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2013,09,01, Sunday
秋の花 (1)消費税増税の3党合意は国民に支持されたのか? *2に、公明党の斉藤鉄夫税制調査会長(東工大大学院卒、工学博士)が、「自民、公明、民主各党による『社会保障と税の一体改革』に関する3党合意に基づき、予定通り消費税を引き上げるべきだとの考えを示した」と書かれているが、国民は、自民・公明・民主の消費税増税のスタンスを評価して、自民・公明を選挙で勝利させたのではない。それよりもむしろ、マニフェストを守れず3党合意した民主党に失望して、民主党を敗退させたと言う方が正しい。 従って、「3党合意があるから消費税を引き上げるべきだ」という主張は国民をないがしろにしているし、公認会計士で税理士である私も、その「社会保障と税の一体改革」が全体の整合性を見据えた賢明な改革だとは思わないため、これまでも、何どもこのブログに反対意見を書いてきたわけである。 (2)経済成長率が高く景気が回復すれば、消費税増税の条件を満たすのか? *1に記載されているように、「2013年4~6月期の実質経済成長率が前期比年率で2.6%となり、2013年1~3月期の3.8%に続く高めの成長率を記録したので、景気の回復を支えながら、増税の実行につなげるべきだ」というようなことは、よく言われる。また、*2のように、「4~6月の国内総生産(GDP)速報値が年率換算で前期比2.6%増なので、消費税を来年4月に8%に引き上げる3党合意を実行すべきだ」というのも、メディアを通じて大々的にキャンペーンされたので、多くの人が信じている。 しかし、実際には、GDPが増えても、年金生活者、生活保護世帯、非正規雇用など低所得者の収入が上がるわけではないため、物価高、消費税増税、医療・介護費用の値上げなどが続けば可処分所得が減って生きていけず、「経済成長率が高く、景気が回復すれば消費税増税の条件を満たす」という前提条件自体が間違っていることが証明される。 そのため、*4のように、生活観のある一般市民のアンケートでは、予定通り実施すべきだとの回答は22・5%にとどまり、現行税率5%の維持を求める回答が29・1%で最も多く、次いで「引き上げ時期の先送り」22・7%、「引き上げ幅の縮小」22・0%となっているのである。従って、*6に書かれているとおり、*3で選ばれた“有識者”なる人々は、賛成派を多くし、反対派も少数入れて意見を聞いたという実績を作ったにすぎず、私は、選ばれた人の選考基準が重要だと思っている。 (3)消費増税しなければ社会保障の財源が確保できないという主張は正しいのか? *3のように、消費増税しなければ社会保障の財源が確保できないと主張する人が多いが、これは、これまでメディアを通じて大々的にそのようなキャンペーンを行ってきた結果であり、そう述べている人が、新聞記者や”有識者”と呼ばれる人も含めて、税法を理解しているわけではない。 実際には、社会保障にもいろいろあり、年金は年金保険料を支払っているし、医療保険、介護保険も保険料を支払っている。また、社会保障の保険料だけでは足りない部分や子育て支援に関する歳出は、消費税を財源として他の国税を財源としてはならならないという税法上の論拠などはなく、「社会保障に使うから」というのは、消費税増税を一般の人に納得させるための方便にすぎない。そして、①所得の再分配機能 ②応能負担の原則 ③景気の調整機能という租税の観点からは、間接税である消費税よりも、直接税である所得税・法人税・相続税の方が優れているのである。 そのため、*5のように、消費税の増税に反対する税理士が、税の専門家として、「大企業へのゆきすぎた減税や富裕層への優遇税制を見なおすことの必要性を指摘し、税金は憲法にもとづき負担能力に応じた取り方であるべき」とアピールしたのは、租税法の理論に則ったまっとうな意見である。 (4)財政健全化について *7によると、「来年度の予算編成で各省庁が財務省に概算要求を出し、一般会計の総額は過去最大の99・2兆円で、今年度予算を7兆円近く上回り、省庁毎、分野毎でも軒並み増額で、査定はこれからだが、財政再建などどこ吹く風と言わんばかりのしまりのなさに呆れるほかない」そうだが、これは事実であろう。また、消費税増税でも景気を支えるため、あまり意味のないところにまで歳出するというやり方は、これまでもやってきて失敗し、1000兆円もの借金を作った元凶なのである。 財政健全化は、原発や200兆円もの公共投資に湯水のように金を使いながら、福祉を削減して行うべきではない。