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2016.4.4 電力自由化からクリーンエネルギーの選択へ ← 放射能公害を考慮できない人は、エネルギーや環境を語る資格がないこと (2016年4月4、6、7、9、11、12日に追加あり)
 
    電力自由化     世界の自由化状況   上      2016.3.31西日本新聞  上  
                          (原発より再生可能    (まだ電力自由化の仕組みがわか
                           エネルギーの方が     っていないのは、スポーツ・犯罪・
                           高いとしているのは、   天気をはじめ、馬鹿な番組しか
                           意図的で変である)    放送できないメディアの責任だ)

(1)「パリ協定」がなければ、温暖化対策もできなかった我が国の環境意識の低さ
1)イノベーションによる経済成長があるのに・・・
 国連の会議で2020年以降の温暖化対策国際的枠組み「パリ協定」が採択され、「今世紀後半に世界全体で温暖化ガスの排出量をゼロにする」とされた。そこで、イノベーションによって経済成長を達成し、より住みやすい国にするためには、*1-1のように、省エネや炭素税も重要だが、①発電の分散化 ②電力の地産地消 ③水素の利用 ④蓄電池の進歩と自然再生可能エネルギーの利用によって、すべての産業で使用するエネルギーを、安くて公害(当然、放射性物質やNOx、SOxなどの排出による公害も含む)の出ない方法で創ることが必要である。

 このうち、④の蓄電池は、*1-3のように、現在の100倍以上高速に充電できるリチウムイオン電池が開発され、これは、携帯端末、ウエアラブル機器、電気自動車のコスト削減と加速性能の向上に繋がるため、5年以内の実用化を目指すそうだ。「5年以内の実用化」というのは相当のんびりしているが、経産省も最近は、遅ればせながら2020年における世界の蓄電池市場は20兆円で、そのうち車載用蓄電池は8兆円に達すると推定しているとのことである。

2)環境の快適化もできるのに・・・
 環境を快適化するには、温室効果ガス(CO2)を削減して地球の気温上昇幅を2度以内に抑えるだけでよいわけではないが、*1-2のように、政府の「エネルギー・環境イノベーション戦略」案では、2050年の実用化を目指して重点的に開発を進める分野として、システム、省エネ、エネルギー貯蔵、自然エネルギー、二酸化炭素固定化の五つと人工知能を挙げたそうである。

 本当は、①どの公害も出さない ②自然の緑に囲まれた便利で居心地のよい街づくり など、必要なことは温室効果ガスの削減に限らず、いくらでもある。

(2)電力自由化のスタート
1)電力自由化の不完全性について
 (私が提案して始まった)電力小売りの全面自由化が、*2-1のように、2016年4月1日に始まり、大手電力会社10社の地域独占は廃止されて、8兆円規模の市場に新電力約260社が参入したそうだ。しかし、電力料が安くなれば、他のエネルギーから電力への切り替えが進むため、電力市場が8兆円に留まることはない上、発電方法を選べばクリーンなエネルギーを純国産で供給できるため、電力自由化とそれに伴う再生可能エネルギーへの転換は、日本にとって100点満点の解決になる。

 そのため、*2-2、*2-3に書かれているように、この電力小売り全面自由化は再生可能エネルギーを伸ばす契機にしたく、間違っても原発依存に逆戻りさせたくないため、新電力には脱原発の原動力になって欲しいわけである。そして、それができるためには、消費者が電源を選択できるよう電力会社の発電方法開示は義務化すべきで、新電力が大手電力会社に支払う送電料に原発の使用済核燃料再処理費が算入されるなどの制度上の問題点も解消されるべきだ。つまり、政府は、原発ありきの不公平な姿勢を改めるべきなのである。

 *2-3に、信濃毎日新聞が、電力自由化で社会を変える市民の選択が可能になると題して、課題はいくつも残されており、送配電網の恣意的運用や不適正な使用料金を挙げている。大手電力の発電部門と送配電部門の分離が4年後に先送りされたことで、その間に新電力が破産してはせっかくの電力自由化も無意味になるため、公正な競争が不可欠なのである。しかし、他の産業と同様に公正取引委員会ではなく電力取引監視等委員会が監視する役割を担うのは、既に公正とは言えない。

2)九州では
 九州では、*2-4のように、九電の入社式で、瓜生社長が「原発の早期再稼働で収支改善目指す」と述べたそうだ。九電は、昨年、川内原発1、2号機(鹿児島県)を再稼働させ、2016年3月期の連結決算は5年ぶりに黒字転換する見込で、九電の社長は「抜本的な収支改善に向け、玄海3、4号機(東松浦郡玄海町)の早期再稼働を目指す」と強調したそうだが、原発にはリスクと多額の税金と未解決の多くの問題が残されており、それを明るみに出すには、金額で示すのがよいだろう。

 さらに、*2-5は「安い電気、消えぬ不安 過当競争、寡占再来も」と題しており、「①電力小売りが全面自由化され、100社を超す企業が家庭向け市場に参入した」「②競争が激化する中、新電力大手が撤退や収益悪化を余儀なくされるなど早くも厳しい選別にさらされている」「③電気を自由に選ぶ時代は何を意味するのか。競争相手が増え、営業現場では激しい値下げ合戦が繰り広げられている」「④先行して自由化を進めた欧米では新電力の倒産や発電設備への投資抑制が続出し、大手の寡占が進んで逆に料金が上がった例もある」「⑤電気はつくれば売れるものではなくなった」など、西日本新聞は後ろ向きの発言が多い。

 しかし、①③⑤は、どの市場でも普通に起こっていることで、これまでは電力についてのみこのような市場競争がなく地域独占であったため、総括原価方式が通用して料金が高止まりし、あらゆる産業の足を引っ張っていたのだ(こんなことも知らないで記事を書いた?)。さらに、②は、電力会社の発電方法の開示を義務化して消費者が電源を選択できるようにし、新電力が大手電力会社に支払う送電料の問題点も解消して、送配電網の恣意的運用を不可能にして初めて、公正な市場競争ができるものである。また、④のヨーロッパの事例は、仮にそれが本当であったとしても、日本でもそれを繰り返す必要はない。

 そして、これらを速やかに解決する手段として、上下水道を持っている地方自治体が送配電設備を作って公正中立で安価な送配電料で送配電を行えば、電線の地中化も同時に行われてよいと考える。

(3)原発回帰はありえない
 *3-1のように、安倍首相が、核物質や核施設の防護・管理強化を話し合う「核安全保障サミット」で演説して、フクイチ事故を踏まえ「日本は二度とあのような事故を起こさないとの決意の下、原子力の平和的利用を再びリードすべく歩み始めた」と原発の再稼働推進を宣言されたそうだ。

 しかし、いくら決意しても、原発事故発生の確率が0でなく低いとも言えないことは、フクイチ後の日本の対応を見れば誰にでもわかることだ。そのため、事故の教訓を活かすなら、原発は止めてエネルギーの転換を行うべく、イノベーションを進めるべきである。

 なお、*3-2のように、ブリュッセルで起きた連続テロを受けて、仏エネルギー大手エンジーは、ベルギー当局の要請を受け、同社が運営するベルギー南部ティアンジュ原発の稼働中の原発の大半の作業員を避難させたそうだ。

 また、*3-3のように、福島県下の多くの小中学校周辺の土壌で、「放射線管理区域」を上回る高濃度のセシウムが検出されるという驚愕の事実が「女性自身」に続き「週刊プレイボーイ」の調査でも判明したが、原発村広告漬けの「週刊新潮」は影響を否定しているそうだ。住民を被爆させながら県や村を維持するのは守るべきものを間違えているため、他の原発地元も為政者のこの発想を忘れてはならない。

 さらに、*3-4のように、フクイチ事故を受けて茨城や千葉の市民団体が1800人余りの子どもの甲状腺を検査したところ、「小さなしこりやのう胞と呼ばれる液体がたまった部分があるものの、特に心配はなく経過観察」とされた子どもが1139人、「一定以上の大きさのしこりなどがあり、さらに詳しい検査が必要」とされた子どもが7人で、担当医師は原発事故の影響とは判定できないとしているそうだが、それは疫学調査をすればすぐわかることである。そして、原発事故の影響を受けるのは子どもだけではない。

 *3-5のように、フクイチ事故に伴って福島県の避難指示区域外から千葉県に自主避難した6世帯20人は、国と東電に計2億2千万円の損害賠償を求め、国と東電側は請求棄却を求めているそうだ。

 このような中、*3-6のように、九電川内原発(鹿児島県薩摩川内市)から30〜40キロ圏の鹿児島県出水市、阿久根市、伊佐市と熊本県水俣市の複数の脱原発市民団体や市議が、2016年4月24日、新組織「川内原発を考える肥薩ネットワーク」を設立するそうだ。新組織の会員は200人規模で、4市の市議5人も加わる予定であり、「互いの地域の課題を持ち寄り、協力して活動したい」とのことである。

