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2022.5.6~14 侮辱や誹謗中傷を「言論の自由」「表現の自由」と考える社会の民主化度 (2022年5月16、23日に追加あり)
(1)侮辱や誹謗中傷は「人格権の侵害(=人権侵害)」である

     
    2022.4.16朝日新聞      2022.4.26朝日新聞  2022.4.26読売新聞

(図の説明:左図のように、イーロン・マスク氏がツイッター社の買収を提案し、ツイッター社は買収防衛策を検討していた。マスク氏の主張は中央の図の通りだが、これでは悪意の投稿は防げない。しかし、右図のように、4月25日、ツイッター社はマスク氏の買収提案を受け入れた)

1)イーロン・マスク氏のツイッター社買収から
 *1-1のように、徹底的な「言論の自由」を求めてツイッター社の投稿管理を批判していた米テスラCEOのイーロン・マスク氏による買収提案を、ツイッター社が受け入れたそうだ。しかし、市民が政治の良し悪しを判断する民主主義国で、市民の判断材料となる情報に関しては、「言論の自由」「表現の自由」の名の下であっても偽情報を容認するわけにはいかない。

 近年は、ツイッターのようなネット利用者が直接情報発信するプラットフォームで、正義の名の下に書かれた暴力・差別・ヘイト(憎悪)を助長する投稿が後を絶たず、ツイッター社は、有害投稿の削除や常習者のアカウント凍結などの対策を強化してきた。

 その中で、マスク氏は米国のトランプ前大統領のアカウント凍結などに強く反対してこられたそうだが、私も、トランプ前大統領が発した情報は米国民が選んだトップの主張を、メディアのフィルターを通さず知ることができるよい機会であったため、「(自分と意見が異なるから)偽情報で有害だ」と決めつけるのは、奢った価値観でよくないと思っていた。

2)ネット事業者に対する世界の潮流と改善すべき事項
イ)欧州のケース
 EUは、*1-3のように、グーグルやメタなどのネット事業者に違法コンテンツの排除や広告の適正表示を義務づける「デジタルサービス法(DSA)」を欧州議会で可決し、プラットフォーム企業に対して児童ポルノ・差別・デマ・ヘイトスピーチなどを含んだ違法コンテンツの排除や差し止めを厳しく義務づけた。

 また、ターゲット広告のために利用者のデータや閲覧履歴などが使われるのを簡単に拒める仕組みを提供し、子どもをターゲット広告の対象にしないことも規定し、利用者が意図しないサービスの契約や物品の購入を促すサイトの設計も禁止して、広告表示のルールも厳しくするそうで、どれも重要なことである。

 しかし、私は、個人情報保護や民主主義に響くとみて制御に乗り出すのには賛成だが、暮らしの隅々に行き渡っているサービスは独占的地位ある巨大IT企業だけが行っているわけではないため、まだ不足だと思う。

ロ)米国のケース
 米国では、*1-2のように、「利用者による投稿の内容にネット企業が責任を負わなくてよい」とする「通信品位法230条」を、「利用者の身体的、精神的被害に繋がるコンテンツを推奨するアルゴリズムを意図的に使った場合、230条による保護をなくす」という改正案が提出されたが、未だ合意は見通せていないそうだ。

 そのため、私自身は、ツイッターにこのブログに書いている内容の題名を一度だけ紹介するのみで、他のプラットフォームは使っていない。また、「反論を許していたら、批判のための批判ばかりされた」という民主主義とはかけ離れた経験から、現在は反論も受け付けないシステムにしているのである。

ハ)日本のケース
 日本は、昨年、ネット上の違法な投稿について被害者が投稿者を特定するための司法手続きを迅速化する「プロバイダー責任制限法」を改正し、ネット企業に違法な投稿を削除する「自主的対応」を求めているそうだ。

 しかし、私(被害者)の経験では、プロバイダーの自主的対応には限界があった上、司法手続きを使っての削除には時間と金がかかり、既にあちこちでコピーされている内容を完全に削除させることは不可能に近かった。さらに、判決が出て削除される前に生じた損害に対する賠償額は、「心の傷を癒やすため」とする慰謝料だけで、日本の裁判所には「その間の逸失利益を賠償させる」という発想がないため、損害賠償額が著しく低いのが問題だった。その結果、「加害者はやり得」で「被害者は徒労」という状態になっているのである。

ニ)「個人の尊厳」を踏みにじる侮辱と誹謗中傷
 近年は、*1-4のように、SNSの普及で誰もが瞬時に不特定多数に向けて発信し、表現できる時代になったため、これまで自分の意見を公に言うことができなかった人も、意見を言って書き残すことができるようになった。これにより、憲法が保障する「言論の自由」「表現の自由」の実現可能性が増してよくなったのだが、反面、ネット上で相手を貶める侮辱・誹謗中傷などの人格攻撃を行えば、「営業妨害」や「人格権の侵害(≒人権侵害)」などの深刻な被害を引き起こして、「心の傷」だけでは終わらないことになる。

 さらに、国民が正確な情報を入手して選挙時にそれを反映し、自分自身も自由に意見表明ができることは、民主主義の根幹だが、ネット上で容易に行える政治家への事実無根の侮辱・誹謗中傷などの人格攻撃は、その政治家に対する「政治活動の妨害」「人格権の侵害」を引き起こすだけでなく、結果として公正な選挙を妨げる。私もそういうことをされた経験があって司法に訴えたが、ハ)で述べたとおり、日本の司法には問題が多かったわけである。

 なお、政治家だけでなく、特定の企業を誹謗中傷する事例でも、名誉毀損・侮辱のみでなく「営業妨害」が発生し、司法判決が出る頃には、その企業は潰れていて判決の如何にかかわらずライバルらしき加害者は目的を達していることもある。そのため、「ネット情報は不特定多数が瞬時に閲覧可能となり、時として被害は深刻なものとなり得る」というのは本当だ。

 *1-4は、①インターネット上での中傷は、個々の投稿は軽微な内容でも、特定の人に殺到すれば大きな精神的負担となる ②投稿者が自身と考えの違う人を全否定し、自分なりの「正義」を掲げる投稿が目立つのも特徴 ③「表現の自由」は人権侵害につながる意見表明を無制限に許容していない ④リテラシー教育が重要 ⑤SNS運営事業者の取り組みも鍵を握る とも書いており、私は賛成だ。

 従って、問題のある投稿を放置して被害者の削除依頼に応じない事業者は、刑事事件として公権力が介入してよいと、私は思う。何故なら、被害者の不利益になっていることは明らかであり、事業者には、それでも公開し続けなければならない理由はないからだ。その後、削除された加害者から苦情が出れば、書いてある内容が事実か否か、仮に事実であったとしても公開すべき内容か否かによって、いったん削除したものを再度公開することは可能だが、「営業妨害」や「人格権の侵害」によって失われた被害者の逸失利益は戻らないからである。

(2)侮辱・誹謗中傷などの人格攻撃を「言論の自由」「表現の自由」とするメディアと野党
 *2-2のように、インターネット上での匿名の投稿者による誹謗中傷が後を絶たず、気に入らない人物や書き込みを不特定多数によって集中攻撃するという愚かな行為が生じやすくなった。その結果、非難された側が追い込まれて、自殺につながる例が国内外で相次いでいるのだが、ネット社会に法整備が追いついていない。

 また、「匿名での意見や情報発信を認めなければ、社会の不正を正す機会は保障されない」という人もいるが、匿名でしか書けないということは、「自分が書いていることの真実性に責任を持たず、相手に不都合なことを書きたいだけ書く」ということであるため、そのような無責任な侮辱・誹謗中傷が「言論の自由」を支えているなどと考えられては困る。そして、これは優位な立場にあるか劣位な立場にあるかが問題なのではなく、一人の主権者として、民主主義に責任を持つ大人の態度ではないという問題なのである。

 そして、4月21日、衆院で審議入りした刑法改正案の柱となる侮辱罪の厳罰化を巡って、*2-1のように、立憲民主党は「恣意的適用への歯止めが効かず、政府による言論弾圧に繋がりかねない」と批判を強め、泉代表が「侮辱罪は『言論の自由』を侵しかねない」と指摘されて、対案となる議員立法を国会に提出したそうだ。

 しかし、侮辱罪の法定刑の上限を「1年以下の懲役もしくは禁錮」「30万円以下の罰金」に引き上げるのが、被害者の損害と比較して厳しすぎるとは全く思えず、軽すぎて抑止力にもならなそうだ。さらに、名誉毀損罪のように「公共性がある場合は罰しない」として、政治家に対する誹謗中傷をすべて「公共性がある」と解すれば、政策論争ではない単なる人格攻撃の誹謗中傷・侮辱に「公共性」があるされ、それこそ恣意的に民主主義が破壊される。そのため、誰に対する誹謗中傷・侮辱かは関係なく、平等に人格権の侵害(≒人権侵害)として罰すべきである。

(3)過去には“普通”で“常識”だった差別と偏見の事例
 *3-1-1は、①SNSの誹謗中傷には、書き込む人の“正義感”が背景にある ②ネットで多数の批判や誹謗中傷が集まる「炎上」が頻発し、芸能人の活動自粛・企業の株価下落・倒産のみならず ③誹謗中傷を避けて発信しなくなったり ④「ネットで政治の話はしない」という人たちも出たり ⑤大衆による表現の規制と言っても過言ではない状況で ⑥他人に押しつける正義感が最もやっかいで ⑦マスメディアも自分たちが『正しい』と思って批判をするが、それも暴力になり得る と結論づけている。

 このうち、①②③は事実であり賛成だが、④⑤⑦については、政策に関する議論はできずに人格攻撃に終始する人が多く、これをマスメディアも煽っているのが、日本の民主主義のお粗末さである。そして、大きな割合の人がそうであるのなら、それは身分制度によって作られてきた文化とそれを修正しない教育に問題がある。

 また、⑥の他人に押しつける正義感すべてを悪者にする発想も「浅はか」のレベルに達するほど単純だ。何故なら、「他人を根拠もなく誹謗中傷して、その人に迷惑をかけてはいけない」というのは人権を大切にする日本国憲法の基本であるし、「そういうことをして人権侵害している人を見たら、無視するのではなく注意してやめさせなければならない」というのも大人が持っておくべき正義感だからだ。

 しかし、本人が「自分は普通だから正義だ」と思っていても、その時代・その人が住んでいる地域での“普通”にすぎず、それが永遠に世界標準で“正義”であるとは限らない。そのため、その時代の“普通”は時代を先取りする“先進”よりも下位にあるもので、「普通だから自分の考えが正義だ」と考え、他人に自分の価値観を押し付けたりしないことは重要である。以下に、“正義”ではないことになった“普通”の事例を、一部ではあるが列挙する。

1)障がい者に対する差別と偏見
イ)身体障がい者のケース
 *3-1-1のように、車いすを使う人が、①車いすユーザーが乗車拒否されたり ②駅員に「エレベーターのない無人駅で下車したい」と申し出たら「案内できない」と言われたり ③それをブログに書いたら「わがままだ」「感謝の言葉がない」などの誹謗中傷や批判が殺到したり ④「本当は歩ける」といった虚偽の記述をされたり ⑤子どもの学校を特定してさらされたり など、「誰もが生きやすい社会になるよう皆に考えてもらいたかった」という本人の意図からかけ離れた嫌がらせを受けたそうだ。

 駅へのエレベーター設置は、「高齢者・障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律(通称:バリアフリー法)(https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=418AC0000000091 参照)」が制定された2006年から開始され、この法律の目的は「高齢者・障害者等が自立した日常生活・社会生活を確保する重要性から、公共交通機関・建築物・設備等を改善することにある。しかし、それから16年後の現在でも改善されていない場所が多く、その分、ヘルパーの出番が増えている。

 そして、現在は、高齢者・障害者の日常生活や社会生活に障壁となる社会における事物・制度・慣行・観念その他一切のものの除去に資することや全ての国民が年齢・障害の有無・その他の事情によって分け隔てられることなく共生できる社会を実現することを目指しているが、この法律の制定前は、「高齢者や障害者は、世話をしてもらうことに感謝しながら、社会から隔絶された目立たない場所で、ひっそり暮らせ」と言わんばかりの“常識”だった。

 この“常識”が、高齢者や障害者の健康に悪く、彼らの人生を味気ないものにし、昭和21年11月3日に定められた日本国憲法(https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=321CONSTITUTION 参照)の「25条:すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」「13条:すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする」に反していることは明らかだが、日本国憲法にもついてきていない“常識”を持つ人が多かったことは否めない事実である。

ロ)精神障がい者のケース
 それでも、身体障がい者については、バリアフリーの考え方が浸透し始めているが、精神障がい者の場合は、刑法第39条が「i) 心神喪失者の行為は罰しない ii) 心神耗弱者の行為はその刑を減軽する(https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=140AC0000000045 参照)」と定めており、現在でも法律で差別がなされている。

 そして、その理由を「心神喪失者・心神耗弱者は行為の善悪や是非について判断ができないため責任能力がないからで、心神喪失者・心神耗弱者とは重度の精神障害・知的障害・泥酔状態を指す」と説明しているが、そもそも心神喪失とか心神耗弱という病名の病気はないのである。

 そのため、具体的な状況も示さずに、「精神障害者・知的障害者は何をするかわからない潜在的犯罪者で、責任能力がない」という印象を刑法が一般人に与えているのであり、メディアもまた、このような報道を頻発させて“一般常識”を作っている。なお、泥酔状態になることは本人の意思で防ぐことが可能であるため、泥酔状態であることを理由に刑罰を軽減するのも不合理だ。

 そのような中、*3-1-2の「精神科病院に入院中に新型コロナ患者のうち、235人が重症化しても治療設備が整った別の病院に転院できず死亡した」という事件が起きた。これについて、日本精神科病院協会の山崎会長は、「医療体制が逼迫したというだけではなく、精神科患者だから転院を拒まれた例もある」が話されたそうだ。もともと日本の精神病患者の入院日数は他国と比較して著しく長いが、それに加えて、薬で症状を抑えることができるようになった現在でも不当な差別が残っているのは、あまりにおかしいわけである。

2)女性に対する差別と偏見

   
  2021.3.31Yahoo   2021.3男女共同参画局     2021.5.15日経新聞

(図の説明:2021年3月に公表された2020年の男女格差報告では、左図のように、日本は120位で下から数えた方が早く、156位で最下位のアフガニスタンの方にむしろ近い。また、中央の図のように、日本はG7中最下位をキープしており、男女格差指数が改善せずに横這いなのは日本だけである。そして、右図のように、日本国内でも「管理的職業従事者に占める女性の割合」にはばらつきがあって、全体の傾向としては東日本より西日本の方が高い)

イ)教育の機会における女性差別と偏見
 芝浦工大が、*3-2-1のように、「2022年度の入試から、上位の女子約100人と公募制推薦入学者選抜(女子)の入学者約30人に入学金相当の28万円を給付して入学金を実質免除する」とのことである。

 この背景には、2019年調査で工学系の高等教育機関の入学者に占める女性割合がOECD加盟国平均で26%であるのに対し、日本は16%と最下位で、日本の女子の大学進学率が上昇しているにもかかわらず、工学部志望者が少ないことがある。しかし、工学の分野から女性のニーズを取り込むにあたっては、工学部の女性割合は増える必要があるわけだ。

 しかし、埼玉県の県立高校長などを務めた真下峯子校長が「①教育界には女子に無理をさせない、数学や理科は難しいから文系でよい、という文化があった」と指摘しておられ、保護者も「②工学部などは卒業後にきつい現場で働く」と考え、「③理系科目が得意な女子は医師、薬剤師といった仕事内容や働き方が想像しやすい分野に進ませがちだった」としている。

 上の右図にあるとおり、「管理的職業従事者に占める女性の割合」は、東京都と青森県を除いて西高東低だが、これには東日本の公立高校の多くが未だに男女別学で、女子高には理系コースがないという恐ろしい状況がある。私は、佐賀県の男女共学進学校から東大に来て、東日本では公立高校に男女別学のところがあるのに唖然としたくらいなのだ。

 ちなみに、日本国憲法は、「第14条:すべて国民は法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において差別されない」と規定しており、戦前は男女別学だった学校制度も、戦後になって男女共学に再編された経緯がある。しかし、西日本の公立高校では真面目にこれを実施したのに対し、東日本では実施しなかった上、私立の進学校は殆どと言っていいくらい男女別学にしたのだ。

 それにしても、①は、私から見れば失礼にも程があり、②は、女性の割合が低い職場は男性中心になるため3Kの現場が多くなる面はあるものの、③の医師は、(誰もが知っているとおり)最も3Kで体力を要する仕事であるため、学校はじめ保護者の理解不足によって、女性に均等な教育の機会が与えられてこなかったことは明白だ。

 さらに、*3-2-1は、④東大の女子学生割合は2021年度で19.7%で、東大は3割に高めようと地方出身の女子向けの住宅費補助を始めた ⑤女性は自宅外通学・浪人のしにくさがある ⑥「東大卒女子は婚活に不利」という俗論もある ⑦その結果、女子の挑戦意欲を冷ます土壌が強く残っている ⑧日本の女性学長割合は20年で13%で、英米独の20~30%を大きく下回る ⑨日本の停滞と閉塞感の根底には人の能力を十分に発揮させないことがある としている。

 ④はそのとおりで、東大は地方出身の女子学生のために、1~2年の学部生と外国人留学生のために三鷹国際学生宿舎(通称、三鷹寮)を用意したり、女子学生向けに住宅費補助を始めたりしている(https://www.u-tokyo.ac.jp/ja/students/welfare/h04_11.html 参照)。そして、私の経験では、寮に住んで様々な場所から集まった人と学部を問わず話をすることは、優秀な人が集まっているだけに、視野を広げるのに大いに役立つものだった。

 ⑤については、保護者の理解度や経済力にもよるが、保護者がよくても企業が自宅外通学や浪人歴のある女子学生をシャットアウトする場合があったが、これは今でもそうなのだろうか? また、⑥は真っ赤な嘘であるため気にする必要はないが、全体が相まって⑦⑧⑨の結果を生んでいることは間違いないだろう。

ロ)社会“常識”としての女性差別と偏見
 吉野家の常務取締役企画本部長である伊東正明常務が、*3-2-2のように、早稲田大学のマーケティング講座で、「①生娘をシャブ漬け戦略」「②田舎から出てきた右も左も分からない若い女の子を無垢、生娘な内に牛丼中毒にする」「③男に高い飯を奢って貰えるようになれば、絶対に食べない」などという講演をして吉野家から解任されたが、この講演を聞いていた人の中に女性はいなかったのだろうか?

