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2013.11.1 今でも、ダンスは性風俗を乱しているのか?
      

 原発、内部被曝、社会保障の削減など、命に関わる深刻な事案が多かったため、ダンスの風営法取締事件については後になりましたが、今日は、ダンスの話です。

(1)クラブでダンスをすると、性風俗を乱すのか
 *1の午後9時半過ぎに、府警が拡声機で「音楽を止めろ」と呼びかけながら、ダンス・クラブに踏み込んだ事件の報道があった時には、私も変だと思った。弁護側は、「当夜クラブでかけていた4曲で踊るダンスが性風俗を乱すものかどうか考えて欲しい」とし、今回の裁判で問題視するのは、風営法の規定そのものだそうだが、この風営法のダンス規定は1948年に制定され、現在と当時の性風俗は全く異なっているため、それが妥当だと思う。

 そもそも、現代は、オリンピックでも、肌を露わにした(ように見える)女性と男性のカップルが、アイスダンスの競技を行い、多くの人が、その芸術性や技術に感心して見ている時代だ。また、性風俗を乱すような行為をしたい人は、今は、もっと直接的な行為が自由にできる。

(2)ダンスはスポーツ・文化の一種
 *2に、「『設備を設けて客にダンスをさせる営業』が風俗営業に該当し、『ダンス』について法律上何らの限定はなく、社交ダンスだけでなく、サルサやヒップホップなど幅広く規制の対象とされている」と記載されているが、私は、東大で社交ダンス・クラブに入っていた。東大は、野球は弱いが、社交ダンスでは、大学間競技でよく1位になり、私は、社交ダンスを優雅なスポーツだと認識している。

 しかし、「社交ダンスが趣味だ」というと、変な笑みを浮かべる人もいるため、必ず「競技ダンスです」と付け加えなければならず、閉口している。もともと、ワルツは貴族の踊りであり、今では、タンゴも古典だ。それを、「男女の享楽的雰囲気を過度に醸成させる」などとして、いやらしく考える人こそ、おかしい。

(3)風営法のダンス規制は削除すべき
 現在、社交ダンスは中学校体育の必修科目(http://blogs.yahoo.co.jp/purinchan08/24913722.html 参照)であり、*2に記載されているとおり、「ダンスさせる場所=風俗営業」とするのは、時代遅れも甚だしい。また、社交ダンスは、高齢者の健康を守る運動としても盛んだ。そのダンスを披露する場所であるクラブの存在を禁止するのは社会通念に合わず、*2に書かれているとおり、法律を改正して「ダンス規制」である風営法第2条第1項第1号、同第3号、同第4号を削除すべきだろう。

(4)東京大会から、オリンピックの競技種目にしよう
 わが国では、社交ダンスは風営法違反とされてきたため、社交ダンスには変なイメージがつきまとっているが、映画「マイ・フェア・レディー」や「サウンド・オブ・ミュージック」などに出てくるように、もともとは貴族の上品な社交手段だったもので、ルックスがよくて上手な人が踊ると体操やフィギュアより素敵だ。

 そのため、東京オリンピックから、社交ダンスを競技種目に加えたらどうだろうか。アルゼンチンで選ばれた開催地「TOKYO」であるから、アルゼンチンに敬意を表し、最もセクシーと言われるアルゼンチン・タンゴも種目に入れるべきだろう。そこで各国の踊り手が、どのようなダンスにまとめてくるか楽しみであり、社交ダンスは体操よりも人気種目になるかも知れない。

