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2014.11.26 原発の廃炉について (2014.11.26、27、30に追加あり)
     
     当初の原発発電原価   原発運転修了後の流れ  廃炉の人材育成 
                        日経新聞2014.11.26より  
(1)原発の耐用年数が、16年から40年を経て60年になったとは、あらためて驚きである
 私が衆議院議員だった2006年に、経産省と九州電力の重鎮が議員会館の事務所に来られて、「原発の耐用年数を40年から60年まで可能にしたい」と言われたので、「原発のような危険性のある機械の耐用年数を延ばすのはいけない」と反論した。その時、2人の重鎮は、「絶対に安全です!」と何度も言いきったが、今、調べると、*1のように、原発の税務上の法定耐用年数は最初は16年で、発電コストを安く見せるために40年に延長し、さらに60年に延長できるようにしたと書かれている。しかし、税法上の機械の耐用年数がそこまで実際と乖離しているケースはなく、仮にそこまで乖離していたとすれば、税務上、優遇されていたのである。

 原発の運転延長により、恣意的に原発の高コスト体質が隠され、フクシマ原発事故後の現在も、これに言及するメディアは少なく、新しい安全神話が創造されている。また、*1は、電気事業連合会 が2003年に記載したものとされており(本当?)、「新しい原発に更新すればよい」という受け取り方もできるが、現在は、既に水素や太陽光発電等を使った分散発電が可能になっているため、税務上の優遇や大きな補助金を交付してまで原発を更新する必要はないと考える。

(2)経産省の会計制度見直しで、国ぐるみの粉飾決算はよくない
 *2-1に書かれているように、「経産省は、2014年11月25日、運転開始から40年前後の老朽原発を廃炉にした場合、電力会社側の損失額が1基当たり約210億円になるとの試算をまとめ、電力会社の負担が過大にならないよう会計制度の見直しを進める」とのことだ。

 そして、*2-2、*3に書かれているように、経産省は、「①廃炉費用を安定確保するため、発送電分離後も新規参入組を含む電力小売会社が消費者や企業から徴収する仕組みにするよう廃炉の会計制度を見直す」「②電力会社から分かれた小売会社等が送配電会社に支払う送電線使用料に廃炉費用を上乗せして負担する」としているが、これでは、会計の基本を無視して、経産省ぐるみでおかしな会計処理を推奨していることになる。

 本来、廃炉費用は、原発の稼働開始と同時に廃炉引当金という負債性引当金として引き当てるべきで、廃炉引当金繰入額は原発由来の電力を販売する期の費用とすべきである。そして、廃炉時に廃炉引当金に不足が出れば、それは見積もり誤りであるため、ただちに特別損失の過年度修正損として処理すべきなのだ。それにもかかわらず、経産省は、原発の稼働可能期間を16年から40年、60年と引き延ばそうとし、その間に必要な負債性引当金を引き当てない会計処理を電力会社に許してきたのである。

 しかし、この引当金不足額(原発による過去の発電費用)を、将来の電力消費者に負担させるのは全く筋が通らない。また、原発を使っていない新規参入組の電力小売会社に負担させるのは、不合理である上、市場原理による選択を害する。

 ここで何が悪いのかと言えば、経産省はここまで会計の知識がなく、それでも会計制度をいじり、国を挙げて電力会社の有価証券報告書などによるディスクロージャーを歪めようとしているとともに、市場原理による電力需要者の電源選択を歪めようとしていることである。

(3)今頃、産学官で廃炉に携わる人材を育てる ?! ← 泥縄にも程がある
 *3に、「①東大・東電など協力して産学官で原発廃炉の人材を育てる」「②(そのために)東大、東工大、東北大は14年度に文科省から計2億円弱の補助を受ける」「③東電と情報を共有しながら、ロボットの遠隔操作や放射性廃棄物の管理、地下水処理の手法を教える」「④福島県では日本原子力研究開発機構が来夏以降、廃炉作業を担うロボットの開発を始める」「⑤政府が原発の輸出を後押しするなか、日本の原発産業全体の技術力の底上げ」などが記載されている。

