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2019.4.30 ちょっと面白い進化の話と農林水産業 (2019年5月1、2日に追加あり)

     ティラノサウルスの骨格と想像図           羽毛恐竜の化石と想像図

(図の説明:最近は恐竜化石の発見が多く、次第に全貌が見えてきたが、恐竜と鳥の骨格は類似点が多い。また、羽毛恐竜の化石も発見されている。そして、ティラノサウルスの骨格は、下のエミューや鶏のような組み立て方をするのが、重心が足の上にくるので正解だと思われる)

   
 (飛べない鳥)エミューの親子と骨格  (あまり飛べない鳥)鶏の成鳥の骨格と雛
  
(図の説明:左の2つは、オーストラリアの飛べない鳥エミューの生きている姿・雛・骨格だ。また、右の2つは、鶏の骨格模型と雛である)

 
  (飛ぶ鳥)鶴と鶴の雛      (飛ぶ鳥)鳩の飛び方、翼の構造、骨格 

(図の説明:左の2つは、鶴の成鳥と雛、右の3つは鳩の成鳥・翼の仕組み・骨格だ)

 (注)生態を調べるためでも、むやみに鳥を傷つけたり、殺したりしないで下さいね。

(1)ティラノサウルスはトカゲではなく、飛べない鳥だったのでは?
1)自然に起こった進化
 *1-1のティラノサウルス(学名:genus Tyrannosaurus)は、約6850万~6550万年前の北アメリカ大陸に生息していた肉食恐竜とされ、サウルス(saurus:ギリシア語のラテン語形学名で「トカゲ」を意味する)は恐竜・翼竜・首長竜等の絶滅爬虫類に用いられてきた(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B6%E3%82%A6%E3%83%AB%E3%82%B9_(%E6%9B%96%E6%98%A7%E3%81%95%E5%9B%9E%E9%81%BF) 参照)。

 しかし、爬虫類であるトカゲの骨格は、手足の長さが同じで地を這いやすいようになっているのが特徴で、ティラノサウルスの骨格は手が短くて羽でも生えていなければ役に立たなそうに見える。これに近い大きさの手を持っているのは、飛べない鳥エミュー(オーストラリアの非公式な国鳥で、オーストラリア大陸全域の草原や砂地など拓けた土地に分布している)で、エミューは風切羽を持たず糸状羽毛だけが生えており、手は座って卵を抱く際に地面についている。

 鳥として最終形に進化している鶴や鳩の骨格を見ると、手(=翼)の骨が長く、羽も自由に動かすことができ、翼を広げれば自在に飛べる仕組みになっている。それでも、「個体発生は系統発生を繰り返す」と言われているとおり、雛の手はエミューやティラノサウルスと同様に短く、羽毛は生えているが羽はない。ティラノサウルスと鳥の違いは、口の構造のように見える。

 このような進化が起こった理由は、そうしなければ生きられない環境があり、環境と生殖の両面から迫る淘汰圧によって、より環境に適応した個体が生き残って子孫を増やせたからである。

2)農業などで人が作った進化(or退化?)
 鶏は、キジの仲間のセキショクヤケイを、4000~5000年ほど前に、人が飼い馴らして家禽としたもので、現在では、肉や卵を生産する用途別に品種改良が進められ、約120品種以上あるそうだ(http://zookan.lin.gr.jp/kototen/tori/t421_1.htm 参照)。

 そのため、セキショクヤケイの間は、得意ではなくても少しは飛べる鳥だったようだが、家禽として人が飼うようになってからは、飛ぶ能力よりも、産卵能力や肉の美味さによって人に選別されて変わってきたわけだ(品種改良)。その鶏の手は鶴や鳩よりもずっと小さいが、エミューと違って風切り羽はあり、幼鳥の時は羽毛だけだが、成長するにつれて風切羽が生えてくる。

3)ティラノサウルスはトカゲではなく、エミューのような鳥だったのでは?
 結論として、ティラノサウルスと鳥類の足や首は殆ど同じ形であることもあり、最初に「トカゲ」という名前を付けたのが誤りで、本当はエミューと同じような飛べない鳥だったのではないかと、私は考える。また、陸上の寒冷な場所なら、うろこより羽毛の方が役立つだろう。

(2)農業における品種改良
 家畜や稲などの農産物は、味をよくしたり、気候に合わせたり、生産性を上げたりするために、品種改良や技術開発が行われるが、品種改良は生物の方から見ると進化(or退化)である。

 最近は、*1-2のように、比較的栽培が容易なことからオリーブの生産が活発化しており、油が取れるだけでなく、健康に良く、植木や枝物としても利用でき、6次産業化すれば国内だけでなく輸出にも耐えられることから、オリーブの産地化には期待が持てる。

 しかし、オリーブは、もともと地中海性気候の地域で栽培されていたものであるため、九州や瀬戸内海に浮かぶ広島県江田島市が市を挙げてオリーブの産地化を進めるのはわかるが、耕作放棄地対策や他果樹からの転換品目として東北でも栽培するには、かなりの品種改良が必要なのではないか? このようにして、農業は時間をかけて品種改良をしてきたわけだが、栗・クルミ・アーモンドなど、もっと東北で作り易い作物もあるのではないかと思った。

(3)放射線が、DNAを通して進化に与える影響
1)進化の仕組み
 それでは、どのようにして生物の進化が起こるのかと言えば、同じ種の生物でも偶然起こるDNAの突然変異によって多様な個体が生まれ、環境に適さないものも多く生まれるが、特に環境に適したものも生まれ、後者が多くの子孫を残すことで、その生物の全体に占める割合を増やしていくことによって起こるのである。

 そして、自然では、生殖と環境による淘汰圧のバランスによって選択されて変化の方向とスピードが決まり、家畜や農作物は、人の選択によって変化の方向とスピードが決まる。食品等のゲノム編集は、人がDNAに直接手を加えて変化させるので早いが、個体や環境に予想もしていなかった多くの影響が出る可能性があるため、慎重にも慎重を重ねるべきなのである。

2)自然放射線と人工放射線の違い
 ショウジョウバエの突然変異を起こすのに放射線を使うことを高校生物で勉強したが、放射線を当てるとDNAが損傷するから突然変異が起こり易くなるのであり、これは、人を含む他の生物でも同じことで、放射線には、①自然に降り注いでいる自然放射線(これが、年間1mSv未満と言われているもの) ②核爆発によって人が起こした人工放射線があるわけだ。

 これまで地球上で生き残ってきた生物は、①については、対応できているため問題ない。何故なら、対応できていない生物は子孫を残せないため、現在まで生き残っていないからだ。しかし、②については、そのストレスに曝露され始めてから70年前後であるため、寿命が長くて少産少死の生物は対応できていないわけである。

 そして、*2-1に関して、WTOが報告書に「日本産食品は科学的に安全」という記載をしなかったのは、②については、日本産食品が国際機関より厳しい基準で出荷されていても、科学的に安全とは言えないからである。そのため、*2-2に「日本は科学的立証せず、裏目に出た」と書かれているが、正確な統計をとって科学的に調査をすれば、(何度も書いているので長くは書かないが)安全ではないという結果になるだろう。

 なお、BSEのケースは、日本が国際ルールより厳しい基準を設けて前頭検査をしていたのだが、吉野屋の強い要望で米国産牛を輸入し、日本産牛の前頭検査もやめて米国基準に合わせた。しかし、米国が米国産牛の安全性を主張しているのは、それを食べてクロイツフェルト・ヤコブ病になった人がいたとしても、どの牛肉が原因だったかを判定することができないので損害賠償請求もできないだろうという考え方である。今では、日本もBSE牛が発生しやすくなっていると思われるため、せっかくやっていた前頭検査をやめて価格だけ高い牛肉になってしまったのは残念なことである。

 また、*2-3に、福島県産の野菜・果物・魚などの放射性物質の検査で、昨年度に日本の食品基準(100ベクレル/ kg)を上回ったのはおよそ1万6000点のうち6点で、イワナ・ヤマメ・たらの芽だったそうだが、問題は「100ベクレル/ kgなら無害」という根拠が科学的に示されていないことなのである。

 そのため、*2-4のように、「100ベクレル/ kg以下の食品なら、いくら食べ続けても無害だ」という根拠を科学的に示すことなく風評被害と強弁し、農水省・復興庁・経産省が連名で業界団体に対して福島県産農産物を敬遠したり、買いたたいたりすることがないよう求める通知を出したことは、日本は産業のためには人の命を差し出しても何とも思わない国だということで、とても許せるものではない。しかし、このような安全性に対する鈍感さは日本製全体の信頼を損なうため、産業のためにも有害なのである。

・・参考資料・・
<生物の進化>
*1-1:https://www.tokyo-np.co.jp/article/ibaraki/list/201904/CK2019042802000147.html (東京新聞 2019年4月28日) ティラノサウルス勢ぞろい 坂東・県自然博物館 企画展入場10万人突破
 坂東市のミュージアムパーク県自然博物館で開催中の企画展「体験!発見!恐竜研究所-ようこそ未来の研究者-」が人気だ。肉食恐竜ティラノサウルスの全身骨格を三体同時に見られる日本初という展示が好評で、ゴールデンウイーク初日の二十七日に企画展の入場者が十万人に達した。十万人目になったのは、神栖市から家族で訪れた宍戸真子さん(4つ)。「恐竜が好きで見に来た。(十万人目になり)びっくりした」と話した。企画展は二月にスタート。恐竜の標本や模型など二百二十三点を展示し、恐竜の復元された姿の変化や、骨から年齢を推定するなどの最新の研究、日本で発見された恐竜などを紹介している。発掘体験コーナーもある。三体のティラノサウルスの全身骨格は、それぞれ二十歳、十一歳、二歳ごろとされる。大人、若者、子どもの年齢で、体格の違いを見比べられる。さいたま市の小学一年生吉田光汰(ひなた)さん(7つ)は「大きくて、歯がすごかった」と驚いていた。六月九日まで。月曜休館(二十九日、五月六日は開館、同七、八日は閉館)。入場料は一般七百四十円、高校・大学生四百五十円、小・中学生百四十円。五月四日と六月五日は無料で入館できる。

*1-2:https://www.agrinews.co.jp/p47300.html (日本農業新聞 2019年4月7日) 国産オリーブ 多用途で地域を元気に
 オリーブの生産が活発だ。比較的栽培が容易なことから、耕作放棄地対策や他果樹からの転換品目として、栽培は東北から九州に及ぶ。魅力は油が取れるだけでなく、植木や枝物としても利用できること。6次産業化で新たな雇用が生まれた事例もあり、地域を元気にする果樹として産地化を進めよう。瀬戸内海に浮かぶ広島県江田島市は、市を挙げてオリーブの産地化を進める。目指すのは「カキに匹敵する産業」。市内はかんきつ栽培が盛んだが、高齢化で耕作放棄が年々拡大。管理の手間がかんきつより少なく、6次化への展開が期待できるとして目を付けた。市は苗木の助成や、荒廃した園地の改良に必要な機器リース料の助成の他、6・6ヘクタールを新たに造成するほどの力の入れようだ。果実はそのままでは利用できないため、脱渋や塩漬け、搾油といった工程が必要になる。その核となるのが、江田島オリーブ(株)だ。同社は自ら生産、販売、加工を手掛けるだけでなく、オリーブ油を使った料理などが楽しめる施設を運営する。これにより、地元に50人の雇用を生んだ。地元農家が作った果実も1キロ850円で買い取るため、農家にも地元住民にも、会社にも利益が得られる好循環が生まれている。ユニークな活用法を目指すのが、群馬県館林市の農業生産・加工を手掛けるジャングルデリバリー。鉢植えにしたオリーブを生産し、街路樹向けとしてレンタルする事業に乗り出した。生産に必要な農地は8戸の農家から借り、現在5000本の苗木を育てる。将来は面積を広げ、地域の雇用創出や農福連携も展望する。この他にも化粧品や枝物としての販売、植木としての需要も見込める。香川県では、茶樹のように仕立てて葉を収穫し、オリーブ茶として販売する。栽培の広がりを受けて2月下旬には、栽培発祥の地・香川県小豆島で初の全国サミットが開かれた。参加したのは12府県24自治体で、北は宮城県石巻市から南は鹿児島県日置市。会合では「日本オリーブ自治体協会」の設立を目指し、産地間の連携や国際オリーブ協議会への加入を目指すことを確認した。栽培に適した環境は、①年平均気温14~16度で一時的には氷点下10度でも耐えられる②年間日照時間は2000時間以上が理想。1700時間程度の産地でも結実する③年間降水量は1000~2000ミリ。地球温暖化の影響で適地は広がっているとみられるが、懸念されるのは近年の異常気象による大量の降雨。香川県小豆オリーブ研究所は「地質条件や気象条件に応じた技術開発が必要」とみる。国内で流通する国産のオリーブ油は1%未満。油にはオレイン酸、果実や葉にはポリフェノールなど機能性成分が含まれ、健康志向にマッチする。産地化に向け情報を共有し、栽培の機運を高めよう。

<自然放射線と人工放射線の違い>
*2-1:https://digital.asahi.com/articles/ASM4Q54YDM4QULFA01W.html?ref=mor_mail_topix1 (朝日新聞 2019年4月23日) WTO判決「日本産食品は安全」の記載なし 政府と乖離
 韓国による東京電力福島第一原発事故の被災地などからの水産物の全面禁輸を事実上容認した世界貿易機関(WTO)の判断をめぐり、日本政府が第一審の判断を根拠に説明している「日本産食品の科学的安全性は認められた」との記載が第一審の判決文にあたる報告書にないことがわかった。国際法の専門家から「無理のある説明だ」と報告書の内容との乖離(かいり)を指摘する声が出ており、「身内」なはずの経済産業省所管のシンクタンクも問題視するリポートを出した。この紛争は、韓国が2013年、事故を起こした福島第一原発から汚染水が流出しているとして、福島など8県の水産物の禁輸対象を一部から全面に拡大したことに対し、日本がWTO協定に違反しているとして提訴した。紛争を処理する上級委員会が11日、韓国の禁輸を「不当な差別」とした第一審・小委員会の判断を破棄する報告書を出した。日本の事実上の逆転敗訴だが、菅義偉官房長官は12日の記者会見で「敗訴の指摘は当たらない」と強調した。理由として、上級委が日本産食品の安全性に触れていないため「日本産食品は科学的に安全であり、韓国の安全基準を十分クリアするとの一審の事実認定は維持されている」ことを挙げた。河野太郎外相もほぼ同じ発言をした。だが、実際には第一審の報告書には「日本産食品は科学的に安全」との記載はなかった。さらに、第一審は「日本産食品が韓国の安全基準を十分クリアする」と認定していたものの、上級委はこれを取り消していた。「食品に含まれる放射性物質の量だけに着目した第一審の判断は議論が不十分」というのが理由だ。「科学的に安全」と付け加えたことについて、外務省と農林水産省の担当者は「第一審の『日本産食品が国際機関より厳しい基準で出荷されている』との認定をわかりやすく言い換えた」と釈明する。だが、WTOの紛争処理に詳しい中川淳司・中央学院大教授は「日本の基準が国際基準より厳しいことと、科学的に安全かは同義ではない。苦しい説明だ」と指摘する。また、福永有夏(ゆか)・早大教授は「そもそも第一審で安全性の認定は行われていない」と話す。日本が訴えたのは韓国が日本産食品を差別的に扱っていることなどで、安全性自体の認定は求めなかったためという。「韓国の安全基準を十分クリアする」との説明には、川瀬剛志・上智大教授が「明らかに判決の解釈を誤っている」と指摘する。経産省所管の独立行政法人「経済産業研究所」は16日、同研究員でもある川瀬教授がこうした問題点を指摘したリポートを出した。翌17日、外務省の山上信吾経済局長は自民党の会合で、「韓国が定める『安全性の数値基準』を十分クリアできる」と述べ、政府の公式見解を一部修正した。「判決を精査した結果、より適切な表現に改めた」(農水省担当者)という。「科学的に安全」との説明はそのまま続けている。川瀬教授は、「判決は日本の食品の安全性を決して否定していない」と強調した上で、「政府がやるべきことは事実をごまかすことではない。冷静に現実と向き合い、23カ国・地域で残る食品の輸入規制にどう対処するかを考え抜くことだ」としている。

*2-2:https://digital.asahi.com/articles/ASM4L441NM4LULFA00Y.html?iref=pc_extlink (朝日新聞 2019年4月23日) 日本は科学的立証せず「裏目に出た」 WTO判決の敗因
 世界貿易機関(WTO)の上級委員会が判決に当たる報告書で、東京電力福島第一原発事故を理由とした韓国による日本産水産物の禁輸を事実上容認し、日本が「敗訴」した。なぜ負けたのか。今後どのような影響があるのか。WTOの紛争処理に詳しい2人の国際経済法の専門家に聞いた。
●中川淳司教授(中央学院大・現代教養学部)
 今回の日韓紛争の本質は、韓国の輸入禁止措置に科学的な根拠があるのかどうかだ。にもかかわらず、日本はこの「本丸」を正攻法で立証せずに脇から攻め、裏目に出た印象だ。衛生植物検疫措置に関するWTOの国際ルール「SPS協定」は、2条の2で、各国の輸入規制は「科学的な原則に基づいてとること」を求めている。日本はこの条文では訴えず、「同一または同様の条件下にある国の恣意(しい)的または不当な差別」(2条の3)と、「必要以上に貿易制限をしてはならない」(5条の6)で韓国を訴えた。2条の3違反には、日本と他国が「同一条件にある」ことが必要だ。だが、普通に考えて、国際社会は福島第一原発の事故があった日本と他国が同一条件とは思わないはずだ。5条の6違反には、韓国の措置が「必要以上」であることを立証しなければならない。だが、食品の安全をどこまで求めるのかは国民性で違いがあるため、SPS協定は各国の裁量の余地を残している。日本も牛海綿状脳症(BSE)では、国際ルールよりも厳しい基準を独自に設けて、米国産牛肉の輸入を制限した。日本が2条の2違反を主張しなかったのは、立証が難しいと考えたからだろう。日本が放射線被曝(ひばく)量に関する国際基準より厳しい出荷規制をしていても、「科学的に安全」と認められるとは限らない。負けた時の風評被害のリスクも意識したのではないか。日本が「王道」の議論を避けた時点で、この裁判は勝ち目が無かったと思う。WTOの紛争処理では、上級委の判決には重みがある。日本が今後韓国以外の国を訴えた場合、今回の判決が重要な参考とされるはずだ。日本にとって今回の敗訴は、非常に厳しい。
●福永有夏教授(早稲田大・社会科学部)
 WTOの紛争処理においては、各国の「安全」と考える対応について、その国の裁量をより広く認める傾向は以前からある。今回の上級委の判断の妥当性に、問題はないと思う。ただ、韓国の禁輸措置をSPS協定違反とした一審の判断を破棄したものの、肝心な「違反があったかどうか」について最終的な結論は出さなかった。中途半端で、日韓の紛争が解決されずに残ってしまったと言える。判断は韓国の禁輸を「協定に違反していない」と積極的に認めたわけではないが、「違反している」とも認めなかった。最終結論は出ていないので、法律論としては、今回は「引き分け」との評価が一番妥当だ。ただ、重要な日本の主張が退けられた観点では、日本の事実上の敗訴と言える。今後、東京電力福島第一原発の事故を理由に日本産食品に輸入規制をかけている23カ国・地域と、日本が規制撤廃を交渉していく上で、痛いつまずきとなった。米国が「上級委が必要以上に判断を出しすぎだ」とWTOを批判しており、上級委がこうした批判を意識し、最終的な結論を出すのを控えた可能性もある。懸念するのは、日本国民のWTOへの信頼が損なわれることだ。WTO紛争処理は法に基づく貿易紛争の解決に貢献しており、これまで日本も多くの恩恵を受けてきた。いまのWTO紛争処理には「差し戻し」の制度が無く、今回のように上級委が第一審の判断を破棄すると、最終的な結論を下されないまま判断が確定してしまう恐れがある。差し戻し制度の導入も検討すべきで、日本は今回の判断を契機に、WTO改革を主導していく役割を果たしてほしい。
     ◇
〈韓国による日本産水産物の禁輸をめぐる経緯〉 韓国が2013年9月、福島第一原発から汚染水が流出しているとして、青森、岩手、宮城、福島、茨城、栃木、群馬、千葉の8県の水産物の禁輸対象を一部から全面に拡大。日本が15年8月にWTO協定に違反しているとして提訴した。第一審の小委員会は「不当な差別」として韓国に是正を勧告したが、第二審の上級委員会は、小委員会の判断について、検討が不十分だったとして破棄した。WTOの紛争処理は二審制で、この判断が確定することになる。

*2-3:https://www3.nhk.or.jp/lnews/fukushima/20190417/6050005159.html (NHK 2019年4月17日) 放射性物質 基準超の食品は6点
 福島県産の野菜や果物、魚などの放射性物質の検査で、昨年度国の食品の基準を上回ったのはおよそ1万6000点のうち6点でした。基準を超えたのはイワナとヤマメ、たらの芽でした。福島県は原発事故のあと県内でとれた野菜や果物、魚などの一部で放射性物質の検査を行っています。昨年度は492品目、1万5941点を検査し、国の食品の基準の1キロあたり100ベクレルを超えたのは0.04%にあたる6点で、10点だった前の年度に比べ、4点減りました。基準を超えたのは、福島市、伊達市、桑折町の阿武隈川水系でとれたイワナ2点とヤマメ3点、北塩原村でとれた野生のたらのめ1点でした。基準超えの食品は原発事故の直後に比べ大幅に減少していて、肉類は平成23年度から、野菜や果物は25年度から、コメなどの穀類は27年度から、国の基準値を上回るものは出ていません。県環境保全農業課は、「安全安心を確保するにはこうしたデータがベースになるので、品目や検体の数も含めてこれまでと変わらず検査を徹底するとともに正確に情報発信していきたい」としています。

*2-4:https://www.agrinews.co.jp/p47514.html (日本農業新聞 2019年4月30日) 福島産 敬遠回避を 物流業界に農水省指導
 農水省は29日までに、復興庁と経済産業省の連名で、卸売業者や小売業者などの業界団体に対し、福島県産農産物を敬遠したり、買いたたいたりすることがないよう求める通知を出した。東京電力福島第1原子力発電所事故を受けて根強く残る風評被害の払拭(ふっしょく)につなげる。農水省は3月末、同県産農産物の流通実態について、2018年度の調査結果を発表した。主要な農産物である米や桃などの販売価格は全国平均を下回り、震災前水準まで回復していなかった。事業者や消費者へのアンケート結果からは、福島産を敬遠する傾向が浮かんだ。今回の通知はこうした調査結果を踏まえて出した。卸売業者や仲卸業者、小売業者などの業界団体に対しては、①同県産の評価に見合った販売を行うこと②同県産農産物であることだけで取り扱わなかったり買いたたいたりしないこと③同県産と他産地産を対等に比較して取扱商品を選択すること──などを求めた。3省庁は生産者団体に対しても通知を出した。農業生産工程管理(GAP)を着実に行い、県産農産物のイメージアップにつなげることや、積極的な販売促進活動を行うことを呼び掛けている。農水省は今回の通知について、流通業者や同県の生産者を対象に説明会を開くなどし、理解を呼び掛けていく考え。

<恐竜絶滅の中で鳥類だけが生き延びた理由>
PS(2019.5.1追加):*3に、「①恐竜絶滅で、なぜ鳥だけが生き延びたか?」「②空飛ぶ恐竜はほかにもいたはず」と書かれているが、小惑星が衝突して気候が寒冷化し、陸上動物が少なくなった地球で生き残る要件は、①食物が水中・地中・木の中などにある ②体毛がある などで、そのため、大型で動物の肉を切り裂く歯を持つ恐竜が絶滅し、嘴と羽毛を持つ鳥類が生き残ったのではないかと思う。

 
 トラ(肉食)   ワニ(肉食) イグアナ(草食)   2016.4.11日経BP
        現生動物の口と歯の比較       (アメリカの恐竜展より)

*3:https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/18/050100197/(日経BP 2018.5.2)恐竜絶滅、なぜ鳥だけが生き延びた?空飛ぶ恐竜はほかにもいたはず、科学で迫る鳥類進化の秘密
 ここ数年、鳥類の進化を解明する手がかりになるような発見が続いている。米国のニューメキシコ州では最近、原始的なネズミドリの化石が断片ながら見つかった。6200万年前のものと推定されるこの化石は現在のところ、大量絶滅後に生息していた鳥類のうち、最も古い部類に属する。このほか、ニュージーランドでは6100万年前の太古のペンギンの化石が最近見つかったが、同時代のほかのペンギンとは異なる外見をしていたと考えられる。こうした化石のすべてが、最新の遺伝子解析で明らかになった進化の道筋と一致しているようだ。「数千万年に及ぶ進化の結果、前肢を羽ばたかせて空を飛ぶ小型の恐竜が誕生しました。その後、小惑星が衝突した際、そうした体の構造が実に好都合だとわかったのです」と、英エディンバラ大学の古生物学者スティーブン・ブルサティは語る。「こうした鳥の一部が大量絶滅を生き延び、ほかの動物がほとんどいなくなった地球で繁栄することになりました」。しかしまだ、より難解な謎が残っている。なぜ、現在の鳥類の祖先だけが生き延びたのかということだ。その理由に関しては、さまざまな説が唱えられている。バース大学のダニエル・フィールドと彼の同僚たちは、森林の大規模な消滅が関係しているのではないかと考えている。白亜紀末の地球は現在よりも温暖で湿潤だった。生い茂った森には、さまざまな種類の初期の鳥たちが生息していて、現生の鳥と似たものも多かったと考えられる。繁殖能力の高さが鍵を握ったとする説もある。2017年、米フロリダ州立大学のグレゴリー・エリクソンが率いる研究チームは、非鳥類型の恐竜は卵を抱いて孵化させるのに数カ月かかっていたとする証拠を示した。一方、現生鳥類の多くは一般に繁殖頻度が高く、数日から数週間という短期間で孵化するので、小惑星衝突後の過酷な状況を生き抜くことができた可能性がある。世界各地で、研究者たちは鳥類の進化の謎に挑んでいる。南米やニュージーランド、南極で進行中の発掘調査から、新たな発見が近々もたらされると期待されている。さらに今後数年のうちに、より詳細で豊富な遺伝情報が得られることになりそうだ。中国広東省の深センにある国家遺伝子バンクでは、従来よりも高速で精度の高い技術を駆使して、2020年までに1万種を超す現生鳥類すべての全遺伝子のドラフト配列(おおよその配列)を解明する取り組みを進めている。このプロジェクトの成果を応用すれば、化石となった太古の鳥の特徴と現生の鳥の特徴を照合できるようになるはずだ。ある種の鳥だけが絶滅を免れたのは、それに適した条件をいくつも備えていたからだと考えるのが、生き残りの謎に対する最も妥当な答えといえそうだ。だからこそ、これからも証拠を積み上げ、新たな説を次々と検証していくことが大切なのだ。「私たちが取り組んでいるのは、6000万年以上も時間をさかのぼり、地球規模で起きた極めて複雑な出来事を解明することなのです」とフィールドは話す。それでも「相互に関連するこうした疑問を詳細に研究することによって、地球史上でも最大規模の深刻な大量絶滅を生き延びた鳥という生き物に対して、少しずつ理解が深まっています」

<皇室が絶滅しないために、求められる「国民統合の象徴」像>
PS(2019年5月1日追加):こういう場所に書いて申し訳ないが、*4-1のように、平成天皇が2019年4月30日に退位され、「退位礼正殿の儀」で「象徴としての私を受け入れ、支えてくれた国民に、心から感謝します。令和の時代が平和で実り多くあることを皇后と共に心から願います」とお言葉を述べられた。また、同年5月1日には、*4-2のように、令和天皇が即位され、「即位後朝見の儀」で「憲法に則り、日本国および日本国民統合の象徴としての責務を果たすことを誓う」と述べられた。これらはよいが、「剣璽等承継の儀」は皇位継承資格を有する男性皇族しか参列できないというのは、大日本帝国憲法下で女性を一人前の人間と認めていなかった時代ならともかく、現在の日本国憲法下では合憲でなく、国民感情に寄り沿ってもいない。
 そのため、昭憲皇后が洋装で積極的に人々の前に姿を見せ、貞明皇后が側室制度を無くし、美智子皇后が恋愛結婚して乳母制度を廃止し、雅子皇后がキャリアウーマンから皇室に嫁ぐなど、一歩先を行く女性像を示してきた皇室なら、次は女性天皇・女系天皇を出し女性宮家も認めて皇室を男女平等にするのが、女性を含む国民統合の象徴の役割だと考える。
 側室制度を作ったり、外部から天皇として男系男子を養子に迎えたりすることを、*4-3のように国民は望んでおらず、現在の環境にも合っていないため、天照大御神(皇祖神で女性)は、その改革を進めるために令和天皇御一家に女の子だけを授けたのかもしれない。
 なお、*4-4に、新天皇のお言葉全文が記載されているが、雅子皇后について宮内庁が2004年7月に公表した「適応障害」は病名として存在せず、いい加減だ。そのため、雅子皇后には、もともと持っている個性と能力を活かして新しい皇后像を作ってもらいたいが、皇后の能力は、知識や語学だけでなく容姿やファッションセンスも含んでおり、世界に出しても恥ずかしくない皇后であっていただきたいわけだ。そのためには、メディアでよく褒め言葉として使っている日本独特の「やさしさ」と意味なき「笑顔」では不足である。
 それにしてもメディアのキャラウーマン叩き(人権侵害と侮辱そのもの)はものすごく、私もこのキャラウーマン叩きの“空気”に大変迷惑したのだが、訴訟して勝っても謝罪もされないし、損害を回復するための補償もなかったので、決して忘れてやることも許すこともない。


2019.1.5産経新聞 2019.5.1産経BZ               2019.5.1朝日新聞

(図の説明:左図の予定に従って退位及び即位の儀式が行われる。左から2番目と3番目は平成天皇退位の儀式で、1番右は令和天皇即位の儀式のうちの「即位後朝見の儀」だ。私は、皇室の儀式を私費で賄うよりも、国費で賄って立派に行いつつ世界に放映した方が、皇室の歴史を感じさせたり、外交でプラスになったりすると同時に、歴史で稼げると考える)

*4-1:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO44368970Q9A430C1000000/?n_cid=BMSR3P001_201904301709 (日経新聞 2019年5月1日) 「国民に心から感謝」 天皇陛下の最後のお言葉全文 、退位礼正殿の儀
 天皇陛下が退位礼正殿の儀で述べられたお言葉は以下の通り。
 今日をもち、天皇としての務めを終えることになりました。ただ今、国民を代表して、安倍内閣総理大臣の述べられた言葉に、深く謝意を表します。即位から30年、これまでの天皇としての務めを、国民への深い信頼と敬愛をもって行い得たことは、幸せなことでした。象徴としての私を受け入れ、支えてくれた国民に、心から感謝します。明日から始まる新しい令和の時代が、平和で実り多くあることを、皇后と共に心から願い、ここに我が国と世界の人々の安寧と幸せを祈ります。

*4-2:https://www.nishinippon.co.jp/feature/gougai/article/506992/ (西日本新聞 2019年5月1日) 天皇陛下即位の儀 「憲法にのっとり責務果たす」
 天皇陛下は1日、皇后さまと共に皇居・宮殿「松の間」で、国事行為の「即位後朝見(ちょうけん)の儀」に臨み「憲法にのっとり、日本国および日本国民統合の象徴としての責務を果たすことを誓う」と、天皇として最初のお言葉を述べられた。即位後朝見の儀には、安倍晋三首相ら三権の長をはじめ都道府県の知事や議長、市町村長の各代表らが参列。皇嗣(こうし)秋篠宮ご夫妻ら女性も含めた成年皇族も同席した。陛下は「自己の研鑽(けんさん)に励むとともに、常に国民を思い、国民に寄り添う」と決意を誓った。朝見の儀に先立ち、陛下は松の間で国事行為の「剣璽(けんじ)等承継の儀」に臨んだ。即位後初めての儀式で、陛下は皇位のしるしとされる「三種の神器」のうち剣と璽(じ)(勾玉(まがたま))を、国の印章の「国璽(こくじ)」と天皇の印の「御璽(ぎょじ)」とともに受け継いだ。皇位継承資格を有する男性皇族のみが参列し、前例に倣って女性皇族は同席しなかった。

