアスファルトで覆われており、コンクリート製の建物が密集して緑が少ないため、ヒートアイランド現象を起こし易い。つまり、都市計画が乏しい。中央の図は、大阪の空中写真で、大阪城近くを撮影しているため緑が多く見えるが、街中は東京と同じかそれ以下だ。大阪城近くを流れている大川(旧淀川)や寝屋川も、空を映して青く見えてはいるが、近くで見るときれいな川ではない。なお、右図は、福岡の空中写真で、空港にJR直通の地下鉄が乗り入れていたり、空港が街に近かったりするのはよいが、都市は東京と同じくコンクリートとアスファルトで覆われ、コンクリートの建物が密集して緑は東京より少ない《福岡の人は「自然が近いからいい」と言っていたが》。そして、どの都市も飛行機から見ると家並が時代を経るに従って無秩序に広がっていき、都市計画はないようだ)

   
   ロンドン(英国)      パリ(フランス)      上海(中国)

(図の説明:左図は、ロンドンの空中写真で、東京よりは高さの揃った建物が並んでいるが、コンクリート・アスファルト・石造りの建物が多く、街中を流れるテムズ川はきれいでない。しかし、東京より緯度が高いため、年間平均気温は低い。中央の図は、凱旋門を中心として放射状に広がったパリの街で、建物の高さ・設計がかなり統一されているため、街の景観が良く絵になる。緑は道路からは多く見えないが、建物の中庭にもあるようだ。また、右図は上海で、競って近代的な建物を建てているので一つ一つはおしゃれな建物も多いが、街全体としての整合性・統一性がなく、少し路地に入ると昔ながらの汚ない建物も多い。緑は東京と同じか少し多いくらいで、道は広くなったが近くを流れる蘇州河・黄浦江の水はきれいでない。そのため、ここも、環境に配慮した都市計画が必要だろう)

イ)日本の都市構造について
 日本の都市は、奈良・京都を除いて、道路は建物の隙間を利用して作ったかのように狭くてわかりにくく、碁盤の目になっていない。そのため、番地で住所を探しにくいが、スマホの地図を見ながら歩くと危ない上、逆に居場所を探知されて悪用されるケースもあるため、私自身はスマホを使っていない。

 そのため、これからの都市造りは、あらかじめ安全性で土地にランクを付け、水やエネルギーの供給計画を立て、必要な交通システム・上下水道・電気・ガス・病院・学校・保育所・介護施設・緑地などのインフラ整備を行う必要がある。何故なら、そういうことを考えずに建物を増やしていくと、災害のリスクが上がり、結局は住環境が悪くなるからで、既にできている都市も、今後10~100年の街づくり計画を立て、それに合わせていく必要があろう。

ロ)「空飛ぶクルマ」を使った交通システム
 JALは、*3-3のように、2025年度に、三重県等で空港と観光地を結ぶ「空飛ぶクルマ」を使ったサービスを始めるそうだ。空港を起点に目的地に行く「空飛ぶクルマ」が実用化されれば、道路の渋滞緩和や過疎地の交通に役立ちそうだ。

 しかし、「クルマ」が空から落ちてきては人も建物もたまったものではないため、事故時も安全が保たれるクルマ・道・ルールを作って欲しい。例えば、道路を3階建てにして、1階は歩行者・自転車・自動二輪車・緑地専用、2階は自動車専用、3階は「空飛ぶクルマ」専用にしておけば、「空飛ぶクルマ」は最悪でも3階に落ちるだけですみ、3階の道路に不時着することも可能だ。そして、目的地となる場所は、建物の屋上か3階以上にポートを作る必要があるだろう。

 なお、この交通システムは、これまで道路の整備が遅れていた場所で作った方が早くできそうで、もしアフリカで作れば、サバンナを道路で分断せずに自動車専用道路を作ることができる。

2)せめて「30年の計」がある予算を作るべき

 
2021.7.3日経新聞   2021.7.15日経新聞   2021.6.24日経新聞 2021.7.14日経新聞

(図の説明:1番左の図のように、政府は2021年12月下旬に来年度予算を閣議決定するが、そのためには7月から各省庁が財務省に概算要求を提出して折衝しており、2022年1~3月に国会の予算委員会で行われる議論は殆ど反映されない。そして、予算委員会は、予算審議の場ではなく、首相・大臣を小さな政治とカネ問題で誹謗中傷する場と化している。また、左から2番目の図のように、米国や欧州は、複数年かけてグリーンイノベーションを行うため徹底的な投資をするが、日本は、グリーンイノベーションには単年度で思いつき程度の予算しか割かず、役に立たない景気対策ばかり行って無駄遣いしており、財源は赤字国債なのだ。さらに、さっさとワクチンや治療薬を承認して先に進めば、人流ばかり止めなくても新型コロナの流行は止まるのに、それはやらずに人流を止め、その保証として右から2番目の図のように大きな無駄遣いをしている。なお、1番右の図のように、EUが環境対策の緩い国の製品に対し国境炭素税を導入するのは正しく、これに反対している環境保護に消極的な日本のメディアは見識が疑われるのだ)

イ)日本の財政支出
 政府が6月に閣議決定した骨太の方針では、*2-2-1のように ①グリーン社会の実現 ②デジタル化の加速 ③少子化の克服 ④地方の活性化の4分野を今後の重点課題とし、2022年度予算で重点分野の予算を増やすために、財務省は各省庁の裁量的経費を前年度から10%減らし、削減額の3倍を特別枠で要求できるようにして成長分野に優先的に予算配分できる特別枠を設けるよう調整するとのことである。

 そして、予算規模の大きい社会保障関係費は高齢化による自然増に抑え、医師の技術料等の診療報酬見直しなどでどれくらい伸びを圧縮できるかを今後の焦点にし(このように医療及び医療人材を粗末にしたのが今回の情けない結果を招いたのだが)、新型コロナに関連する予算は影響が現時点で見通しにくいため、金額を示さない(無限の)事項要求を認めるそうだ。

 しかし、財務省のこのような硬直したやり方では、無駄な支出(長くは書かないが、本当は社会保障費ではない)を省いて効率的な財政運営を行うことはできない。そのため、国の財政状態及び収支の状況を一目瞭然に把握することができ、事業別の費用対効果を計測することが可能な複式簿記による公会計制度を導入して、支出の費用対効果やその財源(国民に賦課する税収だけでなく資産から得られる収入を含む)について、毎年度、見直しを行うべきなのだ。

 なお、私は、日本も環境税(or炭素税)をかけ、そこから環境によい製品への投資を促す補助金を出して、民間の力をフル活用し、できるだけ早い時期に気候変動問題を片づけるべきで、それは可能である上に、日本にとってメリットが大きいと考えている。

ロ)欧米の財政支出と財源
 米国や欧州は、*2-2-2のように、新型コロナ危機の出口を見据えて環境・デジタル分野で数十兆円規模の財政支出に動き始め、その財源として、米国は法人税率の引き上げや富裕層への課税強化策を表明し、EUは国境炭素税案を公表している。

 なお、*2-2-3のように、EUの国境炭素調整措置案は、第三国にEU並みの気候変動政策を要求するもので、当然、中国・ロシアはじめ日米も対象になる。これを貿易摩擦に繋がるなどとと捉える思慮の浅い国は、国際基準作りでリーダーになる資格がない。

(3)エネルギーを変える

   
 2017.6.27日経BP  2013.4.24IBM研究所等 2019.5.21日板 2021.3.23exite news

(図の説明:1番左は、バスの駐車場屋根にとりつけた従来型の太陽光発電機で、左から2番目は、鏡を使って2000倍の面積から太陽光を集める太陽光発電機だ。また、右から2番目は、ビルの窓に取り付けた透明ガラスの太陽光発電機、1番右は、温室に使った透明膜の太陽光発電機で、いろいろな進化形があるので場所を選んで使えばよい。そして、これらの技術は、都会にとっても、農業地帯にとっても、また砂漠にとっても福音となるだろう)

イ)2030年度の日本の電源構成は再エネのみにすべき
 朝日新聞は社説で、*2-1-1のように、経産省が政府の次期エネルギー基本計画素案で新しい目標を示し、①2030年度の再エネ比率を36~38%とし ②再エネ最優先と明記したが ③原発比率は昨年の発電実績で4.3%に過ぎないのに20~22%に据え置いた と記載している。

 高知新聞も、*2-1-2のように、④最安値とされた原子力のコストが上がり、太陽光が原子力を下回った ⑤改正地球温暖化対策推進法は2050年までの脱炭素社会の実現を明記し ⑥それには大規模な省エネとCO₂排出量の4割を占める電力部門の対応がKeyで ⑦太陽光など再エネの導入量を増加して主力電源にすべきで、火力は縮小へ国際的な圧力がある ⑧再エネ拡大には送電網の整備が必要だ と記載している。

 また、愛媛新聞も社説で、*2-1-3のように、「太陽光『最安電力』 再生エネを促進し、原発は全廃を」と題して、⑨「最も安い電力」が原子力から太陽光に交代した ⑩原子力は発電コストの安さを強みとしてきたが、安全性への懸念・高レベル放射性廃棄物の最終処分・経済的な優位性も揺らいでいる ⑪国は太陽光など再エネの主力電源化を推し進め、原発の速やかな全廃に道筋を付けるべき と記載しており、全くそのとおりだ。

 しかし、そもそも①④⑨⑩の「原発が最安コストの電源だった」というのも嘘だったことは確実で、使用済核燃料の最終処分費用や事故時の対策費、平時の公害対策費などのすべてを加えたコスト計算はしていなかったのだ。そのため、これらをすべて含めれば、1kwh当たり11 円台後半という試算も安く見積もりすぎであろう。

 一方、太陽光は日本では30年時点で8円台前半~11円台後半と言われているが、現在は日射量の少ないドイツ・デンマークでも7~8円、日射量の多いチリ・メキシコは3~5円、アラブ首長国連邦は3円であるため、日本も次世代太陽光発電機器を住宅・ビルなどに地道に取り付けていけば相当の発電効果・節電効果が得られ、5円程度にはなるだろう。そして、水力・地熱・風力なども無駄にせず発電すれば、変動費0の低コストエネルギーを国内で自給できるのである。

 そのため、⑦⑧⑪のように、再エネの主力電源化を進め、送電網を整備して、原発は速やかに全廃するのが無駄遣いをなくす前向きの投資となる。もちろん、火力は⑥⑦のように、CO₂を排出し、縮小へ国際的な圧力がある上、変動費が0ではなく高価な輸入燃料を使わなければならないため、2030年度の電源構成で41%も残す必要はないと思う。

 なお、「原発はCO₂を排出しないから地球温暖化防止に資する電源だ」という主張もあるが、原発は平時でも温排水を排出して海を温めており、外国の分まで含めて数が多ければ、これも見過ごすことはできない。また、*2-3のように、中国広東省の台山原発で燃料棒が破損し、冷却材中の放射性物質の濃度が上昇したそうだが、放射性物質は平時でも取り除くことができないという理由でトリチウムを海に流しており、公害は地球温暖化だけでないことを考慮すれば、一日も早い廃止が必要なのである。

ロ)「現役世代からの医療費召し上げ」とはどういうことか
 (2)2)イ)の新型コロナで無差別に休業させた企業への助成金、景気対策のバラマキ、(3)の原発補助金のように、もっと賢い方法があるのに血税を無駄遣いしてきた例は多い。しかし、日経新聞はじめいくつかのメディアは、それらを批判するどころか推奨してきた。

 その上で、*2-1-4のように、「現役世代からの医療費召し上げは限界だ」と題して、①75歳以上の後期高齢者が入る医療制度に対して現役世代の加入者を中心とする企業の健康保険組合などが負担する支援金が一段と膨張した ②全世代型社会保障を看板に掲げるなら医療費膨張を制御し ③不足する財源は現役世代からの召し上げだけに頼らず安定した税財源の確保に力を尽くす必要がある などと記載している。

 しかし、①③の問題は、現役サラリーマンは協会けんぽ・組合健保・共済組合に加入し、退職すると国民健康保険に入り、75歳以上になると後期高齢者医療制度に入るという年齢で区切ったため医療需要が増える時には別の保険に入ることになる誤った区切り方が原因で発生している。

 保険理論に沿った保険制度は、サラリーマンが加入する協会けんぽ・組合健保・共済組合に退職者も加入し続け、75歳以上になっても同じ保険に加入し続けるものである。そうすれば、応能負担で保険料を支払い、リスクの低い人がリスクの高い人を支え、生涯を通じて見れば損得なしの本来の保険制度となる。そして、その結果は、現役サラリーマンの負担はもっと増え、企業は定年年齢を延長して健康な支え手である期間を伸ばすようにするだろう。介護保険も同様で、これらを徹底したときに、②の全世代型社会保障になるのだ。

 にもかかわらず、「高齢者と同じ保険に入り続けるのは嫌だ」「現役世代が高齢者の保険に支援金を払うのも嫌だ」「医療費に消費税投入を増やせ」「高齢者は世代内互助せよ」と言うのなら、それはわがままにすぎない。「後期高齢者人口が増加する」のは前からわかっていたことで、医薬品・医療機器などのイノベーションは早く治す方向に起こるため、医療費削減に資する筈だ。また、新薬の値段が高いのは、普及が遅いため単価が高いか、厚労省が言い値で機材や薬品を買っているか が理由で、いずれにしても改善すべき点は高齢者ではなく厚労省側にある。

 なお、2006年6月に老人保健法が改正され、2008年4月から後期高齢者医療制度が創設されたが、その原案を厚労省の担当者が自民党内の厚労部会に持ってきた時、私は「保険の原理に反する」と言って反対したが、その時の担当者の答えは、「そのかわり、患者負担以外は医療保険者からの拠出金と公費(税金)で賄うから」というものだった。私は、「そういう意図的な割合では、不公平になる」と言ったのだが、現在、後期高齢者医療制度の財源は、患者の自己負担分を除いて現役世代からの支援金(国保や被用者保険者からの負担)4割・公費(国・都道府県・区市町村の負担)5割・被保険者からの保険料1割で構成されているのである。

 また、「医療現場で検査の重複を減らせ」というのも、単純すぎる。その理由は、独立した病院で「Second Opinion」を取りたい場合もあるからで、デジタル化した検査結果記録を患者自身が簡単に持ち運びできるようにするのはよいものの、別の病院で二重に検査することも当然あってしかるべきだからである。

 このように、社会保障を疎かにしてきたことが、実需であり成長分野でもある産業の伸びを抑えてきた。そして、これにより、本来なら上昇する潜在力のあったGDP成長率も上昇せず、国民は豊かになるどころか貧しくなっているのだ。

(4)機械を変える ← 先端技術の使用


2021.7.15日経新聞 2021.7.22日経新聞 2021.1.26朝日新聞    2021.4.16
                            Business Insider Deutschland 

(図の説明:1番左の図は、EUの主な気候変動対策で、左から2番目の図は、自動車各社のEV専業化スケジュールだ。また、右から2番目の図は、ボルボのEVで、1番右の図は、メルセデス・ベンツのEVだ)

1)EVへの移行
イ)欧米のケース
 欧州委員会は、*3-1のように、7月14日、温暖化ガス排出大幅削減に向け、①2050年の温暖化ガス排出実質0という目標の中間になる2030年までに、1990年比で55%減らす目標を実現するため ②ガソリン・ディーゼル・ハイブリッド等の内燃機関車の販売を2035年に事実上禁止し ③自動車からのCO₂排出を2035年までに100%減らすよう定め ④環境規制の緩い国からの輸入品に国境炭素調整措置を2023年にも暫定導入し ⑤自動車及びビルの暖房用燃料に新しい排出量取引制度を設けてCO₂排出の炭素価格を上乗せするそうで、Perfectな案である。

 これを受けて、*3-2-2のように、ボルボは製品ラインナップの完全な電気自動車(EV)化へ向けた技術ロードマップを発表し、⑥実走行距離1000kmのEVを目指し ⑦バッテリーパックをクルマのフロアに統合しセル構造を利用して車両全体の剛性(安全性)を高め ⑧充電時間もバッテリー技術の向上とソフトウエア・急速充電技術の継続的改善によって2020年代半ばまでに現在の半分にし ⑨バッテリーセルを100%再エネで生産することを目指し ⑩使用済バッテリーのリユースやリサイクルも計画し ⑪EVのエネルギーインフラでの活用も計画している とのことである。
 
 さらに、独自動車大手ダイムラーのメルセデス・ベンツは、2021年7月22日、*3-2-3のように、⑫販売する新車を2030年にもすべてEVにすると発表し ⑬8つの電池セル工場を新設するなど、2030年までに400億ユーロ(約5兆2000億円)をEVに投資し ⑭EVに不可欠な車載電池では専業メーカーと共同で世界に8つの大型工場を設け ⑮2022年に満充電で航続距離1000km以上の新型車を発表し ⑯EVファーストからEVオンリーに踏み込む こととし、このほか独アウディや英ジャガー等の高級車ブランドもEV専業への転身を発表しているそうだ。

 このように、政府が政策の方向性を明確にすると、民間企業も戦略を立てやすく、そのための技術開発や投資を行えるのだが、さすがボルボは徹底していてスマートであり、ベンツは世界展開が早く、日本だけ置いてきぼりになった感がある。日本は屁理屈が多すぎ、競争もなさすぎるため、ボルボやベンツの工場を誘致してはどうか?

ロ)中韓のケース
 これまで日本車が圧倒的なシェアを占めていた東南アジアの自動車市場でも、*3-2-1のように、現地政府のEV振興策に呼応して中国・韓国のメーカーがEVで先手を取ろうとしており、タイでは中国の長城汽車が、インドネシアでは韓国の現代自動車が現地生産に乗り出そうとしているそうだ。

 タイは、現在は日本車の生産・販売シェアが約9割に達するが、大半をガソリン車が占め、長城汽車は2020年にタイから撤退した米GMの工場を取得して参入し、3年間でEVを含む9車種の電動車を投入するとのことである。

 タイ、インドネシア両政府に共通するのは、動きの鈍い日本車へのいらだちで、タイではEV普及目標の引き上げを検討する政府に対し、バンコク日本人商工会議所自動車部会が「全体でのゼロエミッションを考えて段階的に進めるべきだ」として慎重な議論を求め、インドネシアも同様だということだが、日本国内でもよく言われるこの屁理屈は、どちらから先でもよいが解決すべき問題を先送りするために使われている見識の低いものである。

ハ)日本のケース
 日本車は、*3-2-1のように、東南アジアで1960年代から現地組み立てを始め、主要国の新車販売に占めるシェアが約8割に達しているが、いつまでもガソリン・エンジンに執着した結果、EVでゲームチェンジが起こって中国勢が小型車・商用車で攻勢をかけているそうだ。

 そのため、*3-2-4に、2021年7月21日、スズキ・ダイハツがトヨタ・日野・いすゞの商用車連合に合流すると発表し、トヨタにとって電動化など脱炭素における商用車分野協業の総仕上げになると記載されているが、商用車の技術開発会社に軽自動車を得意とする2社が加わって大型から小型まで商用車を全方位で開発する体制が整うのはよいものの、すべてがトヨタ頼みでは多様性がなくなりそうである。

 地方では、狭い道でも通りやすくて自転車代わりに乗りこなせるため、軽自動車が初心者用や主婦用として購入されるケースが多い。ただし、安い価格で脱炭素を実現してもらいたいのは当然だが、ダサくてもよいわけではないため、VWやフィアットを選ぶ人もいる。つまり、日本車は、企画が洗練されておらず、(馬鹿の一つ覚えで)工夫が足りない感があるのだ。

2)有望な新技術を選ぶ脱炭素ファンドができた
 このような中、*3-4のように、企業の脱炭素化に向けた世界最大規模の枠組みとして、米投資ファンドTPGキャピタルが気候変動対策に特化したファンドを組成し、アップル・グーグル・ボーイングなどの米国を代表する企業20社以上と日本の三井住友銀行が出資して、当初の運用規模が約54億ドル(約6000億円)になるそうだ。

 そして、このファンドは、①脱炭素化に向けた技術を有するベンチャー企業に資金を投じ ②新技術開発を促進し ③2021年中に出資額を70億ドル程度まで引き上げ、④三井住友銀行は出資先への融資や新規株式公開の支援などで連携し、また、⑤気候変動対策を巡っては米アップルが2億ドル規模の森林再生ファンドを既に立ち上げており ⑥アルファベットは環境関連に使途を絞った社債「サステナビリティボンド」の発行を決めている とのことである。

 このほか、脱炭素化を巡っては米ブラックロックが新興国向けインフラファンドを立ち上げ、国際協力銀行・第一生命・三菱UFJ銀行などが出資を決めて、ファンド総額5億ドル規模を目指しており、このように、金融の視点から気候変動問題に対応し、脱炭素化の技術を保有する企業を探して育てるのはよい考えだと思う。

3)日本に国際ルール作成能力があるのか
 日経新聞は、*3-2-5のように、EUが2021年4月に公表した「タクソノミー(事業が持続可能と判定される基準)」について、「①『閻魔大王』のように企業が選別される」「②環境に優しいとされるプラグインハイブリッド車はEVへの移行期に伸びると見込まれていたが、2026年以降は新車で売りにくくなる」「③天然ガスは石炭よりCO2排出量が4割少なく、石炭から再生エネへの移行期の繋ぎ役になるとされてきたが、欧州投資銀行のホイヤー総裁は2021年末までにガスへの投融資から手を引く方針を表明した」等と記載している。

 しかし、②③は繋ぎ役でしかなく、繋ぎ役が出演できるのは主役が出てくるまでの時間でしかないため、もともと予想されていたことで、繋ぎ役で凌いでいる間に主役を作らなければならなかったのだ。また、天然ガスについては、燃料として使わなくても化学工業原料として使える上、燃料としてのガスならオリンピックの聖火と同じく再エネ由来のH₂を使えばよいだろう。

 つまり、「完全にはできないから妥協する」という地点から出発すると何も解決できないため、「日本は欧米主導のルールを受け入れることが多かったが、ルールをつくる側に回れるかどうかは国益を左右する」と言いたいのなら、我田引水によって歪んでいない合理的なルールを作って見せる必要がある。何故なら、これまでは、日本人の私が見ても、先進的かつ合理的で世界のリーダーになってもらいたいのは、欧州のルールの方だったからだ。

・・参考資料・・
<洪水の多発と地球温暖化の関係>
*1-1-1:https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2021/07/1201300.php (Newsweek、Reuters 2021年7月17日) ドイツ・ベルギー洪水の死者120人超に、行方不明約1300人
 欧州西部を襲った記録的な豪雨で河川の氾濫により洪水が発生し、16日時点でドイツ西部などで約1300人の安否が確認されていない。水位の上昇が続き、一部地域で通信が途絶える中、ドイツとベルギー両国の死者は120人を超えた。ドイツのラインラント・プファルツ州とノルトライン・ウェストファーレン州に加え、ベルギーとオランダで、河川の氾濫で住宅が押し流されるなど大規模な被害が発生。これまでにドイツだけでも103人の死亡が確認された。このうち12人は、夜間に鉄砲水に襲われたケルン南方のジンツィッヒにある障がい者施設の入所者だった。地元メディアは、洪水による家屋倒壊が増えているため、犠牲者数が増加する恐れがあると報道。ベルギーではこれまでに少なくとも20人の死亡が確認され、安否不明は20人となっている。ドイツでは16日時点で約11万4000世帯が停電。洪水に見舞われている一部の地域では携帯電話網が機能停止に陥り、被災者と連絡が取れない状態になっている。ラインラント・プファルツ州では、ケルン南方のアールワイラー地区で約1300人の安否が未確認。ケルン当局の報道官は「ネットワークが完全に遮断され、インフラは完全に破壊された。病院は患者を受け入れられなくなっている」と述べた。ドイツ政府は700人を超える軍隊を動員し、救援にあたっている。独政府報道官によると、メルケル首相は次期首相候補であるキリスト教民主同盟(CDU)のラシェット党首から捜索や救助活動を巡る状況報告を受け、近く被災地を訪問する予定という。ARD(ドイツ公共放送連盟)は、メルケル首相が18日にシュルトを訪れると報じた。当局は、ダムが決壊すれば下流地域が一段の洪水に見舞われる恐れがあるとして、放流を試みている。ドイツ西部シュタインバッハタール・ダムは昨晩にかけて決壊の恐れが高まったため、下流地域で約4500人が避難した。気象学者は、気候変動の影響でジェットストリームの流れが変わったために今回の豪雨が引き起こされたと指摘。欧州委員会のフォンデアライエン委員長も、今回の洪水の規模を踏まえると気候変動が影響していることは明らかだとし、迅速に対応する必要があるとの考えを示した。

*1-1-2:https://digital.asahi.com/articles/ASP7P4142P7PUHBI00V.html (朝日新聞 2021年7月21日) 地下鉄浸水12人死亡 中国・河南「千年に1度の暴雨」
 中国・河南省で17日以降、記録的な大雨が続き、省都の鄭州市で地下鉄が浸水するなどして21日までに少なくとも計16人が死亡、10万人が避難した。鄭州の気象局は「1千年に1度の暴雨」だとして、警戒を呼びかけている。習近平(シーチンピン)国家主席は同日、被災者の救済に取り組むよう関係部門に対して重要指示を出した。中国メディアによると、鄭州市では、20日午後4~5時の1時間で201・9ミリの雨が降り、中国全土での観測史上最大を記録した。17日以降の3日間では、鄭州市の年間雨量にほぼ匹敵する617ミリの雨量を計測したという。地元メディアによると、鄭州市では20日午後6時ごろ、地下鉄構内への浸水を防ぐ遮水壁を越えて雨水が線路にまで流れ込んだ。市内の地下鉄は全線が運行停止となり500人余りが避難したが、逃げ遅れた12人が死亡したという。ほかに5人がけがを追った。中国のSNSには、鄭州市内の地下鉄車内で乗客が胸のあたりまで水につかったまま取り残されている様子を映した動画も投稿されている。このほか、鄭州市内では家屋の倒壊などによって4人が死亡した。

*1-1-3:https://www.bbc.com/japanese/57911006 (BBC 2021年7月21日) 中国・河南省で記録的豪雨 12人死亡、1万人以上が避難
 中国中部・河南省は、今月16日から続く記録的豪雨で、深刻な洪水被害に見舞われている。駅や道路が冠水し、住民1万人以上が避難を余儀なくされている。当局によると、鄭州市でこれまでに少なくとも12人が死亡した。また、主要道路が閉鎖され、空の便が欠航するなど、10都市以上に被害の影響が出ている。人口約9400万人の河南省には最高レベルの気象警報が発令されている。洪水発生の原因は複合的だが、気候変動による気温上昇は激しい降雨のきっかけになる。
●ダム決壊の恐れも
 ソーシャルメディアでは、道路全体が水没している様子が画像から確認できる。水の流れは速く、車やがれきが漂流しているのがわかる。こうした中、河南省のダムが決壊する恐れが出ている。当局によると、洛陽市のダムに20メートルほどの亀裂が生じている。同地域には兵士が配備され、軍は声明で「いつ決壊してもおかしくない」と警告した。ツイッターには、鄭州市で浸水した地下鉄の車両に乗っていた乗客が、肩のあたりまで水に浸かっている映像が投稿されている。現実の状況を撮影したものなのかは不明。救助隊がロープを使って人々を安全な場所に引き上げる様子や、列車の座席に立って水に浸からないようにする人の姿などが確認できる。車両内に何人が閉じ込められているのかは不明だが、これまでに数百人が救助されたとの報告がある。シャオペイと名乗る人物は、中国のソーシャルメディア「微博(ウェイボ)」に助けを求めるメッセージを投稿した。「車両内の水が自分の胸にまで達している。もう声も出ません」。消防局はその後、この人物が救助されたと明らかにした。
●3日間で1年分の雨量
 「生まれてからずっと鄭州市で暮らしているが、こんな大雨は経験したことがない」と、56歳のレストラン経営者はAP通信に語った。鄭州市ではこの3日間で、通常の1年分の雨量に匹敵する雨が降ったと報じられている。同地域では少なくとも今後24時間は土砂降りの雨が続くと予想されている。

*1-2-1:https://news.yahoo.co.jp/articles/794b549b846d24273ef57f58173d01c107872ca7 (Yahoo 2021/5/1) 世界の山間部の氷河が、2050年までに“完全消失”する:衝撃の研究結果が意味すること
 これまでに氷河を散策した経験がないなら、近いうちに行きたくなるかもしれない。標高の高い場所にある世界の氷河が、科学者が想定していたよりも速く溶けていることが判明したのだ。すでに2015年以降だけで年間3,000億トン近くの氷が失われている。4月28日に発表された包括的な研究によると、このままのペースで融解が続けば、今世紀半ばには多くの氷河が完全に失われる可能性があるという。このほどカナダとフランス、スイス、ノルウェーの研究者たちが、米航空宇宙局(NASA)の衛星「Terra(テラ)」に搭載された特殊なカメラで撮影された20年分の衛星写真をまとめた。このカメラは「ASTER(Advanced Spaceborne Thermal Emission and Reflection Radiometer=アスター)」と呼ばれる機器で、世界各地の21万カ所以上の氷河の写真を撮影している。氷河の表面の特徴を立体的に捉えるために、撮影にはふたつのレンズが使用された。今回の研究にはグリーンランドと南極の大規模な氷床は含まれていないが、こちらは別の科学者のチームが調査している。今回の研究は『Nature』に掲載されたもので、2000年から04年にかけて年間2,270億メートルトンの氷河が失われたことが判明した。ところが15~19年には、溶ける量が年間2,980億トンまで増えていたことも明らかになっている。こうした変化の原因として論文では、温暖化や降水量の増加を挙げている。すべてを合わせると、溶けて河川や海に注ぎ込んだ水の量は、過去20年間に観測された海面上昇分の約5分の1に相当するという。
●人々の生活を脅かす現象
 問題は海面上昇にとどまらないが、重大な問題であることには変わりない。インドネシアやバングラデシュ、パナマ、オランダといった沿岸国や米国の一部の住民の生活が脅かされているからだ。また内陸地域の一部では、何百万人もの人が雪解け水からきれいな水を得ている。降雪量が少ないときは、長年にわたって氷河が予備の水源になっているのだ。そうした状況はアンデス山脈やヒマラヤ山脈、アラスカ州の一部に特に見られている。「氷河は地球全体の多くの場所に冷涼で豊富な水を提供しています」と、ノーザンブリティッシュコロンビア大学の地球科学教授で今回の論文執筆者のひとりであるブライアン・メヌーノスは言う。「これらの氷河がなくなると、そうしたバッファとしての機能が失われてしまいます」。これまでの氷河溶解に関する研究では、空間的にも時間的にもほとんど計測が実施されていなかった。このため氷河が実際にどれほど後退しているのかについては、不明瞭な点があったという。それが詳細な衛星写真を使うことで、「わたしたちの推計では不明確な部分を大幅に減らすことができました」と、メヌーノスは言う。21万1,000カ所すべての氷河のデータを処理するために、ノーザンブリティッシュコロンビア大学のスーパーコンピューター1台を1年間にわたってほぼフル稼働させる必要があった。
●厳しい未来への警鐘
 今回の研究結果は厳しい未来に警鐘を鳴らしているのだと、ブリストル大学の地理学教授のジョナサン・バンバー(今回の研究には参加していない)は言う。「これは21世紀の世界の氷河の質量損失に関する最も包括的、徹底的かつ詳細な評価です。かなり詳細な研究結果のおかげで、世界全体の個々の氷河の変化を初めて知ることができました」と、バンバーは説明する。現在の傾向が続けば、標高の低い山地の一部では2050年までに氷河が完全に失われることが分析で示されていると、バンバーは言う。「研究自体やその成果は素晴らしいものですが、最上段に掲げられたメッセージはとても悲観的です。氷河は消えゆく運命にあり、水源や自然災害、海面上昇、観光、そして地域の生活に深刻な影響を与えているのです」。論文の筆者たちも、この評価と同じ考えだ。ノーザンブリティッシュコロンビア大学のメヌーノスは、今世紀半ばまでにカスケード山脈やモンタナ州のグレイシャー国立公園などの場所から氷が完全になくなるだろうと指摘している。「見られるうちに見ておいたほうがいいでしょうね」と、メヌーノスは促す。急速に溶ける氷河が生み出す水は、環境災害を引き起こすことがある。例えば今年2月には、融解が進んでいたヒマラヤの氷河が北インドで崩れ、水の壁が狭い渓谷を下ってふたつのダムに到達して200人が亡くなる事故が起きた。国連の気候変動に関する政府間パネルが18年に発表した報告書は、そうした凄まじい洪水や地滑りが高山で起きやすくなっている原因は、温暖な気候にあると指摘している。「氷河の後退や永久凍土の融解によって山の斜面の安定が崩れ、氷河湖の数や面積が増えると予測される」と、報告書では結論づけている。「その結果、地滑りや洪水、水が滝状に流れる現象が、かつてそうした現象がなかった場所でも起きるだろう」
●氷河の損失の半数が北米に
 カナダと欧州の研究者たちが執筆した今回の論文は、アラスカやカナダ西部、米国で溶けつつある氷河が、世界全体で加速する氷河の質量損失の半分近くを占めていることも突き止めている。「アラスカ州の南東部は心配な場所です。ここ10年間で途方もない変化が起きています」と、メヌーノスは指摘する。アラスカ州では融解する氷が原因で地震の規模が大きくなっている。3月に『Geophysical Research』に掲載されたアラスカ大学フェアバンクス校の研究者たちの論文によると、氷河の下にある地面が隆起して圧力が解放され、付近の断層にかかる力に影響を及ぼしているのだという。全体としては悪いニュースではあるが、研究チームが20年間の衛星写真からまとめたデータの量に専門家は感銘を受けている。「本当に素晴らしい成果だと思いました」と、NASAゴダード宇宙飛行センターの雪氷圏科学研究所所長のトム・ノイマンは言う。「時系列の威力がはっきりと示されています。多くの場合、こうした調査には5~7年単位の年月がかかります。研究チームがいまでも優れたデータを集めているという事実は驚きに値します。そうしたデータは史上初の成果を得る上で大きな力になったのです」。ノイマンは、NASAの地球観測衛星「ICESat-2」のミッションのプロジェクトサイエンティストを務めている。ICESat-2は、地球の極地にレーザーを反射させて氷河や極地の氷床の損失を計測し、世界の海面上昇への影響を監視する。「20年は続けたいと思います。そしていつの日か、今回の論文のようなものを執筆できればいいですね」と、ノイマンは語る。

*1-2-2:https://www.sankeibiz.jp/workstyle/news/210104/cpd2101040638001-n1.htm (産経BZ 2021.1.4) 2020年は日本も世界も平均気温が史上最高 豪雨、異常高温相次ぐ
2020年の世界と日本の平均気温が、観測が始まった19世紀末以降、最高となる見込みであることが気象庁の調査で分かった。気温上昇に伴い、各地で30年に一度の規模の高温や大雨などが頻発。国内も九州で豪雨災害が発生するなどした。地球温暖化も寄与したとみられ、2020年は新型コロナウイルスだけでなく、気象も人類に牙を向いた年として記憶されそうだ。一方、今年はこうした傾向がやや緩和されるとの見方もある。気象庁によると、世界の1~11月の平均気温は平年(1981~2020年の平均)から0・47度上がり、16年1~11月の0・45度を抜いて1891年以降、歴代1位となった。100年で0・75度上昇したことになる。太平洋南東側やアフリカ大陸の南東側の海を除くほとんどの地域で、平年より平均気温が高くなった。日本の平均気温も1898年の観測開始以来、過去最高となり、平年より1・07度高かった。100年あたりでは1・27度上昇した。各地で異常高温もみられ、気象庁がまとめた主な現象だけでも世界の11地域で発生。シベリアの一部地域では気温が平年より14・2度高くなり、永久凍土まで解ける地域もあった。気象庁のまとめでは、8~9月に米国西部で森林火災が発生するなど、2020年は8件の気象災害が発生。うち6件が大雨、1件がハリケーンによる被害だった。6~10月にインドなどを含む南アジアで発生した大雨で、周辺では2700人以上が亡くなった。国内では7月に九州で長期にわたる豪雨災害が発生したが、この雨をもたらした暖かく湿った空気と長く停滞した梅雨前線は、九州を襲う前の6月中旬以降、中国の長江の中・下流域でも活動を活発化させ、270人以上が死亡・行方不明となる豪雨を発生させた。気象庁異常気象情報センターの担当者は「20年が暑かった原因は、温室効果ガスによる地球温暖化に加えて複数ある」と分析する。20年初頭は北極にある寒気が南に降りてきにくい大気の状態だったことから、暖冬が進行。さらに19年ごろからインド洋の海面水温が平年より高まったことが地球全体に広がり、年間を通してさらなる温暖化に寄与した可能性があるという。一方、20年夏以降は太平洋の中部・東部の海面水温が平年より低くなるラニーニャ現象が発生。ラニーニャ現象が発生した年は日本列島は寒くなる傾向にあるといい、20年末から21年にかけては一転して寒い冬となるという。気象庁と同様に地球温暖化を監視している英国気象庁によると、21年の世界の気温は15年以降の数年間よりはラニーニャ現象の影響で少し涼しくなるものの、1850~1900年の平均よりは約1度高く、長期的な温暖化傾向に変わりはないとみられる。

*1-2-3:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000006.000044799.html(パシフィック・コミュニケーションズより抜粋 2020年3月23日)昭和から令和で気温1.4度上昇!
■平成の31年間は1989年の観測史上、もっとも日本の気温が上昇した期間。
 昭和元年から令和元年(1926~2019年)の94年間で、日本の平均気温は1.4度上昇。
■世界全体で見ても平均気温は上昇傾向。2019年の世界の年平均気温は史上2番目の高さで、15~19年の5年間、10~19年の10年間の平均気温はいずれも過去最高。
■気象庁発表によると、2020年3月~5月の気温は全国的に高く、夏(6月~8月)の気温も全国的に平年並みか、高め。昨年より早い時期から真夏の太陽が照り付けると想定される。
■日本全体で進む高気温化
 都市化による影響が小さい全国15地点(※)の年平均気温偏差(濃い折れ線)および全国13地点*1の猛暑日*2の平均年間日数(薄い折れ線)の推移。
*1:全国15地点:網走*,根室,寿都,山形,石巻,伏木,飯田*,銚子,境,浜田,彦根,宮崎*,多度津,名瀬,石垣島(全国13地点:全国15地点のうち、*以外の地点)
 ※都市部ではヒートアイランド現象による気温上昇が別途加味されるため、日本全体の気温推移を確認する場合は、都市部を除いた地点を全国まんべんなく抽出している。
*2:日最高気温が35度以上の日
 日本気象協会によると、昭和元年から令和元年(1926~2019年)の94年間で、日本の平均気温が1.4度上昇したことがわかりました。2015年7月に発表された研究によると、大気中の二酸化炭素レベルが現在とほぼ同じだった300万年前の気温は、現在よりも2℃から3℃高く、海抜は最低でも6メートル高かったことがわかっています(※)。この内容から単純に計算すると、気温が1度上昇するごとに海面は2mほど高くなることから、気温1.4度の上昇がどれほど大きな変化かわかるでしょう。中でも、平成以降の約30年は気温が一段と高くなっており、統計的にも平成の30年は1898年の統計開始以降、最も暑い30年間だったと言うことができます。また、猛暑日の出現日数についても1920年から10年刻みで日数を確認したところ、平成以降急激に猛暑日が増えていることがわかりました。特に2010年代の10年間は1980年代と比較すると猛暑日の日数が4.6倍にも及ぶほか、1926年以降で猛暑日の出現日数が多かった年をランキングにしてみると、上位5カ年のうち4カ年が平成元年以降に集中するなど、直近30年の気温の高さが伺えます。
 ※Dutton et al. 2015 https://science.sciencemag.org/content/349/6244/aaa4019
■都市部でも大きな変化が
 横浜・京都・福岡など都市部では全国平均よりも大きく気温が上昇。年間の猛暑日数に関しても明確な増加傾向にあることが分かりました。一般的に、都市域では建築物や人工排熱などで気温が下がりにくいヒートアイランド現象の影響を受けやすいため、その効果が全国平均よりも顕著な気温上昇傾向として表れた可能性があります。
■令和を迎えた昨年、日本全体の年平均気温の最高を更新。2020も高気温の見通し
 2020年1月、気象庁は、2019年の日本の年平均気温(基準値との差:+0.92℃)が、1898年の統計開始以来で最も高い値であると発表。加えて、世界気象機関(WMO)は、2019年の世界の年平均気温(基準値との差)が史上2番目の高さであり、15~19年の5年間、10~19年の10年間の平均気温はいずれも過去最高であると発表するなど、日本だけでなく世界全体で見ても多くの研究で高気温化が認められています。日本全体の気温上昇は、地球温暖化の影響と自然変動の影響を受けていると考えられ、今後ますます注意が必要です。また、気象庁が20 年2月25日に発表した、向こう3ヶ月(3月~5月)と今年夏(6月~8月)の天候見通しによると、今年の夏の気温も全国的に平年並みか高めになるとのことです。また、梅雨時期の降水量はほぼ平年並みで、その後は高気圧に覆われて晴れる日が多くなると予想。昨年は7月下旬まで雨が続き、気温が上がらなかったことを考えると、今年は昨年より早い時期から真夏の太陽が照り付けるでしょう。この結果を受けて、日本気象協会は、今年は本格的な夏を待たずに、いち早く猛暑対策を行う必要があるとしています。(以下、略)

<政策の方針と予算>
*2-1-1:https://digital.asahi.com/articles/DA3S14983912.html (朝日新聞社説 2021年7月22日) 30年電源構成 原発維持は理解できぬ
 2050年に脱炭素社会を実現するために、30年度にどんな電源構成をめざすべきか。経済産業省がきのう、政府の次期エネルギー基本計画の素案で新しい目標を示した。再生可能エネルギーを「最優先」と明記し、30年度の再エネ比率を36~38%と現行目標より14ポイント高くした。再エネを主力電源と明確に位置づけたことは評価できる。一方、理解できないのが、原子力の比率を20~22%に据え置いたことだ。国際エネルギー機関(IEA)が集計した昨年の国内の発電実績の速報では、原発の割合は4・3%に過ぎない。素案が示す原発比率の達成には、新規制基準で審査中の11基を含む国内の原発27基を、8割の高稼働率で運転させる必要がある。しかし現実には、福島の事故以来、国民の不信感が根強く、再稼働は進んでいない。コストが安い電源だとの主張も根拠が揺らいでいる。経産省が今月まとめた電源別の発電コスト試算の最新結果では、30年に新設する原発は1キロワット時当たり11円台後半以上。04年には5・9円とされていたが、安全対策費用が増え続けて上昇傾向が止まらない。30年時点で8円台前半~11円台後半と最も安くなる見通しの事業用太陽光など、コスト低下が進む再エネとは対照的だ。素案が「可能な限り原発依存度を低減」としながら、非現実的な目標を掲げざるを得ないのは、30年度の温室効果ガス排出を13年度より46%減らす新しい政府目標との整合性を取る必要があるからだろう。それだけ無理をしても、30年度の電源構成の目標で最も大きいのは火力だ。昨年実績の7割からは下がる見通しだが、依然、41%もある。そもそも、8年半後の電源構成を現状から大きく組み替えることには限界がある。発電施設の建設や送電システムの改革には時間がかかるからだ。まずやるべきは、脱炭素社会実現をめざす50年のあるべき電源構成の姿を示すことではないか。主役は現時点では、再エネしか考えられない。昨年の発電実績で21・7%と、現行の30年目標(22~24%)に匹敵する水準に育った再エネの潜在力を、できる限り生かすのが得策だ。30年度の数字は、50年の目標に向けての足取りを検証するための中間指標との位置づけで考え直すのが望ましい。太陽光や風力など電源ごとに具体的な施策を挙げた長期の実行計画をまとめ、検証と修正を重ねながら柔軟に進めていく。そんな態勢を整えることこそ、脱炭素社会への早道になるだろう。

*2-1-2:https://www.kochinews.co.jp/article/471271/ (高知新聞 2021.7.14) 再生エネの優位性を磨け
 2030年時点の各電源の発電コストについて経済産業省が示した新たな試算は、太陽光が最安になった。これまで最も安いとされた原子力のコストが上昇し、太陽光は初めて原子力を下回った。原子力は東京電力福島第1原発事故を受けた規制強化に伴い、安全対策費が膨らんだ。このため前回15年の試算より1割程度上がった。改正地球温暖化対策推進法は、50年までの脱炭素社会の実現を明記している。そのためには、大規模な省エネルギーとともに、二酸化炭素(CO2)排出量の4割を占める電力部門の対応が鍵を握る。中期目標では、30年度の排出量を13年度比で46%削減する。取り組みの加速が求められている。太陽光など再生可能エネルギーは導入量の増加で主力電源になると見込まれる。今夏をめどに改定する「エネルギー基本計画」に合わせた電源構成の新目標は、現行より引き上げる方向で検討されている。火力は縮小へ国際的な圧力がある。そこで、原子力は目標を維持するとの見方が出ている。CO2を排出しない再生エネと原発の電源割合を引き上げることで補うことをもくろむ。発電コストを巡っても、経産省は原子力の安さを強みと位置付けてきた。だが、その見方も安全性とともに揺らいでしまった。災害などを想定した事故防止対策のコスト増加が見込まれる。第1原発の廃炉で最難関とされる溶融核燃料(デブリ)の取り出し費用などは含んでおらず、コストはさらに上昇することは間違いない。この試算は発電設備を新たに更地に建設して運転した場合を前提としている。土地取得の費用などは含まず、利用状況などで数値は変動するとはいえ、運転開始から40年を過ぎた原発が再稼働する中、新増設は厳しい状況だ。石炭火力はCO2排出抑制の対策費がかさむため、上昇を見込む。一方、太陽光の発電コストは、事業用、住宅向けとも下がるとした。世界的に普及が進むことでパネルなどの価格が低下するとみる。陸上風力や液化天然ガス(LNG)火力なども、発電コストを最も安く見込んだ場合の試算値では、原子力の発電コストを下回った。ただし、再生エネへの期待を膨らませても、導入は簡単に拡大するものではない。送電網の整備費などは今回の試算に含まれていない。天候に左右される発電条件など、乗り越えなければならない課題も多い。来年4月施行予定の改正温対法は、太陽光や風力発電などの促進区域を市町村が設定する制度を創設する。手続きの簡素化や資金面での優遇を想定している。だが、生態系や景観の悪化を懸念する住民らの反対運動も目立つようになった。国は土砂災害などが想定される地域は指定対象から除外する方針のようだが、地域の混乱を誘発するようでは本末転倒だ。再生エネの優位性を生かすように、きめ細やかな対応が求められる。

