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2018.1.29 高齢化した成熟国家では、医療・介護などの福祉サービスは実需であること (2018年1月30、31日、2月1、2、3、4、7、10日に追加あり)
   
      日本の人口構成の変化               *3-3より

(図の説明:日本の年齢階層別人口は、1番左と左から2番目のグラフのとおり、高齢者の割合が増えて、収入構造《賃金・年金》と需要構造が変わった。つまり、全収入に占める年金収入の割合が増え、高齢者向けサービスの実需が増加したのだ。にもかかわらず、政府は、高齢者向けサービスを削減し、インフレによって高齢者の資産移転を行ったため、不要な需給ギャップが生じ、GDPの伸びも抑制された。こういう不要なことをしなければ、高齢化社会で真に必要とされる財・サービスの開発と供給が進み、それは今後、世界で必要とされた筈である。なお、何歳まで健康かという問題については、左から2番目のグラフで同年齢の人口が急カーブで減り始める頃までと思われ、健康状態は人によって異なるため階段状になっているわけである)

  
  購買力平価による各国GDPの推移    日本の実質・名目賃金と消費者物価指数

(図の説明:その需給ギャップを解消するためとして、インフレ政策を行い、生産性の低い政府支出に多くの予算を配分し、実需を抑制したため、購買力平価で比較して日本のGDPの伸びは先進国・開発途上国を合わせて最低になった。また、インフレ政策で実質賃金の伸びもマイナスになっている《年金支給額は当然マイナス》が、これは国民を主体としない政策の結果である)

(1)医療について
1)医師の長時間労働と医師の時給
 *1-1、*1-2のように、杏林大学医学部付属病院が36協定を超えて医師に残業させ、残業した時の割増賃金も不十分だったとして三鷹労基署から是正勧告・改善指導を受けたり、北里大学病院の36協定の結び方が不適切で「協定が無効だ」と労基署から指摘されたりしているが、医師には応召義務があり、(役所と違って)9時~5時の勤務時間には入らないことも多々ある職種であるため、これに近いことはどの病院でも行われていると思われる。また、残業代を請求できる医師ばかりではないため、医師の時給はかなり低くなるだろう。

 それでは、労働基準法を順守する上で必要な医師数は確保できるのかと言えば、例えば、*1-3のように、正常出産でも「9時~5時」の間に子どもが生まれるとは限らない産婦人科で、医師数を確保できていない。産婦人科医を増やすことも必要だと言われているが、*1-6のように、地域や診療科間で医師数は偏在しており、外科系や産婦人科は医師数が減っている診療科なのである。

 外科の医師数が減る理由は、手術が長引いたり、重篤な患者の治療を行ったりするため、医師の労働が過重になるからだが、だからといって、*1-4のように、救急患者が「たらい回し」にされて治るものも治らないという事態になってはならない。これを解決するには、医師個人の善意に依存して医師に重労働を課し命を削らせてきた現在の医療政策を改め、十分な数の医師を配置して無理なく診療できる組織体制を作ることが必要で、そのためには、診療報酬削減一辺倒の現在の医療政策を改めなければならない。

2)女性医師割合の増加で起こったこと

  
     2018.1.28東京新聞    女性の医師割合及び医師国家試験合格者割合の推移

 医師国家試験合格者に占める女性割合は次第に増加し、2014年は31.8%となり、これに伴って医療機関で働く2016年末の女性医師数は、*1-5のように、6万4305人で全体の21%となった。男女比は年齢層が若いほど女性の割合が高く、29歳以下は35%、30代は31%を占め、20年前と比べると29歳以下も全世代で8%高くなったそうで、私はよいことだと考える。

 また、私は、女性だからといって妊娠・出産を機に離職して職場復帰しない人はむしろ少なく、そのために男女雇用機会均等法で育児休業等が定められているのだと思うが、女性医師は結婚後のことも考えて過重労働を強いる診療科を敬遠し、無理の少ない診療科に集まる傾向があるそうだ。それもあって、地域や診療科による医師の偏在が起こっているため、希望者の少ない地域や診療科は、担当する医師を厚遇する必要があるだろう。

(2)介護について

  

(図の説明:介護保険制度は、導入されて17年しか経過しておらず、全世代型になっていないため不完全だが、著しい伸びが見込まれている。これは、核家族化した高齢化社会を迎えた日本で、本当に必要とされている実需だからだ)

   
  2018.1.27日経新聞   2017.6.27読売新聞     2018.1.27東京新聞 

(図の説明:政府は、その実需を無駄遣いであるかのように抑制することに努めているが、身体が動かなくなった人が自宅で暮らすには家事支援も必要であるため、少なくとも混合介護を認めるべきであろう)

 介護保険制度は、1995年前後に私が提案し、1997年の国会で制定された介護保険法に基づいて、2000年4月1日に施行され、2000年時点で184万人だった介護保険制度の利用者は、2025年には657万人になると予想されている。これだけ利用者が増加するのは、核家族の多い成熟した高齢化社会の日本で、合理的な介護サービスは必要性の高い実需だからにほかならない。

 厚労省は、*2-1のように、自立支援や重度化を防ぐ取り組みに報酬を手厚くし、医療との連携拡大を促すそうだが、このうち医療と介護の連携は当然のことで、自立支援に頑張った事業者が報われる仕組みは必要であるものの、どうしても自立できないから介護サービスを利用している人も多いため、*2-2、*2-3のように、介護報酬の改定は、利用者の生活の質の向上に資する利用者本位のもので、無理に自立を押しつける改定であってはならないと考える。

 日経新聞は、「介護サービスは生産活動ではなく無駄遣い」と見做しているせいか、*2-5のように、「給付の効率化、給付削減が不十分」という記載が多い。しかし、核家族化した高齢化社会の日本で、介護サービスは必要性の高い実需であるため利用者の増加があるのであり、やみくもな介護費の抑制はむしろGDPを落とす。

 そのため、私は、医療・介護は保険適用分と自己負担分を作って混合でサービスを受けることを可能にし、自己負担でも多くの人が購入するサービスは、順次保険適用にしていくのがよいと考える。そうすれば、保険適用を前提とした日本だけ不当に高い価格付けはなくなるだろう。

 なお、東京新聞は、*2-4のように、「介護の見直しに、必要性を増す担い手の確保策が十分か疑問が残る」という記事を書いており、これらはしっかりと考慮されなければならない。

(3)年金と高齢者雇用
 日本老年学会などは、*3-1のように、医療の進展や生活環境の改善により、10年前に比べて身体の働きや知的能力が5~10歳は若返っていると判断し、現在65歳以上とされている高齢者の定義を75歳以上に見直すよう求める提言を発表した。

 そのため、75歳まで働ける人は、*3-2のように、年金受給開始を75歳からに選択することもでき、年金支給開始年齢を遅らせた人は毎月の受給額が増える制度を拡充し、定年延長など元気な高齢者が働ける仕組み作りも進めるのはよいと考える。働いている人の方が認知症にならず、身体も元気でいられるので、介護サービスを使わずにすみ、多面的なメリットがある。

 そのような中、*3-3に、日経新聞が、「2008年のリーマン・ショック以降、先進国を苦しめてきた『需要不足』と呼ばれる状態が約10年ぶりに解消される見通しとなり、米国の景気回復を追い風に貿易や投資が刺激され、需要が増えている」としているのには驚いた。

 何故なら、未だに日本の需要を米国輸出とそのための投資に頼っているが、これは先進国ではなく低賃金を使った製造業による輸出に頼る開発途上国の発想であり、この前提は戦後すぐの日本には正しかったかも知れないものの、現在には全く当てはまらないからである。現在は、福祉サービスなどの内需を満たす方向で需要を作り出すのが、国民を豊かにするための正道だ。

 なお、東日本大震災の復興需要があり、福祉サービスの担い手も足りないため、金融緩和しなくても失業率を最低水準にし、さらに人手が足りない状態を作ることはできたと思われる。にもかかわらず、金融緩和とインフレ政策で実質賃金を下げたことは、不問に付されるべきでない。

 また、「失業率が下がるほど物価が上がるという相関関係は、右肩下がりの“フィリップス曲線”に示されるが、日本や米国は失業率が完全雇用と考えられている水準を下回っている割に物価の反応が鈍い」とも書かれているが、過去に米国で観測されたフィリップス曲線を出すまでもなく、実質賃金や実質年金が下がれば需要が減る上、現在の需給は国内だけでなく開発途上国も含めた世界市場で調整されているため、安い賃金で働く開発途上国が市場経済に参入してくる限り、物価は上がらない。これは、1990年以降の米国でも観測されていることであり、賃金の高い先進国は別の豊かさを考えるべきなのである。

<医療>
*1-1:https://digital.asahi.com/articles/DA3S13322983.html (朝日新聞 2018年1月20日) 杏林大の医師、長時間労働 月100時間超の例も 労基署が是正勧告
 東京都三鷹市の杏林大学医学部付属病院が、労使間の時間外労働の取り決め(36協定)を超えて医師に残業させ、残業した時の割増賃金も不十分だったとして、設置者の杏林学園が三鷹労働基準監督署から是正勧告と改善指導を受けていたことが分かった。杏林大は「勧告を真摯(しんし)に受け止める」としており、働き方の見直しに着手。医師数百人に不足分の賃金数億円を支払ったとしている。杏林大などによると、勧告と指導は昨年10月26日付。杏林大は就業規則と協定で、医師について週39時間の所定労働時間、月最大70時間の残業時間を定めているが、労基署の調査では約700人の医師のうち約2%が「過労死ライン」とされる残業80時間を超え、100時間を超える医師も数人いたという。労働基準法が定める、残業に対する割増賃金も一部の医師について法定の割増率を下回っていた。杏林大は昨年末、同年4~9月の不足分を対象者に支払ったという。長時間労働の理由について、杏林大は朝日新聞の取材に「医師には(治療を求められたら拒めない)応召義務があり、患者側に立って丁寧な診療をしたり、手術が予想以上に長引いたりすることがある」などと説明している。割増賃金については、法定割増率を下回る別の手当を支払っていたという。同病院は高度な医療を提供する施設として国が承認する全国85の「特定機能病院」の一つ。2016年度の外来患者は約64万9千人、入院患者は約29万5千人に上る。医師の長時間労働や勤務管理を巡っては、聖路加国際病院(東京都中央区)や北里大学病院(相模原市)なども労基署から是正を求められていることが明らかになっている。厚生労働省は有識者会議で医師の働き方についての議論を進めており、18年度末までに具体案を取りまとめる予定だ。