 その場に女性がいたとすれば、その女性に対して配慮がなさすぎるし、配慮以前に女性を性的に見下している。そのため、この発言がネットですぐに報告され、「④こういう発言がさらっと出てくるのは、普段からこういう思想を持っているということ」「⑤顧客を軽視かつ蔑視している発言は取締役としても問題」「⑥上場会社の取締役がこんな差別的表現しか出来ないことに唖然」などと誰もが批判できるようになったのはよいことだ。
 
 しかし、記事の方では「⑦ウケを狙ったつもりが見事に滑って失敗した痛いおじさん」程度にしか批判していない。そして、ちょっと前までは、こういう発言を批判すると、むしろ「⑧笑って受け流せ」「⑨そんなことに目くじらを立てて」「⑩だから女がいるとやりにくいんだ」などと批判する方が悪いかのように言われたものである。そのため、これは、ほんの10年程の間に“一般常識”が変わったと言える事例なのだ。

 なお、「⑪吉野家はいつの間にか顧客を軽んじるような社風になりつつあったのではないか」と書かれている点については、日本はBSEに関して全頭検査をしていたにもかかわらず、私が衆議院議員をしていた期間(2005~2009年)に「米国に合わせて規制緩和しろ」と政府に言っていたのが吉野家で、それに反対していた私の落選後の2013年に、日本でもBSE検査対象牛の月齢を、30か月齢超、48か月齢超へと次第に引き上げる規制緩和がなされた(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000070497.html 参照)。つまり、吉野家が男社会で、安さに重きを置いて顧客の安全を軽んじていたのは、今に始まったことではない。

ハ)世界最下位の国アフガニスタンで起こっている間接差別・人権侵害など
 アフガニスタンのイスラム主義組織タリバン暫定政権の勧善懲悪省が、*3-2-3のように、「①女性は公共の場で目の部分以外の顔を布で覆わなければならない」という命令を出し、女性が従わなければ近親男性が当局から注意を受け、それでも従わなければ近親男性が3日間拘束され、投獄される場合もあり、政府機関で働く女性職員が命令を守らなければ解雇され、妻や娘が守らなければ男性職員を職務停止にするそうだ。

 タリバン暫定政権は、女性に髪や体の線を隠す服装の着用を求めていたが、②女性だけでの長距離移動禁止など女性への制限を強め ③家族以外の成人男性と会う場合は目の部分以外の顔を覆うよう指示し ④髪や体の線を隠す服装を「ヒジャブ」と呼ぶと定めて中でも全身を覆うブルカが最適とし、その理由を、「⑤ヒジャブを着用すれば、邪悪で堕落した者から守られるからだ」としている。

 しかし、①③④のように、女性全員に黒装束の衣装を着せて容姿を含めた人格を見えなくし、②のように、移動等を制限して一人前の人間としての活動をできなくするのは、人権侵害も甚だしい上、それを⑤のように、「(その定義は不明だが)“邪悪で堕落した”男性から身を守るため」としているのは本末転倒だ。何故なら、“邪悪で堕落した”人から女性を守ることが目的なら、邪悪で堕落した行為をした人を罰すべきであり、そうでない人を予防的に閉じ込めるのは乱暴極まりない差別と偏見だからである。

 さらに、女性がヒジャブを着なければ近親男性が当局から注意を受けたり、拘束されたり、投獄されたりするというのは間接差別と人権侵害が重なっており、政府機関で働く女性職員が命令を守らなければ解雇され、妻や娘が守らなければ男性職員は職務停止というのは労働法違反になりそうだ。

 しかし、これがアフガニスタン暫定政権が現在 “常識”にしようとしていることであり、これをアフガニスタンのような外国のことと無視できないのは、アフガニスタン人に起こっている間接差別や人権侵害などの不幸が、程度の差こそあれ日本にもあって、それに抗って最初に変革しようとした先進的な人ほど犠牲になってきた歴史があるからである。

3)メディアやSNSで増幅される差別と偏見
 これまで述べてきたように、差別や偏見は、メディアやSNSで“常識”とか“空気”の名の下に、その枠に入らないと思われる人に向かって誹謗中傷として浴びせられるもので、侮辱・人格権の侵害・営業妨害・政治活動の妨害等の深刻な被害を引き起こすものである。

 そして、SNSで発せられる誹謗中傷は、*3-3のように、匿名やニックネームを使っているため、被害者が損害賠償請求すべき相手を開示させるには、弁護士に依頼して訴訟を起こさなければならず、訴訟を受けたプロバイダーは「一般論の意見や感想に過ぎない」「名誉感情侵害とは言えない」「公共性がある」等の勝手な理屈付けをして投稿者の身元を開示せず、開示した場合でもIPアドレスのみという場合が多い。そのため、そのIPアドレスを元に利用者の実名・住所等を持つプロバイダーを突き止めて、さらに開示請求しなければならないことになる。

 従って問題点は、①「匿名やニックネームで無責任に他人を誹謗中傷してもよい」というルールにしていること ②プロバイダーが利用者の実名・住所等を持たず、IPアドレスのみでプラットフォームを使わせていること ③被害者が加害者を特定したい時に、個人情報保護・一般的意見・公共性などの勝手な理由をつけて加害者を隠蔽できる仕組みにしていること ④訴訟を通じた加害者の特定や損害の認定に時間がかかれば、被害者の逸失利益が膨らむ ということだ。

(4)女性議員が少ない理由にも“常識”としての女性差別・女性蔑視があること

  
2021.3男女共同参画局             2021.3Huffintonpost 

(図の説明:左図は、2021年3月に公表された総合のジェンダーギャップ指数と順位で、中央の図は、日本における総合と政治・経済・教育・健康という要素別の指数の推移だ。また、右図が、政治における小項目の順位であり、いずれも世界平均より著しく低い)

1)女性議員が増えない理由は何か
 *4-1のように、世界の諸機関が算出するジェンダーギャップ調査で、日本は常に下位に沈んでおり、特に、政治・経済面での不平等が際立っている。

 そして、2020年末に閣議決定した男女共同参画基本計画は国政選挙の女性候補割合を2025年までに35%にする目標だったが、候補者の男女均等化を政党に求める法律が施行され初めて行われた昨秋の衆院選でも、女性候補の割合は2割以下で、特に自民党・公明党は1割以下だった。

 2003年に小泉政権が掲げた「202030」は、「社会のあらゆる分野で、2020年までに指導的地位に占める女性の割合を少なくとも30%程度とする」という目標だったが、なかなか意思決定層に女性が増えず、指導的地位に占める女性割合は未だに低い。

 また、2007年の男女共同参画会議で「指導的地位」の定義を、①議会議員 ②法人・団体等における課長相当職以上の者 ③専門的・技術的な職業のうち特に専門性が高い職業に従事する者 と決定したが、これはむしろ妥協の産物であり、①については、議員になっただけでは意思決定できる指導的地位でないため内閣や首長に30%以上の女性がいることとすべきで、②については、課長ではなく役員(取締役等)に30%以上の女性がいることが必要で、③は専門的・技術的職業の経営者クラスに30%以上の女性がいることとすべきであって、こうなって初めて女性の意見がスムーズに社会に反映されるのである。

 しかし、2022年現在、「202030」も達成できなかっただけでなく遠く及ばず、身近な暮らしを支える意思決定の場が男性ばかりで運営されるのは、多面的意見を反映できないため政治にも経済にもマイナスになっている。その解決策として、世界の約130カ国・地域が「クオータ制」を導入して効果を上げており、日本も政党に女性候補者割合の数値目標設定の義務化を求めるなどの強化が必要という意見が多い。

 それも必要かも知れないが、私は、これまで書いてきたように、「指導的地位」に行こうとする向上心ある女性を何とかかんとか悪しざまに言って名誉を棄損することが、女性が「指導的地位」に昇ることを妨げているため、これを変えることが必要不可欠だと考える。何故なら、この社会の因習が、女性の政治参画を遅れさせ、経済でも女性に低い地位を押し付けて、男女の賃金格差を合理化しているからである。

 なお、岸田首相が施政方針演説で賃金格差是正に向けて「企業の開示ルールを見直す」として企業に対して格差報告を義務化する方針を示されたのはよいことであるため、この情報を徹底して開示し、投資家は気候危機に対する対応と男女格差に関する情報も見て投資先を決めるようにした方がよいと思う。

 その理由は、東証1部上場企業約900社を対象とした大手コンサルティング会社の調査のとおり、女性役員比率と企業業績には正の相関関係があり、多様性によって変革とイノベーションが進んで中長期に渡って利益率が上がり、日本経済の成長のためにもプラスだからである。

2)現職女性議員の話から
 世界経済フォーラムが発表した「ジェンダーギャップ指数」で、日本は昨年156カ国中120位で、とりわけ政治分野の147位がワースト10位に入るため、女性国会議員が増えない理由について、*4-2のように、7党の女性議員が障壁や解決策を率直に語り合う企画があったそうだ。

 その結果、①自民党の三原氏は「社会の意識。女性議員が必要だと本気で感じている方がどれほどいるか疑問だ」と指摘し ②立憲民主党の徳永氏も「男性は外で仕事、女性は家で家族の世話という性別の役割分担の意識」にある と述べられたとのことである。

 私は、①②については、1)の大手コンサルティング会社の調査で既に結論が出ており、性的役割分担している男性で殆どを占める日本の政治が、国の借金を量産し、イノベーションを阻害して日本経済を停滞させ、そのパフォーマンスは世界の中でも低いのを、誰もが見ているため重ねてコメントはしない。

 また、国会議員の働き方改革については、③公明党の古屋氏は「朝から晩までフル回転で働き続けるのが国会議員のかがみという風潮がある」とし ④国民民主党の矢田氏は「オンラインの国会がなかなか実現できず、家庭と両立していく制度が整っていない」とし ⑤三原氏は国会の質問対応が深夜に及ぶことから「霞が関と永田町が一緒に変わらなければ政治は変わらない」とし ⑥生理など女性特有の体調不良について声を上げにくいとの声もあがった のだそうだ。

 しかし、③~⑥については、女性の参画というと必ず、働き方改革と称して全員に対して働かない改革を強い、女性特有の不利な条件として「家庭との両立」「生理や更年期障害」を上げるが、「指導的地位」に昇るような女性はそれらを克服して働いてきているので、全女性に対して観念的な短所を押しつけるのは、むしろ女性が「指導的地位」に昇るのを妨げると、私は思う。

 また、選挙制度については、⑦小選挙区が現職優先になっているため、男性の現職がいるところに女性は立候補できず ⑧社民党の福島瑞穂氏は「北欧が女性議員を増やしたのは比例代表制のためで、政党の政策で選ばれる制度に変える必要がある」とし、⑨日本維新の会の石井苗子氏も「現職優先を守っている人たちはそう簡単には(議席を)明け渡さないから制度を変えないと絶対に変わらない」と応じたそうだ。

 私は、⑦⑧⑨は本当だと思うが、自民党は「現職優先」だけでなく、「勝つ候補」を公認するポリシーを持っており、選挙で勝ちやすい候補は、「現職」「世襲」「男性」「選挙に強い人気者」などの特徴があり、現職か世襲の男性候補が地方組織から上がってきやすいわけである。そのため、「そういう人ばかりが議員になって政治がうまく廻るのか」については、投票する側の国民が真剣に考えて投票先を選ぶ必要があるが、「公認されないため立候補していない人には投票できない」というジレンマもある。

 「クオータ制」を「優秀な男性が出られなくなる」と言う人も少なくないが、教育やキャリア形成で均等な機会を与えていれば優秀な人の割合は人口の割合に比例する。そのため、なかなか均等な機会が与えられない以上、男女の候補者割合を半々にすることに合理性はある。その結果として、選挙で当選し続けて意思決定できる立場まで昇る人が30%以上になるべきなのであり、日本における現在の状況を見る限り、「クオータ制」は必要だろう。

 私も、英国やドイツで女性がトップになって、国がよい方向に変革されたと思っているが、サッチャー英首相もメルケル独首相も本当に優秀な人であったため、そういう人を選んだ国民も賢いのだと思う。

3)女性の意見・能力・実績を軽く評価したがる偏見(“常識”)の存在
 60年前にレイチェル・カーソンが世に出した「沈黙の春」の冒頭「自然は、沈黙した。うす気味悪い。鳥たちは、どこへ行ってしまったのか」という記述は有名だが、DDTなどの殺虫剤の大量散布が生態系を破壊し、人の健康に影響を及ぼす可能性を訴え、米国社会に大きな衝撃を与えた生態学者のレイチェル・カーソンが、男性優位の産業界・科学界・メディアから、*4-3のように、「女性は科学者に向いていない」「ヒステリー」「未婚の女がなぜ遺伝のことを心配するのか」といった性差別的な攻撃を受けていたのは、本当に気の毒である。

 しかし、ジョン・F・ケネディ大統領がこの本の真価に気づき、大統領の科学諮問委員会が農薬の使用を制限すべきという報告書をまとめ、カーソンの警告が葬られなかったのは、世界にとって幸運なことだった。
     
 私も1995年頃、経産省に地球温暖化問題やその対策としてのEV・再エネ発電などを提案し、1997年に京都で開催されたCOP3で京都議定書が採択されてCO₂排出量削減が義務付けられたが、それ以外はなかなか進まなかった。それどころか、EVは「音がしないので危険(!?)」とか「航続距離が短い(?)」「高い(??)」など、また、太陽光発電も「廃棄物処理が大変だ(!?)」「高い(??)」「変動するのでバックアップ電源が必要だ(?)」などの馬鹿馬鹿しいいちゃもんをつけられることが多く、「これは私(女性)の科学力を馬鹿にしているせいだ」と感じている。そして、このような時に、内容を評価して実現に導いてくれるのは、本人も理解力のある優秀な人なのである。

 日本は、*4-4のように、①脱炭素社会のインフラ作りのためには、政府が金を出し惜しみすべきではない という主張が世界で勢いづいているのは、当然でよいことである。そして、このような場合に、②先進国で最悪の財政状況だ ③グリーン化にかかる膨大なコストをまかなう余力はあるのか などとして、無駄遣いと必要なインフラへの投資を混同する主張が出てくるのは、全く変である。

 さらに、④MMTの自国通貨建て国債を発行できる国なら、インフレになるまで赤字を気にせず財政拡大できる などとする意見は狂っており、今ある産業と雇用を維持するための浪費ばかり行い、グリーン投資をてこにして社会システムを転換させようとする近未来の視点もなく、新陳代謝を妨げる予算を作って国民に迷惑をかけたという意識にも欠けると言わざるを得ない。

4)人間の歴史と地球の歴史を関連づけて考えるには地質学が必要だが・・
 *4-5は、「大学での学生の人気は宇宙や気象に集まりがちで、地質学は地味な学問だが、興味を持つ若者が少ないと発展が望めない」「高校でも地学の履修率は低く、裾野を広げることが長年の懸案になっている」と記載しているが、私は、高校で地学も履修し、その地学は単に地質だけを述べていたため、無味乾燥な暗記科目になっていたと思う。

 人間は、目的があれば現地を歩いて調べたり、深く探究したりすることを全く厭わない動物で、①地下資源の探査 ②陸上の地震・津波に関する記録を調べて将来リスクの予測 ③火山や活断層の存在から原発の安全性確認 ④海底の地形や地質を把握して地図を作り、他の活動に使用 ⑤化石の年代とその時代の状況を推定 などが、これまで熱心に行われてきた個々の地質調査であろう。

 そして、「何の役に立つかわからないものを地道に調べろ」と言われても、人材が流入しないため研究や育成にも繋がらないため、高校の教科書(動画を使った方がわかりやすいと思うが)で、地球の始まりから現在までの「⑥陸地と海の変化」「⑦それが起こった理由」「⑧その時の気候」「⑨その時点で住んでいた動植物の種類と変化及び周囲の環境変化」「⑩人類が生まれて以降の地球の気候変動と人類の拡散(DNAの分布も調べる必要がある)」「⑪人間の歴史上で政権転覆や革命が起こった時の気候・収穫(各国の歴史家の協力が必要)」などを時系列で有機的に結び付けて解説すれば、実証的・科学的であると同時に興味深いと思う。

 つまり、生物や人間の壮大な歴史も、その背後には地球で起こった気候の変化やそれに伴う地政学上の変化があると思われ、今までは、それを科学的関連性を持って語られなかった点で無味乾燥だったため、国際的に協力してそれらを解明すれば、首尾一貫した科学になって興味深いと思うわけである。

(5)議員に対するメディアのスタンスの誤り
1)選挙に関する報道について
 *5-1-1は、①公職選挙法第148条は、新聞が選挙について報道、評論する自由を大幅に認めている規定で ②はじめから虚偽・事実を曲げた報道・それに基づいた評論でない限り ③政党等の主張や政策、候補者の人物、経歴、政見などを報道し ④これを支持・反対する評論を行うことはなんら制限を受けず ⑤そうした報道・評論により、結果として特定の政党や候補者にたまたま利益をもたらしたとしても、第148条にいう自由の範囲内に属するため問題はない ⑥従って選挙に関する報道・評論で、どのような態度をとるかは、法律の問題ではなく新聞の編集政策の問題で ⑦新聞に対して選挙の公正を確保する趣旨から、積極性を欠いた報道・評論を行ってきたとする批判があったが ⑧これは「表現の自由を濫用して選挙の公正を害してはならない」とのただし書き規定が、言論機関によって選挙の公正を害されたとする候補者側の法的根拠に利用されてきたためだ と記載している。

 このうち①については、*5-1-2の公職選挙法第148条は、1項に「新聞紙(これに類する通信類を含む。以下同じ)又は雑誌が、選挙に関し、報道及び評論を掲載するの自由を妨げるものではない」と規定しており、「大幅に認めている」のではなく「妨げない」のである。

 また、「虚偽の事項を記載し又は事実を歪曲して記載する等表現の自由を濫用して選挙の公正を害してはならない」という但し書きもあって、「虚偽や事実を歪曲した記載は『表現の自由』の濫用によって選挙の公正を害するものである」と規定しており、②③④は言いすぎである。さらに、⑤は、「結果として特定の政党や候補者にたまたま利益をもたらした」などと、意図しない結果で偶発的なものであるかのように書いているが、私のケースでは、女性蔑視を利用して議員としてマイナスのイメージを擦り付ける明らかに結果を意図したものだったし、そういう報道は例を挙げればきりがないほど多かったため、私は忘れても許してもいないのである。

 さらに、⑥は、「法律の問題ではなく編集政策の問題」などとしているが、虚偽や事実を歪曲した記載で「表現の自由」を濫用することは、日本国憲法では人権侵害であり、公職選挙法でも「選挙の公正を害する」と明確に規定されているため、明らかに法律上の問題であり、「儲かりさえすればよい」という編集政策の問題ではない。

 これに加えて、⑦⑧のように、「新聞に対して積極性を欠いた報道・評論を行ってきたとする批判があったが、これは但し書き規定が『言論機関によって選挙の公正を害された』とする候補者側の法的根拠に利用されてきたためだ」とするのは我田引水で、議員や候補者にも日本国憲法が適用されることを忘れるべきではない。

2)メディアの女性政治家に関する報道にも女性蔑視があること
 朝日新聞社は、*5-2のように、報道・各種事業・組織等におけるジェンダーバランスを見直そうと、2020年4月に「ジェンダー平等宣言」を発表し、①多様性実現のため、報道・事業・働き方に関する4つの指標を掲げ ②登場者・登壇者の女性比率をほぼ5割にし ③記事の見出し・写真がジェンダー格差を助長しないか目配りし ④男性社員の(2週間以上の)育休取得率は2020年度が約12%で、職場の雰囲気に問題のあることがわかり ⑤管理職・専門職に占める女性割合は14.2%で40代以上の社員の女性比率と等しいが、意思決定の場に女性が圧倒的に少ない現状は変わりなく ⑥日本のジェンダーギャップ指数低迷の責任はメディアにもあるため、男社会のメディアの変革は待ったなしだ と記載している。

 今でもそういう面は多いが、私の議員及び候補者時代には、メディアの報道には女性蔑視がしばしば見られた。例えば、私の出身地・経歴・実績などを全て無視して「落下傘だ」「刺客だ」と喚き立てたメディアは多かったし、私が社会調査を兼ねて玄海町を1件毎に要望や意見を聞きながらあいさつ廻りしていた時、「同行したい」と言ったテレ朝の記者を同行させていろいろと説明したにもかかわらず、TVで報道にする時には「単なる刺客で能力も実績もない馬鹿な女」ということになっていて「何を考えているのか」と思った。

 つまり、女性政治家の能力や実績を過小評価したり、事実を歪曲して悪く報道したりすれば、それは選挙という能力・実績・評判で闘っている人の足を引っ張ることになるため、政治活動の妨害以外の何物でもない。そのくせ、男性に対しては、大したこともないことを褒めて不公平・不公正を助長する現実があるのである。

3)変なことで政治家を叩き、官僚におべっかを使うメディアの姿勢も問題
 日本国憲法は、前文で、①主権は国民に存する ②国政は国民の信託によるもので、権威は国民に由来し、権力は国民の代表者が行使し、福利は国民が享受する ③日本国民は、正当に選挙された代表者を通じて行動する 等を定めて(https://hourei.net/law/321CONSTITUTION 参照)、議員による間接民主制を選択しているスマートな憲法だ。

