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2015.12.8 温室効果ガスの削減は、自然再生可能エネルギーによってなされるべきであり、原発再稼働は不要であること → 今年のKey Wordは、「ゼロ・エミッション」 (2015年12月9日、10日、13日、15日に追加あり)
     
2015.11.30    2015.10.31       2015.12.6   2015.9.20   2015.12.6
 朝日新聞       西日本新聞        日経新聞     日経新聞     東京新聞

(1)第21回国連気候変動枠組条約締約国会議(以下“COP21”)について
 *1-1のように、国連が、「このままでは世界の気温が今世紀末に2.7度上昇する」と発表し、多くの国が削減目標を出したが、電気自動車・燃料電池車・太陽光発電などを最初に開発した日本の削減目標は26%と他国より低く、*1-5のような「日本が取り残される事態」に陥ったのは、理系研究者・技術者の科学力・開発力は高いが、政治・行政・メディア・経営などの主たる担当者である文系の人に科学的判断力がなさすぎるのが原因だ。

 また、*1-5のように、原発ゼロでも自然再生可能エネルギーによる温室効果ガス排出量削減は可能で、*1-6のように、市民は脱原発を訴えているのに、大手電力会社は化石燃料か原発かという選択肢しか思い浮かばないというのもお粗末すぎる。しかし、これは教育の結果であるため、文系でも誰でも、幅広い基礎知識や思考力・洞察力を身につけられるように、初等・中等・大学教育の改革や入試科目の増加を行う必要があるだろう。

 なお、*1-2のように、COP21では、日米欧などの先進国が2020年以降の途上国への温暖化対策資金支援を、官民合わせて年間1,000億ドル(約12兆3000億円)を超える規模とする方向で調整し、日本は2020年までに現在の1.3倍の年1兆3000億円に増額すると表明したそうだ。このように、文系担当者の思考力・洞察力・判断力の低さを、国民の血税を国内のみならず国外にもばら撒くことでカバーしているのが今の日本の現状であり、これでは金を出しても尊敬はされない。そのため、こうなった本質的な原因を解決すべきなのである。

(2)では、世界的にはどうすればよいのか
 私は、世界中の人に平等に、公平・中立・簡素な化石燃料税(炭素税又は環境税)を課し、二酸化炭素吸収力を加味した森林・藻場・緑地の面積に比例して、意図を入れずに全額補助金として配るのがよいと考える。何故なら、そうすると、結果として開発途上国や新興国は純額で補助金の方が多くなり、世界のあらゆる場所で緑地化や藻場の造成に励み、これを壊すことには慎重になるからだ。また、緑地には、都市の緑地面積も加えた方が、緑地整備の動機づけになってよいだろう。

 このようにして、緑地面積に応じて補助金が入れば、*1-3のように、途上国の大半は、多額の補助金を得ることができるため、環境を考慮しながら再生可能エネルギーを使った次の開発が行われることになる。そうすると、地熱発電、水力発電等への投資も進めることができ、熱帯地域や砂漠地帯は太陽光発電の適地でもあるため再生可能エネルギーによる分散型発電を行って、例えばアフリカなどは、20世紀型の電線を張らずに、まっすぐ21世紀型の地産地消型分散発電によって電気が使える地域を広げることができる。

 さらに、*1-4のように、2014年に建設された再生可能エネルギーの発電設備容量は9,700万キロワット(原発97基分)で2013年に比べると約17%増えており、太陽光や風力は不安定で頼りないのではなく、世界は今、脱原発して再生可能エネルギーの推進に向かっているのだということがわかる。そして、日本でも、投資をするなら燃料費のコストダウンに繋がる自然再生可能エネルギーが合理的であるため、①低コストの自然再生可能エネルギーへの投資をやめさせ ②高コストの原発を維持させながら ③投資を増やした企業にさらなる税優遇を与える というのは、国民に3重苦を与える愚かな政府だ。

(3)現代日本のエコ技術
 科学・技術の分野では、*2-1のように、「エネルギー収支ゼロ」住宅ができ、苦労なくスマートに「省エネ」「ゼロエネ」を行うことができるようになった。従って、新しい街づくりではこの技術を取り入れるように投資促進すればよく、また、「エネルギー収支ゼロ」住宅は、アフリカなどで使えば大発電所を建てたり電線を張ったりすることなく、快適な生活に進むツールになる。

 また、*2-2のように、日本で始まって20年間も遅々としていた電気自動車・燃料電池車の普及を進めれば、化石燃料ではないエネルギーを安価に供給できる。そのため、開発途上国では、まっすぐこれを普及させればよく、化石燃料体系ができてしまっている先進国よりも話が簡単な筈である。

 そのほか、*2-3のように、日本は世界第3位の「地熱資源国」であるため、今までこれを発電に使わなかったことの方がむしろ不思議だ。また、*2-4のように、ごみ処理を広域化して熱を利用した発電を行い、自治体が電気を周辺住民や誘致企業に上下水道と同様の安い単価で供給することも可能だ。

 さらに、*2-5のように、「佐賀県海洋エネルギー産業クラスター研究会」が発足し、海洋エネルギーの実用化で地方活性化を目指すそうだ。私も、浮体式洋上風力発電や潮流発電を速やかに実用化して船も電動化すれば、化石燃料を購入して燃やす必要がなく、安価な乗り物になると考えている。特に、空母や潜水艦などは、間違っても原子力を動力とするのではなく、潮流発電で充電する方法を考えて欲しい。

 なお、*2-6のように、農業で小水力発電や太陽光発電の導入を進めれば、①国産エネルギー資源が拡大し ②雇用が創出され ③農家の安定した副収入になる。そのため、農家に毎年所得補助を行うよりも、農地へのこれらの機器設置を補助した方が、国民の税負担が少なく、再生エネによる発電が進んで、一石二鳥ではないだろうか。

(4)電力自由化と選択
 *3-1のように、2016年4月に電力小売りが全面自由化される。この時、電力需要者は、発電方法も加味して電力会社を選択しようと思っているため、それが可能な状況にすべきだ。しかし、*3-2のように、電力小売り全面自由化に向けて大手電力9社が経産省に申請した送電線使用料には、使用済核燃料再処理費など送電と無関係な原発関連費用が上乗せされ、原価の1割近くを占めていることがわかったそうだ。これだから、送電会社は別会社として上場し、ガラス張りの会計処理にすべきなのである。

 九州電力の場合は、1年間の託送原価4,536億円のうち電源開発促進税324億円、核燃料再処理費76億円と原発費用が8.8%を占め、大手9社では9.3%が原発費用だそうだ。電力自由化は、託送原価に送配電に必要な費用のみを計上して、消費者がよい発電方法を選択していくチャンスであるのに、経産省が「促進税と再処理費は電力の安定供給を実現するための費用で、全消費者が公平に負担すべきもの」などとしているのでは、日本の経産省は組織全体として、①科学に弱く ②技術進歩を阻害しており ③電力自由化の意義すら理解できないほど経済にも疎い と言わざるを得ない。

 なお、*3-3のように、経産省が電力会社の発電内訳開示を義務化せず、固定価格買い取り制度(FIT)を利用した再生エネのみ「FIT電気(太陽光)」などと表示させ、原発や石炭火力での発電を消費者に敬遠されるのを避け、あらかじめ電源構成を決めるなどというのは、経産省が日本の技術進歩の足を引っ張り、環境破壊を進めて、世界に遅れる原因を作っているということにほかならない。

