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2016.11.20 2015年度のふるさと納税と東京都の予算の使い方について (2016年12月12、16日、2017年2月4日に追加あり)
   
ふるさと納税受入額・受入件数 ふるさと納税額推移   2015年ふるさと納税額   2016.12.12  
                                      上位20自治体       日経新聞
(1)地方の努力
 ふるさと納税による地方自治体への寄付額は、*1-1のように、2015年度に約1,653億円で前年度の4.3倍となり、件数は726万件で3.8倍になったそうだ。その理由は、①昨年4月から減税対象となる寄付額の上限が約2倍に引き上げられたこと ②各地の自治体が返礼品を充実させたこと ③「ワンストップ特例」を導入して確定申告不要とし利便性が高くなったこと などである。

 また、2015年度のふるさと納税額トップ20に九州の9自治体が入り、宮崎県都城市が返礼品の地元産肉や焼酎により人気を集めて42億3,100万円で1位だったのは、2005年に九州から衆議院議員になってすぐ「ふるさと納税」を提案して実現にこぎつけた私にとって満足いく結果だった。そのほか、都道府県別の集計では、北海道が150億3,600万円で1位、山形県が139億800万円で2位、長野県が104億5,600万で3位だったのも頷ける。

 さらに、*1-2のように、ふるさと納税の返礼品を扱って売り上げを伸ばす農産物直売所も出ているのは、地元では当然のようにある農産物が他地域では高く評価されることがわかるため、このように全国の消費者と結ばれた生産物の販売を行えば、農業者も消費者が何に価値を見出しているかを肌で感じることができ、次の生産を行うにあたって励みになると考える。

(2)返礼品は寄付の理念に反するか? ← 可能性を狭めるべきではないこと
 *1-1には、「①換金性の高い商品券の提供があり、地域活性化という趣旨に外れる」とか、*2には、「②所得が多い人ほど恩恵が増えるため、ふるさと納税は富裕層の節税策か」「③自治体が寄付を募るため返礼品をめぐる過剰な競争に走る動きが収まらない」「④寄付を通じてふるさとなどを応援するという本来の趣旨を見失ってはならない」などが書かれている。

 確かに、①の商品券のような換金性の高いものを返礼品として、その町の商店街で買い物をするように自治体が誘導するのは、使い方によっては問題が生じ、その町の生産物を売ったり有名にしたりすることもないため経済効果も限られるが、商店街の売り上げには貢献する。

 また、②は、所得の多い人ほど支払税金額が大きいため、そのうちの一部であるふるさと納税の限度額が大きくなるのは当たり前であり、それを「ふるさと納税は富裕層(定義も曖昧)の節税策か」とまで書くと、比較的所得の多い人に対する偏見に満ちた差別となる。

 ③については、自治体が寄付を募るために返礼品を工夫することによって地域の生産物を育て、それに自信を持って全国に発信する効果があるため、私はよいことだと考えている。さらに、④の寄付を通じてふるさとを応援する趣旨は、返礼品をもらうから失われるわけではない。そして、寄付金額から2千円差し引いた分しか所得税・住民税から軽減されないのが、ふるさと納税を受けたい地方自治体が返礼品という案を編み出した理由であるため、「減税で返礼品の取得を助けている」と言うのも正しくない。

 私は、*2の「ふるさと納税が地方創生に繋がる」というのは本当だと考えており、「税収が減る都市部の自治体では保育所整備などへの影響を心配する」などと言うのは、「ふるさと納税制度の開始前には保育所や学童保育の整備を進めきたが、ふるさと納税制度のためにそれができなくなった」という嘘の言いがかりである。例えば、ふるさと納税制度で独り負けしている東京都の例では、豊洲市場や東京オリンピックの建物だけでも数千億~数兆円規模の無駄遣いをしているのに、ふるさと納税に返礼品を付けて10~50億円を一生懸命集めている地方自治体(それが、その町の1年分の予算に匹敵する地域もある)に文句を言う必要はないだろう。

 確かに、東日本大震災や熊本地震では被災地の自治体に見返りを求めない寄付が集まっているが、このように甚大で明らかに目に見える被害を受けている時だけでなく、企業が都会に偏在するため予算を使って教育した人材を都会に送り出して老親の世話をし続けている自治体が、その自治体への感謝や応援の意味で、ふるさと納税を受け易くするのは、むしろ公平・公正だと考える。