*1-2:https://digital.asahi.com/articles/DA3S13318146.html (朝日新聞 2018年1月18日) 北里大病院、勤務ずさん管理 医師の労働時間定めず、36協定不適切
 北里大学病院(相模原市)が、医師らを残業させるために必要な労使協定(36〈サブロク〉協定)の結び方が不適切で、協定が無効だと相模原労働基準監督署(同)から指摘されていたことがわかった。医師の勤務時間を就業規則で定めずに違法な残業をさせていたなどとして、労働基準法違反で是正勧告や改善指導も受けており、大病院のずさんな労務管理の実態が明らかになった。勧告や指導は昨年12月27日付。法定労働時間を超えて病院職員を働かせるには、労働者の過半数で組織する労働組合か、労働者の過半数代表者と36協定を結び、残業の上限時間などを定める必要がある。北里大病院の関係者によると、病院には労組がなく、各部門の代表が集まる「職員代表の意見を聴く会」で過半数代表者を選び、残業の上限を「月80時間」などとする36協定を代表者と結んでいた。だが、各部門の代表になるには所属長の推薦が必要なうえ、人事担当の副院長ら幹部が過半数代表の選出に関わっていた。このため選出の手続きが労基法の要件を満たさないと指摘されたという。2千人以上いる職員の残業が違法状態にあったことになり、この点でも是正勧告を受けた。また、同病院は「勤務時間管理規程」に従って職員の勤務を管理し、所定労働時間は週38時間とする▽残業させる場合は責任者の承認を必要とする――ことなどを定めているが、医師や管理職をこの規程の「適用除外」にしていた。北里大病院は全国に85ある、高度な医療を提供する「特定機能病院」の一つ。2016年10月時点で医師約600人が勤務しているが、始業・終業の時刻や所定労働時間、休日についてのルールがない状態で働かされていたことになる。同病院の職員によると、職員の出退勤時間を打刻するタイムカードはあるが、医師の多くは出勤か退勤のどちらか一方のみを打刻するよう病院側から指導されていたという。長時間労働が長年常態化していたとの声もある。医師がどれだけ残業したかの十分な記録がないため、違法残業の時間や未払い残業代の規模の把握も難しいとみられる。残業時間の上限規制の導入を目指す政府は、医師への規制適用を5年をめどに猶予する方針だ。だが、組織ぐるみともみられかねない大病院の不適切な労務管理が明るみに出たことで、勤務医の労働環境の改善を急ぐよう求める声が強まるのは必至だ。

*1-3:https://yomidr.yomiuri.co.jp/article/20171108-OYTET50038/ (読売新聞 2017年11月8日) リスクの高い出産に対応する病院、6割が産科医不足
 リスクの高い出産に対応する総合周産期母子医療センターの約6割が労働基準法を順守する上で必要な産婦人科医を確保できていない、とする初の推計を日本産婦人科医会がまとめた。宿直や休日の日直の限度回数を超えた勤務が常態化している恐れがあるという。労基法では、労働基準監督署の許可があれば、労働時間の規制外となる宿直や日直を認めている。厚生労働省は通知で、1人につき宿直は週1回、日直は月1回が限度としている。同センターは、合併症のある妊産婦や新生児の集中治療を行う医療機関で、全国に107施設が指定されている。原則24時間、複数の産婦人科医の勤務が要件だ。同医会では、通知と要件に従った場合の宿直・日直体制には16人が必要と試算。今年6月、同センターの人員体制を調査したところ、107施設中66施設(62%)で産婦人科の常勤医が16人未満だった。非常勤医を加えても56施設(52%)が16人に達しなかった。実際は、高齢や妊娠・育児中などで宿直・日直を免除、軽減される医師も多い。16人以上いても、限度回数を超えている医師がいる可能性がある。産婦人科医不足を巡っては、同センターなど地域の基幹病院に医師を集めて、勤務負担を減らす対策が進む。同医会の中井章人常務理事は「さらに集約化を図るとともに、産婦人科医を増やす方策も必要だ。地域や診療科間での医師の偏在解消が急務だ」と話している。

*1-4:https://dot.asahi.com/dot/2017112200086.html?page=1 (AERA 2017.11.24) 救急患者「たらい回し」の裏側 断らざるを得ない当直医の窮状とは、連載「メディカルインサイト」
 11月7日、香川県内の県立病院で昨年度、時間外労働が2千時間を超える勤務医がいたことが報じられた。県は背景に医師不足があるとし、医師確保に努めているという。だが、「妙案はない」とも。現役の医師であり、東京大学医科学研究所を経て医療ガバナンス研究所を主宰する上昌広氏は、著書『病院は東京から破綻する』で、医師不足が原因で患者を受け入れられない病院側の実情を、自身の経験をもとに打ち明けている。
     *  *  *
 2013年1月、埼玉県久喜市で救急車を呼んだ75歳(当時)の男性が、県内外の25病院から合計36回、受け入れを断られ、最終的には県外の病院で死亡しました。典型的な「救急患者のたらい回し」です。亡くなった患者さんのご冥福をお祈りすると同時に、医師も患者受け入れが嫌で断っているのではないことをお伝えしたいと思います。埼玉県は日本で最も人口あたりの医師の少ない地域の一つです。私自身の経験から考えても、埼玉県の病院の当直医師が、全ての救急車を受け入れることは不可能です。私は1995年から2001年まで、大宮赤十字病院(現さいたま赤十字病院)の内科・循環器科に常勤、非常勤医師として勤務しました。06年から現在に至るまで、埼玉県北部に存在する行田総合病院に内科非常勤医師としても勤務しています。大宮赤十字病院に勤務していた頃、私は20代でした。1人でも多くの患者を診ようと、先輩医師に当直業務をかわってもらうことも珍しくありませんでした。当時の大宮赤十字病院では、内科は一般内科1人と循環器科1人の2人当直体制でした。周辺の医療機関と比較して、恵まれていたと思います。三次救急を受け入れる地域の基幹病院だったため、次から次に救急車がやってきました。一睡もできないことも珍しくありませんでした。その後、都内の虎の門病院や国立がんセンター中央病院(当時)に勤務し、当直業務をこなしましたが、大宮赤十字病院との違いに啞然としたことを覚えています。大宮赤十字病院では、心肺停止から急性心筋梗塞、脳卒中までの患者を引き受けていました。こうした患者は早期の対応が求められます。たとえば、心筋梗塞の患者が来たら、すぐに検査や治療を指示し、同時に緊急カテーテル検査を行うか判断しなければなりません。判断に困るときは、先輩医師に電話して、指示を仰ぎました。心臓カテーテル検査を実施すると決めれば、他の先輩医師にも電話して、緊急来院をお願いしました。彼らが来てから検査に入ることもありました。このような重症患者に対応している間は、別の患者を診ることは不可能です。脳卒中や心筋梗塞など、迅速な対応が必要な患者の場合は、救急隊から連絡を受けても、「申し訳ない」と思いながら、お断りしたことが何度もあります。これが、当直医の立場から見た「救急患者のたらい回し」の実態なのです。
■「緊急受け入れ病院」制度の限界
 埼玉県は、救急車の「たらい回し」を防止するため、14年4月には全ての救急車にタブレット端末を設置し、15年2月には「緊急受け入れ病院」を4ヵ所から12ヵ所に増やすことを決定しました。「緊急受け入れ病院」制では、埼玉県が認定する施設で、受け入れを2回断られた患者に対し、3回目で必ず対応することが義務づけられます。埼玉県によれば、タブレット端末の導入により、受け入れ照会が4回以上の「たらい回し」患者は14%減少したそうですが、この程度では問題は解決するとは思えません。「緊急受け入れ病院」を指定し、補助金と引き替えに救急車を引き受けさせても、他の患者を治療している間、病院のベッドで待ってもらうことになります。結局、救急隊の代わりに当直医に責任をなすりつけるだけです。脳卒中や心筋梗塞の治療は時間との戦いです。こうした形骸的な対応は患者にとって決していいことではありません。医師不足が深刻な千葉県や埼玉県で、「救急患者のたらい回し」を減らすには、医師を増やすしかありません。ところが、それが困難です。医師会や医学部経営者など既得権者の思惑が絡むからです。既得権を打破するには、市民が問題を認識し、既得権者を批判する必要があります。そうすれば行政や政治は動かざるを得なくなります。
※『病院は東京から破綻する』から抜粋

