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2016.5.30 財務省とメディアの消費税増税自体が目的の政策を中止して国に公会計制度を導入するのが、ギリシャのようにならないために必要な日本の経済・財政政策である (2016年5月31日、6月1、3、4、5日に追加あり)
   
                    2016.5.27日経新聞      2016.5.28    2016.5.25 
                                       日本農業新聞     佐賀新聞

   
    2016.5.27日経新聞   債務残高のGDP比  日本のGDP推移    日本の賃金推移

(1)消費税増税は、国益ではなく財務省の願望だ
 私はギリシャに向かって直進する消費税増税は不要だと思うが、首相が消費税増税延期を選択すると、*1-1のように、日本のメディアは「①消費税増税で得た財源は社会保障の安定や拡充に充てる計画だったので、延期のしわ寄せは社会保障の対象となる高齢者や子育て世帯に真っ先に及ぶ」「②既に深刻な状況にある我が国の財政再建は遠のく」「③大衆迎合や選挙を意識した安易な先送りは許されず、首相は説明責任を厳しく問われる」などと騒ぎ立てる。

 しかし、①②③のような論調こそが、猿芝居の始まりなのだ。首相より前に、財務省とメディアは、①他国にはそのような決まりはないが、日本では社会保障の安定・拡充に充てる財源は消費税でなければならないとする理由 ②実際には消費増税前後の景気対策と称して国民から巻き上げた税金を政府が付加価値の低い投資にばら撒いて経済成長を妨げているのに、消費税増税をすれば財政再建できると唱えている理由 ③算術しかできない消費税増税論者が日本経済を考えており、反対論者は大衆迎合だという誤った自信を持っている理由 などについて、世界が呆れない根拠をもって説明すべきだ。

 なお、首相や多くの国会議員はもともと消費税増税に積極的ではなかったのに、どの党が政権をとっても消費税増税をしなければメディアを使って論理にならない批判をさせ、ついに増税に追い込ませたのは、消費税増税が願望の財務省だ。そして、メディアは財務省の尻馬に乗って騒いでいるにすぎず、「表現の自由」を標榜しなければならないほど芯のある報道をしているわけではない。

 また、東日本大震災や九州大地震の復興で多くの工事が必要になったため、失業率が下がって景気も良くなるのは当たり前であり、実際、上のグラフのように国内需要は東日本大震災の後、急速に伸びている。そのため、金融緩和による物価上昇・消費税増税・社会保障削減などぎりぎりで暮らしている家計にマイナスの影響を与える経済政策の邪魔がなければ、本物の景気回復ができた筈なのである。

(2)景気対策と称する生産性を高めないばら撒き
 日銀が「2%の物価上昇目標を実現するためなら何でもやる」と言っているように、0金利に近い金融緩和でインフレを起こしてデフレを脱却すればよいという発想は、経済学的に誤りである。何故なら、そのような中央銀行の下では、人々は自分の資産と将来の安全を護るために貯蓄を行って家計を護る方向となり、結果として利子率が少なくとも2%程度になるまで物価が下がるからだ。これを、経済学では「ジョンブルも2%の利子率には我慢できない」と表現する。ジョンブルとは、イギリス人の男性に多い名前で、贅沢をせず、文句も言わずに、こつこつと働く人を意味し、そのジョンブルでさえ我慢できないという意味だ。

 そこで、*1-2のように、安倍首相は28日夜、麻生財務相、谷垣自民党幹事長と会談して、来年4月に予定する消費税率10%への引き上げを2019年10月まで延期する方針を伝え、会談で反対する意見も出たため、引き続き政府・与党内で調整することになったそうだ。また、首相は、消費税率10%への増税延期と財政出動を行うために、G7首脳会議で「世界経済は危機に陥る大きなリスクに直面している」「各国の財政出動が必要だ」という合意を取り付けようとしていた。

 しかし、*1-8のように、例えば、道路をより良くするのではなく掘っては埋めるだけのような生産性を上げない工事や合理性のない公共工事によって実際に行われている「ヘリコプターマネー」による財政出動は、役に立つ仕事をせずに給料をもらう人を作って全体の生産性を下げ、円の価値を薄めて所在を変えるだけであるため、我が国の借金を増やして成長に結びつかず、正義でもないのである。
 
 ただし、政府が、当初の契約通りに年金を支払えば必要となる年金資産額を退職給付会計を使って計算し、50年以上の償還期限の0金利長期国債を発行して積み立てたり、教育・医療・社会保障を充実したりするのはヘリコプターマネーではないため、行うべきである。

(3)やはりG7の他国は、日本政府の変な説明には同調しなかった
 *1-3のように、首相はG7で「リーマンショック前に似ている」として消費増税延期への地ならしをしたが、これは日本の特殊事情であるため、G7で話すのは不適切のように思えた。そのため、危機認識が首脳間で差があったのは当然で、既に国に公会計制度を導入しているG7各国の首脳が、「危機、クライシスとまで言うのはいかがなものか」とし、「G7各国は、『それぞれの必要性に応じて経済政策をとるべきだ』というドイツのメルケル首相の意見を支持した」というのは、当たり前のことだった。

 また、*1-4のように、「世界経済に下振れリスク」ともよく言われるが、経済は常に景気循環しながら発展していくため、下振れも上振れも普通に起こる。そのため、一つ一つの投資効果を吟味して生産性を上げる投資をするのではなく、消費税を上げながら「○○兆円規模の景気対策」というヘリコプターマネーを撒く方がよほどまずく、これが通用する理由は、事実を分析し本質や真実を突きとめて報道することができない日本メディアの質の低さと、それを許している主権者の怠慢である。

 つまり、*1-5のように、G7首脳会議(伊勢志摩サミット)で議長を務めた安倍首相は、世界経済のリスクを強調し、G7による危機対応を強く求めたが、G7の他国首脳は日本政府の変な説明に騙されず、首脳宣言は「世界経済の回復は継続しているが、成長は緩やかでばらつきがある」という議長国日本に配慮したあまり意味のない基本認識を示した。しかし今、日本で感じるべき最も大きなリスクは、地震と原発のリスクなのである。

