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2015.4.27 川内原発仮処分の却下と各メディアの論調について(2015年4月27、28日追加あり)
    
2015.4.23佐賀新聞 *1-1           GreenPeaceより

(1)鹿児島地裁の決定について
 *1-1のように、鹿児島地裁は九電川内原発1、2号機の再稼働差し止めを認めず、理由として「①新基準の合理性は専門的な知見を持った原子力規制委員会が審議を重ねて定め、フクシマ原発事故の経験も考慮した最新の科学的知見に照らして不合理ではない」「②新基準では、基準地震動を過去の地震の平均像を用いて策定しているが、過去10年で想定を超える地震が発生したケースは5回あるが、新基準はそうした地震が起きた地域の特性を考慮できるようになっており、不合理だとはいえない」とした。

 しかし、①については、*1-6のように、“専門的な知見を持つ”とされる原子力規制委員会は、原発事故の際に放射性物質の拡散を予測するSPEEDIの活用を中止し、半径30km圏内しか放射性物質が飛散しないかのような前提で避難範囲を定めているのであり、これは、御世辞にも、フクシマ原発事故の経験を考慮した最新の科学的知見や専門的知見に基づいた判断とは言えない。

 さらに、②についても、自然現象の予測には「不確かさ」があるからこそ、最悪の事態にもゆとりを持って安全と言えなければ万全な危機管理とは言えず、「想定外」ばかりだったフクシマ原発事故から学んでいない。また、*1-1では、「地震が原因となる事故による放射性物質放出をかなり防げる」としているが、冷やし続けるための配管も壊れないとはとても思えない上、「かなり防げる」程度では困るのだ。

 また、鹿児島地裁は、「九電は新基準に従って調査した上で川内原発が受ける火山活動の影響を評価しており、火山学の知見からも一定程度裏付けられている」としているが、多くの火山学者が、噴火予知は不可能であり、直前に予知できたところで対処の仕様がないだろうと言っている。

 このような中、*1-3のように、阿蘇山は噴煙1500メートルに達する噴火を起こして火口から1キロ以遠でも噴石の降る恐れがあり、*1-4のように、桜島も、今年の爆発的噴火回数が400回を超え、これは記録の残る1955年以降で3番目に早いペースで、噴煙は高さ5千メートルに達して鹿児島市街地に大量降灰をもたらした2013年8月の爆発的噴火と同規模かそれ以上の噴火が起きる可能性があり、404回目の爆発的噴火では噴煙が高さ3100メートルに達して鹿児島市街地で断続的に降灰を観測しているとのことである。

 *1-1では、「避難計画は、原発からの距離で区分された地域によって避難行動が具体的に定められ、放射性物質の拡散状況に応じて避難先を調整するほか、放射線防護資機材の備蓄や緊急時の放射線量の測定、安定ヨウ素剤の投与についても具体的に定めており、現時点での一応の合理性や実効性を備えている」としているが、再稼働ありきでこじつけられた“一応の合理性”程度で、原発を再稼働されては困るのである。

(2)福井地裁と鹿児島地裁の判断の違い
 上の図のように、高浜原発(福井県)の再稼働を否定した福井地裁と川内原発(鹿児島県)の再稼働を認めた鹿児島地裁の決定の相違点は、①新基準の合理性に関する判断 ②原発に絶対的な安全性を求めるべきかどうかについて福井地裁が「万が一にも事故が起こらない」ことを求めたのに対し、鹿児島地裁は「重大な事故が発生する確率が低ければよい」としたこと ③基準地震動について ④火山の噴火について である。

 そして、①については(1)で述べたとおり、新基準は再稼働ありきで緩やか過ぎる上、②については、*2-1、*2-2、*2-3、*2-4に書かれているように、原発事故が一度起きれば回復不能で甚大な被害をもたらすことを考えれば、「万が一にも事故が起こってはならない」という判断が正しい。

 何故なら、*3-1のような記事もあるが、自動車事故なら死亡事故が起きても3000万円程度の補償額で原因者負担であり、事故の片づけが終わればその道路は通行可能になり、近隣住民が事故後そこに居住できなくなるということもないのに対し、フクシマ原発事故の例では、現在判明している補償額だけでも10兆円に達し、人間が住めなくなった場所も多く、このような事故が1基あたり80年に1度起こるとすれば、10機稼働していれば8年に1度は起こって、1年当たり1.25兆円の補償を国が行わなければならず、そのたびに国土を狭めるからである。つまり、原発事故は、他の事故とは異なるのである。