*4-3:https://digital.asahi.com/articles/ASM4H42NFM4HUTIL00P.html (朝日新聞 2019年4月18日) 「容認」7割超、女性天皇も女系天皇も 朝日世論調査
 新しい天皇陛下には被災地訪問などを期待し、将来の安定した皇位継承のために女性・女系天皇を認めてもよい――平成から令和への代替わりを前に実施した朝日新聞社の全国世論調査では、こんな傾向も浮かび上がった。新天皇に期待する役割を複数回答で選んでもらったところ、「被災地訪問などで国民を励ます」が最も多く66%、「外国訪問や外国要人との面会」が55%、「戦没者への慰霊など平和を願う」が52%――などとなった。被災地訪問や戦没者慰霊は平成の時代に天皇、皇后両陛下が力を入れてきた活動。象徴天皇の活動として、広く浸透したことがうかがえる。一方、安定した皇位継承のために、女性天皇や母方だけに天皇の血をひく女系天皇を認めるのかと尋ねたところ、女性天皇については76%、女系天皇は74%が、それぞれ認めてもよいと回答した。天皇の退位を認める特例法案が国会に提出される直前の2017年3~4月の調査でも、女性天皇は75%、女系天皇は72%が認めてもよいと回答しており、ほぼ同様の結果だった。また、今後の皇室の活動を維持するために、女性皇族が結婚後も皇室にとどまる「女性宮家」の創設については、50%が賛成、37%が反対と答えた。現在の皇室典範では、天皇になれるのは父方に天皇の血をひく「男系」の男性のみ。このため、5月の代替わり後、新天皇となる皇太子さまよりも若い皇位継承者は、5歳違いの秋篠宮さまと今年13歳になる悠仁さまだけになる。今回の天皇退位を実現する特例法ができた際、国会は付帯決議で、安定的な皇位継承を確保するための諸課題などを検討して国会に報告するよう政府に求めた。今回の調査で、安倍内閣を支持すると答えた層の意見をみてみると、女性天皇容認は72%、女系天皇容認は70%で、全体の76%、74%をそれぞれ下回った。逆に「男性に限った方がいい」は25%で、全体の19%を上回った。安倍首相の言葉を「大いに信頼できる」と答えた層でみると、女性・女系を認める意見と男性・男系に限るべきだとする意見が拮抗していた。
新天皇に期待する役割(複数回答)
 ・被災地訪問などで国民を励ます        66%
 ・外国訪問や外国要人との面会         55%
 ・戦没者への慰霊など平和を願う        52%
 ・宮中祭祀(さいし)など伝統を守る      47%
 ・国民体育大会など国民的な催し出席      36%
 ・国会召集など国事行為に専念する       21%

*4-4:https://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2019050190135516.html (東京新聞 2019年5月1日) 「常に国民を思い、寄り添う」 天皇陛下即位お言葉
 一日に即位した天皇陛下は午前、皇居・宮殿の正殿「松の間」で、皇位継承儀式「剣璽(けんじ)等承継の儀」と、国民の代表と会う「即位後朝見(ちょうけん)の儀」に臨まれた。朝見の儀で陛下は、初のお言葉で「常に国民を思い、国民に寄り添いながら、憲法にのっとり、日本国および日本国民統合の象徴としての責務を果たすことを誓います」などと述べた。この日午前零時、「平成」から代替わりした「令和」がスタート。陛下は五十九歳で、戦後生まれの初の天皇となった。皇后さまは五十五歳。剣璽等承継の儀と即位後朝見の儀は、憲法に定める天皇の国事行為として行われた。剣璽等承継の儀では、陛下が皇位の証しとされる「三種の神器」のうち、剣と勾玉(まがたま)(璽(じ))、国印の国璽(こくじ)と天皇印の御璽(ぎょじ)を継承した。即位後朝見の儀では陛下のお言葉に続き、安倍晋三首相が国民代表として「天皇陛下を象徴として仰ぎ、平和で希望に満ちあふれ、誇りある日本の輝かしい未来を創り上げていく決意です」などと祝意を述べた。剣璽等承継の儀には、男性の成年皇族である皇嗣(こうし)秋篠宮さまと常陸宮さまのほか、安倍首相、大谷直人最高裁長官、大島理森衆院議長、伊達忠一参院議長の三権の長と閣僚、最高裁判事ら二十六人が参列。皇位継承権のない女性皇族は立ち会わず、片山さつき地方創生担当相が憲政史上初めて女性として参列した。即位後朝見の儀には、剣璽等承継の儀の参列者に加え、皇后さまをはじめ女性の成年皇族、地方自治体の代表ら約三百人が参列した。これに先立ち、陛下は即位後初の国事行為として両儀式を行うとの閣議決定を裁可した。
◆天皇陛下お言葉全文
 日本国憲法および皇室典範特例法の定めるところにより、ここに皇位を継承しました。この身に負った重責を思うと粛然たる思いがします。顧みれば、上皇陛下にはご即位より、三十年以上の長きにわたり、世界の平和と国民の幸せを願われ、いかなる時も国民と苦楽を共にされながら、その強い御心をご自身のお姿でお示しになりつつ、一つ一つのお務めに真摯に取り組んでこられました。上皇陛下がお示しになった象徴としてのお姿に心からの敬意と感謝を申し上げます。ここに、皇位を継承するに当たり、上皇陛下のこれまでの歩みに深く思いを致し、また、歴代の天皇のなさりようを心にとどめ、自己の研鑽に励むとともに、常に国民を思い、国民に寄り添いながら、憲法にのっとり、日本国および日本国民統合の象徴としての責務を果たすことを誓い、国民の幸せと国の一層の発展、そして世界の平和を切に希望いたします。
<天皇陛下> 名前は徳仁(なるひと)。1960年2月23日生まれで、幼少時の称号は浩宮(ひろのみや)。学習院大文学部史学科を卒業後、同大大学院に進学。英オックスフォード大にも留学した。89年1月、昭和天皇の逝去に伴い皇太子となり、93年6月に元外交官の雅子さまと結婚した。学習院女子高等科3年の長女愛子さまと3人家族。ライフワークは水問題に関する考察で、2013年と15年、国連本部で開かれた「水と災害に関する特別会合」で講演した。趣味はビオラ演奏と登山。
<皇后雅子さま> 1963年12月9日、後の外務事務次官小和田恒氏と妻優美子さんの長女として生まれた。85年に米ハーバード大を卒業。学士入学した東京大を中退後、87年4月に外務省に入り、日米の経済外交に携わった。86年10月、東宮御所で開かれたスペインのエレナ王女歓迎会で、天皇陛下と出会い、93年6月に結婚した。2001年12月に長女愛子さまを出産。03年12月から療養生活に入り、宮内庁は04年7月、病名を「適応障害」と公表した。現在も療養が続いている。

PS(2019.5.2追加):雅子妃に対するバッシングは、*5に書かれているとおりで、この内容が当時の週刊誌(私は、そのような週刊誌は買わないので美容院で読んだ)に掲載され、それを人権侵害や侮辱だとすら思わないほど女性蔑視の“空気”が世の中に蔓延していた。私は、世界の中で「適応障害」を起こしたのは、このようなことを言いたてた日本国民の方だと思う。

*5:https://rondan.net/17760 (論壇ネット 2019.3.12) 【雅子さま】別居・離婚・廃太子論……数々の批判を乗り越えて“新”皇后に
Contents
1 長期療養中の雅子さま
2 別居
3 離婚
4 小和田家が引き取れ
5 廃太子
6 廃太子した後の皇太子
7 まとめ
1 長期療養中の雅子さま
 適応障害になられてから、久しく公務や祭祀を欠席されている雅子さま。元はと言えば「御世継ぎを」のプレッシャーから適応障害になられ、今度はその適応障害を批判されるという負のスパイラルの中にありました。一連の雅子さまバッシングの中核を担った論者としては西尾幹二氏や、橋本明氏、保坂正康氏などが有名です。一方で、雅子さま擁護論を展開した論者としては、竹田恒泰氏や小林よしのり氏が挙げられます。一時はバッシングに次ぐバッシングの嵐だったものの、最近になって落ち着いてきたように思います。これも適応障害など精神疾患に関する国民の理解が進み、小室圭さん問題に端を発する秋篠宮家に注目が集まっていることなどが挙げられるでしょう。またこの5月に控えた御譲位も大きく影響しているように思えます。今回は、そんな雅子さまへのバッシングを振り返ってみたいと思います。特に取り上げるのは、橋本明「「別居」、「離婚」、「廃太子」を国民的議論に」『WiLL』(2009.9号)です。この記事は、「廃太子論」にまで飛び火したことで非常に有名です。またこの記事と関連する書籍や対談も取り上げていきたいと思います。
2 別居
 橋下氏の理論は、雅子さまのご病状を回復させることが重要であるとして、①別居、②離婚という二つの方法を挙げ、その二つが適用できずご病状も改善しないのなら③廃太子(秋篠宮殿下を皇太子にして、現・皇太子殿下は親王に格下げ)すべきだという内容です。雅子さまのご病状を心配しているような書きぶりで、実際には東宮家への強い批判が込められた文章です。まず、別居を薦める下り。
[雅子妃がご病気を克服されるということは健康を取り戻すことです。徹底的に治療する環境を作るというのは一つの方策だと思います。つまり、別居して治療に専念するということです。
橋本明「「別居」、「離婚」、「廃太子」を国民的議論に」『WiLL』(2009.9号)]
 より具体的には次のように。
[この際思い切って雅子妃を皇室から遠ざけ、ストレス因子の存在しない空間に身を移し変えて回復に専念する態勢を創出してはいかがだろうか。そこでは公務や育児の責務を逃れ、治療に専念していただく。公務を抱える殿下、学業がある愛子内親王とは別居となる。女官なども遠ざけ、身の回りの世話は専門の看護師あるいは介護者が当たればよい。橋本明『平成皇室論——次の御代へむけて』朝日新聞出版, 2009.]
 具体的な療養として、栃木の御料牧地でのアニマルセラピーが挙げられるなど、おちょくってるのか、大真面目なのか解らない文章が続きます。きっと前者なんでしょうけど。もちろん別居して改善する保証などどこにもないのですから、「別居すればいい」などとは橋本氏の妄想以外の何物でもない選択肢です。
3 離婚
 さらに橋本氏の妄想は加速して「離婚」を薦めます。
[もちろん離婚はあり得ますが、離婚は両者の合意に基づくもので一方的には決められません。決められない場合は民間であれば離婚調停を行うわけですが、皇室にはそれを保護する法律の後ろ盾はあるのかということです。いったいどこの裁判所で誰が調停員になるのか。ですから常識的にはないにしても、ご結婚が皇室会議の賛同を得なければ成立しないのと同じように、皇室会議に持ち出せば離婚もあり得ると思います。橋本明「「別居」、「離婚」、「廃太子」を国民的議論に」『WiLL』(2009.9号)]
 ただし、同氏による書籍では、離婚という選択肢もあるが、現実的には離婚など有り得ないだろうという文脈でこれが語られています。
[雅子妃の静養が長引くにつれ、ご夫妻をめぐる報道に「離婚」という文字が散見されるようになった。雅子妃を皇室という環境から解放して差し上げようといった同情的な論調から、東宮のあり方に疑問を呈するむきまでさまざまだが、皇太子が雅子妃を愛し、守り続ける覚悟に今後も生きるとすれば離婚はもとより問題外となる。仲睦まじいいまのお二人の姿からも、離婚などという事態は想像し難い。橋本明『平成皇室論——次の御代へむけて』朝日新聞出版, 2009.]
 なお法的に皇族が離婚できるのかどうか議論があるようです。しかしここで重要な点は、橋本氏は、皇太子殿下と雅子さまの「離婚」を現実的な選択肢として語っているのではなく、単に雅子さまが皇室不適格だとなじるために言っているにすぎません。先の「別居」、今回の「離婚」、これに続く「廃皇太子」いずれも実行可能な選択肢として語られているのではなく、極論を持ち出して東宮家(特に雅子さま)を貶めたいだけの言論であるように思えます。
4 小和田家が引き取れ
 このような橋下氏による雅子さま攻撃の根源的原因は、どうやらその父・小和田恆氏が左派リベラル的活動をしていたことに起因するようです。本筋とは全く関係の無い人格攻撃を持ち出して次のように言っています。
[橋本 常識的に考えて、「私の娘は役に立ちませんから引き取らせて頂きます」と申し出るのが本当の親の役目だと思います。ところが、小和田ご夫妻には、そのような意識はかけらもありませんでした。私は個人攻撃をするつもりはありませんが、国家の問題として言わざるを得ません。ところが、小和田ご夫妻には、そのような意識はかけらもありませんでした。私は個人攻撃をするつもりはありませんが、国家の問題として言わざるを得ません。小和田恆氏は、男女共同参画の産みの親のような方です。小和田氏が国連大使の時代に、国際婦人年があり、その総会で決まったことを日本に持ち帰って法律化しようと、労働省の婦人少年局長と渡り合いました。その時の記録を見ると小和田氏は、日本も男女同格で、女性も権利をもって働く国にならなければ駄目だと明確に言っています。婦人少年局長のほうがまだ尻込みしていて、そこまでまだいきませんと言っているくらいです。そらく今の雅子妃の姿を見ると、小和田氏は「こんな娘で申し訳ない」という気持ちではなく、「こんな娘にしたのは誰彼のせいだ」と思っているでしょう。橋本明×西尾幹二「雅子妃の御病気と小野田王朝」『WiLL』(2009.10号)]
 橋下氏の理論からすれば、皇室とは平等や人権とはまったく別個の世界であり、そこに適応できない雅子さまとその両親が悪いということのようです。この様な理論は保守論客の中でまま見られるものです。しかし、これは「開かれた皇室」を目指す現皇室の在り方と相容れていないことを留意すべきです。今上陛下も皇太子殿下も秋篠宮殿下も、結婚に関しては当時としてリベラル的な選択をした恋愛結婚です。また、平等という観念にも皇室は寄り添おうと努力しています。被災者を前にしても昭和天皇は決して膝を折りませんでしたが、今上陛下は膝を折り視線の高さを同じくして声に耳を傾けています。
5 廃太子
 このように「別居」して治療してもダメ、「離婚」も有り得ないのであれば、「廃太子」するしかないと言い出します。
[治療をしても雅子妃がよくならない場合について、もう少し考えてみよう。離婚という事態は、お二人のお気持ちの中に一切ないであろう。その場合、仮に皇太子が以下のように考えたとしたらどうだろうか。自分はあくまでも雅子妃と愛子内親王と共に暮らして一家庭という単位で人間として幸福を追求する。ただし、この形態のまま践祚・即位した場合、皇室のあるべき運営に不都合をきたす。よって天皇にはならない──。このように考えた場合は、立太子の儀を経て皇位を継ぎ、次期天皇に即位する既定路線が定まっているこれまでの生き方を否定し、その立場を廃するという道も選択肢のひとつとして考えられる。橋本明『平成皇室論——次の御代へむけて』朝日新聞出版, 2009. ]
 過去の歴史で「廃太子」は実際にあったことのようですが、皇太子殿下ご自身が心身健康なのに、廃位を求めるというのは流石に滅茶苦茶でしょう。事実、こっぴどく批判されています。要点は次のように。
[もう一は、廃太子、つまり秋篠宮を皇位継承第一位にするという方策もあります。皇室典範の第三条には、皇太子が心身を病んだりして公務ができない場合、皇位継承順位の変更を皇室会議で認めることが定められているからです。これについても先述の所氏は、「規定の趣旨はあくまで皇太子さま本人に決定的な不都合が生じた場合であって、雅子さまの病気が皇位継承の順番を変える理由になるはずがありません」と言います。さらに、同誌で小田部雄次静岡福祉大教授は、「公務は天皇の単独が基本で、夫婦でやるのは今の両陛下が欧米型を取り入れてから。雅子さまが公務をやらないことを理由に離婚されるとは、おかしな話です。周りが勝手な皇室像を押し付けていると感じます」という。橋本明「「別居」、「離婚」、「廃太子」を国民的議論に」『WiLL』(2009.9号)]
 つまり、雅子さまのご病状の如何で皇太子殿下が継承権を辞退する必要はないし、雅子さまがご病気で公務や祭祀ができなくても問題ないということです。特に、「両陛下が公務を行なうというのは平成流であって、皇室の伝統ではなかった」ことは、今後の雅子さまのご公務の在り方を考えるうえで重要でしょう。
6 廃太子した後の皇太子
 また「廃太子」となった後の皇太子殿下の処遇というのは次のようなもの。
[もし「廃太子」が現実になったと想定しても、徳仁親王の皇族というお立場を定める身位は「親王位」にあり、皇太子を放棄しても基本的身分に変更はない。徳仁親王家が皇族として存在することに何らの変化も生じない。ご家族とて同じである。宮家として公務に専念する立場にも変化はない。皇位継承順位もいままでの一位から三位に下がるだけだ。ただし、その際には新たに立太子礼を他の皇族について挙げ、皇太子として内外に宣明する手続きと宮中行事が必要となる。具体的に言えば、皇次子秋篠宮文仁親王が立太子礼を経て皇太子になるということだ。同時に徳仁親王には新宮家が創設され、宮号が賜れる。皇位継承順位は秋篠宮、悠仁親王、そして徳仁親王となる。東宮家のご身位は、いまの秋篠宮家と同格になる。橋本明『平成皇室論——次の御代へむけて』朝日新聞出版, 2009. ]
 具体的なのは結構ですが、秋篠宮殿下が“皇太子”になったら継承順位は二位じゃないの? こういう基本的なところでオカシナところが目につきます。単に東宮家バッシングしたいだけなんでしょうね、きっと。
7 まとめ
 以上、雅子さまバッシングの極まり「別居」「離婚」「廃皇太子論」を見てきました。東宮家叩きが収まり、秋篠宮家批判が強まりつつある今となっては、時代遅れの議論である感が否めません。当時、雅子さまや東宮家を叩きに叩いていた評論家たちが、今になって皆黙っているのは奇妙な現象であると言わざるを得ません。手のひらを返して「秋篠宮家廃嫡」すら主張できないほどの惨状です。所詮その程度の信念だったということでしょうか?雅子さまは、 様々なバッシングを浴び抜いて、とうとうこの五月に“新”皇后になられます。果たしてどの様な“象徴”となられるのか、もうすぐ明らかになります。

| 農林漁業::2015.10~ | 01:15 PM | comments (x) | trackback (x) |
2019.4.15 新技術の普及と銀行・産業界における本物のリーダーシップの必要性 (2019年4月17、18、19、20、22、23、24、26、27日追加)

    フクイチ3号基      2019.4.15東京新聞     2019.4.3東京新聞

(図の説明:左図は、フクイチ3号基の爆発直後と現在の画像で、中央の図は、使用済核燃料を敷地内で移動させる仕組みだ。また、右図は再稼働しているか否かを示す全国の原発の様子だが、フクイチの影響がなかった西日本で危機感が薄いため、最悪の事態にならないことを祈る)

(1)再エネの普及を妨げている原発
1)経団連の原発推進提言について
 原発メーカーである日立出身の中西氏を会長とする経団連が、*1-1のように、「①原発は脱炭素社会に不可欠なエネルギーであり、再稼働・新増設が必要」「②最長60年の既存原発の運転期間を延長し、審査等で停止していた期間を運転期間に含めない事実上の延長をすべき」「③政府のエネルギー基本計画は2030年度の原発発電割合を20~22%とする目標を掲げているのに、廃炉が進めば目標達成が困難」等々、世界に逆行した先見の明のない提言をしている。
 
 しかし、①は、二酸化炭素以外の公害を無視しており、②は会計・税務の常識から大きく外れている。何故なら、60年という運転期間は機械装置の中では異常に長く、例えば非常用発電機の法定耐用年数は15年だ。そのため、延長前の40年ならまあいいかという程度であるのに、原発事故後に耐用年数を20年延長して60年にするなど狂ったとしか思えない。さらに、稼働せずに停止していればさびつくため、稼働していないのは運転期間の延長理由にはならない。

 また、③については、再エネが急速に普及してコスト低減している中、政府の2030年度の原発発電割合20~22%という目標は根拠もなく高すぎる設定をしているため、この目標を達成するために原発の再稼働・新増設を進めるなど思考停止も甚だしい。

 さらに、使用済核燃料は行き場がなく、核燃料サイクルは破綻し、高レベル放射性廃棄物の処分場もなく、安全強化や事故対応でコストが高騰した原発は低コストでもないため、世界の潮流に逆らってまで原発を推進するのは無責任である。それより、経産省や経団連が取り組むべき課題は、再エネを活用して0エミッション社会を作り、その技術を世界に売り出すことだろう。

2)やっと核燃料の取り出しを始めたフクイチ
 東京電力は、事故後8年経過した2019年4月15日、*1-2のように、フクイチ3号機の原子炉建屋上部にある使用済核燃料プールから冷却保管中の核燃料を取り出し始めたそうだが、その間には屋根を取り外して強い放射線を拡散し続けていた時期もあり、その無神経さには呆れる。

 そして、取り出した核燃料は2年もかかって敷地内の共用プールに移すだけであり、クレーンなどの機器に不具合が相次ぐなど、日本の中でも低い技術で形だけの原発事故処理をして、危機感もなく遊んでいるように見える。

3)フクイチ近海の水産物について
 韓国だけでなく、被災地付近からの水産物の輸入を禁止している国は多いが、*1-3のように、日本政府は福島など8県からの全水産物の禁輸措置を行っている韓国をWTOに提訴し、WTO上級委員会が禁輸を容認する報告書を出した。

 私は、安全性の確保は自由貿易に優先するため、これらの禁輸措置を行っている国々を「科学的根拠が無い」としてWTOに提訴すること自体に見識が伺われず、それでは日本国民も困るのだが、取り出した使用済核燃料を敷地内の共用プールに移して冷やし続ける行為は、汚染水の流出防止や水産業の復興には何ら寄与しないことを付け加えなければならない。

(2)再生医療は時間をかければ犠牲者が増えること
1)再生医療の普及について ← 「焦らず安全重視で丁寧に」という言葉は意味不明
 *2-1に、「再生医療で病気やけがを治す試みが大学病院などで相次いでいるが、期待が大きい一方、実用化のペースが速すぎると危ぶむ声もある」と書かれている。しかし、遅ければその患者さんが治療不能になるため、「安全重視で焦らず丁寧に治療法を確立する」というのは、言葉だけが踊っている意味不明の文章だ。

 そもそも、医療は時間を争って治療すべきもので、ゆっくりすればひどくなったり、治らなくなったり、命を失ったりする。また、従来の治療法ではうまく治らず、それよりよい方法だと考えられるからこそ、新しい治療法である再生医療を開発しているのであるため、「速すぎるのがいけない」という主張は全くおかしい。

 また、海外には、脊髄損傷を本人の脂肪幹細胞で治療したと言っていた権威もおり、幹細胞を使うのは正解だが、日本のように早々にiPS細胞のみに特化したのは他の可能性を封じ込めたという意味で愚かな決定だった。

 そして大切なことは、一定数以上の治験をしなければ、安全性・有効性に関するデータの裏付けもとれないため、意味も分からずに変な論理で先進治療を妨害するのは止めた方がよい。そのため、メディアには各学会に行って内容を理解して取材し、正しい記事を書く能力のある記者を置いておいたらどうかと考える。

2)腎臓病の例で説明する
i) 人工透析について
 公立福生病院で、*2-2のように、本人の意思を十分確認した上で人工透析を中止し、44歳の女性が死亡したため、病院は「問題なし」としているものの、離脱判断が正しかったか否かが問題になった。人工透析はシャントを永久に作ったまま、1回4時間・週3回くらいのペースで透析しなければならないため、透析から離脱したくなるのもよくわかるが、現在はそれを我慢して人工透析で現状維持するか腎移植するかしかなく、提供される腎臓は少ないわけである。

ii) 腎臓の再生医療について
 そのような中、*2-3のように、ES細胞(胚性幹細胞)を使って、ラットの体内にマウスの腎臓を作ることに自然科学研究機構や東京大らのグループが成功し、ES細胞やiPS細胞などの多能性幹細胞から腎臓という複雑で大型の臓器の再生に世界で初めて成功したそうだ。これは、種の近さから言えば、ヒトの腎臓をサルの体内に作ったのと同じくらいだが、将来はヒトの臓器をブタなどの動物の体内で作ろうとする研究が進められている。

 このほか、*2-4のように、徳島大学の安部准教授らが、腎臓を形成する複数の細胞を混合する共培養により、生体に近い腎臓の特性を持った立体的なKLSの作製に成功し、KLSは24時間の培養ででき、低コスト・短期間での作製が可能だそうだ。

 私は、このやり方で純粋な本人の腎臓を作った方がうまくでき、慢性腎不全で新たに人工透析を受ける患者は日本国内で毎年4万人おり、世界ではもっと多いため、速やかに創薬すべき実用化の段階に入っていると思う。そして、これが実用化されれば、患者さんの苦しみが本当の意味で緩和されると同時に、現状維持するだけの苦しくて高額な医療費の削減ができるわけだが、それには資金が必要で、まずはクラウドファンディングや銀行貸付が考えられるわけである。

3)白血病の例でも説明する
 競泳女子の池江璃花子選手の白血病が公表された後、*3-1のように、骨髄移植のドナー(提供者)登録に関心が集まっているそうだが、ドナーになるのも大変で、適合しても移植が実現するのは6割程度だそうだ。
  
 私の東大の友人にも35歳で白血病になり、弟さんに骨髄を提供してもらって6カ月の入院治療後に回復した人がいるが、彼は「だんだん弟の体になっていくような気がする」と言っていた。血液を作る骨髄細胞の多くが弟さんの細胞に変わっているのだから、確かにそうなるのだろう。

 そのため、池江璃花子選手のように、身体能力が才能にあたる人は、他の人の細胞が入ると今まで通りの強い選手ではいられないかも知れない。そのため、*3-2のような自分の免疫細胞の攻撃力を高める「CAR―T細胞」を利用した新型がん免疫製剤や、自分の骨髄細胞の健康な部分を使って治療できれば一番よいと思われる。しかし、これらの治療も、早く実用化して価格を下げなければ、使えずに亡くなる人が増えるわけだ。

(3)ゲノム編集食品について
 ゲノム編集された生物を使った食品の扱いについて、*4-1のように、厚労省がパブリックコメントを実施し、有識者調査会がまとめた報告書は「開発中の大半のゲノム編集食品は安全性審査を必要とせず、国への情報提供だけで販売を認めてよい」とする内容で、安全管理の杜撰さが浮き彫りになった。
 
 そのゲノム編集は未知の部分が大きいからいけないというよりは、①害虫がつかなくなる遺伝子を入れたり ②筋肉が多くなる遺伝子を入れたりして、それが食べた人に与える影響は検証されていないことが問題なのである。また、害虫は、虫の方も進化して耐性ができるため、より強い遺伝子を入れなければならなくなり、それが自然界に拡散すれば環境にも悪影響を与える。

 そのため、少なくとも消費者が選択可能なように、ゲノム編集食品の表示は不可欠だ。また、報告書では、その生物にはない遺伝子を導入する場合は遺伝子組み換え食品と同様の安全性審査が必要と判断したそうだが、食べ物でない場合は検証の仕方が異なるし、遺伝子の入れ方によっても異なるため、薬と同様、個別にしっかり検証されていることを条件とすべきだ。

 このような中、*4-2のように、「ゲノム編集食品は、予防原則で安全徹底を」と日本農業新聞が書いているとおり、買う側の選ぶ権利を保障するための食品表示は不可欠であり、顧客ファーストの精神がなければ消費者に選ばれないため、どんな産業も成功しない。作る人も、それがわかっているのである。

(4)事業承継について


      2018.7.31産経新聞          事業承継税制の2018年改正

(図の説明:左図のように、中小企業の経営者も高齢化し、後継者がいないため廃業して技術が失われるケースが増えた。そのため、中央と右の図のように、2018年改正で10年間の特例として贈与税・相続税免除の要件が大幅に緩和された。これにより、後継者は複数でも親族外でも税制優遇を受けられるようになり、多様な形の事業承継が考えられるようになった)

 これまで、オーナー経営の中小企業の株式を後継者に移して代替わりしようとすると、オーナーの生前なら贈与税、死後なら相続税が発生し、事業承継する後継者に不利な点が多いため、黒字でも廃業して技術が廃れる事例が少なくなかった。

 そこで、*5-1のように、事業承継を円滑に進められるよう、政府が2018年度に「事業承継税制」を改正し、納税猶予割合が8割から全額になり、対象株式も発行済株式総数の3分の2から全てに拡大され、事業承継時の税負担をゼロにすることが可能になった。また、孫の代まで経営を引き継げば、猶予されていた税負担は免除されるそうだ。

 さらに、*5-2のように、個人事業主が事業承継しやすい環境をつくるため、子が事業を継ぐ時に土地・建物にかかる贈与税支払を猶予する「個人版事業承継税制」も作り、2025年までに70歳を超える約150万人の個人事業主が引退で廃業を迫られるのを防ごうとしている。その制度の対象になるのは、地方の旅館・町工場・代々続く酒蔵などの家族経営をしている個人事業主で、新制度では土地・建物・設備にかかる税金の支払いが猶予されることになるそうだ。

(5)地銀を含む銀行の役割と今後の展望
 金融庁が、*6-1のように、地方銀行の監督指針を見直して、収益が低迷する地銀の逃げ道を断って経営改革を促す方向へかじを切るそうだが、人口減少や高齢化には対応できるものの、金融緩和と超低金利が銀行の利益にマイナスであることは明らかだ。

 しかし、経済活動を行っている企業である以上、一つの「特効薬」があるわけではなく、顧客ファーストで考えた時に必要とされるサービスを安く提供しているか否かが分かれ目になる。

 もちろん、*6-2のように、店舗・人員配置の合理化などで生産性を上げ、高付加価値化することは必要だが、人口減少は産業構造改革を通じてビジネスチャンスになる上、上記(1)~(4)に関するサービスもまさにニーズであるため、次の有望企業(=融資先)を育てて将来の自己資本比率や収益力を改善する手段にできる筈だ。

 農林中央金庫は、*6-3のように、ベトナム、フィリピンの大手銀行と包括的な業務提携を結び、現地銀行ならではの情報やネットワークを生かして日本の農業法人等の販路開拓や食農関連企業の海外進出・事業拡大の支援を本格化させるそうだ。また、オランダの協同組合金融機関「ラボバンク」とも既に提携しており、農業法人やJAグループ、食品関連企業に対する現地情報の提供・ビジネスマッチング・現地での協調融資・企業の合併・買収(M&A)への助言、現地通貨の供給などを目指すそうだ。

 このうち、国際化・ビジネスマッチング・M&Aの助言・事業承継の相談などは、地方銀行もできなければならない時代になっている。

・・参考資料・・
<再エネの普及を妨げる原発>
*1-1:https://www.hokkaido-np.co.jp/article/295255 (北海道新聞 2019.4.11) 経団連の提言 身勝手な原発擁護策だ
 構造的な問題を度外視した身勝手な原発回帰論と言うほかない。経団連が電力政策に関する提言を2年ぶりに発表した。原発を脱炭素社会に不可欠なエネルギーとし、再稼働や新増設を求めた。最長60年となっている既存原発の運転期間の延長や、審査などで停止した期間を運転期間に含めないで運転できる期間を事実上延ばすことも新たに盛り込んだ。東京電力福島第1原発事故は、原発がひとたび事故を起こせば取り返しがつかない現実を突きつけた。その教訓を生かす方策が見当たらない。再生可能エネルギーが急速に普及する中、安全基準の強化でコストが高騰した原発は、もはや有望なビジネスでもない。国民の不安に応えようとせず、世界の潮流に逆らって原発を推進するのは理解に苦しむ。安倍晋三政権や経済産業省は再稼働推進の姿勢を取るが、経団連の提言に乗って原発回帰を加速させることがあってはならない。提言は、温室効果ガスを排出する火力発電への依存度が8割を超え、再生エネで賄うにも限界があり、原発が不可欠だとした。政府のエネルギー基本計画で2030年度の原発の発電割合を20~22%とする目標を掲げたことにも触れ、「廃炉が進めば達成が困難」と再稼働の必要性を訴えた。だが計画は原発依存度を低減すると明記している。目標達成のために再稼働するのは本末転倒だ。原発の大きな問題は使用済み核燃料の行き場がないことである。核燃料サイクルは事実上破綻し、高レベル放射性廃棄物の処分場選定も進んでいない。福島の事故原因は解明されておらず、廃炉のめども立たない。こうした負の側面をどう克服するか説明を尽くさず、再稼働や新増設を訴えるのは無責任である。提言を主導したのは原発メーカー、日立製作所出身の中西宏明会長だ。中西氏は「再稼働をどんどんやるべきだ」と発言し、原発と原爆が混同されて再稼働が進まないとの認識を示したこともある。日立は英国の原発建設計画を凍結したばかりで、原発ビジネスの行き詰まりを中西氏は分かっているはずだ。経団連会長の立場を利用して原発産業を守ろうとしているとの疑念も招きかねない。経団連が取り組むべきは、再生エネを有効活用して原発依存を脱する道筋を示すことだ。政治への発言力をそのためにこそ生かさなければならない。