*2-1-3:https://www.ehime-np.co.jp/article/news202107150013 (愛媛新聞社説 2021年7月15日) 太陽光「最安電力」 再生エネを促進し原発は全廃を
 経済産業省が2030年時点での発電コストの試算を示し、「最も安い電力」が原子力から太陽光に交代した。太陽光の発電コストが原子力を下回るのは初めてとなる。原子力は発電コストの安さを強みとしてきた。だが、安全性への懸念や、高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分などの問題に加え、経済的な優位性も揺らぎ、存在意義は薄れる一方となっている。国は太陽光など再生可能エネルギーの主力電源化を推し進めるとともに、原発の速やかな全廃に道筋を付けるべきだ。試算は、発電設備を更地に新設して運転するのが前提となっている。原子力の発電コストは04年試算で1キロワット時当たり5・9円だったが、11年の東京電力福島第1原発事故を機に上昇。前回15年は10・3円以上、今回は11円台後半以上だった。前回試算と比べると、1基当たり平均1千億円と見積もった安全対策費が今回は2千億円になった。福島の事故を巡る廃炉や賠償、除染などの見積額も12兆2千億円からほぼ倍増。これらが発電コストを押し上げている。廃炉で最難関の溶融核燃料取り出しや、除染土壌の最終処分の費用は試算に含まれておらず、原発のコストが上振れするのは避けられないだろう。二酸化炭素(CO2)排出量が多い石炭火力も排出抑制対策に費用がかかり、発電コストの上昇が見込まれる。地球温暖化の元凶でもあり、原発と同様に一刻も早く廃止すべきだ。一方、太陽光は世界的な普及拡大でパネルなどの価格が低下し、発電コストが下がる。最安の計算値は、事業用が1キロワット時当たり8円台前半、住宅用が9円台後半。陸上風力も原子力を下回る見通しという。今年5月、「50年までの脱炭素社会実現」を明記した改正地球温暖化対策推進法が成立。政府は30年度の温室効果ガス排出量を13年度比で46%減らす目標を掲げる。達成に向け、省エネと合わせ、より安全で安価な再生エネの普及拡大に注力するのが合理的といえる。ただ、課題も残る。太陽光や風力発電の適地は全国に分散しており、大消費地への送電網拡張が欠かせない。天候の変化に備えた蓄電池の整備なども必要になる。こうした費用は試算に入っておらず、コストを抑える取り組みが重要だ。大規模施設を設置するための森林伐採が土砂災害リスクを高めるとの懸念もある。水質や景観への悪影響を理由とした反対運動も各地で起きている。国は地元に対応を丸投げしてはならない。行政と住民、事業者の利害を調整し、丁寧に合意形成を図る制度が必要ではないか。経産省は今月21日にもエネルギー基本計画の改定案を提示する。計画の土台となる30年度の電源構成目標で、再生エネを大きく伸ばす姿勢を明確に打ち出し、民間企業による投資拡大や技術革新につなげたい。

*2-1-4:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20210726&ng=DGKKZO74163590V20C21A7PE8000 (日経新聞社説 2021.7.26) 現役世代からの医療費召し上げは限界だ
75歳以上の後期高齢者が入る医療制度(後期制度)に対し、現役世代の加入者を中心とする企業の健康保険組合などが負担する支援金が一段と膨張した。今後、団塊世代の後期高齢化で消費する医療サービスはますます増える。菅政権が全世代型社会保障を看板に掲げるなら、医療費膨張を制御するとともに、不足する財源は現役世代からの召し上げだけに頼らず、安定した税財源の確保に力を尽くす必要がある。厚生労働省によると、2019年度に健保組合などが後期制度に払った支援金総額は前年度より3.7%増え、6兆5220億円となった。後期制度を導入した08年度以降で最高だ。主因は(1)後期高齢者人口の増加(2)医薬品・医療機器などのイノベーションがもたらした診療報酬の増額――の2点だ。イノベーションの恩恵は全世代の患者が広く享受する。新型コロナの例を出すまでもなく病の脅威に診療報酬政策を適切に用いるのは当然である。一方、後期高齢者人口の増大は22年から拍車がかかる。すべての団塊世代が後期高齢者になる25年に向け、医療費膨張に歯止めが利かなくなる事態を憂慮する。国会は先の通常国会で、一定以上の年金所得などがある後期高齢者の窓口負担を1割から2割に高める法改正をした。しかし対象者が限られ、医療費膨張を制御する効果は乏しい。根本からの対策を視野に入れるときだ。医療現場では検査の重複を減らすのが課題である。マイナンバーを生かし、デジタル化した検査結果の記録を患者自身が簡単に持ち運びできるようにすべきだ。また、最も有効かつ安全で経済的な薬の使用方針を決める「フォーミュラリー」も医療費の制御効果が高い。厚労省は来年度の診療報酬改定で、病院への導入を後押しする仕組みを工夫してほしい。もっとも、これらの対策をとっても現役世代の支援金増加をくい止めるのは難しい。骨折や慢性疾患のリスクがほかの世代よりも格段に高く、保険原理が働きにくい後期高齢者の特質を考えれば、その医療費に消費税の投入を増やすのが理にかなっていよう。今後10年程度は、消費税増税は不要というのが首相の立場だが、超高齢国のリーダーとして責任ある考えとは言えまい。税率10%後のあり方について政治的な議論の場を設定するときである。

*2-2-1:https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA0311G0T00C21A7000000/ (日経新聞 2021年7月3日) 概算要求に特別枠 22年度予算、成長分野の投資促す
 財務省は2022年度予算の概算要求基準で、成長分野に優先的に予算配分できる特別枠を設けるよう調整する。各省庁で使い道を決められる裁量的経費を前年度からまず10%減らすよう求め、削減額の3倍を特別枠で要求できるようにする。デジタル化の加速や脱炭素など菅義偉政権が力を入れる分野で政策を集め、投資を促す狙いがある。概算要求基準は各省庁による予算要求のルールとして位置づけられる。政府が近く与党と調整し、正式に決める。各省庁は8月末までに財務省に概算要求を出す。財務省は金額と政策を査定し、年末までに政府の予算案をつくる。政府は6月に閣議決定した経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)で①グリーン社会の実現②デジタル化の加速③少子化の克服④地方の活性化――の4分野を今後の重点課題にした。22年度予算編成に向けて、既存の事業の見直しを求めてメリハリを利かせたうえで、重点分野の予算を増やす。公共事業や教育など一般会計の裁量的経費は、21年度当初予算で約15兆円だった。前提として各省庁には既存経費の10%削減を求める。特別枠は削った額の3倍を上乗せして要求できる。人件費など義務的経費を減らした分についても特別枠に入れることを認める。歳出に上限は設定しない。新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、昨年の予算編成では概算要求の締め切りを1カ月遅らせて9月末にするなどの対応を取った。特別枠も設けなかったため、22年度は例年のかたちに戻る。予算規模の大きい社会保障関係費の扱いについては、骨太方針に従い、過度に膨張しないよう高齢化に伴う伸び(自然増)に抑える方針を示す。21年度予算では社会保障費の伸びを4800億円と見込んでいたが、薬価改定などで実質的な伸びを3500億円にとどめた。22年度は団塊の世代が75歳以上になり始める影響もあって、自然増はこれまでより増える見通し。医師の技術料など診療報酬の見直しなどでどれくらい伸びを圧縮できるかが今後の焦点になる。新型コロナに関連する予算などでは、影響が現時点で見通しにくいことを考慮し、金額を示さない事項要求を認める。21年度の当初予算は一般会計で106.6兆円と9年連続で過去最大を更新した。22年度も膨張が予想される。

*2-2-2:https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA13AP70T10C21A7000000/ (日経新聞 2021年7月15日) 米欧の財政支出、脱炭素・ITに集中 日本は配分課題
 米国や欧州が新型コロナウイルス危機の出口を見据え、環境やデジタルの分野で数十兆円規模の巨額の財政支出に動き始めた。税財源の計画も打ち出し、数年単位の持続的な成長戦略と位置づける。明らかになっているメニューの比較で日本は支出が実質的に10分の1に及ばず、メリハリも効いていない。長期構想に基づいて予算を無駄なく戦略的に配分する仕組みを整えなければ国際競争で劣後する恐れがある。米欧はもともと産業振興に巨額の補助金などを投じることには慎重だった。ただ脱炭素などの新技術の開発では政府がインフラ開発などで旗を振らなければ、民間の投資が伸びにくい。国家を挙げて技術覇権の確立を狙う中国に後れを取りかねないとの危機感も米欧政府の背中を押す。米バイデン政権が掲げた「雇用計画」は8年間で2兆ドル(約220兆円)をインフラ整備や気候変動対策に投じる。電気自動車(EV)を購入する消費者への補助金などに総額約19兆円、電力網の刷新に約11兆円など巨額のメニューが並ぶ。中国との覇権争いも絡むデジタル経済のカギを握る半導体支援も重点テーマだ。2022会計年度(21年10月~22年9月)から5年間で、米国内に工場や開発拠点を設ける企業への補助金など計5.7兆円を出す法案を米議会上院が可決した。政策を実現する財源確保の一環で法人税率の引き上げや富裕層への課税強化策も表明している。欧州連合(EU)は気候変動分野に集中投資する。21年から7年間の中期予算と「コロナ復興基金」の計約1兆8千億ユーロ(230兆円)のうち3割を気候変動対策にあてる。目玉は水素戦略だ。30年までに日本の目標の3倍超にあたる年1千万トンの生産体制を整える。EUは14日、国境炭素税の案を公表した。環境対策が不十分な国・地域からの輸入品に欧州の排出枠価格と同程度の税を課す。事実上の関税として年100億ユーロ近くの収入を想定し、環境投資の新たなサイクルを回す。中国は2014年から基金を作り、半導体関連技術に5兆円超の大規模投資を進めている。上海に二酸化炭素排出枠の取引所を設け、気候変動対策にも本腰を入れる。成長分野への支出で日本は質量ともに見劣りする。脱炭素に10年間で2兆円を投じる基金は20年度第3次補正予算に急きょ盛り込んだ。EVなど向けの経産省の補助金は21年度に155億円で、19兆円の米補助金に比べ桁違いに少ない。第一生命経済研究所の永浜利広氏は「経済規模の違いを考えても日本の支出は米国の10分の1以下。成長力で差が広がりかねない」という。単年度主義の硬直的な予算で赤字国債の発行に頼る財政運営も限界がある。大和総研の神田慶司氏は「コロナ後にどういう経済社会をつくるのか、財政健全化に目配りしつつ、いつまでにどれだけの政策・予算が必要なのか大きな青写真が見えない」と指摘する。日本もコロナによる経済への打撃を和らげるため、予算は大幅に増やしている。国際通貨基金(IMF)の集計によると20年以降の財政対応は計88兆円、国内総生産(GDP)比にして15.9%に上る。米国の25.5%ほどではないが、先進国で中程度の水準だ。しかし規模ありきの編成の結果、約30兆円を使い残した。無駄な部分を大胆に見直しつつ、民間の投資を促すような戦略的配分が求められる。政府は22年度予算編成ではデジタルや脱炭素などに充てる特別枠を2年ぶりに設けた。実際は各省庁のばらばらの要求の受け皿という面がある。経済成長がないまま政府債務ばかり膨らむ危うい状態に陥る恐れがある。経済協力開発機構(OECD)の見通しによると日本の21年と22年の実質成長率は主要7カ国(G7)で最も低い。長期展望や柔軟性に乏しい予算や政策の仕組みのままでは米欧の背中がますます遠のきかねない。

*2-2-3:https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR13BNE0T10C21A7000000/ (日経新聞 2021年7月14日) EU並み気候変動対策、第三国に要求 国境炭素税
 欧州連合(EU)の欧州委員会が14日公表する国境炭素調整措置(CBAM)案は、第三国にEU並みの気候変動政策を要求するものだ。中国やロシアをはじめ、日米なども対象になる可能性がある。EUは緩やかに導入を進めることで他国との対立を避けたい考えだが、貿易摩擦につながるリスクがある。「第三国の生産者が排出を減らすインセンティブになる」。欧州委の担当者はこう強調する。EU域外の事業者がEUに製品を輸出するために排出減に向けて努力するというわけだ。実際、EU並みの気候変動対策をとっていれば制度の対象にはならない。CBAMは国境炭素税とも呼ばれる。影響が大きそうなのがロシアや中国、トルコの企業だ。EUの輸入に占める割合を見ると、セメントではトルコが37%を占めるほか、肥料では36%をロシアが、鉄鋼ではトップ3に中国、ロシア、トルコが名前を連ねる。厳しい環境規制で競争力の低下を懸念する欧州の鉄鋼やセメント業界などは制度の導入を支持する一方、中ロや日米などの域外国は懸念を示してきた。保護主義的な措置で、世界貿易機関(WTO)の無差別原則などのルールに違反しているのではないかといった理由だ。EU高官は6月、日本経済新聞の取材に「2050年に温暖化ガス排出の実質ゼロを宣言した先進国を念頭に置いた制度ではない」と述べた。だが日米などの企業のすべての製品が対象外になるかは不透明な面が残る。日米などは全国的な排出量取引制度を持たないため、EUと同等の環境対策をしているとデータで示すことが難しい可能性がある。EUでは排出量取引に基づいて、二酸化炭素(CO2)を出す権利の価格が日々公開される。データで示せなければ、制度の対象になるリスクが高まる。EU内にも貿易摩擦につながりかねないと不安視する声はある。とりわけ米国とはトランプ前政権時代には通商問題を巡って関係が冷え込んだ。フォンデアライエン欧州委員長は6月のバイデン大統領との首脳会談でCBAMを巡って意見交換することに同意するなど、一定の配慮を見せた。23年から3年間の移行期間を設けたのも、各国の理解を得るためだ。制度が成立するには、加盟国の承認と欧州議会の同意を得る必要がある。成立までに1~2年かかるとの見方もあり、制度設計を巡って曲折がありそうだ。日本経済研究センターは欧米が国境炭素調整を導入した場合の日本の製造業への影響について、CO2・1トンあたり50ドル(約5500円)の場合、EU向けに年2.5億ドル、米英に年5.67億ドルを支払う可能性があると試算する。業種別の負担額は機械産業で290億円、輸出額の大きい自動車産業も215億円になる。関税の上乗せで輸出額も減少する見通しだ。試算ではCO2排出量の多い鉄鋼業は欧米への輸出額が5・7%、窯業・土石業で4・7%、それぞれ減少する見通し。日本も炭素税などを導入すれば越境課税は回避できる。ただCO2・1トンあたり50ドルの炭素税を導入すると、日本経済研究センターは製造業の納税額が約1兆2010億円になると試算する。19年度に企業が納めた法人税(10.8兆円)の1割強に相当する。

*2-3:https://www.tokyo-np.co.jp/article/118798 (東京新聞 2021年7月23日) 中国・台山原発、仏なら一時停止 燃料棒破損、合弁の電力会社見解
 中国広東省の台山原発の燃料棒が破損し冷却材中の放射性物質の濃度が上昇した問題で、合弁で同原発を建設したフランス電力(EDF)は23日までに「フランスであれば、状況を正確に把握し(濃度上昇の)進行を止めるため、原子炉を一時停止する」との見解を発表した。23日付のフランス紙レゼコーは「事故ではないが、進行性の状態で深刻だ。フランスであれば、できるだけ早く原子炉を止める必要がある」とのEDF関係者のコメントを伝えた。EDFは22日の声明で、原子炉を止めるかどうかの決定は、中国側が主導権を握る運営企業にあると指摘した。

<先端技術の応用>
*3-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20210715&ng=DGKKZO73887760V10C21A7MM8000 (日経新聞 2021.7.15) EU、ガソリン車販売を35年に禁止、排出ゼロへ包括案、国境炭素税は23年にも
 欧州連合(EU)の欧州委員会は14日、温暖化ガスの大幅削減に向けた包括案を公表した。ハイブリッド車を含むガソリン車など内燃機関車の新車販売について2035年に事実上禁止する方針を打ち出した。環境規制の緩い国からの輸入品に事実上の関税をかける国境炭素調整措置(CBAM)を23年にも暫定導入する計画だ。欧州委案が成立するには、原則として加盟国との調整や欧州議会の審議を経る必要がある。企業や域外国の反発も避けられそうにない。欧州委の政策パッケージは、30年までに域内の温暖化ガスの排出量を1990年比55%減らす目標を実現するための対策だ。2030年目標は50年に排出実質ゼロにする目標の中間点となる。欧州委はガソリンやディーゼルといった内燃機関車について、35年に事実上禁止する方針を初めて提案した。自動車のCO2排出規制を同年までに100%減らすよう定める。フォンデアライエン欧州委員長は14日の記者会見で「化石燃料に依存する経済は限界に達した」と述べ、速やかに脱炭素社会を実現すると表明した。対応を迫られる自動車業界は反発を強める。ドイツ自動車工業会のヒルデガルト・ミュラー会長は7日、「35年にCO2をゼロとすることはハイブリッド車を含むエンジン車の事実上の禁止だ。技術革新の可能性を閉ざし、消費者の選ぶ自由を制限する。多くの雇用にも響く」と訴えた。トヨタ自動車幹部は「戦略練り直しは避けられない」と話す。欧州委は燃料面からも運輸部門の排出減を促す。自動車とビルの暖房用の燃料を対象にした新しい排出量取引制度を設け、CO2排出にかかる炭素価格を上乗せする。EUには産業や電力など大規模施設を対象にした排出量取引制度がある。だが炭素価格の上昇による燃料費の高騰が低所得層の家計を圧迫しかねないとの批判もあり、当面は別建ての制度とする。従来の排出量取引制度では海運を新たに対象とする。欧州委が導入を目指すCBAMは国境炭素税とも呼ばれる。当初は鉄鋼、アルミニウム、セメント、電力、肥料の5製品を対象とする方針。23年からの3年間を移行期間として暫定的に始め、事業者に報告義務などを課す。26年から本格導入され、支払いが発生する見通しだ。欧州委は30年時点でCBAMに関連する収入を年91億ユーロ(約1.2兆円)と見込む。制度案では、EU域外の事業者が環境規制が十分でない手法でつくった対象製品をEUに輸出する場合、EUの排出量取引制度に基づく炭素価格を支払う必要がある。製品の製造過程における排出量に応じた金額を算出し、事業者に負担させる。EU域内外の負担が等しくなるという考え方だ。

*3-2-1:https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGS155WI0V10C21A7000000/ (日経新聞 2021年7月21日) 中韓勢、東南アジア市場でEV先手 長城汽車や現代自
 日本車が圧倒的なシェアを占める東南アジアの自動車市場に、中国・韓国メーカーが電気自動車(EV)で先手を取ろうとしている。タイでは中国・長城汽車、インドネシアで韓国・現代自動車が現地生産に乗り出す。両社とも現地政府のEV振興策に呼応した。日本勢は、21日に発表したトヨタ自動車やスズキなどの商用車連合で、こうした動きに対抗する構えだ。「変化する時が来た」。長城汽車は6月末、バンコクで開いた新車発表会で日本車への宣戦布告ともとれるスローガンを打ち出した。タイは日本車の生産・販売シェアが約9割に達するものの、大半をガソリン車が占める。長城汽車は3年間でEVを含む9車種の電動車を投入して市場の切り崩しを狙う。同社は2020年にタイから撤退した米ゼネラル・モーターズ(GM)の工場を取得して参入した。800億円弱を投じて人工知能(AI)技術やロボットを導入し、年産能力約8万台の「スマート工場」に改修。手始めに6月からハイブリッド車(HV)の生産を始めた。23年までにEV生産を開始する計画だ。工場改修はタイ政府のEV振興策を利用し、最長8年間の法人税免除の恩典を受けた。タイは30年までに国産車の3割をEVにする目標を掲げる。長城汽車タイ法人の張佳明社長は「タイで電動車のリーダーとなり、産業高度化に協力する」と強調する。タイは東南アジア最大級の自動車市場だが、EVシフトは遅れている。自動車大手はEVを現地生産しておらず、20年の販売台数は約1400台にすぎない。このうち約6割を中国・上海汽車集団の輸入車が占める。同社はタイ財閥チャロン・ポカパン(CP)グループとの合弁工場でEVを現地生産する予定という。日本車は日産自動車の「リーフ」やトヨタ自動車の高級車「レクサス」の一部車種の輸入販売にとどまる。現地生産は三菱自動車が23年から開始する計画を持つものの、全体的にはHVを優先する傾向が強い。充電インフラが整っておらず、所得水準もまだ低いためだ。長城汽車もまず、中国で補助金分を引いた実売価格が約120万円の小型EV「欧拉」を、中国から輸出してタイ市場に投入する。市場開拓を進めながら時期をみて現地生産に切り替えるとみられる。野村総合研究所タイの山本肇シニアマネジャーは「中国勢が間隙を突いて、低価格EVでシェアを伸ばしてくるのは確実だ」と指摘する。タイと並ぶ域内2大市場の一角であるインドネシアには現代自動車が攻め入る。首都ジャカルタ近郊で総事業費約1700億円の工場建設が進む。当初の年産能力は15万台で、年内にガソリン車の生産を開始する。現地報道によると22年にもEV生産に乗り出す。同国は日本車の販売シェアが9割台後半と、ほぼ市場を独占してきた。現代自の工場建設にはインドネシア政府の働きかけがあった。進出が決定した19年11月はインドネシアと韓国が経済連携協定(EPA)を妥結した時期と重なる。韓国から輸入する自動車部品の大半が無関税となり、韓国メーカーは日本車と同等な条件での競争が可能になった。インドネシア政府は19年の大統領令で、国産車の20%をEVとする目標を打ち出した。だが、同国が13年に出した小型エコカーの振興策を受けて、日本車は設備増強を実施済みで追加投資に慎重だ。そこで白羽の矢が立ったのが現代自動車だった。タイ、インドネシア両政府に共通するのは、動きが鈍い日本車へのいらだちだ。タイではEV普及目標の引き上げを検討する政府に対し、日本車の業界団体に当たるバンコク日本人商工会議所自動車部会が「全体でのゼロエミッションを考えて段階的に進めるべきだ」として慎重な議論を求めた。タイは火力発電が中心のため、EVだけ増やしても温暖化ガスの排出は減らせないという理屈だ。インドネシアも同様の課題を抱える。日本車の主張は一理あるものの、中韓勢との投資競争に後れをとれば、かつて家電や携帯電話でシェアを失ったように自動車市場も奪われかねない。
●商用車も日本強く 5社連合で守り固める
 日本車は東南アジアで1960年代から現地組み立てを始め、主要6カ国の新車販売に占めるシェアは約8割に達した。ただ、足元で中国勢がEVで小型車のみならず商用車でも攻勢をかける。21日にスズキやダイハツ工業が、トヨタ自動車、日野自動車、いすゞ自動車の商用車連合に合流すると発表したのも、中国勢の攻勢に対抗する守り固めの意味がある。東南アジア最大級の市場のタイは小型商用車「ピックアップトラック」が市場の半分以上を占める。20年の国内販売全体でもいすゞのシェアは23%に達し、トヨタ(31%)に次ぐ2位を占める。インドネシアでも日野、三菱ふそうトラック・バス、いすゞが商用車で寡占状態だ。だが、日本勢のすきを狙い、中国勢が商用車でも攻勢をかける。タイでは商用車大手、北汽福田汽車がEVトラックを21年中にも発売する予定だ。現状、スズキは軽商用車の海外展開をしていない。5社連合で技術力を結集した小型EVなどを出せれば、日本勢の存在感が維持できる可能性がある。

*3-2-2:https://www.webcg.net/articles/-/44769 (Webcg 2021.7.1) ボルボが全車EV化へ向けたロードマップを発表
 ボルボ・カーズは2021年6月30日(スウェーデン現地時間)、製品ラインナップの完全な電気自動車(EV)化へ向けた、技術ロードマップを発表した。
●目指すは実走行距離1000kmのEV
 ボルボは現在、自社製品の急速な電動化と、より長い一充電走行可能距離や短い充電時間を可能とするバッテリーセル技術の開発を推し進めている。特にプロダクトについては、近い将来、SUVタイプの新型EVを投入し、2020年代半ばにはその次の世代となる第3世代のEVも導入するとしている。このモデルでは、航続距離をさらに伸ばすとともに、バッテリーパックをクルマのフロアに統合し、セル構造を利用して車両全体の剛性を高める、より高効率な車両パッケージも実現するという。一方、バッテリーの開発・生産に関しては、スウェーデンの大手バッテリーメーカーであるノースボルトと提携。現在のものより最大で50%エネルギー密度の高いバッテリーセルの開発を計画している。さらに2020年代の後半には、1000Wh/リッターというエネルギー密度の達成と、実走行距離1000kmのEVの実現を目指しているという。また充電に要する時間については、バッテリー技術の向上、ソフトウエアや急速充電技術の継続的な改善により、2020年代の半ばまでに現在のほぼ半分になると予想している。
●生産や廃棄の段階における環境負荷低減にも腐心
 ボルボはプロダクトの電動化以外の点でも二酸化炭素排出量の削減を推進。ノースボルトと共同開発するバッテリーセルについては100%再生可能エネルギーを使用して生産することを目指しており、他のサプライヤーとも2025年までに100%再生可能エネルギーでバッテリーを生産できるよう、取り組みを進めているという。加えて、使用済みバッテリーのリユースやリサイクルについても計画。エネルギー貯蔵などの二次利用の可能性も調査を進めている。EVのエネルギーインフラでの活用についても計画しており、SUVタイプの次世代EVでは、双方向充電により車載バッテリーの電気を電力網に流すことができるようになるという。これにより、EVのドライバーは電力の生産時に排出されるCO2量がピークとなる時間には、電力網にエネルギーを供給してCO2の排出抑制に貢献。そしてCO2排出量が減少する時間にクルマを充電することができるようになると説明している。(webCG)

*3-2-3:https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR223I60S1A720C2000000/ (日経新聞 2021年7月22日) 独メルセデス、30年にもEV専業に 5.2兆円投資
 独自動車大手ダイムラーの高級車事業会社、メルセデス・ベンツは22日、販売する新車を2030年にもすべて電気自動車(EV)にすると発表した。8つの電池セル工場を新設するなど、30年までに400億ユーロ(約5兆2000億円)をEVに投資する。オンラインで開いた記者会見で、オラ・ケレニウス社長は「高級車のEVシフトは加速している。転換点は近づいており、30年までにメルセデスは準備できているようにする。EVファーストからEVオンリーに踏み込む」と述べた。22年に満充電で航続距離1000キロメートル以上の新型車を発表する。25年にEV専用の車台(基本設計)を3種類導入。それ以降に出す車台はすべてEV専用とする。代表車種の「Sクラス」や「Cクラス」の次期モデルはEVだけになる見通しだ。ガソリン車などの販売終了時期は市場によって前後するとしている。ハラルト・ウィルヘルム最高財務責任者(CFO)は30年までにEVの生産コストを同じ車格のガソリン車と同等水準に引き下げるとしたうえで、売上高に占める調整後EBIT(利払い・税引き前損益)比率を10%以上で維持するとの見通しを示した。EVに不可欠な車載電池では専業メーカーと共同で世界に8つの大型工場を設ける。4つは欧州で、米国と中国にも建設する。年間生産能力は高級EV200万台分前後に相当する計200ギガワット時(2億キロワット時)を計画する。メルセデスはこれまで30年に新車販売の半分をEVかプラグインハイブリッド車(PHV)にし、39年にガソリン車の販売終了などで二酸化炭素(CO2)排出を実質ゼロにする「カーボンニュートラル」を目指す計画を掲げていた。半分をEV・PHVにする期限は25年に前倒しする。EV専業化に向け、PHVを含むエンジン搭載車への投資を26年までに19年比で8割減らす。欧州連合(EU)の欧州委員会は14日、35年にエンジン搭載車の販売を事実上禁止する規制案を発表した。すでに独フォルクスワーゲン(VW)傘下の独アウディや、ボルボ・カー(スウェーデン)、英ジャガーなどの高級車ブランドが相次いでEV専業への転身を発表している。

*3-2-4:https://www.nikkei.com/article/DGXZQOFD21AF30R20C21A7000000/?n_cid=SPTMG002 (日経新聞 2021年7月21日) トヨタ、商用車連合を拡大 大型から軽まで電動化
 トヨタ自動車が中心の商用車連合にスズキとダイハツ工業が加わる。トヨタにとって電動化など脱炭素における商用車分野の協業の総仕上げとなる。4月に日野自動車といすゞ自動車と立ち上げた商用車の技術開発会社に軽自動車を得意とする2社が加わり、大型から小型まで商用車を全方位で開発する体制が整う。「国内の自動車保有台数7800万台のうち軽は(4割の)3100万台を占める。地方では半数を超える」。トヨタの豊田章男社長は21日の記者会見でこう切り出し、「商用軽は収益だけを考えると非常に厳しいが日本では欠かせないものだ」と軽の重要性を強調した。スズキの鈴木俊宏社長は「求めやすい価格で脱炭素を実現するには単独では非常に難しい」と参加の理由を説明した。「企業としても脱炭素をアピールできる軽の商用電気自動車(EV)へのニーズはこれまでも高かった」と別のスズキ幹部は背景をこう解説する。今回の協業で改めて強調したのが、商用車分野を電動化や脱炭素の技術開発の起点とする考えだ。物流を担う商用車はあらかじめ決められたルートを通ることが多い。「(充電設備など)インフラとセットで考えることが不可欠」(豊田社長)なEVや燃料電池車(FCV)などの開発には向いている。トヨタが日野・いすゞとの商用車連合を発表した際、念頭にあったのが、福島県での再生エネルギーから作った水素を活用したFCVのトラックによる物流網の構築だった。今回の参画で、FCVの軽商用車も視野に入り取り組みが広がる可能性がある。3月の商用車提携発表後に、自治体・インフラ事業者、運送事業者など、多くの関係者から一緒にやりたいとの声がトヨタに寄せられた。荷物の集配所から受け取る人までの「ラストワンマイル」の物流を担う軽自動車は電動化やコネクテッドなど新技術の開発には欠かせないと判断した。トヨタからスズキとダイハツに声をかけた。軽の商用車が加わることで、中長距離物流を支える大中型トラックを含めて物流に関わる技術開発が加速できるとみる。鈴木社長は「大型と軽がつながることで非常に効率がいい物流ができる。大きな成果に結びつくのではないか」と期待を示す。トヨタにとっては、大きさの制約がある中で、いかに安く作るかを突き詰めてきた軽メーカーのノウハウを取り込む狙いもある。電動化やつながる車などは今後いかに安く作れるかがカギとなる。商用車を軸とした5社連合で、新たなプロジェクトを始める起点にもなり得る。

*3-2-5:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20210724&ng=DGKKZO74149360U1A720C2MM8000 (日経新聞 2021.7.24) GXの衝撃(5)取捨選択、欧州が主導 ルールが決する競争力
 欧州委員会が4月に公表した、分類を意味する「タクソノミー」と呼ぶ数百ページの資料。企業が手がける事業がどういう基準を満たせば「持続可能」と判別されるかを示す。「まるで『閻魔(えんま)大王』みたいに企業が選別される」。こんな受け止め方が広がる。電池製造や発電などが対象で、欧州連合(EU)の温暖化ガス排出の8割をカバーする。企業は基準外の製品を作れなくなるわけではないが、ESG(環境・社会・企業統治)が広がる中、投資を集めにくくなる。
●PHVにも逆風
 環境に優しいとされる製品もやり玉に挙がる。例えば日本の自動車メーカーが強みを持つプラグインハイブリッド車(PHV)。2026年以降は「持続可能」などの分類から外れ、新車で売りにくくなる恐れがある。PHVは、ガソリン車と電気自動車(EV)の間に位置する。EVへの移行期に伸びると見込まれているが「タクソノミーでPHVの普及期の寿命は5年ほど短くなった」と専門家は分析する。石炭火力発電がタクソノミーで外される一方、天然ガスは欧州でも意見が割れる。ポーランドなど東欧諸国は「脱石炭を進めるうえで当面は認めるべきだ」と訴える。逆風の予兆はあった。「控えめに言ってガスは終わった」。欧州投資銀行(EIB)のホイヤー総裁の1月の発言。21年末までにガスへの投融資から原則、手を引く方針を表明し波紋を呼んだ。
●ガスも縮小懸念
 天然ガスは石炭より二酸化炭素(CO2)排出量が4割少ない。天候によって変わる太陽光や風力の発電量を補う役割から、石炭から再生エネへの移行期の「つなぎ役」になるとされてきた。「天然ガスの黄金時代」が到来するとのリポートを国際エネルギー機関(IEA)が公表したのは10年前。クリーンとされる液化天然ガス(LNG)の消費はこの間に6割増えた。ただ、IEAは21年5月、50年のカーボンゼロ達成には、ガスを含む化石燃料の開発投資の即時停止が必要とのシナリオを公表した。日本エネルギー経済研究所の二宮康司氏は「今のままでは30年代以降、ガスも石炭のように悪者扱いされる」とみる。国内最大手の東京ガスが関東で張り巡らすガスのパイプラインは地球1.5周分。輸入のため港湾に設けたLNG基地は1カ所で1000億円規模だ。ガスが石炭のように縮小の道をたどればこうした設備が「座礁資産」となり使い道を失う。タクソノミーのような欧州発のルールが世界の潮流となってきたケースは多い。欧州各国によるガソリン車の販売規制の表明を伊藤忠総研の深尾三四郎氏は「欧州自動車メーカーのディーゼル不正を機に欧州が有利になるようなルールに変えてしまった」と指摘する。車が製造されてから廃棄されるまでの10年間の「ライフサイクル」でみたCO2の排出量は、IEAの20年のまとめによるとガソリン車で1台あたり平均34トン程度だった。EVが24~28トンで、PHVは約25トンと、PHVは環境性能に優れるケースもあるのにEU基準ではアウトになる。欧州がEV導入の高い目標を掲げる中、ESGの圧力により、石油開発は足元で急減。ただ実際に選ぶのは消費者で、EVの普及が遅れれば需給バランスが大きく崩れ、ガソリン価格は高騰しかねない。多角的なリスクを抱えながら企業は難しい選択を迫られている。日本は通貨や通商などで欧米主導のルールを受け入れることが多かった。グリーントランスフォーメーション(GX=緑転)でルールをつくる側に回れるかどうかは、産業競争力にとどまらず、国益をも左右する。

*3-3:https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC071580X00C21A7000000/?n_cid=NMAIL006_20210709_Y (日経新聞 2021年7月9日) JAL「空飛ぶクルマ」で旅客輸送 25年度に事業化
 日本航空(JAL)は2025年度に「空飛ぶクルマ」を使った事業に乗り出す。三重県などで空港と観光地を結ぶ旅客輸送サービスを始める。ANAホールディングス(HD)も25年度に同様のサービスへの参入を検討している。空の移動が身近になれば道路渋滞の緩和や過疎地の交通対策にも役立つ。海外でも実用化競争が進んでおり、新ビジネスに見合うルール整備が課題となる。空飛ぶクルマは空を飛び近中距離を手軽に移動する次世代の乗り物。JALが使うのはeVTOL(電動垂直離着陸機)と呼ぶ2人乗りのドローン型の機体で、航続距離は35キロメートル。最高時速は110キロ。三重県とこのほど実証実験や事業化に向けた連携協定を結んだ。機体を開発したのはJALが20年に出資したドイツのスタートアップ、ボロコプター。リチウムイオン電池に蓄えた電気で複数のプロペラを回して飛ぶ。まず20キロの近距離圏内を飛ぶ実験を進め、さらに地方の都市間を結ぶような50~150キロの中距離圏のサービスを検証する。事業化の際は発着ポートを設けやすい空港を起点に観光地をつなぐ見通し。料金は今後詰める。最終的には中距離圏内であらゆる場所に行き来するタクシーのようなサービスにする構想だ。輸送事業者としてだけでなく、操縦者の訓練や安全管理などのオペレーターサービスを他の輸送事業者に提供して稼ぐ仕組みも想定する。空飛ぶクルマは滑走路が不要で機動性が強み。都市内を簡単に移動できるため、交通渋滞の解消につながると期待されている。交通手段に乏しい過疎地の移動問題の克服にもつながる。一方で社会で広く受け入れられるサービスとするにはルール整備が不可欠だ。三重県は特区として空飛ぶサービスを認めているが、他県との行き来はできない。政府は電動かつ自動操縦で飛ぶ機体を空飛ぶクルマと見なし、ルールづくりを急いでいる。機体は航空機とみなされるため航空法に基づく制度の見直しが必要で、25年までに詰める。航空機燃料を使わないため安全基準も新たな考え方が必要となる。操縦ライセンス、運航の決まりなど整理すべき点は多い。実用化では海外が先行する。トヨタ自動車が出資する米新興企業のジョビー・アビエーションは24年に輸送サービスの商用化を計画。欧州エアバスも24年のパリ五輪での有人サービスの実現を目指している。将来はスマートフォンから予約可能なタクシーサービスの提供をめざす。国内航空大手は空飛ぶクルマなど次世代モビリティー事業を成長の柱の一つと期待する。米モルガン・スタンレーは40年までに世界の空飛ぶクルマの市場規模が1兆5千億ドル(約165兆円)に成長すると予測する。

*3-4:https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB273460X20C21A7000000/ (日経新聞 2021年7月27日) 脱炭素ファンド、Appleなど参画 三井住友銀行も出資
 企業の脱炭素化に向けた世界最大規模の枠組みが立ち上がる。米投資ファンド、TPGキャピタルは気候変動対策に特化したファンドを組成する。当初の運用規模は約54億ドル(約6000億円)で、脱炭素ファンドでは過去最大規模となる。アップルやグーグル、ボーイングなど米国を代表する企業に加え、日本からは三井住友銀行が出資する。脱炭素化に向けた技術を有する世界のベンチャー企業に資金を投じることで、新技術の開発を促進する。TPGが27日に発表した。米国の大企業や大手年金基金などから約54億ドルを集めた。2021年中に出資額を70億ドル程度まで引き上げる方針だ。ファンド出資者にはグーグルの持ち株会社であるアルファベットやアップルなど米IT(情報技術)大手に加え、ボーイングやゼネラル・モーターズ(GM)なども名を連ねる。20社以上が加わるとみられ、日本からは三井住友銀行が5000万ドルを投じて参画する。ファンドを通じて、再生可能エネルギーや二酸化炭素を排出しない輸送手段など、脱炭素化に貢献する技術を有するベンチャー企業などに出資する。投資額は1件当たり数百億円規模を想定している。ポールソン元米財務長官がファンドの取締役会長を務める。ポールソン氏は自身のシンクタンクで気候変動対策に向けた分析を手掛けており、出資先の選定などで手腕を振るう。気候変動対策を巡っては、米アップルが2億ドル規模の森林再生ファンドを立ち上げたほか、アルファベットが環境関連などに資金使途を絞った社債「サステナビリティボンド」の発行を決めるなど米IT大手の取り組みが加速している。だが、気候変動対応に関する技術を有したベンチャー企業に出資するファンドにこうしたIT大手が参画するのは異例だ。背景には投資先が有する技術にいち早くアクセスしたいIT大手側の思惑がある。ファンドは出資者や投資先が参加する企業連合を立ち上げる方針。こうした場を通じて、脱炭素化に向けた有望な技術を有するベンチャーとの協業や出資につなげていく。日本から参画する三井住友銀行は、出資先への融資や新規株式公開(IPO)の支援などで連携していく考えだ。TPGは1992年創業のプライベートエクイティ(PE=未公開企業投資)。直近の運用資産残高は960億ドル(約10兆円)で、未公開株や不動産投資などに強みをもつ。脱炭素化を巡っては、米ブラックロックが新興国向けのインフラファンドを立ち上げた。国際協力銀行や第一生命、三菱UFJ銀行などが出資を決めており、ファンドは総額5億ドル規模を目指している。

<新型コロナと五輪に関する世論から見た教育の問題点>
PS(2021年7月30日、8月2日《図》追加):*4-1のように、衆院内閣委員会で、政府の新型コロナ分科会の尾身会長が「①医療の逼迫が既に起き始めている」「②一般の人々に危機感が十分に伝わっていない」「③緊急事態宣言が出て人流は徐々に減っているが、期待されるレベルには至っていない」「④日本社会みんな危機感を共有することが今非常に重要だ」「⑤入院や重症者の数が増え、入院調整・宿泊療養・自宅療養の人も急増している」「⑥今の状況で求められることは、人々に危機感を共有してもらえるようなメッセージを出し、効果的な対策を打つことに尽きる」等と言われたそうだ。
 しかし、2020年1月に始まった新型コロナ騒動から既に1年半経過し、②の一般の人々の危機感は2020年2月から高まって協力したのに、厚労省だけが危機感を持たず、蔓延や①⑤を防ぐための検査による潜在患者の洗い出し、水際対策の徹底、ワクチン・治療薬の開発・承認、医療機関の広域連携、療養先の確保などの全てを行わず、③の“緊急”事態宣言による人流減少だけを主張して現在に至っているのだ。そのため、④は、これまでの経緯を忘れて、どの口で言えたものかと思う。また、⑥の「人々が危機感を共有するメッセージ」として「国民に自粛を求めながら、オリンピックを行うのは矛盾だ」などと関係のない2つの事象を結びつけるのも“専門家”からかけ離れており、そんなことは根拠を示してきちんと説明すれば理解されることである。さらに、「⑦デルタ株の感染力を前提としていない」というのも、デルタ株は何故感染力が高いのか、それに対してどういう対応方法が適切なのかに関するしっかりした調査もなく、ワクチンや治療薬が効かないというデータもない時に、言うべきではない。
 また、*4-2のように、日本医師会、日本病院会、日本歯科医師会、日本薬剤師会、日本看護協会、全日本病院協会、日本医療法人協会、日本精神科病院協会、東京都医師会も、「⑧感染爆発を避けるため危機感共有を」という緊急声明を7月29日に出し、その内容は「⑨40~50代の中等症患者の増加で医療の逼迫が懸念されると指摘し、政府に十分で安定したワクチンの供給を要請する」だそうだ。しかし、ワクチン接種を進めるのは当然のことで、今回の五輪はお祭り騒ぎどころか練習試合ででもあるかのように観客もいないため、間接的影響ででもこの2つを結び付けるのはおかしい。さらに、医療関係者が国民にテレワークの実施を求めるのも越境で変であり、国民は運動をせず、目が悪くなったり、ロコモになったり、孤独で心を病んだりした方がよいとでも言うのだろうか。
 なお、IOCのアダムス広報部長は、*4-3のように、東京五輪のメインプレスセンターで記者会見し、「⑩五輪関係者は最も頻繁に検査されており、別世界みたいで、われわれから感染を広げていることはない」と強調し、バジェット医事部長も五輪が「⑪医療崩壊に影響することはない」と訴えられたそうだ。組織委がまとめた大会関連の陽性者は7月1日以降で累計198人となり、陽性となった海外からの大会関係者2人が入院したそうだが、母国なら入院の必要があるのか、その後に中等症や重症になったかについても、報告された方が役に立つ。
 このように外国の対処方法と比較した方がよい理由は、*4-4のように、日本政府が「⑫新型コロナワクチン接種証明書の国内利用を特別な事情で接種できない人への差別を理由として認めなかったり(本当は、差別にならないようにすることもできる)」「⑬接種証明書を持つ入国者に72時間以内の陰性証明の提出と14日間の待機措置を求めたり(本当は、いずれか1つでよい)」「⑭外国が発行した接種証明書の利用を認めず、日本の証明書は受け入れるよう交渉したり(相互主義の常識に反する)」など、非科学的かつ非常識な対応が多いのに「何様のつもりか」と思うような不公平な取り扱いを求めているからである。
 なお、上昌広氏が、*4-5に、「⑮新型コロナ対策で日本は1回以上ワクチン接種を受けた人がG7最下位で一人負け」「⑯ワクチン接種が進む国は感染者が急速に減少」「⑰G7で感染者数が増加しているのは日本だけ」「⑱米疾病対策センターはワクチン接種を済ませた人はマスク着用義務を解除し、ドイツもワクチン接種を終えた人への制限を緩和」「⑲日本の最初の躓きは無症状感染対策なのにPCR検査を抑制したこと」「⑳感染の抑制と最も相関したのは、感染者数当たりの検査数だったが、厚労省や専門家たちはこの研究成果を無視し続け、政府のコロナ対策分科会会長の尾身氏は、2021年10月の講演で『無症状者にPCR検査しても感染は抑えられない』と公言している」「㉑これは厚労省で医療政策を仕切る医系技官の意向を代弁したもので、医系技官は、『PCRは1%程度の偽陽性があり、PCR数を増やせば医療が崩壊する』と主張して検査数を抑制した」「㉒『米国医師会誌(JAMA)』5月6日号は『殆どのPCRの特異度は100%』と記しており、2020年5月の段階でPCR検査の精度が高いことは世界の常識となって世界各国が大規模スクリーニング検査体制の構築を進めていた」と書かれており、全くその通りだ。
 また、「㉓日本の人口千人あたり検査数は、インドの半分以下で後進国レベル」「㉔厚労省は、変異株の大部分を見落とした」「㉕世界は『マルチプレックスPCR』を用いて1回の検査で変異株の感染を判断しているが、日本は検体を国立感染症研究所などの専門施設に運ぶ2段階検査に固執している」「㉖厚労省がここまでPCRを抑制する理由は、感染症ムラ(厚労省医系技官、感染研、専門家で構築される利益共同体で健康局結核感染症課が中心)の利権に関わるからである」「㉗コロナ対策で、感染症ムラにとっての『公共事業』となったのは積極的疫学調査で、法定感染症が発生した時、厚労省が指示して感染研と保健所が連携して実施することと定められている」「㉘コロナ感染症対策分科会委員の押谷東北大学教授が、2020年3月22日のNHKスペシャルで、『全ての感染者を見つけなければいけないというウイルスではなく、クラスターさえ見つけていればある程度の制御ができる』」と述べたが、この指摘が間違いだったのは明白で、感染が蔓延すればクラスター対策では対応できないことは素人でもわかる」と書かれているが、私も㉓~㉘は、あまりにも不自然でおかしいと思っていたのである。
 さらに、「㉙彼らがクラスター対策に固執している理由は研究費(2019年度の約3億4千万円から、2020年度には36億5400万円に増額)で、2020年度に採択された41人中20人が感染研、27人が感染症ムラの関係者」「㉚研究成果は東京大54報、感染研19報、横浜市大16報であり、感染症ムラの情報独占や過剰な資源投入は、日本の研究力を削いでいる」「㉛4月8日現在、PubMedには6万2905報のコロナ論文が収載されており、米国1万1251報、中国(8881報)、イタリア(6945報)、イギリス(6448報)、日本(1333報)でG7最下位だ」「㉛ワクチン開発に成功した独ビオンテックと米モデルナは、元はがん治療ワクチンを開発していたバイオベンチャーで、ゲノム情報を分析してワクチン候補となるmRNAの配列を決定するノウハウを有しており、2020年1月に中国の研究チームがコロナのゲノム配列を公開すると、その情報を分析してワクチン開発に取りかかったが、彼らの成功は感染症・免疫学・情報工学の専門家の有機的な連携によるものだ」等も書かれており、なるほどそうだったのかと思われた。
 最後に、「㉜PCR検査もできず、37.5度4日間の自宅待機を強要し、ワクチン・治療薬の開発もできず、緊急事態宣言を繰り返す日本で、多くの人命と財産が失われた」「㉝クラスター対策に固執して非科学的な対応を取り続けてきた感染症ムラと、彼らの暴走に目をつぶった政治家による人災だ」「㉞これまでの経緯を検証し、ゼロベースで体制を見直さねばならない」と書かれているのは全くそのとおりだ。しかし、「感染症ムラの暴走をコントロールするのは、本来、政治の役割だ」というのは、それをやるためには厚労省の医系技官をリードできるようなその分野に詳しく能力ある人材を担当に選ばなければならないが、「国民から選ばれて選挙で勝つ人」は必ずしもそうではなく、仮にそういう人がいたとしてもやはり厚労省の医系技官から煙たがられて担当になれないという日本特有の人事の根本的問題があるのである。

