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2014.6.18 原発事故時に被害を受ける原発周辺地域は、半径30キロ圏内よりずっと広いこと
 
          2014.6.14東京新聞より          *4-1より   

(1)フクイチ事故では首都圏も放射能汚染されているが、報道されていない
 *1に書かれているとおり、埼玉県西部にある秩父市内で捕獲されたシカに含まれる放射性セシウム濃度は、捕獲場所付近の空間放射線量が毎時0.05~0.07マイクロシーベルトだったにもかかわらず、モモ肉からは1キログラム当たり189.4ベクレル、肺からは54.9ベクレル検出された。その理由は、セシウム濃度の高い地面の土が風で巻き上げられて吸い込んだもので、住宅地の放射性セシウムが山林より低いとしても、人間も同じ傾向にあるだろう。

 なお、*1だけではなく、このブログの2014.6.16の*4-2の西東京市の農場にあるモモの樹も汚染されていたことで、首都圏の放射能汚染も確実だが、これはTVでは報道されず、サッカー、お天気、殺人事件などの報道ばかりがなされており、TVは、「民は依らしむべし、知らしむべからず」という民主主義以前の姿勢を維持しているようだ。成人の日本国民は全員1票持っているため、これでは、選挙しても候補者が正当に評価されて当選しないのは当然である。

(2)原発攻撃への備えと最終処分場
 *2-1のように、外務省は、1984年、日本国内の原発が攻撃を受けた場合の被害予測を研究し、原子炉や格納容器が破壊された場合と東電福島第一原発事故と同じ全電源喪失を想定し、大量の放射性物質が流出して最大1万8千人が急性死亡するという報告書を作成したが、反原発運動の拡大を恐れて部外秘扱いにして公表しなかったそうだ。「依らしむべし、知らしむべからず」では、こうなるのである。

 なお、テロ・攻撃・天災なども過酷事故の発生リスクとして認めれば、現在、原発の使用済核燃料プールいっぱいに保存されている使用済核燃料も、早々に処分しなければ危険である。しかし、*2-2に書かれているとおり、2007年に高知県東洋町が候補地として名乗りをあげた時は反対が多く、それを言いだした町長は出直し町長選で負け、反対派が2倍以上の得票で当選したため、候補地への応募を撤回し、現在も最終処分場の建設候補地選定はできていないという経緯があるのだ。

(3)原発事故時に被害を受ける範囲は30キロ圏内だけではない
 福井地裁大飯原発3、4号機差止訴訟判決では、原発事故時に被害を受ける範囲を250キロ圏内とし、それは、上の(1)でも証明されている。このように、原発事故時に被害を受ける範囲は、30キロ圏内よりもかなり広い範囲だ。

 *3-1では、玄海原発の操業停止を九州電力と国に求めている「原発なくそう!九州玄海訴訟」の原告団が、原発事故で放射性物質がどこまで拡散するかについて風船を飛ばして実験し、冬は強い偏西風の影響で、玄海原発から554キロ離れた奈良県まで飛んだそうである。

 また、*3-2のように、茨城県は、「30キロ圏外でも原子力事故による被災地となることを体験をもって明らかにしている」として30キロ圏にとらわれない原子力災害対策等を要望している。

 さらに、*3-3のように、北大名誉教授の小野氏は、講演で、「泊原発が事故を起こしたら、北海道はすべてを失う」「上空にはいつも西風が吹いており、放射性物質が流れてくる。日高山脈も越えるのは容易で、釧路にも影響を及ぼすだろう」としている。

(4)有効な避難計画はできているのか
 *4-1に書かれているように、福岡、佐賀、長崎3県が示した周辺住民の避難時間推計において、試算の前提条件に、現実性に乏しい甘い前提の項目が多く含まれていることが分かったそうだ。こういう前提にした理由を、三菱重工業は「佐賀県と協議して決めた」「米国では避難シミュレーションに不確定要素を取り込まないのが通例」と説明しているが、30キロ圏内に限っても行政の自己満足程度の避難計画しかできていないのである。
 
