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2014.12.1 今回の選挙では、原発再稼働の是非も重要な争点だということ ← 原発事故の人体への影響から (2014年12月2日、12日、13日、2015年1月3日に追加あり)
     
 2014.11.28NHK  2014.11.24西日本新聞      東京新聞

(1)原発輸出や原発再稼働などの原発回帰は正しい方向ではない
 *1-1にも記載されているように、安倍政権下の2年で「原発回帰」の流れが加速し、民主党政権時に国民的議論から導かれた「2030年代の原発ゼロ」の方向は無視されたが、政権が変わったからといって、その時にパブリックコメントで表明された原発に関する国民の意志が変わったわけではない。

 それにもかかわらず、2014年4月に「原発は重要なベースロード電源」と位置づける新エネルギー基本計画を閣議決定したのは、重要な論点として今回の総選挙で主権者である国民の目に晒されるべきだ。何故なら、税金からカネを出して原発事故の責任を負うのも、平時の原発運転や過酷事故の放射能汚染で健康を害して被害を受けるのも国民自身にほかならないからである。

 一方、公害を出さない再生可能エネルギーに対しては、太陽光発電による電力の買取を大手電力会社が受け入れ中断し、その上で、経産省と大手電力会社が、電力不足を挙げて原発再稼働の必要性を説いている。電源構成は、①公害を出して国民を害することがない ②国民にとって安価である ③日本で自給できる などの視点から、より優れた電源が勝ち残るべきなのであり、電源構成をあらかじめ人為的に定めれば、最も優れた電源が勝ち残る機会は奪われる。

 この際、メディアは、国民の判断を誤らせないため、「原発のコストは安い」「放射能は安全だ」などという虚偽の情報を流してはならない。何故なら、国民が判断を誤れば、その結果は国民負担として国民に返ってくるからである。

 なお、*1-2で、川内原発をエリアとする西日本新聞が、「原発回帰、高まる不信 問われるエネルギー政策」「原発は安全と何万回も聞いたが、安全に絶対はない」という記事を書いている。一方、自民党が前回の衆院選で「太陽光などの再生可能エネルギーを最大限導入する」と公約としたにもかかわらず、九電はじめ大手電力会社5社は、2014年9月、再生エネの接続申し込みが許容量を超えたとして契約手続きを中断した。

 しかし、私が、このブログに根拠を挙げて何度も記載したように、*1-2の「原発停止や円安で電気料金の高止まりが続く」「再生エネの導入を増やせばその分も料金に上積みされる」という解説については、総括原価方式を採用してきた地域独占企業である電力会社には、コスト削減の動機付けも努力もなく、再生エネと火力燃料の値上がり分だけを料金にサーチャージする仕組みもおかしいので、これは正確な原価計算によるコスト比較にはなっていない。

(2)原発事故の人体への影響
 *2-1には、津田岡山大大学院教授(環境医学)が「日本公衆衛生学会」で講演し、国の有識者会議などが支持している「(累積で)100ミリシーベルト以下の被ばくでは、がんの増加が確認されていない」という見解を否定し、「世界保健機関(WHO)が2013年の報告書で、福島県で甲状腺がんや白血病が増える可能性があると予想している」と報告したことが述べられている。「こうした事実が知られていないため、放射線から身を守るための建設的な議論がストップしている」「放射能は県境で遮断されるわけではない」というのも、私は全く同感だ。

 また、*2-2には、18歳以下の子ども1818人の甲状腺検査の結果、「①正常と診断された子どもが672人」「②小さなしこりやのう胞と呼ばれる液体がたまった部分があるものの経過観察とされた子どもが1139人」「③一定以上の大きさのしこりなどがあり、さらに詳しい検査が必要とされた子どもが7人」だったが、この結果について、検査に当たった島根大学医学部の野宗義博教授は、「チェルノブイリ事故の例から見て原発事故から3年余りで甲状腺がんが発生するとは考えにくく、詳しい検査が必要とされた子どもについても被曝による影響とは判定できない」としていると記載されている。

 しかし、*2-2の検査と結論は、1)18歳以下の人しか甲状腺癌が起こらないとしている点 2)どのような被曝線量を浴びても(また浴び続けても)、3年以上経なければ甲状腺癌は発症しないとしている点 3)甲状腺癌だけしか調べていない点 で科学的ではない。

 そのような中、*2-3のように、雑誌『宝島』の2014年10月号に福島県内で急増する「急性心筋梗塞」のレポートが掲載され、各方面から大きな反響があったそうだ。そして、『宝島』11月号では、全ガン(悪性新生物)の死亡者数が増加傾向にある背景について検証している。

 それによると、小児甲状腺ガンは既に多発しており、地域別の発症率は、福島市の「中通り」が一番高くて10万人当たり36.4人、いわき市などの「浜通り」が同35.3人、原発直近の「避難区域等」が同33.5人、原発から80キロメートル以上離れた「会津地方」は同27.7人で最も低く、放射能汚染の度合いが高い「中通り」と、相対的に低い「会津地方」では、同8.7人もの地域差があったのである。

 これに対し、福島県立医科大学はこの地域差を、「被曝の影響とは考えにくい」「福島県で原発事故による健康被害は発生していない」としているが、福島原発事故時、既に誕生していた子どもたちには小児甲状腺ガンが多発しているのに対し、事故の1年後以降に誕生した子どもたち9472人の間では小児甲状腺ガンの発症がゼロだったため、福島県立医科大学の反論は当たらない。

 また、福島県で増えているガンは「甲状腺ガン」だけではなく、ガンごとの潜伏期間は、「【白血病、悪性リンパ腫】0.4年(146日)、【小児ガン(小児甲状腺ガンを含む)】1年、【大人の甲状腺ガン】2.5年、【肺ガンを含むすべての固形ガン】4年」などとなっており、福島県立医大の唱える「発ガンは原発事故発生から4年目以降」という説は、『Minimum Latency Types or Categories of Cancer』から全く相手にされていないそうで、私も、こちらの方が科学的に矛盾がなく、常識的だと考える。