*1:http://digital.asahi.com/articles/OSK201310010046.html
(朝日新聞 2013.10.1) クラブでダンス、性風俗乱す? 初公判「オアシス」響く
 「ダンス規制」は時代に合っているのか――。その是非を争点とした刑事裁判が1日、大阪地裁であった。検察側はダンスを規制対象とし、無許可営業に刑罰を科す風俗営業法に基づき「違反は明らか」と指摘。これに対し被告のクラブ経営者側は「ダンスが性風俗を乱すという考え方が時代錯誤」「規制は『営業活動の自由』を侵害する」とし、憲法判断まで求める異例の展開に。それぞれの主張が平行線をたどる中、地裁の判断が注目される。
●深夜0時、奪われた踊り
 「(クラブは)規制対象とされる風俗営業ではないと、裁判所が判断すると信じています」。この日の初公判の罪状認否で、風営法違反罪(無許可営業)に問われた大阪市北区の老舗クラブ「NOON」の元経営者、金光(かねみつ)正年被告(51)は、こう述べて無罪を主張した。金光被告は昨年4月、大阪府公安委員会の許可なく客にダンスや飲食をさせたとして、逮捕・起訴された。検察側は冒頭陳述で、金光被告が1993年ごろ無許可でクラブ営業を開始し、ダンスイベントなどを開いてきたと指摘。昨年3月に府警が立ち入り調査して改善を求めたが、応じないため強制捜査に発展したと説明した。風営法で規制対象となるダンスは、ヒップホップにとどまらず、サルサ、タンゴなどほぼ全てのジャンルにわたる。検察側は今回の公判で、「ダンス」とは「社会の風俗に影響を及ぼす可能性があるもの」と定義。具体的には、薄暗い中、大音量の音楽やミラーボールなどの照明があり、酒類を提供する店内で客が音楽に合わせ、ステップを踏む▽体を上下左右に揺らす▽ひざの曲げ伸ばしをする▽腕や頭を振るものとしている。昨年4月4日の摘発当夜、店内には約20人の客がおり、英国の人気ロックバンド・オアシスの曲「She’s Electric」などがかかっていた。弁護側によると、体が触れあうような状態ではなく、音楽を聴いて会話する人もおり、「思い思いに体を揺らしていた」。午後9時半過ぎ、府警が拡声機で「音楽を止めろ」と呼びかけながら踏み込んだという。弁護側は、当夜クラブでかけた4曲を法廷で再生するよう申請。斎藤正人裁判長はこれを認めて法廷に楽曲が流れた。弁護側は「果たしてこの曲で踊るダンスが性風俗を乱すものかどうか考えて欲しい」としている。
■クラブ利用者ら、署名16万筆
 今回の裁判で弁護側が問題視するのは、風営法の規定そのものだ。「ダンスはおしなべて性風俗を害するものだという制定(1948年)当時の道徳観念に基づいており、現代にそぐわない」と指摘。売春やドラッグが横行する場ではないと訴えている。さらに、弁護側が憲法違反の主張まで持ち出す背景には、クラブが摘発のターゲットになっているとの危機感がある。弁護側によると、90~2009年で、無許可営業容疑で摘発を受けた件数は年平均6・4件。しかし10年以降は平均15件と倍増した。警察庁は4月、国会でダンス規制の是非を問われ、「店(クラブ)内外で暴行傷害事件や女性に対する性的な事件が発生したり、少年の立ち入りの問題が生じたりする」と規制が必要との見解を示した。これに対抗するクラブ側の動きは活発化している。クラブ利用者や法律家らでつくる「レッツダンス署名推進委員会」は昨年から風営法見直しを求める署名活動を始めた。音楽家の坂本龍一さんやNHKの連続ドラマ「あまちゃん」の音楽を手がけた大友良英さんも呼びかけ人に加わり、署名は16万筆を超えた。政府の規制改革会議も先月、「ダンス営業の許可基準が明確でない」などとして見直しを検討することを決めた。来年6月をめどに意見をまとめる予定だ。風営法の実務に詳しい行政書士の雨堤(あまづつみ)孝一さんは「風営法とクラブの関係を考えるうえで重要な裁判。司法が風営法の憲法判断にまで踏み込めば、見直し議論に与える影響は大きい」と話す。
     ◇
 〈風営法とクラブ〉 クラブについて、「客にダンスをさせ、かつ、客に飲食をさせる営業」と定義。営業には都道府県公安委員会の許可が必要で、最長で午前1時までに制限されている。許可を得ると深夜帯に営業できないため、無許可のクラブも多いとされる。実質的に黙認状態が続いていたが、近年摘発されるケースが相次いでいる。

