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2017,07,14, Friday
2017.7.4西日本新聞 2017.4.24日経新聞 2017.7.9 西日本新聞 (図の説明:ふるさと納税でいつも上位にくる地方自治体には、その努力に敬意を表する。それに対し、努力もせずに無駄遣いばかりしている負け組の地域が、勝ち組の返礼品等に文句をつけているのは、正々堂々と競争しておらず見苦しい。また、使途による寄付は、東日本大震災や熊本地震などの大災害で著しく増加したが、そのようにわかりやすい使途だけが重要なのではないため、主体である地方自治体に自由に決めさせるべきである。そのため、総務省は、地方自治体の箸の上げ下げにまで指示するのは控えるべきだ) (1)災害支援とふるさと納税 九州北部の激しい豪雨で、福岡・大分両県の被災地では、*1-1のように、自衛隊や警察などによる捜索や救助が続き、有明海に5遺体が流れ着くなど、その被害の大きさを物語っている。また、熊本地震と重ね合わせてみると、どのようにして日本の山・川・扇状地・平野・干潟ができたのかが、映像で記録された体験として理解できる。 福岡県朝倉市、大分県日田市付近は、大宰府・吉野ヶ里遺跡・神崎・耶馬渓・高千穂に近く、まさに日本の古代史の現場である。そして、そこから中継されてくる映像を見ると、近年、もともと川だった場所に道を作ったり、堤防を過信して川の近くや三角州に住宅を建てたりしており、これならちょっと激しい雨が降れば危険になるのは当然だと思われる。また、その山に作ったコンクリートのちゃちな砂防ダムで、山崩れが防げるわけがない。 そのため、少子高齢化で人口減少時代の現在であれば、復旧ではなく、住居は安全性と高齢者等のケアを考えて街づくりを行い、危険になりやすい地域は農業や林業を行う形で復興するのがよいと思われる。たくさん流れてきた木材も、製材すれば使えそうな立派なものが多いようだ。 そのような中、政府が激甚災害の指定を行い、災害復興のために要する地元負担が小さくなったのは助かるとともに、*1-2のように、福岡県朝倉市と大分県日田市への「ふるさと納税」が急増しており、感謝されている。ただ、今回は、熊本地震の時とは異なり、他の自治体がふるさと納税事務の代替をしているわけではなく、災害の対応と両方を行っている役場の人手は足りているのだろうか? また、被害を受けた地域は、福岡県朝倉市と大分県日田市だけではないので、正確に報道すべきだ。 (2)ふるさと納税の実績 ふるさと納税制度は、2005~2009年の間に衆議院議員をした私の提案で、2008年4月30日に公布された「地方税法等の一部を改正する法律」により開始され、手続きの簡易化や上限の引き上げにより、2016年度の寄付総額は、*2-1のように、約2844億円に上った。そして、その制度の導入が決まった時の自民党税調会長は、青森県選出の津島雄二衆議院議員だった。 これに対し、*2-2、*2-3のように、全自治体を合計した返礼品の調達費約1091億円に送料、広報、事務費などを加えた総経費が1485億1千万円に達して寄付総額の半分を超えた等々の批判があったため、総務省は2017年4月の通知で寄付の30%を超える品物や換金性の高い商品券や家電などを贈る自治体に見直しを求めた。 しかし、私は、今回被害を受けた久留米市の久留米絣や大川市の家具、その他中小企業の工場がある地域など、応援したい産業のある地域もあり、国が一律に地方の箸の上げ下ろしにまで口を出して護送船団方式にするのはよくないと考える。つまり、良識の範囲のことをしていればよいのであり、仮にふるさと納税の大部分を返礼品に使ってしまえば、その地方自治体はふるさと納税の事務費はかかるが、ふるさと納税収入で事業を行うことができなくなり、これはその自治体自身の経営の問題だからである。 (3)地域振興と街づくり、教育と福祉 地域振興・街づくり・教育・福祉などは、地方自治体が賢い基本計画を作って実現していくべきもので、その成否がその後の地域の発展や住みやすさに繋がる。その原資には、地方交付税交付金、地方税、地方消費税、ふるさと納税などがあり、産業を振興し、居心地のよい安全な街を作り、教育・福祉を充実させることが、その後のその地域の振興に繋がる。 1)地域振興と街づくりに関する地方自治体の総合基本計画 野村総合研究所(東京)がまとめた国内100都市対象の「成長可能性都市ランキング」では、*3-1のように、九州は福岡市が2位、鹿児島市が5位に、福岡県久留米市が9位、長崎県佐世保市が10位と、上位10都市中、九州が4市を占めたそうだ。しかし、調査は九州の10市を含む人口10万人以上の主な都市を対象にしたものだそうで、人口10万人以上の主な都市しか対象にしなかった点で、調査者は自らは気付いていない先入観を持っている。それは、*3-2の沖縄の例をはじめとして、地方都市は、その命運をかけて地域の基本計画を作りつつある所が多く、住みやすい街は人口10万人以上の主な都市とは限らないことである。 そして、*3-2のように、沖縄総合事務局と沖縄観光コンベンションビューロー(OCVB)が観光客を迎える視点で道路の景観を考える「沖縄における観光の推進と道路緑化シンポジウム」を那覇市のテンブスホールで開いたところ、東京都市大学環境学部の涌井特別教授が「玄関口である道路で、沖縄らしさをどう表現するかを練らないといけない」と基調講演で強調され、沖縄総合事務局南部国道事務所の小幡所長は「都市や海岸、山あいなど地域の特性に応じて植樹すべきだ」と述べられたそうで、その地域らしい美しさや魅力を演出するのが最も効果的なのは、北海道から沖縄まで同じだろう。 2)教育と福祉 東京の大学は、*3-3のように、画一化を脱するため、地方出身者用の奨学金や学生寮の充実を行い、多様な学生を全国から集めようとしている。そして、これをやらなければ、東大、東工大などは、東京近郊にある受験高出身の男子学生が大半を占め、その人たちが大挙してエンジニアになったり官庁に就職したりする結果、自然を知らない人、教育・福祉・環境を軽んじる人ばかりがリーダーとなって、視野が一面的で狭くなる。 私も、地方出身者や理系女子学生数が少ないことで、多くの分野で考え方が悪い意味で画一化されているため、母集団の多様性こそが幅広い思考の原点になるという大学の思いに賛成だ。 さらに、*3-4のように、東大は女子学生に限定して家賃補助を行い、それが逆差別との批判もあるが、もともと男子学生寮は充実している上、家族やそれを取り巻く社会は東大志望の女子生徒には「無理しなくても」と言い、男子生徒には「何が何でも頑張れ」と言う傾向にあることから、女性の高学歴に反対する社会や親へのよいメッセージになると考える。 確かに、佐賀県も東京の県人寮に入居できるのは男子学生だけであり、女子には高学歴は不要だと言わんばかりのように見える(それどころか、はっきりそう言う人もいる)。