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2013,12,01, Sunday
(1)特定秘密保護法制定の目的と法案内容の不整合について *3の特定秘密保護法案の最後に、この法律の制定理由を、「国際情勢の複雑化に伴い我が国及び国民の安全の確保に係る情報の重要性が増大するとともに、高度情報通信ネットワーク社会の発展に伴いその漏えいの危険性が懸念される中で、我が国の安全保障に関する情報のうち特に秘匿することが必要であるものについて、これを適確に保護する体制を確立した上で収集し、整理し、及び活用することが重要であることに鑑み、当該情報の保護に関し、特定秘密の指定及び取扱者の制限その他の必要な事項を定める必要がある。これが、この法律案を提出する理由である」と記載されている。 しかし、この制定理由なら、①インターネット(外部通信ネット)に接続するコンピューターを制限して秘密文書を保管するコンピューターを外部ネットに接続しないようにする ②防衛省・外務省・政府など、必要な組織はイントラネット(外部とは隔絶した組織内の専用線を使った通信網)を整備する ③秘密情報を扱う人を制限し、内部統制を強化して守秘義務を課す などが必要なのであって、市民を巻き込んで治安維持法まがいの法律を作り、罰則を強化する必要はないと考える。 また、*3の第1条には、「国際情勢の複雑化に伴い、我が国及び国民の安全の確保に係る情報の重要性が増大した」と記載されているが、これは意味不明だ。何故なら、国際情勢は以前から複雑であって今に始まったことではなく、我が国及び国民の安全の確保に係る情報の重要性が増大したから、何故この法律を制定する必要があるのかについても、論理的飛躍があるからだ。そして、そもそも「情報」とは、漫然と受容しても意味がなく、問題意識を持って集めたり作ったりして、初めて役に立つものである。 さらに、*3第1条に、「高度情報通信ネットワーク社会の発展に伴いその漏えいの危険性が懸念される」「情報の保護に関し、特定秘密の指定及び取扱者の制限その他の必要な事項を定めることにより、その漏えいの防止を図り、もって我が国及び国民の安全の確保に資することを目的とする」と書かれているのも、上に書いたとおり、安易に外部ネットに接続せず、情報管理の質を高めれば足りるのであって、これは、欧米先進国では20年以上も前から行われていることである。 なお、外部ネットだから、覗いても何をしてもよいということはなく、通信の秘密やプライバシーを守れるようにするための法律こそ作るべきであり、それは今後のインターネット発展のための重要なインフラになろう。 (2)特定有害活動の定義について また、*3の別表に、「特定有害活動の防止に関する事項」というのがあるが、特定有害活動の定義が不明だ。そして、この言い方であれば、誰かが有害と感じさえすれば、デモやチラシの配布など、憲法で言論の自由、表現の自由として認められたどんな活動でも特定有害活動に入れることができるため、そのようなことがないように、「特定有害活動」の定義を明確にすべきだ。 (3)テロリズムの定義について さらに*3には、「テロリズムの防止に関する事項」というのもあるが、この文言だけでは、*2のように、反対する者は何でもテロリストに含めることさえ可能だ。清水勉弁護士は「普通の法律の読み方だと主義主張を強要しただけでテロになる」と指摘しており、このままでは、自民党の石破茂幹事長だけではなく、多くの人がそう思うだろう。そのため、この法律で言う「テロリズム」の定義も、法律内で明確に定義すべきだ。 (4)一般国民の言論の自由、表現の自由、知る権利は担保されていないということ *3に、「第二十二条 この法律の適用に当たっては、これを拡張して解釈して、国民の基本的人権を不当に侵害するようなことがあってはならず、国民の知る権利の保障に資する報道又は取材の自由に十分に配慮しなければならない」「2 出版又は報道の業務に従事する者の取材行為については、専ら公益を図る目的を有し、かつ、法令違反又は著しく不当な方法によるものと認められない限りは、これを正当な業務による行為とするものとする」として、この法案の強力な反対者である報道機関、出版・報道業務従事者の取材行為については、「専ら公益を図る目的を有し、かつ、法令違反又は著しく不当な方法によるものと認められない限り、これを正当な業務による行為とする」として、今までどおりの原則免責とした反面、ブログなどで発信している一般市民の言論の自由については強い規制がかかる。 