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2012,06,07, Thursday
下のように、日経新聞に、まさにステレオタイプな少子高齢化論が掲載されていましたので、30年近くの間、共働きの働く女性として人生を過ごしてきた経験を踏まえて、コメントします。この記事に足りないことは、個々の人間の幸福を願うヒューマニズムがなく、人間を社会保障費の支払者、生産者、次世代生産者という経済的視点からのみとらえていることです。そして、これは、消費税増税、社会保障費削減を主張する自民党の主張に似たところがありますが、元は官の発想でしょう。
http://www.nikkei.com/article/DGXDZO42251870W2A600C1EA1000/ (日経新聞 2012/6/6) 加速する人口減への危機意識が足りない 記事のポイント1:2011年の出生数は105万人と過去最少になり、1人の女性が生涯に産む子供の数の推計である合計特殊出生率は前年と同じ1.39にとどまった。ともに05年を底にほぼ回復基調にあったが、ブレーキがかかった。死亡数は125万人と戦後最多を更新。日本の人口は約20万人の自然減になった。これは神奈川県小田原市の人口に匹敵する規模である。11年は東日本大震災もあって、少子化や人口減少の動きは政府が考えていたよりも急である。なぜこんな事態になっているのか。政府が社会保障と税の一体改革で掲げる子育て支援策は待機児童の解消を目指したもので、すでに生まれた子供に力点が置かれている。だが、少子化問題の解決には出生数が増える施策が必要だ。そのためには若い世代に広がる将来への不安を和らげることに、もっと目を向けるべきだ。内閣府の調査によると、20~39歳の未婚男女の約9割が結婚したいと考えているが、その半数以上が経済的な不安を抱いている。20~49歳の男女に、希望する数の子供を持たない理由を聞いた別の調査でも、「お金がかかりすぎる」が最多だった。 <記事のポイント1に関する私の見解> 左のグラフは合計特殊出生率の推移であり、この30年は、1985年の1.76を最高にして次第に下がり、2005年の1.26を最底として少し上りつつある。そして、出生率低下に伴い、日本の人口は右のグラフ(出典:財務省HP)のように2004年に最高値12,779万人となり、その後、2005年以降は急に減るかのように描かれているが、2010年以降は予測値である。そのため、この予測は正しくないことを、ヒトの行動学・社会学の視点から説明する。 ①最低だった2005年で都道府県別合計特殊出生率が低いのは、東京都1.00、北海道1.15、神奈川県1.19、京都府1.18、奈良県1.19など、北海道以外は、都市化が進み人口が集中した地域である。それは、人口集中による居住条件の悪化(家の狭さ、通勤距離の長さ、祖父母等の支援のやりにくさ等)や低所得及び女性の高学歴化に伴う有職業率の増大(保育所の不足・学童保育の未整備など)が原因と思われる。 ②2005年で都道府県別合計特殊出生率が高いのは、沖縄県1.72、福井県1.50、島根県1.50、福島県1.49、鹿児島県1.49など、人口密度の低い地方都市である。なぜなら、地方都市は人口密度が低いため、園庭が広く質の良い保育所が十分にあり、保育所の待ち行列はなく、通勤距離は短く、祖父母や周りの人の支援も得られやすいからだ。また、女性の学歴・地位・仕事の選択肢が都会と比較して低いため、古い女性観が多く残っていることもあろう。 ③2005年を最低として出生率が少し回復したのは、この年に小泉政権の下で、女性で初めて“小泉チルドレン”の猪口邦子氏が少子化・男女共同参画担当大臣となり、少子化の原因解決に本当に迫る少子化対策を行ったことである。それは、働く女性が仕事か子育てかの選択を迫られないこと、子育てにかかるコストを一部社会が負担することなどであった。その内容は、保育所をニーズに合わせて増設し、認定子ども園など幼保一体化を進め、子どもの医療費負担を軽減し、児童手当を創設したものである。これには、私も大きく関与した。 つまり、①②を単純化して説明するために、シャーレに飼っている大腸菌を例に挙げれば、シャーレいっぱいに繁殖した後は生存条件が悪くなるので、大腸菌の繁殖スピードが落ちるという生物現象が働いているのが、人口密度の高い都会で特に出生率が下がっている原因の一つである。そのため、人口が減るに従って生存条件がよくなるため、人口現象のスピードは遅くなり、緩やかなカーブを描いて漸近線(日本の適正人口)に近づくグラフになるはずである。