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2013,11,19, Tuesday
(1)民主主義の基礎は、国民の自由と知る権利 私も、メディアが真実ばかりを言っているわけではなく、政策の分析力も今一つで、ニュースの重要性の比重もおかしいと思うことが多々ある。しかし、主権在民である限り、有権者は、政策を知っていなければ正しい投票行動はできず、有権者が正しい投票行動をできなければ、民主主義は機能しない。そのため、*1のとおり、民主主義の礎となる「(正確な情報を)知る権利」を脅かす秘密保護法案には反対だ。 (2)秘密保護法案に、265人の憲法・刑法学者らが反対声明 このような中、*2で、265人の憲法・刑法学者らが秘密保護法案に対して反対声明を出し、「国民主権の形骸化」「人権侵害のおそれ」「国民主権の原理に反する」「平和主義の原理に反する」など、まさに私の危惧が、具体的に、わかりやすく記載してあるので参照されたい。 (3)国会議員は、自ら立法府の立場を弱めるべきではない この法案には、弁護士会と報道が速やかに反応して反対声明を出した。それに対して、政府・与党は、*3、*4のように、弁護士と報道は対象外として、*5、*6、*7のように、何とかこの法案を成立させようとしている。その様子には、国会議員が民主主義を守るという理念がなく、少しずつ妥協して賛成を増やすというテクニックが見えるのみであり、情けない。 さらに、30年後に、それが秘密だったことが不適切だったとわかっても、スパイやテロリストとして逮捕された人の人生は戻ってこない。そのため、そこまでしてやりたいことが何なのか、大いに疑問だ。 *1:http://mainichi.jp/opinion/news/20131105k0000m070107000c.html (毎日新聞社説 2013年11月5日) 秘密保護法案を問う 国民の知る権利 国民が自由に情報を得る機会を持つことは、民主主義の基本だ。知る権利に奉仕するのは報道だけではない。国民は多様なルートで国政についての情報を集める。だが、特定秘密保護法案が成立し、特定秘密にいったん指定されれば、その取得行為が幅広く罰せられる。国民も例外ではない。法案は、社会の情報流通を妨げ、国民の日常生活を脅かす危険性に満ちていると、改めて指摘したい。 憲法や刑事法を専攻する学者300人近くが10月28日、法案に反対する声明を連名で発表した。特定秘密は安全保障に関わる国家機密で、防衛、外交、スパイ活動防止、テロ活動防止の4分野が対象だ。別表で規定された項目は広くあいまいで、行政の判断でいかようにも拡大できる。一方、情報を得ようとする側は、何が特定秘密か分からないまま、取得行為が罰せられる。法学者は、こうした基本的な枠組みに危惧を表明した。国民の人権を侵し、憲法の国民主権の原理に反するというのだ。もっともな指摘だ。声明では、特定秘密の指定が、市民の関心事に及ぶ具体例を二つ挙げた。一つは、原発事故だ。安全性に関わる情報がテロ活動と結びつけられ、特定秘密に指定される可能性が大きいと法学者はみる。もう一つが基地問題だ。防衛省は普天間飛行場の移設先に予定している沖縄県名護市辺野古のジュゴンの環境調査結果を公にしていない。こうした調査でさえ、基地移設と関連づけ特定秘密になり得るという。原発や基地は全国に点在する。地元住民のみならず国民の共通関心事である。そうした重要テーマについて、個人やグループが情報を集め、議論をし、行政対応を求めるのはごく日常的な光景だ。だが、いったん特定秘密に指定されれば、情報に近づくことは、刑事罰に直結する。漏えいや取得についての共謀、そそのかし、扇動行為には、最高で懲役5年が科せられる。未遂の処罰規定もあるから、結果的に情報提供がなくても罰せられてしまう。また、万が一、逮捕・起訴されて裁判になっても、特定秘密の内容が法廷で明らかにされないまま有罪になる可能性を法学者は指摘する。