 そのほか、*1-6のように、「アベノミクスが成果を上げていない」とも書かれているが、その最も大きな原因は、金融緩和によるインフレ、消費税増税、医療・福祉の削減によって国民から金を巻き上げ、それを生産性の低い事業にばら撒き、その中には生産性がマイナスの事業すらあることだ。そして、このことはずっとこのブログに書いてきたのでここで長くは書かないが、これまでの一つ一つの政策の総合が日本のマクロ経済に結果として現れているのであり、その責任はアベノミクスのみにあるわけではない。

 なお、*1-7に、「首相は個人消費の低迷を踏まえ、購入額以上の買い物ができるプレミアム商品券の発行といった家計支援策も柱となる2次補正を検討する」と書かれているが、物価上昇、消費税増税・福祉の切り捨てなどで大きくぶんどられた国民に、そこから少額のプレミアム商品券を発行して地元商店街で買い物をするように“支援する”などというのは、あまりにも人を馬鹿にした愚策である。 

(4)G7(伊勢志摩サミット)で議論されたこと
 *2-1のように、G7では世界経済の安定に向け、「G7が世界経済のイニシアチブをとる」と首脳宣言に盛り込み、財政出動、構造改革、金融政策などを総動員して成長を底上げし、そのほか①テロ対策 ②タックスヘイブンを使った課税逃れ対策 ③サイバー対策 ④質の高いインフラ投資 ⑤感染症対策などの国際保健 ⑥女性の活躍推進 などの重点6分野で付属文書をまとめる予定だったそうだ。

 このうち、「財政出動、構造改革、金融政策などを総動員して成長を底上げする」というのは、具体的な意味のないばら撒きを行うという宣言だが、やはりG7の財務相・中央銀行総裁会議は、紳士的に世界経済を下支えするためにあらゆる政策手段を総合的に用いることは確認したものの、各国一斉の財政出動に関しては合意に至らず、健全だった。特に、*2-3のように、独財務相が「目先の効果にこだわり、借金を積み上げるだけになってしまう事態は避けたいと(G7の)みんなが思っている」との認識を示したのはもっともであり、日本もそうすべきである。

 そのような中、*2-4のように、佐賀新聞は「G7、財政出動は各国判断、経済下支えへ政策総動員」という表現をしているが、日本のように「景気対策、景気対策」と言って、具体的な方針のない政府支出(=ばら撒き)を経済下支えと称して行う国はないことを認識しておくべきだ。

 また、*2-5のように、タックスヘイブンをテロ資金と結びつけて禁止しようとする国も日本くらいであり、これが重要な問題として取り扱われなかったのは、世界の正常性と日本の異常性を物語っている。

 なお、①③④⑤はさほど意見の違いの出ない項目だが、⑥の女性の活躍推進は、意見の違いは出ないものの、今頃そういうことを言っている国はG7では日本くらいであるため、G7でそれを言うと、みんな(イギリス、ドイツは既に女性首相を出しており、アメリカも女性大統領が出そうだ)呆れたと思われる。

<財務省とメディアのおかしな思考>
*1-1:http://qbiz.jp/article/87630/1/
(西日本新聞 2016年5月27日) 【解説】増税延期 首相、問われる説明責任
 議論を重ねた末に与野党が合意し法律に定めた消費税率10%への引き上げを、安倍晋三首相が再び延期する道を選んだ。国内外の景気が停滞していることは確かだが、首相が伊勢志摩サミットで訴えた「リーマン・ショック前に似た状況」とは程遠いとの見方が専門家の間では強い。大衆迎合や選挙を意識した安易な先送りなら許されず、首相は説明責任を厳しく問われている。消費税の扱いは、景気への影響にとどまらず、社会保障や国の財政、将来世代も含めた国民負担の在り方といった幅広い観点から論じられるべきテーマだ。増税で得た財源は社会保障の安定や拡充に充てる計画だった。延期のしわ寄せは社会保障の対象となる高齢者や子育て世帯に真っ先に及ぶ可能性がある。既に深刻な状況にある国の財政の再建はさらに遠のくことになる。前回延期時に「再び延期することはない」と約束した首相が前言を翻したことで増税への本気度を疑われ日本国債の格下げを含め市場の信認低下を招く事態も予想される。熊本地震の被災地はなお厳しい状況に置かれており、消費低迷が続く家計にとって増税先送りの恩恵は大きい。ただ、増税を予定通りに実施できる経済環境を整えられなかった安倍政権の責任は重い。「アベノミクス」の限界を露呈したとも言え、政権への批判や経済政策の見直しを求める声が強まるのは必至だ。

*1-2:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12382288.html (朝日新聞社説 2016年5月29日) 首相、増税再延期伝える 「19年10月」麻生氏らに 2次補正を検討
 安倍晋三首相は28日夜、首相公邸で麻生太郎財務相、谷垣禎一自民党幹事長と会談し、来年4月に予定する消費税率10%への引き上げを延期する方針を伝えた。延期期間は2019年10月までの2年半とする考えも示した。だが、会談では反対する意見も出たため、引き続き政府・与党内で調整することになった。複数の政府関係者が明らかにした。会談には菅義偉官房長官も同席した。首相は熊本地震の発生に加え、今後は世界経済の収縮も懸念されることから、来年4月に予定通り消費増税を実施すれば政権が掲げるデフレ脱却がさらに遠のきかねないと判断し、増税時期を先送りする考えだ。首相は、主要7カ国(G7)首脳会議(伊勢志摩サミット)が閉幕した27日の記者会見で「世界経済が危機に陥る大きなリスクに直面している。G7はその認識を共有した」と強調。「アベノミクスのエンジンをもう一度、最大限ふかしていく決意だ。消費税率引き上げの是非も含めて検討する」と述べ、増税を延期する考えを示唆していた。28日夜の会談で、首相は伊勢志摩サミットの議論などをもとに、予定通りの増税を求める麻生氏らに増税延期の方針を伝えた。ただ、麻生氏は延期に反対し、仮に延期する場合は「衆院を解散すべきだ」と主張したという。このため、29日以降も調整を続けることにした。首相は今後、山口那津男公明党代表らとも会談し、増税延期に理解を求める。政府・与党内で合意が得られれば、参院選前に正式に表明する考えだ。首相は14年11月にも15年10月の消費増税を1年半延期しており、今回延期を正式に決めれば2回目となる。一方、首相は公共事業など新たな経済対策を盛り込んだ16年度第2次補正予算案を編成する方向で検討に入った。首相官邸の幹部は「消費増税を先送りし、大規模補正を打つという考え方もある」と主張。規模は与党内で5兆~10兆円との見方が出ており、参院選後の臨時国会に補正予算案を提出する方向だ。