 ここで驚くことは、原発が運転を開始する時には、廃炉の技術はできて見通しが立っていなければならないにもかかわらず、それから40年近く経った現在、①のように「産学官で原発廃炉の人材を育てる」などとアホなことを言っていることだ。これでは、廃炉引当金の引当額も見通せなかっただろうが、関係者が誰もそのことを問題にしなかったのは、さらに驚きだ。

 また、原子力発電を行って多大な収益を上げてきた電力会社は、廃炉計画くらい自分で作っていてもよさそうなものだが、②のように、廃炉のために、文科省が新たに東大、東工大、東北大に年2億円弱の補助金を出すとしており、これは焼け太りであるとともに、なけなしの社会保障を削りながら税金の無駄遣いが過ぎるのである。

 さらに、核燃料がどこにあるかは、放射線の強さを三次元で測定して映像化すればわかるため、③④のロボットは、NHK放送でロボットを使ってフクイチの核燃料のありかを探していたのを見て、ロボットを開発することが目的の行為のように思えた。ロボットのような精密機械は、強い放射線を浴び続ければ故障し、それも放射性廃棄物になるため、ロボット開発は原発とは結びつけずに行った方がよいと思う。

 なお、このように、原発をスタートする時点で、廃炉や最終処分場のことを誰も考えていない国が、世界でも厳しい安全基準を持っているとはとても考えられない。そのため、世界で唯一の被爆国であり、原発事故も経験した日本政府が、税金を使って原発輸出を後押しするのは誤った方向であると考えている。