(3)東京都の予算の使い方について
1)豊洲市場建設費の場合

    
  豊洲市場概観図            豊洲市場建設費用の推移         天下りした都のOB

 *3-1のように、東京都の豊洲新市場の主要建物3棟の建設工事では、都当局が入札予定の大手ゼネコン側にヒアリングを行った後、予算が400億円増えていたそうだが、2015年の建設費(2,752億円)は、2011年の建設費(990億円)と比較して約2.8倍、差額が1,762億円もある。この間に東日本大震災や東京オリンピックの誘致で建設コストが上がったとしても、新市場の建設コストに関する誤差が1,000億円以上あっても、東京都は今まで問題にしなかったくらいなのである。

 豊洲市場問題について、私自身は、築地市場の機能の大部分を大田市場に集め、豊洲の施設はアマゾン・楽天等のネット販売か、ヤマト運輸等の宅配会社に売却するのが現代のニーズに合っていると考える。何故なら、豊洲の問題は、そこで海産物を処理するから起こるのであり、既に包装された商品を短期間在庫するだけなら、さほど大きな問題にはならないからだ。

2)東京五輪(オリンピック・パラリンピック)会場建設費の場合

   
  *3-2より        主な五輪競技場の整備費など     諸外国・国内の事例 国内建設費

 東京五輪会場については、*3-2のように、当初7300億円程度とされていた総費用が現在では3兆円になり、そのうちオリンピック・パラリンピック終了後には壊される仮設にも2,800億円が投入される。その状況は、費用対効果を責任を持って考える人がおらず、「社長と財務部長がいない会社」と同じだ。

 また、メーンスタジアムの建設費も、他国と比較して1,500~2,000億円高く、国内の他のスタジアムの建設費と比較しても著しく高い。そのため、*3-3のように、世論調査は、「できるだけ今ある施設を利用して費用を抑えるべきだ」との回答が74%を占め、「小池百合子知事を支持する」が70%を占め、「(オリンピックの)費用は抑えるべきだ」が82%に上っている。

 私も仮設のような資産にならない建設費を使うのは止め、復興五輪の趣旨から国が宮城県(又は福島県)に新競技場を整備し、首都圏には既に多くの競技場が存在するためそれを改修し、分散して競技するのが現存の資産を有効に使って最も安価にできる方法だと考える。これに対して、スポーツ団体から反対があるが、民間で完全に五輪の収支に責任を持てるならともかく、そうでなければ贅沢を言うべきではない。また、宮城県等の方が自然が美しく、世界に放映した時に背景が絵になる競技も多い。

 ただ、東京都も、五輪の人気種目・開会式・閉会式で特別席を準備して、そのチケットを返礼品にしたり、使い道を選択させたりすれば、多額のふるさと納税を集められるかもしれない。そして、このようにして東京都で余った予算は、環境や福祉を織り込んだ新しい街づくり、道路や下水道の更新などに効率よく投入していかなければ、近い将来、東京都も破綻してしまうだろう。

 全体としては、現在の東京都が、本当に必要なことを最小限の費用で行うのではなく、数千億~数兆円規模で無駄な予算の使い方をしていることは間違いない。

*1-1:http://qbiz.jp/article/88726/1/
(西日本新聞 2016年6月14日) 2015ふるさと納税、トップ10に九州5自治体 都城市が1位
 総務省は14日、応援したい自治体に寄付すると税が軽減される「ふるさと納税」による2015年度の地方自治体への寄付額が計1652億9102万円となり、前年度の4・3倍に増えたと発表した。件数は3・8倍の726万件となった。昨年4月から減税対象となる寄付額の上限が約2倍に引き上げられ、各地の自治体がお礼の特典を充実させたことで急増。その一方で、お金に換えやすい商品券の提供など競争の過熱も指摘され「地域活性化という趣旨に外れる」との声も上がっている。最も多くの寄付金を受け取ったのは宮崎県都城市の42億3100万円。特典となる地元産の肉や焼酎が人気を集めた。2位は静岡県焼津市の38億2600万円、3位は山形県天童市の32億2800万円と続いた。都道府県別の集計では、トップが北海道の150億3600万円、2位は山形県の139億800万円、3位が長野県の104億5600万円だった。15年度に導入した、寄付する自治体が5団体までなら確定申告なしで済む「ワンストップ特例」を利用した寄付は286億7402万円、147万件だった。