 また、③の基準地震動については、(1)に記載したとおり、地震の最大予測値にゆとりを持たせておくべきであり、配線、配管、建物の構造を含むすべてが地震の最大予測値を超える強度でなければ安全とは言えない。

 なお、*1-2に書かれているとおり、福井地裁は火山噴火の危険性については言及していないが、川内原発の新規制基準への適合性をめぐる決定では、「原子力規制委員会が火山学の専門家の関与・協力を得ながら厳格かつ詳細に審査した」としている。しかし、その判断には火山学者から強い批判が出ており、東京大学火山噴火予知研究センターの中田節也教授は「火山学会の意見を聞いて再稼働が判断されたわけではなく、全くの事実誤認」「規制委にも破局的噴火が起こればみんな死ぬ、という乱暴な意見があるが、それは違う。原発の使用済み核燃料を放置していれば深刻な核汚染を招く」としている。

 また、静岡大の小山真人教授は「規制委の基準には、巨大噴火の発生する周期が原発立地をどう制限するかが定められていないなど、問題点が多く見直すべきだ。地裁は、決定の説得性を増すために火山学者の指摘を都合よく使っている」と語っている。

 自治体が策定する避難計画については規制委も審査対象にしておらず、公的機関の判断は今回が初となったが、決定は「一応の合理性、実効性を備えている」と結論づけた。人命がかかった避難計画に、“一応”がつくのは論外で、東京女子大の広瀬弘忠名誉教授(災害・リスク学)も「(地震と原発事故といった)複合災害への対応が不十分だ。福島事故の教訓を判断基準にすれば、全く違う結論になる」と指摘している。

(3)危機管理の常識は、最悪の事態に備えることである
 *1-5は、「川内の仮処分は専門的な知識を持つ人たちが十分に審議した過程を重視し、見過ごせない落ち度がない限り司法はあえて踏み込まないという考え方をとっているが、フクシマ原発事故は(狭い分野の)専門家に安全を委ねる中で起き、深刻な放射能漏れが起きて周辺住民の生活を直撃し収束のめどが立たない事態が続いているのであり、福井地裁判断に説得力がある」としており、これは本当だ。

 しかし、鹿児島地裁は「地震や火山活動等の自然現象も十分に解明されているものではない」としているが、これは、十分に解明されておらず予測不能であれば、最悪の事態に備えるという危機管理の常識に反している。

(4)原発は、事故時にメーカー責任がない
 *3-1では、「原発事故のリスクを考えるときに、リスクにさらされるのは原発が立地する地域社会で、この地域社会を、そこに住む『個人』という要素の単純合計と考えるのが要素還元論であり、科学界の主流がとる立場だ」としている。

 しかし、科学的にも、会計学的にも、原発事故で失われた土地で、原発事故がなければ将来に渡って生産できた筈の農林水産物や他の産業から生み出される価値は、機会費用として原発事故の損害に加算しなければならず、損害は個人の損失の単純合計ではない。そして、その総合損失と原発の価値を比較しなければならないのであり、*3-1で科学的とされている損害要素は、損害のうちのごく一部にすぎないため、この記事は誤りである。

 また、これらの損失について、交通事故であれば、事故の原因となった人が自動車保険を使って損害賠償するのであり、国が損害賠償することはない。また、自動車の方に欠陥があったのであれば、自動車会社が補償し、同機種の車をリコールして改善しなければならず、これを製造物責任と呼ぶ。

 しかし、*3-2に書かれているとおり、原子炉は製造物責任法の対象から除外されており、日立、東芝、三菱重工などの原子炉メーカーは原発事故の責任を問われない。もし、原子炉メーカーが今回の原発事故で製造物責任を負うことになっていれば、放射性物質の回収、除染、汚染水の処理等は、国ではなく原子炉メーカーの責任でやることになり、投資家に「さらなる原発ビジネスの拡大」などを説得することはできず、海外への原発輸出どころではなかった筈だ。そのため、まず普通の工業製品と同様、原賠法で原子炉メーカーに製造物責任を負わせるようにすべきである。