しかし、管理職やリーダーの母集団になる女性は、男性と同等以上の実力・能力を要求されるため、東大方式はジェンダー(社会的性差)の公平を狙った策であり、不平等にはあたらないだろう。 そして、地方では、ふるさと納税収入から、これらの教育・福祉にかかる経費を支払ったり、卒業後にふるさとで就職した学生に奨学金返済を肩代わりしたりすることも可能だ。 <災害とふるさと納税> *1-1:http://qbiz.jp/article/113836/1/ (西日本新聞 2017年7月9日) 豪雨死者18人に 被災者か、有明海に5遺体 福岡・大分 九州豪雨による福岡、大分両県の被災地では8日も自衛隊や警察などによる捜索や救助が続いた。福岡県朝倉市では新たに女性の3遺体が見つかり、犠牲者は両県で計18人になった。福岡、佐賀両県沖の有明海では豪雨で流されたとみられる男女5人の遺体が見つかった。生存率が急速に下がるとされる発生から「72時間」が経過する中、大分県日田市では安否不明者全員の無事が確認されたが、福岡県では依然として27人と連絡が取れていない。犠牲者の内訳は、朝倉市13人、同県東峰村2人、日田市3人。朝倉市黒川で見つかった3遺体は、渕上麗子さん(63)と娘の江藤由香理さん(26)、江藤さんの長男友哉ちゃん(1)▽同市杷木林田の遺体は岩下ひとみさん(36)=杷木池田▽東峰村宝珠山の2遺体は熊谷国茂さん(81)と妻千鶴代さん(81)と判明した。また、日田市の田代川近くで発見された遺体は矢野知子さん(70)=鶴河内=と確認された。福岡県などによると8日午前、朝倉市杷木を捜索していた消防隊が川の上流で女性の遺体を発見。その後も杷木の竹やぶなどから女性の2遺体が見つかった。被災地の川から数十キロ下流にある有明海やその沿岸でも女性3人、男性2人の遺体が相次いで見つかった。福岡、佐賀両県警によると、周辺に大量の流木があったことなどから豪雨で流された可能性があるという。安否不明の26人がいる朝倉市では、果樹園の様子を見に行ったまま行方不明となっている男性などの捜索が続いた。1人の行方が分かっていない東峰村宝珠山でも捜索が行われたが、二次災害の危険があることから日没で打ち切られた。同日夕現在、孤立しているのは朝倉市で1人、東峰村で28人、日田市で545人。避難所には朝倉市1142人、東峰村429人、大分県378人が避難している。朝倉市と東峰村では計2170戸が断水し、計1200戸が停電。日田市では410戸が断水している。交通では、大雨の影響で不通となっていたJR佐世保線の肥前山口−早岐で運転が再開されたほか、東九州自動車道や九州道も8日までに通行止めが全線で解除された。九州北部は8日も、朝倉市や福岡県嘉麻市で局地的に非常に激しい雨が降った。今後も大気の不安定な状態が続くといい、気象庁は土砂災害などへの厳重な警戒を呼び掛けている。9日午後6時までの24時間予想雨量は多いところで熊本200ミリ、福岡150ミリ、佐賀、長崎、大分120ミリ。 *1-2:http://qbiz.jp/article/114256/1/ (西日本新聞 2017年7月14日) 2017九州豪雨:被災地のふるさと納税急増 朝倉、日田両市 九州豪雨で被災した福岡県朝倉市と大分県日田市への「ふるさと納税」が急増していることが13日、分かった。朝倉市によると5〜12日の8日間だけで計4888万370円(2485件)。「応援しています」など、被災者へのメッセージも添えられているという。朝倉市へのふるさと納税は、昨年7月の1カ月間では計2051万9000円(1388件)だった。同市は6日から返礼品をストップしているが、勢いは止まっていない。日田市でも今月5〜12日、少なくとも1605件、計2802万3600円(1605件)が集まった。直前の6月27日〜7月4日は計409万円(305件、いずれも暫定値)で、約6.9倍に増えた計算だ。同市は「『一日も早く復興に向かうよう祈っています』などコメントを付けて納税してくれる方が多く、本当にありがたい」と感謝しきりだ。 <ふるさと納税の実績> *2-1:http://qbiz.jp/article/113473/1/ (西日本新聞 2017年7月4日) ふるさと納税が過去最高の2844億円 首位は2年連続で宮崎・都城市 総務省は4日、ふるさと納税による2016年度の寄付総額が過去最高の2844億887万5千円に上ったと発表した。15年度より1200億円近く増え、伸びは1・7倍。返礼品の充実に加え、インターネットでの簡易な手続きが定着したことも追い風になったが、住民税や所得税の減税が受けられる寄付額上限が約2倍に引き上げられた15年度の伸び(4・3倍)には及ばなかった。件数は1・8倍の1271万件だった。寄付額は宮崎県都城市が73億3300万円で2年連続のトップ。昨年4月に大規模な地震があった熊本市は復興支援の寄付が急増して36億8600万円で6位に入った。寄付額の上位には、高額な商品や多彩な特産物を返礼品とする自治体が並んだ。2位以下は長野県伊那市の72億500万円、静岡県焼津市の51億2100万円、宮崎県都農町の50億900万円、佐賀県上峰町の45億7300万円と続いた。都道府県別の寄付額は、北海道271億2400万円、山形225億3300万円、宮崎206億200万円の順だった。総務省は4月以降、返礼品競争の過熱を抑えるため、寄付の3割を超える金額の品物や、換金性の高い商品券や家電などを贈る自治体に見直しを要請した。その結果、寄付額上位の約200自治体のうち9割程度が見直す意向を示したという。15年度の寄付総額は1652億9102万円。17年度に入ってからは総務省が高額な返礼品の自粛を全国の自治体に求めており、伸びが落ち込む可能性もありそうだ。 *2-2:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/443653 (佐賀新聞 2017年7月5日) ふるさと納税2844億円 16年度過去最高、返礼品が追い風 総務省は4日、ふるさと納税による2016年度の自治体への寄付総額が過去最高の2844億887万5千円になったと発表した。15年度の1・7倍で、返礼品の充実やインターネットでの簡易な手続きが定着したことが追い風になった。ただ住民税や所得税の減税が受けられる寄付額の上限が約2倍に引き上げられた15年度の伸び(4・3倍)には及ばなかった。件数は1・8倍の1271万件だった。寄付額は宮崎県都城市が73億3300万円で2年連続のトップ。長野県伊那市の72億500万円、静岡県焼津市の51億2100万円と続き、上位には高額な商品や多彩な特産物を返礼品とする自治体が並んだ。昨年4月に大規模な地震があった熊本市は復興支援の寄付が急増し、36億8600万円で6位だった。都道府県別の合計は、北海道271億2400万円、山形225億3300万円、宮崎206億200万円の順だった。寄付額に占める返礼品調達費の割合は全国平均で38%。15年度から横ばいだった。全自治体を合計した調達費1090億8千万円に、返礼品の送料や広報、事務費などを加えた総経費は1485億1千万円に達し、寄付総額の半分を超えた。