また、東日本大震災直後の現在、財政健全化を唱えるのもおかしい。それよりも、1000兆円もの借金を作ってしまった本質的な問題をそのままにして消費税増税をするのは、汚染水が漏れている壊れかけたタンクに、さらに汚染水を注ぐようなものであるため、効果の少ない単なる景気対策に金を使うのをやめるべきなのである。 (5)では、何が必要なのか? これですべてではないが、まず、国に複式簿記による公会計制度を導入し、歳出・歳入や資産・負債を民間企業並みにしっかりと管理し、決算の結果を予算の議論をする前に公開できるようにすることが、スタートとして必要である。多くの民間人は、まさか国がそんなこともできていないとは思っておらず、話題にもならないのだが、重要なことである。 秋の花 *1:http://www.nikkei.com/article/DGXDZO58439050T10C13A8EA1000/ (日経新聞 2013/8/13) 景気の回復を支え消費増税につなげよ 2013年4~6月期の実質経済成長率が前期比年率で2.6%となった。安倍政権の経済政策「アベノミクス」の効果もあって、13年1~3月期の3.8%に続く高めの成長率を記録した。安倍晋三首相はこの統計も踏まえ、14年度から消費税増税に踏み切るかどうかを9月中にも最終判断する構えだ。景気の着実な回復を支えながら、増税の実行につなげるべきだろう。実質成長率を押し上げたのは個人消費と輸出である。消費では高額品や衣料品、輸出では米国向けの自動車などが好調だった。これに対して設備投資は6四半期連続で減少し、住宅投資は5四半期ぶりのマイナスに転じた。企業収益の改善が設備投資の拡大につながり、雇用の増加や賃金の上昇を通じて家計にも恩恵を及ぼす。そんな好循環の歯車が本格的に回り始めたとはまだ言えない。米金融緩和の出口を巡る市場の混乱や、中国を含む新興国の景気減速といったリスクも残る。それでも財政・金融政策の下支えや円安・株高の追い風などが重なり、13年度の実質成長率は3%近くに達するとの予測が多い。日本としてはかなり高い成長率と言ってもいいのではないか。 首相は今回の統計や有識者の意見などを参考にして、消費税増税の時期や幅を決定する。5%の税率を14年4月に8%、15年10月に10%まで引き上げる予定を堅持するのか。それとも予定の修正や先送りに動くのか。大事な決断のタイミングが近づきつつある。消費税増税は財政再建の重要な一歩だ。景気に与える影響には細心の注意を払うべきだが、増税そのものを回避するのはリスクが大きいといわざるを得ない。問われるのはデフレの克服と消費税増税を両立させる工夫である。金融緩和や財政出動の効果が出ているうちに有効な成長戦略を実行し、日本経済の岩盤をしっかりと固めなければならない。首相は「秋のさらなる成長戦略の実行など、景気(の浮揚)に力を入れていきたい」と語った。消費税増税を実行しても成長を維持できるよう、大胆な規制緩和や法人税減税に踏み込むべきだ。消費税増税の円滑な価格転嫁を促す政策や、住宅などの駆け込み需要と反動減を緩和する政策にも万全を期す必要がある。安倍政権はこうした努力を積み重ね、増税の軟着陸を目指してほしい。 *2:http://www.jiji.com/jc/c?g=pol_30&k=2013082400211 (時事ドットコム 2013/08/24) 3党合意に沿い消費増税を=斉藤公明税調会長インタビュー 公明党の斉藤鉄夫税制調査会長は、時事通信のインタビューに応じ、4~6月の国内総生産(GDP)速報値が年率換算で前期比2.6%増となったことを受け、自民、公明、民主各党による「社会保障と税の一体改革」に関する3党合意に基づき、予定通り消費税を引き上げるべきだとの考えを示した。与党が検討を始めた設備投資減税に関しては、企業の省エネ設備などの導入を後押しする考えを強調した。 <主な一問一答は次の通り> ①4~6月のGDP速報値が年率換算で前期比2.6%増となった。どう評価するか。 消費税を来年4月に8%に引き上げる3党合意を実行するのに十分な数字だ。(消費増税は)社会保障の持続可能性をより強固なものにし、財政を健全化するために必要だと認識している。 ②安倍晋三首相の周辺には慎重論もある。 (増税先送りで)世界からの信認を失うことは長期金利の上昇につながる。(予定通りの増税を)やらないことも大きな景気腰折れの原因になり得るので、国際公約通り実行することが肝心だ。景気に不安があるなら、補正予算による十分な景気対策も考えてよいのではないか。 ③設備投資減税の具体策は。 