 そして、③を実現するツールが選挙であるため、議員の意思が国政に反映されなければ、①②の国民主権は達成されないのに、朝日新聞は、2022年1月22日、*5-3-1のように、④官僚が「政治家の下請け」になり、根回しばかり奔走した結果、政策が劣化した と題して、下のことを記載している。

 つまり、⑤政府統計で統計的処理による補完は認められているが、官僚がデータを書き換えて、それを隠したのはアウト ⑥霞が関で統計不正が起きる原因は、統計軽視の姿勢と人員不足 ⑦統計軽視の理由は、統計データに基づいて政策や制度を見直すと間違いを認めることになる ⑧官僚も「無謬性の原則」に囚われている ⑨政治家は次の選挙で勝つことが最優先の短期志向で政策評価や分析ができず ⑩政治主導で政治家が上になって、官僚が政策評価や問題点の指摘をできず政治家の下請けになった ⑪官僚の役割は政策を検討したり実施したりすることで専門性が重要だが ⑫殆どの官僚が政治家や業界の根回しに奔走して勉強する時間がなく ⑬霞が関の幹部は法学部出身のゼネラリストが多く、専門家が不足して博士号を持つ人も少なく ⑭事務次官・課長・局長が1年ほどで異動し、卒なくこなしてリスクはとらなくなる人事制度が最大のネック などである。
 
 このうち、⑤は正しいが、人員不足を言いたてて、⑥⑦⑧⑫⑬⑭のように役立たずの人材を増やされては、国民負担が重くなりすぎる。また、⑨の政治家が短期志向であることは確かに問題だが、メディアは議員が各種委員会で政策に関する質問をしている場面を報道し、足りない点があればそれを指摘すべきなのに、政治家の人格攻撃に終始して国民の誰にもメリットにならない報道をしているのが大きな問題なのである。

 また、⑩は、憲法で国民主権と間接民主主義が定められている以上、選挙を通じて国民に選ばれた議員(=政治家)が官僚に指示するのは当然で、さもなくば民主主義が有名無実化するため何を言っているのかと思うし、また⑪の政策の検討や実施に専門性を要するのは官僚だけでなく政治家も同じであるため、そういう人が議員として当選するようなメディアの論調が必要で、それはメディアの社会的役割の1つであるのに何を勘違いしているのかと思うわけである。

 そして、朝日新聞は、2022年5月14日、*5-3-2のように、⑮「建設工事受注動態統計」の不正で受注実績を無断で書き換え二重計上した金額は、2020年度で実際より3.6兆円過大 ⑯2013~19年度には年5.8兆円過大だっていた可能性があるが ⑰正しい数字は今も見えない としている。

 そもそも、実績ではなく統計でもよいとし、仮の数字を入れて放っておくなどという行政特有の発想は、実績を重視する会計を全く理解しておらず、政策のレビューにも役立たない統計を作っている。そのため、その発想を変える根本的な制度変更が必要なのであり、それが公会計制度の導入と「Plan(計画)→Do(実行)→Chech(確認)→Action(行動)」システムの制度としての導入なのだ。

4)国民が選ぶ政治家の汚さを言いたててフィーバーするメディア
                  ← 国会議員の文書通信交通滞在費から
 *5-4のように、国会議員の文書通信交通滞在費の支給方法が法改正で月単位から日割りへと変わるそうだが、まだ使い道を開示する必要はないため、議員の「第2の給料」と皮肉られ、使い道の開示など改革の必要性が残っているのだそうだ。

 これについて、①法改正の発端は初当選した新人議員が在職1日で月100万円満額の文通費を受け取ったことを「世間の常識からしたらおかしい」とブログに綴ったことで ②今回の法改正で月単位の支給は廃止となったが ③非課税なので全額が議員のもとに入り ④使い切らなかった分の国庫返納の必要がなく ⑤一般社会では経費として使ったものの精算に領収書の添付は常識なのに ⑥国会議員の文通費は使途の公開義務がないため、正当な政治活動に使われていないとの指摘がある そうだ。

 昨年の衆議院議員選挙の後はこの話題でもちきりだったが、①については、私も初当選した時は在職1日で月100万円もらえる文通費は確かに「世間の常識と異なる」と思ったが、政治家の政治活動費も世間の常識とは異なる大きさだったので、これとは別に支給される交通費まですべてを無駄遣いではない必要経費に使っても足りない月が多かった。そのため、「国会活動とプライベートでの支出の線引きが曖昧」などと言われるのは、痛くもない腹を探られる気がする。

 どんな経費に使うのかと言えば、新人議員はまず東京と地元に事務所を設置して机やパソコンなどの備品を揃えなければならないため、その費用は100万円どころか300万円くらいかかる。そのため、私の場合は、地元を廻る自動車やコピー機はリースで済ませたが、毎月のリース料も決して安くなかったし、毎週末に九州の地元と東京を往復する交通費は国から支給される交通費を上回っていた。さらに、地元に送付する資料や国政報告会・タウンミーティングを知らせるチラシの数も世間の常識からかけ離れて大きいため、印刷代や送付料も著しく大きいのである。

 そのため、②のように、月単位の支給が廃止となったのなら、新事務所を設置しなければならない議員には東京と地元への事務所設置資金を渡した方がよいくらいだと思う。また、③については、経費なので非課税でよいが、確かに⑤⑥のように、領収書をつけて使途は開示した方がよいだろう。そして、④については、使い切らなかった分の国庫返納は必要だが、それなら地理的事情等で足りなくなる人には追加支給も必要だ。

 私は、もらった文通費の全額を政党支部に寄付して使途を全て開示し、監査も受けていたため文句を言わせないが、調査研究や広報などの政治活動を熱心にやればやるほど活動費はかさむので、名称を「調査研究広報滞在費」に改め、支給目的を「国政に関する調査研究、広報、国民との交流、滞在等の議員活動を行うため」としたのは、議員を経験した人の妥当な判断だと思う。

 また、政策研究大学院大学の竹中教授(政治学)が、「よい人材を採用するなら金銭的な待遇は大事になる」と指摘しておられるのは尤もで、金がなければ政治家になれない環境になれば、政治家の適正性に別の要素が加わって、寄付集めばかりしている人や一般人のニーズがわからないような金持ちが政治家になることになる。そして、それが国民にとってプラスかどうかは、考えなくてもわかることだろう。

<侮辱や誹謗中傷は「人権侵害」である>
*1-1:https://www.nikkei.com/article/DGXZQODK2648P0W2A420C2000000/?n_cid=SPTMG002 (日経新聞社説 2022年4月27日) ツイッターの公共性と社会的責任を問う
 米ツイッターが、米テスラ最高経営責任者(CEO)のイーロン・マスク氏による買収提案を受け入れた。徹底的な「言論の自由」を求めるマスク氏はツイッターの投稿管理を批判してきた。同氏には、言論の自由と有害情報防止という難しいバランスに細心の注意を払うよう求めたい。ツイッターは世界の著名人や一般市民が数億人のネット利用者に向け直接情報発信する基盤(プラットフォーム)であり、極めて公共性が高い。市民が政治の良しあしを判断する民主主義国では、判断のもとになる正確な情報の流布を担う役割もある。ところが近年、暴力、差別、ヘイト(憎悪)を助長する投稿や、ロシアのプーチン政権や米国のトランプ前大統領らが発する偽情報などの有害投稿が横行し、公共的な情報基盤として機能不全に陥りつつあった。このためツイッターは、有害投稿の削除や常習者のアカウント凍結などの対策を強化してきた経緯がある。トランプ氏のアカウント凍結はその一環だが、マスク氏は強く反対してきた。買収に成功した場合、同氏にはツイッターの公共性とそれに伴う責任を改めて強く自覚して行動してほしい。個人が支配する非上場企業になれば、株式市場を通じた社会による統治が効かなくなる。このため、買収成立後のマスク氏の行動次第では、法律規制によって有害情報を防ごうという潮流が世界で強まる可能性がある。すでに法律による規制にカジを切ったのが欧州だ。欧州連合(EU)は23日、「デジタルサービス法案」に合意した。年内にも施行する見込みだ。SNS(交流サイト)や動画共有などのプラットフォームの運営企業に有害情報を防ぐ管理責任を負わせ、違反企業には高額の罰金を科す。マスク氏が支配権を握ったとしてもツイッターは欧州でむしろ管理強化を強いられそうだ。米国で有害情報が増えれば、足踏みしてきた米議会での法規制導入論議が前進するかもしれない。日本では国家による言論規制を避けるためプラットフォーム企業や有識者が自主規制の枠組みを検討してきたが、効果的な具体策はまだできていない。ワクチンを巡る誤情報の横行で有害情報防止は社会の要請になった。関係者はツイッターの動向を注視しつつ、防止策の具体化を進めてほしい。

*1-2:https://digital.asahi.com/articles/DA3S15181362.html (朝日新聞 2022年1月23日) 巨大IT規制、遅れる日米 自主的対応が軸/与野党足並みそろわず
 米巨大IT企業の規制をめぐっては欧州だけでなく、日米でも動きが出ている。ただ、包括的な規制の網をかけようとする欧州に対し、与野党の足並みがそろわない米国や、企業の自主的な対応を軸としてきた日本はそこまで踏み込めてはいない。米下院の民主党議員らは昨年、利用者による投稿の内容にネット企業が責任を負わなくていいとする「通信品位法230条」の改正案を提出した。利用者の身体的、精神的被害につながるコンテンツを推奨するアルゴリズムを意図的に使った場合、230条による保護をなくすという内容だ。米国では、メタ傘下のフェイスブック(FB)をめぐる内部告発などを受け、規制強化の機運が超党派で高まっている。ただ、230条の改正には超党派の支持があるものの、共和党側はIT大手による投稿の削除を「やり過ぎ」と批判し、民主党側は有害投稿への対応が不十分だと訴えるなど合意は見通せていない。日本では昨年、ネット上の違法な投稿について、被害者が投稿者を特定するための司法手続きを迅速化する「プロバイダー責任制限法」の改正があった。ネット企業には、こうした投稿を削除する「自主的な対応」を求めている。ただ、国ごとの対応を公表しない米企業もあり、総務省の有識者会議は、この状況が続けばルールづくりなどの「具体的な検討が必要」との意見を昨秋に出した。また、情報管理については巨大IT企業に対する規制強化の動きがある。政府は大規模な検索サービスやSNS事業者にも厳格な管理の義務を課す電気通信事業法の改正案を、今年の通常国会に出す予定だ。ただ、当初盛り込む方針だったネット閲覧履歴の第三者への提供についての本人同意の原則は、日米の経済界の反対で見送りになりそうだ。利用者への通知・公表だけでも認める方向となっている。

*1-3:https://digital.asahi.com/articles/DA3S15181454.html (朝日新聞 2022年1月23日) 欧州議会、巨大IT規制可決 差別・デマ排除、成立へ前進
 「プラットフォーマー」と呼ばれる巨大IT企業の規制へ、欧州連合(EU)が取り組みを急いでいる。グーグルやメタ(旧フェイスブック)などのネット事業者らに、違法コンテンツの排除や広告の適正な表示を義務づける法案を、欧州議会が可決した。暮らしの隅々に行き渡る巨大企業のサービスは、個人情報の保護や言論など民主主義のありようにも響くとみて制御に乗り出す。欧州議会が20日に可決した「デジタルサービス法(DSA)案」はプラットフォーム企業に対し、児童ポルノや差別、デマ、ヘイトスピーチなどを含んだ違法コンテンツの排除や差し止めを厳しく義務づける。広告表示のルールも厳しくする。ターゲット広告のために利用者のデータや閲覧履歴などが使われるのを簡単に拒める仕組みの提供や、子どもをターゲット広告の対象にしないことなどを規定。利用者に意図しないサービス契約や物品購入を巧みに促すサイトの設計も禁止する。企業は違反すれば、最大で世界売上高の6%の罰金が科される。今後、EU加盟国でつくる理事会との協議を経て成立に向かう。EUは、他国のモデルにもなりうるとみており、巨大IT企業の規制づくりをリードしたい考えだ。DSAは、EUの行政を担う欧州委員会が2020年12月に発案した。圧倒的な規模と資金力を持つ巨大IT企業に対し、独占的地位の利用を禁じてビジネスの競争環境を整える「デジタル市場法(DMA)案」とセットで法制化を進めている。DMAの法案は昨年12月に一足早く可決しており、問題が起きた後に競争法違反などで罰する仕組みから事前規制への転換をめざす。両法案は00年に定めた法律の包括的な改定にあたり、市民がネットを安全に使えるようにし、公正な競争を促す狙いがある。社会のデジタル化への対応は、気候変動とともにEUが取り組む主要課題だ。ただし、ネット上で憎悪があおられたり、犯罪が誘発されたりする問題点もたびたび指摘される。欧州委のフォンデアライエン委員長は「プラットフォーマーのビジネスモデルは、自由で公正な競争だけでなく民主主義や安全にも影響を及ぼす。巨大な力を制御していかねばならない」と指摘する。

*1-4:https://mainichi.jp/articles/20220428/k00/00m/040/330000c?cx_fm=mailasa&cx_ml=article&cx_mdate=20220504 (毎日新聞 2022/5/3) ネット中傷の連鎖どう防ぐ 「個人の尊厳」と「表現の自由」考
 インターネット上でSNS(ネット交流サービス)が普及したことで、誰もが不特定多数に向けて発信したり、表現したりできる時代になった。憲法21条が保障する「表現の自由」の重要性が増す一方、ネット上の中傷は「言葉の刃(やいば)」となり、時に深刻な人権侵害を引き起こす。ネット空間で「個人の尊厳」をどう守っていくのか――。デジタル社会の大きな課題となっている。
●「加害者」にも「被害者」にも
 国民が自由に意見表明できることは民主主義の根幹だ。だが、他人の名誉やプライバシーを侵害する表現は「個人の尊厳」や幸福追求権を保障する憲法13条の理念に反して違法となり、司法は被害者への損害賠償や表現内容の削除を命じることで被害回復を図ってきた。名誉毀損(きそん)と認定されるのは、従来はマスメディアの表現内容が多かったが、1990年代後半からインターネットが普及すると、個人によるネットへの投稿が対象となるケースが増えた。99年に開設された匿名ネット掲示板「2ちゃんねる」を巡り、投稿内容で中傷されたとする人たちが掲示板管理人に損害賠償を求めた訴訟で、中傷を放置したことへの違法性を認める判決が2002~03年ごろに相次いだ。08年に米アップルのスマートフォン「アイフォーン」が日本に上陸すると、パソコンに向かわずとも手元でのネット接続が容易になった。ツイッターなどSNSの広がりもあり、誰もが投稿による「加害者」や「被害者」になり得る時代になった。こうした状況下で最高裁は10年、二つの重要な判断を示した。自らのホームページで特定企業を中傷したとして名誉毀損罪に問われた男性の刑事裁判で、「ネットの情報は不特定多数が瞬時に閲覧可能となり、時として被害は深刻なものとなり得る」と指摘。ネット上の表現も、従来の紙媒体などでの表現方法より緩やかな基準で扱うべきでないとした。また、名誉毀損に当たる投稿内容に関してプロバイダー(接続業者)に発信者情報の開示義務があるかが争われた訴訟で、「開示義務がある」との初判断を示した。匿名の投稿者による中傷に対して法的責任を問うには被害者側が投稿者を割り出す必要がある。最高裁がプロバイダーに情報開示義務があると認めたことで、ネット上の中傷を抑止することが期待された。
●中傷相談、10年間で4倍超
 だが、被害は急速なペースで深刻化してきた。総務省が委託する「違法・有害情報相談センター」に寄せられた中傷相談は、10年度の1337件が20年度に5407件と4倍超に増加。ツイッター社に対する発信者情報の開示請求も16年の58件が20年は364件と6倍超に及んでいる。20年5月には、フジテレビの人気番組「テラスハウス」に出演していたプロレスラーの木村花さん(当時22歳)が、放送内容を巡ってSNS上で中傷を受けた後に急死。ネット中傷の拡散と連鎖が社会問題として広く認知され、被害者救済の動きが本格化した。21年4月にはプロバイダー責任制限法が改正され、中傷投稿者の特定に必要な2段階の裁判手続き(①ネット上の住所であるIPアドレスの開示をSNS事業者らに求める②事業者から開示されたIPアドレスを基に契約者情報をプロバイダーに求める)について、同じ裁判官が判断できるように簡略化された。また、裁判所が通信記録の消去禁止をSNS事業者側に命じる措置も新設された。この改正法は今年秋までに施行される。さらに、政府は3月、侮辱罪を厳罰化する刑法改正案を閣議決定し、今国会での成立を目指している。改正が実現すれば、現行の「拘留(30日未満)または科料(1万円未満)」に「1年以下の懲役もしくは禁錮」と「30万円以下の罰金」が追加され、公訴時効は1年から3年に延長される。
●欧州で保護進む「忘れられる権利」
 広大な海にも例えられるインターネット上では、グーグルやヤフーなどの検索サイトは欠かせないツールとなっている。だが、ネットでの名誉侵害などを訴える人にとっては、不都合な情報が不特定多数へ容易に広まることとなり、検索サイトを相手取って削除を求め裁判を起こす動きは絶えない。ただ、「表現の自由」との兼ね合いがあり、司法はこうした訴えに対して慎重な姿勢を示す。最高裁は2017年、児童買春容疑で逮捕された男性が、逮捕歴が表示される検索結果の削除をグーグルに求めた仮処分申請を退けた。この際の決定で「公表されない利益が公表される利益に明らかに優越する場合には削除が認められる」との初判断を示した。検索サイトの存在については「情報流通の基盤として大きな役割を果たしている」と意義付け、検索結果を安易に削除することはこの役割を制約するとした。サイトによる検索結果の提供を表現行為と捉え、「表現の自由」を重く見た決定だった。インターネット上の個人情報の削除を求める権利は「忘れられる権利」として欧州で保護が進み、日本でもさいたま地裁が15年に新たな権利として認める判断を示した。だが、2審・東京高裁は地裁決定を取り消し、最高裁もこれまで「忘れられる権利」に言及した判断を出していない。ネット情報の削除訴訟に詳しい神田知宏弁護士は「逮捕歴などがいつまでも検索結果として残ると、就職などに影響して更生に支障が生じる。ネットで情報が拡散する時代は、紙媒体中心の時代では考えられないほど問題が深刻だ。17年の最高裁決定以降、裁判所が削除を命じるハードルが上がり、以前なら削除が認められていた事案でも認められない傾向が続いている」と指摘する。
●中傷投稿対策 事業者に公表義務化を
 インターネット上での中傷は、個々の投稿は軽微な内容でも、特定の人に殺到すれば大きな精神的負担となる。投稿者が自身と考えの違う人を全否定し、自分なりの「正義」を掲げる投稿が目立つのも特徴だ。「表現の自由」は人権侵害につながる意見表明を無制限に許容しておらず、自身の投稿に問題がないかを判断するためのリテラシー教育が重要となる。SNS(ネット交流サービス)の運営事業者の取り組みも鍵を握る。プロバイダー責任制限法の改正により、投稿者の責任を追及するための裁判手続きは簡易になるが、一般市民にとっては裁判手続きを経ること自体が負担だ。まずは中傷投稿の全体数を減らす必要があり、問題のある投稿を放置している事業者に行政処分や罰金などを科すことも考えられるが、安易な公権力の介入は過剰な削除を招き、表現の自由との関係で問題が生じかねない。そこで考えられるのは、中傷やプライバシー侵害に当たる違法な投稿にどういった対策をしているのか、各事業者に公表義務を課すことだ。具体的には、どれぐらいの削除要請があり、どういった内容の投稿を何件削除したかなどが分かれば、国民が事業者を評価できるようになる。ただ、中傷投稿には明らかに違法というものから、社会的に不適切というものまで幅があり、画一的な対応は難しい面もある。事業者は社会と対話をしながら、自社の方針を常に改善していくことが求められる。
■日本国憲法(抜粋)
第13条
すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。
第21条
1 集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。
2 検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない。