*1-1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20160325&ng=DGKKZO98811600U6A320C1KE8000 イノベーションを考える 第5章 成長に果たす役割(6) 「パリ協定」が電力後押し 東京大学教授 大橋弘
 昨年末に、国連の会議で2020年以降の温暖化対策の国際的枠組み「パリ協定」が採択されました。今世紀後半に世界全体で温暖化ガスの排出量をゼロにすると定めています。パリ協定を踏まえ、わが国は「地球温暖化対策計画案」をまとめ、省エネルギーと再生可能エネルギーで野心的な目標を設定しました。省エネでは2%程度の経済成長を前提にしながら、30年度に向け、12年比で35%のエネルギー効率改善を目指しています。過去20年間の効率改善は約10%ですので、極めて高い目標です。1970年代は石油価格の高騰が省エネ技術を発展させました。石油価格が低迷する現在では、それに代わる省エネのインセンティブ(誘因)が必要です。炭素税はその候補になりえます。家庭や運輸部門など各部門間でバランスの良い省エネ技術の開発が求められます。再生エネでは現状の2倍の導入量が目標ですが、低廉・大容量で長寿命の蓄電池の開発が有効です。日が沈むと発電しない太陽光発電も、蓄電池が登場すれば夜でも太陽光で発電した電気を使えます。蓄電池の普及は再生エネの分散型電源としての価値を高め、地域で発電した電気をその地域で消費できるようになります。電力の地産地消が進むと電気を他地域から送る必要が減り、送電に伴う損失も減少します。一方で地産地消を超えて再生エネを大量導入する施策も取られており、政策の整合性が必要です。また、余った電気を水素に変換して利用すれば、水素を使った燃料電池車の普及を後押しする可能性があります。人口減などを背景に国内の電力需要は今後低減していきます。電力分野の技術開発は海外展開を視野に入れる必要があります。送配電系統が脆弱な新興国地域では、電力システムの分散化に向けたイノベーションは特に重要です。技術的に旧態依然といわれる電力システムですが、分散化を推し進めれば、イノベーションが起こる日はそう遠くないかもしれません。

*1-2:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12275353.html
(朝日新聞 2016年3月25日) 温室ガス削減へ技術戦略 人工知能活用・700キロ走れる蓄電池
 内閣府の有識者会合は24日、革新的な技術を開発して温室効果ガスの排出を大幅に減らすことを目指す「エネルギー・環境イノベーション戦略」の案をまとめた。日本発の技術を実現、普及させることで、世界全体の排出量を最大で年100億トンほど減らす効果を期待するという。昨年末の国連気候変動会議(COP21)に合わせ安倍晋三首相が策定を指示していた。政府の総合科学技術・イノベーション会議で4月中にも正式決定する。戦略案では、2050年の実用化を目指し重点的に開発を進める分野として、システム、省エネ、エネルギー貯蔵、自然エネルギー、二酸化炭素固定化の五つを挙げた。発電量が変動する自然エネルギーを増やすため、人工知能などを活用して電力システム全体を効率化させる技術などを盛り込んだ。内閣府によると、世界全体の排出量は30年に約570億トンと見込まれている。気温上昇幅を国際社会が目指す2度以内に抑えるには、50年までに300億トン以上減らす必要がある。戦略案に掲げた技術を普及させることができれば、数十から100億トンほどの削減につながるという。今後、産業界とも連携して開発を進める。島尻安伊子科学技術担当相は「2度目標を実現するためにはイノベーション(技術革新)なくしては不可能」と述べた。

*1-3:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20160404&ng=DGKKZO99229380T00C16A4TJM000 (日経新聞2016.4.4)充電100倍速い電池 カネカと愛知工大、リチウムイオンで
 カネカと愛知工業大学の森田靖教授らは、100倍以上高速に充電できるリチウムイオン電池を開発した。電極に独自開発の有機材料を使っており、携帯電話なら10分で充電できるとみられる。携帯端末やウエアラブル機器、電気自動車などの用途に向けて、5年以内の実用化を目指す。開発したリチウムイオン電池は、正極の材料として、TOTと呼ぶ有機分子にカーボンナノチューブを混ぜたものを用いた。体積あたりにため込める電子の数が多く電気伝導度も高いため、効率よく充放電できる。試作した体積1立方センチメートルのコイン型リチウムイオン電池は36秒で充電でき、5000回充放電をしても性能が落ちなかった。携帯電話用の大きさなら10分ほどで充電が完了する見通し。大容量の電池が必要な電気自動車でも、充電時間を大幅に短縮できる。現在のリチウムイオン電池は正極に希少金属であるコバルトの酸化物を用いており、同じ大きさのコイン型電池の充電に数時間かかる。大電流を得るのも困難で、電気自動車では加速時などに備え、電気をため込んで一気に流すキャパシタという装置を搭載している。新開発の電池は大電流を流せるのでキャパシタが不要になる。コスト削減と加速性能の向上につながると期待される。開発した電極は有機物材料なので、曲げたり伸ばしたりしても壊れない。丸めて運べる電子ペーパーや、体に付けて使う生体センサーなどのウエアラブル機器などの用途にも向く。有機ELなど曲げられるディスプレーはすでにあるが、これまで曲げられる電池がなかったため、用途が限定されていた。現在のリチウムイオン電池は充放電しすぎると発火することがあり、何重もの安全策が講じられている。新開発の電池は過充電しても発火などの事故は起きておらず、安全性も高いとみられる。今後は電気自動車向けに大型化した電池で性能と安全性を確かめる。充電可能な蓄電池の市場は、今後大きく成長する見通し。経済産業省は2020年に世界の蓄電池市場は20兆円、うち車載用蓄電池は8兆円に達すると推定しており、メーカーや研究機関が競って開発を進めている。

<電力自由化>
*2-1:http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2016033101001886.html
(東京新聞 2016年4月1日) 電力小売り自由化がスタート 8兆円市場に異業種参入
 家庭が電力会社を選べるようになる電力小売りの全面自由化が1日、始まった。東京電力や関西電力など大手電力10社の地域独占が崩れ、約8兆円の市場が開放される。ガス会社や石油元売り、通信など異業種が参入し顧客獲得を競う。政府は料金の低下やサービスの向上を狙い、エネルギー分野の規制緩和をさらに進める。新規参入の電力小売り会社として政府に登録したのは266社(3月25日時点)。東京ガスや大阪ガスなど大手都市ガス、地域のガス会社、JXエネルギーなど石油元売り系、KDDIなどの通信会社や私鉄の東京急行電鉄が加わった。

*2-2:http://dd.hokkaido-np.co.jp/news/opinion/editorial/2-0052982.html
(北海道新聞 2016年4月1日) 電力自由化 再生エネ伸ばす契機に
 家庭などを対象に、電力小売りがきょう全面自由化した。東京電力、北海道電力など大手10社の地域独占が崩れ、8兆円規模の市場に新電力約260社が参入する。消費者が電力会社を自由に選べる大きな転換点を迎えた。自由化の歩みは欧米諸国と比べて20年近く遅れている。政府は公正な競争を通じて、料金の引き下げを促さねばならない。全面自由化は原発、火力発電など大規模電源に依存する構造を変えるきっかけになる。再生可能エネルギーを活用する新電力には、脱原発の原動力になってほしい。ただ、再生エネの電源は不足している。民間企業の拡大に向けた取り組みに加え、政府の支援が欠かせない。自由化は、大手電力の発電と送配電部門を切り離す2020年の発送電分離が総仕上げとなる。小売り全面自由化では、全国でガス、石油や通信関連など異業種が参入し、道内では北海道ガス、流通関連企業など十数社がサービスを始める。北海道は太陽光、風力、バイオマスなど再生エネの宝庫だ。その特性を十分に生かすべきだ。国内の再生エネの現状の発電量は水力を除けば数%にすぎない。道内を含む風力発電基地の計画をはじめ、国境を越えて再生エネによる電気を融通する民間の構想もある。着実に再生エネの電源を増やすことが大切だ。さらに、天候などで出力が不安定になる再生エネの欠点の克服に向け、送電網の拡充や蓄電池の開発で政府の後押しが求められる。気になるのは、火力、原発、再生エネなど電源の構成の情報開示に、再生エネを重視したり自社電源を持つ企業を除き、多くの新電力が消極的な点だ。経済産業省の電力取引監視等委員会が、開示を努力義務にとどめたことが背景にある。環境にやさしい電源かどうかは、消費者にとって大切な判断材料だ。一層の開示に期待したい。大手電力と比べた新電力の電気料金の割引率は、標準的な家庭で数%にとどまる例が多い。電気以外の商品とのセット割引を含め、価格設定で一層の工夫が必要だ。見過ごせない制度上の問題もある。新電力が大手に支払う電気の託送料金には、原発の使用済み燃料の再処理費が算入されている。再生エネを扱う新電力も原発関連費用を間接的に負担する矛盾が生じてしまう。政府は原発ありきの姿勢を改めるべきだ。

