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2020.5.11~13 日本の情けない遅れは、どうして起こったのか? (2020年5月14、16、17、18、19、20、21、22、23、24、26、27、28、30、31日追加)
   
2020.3.6  2020.3.24   2020.3.2           2020.5.2朝日新聞
東京新聞   朝日新聞    毎日新聞   

 
          テレビ朝日              新型コロナウイルスの治療薬

(1)新型コロナウイルスの検査について
1)PCR検査について
 日本は、上の1番左の図のように、2020年3月5日まで、「①37度5分以上の発熱が4日以上続く場合」「②保健所などの帰国者・接触者相談センターに電話で相談し」「③帰国者・接触者外来などを受診し」「④そこの医師から依頼を受けて」「⑤保健所が必要性を判断すれば」「⑥各都道府県の地方衛生研究所などで検査を受けられる」ことになっていたが、検査を受けるまでの関門が5つもあるため、実際には検査を受けにくい仕組みになっていた。3月6日以降は、保健所を通さずに医師の判断で検査を実施し、民間の検査会社などが検体を調べることができるようになっていた。

 3月24日以降は、左から2番目の図のように、症状の要件は緩和されたものの、検査を受けるにはどこかで保健所を通さなければならなかった。しかし、具合が悪ければ、病名を特定するために、まず医療機関を受診して該当しそうな病気に関する検査を受けるのが当然なのである。にもかかわらず、①などの要件をつけて待機させたため、その期間中に重症になったり、死亡したり、保健所で事務的に排除されてPCR検査に辿りつけなかったり、検査後も結果が出るまでに3~7日かかったりなど、これまでの日本の医療ではあり得ないことが続いたわけだ。

 しかし、予算委員会では、上の右から2番目の図のように、安倍首相や加藤厚労相は、なるべくPCR検査をしようとする発言をし、検査を妨害する意図はなかったように見える。それでは、誰が、何の目的で、実質的にPCR検査を邪魔していたのかについては、読者の皆さんは、既にそれぞれの解答を持っておられるだろう。

 そのような中、2020年5月6日、*1-1-1・*1-1-2のように、加藤厚労相は、これまで「37度5分以上の発熱が続く場合」などとしてきた相談・受診の目安を「息苦しさや強いだるさがある場合、高熱が出た場合、基礎疾患がある人などは軽い発熱でも相談できるよう見直す」という考えを示されたが、“基礎疾患(そもそも範囲不明)”がなくても、高熱(定義できない)でなくても、高齢者(定義不明)でなくても、陽性であれば他人に感染させる可能性があり、リスクが高いとされるグループ以外の人でも場合によっては体調が急速に悪化することもあるため、受診に勝手な要件を設けて受診しにくくすること自体が問題なのである。

 従って、私は、*1-1-3の「ウイルスの有無を調べるPCR検査が日本は際立って少なく、人口10万人当たり検査数は、日本187.8人、韓国1198人、米国1752.3人、イタリア3159人、ドイツ3043.5人である」「国内の正確な感染実態を把握せずに、どうして社会経済活動の再開を判断できるのか」「政府の戦略には科学的根拠がない」等の指摘に賛成だ。

 しかし、政府が検査を増加するという説明を繰り返しているのに、検査が抑えられる運用が続いていたのは、政治家よりも厚労省(+専門家会議)の主導であるため、政治家が責任をとったり政権を変えたりしても状況は変わらないと思う。従って、本質の方を変えなければならないのだが、行政の言う通りにしか動けない政府や与党も、識見に基づく指導力がなさすぎるだろう。

2)PCR検査を倍にすれば、接触「5割減」でも収束可能
 厚労省と専門家会議が、PCR検査を渋って軽度及び中等度の感染者を市中に放置した結果、新型コロナウイルスが市中に蔓延することになったが、*1-1-4の九州大学の小田名誉教授(社会物理学)の「検査数を2倍にすれば接触機会が5割減でも14日で収束し、検査数が4倍なら接触機会を全く削減しなくても8日で収束するなど、接触機会の削減より検査と隔離の拡充の方が対策として有効である」としている。

 私は、モデルを使うのなら、小田名誉教授のモデルの方が、スペイン風邪流行時のモデルを使っているらしい専門家会議のモデルよりも、現代の医療に適合しており正しいと思う。さらに治療薬を使えば、回復が早くなり、隔離を要する病気でもなくなるだろう。

 なお、国は1日のPCR検査の能力を2万件まで拡充できるとしているので、少なく見積もっても検査数を2倍にすることはでき、さらに、*2-1のように、唾液でPCR検査を行ったり、全自動の機械を使ったりすれば、その他のネックもなくなるため4倍以上にすることも可能だ。そして、これらの工夫を最初の1カ月で行えば、「Good Job!」と言うことができて、日本医療の信頼を損なわずにすんだ筈だった。

(2)不十分な検査体制は日本医療の恥だが、それによる被害者は誰か?
1)政府の方針
 厚労省で感染症対策などを担当してきた自民党衆議院議員の国光氏は、*1-2-1のように、「①日本のPCR検査数が海外に比べて少ないのは、欧州などが軽症者を対象とするのに対し、日本は重症者から検査するためだ」「②国が37.5度以上の発熱が4日以上続くとしてきた受診の目安を緩めるのは評価するが、実際に検査するかは医師の判断なので、国は他の病気と同様に医師の検査基準を示してほしい」「③医師が検査すべきと判断したら保健所につなぐ」「④保健所は4日以上の発熱などの症状がなければ検査しない例があり、保健所が医師の判断を尊重する仕組みも必要だ」「⑤米国や韓国などで普及するドライブスルー方式は短時間で効率は良い」 「⑥国が地域ごとのPCRセンターを指定して検査を集約し、かかりつけ医がそこを紹介する体制がより効率的だろう」「⑦民間の検査機関を使う場合は病院から検体を送るのに2日など時間がかかる。民間は国指定のPCRセンターに協力すべきだ」「⑧PCR検査以外でも最低3~4時間で終わる『LAMP法』などの導入を支援すべきだ」「⑨関連法令を緊急に改正し条件や期限付きで担い手を広げるのも一案だ」などとしている。

 このうち、①②については、軽症者も時々刻々と症状が悪化するケースがあることを考えれば、医師の判断で他の病気も含めて速やかに検査する必要があり、検査するかしないかの判断に保健所をかませたことが失敗の始まりなのである。従って、③④の保健所との関係は、事後報告でよいこととするように、⑨の関連法を変えるべきである。

 さらに、⑤⑥⑦⑧については、工夫はいろいろとあるため、医療機関や民間検査センターよりも行動の遅い厚労省や保健所をカットするのが、最善の方法に思える。

 具体的に、保健所を通す方法は、*1-2-2のように、⑩検査の実施が滞って、発症から陽性確定まで7日間など長期化させ ⑪検査の機能不全を背景にした陽性判明の遅れが重症化リスクを高め ⑫陽性と判明していない感染者と他者との接触機会を増やしていた。そのため、“医療崩壊”を避けながら感染拡大を防ぐには、大学・研究所・民間検査機関を含めて検査機関を増やしたり、簡易検査キットを使ったりするなどの改善が必要なことは明らかだ。発熱から4日以上たってPCR検査を受け、7日も結果を待っていれば、その間に悪化する人は多い筈である。

 さらに、⑬PCR検査の実施数は全国で1日8000件前後が続くが、民間検査会社の受託は2000件ほどで、残りは国立感染症研究所(東京・新宿)や地方衛生研究所などの公的機関であり ⑭民間検査数は2月下旬まではゼロの日もあったし ⑮熱が出て気分が悪いといった程度ではすぐに検査を受けてもらえない状況で ⑯京都大学病院は、院内感染予防の視点から、無症状でも公費でPCR検査を受けられるようにすべきとの声明を出していたそうだ。

 しかし、日本は世界でも類を見ないクラスター潰しに専念し、クラスターに入ると見做された無症状者や軽症者を優先して入院させていたため、“孤発例(誰かから感染しているので、そんな筈はないが・・)”という非科学的な呼び名の経路不明な症状のある感染者の検査や治療に医療資源が廻らなかったそうなのである。

 なお、宮城県内で確認された新型コロナ感染者88人は、*1-2-3のように、感染経路不明な人ほど検査まで時間を要し、発症からPCR検査の結果が出るまでの最長は16日かかっており、最長の20代の男性は、4月9日に家族の感染が分かって11日に陽性と判定され、家族の感染がなければ検査すら受けられなかった可能性が高いそうだ。

 また、経路不明の仙台市の50代の女性は、医療機関を2カ所回った後、相談センターから紹介された一般医療機関の求めで検査を受け陽性判明まで9日かかったそうだが、感染者の初期症状は多様であるため、国が目安としていた「37.5度以上の熱が4日以上」「高熱・・」等に当てはまらない感染者は少なくない筈だ。

2)まとめ
 私も、*1-2-4のように、不十分なPCR検査体制は日本の恥であり、日本で新型コロナによる死者数が少ないのは、検査数が少ないため死因を新型コロナに分類されず、肺炎等の他の病気に分類されたり、原因不明とされたりしている人が多いという理由があると思う。