*1-2:https://www.agrinews.co.jp/p38596.html
(日本農業新聞 2016年9月3日) ふるさと納税で沸く 返礼品扱い JAグループ直売所
 ふるさと納税の返礼品を扱い、売り上げを伸ばすJAグループの農産物直売所が出てきている。ふるさと納税によるものだけで年間1億円を稼ぎ出す直売所や、受け付け開始後まもなく品切れとなる人気商品を取り扱う店もある。一時的な売り上げ増にとどめず、直売所のリピーター獲得にもつなげていく戦略だ。
●売り上げ年1億円も
 山形県JAさくらんぼひがしねの直売所「よってけポポラ」は2015年、直売所全体の売上高の約10分の1に当たる約1億円をふるさと納税の返礼品が占めた。主力のサクランボ「佐藤錦」を中心に注文が相次ぐ。2~6月には、「佐藤錦」700グラム入り9000円コースを2450件受け付けた。4月に1キロの1万円コースを追加投入したところ、2900件の注文が寄せられた。桃「川中島白桃」5キロ入り1万円コースも3月に800件、4月に200件の申し込みがあった。同直売所は東根市からの依頼を受け、14年からふるさと納税の返礼品の取り扱いを始めた。入荷、梱包(こんぽう)、発送作業などを担っている。後藤隼一店長は「果実の人気の高さを実感する。市場出荷より高い価格で提供でき、農家にも還元できている」と歓迎する。
●リピーター獲得期待
 宮崎県JA都城の子会社で直売所「ATOM」を運営する(株)協同商事も都城市の依頼を受け、地元産畜産物を中心にそろえる。ふるさと納税の返礼品を紹介するサイトに掲載後、わずか数分で「品切れ」になる人気商品もあるという。8月入荷分では、都城産の黒豚切り落とし4キロ(1万円)が200件、宮崎牛ステーキ(サーロイン400グラム、ヒレ200グラム、2万円)が70件、宮崎牛ローススライス4キロ(5万円)が40件など、次々に完売した。ATOMの浜川紘行店長は「売れ行きが好調で、直売所の売り上げにも貢献している」と話す。福岡県JAふくおか八女が展開し、筑後市に構える直売所「よらん野」は6月、1万円のブドウ「シャインマスカット」限定150ケース(1ケース350グラム入り4パック)が、約10日間で品切れになった。1万円の特産の梨「豊水」は限定100ケース(1ケース10~12玉入り)で期間中に全て注文を受け付けた。市の依頼を受けてふるさと納税の返礼品を取り扱うが、売り上げは15年と比べて上昇。同直売所は寄付者に直売所を知ってもらい、通販や宅配を通じた新たなリピーター開拓に期待をかける。

<可能性を狭めるべきでないこと>
*2:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12360430.html
(朝日新聞社説 2016年5月17日) ふるさと納税 富裕層の節税策なのか
 自治体が寄付を募ろうとするあまり、返礼品をめぐる過剰な競争に走る動きが収まらない。そのうえ新たな弊害も浮上している。所得が多い人ほど恩恵が増えるため、富裕層の節税に利用されているのだ。「寄付を通じてふるさとなどを応援する」という本来の趣旨を見失ってはなるまい。制度を拡充してきた安倍政権は責任をもって改善すべきだ。制度は第1次安倍政権が打ち出して08年度に始まり、ここ数年返礼品への注目が高まった。寄付額は14年度に前年度の3倍近い389億円になり、15年度はさらに1300億~1400億円に達したようだ。寄付の上限額引き上げなど制度拡充の効果も大きかったとみられる。とりわけ、富裕層にとっては上限額が増えた分、節税策として使い勝手がよくなった。寄付額から2千円を引いた分だけ所得税と住民税が軽くなるのが制度の基本だ。上限は所得が多いほど高い。世帯の家族構成にもよるが、給与年収が400万円だと上限額が2万~4万円程度に対し、2500万円の人は80万円に達する。例えば、その人が80万円を寄付しても、79万8千円が減税されて戻ってくる。寄付先の自治体からもらえる返礼品分が得となる。その金額にもよるが、減税で返礼品の取得を助けている構図だ。返礼品は高価な牛肉や魚介類が話題になることが多いが、商品券や家電・電子機器などに広がり、地元との結びつきがあいまいな例も少なくない。そうした返礼品を控えるように、総務省は自治体に通知を出したが、強制力はなく、根本的な対策になっていない。安倍政権は「地方と都市部の税収格差を縮める」「寄付集めが地方創生につながる」と利点を強調する。確かにその効果もあるが、自治体同士が税金を奪い合い、結局、国と地方に入る税収の総額を減らしている。税収が減る都市部の自治体では、保育所整備などへの影響を心配する声も出始めている。自治体間や、国と地方の財政力の格差を縮めるには、税制や予算の仕組みを見直すのが筋だ。熊本地震では被災地の自治体に見返りを求めない寄付が集まっている。こうした本来のあり方をどう広げていくか。必要な改革から逃げず、制度の弊害を是正する。そうした真摯(しんし)な姿勢を政権に望む。