*2-3:http://www.shinmai.co.jp/news/nagano/20160401/KT160331ETI090008000.php (信濃毎日新聞 2016.4.1) 電力自由化 社会を変える市民の選択
 電力小売りの全面自由化がきょうから始まった。家庭が契約する電力会社を選べるようになった。必要な登録を得た企業は200社を超える。大手電力会社が独占していた8兆円の市場をめぐり、新たな競争がスタートした。県内でも通信やガス会社などが新規参入し、本業の商品とのセット割引や、各種のポイントサービスとの連携を打ち出している。どの電力会社を選べばいいのか、悩んでいる人も多いだろう。各社のサービスをじっくりと比較して選択したい。
<恣意的運用の懸念>
 課題はいくつも残されている。まず必要なのは公正な競争環境の確保である。今回参入した新電力は、現時点では大手電力会社の送配電網を使って電力を供給する。大手電力が特定業者を優先したり、新電力の送電を受けつけなかったりすれば競争が成り立たない。大手電力の発電部門と送配電部門の分離は4年後に先送りされた。現状では、大手電力が競争力確保のため、恣意的運用する懸念が残る。送配電網の使用料金も適正にする必要がある。自社電源を持たない多くの新電力が電力を調達する市場に、余剰電力が十分に供給されることも必要だ。経営基盤が強くない新電力も多い。自治体や電力会社から電力を仕入れ、公共施設などに供給してきた新電力大手の日本ロジテック協同組合(東京)が、破産申請手続きの準備に入ったことも判明している。公正な競争は電力の自由化に不可欠だ。鍵を握るのは、電力取引監視等委員会である。電力取引が適切に行われているかチェックする。立ち入り検査や業務改善勧告をする権限も持つ。問題は、委員会が経済産業相の直属機関であることだ。公正取引委員会などに比べ独立性が弱い。経済産業省は大手電力と一体になって原発政策を進めてきた。委員会が同省の影響を受ける心配はないのか。消費者の信頼を得るため、組織の位置付けを見直す必要がある。
<少ない情報開示>
 情報の開示も欠かせない。日本生活協同組合連合会の調査では、原発や火力、再生可能エネルギーといった電源構成を電力会社の選択に「必要な情報」とする回答が8割以上に上った。それなのに経産省も電力会社に対し、自主的な開示を要請するにとどまる。発電方法を開示している事業者も少ない。原発が含まれている電源を拒否し、価格が多少高くても再生可能エネルギーに積極的に取り組んでいる企業を応援したい消費者もいる。地産地消のエネルギーを選択したい人や、地球温暖化防止に向けて二酸化炭素(CO2)の排出がない電源を選びたいという考え方もあるだろう。消費者は自らの選択の結果として、電力業界や社会を変えることもできる。情報が不足すれば自由化の意義が大きく損なわれる。消費者が電源を主体的に選ぶ権利を確保しなくてはならない。電力会社は積極的に情報を明らかにするべきだ。
<大手電力の抵抗>
 自由化を進める取り組みは1990年代からあった。割高な電気料金が経済の足かせになっているという理由だった。企業向けの小売り自由化が実現したのは2000年3月。その先は、経営環境の悪化を懸念する大手電力や政界の安定供給を掲げた強い抵抗に阻まれた。事態が変わったのは、東日本大震災と東京電力福島第1原発事故だった。地域間の電力融通がうまくいかず、東電管内が計画停電に追い込まれるなど供給体制のもろさが露呈。電気料金も高騰した。競争環境で災害に強い供給体制をつくり、料金を抑制することが求められ、民主党政権当時の12年7月に自由化方針が決まった。大手電力の抵抗は続いている。4年後の「発送電分離」実施を定めた改正電気事業法の付則には、実施前に電力の需給改善の進み具合を検証し「必要な措置を講ずる」と盛り込まれた。大手電力の主張を取り入れたとされ、「原発再稼働が遅れる場合は分離を延期する」という解釈が、電力会社や政界の一部に広がっている。安全性が確保できず再稼働できない原発は、膨大な維持費だけがかかる。自由化が進んで競争が激しくなれば、大手電力の経営の足かせとなる。だからといって自由化阻止に動くのは筋違いだ。原発が経済的に見合わないのなら、廃炉を進めるしかない。原発なしでも電力供給に支障が出ないことは、震災後の原発停止で明らかになっている。自由化を止める理由にはならない。新電力が送配電網を大手と公平な条件で利用できる「発送電分離」は自由化の成否を握る。抵抗は消費者の利益を損なう。

*2-4:http://www.saga-s.co.jp/column/economy/22901/296208
(佐賀新聞 2016年4月2日) 九電入社式で社長、早期再稼働で収支改善目指す
 九州電力はは1日、福岡市で入社式を開いた。瓜生道明社長は新入社員約200人を前に、この日から始まった電力自由化に触れ「エネルギー業界は本格的な競争時代を迎える。九州域内外や海外の事業に積極的に取り組みたい」と訓示した。九電は昨年に川内原発1、2号機(鹿児島県)が再稼働し、2016年3月期連結決算は5年ぶりに黒字転換する見込みだ。瓜生社長は「抜本的な収支改善に向け、玄海3、4号機(東松浦郡玄海町)の早期再稼働を目指す」と強調した。新入社員の縄田由香利さん(23)は式典で「電力自由化を飛躍のチャンスと捉え、九州のためにできることは何かを考えて行動したい」と述べた。

*2-5:http://qbiz.jp/article/83843/1/
(西日本新聞 2016年3月31日) 安い電気、消えぬ不安 過当競争、寡占再来も
 4月1日、電力小売りが全面自由化され、100社を超す企業が家庭向け市場に参入する。競争が激化する中、新電力大手が撤退や収益悪化を余儀なくされるなど、早くも厳しい選別にさらされる。消費者もリスクと恩恵の見極めに戸惑う。「電気を自由に選ぶ時代」は何を意味するのか。「こっちが年間600万円の値下げ効果があると提案したら、ライバル会社は1千万円を示した。そんなに下げられるはずがない」。企業向けに電力を売る新電力大手の九州にある代理店関係者はこう嘆く。競争相手が増え、各社が販売量の確保を優先するため、営業現場では激しい値下げ合戦が繰り広げられている。この関係者は警鐘を鳴らす。「名だたる大手も安売りしている。省エネの助言やアフターケアなど、今までと違うサービスで本来は競うべきなのに」。だが懸念は表面化した。新電力5位の日本ロジテック協同組合(東京)の経営破綻だ。自前の発電所を持たず、自治体などから余剰電力を仕入れ、公共施設などに販売。事業拡大を続けたが資金繰りが行き詰まったとみられる。家庭向けにも参入を予定したが、今月末で事業から撤退する。先行して自由化を進めた欧米では、新電力の倒産や発電設備への投資抑制が続出。大手の寡占が進み、逆に料金が上がった例もある。日本もその予兆なのか。コスト低減が鍵。電力自由化に詳しい日本総合研究所創発戦略センターの瀧口信一郎シニアマネジャーは「自前の電源を持つなどコストを抑えられなければ、体力のない企業は淘汰(とうた)される」と指摘する。だが、自前の電源を保有しても巨額投資に見合う利益が得られるかは不透明だ。大手電力が市場を独占してきたこれまでと違い、電気は「つくれば売れる」ものではなくなった。「大規模でなく、少ない量での卸販売の交渉を進めている。九電ばかりに頼ってはいられない」。西部ガス(福岡市)の幹部はこう明かす。同社は最大出力160万キロワットの液化天然ガス(LNG)火力発電所を北九州市に計画。九電に電気を販売する方向で長期交渉してきたが、九電も原発再稼働の時期や需要動向が読めず、宙に浮いたままだ。このままでは先に進めない−。西部ガスは投資リスクの小さい発電所の小規模化と「九電以外」への販売を視野に動き始めた。切り替えは0.1%。九州の家庭向け市場への参入は三十数社。どこも「九電よりお得」を掲げ、九電も「億単位」(幹部)を投じ、テレビCMなどで新料金をPRする。“序盤戦”は九電の強さが目立つ。九電から他社に流れたのは23日時点で約9千件と、九電の小口顧客の0・1%どまり。九電幹部が「予想より少ない」と言うほど、関東や関西に比べて動きがない。「数百件の申し込みがあり、まずまずの数字。今後は伸びる」(鹿児島市のナンワエナジー)と強気な企業もあるが、消費者の視線は甘くない。西日本新聞が行った九州7県の100人アンケートでは、35人が九電の現行料金を「高い」と感じている。一方、95人が契約先を他社に「切り替えない」「未定」とした。「制度の仕組みや料金の違いが分からない」との理由が最多だが、切り替えに対する潜在的な不安が根強いのも事実だ。だが消極的な「様子見」は、結局は既存の大手電力が圧倒的なシェアを持ち続け、料金低減につながらない恐れもある。電力中央研究所の筒井美樹主任研究員は「供給余力の状況や原油価格次第で、容易に値下げ競争が終わる」と指摘。健全な競争や価格を維持するためにも「消費者も企業を選ぶ目が必要となる」としている。