 さらに、新型コロナウイルスは肺炎だけがクローズアップされているが、味覚だけでなく、消化器にも異常をきたしたり、ウイルス性髄膜炎になったりなど、時間の経過とともに人間の免疫の方がウイルスに負け、ウイルスが増殖して全身に広がるにつれて、身体へのダメージは大きくなる。そのため、検査数を増やして早期発見・早期治療することが必要だったのであり、死んでから冥福を祈られても浮かばれないのである。

(3)日本における実用化の壁は何か?
 日本医師会の横倉会長は、*2-1のように、唾液で判定するPCR検査法の実用化を訴えられたそうだ。これは、米国で開発され、北海道大学で試験が進められており、鼻の奥や喉から粘液を採取する方法と同じ結果が出る上、手軽で医療関係者への感染リスクを減らすことが期待できるそうだ。よいものは、欠点を探して停止させるのではなく、早々に採用して欠点を補いながら使った方がよいと私も考える。

 また、スイス製薬大手のロシュは、*2-2のように、新型コロナウイルスの抗体検査薬が米食品医薬品局(FDA)から緊急使用許可を得たと発表し、判定確率は100%に近いそうだ。日本でも5月中に承認申請する方針で、抗体検査の精度が高まれば、免疫を持つ可能性のある人を特定しやすくなり、経済活動の正常化に役立ちそうである。

 そのほか、*2-3のように、「富士レビオ」が新型コロナ患者の検体から15~30分で検出できる「抗原検査キット」を開発し、医療現場において15分程度で判定可能となるので、政府は5月13日に薬事承認する方針だそうだ。私も、PCR検査などとの組み合わせで活用すれば、医療現場でのツールとして価値が大きいと考える。

 しかし、*2-4は「①日本も東京と東北地方で調査が進むが、検査キットの精度などを巡り課題が指摘されている」「②『大規模な抗体検査と診断で市民は安全に仕事に戻れる』とNY州のクオモ知事が抗体検査の意義を強調したが、精度に難点がある」「③そもそも免疫できない?」と記載しており、日本では、無理に欠点を探して実用化を阻む後ろ向きの声が多く、開発者に非生産的な時間と苦労をかけるのである。

 例えば、①②の検査キットや抗体検査の精度が仮に90%しかなかったとしても、90%の確率では当たって傾向がわかるため、何もせず傾向を全く把握していないよりはずっと良い。さらに、使いながら改良すれば精度は上がるため、何もせず、いつまでも0の状態でいるよりも始めた方がずっとよいのである。

 また、③の免疫ができないというのは、想像によるいちゃもんに過ぎない。何故なら、新型コロナから回復した人の血漿で重症患者が回復したという事実は、血液中に抗体ができ、それが新型コロナウイルスを打ち負かしたからにほかならないからだ。これを戦国時代に例えると、自分の兵隊(免疫)が新型コロナウイルスという敵に負けて全滅しかかっている時に、他国から強い援軍をさしむけてもらったようなものなのである。

 なお、新型コロナ感染者が多い米東部ニューヨーク州のクオモ知事は、*2-5のように、州内の医療従事者に対して感染歴を調べる抗体検査を行った結果、陽性割合が一般市民より低く、医療従事者が着用しているマスクや防護服に感染防止の効果が見られるということを明らかにしたそうだ。そのためにマスクや防護服を身に着けるので当たり前なのだが、抗体検査によって数量的なエビデンスを得た点が新鮮だ。

(4)あるべきスケジュールはこうだった
1)大型クルーズ船の扱いは失敗だったこと
 大型クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」の乗客は、2020年2月5~19日の14日間の隔離を終了して、*1-3-1のように、新型コロナの感染が確認されなかった約500人が下船したが、船内の感染対策が不十分であったため、隔離期間に感染を広げて乗客乗員542人を感染させたのが第1の不手際だ。

 そのため、アメリカ、カナダ、オーストラリア、イギリスの各国政府は、ダイヤモンド・プリンセスから政府チャーター機などで帰国した人たちに対し、さらに14日間の隔離措置をとり、韓国は自国民以外はダイヤモンド・プリンセス号の乗客の入国を禁止する方針を示した。しかし、日本の当局者は、「自分たちの対応は適切だった」と主張している。

 日本は、日頃からクルーズ船を誘致しているため、いざという時には適切なケアができなければならないし、そういう実績を積み重ねていくことによって初めて、クルーズ船の誘致が容易になったり、日本の医療水準の高さが認められて医療観光が視野に入ったりするのだ。そのため、大型クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」への対応は、今後の日本経済にとって大きなマイナス(成績なら“不可”)になった。

2)医療現場は仕方なくCTで判定
 PCR検査ができなかったため、*1-3-2のように、医療現場では、新型コロナ感染症の重症度判定にCTの画像診断を使い始めた。そのため、「肺炎を起こすような重症例についての見落としは少ない」と、政府専門家会議の尾身副座長が述べている。

 しかし、重症(既に免疫が負けてウイルスが増えた状態)になってから、人工呼吸器やECMOを使っても患者に負担をかける割に回復の見込みが小さいため、CT検査で肺に影が出る前に検査して治療するのが正攻法であり、その準備は、「ダイヤモンド・プリンセス」に対応していた2月中に、情報をかき集めて行っておかなければならなかったし、やろうと思えばできた筈だ。

(5)ワクチンの開発
 米政府は、*3-1のように、新型コロナウイルスのワクチン開発を急ぎ、米国生物医学先端研究開発局がJ&Jに約10億ドル投じて開発を本格化させているほか、米バイオ企業モデルナにも最大4億8000万ドル拠出してワクチンの開発と生産体制の整備を支援し、承認されたワクチンを早急に量産できるよう後押しし、年内に数億本の量産体制を目指すとのことだ。

 ここで、日本人には、「ワクチンの安全性・有効性を確かめる臨床試験は通常1年~1年半を要するのに、約8カ月で医療現場に投入する計画は安全性を無視している」などと言う人が少なくないが、安全性・有効性とスピードは両立できないものではないため、ピンチをチャンスに変えて利益を出すためには、安価で質の高いものを作って最初にゴールすることが必要だ。
 
 その理由は、世界で需要のある新型コロナワクチンは、安全性・有効性と世界一のスピードが達成できれば大きな利益を生むが、そうでなければ設備投資が無駄になって大きな損失を抱え込む可能性が高いからだ。新型コロナのワクチン候補は現在約50あり、ワクチンや特効薬の開発に成功すれば経済活動を停滞させる外出制限などの対策をとる必要がなくなるため、欧州や中国も国力をあげて開発を進めているそうだ。

 また、*3-2のように、世界では70を超えるワクチンの開発プログラムが進んでおり、日本では大阪大学と大阪大学発バイオベンチャーが、「DNAワクチン」という新しい手法を用いたワクチン開発に取り組むことを表明し、3月24日には動物実験用の原薬開発に成功している。

 これは、大腸菌を培養することで得られる「プラスミドDNA」に新型コロナウイルスの表面にあるタンパク質の一部を作り出す遺伝子を組み込んで体内に投与すると、体内で目的のタンパク質が作られ、免疫システムがそのタンパク質を排除対象として認識し、ウイルスが体内に侵入した時にウイルス表面にあるそのタンパク質を目印として排除する仕組みで、増産が簡単なので値段を安くでき、年内に医療従事者を中心に十数万人に接種することを目標にしているとのことだ。

 そのような中、*3-3のように、欧州委員会の呼びかけで国際会議が開かれ、ワクチン開発に世界が協力するとして、参加者が総額80億ドル以上の拠出を約束し、欧州委員会のライエン委員長は、これらの資金が前例のない国際協力の端緒になるとし、資金はさらに必要になるだろうと警告したそうだ。日本はこの中に入っているが、アメリカ・ロシアは参加せず、中国はEU大使が儀礼的に参加したのみで、ワクチン開発が進んで既に実用化が視野に入っている国は、自国のワクチン候補に資金を投じた方がメリットが大きいのである。

(6)治療薬
1)抗ウイルス薬の重要性
 新型コロナウイルスの治療薬としては、さまざまな薬が候補にあがっており、抗ウイルス薬「レムデシビル」は5月7日に承認され、抗ウイルス薬のアビガンも5月内に承認されそうだ。

 福岡県医師会は、*4-1のように、新型コロナウイルス感染症への効果が期待される新型インフルエンザ治療薬「アビガン」を、主治医が重症化の恐れがあると判断した場合は軽症でも早期投与できる独自の体制を整え、このように「主治医等が重症化の可能性を憂慮する患者」を対象に明記したことで、主治医が必要と判断すれば軽症でも早期投与が可能になった。

2)他の病気との類似性 ← 一致しているのでは?
 米ニューヨーク市保健局は、*4-2のように、5月4日、2~15歳の15人で「多臓器炎症型疾患」が確認され、それは、高熱や発疹、腹痛、吐き気、下痢などがみられる川崎病に似た症状で、うち10人が新型コロナのPCR検査や抗体検査で陽性が判明し、感染歴があることが分かったと発表した。