しかし、日本国憲法では、国民すべてに言論の自由、表現の自由が認められているのであり、主権在民の民主主義国家として、知る権利も国民すべてが持っているため、この法律は日本国憲法違反であるとともに、*1に記載されているように、国際基準を逸脱したものでもある。 *1:http://www.shinmai.co.jp/news/20131201/KT131129ETI090014000.php (信濃毎日新聞 2013年12月1日) 市民も処罰 国際基準を逸脱する 安全保障のため国が秘密を持つことと、国民の「知る権利」のバランスをどう取るべきか。国際的に議論されている重い課題だ。特定秘密保護法案の成立にこだわる政府には、その大事な視点が感じられない。世界の安全保障や人権の専門家らによる「国家安全保障と情報への権利に関する国際原則」が6月に示された。70カ国500人以上が2年にわたり会議を重ね、まとめたものだ。南アフリカのツワネで発表されたことから「ツワネ原則」と呼ばれる。50項目から成る原則には、情報は市民の財産という精神が貫かれている。秘密を限定するため、防衛計画や兵器開発、情報源など対象を具体的に示した。無期限の秘密扱いは認めず、最長期間を法律で定めるべきだとした。 知る権利を制限する条件としては、独立した監視機関など職権乱用を防ぐ規定を挙げる。監視機関は全ての情報にアクセスする権利を持つべきだとしている。公務員以外の人が秘密を受け取ったり公表したりしても処罰されないとの原則も記した。これらに照らしてみれば、参院で審議中の法案は国際基準から大きく逸脱している。秘密指定の対象は抽象的で、際限なく広がる恐れがある。指定期間は最長60年とする一方、7項目の例外を設けるため、永遠に秘密になることもある。指定の妥当性をチェックする第三者機関の具体像は、相変わらずはっきりしない。公務員だけでなく、市民も罪に問われる。不安視する声は、国内にとどまらない。表現の自由を担当する国連特別報告者のラルー氏は「行政の透明性を脅かす」と懸念を表明した。「内部告発者や秘密を報じるジャーナリストにとって深刻な脅威となる内容を含んでいる」とも指摘する。ツワネ原則は国会審議でも取り上げられた。安倍晋三首相は「特定の民間団体が示した一つの参考意見として存在する」と受け流している。知る権利と秘密保持を調和させようという国際的な努力への敬意は全くうかがえない。 知る権利は民主主義を支える根幹だ。日本はもともと情報公開の取り組みが遅れている。その上、世界の流れに反する法案を成立させるわけにはいかない。参院はツワネ原則に照らし、法案の問題点を徹底追及する必要がある。 *2:http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2013120102000127.html (東京新聞 2013年12月1日) 「絶叫デモはテロ行為」 石破幹事長 市民活動、テロと同一視 自民党の石破茂幹事長は十一月二十九日付の自身のブログで、デモ活動について「単なる絶叫戦術はテロ行為と変わらない」と指摘した。テロの定義をめぐっては、特定秘密保護法案の条文のあいまいさが問題視されており、弁護士などからテロの範囲が広がりすぎることへの懸念が示されている。法案の審議が続く最中に、市民の活動をテロと同一視した記述は批判を集めるのは必至だ。石破氏は「今も議員会館の外では『特定機密保護法絶対阻止!』を叫ぶ大音量が鳴り響いています」とした上で、「いかなる勢力なのか知る由もありませんが、左右どのような主張であっても、ただひたすら己の主張を絶叫し、多くの人々の静穏を妨げるような行為は決して世論の共感を呼ぶことはないでしょう」と指摘した。