高額な返礼品で寄付を集める自治体間の競争が過熱したことから、総務省は4月の通知で寄付の30%を超える金額の品物や、換金性の高い商品券や家電などを贈る自治体に見直しを求めた。ただ寄付額の上位約200自治体のうち10%ほどは受け入れておらず、今後も働きかけを続ける。15年度の寄付総額は1652億9102万円だった。17年度に入ってからは総務省の要請に応じた返礼品の見直しが広がっており、寄付の伸びが鈍化する可能性もありそうだ。 *2-3:https://www.agrinews.co.jp/p41343.html (日本農業新聞 2017年7月11日) 再考 ふるさと納税 返礼品競争に終止符を 2016年度のふるさと納税の寄付総額が過去最高を更新した。地方支援の広がりは歓迎するが、豪華な品物で寄付を集める「返礼品競争」が過熱し、本来の趣旨を逸脱する面もみられる。行き過ぎた競争は早期に是正する必要がある。ふるさと納税は、出身地や応援したい自治体に寄付をすると税金が軽減される制度。08年度に始まった。寄付金額から2000円を引いた額が所得税や住民税から控除される。寄付した自治体からは、特産品などの返礼品が届く。15年度からは、減税される寄付額の上限が2倍に引き上げられ、寄付先が5自治体までなら確定申告のいらない「ワンストップ特例」が導入された。この結果、全国の自治体が受け入れた寄付額は1653億円と前年度の4.3倍にも増えた。16年度は前年度比1.7倍の2844億円で過去最高となった。一方で、返礼品調達費は16年度で1091億円にも上り、寄付額に占める割合が全国平均で38.4%にも達した。負担になり始めている。総務省は4月に、寄付額の3割以下に抑えるように自治体に通知し、6月からは100団体に改善を求めているが、対応が遅れている。自治体の中には、寄付金で財政が潤い、特産品の消費拡大にもつながるとして、見直しには消極的なところもある。見直し根拠が曖昧なことへの戸惑いも見える。しかしこのまま高額の返礼品が続けば、対価を求めない寄付文化をゆがめたり、特産品の廉売につながったりする。総務省は説得に努めるべきだ。とりわけ農畜産物は、農業関係者の間に「将来的に安売りや投げ売りにつながり、自らの首を絞めることになりかねない」との懸念が強まっている。返礼品に「上限」を設けたり、品目を制限したりする明確なルールを考えるべきだ。寄付の集まらない自治体の不公平感や、住民が他市町村の特産品を目当てに寄付し「税金が逃げる」という弊害、多額の寄付ができる富裕層ほど税の控除が多くなる問題も指摘されている。政府はこうした問題の是正も急ぐ必要がある。寄付する側の意識改革も必要だ。商品を探すように、ネットでの返礼品人気ランキングを見ながら寄付先を選ぶような行為は制度本来の姿ではない。返礼品を得ることが目的ではないはずだ。制度の趣旨を理解した上での冷静な行動が求められる。制度創設時から過剰な返礼品を規制すべきだとの議論はあった。その対策を怠って混乱させた政府の責任は重い。このまま過熱し続けると、制度の存亡に関わる。全国市長会など地方6団体が中心になって返礼品の是正に取り組むことも重要だ。都市と地方との関わりの契機となり、寄付した人が実際に産地を訪れたりする。そうした真のふるさと創生につながる制度となるよう抜本改革も含め再設計する必要がある。 <地域振興と街づくり> *3-1:http://qbiz.jp/article/113834/1/ (西日本新聞 2017年7月9日) 福岡市が「成長可能性都市」2位 鹿児島など九州4市もトップ10入り 野村総合研究所(東京)がまとめた国内100都市対象の「成長可能性都市ランキング」で、福岡市が2位、鹿児島市が5位になった。他に福岡県久留米市が9位、長崎県佐世保市が10位と、上位10都市中、九州が4市を占めた。1位は東京23区だった。野村総研は「九州の地方都市は、大都市に頼らない『ローカルハブ』(地方拠点)になる可能性を秘めている。自らの強みを生かし、地域経済をけん引してほしい」としている。調査は九州の10市を含む人口10万人以上の主な都市が対象。人口、事業所数、地価、財政力、地方交付税への依存度、創業支援策、産学連携など計131の指標に加え、各自治体100〜300人の住民アンケートを点数化し、合計のスコアから順位を算出した。その結果、2位の福岡市は空港、新幹線駅へのアクセスや起業支援策が充実し、市民の幸福度も高いことなどから「“支店経済”の街を脱し新たなビジネスを創出するなど、三大都市圏に次ぐ第4の都市として成長している」。鹿児島市は「外部人材の受け入れに寛容でビジネス集積の伸びしろが大きい」とした。一方、久留米市や佐世保市については「一見、産業創出力が乏しいイメージだが、多様性があり、企業、人材の誘致につながる潜在力は高い」としている。分析した小林庸至上級研究員は「多様なローカルハブを育てていくことは、地方創生だけでなく、首都直下型地震の危機に備えた、災害に強い国づくりにもつながる」と述べた。 *3-2:https://ryukyushimpo.jp/news/entry-531155.html (琉球新報 2017年7月9日) 経済:「道路に沖縄らしさを」 戦略的緑化を議論 沖縄総合事務局と沖縄観光コンベンションビューロー(OCVB)は4日、観光客を迎え入れる視点で県内道路の景観を考える「沖縄における観光の推進と道路緑化シンポジウム」を那覇市のテンブスホールで開いた。観光、道路緑化などに携わる関係者による討論では、維持管理費の公共予算が減額される中、緑化保全にも優先順位を付ける必要性が確認された。沖縄海洋博覧会の基本計画やハウステンボス、全日空などのリゾート計画に関わった東京都市大学環境学部の涌井史郎特別教授が基調講演し「玄関口である道路で、沖縄らしさをどう表現するか。そのことを戦略的に練らないといけない」と強調した。討論では、OCVBの前田光幸専務理事がシンガポールやハワイなど観光と道路緑化を戦略的に実践している国々の事例を紹介した。沖縄総合事務局南部国道事務所の小幡宏所長は「観光客の訪問頻度や、都市や海岸、山あいなど地域の特性に応じて植樹するべきだ」と述べた。和歌山大学システム工学部の山田和司非常勤講師は、亜熱帯気候のため他県より3倍の早さで成長する沖縄の植物管理頻度の高さを指摘した。沖縄国際大学の宮城邦治名誉教授は「観光客が抱く『日本の中の異国感』という印象を植樹でも想起させるべきだ」と提案した。 *3-3:http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201702/CK2017020202000130.html (東京新聞 2017年2月2日) 【社会】来れ地方の学生よ 東京の大学、脱「画一化」に挑戦 入学試験に「地域の課題」、地方出身者用の奨学金、学生寮の充実-。多様な学生を全国から集めようと、東京の大学が試行錯誤している。