 新型コロナ感染拡大に伴い、同じような症例が英国・フランス・スペイン・イタリアなど欧州でも相次いで報告されており、「免疫の過剰反応で血管に炎症が起き、血栓ができやすくなった状態」と説明されているが、多臓器炎症は、免疫が負け始めてウイルスが増殖し、血管を通じて体中に廻った状態ではないかと、私は思う。

 実際、*4-3のように、敗血症(感染症を起こしている細菌・ウイルス・真菌・寄生虫等が増殖して炎症が全身に広がり、重大な臓器障害が起きて重篤になっている状態)は、感染症がきっかけとなって起きる症状で、その原因となる菌を見つけて、それに対する治療を早期に開始しなければ命に関わる。

 そして、どんな感染症でも、免疫の方が負ければ敗血症を起こす可能性があり、特に免疫力がまだついていない乳幼児や、高齢者、糖尿病などの慢性疾患やがんなどの基礎疾患がある人や、病気治療中で免疫力が低下している人は、感染症から敗血症を起こすリスクが高いのである。

 そのため、治療には、その感染症の原因となっている病原体を早急に特定して治療を開始することしかない。薬物治療であれば、細菌の場合は抗菌薬、ウイルスの場合は抗ウイルス薬、真菌の場合は抗真菌薬、寄生虫の場合は抗寄生虫薬を用いる。そして、発見が遅れるほど死亡リスクが高まり、助かった場合でも後遺症が残ることが多いのである。

(7)教育について

    

(図の説明:1番左は幅120cmの机、左から2番目はそれに合わせる引き出しで、並べ方によって人と人の距離を調節することができる。また、右の3つは、アクリル板を使った透明なパーティションで、学校・オフィス・役所などで自然な形で使うことが可能だ。そのため、こういうものを作れる会社は、結果的にビジネスチャンスになった)

 状況を理解して適切な判断をし、的確な行動に結び付けたり、主権者として政策を理解した上で選択したりできるためには、教育が重要である。  

 このような中、私は東大同窓会の会員なので、*5-1のように、東京大学総長の五神先生から、新型コロナウイルス感染症に関連する対応に関する総長メッセージが届いた。その中には、①東大は、学生の学びの機会を確保するために、オンライン授業への全面的な移行を進めた ②学生それぞれの接続環境によって不公平が生じないよう対策を講じている ③東大の研究力を活かして治療に寄与する薬剤の同定・検査技術の開発・疫学的解析など、様々な分野で研究・開発を進め、これまでにも感染阻止の効果が期待できる国内既存薬剤を同定したことを発表した ④PCR検査を迅速に行える検査機器の導入・コロナ対応ICUの整備・中等症患者に対応する病棟開設など全診療科の医師・看護師が参加して医療体制の充実を図った ⑤財政的基盤が脆弱な東大発ベンチャー企業の支援等の多数のことが必要で財政的下支えを要するため支援が欲しい ⑥東大は開学140年にわたる知の協創の拠点として、世界最高水準の学問の叡智を結集させ、この人類の新たな脅威に全力で立ち向かう所存だ 等が書かれていた。

 このうち、③④は、新型コロナに直接的に関係するものであるため頑張って欲しいし、⑤⑥も、同窓生を含めた全学の知恵を結集すれば、新たな手法が出てくるだろう。そして、これは、他大学も同じだ。

 また、①②は、オンライン授業とそれを可能にする接続環境を整備することによって、教育の新しいツールができたことを意味するが、関心のある授業を学外からオンラインで受講できるようにすると、東大の教官は優秀なので、高校生から定年後の大人にまで役立つと思う。

 一方、*5-2のように、佐賀県内の県立学校や各市町の小中学校などが14日から再開されるが、文科省ガイドラインの児童生徒同士の座席を1~2メートル離すというのが、40人規模の学級を抱える大規模校で難しいそうだ。そして、生徒一人に一台のiPadを配ってICT教育を進めている武雄市でさえ、授業を20人以下で行う方針を示しつつも、教員数の問題があって全授業での実施が難しいのだそうだ。しかし、教員数は、教員の定年を延長したり、退職した教員に復職してもらったり、ポスドクを採用したりすれば解決できると思われる。

 世界では、*5-3のように、新型コロナウイルス対策の全国的な休校で、全世界の72%、約13億人が登校できていないそうだ。私は、学力の「格差」よりも学力の「低下」の方が問題だと思うが、フランスは小学校は1学級15人以下として校内の動線を決め接触を減らすなどして感染を防ぎ、オンライン授業が広がる米国では、インターネット環境が整わない家庭の子どもの学習支援で官民が連携しているそうだ。

 日本は、2020年4月22日時点で小中の95%、高校の97%が休校していたが、公立小中高校の95%は同時双方向のオンライン指導ができていない。オンライン教育をやりたい時にはいつでもやれる体制にしておけば、それを利用したい生徒は、塾や大学の授業を聴講したり、外国の学校の授業を聴講したりもできて便利だと思う。

<参考資料>
*1-1-1:https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200506/k10012419171000.html (NHK 2020年5月6日) PCR検査 相談・受診の目安見直し 「発熱」も 近く公表
 新型コロナウイルスのPCR検査について、加藤厚生労働大臣は、これまで「37度5分以上の発熱が続く場合」などとしてきた、相談・受診の目安について、高熱が出た場合や基礎疾患がある人などは軽い発熱でも相談できるよう見直し、近く公表する考えを示しました。加藤厚生労働大臣は、6日神奈川県が進める「神奈川モデル」と呼ばれる医療体制のうち、中等症の患者が入院する「重点医療機関」に指定されている医療機関を黒岩知事と視察し、関係者と意見交換を行いました。このあと加藤大臣は記者団に対し、新型コロナウイルスのPCR検査をめぐり、これまで「37度5分以上の発熱が4日以上続く場合」などとしてきた相談・受診の目安について、「自宅で体調が急速に悪化する事例なども出てきているので、専門家や医療関係者、保健所の方々に素案を出して意見を聞いている」と述べ、見直しを進めていることを明らかにしました。そのうえで、新たな案について、「『高熱』と『発熱』という2つの概念を出す。『高熱』だと思った方はすぐ検査に行っていただく」と述べ、目安には基準とする体温の数値は明記せず、高熱が出た場合や基礎疾患がある人などは軽い発熱でも相談できるよう見直し、近く公表する考えを示しました。一方、加藤大臣は、「雇用調整助成金」の申請手続きについて、従業員20人以下の事業者については、一部簡素化して、申請に必要な平均賃金の算定を省略できるよう見直すことを明らかにしました。

*1-1-2:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO58899960Y0A500C2EA2000/ (日経新聞 2020/5/8) 「37.5度以上」削除 PCR相談目安改定 幅広い受診促す
 厚生労働省は8日、新型コロナウイルスが疑われるとして診察やPCR検査を受ける際の「相談・受診の目安」を改定し、「息苦しさや強いだるさ、高熱」がみられた場合にはすぐに相談するよう呼びかけた。これまでは「37.5度以上の発熱が4日以上」などの具体的条件を設定していたが、条件に満たない場合は検査を受けられないとの誤解が出ていた。従来の基準は検査の実施を抑える方向に働いていた可能性がある。新たな目安では、感染が疑われる人をより幅広く検査することで見落としをなくし、感染の再拡大を防ぐ狙いが鮮明になっている。新たな目安では、37.5度との数値基準を削除し、高熱など強い症状がある場合はすぐに相談してもらう。重症化しやすい高齢者や持病がある人、妊婦などは発熱やせきなど比較的軽い風邪の症状でも相談してもらう。従来の目安は厚労省が2月17日に公表。目安に当てはまると判断すれば、都道府県などが設置する「帰国者・接触者相談センター」に電話し、帰国者・接触者外来を紹介してもらう仕組みだった。だが目安に当てはまらないとして診察や検査を受けられないケースが相次ぎ、自宅療養中に容体が急変する事例も出た。同省の担当者は4日以上などとした従来の目安について「症状が短期間で治まることの多い季節性インフルエンザと区別するため、一定期間様子をみてもらう趣旨だった」と説明。インフルエンザが終息したことも受け、目安の見直しを決めたとしている。