さらに「主義主張を実現したければ、民主主義に従って理解者を一人でも増やし、支持の輪を広げるべき。単なる絶叫戦術はテロ行為とその本質においてあまり変わらないように思われます」としている。 特定秘密保護法案のテロの定義をめぐっては早い段階から議論となっている。法案は一二条で、テロについて「主義主張に基づき、国家もしくは他人にこれを強要し、または社会に不安もしくは恐怖を与える目的で人を殺傷し…(後略)」としている。この部分は(1)「主義主張を強要する目的で人を殺傷」した場合と「恐怖を与える目的で人を殺傷」した場合がテロにあたるという解釈と(2)「主義主張を強要」した場合と「恐怖を与える目的で人を殺傷」した場合がテロの二通りの読み方ができる。森雅子内閣府特命担当相は(1)だと主張したが、石破氏の発言は(2)のように主義主張を強要しただけでテロになるととらえているように聞こえる。法案に反対する清水勉弁護士は「普通の法律の読み方だと主義主張を強要しただけでテロになる」と指摘している。 *3:http://digital.asahi.com/articles/TKY201311260565.html?iref=comkiji_redirect (朝日新聞デジタル 2013年11月27日) 特定秘密保護法4党修正案の全文 ◆特定秘密の保護に関する法律案に対する修正案 26日に衆院を通過した特定秘密保護法4党修正案の全文は次の通り。(【】内が主な修正箇所) 目次 第一章 総則(第一条・第二条) 第二章 特定秘密の指定等(第三条―第五条) 第三章 特定秘密の提供(第六条―第十条) 第四章 特定秘密の取扱者の制限(第十一条) 第五章 適性評価(第十二条―第十七条) 第六章 雑則(第十八条―第二十二条) 第七章 罰則(第二十三条―第二十七条) 附則 第一章 総則 (目的) 第一条 この法律は、国際情勢の複雑化に伴い我が国及び国民の安全の確保に係る情報の重要性が増大するとともに、高度情報通信ネットワーク社会の発展に伴いその漏えいの危険性が懸念される中で、我が国の安全保障【(国の存立に関わる外部からの侵略等に対して国家及び国民の安全を保障することをいう。以下同じ。)】に関する情報のうち特に秘匿することが必要であるものについて、これを適確に保護する体制を確立した上で収集し、整理し、及び活用することが重要であることに鑑み、当該情報の保護に関し、特定秘密の指定及び取扱者の制限その他の必要な事項を定めることにより、その漏えいの防止を図り、もって我が国及び国民の安全の確保に資することを目的とする。 (定義) 第二条 この法律において「行政機関」とは、次に掲げる機関をいう。 一 法律の規定に基づき内閣に置かれる機関(内閣府を除く。)及び内閣の所轄の下に置かれる機関 二 内閣府、宮内庁並びに内閣府設置法(平成十一年法律第八十九号)第四十九条第一項及び第二項に規定する機関(これらの機関のうち、国家公安委員会にあっては警察庁を、第四号の政令で定める機関が置かれる機関にあっては当該政令で定める機関を除く。) 三 国家行政組織法(昭和二十三年法律第百二十号)第三条第二項に規定する機関(第五号の政令で定める機関が置かれる機関にあっては、当該政令で定める機関を除く。) 四 内閣府設置法第三十九条及び第五十五条並びに宮内庁法(昭和二十二年法律第七十号)第十六条第二項の機関並びに内閣府設置法第四十条及び第五十六条(宮内庁法第十八条第一項において準用する場合を含む。)の特別の機関で、警察庁その他政令で定めるもの 五 国家行政組織法第八条二の施設等機関及び同法第八条の三の特別の機関で、政令で定めるもの 六 会計検査院 「続き▽」をクリックすると第二章以下が表示されます。 続き▽
| 民主主義・選挙・その他::特定秘密保護法関係2013.10~12 | 03:21 PM | comments (x) | trackback (x) |
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