(3)原発に対する国民の意見は?
 原発公害の深刻さがわかった後、*3-1のように、国民に意見を募った「パブリックコメント」で脱原発を求める意見が9割を超えていたにもかかわらず、経産省は基本計画で原発を「重要なベースロード電源」と位置づけた。また、2012年に民主党政権が行った「2030年の原発比率に関するパブリックコメント」でも、約9割が「原発ゼロ」を支持しており、これは、政権とは関係なく国民の意志なのである。

 それにもかかわらず、このように民意を無視した政治がおこなわれる理由は、「官僚を使う(麻生財務大臣)」としながらも、実際には官僚のシナリオ通りに使われざるを得ない状況になっている政治家と選挙で応援してくれた産業に有利に予算を配分する政治のためである。これは、(長くは書かないが)根深い問題であり、政治家が身を切る改革をすれば解決するというような簡単なものではない。

 しかし、NHKは、*3-2のように、「原発の再稼働には若い世代に賛成が多い傾向がある」とし、「地元・薩摩川内市では、20代から30代で『賛成』『どちらかといえば賛成』が75%に上り、若い世代で再稼働に賛成の割合が多くなる傾向はほかの地域でも見られた」としている。

 が、これには、1)20代から30代の世代は、小学校で「原発は安全」という誤った知識を副読本で教えられていること 2)彼らが物心ついて以来、メディアからも「原発は夢のエネルギー」「原発は安全」というメッセージを多く受け取ってきたこと 3)ゆとり教育や理科系科目への敬遠の中で、物理学や生物学の知識の乏しい人が多くなっていること 4)それにより、正しい知識や情報に基づく論理的思考ができない状態になっていること などが、理由として挙げられる。

*1-1:http://www.kochinews.co.jp/?&nwSrl=329840&nwIW=1&nwVt=k
(高知新聞 2014年11月30日) 【エネルギー政策 14衆院選】国の責任をはっきり語れ
 安倍政権下の2年で、「原発回帰」の流れが加速している。民主党政権時に国民的議論から導かれた「2030年代の原発ゼロ」から方向転換し、ことし4月には原発を「重要なベースロード電源」と位置付ける新たなエネルギー基本計画を閣議決定した。原発再稼働は、安倍首相が衆院選で国民に信を問うアベノミクスの一角を占める政策である。果たして、福島第1原発事故を経た日本に原発は必要なのか。年明けにも九州電力・川内(せんだい)原発の運転再開が視野に入る今、あらためて議論を深める機会としなければならない。「責任あるエネルギー政策」をうたった安倍政権は、原子力規制委員会が新規制基準への適合を認めた原発は再稼働させる方針をエネ計画に盛り込んだ。「国も前面に立ち」地元の理解を得るとも明記し、この衆院選でも公約とした。だが、川内原発の再稼働手続きで、「責任」の曖昧さが浮き彫りになったといえる。安全対策でげたを預けられた形の規制委は、基準の適合性を審査するだけで、必ずしも安全を担保するものではないとの立場を崩さない。地元の鹿児島県などは「国の責任」を挙げ、安全対策では「規制委を信じる」と同意を決めた。安全に対する最終的な責任を押し付け合うようにもみえる構図から、重要な課題もこぼれ落ちた。事故時の避難計画は規制委の審査対象に含まれず、実質的には地元任せだった。実効性を疑問視する声も根強い。広域に被害が及んだ福島の教訓が生かされたとはいいがたく、「安全神話」の復活さえ印象付ける。今後の手続きで「川内方式」がひな型となり、多くの問題を抱えたまま全国の原発が次々と再稼働する恐れがある。国の責任がみえないのは原発に限った話ではない。エネ計画でも示されなかった電源構成からしてそうだ。
●根本的な疑問
 安倍政権は原発再稼働が見通せないと構成決定を先送りしてきたが、長期的な原発維持を明確にすれば、世論の反発を招くとの思惑はなかったか。しわ寄せは大きくなりつつある。再生可能エネルギーでは、太陽光発電の急増で、四国電力など大手電力に受け入れ中断の動きが広がる。普及の切り札、固定価格買い取り制度の見直しは不可避ながら、将来の導入量が未定のために、国民負担の推計が難航して作業が遅れている。地球温暖化対策の国際枠組みの交渉にも影響が懸念される。主要国が次々と温室効果ガスの削減目標を公表する中、日本は目標設定が遅れ、本気度を疑われかねない状況にある。これも排出量全体の約4割を占める電力部門で電源構成が固まらないからだ。政府はようやく、来年夏までに電源構成を決めると明らかにした。ただし、その前に国民に説明すべきことがあるはずだ。そもそも今夏、原発ゼロで需要のピークを乗り切ったのに、原発は本当に要るのか。使用済み核燃料の処理はどうするのか。国民の根本的な疑問は解消されたとはいえまい。与党は再稼働を進めるなら、選挙戦で明確に答える責務があろう。将来的な原発ゼロを掲げた民主党などの野党も、国民的な議論につながる論戦を展開する必要がある。

