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2019.1.9~12 日本経済における人口構造の変化と労働力・需要構造の変化 (2019年1月13、14《図の説明等》、18日に追加あり)
 2019年(平成31年)の新年、おめでとうございます。

(1)人口減少が経済悪化の原因ではないこと


  日本の経済成長率推移    “高齢者”割合の急速な増加    人口構造の変化

(図の説明:左図の「経済成長率(数学的には、GDPの変化率)」は、戦後から第一次オイルショックまでは9%前後であり、オイルショックからバブル崩壊時までは4%前後だった。そして、バブル崩壊後は、リーマンショック時にマイナスになったものの、だいたい1%前後で推移している。つまり、誰もが購入したいと思う新製品がある時にはGDPが急激に増え(=変化率が高くなり)、それがなければ安定した状態が続くということだ。また、日本の人口は、中央と右図のように、“高齢者”の割合が大きくなっていくが、これは購入したいと思う需要構造が変化することを示している。そのような中、介護は需要が増えるサービスの代表で、雇用吸収力も大きいため、必要な介護サービスを削減するのは経済にマイナスだ。また、生産年齢人口に入れられない“高齢者”の定義は、寿命が延びれば高くなるのが当然で、女性の労働参加や外国人労働者の受け入れも増えるため、働く人や支える人が足りなくなるという主張は正しくないと考える)

1)世界と日本の人口推移
 2100年には、*1-1のように、世界の人口は112億人、日本の人口は8,500万人になり、平均寿命は世界82.6歳、日本93.9歳になるそうだ。しかし、これについては、日本では、機械化・高齢者の雇用・女性の雇用・外国人労働者の受入拡大などのように、既に対応を始めているので問題ないと考える。

 また、世界の人口は増え、日本の人口は減るため、2100年の平均出産数は、世界では1.97人まで減り、日本では1.79人に増えるそうで、これは数世代かけて生物的調整が働くからだ。

 さらに、60歳以上の人口は、2100年には世界全体で現在の3倍以上になるとのことだが、世界でも平均寿命が82.6歳まで延びるのに、高齢者の定義を「60歳(又は65歳)以上」のまま変えないのが、実態に合わないわけである。

2)人口構造の変化と労働力・需要の変化
 政府は、*1-2のように、「国内景気は、緩やかに回復している」としているが、私は金融緩和しなくても景気は回復したと思う。何故なら、東日本大震災等の大災害で多くの都市が壊滅的打撃を受け、リスクの小さい環境のよい街に再生するためには、莫大な公共投資が必要だからだ。そのため、このようにどうせ多額の国費を使わなければならない機会をとらえて、リスクや環境を考慮した進歩した街づくりを行い、無駄遣いの方は徹底してなくして欲しかった。

 なお、大災害からの復興で建設に従事する労働力が不足している時に、同時に東京オリンピックや万博の誘致をしたのには疑問を感じるが、外国人労働者の受入拡大が実現したため、労働力のネックは次第になくなると思われる。

 私は、個人消費が勢いに欠ける理由は、金融緩和と公共投資で景気を持たせているものの、①年金が主な収入源である65歳以上人口が29%を占めるのに、物価上昇やマクロ経済スライドなどで実質年金を減らしこと ②人口の29%を占める高齢者の社会保障も負担増・給付減にしたこと ③賃金上昇が物価上昇に追いつかず、現役世代の実質賃金も増えなかったこと ④消費税上昇分が物価に上乗せされ、明確に国民負担増となったこと などだと考える。

 つまり、可処分所得が減れば、家計が破綻しないためには支出を減らすしかないため、現在は節約することが国民の唯一の選択肢になっており、これが消費者の財布のひもが固い本当の理由なのだ。しかし、景気拡大で、若い男性だけでなく高齢者や女性の雇用も増え、労働参加率が上がったことは重要だった。

3)実質賃金の上昇には、迅速なイノベーションが必要であること


日米の実質賃金推移   膝軟骨の再生医療    介護の市場規模     燃料電池バス 

(図の説明:米国は実質賃金が順調に伸びているのに対し、日本は低迷したままである。これは、金融緩和で金をじゃぶじゃぶにして物価を上げはしたものの、「本物の革新」が速やかにできないからだ。「本物の革新」とは、求められる新技術を積極的に作って実用化し、国民生活を豊かにしていくことだが、新しい技術ができると否定やバックラッシュが多く、日本で最初に実用化するのが難しいという状況がある。また、技術や生産の元になる特許権も粗末にされており、この点で、我が国の意識は開発途上国のままなのである)

i)日本のイノベーションは、バックラッシュが多くて速度が遅い
 日経新聞と一橋大学イノベーション研究センターが、*1-3-1のように、共同で世界の主要企業の「イノベーション力」ランキングをまとめたところ、米国のIT企業が上位を独占し、日本はトヨタ自動車の11位が最高で、楽天とソニーが30位台だったそうだ。

 日本のメディアは、イノベーションの例として、既に常識となっているITやAIのクローズアップをすることが多いが、EV・自然エネルギー・自動運転・再生医療・癌の免疫療法・介護制度なども立派なイノベーションであり、それにあった道づくりや街づくりをして実用化していく必要があるにもかかわらず、EV・自然エネルギー・癌の免疫療法・介護などへの逆風を初め、バックラッシュが多くて産業を育てることができず、我が国が損失を蒙っているケースは多い。

ii)高すぎる洋上風力発電機
 大手電力が、*1-3-2のように、洋上風力発電設備を建設し始めたのはよいことで、漁業関係者の理解は、その施設が同時に漁礁(魚介類のゆりかご)や養殖施設の役割を果すように設計すればすぐに得られると思う。また、海は国有地であるため、騒音・振動・悪景観などの公害を出さなければ、地元の理解は容易に得られるだろう。

 ただ、「東電は、最大100基程度を数千億円かけて建設し、合計出力を原発1基相当の100万キロワットにすることも可能」としているが、風力発電機一基を設置するのに数十億円かかるというのは、1桁高すぎる。このように、ちょっと新しい技術を、いつまでも高価で実用化できないものにしているのも、我が国産業の悪い慣習だ。

iii) 再生医療の遅い進歩
 再生医療が商用化の段階に入り、*1-3-3のように、高齢化に伴う膝関節症などにグンゼ、オリンパス、中外製薬、ジャパン・ティッシュ・エンジニアリング等の日本企業が参入しているそうだ。膝関節症は、日本人の5人に1人が患う病気であるため需要が多いが、その他の病気も再生医療で解決できるものが次第に増えていくと思われる。そして、需要増は、他国でも数年遅れで日本と同じ経過を辿るのである。

 その再生医療は、私が衆議院議員をしていた2005~2009年の間に、厚労省・文科省・経済産業省が協力して力を入れ始めたもので、日本では医療分野での研究が盛んだったため、この分野で日本企業が世界をリードできる可能性はもっと高かった。

 しかし、このような時にネックになるのが公的医療保険でカバーする治療費の範囲であり、理論的には、副作用がなく効果の高い治療法であり、治して介護費用を少なくできるものでもあるため、積極的に多くの症例に使えるようにして治療費を抑え、公的保険でカバーできるようにすることが重要なのである。

iv) オプジーボの発明から見えた日本における特許権の軽視
 がん免疫薬は、*1-3-4のように、本庶氏らが1991年に発見した遺伝子「PD―1」の機能阻害でがんを治療できる可能性を示し、京大に特許出願を要請したが、知的財産に関心が薄かった京大は「特許維持費用を負担できない」として拒否したそうだ。

 そのため、小野薬品と特許を共同出願したが、本庶氏と小野薬品が結んだ契約では、発明の使用を小野薬品に独占的に認める専用実施権と、本庶氏が受け取る対価の料率などを決め、その対価の料率が1桁小さかったのだそうだ。

 しかし、もともと求められていた癌免疫治療薬の売り上げはうなぎ登りで、一人の研究者が思いついたアイデアに端を発した2024年売上額は年4兆円との想定もあり、仮に年4兆円の売り上げで0.5%の特許権料率なら毎年200億円の特許権収入が入ることになる。しかし、日本では、このように知識や技術に対する評価が低く、大切にされないのが問題なのである。

v) 2019年、新時代へのトップの意識
 西日本新聞が、*1-3-5のように、2019年1月9日、JR九州の青柳社長と西鉄の倉富社長に新時代へのインタビューをしている。

 JR九州の青柳社長は、「地域に応じて最適解を」として、①自動運転技術の導入 ②タクシー・バスとの融合 ③柱は鉄道と不動産 ④商業施設だけでなくオフィス・ホテル・大型コンベンション施設なども開発 ⑤志を共にする企業と連携して街づくりに貢献したい とのことである。

 西鉄の倉富社長は、①成長の柱は海外で、ASEANでのマンション・一戸建て住宅、付随する商業施設などを増やしていく ②グループ全体で結束して大型プロジェクトを進める ③福岡空港に『スマートバス停』を導入する ④次世代型開発の一つとして、スーパー、病院、医療・介護サービス付きマンションなど、シニア世代に必要な機能が近距離にまとまっている地域を造る ⑤モニターやセンサーを活用して機械化を進めるなど最適な技術導入や効率化が大事 などとしており、よいと思う。

4)社会保障の負担増・給付減が景気悪化の最大の理由である
 しかし、厚生労働省は、*1-4のように、2019年に公的年金の財政検証を実施し、当面の年金財政は健全だと確認するが、支給の長期的な先細りは避けられないとしている。しかし、私は、①高齢者が長く働いて70歳超からの年金受給開始も選べるようになったり ②女性の労働参加率が増えたり ③外国人労働者が増えたり ④パート社員へも厚生年金が適用されたり ⑤産業を効率化したり、産業の付加価値を高くしたり ⑥エネルギー料金を海外に支出するのを止めたりすれば、一律に支給開始年齢を引き上げなくてもやれるのが当然だと考える。

 そもそも、所得代替率(現役の手取り収入に対する年金額の比率)が50%ならよいというのも根拠はないが、上のような対応をしても年金や社会保障が持続可能でないと言うのなら、厚労省の管理やメディアの報道の仕方に問題があるのだ。つまり、いつまでも負担増・給付減のみを言い続け、それに反対するのをポピュリズムと呼ぶような思考停止は止めるべきである。

(2)改正入管難民法について


 2018.11.10産経新聞     2018.11.14産経新聞    2018.12.25 2018.12.8
                              西日本新聞  毎日新聞    

(図の説明:一番左の図のように、日本国内で働いている外国人労働者は、2017年に約128万人で、既に日本で欠かすことのできない人材となっている。しかし、現在は、外国人を専門的・技術的分野以外は労働者として受け入れておらず、技能実習生として受け入れているため、悪い労働条件を押し付けたり、仕事を覚えた頃に母国に返さなければならなかったりして、雇用者・被用者の双方に不便な状態なのだ。そのため、左から2番目の図のように、分野別に必要とされる人数を労働者として受け入れ、右の2つの図のように、環境整備をすることになったわけだ)


 日本とASEAN諸国の    介護人材の需給推計   外国人受入に関する政府の基本方針
  人口ピラミッド

(図の説明:左図のように、日本の人口ピラミッドはつぼ型になっているが、ASEAN諸国等にはピラミッド型の国も多いため、今なら、その気になれば外国人労働者を受け入れることが可能だ。実際に、介護分野では、中央の図のように、2025年には40万人近くの人材が不足すると言われている。しかし、「入国した外国人も都市に集中するのでは?」「日本人の雇用が奪われるのでは?」と懸念する人もいるので、右図のように、政府の基本方針が出されたわけである)

1)外国人労働者受入拡大について
 政府は、*2-1、*2-2のように、2018年12月25日、来年4月からの外国人労働者受入拡大に向けた新在留資格「特定技能」の枠組みを定めた「基本方針」と業種毎に人数などの詳細を決めた「分野別運用方針」を閣議決定したそうだ。

 介護や建設などの深刻な人手不足14業種で受け入れを決め、来年4月から5年間で最大34万5150人がこの在留資格を得ることを見込んでおり、関係閣僚会議では共生のための環境整備施策をまとめた総合的対応策も決定したとのことである。しかし、私は、この14業種だけでなく、美容師も労働力確保と技術交流を兼ねて外国人美容師の就労を認めてもらう嘆願書を出したと聞いており、これは意義のあることだと考える。
 
 なお、外国人が大都市圏に集中しないように措置を講じるとのことだが、仕事・住居・医療などの福祉・教育で安心できれば、多少の賃金格差は問題にならないと思う。

2)農業分野の外国人労働者受入拡大
 農業分野は、*2-3-1のように、受入人数の見込みは、5年間で最大3万6500人、外国人も栽培管理から集出荷、加工、販売など生産現場の全般の作業に携われるとし、受入農家は雇用労働者を一定期間以上受け入れた経験があることなどを要件とし、受入形態は、農家の直接雇用だけでなく人材派遣業者を通じた受け入れも認めている。

 TPPが発効し、*2-3-2のように、九州の農家が「組織化」で対抗するには、大規模化して必要な労働力を確保することが必要だ。そのためには、機械化とともに外国人労働者の雇用が有力なツールとなり、*2-3-3のように、大分県内に、来年にもアジア出身者らを対象として農林業の担い手を育成する国際専門校が開校して、若者の就業・定住を促進し、国際ビジネスの創造や海外販路の拡大も狙うというのは、迅速で頼もしい。

3)介護分野の外国人労働者受入拡大
 外国人は日本全国の介護現場で活躍しており、*2-4のように、2019年4月施行の外国人労働者の新たな受け入れ制度では、全職種で介護分野が最多の人数となる見込みだ。介護は、2020年には12.2兆円規模、2025年には15.2兆円規模になる実需であり、2025年には253万人の雇用が見込まれている大きな産業なのだが、何故か粗末にされている。

 また、介護現場における外国人の登用は今後も拡大し続けると見込まれ、先進国を中心に介護分野の外国人の受け入れは進んでいるそうだ。そのため、就労のハードルが高い日本を避けて他国に人材が流れる恐れもあるため、外国人が技術をしっかりと習得し、安心して生活を送れる環境を整えなければならないようだ。

 さらに、介護だけでなく家政婦も外国人を登用できれば、女性の仕事と子育ての両立が容易になったり、自宅療養がやりやすくなったりするが、男性が大半の議員では気が付かないようだ。

4)外国人労働者の受入環境整備
 2019年4月に始まる外国人労働者の受入拡大に向け、*2-5のように、受入環境の整備に重点を置いて各省庁が予算措置を行い、例えば、厚労省は①雇用状況視察 ②受入先の改善指導 ③医療機関の多言語化支援 などの予算を確保し、外務省は将来的な人材の獲得合戦を見据えて、海外での日本語教育や現地での日本語教師の育成・教材開発などを行うそうだ。

 そのほか、*2-6のように、外国人と働くには、さまざまな問題が発生し、一律の対応は通用しないそうだが、しばらくやれば問題がパターン化するため、自治体や企業も次第に対応に慣れてくるだろう。

(4)家事労働の軽視と女性差別

 
2018.12.18 ジェンダーギャップ指数順位   2018.9.3    2018.9.5 2018.8.7
西日本新聞                  西日本新聞    中日新聞 産経新聞

(図の説明:一番左の図のように、2018年版男女格差報告によると、日本は男女平等度が世界で110位と低い。また、左から2番目の図のように、2011~2017年の内訳では、政治・経済の分野で特に平等が進んでおらず、教育においても中位以下である。また、医師全体に占める女性の割合は21.1%だが、外科系は8.7%しかおらず、戦力としての女性医師への期待の薄さからか、いくつかの医科大学で入試における女性への不利な扱いがあったのは記憶に新しい)