*1:http://www.nuketext.org/yasui_cost.html
(電気事業連合会 2003年12月?日)原子力発電の発電コスト  
●原発などの発電コストを試算
 2003年12月16日、電気事業連合会は「モデル試算による各電源の発電コスト比較」を公表しました。1999年以来 4年ぶりの試算改訂です。運転年数40年・設備稼働率80%の場合、原子力5.3円/kWh(以下すべて単位同じ)、石炭5.7円、LNG 6.2円となりました。しかし従来の法定耐用年数等で試算すると、運転年数15〜 16年・設備稼働率80%として計算すると、原子力7.3円、 石炭7.2円、LNG 7.0円、となるそうです。さらに有価証券報告書を用いた既存発電所についての試算では原子力 8.3円、火力平均7.3円となるそうです。いろいろな数字が出てきて、いったいどれを信用していいのかわから なくなりますが、要するに、コストというのは試算の前提条件によってかなり変わってくるということなのです。試算結果としての数字は、ある程度の目安にはなると思いますが、どの数字も絶対的なものではありません。この後で詳しく見てみますが、電力会社にしても政府にしても、自分たちの方針(つまり原発の推進)がもっとも有利に見せられるような試算を利用しているということを理解しておかなければなりません。従って問題になるのは、その試算の前提となる条件にどのようなものなのが含まれているのかということです。前提としている条件には、意図的なもの、不合理な点など、多くの問題点が見られます。また、原発の問題には、前提条件に含まれていない隠されたコストが存在することも問題です。こうした問題について、次に見ていきます。
●耐用年数40年 新幹線と原発
 従来原発の"運転年数=耐用年数"は、減価償却の終わる「法定耐用年数」16年でした。しかし、ここ数年、電力会社や経済産業省などは、初期投資が大きく、燃料費の割合が化石燃料に比べて比較的に小さい原発の"耐用年数"を40年として、コスト計算をするようになりました。このことから言えることは、電力会社は原子力発電の経済性をアピールするために、耐用年数を引き上げ、原発を40年も使い続けることを想定しているようです。別の言い方をすれば、原発推進の結論が先にあって、コスト面でそれが都合よく説明できるように、耐用年数を40年に引き上げた、ともいえるでしょう。そうしないと、他の電源とコスト競争で打ち勝つことができません。そのことと実際原発が40年の使用に耐えられるかどうかは別問題。データの出し方からして、40年という数字を出してから、現場に指示をして、実際40年の使用に耐えられるか調べさせたような進め方をしていました。経済性を実証するために安全思想が無視されている、そう言ってもいいかもしれません。例えば、いまから40年前、東京オリンピックが開かれた年に開業したのが東海道新幹線です。今も当時と同じ型の0系と呼ばれる車両が山陽新幹線に走っているようですが、それも開業当初に製造されたものではありません。この形は1985年まで製造されたそうで、今残っているのもまだ20数年経っているに過ぎません。初期のものは老朽化し時代遅れになって、とっくに引退・解体されているはずです。ところが原発の場合は、まさに全く同じ原子炉がそのまま40年も使い続けられようとしています。新幹線は時速200kmを超えるスピードで激しい振動や摩擦にさらされていますが、原子炉はそれよりさらに危険な放射能と高温・高圧に、しかも運転期間中は四六時中さらされているわけです。40年前につくられた新幹線の車両をそのまま時速200kmで走らせ続けるとしたら、整備に当たる技術者は何というでしょう。新幹線と原発なんて直接比較することはばかげているかもしれませんが、4 0年という時間の重荷を理解する例になるとは思います。
●コスト試算のマジック
 このような発電所の耐用年数でコスト比較をする試算方式は、「耐用年数発電原価試算」といって、1986年から採用されています。ところが、その前までは「初年度発電原価試算」という方式が使われていました。両者の違いとその背景を整理してみると、原発をなんとか有利にみせようという意図がよく分かります。
□初年度発電原価試算:
発電所が完成した後1年間の実績を基に電源別のコストを比較しようというもので、建設費、燃料費、および人件費を含む維持管理費を実績値に基づいて作成します。但し、稼働率については比較のため統一し、水力は45%、火力・原子力は70%にしています。
□耐用年発電原価試算:
まず電源別に発電所の耐用年数を決めておき、期間中の燃料費や為替レートの変動を予測し、それをモデルプラントのコストに反映させて比較しようというものです。稼働率などの条件は「初年度..」と同じです。(前述の電気事業連合会の試算では"設備利用率≒稼働率 "80%の条件) 。この違いが何を意味しているか、その背景を見てみましょう。通産省(当時)が最初に試算を発表したのは1979年です。この年イラン革命とその後のイラン=イラク戦争を契機とする第2次オイルショックがはじまり、原油価格が急騰していました。そこで「初年度発電原価試算」方式により、実績をベースに試算して発表を始めたのです。原子力の経済的な優位性を印象づけるにはもってこいの内容でした。ところが、1986年、非OPEC諸国の原油増産により原油は供給過剰となり、原油価格は急落しました。逆オイルショックと呼ばれる状況で、化石燃料を用いた発電は、コスト的に優位になるはずでした。このとき通産省(当時)は発電コスト比較で突然「初年度・・・」方式をやめて、「耐用年数発電原価試算」方式に変更したのです。「発電所のように長期に渡る設備には、使用される燃料価格と為替レートの変動をコスト計算に含めるのがより公平」と通産省は言っていました。新しい試算方式の問題は、燃料価格の見通しとしてIEA(国際エネルギー機関:石油を中心としたエネルギー安全保障を追求している国際的組織)の試算を用いていて、原油価格など常に大幅な値上がりを前提にしています。一方で原子力の燃料はほとんど変化なしとされていますから、長い年月にわたって試算をすれば、化石燃料による発電の方が不利になってしまうのです。そして、前述したように原発の"耐用年数"を40年に引き延ばして、原発のコストをさらに安く見せかけようとしています。
●「試算」は「理想的なモデルプラン」
 「耐用年数発電原価試算」の方式のもう一つの問題は、個々の発電所のコストではなく「モデルプラント」における試算だということです。個々の発電所では、それぞれ立地・建設条件も違うし、燃料の輸送コストなどその他の条件も変わってくるので、電源別に単純に比較することは出来ません。電源種別毎に理想的な「モデルプラント」を想定し、そこに様々な数値を当てはめて試算したものが発表されている数値ですが、実際の個々の発電所のデータは公表していません。具体的な個々の発電所の原価試算はないのでしょうか。実は、各電力会社が原子力発電所を建設する際の手続きとして「電源開発調整審議会」での決定後、通産省(現経済産業省)に「原子炉設置許可申請」を行います。ここで、電力会社は建設しようとする原発の発電原価について試算し、結果を記載することになっています。これも実績ではありませんから、あくまでも予測にすぎません。参考までに、東京電力の原発について、つぎのような原価試算が提出されています。( *注:この年代の試算では耐用年は16年)。この表から見ると、原発の発電原価が一般に公表されている「モデルプラント」を用いた試算に比べてかなり割高であることは明らかです。電力会社自身は、そのことを一番よく知っているはずで、それでも「国策」として推進されている原子力開発に、異論を唱えることが出来ないでいるようです。
●隠蔽体質・・・・原発推進データの信用性
 「原子力発電は安全でしかも経済的」、政府・電力会社は、原発推進の理由としてことあるごとにそういってきました。なかでも原発の経済性は、これまで原子力推進の最も大きな根拠でした。しかし、その根拠を支える議論の透明性は確保されているのか、根本的な信用に疑問を抱かせるようなことがまた一つ明らかになりました。2004年3月参議院予算委員会において,社民党の福島党首の質問に対し,日下資源エネルギー庁長官(当時)は,「日本では(核燃料の)再処理*をしない場合のコストを試算したことはございません」と答弁しました。ところが、7月になって資源エネルギー庁の「ロッカー」から、したはずのない「試算」の資料が出てきたのです。隠されていた資料は,1994年2月4日の総合エネルギー調査会原子力部会核燃料サイクル及び国際問題作業グループにおける議論用参考資料として、事務局が作成した「核燃料サイクルの経済性試算について」というものです。これによると核燃料再処理のコストは再処理をしないで直接使用済み燃料を処分する費用の2〜4倍という結論でした。まるで子供だましのやり方で、この問題の責任の追及はなされないのでしょうか。この試算が隠されている間に、着々と将来計画をたててしまって、再処理を既定路線にしてしまってから肝心の試算を公表する。例えば、「長期エネルギー需給見通し(1998)」や、「エネルギー基本計画(2003)」、それらに基づくさまざまな計画や方針決定に関わる作業が行われてきました。この試算が公表されていたら、路線を巡る議論は別の方向に行っていた可能性もあるでしょう。原子力推進に都合の悪いデータはひた隠しにして、都合の良いデータだけを並べる。もんじゅの事故の時も、昨年の東電の事故隠しの時もそうでしたが、この隠蔽体質はどうしたものでしょう。結局自分たちの信用をおとしめ、原子力は不透明だと宣伝しているようなものです。そのほかの試算・データは存在しないのでしょうか? また、そうして明らかになったデータそのものが果たして信用できるものなのかという疑念も湧いてくるはずです。
●この発電コストに含まれていないそのほかの費用
 これまで見てきたとおり、経済産業省(旧通産省)・資源エネルギー庁のコスト試算そのものが、きわめて意図的に数字を操られていますが、実はそれ以外にも、原子力発電には隠されたコストがあります。大きく分けて次の4つの内容については、本来原子力発電を成立させるために必須の費用となっていますので、厳密な意味では原子力発電のコストに含まれるべきものです。
   ●電気を捨てる"発電所"・・・揚水式発電所
   ●電源三法交付金・・・地元への懐柔策
   ●バックエンド費用
   ●送電費用
それぞれの内容は、リンクが貼ってありますから、該当の項目のところをクリックしてみてください。