*1-1-3:https://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-1118607.html (琉球新報社説 2020年5月8日) PCR検査の拡充 政府の無為無策問われる
 新型コロナウイルスの感染拡大で世界が出口に向けた模索を始める中で、ウイルスの有無を調べるPCR検査が日本は際立って少ない。国内の正確な感染実態を把握せず、どのように社会経済活動の再開を判断できるというのか。政府の出口戦略には、科学的根拠において不備があると言わざるを得ない。安倍晋三首相は4月6日の政府対策本部でPCR検査の実施可能数を全国で1日2万件に増やすと公言した。だが、現状の実施数は1日8千件前後と一向に増えておらず、対応の遅れが明らかだ。他国と比較したPCR検査の不十分さは政府の専門家会議も認めている。専門家会議が4日に示した資料から人口10万人当たりの検査数を見ると、日本が187・8人なのに対し、隣国の韓国では1198人、米国は1752・3人だ。イタリアは3159人、ドイツは3043・5人と3千人を超える国もあり、日本とは桁が違っている。有識者会議は、日本で検査能力が早期に拡充されなかった理由として、重症急性呼吸器症候群(SARS)や中東呼吸器症候群(MERS)の経験を踏まえて検査拡充を進めていた国々に比べ、日本では「PCR等検査能力の拡充を求める議論が起こらなかった」と指摘した。そのため、重症化の恐れがある人や濃厚接触者の診断のための検査を優先せざるを得なかったとしている。しかし、徹底したPCR検査が必要だという指摘は、新型コロナの国内での感染が始まった早い段階から上がっていたはずだ。緊急事態宣言をさらに延長する現状において、過去の感染症の経験に結び付けて検査の少なさを説明しているのは、現在進行形の対策の誤りを認めない言い逃れのように映る。新型コロナのような治療方法が確立されていない感染症については、検査で陽性者を特定し、隔離・治療して感染の拡大を封じ込めるしかない。世界保健機関(WHO)は「検査、検査、検査」と述べ、徹底的なウイルス検査を各国に求めていた。だが、日本政府は表面上検査を増加するという説明を繰り返しながら、実際には検査を抑える運用が続いてきた。軽症者が病院に殺到するのを防ぐ狙いから、感染疑いで受診する目安として37・5度以上の発熱が4日以上続いた場合などの基準を示してきたのはその一例だ。加藤勝信厚生労働相は6日になり、目安を見直す方針を示した。受診の基準を満たしていないことを理由に、検査を受けられない例が相次いでいるためだ。これまでの政府の無為無策が問われる。医療・研究機関などと連携して検査従事者の養成、機器の増産、迅速診断の確立などの課題解決に取り組み、十分なPCR検査を実施できる態勢を早急に整えるべきだ。

*1-1-4:https://digital.asahi.com/articles/ASN557T4WN54ULBJ01C.html?iref=comtop_8_03 (朝日新聞 2020年5月6日) PCR検査を倍にすれば、接触「5割減」でも収束可能?
 新型コロナウイルスのPCR検査を増やすことで自宅などで隔離療養する感染者を倍増できるなら、国民の接触機会は、国が求める「8割減」でなく「5割減」でも、感染は早期に収まるとする計算結果を、九州大学の小田垣孝名誉教授(社会物理学)がまとめた。経済活動と感染拡大防止の両立の「かぎ」はPCR検査にあることを定量的に示したもので、議論を呼びそうだ。小田垣さんは、感染拡大防止のために国が施策の根拠の一つとして活用する「SIRモデル」を改良。公表値を使って独自に計算した。SIRモデルは、まだ感染していない人(S)、感染者(I)、治癒あるいは死亡した人(R)の数が時間とともにどう推移するかを示す数式で、1927年、スペインかぜの流行を解析するために英国で発表された。疫学の専門家でなくても理解できる平易な数式で、1世紀を経た今回のコロナ禍でも国内外の多く識者がこの数式を現実に則して改良しながら、さまざまな計算結果を導いている。小田垣さんによると、このモデルの難点は、感染者を、他人にウイルスを感染させる存在として一律に扱っている点だ。だが、日本の現実の感染者は一律ではない。そこで、無症状や軽症のためPCR検査を受けずに通常の生活を続ける「市中感染者」と、PCR検査で陽性と判定されて自宅やホテルで隔離生活を送る「隔離感染者」の二つに感染者を分け、前者は周囲に感染させるが、後者は感染させないと仮定。さらに、陽性と判定されたらすぐに隔離されると仮定し、検査が増えるほど隔離感染者が増えて感染が抑えられる効果を考慮してモデルを改良し、解き直した。「接触機会削減」と「検査・隔離の拡充」という二つの対策によって新規感染者数が10分の1に減るのにかかる日数を計算したところ、検査数を現状に据え置いたまま接触機会を8割削減すると23日、10割削減(ロックアウトに相当)でも18日かかるとした。一方、検査数が倍増するなら接触機会が5割減でも14日ですみ、検査数が4倍増なら接触機会をまったく削減しなくても8日で達成するなど、接触機会削減より検査・隔離の拡充の方が対策として有効であることを数値ではじき出した。国は1日のPCR検査の能力を2万件まで拡充できるとしているが、実施数は最大9千件にとどまる。小田垣さんは「感染の兆候が一つでも表れた時点で隔離することが有効だろう。接触機会を減らす対策はひとえに市民生活と経済を犠牲にする一方、検査と隔離のしくみの構築は政府の責任。その努力をせずに8割削減ばかりを強調するなら、それは国の責任放棄に等しい」と指摘している。現実に実験したり調べたりすることが難しい状況で、モデル計算によって現実を再現するのがシミュレーションだ。一部の実測データをもとに全体を推測したり、どのような対策が最も効果的かを推定したりするのに使われる。国がコロナ禍を乗り切る政策判断にあたって根拠とするシミュレーションは、厚生労働省クラスター対策班が担う。1日の専門家会議では、同班が算出した「実効再生産数」のグラフが初めて示された。実効再生産数は、「ひとりの感染者が周囲の何人に感染させるか」を示す数字で、政策判断の目安として注目される。その数値の妥当性はどうか。シミュレーションは使うモデルやデータ、前提条件によって結果が大きく変わる。国の公表する新規感染者数や検査数などのデータは、最新の結果を反映していなかったり、すべての感染者を網羅できていない可能性があったりするなど信頼性に難がある。そのような中で、計算結果の正しさを主張するなら、計算手法や使う数値などの情報を公開すべきだが、これまで明らかにしていない。シミュレーションの妙味は、データ不備などの悪条件下でも、起きている現象の本質を捉えることにある。今回、小田垣孝・九州大名誉教授の結果は、「検査と隔離」という感染症対策の基本の重要性を示した。その徹底によって感染者数を抑え込んだ韓国の事例をみても、意義の大きさは論をまたない。PCR検査の件数がなかなか増えなかった日本では、市中感染者の実像を十分につかめていない。4月7日に緊急事態宣言が出て以降、国は「行動自粛」によって時間をかせぎ、その間に検査を拡充して医療態勢を整備し、次の波に備える作戦を取った。全国民を巻き込む施策を続ける以上、政策判断が恣意的であってはならない。西村康稔経済再生担当相が4日の会見で、今後の政策判断として「科学的根拠をもとに、データに基づいて」を強調したのはこうした理由からだろう。国のシミュレーションはクラスター対策班が一手に握る。詳しいデータの早期公開を実現し、他の専門家の試算も交えながらオープンな議論を進めるべきだ。その過程を経ずして「科学」をかたってはならない。

*1-2-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200510&ng=DGKKZO58917170Z00C20A5EA3000 (日経新聞 2020.5.10) 新型コロナ 政策を聞く〈PCR検査〉 国指定拠点に集約を 自民・衆院議員 国光文乃氏(くにみつ・あやの 東京医科歯科大院修了、内科医。厚労省で感染症対策などを担当。岸田派。衆院茨城6区、41歳)
 日本のPCR検査の数が海外に比べて少ないのは、欧州などが軽症者を対象とするのに対し日本は重症者から検査するためだ。軽症者らが受けられていない恐れはある。国が「37.5度以上の発熱が4日以上続く」などとしてきた受診の目安を緩める方針は評価するが、実際に検査するかは医師の判断だ。国は他の病気と同様に医師の検査基準を示してほしい。医師が検査すべきと判断したら保健所につなぐ。保健所は4日以上の発熱などの症状がなければ検査しない例があった。保健所が医師の判断を尊重する仕組みも必要だ。米国や韓国などで普及するドライブスルー方式は短時間で効率は良い。日本も一部の医師会や自治体が導入しており検査拡充の一助になる。国が地域ごとのPCRセンターを指定して検査を集約し、かかりつけ医がそこを紹介する体制がより効率的だろう。民間の検査機関を使う場合は病院から検体を送るのに2日など時間がかかる。民間は国指定のPCRセンターに協力すべきだ。医師ら法令で認める担い手で検査し切れない懸念はある。PCR検査以外でも最低3~4時間で終わる「LAMP法」などの導入を支援すべきだ。関連法令を緊急に改正し条件や期限付きで担い手を広げるのも一案だ。

