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2014,11,29, Saturday
2014.11.28 2014.6.26 2014.5.1 2014.9.19 阿蘇中岳噴火 東京新聞 毎日新聞 西日本新聞 西日本新聞 (1)火山の噴火について *1-1に書かれているように、東大地震研究所長で日本火山学会長を務めた火山噴火予知連絡会長の藤井東大名誉教授が、「原発への火山影響予知には限界があり、原子力規制委員会の判断はおかしい」と述べている。具体的には、カルデラ噴火(巨大噴火)は、国内ではおよそ1万年に1度という発生頻度がわかるだけで、切迫度(今後どのくらい大丈夫か)は分からないそうだ。また、約7300年前に鬼界カルデラが噴火した際には、南九州の縄文文化が壊滅し、その後、復興に1000年くらいかかったそうだが、復興できるのは、原発がなく放射性物質がまき散らされなかった場合のみである。 また、自治体の地域防災計画では、桜島の大正噴火を超える規模の噴火は想定されておらず、原子力規制委員会がまとめた「火山影響評価ガイド」は、「火山の噴火は予知できる」という前提で作られており、「カルデラ噴火が予想されたら核燃料を移動させる」ともしているが、これは火山学者の認識とは全く異なるそうである。 そして、藤井氏は、「①確率が低いかどうか何も言えないため判定はできず、原発の立地は不可能」「②九電の主張は、たまたまギリシャの論文に載っていたもので、カルデラ噴火のすべてに当てはまるものではないまやかしの論理で不適切」「③噴火規模が大きくなると、前から予兆が分かるというのは幻想だ」としている。また、日本火山学会・原子力問題対応委員会(委員長:石原和弘京大名誉教授)も、規制委に火山影響評価ガイドラインの見直しなどを求める趣旨の提言をまとめたそうだ。 日本火山学会の原子力問題対応委員会が規制委のガイドライン見直しを求めたことについて、規制委は、*1-2のように、「非常に荒っぽい話だ」と反対の姿勢を示し、「川内原発では、ここ30、40年ではカルデラ噴火はないと判断した」と訴え、「カルデラを含む巨大噴火への対応については『国がきちっと(火山学会の意見を)受け止めなければならない』」としているが、「国が受けとめる」ということの具体的な意味は不明だ。 このように、新たな火山予知に関する安全神話が作られようとしていた時、小笠原諸島の西ノ島、長野県の御嶽山に続き、*1-3の阿蘇中岳の噴火があり、あらためて人々に火山活動が活発化していることを思い出させたのは、人間にはできない神技のようである。 小笠原諸島、西ノ島の噴火 (2)再稼働反対について 1)九州電力川内原発について *2-1のように、原子力規制委が新規制基準に適合しているとした九電川内原発1、2号機の原子炉設計変更許可について、再稼働に批判的な立場の約1400人が、行政不服審査法に基づき、許可の取り消しを求める異議申し立てをしたそうだ。 しかし、*2-2、*2-3のように、九電は「川内原発が実際に動くまで気は抜けない」とし、さらに経営安定化のため、玄海原発3、4号機の再稼働を行うつもりだ。しかし、影響を受ける地元自治体は原発30キロ圏内の自治体だけでもないため、強引な再稼働を地元が許してはならない。 また、*2-4のように、大津地裁に福井県の大飯原発3、4号機と高浜原発3、4号機の再稼働差し止めを求めた仮処分の申請は、2014年11月27日に、「①事故に対応する組織や地元自治体との連携・役割分担、住民の避難計画が何ら策定されていない」「②これらの作業が進まなければ再稼働はあり得ず、原子力規制委がいたずらに早急に、新規制基準に適合すると判断して再稼働を容認するとは考え難い」とし、緊急性がないと判断して仮処分の申請が却下された。これらは、川内原発や玄海原発でも同じ条件だが、それでも原発再稼働の前提となる原子炉設置変更許可は認められているため、安心することはできない。 これについて、九電玄海原発の操業差し止め請求訴訟の原告団は、*2-5のように、2014年11月27日、「①再稼働差し止めの仮処分申し立てを却下した大津地裁の決定は原発の危険性を否定しているのではない」「②関西電力の高浜原発3、4号機と大飯原発3、4号機は、原発の再稼働が差し迫っていないのが却下の理由である」「③決定は簡単に原発の安全性が認められる状況にはないことを示している」として、電力会社に再稼働しないよう求める声明を出している。 (3)結論 原発建設当初は、火山の噴火、地震、大津波について、それほど真剣には考慮されていなかったというのが正しいだろう。また、一度過酷事故を起こせば、原発から30km圏内の人が一時的に避難すれば、元に場所に戻って前の生活を取り戻すことができるという甘いものではないことが、今では誰の目にも明らかになっている。 そのため、再生可能エネルギーや水素エネルギーの技術が進んできた現在こそ、脱原発してエネルギーの転換を図るのが、日本を本当の意味で豊かにする第一歩になる。 <原発と火山について> *1-1:http://qbiz.jp/article/50235/1/ (西日本新聞 2014年11月20日) 「ミスター火山学」が批判を続ける理由 [藤井敏嗣:03年から火山噴火予知連絡会長。現在は東大名誉教授、NPO法人環境防災総合政策研究機構理事(環境・防災研究所長)、山梨県富士山科学研究所長。専門はマグマ学。1997〜2001年東大地震研究所長、06〜08年日本火山学会長を務めた。福岡県田川市出身。67歳] 火山噴火予知連絡会会長の藤井敏嗣氏。東京大地震研究所長(現名誉教授)、日本火山学会長などを歴任した「ミスター火山学」。原発の火山影響について、予知には限界があり「原子力規制委員会の判断はおかしい」などと正面から批判を続けている。周辺が「あまりに率直に話しすぎる」という同氏に本紙がインタビュー(実施は11月3日)。発言の背景も交えながら、その詳細をまとめた。 ◆カルデラ噴火、国全体で対処を 「カルデラ噴火(巨大噴火)についてわれわれが分かっているのは、おおよそ1万年に1回という国内での発生頻度だけ。カルデラの半分規模の噴火なら、6000年に1回ぐらい起きている。今のわれわれの能力では、切迫度は言えない。『あと1000年は大丈夫』とかは分からない。その切迫度を読み取る手法を考えないといけない。それには国を挙げて研究体制を整えないと、とても間に合わない。これは原発問題が浮上する前から言ってきたこと」。藤井氏によると、カルデラ噴火の発生で、周辺地域は火砕流などで壊滅的な被害を受ける。最後のカルデラ噴火は縄文時代、約7300年前の「鬼界カルデラ」(鹿児島県南部)。関西で約30センチ、東京近辺で約10センチの火山灰が積もったとされる。想像を超える火山灰が降り積もる重みで、各地の送電線が切れて広域停電が起こり、電車も飛行機も動かない。農作物は全滅し、原発だけの問題ではない、と言うのだ。神戸大の巽好幸(たつみ・よしゆき)教授らが10月末発表した「巨大カルデラ噴火のメカニズムとリスク」の発表資料によると、鬼界カルデラの噴火で「少なくとも南九州の縄文文化は壊滅し、その回復に1000年近くかかったと言われる」という。「日本の株価も暴落し、経済もめちゃくちゃになる。火山学だけでなく、社会学などを含めて国を守るためにどうすればいいのか、研究を急がないといけないと提言した。カルデラ噴火が起きたら、国がつぶれるようなことになるからだ。だけど、まったく(世の中に)動きはなかった」。内閣府の「広域的な火山防災対策に係る検討会」が昨年5月に出した提言のことだ。藤井氏は座長。鹿児島・桜島の大正噴火(1914年)を超えるような大規模、あるいはカルデラなどの巨大噴火への備えを初めて促した。自治体の地域防災計画では、大正噴火を超えるような規模の噴火がそもそも想定されていない。提言のメッセージが世の中に理解されていないことに、藤井氏は不満を抱いていた。原子力規制委員会が、原発に対する基準「火山影響評価ガイド」をとりまとめたのはその直後、同年6月だった。「ガイドラインは予知できる、という前提で作られている。ガイドラインを見てがくぜんとした。われわれの認識とまるで違っていたから。火山の状況をモニタリング(監視)し、カルデラ噴火が予想されたら核燃料を移動させると言うけれど、今のわれわれの能力ではとても分からない。これから先40年(原発の運転期間)以内に何が起きるか予知ができないと、確率が低いかどうかというのは何も言えないわけだから。