1)日本の男女平等度
 スイスの「世界経済フォーラム」は、2018年12月18日、*3-1のように、2018年版「男女格差報告」を発表し、日本は149カ国中110位で政治・経済分野で女性の進出が進んでおらず、G20では下位グループに位置しており、中国(103位)、インド(108位)よりも低かったと報告している。G20で日本より低かったのは、韓国(115位)、トルコ(130位)、サウジアラビア(141位)の3カ国しかなく、この3カ国には悪いが、名誉ある地位とは言えない。

 日本の最初の男女雇用機会均等法は、*3-2のように、1985年に国連の「女子差別撤廃条約」という外圧を利用し、経済界の反対を押し切って制定されたが、男女の雇用機会均等を努力義務にまでしかできなかったため、ないよりはよいものの骨抜きの部分が多かった。そして、1997年の改正で、努力義務規定を禁止規定にしたものの、まだ骨抜きの部分があるわけである。

 また、保育所は、「(本来は母親が育てるべきものだが)保育に欠ける者への福祉」として整備されたため、十分にはなく、学童保育は存在しなかった。そのため、出産退職せざるを得なかった女性も多く、出生率は落下の一途を辿った。つまり、保育所や学童保育が十分に整備され仕事を継続できるのでなければ、仕事を辞めるか、出産を諦めるしかなかったのである。

 これに対し、現在では、将来の支え手である子どもを増やすことを目的として(これも失礼な話だが)、①男性の家事・育児参加 ②社会の子育て支援 ③働き方改革 などを主張する人が多い。しかし、両方が力いっぱい働いている夫婦で、①のように、男性が家事・育児に参加し、③の働き方改革で2人とも5時に終業しても、通勤時間を考えれば、②の社会の子育て支援だけでは過労になる。何故なら、家事は、それだけでも仕事になるくらいの労働量だからだ。そのため、*3-3のように、働く女性の数は、働き盛りの25~44歳で伸び悩んでいるわけだ。

 従って、私は、仕事と子育てを無理なく両立するには、保育所や学童保育だけでなく、家政婦の雇用や家事の外注をやりやすくすることが必要だと考えている。

2)管理職や専門職に女性より男性が選ばれる理由は何か
i)医大入試における女性差別の衝撃と社会“常識”
 *3-4-1、*3-4-2、*3-4-3のように、多くの医科大学で不正入試を行い、女子学生や多浪生を不利に扱っていたのは衝撃的だったが、特に、順天堂大学が女子を不利に扱った理由を、①女子は男子より精神的な成熟が早く、受験時はコミュニケーション能力も高いが、入学後はその差が解消されるため補正する必要があった ②女子寮の収容人数が少なかった と、説明したのには呆れた。

 このうちの①については、順天堂大学は医学的検証資料として学術論文を提出し、心理学者が、「そのような内容を主張しているわけではない心理学の論文を安易に引用するような姿勢に対して、強い懸念を表明する」という見解を発表したのが、あざやかだった。また、②ついては、東大は、現在では、日本人学生と留学生の男女が共に豊島国際学生宿舎に入れるようにして相互交流や国際交流の推進を図っているのであり、個室なら寮自体が男女別でなくてもよい上、寮に入ることが大学に行くために不可欠なことでもない筈だ。

 ただ、「女子の方が精神的な成熟は早いが、後で男子に抜かれる」「女子の方がコミュニケーション能力は男子よりも高いが、数学や論理学は男子の方ができる」などというのは、初等・中等教育でも教師がよく言うことであり、要するに、「成人では、男子より女子の方が仕事の能力が低いため、女子を教育するのは無駄だ」という結論にしたがっているわけだ。

 そして、これは、特定大学の医学部だけの問題ではなく、教育段階や企業の採用・研修・配置・昇進段階でよく出てくる女性差別の根拠となっている先入観(社会常識)であるため、女性蔑視をなくすには、この先入観を廃することに正面から向き合わなければならない。

ii)女子だけに保育園の質問するのは何故か?
 医学部専門予備校「メディカルラボ」は、*3-4-5のように、女子の合格率が低い大学は、面接で女子に厳しい質問をする傾向があり、ある大学では女子にだけ「患者がたくさん待っている時、自分の子どもが急病で保育園から呼び出されたらどうしますか」と質問をしていたとしている。

 共働き時代なので、男子にも同じ質問をしてみればよさそうだが、こういう質問の背景には、医大の入試が大学病院の勤務医採用に直結しているからであるとされ、他学部を卒業して企業の採用試験にのぞむときも同じであるのに、こちらはまだ問題にされていない。

 私自身は、「小児科のある病院に病児保育施設を設け、通院圏の保育園や学童保育で病気になった子どもは、まず全員そこに連れて行き、そこで診察した後、保護者が迎えに来るまで預かっておくシステムにすればよい」と考えるが、これは国会議員として地元の保育園を廻って、園長・保育士・親などから意見を聞いて出てきた解であるため、受験生には難しいと思われる。

iii)診療科による男女の医師の偏在と都市部への偏在
 *3-5のように、①女性医師は全員、子育てで現場を離れたり、勤務が制限されたりすることが少なくなく ②診療科で男女に偏在があり ③女性医師だけが都市に集中する というのが、仮に本当で改善できないのであれば、女性医師が戦力にならないと思われても仕方が無い。

 しかし、①は、保育所や学童保育が整備され、家政婦を雇いやすくすれば解決できる。また、②は、女性医師が少ない診療課では、女性医師を差別なく採用して活躍させているかについても検討しなければならない。さらに、③については、多くの症例を見ることができる場所に集中したがるのは、女性医師だけでなく男性医師もであるし、都市の方が都合がよいのは、子の教育や配偶者の仕事との調整もあるからで、これは女性医師特有の問題ではないと思われる。

 ただ、「軽症患者の夜間救急への対応の必要性」と言われても、本人が重症か軽症かを判断できる場合は少ないため、病院に行くことを国民が躊躇しなければならないようなシステムにするのは感心しない。私は、医療に関する問題の本質は、診療報酬を下げ過ぎたため十分な数の医師を確保することができず、働いている医師に過重な負担がかかっていることだと考える。

<人口と経済>
*1-1:http://qbiz.jp/article/112572/1/ (西日本新聞 2017年6月22日) 世界人口 2100年には112億人に 国連予測、日本は29位
 国連経済社会局は21日、世界人口が現在の76億人から2050年に98億人に増え、2100年には112億人に達するとの予測を発表した。24年ごろまでにインドが中国を抜き国別で1位となり、日本は現在の11位(1億2700万人)から次第に順位を下げ、2100年には8500万人で29位になるとした。経済社会局は最貧国での集中的な人口増加が貧困や飢餓の撲滅などを掲げた国連の「持続可能な開発目標(SDGs)」履行に向けた課題になると指摘している。予測によると、2100年のインドの人口は15億1700万人、中国は10億2100万人で、両国だけで世界人口の22・7%を占める。上位10カ国のうち、5カ国をアフリカ諸国が占めた。世界全体の平均寿命は2015〜20年の71・9歳から、95〜2100年には82・6歳まで延びる見通し。日本は84歳から93・9歳になる。女性1人が出産する子どもの平均数については、世界全体で同期間に2・47人から1・97人に減ると予想。一方で日本は1・48人から1・79人に増えると見込んだ。高齢化も進み、60歳以上の人口は世界全体で50年までに現在の2倍以上、2100年までに3倍以上になるとしている。

*1-2:http://qbiz.jp/article/146151/1/ (西日本新聞 2018年12月21日) 景気拡大「戦後最長」 12年12月から73ヵ月間に 12月の月例報告
 政府は20日発表した12月の月例経済報告で、国内景気は「緩やかに回復している」とし従来の判断を維持した。同じ表現は12カ月連続。茂木敏充経済再生担当相は関係閣僚会議で、2012年12月から続く景気拡大期が今月で73カ月(6年1カ月)に達し、00年代の戦後最長期(02年2月〜08年2月)と並んだ可能性が高いと表明した。12年12月の安倍政権発足以来の景気拡大は、来年1月で戦後最長も超えそうな情勢だが、賃金の伸び悩みで肝心の個人消費が勢いに欠け、実感は広がっていない。茂木氏は記者会見で「日本経済の基礎体力を引き上げることで回復の実感を強めたい」と述べ、人手不足の解消や生産性向上につながる政策実行に注力する考えを示した。月例経済報告は、個別項目では公共投資を「このところ弱含んでいる」として1年ぶりに下方修正。その他は一部の表現変更にとどめた。先行きを巡っては「緩やかな回復が続くことが期待される」とした上で、米中貿易摩擦など通商問題の動向や世界経済の不確実性、金融資本市場の変動などに留意する必要があると指摘した。月例経済報告の景気判断は現段階の政府見解。景気の拡大期間は、正式には専門家でつくる景気動向指数研究会がデータを分析し判定する。
   ◇   ◇
●「最長」に減速の影 賃金伸びず乏しい実感
 2012年12月からの景気拡大期が、来年1月で戦後最長を超えそうな情勢だ。ただ、かつての高度成長期とは違って経済成長率は低空飛行。アベノミクスによる円安・株高を追い風に企業業績や雇用は改善したが、賃金の伸び悩みで消費者の財布のひもは固く、好況の実感は乏しい。来年10月に消費税増税を控える中、海外経済は米中貿易摩擦などで減速懸念が強まっており、景気の先行きは予断を許さない。「名目GDP(国内総生産)が過去最大となり、企業収益も過去最高を記録した。雇用・所得環境も大幅に改善し、地域ごとの景況感のばらつきが小さいのも特徴だ」。茂木敏充経済再生担当相は20日の記者会見でこう胸を張った。大胆な金融政策▽機動的な財政出動▽成長戦略−の三本の矢を掲げたアベノミクス。日銀の大規模金融緩和が円安を誘い、堅調な海外経済を背景に輸出が拡大して企業収益が改善。12年12月の安倍政権発足前に1万円台だった日経平均株価は、2万円台まで回復した。しかし賃上げは十分でなく、GDPの半分以上を占める個人消費は力強さに欠ける。内閣府は今回の景気拡大について、名目総雇用者所得の伸びを根拠に「00年代の戦後最長期と比べ、雇用・所得環境が大幅に改善した」と説明した。だが、物価の影響を除く実質ベースの伸び率は年0・9%と、戦後最長期の年1・0%を下回っており「企業が賃上げに踏み込まない限り消費意欲も高まらない」(エコノミスト)との見方は強い。さらに、今回の景気拡大期の実質経済成長率は1・2%と低調。高度成長期のいざなぎ景気の11・5%に遠く及ばず、00年代の戦後最長拡大期の1・6%と比べても見劣りする。少子高齢化に伴う人口減が進む中、人手不足も成長を阻む要因となっており、日本経済の実力を引き上げるような構造改革を進めない限り、企業も賃上げや設備投資を進めにくい。日本が「頼みの綱」とする世界経済にも変調の兆しが出ている。目下の懸案は米中貿易摩擦。今月初旬の首脳会談で中国への追加関税が棚上げされたものの、中国通信機器大手の華為技術(ファーウェイ)副会長が逮捕されたことで再燃。中国経済には減速感も出ており、金融の引き締め局面に入った米国の景気も先行きは楽観できない。世界的な景況悪化で為替が円高に振れるなどすれば「日本にとって新たな不安材料になる」(大和総研の児玉卓氏)との懸念も出ている。
*景気拡大 経済活動が活発な状態を指す。経済は景気が改善する拡大期と悪化する後退期が交互に訪れると考えられているが、景気の流れがどちらに向かっているか判断するには時間がかかる。2012年12月から続く現在の景気拡大は昨年9月で「いざなぎ景気」を抜き、戦後2番目の長さになったが、内閣府が正式に認定したのは今月だった。

*1-3-1:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO39102650Y8A211C1000000/ (日経新聞 2018/12/19) イノベーション力、米IT突出 トヨタ11位・楽天33位、日経・一橋大「イノベーション力」ランキング
 日本経済新聞は一橋大学イノベーション研究センターと共同で、世界の主要企業の「イノベーション力」ランキングをまとめた。首位のフェイスブックやアマゾン・ドット・コムなど米IT(情報技術)企業が上位を独占。日本はトヨタ自動車の11位が最高で、次ぐ楽天とソニーが30位台だった。意思決定や収益力などで日本勢は見劣りする。新たなイノベーションの波が次々と押し寄せるなか、経営のスピードが足りない。意思決定の素早さなど革新を生み出す「組織力」、技術開発の力を示す「価値創出力」、イノベーションの種をうまく育てられるかを示す「潜在力」の3つを指標にした。QUICK・ファクトセットの決算データを使い、金融・不動産を除く時価総額の大きい国内168社、海外150社を対象に算出した。フェイスブック、アマゾン、アルファベット(グーグル)、アップルの米国勢が4位までを占めた。4社の頭文字を取った「GAFA」は時価総額や営業利益、研究開発投資、設備投資がいずれも5年前より急伸した。GAFAは人工知能(AI)や自動運転、次世代の超高速コンピューターである量子コンピューターなど産業や社会を大きく変えうる最先端技術に積極投資する。取締役は少数精鋭で、女性の登用にも熱心だ。「意思決定と事業展開のスピードを高めることにつながっている」と一橋大の青島矢一イノベーション研究センター長は説明する。日本企業のトップはトヨタ自動車の11位にとどまる。設備や研究開発への投資意欲が旺盛で、イノベーションの種を育てる努力への評価は高い。しかし、GAFAとの差は歴然としている。例えば、1位のフェイスブックと2位のアマゾンは、価値創出力に寄与する営業利益が5年間でそれぞれ3655%、417%増えた。潜在力に寄与する研究開発投資や設備投資を大幅に増やしている。成長が資金力を高め、それを将来への投資に充てて事業拡大につなげる好循環を生んでいる。20世紀にはなかった企業の成長戦略だ。平成が始まった1989年、日本企業は時価総額ランキングで上位を独占した。トヨタ自動車や現新日鉄住金、パナソニック、日産自動車、日立製作所、東芝などが入った。約30年たち、上位にいるのはトヨタだけだ。日本勢の低迷はバブル後の経済の低成長が原因ではない。高品質の製品を量産する「日本流」の行き詰まりがある。日本企業は中核部品の開発や作り込み、完成品の組み立てまで自前主義と完璧主義にこだわった。イノベーションが既存技術の延長線上にあった時代には大きな武器だった。だが、イノベーションの条件は一変した。GAFAに代表される新興企業はスピード重視だ。必要な技術は他社から調達して素早く事業化、不完全でも投入して市場の反応を待ち改良する。次々に新事業の開始と閉鎖を繰り返し正解を見つける。こうした手法で社会に欠かせない商品やサービスを作り上げた。日本を代表するものづくり企業も手をこまねいているわけではない。「モビリティカンパニーに変わるために、ソフトバンクとの提携は不可欠」。10月4日、東京都内で開いた記者会見で、トヨタの豊田章男社長はこう語り、ソフトバンクグループの孫正義会長兼社長と固く握手した。両社は自動運転など移動サービス事業で手を組んだ。世界では自動車・IT企業が手を組み、自動運転技術の開発にしのぎを削る。実現にはAIや半導体といった技術だけでなく、ライドシェアなどのサービスや地図データも欠かせない。トヨタは電気自動車向けの次世代電池の開発にも取り組んでいるが、次世代の自動車に必要な要素を押さえるには自前主義では時間がかかりすぎる。パナソニックは津賀一宏社長の号令下、あえて未完成品を世に出す計画だ。スピード感を重視するシリコンバレー流の改革に取り組む。完璧な製品を志向すると投入したころには、市場を席巻されている。問題が残っても先に進める手法を取り入れる。日本マイクロソフト会長などを務めた樋口泰行専務役員ら、スピード経営を体感した幹部が主導する。
*調査の概要 イノベーション力は公開されている決算データから、3つの指標についてスコアを測定した。海外企業も含めて公開されている最新の決算データを使い、日本企業は2018年3月期を基本にした。「組織力」は外部取締役や女性取締役の割合が高いほど経営陣の多様性があり、市場変化に機動的に対応できると判断。役員の数が少なくて平均年齢が低いほど組織運営が柔軟で、意思決定が速いと評価した。「価値創出力」は株式の時価総額や営業利益、売上高に占める営業利益の比率、海外売上高比率などで構成。それぞれについて5年前との変化率を加味した。「潜在力」は研究開発投資や設備投資、販売管理費とそれぞれの5年前からの伸びを踏まえて点数をつけた。一橋大学イノベーション研究センターの青島矢一センター長、和泉章教授、江藤学教授、軽部大教授、清水洋教授、延岡健太郎教授(現大阪大学教授)、大山睦准教授、中島賢太郎准教授、カン・ビョンウ専任講師の協力を得た。