*1-2:http://qbiz.jp/article/50660/1/ (西日本新聞 2014年11月27日) 原発回帰、高まる不信 問われるエネルギー政策
 「原発は安全と何万回も聞いたが、安全に絶対はない」。九州電力川内原発1、2号機(鹿児島県薩摩川内市)の再稼働が目前に控える中の衆院解散。福島第1原発がある福島県双葉町から鹿児島市に避難した遠藤昭栄さん(71)は、政府が原発の安全性を強調するたびに、憤りを隠せない。双葉町の自宅は原発から約2キロ。事故後は公民館など県内外の施設を転々とした。故郷に戻るめどが立たず、2012年春、妻と愛犬を連れ、長男が住む鹿児島市に身を寄せた。年明けに再稼働する川内原発のほか原子力規制委員会では12原発(18基)が審査中。来年は審査が先行する関西電力高浜原発3、4号機(福井県)や九電玄海原発3、4号機(佐賀県玄海町)なども再稼働が見込まれる。「福島の事故も収束していない。政治は福島を忘れたのか」。故郷を遠く離れた鹿児島で再び原発と向き合う遠藤さんの政治への不信は高まる。
    □    □
 「3・11」から4年足らず。福島の事故が国民に突きつけた原発の課題は、何一つ解決していない。例えば、原発が出す高レベル放射性廃棄物「核のごみ」。政府の原子力委員会が、地下深くに埋設する方法を決めたのが1984年。実験は進んだが、30年たった今も処分場の選定方法さえ決まっていない。問題があらためて注目されるきっかけになったのは、昨秋以降の小泉純一郎元首相による相次ぐ「脱原発」を求める発言だ。小泉氏は昨年11月、日本記者クラブで「首相が決断すれば(脱原発は)できる。再稼働すればまた核のごみが増える」と政府に迫った。小泉氏の強いメッセージ力に危機感を抱いた政府は昨年12月、最終処分場の選定について「国が前面に立つ」と宣言。建設スケジュールなどを盛り込んだ基本方針を今春までに見直す方針を打ち出した。だが、2月の東京都知事選で、小泉氏と共闘する形で立候補した細川護熙元首相が落選すると作業はストップ。基本方針の見直しは宙に浮いている。
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 自民党が衆院選の公約で「最大限導入する」と明記した太陽光などの再生可能エネルギーの行方も不透明だ。九電をはじめとする大手電力会社5社が9月、再生エネの接続申し込みが許容量を超えたとして、契約手続きを中断した。「衆院選をする暇があれば、一刻も早く解決策を示してほしい」。太陽光発電事業に挑戦するつもりで金融機関から5千万円を借り、既に土地も購入した鹿児島県内の自営業男性(31)は、突然の手続き中断に憤まんやる方ない様子だ。原発停止や円安で電気料金の高止まりは続く。再生エネの導入を増やせば、その分も料金に上積みされる。複雑に絡み合ったエネルギー政策の方向性を示す覚悟が政府に問われている。

<原発事故の人体への影響>
*2-1:http://www.tokyo-np.co.jp/article/tochigi/20141108/CK2014110802000179.html (東京新聞 2014年11月8日) 原発事故の健康影響「検査態勢の充実必要」 国見解否定の津田教授講演
 東京電力福島第一原発事故後の健康影響を考える集会が六日夜、宇都宮市の県総合文化センターで開かれ、「ただちに健康影響はない」とする政府見解に異を唱えてきた津田敏秀・岡山大大学院教授(環境医学)が講演した。県内外の医療関係者や放射線に関心がある市民ら約六十人が耳を傾けた。講演は、全国の医師や研究者が集まる「日本公衆衛生学会」(五~七日)の自由集会内で行われた。津田教授は、疫学の専門家である立場から、チェルノブイリの原発事故後のデータなどを基に、国の有識者会議などが支持している「(累積で)一〇〇ミリシーベルト以下の被ばくでは、がんの増加が確認されていない」という見解を否定した。世界保健機関(WHO)が二〇一三年の報告書で、福島県で甲状腺がんや白血病が増える可能性があると予想していることも報告。「こうした事実が知られていないため、放射線から身を守るための建設的な議論がストップしている」と警鐘を鳴らした。福島県に隣接する栃木県についても「放射能は県境で遮断されたわけではない」と、検査態勢を充実する必要性を主張。健診だけでは受診率が下がるため、全市民に手帳を配布するなどして、経過を記録しやすくする方法を提案した。

*2-2:http://www3.nhk.or.jp/news/html/20141109/k10013058381000.html
(NHK 2014年11月9日) 子どもの甲状腺 今後も検査を
東京電力福島第一原子力発電所の事故を受けて茨城や千葉の保護者などで作る市民団体が1800人余りの子どもたちの甲状腺を検査したところ、このうち7人が「一定以上の大きさのしこりなどがあり、さらに詳しい検査が必要」とされましたが、担当の医師は原発事故の影響とは判定できないとしています。団体では今後も検査を続けることにしています。茨城や千葉の保護者などで作る市民団体「関東子ども健康調査支援基金」は、原発事故で放出された放射性物質が子どもたちの健康に影響していないか調べようと去年10月から希望者を対象に医師の協力を受けて甲状腺の検査を行ってきました。検査は茨城、千葉、埼玉、神奈川、栃木の5つの県で行われ、ことし9月までに検査を受けた18歳以下の子どもたち1818人の結果がまとまりました。それによりますと「正常」と診断された子どもが672人、「小さなしこりやのう胞と呼ばれる液体がたまった部分があるものの、特に心配はなく経過を観察」とされた子どもが1139人、「一定以上の大きさのしこりなどがあり、さらに詳しい検査が必要」とされた子どもが7人でした。今回の結果について検査に当たった島根大学医学部の野宗義博教授は「チェルノブイリ事故の例から見て原発事故から3年余りで甲状腺がんが発生するとは考えにくく、詳しい検査が必要とされた子どもについても被ばくによる影響とは判定できない。今後も定期的に検査をしていくことが大切だ」と話しています。市民団体では今後も希望者を対象に検査を続けることにしています。