*1-1:http://qbiz.jp/article/73955/1/
(西日本新聞 2015年10月31日) 【温室ガス削減】世界の気温、今世紀末2.7度上昇 国連発表
 国連気候変動枠組み条約事務局は30日、世界146カ国が既に公表した温室効果ガス削減目標を実行したとしても、今世紀末の世界の平均気温は2・7度上昇する恐れがあると発表した。ベルリンで記者会見したフィゲレス事務局長は「主要国の目標が出そろったのは歴史的成果だ。正しい方向に向かっているが、気温上昇を2度未満に抑えるという国際目標の達成には十分でない」と話し、各国にさらなる努力を促した。地球温暖化対策の新たな国際枠組みを決めるため、11月30日からパリで開かれる条約締約国会議(COP21)まであと1カ月。今の努力だけでは、温暖化の被害が広がる可能性があり、対応策の検討が求められる。事務局は、10月1日までに提出した146カ国の目標を足し合わせて分析した。温室ガス排出量が世界1位から5位の中国、米国、インド、ロシア、日本をはじめ温室効果ガスの大排出国の削減目標が含まれ、世界の排出量の86%を占めている。2030年の世界全体の排出量は570億トンになると推定。目標がない場合と比べると、40億トン削減できるが、増え続けている排出量を減少に転じさせることはできないと指摘した。今世紀末の気温上昇を2度未満に抑えるには、30年に150億トンの削減が求められるとした。2度未満に抑えることは難しいが、各国が努力を続ければ達成は不可能ではないとしている。

*1-2:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20151206&ng=DGKKASGG05H2A_V01C15A2NN1000 (日経新聞 2015.12.6) 
途上国支援、20年以降年1000億ドル超、COP21で日米欧調整
 パリで開催中の第21回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP21)で、日米欧などの先進国は2020年以降の途上国への温暖化対策の資金支援を、官民合わせて年間1000億ドル(約12兆3000億円)を超える規模とする方向で調整に入る。COP21は、20年以降のすべての国が参加する新枠組みで合意することを目指しているが、交渉は難航中。先進国は途上国の求めに応じることで打開を目指す方針だ。COP21では、先進国のみに温暖化ガスの排出削減を義務付けた京都議定書に代わる新たな枠組みの合意を目指している。5日に事務レベルの会合を終え、7日から閣僚会合が始まるが、交渉は難航している。最大の焦点は、途上国への支援の増額だ。合意の条件として途上国は、温暖化ガスの排出削減や洪水や高潮といった被害抑制の対策に充てる資金支援を先進国に強く求めている。先進国は09年のCOP15で、20年までに官民合わせて年間1000億ドルを途上国に供与すると約束した。COP21では11月30日の首脳級会合で、日本が20年までに現在の1.3倍の年1兆3000億円に増額すると表明。ドイツや英国なども増額方針を示し、1000億ドルの達成がほぼ確実になった。

*1-3:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12100172.html
(朝日新聞 2015年12月4日) 再生エネ、途上国「好機」 温暖化対策、成長の糧
 2020年以降に始める地球温暖化対策の新しい国際枠組みに向けて、約180カ国・地域が削減目標を掲げた。そのうちの途上国の大半は、二酸化炭素(CO2)排出量が世界全体の1%に満たない。経済成長への「足かせ」とみられがちな環境対策は、これらの国では再生可能エネルギーを増やす投資の「呼び水」になっている。
■ケニアへ先進国投資
 ケニアの首都ナイロビから北西約120キロ。ヘルズゲート国立公園内に、同国最大のオルカリア地熱発電所がある。施設の周り、道路の脇からも真っ白な湯気が上がっていた。「これはジオサーマルグラス(地熱草)。ここを掘ればいい熱がとれる」。ケニア電力公社のカリンギティ部長補佐が、草をむしって見せてくれた。発電所は4号機までが完成し、さらに新設、増強する。完了すれば出力は約100万キロワットで、日本の原発1基分に匹敵する。「融資があればまだまだ掘れるよ」。カリンギティさんは自信満々だ。ケニアの再生可能エネルギーへの開発資金は、いまは世界銀行など公的融資が中心だが、今年10月に米グーグルが同国の風力発電に投資をするなど、民間のお金も集まり始めた。ケニアの電気は水力が約半分で、地熱は4分の1。石油や石炭の発電もあるが、今後は地熱や風力を中心に1500万キロワットの発電容量を増やす。「価格が変わりやすい石油や石炭に、経済力が弱い途上国は頼れない。再生エネはコストの見通しがつきやすく、続けるのも簡単だ」。世銀グループの国際金融公社のベルナデット・タベコ氏は分析する。電気が届く地域をいまの約5割から全土に広げるほか、東アフリカの玄関口として海外企業を誘致し、経済発展をめざしている。一方、温室効果ガスの排出量を「何も対策をしなかった場合に比べて30年までに30%削減する」という目標を掲げた。1日100リットル以上を使う事務所やホテル、家庭に太陽熱給湯器を義務づけ、固定価格買い取り制度を導入するなど、環境対策も次々と打つ。「環境と持続可能性を重視している。そこに大きな市場がある」。同国エネルギー規制委員会のパベル・オイメケ再生エネ部長は話す。
■周辺国にも計画次々
 再生エネの国際組織「REN21」によると、14年の再生エネへの投資額は、途上国で約1313億ドルと前年から36%も伸び、先進国に迫る勢いだ。途上国のうち約6割は中国が占めるが、国内総生産(GDP)当たりでみれば、世界の上位には中堅の途上国が並び、ケニアは2位だった。再生エネは燃料代がほとんどかからず、技術革新で発電コストも下がった。機関投資家が化石燃料関連の企業から投資を引き揚げ、再生エネに振り向ける動きが出ていることも普及を後押しする。ケニアの周辺国、エチオピアやウガンダ、タンザニアにも水力や地熱の発電所計画が次々に生まれ、買い取り制度の整備も進む。これらの国々を送電網で結び欧州のように電気を融通し合う仕組みの構想もある。化石燃料で発展した中国やインドとは違う道をめざしている。(ナイロビ=小坪遊)

*1-4:http://www.kahoku.co.jp/editorial/20150706_01.html
(河北新報 2015.7.6) 再生エネルギー/クリーンな発電世界が期待
 原子力発電に比べると、太陽光や風力など自然任せの発電は不安定で頼りない。そうした懸念を乗り越える動きが世界的に広がっている。2014年に建設された再生可能エネルギーの発電設備容量は9700万キロワットで、総容量は13年に比べ約17%も増え、6億5700万キロワットに上っている。エネルギーの専門家でつくる「21世紀の再生可能エネルギーネットワーク」(REN21、本部フランス)がまとめた世界の現状である。新設された発電設備のうち約6割を再生可能エネルギーが占め、クリーンで安全な発電として期待が高まっているのだ。その効果は明白で、経済成長に伴ってエネルギー消費が増大しているにもかかわらず、世界全体の二酸化炭素(CO2)排出量は前年と変わらなかった。CO2排出量が最も多い中国で、再生可能エネルギーが急拡大していることが一つの要因だ。14年の中国の太陽光発電建設は1060万キロワットで最多だった。世界の大型水力を除いた再生可能エネルギーによる発電総容量は6億5700万キロワットで、やはり中国がトップで1億5300万キロワット、次いで米国1億500万キロワット、ドイツ8600万キロワットの順。日本は3100万キロワットで5位にとどまった。中国でも原発はエネルギー戦略の柱の一つではある。ただ全電源に占める原発の比率は1.1%程度にすぎず、東京電力福島第1原発の事故後は安全性への懸念が拡大。四川大地震にみられるような地震多発国であり、住民の不安も強い。電力多消費国の中国で再生可能エネルギーの発電が増えるのは必然なのだ。日本の原発推進派は利点として、低コストでCO2を排出せず、再処理が可能などを掲げるが、いずれの点でも反対の指摘がある。コストの見積もりが過小で、燃料採掘や建設の過程でCO2を排出する、核燃料サイクルはいまだ実現していない-などだ。メリット、デメリットを冷静に点検、潮流を慎重に見極める必要もある。その際、福島の事故で原発の安全神話が崩れた事実を踏まえねばならない。大量の放射性物質を放出し、制御不能の事態を引き起こした、そのことをだ。世界は今、脱原発、再生可能エネルギー推進に向かっている。REN21の報告が如実に物語っていよう。調査結果は14年に再生可能エネルギー開発に投資された金額が2700億ドル(約33兆円)で過去2番目の規模だった事実を示す。中国が833億ドルで以下、米国383億ドル、日本343億ドルと続く。その経済効果も無視できない。一方で世界の原発市場は冷え込んでいる。フランスの原子力大手アレバは経営が悪化し、14年の通期決算で約48億ユーロ(約6700億円)の純損失を計上、6000人の人員削減を迫られている。太陽光や風力発電などの適地整備は有力な方向で、蓄電などの技術が進めば自然条件の制約を突破、安定供給が可能だ。水素発電など新エネルギーも出てきた。経済優先で考えても投資的価値はあろう。長期的な展望に立った賢明な対応が求められている。