*1-1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20150423&ng=DGKKZO86032570T20C15A4CC1000 (日経新聞 2015.4.23) 川内原発を巡る決定要旨
 九州電力川内原発1、2号機の再稼働差し止めを認めなかった22日の鹿児島地裁の決定要旨は次の通り。
【新基準の合理性】
 原発の新規制基準は専門的な知見を持った原子力規制委員会が審議を重ねて定めた。東京電力福島第1原発事故の経験も考慮した最新の科学的知見に照らして不合理ではない。新基準では、基準地震動(耐震設計の目安となる揺れ)を過去の地震の平均像を用いて策定している。住民らはその点を問題視しているが、地域の地震の様式や規模、頻度といった特性を踏まえた上で、平均像を用いて基準地震動を検討することは相当だ。過去10年で日本の原発に想定を超える地震が発生したケースは5回あるが、新基準はそうした地震が起きた地域の特性を考慮できるようになっており、不合理だとはいえない。
【地震対策が十分か】
 九電は敷地周辺の地震や地質を詳細に調べた上で、自然現象の予測には避けられない「不確かさ」をかなり考慮に入れて基準地震動を決めている。川内原発が新基準に適合しているとの規制委の判断は妥当だ。九電は耐震設計などで安全上の余裕を確保するとともに、重大事故対策として、保安設備の追加配備などをしている。これらの取り組みで、地震が原因となる事故により放射性物質が放出されることをかなり防げる。住民らは、川内原発には「冷やす」と「閉じ込める」機能に重大な欠陥があると主張するが、事故の発生が避けられないとする証明はない。
【火山活動の影響】
 九電は新基準に従って調査した上で川内原発が受ける火山活動の影響を評価しており、火山学の知見からも一定程度裏付けられている。カルデラ火山の破局的な噴火の可能性が十分に小さいとはいえないと考える火山学者も一定数は存在するが、火山学会の多数を占めるとまではいえない。
【避難計画の実効性】
 避難計画は、原発からの距離で区分された地域によって避難行動が具体的に定められている。放射性物質の拡散状況に応じて避難先を調整する方策のほか、放射線防護資機材の備蓄や緊急時の放射線量の測定、安定ヨウ素剤の投与についても具体的に定めており、現時点での一応の合理性や実効性を備えている。