刑事裁判の適正手続きという観点からも大いに疑問が残るのだ。法案が成立すれば、国民の知る権利は守れなくなる。 ◇ 特定秘密保護法案の審議入りが近い。問題点を明らかにしていく。 *2:http://www.tokyo-np.co.jp/feature/himitsuhogo/seimei.html (東京新聞 2013年10月29日) 秘密保護法案265人反対 憲・刑法学者ら声明 憲法・メディア法と刑事法の研究者が二十八日、それぞれ特定秘密保護法案に反対する声明を発表した。声明に賛成する研究者は憲法・メディア法が百四十人、刑事法が百二十人を超えた。憲法の「知る権利」や「国民主権」を損なう法案の実態が明らかになるにつれ、成立を急ぐ政府とは逆に反対の声が広がっている。 反対声明は憲法・メディア法と刑事法の研究者が二十八日、国会内で合同で記者会見して発表した。憲法・メディア法研究者の声明は呼び掛け人が二十四人、賛同者百十八人の計百四十二人。刑事法は呼び掛け人二十三人、賛同者百人の計百二十三人。会見で、憲法・メディア法の呼び掛け人の山内敏弘一橋大名誉教授は「法案は憲法の三つの基本原理である基本的人権、国民主権、平和主義と真っ向から衝突し侵害する」と指摘。刑事法の呼び掛け人代表の村井敏邦一橋大名誉教授は「(軍事機密を守る目的で制定された)戦前の軍機保護法と同じ性格。戦前の影響を考えれば、刑事法学者は絶対反対しなければならない」と呼び掛けた。声明はいずれも法案の問題点として、特定秘密を第三者の点検を受けず政府の判断で指定し、漏えいや取得に厳罰を科して、調査活動をする市民や記者も罪に問われる点を挙げた。その上で「国民の『知る権利』を侵害し憲法の国民主権の基盤を失わせ、憲法に基づいて国民が精査すべき平和主義に反している」などと批判した。憲法・メディア法は奥平康弘東京大名誉教授、東北大や東大などで教授を歴任した樋口陽一氏、杉原泰雄一橋大名誉教授、刑事法は斉藤豊治甲南大名誉教授ら研究者が呼び掛け人、賛同者に名を連ねた。 ◆声明呼び掛け人(敬称略) 【憲法・メディア法研究者】=24人 愛敬浩二(名古屋大教授) 浦田一郎(明治大教授) 服部孝章(立教大教授) 青井未帆(学習院大教授) 浦部法穂(神戸大名誉教授) 水島朝穂(早大教授) 石村善治(福岡大名誉教授) 奥平康弘(東京大名誉教授) 本秀紀(名古屋大教授) 市川正人(立命館大教授) 小沢隆一(東京慈恵会医科大教授) 森英樹(名古屋大名誉教授) 今関源成(早大教授) 阪口正二郎(一橋大教授) 山内敏弘(一橋大名誉教授) 上田勝美(龍谷大名誉教授) 清水雅彦(日本体育大准教授) 吉田栄司(関西大教授) 右崎正博(独協大教授) 杉原泰雄(一橋大名誉教授) 渡辺治(一橋大名誉教授) 浦田賢治(早大名誉教授) 田島泰彦(上智大教授) 和田進(神戸大名誉教授) 【刑事法研究者】=23人 村井敏邦(代表、一橋大名誉教授) 白取祐司(北海道大教授) 前田朗(東京造形大教授) 斉藤豊治(代表、甲南大名誉教授) 新屋達之(大宮法科大学院大教授) 松宮孝明(立命館大教授) 浅田和茂(立命館大教授) 武内謙治(九州大准教授) 三島聡(大阪市立大教授) 安達光治(立命館大教授) 土井政和(九州大教授) 水谷規男(大阪大教授) 海渡雄一(弁護士) 豊崎七絵(九州大准教授) 守屋克彦(弁護士) 川崎英明(関西学院大教授) 中川孝博(国学院大教授) 葛野尋之(一橋大教授) 新倉修(青山学院大教授) 斎藤司(龍谷大准教授) 渕野貴生(立命館大教授) 佐々木光明(神戸学院大教授) 本庄武(一橋大准教授) ◆特定秘密保護法制定に反対する憲法・メディア法研究者の声明の賛同者 青木宏治 (関東学院大法科大学院教授) 榎澤幸広 (名古屋学院大講師) 川岸令和 (早大教授) 浅川千尋 (天理大教授) 大石泰彦 (青山学院大教授) 菊地洋 (岩手大准教授) 足立英郎 (大阪電気通信大教授) 大久保史郎(立命館大教授) 