*1-3:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20160527&ng=DGKKZO02843290X20C16A5EA2000 (日経新聞 2016.5.27) 首相「リーマン前に似る」 消費増税延期へ地ならし、危機認識、首脳に差も 伊勢志摩サミット 
 安倍晋三首相は26日の主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)で、世界経済について「危機に陥るリスクがある」と訴えた。政策対応を誤ればリーマン・ショック級の経済危機が発生しかねないとして各国に財政出動を促したが、認識は必ずしも一致しなかった。首相の強い訴えには、2017年4月に予定する消費税増税を再延期する地ならしの思惑が透ける。「リーマン・ショック直前の洞爺湖サミットは危機を防ぐことができなかった。そのてつを踏みたくない」。首相は世界経済に関する討議で、日本が前回議長国を務めた08年の洞爺湖サミットに言及し「将来の危機」への対処を求めた。首相の「危機」へのこだわりには並々ならぬものがある。討議では商品価格や新興国経済に関する指標を並べた4ページの資料も配布。いずれのページにも「リーマン・ショック」という単語を盛り込み、「リーマン前と状況が似ている」と指摘した。前のめりの姿勢の背景にあるのは消費税だ。首相は14年に増税先送りを理由に衆院を解散した際、17年4月の増税を「再び延期することはない」と断言。その後はリーマン・ショックや大震災のような事態が起こらない限り、増税方針は変えないと説明してきた。政権が目指すデフレ脱却や景気の腰折れの可能性を考えると、予定通りの増税は政権運営へのマイナス面がある。だが「いまはリーマン・ショックのような事態とはとてもいえない」(首相周辺)状況。7月の参院選を控え、説得力のある材料をそろえなければ有権者から理解は得られない。首相はすでに増税延期の方針を固め、来週に表明する見通し。国会会期末の6月1日に記者会見を開く案が有力だ。政権内で浮上しているのが経済状況の悪化懸念と、熊本地震の2つの「合わせ技一本」という案。いまはリーマン・ショック級ではないが、将来の下振れリスクはある。G7でそう合意し、財政出動の必要性でもお墨付きを得れば「負の財政出動」ともいえる増税延期の理由になる。だが各国の反応は首相の期待とは微妙に異なる。日本政府関係者は「危機、クライシスとまで言うのはいかがなものか、という意見もあった」と語る。英国政府の説明によると「G7各国は、それぞれの必要性に応じて経済政策をとるべきだというドイツのメルケル首相の意見を支持した」という。首相が各国首脳に提示した討議資料にも、身内である自民党執行部内から「世界からどんな反応が出るか心配だ」との声が漏れた。討議終了後、記者団の質問に答えた首相は「世界経済は大きなリスクに直面しているとの認識については一致できた」と語った。それは「我々は大きな危機に……」と語り始めたのを言い直した表現だった。

*1-4:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20160527&ng=DGKKASFS26H4M_W6A520C1MM8000 (日経新聞 2016.5.27) G7「世界経済に下振れリスク」で一致、サミットで首相「政策対応を」 消費増税延期にらむ
 26日に開幕した主要国首脳会議は初日の討議で、世界経済に下振れのリスクがあるとの懸念を共有した。安倍晋三首相は2008年のリーマン・ショック並みの危機が再発してもおかしくないほど世界経済が脆弱になっているとの認識を表明し、各国に財政出動を含む強力な政策の実施を促した。首相は26日の討議後、記者団に「世界経済が大きなリスクに直面しているとの認識で一致できた。これに基づく(金融・財政・構造政策の)3本の矢を主要7カ国(G7)で展開していくことになった」と語った。首相は26日の討議に「参考データ」を提出し、いまの世界経済がリーマン危機前に似ていると指摘した。「参考データ」によると、最近のエネルギーや食料など商品価格がリーマン危機前後と同じ55%下落。新興国の投資や経済成長はリーマン危機以来の落ち込みを示し、新興国からの資金流出が再び起きた。主要国の成長率見通しの下方修正が繰り返されるのも当時と同じだと主張する。日本政府関係者によると、会議ではある首脳から「『危機』とまで言うのはどうか」と表現ぶりに異論が出たものの「新興国が厳しい」という基本認識では全員一致した。首相は金融産業を抱える米英両首脳と25日に相次いで個別に会い、認識を擦り合わせていた。首相は「G7が金融・財政・構造政策を総動員し、世界経済をけん引する。特に機動的な財政戦略および構造改革を果断に進める重要性を訴えたい」と呼びかけた。インフラや環境・エネルギー、科学技術分野への投資を財政出動の具体例に挙げ「日本が先陣を切っていきたい」と強調した。日本政府関係者によると、複数の首脳が「中間層に対する投資が重要だ」との考えを示した。世界で格差問題が深刻になり、中間層の不満が拡大している。その結果として、各地でポピュリズムが横行しているという共通の危機感がある。日本は「財政出動の重要性で各国が一致した」とし、強固な政策をうたう共同宣言を調整している。金融・財政・構造政策を幅広く活用する政策総動員の議論は、金融市場が不安定だった2月の20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議で浮上した。仙台市で21日閉幕したG7財務相会議でもテーマになったが、財政出動は各国がそれぞれ判断する位置づけにとどめていた。サミットの場で一歩踏み込んだ。安倍首相が「リーマン並み危機」の可能性に言及したことは、来年4月に予定する消費増税の先送りをにらんだものと受け止められている。首相は消費増税について「リーマン・ショックや大震災級の影響のある事態が起こらない限り予定通り行っていく。適時適切に判断していきたい」と対外説明してきたからだ。26日のサミットの討議で日本の消費増税は「話題にならなかった」(日本政府関係者)という。