*1-2:http://qbiz.jp/article/60861/1/ (西日本新聞 2015年4月23日) 【川内原発仮処分】「絶対的安全」司法割れる 「重大事故の確率低い」
 川内原発(鹿児島県薩摩川内市)の再稼働を認めた22日の鹿児島地裁決定は、高浜原発(福井県)の再稼働を否定した14日の福井地裁決定とは、全く異質の司法判断となった。分岐点は「原発に絶対的な安全性を求めるべきかどうか」だった。福井地裁は「万が一にも事故が起こらない」ことを求めたのに対し、鹿児島地裁は「重大な事故が発生する確率はきわめて低い」として再稼働を容認した。一方で、初の司法判断となった火山の影響や避難計画の評価をめぐっては、早くも専門家から「事実誤認だ」と強い批判が出ている。「ぜひ最終ページを読んでほしい」。申立人弁護団の河合弘之弁護士は決定が出された後、鹿児島市での記者会見で強調した。決定文の結論にはこうあった。「さらに厳しい基準で原発の安全性を審査すべきだという考えも成り立ち得ないものではない」。福井地裁は新規制基準を「緩やかにすぎる」と真っ向から否定したが、鹿児島地裁の決定は、原発が安全かどうかについて「原発の重大事故の際は、放射性物質の放出が社会通念上無視できるほど小さいかどうか」で判断すべきだとし、新基準に適合した川内原発はそれを満たすと認定した。ただ、鹿児島地裁は結論で「絶対的安全性」を求めるのであれば、「社会的合意が形成された場合」とあえて明記もした。「再稼働を認めておきながらこんな言い訳を入れるのは、決定に自信がなかったのではないか」。全国の原発裁判に関わる海渡雄一弁護士はこう推察した。
   ◇    ◇
 周辺火山の噴火の影響をめぐる判断には、火山学者から強い批判が出ている。川内原発の新規制基準への適合性をめぐり決定は「原子力規制委員会が火山学の専門家の関与・協力を得ながら厳格かつ詳細に審査した」とした。これに対し、東京大火山噴火予知研究センターの中田節也教授は「学会の意見を聞いて再稼働が判断されたわけではなく、全くの事実誤認」と憤る。静岡大の小山真人教授は「規制委の基準には、巨大噴火の発生する周期が原発立地をどう制限するかが定められていないなど、問題点が多く見直すべきだ。地裁は、決定の説得性を増すために火山学者の指摘を都合よく使っている」と語る。さらに決定は「カルデラ火山の破局的噴火による住民への影響は甚大だが、それが原発によるものかどうかは不明」として申立人にさらなる説明を求めた。中田教授は「規制委にも破局的噴火が起こればみんな死ぬ、という乱暴な意見があるが、それは違う。原発の使用済み核燃料を放置していれば深刻な核汚染を招く」と批判した。
   ◇    ◇
 自治体が策定する避難計画については規制委も審査対象にしておらず、公的機関の判断は今回が初となった。決定は「一応の合理性、実効性を備えている」と結論づけた。東京女子大の広瀬弘忠名誉教授(災害・リスク学)は「(地震と原発事故といった)複合災害への対応などが不十分だ。福島事故の教訓を判断基準にすれば、全く違う結論になる」と指摘する。決定は「あらゆるトラブルの対処方法を詳細に策定すると、計画がきわめて膨大になる」と行政側に寛容な姿勢ものぞかせた。広瀬氏は「人命がかかった避難計画なのに軽視が甚だしい」と憤慨した。

*1-3:http://qbiz.jp/article/60998/1/
(西日本新聞 2015年4月24日) 阿蘇山で噴煙1300メートル
 24日午前9時55分、熊本県の阿蘇山の中岳第1火口で噴火があり、噴煙が1300メートルまで上がった。気象庁は火口から1キロ以遠でも小さな噴石が降るおそれがあるとして、注意を呼び掛けている。23日には上空1500メートルまでの噴煙を観測。阿蘇市や南阿蘇村では、やや多量の降灰が予測され、高森町などでも火山灰が積もる可能性がある。

*1-4:http://qbiz.jp/article/60937/1/
(西日本新聞 2015年4月24日) 桜島、今年の噴火400回 史上3番目のペース
 鹿児島地方気象台は23日、桜島の今年の爆発的噴火回数が400回を超えたと明らかにした。記録の残る1955年以降で3番目に早いペース。活発な状態が続いており、噴煙が高さ5千メートルに達し鹿児島市街地に大量降灰をもたらした2013年8月の爆発的噴火と同規模かそれ以上の噴火が起きる可能性があるとみて、大量降灰や噴石の飛散に警戒を呼び掛けている。気象台によると、桜島の昭和火口(標高800メートル)で23日午前0時42分、400回目の爆発的噴火を観測。その後も繰り返し発生し、同11時21分の404回目の爆発的噴火は噴煙が高さ3100メートルに達した。鹿児島市街地では断続的に降灰を観測した。桜島は1月から山体膨張が続き、3月27日には爆発的噴火の回数が、昭和火口が活動再開した2006年以降で1日当たり最多の31回に上った。