*2-1:http://www.47news.jp/CN/201411/CN2014112501001517.html
(47ニュース 2014/11/25) 原発廃炉の損失1基210億円 経産省、会計制度見直し
 経済産業省は25日、運転開始から40年前後の老朽原発7基を廃炉にした場合、電力会社側の損失額が1基当たり約210億円になるとの試算をまとめた。政府は老朽原発の廃炉判断を急ぐよう電力各社に求めており、電力会社の負担が過大にならないよう会計制度の見直しを進める。経産省で同日開かれた、会計制度見直しの有識者会議で示された。電力会社の廃炉決断を後押しするのが狙いで、年内に見直しの方向性を示す方針だ。福島原発事故後、原発運転期間が原則40年と定められた。電力会社は当初想定年数より前で、廃炉か、特別点検を受け運転延長を目指すかの決断を迫られるケースが出てくる。

*2-2:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20141126&ng=DGKKASDF25H1E_V21C14A1PP8000
(日経新聞 2014.11.26) 廃炉費用を安定確保 発送電分離後も 消費者から徴収 経産省検討
 経済産業省は、電力会社が発電、送電、小売りの3事業に分かれた後も原発の廃炉費用を安定確保する検討を始めた。新規参入組を含む電力小売会社が消費者や企業から徴収する仕組みになる公算が大きい。25日の廃炉の会計制度を見直す経産省の有識者会議で議論した。経産省は導入した場合の試算を年内にも示す。現在は電力会社が家庭や企業の電気料金から廃炉を含む原発の運営経費を回収している。同方式は2018~20年に廃止されるため費用負担の仕組みづくりが課題だった。新たな案では、電力会社から分かれた小売会社などが、送配電会社に支払う送電線使用料に廃炉費用を上乗せして負担する。経産省はこの日、運転開始から40年前後の古い原発7基を廃炉したときの電力各社の損失額が1基あたり210億円程度になるとの試算も示した。

*3:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20141126&ng=DGKKASDZ25HND_V21C14A1MM8000 (日経新聞 2014.11.26) 産学官、原発廃炉へ人材 東大・東電など協力 国が補助金 産業の技術基盤を維持
 産学官が共同で原子力発電所の廃炉に携わる人材を育てる。2015年から東京大学や東京工業大学が東京電力などと協力し、特殊な工程を伴う廃炉作業の専門知識を教える。文部科学省は補助金を出す。日本の原発は今後、再稼働か廃炉かの選別が始まる。高度な技術を備えた人材の確保は原発の輸出や安定稼働にも寄与するため、産業基盤の維持につながりそうだ。東大は来秋、原子力工学などを専攻する学生向けに廃炉専門の講座を設ける。東電福島第1原発の廃炉作業を想定し、東電と情報を共有しながらロボットの遠隔操作や放射性廃棄物の管理、地下水処理の手法を教える。九州大学や京都大学、福島工業高等専門学校と遠隔講義などで知識を共有する。東大の学生で年30人、総勢で同100人の受講を見込んでいる。東工大は15年4月に開講する。東電や三菱重工業、東芝などが参加する国際廃炉研究開発機構と協力して、放射線の測定など現場での実験を交える。東北大は15年1月に廃炉に関する情報を交換する研究会を設ける。東大と東工大、東北大は14年度に文科省から計2億円弱の補助を受ける。15年度以降も補助を利用する見込みだ。国内の48基の原発のうち、九州電力川内原発(鹿児島県)など再稼働に向けた動きがある一方、運転年数が40年前後たつ老朽原発は7基ある。40年を超えて運転するには原子力規制委員会の厳しい審査が必要で、関西電力の美浜原発1、2号機(福井県)など5基が廃炉を検討している。老朽原発を廃炉にすると電力会社の損失額は1基当たり210億円程度にのぼり、経済産業省は電気料金に上乗せできる会計制度の導入を検討中だ。福島県では日本原子力研究開発機構が来夏以降、廃炉作業を担うロボットの開発を始める。廃炉を進める様々な取り組みが動きだす一方、原発プラント大手ではベテランの技術者が今後10~15年間でほぼ退職するなど、技術の継承が課題に浮上している。このため産学官で廃炉作業の中核を支える人材を育てる枠組みをつくる。原発の廃炉作業は原子力工学や安全管理など総合的な知識や技術が不可欠で、再稼働でも貢献できる。政府が原発の輸出を後押しするなか、日本の原発産業全体の技術力の底上げにもつながる。日本には廃炉を終えた商用原発はまだない。海外には米国などで約10基あるほか、廃炉を検討・計画している原発が100基以上あるといわれる。今後は海外でも原発の廃炉に必要な技術者のニーズが高まると見込まれる。


