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2015.5.29 地方自治体が持つノウハウと国際協力の可能性 (2015年6月20日追加あり)
   
    *1-2より                               *2-1より
 日本の地方自治体がこれまで培ってきたノウハウは、開発途上国のインフラづくりにも応用でき、例えばネパールのような人口の多くない地域のインフラ作りは、同じような自治体の経験が有用だろう。なお、定年を延長して増えた人員をこのような事業に投入することで、地方自治体の生産性が向上したり、税外収入が増えたりする。

(1)上下水道整備や廃棄物管理、防災、地域開発における国際協力
 *1-1のように、国際協力機構(JICA)が、2014年11月25日、「第1回地方自治体による海外展開推進のための自治体連携強化セミナー」を開催し、日本の地方自治体の上下水道、廃棄物、災害対策、地域開発、農村開発の多様な経験やノウハウは、現在の多様化する途上国のニーズに合致するとしているが、私もこれに同感だ。そして、JICAと自治体が連携して行う国際貢献は、開発途上国への貢献と同時に、それを行う地方自治体側の海外展開や地域振興、安全保障の足がかりになると考える。

 帯広市(北海道)、東松島市(宮城県)、横浜市(神奈川県)、駒ヶ根市(長野県)大阪市(大阪府)、北九州市(福岡県)、那覇市(沖縄県)などは、既にJICAとの国際協力に取り組んでおり、*1-2のように、北九州市は、2013年2月6日、JICAと包括連携協定を締結してグリーンシティ北九州モデルを活用した環境配慮型都市づくり分野における国際戦略および国際協力を推進するとしている。

(2)佐賀市の挑戦
 *2-1、*2-2に書かれているように、佐賀市は、東芝、ユーグレナ、日環特殊、日本下水道事業団、日水コンなどと共同で、下水処理時に発生するバイオガスから抽出した二酸化炭素(CO2)と処理水を使い、栄養成分が豊富な藻類ミドリムシを培養する実証事業を始める。

 佐賀市の下水浄化センターは、1日約5万立方メートルの下水を処理し、これによりCO2が約4割を占めるバイオガスが1日約5千立方メートル発生するが、ミドリムシはCO2と下水処理水に含まれる窒素やリンを使って光合成を行うため、ミドリムシの培養で下水処理場の処理コストが軽減され、培養されたミドリムシ(藻類)は栄養豊富で、家畜や養殖魚向けの飼料・肥料など高付加価値資源としての利用が期待できる。東芝などとの調印後、秀島市長は「必ず実用化につなげて、地球にやさしい技術を全国、世界に広げたい」としている。

 佐賀市の事業は、国土交通省の2015年度革新的技術実証事業に採択されたが、このような資源の徹底利用は、どこに持って行っても歓迎されるだろう。

 なお、*2-3のように、主食米の生産抑制と飼料自給率向上の目的で、農水省は飼料用米の作付面積を増やす政策を行っているが、飼料も米だけでは栄養が偏るため、ミドリムシを混ぜるとよい。

(3)福岡市のODA参加
 *3のように、福岡市が、ミャンマーの最大都市ヤンゴン市で行われる政府開発援助(ODA)の水道整備事業に参加し、浄水場建設の調査事業を受注したそうだ。福岡市が、節水・漏水対策の技術協力を行う覚書を結んだのはよいが、私は、福岡市の水道は節水しすぎで、福岡空港の水道はちょろちょろしたシャワーのようになっており、手もよく洗えず、歯も磨きにくいため、改善すべきだと思っている。