*1-2-2:https://www.nikkei.com/paper/related-article/?R_FLG=1&b=20200510&be=・・ (日経新聞 2020.5.10)  コロナ検査 機能不全 結果まで1週間も 民間拡大カギ
 新型コロナウイルスに感染しているかどうかを判断するPCR検査の体制が感染者の拡大傾向に追いつけていない。検査の実施が滞っており、発症から陽性が確定するまでの期間が1週間と長期化し始めた。検査の機能不全を背景にした陽性判明の遅れは重症化リスクを高めるほか、潜在的な感染者と他者との接触機会を増やしかねない。医療崩壊を避けながら感染拡大を防ぐためにも、国による民間への検査委託の拡大や簡易検査の後押しが必要だ。日本経済新聞がコンサルティング会社、ジャッグジャパン(東京)が収集した陽性事例のデータを基に分析したところ、発熱やせきなど新型コロナウイルスの症状が出てから検査で陽性が確定するまでの期間は、7日移動平均で4月18日時点が7.3日と4月初旬から1.8日延びた。感染者数が拡大し検査を迅速にこなせなくなっているもようだ。厚生労働省は、重症化する人は発症から7日以降に肺炎症状が悪化するとしている。検査体制の強化が課題となるなか、民間への検体検査の委託拡大が急務だ。4月中旬以降、PCR検査の実施数は全国で1日当たり8000件前後が続く。うち民間検査会社の受託は2000件ほどで、残りは国立感染症研究所(東京・新宿)や地方衛生研究所などの公的機関だった。民間検査数は2月下旬まではゼロの日もあった。みらかホールディングス(HD)など国内の主要な検査会社の検査能力の合計は1日当たり約4000件とまだ余裕がある。各自治体の指定病院は、検査を民間ではなく地方衛生研究所に委ねる傾向が目立つ。「感染症は国が担うものだとの意識が強い」(検査会社)。長野では県が優先度に応じて民間か行政かの検査委託先を決める方針だが、こうした調整に乗り出す自治体はまだ少ない。民間が主に担ってきた軽症者の検体検査が増えにくい問題もある。現状では、熱が出て気分が悪いといった程度ではすぐに検査を受けられない。京都大学病院は15日、院内感染予防の視点から「無症状であっても公費でPCR検査を受けられるようにすべきだ」との声明を出した。香港や韓国では簡易キットも駆使した検査の大量実施が進む。日本でも楽天が20日、新型コロナウイルスの感染の可能性が分かる自宅でできる検査キットを発売した。ただ日本医師会が22日に「採取の方法が不適切であれば結果は信頼できず混乱を招く」との意見を出すなど医師を介さない検査は普及に壁がある。安倍晋三首相は6日、PCR検査の1日当たりの能力を2万件に倍増すると表明したが、進捗は遅く政府でも危機感が高まりつつある。「全国で同様の取り組みが広がるよう支援する」。加藤勝信厚労相は23日、東京都新宿区に新設されたPCR検査センターを視察した。検体検査はみらかの子会社に委託する。自民党の塩崎恭久元厚労相は「政府がクラスター(感染者集団)潰しを重視しすぎて検査体制の強化が後手に回った」と指摘している。

*1-2-3:https://www.kahoku.co.jp/special/spe1211/20200501_08.html (河北新報 2020年5月1日) PCR検査陽性判明まで最長16日 宮城県内88人、経路不明者は平均8日
 宮城県内で確認された新型コロナウイルス感染者88人を見ると、発症からPCR検査の結果が出るまでの最長期間は16日だった。発症から結果確定までをゼロ日とカウントした無症状者を含む全体の平均は6.6日。濃厚接触者は比較的早く検査を受けられたが、感染経路が不明な人ほど検査まで時間を要する傾向がある。感染経路が判明した濃厚接触者らに限れば平均5.5日(無症状者8人含む)で、経路不明者だけの平均は8.0日だった。経路不明の場合でも、東京から仙台市に引っ越した人や外国人の場合(計4人)は3~5日だった。陽性判明まで最も時間がかかったのは仙台市の20代男性。3月27日に発熱し、帰国者・接触者相談センター(保健所)の紹介で一般の医療機関を受診後、同30日に熱が下がった。4月9日に家族の感染が分かり、11日に陽性と判定された。家族の感染が判明しなければ、男性は検査を受けられなかった可能性が高い。経路不明の仙台市の50代女性は医療機関を2カ所回った後、相談センターから紹介された一般の医療機関の求めで検査を受けた。陽性判明まで9日かかった。感染者の初期症状は発熱、悪寒、倦怠(けんたい)感、せき、鼻づまり、関節痛、味覚や嗅覚の異常など多様。風邪の症状に似ており、無症状のケースもある。国が受診・相談の目安として出した「37.5度以上の熱が4日以上」に当てはまらない感染者が少なくない。

*1-2-4:https://digital.asahi.com/articles/ASN555QVWN54UTIL02Q.html?ref=mor_mail_topix1 (朝日新聞 2020年5月5日) 「不十分なPCR検査体制、日本の恥」 地方からの異論
 国の専門家会議が、対応が不十分だったとようやく認めた新型コロナウイルスのPCR検査体制。緊急事態宣言の解除に向けても、検査による現状把握は重要なカギだ。体制強化が進まず、検査を受けるべき人が受けられない状況に異を唱えてきたのは、現場をつかさどる地方のリーダーたちだった。
●国の専門家会議を痛烈に批判
 厚生労働省の発表によると、4月下旬の国内のPCR検査件数は1日約7千~9千件ほど。安倍晋三首相は4月6日に、PCR検査の実施能力を1日2万件に増やす方針を示したが、約1カ月たっても一度も1万件に達していない。4月1日の記者会見で「日本ではコミュニティーの中での広がりを調べるための検査はしない」と述べていた専門家会議の尾身茂副座長は、5月4日の会見で「確かに日本はPCRのキャパシティーを上げるということが、他の国に比べて遅れた」と認める一方で「死亡者のようなものは、だいたい正しい件数がピックアップされている」とも述べた。「PCR検査の不十分な体制は日本の恥」「惨憺(さんたん)たる状況」。現状を強く批判し、検査拡充の必要性を直言してきたのが、山梨大の島田真路(しんじ)学長(68)だ。島田学長は2002~03年の重症急性呼吸器症候群(SARS)流行の際、同大医学部付属病院の感染対策委員長を務めた。今回の新型コロナに対して、付属病院はPCR検査の態勢を強化。クルーズ船ダイヤモンド・プリンセスの乗客ら計14人の患者を受け入れてきた。3月6日に搬送された意識障害のある20代男性については、翌日のPCR検査で陽性が判明し、「髄膜炎の原因が新型コロナである可能性が極めて高い」と発表した。同31日に心肺停止で救急搬送された0歳女児の感染が判明した際は、ただちに医師や入院患者ら50人余りを検査し、救急体制も見直した。島田学長は自らの経験を踏まえ、医療関係者向けのサイト「医療維新」に3~4月に、「山梨大学における新型コロナウイルス感染症との闘い」と題した論考を計5回執筆。大学のホームページにも掲載した。検査が増えない理由について学長は、国の専門家会議が2月下旬に「限られたPCR検査の資源を、重症化のおそれがある方の検査のために集中させる必要がある」と表明したためとし、「検査上限を世界水準からかけ離れた低値にとどまり続けさせる大失態を招来した」と強く批判した。「3月下旬まで(自治体の)地方衛生研究所・保健所が検査をほぼ独占してきた」とも指摘。最前線で闘い続けている職員たちに謝意を示しつつ、週末に検査件数が下がっている事実も挙げて、行政機関のみに依存する体制を「そもそも無理筋」とした。専門家会議は5月4日の提言で保健所の体制強化を掲げたが、島田学長は論考の中で、早急な立て直しのためには、民間検査会社と地方の国立大学が大きな役割を担うべきだと主張した。さらに「未曽有の事態の今だからこそ、権威にひるまず、権力に盲従しない、真実一路の姿勢が全ての医療者に求められている」と訴えた。島田学長は4月30日の朝日新聞の取材に対して、国内の現状について「市中感染が広がり、原因不明で亡くなっている人もいるが、検査が少ないので実数がつかめていない」と指摘。「感染の疑いのある人が広く検査を受けられていない。国が検査を増やすと決めたなら、方針を変えたとはっきり自治体に伝え、マインドチェンジをする必要がある」と述べた。山梨大では、県内の検査体制拡充に向け、8日からドライブスルー方式の検査を始める予定だ。
●和歌山県、当初から異議
 「37・5度以上の熱が4日以上続くなら相談を」。新型コロナの受診について国が2月から示してきたこの目安に、当初から異を唱え、積極的にPCR検査を実施することで早期発見をめざしたのが和歌山県だ。仁坂吉伸知事は、県内の病院などで感染が確認された2月から、自ら記者会見に対応。「早期に発見し、感染が他に広がらないようにすることが大事。家にいることで、二次感染をさせてしまう可能性や重症化する可能性もある」と指摘し、自宅待機を推奨する国の姿勢に異論を唱えてきた。県では、発熱などの症状がある場合は、早めにかかりつけ医などを受診するよう呼びかけている。X線で肺炎像が確認されるなど、医師が必要と判断した場合はPCR検査を実施。陽性の場合は濃厚接触者らに対してもPCR検査し、感染者の早期発見に努めてきた。県内で確認された感染者は4日までに62人。PCR検査を受けた人は約3200人で、陽性率は約1・9%にとどまる。和歌山県では4月28日、自宅で死亡した60代男性について、死後に感染が確認された。死亡の約1週間前から親族に体調不良を訴えていたが、医療機関への相談はなかったという。仁坂知事は「『4日間は自宅待機』という情報をもとに受診をしなかったのならば、(方針を決めた専門家や、方針を流し続けたメディアに対して)怒りを感じる」と訴え、「受診を我慢しないでほしい」と改めて呼びかけた。県によると、仁坂知事は4月29日にあった全国知事会のウェブ会議でも「医療崩壊が発生していない県では、医者に行き、早期発見した方が医療崩壊を食い止めることができる」と主張した。
●山梨大学長「マインドチェンジが必要」
 山梨大の島田真路学長に4月30日、国内のPCR検査の現状についてどう見ているか聞いた。
―感染者の実態はつかめていると考えるか
 市中感染が広がり、原因不明で亡くなっている人もいるが、検査が少ないので実数がつかめていない。危機感を持っている。
―首相は検査を増やすと言っているのに、なぜ検査が増えないのか
 保健所が相談を受け、帰国者・接触者外来のドクターが診断して、という2段階の「制限」がある。ここで実質的に絞られ、感染の疑いのある人が広く検査を受けられていない。このスキームが変わっていない。国が増やすと決めたなら、自治体へはっきり方針を変えたと伝え、マインドチェンジをする必要がある。東京ではかかりつけ医の診断で検査できるような体制ができたが、医師会の協力も必要。でも、検査中に感染した場合の補償もないため、積極的にやる動きは広がっていない。
―週末や連休に検査が減ることが心配?
 そう思う。どのように医療や検査を維持するか。スタッフが減るのは事実で、役所や大きな病院では難しい面もあるが、人を増やして勤務シフトを見直すことも必要かもしれない。
―感染者が50人を超えた山梨県内の状況をどうみるか
 重症者が少なく、感染者数はやや落ち着いているが楽観できない。検査を今より10倍近く増やしてほしい。山梨大としてはドライブスルーPCR検査で貢献するが、各地域に検査場の拠点を設けてやるべきだ。