省エネやエネルギーの効率的な利用をもたらす設備投資を積極的に支援する。党としては、再生可能エネルギーや省エネルギー製品に個人として投資し、子や孫に贈与した場合に税優遇を行う「緑の贈与税」も提案している。 ④法人実効税率の引き下げは。 2年後に(法人税に上乗せされている)復興増税分がなくなり、実効税率が下がる。その時点でもう一度考える必要があるが、今の時点では財源との関係でなかなか考えられる状況にはない。 ⑤消費税10%時の導入を目指す軽減税率について、税率の水準に関する考えは。 標準税率が10%になる時、(軽減税率の対象品目の税率は)8%から下がることはあり得る。食料品などは5%がベースになる。可能性として5~8%があり得る。財源との見合いだ。 *3:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20130831&ng=DGKDASFS3005E_Q3A830C1EE8000 (日経新聞 2013.8.31) 消費増税で社会保障の財源確保を 有識者聞き取り5日目、低所得者へ配慮求める 政府は30日、消費増税について有識者から意見を聞く集中点検会合(5日目)を開いた。社会保障などに詳しい9人の有識者が参加。年金や医療などの財源を確保するため、税率の引き上げはやむを得ないとの意見が多数を占めた。負担を重く感じやすい低所得者に十分な配慮を求める声も目立った。9人のうち予定通り2014年4月から消費税率を8%に上げることに6人が賛成した。清家篤・慶応義塾長は「計画通りに引き上げられて、社会保障制度改革のための財源が確保されることが大切だ」と指摘。奥山千鶴子・NPO法人「子育てひろば全国連絡協議会」理事長は「子育て世代には厳しい選択だが、ここで消費税を引き上げなければ子育て支援の充実も図れない」と語った。 低所得者らへの措置を促す声も相次いだ。林文子・横浜市長は「大切なのは社会で弱い立場の人たち、中小企業、あとは被災地の問題だ」と発言。岡崎誠也・国民健康保険中央会会長は入院時の負担を軽減する高額療養費制度の拡充などで「低所得者への対策をきめ細かくやっていく必要がある」と話した。消費増税では、低所得者の健康保険料の軽減策や低所得者に一律で現金を配る「簡素な給付措置」などをあわせて実施する予定になっている。 清家氏は「引き上げのスケジュールが変われば、待機児童の解消策や保険料軽減策などの政策実現が不可能になったり、遅れたりしてしまう」と語った。 一方、白石興二郎・読売新聞グループ本社社長は「税率引き上げの際には(新聞も含めて)生活必需品を中心に(税率を低く抑える)軽減税率を導入すべきだ」と主張。「経済状況を考えると、来年4月に8%へ税率を引き上げる状況にはない」と述べ、来年4月の引き上げを見送り、15年10月に一気に10%に上げることを提案した。 大久保朝江・NPO法人「杜の伝言板ゆるる」代表理事は「被災地では建物の復興が遅れている。建物を買うに当たって消費増税の影響は大きい」とし、1年先送りを主張した。精神医療などに詳しい広田和子氏は「生活困窮者や生活保護者が一番打撃を受けるのが消費税だ」と述べ、予定通りの引き上げに反対した。 *4:http://www.saga-s.co.jp/news/global/corenews.0.2538975.article.html (佐賀新聞 2013年8月25日) 消費増税「予定通り」22% / 共同通信世論調査 共同通信社が24、25両日に実施した全国電話世論調査によると、来年4月に消費税率を8%に引き上げる方針に関し、予定通り実施すべきだとの回答は22・5%にとどまった。現行税率5%の維持を求める回答が29・1%で最も多く、次いで「引き上げ時期の先送り」22・7%、「引き上げ幅の縮小」22・0%となった。見直し策をめぐっても意見が割れた格好だ。安倍晋三首相は10月上旬に消費税増税に結論を出す構えだが、国民の意見が割れている状況は判断に影響を与えそうだ。憲法解釈で行使が禁じられている集団的自衛権については「行使できないままでよい」が47・4%で最多だった。 *5:http://www.jcp.or.jp/akahata/aik13/2013-08-30/2013083001_02_1.html (赤旗 2013.8.30) 税理士137人が「アピール」 消費税増税中止求める 安倍政権が4月に強行しようとしている消費税の増税に反対する税理士が29日、衆院第2議員会館で記者会見を開き、税の専門家として日本経済を低迷させる増税の中止を求めるアピールを発表しました。