   
2021.7.9毎日新聞 2021.8.2琉球新報  2021.6.17日経新聞   2021.7.12日経新聞

(図の説明:東京圏の患者数が増えていると言われるが、1番左の図のように、東京都のPCR検査数は少し増えたが、ワクチン効果で重症者数は漸減している。また、左から2番目の図のように、新型コロナウイルスも中等症以上になると後遺症を残すケースが多発しており、これは日本脳炎やポリオ《小児麻痺》ウイルスも重症化すると神経系に後遺症を残すことを考えれば常識的に考えられることだが、日本では、最初、『軽症者は病院に行くな』と呼びかけられていた。なお、日本脳炎やポリオはワクチンによって撲滅されたのだが、現在は、右から2番目の図のように、ワクチンの副作用ばかりを強調し、1番右の図のように、感染リスクの低減したワクチンの既接種者にワクチンパスポートを出すことをためらうという世界でも珍しい対応をしている)

*4-1:https://digital.asahi.com/articles/DA3S14991935.html (朝日新聞 2021年7月29日) 尾身氏「危機感伝わらず」 迫る医療逼迫指摘 閉会中審査
 衆院内閣委員会の閉会中審査が28日開かれ、東京都の新型コロナウイルスの感染者が急増している点について、政府の新型コロナ分科会の尾身茂会長は「医療の逼迫(ひっぱく)がもうすでに起き始めている」との認識を示した。その上で「人々に危機感が十分に伝わっていない」などと懸念を語った。菅義偉首相は27日に記者団に対し、感染の急拡大による五輪への影響について「人流は減少している。心配はない」と述べた。28日の内閣委では、立憲民主党の柚木道義氏が人流の減り方は十分なのか尋ねた。尾身氏は「緊急事態宣言が出て徐々に減っているが、期待されるレベルには残念ながら至っていない」と指摘。続けて「入院や重症者の数が増えている。入院調整や宿泊療養、さらに自宅で療養している人も急増している」と述べ、医療逼迫の懸念を示した。その上で、尾身氏は「一般の人々に十分に危機感が伝わっていないということが、大きい一つの原因だ。日本の社会みんな危機感を共有することが今非常に重要だ」と語った。柚木氏から、首相による発信の仕方など政府の対応について問われ、尾身氏は「今の状況で求められることは二つだ。人々にしっかりと危機感を共有してもらえるようなメッセージの出し方。効果的な対策をしっかり打つ。この2点に尽きる」と述べた。感染拡大と五輪開催との関係を指摘する意見も出た。共産党の塩川鉄也氏は「政府は国民に自粛を求めながら、世界最大の式典を行う。大きな矛盾だ」と指摘した。西村康稔経済再生相は「都内の人流は一定の減少をみている」と強調した上で、「医療提供体制を確保していく上でも、自宅で家族か、いつもいる仲間と少人数で観戦応援をお願いできれば」と述べた。また、ワクチン接種に関し、首相が会見で、野村総合研究所のリポートをもとに「人口の4割がワクチンを1回接種したあたりから、感染者の減少傾向が明確」と発言した点について、立憲の玄葉光一郎氏が「デルタ株の感染力を前提としていない」と問題視した。これに対し、西村経済再生相は「野村総研以外のデータも首相は理解している。政府全体で正確な情報を伝えたい」と語った。
■都の説明、都庁内からも批判 「医療逼迫、第3波ほどではない」 「大丈夫との発信、意味あるのか」
 新型コロナウイルスの新規感染者数が2日連続で過去最多を更新した東京都が強調するのが、病床が逼迫(ひっぱく)して医療危機に陥った冬の第3波との違いだ。都は重症化しやすい高齢者の感染が激減し、医療への負荷が当時とは異なると説明する。だが、入院者数は急増し、病床逼迫へ警鐘を鳴らしてきた都の専門家の説明とも食い違い、政府内、都庁内から批判の声が出ている。「第3波のピーク時と比べるとワクチン接種が加速した。重症化しやすい60代以上も減っている。第3波の時とは状況が異なると認識している」。小池百合子知事は28日午後、国内外のメディア向けのオンライン講演で、そう強調した。27日の2848人の感染者を年代別にみると、60代以上は全体の5%。一方、第3波でピークとなった1月7日(2520人)では、60代以上が14%に達した。1月7日に121人を数えた重症患者数も、27日は82人にとどまる。27日夜、都のコロナ対策を担当する吉村憲彦・福祉保健局長は記者団に異例の説明の場を設け、「第3波のピークとは感染状況の質が違う。医療に与える圧迫は変わっていることをご理解いただければ」と説明した。吉村局長は、第3波で9割弱に達した病床使用率が今は半分弱になっているとも強調。「医療提供体制がにっちもさっちもいかなくなって、死者がばたばた出ることは現状ない」とした上で、「いたずらに不安をあおるようなことはしていただきたくない」と述べた。だが、こうした吉村局長の説明は、都が毎週開いてきたコロナ対応のモニタリング会議での、感染症対策の専門家や医師たちの説明とは食い違う。21日の同会議では、「新規陽性者数が急速に増加すれば、医療提供体制が逼迫の危機に直面する」との専門家のコメントを公表。指摘の通り、病床は徐々に埋まり、27日時点の入院患者数は2864人と1カ月前と比べて倍増している。厚生労働省の幹部は「不安をあおらないでほしい」との吉村局長の訴えについて、「東京の感染状況は不安になる状態。逆のメッセージを出した方がよかったんじゃないか」と指摘する。病床に余裕があるとの説明に対しても、「いまはそうかもしれないが、来週、再来週は絶対に逼迫する」と警鐘を鳴らす。東京五輪が開かれる中、あえて第3波との違いを強調した吉村局長の説明に対し、都の福祉保健局内からも批判の声が上がる。ある幹部は「病床にまだ余裕があることは事実だとしても、その点を強調して『まだ大丈夫だ』と発信することにどれだけの意味があるのか」と疑問を呈する。

*4-2:https://mainichi.jp/articles/20210729/k00/00m/040/401000c (毎日新聞 2021/7/29) 日医など9団体が緊急声明「感染爆発避けるため、危機感共有を」
 新型コロナウイルスの感染者急増によって医療提供体制の逼迫(ひっぱく)は間近だとして、日本医師会(日医)や日本病院会など9団体が29日、緊急声明を出した。声明は全国の感染者数が過去最多を更新したことに触れ、「今後の爆発的感染拡大を避けるための危機感の共有と対策が必須」と指摘。全国を対象に緊急事態宣言を出すことを検討し、40~64歳のワクチン接種を推進するよう政府に求めている。記者会見した日医の中川俊男会長は「(緊急事態宣言は)要請がないから発令しないというスタンスでは間に合わない。政府には早め早めに手を打ってほしい」と訴えた。開催中の東京オリンピックの影響について問われた東京都医師会の尾崎治夫会長は「(五輪の開催で)お祭り騒ぎをしているのに自粛してと言うのは難しく、間接的な影響はあったかもしれない」と語った。声明は、40~50代の中等症患者の増加で医療の逼迫が懸念されると指摘し、政府に十分で安定したワクチンの供給を要請。国民には徹底的にテレワークを実施することなどを求めている。声明は日医、日本病院会のほか、日本歯科医師会、日本薬剤師会、日本看護協会、全日本病院協会、日本医療法人協会、日本精神科病院協会、東京都医師会の連名で出された。

*4-3:https://www.tokyo-np.co.jp/article/120263 (東京新聞 2021年7月29日) IOC広報部長「五輪はパラレルワールド。われわれから広げていない」新型コロナ感染者数過去最多に
 国際オリンピック委員会(IOC)のアダムス広報部長は29日、東京五輪のメインプレスセンター(東京都江東区)で記者会見し、国内で感染者数が過去最多を更新していることに関連し「五輪関係者は最も頻繁に検査されており、パラレルワールド(別の世界)みたいなものだ。われわれから感染を広げていることはない」と強調した。バジェット医事部長も五輪が「医療崩壊に影響することはない」と訴えた。大会開催でお祭りムードが広がり、間接的に感染拡大につながっているのではないかとの質問に対し、東京五輪・パラリンピック組織委員会の高谷正哲スポークスパーソンは「専門家の評価に耳を傾けながら安全安心な大会運営に努めたい」と述べるにとどめた。組織委は29日、大会関連で選手3人を含む24人が新たに新型コロナウイルス検査で陽性になったと発表した。組織委が取りまとめた大会関連の陽性者数としては1日当たりで最多。陽性者は今月1日以降で累計198人となった。陽性となった海外からの大会関係者2人が入院していると明らかにした。

*4-4:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20210725&ng=DGKKZO74155890U1A720C2EA3000 (日経新聞 2021.7.25) 接種証明、入国活用も検討 五輪後の感染状況見極め、」渡航向け申請あすから、まず5カ国
 政府は26日、新型コロナウイルスワクチンの接種証明書の申請受け付けを始める。海外渡航向けの発行が目的で、全国の市区町村で対応する。まずイタリアなど5カ国が対象になる。東京五輪後の感染状況を見ながら、証明書を持つ人が日本への入国時に利用できる措置の導入も検討する。接種証明書を査証(ビザ)の発行時や入国審査の際に示すと、入国後の待機措置やPCR検査が免除される。手続きが省略されるため、新型コロナ禍での出入国の負担が減る。ビジネス往来の活性化にもつながる。政府は21日、日本で発行する接種証明書が海外の5カ国に入国する際に利用可能になると発表した。イタリア、オーストリア、トルコ、ブルガリア、ポーランドが対象になる。5カ国のほか、韓国でも入国時に隔離されないようにする手続きが簡素になる。隔離免除の申請に必要な書類の一つに認められた。証明書の申請は26日から市区町村で受け付ける。ワクチンを接種した時点で住民票があった市区町村が窓口になる。申請書と接種済み証、パスポートなどを提示する。当面、証明書の交付は書面になる。接種した日時やワクチンの種類、パスポート番号、氏名、生年月日などを日本語と英語で表記する。費用は無料で、スマートフォンのアプリを使う電子証明書の発行も視野に入れる。日本の外務省は外国が発行した証明書の利用を認めず、日本の証明書は受け入れてほしいと交渉してきた。フランスなど一部の国は日本の要請を容認しなかった。出入国の制限は両国が同じ条件を課す「相互主義」を原則にしていることも一因になったとみられる。現時点で5カ国のみとなった日本の証明書の受け入れ国を広げるには「相互主義」への対応が避けられないとの声があがる。外国で発行された証明書を持つ人が日本への入国時に利用できる基準などが課題になる。そのひとつが中国製やロシア製など日本で承認されていないワクチンの扱いだ。中国製を巡っては米欧製に比べて効力が低いとの見方がある。日本の場合、海外からの入国者に原則として72時間以内の陰性証明の提出や、14日間の待機措置を求める。渡航先で活用できても日本への再入国時に証明書が使えない点も議題になる。出入国在留管理庁によると、6月に帰国した邦人は4万3千人、外国人の入国者は1万7千人にのぼる。宿泊施設での待機措置は大きな負担になっている。足元ではコロナの感染状況が再び拡大傾向にあり、政府は導入時期を慎重に探る構えだ。新型コロナ感染症対策分科会の尾身茂会長は20日の日本テレビ番組で、東京都の1日当たりの新規感染者数が「8月第1週に3千人近くまで増加する」との見通しを示した。政府は入国時の接種証明書を活用するのは感染者数が減少局面に入った段階を想定しており、8月8日の東京五輪の閉幕後になる公算が大きい。経団連は移動自粛の緩和など証明書の国内での活用を提言したが、政府は現状では及び腰だ。ワクチン接種は任意でアレルギーなど特別な事情で接種できない人への差別につながりかねないと懸念する。当面は海外渡航での利用を念頭に置く。

*4-5:https://facta.co.jp/article/202106024.html (POLITICS 2021年6月号[罷り通る出鱈目])「ワクチン敗戦」のA級戦犯、「感染症ムラ」の暴走を止めるのは、本来、政治の役割。加藤官房長官と田村厚労大臣は、その責任を放棄してきた。
 新型コロナウイルス(以下、コロナ)対策で、日本は一人負けを続けている。1回でもワクチン接種を受けた人の割合は、2.0%以下(4月29日現在)で、主要先進国(G7)で最下位だ。英国(50.4%)、米国(43.0%)は勿論、G7で日本に次いで接種が少ないフランス(22.4%)にもはるかに及ばない。ワクチン接種が進む国では、感染者が急速に減少している。英国の人口百万人あたりの感染者数は1月10日のピークの881人から32.5人(5月1日現在)に減少し、日本(40.0人)よりも少ない。G7で感染者数が増加しているのは日本だけだ。この状況は国民生活にも影響する。英国では、5月17日に屋内での飲食、映画館などの娯楽施設、ホテルの営業が再開し、6月21日にはマスクの着用を緩和し、ナイトクラブの営業を再開する予定だ。米国も状況は変わらない。カリフォルニア州のユニバーサル・スタジオは4月16日に営業を再開し、27日には、米疾病対策センター(CDC)が、ワクチン接種を済ませた人には、マスク着用義務を解除する方針を出した。5月4日、ドイツでもワクチン接種を終えた人への制限を緩和する方針が発表された。この状況は、緊急事態宣言下の日本とは対照的だ。なぜ、日本だけ上手くいかないのだろうか。実は、このことは今に始まった話ではない。日本のコロナ対策は、昨年から一貫して「劣等生」だった。政府は「日本型モデルの成功」と自画自賛してきたが、実態は違う。本稿では、日本のコロナ対策の失敗の本質をご紹介しよう。
●医系技官の意向を代弁した出鱈目
 コロナ対策の目的は国民の生命と生活を守ることだ。これは、人口当たりの死者数と国内総生産(GDP)の変化を用いれば国際比較が可能となる。日本の2020年の人口10万人あたりのコロナによる死者は2.6人、GDPは対前年比で4.8%減だ。19年のGDPは前年より0.3%増だったから、実質5.1%減となる。本稿では、この値を「GDP変化率」と定義する。では、G7ではどうだろうか。10万人あたりの死者数は日本とは桁違いだ。最も多いのはイタリアで122.7人、日本の47.2倍だ。最も少ないドイツ(40.3人)でも日本の15.5倍となる。一方、経済ダメージは、死者数ほどの差はない。最もダメージが軽微なドイツの「GDP変化率」は5.5%減で、日本(5.1%減)と大差ない。欧米と比較した場合、日本は経済ダメージは大きいものの、死者数の抑制に成功したという見方も可能だ。東アジアと比較すれば、この評価は一変する。主要4カ国・地域の死者数は日本2.6人、韓国1.8人、中国0.3人、台湾0.03人で、「GDP変化率」は、日本5.1%減、中国3.7%減、韓国3.0%減、台湾0.3%増だ。死者数、「GDP変化率」の何れにおいても、日本は最低だ。日本はどこで間違えたのだろう。最初の躓きはPCRを抑制したことだ。コロナ対策が難しいのは、感染者の多くが無症状であることだ。それゆえ周囲にうつしてしまう。コロナ対策の本丸は無症状感染対策で、世界中の研究者がこの問題に取り組んだ。最初の報告は、昨年1月24日、香港大学の研究者たちが英『ランセット』誌に無症状感染の存在を報告したものだ。その後、「無症状コロナ感染」をタイトルに含む約800の英文論文が発表されている。この中で特記すべきは、11月11日、米海軍医学研究センターの医師たちが、米『ニューイングランド医学誌』に発表したものだ。1848人の海兵隊の新兵を隔離して感染状態を調べたところ、51人(3.4%)で感染が確認され、46人は診断時に無症状だった。若年者においては、感染者の大半が無症状ということになる。その後、12月2日にスリランカの研究者が、PCR体制の強化がもっとも有効な対策という論文を、医療政策研究の最高峰『ヘルス・アフェアー』誌で発表した。この報告で、感染の抑制と最も相関したのは、感染者数当たりの検査数だった。ところが、厚労省や専門家たちは、このような研究成果を無視し続けた。政府のコロナ感染症対策分科会会長を務める尾身茂氏は、10月14日の横浜市での講演で「無症状者にPCR検査しても感染は抑えられない」と公言している。もちろん、これは厚労省で医療政策を仕切る医系技官の意向を代弁したものだろう。尾身氏自身、医系技官OBだ。医系技官は、流行当初から「PCRは1%程度の偽陽性があり、PCR数を増やせば、医療が崩壊する」と主張し、検査数を抑制してきた。昨年8月まで医系技官トップで事務次官級の医務技監を務めた鈴木康裕氏は、10月24日の毎日新聞で「陽性と結果が出たからといって、本当に感染しているかを意味しない」とコメントしている。この発言も出鱈目だ。『米国医師会誌(JAMA)』5月6日号には「コロナの診断テストの解釈」という論文が掲載され、「ほとんどのPCRの特異度*注は100%である」と記されている。昨年5月の段階で、PCRの精度が高いことは世界の常識となっており、中国をはじめ世界各国が大規模スクリーニング検査体制の構築を進めていた。この手の出鱈目は枚挙に暇がない。11月25日の衆議院予算委員会で田村憲久厚労大臣は「アメリカは1億8千万回検査しているが、毎日十数万人が感染拡大している」と答弁しているが、これも不適切だ。前述したように、感染抑制と相関するのは、検査の絶対数ではなく、感染者数あたりの検査数だ。田村大臣発言当時の米国の感染者あたりの検査数は12.3回で、日本の18.9回以下だ。その後、米国は検査体制強化に努め、4月29日現在の感染者あたり検査数は20.0件で、日本(14.5件)を追い越した。
* 特異度(とくいど)=臨床検査の性格を決める指標の1つで、ある検査について「陰性のものを正しく陰性と判定する確率」として定義される値である。
●変異株6割見落とす「二段階検査」
 感染症対策の根幹は検査だ。菅義偉総理は繰り返し「検査体制の強化」を主張するが、日本の検査能力はいまだに後進国レベルだ。4月29日現在の人口千人あたりの検査数は0.58件で、英国(15.8件)、米国(3.1件)はもちろん、インド(1.22件)の半分以下である。PCR抑制は様々な影響を与えた。変異株のまん延もその一つだ。厚労省はPCR陽性例の4割を変異株の検査に回したが、そもそもの検査数が少なく、かつ6割はノーチェックなのだから、変異株の大部分を見落としてしまった。4月19日~25日の間に東京都では5090人のPCR陽性が確認され、このうち41%に変異株検査を実施したが、56%が陽性だった。大阪・兵庫・京都では、変異株の割合は80%を超える。実は、世界の変異株検査のやり方は、日本とは全く違った。二段階検査のような手間のかかる方法ではなく、複数の遺伝子配列を同時に増幅することができる「マルチプレックスPCR」を用い、一回の検査で変異株の感染を判断している。この方法を用いれば、検体を国立感染症研究所(感染研)などの専門施設に運ぶ必要はなく、医療機関や民間検査センターでも検査が可能で、結果はその日中にわかる。1月8日、米食品医薬品局(FDA)は、「マルチプレックスPCR」の使用を推奨したが、感染研は執拗に従来の方法にこだわり、いまだに導入されていない。
●「公共事業」と化した積極的疫学調査
 なぜ、厚労省は、ここまでPCRを抑制するのか。それは感染症ムラの利権に関わるからだ。感染症ムラとは、厚労省医系技官、感染研、専門家で構築される利益共同体だ。その中心は健康局結核感染症課だ。コロナ対策の法的根拠となる感染症法と検疫法を所管し、後述する感染症関係の研究予算を差配する。課長は医系技官の指定席だ。コロナ対策で、感染症ムラにとっての「公共事業」と化したのは積極的疫学調査だ。この調査は、感染症法で規定される法定感染症が発生したとき、厚労省が指示し、感染研と保健所が連携して実施することと規定されている。この調査では、感染者を発見したら、保健所が濃厚接触者を探しだし、PCRを実施する。もし、感染していれば、さらに濃厚接触者を探し、芋づる式に感染者を見つける。この芋づるをクラスターと呼ぶ。クラスター調査は、世界のどこでも実施している標準的な感染対策である。日本があえて「積極的」と称するのは、感染者の過去14日間の行動を調べ、接触者を探しだし、彼らを検査するからだ。この際、保健所職員を動員しての人海戦術による聞き取りを実施する。海外では感染者が見つかると、その後に接触した人を洗い出し、発症するか調査するだけだ。この際、接触アプリを活用する。厚労省や「感染症ムラ」の研究者は、積極的疫学調査を自画自賛する。コロナ感染症対策分科会の委員を務める押谷仁・東北大学教授は、昨年3月22日のNHKスペシャルに出演し、「全ての感染者を見つけなければいけないというウイルスではないんですね。クラスターさえ見つけていれば、ある程度の制御ができる」と述べている。この指摘が間違いであったのは、いまや明白だ。感染がまん延すれば、クラスター対策では対応できないことは素人でもわかる。感染研も積極的疫学調査の実施要領に「(大流行下では)感染経路を大きく絶つ対策が行われているため、個々の芽を摘むクラスター対策は意味をなさない場合がある」と記していた。ところが、彼らは未だにクラスター対策に固執する。1月8日には、実施要領の記載を「効果的かつ効率的に積極的疫学調査を行うことが重要になる場合がある」と変更し、2月25日に分科会が提出した提言には現行の調査を強化した「深掘積極的疫学調査」を盛り込む始末だ。なぜ、ここまでしてクラスター対策に拘り、PCRを抑制するのか。それは「クラスターさえ見つけていれば、ある程度の制御ができる(押谷教授)」というフィクションが通用している限り、彼らがカネとポストを独占できるからだ。研究者にとってのカネとは研究費だ。結核感染症課は「新興・再興感染症及び予防接種政策推進研究事業」を所管する。この予算は19年度の約3億4千万円から、20年度には36億5400万円に増額された。公募形式だが、採択されるのは感染症ムラの面々ばかりだ。20年度に採択された41人中、20人が感染研で、27人が感染症ムラ関係者だ。彼らが受け取った研究費の総額は約31億1800万円で、全体の85%を占める。もちろん、感染症ムラの研究者がしっかり成果を出してくれれば問題はない。ところが、研究成果が乏しい。米国立医学図書館データベース(PubMed)によれば、4月14日現在、日本人研究者が筆頭著者の856報の論文が発表されている。施設別で最も多いのは東京大で54報だ。感染研は19報で7位、横浜市大(16報)と同レベルだ。感染症ムラの情報独占や過剰な資源投入は、日本の研究力を削ぐ。4月8日現在、PubMedには6万2905報のコロナ論文が収載されている。国別でトップは米国の1万1251報で、中国(8881報)、イタリア(6945報)、イギリス(6448報)と続き、日本(1333報)はG7で最下位だ。人口10万人あたりで比較すると、日本は1.1報。OECD加盟国37カ国中32位で、ハンガリーやコロンビアと同レベルである。コロナ研究は熾烈な競争の世界だ。様々な分野の専門家が参入する。例えば、ワクチン開発に成功した独ビオンテックと米モデルナは、元はがん治療ワクチンを開発していたバイオベンチャーだ。ゲノム情報を分析し、ワクチン候補となるmRNAの配列を決定するノウハウを有していた。昨年1月、中国の研究チームがコロナのゲノム配列を公開すると、その情報を分析し、ワクチン開発に取りかかった。彼らの成功は感染症に加え、免疫学や情報工学の専門家の有機的な連携によるものだ。感染症ムラの「お医者さん」がカネと情報を独占する日本とは違う。
●「感染症ムラ」の暴走に目をつむる
 余談だが、ゲノム研究の世界的リーダーは中村祐輔・がん研がんプレシジョン医療研究センター所長だ。昨年、米メディアがノーベル生理学・医学賞候補に挙げた。残念なことに、中村氏が「感染症ムラ」から招聘されることはない。中村氏は大阪大学を卒業した外科医だが、あまりにも高名な中村氏は「感染症ムラ」にとって煙たい存在なのだろう。話を戻そう。では、どうすればいいか。感染症ムラの暴走をコントロールするのは、本来、政治の役割だ。その役割を担うべきは、加藤勝信官房長官と田村厚労大臣だ。前職は、それぞれ厚労大臣と自民党コロナ対策本部本部長で、政府・与党の責任者を務めた。ところが、彼らは、その責任を放棄してきた。PCRについての田村厚労大臣の不適切な発言は前述の通りだ。加藤官房長官の姿勢を象徴するのは、37.5度4日間の自宅待機への対応だ。検査を希望する国民に理解を示すことなく、昨年5月8日には「我々から見れば誤解」と国民に責任を押し付けた。PCRもできず、ワクチンも開発できず、緊急事態宣言を繰り返す日本で、多くの人命と財産が失われた。クラスター対策に固執し、非科学的な対応を取り続けてきた感染症ムラと、彼らの暴走に目をつむった政治家による人災だ。これまでの経緯を検証し、ゼロベースで体制を見直さねばならない。
*著者プロフィール:上昌広(かみまさひろ);特定非営利活動法人「医療ガバナンス研究所」理事長、1968年生まれ。兵庫県出身。東大医学部卒。国立がんセンター中央病院薬物療法部医員として造血器悪性腫瘍の臨床研究に従事し、2016年まで東大医科学研究所特任教授を務める。2005年より東大医科学研究所先端医療社会コミュニケーションシステムを主宰し、医療ガバナンスを研究。医療関係者など約5万人が購読するメールマガジン「MRIC(医療ガバナンス学会)」の編集長を兼ねる。

<五輪開会式から見た教育の問題点>
PS(2021年7月31日追加):五輪選手は世界の一流であるため、さすがに質が高くて気持ちの良い競技をするが、それぞれ地域の代表なので東京五輪のような無観客の会場で競技をするのは久しぶりだろう。その五輪で開催地の見識と実力が最も現れるのは開会式と閉会式だが、*5-1のように、開会式は新型コロナのパンデミックを理由に無観客・選手のマスク着用が義務付けられていた。しかし、ワクチン接種が済み、毎日PCR検査をして陰性を証明している選手にマスク着用は不要であるし、観客にワクチン証明か陰性証明があれば無観客である必要もないのだが、その判別もつかないのが、日本の厚労省・同専門家会議・政治家・メディアなのである。
 私も東京五輪の開会式は見たが、①選手の入場行進に「ドラゴンクエスト」「ファイナルファンタジー」などのゲームの楽曲が多く使われ ②歌舞伎俳優市川海老蔵さんの演技は少しで ③各種競技のピクトグラム(絵文字)をパントマイムのパフォーマーが演出し ④聖火リレーの最終ランナーに大坂なおみ選手が起用されていた。
 私の感想は、①②は、日本の芸術の貧困であり、③は面白くはあったが笑う以上の何ものでもなく、歌も上手ではなくて、この開会式にはリオ五輪のようなメッセージ性も本当の芸術もないと思った。唯一存在したメッセージは、最後に④で日本の多様性を示したことだが、これは先進国では当たり前のことで、それと同時に、声がスタジアムに届くよう五輪開会式の会場近くで五輪中止の抗議デモが行われていたのは、外国人差別が現れている上に、外国からのお客さまに対して失礼で、航空自衛隊が描いた空の五輪も風で吹き飛ばされて形にならなかった。
 五輪の開会式は、企業にとっても技術や製品を世界に発信する好機だった筈だが、*5-2のように、⑤夜空に立体的な地球を描いたドローンショーは米インテル ⑥水素で聖火をともしたのはENEOS ⑦国立競技場にプロジェクター・音響設備・照明器具を納入して開会式の演出を支えたのはパナソニック ⑧聖火のトーチに使ったアルミニウムの3割は東日本大震災の仮設住宅の窓サッシを再利用してLIXILが製造 ⑨日本代表選手が着る「式典服」と「開会式服」をAOKIHD が用意 ⑩スウェーデン選手団の公式ウエアはサステナビリティーを重視して回収したペットボトル由来の再生ポリエステルなどを採用してユニクロが提供 だそうだ。
 しかし、⑤は、素晴らしかったが、米企業インテル製で平昌冬季五輪でも同じショーを披露していたので目新しくはなかった。また、⑥⑧⑨⑩は、開会式の放送時に解説や地球環境配慮のメッセージがなかったため、気付いた人が少ない。⑦は、今や日本の家電はパナソニックしか生き残っていないというお寒い状況を告げるメッセージなのである。さらに、だらだらと入ってきた選手団のプラカードは、国名が漫画の吹き出しに書いてあってアホかと思った。
 なお、この開会式を演出したのは、*5-3のように、元お笑い芸人の小林氏だったそうで、小林氏は過去にユダヤ人のホロコーストをコントで茶化した人権意識と見識の低い人だった。組織委の武藤事務総長は小林氏の役割を「全体を統一的で一貫性あるものにするもの」と説明されているが、確かに一貫性を持って教養の香りのない開会式だった。また、7月19日には、開会式の冒頭の楽曲を制作した小山田氏が学生時代の暴行で辞任し、その前には式典を統括するクリエーティブディレクターの佐々木氏が女性タレント容姿侮辱問題で辞任しているため、今回の開会式の軽薄さは、大会を組織した人の首尾一貫した軽薄で教養に欠ける価値観に基づく人選の結果だと言える。なお、*5-4のように、東京五輪の開会式で演出を担当した小林氏の解任について、海外の主要メディアは一斉に報じ、ベンアリ駐日イスラエル大使もツイッターで「ホロコーストの生存者の娘として、小林氏の過去の反ユダヤ主義的な言動に衝撃を受けた」と投稿されたのは当然のことだが、軽薄の仲間である日本メディアは大して問題にしなかった。

    
                 2021.7.23、2021.7.24日経新聞     
(図の説明:1番左の表は、開会式で使われたゲーム曲のリストで、左から2番目の図は、日本選手団の入場の様子だ。また、右から2番目の図は、聖火の点火の様子で、1番右の表は、東京五輪をめぐる不祥事のリストだ)

*5-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20210724&ng=DGKKZO74152200U1A720C2NNE000 (日経新聞 2021.7.24) 異例の開会式、各国で詳報 無観客や選手マスク姿、東京五輪、大坂選手の点火速報
 東京五輪の開会式が23日、国立競技場(東京・新宿)で行われた。新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)下で開かれた今回の開会式について海外メディアは、初めて無観客となったことや選手がマスクを着用して参加したことなど異例ずくめである様子を報じた。米メディアのCNNやニューヨーク・タイムズ(NYT)などは開会式をライブで中継した。選手の入場行進には「ドラゴンクエスト」など日本の有名ゲームの楽曲が使われたと紹介し、各種競技のピクトグラム(絵文字)をパントマイムのパフォーマーが演出したなどと伝えた。歌舞伎俳優の市川海老蔵さんによる演技も開会式のハイライトとして注目を集めた。聖火リレーの最終ランナーにはテニス女子の大坂なおみ選手が登場、聖火を点火したときには主要メディアが相次いで速報を流した。AP通信は「空っぽのスタジアムで控えめなセレモニーが開かれるなか、東京五輪は始まった」と伝えた。「想像していたものと大きく異なったが、ようやく集まれたのでこの時間を大切にしよう」と呼びかけた国際オリンピック委員会(IOC)のバッハ会長による開会式の演説も紹介した。英BBCは「リオ五輪のようなカーニバルも、ロンドン五輪のようにスカイダイビングする女王もいなく、世界が最大の試練に立ち向かうなかで開かれる大会だと思い知らされた」と報じた。「この大会はマスク着用やコロナの陽性検査、そして無観客などこれまでとは異なるが、オリンピックが世界最大のショーであることに変わりはない」と指摘した。五輪の中止を呼びかける抗議デモについても報道が相次いだ。米公共ラジオ放送NPRは五輪開催について日本人の大半が「必要ではなく、危険な状況を作って国民に健康リスクをもたらすと感じている」と報じた。NYTは東京都が現在、コロナの感染拡大に伴い緊急事態宣言を発令中だと指摘。開会式のプログラムの合間に静けさが戻ると、会場の外に集まった抗議デモ参加者の声がスタジアムにも届いたと伝えた。

*5-2:https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC242IB0U1A720C2000000/ (日経新聞 2021年7月24日) 幻想ドローンショー 五輪開会式、企業の技術が支える、環境配慮を世界に発信
 23日の東京五輪開会式は、企業にとっても技術や製品を世界に発信する好機となった。夜空に立体的な「地球」を描いたドローン(小型無人機)ショーを手がけたのは米半導体大手のインテル。エネルギー大手のENEOSホールディングス(HD)は五輪史上初めて、環境負荷が小さい水素で聖火をともした。スポーツと平和の祭典を企業が培った技術が支える。夜空を彩ったドローンショー。1824台のドローンが五輪のエンブレムを形作り、平和を象徴する青い地球へと姿を変えた。インテルは2018年の平昌冬季五輪でも1200台超のドローンでショーを披露した。今回、使ったのは4つの羽根を備える「シューティング・スター」という同社のドローンだ。数は平昌の約1.5倍。1台340グラムと軽く、最大秒速11メートルまでの風にも耐える。高精細LEDを4つ搭載。「鮮明で境界のない明るさを実現し、より細かいグラフィックス表現が可能になった」(インテル日本法人の鈴木国正社長)。平昌では各機1つだった。ドローンの動き、光の色や点滅はアニメーションのソフトウエアなどで設計した。インテルは今回の東京五輪で、高性能CPU(中央演算処理装置)を駆使したデータの生成・処理などの技術を提供する。アスリートの動作を複数のカメラで即座に分析したり、立体データから自由に視点を移動したりといったもので、テレビ放送にも活用される。パナソニックは国立競技場にプロジェクションマッピングに使うプロジェクターや音響設備、照明器具を納入し、開会式の演出を支えた。音響設備はスピーカーから離れていても明瞭な音が聞こえる。照明器具は瞬時にオン・オフでき、高精細な4Kや8K放送で色を鮮やかに再現できるように設計した。地球環境への配慮は今大会の大きなテーマだ。国立競技場と夢の大橋(東京・江東)に設置された聖火台にはENEOSHDが水素を供給する。再生可能エネルギー由来の水素だ。新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)などが福島県に設立した「福島水素エネルギー研究フィールド」(福島県浪江町)で製造し、東京まで運ぶ。再生エネ電力を使い、水を電気分解して発生させた「グリーン水素」だ。製造時にも二酸化炭素(CO2)は出ない。聖火のトーチに使うアルミニウムの製造はLIXILが担った。アルミをリサイクルして窓サッシなどをつくる技術が評価された。素材の約3割は東日本大震災の被災者が暮らした仮設住宅の窓サッシを再利用した。トーチ本体を作ったのは金属加工・販売のUACJ押出加工(東京・中央)。軽量化しつつ、桜をイメージした複雑なデザインを実現する必要があった。金型の設計を繰り返し、約3年がかりで完成させた。トーチは全長71センチ、重さ1.2キロ。約1万本が全国で聖火をつないだ。紳士服大手のAOKIホールディングス(HD)は日本代表選手が記者会見の場などで着る「式典服」と「開会式服」を1600人分用意。日本オリンピック委員会(JOC)などが19年に実施したコンペで数十社の中から選ばれた。開会式服は白いジャケットと赤のパンツ。ジャケットの生地には日本の職人の特殊技術で小さな穴をあけ、通気性と伸縮性を高めた。シャツやブラウスには吸水・速乾機能を持たせた。AOKIHDの青木彰宏社長は「国内で60年間スーツを作ってきた技術を発信できる」と期待する。ファーストリテイリング傘下のユニクロは、スウェーデン選手団に公式ウエアを提供した。環境先進国とされる同国のためサステナビリティー(持続可能性)の観点を重視。回収したペットボトル由来の再生ポリエステルなどを採用した。選手入場時には、国内外で人気の高い家庭用ゲームのテーマ曲などが使われた。「ドラゴンクエスト」や「ファイナルファンタジー」などスクウェア・エニックス・ホールディングスの6作品から9曲が採用された。ネット上では「ドラクエの曲で鳥肌が立った」などと大きな反響があった。カプコンの「モンスターハンター」やバンダイナムコホールディングスの3作品、セガサミーホールディングスやコナミホールディングスから各2作品が使われた。

*5-3:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20210723&ng=DGKKZO74137290S1A720C2NN1000 (日経新聞 2021.7.23) 五輪組織委、止まらぬ迷走、開会式演出の小林氏解任、低い人権意識が根底に
 東京五輪の運営を担う大会組織委員会の混乱が収まらない。開会式を翌日に控えた22日、ショーディレクターを務める元お笑い芸人の小林賢太郎氏を過去のコント内容を巡って解任した。かねて不祥事は相次ぎ、19日には開会式の楽曲担当者が辞任したばかり。根底にある人権意識の希薄さや「密室体質」を払拭できず、東京五輪そのもののイメージを損なった。開閉会式の制作・演出チームの一員だった小林氏は過去にユダヤ人の大量虐殺(ホロコースト)をコントで扱い、SNS(交流サイト)上で批判が集まっていた。組織委の橋本聖子会長は22日の記者会見で「次々と多くの問題が発覚し、後手に回っている印象があり反省している」と述べた。組織委の武藤敏郎事務総長は小林氏の役割を「全体を統一的、一貫性あるものにするもの」と説明。組織委は演出内容を見直すかどうかを検討したが、22日夜に変更しないと発表した。精査した結果、小林氏1人で演出を手掛けた部分はなかったとし、「予定通り実施する方向で準備を進めている」とコメントした。橋本氏が問題を把握したのは22日未明。外交上の問題にもなりかねないとして同日午前に解任した。米ユダヤ系団体が小林氏を非難する声明を出していた。菅義偉首相も首相公邸で記者団の質問に答えて「言語道断だ。全く受け入れることはできない」と批判した。組織委を巡っては、3月に式典を統括するクリエーティブディレクターの佐々木宏氏が演出関係者に女性タレントの容姿を侮辱するメッセージを送った問題で辞任した。組織委はこれを受け、式典の制作や演出を担うチームを再編成。詳細なメンバーを開会式の9日前となる7月14日になって発表した。選定過程などの説明はなかった。19日にはメンバーの一人、ミュージシャンの小山田圭吾氏が雑誌で告白した学生時代のいじめが問題となり、辞任に追い込まれた。小山田氏は開会式の冒頭の楽曲を制作しており、当該部分の変更を迫られた。小山田氏の場合、いったん組織委は続投させる意向を示していた。今年2月には前会長の森喜朗氏が女性蔑視発言で辞任。組織委の人権意識の低さが相次ぐ不祥事の根底にはある。小山田氏辞任の際、武藤氏は「佐々木氏の辞任後、時間がない中で必要な人たちを仲間内で集める形になった」と説明。小山田、小林両氏について過去の問題の把握や精査はできていなかった。かねて不透明な体質が批判されてきた組織委。2015年には大会エンブレムで盗作疑惑が浮上し、アートディレクターを限られた幹部で決めた経緯が批判された。森氏辞任の際も後任人事を巡り、森氏が元日本サッカー協会会長の川淵三郎氏へ直接就任を打診したことが「密室人事」と非難された。教訓が生かされず、不祥事が収まらない。組織委は都や日本オリンピック委員会(JOC)、政府や民間など出身母体が異なる職員が集まり14年に発足した。専門家が集まった混成組織で職員は約8千人に及び、統治機能が働きにくい。エンブレム見直しでは選考方法を公募に切り替えた。当時の幹部は「国民的事業なので、オールジャパンで策定すべきものだった」と反省の弁を述べたが、不透明な構図は再び繰り返された。五輪の開会式目前になって制作・演出の主要メンバー2人が去った。開会式の演出はほぼ完成し、国立競技場ではリハーサルが連日行われていた。「このタイミングで演出を変更するのはかなり難しい」(組織委の担当者)のが実情だった。開会式は10億人以上がテレビで視聴するとされる。「マイナスのイメージがどうしてもぬぐえない状態で開幕を迎えようとしている」(橋本氏)。「多様性と調和」をテーマに、日本を世界に発信する場は揺らぐ。

*5-4:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20210723&ng=DGKKZO74137320S1A720C2NN1000 (日経新聞 2021.7.23) イスラエル大使「衝撃受けた」 海外から批判相次ぐ
 23日に開かれる東京五輪の開会式で演出を担当する元お笑い芸人の小林賢太郎氏の解任について主要な海外メディアも一斉に報じた。スキャンダルが立て続けに起きていることから厳しい批判が相次ぐ。ロイター通信は小林氏がユダヤ人の大量虐殺(ホロコースト)をコントのネタにしていたとみられる動画が拡散したことについて「組織委員会の頭を悩ませる最新のスキャンダルとなった」と報じた。小林氏の解任は開会式の楽曲を制作したミュージシャンの小山田圭吾氏の辞任に続くもので「さらに恥をさらす事態となった」と断じた。AP通信は「感染再拡大の懸念が高まっているにもかかわらず開催を優先させる政府への批判が土壇場の不祥事につながっている」と分析した。外国政府からも批判の声が上がる。ベンアリ駐日イスラエル大使はツイッターで「ホロコーストの生存者の娘として、小林氏の過去の反ユダヤ主義的な言動に衝撃を受けた」と投稿。その上で、小林氏を解任した組織委員会に対して「迅速な対応に感謝する」と述べた。