*1-3-1:https://www.bbc.com/japanese/51555374 (BBC 2020年2月20日) 「ダイヤモンド・プリンセス」から下船始まる 新型コロナウイルス陰性の乗客
 横浜港で19日午前、大型クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」で隔離されていた乗客のうち、新型コロナウイルス感染が確認されなかった約500人の下船が始まった。多くの乗客は今月5日から14日間の健康観察期間が19日で終了した。「ダイヤモンド・プリンセス」では新型コロナウイルス(COVID-19)に乗客乗員542人が感染した。中国大陸の外では最多の集団感染となった。今回下船が許可された乗客は、ウイルス検査で感染が確認されず、症状の出ていない人たち。日本メディアによると、対象者全員が下船し終わるのは21日の見通し。ただし、検査で陽性となった人と同室にいた人たちは検査で陰性となっても、健康観察期間の終了日が延びるため、隔離期間が続く。横浜港で取材するBBCのローラ・ビッカー記者によると、ダイヤモンド・プリンセスを降りた乗客たちはそのまま、待機していたバスやタクシーに乗ってその場を離れた。ダイヤモンド・プリンセスの乗客の出身地は50カ国以上で、世界的な感染拡大の発生源になる懸念が出ていると、ビッカー記者は指摘する。日本当局は18日には、船内で新たに88人の感染が確認されたと発表。これによって確認された船内の感染者数は542人になった。アメリカをはじめ複数の国はすでに、船内の自国民を政府チャーター機で帰国させたり、数日中に帰国させたりする予定。新型コロナウイルス大流行の中心地となった中国では、19日までに2004人が死亡した。感染が確認された人の数は中国大陸で7万4185人に達し、それ以外の国・地域では700例以上が確認されている。香港政府は19日、感染していた70歳男性が死亡したと発表した。香港での死者は2人目。中国大陸以外ではほかに、フランス、日本、フィリピン、台湾でそれぞれ1人死亡している。
●船内の感染対策を批判する専門家も
 ダイヤモンド・プリンセスから香港で降りた乗客の感染が確認された後、船は今月5日から横浜港で隔離状態に入った。乗客は当初、それぞれの客室内にとどまることを余儀なくされ、後に時間などを制限した状態でデッキに出ることが認められた。5日から2週間の観察期間で乗客乗員3711人のうち感染者が542人に達したことから、船内の感染対策を疑問視する専門家の声も出ている。神戸大学医学研究科感染症内科の岩田健太郎教授は18日、ダイヤモンド・プリンセスに同日に乗船して見た状況についてYouTubeに投稿したビデオで報告した。岩田教授は、ウイルスがまったくない安全区域(グリーンゾーン)とウイルスがいるかもしれない区域(レッドゾーン)を、船内で明確に区別していないと指摘。「感染対策は悲惨な状態」だと批判している。岩田教授はさらに、エボラ出血熱や重症急性呼吸器症候群(SARS)の大流行の最中に現場にいた時よりも、客船内の方が怖かったと述べた。この動画について教授は20日朝、ツイッターで「動画は削除しました」と報告したが、同日にはビデオ経由で東京の日本外国特派員協会で記者会見し、船内の感染対策の不備を重ねて指摘した。一方で、日本の当局者は自分たちの対応は適切だったと反論。感染例の大半は隔離期間の前に起きたものだろうと説明している。また、船内のゾーン区分はできているなど、岩田教授に異を唱える声も出ている。アメリカ、カナダ、オーストラリア、イギリスの各国政府は、ダイヤモンド・プリンセスから政府チャーター機などで帰国した人たちに対して、さらに14日間の隔離措置をとる。韓国は、自国民以外はダイヤモンド・プリンセスの乗客の入国を禁止する方針を示している。

*1-3-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200510&ng=DGKKZO58917950Z00C20A5EA1000 () コロナ重症度、CTで判定 肺炎の症状で見極め、態勢整わぬPCR補う
 新型コロナウイルス感染症の重症度の判定にコンピューター断層撮影装置(CT)の画像診断が威力を発揮することがわかってきた。疑わしい例や軽症でもCT画像で肺炎を早期発見できる可能性があり、重症化リスクの見極めや入院の必要性などの判断の手助けとなっている。日本ではPCR検査の拡大が最重要の課題だが、CTの有効活用も求められる。「日本はPCR検査は少ないが、CTの数は世界的にみても多い。肺炎を起こすような重症例についての見落としは少ない」。新型コロナに関する政府の専門家会議の尾身茂副座長は、緊急事態宣言の延長が正式に決まった4日の記者会見でこう説明した。重症者の把握や対応などでCT検査が重要な役割を果たしているという。PCR検査がウイルスの遺伝子を検知するのに対し、CT検査はエックス線で肺などの様子を詳しく調べる。ウイルスが見えるわけではなく感染の有無の確定的な判断には使えないが、肺炎があればその程度や特徴がわかる。PCR検査の態勢が追いつかない中、多くの医療機関がCTを活用している。聖マリアンナ医科大学病院(川崎市)は感染の疑いのある患者らに対し、CT検査を実施。陽性の可能性があれば、PCR検査の結果を待たず専用病棟に移すなどの対応を進める。同大学の松本純一講師は「患者の約半数は新型コロナ感染に特徴的な画像所見がある」と話す。専門家でつくる日本医学放射線学会がこのほどまとめた提言では、PCR検査に置き換わるものではないとしつつ、当面の対応として入院などの判断にCT検査を活用することは「許容される」とした。特に症状が重い場合などは、優先的に診る患者を判断する「トリアージ」のためのCT検査を推奨するという。CT検査はPCR検査ではわからない「重症度」の見極めに役立つ。クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」の感染者を受け入れた自衛隊中央病院(東京・世田谷)は陽性でも無症状や軽症だった人の約半数にCT検査で肺に影が見つかり、うち3分の1で症状が悪化したことを報告した。聖マリアンナ医科大学病院も一部患者の重症化の予測にCT検査を活用している。発熱から数日内にCT検査で肺に影が見られる場合などに重症化リスクが高いと判断することがあるという。日本はPCRなどのウイルス検査で後れを取ってきた。政府の専門家会議によると、人口10万人あたりの検査数は187件で、数千件にのぼる海外の主要国に見劣りする。一方、CTの数は世界有数だ。経済協力開発機構(OECD)によると日本の保有台数は人口100万人あたり約112台。50台未満の米欧各国を大きく上回り、海外に比べてもCT検査を受けやすい。画像診断の専門医が少ないのが課題だったが、足元ではオンラインのサービスの利用が拡大している。医療機関から届く画像の遠隔診断支援を手掛けるドクターネット(東京・港)では、2月中旬から新型コロナによる肺炎の疑いのある画像が寄せられ、4月にはその数が1日100件を超すようになった。CT検査には課題もある。特に要注意なのが検査室での感染拡大のリスクだ。入念な消毒などが欠かせない。新型コロナ感染症以外にもCT検査が必要な人は大勢おり、感染者が増えると対応が追いつかなくなる。日本医学放射線学会も「全ての新型コロナの患者にCT検査を勧めているわけではない」と強調する。海外では中国の医療機関などが人工知能(AI)を取り入れた画像診断を活用した。「CT大国」の利点をどう生かすか、日本の新型コロナ対応の鍵となる。

