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2013,11,18, Monday
(1)食品偽装と食品表示 *1に書かれている「全国各地のホテルや百貨店で相次ぐ食材の偽装は、おもてなし以前の問題で、人の口に入れるものをだますのは犯罪に等しい」というのは本当で、薬と同様、食品は身体の中に入れるものであるため、安全性や品質には、十分な注意が必要だ。そのため、消費者が正しく選択できるように、食品表示が義務付けられているのである。 しかし、*2のように、委員を務めるJA全農の立石食品品質・表示管理部長が、「事業者と消費者には大きな情報格差があるので、原料原産地表示などの重要課題を先送りせず、消費者目線で検討すべきだ」と主張したにもかかわらず、本来、消費者の側に立つべき消費者庁が、「食品表示法施行までの時間が限られている」として、表示基準案の作成を優先し、アレルギー表示や遺伝子組み換え表示、加工食品の原料原産地表示などの問題を先送りすることをあらためて強調したそうである。 (2)食品表示の役割 *1で、「日本農林規格法(JAS)では、加工品や生鮮食品には品種や産地名の記載が求められるにもかかわらず、外食には法規制が及ばなかった」と書かれているが、これは、私が衆議院議員だった時、議員数人で外食産業に視察に行き、私が提案したことだ。何故なら、産地名が表示されていなければ、消費者は正しい選択をすることができず、食品の安全や品質に注意して手をかけた生産者が馬鹿を見るパラドックスが起きるからだ。 そのため、消費者庁は、外食メニューにも食材の明記や安全性に関する表示を求めることを検討しているそうだが、外食や中食でも、原材料の産地は地域まで正確に記載してもらいたい。その理由は、安全・安心や質の高さに地域ぐるみで取り組んでいる県や農協もあり、産地が明確に区別されなければ、努力が水泡に帰すからだ。そのため、*2、*3のように、生産者も表示に積極的なのである。 また、*4のように、今の日本では、「放射能○○ベクレル」という放射能表示も必要になった。何故なら、それがなければ、消費者は、危険性ある地域の食材をすべて敬遠するしかないからだ。 (3)大人にも「嘘をつくな」「誠実に生きよ」という基本的道徳がないのに、誰が教えて評価する? *1に、「肝心なのは食を提供する側にモラルを取り戻すことだ」と書かれているが、そのとおりだ。それでは、どうすればそれを可能にできるかと言えば、家庭や社会の大人たちが見本を見せることができていない以上、「嘘をつくな」「誠実に生きよ」という基本的な道徳を、*5のように、学校で教える必要があるだろう。子どもにだけ教えても無理だろうが・・・。 また、*5に、重要項目として「いじめ防止」「生命尊重」「グローバル社会の中でのアイデンティティー」などが挙がっていると書かれているが、「ヒューマニズム(生命尊重やいじめ防止は当然含まれる)」と「個人の尊重(すべての人のアイデンティティーを大切にすること)」を教えれば、それらはすべて含まれる。また、子どもに「善悪の価値」や「我慢」を教えることは重要だが、「自己犠牲」を教えれば、基本的人権の軽視に繋がる「特定の価値観の押しつけ」に発展することが、日本の歴史と文化には現われている。 *1:http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2013110902000138.html (東京新聞社説 2013年11月9日) 食材偽装 モラルを取り戻そう 全国各地のホテルや百貨店で相次ぐ食材の偽装は、おもてなし以前の問題だ。人の口に入れるものをだますのは犯罪に等しい。「表示を誤った」と弁解する経営陣には最低限のモラルもない。後味の悪い話というのは、まさにこのことだ。阪急阪神ホテルズで食材の偽装が発覚したのをきっかけに、全国のホテルや百貨店などが自主調査したところ、オークラや高島屋、三越伊勢丹など大手老舗にもまん延していた。安価な食材を使いながら、高級食材を使ったように偽る。その手口も詐欺的で、一流店のすることかとあざとさに驚かされる。