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2013.10.28 認められる集団的自衛権の範囲は、どこまでか
  
       尖閣諸島            尖閣諸島の位置

(1)集団的自衛権の行使について、何のための憲法解釈変更か
 私は、「日本国憲法9条の平和主義は大切で、集団的自衛権を認めれば、湾岸戦争、イラク戦争のように、アメリカが出兵する時に日本も出兵するなどということになりかねないため、集団的自衛権は認めない方がよい」と考えていた。しかし、尖閣諸島の例のように日本の領海に他国が侵略してきたような場合には、集団的自衛権を認めなければ、応援してくれる同盟国に悪すぎると、2006年頃、考え直した。

 私が考え直したきっかけは、元防衛庁長官の愛知和夫氏に「集団的自衛権も、認めていいものと悪いものがあると思うんだ」と言われたことである。つまり、確かに憲法9条1項は、『国権の発動たる戦争と国際紛争を解決する手段としての武力行使を永久に放棄する』と述べているが、自衛のための戦争までは否定していないと解釈されており、それならば、自衛戦争で集団的自衛権を行使するのは許されるのではないかということだ。

(2)認められる集団的自衛権の範囲
1)尖閣諸島の防衛は、集団的自衛権の範囲か
 尖閣諸島の防衛について、中国との戦争を回避したいアメリカは、「現在の尖閣諸島の施政権が日本にあることは認めるが、領有権が日中どちら側に帰属するかは、アメリカの関知するところではない。つまり、実効支配している限りは、尖閣諸島は日本の領有だが、実効支配が中国に代わった場合には、施政権は中国に移る」という態度だ。

 これでは、何のための日米安全保障条約かわからないが、まず、アメリカは日本が領有権を有している場所に関しては、日米安全保障条約の範囲内だとしているわけである。この時、もしアメリカが尖閣諸島を守るための行動をした場合には、日本も集団的自衛権が認められなければおかしい。

2)米国がシリアに出兵した場合、集団的自衛権の範囲か
 政府・与党内には、米国がシリアに出兵した場合、集団的自衛権の範囲内だと言った人もいたが、これは日本国憲法違反だ。そして、イギリス、ドイツは米国から同調するように言われても、国内で議論して反対が勝れば断るという独立した民主主義国家の基本を持っているが、わが国の政府は、国民の意思を無視しても米国から言われるままに動くという特性を持っていることを考えれば、憲法9条1項は功を奏しており、このような場合に集団的自衛権を認める解釈をしてはならないだろう。

3)アルジェリア石油施設襲撃テロ事件に出兵し、日本人を守るために自衛隊がアルジェリア軍と共同して闘うのは、集団的自衛権の範囲か
 アルジェリア石油施設襲撃テロ事件のような場合に、日本人を守るために自衛隊がアルジェリア軍と共同して闘うのは、資源獲得のための侵略戦争と紙一重になりかねない難しさがある。私は、このような場合は、アルジェリア軍に任せるべきで、そもそも地元の人から喜ばれない海外資源を調達するよりも、わが国領海内の海底資源を開発すべきだと考えている。

4)国連平和維持活動(PKO)に参加した自衛隊の集団的自衛権は認めるべきか
 イラク戦争でわかったことは、どちらが正義かわからなかったということである。そのため、わが国が、これを判断する独立国家の基本を持っていない以上、武力を行使せずにすむ地域での平和維持活動のみに専念するのがよいと思う。それで文句を言う国はないだろう。

5)公海上で自衛隊艦船の近くにいる米艦が攻撃された場合の防護は集団的自衛権の行使になるか
 *1に書かれている「公海上で自衛隊艦船の近くにいる米艦が攻撃された場合の防護」については、どういう理由でそうなったかによって異なる。例えば、尖閣諸島防衛のための戦争であれば集団的自衛権の範囲になるし、米国独自の判断による他国との戦争であれば加担してはならない。テロや海賊からの攻撃であれば協力することになるだろうが、何でも“テロ”や“海賊”とする正当化には気をつけるべきだ。

6)米国に向かうかもしれない弾道ミサイルへの迎撃は集団的自衛権の行使に当たるか
 *1によれば、「米国に向かうかもしれない弾道ミサイルの迎撃は技術的に不可能との指摘もある」とのことだが、その前に、日本の自衛に関係があるか否かで判断すべきだ。

(3)結論
 私は、日本国憲法9条は、世界に誇るべき平和主義の理念が入っていると考える。しかし、自衛はしなければならず、また、そのための自衛軍も所有しているのだから、自衛のための集団的自衛権のみは認めるべきだし、自衛軍の存在もきちんと憲法に明記した方がよいと思う。

