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2014.7.7 号泣県議のお粗末な粉飾決算は、政治資金監査をしていれば防げた筈だ
(1)泣けばよいというものではないだろう
 *1-1のように、兵庫県の野々村県議(47)が、政務活動費から195回分もの不自然な出張旅費を支出しただけなら、「もしかしたら、温泉地帯の街おこしに一生懸命になって、何度も温泉を訪問したのかも・・」と私は思ったが、支出の理由を説明できずに突然泣きだしたのは、あまりにお粗末で私も呆れた。

 呆れた理由は、*1-2や*1-3のように、①粉飾決算の仕方があまりにも稚拙で ②いい大人(それも男)が絶叫して泣いたから である。しかし、近年、男女とも、親しい者の死のように本当に泣くべき場面ではないところで、簡単に大人が泣くことが多くなったのは見苦しい。

 そのため、*2のように、兵庫県議会議長が、「議員としての資質に疑問を抱かざるを得ない」として、野々村氏に「辞職すべきだ」との勧告文を手渡したのはもっともで、これだけの粉飾決算を行って、説明できない政務費をすべて返還しただけですまないのは社会常識である。

(2)苦労人だからよいというものでもない
 あまりにもお粗末な粉飾決算を見せられたため経歴を調べたところ、*3のように、川西市役所を退職後、5回目の立候補で兵庫県議に滑り込んだ苦労人と表現されていた。

 「苦労人だからよい」ということもないが、市役所は複式簿記で会計を行って公認会計士監査を受けている所ではないため、こういう空出張や虚偽の経費支出が常態化しており、野々村氏はこれを悪いことだと意識していなかったのではないだろうか。

(3)政治資金報告書の監査について
 私は、何かといちゃもんをつけようと狙われているのを知っていたため、2005年に衆議院議員になってすぐから、政治資金の会計に関しては公認会計士の任意監査を受けていた。そうすると、*4のように、政治資金に関する監査が、2007年12月、国会議員にのみ導入された。

 報酬を支払っても監査を受けておくメリットは、下のとおりである。
1)会計に強くない会計責任者でも、日頃から監査人に指導してもらい、故意もミスもなくすことができる。
2)政治資金報告書を監査して監査証明をもらう以上、政治資金報告書の適正性について、利害関係の
   ない独立した監査人に連帯責任を負ってもらうことができるため、説明責任を果たしやすい。

 そして、*4に書いてあるとおり、政治資金監査人による政治資金監査は下の4点について行うため、監査人が事前に会計指導し、事後に政治資金報告書をチェックすると、兵庫県の野々村県議のようなことは起こらないのである。これは、とかく上げ足を取られやすい首長や議員にとっても、リスク管理や安全保障になるのだ。
① 会計帳簿、明細書、領収書等、徴難明細書、支出目的書、振込明細書が保存されていること
② 会計帳簿にその年の支出の状況が記載されており、かつ、会計責任者が会計帳簿を備えていること
③ 収支報告書は、会計帳簿、明細書、領収書等、徴難明細書、支出目的書及び振込明細書に基づいて
   支出の状況が表示されていること
④ 徴難明細書、支出目的書は、会計帳簿に基づいて記載されていること

 私は、この政治資金監査は、国会議員だけでなく、すべての首長や議員を対象にすべきだと考えている。また、会計も単式簿記ではなく複式簿記に変更すれば、網羅性・検証可能性が増し、ごまかしにくくなるとともに、表示もわかりやすくなって、民主党の小沢氏のようないちゃもんをつけられることがなくなる。そして、複式簿記の方が一般社会の会計基準と同じであるため、誰にでもわかりやすいのだ。

*1-1:http://www.saga-s.co.jp/news/national/10202/80863
(佐賀新聞 2014年7月4日) 県議号泣会見、ネット拡散し波紋、専門家「世界に恥」と批判
 兵庫県の野々村竜太郎県議(47)=無所属=が政務活動費から195回分の出張旅費を支出していた問題は、号泣会見の動画がインターネットに出回り、海外にまで波紋を広げた。一方、出張目的などの説明は拒否したままで、専門家は「責任を果たさず世界に恥をさらした」と批判する。「やっと議員になったんです」「世の中を、うおー、世の中を、変えたくて」。1日の釈明会見で野々村議員は突然、右手を机にたたきつけて絶叫、泣きじゃくった。記者が止めるまで約8分間の「独演会」。自ら感情的な質問は受けないと冒頭に宣言していただけに、記者らは言葉を失った。

*1-2:http://www.saga-s.co.jp/news/national/10202/81081
(佐賀新聞 2014年7月5日) 号泣県議、大雨運休でも出張費、申請の信頼性揺らぐ
 兵庫県の野々村竜太郎県議(47)=無所属=が政務活動費から195回分の出張旅費を支出していた問題で、議員が西宮市の自宅からJR城崎温泉駅(同県豊岡市)に日帰り出張したと収支報告書に記載している昨年9月2日は、大雨により特急の多くが運休し、日帰りが極めて困難だったことが5日、JR西日本への取材で分かった。野々村議員は、城崎温泉への往復は常に往復1万5340円を申請。号泣した釈明会見では、経路について記憶にないとした上で「出張はグリーン車を使った」と発言。昨年9月2日は普通電車を乗り継ぐなどすれば日帰りできなくはないが、申請額の信頼性が揺らぎ始めた。