 また、*4-2のように、再稼働に向けた審査が全国の原発の中で最も早く進んでいる九電川内原発では、鹿児島県が発表した重大事故時の避難時間推計が、渋滞やガス欠、病院や施設入所者などについて全く考慮しておらず、「お粗末すぎる」との専門家の批判が相次いでいる。しかし、そもそも30キロ圏内の人が一時的に避難すれば、帰って元どおりの生活に戻れるという前提は甘すぎるのである。

 さらに、*4-3には、「地元市長がJR九州に打診し、川内原発の避難に新幹線の活用を探っている」と書かれているが、原発の過酷事故が起これば、せっかく開通した新幹線も高線量で運行できなくなる可能性が高い。

(5)原発再稼働の推進団体と阻止団体
 *5-1のように、原子力推進を訴える「(社)原子力国民会議」の第1回九州集会が福岡市のホテルで開かれ、九州の経済界、大学、自治体からの出席者が、「原発停止に端を発する電気料金値上げで産業や生活が圧迫され、経済の重大な懸念材料になっている」として、集まった約500人に原発の必要性を訴えたそうだ。

 しかし、これについては、このブログの2014.5.26に掲載している大飯原発再稼働差止判決が、「個人の生命、身体、精神及び生活に関する利益は、人の生命を基礎とする憲法上の権利であるため(13条、25条)、我が国の法制下ではこれを超える価値を他に見出すことはできない」「被告は、原発の稼動が電力供給の安定性、コストの低減につながると主張するが、当裁判所は、極めて多数の人の生存そのものに関わる権利と電気代の高い低いの問題等とを並べて論じるようなこと自体、法的には許されないと考えている」「原発から250キロメートル圏内に居住する者は、原発の運転によって直接的にその人格権が侵害される具体的な危険があると認められる」と明快に結論付けており、そのとおりだ。

 さらに、フクイチでは、原発では絶対に起こらないとされていた過酷事故が起こり、その原因も影響範囲も未だ明らかにされていない。そのため、当然、解決もされておらず、「一度失敗したらだめ」というよりは、大きな事故で、「これまでの楽観論では駄目」ということが明白になったと考えるべきである。

 そのため、*5-2のように、北海道や九州で原発廃炉訴訟などを起こしている原告団が、東京都内で記者会見して、全国の原発関連訴訟の原告団が連携する「脱原発原告団全国連絡会」の結成を表明し、全国の弁護団も「連絡会」を結成して、お互いに知識のブラッシュアップや裁判期日が入った裁判所における傍聴などで協力するそうだ。

 また、*5-3のように、鹿児島県内では、九電川内原発の再稼働について、「いのちの会」が再稼働の是非を問うアンケートをとったところ、回答した1001人のうち85%が再稼働反対だったそうである。 

<フクイチで汚染された範囲>
*1:http://radiation7.blog.fc2.com/blog-entry-3265.html (東京新聞 2014.2.2) 報道されない首都圏の放射能汚染、秩父のシカのモモ肉189.4ベクレル、肺54.9ベクレル、汚染物質を吸い込んだ証拠
 東京電力福島第一原発事故後、食品に含まれる放射性物質の濃度などを調べている「みんなの測定所in秩父」(秩父市黒谷)を運営する市民団体が、市内で捕獲された野生シカ二頭の部位ごとの放射性物質量を調べた結果をまとめた。福島県内では家畜で同様の調査が行われた例はあるが、県内でのデータは珍しいという。同団体は「今後の対策を考える資料にしてほしい」と話している。秩父市内の野生シカからは一般食品の基準値(一キログラム当たり一〇〇ベクレル)を超える放射性セシウムが昨年も検出されており、県内全域で捕獲されたシカの肉の出荷・販売の自粛が続いている。市民団体が調査したのは、昨年十一~十二月に秩父市大滝で捕獲された三歳前後のメス(体重四八キロ)と、七~八カ月のオス(同三〇キロ)。捕獲場所付近の空間放射線量は、毎時〇・〇五~〇・〇七マイクロシーベルトだった。モモ肉や内臓など約三十の部位のセシウム濃度を調べたところ、モモ肉から一キログラム当たり一八九・四ベクレルが検出された。他の家畜調査の結果と同じく、骨格筋にセシウムがたまりやすい性質が確認できたという。また、メスの肺からは比較的高い五四・九ベクレルが検出された。市民団体の関根一昭代表は「セシウム濃度が高い腐葉土が風などで巻き上げられ、シカが吸い込んだ可能性がある」と分析している。