<侮辱や誹謗中傷を「言論の自由」「表現の自由」としたメディア>
*2-1:https://news.yahoo.co.jp/pickup/6424696 (Yahoo 2022/4/24) 侮辱罪厳罰化、見直し要求 立民「言論弾圧」と批判 刑法改正案
 21日に衆院で審議入りした刑法改正案の柱となる侮辱罪の厳罰化をめぐり、立憲民主党が批判を強めている。インターネット上の中傷抑止が狙いだが、改正案では恣意(しい)的な適用への歯止めが効かず、政府による「言論弾圧」につながりかねないとの主張だ。既に対案となる議員立法を国会に提出。修正も含め見直しを求めている。「街頭演説で『悪夢のような民主党政権』と言えば、侮辱罪で逮捕される可能性がある。自民党はそれでもいいのか」。立民の藤岡隆雄氏は21日の衆院本会議で、安倍晋三元首相による在任中の旧民主党政権批判を例に挙げながら、改正案の問題点を追及した。改正案は、現行で「拘留(30日未満)または科料(1万円未満)」となっている侮辱罪の法定刑の上限を、「1年以下の懲役もしくは禁錮」「30万円以下の罰金」に引き上げる内容だ。きっかけは、ネットで中傷を受けたプロレスラーの木村花さん=当時(22)=が命を絶った問題。投稿者2人が略式命令を受けたものの、科料9000円にとどまったため、「軽過ぎる」との声が強まった。ただ、侮辱罪には、名誉毀損(きそん)罪にあるような「公共性などがある場合は罰しない」との条文がなく、立民は政治家らへの批判を萎縮させかねないと問題視。さらに、侮辱罪は「公然と人を侮辱」したケースが対象のため、交流サイト(SNS)などでのいじめに対応しにくいと指摘する。立民の対案は、SNSでの中傷を対象にする「加害目的誹謗(ひぼう)等罪」を新設。併せて、正当な批判への同罪適用を封じる規定も盛り込んだ。泉健太代表は22日の記者会見で「侮辱罪は言論の自由を侵しかねない」と指摘。同党関係者は「修正されなければ反対する」と明言した。これに対し、古川禎久法相は「表現の自由は極めて重要な権利で、不当に制限してはならないのは当然だ」と反論。政府・与党は法案見直しの必要性を認めておらず、今後の審議は難航が予想される。 

*2-2:https://www.nishinippon.co.jp/item/n/638156/ (西日本新聞 2020/8/24) ネット中傷対策 表現の自由も守る制度を
 人権を傷つけられた被害者の救済と表現の自由の両立-。容易ではないが、情報技術(IT)進展に伴う法整備など時代に即した対策が求められる。インターネット上で匿名の投稿者による誹謗(ひぼう)中傷が後を絶たない。「死ね」「つぶせ」といった特定の個人や団体の存在を否定する内容もある。少し前のパソコン全盛の時代は掲示板サイトが主な舞台だったが、最近はスマートフォンを使った会員制交流サイト(SNS)に移った。SNSは誰でも意見を匿名で気軽に投稿でき、その内容は瞬時に他の利用者に拡散もされる。このため、気に入らない人物や書き込みを、不特定多数により集中攻撃する行為も生じやすい。その結果、非難された側が追い込まれ、自殺などにつながる例が国内外で相次いでいる。SNSは知らぬ間に不特定多数とネット上の知人を介してつながり、自分の情報が次々に掲載されていくケースもある。投稿による人権侵害への対応を定めたプロバイダー責任制限法は2002年に施行した。被害者側がネット事業者(プロバイダー)に投稿の削除を求め、応じない場合、投稿者の特定につながる情報開示を求め、裁判に移行する制度だ。総務省の有識者会議は今年7月、こうした裁判手続きの迅速化のため、投稿者の氏名を特定する情報として、従来のネット上の住所に加え、電話番号も開示するという中間報告案を示した。それでも開示請求の裁判自体は必要で、その労力を苦に泣き寝入りする被害者はいるだろう。ネット社会に法整備が追いつかない現状の一端である。人工知能(AI)を使いネット上の投稿から有害な内容を検出する試みもある。新たな問題はないか成否を注目したい。一方、匿名での意見や情報の発信を認めなければ、社会の不正を正す機会は保障されないとの議論もある。確かに、匿名性が言論の自由を側面から支えているのは間違いない。危ぶむべきは、優位な立場にある行政や大企業が自らに不都合な投稿の削除を不当に求めることだ。その危険性を排除する仕組み作りは欠かせない。現行制度はネット事業者が独自の基準を投稿者に示し、誹謗中傷と判断した場合は削除するとしている。自主判断は、恣意(しい)的な権力の介入を招かぬためにも必要だ。新聞も公序良俗に反すると判断した投稿は掲載しない。社会の公器としての責務であり、ネット事業者にも共通の部分があるはずだ。もとより表現の自由にも憲法上の制約はある。ヘイトスピーチ規制法の成立がその好例だ。

<ネット中傷に含まれる差別も過去には“常識”だったこと>
*3-1-1:https://digital.asahi.com/articles/DA3S15282598.html (朝日新聞 2022年5月1日) 「正しさ」が生む、誹謗中傷 5・3集会 阪神支局襲撃35年
 1987年に朝日新聞阪神支局で記者2人が殺傷された事件から、5月3日で35年を迎える。朝日新聞労働組合は事件翌年から「言論の自由を考える5・3集会」を開いてきた。昨年に続き今年もオンラインで開く。タイトルは「『正しさ』が暴力になるとき ネット上の誹謗(ひぼう)中傷と向き合う」。登壇予定のパネリストたちに、メディアの現状について考えを語ってもらった。
■差別の構造、強く表れるネット上 コラムニスト・伊是名夏子さん
 昨年4月、車いすを使う私が、JRの駅で「乗車拒否されました」とブログに書いたところ、多くの誹謗(ひぼう)中傷や批判が寄せられました。1年が経った今でもネットで書かれ、被害が続いています。ネット上の攻撃は粘着質で、どんどんエスカレートします。発端は、私が「エレベーターのない無人駅で下車したい」と駅員に申し出て、一時は「案内できない」と言われた体験を明かしたことです。これに対し、「わがままだ」とか「感謝の言葉がない」などの批判が殺到しました。「本当は歩ける」といった事実無根の記述もありました。子どもの学校も特定してさらされ、迷惑や危険が及ぶことを考えて怖かったです。例えば、レストランの予約をする時に「伊是名です」と名乗るのも怖い。今は自分のツイッターの書き込みをやめています。ブログに書いたのは腹いせのためではなく、誰もが生きやすい社会になるようみなさんに考えていただきたいと思ったからです。でも本当に難しいと感じます。車いすユーザーへの乗車拒否はよくありますが、今回は炎上した。鉄道の駅は「歩いている人」に身近な場所。そうした空間では人々にとって、車いすユーザーよりも駅員の方が身近だからかな、と思います。ネットでは差別の構造がより強く表れます。社会には障害者や女性、在日コリアンの問題などまだまだ見えない差別があり、ネット上に誹謗中傷として「うわっ」と出てきている。メディアは、被害者だけでなく加害者や第三者の主張も採り入れて中立性を保とうとすることがあります。でも被害者と加害者らは対等ではありません。差別への向き合い方についても議論したいと思います。
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1982年生まれ。生まれつき骨の弱い「骨形成不全症」で電動車いすを使う。東京新聞・中日新聞、ハフポストなどでコラムを執筆。著書に「ママは身長100cm」(ディスカヴァー・トゥエンティワン)。
■違う観点、「まじること」の健全さ 演出家・高山明さん
 国際芸術祭「あいちトリエンナーレ2019」で一時中止された企画展「表現の不自由展・その後」について、寄せられる意見を出展作家の有志で受ける「Jアートコールセンター」を期間中に設置しました。電話線を通じ、電話をかけてきてくれている人との間に、文字どおり回線がつながった感じがありました。不自由展の開催者側、抗議する側の双方が「自分の方が正しい」と競い合うことに息苦しさを感じていました。自分はそうあるまいと思っていても、電話で反対意見を聞くと「いやあなたが間違っている。税金でそういうことをやるのはドイツでは当然で……」などと言ってしまう。相手も違う観点から自分の「正しさ」を主張するだけ。場合によっては3時間話してけんか別れのようになりました。「説得」は「自分が正しい」ということが前提のコミュニケーション。対等ではなく、お互いマウントを取ろうとする。途中から自分も相手も声をあげ、それを両者の間に置くだけでいいじゃないかと思うようになりました。インターネットは開いているようで、どんどん閉じていくものだと思います。SNSはある程度選別された相手と社会を作るので、似たもの同士になりやすい。行き場のない感情、怒りやねたみが「正しさ」と結びつき、制御不能となり、集団リンチを始めてしまいます。制御するシステムを作らなければならないと思いますが、それもエスカレートすれば、一定の傾向の意見が排除されて「まじっていること」の健全さが損なわれてしまう。無法地帯にならないようにジャッジするのは誰なのか。どう折り合いをつけていくのか。考えたいと思います。
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1969年生まれ。演出家・アーティスト。2002年に演劇ユニット「Port(ポルト) B」を結成。東京芸術大学大学院映像研究科教授。著書に「テアトロン:社会と演劇をつなぐもの」(河出書房新社)。
■「大衆による表現の規制」で萎縮 経済学者・山口真一さん
 計量経済学というデータ分析手法を使って、2014年からソーシャルメディアの研究をしています。私が始めた時点ですでに、ネット上で多数の批判や誹謗(ひぼう)中傷が集まる「炎上」は頻発していました。影響は芸能人の活動自粛や企業の株価下落、倒産にとどまりません。誹謗中傷が怖くて自由な発信ができなくなってきた。現実に「ネット上では政治の話はしない」という人たちがいます。SNSが普及して、誰もが自由に発信できるようになった。けれど気がついてみたら、みんなの発信によって発信が萎縮してしまっている。まさに、大衆による表現の規制と言っても過言ではない状況です。「ネット上の誹謗中傷」と言いますが、加速させる一因にマスメディアの影響が少なからずあります。昨年にかけて起きた秋篠宮家の眞子さんと小室圭さんの結婚を巡る騒動は、誹謗中傷にメディアが加担してしまった事例と言えます。多くの人が必要以上にネガティブな感情を抱いて、過剰にあおられるという現象が起きてしまった。私が17年に調査したところ、誹謗中傷に参加した人の動機として、6~7割は「許せなかったから」「失望したから」といった、その人なりの「正義感」があることが分かりました。私は、他人に押しつける正義感が人間で最もやっかいで、人は正義感を抱いたときこそ注意しなければいけないと考えています。他方で、マスメディアも自分たちが「正しい」と思って批判をする立場ですよね。ときにそれが暴力になり得てしまう。ネット上の誹謗中傷だけでなく、どうすればよりよい社会になるのか、メディアはどうしていけばいいのかという議論もできればと思います。
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1986年生まれ。国際大学グローバル・コミュニケーション・センター准教授(計量経済学)。著書に「正義を振りかざす『極端な人』の正体」(光文社新書)。朝日新聞朝刊で「メディア私評」を連載中。
■自由権が言葉の暴力ぶつける方便に コーディネーター・朝日新聞デジタル機動報道部、藤えりか記者
 SNSの誹謗(ひぼう)中傷をめぐり、運営企業や法規制などのあり方を取材してきました。被害を訴える人たちにも話を聞いてきましたが、多くは相手側から「言論の自由だ」「意見論評にすぎない」と異口同音に反論を受けているといいます。批判の範疇(はんちゅう)と思える表現もありますが、裁判所に権利侵害が認められても「言論の自由」を主張し続け、書き込みをやめない例もあります。書き込む人なりの「正義感」が背景にある場合は顕著なようです。民主主義の根幹を成す自由権が、言葉の暴力をぶつけるための方便として利用されています。結果、「言論の自由」を否定的にとらえる言説もネットで見かけます。攻撃対象になりたくないと、SNSでの発信をやめる人も出ています。言論機関の一員として、憂慮すべき事態だと感じます。言葉の暴力に追い詰められ、自死に至る例も出ました。誹謗中傷や偽情報に感化された可能性のある暴力事件も起きました。5月3日は言論の自由を再確認する日。現在のゆがめられた状況を立て直すにはどうしたらいいのか、考えたいと思います。
■言論の自由、今年も語り合う
 35年前の憲法記念日の夜、兵庫県西宮市の朝日新聞阪神支局に目出し帽姿の男が押し入り、散弾銃を発砲した。小尻知博記者(当時29)が左脇腹を撃たれて死亡し、犬飼兵衛記者(当時42)は右手の小指と薬指を失うなど重傷を負った。「赤報隊」を名乗り、「すべての朝日社員に死刑を言いわたす」「反日分子には極刑あるのみ」と記した犯行声明文が事件の3日後、共同、時事両通信社に届いた。警察庁は、後に判明した東京本社銃撃などとともに、全8事件について「広域重要指定116号事件」として捜査したが、2003年までに全ての事件が未解決のまま公訴時効を迎えた。朝日新聞労働組合は事件翌年から、「言論の自由を考える5・3集会」を主に兵庫県内で開催している。言論への暴力やナショナリズム、メディア不信など、年ごとにテーマを設け、多彩なゲストを迎えるパネルディスカッション形式で語り合ってきた。コロナ禍で昨年は初めてオンラインでの開催となり、今年も同じ形式になる。
◇集会は5月3日午後1時から。参加無料。視聴するには申し込みが必要。パソコンやスマートフォンから専用サイト(https://53asahiroso35.peatix.com別ウインドウで開きます)にアクセスする。イベントサイトPeatixの会員登録も必要。問い合わせは5・3集会事務局(auosk@asahi.email.ne.jpメールする)。

*3-1-2:https://www.yomiuri.co.jp/medical/20210915-OYT1T50211/ (読売新聞 2021/9/15) 精神科入院の235人、コロナ重症化で死亡…別の病院に転院できず
 日本精神科病院協会は15日、全国の精神科病院に入院中に新型コロナウイルスに感染した患者のうち、235人が重症化しても治療設備が整った別の病院に転院できずに死亡した、との調査結果を発表した。調査は8月、協会に加盟する民間精神科病院1185か所を対象に実施。昨年以降の感染者の発生状況などを尋ね、711病院から回答を得た(回収率60%)。その結果、310病院で入院患者3602人、病院職員1489人の感染が判明。うち30病院の患者235人が、転院要請に応じてもらえず死亡した。同協会によると、精神科病院では、患者のマスク着用など感染対策の徹底が難しい。内科や呼吸器科の医師が不在の病院もあり、感染症の専門的な治療を行うには限界があるという。同協会の山崎学会長は記者会見で「医療体制が 逼迫ひっぱく したというだけではなく、精神科患者だから転院を拒まれた例もあると思われる」と話した。今回の調査を受け、同協会は15日、新型コロナに感染し重症化した精神疾患患者が迅速に転院できる体制の整備などを求める要望書を厚生労働省に提出した。

*3-2-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20220506&ng=DGKKZO60526440W2A500C2MM8000 (日経新聞 2022.5.6) 揺らぐ人材立国(5)偏見が狭める女性の進路 国の未来、多様性がひらく
 成績優秀な女子学生は入学金を実質免除――。芝浦工業大は2022年度の入試から、女子限定の"大盤振る舞い"を始めた。
●限定の奨学金
 一般入試合格者で上位の女子約100人と「公募制推薦入学者選抜(女子)」の入学者約30人に入学金相当の28万円を給付する。女子学生の3人に1人弱が恩恵を受ける計算だ。反応は上々で一般入試の女子志願者は前年度比9%増えた。女子の大学進学率は上昇傾向なのに工学部志望者が少ないことは日本の大学に共通の悩みだ。経済協力開発機構(OECD)の19年調査では工学系の高等教育機関の入学者に占める女性割合は加盟国平均で26%。日本は16%で最下位だ。2月中旬、昭和女子大付属昭和中学・高校(東京・世田谷)を東京大の染谷隆夫工学部長らが訪れ、教員や生徒と懇談した。女子学生比率(学部で10%)の大幅上昇へのヒントを得る狙いだ。染谷氏は「人々が困っていることを技術で解決するのが工学。色々な立場の人のための問題解決には男女双方のアイデアが必要です」と語りかけた。「教育界には女子に無理をさせない、数学や理科は難しいから文系でよい、という文化があった」。埼玉県の県立高校長などを務めた同校の真下峯子校長は指摘する。保護者も「工学部などは卒業後にきつい現場で働く」と考え、理系科目が得意な女子は医師、薬剤師といった仕事内容や働き方が想像しやすい分野に進みがちだった。だが今、工学部卒の女性は産業界から引く手あまた。製品開発などでは女性の発想が不可欠なのに「高校教員はほとんど知らない」(真下校長)ままだ。
●「東大卒は不利」
 大学選びでも壁がある。東大生のうち女子は21年度で19.7%。東大は3割に高めようと地方出身の女子向けの住宅費補助を始めるなど懸命だが、自宅外通学・浪人のしにくさや「東大卒女子は婚活に不利」という俗論など、女子の挑戦意欲を冷ます土壌が強く残る。「学生の5割弱は女性なのに、大学の経営トップ層は男性ばかり」と訴えるのは津田塾大の高橋裕子学長だ。同学長らでつくる研究会の調査によると、日本の女性学長割合は20年で13%で、英米独の20~30%を大きく下回る。高橋学長は「女性の経営人材を育成していない」と批判する。米マサチューセッツ工科大は1990年代から女性教員の地位向上を進め、04年に初の女性学長が誕生した。学部の女子学生の割合は21年秋で48%に達する。米国の大学が奨学金や入試での配慮を通じて女性や黒人ら少数派を積極的に受け入れるのは、高度な学びや革新的な研究成果の創出には人の多様性が欠かせないからだ。日本はその認識が薄く、教育の質やイノベーションを生む力を落としている。工学部や女性学長の問題はその象徴だ。日本の停滞と閉塞感の根底には人の能力が十分に発揮されていないことがある。教育を一新し、知を磨き行き渡らせることで国の将来をひらく。人材立国に再び挑戦するときがきている。

*3-2-2:https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/304228 (日刊現代 2022/4/21) 吉野家に常務を“生娘シャブ漬け”発言で解任された伊東正明氏は「痛いおじさん」のテンプレか
 今月16日の早稲田大学のマーケティング講座で、牛丼チェーン大手の吉野家の常務取締役企画本部長である伊東正明常務(49)の発言が大炎上し、吉野家HDは19日解任を発表した。伊東元常務は若年女性向けマーケティングについて「生娘をシャブ漬け戦略」と表し、「田舎から出てきた右も左も分からない若い女の子を無垢、生娘な内に牛丼中毒にする。男に高い飯を奢って貰えるようになれば、絶対に食べない」という旨の内容の講演を展開していたという。受講者の目撃情報の投稿がSNS上で拡散されていた。
■女性を性的かつ下に見るような言葉のチョイス
 ネットでは<こういう発言がさらっと出てくるということは普段からこういう思想を持っていたということ><顧客を軽視かつ蔑視しているような発言は取締役としても問題><マーケティング戦略は分からなくもないが、上場会社の取締役がこんな差別的表現しか出来ないことに唖然>と女性を性的かつ下に見るような言葉のチョイスや、表現方法の問題性に指摘と批判が相次いだ。さらに伊藤元常務の発言は、計29回、受講料38万5000の1回当たり約1万3000円の社会人向けのマーケティング講座の初回授業で飛び出したものということもあり、その金額に対しても注目が集まった。確かに安くない受講料を払って「生娘のシャブ漬け戦略」を聞かされたのでは堪らない。権力のある男性による舌禍が後を経たないが、この件は単に人権、ジェンダー問題の観点だけでは語れないところに根深さがある。
■ウケ狙いで炎上
 伊東元常務は慶大卒で日用品大手プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)に入社。ブランドマネージャーを務め、米国本社やヨーロッパ本社などでも勤務し、グローバルチームのマーケティング責任者も担当。輝かしい経歴と共に18年10月に吉野家の常務に就任した。「マーケティングのプロ」としてメディアや講演にもたびたび登場し、今回は早稲田大学の社会人向けの講座での初回での発言ということもあり、よく言えば「若者向けに受けるようなユーモアある講座を展開しよう」と張り切って講義に臨んだのだろう。「ウケを狙ったつもりが見事に滑って失敗した痛いおじさんだなという印象です。ユーモアを交えつつ、笑いをとりながら有益な講座を提供したかったのでしょうが、そこには『自分は成功している』というエゴや慢心、ナルシズムが垣間見えます。奇抜な言葉を用いることで『自分のセンスのよさ』もアピールしたかったのでしょうが、それらが完全に裏目に出てしまった例のテンプレのような気がします」(コラムニストの水野詩子氏)。伊東元常務は男性客に対しても「家に居場所のない人が何度も来店する」といった趣旨の発言があったという。女性蔑視以前に顧客を下に見るような“上から目線”が元常務の根っ子にあったのではないか。
■「魁‼男塾」のコラボ企画でも炎上した吉野家
 吉野家の21年7月に開催した人気漫画『魁!!男塾』とのコラボ企画でも炎上した。マイル(米礼)を貯めて得られる最も豪華な特典の「お名前入りオリジナル丼」に任意の名前を入れることができると説明していたにも関わらず、一転して「家族、友人等第三者、キャラクター、タレント、ニックネームなどは使用できません」との方針転換したことで炎上した。事前に「本名しか記載できない」という案内を出していれば、顧客から文句も出なかったはずだ。今回の伊東元常務の発言といい、コラボ企画の恣意的なルール変更といい、吉野家はいつの間にか顧客を軽んじるような社風になりつつあったのではないか。今一度本当のブランディングとは何かを考えなければならない時期に差し掛かっているのかもしれない。