<先端技術の応用から見た教育の問題点>
PS(2021年8月1日追加):*6-1のように、全ゲノム健診で欧米が先行しており、ゲノム解析装置の進化で1人あたりの解析コストは20年前の10万分の1の1,000$(約11万円=109.7¥/$X1,000$)に下がって、世界のゲノム関連市場は2028年までに20年比3倍超の約630億$(約7兆円=109.7¥/$X630億$)に拡大するそうだ。日本では、「①ビッグデータだ」「②マイナンバーだ」「③位置情報だ」と言って勝手に他人の個人情報を集めて使っておきながら、このような時だけ「個人情報保護」「医療倫理」などとして進歩を妨げる声が強くなる。しかし、それなら通常の健診も同じだ。さらに、医療は守秘義務を護るため、①②③よりはずっと安全で、遺伝情報は病気になる可能性が他の人より高いことを示すだけで、現時点で病気でなければ仕事に影響ないため職場で降格や解雇をする理由はない。さらに、遺伝情報は、生命保険会社がそれだけを見てリスク判定できるほど高い確率で一定の病気にかかることを現すわけではないため、守秘義務を護り、データ管理をしっかりしておけば問題ない筈だ。
 このように、新型コロナ・ゲノム・地球環境・五輪等の問題を考えるにあたって、驚くほど非科学的で基礎的教養に欠ける思考が続いているのは呆れるほかないが、その根源は多くの国民に行われている教育にあるだろう。
 例えば、*6-2-1のケースのように、「①東京都立高校が70年以上も普通科110校で男女別の募集定員を設定して入試の合格ラインで男子に下駄をはかせ」「②都教委が『急に変えると中学の進路指導などが混乱する』と言い」「③副校長だった教員が『理系難関大学への進学実績は保護者の関心事であり、理数系に苦手意識を抱きがちな女子より男子が増えるほうが喜ばしい』と言ったり(これは『ふざけるな』と言いたい)」「④都教委と私立高が全体の定員が都立約6割、私立約4割になるよう調整したり(私立は男女別学で高いのに)」「⑤複数の大学医学部入試で女性差別をして男子に下駄を履かせたり」など、憲法26条1項の「能力に応じて、等しく教育を受ける権利を保障する」に反すると同時に女性に対する人格権の侵害を行い、能力ある人から安価でよい教育を受けさせ社会の発展に資するという教育のもう1つの目的も果たしていない。にもかかわらず、教育者が憲法や教育基本法に反する①~⑤の考え方を持ち、それを疑問にすら思わずに70年以上も継けてきたことは、教育者の質に疑問を感じざるを得ないのだ。
 さらに、*6-2-2は、「⑥文科省は小中高校や幼稚園等の教員に10年毎の講習を義務付ける『教員免許更新制』を廃止する方針を固め」「⑦最新の知識や技能を習得する狙いだったが」「⑧多忙な現場の負担が一層増すなど数々の問題が当初から指摘されていた」「⑨現役教員の調査では、8割超が負担を感じ、6割弱が講習内容に不満を持っていた」「⑩講習の頻度が10年に1度では技能向上に結びつかない」「⑪各教育委員会の研修内容とも重複する」としているが、⑥⑩は、確かに10年に1度では技能向上に結びつかないものの、⑪は、教育委員会によって研修レベルが異なるため全国統一された底上げが必要だ。また、⑧⑨のように、多忙を理由として負担を感じるのなら、長期休暇のない職種も研修が義務付けられているのだから工夫が足りないし、⑦の意欲に欠ける不適格な教員と言わざるを得ない。なお、「⑫教え子の未来を左右する教員の責任は極めて重く、教育者としての力や質を高める努力が常に求められる」と言っても、(私はその時に議論の中心にいたので知っているのだが)政治主導がなければ教員が研鑽を積み技能を高める仕組みは入らなかったし、愚痴のように実態を言っているだけでは改善しない。
 そのため、政治を批判する前に、教育者自らが常日頃から問題点を把握・検証・改善し続けるべきであり、また、それができる人材を公立校の教員として採用すべきだ。そうでなければ、親の負担が重すぎて、子育てはできないのである。


 2019.11.28毎日新聞       resemon         2019.8.1西日本新聞

(図の説明:左図のように、教育用PCは九州・四国で普及しており、大都市圏の方が普及していない。また、中央の図のように、普通教室の電子黒板は佐賀県が飛びぬけて普及しており、これらは教育に対する優先順位のつけ方に違いがあるからだろう。右図は、九州地区と全国を比較した学力テストの正答率で、これは地方より大都市、公立より国公私立全体の方が高いが、全国と比較して理由を分析し、教え方を改善していくのも教育者の仕事だと思う)

*6-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20210725&ng=DGKKZO74155430U1A720C2EA4000 (日経新聞 2021.7.25) 倫理や個人情報課題に 全ゲノム健診、欧米先行
 筑波大学などが始める全ゲノム健診では欧米が先行する。一例は米新興企業バリアンティクス(マサチューセッツ州)で1回5600ドル(約62万円)。米国立ヒトゲノム研究所によると、解析装置の進化で1人あたりの解析コストは1000ドルと、20年前の10万分の1に下がったという。米調査会社グランドビューリサーチによると、世界のゲノム関連市場は2028年までに20年比3倍超の約630億ドルに拡大する。予防意識の高まりから健康診断サービスが市場の成長をけん引するとみられている。ただ個人情報保護や医療倫理などの面で課題は多い。ゲノム情報に関する倫理制度に詳しい早稲田大学の横野恵准教授は「ルール整備を通じて差別や不利益に対する利用者の懸念を軽減することが必要だ」と話す。米国では検査の結果に基づいて生命保険や医療保険などの加入を拒否されるといった問題が起きた。08年に遺伝情報に基づく差別を禁止する法制度が整ったが、なお職場での降格や解雇といった事例が相次ぐ。日本では17年、複数の生命保険会社の約款に遺伝情報を用いるかのように読める記載があったことから、金融庁が削除を要請した経緯がある。筑波大でも検査により不利益を被る可能性を事前に説明することや、厳格なデータ管理を求める意見が出たという。今回のサービスでは検査前に対面でリスクを説明し、データは専用サーバーで物理的に隔離する。森・浜田松本法律事務所の吉田和央弁護士は「十分なインフォームド・コンセント(説明と同意)が必要だ」と話す。

*6-2-1:https://digital.asahi.com/articles/DA3S14987293.html (朝日新聞 2021年7月25日より抜粋) 男女別定員は必要か
 東京都立高校は、募集定員が男女別に設定されています。70年以上にわたって続く制度で、性別によって入試の合格ラインが異なるため、問題視する声があがっています。2018年には大学の医学部入試で、女性や浪人生が差別を受ける不正も明らかになりました。中学の学校現場の声や法律の専門家の話から、入試にまつわるジェンダーの問題について考えました。
■公立高では都立入試だけ 本社アンケート
 都立高校の男女別定員は、全国でみると異例の制度だ。朝日新聞が今年6月、47都道府県にアンケートしたところ、都道府県立高校で定員を男女別にしているのは東京都だけだった。過去に男女別にしていた7府県は「男女の比率にあらかじめ一定の範囲を定めることは合格ラインが異なることになり、男女平等の理念にそぐわない」(兵庫県)などとして、いずれも廃止。一部の学校で残っていた群馬県でも昨年春の入試を最後に廃止した。アンケートでは、男女の生徒数が同程度であるメリットも聞き、「混声合唱や部活動での団体活動が実施しやすい」といった回答があった。一方、「入学時に男女の数字に差が生じることがあるが、課題は生じていない」と答えた自治体もあった。都立高校の男女別定員制度は1950年度に導入された。現在は普通科110校で定員が男女別になっている。一方、定員の9割までを男女別の成績順で決め、残り1割を男女合同の成績順で決める「緩和措置」も98年度から導入。今春の入試では42校がこの措置をとった。男女別定員制度については、これまでも撤廃を求める声が上がっていた。男女別定員を話し合う東京都の検討委員会は90年に撤廃を提言。「小中学校での『男女平等』が高校で一転し、全日制普通科のみ男女を区別して選抜するのは疑問」とした。また、外部の有識者や学校の関係者でつくる都の入試検討委員会も見直すよう指摘している。制度が続いているのはなぜか。都教育委員会は「急激に変えると中学の進路指導などが混乱する。影響が大きいので慎重に検討する必要がある。緩和措置を導入するなど、議論は進めている」としている。私立高校との関係も影響している。都教委と私立高校は、全体の定員が都立約6割、私立約4割になるよう調整。朝日新聞のアンケートでは、東京都以外の17県も私立高との定員調整をしていると回答した。東京都以外の道府県では、性別に基づく定員の調整はいずれも「ない」と答えた。一方、男子生徒の比率が高い東日本の公立難関高で昨年まで副校長だった教員は「数学と理科が難しいと(結果として)女子の合格者が減る」と打ち明ける。理系の難関大学への進学実績は保護者の関心事でもあったといい、「理数系に苦手意識を抱きがちな女子より、男子が増えるほうが、喜ばしい。女子のほうが元気なので、女子がちょっと少ないほうが学校としてはバランスがいいと感じていた」という。
(中略)
■「違憲、医学部入試と根は同じ」 ジェンダー平等を求める弁護士の会
 都立高校入試の男女別定員制は、憲法や教育基本法に違反する許されない性差別だ――。「都立高校入試のジェンダー平等を求める弁護士の会」が6月末、制度の廃止と、合否判定における男女格差の是正を求める意見書を公表した。同会のメンバーは2018年に発覚した複数の大学医学部入試での女性差別問題で、訴訟などに関わってきた。意見書では、男女別定員制について「能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利」を保障する憲法26条1項に反すると指摘。性別などによる教育上の差別を禁じた教育基本法にも反すると訴えている。また、日本も批准している女子差別撤廃条約は男女に「同一の試験」を保障することを求めているとしたうえで、男女別定員は、受験生個人に保障されている「自ら選んだ学校の入試で公正に評価される権利」の侵害にあたると指摘している。都立高入試は、男女別の定員を明示している点では医学部入試問題と異なるが、同会メンバーの山崎新弁護士(48)は「男女の合格最低点の差を明示せず、正確な情報を隠してきたという点で、東京都は入試の公正性についての説明義務を果たしているとは言えない。性別のみに着目した入試を長年行ってきたという意味で、医学部入試問題と根は同じ」と指摘する。私立校でも男女別定員があり、男女で倍率が異なる学校はあるが、山崎弁護士は「公立校は、憲法に適合し、男女の機会平等を担保しなければならないため、例えば『男女の人数は半々が良い』などの目的で現状のような男女格差を正当化することができない」と訴える。自身も都立高出身といい、「塾が出す偏差値分布では、当時から明らかに男女で差がある高校もあった。にもかかわらず制度が長年維持されてきたのは、多くの場合、不利益を受けるのが女子だったからだ」と指摘する。「根底には性差別への感度の鈍さがある。公正に評価され、能力に応じた教育を受ける個人の権利をないがしろにしてまで、『私立校との定員調整』といったシステムを維持する合理性はない」
◇フォーラムアンケートに寄せられた声の一部を紹介します。
●その後の人生にも影響
 共学と言っても大学は成績順で合否が決まるし、高校でも理系文系でクラスが分かれれば男女比が極端に異なるクラスもたくさんある。男女比を半々にしたいがために有能な子が不合格になり、希望する教育を受けられないのはおかしいと思う。その後の人生にも影響してしまうのでは。(東京都 30代女性)
●ステレオタイプ、目の当たりに
 数年前に大学受験をしました。知人の女性が国立の大学に不合格になり、その母親が「女の子だし私立で十分だ」と慰めるように言ったのを見て衝撃を受けました。また先日、中学生の女の子の親から勉強について相談を受けていたところ「女の子だから数学は苦手で」と言われました。どちらも言った当人に悪気のない慰めや擁護ですが、そのような言葉で子供の首を絞めている側面があるように思います。適当に作られたステレオタイプが実際に成績に影響する(ステレオタイプ脅威)という事実もあるそうです。大人によるこうした刷り込みをどうにか減らせれば、と願います。(東京都 20代男性)
■不利益の当事者、見えぬまま
 取材の過程で1990年の朝日新聞朝刊1面の記事を見て驚きました。30年以上前に、都の検討委員会が都立高校の男女別定員制度を撤廃するよう求める記事が載っていたからです。当時からこの制度が「男女平等」に反するという指摘があったにもかかわらず、議論が進まないのはなぜなのでしょうか。山崎新弁護士が「この議論が深まらないのは、当事者が見えないから」と指摘していました。合格最低点が明示されない今の制度では、性別で合否が分かれても受験生自身が知ることができません。合格最低点は東京都だけでなく、すべての都道府県で公表しておらず「ブラックボックス」となっています。公平な入試のために何ができるか、受験生目線で知恵を絞るべきではないでしょうか。

*6-2-2:https://www.hokkaido-np.co.jp/article/573482 (北海道新聞 2021/8/1) 教員免許更新制 廃止に併せ検証必要だ
 文部科学省は小中高校や幼稚園などの教員に10年ごとの講習を義務付ける「教員免許更新制」を廃止する方針を固めた。最新の知識や技能を習得する狙いだったが、多忙な現場の負担が一層増すなど数々の問題が当初から指摘されていた。講習の効果自体にも疑問符が付き、マイナス面ばかりが目立つ。廃止は当然である。2009年度に導入されたこの制度は、「教育再生」を掲げた第1次安倍政権の看板政策だった。現場の実態を十分に反映していない制度設計や運用は、政治主導が過ぎた面がなかったか。教員が研さんを積み技能を高める大切さは言うまでもない。文科省は廃止で済ませず、問題点を検証し今後に生かす責務がある。更新制は教員免許に10年の期限を設け、更新時に大学などで30時間以上の講習を受ける仕組みだ。教員は約3万円かかる講習費を自己負担し、受講するために長期休暇などのまとまった時間を割く必要があった。面積が広大な道内では移動や宿泊も重荷だった。文科省による現役教員の調査では、8割超が負担を感じ、6割弱が講習内容に不満を持っていた。講習の頻度が10年に1度では技能向上に結びつかない、各教育委員会による研修内容と重複する―といった現場の指摘も当初から上がっていた。もっと早く対応する必要があったのではないか。教員はいじめや不登校、さらにコロナ禍への対応に追われ、長時間労働を強いられている。免許更新の負担が加われば、教員志望者が減るのも無理はなかろう。導入前の論議では、指導力を欠く「不適格教員」の排除が強調され、現場の管理を強める安倍政権の意向が色濃く反映した。教育の実態に詳しい専門家の知見を軽んじる姿勢も顕著だった。それが今回の方針転換につながったことを忘れてはならない。文科省は来年の通常国会で廃止に必要な法改正を目指す。国会の論議を通じ、教訓を探るべきだ。教え子の未来を左右する教員の責任は極めて重い。教育者としての力や質を高める努力が常に求められる。ただ今回の経緯を踏まえれば、いたずらに制度を変えても実効性に乏しいのは明白だ。子どもの思いや悩みにじっくりと向き合い、学ぶ喜びが感じられるよう授業で創意工夫を重ねる。そんな人材を育てるため、文科省や各教委には働き方改革や研修の改善を進めてもらいたい。

<新型コロナへの対応から見た厚労省はじめ政府の問題点>
PS(2021年8月7日追加):*7-1のように、「①新型コロナ第5波の勢いが止まらず、染み出すように地方へと広がっている」「②『五輪を開催しながら外出自粛を求めるのは矛盾したメッセージになる』と専門家が指摘してきた」などとして五輪と結び付ける論調が多いが、①については、7月20日前後は夏休みが始まって学生が帰省する影響であり、②については、国民は五輪と外出自粛が矛盾したメッセージになるから戸惑うほど馬鹿ではなく、変異株を口実にしていつまでも人流を抑えることしかしない厚労省に愛層をつかしているのである。
 また、*7-2-1の「③首相は第5波による患者急増を受けて重症者以外は基本的に自宅療養の方針を8月2日に出し、病床逼迫の緩和を狙った」「④入院制限を巡って、急変を見逃すリスクが増すとして、知事や与野党から批判が続出した」「⑤政府は8月5日、新型コロナ患者の入院制限に関して、肺炎などの中等症で酸素吸入が不要でも、高リスクなら入院できると明確にした」については、③⑤は、医師が患者の状況から臨機応変に入院や治療の判断をするのが合理的で、入院・治療に医師以外の人が基準を設け、保健所が重症度の判断をするのは、そもそも医師法違反である。また、入院制限があると、④のように急変を見逃すリスクがあったり、必要な治療を行えなくなったりするので、医師も治療に責任を持てなくなる。そのため、病床逼迫していない地方自治体が同じにする必要はないし、1年半も“病床逼迫”と言い続けている厚労省と同専門家会議は国民に対して無責任極まりなく、これが国民が怒っている理由なのだ。
 さらに、*7-2-3のように、さっさとワクチンを接種してリスクの低くなった人から経済活動を始めればよいし、そのためには、感染リスクの高い職域の人には企業がワクチン接種を求めてよい。また、*7-2-2のように、抗体カクテル療法等の治療薬も早く承認し、ワクチン接種ができない人も安心できるようにすればよかったのに、これまで厚労省がやってきたことは、検査を十分に行わず、水際も不合理で、ワクチンや治療薬も承認せずに、まるで国民の身体で新型コロナウイルスを大切に培養しているかのように逆の対応が多かったのである。
 なお、*7-3のように、「⑥全国知事会が国への緊急提言をまとめて、ロックダウン(都市封鎖・強制的外出禁止・生活必需品以外店舗閉鎖措置)のような手法の検討を求めた」とのことだが、私は日本の感染状況なら水際対策を合理的にし、さっさとワクチンを接種し、治療薬を素早く承認して治療すれば、私権の制限は不要なくらいだったと考える。むしろ、故意にそれをやらず、国民の身体で新型コロナウイルスを培養してきたのは、私権の制限やロックダウンの可否を口実に憲法に緊急事態条項を入れたり、(詳しくは書かないが、そのうち表に出るのでわかる)特定の事柄を推し進めたりするのが目的だったようで、とても許せるものではないのだ。
 また、*7-4のように、米国の企業や州政府では「⑦職員に新型コロナワクチンの接種を義務づける動きが広がり、違反すれば解雇される場合もある」「⑧未接種者には週1~2回の検査やマスク着用を求める」とのことだが、取引相手・客・同僚などに迷惑をかけないため当然だ。日本で接種を急がせるとすれば、接種可能な希望者には接種できる体制が整ってからのことだが、例えば「11月以降の接種は、無料ではなく有料」にすればよいと思う。

 
   2021.7.7NHK       2021.8.5琉球新報     2020.8.19日経新聞

    
          2021.8.6日経新聞     2021.7.6毎日新聞 2021.6.26日経新聞

(図の説明:上の段の左図のように、人口100万人あたりの新型コロナ感染者数は沖縄県が最高だが、下の段の1番左と左から2番目の図のように、全世代のワクチン1回接種率も沖縄県が47都道府県中最下位で、ワクチンの効果は明らかである。また、下の段の右から2番目の図のように、英国とフランスは感染者数が一時的に増加したが、死者数は一貫して減っており、ここでもワクチンの効果が明らかで、1番右の図のように、ワクチン接種によって入国条件を緩和する国が増えたが、これは科学的合理性がある。しかし、日本政府は、必要なことは行わずに入院制限や私権制限を行おうとするばかりで、先進国とは言えない。そして、上の段の中央の図のように、重症か中等症かで入院制限をしているが、医師でもない人がわけもわからず勝手な基準を作って医療行為の可否を決めるのは医師法違反である上に国民皆保険に反する。また、上の段の右図のように、重傷者の定義も常識からかけ離れており、1年半も何をやっていたのかと思う)

*7-1:https://news.yahoo.co.jp/articles/e741ddbcf183aafe6bd5f889864b3b3ba17e6f33 (朝日新聞 2021/8/4) 勢い止まらぬ「第5波」 お盆を待たず地方にも急拡大
 新型コロナウイルスの「第5波」の勢いが止まらない。五輪が開催される中、感染が東京など都市部だけでなく、染み出すように地方へと広がる――。専門家が懸念していた状況が現実になっている。人の移動が活発になるお盆の時期を前に、さらなる全国的な感染拡大への懸念が高まっている。朝日新聞の集計では、人口10万人あたりの1週間の感染者数をみると、4連休直前の7月19日には、最も深刻なステージ4(25人以上)は東京、神奈川、千葉、沖縄の4都県。ステージ3(15人以上)も埼玉、石川、鳥取、大阪の4府県だった。それが連休明け直後の25日には、埼玉や大阪はステージ4に。茨城や京都も新たにステージ3になった。今月3日時点でみると、ステージ4に茨城、栃木、群馬などの北関東の各県や、京都、兵庫などの関西圏、福岡などが加わって計23都道府県に拡大。ステージ3はこれらの隣接県を中心に8県となり、全国的に感染者数は増え続けている。昨年末には東京で感染者が増え、帰省の影響もあって年明けから全国に拡大した。第5波でも、お盆で感染が全国に拡大することが心配されていたが、それよりも前にすでに拡大している形だ。五輪を開催する一方で、外出自粛を求めることが「矛盾したメッセージ」になると専門家は指摘してきた。実際、繁華街の人出はこれまでの宣言時に比べても減り方が鈍い。

*7-2-1:https://ryukyushimpo.jp/kyodo/entry-1369431.html (琉球新報 2021年8月5日) 中等症、高リスクなら入院 政府、説明内容を修正
 政府は5日、新型コロナウイルス患者の入院制限に関し、自治体に示した説明内容を修正した。肺炎などの中等症で酸素吸入が不要でも、高リスクなら入院できると明確にした。菅義偉首相は、入院制限を行うかどうかは自治体の判断とした。首相は感染「第5波」による患者急増を受け、重症者以外は基本的に自宅療養との方針を2日に打ち出し、病床逼迫の緩和を狙ったが、与党からも反発。わずか3日で説明の見直しに追い込まれた。入院制限を巡っては、重症手前の中等症で自宅療養する人が増え、急変を見逃すリスクが増すとして、知事や与野党から批判が続出。与党が撤回を求めたが、首相は拒否した。

*7-2-2:https://www.tokyo-np.co.jp/article/120971 (東京新聞 2021年8月1日) <新型コロナ>抗体カクテル療法 墨田区がスタート
 墨田区内四カ所の医療機関で、新型コロナウイルスの新たな治療「抗体カクテル療法」が始まった。基礎疾患のある軽症者や中等症の患者向けで、重症化を防ぐ効果があるとされている。区は独自に、この療法を受けられる区民向けの入院枠計二十床を確保した。政府が特例承認した抗体カクテル療法は、二種類の抗体を組み合わせて点滴投与する。海外の臨床試験では、入院や死亡のリスクを七割減らす効果があるとされた。区内では、都立墨東病院(江東橋四)などで七月二十七日から順次、治療をスタートした。
     ◇ 
 墨田区によると、六月以降、区内高齢者施設でクラスターは起きていない。七月からは六十五歳以上の高齢者の重症者はゼロだ。西塚所長は「命を守るワクチンの効果は出ている」と手応えを語る。区は集団接種会場として、仕事帰りに利用できる駅近くのホテルなどを平日夜間や週末に活用。金曜日の七月三十日夜、錦糸町駅に近い「東武ホテルレバント東京」(錦糸一)では、シャンデリアのきらめく宴会場で約四百人が接種を受けた。会社員の渋江みのりさん(23)は「夜までやってくれて助かる。快適な会場でスムーズに受けられて驚いた」と話した。

*7-2-3:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20210804&ng=DGKKZO74484910U1A800C2MM0000 (日経新聞 2021.8.4) NY市、接種証明義務付け 飲食やジム利用で米国初、接種率向上目指す
 二ューヨーク市のデブラシオ市長は3日、同市内のレストランやバー、スポーツジムなどの屋内施設を利用する顧客や従業員に新型コロナウイルスのワクチン接種証明の提示を義務付けると発表した。全米の都市で初めて。ワクチンの接種拒否層に対する圧力が広がっている。接種証明の義務付けは8月16日から段階的に導入し、9月13日には全面実施する。デブラシオ市長は3日の記者会見で「ワクチン接種は健康で充実した生活を送るためには必要だ」と述べた。新たに接種証明パスを発行する計画を示した。同市長はすでに警察官や教員を含む市職員にワクチン接種を義務付ける方針を示した。市の成人の66%はワクチン接種を完了したが、接種率は伸び悩む。接種を加速するため、接種者に100ドル(約1万1000円)支払う取り組みも始めた。民間も独自に接種証明書を求める。ニューヨークを拠点に高級レストランやバーを展開するユニオン・スクエア・ホスピタリティー・グループは、9月7日から店内の飲食客にワクチン接種証明書の提示を求める。提示がない場合は「屋外の座席で飲食はできるが店内には通さない」という。
●社員に接種要求
 大手企業ではグーグルやフェイスブックなどが従業員にワクチン接種を求める。米メディアは3日、マイクロソフトが9月から米国内のオフィスで従業員にワクチン接種を求めると報じた。米食肉大手タイソンフーズも3日、全従業員のワクチン接種を義務付けると発表。従業員の半分以上が未接種といい、現場で働く接種者には200ドルを出す。アワー・ワールド・イン・データによると、米国の新規感染者数(7日移動平均)は2日に8万5千人を超え、およそ5カ月半ぶりの高水準となった。感染力の強いインド型(デルタ型)が全体の8割超を占めるなか、ワクチン接種率の低い南部州などで感染拡大が顕著となっている。デルタ型の感染リスクが懸念され、接種ペースはじわりと回復する。1日あたりの接種回数(7日移動平均)は2日時点で67万回となり、50万回まで落ち込んだ7月上旬から増えた。それでもピークだった4月の338万回に比べると5分の1程度にとどまる。(以下略)

*7-3:https://www.shinmai.co.jp/news/article/CNTS2021080300105 (信濃毎日新聞社説 2021/8/3) 知事会緊急提言 ロックダウンは危うい
 新型コロナの流行第5波を受け、全国知事会が国への緊急提言をまとめた。感染対策、検査・医療体制、事業者支援と雇用対策、ワクチン接種などについて計91項目に及ぶ。国民に対しても、夏の帰省や旅行の中止や延期を求めた。第5波は、緊急事態宣言下で五輪を開く東京から一気に地方へ波及し、各地で急拡大が続く。政府は、宣言対象地域の拡大で対応している。効果は乏しく、危機感を共有できる国民への強いメッセージも打ち出せていない。緊急提言は、政府へのいら立ちや不信、悪化する足元の感染状況への焦りが、形になったと言える。政府は知事たちの危機感をきちんと受け止めるべきだ。一方、知事会が提言の中で「ロックダウンのような手法」の検討を求めた点は、人権や自由との兼ね合いから問題がある。ロックダウンは、都市を封鎖したり、強制的に外出禁止や生活必需品以外の店舗の閉鎖をしたりする措置だ。人出を抑えるには有効だが、経済への影響は大きい。欧米を中心に多くの国や地域が踏み切ったものの、感染封じ込めに成功したとは言い難い。昨年3月から断続的にロックダウンを行いワクチン接種も進めた英国では、ほぼ規制が解除された先月27日時点でも1日の新規感染者が2万人を超えている。他の国でも、感染力が強いデルタ株がまん延する中、減少につながらなかったり、解除するとすぐに増加に転じたりしている。ロックダウンを強いられたために家庭内で女性や子どもへの暴力が増え、被害者支援が受けられない事態も起きている。外出禁止を理由に、集会やデモを取り締まる国もある。日本には、強制的な外出禁止を定めた法規定がない。営業や移動の自由を保障する憲法に抵触する恐れがあるからだ。ロックダウンの法整備を求めることは、改憲への誘い水になりかねない。新型コロナに対応する特別措置法も「権利制限は必要最小限でなければならない」と定める。措置を強める前に、やるべきことがあるのではないか。いつでも誰でも何回でも受けられる検査体制は構築できたか。陽性者を一般の生活から離し確実に医療につなげているか。国も地方も不断の検証と見直しが要る。住民と行政に信頼関係がなければ、どんな対策も効果は期待できない。不信が飛び交う中でロックダウンを口にするのは危うい。

*7-4:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20210807&ng=DGKKZO74611080X00C21A8MM0000 (日経新聞 2021.8.7) 米、接種義務相次ぐ 企業・州政府、違反なら解雇も
 米国の企業や州政府で職員に新型コロナウイルスのワクチン接種を義務づける動きが広がってきた。違反すれば解雇される場合もある。インド型(デルタ型)の感染が止まらないためだ。米ユナイテッド航空は6日、全米の拠点に所属するすべての従業員に接種を義務づけると通知した。全米の大手航空会社で初めての試み。「全員が接種すれば全員がより安全になる」。スコット・カービー最高経営責任者(CEO)は従業員への手紙で利点を強調した。米食肉大手タイソンフーズは3日、全従業員に完全な接種を義務づける方針を発表した。マイクロソフトも9月から、従業員や取引先などが職場に入る際に接種証明の提示を求める。グーグルやフェイスブックなども出社する従業員に義務づける方針だ。米CNNは6日までに、未接種のまま出社した従業員3人を解雇した。州政府でも接種の義務づけが相次ぐ。ハワイ州や南部バージニア州などは5日、州の職員に接種証明を求めると発表した。未接種者には毎週のコロナ検査を課す。ハワイ州の場合、接種を受けない場合の解雇も辞さない。バイデン大統領も7月末、連邦政府職員に接種状況の開示を義務づけると発表した。未接種者には週1~2回の検査やマスク着用を求める。連邦政府の取引企業にも同様の措置を求めている。

<五輪を見て思ったこと>
PS(2021年8月10、13日):*8-1のように、菅首相が、東京五輪について「開催国としての責任を果たし、無事に終えることができた」と言われたのはそのとおりで、五輪を誘致しておいて途中で投げ出すのは無責任すぎるので、無観客開催で高揚感や経済効果が落ちたのは残念だったが、中止するよりはずっとよかったと思う。
 私は、*8-3のうち、開会式・閉会式・男女体操決勝・新体操決勝・アーティスティックスウィミング・100m決勝・男子マラソン後半・マラソンスウィミングなどを見たが、100m決勝や男子マラソンでは国籍が違ってもアフリカにルーツを持つ選手が細くて長い足で快走するのに感心し、女子体操・新体操・アーティスティックスウィミングは、旧ソ連系と中国選手の技術の高さと美しさに感心した。日本選手も頑張っていたが。
 また、マラソンスウィミングも見たのだが、*8-2のように、水質汚染で薄いカレー汁のような色をして、私なら足もつけたくないくらい汚かった。この場所は、前から、i)悪臭が報告され ii)大腸菌の濃度を懸念する場所で iii)大雨が降ると大量の未処理下水道排水が流れこんでトイレ臭を放っていたため、東京都は、iv)水質改善のために神津島の砂を海中投入し v)大腸菌を防ぐためのポリエステル製のスクリーンを設置し vi)降雨時の流出水を貯める新しい貯水タンクを設置して湾内に放出する前に処理できるようにした のだそうだが、あれは汚染水の色だった。そのため、フォックススポーツ・オーストラリアが「排泄物の中で泳ぐ。オリンピック会場で下水漏れの恐れ」という見出しで水質汚染と悪臭問題を報じたり、ブルームバーグ誌が東京湾の水質問題を「it stinks」と報じたりしたのも理解でき、これを「人工ビーチがあり、レインボーブリッジを眺める景観が最高」と表現する人は、自然の美しい海岸を見たことのない人だと思う。なお、iv) v) vi)の東京都の水質改善対策は大した効果のなさそうな弥縫策であるため、このような場所で2時間前後も泳がせることは、新型コロナが流行している今はなおさら不潔で、選手に失礼である上に人権侵害も心配された。そのため、東京都の下水処理システムを最新のものに変更して東京湾を清潔な海にすることは、東京湾の環境や漁業に不可欠である。
 なお、*8-4にも書かれているとおり、東京五輪は開会式だけでなく閉会式も芸術性が乏しくお粗末だった。大竹しのぶは灰色のセンスの悪いスタイルで昭和の格好の子供たちと何かをしていたが、私も「ここで、大竹しのぶ?」と思ったので、芝生でイベントを見ていた外国人選手たちが続々と引き揚げたのも理解できる。一方、*8-5のように、次の開催地パリからのライブ中継は、マクロン大統領も登場し、仏空軍のアクロバットチームがスモークで空にフランス国旗を描き、BMXに乗った若者が競技施設の屋根や名所を走る映像が流れて見応えがあった。また、ワクチン接種証明書か陰性証明書の提出を義務付け、イベルメクチン等の治療薬を承認していれば“密”になってもかまわないため、日本国民が中止や無観客五輪ばかりを主張し、バッハ会長の“銀ブラ”にまでケチをつけるような非科学的“空気”を作っていることには呆れるほかない。
 *8-6も、「①バッハ会長の銀座散歩は、IOCファーストに映った」「②新型コロナ感染対策規則集『プレーブック』によって柔道ジョージア代表の2人が東京タワー等を観光した際は参加資格剥奪された」「③政府は『大会関係者は入国後14日間は行動範囲が限定されるが、その後は制約がない』として、バッハ会長の行動を問題視しなかった」「④大会序盤の7月26日に、バッハ会長が笑顔で話しかけた視線の先には阿部兄妹がいて、マスクはつけていたものの、距離は1メートル以内と近かった」と記載している。
 しかし、②③は、ワクチン接種済なら選手やIOC関係者は入国後14日間の自粛も不要であるのに、14日間行動範囲を限定したり、ワクチン接種済選手家族の観戦を認めなかったりする規制の方が過剰なのである。ただ、ジョージア代表の2人の選手が東京に関心を持ってくれ、被感染リスクを犯しても街に出たいと思ってくれたことは有難いものの、街に出ると重症にならないまでも感染する可能性はあるため、ワクチン接種をしていない人もいると思われる他の選手に競技中に感染させて迷惑をかける可能性はある。従って、ワクチン接種済で入国後14日経過後のバッハ会長が、①のように、大会終了後に“銀ブラ”をしたり、④のように、ワクチン接種済の選手にマスクなしで話しかけたりしても何の問題もない。それどころか、このようなことに対して、“IOCファースト”とか変な“公平性”を持ちだして他人に不自由を強いたり、足をひっぱったりしたいと考える心を持つことこそ重症の心の病で、外国人差別でもあり、教育の問題である。


             日刊スポーツ              2021.8.8daily
(図の説明:1番左の図は、大竹しのぶと子どもたち、左から2番目の図が男声ソプラノ《!?》によるオリンピック賛歌だが、いずれもミスキャストでレベルの低い出し物だった。右から2番目の図は、東京音頭による盆踊りで少しは明るくなったものの豪華さはない。さらに1番右は、途中で退場する外国人選手たちだ)

*8-1:https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA091130Z00C21A8000000/ (日経新聞 2021年8月9日) 五輪閉幕、首相「開催国の責任果たした」 国民に謝意
 菅義偉首相は9日、長崎市内で記者会見し、8日に閉幕した東京五輪について「開催国としての責任を果たし、無事に終えることができた」と評価した。「国民の理解と協力のたまものだ。心から感謝申し上げたい」と謝意を示した。新型コロナウイルスの感染拡大による1年の延期で「様々な制約の下での大会となった」と振り返った。感染対策は「海外から『厳し過ぎる』という声もあったが、『日本だからできた』と評価する声も聞かれた」と説明した。「選手のみなさんは大活躍だった。素晴らしい大会になった」と強調した。大会関係者や医療従事者、ボランティアにも賛辞を送った。首相は9日、首相官邸のツイッターにビデオメッセージを投稿した。すべての選手に「大きな拍手を送りたい」とたたえた。「夢や希望、感動を子ども、若者、世界の人々に届けてくれたことは何ものにも代えがたい未来への財産になった」と訴えた。

*8-2:https://news.yahoo.co.jp/articles/42e2b7d0eccbf2bb31db3c3673ee4cf3f8620f16 (Yahoo 2021/7/20) 東京五輪のお台場会場の水質汚染と“トイレ臭”問題も海外に波紋…「排泄物の中を泳ぐ」「大腸菌濃度レベルが上昇」
  「選手村」での新型コロナウイルス感染や猛暑問題など3日後に開会式を控えた東京五輪に次から次へと懸念すべき問題が浮上しているが、今度はトライアスロンやオープンウォータースイミングなどの会場となっている、お台場海浜公園の水質汚染問題が海外に波紋を広げている。フォックススポーツ・オーストラリアのホームページは「排泄物のなかで泳ぐ。オリンピック会場で下水漏れの恐れ」という強烈な見出しで水質汚染と悪臭問題について報じている。「暑さもさることながら、オリンピックのオープンウォータースイミングやトライアスロンの選手たちが最も心配しているのは、東京湾の水質に懸念がある“臭い湾”だ。トライアスロンやオープンウォータースイミングの会場では、悪臭が報告されており、大腸菌の濃度レベルが上昇していることが懸念されている」としている。お台場海浜公園は、綺麗な砂浜の人工ビーチがあり、レインボーブリッジを眺める景観は最高だが、大雨が降ると、大量の未処理の下水道排水がここに流れこみ、強烈なトイレ臭を放つ。2019年にトライアスロンと、パラトライアスロン、オープンウォータースイミングのプレ大会が開催されたが、選手からは「臭い」とのクレームが続出。パラトライアスロンのスイムは基準以上の大腸菌が検出され中止になっていた。東京都は水質を改善するために伊豆諸島の神津島の大量の砂を海中に投入し、大腸菌を防ぐためにポリエステル製のスクリーンを設置。降雨時の流出水を貯めるための新しい貯水タンクを設置して湾内に放出する前に処理できるようにした。様々な対策は講じてきたが大雨が降ると未処理水を放水せざるを得ないようで、根本的な解決にはなっていない。記事では、それも踏まえて「東京では7月27日から大雨が予想されており、東京湾へ下水が流入する危険性が高まっている」と不安視している。ちなみにトライアスロンは26、27、31日に開催され、マラソンスイミングは8月4、5日に行われる。オーストラリアのトライアスロンチームは1日に2回、自ら水質検査をし、対策を練っており「チームは独自の戦略を準備している」という。ブルームバーグ誌もトライアスロンやオープンウォータースイミングの会場である東京湾の水質問題を報じており、ブルームバーグのレポートは、「it stinks (臭い)」というたった2つの言葉に、今回の問題を集約した。同誌は「問題は単に湾内の水が臭うということではない。これは、東京都が合流式下水道を採用していることが原因だ。合流式下水道とは、雨水と汚水の排水を分離せずに合流させる方式である。ほとんどの場合、このシステムはうまく機能するが、しかし、東京は台風や洪水の影響を受けやすい地域であり、排水システムはすぐに負荷がかかる」と原因を分析。東京都の水質改善の対策を紹介した上で「数週間前から不快な匂いを放っている」と、大会直前になっても改善されていない悪臭と、大会期間中の雨によってさらに状況が悪化することを懸念している。

*8-3:https://digital.asahi.com/articles/ASP8B5W9QP8BUCVL010.html?iref=com_tokyo2020_news_list_n (朝日新聞 2021年8月10日) 五輪閉会式、推計4700万人見た 視聴率最高の競技は
 ビデオリサーチは10日、NHK総合が8日に中継した東京オリンピック(五輪)閉会式の前半(午後7時58分開始)の平均世帯視聴率(速報値、以下同)が関東地区で46・7%だったと公表した。他地区は関西41・3%、名古屋40・7%、北部九州で41・5%だった。関東地区の個人視聴率は31・5%だった。全国32地区分のデータをもとにした同社の推計では、全国で4699万7千人がこの中継をリアルタイムで視聴したという。ニュースを挟んだ閉会式後半(午後9時23分開始)の世帯視聴率は関東地区で39・8%だった。競技を中継した番組で世帯視聴率(関東地区)が高かったのは▽日本が米国に勝って金メダルを獲得した野球男子決勝の後半部分(7日、NHK総合)=37・0%▽大迫傑(すぐる)選手が6位入賞した男子マラソンの後半部分(8日、同)=31・4%▽日本が延長の末スペインに敗れたサッカー男子準決勝(3日、日本テレビ)=30・8%。
東京五輪で番組平均視聴率が高かったのは
※左から内容(放送日・放送局)、世帯視聴率、個人視聴率
①開会式(7月23日・NHK) 56.4% 40.0%
②閉会式(8月8日・NHK) 46.7% 31.5%
③野球男子決勝 日本×米国の後半部分(8月7日・NHK) 37.0% 23.5%
④男子マラソンの後半部分(8月8日・NHK) 31.4% 17.7%
⑤サッカー男子準決勝 日本×スペイン(8月3日・日本テレビ) 30.8% 19.6%
⑥サッカー男子準々決勝 日本×ニュージーランドの後半~PK戦 (7月31日・NHK) 26.9% 17.0%
⑦卓球女子団体決勝 日本×中国の前半部分(8月5日・NHK) 26.3% 16.4%
⑧野球男子準決勝 日本×韓国の後半部分(8月4日・NHK) 26.2% 15.9%
⑨サッカー男子1次ラウンド 日本×南アフリカの後半(7月22日・NHK) 25.1% 15.9%
⑩卓球混合ダブルス決勝~表彰式(7月26日・フジテレビ) 24.6% 15.7%
(ビデオリサーチの関東地区の速報値をもとに作成。世帯視聴率はチャンネルを合わせた世帯の、個人視聴率は見た人の割合。競技が連続した複数番組にわたる場合は視聴率の高い方のみを記載)

*8-4:https://news.nifty.com/article/entame/showbizd/12136-1191509/ (日刊ゲンダイ 2021年8月10日) 大竹しのぶは“貧乏クジ”を引かされた…五輪閉会式で大トリも演出ドッチラケで評価散々
 「まるで葬式」と海外メディアに報じられた東京五輪開会式よりも、評価が低いともっぱらなのが閉会式だった。とりわけ大竹しのぶ(64)が合唱団の子供たちと宮沢賢治の「星めぐりの歌」を歌い、聖火台の火が消えるのを見守る大トリのフィナーレはドッチラケで、「なぜ大竹しのぶだったのか」「大女優に恥をかかせた」などとSNSでの評価は散々である。「会場は暗くシーンとして、芝生でイベントを見ていた外国人選手たちも続々と引き揚げていった。彼らも楽しもうとしていたはずですが、出演者も演出も意図も、何が何だか分からなかったのだと思います」(スポーツ紙デスク)。それはお茶の間で式典を見ていた視聴者も全く同じ。組織委によると閉会式のコンセプトは「Worlds we share」。エグゼクティブプロデューサーでスポーツマネジメント会社経営の日置貴之氏(46)は日刊スポーツに対しこう語っていた。「大会の基本コンセプトに『ダイバーシティー&インクルージョン(多様性と調和)』とある。それを考え開閉会式をつくってきた。僕が大事にすべきは、みんながそれを言える、理解する開閉会式」。東京五輪招致の際のコンセプトだった「復興五輪」については「省いたつもりはない。演出には復興の観点もあり、1ミリも忘れていない」とし、東北・復興へのメッセージは「見てもらえば分かる」と胸を張ったそうだ。で、なぜ大竹しのぶだったのか。某ベテラン広告プロデューサーはこう言う。「芸能界の大御所で、選考で名前を挙げれば誰からもケチがつかなかったでしょうし、次の五輪のパリは芸術の都ですから、大竹さんのアートな雰囲気もぴったり。閉会式でmilet(ミレイ)の歌ったエディット・ピアフの『愛の讃歌』は大竹さんも舞台などで歌われているし、何より反戦護憲派で、容姿侮辱や凄惨ないじめ喧伝、ホロコーストをネタにするような過去もありませんからね。また、夜10時すぎに子供を登場させるのは本当はアウトなのですが、その母親、理解ある保護者役のイメージも大竹さんに託したかったのかもしれません」。だが、五輪担当記者はこう言って、首をかしげた。「事実、いわゆる『身体検査』は念入りだったと思います。とはいえ、大竹さんの出演は唐突だったし、復興五輪を印象付けるためでしょうが岩手生まれの宮沢賢治の合唱は安直だったのではという意見が現場ではほとんどでした」。いずれにしても、こうした後ろ向きな基準で閉会式の演出プランが練られていたとすれば残念な限りである。前出のプロデューサーはこうも言う。「今回の東京大会も仕切った電通の担当者たちは電通の中でも特権階級でIOCのバッハ会長が接待されれば、自分たちも同じように優遇されて当然てなものです。世論などどこ吹く風どころか、完全に見下していますから。今回の閉会式も素晴らしい出来だったと自画自賛していて不思議じゃない。だからバッハ会長は大会が終わるやコロナ禍の中、堂々と“銀ブラ”なんかしてるんですよ」。大竹は9日、自身のインスタグラムを更新。「私自身、今この時の開催に、全く疑問が無かったわけではありません」と複雑な心境を打ち明けながらも「制作側のお話を聞いた上で考え、選手の皆さんの5年間を想い、明日に繋がる力になればと舞台に立ちました」と閉会式を振り返った。誰が何をやっても批判されるのは承知の上とはいえ、貧乏クジを引かされた気分だろう。

*8-5:https://www.sponichi.co.jp/entertainment/news/2021/08/08/kiji/20210808s00041000661000c.html (スポニチ 2021年8月8日) 東京五輪閉会式 中継のパリ会場は“めっちゃ密”…ネット驚き「過去の動画かと」「同じ世界なのか」
 東京五輪は8日、17日間の全日程を終え、無観客の東京・国立競技場で閉会式が行われた。式の終盤では小池百合子東京都知事からパリのアンヌ・イダルゴ市長へ五輪旗渡されるなど、次の開催地への「引き継ぎ式」が行われた。式では東京とパリを一部ライブ中継でつなぐ演出が行われ、エマニュエル・マクロン大統領らが登場。仏空軍のアクロバットチーム「パトルイユ・ド・フランス」が大空を飛び、セーヌ川、エッフェル塔など美しい街並みをバックにトリコロールのスモークを空に描いた。BMXに乗った若者が競技施設や名所から魅力をアピールする映像も流れた。パリのエッフェル塔近くの特設会場にはフランス国旗を手にした大勢の人々が詰めかけて「密」の状態。無観客の東京とは正反対の映像にネット上では驚きの声が続出し、「人多すぎて過去の動画かと思った」「もはや突き抜けてて凄い」「同じコロナ禍の世界とは思えない」「パリってこれ生中継なの?」「パリ、めっちゃ密だけど大丈夫?」「めっちゃマスク無しで密」「めっちゃ密で盛り上がってるパリの映像見ると、なんともいえん気持ちになる」などの声が上がっていた。

*8-6:https://mainichi.jp/articles/20210812/k00/00m/050/181000c?cx_fm=mailasa&cx_ml=article&cx_mdate=20210813 (毎日新聞 2021.8.12) IOC、選手家族の観戦認めず バッハ会長は視察ざんまい
 東京オリンピックは主催者の国際オリンピック委員会(IOC)のためにあるのか。そう言いたくなるトーマス・バッハ会長の行動だった。大会期間中、IOCファーストに映る場面はいくつもあった。極めつきは閉幕翌日の9日、東京・銀座の散歩だろう。ポロシャツ姿のバッハ会長は午後4時過ぎ、警護がつく中で銀座を散策した。政府はこの行動を問題視しなかった。新型コロナウイルスの感染対策をまとめた規則集「プレーブック」で選手は厳しい制限下にあった。柔道ジョージア代表の2人が東京タワーなどを観光した際は、参加資格証を剥奪されている。一方、大会関係者は入国後14日間、行動範囲が限定され公共交通機関の不使用などが求められるが、それを経過すれば行動に制約はない。7月8日に入国したバッハ会長は行動制限の対象に該当しないというのだ。大会序盤の7月26日、柔道の競技会場となった日本武道館で、バッハ会長は上機嫌だった。笑顔で話しかけた視線の先には、前日に金メダルを獲得した男子66キロ級の阿部一二三、妹で女子52キロ級の阿部詩のきょうだい。関係者席で大野将平が2連覇を果たした男子73キロ級を一緒に観戦した。マスクはつけていたものの、距離は1メートル以内と近かった。(以下略)