<原発攻撃への備え、最終処分場>
*2-1:http://www.asahi.com/special/10005/TKY201107300615.html (朝日新聞 2011年7月31日) 原発への攻撃、極秘に被害予測 1984年に外務省関連トピックス東京電力 原子力発電所
 外務省が1984年、日本国内の原発が攻撃を受けた場合の被害予測を極秘に研究していたことがわかった。原子炉や格納容器が破壊された場合に加え、東京電力福島第一原発の事故と同じ全電源喪失も想定。大量の放射性物質が流出して最大1万8千人が急性死亡するという報告書を作成したが、反原発運動の拡大を恐れて公表しなかった。欧米諸国は原発テロを想定した研究や訓練を実施しているが、日本政府による原発攻撃シナリオの研究が判明したのは初めて。1981年にイスラエルがイラクの研究用原子炉施設を爆撃した事件を受け、外務省が財団法人日本国際問題研究所(当時の理事長・中川融元国連大使)に想定される原発への攻撃や被害予測の研究を委託。84年2月にまとめたB5判63ページの報告書を朝日新聞が入手した。報告書は(1)送電線や原発内の電気系統を破壊され、全電源を喪失(2)格納容器が大型爆弾で爆撃され、全電源や冷却機能を喪失(3)命中精度の高い誘導型爆弾で格納容器だけでなく原子炉自体が破壊――の3段階に分けて研究。特定の原発は想定せず、日本の原発周辺の人口分布とよく似た米国の原発安全性評価リポートを参考に、(2)のケースについて放射性物質の放出量を今回の事故の100倍以上大きく想定。様々な気象条件のもとで死者や患者数などの被害予測を算出した。緊急避難しなければ平均3600人、最大1万8千人が急性死亡すると予測。住めなくなる地域は平均で周囲30キロ圏内、最大で87キロ圏内とした。(3)の場合は「さらに過酷な事態になる恐れが大きい」と記した。ところが、外務省の担当課長は報告書に「反原発運動への影響を勘案」するとして部外秘扱いにすると明記。50部限定で省内のみに配り、首相官邸や原子力委員会にも提出せず、原発施設の改善や警備の強化に活用されることはなかった。当時、外務省国際連合局審議官としてかかわった遠藤哲也氏は「報告書はあくまで外務省として参考にしたもので、原子力施設に何か対策を講じたわけではなかった」と話す。外務省軍備管理軍縮課は「調査は委託したが、すでに関連資料はなく、詳しい事情は分からない」としている。二ノ方寿・東工大教授(原子炉安全工学)は「日本では反対運動につながることを恐れ、テロで過酷事故が起こることはあり得ないとされた。攻撃もリスクの一つとして認め、危険性や対策について国民に説明すべきだ」と話す。

*2-2:http://www.yomiuri.co.jp/economy/20140607-OYT1T50099.html
(読売新聞 2014年6月7日) 「核ごみ」機構、トップ更迭…処分場選び加速へ
 政府は、原子力発電所から出る「核のごみ」の最終処分場の選定や建設を担う「原子力発電環境整備機構」の山路亨理事長(65)を、任期途中で退任させる方針を固めた。後任には前原子力委員会委員長の近藤駿介氏(71)が起用される見通しだ。トップ交代により、最終処分場の候補地選びを加速させるのがねらいだ。近藤氏は7月にも就任する見込みだ。機構は2000年に設立された。これまで、高知県東洋町が候補地として名乗りをあげたが、その後取り下げ、選定作業は難航している。政府は昨年12月、地方自治体側の立候補を待つ従来の方針を、国主導で処分場を選定する方向に転換させた。機構に対しては「待ちの姿勢で組織としての危機感が欠如している」(政府関係者)などと批判を強めていた。東京電力出身の山路理事長は06年12月に就任し、現在、8年目。16年まで約2年の任期を残して退任することになる。