*1-2:https://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2019041590135634.html (東京新聞 2019年4月15日) プール核燃料、搬出開始 福島第一事故8年 3号機566体
 東京電力は十五日、福島第一原発3号機の原子炉建屋上部にある使用済み核燃料プールから、冷却保管中の核燃料の取り出しを始めた。事故から八年、炉心溶融(メルトダウン)を起こした1~3号機でプールからの核燃料取り出しは初めて。現場は放射線量が高く人が長時間いることができない。ほとんどの作業が遠隔操作であるため、難航することが予想される。3号機プールには、使用済みと未使用の核燃料計五百六十六体を保管。使用済み核燃料は長期間、強い放射線と熱を発するため、水中で冷やしている。東電は四月中に未使用の七体を取り出し、六月下旬から作業を本格化させる方針。核燃料は敷地内の共用プールに移す。取り出しを終えるまでに約二年かかる見込み。作業は午前八時半すぎに開始。建屋から五百メートル離れた免震重要棟内の操作室で、作業員がモニターの画面を見ながら取り出し機器を操作した。燃料取扱機で核燃料を一体(長さ四・五メートル、十五センチ四方、重さ約二百五十キロ)ずつ持ち上げ、水中に置いた専用容器(重さ約四十六トン)に七体入れる。一体を入れるのに二、三時間かけ、この日は午後八時まで作業する。一体目は、一時間半ほどで容器に入れることができた。その後、容器をクレーンで三十メートル下の一階に下ろし、トレーラーで共用プールに運び出す予定。3号機の核燃料取り出しは当初、二〇一四年末にも始める計画だったが、高線量が作業の壁となった。外部に放射性物質が飛び散らないよう、建屋上部にドーム型カバーを設置。東電は昨年十一月に取り出しを始める計画を示したものの、クレーンなどの機器に不具合が相次ぎ、点検や部品交換のため延期していた。4号機では、一四年末にプールから核燃料千五百三十五体を取り出し済み。地震発生時は定期検査で停止中で原子炉内に核燃料がなく、炉心溶融を免れた。水素爆発で建屋上部が吹き飛んだが線量は低く人が中で作業して一年程度で終えた。
◆解説
 福島第一原発3号機のプールからの核燃料取り出し作業は、同じく炉心溶融が起きた1、2号機の核燃料取り出しの行方を左右する。いずれも建屋内の放射線量が高く、人が中で長時間作業できず、遠隔操作で進めざるを得ないからだ。3号機プール周辺の線量は毎時五四〇マイクロシーベルトで、二時間で一般人の年間被ばく線量限度に達するレベル。プールに残る細かな汚染がれきを、アーム型機器で取りながらの作業だ。クレーンなどでトラブルが起きれば、人が建屋内で修理しなければならない。これら未経験の作業をこなし、ノウハウを積む必要がある。東電は1、2号機のプール内の核燃料取り出しを二〇二三年度に始める計画を立てたが、両号機は3号機よりも線量が高く厄介だ。特に1号機は建屋最上階に大きながれきが積み重なり、原子炉格納容器上のコンクリート製の巨大なふたがずれ落ちている。ふたのずれを元に戻さなければ、3号機同様の取り出し機器は設置できない。1号機は三百九十二体、2号機は六百十五体の核燃料がプールに残る。これらを高台の共用プールに移すことはリスク軽減のため不可欠。ただ3号機の作業次第では、1、2号機の取り出し計画の大幅な見直しが迫られる。

*1-3:https://digital.asahi.com/articles/DA3S13975075.html (朝日新聞 2019年4月12日) 日本の水産物、禁輸容認 韓国が逆転勝訴 WTO上級委
 韓国が東京電力福島第一原発事故の被災地などから水産物の輸入を全て禁止していることについて、世界貿易機関(WTO)の紛争を処理する上級委員会は11日、判決に当たる報告書を公表した。韓国に是正を勧告した第一審を大幅に修正して禁輸を容認し、事実上、日本の逆転敗訴となった。これで韓国の禁輸はしばらく続くとみられる。勝訴を追い風にほかの国・地域にも輸入規制の緩和を求める予定だった日本の戦略が狂う可能性が高い。日本政府関係者によると、上級委の報告書は、第一審の紛争処理小委員会による判断の主要部分が「誤りだった」と認定。その上で、福島など8県の全水産物の禁輸を「恣意(しい)的で不当な差別」として是正を求めた判断の主要部分を覆したという。上級委が第一審の判断を変えるのは異例だ。WTOの紛争処理は二審制のため、これで禁輸を容認したWTOの判断が確定するとみられる。ある政府関係者は「日本にとって残念な結果」と話した。韓国は2013年9月、同原発から汚染水が流出しているとして輸入規制を強化した。青森、岩手、宮城、福島、茨城、栃木、群馬、千葉の8県の水産物については輸入禁止の対象を一部から全てに拡大した。これに対し日本は15年8月、「科学的な根拠が無い規制だ」とWTOに提訴。18年2月、紛争処理小委員会では日本が勝訴したが、韓国が「国民の健康保護と安全のため」として上級委に上訴していた。今回の上級委の報告書は30日以内に正式に採択される見込みだ。農林水産省によると、原発事故後、一時54カ国・地域が日本産食品の輸入を規制した。撤廃が進む一方、いまも23カ国・地域で規制が続く。政府は、規制緩和の見通しを示さず、逆に規制を大幅に強化した韓国を提訴したが、ほかは訴えていない。政府は、今回の上級委の報告で勝訴を確定した上で、ほかの国・地域とも規制撤廃に向けた交渉を加速させていく戦略を描いていた。
■韓国による日本食品輸入規制をめぐる動き
<2011年3月> 東日本大震災で東京電力福島第一原子力発電所の事故が発生
<13年5月ごろ> 原発事故を理由とした輸入規制が韓国を含む54カ国・地域に拡大
<9月> 韓国が輸入規制を強化。8県産の全水産物を禁止に
<15年6月> 日韓の二国間協議が平行線に
<8月> 日本がWTOに提訴
<18年2月> WTO紛争処理小委員会(一審)で、日本が勝訴
<4月> 韓国が上級委員会(二審)に上訴
<19年4月> 上級委員会が報告書を公表

<再生医療は時間をかければ犠牲者が増えること>
*2-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190220&ng=DGKKZO41468640Z10C19A2EA1000 (日経新聞社説 2019年2月20日) 再生医療の普及焦らず丁寧に
 iPS細胞などを使う再生医療で病気やけがを治す試みが大学病院などで相次いでいる。期待が大きい一方、実用化のペースが速すぎると危ぶむ声もある。医師も患者も焦ることなく安全重視で丁寧に治療法を確立してほしい。厚生労働省の専門部会は18日、他人のiPS細胞をもとにした神経細胞で脊髄損傷の患者を治療する計画を、承認した。慶応大学が世界で初めて実施する。iPS細胞による再生医療は、2018年に京都大学のパーキンソン病治療や、大阪大学の心臓病治療の計画も認められた。理化学研究所などは神戸市で実施した目の難病のiPS細胞治療を、全国の病院に広げる計画だ。他の細胞を使う再生医療も実用化が進んでいる。骨髄液から得た細胞による脊髄損傷治療や、足の筋肉の細胞をもとにした心臓病治療の薬が、既に医薬品医療機器総合機構から「条件付き・期限付き承認」を取得している。この制度では、少人数の患者で安全性と一定の効果を確認した段階で市販を認め、その後は使いながら効果を確かめていく。量産が難しい細胞を使う薬の承認に適しており、新しい治療法を素早く患者に届けられる利点がある。今後、再生医療は条件付き・期限付き承認が主流になろう。ただ海外からは、臨床応用を急ぎすぎではないか、との声も出ている。英科学誌「ネイチャー」は最近、同制度による承認はデータの裏付けが不十分で慎重さに欠ける、とする批判記事を載せた。実際には、市販から数年間すべての利用データを集めて安全性と有効性を詳しく調べ、結果を公表する仕組みである。厚労省や開発者は説明を尽くし、理解を促していかなくてはならない。過去の臓器移植や遺伝子治療の例からもうかがえるように、いったん不信感が広がると先端医療が再び受け入れられるのは容易でない。再生医療が普及期に向かう今こそ、多くの人の納得が得られるよう最大限の努力が必要だ。

<腎臓病について>
*2-2:https://digital.asahi.com/articles/ASM3X53TKM3XULBJ00K.html?iref=comtop_8_03 (朝日新聞 2019年3月28日) 透析中止で死亡、病院「問題なし」 判断は正しかったか
 昨年、当時44歳の女性が人工透析をやめ、公立福生(ふっさ)病院(東京都福生市)で亡くなった。病院は28日、初めて報道各社の取材に応じ、女性の意思を十分確認した上で中止し、手続きなどに問題はなかったとの認識を示した。患者が透析中止を希望した場合、医療者はどのように対応すべきか。今回の件をふまえて学会で議論している。治療にあたった外科医(50)と松山健院長らが女性の治療経過を説明した。説明によると、糖尿病による腎不全や心筋梗塞(こうそく)などを起こし、人工透析をしていた女性は、左腕につくった透析用の血液の出入り口(シャント)の状態が悪化。血管の状態も悪く、新しくシャントをつくるのは難しい状態だった。昨年8月9日、女性はシャントが閉塞(へいそく)し、同病院を受診。外科医は首周辺に管を通す透析治療を提案したが、女性は「シャントがだめだったら透析をやめようと思っていた」と話し、拒否した。女性は透析の針を刺す際の痛みがつらいなどと語ったという。外科医は透析をやめると2週間くらいで死に至ると説明、女性は「よくわかっている」と答えたという。女性と女性の夫、外科医と看護師、ソーシャルワーカーを交えて再度話し合ったが、女性の意思は変わらず、夫も女性に同意した。外科医は透析からの「離脱証明書」に女性に署名してもらった。翌10日も、看護師、センターの内科医、ソーシャルワーカーが女性と夫に確認したが、意思は固かった。女性は14日に呼吸が苦しくなり入院。16日未明、呼吸の苦しさや体の痛みを訴え、看護師に「こんなに苦しいなら透析した方がいい。撤回する」と発言したことが記録に残っている。しかし、16日昼前に女性の症状が落ち着き、外科医が呼吸の苦しさや体の痛みが軽減されればよいか、それとも透析の再開を望むかと尋ねると、「苦しさが取れればいい」と答えたという。外科医は女性の息子2人にも説明して理解を得たうえで鎮静剤を増やし、女性は同夕に亡くなった。
●外科医「特異なケースだが丁寧に対応」
 外科医は「透析を続けるための措置を拒否したために透析が出来なくなった特異なケースだが、丁寧に対応し、出来ることはやらせてもらった」と述べた。今月6日に病院に立ち入り検査をした東京都は当初、外科医が透析をやめる選択肢を示した、と説明していた。この点について外科医は「中止の選択肢は示していない」と否定した。透析中止の判断をめぐり、都は、日本透析医学会の提言を踏まえて第三者も入る倫理委員会に諮るべきだったのに行わなかったとして、病院を口頭指導した。しかし、松山院長は「病気の進行や患者の透析離脱の強い希望などがあった。学会の提言には違反していない」と述べ、対応に問題はなかったとした。都の調べで、同病院では女性のほかに透析を始めなかったり、中止したりした患者20人が亡くなったことが判明している。病院側は「確認が取れていない」として説明しなかった。病院側の弁護士は、取材対応が問題の表面化から3週間以上後になったことについて、学会の調査や見解を待っていたため、などと説明した。都のほか、日本透析医学会と日本腎臓学会も調査を進めており、近く指導したり、見解を示したりする予定だ。
●「つらさ和らげる努力」必要
 日本透析医学会は2014年、どのような場合に透析を中止するかについての提言を示した。中止の検討対象を、がんを併発するなど終末期の患者に限定。終末期でない患者が強く中止を望む場合は、透析の効果を丁寧に説明し、それでも意思が変わらなければ判断を尊重するとしている。また、患者の意思が変われば透析を始めたり、再開したりすることも盛り込んだ。木澤義之・神戸大特命教授(緩和支持治療科)は、「病院側の説明では、本人の意向を何度も確認し、誠実に対応した印象だ」と話す。その上で、透析中止の判断後の重要性を指摘する。「がん以外の他の病気では家族への対応が不十分な場合も少なくない。今回、適切な苦痛緩和や家族の十分なケアが行われたのかという視点での検討も必要だ」と話す。JCHO(ジェイコー)千葉病院(千葉市)の室谷典義院長も「つらさを和らげる努力をどれだけしたかが大切だ」と指摘する。「つらさから逃れるために鎮静剤を使って結果的に患者が亡くなることはあるが、末期腎不全の患者の苦痛は透析をすることで和らぐことも少なくない」と話す。人工透析は週2~3回、1回で4~5時間かかり、身体的にも精神的にも負担が大きい。少数だが、脚の血管が詰まり透析の度に激痛が走る例もある。透析開始年齢が平均約70歳と高齢化して合併症を持つ人も少なくない。このため、透析をしたくない、やめたいという患者もいる。だが、多くの場合透析をすれば、何年も生きることができる。藤田医科大の稲熊大城教授(腎臓内科)は「心臓などに問題がなければ、透析を始めれば、その時点での平均余命の半分は生きられる」と説明する。70歳男性なら7年超にあたる。透析をしながら旅行やスポーツなどを楽しむ患者も少なくない。透析医学会は25日、透析をしているだけでは終末期に含まないとの見解を示した。患者の命にかかわる透析の中止などについては、慎重な検討が必要だ。清水哲郎・岩手保健医療大学長(臨床倫理学)は「方針決定には本人の意思の尊重が大前提だが、医学や生活への影響についての知識が不十分なままでの意思決定は必ずしも本人にとって最善とは限らない」と話す。患者が透析で余命が何年も見込めるのに透析を望まない場合や、透析の実態や費用などについて誤解している場合は、医療従事者は透析の効果やリスク、公的助成などについて十分に患者に説明し、理解してもらうことが欠かせない。清水さんは「医療従事者も含めて本人やチーム全体が合意に至らなければ、本人の人生観や価値観を踏まえた上で、何度も話し合いを繰り返すことが大切だ」と強調する。
●透析治療をめぐる女性患者(44)の経緯
1998年      糖尿病の指摘を受ける。その後、治療を始める
2007年      心筋梗塞(こうそく)で、東京都内の病院で治療
2015年12月   透析治療で通院していたクリニックの紹介で、福生病院を初めて受診
2018年 8月9日 透析に使うシャントが詰まり、福生病院を受診。女性は透析治療をしない意思を病院に告げる
       14日 福生病院に入院
       16日 女性は苦しくなり透析再開を希望。病院側は、女性が落ち着いたときに改めて意思を確認し、透析を再開しないことを確認。女性は夕方に死亡
2019年 3月6日 東京都が病院に立ち入り検査を実施
※福生病院の説明をもとに作成

*2-3:https://digital.asahi.com/articles/ASM266X2RM26UBQU01B.html (朝日新聞 2019年2月7日) ラットの体内にマウスの腎臓 ヒトの再生医療応用に期待
 ES細胞(胚(はい)性幹細胞)を使い、ラットの体内に別の種であるマウスの腎臓を作ることに、自然科学研究機構や東京大らのグループが成功した。将来的に、移植用のヒトの臓器を動物の体内で作る研究に応用したいという。研究成果は6日、ネイチャーコミュニケーションズに掲載された。自然科学研究機構生理学研究所の平林真澄准教授らのグループは、腎臓を作るのに不可欠な「Sall1」という遺伝子をなくした状態にしたラットの受精卵をつくり、そこにマウスのES細胞を注入。生まれたラットの体内に別の種であるマウスの細胞に由来する腎臓を作った。この遺伝子は他の臓器が機能するのにも必要なため、生まれたラットの多くは数時間しか生きられなかったという。今回のように、本来臓器ができる場所に空きを作り、ES細胞やiPS細胞などの多能性幹細胞由来の臓器を作る方法を応用し、将来的にヒトの臓器をブタなどの動物の体内で作ろうとする研究が進められている。今回の成果は「腎臓という大型主要臓器の再生に、世界で初めて成功した」としている。同グループは、膵臓(すいぞう)がないラットの体内でマウスの膵臓を作り、糖尿病にしたマウスに移植することに成功している。腎臓は血液中の老廃物を濾過(ろか)し、体の外に出す機能を持つ。慢性腎不全で透析治療が必要になった際、根本的な治療は腎移植だが、ドナー不足のため移植を受けられる患者は希望者の1~2%という。平林さんは「将来的にこの方法でヒトの腎臓を作り、移植で実用できる可能性を示せた」と話す。

*2-4:https://newswitch.jp/p/15569 (ニュースイッチ 2018年12月10日) “ミニ腎臓”作製成功、実用化へクラウドファンディング
 徳島大学の安部秀斉准教授らは、腎臓を形成する複数の細胞を混合する共培養により、生体に近い腎臓組織の特性を持った立体的な組織様構造体「KLS」の作製に成功した。KLSは24時間の培養で作製可能で、尿を濾過する糸球体と糸球体を保護する細胞「ポドサイト」も再現していた。均質なミニ腎臓を低コストかつ短期間で作製が可能になり、創薬への活用が期待される。実用化に向け、不特定多数から資金を集めるクラウドファンディング(CF)を通じて資金調達する。こうしたバイオ系の創薬技術でCFを実施するのは珍しいという。KLSは、腎臓の細胞3―6種類を3次元的に共培養して作製する。培養中に細胞は自然に集まって丸い構造をとる。作製したKLSは、糸球体とそれを保護する重要な組織であるポドサイトを有していた。また、発現している遺伝子を調べると生体内の腎臓の細胞と同様であった。KLSをマウスの皮下に移植すると血管の管腔構造ができたことから、生体内に近い培養条件でKLSを作製すれば血管の構造も作れる可能性も示された。慢性腎不全で新たに人工透析を受ける患者は日本国内で毎年4万人と言われる。高齢化に伴って腎機能は低下する傾向にあり、透析に移行する前に使える治療薬の開発が求められている。現在、創薬には高速で化合物の評価ができる「ハイスループット」という手法が用いられるが、これには実験用の均質な細胞や組織が大量に必要となる。KLSは分化細胞から作るため品質にばらつきが少なく、わずか24時間でできるため低コストで大量に製造できる。CFを通じて調達した資金はKLSの有用性を示すデータを取得するための実験や、KLSの実用化に向けたベンチャー設立に充てる。国の補助金の獲得を待たず、実用化を加速する。目標金額は数百万円規模と低めに設定する。多くの人に技術を認知してもらい、実用化へのアイデアを募る狙いもある。

<白血病の治療>
*3-1:http://www.tokyo-np.co.jp/article/living/life/201902/CK2019021902000181.html (東京新聞 2019年2月19日) 池江選手白血病公表 骨髄移植ドナーに関心 適合でも実現6割
 競泳女子の池江璃花子選手の白血病公表後、骨髄移植のドナー(提供者)登録に関心が集まっている。ただ、ドナーの辞退などもあり移植が実現するのは、六割程度。ドナーになれるのは五十五歳までで、若い世代を増やすことも急務となっている。日本骨髄バンク(東京)によると、登録できるのは、十八~五十四歳の健康な人(提供は二十~五十五歳)で、体重制限もある。献血ルームや保健所などで受け付け、約二ミリリットルを採血。後日、型が患者と適合すると、候補者に選ばれる。健康の確認検査などで計四回医療機関に行き、家族同席で最終同意書に署名した後は撤回できない。骨髄は全身麻酔で採取する。採取部位の痛みや発熱、まれにしびれなどの合併症が出ることがあり、最高一億円の補償制度がある。二〇一七年三月までに実施された二万二百六十六件のうち、入通院して保険金が支払われたケースは百七十一件(0・8%)。いずれも回復している。移植を待つ患者は昨年末現在、二千九百三十人。登録者は約四十九万人で、適合率は95%になったが、移植できたのは57%。健康上の理由や、仕事などで辞退したり、連絡が取れなかったりするドナーも少なくない。登録者の半数が「定年」に近い四十~五十代で、ドナー不足は続いている。
<骨髄移植> 白血病などの患者に、ドナーの骨髄液を点滴し、造血機能を回復させる治療。白血球の型はきょうだい間で4分の1、他人では数百から数万分の1の確率で一致するとされる。池江選手は骨髄移植が必要なケースかは、明らかになっていない。
◆命の重みを知り、大きな達成感 「体験に感謝」
 東京都の田中紀子さん(54)=写真=は7年前、骨髄を提供した。1995年にドナー登録し、忘れかけていた2012年夏。日本骨髄バンクから、白血球の型が一致する患者が見つかったと連絡を受けた。家族同席で弁護士から全身麻酔による事故の確率や採取後の痛みなどについて詳しく説明され、同意書に署名。「もうキャンセルできない」と念を押された。ところが、入院前日に、療養中の義父が死去。葬儀の準備で慌ただしい中、義理の母や姉が「生きている人を助けることを優先して」と背中を押してくれた。入院翌日に採取。マスクを着けられ、再び名前を呼ばれたときには終わっていた。採取した腰の部分は内出血で変色し、強く痛んだが、1週間で治まった。体験を通じ、命の重みを知り、大きな達成感を得た。知らないだれかを救うために仕事を調整し、家族を説得し、義父の葬式に出ないことを決めた。「困難に挑戦する自分を好きになれた。ドナーは患者さんのためだけでなく、むしろ自分のためにある」。提供相手は「九州在住の男性」とだけ知らされ、バンクを通じ、家族から感謝の手紙が届いた。若い時期にギャンブル依存の問題を抱えていた田中さんは今、「ギャンブル依存症問題を考える会」(東京)の代表として患者や家族の支援に飛び回る。その原点は「ドナー体験での達成感」という。9月でドナーの年齢上限を迎える。「夫や子どもがもし、『ドナーになる』と言ったら動揺すると思う。でも、反対はしない。自分はドナーをさせてもらい、本当に感謝しているから」

*3-2:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/340090 (佐賀新聞 2019年2月20日) 新型がん免疫製剤を了承、人工遺伝子で白血病治療
 厚生労働省の専門部会は20日、一部の白血病を治療する新型の細胞製剤「キムリア」の製造販売を了承した。人工遺伝子で患者の免疫細胞の攻撃力を高める「CAR―T細胞」を利用した国内初の治療法で、3月にも正式承認され、5月にも公的医療保険が適用される見通し。臨床試験(治験)で既存の治療法が効かない患者にも効果が得られたことから注目を集めている。
欧米では既に承認されているが、米国では1回の治療が5千万円以上に設定され、高額な費用が問題となっている。日本でも今後、価格が決定されるが、高額薬として知られるがん治療薬「オプジーボ」よりも高くなる可能性がある。

<ゲノム編集食品>
*4-1:https://www.kobe-np.co.jp/column/shasetsu/201902/0012083416.shtml (神戸新聞 2019/2/21) ゲノム編集食品/国の方針は拙速に過ぎる
 ゲノム編集された生物を使った食品の扱いについて、厚生労働省がパブリックコメントを実施している。有識者調査会が取りまとめた報告書は、開発中の大半のゲノム編集食品は安全性審査を必要とせず、国への情報提供だけで販売を認めてよいとする内容だ。厚労省は本年度中に結論をまとめ、具体的な仕組みをつくる方針を示しているが、議論が不十分で拙速に過ぎる。ゲノム編集はまだ未知の部分が大きい。なにより人が食べた場合の影響はどうなのか。審査を求める消費者団体などは、調査会の検討がわずか3カ月だったことを批判している。ゲノム編集食品の表示が要らない仕組みになれば、消費者に情報が伝わらず、食べる人の知る権利、選ぶ権利を奪うことになりかねない。ゲノム編集食品は、遺伝子を切断する酵素を使って効率よく改変できる。従来の遺伝子組み換え技術に比べて開発期間が大幅に短縮される。肉付きのいいマダイや収量の多いイネなどが開発されている。報告書では、その生物にない遺伝子を導入する場合は、遺伝子組み換え食品と同様の安全性審査が必要と判断した。一方、特定の遺伝子を壊した食品は審査を不要とした。国への情報提供は問題発生時の対応などのためで、法的な義務化はしない。従来の品種改良との違いがあまりないとの推論が根拠だが、そう言い切れるのか。編集された細胞ががん化する恐れが高まるなど、新たな報告や知見がもたらされている。一度に多くの遺伝子を改変した際のリスクも不透明だ。自然界に拡散した場合、悪影響が判明しても取り返しがつかない。審査も表示もない緩い規制の下で生産が広がり、予期せぬ問題が起きたら、誰がどう責任をとるのか。影響が予測しきれない新しい技術である。人の健康と環境に関わる問題として、安全を最優先に考えるべきだ。欧州連合(EU)では、予防原則の立場から遺伝子組み換え作物として規制すべきとの司法判断が下されている。各国の状況も参考にしながら、国会でもしっかりと時間をかけて議論する必要がある。

*4-2:https://www.agrinews.co.jp/p47358.html (日本農業新聞 2019年4月13日) ゲノム編集食品 予防原則で安全徹底を
 生物の遺伝子を効率的に改変できるゲノム編集。この技術を使って品種改良した農水産物の多くは厳格な安全性審査をせずに、今夏にも食品として販売できる見通しとなった。安全性について不安視する消費者は少なくない。買う側の選ぶ権利を保障するためにも、食品表示は不可欠である。ゲノム編集は新しい技術で、もともとある特性を消すため遺伝子の一部を削ったり、他の生物の遺伝子を導入したりする。目的の遺伝子をピンポイントで改変でき、開発期間を大幅に短くできるのが特徴。交配による育種や遺伝子組み換え(GM)技術に比べて簡単で間違いが少なく、汎用(はんよう)性がある。農業分野でも多収性の稲や日持ちするトマトなどの研究が進んでいる。農水省は2019年度から5年間で、ゲノム編集作物を五つ以上開発する「次世代バイオ農業創造プロジェクト」を始めた。19年度当初予算で1億100万円を計上。需要が見込め、収益性の高い品種をつくるのが目的だ。開発に取り組む研究機関を公募する。厚生労働省は報告書を3月にまとめ、開発者側は国に届け出れば販売してもよいとした。ただ届け出に法的な義務はなく、制度の実効性に疑問を投げ掛ける向きもある。安全性の審査が必要なのは新しい遺伝子を追加する場合だけ。もともとの遺伝子を取り除くなど改変する場合は不要とした。「従来の品種改良や自然界で起きる変化と区別がつかない」(同省)からだ。この報告書案について一般に意見を募集したところ、約700件が集まった。大半が「長期的な検証をしてから導入すべきだ」「自然界で起きる突然変異と同じとは思えない」など、安全性を懸念する声だった。この声は無視できない。「遺伝子」という命に関わる新技術の開発で賛否が分かれるのはやむを得ない。問題は、このような国民生活に影響を及ぼす重要課題について議論が不十分な上、1年足らずで方針をまとめてしまう拙速さにある。これは主要農作物種子法(種子法)が廃止されたのと同じ構図だ。作る側、食べる側の不安に応えようとしない国の姿勢が問われている。日本と同様、米国も技術開発や商品化の速度に法整備が追い付かない中、欧州司法裁判所は「自然には発生しない方法で生物の遺伝子を改変して得られた生物はGMに該当する」と判断した。疑わしいものは規制するという予防原則の立場を崩していない。生産現場への影響についての実証も十分とはいえない。技術を通して多国籍企業による種子の独占、支配が進むのではないかという見方もある。食の安全についてどう考えるか。いま一度、議論をする必要がある。その上で、消費者が食べる、食べないを選択できる表示を求めたい。これは国民の権利である。

<事業承継について>
*5-1:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO34657360X20C18A8EA2000/ (日経新聞 2018/8/27) 事業承継税制とは 孫まで円滑に引き継ぎ
▼事業承継税制 オーナー経営の中小企業の株式を後継者に移して代替わりをしようとすると、オーナーの生前なら贈与税、死後なら相続税が発生する。日本の産業を支える中小企業の技術・ノウハウが失われるのを防ぐには事業承継を円滑に進める必要があり、政府は2018年度に「事業承継税制」を大きく改正した。改正では納税が猶予される割合が8割から全額になり、対象となる株式も発行総数の3分の2から全てに拡大された。承継時点での税負担をゼロにすることが可能になっている。孫の代まで経営を引き継げば、猶予されていた税負担は免除される。優遇を受けるには都道府県知事に承継計画を提出しなければならないが、改正前に年500件ほどだった利用件数は大幅に増えると見込まれている。一方、法人を設立せず商売をしている個人事業主は長らく、商売用の土地の相続時に大幅に税額を減らす「小規模宅地等の特例」を活用してきた。ただ店舗に使う建物や設備は優遇対象外だったため、個人事業主でつくる納税者団体などが、対象に含めるよう求めてきた経緯がある。

*5-2:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO38283570Y8A121C1MM8000/ (日経新聞 2018/11/28) 個人事業主の事業承継支援へ税優遇 政府・与党検討
 個人事業主が事業承継をしやすい環境をつくるため、政府・与党は新たな税優遇制度を作る方針を固めた。子供が事業を継ぐとき、土地や建物にかかる贈与税などの支払いを猶予する「個人版事業承継税制」を作る。2025年までに70歳を超える個人事業主は約150万人いるとされる。引退期を迎えた個人事業主が税金を理由に廃業を迫られるのを防ぐ狙いだ。与党の税制調査会で制度の詳しい設計を議論したうえで、2019年度の税制改正大綱に新制度の創設方針を盛り込む方向だ。新制度の主な対象になるのは、地方の旅館や町工場、代々続く酒蔵などを家族経営しているような個人事業主。土地や建物などを含めて跡継ぎに事業承継する際は、控除を超える分に生前なら贈与税、死後なら相続税がかかる。政府・与党が検討している新制度は、土地や建物、設備にかかる税金の支払いを猶予する仕組み。10年程度の時限的な制度にすることで調整している。中小企業庁によると、個人事業主全体のうち相続税が実際にかかりそうなのは1割程度を占める。新制度が悪質な節税に利用されることを防ぐ対策も同時に設ける。個人事業主が事前に事業承継計画を都道府県に提出し、認可を受けることを条件にする。法人と違い、個人事業主は私用と事業用の資産の線引きが曖昧。資産の切り分けを第三者が確認することや、跡継ぎが承継後すぐに事業をやめないことを義務づける案を検討する。税優遇が過剰にならないようにもする。個人の土地の相続では今も「小規模宅地特例」と呼ばれる税優遇制度がある。土地の価格を8割減額して相続税を減らせる仕組みで、新制度の創設後はこの特例は税優遇を受けにくくする。現在は事業用の土地を買うために借金をした場合に私用の資産と相殺して節税したり、跡継ぎでない親族まで税優遇のメリットを受けたりできる。政府・与党は条件の厳格化でこうした問題点を解消し、個人事業主への税優遇が過剰にならないよう配慮する方針だ。

<地銀の役割と今後の展望>
*6-1:http://qbiz.jp/article/150743/1/ (西日本新聞 2019年3月23日) 地銀引き締め、再編頼み 金融庁監視強化 改善不十分で退場も 地元密着合理化に限界
 金融庁が地方銀行の監督指針を見直し、収益が低迷する地銀の逃げ道を断って経営改革を促す方向へかじを切る。人口減少や超低金利という「構造不況」が続く中で、特効薬のような事業戦略は見当たらない。圧力が行き過ぎれば、店舗の統廃合など無理なリストラで金融サービスが損なわれ、地域経済に禍根を残す懸念もはらんでいる。店舗などの減損処理で計約6800億円を損失計上−。みずほフィナンシャルグループ(FG)が6日に発表した2019年3月期連結業績予想の下方修正を、ある地銀幹部は「衝撃だった」と振り返る。頭をよぎったのは昨年5月、金融庁から業務改善命令を受け、収益力の抜本改革を迫られた福島銀行の事例だ。福島銀は収益力が下がった店舗の評価を低く見直す減損処理などにより、18年3月期決算で7年ぶりの赤字に転落した。処理の背景には、金融庁検査による厳しい追い込みがあったとささやかれる。「みずほFGと同様の損失処理を迫られれば、いきなり赤字に陥りかねない」。別の地銀幹部も首筋が寒くなった。金融庁は昨年、地銀が1行しかなくても単独での存続が難しい地域が青森、富山、島根など23県あるとの試算を公表。収益改善が見込めない地銀の市場からの「退出」に関する制度見直しにまで言及した。「環境を言い訳にする経営者は失格だ」。幹部は監督指針見直しの先に地銀の「廃業」さえも見据えている。昨年4月以降、新潟県や三重県、関西圏で地銀再編が進んだ。業界の耳目を集めたふくおかフィナンシャルグループと長崎県の十八銀行の再編は、公正取引委員会の審査を巡り混迷したが、ようやく来月実現する。政府は経営統合基準を緩和してさらに再編を促す構えだが、もはや再編相手をつかまえる体力すらないほどに弱体化した地銀もある。店舗や人員配置を大胆に見直して経営改革を急ぐメガバンクとは違い、過疎地も含めてネットワークを張り巡らせ、地域経済や雇用を支える役割を担う地銀の多くは、激しいリストラには二の足を踏まざるを得ないのが実情だ。金融庁が業務改善命令を連発すれば、経営トップの辞任ドミノが起こる可能性があるが、再建が進む保証はない。
*金融庁検査:金融機関が健全で適切な業務運営をしているかを金融庁と地方の財務局が協力して調べる仕組み。大手銀行や地方銀行、信用金庫などが対象。本支店への立ち入りに加え、書類提出や聞き取りなどを組み合わせる。内部管理体制や法令違反の有無を厳しくチェックする。人口減少に伴う地銀の存続可能性も重視している。