<原発回帰はありえない>
*3-1:http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201604/CK2016040202000142.html (東京新聞 2016年4月2日) 「原子力利用再びリードする」 首相、原発推進を宣言
 安倍晋三首相は一日午前(日本時間二日未明)、核物質や核施設の防護・管理強化を話し合う「核安全保障サミット」で演説し、東京電力福島第一原発の事故を踏まえ「日本は二度とあのような事故を起こさないとの決意の下、原子力の平和的利用を再びリードすべく歩み始めた」と原発の再稼働推進を宣言した。事故から五年を経ても収束の道筋が見えない福島第一原発の現状には言及しなかった。首相は演説で「事故の教訓を原発を導入するすべての国と共有し、安全性や事故対策についての知見を世界に広げることが日本の使命だ」と強調。各国への支援、安全基準に関する国際協力などを積極的に行っていく考えを表明した。福島第一原発では、現在も放射能汚染水の対策に追われる。福島県では十万人近くが避難生活を送り、放射性物質を含む汚染土を処分するめどもついていない。東電や国から十分な賠償が得られていないとして集団訴訟も相次いでいる。首相は、こうした状況に関する説明は避けた。一方で、原発の再稼働に関しては「世界で最も厳しいレベルの新規制基準をつくった」と主張。新規制基準をめぐっては、大津地裁が三月、新規制基準を疑問視し、稼働中の関西電力高浜3、4号機(福井県高浜町)の運転差し止めを決定したばかりだ。さらに、首相は、日本は国際原子力機関(IAEA)の下、高水準の透明性を保ってプルトニウムを厳格に管理していると説明。「利用目的のないプルトニウムは持たない」との方針で核物質の最小化、適正管理に取り組んでいると強調した。各国が原子力の平和利用を将来も続けるには「完全な透明性の確保が必要だ」と訴え、日本が支援していく考えも示した。日米両政府は核安保サミットに合わせ、京都大の研究用原子炉から高濃縮ウランを撤去するとの合意を盛り込んだ共同声明を発表した。首相は演説で「世界の核セキュリティー強化への大きな貢献だ」と述べた。

*3-2:http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160322-00000166-jij-eurp
(時事通信  2016年3月22日) 原発作業員の大半避難=ベルギー南部
 ロイター通信によると、仏エネルギー大手エンジーは22日、ベルギー当局の要請を受け、同社が運営するベルギー南部にあるティアンジュ原発の大半の作業員を避難させたことを明らかにした。原発は稼働中で、稼働に必要な作業員は残しているという。ブリュッセルで起きた連続テロを受けた措置とみられるが、何らかの異変があったかどうかは不明。 

*3-3:http://lite-ra.com/2016/03/post-2116.html (LITERA 2016年月31日号) 福島の高濃度放射能汚染が「女性自身」に続き「週プレ」の調査でも判明! 影響否定の「週刊新潮」は原発村の広告漬け
 先日、「女性自身」(光文社)3月22日号が福島県下の多くの小中学校周辺の土壌で、「放射線管理区域」を上回る高濃度のセシウムが検出されるという驚愕の事実を報道したことを取り上げたが、今度は「週刊プレイボーイ」(集英社)が「県や村を維持するために住民を被爆させる“棄民”政策がさらに進んでいた!!」(3月14日号)、「原発事故から5年たっても、福島の汚染地域は住んでいいレベルではない!!」(3月21日号)と連続して福島県の各地の放射線土壌汚染と行政の欺瞞の実態をレポートしている。同誌の調査によればやはり「女性自身」の調査同様、多くの場所で信じられない数値が出ていた。例えば2014年に「特定避難奨励地点」が解除された南相馬市原町区馬場にある民家の裏庭では毎時1μSv(マイクロシーベルト)を超える空間線量があったという。これは一般の被爆限度である年間1mSv、毎時に計算すると0.23μSvを遥かに上回る数字だ。また来年3月に避難者指示区域解除を目指す飯館市の中学校では、雪に覆われているにも関わらず空間線量が0.7μSvを超える場所が何カ所もあり、雨水を測定すると80Bq(ベクレル)/kgだった。これは飲料水基準の8倍もの数値だという。また、早期の居住制限解除を目指し住民から猛反発にあった南相馬市小高地区の小学校でも1平方m当たり30万Bqもの土壌汚染が見つかっている。これはなんと事故前の3000倍もの汚染だ。
「一般の人が立ち入りできない放射線管理区域は4万Bq/㎡。それよりも7倍近い場所を『安全』と言い、子供たちを遊ばせようとしているのが今の政策だ」(14日号記事より)。まだまだある。南相馬市高倉にある通学路の土からは400万Bq/㎡、飯館村の学校からは1000万Bq/㎡を超える汚染土も見つかっているが、同誌が測定した放射能プルームから外れた新潟の土壌に比べ、なんと100〜2400倍もの数値だという。こうしたホットスポットが点在する場所に住民や子供たちを帰還させる。同誌ではこれを“棄民”と表現しているが、まさにその通りだろう。記事には今年1月に飯館村中学校の校内を測定した市民団体の小澤洋一氏のこんなコメントを寄せている。「私が今年1月に校内を測定したときには、毎時20μSvの場所がありました。村はまずこの小中学校を再開して、小中学校の授業を始めると聞いています。子供たちが避難する福島市や川俣町からスクールバスでここまで送迎するようです。ですが、これではわざわざ被爆せるために通学するようなもの」。同誌では学校だけでなく様々な場所で土壌を測っているが、その結果も驚くべきものだった。「そもそも法律では、4万Bq/㎡以上に汚染された場所は『放射線管理区域』に指定され、区域内には一般人は入れないようにしている。18歳以下の就労も禁止だ。理由は、それたけの放射線を浴び続ければ人体に悪影響があるから。しかし、福島の土壌を検査すると、多くの場所でこの基準をいとも簡単に上回ってしまうことがわかっている」(集英社「週刊プレイボーイ」 2016年月21日号記事より)。しかも、行政や自治体には「住民を守る」という発想はなく、頭にあるのは「自治体の維持」ばかりで恫喝まがいのことまで行っている。それが避難区域解除に伴う賠償金の打ち切りだ。「除染して線量が下がったから帰ってきても安全と宣伝し、帰ってこられるようにインフラも整えた。だから元の自治体に戻ってこない住民には補助を打ち切る。これでは、体裁を整えるためだけに無駄金だけが突っ込まれ、住民は命の危険に晒されることになる」(同14日号記事より)。子供の被爆を恐れる親が元の場所に戻らなければ、補助金は打ち切られ全ては自己責任というわけだ。既に福島県の166人もの子供たちが甲状腺がんに侵されているというのに、子供たちをさらなる被爆に晒し、欺瞞に満ちた“安全神話”で帰還を強制する。避難地区に指定された人々は福島第一原発事故直後、激烈な放射線に晒された。そして5年経った今、今度は根拠のない“安全宣言”と賠償金打ち切りという脅迫で、“第二の被爆”に晒されようとしている。さらに問題なのは、こうした調査や報道が「女性自身」や「週刊プレイボーイ」、テレビでは「報道ステーション」といったごく一部でしか報じられないことだろう。しかも電力会社や電力団体が、またぞろメディアに対しての原発広告というバラマキ工作を再開させている。このままでは再び、電力会社のメディア支配、そして原発の安全神話が復活しかねない。実際、毎号のように電事連の原発広告を掲載している「週刊新潮」(新潮社)は、3月24日号で、福島での「甲状腺がん」増加を報道した「報道ステーション」にかみつき、まったくデタラメな根拠を並べて、甲状腺がん増加を「過剰診断」だと断定した。そうした中、事故から5年経った現在でも一貫して放射線や健康問題を報じ続けている「週刊プレイボーイ」や「女性自身」には、圧力や懐柔に屈することなく、これからもぜひ告発を続けてもらいたい。

*3-4:http://kodomozenkoku-news.blogspot.jp/2014/11/blog-post_9.html (情報ブログ 2014/11/9) 関東子ども健康調査支援基金による甲状腺エコー検査の結果が報道されました。
 11月9日 6時04分東京電力福島第一原子力発電所の事故を受けて茨城や千葉の保護者などで作る市民団体が1800人余りの子どもたちの甲状腺を検査したところ、このうち7人が「一定以上の大きさのしこりなどがあり、さらに詳しい検査が必要」とされましたが、担当の医師は原発事故の影響とは判定できないとしています。団体では今後も検査を続けることにしています。茨城や千葉の保護者などで作る市民団体「関東子ども健康調査支援基金」は、原発事故で放出された放射性物質が子どもたちの健康に影響していないか調べようと去年10月から希望者を対象に医師の協力を受けて甲状腺の検査を行ってきました。検査は茨城、千葉、埼玉、神奈川、栃木の5つの県で行われ、ことし9月までに検査を受けた18歳以下の子どもたち1818人の結果がまとまりました。それによりますと「正常」と診断された子どもが672人、「小さなしこりやのう胞と呼ばれる液体がたまった部分があるものの、特に心配はなく経過を観察」とされた子どもが1139人、「一定以上の大きさのしこりなどがあり、さらに詳しい検査が必要」とされた子どもが7人でした。今回の結果について検査に当たった島根大学医学部の野宗義博教授は「チェルノブイリ事故の例から見て原発事故から3年余りで甲状腺がんが発生するとは考えにくく、詳しい検査が必要とされた子どもについても被ばくによる影響とは判定できない。今後も定期的に検査をしていくことが大切だ」と話しています。市民団体では今後も希望者を対象に検査を続けることにしています。
*2014年11月9日 NHKニュース(下記サイトに動画あり。数日で削除されると思いますが)
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20141109/k10013058381000.html