*1-5:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180129&ng=DGKKZO26119940V20C18A1TY5000 (日経新聞 2018.1.29) 女性医師、働き続けやすく、東京女子医大 育児での離職者再研修/総合メディカル モール設立開業を支援
 遅れていた女性医師のキャリアと出産・育児との両立を後押しする動きが広がっている。20代では医師の3割超が女性になった。日本の医療を支えるために女性の活躍は不可欠で、復職支援や働き続けやすい環境づくりを進める。「この1、2年で症状が変わったことはありますか」。東京女子医科大学病院(東京・新宿)の総合診療科で1月上旬、山口あけみ医師(40)が精密検査に訪れた男性を診察していた。山口さんは2017年秋、約10年間の専業主婦生活から、非常勤医師として医療現場に復帰した。同大学卒業後、付属の医療機関に勤めていたが、4年目に夫の仕事の都合で米国に引っ越すため離職した。現在4~10歳の2男2女を育てている。17年1月の帰国を機に、医師の仕事を通じて社会に役割を持ちたいと復帰を願ったものの、長く現場を離れ不安があった。「仕事を忘れているのでは」「ミスを起こしてしまったら」。後押ししたのが同大の女性医師再研修部門が提供する「再研修―復職プロジェクト」だった。原則3カ月で希望者の要望に沿った頻度、内容の研修をする。制度は06年度に始まり、結婚や育児などで医療現場から離れた女性医師が対象だ。卒業校は問わない。17年1月までに233人が相談し、96人が研修を受けた。休職していた相談者のうち75%が復職した。山口さんは子育てとの両立を考え週1度、総合診療科で研修した。指導医にアドバイスをもらいながら実際に診療をして「自分にもできる役割がある」と前向きになれたという。再研修部門の唐沢久美子部門長は「キャリアが多様化し、一旦離職する医師も増えた。復職したいときに相談できる人がいないことが課題。人材という宝を掘り起こす必要がある」と話す。厚生労働省によると医療機関で働く16年末の女性医師数は6万4305人で全体の21%。ただ男女比は年齢層が若いほど女性の割合が高く、29歳以下は35%、30代は31%を占める。20年前と比べると29歳以下も、全世代でみても8ポイント高くなった。日本医師会の今村定臣常任理事は「女性には妊娠・出産など男性と異なるライフステージがあるが、女性に働いてもらわなければ医療現場は立ちゆかなくなる」と指摘。医師会は厚労省から委託を受け、就業希望者に医療機関を無料で紹介する「女性医師バンク」をつくった。一方、08年から子育てや介護中の医師らに基本3年間の「キャリア支援制度」を提供するのが岡山大学病院(岡山市)。それまでの定員と別に応募医師を配置する。勤務時間や頻度が比較的自由になる。制度利用後は大学病院で常勤復帰したり、地域の病院に就職したり。希望者が増え、来年度からは受け入れ可能時間を増やす予定だ。働き方改革も進む。久留米大学病院(福岡県久留米市)は18年度、小児科のワークライフバランスを進める取り組みを、他科に紹介し広げる意向だ。ママさん医師が活躍中の小児科は13年末から土日にしっかり休めるよう体制を整備。休日にも主治医が担当患者の見回りやガーゼ交換をしていたのを、基本的に全て当直医が対応するよう変更した。入院患者らに対応する医師約20人の土日の平均勤務時間は、1日平均3.5時間から2.7時間に減少。患者から大きな不満はないという。キャリア支援を担当する一人、守屋普久子医師は「結婚出産を控える若手の女性医師が増える中、働き続けやすい環境作りが必要。大学病院で人材が不足すれば地域に医師を派遣できなくなる可能性もあり、地域医療に影響を及ぼしかねない」と話す。働く場を自ら作ることで子育てとの両立を図ろうとする試みもある。医療コンサルティング大手の総合メディカルは開業を希望する女性医師向けに19年4月に複数のクリニックが集まる「女医モール」の開業を都内2カ所で目指す。社内に女性社員主体の「JOY☆Working Team」を設け、医師の募集や開業地の選定に当たる。将来は子育て中の女性がワークシェアできる体制の医療モール開設も目指す。保育園と小学校に通う3人の子を育てながら首都圏の病院に勤める40代女性医師は開業を検討中だ。同医師は「自宅近くで開業できれば、子どもの下校後にクリニックで宿題をさせるなど、そばにいられる」と話す。今は父母の力も借りながら午前8時半~午後5時半を定時として働くが、緊急時には突如の時間外勤務や深夜の対応が必要なことがある。いつまでこの生活を続けられるか不安を感じるそうだ。ただ、「これまで約20年キャリアを積んで来られたのは、大学や患者さんから多くの機会を与えられてきたから。医師として返し続けることが使命」と強調する。医療に携わり続ける気持ちは変わらない。

*1-6:http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2018012801001532.html (東京新聞 2018年1月28日) 専門医研修、地方は低迷 外科「10人未満」27県
 若手医師に分野ごとの高度な知識や技術を身に付けてもらうため、4月から新たに始まる専門医養成制度で、医師が希望する研修先が大都市に集中し、地域に大きな偏りがあることが28日、分かった。外科は東京での研修希望者が170人に上る一方、青森、高知など27県は10人未満、内科でも9県が15人以下だった。指導医の数など、研修機関としての基準を満たす病院が地方に少ないことが背景にある。新たな制度は大学の医学部教授や公的機関の代表で構成する一般社団法人「日本専門医機構」(2014年設立)が運営。研修先登録結果は同日までに機構が公表した。

<介護>
*2-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180127&ng=DGKKZO26194380W8A120C1EA3000 (日経新聞 2018.1.27) 介護自立支援、報酬手厚く、重度化防止も対象 医療と連携拡大促す
 厚生労働省は26日、4月から適用する介護保険サービスの新しい料金体系(介護報酬)を公表した。介護を受ける人の自立に向けた支援や、重度化を防ぐ取り組みに報酬を手厚く配ることが特徴だ。効率化に向け残された課題は多い。介護報酬全体の改定率は、昨年末の2018年度予算編成の過程でプラス0.54%と決まった。保険料などを除く国費ベースでは支給額が約140億円増える。同日の社会保障審議会(厚生労働相の諮問機関)の分科会では、報酬の増額分をどこに配分するかや、どのサービスを効率化するかの詳細を固めた。柱の一つである自立支援は、食事や入浴、歩行といった日常動作が通所介護(デイサービス)を通じて改善できた事業所に対して報酬を加算する。外部のリハビリ専門家や医師と協力した重度化防止の取り組みにも報酬を厚くする。適切な支援を通じ、服の脱ぎ着が自分でできるようになったり、不安定だった歩行がしっかりとした足取りになったりする例がある。介護事業者の間でも「やり方次第で要介護度が改善する人は多い。頑張った事業者が報われる仕組みが必要」との声が根強くある。要介護度が改善すれば生活の質が向上し、給付費も少なくて済む。今回の取り組みはその第一歩だが、加算額はわずかなため「自立支援のインセンティブとしては不十分」(介護事業者)との指摘が早くも出ている。自立支援などを重視する背景にあるのは、逼迫する介護保険財政だ。制度を施行した2000年度と15年度を比べると給付額は約3倍の9兆円、要介護認定者数は倍近くの445万人まで増えた。自立支援を通じて状態改善を促し、給付額の増加幅を抑える。今回の報酬改定では医療との連携拡大への評価も盛り込んだ。特別養護老人ホームでは終末期のみとりに対応するため、夜間や早朝に医師が駆け付ける態勢を充実させた施設への報酬も増やす。みとり対応が特養で可能になれば、病院への救急搬送などが必要なくなる。高齢者の「薬漬け」が問題となる中、かかりつけ医と連携した「減薬」への加算も新設する。介護施設と病院間で、利用者の状態について緊密に情報を共有することも促す。今回は報酬全体が増額となるため、事業者にとっては収益上プラスとなる面があるが、利用者の負担は増える場合がある。厚労省の試算によると、通所介護を週3回、訪問介護を週2回利用している場合、1カ月あたりの総費用は訪問介護分で5万2900円から5万5290円へと5%弱増える。自己負担を1割とすると200円超負担が増える。通所介護では自己負担は50円ほど増える。特養のモデルケースの場合、総費用は1カ月28万1040円から28万8730円へと8000円程増える。自己負担も800円近く増えることになる。今回は介護職員の負担軽減につながる情報通信技術(ICT)の活用促進策は一部にとどまった。特養の見守りセンサー導入で夜勤対応に関する加算を取りやすくするほかには目立った施策はない。

*2-2:https://digital.asahi.com/articles/DA3S13335157.html (朝日新聞社説 2018年1月29日) 介護報酬改定 利用者本位を忘れずに
 介護保険サービスで、事業者に支払われる介護報酬の4月からの改定内容が決まった。大きな特徴は、利用者の自立支援や重度化防止につながる取り組みに対し、重点的に報酬を手厚くしたことだ。リハビリを強化・充実するほか、通所介護(デイサービス)で、日常生活で使う身体機能が維持・改善される利用者が多い場合に「成功報酬」を加算する仕組みを入れる。特別養護老人ホームなどでは、排泄(はいせつ)で介助が必要な人の「おむつ外し」を支援する取り組みも評価する。身体機能が改善したり、自分でトイレに行ったりできるようになれば、利用者の生活の質の向上につながるだろう。一方で、利用者が望まないサービスを事業者が強いたり、改善が見込めそうな軽度の人ばかり選んだりしないかという懸念もある。十分留意したい。今回の改定には、高齢化が今後ピークを迎えるなかで、介護費用の伸びを抑える狙いもある。経済界などからは、給付の抑制策が不十分だとの不満も聞かれる。厳しい介護保険財政への目配りは必要だ。ケアプランを作るケアマネジャーの能力と中立性を高める工夫など、無駄をなくす努力も続けねばならない。同時に、利用者が自分らしく暮らすことを支えるという、介護保険の理念を見失ってはならない。調理や掃除といった生活援助サービスについて、財務省などは利用回数に上限を設けるよう求めていたが、導入は見送られた。利用が平均を大きく上回る場合は自治体が設ける専門職らの会議で検証し、必要があれば改善を促すことになった。利用回数が多い人には、ひとり暮らしや認知症の人も少なくないとされる。個々の事情をよく考慮してほしい。介護人材の待遇改善も、引き続き待ったなしである。今後の消費増税分を活用した改善策が検討されているため、今回の改定では具体策は限られる。しかし、介護報酬が全体として6年ぶりにプラス改定とされたのは、待遇改善による人手不足解消が喫緊の課題であることに配慮したからだ。事業者は肝に銘じてほしい。利用者のニーズにあった質の高い介護サービスを提供することは、「介護離職ゼロ」を実現するための基本である。そのためには、サービスのあり方だけでなく、税金投入や保険料を納める制度の担い手拡大など、負担増を視野にいれた議論も避けるべきではない。