*6-2:http://qbiz.jp/article/150744/1/ (西日本新聞 2019年3月23日) 金融庁、地銀の監視強化 収益低迷に改善命令 月内にも指針
 金融庁は地方銀行など地域金融機関への監督指針を見直し、監視を強化する。「自己資本比率」の水準など財務の健全性を重視する考え方から、将来の収益力など事業の「存続可能性」の向上に軸足を移す。貸し出しなどの本業が赤字で業績が低迷する地銀に対し、店舗や人員の縮小などの速やかな改革を求める。月内にも公表する。今夏、問題があるとみられる地銀への検査に着手する見通しで、対応が遅れれば業務改善命令を出し、経営責任を明確化する。地銀の経営環境は、人口減少や日銀の大規模金融緩和に伴う超低金利の長期化で、収益力低下に歯止めがかからない。金融庁は厳しい経営環境でも存続できるビジネスモデルを構築するよう求めている。従来の監督指針では、不良債権問題を念頭に現在の自己資本比率が重要な指標だったが、新指針では将来の自己資本比率や収益力に着目する。自己資本比率が財務の健全性を示す国内基準の4%を上回っていても、本業で赤字を出し続けている地銀には、経営の改善を求める。地域の人口や企業数の増減、融資先の動向について分析し、経営陣から経営計画などについて聞き取り調査を行った後、立ち入り検査の必要性を検討する。金融庁が2018年3月期決算を分析したところ、全国の地銀106行のうち約半数の54行が本業で赤字になり、うち23行は5期以上連続で赤字だった。ある金融庁関係者は「日銀の超低金利政策の終わりは見通せない。経営者は背水の陣に立つ覚悟で改革に挑むべきだ」と強調する。金融庁は指針の見直しを前に一部の地銀に立ち入り検査を実施。福島銀行(福島市)に収益力強化を求める業務改善命令を出したほか、島根銀行(松江市)への対応も検討している。
   ◇   ◇
●生き残り模索、九州でも 
 九州の地方銀行も収益環境は厳しさを増している。2018年9月中間決算では九州の18行・グループ中、13行・グループが最終減益となった。各行とも店舗、人員縮減によるコスト削減や業務効率化に取り組むが、抜本的な改善は難しい。今回の指針見直しは、地銀に再編を迫る「布石」になる可能性もある。西日本シティ銀行(福岡市)は昨年1月、業務見直しと効率化を図る「業務革新室」を設置した。20年までに業務効率化などで事務量の3割を削減、現金自動支払機(ATM)の2割に当たる300台を減らすという。ふくおかフィナンシャルグループ(FFG、福岡市)傘下の熊本銀行(熊本市)は無人の4店舗を導入。佐賀銀行(佐賀市)も福岡県内の7支店1事業所を今月中に移転統合する。ただ店舗削減などは一時的な対策で、将来的な業績向上につながるとは言えない。4月のFFGと十八銀行(長崎市)の経営統合後も、地銀再編の動きが続くとの見方は根強い。九州フィナンシャルグループ(熊本市)社長で鹿児島銀行頭取の上村基宏氏は昨年末のインタビューで「単独で生き残れる状況ではない。結論の先送りはその分後れを取ることになる」と指摘した。

*6-3:https://www.agrinews.co.jp/p47146.html (日本農業新聞 2019年3月23日) アジア2銀行と提携 輸出や海外進出支援 農林中金
 農林中央金庫は22日、ベトナムとフィリピンの大手銀行と包括的な業務提携を結んだと発表した。現地銀行ならではの情報やネットワークを生かし、農林中金として日本の農業法人などの販路開拓や、日本の食農関連企業の海外進出などを支援する。他のアジアにある複数の国の銀行とも同様の連携を始め、食農分野での海外進出・事業拡大への支援を本格化させる。農林中金は2019年度から5カ年の次期中期計画で、国内の農家所得増大などにつなげるため、アジアの食農バンクとしての機能を発揮し、アジアの成長を取り込む方向を示している。今回提携を結んだのは、ベトナム投資開発銀行とフィリピンのBDOユニバンク。農林中金は、オランダの協同組合金融機関「ラボバンク」とも既に提携。ラボバンクもアジアの情報は持っているが、現地銀行と連携することで、より地域のきめ細かい情報やネットワークが活用できる。具体的には、農業法人やJAグループ、食品関連企業に対し、現地情報の提供やビジネスマッチング、現地での協調融資、企業の合併・買収(M&A)への助言、現地通貨の供給などを目指す。例えば、農業法人などが日本産農産物の販路を探している場合は、提携銀行からの情報やネットワークを生かして売り先を見つけ、商流を構築することなどが考えられる。輸出ではJA全農とも連携。農業生産資材企業の販路開拓のための出資や企業買収、低温のまま輸送するコールドチェーン構築のための現地企業との連携への支援なども想定できるという。こうした情報を生かし、各種サービス提供を進めるため、農林中金は4月から海外展開を支援するための専門チームを立ち上げ。シンガポール支店の人員も増強する。農林中金は「現地からの日本の農業や食品に対する関心は高い。農業法人に加え、食品企業を支援することで、国内の農林水産物の消費を増やすことにつながる」(営業企画部)と説明する。

<疑問を感じる思考法>
PS(2019年4月17、18日追加):*7-1に、「①福島県産の野菜・果物・魚の放射性物質検査で、2018年度に国の食品基準(1kgあたり100ベクレル以下)を上回ったのは約1万6000点のうち0.04%の6点だった」「②福島県は原発事故のあと県産の野菜・果物・魚 の一部で放射性物質の検査を行っている」「③国の基準を超える食品は、肉類は2011年度、野菜・果物は2013年度、穀類は2015年度から出ていない」としており、*7-2は、「④WTOで敗訴したが、風評被害を広げぬようにしよう」「⑤残念だが、食の安全で消費者の関心は国を問わず極めて高い」「⑥23カ国・地域で続いている輸入規制撤廃と風評被害の払拭をねばり強く進めたい」「⑦生産者、消費者への十分な説明が必要」としている。
 しかし、このブログに何度も書いたように、このうち①③は、国の食品基準(1kgあたり100ベクレル以下)なら無害だとする科学的根拠はないため、説明もされていない。また、基準以下の場合には反応しないように測定器が設定されており、“食べる部分”とする一部を測定しているに過ぎないとも聞いているため、「安全」という方が風評にすぎない。さらに、②のように、ごく一部しか測定せずに全体を推測して安全性を強調するのはリスクが高い。
 また、⑤のように、食の安全性に関する消費者の関心が高いことを残念だとしている点は根本的姿勢が間違っており、④のようにWTOで敗訴し、⑥のように23カ国・地域で輸入規制が続いているのは「日本基準以下なら安全なのだから、外国の輸入規制の方が風評被害にすぎず、ねばり強く撤廃しよう」としている点で、科学的な説明もできないくせに傲慢極まりない。そして、生産者、消費者の方が詳しいのに、⑦のように説明不十分としている点は呆れるのである。
 なお、上記のように、「国の食品基準(1kgあたり100ベクレル)以下なら安全だから、いくらでも食べよ」と根拠も示さずに主張しながら、*7-3に書かれているように、「⑧経団連は再稼働や新増設の推進を掲げ」「⑨福島事故で表面化した原発の問題点には触れず」「⑩最大81兆円の廃炉等事故対応費を税金と電気料金で国民に負担させ」「⑪世界で斜陽化する原発産業にこだわり続け」ようとしている。残念ながら、これは客観的数字を無視して何が何でも日本の主張が正しいと信じ、メディアも加担して誤った政策につき進んで行った過去を思い出させる。
 このような中、*8のように、2018年の農林水産物は、輸出額9,068億円・輸入額9兆6,688億円・貿易赤字8兆7,620億円で、輸出額に対して輸入額が10倍という圧倒的輸入超過の状況で貿易赤字が拡大しているそうだ。値段が高くて安全性に「?」がつくのでは当然とも言えるが、解決策は国民が需要していないものを供給してそれを食べるように強制することではなく、これまで(安倍政治ではなく戦後政治)の政策の失敗を含めて悪い点を一つ一つ変えていくことしかない。なお、うぬ惚れの結果、自動車もJapan Passingが始まっており、いつまで貿易黒字が続くかわからないため、このままでは米国のように双子の赤字になる可能性が高い。



(図の説明:1番左の図のように、牛白血病が増加しており、左から2番目の図のように、日本では東日本に出ている。右から2番目の図に書かれている症状は人間の癌に似ており、1番右の日経新聞記事のように、感染症だとされているものの癌免疫薬が効くそうだ。何故か?)


  宝島2015.3.24    宝島2015.3.9      宝島2015.3.25    宝島2015.3.24

(図の説明:この記事を掲載した雑誌宝島は、「風評被害」「差別」などと叩かれて廃刊に追い込まれたが、書かれている統計データや内容は常識的だった。放射線に当たるとDNAが壊されるため、白血病や癌が増えたり、生殖細胞や胎児に悪影響を与えたりする。また、心臓病の増加も報告されており、フクイチ事故で増えた分は、本当は原発被害や原発のコストにあたる)

*7-1:https://www3.nhk.or.jp/lnews/fukushima/20190417/6050005159.html (NHK 2019年4月17日) 放射性物質 基準超の食品は6点
 福島県産の野菜や果物、魚などの放射性物質の検査で、昨年度国の食品の基準を上回ったのはおよそ1万6000点のうち6点でした。基準を超えたのはイワナとヤマメ、たらの芽でした。福島県は原発事故のあと県内でとれた野菜や果物、魚などの一部で放射性物質の検査を行っています。昨年度は492品目、1万5941点を検査し、国の食品の基準の1キロあたり100ベクレルを超えたのは0.04%にあたる6点で、10点だった前の年度に比べ、4点減りました。基準を超えたのは、福島市、伊達市、桑折町の阿武隈川水系でとれたイワナ2点とヤマメ3点、北塩原村でとれた野生のたらのめ1点でした。基準超えの食品は原発事故の直後に比べ大幅に減少していて、肉類は平成23年度から、野菜や果物は25年度から、コメなどの穀類は27年度から、国の基準値を上回るものは出ていません。県環境保全農業課は、「安全安心を確保するにはこうしたデータがベースになるので、品目や検体の数も含めてこれまでと変わらず検査を徹底するとともに正確に情報発信していきたい」としています。

*7-2:https://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2019041702000164.html (東京新聞社説 2019年4月17日) WTO逆転敗訴 風評被害を広げぬよう
 福島県産などの水産物輸入禁止をめぐる韓国との貿易紛争で日本は敗訴した。残念だが、食の安全で消費者の関心は国を問わず極めて高い。ねばり強い対応で規制撤廃と風評被害の払拭(ふっしょく)を進めたい。一審は二〇一八年二月に日本の主張を認めただけに、最終判断の二審での逆転敗訴は想定外で、産地の漁師に落胆が広がっている。経緯をたどると、一一年三月の福島原発の事故後、放射性物質への懸念から日本の水産物の輸入規制が各国に広がった。このうち韓国は、一三年九月に汚染水流出を受けて規制を強化し、福島、宮城、岩手など八県の水産物の輸入を全面禁止した。安全対策に取り組んできた日本はこれを不当として、一五年八月、世界貿易機関(WTO)に提訴していた。WTOは貿易紛争を扱う唯一の国際機関。機能の低下も指摘されるが、外務省は「中立的な専門家の判断」としている。日本の食品の安全性を否定しない一方で、韓国の主張を認めた判決をよく分析してほしい。生産者、消費者への十分な説明が必要だ。原発事故から八年。輸入規制は五十四カ国・地域から二十三に減った。勝訴をてこに規制撤廃と輸出拡大を目指した政府の戦略は練り直しが必要だ。養殖ホヤの生産量全国一位の宮城県では原発事故前、七、八割を韓国に輸出していた。厳しい基準での放射性物質検査に協力し、規制解除を待ち望んできた生産者、産地の漁師らの落胆は察するに余りある。ただ日本でも過去、内外の食品、食物の安全性でさまざまな問題が起きている。牛海綿状脳症(BSE)では、今回とは逆に、米国から輸入禁止の条件が厳しすぎると批判を受けた。消費者が政府に慎重すぎるくらいの対応を求めるのは国ごとの面もある。ふたつ指摘しておきたい。まず、WTO改革による紛争処理機能の強化。多国間の枠組みであるWTOの権威が揺らげば、紛争は激化しかねない。二審を担当する委員七人のうち四人が空席という事態を早く解消すべきだ。そして原発事故の影響の大きさにあらためて向き合わなければいけない。輸入規制は二十三カ国・地域で続いている。風評被害を防ぎ、すべての消費国、消費者に受け入れられるには科学的なデータの蓄積と提供、丁寧で根気強い説明が不可欠となる。

*7-3:https://www.kobe-np.co.jp/column/shasetsu/201904/0012248199.shtml (日経新聞 2019/4/17) 経団連と原発/次代への開かれた議論を
 経団連の中西宏明会長がエネルギー政策の提言を発表した。自然エネルギー拡大に必要な送配電網や蓄エネ技術の開発など、重要な指摘が多数ある。ところが、肝心の原発については首をかしげる部分が多い。安全性確保や国民の理解を前提に、再稼働や新増設の推進を掲げている。だが福島事故が示したさまざまな問題に触れていないのは不自然だ。エネルギーの在り方は日本の命運を左右する。中西会長は、次代への責任として開かれた場で疑問に答え、幅広く議論してもらいたい。中西会長は年初のインタビューで、「国民が反対するものはつくれない」「理解を得るために一般公開の討論をすべき」と発言した。その後、「再稼働をどんどんやるべきだ」と積極姿勢を打ち出し、物議を醸した。経済界トップの呼び掛けに応じて、「原発ゼロ・自然エネルギー推進連盟」が公開討論を申し込んだが、経団連はずっと拒否している。今回の提言は化石燃料の依存度を下げるために原発再稼働の必要性を主張し、60年運転延長にまで踏み込んだ。中西会長は原発メーカーの日立製作所会長でもある。福島の事故で多くの人々が苦しんでいる中、原発の負の部分を語らないのは無責任ではないか。民間シンクタンクが最大81兆円とした廃炉など事故対応費は、税金と電気料金で国民が負担している。事故から8年経っても収束までの時期も費用も全く見通せない。こうした膨大な社会的費用を無視した主張は、国民の支持は得られない。もう一つ気掛かりなことは、世界で斜陽化する原発産業にこだわり続けることのリスクだ。政府が成長戦略とした原発輸出は総崩れの状況にある。巨額の安全対策費が必要で高リスクの原発と、世界の投資が集中する自然エネルギーでは競争力の差が広がり続ける。世界の潮流は自然エネルギーを中心に、蓄電池や電気自動車、住宅などをつないだ自立・分散型社会へと加速している。提言は、電気や関係業界のビジネスモデルが一変する可能性も指摘した。原発に固執せず本音で話し合ってほしい。

*8:https://www.agrinews.co.jp/p47405.html (日本農業新聞 2019年4月18日) 18年貿易赤字 農林水拡大 8・7兆円で1958億円増
 農林水産物の貿易赤字が拡大している。農水省のまとめによると2018年は、輸出額9068億円に対し、輸入額は9兆6688億円となり、貿易赤字は8兆7620億円と前年に比べ1958億円(2%)増えた。輸出額が約1000億円伸びたものの、輸入額の伸びがそれを大きく上回った。輸入額は過去最高を更新した。農産物(食品を含む)が6兆559億円(2%増)と貿易赤字の多くを占めている。ホームページで公表する03年以降で輸入額は最大。輸出額に対し、輸入額が10倍という圧倒的に輸入超過の状況だ。赤字額は林産物が1兆2182億円、水産物が1兆4879億円となっている。農産物の輸入品目を輸入額で見ると、豚肉、牛肉、トウモロコシ、生鮮・乾燥果実、鶏肉調製品、冷凍野菜が上位に並ぶ。19年は赤字幅がさらに拡大するとの懸念が強い。TPPや日本と欧州連合(EU)との経済連携協定(EPA)が相次いで発効。牛肉などの輸入が増えるなど、貿易収支悪化の懸念材料は多い。貿易協定交渉が始まった米国は、農林水産物輸入の最大の相手国。18年の輸入額は1兆8077億円で、トウモロコシや食肉が中心だ。それに対し、輸出額は1176億円にとどまる。1兆6901億円の赤字で、農林水産物全体の貿易赤字の2割を占める。

<思考するには基礎知識が必要であること>
PS(2019年4月19、20、22日追加):*9-1に、地球環境工学が専門で東大学長を勤められた小宮山氏が「①3・11以降、原発のコストが上がり、再エネは下がって逆転が早かった」「②送電線は国民が払った電気料金で整備してきたので単に電力会社のものではなく、公共事業で増強して社会の所有物にすべき」「③世界の潮流は完全に再エネシフトしており、欧州の再エネ比率は30%超、中国は25%、米国も30%程度で、日本の16%は完全に出遅れている」「④現在は、石油・石炭・天然ガスを輸入するため20兆~30兆円が海外に流れているが、再生エネで自給するようになれば、この金は国内に流れ地域の産業に変わるので地方の活性化という日本の根本的な課題の解決に繋がる」「⑤原発ゼロは必然で、再生エネ負担は後世への贈り物」と明言しておられるが、このようにわかりやすくポイントを必要十分に語れる背景には、工学・環境・政治(社会インフラ)・経済(地方活性化)などの幅広い知識と経験の裏打ちがある。
 そのような中、*9-2に、「イ. 小学6年と中学3年全員を対象として、文科省の全国学力テストが4月18日に行われた」「ロ.中3で初めて行われる英語では発信力を重視した」「ハ.国語と算数・数学は日常生活に関わる場面設定に基づく出題が中心になった」「ニ.佐賀県教育委員会は独自に小5、中1、2で国語、算数・数学の2教科のテストも実施した」「ホ.佐賀県内は前年度、小中学ともに漢字の読みや計算など基礎の正答率は高かったが、実験結果を考察するなどの応用問題を解く力に課題があった」等が書かれている。
 このうち、イについては、全国では小6と中3しか学力テストを行わないことに呆れ、佐賀県教育委員会がニのように独自に小5、中1、2でもテストを実施したことに賛成だが、思考するには理科・社会の知識も使うため、国語・算数(数学)と英語のみに限定した科目選択を行い、これだけが重要であるかのようなメッセージを与えるのはよくないと思う。また、ロのように、中3で初めて英語のテストを行って発信力を重視するというのも考え方が安易で、意味のある内容を説得力をもって発信するには背景となる知識が重要なので、小5から数国理社英の5科目はテストをして確実に身に着けさせた方が良く、そうしなければプアー日本人を生産してしまうだろう。また、ハの日常生活の場面における応用は、理科・社会・その他の知識も組み合わせて使うので意外と簡単ではなく、義務教育では幅広い基礎知識を確実に身に着ける方が重要だと考える。
 なお、地球温暖化対策に関する「パリ協定」は、このブログに記載してきたとおり、原発の欠点により、原発回帰ではなく再エネシフトを奨めている。そのため、*10-1のように、日本政府が原発を「実用段階にある脱炭素化の選択肢」などとG20サミットまでに正式決定して国連に提出するのは、ただイノベーションという言葉を繰り返しているだけで諸問題の解決はできておらず、外国の首脳はそれぞれ優秀であるため、日本政府の環境に関する知識や意識の低さをアピールして失笑を買うと思う。さらに、日本国民の金を湯水のように使うのも大きな問題だ。
 このような状況の下、*10-2のように、衆院沖縄3区と大阪12区の補欠選挙でいずれも自民党候補が敗れ、朝日新聞は、その原因を「①首相が沖縄に入らなかった」「②首相への忖度発言で塚田氏が国交副大臣を、復興に絡む失言で桜田氏が五輪相を辞任し、首相の任命責任が問われた」「③選挙期間中に首相側近が10月に予定される消費増税の延期に言及した」などとしているが、沖縄3区は米軍普天間飛行場移設に伴う名護市辺野古への土砂投入に対する批判であり、大阪12区は維新の党のこれまでの実績を評価したもので、どちらも有権者が地元を守るため地元に関する政策を判断したものであって、①②③のように、無理に安倍首相の人格や過失に問題をすりかえても当たらない。地方の有権者は、まじめに考えており馬鹿ではないのである。
  
*9-1:https://genpatsu.tokyo-np.co.jp/page/detail/969 (東京新聞 2019年3月11日) 「原発ゼロは可能だ」小宮山宏・三菱総研理事長インタビュー
 三菱総合研究所理事長の小宮山宏氏(74)は東京電力福島第一原発事故の前後に東電で監査役を務め、原子力業界を間近で見てきた。近年は再生可能エネルギーの推進を訴え、経済界に身を置きながら「原発ゼロは可能だ」と明言する数少ない一人。その真意を聞いた。(伊藤弘喜)
●3.11機に原発はコスト高く
−東電監査役時代からの考えが変わったのですか。
 あまり変わっていません。東電でも再生エネと省エネの重要性を主張し続けた。1990年から一貫して「温暖化の解決策となるエネルギー源は、再生エネと原子力しかない。ただし原子力には安全性の問題がある」と言ってきました。90年代、再生エネのコストはまだ高かった。技術的な見通しが完全には立っていなかったから。でも技術が進めば下がり、2050年ごろには安全対策でコストが上がる原子力と逆転すると思っていた。ところが3・11がきっかけとなり原子力のコストは上がり、再生エネはがんがん下がった。(逆転は)予想よりはるかに早かったです。
●送電線は公共事業で増強を
−なぜ日本で再生エネが拡大しないのでしょうか。
 背景に大手電力10社による地域独占体制がある。地域間をつなぐ送電線が細く、電力が足りなかったり余ったりした時、融通できる余地が少ないのです。送電線は誰のものか。国民が払う電気料金で整備してきたのだから、単に電力会社のものではありません。公共事業で増強し、社会の所有物にすべきです。昨年、世界で新設された発電所の70%は再生エネで火力が25%、原子力が5%。こうした傾向は近年、一定しており、世界の潮流は完全に再生エネにシフトしている。欧州では再生エネの比率は30%を超えた。中国でも25%、米国が3割ほど。日本は16%で完全に出遅れています。
●再生エネは地方を変える
−再生エネはどんな効果をもたらしますか。
 地方の活性化という日本の根本的な課題の解決につながります。今は石油や石炭、天然ガスを輸入するため20兆~30兆円が海外に流れている。再生エネで自給するようになれば、このお金は国内に流れ、地域の産業に変わります。間伐材や家畜のふん尿で発電するバイオマスの推進は、農林業の再生につながる。水が豊富な地域は水力を、風が強い地域は風力を−といった具合に、地域に合った再生エネに取り組めばいいのです。
−現状は、政府も経済界も原発再稼働に積極的です。
 20年後には原発はほとんど動いていないでしょう。新しい原発をつくるのは極めてコストが高い。長期的には、全てを再生エネでまかなうことに多くの人が合意できると思います。一番安いのだから。
●再生エネは後世への「贈り物」
−再生エネ電力を買い取る固定価格買い取り(FIT)制度は電気料金で下支えしています。それにより、国民負担が膨らんでいるという指摘があります。
 FITは再生エネを普及させるために、現世代が負担する制度です。原発が放射性廃棄物の負担を次世代に回していることとは逆の構造なのです。FITでの買い取り期間は10~20年。何万年も保管する必要がある放射性廃棄物と比べれば、FITの負担は我慢できる範囲だと思います。温室効果ガスを出さず、後世に負担を残さない「贈り物」となるエネルギー源は、再生エネ以外にありません。
【略歴】こみやま・ひろし 1944年、栃木県生まれ。東大大学院博士課程修了。工学博士。専門は地球環境工学。東大教授、東大学長などを経て、2009年から現職。09年6月~12年6月まで東電監査役。

*9-2:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/364133 (佐賀新聞 2019年4月19日) 全国学力テスト、県内は255校 中3で初の英語、発信力重視
 小学6年と中学3年の全員を対象とした文部科学省の「全国学力・学習状況調査」(全国学力テスト)が18日、一斉に行われた。中3で初導入の英語では自分の考えを書いたり話したりする発信力を重視。学習指導要領改定を踏まえ、基礎知識と活用力を一体的に問う新形式に変更された国語と算数・数学は、日常生活に関わる場面設定に基づく出題が中心となった。佐賀県内では、国公立の小中学校と特別支援学校、私立中の計255校、約1万5500人が試験に臨んだ。結果は7月に公表される。英語は「読む・聞く・書く・話す」の4技能を問い、このうち「話す」は、パソコンの画面の映像を見て英語で説明させる形式。生徒の声の録音データを基に採点を行う。テレビ局から将来の夢を聞かれたという設定で、内容を1分間考えた後に30秒で答える出題などがあった。国語と算数・数学はこれまで、基礎知識を問う「A問題」と活用力を測る「B問題」に分かれていたが、今回から統合し、活用力を意識した設問をそろえた。日常生活と結び付いた場面設定が多く、小学校国語では、畳職人へのインタビューのやりとりから自分の考えをまとめさせた。佐賀県教育委員会は独自に小5、中1、2で国語、算数・数学の2教科のテストも実施した。対象は公立の小中学校258校、約2万3千人。県教委は、7月末をめどに国から結果が届くことを受けて、前年度まで実施してきた独自の採点は行わない。県独自の調査分については6月下旬までに各学校に集計結果を送る。県内は前年度、小中学ともに漢字の読みや計算など基礎の正答率は高かった一方で、実験結果を考察するなどの応用問題を解く力に課題があった。県教委は、基礎学力の定着に向けた補充学習の実施や、家庭学習の定着に向けた手引を小中学の保護者に配布するなど五つの柱に沿って学力アップに取り組んでいる。今回の全国での参加は小学校1万9496校の約107万6千人、中学校1万22校の約104万5千人。国公立は全校、私立の参加率は50・1%だった。

*10-1:https://digital.asahi.com/articles/DA3S13985037.html (朝日新聞 2019年4月20日) 温暖化の対策案、「原発推進」鮮明 政府、国連に提出へ
 地球温暖化対策の国際ルール「パリ協定」に基づき、政府が国連に提出する長期戦略案が19日わかった。焦点の一つである原発は「実用段階にある脱炭素化の選択肢」とし、安全性・経済性・機動性に優れた炉を追求するとの目標を掲げた。政府の有識者懇談会の提言より、原発推進に前のめりな姿勢を鮮明にした。23日に公表し、国民から意見を募った上で6月に大阪である主要20カ国・地域首脳会議(G20サミット)までの正式決定をめざす。パリ協定は2015年に採択され、21世紀後半に温室効果ガスの排出を「実質ゼロ」にすることをめざしている。各国は20年までに国連に長期戦略を提出する必要がある。日本は「50年までに温室効果ガスを80%削減」との目標を掲げており、長期戦略は実現に向けたシナリオとなる。安倍晋三首相の指示で、政府の有識者懇談会が基本的な考え方を議論してきた。今月2日に公表した提言では、原発について省エネルギーや再生可能エネルギー、水素などとともに技術的な選択肢の一つとし、「安全性確保を大前提とした原子力の活用について議論が必要」だとして、推進までは踏み込んでいなかった。一方、長期戦略案では、原発を二酸化炭素(CO2)大幅削減に貢献する主要な革新的技術の一つとして取り上げ、「可能な限り原発依存度を低減する」としつつも、「安全確保を大前提に、原子力の利用を安定的に進めていく」とした。「もんじゅ」(福井県)で失敗した高速炉のほか、小型炉、高温ガス炉など具体的な技術例を挙げたうえで、「原子力関連技術のイノベーションを促進する観点が重要」とも言及した。

*10-2:https://digital.asahi.com/articles/ASM4P76P2M4PUTFK007.html?iref=comtop_8_01 (朝日新聞 2019年4月21日) 政権与党、参院選へ痛手 忖度・復興失言… 補選2敗
 衆院沖縄3区と大阪12区の補欠選挙が21日、投開票され、沖縄では野党系新顔、大阪では維新新顔が初当選し、自民党新顔がいずれも敗れた。与野党ともに夏の参院選の前哨戦と位置づけたが、政権与党は大きな痛手を受け、大阪で大敗した野党も連携が不発に終わった。2012年の政権復帰以降、国政選挙で強さを見せてきた安倍政権が補選でつまずいた。国政選挙にもかかわらず、安倍晋三首相は沖縄に入らず、大阪入りは投票前日。選挙の顔として不安を残した。「オール沖縄」や維新が、政権に対する批判票の受け皿になった形だ。新元号「令和」への好感から一部には内閣支持率が上昇した世論調査もあったが、首相らへの「忖度(そんたく)」発言で塚田一郎氏が国土交通副大臣を、復興に絡む失言で桜田義孝氏が五輪相を相次いで辞任。首相の任命責任が問われた中での選挙戦だった。大阪は維新のダブル選で圧勝した勢い、沖縄では米軍普天間飛行場移設に伴う名護市辺野古への土砂投入を強行してきた政権に対する厳しい批判の逆風にさらされた。大阪12区はもともと自民の議席のため、自民や公明の幹部は「せめて1勝」と口をそろえていたが、両選挙区とも自公協力がうまく機能しなかった。首相は投開票日前日に同じ選挙区内で異例という3カ所の街頭演説をこなしたが、自民幹部が一度は公言した公明党の山口那津男代表とのそろい踏みは実現しなかった。選挙期間中に首相側近が10月に予定される消費増税の延期に言及。政権内には、夏の参院選に合わせた衆参同日選論がくすぶる。しかし、公明は同日選に強く反対しており、自公の選挙協力がきしむ中で踏み切れるか不透明な状況だ。対する野党は、「辺野古移設反対」で一致した沖縄3区では連携を成功させた。しかし、大阪12区では共産党現職が辞職して無所属で立候補し、他党が協力する方式が不発に終わった。参院選で32ある1人区の候補者調整で、共産系候補が立候補するケースは限定的になりそうだ。

<高齢者・障害者差別から課題解決へ>
PS(2019年4月22、23日追加): *11-1・*11-2のように、「①高齢ドライバーが自動車事故を起こした」「②従って80代以上は免許返納を」「③地方では車がないと生活できない」「④犠牲者が気の毒」などという議論がよく起こるが、④だからといって、①②のように、「高齢になると判断能力が衰え、事故を起こしやすいので、80代以上は全員免許を返納せよ」というのは、「女性は運転能力がないので、女性には自動車免許を取らせない」というのと同様に属性に基づく根拠なき差別であり、人によって異なる。また、③のように、地方では車がないと生活できない上、都会でも運転が必要不可欠な場合もあるため、人権侵害にもなる。
 そして、*11-3のように、年代別の事故率は、20代・40代・30代が多く、80歳以上による交通事故は最も少ないそうで、データを読む場合は感情論に走らず、「母集団の数」「運転時間(あまり運転しない人は事故も少ないから)」などを揃えて正確に考察すべきだ。
 なお、障がい者はむしろ自動車が不可欠な場合もあるため、障がい者が運転できない自動車の構造は変えるべきであり、バリアフリーを実現するためにも自動運転や運転支援機能が重要なことは、前から指摘されていた。にもかかわらず、*11-4のように、未だに「CASEの重圧」などと記載されているのは、日本の自動車会社の決断の遅さを示しており、これについては既に進路が明確になっているため、ディーゼル車やハイブリッド車に経営資源を振り向けるよりも、EVや自動運転車に経営資源を集中した方が無駄なく競争できるわけである。
 このように、ともかく高齢者の能力を低く見たり、差別したりするキャンペーン発言が多い中、*12のように、佐賀県鹿島市に91歳で初当選した市議がおられ、「イ. 年寄りとは思っておらず、老け込むには早過ぎる」「ロ. 4年間やっていく自信がある」「ハ. 老人のことを専門にする人が、議会に1人くらいいてもいいのではないか」と言っておられるのは頼もしい。確かに、若くさえあればよいわけではなく、高齢者だからこそわかることも多いため、人口構成を反映した議員構成が必要だろう。


アウディの自動運転車 ベンツの自動運転車  ヤマトのEV配送車    日本郵便のEV

(図の説明:日本では、1995年前後からEVの市場投入をめざして研究開発してきたにもかかわらず、実用化はEUや中国の方が早く、それを見て後を追いかけることしかできていない。また、自動運転や運転支援も高齢化・運転手不足・バリアフリー等の視点から2000年代には言っていたのに、他国に後れをとってから慌てる構図が変わらないのは何故だろう?)