*3-5:http://this.kiji.is/88115145579562493
(共同通信 2016/3/31) 原発事故自主避難者が訴訟で陳述、「極限状態」、千葉
 東京電力福島第1原発事故に伴い、福島県の避難指示区域外から千葉県に自主避難した6世帯20人が、国と東電に計2億2千万円の損害賠償を求めた訴訟の第1回口頭弁論が31日、千葉地裁(鹿子木康裁判長)で開かれ、原告が「体力的、精神的に極限状態になった」と意見陳述した。
 原告の一人で、福島県南相馬市原町区から千葉県四街道市に家族で避難した女性(37)は「国が一方的に線引きした避難区域外から逃げたため、損害賠償がまともに受けられていない」と声を震わせた。国と東電側は請求棄却を求めた。

*3-6:http://qbiz.jp/article/83127/1/
(西日本新聞 2016年3月21日) 脱原発を訴える広域組織設立へ 鹿児島、熊本の市民ら
 九州電力川内原発(鹿児島県薩摩川内市)から30〜40キロ圏の同県出水市、阿久根市、伊佐市と熊本県水俣市の複数の脱原発市民団体や市議が4月24日、新組織「川内原発を考える肥薩ネットワーク」を設立する。原発近接地に比べ、九電などからの情報が少ないため、広域連携して過酷事故時の避難計画などの問題点を探る狙いがある。参加する水俣市の「原発避難計画を考える水俣の会」(永野隆文代表)によると、新組織の会員は200人規模で、4市の市議5人も加わる予定。「互いの地域の課題を持ち寄り、協力して活動したい」としている。


PS(2016年4月4日追加):使用済核燃料貯蔵量は、下図のように日本全体で17,315tにもなっており、これを貯蔵していること自体に大きなリスクがあることは、フクイチ原発事故で明確になった。そのため、そのように大きなリスクがあるものを無料で保管することを、保管する自治体はじめ事故を起こした時に影響を受ける範囲の自治体が容認すべき理由はなく、(課税する自治体の範囲や使い方には異議があるものの)使用済核燃料の貯蔵に課税することはリスク負担料として合理的である。また、保管し続ければ無限にかかる使用済核燃料の保管費や使用済核燃料税は原子力発電を行った電力会社が全額支払うべきで、その費用は原発による発電コストとして発電時に引当金を積むのが正しい会計処理だ。
 しかし、こうすると継続できる大手電力会社はなくなり、国民負担も莫大になるため、現在ある使用済核燃料に限って多重バリアで包み、1000年しかもたないステンレス製や金属製の容器ではなく、10万年以上もつセラミック製の容器に入れて、(地層処分はどこも引き受けないため)地層処分ではなく日本海溝の流れのない窪地に正確に沈めるのがよいと考える。

      
 使用済核燃料貯蔵量    使用済核燃料への課税額と課税方法    多重バリアによる最終処分  
                                    *4より上
*4:http://digital.asahi.com/articles/ASJ4143D3J41UUPI004.html
(朝日新聞 2016年4月4日) 使用済み核燃料への課税拡大 8市町村で毎年29億円
 東京電力福島第一原発事故後、原発から出る使用済み核燃料に対して立地自治体が独自の課税を強め、原発や関連施設がある全国の8市町村に2017年度以降、少なくとも毎年計約29億円が入るようになることが朝日新聞の調べで分かった。この税金分は大手電力会社の電気料金に影響する。原発の使用済み核燃料を再処理して再び燃料に使う核燃料サイクルが進まない中、再処理できずにたまり続ける使用済み燃料を新たな収入源にする動きが広がったことになる。原発再稼働も進まず、減少する電源三法交付金などの穴埋めの意味が強く、新たな原発マネー依存との指摘もある。使用済み燃料への課税では、立地の市町村が課す場合と、立地の道県が課税して税収の一部を立地市町村に交付する場合がある。いずれも自治体が条例をつくって課す法定外税。設置には総務相の同意が必要だが、不同意となったのはこれまで1件だけだ。使用済み核燃料税は、使用済み燃料の重量などにかかる税金で、03年、東電柏崎刈羽原発がある新潟県柏崎市と九州電力川内原発がある鹿児島県薩摩川内市が始めた。税収は14年度実績でそれぞれ5億7千万円、3億9千万円だった。朝日新聞は、原発や再処理施設が立地する全12道県、全20市町村の検討状況を調べた(福島県内を除く)。九電玄海原発がある佐賀県玄海町の岸本英雄町長は3月10日、使用済み核燃料税を17年度から導入することを町議会で表明した。九電には1月に正式に伝えており、税収は年間約4億円を想定しているという。東北電力女川原発がある宮城県女川町は取材に「検討中」と答えた。茨城県は14年4月、日本原子力研究開発機構の再処理施設(茨城県東海村)に関し、使用済み燃料の保管への課税を始めた。年間約6千万円を東海村に交付する。青森県は12年4月、日本原燃再処理工場(青森県六ケ所村)などへの課税で得た一部を立地周辺の市町村に配る交付金制度を始めた。青森県大間町、むつ市、東通村、六ケ所村の立地4市町村へは最大で計10億円だったが、14年4月には計15億円に引き上げた。全国最多の原発11基を抱える福井県の西川一誠知事は今年3月11日、11月から使用済み燃料への課税を始める方針を表明した。六ケ所村の再処理工場は完成が遅れ、燃料プールはほぼ満杯。また電気事業連合会によると、全国の原発にある使用済み燃料は1万4700トンウラン。各地の原発が再稼働すると5年後には、全国の17原発のうち12原発で燃料プールの貯蔵割合が8割を超える。これまでは原発で燃料が使われる際の課税が主だった。使用済み燃料へ課税を始めることについて、各自治体は「使用後には危険性が高まり、安全対策などに充てるため」とする。福井県は燃料の搬出を促すという理由も挙げるが、搬出先が決まるめどはない。一方で佐賀県玄海町は、減っていく交付金などの穴埋めが目的と認める。資源エネルギー庁が示すモデルでは、原発周辺にもたらされる電源三法交付金は、運転が始まると建設中のピーク時の4分の1に減少。また旧国家戦略室が11年に示したモデルでは、固定資産税は運転から20年で20分の1になる。廃炉で交付金は対象外となり、固定資産税もなくなる。税収の使途では、漁業支援など安全対策とは直接関係ない事業が目立つほか、人件費やゴミ処理などの義務的経費も増えている。これまで使用済み核燃料税などは、電気料金算定の基礎となる経費「原価」に上乗せされており、負担するのは実質的に電気利用者だった。六ケ所村の再処理工場を中心に予定されてきた再処理事業には、原発を持つ全国の大手9電力会社が電気料金から資金を拠出してきた。今年4月の小売り自由化後も、原発を持つ大手電力会社は使用済み核燃料税などの分を電気料金で回収することになる。
■利権構造が継続
 〈福島原発事故の政府事故調査・検証委員会で委員を務めた吉岡斉・九州大教授(科学技術史)の話〉 使用済み燃料を半永久的にカネを取るための材料にしたい立地自治体、置いておくしかないから支払って電気料金転嫁を狙う大手電力会社、それらを受け入れる政府。原発を巡る利益配分の構造は変わっていない。福島の事故で原子力に関するあらゆるハードルは上がったはずだが、一定程度再稼働は進む流れで、配られる分け前は減るものの原発を巡る利権構造は維持されようとしている。国民は、電力と税金を巡る関係にもより関心を持つ必要がある。


PS(2016年4月6日追加):*5に、「①九電川内原発1、2号機の運転差し止めを求めた即時抗告審で、福岡高裁宮崎支部は九電の主張を丸のみして、鹿児島地裁と同様に住民側の申し立てを退けた」「②鹿児島県は道路整備が進んでおらず、事故が起きた場合、どれだけの人が避難できるのかについて決定は全く配慮していない」「③薩摩川内市で飲食店を営む男性は、経済的に一番底の状態で再稼働差し止めとなると大変だと話した」などと記載されている。
 しかし、①については、福岡高裁はどんな時でも地裁判断を丸のみするので三審制の存在意義が問われる印象があり、②については、仮に道路整備が進んでいて避難できたとしてもすぐ帰れるわけでないのはフクイチ原発事故でわかっていることであり、③の「再稼働が差し止めになると経済的に大変という飲食店がある」というのは、生産年齢人口にあたる人が国民の無駄な拠出でやっと生活しているということで、誠にもったいなく情けない話なのである。つまり、薩摩川内市は、海岸に海ガメが産卵に訪れ、近くに鶴の越冬地があり、温泉も出て、食べ物が美味しく、新幹線が停車するようになったのだから、もっとポジティブで役に立つビジネスができるよう、公害のないきれいな街づくりをしてはどうかと思われる。