*1-3-2:http://qbiz.jp/article/146749/1/ (西日本新聞 2019年1月8日) 大手電力、洋上風力に熱 低コスト・需要見据え積極投資 開発には地元の理解が鍵に
 東京電力ホールディングスや九州電力などの大手電力が、洋上風力発電への積極的な投資に動きだした。洋上は陸上と比べて安定して風が吹き、低い経費で発電が可能だ。「再生可能エネルギーに消極的」という、大手電力のイメージを変える効果にも期待をかける。漁業関係者など地元の理解を得られるかが開発の鍵を握る。東電は昨年11月、千葉県銚子沖で大規模な洋上風力を建設するため、地盤調査を始めた。風力事業推進室の井上慎介室長は「風が安定して吹き、風力発電の支柱を立てるのに適した浅い海が広がっている」と話す。洋上は陸上と違い、一つの区域に集中して風力発電機を設置することができるのも利点だ。将来的には火力発電より発電コストを低減することができるとする見方もある。東電は条件が整えば最大100基程度を数千億円かけて建設し、合計の出力を原発1基相当の100万キロワットにすることも可能だと説明する。銚子沖を含め、今後10年間で200万〜300万キロワットの洋上風力を建設する目標を掲げる。他の大手電力の投資も活発だ。九州電力は西部ガス(福岡市)などと、北九州港で出力約22万キロワット、事業費1750億円の計画を進めており、2022年の着工を予定する。東北電力と関西電力、中部電力の3社は秋田県内の能代港と秋田港の計画に参画している。企業や家庭には環境に配慮し、再生エネでつくった電気を買いたいという需要が増えるとみられる。経済産業省や東電によると、再生エネの固定価格買い取り制度によって営業運転している洋上風力は、長崎県五島市沖の1基(出力1990キロワット)と東電の千葉県銚子沖の1基(同2400キロワット)。一方、計画中の洋上風力の出力を合わせると全国で計500万キロワット程度になるという。国も法制度を整備して後押しする。昨年11月に成立した洋上風力発電普及法は、自治体や漁協が参加する協議会で調整した上で、国が「促進区域」を指定し、最大30年間にわたり発電を許可することが柱だ。大手電力幹部は「新法で漁業などの利害関係者との調整ルールが明確化され、長期にわたり海域が利用できるため、投資計画が立てやすくなる」と話している。洋上風力発電 海上に設置した巨大な風車で電気をつくる再生可能エネルギー。電気は海底ケーブルで陸地に送る。海底に固定した土台の上に風車を設置する「着床式」と海上に風車を浮かべる「浮体式」がある。着床式が世界の主流で、遠浅の海域が広い欧州が先進地域。一つのプロジェクトで総出力100万キロワット規模の大型計画も具体化している。

*1-3-3: https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190107&ng=DGKKZO39689860W9A100C1MM8000 (日経新聞 2019年1月7日) 再生医療、商用段階に、患者2500万人の膝治療で実用化
 再生医療(総合経済面きょうのことば)が商用化の段階に入る。高齢化などに伴う膝関節の病気に企業が相次いで再生医療を応用する。グンゼは軟骨の再生を促す素材を欧州で発売。オリンパスや中外製薬は培養した軟骨を使う方法の実用化を急ぐ。膝関節の病気は日本人の5人に1人が患うため、その治療は再生医療の本丸と目されている。治療法が浸透し関連産業が活性化すれば、再生医療で日本が世界をリードする可能性もある。再生医療は人体の組織や臓器を再生し機能を取り戻す技術だ。実用化で先行したのは皮膚や心臓などの治療。重いやけど患者は年5千人で、うち60件程度が再生医療技術を治療に生かしている。経済産業省は、2012年に2400億円だった世界の再生医療に関連する市場規模が、30年には20倍超の5兆2千億円に拡大するとしている。今回、各社が着目するのは膝関節の病気「変形性膝関節症」。潜在患者数は高齢者を中心に国内だけで2500万人いるとされる。これまでは手術で人工関節を導入するしか根治する方法はなく、症状の重い年8万人が手術を受けていた。患者数が多い病気に再生医療を応用することで、市場が一気に広がりそうだ。グンゼは1月、軟骨再生を促す繊維シートを欧州で発売する。手術で軟骨に傷をつけると、軟骨のもとになる細胞や栄養分がしみ出す。シートがそれらを取り込み軟骨を立体的に再生する。日本では20年にも臨床試験(治験)を始める。オリンパスは1月、患者の軟骨を培養し体内に戻す治験を国内で始める。23年3月までに承認申請する。中外製薬も、スタートアップのツーセル(広島市)と組み、国内で最終段階の治験を進めている。21年にも承認を得たい考えだ。旭化成は18年10月、京都大学などから、けがで傷ついた軟骨の治療にiPS細胞を使う権利を獲得した。欧米ではスタートアップ企業が再生した軟骨を販売しているケースもあるが、日本企業はより多様な治療法の研究を手がけている。膝軟骨以外にも再生医療の研究が進む。既存の治療手段に乏しい神経細胞の分野がその一つで、このほどニプロが開発した治療用の細胞が、脊髄損傷向け再生医療技術として国に承認された。患者数が多い心不全の治療への応用研究も活発で、慶応大学発スタートアップのハートシードなどが治験を目指している。再生医療で臓器や組織を再生できれば、治療にとどまらず、老化して機能が衰えた臓器の置き換えも可能だ。生活の質を向上させ、寿命を延ばすと期待されている。これまで再生医療が普及しなかったのは、細胞を注入する手術が難しかったり、効果が十分に確認できなかったりしたからだ。富士フイルムホールディングス傘下のジャパン・ティッシュ・エンジニアリング(J―TEC)が12年から培養軟骨を販売するが、手術が難しく18年3月期の販売額は約3億円(約150件)にとどまる。ただ、ここにきて各社は手術を大幅に簡略化している。今後は公的な保険でカバーできる範囲に治療費を抑えることなどが課題となりそうだ。

*1-3-4:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190109&ng=DGKKZO39787730Y9A100C1EA1000 (西日本新聞 2019年1月9日) オプジーボの対価「桁違い」、本庶氏と小野薬、食い違い生んだ契約
 がん免疫薬につながる基礎研究でノーベル賞を受賞した本庶佑・京都大学特別教授と「オプジーボ」を実用化した小野薬品工業。産学連携の類いまれな成功事例だが、対価を巡る仲たがいが影を落とす。背景には両者が交わした契約があった。「小野薬は研究自身に全く貢献していない」(本庶氏)。「我々の努力や貢献もあった」(相良暁社長)。2018年10月の授賞決定後、お祝いムードに水を差す両者の応酬に注目が集まった。
●水掛け論の発端
 本庶氏は「論文に小野薬の研究員の名はない。彼らの言う貢献は『金を出した』という意味だ」と主張。一方で小野薬は本庶氏の恩師の早石修京大教授(故人)の紹介で30年以上、研究員を本庶氏の元に派遣し資金提供してきた。今も毎年5000万円を寄付する。水掛け論でいがみ合うきっかけは、02年に共同出願した特許だ。本庶氏らは91年に発見した遺伝子「PD―1」の機能阻害でがんを治療できる可能性を示した。本庶氏は当初、京大に出願を要請したが、知的財産に関心が薄かった京大側は「(特許を維持する)費用を負担できない」として拒否。小野薬と共同出願した。小野薬は05年、米企業と共同開発を始めることになり、本庶氏と小野薬は1つの契約を結ぶ。これが今に至るまでこじれる原因となる。契約では発明の使用を小野薬に独占的に認める専用実施権と、本庶氏が受け取る対価の料率などを決めた。両者とも具体的な内容は明らかにしていない。本庶氏は「後から見ればとんでもない契約で相場に比べて対価の料率が1桁小さかった」と憤る。大学の研究者では交渉力は弱かった。さらに契約に含む特許の範囲で両者の食い違いも判明。本庶氏は再交渉を迫り小野薬も応じかけたという。そんなときに事態が急変する。米メルクが14年にPD―1の仕組みを応用したがん免疫薬「キイトルーダ」を発売、特許侵害が表面化したからだ。小野薬は共同開発した米ブリストル・マイヤーズスクイブとともに特許侵害を提訴。本庶氏もデータ提出や証言などで貢献し、メルクは特許を認める内容で和解した。ぎくしゃくする両者が他社の特許侵害で共闘する格好になった。本庶氏は事前に小野薬に訴訟協力の対価を求めて「新しい提案があった」という。小野薬はメルクから100億円を超える一時金と売り上げの一部を受け取った。ただ新提案の合意に至らず本庶氏は不信感を募らせる。一方で小野薬は当初の契約に基づいて対応しているとの立場だ。リスクを負って世界初の治療薬を生み出した自負もあり後出しで膨らむ要求に応じる前例は作りたくない。契約内容を含めて相良社長は取材に「今は回答したくない」と答えた。
●売上額4兆円も
 こじれる両者の関係をよそに、がん免疫薬の売り上げはうなぎ登りだ。小野薬とブリストル、メルクだけでなく、類似のがん免疫薬が相次いで発売。24年の売上額は年4兆円との試算もある。本庶氏と小野薬の特許が利用されれば、小野薬に巨額の対価が入る。本庶氏は18年12月、若手研究者を支援する「本庶佑有志基金」を京大内に立ち上げた。ノーベル賞の賞金に加えがん免疫薬の対価も充てる考え。「仮に年4兆円の売り上げで0.5%の料率なら5年で1000億円だ」(本庶氏)。小野薬側は若手研究者の支援には賛成しているが、基金へ協力する意思表明はまだない。研究者支援は国の役割で、営利企業は収入を自社の研究開発や株主還元に使うのが本来だ。株主の意向を見極める必要がある。契約した当時と比べて、大学と企業の関係は変わった。政府は大学に対する企業の投資を3倍に増やす目標を掲げ大学に「特許で稼げ」と迫る。ただ大学の交渉力は弱く、企業と対等な契約ができるかは心もとない。京大の産学連携担当者は「本庶先生は大学と企業の今後の関係を対等にするためにも、譲歩せず小野薬と交渉を続けるだろう」と語る。共存共栄のための産学連携の新しい仕組みづくりが急務だ。

*1-3-5:http://qbiz.jp/article/146817/1/ (西日本新聞 2019年1月9日) 2019 新時代へ トップインタビュー(4)
●地域に応じ最適解を JR九州 青柳俊彦社長
−人口減少が進む中、鉄道事業の収益改善が課題となる。
 「鉄道は設備の保守点検が宿命で、維持費用を下げつつ安全性、信頼度を高めることが大事。一方で自動運転技術も無視できない。踏切がない場所であれば導入も難しくない。外部で開発、導入されている技術を引き続き勉強していく」「タクシーや乗り合いバスなどとの融合も検討する。地域や利用者にとって一番いい方法を探る。(一部不通が続く)日田彦山線は鉄道での復旧を目指し、自治体との協議を進める」
−2019年度から新しい中期経営計画がスタートする。
 「今までの成長をさらに高め、伸ばす計画を策定中だ。10年後のJR九州の姿を描く。新たな時代に合わせて情勢は変わるだろうが、われわれの柱はやはり鉄道と不動産だ」
−熊本や宮崎、長崎など九州各地で駅ビル開発が続く。
 「長年『沿線人口を増やす』を合言葉に、九州全体の発展を考えてきた。商業施設だけでなく、オフィスやホテル、大型コンベンション(MICE)施設など、国内外での経験を生かした開発に積極的に取り組む」
−福岡市でも博多駅周辺や博多ふ頭ウオーターフロント地区の再開発計画がある。
 「駅ビルでの集客実績は着実に積み上げている。特に博多駅周辺は街が広がって、にぎわいが増した。(博多駅と博多港地区を結ぶ)ロープウエー構想など、人を運ぶ点にも強みがある。大型の再開発案件を取れなかった昨年の反省を踏まえ、志をともにする企業と連携して、街づくりに貢献したい」
   ◇   ◇
●海外事業成長の柱に 西日本鉄道 倉富純男社長
−昨年は福岡市都心部の大名小跡地や福ビル街区、博多区の青果市場跡地など、大きな再開発計画に次々と着手した。
 「これまで西鉄が積み上げてきた信頼の力が発揮された1年だったと思う。新しい時代も汗をかくことの重要性は変わらない。グループ全体で結束し、大型プロジェクトを進めていく」
−運営会社に参画する福岡空港が4月に完全民営化される。
 「国内線と国際線の連絡バス停留所に、電子表示で外国語にも対応する『スマートバス停』を導入するなど、できることから利便性を改善する。滑走路が2本に増える2025年に向け、商業やホテル機能の計画を前のめりで固めていく」
−今後の重点分野は。
 「成長の柱は海外だ。東南アジア諸国連合(ASEAN)地域でのマンションや一戸建て住宅のほか、付随する商業施設なども増やしていく。国内外での観光需要取り込みも重要で、ホテルも年に1、2棟は着実に開発していきたい」
−天神大牟田線の雑餉隈駅(福岡市博多区)や春日原駅(福岡県春日市)の高架化、駅前開発を進めている。
 「次世代型開発の答えの一つは三国が丘駅(同県小郡市)だ。スーパーや病院、医療・介護サービス付きマンションなど、シニア世代に必要な機能が近距離にまとまっている。その地域での暮らしを快適にすることで、沿線人口を増やしたい」
−進む人手不足への対策は。
 「モニターやセンサーを活用して保線作業の機械化を進めるなど、最適な技術導入や効率化が大事だ」