<実用化の壁>
*2-1:https://news.tv-asahi.co.jp/news_society/articles/000183477.html (テレ朝 2020/5/7) 「唾液でPCR検査を」日本医師会 実用化を申し入れ
 日本医師会の横倉義武会長は臨時の記者会見で、唾液で判定するPCR検査法の実用化を訴えました。日本医師会・横倉義武会長:「唾液を使ったPCR検査については、加藤厚生労働大臣に速やかに実用化をして頂くよう今朝、申し入れをした」。横倉会長によりますと、唾液を検体として新型コロナウイルスへの感染の有無を判断する検査方法については、北海道大学で研究が進められています。鼻の奥や喉から粘液を採取する方法よりも手軽で、医療関係者への感染リスクを減らすことが期待できるということです。

*2-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200505&ng=DGKKZO58781190U0A500C2NN1000 (日経新聞 2020.5.5) ロシュの抗体検査薬、米許可 正確性「ほぼ100%」 独が大量調達へ
 スイス製薬大手のロシュは3日、新型コロナウイルスの抗体検査薬が米食品医薬品局(FDA)から緊急使用許可を得たと発表した。同社は抗体を持っているかどうかを判定する確率が「100%に近い」とし、日本でも5月中に承認申請する方針。抗体検査の精度が高まれば、免疫を持つ可能性のある人を特定しやすくなり、経済活動の速やかな正常化に役立つとの見方がある。ロシュは約5200人分を検査し、PCR検査で新型コロナの感染が確認された人を14日後に検査したところ、100%で抗体が確認されたという。1時間当たり最大300人の測定が可能とする。各国の関心も高く、今月末にも欧米で数千万回分を提供する。ドイツのシュパーン保健相は4日、月内にロシュの抗体検査薬300万個を調達すると表明した。6月以降は月500万個ペースに増やす。簡易検査キットの場合、一般的な風邪の原因となるウイルスとコロナウイルスに対する抗体とを間違う可能性もあるが、ロシュのキットは新型コロナだけを99.8%の精度で特定できるとされる。簡易キットで生じる「見逃し」を防げれば、抗体を持った人の割合を特定でき、外出制限などの緩和も検討しやすくなる。地域ごとに事態が収束したかを判断する材料にもなる。現在、中国や英国などでは抗体検査を使って感染の広がりを調べる研究が進むが、ほとんどがイムノクロマト反応(抗原抗体反応)という仕組みを使った簡易検査キットだ。プレートの上に血液を1滴程度垂らすと、血液中の新型コロナに対する抗体の有無を調べられる。ただ精度が高くないため、なかなか経済活動の再開を判断するまでには至らないのが実情だ。

*2-3:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/520947 (佐賀新聞 2020.5.9) 抗原検査キットを13日に承認、新型コロナ、15~30分で判定
 政府は9日、新型コロナウイルスを患者の検体から15~30分で検出する「抗原検査」のキットを13日に薬事承認する方針を固めた。PCRによる検査が数時間かかるのに対し、医療現場で15分程度で判定が可能になるため、検査態勢の強化に貢献しそうだ。ただ精度はやや劣るため、陰性が出た場合は、念のためPCRによる検査を実施する見通しだ。開発した「富士レビオ」(東京)が4月に申請していた。加藤勝信厚生労働相は今月8日の衆院厚労委員会で「来週中に判断する。医療現場で使えるようになる。メーカーによると、かなりの数が提供され得る」と述べた。抗原検査はインフルエンザ検査でも広く使われる。ウイルス特有のタンパク質(抗原)を狙ってくっつく物質を使い、患者の検体に含まれるウイルスを発見する。病院で鼻の奥の粘液を取れば、装置のある地方衛生研究所などへ運ばずに、その場で調べられる。ただウイルス量の少ない患者は陰性となる可能性もある。加藤厚労相は「見落としもあるのでPCRで補っていく。一番いい組み合わせで活用を考えていく」と述べた。その上で、救急医療や手術前など、直ちに判断する必要のある医療現場ではツールとして価値があるとの考えを示した。安倍晋三首相は抗原検査についてPCR検査の前段階として活用し、検査態勢の強化を図ることに意欲を示している。

*2-4:https://mainichi.jp/articles/20200501/k00/00m/040/244000c (毎日新聞 2020.5.1) 感染全容知りたい、でも精度に難点、そもそも免疫できない? 各国で進む抗体検査、遅れる日本
 新型コロナウイルスの感染状況を分析するため、感染した痕跡を調べる抗体検査が各国で相次ぐ。米ニューヨーク(NY)州では住民の15%が感染したことをうかがわせるデータも。日本も東京と東北地方で調査が進むが、検査キットの精度などを巡り課題も指摘されている。「大規模な抗体検査と診断で、市民は安全に仕事に戻れる」。感染者が30万人にも上るNY州のアンドリュー・クオモ知事は4月19日の記者会見で、抗体検査の意義をこう強調した。同州は毎日2000人ずつ検査する予定で、トランプ米大統領も支援を表明。23日に発表された3000人分の結果では13.9%が抗体を保有していた。州全体で約270万人が既に感染している計算で、確認された感染者数の約10倍に上る。さらに、27日には保有率が14.9%に上昇。クオモ知事は「割合がどうなっていくのかを知りたい。決定を下すためのデータになる」と期待する。

*2-5:https://www.tokyo-np.co.jp/article/world/list/202005/CK2020050802000253.html (東京新聞 2020年5月8日) 医療従事者 陽性割合低く NY州抗体検査 マスクなど効果
 新型コロナウイルス感染被害が深刻な米東部ニューヨーク州のクオモ知事は七日の記者会見で、州内の医療従事者に対して感染歴を調べる抗体検査を行った結果、陽性の割合は一般市民より低かったことを明らかにした。クオモ氏は、医療従事者が着用しているマスクや防護服に感染防止の効果が見られるとして「とても良いニュースだ」と述べた。検査は約二万七千人の医療従事者に実施。ニューヨーク市では陽性の割合は約12%で、一般市民の約20%と比べて低かった。他の地域でもおおむね同様の傾向が出た。州当局によると、州内の感染による死者は前日比二百三十一人増の二万八百二十八人。入院中の患者数の減少は続いている。ニューヨーク市のデブラシオ市長は七日、来週から来月初めにかけて、希望する市民に対して十四万件の抗体検査を無料で行うと発表した。

<ワクチン>
*3-1:https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20200502-00000530-san-n_ame (産経新聞 2020.5.2) 米、年内にワクチン開発、量産計画 新型コロナ 官民で並行整備
 米国が新型コロナウイルスのワクチン開発を急いでいる。政府横断で進める「ワープ・スピード作戦」と呼ばれる計画は、有望なワクチン候補を手がける企業が、開発途中から生産体制を整備できるよう支援。年内に数億本の量産体制を目指す。世界的に競争が過熱する開発に国の威信をかけて臨む。米メディアに報じられた同作戦について、トランプ米大統領は4月30日の記者会見で、「責任者は私だ」と存在を認めた。ワクチンの安全性や有効性を確かめる臨床試験(治験)は通常1年~1年半を要するが、約8カ月で医療現場に投入する計画は「大げさではない」と述べ、スピード開発を主導する姿勢をみせた。すでに米国生物医学先端研究開発局(BARDA)がジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)と組んで、約10億ドル(約1060億円)を投じて開発を本格化させている。米バイオ企業モデルナにも最大4億8000万ドルを拠出した。米政府は資金拠出を通じて、ワクチン開発と生産体制の整備を一体的に支援。官民が連携し、医療現場への投入が承認されたワクチンを、早急に量産できるよう後押しする。企業にとっては、ワクチン投入が認められなければ設備投資が無駄になるリスクがあるが、政府支援を背景に「リスクを前提に先行して生産を始める」(米政権の新型コロナ対策チーム幹部)ことができる。J&Jは「米国内の施設の新設も含め、ワクチン生産体制を増強する」と表明した。世界保健機関(WHO)によると、新型コロナのワクチン候補は現在、約50ある。ワクチンや特効薬の開発に成功すれば、経済活動を停滞させる外出制限などの対策をとる重要性がなくなるだけに、欧州勢や中国も国力をあげて開発を進めている。医薬品の承認を担当する米食品医薬品局(FDA)のゴットリーブ元長官は、米紙への寄稿で「最初にゴールした国がいち早く経済を再建させ、国際的な影響力も高められる」として、米国が国際競争を制する必要性を強調した。