*3-2-3:https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCB073UE0X00C22A5000000/ (日経新聞 2022年5月8日) 全身覆う服を女性の義務に タリバン、近親男性投獄も
 アフガニスタンのイスラム主義組織タリバン暫定政権の勧善懲悪省は7日、「女性は公共の場で、目の部分以外の顔を布で覆わなければならない」とする命令を発表した。従わなければ父親や夫などの近親男性が投獄される場合があるとしている。女性には既に髪や体の線を隠す服装の着用を求めており、規制を強化した形だ。暫定政権は国際承認や人道支援を求める一方で、女性だけでの長距離移動禁止など女性への制限を強めている。新たな服装規制は、女性の権利確保を求める欧米各国などから、さらなる批判を呼びそうだ。命令は、家族以外の成人男性と会う場合、目の部分以外の顔を覆うよう指示した。髪や体の線を隠す服装を「ヒジャブ」と呼ぶと定め、中でも全身を覆うブルカが最適としている。ヒジャブを着用すれば「邪悪で堕落した者から守られる」としている。女性がヒジャブを着用しなかったり顔を隠さなかったりすれば、近親男性が当局から注意を受ける。それでも女性が従わなければ男性は3日間拘束され、投獄される場合がある。政府機関で働く女性職員が命令を守らなければ解雇される。男性職員は、妻や娘が守らなければ職務停止となる。

*3-3:https://digital.asahi.com/articles/ASQ234DNYP9VULFA008.html?iref=pc_extlink (朝日新聞 2022年2月7日) SNS中傷、なぜ「加害者」が守られる? 訴えて見えたいびつな構図
 クリエーティブディレクターの辻愛沙子さん(26)は2021年、書類に連なった文言に、目を疑った。辻さんは、ツイッターなどで「誹謗(ひぼう)中傷」を書き込んだ人の個人情報を開示するよう求める訴えを、ツイッター社やネットのプロバイダー(接続事業者)に対して相次いで起こしている。訴訟プロセスの中で、プロバイダーから代理人弁護士を通して送られてきた答弁書や準備書面を相次ぎ読んだ。そこには、書き込みについてこんな見解が書いてあった。「一般論の意見や感想に過ぎない」「名誉感情侵害と言えない」。辻さんには、まるで投稿者の立場に寄り添うかのような反論に思えた。「ひどい書き込みをした人を、なぜ接続事業者がこんなにかばうのか」。実は、こうした書面が送られてくるのには理由がある。
*SNS上の誹謗中傷――。それが「書き込んだ人の問題」であることは疑いがありません。しかし、ネット上の仕組みや法制度、企業のあり方も、被害の回復をより難しくしています。被害者をさらに追い詰めるものは何か。その構造を追いました。記事の最後では、記者によるポッドキャストでの解説もお聞きいただけます。
●大量に押し寄せる中傷をリスト化
 辻さんはジェンダー平等や人権、反差別などについて、SNSなどで積極発信してきた。それに対し、匿名のアカウントから「若い女性の政治的な発言」を攻撃する内容の投稿が相次いだ。辻さんはそのたび、そうした投稿も引用しながら説明を加え、根気よく言葉を継いだ。「第三者の、特に女性たちが、こういう風に言っていいんだ、傷ついても我慢しなければいけないなんてことはないんだと思える前例を作っていくためにも発信している。でないと、社会は変わらない」。プロバイダ責任制限法(プロ責法)に基づく発信者情報開示請求に踏み切ったのも、その一環だ。声を上げることで、「匿名で『石』を投げてくる人が減るかもしれません。開示の過程でどれだけ大変なことがあるのかも、自分の目で見たい」と考えたからだという。スタッフや弁護士と手分けし、とりわけ権利侵害が著しいと判断した投稿をリスト化した。20年11月、まずはネット上で利用者にサービスを提供するツイッター社を相手取り、ツイッター上の8件の書き込みに関する情報開示を求める仮処分を東京地裁に申請した。東京地裁は翌12月、7件について名誉感情侵害や名誉権侵害を認め、ツイッター社に開示を命じた。
●訴えは認められたのに……
 だが、ここで開示されたのはIPアドレスのみ。実名などを登録せずに使えるツイッターの特性から、同社は書き込んだ人の実名や住所といった個人情報をそもそも持っていない。そこで辻さん側は、利用者の実名や住所などを持っているはずのプロバイダーを、IPアドレスを元に突き止めていった。21年3月、その情報開示をプロバイダーに求める訴訟を起こした。冒頭の答弁書や準備書面は、そうした経緯の中で辻さんがプロバイダーから受け取ったものだった。裁判所が辻さんの「名誉感情侵害」を認めたうえでツイッター社への仮処分を決定してもなお、プロバイダーが「意見論評である」と改めて主張するのはなぜか。背景には、法律の建て付けがある。プロ責法は、開示請求を受けた事業者が「当該発信者の意見を聴かなければならない」と定める。その結果、権利侵害にあたるかどうかを争う場で、事業者は投稿者の「代弁者」となる構図が生まれる。辻さんはそんな構図に対し、「被害を訴える側は自力で弁護士を依頼するのに、書いた人は事業者の弁護士に守られ、代弁してもらう状況はどうなのか」と指摘する。
●「我々にも法的リスクが」
 辻さんと同じような思いを抱いた人は、他にもいる。東京都内のあるツイッター利用者は、誹謗中傷を書き込まれたとして、発信者の情報開示をツイッター社に求めて東京地裁に仮処分申請。その際の審尋で同社の代理人弁護士は、書き込みが「意見論評」だと主張、書き込みが予想されたものだとも述べたという。最終的に、名誉感情侵害や侮辱が成り立つとして、同地裁は開示を命じる仮処分を決定したが、その過程は辻さんの裁判とうり二つの構図だった。プロ責法は22年秋までに改正されることとなり、手続きは簡素化されるが、この構図自体は改正後も変わらない。ツイッター日本法人は「被害を受けた方のつらい思いに申し訳なく思う一方で、権利侵害を明確にしないと我々にも法的リスクが発生する。個人情報開示の重さもわかってもらえればと思う」と昨年9月時点の取材で説明した。プロ責法改正の方向性をまとめた総務省の有識者会議「発信者情報開示の在り方に関する研究会」の座長を務めた曽我部真裕・京都大学法科大学院教授(憲法・情報法)はこう指摘する。「開示されるまでは書き込んだ本人が出てこないし、事業者が投稿者を代弁しなければならない仕組み自体いびつだ。プロ責法は、権利侵害に明白性があれば裁判手続きを経なくても開示できると規定しており、個別に開示に応じる運用もあり得る。企業の姿勢が問われている」

<女性議員が少ない理由にも過去の“常識”としての女性蔑視があること>
*4-1:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/821842 (佐賀新聞 2022.3.9) 国際女性デー 格差是正へ政治が範を
 国連が制定した女性の地位向上を目指す「国際女性デー」を8日迎えた。世界の諸機関が算出するジェンダーギャップ調査で、日本は常に下位に沈んでいる。政治、経済面の不平等が際立つが、自民党などの対応は鈍いと言わざるを得ない。まずは国会、地方議会で確実に女性議員を増やし、政治が変わるとの姿勢を示すべきだ。1年前、森喜朗元首相の女性蔑視発言に抗議署名が集まるなど、性差別に反対し、格差解消を求める声が高まった。だが、政治にその機運は生かされていない。候補者の男女均等化を政党に求める法律が施行され初めて行われた昨秋の衆院選で、女性候補の割合は2割に届かず、前回の2017年と同水準だった。特に自民、公明両党はいずれも1割を切った。この結果、衆院議員の女性比は1割未満。20年末に閣議決定した男女共同参画基本計画では、国政選挙の女性候補割合を25年までに35%にする目標だが、現状は遠く及ばない。女性の地方議員も2割に満たず、女性首長の比率は極めて低い。身近な暮らしを支える意思決定の場が、男性ばかりで運営されているのは極めていびつである。世界の約130カ国・地域が、性別を基準に候補者や議席の一定比率を割り当てる「クオータ制」を導入し、効果を上げている。日本も、政党に女性候補者割合の数値目標設定の義務化を求めるなど、同法の強化が必要となろう。今夏の参院選に向け、立憲民主党が「女性候補者5割達成」を目指す方針を示した。他党の動向も注視したい。政治参画の遅れとともに、日本女性の置かれた地位を象徴するのが、男女の賃金格差である。女性の就業率は米国やユーロ圏を抜き7割を超えているが、女性の5割強がパート・アルバイトなど、不安定で低賃金になりがちな非正規従業員である。このため、女性の平均給与は男性の7割。男女の賃金格差は経済協力開発機構(OECD)諸国の中で最悪レベルだ。新型コロナウイルス禍が、この就業構造の問題点を浮き彫りにした。雇用調整を受けやすい非正規の女性たちが職を失い、生活が困窮している。女性の低賃金労働に依存する構造にメスを入れねばならない。岸田文雄首相は1月の施政方針演説で、賃金格差是正に向け「企業の開示ルールを見直す」として、企業に対し格差の報告を義務化する方針を示した。これを機に是正へ本腰を入れることを期待したい。一方、妻の年収が130万円未満の場合、夫の扶養に入り国民年金と国民健康保険の保険料を払う必要がなくなる「130万円の壁」の問題など、女性の就業拡大を阻む制度の見直しが急務だ。コロナ対策の「特別定額給付金」が世帯主に一括給付され、ドメスティックバイオレンス(DV)被害者が受け取れない問題も生じた。「世帯主」の考え方は今の時代にそぐわず、各種制度で「給付と負担」を個人単位に変えていく必要がある。東証1部上場企業約900社を対象とした大手コンサルティング会社の調査で、女性役員比率と企業業績の相関関係が確かめられた。多様性があれば企業が活性化し、イノベーションが生まれる。日本の成長のためにも格差解消が必要だ。

*4-2:https://digital.asahi.com/articles/DA3S15282765.html (朝日新聞 2022年5月2日) 女性国会議員の道、開くには 7党の現職、語り合う 記者サロン
■まなび つながる 広場
 女性の国会議員はなぜ、増えないのでしょうか。その障壁や解決策について7党の女性議員が率直に語り合う朝日新聞オンラインイベントの収録が4月、東京・築地の浜離宮朝日ホールでありました。司会はジャーナリストの長野智子氏が務め、政界を長年取材してきた田原総一朗氏らをゲストに招き、意見を交わしました。
■「男は外、女は家」根強い意識/「現職優先」見直しを
 長野氏が冒頭、世界経済フォーラムが毎年発表する「ジェンダーギャップ(男女格差)指数」にふれ、日本は昨年156カ国中120位、政治分野は147位でワースト10位に入ると紹介した。女性の国政進出を阻む原因について、自民党の三原じゅん子氏は「社会の意識。女性議員が必要だと本気で感じている方がどれほどいるか疑問だ」と指摘。立憲民主党の徳永エリ氏も「男性は外で仕事、女性は家で家族の世話という性別の役割分担の意識」にあると述べた。国会議員の働き方改革と選挙制度のあり方についても議論になった。公明党の古屋範子氏は「朝から晩までフル回転で働き続けるのが国会議員のかがみだという風潮がある」。国民民主党の矢田稚子氏は「オンラインの国会がなかなか実現できない。家庭と両立していく制度が整っていない」。三原氏は、国会の質問対応が深夜に及ぶことなどから「霞が関と永田町が一緒に変わらなければ政治は変わらない」と訴えた。生理など女性特有の体調不良について声を上げにくいとの声もあがった。選挙制度について、小選挙区が現職優先になっている現状も取り上げられた。社民党の福島瑞穂氏は「小選挙区では何回お祭りに行ったかなど地元密着なため、家事を担わない男性が有利だ。北欧が女性議員を増やしたのは比例代表制のためで、政党の政策で選ばれる制度に変える必要がある」、日本維新の会の石井苗子氏も「現職優先を守っている人たちはそう簡単には(議席を)明け渡さない。だからこそ、制度を変えないと絶対に変わらない」と応じた。今回参加した議員は、選挙の候補者の一定割合を女性に割り当てる「クオータ制」の勉強会のメンバー。矢田氏はクオータ制の議論が日本で進まない背景について「(男性議員の)抵抗の壁が厚すぎて一歩も動けない」、石井氏は「女性の割合を決めてしまうと優秀な男性が出られなくなる、と言われた」と説明。候補者の選び方についても、古屋氏は「選挙の過酷さなどから当選できる人をとなると、男性候補が地方組織から上がってくる」。徳永氏は、昨秋の衆院選で「比例の上位に女性を立てようと提案したが、(男性議員が)選挙区で勝てなかったら比例で復活したいとなり、いざやるとなると反対された」と振り返った。2018年に候補者男女均等法が施行されたが、共産党の田村智子氏は「努力義務であったとしても、なぜ候補者数を男女均等にできなかったのかの総括を各党は議論するべきだ」と検証を呼びかけた。女性候補を増やす具体策として、夏の参院選に向け「女性候補者50%」を掲げる立憲が女性支援チームを発足し、研修会を開いていることが紹介された。ゲストには田原氏のほか、ワーク・ライフバランスの小室淑恵社長、働き方評論家の常見陽平氏、朝日新聞政治部の三輪さち子記者が参加。田原氏は「英国やドイツ、北欧など女性がトップになって国が変わるのが世界の常識。日本も早く女性をトップにするべきだ」。小室氏は、働かない時間を確保する「インターバルの保障」、常見氏は「女性議員を育てる後方支援体制づくり」、三輪記者は「党執行部に女性の配置を」をそれぞれ訴えた。会場では、れいわ新選組から大石晃子衆院議員の「女性議員が増えれば、男性中心の世の中ですくってこなかった声や事実を表にしていくことができる」とのビデオメッセージも披露された。(構成・西尾邦明)
■討論の出席者
 三原じゅん子氏(自民党元女性局長)
 古屋範子氏(公明党女性委員長)
 徳永エリ氏(立憲民主党ジェンダー平等推進本部長)
 矢田稚子氏(国民民主党男女共同参画推進本部長)
 田村智子氏(共産党政策委員長)
 石井苗子氏(日本維新の会)
 福島瑞穂氏(社民党党首) (以下略)

*4-3:https://digital.asahi.com/articles/DA3S15289923.html (朝日新聞 2022年5月11日) エコロジーと女性 「沈黙の春」から60年のいまも 岡崎明子
 3年ぶりに行動制限がかからない大型連休、伊豆高原を訪れた。鳥たちの鳴き声を聞きながら、ある文章を思い出した。自然は、沈黙した。うす気味悪い。鳥たちは、どこへ行ってしまったのか。60年前、レイチェル・カーソンが世に出した「沈黙の春」の冒頭の一節だ。彼女は「女性は科学者に向いていない」と公然と言われる時代に、周囲の反対を押し切り生物学を学んだ。著書は、DDTなど殺虫剤の大量散布が生態系を破壊し、人の健康に影響を及ぼす可能性を訴え、米国社会に大きな衝撃を与えた。一方で「ヒステリー」「未婚の女がなぜ遺伝のことを心配するのか」といった性差別的な攻撃が相次いだ。産業界や科学界、メディアは、いま以上に男性優位だった。幸運なことに、当時のジョン・F・ケネディ大統領はこの本の真価に気づいた。大統領の科学諮問委員会は、農薬の使用を制限すべきだという報告書をまとめ、カーソンの警告が葬られることはなかった。映画「不都合な真実」で脱温暖化を訴えたアル・ゴア元副大統領は「この本がなければ、環境保護運動は全く発展していなかったかもしれない」とまで語っている。
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 理系の女性研究者が少ない、グレタ・トゥンベリさんら、気候変動対策を訴える女性の言動がバッシングを受ける――。これは、60年たった今も残る不都合な真実だ。NPO法人「環境・持続社会」研究センターの事務局次長、遠藤理紗さんはこう話す。「気候変動対策とジェンダー平等は、実はつながっている問題です」。ここ10年ほど、国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP)の合意文書には「ジェンダー平等」の文字が盛り込まれるようになった。途上国では子どもや高齢者を守るために女性の避難が遅れることが多く、男性より死者数が多い。また水くみは主に女性の仕事で、干ばつが進むと労働時間が増え、学校に通えなくなる少女も増える。このように女性の方が気候変動の影響を受けやすいにもかかわらず、政策決定にかかわる女性は少ないからだ。女性の政治家が多いほど、より厳しい気候変動政策がとられるというデータもある。だが、女性が環境大臣を務める国は15%ほどだ。ちなみに経済協力開発機構(OECD)によると、COP14~25の日本の政府代表団に女性が占める割合は平均21%で、38カ国中38位と最低だった。
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 気候変動は大切なテーマだ。でも残念なことに、正論は響きにくい。さらに主語が「地球」「人類」と大きすぎる。自分事と感じにくい人も多いのではないか。実は私もその一人だった。だが、遠藤さんの指摘を聞いてハッとした。「コロナ下、日本でもDV被害や非正規雇用の失業増加など社会の脆弱(ぜいじゃく)性が浮き彫りになりました。気候変動も同じ構造で、災害や経済リスクの影響をまず受けるのは社会的弱者です。日本の気候変動対策を行う人に、そういう視点があるでしょうか」。社会の格差を縮めなければ、いくら対策を進めても取りこぼされる人がでてきてしまう。この意識があるかないかによって、気候変動対策への取り組み方も変わってくるだろう。だからこそ、ジェンダー平等とセットで考える必要がある。歴史はその重要性を教えてくれる。130年前、「人々が健康で幸福な生活を送る条件を考える科学」をエコロジーと命名したのは、米国初の女性化学者エレン・スワローだった。現代の環境保護運動につながる思想だが、当時の社会ではいわば「わきまえない女」だと黙殺された。翌年、男性科学者たちが「自然の探求や開発に基礎を置く科学」と定義し直した。歴史に「もし」はないというが、彼女の提案が無視されなかったら? 「不都合な真実」も、生まれなかったかもしれない。