*2-3:http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20140926-00010000-takaraj-soci
(YAHOOニュース 宝島2014年9月26日) 福島県でなぜ「ガン死」が増加しているのか?~誰も書けなかった福島原発事故の健康被害~【第2回】
 先月号(『宝島』10月号)に掲載した福島県内で急増する「急性心筋梗塞」のレポートは各方面から反響を頂戴した。引き続き本号(『宝島』11月号)では、全ガン(悪性新生物)の死亡者数が、これも増加傾向にある背景について検証する。
■小児甲状腺ガンはすでに多発している
 前号では、福島県で多発・急増する「急性心筋梗塞」の問題を検証したが、今回は、原発への賛成・反対にかかわらず、関心の的である「ガン」に注目してみたい。旧ソ連・チェルノブイリ原発事故(1986年)の際に多発が確認されたのが、「子どもたちの甲状腺ガン」である。福島原発事故においても、事故発生当時18歳以下だった福.島県民36万7707人のうち、今年6月末時点で57人の子どもが甲状腺ガンと確定した。甲状腺ガンの疑いがある者まで含めると、実に104人(良性結節1人も含む)に及んでいる。地域別の発症率を見ると、福島市などの「中通(なかどお)り」が一番高くて10万人当たり(注1)36.4人。次いで、いわき市などの「浜通(はまどお)り」が同35.3人。原発直近の「避難区域等」が同33.5人。一方、原発から80キロメートル以上離れた「会津地方」は最も低く、同27.7人だった。放射能汚染の度合いが高い「中通り」と、相対的に低い「会津地方」では、同8.7人もの地域差がある。しかし、小児甲状腺ガン調査を担当する福島県立医科大学はこの地域差を、「被曝の影響とは考えにくい」としている。すでに地域差が表れている点についても県立医大は、会津地方では精密検査が終わっていない子どもたちが多く、甲状腺ガンと診断される子どもが今後増える可能性があるとして、「地域別発症率に差がない」と、かなり強引な解釈をしている。また、被曝の影響を最も受けやすいと見られる0~5歳で甲状腺ガンの発症がまだ一人も確認されていないこと(現時点での最年少患者は6歳)を、県立医大はことさら重視し、調査が進むにつれて甲状腺ガン患者が増え続けていく現状についても、「被曝の影響とは考えにくい」と、オウム返しのように連呼している。ともあれ、彼らの主訴は、“福島県で原発事故による健康被害は発生していない”ということなのであり、「考えにくい」のではなく、安定ヨウ素剤を子どもたちに飲ませなかった責任を追及されるのが怖い──という本音が見え隠れしている。そもそも、県立医大の期待どおりに会津地方でも小児甲状腺ガンが増えていくかどうかは不明である。それに、原発事故による放射能汚染は会津地方にも及んでおり、会津地方でも発症率が高まることが、直ちに被曝の影響を否定することにはならない。国立ガン研究センターの「地域がん登録全国推計値」によれば、子どもから大人までを含む全年齢層における甲状腺ガンの発症率は、10万人当たり年間7~8人だという。また、事故当初、甲状腺の専門医らは、通常時における小児甲状腺ガンの発症率は「100万人に1~2人」(=10万人当たり0.1~0.2人)だと、マスコミ等を通じて説明していた。これらの数字に比べると、福島県の子どもたちだけで「10万人当たり30人以上」という調査結果はかけ離れて高く、まさに「多発」と呼ぶに相応(ふさわ)しい。福島県は原発事故以前から「小児甲状腺ガン多発県」だったという話もない。この「10万人当たり」は、人口を分母にしての値ではない。この値を求める計算式は、分母を「1次検査の受診者数」として、分子が「甲状腺ガンやその疑いがあると診断された者の数」である。「中通り」の場合、受診者数が16万7593人で、甲状腺ガン患者数が61人なので、61÷16万7593×10万人=36.39…となり、小数点以下第2位を四捨五入して「36.4人」になる。
■福島県で増えているガンは「甲状腺ガン」だけではない
 山下俊一・長崎大学教授(現・同大副学長)も内閣府原子力委員会のホームページで書いているように、チェルノブイリ原発事故では発生の1年後、高汚染地域(ベラルーシ共和国ゴメリ州)で4人の子どもたちに甲状腺ガンが発症している。ゴメリ州の甲状腺ガン患者は、2年後に3人、3年後に5人、4年後には15人と増え、その後は爆発的に増加し、98年までに400人を超えるほどの多発状態に陥っていた。米国のCDC(疾病管理予防センター)では、2001年9月の世界貿易センター事件(同時多発テロ事件)を受け、ガンの潜伏期間に関するレポート『Minimum Latency Types or Categories of Cancer』(改訂:13年5月1日。以下「CDCレポート」)を公表している。これに掲載されている、ガンごとの潜伏期間を短い順に示すと、「【白血病、悪性リンパ腫】0.4年(146日)、【小児ガン(小児甲状腺ガンを含む)】1年、【大人の甲状腺ガン】2.5年、【肺ガンを含むすべての固形ガン】4年」などとなっている。小児甲状腺ガンの潜伏期間は1年ほどということになり、前掲の山下報告とも矛盾しない。県立医大の唱える「発ガンは原発事故発生から4年目以降」説など、CDCからは全く相手にされていないのである。にもかかわらず県立医大は、一見して多く見えるのは無症状の人まで調べたことによる「スクリーニング効果」によるものであり、将来発症するガンを早めに見つけているに過ぎない、などと頑(かたく)なに主張している。だが、こうした「スクリーニング効果」説は、科学の定説として確立している話でもなく、単なる仮説に過ぎない。実は、チェルノブイリ原発事故でも「小児甲状腺ガンのスクリーニング」が実施されている。行ったのは、前出の山下・長崎大教授らである。小児甲状腺ガンの発症率を、事故発生当時に0歳から3歳だった子どもたちと、事故後に生まれた子どもたちとの間で比較したのだという。その結果は昨年3月、米国放射線防護協会の年次大会の場で山下氏が報告している。それによると、事故発生時にすでに誕生していた子どもたちの間では小児甲状腺ガンが多発していたのに対し、事故の1年後以降に誕生した子どもたち9472人の間では小児甲状腺ガンの発症がゼロだった――というのである。つまり、「スクリーニング効果」仮説は山下氏によって葬り去られていた。それでも「スクリーニング効果」仮説に拘(こだわ)り続けるという皆さんは、福島原発事故の1年後か2年後くらいに生まれた福島県の子どもたちに対し、山下氏がやったのと同様の「小児甲状腺ガンのスクリーニング」を行い、現在の「多発」状態と大差ない発症が見られることを実証しなければなるまい。それに、原発事故後に福島県で増加が確認されているガンは、何も甲状腺ガンだけではない。【表1】は、事故翌年の12年に福島県内で増加した「死因」を、国の人口動態統計をもとに多い順から並べたものだ。このワースト10には、「結腸の悪性新生物」(第2位。以下「結腸ガン」)と、すべてのガンの合計値である「悪性新生物」(第6位。以下「全ガン」)がランクインしている。大分類である全ガンの数字には当然、結腸ガンの数字も含まれているのだが、ともに右肩上がりの増加傾向が続いている。しかも、全ガンは10年との比較で11年が+19人、12年には+62人と、増加の度合いが年々強まっている(結腸ガンでは11年が+33人、12年は+75人)。そこで私たちは、前回の「急性心筋梗塞」検証に引き続き、「原発事故による被曝と発ガンには関係がない」との仮説の下、それを否定することが可能かどうかを見極めることにした。病気発生の頻度を表す物差しである「年齢調整死亡率」(注2)を、福島県内の市町村ごとに計算した上で、文部科学省による福島県内の「セシウム汚染値」(注3)の濃淡と、相関関係が見られるかどうかを調べたのである(注4)。今回の検証作業でも、福島県内のセシウム汚染分布に詳しい沢野伸浩・金沢星稜大学女子短期大学部教授にご協力いただいた。
(注2)本誌2014年10月号10ページ(注2)および小社ホームページ(http://blog.takarajima.tkj.jp/archives/1921954.html)参照。
(注3)同(注3)参照。
(注4)福島第一原発事故後、高汚染のためにすべての住民が避難した原発直近の7町村(双葉町・大熊町・富岡町・楢葉町・浪江町・飯舘村・葛尾村)は、解析対象から除外した。
 年齢調整死亡率は、原発事故前年の2010のものと、事故翌年の12年のものを、それぞれ計算して求めた。こうすることによって、セシウム汚染によって数値が上がったのか否かの区別がつく。つまり、汚染の高いところで12年の年齢調整死亡率も同時に高くなるという「正比例の関係」が見られれば、被曝との因果関係が強く疑われる――ということになる。逆の言い方をすれば、もし「正比例の関係」がなければ、原発事故とは別のところに原因が存在することを意味する。
■警戒が必要なのは「悪性リンパ腫」
 その解析の結果、結論は「セシウム137の土壌汚染密度分布と『全ガン』年齢調整死亡率の分布との間には、原発事故後、弱いながら統計的には有意(r =0.24)と言える正の相関関係が生じている」というものだ。つまり、「原発事故による被曝と発ガンには関係がない」との仮説を否定する結果となったのである。実数で見ると、福島県で全ガンによる死者は増加傾向にあるものの、年齢調整死亡率で見た場合は原発事故前と比べ、横ばいで推移している。しかし、セシウム汚染との相関を見たグラフは、11年を境に何らかの“異変”が起きた可能性を示している。汚染の濃いところで10年の年齢調整死亡率が高ければ、それは放射能汚染に晒(さら)される前から死亡率が高かったことを意味し、10年のグラフの直線(回帰直線)は右肩上がりになる。12年の年齢調整死亡率がさらに上昇していない限り、「汚染との相関はない」と言える。10年の「全ガン」グラフは、完全な右肩下がり(r =-0.23)──すなわち、放射能汚染に晒される以前は死亡率が低かった地域が多いということを示し、汚染との相関が全くなかったことを表わしている。それが、事故後の12年には右肩上がり(r =0.24)に転じていた。12年に年齢調整死亡率の増加が見られた市町村は、58自治体中33の自治体である。右肩上がりに変わったのは、事故発生の年である11年(r =0.26)からだ。部位ごとにも検証してみた結果を示し、全ガンと似た傾向が見られたのは、「気管、気管支および肺ガン」(r =0.23)だ。全ガンと同様に回帰直線が事故前と事故後で反転している。とはいえ、前出の「CDCレポート」のところで示したように、肺ガンの潜伏期間は「4年」である。原発事故による健康被害が現れるにしても、肺ガンの場合、事故翌年の12年では早すぎるのだ。何が原因であるにせよ、ここまでトレンドが反転するには何らかの相当なエネルギーが必要と思われるが、現時点ではその“エネルギー源”が「原発事故」や「放射能汚染」であると推定するには、かなり無理がある。従って、今回は現時点での検証の途中経過を示すだけにとどめ、13年以降の推移を注視していくことにしたい。白血病や胃ガン、乳ガンでは、現時点で全ガンと似た傾向は見られなかった。12年の死因ランキングで第2位に入っていた結腸ガンは、年齢調整死亡率が年々微増している。セシウム汚染との相関は、11年に「弱い相関」(r =0.23)があったものの、12年には「ほとんど相関がない」(r =0.04)レベルになっていた。気になるのは「悪性リンパ腫」(r =0.12)だ。セシウム汚染とは「ほとんど相関がない」レベルだが、そのr値がわずかながらも増加してきているのである。CDCレポート」では悪性リンパ腫の潜伏期間を「0.4年(146日)」としていることからも、悪性リンパ腫には今後、特に警戒が必要と思われる。そんなわけで、福島県でどんな部位のガンが増えたことで全ガンの増加に至ったのかは、手持ちの人口動態統計データだけでは解明することができなかった。この先の分析作業には、厚生労働省にある人口動態統計の生データが必要になる。ただ、このデータは一般向けに公開されておらず、国から厚生労働科学研究費をもらっているような大学などの研究者でなければ見せてもらえないのが実情だ。ぜひ、厚労省自身の手で解明していただきたい。次回は、福島県内の取材へと駒を進める。(以下、続く) (『月刊宝島』2014年11月号より)