<東京都の予算の使い方>
*3-1:http://www.huffingtonpost.jp/2016/09/15/toyosu-general-contractor_n_12034616.html (朝日新聞 2016年9月16日) 豊洲市場3棟の予定価格 ゼネコンに聴取後、予算が400億円増えていた
●豊洲市場3棟予定価格、ゼネコンに聴取後400億円増
 東京都の築地市場(中央区)が移転する予定の豊洲市場(江東区)の主要建物3棟の建設工事で、1回目の入札不調後、都当局が入札予定の大手ゼネコン側にヒアリングを行い、積算を事実上聞いていたことが、都幹部や受注ゼネコン幹部の証言で分かった。その後の再入札で3棟工事の予定価格が計407億円増額され、いずれも予定価格の99%超で落札された。また、受注ゼネコン幹部は「再入札前に予定価格を引き上げるから落札してほしいと都側からヒアリングとは別ルートで要請があり受け入れた、と社内で説明を受けた」とも証言した。都幹部はこうした要請を否定している。都とゼネコン側のなれ合いの中で建設費がつり上がっていた可能性が浮かび、小池百合子都知事が発足させた「市場問題プロジェクトチーム」の調査でも解明のポイントとなりそうだ。

*3-2:http://www.nikkei.com/article/DGXLASDG29H25_Z20C16A9000000/
(日経新聞 2016/9/29) 東京五輪・パラ、総費用3兆円超の恐れ 都調査チーム
 東京五輪・パラリンピックの推進体制や費用をチェックする東京都の「都政改革本部」(本部長・小池百合子知事)の調査チームは29日、大会の総費用が3兆円超となる可能性があると明らかにした。五輪の推進体制の現状について「あたかも社長と財務部長がいない会社と同じ」と指摘。ガバナンスに問題があるとして、都や組織委、日本オリンピック委員会(JOC)などを統括するトップの新設を提言した。都が整備を担当する競技施設で、ボート・カヌー会場の「海の森水上競技場」、バレーボール会場の「有明アリーナ」、水泳会場の「オリンピックアクアティクスセンター」について、過剰な座席数や大会後の活用計画の甘さを言及。コスト削減のため、整備計画の見直しを訴えた。小池知事は今後、整備計画の変更に踏み込むか、判断を迫られる。現在の計画は既に国際オリンピック委員会(IOC)の承認を得ており、大きな見直しは困難が予想される。