*4-4:https://digital.asahi.com/articles/DA3S15289968.html (朝日新聞 2022年5月11日) 脱炭素へ、乏しい財政支出
 脱炭素社会のためには、政府がお金を出し惜しみすべきではない――。世界で勢いづく主張が、日本にも波及する。先進国で最悪の財政状況から抜け出せない中、グリーン化にかかる膨大なコストをまかなう余力はあるのか。
■細い送電網、再エネ生かし切れず
 九州と本州を結ぶ交通の要衝、関門橋。開通は1973年だが、その28年前の太平洋戦争終戦の年、関門海峡には橋より先に電線が架かった。いまも九州と本州を結ぶ唯一の送電線「関門連系線」だ。国内最高レベルの電圧50万ボルトを誇る電線が、脱炭素の足かせになっている。九州は日照に恵まれ、太陽光発電施設が多い。関門連系線を通じ、電力需要が大きい本州に送電している。しかし、送電の容量に限界があるため、太陽光や風力の発電を一時的に停止する「出力制御」が頻発する。せっかくの再エネを生かし切れていない。九州電力が実施した出力制御は3年半で250回を超す。送電網増強の課題はコストだ。関門連系線の場合、容量を2倍にするのにかかる費用はざっと3600億円。電力需給の調整役を担う国の「電力広域的運営推進機関」が試算した。将来、国内で再エネの発電比率を5~6割まで高めるには、北海道と関東を海底ケーブルで結ぶなど、大がかりな工事が必要だ。同機関は投資額は最大2・6兆円と見積もる。電気自動車(EV)の普及に欠かせない充電スタンド、古い住宅の断熱改修……。温暖化を止めるコストは果てしない。日本政府のグリーン成長戦略は「政府の資金を呼び水に民間投資を呼び込む」と明記した。市場原理に任せていては時間がかかり、国の後押しが欠かせないとの声が国内外で高まる。東北大の明日香寿川教授らの試算によると、日本で必要な投資は30年までに202兆円。うち51兆円は公的資金でまかなわなければならない。明日香氏は言う。「日本ではグリーン化への財政支出は多くが研究開発に限られ、実際に再エネや省エネを拡大するお金が少ない。思い切った補助金や規制が必要だ」
■高まる「積極派」の声
 財政出動への圧力とともに勢いが増すのが、この際、財政健全化は後回しでもよいとする主張だ。代表格が現代貨幣理論(MMT)。自国通貨建ての国債を発行できる国なら、インフレになるまで赤字を気にせず財政拡大できる、という考えだ。米国では積極財政によって脱炭素社会への早期の転換をはかる「グリーン・ニューディール」支持派とMMT派の親和性が高い。バイデン政権は増税に前向きでMMTを受け入れたわけではないが、「大きな政府」が容認されやすい素地となっている。積極財政派の声は日本でも高まっている。自民党が昨年末にたちあげた財政政策検討本部は、MMTが議論の土台となった。これまであった財政再建推進本部から「再建」をとる形で改編。最高顧問に安倍晋三元首相、顧問に高市早苗政調会長、本部長にMMT支持の西田昌司政調会長代理といった積極財政派がずらりと並ぶ。夏の参院選に向け、岸田文雄首相に提言を出す計画だが、財政健全化目標であるプライマリーバランス(PB)の黒字化の見直しなどを視野に入れる。西田氏は「積極派の考えを正しく理解してくれれば、首相も無視はできない」。現状でも、コロナ下の財政出動は欧米と比べてもひけをとらない。35兆円の補正予算、107兆円の当初予算はいずれも過去最大。しかし、いまある産業や雇用を維持するのが中心で、グリーンへの投資をてこに、社会システムを転換させようとする未来図までは見えてこない。東京工業大の阿部直也教授は「新陳代謝を妨げるためにお金をつぎ込んでいて、新たなものを生み出せていない」と話す。地球への負荷を抑え、持続的に成長できる経済構造に切り替えるには何が必要か。大きな絵を描くことから始めなければ、せっかくの支出は財政赤字を膨らますだけに終わりかねない。

*4-5:https://digital.asahi.com/articles/DA3S15289898.html (朝日新聞社説 2022年5月11日) 地質に親しむ 大地に関心 変わる風景
 ふだん気にとめなくても、「地質」は災害や開発など日々のくらしと深く関わっている。表土の下にどんな岩石や地層があるかを示す地質図は、地図と同じく、国土を把握するための基本データといえる。その地質図を作成する国の機関が、産業技術総合研究所の地質調査総合センター(GSJ)だ。前身の旧地質調査所の設立から、今年で140年になる。日本で初めて広域的な地質図ができたのはその6年前で、完成した5月10日は「地質の日」と定められている。これを機に、足元に広がる世界をのぞいてみてはどうだろう。地質調査の歴史をたどると、その時どきの社会の様子や課題が浮かび上がる。最初は「富国」をめざして石炭などの資源の探査が目的だった。第2次世界大戦の頃は軍需省の所属に。戦後は海洋地質の調査や地熱開発、最近は地震を引き起こす活断層や、過去にあった大津波の解明などで注目を集めた。気候変動対策として、二酸化炭素を地中に貯留する技術への貢献も期待される。ところが全国の地質図の整備はなお途上にある。20万分の1のものは2010年に完成したが、精度が高い5万分の1は、国土の76%程度しかカバーできていない。専門家が実際に現地を歩いて調べる必要があり、手間がかかるからだ。GSJは近年、地下利用の頻度が高い都市圏の地層分布を立体的に示す地質地盤図を続けて作成し、先月には火山噴火が起きた時の推移を予測して被害の軽減を図る「火山灰データベース」を公開した。いずれも長年の蓄積に支えられたものだ。ただちに役に立たなくても、地道な整備を怠ればこうした果実を受け取ることはできない。そのためにも、野外調査ができる人材の育成に取り組む必要がある。ところが地質学は地味な学問で、大学での学生の人気は同じ地学分野でも宇宙や気象に集まりがちだ。興味を持つ若者が少なければ発展は望めない。高校でも地学の履修率は低く、裾野を広げることが長年の懸案になっている。きっかけはある。大勢の観客を集める恐竜展は地質学抜きに語れないし、地質の話題が豊富なNHK番組「ブラタモリ」のファンは多い。08年に認定が始まった日本ジオパークは46地域に増え、2年前には千葉県内の地層から地質年代のある時期が「チバニアン」と命名され、話題となった。住んでいる土地の成り立ちを知ることから始めるのもいい。新たな魅力や隠れた危険がわかり、風景の見え方が少し違ってくるかもしれない。

<議員に対するメディアのスタンス>
*5-1-1:https://www.pressnet.or.jp/statement/report/661208_99.html (第222回編集委員会 1966年12月8日) 公職選挙法第148条に関する日本新聞協会編集委員会の統一見解(要旨)
 第148条は、新聞が選挙について報道、評論する自由を大幅に認めている規定である。この報道、評論の自由を個々の記事の具体的扱いにあてはめてみると、従来の選挙訴訟をめぐるいくつかの判例でも明らかなように、はじめから虚偽のこととか、事実を曲げて報道したり、そうしたものに基づいて評論したものでない限り、政党等の主張や政策、候補者の人物、経歴、政見などを報道したり、これを支持したり反対する評論をすることはなんら制限を受けない。そうした報道、評論により、結果として特定の政党や候補者にたまたま利益をもたらしたとしても、それは第148条にいう自由の範囲内に属するもので、別に問題はない。いわば新聞は通常の報道、評論をやっている限り、選挙法上は無制限に近い自由が認められている。したがって、選挙に関する報道、評論で、どのような態度をとるかは、法律上の問題ではなく、新聞の編集政策の問題として決定されるべきものであろう。従来、新聞に対して、選挙の公正を確保する趣旨から、ややもすれば積極性を欠いた報道、評論を行ってきたとする批判があった。このことは同条ただし書きにいう「......など表現の自由を濫用して選挙の公正を害してはならない」との規定が、しばしば言論機関によって選挙の公正を害されたとする候補者側の法的根拠に利用されてきたためだと考えられる。しかし、このただし書きは、関係官庁の見解あるいは過去の判例によっても明らかなように、一般的な報道、評論を制限するものでないことは自明であり、事実に立脚した自信のある報道、評論が期待されるのである。

*5-1-2:https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=325AC1000000100 (昭和二十五年法律第百号) 公職選挙法より抜粋
(新聞紙、雑誌の報道及び評論等の自由)
第百四十八条 この法律に定めるところの選挙運動の制限に関する規定(第百三十八条の三の規定を除く。)は、新聞紙(これに類する通信類を含む。以下同じ。)又は雑誌が、選挙に関し、報道及び評論を掲載するの自由を妨げるものではない。但し、虚偽の事項を記載し又は事実を歪曲して記載する等表現の自由を濫用して選挙の公正を害してはならない。
2 新聞紙又は雑誌の販売を業とする者は、前項に規定する新聞紙又は雑誌を、通常の方法(選挙運動の期間中及び選挙の当日において、定期購読者以外の者に対して頒布する新聞紙又は雑誌については、有償でする場合に限る。)で頒布し又は都道府県の選挙管理委員会の指定する場所に掲示することができる。
3 前二項の規定の適用について新聞紙又は雑誌とは、選挙運動の期間中及び選挙の当日に限り、次に掲げるものをいう。ただし、点字新聞紙については、第一号ロの規定(同号ハ及び第二号中第一号ロに係る部分を含む。)は、適用しない。
一 次の条件を具備する新聞紙又は雑誌
イ 新聞紙にあつては毎月三回以上、雑誌にあつては毎月一回以上、号を逐つて定期に有償頒布するものであること。
ロ 第三種郵便物の承認のあるものであること。
ハ 当該選挙の選挙期日の公示又は告示の日前一年(時事に関する事項を掲載する日刊新聞紙にあつては、六月)以来、イ及びロに該当し、引き続き発行するものであること。
二 前号に該当する新聞紙又は雑誌を発行する者が発行する新聞紙又は雑誌で同号イ及びロの条件を具備するもの
(新聞紙、雑誌の不法利用等の制限)
第百四十八条の二 何人も、当選を得若しくは得しめ又は得しめない目的をもつて新聞紙又は雑誌の編集その他経営を担当する者に対し金銭、物品その他の財産上の利益の供与、その供与の申込若しくは約束をし又は饗応接待、その申込若しくは約束をして、これに選挙に関する報道及び評論を掲載させることができない。
2 新聞紙又は雑誌の編集その他経営を担当する者は、前項の供与、饗応接待を受け若しくは要求し又は前項の申込を承諾して、これに選挙に関する報道及び評論を掲載することができない。
3 何人も、当選を得若しくは得しめ又は得しめない目的をもつて新聞紙又は雑誌に対する編集その他経営上の特殊の地位を利用して、これに選挙に関する報道及び評論を掲載し又は掲載させることができない。
(人気投票の公表の禁止)
第百三十八条の三 何人も、選挙に関し、公職に就くべき者(衆議院比例代表選出議員の選挙にあつては政党その他の政治団体に係る公職に就くべき者又はその数、参議院比例代表選出議員の選挙にあつては政党その他の政治団体に係る公職に就くべき者又はその数若しくは公職に就くべき順位)を予想する人気投票の経過又は結果を公表してはならない。

*5-2:https://digital.asahi.com/articles/DA3S15286380.html (朝日新聞 2022年5月6日) 報じる側も、当事者として 朝日新聞社ジェンダー平等宣言2年
■gender equality 朝日新聞×SDGs
 報道や各種事業、組織などにおけるジェンダーバランスを見直し、ジェンダー平等を進めていこうと、朝日新聞社は2020年4月に「ジェンダー平等宣言」を発表しました。2年目の歩みを報告します。
■「男社会」のメディア、その変革の先頭に 朝日新聞社代表取締役社長・中村史郎
 「朝日新聞社ジェンダー平等宣言」を公表して2年余り。少しずつですが、私たちは変化を実感しています。宣言のきっかけは、ジェンダー格差の問題を現場で取材してきた記者たちの危機感でした。この問題を報じるなら、私たち自身が足元を見つめ直す必要があるのではないか。多様性を実現するため、私たちは報道と事業、働き方に関する四つの指標を掲げました。そのうち、「ひと」欄の登場者、朝日地球会議の登壇者の目標は2年続けて達成し、初年度に4割強だった女性比率がほぼ5割になりました。編集の現場では記事の見出しや写真がジェンダー格差を助長しないか、目配りする姿勢が浸透してきています。一方、働き方に関する指標の達成はまだまだです。男性社員の育休取得率は20年度が約12%で前年を下回りました。理由を調べたところ、職場の雰囲気などに問題があることがわかりました。育休を取った男性とその上司が体験を語る催しを社内で開き、育休が取りやすい環境づくりを強く呼びかけました。結果として、21年度の取得率は30%を超えました。もちろん、これで満足してはいません。改正育児・介護休業法が4月から段階的に施行され、育休取得の意思確認などが義務化されました。私たちも独自の特別休暇制度を整え、22年度は男性社員による育休(2週間以上)の取得率100%を目指します。女性登用も道半ばです。4月現在の管理職と専門職に占める女性の割合は14・2%で、40代以上の社員の女性比率と等しくなりました。それでも意思決定の場に女性が圧倒的に少ない現状に変わりはありません。ジェンダーへの対応や女性リーダーの育成などについて、社外の専門家の助言も得ながら、取り組みを加速させます。日本のジェンダーギャップ指数が低迷する責任の一端はメディアにもあります。長年「男社会」とされてきたメディアの変革は待ったなし。私たちは、その先頭に立ちたいと思います。(中略)
■宣言骨子(全文はQRコードから)
1.朝日新聞の朝刊に掲載する「ひと」欄に登場する人物は、年間を通じて男女どちらの性も
  40%を下回らないことをめざす。
2.「朝日地球会議」をはじめとする主要な主催シンポジウムの登壇者は、男女どちらの性も
  40%を下回らないことをめざす。
3.管理職に占める女性比率を2020年の約12%から少なくとも倍増させることをめざす。
  男性の育休取得率を向上させる。
4.ジェンダー平等に関する社内の研修や勉強会を定期的に開催する。
5.ジェンダー平等に関する報道をまとめた冊子を定期的につくる。
6.宣言の達成度を定期的に点検、公表する。

*5-3-1:https://digital.asahi.com/articles/ASQ1P2VRSPDQUPQJ00P.html?iref=comtop_Opinion_02 (朝日新聞 2022年1月22日) 「政治家の下請け」になった官僚 根回しばかり奔走、劣化する政策
 建設業者の提出データを無断で書き換えていた統計不正問題で、国土交通省が21日、事務次官らを処分した。国の針路の決定に使われる基幹統計の信頼は大きく揺らいだ。不正を生んだ原因はどこにあるのか。再発防止には何が必要か。公共政策と国際政治の専門家に聞いた。
●「政策過程の劣化、政治システムの問題」 田中秀明さん(明治大学教授)
―国土交通省の統計不正をどうみますか。
 「政府の統計でデータが集まらない場合、統計的な処理で補完することは認められています。しかし、官僚がデータを勝手に書き換えるのはアウトです。2018年に厚生労働省の毎月勤労統計の不正が明らかになり、各省庁の統計が一斉点検された際、国交省は正直に不正を報告するべきでした。隠した結果、事態は悪化しました」
―霞が関で統計不正が起きる原因はどこにあるのですか。
 「原因は複合的だと思います。まず、政策を形成する過程や制度改革で、統計データが重視されていません。政府はEBPM(証拠に基づく政策立案)が重要と言っていますが、かけ声だけでしょう。肝心の統計が信用できません」「人員不足も顕著です。14日に公表された検証委員会の報告書で業務を担う統計室の人員不足が指摘されたのも、統計軽視の姿勢の表れといえます」
―統計が軽視されるのは、なぜでしょうか。
 「政策や制度は統計データなどに基づき見直すことが必要ですが、官僚は苦手です。先輩たちを含め、今までの取り組みの間違いや不十分さを暗に認めることになるからです。官僚自身も、自分たちは間違えないという『無謬(むびゅう)性の原則』にとらわれています。政策や制度は本来不完全で、実施しながら見直せばいいのですが、いまの日本社会では許容されないという問題もあります」
―政治の側に問題はないのでしょうか。
 国の針路の根幹に関わる統計の書き換え問題。記事の後半で、北大教授の遠藤乾さんは「ギリシャ危機」との共通点を指摘。金融危機の観点から、今回の不正問題を読み解きます。「政治家にとっては、次の選挙で勝つことが最優先です。極めて短期志向です。だから、安倍政権の『三本の矢』や『地方創生』のような目玉政策を次々と打ち出す。しかし、こうした政策の評価や分析は不十分です。岸田政権は賃上げ税制の拡大を決めましたが、これまでに減税分を上回る効果はあったのでしょうか。課題の解決にどれだけ寄与したかわからないため、『やっている感』を出すだけになっています」
―政治家と官僚の関係はどう変わってきたのでしょうか。
 「かつては一定の緊張感があった両者の関係は平成以降、政治主導の流れのなかで変わってきました。いま官僚は常に目玉政策を考えねばならず、過去の政策を振り返る余裕などありません。政治家が思いついた政策に『ノー』と言えば、左遷もありえます。そんな上下関係があるから、政策を評価したり、問題点を指摘したりすることはできないのです」「官僚が、政治家の下請けになり、先輩たちがやってきた政策を否定せず、自分たちの利害を優先する。私は『公務員の政治化』と名づけました」
―それが霞が関や官僚の劣化なのでしょうか。
 「官僚の役割は政策を検討したり実施したりすることですが、それには専門性が重要です。しかし、係長級を含めほとんどの官僚が、政治家や業界の根回しに奔走します。経済社会は複雑化しているので、より高い専門性が必要ですが、根回しで勉強する時間もありません」「霞が関の幹部は法学部出身のゼネラリストが多く、エコノミストやITの専門家は不足しています。諸外国では、省庁幹部に博士号を持つ人が多いですが、日本では限られています」
―人事制度が最大のネックになっているというのですね。
 「課長や局長は短ければ、1年ほどで異動します。そつなくこなし、リスクはとらなくなる。可能な限り専門性を磨いて、政治家を忖度(そんたく)するのではなく、成果をもとに処遇されるようになれば、不正は減り、政策過程も少しは改善するでしょう。事務方トップの事務次官が毎年のように交代し、名誉職化している点も問題です。英国などの次官は予算執行や内部統制に一義的な責任を負っており、内部監査委員会も設置されています。次官が組織運営に指導力を発揮するべきでしょう」
―外部の機関が政策をチェックするのはどうでしょうか。
 「これが著しく弱いことが大きな問題です。ほとんどの先進国で導入されている独立財政機関は、日本にはありません。国会の政府監視機能も弱い。与党議員も一議員としてその役割を担うべきです。法律を作る際、与党の事前審査で審査も修正も実質的に終わるため、国会審議も形骸化しています。結局のところ、政策過程の劣化は日本の政治システムの問題なのです」(以下略)