PS(2014.11.26追加):*4のように、フクシマ原発事故では、現時点でも既に、国民が4兆5782億円(!!)を負担しているが、これは、*1に書かれている2003年時点の原発コストの試算には含まれていない。そして、今後も、「過酷事故は起きない」とは決して言えないのだ。

*4:http://www.tokyo-np.co.jp/article/feature/nucerror/list/CK2014112602000115.html (東京新聞 2014年11月26日) 【福島原発事故】東電に738億円交付 機構、34回目
 東京電力は二十五日、福島第一原発事故の賠償資金として、原子力損害賠償・廃炉等支援機構から七百三十八億円の交付を受けたと発表した。資金の交付は三十四回目で、累計で四兆四千五百八十二億円となった。東電はこれとは別に政府から原子力損害賠償法に基づく千二百億円を受け取っており、合わせると四兆五千七百八十二億円になった。東電が二十一日時点で支払った賠償金は約四兆四千五百五十三億円だった。


PS(2014.11.27追加):経産省が、電力自由化後に、原発の廃炉費用を事業所や家庭への送配電を請け負う電力会社の利用料金に上乗せして消費者に転嫁する仕組みを導入しようとしている点については、現在及び未来の送配電に関する負担と過去の電力使用に関する負担は異なるため筋が通らない。そのため、このようなことをして電力市場を歪めるのは百害あって一利なしであり、私は、このブログの2011年6月21に、「電力会社の送配電部門は会社にして上場し、旧電力会社から独立させるべき」と記載している。
 もし、それができないのなら、もはや電力会社の送電線はあてにせず、自治体が上下水道と一緒に地下に送電線を埋設して送配電料金をとれば自治体の税外収入になるし、ガス会社がガス管と電線を併設して送配電料金をとる方法もあり、選択肢が多い方が適切な料金になるだろう。
 また、原発の運転期間はもともと16年から40年に延長されたものであるため、40年を経ずに廃炉する原発については、差の期間分の廃炉引当金不足額は国が負担してもよいと考えるが、そのためには合理的な見積もりによる廃炉引当金が原発稼働期間に引き当てられてきたことを前提にすべきだ。