         
 鹿児島地裁判決 風船が飛ぶ範囲 偏西風の影響     汚染水と海流    火山の噴火
   <つまり、川内原発の事故時には、遠い地域の人も無関係ではいられないということ> 

*5:http://mainichi.jp/articles/20160406/k00/00e/040/224000c
(毎日新聞 2016年4月6日) 割れた司法判断「なぜ」 住民、落胆と怒り
 またも訴えは司法に届かなかった。九州電力川内原発1、2号機(鹿児島県薩摩川内市)の運転差し止めを求めた即時抗告審で、福岡高裁宮崎支部は6日、昨年4月の鹿児島地裁と同様、住民側の申し立てを退けた。関西電力高浜原発(福井県高浜町)の運転差し止めを命じた1カ月前の大津地裁に続く決定を期待した住民は「なぜ認められないのか」と不満をあらわにした。一方、経済効果に期待する地元からは安堵の声も聞かれた。「不当決定」「私達は屈しない」。午前10時半過ぎ、宮崎市の福岡高裁宮崎支部前で住民側弁護団が垂れ幕を掲げると、集まった住民や支援者から憤りの声が上がった。森雅美弁護団長は「非常に残念な結果。鹿児島地裁の焼き直しのようだ」と厳しい表情で語った。続いて宮崎市のビルの一室で開かれた記者会見。森弁護団長は「九電の主張を丸のみした決定。司法の後退を意味している」と強い口調で批判し、「棄却決定は法解釈を誤ったもので東京電力福島第1原発事故の重大性を認識していない」とする声明文を読み上げた。仮処分を申し立てた一人、鹿児島大名誉教授、荒川譲さん(82)は「鹿児島県は道路整備が進んでおらず、事故が起きた場合、どれだけの人が避難できるのか。決定はまったく配慮していない」と疑問を投げかけた。仮処分申請に参加した会社員の塚田ともみさん(45)=同県姶良(あいら)市=は「残念だがまだ本訴(運転差し止め訴訟)もある。本来ならば政治の力で変えるのがあるべき姿だ」と語った。他の住民らは、抗告審で火山の専門家らが原子力規制委員会を明確に批判したことなどを念頭に「今までの審理の過程を考えると勝って当然なのに……」と言葉を詰まらせた。一方、薩摩川内市で飲食店を営む男性(43)は「ほっとした。再稼働してこれから街が元気になると期待していた。今、経済的には一番底の状態で、差し止めとなると大変」と話した。
●今回の決定は妥当
 宮崎慶次・大阪大名誉教授(原子力工学)の話 高浜原発3、4号機の運転差し止めを命じた大津地裁の仮処分決定では、福島第1原発事故で起きたようなことが高浜でも起きるような論調になっていた。新規制基準は福島事故の反省を踏まえ厳格に作られた。今回の決定はそれが正当であるとしており、妥当な決定と言える。
●規制委に説明責任
 諸葛宗男・元東京大公共政策大学院特任教授(原子力安全規制法制)の話 専門的な内容の判断については原子力規制委員会に委ねたということだろう。評価が裁判所によって分かれたのは、規制委が「規制基準に適合している」としか言っていないことにある。規制委は国民に丁寧に説明すべきだ。
*解説 国と電力会社は国民不安直視を
 関西電力高浜原発3、4号機の運転停止を命じた大津地裁決定から1カ月。福岡高裁宮崎支部が、国の新規制基準に基づいて昨夏再稼働した九州電力川内原発の運転を追認し、またも司法の判断は分かれた。3月の大津地裁は、新基準について「十二分の余裕をもつべきだ」と指摘。これに対し、高裁宮崎支部は社会通念上、「絶対的な安全性に準じる安全性の確保」までは求められていないとして、原子力規制委員会が策定した新基準は合理的と結論づけた。東京電力福島第1原発事故以前、原発を巡る訴訟の判断基準となった四国電力伊方原発訴訟の最高裁判決(1992年)は、旧原子力安全委員会などによる審査の目的を「災害が万が一にも起こらないようにするため」とした。当時、行政庁の審査に通りさえすれば「事故は万が一にもない」とする考えが、司法を含む社会全般に通底していた。事故後、原発の運転差し止めを巡る判決や仮処分決定は今回で9件目だが、うち3件で運転差し止めの判断が出ている。運転は止めなかったものの、高裁宮崎支部も規制委がまとめた火山影響評価ガイドを批判し、「過去の最大規模の噴火で設計対応不可能な事象を起こす火山が地理的領域にある場合は、立地不適とすべき」と踏み込んだ。全国で唯一運転している川内原発が止まれば、国内の稼働原発が再びゼロに戻るところだった。再稼働を進める国も電力各社も今回の決定に安堵(あんど)したに違いない。だが、その前に司法も揺れているという事実を直視し、国民の不安に真摯(しんし)に向き合うべきだ。


PS(2016年4月7日追加):福岡高裁が「破局的噴火は無視しうる」「避難計画は実効性がなくても人格権を侵害しない」として新基準は合理的という結論を導き出したのは、私もおかしいと思った。また、「日本全体の破局的噴火は約1万年に1回程度」とする専門家もいるが、それなら、①噴火は約1万年に1回しかないという根拠を示すべきであり ②その1万年に1回というのは、東日本大震災が起こった後の現在でも無視できるほど遠い将来のことと言えるのか について、原発を立地して「安全だから稼働する」としている九電が根拠を持って示すべきで、立証責任の所在が逆だと考える。
 また、福岡高裁が「一般の建築規則では破局的噴火を無視できるとする社会通念があり、原発だけ特別に安全対策を考える根拠はない」としている点については、原発が事故を起こせば建物の所有者に限らず被害甚大になるため一般の建築規則では判断できず、静岡大の小山教授(火山学)の「そんな社会通念はないと思う。破局的噴火は一般社会に知られていないだけで、むしろ今後はそのようなリスクと原発の利点を比較し、どちらをとるかの社会通念を形成していくべきだ」という意見に賛成だ。