*5-3-2:https://digital.asahi.com/articles/DA3S15293370.html?iref=pc_shimenDigest_top01 (朝日新聞 2022年5月14日) 二重計上、20年度3.6兆円 13~19年度は5.8兆円の可能性 統計不正、調査報告
 国の基幹統計「建設工事受注動態統計」の不正をめぐり、国土交通省が設置した有識者の検討会議は13日、受注実績を無断で書き換えて二重計上したことで、2020年度の統計の金額が実際より3・6兆円(4・8%)過大だったとする報告書をまとめた。13~19年度については年5・8兆円(7・7%)過大になっていた可能性があるとの目安も示した。国交省は今秋までをめどに過去の統計を修正する方針だ。今回の統計不正は、朝日新聞が昨年12月に報じて発覚。業者から未提出の受注実績を推計値として計上しながら、遅れて提出されたデータも計上し、13年度から二重計上となっていた。国交省は検討会議を設置し、データの復元に着手。その結果、データが残る20年度の調査票を使って改めて算出したところ、二重計上の影響で統計が3・6兆円過大になっていたことが確認されたという。朝日新聞は1月、公表データをもとに、20年度の二重計上の影響を試算し、約4兆円(約5%)過大だった疑いがあると報じていた。19年度以前はデータが残っていないため、復元できなくなっている。合算する受注実績の量がより多く、過大額は大きくなることから、20年度の実績をもとに計算すれば年5・8兆円過大だったことになるとの目安も示された。国交省は二重計上とは別に、回収率に基づく推計の計算にも誤りがあったと公表。20年10月に担当室長が誤りを認識しながら公表せず、「責任追及を回避したいとの意識があった」と特別監察の報告書で指摘した。検討会議の報告書によると、この誤りは統計の金額を下ぶれさせるもので、この誤りと二重計上の影響をふまえて計算し直すと、20年度の実際の過大額は2・8兆円になり、19年度以前は年約5・1兆円過大だったと想定されるとした。統計は国内総生産(GDP)の算出にも使われる「建設総合統計」のもとになっており、この統計への影響はマイナス0・3%~プラス0・6%程度だったという。国はGDPへの影響についても調査する。
■<視点>書き換え、正しい数字いまも見えず
 統計は私たちが暮らす社会の状態を映す鏡であり、健康診断のデータのようなものだ。誤っていれば政策の失敗につながりかねない。事業者から提出された調査票の生データが、公務員の手で長年無断で書き換えられ、国の基幹統計が兆円単位で過大になっていた事実は重い。ゆがめられた過去の統計は今もそのまま公表され、訂正後の数字を私たちが知るすべはまだない。今回、是正の手法が示されたが、是正後の統計もあくまで推定だ。焦点の一つとなった国内総生産(GDP)への影響は「軽微」との見方を政府が示してきたが、数字はなお見えぬままだ。そもそもGDPへの影響が小さければ、その基となる統計が不正なものであってもいい、ということではない。統計のうち特に重要とされる基幹統計は、政策立案のほか、民間の経営判断や研究活動などに幅広く使われる。正しいデータを社会が共有できていない状況を政府は重く受け止め、できるだけ正しいデータを早急に示すべきだ。

*5-4:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20220422&ng=DGKKZO60225850S2A420C2EAC000 (日経新聞 2022.4.22) 国会の文通費、改革道半ば、名称に「調査研究」入る
 国会議員の文書通信交通滞在費(文通費。調査研究広報滞在費に名称変更)の支給方法が法改正で月単位から日割りへと変わる。文通費は使い道を明らかにする必要がなく議員の「第2の給料」と皮肉られる。日割りへの変更は一歩前進といえるが、使い道の開示など改革の必要性はまだ残る。「世間の常識からしたらおかしい」。2021年の衆院選の投開票日は10月31日だった。初当選した新人議員らは10月の在職日数はたった1日となった。在職1日にもかかわらず新人議員を含めて満額の文通費を受け取った。当選したばかりの新人があり方を疑問視しブログにつづった。それが法改正の発端だった。文通費は国会議員に月100万円支給する。今回の法改正で月単位の支給は廃止となった。4月24日投開票の参院石川選挙区補欠選挙の当選者から適用する。非課税なのでそのまま全額が議員のもとに入る。加えて使途の公開の義務がない。使い切らなかった分の国庫返納の必要もない。一般社会では経費として使ったものの領収書の添付による精算は常識といえる。公開の義務がないことから正当な政治活動に使われていないとの指摘がある。論点は使途の公開などにも広がった。自民、立憲民主、維新、公明、国民民主、共産の6党は国会内に協議会を設置し22年2月から協議を続けてきた。使途の公開や未使用分の国庫返納の是非は与野党で引き続き議論する。今回の法改正で文通費の名称は「調査研究広報滞在費」に改めた。支給の目的は「公の書類を発送し及び公の性質を有する通信をなす等」から「国政に関する調査研究、広報、国民との交流、滞在等の議員活動を行うため」に変えた。「調査研究」「広報」「国民との交流」の定義はあいまいだ。使途を事実上広げたままにする焼け太りではないかとの批判もあがる。共産党は日割りには賛成だが名称と目的の改正には同意できないと主張し反対した。使い道の名目の幅が広いと国会活動とプライベートでの支出の線引きが曖昧になりかねない。依然として不透明だとの懸念は残る。日本維新の会の馬場伸幸共同代表は「『日割り』『領収書の公開』『未使用分の返還』の3点セットは譲らない」と強調する。公明党の山口那津男代表は「使途の範囲や公開、未使用分について国庫に返納する仕組みをつくるなど積極的に議論していくべきだ」と述べる。駒沢大学の富崎隆教授(政治学)は「政治資金を透明化し公私を峻別(しゅんべつ)するため領収書添付などの公開は最低限必要になる」と語る。手続きの煩雑さなどから慎重な意見がある。ある議員は「国会議員は選挙区にずっと住むわけではない。二重生活とか多重生活が基本だ。雑費をいちいち公開しないといけないのか」と打ち明ける。「有識者と会食したらおごらなければならない。そういうのをやめて政治家らしくない政治家像が求められているのか」と続ける。政策研究大学院大学の竹中治堅教授(政治学)は「よい人材を採用するなら金銭的な待遇は大事になる」と指摘する。歳費のかなりの部分を日常的な政治活動に充て、生活費を切り詰める議員も少なくない。若手を中心に「お金持ちでないと政治家になれなくなる」という不満も聞こえる。与野党6党はこれまで2週間に1回の頻度で協議を続けてきた。今国会中に結論を出すとなるとあと数回の協議の機会しか残されていない。自民党の高木毅国会対策委員長は「与野党の協議会を開き、精力的に議論されると思う」と話す。立民の馬淵澄夫国対委員長も「何らかの形で具体的な結果が出ると思う。協議会に議論を尽くしていただきたい」と主張した。国会の会期末は延長がなければ6月15日で、そのあとは各党は参院選に走り出す。会期末まで残り2カ月を切った。使途の公開のルールなど議論すべきことは山積する。

<安全保障と人材鎖国・外国人差別>
PS(2022年5月16日追加):*6-1のように、①半導体等の国内生産や海外調達を強化する仕組みを導入してサプライチェーンを強靱化し ②情報通信等の基幹インフラの安全性を事前審査し ③先端技術開発の官民協力を行い ④技術情報の流出を防ぐ特許を非公開にする4点を柱に、政府が企業活動への公的関与を強化して重要な産業・技術を育成・保護する経済安全保障推進法が成立した。
 安全保障を無視した経済活動を行えばそのうち国民の首を絞めることは間違いないが、安全保障上必要な物資の選定については、この経済安全保障推進法では不十分だと、私は思う。何故なら、供給網を強化すべき特定重要物資に(米国をまねて)半導体・医薬品・蓄電池・レアアースなどのハイテク分野だけを指定しているが、安全保障として国民を守る視点があるのなら基幹インフラの第1として食糧・エネルギーの自給率向上こそ重要だからである。米国は、これらの自給率が十分に高いため、指定する必要がないだけだ。つまり、場当たり的に指定したいものを指定しただけで国民を守る視点に欠けているように見えるし、技術は国の方が民間より遅れるため、国の介入や制限を強めすぎればかえって経済発展が望めない。そのため、企業の自由をできる限り尊重する運用は重要なのである。なお、世界は、もともと極楽とんぼのように性善説を前提として無防備な状態でいるわけではなく、いつも最悪の事態に備え、それを回避する準備も同時に行っているものだ。そのため、「信じる力」などと言って性善説を推し進めてきた日本の方が異常で、安全保障や経済に恣意的運用をしている余裕などない筈なのである。また、民間人に身上調査や罰則が入るのなら、人権や企業活動の自由という視点からの議論も重要だ。
 さらに、*6-2-1のように、G7外相会合が、⑤ロシアのウクライナ侵攻で世界的な食糧・エネルギー危機が起きており ⑥ウクライナ農産物の輸出支援や飢餓に直面する人々への人道支援で具体的行動を進めることを合意し ⑦ロシアが軍事侵略によって変えようとした国境は決して認めず、全ての国の主権と領土保全の取り組みを堅持するとし ⑧ロシアに対する経済的・政治的圧力を高めて団結し行動し続けることを確認した そうだ。ここでも、戦争によってウクライナからの穀物輸出だけでなくロシアからの穀物・エネルギー輸出も停滞し、世界の思いもよらぬ場所で一般人の飢餓やエネルギー不安を誘発しているわけである。
 それにしても、*6-2-2のように、⑨国土の7割が森林で2020年の森林率はOECD37カ国中3番目に高いのに ⑩安い輸入材の台頭で国内林業が長期間低迷し ⑪担い手も高齢化して人工林の2/3に手入れが行き届かず ⑫国際的な木材の需給逼迫が生じて初めて国産材の需要増になった というのには呆れるが、2020年には⑬木材自給率が4割を回復し ⑭2015~20年度の公共施設の平均木造率は、努力の結果、東北が上位を独占した のはよかった。
 このように、必要なことをやろうとすると必ず「高齢化による人手不足」「人件費高騰による国際競争の場での敗北」等のネックを言いたてて前に進まない一方で、日本政府は移民や難民の受け入れを拒んで全分野の人件費を高止まりさせ、日本企業の海外生産や輸入を促進している状況がある。例えば、*6-3-1のように、ウクライナからの「避難民」へは支援の輪が広がったが、クルド人・アフガニスタン人などの祖国で迫害を受けるため逃れてきた「難民」には在留資格を与えず、働くことも許さず、社会保険にも入れず、移動も禁止するなどしている。そのため、日本政府は速やかに人材鎖国を排して移民・難民を受け入れるよう考え直すべきで、これについては立憲民主・共産・れいわ新選組・社民などの野党が、*6-3-2のように、難民保護の新法案と出入国管理法改正案を参院に提出したそうだ。そして、難民政策を国際水準に近づけることは少子高齢化しつつある先進国として当然であると同時に、その方がさまざまな意味で日本経済を活性化させ、人の繋がりによって安全保障も強化できるのである。
 このような中、*6-3-3のように、政府は今夏にも企業に対して従業員の育成状況や多様性の確保等の人材への投資に関わる19項目の経営情報を開示することを求め、(遅すぎるくらいだが)そのうち一部は2023年度にも有価証券報告書への記載を義務付けるそうだ。多様な人材や文化の存在とそれらの摺合せによって生み出されるアイデアが新製品や新サービスを生み出す源泉であるため、有価証券報告書における多様性の開示は重要だ。そのため、役員・従業員の男女比や人種等の開示基準を国際基準と合わせて比較できるようにすれば、人材の多様性と企業の利益率、国の経済成長率などの関係が比較できるようになって便利だと思う。


 2022.5.11日経新聞 2022.2.26西日本新聞 2022.2.25毎日新聞 2022.2.7時事

(図の説明:経済安保推進法は、1番左の図のとおり成立した。そのポイントが左から2番目の図で、右から2番目の図のように、政府の関与と違反者に対する罰則が定められている。そして、この経済安保推進法の施行予定が、1番右の図の通りだ)

*6-1:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/852709 (佐賀新聞 2022/5/12) 経済安保法成立 抑制の効いた運用を
 半導体など戦略物資の国内生産や海外調達を強化する仕組みを導入し、重要な産業や技術を政府が直接育成、保護する制度を盛り込んだ経済安全保障推進法が成立した。同法は(1)半導体などのサプライチェーン(供給網)強靱化(きょうじんか)の支援(2)情報通信など基幹インフラの安全性の事前審査(3)先端技術開発の官民協力(4)技術情報の流出を防ぐための特許の非公開化制度―の4項目を柱に、企業活動に対する公的関与を強化する。2023年春から段階的に施行する。安全保障と経済活動はもはや密接不可分になった。国民生活を守るには一定の規制強化や国家介入は必要だ。国家機密や個人情報の海外への流出を防ぎ、日本経済の屋台骨である自動車産業が力を入れる電気自動車(EV)に必要な半導体確保などに道筋を付けるのは政府の責務である。新法には、非公開の特許情報を漏らした場合に2年以下の懲役を科すなどの罰則が導入された。「特定重要物資」に指定された医薬品や半導体の調達先を隠したり、インフラ設備を製造した国を偽ったりした場合も罰則の対象になる。だが、国の介入が過大になれば経済活動が萎縮しかねない。企業の自由をできる限り尊重する抑制の効いた運用を求めたい。安全保障環境を整える観点から経済活動への規制を強化しようという議論は、情報通信やデジタルなどのハイテク分野を巡る米中対立激化を背景に始まった。ロシアによるウクライナ侵攻で、経済安保の重要性が一段と増す国際情勢となっている。日米欧はロシアの戦力をそぐため、対ロ金融・経済制裁に踏み切ったが、原油や天然ガスなどエネルギーの対ロ依存度が高い欧州が、特に厳しい状況に追い込まれているからだ。ロシアを排除した世界規模での経済構造の組み直しが急務になっている。だが、これまで長期間にわたる貿易などにより築かれた取引関係の解体は一朝一夕にはできない。日本はエネルギーの対ロ依存度が比較的低いが、多くの企業はロシア市場からの撤退や戦略見直しを強いられている。貿易・金融網が世界に広がるグローバル化は平時には有効に機能し、各国の経済成長を後押しした。しかしいったん有事になれば、それは国家運営の基礎をなす重要物資が「敵国」ににぎられる状態に変質することを世界は今、痛感している。プーチン大統領の言動を見ていると、もはや世界は性善説を前提にしては成り立たないと認識せざるを得ない。政府はこうした状況にも耐え得る経済構造を構築しながら、同時に企業活動の活力を維持、向上させなければならない。その成否の鍵は制度運用の透明性だ。経済安保法は規制や支援の対象となる企業や設備を、国会審議を経ない政令や省令で決めるため、経済界には恣意(しい)的運用への懸念が強い。円滑な制度運用には不信感を取り除くことが急務であり、丁寧な説明と可能な限りの情報公開が不可欠だ。その上で、政策執行を事後的に検証できるようなルールも検討したい。今回は民間人が対象となる機密情報の資格制度「セキュリティー・クリアランス」は見送られたが政府与党内にはなお導入を求める声が強い。資格の前提となる身上調査の是非を含め、人権、企業活動の自由の侵害を回避する議論を求めたい。

*6-2-1:https://digital.asahi.com/articles/DA3S15294495.html (朝日新聞 2022年5月15日) 食糧・エネルギー危機懸念 対ロシア「団結」声明 G7外相会合
 ドイツ北部ワイセンハウスで行われた主要7カ国(G7)外相会合は14日、共同声明を採択し、閉幕した。共同声明や関連文書では、ロシアのウクライナ侵攻が、世界的に深刻な食糧とエネルギーの危機を引き起こしているとの懸念を表明。ウクライナ農産物の輸出支援や飢餓に直面する人々への人道支援など、さまざまな枠組みで具体的行動を進めることで合意した。声明などでは「ロシアが軍事侵略によって変えようとした国境は決して認めない」とし、ウクライナや全ての国の主権と領土保全のための取り組みを堅持すると明記。ロシアに対し「経済的および政治的圧力をさらに高め、団結して行動し続ける」ことを確認した。ロシア産の石炭と石油の輸入を段階的にやめるというG7の方針に基づき、「ロシアへのエネルギー依存を減らし、可能な限り早期に終わらせるための努力を促進する」とした。会合では、ロシアの侵攻でウクライナからの穀物輸出が制限され、世界的な食糧供給の危機が生じかねないことへの対応も議論された。ロシアに対し、港湾を含むウクライナの主要な輸送インフラへの攻撃を直ちに中止し、ウクライナが農産物の輸出ができるようにすることを求めた。議長国ドイツのベアボック外相は会合終了後の記者会見で「G7は戦争が世界に及ぼす影響を確実に防ぎ、飢餓やエネルギー不安などが誘発されないようにしなければならない」と話した。穀物輸送のための鉄道の活用などさまざまな可能性を検討し、「できるだけ早く穀物を輸出できるようにする」と述べた。また、共同声明では、中国に対し、ウクライナに対するロシアの侵略を支援しないよう要求。米欧が主導する制裁を弱体化したり、ロシアの行為を正当化したりしないよう求めた。日本は今回の外相会合を「アジアの厳しい安全保障環境にもきちんと目を向けてほしいと問題提起をする場」(外務省関係者)と位置づけた。ロシアと同様に、海洋進出の動きを強める中国が地域の平和と安定を崩しかねないとの危機感があるからだ。林芳正外相は、アジアを含むインド太平洋地域が議題となった13日の会合で、中国による東シナ海、南シナ海での一方的な現状変更の試みの継続・強化に対して「深刻な懸念と反対」を表明。「中国との関係において、原則の問題について妥協してはならない」と強調し、連携を呼びかけた。

*6-2-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20220514&ng=DGKKZO60783110T10C22A5EA1000 (日経新聞 2022.5.14) 国産材活用を東北けん引 木造公共施設、秋田34%で首位、ウッドショックも影響 森林荒廃防ぐ
 国産木材の建築利用の裾野が広がっている。主要部に木材を活用した公共施設の割合(木造率)は2010年度の8.3%から20年度は13.9%に上昇し、低層に限れば3割に迫る。災害に強い部材開発に加え、国際的な需給逼迫で外国産材価格が高騰する「ウッドショック」も需要増につながる。戦後に植林した人工林が利用期を迎えるなか、資源を循環利用する脱炭素の地域づくりが欠かせない。日本は国土の約7割が森林で、20年の森林率は経済協力開発機構(OECD)加盟37カ国で3番目に高い。一方、林業は安い輸入材の台頭などで長期低迷する。担い手の減少とともに高齢化が進み、私有林の半分近くを占める人工林の3分の2は手入れが行き届いていない。こうした状況を改善しようと、国は10年、公共施設などの木材利用を促す法律を施行。02年に18.8%まで沈んだ木材自給率は20年に4割を回復した。林野庁の試算を基に15~20年度の公共施設の平均木造率を調べたところ、都道府県別で最も利用したのは秋田県の34.3%だった。以下は岩手県、山形県、青森県が続き、東北が上位を独占した。日本政策投資銀行東北支店の渡辺秀幸企画調査課長は「東北は壁や柱に適したスギやマツが豊富で、製材工場も整っている」と指摘する。秋田県は01年、県産材利用推進会議を設置した。木造化や内装の木質化になじまない案件は理由を添えて会議に諮るなど「原則木造化」を徹底し、20年度までの8年間に造った県営125施設のうち7割を木造・木質にした。岩手県も木材需要が低迷していた03年、秋田と同種の組織を立ち上げた。市町村と連携し東日本大震災で被災した公共施設や災害公営住宅の整備に県産材を積極利用しており、20年度に市町村が整備した低層(3階建て以下)の木造率は43.8%と全国平均(17.2%)を大きく上回る。森林は二酸化炭素(CO2)を吸収する特徴があり、木を燃やさずに使えばCO2を長期間貯蔵できる。民間が整備する病院や学校も含め、多くの人が集う公共的な施設は木造の良さも訴えやすい。山形県白鷹町は人工林が流出するなどした13、14年の豪雨災害を契機に森林を循環利用する機運が高まった。製材所など6社が16年、木材乾燥施設を整備し、伐採から加工まで町内でほぼ完結できるようになった。19年に完成した庁舎などの複合施設では木材利用量の約75%に地元のスギが使われ、民間施設に活用が広がるきっかけになった。教育分野では、木造校舎そのものが「木育」の教材になる。建築規制の緩和を受け、富山県魚津市で19年、全国初となる木造3階建ての小学校が誕生。文部科学省によると、20年度に新築した学校施設の19.1%(154棟)は木造だった。国内最大級の木造校舎の整備で、千葉県流山市が姉妹都市の長野県信濃町から木材を調達するなど、地域材の確保が難しい都市部と地方の連携も広がる。木材利用を促す法律は21年に改正法が施行され、民間建築物も利用促進の対象になった。事業者は国や自治体と協定を結べば、技術的な助言や財政支援を受けやすくなる。木造率が1割以下の中高層建築などは需要開拓の余地が大きいが、鉄骨造などと比べ10~15%費用が高いとされる。木造建築に詳しい東京都市大の大橋好光名誉教授は「実績を増やしてコストを下げるとともに、地方の工務店の技術向上を支援し、新しい領域への挑戦を後押しする取り組みも必要だ」と話す。