*2-3:https://373news.com/_column/syasetu.php?storyid=89990 (南日本新聞社説 2018年1月28日) [介護報酬改定] 自立の「押しつけ」懸念
 利用者の意思に関係なく、自立を押しつけるようなことがあってはならない。厚生労働省が2018年度からの3年間、介護保険サービス事業所に支払う介護報酬の改定方針をまとめた。事業所が外部の医師らと連携して身体機能の回復に取り組んだ際の報酬を手厚くするほか、通所介護(デイサービス)で利用者の状態が改善すると加算する「成果型」の報酬が新設される。身体機能が回復すれば、生活の質の向上が期待できる。手厚いケアが必要な高齢者の増加を抑えられれば、増大する介護費用の抑制にも効果があるだろう。介護の総費用は18年度予算ベースで11兆円超に上る。団塊世代が全員75歳以上になる25年、日本は全人口の3人に1人が65歳以上という超高齢化社会に突入する。持続可能な制度とするために、費用の抑制は不可欠である。今回の改定は、医療機関に支払われる診療報酬との同時改定だ。夜間や早朝に医師が駆けつける態勢を整えた特養への加算を新設するなど、医療、介護の連携強化を目指すのも理解できる。ただ、介護保険制度の原点は利用者が目指す生活を補助することなはずだ。治すことを目的とする医療とは異なることも忘れてはならない。要介護度が重度の高齢者の増加を防ぐのは、厚労省のここ数年の方針だ。昨年の法改正では住民の要介護度の維持・改善に取り組み、成果を上げた自治体に財政支援をする交付金創設が決まった。事業所への成果報酬もこの一環といえる。利用者の要介護度が上がれば、事業所への介護報酬は上がる。逆に高齢者の状態が改善すれば、事業所の収入は減ることになる。事業所の努力が報われない今の仕組みは、確かに改善した方がいい。だが、成果報酬目当てで利用者にリハビリを強制する事業所が出ないとは限らない。国や事業所が機能回復に重点を置きすぎて、利用者の希望や実情が置き去りになるようでは本末転倒だ。訪問介護のうち掃除や調理などの「生活援助」については、市町村がケアプランを検証する仕組みを設けるなどの利用抑制策が盛り込まれた。軽度の利用者がヘルパーを家政婦代わりに使っている一部の例が問題視されているのは確かだ。しかし、定期的なヘルパー訪問は高齢者の見守りという意味合いも大きい。離れて暮らす家族の安心につながる役割に十分配慮する必要がある。

*2-4:http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2018012702000132.html (東京新聞社説 2018年1月27日) 介護の見直し 担い手の確保忘れずに
 三年に一度の介護報酬の見直しの内容が公表されサービスメニューが出そろった。超高齢社会を支えるための改定が行われるが、必要性を増す担い手の確保策が十分なのか、疑問が残る。介護報酬は、事業者に介護保険などから支払われる報酬で、いわばサービスの価格表だ。公的価格で国が定め、二〇一八年度から実施される。増やしたいサービスは価格を上げ取り組む事業者を増やすことを狙う。増える高齢者の在宅生活を支えるためのサービスの充実、自立した生活を支える介護予防やリハビリテーションの強化を図る。特に、今回は二年に一度の医療の診療報酬も改定される。同時改定を利用した医療と介護の連携メニューも並ぶ。在宅での医療ケアを担う看護職員の活躍の場が広がる。介護職員が医療機関や主治医との利用者情報の共有を進める。メニュー充実の方向はいいが、介護を担う人材の確保の視点を忘れてはならない。今改定では、訪問介護のうち生活援助について、研修を受けた幅広い人材の参入を図る。今担っている介護福祉士など専門性のある職員は身体介護に集中してもらうためだ。元気な高齢者が新たな担い手になれるが、介護の質を維持するため研修内容の十分な検討は欠かせない。人材確保が難しく地域のニーズに合わないなどの理由で広がらないサービスがある。一二年度に在宅を二十四時間支える訪問介護・看護サービスが始まった。在宅介護の“切り札”と期待されたが、一六年度で利用者は一日当たり一万三千八百人。今改定でも要件を緩和して事業者の参入を促すが、当初見込みの二五年度に一日当たり十五万人の達成は厳しいのではないか。サービスをつくっても担い手がいなければ普及しない。厚生労働省によると、一六年の介護職員の月給は全産業平均より約十万円低い。待遇改善は報酬改定の中でも進められているが、十分なのか。今改定では実施されない。春闘で賃上げが決まれば他産業とさらに差が開く。今後は、一九年秋に消費税率が10%に引き上げられた際、増税分を活用して一千億円を充てる予定でそれを待たなければならない。二五年度には三十八万人の介護職人材が不足するといわれる。介護ロボットの活用による負担軽減策も同時に広げながら、人材確保を進める必要がある。

*2-5:https://www.nikkei.com/paper/related-article/?b=20180127&c=DM1&d=0&nbm=DGKKZO26194380W8A120C1EA3000&ng=DGKKZO26194110W8A120C1EA3000&ue=DEA3000 (日経新聞 2018.1.27) 給付の効率化は不十分
 介護報酬全体の改定率が6年ぶりのプラス改定となった。大規模な通所介護事業所や家事援助サービスの報酬引き下げ、福祉用具レンタルへの上限価格設定など複数の効率化策をそろえたが、給付のムダを抑える半歩にすぎない。医療や年金を上回るスピードで増える介護費の抑制には力不足だ。焦点の一つとなっていたのが、利用者の自宅で調理や掃除を手掛ける「生活援助」と呼ばれるサービスの効率化だ。財政制度等審議会で月100回を超えるような頻繁な利用が問題視され、上限回数を設けるなど何らかの制限をかけるべきだとの声が上がった。最終的には上限設定は見送られ、代わりに平均を大きく上回る利用には市町村による一定のチェックが働く仕組みになったが、どこまで機能するかわからない。比較的収益率が高いとされる大規模な通所介護事業所の報酬も減らされる。ただ、これについては事業者から「規模拡大による経営効率化の動きを妨げる」との指摘も出て、改定にちぐはぐな面が否めない。介護給付費は2025年度に現在の2倍の約20兆円まで増えるとの推計もある。「どこまで社会保険で面倒を見るかの議論をしないと、際限なく給付が増えかねない」(大和総研・鈴木準政策調査部長)との懸念が広がっている。

<年金と高齢者雇用>
*3-1:https://www.nikkei.com/article/DGXLAS0040011_V00C17A1000000/ (日経新聞 2017/1/5) 75歳で高齢者、65歳は「准高齢者」 学会提言
 日本老年学会などは5日、現在は65歳以上と定義されている「高齢者」を75歳以上に見直すよう求める提言を発表した。医療の進展や生活環境の改善により、10年前に比べ身体の働きや知的能力が5~10歳は若返っていると判断した。前期高齢者とされている65~74歳は、活発な社会活動が可能な人が大多数だとして「准高齢者」に区分するよう提案。社会の支え手と捉え直すことが、明るく活力ある高齢化社会につながるとしている。65歳以上を「支えられる側」として設計されている社会保障や雇用制度の在り方に関する議論にも大きな影響を与えそうだ。平均寿命を超える90歳以上は「超高齢者」とした。提言をまとめた大内尉義・虎の門病院院長は「高齢者に対する意識を変え、社会参加を促すきっかけになってほしい」と述べた。学会は、お年寄りの心身の健康に関するさまざまなデータを解析。身体の働きや知能の検査結果、残った歯の数などは同一年齢で比べると年々高まる傾向にあり、死亡率や要介護認定率は減少していた。内閣府の意識調査でも、65歳以上を高齢者とすることに否定的な意見が大半で、男性は70歳以上、女性は75歳以上を高齢者とする回答が最多だったことも考慮した。准高齢者は、仕事やボランティアなど社会に参加しながら、病気の予防に取り組み、高齢期に備える時期だとした。

*3-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180117&ng=DGKKZO25752900W8A110C1MM8000 (日経新聞 2018.1.17) 年金受給開始 70歳超も、政府検討 選択制、額は上乗せ 高齢者に就労促す
 政府は公的年金の受け取りを始める年齢について、受給者の選択で70歳超に先送りできる制度の検討に入った。年金の支給開始年齢(総合2面きょうのことば)を遅らせた人は毎月の受給額が増える制度を拡充し、70歳超を選んだ場合はさらに積み増す。高齢化の一層の進展に備え、定年延長など元気な高齢者がより働ける仕組みづくりも進める方針だ。2020年中にも関連法改正案の国会提出を目指す。政府が近くまとめる高齢化社会に関する大綱に「70歳以降の受給開始を選択可能とする制度を検討する」と盛り込む。政府が70歳超を選択肢として明示するのは初めて。大綱には、ハローワークに高齢者の再就職支援の窓口を増やしたり、起業をめざす高齢者を事務手続きや融資の面で支援したりする方針も示した。定年延長や継続雇用をする企業への助成制度の活用も明記した。現在の公的年金制度では、受け取り開始年齢は65歳が基準だ。受給者の希望に応じて、原則として60~70歳までの間で選択できる。受け取り開始を65歳より後にすれば毎月の受給額が増え、前倒しすれば減る仕組みだ。現行制度では、受給開始を65歳より後にすると、1カ月遅らせるごとに0.7%ずつ毎月の受給額が増える。例えば66歳で受け取り始めた場合、65歳から受け取るよりも月額で8.4%上乗せされる。いまの上限の70歳まで遅らせた場合は、受給額は同42%増える。70歳を超えてから受け取り開始を認める制度にする場合、70歳超の部分は65~70歳で受け取り始める場合の上乗せ(いまは0.7%)よりも高い上乗せ率にする方針だ。現行制度でも70歳超で受け取り始めることはできるが、70歳超の受給額の加算は対象外だった。受給開始年齢の上限は、いまの70歳から75~80歳程度に引き上げることを想定している。上限を定めた国民年金法と厚生年金保険法を改正する方針だ。制度が発足した当初、厚生年金の受給開始年齢は55歳(国民年金は65歳)だった。政府は高齢化に伴い、徐々に引き上げてきた。さらに開始年齢の上限を上げる場合、年金財政に影響が及ばないよう設計する方針。先送りで支給が不要になる分を、その後の受給額上乗せの財源に充てる。年齢の上限や増額率などは、厚生労働省の社会保障審議会年金部会で議論し、19年中に具体化する。受け取り開始年齢をめぐっては、17年に内閣府の有識者会議が引き上げを提言。自民党のプロジェクトチームも同様の方針をまとめていた。大綱にはこのほか、20年代初頭までに介護施設やサービスの受け皿確保を通じて介護離職をゼロにする目標などを盛り込んだ。安倍晋三首相をトップとする高齢社会対策会議の議論を経て、月内にも閣議決定する。