*1-4:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20181228&ng=DGKKZO39456300X21C18A2EE8000 (日経新聞 2018年12月28日) 年金改革、女性・高齢者に的 来年に財政検証、保険料増へ加入対象拡大
 厚生労働省は2019年、公的年金の財政検証を実施する。当面の年金財政は健全だと確認する見通しだが、支給の長期的な先細りは避けられない。これを受け検討する制度改正では、働く女性と高齢者が焦点だ。パート社員への厚生年金適用や、70歳超からの受給開始も選べるようにし、保険料収入を増やす。一方、支給開始年齢の一律引き上げなど抜本改革は見送られる可能性が高い。財政検証は5年に1度実施する。人口構成や経済情勢の変化に合わせ、将来の年金財政の収支見通しなどを作る。「100年安心」をうたった公的年金の定期健康診断という位置づけだ。検証の結果、5年以内に所得代替率(現役の手取り収入に対する年金額の比率)が50%を下回ると見込まれる場合、給付減額や保険料率の引き上げが避けられなくなる。14年に実施した前回の財政検証では、安定して経済成長する「標準ケース」で43年度に所得代替率が50.6%になるという結果だった。足元の景気は緩やかに回復しており、19年の検証でも5年以内に50%を下回る試算は出ない見込みだ。ただ、年金財政を長期にわたり維持できるかの不安は残る。次の制度改正では、年金支給の財源となる保険料を増やす取り組みに軸足を置く。実施することが確実な具体策の一つは、年金の受給開始年齢について、70歳を超えてからも選べるようにすることだ。今の制度は65歳が基準で、60~70歳の間であればいつから年金をもらうか選択できる。健康寿命が延びて、働く高齢者が増えているのを受けた制度見直しといえる。年金は受け取り始める年齢を遅らせるほど、月当たりの支給額が増えるという仕組みだ。70歳で受け取り開始なら、65歳より4割程度増える。制度改正で高齢者の就労がさらに増えれば、年金の保険料収入が増える。働く女性を念頭に、パート労働者の厚生年金加入も促す。今の制度は(1)従業員501人以上の企業で就労(2)労働時間が週20時間以上(3)賃金が月8.8万円以上――などを満たす人が適用対象だ。この基準を引き下げ、厚生年金に加入する短時間労働者を増やしていく方向で検討が進む見通し。ただ、長い目で公的年金財政の持続性を高めるには(1)支給開始年齢(2)保険料率(3)支給額――の見直しを一体的に実施することが不可欠との見方が少なくない。厚労省は支給開始年齢を一律に引き上げなくても、人口減少などに応じて給付を抑える「マクロ経済スライド」で、将来にわたり年金財政を維持できるとの立場だ。ただ、同スライドを過去に発動したのは1度きり。海外では支給開始年齢を60歳代後半にしている国も多く、有識者の間では一律引き上げを検討すべきだとの意見が根強い。

<改正入管難民法>
*2-1:https://digital.asahi.com/articles/ASLDS3575LDSUTIL003.html?iref=comtop_list_pol_n03 (朝日新聞 2018年12月25日) 外国人労働者、介護など14業種で受け入れへ 閣議決定
 政府は25日、来年4月からの外国人労働者の受け入れ拡大に向けて、新在留資格「特定技能」の枠組みを定めた「基本方針」と、業種ごとに人数などの詳細を決めた「分野別運用方針」を閣議決定した。介護や建設など14業種での受け入れを決め、来年4月からの5年間で最大34万5150人がこの在留資格を得ることを見込む。閣議に先立って開かれた関係閣僚会議では、外国人の受け入れや共生のための「総合的対応策」の最終案を決定。安倍晋三首相は「外国人が日本で働いてみたい、住んでみたいと思えるような制度の運用、社会の実現に全力を尽くして下さい」と指示をした。この日決定された内容で、政府が出入国管理法の国会審議で「成立後に示す」としてきた新制度の全体像を示す「3点セット」が出そろった。ただ、検討中の施策や抽象的な表現にとどまる取り組みも少なくなく、来春からの実効性は不透明だ。政府は年内に基本方針や分野別運用方針の内容などが反映された政省令についてパブリックコメントの募集を始め、来年3月に公示する方針だ。相当程度の技能が必要な「特定技能1号」の資格を得るには、技能試験と日本語試験に合格しなければならない。基本方針には、全ての業種に共通する内容として、外国人労働者が大都市に集中するのを防ぐ▽悪質なブローカーを介在させない▽外国人の給与は日本人と同等額以上にする――などが盛り込まれた。分野別運用方針には、14業種ごとの、来年4月からの5年間の最大受け入れ見込み人数が明記された。最多は介護の6万人、最少は航空の2200人。技能試験と日本語試験を来年4月から実施するのは介護と宿泊、外食の3業種で、他の11業種は来年度中に実施予定。当面は、試験を受けずに在留資格を変更できる技能実習生が担い手の中心となりそうだ。熟練した技能が必要な「特定技能2号」を活用するのは建設と造船・舶用工業の2業種。技能試験に合格するだけでなく、一定期間の実務経験も必要だ。新設される技能試験は2業種とも、21年度に実施される予定という。

*2-2:http://qbiz.jp/article/146287/1/ (西日本新聞 2018年12月25日) 改正入管法 政府方針を決定 5年間で最大34万5150人受け入れ
 政府は25日、改正入管難民法に基づく外国人労働者受け入れ拡大の新制度について、基本方針などを閣議決定し、全容を固めた。深刻な人手不足を理由に、高度専門職に限っていた従来施策を変更。特定技能1号、2号の在留資格を新設して単純労働分野にも広げ、来年4月から5年間で最大34万5150人を受け入れる。外国人が大都市圏に集中しないよう措置を講じるとしたが、地方との賃金格差などを埋める施策を打ち出せるかどうかが課題だ。閣議で受け入れ見込み数などを記載する分野別運用方針、関係閣僚会議で受け入れの環境整備施策をまとめた総合的対応策も決定した。基本方針では、受け入れの必要性を具体的に示すよう関係省庁に要請。対象は14業種で、見込み数は大きな経済情勢の変化がない限り上限として運用する一方、必要に応じて見直し、受け入れ停止を検討することも記した。

*2-3-1:https://www.agrinews.co.jp/p46156.html (西日本新聞 2018年12月18日) 外国人就労で政府案 農作業全般 可能に 雇用側「経験」が要件
 改正出入国管理法(入管法)に基づく外国人労働者の新たな受け入れ制度で、農業分野の制度詳細を盛り込む運用方針、運用要領の政府案が17日、判明した。外国人は栽培管理から集出荷、加工、販売など、生産現場の全般の作業に携われるとした。農家など受け入れ側の要件としては、雇用労働者を一定期間以上受け入れた経験があることなどを盛り込んだ。農業の運用方針などの案は、農水省を中心に関係省庁で策定。19日の自民党農林合同会議で審議した上で、政府は年内に正式決定する。受け入れ人数の見込みは、5年間で最大3万6500人とした。農相は、実際の受け入れがこの人数を超えそうな場合は法相に受け入れ停止を求める。事実上の受け入れ上限の位置付けだ。外国人の業務としては、作物の栽培管理や家畜の飼養管理をはじめ、JAなどの施設での作業を念頭に集出荷、選別作業を位置付ける。運用方針を受けて、さらに細かな内容を盛り込む運用要領の案には、農畜産物の製造・加工、販売、冬場の除雪など外国人と同じ職場で働く日本人が通常従事している作業も、付随的に担えることも定める。外国人の受け入れ形態は、農家など受け入れ側の直接雇用か、人材派遣業者を通じた受け入れとする。直接雇用の場合は一定期間以上、労働者を雇用した経験があることが条件。派遣業者を通じた受け入れの場合、一定期間以上の労働者の雇用経験か、人材派遣に関する講習などの受講者を責任者として配置することが必要とした。新制度による就労では、3年間の技能実習の修了者以外は、一定の技能や日本語能力を問う試験への合格が求められる。技能を問う試験の実施主体は公募で決めるが、全国農業会議所が務めることを想定。日本語の能力試験では、難易度の区分で下から2番目の、基本的な日本語を理解できる「N4」以上の水準を求める。

*2-3-2:http://qbiz.jp/article/146551/1/ (西日本新聞 2018年12月30日) TPP発効 九州農家「組織化」で対抗 輸入増、競争激化に危機感
 環太平洋連携協定(TPP)が30日発効、海外産の安い農産物の輸入が一層拡大することが予想される。農家は競争激化へ危機感を強め、組織化などで対抗する動きを強めている。福岡県産ブランド「博多和牛」の品質向上を図ろうと、県肉用牛生産者の会(肥育農家70戸)と県和牛改良協議会(繁殖農家51戸)などは11月、「福岡県肉用牛振興協議会」(福岡市)を発足させた。福岡県内では、子牛を誕生させて一定期間育てる繁殖農家と、子牛を買い取って出荷まで育てる肥育農家はつながりが希薄だった。協議会は合同研修などを通じ、飼育環境や飼料に関する情報交換や連携を強化。誕生から出荷まで地域で一貫的に行う形を築き、品質向上につなげたい考えだ。農林水産省はTPP11発効に伴い、牛肉の国内生産額が約200億〜約399億円減少すると試算。協議会会長で博多和牛を生産する堀内幸浩さん(45)=福岡県朝倉市=は「海外からの牛肉は赤身で、霜降りが中心の和牛と激しく競合するとは考えていないが、国際的な競争が強まるのは必至。その中で博多和牛が生き抜くためには質向上は欠かせない」と強調する。熊本県宇城市の酪農家川田健一さん(50)は2016年、同市や熊本市の酪農家4人で株式会社「うきうき」(宇城市)を設立した。乳牛の飼料となるトウモロコシの収穫作業を地域の酪農家から請け負うのが主業務だ。飼料収穫機などの大型機械は自己資金に加え国の補助金、JAからの借り入れで確保。18年は6酪農家の計約33ヘクタールを請け負った。設立のきっかけは酪農家の高齢化や人手不足。牛舎での作業以外に、農地での作物栽培などを行うのが難しくなり、牛ふんの堆肥活用ができず処理に苦慮するという悪循環が見られるようになったためだ。農水省試算では、TPPによる牛乳・乳製品の生産額減少は約199億〜約314億円。うきうきの社長を務める川田さんは「今後は廃業する酪農家の乳牛や施設を引き受けることも考えている。組織化によるコスト削減の強みを発揮し地域の酪農を守りたい」と表情を引き締める。

*2-3-3:http://qbiz.jp/article/146690/1/ (西日本新聞 2019年1月6日) 農林業担い手育成へ国際専門校 九州定住、海外販路狙う 大分県内に来年にも アジア出身者ら対象
 政府が外国人労働者の受け入れ拡大を図る中、アジア出身の留学生らを人手不足にあえぐ農林業の担い手に育成する専門学校「アジアグローカルビジネスカレッジ」(仮称)の設立計画が大分県内で進んでいることが分かった。2020年にも開校予定。若者の就業・地元定住を促し、国際ビジネスの創造や海外販路の拡大も狙う。こうした農林業の国際専門学校は全国的に珍しい。昨年11月に発足した設立準備委員会は、九州の農林事業者、学校法人、企業、大学教授、中国の貿易業者らで構成。大分県内の空き校舎を活用し、九州の若者のほか、今後提携するアジアなど10カ国の農業高校の卒業生らに呼び掛ける。総定員は180人、半数程度は留学生を想定している。計画では「グローカル学科」に(1)スペシャリストコース(2)マネジメントコース(3)ビジネス創造コース−を設置。(1)ではコメやユズなど休閑地を活用した九州の特産農作物の栽培や無人の農林業ロボットの操作、(2)では農林業法人の経営ノウハウを学ぶ。(3)は農作物を海外に販売できる人材の育成を目指し、中国・上海やシンガポールなどのバイヤーとウェブ上で交渉する実践的な授業をする。留学生はコース選択の前に1年半〜2年、日本語学科で日本語や商用英語などを学ぶ。卒業生の進路は、農林業法人への就職のほか、耕作放棄地や高齢化した農家の田畑を活用した農林業法人の設立、地元農産品を留学生の母国向けにネット通販する貿易業の起業などを想定。韓国・大邱市の永進専門大や中国・四川省の四川農業大との提携が内定、交換留学も行いたいという。農林水産省によると、15年の九州の農業就業人口は32万7624人で、1990年の4割ほどに減少。このうち30歳未満は9747人と、90年の2割以下に落ち込んでいる。一方、厚生労働省によると、農業に従事する外国人技能実習生は2万4039人(17年10月末現在)。改正入管難民法に基づき、政府はさらに農業分野の外国人労働者の受け入れを拡大する方針。専門学校は新設される在留資格にも対応する授業を目指す。設立準備委の関係者は「卒業生の8割に、九州の農林業に定着してもらうのが目標」としている。
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●農林業のプロ育成目指す 九州農業けん引期待
 日本の農業現場が高齢化や人手不足に陥る中、政府は外国人労働力の受け入れに前のめりになっている。大分県内で2020年の開校を計画する国際専門学校「アジアグローカルビジネスカレッジ」(仮称)は、単に人手不足解消という狙いだけでなく、海外販路開拓も含め、「農業王国」九州をリードする人材の育成も目指している。農林水産省によると、九州各県の農業就業人口(2015年)は、福岡5万6950人(1990年比58・8%減)▽佐賀2万6244人(同63・7%減)▽長崎3万4440人(同57・2%減)▽熊本7万1900人(同54・5%減)▽大分3万5208人(同60・6%減)−と、大幅に減っている。後継者確保に悩む農家も多い。外国人受け入れ拡大に向け、政府が昨年12月25日に閣議決定した分野別運用方針は、農業分野では「雇用就農者数が現時点で約7万人不足」し、「基幹的農業従事者の68%が65歳以上」といった課題を明記した。4月に創設される新たな在留資格のうち「特定技能1号」では農業分野で最大3万6500人を受け入れる方針だが、在留期間は通算5年。家族帯同が認められ、在留期限を更新できる「技能2号」は「農業分野では、現時点で導入予定はない」(法務省入国管理局)という。アジアグローカルビジネスカレッジは留学生の卒業後の進路として、九州の耕作放棄地を利用した農林業法人や、農産物の海外販売を手掛ける貿易法人の起業など、より専門性の高い「農林業のプロ」を想定。在留期限を更新できる在留資格「経営・管理」などを取得してもらう。設立準備委員会の関係者は「長期間にわたり九州の農業を引っ張るような高度人材の育成につなげたい。母国に戻り、活躍するグローバルな人材も送り出したい」としている。