*1-5:http://digital.asahi.com/articles/DA3S11719295.html
(朝日新聞社説 2015年4月23日) 川内の仮処分 専門知に委ねていいか
 きのう、九州電力川内原発1、2号機の再稼働をめぐって、運転差し止めの仮処分を求めた住民の申し立てを鹿児島地裁は退けた。14日には、福井地裁は関西電力高浜原発3、4号機の運転を差し止める仮処分を決めた。判断を分けたのは、規制基準を含む規制委の審査に対する見方である。福井地裁は、安全対策の柱となる「基準地震動」を超える地震が05年以降、四つの原発で5回起きた事実を重く見たうえで、規制基準について「これに適合しても原発の安全性は確保されない」と判断した。一方、鹿児島地裁は、地域的な特性を考慮して基準地震動を策定していることから「基準地震動超過地震の存在が規制基準の不合理性を直ちに基礎付けるものではない」とし、規制基準は「最新の科学的知見に照らしても、不合理な点は認められない」と結論づけた。鹿児島地裁の判断は、従来の最高裁判決を踏襲している。行政について、専門的な知識をもつ人たちが十分に審議した過程を重視し、見過ごせない落ち度がない限り、司法はあえて踏み込まない、という考え方だ。だが、福島での事故は、専門家に安全を委ねる中で起きた。ひとたび過酷事故が起きれば深刻な放射線漏れが起きて、周辺住民の生活を直撃し、収束のめどが立たない事態が続く。原発の運転は、二度と過酷事故を起こさないことが原点である。過去、基準地震動を超える地震が5回起きた事実は重い。「想定外」に備えるためにも、厳しい規制基準を構えるべきである。特に、原発の運転には、国民の理解が不可欠であることを考えれば、規制基準についても、国民の納得がいる。これらの点を踏まえれば、福井地裁判断に説得力がある。鹿児島地裁は「地震や火山活動等の自然現象も十分に解明されているものではない」「今後、原子炉施設について更に厳しい安全性を求めるという社会的合意が形成されたと認められる場合、そうした安全性のレベルを基に判断すべきことになる」とも述べている。世論調査では依然として原発再稼働に厳しい視線が注がれている。政府も電力会社も鹿児島地裁の決定を受けて「これでお墨付きを得た」と受けとめるべきではない。

*1-6:http://www.sankei.com/affairs/news/150419/afr1504190001-n1.html (産経新聞2015.4.19)「SPEEDI」削除決定へ 自治体反対押し切る 規制委、原子力災害対策指針改正
 原子力規制委員会が、原発事故の際に放射性物質の拡散を予測する「緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム」(SPEEDI=スピーディ)の活用を明記していた原子力災害対策指針を今月中に改正し、SPEEDIの記述の削除を決めたことが18日、分かった。規制委には原発の立地自治体からSPEEDIを活用するよう意見書が寄せられていたが、それを押し切る形となり、自治体の反発が予想される。規制委によると、現行の指針は「SPEEDIのようなシミュレーションを活用した手法で、放射性物質の放出状況の推定を行う」と記載していたが、これらの文章を削除するという。代わりに、実際に測定された実測値を基準に避難を判断。重大事故が起きた場合、原発から半径5キロ圏は即時避難、5~30キロ圏は屋内退避後に、実測値に基づいて避難するとしている。東京電力福島第1原発事故では、政府中枢にSPEEDIの存在が知らされず、SPEEDI自体もデータがうまく収集できなかったため、初期避難に混乱を招いた。結果的に、原発周辺の住民の中には放射性物質が飛散した方向へ避難した人も多く、政府は強い批判を浴びた。このため、規制委は風向きなど天候次第で放射性物質が拡散する方向が変わり、予測が困難であることを重要視。昨年10月には、「SPEEDIで放射性物質の放出のタイミングやその影響の範囲が正確に予測されるとの前提に立って住民の避難を実施するとの考え方は危険」と判断した方針をまとめていた。しかし、新潟県は3月末、「実測値のみによる防護措置の判断では被(ひ)曝(ばく)が前提となるため、判断材料の一つとして予測的手法も活用し、早めに防護措置が実施できる仕組みとするように」と要望する意見書を規制委に提出。福島県も「安全で確実な避難をするためにはSPEEDIの予測精度を高めることも必要。使えるものは使っていくべきだ」と反発していた。規制委関係者は「自治体の反対意見は承知しているが、丁寧に理解を求めていきたい」と話している。