論理的に言えば、判定できないということなら立地は不可能となるはずだし、念のためにモニタリングしてカルデラ噴火の予兆があったら核燃料棒を片付けるというが、だいたい、何か異常があったとき、それがカルデラ噴火なのか、もっと小さい噴火なのか、ということは、今のわれわれの能力では分からないわけですよ」。カルデラ噴火はあまりに頻度が低く、これまで本格的な研究がなされていなかったが、ようやく噴火の前兆現象を捉える研究が本年度から始まった。西日本新聞も4月23日朝刊1面で、そのことを伝えている。火山学者にとっても、分からないことが多すぎるのだ。火山学の常識に反して見える規制委や九州電力の評価に、藤井氏は我慢がならない。 ◆九電の主張「不適切」 「たまたまギリシャの論文で、カルデラ噴火前の最終期にはマグマが大量に堆積するとあり、九電はそれに引きずられた。規制委も悪のりした。まやかしの論理だ」。九電は2012年に出された論文に基づき、川内原発(鹿児島県薩摩川内市)の運転期間中に、カルデラ噴火が起きる可能性が十分に低い、とした。それを規制委も認めた。紀元前17世紀、ギリシャのサントリーニ火山で発生したカルデラ噴火の噴出物を分析した結果、噴火直前の100年間、地中のマグマだまりへ毎年0・05〜0・1キロ立方メートルのマグマが供給され、地表の隆起が発生していたと推定されるとの内容だ。九電はそれを根拠に、現状で大きな変化が見られないことから、「カルデラ噴火直前の状態ではない」と主張。これに、藤井氏は異論を唱える。「論文は、サントリーニ火山についての研究であり、カルデラ一般に広げることはできない。マグマが供給されても地表の隆起が起こらない可能性もある。公表された論文に対し、反論が出るまで何十年もかかるケースもあり、12年論文に反論がないから正しい、というのは不適切だ。噴火規模が大きくなると、ずっと前から予兆が分かるというのは幻想。規制委の田中俊一委員長も国会でそのような答弁をしたけど、それは違う」。藤井氏の反論は、続く。九電は、南九州のカルデラの平均的な噴火発生頻度を約9万年に1度と整理。ところが、阿蘇カルデラだと2万年、3万年、11万年とバラバラという。さらに、仮にサントリーニ火山を参考事例にすれば、同火山は3500年前(紀元前17世紀)前の噴火のほか、1万8000年前にもカルデラ噴火を起こしており、1万5000年間隔で起きていることになるわけだが、九電は、そのことに関しては一切触れていない、とも批判。川内原発から40キロ、桜島を含む姶良カルデラの噴火から約3万年が経過しているからといって、あと6万年大丈夫というのはあまりに危ない、と指摘する。「カルデラ噴火の切迫度が分からないので、原発を止めろとは言えない。ただ、リスクが残っていて科学的に安全だと言えないことを認めた上で、どうしても電力が必要で動かしたいのなら、そう言うべきだ。科学的に安全だとすべきではない」。 ◆火山監視体制はぜい弱 日本火山学会・原子力問題対応委員会(委員長=京都大の石原和弘名誉教授)は11月2日、規制委に火山影響評価ガイドラインの見直しなどを求める趣旨の提言をまとめた。規制委と火山学会との意見対立が深まる中、田中委員長は記者会見で「とんでもないことが起こるかもしれないということを平気で言わないで、学会をあげて必死になって夜も寝ないで観測し、わが国のために国民のためにがんばってもらわないと困るんだよ」と声を荒らげた。ただ、委員長が言うように、学者が努力すれば済むような現状なのだろうか。「米国、イタリア、インドネシア、フィリピンなどでは国の一元的な監視組織がある。地震火山庁みたいな。地球科学、火山ガス、地殻変動、地質などいろんな分野の研究者がいる。そこで、24時間監視にあたる技術職員がいる。そういう機関がある。日本にだけない。気象庁のいわば素人集団が監視し、大学の研究者もバラバラ。火山をやるのにこういう観測装置が必要だというと、それぞれが買う。効率もよくない。言ってきたが、変わらない。気象庁のデータも、近年まであまりしっかりしたものがなかった」。巨大噴火の監視、研究体制の強化の必要性について、規制委と火山学会の問題意識は同じだ。両者の徹底的な議論を通じ、火山大国の日本が、よりよい方向に向かってほしいのだが。 *1-2:http://qbiz.jp/article/50250/1/ (西日本新聞 2014年11月20日) 規制委、火山学会に再度反論 「国が受け止めを」指摘も 原子力規制委員会の田中俊一委員長は19日の会見で、日本火山学会の原子力問題対応委員会が規制委のガイドライン見直しを求めていることについて「非常に荒っぽい話だ」と、あらためて反対の姿勢を示した。火山学会は、規制委のガイドラインがカルデラ噴火の前兆が把握可能との前提でつくられていることに関して「現在の知見では予知は困難」と問題視。これに対し、田中委員長は「川内原発ではカルデラ噴火を検討した結果、ここ30、40年ではそういう状況には至らないと判断をした」と訴えた。一方、田中委員長は「火山学会の方も、単なる原子力だけではなく、国の存続に関わる問題であるということを、外に向かって言い始めていると思う」と指摘。カルデラを含む巨大噴火への対応については「国がきちっと(火山学会の意見を)受け止めなければならない」と話した。 *1-3:http://qbiz.jp/article/50655/1/ (西日本新聞 2014年11月27日) ルポ・噴煙やまぬ阿蘇中岳 降り続く灰、すべてが黒一色に 火山活動が活発化している熊本県・阿蘇山の中岳は、26日も小規模な噴火を繰り返した。火山灰を含む噴煙が活動中の第1火口から噴き上げ、風に流れて、辺りの山々に降灰をもたらした。記者は、中岳と尾根続きの高岳周辺を歩き、その「黒い風景」を見た。午前9時すぎ、標高900メートルにある高岳登山口の仙酔峡(阿蘇市)は灰が降っていた。見上げると、中岳も高岳も霧の中にある。それも、黒い霧だ。山上からの眺めは「黒い雲海」になっているだろう。中岳火口から2〜3キロ離れた仙酔尾根に足を踏み入れる。尾根道は、倒れかかったススキで半ば隠れていた。葉に積もった火山灰が前夜の雨で重さを増し、しなってひれ伏している。足元の溶岩に積もった灰は、雨水で泥状になり、べっとりと靴を重くする。雲に入り、標高1200メートル(7合目)付近で雲海を抜けると、視界がぱっと開けた。右手に、中岳の噴煙が渦を巻くように立ち上っている。ヘルメットがパサパサ鳴る。服に無数の染みが付く。風下側の仙酔尾根を火山灰が襲っていた。口の中で、歯がすれ合うたびに、絶えずジャリジャリと音を出す。噴火の噴出物、恐らく火山灰が口に入るのだろう。これまで降り積もった灰の上に、今日も新しい灰が降る。正午近く、仙酔峡に下りた。3時間足らずの間に、登山口に置いていた車の窓は灰をかぶって真っ黒になっていた。活動はこれから本格化するのか、静まるのか−。 ◆噴煙一時1000メートル 95年以来の規模 福岡管区気象台は26日、熊本県・阿蘇山の中岳第1火口で小規模の噴火が継続していると発表した。同日午前9時には噴煙の高さが千メートルに達した。継続的に多量の噴煙が出ており、気象台によると、1995年以来の規模の噴火という。気象台によると、火口縁のカメラでは、高温の噴出物が炎のように見える火炎現象を断続的に観測したほか、火口縁内に飛散する噴石も見られたという。噴火による降灰は大分県豊後大野市(東約40キロ)、熊本県山都町(南約30キロ)などでも確認されたという。地殻変動も確認されており、気象台は「マグマだまりが膨らんでいる可能性がある」と指摘している。阿蘇山は8月の小規模噴火を受けて、噴火警戒レベルが1(平常)から2(火口周辺規制)に引き上げられた。阿蘇市は火口から半径約1キロの立ち入りを禁止している。気象台は現段階では警戒レベル3(入山規制)への引き上げは検討していないという。 <再稼働反対について> *2-1:http://mainichi.jp/select/news/20141112k0000e040181000c.html (毎日新聞 2014年11月12日) 川内原発:1400人が異議申し立て 原子力規制委員会が新規制基準に適合していると判断した九州電力川内(せんだい)原発1、2号機(鹿児島県)の原子炉の設計変更許可について、再稼働に批判的な立場の計約1400人が行政不服審査法に基づき許可の取り消しを求める異議申し立てをした。規制委が12日、発表した。川内原発の許可への異議申し立ては初めて。規制委は今後、内容の審理をする。 *2-2:http://qbiz.jp/article/49594/1/ (西日本新聞 2014年11月11日) 【川内再稼動】(3)九電 安定経営へ「玄海も」 「実際に動くまで気は抜けない」−。