<原発事故時に被害を受ける範囲>
*3-1:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/73331
(佐賀新聞 2014年6月12日)  風船調査まとめ出版 脱原発団体がブックレット
 玄海原発の操業停止を九州電力と国に求めている「原発なくそう!九州玄海訴訟」の原告団が、原発事故で放射性物質がどこまで拡散するか風船を飛ばして調べた活動をブックレットにまとめ出版した。調査は2012年12月から1年間、季節別に計4回実施。原発が立地する東松浦郡玄海町から毎回、風船を1千個程度飛ばした。140~430キロ離れた地点まで飛来が確認され、特に冬場は強い偏西風の影響で、玄海原発から554キロ離れた奈良県で見つかった。ブックレットには調査結果のほか、全国から訴訟に参加している作家らが文章を寄せた。プロジェクトリーダーの柳原憲文さん(43)は「過酷事故が玄海原発で起きた場合の恐ろしさを実感できる。二度と繰り返さないために、本を通して脱原発が必要なことを伝えていきたい」と話す。A5判125ページ。1部千円(税別)。問い合わせは佐賀中央法律事務所、電話0952(25)3121。

*3-2:http://ibarakinews.jp/news/newsdetail.php?f_jun=14029276486184
茨城新聞 2014年6月17日) 原発30キロ圏外も対策を 県南6首長、県に要望へ
 東京電力福島第1原発事故に伴う放射性物質の汚染状況重点調査地域に指定されている県南地域の6市町村は16日、県の原子力災害対策について、国に安全審査を申請した日本原子力発電東海第2原発(東海村)の30キロ圏内にとどまらず、全県に拡大すべきとする要請書をまとめ、橋本昌知事に提出することを決めた。要請書をまとめたのは牛久、稲敷、龍ケ崎市と阿見、利根町、美浦村で構成する「稲敷地区6市町村放射能対策協議会」(会長・池辺勝幸牛久市長)。いずれも国から汚染状況重点調査地域に指定され、除染や食品などの放射性物質検査に追われている。同日夕、牛久市役所で協議会を開き、代理人出席を含めて全首長が要請書に合意した。福島第1原発事故で6市町村の放射線量が高くなったことから、要請書は「30キロ圏外でも原子力事故による被災地となることを体験をもって明らかにしている」「30キロ圏内のみを対象としている県の原子力災害対策は事故の教訓を軽視していると言わざるを得ない」と指摘。その上で、(1)30キロ圏にとらわれない原子力災害対策(2)事故発生の通報体制や安定ヨウ素剤の整備(3)原子力安全協定にかかわる重大問題についての情報提供と意見表明の機会-を県内全域を対象に求めた。要請は原電と東海第2の立地・周辺11市町村で進められている原子力安全協定の見直しを念頭に置いており、16日の協議会後の会見では首長らから「住民に説明責任がある中、県からは東海第2原発の安全審査などの情報が入らない」「30キロ圏内外にかかわらず、県全域で対応すべき」などと、不満の声が上がった。

*3-3:http://www.news-kushiro.jp/news/20140615/201406155.html
(釧路新聞 2014年6月15日)  泊原発「釧路にも影響」/釧路集会でリスク語る
  脱原発への思いを広げようと「さようなら原発1000万人アクション」IN釧路集会が14日、釧路市内で開かれ、泊原発の廃炉をめざす会代表の小野有五さん(北大名誉教授)が原発のリスクや事故の問題点などについて語った。釧路集会は平和運動フォーラム釧根地域協議会、いのちとくらしを守る釧路市民会議、脱原発ネット釧路による実行委員会の主催。講演の中で小野さんは「泊原発が事故を起こしたら北海道はすべてを失う」とし、「上空にはいつも西風が吹いており放射性物質が流れてくる。日高山脈も越えるのは容易で、釧路にも影響を及ぼすだろう」と述べた。