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2016.4.11 ドローンの危険性について
    
     <ドローンの回転するプロペラは凶器になり、小型カメラは覗きを可能にする>

(1)ドローンのリスクはテロだけではないこと
 *1のように、テロ対策のため、重要施設上空を小型無人機「ドローン」が飛行することを禁じる規制法が成立したそうだ。これは、首相官邸、皇居、外国要人がいる施設などとその周辺の上空飛行を禁止する法律だが、(2)で述べるように、ドローンの危険性はテロに使われるだけではない。

(2)ドローンのプロペラが人に接したらどうなるか考えるべき
 *2のように、ドローンでマンションに荷物を宅配する実証実験が千葉市で始まり、風が吹きすさぶ中、荷物を積んだドローンがマンションや大型商業施設の屋上と隣接する公園を往復して成功し、数年以内の実用化が目標だそうだ。

 しかし、荷物を積んでも飛べるほどの力を出すドローンのプロペラが人に当たれば、殺傷事故を起こすことは間違いなく、そのような事故が起きてから「想定外でした」とか「“信頼”していたのに」などと言うのは止めてもらいたい。従って、実用化にあたっては、①当たっても決して人を殺傷しない構造にすること ②カメラを搭載して、他人の家を勝手に覗いたり盗撮したりできないようにすること ③墜落すれば被害の出やすい人口密集地では飛ばさないことが、必要条件である。

(3)ドローンの落下も危険
 また、荷物を積んだ重量の大きなドローンが高いところから落下してくれば、人間に当たれば100%死亡し、家屋に当たれば破壊される。国は、「ドローン管制官」まで作ってドローンを飛ばすつもりのようだが、首相官邸、皇居、外国要人がいる施設やその周辺を飛行禁止にしても、高層マンションのベランダにドローンの離着陸場を設置することを義務付けるなどというのは、「一般市民の危険はどうでもいい」と言わんばかりで呆れた。

*1:http://qbiz.jp/article/82942/1/
(西日本新聞  2016年3月17日) ドローン規制法が成立 テロ対策を強化
 テロ対策強化のため、重要施設上空の小型無人機「ドローン」の飛行を禁じる規制法が17日午後の衆院本会議で可決、成立した。5月の主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)に向けた関係閣僚会合の皮切りで4月10、11日に広島市で予定されている外相会合までに施行される見込みだ。閣僚会合が迫る中、与党が成立を急いでいた。規制法は首相官邸や皇居、外国要人がいる施設などと周辺の上空飛行を禁止する。必要に応じて警察当局に不審なドローンの破壊も認める。ドローン規制では、改正航空法が昨年9月に成立したが、強制排除を認める規定がなく、テロ対策上の不備が指摘されていた。

*2:http://qbiz.jp/article/84548/1/
(西日本新聞 2016年4月11日) ドローン 千葉で宅配実験 戦略特区の産学官連携
●都市部初、マンションなど
 小型無人機「ドローン」でマンションに荷物を宅配する実証実験が11日、千葉市美浜区の幕張新都心で始まった。風が吹きすさぶ中、荷物を積んだドローンがマンションや大型商業施設の屋上と隣接する公園を往復した。国家戦略特区の規制緩和を活用した事業で、国と千葉市、楽天などの大手企業、研究機関が共同で実施。同種の実験は、過疎地の買い物難民対策として徳島県那賀町で2月に実施されたが、都市部では初めて。数年以内の実用化が目標で、今後、約10キロ離れた東京湾沿いの倉庫から海上を飛行して幕張地区まで荷物を運ぶといった、より高度な実験にも取り組む。この日は、ワインボトル1本を積んだドローンが「イオンモール幕張新都心」の屋上(高さ23メートル)から安定した飛行で公園に着陸。マンション屋上(同31メートル)からの運航も無事成功した。実験を基に、雨天や強風時でも安定飛行できる技術の確立や管制システムの設計を目指す。実験に使ったドローンを開発した千葉大の野波健蔵特別教授は「実用化に向けた課題を一つ一つクリアしていき、物流に革命を起こしたい」と話した。
●管制官資格 創設構想も
 高層マンションの立ち並ぶ千葉市・幕張地区で11日、ドローン宅配の実証実験がスタート。市は衝突事故を防ぐため、航空機の管制官をモデルにした「ドローン管制官」の資格を独自につくることも構想している。先進技術を活用して街の魅力を高め、関連産業の誘致にも取り組む。市は2020年の東京五輪・パラリンピックまでに事業化を狙う。同地区で高層マンションを建設予定の不動産業者に、各戸のベランダにドローンの離着陸場を設置するよう協力を求める方針。市内に進出したドローン関連企業に補助金を出す制度も本年度から始め、既に問い合わせが寄せられたという。3月下旬、同地区の幕張メッセで開かれたドローンの国際展示会で、熊谷俊人市長は「先駆的なアイデアと技術を集め、他にない町づくりを目指す」と強調した。

| 環境::2015.5~ | 04:55 PM | comments (x) | trackback (x) |
2015.6.18 オリンピック・パラリンピックに使用する国立競技場について (2015年6月19、23、24、27日、7月1、15、18日に追加あり)
   
  ザハ・ハディド氏の設計      坂茂氏の設計      その他の例     建設地域

(1)新国立競技場建設の状況
 *1-1のように、新国立競技場の改築計画が、建設費の高騰や工期の遅れで、基本設計を変更したり見直しを求められたりしているそうだが、舛添東京都知事は、国立競技場の改築費のうち500億円程度を都に負担してもらいたいという国の要請を断り、都民が納得できる説明をするよう求めている。

 そして、*1-2のように、森喜朗氏が「五輪をやりたいと言ったのは東京都だから支出を求める」としているのは、舛添知事に気の毒だろう。何故なら、2020年に東京でオリンピック、パラリンピックを是非やりたいとしていたのは、石原知事、猪瀬知事であって、舛添知事ではないからだ。

(2)そこで提案
 しかし、*1-1のように、基本設計を縮小したり、開閉式屋根の設置を大会後に延ばしたり、可動席を手動や仮設で対応するくらいなら、ザハ・ハディド氏設計のどこかパソコンのマウスのような形をした国立競技場の建設は中止し、*2-1、*2-2のように、国立競技場の後背地にある明治神宮の森の景観を壊すことなく、周囲の環境を活かしてこれに溶け込む国立競技場を建設することにして、「成熟国家日本が、世界にポジティブな変革を促し、それを未来へ継げる」という基本コンセプトから、プリツカー賞を受賞した坂茂氏のデザインを使ったらどうかと考える。

(3)木材の利用
 また、現在の日本は、*3-1、*3-2のように、森林・林業白書で、国産材の利用推進・輸出推進・木材産業の役割などが強調されている時代だ。そして、木材は直交集成板などの新技術により建材としての新たな需要を作り出し、木材製品に加工したりして、付加価値を高めることが期待されている。

 そして、*3-3のように、九州北部3県は杉の原木を中国に伊万里港から共同輸出する事業に乗り出し、福岡県の森林組合などが同港まで原木を運ぶ経費を一部負担して支援するそうだ。

 さらに、*3-4のように、大分県の日田市も「川上(森林・林業)」から「川下(木材産業)」までの関連業種やまちづくり団体等が連携して新ビジネスの創出・日田材の付加価値向上などに繋げようとしている。しかし、せっかく育てた森林資源をバイオマスの燃料にして燃やしてしまってはもったいない。

 そのため、木材を使って最先端の環境技術を備え、長く使える国立競技場を建設し、座席や家具にもなるべく木材を利用して、木材がいろいろな点で優れた材料であることを示すのがよいと考える。また、木材関係だけではなく、家具関係の会社にも座席や部屋の家具などを大量かつ安価に作ってもらったり、寄付部分があればそれを税額控除可能にしたりして、一定以上の金額を寄付してくれた会社や個人は、寄付額に応じ、まとめて寄付者のネームプレートを開示したりするようにすればよいと考える。

 なお、東京の国立競技場に使うのであれば、木曽ひのき始め近くに優れた木材が多く、国産材の利用を推進しながら、成熟国家日本が環境を大切にポジティブな変革を未来に継げる象徴にできると考える。

<新国立競技場>
*1-1:http://www3.nhk.or.jp/news/html/20150609/k10010108001000.html
(NHK 2015年6月9日) 新国立競技場 「責任の所在不明確が問題」
 新国立競技場の改築計画が建設費の高騰や工期の遅れの問題などから変更されていることについて、IOC=国際オリンピック委員会のバッハ会長が懸念を示したことに関連して、下村文部科学大臣は閣議の後の記者会見で、「全体的な責任者というのがはっきりわからないまま来てしまったところもあるのではないか。工期に間に合わないかもしれないと報告が来たのはことし4月なので、もうちょっと早く報告があればもっといろんな柔軟な見直しというのもあり得たのではないかと思う」と述べ、責任の所在の不明確さに問題があったという認識を示しました。そのうえで、「国際的な信用を失墜させることなく、まだ4年あるので、十分、間に合うように対処する」と話しました。また、下村文部科学大臣は、東京都の舛添知事が、国立競技場の改築費の一部を都に負担してもらいたいという国の要請に反発していることに関連して、東京都に負担を求める根拠となる法律の整備を検討する考えを示しました。2020年の東京オリンピック・パラリンピックのメインスタジアムとなる国立競技場を巡って、国は、改築費のうち500億円程度を東京都に負担してもらいたい考えですが、東京都の舛添知事は、「都からの支出が法的に認められるのは50億円程度だ」などと述べて、都民が納得できる説明をするよう求めています。これに関連して、下村文部科学大臣は、9日の閣議のあとの記者会見で、「根拠法を明確につくる準備をしたい」と述べ、都に対して国立競技場の改築費の一部の負担を求める、根拠となる法律の整備を検討する考えを示しました。下村大臣は、改築費の積算根拠を都に説明する時期について、「舛添知事は、『途中経過は聞かない』と言っているので、改築費の積算結果が出てから詳しく説明にいきたい。来月上旬までには施工予定業者と契約を締結したいと思っているので、それまでにはまとめていくよう努力したい」と述べました。 .新国立 改築巡る問題の経緯と焦点改築される国立競技場は、2020年東京オリンピック・パラリンピックのメインスタジアムとなる施設で、2019年のラグビーワールドカップの開催に間に合わせるため2019年3月の完成を目指して工事が進んでいます。改築を巡っては、2012年11月、イラク人の女性建築家、ザハ・ハディドさんのデザインが採用されました。競技場は、観客席を8万人規模に増やし開閉式の屋根をつける構想で、競技場を運営する文部科学省所管の独立行政法人、「JSC=日本スポーツ振興センター」は、費用の見込みは当初、「1300億円」としていました。その後、2020年東京大会決定後の2013年10月、ハディドさんのデザインを忠実に再現した場合、費用が当初の2倍を超える3000億円に上ることが判明しました。経費がかかりすぎるうえ、巨大すぎて神宮外苑の景観にそぐわないと建築家や市民グループから批判が相次いだことを受けて、下村文部科学大臣は当初のデザインより縮小する方向で検討する方針を示しました。そして、去年5月にまとまった基本設計案では、当初のデザインと比べ、立体型の通路を見直し延べ床面積を25%程度縮小、高さも5メートル低くし、建設費も1625億円の見込みとなりました。この時点では、屋根は開閉式で、サッカーやラグビーなどの試合では、座席がピッチサイドまで自動でせり出す可動式になっているのが特徴としていました。ようやく計画がまとまったものの、今度は解体工事を巡って入札の不調や談合の疑いなどたび重なる問題が発生しました。去年12月に3回目の入札で業者がようやく決定し、当初の予定からおよそ半年遅れたことし1月から解体作業に入って順調に進み、ことし10月から建設工事を始める予定となっていました。こうしたなか、工事を請け負う予定の建設会社の試算で、建設資材の高騰なども加わり、このままの計画では総工費が大幅に増え、工期も間に合わないことが分かりました。このため下村大臣は、先月に入って、開閉式の屋根の設置を大会後に先延ばし、フィールドに向けてせり出すおよそ1万5000席の可動席を自動ではなく手動による仮設で対応することを明らかにしたうえで東京都に対して500億円程度を負担するよう要請していました。現在は、JSCがさらなるコスト削減を目指して建設会社側と来月上旬までの契約に向けて詰めの交渉を進めていますが、総工費がどの程度圧縮できるのか、変更後の総工費やデザインなどの詳細を、いつ、どのような形で明らかにするのかが今後の焦点となります。

*1-2:http://www.huffingtonpost.jp/2015/06/04/mori-talks-on-new-national-stadium_n_7507938.html (The Huffington Post 2015年6月4日 ) 新国立競技場の問題に森喜朗氏「五輪やりたいと言ったのは東京都」支出求める
 建設計画をめぐって混乱が続いている新国立競技場の問題で、2020年東京オリンピック・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長は、東京都が費用を支出するのは当然、との考え方を示した。6月3日に内外情勢調査会が開いたイベントに登壇し、語った。新国立競技場の費用を巡っては、下村博文文科相が東京都に580億円の支出を要請。舛添要一東京都知事は「説明不足」などとして断っており、国と東京都の溝が深まっていた。この状況をオリンピック組織員会の会長で、自民党の有力者でもある森喜朗氏が間をとりなした形だ。「東京都が(オリンピックを)やりたいといったんでしょ。東京都が場所を全部用意するのは当たり前のことなんです。知事が『俺は知らん』と言うのはおかしな話なんです」と森氏は語り、東京都も支出すべきとの考え方を示した。また、落選した2016年オリンピックの招致活動の際、石原慎太郎元都知事と競技場について、国と都で折半すると約束していたことも明かしている。新国立競技場は当初、2012年にコンペで選ばれたイギリスの建築家、ザハ・ハディドさんがデザインした案で建設される予定だった。この案では天候にかかわらず使用できる開閉式屋根と、約8万人を収容できるスタンドを備えていたが、設計通りに作ると、当初の予算の1300億円を大幅に超える、3000億円まで工費が膨らむことが判明した。日本スポーツ振興センター(JSC)はハディドさんの原案のまま建設することを諦め、原案のテイストを残しつつ、大幅に規模を縮小し、総工費1692億円の修正案で建設することを決めた。しかし、資材の値上がりで総工費がさらに上回る可能性が高く、工期も2019年のラグビー・ワールドカップに間に合わないことから、整備費の減額や工期短縮を図るために、さらに建設プランを変更することになった。下村文科相は5月18日の舛添知事との会談で、新国立競技場の屋根の建設はオリンピック終了後となる見通しを示した。また、当初計画していた8万人収容の一部を仮設スタンドとし、オリンピック後に5万人規模へ縮小されるという。下村文科相は舛添知事に、周辺整備にかかる費用500億円の負担を要請。これに対し、舛添知事は「説明不足」などを理由とし、文科省担当者の説明を断わっていた。

<建築家・坂茂氏>
*2-1:http://news.livedoor.com/article/detail/10152161/ (Livedoor News 2015年5月25日) 迷走する新国立競技場。今こそ建築家・坂茂氏を推したいこれだけの理由
 2020年に開催の迫る東京オリンピック・パラリンピック。そのメイン会場である新国立競技場の建設計画が、揺れている。建設計画の目玉であった開閉式の屋根が、オリンピック開催に間に合わないというのだ。5月18日、下村文部科学相は東京都の舛添都知事と会談し、開閉式屋根の設置を五輪後とすることや観客席の一部を仮設スタンドとして規模を縮小することなどを伝える一方、周辺整備にかかる費用500億円の負担を求めた。国が都に対し「納期に間に合わない。しかし費用負担はお願いしたい」と、なんとも無様なお願いをした格好だ。今回の建築案には、選定当初から様々な疑問が呈されてきた。「アンビルドの女王」とも揶揄されるザハ・ハディド氏の当初プランは、あの自転車用ヘルメットのような奇抜な外観もさることながら、規模も費用もあまりにも大きすぎたのだ。また、安藤忠雄氏が主導する選定過程にも、合理性のなさや不透明さを指摘する声が絶えない。しかし安藤氏や事業主体の一つである日本スポーツ振興センターは、責任のなすり合いに終始し、これらの批判に向き合っていない。こうした中、一部有識者からは、計画の白紙撤回を求める声も上がりつつある。すでに、旧・国立競技場は解体され全くの更地になっている。新しいスタジアムを作らねばならない以上、この際、ザハ案を白紙撤回し、選定作業からやり直すというのも合理的な選択肢の一つだろう。東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会の公式サイトに掲載された「ビジョン」(http://tokyo2020.jp/jp/vision/)によれば、2020年東京オリンピックの基本コンセプトの一つは、「成熟国家となった日本が、今度は世界にポジティブな変革を促し、それらをレガシーとして未来へ継承していく」ことだそうだ。国立競技場の後背地には、日本が世界に誇る明治神宮の人工自然林がある。「明治神宮御境内 林苑計画」が当時の森林学の最新知見を集めてまとめられたのが、1921年(大正10年)。ちょうどオリンピックから100年前のこと。計画段階から「およそ100年後には広葉樹を中心とした極相林(人の手によらず自然の力だけで森林が維持でき、自生する植物の構成が安定する状態)になる」ことを目指して造営された。それから100年。明治神宮の森は、「成熟都市・東京」のシンボルのような存在だ。コンセプトに照らし合わせて考えると、新しい国立競技場は、この明治神宮の森の景観を壊すことなく周囲の環境に溶け込む必要があるだろう。また、「東日本大震災からの復興」も東京オリンピックの大きなテーマの一つだ。2013年に行われたオリンピック誘致のための最終プレゼンは、高円宮妃久子殿下による「世界から寄せられた東日本大震災被災地支援への感謝の言葉」からスタートしている。安部首相も「フクシマについて、お案じの向きには、私から保証をいたします。状況は、統御されています。」と発言し、東日本大震災や福島第一原発事故はオリンピック開催の障害にはならないことを「保証」した。で、あるならば大会のシンボルである新国立競技場も、「震災からの復興」を象徴するものでなければならないはずだ。そこで、注目したいのが、坂茂(ばん しげる)氏がコンペにあたって提出したプランだ。日本スポーツ振興センターが公開している応募作品集に残る坂氏の外観パース図には、「周囲の環境に溶け込む小さなモジュール構造と開閉式屋根」との注釈が添えられている。また、他の応募作品に比べて、特筆して緑が多いのも氏のプランの特徴だろう。プラン立案にあたって、氏が、明治神宮の森をはじめとする神宮外苑エリアの地域特性を考慮した様子がうかがえる。また「震災からの復興」というテーマからも、坂氏の作品は注目に価する。坂茂氏は、2014年、「建築界のノーベル賞」とよばれるプリツカー賞を受賞した。審査委員長を務めた英国のピーター・パルンボ卿は「自然災害などで壊滅的な打撃を受けて家を失った人々に対して、自発的な活動を展開する」ことを、受賞理由の一つとしてあげている。つまり、坂氏は「復興建築の第一人者」としてプリツカー賞を受賞しているのだ。氏は1994年にルワンダ難民キャンプへシェルターを提供したことを皮切りに、阪神淡路大震災、四川省大地震、ニュージーランド地震そして東日本大震災と、紛争地・被災地にシェルターや仮設住宅を建て続けてきた。東日本大震災では、女川町に仮設住宅を建設。平地が少ない立地特性にあわせ、「コンテナを多層的に組み合わせる」解決策を打ち出したこの仮設住宅は、被災者からも「仮設とは思えない」「出て行きたくないほど快適」との声が聞こえるほど、好評を博している。また、東日本大震災における津波被害の一つのシンボルとも言えるJR石巻線・女川駅の復興駅舎を設計したのも坂氏だ。オリンピックのテーマの一つが震災からの復興であるならば、実際に東日本大震災の被災者での活動実績があり世界的な評価も高い坂氏のプランこそ、新国立競技場にふさわしい。そう思えてならないのだ。

*2-2:http://president.jp/articles/-/12514 (PRESIDENT 2014年5月9日) 建築界のノーベル賞」が志向する、建築家の大切な使命とは、 プリツカー賞建築家・坂茂氏インタビュー
●被災地支援にも高い評価
 坂茂のプリツカー賞受賞は、胸のすくような快事だった。ハイアット財団が”建築界のノーベル賞”を坂に与えた事実は、権力や富に依存する建築家像を大きく変えた。「社会の役に立つ」ことが建築家の大切な使命として真正面から見直されたのである。ポンピドゥー・センター・メス(photo by Didier Boy de la Tour)坂は、高校卒業後、単身米国に渡り、名門クーパーユニオンの建築学科で学んだ。素材・構造・デザインの三位一体となった建築の王道を歩み、東京とパリを一週間おきに往復する。欧州最大の現代美術館、ポンピドゥー・センターの別館「ポンピドゥー・センター・メス」は坂の代表作のひとつだ。一方で、1994年にルワンダ難民キャンプへシェルターを提供したのを皮切りに阪神淡路大震災、四川省大地震、カンタベリー地震、東日本大震災、フィリピン台風災害……と被災地にいち早く入り、仮設住宅を建ててきた。材料には厚紙の再生紙を耐火、防水加工した「紙管」や貨物用の「コンテナ」などを使う。こちらはすべてボランティアだ。王道建築と仮設建築、この車の両輪のような活動が国際的に高く評価されて受賞に至った。じつは、2007~2009年にかけて坂はプリツカー賞の審査委員を3回務めている。賞の重さと意味を熟知する彼自身、今回の受賞をどう受けとめているのだろうか。「今年1月末に賞のエグゼクティブ・ディレクター、マーサ・ソーンから受賞内示の電話がかかってきました。車で移動中だったのですが、彼女とは昔から親しくて、よく電話し合っていたので、最初、冗談を言っていると思いました。まったく予想してなくて、驚いた。で、正式発表まで絶対に誰にも言うな、と。それから2カ月くらい、ずうっと、みんなに、パートナーにも黙ってなくちゃいけなくて、けっこうキツかったな(笑)。賞って怖いじゃないですか。驕ったら終わりだし、チャンスも、仕事も増える可能性が高いけど、それに飛びついて自分の時間を失くしてボランティアができなくなったら意味がない。だから、この受賞は、今までどおりに続けなさいという奨励だととらえています」
●リーズナブルな紙管のポテンシャル見出す
 実際、坂が世界各地で講演をすると、「ボランティアの仲間に入れてほしい」と声をあげる若い建築家や学生がどんどん増えている。次世代がめざす建築家像は変わりつつある。「僕らが学生のころは、スター建築家になりたい、大きなディベロッパーの仕事で巨大な建物を建てたいという人が多かったけれど、変わってきていますね。建築の社会的有用性に若い世代は目を向けている。もしも、その先駆的や役割を僕が果たせたのだとしたら、この賞はそういう人たちの励ましにもなるでしょう」。坂が紙管に着目したのは、建築の仕事が少なくて展覧会の構成ばかりしていた80年代だった。無造作に積まれた反物の芯を「もったいない」と眺めていて、「コレだ!」と閃く。厚紙の管は長さも大きさも変えられて強度もある。研究を重ねて建築の材料にした。坂に初めて私が長いインタビューをしたのは1997年。坂は阪神淡路大震災で焼失した聖堂の代わりに「紙の教会」を、家を失ったベトナム人のために行政の規制を突破して「紙のログハウス」を公園に建てた後だった。なぜ、こんな活動をするのか、と不躾に訊ねると「建物が崩壊して人が亡くなるのを見てね、建物をつくる建築家として責任を感じた」とポツリと言った。ただ、被災地神戸でのボランティア活動は難行苦行の連続だった。心身は消耗し、どことなく「もうこりごり」と辟易しているようにも見えた。だが、坂は、その後も被災地に寄り添い続ける……。「もともと一般的な建築とボランティアの災害支援、両方を自分の仕事としてバランスをとりたいと考えていました。それが最近は、別々のものじゃなくて、つながってきた。唯一違う点は、設計料をもらっているか、いないかです(笑)。仮設住宅でも、お金のある人の家でも、自分自身の仕事としての満足度や取り組む情熱は、まったく変わりません。(photo by Hiroyuki Hirai)たとえば東日本大震災後に宮城県女川町に建てた仮設住宅。平らな土地が十分にないので、コンテナを重ねて3階建てにしました。特殊な解でしたが、部屋のレイアウトや木の利用、断熱、防音など工夫しています。いま行くと、住民の皆さん、ずっと住み続けたいと言ってくれます。仮設ですからローコストです。でも手抜きの安普請にはしていません。特権階級が財力や権力を社会に見せるために建築家が雇われて、モニュメンタルな建物はつくられてきました。それを否定するつもりはありませんが、お金のない社会的弱者の仮設でも建築家の技能は生かせると信じてやってきた。ところが、クライストチャーチで『紙のカテドラル』を完成させて、両者の境目はなくなったんです」。2011年2月のカンタベリー地震でニュージーランドの首都、クライストチャーチの大聖堂は深刻な被害を受けた。坂は現地の紙管とコンテナで三角形の断面を構成する「紙のカテドラル」を設計。13年8月に700人収容できる紙の大聖堂が出来上がった。「ボランティアでつくったけれど、完全に街のモニュメントになりました。教会の行事だけでなく、コンサートやコミュニティ・サービス、イベントにも使われ、復興のシンボルとして旅行社のパンフレットにも載っています。仮設でもモニュメンタルな建物になるんです。現実的な話をすると、事務所のパートナーはお金の入らない仕事ばかりでヒヤヒヤしてる。スタッフの給料を払うには他のプロジェクトもしっかり遂行しなくてはいけません。全体が滞ります」
●新国立競技場コンペの舞台裏
 建築家・坂茂氏これまで日本の建築界は、必ずしも坂を正当に評価してはこなかった。紙管を一瞥して「堅牢性のないアレが建築か」と見下す建築家もいた。狭い建築家ムラは坂を異端視することで奇妙な序列を保とうとしてきた。その建築家ムラが、2020年東京五輪に向けた「新国立競技場」の国際コンペでザハ・ハディドの巨大で複雑な形状のデザインが選ばれたことで揺れている。日本人で二人目のプリツカー賞受賞者の槇文彦が「緑豊かで歴史的文脈の濃い風致地区が損なわれる」と問題提起し、賛同した建築家約100人が計画縮小の要望書を文部科学省と東京都に提出。事業主体の日本スポーツ振興センター(JSC)は、床面積を25%縮小し、建設費を約1800億円に抑えると発表したが、まだ判然としない。この騒動を坂はどう眺めているのだろう。「まず、オリンピックの開催地選考で、絶対にイスタンブールにすべきだと思っていました。やはり中東、イスラム圏で最初の五輪になりますからね。イスタンブールはヨーロッパともアジアともつながっていて、素晴らしい街です。こんなに最適な場所はない。それが、まぁ東京に決まった。仲間の建築家の批判はしたくないし、ザハだってよく知っている。先日、わざわざ、『受賞おめでとう』と手紙をくれました。彼女はもともとコンテクストを考える建築家ではないし、自分なりの案を出したわけで、選んだほうの問題です。どう考えたって、あんな巨大なものを……選んだほうの問題です」。ザハは、1950年にイラクのバクダッドで生まれている。父はリベラル派の政治家で、サダム・フセインが政権を掌握した後、家族とともにバクダッドを脱出した。1972年に渡英し、ロンドンの建築学校で学ぶ。彼女はコンセプトを重視し、空想的なものを現実空間に現出させる「脱構築派」の建築家といわれる。新国立競技場の話をしていて、坂の口から驚くような言葉が飛び出した。「あのコンペに僕も案を出したんですよ。見事に落ちましたけど(笑)。神宮の森と競技場を溶け込ませる配慮は当然です。規模も小さくなります。それは、僕だけじゃなく、他の提案者もしています。当たり前のことなのです。そのうえで、僕の案は、予算(当初の予定価格は1300億円)の8割ぐらい。もっと簡単にドームの開閉ができるプランです。従来の開閉式ドームは、建設にもメンテナンスにもすごくお金がかかる。一回一回の開閉が大変で、時間もかかります。そこを簡単な構造で、スピーディにできるようにしました。オリンピック用の競技場って、競技結果を公式記録とするために地面の風速は秒速何メートル以下とか、厳しい基準があるんですけど、そのコントロールもできるシステム。既存の技術で可能です。詳しく喋ると真似されちゃうので言えませんが、今度、どこかで競技場のコンペがあったら、やろうと思っています」
文科省や東京都の五輪担当者たちは、坂の発言をどう受けとめるだろうか。

<木材の利用推進>
*3-1:http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=33493
(日本農業新聞 2015/5/30) 木材産業に焦点 14年度林業白書
 政府は29日、2014年度の森林・林業白書を閣議決定した。国産材の利用推進などの点で、林業と実需者を結ぶ木材産業の役割が重要だと強調。木材産業が直交集成板(CLT)をはじめとする新技術の開発などで新たな木材需要をつくり出すことや、国産材を木材製品に加工し、付加価値を高めて輸出することへの期待を示した。白書で木材産業を特集するのは初めて。国内の人工林が利用期を迎え国産材の供給量が増える中、原木の販売先となる木材産業は森林整備の観点からも欠かせない存在として焦点を当てた。需要に応じた木材製品の製造・販売を担い、林業の成長産業化にも貢献するという。

*3-2:http://qbiz.jp/article/63291/1/
(西日本新聞 2015年5月29日) 木材輸出、円安背景に45%増 14年度林業白書
 政府は29日、2014年度の「森林・林業白書」を閣議決定した。14年の木材輸出額が178億円と、前年比約45%増と大幅に伸びたことを紹介。為替の円安傾向などが背景だ。20年までに輸出額を250億円に伸ばす目標の達成に向け、国産材の普及活動に取り組む姿勢を強調した。日本の木材輸出は、12年は93億円にとどまっていた。その後、円安のほか、中国などの木材需要の増加が寄与して、13年には約32%増の123億円となっていた。14年の輸出先は中国が最も多く、韓国、台湾、フィリピンといったアジア諸国が上位を占めた。品目別では丸太が特に増加した。白書は「新興国での経済発展や人口増加により、今後も木材需要が増加することが見込まれている」と指摘した。13年の木材自給率は、国産材の供給量が増加したことなどから、前年比0・7ポイント増の28・6%となった。過去最低だったのは02年の18・2%。白書ではこのほか、木材産業の現状や課題が取り上げられた。競争力強化のために、消費者らの需要に応じた木材製品の生産や販売が必要だとした。

*3-3:http://qbiz.jp/article/63797/1/
(西日本新聞 2015年6月5日) スギ原木を中国へ共同輸出 九州北部3県が事業計画
 円安を追い風に、福岡、佐賀、長崎3県が本年度、スギの原木を中国に向けて共同輸出する事業に試験的に乗り出す。経済成長が続く中国では貨物を保護する梱包(こんぽう)材や建築用構造材の需要が急拡大。各県単独では輸送船に見合う一定量の確保が難しいことから、合同集荷で安定供給を図る。財務省貿易統計によると、日本のアジア向け原木輸出は2010年ごろから増え始め、14年の輸出量は約51万8千立方メートルと、ここ5年で約8倍に膨らんだ。輸出先の5割以上を中国が占めており、3県の共同輸出も主に中国市場を狙う。全国有数の林業地帯の九州南部では、すでに森林組合などが原木輸出に取り組み、輸出量を伸ばしている。九州北部3県ではスギやヒノキの人工林の7〜8割が伐採の適齢期を迎えているが、国内需要が低迷しており、利用先の確保が課題になっている。ただ3県は林業規模が小さく、県単位では中国向けの輸送船に見合う量(1回の航行当たり1千立方メートル程度)を定期的に確保するのは難しいのが現状。3県が連携して集荷することで安定的な量を確保できれば、販路を開拓しやすくなる。中国向けは需要に応じて主にスギの低級材を、韓国にもヒノキを輸出する。佐賀県の伊万里港から輸出する予定で、福岡県は森林組合などが同港まで原木を運ぶ経費を一部負担して支援する方針。3県は「安定供給の仕組みを構築し、価格交渉力をつけて各県産材の需要拡大につなげたい」としている。

*3-4:http://qbiz.jp/article/60425/1/ (西日本新聞 2015年4月17日) 日田市、20年ぶり林業振興ビジョン 業種横断的な連携目指す
 大分県日田市は林業振興の指針となる「新しい日田の森林・林業・木材産業振興ビジョン」をまとめた。基幹産業の再生に向けた鍵は「業種横断的なネットワークの形成と強化」にあると指摘。「川上(森林・林業)」から「川下(木材産業)」までの関連業種、観光やまちづくりの団体などが連携し、新ビジネスの創出や日田材の付加価値向上などにつなげたいとしている。ビジョン策定は1993年の「新日田林業構想」以来、約20年ぶり。市が設置した林業や行政関係者、学識経験者らでつくる策定委員会と、川上と川下の関係者でつくる二つの専門部会で議論を重ねてきた。振興ビジョンでは、森林・林業・木材産業の現状と課題を整理した上で、森林の適正な整備や保全を図る「森林(もり)を守り・育てる」▽伐採期を迎えた森林資源を有効活用する「森林を活(い)かす」▽担い手育成や市民の関心を高める「森林でつながる」−の三つの目標を掲げ、実現に向けた具体例を示している。例えば、木質バイオマスの燃料を安定供給するため、市有林を活用した早生樹種の育成、現代の生活スタイルに合ったデザイン性の高い木材製品の開発、「森林浴ツアー」など、地域資源を生かした観光プログラムの開発などに取り組むとしている。振興ビジョンは市のホームページから閲覧できる。原田啓介市長は「ビジョンをどう具体化させていくかが問われる。市民と協働しながら基幹産業の再生に取り組みたい」と話している。


PS(2015年6月19日追加):*4の「寄付を募ってもよい」「稼ぐ発想が不可欠」という各競技団体の意見はもっともであるとともに、いろいろな団体が世界大会を誘致して世界に注目されれば、地球環境を護る方法や健康維持対策を世界の多くの人に発信することができる。ただ、オリンピックのように大量の金が動く場合は、きちんと管理され公正に使われていることについて、監査法人の監査を受けて監査証明をもらっておくことが、国民のため及び運営に関するいちゃもんづけに対応するために必要だ。

*4:http://digital.asahi.com/articles/DA3S11814678.html
(朝日新聞 2015年6月19日) 新国立、競技団体も物申す 「寄付募ってもいい」「稼ぐ発想不可欠」
 新国立競技場の建設は最近、国と東京都の対立ばかりに注目が集まり、政治問題のように取り上げられる。でも、2020年東京五輪・パラリンピックで使い、大会後の活用法を考えるべき主役はスポーツ界のはず。サッカー、陸上、ラグビー界に聞いた。
■問われる発信力
 サッカー界が見据えるのは、2度目のワールドカップ(W杯)日本開催。だから、小倉純二・日本サッカー協会名誉会長は憤る。「安倍総理が五輪招致のプレゼンで立派な国立を造ると約束した。国際公約を破る損失は計り知れない」。当初の計画通り、五輪後も可動式の客席を備えた8万人規模の維持を日本協会が求めるのは、国際サッカー連盟(FIFA)の規定で、W杯開催にはその規模の競技場が必須とされているからだ。小倉氏自身、国際オリンピック委員会(IOC)委員でもあるブラッターFIFA会長らに新国立の魅力を力説し、東京支持を訴えてきた。ザハ・ハディド氏のデザインを採用した国際コンペにも審査委員として参加した小倉氏は、「コンペの過程では建築の専門家も入り、技術的に難しい部分を何十カ所もチェックして2千億円を超える案は外した。その予算の範囲で出来ると思っていたら、突然数千億円とは……」。50年までに再び日本でW杯を開いて優勝するという目標がかすみかねないが、前向きな提案もある。「使う団体が払っても、寄付を募ってもいい。W杯をまた見たい人なら、寄付をしてくれる」。日本陸連の横川浩会長は新国立建設は「意味のある社会投資だ」と訴える。常設か仮設かで結論が出ないサブトラック問題も、常設にして一般開放すれば、1964年東京五輪で選手村の練習場だった通称「織田フィールド」のように、市民に親しまれる存在になると考える。「陸上の大会だけで新国立の維持費(年間約35億円)を賄えるとはとても言えないが、使ってもらえばそれなりの収入になる。五輪の余韻が冷めないうちに、世界陸上も招致したい」。新国立の本格的な「こけら落とし」は、19年秋開幕のラグビーW杯日本大会の開幕戦。決勝の舞台にもなる。日本ラグビー協会は、8万人の観客で満杯にすることを見込んでいる。一方、新国立にほど近い秩父宮ラグビー場は、五輪期間中は駐車場になる予定だ。日本協会幹部は「秩父宮が使えない期間は、ファンが離れないよう別会場の整備などで自治体と交渉したい」と話している。元IOC委員で日本サッカー協会会長などを歴任した岡野俊一郎氏は、ポスト五輪を見据えて提案する。「国立競技場のスポーツクラブをつくるべきだ。プールやレストラン、医療施設など、スポーツや健康にかかわるものがすべてそろうのが理想。都心の一等地にあるのだから、年会費10万円でも需要は見込める。民間の知恵を借りて、稼ぐ発想が不可欠」。求める水準の競技場を建てるためにも、スポーツ界には有益な活用法に向けた知恵を出し合い、世論を喚起する発信力が問われる。

PS(2015年6月23、24日追加):東京は容積率を緩和して再開発が済んでいる東京駅近郊でさえも、下の写真のように皇居以外は申し訳程度にしか緑がなく、再開発しても環境がよくなっていない。また、スカイツリ―(そもそも、これを“ツリ―”と呼ぶのは可哀想な感覚である)周辺には殆ど緑がなく、川や川べりも見るに堪えない。一方、海外では、道路に占める並木や緑の面積が大きくて、町全体が目を覆いたくなるようなものではなく心を潤すものが多く、都市の気温上昇を抑えている。私は、東京も環境都市になる計画を立てて、東京オリンピックまでに関連地域を変えていくのがよいと考える。
 また、*5のように、経産省は、「買い取り費用が電気料金に上乗せされて国民負担が増える」ことを理由として太陽光発電を抑制するそうだが、国民負担・環境への悪影響リスクが原発は無限大であり、自然エネルギーとは比較にもならない。そして、東京など大都市のビルや道路で、建材に溶け込む形で太陽光発電を行えば膨大な電力が得られると同時に、電気に変換されたエネルギーは熱にならないため、都市の気温上昇が緩和される。そのため、このような電源構成比率を定めて技術進歩を妨害する経産省の科学的合理性のない思考力・判断力が重大な問題なのである。

    
  再建済の東京駅     東京駅周辺     スカイツリー周辺    イギリスの並木道

   
  米国の並木道   パリ、凱旋門付近の並木道  ドイツの並木道  チリ、サンチアゴの自転車道

*5:http://qbiz.jp/article/65192/1/
(西日本新聞 2015年6月24日) 経産省、太陽光偏重の見直し着手 再生エネ買い取りで
 経済産業省は24日、有識者委員会を開き、太陽光など再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度の再見直しに着手した。太陽光に偏らず、地熱や小規模水力などをバランス良く普及させるための価格設定の在り方を検討し、安定した運用につなげる。年内にも方向性を示す見通しだ。政府は2030年の電源構成比率で再生可能エネルギーを現在の約2倍の22〜24%にする目標を掲げており、制度の再検討で達成を後押しする。事業化に時間がかかる地熱などの拡大に向け、年度ごとに算定する買い取り価格を長期間据え置くなど価格設定の方法についても議論した。太陽光は買い取り価格が高く設定され、太陽光に偏って導入が進んだ経緯がある。普及に伴い、買い取り費用が電気料金に上乗せされて国民負担が増える懸念もあり、負担抑制策も検討を続ける。制度をめぐっては高い買い取り価格で認定を受け、太陽光パネルの値下がりを待ってから発電を始める事業者がいるとも指摘される。設備が整い電力会社と売買契約した段階で買い取りを認めるなど、チェック態勢強化も今後の焦点だ。買い取り制度は12年7月に始まった。太陽光の増加が想定を超え、電力5社が新たな契約手続きを一時、中断したことから経産省が今年1月に制度を見直し、発電抑制の要請をしやすくした。


PS(2015年6月27日追加):都市に、並木、緑地帯、公園を増やして、やすらぎや楽しさのある街を作るには、里山から大きな木を運んだり、里山で木を栽培したりすることが必要不可欠であるため、*6はよいと思う。私は、クリスマスに銀座で、並木がモミの木のクリスマスツリーになっていたのを見てびっくりしたことがあるが、並木や緑地帯の木は、街の雰囲気にあわせて、いろいろな季節にそれぞれの花を咲かせる木の需要が高いと思うので、都市の街づくりと木の需要を調査して栽培すればヒットすると考える。

*6:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/201946
(佐賀新聞 2015年6月27日) 武雄市“売れる木”植え住民管理 里山再生で雇用創出
■高齢者の生きがいにも
 荒れた山を開墾して苗木を植え、高齢者に管理を任せて生きがいづくりと所得向上につなげてもらう武雄市の「里山再生プロジェクト」が26日、始動した。北方町の市有山林にサカキとシキミの苗木を植えた。育った木は挿し木用に無償で提供し、新たに里山を開く取り組みを広げる。過疎化や高齢化に伴う里山の荒廃対策として考えた。人が入らなくなった山を開墾し直して苗木を植え、管理は地域の高齢者に任せる。市は市場調査などを通じて流通ルートを開拓し、植栽に取り組む人が増える環境をつくる。里山再生と地域活性化、高齢者の健康づくりと所得向上、産業としての雇用創出を目指す。第1弾として北方町西宮据地区の市有山林約2千平方メートルを開墾した。神事に需要があるサカキの苗木140本、仏事に使うシキミの苗木60本を1千平方メートルずつ植えた。地区の60~70歳代の11人が「緑の会」をつくって管理する。2年ほどで挿し木用の苗木がとれるようになる。苗木は山で栽培を考える人たちに無償で配り、里山再生を拡大する。本年度の事業費は、苗木購入やイノシシ防護柵、管理委託費など計100万円。植栽式で小松政市長は「サカキは武雄の山にも自生しているが、市場にあるのはほとんどが輸入物といわれている。国産をしっかり供給することで所得向上や里山保全につなげ、雇用創出にも広げたい。武雄の宝を発掘して第2、第3弾を考えたい」と意気込みを語った。


PS(2015年7月1日追加): *7-1、*7-2のように、東京オリンピック・パラリンピックで使用する新国立競技場は巨大アーチを維持して、オリンピック史上最高の2520億円の整備費をかけることになったそうだ。私も、女性建築家のザハ・ハディド氏のデザインが取り入れられた当時は祝福したが、近い将来、首都直下地震が想定される中、鉄骨製の重たい巨大アーチは耐震性に問題がある上、このデザインは、「環境」という視点でのメッセージ発信力もなく、2520億円もの建設費は他と比較して高すぎる。そのため、迅速に変更するのがよいと考える。

*7-1:http://qbiz.jp/article/65194/1/
(西日本新聞 2015年6月24日)新国立競技場の巨大アーチ維持 整備費2520億円に
 政府は24日、2020年東京五輪・パラリンピックのメーン会場となる新国立競技場の整備費について当初予定を800億円以上も上回る2520億円とする方針を固めた。屋根を支える2本の巨大なアーチ構造を特徴とするデザインは維持する。近く建設業者と工事契約を結び、10月に着工する予定で、19年のラグビー・ワールドカップ日本大会までの完成を目指す。景観を阻害し、コストも掛かりすぎるとして、建築家や市民からデザインの見直しを求める声が上がっていたが、政府は工事の遅れにつながる大幅な設計変更は困難と判断した。財源確保策が今後の焦点となる。資材や人件費の高騰、消費税増税の影響などで、整備費は大幅に膨張した。東京五輪の準備に携わる主要団体の調整会議で29日、報告する。文部科学省と事業主体の日本スポーツ振興センター(JSC)は建設費1625億円、旧国立競技場の解体費67億円を含めて当初1692億円としていた整備費が膨らむのを抑えるため、観客席の一部を仮設にするなどコスト削減に向けた計画見直しを続けていた。文科省は今後、東京都にも見直しの内容を説明、費用の一部として500億円の負担を受け入れるよう求めたいとしている。巨大アーチのデザインは、12年にJSCが実施した国際公募で選ばれた。だが、技術的に難しくコスト増や工事の遅れにつながるなどと建築家らが反発、デザインの見直し案も提案していた。