親の世帯の収入の減少などで地方出身者が減少し、理系を目指す女子学生数も伸び悩む。放っておけば画一化が進みかねない中で、多様性こそが、幅広い思考の原点になるという大学側の思いが込められている。早稲田大は二〇一七年度、「地域に貢献する人材育成」をうたう「新思考入学試験(地域連携型)」という入試を文学部や商学部など五学部で始める。リポートなどで、自分の暮らす地域の課題と解決のために大学で学びたいことなどを示してもらうという。入学センターの担当者は「広く日本各地の受験生に挑戦してもらいたい」と期待する。全国から学生が集まることを特色の一つとしてきた早大でも、地方出身者は年々減少し、現在は全学部生のうち首都圏出身者が約七割を占める。仕送りの負担から、東京への進学をあきらめている地方の若者を後押しするため、〇九年度に首都圏以外の受験生を対象にした「めざせ!都の西北奨学金」も導入。年間約四十万円を給付してきたが、一七年度からは半期分の授業料(約五十万~七十万円)を免除する制度に拡大する。他の私立大でも地方出身者対象の奨学金導入は広がっている。一二年度から「学問のすゝめ奨学金」を設けた慶応義塾大は、首都圏以外の道府県をブロックに分け、給付人数を振り分けて地域が偏らないようにしているという。同大でも一九九五年の入試では43・8%を占めていた首都圏以外の合格者の割合が二〇一五年には28・9%に減少している。女子学生を増やすため、住まいの確保を重視する大学もある。東京工業大は二年前に老朽化で閉鎖した女子寮を建て替え、設備を充実させた上で今年四月にオープンする。キャンパスまで徒歩十五分と便利だ。東京工業大の女子の学部生は12%にとどまり、このうち九割近くは首都圏から通学している。留学生は女子の割合が増えてきており、担当者は、「留学生も含め、安心できる環境を整備して女子学生を増やしたい」と話す。同じく女子学部生の割合が19%と低い東京大は今春、地方出身の女子学生に月三万円の家賃を補助する制度を導入する。安全性を重視した住居百室を用意し、最長で二年間支給する。制度を公表すると、「男子学生との不平等になる」との意見も出たが、同大は「学生の多様性を拡大するため」と説明している。 *3-4:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12723358.html (朝日新聞 2016年12月26日) 東大の家賃補助、女子限定のワケ 家族、志望に「無理しなくても」 安全重視、高め物件 東京大が来年度から設ける女子学生向けの家賃補助制度にさまざまな声があがっている。女子学生を増やす狙いだが、「なぜ女子だけ?」といった批判の一方、女子の高学歴への偏見や自宅外通学を理由に受験を反対された人たちの間では歓迎の声が上がる。年明けからは本格的な受験シーズン。東大だけでなく各地の大学も、女子学生増へ手探りの試みを続ける。歓迎の声の一つは、家賃補助制度が、東大をはじめ、女子の志望先に反対する親へのメッセージになることへの期待だ。「女の子が無理して頑張らなくてもいいのに」「なぜ東京に行くの?」……。東海地方出身の東大4年の女子学生(23)は、家族の言葉が忘れられない。当時、東大に毎年10人以上が進学する県立高に通っていた。先生の勧めで高校2年の1月、志望校に決めた。だが、80代の祖母と50代の母が反対した。祖母の兄弟姉妹で大学に行けたのは男の子だけだったといい、母も短大卒。今では「それが影響したのかも」と思う。現役で受験に失敗すると、「女の子が浪人なんて」と言われた。結局は父が賛成で、東大に挑戦できたという。東大の女子学生の割合は2割未満。この女子学生は「東大が地方の女子学生を増やす手段を採ったことには好感がもてる。送り出す親の意識も変わるだろう」と期待する。家賃補助を歓迎する側のもう一つの理由は、女子が安全に暮らせる住居へのニーズが切実なことだ。東大によると、大学の説明会などで、女子の安全な住まいの確保を心配する保護者の声があったという。「遠くの大学は危ないからダメだ」。神奈川県の30代の女性会社員は湘南地方の高校に通っていた時、父からこう反対されたのをよく覚えている。「一橋大か京都大を目指す」と家族に宣言。模擬試験の成績では十分にめざせる判定だったが、受験を認めてもらえず、自宅から約1時間の私立大に進学した。東大は今回の家賃補助の対象を「自宅から90分以上かかる女子学生」とし、安全や耐震性にも配慮することも強調している。女性は「東大は女子学生がなぜ来ないのか、その理由を調べたのだろう。こうした制度があれば、一人暮らしに反対する親を説得する材料になる」と期待する。東海地方の女子学生も合格後、住居で苦労した。「東京の県人寮に入居しているのは男子学生だけ。女子学生には、安くて安全な住居の選択肢が少ない」。東京で民間の女子専用学生会館に住んだが、干していた下着を盗まれたこともある。3年で一人暮らしを始めたが、安全面から家賃を高めにするしかなかった。一方、東大によると、この制度に約80件の意見が寄せられ、「(男性への)差別だ」という声が多かった。ネット上では「女性限定ではなく、(男女関係なく)貧困の学生に補助すべきだ」という声のほか、まず女子に高学歴は必要ないなどとする一部の風潮に対処すべきだとして「家賃は根本的な問題ではない」などの意見もあった。 ■男女平等とは、他大学も模索 女子教育に詳しいNPO法人サルタック理事の畠山勝太さん(31)は「安全性が高い住まいという女子のニーズへの対応は、ジェンダー(社会的性差)の公平を狙った策で不平等にはあたらない」とみる。「日本の女子の学力は国際的にもトップレベルで、大学進学率の低さは能力の問題ではない」と指摘。東大の家賃補助制度を「国際的には当然のことだ」と話す。男子学生だけでなく、優秀な女子学生を増やすことで研究の多様性を向上させようと大学も様々な試みを続けるが、手探りの段階だ。金沢工業大(石川県野々市市)はバイオ・化学部を新設した2008年度から2年間、女子の特別選抜制度を設けたが、志願者は12~13人と少なく中止した。「特別選抜が敬遠され、AO入試など別の試験が受験しやすかったようだ」(同大)という。大阪電気通信大(大阪府寝屋川市)は十数年前から、公募推薦入試の優遇制度の一つに「女子への点の加算」を設けるが、「女子の志願者は増えていない」という。九州大(福岡市)は12年度の理学部数学科の入試で「将来の女性研究者を増やすため」として、女性枠を設けようとした。だが、「『法の下の平等』の点から問題があるのではないかとの意見があり、社会的影響や入学した学生の精神的負担などを総合的に判断して取りやめた」(同大)という。辻村みよ子・明治大教授(憲法)は「東大の家賃補助は女子寮に代わる学生支援の特別措置ならば、男女共同参画社会基本法上のポジティブ・アクション(積極的改善措置)と認めることができ、法の下の平等を定めた憲法にも違反しない」と指摘。そのうえで「入試では(特例で入学したという)女子学生への烙印(らくいん)にならないよう、男女ともに合格最低点を設けるなどの方が有効だ。