<避難計画>
*4-1:http://www.nishinippon.co.jp/nnp/f_sougou/article/95034
(西日本新聞 2014年6月15日) 玄海原発事故時の3県推計 「避難時間」甘い前提で試算 [福岡県]
 「避難車両の交通事故やガス欠は想定しない」「避難行動は原発から半径30キロ圏内でのみ発生する」-。九州電力玄海原発(佐賀県玄海町)での重大事故を想定し、福岡、佐賀、長崎3県が示した周辺住民の避難時間推計で、試算の前提条件に、現実性に乏しい項目が数多く含まれていることが分かった。3県は試算で半径30キロ圏の住民約27万3千人が避難するには約17~43時間が必要と発表したが、防災の専門家からは「最悪の条件によるシナリオに基づかなければ十分な備えはできない」と有用性を疑問視する声も出ている。西日本新聞は3県から試算業務を請け負った三菱重工業(東京)が佐賀県に提出した報告書を、情報公開請求して入手した。それによると、三菱重工業は自社開発のプログラムを用い、約2600万円をかけて5キロ圏の住民を優先的に避難させるケースなど52パターンを検討した。避難時間を算出するため設定した前提条件は27項目。東京電力福島第1原発事故が発生した際の避難実態に照らすと、現実的な避難者や緊急車両の動きを反映していない設定がある。福島県原子力安全対策課によると、地震と津波の複合災害となった福島事故では、道路や橋にできた亀裂で避難車両がパンクして動けない事例が続出。避難指示区域となった原発から20キロ圏の大半が停電し、信号機が停止したり、ガソリンスタンドで給油できずに車がガス欠したりした。50~60キロ圏でも県外に自主避難する人が相次いだという。しかし、福岡、佐賀、長崎3県の避難時間推計の前提条件は「避難行動は30キロ圏内でのみ発生する」と設定。事故の収束作業のため原発に向かう緊急車両があるのは確実だが、「新たな30キロ圏外からの車両の流入はない」とした。避難道路の状況も、信号機は「平日日中の信号管制が継続する」とみなし、通行止めなどの発生は「避難開始前に住民に周知され、規制誘導は必要ない」と設定した。こうした前提条件にした理由を三菱重工業広報グループは「佐賀県と協議して決めており回答できない。ただ、米国では避難シミュレーションに不確定要素を取り込まないのが通例」と説明。佐賀県消防防災課は「27万人の動きを予測するにはある程度、設定を単純化しなければならない。これまでに避難時間の指標となる推計はなかったので、一つの目安として考えている」としている。
■行政の自己満足
 河田恵昭関西大学教授(防災・減災学)の話 避難時間を推計する際は、最悪の被災シナリオを考慮することが重要だ。今回の前提条件は福島原発事故の教訓を反映しておらず、行政の自己満足にすぎない。住民の命にかかわるリスクを厳しく捉えなければ、推計の意味が問われる。現実の事故はさまざまな事象が重なり、複雑。せめて原発から放射性物質がどう分布し、この地域は何時間以内に退避しなければ危ないといった情報が必要だ。