*2-4:https://www.agrinews.co.jp/p46244.html?page=1 (日本農業新聞 2018年12月26日) 外国人材 介護現場で活躍 欠かせぬ戦力に 資格取得にも意欲的 JA愛知厚生連足助病院
 全国の介護現場で外国人が活躍している。来年4月施行の外国人労働者の新たな受け入れ制度では、全職種の中で介護分野が最多人数となる見込みだ。経済連携協定(EPA)で3人の外国人を受け入れ、現場の戦力になっているJA愛知厚生連の足助病院(豊田市)の現場から、メリットや課題を探る。介護医療院を運営する同病院では、フィリピン出身の女性3人が勤務している。双子のヘロナ・アケミさん(24)、ユミコさん(24)姉妹は、2016年に着任した。職員から介護技術や日本語の指導を受け、介護福祉士国家試験合格を目指している。2人は、ホールで昼食を取る利用者に「おいしいですか」「ゆっくり食べてくださいね」と日本語で優しく声を掛ける。利用者の女性は「頑張っているから応援したくなる」と話す。2人は着任前の研修で日本語を勉強してきたが、利用者の方言に苦戦している。アケミさんは「『えらい』という言葉が『とても』の意味で使われるのが分からなかった」と苦笑い。分からない言葉は、職員に尋ねて地道に語彙(ごい)を増やしている。2人はフィリピンの大学で介護を勉強した。「フィリピンでは誰でもできる仕事と捉えられがちで、介護施設も少ない。プロフェッショナルとして働ける日本は魅力的だ」と口をそろえる。「利用者に家族のような温かい介護ができるようになりたい」と前を向く。介護医療院の松井孝子課長は「現場では、日本人の新人と同じようにチェックリストを使って教えている。利用者に丁寧に接し、良い印象を持たれている」と評価する。同病院が外国人を受け入れたのは、介護人材の確保が難しくなっているためだ。看護部の大山康子部長は「地元の高校生が就職する場合、市の中心部の企業に就職する傾向が強い。好景気が続く中、介護職に就く人は少ない」と話す。定年退職した職員を再雇用し人材を確保しているが、中堅、若手の層が薄い。14年、同病院に初の外国人人材としてエンピス・ラブジョイ・パルシアさん(25)が着任した。住む場所も同病院が用意し、ベッド、テレビ、自転車などは、職員が持ち寄り提供した。正月は和服を着る体験会を開き、日本文化に親しめるよう心掛けた。現場での実習に加え、過去の試験問題を解く練習を繰り返すよう指導。ラブジョイさんは18年に国家試験に合格。アケミさんとユミコさんは20年の合格を目指す。同病院では、今後も外国人人材の受け入れを続ける予定だ。大山看護部長は「意欲がある若手人材は貴重だ。3人が頑張る姿を見て、受け入れてよかったと言う職員も増えた」と話す。一方で「日本と海外では介護のやり方が異なる。日本の介護のノウハウを習得したいと考える人材でなければ、現場での活躍は難しい」と説明する。
●安心できる環境づくりを
 外国人介護人材を研究する聖徳大学心理・福祉学部社会福祉学科の赤羽克子教授の話
介護現場での外国人登用は拡大し続けるだろう。新たな受け入れ制度が始まれば、さらに加速するはずだ。一方で、来日して介護福祉士の資格を取得しても、孤独を感じて帰国した例がある。外国人同士のコミュニティーづくりの支援が必要だ。先進国を中心に介護分野の外国人の受け入れが進んでいる。就労のハードルが高い日本を避け、他国に人材が流れる恐れもある。外国人が技術をしっかり習得し、安心して生活を送れる環境を整えなければならない。
<メモ>外国人介護人材の受け入れ 
 EPAに基づく受け入れが08年度から始まり、現在はインドネシア、フィリピン、ベトナムの3カ国が対象。17年度までに3529人を受け入れた。介護福祉士候補者として介護施設で就労しながら、資格取得を目指す。他にも、介護福祉士資格を取得した留学生に対する在留資格、技能実習の制度がある。来年4月には、改正出入国管理法(入管法)に基づく新たな受け入れ制度が始まり、国は5年間で5、6万人の人材確保を見込む。

*2-5:http://qbiz.jp/article/146225/1/ (西日本新聞 2018年12月22日) 外国人就労促進へ力 関係省庁予算案 環境整備や技能評価
 来年4月に始まる外国人労働者の受け入れ拡大に向け、関係省庁の2019年度当初予算案が出そろった。相談窓口の設置など、受け入れ環境の整備に重点が置かれたほか、技能や日本語評価のための試験実施に向けた予算措置が目立つ。厚生労働省は、受け入れた外国人の雇用状況を確認するための視察や、受け入れ先の改善指導といった体制整備に8億1千万円を計上した。外国人が安心して医療機関にかかれるよう、病院の多言語化支援に17億円を確保。介護現場で働く人が円滑に利用者や他の従業員となじめるよう、日本語や介護技能を学ぶ研修費用などに11億円を充てる。諸外国でも外国人労働者の活用が進んでいる。外務省は将来的な人材の獲得合戦を見据え、海外での日本語教育事業として10億3千万円を計上。現地での日本語教師の育成や教材の開発を行う。文部科学省は、全国50程度の都道府県や政令市を対象に、日本語教育が必要な外国人を把握するための調査費や、各地域に日本語教室をつくってもらうための補助事業費として4億9700万円を見込む。熟練した技能を持つ人に限定した在留資格「特定技能2号」では家族の帯同が認められている。連れてきた子どもに対する就職相談や地域での居場所づくりに取り組む公立高校への補助事業費に1億円を充てた。国土交通省は、建設分野での受け入れ環境整備に2億2400万円を確保。現在の緊急受け入れで不適切な賃金支払いや過重労働が問題化したため、受け入れ業者の実態調査を強化する。航空業界では、今後整備士の大量退職が見込まれ、外国人の受け入れに期待が高まる。海外での整備士養成の現状を調べる費用として1800万円を計上した。日本を訪れる外国人観光客は今年初めて年間3千万人を超え、東京五輪に向けてさらなる増加が見込まれる。観光庁は、観光を担う人材確保に向けて1億4400万円を計上。宿泊業での雇用環境を整えるため、外国人向けセミナーの開催や教材開発を行う。経済産業省は、業界団体を対象に、外国人の労務管理や生活指導のノウハウを伝えるセミナー開催などのため1億円を充てた。農林水産省は、農業と漁業、飲食料品製造業、外食業の4分野で、知識や技能評価のための現地試験を実施する。試験問題作成や、会場設営を支援するために3億5千万円を確保した。法務省は、全国100カ所に多言語で応じる生活相談窓口を設置するため、自治体に20億円(うち10億円は18年度補正予算案)の交付金を配分する。出入国在留管理庁新設に当たり、18年度補正予算案には13億5200万円も盛り込んだ。

*2-6:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20181228&ng=DGKKZO39485570X21C18A2EA1000 (日経新聞 2018年12月28日) 外国人と働く(4) 一律対応は通用しない
 「滞納していた保険料を分けて払いたい」訪日外国人や忘年会の会社員でにぎわう東京・歌舞伎町の新宿区役所本庁舎。4階の医療保険年金課の窓口には、12月に入ってもこんな問い合わせをする外国人が足を運ぶ。国民健康保険(国保)の手続きを管轄する部署の課長、村山透(56)は「留学生の来日が集中する4月と10月は外国人が殺到する。12月はすいている方だ」と明かす。区内には12月1日現在、約4万3600人の外国人が暮らしている。中国や韓国、欧米、アフリカなど出身国・地域は計140弱。「日本で一番助かるのは病院にかかりやすいこと」(中国人の女子留学生、20)との声がある一方、月額数千円程度の保険料が未払いの外国人も増加傾向だ。区は4月、納付を促す催告書にベトナム語とミャンマー語、ネパール語を加えた。人数が増え、出身地が広がる外国人住民。地域で向き合う自治体の体制はどうか。JR川口駅東口の複合施設「キュポ・ラ」には埼玉県川口市の協働推進課の窓口がある。応対する職員は3人で、英語や中国語が母国語の「国際交流員」が補助する。この人員で3万3000人の外国人の相談にあたる。生活習慣や納税など、文化の違いに根ざしたトラブルは幅広い。係長の川田一(44)は「何度も説明しないと理解してもらえない場合も多い」とこぼす。多様化する外国人住民に、自治体の一律対応は通用しなくなりつつある。各地の自治体でつくる「外国人集住都市会議」は11月28日、外国人受け入れに関する意見書を東京・霞が関の法務省に提出した。名前を連ねたのは浜松市や群馬県太田市など15自治体で、ピーク時からほぼ半減した。日系ブラジル人対応で連携する目的で設立されたが、出身地が広がり、共有できるテーマやノウハウが乏しくなり、一部の自治体が離脱した。北海道紋別市の水産加工会社、光進水産は外国人技能実習生の住宅で無料Wi―Fiが使えるようにしている。暮らしやすい環境を整え、実習生をつなぎ留めるためだ。それでも、社長の斉藤則光(66)は「日本の若者と同じように、都会に出て行ってしまうのではないか」との不安は消えない。働き手として住み続けてもらうには何が必要か。自治体や企業の試行錯誤は続く。

<家事労働の軽視と女性差別>
*3-1:http://qbiz.jp/article/145946/1/ (西日本新聞 2018年12月18日) 男女平等、日本は110位 18年、賃金格差縮小でやや上昇
 ダボス会議で知られるスイスの「世界経済フォーラム」は18日、2018年版「男女格差報告」を発表した。日本は調査対象となった149カ国中110位で、賃金格差の縮小などにより前年より順位を四つ上げた。しかし政治、経済分野で依然女性の進出が進んでいないとされ、20カ国・地域(G20)では下位グループに位置、中国(103位)、インド(108位)より低かった。報告書では、日本は女性の議員や閣僚の少なさから政治分野(125位)が低評価で、経済分野(117位)も幹部社員の少なさなどから前年より順位を三つ下げた。「依然として男女平等が進んでいない国の一つだ」と指摘されている。首位は10年連続でアイスランド。2位ノルウェー、3位スウェーデンと北欧諸国が上位に並んだ。G20では12位のフランスがトップで、次いでドイツの14位。米国は51位だった。日本より低かったのは韓国(115位)、トルコ(130位)、サウジアラビア(141位)の3カ国。世界経済フォーラムは「世界全体として政治分野で男女格差が拡大するなど格差解消の動きは足踏み状態だ。このスピードでは完全解消に108年かかる」と強調した。男女格差報告は各国の女性の地位を経済、教育、政治、健康の4分野で分析、数値化している。

*3-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190110&ng=DGKKZO39807280Z00C19A1KE8000 (日経新聞 2019年1月10日) 平成の終わりに(5)女性活躍誇れる国 目指せ、多様性向上、企業・社会に益 村木厚子・元厚生労働事務次官(1955年生まれ。高知大文理卒、旧労働省へ。津田塾大客員教授)
〈ポイント〉
○第1子出産で離職する女性比率高止まり
○育児への男性の参加と社会の支援が重要
○女性活躍進むが他国に比べスピード遅い
 男女雇用機会均等法は、昭和の終わりに近い1985年に制定された。それから30年余りが経過した今日、「女性活躍」は再び政府の最重要課題の一つとなり、これに加えて「働き方改革」が大きな政策課題となっている。本稿では、これらがそれ自体、社会的に重要であるだけでなく、日本にとって最も深刻な社会課題である少子高齢化への対応や、さらには多くの企業が目指す新たな価値創造にとっても重要な役割を果たすことについて述べたい。均等法は、国連の「女子差別撤廃条約」という外圧を借りながら、経済界の強い反対を押し切って誕生した。女性が性別により差別されることなく、かつ母性を尊重されつつ充実した職業生活を営むことを基本理念に、雇用の場での機会と待遇の均等を確保することを目的とした。しかしその後、女性の多くが育児や介護などの家庭責任を負う状況では、女性の活躍どころか、就業の継続そのものが難しいことが次第に明らかになった。このため「育児休業法」(現在は育児・介護休業法)が91年に制定され、子どもが満1歳になるまでの間、育児休業を男女労働者に付与することなどが義務付けられた。これで「均等」と「(仕事と家庭の)両立」という車の両輪がそろった。その後、均等法も育児・介護休業法も順次強化され、さらには2015年に成立した女性活躍推進法で、「機会」の均等のみならず、女性活躍の「結果」が出ているかどうかを企業などが検証し、対策や目標数値を盛り込んだ計画を策定し実行するいわゆるPDCA(計画、実行、評価、改善)の実施と、その内容の公表が義務付けられた。こうした均等と両立の施策の充実により、女性の就業率や管理職比率の向上、男女間の賃金格差の解消などが、平成の全時代を通じゆっくりとではあるが進んだ。だがなかなか変わらない現実もある。育児・介護休業法により女性の育児休業取得率は、07年以降は常に80%を超えるが、男性の取得率はまだ5%台にとどまる。法律は男女労働者を対象にしていても、育児は女性の仕事という構図はほとんど変わっていない。第1子を出産した女性の出産前後の就業状況をみると、結婚して仕事を辞める女性は均等法施行後徐々に減っている。だが第1子の出産後も就業を継続する女性の割合は、10年ごろまでは20%台で推移していた。こうした中で別の大きな問題が顕在化してくる。出生率の低下だ。出生率は80年代半ばごろから低下が続き、05年に史上最低の1.26を記録した。少子高齢化の急速な進展は将来世代への過大な負担を意味する。加えて社会保障負担の増大による財政の悪化により、次世代への負担の付け回しが既に始まっている。社会の疲弊や財政破綻を避け、平成の次の時代、長寿を喜べる社会にするためには、「支え手」を増やすしかない。今の支え手である働く女性を増やすことと将来の支え手である子どもを増やすことは同時に実現できるのだろうか。答えは他の先進国の状況をみれば明らかだ。経済協力開発機構(OECD)加盟諸国のデータをみると、おおむね女性の労働力率が高い国は出生率も高く、逆に女性の労働力率が低い国は少子化に苦しんでいる。女性が活躍する社会が、同時に希望する子どもを持つことができる社会だ。これを日本で実現する鍵は何か。他国の状況や国内のニーズ調査などから政府がたどり着いた結論は、男性の育児参加と社会の子育て支援の重要性だった。具体的には、男性を含めた働き方の改革と保育の充実だ。保育が、男女が子どもを持ち、ともに働き続けるための必要条件であることは疑いがない。このため「社会保障と税の一体改革」の中で、消費税率引き上げによる増収分の一部を保育に充てることになり、ここ数年、急速に整備が進み始めた。この分野は今後も手を緩めてはならない。次は働き方改革だ。各種調査で、子どもを持つ女性が仕事を続けるための条件として挙げたのは、職場全体の勤務時間や両立を支援する雰囲気、勤務時間の柔軟性などだ。日本の残業時間は国際的にみても長く、男性の家事・育児参加の度合いは低い。就学前の子どもを持つ父親の家事・育児時間は日本は1日平均約1時間強で、欧米の半分以下だ。夫の家事・育児参加時間が長い家庭ほど妻の就業継続率が高く、2人目以降の子どもを持つ確率が高いこともわかってきた。妻だけが育児を担う「ワンオペ育児」が少子化につながることが裏付けられた。そして男性の育児参加には労働時間の短縮が必要だ。18年6月には働き方改革関連法が成立した。残業の上限規制、高度プロフェッショナル制度(脱時間給制度)の導入、同一労働同一賃金の推進などが柱だ。長時間労働の是正、多様で柔軟な働き方の導入、多様な働き方に見合う公正な処遇を受けられるルールづくりを目指すものだ。これらが実現すれば、男女がともに、さらには高齢者、障害者など多様な労働者が自分に合った多様な働き方で力を発揮することができる。働き方改革は労働者の健康だけでなく、男女が仕事で活躍し、家庭生活を充実させ、さらには多様な支え手が社会を支えることを可能にし、社会全体の持続可能性を高めるための重要な政策となった。「女性活躍」からスタートして男女の「働き方改革」へと広がってきた政策の方向性は間違っていない。問題は改革のスピードだ。図が示すように、結婚し第1子を出産した後も働き続ける女性は10年ごろから増え始めたが、それでも4割にも満たない。世界経済フォーラムが公表する男女平等の度合いを示す「ジェンダー・ギャップ指数」で、日本のランキングは149カ国中110位(18年)と極めて低い。しかも中長期でみると、ずるずると順位を下げている。関連の国際機関に、日本の女性活躍は進んでいるのになぜ順位が下がるのか問い合わせたところ、「日本は良くなっているが、ほかの国はもっと速いスピードで良くなっている」との答えが返ってきた。長時間労働の是正も同様の状況だ。スピードを上げるために政府は何をすべきか。女性活躍や働き方改革の進捗状況を点検し、政策効果を分析し、さらなる対策や目標値を明示して、これを広く国民と共有しながら取り組みを進めていく、すなわち女性活躍推進法で企業に義務付けたPDCAの実施だ。特定分野でのクオータ制(割当制)の導入も検討してよい時期だ。女性活躍も働き方改革も日本社会にとっては最重要課題だが、個々の企業にとってはどうだろうか。まだ多くの企業はこれを「コスト」と受け止めているのではないか。だが調査研究によれば、女性の役員が多い企業は比較的業績が良く、ワーク・ライフ・バランスの取り組みやフレックスタイム制を進める企業は、一定の時間はかかるが大幅に付加価値生産性が上がる。平成の次の時代の企業の最大課題は新たな価値の創造だ。女性をはじめ多様な人材が活躍できるダイバーシティー(多様性)の実現はそのための大きな原動力だ。そう認識し、本気で取り組む企業が増えれば、改革のスピードは上がり、企業の成長と社会の成長の好循環が生まれる。