こうしたポジティブ・アクションは社会的合意が大切で、大学が丁寧に説明する必要もある」と話す。 ◆キーワード <女子学生への家賃補助> 東大が2017年度から、駒場キャンパス(東京都目黒区)周辺に安全性や耐震性の高い部屋を100室ほど確保し、入居した女子学生に月3万円の家賃を補助する。自宅から90分以上かかる女子学生が対象で最長2年間支給。保護者の所得制限はつけない。 <地方の選択に中央政府の指示は不要である> PS(2017.7.15追加):日経新聞は、*4-1のように、都市寄り・省庁寄りの見解が多いが、これまでに多くの投資がなされて資源や人材の多い都市部自治体の税収減は努力と工夫不足の結果にすぎないため、言い訳無用で自助努力させるべきである。そして、三重県の鳥羽、志摩両市が真珠の返礼品を認めるよう総務省に要望したのは同感で、(高いものから安いものまである)真珠が返礼品になるのは面白く、「返礼品は農産品に限る」などとするのは、論理とは関係なく反対したいだけの狭い発想である。 なお、*4-2のように、西日本地区の18の経済同友会が、観光推進で地域活性化するため西日本全体が広域で連携すべきだとし、四国新幹線を含む交通網に言及したのには賛成だが、広域の方がよいのは西日本だけではないだろう。ただ、カジノを中心とした統合型リゾート施設(IR)を起点にするという発想は情けなく、九州を起点として四国を通り、伊勢志摩から奈良・京都に至った方が余程面白い。さらに、2025年に万博を大阪に誘致するというのは、日本が開発途上国で威信を示さなければならない時代ではないため古くさい戦略で、既に有名な陶磁器・織物・染色・真珠養殖・漆器・機械などの生産現場を案内した方がよほど面白くて買ってもらえるだろう。つまり、誰にとっても、ゲームより本物の方が見ごたえがあるということだ。 *4-1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20170705&ng=DGKKASFS04H64_U7A700C1EA2000 (日経新聞 2017.7.5) ふるさと納税、自粛・継続で割れる自治体 ふるさと納税の人気上昇とともに制度のひずみが鮮明になっている。2016年度の寄付額は2844億円。4年連続で過去最高を更新した。特色ある返礼品で納税者の関心を引き付け、地元農産品の活用や被災地支援など地方振興で成果をあげている。その一方で高額の返礼品や都市自治体の税収減といった問題も浮上。自治体には適正な競争が求められている。ふるさと納税は自治体への寄付額から2千円を引いた額が国の所得税、地方の住民税から一定額控除される仕組み。自治体は寄付を増やそうと返礼品を充実させている。16年度に最も多くの寄付を得たのは宮崎県都城市。2年連続の首位で、返礼品の宮崎牛や焼酎の人気が高く73億円を集めた。2位の長野県伊那市は家電の返礼をあてにした寄付を集めた。ふるさと納税を通じ、被災地を支援する動きも目立つ。6位の熊本市は昨年の震災を機に寄付額が増え、前の年度の86倍に膨らんだ。使途として熊本城の修復を指定したものが多かった。 ■総務省の要請に難色 ただ寄付獲得へ向けた自治体間の競争は過熱気味だ。寄付の趣旨から外れ「2千円で返礼品がもらえる」とあおる自治体もある。総務省は4月、寄付額に対する返礼品の割合を3割以下に下げるよう全国の自治体に要請した。都城市は6月に約6割あった割合を下げると表明。佐賀県上峰町も約5割だった返礼割合の引き下げを目指す。一方、難色を示す自治体もある。ふるさと納税を特産品などのPRに使う自治体には不満がくすぶる。総務省によると、寄付額の上位200自治体のうち、20弱が指摘を受けた返礼品を見直さない意向を示した。三重県の鳥羽、志摩両市は真珠の返礼品を認めるよう総務省に逆に要望した。 ■都市は税収減を懸念 都市と地方のあつれきも表面化している。都市部は地方の自治体に税収を奪われると反発。ふるさと納税による減収額は東京23区で16年度129億円、17年度207億円の見込み。17年度の減収額を30億円とする世田谷区は「30億円といえば学校1校の改築費にあたる規模。税収減が累積すると行政サービスに影響が出る」(財政課)と危機感を強める。地方に対抗しようと、中野区は16年10月から返礼品を設けた。区内レストランの食事券や交流のある他県の日本酒など特産品もそろえる。品川区も競馬場の指定席を返礼品に加えるなどした。 ■使途の明確化が必要 ふるさと納税の運用を巡っては、専門家からも異論が出始めている。とりわけ問題視するのは、集めた寄付の使い方。関西大の橋本恭之教授は「4割の自治体が寄付金の使途を明らかにしていない。公表しない場合は特例控除の適用外にすべきだ」と指摘、使途の明確化を求める。一橋大の佐藤主光教授は「財源を必要とする地域に寄付金が渡っていない。返礼品は農産品などに限り、調達の情報公開を進めるべきだ。過剰競争で利用者も返礼品以外に無関心になっている」と警鐘を鳴らしている。 *4-2:http://qbiz.jp/article/114338/1/ (西日本新聞 2017年7月15日) 九州など18同友会が声明 観光推進へ広域連携を 関西や中部、九州など西日本地区の18の経済同友会は14日、大阪市内で開いた会議後に、観光推進による地域活性化を実現するため、カジノを中心とした統合型リゾート施設(IR)などの観光資源を起点にし、西日本全体が広域で連携するべきだとする声明を発表した。声明では、増加を続ける訪日観光客の受け入れ態勢を整える必要があると強調。国に対し、空港・港湾の整備や、四国新幹線などの整備計画を早急に検討するよう要望した。北陸新幹線の大阪までの早期延伸も求めた。会議後に記者会見した関西経済同友会の黒田章裕代表幹事(コクヨ会長)は、2025年の大阪誘致を目指す国際博覧会(万博)やIRを西日本全体の観光推進につなげるため、「大阪からそれぞれの観光地にお連れするには、交通網をどうすれば良いのかなどの検討が必要だ」と述べた。 <災害支援法と街づくりのあり方について> PS(2017年7月17、18日追加):*5-1については、①災害額を確定するためには被災状況の調査や被害額の算定は必要だが、それに時間がかかることが問題であり、②災害補償は復旧を後押しするだけなので、より災害に強い街へ都市計画を変更できないという欠点がある。 そのため、①については、必要な書類と被災状況を証明する写真を標準化しておき、それに従って提出された書類をコンピューター処理すれば固定資産税評価額等と照合して概略の被災額・補償額を直ちに計算して支払い、後で確認して調整する仕組みにすればよいだろう。また、②については、川の三角州やもともと川だった場所を埋め立てて洪水リスクの高い場所に住宅を作っているようなので、人口減少社会で何度も同じ被害が起こらないよう、安全で便利な街づくりに変更するために、復旧だけではなく積極的な復興も対象にすべきである。 