*4-2:http://qbiz.jp/article/38828/1/ (西日本新聞 2014年5月30日) 「具体性ない」住民不信、川内原発の避難時間推計 鹿児島県、市町別の試算せず
 「想定が甘すぎる」「再稼働ありきの机上の空論だ」−。鹿児島県が29日発表した九州電力川内原発(同県薩摩川内市)の重大事故時の避難時間推計。市町別の時間を試算しないなど、推計方法や想定の在り方に、住民や自治体関係者から批判や疑問が相次いだ。「最も厳しい想定をした」と県の担当者は胸を張るが、再稼働に向けた審査が全国の原発の中で最も早く進む中、住民の原発不信を深める推計となった。市の全域が30キロ圏に入る同県阿久根市。原発避難計画の周知を図ろうと、市は6月9日まで5回の説明会を予定する。同市の花木俊宗さん(82)は地元であった説明会で、避難先となっている熊本県芦北町までの渋滞時の所要時間を尋ねたが、市の回答は「県の推計が出たら説明する」。花木さんは「住民が一番知りたい市町別の避難時間がないとは。推計の意味がない」と憤る。市の担当者も「今後開く3回の説明会では県の推計も説明するが、住民は納得しない」とこぼした。鹿児島県出水市の説明会に出席した主婦福島直子さん(61)は、推計発表後に再度説明会を開くよう求めた。市が推計を参考に避難計画を見直すと答えたからだが、「この推計で計画を改善できるのか」と疑問を口にする。渋谷俊彦市長は「住民の疑問に答える内容になっていない。今後、避難先までの所要時間をさまざまな具体的パターンで算定するよう県に要望したい」と推計の不備を強調した。推計は、病院や施設入所者の避難時間も示さなかった。原発から5キロ圏にある薩摩川内市高江町の高齢者福祉施設「わかまつ園」は、入居者や利用者が約70人いる。浜田時久園長(63)は「推計を施設の避難計画の改善に役立てようと思っていたが、具体性がなく期待はずれ」と不満を語った。推計結果に不安を訴える声も上がった。原発から23キロの同市入来町で自治会長を務める石塚政揮さん(76)は、最長29時間近くかかるとの結果に「県はおおむね妥当と言うが、地域にはお年寄りが多い。長時間、緊張感を強いられるのはこたえるはずだ」と懸念する。
◆「お粗末すぎる」専門家が相次ぎ批判
 鹿児島県による九州電力川内原発の重大事故時の避難時間推計には、専門家からも批判が相次いでいる。佐賀県が4月末に発表した九電玄海原発(同県玄海町)の避難時間推計は、川内原発の推計の4倍に上る52パターンを想定。市町別の避難時間や圏内住民全員の退去完了時間も推計したほか、最もひどい渋滞が予想される圏内の住民全員が行政の指示を待たずに避難を始めるケースや、5キロ圏の施設入所者や入院患者の避難も想定に入れた。佐賀県消防防災課の川内野修参事は「県によって事情は違う」とした上で「住民に分かりやすいように、国が基準として示す想定より踏み込んだ」と振り返る。鹿児島県は「国の基準に沿った」と説明している。東京女子大の広瀬弘忠名誉教授(災害・リスク心理学)は、川内原発の想定を「お粗末すぎる」と酷評。特に、5キロ圏の避難が優先的に進むとの想定を「あり得ない」と指摘し、「30キロ圏はおろか、広い範囲で住民が避難を始め、推計よりはるかに激しい渋滞が発生するのは目に見えている」と話す。「行政の避難指示から最大2時間で住民が避難を開始する」との県の想定も「訓練を受けた軍隊でなければ不可能。情報をすぐ受け取れない住民も多くいるはずだ」と批判する。避難計画に詳しい環境経済研究所(東京)の上岡直見代表も「他の原発の推計と比べ著しくレベルが低い。再稼働を前提とした都合のいい想定しかしていない」としている。

*4-3:http://qbiz.jp/article/39020/1/
(西日本新聞 2014年6月3日)  川内原発、避難に新幹線の活用探る 地元市長がJR九州に打診
 鹿児島県薩摩川内市の岩切秀雄市長は2日の記者会見で、九州電力川内原発での過酷事故に備え、九州新幹線での住民避難への協力をJR九州に打診したことを明らかにした。避難計画では現在、新幹線の活用は想定されていないが、同社は「可能な限り協力していきたい」(鉄道事業本部)との立場。ただ、原発事故時の運行についての具体的マニュアルはない上、高線量下では運行そのものができなくなるとみられ、実効性は不透明だ。JR川内駅は同原発から12キロ弱にあり、新幹線駅としては全国で最も原発に近い。九州新幹線(6〜8両編成)は、一度に450〜650人規模を運ぶことが可能。岩切市長によると、5月19日に同社の唐池恒二社長を訪ねた際、避難時の協力の可能性を尋ねた。唐池社長も「(正式に)要請があればいつでも受ける。ただ、課題もあるので研究する」と応じたという。国土交通省も昨年12月、交通事業者に対し、原発事故時に自治体側から避難の支援要請があった場合は協力するよう内閣府と連名の文書で依頼。国の原子力災害対策指針では、空間線量がそれほど高くない場合、原発から5〜30キロ圏の住民は屋内退避後1週間ほどかけて避難することになっており、こうしたケースなどでの利用が想定される。ただ、JR九州は現在、空間線量がどの程度上昇すると新幹線の運行を止めるのかなど、大雨や地震時のようなマニュアルを策定していない。また、自前の線量計測装置を持たず、データは行政に頼るしかないほか、車両の汚染検査や除染の態勢を独力で事前に整えておくことも難しいなど、原発事故時の安定運行には課題が山積している。JR九州は今後、原発事故を想定した運行マニュアルを整備するというが、時期は未定。「空間線量が高く即時避難となれば、社員の安全確保の観点からも新幹線の運行はできないだろう」(鉄道事業本部)との見通しを示した。鹿児島県も「新幹線を使った避難については今後の課題」(原子力安全対策課)としている。中部電力浜岡原発(静岡県御前崎市)から20キロ圏に新幹線駅を持つJR東海は「運転停止の数値基準はないが、危険な地域には新幹線を進入させられない」と慎重な構えだ。