*1-5:http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2015113002000151.html (東京新聞社説 2015年11月30日) 温暖化対策パリ会議 日本が取り残される
 温暖化対策パリ会議(COP21)では初日から首脳会合を開催し、新たなルール作りに意欲を見せる。脱化石燃料の時代へと、世界は一気に加速する。地球史的な会議になる。一九九七年暮れの京都会議(COP3)は、先進国に温暖化対策の法律的な義務を課し、数値目標を割り当てたという点で、当時としては画期的だった。パリ会議では京都議定書第二約束期間の後を受け、途上国や新興国も参加する二〇二〇年以降の温暖化対策の新たなルール作りをめざす。世界が初めて一つになって、気候変動の悪影響がさまざまに目立ち始めた地球環境を、立て直そうというのである。
◆難民問題の引き金に
 東北大学の明日香寿川(じゅせん)教授は、シリアの難民問題の引き金を引いたのも、温暖化だと指摘する。気候変動で降雨量が減ったため、シリアは〇六年から一〇年にかけて、史上最悪といわれる干ばつに見舞われた。農地は荒れ果て、家畜を失い、難民化したシリアの農民は百五十万人に上るという。巨大化するハリケーンなどの自然災害は、低所得者層により大きな打撃を残し、格差を助長する。温暖化は今や、世界的な社会不安の温床にもなっている。世界銀行は今月初め、三〇年までに適切な温暖化対策が取られなければ、貧困層が一億人以上増えるという試算を発表した。増大する危機感が、国際社会の背中を押している。来年、米国は大統領選挙に染まり、大きな政策決定ができなくなる。パリで合意できないと、ルール作りは大きく後退するだろう。温室効果ガスの削減数値を先進国に割り当てた京都議定書とは違い、パリ会議では、参加各国が自主的に提示した「約束草案(目標案)」が合意の基本になる。
◆気温抑制 目標に届かず
 いつまでにどれだけ削減するか。目標の設定は参加各国の判断に委ね、達成までの過程と成果を、互いに監視、評価し合うという形を取ることになりそうだ。ガス排出量世界一の中国、二位の米国、三位のインド、それに産油国のサウジアラビアなども含め、これまでに約百八十の国と地域が目標案を公表済みである。世界の排出量の九割以上を占める国と地域が、新たな対策ルールへの参加を決めたことになる。議定書か、協定か、呼び名はまだ分からない。いずれにしても法的拘束力のある、何らかの合意文書が採択されるはずである。ただし、今のところ、各国の目標案をすべて足しても「二度目標」には届かない。国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は、先進国の工業化が始まった十九世紀末以来の地球の平均気温の上昇を二度未満に抑えなければ、地球上の生命や社会、経済などにも、取り返しのつかない悪影響が及ぶと、警告を発してきた。自主目標は恐らく五年に一度、見直されることになる。二度目標の達成に向けて、各国の自主目標を引き上げていく仕組みを盛り込まないと、“歴史的合意”の意義は薄れてしまう。三〇年度に一三年度比26%減という、日本の目標案の国際評価は高くない。途上国グループのリーダーとして、削減義務受け入れ反対の急先鋒(せんぽう)だった中国は、九月の米中共同声明で「低炭素経済」へ移行する方針を打ち出した。二酸化炭素(CO2)を大量に排出する企業に対しては、公的投資を減らしていくという。また再来年には、発電や製鉄などの主要産業にCO2排出量の上限を設け、過不足分を取引できる排出量取引制度を導入する。ところが日本は、原発の停止を口実に、CO2の大量排出源である石炭火力発電所の新増設にまい進し、その技術を途上国へ輸出しようと躍起になっている。一方、再生可能エネルギーの普及には、電力の安定供給に支障を来すと電力会社に請われるままに、ブレーキをかけつつあるようだ。逆行というしかない。
◆原発ゼロでも削減可能
 経済協力開発機構(OECD)は、日本の高効率石炭火力技術を温暖化対策とは認めなかった。昨年度の日本の温室効果ガス排出量は、原発がすべて停止していたにもかかわらず、五年ぶりに前年度を下回った。原発ゼロをきっかけに省エネと再生エネの普及が進み、発電由来のCO2が減ったのが主な理由という。これこそ日本がパリで強調すべき、方向性ではないか。パリ合意の採択は再生可能エネ時代の到来を、あらためて世界に告げることになる。このままでは日本は独り、世界の流れに取り残されていく。

*1-6:http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201512/CK2015120602000104.html (東京新聞 2015年12月6日) 「脱原発」銀座に響く
 脱原発を訴える集会が5日、東京都千代田区の日比谷野外音楽堂で開かれた。参加者約3000人(主催者発表)は集会後、経済産業省や東京電力本店前で「原発要らない」などと叫びながら銀座までデモ行進した。毎週金曜に首相官邸前でデモをしている首都圏反原発連合が主催。集会では、城南信用金庫(品川区)の吉原毅(よしわらつよし)相談役が「原発は採算に合わない。太陽光で地域が豊かになれば、原発は要らなくなる」と説いた。参加した豊島区の無職島村ひろ子さん(67)は「電力も足りているし、やめるべきだ。核燃料サイクルの資金を再生エネルギーの普及に使って」と話した。