*3-3:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180128&ng=DGKKZO26238120X20C18A1MM8000 (日経新聞 2018.1.28) 先進国、需要不足解消へ、今年、10年ぶり 経済、なお浮揚力欠く
 2008年のリーマン・ショック以降、先進国を苦しめてきた「需要不足」と呼ばれる状態が今年、約10年ぶりに解消される見通しとなった。米国の景気回復を追い風に貿易や投資が刺激され、需要が増えている。だがデジタル経済化に伴う経済の変質などの構造問題で物価の伸びも鈍い。金融緩和に頼らず、浮揚力を高めていけるか。主要国の経済運営は、なお難しいかじ取りを迫られている。国際通貨基金(IMF)の推計によると、日米欧などの先進39カ国はリーマン危機直後の09年、国内総生産(GDP)の3.9%にあたる1.5兆ドル(約163兆円)の需要不足に陥った。急激な需要減は大量の失業を招き、企業の設備投資も急減。だが、先進各国の経済対策で需要不足は徐々に解消に向かい、18年には0.1%と小幅ながらプラスに転じる見通しだ。
●失業率も最低水準
 経済は何年もかけて大きな波を打つように変動しており、この「景気循環」と呼ぶ流れを判断する目安が「需給ギャップ(総合2面きょうのことば)」だ。需要が不足すると経済活動が停滞して物価を下押しするデフレ圧力が強まるため、各国は金融緩和や財政出動で需要を喚起する。リーマン・ショック後の危機対応に伴う相次ぐ追加財政支出で、17年の先進国の政府債務残高は50兆ドル(約5500兆円)強と10年間でおよそ7割も増えた。13年には主要7カ国(G7)の全てが需要不足だったが、18年にはドイツが1.0%、米国が0.7%の需要超過になる見込み。専門家の間では超過の幅も順調に広がるとの分析が多い。日本は09年に7.3%だった需要不足が0.7%まで縮小しており、日銀の試算ではすでにプラスに転じている。背景には世界経済の同時成長がある。米国は3次にわたる大規模な量的金融緩和や減税で回復の足取りを強め、景気拡大は9年に及ぶ。数年前まで停滞感のあった欧州や中国も持ち直し、建設機械や電子部品の貿易も急回復中だ。17年の世界の貿易量は4.7%増と16年(2.5%増)から勢いを増し、危機から10年を経て世界経済の現状は「大いなる安定」ともいわれる。経済の活動水準が上がって雇用が逼迫し、先進国の失業率も5%台半ばと00年以降の最低レベルだ。IMFは22日、18年と19年の世界成長率見通しをともに3.7%から3.9%へと上方修正した。過去5年、先進国の物価上昇率の平均は中央銀行が目標とする2%を下回ってきた。経済学のセオリー通りなら、需要超過の下で物価や賃金にも上昇圧力がかかってきてもおかしくない。実際、欧米では物価が少しずつ上向く兆しが出ており、IMFは19年に2%を上回るとの見通しを立てるなど強気だ。米連邦準備理事会(FRB)は18年のシナリオとして3回の利上げを見込む。欧州中央銀行(ECB)も今月から資産購入を減らし、正常化を探り始めた中銀の一挙一動に市場は敏感に反応している。米長期金利は年明け以降、米税制改革や原油高に伴うインフレ期待を先取りするように上昇傾向をたどった。もし物価が予想以上のペースで上がり始めれば、利上げのテンポも速めざるを得なくなる。問題は、経済がそうした引き締めに耐えられるほど強固になったのかどうかだ。世界最大のヘッジファンド、ブリッジウォーター・アソシエーツ創業者のレイ・ダリオ氏は「FRBが1~1.25%の(追加)利上げをすれば資産価格は下落する」と話す。米国の株価や不動産には過熱感もみえ、調整が始まれば世界に波及する恐れがある。低金利で均衡を保っているグローバル経済が、一瞬にして変調を来すリスクと背中合わせだ。
●構造問題には課題
 物価上昇には懐疑的な見方も多い。世界的なデジタル経済の拡大と人口の高齢化、政府債務の増大――。「循環的な面では危機の後遺症がほぼなくなるものの、構造的な成長力の弱さは払拭されていない」。みずほ総合研究所の門間一夫氏はこう語る。失業率が下がるほど物価が上がるという負の相関関係は、右肩下がりの「フィリップス曲線」に示される。危機後はこの連動性が薄れ、日本や米国は失業率が完全雇用と考えられている水準を下回っている割に物価の反応が鈍い。オンラインショッピングの普及や機械化で賃金が抑えられるといった歴史的な構造変化が進んでいるためで、2000年に3%弱だった先進国の潜在成長率は金融危機後に1%強に低下し、いまも1%台半ばだ。経済の実力が弱いままだと、次の景気後退期が来るのが早まる恐れがある。需給ギャップが10年ぶりプラスとはいえ、中国や新興国との競争激化などで先進国がかつてのような成長トレンドを描くのは難しい。サマーズ元米財務長官が唱えた「長期停滞論」に重なるもので、各国当局者の戸惑いは消えない。この先、需要超過の勢いや物価、利上げテンポなど様々な景気の変数がどう推移するのか。世界経済が安泰といえる状況にはまだ遠い。

<サービス付高齢者住宅>
PS(2018.1.30追加):*4のように、三菱地所が老人ホームを開発したり、東急不動産・東京急行電鉄などが共同で高齢者住宅の複合開発に着手したり、野村不動産がシニア住宅を供給する目標を掲げたりしているのは、アクションが速くて感心する。しかし、有料老人ホームはマンション用地より手狭でよいというのは疑問が残るし、高齢者住宅は、サービスも付けられるようにした方がよいと考える。

*4:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180130&ng=DGKKZO26271860Z20C18A1TJ2000 (日経新聞 2018.1.30) 三菱地所、老人ホーム開発、大手各社、高齢者住宅に的 狭い敷地を有効活用
 三菱地所が有料老人ホーム開発に参入する。主に東京23区で物件を開発して運営会社に賃貸する。東急不動産も東京急行電鉄などと共同で横浜市で分譲マンションと高齢者向け住宅の複合開発に着手した。不動産大手は市況の見通しが不透明になる2020年の東京五輪以降も見据え、安定した収益が見込める高齢者向け住宅事業を強化している。三菱地所はグループで住宅事業を担う三菱地所レジデンスを通じて参入する。有料老人ホームはマンション用地としては手狭な約1千平方メートル前後の敷地でも建てられることから、開発の柔軟性と収益性は高いと見ている。第1弾として老人ホーム運営のチャーム・ケア・コーポレーションが東京都区部で展開する物件を開発。チャーム社が物件を賃借して2019年春に開業する。物件は地上5階建てで、48室規模となる予定だ。当面は年間1~2棟の老人ホームを開発し、物件の賃貸や売却で15億~20億円規模の売り上げを目指す。地所レジは16年春に開発チームを発足させ、今年度から専属の社員を置いた。東急不動産は昨年、東京都世田谷区で分譲マンション「ブランズ」やシニア住宅「グランクレール」を複合開発した「世田谷中町プロジェクト」を開業したが、第2弾として横浜市緑区の十日市場で同様のプロジェクトを進める。東急電鉄やNTT都市開発の3社共同事業として展開。19年内の開業を目指し、分譲マンションと高齢者住宅を複合開発する。東急不は世田谷や横浜に次ぐ案件開発も模索している。政府は25年に高齢者人口に対する高齢者住宅の整備率を4%、146万人に高める目標を掲げているが、足元では2%程度にすぎない。野村不動産はシニア住宅の供給拡大が不可欠とみて、昨年10月に千葉県船橋市で介護が必要な人や健康な高齢者を対象にした住宅「OUKAS(オウカス)」の1号案件を開業。今後も千葉市や横浜市などでも順次施設を開業する方針で、向こう10年間で40棟、5千戸規模のシニア住宅を供給する目標を掲げている。

<ド阿保の発想>
PS(2018年1月31日、2月2日追加):日経新聞記者がどういう話の持って行き方をしたのかが疑問だが、*5-1のように、「原油から水素を取り出し、燃料を使って船で運んでくる」というのは、発想が悪すぎる。その上で、「石炭火力で作った電力や原油から作った水素でEVやFCVを動かしたら環境への負荷は減らない」などと言う人がいるが、これにはサウジアラムコのアミン社長も唖然とするだろう。サウジのムハンマド皇太子が原油の販売収入に頼った経済を見直す改革を進めているのは、サウジに石油化学製品などを作る会社や技術を誘致するという意味であり、原油から水素を作ることではないのである。なお、日本は、自然エネルギー由来の電力が余り始めて水も豊富であるため、その電力で水を電気分解すれば100%クリーンな水素と酸素が容易に得られる状況であり、このようにして国富をサウジに移転する必要はない。
 また、今日の予算委員会の質問で、「再エネを接続すると再エネ賦課金がかかり、電力消費者に負担になる」と言っていた委員がいたが、私の家の2018年1月の東電の再エネ賦課金は1,950円(10.0%)で、その他の部分が17,429円(90%)であり、17,429円の中には、①火力発電の燃料費 ②稼働していない原発や稼働率の低い発電所を含む従来の発電設備の減価償却費 ③種々のメンテナンス費用 ④事務費 ⑤原発事故処理費 等が含まれているのであり、従来の発電コストは決して安くない。そして、そもそも発電コストを正しく比較するには、発電方法毎に発生した原価の実績を正確に計算する必要がある。
 上のような理由で日経新聞記者のド阿保ぶりにはまいったが、*5-3のように、「九州水素・燃料電池フォーラム&水素先端世界フォーラム2018」が福岡市であり、九大の佐々木副学長が「経済と環境を両立させるキーテクノロジーが水素だ」と語られたり、九州の自治体や民間企業が水素社会の実現に向けた取り組みをしたりしているのは期待を持つことができる。2020年の東京オリンピックは、世界の人々を水素社会の幕開けに招待したいので、是非、オリンピック前に花開かせてもらいたい。