<再稼働推進の動き>
*5-1:http://qbiz.jp/article/38952/1/
(西日本新聞 2014年6月2日) 原子力推進訴え「九州集会」 経済界や識者ら500人
 原子力推進を訴える一般社団法人「原子力国民会議」(東京)の第1回九州集会が1日、福岡市のホテルであり、九州の経済界や大学、自治体からの出席者が、集まった約500人に原発の必要性を訴えた。集会では、国民会議の石原進共同代表(九州経済同友会代表委員)が原発停止に端を発する電気料金値上げに触れ「産業や生活を圧迫し、経済の重大な懸念材料になっている」と主張。福岡大の永野芳宣客員教授は「技術は進歩しているのに、原発反対の動きは一度失敗したらだめという日本の悪い風潮の表れだ」と訴えた。東日本大震災で自動停止した宮城県の東北電力女川原発の幹部が、事故対応を語る講演もあった。国民会議は4月に発足し、6月2日までに東京や北海道など4カ所で集会を初開催。終了後、安倍晋三首相に早期の原発再稼働を促す要望書を提出する。

*5-2:http://mainichi.jp/select/news/20140603k0000m040061000c.html
(毎日新聞 2014年6月2日) 原発訴訟原告団:全国組織を設立へ 10月に全国大会
 北海道や九州で原発廃炉訴訟などを起こしている原告らが2日、東京都内で記者会見し、全国の原発関連訴訟の原告団が連携する「脱原発原告団全国連絡会」の結成を表明した。原告団の全国組織設立は初めてで、10月に最初の全国大会を開く。現時点で約10訴訟の原告ら約3万人が参加予定という。住民らが国や電力会社などを相手取った原発訴訟では、2011年7月に全国の弁護団が「連絡会」を結成しているが、原告団の全国組織はなかった。記者会見では、呼びかけ人の一人で「原発なくそう!九州玄海訴訟原告団」の蔦川正義・久留米原告団団長(76)が「人数の多い原告団も少ない原告団もあるが、創意工夫を学び合っていきたい」と抱負を語った。「脱原発弁護団全国連絡会」共同代表の河合弘之弁護士は「弁護団の全国的な連携が、運転差し止めを命じた大飯原発訴訟の福井地裁判決に結実した。原告団も連携することで闘いの輪を広げよう」と訴えた。今後は、原発訴訟の裁判期日が入った裁判所に全国の原告団が駆けつけて支援するなど協力を図る。

*5-3:http://qbiz.jp/article/40028/1/
(西日本新聞 2014年6月17日) 「85%が再稼働反対」 川内原発 市民団体がアンケ結果報告
 九州電力川内原発(鹿児島県薩摩川内市)の重大事故に備えた入院患者や福祉施設入所者(要援護者)の避難計画策定について、同県内で反原発を主張する三つの市民団体は17日、伊藤祐一郎知事が「(県地域防災計画に明記された)原発30キロ圏までの策定は不可能。作らない」と発言したことに抗議する知事宛ての申し入れ書を県に提出した。団体は、原発ゼロをめざす県民の会(井上森雄筆頭代表委員)▽さよなら原発いのちの会(堀切時子代表)▽川内原発建設反対連絡協議会(鳥原良子会長)。申し入れ書では、知事発言を「人命軽視もはなはだしい暴言」と批判し「策定が不可能と認識するなら、川内原発の再稼働は認めないでほしい」と求めた。「いのちの会」は、薩摩川内市の街頭や郵送で5月中旬から募った再稼働の是非を問うアンケートで、回答した1001人の85%が「反対」とした結果も示した。応対した県保健医療福祉課の鎮寺裕人課長は、取材に「策定が非常に困難なのは事実」とする一方、「知事から策定の必要はないとの指示はなく、県として地域防災計画通りに作る方針に変わりはない」と述べ、知事発言に困惑していた。

| 原発::2014.5~8 | 12:20 PM | comments (x) | trackback (x) |

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