*1-1:http://www.jica.go.jp/topics/news/2014/20141211_01.html (JICA 2014年12月11日要点のみ) 上下水道や防災など「国際協力先進自治体」のノウハウを共有――「第1回自治体連携強化セミナー」開催
 上下水道整備や廃棄物管理、防災、地域開発――。日本の地方自治体は市民の生活向上のために日々さまざまな課題に取り組み、解決を図っている。その経験やノウハウを、開発途上国への国際協力に生かして、地域活性化を進める日本の地方自治体が増えている。そうした先進事例を全国の自治体と共有するため、JICAは11月25日、「第1回地方自治体による海外展開推進のための自治体連携強化セミナー」をJICA研究所(東京都新宿区)で開催した。セミナーでは、JICAの事業などを活用して国際協力に積極的に取り組む、帯広市(北海道)、東松島市(宮城県)、横浜市(神奈川県)、駒ヶ根市(長野県)大阪市(大阪府)、北九州市(福岡県)、那覇市(沖縄県)の7自治体がそれぞれの事例を発表。41自治体などから参加した107人が熱心に聴き入った。都市運営や地域開発の経験が海外で生きる全世界人口の半数以上が都市に住み、2050年には10人のうち7人が都市の住民になると予測されているが、急激な都市化の90パーセントは途上国で起こっている。一方、日本の地方自治体は上下水道や廃棄物、災害対策などの都市運営のほか、地域開発や農村開発などにも多彩な経験を持っている。このノウハウや課題対応経験が、現在の多様化する途上国の支援ニーズに合致している。横浜市や北九州市は自らの都市経営の経験を活用し、1990年代から積極的に途上国への支援を進めている「国際協力先進自治体」だ。JICAは両市の途上国の課題解決に役立つ豊富な知見を活用するため、2011年10月に横浜市、2013年2月に北九州市と包括連携協定を締結し、連携を強化している。また大阪市は上下水道などの研修やプロジェクトで、東日本大震災での復興経験を持つ東松島市は防災・災害復興分野で、那覇市は島しょ部ならではの経験を生かした廃棄物などの分野で、JICAと連携した協力が進んでいる。帯広市(北海道)や駒ヶ根市(長野県)はJICAの国内拠点を活用しながら、地域の特徴を生かし開発途上国との協力を深めてきた。
●「国際協力」を日本の地域振興の一助に
 セミナー冒頭のあいさつで、外務省国際協力局の石兼公博局長は、「自治体や地方企業の国際展開を支援し、地方産業振興や国際化などの地域社会の活性化に貢献することは、政府が最重要課題として掲げる『地方創生』の理念に合致する」と述べ、今後の展開に大きな期待を寄せた。JICAの黒柳俊之理事は、「ODAはさまざまな知見を有する地方自治体や企業などとの連携があって初めて成立する。JICAと自治体との連携が、途上国開発への貢献とともに、地域振興の一助になれば」と自治体の海外展開を後押しした。その後、JICA国内事業部の小林雪治次長が、自治体との連携事例と活用可能な事業を紹介。地方自治体の強みは、1)都市経営に関する豊富な経験、2)公共サービスの包括的なノウハウ、3)地元企業とのネットワークなどであるとした上で、「JICAの強みは、海外約100ヵ所にある拠点と、50年以上の協力で培われた途上国とのネットワークだ。また、途上国への海外展開を考える際に、JICAの国内拠点を積極的に活用してほしい」と呼びかけた。

*1-2:http://www.jica.go.jp/press/2012/20130206_01.html
(JICA 2013年2月6日) 北九州市と包括的連携協定を締結
-開発途上国の発展と北九州の海外戦略に貢献へ-
 国際協力機構(JICA)は2月6日、北九州市と包括連携協定を締結しました。これは、JICAが取り組む開発途上地域への国際協力事業と北九州市が取り組む国際戦略にかかわる事業の連携を強化することにより、国際協力事業をさらに質の高いものとし、ひいては開発途上地域の発展と北九州市の国際競争力の強化、地元企業の活性化に貢献することを目的としています。北九州市役所で行われた締結式には、田中明彦JICA理事長と北橋健治北九州市長が出席し、協定に署名しました。JICAが自治体と包括的な連携協定を締結するのは2011年10月の横浜市に次いで2例目となります。JICAと北九州市は国際協力における連携を長年進めており、特に1989年のJICA九州の開設以降は、緊密な協力関係を構築してきました。北九州市は自らの公害克服の経験と、環境と経済を両立した都市づくりを進めてきたノウハウを生かし、環境分野での国際協力を多く行ってきました。特に近年は、自らの経験を踏まえた「グリーンシティ」(注)としての視点から、産官学連携による環境国際戦略を推進しています。JICAも、ODAを活用した日本国内の地域活性化に向けた取り組みを強化しており、開発途上地域に対する国際協力のさらなる発展と、北九州市による海外戦略への貢献の双方が期待されるとして、包括的な連携協定の締結に至ったものです。本協定の締結により、JICAと北九州市が連携を促進・強化し、大学、企業、NGOなど多くのパートナー、関係者の方々の参画も通じて、「グリーンシティ」の視点も踏まえた国際戦略および国際協力を進めます。具体的には、以下のような取り組みを目指しています。
 1. グリーンシティ北九州モデルを活用した環境配慮型都市づくり分野における国際戦略および
   国際協力の推進
 2. 官民連携および産官学連携の促進・支援
 3. 技術研修員の受入れ、技術協力専門家の派遣、技術協力プロジェクト、草の根技術協力、
   開発調査、協力準備調査などの実施
 4. 無償資金協力および有償資金協力(円借款)の実施への支援
 5. 北九州市が有する技術・ノウハウを活用したJICA事業への助言および協力
 6. 青年海外協力隊など、JICAボランティア事業への北九州市民の参加促進
 7. 多文化共生促進を目的とした開発教育/国際理解教育の推進
(注)北九州市は、環境政策と経済成長を両立した都市として、経済協力開発機構(OECD)が選定する「グリーンシティプログラム」に、アジア地域から初めて選定されました。