*11-1:https://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201904/CK2019042002000261.html (東京新聞 2019年4月20日) 池袋暴走 「80代以上 免許返納を」 「地方暮らし 車が必須」
 東京・池袋の乗用車暴走事故があった現場では二十日午前、亡くなった母子を悼む人たちが次々と訪れ、花などを供えて手を合わせた。横断歩道のそばに設けられた献花台には、数十もの花束や人気アニメのキャラクターが描かれたお菓子などが並べられた。亡くなったのは、現場近くに住む松永真菜(まな)さん(31)と長女莉子(りこ)ちゃん(3つ)。近くのマンションに住む福沢有希子さん(40)は、花束の前で自転車を止め、後ろに乗った次女(4つ)と一緒に手を合わせた。「とても人ごととは思えない。無念と思いますが、天国で安らかに過ごしてほしい」と声を落とした。青信号の横断歩道を渡っていた人たちが巻き込まれた今回の事故。福沢さんは「青信号でもしっかり安全確認しよう」と家族で話し合ったという。近くの女性看護師(39)は「事故の時に近くにいれば。何かの助けになりたかった…」と悔やむ。八十七歳の高齢ドライバーによる事故を受け、栃木県で暮らす六十代の両親に電話で「運転に気を付けようね」と伝えたという。「地方では車がないと生活できない。実家に帰ったらタクシー代を渡したい」と話した。追悼に訪れた人たちの中には、高齢者の姿も。二歳の孫がいるという千葉県成田市の男性(75)は花束の前で手を合わせ、「あまりに悲しすぎる」と何度もハンカチで目を拭った。男性は毎日のように車を運転しているが、衰えも感じるという。「赤信号を漫然と見過ごさないよう意識しているが、高齢者講習を強化しないといけないのでは」と指摘した。三歳の孫がいるという近くに住む女性(66)は「亡くなった子と同じ公園で遊んだこともあったかもしれない。かわいい盛りなのに」と涙ぐんだ。痛ましい事故を受け、「八十代ぐらいで免許は返還してほしい」と語った。

*11-2:https://www.hokkaido-np.co.jp/article/298364 (北海道新聞 2019年4月20日) 82歳運転の乗用車、店舗入り口に突進 むかわ 2人軽傷 アクセルとブレーキ踏み間違えか
 20日午後2時5分ごろ、胆振管内むかわ町美幸4のホームセンター「ホーマックニコットむかわ店」の入り口付近に、同町穂別の会社役員男性(82)の乗用車が突っ込んだ。入り口前の園芸コーナーで作業をしていた店長の男性(53)と女性従業員(30)がはねられ、腰などを打つ軽傷を負った。乗用車は建物には衝突しなかった。苫小牧署によると、会社役員男性は駐車場に車を止めようとしていたという。同署はこの男性がアクセルとブレーキを踏み間違えたとみて調べている。

*11-3:https://news.yahoo.co.jp/byline/mamoruichikawa/ (Yahoo 2016/11/20) 高齢ドライバーの事故は20代より少ない 意外と知らないデータの真実
 10月、11月と高齢のドライバーによる交通死亡事故が相次いで報道されています。「登校の列に車、小1男児が死亡 横浜、児童8人けが」(朝日新聞 10月28日)。「駐車場のバー折って歩道の2人はねる…車暴走」(読売新聞 11月13日)。実際に統計上、高齢ドライバーによる死亡事故の件数は増加しているようです。「2014年に約3600件あった死亡事故のうち、65歳以上の運転者が過失の重い「第1当事者」になったケースは26%だった。約10年間で10ポイント近く増えている。 出典:北海道新聞11月17日社説『高齢ドライバー 事故防ぐ対策急ぎたい』」でも考えてみると、いま日本では急速に高齢化が進んでいます。それとともに65歳以上の人口が増えているわけですから、事故の件数が増えてしまうのはある意味で当然のことです。では高齢化の影響を除いた場合、高齢ドライバーによる事故は増えているのでしょうか?
●高齢ドライバーが起こす交通事故は20代より少ない
 上の図は、交通事故を起こした人(第1当事者)の数を年代別に、平成17年から27年まで見たデータです。ポイントは、年代別の「全件数」ではなく、「その年代の免許者10万人当たり、どのくらい事故を起こしているのか?」を調べていることです。こうすることで、より正確に「その年代の人が、どのくらい事故を起こしやすいのか」を知ることができます。(※16歳からのデータがあるのは、原付やバイクを含むからです。)まずわかることは、全年代でゆるやかに減っていることです。全体で見ると、10年前のおよそ半分になっています。では、どの年代がもっとも交通事故を起こしやすいのでしょうか?上から順番に見ていくと、「16~19歳」が傑出して多く、それに続くのが「20~29歳」。その次に来るのが「80歳以上」です。70代となると、他の年代とほとんど差はありません。とはいえ、高齢者になるとペーパードライバー(免許を持っているけれど運転しない人)の割合が多くなりそうです。そこで念のため、年代別の「全件数」のデータも調べてみました。驚いたことに、20代・40代・30代が多く、80歳以上による交通事故が最も少ないことがわかりました。少なくとも上記のデータからは、高齢者が若者と比べて特に交通事故を起こしやすいとは言えないのではないか?という気がしてきます。
●死亡事故は80歳以上で起こしやすいが、トップではない
 では、「死亡事故」に限定した場合はどうなるでしょうか?年代別の免許者10万人当たりの件数を見たデータです。まずわかることは、死亡事故も大幅に減っているということです。80歳以上に限定すると、10年前の半分程度に減っています。死亡事故の場合、確かに80歳以上の危険性が高いことがわかります。ただし「16~19歳」も高く、去年のデータでいえばわずかに80歳以上を上回っています。その次は、20代と70代が同じくらい。とはいえ、その他の年代と比べて、それほど多いとは言えないようです。上記のデータからは、「16~19歳と80歳以上の運転者は、死亡事故を起こしやすい」のではないか?ということがわかります。なおせっかくですから、年代ごとの交通死亡事故の「全件数」を見てみます。全件数でみると、やはり20代や40代が多く、80歳以上が起こす死亡事故は少ないことがわかります。この年代で運転している人が、そもそも少ないのかもしれません。
●データをもとに議論する大切さ
 いま高齢ドライバーが起こす死亡事故が急増していることが強調され、免許返納や認知機能検査などの重要性が指摘されています。確かにデータからも、件数としては少ないですが、80歳以上で死亡事故を起こす危険性が高いことが示されています。今後、高齢化のなかでこの年代のドライバーの絶対数が増えるのは確実ですから、対策が急務なことは間違いありません。ただ心配なのは、高齢ドライバーへの風当たりが必要以上に強まることです。例えば下記の報道で「高齢ドライバー」とされているのは、67歳の男性です。「高齢ドライバーにはねられ男性死亡 長崎」(日テレNEWS24・11月18日)65歳以上の人は「高齢者」とされるので、この男性を「高齢ドライバー」と呼ぶのは間違っていないかもしれません。でも実際の統計データは、60代のドライバーは20代より交通事故を起こしにくいことを示しています。わざわざ上記の事故を「高齢」と付けて報じることで、誤ったイメージが広がってしまう危険があります。繰り返しますが、死亡事故を減らすために、増え続ける高齢ドライバー(75歳以上)、とくに認知症に気づかないまま運転してしまう人への対策は有効だと考えられます。一方で高齢者にとって、自動車の運転が自立した生活の生命線であったり、「誇り」の象徴だったりするケースも少なくありません。いま対策が急務だからこそ、「なんとなく危なそう」というイメージではなく、データに基づいて「どんな年代の人に、何をすべきか」を冷静に考えていくことこそが大事なのではないでしょうか。
【注】第1当事者とは、事故当事者のうちもっとも過失の重い者のことを言います。

*11-4:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190421&ng=DGKKZO43942810Z10C19A4MM8000 (日経新聞 2019年4月21日) 自動車産業にCASEの重圧、直近ピーク比、時価総額57兆円減
 自動運転など新しい技術の潮流「CASE(ケース)」が、世界の自動車産業を揺さぶっている。ソフトウエアなど不慣れな領域で投資・開発の負担が膨らみ、IT(情報技術)大手など異業種との競争も激化する。「100年に一度の大変革期」に突入した自動車産業。投資マネーは離散し、自動車株の時価総額は2018年1月の直近ピーク比で約57兆円(21%)減少した。「(CASE対応で)毎年1000億円以上の開発費が必要。営業利益は大きなマイナスのリスクを抱えている」。トヨタ自動車の白柳正義執行役員は18年12月の労働組合員向けの説明会で述べた。春季労使交渉は13年ぶりに回答日までもつれ、賃上げ額は組合要求を下回った。アイシン精機の社内でも危機感は強い。主力製品の自動変速機(AT)は「自動車がすべて電動化されれば、不要になってしまう」(幹部)。ハイブリッド車向けにモーターを組み込んだATの生産を拡大するなど生き残りを懸命に探る。曙ブレーキ工業が私的整理の一種、事業再生ADR(裁判以外の紛争解決)を申請した背景にもCASEの重圧があった。業績が悪化するなかでも電動化を見据えた新しい構造のブレーキの開発を継続し、18年3月期の研究開発費は総額103億円と純利益の13倍に膨らんでいた。自動車産業の競争力を支えてきたのはエンジンなど「機械」の技術だ。しかし、CASE対応にはソフトウエアや半導体など別の技術が必要で、その領域ではIT大手など異業種勢が先行する。米グーグルは約10年前に自動運転車の開発に着手。手元資金も12兆円強と巨大で、有望な新技術を総ざらえするだけの財力もある。規制面での逆風も強く、英国とフランスはガソリン車・ディーゼル車の国内販売を40年までに禁止する方針だ。経営環境が悪化する自動車業界を投資マネーは回避している。主要自動車株の動きは世界の株式相場との連動性が薄れ、下振れが鮮明だ。15年末比で世界株が30%上昇しているのに対し、自動車株は4%安に沈む。同期間に米フォード・モーターや独ダイムラー、日産自動車の株価は2~3割下落。トヨタ、ホンダも1~2割下げた。半面、米ゼネラル・モーターズ、独フォルクスワーゲン(VW)は2割弱上昇。両社とも人員削減を含むリストラ策を決め、CASE対応の資金を捻出しやすくなったと市場で評価されている。部品メーカーでは世界大手の独コンチネンタルや仏ヴァレオが約3割下落。エンジンや変速機などの駆動系部品を手掛け、CASEに伴う事業規模の縮小が懸念材料だ。一方、電動車にも必要なシートなどの内装部品を扱う米リア・コーポレーション、ライト専業の小糸製作所は3~4割程度上昇している。トヨタが米配車サービス大手ウーバーテクノロジーズの自動運転部門への出資を決めるなど、既存勢力も巻き返しを急ぐ。自動車産業は裾野が広く、販売なども含めれば日本の全就業者の1割弱が従事するほどだ。「CASE革命」の帰結は、日本経済にも大きなインパクトを与える。

*12:https://digital.asahi.com/articles/ASM4N3RN9M4NUTPB008.html (朝日新聞 2019年4月21日) 市議初挑戦の91歳当選 マハティール氏復帰に押され
 静岡県熱海市議選(定数15)では、山田治雄氏(91)が1975年の初当選から連続で12回目の当選を果たした。全国市議会議長会などによると、昨年8月時点で全国最高齢の市議だった。選挙戦では1日数回~10回ほどの街頭演説をするなど精力的に活動。当選を重ねるにつれて、支持者も高齢化し、亡くなったり投票に行けなくなったりする人が増えた。議会の定例会ごとに出す1400枚の報告はがきや市民相談で支持者とつながり、今回も議席を守った。当選後、「活動を評価してもらえた。山積みの高齢者の問題に取り組む」と力を込めた。佐賀県鹿島市議選(定数16)では、山田氏より8カ月若い無所属新顔の電気事業会社会長、高松昭三氏(91)が初当選を果たした。取材に「年寄りと思っていない。4年間やっていく自信がある」と語った。市の老人クラブ連合会長と県の連合会副会長を務める。独り暮らしのお年寄りに対する見回り活動などに力を入れる中で、県や市の高齢者支援の予算が不十分だと感じ、「老け込むには早過ぎる」と初めて立候補した。マレーシアのマハティール氏が昨年5月、当時92歳で首相に返り咲いたことも背中を押したという。健康には自信があり、「80歳ぐらいにしか見えないとみんな言う」と話す。告示日の14日の出陣式で、「老人のことを専門に(対応)する人が、議会に1人くらいいてもいいのではないか」と演説。選挙戦では、高齢者に優しいまちづくりや地元の桜の名所の整備などを訴えた。一方、埼玉県北本市議選(定数20)では、無所属元職の神田庄平氏(94)が落選。20年ぶりの返り咲きはならなかった。

<環境税・自然エネルギー・道路の進歩など>
PS(2019年4月24、27日追加): *13-1のように、EUは2030年までに域内(加盟国28カ国)で販売するトラックやバスのCO₂排出量を2019年比で30%削減する方針を固め、温室効果ガスを出さない(水素や電気で走る)トラックの製造に向けた刺激にするそうだ。
 一方、日本は、*13-2のように、2030年度までの燃費規制で2020年度目標から約3割の改善を義務付け、EVは走行に必要な電気をつくる際に化石燃料などを消費してCO₂を排出するので“電費”という概念を設けるそうだが、自然エネルギーを使って発電すればCO₂を全く排出しないため、化石燃料の使用時にCO₂排出量に応じて課税するのが合理的であり、そうするとCO₂等の排出に対して課す環境税になるわけである。
 また、*13-3のように、小樽にある道路用資材製造販売の理研興業が、LEDで帯状に光るワイヤロープをネパールやインドネシアの街灯のない道路に試験設置してアジア市場の開拓を目指すそうだが、日本国内でも太陽光発電や蓄電池と組み合わせてLEDを使用したり、自動運転に必要な道路の設計や道路用資材の進歩があったりしてもよいと思われる。
 なお、*13-4に、政府が定めた5年間の農協改革集中推進期間の期限が2019年5月末で、JAの自己改革が一定の成果を上げていると記載されているのは喜ばしいことだが、次の5年間は再エネ電力を副産物として収入を増やし、農業機械を電動化してコストを下げることにより、農家所得を増やすことも加えてはどうかと考える。何故なら、そのための補助金をつけてもらって金銭分配による補助金をなくせば、TPPやFTAに対抗しつつ、環境・財政・経済のすべてに貢献できるからだ。そのため、農林漁業由来の再エネを農協等で集め、*13-5のようなガス会社の電力子会社、大手電力会社、地方自治体、運輸・一般会社に販売する方法が考えられる。


 2019.3.15東京新聞    環境税がCO₂を減らす仕組み  各国の環境税導入年と概要

(図の説明:左図のように、エネルギー基本計画は恣意的な印象操作の上に成り立っている。また、中央の図のように、環境税を導入するとCO₂削減効果・財源効果・アナウンス効果があり、ヨーロッパでは、右図のように、1990年~2000年代前半に環境税か炭素税が導入されている)

*13-1:http://qbiz.jp/article/149068/1/ (西日本新聞 2019年2月20日) トラックのCO2排出30%減へ EUが基本合意、30年まで
 欧州連合(EU)は2030年までに、域内で販売するトラックやバス(新車)の二酸化炭素(CO2)排出量を19年比で30%削減する方針を固めた。全28加盟国で組織する閣僚理事会と欧州議会が基本合意したと両機関が19日発表した。合意内容が両機関で承認されれば正式合意となる。排出削減は2段階で実施し、25年までに15%削減を目指す。法令として法的拘束力を持つ。トラックはEU域内全自動車のCO2排出量の27%を占めるが、日米などと違い、排出制限がない。EU欧州委員会は昨年5月、30%削減を提案していた。合意へ向けて協議を主導した緑の党のエイカウト欧州議員は同日、ツイッターで「温室効果ガスを出さない(水素や電気で走る)トラック製造に向けた刺激となる」と述べた。大手自動車メーカーを抱えるドイツは野心的目標に難色を示したが折れた形。欧州自動車大手などで組織する欧州自動車工業会は、欧州にはトラック用の充電施設や水素ステーションが皆無だと指摘。こうした状況で「電気や通常の燃料以外で走るトラックを運送業者が急に買い始めるとは想定できない」と訴えた。EUは乗用車を巡っても、30年までにCO2排出量を21年目標と比べ、37・5%削減する方針で基本合意している。

*13-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190424&ng=DGKKZO44097710T20C19A4MM8000 (日経新聞 2019年4月24日) 車燃費3割改善義務 30年度目標、EV普及2~3割へ 走行電力も抑制
 経済産業省と国土交通省は自動車メーカーに対し、2030年度までの燃費規制(総合2面きょうのことば)を課し、20年度目標から約3割の改善を義務付ける方針だ。現在は主にガソリン車やハイブリッド車を規制するが、電気自動車(EV)も同じ基準で位置づけ、メーカーに技術革新と販売車種の見直しを迫る。この規制で、EVを2~3割普及させる目標の達成を図る。燃費規制は個別の車種が対象ではなく、メーカーとして全販売台数の平均で達成しなければならない。11年に定めた現行の燃費規制は20年度にガソリン1リットルあたりの走行距離で約20キロメートルとした。09年度実績比で24.1%の改善を義務付ける内容だ。国内メーカーはこの基準を前倒しで達成できる見通しだ。新基準は両省が5月の大型連休明け後にも原案を示し、今夏をめどに決定する。これまでEVはガソリンを使わないため、燃料消費をゼロとして計算してきた。この方針を転換し、今後は走行に必要な電気をつくる際に化石燃料などを消費して二酸化炭素(CO2)を排出することで環境に負荷をかけているという概念を入れる。具体的にはEVが1キロメートル走るのにどれだけ電力を消費するかを示す「電費」という数値を消費燃費に換算し、電力使用量の削減に向けた技術革新を促していく。政府は今回の燃費規制を用い、次世代自動車の普及を進めていく方針だ。17年度時点でEVやプラグインハイブリッド車は新車販売台数の1%程度にすぎないが、30年に20~30%に高まる可能性がある。一方、従来のガソリン車は63%から30~50%に下がる見通しだ。一般的にEVはハイブリッド車やガソリン車に比べ環境負荷が小さく、燃費規制を達成するうえで有利とされる。一方で本格的な普及にはさらなる技術革新が必要だ。トヨタ自動車幹部は「ガソリン車だけで規制を満たすのは限界があり、当面の『現実解』であるハイブリッド車中心に電動車で対応することになる」と話す。三菱UFJモルガン・スタンレー証券の杉本浩一アナリストは「各社は電動車比率など従来掲げてきた数値目標の前倒しが求められるだろう」と指摘する。政府は基準達成を判定する際、燃費に加え、省エネ性能の高いエアコンなどを搭載していれば基準を緩和することも検討する。30年度までに中間評価をして新制度の目標が適正か検証もする。世界でも30年前後の燃費規制の検討が進む。欧州連合(EU)はCO2排出量を30年までに21年目標に比べて37.5%削減する案をまとめた。ただしEUは日本の目標と異なり、EVが走行のために使う電気の環境負荷を考慮しない仕組みだ。EVの普及を強力に迫る規制で、ハイブリッド車などには距離を置く政策といえる。中国政府は19年から国内で年3万台以上を生産・輸入する自動車メーカーに対し、EVなど一定割合の「新エネルギー車」の生産・販売枠を義務付ける新規制を導入した。目標は19年に10%、20年には12%とする方針で、欧州と同様にEVシフトを強力に進める。

*13-3:https://www.hokkaido-np.co.jp/article/282374 (北海道新聞 2019年3月3日) 光るワイヤロープ海外展開 小樽・理研興業 ネパールやインドネシア 街灯ない道路に
 道路用資材製造販売の理研興業(小樽、柴尾耕三社長)は、同社の看板商品である、発光ダイオード(LED)で帯状に光るワイヤロープの海外展開に本格的に取り組む。まずはネパールの街灯がない道路に試験設置し、車が安全走行できるかを検証。インドネシアを含め、経済成長で交通安全対策の需要が高まっているアジア市場の開拓を目指す。同社は防雪柵で約5割の道内シェアを持つ。今後の国内、道内市場の縮小を見込み、海外の開拓を今後の中核事業に位置づけた。2017年、中央アジア・キルギスの山岳道路に防雪柵を設置し、海外に初進出した。光るワイヤロープは、ロープに取り付けたLEDが明るく点灯し、暴風雪時でも視認性を確保できる商品。太陽光が電源で、18年に国際特許を出願した。同社は、売り込み先として人口の多いインドに隣接するネパールに着目。国際協力機構(JICA)の協力を得て、今夏から20年冬まで、首都カトマンズ近郊と南部を結ぶ幹線で、夜間は通行止めになっている街灯のない山岳道路約160キロに試験設置し効果を探る。

*13-4:https://www.agrinews.co.jp/p47455.html (日本農業新聞 2019年4月24日) 改革期限1カ月 JAの成果 発信の好機
 政府が定めた農協改革集中推進期間期限の5月末まで、あと1カ月。JAグループの自己改革の成果や今後の計画を発信する好機としたい。JAグループが地域に根差す協同組合であることを含め、理解を広げるきっかけにしよう。JAの自己改革は一定の成果を上げているが、3月の第28回JA全国大会で掲げた「自己改革の継続」も必要だ。同期間の期限を視野に、これまでの成果やこれからの計画の発信に力を入れるべきだ。2014年6月に政府が定めた「規制改革実施計画」では、「今後5年間を改革の集中推進期間」とし、JAグループに自己改革を求めた。規制改革推進会議は今年2月、「期間の最終年を見据え、さまざまな仕組みを徹底的に活用した自己改革がなされるよう促す」とし、重点フォローアップ事項の一つに据えた。組合員の声を踏まえた自己改革は着実に進展している。JA全中の18年4月時点の全JA調査によると、90%のJAが生産資材価格の引き下げや低コスト生産技術の確立・普及に取り組んでいる。この2年で9ポイント伸びた。第27回JA全国大会で決議した自己改革の「重点実施分野」に取り組むJAの割合は9分野全てで伸びた。「マーケットインに基づく生産・販売事業方式への転換」など4分野では10ポイント以上伸びている。全国連も成果を上げている。JA全農は17年3月に農家所得の増大に向けた事業改革方針と年次計画を策定。これまでの2年間は、米穀や園芸品目での直接販売金額、農薬の担い手直送規格の普及面積、肥料の銘柄集約・共同購入の仕組み作りなど、多くの項目で計画通り進んでいる。当初は、政府などから取り組みの具体化や高い目標の着実な実行を求める声があったが、順調に改革が進んでいることがうかがえる。JA全国大会では、JAグループ一体となって自己改革を継続することを決議した。それぞれのJAが組合員らの声を丁寧に聞きながら地域の課題に対応した改革を継続するとした。農水省調査によると、自己改革の進展について、JAと認定農業者の認識には依然として差がある。JAは組合員をはじめ広く国民に対し、これまでの成果や今後の取り組みについて発信し続けることが重要だ。全国大会では、改革の一つの節目としてこれまでの成果を広くアピールした。農協改革集中推進期間については、この間の改革の状況を政府が検証することになるが、JAとしては残り1カ月を有効に活用し、改革の成果などを対外的に発信する機会とすべきである。発信方法は多様だ。4、5月はイベントも多く、地域住民にJAの役割を知ってもらうチャンスとなる。トップ広報や組合員らの戸別訪問、マスコミへの発信など、さまざまな機会を捉えて情報発信を強化しよう。

*13-5:https://www.hokkaido-np.co.jp/article/300596 (北海道新聞 2019年4月27日) 北ガス、風力発電参入へ 規模・立地検討 電力販売増に対応 LNG火発も2割増強
 北海道ガス(札幌)の大槻博社長は26日、2019年3月期決算記者会見で「これからは再生可能エネルギーの取り合いになる」などと述べ、同社初の風力発電に早期参入する方針を示した。発電規模や立地場所は今後検討する。急成長する電力販売の増加に対応するため早ければ20年度にも、液化天然ガス(LNG)を使う北ガス石狩火力発電所(石狩市、出力7万8千キロワット)の発電能力を2割増強することも明らかにした。大槻社長は会見で「小さくても風力を自社で手がけたい」と話し、まずは小規模な風力発電を整備する考えを示した。風力発電のノウハウを積み、風力を含む再エネで他社との提携も視野に「中長期的には事業の大きな柱にしたい」と語った。ただ、天候に左右される再エネは出力が不安定で、太陽光発電などに加え、風力にも参入することで調整はさらに複雑になる。発電力の調節が容易な石狩湾新港のLNG火発の増強は、再エネ増加後の電力供給を安定させる狙いもある。

<新幹線長崎ルートの問題点と解決策>
PS(2019年4月26日追加):*14-1のように、佐賀県南部には既に九州新幹線の新鳥栖駅があり、「新鳥栖-武雄温泉」間は、在来線を乗り継いだ方が所要時間は大差ないのに停車駅は減らないので便利だという佐賀県内の事情がある。そのため、*14-2のように、全線フル規格で長崎まで新幹線を整備したければ、これまで特急が通っていなかった佐賀県北部の「福岡-前原-伊都-唐津(末盧)-名護屋-伊万里-有田-武雄温泉」又は「福岡-伊都-新唐津(北波多付近)-武雄温泉」を結び、筑肥線か西九州自動車道の用地を利用して高架を作りながら海岸沿いを走らせれば、用地買収が少なくて海の景色がよい。なお、呼子・玄海町の近くに名護屋駅を作ると、玄海原発が停止しても玄海町がさびれずにすむ。

 
新幹線長崎ルート予定 2018.3.31西日本新聞     佐賀県北部を走る筑肥線

(図の説明:左図の現在の計画で九州新幹線長崎ルートを建設すると、中央の表のように、佐賀県内は特急列車との時間差は少ないのに停車駅が減らされてマイナスが多く、確かに費用対効果が悪すぎる。しかし、右図の筑肥線か西九州自動車道用地に高架を作って佐賀県北部を通せば、現在は高速列車がなく用地買収も少ないため、費用対効果が高くなるのではないか?)

*14-1:https://www.nishinippon.co.jp/nnp/national/article/505860/ (西日本新聞 2019年4月26日) 「負担ゼロでも認めない」佐賀知事、新幹線建設を拒否 与党検討委 長崎ルート新鳥栖-武雄温泉
 佐賀県の山口祥義知事は26日、九州新幹線西九州(長崎)ルートを巡る与党検討委員会に出席し、新鳥栖-武雄温泉の建設について「佐賀県は新幹線整備を求めたことはなく、現在も求めていない」と拒否した。武雄温泉-長崎は2022年度までの開業を目指してフル規格での建設が進む。新鳥栖-武雄温泉が着工できなければ、武雄温泉で在来線を乗り継ぐ「対面乗り換え」が長引くが、山口氏は「やむを得ない」と述べた。与党側は佐賀県の財政負担の軽減策を示したが、山口氏は「財政負担の問題ではない。負担ゼロでも建設は認めない」と反発、議論は深まらなかった。山本幸三委員長は終了後、記者団に「地元の意見聴取は終えた」と述べた。与党側は整備方式案を早期にまとめる方針だ。長崎県の中村法道知事は9日の検討委に出席し、全線フル規格での早期整備を求めている。

*14-2:https://diamond.jp/articles/-/181109?page=3 (週刊ダイヤモンド 2018.10.4) LCCジェットスターvs九州新幹線「長崎の戦い」が明暗を分けた裏事情、国と自治体、事業者で、議論が紛糾する新幹線長崎ルート
 LCCでこんなに手軽に行ける長崎に、新幹線では行きたくても行けない事態が起きている。JR博多駅から九州新幹線に乗って13分、新鳥栖駅に着いた。ここから西に分岐する西九州ルート(長崎ルート)の整備方式をめぐり、国と自治体、JR九州ら利害関係者の間で議論が紛糾している。事の発端は、車輪の幅を変えて在来線と新幹線どちらの線路も走れる「フリーゲージトレイン」(FGT)の技術だった。長崎ルートの新鳥栖~武雄温泉では、地元の佐賀県の建設費を軽減する狙いから日本で初めてFGTを導入する計画を進めてきた。しかし、技術開発が難航し、導入は見送られた。すると今度は、在来線を新幹線の線路にする「フル規格」か、在来線の線路を広げて新幹線も走れるようにする「ミニ新幹線」かの議論が浮上した。新幹線の速達性はフル規格が圧勝するが、建設費は倍以上、6000億円も掛かる。JR九州と長崎県はフル規格を推す。その理由は、2022年度に武雄温泉以西(~長崎)でフル規格新幹線が先行開業するからだ。そうなると、当座は博多から長崎を目指す人は、新鳥栖まで新幹線、武雄温泉まで在来線、長崎まで再び新幹線という面倒な乗り換えをしなければならず、乗客数が伸び悩んでしまう。こうして新幹線効果が薄れてしまうことを、JR九州と長崎県は危惧している。

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2019.4.6 日本は人権を大切にしない国である ← ゴーン氏逮捕事件から日本の司法を評価する (2019年4月8、9、10、11、12、13、15日に追加あり)
    
2019.4.4朝日新聞 2018.12.19    2019.1.6産経新聞     2019.4.5Yahoo
          東京新聞
(図の説明:左図のように、最初のゴーン氏の逮捕・拘束は108日間続き、10億円もの保釈金を払って保釈されたのに、保釈から1か月後に再逮捕された。しかし、検察が指摘する罪状は、日産が協力しているにもかかわらず、まだ「ゴーン氏に証拠隠滅の恐れがある」と言っているほど証拠を押さえられていないらしい。さらに、ゴーン氏の罪の内容は、左から2番目、右から2番目、1番右と、実力派経営者の高額報酬にケチをつけたり、とにかくゴーン氏個人の不正を探したりしているもので、批判している人の方が見苦しいのである)

(1)刑事事件に関する日本国憲法の規定
 日本国憲法は、*1のように、「①33条:理由となる犯罪を明示する裁判所の令状によらなければ逮捕されない」「②34条:理由は直ちに告げられ、直ちに弁護人に依頼する権利を与へられなければ拘禁されず、要求があれば、理由は直ちに本人と弁護人の出席する公開の法廷で示されなければならない」「③37条:すべて刑事事件で、被告人は公平な裁判所の迅速な公開裁判を受ける権利を有する」「④38条:不当に長く拘禁された後の自白を証拠とすることはできず、自己に不利益な唯一の証拠が本人の自白である場合は、有罪とされたり刑罰を科せられたりしない」と規定している。

 これを、ゴーン氏の逮捕と勾留に当てはめると、①については、裁判所の令状があったので満たされているが、②については、有価証券報告書虚偽記載という逮捕理由は告げられたものの逮捕するような罪ではなく、ゴーン氏のみを悪人に仕立てるにも都合が悪かった。そのため、検察は、ゴーン氏の特別背任罪を言い立てるために不正捜しを行い、直ちに本人と弁護人の出席する公開の法廷で逮捕理由を示すどころか、逮捕から半年たっても証拠隠滅の恐れがあるなどとして再勾留した。しかし、逮捕は証拠を揃えてからすべきものであるため、これは憲法違反である。

 また、③についても、被告人は公平な裁判所の迅速な公開裁判を受ける権利を有するにもかかわらず、裁判もせずに懲罰的拘束を行っているので、人権侵害が甚だしい。これに加え、日本の司法は、④の「不当に長く拘禁された後の自白を証拠とすることはできない」「自己に不利益な唯一の証拠が本人の自白である場合は、有罪とされたり刑罰を科せられたりしない」という日本国憲法の規定を無視している。

(2)日本の司法の問題点
 東京地裁は、2019年1月15及び22日、*2-1・*2-2のように、証拠隠滅の恐れがあるとしてゴーン氏の保釈請求を却下した。しかし、日産の代表取締役社長兼最高経営責任者は西川氏(1953年11月14日生まれ、開成高校・東京大学経済学部卒業、1977年日産入社)で、現在の日産はゴーン氏ではなく西川氏の指示で動くため、ゴーン氏は既に日産内外で影響力は持っておらず、証拠隠滅の恐れはない。だからこそ、2018年4月頃から、ゴーン氏を日産の会長職から追い落とすための証拠集めができたのだ。

 それどころか、*2-3-4のように、「ゴーン氏が中東の子会社からオマーンの販売代理店に『販売促進費』として送金させた資金は不要な支出だった」と日産関係者が証言しているように、現在は、西川氏をトップとする日産が組織的に口裏合わせをする方が容易だ。また、中東日産に100億円規模の販売奨励金があって半分ほど余っていたとしても、例えば権力者にエコカー優遇の働きかけをするために、販促費をゴーン氏がCEOリザーブから支出していても全くおかしくなく、CEOリザーブはルーチンワークではないCEOの判断で使ってよい金であるため、不正ありきでステレオタイプの論理を組み立てるのは、無知と悪意の両方が原因のように見える。

 また、検察が日産との司法取引で最初にゴーン氏を逮捕(2018年11月19日)してから既に2カ月も経っているため、検察は(あるのなら)既に書面で証拠を入手しているのが当たり前であり、今さら、ゴーン氏が口裏合わせによって証拠を隠滅できる可能性はない筈だ。

 さらに、特別背任罪起訴内容の「①私的通貨取引のスワップ契約の日産への移転」「②サウジアラビアの知人に日産子会社から約12億8千万円支出させた」というのは、①は実際には日産に損をさせていないし、②は販促費として支出されているわけである。

 そのため、検察は、①②だけでは特別背任罪として弱すぎると考えたのか、*2-3-1・*2-3-2のように、ゴーン氏が中東オマーンの販売代理店に送金した約5億6300万円の日産の資金を自らに還流させたとして特別背任容疑で再逮捕した。これについて、ゴーン氏は、「CEOリザーブは、各国の幹部がサインしており、ブラックボックスではない」「容疑に根拠はなく無実だ」としている。