北川善英 (横浜国立大教授) 荒牧重人 (山梨学院大大学院教授) 大津浩 (成城大教授) 木下智史 (関西大教授) 飯島滋明 (名古屋学院大准教授) 大塚一美 (山梨学院大非常勤講師) 君島東彦 (立命館大教授) 池端忠司 (神奈川大教授) 大藤紀子 (獨協大教授) 清田雄治 (愛知教育大教授) 井口秀作 (愛媛大教授) 大野友也 (鹿児島大准教授) 倉田原志 (立命館大教授) 石川裕一郎(聖学院大准教授) 岡田健一郎(高知大講師) 古関彰一 (獨協大教授) 石塚迅 (山梨大准教授) 岡田信弘 (北海道大教授) 小竹聡 (拓殖大教授) 石村修 (専修大法科大学院教授) 緒方章宏 (日本体育大名誉教授) 後藤登 (大阪学院大教授) 井田洋子 (長崎大教授) 奥田喜道 (跡見学園女子大助教) 小林武 (沖縄大客員教授) 伊藤雅康 (札幌学院大教授) 奥野恒久 (龍谷大教授) 小林直樹 (東京大名誉教授) 稲正樹 (国際基督教大教授) 小栗実 (鹿児島大教員) 小松浩 (立命館大教授) 井端正幸 (沖縄国際大教授) 柏崎敏義 (東京理科大教授) 笹川紀勝 (国際基督教大名誉教授) 浮田哲 (羽衣国際大教授) 加藤一彦 (東京経済大教授) 佐々木弘通(東北大教授) 植野妙実子(中央大教授) 金澤孝 (早大准教授) 笹沼弘志 (静岡大教授) 植松健一 (立命館大教授) 金子匡良 (神奈川大准教授) 佐藤潤一 (大阪産業大准教授) 植村勝慶 (国学院大教授) 上脇博之 (神戸学院大大学院教授) 佐藤信行 (中央大教授) 江原勝行 (岩手大准教授) 河合正雄 (弘前大講師) 澤野義一 (大阪経済法科大教授) 榎透 (専修大准教授) 河上暁弘 (広島市立大講師) 清水睦 (中央大名誉教授) 城野一憲 (早大法学学術院助手) 中島茂樹 (立命館大教授) 前原清隆 (日本福祉大教授) 鈴木眞澄 (龍谷大教授) 永田秀樹 (関西学院大大学院教授) 松田浩 (成城大准教授) 隅野隆徳 (専修大名誉教授) 中村睦男 (北海道大名誉教授) 松原幸恵 (山口大准教授) 芹沢斉 (青山学院大教授) 長峯信彦 (愛知大教授) 丸山重威 (関東学院大前教授) 高作正博 (関西大教授) 成澤孝人 (信州大教授) 宮井清暢 (富山大教授) 高橋利安 (広島修道大教授) 成嶋隆 (獨協大教授) 三宅裕一郎(三重短期大准教授) 高橋洋 (愛知学院大大学院教授) 西原博史 (早大教授) 三輪隆 (埼玉大特別教員・名誉教授) 高見勝利 (上智大法科大学院教授) 丹羽徹 (大阪経済法科大教授) 村田尚紀 (関西大法科大学院教授) 田北康成 (立教大助教) 根森健 (新潟大教授) 元山健 (龍谷大教授) 竹森正孝 (大学教員) 野中俊彦 (法政大名誉教授) 諸根貞夫 (龍谷大教授) 多田一路 (立命館大教授) 濱口晶子 (龍谷大准教授) 森正 (名古屋市立大名誉教授) 只野雅人 (一橋大教授) 韓永學 (北海学園大教授) 山崎英壽 (都留文科大非常勤講師) 館田晶子 (専修大准教授) 樋口陽一 (憲法研究者) 山元一 (慶大教授) 田中祥貴 (信州大准教授) 廣田全男 (横浜市立大教授) 横田耕一 (九州大名誉教授) 寺川史朗 (龍谷大教授) 深瀬忠一 (北海道大名誉教授) 横山宏章 (北九州市立大大学院教授) 戸波江二 (早大大学院教授) 福嶋敏明 (神戸学院大准教授) 吉田善明 (明治大名誉教授) 内藤光博 (専修大教授) 福島力洋 (関西大准教授) 渡辺賢 (大阪市立大学大学院教授) 永井憲一 (法政大名誉教授) 藤野美都子(福島県立医科大教授) 渡辺洋 (神戸学院大教授) 中川律 (宮崎大講師) 船木正文 (大東文化大教員) 中里見博 (徳島大准教授) 古川純 (専修大名誉教授) (27日現在、118人=敬称略) ◆刑事法研究者の声明の賛同者 赤池一将 (龍谷大教授) 京明 (関西学院大准教授) 中村悠人 (東京経済大専任講師) 安里全勝 (山口大前教授) 楠本孝 (三重短期大教授) 鯰越溢弘 (創価大教授) 雨宮敬博 (宮崎産業経営大講師) 黒川亨子 (宇都宮大専任講師) 名和鐡郎 (静岡大名誉教授) 甘利航司 (国学院大准教授) 小浦美保 (岡山商科大准教授) 西岡正樹 (山形大准教授) 荒川雅行 (関西学院大教授) 古川原明子(龍谷大准教授) 新村繁文 (福島大教授) 荒木伸怡 (立教大名誉教授) 後藤昭 (一橋大教授) 比嘉康光 (立正大名誉教授) 伊賀興一 (弁護士) 酒井安行 (青山学院大教授) 玄守道 (龍谷大准教授) 生田勝義 (立命館大名誉教授) 坂本学史 (神戸学院大講師) 平井佐和子(西南学院大准教授) 石塚伸一 (龍谷大教授) 佐川友佳子(香川大准教授) 平川宗信 (中京大教授) 石田倫識 (愛知学院大准教授) 櫻庭総 (山口大専任講師) 福井厚 (京都女子大教授) 伊藤睦 (三重大准教授) 笹倉香奈 (甲南大准教授) 福島至 (龍谷大教授) 稲田朗子 (高知大准教授) 佐藤雅美 (神戸学院大教授) 振津隆行 (金沢大教授) 指宿信 (成城大教授) 島岡まな (大阪大教授) 本田稔 (立命館大教授) 上田寛 (立命館大教授) 白井諭 (大阪経済法科大専任講師) 前田忠弘 (甲南大教授) 上田信太郎(岡山大教授) 鈴木博康 (九州国際大准教授) 前野育三 (関西学院大名誉教授) 植田博 (広島修道大教授) 陶山二郎 (茨城大准教授) 正木祐史 (静岡大教授) 上野達彦 (三重大名誉教授) 関口和徳 (愛媛大准教授) 松岡正章 (弁護士) 内田博文 (神戸学院大教授) 高内寿夫 (国学院大教授) 松倉治代 (大阪市立大准教授) 内山真由美(佐賀大准教授) 高倉新喜 (山形大准教授) 松本英俊 (駒沢大教授) 梅田豊 (愛知学院大教授) 高田昭正 (立命館大教授) 丸山泰弘 (立正大専任講師) 岡田行雄 (熊本大教授) 高平奇恵 (九州大助教) 光藤景皎 (大阪市立大名誉教授) 岡本勝 (東北大名誉教授) 武田誠 (国学院大教授) 緑大輔 (北海道大准教授) 大出良知 (東京経済大教授) 田中輝和 (東北学院大名誉教授) 三宅孝之 (島根大名誉教授) 大藪志保子(久留米大准教授) 田淵浩二 (九州大教授) 宮本弘典 (関東学院大教授) 大山弘 (神戸学院大教授) 丹治初彦 (弁護士) 村岡啓一 (一橋大教授) 小田中聰樹(東北大名誉教授) 恒光徹 (大阪市立大教授) 森尾亮 (久留米大教授) 春日勉 (神戸学院大教授) 寺中誠 (東京経済大非常勤講師) 森下弘 (立命館大教授) 門田成人 (広島大教授) 徳永光 (独協大教授) 森久智江 (立命館大准教授) 金澤真理 (大阪市立大教授) 冨田真 (東北学院大教授) 森本益之 (大阪大名誉教授) 神山敏雄 (岡山大名誉教授) 内藤大海 (熊本大准教授) 山田直子 (関西学院大教授) 嘉門優 (立命館大准教授) 永井善之 (金沢大教授) 山名京子 (関西大教授) 金尚均 (龍谷大教授) 中島洋樹 (関西大准教授) 吉村真性 (九州国際大准教授) ※ほかに氏名未公表の賛同者4人 (25日現在、100人=敬称略) 【秘密保護法案に反対 声明要旨】 ◇国民主権を形骸化 憲法・メディア法研究者 法案には憲法の基本原理に照らして看過しがたい重大な問題点があると考える。 一 取材・報道の自由、国民の知る権利などさまざまな人権を侵害する 重要で広範な国の情報が行政機関の一存で特定秘密とされることにより、国民の知る権利が制約される危険が生じる。また、公務員などが萎縮することにより情報提供が狭められ、漏えいへの教唆や取得なども犯罪として処罰されることで、取材活動や市民の調査活動が厳しく制限され、報道の自由や市民の知る権利が不当に侵害されかねない。法案には、「報道の自由に十分配慮する」との規定も置かれているが、この種の配慮規定により、法案の危険性を本質的に取り除くことはできない。