*1-5:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12382162.html
(朝日新聞社説 2016年5月29日) 首相と消費税 世界経済は危機前夜か
 主要7カ国(G7)首脳会議(伊勢志摩サミット)で議長を務めた安倍晋三首相はそのリスクを強調し、G7による「危機対応」を強く求めた。だがその認識は誤りと言うしかない。サミットでの経済議論を大きくゆがめてしまったのではないか。首相は、来年4月に予定される10%への消費増税の再延期を決断したいようだ。ただ単に表明するのでは野党から「アベノミクスの失敗」と攻撃される。そこで世界経済は危機前夜であり、海外要因でやむなく延期するのだという理由付けがしたかったのだろう。首相がサミットで首脳らに配った資料はその道具だった。たとえば最近の原油や穀物などの商品価格がリーマン危機時と同じ55%下落したことを強調するグラフがある。世界の需要が一気に消失したリーマン時と、米シェール革命など原油の劇的な供給増加が背景にある最近の動きは、構造が決定的に違う。足もとでは原油価格は上昇に転じている。リーマン危機の震源となった米国経済はいまは堅調で、米当局は金融引き締めを進めている。危機前夜と言うのはまったく説得力に欠ける。だから会議でメルケル独首相から「危機とまで言うのはいかがなものか」と反論があったのは当然だ。他の首脳からも危機を強調する意見はなかった。にもかかわらず、安倍首相はサミット後の会見で「リーマン・ショック以来の落ち込み」との説明を連発した。そして「世界経済が通常の景気循環を超えて危機に陥る大きなリスクに直面している」ことでG7が認識を共有したと述べた。これは、「世界経済の回復は継続しているが、成長は緩やかでばらつきがある」との基本認識を示した首脳宣言を逸脱している。首相は会見で消費増税について「是非も含めて検討」とし、近く再延期を表明することを示唆した。サミットをそれに利用したと受け止めざるを得ない。財政出動や消費増税先送りは一時的に景気を支える効果はある。ただ先進国が直面する「長期停滞」はそれだけで解決できる問題ではない。地道に経済の体力を蓄えることが必要で、むしろ低成長下でも社会保障を維持できる財政の安定が重要だ。消費増税の再延期は経済政策の方向を誤ることになりかねない。しかも、それにサミットを利用したことで、日本がG7内での信認を失うことを恐れる。

*1-6:http://qbiz.jp/article/87673/1/
(西日本新聞 2016年5月28日) 首相が語らない、消費増税再延期を決断する本当の理由
 安倍晋三首相が消費税増税再延期の方針を固めた背景には、自身の政策アベノミクスが思うような成果を上げていない現状がある。首相は先送りの理由として、主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)で合意した経済危機回避のため、率先して政策を総動員する必要性を強調するとみられる。だが実際は、政策効果が不十分で消費や設備投資は伸び悩み、構造改革も道半ばのままで、増税できる環境が整わなかったことが最大の要因だ。「アベノミクスのエンジンをもう一度、力強く吹かしていかなければならない」。首相は27日、議長を務めたサミットを締めくくる記者会見で強調、「政策総動員」の一環として、消費税率引き上げ見送りの検討を明言した。増税再延期はアベノミクスの破綻を意味するのではないかとの質問には「決してそんなことはない」と強く否定。雇用状況の改善などの成果を示した上で、先送りはあく、世界経済の危機回避を目指すサミットでの合意に基づく判断との考えを示した。しかし、元財務官の篠原尚之氏(東京大政策ビジョン研究センター教授)が「日本経済に悪影響があるからなのに、世界経済にリスクがあるようにすり替えている」と指摘するように、増税先送りは、足踏みが続く日本経済の危機回避策に他ならない。日本の成長率は現在、先進7カ国(G7)の中で最低。国際通貨基金(IMF)の予測では、消費税率を引き上げると2017年にはマイナス成長に陥るとみられている。景気低迷の一因には社会保障制度の将来不安に伴う消費不振がある。増税を先送りし社会保障の充実が遅れれば、国民の不安はますます強まり、さらなる消費抑制につながりかねない。政府は一方で経済成長と財政健全化の両立を目指すが、20年度黒字化目標を掲げる国と地方の基礎的財政収支(プライマリーバランス)は、現時点でも6兆5千億円の赤字見通し。増税を先送りすれば、目標達成は絶望的になる。サミットの首脳宣言でうたわれた構造改革の重要性に関しても、日本は欧米諸国から「改革が足りない」と批判されているにもかかわらず、取り組みは進んでいない。首相は会見で、アベノミクスを「世界に展開する」とも語ったが、まず行うべきことは、これまでの政策点検と見直しだ。

*1-7:http://qbiz.jp/article/87713/1/
(西日本新聞 2016年5月29日) 首相、2次補正を検討 サミット受け、参院選後に家計支援策
 安倍晋三首相は、世界経済の危機回避のため機動的な財政戦略の実施で合意した先進7カ国(G7)による主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)の議論を踏まえ、新たな経済対策を盛り込んだ2016年度第2次補正予算案の編成に向け検討に入った。自民党の茂木敏充選対委員長が28日、宮崎市の党会合で「参院選後に新たな経済対策に取り組む。補正予算を臨時国会に提出することになる」と見通しを示した。補正予算案の規模は5兆〜10兆円程度との見方が多い。近く閣議決定する「1億総活躍プラン」から先行実施する政策を選ぶ。個人消費の低迷を踏まえ、購入額以上の買い物ができるプレミアム商品券の発行といった家計支援策も柱となる。当初予算の執行前倒しに取り組んでいる公共事業の上積みも検討する。熊本地震の復旧費用は今月成立した1次補正予算で賄えると見ているが、一段の支援が必要になれば対策費を盛り込む。民進党の岡田克也代表は金沢市内で記者団に「アベノミクスは失敗しているから財政出動をせざるを得ない。それが正直な気持ちだろう。従来の古い自民党に戻っただけだ」と指摘した。共産党の小池晃書記局長は「選挙目当ての質の悪いばらまきで、あきれる」と反発を強めた。