<原発に対する国民の意見>
*3-1:http://digital.asahi.com/articles/DA3S11450294.html (朝日新聞 2014年11月12日) 「脱原発」の意見、1万7665件で94% エネルギー計画のパブリックコメント
 安倍内閣が4月に閣議決定したエネルギー基本計画をつくる際、国民に意見を募った「パブリックコメント」で、脱原発を求める意見が9割を超えていたことがわかった。朝日新聞が経済産業省に情報公開を求めて開示されたすべてを原発への賛否で分類した。経産省は基本計画で原発を「重要なベースロード電源」と位置づけたが、そうした民意をくみ取らなかった。経産省が昨年12月6日に示した基本計画の原案に対し、対象の1カ月間にメールやファクスなどで約1万9千件の意見が集まった。同省は今年2月、主な意見を発表したが原発への賛否は分類していなかった。開示されたのは全部で2万929ページ。複数ページに及ぶものを1件と数えると1万8711件だった。うち2109件はすでに今年5月に開示され、今回残りが開示された。廃炉や再稼働反対を求める「脱原発」は1万7665件で94・4%。再稼働を求めるなどした「原発維持・推進」は213件で1・1%、賛否の判断が難しいなどの「その他」が833件で4・5%だった。脱原発の理由では「原案は民意を反映していない」「使用済み核燃料を処分する場所がない」などが多かった。「原発維持・推進」の理由では、電力の安定供給や温暖化対策に原発が必要との意見があった。開示文書は、個人情報保護のため名前が消されており正確な把握はできないが、「脱原発」の意見には同じ文面のファクスが数十件あるなど、何度も意見を送った人もいたようだ。経産省は、今回の基本計画をめぐるパブリックコメントのとりまとめでは「団体の意見も個人の意見も1件。それで数ではなく内容に着目して整理作業をした」として、原発への賛否は集計しなかった。民主党政権は2012年、30年の原発比率について国民的議論を呼びかけた。パブリックコメントでは約8万9千件が集まり、約9割が「原発ゼロ」を支持した。