*7-2:http://thepage.jp/detail/20150626-00000005-wordleaf?utm_expid=90592221-37.fVZ9WgkFQES3eBF2lg39IQ.0&utm_referrer (The Page 2015.6.26) 新国立競技場の計画見直し 責任はどこにあるのか? 大杉覚・首都大院教授
 東京五輪・パラリンピックのメイン会場となる新国立競技場の建設計画が迷走している。総工費が当初予定よりも1000億円近く膨らみ、政府は東京都に費用の一部負担を求めているが、都側は反発し、解決の糸口は見えていない。この迷走の責任はどこあるのか。原因は何なのか。都市行政が専門の大杉覚(おおすぎ・さとる)首都大学東京大学院教授に寄稿してもらった。2020年東京五輪の会場整備が急ピッチで進められています。都心に会場を集中させる「コンパクト五輪」をコンセプトとした当初計画は、東日本大震災の復興事業等の影響で建設資材費・人件費の高騰に見舞われて変更を余儀なくされたものの、さいたまスーパーアリーナ(バスケットボール)や江ノ島(セーリング)など首都圏各地の既存施設を活用することで、ようやくほとんどの競技で会場確保の見通しがつきました。そうしたなか、要となるメインスタジアム、新国立競技場の建設計画が混迷を極めています。なぜでしょうか。何が問題で、この混迷の原因と責任はどこにあるのでしょうか。
●これまでの経緯と問題点
 新国立競技場の建設計画に対しては、これまでに様々な立場からの批判が提起されています。まずは膨大な建設費を要することであり、建築構造上に欠陥や技術的な困難があること、あるいは、神宮外苑という歴史的な景観にそぐわないデザインであることなどです。これらの批判は、国際コンペで最優秀賞として採用された、世界的に著名な建築家ザハ・ハディド氏による、アーチ状の構造に巨大な可動式屋根を配した奇抜なデザイン案に由来するといってよいでしょう。ただし、混迷の「原因」はより根深いものです。一言で言えば、事業構想から計画、実施に至る事業プロセスに「不透明な構図」が伺えるのです。これまでの経緯を振り返りながら、問題点を確認しましょう。新国立競技場のデザイン案決定は、国際コンペ方式で行われました。建築家安藤忠雄氏をトップに据えた審査委員会が設けられ、公募が開始されたのが2012年7月、審査結果を受けて、国立競技場将来構想有識者会議がハディド氏のデザイン案を決定したのが同年11月のことです。ハディド案に対する批判をいち早く唱えた建築家の槇文彦氏は、大規模な事業にもかかわらず、公募条件が緩く、国際コンペの進め方が粗雑であったため、ハディド案のような景観面で配慮を欠いた巨大な建築物のデザインが提示されたのではないかと、初期段階での取組の問題点を指摘しています(『新国立競技場、何が問題か』平凡社)。また、審査過程についても問題が指摘されています。公募段階での総工費は約1300億円と想定さていました。ところが、翌13年9月に東京五輪開催が決定され、改めて発注者である日本スポーツ振興センター(JSC)がハディド案をもとに試算したところ、一挙に3千億円にまで跳ね上がったのです。ロンドンをはじめ過去の夏季五輪メインスタジアムの整備費はいずれも1千億円に及ばなかったことを考えると、そのコストがいかに突出したものかがわかります。少なくとも、安藤氏ら建築の専門家を中心としたチェックが甘かったと言わざるを得ないでしょう。本来、現実的ではない建設費を要する案は審査過程を通じて退けられたはずです。その後、さすがにJSCは規模を縮小して総工費の圧縮を図り、1625億円に修正して基本設計の承認を有識者会議から得ますが(2014年5月)、旧国立競技場の解体着手(2015年3月)後の試算では総工費は再び膨張し、2500億円あるいはそれ以上の費用を要する見通しが示されました。下村博文文部科学大臣が都庁を訪問し、正式に500億円の費用分担協力を舛添要一都知事に要請したのもこのタイミングでのことでした(同年5月18日)。


PS(2015年7月15日追加):文科省とJSC現行案を変更できない理由は、①女性建築家ザハ・ハディド氏のデザインを基にするとした「国際公約」に反すること ②一九年のラグビー・ワールドカップ(W杯)日本大会に間に合わないこと だそうだが、①のハディド氏のデザインを基にするか否かは国内で決めるべき問題であって国際公約ではない上、「カネをかけないオリンピックを行う」というオリンピックのコンセンサス違反でもある。さらに、建物のデザインを考えるのは小学生のお絵かきではないため、あらかじめ耐震設計やコストを考慮しておくのが当然で、受注価格が当初の予定を大きく上回り、耐震性も保証できないのであれば、ハディド氏と何らかの契約があったとしても破棄する理由になるだろう。また、②については、横浜スタジアムの改装や東北に新しいスタジアムを建設するなどの代替案もあり、それらは、ハディド氏のデザインを変更すれば費用の捻出も容易だ。

*8:http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2015071502000124.html
(東京新聞 2015年7月15日) 新国立問題で公開質問状 市民団体が文科相らに
 二〇二〇年東京五輪・パラリンピックの主会場となる新国立競技場(東京都新宿区)の工費が二千五百二十億円に高騰した問題で、計画の見直しを求めている市民団体「神宮外苑と国立競技場を未来へ手わたす会」は十四日、下村博文文部科学相と事業主体の日本スポーツ振興センター(JSC)の河野一郎理事長に対し、工費の内訳など十四項目の公開質問状を郵送した。文科省とJSCは現行案を変更できない理由として、女性建築家ザハ・ハディド氏のデザインを基にするとした「国際公約」に反することや、一九年のラグビー・ワールドカップ(W杯)日本大会に間に合わないことなどを挙げる。質問状では、これらの根拠を尋ね、ハディド氏との契約書の公開を要求。完成後の設置となる開閉式屋根などの費用を含めた「ほんとうの総工費」や、計画の責任者が誰かも明らかにするよう求めている。会は、「現行案を承認しない」とする同会の主張がネット上で四万七千人超の賛同を得ていると強調。公開質問状には二十八日までの回答を求め、内容は会のホームページでも公開するとしている。JSCは九日、施工業者の大成建設とスタンド部分の一部資材の発注契約を結んだが、会の共同代表の建築家大橋智子さんは「今からでも止められる」と話す。会は計画見直しを求める請願を国会に提出するため、八月末までに二十五万人を目標に署名を集める。


PS(2015年7月18日追加):これまで新国立競技場建設計画の変更を決断できなかったのは、①森元首相が「たった2500億円出せないのか」という発想で“夢”を追い駆けるタイプの人である ②首相はじめその周辺には旧森派が多く、世話になったため森氏には気を使う ③変更すると違約金発生などの問題が生じる可能性があり、変更決定前にそれらをクリアにする必要があった 等が理由だろう。
 しかし、首相の最終結論である現在の新国立競技場建設計画の白紙撤回は英断であるため、素直に褒めるべきであり、これを批判するようであれば「国が一度決めたことは、どんなに不都合が明白になっても決して変更できない」ことになってしまう。なお、安保関連法案が衆議院を通過した直後の決定だったことは、メディアが、安保関連法案について、感情論や政争に落とし込まずにポイントをついた理論的な議論をわかりやすく淡々と展開すればよく、報道するからにはその能力が求められるのである。

*9:http://qbiz.jp/article/67069/1/ (西日本新聞 2015年7月18日) 支持率に陰り、新国立白紙で英断演出 首相、安保審議への影響懸念
 安倍晋三首相は17日、巨額の総工費問題に揺れた新国立競技場(東京都新宿区)建設をめぐり現行計画の白紙撤回に踏み切った。2020年東京五輪・パラリンピックの大会組織委員会会長を務める森喜朗元首相との会談を経て、トップダウンによる政治決断を演出した。見直し期限を過ぎつつあった局面での突然の方針転換は、巨額費用に対する国民の強い批判に追い込まれた形だ。安全保障関連法案の強引な審議と併せ、政権批判が増幅しかねないとの「焦り」(官邸筋)も透ける。
◆「先月から検討していた」
 「このままでは、みんなに祝福される大会にすることは困難だ」。首相は17日午後、官邸で記者団を前に現行計画を全面的に見直す意義を強調した。競技場の建設を所管する文部科学省を中心に計画見直しを始めたのは、政府の説明では「1カ月ほど前」(首相)。負担をめぐり下村博文文部科学相と開催都市の東京都の舛添要一知事が言い合う姿が連日のように報道された。首相は周囲に、巨額の総工費に関し「絶対におかしい」として新たな計画づくりを指示したという。だが、こうした動きが現実のものとして表面化したのは今週だ。報道各社の世論調査で計画見直しを求める声が高まり、与党内からも不満が噴出。15日には首相が「白紙に戻す」という言葉を17日の発表の際に盛り込むことを決めたという。
◆説得工作
 首相にとって、見直しを進めるには避けては通れない道があった。実現には、19年5月とした完成を遅らせることが不可欠で、鍵を握るのは大会組織委会長を務め、首相の大先輩に当たる森喜朗元首相だった。日本ラグビー協会会長も6月まで10年間務めた森氏が主導し、19年秋のラグビーワールドカップ(W杯)日本大会を招致した。主会場は新国立競技場で、それに間に合わせるとの制約が「見直しのネック」(官邸筋)に。W杯での使用断念へ説得工作が必要だった。首相への援護射撃もあった。自民党の二階俊博総務会長が15日のBS番組で競技場について「節約する方法はないのか」と問題提起をすると、公明党幹部も含め見直し論が相次ぎ、森氏説得の舞台は整った。17日午後の官邸執務室。「ゼロベースで計画を見直したい。ラグビーのW杯は間に合いません」。首相がこう告げると、森氏は「残念ですね」と言うよりほかなかった。
◆突貫工事
 「白紙」発表の決断の大きな要素として、安保法案をめぐる首相の政治姿勢に、世論の批判が集中したことがあるのは間違いない。報道各社の内閣支持率も低落傾向で、政府、与党内に「これ以上問題を抱えれば、政権が持たない」(官邸関係者)との危機感が募ったのは事実だからだ。本格検討に入ったのはいつか。政府関係者は「約1週間前だ。首相の表明に向けて突貫工事だった」と内幕を明かす。森氏は、首相との会談で「20年の五輪までにできなかったら、大変なことになりますよ」と忠告した。唐突な変更には関係者から「朝令暮改はやるな」(舛添氏)との不満がくすぶる。野党は「世論の反発に押され、見直しを迫られた」(今井雅人維新の党政調会長)と捉え、同様に反対が根強い安保法案とともに国会論戦で追及する構えだ。国際オリンピック委員会(IOC)や建築家、建設業者らの思惑も交錯する。政府高官はこうつぶやく。「白紙撤回は、パンドラの箱を開けるようなものだ」
◆森氏「たった2500億円出せないのか」
 2020年東京五輪・パラリンピックのメーンスタジアムとなる新国立競技場の建設計画が白紙となったことを受け、大会組織委員会の森喜朗会長は17日、東京都内の組織委オフィスで取材に応じ「施設に掛けるお金は都が3千億円。組織委が五輪に掛けるお金はその比ではない。国がたった2500億円も出せなかったのかねという不満はある」と語った。コスト削減を促す国際オリンピック委員会(IOC)の五輪改革の趣旨に沿う判断と認めつつ「日本スポーツの聖地としていろいろと生み出していけると夢を描いていただけに大変残念」と思いを吐露した。本番前に設備や運営をチェックするための「テスト大会がどういう日程でできるか。一番気になるのは完成時期」と懸念を示した。安倍晋三首相に新たなデザインとして12年の国際公募の優秀賞、入選の2作品を検討するように進言したものの「そちらの方が(工費が)高いのでゼロからやる」との返答があったことも明かした。下村博文文部科学相に対しては「これまで責任があるっていったって何もやってやしない。今度は少し本気になってやらなきゃ」と注文を付けた。
   ◇   ◇
 森喜朗元首相は17日のBS朝日番組収録で、新国立競技場の総工費が2520億円に膨張する大きな原因となった屋根を支える2本の巨大なアーチ構造のデザインについて「見直した方がいい。もともとあのスタイルが嫌だった」と述べた。「生がきみたいだ。(東京に)合わないじゃないか」とも語った。
◆抜本見直し、否定の末
 安倍晋三首相は新国立競技場の建設計画を「1カ月ほど前から見直せないかを検討してきた」と語った。だが、政府が建設費を約2520億円と発表した6月29日以降も、首相や閣僚は見直しに否定的な発言を重ねていた。首相は10日の衆院平和安全法制特別委員会で、建設計画を見直せば「(五輪に)間に合わない可能性が高い」と答弁。菅義偉官房長官も16日の記者会見で「工期の問題が現実的にある」と述べた。下村博文文部科学相は12日の会見で「斬新なデザインを招致に使ってきた。『お金がないからやめた』では国際的な信用の問題にも関わる」と話し、デザイン変更を否定している。6月29日の建設計画発表を受け、7月7日には新競技場の整備主体である日本スポーツ振興センターの有識者会議が実施計画を了承した。首相が言う「1カ月前」から、見直しを具体的に検討した形跡は見当たらない。政府高官は「文科省に聞いてみたが、見直しを検討する話はなかった」と打ち明ける。菅氏は17日の会見で「下村氏から今月中に判断すればぎりぎり五輪本番に間に合うと、きょう報告を受けた」と説明。下村氏は会見で根拠を問われると「専門家に詳しく聞いた結果」と述べるにとどめた。週末は世論調査が予定されている。「安保法案と新競技場への批判が重なれば数字はボロボロだ。週末をまたぎたくなかったので、駆け込みで見直したのだろう」。自民党関係者は方針転換の背景をこう解説した。

| 環境::2015.5~ | 01:56 PM | comments (x) | trackback (x) |
2015.4.9 大手電力会社の立場に立ち、温室効果ガスの削減を口実として、それより公害の多い原発維持の論理を展開するのは、もうやめるべきである。 (2015年4月10、11、12、24日に追加あり)
        
世界のCO2排出量  国別総排出量    日本の         日本の   
            一人当たり排出量  部門別排出量   部門別排出量推移

   
     *1-3より       *1-1より    *2-1より    再生エネ&水素社会  

(1)2030年に2013年比で温室効果ガス(CO2)20%削減は目標が小さすぎる
 世界のCO2排出量は上の段の一番左の図で、国別総排出量と国別一人当たり排出量は二番目の図である。アメリカは総排出量・一人当たり排出量ともに大きく、中国・インドは一人当たり排出量は小さいが人口が多いため総排出量が大きい。日本・ドイツは、先進国の中では総排出量が比較的小さい。

 しかし、日本の部門別排出量を見ると、①エネルギー転換部門39% ②産業部門26% ③運輸部門17% が大きい。そのため、2030年(今から15年後)までであれば、運輸部門をすべて自然エネルギー由来の水素燃料と電気自動車に変え、③からはCO2を排出しないようにすれば、まず17%のCO2削減が可能だ。また、①のうちの発電もLNG以外は全て自然エネルギーに変えれば、原発を再稼働しなくても10%くらい(39%X電力への使用割合X40%)は排出されなくなる。さらに、産業部門も半分を水素に変更すれば13%(26%X50%)の抑制ができるため、全部で約40%のCO2削減ができる筈だ。

 こう書くと、「責任政党は、そのような実行不可能なことは言わない」などと言う人がいるが、電気自動車や燃料電池車は、このために1995年頃から開発し始めて既に実用化済であり、自然エネルギーや水素燃料による発電システムも使用開始の目途がついているのだ。そのため、目標を立ててやるかやらないかが現在の政治責任であり、これを2段目の「再生エネ&水素社会」のイメージのように実行すれば、日本のエネルギー自給率は100%以上となって、海外に燃料費を支払わなくてもすむわけである。

 そのため、*1-3で、2009年9月に鳩山首相が「あらゆる政策を総動員して25%削減する」と言ったのが、目標として最も妥当だったと、私は、当時から思っていた。

(2)原発再稼働は不要である
 *1-1の「経済産業省と環境省が案を詰め、再生可能エネルギーのてこ入れや原子力発電所の再稼働を前提に、2030年までの温暖化ガス排出量を2013年比で20%前後削減する目標を打ち出す実現可能な目標として国際社会に示す」というのは、現状維持を前提としているため、全く話にならない。

 なお、原発再稼働論者は、*1-2のように、必ず「原発が稼働しなければ国民負担が大きい」という嘘を言うが、原発のコストは、何度も記載してきたとおり、原発立地自治体への交付金、防災費用、廃炉費用、最終処分費用、事故処理費用のすべてを含み、運転費用だけではないことを忘れてはならない。

(3)自民党の原子力政策とエネルギーミックスの非妥当性
 *2-1のように、自民党の原子力政策・需給問題等調査会が2030年の望ましい電源構成として、「原子力、石炭火力、水力などの“ベースロード電源”の比率を東日本大震災前の水準である約6割に引き上げるよう提言した」とのことだが、これは、何も考えずに経産省主導で従来のやり方を踏襲した姿だ。また、「安定的に発電できるのは、原子力、石炭火力、水力しかない」としているのも、フクシマ原発事故に正面から向き合って反省していない姿勢である。

 また、*2-2では、環境省が「2030年の再生エネ比率は、24~35%になると推定」し、宮沢経産相が「技術的な制約やコストの課題など実現可能性について十分考慮されていない」としているが、実際には、再生エネよりも原発の方が、技術、コスト、環境汚染などへの課題は解決していない。

 そのような中、*2-3のように、佐賀新聞社が佐賀県議選候補者に、玄海原発再稼働の地元同意範囲についてアンケート調査したところ、立地自治体だけでは「不十分」とした候補者が4割で、自民現職は明確な範囲を答えなかったそうだ。しかし、今後の原発の存廃と玄海原発の再稼働では、自民現職が「安全性確保を前提に、重要なベースロード電源と位置づけ、原子力規制委が新規制基準に適合すると認め、住民理解が得られた原発は再稼働を進める」という自民党及び政府の方針を踏まえた考えを示し、全体では6割が「廃止すべきでない」、7割が「再稼働を容認する」という情けない結果だったそうだ。

 一方、*2-4のように、憲法で原発建設を禁じるオーストリアが、英政府の原発補助金支出を欧州連合(EU)が認めた決定に対し、「市場競争を歪める」として5月にもEU司法裁判所に無効確認の訴訟を起こすそうだ。私も、「原発はコストが安く、安定電源だ」などとして再稼働しようとするのであれば、補助金は廃止して公正な市場競争を行うべきだと考える。

*1-1:http://www.nikkei.com/article/DGXLASDF08H1C_Y5A400C1MM8000/?dg=1
(日経新聞 2015/4/9) 温暖化ガス、20%削減 30年目標に政府調整、13年比で
 政府は2030年までの温暖化ガス排出量を、13年比で20%前後削減する新たな目標を打ち出す方向で調整に入った。6月上旬にドイツで開く主要7カ国(G7)の首脳会議(サミット)で表明する見通し。温暖化対策を巡る国際交渉での欧米の動向を踏まえ、再生可能エネルギーのてこ入れや原子力発電所の再稼働を前提に実現可能な目標として国際社会に示す。経済産業省と環境省が案を詰めている。外務省や首相官邸と調整し、今月下旬にも電源構成(ベストミックス)と温暖化ガスの削減目標に関する有識者会議にかけた上で、正式に政府案としてまとめる。温暖化の国際交渉では、各国が年末にパリで第21回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP21)を開く。そこでは、先進国に排出削減を義務付けた京都議定書に代わり、すべての国が参加する新たな枠組みで合意をめざす。国連は各国に20年以降の削減目標の提出を求めており、米国や欧州連合(EU)は今年3月に提出した。削減目標のベースとなる30年時点の望ましい電源構成について、経産省は二酸化炭素(CO2)を排出しない太陽光や風力などの再生可能エネルギーの割合を現状の10%程度から30年に23~25%前後に拡大。原子力の比率も停止中の原発の再稼働を前提に2割を確保する方向で調整している。CO2を大量に出す石炭、液化天然ガス(LNG)、石油の火力発電は5割半ばと、現状の約9割から大幅に減る見通しで、それだけで温暖化ガスの削減は13年比で10%台半ばとなる。これに省エネ対策の効果などを上乗せし、20%前後の削減をめざす。各国が提示している削減目標に、遜色ない水準にしたいと政府は考えている。当初は削減目標の基準年を米国と同じ05年で検討していた。東京電力福島第1原子力発電所事故に伴い、全国の原発が停止して温暖化ガスの排出が増えている13年を基準にすることで、20%前後の温暖化ガス削減が実現する面もある。米国の目標は05年比26~28%削減、EUは1990年比40%削減。政府関係者によると、これらを13年比に直すと米国は約2割減、EUは3割弱の減少となり、日本が示す20%前後の目標に近づく。温暖化問題は、過去に大量のCO2を排出してきた先進国の責任が重いとされ、新たな枠組みで合意するには日本も欧米並みの負担が必要とされる。日本は97年に京都議定書で、08~12年に90年比でCO2排出量を6%減らす目標を国際社会に示した。その後、09年に民主党の鳩山由紀夫首相(当時)が国連の気候変動サミットで20年までの目標として、90年比で25%削減すると表明。東京電力福島第1原発事故による原発停止を受け、13年に石原伸晃環境相(同)が05年比3.8%削減とする目標に実質的に引き下げた。関係各省は13年を軸に各国の目標を比較・検証する方向だが、14年とする案もある。ただ基準年は米国は05年、EUは90年と異なっており、大震災後の日本の環境変化について、国際社会の理解が得られるかが焦点だ。安倍晋三首相は第1次内閣の07年に「50年までに世界の排出量を半減する」との長期目標を示して国際的な議論を主導した。経済成長と国際交渉への貢献、地球環境への配慮という観点から削減目標でさらなる上積みが可能か、関係各省で詰める。

*1-2:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20150319&ng=DGKKZO84541300Y5A310C1KE8000 (日経新聞 2015.3.19) 2030年の電源構成(下)過大な省エネは国民負担、原発比率20%以上に、成長維持へ電力価格抑制 野村浩二 慶応義塾大学准教授(1971年生まれ。慶大博士。専門は応用計量経済学、経済統計)
<ポイント>
○省エネと電力価格の上昇はコインの両面
○過大な省エネは電力需要の過小推計導く
○電力価格高騰は生産縮小、経済停滞を招く
 米国に比べて2倍以上の電力価格負担を強いられている日本の消費者が、さらに価格上昇を受け入れる余地はあるのだろうか。福島原発事故を受け、稼働を止めた原発を補うため化石燃料依存度は88%に達し、電力価格は現在までに35%上昇している。経済産業省は長期エネルギー需給見通し小委員会を設置し、2030年における電源構成について検討している。需給見通しには電力価格上昇の抑制は当然に織り込まれると思われるかもしれない。しかし、過去の政府試算では電力価格上昇はきわめて大きいものだった。12年、民主党政権下のエネルギー・環境会議では、国民に提示されたすべての選択肢で、30年における電力価格は60%から2倍以上の上昇となっていた。なぜこれほどの上昇となるのか。一般には再生可能エネルギーの増加の影響とみられがちだが、実際には省エネ拡大の影響の方が大きい。省エネ(省電力)と電力価格上昇はコインの両面である。省エネは、その多くが省エネ技術を体化した資本財の導入によって実現される。そして資本の更新時期を迎えたとき、追加的に大きな費用負担のないままに、新しい省エネ技術は緩やかに経済体系に組み込まれていく。市場経済において、省エネを加速するためには、企業や家計において合理的な投資機会となるよう、その背景に電力価格の上昇が必要となる。言い換えれば、将来の電力価格水準をターゲットとすれば、それに対応して実現可能な省エネ量の水準はおのずと定まる。政府は電力消費者の負担とせずに、補助金や直接規制により省エネを推進してきた。しかし、そうした安易な政策手段による隠れた費用も結局は国民の負担となる。省エネへの負担を余儀なくされた企業では、生産コストはトータルで上昇し、国際競争力を喪失していく。家計では教育や健康への投資が阻害される。一般的に資本財価格は相対的に低下する傾向にあり、将来の電力価格が安定的でも、市場経済においても省エネ技術は時間をかけて導入されていく性質のものである。政策によって得られるのは、少しばかりの「前倒し」効果にすぎない。非合理的な選択は、最終的にだれの負担になろうとも、一国経済の成長力をそぐことになる。政府はこの20年以上、コスト負担を顧みることなく、省エネ努力を数量的に積み上げることに腐心してきた。省エネの過大推計は、電力需要の過小推計を導く。そして二酸化炭素(CO2)排出量を小さく、電力構成における再エネ比率を大きく見せる。ゆえに理想的な政策目標に近づけるには、禁断の果実となる。図は日米両国における需要見通しについて、1990年代後半からの予測値と実績値の推移を示している。日本では少しの需要減少を契機に、その減少トレンドを引き継ぐように省エネが過大に推計されている。前政権の見通しを上回らないよう、過去の過大推計は将来の更なる過大推計の布石ともなる。そうした推計値は、リーマン・ショックや震災で生産が大打撃を受けた実績と皮肉にも近似した。その近似を根拠として、30年に向けて年率1.7%という高い経済成長率の想定のもとでも、省エネ努力の積算はきわめて大きなものとなっている。しかし震災後の生産縮小によらない電力需要の減少は、その多くが省エネの「前倒し」によるものであり、30年時点で残る省エネ効果はわずかであると考えられる。対照的に米国での見通しは合理的である。参照ケースは将来の予測値としての機能を果たしている。09年には大きく縮小しその後も停滞しているが、将来の需要は再び過去の成長率へと戻る見通しである。最良技術導入ケースでも増加が見込まれている。求められる需要見通しは、企業が中長期の事業計画を構築しやすいよう現実性の高いシナリオであり、経済合理性を度外視した積算ではノイズでしかない。電力需要の過小推計のもとに電力供給が計画され、もし将来に想定を上回る需要が現実化したとき、コインの表面(数量側)から見れば電気使用制限か停電、あるいは老朽火力の発電増加などでCO2排出量が膨らんで海外から排出枠を購入するという負担を余儀なくされる。コインの裏面(価格側)から見れば、需要を大幅に減少させるため、筆者の試算では電力価格の倍増が必要となる。その結果、日米の需給見通しに基づけば、日本の電力および炭素排出の価格は30年にはともに米国の5倍もの水準になってしまう。とても経済成長と両立するシナリオではない。電力価格の倍増への懸念は絵空事ではない。エネルギー政策で先行している欧州諸国では、21世紀に入り軒並み倍増した。イタリアは欧州連合(EU)の電力自由化指令が国内法化された99年を転機として急速な電力価格上昇に見舞われ、13年には3倍、消費者物価指数で除した実質価格でも2.3倍へと高騰した。産業ごとの成長率と生産コストに占める電力依存度はほぼ無相関だったが、高騰後は強い負の相関が見られる。窯業土石、ゴム製品、パルプ紙製造業など、一国平均よりも年率で3~4%ほど成長率が低い。電力価格倍増は、輸入財への代替や海外への生産移転などを通じて、国内の産業構造を大きく変えてしまう力をもっている。その結果、80%近く石炭火力に依存する中国や、過剰な再エネ負担なしに安定した電力価格を保つ米国へのシフトをもたらした。21世紀に入ってイタリアの経済成長率はほぼゼロで、先進諸国で最低となった。電力価格高騰による生産縮小は、一定の仮定に基づく積算でみれば年率0.15%ほどの成長率の低下要因と解される。これを日本経済の将来見通しに適用すれば、30年の断面では国内総生産(GDP)の約2.2%の下落となり、それまでに失う所得の総額は100兆円近い。日本が同じ轍(てつ)を踏んではならない。再エネは系統対策コストを含まずとも、経済性のある事業は限られ、ほとんどは政策支援なしに成り立たない。再エネの固定価格買い取り制度(FIT)による賦課金総額は15年度に1兆円を超えると言われるほど膨大となった。一部が期待した経済効果も無残なものである。導入前には30%程であった太陽電池の輸入シェアは、一気に80%近くまで上昇した。年率20%ほどで下落していた太陽電池の輸入価格は、導入後の13年初めには(外貨建てでも)プラスに転じ、過度な価格競争に陥っていた中国企業が大きく一息ついただけである。FITは買い取り価格を固定してしまうことで企業の競争を阻害し、価格低下を阻む引力にすらなる。価格上昇を抑制するためFITからの出口戦略の構築を急ぎ、再エネの目標値は20%ほどまでとして中長期的に整備していくことが現実的であろう。電源構成の見通し策定は、エネルギー政策における停滞を前進させる指針の役割も担う。エネルギー安全保障と低炭素、そして経済成長と両立する電力需要に対応できるベースロード電源として、原発の役割は依然として大きい。安全性と効率性の向上のため、原発のリプレースも将来の選択肢である。原子力は20%以上を目標とすべきである。残りは石炭と天然ガスの間の民間企業による選択である。原子力と再エネの適切なシェアの維持は、自由化による価格上昇リスクの抑制のためにも有益であろう。

*1-3:http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BA%8C%E9%85%B8%E5%8C%96%E7%82%AD%E7%B4%A025%25%E5%89%8A%E6%B8%9B (Wikipedia)
●歴史
・2009年 民主党が衆議院選挙においてマニフェストに排出権取引・環境税の導入などによる25%削減を明記
・2009年9月7日 民主党の鳩山由紀夫代表が東京都内のシンポジウムにおいて「あらゆる政策を総動員して実現を目指していく」と発言、世界に注目される
・2009年9月22日 鳩山由紀夫首相がニューヨークの国連本部で開かれた国連気候変動サミットにおいて演説内で温室効果ガス25%削減を発言。日本メディアは注目するも、欧州メディアにはまったく注目されず。オバマ大統領の演説ではCO2削減についてブラジルや中国に言及するも日本には言及せず。
・2009年9月30日 鳩山由紀夫首相が関係閣僚へ温室効果ガスによる影響の試算のやり直しを指示
・2009年10月19日 国内総生産(GDP)が05年から20年に約21%成長することを前提とした場合、日本の2020年の温室効果ガス排出量を国内対策だけで1990年比25%減らし、光熱費の上昇を見込んでも、世帯当たりの可処分所得は経済成長などに伴い05年に比べて76万円増えるとの試算が、前政権(麻生政権)による削減中期目標の検討過程でまとめられていたことが中日新聞社によって報道された。
・2012年1月 温室効果ガス25%削減の撤回を表明
・2012年12月28日、再び政権与党となった自由民主党の茂木敏充経済産業大臣は、民主党政権が掲げた「2020年の温室効果ガス排出量を1990年比25%削減する」とした国際公約について、見直す方針とした[10]。2013年1月25日には安倍晋三首相が、温室効果ガス25%削減目標について、ゼロベースでの見直しを指示した。
・2013年10月 安倍首相と閣僚との協議で、2005年(Co2=129300万トン)比で日本のCo2の排出量をマイナス6%-7%を目標という考えを示した。
●対象となりうる業界
  製紙業界・出版業界
  石油業界・鉄鋼業界
  自動車業界
  発電業界

<エネルギーミックス>
*2-1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20150408&ng=DGKKZO85414030Y5A400C1EA1000 (日経新聞 2015.4.8) 
自民、原発比率 明示せず 安定電源引き上げを提言 党内に異論も
 自民党原子力政策・需給問題等調査会の額賀福志郎会長は7日、首相官邸で安倍晋三首相に2030年の望ましい電源構成案を提言した。安定的に発電できる原子力、石炭火力、水力などの「ベースロード電源」の比率を東日本大震災前の水準である約6割に引き上げるよう求めた。原発の稼働停止で電気料金は上がっており、家計や企業の負担軽減をめざすが、党内には異論もある。首相は「安全第一を基本原則に、安定供給が大切だ。国民生活や中小企業が成り立っていく上で電力料金の抑制は必要だ」と強調した。提言はベースロード電源に関して「欧米の多くの国で、漸減傾向にあるが現状6割以上となっている比率について、国際的に遜色のない水準を確保すること」とした。
■「6割」確保の表現消える 当初はベースロード電源の比率を「6割程度」確保すると明記する考えだった。比率の明示はないが、原発が2割程度、石炭が3割程度になるのが念頭にあるため、党内の一部から異論が出て、最終的に玉虫色の表現になった。11年の震災の後に原発が止まり、液化天然ガス(LNG)や石油といった燃料の調達コストが高い発電が増えた。震災前より家庭向けの電気料金は19%、企業向けは28%上がった。原発の立地自治体では、関連産業への波及も含めて再稼働を求める声がある。原発の再稼働が容易ではないなか、石炭の比率が増すことへの懸念も一部に広がった。「温暖化ガスの排出が増えれば国際舞台で恥をかくのは首相だ」と閣僚経験者の一人は語る。欧米各国は将来的にベースロード電源の比率を下げるとの指摘もあり、国際的な潮流に逆行するとの声も上がった。太陽光や風力など再生可能エネルギーの比率を上げるべきだとの意見もあるが、再生エネについては固定価格買い取り制度による家計や企業の電気料金の値上がりも懸念される。政府は再生エネの比率を原発よりも高くする方針で、今は全体の10%程度の割合が25%程度まで増えれば、電気代への上乗せ額は15年度の年5688円では済まなくなる見通しだ。
■排出削減目標の前提に 30年の電源構成は、今年末の第21回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP21)に向け、政府が温暖化ガスの排出削減目標を決める前提にもなる。首相は6月のドイツでの主要7カ国(G7)首脳会議(サミット)で日本の目標を説明する考えだ。菅義偉官房長官は7日の記者会見で「党の提言もふまえ、できるだけ速やかにエネルギーミックス(電源構成)をまとめたい」と語った。政府内ではすでに原子力を2割以上とし、ベースロード電源で全体の6割程度を確保する方向で議論が進んでいる。

*2-2:http://news.goo.ne.jp/article/mainichi/business/communications/mainichi-20150408k0000m020116000c.html (毎日新聞 2015年4月7日) <再生エネ比率>宮沢経産相、環境省試算を批判
 宮沢洋一経済産業相は7日の記者会見で、2030年の総発電量に占める電源ごとの割合(電源構成)をめぐり、再生可能エネルギー比率を最大35%まで拡大できるとする環境省の試算を「技術的な制約やコストの課題など実現可能性について十分考慮されていない」と批判した。環境省が三菱総合研究所に委託した試算は、30年の再生エネ比率が24~35%になると推定した。35%の場合、電力大手10社がそれぞれの地域で独自に行っている電力の過不足調整を、東日本と西日本の2地域(沖縄を除く)に統合し、地方で余った再生エネ電力を都市部に流すことや、蓄電池を最大限導入することを前提にしている。一方、経産省は再生エネ比率を20%台半ばとする方向だ。当初は3割程度まで拡大できるか検討したが、電力会社間の送電線の増強に数兆円規模のコストがかかり、過不足調整の地域を二つにするなどの対策は実現性が低いと判断した。宮沢氏は会見で、環境省の試算を「電源構成を決める議論で用いることはなかなかできない」と一蹴した。環境省は地球温暖化対策を推進するため、09年度から毎年、再生エネの導入可能量を試算している。今回の試算も「電源構成の策定を目的にしたものではない」と説明。望月義夫環境相は同日の記者会見で「環境省として技術やコストは試算できていない」と認めつつ、「CO2削減を考え、(経産省と)折り合いをつけなくてはいけない。最大限(比率を)増やす方向で頑張りたい」と述べた。

*2-3:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/175082
(佐賀新聞 2015年4月9日) 県議選候補者アンケート(下) 玄海原発再稼働の地元同意範囲
■立地自治体だけ「不十分」4割 ■自民現職、明確な範囲答えず
 玄海原発(東松浦郡玄海町)再稼働を判断する際の「地元同意の範囲」について、佐賀県議選立候補者48人へのアンケートで、隣接や30キロ圏内の自治体への配慮を求める意見を含め、約4割が立地自治体(玄海町と県)だけでは不十分と回答した。統一見解で回答した自民現職27人(無所属1人を含む)は、明確な範囲は答えず、国の動向を注視する考えを示した。地元同意の範囲をめぐっては、7月の再稼働を目指す川内原発の場合、鹿児島県と立地する薩摩川内市だけで「同意」とされた。ただ、全国の原発では、30キロ圏内の自治体などから同意の範囲に含めるよう求める声も上がっている。アンケートでは、無所属や共産、社民現職ら8人が「不十分」と回答した。さらに「どちらともいえない」と答えた12人のほとんどが、「立地自治体だけの問題ではない」(自民新人)「30キロ圏内の意見も聞くべき」(公明)「説明や配慮が必要」(民主)「幅広い理解を得る必要がある」(無所属)など、何らかの対応が必要としている。原発に関する県独自の専門家組織は、8人が「必要」と答えた。「どちらともいえない」の7人の中には、「同じ判断基準の組織は不要だが、地域性に着眼した議論ができるならあっていい」「周辺県と連携した専門チーム」(自民新人)などの意見もあった。30キロ圏内の自治体が策定している避難計画の実効性に関しても、「計画通りにいくとは思えない」「現実的ではない部分がある」などの指摘が多く、改善を求める意見が多かった。今後の原発の存廃と玄海原発の再稼働では、自民現職が「安全性確保を前提に、重要なベースロード電源と位置づけ、原子力規制委が新規制基準に適合すると認め、住民理解が得られた原発は再稼働を進める」と政府方針を踏まえて考えを示した。全体では6割が「廃止すべきでない」とし、7割が再稼働を「容認」するだった。

*2-4:http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2015040401001563.html
(東京新聞 2015年4月4日) 英原発補助金めぐり提訴へ オーストリア、EU相手に
 【ウィーン共同】英政府の原発補助金支出を欧州連合(EU)が認めた決定に対し、憲法で原発建設を禁じるオーストリアが「市場競争をゆがめる」と反発、5月にもEU司法裁判所に無効確認の訴訟を起こす。英政府は「内政干渉」(キャメロン首相)と主張、対抗措置を警告したとも報じられ、両国の外交戦に発展しそうな気配だ。「われわれは誰の脅しにも屈しない。持続可能でも、再生可能でもない原発への補助金には明確に反対する」。オーストリア首相府の担当者は共同通信の取材にこう強調した。


PS(2015.4.10追加):*3のように、NHKは、「東電の福島第一廃炉責任者が、廃炉作業の見通しに関する悲観的な見通しを驚くほど率直に語った」とワールドニュースで海外には報道したが、国内ではそれを報道していない。そのため、NHKは海外向けには「報道した」というアリバイを作り、国民はその深刻でアホらしい内容を知らないのだ。これは、馬鹿者の悪知恵としか言いようがない。
       
        上              上           一方で2015.4.6日経新聞より
        上              上      2030年のエネルギーミックスで原発20%以上 
http://www3.nhk.or.jp/nhkworld/english/news/features/201503312108.html より

*3:http://financegreenwatch.org/jp/?p=50971 (Finance GreenWatch 2015年4月8日) 東電・廃炉責任者が悲観的な見通しを語るも、NHKは国内では報道せず
NHKが、東電・福島第一廃炉推進カンパニー社長・増田尚宏氏に、廃炉作業の見通しについて
インタビューしています。
「東電・廃炉推進トップが語る」 (NHKワールドニュース 2015/3/31)
http://www3.nhk.or.jp/nhkworld/english/news/features/201503312108.html
以下、増田氏の回答を引用します。
—–(引用ここから)——
(Masuda)
We have no idea about the debris. We don’t know its shape or strength.
We have to remove it remotely from 30 meters above, but we don’t have that kind of technology yet, it simply doesn’t exist.
溶融燃料についてはわからない。形状や強度は不明。30メータ上方から遠隔操作で取り除く必要があるが、そういった種類の技術は持っておらず、存在しない。
(Masuda)
We still don’t know whether it’s possible to fill the reactor containers with water.
We’ve found some cracks and holes in the three damaged container vessels,
but we don’t know if we found them all.
If it turns out there are other holes, we might have to look for some other way to remove the debris.
格納容器を水棺にするのが可能かどうかまだわからない。壊れた格納容器3基にヒビ割れや穴をいくつか見つけたが、それで全部かどうかわからない。ほかにもあれば、がれきを取り除く他の方法を見つけなければならない。
(NHK)
The government wants that work to begin in 2020.
I asked Masuda how confident he is that he hit the target. His answer was surprisingly candid.
政府は廃炉作業を2020年に始める意向だ。増田氏にそれについてどれだけ確信があるか尋ねた。彼の回答は驚くほど率直だった。
(Masuda)
It’s a very big challenge. Honestly speaking, I cannot say it’s possible.
But also I do not wish to say it’s impossible.
それは非常に大きなチャレンジだ。正直に言って、私はそれが可能だと言えない。でも不可能だとも言いたくない。
(NHK)
I also asked Masuda what he needs most for the operation to succeed.
増田氏に、成功させるためには何が一番必要かと聞いた。
(Masuda)
That’s hard to say. but probably experience.
How much radiation exposure can people tolerate?
What kind of information do the residents in the area need?There is no textbook to teach us what to do.
I have to make decisions every step of the way.
And I must be honest with you I cannot promise that I will always make the right decision.
言うのは難しいが、おそらく経験だろう。どのくらいの被ばく線量なら許容されるのか?周辺住民ににはどんな情報が必要なのか?どうすればよいか教えてくれる教科書はない。私は、ステップごとに決定を下さなければならない。正直に申し上げて、私が正しい決定をするということは約束できない。
—–(引用ここまで)——
増田氏は、極めて悲観的な見通しを語っています。NHKはこのインタビューを海外に報道したのに、国内では全く報道していません。国内の視聴者の受信料で番組を制作しているのに、都合の悪い情報は国内には一切報道しない。NHKは、東電の広報かと言いたい。極めて悪質な、ふざけた会社です。受信契約を解約する人が激増しているのは当たり前でしょう。


PS(2015.4.11追加):*4のとおり、電源別発電コストは、技術進歩や普及の程度で異なるため、名古屋大大学院教授、高村ゆかり氏の「原発など特定の電源を基幹電源と位置付ける考え方自体がなくなる」「ドイツでは安い再生エネが増えて電力の価格が下がっている」というのはそのとおりだと思う。また、環境省の試案根拠だけでなく、意図的な仮定と都合のよい不明事項が多すぎていかがわしい自民党、経産省、政府の試算根拠も明確に示すべきだ。

   
   2015.4.5NHKより     2015.4.8東京新聞より   2015.4.8    電気軽トラック 
                  原発がミサイル攻撃された場合  朝日新聞より   (実用化済)
*4:http://www.tokyo-np.co.jp/article/economics/news/CK2015041102000126.html
(佐賀新聞 2015年4月11日) 「原発比率2割」異論続々 有識者「事故なかったような議論だ」
 経済産業省は十日、二〇三〇年に目指す再生可能エネルギーや原発など、電源種類別の発電比率を検討する有識者会合を開いた。自民党と経産省が原発で二割程度を賄うことを念頭に水面下で比率案を調整していることに対し、出席者からは「福島(の原発)の事故がなかったかのような議論だ」などの異論が相次いだ。自民党の額賀福志郎元財務相は経産省と足並みをそろえて原発、石炭火力、水力、地熱の「ベースロード(基幹)電源」を、現在の四割から震災前の六割程度に戻す提言を七日に安倍晋三首相に渡した。これは原発で二割程度を積み増すことが念頭にある。太陽光など再生可能エネルギーは、20%台半ばに抑える方向だ。十日の会合では、この提言に対し、東京理科大の橘川武郎(きっかわたけお)教授が、あらためて「将来に向けて大きく考え方を変え、再生エネを30%まで高めて原発は15%に抑えるべきだ」と主張した。また名古屋大大学院の高村ゆかり教授は、欧米では再生エネの増加とともに基幹電源の比率が減少している傾向を解説。「原発など特定の電源を基幹電源と位置付ける考え方自体がなくなりつつある」と話し、基幹電源の名の下に原発を重視する自民党と経産省をけん制した。その上で「ドイツでは安い再生エネが増えて電力の価格が下がっている」とも指摘した。環境省は三〇年に再生エネの比率を最大35%まで高められると試算したが、自民党と経産省は実現性に否定的だ。これについて全国消費者団体連絡会の河野康子事務局長は環境省の出席者に「(試算の)根拠を示してほしい」と要望。経産省に対して電源種類別の発電比率を検討する際の検討材料から環境省の試算を安易に外さないよう、くぎを刺した。次回の会合で経産省は基幹電源についての考え方を整理し、環境省は試算の詳しい根拠を示す。


PS(2015年4月12日追加):*5のとおり、原子力、石炭、水力、地熱をベースロード電源とし、それを隠れ蓑にして原発比率を高めようという意図がありありだ。しかし、「発電コストが安い」という理由で原子力をベースロード電源に入れるのなら、今後、原発に税金で補助金を出したり、フクイチ以後の事故に国の責任で補償したりすることは無用であり、他の電源と同様、すべて原発企業の責任で行うべきである。また、「どの電源による電力を使うか」については、このブログの2011年6月21日に記載したとおり、ユーザーが正しく選択できるよう、電源毎に別会社にして正確に原価計算・利益計算を行うべきである。

*5:http://mainichi.jp/opinion/news/20150412k0000m070110000c.html
(毎日新聞社説 2015年4月12日) 電源構成 原発回帰が透けている
 あの原発過酷事故をなかったことにしたいのだろうか。経済産業省が2030年の日本の電源構成について、「ベースロード電源6割」を打ち出した。自民党の調査会も同様の提言をまとめている。政府によればベースロードは発電コストが安く安定して発電できる電源で、原子力、石炭、水力、地熱を指す。経産省は現時点で原発比率を明示していないが、水力・地熱が簡単には拡大できず、石炭は温暖化対策の観点から抑制が必要であることを考えると、引き算で「原発20%以上」となる可能性が高い。この数字が原発回帰を示していることは明らかだ。事故後に決まった「原則40年廃炉ルール」を守れば、国内の全原発を再稼働させたとしても30年の原発比率は15%程度。20%以上とするには、多くの老朽原発の稼働期間を60年まで延長するか、原発の建て替え・新増設が必要になる。統一地方選への影響を考慮し、ベースロードを隠れみのに原発比率を決めようとしているのだとしたら、姑息(こそく)な話だ。そもそも、「ベースロード6割」に特段の意味があるわけではない。欧米では今後、その割合が低下していくとの予測や、ベースロード電源という考え方自体が時代遅れとの指摘もある。欧米では、まず再生可能エネルギーを優先的に活用する流れができてきている。ひとたび事故が起きれば何年も動かせない原発を、「安定供給できる電源」と言えるのかという疑問もある。経産省は再生エネの比率についても20%台半ば(水力を含む)を検討しているというが、これも政府方針の「最大限の導入」からはほど遠い。太陽光や風力の拡大には送電網の増強などに高コストがかかるためというが、まずは、既存の送電網を再生エネのために有効活用できるよう制度を改善することが先決だ。将来に向けては、事実上破綻している核燃料サイクルや、温暖化対策に逆行する石炭火力への投資分を送電網の拡充にふり向けられる仕組みも考えるべきだ。負担が増えても再生エネを選びたい国民はいるはずで、それを可能にするためにも透明性のある議論が不可欠だ。環境省は30年の再生エネの割合を最大35%まで拡大できるとの委託研究の試算を公表している。この試算をめぐっては技術的制約やコストなどの検討が十分かについて見方がわかれているが、経産省は門前払いするのではなく、公の場で議論してほしい。原発にしても再生エネにしても、正面からの議論を避けているとすれば、政府が決める電源構成に国民の理解は得られない。