*5-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180131&ng=DGKKZO26352050R30C18A1MM8000 (日経新聞 2018.1.31) サウジアラムコ、次世代エネで日本と協力、社長会見 脱・原油へ水素製造
サウジアラビアの国営石油会社サウジアラムコのアミン・ナセル社長兼最高経営責任者(CEO)は都内で日本経済新聞記者と会見した。原油販売への依存を減らすため、原油から水素を取り出す技術で日本企業と協議に入ったと明らかにした。アジアで石油化学工場などへの投資も加速する。史上最大規模となる新規株式公開(IPO)は「2018年後半をめどに実行する」と言明した。サウジはムハンマド皇太子が旗振り役となり原油の販売収入に頼った経済を見直す改革を進めている。アラムコ株を最大5%上場して1000億ドル(約11兆円)を調達し、民間企業の育成に投じる計画だ。アラムコは世界の原油生産の1割近くを握り、売り上げの大半を原油販売に依存する。ナセル氏は「原油相場は健全な需要に支えられている」と話し、年内に供給過剰が解消するとの見通しを示した。だが英仏が将来のガソリン車販売を禁じる方針を打ち出すなど脱化石燃料の流れは加速している。このため将来の柱の一つとして温暖化ガスを排出しない水素の利用拡大に向け「原油から水素を取り出す技術の実用化を日本企業と議論している」と述べた。水素は環境への負荷が低い次世代エネルギーの中核となると期待されている。燃料電池車や発電への利用が見込まれ、水素関連のインフラ市場規模は50年に約160兆円になるとの試算がある。アラムコは豊富な埋蔵量を誇る原油から水素をつくることで、将来も原油から収益を得ると同時にエネルギー大国としての地位の維持を目指す。関係者によると、経済産業省系の日本エネルギー経済研究所が日本側の窓口になる。日本は官民を挙げて水素産業の育成を進め、トヨタ自動車や川崎重工業、千代田化工建設などが水素ビジネスの実用化をリードする。アラムコと日本側はすでに実務者級の協議を複数回実施。年内にサウジ国内の試験プラント設置に向けた事業化調査で合意を目指している。足元では原油をガソリンや化学製品に加工して販売する体制の整備を急ぐ。ナセル氏は「エネルギーと化学の複合企業となる」と強調。需要が拡大するアジアに照準を絞り、マレーシアやインドネシアで石油化学工場や製油所に投資する。「インドは重要な市場だ」とも強調した。同国の石油需要は40年まで年率3.3%成長を続ける見通しで「複数の企業と製油所開設に向けて協議中だ」と明かした。今年後半を目指すIPOによる資金調達額は過去最大だった中国のアリババ集団(約250億ドル)を大幅に上回る見通し。ニューヨークやロンドン、香港に加え東京市場も誘致に名乗りをあげる。ナセル氏は「上場市場は政府が最終的に決める」と述べるにとどめた。
*アミン・ナセル氏 1982年キングファハド鉱物資源大学を卒業、サウジアラムコ入社。開発・生産担当の上級副社長を経て、2015年から現職。

*5-2:http://qbiz.jp/article/127215/1/ (西日本新聞 2018年1月31日) 電力7社、燃料高で減益 市場の自由化で顧客流出も
 電力大手10社の2017年4〜12月期連結決算が31日出そろい、北陸、四国、沖縄3電力を除く7社の経常利益が前年同期比で減少した。火力発電の燃料となる原油や液化天然ガス(LNG)の価格が上昇し、利益を押し下げた。市場の自由化に伴う顧客の流出も響いた。燃料費は関西電力を除く9社で上昇し、東京電力ホールディングスなど2割程度増える企業が目立った。北海道電力は経常利益が半減し、中部電力は26・2%、東北電力は18・2%、東電は10・4%それぞれ減少した。一方、関電は3・1%の減益にとどまった。高浜原発3、4号機(福井県)の稼働で火力燃料費を抑制できた。四国電力は伊方原発3号機(愛媛県)の運転によって他の電力への販売が増え、経常利益は約3・4倍となった。沖縄電力は修繕費の低減などで17・0%増益。北陸電力も増益だったが、燃料費がかさんだため純損益は2年続けて赤字となった。売上高は、燃料高騰に伴う料金単価の上昇により10社全てで増えた。18年3月期予想は北海道、中国、四国3電力を除く7社が経常減益を見込む。

*5-3:http://qbiz.jp/article/127324/1/ (西日本新聞 2018年2月2日) 「水素社会」実現へ福岡でフォーラム
 水素エネルギーの普及促進策などを考える「九州水素・燃料電池フォーラム&水素先端世界フォーラム2018」(九州経済産業局、九州大など主催)が1日、福岡市であり、水素関連企業や大学関係者など約460人が参加した。九州大の佐々木一成副学長が「脱炭素・水素エネルギー社会実現への産学官地域連携と将来展望」と題して基調講演。「経済と環境を両立させるキーテクノロジー(主要技術)が水素だ」と語り、低コストで水の電気分解ができる技術や燃料電池の発電効率化に向けた開発が進んでいる現状などを紹介した。自治体や民間企業などの担当者による講演もあり、水素社会の実現に向けたさまざまな取り組みが報告された。

<外国人労働者>
PS(2018年2月1、3日追加):人口減少を問題視する論調が多いが、団塊の世代が働き盛りだった昭和50年代には、生産年齢人口の男女に対して十分な職場を作れなかったため、女性には仕事での達成を遠慮してもらって家事・育児に専念させていた経緯がある。そのため、昭和50年代の女性の労働力率は低く、1979年に国連総会で国連女子差別撤廃条約が採択され、日本も1985年に批准し、我が国でも男女雇用機会均等法が制定されて後、次第に女性の労働力率が上がってきたのである。従って、生産年齢人口の減少で女性や高齢者がフルに働いても失業率が低くなったのは一つの進歩と言わざるを得ず、*6-1の「動員型」の達成は、憲法27条1項の「すべて国民は勤労の権利を有し義務を負う」という条文から当然やらなければならないことである。しかし、労働力生産性(労働力人口1人当たりの生産性)も上げなければ、賃金や報酬を上げることはできないため、教育・訓練による労働の質の向上、技術革新の導入等が必要で、これも生産年齢人口の減少に伴う機械化・大規模化や教育水準の上昇で可能になった面がある。
 しかし、日本は、まだ外国人労働者を締め出している国だ。例えば、*6-2のようなフィリピン人女性が家政婦として働いているような国では、*1-5のように女性医師が仕事を辞める必要はなく、複数の家政婦を雇って子育て期を乗り切っている。これを、「女性間の不平等」などと馬鹿なことを言って高度専門職の女性も社会的に家に閉じ込めようとしたのが日本であるため、その原因を追究して猛省するところから始めなければ論点がずれ続けるのである。
 なお、*6-3のように、農業はロボット化やICT化などスマート農業による労働力軽減を行っても労働力不足が深刻になるそうで、外国人労働者を受け入れることが必要だ。そのためには、農協や農業法人を受け皿にすることができ、外国人の人権や権利を守りながら、異なる文化の接触で今までなかった製品が生まれるような形で外国人労働者を受け入れるのが望ましい。

 

(図の説明:1番左のグラフのように、日本は世界の中で失業率の低い国である。また、左から2番目のグラフのように、国内の失業率には変化があるが、正規雇用に適用される改正男女雇用機会均等法《1999年4月1日施行》、介護保険法《2000年4月1日施行》が導入された後、2000年代前半に失業率が5%代に上がり、非正規雇用《=非常勤》が増えた。さらに、左から3番目のグラフのように、女性の労働力率は次第に上がり、M字カーブは薄くなったが、今でも女性は非正規が多い。また、1番右の図のように、現在、日本は外国人の単純労働者を受け入れていない)

*6-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180127&ng=DGKKZO26189740W8A120C1EN2000 (日経新聞 2018.1.27) 人口オーナス第2幕に備えよ
 少子化・人口減少が進むと、経済・社会を支える生産年齢人口(15~64歳)が絶対数でも、人口に占める比率としても減少・低下する。いわゆる「人口オーナス(重荷)」現象である。この人口オーナスの中にあって、持続的な成長を維持するためには「生産年齢人口1人当たりの生産性(生産年齢人口生産性)」を高めるしかない。生産年齢人口が5%減っても、生産年齢人口生産性が5%上昇すれば、人口オーナスの負の影響を帳消しにできる。実際はどうだったか。2012年度と、政府見通し数値を用い17年度を比較してみよう。この間、生産年齢人口は5.3%も減少したが、実質GDPは7%増大した。生産年齢人口生産性が13%も上昇したからだ。すると、日本経済は人口オーナスを生産性の上昇で克服してきたことになる。しかし話はそう簡単ではない。この生産年齢人口生産性を引き上げるには2つの道がある。一つは、生産年齢人口との対比でみた労働力人口の比率(労働力率)を引き上げることであり、もう一つは、「労働力人口1人当たりの生産性(労働力生産性)」の引き上げである。前者は働いていなかった女性、高齢者が働くようになることであり、いわば動員型の道である。後者は、働く人がより効率的に働くようになることであり、教育・訓練による労働の質向上、技術革新の導入、生産性の高い分野への労働移動などによってもたらされる効率性向上型の道である。再び12~17年度を振り返ると、女性や高齢者の参入増で労働力率は8.4%上昇した一方、労働力人口生産性は4.1%の上昇にとどまった。つまり、近年、人口オーナスの悪影響を克服できたのは、主に動員型によるものだったわけだ。人口オーナス第1幕は動員型による生産年齢人口生産性の上昇で乗り切ってきた。だが、女性や高齢者の参入は近く限界に達するだろう。女性労働力のM字カーブは解消傾向だし、もともと高水準だった高齢者の就業率をさらに引き上げることは次第に難しくなる。動員型が限界に達した後の人口オーナス第2幕においては、効率性向上型による労働力生産性の上昇が必須となる。今からそれが実現できるような働き方改革を進めていくべきである。