*3-3:http://mainichi.jp/sportsspecial/articles/20161107/k00/00m/040/142000c (毎日新聞 2016年11月7日) 世論調査:「既存施設で五輪」74% 「都知事支持」7割
 毎日新聞は5、6両日、全国世論調査を実施した。2020年東京五輪・パラリンピックの施設計画について「できるだけ今ある施設を利用して費用を抑えるべきだ」との回答が74%を占めた。「大会後のスポーツ振興のため計画通りつくるべきだ」は16%で、見直しを求める意見が強い。東京都の小池百合子知事を「支持する」は70%、「支持しない」は7%。小池氏支持層では「費用を抑えるべきだ」が82%に上った。国際オリンピック委員会(IOC)、大会組織委員会、政府、東京都の4者は月内にも、ボート・カヌー(スプリント)とバレーボールの会場見直しや開催費用削減策に結論を出すことになっている。9月に就任した民進党の蓮舫代表に関しては、「支持する」26%▽「支持しない」36%▽「関心がない」32%--と評価が分かれた。民進支持層では支持が7割弱に達したが、支持政党はないと答えた無党派層は「関心がない」が42%で最も多く、支持20%、不支持31%だった。対照的に、小池氏は民進支持層の8割強が支持するなど与野党を問わず支持率が高く、無党派層も59%が支持している。「小池人気」は、来年夏の都議選や次期衆院選に向けた民進党の選挙戦術に影響しそうだ。天皇陛下の生前退位について「将来の天皇も生前退位できるように制度を変えるべきだ」は66%で、「今の陛下に限り生前退位できるようにすべきだ」の18%を上回った。「制度を見直す必要はない」は5%だった。安倍内閣の支持率は9月の前回調査から2ポイント増の48%、不支持率は4ポイント減の31%。主な政党支持率は自民32%▽民進9%▽公明4%▽共産4%▽維新4%--などで、無党派層は34%だった。

<ふるさと納税の経済効果>
PS(2016.12.12追加):*4-1に、「ふるさと納税した人に自治体が贈る返礼品となって、地元の生産者や加工業者の認知度が上がり、リピーターの獲得に繋がって地元を潤している」という記事があるが、これがふるさと納税の経済効果だ。また、自治体と地元産業が知恵を寄せ合って地元の魅力を探せば、地元産品の長所を再発見することになる。なお、自治体の返礼品に選ばれるか否かは地元生産者の岐路になってしまうかもしれないが、その点は次の工夫をすればよいだろう。また、ふるさと納税で得た資金の使途が教育の充実や介護、21世紀型の街づくりなら、寄付した人も満足だ。このように、ふるさと納税は使途を指定できることも魅力だ。
 一方で、*4-2は、「①久留米市の『ふるさと納税』が好調で、2015年度は全国の自治体で13番目に多い17億5942万円の寄付を集め、本年度も15年度を上回るペースで推移している」「②急増した理由はふるさと納税のやりやすさに加え返礼品の充実」「③市は中古市場に出回る恐れがあるゴルフクラブや高価な久留米絣の反物などを取りやめた」「④市総務課は『応援より返礼品目当ての人もいるのでは』とみている」「⑤返礼品は、もつ鍋セットやブリヂストンのゴルフボールなどが人気」「⑥久留米大経済学部の大矢野栄次教授は『勝ち残る自治体は良いが、それ以外は見捨てられる。地方交付税を減らしたい国が地方を切り捨てる政策』と指摘し、急増する寄付についても寄付が続くとは限らない。不安定な財源が増えても喜べない」と話したとしている。
 このうち、①②は尤もだが、③⑤は、特産品が農林漁業製品ではなく工業製品の地域もあるため、久留米絣(私も持っているが、とてもよい)やゴルフクラブを応援する人がいてもよいし、もつ鍋セットやブリヂストンのゴルフボールが欲しい人がいてもよい。それを、④のように言うようでは、久留米市にふるさと納税してくれた人に対して感謝の気持ちが足りず失礼であるため、すぐ負け組に移動することになるだろう。さらに、⑥については、私がふるさと納税制度を提案した人なので明確に言えるのだが、地方交付税を減らしたい国が地方を切り捨てるために創った制度ではなく地方を応援するために創った制度であり、地方交付税の増減とは関係ない。なお、久留米大学がある久留米市なら、使途に「久留米大学生命科学研究所の充実」「久留米大学がんセンターや救急医療センターの充実」などを加えたり、その返礼品に「家族の久留米大学医学部付属病院への優先入院券」を加えたりすれば、周辺地域からのふるさと納税も増えるだろう。そして、地方も、ふるさと納税にかかわらず、財源の関係で次第に減らされるであろう地方交付税を待っているだけではなく、小さくてもそれぞれのエンジンを持つようにしてもらいたいのだ。