このほか、法案は、秘密を取り扱う者に対する適性評価制度を導入しようとしているが、これは個人のプライバシーを広範囲に侵害するもので、内部告発の抑止にもつながりかねない。また、秘密とされる範囲は広範囲に及び、かつ、漏えい等が禁止される事項も抽象的に書かれており、処罰の範囲も不明確であり、憲法三一条が要求する適正手続きの保障に反する疑いも強い。 二 憲法の国民主権の原理に反する 法案が提示しているのは、国民主権の前提に反して、防衛、外交、有害活動防止やテロ防止など国民が大きな影響を受ける重要な情報について、その入手、取材、伝達、報道、意見交換がさまざまな形で制限される仕組みとなっている。これでは、国民主権が拠(よ)って立つ基盤そのものが失われてしまうことになろう。また、法案が制定されることになれば、国会議員の調査活動や議院の国政調査権なども制限を受ける可能性が高く、国民主権の原理はますます形骸化されてしまいかねない。 三 憲法の平和主義の原理に反する 法案は、防衛に関する事項を別表で広く詳細に列記し、関連の特定有害活動やテロ防止活動に関する事項も含め、これらの情報を広く国民の目から遠ざけてしまうことになる。しかも、法案により、現在の自衛隊法により指定されている「防衛秘密」はそのまま「特定秘密」に指定されたものと見なされ、懲役も倍化されるという乱暴なやり方が取られている。政府は、安全保障政策の司令塔の役割を担う日本版NSC(国家安全保障会議)の設置法案とともに法案の制定を図ろうとしている。法案は、想定される武力の行使を見越して秘密保護をはかろうとするものだ。その背後には、日米の情報共有の進展を踏まえた秘密保護強化の要請がある。 ◇人権侵害のおそれ 刑事法研究者 法案は、基本的には一種の軍事立法であり、平和主義、国民主権原理、基本的人権の尊重主義といった憲法の基本原理を脅かし、憲法「改正」の先取りでもある。同時に、刑事法の人権保障をも侵害するおそれが大きいと言わざるを得ない。 一 法案の罰則は罪刑法定主義に反し、憲法三一条違反である 特定秘密保護法の罰則は、文言が曖昧であり、処罰範囲は広汎(こうはん)であって、憲法三一条の適正手続き・罪刑法定主義に反する。罪刑法定主義は、犯罪と刑罰が国会の制定する法律によらなければならないとするもので、政府が刑罰法規を定めることは基本的人権と議会制民主主義の見地から許されない。この法案の特定秘密はそもそもきわめて広範囲であり、具体的な内容は行政機関の長が決定する。このような罰則は、刑法による保護の対象を事実上行政機関の決定に広範に委任するという意味で、それ自体罪刑法定主義の趣旨に反する。処罰の類型も秘密漏えいを中心に、特定秘密の取得行為、独立教唆・扇動、共謀にまで及び、過失による漏えいの処罰も含まれており、悪(あ)しき完全主義に陥っている。ささいな行き過ぎを口実に、報道機関の取材や住民運動の側の調査活動は規制の対象とされ、活動を萎縮させるおそれが大きい。 二 刑事裁判における適正手続きを侵害する 罰則に違反して起訴された場合、裁判官や弁護人に秘密の内容を開示することは認められないおそれがある。その結果、「特定秘密」の内容が裁判官に対してさえ明らかにされないまま審理され、有罪とされることになろう。裁判の公開の制限や、尋問・論告・弁論が制限されるおそれも無視できない。弁護人の活動が特定秘密の取得行為あるいは共謀罪、独立教唆・扇動罪あるいは未遂罪に当たるとして、処罰される可能性がある。被疑者・被告人が弁護人の援助を受ける権利が著しく制限される。 三 報道機関への配慮規定は問題を解決しない 法案は報道・取材に対する配慮規定といわゆる「免責」規定をおいている。これらの条文はメディアをなだめることを意図している。しかし、懲役十年を覚悟して、秘密の情報をメディアに提供する人はほとんどいない。濫用(らんよう)禁止規定が人権侵害に対して効果的な歯止めとなるかは、過去の類似の規定を持つ法律等の運用から見て疑わしい。 *3:http://www.jiji.com/jc/c?g=pol_30&k=2013110900196 (時事ドットコム 2013.11.9) 秘密提供、弁護人は対象外=「防御権侵害の恐れ」指摘も-保護法案. イージス艦情報漏えい事件で海上自衛隊第1術科学校を家宅捜索し、押収品を車両に載せる神奈川県警の捜査員ら=2007年5月19日、広島県江田島市政府が今国会で成立を目指す特定秘密保護法案は、秘密を扱う公務員らだけでなく、秘密を取得した側も罪に問われかねない内容となっている。起訴されて裁判を受ける場合、同法案では弁護人への秘密の提供は認められておらず、弁護士の間では「被告の防御権が侵害される恐れがある」との指摘も出ている。特定秘密は行政機関の長が指定し、扱えるのは国家公務員や都道府県警の職員、防衛産業関係者らに限定。秘密を漏らすと最高で懲役10年の刑が科され、過失や未遂も処罰の対象となる。また、秘密漏えいを唆したり、暴行や脅迫、不正アクセスなどによって秘密を取得したりした場合も処罰対象となる。法案では、刑事事件の捜査または公訴の維持に携わる警察、検察には特定秘密を提供できるとされる。証拠開示命令を出すかどうかを決めるに当たって必要な場合には裁判所への提供も可能とされるが、弁護人への提供を認める記載はない。 *4:http://mainichi.jp/shimen/news/20131115ddm041010080000c.html (毎日新聞 2013年11月15日) 特定秘密保護法案に言いたい:「報道」の線引きに疑問−−アジアプレス共同代表・石丸次郎さん ◇石丸次郎さん(51) 特定秘密保護法ができれば、報道と秘密保護の摩擦は必ず起きる。立件するかどうか決めるのは警察だ。大手メディアにはすぐには手を出さないだろう。まずターゲットになるのは私たち独立系やフリーランスのジャーナリストではないかと強い危惧を抱いている。政府はフリーランスも「報道従事者」として処罰対象にしないと言っているが線引きするのは権力側。日朝外交の舞台裏をチームで取材し、若いスタッフが外交官に話を聞いたら「特定秘密の漏えい教唆」と見なされるかもしれない。「報道実績がない」と決めつけることも可能だからだ。基地問題などで報道機関に負けない地道な調査を続けている市民がいる。彼らはどうなるのか。 報道とそれ以外という線引き自体が間違っていると思う。何が秘密か分からないのが不気味だ。アジアプレスのメンバーはイラクで自衛隊の活動も取材した。特定秘密保護法ができれば、自衛隊や外交の関係者を取材する時に「相手に迷惑をかけるかもしれない」との思いが働くだろう。「これ以上突っ込むと通報されるかもしれない」という疑心暗鬼にも陥る。踏み込んだ取材には慎重にならざるを得なくなる。長く取材してきた北朝鮮は、路地裏の露天市場の写真や映像すら「国家機密」として外国に持ち出すことを厳罰に処す国だ。非民主的で強権的な国家はやたらと秘密を作りたがり、情報統制によって国民を管理する。安倍政権も同じベクトルを向いているのではないか。 *5:http://www.tokyo-np.co.jp/article/feature/himitsuhogo/list/CK2013111002000111.html (東京新聞 2013年11月10日)【特定秘密保護法案】「国家の安全に優先せず」 「法案批判は放送法違反」 「知る権利」が国家の安全に優先するとの考えは間違い。法案に批判的なテレビキャスター発言は放送法違反-。特定秘密保護法案をめぐり、自民党の閣僚経験者や政権幹部から、国民の知る権利や報道の自由を軽視するかのような発言が続いている。法案は知る権利と報道・取材の自由に十分配慮すると規定しているが「うわべだけのものだ」との声も上がる。 自民党の特定秘密保護法案に関するプロジェクトチーム座長を務める町村信孝元外相は、八日の衆院国家安全保障特別委員会で「(知る権利が)国家や国民の安全に優先するという考え方は基本的に間違いがある」と発言。