*3-3:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO39490190Y8A221C1EA4000/?n_cid=NMAIL006 (日経新聞 2018/12/28) 働く女性3000万人、超えられぬ壁 働き盛り伸び悩む
 働く女性の数が3000万人の大台を目前に足踏みしている。総務省が28日発表した11月の労働力調査によると、女性の就業者数は2964万人(季節調整値)で前月に比べ7万人減った。順調に増えてきたが、5カ月ぶりに減少に転じた。高齢者や学生ら若者が女性の働き手を増やすけん引役だが、全体の底上げには25~44歳を中心とする働き盛りの世代の動向がカギとなる。11月の就業者数は男女合わせて6713万人。このうち男性は3749万人で全体の56%。30年前は6割だったが、働く女性が増えて男女比率は半々に近づいている。11月の女性の就業者数を年代別に17年末と比べると、伸び率が最も高いのが15~24歳だ。就業者数は284万人で13%増えた。全体の伸び(3%)を大きく上回る。13~17年はおおむね240万~250万人台で推移してきた。少子化で人口が減るなか、18年に急増した要因は「時給上昇と労働条件の緩和だろう」とSMBC日興証券の宮前耕也シニアエコノミストは話す。有効求人倍率は1.6倍を超え、人手不足は深刻だ。アルバイトを募集する際、時給を上げ、就業は週1回でも良いといった条件にするなど、学生にとって働きやすくなった。景気要因の大きい学生の雇用状況に対し、65歳以上の高齢女性で働く人は安定して増えそうだ。11月の就業者数は366万人で、17年末と比べると11%増だ。一方、就業率は17.9%。65歳以上の男性の就業率が33.6%で、高齢女性の伸びしろは大きい。気がかりなのは働き盛りにあたる25~44歳。就業者数は17年末に比べ1%減った。働く意欲は持っていても、子どもを預けることができず就労を諦めている女性もいる。都市部を中心に保育所に預けられない待機児童は全国で約2万人にのぼる。働き続けられる環境整備が欠かせず、政府は対策を急ぐ必要がある。

*3-4-1:https://digital.asahi.com/articles/ASLD92PS3LD9UBQU001.html?iref=pc_extlink (朝日新聞 2018年12月9日) 不適切な入試、岩手医科大・金沢医科大・福岡大でも
 岩手医科大、金沢医科大、福岡大の3私立大が8日、一斉に各大学で会見を開き、医学部入試で「文部科学省から不適切な点があると指摘された」と公表した。募集要項で明記せずに現役生や地元高校の卒業生ら、特定の受験生を優遇していたが、いずれも「問題ないと思っていた」と釈明した。文科省は同省幹部の汚職事件をきっかけに、東京医科大の医学部入試で不適切な得点操作が発覚したことを受け、全国81大学の医学部入試を調べている。10月に「複数の大学で不適切な入試が行われている」と発表し、大学の自主的な公表を求めていた。岩手医科大は、34人が受験して7人が合格した今年の編入試験で、同大歯学部の出身者3人を優遇した。地域医療に貢献する人材育成のために出願時に約束させている、付属病院や関連病院で卒業後6年以上、勤務する条件を守る可能性を重視したという。佐藤洋一・医学部長は「出身者に優位性を持たせるのは、私学の裁量の範囲内と考えていた」と話した。今年度入学の一般入試で不合格となった7、8人より、評価が明らかに低かった1人を追加合格させた点も、不適切と指摘されたという。判断の基準について問われた佐藤医学部長は、「公表を差し控えたい。特定の属性で合格させておらず、不都合な点はないと考えていた」とした。金沢医科大は今年度のAO入試で同窓生の子ども、北陸3県(石川・福井・富山)の高校の卒業生、現役生と1浪生に加点していた。同窓生の子は10点、石川の高校出身者には5点、富山、福井については3点、現役・1浪生には5点を加えていた。編入試験でも北陸3県の高校出身者や年齢に応じて得点を調整。これらの操作によって約10人が不合格になったという。さらに、一般入試の補欠合格者を決める際にも年齢を考慮していた。会見した神田享勉(つぎやす)学長は「大学の機能を保ちながら、北陸の医療を支えていくのは困難。同窓生の子どもや現役・1浪生、北陸3県出身者の方が地域に残るというデータがある」と得点調整の理由を説明した。福岡大では、高校の調査書の評価を点数化する際、現役生を有利にしていた。一般入試の評価では、1浪は現役生の半分で、2浪以上は0点だった。2浪以上は受験できない推薦入試でも、同様に差をつけていたという。「高校時代の学力・成績も評価したかったが、卒業から年数が経つと基礎学力評価の有効性が下がる」として、2010年度入試から始めたという。11月下旬に文科省から不適切との指摘を受けて再検討し、高校側の保存期間を過ぎて調査書を提出できない浪人生もいることなどから「不適切」と結論づけた。月内に第三者を含む調査委員会を設け、追加合格などを検討するという。会見はいずれも午前11時に開始された。この日になった理由を問われ、3大学とも「近く、一般入試の出願が始まるため」と同様の説明をした。会見日時が重なったことについて、福岡大の黒瀬秀樹副学長は「びっくりしている。示し合わせているわけでは全くない」と話した。

*3-4-2:https://digital.asahi.com/articles/ASLDB76NZLDBUBQU00X.html?iref=pc_ss_date?iref=pc_extlink (朝日新聞 2018年12月11日) 順大・北里大で不適切な医学部入試 女子など不利な扱い
 順天堂大と北里大は10日、医学部で女子や浪人回数の多い受験生を不利に扱う不適切な入試を行っていた、と発表した。順大は「女子はコミュニケーション能力が高いため、補正する必要がある」として、面接などを行う2次試験の評価で、男女で異なる合格ラインを用いるなどした。北里大は今年度の一般入試で繰り上げ合格者に連絡する際、男子や浪人回数の少ない受験生を優先させた。順大によると、不適切な入試の結果、2017、18年春の入試で計165人が不当に不合格となった。順大はこのうち2次試験で不合格となった48人(うち女子47人)を追加合格にする方針を示した。順大は女子を不利に扱った理由について①男子よりも精神的な成熟が早く、受験時はコミュニケーション能力も高いが、入学後はその差が解消されるため補正する必要があった②女子寮の収容人数が少なかった――と説明。ただ、この問題で設置した第三者委員会からは、いずれも「合理的な理由はない」と指摘された。新井一学長は「当時は大学の裁量の中で妥当と判断した。不適切とされたので、今後はなくす」と謝罪した。北里大は今後、第三者委を設置して対応を検討する。医学部入試をめぐって不適切な入試を認めたのはこれで8大学になる。

*3-4-3:https://digital.asahi.com/articles/ASLDC4389LDCUBQU00H.html?iref=pc_ss_date?iref=pc_extlink (朝日新聞 2018年12月11日) 「女子の方がコミュ力高い」 順大、医学部入試で不利に
 医学部入試での女子差別が再び明らかになった。順天堂大は10日に会見を開き、男女によって異なる合格ラインを設定していたと明らかにしたうえで「女子の方が精神的な成熟が男子より早く、コミュニケーション能力が高い。ある意味で、男子を救うためだった」と説明した。「受験生、保護者、関係者に多大な心配とご迷惑をおかけし、深くおわび申し上げます」。午後4時に始まった会見の冒頭、新井一学長と代田浩之医学部長は、深く頭を下げた。順大が文部科学省から「不適切」との指摘を受けて、10月に設置した第三者委員会の報告書は、女子と浪人回数の多い受験生を構造的に不利に扱っていたと指摘した。出願者の半分近くを占める「一般A方式」の1次試験では、一定順位を下回る受験生については性別、浪人回数、調査書の評価によって異なる合格基準を設定。女子や浪人回数の多い男子は、2次試験に進むことが困難だった。面接などを行う2次試験では地域枠と国際枠を除く全ての入試区分で、男女について異なる合格ラインを設定。順大は1次試験の順位をランクごとに分け、2次試験の成績(満点は5・40~5・65点)を組み合わせて合否判定する。1次試験の評価が男女で同じランクの場合、女子の2次試験の合格ラインが0・5点厳しかった。この仕組みは遅くとも2008年度から行われていたという。報告書によると、順大は男女で異なる取り扱いをした理由を第三者委に「入学後に男性の成熟が進み、男女間のコミュニケーション能力の差が縮小され、解消される」と主張。多数の教職員が「女子受験者に対する面接評価の補正を行う必要があった」と説明し、医学的な検証をした資料として学術誌の論文も提出していた。だが、第三者委は「面接では受験者個人の資質こそが性差よりも重視されるべきだ」と指摘し、「合理性はない」と退けた。順大は医学部の1年生が全員、寮で生活する。順大は「女子寮の収容力に限界があり、合格者を制限する必要があった」とも述べたが、第三者委は「新たな寮ができた後も合格判定基準が変わっていない」として合理性を認めなかった。17年度と18年度の2次試験を再判定した結果、計48人(うち女子47人)を追加合格とし、今後、28日を期限に意向を確認して希望者全員の入学を認める。その分、19年度入試の募集定員を減らす。2年間の1次試験で不合格とされた計117人には入学検定料を返す。2次試験を受けさせない理由について代田医学部長は「過去の入試と来年度の入試の難易度を合わせるのは難しい」とした。16年度以前の受験生については補償を含めて「考えていない」という。会見で新井学長は「当時は私学の裁量の範囲内だと考えていた」と話した。第三者委の指摘を受けて「現時点では不適切だった」と述べ、19年度入試からこうした扱いは全廃するとともに、調査書も評価に入れないと説明した。自身の進退を含めた処分は「不正ではないので考えていない」という。文部科学省の調査によると、順大の過去6年間の平均合格率は男子9・16%、女子5・50%。女子と比べて男子の合格率が1・67倍となり、全国81大学で最も高かった。順大が当初、文科省の調査に不正を否定していた点を問われ、新井学長は「補正という考えであり、差をつけているという認識はしていなかった」と説明した。北里大も10日、18年度の一般入試で繰り上げ合格者に連絡する際に、男子や浪人年数の短い受験生を優先させていたと公表した。記者会見はせず、ホームページに掲載した。北里大によると、入学者に占める女子の割合や、22歳以上の受験生の合格率が、ほかの私立大医学部より高いという。担当者は「合格した男子学生の辞退率が高く、抜けた部分を埋め合わせるためだった」と話した。今後、第三者委を設置して、18年度以前の入試についても調べ、不利に扱った受験生らへの対応を検討する。

*3-4-4:https://digital.asahi.com/articles/ASLDL4DZNLDLUBQU008.html (朝日新聞 2018年12月18日) 順天堂大入試「コミュ力」問題、心理学者が相次ぎ懸念
 順天堂大医学部の入試で、女子のコミュニケーション能力が高いため男子の点数を補正した、と大学側が説明した問題に関連し、「日本パーソナリティ心理学会」(理事長=渡辺芳之・帯広畜産大教授)が16日、大学側が根拠として第三者委員会に米テキサス大教授の1991年の論文を提出したことについて、「そのような内容を主張しているわけではない心理学の論文を安易に引用するような姿勢に対して、強い懸念を表明する」などとする見解を発表した。同会には、パーソナリティー研究に関わる心理学者らが参加している。見解では、「入学試験において、パーソナリティーに関係する心理学の研究知見を特定の人々に対する不利益な扱いの根拠として引用する事例が発生した。研究成果に対して多様な解釈があり得ることはもちろんだが、他の研究分野の知識を、その研究本来の文脈や目的から離れて不適切に引用することは好ましいことではない」としている。これとは別に、三浦麻子・関西学院大教授ら心理学者の有志も16日、声明を発表。「根拠」とされた論文は「児童期から成人期までのパーソナリティー発達と男女差を検討したもので、『女性の方が精神的な成熟が早く、相対的にコミュニケーション能力が男性より高い傾向がある』という知見を提出したものではない」として、根拠として用いたことを「非科学的」と批判。「性別ごとの平均値による比較を個別の人物評価に一律に当てはめるべきではない」とし、「心理学研究の素朴な引用によって差別的言動を正当化する行為全般に、心理学者として断固抗議する」としている。

*3-4-5:https://digital.asahi.com/articles/ASLCH4F21LCHUTIL019.html?iref=comtop_8_06 (朝日新聞 2018年12月15日) 医学部入試、選ぶ側に裁量 女子だけに保育園の質問も
 医学部入試に関する調査を進めてきた文部科学省は14日に最終報告を公表し、改めて公正な入試の必要性を訴えた。「入試が不適切だった」と公表した各大学も、選抜方法を改めるとしている。ただ、「何が公正か」という課題は残る。特に医学部の場合は、ほとんどの大学が面接を含む2次試験を行っており、選ぶ側の裁量が大きい。面接試験は、患者と接するコミュニケーション能力や丁寧に説明する力など、医師に求められる資質や適性をみるために大切とされる。主に医学部に進む東京大理科3類では2018年度入試から11年ぶりに復活し、19年度入試は九州大を除く全ての医学部で行われる。ただ、面接は学力試験と比べ、面接をする人の「主観」に左右されやすい。不正発覚の発端となった東京医科大の小西真人・入試委員長は、2年間で101人を不正に不合格にしていたと発表した11月7日の会見で「完全な客観性は面接には無理。大学側に、ある一定の裁量があることは確か」と語った。各大学の男女の合格率や面接内容を分析してきた医学部専門予備校「メディカルラボ」(本部・名古屋)によると、女子の合格率が低い大学は、面接で女子に厳しい質問をする傾向がある。ある大学では女子にだけ「患者がたくさん待っている時、自分の子どもが急病で保育園から呼び出されたらどうしますか」と質問をしていたという。複数の医師は、こうした質問の背景に、入試が大学病院の勤務医の「採用」につながっているという面があると指摘する。同校本部教務統括の可児良友さんは「男子や現役を多く確保したいという大学側の意識が変わらないと、現状が変わらないかもしれない」と不安だ。2次試験の問題は、面接だけではない。得点配分を公表していない私立大も多く、運用が不透明との批判がある。文科省の調査で「不適切な疑いがある」と指摘を受けた10大学のうち、ただ一つ、「問題はなかった」との立場の聖マリアンナ医科大(川崎市)の場合、1次の学力試験は400点満点。2次試験では100点ずつの小論文と面接に加え、調査書などを点数化して合格者を決めているが、この部分の配点は募集要項に記しておらず、評価基準もなかった。文科省はこの点数化の際、「女性より男性、多浪生より現役生が、顕著に高い」と指摘したが、大学側は「受験生を個々に総合評価している」と反論した。同大の広報担当者は取材に「面接官によって、男子や現役に高くつける人はいるかもしれないが、一律に加点していることはない」と答えた。14日の会見で柴山昌彦文科相は同大との見解の相違について「かなり大きな溝がある」として第三者委員会による調査を求めた。ただ、大学側は実施しない方針という。