*6:http://qbiz.jp/article/84322/1/ (西日本新聞 2016年4月7日) 「社会通念」が判断の基準 安全評価「ピント外れ」「妥当」…識者評価割れる 川内差し止め棄却
 「破局的噴火は無視しうる」「避難計画は実効性がなくても人格権を侵害しない」。川内原発(鹿児島県薩摩川内市)の運転差し止めを求めた仮処分申し立ての即時抗告審で、福岡高裁宮崎支部は6日、新規制基準の一部や自治体が定めた避難計画の問題点を指摘しながら、社会通念を用いて「新基準は合理的」との結論を導き出した。住民側弁護団は「問題があるのに差し止めを認めないのでは、司法の役割を果たしていない」と強く批判する。「即時抗告審で主張した火山評価の問題点は、ほぼ認められた」。抗告審の決定後に宮崎市内で会見した住民側の海渡雄一弁護士はこう説明した。弁護団は抗告審で、破局的噴火を予測できるとした新規制基準の安全対策指針(火山ガイド)などの問題点を、火山学者の協力を得ながら集中的に反論。高裁は同指針を「不合理」と判断した。日本大の高橋正樹教授(火山地質学)は「できないことをできないと言ったのは妥当だ」と評価している。ところが、運転差し止めには「破局的噴火の発生可能性が、根拠を持って示される必要がある」と高いハードルを課した。鹿児島大の井村隆介准教授(地質学)は「『噴火は予測できない』と認めながら、住民側に根拠を求めるのは明らかに矛盾している。指針に問題があったわけだから、1度原発を止め、破局的噴火の発生可能性について議論を尽くすよう決定を出すべきだった」と批判した。伊方原発の設置許可を認めた1992年の最高裁判決は、専門的な行政判断を尊重するべきだとしつつ、「裁判所は審査基準に不合理な点がないかを審理する」と判示。ただ、今回は指針を不合理としながら、運転差し止めに踏み込まなかった。海渡弁護士は「伊方判決を骨抜きにする判断だ」と憤り、最高裁への抗告を検討している。さらに、弁護団の反論を認めた高裁が「(一般の)建築規則で考慮していないのは、破局的噴火を無視できると容認する社会通念の反映」とし、「原発だけ特別に安全対策を考える根拠はない」と断じた。これに対し、静岡大の小山真人教授(火山学)は「そんな社会通念はないと思う。破局的噴火は一般社会に知られていないだけで、むしろ今後はそのようなリスクと原発の利点を比較し、どちらをとるかの社会通念を形成していくべきだ」と話す。避難計画について、昨年4月の鹿児島地裁の決定は「一応の合理性、実効性を備えている」と評価していた。ところが、今回の高裁決定は「(政府方針に従って計画さえ作れば)合理性や実効性を欠いても、違法ではない」とし、避難計画の重要性を引き下げた。東京大の金井利之教授(自治体行政学)は「避難計画が不十分だと裁判所が実質的に認めており、ある意味で画期的だ。計画の合理性、実効性を点検する仕組みも現行法制では不在だと指摘したのと同じ。関係自治体と電力会社が責任をもって計画の実効性を高めるべきだ」と注文を付けた。
◆リスク軽視 荒い判断
 吉岡斉九州大教授(科学史)の話 裁判官は原発の過酷事故のリスク認識が甘く、安全を非常に軽視した決定だ。原子力規制委員会の新規制基準とその運用を丸ごと認め、火山噴火の危険性も原発が存在する間に無事であれば良いと受け取れる。避難計画についても、3月の大津地裁の仮処分決定は、国主導の計画策定と規制委による審査を求めたが、今回は「基本的に市町村の責務」とした。「計画の問題点を指摘できるとしても、計画が存在しないのと同視できない」というくだりは「ないよりはましだ」とも受け取れ、荒っぽい判断だ。
◆安全評価ピント外れ
 勝田忠広明治大准教授(原子力政策)の話 福岡高裁宮崎支部の決定は新規制基準や原子力規制委員会の審査の合理性を認めたが、無批判すぎる。優先審査の対象だった川内原発1、2号機の審査は先を急いでいた印象がある。住民側は安全の問題を見落としていると訴えているのに、決定は書類の手続きしか見ておらず、ピント外れだ。また安全性の判断基準に「社会通念」を用いているが、東京電力福島第1原発事故以降、どこまで安全性を求めるかの社会通念が定まっていないことが原発問題の根幹。裁判長は「社会通念はこれだ」と明確にすべきだった。
◆地震動想定甘い恐れ
 高知大の岡村真特任教授(地震地質学)の話 川内原発周辺の断層は海底部分でさらに延びている可能性がある。即時抗告審で住民側がそれを訴えたが、認められなかった。断層が長くなれば、現在想定している基準地震動が過小評価となる。最近の直下型地震をみても九電の想定地震動の2〜3倍に達するものもあり、その点を考慮してこそ、福島原発事故の教訓を踏まえたことになる。
◆法に沿った妥当な決定
 奈良林直・北海道大特任教授(原子炉工学)の話 法律に準拠した妥当な決定だ。法の下で策定された新規制基準と審査に合理性があることを認め、火山や自然災害も含めた九州電力の安全対策が新基準に合致していることを理路整然と評価した。電力会社には、安定した価格で電力を供給する義務があり、国民の利益につながる。関西電力高浜原発3、4号機の運転差し止めの仮処分決定を出した大津地裁や福井地裁の判断に見られた事実誤認もなかった。
   ◇   ◇
◆川内原発差し止め棄却 高裁宮崎決定要旨
 九州電力川内原発1、2号機の再稼働差し止めを認めなかった6日の福岡高裁宮崎支部の決定要旨は次の通り。
▼司法審査の在り方  
 どのような事象でも原子炉施設から放射性物質が放出されることのない安全性を確保することは、少なくとも現在の科学技術水準では不可能だ。わが国の社会がどの程度の危険性であれば容認するかの社会通念を基準として判断するほかない。
▼新規制基準の合理性  
 基準地震動(耐震設計の目安となる揺れ)の策定、耐震安全性確保や重大事故対策に関する新規制基準に不合理な点はなく、施設が新基準に適合するとした原子力規制委員会の判断も不合理とは言えない。九電は相当の根拠、資料に基づく説明を尽くした。基準地震動を上回る地震のリスクはゼロではないが、耐震安全性の確保の観点から新基準は極めて高度の合理性を有する。住民に直接的かつ重大な被害が生じる具体的な危険が存在するとは言えない。
▼火山の危険性   
 火山の噴火時期や規模を的確に予測できるとする規制委の前提は不合理だが、日本全体で見れば破局的噴火は約1万年に1回程度だ。極めて低頻度で経験したことがない規模の自然災害の危険性については、安全性確保の上で考慮されないのが実情であり、無視できるという社会通念がある。このような危険性を自然災害として想定するかは政策判断に帰するが、現行法制度では想定すべきだとの立法政策は取られていると解釈できない。立地不適とは言えない。
▼その他の危険性   
 竜巻による飛来物が使用済み燃料ピットに衝突し重大な被害が生じる具体的な危険があるとは言えない。テロリズム対策も新基準に適合するとした規制委の判断は不合理ではない。戦争による武力攻撃対策は国の防衛政策に位置づけられ、危険性を検討する余地があるとしても、九電による人格権侵害の恐れがあるとは言えない。
▼避難計画の実効性  
 避難計画は、施設からの距離に応じた対応策が合理的かつ具体的に定められていることを確認したとして原子力防災会議で了承されている。段階的避難の実効性や避難経路の確保などの問題点を指摘することができるとしても、避難計画が存在しないのと同視することはできない。原発の運転で、直ちに九電による人格権侵害の恐れがあるとは言えない。


PS(2016年4月9日追加):*7-1のように、みやま市の再生エネのみを使って電力を供給するモデルが東京都に採用されたのは、大変よかった。埼玉県、千葉県、神奈川県など関東の他県でも再生エネ由来の電力を供給し、関東で容易にスマートエネルギーの電力が手に入るようにして欲しい。また、*7-2のように、下水道汚泥から発生するバイオガスから水素を作り、燃料電池自動車の燃料にしたり発電に使ったりするのも、邪魔物から価値ある物を作っており、賢い。

*7-1:http://qbiz.jp/article/84490/1/
(西日本新聞 2016年4月9日) みやま市が東京都に技術協力 再生エネルギーモデル事業
 東京都は8日、電力小売り事業に参入すると発表した。福岡県みやま市などでつくる電力会社「みやまスマートエネルギー」が、技術やノウハウ面で協力する。都の公益財団法人「東京都環境公社」を通じて、7月から都内の公共施設2カ所への電力供給を始める。都は都内の電力消費量に占める再生可能エネルギーの割合を2030年までに30%程度に高める目標を掲げているが、再生エネのみを使って電力を供給する事業者が都内には少ないのが現状。都がモデル事業として小売りに乗り出すことで、再生エネの利用拡大を図る。公社は今回、バイオマスや太陽光に由来する再生エネの電力を宮城県と都内の2事業者から調達する。みやま社は、昨年11月から公共施設などに電力を供給してきたノウハウや技術を提供。電力の需給調整のほか、再生エネ由来の電力の共同調達などで公社と連携する。公社が調達した電力をみやま市に融通する計画もある。みやま社は業務を受託することで、事業規模の拡大を図る。「電力の地産地消」を掲げるみやま社は、10月にも新電力会社の設立を目指す鹿児島県肝付町なども支援。さらに、九州大と共同で電力小売り事業に参入する自治体向けのソフトウエアの開発を始めており、今後も全国の市町村との連携を広げていく考えだ。この日、記者会見した舛添要一都知事は「今回の取り組みでノウハウを蓄積し、再生エネ由来の電気を供給する事業者を育てていきたい」と述べた。

*7-2:http://mainichi.jp/articles/20160409/dde/041/040/048000c (毎日新聞 2016年4月9日) 下水汚泥 、.発生するバイオガスから水素生成、発電 自動車燃料に 国交省試み
●汚れた水を利用、再生 新たな技術
 国土交通省が、下水道の汚泥から発生するバイオガスから水素を作り、燃料電池自動車(FCV)の燃料にする取り組みを進めている。水素と酸素の化学反応で発電する電気で動き、水しか出さない「究極のエコカー」と呼ばれるFCV。そのエネルギーに、廃棄物である下水汚泥を有効活用できれば、FCVの普及につながるとして、全国の自治体も注目している。バイオガスは、下水汚泥を微生物の働きで処理する過程で発生する。既に発電などにも利用されているが、小規模な施設では発電の設備が設置できないなどの理由で、国内で発生するバイオガスの全体量のうち3分の1は焼却する形で廃棄されているという。国交省によると、廃棄されているバイオガスの量は8900万立方メートルで、仮に有効活用できれば年間1・3億立方メートルの水素が生成できると試算している。FCV1台の1回当たりの水素充填(じゅうてん)量を50立方メートルとすると、約270万回分に上る。国交省は2014〜15年度に、福岡市中部水処理センター(福岡市中央区)で実証実験を実施。(1)下水汚泥を発酵させて発生したバイオガスから二酸化炭素を除去し、高濃度メタンガスを回収(2)メタンガスと水蒸気を反応させ水素を作る(3)吸着剤で残っている二酸化炭素をさらに除去する−−という手順で、高純度の水素を生成。1日にFCV65台前後の燃料になる3300立方メートルの水素を作り出した。こうした取り組みに着目した埼玉県、横浜市、青森県弘前市が事業化に向けた検討を始めており、それ以外の複数の自治体も関心を寄せているという。下水汚泥の活用は、他の分野でも始まっている。佐賀市は汚泥を高温発酵して堆肥(たいひ)として活用している。汚泥から発生したバイオガスを燃料に発電する「バイオガス発電」は北海道や横浜市、広島県など55カ所が実施(13年度現在)しており、国交省下水道企画課の担当者は「下水汚泥は重要な国産エネルギー源。活用を加速させたい」としている。