*1:http://mainichi.jp/opinion/news/20130918k0000m070139000c.html
(毎日新聞社説 2013年9月18日) 集団的自衛権 何のために論じるのか
 安倍政権は、集団的自衛権の行使を可能にするための憲法解釈の変更に向け、有識者会議「安保法制懇」の議論を7カ月ぶりに再開した。安倍晋三首相は会合で、「憲法制定以来の変化を直視し、新しい時代にふさわしい憲法解釈のあり方を検討していく」とあいさつした。しかし、これまでの推移からは、肝心な何のための行使容認か、行使容認がアジア太平洋地域の安全保障にどう寄与するのかが見えない。歴代政権は、日本は国際法上、集団的自衛権を有しているが、憲法9条のもとで許容される必要最小限度の自衛権の範囲を超えるため行使できない、と解釈してきた。有識者会議の座長代理・北岡伸一国際大学長は、憲法9条のもとで許される必要最小限度の自衛権行使の中に、集団的自衛権も含まれるというのが持論で、歴代政権の「誤った解釈を正す」と公言している。内閣法制局の長官経験者たちからは、必要ならば真正面から憲法改正を論じるべきだと反発があがっている。行使容認の目的、憲法の解釈変更か改正かの手法、地理的条件や対象国を含む容認の範囲、歯止めなど、政府内の見解はまだまとまっていないようだ。
 議論が整理されない原因の一つは、何のために行使容認を目指すのかが、具体的政策論として明確に示されていない点にある。第1次安倍政権時に今回とほぼ同じメンバーが議論してまとめた報告書は、(1)公海上で自衛隊艦船の近くにいる米艦が攻撃された場合の防護(2)米国に向かうかもしれない弾道ミサイルの迎撃−−などについて、集団的自衛権の行使を認めるよう求めた。今回は、類型を拡大して行使を容認する方向で議論されている。しかし(1)は、日本有事ならば自衛隊は個別的自衛権の範囲で対応できるし、そうでなくても米軍が自身で守る態勢をとっていない可能性はほぼない、との意見も根強い。(2)は技術的に不可能との指摘もある。それ以外に想定しているというのなら、どんなケースなのか。現実味の乏しいシナリオをもとに、日米同盟強化の姿勢を示すために議論をしているのではないか。そんな疑問が一部専門家の間からも指摘されている。首相にはおそらく、北朝鮮の核開発や中国の海洋進出の一方、米国の力が相対的に低下するなか、日本は自らの役割を増強する必要がある、という問題意識があるのだろう。しかし、こんな状態では中国、韓国はおろか、国民に理解してもらうのも難しいのではないか。首相はまず行使容認の目的は何か、どんな効果があるのかを、きちんと国民に説明する責任がある。

*2:http://qbiz.jp/article/25027/1/
(西日本新聞 2013年10月9日) 尖閣諸島 「棚上げ」合意はあったのか否か
 日本政府による沖縄県・尖閣諸島の国有化から1年余。日中関係が冷え込む中、1972年の国交正常化交渉の過程で尖閣諸島問題をめぐって両政府間に「棚上げ」の合意があったか否かをテーマにした講演会が11月13日、福岡市で開かれる。九州の経済人や文化人でつくる「九州日中クラブ」(代表・石原進JR九州会長)の主催。尖閣諸島をめぐり日本政府は「歴史的にも国際法上も固有の領土。領土問題は存在せず、棚上げもない」との立場。中国政府は「棚上げ」を首脳会談の開催条件とし、こう着状態が続いている。こうした中、72年当時、外務省条約課長だった栗山尚一・元駐米大使は「解決しないことで当面の解決策とする黙示の了解があった。これを棚上げと呼んだ」とする論文を発表した。一方、池田維・元外務省アジア局長は「棚上げしようという合意はこれまで日中間に存在したことがない」と栗山論文を全面否定する論文を発表、外務省OBの見解も割れている。講演会は11月13日午後2時から福岡市・天神の福岡国際ホール(西日本新聞会館16階)で。日中協会の白西紳一郎理事長が一連の論文の背景を解説、「尖閣諸島問題 領土ナショナリズムの魔力」の著者で共同通信客員論説委員の岡田充さんが「尖閣諸島問題で誰が本当のことを言っているのか」と題し講演する。参加費2千円。申し込みは九州日中民間文化交流協会・山口恵さん=ファクス092(281)7488。問い合わせは同協会の張晶さん=090(1084)5659。

*3:http://www.jiji.com/jc/c?g=pol_30&k=2013092800216
(時事ドットコム 2013/09/28) 駆け付け警護容認を=小野寺防衛相
 小野寺五典防衛相は28日、宮崎市内で講演し、国連平和維持活動(PKO)に参加する自衛隊が、攻撃された他国部隊要員や邦人を守る「駆け付け警護」について「自衛隊はPKOを盛んに海外でしているが、日本のNGOが武力集団に危害を加えられているときに駆け付けて救ったりできない。今のままの解釈でいいのか」と述べ、憲法解釈を変更して容認すべきだとの考えを示した。

*4:http://digital.asahi.com/articles/TKY201309140046.html (朝日新聞 2013年9月14日) 「集団的自衛権、必要なら遠くも行く」石破・自民幹事長 ■石破茂・自民党幹事長
 (集団的自衛権は)誰も米国だけを相手にするとは言っていないし、攻撃する国が極東と限っていない。集団的自衛権は、国連の概念であって、地理的にどうのこうの、相手がどうのこうのじゃない。必要であれば遠くでも行くし、必要でなければ近くでも行かない。例えば東南アジア。フィリピン、マレーシア、どこかの国が攻撃を受けた。そこが日本にとって死活的に重要。そういう場合に知らん顔、そういうときは米国が出て行く。そういうことで本当にやれるのか。

| 外交・防衛::2013.1~2014.8 | 05:23 PM | comments (x) | trackback (x) |

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