*5:http://mainichi.jp/select/news/20141127k0000m020062000c.html
(毎日新聞 2014年11月26日) 原発廃炉:消費者に負担転嫁導入、検討入り 経産省
 経済産業省は26日、運転終了後の原子力発電所の廃炉費用について、2018〜20年に予定される電気料金の完全自由化後も大手電力会社が消費者に負担を転嫁できる仕組みを導入する方向で検討に入った。発電部門と送電部門を切り離す発送電分離が実施された後、事業所や家庭への送配電を請け負う電力会社の利用料金に上乗せする形で負担を求める案が浮上している。電力自由化後に予想される価格競争に影響されずに廃炉費用を安定して回収できるようにすることで、電力会社による早期の廃炉判断につなげたい意向だ。原発を保有する電力大手は、原発の廃炉費用を年度ごとに分割して計上し、電気料金に上乗せしている。13年7月の制度改正で原発の運転期間が原則40年に限定されたことで、より長期の運転を想定していた老朽原発の廃炉が前倒しされ、電力会社が運転計画期間に分割計上する予定の廃炉費用を前倒しで計上する必要が生じ、多額の損失が生じる可能性が出ている。経産省は、16年7月に運転期限を迎える原発7基を廃炉にした場合、1基当たりの損失は約210億円と試算している。原発の再稼働が遅れて財務が悪化している電力各社は多額の損失計上に慎重で、廃炉が円滑に進まない懸念があった。このため、経産省は、廃炉となった場合も、原発設備の多くを複数年度に分割して計上できるようにし、電力会社の財務が一気に悪化しないようにする方針だ。新たな仕組みの検討を急ぐのは、18〜20年をめどに電気料金の完全自由化が予定され、それに合わせて廃炉費用を電気料金に上乗せする現行の料金制度が廃止されるため。16年の電力小売り全面自由化後、大手電力会社の電気料金だけに廃炉費用が上乗せされた場合、新規参入の電力小売会社が料金設定で有利となる。そうなれば、大手からの顧客流出が進み、廃炉費用の回収に困難をきたしかねない。経産省はこうした懸念を解消することで、大手電力による予定通りの廃炉を後押しする。


PS(2014.11.30追加):*6の記事は、「①脱原発を志向して再生可能エネルギー専門の電力小売会社と契約する消費者にも原発廃炉費転嫁しながら、大手電力が発電コストの相対的に安い原発の再稼働を進めれば競争が成り立たない恐れがある」「②既存の新電力の中には、大手電力に原発で発電した電力の一部を割安な料金で卸販売させるべきだとの意見がある」などとしているが、①をはじめ全体として、原発の発電コストは安いという虚偽の情報を有権者に流しており、②は、脱原発を志向して再生可能エネルギー専門の電力小売会社と契約する消費者の意志と需要を無視するものである。つまり、この記事は、官業(経産省+旧電力会社)が結託した思想をメディアが宣伝しているものだ。

*6:http://qbiz.jp/article/50883/1/
(西日本新聞 2014年11月29日) 自由化後も原発廃炉費転嫁を検討 新規会社の契約者にも負担
 経済産業省は29日、大手電力会社が老朽化した原発の廃炉に取り組むのを支援するため電力小売り全面自由化後も、すべての電力小売り会社の電気料金に廃炉費用を転嫁する方向で検討に入った。費用を確実に確保できる仕組みを整備することで、老朽原発の廃炉を着実に進めたい考え。ただ新規参入の電力小売り会社の契約者にも大手電力の廃炉費用を負担させるのは、公平な市場競争を阻害するとの反対意見も多い。脱原発を志向して再生可能エネルギー専門の小売り会社と契約する消費者からは反発も予想され、激しい議論になりそうだ。大手電力はこれまで廃炉費用を電気料金の中で徴収してきた。2016年4月に電力小売りが全面自由化されると料金競争が激しくなり、廃炉費用を料金に織り込みづらくなると予想される。老朽原発は年々増えるため費用が確保できないと廃炉計画に遅れが出かねないと懸念されている。18〜20年には「発送電分離」で大手電力から送配電部門が切り離され別会社化される。すべての電力小売り会社が送配電会社に託送料を支払い契約者に電気を届けてもらう形になることから、託送料に廃炉費用を上乗せする案が検討されている。この場合、全電力利用者が大手電力の廃炉費用を負担することになる。一方、こうした支援を受けながら大手電力が発電コストの相対的に安い原発の再稼働を進めれば、競争が成り立たない恐れがある。既存の新電力の中には、大手電力に原発で発電した電力の一部を割安な料金で卸販売させるべきだとの意見があり、今後併せて議論が進むとみられる。

| 原発::2014.10~2015.3 | 11:47 AM | comments (x) | trackback (x) |

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