PS(2016年4月11日追加):森林資源は戦後の努力でやっと豊富になってきた状況であるにもかかわらず、*8のように、「太陽光発電偏重は悪いことで、木質バイオマス発電が必要であり、木材の利用と言えば発電のために燃やす木材チップの加工設備を新増設することしか合点が行かない」というのは、物理学・化学・生物学・経営学・経済学のわかっていない人が書いた記事であり、問題が多い。
 何故なら、物理学・化学・生物学的には、木材を燃やす発電方法は太陽光発電よりCO2を出す上、木材は燃やせば次第に枯渇するため持続可能性もなく、経営学的・経済学的には、長期間かかって育てた木材を最も低い付加価値で使用しており、記者はそれを多面的に批判することができていないからである。つまり、燃やして発電するのは、使い道のないゴミだけで十分なのだ。
 しかし、これは、(文科系・理科系を含む)教育において知識と論理的思考力を軽視しすぎた結果であり、これでは正しい判断をする主権者や将来性のある事業を選別できる人材は育たない。

    
           中国家具              イギリス家具       イタリア家具
 <世界に輸出できる家具を作るためには、家具会社やデザイナ―を誘致してくる方法もある>

    
          <木材の使い方は進歩し、環境に優しい用途が増えている>

*8:http://qbiz.jp/article/84439/1/ (西日本新聞 2016年4月11日) 【工場立地、木材が26業種中4位】食品、車、半導体に続く「常連」に?
 九州経済産業局がまとめた2015年の工場立地動向調査によると、九州7県の立地件数(電気業を除く)は106件となり、7年ぶりに100件を突破した。26の業種別でみると、最多は食料品20件、次いで金属製品19件、輸送用機械器具9件で、ここまでは九州経済のイメージ通りだ。業種別4位に入ったのは木材・木製品の8件。九州は森林資源が豊富だが、木材と「工場立地」はあまり結びつかないのではないだろうか。九州経産局によると、木材・木製品の工場立地で目立つのは「木質バイオマス発電の燃料となる木材チップ加工設備の進出や増設」とのことで、ようやく合点が行った。九州では、大分県などで既に国内屈指の発電規模を持つ木質バイオマス発電所がある。太陽光偏重だった固定価格買い取り制度の見直しもあり、他にも複数の大規模建設計画が浮上している。当然、発電燃料の木質チップを安く、安定的に調達することが必要。森林資源が多く、質も高いとされる九州に木質チップ設備の立地や増設が相次ぐのも自然な流れだ。実際、立地8件のうち大分県内が半分の4件を占めている。業界では、木材チップの供給不足が懸念される一方、あまりに供給が増えすぎると木材市況への影響も出かねない。さらに、固定買い取り価格の変動など国のエネルギー政策にも左右される側面があり、今後も右肩上がりで普及が進むかどうかは不透明だ。九州の木材・木製品業種の工場立地は例年1〜3件程度が続いていたが、13年5件、14年8件と増加。業種別の上位に入るようになっている。食品や自動車、半導体関連に続く、九州の「常連」業種となるだろうか。


PS(2016.4.12追加):*9のように、日経新聞が、一億総活躍社会で女性の活躍は重点になっているが、「①2013年以降を見ると、就業者数が伸びているのにGDPは横ばいで1人当たりの生産性が下がっている」「②女性は働くことを余儀なくされているだけ」「③女性の活躍の真の目的は、女性が男性の仕事を取ることではなく、男女ともに活躍して総生産を増やすこと」「④現在のような需要不足の状況では、総需要を増やさなければ生産を増やしようがない」「⑤それをせずに企業に女性の受け入ればかりを強要すれば男性との仕事の取り合いになるのは自然のこと」「⑥最終需要の拡大は、民間に任せるだけでは無理なことは、過去20年を振り返っても政府が財政を投入してつくるしかない」「⑦女性進出を目指すなら、大企業は必ず中小は複数の企業で保育室を作ることを義務づけるくらいの思い切った方策が必要」などとしている。
 しかし、日本国憲法27条に「すべて国民は勤労の権利を有し義務を負う」と規定されており、男性が優先的に職を得るとは書かれていない(男女平等なのだから当然)。そのため、③⑤の主張は、憲法違反かつ男女雇用機会均等法違反で誤りだ。そもそも、「女性が男性の仕事を取ることではない」などと書く以上、何が男性固有の仕事かをリストアップしてみせるべきだが、戦闘機にも女性が乗っている現在、男性固有の仕事はあまりない上、これまで勤労者が男性に偏っていたためわからなかった本当の需要は多く、保育や介護はその一部にすぎない。また、人によって働く目的や動機は異なり、私(純然たる女性)は、仕事を通じて自己実現するために、勉強し、仕事上の経験を積み、目的に沿った仕事をしてきたので、②を全女性に当てはめるのは失礼だ。そして、こういうことを書く女性を「謙虚でない」「自分を知らない」「女らしくない」などと論評する人がいるが、それはジェンダーによる間接差別であるため、そう言う人は、「謙虚さ」「自分を知ること」「女らしさ」に関する自分の定義とその定義を誰にでも押しつけることの正しさについて見直すべきである。なお、⑦の「女性進出を目指すなら企業で保育室を作ることを義務づけることが必要」というのも、「保育=母親の仕事」という固定観念によっているため間違いで、日経新聞がここまでの差別記事を掲載するとは呆れた。
 さらに、①の「就業者数が伸びたのにGDPが横ばい」というのは、⑥のように、政府が税金を投入して必要性が小さく付加価値の低い(もしくは、付加価値のない)最終需要を作り、多くの労働力がそういう仕事についているからで、そのために政府が税金を上げると、また消費者は本物の需要を節約し、④の需要不足が促進され、GDPも落ちるという負のスパイラルになっているのである。家計という消費の60%を占める実物経済の重要な部分を知らない人には想像すらできないようだが、日経新聞の記者が経済学に弱くて本質を突けず、官のマイクロホンと化しているのでは役に立たない。

*9:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20160412&ng=DGKKZO99530030R10C16A4EN2000 (日経新聞 2016.4.12) 女性活躍の必須条件
 安倍晋三政権は一億総活躍社会を目指し、なかでも女性の活躍は重点課題になっている。実際、2013年以降を見ると、就業者数は伸び、その推進役は女性の就業者数の増大で、男性就業者数はほとんど変わっていない。これから見ると、政策は成功しているように見える。一方、この間の実質国内総生産(GDP)はほぼ横ばいで、マイナス成長すら起こっている。就業者数が伸びているのにGDPが横ばいなのは、1人当たりの生産性が下がっているということだ。その結果、1人当たりの所得が減り、家計の平均所得は変わらない。これは、従来、夫1人の働きで成り立っていた家計が、夫婦共働きでなければ成り立たなくなっていることを意味する。つまり、生活はまったく楽にならず、女性は働くことを余儀なくされているだけだ。子供を持つ家庭では、事態はさらに深刻だ。女性が働こうとすれば、その前に保育園探しに奔走しなければならないからだ。運良く仕事に就いても、保育園の入園はすでに職のある人が優遇される。最近話題の「保育園落ちた……」というブログが引き起こした波紋は、子育て家庭を取り巻く切実な状況が背景にある。女性の活躍の真の目的とは、女性が男性の仕事を取ることではなく、男女ともに活躍して、総生産を増やすことだ。だが、現在のような需要不足の状況では、総需要を増やさなければ生産を増やしようがない。それをせずに、企業に女性の受け入ればかりを強要すれば、男性との仕事の取り合いになるのは自然のことだ。その結果が非正規雇用と低賃金労働の拡大となって、子育て家庭は、子供を保育園に入れる資金さえ足りなくなってしまう。最終需要の拡大こそが、一億総活躍社会の必要条件であり、それができれば、活躍の場は自然に広がる。最終需要の拡大は、民間に任せるだけでは無理なことは、過去20年を振り返ってもわかる。政府が財政を投入してつくるしかない。その上で、特に女性進出を目指すなら、大企業は必ず、中小は複数の企業で保育室を作ることを義務づけるくらいの、思い切った方策が必要であろう。そうでなければ、たとえ仕事が増えても保育園探しがますます深刻化し、働くことが難しくなる。

| 資源・エネルギー::2015.5~2016.12 | 03:23 PM | comments (x) | trackback (x) |

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