*4-1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20161210&ng=DGKKASDJ01H1L_Q6A211C1MM0000 (日経新聞 2016.12.10) ふるさと納税 潤い第2幕、返礼品目的→自ら購入 特産品に新たな顧客
 ふるさと納税が地元の生産者や加工業者を潤している。寄付をした人に自治体が贈る返礼品として認知度が上がり、リピーターの獲得につながっている。返礼品は自治体がまとめて買い取るため、経営も安定しやすい。確定申告の関係で寄付の申し込みが増える年末に向けて、産地は準備に追われている。宮崎県都城市で食肉加工卸売を手がける野上食品は、ブランド牛の宮崎牛で作ったローストビーフなどを返礼品として市に提供している。同社のインターネット通販の売上高は、返礼品採用前に比べて5割増えた。「返礼品に選んだ人がリピーターとして買っている」(野上幸平代表取締役)。畜産が盛んな都城市は宮崎牛や地元産鶏肉の加工品を返礼品にそろえる。2015年度は全国で最も多い42億円の寄付を集めた。市によると、市内の畜産農家が年間に出荷する宮崎牛約4000頭のうち、返礼品向けは1割に達する。農家や加工業者にとって大きな収入源となっている。ふるさと納税制度は08年度に始まった。好きな自治体を選んで寄付すると、所得税と住民税の控除を受けられる。寄付金を集めたい自治体が返礼品の豪華さを競い合った結果、15年度に全国の自治体が受け入れた寄付金は1653億円と10年度の16倍に膨らんだ。ふるさと納税はいつでも申し込めるが、確定申告の関係で年末に申し込みが増える傾向にある。売れる時期が春や夏に限られやすい商品は、自治体による返礼品用の買い取りが出荷量の安定につながっている。養殖ウナギの産地、鹿児島県大崎町のおおさき町鰻(うなぎ)加工組合はウナギかば焼きの製造を手がける。横田信久社長は返礼品に採用されたことで「土用の丑(うし)の日前後だけでなく、冬にも売れるようになって助かる」と話す。受け入れ額3位の山形県天童市はモモやラ・フランス、サクランボといった果物が返礼品。15年度は前年度比4倍の32億円の寄付額を集めた。同市の15年度の一般会計は243億円で、ふるさと納税の存在感は大きい。自治体の返礼品競争が激しさを増し、受け入れ額の半分以上を返礼品に使う自治体もある。受け入れ額2位の静岡県焼津市は「特産品の認知度向上を地元の産業振興につなげることが重要」と話す。ふるさと納税のポータルサイトを運営するトラストバンク(東京・渋谷)は「寄付金活用に明確な計画がある自治体は寄付額が多い」と指摘する。

*4-2::http://qbiz.jp/article/99827/1/ (西日本新聞 2016年12月11日) 前年度の52倍! 福岡・久留米市のふるさと納税、15年度は17億円で全国13番目に浮上した理由
 福岡県久留米市の「ふるさと納税」が好調だ。2015年度は全国の自治体で13番目に多い17億5942万円の寄付を集め、本年度も15年度を上回るペースで推移している。ふるさと納税を後押しする国の税制改正に合わせ、市が寄付者の利便性を高めたことが奏功しているようだが、故郷や地方を応援しようという本来の趣旨とは外れた状況もうかがえる。市への寄付は、ふるさと納税が始まった08年度以降、しばらく横ばいだったが、15年度は前年度の約52倍に急増した。市は15年度当初、年1億円の寄付を想定していたが、4月の受け付け開始から半月で達成。返礼品の購入や発送にかかる費用を追加するため、補正予算を3回組んで対応した。15年度の全国の寄付額は、前年度比4・3倍の1653億円で、市は全国平均の伸びを大幅に超えた。なぜ15年度に急増したのか。国の税制改正で税控除が受けられる寄付の上限額が2倍に増えたことや、給与所得者の確定申告が不要になったことが背景にある。さらに市独自に(1)ポイント制(2千円ごとに1ポイント)を導入して年1回だった返礼品の受け取りがポイントの範囲内なら何度でも可能になった(2)ふるさと納税の大手サイトと提携して数日かかっていたクレジットカード決済が即日可能になった(3)14年度に28点だった返礼品を104点(今年11月時点で320点)まで充実させた−といった利便性向上やサービス拡充に取り組み、税制改正と相乗効果を生んだ。ただ、ふるさと納税は自治体間の返礼品競争の様相だ。総務省は、具体例を示して換金性や資産性が高い返礼品の自粛を求めており、市は、中古市場に出回る恐れがあるゴルフクラブや100ポイント(20万円相当)以上が必要な久留米絣(がすり)の反物など十数点を今年8月で取りやめた。市が15年度の寄付者に市との関わりを聞いたところ、ふるさと納税がきっかけで知った人が最多の35・2%に上った。市出身者(2・7%)、親族・知人がいる(6・4%)などの割合は低く、市総務課は「応援より返礼品目当ての人もいるのでは」とみている。本年度の寄付は、11月20日時点で前年同期比1・1倍に当たる10億9747万円。返礼品は、もつ鍋セットやブリヂストンのゴルフボールなどが人気という。年明けの確定申告に向けて、11、12月に寄付が集中する傾向にあり、市は本年度の寄付を15年度並みの18億円と想定している。総務省の集計によると、筑後地区12市町の15年度の寄付は大きな開きがある=表。久留米大経済学部の大矢野栄次教授は「勝ち残る自治体は良いが、それ以外は見捨てられる。地方交付税を減らしたい国が地方を切り捨てる政策」と指摘し、急増する寄付についても「寄付が続くとは限らない。不安定な財源が増えても喜べない」と話した。