PS(2015年4月24日追加):このように、「発電時に二酸化炭素を出さない」という理由をつけて、温室効果ガス削減の名目で、原発の割合を2030年代に20~22%(東日本大震災前と大差なし)とするのは、「公害を出さず、国民の生命・財産を守る」という最も重要な意欲に欠けており、頭が休んでいる。

  
        *6より             経産省上       2015.4.23NHK  
                (LNGをベースロード電源に入れないのもおかしい)

*6:http://digital.asahi.com/articles/DA3S11721337.html
(朝日新聞 2015年4月24日) 温室ガス削減「25%程度」 政府原案提示へ 2030年目標
 政府は23日、2030年の温室効果ガスの削減目標について、現状から25%程度の削減を目指して調整に入った。安倍晋三首相の指示も踏まえて、近く数値を定める。前提となる電源構成(エネルギーミックス)の割合は、原発を「20~22%」、太陽光など再生可能エネルギーを「22~24%」とする方針だ。
■電源構成、原発20~22%
 関係閣僚がこの日、首相官邸に入って協議した。首相の指示を経た後の週明けにも、環境省と経済産業省の専門家会合に政府原案として提示し、6月のG7サミット(主要7カ国首脳会議)までに決める。環境省と経産省で調整している目標案によると、前提となる30年の電源構成は、発電時に二酸化炭素を出さない原発と再生エネの合計で発電量の44%、排出量が少ない天然ガス火力が27%、石炭火力が26%、石油火力が3%。これらにより、エネルギー起源の二酸化炭素排出量は13年比で計算すると20%程度の削減になる見込みだ。ここから25%程度の削減を目指して、森林による二酸化炭素の吸収や代替フロン対策などを積み上げることなどで調整する。これまで、経済への影響を心配して当初10%台の削減としていた経産省と、国際社会で責任を果たすには30%近い削減が必要だとする環境省で主張に開きがあった。20%台半ばであれば、実現可能で意欲的な数字になると判断した模様だ。削減の基準となる年については従来の05年とする案と、原発停止後に排出量が増えた13年とする案があるが、削減率の差は0・6ポイント程度で、国際交渉への影響を見定めながら最終判断する。国際社会は、京都議定書にかわる、すべての国が参加する新しい枠組みを作るため、今年末にパリで開かれる国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP21)での合意を目指している。新しい枠組みでは、各国が温室効果ガス削減などの自主目標案を事務局に登録することになっている。すでに提出している主な国・地域のほとんどは30~50%の範囲にあり、この中では日本の目標は見劣りしかねない。

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2014.1.6 原発には不向きな日本の位置と原発の廃炉について - 川内原発、玄海原発の事例を中心として (2015.1.8追加あり)
    
  地震発生箇所  日本近海の海図  マリアナ海溝付近    *2-1より

(1)地球上の日本の位置
 上の地図のとおり、プレートが押し込まれて無理な力がかかった時に地震が起こるため、プレートが潜り込む近くで地震が多発している。そして、隣の海図を見れば、プレートが押し込まれて盛り上がった場所が日本列島と島々になっており、このような場所に原発を作ったのがそもそも無謀だったのだろう。もう少し海の深さを正確に測定し、海底の地形が正確にわかる地図があれば、それを時系列で分析することによって、地球の動きを知ることもできると考える。

 また、*2-1に書かれているように、2014年8月3日午後0時半前、鹿児島県屋久島町の口永良部島の真ん中にある新岳が34年ぶりに噴火して火砕サージが通り、今でも噴火警戒レベル3だそうである。気象庁が24時間監視する全国47火山のうち、警戒レベル3なのは、他に2014年9月27日の噴火で戦後最悪の被害が出た御嶽山と、年に千回以上噴火する桜島(鹿児島県)だけだそうだが、新岳噴火後、島を視察した国会議員はゼロとのことだ。

(2)原発立地自治体の原発依存脱却の必要性とその萌芽は既にあること
 *1のように、九電玄海原発(佐賀県玄海町)で原子炉1号機が廃炉になると、原発の地元では関連交付金や税収の減少、原発労働者の縮小に伴う消費の減少で、少なくとも年間約13億円の経済損失が見込まれると、玄海町と唐津上場商工会が試算したそうだが、これまで電源立地地域対策交付金などで、薬草の研究、鯛やフグの養殖、西九州自動車道に通じる道路建設などを行い、ぼーっとしていたわけではないため、ここでその真価を発揮すべきである。

 そのため、水素燃料や自然エネルギー関係の工場、新聞社の印刷所などを誘致し、全力を挙げて普通の産業で成り立つようにすべきだ。今は、変化の時であるだけにチャンスも多いので、地元の旅館や飲食店は原発需要に頼らず、これまで育んだ技術や資産を活かして、6次産業化に向けての食品加工やサービスに参入していくのがよいと思う。

 また、原発の廃炉による減収を穴埋めするためには、「廃炉交付金」の創設を国に求めるよりも、日韓トンネルを実現してもらって、外国人労働者を受け入れ、産業振興した方が将来に繋がると考える。

(3)川内原発の再稼働はあり得ない
 このような場所に日本列島があり、口永良部島、桜島、西ノ島、御嶽山が次々と噴火しているのに、*2-2のように、「川内原発の万全の再稼働へ国は覚悟示せ」などというのはあり得ない話だ。火山や地震についての考察が不足し、避難する場所も避難方法もない状況で、原子力規制委員会の安全審査に合格したのなら、その基準と審査に問題があるにすぎず、無責任にも程があるのである。

 そのため、これ以上、「原発再稼働ゼロでは電気料金が上昇し、国民生活や経済に悪影響が及ぶ」などという、結果ありきの短期的で自己中心的な暴論は止めてもらいたいのだ。

(4)日本近海の地形と高レベル放射性廃棄物の最終処分場について
 *3のように、北西太平洋のマリアナ諸島の東、北緯11度21分、東経142度12分に位置する世界で最も深い海溝がマリアナ海溝で、水面下10,911mの地球上で最も深い海底の凹地であり、北東端は伊豆・小笠原海溝だそうである。海底の地形が正確にわかれば、高レベル放射性廃棄物は、これ以上出さないことを条件に、壊れない石と鉛の箱に入れて、スポットで深くなっており水の流れがない海底の凹地に、正確に沈める方法もあるかもしれない。

<玄海原発について>
*1:http://qbiz.jp/article/53005/1/
(西日本新聞 2015年1月5日) 玄海廃炉で年13億円損失 町、地元商工会が試算
 今年10月に稼働40年を迎える九州電力玄海原発(佐賀県玄海町)で原子炉1号機が廃炉となった場合、地元では関連交付金や税収の減少、原発労働者の縮小に伴う消費減少で、少なくとも年間約13億円の経済損失が見込まれることが分かった。九電が1号機の廃炉方針を固める中、玄海町と唐津上場商工会が試算した。玄海町の本年度歳入(当初額)は100億8千万円で玄海原発1〜4号機に絡む原発関連交付金と九電から徴収する固定資産税が総額の66・8%を占める。潤沢な「原発マネー」で大型事業にも投資してきた。町財政企画課によると、廃炉で影響を受けるのは前々年度の発電実績で金額が決まる「電源立地地域対策交付金」。2015年度に廃炉が決定した場合、翌年度から交付対象外となるため、15年度の約17億3600万円が16年度は約13億1300万円(前年度比約4億2300万円減)に落ち込む。さらに、発電量が消費量の1・5倍を超える都道府県に国が支出し、市町村に配分される「県電源立地地域対策補助金」や核燃料に課税して県が交付する「核燃料税交付金」、原発の「固定資産税」も減額する可能性があるという。一方、地元の旅館や飲食店も影響を受ける。13カ月に1度、原発1基当たり約千人の臨時作業員が訪れる定期検査が減るためだ。唐津上場商工会は、宿泊費と食費で年間約4億7千万円、地元雇用の作業員給与約4億850万円の損失が生じると試算した。古賀和裕会長(59)は「酒代やクリーニング代、交通費も含めれば損失はさらに膨らむ」と危機感を訴える。実際には、廃炉が決定しても原子炉解体作業に伴う労働需要が発生するが「廃炉特需」は一時的で、長期的には大きなマイナスになるという。21年には2号機も稼働40年を迎える。町は減収を穴埋めするため「廃炉交付金」の創設を国に求め、玄海原発に保管された使用済み核燃料にも町独自で課税する制度を検討。岸本英雄町長は「1号機に加え、2号機も廃炉になれば町の財政は立ち行かない。国の支援が必要だ」と話している。
●依存から脱却を
 清水修二福島大学特任教授(地方財政論)の話 原発を増やしてきた国には廃炉に伴う地域の影響を軽減する責任がある。原発の立地自治体は廃炉に備え、原発依存の構造から脱却する戦略が求められる。今のうちに原発関連交付金の使途を見直すなど、自立を模索するべきだ。

<川内原発について>
*2-1:http://qbiz.jp/article/51432/1/ (西日本新聞 2014年12月9日) 見捨てられた火山島 検証「口永良部噴火」 観測機は全滅、国会議員視察もゼロ
 黄土色の山肌に転がる無数の岩と、山頂から絶えず上がる噴煙が、約3キロ離れた本村港からくっきり見える。「緑の火山島」と防波堤の案内板がうたう鹿児島県屋久島町の口永良部島(くちのえらぶじま)。一面に木々が生い茂っていたという新岳を今、想像するのは難しい。「海岸線までずーっと木が枯れとるでしょうが。火砕サージ(火山ガスや灰がまじった火砕流の一種)が通った跡よ。元に戻るのに数十年かかる」。島でただ一人の町職員、川東久志さん(54)がつぶやいた。8月3日午後0時半前、島の真ん中にある新岳が34年ぶりに噴火した。現在も噴火警戒レベル3(入山規制)。火口から半径2キロは立ち入り禁止のまま。気象庁が24時間監視する全国47火山のうち、警戒レベル3が出されているのは他に、9月27日の噴火で戦後最悪の被害が出た御嶽山(おんたけさん)=長野、岐阜県=と、年に千回以上噴火する桜島(鹿児島県)だけだ。屋久島から北西に約12キロ。136人(11月末現在)しかいない島で、火山は最大の観光資源だった。「一歩違えば、ここは御嶽山より先に全国に注目されたかもしれなかったんですよ」。民宿を営む貴船森さん(42)はこう話す。規制が一切ない警戒レベル1(平常)から突然、噴石を伴う噴火があったのは日曜日。土曜日の正午前に噴いた御嶽山とほぼ同じ状況だ。死者57人行方不明者6人の御嶽山に対し、口永良部島は負傷者ゼロ。その背景には、台風の接近で島へのフェリーが欠航し、新岳に登る予定だった観光客が来なかったという偶然があった。
   ◆    ◆
 「本当なら、あの時間は山頂で昼ご飯を食べていたはずです」。鹿児島県屋久島町口永良部島(くちのえらぶじま)。噴火当日、東京の高校生12人と新岳に登る予定だった民宿経営の貴船森さんは、フェリーが来なかったことで九死に一生を得た。8月3日午後0時24分。新岳火口から約2・2キロの集落にある民宿の庭にいた。バリバリバリバリ−。山を見ると空に上がった煙が斜面を駆け下りてきた。「あっ火砕流!」。宿には地域活性化を研究中の大学生グループが滞在中だった。「おまえらすぐ出てこい」。軽ワゴン車に家族や学生10人がぎゅうぎゅう詰めで坂を下った。バックミラーに灰色の煙が迫る。途中、走って逃げる数人を見かけたが、車に乗せる余裕はなかった。煙は坂をまっすぐ下っていった。「煙に巻かれた人は亡くなったと思っていましたよ」。島には警察官も消防士も医師もいない。住民を守るのは貴船さんも所属する消防団だけだ。火口から約1・5キロ地点では、噴火予測に使う地震観測機の設置工事中だった。死亡したと思っていた作業員から電話が鳴った。「助けてくれ」。山に向かうと、灰まみれの5人がいた。前後の区別もつかず目だけが真っ赤。視界がなくなり、横一列で手をつなぎ一歩ずつ逃げてきたという。「おれ、生きていますよね」。作業員はうつろな表情で何度も繰り返した。工事現場の数百メートル先には、数十センチ大の噴石がいくつも転がっていた。
   ◆    ◆
 11月15日。島には福岡管区気象台の職員2人の姿があった。火山ガスの放出量などを計測するため、チャーターした漁船で山の風下側を何度も往復する。「こうして地道にやるしかないんです」と職員は話した。気象台が火口付近に設置していた観測機は、噴火でほぼ全滅。安全上の理由から代替機を設置できず、観測は月に1度の麓からの調査に頼る。気象台も噴火の前兆現象を把握するのは困難と認める。噴火から4カ月がたつ今も、島は非常事態にある。コンクリート製造工場が立ち入り禁止区域に入り、島の経済を担う公共工事も観光客も止まったまま。小中学校では教員の車を校舎脇に止め、すぐに子どもを避難させられる態勢を取る。11月14日に実施した噴火後初の避難訓練では、避難場所を従来より新岳から遠くに変更した。「火山観測の態勢を見直す」「災害に強いまちづくり」。衆院選の各政党の公約には力強い言葉が並ぶ。安倍晋三首相は公示前、長野県北部地震の被災地を訪れた。だが、新岳噴火後、島を視察した国会議員はゼロ。有権者が100人ほどの島には選挙中に候補者が来る予定もない。「見捨てられとるんよ」と港のそばに住む松本章さん(70)。火山噴火予知連絡会は11月末、火山の観測強化を求める提言を出した。国も対策に乗り出したが、動きはあくまで御嶽山(おんたけさん)の災害を受けたものだ。「犠牲者が出んと国は動かん。口永良部で噴いたことを政治家は知っとるんやろうか」。島民の視線は冷めている。

*2-2:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20141108&ng=DGKKZO79450040Y4A101C1EA1000 (日経新聞社説 2014.11.8) 川内原発の万全の再稼働へ国は覚悟示せ
 九州電力川内原子力発電所1、2号機の再稼働に地元鹿児島県の伊藤祐一郎知事が同意した。原発のある薩摩川内市も同意している。同原発は9月に原子力規制委員会の安全審査に合格しており、これで再稼働の要件を満たす。原発の稼働ゼロが長引き、電気料金が上昇して国民生活や経済に悪影響が及んでいる。川内原発は新たな規制基準を満たして再稼働する最初の原発になり、稼働ゼロが解消される意義は大きい。一方で、安全確保に万全を期すため、国や電力会社にはやるべきことがまだ多い。再稼働に同意した地元自治体も、住民の安全を守る責務を負うことになる。まず規制委は工事計画の審査など残った手続きをぬかりなく進めてほしい。九電もより入念に機器の点検などにあたるのは当然だ。事故を想定し、住民を安全に避難させる体制づくりでは自治体の責任が大きい。川内の周辺9市町は防災計画をつくり、国も専門家を派遣するなど支援を強めてきた。だが高齢者らが安全に避難できるかなど、なお懸念が残る。避難計画が机上の案にならないよう、自治体が防災訓練を積み、住民の不安を拭うことが大事だ。国も事故時の指揮系統がきちんと機能するか、点検すべきだ。地元だけでなく国民全体に向けても、再稼働がなぜ必要か、政府が丁寧に説明してほしい。宮沢洋一経済産業相は川内原発の地元を訪ね、理解を求めた。だが安倍晋三首相は「安全が確認された原発を再稼働させる」と訴えつつ、それ以上踏み込んでいない。政権内には「首相が安全を保証すると政治判断になり、適当でない」との意見があるという。確かに、原発の安全性は規制委が専門的な見地から判断すべき問題だ。一方で、再稼働には国民の不安も根強い。ここは首相が前に出て、事故の再発を防ぎ、万が一起きても最小限に食い止める決意を示すべきではないか。川内のほかにも電力会社10社が18原発の安全審査を申請し、うち数基の審査は終盤に入っている。だが政府が4月に決めたエネルギー基本計画では、将来の発電量に占める原発の比率や需給見通しなどがあいまいなままだ。規制委はほかの原発の安全審査を迅速に進めてほしい。同時に政府としても、中長期的に原発にどの程度依存するのか、位置づけをもっと明確に示すときだ。

<日本近海の地形と高レベル放射性廃棄物の最終処分場>
*3:http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9E%E3%83%AA%E3%82%A2%E3%83%8A%E6%B5%B7%E6%BA%9D (フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』) マリアナ海溝
 マリアナ海溝の位置マリアナ海溝(マリアナかいこう、Mariana Trench)は、北西太平洋のマリアナ諸島の東、北緯11度21分、東経142度12分に位置する、世界で最も深い海溝である。太平洋プレートはこのマリアナ海溝においてフィリピン海プレートの下にもぐりこんでいる。北東端は伊豆・小笠原海溝、南西端はヤップ海溝に連なる。マリアナ海溝の最深部はチャレンジャー海淵(チャレンジャーかいえん、Challenger Deep)と呼ばれている。その深さについてはいくつかの計測結果があるが、最新の計測では水面下10,911mとされ、地球上で最も深い海底凹地(海淵)である。これは海面を基準にエベレストをひっくり返しても山頂が底につかないほどの深さで、地球の中心からは6,366.4km地点にある。(以下略)


PS(2015.1.8追加):福井県には原発が林立しており危険だが、それは、日本海側は太平洋側と違って新幹線などの基礎的インフラ整備が遅れ、他産業が発展しにくかったことにも原因がある。しかし、製造業がアジアを相手として輸出する時代になると、日本海側の方が輸送コストが安くて有利になるため、原発を廃炉にして新幹線などへの投資を進め、他産業で成り立つようにするのがよいと考える。

*4:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20150108&ng=DGKKZO81699380Y5A100C1EE8000 (日経新聞 2015.1.8) 北陸新幹線の福井延伸、20年にも
 政府・与党は建設を進めている北陸新幹線で、福井駅の早期開業に向けた検討に入った。すでに同県内にある敦賀駅の開業時期を現行計画から3年早め、2022年度とする方針を決めている。新幹線の開業効果をいち早く浸透させるため、与党側は途中駅である福井の開業をさらに2年前倒しするよう求めている。ただ早期開業には新たな財源が必要で、実現には曲折がありそうだ。14日にまとめる政府・与党の合意文書に福井駅の早期開業を検討する方針を盛り込む。与党のプロジェクトチームで議論を進め、今年夏までに結論を得る予定だ。福井駅の周辺部は北陸新幹線の延伸に先駆けて、09年に整備を終えている。与党側は既存駅を有効活用するためにも同駅の開業を急ぎ、新幹線の開業効果を高めるべきだと主張。20年まで、さらに2年早めるよう求めている。ただ福井を一時的に終着駅とするには駅近くに車両基地を建設する必要がある。


PS(2015.1.8追加):*5では、「過酷事故時の住民避難計画は、昨年12月5日時点で策定を終えたのが64%であり、4割弱の49市町村がなお未策定」としているが、策定済とされているものも、机上の空論だったり、いつ元の場所に戻れるかは見当もつかなかったりする。そのため、そうまでして原発に固執する理由がないのだ。

*5:http://www.nikkei.com/article/DGXLASFS05H1O_V00C15A1PP8000/?dg=1
(日経新聞 2015/1/6) 原発事故の避難計画、周辺自治体の4割弱が未策定
 政府は原発事故の発生に備えて周辺自治体がつくる住民避難計画について、昨年12月5日時点の策定状況をまとめた。計画づくりが必要な全国の原発から半径30キロ以内にある135市町村のうち、策定を終えたのは64%の86市町村で、4割弱の49市町村がなお未策定のままだった。昨年8月の前回調査と比べると、北陸電力の志賀原発(石川県)の周辺にある富山県氷見市と、東京電力の柏崎刈羽原発(新潟県)が立地する同県刈羽村が10月下旬に計画づくりを終え、策定済みが2市村増えた。政府は避難計画づくりが必要な自治体を13地域に分類して策定状況を集計している。九州電力の川内原発(鹿児島県)や、関西電力の高浜原発(福井県)周辺など8地域ではすべての市町村が計画の策定を終えた。東北電力の女川原発(宮城県)、中部電力の浜岡原発(静岡県)、日本原子力発電の東海第2原発(茨城県)周辺では策定を終えた市町村がいまだにゼロのままだった。柏崎刈羽でも、対象9市町村のうち策定済みなのは同原発が立地する柏崎市と刈羽村のみで、遅れが目立っている。


PS(2015.1.8追加):上のような状況であるにもかかわらず、九電社長は、ずいぶん一方的だと思う。それを地元住民の誰が喜ぶのだろうか?また、2号機は、廃炉の方向に進めるのだろうか?

*6:http://www.nikkei.com/article/DGXLASFB08H3Y_Y5A100C1EAF000/
(日経新聞 2015/1/8) 九電社長「玄海3、4号機の15年中再稼働目指す」、町長に伝達
 九州電力の瓜生道明社長は8日、佐賀県玄海町の岸本英雄町長と会い、玄海原子力発電所3、4号機(佐賀県玄海町)の今年中の再稼働を目指す方針を伝えた。原子力規制委員会による玄海3、4号機の安全審査は終盤に入っている。岸本町長は瓜生社長に対して、改めて玄海3、4号機の早期の再稼働を求めた。瓜生社長は今年10月に運転開始から40年を迎える玄海1号機に関して、廃炉を検討していることを岸本町長に伝えたこともわかった。

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2014.11.19 赤サンゴの中国密漁船に対する日本の対応とサンゴ養殖の可能性について
     
              小笠原諸島における中国船のサンゴ密漁
(1)サンゴ密漁船に対する日本政府及び日本人の態度
 *1-1のように、小笠原諸島周辺海域に中国のサンゴ密漁船が押し寄せたが、日本は、「一時200隻を超えた漁船の一部に撤退の動きがあり、12日には117隻まで減って、再び増加した」等と言って、領海内や排他的経済水域(EEZ)内では断固として違法操業をさせないという意志が見えなかった。

 そして、これを「大人の対応」と呼ぶ人もいるが、それは何もできない自分を慰めている言葉にすぎない。政府要人が、慰安婦問題を蒸し返して否定したり、靖国神社参拝をしたりして、多くの外国に「日本は・・」と思われるよりも、日本の排他的経済水域(EEZ)内や領海内では断固として環境破壊や密漁を取り締まるという態度を貫いた方が国際法に照らして諸外国にも認められるにもかかわらず、過去のことでもめて現在から未来に係る大切なことを黙認せざるを得ない状況になっていたわけである。

 一方、*1-2のように、中国政府は漁船に帰港を指示しているそうで、そのための外交努力はあったのかもしれないが、すでにサンゴを獲りつくした後であるため、この海域の中国漁船が最盛期に比べて半減し、次第に姿を消していくのは必然である。漁船の拠点とされる福建・浙江両省で当局による取り締まりが強化されたとしても、サンゴは台湾に水揚げして代金をもらった後であるため関係なく、ボロ船はサンゴを売った後に沈めても売っても元が取れるのではないだろうか。そのため、中国漁船が半減したのを喜んでいるのは、あまりにもお人好しすぎる。

(2)サンゴ密漁船に対する中国政府の対応
 一方、*2-1、*2-2のように、小笠原諸島の周辺海域などで希少な「宝石サンゴ」を中国漁船が密漁している問題について、浙江省象山県の漁業管理当局の幹部が、2014年11月11日に、同県の漁港からサンゴ漁船数十隻が日本の海域に出ていることを認め、「戻れば厳しく処分し、再発防止のため漁船を破壊する」と明言したそうだ。

 しかし、①サンゴを採取した密漁船がそのまま漁港に戻るわけがない ②そのため浙江省象山県での漁業管理当局の摘発は困難である ③漁船からサンゴ採取の網が見つかれば、漁船を押収して破壊する措置を取るとしても、漁船や漁具も捨てることができる ④漁民がサンゴを所有していれば刑事処分を行うとしても、台湾で水揚げすれば浙江省象山県に戻る時には所有していない などのため、この事件は、日本の排他的経済水域(EEZ)や領海内で起こっている以上、これこそ日本の海上保安庁が現行犯逮捕しなければならない重要な問題だと考える。

(3)サンゴ礁と環境
    
                  小笠原諸島の自然と海
 海上保安庁は、漁船の行動や漁具から違法操業であることを証明できるにもかかわらず、船が足りないことを理由に、密漁船の船長や乗組員を積極的に逮捕しようとはせず、国会も罰金を引き上げる検討しかしなかった。これは、国際会議の最中で、中国政府ともめてはならない時期だったとしても、異常だ。

 また、沖縄県辺野古で自然を破壊してジュゴンの住む海を埋め立てるために世論を誘導しているメディアであれば仕方のないことではあるが、密漁のみを問題として、(世界遺産である)小笠原諸島の生物や自然保護に言及するメディアが殆どなかったことにも、メディアの見識の低さを感じた。

(4)サンゴも養殖して輸出しては?
      
            赤サンゴ製品(中国で好まれそうな色)
 しかし、私もピンクの数珠を持っていたので見たところ、サンゴ製品だった。他にも、写真のようにネックレス、ペンダント、指輪、ブローチ、帯留めなど、赤から白までのさまざまな明度のサンゴ製品があり、美しい。そのため、養殖して輸出する価値がありそうだ。例えば、有明海では、有害生物として邪魔者扱いしていたクラゲを捕獲し、細かく切って干しクラゲにして中国に輸出したところ、思わぬ収入源となっている。

 そのため、真珠貝に赤サンゴの遺伝子を組み込んで赤い真珠を作ったり、サンゴそのものを赤色光から白色光までのさまざまな色の光の下で養殖して目的の色のサンゴを作り、装飾品用として輸出すればよいと考える。既に、ユーグレナ(ミドリムシ)の大量生産に成功しているため、養殖サンゴの餌は安価に手に入るだろう。

     
               サンゴ製品(日本で好まれそうな色)
<日本の対応>
*1-1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20141114&ng=DGKKASDG14H18_U4A111C1CC0000 (日経新聞 2014.11.14) サンゴ密漁船145隻に 小笠原海域で再び増加
 小笠原諸島周辺などの海域に中国のサンゴ密漁船とみられる外国漁船が多数押し寄せている問題で、太田昭宏国土交通相は14日の閣議後の記者会見で、同海域で13日に145隻の漁船が確認されたことを明らかにした。一時200隻を超えた漁船の一部に撤退の動きがあり、12日には117隻まで減っていたが、再び増加した。海上保安庁によると、小笠原諸島の父島や母島の周辺で134隻、伊豆諸島南部の鳥島周辺などで11隻が確認された。いずれも排他的経済水域(EEZ)内だった。

*1-2:http://mainichi.jp/select/news/20141114k0000m040169000c.html
(毎日新聞 2014年11月14日) サンゴ密漁:漁船、週内に撤退か 中国政府が帰港指示
 東京都の小笠原諸島近海などで中国漁船によるサンゴ密漁が横行し、地元漁業に深刻な影響を与えている問題で、中国政府が漁船に帰港を指示していると日本側に通告してきたことが13日、政府関係者への取材でわかった。この海域の中国漁船は最盛期に比べて半減しており、中国側の指示がすでに実行に移されたとみられる。指示が徹底されれば、今週中にも小笠原周辺から中国漁船が姿を消す可能性がある。政府関係者によると、中国政府から、今週末にかけて漁船を福建省や浙江省にある母港に帰港させ、地元の公安当局が捜査を開始すると外交ルートを通じて連絡があったという。当局は多数の漁船を所有するオーナーらに帰港を指示したとされ、これを受け入れた漁船が中国本土に向けて移動を開始した可能性が高い。この問題を巡っては8日、中国・北京での日中外相会談で岸田文雄外相が対策の強化を求め、王毅外相が「必要な措置を取っている」と応じていた。10日の首脳会談でも安倍晋三首相が習近平国家主席に「前向きな対応」を要請。漁船の拠点とされる福建・浙江両省では当局による取り締まりが強化されている。中国が領有権を主張する沖縄・尖閣諸島周辺では、中国政府が関与しているとみられる公船や漁船の領海侵入が常態化しているが、今回のような通告をしてきたことはない。これに対し、今回の外交ルートを通じた通告は自国の船の違法操業を認めた形となっており、ある関係者は「小笠原近海でのサンゴ密漁に中国政府が関与していない証拠と捉えることもできる」と分析している。海上保安庁による上空からの調査では、小笠原10+件諸島周辺などでは先月30日に過去最多の212隻の中国船が確認され、活動海域も伊豆諸島南方まで拡大したが、その後は減少に転じた。日中外相会談後の10日には、141隻と大幅に減少し、約半数が中国本土に向かって西に航行しているのが確認された。12日は117隻で先月末に比べ半減した。

<中国の対応>
*2-1:http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20141112-00050018-yom-int
(Yahooニュース《読売新聞》 2014年11月12日) 「戻れば漁船を破壊」サンゴ密漁に中国当局
 小笠原諸島の周辺海域などで希少な「宝石サンゴ」を中国漁船が密漁している問題で、浙江省象山県の漁業管理当局の幹部は11日、読売新聞の取材に応じ、同県の漁港からサンゴ漁船数十隻が日本の海域に出ていることを認め、「戻れば厳しく処分し、再発防止のため漁船を破壊する」と明言した。ただ、サンゴを採取した密漁船は漁港に戻ることは少ないとみられ、幹部は「摘発が極めて難しいのも事実だ」と語った。実際にどこまで厳しく取り締まれるかは不透明だ。同当局によると、地元漁民の証言から、日本の海域へサンゴ漁に向かった漁船がいることを確認した。今後、戻った漁船からサンゴ採取の網が見つかれば、漁船を押収して破壊する措置を取る。漁民がサンゴを所有していれば、刑事処分を行う方針だ。今月7日、浙江省政府が緊急会議を開き、サンゴ密漁船を厳しく取り締まることを確認している。

*2-2:http://mainichi.jp/select/news/20141115k0000e040219000c.html
(毎日新聞 2014年11月15日) サンゴ密漁:中国が帰港漁船取り締まりへ 監視衛星で追跡
 東京都の小笠原、伊豆両諸島周辺で横行する中国漁船のサンゴ密漁問題で、中国公安当局は近く、帰港した密漁船を対象に大規模な取り締まりに乗り出す。中国側は日中外相会談(8日)などで「必要な措置を取る」と明言しており、成果をアピールする狙いがあるとみられる。ただ、帰港前に洋上で密売業者との取引を済ませてしまえば、証拠に乏しいとして摘発が困難になる可能性があり、実効性は不透明だ。日本政府関係者によると、中国当局はサンゴ密漁船の拠点の一つとされる浙江省象山で、小笠原近海から帰港するサンゴ漁船を集中的に摘発する。中国当局は監視衛星などを使い、中国本土に戻る船団の動きを正確に把握している。外交ルートを通じて日本側が提供した密漁船の特徴なども参考にするとみられる。中国政府は既に漁船オーナーに密漁船を帰還させるよう指示しており、今週末以降、数十隻がそれぞれの母港に戻ると予想されている。一方で、密漁船の多くは船名などを偽装し、宝飾品になる「アカサンゴ」は洋上で密売業者に売りさばかれてしまうケースが多いとされる。このため、密漁の痕跡を残して帰港する漁船は少ない可能性があり、多数の立件は難しいとの見方もある。サンゴ漁船には、海底を根こそぎさらう専用の網が装備されている。浙江省と並ぶ拠点とされる福建省の海洋漁業庁は今月11日、漁船の装備などに関する大規模検査を実施すると告知。さらに12日に地元メディアが伝えた情報によると、同省福安市の検察当局は沖縄・尖閣諸島周辺などでアカサンゴを密漁したとして4人を起訴したという。ただ、中国政府の働きかけにもかかわらず、小笠原周辺には今も100隻を超すサンゴ漁船が残る。海上保安庁によると、先月30日、過去最多の計212隻が確認され、今月12日に117隻まで減ったが、翌13日に再び145隻まで増加。一時海域を離れた漁船が密漁を再開した可能性もあり、海保の巡視船などが24時間態勢で取り締まりを続けている。13日には漁業法違反(立ち入り検査忌避)容疑で中国人船長(33)を逮捕し、今年10月以降に周辺で逮捕された中国人船長は計6人になった。

| 環境::2012.12~2015.4 | 12:10 PM | comments (x) | trackback (x) |
2014.9.20 日本政府に不足しているのは、「自然や生態系の維持は、生態系の一部である人間のためでもある」という発想だ
    
   鯨のおば      鯨の刺身    鯨の竜田揚げ   鯨のステーキ

(1)生物資源管理としての捕鯨の制限について ← 鯨の数は、元にもどったのか
 *1-1、*1-2のように、国際捕鯨委員会(IWC)は、科学委員会に続き、総会でも、日本が南極海で行っている調査捕鯨の再開を先延ばしすることを決議し、日本が調査捕鯨する際に出している計画を科学委員会だけでなく総会にも提出するよう要求したが、日本はそれに従わず、捕鯨再開の方針を変えないとのことである。これに対し、日本が国際ルールを無視していると批判されるのは当然だ。

 しかし、日本政府関係者は、*1-2のように、「日本は、今回の決議で、少なくとも次回2016年の総会まで南極海での調査捕鯨ができなくなったため、今後は、反捕鯨国に対して、国会議員や大使ら政府関係者が個別に働きかけ続けて、日本の方針への理解を求めていく」としている。

 私は、(動物愛護からではなく)人間の捕獲によって鯨の数が減り、日本近海だけでは十分な数の鯨が獲れなくなったため南極海まで行って捕鯨しているのだから、この日本政府の方針には反対だ。日本人の食文化としての鯨の捕獲なら、調査捕鯨ではなく商業捕鯨そのものであり、日本の近海で鯨を捕獲できるだけの鯨資源があった時代に成り立っていた食文化であるため、そういう状況になってから捕鯨を再開するのが筋である。

(2)「鯨を食べるのは日本の食文化」という主張は、どこまで通るのか
 *1-3に書かれているように、日本が世界中の非難を受けながらも捕鯨再開にこだわる理由は、①科学的根拠に基づく資源管理はしている ②鯨食は日本の食文化である ③捕鯨が日本の主張や愛国主義の象徴になっている などだそうだ。しかし、①については、江戸時代に日本近海で鯨を捕獲していた頃ほど鯨資源が回復したわけではないので成立しないし、②についても、今では子どもの頃に鯨を食べていた50歳以上の人にしか通用しないため、成立していない。さらに、③については、このようなことで横車を押していると、尖閣諸島についても、日本の方に正当性がないかのように他国に思われるため、その方が重大な問題である。

 また、*1-3で、「日本人は英語が不得意だから世界の世論を理解できていない」とされているのは、「日本人は、英語が不得意な人が多く、日本語の情報しか入手しないため、日本は特別な国で日本が中心だという発想をしがちだ」というのが正しいだろう。

 なお、ここで捕鯨にこだわる「日本」とは、一部の日本人と、その一部の日本人を代表する政治家や官僚、その太鼓持ちになっている日本のマスコミである。

(3)“調査捕鯨”は、商業捕鯨の抜け穴にすぎない
 *1-3には、「生物資源に関しては、持続可能な利用と保全の両立を基本的目標にするという持続利用原則が広く受け入れられており、我々は無規制で乱獲につながるような捕鯨の再開、絶滅が危惧されるような鯨種の捕獲を求めているわけではない」「捕鯨に反対する人の中には、すべての鯨類が絶滅に瀕しており,捕鯨国がそれを捕り尽くそうとしていると単純に誤解している人も多い」「捕鯨国が持続的に資源の豊富な鯨類を利用することを認めて欲しい」等が、書かれている。

 しかし、“調査捕鯨”とは、そもそも調査のための捕鯨であって商業捕鯨ではないため、食文化や生物資源の持続可能な利用・保全とは関係がない筈である。それにもかかわらず、*2-2のように、「調査」という名目の抜け穴を使って商業捕鯨を行い、1年間で何百頭ものクジラを捕殺するというのは、国が率先してとるべき行動ではない。また、DNA鑑定や遠隔監視ができる時代に、科学者が大量の鯨を捕殺して行わなければならないような科学的調査はない。

 また、*2-3に書かれているように、販売されている鯨肉のDNA鑑定をしたところ、1966年以来保護されているザトウクジラなども交じっており、生物資源の持続可能な利用・保全をしているとも言えないそうだ。そして、このような嘘や言葉のトリック、抜け穴を許さないのは、「感情的な反捕鯨派」にとどまらず、人類共通の倫理観である。

(4)日本人は、今、どうして鯨を食べる必要があるのか
 鯨食派の人は「鯨は美味しい」と言うが、鯨は南氷洋から運ばれて来るので、刺身も冷凍物であり、野生動物として泳ぎまわっていたのだから、筋肉質で固い。そして、鯨と牛の大和煮の缶詰を食べ比べてみればわかるように、牛の方が格段に美味しいのである。

 50~60年前は、牛や豚が少なく、高くて滅多に食べられなかったため、その代用品として鯨を食べていたにすぎない。上の写真の鯨の脂肪をさらした「おば」は安い食べ物の代表だったし、学校給食に出ていた鯨の竜田揚げは、独特の匂いがして固く、はっきり言ってまずかった。また、私は、鯨のステーキを食べたことはないが、野生動物である以上、国産牛のような味と柔らかさは期待できないだろう。

 従って、牛、豚、鶏、その他の動物性蛋白がふんだんに手に入る日本で、江戸時代ほど鯨が増えたわけでもないのに、家畜として日本近海で飼っているならともかく、わざわざ国際ルールを犯してまで南氷洋に鯨を取りに行って、鯨を食べなければならない理由はないと考える。

< 南極海の捕鯨継続派の意見>
*1-1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20140919&ng=DGKDZO77260320Z10C14A9EE8000 (日経新聞 2014.9.19) 
調査捕鯨、先延ばし決議 IWC総会 日本は「再開」変えず
 スロベニアで開いている国際捕鯨委員会(IWC)の総会は18日、ニュージーランドが提案した調査捕鯨の計画への評価や手続きを厳しくする決議を過半数の支持で採択して閉幕した。決議は日本の南極海での調査捕鯨の再開を事実上、先延ばしするように求めた。日本は調査捕鯨を再開する方針を変えていないが「総会決議違反」との批判は避けられなくなる。水産庁によると、決議に賛成したのは35カ国。米国やオーストラリア、チリ、メキシコなどが含まれるとみられる。反対は日本など20カ国にとどまり、棄権が5カ国あった。決議は日本が調査捕鯨をする際に出している計画をこれまでのIWC科学委員会だけではなく、総会にも提出するように要求している。これに従うと毎年開く科学委員会と違って総会は2年に1度しか開かないため、調査捕鯨の再開は最短で2年後の2016年となる公算が大きい。決議には法的拘束力はない。このため日本政府は予定通り、2015年度から南極海での調査捕鯨を規模を縮小したうえで再開する方針だ。ただ反捕鯨を掲げる欧米諸国が「日本は国際ルールを無視している」などとして反発を一層強めるのは必至とみられる。

*1-2:http://www.yomiuri.co.jp/world/20140918-OYT1T50172.html
(読売新聞 2014年9月18日) IWC調査捕鯨先延ばし決議…日本従わない方針
 国際捕鯨委員会(IWC※)総会は最終日の18日、日本の南極海での調査捕鯨開始を遅らせることを狙ったニュージーランドの決議案を賛成多数で採択し、閉幕した。決議に拘束力はないため日本は従わず、来年12月頃に調査捕鯨船団を出港させる方針を改めて表明したが、今回の総会で反捕鯨国との亀裂がさらに深まる結果になった。決議案は16日に提案された。日本政府関係者によると、豪州や米国、南米諸国、日本などが修正協議を行っていたが、特に南米の姿勢が強硬で交渉は決裂した。現在の手続きでは、日本は来年5月のIWC科学委員会で新しい調査計画の審査を受ければ、来冬から南極海の調査捕鯨を始められる。これに対し、決議では同委員会の審査に加え、隔年で開催される総会でも計画内容を議論し、総会が何らかの勧告を出すまで調査をしないよう求めている。決議に基づけば、日本は次回の16年の総会で新しい調査計画が議論されるまで、南極海での調査捕鯨ができない。さらに過半数の反捕鯨国が調査捕鯨に猛反対する総会では、日本に厳しい勧告が行われることになる。ただ、決議には拘束力がなく、日本は16年総会での議論を待たずに、来冬に南極海の調査捕鯨を実施する。一方、沿岸域でミンククジラ17頭を捕獲する商業捕鯨を求める日本の提案も審議され、4分の3の賛成が得られずに否決された。今後、日本は16年総会までの2年間に反捕鯨国に対し、国会議員や大使ら政府関係者が個別に働きかけを続け、日本の方針への理解を求めていく。しかし、反捕鯨国との対立が緩和されない限り、16年総会ではさらなる反発が出ることも予想される。日本は、国際社会の逆風を受け続けてまで調査捕鯨を継続するのか、決断を迫られる可能性もある。