*6-3-1:https://digital.asahi.com/articles/ASQ5B6T5ZQ4TUTNB00P.html (朝日新聞 2022年5月11日) 避難の外国人をどう扱うべきか ウクライナ問題が突きつける課題とは
 戦禍のウクライナを逃れてきた人々への支援の輪が広がり、埼玉県内の自治体も続々と住居の提供などを打ち出している。一方で、県内に多く住むクルド人は、迫害を受けて祖国を逃れてきたが、公的支援は乏しい。日本に避難してきた外国人間の差が、浮き彫りになっている。戸田市役所で先月下旬、市と日本リサイクルソリューション(本社・戸田市)との間で協定が結ばれた。市が用意したウクライナ避難民用の住宅6戸に、同社が家電や家具などを無償で貸与する。菅原文仁市長は「避難民がいつ来てもすぐに安心して住めるようになった」というが、10日時点で、住宅の利用予定はないという。市は住宅提供だけでなく、避難民支援対策連絡会議を設置するなど手厚い支援態勢を敷いた。今月末には市民の理解を深めるため、ウクライナ情勢に関する市民講座も開く。ウクライナ避難民を対象にした支援は他の自治体にも広がっている。深谷市や行田市などが住宅の確保や物資の提供、相談窓口の開設をしている。一方で、戸田市に隣接する川口市や蕨市には、迫害から逃れてきたクルド人が約2千人いるとされる。在留資格がなく、出入国在留管理庁から一時的に釈放されている仮放免の人も多い。川口市に住む30代のクルド人の男性は、5年前から難民申請をしているが、いまだに認められない。働くことは許されず、医療保険にも入れず、県外への移動も禁止されている。自治体からの支援もない。入管の収容におびえながら、他人名義で家を借りて妻と子ども3人と何とか暮らしている。男性は、戦禍から逃れてきたウクライナ避難民への支援は必要だと認めつつ、「彼らと私たちは立場が違うのかもしれない。差別とは言わないが……」と言葉を濁す。政府はウクライナから逃れてきた人たちを「避難民」と位置づけ、クルド人やアフガニスタン人ら「難民」とは区別している。避難民は90日間の短期滞在の在留資格で入国させ、1年間働ける特定活動への切り替えを認め、その更新も考慮するなど、前例のない対応をしている。菅原市長はウクライナ避難民について「国が支援を打ち出したのに、地方自治体が何かしないのは不誠実だ」と説明する一方、「市が難民にこれだけの支援をした記憶はない」とも話す。クルド人支援団体「在日クルド人と共に」の温井立央代表理事もまた、複雑な思いを抱えている。ウクライナ避難民の支援には異を唱えないが、「同じように祖国を追われたクルド人らが明日をも知れない状態で暮らしていることも、考えてほしい」と訴える。そのうえでウクライナ避難民の今後を危惧する。「数年たって避難民が日本に永住したいといったら、どうするのか。ウクライナ人はOKでクルド人はだめなのか。そんなことはできないと思う。国は難民問題を考え直す時ではないか」と指摘している。

*6-3-2:https://digital.asahi.com/articles/DA3S15289937.html (朝日新聞 2022年5月11日) 難民保護の新法案、5野党・会派提出 国民民主は加わらず
 立憲民主、共産、れいわ新選組、社民など野党5党・会派は10日、難民保護の新法案と出入国管理法(入管法)改正案を参院に提出した。ウクライナ侵攻を逃れた「避難民」の位置づけなどを国際水準に近づける内容で、夏の参院選を前に人権意識の高さをアピールしたい考えだ。長期化が課題となっている外国人収容、送還のルールを見直す政府提出の入管法改正案をめぐっては、昨年の通常国会会期中に、入管施設に収容されていたスリランカ人女性が死亡する事案が発生。世論の反対が高まったことなどから政府・与党が衆院選を前に成立を断念した。今年も参院選を控え、政府が批判の高まりを懸念して再提出を見送るなか、野党側は国際的に遅れているとされる難民保護に積極的に取り組む姿勢を打ち出した形だ。立憲の石橋通宏参院議員は法案提出後、「参院選に向けてしっかり訴えるべき課題」と記者団に強調した。岸田政権が推進する経済安全保障推進法案に賛成するなど、存在感を示せていない立憲は「野党が対立軸を示すチャンス」(党国会対策幹部)と期待をかける。一方、同様の議員立法を昨年、共同提出した国民民主党は今回加わらなかった。同党の玉木雄一郎代表は10日の記者会見で「状況の変化を踏まえた」と述べるにとどめ、野党の足並みはそろわなかった。

*6-3-3:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20220514&ng=DGKKZO60783710U2A510C2MM8000 (日経新聞 2022.5.14) スキルや女性登用…「人的資本」情報開示へ政府指針
 政府は今夏にも企業に対し、従業員の育成状況や多様性の確保といった人材への投資にかかわる19項目の経営情報を開示するよう求める。企業が従業員について価値を生み出す「人的資本」と捉えて適切に投資しているかを投資家が判断できるようにする。うち一部は2023年度にも有価証券報告書への記載を義務付ける。開示を通じて人材への投資を促すことで無形資産(総合2面きょうのことば)を積み上げ、日本企業の成長力を高める。従業員を投資の対象である人的資本と位置づける考え方は企業経営で広がっている。製造ラインでの作業などが多かった時代は、人件費をコストと捉える傾向があった。今は経済のデジタル化が進み、従業員が生むアイデアが企業に利益をもたらす。企業が人材にどう投資しているかは、財務諸表の数値だけでは読み取れず開示機運が高まっている。政府の要請を受け、統合報告書などに人的資本に関わる記述を盛り込む企業が増えると見込まれる。内閣官房は今夏にも、人的資本への投資を企業がどのように開示すべきかの指針を作る。6月中にまとめる骨子案では、投資家に伝えるべき情報を19項目に分けて整理する。主な項目は従業員のスキル向上などの人材育成や多様な背景を持つ人材の採用状況などだ。企業には自社の戦略に沿う項目を選び、具体的な数値目標や事例を公表するよう求める。例えば多様性を示す従業員の男女比や人種、女性役員の比率などは、企業ごとの差を測れるように具体的な算出基準の開示を促す。企業によって異なる従業員の研修方法などは、できるだけ具体的な事例を記載してもらう。金融庁は23年度にも人的資本に関する一部の情報を有価証券報告書に記載することを義務付ける方針で、育児休業の取得率、男女間の賃金差、女性管理職の比率が候補となっている。内閣官房は金融庁の方針とは別に、人的資本にかかわる幅広い情報を公表することを企業に求める。欧米は人的資本の情報開示が進んでいる。米国では米証券取引委員会(SEC)が20年8月、企業に対して人的資本にかかわる情報開示を義務づけた。企業がそれぞれ重視する指標や、その目標値の開示を求めている。欧州連合(EU)は14年、従業員500人以上の企業を対象に開示を義務化している。日用品の米プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)は21年のアニュアルリポートから開示を始めた。消費財を扱う企業は多様な顧客のニーズに応えることが重要としたうえで、米国の経営層で40%を多様な文化的背景を持つ人材にするという目標を記載した。現状では投資家の要求水準を満たす日本企業は少ない。一橋大の伊藤邦雄氏や三井住友信託銀行の調査によると、経営層や中核人材の多様性をどう確保するかについて、67%の投資家が開示を求めている。実際にはプライム市場に上場する企業で19%、スタンダード市場では5%の企業しか公表していない。人的資本への投資の遅れは、日本企業が競争力を失う一因となっている。知的資産の評価を手掛ける米オーシャン・トモによると、20年の主要企業の時価総額から有形資産の評価額を引いた額を無形資産の価値と考えると、米国はこの比率が90%を占め、日本は32%にすぎなかった。米企業は人材への投資で無形資産を積み上げ、株価を上げている。岸田文雄首相は21年12月の所信表明演説で「人材投資の見える化を図るため、非財務情報開示を推進する」と述べた。形式的な開示内容にとどまれば市場の評価は高まらず、投資家に分かりやすく伝える努力が求められる。

<日本政府の環境に対する考え方について>
PS(2022年5月23日):朝日新聞は社説で、*7-1のように、①経産省の部会が脱炭素・経済安全保障等を重点分野に設定して「大規模・長期の支援を総動員」する中間整理案を出した ②社会・経済課題の解決を目的に財政出動を「大規模・長期・計画的」にして財政支援をてこに他の先進国を上回るペースで企業の投資を増やすことを目指す ③脱炭素のように、社会的合意のある明確な課題の解決に政府が取り組むのは当然で ④再エネ活用に欠かせない送電網やEV充電スタンドに予算を投じることに異論は無いが ⑤過去30年間、経産省主導の国家プロジェクトは多くが失敗 ⑥インフラ整備や基礎研究を超えて、個別の大企業に多額の税金を投じるのが適切とは思えない ⑦官僚は業界実態に疎く、意思決定も遅い上、責任を負わず、政治家の意向で判断が歪められることもある ⑧日本は2000年代に最先端を走っていた太陽光発電で競争力を失いEVも後れたが ⑨既存技術を手放せない産業界の声に流されて脱炭素規制を不十分にしたことが原因 ⑩官庁からの有力企業への天下りも多く、自民党は多額の企業献金を受けている ⑪政官財の癒着を断ち切れぬまま予算を増やせば、歪みのほうが大規模になりかねない ⑫「新機軸」を目指すなら、経産省はまずは炭素税に否定的な姿勢を改めることから始めてはどうか と記載している。 
 このうち、⑤⑥⑦⑨⑩はその通りで、失敗の中には大量の資金を投じて原発による電源開発を行い、稼働させるために災害を想定外にするなど国民の安全を疎かにする本末転倒の行動があった。そして、これは原発や原発事故に限らないため、①②③④⑪も正しいのである。
 また、*7-3は、今でも⑬EVは当面の需要が読みにくいので各社に柔軟な供給体制の整備を求めたい ⑭EVは充電スタンドなどのインフラ整備が十分と言えないため、日本市場はまだハイブリッド車を含むガソリン車の人気が根強い ⑮当面の需要の動向に応じてガソリン車とEVを柔軟につくり分けられる「混流ライン」の構築 ⑯内燃機関が電池等に置き換わることで裾野産業に大きな影響が及ぶ などとしており、このような環境への対応が、⑧のように、日本は2000年代に最先端を走っていた太陽光発電の競争力を失わせ、EVも後れる状況を作ったのである。具体的には、太陽光発電についてはくだらないことを言って先進日本メーカーを撤退にまで追い込み、EV充電スタンドが足りなければそれこそ作ればよいのに、「混流ライン」でガソリン車とEVの両方を作るなどの生産性の上がらないことをしているわけである。
 さらに、*7-2は、日本政府が⑰今後10年間で官民合わせて150兆円超を投資するため ⑱20兆円規模の資金を確保して民間資金を呼び込む「GX経済移行債(脱炭素社会に移行する投資に使い道を限る国債)」を発行する ⑲GX経済移行債はカーボンプライシング制度を決定した上で排出枠取引や炭素税による収入が入るまでの繋ぎ ⑳省エネ法等の規制対応、水素・アンモニアなどの新たなエネルギーや脱炭素電源の導入拡大に向け、新たなスキームを具体化させる と記載している。
 私も⑰⑱は良い考えで、良いグリーン国債があれば買いたいとは思うが、日本のグリーン国債は企画と利子率が悪すぎるため、外国のグリーン国債を買わざるを得ない。何故なら、⑫のように、カーボンプライシングしてCO2排出量に応じた炭素税の賦課をすれば公平になるが、⑲のように、排出枠取引を許せば日本の国富が開発途上国に流出するだけでCO2排出量は減らず、繋ぎの立場と言われては投資家も嫌な感じがするからだ。また、⑳の使い道も、省エネ規制の強化・再エネの普及・次世代型電線の敷設、EV充電スタンドの普及・水素エネ普及などの徹底したエネルギーのグリーン化ならよいが、CO2を減らしさえすれば良いという中途半端な発想で、原発やアンモニアに投資されればまたまた壮大な無駄遣いになるからだ。
 つまり、日本政府は「環境を護るには金がかかり、環境を汚さなければ効率よく経済発展することはできない」という考え方をしている点で限界がある。実際には、環境を護ると、i) 農林漁業に問題が起きず ii) 海水面も上昇せず iii) エネルギー自給率を飛躍的に上げることが可能で iv) EVへの変更で生産性が上がり v) 空気が汚れないため快適で健康によく vi) 生産性が上がれば営業利益率が上がるため、賃金・配当・債権利子を上げられる という1石6鳥以上の効果があるのである。

*7-1:https://digital.asahi.com/articles/DA3S15294707.html?iref=comtop_Opinion_04 (朝日新聞社説 2022年5月16日) 新産業政策 失敗の歴史繰り返すな
 政府の審議会が「経済産業政策の新機軸」を掲げた議論を進めている。財政資金を投じて民間産業への介入を強めようという方向性だ。過去の産業政策の失敗を繰り返すことにならないか、重大な懸念がある。昨秋、経済産業省の産業構造審議会に部会が設けられ、先月末に中間整理案が示された。脱炭素や経済安全保障などを重点分野に設定し、「大規模・長期の支援を総動員」するとうたう。財政支援をてこに他の先進国を上回るペースで企業の投資を増やすことを目指すという。経産省が部会に出した資料には次のような整理がある。伝統的産業政策は特定産業の保護・育成を目指して「中規模・中期」の財政出動をしてきたが、構造改革路線で「小規模・単発・短期」になった。「新機軸」では社会・経済課題の解決を目的に、財政出動も「大規模・長期・計画的」にする――。脱炭素のように、社会的な合意のある明確な課題の解決に政府が取り組むのは、当然のことだ。実際、50年の温室効果ガス排出実質ゼロの実現は容易ではない。再生可能エネルギーの活用に欠かせない送電網や、電気自動車の充電スタンドに予算を投じることに異論は無い。ただ、インフラ整備や基礎研究を超えて、個別の大企業に多額の税金を投じるのは適切とは思えない。だが、経産省は昨年、台湾半導体大手の国内工場誘致に4千億円もの巨費を投じることにした。今後、同様の補助が相次ぐ可能性がある。そもそも日本の大企業が競争力を失ったのは、資金不足が主因ではない。手元に現預金を積み上げ、法人実効税率の引き下げなど政策の優遇も受けてきた。それでも賃上げや投資拡大には十分に結びつかなかった。一方で過去30年、経産省が主導した国家プロジェクトの多くが失敗した。官僚は業界の実態に疎く意思決定も遅い。頻繁に異動し「長期」の責任を負える立場にない。政治家の意向で判断がゆがめられることもある。日本は、00年代に最先端を走っていた太陽光発電での競争力を失い、次世代エコカーでも後れをとりつつある。火力発電やハイブリッド車などの既存技術を手放せない産業界の声に流され、脱炭素に向けた規制の強化が不十分になったことが、大きな原因だ。官庁からは有力企業への天下りも多く、自民党は多額の企業献金を受けている。政官財の癒着を断ち切れぬまま予算を増やせば、ゆがみのほうが大規模になりかねない。「新機軸」を目指すのなら、経産省はまずは炭素税に否定的な姿勢を改めることから始めてはどうか。

*7-2:https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA193Y50Z10C22A5000000/ (日経新聞 2022年5月20日) 脱炭素へ新国債発行、首相が検討表明 財源20兆円確保
 政府は脱炭素社会に移行するための投資などに使い道を限る新たな国債を発行する検討に入った。「GX(グリーントランスフォーメーション)経済移行債(仮称)」を発行し、市場から資金を調達する。今後10年間で官民合わせて150兆円超の投資を実現するために、政府として20兆円規模の資金を確保して民間資金を呼び込む。岸田文雄首相が19日、首相官邸で開いた「クリーンエネルギー戦略」に関する有識者懇談会の会合で表明した。GX経済移行債は、二酸化炭素(CO2)排出に値付けをする「カーボンプライシング」の制度を決定したうえで、排出枠取引や炭素税による収入が入るまでの「つなぎ」の役割を想定する。早ければ2023年の通常国会に関連法案を提出し、同年度中の発行を目指す。新しい債券は、海外で発行が広がるグリーン国債(環境債)を参考に設計するとみられる。ドイツなど欧州の各国が環境債を発行している。財務省は21年の有識者懇談会で、環境債について「現時点で直ちに発行することは考えていないが、海外の動向などについては注視していきたい」と説明していた。首相は19日の会議で「政府はまず規制、市場設計、政府支援、金融枠組み、インフラ整備など包括的にGX投資のための10年のロードマップとして示していく」と言明した。「本予算、補正予算を毎年繰り返すのではなく、複数年度にわたり予見可能性を高め、脱炭素に向けた民間の長期巨額投資の呼び水とする」と強調した。具体的な政策をまとめるために今夏に官邸に新たに「GX実行会議」を設置し、速やかに結論を得ると説明した。首相は「省エネ法などの規制対応、水素・アンモニアなどの新たなエネルギーや脱炭素電源の導入拡大に向け、新たなスキームを具体化させる」と話した。脱炭素に取り組む企業の資金調達を支える「トランジション・ファイナンス」など新たな金融手法も例示した。カーボンプライシングをめぐっては、脱炭素に取り組む企業で構成する「GXリーグ」の段階的発展や活用に言及した。9月から東京証券取引所でGXリーグに参加する企業を対象にCO2排出量を取引する実証実験を予定する。官民による投資はデジタル技術を使って電力を需給に応じて効率的に送るスマートグリッド(次世代送電網)のほか省エネ住宅や電気自動車など幅広い分野を想定する。GXは首相が掲げる「新しい資本主義」の柱になる。

*7-3:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20220523&ng=DGKKZO61020680S2A520C2PE8000 (日経新聞社説 2022.5.23) EVシフトへ柔軟な生産体制の工夫を
日本車メーカーが相次ぎ電気自動車(EV)への投資計画を表明し始めた。国内ではSUBARU(スバル)がEV工場の新設を決めた。海外でもスズキはインドに、ホンダは中国と北米にEV専用の生産ラインや工場を建設する方針だ。EVは当面の需要が読みにくい面もあり、各社には柔軟な供給体制の整備を求めたい。EVは欧米で普及が進み始めたが、各国政府の補助金に支えられている面がある。アジアも含め今後は地域によって普及のペースが異なる展開が予想される。日本市場に目を向ければまだまだハイブリッド車を含むガソリン車の人気は根強く、EVは充電スタンドなどインフラ面の整備も十分とは言えない。日本車メーカーは欧米勢と比べて難しい立ち位置にある。とはいえ、将来を見据えて後手に回ることは避けたい。そこで不可欠となるのが、当面の需要の動向に応じてガソリン車とEVを柔軟につくり分けられる生産体制の構築だろう。スバルはEV工場の新設に先立ち、ガソリン車とEVを同時につくる「混流ライン」を立ち上げる。EV工場の生産規模も現時点では決めておらず、需要に応じて引き上げるという。トヨタ自動車や日産自動車も当面は同様の混流生産で対応する。部品など関連産業との精緻な擦り合わせが求められるこのような生産方式は、もともと日本勢が得意とする。これまでに培ってきたものづくりの力をEVでも生かしてもらいたい。海外での電池調達など新たな課題にも向き合うことになるが、問われるのは完成車メーカーだけではない。内燃機関が電池などに置き換わることで裾野の産業にはより大きな影響が及ぶだろう。強固なピラミッド構造で成り立ってきたサプライチェーンも新陳代謝は避けられまい。日本電産がモーターで攻勢をかけるように、EVが生み出す新たな商機への挑戦を多くの企業に期待したい。一方でこれまでガソリン車に依拠していた企業は経営基盤の抜本的な見直しを迫られる。欧州で軽油を燃料とするディーゼル車の部品に強みを持っていた独ボッシュは、電動化やソフトウエアへの投資に力を入れ始めた。ガソリン車もEVも関連企業の力なくしてつくることはできない。業界を挙げて長期視点でのEV生産の工程表が求められる。

| 民主主義・選挙・その他::2020.10~ | 10:39 PM | comments (x) | trackback (x) |

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