牛脂を注入した加工肉を「牛ステーキ」と偽り、バナメイエビやブラックタイガーを「シバエビ」「車エビ」と表記する。おせちの「からすみ」もサメとタラの卵で作った模造品だった。ハレの日、いつもより贅沢(ぜいたく)な食事を楽しんだ人は多いだろう。でも、偽物だった。偽装が常態化し、オークラは過去六年間に三十八万六千食、八億円以上を売り上げたという。「業界の慣習」と認めた役員の言葉通り、非常識な偽装は業界の“常識”だったのだ。 怖いのは、食材偽装は命さえ奪いかねないことだ。フランスのグルメ本にも載った奈良の旅館で「和牛ステーキ」として出された成型肉は、結着剤にアレルギー物質の乳などが含まれていた。肉を貼り合わせる過程で雑菌が入り込むと食中毒の危険もある。高い代価を支払う一流店なら食材も厳選している-。お客の多くはそう思っている。だが、こんなお粗末さでは「一流こそ疑え」となる。支配人クラスに食材の知識もなかったのか。現場の料理長らはプロだ。偽の食材を扱って良心は痛まなかったか。消費者庁など行政機関に告発はなかったのか。経営陣は「客を誤解させる意図はなかった」「表記の誤り」と弁解している。「偽装」と認めれば景品表示法に触れる恐れが出てくるためだろう。まず非を認め、反省を示すべきではないか。 日本農林規格(JAS)法では加工品や生鮮食品には品種や産地名の記載が求められるが、外食には法規制が及ばなかった。消費者庁は外食メニューにも食材の明記や、安全性に関する表示を求めることを検討している。肝心なのは食を提供する側にモラルを取り戻すことだ。二度とお客を置き去りにした偽装などしないと。だましてまで食べてほしい味なんてあるはずがない。 *2:http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=24361 (日本農業新聞 2013/11/7) 問題先送りで異論 内閣府消費者委食品表示部会「命に関わる」 内閣府の消費者委員会は6日、食品表示部会を開き、新たな食品表示ルール策定方針や法施行までの日程を確認した。委員からは今後の議論に当たり、委員の構成や原料・原産地表示など残された問題を先送りすることに、異論が出た。消費者庁は食品表示法施行までの時間が限られているとして、表示基準案の作成を優先し、アレルギー表示や遺伝子組み換え(GM)表示、加工食品の原料原産地表示などの問題を先送りすることをあらためて強調した。 委員を務めるJA全農の立石幸一食品品質・表示管理部長は「事業者と消費者には大きな情報格差がある」と指摘。「原料原産地表示などの重要課題を先送りせず、消費者目線で検討すべきだ」と主張した。他の委員からも「命に関わるアレルギー表示などの問題を先送りにするな」といった意見が出た。今後の議論の持ち方については、委員構成を問題視する声も上がった。立石部長は日本消費者連盟の山浦康明共同代表らと共に、消費者団体を代表する委員を減らしたことに質問状を提出。しかし、消費者庁は「人選については部会で議論すべき問題ではない」と答えるにとどまった。 *3:http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=24455 (日本農業新聞 2013/11/13) 食品の表示 適正に 関係団体へ要請 農水省が取り組み方針 ホテルや百貨店でメニューの表示と異なる食材を使っていた虚偽表示問題を受け、農水省は12日、食の信頼回復に向けた今後の取り組み方針を発表した。DNA分析やチェック体制の強化が柱。併せて同省は外・中食業界15団体に対し、適正な表示の徹底を求める指導・要請を行った。取り組み方針では、違反が多く報告されるエビなどの食材をDNA分析し表示内容を確認。地方農政局などの食品表示Gメンが外食事業者に対する表示制度の普及・啓発を行うとした。対策を通じて「表示の適正化に向けて川下の体制を強化し、成果として産地のブランドが守られるようにしたい」(表示・規格課)考えだ。消費者庁が作成する表示適正化へのガイドラインの協力も行うとしている。