*1-3:http://www.e-kujira.or.jp/whaletheory/morishita/1/
(水産庁森下丈二参事官 2007年12月20日) どうして日本はここまで捕鯨問題にこだわるのか?
 このコーナーへの投稿の第一弾として,「日本はどうして世界中の非難を受けながらも捕鯨再開にこだわるのか」という疑問についての考えを私なりにまとめてみたい。この疑問は様々な機会に呈されてきたが,その答えも様々である。捕鯨を支持する立場からは,科学的根拠に基づく資源管理を支持するから,日本の文化だからといったものが主張され,捕鯨に反対する立場からは,捕鯨関係者の政治力が強いから,一部官僚の独走,捕鯨が愛国主義の象徴となっているといった意見が聞かれる。日本人は英語が不得意だから世界の世論を理解できていない,もっと一般の日本人を啓蒙すべきだという記事もオーストラリアの新聞に掲載されたことがある。ここで,捕鯨にこだわる「日本」が,日本人一般なのか,一部の日本人なのか,日本のマスコミなのか,日本政府なのかによって,その答えは千差万別であろうが,本文は,あくまで私自身の立場から見た考え方である。
 まず明確にしなければならないことは,我々は無規制で乱獲につながるような捕鯨の再開や,絶滅が危惧されるような鯨種の捕獲を求めているわけではないということである。資源が豊富な鯨種を,持続的に(すなわち銀行の預金の利子だけを使い,元金を減らさないような方法で),国際規制の下で利用したいと求めているのである。これに対して,全ての捕鯨は破壊的であり規制などできないという捕鯨性悪説の主張があるが,そうした主張については次の機会に詳しく議論したい。我々が捕鯨問題に「こだわる」理由をあえてまとめれば,次のような観点がある。
(1)捕鯨問題は持続的利用の原則の象徴
 生物資源に関しては,持続可能な利用と保全の両立を基本的目標とするという持続利用原則が広く受け入れられている。これは,1992年のリオ会議(地球環境サミット)で確立し,『環境と開発に関するリオ宣言』や『アジェンダ21』に具体化された原則である。言い換えれば,漁業資源を含むすべての生物資源について,資源状態の悪いものについては保全措置をとり,資源が豊富なものについては持続的に利用して良いということが,世界的な常識となっている。他方,いわゆるカリスマ的生物(クジラやゾウなどのアピール性の強い生物)については,資源が豊富に存在しても,イコン(偶像,象徴)として手付かずで保護すべきとの考え方がある。捕鯨に反対する人の中には,すべての鯨類が絶滅に瀕しており,捕鯨国がそれを捕り尽くそうとしていると単純に誤解している人も多いが(仮にそうであれば捕鯨は非難されるべきである),そうではなく,クジラは特別な動物なので,いかなる場合でも保護すべきとの主張があるということである。現に強硬な反捕鯨国である豪州などは,IWCの場において,いかなる状況下であっても(資源が豊富でも,持続的管理が可能でも,充実した監視取締措置を導入しても)捕鯨に反対であるとの立場を公言している。この考え方には,誰が,どのような基準で「特別な動物」を決めるのか,「主要国」が特別な動物を決めれば,それを他の国に強制することが出来るのか,「特別な動物」が次々に増えていくことに対する歯止めはあるのかといった重大な問題が含まれる。インドが,ウシは特別な動物だから牛肉を食べるべきではないと国連などで主張し,これを経済制裁などで他の国に強制すれば,その異常さは誰の目にも明らかである。他方,クジラについてはまさにこれが行われているが,「世界の世論」として受け取られる。クジラは野生動物だから保護すべきとの主張もあるが,漁業対象の多くの魚は野生動物であり,世界人口のかなりの割合が陸上野生動物を捕獲し利用している。ちなみに,くだんの豪州は野生動物であるカンガルーを年間に数百万頭(数百頭ではない)捕獲し,食肉やペット(ドッグ)フードとして販売している。持続的な捕鯨を支持するということは,持続的利用の原則を支持するということであり,その持続的利用原則に恣意的な例外を作らないということであり,一部の「主要国」のわがまま(これには環境帝国主義という名前が付けられている)を認めないということであり,国際的な交渉においてはカリスマ性といった感情論ではなく科学と国際法を尊重するということなのである。捕鯨支持にこだわるのは当然ではないだろうか。
(2)理不尽な反捕鯨の主張
 反捕鯨の主張を理不尽な押し付けと捉える人は多い。日本を含む持続的利用支持派は,反捕鯨国が自国の水域内や,自国国民に対してクジラを完全に保護することを否定しているわけではなく,ホエールウォッチングも認めている。ただ,捕鯨国が持続的に資源の豊富な鯨類を利用することを認めて欲しいと求めている。他方,反捕鯨勢力は,捕鯨国の主張は受け入れず,自分たちの主張を全ての国が受け入れることを強く一方的に求めている。そこには相互の考え方を尊重し,妥協を受け入れるとの観点はきわめて希薄である。本年(2007年)のアンカレッジでの第59回IWC年次会合で,日本は捕獲頭数を空欄にして日本の沿岸小型捕鯨地域に対する捕獲枠を要請する提案を行った。これは,捕獲頭数について交渉をする用意があるとの意思表示であり,たとえば,論理的には誰が見ても資源に悪影響を与えない捕獲頭数(極端にいえば1頭などという象徴的な捕獲も議論としてはありえる)を提示し,捕鯨問題の本質を浮き彫りにしたいという意図もあった。反捕鯨国はこの提案を明確に拒否した。主な理由は,日本の沿岸小型捕鯨には商業性があり,同じアンカレッジ会合で認められた米国やロシアの先住民生存捕鯨とは異なるというのである。IWCが開催されたまさにそのホテルでは,アラスカ先住民が捕獲したホッキョククジラのヒゲや骨などの工芸品が一点数十万円という値段で販売されていたが,反捕鯨国によれば,このような工芸品の販売は商業性があるとはみなさず,一方では,日本の沿岸小型捕鯨地域で鯨肉が地域住民や市場に販売されれば商業性があって認められないというわけである。商業性をこれほど罪悪視すること自体も問題であるが,そもそも反捕鯨国のいうような「商業性」の定義(工芸品はいいが肉はだめ)はいかなる常識でも正当化し得ない。ここに,「日本には何があっても捕鯨はさせない」という基本方針があると疑うのは過剰反応であろうか?このような反捕鯨国の主張を理不尽と感じながら,「世界の世論」として受け入れるべきであろうか?日本の海外での評判という国益のために,捕鯨はあきらめるべきであろうか?捕鯨問題に関する街頭インタビューなどで,「反捕鯨国はウシを食べておきながらクジラを食べるなというのはけしからん」という意見を良く聞く。これに対しては,ウシは家畜でクジラは野生動物だから比較できないといった反論があるだろうが,一般市民が感じ,見抜いている捕鯨問題の理不尽さを端的に表した意見ではないだろうか。
(3)持続的利用を支持する国やNGOからの支持
 日本は捕鯨問題について国際的に孤立しており,IWCで日本を支持するのは援助で買われた開発途上国だけだという批判がある(これについても別の機会に詳細に書くこととしたい)。しかし,持続的捕鯨は広い方面から支持されている。まず国としては,西アフリカ,アジア太平洋,カリブ中米などの開発途上国約30カ国に加えて,ロシア,中国,韓国,ノルウェー,アイスランドなどがIWCにおいて管理された捕鯨の実施を支持している。特に,開発途上国は自国の漁業資源などの自然資源への依存を背景に,持続的利用の原則堅持を強く主張している。中国,韓国は捕鯨に従事していないが,やはり持続的利用の原則支持の立場から基本的に持続的捕鯨を支持している。また,NGOとしては,現在は活動を休止しているが,捕鯨の伝統のある世界の先住民の団体である世界捕鯨者連盟(WCW)があり,カナダの先住民,ニュージーランドのマオリ族などもメンバーとして参加している。また,生物資源の持続的利用を支持し,ゾウの問題などについて活動している国際NGOであるIWMC(国際野生生物管理連盟)は,1982年から1990年までワシントン条約事務局長を務めたユージン・ラポワント氏が率いるワシントン条約に関する専門家集団である。豪州に本拠を置くSMS(生物種管理専門家集団)も,元ワシントン条約動物委員会議長ハンク・ジェンキンス氏がリーダーを務めるワニや爬虫類管理などの専門家グループであり,ヨーロッパで持続的利用を支持するNGOのEBCD(欧州保全開発組織)は欧州議会やIUCNと強いつながりを有する。これら持続的捕鯨を支持するグループは,捕鯨問題を生物資源の持続的利用という大きな流れの中の問題として捉えており,捕鯨を持続的利用原則の立場から支持し,捕鯨問題における後退は,持続的利用原則の後退そのものと捉えているという点である。彼らの主要関心事項がゾウやワニやタイマイであることがこれを明確に示している。捕鯨問題が彼らの関心事項と深いつながりがあるとの認識が無い限りは,捕鯨を支持する理由は無い。彼らの中では,これらの問題を Wise-use という考え方と Non-use という考え方の対立と位置付けている。Wise-use とは保全を図りつつ資源を持続的に利用するということであり,Non-use とは動物愛護運動に代表されるような自然には一切手をつけるべきではないという考え方である。
 さらなる特徴は,自然資源の利用に生活を依存している先住民や開発途上国がクジラの利用を支持しているということである。彼らには,自然資源の利用が科学的な裏づけも無く制限や否定されることへの強い反発と危機感があり,捕鯨問題にその象徴を見ている。それを裏付けるように,IWCでの彼らの発言には食料安全保障や資源利用に関する国家主権などの話題が頻繁に登場する。反捕鯨運動は,独立国が主権に基づいて資源の持続的利用を実現し,開発につなげるという姿勢・考え方に対する攻撃と捉えられており,とりわけ開発途上国にとっては重大問題である。捕鯨問題は原理原則の問題であるといわれる。一部の関係者の利害を越えた,裾野の極めて大きな問題であるからこそ短期的な損得ではなく,より広い視野から資源管理のあり方の原則に沿った対応に,我々はこだわるのである。

<鯨保護派の意見>
*2-1:http://news.goo.ne.jp/article/jiji/business/jiji-140916X102.html (Gooニュース 2014年9月16日) 捕鯨継続への理解焦点=日本、沿岸捕獲枠を提案―IWC総会開幕
 国際捕鯨委員会(IWC)の総会が15日(日本時間同)、スロベニアのポルトロジュで4日間の日程で始まった。国際司法裁判所(ICJ)による南極海調査捕鯨の中止命令を踏まえ、日本は新たな計画を策定し、調査捕鯨を継続する方針を表明する。日本の主張がどの程度の理解を得られるかが焦点だ。総会開催は2年ぶり。IWCによると、初日は加盟88カ国のうち63カ国が参加した。参加国の過半数は反捕鯨国とされ、日本に対する反発が一段と強まる事態も予想される。初日の15日の討議で日本は、網走(北海道)や鮎川(宮城県)などで行われている沿岸小型捕鯨をめぐり、ミンククジラ17頭の捕獲枠の設定を提案。沿岸小型捕鯨に関する提案は過去何度も否決されてきたが、日本は今回、IWC科学委員会が昨年行った試算に基づき、商業捕鯨の例外として捕獲枠を新たに求めた。これに対し反捕鯨国からは、「(商業捕鯨を一時停止している)モラトリアムの抜け道だ」(ニュージーランド)といった厳しい意見が相次ぎ、16日以降も審議を続けることになった。

*2-2:http://www.ifaw.org/japan/our-work/whales/
(IFAW) 「調査」捕鯨の真実
 捕鯨の全面禁止にもかかわらず、国際捕鯨委員会(IWC)のモラトリアムは「科学許可による捕鯨」として知られる大きな抜け穴を含んでいます。この許可によって捕鯨船は調査の名目でクジラを捕獲することが許可されています。この抜け穴は1946年以来、国際捕鯨取締条約に含まれ、1986年に捕鯨モラトリアムが成立した後も残っています。しかし、これには科学的な要素は何もありません。
 •科学許可による捕鯨では鯨肉を利用する必要があり、鯨肉を販売するなり、あげるなりして、利用しな
  くてはいけません。つまり、科学許可は鯨肉の販売許可と大差ないのです。
 •科学許可による捕鯨は申請した国によって認可されます。つまり、日本は外部の精査や説明の必要も
  なく、自国の調査捕鯨を自国で認可しているのです。
 •調査捕鯨を行う国だけが鯨肉市場の開拓に熱心であることは偶然ではありません。日本の調査捕鯨
  プログラムによって、2009年だけで何百頭ものクジラが捕殺されました。
 •大量虐殺の原則に基づいて行われる科学的調査など、他の種では考えられません。
●調査捕鯨の代替案
 DNA鑑定や遠隔監視の時代に、科学者が調査目的でクジラを捕殺する必要はありません。クジラが脱皮する皮、脂肪、糞便からサンプルを採取することも可能です。科学者はクジラが噴気孔から息を吐き出す時にサンプルを採取して、病原体を検出することもできます。IFAWの調査船「ソング・オブ・ザ・ホエール」号の科学者は、クジラに危害を加えずに研究する技術と手法を開発しました。

*2-3:http://www.ifaw.org/japan/our-work/whales/
(IFAW) DNA鑑定が提示する違法捕鯨の証拠
 1995年以降、IFAWの定期的な調査は、日本と韓国による絶滅危惧種のクジラの違法捕鯨及び鯨肉販売の有力な証拠を明らかにしてきました。販売されたクジラ肉のサンプルのDNA鑑定によって、各サンプルの種と地理的起源が特定できます。サンプルには以下の鯨肉が含まれていることがわかりました:
 •ザトウクジラ:1966年以来保護されています。今日市場で見つかったザトウクジラの肉がこれほど
  古いはずはありません。
 •ナガスクジラの肉:1991年までアイスランドから輸入されていましたが、その後輸入は数年間停止
  されました。そしてごく最近、取引再開を目指して少量のナガスクジラの肉が再びアイスランドから
  日本に輸出されました。しかし、近年アイスランドで捕殺されたナガスクジラの肉の大半は買い手
  が付きません。ナガスクジラの肉は一部、日本と韓国で備蓄されていますが、現在の市場の供給
  量は需要をはるかに上回っています。
 •ニタリクジラとシャチの肉:ニタリクジラは1987年から2000年まで、シャチは1997年以降ずっと保護
  の対象になっています。
 •イワシクジラ:1979年以来、南半球では捕獲されていません。
●抜け穴のための抜け穴作り…
 IFAWの捕鯨調査が1995年に公表された後、日本はクジラが「偶然」日本の漁師の網にかかった際の「偶然捕獲されたクジラ」の販売を合法化しようとしました。この抜け穴を認めたIWCは、保護されたクジラの販売を原則的に認可したのも同じです。

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2014.9.17 ユーグレナの可能性と佐賀市の契約 - 循環型社会に向けて理念を通す
      
「ユーグレナは世界を救う」マーク     2014.2.9佐賀新聞より

(1)ミドリムシは食料問題に多様な解を与えるが、環境問題はどうか?
 昨日、会計人東大会で、ユーグレナ社長の出雲氏をお招きして話を聞いた。出雲氏は、*2に書かれているように、大学時代にバングラデシュに行き、おなかをすかせている子どもはいなかったが栄養が偏っているのを見て、ミドリムシで世界の食料問題を解決しようと、東大で文学部から農学部に転部して研究し、ベンチャー企業を興した人である。

 そして、*1に書かれているように、2005年12月に世界で初めて沖縄県石垣島でミドリムシ(学名:ユーグレナ)の屋外大量培養に成功し、2008年に最初の取引相手である伊藤忠商事の出資が決まるまでの3年間は取引を断られ続けて苦労したものの、伊藤忠商事の出資をきっかけに、石油会社、航空会社、ゼネコンなどが次々と手を挙げてくれて事業が軌道に乗り、2012年12月には、ユーグレナ社を東証マザーズに上場したとのことである。

 ミドリムシは、昆布やワカメの仲間の藻の一種で、動くことも光合成することもできる動物と植物の両方の性質を備える生物で、植物と動物の両方の栄養素を持つため、人間に必要なビタミン、ミネラル、アミノ酸、不飽和脂肪酸など59種類もの栄養素を作り出すことができる上、油脂分を作り出すこともできるため、食料問題に多様な解を与えるとともに、ジェット燃料の開発にも期待されているのだ。

 しかし、私自身は、ジェット燃料ならミドリムシより水素の方が、さらに環境適合性がよいため、燃料系は水素か電気にして、ミドリムシには、コストダウンが求められる家畜や養殖魚の餌を含む食料への貢献を期待したい。

(2)佐賀市の挑戦はあっぱれだ
 *2のように、ユーグレナ社と佐賀市は、ジェット燃料などの大量生産、低価格化を目指す共同研究を行うことになり、佐賀市の秀島市長が、石垣島(沖縄県)に次ぐ第二の拠点となる共同研究契約を締結したそうである。そして、今回の研究では、下水処理水や清掃センターで回収する二酸化炭素(CO2)を佐賀市が提供し、従来「じゃまもの」だった下水処理水やCO2を原料に使って燃料開発などに繋げるのはあっぱれで、この研究が成功すれば、他の自治体でも応用できるだろう。

 今後は、工場開設などの生産拠点化が可能かどうか検討し、新たな食品などへの応用を探るそうだが、この機会に玄海、有明海の養殖魚や家畜の餌の研究もし、餌をコストダウンさせることに成功して欲しい。私がそういう質問をしたところ、出雲社長は、養殖魚や家畜の餌に関しても積極的だったため、関係者は話をしに行ってもらいたい。

(3)神鋼環境ソリューションがユーグレナの本格培養を開始
 そのような中、*3のように、神鋼環境ソリューションが、閉鎖型の 1m3培養槽を設置し、従属栄養培養方式によるユーグレナの培養を本格的に開始して、ユーグレナ由来のバイオマスなどのサンプルをキログラム単位で提供する体制が整って、バイオ燃料、食品/化粧品、下水処理に加え、化成品などの商品化検討を開始するそうだ。今後は、培養する方法や種類について、(人間の食べ物でなければ遺伝子組み換えもできるため)目的に応じて更なる改良を進めることができるだろう。

*1:http://mainichi.jp/feature/news/20130118org00m020003000c.html
(毎日新聞 2013年1月22日) 社長インタビュー:出雲充 ユーグレナ社長
<いずも・みつる  広島県呉市出身。2002年東京大学農学部卒業、東京三菱銀行(現・三菱東京UFJ銀行)入行。05年8月、大学時代の後輩ら2人とともにユーグレナ10+件を設立し、社長就任。同年12月、ミドリムシの屋外大量培養に成功した。33歳。>
◇ミドリムシで食料・環境課題を解決する
 ユーグレナは2005年12月、世界で初めて沖縄県石垣島でミドリムシの屋外大量培養に成功したバイオベンチャー。13年9月期決算の見通しは、売上高が22億9000万円(前期比44.5%増)、営業利益が3億5200万円(同14.4%増)。社員は38人。12年12月20日、東証マザーズに上場した。
─ ミドリムシ(学名ユーグレナ)について教えてください。
出雲 その名前からイモムシのような虫の仲間と誤解されやすいのですが、ワカメや昆布と同じ藻類です。ただ、ワカメや昆布とは違い、水中で植物のように光合成をする一方、細胞を変形させて動くという、植物と動物の両方の性質を持つ珍しい生物です。ビタミン類、ミネラル類、アミノ酸など59種類もの豊富な栄養素を含み、二酸化炭素を吸収して成長するという特性から、昔から食料問題や環境問題解決に活用しようと各国で研究されてきました。日本でも1980年代から00年まで、国家プロジェクトとして研究されていましたが、大量培養には至らず頓挫した経緯があります。
─ 大量培養はなぜ難しい?
出雲 培養している間に、他の微生物が侵入してきてミドリムシを食い尽くしてしまうからです。ヨーグルトや日本酒のように、発酵や培養は目的とする菌以外の増殖をいかに防ぐかが重要なのですが、ミドリムシは栄養価があらゆる微生物の中でトップクラスに多いので、その分、他の微生物に最も狙われやすい。そのため、屋外での大量培養は、従来はできなかったのです。
─ 成功した秘訣は何ですか。
出雲 まず、研究者の先生方に過去になぜ大量培養に失敗したのかを教えていただきました。すると、どの先生方も同じ方法で失敗していたことがわかりました。簡単に言えば、失敗していたのは「蚊帳方式」、つまり外敵が中に進入しないようブロックする方法。これに対して私たちは発想を転換し、「蚊取り線香方式」を考えました。培養液に独自の工夫を加え、微生物の進入を阻止する方法です。この培養液の工夫に偶然にたどり着き、大量培養の成功に至りました。
─ それから事業化までが大変だったとか。
出雲 創業前にライブドア社長(当時)の堀江貴文さんと知り合い、お金もオフィスもなかったので創業時には出資を受け、オフィスも間借りしていました。ところが06年1月にライブドアに強制捜査が入り、それをきっかけにそれまで協力してくれていた企業が一斉に当社から手を引いてしまったのです。それ以降、ミドリムシをあらゆる企業に売り込みましたが、協力してくれる最初の1社を見つけるまでに約3年かかりました。08年に伊藤忠商事の出資が決まったことをきっかけに、石油会社、航空会社、ゼネコンなどが次々と手を挙げてくれ、ようやく事業が軌道に乗りました。日本企業は、ベンチャーに出資する最初の1社になるのを躊躇します。しかし、いざチームを組むと、ものすごく協力的です。これまで門前払いをしていた企業も声をかけてくる。とにかく極端ですね。
◇ジェット燃料も開発
─ 現在は、どのような事業を手がけているのですか。
出雲 収益のほとんどがサプリメントなど機能性食品や化粧品などのヘルスケア事業で、自社製品の販売のほかOEM(相手先ブランドによる受託生産)や原料供給もしています。これに加え、様々な企業と共同でジェット機の燃料開発、家畜の飼料開発、水質浄化技術開発の研究も進めています。
─ ジェット燃料の開発が有望視されています。
出雲 バイオ燃料の中で、ミドリムシから取れる油はジェット燃料に性質が適していて、地球環境問題の解決にミドリムシは大きな可能性を持っています。そこで、JX日鉱日石エネルギーなどと共同で、ミドリムシからジェット燃料を作り出すための研究開発をしています。日本航空と全日本空輸の2社が使用する燃料は年9000億トンとされますが、その1割を将来的にミドリムシ由来で賄う計画を立て、18年度に事業化の実現を目指しています。 ただ、現在ある石垣島の培養設備のみでは規模が小さく、ジェット燃料に活用するにはコストが高すぎます。実用化が頂上だとすれば、現在は3合目ぐらい。実際に飛行機を飛ばすことができて6合目、採算性を示すことができて7合目、頂上は900億トンを毎年安定的に生産できる体制が確立した時と考えています。
 そのためにまず、巨大な培養設備が必要です。将来的には光合成に適した赤道直下や国内の耕作放棄地などの活用も含めて、現在の100倍の容量の設備を作ることを目指しています。上場で得た資金で、その場所を確保する予定です。
─ 上場時の初値は、公開価格の1700円に対し、2.3倍をつけました。
出雲 ミドリムシに注力している会社は他になく、その点で注目されている面があると思います。一方で期待に応えられないと、その評価はすぐ剥落するでしょう。いったん期待が逆回転したら2度目のチャンスはないと思うので、技術で株主の期待に応えていきたいです。

*2:http://www1.saga-s.co.jp/news/saga.0.2622486.article.html
(佐賀新聞 2014年2月9日) ミドリムシからジェット燃料 佐賀市と研究
 世界で初めてミドリムシの屋外大量培養に成功し、その体内から燃料を抽出する技術を持つバイオベンチャー企業「ユーグレナ」(本社・東京都)と佐賀市が、ジェット燃料などの大量生産、低価格化を目指す共同研究に乗り出すことになった。石垣島(沖縄県)に次ぐ第二の拠点を探す同社に、全国の自治体から共同研究の依頼が舞い込む中、佐賀市を研究パートナーとして選んだ。8日、同社の出雲充社長が秀島敏行市長と共同研究契約を締結した。自治体との共同研究契約は初めて。ユーグレナは2005年8月に設立。高タンパクのミドリムシを培養し、ミドリムシクッキーやサプリメントなど機能性食品の企画・販売などで成長している。抽出物質のバイオジェット燃料への応用も手掛け、20年の事業化を目指している。今回の研究では、下水浄化センターから排出される有機物を多く含む処理水や、清掃センターから回収する二酸化炭素(CO2)を佐賀市が提供。同社は従来「ごみ」となってきた処理水やCO2を原料に使い、市場コストに見合う燃料開発などにつなげるステップとする考え。今春にも研究に着手し、佐賀市に研究室を設けることも視野に、工場開設など生産拠点化が可能か検討する。ミドリムシは約100種類と多く、ジェット燃料のほか、新たな食品などへの応用も探る。研究者の人数や詳細な日程については「競合が多い分野なので控えたい」とした。出雲社長は「明治維新の原動力となった佐賀で循環型社会構築に向けたスタートを切ることができ、縁を感じている。しっかり取り組みたい」と話した。
■佐賀市と共同研究「ユーグレナ」社長が講演
 8日、佐賀市と共同研究契約を締結したバイオベンチャー「ユーグレナ」。出雲充社長(34)が同日、佐賀市内で講演し、ミドリムシの研究を始めるきっかけから今後の展望までを熱っぽく語った。講演要旨を紹介する。
   ◇   ◇   ◇
 大学時代、世界の最貧国バングラデシュに行った。土産に栄養補助食品を持って行ったが、おなかをすかせている子どもはいなかった。子どもたちはカレーを食べていた。しかし、カレーに具はない。動物性タンパク質の不足から、おなかがポコッと出ている子どもも多かった。腹ぺこ状態ではなく、炭水化物以外の栄養素が不足する「栄養失調」で困っている人が世界に10億人もいる-。現状の一端を垣間見た。「世界の栄養失調を解消したい」という思いが原点。しかし、世界にはそれだけの人が食べる卵や野菜を作る土地、農地がない。帰国して栄養価が高い食べ物について調べた。そこで出合ったのがミドリムシだった。その語感から、よくイモムシのようなものを想像されることが多いが、体長0・1ミリの微生物ミドリムシは植物の仲間で、ワカメやコンブなど海藻の親戚に当たる。植物だけではなく動物の栄養素も持ち合わせ、人間に必要な栄養素59種類を作り出すことができる。ただ、害虫からも狙われるミドリムシを育てる環境整備は非常に困難で、最初は大学の研究室に1カ月泊まり込んで育てても、できるのはスプーン1さじ程度だった。安く大量に育てる技術を世界で初めて発明したのは2005年。沖縄県の石垣島で大量に育てている。2006年からは食品展開を始めた。食品だけではない。ミドリムシからバイオ燃料、特にジェット燃料を生み出す研究も続けている。化石燃料の使用による二酸化炭素の排出が気候変動を引き起こし、昨年も大型台風が国内外を襲った。こうした状況は人類にとって、大きなリスクだ。農地を使わず、ジェット燃料を作り出すことができれば、地球に優しい新しい飛行機が作れる。私たちは今日から佐賀で、燃料や食料の面で日本や世界を救う研究に取り組む。前例がないことをやろうとしている人をぜひ応援してほしい。そして東京オリンピックの20年、ミドリムシからできた燃料を積んだ飛行機で、佐賀空港から東京に向かいましょう。

*3:http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140910-00000131-mycomj-sci
(YAHOO 2014年9月10日) 神鋼ソリューション、ユーグレナの本格培養を開始
 神鋼環境ソリューションは9月8日、技術研究所内に閉鎖型の 1m3培養槽を設置し、従属栄養培養方式によるユーグレナの培養を本格的に開始致したと発表した。これにより、ユーグレナ由来のバイオマスなどのサンプルをキログラム単位で提供する体制が整ったため、バイオ燃料、食品/化粧品、下水処理に加え、化成品等の商品化検討を開始する。ユーグレナの培養方法は一般的に光合成培養と従属栄養培養がありますが、閉鎖型の培養槽における従属栄養培養は、光合成培養と比較すると、単位面積当たりのバイオマス獲得量が数百倍程度となると共に、気候等外部環境(日光、気温等)に影響されない安定した培養を継続することが可能です。このたび、筑波大学と共同で見出したユーグレナの新規株の培養をフラスコ規模から段階的にスケールアップし、培養槽(1m3)においても、バイオ燃料として有望と考えられてきたユーグレナ・グラシリスZ株と比較してバイオマス生産性が2倍以上であることを改めて確認できたという。ユーグレナから得られるパラミロンが嫌気状態にて、バイオ燃料のもとになりうるワックスエステルを生成することも確認されており、バイオマス乾燥重量当たり 70~80%のパラミロンを蓄積する培地成分や培養条件も確立しているとのこと。バイオマスの成分分析結果では、ビタミン・ミネラル・必須アミノ酸・必須脂肪酸の含有が確認されており、アミノ酸スコアは100となっている。なお、これらの培養成績は、日本農芸化学会2014年度大会にて発表された。同社は今後、培養方法について更なる改良を進めると共に1m3培養槽の培養実績を積み重ねていくとしている。また、培養槽の大型化に必要な最適設計条件を把握し、2015年度には10m3培養槽での大量培養を計画しており、この10m3培養槽が完成すれば、パラミロンの製造設備としては、世界最大レベルになる見込みだという。

| 環境::2012.12~2015.4 | 03:11 PM | comments (x) | trackback (x) |
2014.5.29 燃料電池車と東京都の対応について - もう、補助金の時期ではないでしょう
      
 *1より    iMiev(三菱) トヨタ燃料電池車 ホンダ燃料電池車 ヤマトEV車

(1)電気自動車(燃料電池車を含む)の普及について
 *1に、「①トヨタが燃料電池車を年内にも市販する」「②一般向け販売のハードルは500~1000万円になる」「③政府は『水素ステーション』を15年に100カ所設ける目標だが、まだ3分の1しかメドが立っていない」「④消費者が購入価格に見合ったメリットを得られないと普及が進まない」「⑤燃料電池車の普及を目指す自民党の研究会は6月中に、購入費用や燃料費の補助を政府に求める」「⑥水素の補給費用も当面は無料にする」と書かれている。
 
 しかし、電気自動車の構想ができてから既に20年、三菱自動車が2009年に最初の燃料電池車「i-MiEV」を発表してから5年が経過しているのだから、まだ①②③④のようなことを言っているのは、やる気がなかったというほかない。これに対しては、⑤⑥のように、民間企業の製品に対して税金由来の補助金をつけるよりも、排気ガスに応じて環境税をかけた方がよいと思う。

 また、*2のように、東京都も、2020年の東京五輪を念頭に燃料電池車の普及を急いで環境と調和した未来都市の姿を世界に印象づけたいということだが、それなら、2020年1月1日から、東京都内では電気自動車(燃料電池車を含む)以外は通行禁止にするのがよいだろう。何故なら、東京都を走れない車は日本国内での価値が低くなるため、日本全体で電気自動車の普及が推進され販売価格が安くなるからだ。そうなれば、充電施設や水素ステーションなどのインフラも自然とできる。もちろん、京都、大阪、名護屋、札幌、福岡などの大都市が、次第にこの規制を導入していけば、日本の環境はクリーンになるとともに、CO2削減効果も大きい。

(2)水素発電について
 せっかく燃料を国内で自給できる水素に変換するのに、それを外国から輸入しようというのは、経済の全体を見ておらず視野が狭いと思うが、*3のように、川崎重工業が2017年をメドに、水素を燃料とする火力発電設備を、世界に先駆けて量産するそうである。それならば、国内では、各家庭やビルで安全に自家発電するために水素を使い、その水素は、日本に豊富な地熱や汐潮発電で作るのがよいと考える。

*1:http://www.nikkei.com/article/DGXNASFS2802Y_Y4A520C1EA2000/
(日経新聞 2014/5/29) トヨタ、燃料電池車を年内にも市販 官民の連携拡大
 燃料電池車は水素と酸素を化学反応させて生み出した電気でモーターを動かして走る。いま国内では数十~100台が試験用に走るのみ。政府は15年からの市販開始を成長戦略の一つに掲げ、普及策検討を進めてきた。ひとつが燃料タンクの容量拡大。経産省は高圧ガス保安法の省令を改め、1回で車に補給できる水素の圧力上限を約700気圧から875気圧まで高める。これにより車両の走行距離は2割長くなる。トヨタ車の場合、平均的な乗用車を上回る600キロメートルの航続が可能になる。東京・大阪間を水素補給なしで走り続けられる計算だ。海外では高圧の補給が認められており、日本だけが規制のハードルが高かった。輸出のハードルも下げる。国連は日本や欧州連合(EU)などが燃料電池車の輸出入を簡素化するための交渉を進めている。政府は1国の安全審査を通った車両部品を他国の審査なしで輸出できる協定を16年に国内法に反映させる考え。日本の工場でつくった燃料電池車の輸出がしやすくなる。トヨタは規制緩和を追い風に燃料電池車の量産に向けた開発を急ぐ。これまで「15年中」と公表していた市販開始の時期を14年度中に前倒しする方向。ホンダも15年中に一般向け販売を始める。ほかに15年中の市販を予定するのは韓国の現代自動車のみで、日本メーカーが市場開拓でライバルを一歩リードする。一般向け販売のハードルは500万~1000万円とされる車両の価格だ。政府は燃料を補給できる「水素ステーション」を15年に100カ所設ける目標だが、まだ3分の1しかメドが立たない。「消費者が購入価格に見合ったメリットを得られないと普及が進まない」(経産省幹部)。燃料電池車の普及を目指す自民党の研究会は6月中に、購入費用や燃料費の補助を政府に求める提言をまとめる。購入費用の自己負担を「200万円台まで」とし、水素の補給費用も当面は無料にする。政府は提言を受け、15年度予算に補助金をどれだけ盛り込むかの検討に入る。

*2:http://www.nikkei.com/article/DGXNZO71329340W4A510C1L83000/
(日経新聞 2014/5/16) 燃料電池車普及急ぐ 東京都、減税や補助金検討
 東京都は環境への負担が少ない燃料電池車の普及へ減税や補助金制度の創設を検討する。16日に初開催した「水素社会の実現に向けた東京戦略会議」の終了後、舛添要一知事が明らかにした。非常時に避難所や家庭向けの電源供給に活用することも視野に、防災対策の強化も兼ねて都営バスへの導入も想定する。都の水素戦略会議は、一橋大学の橘川武郎教授を座長に自動車メーカーやエネルギー関連企業の担当者らで構成する。1台1千万円程度とされる燃料電池車のコストや規制など様々な課題の解消策を議論。2020年五輪開催時の利用法や、その10年後の30年を見据えた中期的な活用拡大策をまとめ、15年2月に最終報告を出す。16日の初会合で、舛添知事は20年五輪を念頭に燃料電池車の普及を急ぐ考えを表明、「環境と調和した未来都市の姿を世界に印象づけたい」と訴えた。出席者からは、最も需要の見込める都心部で地価の高さから水素ステーションの計画がない問題点などが指摘された。都はガソリンスタンドより広い敷地を必要とする規制などについて国に緩和を働きかける方針だ。

*3:http://www.nikkei.com/article/DGXNASDD120G1_V10C14A2MM8000/
(日経新聞 2014/2/16) 水素発電設備、川重が世界初の量産 17年メド
 川崎重工業は2017年をメドに、水素を燃料とする火力発電設備を、世界に先駆けて量産する。水素は燃やしても二酸化炭素(CO2)を排出しないほか、長期的に発電コストが天然ガス火力並みに下がる見通し。川重は自家発電設備として日本や、温暖化ガスの削減を急ぐ欧州などで売り込む。三菱重工業や米ゼネラル・エレクトリック(GE)なども開発を急いでいる。水素発電は20年以降に普及しそうだ。川重は火力発電の中核設備であるガスタービンの大手。水素燃料だけで発電するタービンを世界で初めて実用化する。標準家庭で2000世帯分を賄える出力7000キロワット級など中小型機を明石工場(兵庫県明石市)で量産する計画。価格は従来のガスタービンより1~2割高い水準に設定する考えだ。水素はガスと比べて熱量が大きいため燃やすとタービン内の燃焼温度が非常に高くなり故障の原因となる。川重は専用の冷却装置を取り付け、タービン内部の設計も改良し耐久性を高めた。水素発電は燃料のコストの高さと安定調達が課題だった。トヨタ自動車など世界大手は今後、水素を燃料とする量販タイプの燃料電池車を相次ぎ投入、20年以降に先進国で普及する見通しだ。水素が大量生産されることで、燃料価格が現在の3分の1程度に下がり、水素発電のコストも石炭やガスを使う火力発電に対抗できる可能性がある。水素発電設備の世界市場は30年に2兆円規模になるとの予測もある。

| 環境::2012.12~2015.4 | 05:21 PM | comments (x) | trackback (x) |
2014.4.27 再生可能エネルギー利用の自動車・住宅・農林漁業で、原発の必要性はなくなる (2014.4.28、29に追加あり)
   
    *1より                 スマートハウス               *4より
(1)自動車の進歩
 *1のように、住友化学は電気自動車(EV)に使うリチウムイオン2次電池の高温に強い絶縁材の生産能力を現在の2.3倍にし、米テスラ・モーターズのEVが搭載するパナソニック製の電池向けに供給するそうだ。これにより、テスラ・モーターズのEVは、1回の充電で500キロメートル走れるようになり、環境負荷や燃費も考慮すれば、軽くガソリン車を越えるEVとなった。

(2)住宅の進歩
 *2のように、積水ハウスは、2003年から販売している断熱性に優れた同社の省エネ住宅をリフォームし、太陽光発電システムや都市ガスによる燃料電池を設置して、省エネ型の空調設備などへ切り替える提案をしており、これにより光熱費(電気・ガス料金)を実質的に0にできるそうだ。

 このようなエネルギー自給型住宅は、経済性、環境負荷、災害時の危機管理に優れているため、特定の住宅だけでなく、多くの住宅に応用できるように、それぞれの機器のデザインやラインナップが増えれば、日本だけでなく、世界で爆発的に売れると思う。特に、電力インフラが頼りない地域では、これしかない必需品になるだろう。

(3)自家発電住宅、農漁業の協力が脱原発を可能にする
 自家発電による電力自給型の住宅が普及すれば、住宅は、電力の需要者ではなく供給者となる。また、*3のように、JAは、「環境が破壊されて一番困るのは農業者」として、第26回全国大会で「将来的な脱原発と再生可能エネルギーの利活用」を決議し、広い面積での太陽光発電や小水力発電・バイオマス発電、発電残さの肥料への活用などを進めているため、原子力発電からの脱却はすぐにでも可能だ。

(4)原発立地自治体は、他の産業へシフトを - 佐賀県玄海町の事例から
 脱原発が行われれば、原発立地地域も原発収入への依存から脱却しなければならないため、それぞれの地域の特性を生かした産業を育てなければならない。

 例えば、すでに九州大学と薬草の研究を進めている玄海町は、苺とタバコの産地でもあるため、*4のような付加価値の高い農産物を作る方法がある。実に有効な物質を含んで人間の歯肉炎を軽減する苺やワクチンの成分を作るタバコ、アルツハイマーの予防に役立つダイズなどを生産することもできるし、その他の製品を作ることも可能だろう。

 ともかく、脱原発のためには、多くの人が原発立地地域の産業振興に協力することが必要である。

*1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20140425&ng=DGKDASDZ240E1_U4A420C1TJ2000
(日経新聞 2014.4.25) 住友化学、EV電池部材を倍増 50億円投資、米テスラ向けに
 住友化学は電気自動車(EV)に使うリチウムイオン2次電池の部材を増産する。大江工場(愛媛県新居浜市)で50億円を投じて2015年春までに、高温に強い絶縁材の生産能力を現在の2.3倍に当たる1億1000万平方メートルへ増やす。一般的なEV10万台以上で使う量に当たる。米テスラ・モーターズのEVが搭載するパナソニック製の電池向けに供給する。高耐熱の絶縁材を採用すれば電池の容量が大きくなり、EVの走行距離を伸ばせる。住友化学はテスラの生産拡大を部材面で支える。他のEVメーカーへの供給も視野に入れている。増産するのはリチウムイオン2次電池の主要部の絶縁材であるセパレーター。樹脂フィルムにアラミド樹脂などを塗って耐熱性を高めた。住友化学はセパレーター市場で世界5位前後の大手メーカー。耐熱性を高めた高機能製品に特化し、この分野では旭化成や東レ、米セルガードなど競合他社に先行している。テスラのEVは一般的なEVの約3倍に当たる最大85キロワット時の高容量電池を積み、1回の充電で500キロメートル走れる。

*2:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20140426&ng=DGKDASDZ250BO_V20C14A4TJ1000 (日経新聞 2014.4.26) 積水ハウス、電気・ガスを実質無料に リフォーム提案
 住宅最大手の積水ハウスは一般家庭の住宅向けに、電気やガスの料金を抑えられるリフォームサービスを始めた。同社が建築した6万戸以上の省エネ住宅が対象で、新たに太陽電池システムなどを設置する。初期費用は約420万円。売電収入を見込めるため、15年程度で回収できるという。積水ハウスがリフォームを提案するのは、2003年から販売している断熱性に優れた同社の省エネ住宅。リフォームでは太陽光発電システムのほか、都市ガスを使って電気や湯をつくる燃料電池を設置する。省エネ型の空調設備などへの切り替えも提案する。同社の試算によれば4人家族で生活した場合、電気・ガス料金は年間約26万円。発電出力が4.6キロワットの太陽電池と700~750ワットの燃料電池を取り付け、効率の高い燃料電池の利用などで消費電力を抑えられる。約28万円の売電収入も見込め、電気・ガスが実質的に無料になるという。

*3:http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=27093
(日本農業新聞 2014年4月14日) JAの取り組み報告 脱原発フォーラム
 原子力発電からの脱却を目指す市民団体や研究者らは13日、脱原発フォーラムを東京都千代田区で開いた。JA全中の村上光雄副会長、JA福島中央会の川上雅則参事が参加し、JAグループの再生可能エネルギーの利活用などを発表した。市民ら820人ほどが参集した。原発と経済、食や生活への影響、JA、生協、漁協の取り組みなどの報告があった。研究者や弁護士らで組織する原子力市民委員会が作成した政策提言集「市民がつくる脱原子力政策大綱」も紹介した。全中の村上副会長は福島県の被災農地の状況などを話し、「なぜ素晴らしいふるさとで農業ができないのか。環境が破壊されて一番困るのは農業者」と強調。第26回JA全国大会で、将来的な脱原発と再生可能エネルギーの利活用を決議したことを説明した。村上副会長は再生可能エネルギーの事例として、中国地方の小水力発電を紹介した。電力は概ね1000キロワット以下で、大きなダムを作らずに川から水路を引き農業用水などを利用して発電していることなどを解説した。福島中央会の川上参事は農業の復興に向けた取り組みを説明した。「地域営農ビジョンを進めていくことが福島の復興再生に重要になる」と述べた。地域で再生可能エネルギー事業に取り組み、脱原発に向けた循環型社会をつくる方策を示した。売電収入による収益の安定化や、バイオマス発電の熱を施設園芸に使用して周年栽培する構想を説明。被災農業者らの雇用にもつなげる考えだ。これまで取り組みのあった耕畜連携をもとに、畜産酪農家から牛の糞尿や飼料作物を再生可能エネルギー施設に提供してもらうことや、発電残さを肥料に活用することなども説明した。川上参事は「地域営農ビジョンの単位ごとに、地域資源がどれだけあるか見極めて運営することが大切」と話した。

*4:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20140427&ng=DGKDZO70432930V20C14A4MZ9000 (日経新聞 2014.4.27) 薬の成分、植物内で生産
 遺伝子組み換え技術を使って様々な医薬品を植物の中で作る「植物創薬」の時代が幕を開けた。この創薬技術は生産コストを大幅に減らせることに加え、新型の感染症の流行時に素早くワクチンを供給できるなどの利点もある。動物用の治療薬がこのほど商品化され、人間向けでも開発が進んでいる。札幌ドームの近くにある産業技術総合研究所北海道センター(札幌市)。その敷地に、完全に密閉された環境で遺伝子組み換え作物を栽培する工場がある。防じん服に着替えて工場内に入り、窓越しに栽培室をのぞくと、鮮やかな緑色の苗が目に飛び込んできた。これはイチゴで、農薬メーカーのホクサン(北海道北広島市)が栽培している。夏には赤く実る予定だが、食用ではない。「インターフェロンという物質が実の中で大量に作られる」と、ホクサンの田林紀子動物薬課長は説明する。イチゴの実は収穫されると、別の部屋ですりつぶされて凍結乾燥される。その後、医薬品製造に求められるGMPと呼ぶ国際的な基準を満たす工場で最終製品となる。同社は3月、イヌの歯肉炎を軽減する薬として発売した。遺伝子組み換え植物を原料とする医薬品は世界初という。工場は遺伝子の拡散を防ぐため、周囲よりも気圧を低くして空気が外に流れないようにしている。排気はフィルターでろ過し、排水も滅菌処理する。遺伝子組み換え作物を栽培する場合、カルタヘナ法にもとづいて厳重管理しなければならない。この工場は同法(第2種産業利用)に適合した国内初の施設として2007年に国の認定を受けた。遺伝子組み換え技術を使って医薬品を作る場合、今は大腸菌や動物の細胞を使うのが一般的だ。大量に培養し、医薬品となるたんぱく質などを抽出・精製する。ただ、細胞や細菌の培養や有効成分の抽出、精製に手間がかかって費用がかさむ。食べられる植物なら、すりつぶすだけで有効成分も一緒に取り出せる。建設に数億円かかるが、季節や天候などに左右されず、一年中栽培できる。「医薬品のような高付加価値製品を作ると、生産コストの削減につながる」と、産総研の松村健・植物分子工学研究グループ長は強調する。産総研の工場の隣には、別の植物工場がある。北海道科学技術総合振興センターが12年に設立したグリーンケミカル研究所だ。出光興産や北興化学工業など5社が入居し、医薬品などを作る遺伝子組み換え作物の開発に取り組んでいる。5つある栽培室の1つで、ダイズが青々と生い茂っている。室内はセ氏23度前後に保たれており、1年に3~4回収穫できる。「アルツハイマー病に効果が見込める物質が含まれている」。北興化学の寺川輝彦研究部長はダイズの実を見せながら説明する。アルツハイマー病の予防に役立つワクチンとなる成分で、実1グラムにつき3ミリグラム含まれるという。弘前大学の研究チームがアルツハイマー病を発症するように遺伝子を操作したマウスに、このワクチン成分を与えたところ、発症を遅らせる効果があるとわかった。原因物質とされるβアミロイドと呼ぶたんぱく質が脳に蓄積する量も減っていた。動物実験をさらに進め、数年後に人間で臨床試験(治験)を始めたい考えだ。ダイズを粉末にしてカプセルに詰め、飲んでもらうことを想定している。植物創薬を目指す動きは世界で活発になっている。遺伝子組み換え作物を栽培する完全密閉型の植物工場は、ドイツのフラウンホーファー研究機構や米バイオベンチャーのケンタッキー・バイオプロセシング(ケンタッキー州)など、少なくとも世界に8カ所ある。田辺三菱製薬は13年に子会社化したカナダのベンチャー企業で、インフルエンザワクチンの成分を作る遺伝子組み換えタバコを生産する。今のように鶏卵を使うと6カ月かかるワクチン製造を1カ月に短縮できるという。5年後の実用化を目指している。遺伝子を組み換えた微生物を使って製造する医薬品が増えつつある。今後はコストや生産調整のしやすさから、遺伝子組み換え植物を使う医薬品製造が広がるとみられる。


PS(2014.4.28追加):漁業における太陽光発電の設置事例を追加する。このほか、養殖施設に風リング風車を設置した例もある。

*5:http://www.saga-s.co.jp/news/saga.0.2661728.article.html
(佐賀新聞 2014年4月12日) オリックスと契約 ノリ施設に太陽光発電
 佐賀県有明海漁協(草場淳吉組合長)は、太陽光発電装置の設置場所として屋根を約20年間貸し出す契約をオリックス(東京)と交わした。貸出料は年間約200万円。同社は、ノリ加工・集荷施設30カ所の屋根に太陽光パネル約1万1千枚を設置して売電する。草場組合長とオリックス国内営業統括本部地域営業担当の井尻康之執行役が佐賀市の同漁協本所で調印した。井尻執行役は「高い建物がなく、全国有数の日射量を誇る好立地」と選定理由を説明。草場組合長は「再生可能エネルギーの推進に一役買えれば」とあいさつした。年間総発電量は約286万6300キロワット時、一般家庭800世帯分を見込む。パネルは、川口スチール工業(鳥栖市)が独自工法で設置する。5月に着工し、9月までに全施設での稼働を目指す。オリックスは金融サービス事業が主な業務で、2012年度から太陽光発電事業に取り組んでいる。


PS(2014.4.29追加):*6のように、コンビニやスーパーに電気自動車の急速充電器があると便利で、高速道路のサービスエリアにもこのタイプの店舗があれば、電池切れの心配なく快適に高速道路を走れる。また、イートインコーナーは、20分程度で飲食を済ませなければならないため、そこで買ったものを座って食べられるスペースにすればよいのではないだろうか。

*6:http://digital.asahi.com/articles/photo/AS20140428003756.html
(朝日デジタル 2014年4月29日) ファミマ500店に電気自動車充電器 1回617円
 ファミリーマートは28日、電気自動車(EV)用の急速充電器を年内に全国500店で設置すると発表した。約20分の充電中に買い物をしてもらったり、「イートインコーナー」で飲食してもらったりするねらい。大手コンビニエンスストアが本格的に充電器を置くのは初めてという。充電器は幹線道路沿いの店などの駐車場に置く。1台あたり300万~500万円の費用がかかるが、政府や自動車メーカーの補助を使うため、ファミマの負担はほぼゼロという。EVのほかにプラグインハイブリッド車も使えて、客は1回617円(税込み)で充電できる。充電サービスを提供するジャパンチャージネットワーク社の有料会員になれば、1回308円(同)で済む。業界団体によると、急速充電器は国内では自動車販売店や公共施設などに約2千カ所ある。24時間使えるコンビニに設置されれば、さらに普及が進む。

| 環境::2012.12~2015.4 | 04:18 PM | comments (x) | trackback (x) |

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