<佐賀市の先進的挑戦>
*2-1:http://qbiz.jp/article/62074/1/
(西日本新聞 2015年5月14日) 佐賀市の藻類培養、下水道施設でも 全国初、年明け開始
 佐賀市は13日、下水処理時に発生するバイオガスから抽出した二酸化炭素(CO2)と処理水を使い、栄養成分が豊富な藻類ミドリムシを培養する実証事業を始めると発表した。東芝などと共同で年内に市下水浄化センター敷地内に実証プラントを建設し、年明けから培養を始める。下水処理時の発生物を活用した藻類の培養は全国初という。同センターは1日約5万立方メートルの下水を処理。下水汚泥を減らすためのメタン発酵で、CO2が約4割を占めるバイオガスが1日約5千立方メートル発生している。ミドリムシは光合成で増える際、CO2と下水処理水に多く含まれる窒素やリンが欠かせず、下水処理場での培養でCO2の排出抑制や処理コストの軽減にもつなげる狙い。東芝は2013年から市清掃工場でごみ焼却時の排気からCO2を回収する技術を提供。今回の実証事業を手掛けるのは東芝のほか、ミドリムシの培養と活用を行うベンチャー企業ユーグレナ(東京)、日本下水道事業団など6団体による共同研究体。国土交通省の15年度革新的技術実証事業に採択され、プラント整備費は国が全額負担する。プラントはCO2の回収装置や9千リットルの培養槽などで構成。安定的な培養のほか、処理水に含まれる窒素、リンの低減効果を確認する。培養したミドリムシは家畜や養殖魚向けの飼料、肥料としての活用を探る。東芝などとの調印後、秀島敏行市長は「必ず実用化につなげて、地球にやさしい技術を全国、世界に広げたい」と期待を込めた。

*2-2:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/186417
(佐賀新聞 2015年5月14日) 佐賀市、東芝など藻類を培養、再資源化 国プロジェクト
◆下水からCO2回収 市浄化センターに実証設備
 佐賀市と東芝など5社・団体は13日、下水処理で発生するガスから二酸化炭素(CO2)を分離、回収する全国初の実証事業に取り組むと発表した。市下水浄化センターにプラントを設置し、回収したCO2を利用して、ミドリムシなどの藻類を培養する。国交省のプロジェクトの一環で、10億円程度の事業費を見込む。廃棄していたガスのCO2を資源として活用する試みで、国は新技術を実用化し、国内外への普及展開を狙う。実証事業に参加するのはほかにユーグレナ、日環特殊、日本下水道事業団、日水コン。CO2の分離回収技術を持つ東芝が代表企業となり、他の企業が藻類培養や汚泥処理、システム設計、施工などを担う。市は西与賀町にある下水浄化センターの設備や敷地の一部を貸して協力する。市や東芝によると、下水浄化センター内にCO2を分離回収するプラントと藻類培養設備を設置する。培養は先進メーカーのユーグレナが手がける。藻類は、飼料や肥料など高付加価値資源として活用が見込めるという。実証では、CO2だけでなく汚泥の脱水過程で生じる分離液から、藻類の栄養となる窒素やリンを取り出し、供給することも試みる。窒素やリンを含む分離液は赤潮の発生原因となるため、通常は再処理して排水するが、窒素、リンを回収することで再処理が不要になるという。今後、敷地内にプラントを設置し、来年2月ごろの稼働を目指す。東芝は実証期間を本年度から2年間と見込み、終了後はプラントを市に引き継ぐ方針。佐賀市と東芝は、市清掃工場の排ガスからCO2を回収する研究で連携してきた経緯から、国のプロジェクトに応募した。会見した秀島市長は職員時代に下水道事業に関わった経験に触れながら「当時は安全第一だったが、今は下水から資源を取り出す時代になった。平成の日本の革命的な事業として100年、150年後に世界遺産となるような取り組みにしたい」と述べた。