なお、溶岩の上に火山灰や有機物が積もってできた九州の地形では、*5-2のような表層崩壊が起こるのは想定内になるため、それに耐える土地利用や街づくりをすべきだ。 2017年7月九州北部豪雨被害 2017.7.16西日本新聞 *5-1:http://www.shinmai.co.jp/news/world/article.php?date=20170716&id=2017071601001513 (信濃毎日新聞 2017.7.16) 二階氏、激甚災害法の改正検討 豪雨被害受け、手続き迅速化 自民党の二階俊博幹事長は16日、福岡、大分両県で大きな被害が出た九州北部の豪雨を受け、激甚災害指定の手続きを迅速化するため、激甚災害法の改正を進める考えを表明した。視察先の福岡県朝倉市で「災害発生後、(政府が)直ちに指定の準備に当たれるよう、法改正を検討したい」と記者団に述べた。秋に想定される臨時国会での成立を目指す考えも明らかにした。激甚災害法は、地震や豪雨など大規模災害で被災した自治体の財政負担を軽くすることで、復旧を後押しする。ただ被災状況の調査や被害額の算定に時間がかかり、1~2カ月後になるのが一般的だ。 *5-2:http://qbiz.jp/article/114370/1/ (西日本新聞 2017年7月16日) 土砂崩れ300ヵ所超 雨で進行の懸念も 農水省調査 九州豪雨により発生した土砂崩れが、福岡県朝倉市と東峰村、大分県日田市で少なくとも300カ所に上ることが農林水産省九州森林管理局の調査で明らかになった。ほとんどは、深い岩盤までは崩れず、表土層と樹木が滑り落ちる「表層崩壊」とみられるという。識者は、斜面に残った土砂や樹木が今後の強い雨や台風で流れ落ちる恐れがあるとして、警戒を呼び掛けている。九州森林管理局は8、10日に上空から被災地を調査した。土砂崩れは朝倉市と東峰村に集中し、その多くは長さ数メートルから数十メートルと比較的小規模だった。調査に加わった森林総合研究所九州支所の黒川潮・山地防災研究グループ長は、山の谷筋に雨水が集中して斜面が削られ、同時多発的に土砂崩れが起きたとみている。熊本大学の北園芳人名誉教授(地盤工学)によると、上空から見た限り、朝倉市や東峰村の土砂崩れでは深い岩盤は崩れておらず、多くが浅い表土層が崩れた「表層崩壊」だった。猛烈な雨が斜面の表面を勢いよくそぎ落とし、深く根を張らないスギなどの針葉樹も流れたとみられるという。表層崩壊は、雨水が深くまで染み込み、岩盤部分から崩れ落ちる「深層崩壊」と比べると、流出する土砂は少ないが、今回は表層崩壊が多発したことで、流れ出た土砂や樹木が膨大になったとみられる。日田市の土砂崩れは数十カ所と比較的少なかった。ただ、朝倉市などの土砂崩れと異なり、川の流れをせき止める“土砂ダム”ができた日田市小野地区の土砂崩れについて、北園名誉教授は、深層崩壊に近いとみている。豪雨翌日の6日朝に発生したことから、雨が時間をかけて斜面深くに染み込み、地下水位が上がって土が浮き上がり、崩れたと考えられるという。福岡大の村上哲教授(地盤工学)の調査では、小野地区の一部斜面では岩盤が露出。山はなお大量の水を含んでいる可能性もある。朝倉市や東峰村も含め、さらに土砂崩れが進む恐れがあると指摘している。 <木材の利用法> PS(2017年7月19日):国交省は、*6-1のように、九州豪雨で土砂・流木が堆積している福岡県朝倉市の県管理河川について、国が権限代行して緊急に大量の土砂・流木の撤去を始めたそうで、福岡県も少しほっとしただろうが、*6-2のように、①20万トン超の流木があり ②寺内ダムは水面を覆うように大量の大木が漂い ③具体的な処理方法は決まっておらず ④1次仮置き場に収集運搬した後で2次仮置き場に移し、 ⑤▽木材として利活用▽破砕して焼却▽バイオマス燃料のチップや建築資材として売却するなどの方法を検討しているそうだ。 しかし、①②③から、所有者がいるのならその人に引き取ってもらえばよいし、所有者がわからず廃棄物となっている木材なら、焼却して無駄にした上、余分なCO2を出すよりも、利活用できる人に無償で渡した方がよいと考える。また、⑤については、写真から、1)建材・家具材として使える大木 2)バイオマス燃料のチップにはできそうな枝・古材 3)焼却して発電できる木材 などがあるため、引き取り手が受け取りやすいように、④の2次置き場は分類して置くのがよいだろう。なお、木材は、一昔前は、水に浮かせて貯蔵したり運んだりしていたため、泥が付いたから価値が低いということはない。 (2017.7.17、19西日本新聞) *6-1:http://qbiz.jp/article/114430/1/ (西日本新聞 2017年7月18日) 2017九州豪雨:国が土砂や流木の除去代行 朝倉市の3河川、新制度で全国初 国土交通省は18日、九州豪雨で大量の土砂や流木が堆積している福岡県朝倉市の赤谷川など県管理3河川について、国が権限代行で緊急的に土砂や流木を除去すると発表した。国による代行は今年6月に施行した改正河川法に基づく新制度で、全国初の適用となる。対象となる河川は、いずれも朝倉市を流れる筑後川水系の赤谷川、大山川、乙石川の計15・5キロ。上流の山腹で多数の土砂崩れが発生したため、大量の土砂や流木が河道をふさいで氾濫の要因になっていた。権限代行は14日に福岡県が要請。二次災害の恐れが高いほか、撤去には高度な技術を要することもあり、国が18日から緊急的に撤去を始めることになった。作業の終了する時期は未定で、国交省は「軟弱になった地質の状況なども勘案する必要があるが、なるべく早く終えたい」としている。 *6-2:http://qbiz.jp/article/114459/1/ (西日本新聞 2017年7月19日) 2017九州豪雨:流木20万トン処理に苦慮 仮置き場足りず 材木転用にも難題 九州豪雨により、被災地の福岡県朝倉市などで発生し、有明海まで広がった流木の処理に行政側が頭を悩ませている。福岡県の推計によると、流木は少なくとも20万トン超。5年前の九州北部豪雨時に比べて3倍を超える。現段階では、回収して一時的に保管する仮置き場の確保もままならず、復旧は見通せない。山あいになみなみと水をたたえる同市の寺内ダム。水面を覆うように漂う大量の大木を見つめ、管理する独立行政法人水資源機構の担当者は声を落とした。「具体的な処理方法は決まっていない」。船や重機を使って回収する方針だが、本格的な作業は手付かずだ。豪雨で山腹が崩壊し、大量の木々や土砂が河川や道路、海にまで散らばった。県の推計は市内を流れる二つの川の航空写真から目視で算出したもので、有明海の流木は含んでいない。流木や土砂の処理は筑後川や有明海などは国、ダムは水資源機構、県管理の河川や道路などは県、農地や民有地などは市町村が担う。いったん1次仮置き場に収集運搬した後、より広い2次仮置き場に移す。1次仮置き場は現在、朝倉市と東峰村の駐車場や広場など計7カ所。福岡県は近隣自治体を含め、民有地など約20カ所を候補地として、1次、2次仮置き場の確保を目指す。