しかし、人間は、高等動物であり将来まで考慮して子どもを産むため、適切な所得や女性の高学歴化による自己実現の欲求増大との両立などが担保されなければ、意識として出生率は上がらず、それを少し解決したのが③なのである。 記事のポイント2:子育て世代の年収分布(07年)をみると、20代では200万円台前半の割合が最も多く、300万円台が最多だった10年前より懐事情が厳しくなっている。30代も収入の減少傾向がみられる。若い世代は失業率が高く、非正規で働く人たちも多い。就業支援や非正規労働者の処遇改善は非婚・少子化対策になるはずだ。女性の就労対策も十分ではない。働く女性の6割が出産を機に退職する状況は、この20年間変わっていない。その4分の1は、育児と仕事を両立できず職場復帰を断念している。 <記事のポイント2に関する私の見解> 下のグラフや総務省による非正規雇用割合からも、現在の生産年齢人口に当たる世代は、失業率が上がり、非正規雇用割合の増加から、経済的に苦しく出生率が下がる傾向にあることがわかる。そして、これは、仮に出生率が上がって若い世代が増えたとしても、しかるべき仕事と雇用がなければ、十分に能力を発揮して生産年齢人口として稼働することはできないことを示している。そのため、①景気をよくする(少なくとも消費税導入などで景気を悪くしない) ②本物の雇用を作る展望を持った産業政策をとる ③企業は正規雇用として労働者を雇う という3原則がなければ、人口だけが増えても社会を支える良質な働き手は増えないということである。 なお、女性の雇用は非正規労働者で高止まりしているとのことであるが、男女雇用機会均等法は、正規労働者でなければ十分に機能しないので、この状況では、採用・配置・昇進・退職などにおける女性差別はなくならないし、出産・育児休暇なども保障されにくい。また、正規労働者であった女性が出産・育児のために退職すれば、次に就職する時は非正規労働者にしかなれないのであれば、その生涯所得の差は出産・育児のコストとなるため、出産・育児のコストは、「子ども手当」くらいではとても埋め合わせることのできない膨大なものとなり、出産・育児は、選択できないことになる。そして、その影響は、よい条件で正規社員として働いている女性ほど大きいだろう。これを解決するには、きちんと能力を評価した中途入社の自由化も必要である。 http://www.fukeiki.com/2012/02/non-regular-employee-2011.html (ポイント)総務省が発表した2011年平均の労働力調査(速報)によると、正社員数は前年比25万人減の3185万人となり、パート・アルバイト・派遣社員・契約社員などの非正規社員数は同48万人増の1733万人だった。また、全雇用者に占める非正規社員の割合は、35.2%で過去最高を記録し、男女別で見ると、男性は19.9%、女性は54.7%となり、景気低迷を受けて、正社員としての採用が落ち込む一方、55歳以上の年齢層における非正規化の動きが顕著となり、女性における非正規社員数の高止まりなどから今回の結果となった。 記事のポイント3:少子化が進むと、年金や医療など社会保障制度の土台は根底から揺らぐ。若い世代が安心して家庭を持ち、出産に踏み切れる施策を早急に打ち出さなければ、日本の将来は危うい。企業は社員のワークライフバランス(仕事と生活の調和)に力を入れ、子供を産み育てやすい環境をつくってほしい。人口減による購買力低下や労働力不足を和らげることにつながる。自社の収益にも影響を与えかねないという危機感を持って、企業も少子化対策に取り組むべきだ。 <記事のポイント3に関する私の見解> 私の解決策は、前に書いたように、下のことである。 ① 都市への過度な人口集中を避け、心がなごみ、住みやすい国づくりをすること ② 生産年齢人口に当たる人が、働きやすく子育てしやすい環境を作ること ③ 現在、生まれてきている人が、幸福を追求し、購買できる環境を整えて、景気をよくすること ④ 年齢や性別による雇用上の差別を禁止し、いる人が生産年齢人口に加わりやすくすること ⑤ 本物の雇用を作れる、展望を持った産業政策をとること ⑥ 企業は正規雇用として労働者を雇い、非正規雇用として労働者に不当な労働条件を強要すること なく、社会保険の負担をすること ⑦ 諸外国と同様、正規雇用としての中途入社を自由に行うこと
| 人口動態・少子高齢化・雇用 | 11:12 AM | comments (x) | trackback (x) |
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