同日の指導・要請で同省は業者らに対し、違反事例などの周知、表示適正化の取り組み状況の把握、表示適正化を強く求めた。山下正行食料産業局長は「2020年の東京五輪に向けて輸出戦略も決め、日本食を世界に広めていこうとしている中で、今回の問題は日本食への信頼が揺るぎかねない重大な問題」と指摘。11日に開いた「食品表示等問題関係府省庁等会議」の内容も説明し、表示順守を重ねて強調した。これに先立ち、林芳正農相は同日の閣議後会見で、「改善されないと、日本の食に対し(信頼に関わる)影響が出る」と食品表示問題に懸念を表明。その上で、「消費者が食に信頼感を持てるように、政府一丸となって表示の適正化に取り組みたい」との意向を示した。 *4:http://dot.asahi.com/news/incident/2012092600824.html 福島第一原発事故の直後、CNNテレビで「すでにチェルノブイリと同じレベルだ」と指摘した米原子力技術者、アーニー・ガンダーセン氏。さらに原発の即時全廃を訴える作家・広瀬隆氏が対談で福島第一原発4号機の危機的状況を指摘した。 * * * ●広瀬:私の講演会では、ガンダーセンさんが3号機の爆発で、使用済み核燃料プールで即発臨界が起こった可能性について解説しているインターネットの動画を見せています。東京電力は認めませんが、私はあなたの解析に間違いないと思います。 ▲ガンダーセン:今は、爆発の原因を厳密に特定するのは難しい段階ですが、上向きのベクトルで劇的な爆発が起こったこと、爆発位置と偏りを考えると、核燃料プールで不慮の臨界が起こったと考えるのが自然です。 ●広瀬:原発敷地内で極めて高い放射線量が検出されたのも、臨界暴走でプールの核燃料が飛び散ったと考えると、現場の状況と符合します。著書『福島第一原発 ―真相と展望 』(集英社新書)では「4号機のプールで火災が起きたら、日本を脱出せよ」と警告していますね。 ▲ガンダーセン:4号機の核燃料プールは、今も日本列島を物理的に分断するほどの力を持っています。震災時、このプールには炉心数個分もの使用済み核燃料が入っていたのです。大気圏内で行われた過去の核実験で放出された総量に匹敵するほどの、放射性セシウムが眠っています。 ●広瀬:しかも、おそろしいことに、核燃料プールは遮蔽されていません。 ▲ガンダーセン:まさに「格納されていない炉心」です。今は水で冷やしていますが、プールにヒビが入るなどして水位が下がり、冷却できなくなると、温度が上がって燃料棒の鞘であるジルコニウム合金が発火するのです。こうなると、もはや水では消火できない。核燃料が大気中で燃えるという、人類のだれも経験したことはない、おそろしい状況になるのです。 ●広瀬:今回の事故とはけた違いの膨大な放射性物質が出てくる。大惨事です。 ▲ガンダーセン:まさしく。震災直後、日本では1、3号機の爆発に気を取られていましたが、米原子力規制委員会(NRC)は、この事態を非常に心配してきました。私自身もそうです。 ●広瀬:私は、ボロボロの4号機の燃料プールがガラッと崩れて、核燃料がバラバラと飛び散る事態を心配してきましたが、燃料プールのコンクリートに亀裂が入っただけで終わり、ということですね。 ▲ガンダーセン:科学にとって未知の大惨事になります。 *5:http://digital.asahi.com/articles/TKY201311110491.html?iref=comkiji_redirect&ref=nmail (朝日新聞 2013年11月12日) 生徒の「心」、評価対象 道徳、教科に格上げ案 文部科学省の「道徳教育の充実に関する懇談会」(座長=鳥居泰彦・慶応義塾学事顧問)は11日、小中学校の道徳を教科に格上げする報告案をまとめた。文科省は、12月に懇談会の報告を受け、年明けにも中央教育審議会に諮問し、15年度から教科化する日程を検討するが、教科書を使い、記述式で子どもを評価するという報告案の実現には問題が多い。 今は教科外の活動として週1回、副読本などを用いて教えられる「道徳」。報告案の最大の特徴は検定教科書の導入だ。