*3-2:http://www3.nhk.or.jp/news/html/20141108/k10013042661000.html
(NHK 2014年11月8日) 原発の再稼働 若い世代に賛成多い傾向
 NHKが行った世論調査で、鹿児島県にある川内原子力発電所の再稼働について尋ねたところ、地元・薩摩川内市では20代から30代で「賛成」「どちらかといえば賛成」が75%に上りました。若い世代で再稼働に賛成の割合が多くなる傾向はほかの地域でも見られました。NHKは先月31日から4日間、「薩摩川内市」とその「周辺地域」、さらに「福岡市」と「全国」の4地域で20歳以上の男女を対象に、コンピューターで無作為に発生させた番号に電話をかける「RDD」という方法で世論調査を行い、調査の対象になった人のうち、およそ67%の人から回答を得ました。川内原発の再稼働について尋ねたところ、薩摩川内市では、「賛成」「どちらかといえば賛成」が49%、「反対」「どちらかといえば反対」が44%でした。
 年代別に見ますと、
▽20代から30代は「賛成」「どちらかといえば賛成」が75%、「反対」「どちらかといえば反対」が23%。
▽40代は「賛成」「どちらかといえば賛成」が60%、「反対」「どちらかといえば反対」が36%。
▽50代は「賛成」「どちらかといえば賛成」が59%、「反対」「どちらかといえば反対」が38%。
▽60代は「賛成」「どちらかといえば賛成」が44%、「反対」「どちらかといえば反対」が51%。
▽70代以上は「賛成」「どちらかといえば賛成」が42%、「反対」「どちらかといえば反対」47%でした。
 若い世代で再稼働に賛成の割合が多くなる傾向はほかの地域でも見られ、20代から30代の「賛成」「どちらかといえば賛成」と答えた割合は、▽いちき串木野市や出水市などの周辺地域では54%、▽福岡市では44%、▽全国では40%と、いずれもほかの世代と比べて割合が高くなりました。今回の世論調査の結果について、科学技術と社会の関係に詳しい大阪大学コミュニケーションデザイン・センターの小林傳司教授は「今、いちばん経済を支えて働いている世代からすれば、現実に再稼働は大きな要素で、きれい事は言えないということだろう。場合によっては事故は起こるかもしれないけれども、今の経済とのバランスを考えたときに、危険を覚悟のうえで選んだという感じがする。ただ、危ないかもしれないからやめておこうという議論と、危ないかもしれないけれども受け入れようという議論は、どちらが合理的か簡単には決められない問題だ」と話しています。


PS(2014.12.2追加):*4は、2014年5月12日現在の諸外国・地域の日本産食品輸入規制措置で、日本では「食べて協力」「風評被害をまき散らすな」と言われている東北・関東圏の食品が、食品からの内部被曝を予防するために、多くの国で「輸入停止」や「証明書要求」となっている。そして、こちらの方が世界常識であるため、TPPが締結されれば日本産農産物の輸出が増えるというのは甘い展望だ。

*4:諸外国・地域の日本産食品輸入規制措置一覧表(2014年5月12日現在)
   


PS(2014.12.12追加):*5のように、フクシマ原発事故の汚染水問題により福島県など8つの県の水産物の輸入を禁じている韓国政府が、専門家を日本に派遣して現地調査を行い、輸入規制の是非を検討するそうだ。韓国の禁輸措置については、水産庁の幹部が韓国を訪れ、「科学的根拠に乏しい過剰なもの」として直ちに撤回するよう申し入れたり、WTO(世界貿易機関)で日本政府の代表が韓国の不当性を訴えたりしたそうだが、「科学的根拠に乏しい過剰なもの」と言う以上は、その科学的根拠を出して立証する責任は原発事故を起こした日本政府の側にある。しかし、統計数値による疫学的立証はまだできない時期であるため、そのような中で「用心する権利」は誰にでもあり、命を懸けてまで「食べて協力」することを押し付ける人は良識に欠ける。