<フクシマの真実>
*2-1:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/180817
(佐賀新聞 2015年4月26日) 原発事故、起きれば佐賀でも悲劇  飯舘村の酪農家が講演
 福島第1原発事故による放射能汚染で離村を余儀なくされた福島県飯舘(いいだて)村の酪農家が25日、佐賀市で講演、被ばくの実態や残留放射能の現況を報告し、「玄海原発が一度でも事故を起こせば佐賀でも同じことが起きる」と警告した。講演したのは同県伊達市の仮設住宅で暮らす長谷川健一さん(61)。飯舘村は原発事故から1カ月遅れの2011年4月に計画的避難区域に指定された。長谷川さんは「速やかに避難指示が出された原発20キロ圏内より、30~45キロ圏内にある飯舘村の住民がはるかに多量の被ばくを強いられた」と訴えた。国が事故当時の放射能影響予測情報をなかなか開示せず、残留放射能の数値を低くするため、汚染土を除去した場所にモニタリングポストを設置するなど、隠ぺい体質が強いと指摘。「見せかけだけの除染。帰村を進めて賠償額を少なくしようとしている。被災地の回復状況をアピールすることで、原発再稼働の動きを加速しようとしている」と危機感を募らせた。講演は「原発なくそう!九州玄海訴訟」原告団・弁護団が主催し約100人が訪れた。

*2-2:http://mainichi.jp/select/news/20150423k0000m040086000c.html
(毎日新聞 2015年4月22日) 線量測定器:異常相次ぎ全77台運用中止 福島県
 福島県が設置した空間放射線量の簡易型測定器に異常が相次いだ問題で、県は22日、不具合が解消しないため、77台すべての運用を中止し、福島市の納入業者との契約を解除したと発表した。再設置する方針だが、時期は未定という。県によると、3月に設置し4月1日から試験運用を始めた77台。一部で測定値が通常値の約1000倍に上昇したり、測定データが伝送できなかったりする不具合が発生した。20日時点で33台が復旧していないという。3月30日に原子力規制庁から、13台が通信テストでデータ送信できないと県に連絡があったが、試験運用を開始した。県危機管理部の樵(きこり)隆男部長は記者会見で「連絡を受けた時点で異常に気づくべきだった。情報が内部で共有されず、不適切だった」と陳謝した。規制庁は福島県内に簡易型測定器3036台を設置しているが、東京電力福島第1原発事故の被災自治体の要望を受け、県が新たに77台を設置していた。

*2-3:http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2015042401001662.html
(東京新聞 2015年4月24日) 北米沿岸に8百テラベクレル着へ 原発事故で海洋放出セシウム
 東京電力福島第1原発事故で海洋に放出された放射性セシウム137の約5%に当たる800テラベクレル(テラは1兆)が北米大陸の西海岸に到達するとの研究結果を福島大学環境放射能研究所の青山道夫教授がまとめ、24日までにウィーンの学会で発表した。約1年後にはほぼ全量がたどり着くという。日本の原子力規制委員会は、100テラベクレルを放出する大事故の発生確率を原子炉1基につき100万年に1回以下に抑える安全目標を決めているが、今回の数値はその8倍に相当する。

*2-4:http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2015042501001598.html
(東京新聞 2015年4月25日) 小出氏「福島第1原発は石棺を」 元京都大助教
 原発の危うさに長年警鐘を鳴らしてきた元京都大原子炉実験所助教の小出裕章氏が25日、東京都内の日本外国特派員協会で記者会見した。事故発生から4年が経過した東京電力福島第1原発について「チェルノブイリのように石棺で(放射性物質を)封じ込めるしかない」と述べ、溶け落ちた核燃料の取り出しを目指す政府や東電の方針を否定した。小出氏は、第1原発の現状について「4年たっても現場に作業員が行けない事故は原発以外にない」と指摘。1~3号機では、溶け落ちた核燃料が原子炉格納容器内に散らばっているとみられることから「機器を使って取り出せる燃料の量は高が知れている」と話した。