*6-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180130&ng=DGKKZO26271910Z20C18A1MM8000 (日経新聞 2018.1.30) 共生への鍵(1)いずれ誰も来ない国に、競争力 見つめ直そう
 人口減で日本の働き手が減る構図が続く限り、年々増える外国人労働者は存在感を高める。国際的な人材獲得競争を見据えてどのように受け入れていくべきか。共生の輪を紡ぐ方策を探る。中国・上海市内には多くのフィリピン人女性が家政婦として働く。マリア・トマスさん(仮名、38)は「子供たちと離れるのはつらいが、家族を支えなくてはいけない」。月収は約8千元(約14万円)。日本で働いた経験があるが「日本よりも2割多い。中国の方が条件がずっと良い」。中国の平均年収(2015年)は6万2千元と20年前の12倍。就労を認めない中国に旅行ビザで入国する不法滞在の状態だ。地元メディアによると中国本土のフィリピン人家政婦は約20万人。あっせん業の男性は「ビザなど規制が緩和されれば殺到するだろう」と話す。中国93%増、韓国444%増――。国連統計によると00年から15年間で外国出身者の人口は日本で21%増だが近隣国も軒並み増えた。経済成長によりアジアで働く労働者の賃金もうなぎ登りだ。日本貿易振興機構の16~17年の調査を10年前と単純比較すると、一般工職の月給はインドネシア・ジャカルタが2倍近く増え、ベトナム・ハノイも3割上昇。日本の半分に満たない都市も多いが、格差は徐々に縮まる。いわゆる単純労働でも受け入れに制約ばかりが目立てば、いずれ選ばれない国になりかねない。日本に技能実習生を最も多く送り出すベトナム。ルオン・バン・ベトさん(27)は実習生として日本に行くのをやめ、台湾を出稼ぎ先に選んだ。技能取得が名目の実習制度では滞在が原則3年間で、台湾の方が長く滞在できると考えた。実習生を日本に派遣する機関の代表、レ・チューン・ソンさん(32)は「今後5年は日本に行きたがる若者が伸びるだろうが、その先はどうなるか」。こんな思いを日本側に伝えている。日本は15年から25年までの10年間で15~64歳の男性人口が270万人減る。これを補う高齢者や女性の就労も限界が近い。25年には団塊の世代が全て75歳以上になる。各年齢層の労働参加率の上昇ペースが2倍に速まり、女性の参加率が男性並みになっても、就業者数は25年をピークに減少に転じるとの試算もある。外国人材に三顧の礼で来てもらわなければいけない時代が現実味を帯びる。待っていても経済力が引き寄せるというのはもはや幻想だ。官民ともに外国人の立場になって魅力を売り込む知恵を練り上げる必要がある。起業をめざす人材にビザを認める特区となった福岡市では、手厚い支援体制で20人超が会社を起こした。「起業の準備期間が半年というのは短い。1年にしてくれれば」。フランス人のトマ・ポプランさん(29)の注文にも国が対応を検討中だ。受け入れ分野を一気に広げるのが難しくても、こうした取り組みは日本の競争力を引き上げる。意欲と質の高い外国人材を得るために、残された時間は少ない。

*6-3:https://www.agrinews.co.jp/p43091.html (日本農業新聞論説 2018年1月24日) 農業労働力不足 施策総動員で対応急げ
 空前の人手不足が、農業生産基盤の弱体化に拍車を掛けている。この先、日本の食と農を誰が支え、担うのか。主役は若い就農者。新技術活用や広域での農作業受委託も欠かせない。外国人材の位置付けも課題だ。施策、人、IT、先進ノウハウを総動員して、労働力不足に対応しなければ農業に未来はない。政府は「農業の成長産業化」を目指すが、担い手や労働力不足という構造問題抜きには語れない。今国会の柱「働き方改革」論戦の重要テーマだ。わが国の基幹的農業従事者数は160万人弱(2016年)。10年で3割約65万5000人減った。しかも65歳以上が65%を占め減少は加速していく。半面、明るい兆しも。新規就農者は2年連続で6万人(16年)を超え、49歳以下は3年連続で2万人超えとなった。法人経営体の増加を受け、雇用就農者の伸びが堅調だ。だが減少には全く追い付いておらず、絶対数の不足は深刻さを増す。それを端的に表すのが有効求人倍率(16年)。米麦や園芸で1・63、畜産で2・34。全産業平均の1・25を上回り、求人しても人が集まらない状況だ。特に法人経営の従業員や実習生、個人経営では農繁期のパート、農作業受託組織はオペレーターなどの人材が不足している。経営形態が個人経営から法人経営へと移行していく中で、雇用問題は経営問題に直結する。地域農業にとっても生産基盤を維持できるかの瀬戸際にある。日本農業法人協会、JA全中など全国連と全国農業会議所で組織する農業労働力支援協議会が昨年末、農業人材・労働力不足への対策を提言にまとめたのは、こうした危機感が背景にある。提言は「労働力不足解消に向けた対策の拡充」と、外国人技能実習制度の改善など「外国人の活用」に大別される。対策では就農環境の整備、広域での農作業受委託の仕組み作り、省力化技術の開発などを挙げ、行政や各団体の役割、関係機関との連携を明記。新規就農者増加の流れを着実なものにし、将来が見通せる経営の安定化を図ることが、問題解決の本筋である。併せて、ロボット農業技術や情報通信技術(ICT)などスマート農業による労力軽減、省力化を急ぐべきだ。外国人技能実習生については、昨年末施行の技能実習法で監理団体の許可制や実習生の保護強化など適正な運用を求めており、提言でも新制度の定着をうたう。併せて、複数の経営体や通年実習など運用面の改善を要望するが、技術移転の本旨に沿った運用に徹するべきだ。国家戦略特区を活用した外国人材の受け入れ拡大も提言したが、体制や法制度整備などを課題に挙げる。コスト優先の単純労働拡大に安易に走ることなく、外国人の権利保護、人権尊重など社会的・文化的側面も含め、この課題に向き合うべきだ。労働力問題は社会と農業の持続可能性を問い掛けている。


<惨めで悲しすぎる最期>
PS(2018.2.4追加):*7-1、*7-2の札幌共同住宅で入居者の男女11人が亡くなった火災では、建物の1階中央部に灯油ポリタンクが置いてあり、各部屋に灯油ファンヒーターが設置されていたそうだが、これなら高齢者の多い居住者のうち誰が失火してもおかしくないため、周辺住民を含む全員にとって危険な造りだったと言わざるを得ない。また、これは旅館だった建物を借りて生活保護受給者らを受け入れ、住居や就職先が見つかるまで一時的に居住させていたもので月3万6千円だったとのことだが、生活困窮者は家賃の安い公営住宅に入れて必要な人には介護や生活支援を行ったり、老人ホームに収容したりするくらいのことはすべきだ。

*7-1:https://www.hokkaido-np.co.jp/article/161078 (北海道新聞 2018.2.2) 札幌の共同住宅火災、火元は1階か 付近に灯油ポリタンク
 1月31日午後11時40分ごろ、札幌市東区北17東1、生活困窮者の支援を目的とした木造2階建て共同住宅「そしあるハイム」(16人入居)から出火し、入居者とみられる男女計11人が死亡した火災で、階段のある1階中央部分の燃え方が激しく、階段付近には暖房用の灯油入りポリタンクが置かれていたことが2日、関係者への取材で分かった。札幌市消防局などは何らかの火が灯油に引火し、短時間のうちに住宅全体に燃え広がったとみて出火原因を慎重に調べている。共同住宅は路上生活者らを支援する札幌の合同会社「なんもさサポート」(藤本典良代表)が運営。生活困窮者が新たな住居や就職先を見つけるまで一時的に受け入れていた。同社などによると、共同住宅は元旅館で築約50年が経過していたという。消防は老朽化に加え、厳冬下の空気の乾燥なども重なり、火の勢いが増したとみている。道警は1日午後から現場検証を開始。消防によると、燃え方が激しい1階中央部分の付近には調理場があるが、当時、火を使っていなかった。藤本代表によると、各部屋には灯油ファンヒーターが設置されていた。同社関係者によると、1階中央部分の階段付近には普段、ヒーターへの給油用の灯油入りポリタンクが置かれていたという。1階東側の物置でも複数の灯油入りタンクが保管され、火災現場からは焼けたポリタンクが数個見つかったという。
■安否確認ができていない方々
 道警は1日、札幌市東区の「そしあるハイム」の火災で、安否の確認ができていない40~80代の住人11人を発表した。名前と年齢は次の通り。
▽竹内正道さん(85)▽森ハナエさん(82)▽渡辺静子さん(81)▽大友靖男さん(78)▽沢田昌子さん(76)▽今井栄友(えいとも)さん(72)▽渋谷新一さん(72)▽川勝正幸さん(67)▽湯浅隆之さん(66)▽白府幸光(しらふゆきみつ)さん(61)▽西山被佐雄(ひさお)さん(48)

*7-2:http://www.saga-s.co.jp/articles/-/177275 (佐賀新聞 2018.2.4) 札幌共同住宅火災、より踏み込んだ支援を
 生活保護受給者らの自立支援を目的とする札幌市の共同住宅が全焼し、11人が死亡した。築50年ほどの老朽化した木造の建物はあっという間に炎にのまれた。16人いた入居者の大半は高齢で身寄りもなく、中には介護を必要とする人もいた。1人1部屋で各部屋には火災報知機があったが、スプリンクラーは設置されていなかったという。厚生労働省によると、生活困窮者向けの「無料・低額宿泊所」は、全国で530カ所以上が自治体に届け出て、約1万5千人が利用している。一方、無届けの施設も1200カ所余りが確認されており、約1万6500人が身を寄せている。火災が起きた札幌の住宅は無届けの一つだった。近年、こうした施設で火災が相次ぎ、犠牲者が後を絶たない。支援団体などが築40~50年の木造の建物を改装し、安い家賃で困窮者らを受け入れることが多いが、防火対策を充実させるのが難しいという。資金的余裕がなく、夜間に人を配置するといった対策を取れば家賃に跳ね返り、住まいを必要とする人たちが住みにくくなるからだ。厚労省は宿泊所について、防火態勢や個室面積の最低基準を定めるなど規制を強化する方針を固めている。無届け施設の実態把握も急がなければならない。さらに多くの施設に対して資金的にも人的にも、より踏み込んだ支援を行う必要がある。火災で11人が亡くなったのは札幌市東区の「そしあるハイム」。市内にある合同会社が以前は旅館だった建物を借りて運営。住居や就職先が見つかるまで一時的に生活保護受給者らを受け入れ、16人が保護費などから月3万6千円を支払っていた。各部屋に石油ファンヒーターがあった。昼間は職員が常駐しているが、火災が発生した深夜の時間帯は不在だった。ハイムでは入居者に食事を提供していたことなどから、市は無届けの有料老人ホームに当たる可能性があるとみて調査する。法律で定められる防火対策は建物の用途や規模により異なるが、有料老人ホームであれば誘導灯などの設置を求められ、自力避難の難しい入所者が一定割合を超える場合はスプリンクラーの設置も義務付けられる。市はこれまで4回にわたりハイムに調査票を送付した。だが回答はなく、実態を把握できなかったという。運営会社が防火対策の費用がかさむのを懸念し、応じなかったとの見方も出ている。秋田県横手市では昨年8月、精神障害者を多く受け入れていた木造アパートが全焼し、5人が死亡。2015年5月には、宿泊者の大半が生活保護受給者だった川崎市の簡易宿泊所の火災で11人が亡くなるなど、惨事が相次いでいる。建物が古く、狭い居室が密集する構造であるため、火災に見舞われると、被害が拡大しやすいとされる。ただ困窮者向け施設を必要とする人はこれからも増えるだろう。厚労省が16年に実施した調査では、住まいのない困窮者は首都圏を中心に03年の2万5千人余りから約6200人にまで減少したが、高齢化と長期化という傾向が見て取れる。そうした人たちの住まいの安全をどう確保していくか。規制強化の一方で、施設への財政支援はもとより、施設の職員がいなくなる夜間に地域の協力を得て人員を派遣するような仕組みを整えることも求められよう。