 そして、*2-3-3のように、ゴーン氏は「真実をお話しする準備をしています。4月11日に記者会見をします」という記者会見予告をした途端に再逮捕された。これについて、ゴーン氏の弁護士は「普通に追起訴すればよく、何のために身柄を取るのかわからない。非常に不適当な方法だと思う」と批判しており、ゴーン氏の再逮捕は、2019年4月11日のゴーン氏の記者会見の妨害であるように思える。

(3)ルノー・日産の行動からわかるゴーン氏逮捕の背景
 ゴーン氏は、倒産しかかった日産自動車をルノーの資金援助で立ち直らせ、電気自動車を最初に市場投入し、世界第二位の自動車メーカーに育てた。その実績と環境車の縁があったからこそ、日産・ルノー組は、水素燃料電池車を最初に開発した三菱自動車と連合を組むことができたのだと、私は考える。

 そこで、仮にゴーン氏がいなかったら、日産は電気自動車を最初に市場投入したかと言えば、「決してしなかった」と私は明確に言える。私は、佐賀県唐津市にある日産のショールームに行って、「リーフを見せて下さい」と言ったことがあり、そのショールームのスタッフは「ああ、リーフね。ないよ」と吐き捨てるように言ったからだ。そして、バルセロナでゴーン氏が宣伝に出ていた動画は「Tecnology is Excellent!」として、電気自動車と自動運転車をアピールしていた。ゴーン氏と日産の一般スタッフはそれだけの意識の違いがあり、ゴーン氏は強力なリーダーシップを発揮したと思われ、これは日本に多い調整型のサラリーマン経営者にはできないからこそ、ゴーン氏は価値があったのである。

 しかし、*3-1のように、保釈されたゴーン氏が取締役会への出席を要求すると、裁判所は「証拠隠滅の恐れがあるから」として、ゴーン氏の取締役会への出席要求を退けた。そして、検察幹部は「関係者だらけの取締役会に出ていいわけがない。出席を希望するなんて、どこまで思い上がっているのか」と批判したそうだが、この状況でゴーン氏が証拠隠滅などできるわけがなく、それでもゴーン氏の話に感じ入ってゴーン氏側につく取締役がいるとすれば、それは人間力の差である。そのため、そんなことしか言えない検察の方がよほど思い上がっており、「検察は、そこまで経済や経営に疎いのに、なぜ威張っているのか?」と思う。

 なお、ゴーン氏逮捕の背景には、ルノーの大株主である仏政府がルノーと日産の経営統合を求めており、それを恐れる人が日産にいたことがある。そして、ゴーン氏逮捕後、仏ルノー、日産、三菱自動車を統括するための新組織を近く立ち上げ、新組織はルノーのスナール会長とボロレCEO、日産の西川社長兼CEO、三菱自の益子会長兼CEOが率いるそうだ。そして、日産は、4月8日の臨時株主総会で、ルノーと三菱自動車は6月の株主総会でゴーン前会長を取締役からも外して経営から全面的に排除する予定だったわけである。

 さらに、*3-2のように、日産が設置した企業統治改革の専門委員会は、日産の経営体制の見直しのため、①取締役会議長に社外取締役をあてる等の執行と監督の分離 ②取締役会の過半を、独立性を持つ社外取締役にする ③人事の決定権集中を防ぐため過半を社外取締役で占める指名委員会を設置する ④経営陣の報酬を決める報酬委員会は全員を社外取締役で構成する3~5人の組織を作る ⑤特別委は各取締役が経営会議体に関するすべての資料やデータにアクセスできる体制の構築 ⑥日産会長職の廃止 などを提言し、日産の西川社長兼CEOは同日夜、「大変重い提言だった。これから取締役会で検討し、できる限り実現したい」と述べたそうだ。

 しかし、取引相手である東レに入社して現在は東レ相談役である榊原氏が提言を出すと、日産に有利な提言が出るとは思えない。また、①③⑤は、経営戦略・特許戦略・販売戦略が外部に漏れ漏れになり、日産は私企業として成立しなくなる。さらに、社外取締役だから独立性を持てるとは言えないため、②は誤りである。そして、③④は、経営戦略に従って柔軟に人をスカウトできず、硬直した組織になる。また、⑥の会長職は、会長の権限の強さにもよるが、会長がいてもいなくてもあまり変わらない企業が多い。そのような提言に、西川社長兼CEOが賛同し、西川氏の責任論が早々に封印されたのは、日産にとってプラスではないと思う。
 
 そして、*3-3のように、ルノーは取締役会を開き、ゴーン氏に対して昨年の業績連動型報酬と年間約77万ユーロ(約9600万円)の年金支給を認めないことを決めたそうだが、懲戒解雇の場合以外は年金受給権はあるのが当然だ。また、退職に伴う報酬の支給は認めない方針ということなので、退職金は受領するまで確定債務でないことが、再度、明らかになっただろう。

 なお、*3-4のように、ゴーン氏は「イ.私は無実だ」「ロ.大量の間違った事実や恣意的な解釈によって絶えず名誉毀損が起きている」「ハ.日産自動車の一部の人間が日本でもフランスでも私をおとしめようと働きかけた」「ニ.2018年の4月か5月に、日産の会長職から追い落とせる証拠を集める動きが起きた」「ホ.日産内部での陰謀が背景にある」「ヘ.アライアンスは3、4人で行うクラブではないので、日産、ルノー、三菱自動車のアライアンスの将来を心配している」「ト.利害の対立で重要な決定がなされなくなり、あっという間にアライアンスが消え入ってしまうのを恐れている」という見解を語ったそうだ。

 このうち、ヘ. ト.について、私企業の経営は、サークル活動ではないため、私はゴーン氏と同じ意見だ。また、ロ. ハ.については、報道を見ていれば賛成できるし、*3-5のサッカー日本代表監督であったハリルホジッチ氏が解任された時と同じだ。つまり、名誉を剥奪する数々の行為を行って解任し、それまでの実績に対するリスペクトが全くないのだ。そして、この一部の日本人の性癖は、人間として本当に失望すべきものである。

 また、ニ.の2018年4月、5月に日産の会長職から追い落とせる証拠を集める動きが起きたのは、その時にはゴーン氏が怖くなくなっていたからで、ゴーン氏に権力が集中していたという説明は嘘である。また、ホ.の日産内部での陰謀が背景にあったのも、ゴーン氏逮捕後のあらかじめ計画されていたように速やかなゴーン氏追い出しの経緯を見ればよくわかる。

 さらに、イ.の無実かどうかは、私は証拠資料を見ていないので何とも言えないが、このように日産の権力闘争と一緒になって日本の司法が動いている以上、日本の司法に公正で迅速な裁判は期待できない。そのため、仏政府は仏市民を護るために動いた方がよいし、このような恣意的な司法では日本人も困るわけである。

・・参考資料・・
<日本国憲法>
*1:http://www.japaneselawtranslation.go.jp/law/detail_main?id=174 (日本国憲法抜粋) 昭和二十一年十一月三日
第三十二条 何人も、裁判所において裁判を受ける権利を奪はれない。
第三十三条 何人も、現行犯として逮捕される場合を除いては、権限を有する司法官憲が発し、且つ理由となつてゐる犯罪を明示する令状によらなければ、逮捕されない。
第三十四条 何人も、理由を直ちに告げられ、且つ、直ちに弁護人に依頼する権利を与へられなければ、抑留又は拘禁されない。又、何人も、正当な理由がなければ、拘禁されず、要求があれば、その理由は、直ちに本人及びその弁護人の出席する公開の法廷で示されなければならない。
第三十六条 公務員による拷問及び残虐な刑罰は、絶対にこれを禁ずる。
第三十七条 すべて刑事事件においては、被告人は、公平な裁判所の迅速な公開裁判を受ける権利を有する。刑事被告人は、すべての証人に対して審問する機会を充分に与へられ、又、公費で自己のために強制的手続により証人を求める権利を有する。刑事被告人は、いかなる場合にも、資格を有する弁護人を依頼することができる。被告人が自らこれを依頼することができないときは、国でこれを附する。
第三十八条 何人も、自己に不利益な供述を強要されない。強制、拷問若しくは脅迫による自白又は不当に長く抑留若しくは拘禁された後の自白は、これを証拠とすることができない。何人も、自己に不利益な唯一の証拠が本人の自白である場合には、有罪とされ、又は刑罰を科せられない。
第三十九条 何人も、実行の時に適法であつた行為又は既に無罪とされた行為については、刑事上の責任を問はれない。又、同一の犯罪について、重ねて刑事上の責任を問はれない。
第四十条 何人も、抑留又は拘禁された後、無罪の裁判を受けたときは、法律の定めるところにより、国にその補償を求めることができる。

<日本の司法の問題点、ゴーン氏の長期勾留から>
*2-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190116&ng=DGKKZO39997400V10C19A1EA2000 (日経新聞 2019年1月16日) ゴーン元会長の保釈認めず 地裁 勾留さらに長期化も
 日産自動車元会長のカルロス・ゴーン被告(64)を巡る一連の事件で、東京地裁は15日、ゴーン元会長の保釈請求を却下する決定をした。証拠隠滅の恐れがあるなどと判断したもようだ。弁護人は不服として準抗告するとみられる。勾留は2018年11月19日の最初の逮捕から2カ月近くに及んでおり、さらに長期化する見通しとなった。海外メディアなどの批判の声が高まる可能性もある。弁護人はゴーン元会長の公判が始まるまで少なくとも半年程度かかるとみており、準抗告が退けられても保釈請求を続けるとみられる。公判前整理手続きで争点や証拠が絞り込まれた段階、初公判で罪状認否が終わった段階で、裁判所が「証拠隠滅などの恐れが低下」と判断すれば保釈が認められる可能性はある。東京地検特捜部は11日、ゴーン元会長を会社法違反(特別背任)と金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)の罪で追起訴。弁護人は即日、保釈を請求した。ゴーン元会長はいずれの起訴内容も否認し、8日の勾留理由開示手続きでも「私は無実です」と意見陳述。従来、特捜部の事件で起訴内容を否認する被告については早期の保釈が認められないケースが多い。地裁は18年12月、ゴーン元会長と共に金商法違反罪に問われた元代表取締役、グレッグ・ケリー被告(62)の保釈を認めた。ゴーン元会長については、特別背任罪にも問われた点、日産内外で大きな影響力を持っている点などを重視し、証拠隠滅の恐れが強いと判断したとみられる。特別背任罪の起訴内容は▽08年10月、私的な通貨取引のスワップ契約を日産に移転し、評価損約18億5000万円の負担義務を負わせた▽09~12年、サウジアラビアの知人側に日産子会社から約12億8千万円を支出させた――の2つの行為で日産に損害を与えたとされる。金商法違反罪の起訴内容は、18年3月期までの8年間、退任後に受け取る予定の報酬計約91億円を有価証券報告書に記載しなかったとされる。

*2-2:http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2019012201001706.html (東京新聞 2019年1月22日) ゴーン被告保釈再び認めず 証拠隠滅の恐れ理由か、東京地裁
 東京地裁は22日、会社法違反(特別背任)などの罪で起訴された日産自動車の前会長カルロス・ゴーン被告(64)側の保釈請求を認めない決定をした。理由は明らかにしていないが、証拠隠滅の恐れがあると判断したとみられる。弁護人が18日に2回目の請求をしていた。勾留はさらに長期化する。最初の保釈請求は15日に却下され、準抗告も17日に退けられていた。ゴーン被告は昨年11月19日に金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)の疑いで東京地検特捜部に逮捕されて以降、2カ月余り東京拘置所に勾留されている。特別背任罪と金融商品取引法違反罪のいずれも無実だと訴えている。

*2-3-1:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO43283380T00C19A4CC1000/ (日経新聞 2019/4/3) ゴーン元会長立件へ オマーン・ルート、特別背任容疑
 日産自動車元会長のカルロス・ゴーン被告(65)が同社の資金をオマーンの知人側に不正流出させた疑いが強まったとして、東京地検特捜部が会社法違反(特別背任)容疑での立件に向け、詰めの捜査を進めていることが3日分かった。関係者が明らかにした。最高検などと協議し、最終的に判断するとみられる。関係者によると、資金の流出先とされるのはゴーン元会長の知人がオーナーを務めるオマーンの販売代理店「スヘイル・バウワン・オートモービルズ」(SBA)。同社には2009年以降、日産の「CEO reserve」(CEO予備費)から、販売促進費名目で計約35億円が支払われた。CEO予備費は当時、日産の最高経営責任者だった元会長が使途を決めることができた。一方で、ほぼ同時期にゴーン元会長が、このオーナーから約30億円を借り入れていたことを示す文書が残っている。SBAの別の幹部が、元会長の妻が代表を務める会社のクルーザー購入代金約16億円を負担していた疑いも浮上している。特捜部は1月のゴーン元会長の追起訴後も捜査を継続。中東各国に捜査共助を要請するなどしていた。SBAに支払われたCEO予備費は販売促進費ではなく、元会長個人のための不正な支出だったとみている。ゴーン元会長は1月30日に勾留先の東京拘置所での日本経済新聞との単独インタビューで、CEO予備費について「各国の幹部がサインしており、ブラックボックスではない」と主張。「他の地域でも同じように予備費からインセンティブが支払われているのに問題視されていない」などと説明していた。ゴーン元会長は▽退任後に受け取る予定の報酬計約91億円を有価証券報告書に記載しなかった金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)▽サウジアラビアの知人側に日産子会社から約12億8千万円を支出させるなどした特別背任――の罪で起訴されている。3月6日に保釈され、現在は事前に裁判所に届け出た東京都内の住居で生活を送っている。

*2-3-2:https://digital.asahi.com/articles/DA3S13965319.html (朝日新聞 2019年4月5日) ゴーン前会長、4回目逮捕 5.6億円、自らに還流容疑 保釈から1カ月
 日産自動車の前会長カルロス・ゴーン容疑者(65)が、中東オマーンの販売代理店に送金した約5億6300万円の日産資金を自らに還流させたとして、東京地検特捜部は4日、ゴーン前会長を会社法違反(特別背任)容疑で再逮捕した。関係者によると、前会長は販売代理店の口座から、自身が実質的に保有する「GFI」社(レバノン)の預金口座に送金させ、自身に還流させていたという。前会長の逮捕は4回目。特捜部の事件で、保釈中の再逮捕は異例だ。弁護団の弘中惇一郎弁護士は記者会見を開き、「合理性も必要性もなく逮捕に踏み切ったのは暴挙だ」と批判した。弘中氏によると、特捜部はこの日早朝、前会長が3月6日の保釈後に暮らしてきた東京都内の住居内で逮捕状を執行。家宅捜索で、裁判準備のための書類や前会長の妻の携帯電話、パスポートなどが押収されたという。弘中氏は「明らかな防御権侵害で弁護権侵害だ」と訴えた。ゴーン前会長も米国の代理人を通じて「容疑に根拠はなく無実だ」などとする談話を公表した。特捜部などによると、ゴーン前会長は2015年12月~18年7月、日産子会社「中東日産」(アラブ首長国連邦)からオマーンの販売代理店「スヘイル・バウワン・オートモービルズ」(SBA)に計1500万ドル(当時のレートで約16億9800万円)を送金。うち計500万ドル(同約5億6300万円)をGFIに送金させていた疑いがある。特捜部は、前会長がGFIを実質的に保有していたとみて調べている。SBAのオーナー、スヘイル・バウワン氏はゴーン前会長の長年の友人。SBAのインド人幹部がGFIの大株主となっている。GFIは15~18年、前会長の息子が米国で起業した会社に計2750万ドル(現在のレートで約30億円)を資金援助していたという。特捜部は1月、サウジアラビアの実業家に日産の資金を不正送金した特別背任罪で前会長を追起訴した。サウジに加えて「オマーンルート」も立件することで疑惑の全容解明をめざす。
■オマーンルート、友人無言 「送金先」に現地で接触
 2月上旬、中東オマーンの首都マスカット。民族衣装を身につけた老齢の男性が建物から出てきた。「日産からどういうお金を受け取ったのですか?」「ゴーン氏個人とはどういう金のやり取りがあったのですか?」。男性は歩きながら、そう質問を投げかける朝日新聞記者をちらっと見ただけで一切答えなかった。運転手に促されてドイツ製の高級車に乗り込み、去った。スヘイル・バウワン氏。現地の富豪で、日産と仏ルノーの販売代理店のオーナーを務める。中東レバノン育ちのゴーン前会長の長年の友人。今回の事件の「オマーンルート」で不正資金の送金先になったとされる。記者は代理店や関連会社、自宅などを訪ねたが一切取り次いでもらえなかった。地元の有力者から、ようやく同氏が訪れる場所と時間を聞くことができた末の接触だった。関係者によると、バウワン氏は、1月に起訴された「サウジアラビアルート」でゴーン前会長から不正送金を受けたとされる富豪ハリド・ジュファリ氏らとともに、日産社内で中東の「GF」(ゴーン・フレンズ)と呼ばれている。オマーン関連の会議を、中東諸国ではなくゴーン前会長がいるパリで開催し、ともに夕食を取るなど親密な関係だったという。オマーンで1970年代から日産代理店だった会社関係者によると、2004年ごろに契約を突然打ち切られたという。不可解に思っていたところ、バウワン氏の会社が新たに代理店となった式典にゴーン前会長が出席した。「ゴーン氏が来るなんて」と驚いたといい、「それほど個人的なつながりがあるのだろう」と感じたという。

*2-3-3:https://digital.asahi.com/articles/ASM4435GCM44UTIL00F.html?iref=comtop_8_01 (朝日新聞 2019年4月4日) 弁護団「意味わからない」 ゴーン前会長、異例の再逮捕
 108日間の勾留後に保釈され、作業着姿で東京拘置所から出て30日目。東京地検特捜部が4日、日産自動車の前会長、カルロス・ゴーン容疑者(65)の4度目の逮捕に踏み切った。前日にゴーン前会長自ら記者会見を予告した矢先の再逮捕に、弁護団は「意味がわからない」と特捜部の対応を批判した。4日午前6時前、東京地検の係官らがゴーン前会長が保釈後に過ごしていた都内の制限住居に入った。住居前に集まった報道陣は約50~60人。現場での混乱を避けるため、東京地検は規制線を敷く異例の対応を取った。約50分後、ゴーン前会長を乗せたとみられるワゴン車が住居を出発。車の窓はカーテンで覆われ、車内の様子を確認することはできなかった。車は午前7時ごろに東京・霞が関の東京地検の敷地に入った。その約30分後、特捜部は前会長を再逮捕したと発表した。特捜部の捜査対象は、政治家や企業の経営者などが多く、早朝の逮捕は極めて異例だ。ゴーン前会長の弁護人を務める弘中惇一郎弁護士は午前8時50分ごろ、事務所前で報道陣の取材に応じ、「普通に(再逮捕せず)追起訴すればいいわけであって、何のために身柄を取るのか意味がわからない。非常に不適当な方法だと思う」と批判した。弘中氏は、前夜までに特捜部からゴーン前会長への聴取要請はなかったとし、今回の再逮捕容疑についてゴーン前会長とは「突っ込んだ話をしたことがない」と明かした。ただ3日に「再逮捕へ」「立件へ」などとする報道を目にしたゴーン前会長は、不愉快そうな様子だったという。ゴーン前会長は3日に自身のツイッターのアカウントを開設し、「真実をお話しする準備をしています。4月11日木曜日に記者会見をします」と発信。弘中氏はその会見について、「逮捕はされたが、裁判所が勾留を認めるかどうかわからないので、勾留されなければ予定通り11日にやろうと思っている」と話した。再逮捕の発表から約3時間後の午前10時15分ごろ、ゴーン前会長を乗せたとみられる車が、昨年11月の逮捕から3月6日まで108日間過ごした東京拘置所に入った。制限住居を家宅捜索した東京地検は、関係する資料を押収したとみられる。

*2-3-4:https://digital.asahi.com/articles/ASM462T3GM46UTIL002.html?iref=comtop_8_04 (朝日新聞 2019年4月6日) ゴーン前会長送金「不要な支出」 中東日産、奨励金余る
 日産自動車の前会長カルロス・ゴーン容疑者(65)をめぐる特別背任事件で、前会長が中東の子会社からオマーンの販売代理店に「販売促進費」として送金させた資金について、日産関係者が「不要な支出だった」と証言していることが関係者への取材でわかった。前会長は自分の裁量で使える予備費から支出していたが、子会社の予算は余っていたことが判明。東京地検特捜部は、前会長が資金の還流を隠すために送金目的を偽ったとみている。特捜部の調べでは、ゴーン前会長は2015~18年、アラブ首長国連邦にある日産子会社「中東日産」からオマーンの販売代理店「スヘイル・バウワン・オートモービルズ(SBA)」に約17億円を送金。そのうち約5億6千万円を、自らが実質的に保有するレバノンの投資会社「GFI」に還流した疑いがあるという。原資はCEO(最高経営責任者)の裁量で使える「CEOリザーブ(予備費)」で、ゴーン前会長は「販売促進費」名目で支出していた。一方、複数の関係者によると、中東日産には、自分たちで予算化した100億円規模の販売奨励金があったという。各国の販売店と決めた年間の販売目標などに基づき、中東日産の判断で支出するが、使い切れずに半分ほど余るような状況だったという。日産関係者は特捜部にこうした実態を説明。ゴーン前会長からのCEOリザーブについて「自分たちの裁量で出す奨励金が余っており、不要だった」と指摘し、SBAへの送金は「中東日産の判断ではない」と供述しているという。一方、関係者によると、ゴーン前会長は、CEOリザーブは正当な販売促進費で「問題ない」と主張しているという。

<ルノー・日産の行動からわかるゴーン氏逮捕の背景>
*3-1:https://digital.asahi.com/articles/ASM3C5JJ6M3CUTIL01T.html?iref=comtop_8_02 (朝日新聞 2019年3月12日) 日産が恐れた取締役会出席 検察は「思い上がり」と批判
 保釈された勢いそのままに、取締役会に乗り込んで反転攻勢に出るのではないか――。日産関係者が恐れた前会長カルロス・ゴーン被告(65)の取締役会への出席要求は退けられた。裁判所は今回、証拠隠滅の恐れを重視した模様だが、前例のない判断が続くことになりそうだ。「(日産に)ここまで強く反対されるとは思わなかった。非常に残念だ。取締役の責任を果たしたいというつもりであり、証拠隠滅する意思なんて全くない」。ゴーン前会長の弁護団の弘中惇一郎弁護士は、検察の意見書に添付されていたという日産の「反対」意見書に不満をにじませた。検察側は、地裁の判断を「妥当」と評価する。一連の事件では、勾留延長の却下や公判前整理手続きが始まる前の保釈と、検察の意に反する判断が続いていただけに、「もはやどんな判断でも動揺はしない」(検察幹部)と構えていた。この幹部は「前会長の発言が取締役個人にどう影響するか分からない。裁判所もさすがにまずいと思ったのだろう」と語った。取締役会には、保釈の条件として接触禁止となっている「事件関係者」とされる西川(さいかわ)広人社長らが出席。事件も議題になる可能性がある。別の検察幹部は「関係者だらけの取締役会に出ていいわけがない。出席を希望するなんて、どこまで思い上がっているのか」と批判した。日産幹部の一人は、東京地裁の判断に「正直言ってひと安心」と胸をなで下ろした。ゴーン前会長が取締役会に出席すれば、他の日産幹部の疑惑への関与などについて、持論を展開する可能性があったからだ。元刑事裁判官の水野智幸・法政大法科大学院教授は「ゴーン前会長に敵対的な人がいる中で簡単に証拠隠滅はできないと思うが、影響を受ける人もいると地裁は懸念したのだろう」と指摘する。一方で、テーマによって判断は変わりうるとし、「取締役会の都度、許可を求めれば、出席が実現することもあるのではないか。前例がなく、裁判官も手探りだろう」と述べた。日産と同様、取締役の職にとどまる三菱自動車や仏ルノーは「事件との関係は希薄になってくる」(弘中氏)。両社の取締役会への出席を求めた場合の判断も注目される。
●3社連合、新組織設立へ
 仏ルノーは11日、3社連合を組む同社と日産、三菱自動車を統括するための新組織を近く立ち上げる方針を明らかにした。新組織の設立により、ゴーン前会長との決別と、3社の連携が強固であることを社内外にアピールする狙いがあるとみられる。新組織はルノーのジャンドミニク・スナール会長とティエリー・ボロレCEO(最高経営責任者)、日産の西川(さいかわ)広人社長兼CEO、三菱自の益子修会長兼CEOが率いる。新組織のトップにはスナール氏が就任する方向で調整している。4人は12日、横浜市の日産本社でそろって記者会見し、新組織などについて説明する。ルノーは11日に出した声明で、新組織の設立はルノーと日産の持ち株比率の変更や、両社のアライアンス(提携)に関する合意文書「RAMA(ラマ)」には影響しないとも明らかにした。ただ、ルノーの大株主の仏政府は両社の経営統合を求めており、今後の協議の行方はなお不透明だ。新組織の設立に伴い、オランダにある統括会社「ルノー・日産BV」と「日産・三菱BV」は機能を停止させる。日産・三菱BVからゴーン前会長が非公開の報酬約10億円を受け取っていたことが判明するなど、二つの統括会社を巡る不透明な資金の流れが問題視されていた。日産は4月8日の臨時株主総会で、ルノーと三菱自も6月の株主総会で、それぞれゴーン前会長を取締役からも外して経営から全面的に排除する予定だ。

*3-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190328&ng=DGKKZO43006590Y9A320C1MM8000 (日経新聞 2019年3月28日) 日産会長職「廃止を」 経営体制見直し 特別委提言、監督・執行分離促す
 日産自動車が設置した企業統治改革の専門委員会は27日、経営体制の見直しへ提言をまとめた。元会長のカルロス・ゴーン被告に権限が集まり不正を防げなかった反省から、取締役会の議長に社外取締役をあてるなど執行と監督の分離を明確にするよう求めた。仏ルノーとの間で指名を巡り対立点になった日産会長職は廃止を提言。日産は提言を基に新たな体制作りに着手する。有識者らで組織する「ガバナンス改善特別委員会」の榊原定征共同委員長らは27日夜、横浜市内で記者会見した。榊原委員長は「(経営の)執行と監督の長が同じ人物であることが不正を招いた。執行の長は最高経営責任者(CEO)、監督機関の長は議長とすべきだ」と述べ、会長職の廃止など経営体制の見直しを求めた。特別委は報告書の中で、カルロス・ゴーン被告に権限が集まった反省から、取締役会の議長に社外取締役をあてるなど執行と監督の分離を明確にするよう提言した。取締役会は過半を独立性を持つ社外取締役にした上で、今年6月末までに「指名委員会等設置会社」に移行するよう促した。具体的には、人事の決定権が集中するのを防ぐため、過半を社外取締役で占める指名委員会を設置。経営陣の報酬を決める報酬委員会については、全員を社外取締役で構成する3~5人の組織をつくるよう求めた。日産では意思決定の権限がゴーン元会長に集中していた。特別委は各取締役が経営会議体に関するすべての資料やデータにアクセスできる体制の構築も提言した。特別委は27日、日産の取締役会に提言内容を説明した。日産の西川広人社長兼CEOは同日夜、「大変重い提言だった。これから取締役会で検討し、できる限り実現したい」と述べた。
●西川氏の責任論、早々に封印
 企業統治(ガバナンス、総合2面きょうのことば)改革の専門委員会の焦点は経営の監督と業務執行の分離が主なテーマになった。約100日に及んだ議論を検証すると、ゴーン元会長の暴走を許した西川広人社長兼最高経営責任者(CEO)ら現経営陣の個人の責任には当初から踏み込まない方向が決まっていた。日産の現経営体制の安定を優先した面が浮かび上がる。「ガバナンス改善特別委員会」の発足は2018年12月。日産がゴーン元会長の一連の問題の原因を分析し、企業統治の改善策を提言してもらうのが目的だった。筆頭株主の仏ルノーが日産会長職の指名を要求し対立が激しくなる中、日産が19年3月末に設定した特別委の提言まで時間稼ぎする効果もあった。「ルノーとの関係を含め考えないといけない。まず第三者の観点から問題を明確に指摘してもらう」。12月17日に記者会見した西川社長は特別委に幅広く議論してもらう考えを示した。「ルノーとの資本関係がいびつ」「現経営陣の責任をどう考えるか」。各委員らは1月に開いた会合で何を討議の対象とするか意見を交わした。共同委員長に就いた榊原定征・前経団連会長が議論を主導し、「この委員会は個人の責任追及のためにあるわけではない。人が代わっても企業統治で問題が生じないようなシステムにしないと意味がない」との意見で一致。早々に、ゴーン体制を支えた西川社長ら個人の責任論は議論の対象から除外された。当初は一部委員から「ルノーとの資本関係についても言及すべきだ」との意見が出たが、「ルノーを刺激する必要はない」との意見が多数派を占めた。議論はいかに権限を分散させるかが中心で、日産の現体制を安定させる方向で進んだ。紛糾したのが日産会長職の扱いだ。「取締役会の議長でない会長職は欧州では聞いたことがない」。本格的な討議が始まり会長と議長の分離が議論になった2月15日の会合。委員の一人であるルノー出身の日産社外取締役、ジャンバプティステ・ドゥザン氏から強い異議が出された。欧米で会長は監督トップを指す議長とほぼ同義。議長と分離しては会長の役割が曖昧になる。別の委員は反論する。「ルノーは権限集中を続けたいと思われていいのか」。ある委員は「監督と執行が同じなんて警察と泥棒が同じようなものだ」と例える。理由はある。ゴーン元会長時代の日産取締役会の平均会議時間は20~30分で短いときは9分。「これで異議はないですね」。ゴーン元会長が鋭いまなざしで取締役メンバーを一瞥(いちべつ)し発言すると周囲はうなずく。議論は深まらない。監督機能の不全に対する委員の問題意識は強く、公表された報告書がその一端を示している。「ゴーン氏は取締役会において質問や意見が出ることを嫌い、意見などを述べた取締役や監査役を会議後自室に呼んだり、いわゆる『うるさい監査役』については再任しなかった」。一方、紛糾した2月の会合後、委員は非公式の会合を重ね「日産に会長はいらない。取締役会議長は社外から」との認識でまとまった。この話を聞いたルノーは会長職の指名にこだわらない方針に傾く。ジャンドミニク・スナール会長は3月12日の記者会見で「日産の会長になろうとは思っていない」と明言した。特別委は日産がルノーの要求をかわし、結果的に両社の直接の対立を緩和する役割も果たした。ルノー側もスナール氏が日産の代表権を持つ取締役に就き、副議長という新設ポストに就く実利をとった。報告書は「活動は社内では不可侵領域化していた」とゴーン元会長を批判した。だが元会長は強力なリーダーシップで「ぬるま湯」だった日産の系列解体を迫り、業績をV字回復をさせたのも事実。日産に来た当初は現場の意見を拾い上げ改革プランを実行したが、途中から独裁的に振る舞うようになった。西川社長らの責任を不問にしたまま新体制に動く日産に対し、業界内では「不正を見逃した人物が新体制の中心にいることには違和感がある」との批判が残る。企業統治を機能させながら迅速に意思決定する必要もある。仕組みはできても、経営幹部らがどう運用するかが重要だ。27日にルノーとの提携合意から20年の節目を迎えた日産。カリスマ退場後の道筋はまだ見えない。

*3-3:https://ryukyushimpo.jp/kyodo/entry-898421.html (琉球新報 2019年4月3日) ルノー、年金と一部報酬を不承認 ゴーン前会長巡り
 フランス自動車大手ルノーは3日、取締役会を開き、ロイター通信によると、前会長カルロス・ゴーン被告に対し、昨年の報酬のうち業績などに応じた分の支払いや年間約77万ユーロ(約9600万円)の年金支給を認めないことを決めた。フランス・メディアによると固定給100万ユーロは既に支払われているという。公共ラジオ、フランス・アンフォは、前会長が1月に辞任した際、年金受給権を主張したと報道。生涯受け取れることになっているとしていた。ルノーは2月の取締役会で、退職に伴う報酬などは支給を認めない方針を既に決定していた。