<事故時の責任の所在>
*3-1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20150423&ng=DGKKZO86023170S5A420C1EN2000 (日経新聞 2015.4.23) 原発とホーリズム
 4月14日、福井地裁が関西電力高浜原子力発電所3、4号機の再稼働を差し止める仮処分を出した。原子力規制委員会は事故リスクは小さいとし、裁判所は大きいという。事実誤認はあるかもしれないが、ことの本質はそこにはない。リスクの確率計算で仮に規制委と合意したとしても、裁判所の判断は変わらないのではないか。規制委と裁判所の判断の違いは、科学を巡る議論で繰り返される「要素還元論」と「全体論(ホーリズム)」との対立の新バージョンだからだ。原発事故のリスクを考えるときに、リスクにさらされるのは原発が立地する地域社会だ。この地域社会を、そこに住む「個人」という要素の単純合計と考えるのが要素還元論だ。科学界の主流がとる立場である。一方のホーリズムは、要素(個人)が集まってできた全体(地域社会)は要素の合計を超えた価値(例えば文化や歴史)を持つとみる。非科学的とされがちだが、我々は社会についての意思決定に際しホーリズム的判断をすることが多い。交通事故で個人が死ぬのは取り返しのつかない悲劇だが、原発事故で地域社会が丸ごと居住不能になることは、なにかしら個人の死を超えた、もっと大きな損失だと感じる人も多いだろう。このホーリズム的感性からは、確率は小さくても原発事故の損害を巨大なものと見積もる判断が出てくる。原発事故で東京が壊滅するシミュレーション小説「東京ブラックアウト」では日本の国柄や国際社会での地位まで劣化していく様子が描かれるが、そこで失われるものは個人の損失の単純合計を超えたものだ。もっと極端な例を考えると論点がはっきりする。夢の新技術が実用化され、それを使えば電気代は永久にタダだが、10万年に1回の確率で地球が消滅するリスクを生むとする。そのような技術を使うべきだろうか。要素還元主義で判断すれば事故の確率は小さいから使うべきだとなる。だが事故=人類絶滅なら確率がいくら小さくても躊躇(ちゅうちょ)する人は多いのではないか。人類存続は個人の生死の合計を超えた価値を持つと我々は感じるからだ。結局、政治的な意思決定を要素還元論で考えるべきかホーリズムで考えるべきかという対立に、我々は直面しているのである。

*3-2:http://blogos.com/article/62029/
(BLOGOS 2013年5月10日 ) 原発輸出が許されてしまう理由
 安倍首相がトルコやアラブ首長国連邦(UAE)を訪れ原子力協定を結び、原発輸出を約束してきた。一方、福島第一原発事故の現場では、たまり続ける汚染水に悩まされるなど綱渡りの状態が続く。
海外では「原発は安全」と原発を売り込むが、国内では収束とは程遠い原発事故の脅威に市民がさらされ続けているわけだ。なぜ、こんなことが許されるのか。その大きな理由の一つは、日立、東芝、三菱重工などの原子炉メーカーは原発事故の責任を問われないという強固な仕組みがあるからだ。
●法律で守られる原子炉メーカー
 原子炉は、製造物責任法(PL法)の対象から除外されているのをご存じだろうか。「原子力損害の賠償に関する法律(原賠法)」の第4条3項には「原子炉の運転等により生じた原子力損害については、(中略)製造物責任法の規定は、適用しない」と明言されている。製造物責任があれば、原発ビジネスは成り立たない?インドは、2010年に、事故の際に原子炉メーカーの責任を問える法律をつくっている。この法律について2月21日、原子炉メーカーであるGEインドの元CEOが以下のように述べている。「GEは(原子炉メーカーが事故責任を問われる)法律がある間は、インドで原発ビジネスを追求しないだろう。我々は民間企業で、そのようなリスクはとれない」(『Forbes India』誌)。どんなメーカーでも、製造物が引き起こすかもしれない事故の責任を問われるとなれば、事故を防止しようとするインセンティブが生まれる。また、起こりうる事故がメーカーでは責任の取りきれないものであれば、企業の存続リスクを考えてそのビジネスから撤退するだろう。
メーカーに責任を問うのは、社会がこのような自浄作用を期待するからだ。
●さらに儲けようとする原子炉メーカー
 一方で、つくった原子炉が大事故を起こしたにもかかわらず、日立は今後8年で原発ビジネスの売上高を2倍の3600億円に、東芝は今後5年で1兆円の売上達成をめざすと公式に発表している(注1)。原発輸出、福島第一原発での汚染水処理、燃料取出し技術の開発などを売り上げ拡大チャンスと期待しているわけだ。この事業計画をみてもわかるように、原子炉メーカーの責任意識は皆無で、自浄作用はまったく存在していない。だからこそ「原発は安全」などということが言えてしまう。「原発はメーカーにとって安全なビジネス」ということだろうか。
●もし日立や東芝が原発事故の賠償を引き受けていたら
 もし、東電だけではなく原子炉メーカーが今回の原発事故で責任を負うことになっていれば、除染や汚染水処理などは国ではなく原子炉メーカーの責任でやるべきものとなっていただろう。
そうであれば、今ごろ海外への原発輸出どころではなかったはずだ。少なくとも「原発ビジネスの拡大」など投資家には説明できなかっただろう。事故や、無謀な原発輸出を防ぐためにも、まずは普通の工業製品と同様に、原賠法で原子炉メーカーに責任を問えるようにすべきだ。責任が問われないビジネスほど、おいしい話はない。