*2:http://www.jicl.jp/hitokoto/backnumber/20130325.html
中村和雄(Let's DANCE法律家の会代表・弁護士)
■風営法によるダンス規制
 皆さんは風営法(正式名称は「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律」)という法律をご存じでしょうか。1948年に風俗営業取締法として制定されたのがはじまりです。風俗営業に関する営業時間、営業区域などを制限する法律で、①善良の風俗の維持、②清浄な風俗環境の保持、③少年の健全な育成に障害を及ぼす行為の防止が規制の目的とされています。何が「風俗営業」に該当するかについては、第2条に定義規定があり、「風俗営業」とは、以下のいずれかに該当する営業とされています。
 1 キャバレーその他設備を設けて客にダンスをさせ、かつ、客の接待をして客に飲食をさせる営業
 2 待合、料理店、カフェーその他設備を設けて客の接待をして客に遊興又は飲食をさせる営業
 3 ナイトクラブその他設備を設けて客にダンスをさせ、かつ、客に飲食をさせる営業
 4 ダンスホールその他設備を設けて客にダンスをさせる営業
 上記のとおり、「設備を設けて客にダンスをさせる営業」は風俗営業に該当します。ここでは「ダンス」について法律上何らの限定はなく、社交ダンスだけでなく、サルサやヒップホップなど幅広く規制の対象とされているのです。風俗営業に該当する営業を営むためには、公安委員会の営業許可が必要となります。許可を取るためには、客室の床面積が66㎡以上あり、かつダンスをさせる部分がその面積の5分の1以上あることが必要であり、許可を得ても深夜のダンスは禁止です。違反すると、許可の取消、営業停止などの行政処分の他、刑事処分として、200万円以下の罰金、2年以下の懲役などが科されます。
■最近の警察による過剰な取締り
 近年、「ダンスをさせる営業許可(風営法2条1、3、4号)がない」などとして、警察当局の摘発が相次ぎました。DJブースやミラーボールを設置した店舗が、「ダンスをさせる意図をもっている」などと警察当局から警告をうけた事例も少なくありません。2012年4月には大阪市北区のクラブ「NOON」が摘発されました。午後9時半過ぎに約20人の客が踊っている最中に、突然客の数を上回る捜査員がなだれ込んできて経営者らを逮捕したのです。長年にわたって無許可営業を黙認していながら突然逮捕というのです。同様の事態は全国各地に広がっています。
■憲法違反の人権侵害
 風営法は、営業形態の差はあれいずれも「ダンスをさせ」る営業を風俗営業とし、これを規制対象として規定しています。そこにいう「ダンス」とは警察庁によれば「男女の享楽的雰囲気を過度に醸成させるダンス」とされていますが、いかなるダンスがかかる「ダンス」に該当するのかについては、通常の判断能力を有する一般人の理解においても判断がつきかねるものであって、上記「ダンス規制」は、憲法第31条が保障する「法定手続きの保障」に反するものです。また、芸術的文化的表現手段の一つとして認められているダンスは、少なくとも現代において、一般的に善良な風俗や清浄な風俗環境、少年の健全育成を害するような危険をはらんでいるとは言えません。にもかかわらず上記のように不明確な基準でしかない「ダンス」を基準にして規制を及ぼそうとすることは、表現の自由(憲法第21条)や営業の自由(憲法第22条)、さらには人格権(憲法第13条)を侵害するものです。他方、仮にダンスを伴う営業が善良な風俗等を害することがあるのであれば、他の個別法規によって対応することが十分に可能なのですから、「ダンス」を基準にして規制を及ぼす必要性も存しません。
■時代遅れのダンス規制
 今日、「ダンス」は、中学校体育の必修科目にされている。「ダンスさせる場所=風俗営業」とするのは、社会通念上も無理があり時代遅れも甚だしいものです。クラブカルチャーは、音楽やアート・映像、ダンスなどの身体表現など、総合的な芸術表現の場として、今日、多くのアーティスト・DJらが、オーディエンスと一体になり、つくりあげてきたものです。民衆の形成する文化を守り育てることの重要性をぜひご理解ください。
■法律改正を
 問題を解決するには、上記「ダンス規制」である風営法第2条第1項第1号、同第3号、同第4号を削除するべきです。警察庁は、風営法による規制が必要である理由として、近隣の騒音やごみ、青少年への享楽的風紀の紊乱などをあげています。たしかに一部のクラブなどにおいて近隣からの苦情があったことは事実です。しかし、その対処は,ダンスさせること自体を規制することで行うべきではありません。騒音規制条例や青少年保護条例など本来の法律や条令を適切に運用すれば良いのであり、不十分であればそれらの規制を整備すべきなのです。現在警察によって行われている「風営法違反」の規制は明らかに法の目的を逸脱した濫用行為です。こうした濫用を規制していくために、風営法からダンス規制を削除することが不可欠なのです。わが国の芸術・文化活動の発展のために、多くの読者の皆さんに風営法改正の必要性をご理解頂ければ幸いです。

| 教育・研究開発::2013.11~2014.7 | 10:10 AM | comments (x) | trackback (x) |

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