*5:http://www3.nhk.or.jp/news/html/20141212/k10013913901000.html
(NHK 2014年12月12日) 原発事故で水産物禁輸の韓国 福島など調査へ
農林水産省は、東京電力福島第一原子力発電所の汚染水問題を受けて、福島県など8つの県の水産物の輸入を禁じている韓国政府が輸入規制の是非を検討するため、来週、専門家らを日本に派遣し、福島第一原発などで現地調査を行うことを明らかにしました。農林水産省の発表によりますと、現地調査を行うのは、韓国政府がことし9月に設置した日本の水産物などの輸入規制の是非を検討する委員会の7人の専門家です。調査は今月15日から19日までの5日間の日程で行われ、このうち17日と18日には福島第一原発の汚染水対策の現状や、福島県沖で行われている試験操業の状況などを視察する予定です。韓国政府は、福島第一原発の汚染水問題を受けて、去年9月から福島県など8つの県のすべての水産物の輸入を禁止する措置を取っていますが、日本政府は、科学的根拠に乏しいとして撤回を求めています。専門家らは来年1月に再び日本を訪れて現地調査を行い、それを踏まえて、輸入規制の是非について報告書をまとめることにしています。農林水産省は「今回の現地調査を輸入規制の撤回への足がかりにしたい」と話していて、水産物の安全性について改めて理解を求める方針です。これまでの経緯韓国政府は去年9月、福島、宮城、岩手、青森、群馬、栃木、茨城、千葉の8つの県のすべての水産物の輸入を禁止したほか、8県以外の水産物などについても放射性物質が僅かでも検出されれば、追加で検査証明書の提出を求める措置を決めました。これに対して、水産庁の幹部が韓国を訪れ、「科学的な根拠に乏しい過剰なものだ」として、直ちに撤回するよう申し入れました。また、WTO=世界貿易機関の食料品の検疫措置などを話し合う委員会でも、日本政府の代表団がこれまでに4回にわたり、韓国の不当性を訴えるなど、さまざまな外交ルートを通じて働きかけを続けてきました。こうしたなか、韓国政府はことし9月、輸入規制の是非について検討するため、専門家による委員会を新たに設置しました。今後、日本政府が提出した資料の分析や来週と来年1月の2回にわたって行われる予定の現地調査などの結果を踏まえ、韓国政府が輸入規制を見直すかどうか判断することになります。

  
         *6より                       *7より

PS(2014.12.13追加):TVメディアは、お天気、スポーツ、(推測の多い)刑事事件の報道が先で、それらの報道時間も長く、ニュースのランク付けがおかしいが、このように政策の論点を開示しない報道をしながら、一般の人に「問題意識を持って選挙に行け」と言っても無理な話である。実際には、*6のような深刻な事態が進行しており、外国の報道機関はまともな報道をしているため、日本人よりも外国人の方がフクシマの真実を知っている状態なのだが、癌や心疾患による死亡率が上がってから「そうなるとは知らなかった」では済まされない。そして、日本にも警告を発している人は多いのだ。

*6:http://eigokiji.cocolog-nifty.com/blog/2014/04/post-feee.html (原文:rt.com/news/tokyo-radiation-fukushima-children-836/) (ロイター 2014年4月21日) 真実を隠す日本政府:福島の放射能で子供や東電社員達が亡くなっている
 破壊された福島原子力発電所に近い双葉町の元町長井戸川克隆は、放射能汚染が、日本の最大の宝である子供達に、悪影響を及ぼしていると、国に警告している。双葉町住民を福島県内の磐城市に移住させる政府計画について尋ねると、井戸川はそうした動きは“人権侵害”だと批判した。チェルノブイリと比較すると福島周辺の放射能レベルは“4倍高いのです”と彼はRTのソフィー・シュワルナゼに語り(英語ビデオ、英語の全文書き起こしあり)“住民が福島県に戻るのはまだ早すぎます”と語った。“政府が何を言おうと、決して安全ではありません。”政府は放射能の危険にもかかわらず、住民を故郷に戻す計画を開始したと井戸川は主張している。“福島県は帰郷キャンペーンを始めました。多くの場合、避難民は帰郷を強いられています。[元町長は、大気の汚染はわずかながら減少しているが、土壌汚染は変わっていないことを示す福島県地図を示した]。井戸川によれば、県内には約200万人が住んでおり、“あらゆる種類の医療問題”を抱えているというが、政府は、こうした状態は福島原発事故とは無関係だと言い張っている。井戸川は、当局の否認を、書面で欲しいと思っている。“当局にその主張を書面で実証するよう要求しましたが、私の要求を無視しました。”井戸川は、1986年4月26日にウクライナを襲った原発の悲劇に再度言及し、日本人は“チェルノブイリを決して忘れてはなりません”と懇願している。しかし、元行政幹部の警告に耳を傾ける人はごくわずかに見える。“現実には、放射能がまだ存在しているのに、人々は政府の言い分を信じているのです。これで子供達が亡くなっています。子供達は心臓病、喘息、白血病、甲状腺炎…で亡くなっています。多くの子供達は、授業の後、ひどくつかれています。体育の授業に出られない生徒たちもいます。ところが、当局は依然、真実を我々から隠しているのです。一体なぜかはわかりません。彼等におこさんはいないのでしょうか? 彼等が、我々の子供達を守ることができないことがわかるというのは、つらいことです。”“彼等は福島県は安全だと言い、それで誰も子供を、どこかへ避難させようとしていないのです。我々はこのことを議論することさえ許されていません。”2020年に予定されている東京オリンピックについて話す際、安倍首相が、本来“人を腹蔵無く遇する”べきことを意味する日本の言葉“おもてなし”を頻繁に使うのは皮肉だと、元町長は考えている。井戸川の考えでは、同じ処遇は、福島に最も密接に結びついている人々には平等に適用されてはいない。除染作業に携わる労働者達だ。“彼らの器具は劣化しつつあります。準備は悪化しつつあります。そこで、彼等は自分達の安全を第一に考え始めざるを得なくなったのです。それが、放射能の本当の危険を理解している人々が退職し始めた理由です。今では、素人達が現場で働いています。彼等は自分たちがしていることが何か実際に理解していません。こうした人々が間違ったポンプを使ったり、そうした類の間違いをしたりするのです。“自分の国を本当に恥ずかしく思いますが、地球を将来清浄に保つには真実を語らなければなりません。井戸川は更に、日本の歴史上、最も悲劇的な出来事の一つとの幾つかの類似点をあげた。第二次世界大戦末、アメリカ合州国による広島と長崎という産業都市への原爆使用だ。“当局は(原子爆弾攻撃の効果について)全員にウソをつきました…当局は真実を隠したのです。そういう状況に我々は暮しているのです。福島だけではありません。日本には暗い歴史があります。これはある種、過去の犠牲です”労働者や一般住民の中には放射能に関連する死者や急性疾患はいないという国連報告の詳細について問うと、井戸川は、危機の頂点で味わった自分自身の体験の一部を語る前に、“全くの嘘です”と切り捨てた。“町長時代、心臓麻痺で亡くなった多くの方を存じていますし、以後も福島で、若い方々にさえ、突然亡くなった方々が多数おられます。当局が、全世界や国連に対し、真実を隠しているのは実に恥ずかしいことです。実際に多くの方々が亡くなっている事実を認めることが必要です。こういうことをいうのは禁じられていますが、東京電力社員も亡くなっています。けれども彼等はそれについては黙して語りません。”そのような状況で実際亡くなった人々の具体的人数を教えて欲しいと言うと、井戸川は“一人や二人ではありません。そのような形で十人、二十人の方々が亡くなっているという話です。”と言って拒否した。1億2600万人の国民向けのエネルギー源として、日本には他にどのような選択肢があるか尋ねると、多数の川があるのに、政府は水力発電を無視していると彼は答えた。理由は何か? “大企業が儲からない!”為だ。井戸川は、驚くほど単純に聞こえる日本のエネルギー需要を満たす為の青写真を示そうとして話を続けた。“投資資金が限られていても、増税せずに多数の人々に電力を送れます。重力を利用するだけで非常に多くのエネルギーが得られますから、もはや原子力発電所は不要です。”
●大災害の予感
 東北日本が地震による津波で襲われた日、2011年3月11日に発電所の原子炉6基中、3基のメルトダウンを引き起こした福島原子力発電所での大事故以前に、井戸川は施設が危険なことを知っていた。“私が何も知らないふりをして、原子力発電所で起きる可能性がある事故について質問すると、私の様々な疑問に彼等が答えられないことがわかりました”と彼は語った。“率直に申しあげて、その時、東電幹部に、緊急時対策がないことに始めて気がついたのです。その時に、原発が危険なことになりうると私は悟ったのです。”津波が襲った日、近くの町にいた元町長は、地震のニュースを聞き、車を運転して双葉に戻ったことを覚えている。ようやく後になって、近づく津波で、すんでのところで命を落とす状態だったことに気がついた。“より大きな津波が来る前に何とか戻ることが出来ました。後になって始めて、津波から生きのびられたことを知りました… 幸運でした。私がその道を運転して過ぎた後、津波が来て、山にまで至ったのです。”30分の帰路、運転しながら、原子力発電所についての疑問ばかり考えていた。“‘地震がこれほど激しいなら、原発で一体何が起きるだろう? もし原子炉が損傷したらどうなるだろう? 水が漏れたらどうなるだろう? 町は何をするだろう? 町長として、何をすべきだろう?とずっと考え続けていました’”町長室に到着した井戸川は窓外を眺め、彼が“恐ろしい光景”と表現するものに直面した。“普通ここからは海は見えませんが、あの時は300-500m先まで見えました”と彼は言う。町長が原子力発電所は恐らく何らかの損傷を受けただろうと気がついたのはその時だった。夜は、携帯電話さえ機能していなかったので、唯一の情報源、テレビのニュース報道を見て過ごした後、井戸川は翌朝早く緊急避難を発令した。ところが、町民全員が緊急放送を聞けたわけではなかった。“後になって、双葉住民全員が私の声明を聞けたわけではなかったことを知りました。申し訳なく思っています…福島県が、時宜にかなう形で、私に全ての情報を教えていなかったことに気がつきました。現在、政府は放射能から住民の安全を確保するいかなる措置も講じていませんし、避難手順の実施も監視していません。”
●原子力を越えて
 井戸川克隆は、よりきれいで安全な形のエネルギー源が得られるよう日本を変えるには、日本の法律を進んで変える意思が必要だと考えている。“日本には様々な法律があります。おそらく多すぎるのです。河川やその利用方法に関する法律があります。農業用水利用に関する法律を変えれば、川を発電用に使用することが始められます。この法律を変えるだけでも、膨大なエネルギーが得られるでしょう。”こうしたこと全て、“地球を汚染せずに”実現可能だ。ところが、そのような大胆な提案は“大企業には受けません。大規模投資が不要で、巨大な発電所を建設する必要がなくなりますから。投資家や、資本家にとっては、さほど儲からないのです。”放射線のおかげで荒廃させられた日本の町の元町長として、井戸川は、世論に大きな変化が起きているのを感じている。日本人は“原子力災害を避ける必要があることを理解し始めましたから、国民の60-70パーセントは自然エネルギー利用に賛成です。”“長い時間がかかりましたが、いつの日か我々も、ヨーロッパの、ドイツの先例に見倣うでしょう。”