<現代のエコ技術>
*2-1:http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150211-00000522-san-soci (YAHOO、産経新聞 2月11日) 「エネルギー収支ゼロ」実証棟の“カッコイイ!”大成建設が都市型で世界初
 大成建設技術センター(横浜市戸塚区)内にあるZEB実証棟(ZEB=ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)を見学する機会に恵まれました。建物単位で年間の一次エネルギー収支がゼロになることを目指すZEBに注目が集まる中、世界初という都市型ZEB実証棟について紹介したいと思います。
■「省エネ」から「ゼロエネ」へ
 日本の最終エネルギー消費(※1)の推移を見ると、全体の3割を占める民生部門は、産業・運輸部門に比べると過去からの増加が顕著です。民生部門の5割以上をオフィスや小売店舗、病院、学校などの業務部門が占めていますが、省エネ対策の強化がもっとも必要な部門ともいえるでしょう。エネルギー基本計画(平成26年4月11日閣議決定)では建築物については、32年までに新築公共建築物等で、42年までに新築建築物の平均でZEBを実現することを目指す。また、住宅については、32年までに標準的な新築住宅で、42年までに新築住宅の平均でZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)の実現を目指します。ZEBは21年に経済産業省から提案され、「建築物における一次エネルギー消費量を、建築物・設備の省エネ性能の向上、エネルギーの面的利用、オンサイトでの再生可能エネルギーの活用等により削減し、年間の一次エネルギー消費量が正味(ネット)でゼロまたはおおむねゼロとなる建築物」と定義されています。欧米や東南アジアなど世界的にZEB実現に向けての取り組みが始まっていますが、東日本大震災以降は国の支援が強化され、日本での取り組みにも注目が集まっています。
■国内、海外評価制度の最高位認証を国内で初めて取得
 26年5月末に竣工(しゅんこう)した大成建設技術センター ZEB実証棟(地上3階、塔屋1階、延べ床面積1277平方メートル)を訪ね、同社技術センター技師長の森川泰成氏に案内していただきました。外観で目にとまったのが、有機薄膜太陽電池を使った「発電する建物外壁ユニット」。大成建設と三菱化学が共同開発したもので、濃いグリーンの太陽光外壁ユニットは建築デザインと見事に融合して、思わず「カッコいい!」と声が漏れました。有機薄膜太陽電池は軽量なうえ、有機材料を用い、色の自由度が高く意匠性も高いため、太陽電池の用途が広がると期待されています。「この外壁ユニット内の太陽光発電システム部は建物の内側から取り外しや交換ができます。創エネ設備としては、屋上にも効率性の高い太陽光発電システムを設置しています。ほかにも燃料電池とコージェネレーションを導入し、電気と熱のエネルギーを高効率利用しています」(森川氏)
■評価制度の最高位認証取得
 ZEB実証棟は、国土交通省が26年4月に創設した「建築物省エネルギー性能表示制度」(BELS=BuildingEnergy-efficiency Labeling System)で最高位評価「五つ星」を取得しました。評価指標は一次エネルギー消費量が基本で、最高位評価の第1号となりました。また、「米国グリーンビル評価システム」(LEED=Leader ship in Energy and Environmental Design)-NC(New Construction=新築)で最高位のプラチナ認証を国内で初めて取得しました。年間消費エネルギーを一般のオフィスビルと比べて75%を省エネで削減し、残る25%を太陽光発電による創エネで賄い、年間エネルギー収支ゼロの実現を目指します。 2、3階は研究チーム員が実際に執務室として利用しているそうです。ZEB実証棟には「超省エネ型タスク・アンビアント空調システム」が導入されています。人のいる場所だけパーソナル空調の吹出し口を自動で空け、部屋全体は天井コンクリートスラブに埋設された配管に冷水(温水)を循環させる躯体放射空調を行っています。「冷水は、燃料電池の低温排熱を利用し、吸着式冷凍機で製造します。外気量も自動制御し、夏季でも省エネで快適なオフィス空間を実現し、知的生産性が落ちません」(森川氏)。オフィス内の消費エネルギーの約2割は照明ですので、消費エネルギーの最小化には効率的な照明システムも不可欠です。ユニークなのが、世界最高水準の性能を持つ有機EL照明パネルを使用した「オフィス向けタスクライト」が導入されていること。大成建設、三菱重工、岡村製作所の共同開発で、有機ELと自然光、天井照明、間接照明が統合的にデザインされています。タスクライトは快適な明るさと寿命、デザイン性も考慮されています。また、東光高岳と共同開発した人検知センサーにより、人の在・不在を判断し、空調の個別制御とともに無線によるLED天井照明の照度制御を行っています。「照明エネルギーを最小化するため、自然光は、天井面に照射してまぶしさ感を抑制し、部屋の奥まで光を到達させ、室内の明るさ感を向上させました。年間を通し、室内照明環境の実証・評価を行っていきます」(森川氏)
■耐震性の強化で安全性向上
 都市型ビルは狭い敷地に建てられることも多いことから、ZEB実証棟では耐震性を強化し、狭い敷地でも最大限に建築面積を確保できるように配慮されています。1階の柱に用いた超高強度コンクリート「Tas-Fine」は、世界最高強度で、一般のコンクリートに比べて10分の1の断面積で開放感ある空間をつくり、火災や地震の際の安全性を確保します。建屋地下には「都市型小変位免震」を導入。揺れの大きさに応じて抵抗力を切り替える新開発の「切替型オイルダンパー」によって、大地震が起きても30センチメートル以内に横揺れが抑えられます。見学の最後に、大成建設が新たに開発した「BIM-VR高速変換システム」のデモンストレーションを見せていただきました。BIM(※2、Building InformationModeling)のデータを、VR(VirtualReality=仮想現実)画像に1分半で高速変換するシステムで、3次元モデルや設計情報を立体画像として確認することができます。ZEB実証棟もBIMVR高速変換システムにより設計プロセスの検討・確認が行われました。ZEB実証棟の今後の課題は何ですか?「コストの低減が課題の1つです。また、さまざまな実証・評価で課題を1つずつ解決していき、32年までの商用化を目指したいと思います」(森川氏)。ZEB実証棟を見学して、未来の都市型ビルが「ゼロエネ」「快適性」「耐震性」「安全・安心」「デザイン性」といういくつもの要素を兼ね備え、想像以上に進化した姿であることに感嘆しました。実証棟に導入されている日本の技術力と創造力を世界にも大きくアピールしてほしいと思います。
※1=産業部門(工場など)や民生部門(オフィスや家庭など)、運輸部門で実際に消費されたエネルギーのこと
※2=コンピューター上に建物の3次元モデルを作成し、そこにコストや仕上げ、風の流れなどのデータを落とし込み、建築の設計、施工、維持管理に活用するツール
<松本真由美(まつもと・まゆみ):東京大学教養学部客員准教授(環境エネルギー科学特別部門)。上智大学在学中からテレビ朝日のニュース番組に出演。NHK-BS1ワールドニュースキャスターなどを務める。環境コミュニケーション、環境とエネルギーの視点から持続可能な社会のあり方を研究する傍ら、シンポジウムのコーディネーターや講演、執筆活動などを行っている。NPO法人国際環境経済研究所(IEEI)理事>

*2-2:http://qbiz.jp/article/75697/1/
(西日本新聞 2015年11月26日) 電気自動車、走行距離を5倍に 環境技術強化で政府戦略
 地球温暖化対策として政府は26日、燃料として使っても二酸化炭素(CO2)を排出しない水素の製造、貯蔵、輸送や、電気自動車(EV)の走行距離を現在の5倍にする次世代蓄電池など、環境分野の技術開発強化に向けた戦略を来年春にまとめることを決めた。また環境に配慮した投資の拡大や、省エネ性に優れた技術の普及を図る。日本は、温室効果ガス排出を30年度に13年度比26%削減するとの目標を設定しており、30日からの国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP21)を前に、さまざまな取り組みを進める姿勢を示した。目標達成には、企業や家庭などでの大幅削減の実現が課題となる。

*2-3:http://www.iza.ne.jp/kiji/economy/news/150118/ecn15011820590006-n1.html (産経新聞 2015.1.18) 
日本は世界3位の「地熱資源国」だ この貴重なエネルギーを大事に生かそう
 昨年、「日本地熱学会タウンフォーラム・青森地熱開発理解促進シンポジウム」でパネルディスカッションのコーディネーターを務めさせていただく機会がありました。第一線の研究者の方々と日本における地熱発電の今後について議論しました。今回は、シンポジウムで提供された情報の一部を紹介したいと思います。
■地熱発電開発が再活性化
 日本の地熱発電ポテンシャルは2300万キロワット以上で、米国、インドネシアに次ぐ世界3位の地熱資源量を誇ります。しかし、開発有望な地域の8割が国立・国定公園内にあること、温泉枯渇や周辺環境への影響を懸念する温泉事業者との摩擦の問題、また自然公園法、温泉法、森林法、電気事業法、環境アセスメント法などの許認可制度をクリアするため探査から開発まで15年程度かかり、初期コストが大きいことなどが普及の障壁とされてきました。国内には17カ所の地熱発電所がありますが、国立・国定公園の普通地域内では、平成11年に運転を始めた東京電力の八丈島地熱発電所(東京都)を最後に開発は進まず、発電設備容量53万キロワットは日本の全発電電力量の0.3%にすぎません。しかし、東日本大震災後、地熱が再評価されて各種の支援政策が復活し、開発市場が再び活性化しています。地熱開発には多くのメリットがあります。日本が世界有数の地熱資源量を有していることや、発電時の二酸化炭素(CO2)排出量がほぼゼロであること、他の再生可能エネルギーと比べて発電コストが低く、設備利用率が約80%と高く、ベースロード電源になることです。国もここにきて、太陽光に偏重した再エネ比率を是正するため、地熱や中小水力発電などを再エネ買い取り価格などで優遇し、普及を後押しする方針を示しています。(以下略)