<防衛の無駄遣い>
PS(2018年2月7日追加):*8-1のように、佐賀県神埼市の住宅に陸自攻撃ヘリが墜落し、原子力燃料も飛散そうだが、政府は「佐賀空港の西側に陸自オスプレイ17機・ヘリ50機を移駐する計画を基本的に変えない」としているそうだ。しかし、この計画は、①田畑をつぶし ②海苔養殖が盛んな有明海を汚す危険性がある上、 ③佐賀空港に配備する機体は、長崎県佐世保市の陸自相浦駐屯地に新設する離島防衛部隊「水陸機動団」と連携運用を予定しているそうで、無駄遣いにも程がある。特に、③については、尖閣諸島を中心とする離島防衛部隊を長崎県と佐賀県という離れた場所で運用し、離島防衛に海自・空自ではなく陸自の水陸機動団とこのようなヘリを使って“攻撃する”という設定自体が合理的でない。また、戦争の道具に原子力を使用すれば墜落・撃沈時に周囲を汚染するため(まさか、想定外ではあるまい)、離島防衛の旗を掲げても必要最小限の費用で環境を汚さない有効な方法を考えるべきである。しかし、NHKは、このような議論も行われている予算委員会を放送せず、よくあることなのでとっくの昔に解決していなければならない*8-2のような積雪被害と角界のゴシップ(??)ばかりをしつこく報道し、重要な論点を国民の目から隠しているのが問題だ。そして、以上のような政策をとりながら、国民の生命・財産を護ることを大切にしているとは、とても言えないのである。

*8-1:http://qbiz.jp/article/127598/1/ (西日本新聞 2018年2月7日) 墜落「最悪のタイミング」 防衛省、オスプレイへの影響懸念
 佐賀県神埼市の住宅に陸上自衛隊AH64D攻撃ヘリコプターが墜落した事故で、小野寺五典防衛相は6日、佐賀空港への陸自オスプレイ配備計画への影響について「予断することは差し控える」と述べるにとどめた。政府筋は「計画は基本的に変えない」とするが、影響が出るのは必至とみられる。防衛省内には「最悪のタイミングだ」と嘆く声が広がっている。計画では、佐賀空港の西側に2019年度以降、陸自オスプレイ17機や今回墜落した機体が所属する陸自目達原(めたばる)駐屯地(佐賀県吉野ケ里町)のヘリ50機が移駐する。佐賀県の山口祥義知事は昨年7月に計画受け入れに前向きな姿勢を示したが、米軍オスプレイの相次ぐ事故で判断を保留している。防衛省幹部は「米軍ヘリの不時着問題があった沖縄県名護市長選を乗り越えたので、佐賀県の陸自オスプレイ配備も進められると思っていたが、最悪のタイミングだ」。その上で「地元は反発ムードが高まるだろう」と声を落とした。佐賀空港配備の機体は、3月に陸自相浦駐屯地(長崎県佐世保市)に新設する離島防衛部隊「水陸機動団」と連携運用を予定しており、計画見直しは考えていない。「ただでさえ理解が進んでいないのに、丁寧に説明していくしかない」(政府高官)と、引き続き理解を求めていく方針だ。
   ◇   ◇
●目達原の全ヘリが飛行見合わせ
 陸上自衛隊は6日、墜落、炎上したAH64D攻撃ヘリコプターが所属する目達原駐屯地の約50機の全ヘリについて、5日夕の事故後、飛行を見合わせていることを明らかにした。事故を受けて、自衛隊が運用する全てのヘリを整備点検しているためという。佐賀県で唯一の陸自駐屯地で、陸自西部方面航空隊や第4師団第4飛行隊が所属している。
   ◇   ◇
●佐賀県知事が現場視察 「けがの女児支える」
 佐賀県の山口祥義知事は6日午前、陸上自衛隊ヘリコプターが墜落した同県神埼市千代田町の事故現場を視察した。同市の松本茂幸市長も同行した。山口知事は「ここは住宅地で小学校や幼稚園もあり、憂慮すべき状況」と述べた。墜落した民家の家族と面会後、けがをした女児について「かなりショックを受けていると聞いた。全力で支えていくと話した」と記者団に明かした。これに先立ち、6日未明、現地派遣された大野敬太郎防衛政務官は県庁で副島良彦副知事と会談し「心からおわび申し上げる。原因究明、再発防止に全力を挙げたい」と陳謝。副島副知事は「県民の不安が高まっている」と述べ、原因調査に万全を期すよう求めた。

*8-2:https://digital.asahi.com/articles/ASL272JM7L27PTIL004.html?iref=comtop_8_01 (朝日新聞 2018年2月7日) 真っ白な世界、立ち往生する大型車 記者が見た雪の福井
 目の前は、空と地上との境界がわからないほど真っ白な世界が一面に広がっていた。7日午前7時ごろ、通行止めの国道8号を迂回(うかい)し、福井県あわら市の県道周辺の光景を見た。点在する住宅は、1階の半分くらいまで雪に埋もれていた。他は雪のじゅうたんがぎっしり。田畑か道路か、駐車場か。大阪出身で土地勘のない私には見当もつかない。福井市内に向かう主要な県道はある程度除雪され、車道と歩道の間に積み上げられた雪が巨大な壁となり、歩行者の姿が見えない。車はゆっくり進んだが、路上の雪の塊に乗り上げると、車体は身体が浮き上がるほど上下左右に大きく揺れた。道路脇には、大型トラックがあちこちで立ち往生。屋外駐車場の車は雪にすっぽり包まれ、巨大な蚕の繭が並んでいるようだ。車の窓越しにみると、除雪作業の住民たちの姿がある一方、完全に玄関が開かないほど雪に埋もれている民家もある。高齢者が除雪できる積雪量ではない。自然の脅威をまざまざと見せつけられる光景だった。福井市のえちぜん鉄道職員の鈴木和緒(かずお)さん(66)は7日午前8時半から、自宅前の除雪作業をしていた。高齢の母と妻と3人暮らし。「子ども3人は県外にいるから除雪作業は1人でやるしかない。(最大196センチの積雪を記録した1981年の)『56豪雪』も経験したが、それ以来の雪の量だ」と驚いていた。「福井の国道で1千台の車が立ち往生している」との一報で、私は6日午後2時、大阪市内を四輪駆動車で出発した。同日夕には福井県鯖江市の北陸自動車道の鯖江インターチェンジを降り、国道や県道を通って福井市内を北上し、あわら市にたどり着いた。福井市内は車が流れず、約20キロの道のりを進むのに3時間半。北陸道を降りた直後の国道8号では、30分ほど車が前に進まず、「立ち往生してしまったのではないか」とひやひやした。福井市内のコンビニエンスストアにも立ち寄ったが、パンやおにぎりといった食料品はほぼ完売。ガソリンスタンドではタンクローリーが来ないため、1台につき給油は20リットルまでという制限を設けていた。

<服育について>
PS(2018年2月10日追加):*9の銀座の中央区立泰明小で、8万円超のアルマーニ監修の服を標準服に決めたそうだが、小学生はすぐ大きくなるため、何回も買い変えなければならず、保護者には負担ではないだろうか。私は服育もある程度は大切だと思うが、下の1番左のアルマーニの標準服は、真ん中の学習院や右端の星野学園の制服と比較して特にデザインが優れているようには見えない。それより銀座の小学校なら、卒業生や保護者にもデザイナーがいる筈なので、かわいい夏服・冬服のデザインをいくつか出してもらい、その中から一番良いものを選んで、銀座ユニクロを通して日本の季節や子どもに適した生地で安く縫製してもらう方が賢いと考える。いくつかの区立小学校で同時に採用すれば、さらに安くなるし・・。

       
  2018.2.10佐賀新聞  学習院小学校 お茶大附属小学校     星野学園 

*9:http://www.saga-s.co.jp/articles/-/180125 (佐賀新聞 2018年2月10日) アルマーニ制服校長「変えない」、銀座の区立小
 高級ブランド「アルマーニ」が手掛けた制服を標準服として今春から採用することにした東京・銀座の中央区立泰明小学校の和田利次校長は9日、区役所で記者会見を開き「これまでより高額になるが、ご理解いただき購入してほしい。(採用を)変える考えはない」と述べた。一方で「各家庭に相談して進めてくれば良かったと反省点を持っている」とも話した。和田校長は採用した理由について「銀座の町の学校として発展していくために、ブランドの力をお借りするのも一つの方法と思った」と説明。「学校として統一性ある服を着ながら、同じ学舎で子どもたちが過ごすこともいいのではないかと考えた」と強調した。アルマーニが制服のデザインを監修しており、上下の服にシャツ、帽子、バッグなどを含めると、保護者の負担は8万円を超える場合もある。和田校長は高額な価格に「本校の保護者ならそれぐらいは出せるのではないかと思った。泰明小でなければこういう話は進めない」と語った。

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