だが「廃棄物」だけに地域の反発も予想され、「地権者や周辺住民に対し、丁寧に説明している」(廃棄物対策課)段階という。保管した流木はその後、木材として利活用▽破砕して焼却▽バイオマス燃料のチップや建築資材として売却−する方法を検討しているものの、「売却は交渉次第であり、泥が付いた流木は買ってくれない」と県の担当者。二次利用も容易ではなさそうだ。家屋やがれきなども含む災害廃棄物は九州北部豪雨では約6万5千トン。被災自治体だけでなく、福岡市や北九州市で広域処理した。今回も既に両市のほか久留米市が受け入れを始めたが、その総量も不透明だ。 <無電柱化と街づくり> PS(2017年7月20日):東京都は、*7-1のように、小池知事が公約を実現して無電柱化条例を成立させたが、無電柱化は防災・景観の両方の視点から重要なことである。また、無電柱化はコストが高くつくという主張もあるが、やる気があれば、市町村・事業者との連携やコスト削減技術の開発で可能で、既に先進国だけでなくアジア諸国も高い割合で無電柱化しており、日本の無電柱化率が異常なくらい低いのである。 しかし、日本の地方自治体も、*7-2のように、福岡県田川市は電力自由化を受けて民間5社と新電力を設立し、電気料金削減とその収益の地域への還元で地域活性化を図るそうだ。また、佐賀県伊万里市は、*7-3のように、佐賀県西部4市5町の広域ごみ処理施設「さが西部クリーンセンター」を完成し、溶融処理で発生する熱を利用した発電や溶融物の再資源化を図っており、これは循環型社会のKeyになりながら収益を挙げる点で先進的な例だ。 さらに、*7-4のように、地方交付税が不要な不交付団体は76自治体で、2017年度は5年ぶりに減少したそうだが、地域電力供給や電線地中化で水道管に電線を併設し、電気料金や配電料金を税外収入として収益源にすればよいと思われる。 世界の無電柱化率 日本の無電柱化率 災害時の電柱 景観への電柱と電線の影響 *7-1:http://www.sankei.com/politics/news/170608/plt1706080018-n1.html(産経新聞 2017.6.8 11)東京都が全国初の無電柱化条例成立 小池知事の公約実現、9月施行 都道上への電柱新設を原則禁止することを柱とした「無電柱化推進条例」が7日、東京都議会本会議で全会一致により可決、成立した。都によると、都道府県での条例化は全国で初めて。9月1日から施行する。無電柱化は、災害時に電柱が倒壊して道路をふさぐことなどを防止する防災面の機能強化と、景観の確保が狙い。小池百合子知事が昨夏の知事選で公約に掲げていた。都は条例に基づき、無電柱化を推進する計画を策定。区市町村や事業者と連携を図るほか、無電柱化を進めるために必要なコスト削減方法の調査や技術開発に取り組む。国会では昨年末、国や自治体、事業者に無電柱化を促す法律が議員立法で成立している。 *7-2:http://qbiz.jp/article/111921/1/ (西日本新聞 2017年6月14日) 電力新時代:田川市が民間5社と新電力を設立 料金削減と収益還元で地域浮揚狙う 福岡県田川市は13日、民間企業5社と共同出資する筑豊地区で初の地域新電力会社「Cocoテラスたがわ株式会社」を設立した。同社は九州電力などの発電事業者から卸値で電力を調達して安価で供給。電気料金削減と収益の還元で地域活性化を図る。12月からまず市の公共施設へ電力供給を開始。2020年度以降は民間企業や一般家庭にも広げる予定だ。「Cocoテラスたがわ」によると、同社からの電力供給により、市公共施設の電気料金は年間約470万円削減されると試算。同社は18、19年度に約600万円、民間への供給を始める20年度以降は年間1千万円前後の収益を見込んでいる。収益はまちづくりなどの地域振興事業などに活用する。資本金は870万円。市と小売・卸売電気事業「パシフィックパワー」(東京)、「NECキャピタルソリューション」(同)が各250万円、福岡銀行、西日本シティ銀行、田川信用金庫の3金融機関が各40万円を出資する。設立記者会見で、二場公人市長は「電力小売自由化を背景に新たなビジネスに挑戦する。公共施設の電気料金削減とともに、新会社を核に収益を地域に還元する地域活性化の新たな手法と確信している」と語った。 *7-3:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/263515 (佐賀新聞 2015年12月26日) 「さが西部クリーンセンター」が完成、循環型社会のモデルに ■溶融熱で発電、再資源化 伊万里市松浦町に建設していた県西部4市5町の広域ごみ処理施設「さが西部クリーンセンター」が完成し25日、竣工(しゅんこう)式があった。溶融処理で発生する熱を利用した発電や溶融物の再資源化も図り、運営する県西部広域環境組合(管理者・塚部芳和伊万里市長)は「循環型社会形成の拠点」と位置付ける。1月4日から正式稼働する。県ごみ処理広域化計画に基づき、老朽化の進む伊万里市環境センター、杵藤クリーンセンター(武雄市)、有田町クリーンセンターの3施設を統合した。伊万里、武雄、鹿島、嬉野の4市と有田、大町、江北、白石、太良の5町の計24万人のごみを処理する。総事業費は約174億円で施設建設工事は約143億円。総事業費のうち国の交付金や地方債を除く約25億円が市町の負担となる。高温でごみを溶かすガス化溶融炉は計2炉で1日最大205トンを処理できる。溶融物のスラグとメタルを分離回収し、それぞれ道路舗装用材や建設機械のおもりに再利用する。溶融処理の熱で発電する蒸気タービン(3900キロワット)で施設内の電力を賄い、余剰分は売電する。不燃ごみや粗大ごみを処理する「マテリアルリサイクル推進施設」では、鉄やアルミを再資源化する。竣工式で塚部市長は「一部事務組合の設立から8年余りで竣工を迎えられたのは、地元の理解と協力のおかげ。4市5町が団結し、施設運営に取り組みたい」と述べた。 *7-4:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/447960 (佐賀新聞 2017年7月20日) 交付税不要は76自治体 17年度、5年ぶり減、税収伸び悩みが要因 独自の税収が豊かで国から地方交付税(普通交付税)を受け取らなくても財政運営できる2017年度の自治体は、宮城県女川町など76団体の見通しであることが分かった。全体の4%に当たる。前年度より1団体少なく、減少は5年ぶり。地方税収の伸び悩みに加え、社会保障費の支出が膨らんでいることが要因。総務省が近く閣議で報告する。不交付団体の数は、景気回復により12年度の48から増え続け、16年度は77だった。17年度はこのうち栃木県上三川町、東京都羽村市、静岡県富士市、佐賀県玄海町の4市町が交付税を受け取るようになる一方、新たに宮城県女川町、埼玉県八潮市、大阪府摂津市の3市町が不交付となる。不交付の都道府県、政令指定都市は16年度に引き続き東京都、川崎市だけとなる。総務省は毎年度、自治体ごとに地方税などの収入と、事業や住民サービスにかかる支出の見込み額を比較。