*2-4:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/241041
(佐賀新聞 2015年10月19日) 完成間近のさが西部クリーンセンター視察
 4市5町でつくる県西部広域環境組合(管理者・塚部芳和伊万里市長)の首長ら組合議員12人は19日、完成間近で試運転中の広域ごみ処理施設「さが西部クリーンセンター」(伊万里市松浦町)を視察した。ガス化溶融炉は計2炉で1日最大205トンを処理する。余熱を利用して発電する蒸気タービン(3900キロワット)も備えた。粗大ごみは不燃性と可燃性に選別した後、鉄やアルミを再資源化する。総事業費は約170億円。施設本体工事は完了しており、現在は外構工事や搬入路の舗装工事などを進めている。9月から各自治体からのごみを搬入して試運転し、来年1月に営業運転を開始する。視察では工事関係者が施設の概要を説明した。見学者コースに沿って、粗大ごみを再資源化する「マテリアルリサイクル推進施設」と、ごみを熱分解、溶融処理する「エネルギー回収推進施設」の試運転の様子を見学した。塚部市長は「着々と完成に近づいている。非常に近代的でクリーンな施設だと感じた」と語った。

*2-5:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/257573
(佐賀新聞 2015年12月8日) 佐賀を海洋エネ先進県に「J☆SCRM」、産学官67団体で研究会
 海洋エネルギーの実用化で地方活性化を目指す「佐賀県海洋エネルギー産業クラスター研究会」が7日、発足した。唐津市呼子町の加部島沖が浮体式洋上風力発電と潮流発電の国の実証フィールドに選定されており、県は研究会を通じて産学官の連携を進め、10年後の2025年を目標に海洋エネルギーの先進県を目指していく。研究会には企業や官公庁、大学・研究機関など67団体が参加。国内唯一の海洋エネルギー研究開発拠点を伊万里市に持つ佐賀大学が中心となり、機械・金属、造船会社、金融機関などが名を連ねる。市場調査会社の試算では現在、世界の海洋エネ市場は1兆円ほどだが、2030年には9兆円台に達する。研究会では年2回会合を開き、情報交換を進めるほか、先進地視察、企業同士のマッチングの機会をつくり、関連産業の集積を図る。海洋エネ技術の実用化と量産化を進め、海洋エネの先進県を目指す。唐津市で開かれた設立総会では、山口祥義知事の提案で、会の名称を「佐賀県は産学官でスクラムを組み、海洋エネルギー産業を目指す」との思いを込めて「J☆SCRM(ジェイ・スクラム)」とした。実用化を目指す技術開発で地場企業参入の可能性もあり、会長に就任した建設機械製造ワイビーエムの吉田哲雄会長は「佐賀発の新技術を生むチャンス。多くの企業でエネルギー分野へ参入してみようという機運が高まってほしい」と述べた。現在、加部島沖で実証実験に取り組んでいるのは三井海洋開発(本社・東京)の1社だけ。同社の発電機は昨年12月に水没。今年5月に引き上げ、原因の究明は終えたが、実験の継続については社内で検討を続けている。

*2-6:http://www.saga-s.co.jp/column/economy/22901/254413
(佐賀新聞 2015年11月28日) 農業用水で小水力発電推進、導入へ運営研修
 用水路や揚水機場など農業水利施設を活用した小水力発電の推進を目指す研修会が19日、佐賀市のグランデはがくれで開かれた。県や市町、土地改良区の関係者ら55人が再生可能エネルギーの動向や小水力発電の仕組みなどを学んだ。小水力発電や太陽光発電の導入推進に向け、発電施設の整備や運営に必要な知識を学ぼうと開催。発電の事業運営に関する講演や先進地の事例の発表などがあった。九州経済産業局の植木健一郎・エネルギー対策課長は講演で、国産エネルギー資源の拡大や雇用創出など導入の意義を紹介。固定価格買取制度の課題や認定の条件などを説明した。農業用水を活用した小電力発電に取り組む「東京発電」の富澤晃・事業戦略グループマネジャーは「既存の水路を活用できる」「安定した発電が望める」「国が普及を促進している」などと説明。導入の条件として「一定以上の流量」「距離50メートル以内で7メートル以上の高低差」「200メートル以内に電力会社の電柱がある」などを挙げた。

<電力自由化>
*3-1:http://www.nikkei.com/article/DGXLZO92638580Z01C15A0EA1000/
(日経新聞 2015/10/9) 電力、広がる選択肢 小売り参入第1弾に40社
 2016年4月に全面自由化される電力小売りに参入する企業が明らかになった。経済産業省は8日、NTTグループが出資するエネット(東京・港)など40社を登録したと発表した。ガスや石油とセットで売るなど電力の販売方法が多様になる。登録企業は来年4月までに100社を超える可能性があり、地域独占の電力会社に限られていた家庭や中小企業の選択肢が広がりそうだ。経産省に「小売電気事業者」として登録した企業は16年4月からすべての消費者に電気を販売できる。10月7日時点で82社から登録申請があり、第1陣として40社が経産省と電力取引監視等委員会の審査を通過した。各社は大手電力が申請した送配電網の使用料金(託送料金)をもとに、年内にも料金プランやサービスを固める。第1陣の顔ぶれをみると、電力小売り市場開拓のビジネスモデルは大きく3つに分類できる。一つは自社の既存の顧客網を生かす戦略だ。札幌市地盤の北海道ガスは、都市ガス販売の顧客網を生かしてガスと電気のセット販売を検討している。まとめて買えば割安になるようにする。出光興産は子会社を通じて、風力発電などの電源を用意し約3700カ所の給油所などで販売する。もう一つは自社の設備やノウハウを活用してつくった電力を売る動きだ。機械メーカーの荏原の子会社である荏原環境プラント(東京・大田)は廃棄物処理設備の建設・保守管理で培った強みを生かし、自社や関連会社が建設した発電設備から電力を調達。企業などへの販売拡大を視野に入れる。地域の活性化や雇用創出の観点から参入する動きもある。一般財団法人の神奈川県太陽光発電協会は太陽光パネルでつくった電気を周辺地域で売る「地産地消」を志向。長野市のグリーンサークルが電源とするバイオマス発電は、燃料となる木材の切り出し・加工を通じて地元に雇用などの波及効果が見込める。「関西電力が2度にわたり値上げしたことで、当社に関心を持つ企業が増えている」。第1弾に入ったにちほクラウド電力(大阪市)の鈴木あかり社長は参入への手応えを感じている。東日本大震災後に値上げしてきた関電を下回る割安な料金を武器に中小企業などに契約切り替えを促す。