*1-8:http://www.saga-s.co.jp/column/economy/22901/315467 (佐賀新聞 2016年5月25日) デフレ脱却へ「ヘリコプターマネー」、「現金ばらまき」 究極の緩和議論盛ん
 既存の金融緩和策への限界論が高まる中、空から現金をばらまくという意味の「ヘリコプターマネー」に関する議論が世界的に盛り上がっている。国民にお金を直接配る「究極の金融緩和」によって消費を刺激し、デフレ脱却を狙うものだ。財源は政府と中央銀行が協力して生み出すため、国の財政への信認が揺らげば国債価格が暴落するなどのリスクも。実現へのハードルは高いが、将来導入される可能性はゼロではない。ヘリコプターマネーは、バーナンキ前米連邦準備制度理事会(FRB)議長がかつて、たとえ話として示して有名になった考え方だ。実際には、お金をばらまくのではなく、政府が償還期限のない永久国債を発行して日銀が購入しお金を供給。その資金を財源に減税や公共投資といった財政拡張に取り組む手法などが専門家の間では取りざたされている。SMBC日興証券の丸山義正チーフマーケットエコノミストは「物価を押し上げる効果は大きい」と指摘する。ヘリコプターマネーに関し、欧州中央銀行(ECB)のドラギ総裁は記者会見で「とても興味深い考えだ」と発言。一方、日銀の黒田東彦総裁は4月28日の会見で金融政策と政府の財政政策を一体とすることは「現行の法制度の下ではできない」と慎重な見方を示した。デフレ脱却という目的のために厳格に運用されなければ、国の財政赤字を中央銀行が穴埋めしているとみなされ、国債や通貨の信認が損なわれる危険も大きい。ただ日銀は2%の物価上昇目標を実現するためなら何でもやると言っており、市場では「主要中央銀行の中では日銀が導入する可能性が最も高い」(外資系証券)との見方もある。

<伊勢志摩サミット開催前>
*2-1:http://mainichi.jp/articles/20160525/ddm/001/010/179000c
(毎日新聞 2016年5月25日) 伊勢志摩サミット、あす開幕 G7、世界経済安定へ決意
 主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)は26日、三重県志摩市の志摩観光ホテルを主会場に2日間の日程で開幕する。世界経済の安定に向けた主要7カ国(G7)の決意を示す「世界経済イニシアチブ」を首脳宣言に盛り込み、財政出動と構造改革の推進を打ち出す。また、テロ対策や租税回避地(タックスヘイブン)を使った課税逃れ対策など重点6分野で付属文書をまとめる予定で、世界が直面する課題の解決に向けたG7のリーダーシップが問われる。世界経済では、中国など新興国の成長鈍化や原油安で強まる停滞感を克服するため、実効性のある対策を打ち出せるかどうかが課題だ。イニシアチブはG7各国の事情に配慮しつつ、財政出動▽構造改革▽金融政策−−を総動員して成長を底上げする姿勢を確認する見通しだ。ただ、財政出動には参加国で温度差があり、どこまで強いメッセージを出すかは首脳間の議論にゆだねられた。日本政府は「世界経済が抱えるリスクに対し、財政出動など喫緊の対応が必要との認識で一致したい」(安倍晋三首相周辺)としており、サミットで認識共有を図る考えだ。首相は財政と構造改革、金融政策を「アベノミクス」と共通する「G7版三本の矢」と位置づけている。サミットでこうした戦略をG7が共有することで政策の正当性を裏付け、夏の参院選に向けた政権浮揚につなげる思惑もある。このほかサミットではテロ対策の行動計画▽「パナマ文書」で焦点が当たる課税逃れなど腐敗防止対策▽サイバー対策▽質の高いインフラ投資▽感染症対策などの国際保健▽女性の活躍推進−−の6分野で付属文書をまとめる。8年ぶりのアジア開催にあわせ、中国の岩礁埋め立てや軍事拠点化で緊迫する南シナ海問題に関し、「一方的な現状変更への強い反対」を盛り込む。また、北朝鮮の核・ミサイル問題を巡っても、核拡散防止条約(NPT)体制を堅持し、容認しない姿勢を明記する。サミットは1975年にフランスで第1回会合が開かれ、今回で42回目。国内開催は79年の東京サミット以降6回目となる。協議には日本、米国、英国、フランス、ドイツ、イタリア、カナダの7カ国の首脳に、欧州連合(EU)の欧州理事会常任議長(大統領)らを加えた9人が参加する。

*2-2:http://qbiz.jp/article/87246/1/
(西日本新聞 2016年5月22日) G7の景気認識にずれ 財務相会議閉幕 欧州は財政出動「不要」
 仙台市で開かれた先進7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議は、世界経済を下支えするため、あらゆる政策手段を総合的に用いることを確認したが、焦点だった各国一斉の財政出動に関しては合意に至らなかった。為替政策を巡っても日米間の溝は埋まらず、景気の着実な回復に向けた政策協調を目指す主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)での議論に課題を残した格好だ。「揺るぎない連帯、相互理解、協調の精神をあらためて確認した。(サミットでは)さらに積極的な話ができると思う」。麻生太郎財務相は21日、閉幕後の記者会見で、サミット本番への期待を示した。だが景気に対する各国の認識や危機感は異なり、低成長打開へ向け、具体的な政策を打ち出すのは困難な状況だ。日本では中国経済減速などの影響で円高が進行、日経平均株価は一時、1万5000円の大台を割るなど株価は低迷が続く。企業業績も先行き不透明感が強まり、市場からは「アベノミクスは行き詰まりつつある」と懸念の声も上がっている。一方、ユーロ圏は2013年4〜6月期以降丸3年にわたり、プラス成長が続く。大和総研の山崎加津子氏は「ドイツ政府には、緊急的な経済対策が必要との認識はない」と分析。フランスのサパン財務相も21日の記者会見で「フランスは成長が戻っており(財政出動は)必要ない」と、財政政策に対する、日本との立場の違いを強調した。
   ▼    ▼
 年明け以降の急速な円高は落ち着きつつあるとはいえ、金融市場は不安定なまま。日本は為替相場について「投機的な動きがある」と懸念を示したが、ルー米財務長官は「(円ドル相場は)秩序的」と反論するなど、為替を巡る日米間の溝は埋まらなかった。米国が強硬姿勢を崩さないのは、11月に大統領選挙を控えているためだ。米国は円安により日本の景気が回復、世界経済を支えると期待していたが、ドル高が続いたことで米国の輸出企業業績は低迷。選挙戦を有利に進めるには景気の下支えが不可欠で、環太平洋連携協定(TPP)に対する議会の反発を抑えるためにも「米政府は円安誘導をけん制する必要がある」(エコノミスト)という。ルー米財務長官と会談した麻生氏は「(日米ともに)選挙があり、TPPを抱えている。互いに意見を交換し、感情的な話からもつれることのないよう配慮しないといけない」と表明した。ニッセイ基礎研究所の上野剛志氏は「G7の結束をアピールするため(為替政策について)強く出ることは避けたのだろう」と分析。今後については「再び円高が進んでも、日本が円売り介入をするのは難しいのではないか」と話した。サミット議長を務める安倍晋三首相は、世界経済の持続的成長へ向け「明確で力強いメッセージを出したい」と意気込む。ただ財務相会議で浮き彫りになったように各国の思惑が絡み合う中、合意取りまとめへのハードルは高い。