北海道から沖縄まで全国36人の税理士が呼びかけ、29日現在で137人が賛同しています。アピールは、大企業や高額所得者の所得が増えている一方で、働く者の賃金は引き下げられ、中小企業の収益は悪化していると指摘。所得の低い人に負担が重い不公平な税制である消費税の増税は、国民生活や中小企業の営業を破壊すると指摘しています。また、大企業へのゆきすぎた減税や富裕層への優遇税制を見なおすことの必要性を指摘。国民の暮らしと権利を守るルールをつくり、国民の所得を増やすことも税収増をはかるためには重要と強調しています。「格差が広がり、経済が低迷している今日、消費税の増税実施は中止すべきです」と訴えています。 会見では、税理士の浦野広明、湖東京至、佐伯正隆、永沢晃、平石共子、青木輝光の各氏が、増税中止への思いを語りました。浦野氏は「国政の指針は日本国憲法です。税金は憲法にもとづき、負担能力に応じた取り方であるべきです」と語りました。湖東氏は「多くの中小企業は、消費税を滞納すると融資が受けられないので、給料や経費を削って必死に納めています。消費税が8%や10%になったら、これらの事業者の大半は事業を続けられなくなります」とのべました。 *6:http://www.nikkei.com/article/DGXNASFS3003I_Q3A830C1PP8000/ (日経新聞 2013/8/30) みんな・渡辺代表、消費増税凍結申し入れへ みんなの党の渡辺喜美代表は30日の記者会見で、消費増税について「タイミングをみて首相に働きかけたい。思い切った決断を望みたい」と述べ、近く増税凍結を申し入れる考えを示した。有識者による消費増税の集中点検会合に関しては「賛成派が圧倒的に多い。役所がお墨付きを得る常とう手段で首相の価値をおとしめる」と批判した。 *7:http://digital.asahi.com/articles/TKY201308300538.html?ref=comkiji_redirect&ref=nmail_20130831mo&ref=pcviewpage (朝日新聞社説 2013.8.31) 予算編成 しまりのなさに驚く 来年度の予算編成で、各省庁が財務省に概算要求を出した。一般会計の総額は過去最大の99・2兆円で、今年度予算を7兆円近く上回る。省庁ごと、分野ごとでも軒並み増額だ。査定はこれからだが、財政再建などどこ吹く風と言わんばかりのしまりのなさに、あきれるほかない。 景気の回復基調を受けて税収は増加が見込まれ、来春には消費増税も想定される。一方、安倍政権はデフレ脱却へ「機動的な財政運営」を掲げる。先の参院選で業界団体の支援を受けた与党からは「予算を増やせ」の声がかまびすしい。古い自民党そのままだ。「入り」が増え、「出」には追い風が吹く。要求しなければ予算はつかないから、とにかく目いっぱい要求する。そんなゆるみきった構図の象徴が「特別枠」だろう。省庁の縦割りを超えて予算を重点配分するのが建前だが、防災や経済成長、地域活性化など実態は何でもありだ。国土交通省や農林水産省が特別枠をフルに使い、公共事業費の要求額を今年度予算より2割近く増やすなど、すっかり「別ポケット」になっている。 財政難への危機感がないのだろうか。「入り」と「出」の現状を、今年度の一般会計で改めて確認したい。全体で92・6兆円に及ぶ歳出の半分近くは、借金(国債)でまかなっている。消費税収は社会保障にあてることになっているが、社会保障費が29兆円を超えるのに対し、国の消費税収は11兆円に満たない。税率を今の5%から10%に上げても足りず、しかも社会保障費は高齢化で毎年1兆円程度増えていく。消費税を除く所得税、法人税などの税収と、公共事業費など社会保障以外の政策経費を比べても、9兆円近い赤字だ。財政再建への出発点である「基礎的財政収支の黒字化」とは、こうした政策にかかわる不足分をゼロにすることだ。これ以外にも、過去に発行した国債の元利払い費(国債費、今年度は22兆円余)があることも忘れてはなるまい。財政の立て直しは、一朝一夕には達成できない。 国の成長率を底上げして税収を増やす▼必要な増税策を実行する▼できるだけ少ない予算で効果をあげて歳出を抑えていく――この三つについて、不断の努力が欠かせない。このままの甘い姿勢では、いまに厳しいしっぺ返しが来る。
| 消費税増税問題::2012.8~2014.11 | 02:30 PM | comments (x) | trackback (x) |
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