収入が支出を上回っている場合は不交付団体として普通交付税を配分しない。同省は、交付税を必要としない自立した自治体の拡大を目指している。しかし大企業などが立地する一部の地域を除き、大幅な増加は難しい状況だ。17年度の交付税は総額16兆3300億円。災害対応などに充てる特別交付税を除く15兆3500億円が普通交付税として配られる。 <木材のプレカット工場> PS(2017年7月29、30日追加):唐津市佐志浜町の埋立地が空き地になっていたので、*8-1のように、「木材プレカット」事業の最大手「ポラスグループ」が新工場を完成させたのは喜ばしいことだ。伊万里市にも中国木材(http://www.chugokumokuzai.co.jp/home.html 参照)があり、2005年に国産のスギとベイマツを組み合わせた異樹種集成材「ハイブリッド・ビーム」の生産を開始し、原木集荷などに広いネットワークを持つ伊万里木材市場株式会社と、原木集荷・製材・乾燥・集成・プレカット・流通を一貫して行える木材コンビナートを形成している。そして、今回の北部九州豪雨を見ればわかるとおり、九州には良質の木材資源が多く、これを高度な技術で自動的にプレカットして付加価値をつければ、復興に使用できるだけでなく、アジアの木材の少ない地域へ輸出も可能だろう。 また、*8-2のように、市内産材を利用して雪や風に負けない木造ハウスができたそうだ。木造といっても全体を木造にする必要はなく、上部は軽い素材の方が丈夫になるのではないかと私は思うが、専門家がしっかりと設計して標準化し、プレカットして組み立てて、安価で災害に強く、生産性の上がるハウスを作るのがよいと考える。 (図の説明:一番左のような骨組みにビニールをかぶせた農業用ハウスが作られ始めているが、災害の度に壊れるのではなく丈夫で作業が快適なハウス作りをした方がよいため、専門家の設計を標準化して自動プレカットし、左から二番目、三番目のような温室を安価に作る方法を考えた方がよいだろう。また、一番右の図のように、リビングの先を温室にすると、共働き家庭が、テラスやベランダよりも安心して洗濯物・布団を干したり、植物を育てたりできる) *8-1:http://qbiz.jp/article/115253/1/ (西日本新聞 2017年7月29日) 唐津市に新工場完成 住宅建材加工のポラスグループ 住宅建材加工「木材プレカット」事業の国内最大手「ポラスグループ」(埼玉県越谷市)は、佐賀県唐津市佐志浜町の埋め立て地「虹の松原ファクトリーパーク」に、新工場「レインボーフィールド(佐賀工場)」を完成させ、21日に見学会を開いた。県有地約3・8ヘクタールを購入し、鉄骨平屋の工場(床面積約1・5ヘクタール)と事務所棟を建設。コンピューター制御で建材の継ぎ手を成形するなどの機械を導入し、木造在来工法を中心とした住宅の月約300棟の生産能力を備えた。初期投資額は約20億円。社員数は33人で、うち22人を地元雇用した。九州一円の工務店や住宅建築会社に販路を求め、2018年5月までにフル稼働を目指す。さらに3〜4年内に隣接地で第2工場を建設し、生産能力を月約500棟に増強する計画。新工場は国内5カ所目で、九州では初めて。同グループは、耐震性向上に向けた構造計算サービスが強み。16年4月の熊本地震を受け、復興需要に応えようと、誘致を受けた唐津市への進出を決めた。21日は市内のホテルで完成披露パーティーも開かれ、中内晃次郎社長が「住宅事業は地域密着に徹する必要がある。地域の発展に役立つ工場になるよう考えていく」とあいさつした。 *8-2:https://www.agrinews.co.jp/p41470.html (日本農業新聞 2017年7月28日) 雪や風に負けない 木造ハウス実証 広島県廿日市市 広島県廿日市市に木造構造のビニールハウスが登場した。市内産材を活用して大雪、台風などの影響を受けずに農業生産ができるかを実証しようと、市の事業で3月に設置。地元のJA佐伯中央が実証試験に協力し、効果を確かめる。同市が2016年度の「市産材活用モデル事業」として取り組んだ。幅6メートル、長さ25メートルで、主に市内産の杉を使う。施工費や材料費などで520万円かかった。同市飯山のJA研修農場に設置。50センチほど雪が積もる場所で、パイプハウスでは雪の重みに耐えられないこともある。JA職員が管理し、7月上旬に小ネギの種をまいた。使い勝手は通常のパイプハウスと変わらないという。費用対効果が課題だが、市は「農業の振興とともに木材の新たな需要を作っていきたい」(産業振興課)としている。 <循環型社会に捨てるものはないこと> PS(2017年8月3日追加):大分県と同県日田市が、九州豪雨で大量に発生した流木を木材チップにして、木質バイオマス発電の燃料として活用することを決めたのはよかった。しかし、「流木の表面に付いた泥や中に含まれる水分は、細かいチップに加工する作業の支障になる可能性があるため、水分が抜きにくい根や泥は、流木を回収して搬送する過程で取り除く」というのは、都会のコンクリートの中で育って掃除すらしたことのない人の発言ではないかと思われる。何故なら、泥は水で洗い流せば落ち、水分は屋外に放置しておけば乾くからだ。しかし、チップとして燃やすには少し泥が残っていても機械に不具合を生じさせるというのなら、細かく粉砕して有機肥料にする方法もある。 *9:http://qbiz.jp/article/115641/1/ (西日本新聞 2017年8月3日) 2017九州豪雨:流木を発電燃料に 大分県と日田市 福岡からも受け入れ検討 大分県と同県日田市は2日、九州豪雨で大量に発生した流木を木質バイオマス発電の燃料として活用することを決めた。流木は河川の復旧工事や農業の足かせになっており、順調に進めば、福岡県内の流木も受け入れる方針だ。国土交通省の推計によると、大分県内の流木は日田市の大肥川や花月川の流域で約2万立方メートル。県や日田市は県建設業協会などの協力を得て流木を回収し、木質バイオマス発電の燃料となる木材チップを加工する「日本フォレスト」(日田市)に処理を委託する。同社は1年間に大分県の流木量以上の処理が可能で、木材チップは県内や九州一円の発電事業者に販売する。流木の表面に付いた泥や中に含まれる水分は、細かいチップに加工する作業の支障になる可能性がある。このため水分が抜きにくい根や泥は、流木を回収し、搬送する過程で取り除く。福岡県内の流木は朝倉市を中心に約19万立方メートルと推計(国交省)され、県などが処分後の活用策を検討している。大分県循環社会推進課の担当者は「日田市で発生した流木の処理を優先するが、隣県としてできるだけの協力をしたい」と話した。
| 経済・雇用::2016.8~2017.12 | 02:45 PM | comments (x) | trackback (x) |
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