*3-4:https://digital.asahi.com/articles/DA3S13966549.html (朝日新聞 2019年4月5日) 資金還流、複数口座を経由 ゴーン前会長、隠す意図か 14日まで勾留決定
 日産自動車の前会長カルロス・ゴーン容疑者(65)がオマーンの販売代理店に不正に支出させた日産資金を私的に流用したとされる会社法違反(特別背任)事件で、販売代理店からレバノンの投資会社「GFI」に送金する際、複数の口座を経由させていたことが関係者への取材でわかった。東京地検特捜部はこの投資会社を前会長が実質的に保有していたとみており、資金の還流を隠すための偽装工作だったとみている。関係者によると、還流した資金の一部は、GFIからゴーン前会長の息子が起業した米国の会社に流れていたとみられる。特捜部は、米国司法当局に捜査共助を要請し、検事を派遣。米当局を通じて息子の会社の口座を解析するなどし、資金の流れを調べるとみられる。特捜部などによると、前会長は2015年12月~18年7月、日産子会社「中東日産」(アラブ首長国連邦)からオマーンの販売代理店「スヘイル・バウワン・オートモービルズ」(SBA)に計1500万ドル(当時のレートで約16億9800万円)を送金させ、そのうち計500万ドル(同約5億6300万円)をGFIに還流させていた疑いがある。関係者によると、SBAからGFIへの送金は、複数の口座を経由。資金の流れを複雑にし、送金先がわからなくなるようにしていたという。GFIは15~18年、ゴーン前会長の息子が米国で起業した会社に計2750万ドル(現在のレートで約30億円)を資金援助していたという。SBAのインド人幹部がGFIの大株主となっていた。前会長は、GFIの株主や役員に名前を連ねていない。自身とGFIの関わりも隠そうとしていたとみて、特捜部はGFIの実態解明を進めている。ゴーン前会長は「容疑に根拠はなく、無実だ」などと主張。弁護人も、前会長に証拠隠滅や逃亡の恐れはなく、逮捕は不当だと主張している。
     ◇
 東京地裁は5日、ゴーン前会長に対する特捜部の勾留請求を認め、14日まで10日間の勾留を決定した。弁護側は決定を不服として準抗告する方針。
■仏政府に権利擁護求める 「日本人、外国からどう言われるか気にする」仏民放に語る
 仏民放ニュース局LCIは4日、ゴーン容疑者に対し、再逮捕直前に行ったとするインタビューを放映した。ゴーン前会長は日本の弁護士事務所から、インターネット電話を通じて記者の質問に約20分間、応じたという。
ゴーン前会長はインタビューで、「私は無実だ」と強調し、「外国で恐ろしい状況に巻き込まれている」と訴えた。「大量の間違った事実や(恣意〈しい〉的な)解釈によって絶えず名誉毀損(きそん)が起きている」と主張した。また、「日産自動車の人間が、日本でもフランスでも(ゴーン前会長をおとしめようと)働きかけてきた」と述べ、「2018年の4月か5月に、日産の会長職から追い落とせるような証拠を集める」動きが起きたと振り返り、日産内部での陰謀が背景にあるという見解を語った。被告として臨む裁判については「どう展開するのか、疑問を持っている」と語った。「日本人は外国からどう言われるかをとても気にする」とし、「仏市民としての私の権利が擁護されるよう、仏政府に訴えた」と述べた。日産、ルノー、三菱自動車のアライアンス(提携)にも触れ、その「将来を心配している」と話した。自身が3社の会長として束ねた体制に代わり、合議制が採用されたことを「アライアンスは3、4人で行うクラブではない」と語り、利害の対立で重要な決定がなされなくなる可能性に言及。「あっという間にアライアンスが消え入ってしまうのを恐れている」と語った。

*3-5:https://www.jiji.com/jc/v4?id=201804vahid0001 (時事 ) サッカー日本代表監督解任 ハリルホジッチ氏会見
●「誰とも何の問題もなかった」
 サッカー日本代表前監督のバヒド・ハリルホジッチ氏(65)が4月27日、東京都内の日本記者クラブで会見し、2018年ワールドカップ(W杯)ロシア大会開幕2カ月前の電撃解任について「日本をこんな形で去ることになるとは考えたことはなかった。私自身が考えつく限りの最悪の悪夢。リスペクトがないのではないか。人間として深く失望している」と語った。同氏が記者会見するのは、今月7日にパリで解任通告を受けてから初めて。会見には報道関係者約330人が集まり、同氏は予定を30分上回り、約1時間半語り続けた。会見の主な内容は次の通り。
 ◇ ◇ ◇
 (解任を通告された)7日以来、初めて私の口から話す機会となった。日本という素晴らしい国を初めて体験してきた。いろいろな物を敬う日本という素晴らしい国に来たのは、観光客、物見遊山ではない。私の手で日本のサッカーに何かをもたらせるのではないか、という気持ちで来た。日本をこんな形で去ることになると考えたことはなかった。人間として、深く失望した。日本にW杯の準備のために来て、しっかり予選を通過させた。ハイレベルなサッカーの世界で45年仕事をしてきて、監督という職業ははかないもので、どんな時だろうと何が起こるか分からない。私に通告されたことに対しては、大変失望した。私に対するリスペクトがなかった。3年間、日本代表チームのためにいろいろな仕事をしてきた。それを説明したい。しっかり誇りを持って仕事をしてきた。(就任)最初の日に、日本サッカー協会のJFAハウスに行った時、こう聞いた。「どこにオフィスがありますか?」と。「あなたのオフィスなんてありませんよ」ということなので、すぐにお願いした。日本のサッカーの歴史で初めてだったようだ。毎日オフィスに出勤した。代表チームのセレクションだけでなく、毎日ミーティングをしたり、テクニカルスタッフと選手の試合の視察もした。選手一人一人の報告書、レポートをつくる。毎週月曜日は、スタッフ全員とミーティングをした。故障した選手とはすぐ連絡を取り、どういう状況かを聞いた。一人一人に、3年間ありがとうと言いたい。私の人生で、ここまでやる気があって、みんなが規律正しくやってくれるのを見たことがない。練習の中身も、選手の集中度、質の高さも本当に素晴らしく、ビッグなブラボー、ビッグなメルシーを申し上げたい。3年前から、私は誰とも何の問題もなかった。特に、選手との問題はなかった。常にコンスタントに選手たちと連絡を取り合っていた。何度、海外組の選手と電話で話しただろうか。国内組もそうだ。合宿、公式戦でもオフィスをしつらえてもらって、選手たちに来てもらって、話し合いができる場をつくった。皆さんは証人になってもらえると思うが、人前で誰か一人の選手を批判したことは一度としてない。いつも「悪いのは私、批判するならハリルを批判してくれ」と言っていた。実際、ピッチで選手たちと1対1で話す時は、ちょっと違っていた。私が何かを言いたい時は、ちゃんと面と向かって言うようにしている。こんなにストレートな物言いに慣れていない選手もいたかもしれない。でも、私はこの選手、チームに対する思い入れは強かった。

<日本版司法取引について>
PS(2019年4月8日追加):ゴーン氏逮捕事件で日産の他の関係者が罪に問われない理由は、*4-1のように、司法取引を導入した改正刑事訴訟法が2018年6月1日に施行され、日産がそれを使ったからである。司法取引とは、共犯者が犯罪解明のため警察官・検察官に対し、供述や証拠提出などの協力をすると、その見返りに検察官が、①起訴見送り ②起訴取り消し ③より軽い罪での起訴 ④より軽い求刑 等ができる制度だ。しかし、誰かを陥れるために虚偽の供述を行って冤罪を生む危険性も孕んでおり、日本の裁判所は迅速で公正な裁判を行わないため、最後に冤罪であることが証明され無罪が確定したとしても、既に数年~数十年間の不名誉な期間が経過して取返しがつかなくなっており、重大な人権侵害を引き起こす。この刑事訴訟法改正は、もともとは厚労省局長であった村木氏の無罪が確定した文書偽造事件を機に議論が始まり、冤罪を防ぐことが目的だったが、それとは逆行した改革になったものである。
 そして、*4-2のように、日本版司法取引の最初の適用事例は、三菱日立パワーシステムズと東京地検特捜部間で行われた「タイの発電所建設事業をめぐる不正競争防止法違反(外国公務員への贈賄)に関し、会社が刑事責任を免れる見返りに賄賂を支払った社員への捜査に協力する」というものだった。私は、受注に贈賄が必要な国もあるため、受注で利益を得た会社が賄賂を支払った社員を刑事罰に処する司法取引を行い、日本の検察や裁判所が国内法や国内の“社会通念”に照らして捜査や審判を行うのは、理不尽が過ぎると思う。

*4-1:https://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-728536.html (琉球新報社説 2018年5月30日) 司法取引導入 冤罪防止目的に逆行する 
 司法取引を導入する改正刑事訴訟法が6月1日に施行される。逮捕された容疑者や起訴された被告が共犯者らの犯罪解明のために警察官や検察官に対して、供述や証拠提出などの協力をした見返りに、検察官は(1)起訴の見送り(2)起訴の取り消し(3)より軽い罪での起訴(4)より軽い求刑―などができる。罪を犯した人は適正に処罰されるべきである。他人の犯罪を明かしたからといって、償うべき罪を軽減されるなどの恩恵を与えられるのはどう考えてもおかしい。対象となる犯罪は改正法で定めている薬物・銃器関連、詐欺、横領、贈収賄などのほか、3月に閣議決定した政令で独占禁止法違反や金融商品取引法違反などを加えた。薬物事件など組織犯罪捜査での効果が期待される一方、虚偽の供述で冤罪えん(ざい)を生む危険性がある。逮捕された後、刑を逃れたり、軽減させたりするために、虚偽の供述をすることは十分あり得る。検察官がうそを全て見破ることができるとも限らない。実際、共犯者とされた人物の虚偽供述が重要な証拠となり、身に覚えのない罪に問われた例がこれまでもあった。名古屋市発注の道路清掃事業を巡る談合事件で2003年、名古屋地検特捜部に逮捕、起訴された男性は虚偽の証言によって巻き込まれた。業者に予定価格を漏らしたとして逮捕された男性の部下が男性に報告し、了承を得ていたとのうその供述をしたため逮捕された。無罪が確定し、男性が非常勤顧問として職場に戻ったのは逮捕から7年が経過してからである。09年に東京都内の民家に男2人と共に押し入り、現金を奪ったとして、強盗致傷罪などに問われた男性は「身に覚えがない」と否認した。だが、共犯者とされた男が「男性から話が持ち込まれた」と供述したため逮捕された。男性が無罪を勝ち取るまでに6年もかかった。司法取引の導入によって自らの罪が軽減されることが期待されれば、冤罪の危険性がこれまで以上に高まることは否定できない。そもそも刑事訴訟法などの改正は、大阪地検特捜部が押収したフロッピーディスクの内容を改ざんし逮捕した厚生労働省元局長の無罪が確定した文書偽造事件を機に議論が始まった捜査・公判改革の一環である。冤罪を防ぐことが大きな目的だったはずだが、司法取引はそれに逆行する。検察が起訴権限を独占し、容疑者らに対して圧倒的な影響力を持っている現状で、司法取引を導入するのは危険である。検察の意に沿うストーリーを受け入れれば、起訴しないと誘導する捜査手法につながる恐れがあるからだ。司法取引はあまりにも問題点が多い。新たな冤罪を生みかねないとの懸念を払拭できない以上、司法取引制度は廃止すべきだ。

*4-2:https://www.huffingtonpost.jp/nobuo-gohara/mhps-20180718_a_23484212/ (HUFFPOST 2018年7月18日) (2018年7月17日郷原信郎が斬る!より転載) 「日本版司法取引初適用事例」への“2つの違和感” ~法人処罰をめぐる議論の契機となる可能性
 今回の事例には、二つの面で違和感を持たざるを得ない。タイの発電所建設事業をめぐる不正競争防止法違反(外国公務員への贈賄)事件で、事業を受注した「三菱日立パワーシステムズ」(MHPS)と、捜査している東京地検特捜部との間で、法人の刑事責任を免れる見返りに、不正に関与した社員への捜査に協力する司法取引(協議・合意)が成立し、今年6月に施行された刑訴法改正で導入された「日本版司法取引」(捜査公判協力型協議合意制度)の初適用事件になったと報じられている。MHPSは、三菱重工業と日立製作所の火力発電事業部門が統合し2014年2月に設立した会社であり、事業を受注したのは、統合前の三菱重工業だったとのことだ。「日本版司法取引」は、検察官と被疑者・被告人およびその弁護人が協議し、被疑者・被告人が「他人」の刑事事件の捜査・公判に協力するのと引換えに、自分の事件を不起訴または軽い求刑にしてもらうことなどを合意するものだ。導入の目的については、「組織犯罪の末端の関与者に刑事責任の軽減の恩典を与えることで、組織の上位者の犯罪について供述しやすくすること」と説明されてきた。ところが、その初適用事例が、「外国公務員贈賄」という犯罪に関して、事業上の利益を得る「会社」が免責されるのと引き換えに、犯罪行為に関わった「社員」の刑事責任を追及する方向での「取引合意」だった。「想定とは逆」であることに、違和感が生じるのも当然と言えよう。今回の事例には、二つの面で違和感を持たざるを得ない。
●法人免責が「取引合意」の対象となったことへの「違和感」
 第一の「違和感」は、MHPSと検察官との間で、「法人」の刑事責任を免れることと引き換えに、贈賄行為に関わった「社員」が刑事処罰されることに協力するという「合意」が行われたことだ。日本での法人処罰は、刑法以外の法律の罰則に設けられた「両罰規定」に基づいて行われる。両罰規定とは、「法人の役職員が、その業務に関して、違反行為を行ったときは、行為者を罰するほか、法人に対しても各本条の罰金刑を科する」という規定に基づき、行為者個人だけではなく、法人も処罰されるというものだ。この「法人の処罰」は、法人の役職員が法人の業務に関して犯罪を行った場合に、法人にも刑事責任を問うもので、行為者の責任とは別個のものと考えられている。理論上は、法人にとって、その役職員の刑事事件を「他人の刑事事件」ととらえることは可能だ。しかし、その前提は、あくまで、行為者の役職員「個人」について犯罪が成立する、ということであり、アメリカのように、行為者が不特定のままでも「法人の行為」について犯罪成立を認め、法人を処罰するというのではない。自然人個人に対する「道義的非難」が中心の日本の刑事司法では、「意思も肉体も持たない抽象的存在」の「法人」に対する処罰は、重要視されてはこなかった。日本法での法人処罰は、法人の役職員個人について犯罪が成立することを前提に、副次的に行われるものに過ぎず、法人に対する罰金の上限も、3億円から5億円程度にとどまっている(昔は個人の上限と同じ500万円程度だったが、90年代から、独禁法等でようやく「行為者個人と法人との罰金額の上限の切り離し」が行われ、数億円への引き上げが進められていった)。法人に対して数百億円、時には数千億円もの罰金が科されることもある米国などとは大きく異なる。今回問題になっている「外国公務員贈賄」の不正競争防止法違反の法人に対する法定刑の上限も3億円に過ぎない。「法人処罰」を、行為者個人の処罰とは独立したものと位置付けるのであれば、当然、その責任の根拠も異なるはずである。従来の見解では、法人の責任の根拠は、行為者に対する選任監督上の過失とされてきたが、実際に、行為者の犯罪行為が認められた場合に、法人については選任監督上の過失がないとして免責された例はほとんどない。実際には、両罰規定がある罰則によって役職員が処罰されると、ほぼ自動的に法人も処罰されてきたのである。つまり、「個人処罰」中心の考え方の日本法による「法人処罰」は、独立した制裁としての位置づけが十分なものではなく、それ自体の制裁機能も、決して十分なものではなかった。「司法取引」によって処罰が軽減されることの理由は、他人の犯罪への捜査・公判に協力することで、その責任が軽減されるということであろう。「法人」としてのMHPSが捜査・公判に協力することで法人の責任が軽減され、一方で行為者「個人」が処罰されるというのであれば、MHPSの捜査・公判への協力を、「法人自体の責任を軽減する要素」として評価したことになる。そのような「法人固有の責任の評価」は、少なくとも、これまでの法人処罰では、ほとんど行われて来なかった。このような日本法による「法人処罰」の実情からは、法人の処罰を免れることと引き換えに、行為者たる役職員「個人」の刑事責任の追及に協力する「取引合意」が成立するというのは、想定し難いことだった。しかし、今回の件は「両罰規定によって処罰され得る『法人』」が、役職員「個人」の処罰に協力することの見返りに、法人の処罰を免れさせてもらうという取引だ。MHPS側が、法人に対する処罰を免れることを優先したのは、僅か上限3億円に過ぎない法人処罰自体より、法人が処罰されることに伴って国際協力銀行(JBIC)等の融資が停止されるなど、他の制裁的措置がとられることを恐れたからだと考えられる。しかし、そのような「企業そのものが被る事業上の不利益」を免れるために、行為者の役職員「個人」が刑事処罰を受けることに積極的に協力する「取引合意」を行うことが、果たして、企業として適切な対応と言えるのだろうか。
●外国公務員贈賄の処罰をめぐる特殊な問題
 もう一つの「違和感」は、法人に対する処罰を免れさせる見返りに、行為者たる社員の側の刑事責任を追及することに協力する「取引合意」が、「東南アジアの国での外国公務員贈賄」という「特殊な事情から発生することが多い犯罪」について行われたことだ。東南アジア諸国では、古くから、公務員が公務の受益者から直接報酬を受け取る慣習がある。それは、米国等でのレストラン等で従業員が客からチップを受け取るのが慣習化しているのと同様に、その国の公務員制度に深く根差しているもので、それを禁止する法律があっても容易に解消できるものではない。そのような慣習が存在するところで行う事業のために現地に派遣される社員は、事業を進める中で、現地の公務員から賄賂を要求された場合に、極めて辛い立場に立たされることになる。要求どおり賄賂を支払わなければ、有形無形の不利益が課され、事業の大幅な遅延というような事態に追い込まれることは必至だ。海外での事業では、契約時に「履行遅延の場合の損害賠償の予定」(リキダメ)が合意されていることが多く、事業が遅延すると、そのリキダメの発生が予想されることで、その会計年度末に多額の損失引当金を計上せざるを得ないことになる。現地に派遣されている社員は、事業の遅延を生じさせないよう、本社側から強く要求され、一方で、現地の公務員から賄賂を要求され、それに応じないと事業が遅延するというジレンマに立たされることになる。社員に「コンプライアンスの徹底」を指示しても、社員を窮地に陥れるだけだ。贈賄リスクを低減するために、現地のコンサルタントを活用して、「賄賂の支払」が直接的にならないようにする弥縫策がとられることもあるが、それは、根本的に問題をなくすものではない。結局のところ、そのような東南アジアの国で事業を行う場合には、公務員側から賄賂を要求されるリスクが相当程度あることを前提に事業を行うか否かの意思決定を行わざるを得ないのである。今回のMHPSの事件に関しては、2013年に、三菱重工業が、タイの民間の発電事業者から発電所建設事業を受注し、その後、同社と日立製作所の火力発電事業部門が統合されて2014年にMHPSが設立された後、同社の社員が、現地の公務員から現金を求められ、担当社員らが数千万円を支払ったということのようだ。まさに、タイという東南アジアの国で、そのような事業を行うのであれば、意思決定を行う際に、当然、現地公務員による賄賂要求のリスクを認識した上で決定する必要があったのであり、事件は、そのような当然のリスクが顕在化したものに過ぎない。発生することが分かっていたリスクにさらされ、ジレンマに悩んだ末に、賄賂を贈った社員を処罰することと引き換えに、会社に対する制裁を免れさせるというのは、納得できることではない。今回の「取引合意」によって、今後、贈賄の実行行為者の社員側に対する捜査が行われることになるが、最終的にどのような刑事処分が行われるか、現時点ではわからない。担当取締役も贈賄を承認していたという報道もあり【(日経)海外贈賄疑惑、元取締役が承認か 納期遅れ回避で】、「末端の社員」ではなく、取締役クラスが処罰されることになるかもしれない。「トカゲのしっぽ切り」にはならない可能性もある。しかし、担当取締役が承認したとしても、それも、上記のようなジレンマに悩んだ末で判断したことは同様であり、その取締役も、贈賄行為によって個人的利益を受ける立場ではないはずだ。本来処罰すべきは、利益が帰属する法人自体であるのに、逆に役職員個人が処罰されることに問題があるのである。
●日立製作所の南アフリカでのFCPA違反との関係
 MHPSがこのような「取引合意」を行ったことの背景に、経営統合前に日立製作所が起こした南アフリカでのFCPA(Foreign Corrupt Practices Act、海外腐敗行為防止法)違反の事件の影響が考えられる。外国公務員贈賄問題の専門家である北島純氏の【北島 純の「外国公務員贈賄罪研究会」ブログ】によると、この事件は、日立製作所の南アフリカ法人が、南アフリカの与党「アフリカ民族会議」(ANC)のフロント企業と合弁で現地子会社を設立し、その後、日立製作所は二つの発電所建設を政府系企業から受注することに成功、フロント企業に「配当」として500万ドル、「成功報酬」として100万ドルを支払った。このうち「consulting fees」名目で計上した「成功報酬」分は、実質的には「外国政党」への支払いであったのに、適切に会計処理をしなかったということで、FCPAの会計条項違反で日立製作所は起訴され、1900万ドル(約23億円)の制裁金を払う和解に合意したというものだ。この日立製作所の事業を引き継いだのが、三菱重工業の発電事業部門との経営統合で設立されたMHPSだった。この事件は、「企業の外国の政党への支払」がFCPAの会計条項違反とされたもので、日本の「外国公務員贈賄罪」には当たらない。ただ、今回のタイでのMHPSの贈賄事件も、その支払の会計処理が、FCPAの会計条項違反となる可能性もあり、同社としては、FCPA違反も含めて企業としての責任追及を最小限にするため、日本法での法人処罰を免れようとした可能性もある。しかし、今回の「取引合意」で法人が処罰を免れることができるのは、あくまで日本法に関するものであり、FCPA違反も含めて免責されるのではない。日本法で役職員が起訴された場合、それを受けて米国司法省の捜査が行われ、法人がFCPA違反で起訴される可能性は残る。
●「司法取引」初適用事件の「法人処罰」をめぐる議論への影響
 今回、MHPSが検察官との「司法取引」に応じたことが、企業の利益を優先して社員を検察に売り渡したようなイメージを持たれたことで、社会にマイナスのイメージを与えたことは否定し難い。そして、それによって守ろうとした「企業の利益」も、FCPA違反も含めて考えた場合に、最終的に、本当に利益になるのかは疑問だ。また、検察にとっても、今後の捜査の結果が、懸念されているような「トカゲのしっぽ切り」で終わった場合には、経済界にも注目されて導入した「日本版取引」のデビュー戦としては、お粗末極まりないものとなり、制度自体のイメージダウンにつながりかねない。しかし、一方で、今回、「日本版司法取引」の初適用事例で「法人処罰」が対象となったことは、これまで、ほとんど注目されて来なかった日本法における法人処罰に初めて焦点が当たるという面では、大きな意義を持つものと言えよう。前述したように、「法人処罰」は、自然人個人に対する道義的責任が中心の日本では、これまで、あまり注目されて来なかった。個人の行為を離れた「法人自体の犯罪行為」は認められず、法人固有の責任を評価することも殆ど行われて来なかった。そうした中で、今回の「司法取引」で「法人が免責された」ということは、まさに、法人が自社の事業に関して発生した犯罪について積極的に内部調査を行って事実を明らかにし、その結果に基づいて捜査当局に協力することが法人の責任を軽減するものと評価されたことになる。それは、「法人処罰」に対する従来の運用を大きく変える可能性につながるものと言える。本来、違法行為や犯罪行為に対する制裁・処罰は、全体として、その責任の程度、悪質性・重大性のレベルに応じたものでなければならない。しかし、日本では、企業や法人に対する制裁は、「行政上の措置としての課徴金」と「刑事罰」が併存し、その関係についての理論的な整理も必ずしも十分ではなく、制裁の在り方についての総合的な研究は、これまで殆ど行われて来なかった。(行政上の制裁を含む法人に対する処罰の在り方についての殆ど唯一の著作と言えるのが、刑法学者の佐伯仁志教授の【制裁論】(有斐閣2009年))。
●「組織罰」としての「業務上過失致死傷罪」への両罰規定の導入をめざす動き
 今回の事件が、法人に対する制裁の在り方についての議論の契機になるとすると、そこで避けては通れないのが、従来、特別法犯に限定されてきた「両罰規定」を、刑法犯にも導入することの是非の検討である。例えば、「談合罪」など、刑法犯の中にも「法人の利益」のために行われることが多い犯罪があるが、それらについても法人を処罰する規定がないことが、かねてから問題とされてきた。それに関して、既に、具体的な動きとなっているのが、重大事故の遺族の方々が中心となって行っている、「業務上過失致死傷罪」に対する「組織罰」実現をめざす活動である。2005年の福知山線脱線事故、2012年の笹子トンネル事故など、多くの重大事故の遺族の方々が中心になって、当初、イギリスで導入された「法人故殺罪」のような「法人組織自体の行為についての刑事責任」を問うことをめざして、2014年に「組織罰を考える勉強会」が立ち上げられた。2015年10月、その会に私が招かれた際、日本の刑法体系からは実現が容易ではない「法人処罰」ではなく、現行法制上可能な、業務上過失致死傷罪についての「両罰規定」を導入する刑事立法を行うことを提案したところ、その趣旨が理解され、それ以降の会の活動が、「両罰規定」によって重大事故についての企業の責任を問うことをめざす、「組織罰を実現する会」に発展していった。現在も、立法化をめざす積極的な活動が続けられている。この「業務上過失致死傷罪」への「両罰規定」の導入に関して最も重要なことは、法人の業務に関する事故について、法人役職員に同罪が成立する場合には、法人にも両罰規定が適用されるが、「当該法人における安全確保のためのコンプライアンス対応が事故防止のために十分なものであったにもかかわらず、予測困難な逸脱行為によって事故が発生した場合には、法人を免責する」ということである。事故防止のための安全コンプライアンスが十分に行われていたことを、法人側が立証した場合には免責されるとすることで、刑事公判で、企業の安全コンプライアンスへの取組みが裁かれることになるのである。今回の司法取引初適用事例での法人の免責は、内部調査によって犯罪事実を明らかにし、捜査・公判に協力するという「法人の事後的なコンプライアンス対応」を評価し、責任の軽減を認めるものであり、法人の固有の責任を独立して評価するという発想に基づくものだ。それは、事故に至るまでの加害企業の安全コンプライアンスへの取組みを実質的に評価して法人の責任の減免を決するという、「組織罰を実現する会」がめざす両罰規定の導入にとって、追い風になるものと言えよう。今回の司法取引初適用事例が、あらゆる面で「法人処罰」をめぐる議論を活性化することにつながることを期待したい。

<監査のビッグ4について>
PS(2019年4月9日追加):「マッケソン・ロビンス会社事件(米国で1938年に発覚した巨額粉飾決算事件)」は、これを機に現金等の実査、棚卸資産の立会、売掛金の確認等の外部証拠の入手を法定監査に義務付けた監査史に残る事件で、この会社の法定監査を行っていた監査人はPW(PwCの合併前の名称)だった。英国発祥のPWはそれだけ歴史と由緒のある老舗監査法人で、私はフィーリングも一致したので公認会計士二次試験合格後にPWに入ったが、現在は、グローバルネットワーク世界158カ国・721拠点、従業員250,930人、業務収入41,280百万米ドルの大法人となっている。また、ずっと昔、ある銀行がPWに監査を依頼したところ、監査が厳しいので自らは翌年から監査法人を変更し、PWにはその銀行の貸出先を次々と紹介したため、PWの関与先には製造業が多く、KPMGの関与先には銀行が多いというエピソードもある。
 そのような中、*5に「①『監査ビッグ4』の解体論が英で浮上」「②企業の会計監査からコンサルティングまで幅広く手掛ける巨大法人の寡占が監査不信や会計不祥事の一因」「③監査と非監査業務を完全な別法人として解体することを提言」「③大手4グループの寡占が問題なので占有率に上限を設けるなどの競争政策を提言」 「④外部監査人KPMGが『無限定適正意見』を出し続けながら経営破綻した建設大手カリリオン事件が改革論に火を付けた」「⑤こうした動きの背景には利益相反のリスク軽減や監査レベルの向上に厳しい競争が不可欠という視点がある」「⑥経営サイドに立って経営や税務戦略を支えるコンサルティングを同時に行えば、外部からのチェック役であるべき財務監査が甘くなる」などが書かれている。
 このうち①②③については、ビッグ4は日本でも世界でも監査・税務・コンサルティングサービスは別会社で行っており、出資者兼経営者のパートナーも別の人であるため、誤った指摘だ。また、私自身は、監査・税務・コンサルティングの全部を経験したが、これは勉強のために別会社間を移動して経験させてもらったからであり、こういう公認会計士はむしろ少ない。
 また、④については、KPMGが何らかの理由で甘かったのかもしれないが、それとPwCなど他の監査法人とは別であるため、全体を改悪するのは止めるべきである。例えば、⑤については、分割して競争が激しくなれば監査レベルの向上に繋がるわけではなく、小さくて被監査会社との間の力関係が弱く、少ない被監査会社に利益を依存している監査法人ほど、被監査会社を失いたくないため、監査が甘くなるという実情がある。
 さらに、⑥については、債権者・株主・投資家に向けて財務諸表を作成する責任は経営者にあり、監査は経営者が作成した財務諸表がお手盛りでないことを証明して被監査会社から報酬をもらうもので、その産業の背景・経営者の考え方・組織の動きなどがわかっていなければ、監査上のリスクもよくわからない。そのため、経営者はじめ担当者とのコミュニケーションや経験の積み重ねは大変重要であり、それと監査が甘くなることとは別なのである。

*5:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190406&ng=DGKKZO43418360V00C19A4DTA000 (日経新聞 2019年4月6日) 「監査ビッグ4」 英で解体論、議会が寡占問題視 質向上へ競争促す
 「ビッグ4」と呼ばれる巨大監査法人の改革論議が英国で山場を迎えている。英議会の委員会はこのほど監査と非監査業務を完全分離する「解体」に踏み込んだ提言をまとめた。大手4グループの寡占を問題視し、占有率に上限を設けるなどの競争政策への支持も表明した。相次ぐ企業の大型破綻や会計不祥事を踏まえて抜本改革に動く。英国の方針は世界の監査業界に影響を与えそうだ。「監査と非監査事業の分離へ、ビッグ4の完全な組織的解体を推奨する」。英下院の民間企業・エネルギー・産業戦略委員会は、改革を提言するリポートで言い切った。企業の会計監査からコンサルティングまで幅広く手掛ける巨大法人による寡占が、監査不信や会計不祥事の一因になっていると指弾した。英国で改革論に火を付けたのが建設大手カリリオンの経営破綻だ。2017年7月、通期決算の発表から約4カ月で巨額損失が表面化し、18年1月に破産申請した。財務諸表に注意喚起なしのお墨付きである「無限定適正意見」を出し続けた外部監査人のKPMGに対して批判が噴き出た。同社を含む4大法人をめぐっては、日本の公正取引委員会にあたる英競争・市場庁が、寡占を問題視する報告書を18年12月に発表。組織内で監査・非監査業務を分離したり、大企業に2社以上の監査を義務付けたりする改善案を挙げた。今回の英下院委の発表は、分離についてより強く踏み込んだのが特徴だ。競争・市場庁はグループ内で財務や報酬などを切り分け、運営面も分離する形態を提言した。下院委は完全な別法人として解体することも視野に入れるべきだとした。こうした動きの背景には利益相反のリスク軽減や、監査レベルの向上に厳しい競争が不可欠という視点がある。経営サイドに立って経営や税務戦略を支えるコンサルティングを同時に行えば、外部からのチェック役であるべき財務監査が甘くなるとの疑念は根強い。解体論のカギは、監査業務より非監査業務の方が総じて採算が良いという、大手グループの収益構造にある。コンサルでの稼ぎを前提として、採算割れで監査を受注していることが質の悪化や競争阻害につながっていると問題視している。英下院委の調べによると、PwCの場合、17年の英事業収入30億200万ポンド(約4400億円)のうち、監査は6億7600万ポンドと約2割にとどまる。予算比で約1割の採算割れを承知で受注した監査は約5割に上ったという。英メディアによると競争・市場庁は今後数週間で監査法人の寡占問題に関する最終報告書を公表する見通し。それを基に政府が法制化に動く。議会は大手監査法人の「解体」が今回見送られる場合も、3年後をめどに状況を見極めて再検討すべきだと提唱した。監査法人側は質を高める必要性は認めつつ、完全分離論には反発している。PwCは分離は英国の競争力をそいで「かえって監査の質の低下につながる」との声明を出した。各社は同じ企業に監査・非監査を同時に提供しないなど自主的に信頼回復に努める構えだが、当局側には自助努力は限界との認識が広がっている。日本では規制で大手監査法人は税務や戦略的なコンサルティングなどを別法人で展開している。日本での議論は監査法人の説明責任などに向けられることが多い。東芝の不正会計などを受けて金融庁は有識者の懇談会を設置。今年1月にはその提言を公表するなど監査の質向上に向けた取り組みが続いている。

<ゴーン氏の映像を見て>
PS(2019年4月10日追加):再逮捕された場合に備えてゴーン氏がとった映像を、弁護団が2019年4月9日に公開し、その動画が掲載されているHP(https://www.youtube.com/watch?v=zLRsvAjW1bI 参照)は多い。そして、①現経営陣のビジョンのなさ ②ゴーン氏逮捕は、日産・仏ルノー統合に向けた動きを恐れた幹部による「陰謀」「謀略」「中傷」であること ③現在の3社連合のリーダーシップの欠如 ④リーダーシップは必要で、妥協か独裁のどちらかしかないと考えている人はリーダーシップを理解していないこと 等が述べられ、納得できた。
 しかし、従来のメディアは、*6のように、必ず④を述べず、故意にゴーン氏に悪いイメージをつけようとしている。そして、映像を見た日産幹部は「相次ぐ不正発覚にもかかわらず一度も記者会見に出なかった」としているが、本当に必要な検査要件を無視したのなら技術部門トップと工場長の責任であり、必要でない要件を国から課されているのなら国交省・経産省に交渉してその要件をなくしてもらうのが社長と技術部門トップの仕事である。つまり、トップが頭を下げる係になり下がり、トップが頭を下げるのを見て民衆が喜ぶ姿は日本の悪しき特徴なのだ。