*2-3:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20160516&ng=DGKKASGM15H3Q_V10C16A5MM8000 (日経新聞 2016.5.16) 独財務相「財政出動の要請ない」 G7で慎重姿勢表明か
 ドイツのショイブレ財務相は15日、日本経済新聞の書面インタビューに答え、日本政府による追加財政出動の具体的な要請は「ない」と明言した。主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)は財政政策の協調を探るが、ショイブレ氏は慎重な姿勢も示した。26~27日のサミットに先立ち、G7は20~21日に仙台で財務相・中央銀行総裁会議を開く。この会議で財政や景気について合意し、首脳がサミットで確認する段取りを描く。ショイブレ氏は仙台の会議に出席する。ショイブレ氏は「目先の効果にこだわり、借金を積み上げるだけになってしまう事態は避けたいと(G7の)みんなが思っている」との認識も示し、仮に要請があっても追加の財政出動は難しいとの考えをにじませた。G7会議でこうした見解を表明するもようだ。日本政府は、安倍晋三首相が5月のメルケル独首相との会談で「機動的な財政出動が求められており、G7で一段と強いメッセージを発出したい」と語り、政策協調に理解を求めたとしていた。為替政策では米国と日本の温度差も目立つ。

*2-4:http://www.saga-s.co.jp/news/national/10201/314200
(佐賀新聞 2016年5月21日) G7、財政出動は各国判断、経済下支えへ政策総動員
 仙台市で開かれた先進7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議は21日、減速する世界経済を下支えするため、各国が必要に応じ財政出動することを確認し閉幕した。国ごとの事情を踏まえ金融政策、構造改革を組み合わせて政策を総動員する。課税逃れやテロ資金対策をG7が主導することで一致。為替を巡っては円高を警戒する日本の為替介入を米国がけん制した。焦点の財政出動は構造改革を重視するドイツなどの慎重論を踏まえ各国判断とし、日本が目指した一斉出動は見送られた。

*2-5:http://www.saga-s.co.jp/news/national/10201/314144
(佐賀新聞 2016年5月21日) G7、税逃れとテロの温床解明、財務相会議閉幕
 仙台市で開かれた先進7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議は21日、国際的な課税逃れやテロ資金の拡散を阻止するため、不正の温床となりがちなタックスヘイブン(租税回避地)を使った資金取引の解明に連携して取り組むことを確認し、閉幕した。麻生太郎財務相とルー米財務長官は討議に先立ち2国間で会談し、為替政策を巡り協議した。ルー氏は通貨の切り下げ競争を回避することが重要との認識を強調した。20日の討議で金融・財政政策と構造改革を各国の事情に応じて総動員することで一致したことと併せ、26、27両日開かれる主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)に成果として引き継ぐ。

<男性社会の欠陥>
PS(2016年5月31日、6月5日《図表》追加):麻生氏のように生活費の上限など考える必要もなく、自分が保育や介護の担当をすることも想像したことがなく、セメントの売れる方が有難いと思う人が財務大臣になった時点で、我が国の財政への取り組みがどうなるかは推測できた。しかし、男性も家計や家事に主体的に参加し、消費者とは自分や家族のことであることを体感し、消費者の行動はどういうものかという感覚を身につけなければ適切な政策を考えることはできないため、世のお母さん方は男の子にもそのような素養を身につけさせる教育をすべきだ。何故なら、現在の男性中心社会は、そういうことを理解した上で働いている人が少なく、いてもマイノリティーで発言権が小さいのが欠陥だからである。

     
  2014.9.17   2015.4.2    延長時の   社会保障負担増        九州の   
  朝日新聞     西日本新聞  年金支給額                  介護保険料負担増
  年金制度   年金支給額減額

*3:http://qbiz.jp/article/87837/1/
(西日本新聞 2016年5月31日) 麻生氏 増税再延期を容認も、『首相との違い』にじませる
 麻生太郎財務相は31日の閣議後の記者会見で、安倍晋三首相が消費税増税の再延期方針を固めたことに関し「首相の最終的な判断に従う」と容認姿勢を表明した。2020年度に基礎的財政収支を黒字化する健全化目標の達成に向け「最大限努力していく姿勢は変わらない」と強調した。麻生氏は予定通りの増税を求めていた。再延期なら夏の参院選に合わせた衆参同日選をしないと「筋が通らない」とも発言していたが「解散は首相の専権事項だ」と、首相の意向を尊重する考えを示した。30日夜の首相との会談内容に対する言及は避けた。一方、増税分を財源に見込んでいた社会保障の充実策については「給付と負担のバランスを考えていくのは当然だ。そういったものは増収額に応じて措置すべきだ」とし、先行実施は困難との姿勢を示唆した。麻生氏は原油安などで「新興国経済が深刻な事態になっている」と指摘しながらも、増税再延期の背景として「一番の問題は(国内の)個人消費が伸びていない点。世界経済は従の原因だ」と述べ、主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)で世界経済の「危機回避」を強調した首相の見解との違いをにじませた。