*2-3:http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=33479
(日本農業新聞 2015/5/29) 飼料米 各地で面積倍増 一層積み上げ 需給改善へJA推進
 各地のJAで飼料用米の作付面積を前年より倍増させる動きが出ている。ただし、JAグループが目標に掲げる60万トンを達成するには、前年実績の3.3倍に広げなければならない。出来秋の米の需給環境を整えるためにも、主食用米からの切り替えを中心に一層の作付面積の積み上げが欠かせない。
●手取り安定が魅力 
 「主食用米より手取りは確実にいい」。岐阜県瑞穂市で137ヘクタールを経営する巣南営農組合の小川勝範理事長は、こう言う。昨年は飼料用米を生産しなかったが、今年は水稲106ヘクタールのうち32ヘクタールで栽培を手掛ける。品種は主食用ながら多収性の「みつひかり」。地元のJAぎふは「最低でも10アール10俵(1俵60キロ)を収穫できる。地域平均より25%ほど多い」と見積もる。国の飼料用米への数量払い交付金の上限である10アール10万5000円は「確実にとれる」(小川理事長)とみる。同JAは、巣南営農組合をはじめ約200の中心的な担い手で組織する協議会に対し、昨夏から飼料用米の作付けを集中的に提案。「飼料用と主食用、半分ずつ生産すれば飼料用米の交付金は確実に入り、主食用の価格が回復した場合も恩恵が得られると説明してきた」(同JA)という。こうした地道な提案活動の結果、今年の飼料用米のJA集荷量は、昨年からほぼ倍増し約2900トンになる見込みだ。JAグループは都道府県ごとに目標数量を設定している。岐阜県の目標は1万1800トンだが、現状でその8割近くに達する見通し。JA岐阜中央会は「今後も全農と連携し、主食用からの切り替えを各JAに働き掛け、一俵でも多く積み上げたい」と説明する。青森県でも増産が進む。昨年の県内の飼料用米の生産実績は1万6000トンだが、JA全農あおもりによると「今年は3万5000トンは確保できる見通しだ」という。目標の2万7800トンを大幅に上回る。農家の作りやすさを考え、主食用品種で取り組む場合でも産地交付金で10アール1万円以内を支援。米価低迷に苦しむ中、飼料用米は安定した手取りが見通せるため農家の理解が広がった。栃木県も、農水省が4月末時点の集計で目標を達成する見込みと発表。同県のJAしもつけ管内では飼料用米の生産量が昨年の約3000トンから約6500トンに増え、主食用米とほぼ同じ数量になる見通しだ。JAは集落座談会や生産者との出荷契約の話し合いの際、需給バランスの崩れた生産が続けば、米価の回復はないと伝えてきた。「様子見をしていた農家が低米価で痛い思いをし、飼料用米の栽培に乗り出した」(同JA)という。飼料用米の面積が目標(900ヘクタール)の1.6倍になる見通しの茨城県のJA北つくばは、6月に職員が「コシヒカリ」以外の主食用品種を栽培する農家を中心に回る予定。営農計画書の提出期限が近づく中、「需給改善に向け取り組みが欠かせないことをあらためて訴えたい」と強調する。

<福岡市のODA参加>
*3:http://qbiz.jp/article/62310/1/
(西日本新聞 2015年5月16日) 福岡市、ミャンマーの水道事業でODA参加 地場の海外進出支援
 福岡市は、ミャンマーの最大都市ヤンゴン市で行われる政府開発援助(ODA)の水道整備事業に参加する。市内に拠点を持つ共同企業体(JV)が市と連携し、浄水場建設の調査事業を受注。市も調査の一部を担う。ヤンゴン市への水道技術支援を進めてきた市は「国際協力をさらに進め、地場企業の海外でのビジネスチャンスを増やしたい」としている。市が民間と連携し、ODAに参加するのは初めて。事業は、国際協力機構(JICA)が発注したヤンゴン市西部で2022年の稼働を目指す浄水場の建設に向けた事前調査。上下水道の設計やコンサルを手がける企業3社(いずれも本社・東京)のJVが市と連携して調査することを提案し、約1億4千万円で受注した。市もJVから請け負う形で、浄水場の運営や施設の維持管理に関する調査を行う。市の受注額は約500万円。事業は来年3月まで。市は12年から3年間、JICAを通じて水道局の職員をヤンゴン市に派遣し、漏水を防ぐノウハウを指導。昨年は節水・漏水対策の技術協力を行う覚書を両市間で結んでおり「現地と築いてきた信頼関係が今回の受注につながった」(担当者)という。市は昨秋、今回のJVに加わる2社を含め、市内に本社や支店がある企業約50社と海外でのビジネス展開を目指す組織を設立。今夏、この組織の参加企業とともに製品や技術を売り込むため、ヤンゴン市を訪ねる予定だ。