*3-5:https://digital.asahi.com/articles/ASLCK2JPSLCKUBQU003.html?iref=pc_ss_date?iref=pc_extlink (朝日新聞 2018年11月17日) 診療科で男女偏在・都市に集中… 入試不正の背景は
 医学部入試で受験者の性別で差をつけてきた背景には、診療科による男女の偏りや都市部への偏在など、医療界が抱える問題がある。専門家は一連の入試不正を社会全体で考える契機にすべきだと指摘する。女性医師は子育てなどで現場を離れたり、勤務が制限されたりすることが少なくない。2016年の厚生労働省の調査によると、外科など長時間や不規則な勤務が強いられる診療科では女性は1割にも満たない。皮膚科(47%)や眼科(38%)などで割合が高く、特定の診療科に偏っている。女性外科医のキャリア支援を続ける日本女性外科医会役員の明石定子・昭和大学准教授(乳腺外科)は「一連の問題が明るみに出て入試改革が進んで現場で女性が増えれば、医療界も変わらざるを得なくなる」と話す。昔と比べて、時短勤務などの制度は広がりつつある。だが、明石さんは「家庭を重視して勤務負担を軽減すればいいわけではない」とも指摘する。「時短の時期が長くなれば医師としてのキャリアを短くしてしまう。育児中であってもキャリアを積める仕組みが必要だ」と話す。医師の労働条件が改善できない理由の一つに、都市に医師が集中し、へき地で深刻な医師不足になっている実態がある。辺見公雄・全国自治体病院協議会名誉会長は「最近は『すめば都』ではなく、『都がすみか』という傾向がより強まっている」という。同協議会が地域医療を支える自治体病院に今春行ったアンケートによると、医師の労働時間短縮について、48%が「実施できない」と答えた。辺見さんは「出身地とは離れた地域でも何年か診療できる若い人材が求められていることを理解して欲しい」と話す。働きやすい病院の認証事業を手がけるNPO法人イージェイネットの瀧野敏子代表理事は医療機関の合理化を進めることも重要だと指摘する。軽症患者の夜間救急への対応の必要性など検討課題は多いという。「合理化できるかもしれない労力の担い手を、事情を抱えてフル稼働できない女性医師らに求めるのではなく、『それは必要なのか』と国民も巻き込んで考えていくべきだ」と話す。

<運輸部門の生産性の低さを何とかしよう>
PS(2019年1月13日追加):日本では、道路が混んで自動車が低速でしか走行できず、運輸部門の生産性が著しく低い時代が何十年も続いているが、中国では、民主主義や一人一人の国民の豊かさに不安はあるものの、6車線道路やリニア・モーターカーができ、EVシフトを進めているという点で、必要なことを着々とやっているように見える。また、日本発のアイデアだった「電動化」「自動運転化」は、日本ではバックラッシュを受けてゆっくりとしか進まないが、世界では、*4-1-1、*4-1-2のように、短期間で市場投入の時代に入った。
 もちろん、電力を化石燃料で作っていては意味がないが、*4-2-1のように、JXTGエネルギーも洋上風力発電の開発を国内外で検討する考えを示しており、私は、再生可能エネルギーで安く電力を作り、給油所を水素充填及び充電拠点に替えて、燃料電池車やEVを相手として安くエネルギーを販売すればよいと考える。そして、安い電力や水素を得るには、このほかに、*4-2-2のような黒潮発電や地熱発電もあり、*4-3のように、経産省が、発電コストの引き下げを促すために風力発電を2021年度から全面入札制にするとのことである。
 さらに、*4-2-3のように、自立した水素エネルギー供給システムも作ることができる。
 
*4-1-1:https://www.nikkei.com/paper/related-article/tc/?b=20190113&bu=BFBD9496・・ (日経新聞 2019年1月13日) 自動運転・電動車で新戦略 フォード・都市と連動/VW・3600億円投資 北米自動車ショー
 開幕した北米国際自動車ショーで、自動車産業の潮流である「自動化」「電動化」の強化へ世界大手が新戦略や大型投資を表明した。米新車販売は2017年に8年ぶりの減少となったが、中国に次ぐ世界2位市場として3位日本の3倍以上の規模。進取の気性にも富む。依然、米市場での浮沈が経営戦略を左右する。米フォード・モーターは14日に発表会を開き、都市インフラを重視した自動運転構想を表明した。ジェームス・ハケット最高経営責任者(CEO)は「駐車場の空き状況と連動したナビゲーションなど、都市インフラとの連動」を提案した。次世代型の都市構想を打ち出すうえで初期段階から車両との連携を進め、燃費節約などにつなげる方針だ。フォードは21年に自動運転車の導入を計画しており、ハケットCEOは「まずは自動運転を使った移動・輸送受託のビジネスモデルを広げることに注力する」と中小企業なども顧客とすることを示唆した。電動化対策としては、フォードは22年までに電気自動車(EV)など電動車40モデルに最大で110億ドル(約1兆2200億円)を投資する。今後の新製品開発はトラックや多目的スポーツ車(SUV)を軸にする方針。20年には主力のピックアップトラックでハイブリッド版を投入するほか、SUV型のEVも発売する。従来の20年までの投資計画規模は45億ドルで、2.4倍だ。新技術をテコに、米国全体で自動車産業を再興しようとの機運が高まっているようだ。米運輸長官のイレーン・チャオ氏は14日、「技術革新を促すよう政策を仕分けし、米国の競争力を高めて雇用を生み出す」と積極的に新技術の利用促進を進める方針を強調した。例に挙げたのが米ゼネラル・モーターズ(GM)が申請したハンドル、ペダルなしの自動運転車の導入だ。GMのメアリー・バーラCEOは「完全自動運転への大きな一歩」と自動運転やEVへの熱意をアピールした。自動運転に関する米国の政策方針として、チャオ運輸長官はトップダウン式に特定の技術を推すことはせず「技術中立的」に官民連携を進めることを強調した。安全性試験の仕組みや安全に関わるデータベースの確立で連携していく。企業の取り組みが依然、カギを握ることになり、GMやフォードが新戦略を打ち出すのもこのためだ。フォードの発表会では創業家のビル・フォード会長が「10年前は死にかけていたがデトロイトは復活した」と宣言していた。確かに都市の中心部は再投資され、きれいな公園が整備され、ニューヨークにあるようなこじゃれたレストランが増えており、復権を印象づけていた。自動運転などを巡っては、米グーグルなどIT(情報技術)大手も交えた異業種との競争にも一歩も引かない構えを見せたといえる。米国重視はビッグスリーだけではない。独フォルクスワーゲン(VW)も3年間で、北米に33億ドル(約3660億円)以上を投資することを表明、積極的な北米展開をアピールした。ショー開催期間中に披露される各社の車種は、米国で人気の大型車が中心になる見通し。一般公開は20日からで、ここ数年は80万人規模が来場する。

*4-1-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190113&ng=DGKKZO39971690S9A110C1EA5000(日経新聞 2019年1月13日)米GM、キャデラックにEV 中国に的
 米自動車大手ゼネラル・モーターズ(GM)は11日、高級車ブランド「キャデラック」で電気自動車(EV)を発売する計画を明らかにした。中国などのEV需要の高まりを受け、高級EVを品ぞろえに加える。「シボレー」「ビュイック」の両ブランドは販売車種を絞り込み、グローバルで設計や部品を共通化して収益性を高める。米ニューヨークで開いた投資家向け説明会で、メアリー・バーラ最高経営責任者(CEO)が明らかにした。同社のEVは「シボレー・ボルト」が主力だが、EVでも最大市場の中国でのシェア拡大に向け、中国の富裕層に人気が高い「キャデラック」ブランドでEVを追加する。GMは発売時期や車種を明らかにしていないが、開発中の新型充電池を搭載し、フル充電で300マイル(約480キロメートル)以上の走行距離をめざしているとみられる。高級EVの市場では米テスラなどがライバルとなる。中国の新車市場は18年に28年ぶりに前年実績を下回ったもようだ。GMの販売も前年割れとなったが、「キャデラック」ブランドの販売は20万台超と17%増加した。バーラCEOは「足元の市況は厳しいが、長期的には中国はまだ成長が見込める」とコメント。19年は新型車とモデル改良を含めて過去最多の20車種以上を中国に投入する。昨年11月に北米で完成車とエンジンの計5工場の生産を休止すると発表した。トランプ米大統領は雇用減につながるとして同社を批判しているが、バーラCEOは「規制や通商の変化など課題は多く、経済環境が堅調なうちに手を打っておく必要がある」と改めてリストラの必要性を強調した。北米の生産再編と合わせて「シボレー」「ビュイック」ブランドの車種を絞り込む。20年前半までに中国やブラジル、メキシコなどの新興国向けに設計と部品を共通化した小型車や多目的スポーツ車など8車種を投入し、地域ごとに異なる既存の車種と置き換える。

*4-2-1:http://qbiz.jp/article/147084/1/ (西日本新聞 2019年1月12日) JXTG、洋上風力発電に意欲 石油最大手が再生可能エネ強化
 石油元売り最大手JXTGホールディングスの事業会社、JXTGエネルギーの大田勝幸社長(60)は12日までに共同通信のインタビューに応じ、洋上風力発電の開発を国内外で検討する考えを示した。「最初は単独でできないので、他社との提携を考えたい」と話した。地球温暖化問題で事業環境の激変が予想されており、再生可能エネルギーを強化する。「投資規模は言える段階ではないが、再生エネはやらなくてはいけない」と語り、ガソリンなどの石油製品に依存しない経営体制をつくることを目指す。一方、今年4月に出光興産と昭和シェル石油が経営統合することが決まり、石油元売りは再編で先行したJXTGとの2強体制になる。「規模で勝るJXTGは統合効果も大きい。出光・昭和シェルの2、3歩先を行く」と話した。JXTGは今年、給油所のブランドを「ENEOS(エネオス)」に統一し、サービス向上に力を入れる。ブランドを統合後も当面併存させる出光・昭和シェルと比べ、強みだと指摘した。米国は対イラン制裁で、原油禁輸に関し日本などを一時的に適用除外としたが、今春に復活する見通しだ。イラン原油について「採算性の魅力がある。条件が整えば輸入を継続したい」と述べた。

*4-2-2:http://qbiz.jp/article/147088/1/ (西日本新聞 2019年1月13日) 「黒潮発電」本格実験へ IHIが離島向け 鹿児島沖で今夏から
 IHIは今年夏から、黒潮の流れを利用した「海流発電」の実用化に向けた本格的な実験を鹿児島県・トカラ列島沖で実施する。出力100キロワットの装置を海中に設置し、2020年まで1年間実験する。実用化の目標は20年代初め。将来的には出力2千キロワット級に大型化し、コスト削減を図る。離島向けなどに新たな再生可能エネルギーとして売り込みたい考えだ。海流発電は、九州から本州の太平洋側を南から北へ向かう黒潮の流れを発電に生かそうという日本独自のアイデア。黒潮の流れは天候や時間帯に左右されないことから、太陽光や風力などと異なり、安定した電力が得られる自然エネルギーとして注目されている。同社が開発した実験用の発電装置は三つの円筒状の構造物を組み合わせたもので、長さと幅は約20メートル。円筒二つの先端に取り付けた直径11メートルの羽根が回って発電する。海底の土台(シンカー)とワイヤでつながれた装置は、たこ揚げのように海中に浮いて発電。装置は水面下約50メートルにあり、上を船舶が通過しても支障はない。羽根は風力発電のようにゆっくり回るため、海洋生物にも影響はないという。同社は17年夏にもトカラ列島沖で7日間、この装置で実験しており、今回は1年間かけて台風などの影響も調べ、実用化に向けた課題を探る。今回の実験が成功すれば、実用化に向け前進。将来的には、装置を複数並べて発電することも可能という。現在の発電コスト目標はディーゼル発電と同程度の1キロワット時当たり40円ほどだが、「大規模太陽光発電に匹敵する20円以下が将来目標」(機械技術開発部海洋技術グループの長屋茂樹部長)。ディーゼル発電を使っている離島などに売り込んでいきたいという。

*4-2-3:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190113&ng=DGKKZO39909860R10C19A1MY1000 (日経新聞 2019年1月13日) 水素を生かす(中)駅でエネルギー供給 災害時も
 JR東日本の武蔵溝ノ口駅(川崎市)は構内で使う電気や温水の一部を、自立した水素エネルギー供給システムでまかなっている。災害時にライフラインが寸断されても、一時的な滞在場所として利用可能だ。上り線のホームには東芝が開発したシステムが3基並んでいる。ホームの屋根に敷いた太陽光パネルで発電し、貯水タンクの水を分解して水素を作る。水素はタンクに貯蔵するほか燃料電池で発電する。照明だけでなく、夏はミストシャワーを動かす電力になる。温水も供給できるため、冬はベンチを温める。腰掛けると、じわりと暖かい。水素の製造、貯蔵、利用を一貫してできるのが特徴だ。2017年にJR東日本の駅で初めて導入した。横幅6メートル、高さと奥行きが2.5メートルのコンテナ型で、船やトラックで運べる。国内では横浜市や宮城県など各地で設置が始まった。海外での利用にも期待を寄せる。東芝エネルギーシステムズの中川隆史担当部長は「水素を身近なエネルギーとして役立てていきたい」と話す。

*4-3:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190113&ng=DGKKZO39975400S9A110C1MM8000 (日経新聞 2019年1月13日) 風力発電で全面入札制 経産省、21年度から 発電コスト下げ促す
 経済産業省は再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度(FIT)で2021年度以降、安い電力だけを買う「入札制」を風力発電に全面的に導入する方針だ。欧州などに比べ発電コストが高止まりしているため、事業者に低コスト化を促し競争力を高める。太陽光でも入札制の範囲を拡大する方針で、再生エネ全体で育成から競争への比重を高める。17日に開く有識者会議で風力発電について「早期の入札制導入を検討する」との方針を示す。国が募集量と買い取り価格の上限を決めた上で売電の希望価格を募る方式。安い電力を示す事業者から順番に買い取り契約をするため、値下げ圧力がかかる。入札による買い取り価格はFITの固定価格買い取り同様、電気代に上乗せされる。19年度の買い取り価格は陸上風力が1キロワット時あたり19円で、洋上風力は同36円。洋上風力には一部案件で入札制を実施する方向になっていた。FIT法の見直しを予定している21年度以降には固定買い取り制度ではなく、入札制への全面切り替えを原則とする。背景にあるのは風力発電コストの高さだ。直近では1キロワット時あたり13.9円と世界平均(8.8円)の約1.6倍になっている。欧州は入札制を広く導入し、発電事業者に競争を促したことで発電コストを抑えた。経産省は30年に発電コストを世界平均並みの8~9円にする目標を掲げるが、現状のままでは達成が厳しいとみられる。高額買い取りが事業者のコスト削減を遅らせていた面もあるとみて、入札制で努力を促す。再生エネでは太陽光でも入札制の対象が拡大されるなど競争路線が加速している。現状の再生エネ比率は16%でこのうち風力は0.6%にとどまる。政府は再生エネを「主力電源」と位置づけ、30年度に再生エネを22~24%まで比率を高める方針。風力を1.7%にする目標を掲げている。

<エネルギーの自給率と長期戦略について>
PS(2019/1/18追加): *5-1に、「①日立が再エネ価格の急落で英国での原発建設計画を凍結する」「②再エネ価格の急落は想定外だった」「③日立は2012年11月、英ホライズン・ニュークリア・パワーを買収して英国事業に乗り出していた」「④原発新設を手がけていないと保守や廃炉などの技術も保てない」「⑤ビッグデータ分析やAIの活用などは膨大な電力を消費するため、再エネだけではカバーできない」「⑥日本は長期を見通す議論が不足している」「⑦原発をエネルギー政策のなかでどう位置づけていくかの将来像が固まらないとビジネスとしての原発は存続できない」と書かれている。しかし、①②③⑥については、簡単な装置で発電でき、燃料を使わず、公害の少ない再エネ価格の急落を想定できず、フクイチ後に英ホライズンを買収したことこそ(英国は、これで十分メリットがあった)、経営者として長期を見通す能力に欠けていたのである。また、④⑤は言い訳に過ぎず、⑦のビジネスとしての原発なら国民負担による政府補助金に頼ることなく、事故時には製造物責任法に基づく損害賠償を行い、最終処分まで含めてビジネスベースに乗せるべきであり、従って原発はビジネスにはならないということだ。
 なお、*5-2のように、九電は、費用対効果が十分でないとの判断から、出力559,000kwの玄海原発2号機を廃炉にする見通しになったそうだ。リスクまで考慮すると、再稼働している玄海3、4号機、川内1、2号機も早く終わり、原発よりずっと簡単な装置で発電でき、燃料を使わず、公害の少ない再エネに移行するのが、長期的にはより安価になるだろう。