<高齢者の貧困と社会保障>
PS(2016年6月1日追加):「高齢者は金持ちである」という事実に基づかない情報を基に、社会保障改革と言えば高齢者からぶんどり、高齢者への社会保障を削減することを続けてきた結果、*4のように、生活保護受給世帯の50.8%が65歳以上の高齢者となった。このように、事実を調査することなく、事実に基づいた深い考察もせずに、厚労省の怠慢を隠すべく若者と高齢者を対立軸として観念的に行われてきた高齢者いじめは、底が浅く、それこそ人格を批判されるべきことである。しかし、完全失業率が低下傾向にあるため、65歳以上の高齢者も働きやすくして支える側にまわってもらえば、年金支給開始年齢を上げ、医療・介護費を減らすことは可能だろう。

    
 2016.6.1、2016.2.16西日本新聞      賃金の推移        失業率の推移

*4:http://qbiz.jp/article/87933/1/
(西日本新聞 2016年6月1日) 生活保護50%超高齢者 82万世帯 過去最多
●9割単身、貧困深刻
 生活保護を受給する世帯のうち、65歳以上の高齢者を中心とする世帯が3月時点で過去最多の82万6656世帯となり、初めて受給世帯の半数を超え50・8%となったことが1日、厚生労働省の調査で分かった。うち単身世帯が9割に上った。厚労省の国民生活基礎調査では、高齢者世帯は約1221万世帯(2014年6月時点)で、受給世帯は約6%に当たる。高齢化が進行する中、低年金や無年金で老後を迎え、身寄りもなく生活保護に頼る高齢者の貧困の深刻化が鮮明になった。厚労省の担当者は「高齢者が就労できず、就労しても十分な収入を得られていない」と分析。景気回復による雇用改善で現役世代の受給が減る一方、高齢者の伸びが全体の受給者数を押し上げており、この傾向は今後も続くとみている。厚労省によると、全体の受給世帯数は前月より2447世帯増加して163万5393世帯で、過去最多を3カ月ぶりに更新。受給者数は216万4154人で2847人増え、人口100人当たりの受給者数である保護率は1・71%だった。

<税外収入の可能性>
PS(2016年6月3日追加):消費税増税を延期(本当は永久凍結か国税としての消費税は廃止したいが)すると、*5-1のように、「①増税先送り、次の世代より次の選挙」「②ポピュリズムに陥らず増税も唱えてきた税のプロの姿はそこにはない」「③増税から逃げたら社会保障を含め予算を切るしかない」などと批判するメディアが多い。しかし、①は単純な算術しかできていない上、目先しか見えない愚鈍な発想であり、②は“ポピュリズム”“プロ”の定義を(わざと?)取り違えている。また、日本だけ「社会保障の財源は消費税」としているのは、③の論法で消費税増税を国民に受け入れさせるための悪知恵だ。
 しかし、国民に負担をかけずに国富を増やして社会保障財源を捻出するのが本当の知恵であり、日本の排他的経済水域からは、下のようにメタンハイドレート、レアメタル、*5-2の金鉱石なども発見されている。そして、海底は国有財産であるため、国は公会計制度を導入して正確な財務管理を行うと同時に、これらの鉱業を早急に事業化して税外収入を得るべきであり、20年以上も「消費増税を先送りすれば次の世代の負担が大きくなる」などという馬鹿の一つ覚えの虚偽記事をメディアが書いていることこそ、次世代に悪影響を与えているのだ。

    
    日本の    メタンハイドレート  鹿児島湾の海底で     青ケ島沖で金鉱石発見
 排他的経済水域    の分布       レアメタル発見          *5-2より               

*5-1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20160603&ng=DGKKZO03157310T00C16A6EA1000 (日経新聞 2016.6.3) 決断増税先送り(2)次の世代より次の選挙
 増税先送りを首相の安倍晋三(61)が表明した1日夜。首相公邸に幹事長の谷垣禎一(71)ら自民党役員が顔をそろえた。「批判も含め、参院選で審判を受けたい」。安倍がカリフォルニアワインを振る舞いながら上機嫌であいさつすると、出席者の一人は「こういう説明もあるのかな」とつぶやいた。谷垣らが増税延期を正式に聞いたのはこの数日前。党幹部は「すでに決定事項で議論の余地はなかった」と話す。しかし安倍が早くから増税延期に含みを持たせる中、党側に議論する時間がなかったわけではない。
   □   □
 2月、安倍から消費増税の先送りを考えていると打ち明けられた首相補佐官の衛藤晟一(68)は、同じ安倍側近の政調会長の稲田朋美(57)に「安倍さんの思いは増税延期ですよ」と伝えた。稲田が主宰する党財政再建特命委員会。2月の会合で園田博之(74)は「増税から逃げたら社会保障を含め予算を切るしかない。この場で増税の是非を議論すべきだ」と稲田に迫った。だが同調する声は出ず、特命委が増税延期を議論することは最後までなかった。自民党税制調査会も5月31日、幹部会合を開いたが増税延期は議論しないまま終わった。幹部の一人は「官邸が決めた以上、何もできない」。ポピュリズムに陥らず増税も唱えてきた税のプロの姿はそこにはない。同じ31日の政調全体会議も、政策決定のあり方には異論が出たものの、増税延期自体には目立った反対はなかった。理由は単純だ。参院選を控え、増税を訴える選挙は勝てないと肌で感じているからだ。政党交付金と選挙の公認を握る安倍には刃向かえない。だが不満はくすぶる。「増税を先送りするような安倍政権だ。我々がもっと頑張らなければいけない」。6月1日夜、都内で開いた額賀派会合。消費税を導入した元首相、竹下登を兄に持つ前復興相の竹下亘(69)はこう訴えた。同じ頃、近くで開いていた岸田派会合では、名誉会長の古賀誠(75)が「首相は芯がない。何をしたいのかわからない」と日本酒を口にしながらぶちまけた。ポスト安倍候補の外相、岸田文雄(58)は受け流したが、出席者から「安倍政権の終わりの始まりだ」「官僚は官邸しか見ていない」と不満が漏れた。こうした声が公の会議で出ず、遠ぼえにしか聞こえないのが今の自民党だ。自民党会派を離脱した前参院幹事長の脇雅史(71)は「権力に弱く、言論空間としての国会が死んでいる」と話す。
   □   □
 2月17日の自公党首会談。安倍が「増税はもちろんやります。ただ経済情勢も注視しますが……」と話すと、公明党代表の山口那津男(63)は「経済は生き物ですからね」と応じた。安倍は「山口さんも経済次第で延期はやむを得ないと考えている」と受け取った。山口は谷垣とともに2012年、社会保障と税の一体改革で消費増税を決めた民主、自民、公明3党合意の当事者。だが前回14年の増税先送りに続き、今回も延期を認めざるを得なかった。痛みを分かち合う時代の政治の知恵とされた3党合意はかすむ。3党合意のもう一人の当事者が民進党の前首相、野田佳彦(59)だ。野田は2日、参院副議長の輿石東(80)に電話で安倍批判を展開した。「19年まで延期なんて誰も信じません。世界経済のリスクなどと言ったら絶対にできない」。その野田も苦しい立場にある。「安倍さんは必ず延期すると言いますよ。その前にこちらが表明しないと機会を逸します」。民進党の発足間もない4月上旬、代表代行の江田憲司(60)は代表の岡田克也(62)に促した。先手を打って延期を表明すれば、安倍が増税する場合、争点にできる。安倍が延期を表明すれば「アベノミクスの失敗」と訴えられる。こう踏んだ岡田は5月18日の党首討論に照準を定めた。党首討論の前週、野田は岡田から「2年延期を打ち出したい」と相談を受けた。岡田は野田の下で一体改革に取り組んだ間柄だ。野田は不満を抱きつつ「代表の足を引っ張ることはしない」と岡田を立てた。野田も安倍と同様、衆院解散時の消費税発言を問われる立場にある。解散した12年の記者会見で「民主党は次の選挙より次の世代を考えた候補者がそろう」と話したからだ。自民党の重鎮の一人は嘆く。「今の政治は与党も野党も、次の世代より次の選挙しか考えていない」