*6:https://digital.asahi.com/articles/DA3S13971856.html (朝日新聞 2019年4月10日) ゴーン前会長、経営陣批判 「ビジョンない。悲しくうんざり」
 日産自動車の前会長カルロス・ゴーン容疑者(65)=会社法違反(特別背任)容疑で再逮捕=の弁護団が9日公開した映像で、ゴーン前会長は発言の大半を日産の現経営陣への批判に費やした。事件は、日産と仏ルノーの統合に向けた動きが進むと恐れた幹部による「陰謀」「謀略」「中傷」だと主張。日産の業績低迷や株価下落、三菱自動車を交えた3社連合のリーダーシップの欠如を嘆いた。
■日産幹部「業績低下の責任棚上げ」
 ゴーン前会長は、逮捕前の昨年9月の日産の取締役会で、3社連合の「アライアンス(提携)を深める議論を進めていきたい」と発言。これを機に日産側は独立性を脅かされることへの危機感を強めたとされる。ゴーン前会長は映像で「統合、すなわち合併に向けて進むことが、ある人たちに確かな脅威を与え、それがゆくゆくは日産の独立性を脅かすかもしれないと恐れたのです」と分析し、この「恐れ」が「陰謀」につながったと主張した。約7分半の映像のほぼ半分、約3分50秒を費やして日産の現経営陣への批判を展開。「この2年で3回の業績の(下方)修正があり、何度も不祥事(検査不正問題)があった」とも指摘し、「現経営陣に問題があった」からだと断じた。「株価の下落と業績の低迷を目にしながらも、幹部たちは『あれはしない、これはしない』と言って、今後何をするのかも言わない」「業績を向上させるビジョンもなく、自らを誇っている幹部たち。それを見ることは非常に悲しい。うんざりさせられる」と嘆く一方で、自らを「20年かけて企業価値を創造し、ブランドを強化してきた人間」だと表現。経営陣が「退廃して無頓着になっているのを目にすることは本当につらい」とも述べた。撮影時には経営幹部の実名を挙げて批判していたが、映像では「自分勝手な恐れを抱いたために、会社の価値を毀損(きそん)している人たち」と述べるにとどめた。3社連合はゴーン前会長に権限が集中していた統治を改め、3社連合を統括する新組織を設立して12日にパリで初会合を開く。3社の首脳の合議による運営に移行することに対し、「テーブルを囲んでコンセンサス(合意)で意思決定していくのは、自動車業界ほど競争の激しい産業においては何らのビジョンも生み出さない」と述べ、リーダーシップの必要性を訴えた。映像を見た日産幹部は「想定の範囲内で影響はゼロ。業績低下の責任はゴーンにもあるのに、それを棚上げするあたりが、いかにも言いたいことだけ話すゴーンらしい」と冷ややかに受け止めた。検査不正に触れた発言にも反論。相次ぐ不正発覚にもかかわらず一度も記者会見に出ず、「対応に追われている最中に、レバノンの高級住宅の改装費用を早く送れと幹部にメールしていた。批判する資格はない」と憤った。
■ゴーン前会長の発言のポイント
 ・全ての嫌疑について私は無実だ
 ・事件は、日産とルノーの経営統合に恐れを抱いた日産経営陣による「陰謀」だ。数人の
  幹部が「汚いたくらみ」を実現させた
 ・日産の業績低下を心配している。経営陣には業績を向上させるビジョンがない
 ・3社連合の提携を強化するビジョンもない。合議による意思決定はビジョンを生み出さ
  ない。リーダーシップの発揮が必要だ
 ・公正な裁判を強く望む。裁判で無実を証明したいと切に願っている

<乗り物は電動化すること>
PS(2019年4月11日):日本の批判的世論は、①報酬が高すぎるからいけない ②ヨットを持っているからいけない ③ヴェルサイユ宮殿で挙式したからいけない など、「個人の生活が質素でないからいけない」という価値観に端を発したものが多い。
 しかし、①の報酬は成果に連動するのが世界の常識で、その人の実績に応じて決めるのが当たり前であるため(そうでなければ勤務年数や学歴で報酬を決めざるを得なくなる)、高報酬や好待遇を求めるのに実績を主張するのは当然であり、報酬がその人の評価なのである。また、(サラリーマンには覚えがあると思うが)従業員毎に報酬を開示すれば会社がひっくりかえるのと同様、取締役の報酬を個人毎に開示するのも有害な面が多いと、私は考える。
 そして、②については、ルノー・日産・三菱グループなら、会社所有の航空機・ヨット・船舶を持ち、取締役や技術者を載せて、それらを電動化しながら乗り心地をよくするよう、センスを磨いて頭を絞れば、次の人気商品になって世界で売れるだろう。そのため、日本の一般人にとって贅沢に見えることでも、商品開発に有意義なことは多々ある。
 なお、③については、特にプライバシーであり、めざしを食べようとヴェルサイユ宮殿で再婚の挙式をしようと個人の自由であるため、報道する必要もない。つまり、誰にでも「質素がよい」というワンパターンの価値観を押し付けるのはよくないと思うのである。


中国のEVタクシー BMWのEV  ジャガーのEV  ホンダのFCV   日産リーフ

(図の説明:左の写真は、整然と並んでいる中国の現役EVタクシーで、日本も営業車は早くEVにすべきだ。また、中央の2つのように、BMWやジャガーもスマートなEVを出しているし、右から2番目のように、ホンダもFCVを出した。しかし、1番右の日産リーフは、いつまでも後部が短く、エコなだけでスマートではない。さらに、このような中、「ツール・ド・九州2019 in 唐津」が開催されるそうだが、ラリーも排気ガスを出すガソリン車ではなく、EVかFCVの競技にすべき時代だ。そのため、夏に世界のEV・FCVを招いて北海道の名勝を周るラリーを行い、世界に放映したらどうかと思う)


   EVバス       燃料電池航空機   蓄電池電車  ゴーン氏のシャチョウ号

(図の説明:1番左は、既に実用化されているEVバスである。また、左から2番目は、IHIが米ボーイング社と共同で開発した燃料電池航空機で、右から2番目は、蓄電池電車で電車の脱電線化を実現できそうなのだが、今一つデザインが悪い。一方、1番右のゴーン氏所有のクルーザーはイタリアのアジムット・ベネッティ社製で、動力は軽油だがデザインは完璧だ。そのため、このようなクルーザーを燃料電池や蓄電池で動くようにすると、ヨーロッパ・アメリカ・オーストラリアはじめ世界で売れそうだ)

*7:https://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201904/CK2019040902000126.html (東京新聞 2019年4月9日) 還流資金で私的投資か ゴーン前会長 息子の投資会社利用?
 日産自動車の資金約五億六千万円を自身に還流させたとして、会社法違反(特別背任)容疑で再逮捕された前会長カルロス・ゴーン容疑者(65)が、自身のペーパー会社を介して日産資金を流入させたとされる息子の投資会社(米国)の資金で、私的な投資をした疑いがあることが関係者への取材で分かった。東京地検特捜部は、実質的に日産の資金で個人的な投資をしたとみている。ゴーン容疑者は、日産子会社「中東日産」から二〇一五~一八年、中東オマーンの販売代理店「SBA」に千五百万ドル(約十七億円)を支出し、うち五百万ドル(約五億六千万円)を自身が事実上保有するレバノンのペーパー会社「GFI」に還流させ、日産に損害を与えたとして逮捕された。関係者によると、SBAから別の複数のペーパー会社を経由してGFIに還流された資金は、息子が最高経営責任者(CEO)を務める米投資会社「ショーグン・インベストメンツ」や、妻が代表を務める英領バージン諸島の会社「ビューティー・ヨット」などに流れたとされる。ビューティー社の資金は高級クルーザー「SHACHOU(社長号)」の購入費に充てられた疑いが持たれている。ショーグン社の資金の一部は、ゴーン容疑者の投資に充てられていた可能性があるという。特捜部は経緯を把握するため、息子に説明を求める検討をしているが、米国在住で日本の司法権は及ばない。そのため米国に捜査共助を要請し、任意で事情聴取をしてもらいたい意向だが、実現は不透明という。

<リーダーもワンパターンではないこと>
PS(2019年4月12日追加):*8は、「①ゴーン氏が強欲で自己中心的だとして、推定無罪の慎重性に欠けている点」「②リーダーは、自己中心的かサーバント型の二者択一しかないとしている点」「③会社によって、必要なリーダーシップは異なることを無視している点」「④日本企業は世界の中で、社員の経営参加や従業員の支援をよく行っている方であることを知らない点」「⑤自分の結論を導くために、状況の異なる外国の大家の理論を都合よく引用し、引用する際に歪めた解釈をしている点」で誤っている。
 このうち①については、これまで述べてきたとおりなので詳細を省くが、こんなことも知らないとは見識が低い。また、③については、専門能力の高い社員を活用する知識生産型のビジネスで、構成メンバーが意見を聞くに足る人である場合には重要だが、業種・メンバー構成・その時の状況によってこの加減は異なり、それを判断するのも経営者やリーダーの能力だ。
 そのため、②の「リーダー(経営者)は、自己中心的かサーバント型の二者択一」としているのは全くの誤りで、経営者は生産物の付加価値を上げ、従業員に相応の給与を支給しつつ利益も挙げ、会社が存続できるようにすることが重要で、すべてはそのために行われるのである。
 従って、④のように、単に社員の経営参加や部下の支援を提唱すればよいのではなく、これらは会社の製品の付加価値と生産性を上げるために行われなければならないし、日本企業は基本的には参加型である。そして、自動車産業などの製造業には階層の多すぎないヒエラルキーが必要で、ヒエラルキーがあっても現場との情報のやりとりは重要なのである。これは、公務員にはピンとこないかも知れないが、経営学の基本だ。
 なお、⑤は、「日本では上意下達傾向が強いが、新たなリーダー像には部下の支援が不可欠で、経営に参加し支援する従業員で業績が向上するので、浸透に工夫が必要だ」という自分の結論を合理化するために、日本の現状や企業毎に異なる実態を無視し、これまでトップダウンの傾向が強かった外国の大家の理論を都合よく引用している。しかも、歪んだ解釈をしているので科学的とは言えず、私に反論したければ、日本企業に関してどういう調査を行い、外国企業とどう比較してこの結論を導き出したかを明らかにすべきだ。何故なら、私は経営学・経済学を勉強した上で、日本の大中小企業や外国企業を数多く見て言っているからだ。そのため、もし「女は経済・経営・ビジネス・リーダーシップについて知らず、論理に弱くて感情的だ」などと思っていたとすれば、それは女性蔑視そのものである。
 さらに、有能な個人は上から一方的に指導するというのも変な決めつけであり、再生医療・電気自動車・ネットなどの新しい事業は最初は一人の思いつきから始まったもので、思いついた人は各方面の勉強をし情報も収集した筈だ。が、そのシーズを日本は育てられず、外国に持って行かなければ形にならないのは、このような変な言動が足を引っ張るからにほかならない。

*8:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190412&ng=DGKKZO43619610R10C19A4KE8000 (日経新聞 2019年4月12日) 従業員視点の新リーダー像、京大教授 若林直樹氏
○新たなリーダー像には部下の支援不可欠
○経営に参加し支援する従業員で業績向上
○日本では上意下達傾向強く浸透に工夫も
 昨今の経営者の不祥事を見るにつけ思うのは、リーダーは有能であれば、自己中心的で良いのだろうかということだ。事実、研究の世界でも経済や社会の変化の中でリーダーシップのあり方について反省が進んでいる。有能な個人が上から一方的に指導するスタイルから、社員の参加や支援を求めるスタイルへと関心が変わってきているのだ。英ダーラム大学教授のロバート・ロード氏らによると、リーダーシップ研究としては従来型は多くはなく、社員の経営参加や部下の支援を求める参加型・支援型リーダーシップへの注目が高まってきている。
背景には、先進国での産業が大量生産型から知識集約型へと転換する中で、企業組織も構造転換を迫られている現実がある。米アリゾナ州立大学名誉教授のロバート・クレイトナー氏らは、リーダーシップの見直しを促す組織変化の要因として3つを挙げる。第一に、チームで行う業務が増えてきたため、チーム全体として業績を上げる仕組みが重要になった。第二に、事業がヒエラルキー組織ではなくプロジェクト組織で行われるようになり、社員や関係者の関与が重要になった。第三に、専門能力の高い社員を活用する知識生産型のビジネスが増えてきた。コンサルティングビジネスや製造業のサービス化はその典型である。そのため、部下や同僚たちが創造性や専門性を発揮し、経営や事業、製品・サービスの革新に主体的に取り組むことを勧めるリーダーシップへの関心が高まっているのだ。参加型・支援型のリーダーシップの研究者は、従来型のリーダーシップが個人に頼りすぎていると問題視している。表のように、従来型リーダーの研究では有能な個人の特性や能力、働きに注目しているが、個人の価値観で意思決定することや上意下達であることは前提条件となっていた。そこでは、リーダーの動機付けが利己主義的であることも暗に認められてきた。そもそもリーダーの機能は、目的達成のために組織やチームをまとめて動かすことにある。だがリーダーがあまりに強い利己主義を表した場合、社員も会社も本当についていくだろうか。参加型・支援型のモデルはこうした反省から、フォロワーシップ研究と関連して、従業員視点に立つ水平的なリーダーシップのあり方を示そうとしている。米デポール大学准教授のグレース・レモン氏らは、リーダーは本来、組織や社員の能力の発揮や成長を推進するという利他的な動機を持っているとする。その上で社内コミュニティーの発展に貢献するような行動分析の重要性を指摘した。これはリーダーが社員から支持を得て、自分のリーダーシップに正統性を得る仕組みの検討でもある。参加型・支援型の典型的なリーダーシップ理論として、シェアード・リーダーシップ、サーバント・リーダーシップの二つのモデルがある。それぞれの研究を検討しながら、水平的で利他的なリーダーシップのモデルの特徴を見てみよう。シェアード・リーダーシップは、チームのメンバーに意思決定や貢献への積極参加を促す、参加型リーダーシップの代表的モデルである。もともとはチーム、特に自己管理型チームの業績を上げるメカニズムの研究から発展してきた。経営コンサルタントであるクレイグ・パース氏らによると、チームのメンバーが組織やチームの目的達成のために、チーム内で相互に導き合うように影響し合う活動の仕組みであるとする。米ワシントン大学教授のブルース・アボリオ氏らによれば、集団の結束力、組織におけるメンバーの利他的貢献(組織市民行動)、チーム業績への貢献を引き出すことができる。米サザンメソジスト大学客員教授のジェイ・カーソン氏らは、こうした参加型リーダーシップがチームの業績を上げる条件として、チームを指導する外部の上司の役割も重視する。内部で目標の共有や相互支援、発言を促進するだけではなく、チームを管理する外部の経営者や管理職のコーチングも業績に影響する。近年の経営者や管理職の不祥事の多発は、リーダーの態度の個人中心性、利己性、独善性の批判につながっている。こうした態度のリーダーは、トラブルの際に、自己保身のために粉飾決算、社内不正、品質偽装を積極的に進めてしまう誤った姿勢を取りがちだ。国際団体である公認不正検査士協会の2006年の調査によると、社内不正の2割が経営者であるが、その1件の損失額は極めて大きく深刻である。また経済広報センターの調査でも、経営者の自己中心的な態度・発言が、消費者や市民の企業イメージ悪化に影響している。経営者がリーダーとして、会社や社会に貢献する意識が期待されるゆえんである。一方、サーバント・リーダーシップは自己よりも社員や他者に対する配慮を優先する利他的リーダーのモデルである。米AT&T出身の経営者であるロバート・グリーンリーフ氏が主唱したリーダーの経営倫理から始まる。米国でもエンロン疑惑など企業不祥事が多発した反省から、実務家を中心に発展した。このモデルでは、リーダーは従業員に対して、意見に耳を傾け、共感、配慮をするだけではなく、従業員の能力や幸福増進を支援するための積極的な取り組みを行い、社会や会社のコミュニティーづくりに貢献する。1970年代以降、米ハーバード大学などでの経営倫理の講演活動を通じて発展してきたが、近年、利他的リーダーシップモデルとして再注目されている。サーバント・リーダーシップの研究は21世紀に入り本格化している。主に、従業員の成長を支援することを通じて、組織やチームの業績を上げる効果が重視されている。米イリノイ大学准教授のジョン・ピーチー氏らの研究では、組織活動へのメンバーの利他的貢献を促進する面や、経営品質の向上、長期的な視点、部下の創造性の活性化、従業員の幸福感促進といった効果が検証されている。米ビラノバ大学教授のジョナサン・ドーハ氏らによると、サーバント型のリーダーは、利己的なリーダーよりも株主や会社の外部利害関係者への配慮が強くなるとの指摘もある。さらにピーチー氏らによると、米国だけではなく中国やインドネシアにおいても同モデルは受容可能であり、国際的な期待も高い。参加型・支援型リーダーシップは日本企業にも定着するのだろうか。国際比較組織調査のグローブによると、日本での参加型リーダーシップ浸透は世界平均より低い。コーチング会社コーチ・エィの国際リーダーシップ調査でも、米国に比べると日本と中国での上司と部下のコミュニケーションは上意下達傾向が強い(図参照)。定着には工夫が必要であろう。

<脱原発・再エネへの転換を解くのを感情論とは!>
PS(2019年4月13日追加):*9-1のように、日本がWTOに提訴していた韓国の水産物禁輸撤廃要求は逆転敗訴だったが、日本政府関係者は「①韓国の禁輸措置がWTO協定に整合的だと認められたわけではない」「②WTOの上級委は日本産食品の安全性について一審の判断を変更していない」「③一審の判断の仕方に瑕疵があったと上級委が認定したのである」「④日本産食品は科学的に安全で、日本の食品の安全性を否定したものではない」等と述べている。
 しかし、④の「科学的に安全」の根拠は、「食品に含まれる放射性物質が基準値以下」という意味しかなく(https://www.r-info-miyagi.jp/r-info/kiseichi/ 参照)、基準値以下ならいくら食べても安全と言える根拠は科学的に示されていないため、今度は“基準値以下”が安全神話を作っている。そのため、国民の安全を第一に考えれば韓国の禁輸措置は妥当で、その禁輸措置がWTO協定違反だとして提訴したり、政府高官が敗訴後に①②③④の弁を発したりするのは、日本産食品全体の安全性に関して世界の信用をなくし、国民の安全をも脅かす。つまり、原発事故を起こせば付近の農林漁業が壊滅するのも、原発のコストに入れるのが当然なのである。
 このような中、*9-2のように、経団連の中西会長は「i)感情的な反対をする人たちと議論しても意味がない」「ii)原発と原爆が結びついている人に違うというのは難しい」「iii)再エネだけで日本の産業競争力を高められればいいが、技術開発が失敗したらどうするのか。いろんな手を打つのがリーダーの役目だ」などと語られたそうだが、i)については、民間企業だけでは採算すらとれず、国の予算を湯水のように使わなければならない原発に固執する方がよほど非論理的かつ感情的である上、それでも原発に固執するのはii)以外には考えられない。また、iii)の再エネは日本は資源豊富で、エネルギー自給率を100%にしながら産業競争力を高められるので、「何をおかしなことを言っているのか」と思うわけである。
 そこで、2019年4月11日、*9-3のように、原発立地県の佐賀新聞が、「脱原発を志向する流れは変わらない」として国民的議論を呼びかけている。経産省は、エネルギー基本計画で原発を「重要なベースロード電源」と位置づけ、2030年度の電源構成における割合を20~22%としているが、これこそ理念も根拠もなく決めた国民の安全を犠牲にする机上の“エネルギーミックス”にすぎず、原発論争は、既に「神学論争」から「安全神話の崩壊」にかわったため、時間と金の無駄使いをしてまた世界に後れを取る前に、早々に終わるべきである。



(図の説明:1番左の図のように、太陽光発電設備の価格は普及とともに下落している。また、左から2番目の図のように、薄膜型太陽光発電設備もできたため、設置可能な場所が増えた。さらに、右から2番目の図のように、駐車場に太陽光発電設備を設置してEVと組み合わせれば、燃料代が0になる。にもかかわらず、右図のように、急速充電器もできているのに、いつまでも価格を高くしていたり、設置が難しいと言っていたりするのは理解不能だ)

*9-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190412&ng=DGKKZO43659910S9A410C1MM0000 (日経新聞 2019年4月12日) 韓国へ水産物禁輸の撤廃要求 日本、WTO逆転敗訴で
 河野太郎外相は12日未明、韓国による福島など8県産の水産物輸入禁止措置をめぐる世界貿易機関(WTO)の判決を受け談話を発表した。「韓国の措置がWTO協定に整合的であると認められたわけではないが、わが国の主張が認められなかったことは誠に遺憾だ」と表明。「韓国との協議を通じ措置の撤廃を求めていく」とした。韓国は東京電力福島第1原子力発電所の事故を受け、放射性物質の漏出を理由に福島県など8県産の水産物の輸入を禁止してきた。日本は韓国の輸入禁止は不当だとしてWTOに提訴した。WTOは一審の紛争処理小委員会(パネル)では日本の主張を認め、韓国に是正を求めた。だが最終審にあたるWTOの上級委員会は11日、一審の判断を取り消し、韓国の措置を妥当とする最終判決を下した。WTOの紛争処理は二審制のため、上級委員会の決定が「最終審」の判断となり、韓国の禁輸措置は継続する。一審の判断を取り消した理由について、政府の担当者は同日、「一審の判断の仕方に瑕疵(かし)があったと上級委が認定した」と説明した。一方で「上級委は日本産の食品の安全性について、一審での判断を変更していない」とした。河野氏は12日午前、外務省内で韓国の李洙勲(イ・スフン)駐日大使と会い、輸入規制の撤廃に向けた2国間協議を呼びかけた。吉川貴盛農相は12日の閣議後の記者会見で「復興に向けて努力してきた被災地を思うと誠に遺憾だ」との認識を示した。その上でWTOの今回の判断は「日本の食品の安全性を否定したものではない」と語り、風評被害の払拭に取り組む考えを述べた。菅義偉官房長官は同日の閣議後の記者会見で「日本産食品は科学的に安全で、韓国の安全基準を十分クリアするとの一審の事実認定は維持されている。敗訴という指摘は当たらない」と強調した。輸入規制をかける他国にも緩和を働きかけ続ける考えを示した。

*9-2:https://digital.asahi.com/articles/ASM3C663FM3CULFA01Q.html?iref=comtop_8_06 (朝日新聞 2019年3月11日) 経団連会長「感情的な人と議論意味ない」原発巡る議論に
 経団連の中西宏明会長(日立製作所会長)は11日、自ら必要性を訴えていたエネルギー・原発政策に関する国民的な議論をめぐり、「エモーショナル(感情的)な反対をする人たちと議論をしても意味がない。絶対いやだという方を説得する力はない」と語った。原発の早期再稼働を求める立場から国民的議論を呼びかけた中西氏は2月、脱原発を求める民間団体から公開討論を求められたのに対し、「反原発を通す団体で議論にならない。水と油だ」などとして断った。「原発と原爆が結びついている人に『違う』ということは難しい」とも発言し、釈明に追われている。11日の定例会見で中西氏は、記者団から「東日本大震災以降、原発に関する国民の意識が変わったのでは」と問われたのに対し、「再生エネルギーだけで日本の産業競争力を高めることができればいいが、技術開発が失敗したらどうするのか。いろんな手を打つのがリーダーの役目だ」と指摘。「多様なエネルギー源を確保しなければ日本は立ちゆかなくなる。福島の事故から何年たとうが変わらない」と話し、電力業界への積極的な投資を呼びかけた。

*9-3:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/360766 (佐賀新聞 2019年4月11日) 平成と原発 次代へ責任ある政策論議を
 新元号「令和」が決まり、5月1日の新天皇即位まで3週間となる中、紙面では「平成」を振り返る企画が続く。歴史を時間の連続性で考える時、「一世一元」の元号で区切ることへの異論もあろう。ただ、明治、大正、昭和、と改めて時代に思いをはせると、その時どきの国家、社会像が浮かんでくる。それは次代への教訓となり、指針となる。平成の31年間で強く印象に残る出来事を聞いた世論調査の結果(3月31日付)では「東日本大震災と福島第1原発事故」が70%(複数回答可)で最も多く、「オウム真理教事件」(50%)、「阪神大震災」(40%)と続いた。後年、回顧する時、震災と原発事故はどう教訓化されているのだろうか。原発立地県で暮らす私たちにとっても大きな命題だ。被爆国日本の原子力政策は戦後10年をおかず「核の平和利用」のかけ声で始まり、高度経済成長以降、需要予測をもとに各地に原発が建設された。その後、スリーマイル島原発事故などで世界は停滞期に入るが、日本は拡大路線を続けてきた。しかし8年前の2011年、福島第1原発事故が発生し「安全神話」は根底から崩れた。玄海原発3号機再稼働から1年の3月、県内の首長に聞いたアンケート調査では7割超が運転継続を是認しつつ、6割超が「将来的に廃止」と答えた。再稼働という現実を前にしてか、前回「即時に廃止」と答えた2人の首長はトーンダウンしたが、脱原発を志向する流れは変わらないと言えよう。そこで気になるのは国民を巻き込んだ幅広い議論がないことだ。政府はエネルギー基本計画で原発を「重要なベースロード電源」と位置づけ、2030年度の電源構成における割合を20~22%とする。そのためには新増設が必要とされるが、具体的な言及はない。一方、経団連は原発の再稼働や新増設、リプレース(建て替え)を真剣に推進すべきとする政策提言を発表した。エネルギーは生活と経済の基盤であり、安定供給と経済性、そして温暖化など環境への対応が不可欠だ。提言は進展なき現状への危機感の現れだろう。ただ、どういうエネルギーを選ぶかは、私たちがどのような社会、どのような未来を選ぶかという、社会設計そのものである。だからこそ中長期的な視点が必要だ。平成は55年体制が終焉しゅうえんした時代でもある。戦後の保守と革新のイデオロギー対立の中で原発をめぐる議論は堂々巡りの「神学論争」とも言われたが、東日本大震災と福島第1原発事故を経験した今、諸課題を正面から見据えた国民的議論が必要だ。政府が具体的な政策を提示し、多面的な観点からエネルギー構成を考え、最大限の合意点を見いだしていく。平成から令和を生きる私たちの責務である。

<日本の産業が劣化した理由は?>
PS(2019年4月15日追加):*10-1のように、仏紙が「日本の経産省が2018年春、日産・ルノー間の経営統合を阻止しようと関与を試みていた」と報道したそうだ。西川社長の経歴から、経産省・法務省にも同窓生が多く歩調を合わせやすいと想像できるが、この面からの指摘は日本メディアはやりにくいため、外国メディアが活躍すべきだ。経営統合については、ゴーン氏は動画で「私は、持株会社方式を支持していた」「独立的に運営するかどうかは実績により、独立的に運営することが目的になってはいけない」と言っておられたが、私もそう思う。
 なお、*10-2のように、日立、東芝、ソニーの事業を統合した「日の丸液晶連合」のJDIが中国と台湾の企業連合の傘下に入り、日本の液晶産業が消滅するそうで困ったことだが、一瞬の売上高最大化を目指す政府主導の統合はうまくいかないことが明らかになったわけだ。
 うまくいかなかった理由は、①内部の主導権争いにエネルギーを使い ②巨大化・官僚化で、課題を先送りして変化の遅い経営になり ③政府の関与で意思決定が遅れ ④顧客ファーストでなくなり ⑤日本経済全体の物価上昇でさらに国際競争力をなくした などが挙げられるが、②③④は、まさに共産主義経済が遅れた原因であり、中国・ロシア・東欧が1990年代に日本を含む西側諸国の援助を受けながら修正したことなのである。

*10-1:https://digital.asahi.com/articles/ASM4H26J6M4HUHBI004.html?iref=comtop_8_03 (朝日新聞 2019年4月15日) 日産・ルノーの統合案、経産省が阻止へ関与か 仏紙報道
 仏日曜紙「ジュルナル・デュ・ディマンシュ」は14日、日本の経済産業省が2018年春、日産自動車と仏ルノーの間で持ち上がっていた経営統合案を阻止しようと関与を試みていた、と報じた。日本政府はこれまで、両社の提携について「政府が関与するものではない」との立場を表明していた。同紙は同年4~5月に日産の幹部が、当時両社の会長だったカルロス・ゴーン容疑者(65)=会社法違反(特別背任)容疑で再逮捕=らにあてた電子メールを入手したとしている。同年4月23日に日産幹部がゴーン前会長にあてたメールでは、経営統合をめぐって同社と仏政府で直前に行われた議論を報告していた。日産側は統合への慎重論を表明したほか、ルノーが日産に43%を出資する一方、日産のルノーへの出資は15%にとどまる関係の見直しを優先するよう求めたことを報告。仏政府側の意見として、「日産の経営統合に向けた歩みが確かでない以上、(日産の要求は)ルノーにとってあまりに大きな犠牲を払うことになる」と反発があった様子を伝えている。5月21日に別の日産幹部がゴーン前会長や西川広人社長に送ったメールには、経産省が準備したという「覚書案」が添付され、そこには「両社のアライアンス(提携)強化は、日産の経営自主性を尊重することによってなされること」などと、日産の懸念に沿って、統合を阻むような文言が並んでいた。ただ、この幹部は同じメールの中で「日本政府の支持はありがたいが、これは民間企業の問題だ」とも指摘。経産省の関与を必ずしも歓迎していなかったという。両社の関係をめぐっては安倍晋三首相が18年12月、マクロン仏大統領と会談した際に「民間の当事者で決めていくもので、政府が関与するものではない」との考えを伝えていた。

*10-2:https://www.kochinews.co.jp/article/269288/ (高知新聞 2019.4.14) 【日本の液晶消滅】国策再編の検証が必要だ
 国内電機産業の衰退を改めて印象付ける出来事だ。中小型液晶パネル大手、ジャパンディスプレイ(JDI)が中国と台湾の企業連合の傘下に入る。JDIは日立製作所、東芝、ソニーの事業を統合した「日の丸液晶連合」。これにより日本の液晶産業は事実上消滅することになる。日の丸連合の立ち上げを主導したのは経済産業省だ。その見通しの甘さも問われかねない頓挫である。2012年に発足したJDIは、中小型液晶の出荷額で世界首位となった。ところが海外勢との価格競争が激化。主要顧客の米アップル社の需要低迷も響いた。液晶より薄く画質が鮮明な有機ELの開発も後手に回り、業績は急速に悪化。19年3月期まで5年連続の連結最終赤字となる見込みだ。この間、経産省の意を受けた官民ファンドの産業革新機構(現INCJ)が出資や融資などで計約4千億円を支援してきた。さらに支援を続ければ、本来淘汰(とうた)されるべき「ゾンビ企業」の救済と批判されよう。一方で税金も投入されている以上、破綻させれば国民負担の議論は避けられなくなる。海外へ日本の技術が流出する恐れがあるにしても、外資による再建に委ねるのはやむを得ない。かつて日本企業が世界市場をけん引したテレビやパソコンも、現在は韓国や中国などのメーカーが上位を占めている。産業界に「栄枯盛衰」はつきものだ。ただしそれとは別に、日の丸連合によって液晶産業を再興しようとした官製シナリオはなぜ狂ったのか。そこはきちんと検証しなければならない。JDIは3社の寄り合い所帯であることから内部で主導権争いが起きたり、課題を先送りにしたりする経営体質が問題視されていた。「政府の関与によって意思決定が遅れるなど、経営が振り回された面もある」といった指摘もある。実際、JDI同様の「国策再編」は失敗続きだ。公的資金を投入した半導体大手のエルピーダメモリは12年に破綻し、外資傘下となった。エルピーダも三菱電機、NEC、日立の事業の寄せ集めだった。同じ3社の半導体部門を統合したルネサスエレクトロニクスも13年に産業革新機構が出資。こちらも人員削減や工場閉鎖を重ねるなど苦戦している。こうした事例が今後もなくならなければ、国の産業政策の失敗を指摘する声はますます強まるだろう。現在のINCJも経営陣の報酬水準を巡って政府と対立し事実上、機能停止に陥っている状態だ。組織を立て直すのであれば官民ファンドの在り方や政府の関与の度合いなど、根本的な議論が欠かせない。日本の電機産業の復権は喫緊の課題だ。なぜ世界市場で埋没してしまったのか。ニーズを見極めることができていたか。顧客ファーストの原点に戻って考える必要がある。

| 司法の問題点::2014.3~ | 07:20 PM | comments (x) | trackback (x) |

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