PS(2015年4月27、28日追加):*4-1、*4-2の経産省の見積もりは原発再稼働ありきで作っているため、信用できない。また、太陽光発電は、「一定の角度をつけて設置しなければならない」などの変な規制があり、建材としての技術進歩を阻んでいる。そのため、このような状況でのコスト見積もりは無意味であり、技術進歩しやすくした上で、すべてのコストを含む実績によるコスト比較をすべきだ。

    
*4-1より      *4-2より                建物に設置する太陽光発電各種 
*4-1:http://digital.asahi.com/articles/ASH4W5Q55H4WULFA01W.html
(朝日新聞 2015年4月27日) 2030年の発電コスト「原発が最安」 経産省試算
 電源別の発電コストを見直している経済産業省は27日、新しい試算結果を公表した。原発は2030年時点で1キロワット時あたり10・1円以上で、下限で比べると、電源別で最も安くなった。11年の前回試算の8・9円以上は上回ったが、再生可能エネルギーや火力などの費用も上がったためだ。この日あった同省の「発電コスト検証ワーキンググループ(WG)」で示し、大筋で了承された。同省は30年の電源構成(エネルギーミックス)案に反映し、28日の有識者会合で原発の割合を20~22%とする案を示す見通しだ。原発の発電コスト試算では、前回試算と同じように原発事故後の損害賠償や、立地自治体への交付金などの費用を計上。11年に比べ、原発の安全対策費が増加したことも反映した。ただ、対策を強化した分、事故が起きる確率は半減したとみて、その分だけコストを低く見積もった。再生可能エネルギーは、前回試算で30年には下限のコストで原発を下回っていた「陸上風力」や「洋上風力」が、今回はともに原発を上回った。再生エネの国の研究開発費などを費用に含めたためだ。

*4-2:http://www.tokyo-np.co.jp/article/economics/news/CK2015042802000127.html (東京新聞 2015年4月28日) 発電費用 欧米を下回る 原発が最安 10・1円
 経済産業省は二十七日、原子力発電にかかる費用を二〇三〇年時点で一キロワット時当たり最低一〇・一円とする試算を大筋で固めた。一一年十二月に試算した八・九円に、追加の安全対策費を上積みするなどし13%の上昇となったが、一キロワット時当たり十六円台の欧米の試算を大きく下回った。再生可能エネルギーや火力の発電費用も引き上げたことで、相対的には原発が最も安いという試算になった。試算はこの日の有識者会合「発電コスト検証ワーキンググループ」に示され、おおむね了承された。経産省は今回の試算を三〇年時点の電源構成を決定する際の根拠にする方針。二十八日には、三〇年に必要な電力の20%程度を原発でまかなう発電比率の案を公表する。原発に関しては、廃炉に必要な費用の見積もりが一一年の試算に比べ増加。また実現のめどが立たない使用済み核燃料の再利用計画に必要な費用も増えた。一方、追加の安全対策をとったため事故が起きる確率が減ると想定。東京電力福島第一原発と同じような重大事故に備えた費用の積み立てを〇・二円減らした。英国政府は新しい原発をつくる場合の発電費用について一六・一円(一ポンド=一八〇円換算)、米国の民間調査会社は一六・七円(一ドル=一一九円換算)と試算している。東日本大震災後、原発建設にはさまざまな安全対策が必要になり建設費が跳ね上がることが要因。これに対し日本の経産省の試算は、中部電力浜岡原発5号機など、震災前につくられた原発と同じ条件で建設するという想定のため、建設費は安く算出された。

| 原発::2015.4~10 | 04:51 PM | comments (x) | trackback (x) |

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