*3-2:http://qbiz.jp/article/75813/1/ (西日本新聞 2015年11月28日) 送電料の1割が原発費用、九電などが上乗せ申請 再生エネ業者も負担
 電力小売り全面自由化に向け大手電力9社が経済産業省に申請した送電線使用料(託送料金)に、使用済み核燃料再処理など送電と無関係な原発関連費用が上乗せされ、原価の1割近くを占めていることが分かった。託送料金は新規参入業者が送電線を所有する会社に支払うもので、原発を保有しない業者も原発費用を負担することになる。電気料金にも転嫁されるため「原発を所有する大手電力が負担すべきだ」と不満の声が上がっている。託送料金に上乗せする原発費用は、電源開発促進税と核燃料再処理費。促進税は立地地域交付金や安全対策、核燃料サイクルの研究開発など大半が原発関係に使われている。九州電力は1年間の託送原価を4536億円と申請、うち促進税324億円、再処理費76億円と原発費用が8・8%を占めた。大手9社では9・3%が原発費用だった。本来、託送原価は送配電に必要な費用を計上するのが原則。各社とも送配電にかかる人件費や送電設備の修繕費などを積み上げて算出している。送配電に無関係な促進税と再処理費を入れた理由について、電力各社は「国の制度に基づいて計上した」(九電)と説明する。経産省によると、促進税と再処理費は「電力の安定供給を実現するための費用で、全消費者が公平に負担すべきもの」などとして、2000年から段階的に自由化された大口向け電力の託送料金にも上乗せされてきた。来年4月からの全面自由化に伴い、経産省は原価の算定基準を見直したが、専門家会合の議論を踏まえ、促進税と再処理費を家庭向けも含めて上乗せすることを決めた。新算定基準では、太陽光や火力、風力などの電気を売る事業者も託送料金を通じて原発費用の負担を強いられる。自由化により、原発の電気を使いたくない消費者は大手電力以外の業者も選べるが、託送料金を含む電気料金を通じて原発費用を支払うことになる。託送料金は、電力取引監視等委員会が審査中で、年内にも申請額が妥当か結論が出る。
■自由化の意義に反する
 日本消費生活アドバイザー・コンサルタント・相談員協会の辰巳菊子常任顧問の話 全ての消費者が負担する託送料金に原発費用を入れるのは絶対におかしい。消費者の選択が将来の電源構成に影響を及ぼす自由化の意義にも反する。原発を使う電力会社が必要な費用を最初から最後まで責任を持つように制度を改めるべきだ。

*3-3:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12100173.html?ref=pcviewpage
(朝日新聞 2015年12月4日) 発電内訳開示、義務化せず 自由化後、電力会社に 経産省方針
 4日に開く同省の有識者会合で、電気事業法に基づく電力会社向けの指針案として示す。年内に広く意見を募るパブリックコメントにかけて、電力会社の営業活動が本格化する年明けにも実施する予定だ。指針案では、発電の内訳を示す電源構成の開示を「望ましい行為」と位置づける。電力会社に自主的な開示を促すが、違反した場合に勧告や罰則の対象となる義務づけはしない。発電による二酸化炭素(CO2)の排出量の開示も「望ましい行為」とするが、放射性廃棄物の量の開示は明記しない。開示の例としては、ホームページなどで項目ごとに、発電の内訳を円グラフで表示することが想定されている。開示する場合は、計画値と実績値を両方示すことが義務づけられる。計画通りに発電しなかったり、前年の実績から発電の内訳が変わったりすることがあるためだ。また、固定価格買い取り制度(FIT)を利用した再生エネは、「FIT電気(太陽光)」などと表示しなければならない。電力小売りの自由化が進む英独仏など欧州では、前年実績の開示が義務づけられている。日本でも消費者団体などは開示の義務づけを要望。一方、電力会社側は費用負担になるなどの理由で義務化には慎重だった。原発や石炭火力での発電を消費者に敬遠されるのを避けたい事情もあるとみられる。


PS(2015年12月9日追加):高木経産副大臣が、再稼働した九州電力川内原発を視察した後、伊藤鹿児島県知事や岩切川内市長と会談し、「再稼働にあたってリーダーシップを発揮し、協力を頂いたことに感謝する」と述べられたそうだが、“リーダー”とされる人たちがこうだから日本は方針を誤ってエネルギーの変換が遅れたのだ。そして、どんなに「リスクコミュニケーション」をしても、原発事故のリスクは0ではないのであり、一度でも過酷事故が起これば取り返しがつかないのは、既にフクイチで証明されている。

*4:http://qbiz.jp/article/76020/1/
(西日本新聞 2015年12月2日) 経産副大臣が川内再稼働感謝 視察後、知事と薩摩川内市長訪問
 高木陽介経済産業副大臣は1日、再稼働した九州電力川内原発(鹿児島県薩摩川内市)を視察後、伊藤祐一郎知事や岩切秀雄市長と会談し、「再稼働にあたってリーダーシップを発揮し、協力を頂いたことに感謝したい」と述べた。川内原発が再稼働後、原子力政策を進める政府要人が県や市を訪れるのは初めて。高木副大臣は会談で「安全性について、住民に理解してもらうため、引き続き連携したい」と述べ、国のエネルギー政策への協力を呼び掛けた。伊藤知事や岩切市長は、国が九電に対し安全運転を強く指導するよう求めた。また、岩切市長は使用済み核燃料の最終処分場の早期完成についても要請し、高木副大臣は「国の責任として手順を踏みながらやる」と応じた。高木副大臣は県庁で記者団の取材に応じ、「(川内原発の安全対策に)福島の事故の教訓が生かされ、現場の職員が安全に対する意識を高いレベルで持っていると実感した」と話した。また、住民の放射線の不安に対し、リスクについて情報共有して相互理解を図る「リスクコミュニケーション」をきめ細かく行っていく考えを示した。

<自動車取得税について>
PS(2015年12月10日追加): 自動車取得税は、現在、グリーン税制として低公害車・低燃費車について軽減されているが、一つの購買取引に対して消費税と同時に課されるため二重課税であり、2017年4月の消費税10%への増税時の廃止が決まっていた。そして、自民党は、自動車取得税の廃止と同時に燃費新税を創設するそうだが、創設すべきなのは、*5のような燃費性能で取得時の税率を分ける新税ではなく、公平・中立・簡素に化石燃料の使用に比例して課税する化石燃料税(炭素税または環境税)だ。何故なら、そうでなければ安全性を無視しても軽い車さえ作ればよいことになって、環境、安全性、低燃費、エネルギー自給率の向上を同時に達成することができないからである。

    
 *5より     日産EVトラック     ホンダ燃料電池車     水素ステーション   高速充電器

*5:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20151209&ng=DGKKASFS09H0D_Z01C15A2MM0000 (日経新聞 2015.12.9) 燃費新税、半数が非課税 17年度から、車取得税を廃止 消費増税の影響緩和
 自民党税制調査会は9日、2017年4月の自動車取得税の廃止と同時に導入する新税の全容を固めた。購入時に燃費性能に応じて支払う仕組みで、環境負荷の低い車が税率0%となる枠を拡大する。17年度は新車販売台数の半数以上が該当する見込み。自動車購入にかかる税収規模を取得税より200億円ほど抑え、実質減税とする。消費税率10%への引き上げによる販売の落ち込みを和らげる狙いだ。自動車をめぐる税制は現在、購入時に消費税や取得税がかかるほか、普通車の持ち主は自動車税、軽は軽自動車税を毎年支払う。購入時と車検時には自動車重量税もかかる。車の保有にかかる税も17年度以降の負担減を検討する。燃費に応じた新税は取得税を廃止する代わりに創設し、取得税と同様、自治体に支払う地方税とする。公明党との協議をふまえ、10日をメドにまとめる16年度与党税制改正大綱に盛り込む。新税は燃費に応じて税率が変わり、普通車は購入額の0、1、2、3%の4段階の税率をかける。軽自動車は0、1、2%の3段階とする。2年ごとに見直す。普通車、軽自動車とも国土交通省が定める20年度の燃費目標基準を10%以上上回る車種を税率0%とする。今年4~8月の新車販売実績をみると、台数ベースで全体の5割がこの条件を満たしていた。自動車メーカーの技術開発により、新たに投入する車種の燃費は年々向上している。このため、17年度時点では新車の半数以上が税率0%となる見通しだ。現在の取得税にも環境に優しい車を対象にしたエコカー減税があるが、非課税となる車は台数ベースで新車全体の30~40%にとどまる。新税の税収規模は取得税の1096億円から約890億円に減らす。トヨタ自動車の「プリウス」やホンダの「フィット」といったハイブリッド車やスズキの「アルト」などの低燃費の軽自動車は現在でも新税でも税率0%。日産自動車の「ノート」やダイハツの「タント」などは現在は取得税がかかっているが、新税では0%となる。自民税調はエコカーを買う場合に翌年度の自動車税を軽くする「グリーン化特例」も見直す。現在は大部分の車が減税対象になっている。より環境に優しい車への買い替えを促すため対象を絞る。保有にかかる税については17年度税制改正を議論する来年末にも負担減の詳細を決める方針だ。自動車の新税をめぐっては結論の先送りを求める自動車業界や経済産業省と早期決着を訴える地方自治体や総務省が対立していた。調整が難航していた自動車の税制がほぼ固まり、16年度の与党税制改正大綱の論点は消費増税時に取り入れる軽減税率の制度づくりを残すだけとなった。自公の溝は埋まらず、両党はギリギリの調整を続けている。