「『知る権利は担保しました、しかし個人の生存が担保できません、国家の存立が確保できません』というのは、全く逆転した議論ではないか」とも述べた。 一方、小池百合子元防衛相は十月二十八日の衆院特別委で、首相の一日の行動を報道する首相動静について「知る権利(の範囲)を超えているのではないか」との認識を示した。「知る権利もあるが、何を知り、何を伝えてはいけないかを精査してほしい」と求めたが、菅義偉官房長官は同日の記者会見で「(首相動静は)特定秘密には当たらない」と火消しに走った。 短文投稿サイト「ツイッター」で盛んにつぶやいているのは、法案を担当する礒崎陽輔首相補佐官。十一月七日にはテレビ報道をめぐり「こういう法案にはファイティングポーズをとらなければならないということなのだろうが、放送の中立性を侵せば、放送法違反だ」「キャスターが『廃案にさせなければならない』と明確に言った。明らかに放送法に規定する中立義務違反の発言だ」と投稿した。 今国会での法案成立を目指す安倍晋三首相は衆院本会議で「国民の知る権利や報道の自由への配慮も重要と認識している。適切に対応する」と述べた。しかし、山口二郎北海道大教授(政治学)は、自民党が七月にTBSの取材を一時拒否したことも挙げながら「安倍政権になってメディアに対するけん制、威嚇はずっと続いており、元閣僚らの発言はその一端だ。配慮規定はうわべだけのソフトな言葉を入れ、法の有害さを隠しているにすぎない」と指摘した。 *6:http://www.saga-s.co.jp/news/global/corenews.0.2582478.article.html (佐賀新聞 2013年11月18日) 民主の対案、特定秘密を限定 / 外部監査も導入 民主党が検討している政府の特定秘密保護法案への対案に、特定秘密に指定できる対象を外国政府との共有情報に限定し「国際特別管理秘密」との名称にする内容を盛り込むことが分かった。行政機関による恣意的な対象拡大を防ぐため、国会や第三者機関による外部監査制度も導入する。複数の党幹部が18日、明らかにした。政府の秘密保護法案は(1)防衛(2)外交(3)スパイ行為など特定有害活動防止(4)テロ活動防止―に関する情報を「特定秘密」に指定。公務員らが漏らした場合、最高10年の懲役を科す。 *7:http://www3.nhk.or.jp/news/html/20131119/k10013165551000.html (NHK 2013年11月19日) みんな 与党と修正のうえ法案賛成へ みんなの党は、まもなく役員会を開き、「特定秘密保護法案」について、「特定秘密」の指定などで総理大臣の関与を強める修正を行ったうえで賛成する方針を、正式に決めることにしています。「特定秘密保護法案」を巡って、自民・公明両党とみんなの党は、修正協議の実務者が、先ほど国会内で会談し、▽「特定秘密」の指定にあたって統一的な運用を図るための基準案を総理大臣が作成することや、▽指定などについて、総理大臣の指揮・監督権を明記し、必要があれば閣僚らに説明を求め、改善を指示できることなど、18日、大筋で合意した法案の修正内容を確認しました。これを受けてみんなの党はまもなく役員会を開き、与党と共に法案を修正したうえで、賛成する方針を正式に決めることにしています。一方、自民・公明両党と日本維新の会の実務者が、先ほどから国会内で修正協議を行っており、この中では、維新の会が求めている、▽「特定秘密」の指定の妥当性をチェックする第三者機関の設置や、▽すべての情報を30年後に開示することなどを巡って、意見が交わされているものとみられます。
| 民主主義・選挙・その他::特定秘密保護法関係2013.10~12 | 08:37 PM | comments (x) | trackback (x) |
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