PS(2015年6月20日追加):*4を解決するには、バスの便を減らすのはほどほどにして、すべての市内バスを電気自動車にし、乗客の少ない路線は小型化して燃料費を節約するのがよいと考える。なお、広告料をもらって佐賀の名産やメッセージを宣伝しながら走るのもよいが、これは景観を悪くしない上品でセンスのよい広告に限るべきだ。

 なお、自動車会社の立場から見ると、電気自動車は、このように世界中でフロンティア領域だ。
   
 市営バス(横浜)  レストランバス(ローマ)   はとバス(東京)      電気バス(富山)   
                     <すべて電動バス>
*4:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/199079 (佐賀新聞2015年6月19日)県が全バス路線で実態調査 8割の便乗客10人以下、平日と休日延べ2000便超 枝線3割利用者ゼロ
 佐賀県は、県内を走るバスの全路線に始発から最終便まで調査員が乗り込んで乗客からアンケートを取るという、全国的に珍しい調査結果をまとめた。平日と休日の2回、延べ2000便以上を対象にした。バス停ごとの乗降数のデータは存在するが、乗客一人一人の乗車区間や利用目的を明らかにした広域調査は前例がなく、「8割の便で最大乗客は10人以下」「鉄道とのすみ分けができていない」実態が明らかになった。県は市町にデータを提供し、人口減少により衰退する公共交通の再構築に乗り出す。移動実態調査は昨年9~10月、2139便を対象に実施した。別に佐賀市営バスから1261便分の提供を受けた。費用は約2000万円。タクシーも県内5地区、12事業者の協力で運転手が乗客に聞き取り調査し、5725サンプルを集めた。国土交通省九州運輸局によると、「事業者の営業戦略に関わる調査だけに、まず表に出てこない。それを県が実施した例は聞いたことがなく、省としても注目している」という。調査は、複数の市町(合併市町含む)をまたぐバス路線を「幹線」(50路線)、人口密集地を走る「市街地路線」(16路線)、それ以外の「枝線」(34路線)に分類した。ほとんどの路線で8割の便が、最大乗客は10人以下だった。特に枝線は利用者ゼロの便が3割、乗客3人以下が7割を占めた。主流の中型バスが定員57人ということを考慮すると、「11人乗りのジャンボタクシーなどの代用も検討される」と分析した。乗客ごとの乗車区間をみると、幹線は枝線や市街地路線に比べ、長い区間乗る傾向があるが、幹線のなかでも鉄道と並行して走る路線は、短区間の利用が多かった。ある路線で始発から終点まで乗車したのは98人中1人だけで、県は「複数市町で本当に長距離バスが必要なのか」と指摘する。乗客の年齢と利用目的を分析すると、平日は22歳以下の若年層で通学、23~59歳の中間層が通勤、60歳以上の高齢層で通院目的が増える「オーソドックスな利用形態」(県)だった。休日はどの年代でも買い物利用の割合が増え、特に中間層は観光が増えた。「平日に比べて休日は枝線での観光利用が増える。これまで路線バスに観光の視点はなかったが、一定の需要はある」とみる。タクシーの利用状況をみると、高齢者が31・5%を占め、会社員の39・2%に次いで多かった。目的地を調べると、高齢者は他の職業に比べて病院や商業、文化娯楽施設など日常的な生活圏での利用が多い一方、駅やバス停など公共交通の乗り継ぎ地点への利用が少なかった。県は「高齢者が日常的に公共交通として利用している実態が見えた。さまざまな施策を考える材料になる」としている。少子高齢化や過疎化で地方の公共交通の維持が課題となるなか、2013年に成立した交通政策基本法は自治体が主体となって住民の移動手段を確保するよう定めた。県は知事と20市町の首長で構成する協議会を発足、検討を進めている。

| 公的部門と公会計制度::2015.3~ | 03:03 PM | comments (x) | trackback (x) |

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