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2013.7.1 特色ある技術を持つ会社がその長所を伸ばすには、合併して大きくなればよいというものではない。
  
   LNG埋蔵海域      海洋資源採掘    地球深部探査船「ちきゅう」     

(1)合併すればよいのか?
 私は、「困ったら合併しさえすればよい」というのは、その会社の技術や経営を知らない官僚やメディア記者の発想だと思う。何故なら、それぞれ特色ある長所を持った造船会社であれば、別会社として経営した方が、経営意思決定が早くて正確であり、会社の長所を活かしやすいからである。わかりやすい例を挙げれば、仮に読者が減ったからといって、日経新聞と朝日新聞が合併したとしても、一時的には規模が大きくなるかもしれないが、その後には両経営陣とも経営方針を見失い、それぞれの長所を失って、さらに読者が減るのと同じである。

(2)海洋資源開発やプラントは、非造船事業なのか?
 今後、日本で需要が拡大する海洋資源開発やプラントは、海洋や造船技術の基礎の上に成り立つものであり、陸上でビルを建てるのとはわけが違うため、三井造船がそれに得意だというのは、重要な長所であり、造船事業か否かというジャンル分けはどうでもよい話である。

(3)そもそも合併話は成立するまで極秘の筈である。
 *1には、「川崎重工との合併話を前向きに考えていたのに、相手から断られた上、あの相手と結婚しても幸せになれないと世間に吹聴された」と書かれているが、吹聴しているのはメディアであり、そもそも合併話や買収話は、お互いの長所や財産・収益力を評価しあって成立するまで極秘に進められるのが常識であるため、報道がマッチポンプなのである。また、技術がよければ、その長所を活かして収益体質を改善することができるので、川崎重工業に限らず、どこの会社との提携話でも出てくるだろうし、海洋資源開発やプラントを得意とするのなら、建設会社とジョイントベンチャーを作るという選択肢もあるだろう。

(4)経営については、官僚や記者よりも、経営の専門家の方が詳しい。
 民間企業が、「人員や生産能力の削減は考えていない」というのであれば、それだけの付加価値をつけているということであるから問題ない。ここは、生産性の高低に関係なく国民の税金で養われている公務員とは異なる。また、企業の経営改善は、コスト削減だけではなく、売上を増やすための新たな市場開拓や技術投資もある。マーケティングについては、今から「液化天然ガス運搬船を作る」というのは、三井造船にしては古くてスケールが小さいので、経営陣に技術や市場の先を見通せる人物を配置し、必要な技術を持つ会社との連携を進めつつ、国も動かさなければならない。本来、資源戦略は、国が最初に、(いつまでも外国からの輸入頼みではない)しっかりとした方針を定めなければならないのだが、わが国には、トップランナーを叩き、横並びの既得権益団体を保護して国力の源をそぐ、変な体質があるのだ。

*1:http://www.nikkei.com/markets/kigyo/editors.aspx?g=DGXNMSGD2804L_28062013000000
(日経新聞 2013/7/1) 三井造船が造船会社でなくなる日公開日時
 三井造船が「造船会社」と言えなくなる日が来るかもしれない。川崎重工業との経営統合が白紙撤回されて半月。6月28日に打ち出した新しい中期経営計画は、造船事業にほとんど触れず、海洋資源開発やプラントなど非造船事業の強化策に終始した。「意欲的な目標に比べ具体策に乏しい」との指摘が市場から漏れるなか、三井グループの重工会社は単身で厳しい荒波を乗り越えられるのか。ふと舞い込んだお見合い話。前向きに考えていたのに、突然相手から「なかったことに」と言われたうえに「あの相手と結婚しても幸せになれない」と世間に吹聴された。川重の統合白紙宣告を三井造が「失礼な話」(同社幹部)と受け止めたのもうなずける。では独身で今後どう生きていくのか。改めて考え出した人生プランが、先週末に発表した中期計画だ。今回の計画の対象期間は13年7月から17年3月までの3年9カ月と中途半端。本来は14年4月から始めるはずだったが、今期予想の連結営業利益は140億円と前回の中期計画で立てた目標(250億円)を大きく下回る。「経営課題にスピード感を持って対応しなければいけない今が正念場」(田中孝雄社長)との認識に立ち、9カ月前倒しで始めることにした。
 川重との経営統合破談で改めて認識された造船業界の厳しい環境。韓国や中国の造船会社が増産投資を競った結果、世界全体の供給能力は需要の2倍に上るとされる。三井造の今期はリーマン・ショック後に受注した安い船の建造が増えるため、造船事業の営業損益はゼロに落ち込む。中期計画では造船事業をどう立て直すかが市場の関心事だったが、配布資料には造船について「外部環境・受注環境に応じたスリムな体制へのシフト」との一文があるだけ。「人員や生産能力の削減は考えていない」(田中社長)と具体的なコスト削減策への言及もなかった。燃費性能の高い省エネルギーの液化天然ガス(LNG)運搬船のイメージ図も掲載したが、受注を増やす具体策にも触れなかった。

| 資源・エネルギー::2013.4~2013.10 | 10:10 AM | comments (x) | trackback (x) |

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