PS(2015.1.3追加)*7のように、「福島産米は全袋検査した結果、基準値超えはゼロ」と、いかにも厳密な検査をクリアしたかのように書かれているが、基準値は「1キロあたり100ベクレル以下」なのである。私は、これを1日、2日ではなく、1ケ月、1年、3年、5年と食べ続けてもよいという実験は見たことがなく、蓄積すると悪影響が出るのが普通であるため、この基準さえ守っていれば安全だという科学的証拠があれば示してもらいたい。何故なら、基準や法律で決めたからと言って、科学的に人体に安全になるわけでも、安全であることが証明されたわけでもないからだ。

*7:http://digital.asahi.com/articles/DA3S11532501.html?_requesturl=articles%2FDA3S11532501.html&iref=comkiji_txt_end_s_kjid_DA3S11532501
(朝日新聞 2015年1月3日) 福島産米、基準値超えゼロ 昨年分、1075万袋検査
 東京電力福島第一原発事故をきっかけに始まった福島県産米の放射性物質検査で、昨年末までに計測した2014年産米約1075万袋全てが国の基準値(1キロあたり100ベクレル)を下回った。収穫した年内の検査で基準値超えゼロを達成したのは初めて。全量全袋検査と呼ばれるこの取り組みは福島県が約190台の検査器を配備して12年に始まった。全ての県産米が対象で1袋ごとに放射性セシウム濃度を調べ、食品衛生法上の基準値以下だと「検査済」のラベルが貼られる。基準値を超えると廃棄される。検査に期限はなく今後も続けられる。基準値超えは、同じく1千万袋以上を調べた12年産米では71袋、13年産米では28袋だった。福島県内の農家は、稲が放射性セシウムを吸収しないよう肥料を工夫するなど試行錯誤を続けてきた。

| 内部被曝・低線量被曝::2014.4~ | 05:38 PM | comments (x) | trackback (x) |

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