PS(2016年12月16日追加):*5-1の上峰町の2015年ふるさと納税受入額は、上の表では全国9位、佐賀県1位の19億円以上であるため、そのために努力した人の実績は評価され、ボーナスに加算されるべきだろう。なお、地方議員の政務活動費が全国的に問題になっているが、これは架空の政務活動費を計上したのが問題なのであり、実際に政務で使った出張費や調査費は請求できるシステムにしておかなければ議員のまともな活動も阻害される。そのため、費用として計上する基準とその真偽が重要なのだ。そこで、地方議員の収支報告書や使途報告書も、国会議員と同様、監査を義務付けるのがよい。
 また、*5-2のように、多久市、嬉野市、白石町の議会が、12月15日、地方議員の厚生年金制度への加入を求める意見書を全会一致で可決し、太良、大町、基山町議会も既に可決していて、佐賀市を除く他の市町や県議会でも12月議会で採決する動きがあるそうだ。私は、「議員はボランティアでやる仕事だ」などとして他の職業より待遇を悪くしていれば、普通の仕事を辞めて議員になる人はいなくなり、議員は金持ちや特殊な家系の人ばかりになるため、少なくとも他と同レベルの待遇にすべきだと考える。私が考える議員の他と同レベルの待遇とは、その不安定性をカバーする高さの報酬と厚生年金への加入だ。

*5-1:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/386911 (佐賀新聞 2016年12月16日) 上峰町にふるさと納税寄付者から非難相次ぐ、議員が手当復活議案を提出
 佐賀県三養基郡上峰町議会で、町の財政改善を理由に議員への費用弁償支給を再開させる議案を議員が提出したことに対し、ふるさと納税で町に寄付した人たちから「全国の善意を(議員が)自分の懐に入れるのは納得できない」などと苦情が相次いでいる。寄付が増える12月の繁忙期に生じた思わぬ事態に、武広勇平町長は15日、急きょ記者会見を開き、「ふるさと納税が費用弁償に充当されることはない」と“火消し”に躍起になっている。町によると、15日午後1時現在でメールや電話、町公式フェイスブックを通じ批判的な内容が計39件寄せられた。「ふるさと納税が高額集まったことで、議員の手当復活の議題が出ていることに心底驚きと嫌悪感を感じた」「寄付を返還してほしい」「議案が可決されるようであれば、納税したことを後悔する」などだった。寄付取り下げも2件計2万5千円あった。武広町長は会見で「ふるさと納税は使途が決まった寄付。寄付者の意向を尊重すべきで、それを背景にした費用弁償の復活ということであれば、町の長として予算措置は一切しない」と強調した。その上で「改正案も議員の方々の良心に基づいて、賢明な判断がなされると思う」と述べた。提出議員は「ふるさと納税を受けての提案ではない」と説明している。ふるさと納税による寄付は昨年度9万1531件、20億6178万円。本年度も11月末現在、12万3764件、20億2743万円に上る。費用弁償に関する条例改正案は16日に採決されるが、取り下げも視野に議員間で協議が進んでいる。