*5-1:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO40153500X10C19A1TJ3000/?nf=1 (日経新聞 2019/1/17) 日立が英計画の凍結発表 再生エネ台頭、原発に誤算
 日立製作所が原子力発電事業の存続をかけて取り組んできた英国での原発建設計画を凍結する。再生可能エネルギーによる電力価格の急落など、当時は想定していなかった誤算が重なり苦渋の決断を強いられた。原発事業をリスクとみる投資マネーの動きも圧力になった。東原敏昭社長兼最高経営責任者(CEO)は17日の記者会見で、凍結理由を「経済合理性の観点からすると、諸条件の合意には想定以上の時間を要すると判断した」と説明した。英国政府との協議は今後も続ける。一方的な打ち切りにすると「英国政府に対し巨額の違約金が発生する可能性がある」(交渉関係者)との懸念もあったようだ。日立は2012年11月、英ホライズン・ニュークリア・パワーを買収して英国事業に乗り出した。発表当時、原発担当役員は「原発を建設する場所がどうしても欲しかった」と語った。原発新設を手がけていないと保守や廃炉などの技術も保てない――。11年の東日本大震災時に起きた原発事故で逆風が吹くなか、望みをつなぐ一手だった。英国には原発でつくった電気を市場価格より高く買い取る制度があり、採算を確保しやすいとの判断もあった。だが、事業環境は大きく変わった。太陽光や風力といった再生エネの台頭だ。技術革新や普及に伴う規模の効果により再エネによる発電コストは年々低下。英国で実施された洋上風力発電の入札では、落札価格が17年までの2年で半分になった。原発の電気を高く買い取るための実質的な国民負担は年々重くなり、政府は修正に動いた。英政府が日立のプロジェクトに対し内々に示した買い取り価格は1千キロワット時あたり70ポンド(約9800円)台前半。先行する他の原発に比べ約2割低かったという。この水準では採算が狂う。危機感を募らせた日立の中西宏明会長は18年5月、英メイ首相と会談し、他の部分での支援を求めた。英政府が用意したのが資金調達コストを下げる仕組みだ。総事業費3兆円のうち2兆円超を英国側が融資するというものだ。残りの資金は日立、日本企業、英国政府・企業がそれぞれ3分の1ずつ出資することにした。トップ会談でつかんだ果実。これを第2の誤算が打ち消した。東京電力ホールディングスなど国内電力の出資拒否だ。日本企業からの出資者集めは日本政府の役割だったが、説得は難航した。特に、日立がつくる沸騰水型軽水炉(BWR)の使い手である東電が動かなかった。「事故を起こし再稼働も進まない中では国民の理解が得られない」。他の電力も見送りに傾く。投資家の目も厳しくなった。「原発のように先行きが不透明な事業を持つ企業の株を中長期で持ちたいとは思わない」(国内投資顧問幹部)。日立も意識しており、ある首脳は昨夏「(国内では原発再稼働が進まず)膨大な資産が何の収入も生んでいない。投資家からみたらそれだけでバツだ」とこぼした。11年に原発事業からの撤退を決めたライバル、独シーメンスと比べ、日立の時価総額は3分の1にとどまってきた。国内企業の中では構造改革に先行したにもかかわらず、株価は日経平均にも見劣りする。英国での計画凍結が伝わった今月11日は前日比9%上昇した。原発事業そのものにも資金は集まりにくくなっている。「ホライズンへの出資を希望していた企業やファンドも、再生エネが台頭するにつれ離れていった」(日立幹部)。ただ、ビッグデータ分析や人工知能(AI)の活用など、今後の産業の進化を支える技術の多くは膨大な電力を消費する。東原社長は17日の記者会見で「エネルギーの安定供給を考えると、再生エネだけでカバーはできない」と強調した。原発なしで電力需要をまかない続けられるのかは明確でない。1月7日。経団連会長の立場で、政府への要望を聞かれた中西氏はこう答えた。「日本は本当に大丈夫か、長期を見通す議論が不足している。エネルギー問題はその典型だが、方向付けに対する議論をどの政治家もやらない」。原発をエネルギー政策のなかでどう位置づけていくか。将来像が固まらないと、ビジネスとしての原発は存続しえない。

*5-2:http://qbiz.jp/article/147063/1/ (西日本新聞 2019年1月12日) 玄海原発2号機廃炉へ 稼働38年、安全対策費多額に  九電、年度内にも結論
 九州電力が玄海原発2号機(佐賀県玄海町、出力55万9千キロワット)の再稼働を断念し、廃炉にする見通しになったことが分かった。廃炉となった玄海1号機と同様、安全対策工事などで多額の費用がかかり、投資効果が十分に得られないとの判断に傾いたとみられる。早ければ2018年度内にも最終判断する。玄海2号機は1981年3月に稼働。2011年1月に定期点検に入って以来、運転を停止している。原則40年とされる運転期限は21年3月で、再稼働し、運転期間を延長するには、1年前の20年3月までに国に申請するルールがある。運転延長を目指す場合、申請前に約半年に及ぶ「特別点検」を実施する必要もあり、実際には19年中の存廃決定を迫られている。運転延長には東京電力福島第1原発事故後の新規制基準に適合させるため、テロに備えた特定重大事故等対処施設(特重施設)などの整備が必要。九電は再稼働した玄海3、4号機用に設ける特重施設との共用は距離的に難しいと判断、単独での建設も用地確保が困難とみている。加えてケーブルの難燃化対応なども必要で、安全対策にかかる費用の総額は「廃炉にした1号機とあまり変わらない可能性がある」(幹部)という。九電が再稼働した原発4基に投じた安全対策費は計9千億円超。2号機の安全対策工事の期間も見通せず、20年間の運転延長では経済性が十分に担保できないと判断したもようだ。一方、再稼働済みの玄海3、4号機の出力は各118万キロワット、川内原発1、2号機(鹿児島県薩摩川内市)は各89万キロワットある。さらに石炭火力で100万キロワットの松浦発電所2号機(長崎県松浦市)が今年稼働予定、九州の太陽光発電の総出力は800万キロワットを超えるなど、供給面では、出力が小さい玄海2号機を再稼働する意義は薄れている。廃炉費用364億円が見込まれる玄海1号機と同時期に廃炉を進めることで、効率的に作業ができる利点も考慮したとみられる。全国では福島第1原発事故後に7原発10基(福島第1を含まず)が廃炉を決め、老朽原発を中心に選別の動きが進んでいる。

<思考における基礎教育の重要性>
PS(2019年1月18日追加):*6-1に、厚労省は、「(外国人材の受け入れ拡大による効果については考慮していないが)ゼロ成長で高齢者や女性の就労が進まない場合には、2040年の就業者数は2017年に比べて1285万人減る」という推計を出したそうで、これを解決するには、労働参加率を上げて量を増やすだけでなく、労働力の質を上げることも重要だ。そのため、*6-2のように、①幼児教育・保育の無償化で、子どもが早くから教育を受けられるようにする ②高等教育の負担を軽減する ③保育所や学童保育の整備で女性の就労を容易にする 等が必要だ。
 しかし、私は、質の確保という意味から、認可外保育施設を無償化対象として永続させることには賛成できない。そのかわり、*6-3のように、学童保育や保育所に待機児童が多いため、就学年齢を3歳からとし、0~2歳は保育、3歳以上は小学校と学童保育という分け方をして、教育の質も同時に充実させるのがよいと考える。
 なお、*6-4のように、厚労省は「毎月勤労統計」を2004年~2018年に東京都で1/3しか実施せず、これが法律違反だということで大騒ぎになっているが、無差別抽出をすれば全数調査しなくても正確な統計をとることはできるため、2018年に東京都分を3倍にしたのは一概に誤っているとは言えない。また、統計による平均値を基にして個人の雇用保険の給付水準を決めるのは理論的ではなく、払込保険料に反映される失業(もしくは育児休業)直前の個人の給与を基にして決めるべきだろう。現在はコンピューター時代で、これを行うことは容易であるため、個人の払込履歴を基に支払うようにすべきだ。

*6-1:http://qbiz.jp/article/147116/1/ (西日本新聞 2019年1月15日) 就業者数が1285万人減 2040年、初の推計
 厚生労働省は15日、雇用政策研究会(座長・樋口美雄労働政策研究・研修機構理事長)を開き、経済成長がない「ゼロ成長」で高齢者や女性の就労が進まない場合、2040年の就業者数は17年に比べて1285万人減るとの推計を示した。研究会は雇用促進策や人工知能(AI)などの技術を活用できる環境の整備を求めている。高齢者数がほぼピークを迎える40年時点の推計を出すのは初めて。4月からの新たな外国人材の受け入れ拡大による効果については「制度が始まっていない」として考慮していない。一方で、日本語教育の充実や生活者としての外国人支援の推進が必要と指摘した。推計では、25年と40年の各時点の就業者数を算出。17年の就業者数が6530万人だったのに対し、25年は448万人減の6082万人になり、40年は5245万人にまで落ち込む見通しだ。17年と40年を比べると、男性711万人減、女性575万人減と、男性の減少幅が大きい。厚労省は「人口減少が原因」としている。産業別では、17年から40年にかけて最も減少するのは、287万人減が見込まれる卸売・小売業だった。221万人減の鉱業・建設業と206万人減の製造業が続く。他が減少する中、医療・福祉分野だけは103万人増加する見通しだ。厚労省は、女性活躍や高齢者雇用政策が一定程度の効果を上げた場合の就業者数も試算。25年は17年比187万人減の6343万人、40年は同比886万人減の5644万人だった。

*6-2:https://digital.asahi.com/articles/DA3S13796591.html (朝日新聞 2018年12月4日) 「市町村の負担、1000億円減」 幼保無償化、政府案軸に調整
 来年10月に始まる幼児教育・保育の無償化で新たに必要となる財源について、政府は3日、年間8千億円のうち市町村負担を当初案より約1千億円少ない約3千億円とする案を地方側に示した。地方側も歩み寄る姿勢を示し、この案を軸に調整が進む見通しとなった。ただ、政府は認可外保育施設を無償化対象とする方針を変えておらず、保育の質の確保は課題のままだ。宮腰光寛少子化対策担当相ら関係4閣僚と、全国知事会、全国市長会、全国町村会の各会長が無償化について協議するのは、11月21日に続いて2回目。国は、新たに公費負担が生じる認可外施設などについて、当初案で3分の1としていた国の負担を2分の1に引き上げる譲歩案を示した。地方側は「評価する」と表明したうえで、持ち帰って検討するとした。安倍政権は昨年秋の衆院選の目玉公約として無償化を打ち出したが、負担割合については十分な調整を欠いた。昨年12月の「国と地方の協議の場」で、地方6団体が「国の責任で、地方負担分も含めた安定財源を確保」と主張したことなどから、「地方も負担に理解を示している」(内閣府幹部)と解釈したからだ。政府は今年11月になって、地方も消費税率引き上げによる増収分から無償化の財源を出すのは当然だとして当初案を示したが、地方側は「負担割合に関する説明は一切なかった」「国が全額負担するべきだ」と猛反発、混乱が広がった。保育の質の確保も課題となった。政府は、認可保育園に入れずに認可外施設を利用する家庭への対応として認可外施設も無償化の対象とする方針だが、指導監督基準を満たしていない認可外施設も多い。地方側は「劣悪な施設に対して公費を投入することは耐え難い」と訴えた。根本匠厚生労働相は3日の協議で国と地方の協議の場を新設し、無償化の対象とする認可外施設の範囲などについて議論する方針を説明した。ただ、譲歩案には保育の質の確保に向けた対応策の詳細は盛り込まれていない。
■高等教育の負担軽減、負担割合了承
 低所得者世帯の子どもが大学などへ進学する際の負担軽減策は、国と地方の負担割合がおおむね了承された。授業料や入学金の減免は(1)国立・私立の大学や短大などは国が全額(2)公立の大学・短大などは設置する都道府県・市町村が全額(3)私立専門学校は、国と都道府県が半分ずつの割合とし、給付型奨学金は国が全額を負担する。ただ、知事会からは専門学校が集中する大都市圏への財政的な配慮を求められ、今後関係する省庁が対応を検討する。主な支援対象は住民税非課税世帯(年収270万円未満)で、国公立大の学生は国立大の授業料標準額(約54万円)を全額免除し、私立大生は約71万円を減額する。給付型奨学金は教科書代や自宅外生の家賃なども対象になる。

*6-3:http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2018122801001178.html (東京新聞 2018年12月28日) 学童保育、1万7千人入れず 小学校高学年で増加、厚労省公表
 厚生労働省は28日、共働きやひとり親家庭の小学生を預かる放課後児童クラブ(学童保育)について、利用を希望しても定員超過などで入れない待機児童は、今年5月時点で1万7279人だったと公表した。1~3年生の低学年で減少する一方、4~6年生の高学年は増加。全体では前年より109人増えた。子育てをしながら働く女性が増えているため利用希望者も年々拡大。政府は2018年度中に待機児童を解消する計画だったが、需要の高まりを受けて達成時期を21年度末へ先送りした。9月に公表した新たな計画では計152万人分の利用枠を確保することを目標に掲げている。

*6-4:https://digital.asahi.com/articles/DA3S13853478.html (朝日新聞 2019年1月18日) 過少給付、延べ2015万人に 統計不正、厚労次官ら処分へ
 厚生労働省の「毎月勤労統計」をめぐる問題で、同統計をもとに給付水準が決まる雇用保険や労災保険、船員保険で本来より少なく給付されていた人が、延べ約2015万人になることが分かった。当初公表の人数から約42万人増える。厚労省は11日の発表で計約1973万人としていたが、精査した結果、失業手当や育児休業給付などを含む雇用保険の対象者が約42万人上積みされたという。過少給付は雇用調整助成金などの助成金30万件でもあった。追加給付に関する費用は、事務費やシステム改修費などの約200億円を含めて約800億円に上る。政府は、問題が発覚する前の昨年12月21日に閣議決定した2019年度予算案を見直し、この問題の対応に必要な予算を反映させた予算案を18日に閣議決定し直す予定。こうした対応は極めて異例だ。一方、根本匠厚労相は同省の鈴木俊彦事務次官らを処分する方向で検討に入った。同省関係者によると、省内に設置された特別監察委員会の検証結果を踏まえて、具体的な処分内容を決めるという。この問題では、04年からの不正な抽出調査の無断実施や、本来の全数調査に近づけるために昨年1月に始まったデータ補正が組織的に行われ、隠蔽(いんぺい)された疑いが出ている。
■閉会中審査、24日に開催
 衆院厚労委員会は17日、24日に閉会中審査を行うことを決めた。審議時間は、与野党の同委員会の筆頭理事の協議で4時間で合意した。

| 経済・雇用::2018.12~ | 10:31 PM | comments (x) | trackback (x) |

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