PS(2015年12月13日追加):*6-1のCOP21合意は、化石燃料から自然エネルギーへの歴史的転換として、各国で歓迎されている。そのような中、日本は、*6-2のように、エネルギー政策を理念なき利益誘導と感情論で決めた結果、リーダーになれるどころか逆噴射になった。日本の2030年のエネルギーミックスは、経過的には再生可能エネルギーとLNGとし、なるべく早い時期に再生可能エネルギーのみとすべきだったのであり、それらは日本に存在する資源なのである。

      
 2015.12.13日経新聞   2015.4.24日経新聞

*6-1:http://mainichi.jp/articles/20151213/ddm/001/040/088000c
(毎日新聞2015年12月13日) 温暖化対策、合意へ パリ協定 18年ぶり枠組み
 パリで開催中の国連気候変動枠組み条約第21回締約国会議(COP21)で12日、フランス外相のファビウス議長は「パリ協定」の最終合意案を提示し、採択される見通しとなった。1997年に採択された京都議定書に代わる、18年ぶりの地球温暖化対策の枠組み。石油・石炭など化石燃料に依存しない社会を目指し、条約に加盟する196カ国・地域が参加する史上初めてのルールとなる。パリ協定は「産業革命前からの気温上昇を2度未満に抑える」という国際目標を明記。海面上昇によって国土の消失などが懸念される島しょ国が強く求める「1・5度未満」も努力目標として併記した。「世界全体の排出量をできるだけ早く頭打ちにし、今世紀後半には排出を実質ゼロにする」ことを初めて盛り込んだ。これらを達成するため、各国が自主的に削減目標を作成し、国連に提出、対策をとることを義務付けた。合意を優先した結果、目標の達成義務化は見送られた。実施状況の報告と目標の5年ごとの見直しを義務化、その内容を公表する。最大の争点だった途上国への資金支援は、先進国が拠出する具体的な目標額を協定には盛り込まず、法的拘束力のない別の文書に「年1000億ドル(約12兆3000億円)を下限として新しい数値目標を2025年までに設定する」とした。一方、先進国以外にも自発的に資金の拠出を求め、双方歩み寄った。
■パリ協定案 骨子
 ・産業革命前からの気温上昇を2度未満に抑える。1.5度未満になるよう努力する
 ・できるだけ早く世界の温室効果ガス排出量を頭打ちにし、今世紀後半に実質ゼロにする
 ・2023年から5年ごとに世界全体の削減状況を検証する
 ・全ての国に削減目標の作成と提出、5年ごとの見直しを義務付ける
 ・温暖化被害軽減のための世界全体の目標を設定する
 ・先進国に途上国支援の資金拠出を義務付けるが、他の国も自発的に拠出することを勧める
 ・先進国は現在の約束よりも多い額を途上国に拠出する

*6-2:http://www.nikkei.com/article/DGXLASDF23H1W_T20C15A4MM8000/
(日経新聞 2015/4/24) 原発比率20~22%に 30年電源構成、経産省案、震災前から減
 経済産業省は23日、2030年時点の望ましい電源構成「ベストミックス」について、原子力の比率を20~22%とする原案を関係閣僚に示した。東京電力福島第1原発の事故を踏まえ、原子力の比率を東日本大震災前の約30%から減らす一方、太陽光などの再生可能エネルギーは原子力よりやや高い22~24%とする。経産省は「総合資源エネルギー調査会」(経産相の諮問機関)の長期エネルギー需給見通し小委員会で示し、5月中の正式決定をめざす。温暖化ガスの排出を減らす前提とする。既存の原発について、十数基が原子力規制委員会の安全審査に合格して最大20年運転を延長できれば、原発の電源構成を20%以上にできるとみられる。ただ実際に運転延長の対象となる原発が何基かは不透明なため幅を持たせる。太陽光や風力などの再生エネの比率は現在10%程度にとどまる。地熱や水力、バイオマスにはまだ拡大の余地があるとして比率を引き上げる。火力発電は全体の5割半ばを占める。温暖化ガス排出量が多い石炭火力を26%と13年度の30%から減らす一方、液化天然ガス(LNG)火力は27%とする方向だ。


PS(2015年12月15日):*7-1、*7-2のように、COP21は2015年12月12日に「今世紀後半に世界の温室効果ガスの実質排出量ゼロを目指す」という正しい決定を行った。これには、米国、中国、日本など190カ国を超える国が参加することとなり、1997年採択の京都議定書(排出削減義務は先進国のみ)以来18年ぶりの歴史的枠組みが誕生して、この18年間の技術進歩により化石燃料に依存する経済社会の変換が現実となった。 
 しかし、京都議定書をまとめた日本はその後は迷走し、*8-1のように、同日、安倍首相がインドのモディ首相と会談して、(日本の新幹線システム導入が決まったのはよいが)日本からインドへの原発輸出を可能にする原子力協定について合意したそうだ。これには、すかさず*8-2のように、ニューヨークで在留邦人など十数人が、「フクシマ原発事故は終わっていないのに、インドに原発を売っている場合か」と抗議の声を上げ、私はニューヨークの寒さ中でのその迅速で勇気ある行動に感心した。

      
       2015.12.14西日本新聞(*7-1)        2015.12.13東京新聞(*8-2)

<世界のエネルギー変換決定>
*7-1:http://qbiz.jp/article/76848/1/ (西日本新聞 2015年12月14日) 温暖化対策 パリ協定採択 190ヵ国超に排出削減義務 COP21
 パリ郊外で開かれた国連気候変動枠組み条約第21回締約国会議(COP21)は12日、2020年からの実施を目指す地球温暖化対策の新たな枠組み「パリ協定」を採択した。今世紀後半に世界の温室効果ガス排出量を実質的にゼロにするのを目指す。米国や中国、日本など190カ国を超える国が参加する。先進国だけに排出削減を義務付けた1997年採択の京都議定書以来、18年ぶりの歴史的枠組みの誕生で、化石燃料に依存してきた社会や経済の在り方が大きく変わりそうだ。協定は、産業革命前からの気温上昇を2度未満に抑える目的を明記した上で被害の深刻な小さな島国に配慮して1・5度に抑えるよう努力する意思も示した。より具体的な削減の道筋を示した長期目標も提示。世界の温室ガス排出をできるだけ早く減少に向かわせ、その後急速に減らすことで、今世紀後半に温室ガス排出量と森林や海による吸収量とのバランスを取るとした。排出量を実質的にゼロにすることを意味する。各国はそれぞれ削減目標を定め、国内対策を進める義務を負う。達成の義務化は見送られ、議定書に比べ法的拘束力が緩くなった。削減の実効性を担保するために、対策の進み具合を評価し、目標を5年ごとに見直す仕組みも設けた。また削減の進め方について、先進国が主導する責任を明確にする一方で、途上国も将来、先進国のような総量削減目標を持つことを推奨した。焦点の一つになっていた途上国への資金支援は先進国側の拠出を義務化。また他の国は自主的に支援するよう求めたが、パリ協定に具体的な金額は盛り込まれなかった。支援額は別の決議文書で示され、既に合意のある年1千億ドル(約12兆円)を最低額として、25年までに新たな数値目標を提示するとした。COP21はパリ同時多発テロ後の厳戒態勢の中、11月30日に始まり、12月13日に全議題を終え閉幕した。
    ◆    ◆    ◆
●首相「最重要課題」
 安倍晋三首相は13日、「パリ協定」の採択について「公平な合意が得られた。高く評価する」とした上で「内閣の最重要課題として取り組む」と決意を示す談話を発表した。温室効果ガス排出量を2030年度までに13年度比で26%減らすとの日本の目標に関し「経済成長を犠牲にせず達成していく」と指摘した。
    ◆    ◆    ◆
●文明史的な転換
環境保護団体「気候ネットワーク」の浅岡美恵代表の話
 パリ協定によって、先進国と発展途上国が協力し、世界が足並みをそろえた地球温暖化対策がようやくスタートする。パリ協定は(各国の目標の継続的な見直しと向上を盛り込むなど)長期にわたり切れ目のない仕組みになっている。文明史的な転換だ。実のあるものにするのは各国やわれわれの取り組みにかかっている。目標の見直しに加え、国内対策の実施も求められており、この数年、基本的な温暖化対策の計画がない日本にとっても極めて大きな意味がある。