*5-2:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/386955
(佐賀新聞 2016年12月16日) 「地方議員を厚生年金に」3市町、意見書可決
 多久市、嬉野市、白石町の各議会は15日、地方議員の厚生年金制度への加入を求める意見書を全会一致で可決した。首相ら関係閣僚や衆参両院議長宛てに送付する。同様の意見書は太良、大町、基山町議会も既に可決、佐賀市を除く他市町や県議会でも12月議会で採決する動きがある。意見書は、市町村議員選への立候補者が減少し、無投票当選が増加するなど、住民の関心の低下や地方議員のなり手不足の問題を指摘。議員の年金制度を時代にふさわしいものにすることが、新たな人材確保につながるとして、厚生年金加入の法整備を早急に実現するよう求めている。地方議員の年金制度は、市町村の「平成の大合併」で地方議会の議員数が激減し、積立金不足が顕著になったため2011年6月に廃止された。国民年金になり、若手ら議員の中には「将来が不安」という声もある。


PS(2017年2月4日追加):*6のように、佐賀県三養基郡上峰町が、ふるさと納税効果で総額109億2,669万円に上る2017年度一般会計当初予算案を発表できたのは、町全体の努力の賜物だ。これに対して、東京などの負け組からふるさと納税の返礼品に対する苦情があるのは、ありあまるほどの人材と資源があるのに努力もせず、無駄遣いばかりしてきた地域のやっかみであるため、気にする必要はない。何故なら、機会は均等に与えられ、本来は、人材や資源の多い地域の方が有利だからである。
 しかし、寄付をいったん基金に積む際と、返礼品の経費や寄付者の意向に沿った事業の経費を基金から繰り入れる際の2度にわたって歳入に計上するとわかりにくくなるため、ふるさと納税が基金に積まれるのであれば、それに関連する支出も基金から行う方がよいと考える。そうすれば、返礼品も含めたふるさと納税の収支が明らかになるとともに、ふるさと納税収入によって新たに支出できるようになった金額(教育・社会保障・その他)が、一見して明らかになるからだ。

*6:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/402127
(佐賀新聞 2017年2月4日) 上峰町、ふるさと納税 当初予算、初の100億円超
■2年前の3倍近く
 三養基郡上峰町は3日、ふるさと納税の好調を受け総額109億2669万円に上る2017年度一般会計当初予算案を発表した。3月に町長選を控えた骨格予算ながら前年度と比べ24億円、28・4%伸び、当初予算では初めて100億円を超えた。町は「全国からの善意はありがたい。財政健全化や住民サービスの向上につなげたい」と話す。上峰町のふるさと納税は15年9月に返礼品を拡充後、寄付者が急増した。16年度は昨年末現在で24万7600件、41億8586万円と全国の自治体でも上位に入る。16年度の歳入決算は137億円に達する予定。17年度も約40億円を見込んでおり、町長選後の補正で百数十億円になる見通し。ふるさと納税に「本格参入」する前の15年度当初予算は37億1660万円で、2年前に比べ約3倍の予算規模になる。予算の膨脹は寄付の会計処理に伴う部分もある。寄付をいったん基金に積む際と、返礼品の経費や寄付者の意向に沿った事業の経費を基金から繰り入れる際の2度、歳入に計上されるため。当初予算案には、12月補正予算案で否決された学校給食費を無料化する経費4200万円を新規事業で盛り込んだ。町税は前年度比1%増の13億6683万円、自主財源比率は8・2ポイント増の81・6%と予測する。地方交付税は1・2%減の8億8904万円、国庫支出金は26・6%減の4億5425万円。町債発行は11・7%増の1億7087万円、公債費は前年度並みの4億1319万円。17年度末の町債残高は34億3300万円、16年度末の基金残高は5億5400万円を見込む。定例議会は10日に開会し、ふるさと納税関連経費や米多浮立会場周辺用地購入費などを含む35億2984万円の補正予算案も提案する。県内10町のうち100億円を超える予算規模(16年度当初)は人口2万人以上の白石、みやきの2町。上峰町は人口約9600人。

| まちづくりと地域振興::2015.5~ | 10:20 PM | comments (x) | trackback (x) |

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