「教科書は使用義務があり、授業水準を保てる」「教科書会社が競い、教材の質が高まる」などを理由に挙げる。ただ、懇談会でも、「検定基準をどう定めるのか、難しい」「教科書を選ぶ教育委員会の負担が大きい」などと慎重な意見が出た。 検定は「学習指導要領に沿っているか」「学説に照らして正確か」等の観点で判断される。「心のありように関わる記述の『正確性』を判断できるのか」と疑問視する文科省幹部も。報告案では「多様な価値観を反映した教科書を認める」としつつ、具体的な検討は文科省に委ねた。また、「成績の数値評価」は「道徳性を培うという性格上、不適切」とする一方、記述による評価の検討をうたった。しかし、具体的な評価観点は示されておらず、何をどう評価するかはまだ不透明だ。教える内容について、報告案は「発達段階ごとに精選を検討すべきだ」とし、重要項目として「いじめ防止」「生命尊重」「グローバル社会の中でのアイデンティティー」などを挙げた。11日の懇談会では「善悪の価値が最重要」「自己犠牲や我慢」といった意見も出た。「特定の価値観の押しつけにつながる」との懸念が根強い中、何を重視するかも焦点だ。 ■「崇高なもの」どう教科書に 編集者ら困惑 「自然や崇高なものとのかかわり」。現在、道徳の学習指導要領で掲げられている柱のうち、大手教科書出版社の編集者は、この項目を将来どう扱ったらいいか気をもむ。自然を愛し、人間の力を超えたものへの畏敬(いけい)の念を養うことなどを目指したもので、副読本ではトルストイの童話「七つの星」やマザー・テレサらの偉人伝などを利用して伝えてきた。この編集者は「『崇高なもの』は抽象的なので子どもが体験に基づいて振り返ることが難しく、個人差も大きい。畏敬の念を抱いたか、どう評価するかも難しいのでは」と話す。評価の導入について、本田由紀・東京大教授(教育社会学)は「記述式とはいえ、多様性の尊重や子どもの内面の自由を損なうことになる。何が良い生き方かを政府が決め、教師が子どもを裁くことになれば、憲法19条の思想・良心の自由にも抵触するのではないか」と心配する。教科化に向けた今回の議論は、政府の教育再生実行会議が2月にまとめた「いじめ対策」の提言が発端だが、効果は高いのか。内藤朝雄・明治大准教授(社会学)は「皆との同調が強く求められる環境の改善なくしていじめはなくならないだろう。むしろ、子どもの内面の善悪の評価をすることによって、『悪い』とされた子へのいじめが正当化されることにもなる」とみる。 ■「道徳」懇談会報告案の主な内容 ◆道徳の時間を「特別の教科」(仮称)に格上げ ◆検定教科書の導入 ◆数値評価は不適切だが、評価は重要。記述式など検討 ◆子どもの実態をよく知る学級担任が指導 ◆教員養成課程で履修単位数の増加を検討 ◆学習指導要領で示す道徳の内容の見直し PS(2013.11.19追加):11月19日に、*6の記事を見たが、食品表示と景品表示の区別もわからないような人が判断しているのが問題なのだ。食品はMainで景品はおまけである。 *6:http://www.saga-s.co.jp/news/global/corenews.0.2582893.article.html (佐賀新聞 2013年11月19日) 食材虚偽表示で改正景表法案 / 来年の国会提出目指す 消費者庁は19日、相次ぐ食材虚偽表示の取り締まりを強化するため、都道府県も違反業者に措置命令を出せるようにする景品表示法改正法案を、来年の通常国会に提出することを目指すと明らかにした。課徴金制度の導入や、違法行為を直接罰する規定の導入も今後の検討課題とする。 自民党の消費者問題調査会は19日、景表法に基づく国と地方自治体の取り締まり態勢を強化することや、虚偽表示の罰則強化を検討すべきとする緊急提言をまとめた。提言は悪質な虚偽表示は、政府が詐欺容疑などでの刑事告発も考えるべきだと指摘した。
| 教育・研究開発::2013.11~2014.7 | 10:44 AM | comments (x) | trackback (x) |
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