*1-3:http://www.saga-s.co.jp/news/national/10201/81493
(佐賀新聞 2014年7月7日) 野々村県議、切手代に175万円、「出張」日に購入も
 兵庫県の野々村竜太郎県議(47)=無所属=が政務活動費から不自然な出張費を支出した問題で、議員が2013年度、政務費から切手代に約175万円を支出し、出張したとする日にも購入していたことが7日、収支報告書の記載で分かった。収支報告書によると、野々村議員は主に大阪市や神戸市の金券ショップで切手を約135回購入。城崎温泉(兵庫県豊岡市)に出張したとする昨年8月29日には、大阪と神戸で別々に購入していた。3日連続で2万円以上の切手を購入したり、1日のうちに複数回購入したりしたこともあった。1日の釈明会見では切手代についても説明を拒否した。

*2:http://www.nikkei.com/article/DGXNASFK0700Y_X00C14A7000000/?n_cid=TPRN0006 (日経新聞 2014/7/7) 野々村県議「辞職も念頭」 兵庫県議会議長が勧告
 兵庫県の野々村竜太郎県議(47)=無所属=が政務活動費で不自然な支出をしていた問題で、県議会の梶谷忠修議長は7日、五つある会派の代表者を集め、野々村議員への対応や政務活動費のルールを協議した。野々村議員も出席し、梶谷議長は「説明責任を果たすことができない場合は辞職すべきだ」との勧告文を手渡した。松本隆弘副議長によると、野々村議員は「説明できない政務費はすべて返還する。辞職も念頭に置いている」と話したという。梶谷議長は冒頭、「野々村議員は説明責任を全く果たしておらず、議員としての資質に疑問を抱かざるを得ない」と厳しく批判した。野々村議員に対しては、最大会派の自民党議員らから「辞職すべきだ」との意見が出ていた。収支報告書によると、議員は2013年度、JR博多駅や城崎温泉駅(兵庫県豊岡市)などに同県西宮市から日帰りで計195回往復したとして、約300万円を支出していた。初当選した11年度から同様の支出を続けた。

*3:http://blog.livedoor.jp/tgfuy8371/archives/9175798.html (世界のニュース 2014年07月03日)号泣・野々村竜太郎県議 意外な苦労人、落選の日々、貧乏生活
 号泣した兵庫県議野々村氏(47)は、川西市役所退職後、5回目の立候補で兵庫県議に滑り込んだ。
  大阪府立北野高校卒業
  関西大学法学部卒業
  川西市役所に勤務、2007年に退職
 高校の後輩の橋下徹に刺激を受けて政治を志した。
 退職後は、宅地建物取引主任者として生計を立てた。
  2008年7月、兵庫県太子町長選に立候補、最下位で落選
  2008年11月、兵庫県西宮市長選に立候補、最下位で落選
  2009年7月、兵庫県議補選西宮市選挙区に立候補、最下位で落選

*4:http://www.soumu.go.jp/main_content/000077917.pdf
(総務省 政治資金報告書の監査) 国会議員にのみ、2007年12月、議員立法で提案され成立した。
<要点のみ>
Ⅳ.政治資金監査
 国会議員関係政治団体の会計責任者は、収支報告書を提出する時は、あらかじめ登録政治資金監査人の監査を受け、登録政治資金監査人が作成した政治資金監査報告書を提出しなければなりません。
※ 「登録政治資金監査人」とは
 登録政治資金監査人とは、政治資金監査を行う者として、弁護士、公認会計士、税理士のうち政治資金適正化委員会に登録された者をいいます。政治資金適正化委員会が行う政治資金に関する研修を修了した登録政治資金監査人が、政治資金監査を行うこととされています。
1.政治資金監査の対象となる政治団体
 次の政治団体が、政治資金監査の対象となります。
① 12月31日現在で、国会議員関係政治団体である政治団体
(その年の途中で国会議員関係政治団体となった政治団体も含まれます。)
② 12月31日現在では、国会議員関係政治団体ではないもののその年の途中に国会議員関係政治団体であった政治団体 (ただし、その年の収支報告書に記載すべき収入及び支出があった政治団体 に限ります。)
 なお、①、②の政治団体について、年の途中に国会議員関係政治団体以外の政治団体の期間があった場合においては、その期間についても政治資金監査の対象となります。
2.監査事項
 登録政治資金監査人による政治資金監査は、次の4点について、政治資金適正化委員会が定める具体的な指針に基づいて行うこととされています。
① 会計帳簿、明細書、領収書等、徴難明細書、支出目的書、振込明細書が保存されていること
② 会計帳簿にその年の支出の状況が記載されており、かつ、会計責任者が会 計帳簿を備えていること
③ 収支報告書は、会計帳簿、明細書、領収書等、徴難明細書、支出目的書及び振込明細書に基づいて
   支出の状況が表示されていること
④ 徴難明細書、支出目的書は、会計帳簿に基づいて記載されていること
 なお、政治資金監査は、国会議員関係政治団体のすべての支出が対象ですので収支報告書において明細の記載が必要とされていない人件費についても、監査の対象となります。
3.政治資金監査に向けた準備
 政治資金監査において監査の対象となる次の書面を書面監査が行われる事務所において準備しておかなければなりません。
○ 収支報告書等の作成の際に基となる書面
 ・ 会計帳簿
 ・ 支出の明細書
 ・ 領収書等(人件費についても対象となります。)
 ・ 振込明細書(人件費についても対象となります。)
○ 収支報告の際に提出すべき書面(政治資金監査までに作成すべきもの)
 ・ 収支報告書
 ・ 徴難明細書
 ・ 支出目的書

| 民主主義・選挙・その他::2013.12~2014.11 | 09:16 PM | comments (x) | trackback (x) |

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