*7-2:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12116622.html (朝日新聞 2015年12月14日) 温暖化対策、パリ協定採択 全ての国に実施義務 新枠組み「京都」以来 COP21
 「小さな木づちが、大きな仕事をやってのける」。12日午後7時半前、議長のファビウス仏外相がパリ協定の採択を宣言すると、会場が総立ちになり拍手は断続的に5分間続いた。採択後、丸川珠代環境相は記者団に「世界を変えていく非常に重要な合意だ」と話した。パリ協定では、産業革命前からの気温上昇を「2度よりかなり低く抑える」とともに、「1・5度未満に抑えるよう努力する」と盛り込んだ。その上で、温室効果ガスの排出を今世紀後半には実質ゼロにすることを目指す。そのために、すべての国に削減目標の作成・報告を義務化。5年ごとに世界全体で進み具合を管理し、各国の目標を出し直す仕組みも設けた。先進国は、国全体から排出される総量の削減に取り組むが、制度が整っていない途上国はできるところから始め、やがて総量で減らすように求める。最後まで残っていた論点だった先進国から途上国への資金支援は、引き続き先進国が義務を負うとともに、経済力をつけた新興国にも自発的に資金を出すよう促す。(パリ=香取啓介)
■<解説>排出ゼロへ長期目標
 パリ協定では、すべての国が参加できるよう、米国などが反対する温室効果ガスの削減目標の「達成」は義務化できなかった。罰則がある京都議定書(1997年採択)に比べれば厳格さに欠ける。しかし、達成のための国内対策の実施は義務化され、世界全体で排出量を減らす仕組みが設けられた。一つは温暖化対策の長期目標だ。「気温上昇を2度未満に抑える」ために「今世紀後半に人為的な排出と吸収を均衡させる」と明確にした。「実質排出ゼロ」を目指すということだ。さらに温暖化の影響を受けやすい島国などが求めていた「1・5度」も努力目標として入った。このためには、実質排出ゼロを前倒しで実現する必要があり、石炭や石油など排出の多い化石燃料に頼る時代を終わらせることを意味する。二つ目は、長期目標の達成に向けた定期的な点検と見直しの仕組みだ。各国が提出した目標を足し合わせた効果を5年ごとに世界全体で点検し、その結果を受けて自国の目標を更新する機会を与え、対策を徐々に強化する。各国は2025年または30年に向けた目標を掲げているが、これは通過点に過ぎない。日本の「30年度までに13年度比26%減」の目標も、5年ごとに見直すことになる。各国は実質排出ゼロ社会に向けた長期戦略作りが急がれる。協定では「持続可能なライフスタイルや消費・生産の重要性」も強調した。自治体や企業、市民社会も積極的に参加し、国をリードすることが求められる。
■「パリ協定」の骨子
【世界全体の目標】
 ・気温上昇を2度よりかなり低く抑える。1.5度未満に向けて努力
 ・今世紀後半に温室効果ガスの排出と吸収を均衡させる
【各国の削減目標】
 ・作成・報告、達成の国内対策を義務化
 ・5年ごとに更新。後退させない
【途上国への支援】
 ・先進国に拠出を義務化
 ・途上国に自主的な拠出を奨励
【温暖化の影響への対策】
 ・被害の軽減策を削減策と並ぶ柱に
 ・途上国で起きつつある被害の救済策に取り組む

<日本の行動>
*8-1:http://digital.asahi.com/articles/ASHDD5GMCHDDULFA00Q.html
(朝日新聞 2015年12月12日) 日印首脳、原子力協定に「原則合意」 原発輸出可能に
 安倍晋三首相は12日、インドのニューデリーでモディ首相と会談した。両首脳は、日本からインドへの原発輸出を可能にする原子力協定について「原則合意」した。インドは核不拡散条約(NPT)に加盟しておらず、日本が非加盟国と協定を締結すれば初の事例となる。また、両首脳はインドの高速鉄道計画をめぐり、一部区間で日本の新幹線方式を採用することも確認した。日印の原子力協定交渉は民主党政権時代の2010年に始まった。唯一の被爆国である日本は核廃絶を目指す立場から、核実験を1998年以来、一時停止しているインドが実験を再開した場合、日本の協力を停止する措置を盛り込むことを求めてきた。だが、この日公表された共同声明や別途署名された原子力協定に関する覚書にはこうした措置は盛り込まれておらず、今後の交渉に委ねられた。NPT非加盟のインドと協定を締結すれば、核不拡散を掲げる日本の原子力政策は大きな節目を迎えることになる。両首脳が会談後に発表した共同声明で、原子力協定については「技術的な詳細が完成した後に署名されることを確認」とした。安倍首相は会談後の共同記者発表で「日印間の平和的目的の原子力協力に基礎を与える協定につき、原則合意に至った」と述べた。日本側の説明によると、安倍首相は首脳会談で、万が一インドが核実験を行った場合は協力を止めることを伝えたという。日本政府はこの発言がインドへの歯止めになるとしている。また、会談では商業都市ムンバイとアーメダバード間(約500キロ)の路線で、日本の新幹線方式を採用することを確認。日本は総事業費約1兆8千億円のうち、最大81%の円借款を低金利で供与する。新幹線が導入されれば海外では台湾に次ぎ2例目となる。このほか、両首脳は海洋進出を強める中国を念頭に南シナ海情勢について「変化に留意する」との認識で一致。防衛装備品・技術移転や秘密軍事情報保護の協定も結び、安全保障分野で協力を進めることを確認した。
■日印共同声明の骨子
 ●防衛装備品・技術移転協定、秘密軍事情報保護協定の締結歓迎
 ●日印米・日印豪3カ国対話など促進
 ●原子力協定の合意歓迎。技術的な詳細が完成した後に署名されることを確認
 ●日本の新幹線システム導入に関する覚書署名を歓迎
 ●南シナ海における変化に留意。地域の緊張につながる一方的な行動回避を呼びかけ
 ●核兵器廃絶に向けたコミットメントを再確認

*8-2:http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2015121301001025.html
(東京新聞 2015年12月13日) NYで日印原発協定に抗議 「事故終わってない」
 【ニューヨーク共同】「フクシマの原発事故は終わってない。インドに原発を売っている場合か」。日本とインドが原子力協定の締結に原則合意したことを受け、米ニューヨーク・マンハッタン中心部の大通りで12日、協定に反対する在留邦人ら十数人が、東京電力福島第1原発事故に触れながらデモを行った。参加者は「日印原子力協定やめろ」と書かれたプラカードを掲げたり、太鼓をたたいたりして抗議の声を上げた。ニュージャージー州の会社員(46)は「核拡散防止条約(NPT)未加盟のインドに、核兵器に転用される恐れのあるものを日本が輸出するのは許されない」と強調した。

| 資源・エネルギー::2015.5~2016.12 | 02:49 PM | comments (x) | trackback (x) |

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