川内原発の再稼働の地元同意手続きが完了した今も、九州電力社内では緊張感が渦巻く。再稼働の前提となる原子力規制委員会の審査はまだ完全に終わっていない。その先には設備の使用前検査も残る。「手抜かりでもあれば、再稼働が後ずれしかねない」(九電関係者)。九電が昨春の電気料金値上げに際し想定した川内原発の再稼働時期は昨年7月。しかし、「世界最高水準」を掲げる規制委の審査は長期化。申請から約1年2カ月後の今年9月に新規制基準への適合が認められたものの、再稼働時期は想定より大幅に遅れている。九電には、2011年夏の苦い記憶も刻まれている。玄海原発(佐賀県玄海町)の再稼働に向け地元同意手続きを進めたのに当時の民主党政権が原発の安全検査を実施すると唐突に表明。自社の「やらせメール問題」発覚もあり、再稼働は一気に遠のいた。「何があるか分からない」。九電関係者は当時のことを思い起こしつつ、こう気を引き締める。原発全6基の停止で、かつて「九州ナンバーワンの安定企業」とうたわれた九電の経営は様変わりした。火力燃料費がかさみ、14年3月期まで3年連続の最終赤字。昨春は33年ぶりとなる電気料金の抜本値上げに踏み切ったが、原発が想定通りに動かず、燃料費がカバーできない状態が続く。債務超過が現実味を帯び始めた今夏は、日本政策投資銀行から1千億円を調達する資本増強策も余儀なくされた。料金値上げに伴う経費削減で、一般社員の基本給は昨年度から平均5%カット。退職金と企業年金の給付水準を将来的に3割程度減らす制度も来年度に導入する方針だ。社員からは「生活が心配」との声も上がる。料金の再値上げは政府の意向に反して景気の足を引っ張りかねないこともあり、踏み切れないまま今に至る。「経営安定化には原発の早期再稼働を目指すしかない」(幹部)というのが九電の現状だ。川内1、2号機の再稼働にめどが立ち、九電の最優先課題は規制委の審査が大詰めを迎えた玄海3、4号機に移る。この2基が動かないと収支が安定しないからだ。川内の前例が「ひな型」となるため、玄海の今後の審査手続きはペースアップが期待できる。しかし、審査の先に待ち構える地元同意手続きが、川内のように円滑に進むかは不透明だ。九電は、玄海でも立地自治体の佐賀県と玄海町に「地元」の範囲を限りたいのが本音だ。だが、玄海原発から最短12キロの佐賀県伊万里市が立地自治体並みの権限を求めており、原発30キロ圏の自治体で唯一、原子力安全協定を結べていない。塚部芳和同市長は「安全協定を締結しないままの再稼働には反対」と公言している。九電は古川康同県知事の調整力に期待を寄せるが、やらせメール問題の“後遺症”が懸念され、強引なやり方は批判を招きかねない。次なる再稼働をめぐっては波乱含みの展開も予想される。 *2-3:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/130270 (佐賀新聞 2014年11月28日) 玄海原発、審査大詰め 残り52項目、年明け完了か 九州電力は27日、原子力規制委員会による新規制基準の適合性審査で、玄海原発3、4号機(東松浦郡玄海町)の指摘事項19項目について回答し、規制委側から了承を得た。残りは52項目となり、審査は最終段階を迎えた。玄海原発をめぐっては、すでに地震・津波の審査は完了し、この日はプラント(設備)審査があった。これまでにさらに詳しいデータの提出や、災害時の対応手順などを提示するよう求められていた。審査を担当する規制委の更田豊志委員は「いくつかの項目が残されているものの、およそ数えられるほどになってきた」と最終段階に入ったという認識を示した。今後の見通しについて九電の中村明上席執行役員は、スタッフの体制を挙げて「川内原発に集中している。川内が済み次第、速やかに玄海の審査をしてもらうべく準備する。今後、どの程度の時間がかかるかははっきり言えない」と説明した。審査後、中村氏は「ほとんどの項目を川内原発の審査で答えているので、玄海特有のものを答えていくことになる」と述べ、年内の終了は困難との見通しを示した。 *2-4:http://mainichi.jp/select/news/20141128k0000m040143000c.html (毎日新聞 2014年11月28日) 原発再稼働差し止め:却下決定「再稼働あり得ない」指摘も 滋賀、大阪、京都3府県の住民計178人が関西電力に対し、福井県の大飯原発3、4号機と高浜原発3、4号機の再稼働差し止めを求めた仮処分申請で、27日に大津地裁が出した却下の決定は、事故対策などが進んでいない現状を指摘した上で仮処分の緊急性がないと判断した。住民側は、裁判所の認識と再稼働に向けた実際の動きの「ずれ」を批判する一方で、避難計画策定の遅れなどへの言及を一定程度評価した。住民側は「事故で琵琶湖が放射能汚染されれば健康被害は計り知れない」などと主張。関電は「安全性は十分確保されている」として却下を求めていた。決定は、4原発について「事故に対応する組織や地元自治体との連携・役割分担、住民の避難計画などが何ら策定されていない」と指摘。「これらの作業が進まなければ再稼働はあり得ず、原子力規制委がいたずらに早急に、新規制基準に適合すると判断して再稼働を容認するとは到底考えがたい」とした。27日午後に記者会見した住民側代表の辻義則さん(67)は、早急な再稼働を否定した決定理由について「両原発は近く再稼働の前提となる原子炉設置変更許可が認められると見込まれており、社会の一般的な認識に反する」と批判した。一方、決定が避難計画の策定作業などが進まなければ再稼働はあり得ないとしたことを「再稼働にまい進する政府・電力会社の姿勢に対する不信と批判」と評価。住民側代理人の井戸謙一弁護士(60)は「常識的に考えれば、こんな状態で再稼働は容認できないという裁判所のメッセージだ」と述べた。 *2-5:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/130271 (佐賀新聞 2014年11月28日) 玄海訴訟原告団、再稼働中止求める ■「危険性否定していない」 関西電力の高浜原発3、4号機(福井県高浜町)と大飯原発3、4号機(同県おおい町)の再稼働差し止めの仮処分申し立てを却下した大津地裁の決定に対し、九州電力玄海原発(東松浦郡玄海町)の操業差し止め請求訴訟の原告団は27日、「決定は原発の危険性を否定していない」として、電力会社に再稼働しないよう求める声明を出した。声明では、原発の再稼働が差し迫っていないのが却下の理由になったことや、住民の避難計画も策定されていない実情を示し、「決定は簡単に原発の安全性が認められる状況にはないことを示している」と指摘した。原告団長の長谷川照・元佐賀大学長は「5月の運転差し止めを認めた福井地裁判決と大津地裁の決定は同じ考えに基づいている印象。再稼働させないための良い環境が整いつつある」と述べた。 PS(2014.11.30追加):自然エネルギーの買い取りを拒否した九州電力は、*3のように、総選挙の公示を控えて、「火力発電所のトラブルなどで需給が切迫する恐れ」を理由に冬の節電要請を始めた。これにより、半官半民の地域独占企業の技術進歩の遅れと顧客志向のなさが白日の下に晒されているわけだが、このようなことを繰り返してきたため、九州の消費者は既にガスストーブや石油ストーブを再購入して電力離れを進めた。 *3:http://qbiz.jp/article/50889/1/ (西日本新聞 2014年11月30日) 12月1日から冬の節電要請期間 九州電力管内 来年3月までの平日 九州電力管内で12月1日、冬の節電要請期間が始まる。数値目標を設けない冬の要請は3年連続で、期間は来年3月末までの平日(年末年始を除く)。九電は原発全6基の停止下でも安定供給に必要な供給力を確保するが、不測の事態に備え「無理のない範囲での節電」を呼び掛ける。九電管内の今冬の需給見通しは、原発停止が続いたまま2011年度並みの厳寒を迎える前提だと来年1、2月の供給予備率は3・0%。他電力からの融通などで最低限必要とされる3%は確保したが、火力発電所のトラブルなどで需給が切迫する恐れがある。川内原発1、2号機(鹿児島県薩摩川内市)が再稼働すれば、予備率は大幅に上昇するが、再稼働時期は来年2月以降になる公算が大きい。節電要請の対象時間帯は午前8時〜午後9時。冬の電力使用量は午前8〜11時と午後5〜8時の2回、ピークがあり、ここで空調温度の引き下げなどに取り組めば効果が大きい。
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