*5-2:http://qbiz.jp/article/88036/1/ (西日本新聞 2016年6月2日) 高濃度の金 海底に 東大発見 鉱石1トン中最大275グラム 伊豆諸島・青ヶ島沖
 伊豆諸島・青ケ島(東京都)沖の海底熱水鉱床で高濃度の金を含む鉱石を発見したと、東京大のチームが2日、発表した。最高で1トン当たり275グラムの高濃度の金を含むものもあり、陸地や他の海域の金鉱石と比較しても高い値だったという。東大の浅田昭教授は「金の採掘を事業化するには同様の鉱床を多く見つける必要がある。この海域の調査を進め、今回のような場所をさらに見つけたい」としている。チームは、海中ロボットから音波を出すことで、海底の地形を高い精度で調べられる装置を開発。昨年6〜9月、青ケ島の東方約12キロにある東青ケ島カルデラを調査し、海底から噴出する熱水に含まれる金属成分が沈殿した海底熱水鉱床を複数発見した。そのうち、カルデラ南部の水深750メートルの小さな丘のような場所で採取した鉱石を分析すると、金や銀を多く含んでいた。分析した15個の鉱石のうち、金の最高の濃度は1トン当たり275グラムで、平均値は同102グラムだった。また0・003〜0・09ミリの大きさの金粒子も確認できた。世界の主要金鉱山の金含有量は1トン当たり3〜5グラムとされ、今回見つかった鉱床の金の割合は高い。飯笹幸吉・東大特任教授は「資源としては期待の持てるエリア」と話した。
■海底熱水鉱床…地中から熱水が噴き出す海底の周りで、熱水に含まれる金属成分が沈殿してできた鉱床。煙突のような噴出口や、小高い丘などの地形が特徴で、含有される金属には銅や鉛、亜鉛などのほか、貴金属の金や銀がある。貴重な資源とされるガリウムやゲルマニウムなどのレアメタルも多く含むものもある。日本近海では伊豆や小笠原の周辺や沖縄海域などでの存在が知られ、政府は商業化に向けた探査や技術開発を推進している。鉱床にすむ生物が特殊な生態系を構成していることでも注目されている。

<本当の責任者>
PS(2016年6月4日追加):安倍首相がTPPテキスト分析チームを表明すると、多くのメディアが「社会保障財源が云々」と騒いでいるが、社会保障財源はもともと社会保険料を徴収して賄っているものであるため、まず徴収漏れや積立金の運用方法を批判すべきである。そして、消費税を増税したからといって、それ以上の景気対策を行えば、社会保障が充実するとも財政状態が改善するとも言えないため、消費税増税延期について自民党と野党連合を舌戦させても意味がなく、「敵は厚労省・財務省にあり」なのだ。
 なお、安倍首相が電力自由化を進められたことは誰にでもはできない大きな実績であり、消費税増税問題で票が減ったからといって責任をとる必要はない。何故なら、誰がやっても、消費税増税も増税延期も票が減る論調にされるからだ。しかし、自民党の憲法改正草案はひどすぎるため、これをおかしく思わない集団が憲法改正国会発議に必要な3分の2以上を占める事態は阻止すべきである。

*6:http://www.saga-s.co.jp/news/national/10201/319269
(佐賀新聞 2016年6月4日) 参院選へ舌戦、初の週末、アベノミクス推進、3分の2阻止
 7月の参院選が事実上スタートして初の週末を迎えた4日、各党幹部らが各地で舌戦を繰り広げた。安倍晋三首相(自民党総裁)は経済政策アベノミクス推進へ意欲を表明。目標とした与党による改選過半数(61議席)獲得に届かなかった場合に退陣する可能性について明言を避けた。一方、民進党の岡田克也代表は、自民党など改憲勢力が憲法改正の国会発議に必要な定数の3分の2以上を占める事態を阻止する決意を示した。

| 経済・雇用::2015.11~2016.8 | 04:01 PM | comments (x) | trackback (x) |

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