*3-2:https://www.businessinsider.jp/post-212222 (Bbusiness Insider 2020.5.1) 「早く、大量生産できる」新型コロナ国産ワクチン、年内供給を目指す。開発者に最新状況を聞いた
 世界中で流行が続く、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)。その治療薬やワクチンの開発は急務とされている。世界保健機関(WHO)の報告では、世界で70を超えるワクチンの開発プログラムが進んでいる。日本でも3月5日、大阪大学と大阪大学発のバイオベンチャー「アンジェス」が、従来のワクチンとは異なる「DNAワクチン」という手法を用いたワクチンの開発に取り組むことを表明。3月24日には、動物実験用の原薬の開発に成功している。アンジェスの創業者であり、DNAワクチンの開発に取り組む大阪大学大学院医学系研究科臨床遺伝子治療学の森下竜一教授に、DNAワクチンの開発状況、そして今後の対コロナ戦略について話を聞いた。
●世界初のプラスミドDNAを使った治療薬のノウハウを応用
— 森下先生はどのような研究をされているのでしょうか?
 森下竜一教授(以下・森下):私は、大阪大学で血管を再生させるための遺伝子治療薬を研究していました。その実用化のために設立した会社がアンジェスです。そこで2019年、大腸菌を培養することで得られる「プラスミドDNA」(環状のDNA)に、血管の再生に利用できる遺伝子を組み込んだ治療薬「コラテジェン」の実用化に成功しました。意図した遺伝子を組み込んだプラスミドDNAを体内に投与することで、体内で治療に必要とされる物質がつくられます。 厚生労働省から販売の認可が降り、世界初のプラスミドDNAを使った遺伝子治療薬となりました。他にも、プラスミドDNAをベースに、血圧を上げるホルモン(アンジオテンシンII)に対する抗体をつくるDNA治療薬の開発にも取り組んでいます。高血圧のDNAワクチンです。2020年3月には、オーストラリアで臨床試験を開始したことを報告しました。 来年には、結果が出てきます。
—なぜ、今回新型コロナウイルスのワクチン開発レースに参加できたのでしょうか?
森下:アンジェスは以前、アメリカのバイオテック「バイカル」に出資していました。バイカルは、エボラウイルスや鳥インフルエンザウイルスに対するDNAワクチンを開発しており、鳥インフルエンザウイルスが流行しかけたときに一緒に仕事をしていたんです。そのときの開発ノウハウと、アンジェスが実際に世界ではじめてプラスミドDNAを用いた遺伝子治療薬を製作したノウハウがあったため、迅速に新型コロナウイルスのワクチン開発をスタートできました。
●新型コロナウイルス用DNAワクチン
 プラスミドDNAに新型コロナウイルスの表面にあるタンパク質の一部を作り出すような遺伝子を組み込み、体内に投与する。体内で目的のタンパク質が作られると、免疫システムはそのタンパク質を排除対象として認識する。その結果、ウイルスが体内に侵入してくると、表面にあるタンパク質を目印にして排除されるようになる。生産にはタカラバイオさんにも協力いただくなど、現在は複数の企業連合のような形で開発を進めています。人工知能(AI)を利用して、第2世代のDNAワクチンの開発にも着手しています。
●パンデミックに有効なDNAワクチン
—DNAワクチンと従来のワクチンの違いはどのような点ですか?
森下:インフルエンザワクチンなどの普通のワクチンは、不活化ワクチンや生ワクチンと呼ばれ、その開発にはウイルスそのものが使われます。弱毒化(あるいは不活化)したウイルスを有精卵に接種して、「抗原」(ウイルスがもつ、免疫反応を引き起こすタンパク質)をつくります。それを体内に入れることで、免疫を担う「抗体」ができるという仕組みです。この手法は確立されたものですが、開発までにウイルスを見つけてから6〜8カ月くらいかかります。 また、有精卵を使う以上、すぐに大量生産することができません。一方で、DNAワクチンは大腸菌を増殖させれば(プラスミドDNAを増やせるので)、簡単に増産することが可能です。値段が比較的安いというのも一つの特徴です。また、ウイルスそのものを使うのではなく、ウイルスの遺伝情報をプラスミドに挿入して利用しているため、ウイルスのゲノム情報が公開されればすぐに開発に着手できる上、安全だというのも大きなポイントです。早期に大量生産でき、さらに安いという点が大きなメリットといえます。新型コロナウイルスのDNAワクチンとして、アメリカのバイオテクノロジー企業のモデルナが新型コロナウイルスのDNAデータが公開されてから42日でRNAワクチン(DNAワクチンと似たタイプのワクチン)を作りました。アンジェスは3月5日に開発を発表して、3月24日にはDNAワクチンが完成しました。20日間で作れたのは、世界最速です。
— ワクチンには副作用がつきものです。どういったものが考えられますか?
森下: 副作用は2つに分けて考えられます。1つは、ワクチンで免疫をつけること自体に対する副作用。もう1つは接種するワクチンの種類ごとに生じる副作用です。どんなワクチンでも、接種する際にADE(Antibody Dependent Enhancement)という現象が生じることがあります。ウイルスに感染しないためのワクチンを接種することで、逆にウイルスに感染しやすくなってしまう現象です。動物実験や一部のワクチンの臨床試験で報告されていますが、詳しいメカニズムは分かっていません。どういったワクチンを接種しても起こるため、そのリスクを踏まえてワクチンの接種対象を選ぶ必要があるでしょう。若い人が新型コロナウイルスに感染してもあまり重症にならないのであれば、ADEが生じるリスクを避けてワクチンを接種しないほうが良いかもしれません。一方、高齢者や合併症(既往歴)を持つ人など、新型コロナウイルスに感染した場合の致死率が高い人は、ADEが生じる割合を考慮してもワクチンを接種するメリットが大きいのではないでしょうか。また、感染する可能性が高い医療関係者に対するワクチンの接種も、デメリットを大きく上回るメリットがあるでしょう。
— 従来のワクチンとDNAワクチンで副作用に違いはありますか?
森下:生ワクチンや不活化ワクチンといった従来のワクチンは、ウイルスそのものを使うため、副作用としてウイルスの影響が出る可能性があります。また、ワクチン内にウイルスが混じる可能性もあります。一方、DNAワクチンについては、ほぼ副作用はないと思っています。2019年に販売を開始したコラテジェンという血管再生のDNA治療薬でも、今回開発しているDNAワクチンと同じ仕組みを使っています。臨床試験では、比較対象となった方々との間で、DNA治療薬を使ったことで生じる重篤な副作用はみられませんでした。
— 確認できる範囲では大きな副作用はなさそうということですね。では一方で、DNAワクチンの効果は従来のワクチンと遜色ないのでしょうか?
森下:DNAワクチンが安全なのは間違いないですが、抗体を作り出す能力が若干弱いとされるのが懸念点です。だからこそ、抗体をつくる能力を上げるために、 ほかの企業と一緒に、第2世代のDNAワクチンの開発にも力を入れています。プラスミドに組み込む遺伝子を調整したり、ワクチンと一緒に投与する「アジュバンド」と呼ばれる物質や、DNAワクチンと相性の良い抗体誘導ペプチドの研究を進めたりしています。
— ワクチンを接種したあと、効果の持続期間はどの程度になるのでしょうか? インフルエンザのように、毎年打たなければ意味がないのでしょうか?
森下: コロナウイルスに対するワクチンは前例がないため、正直、実際にやってみないと分かりません。インフルエンザワクチンの効果は大体3カ月くらいです。仮にコロナウイルスに対するワクチンが半年程度しかもたないとすると、毎年のように打たなければならなくなるので、少し厳しくなりますね。
— その場合、抗体ができやすい他のワクチンを検討しなければならないということでしょうか?
森下:正直なところ、DNAワクチンなどの新しいワクチンは、パンデミックを一時的にしのぐためのものです。恒常的に打つようなものではありません。とりあえず社会生活を維持し、その間に治療薬や通常のワクチンの開発が追いついてくるための、リリーフ役でしかありません。DNAワクチンはパンデミック対策に向いているといえば向いていると思いますが、対策のメインとして長期間据えるのは厳しいと思っています。実は、SARS(重症急性呼吸器症候群、コロナウイルスが原因の感染症)が流行した時に、従来の方法ではワクチンを作ることができませんでした。その際の経験などから、有精卵を使ってワクチンを作る手法だと、コロナウイルスに対するワクチンを作りにくいのではないかという話もあります。これがもし本当なら、先行きはかなり暗いです。
●自国のワクチンは自国で。年内に10万人分を確保へ
— 今後、どのようなステップで臨床試験が進んでいくのでしょうか?
森下:今、動物での試験を実施しているところです。その結果をもとに、7月からヒトへの臨床試験が行われます。 最終的な実用化に向けた試験も9月から実施する予定です。年内には、医療従事者を中心に十数万人にワクチンを接種することを目標としています。
— 性急な臨床試験で、安全性は十分担保されるのでしょうか?
森下:当然安全性の試験はしっかりと進めます。また、すでにある程度安全性について確認済みのものを利用しているので、その面での心配は低いと考えています。アジュバンドなどを加えるにしても、もう臨床現場で使われている物質、承認されている物質を使う予定です。
あらためて全く新しいものを開発すると、その承認に時間がかかりすぎてしまいますから。
— 臨床試験で効果が思うように出なければ、開発のやり直しになるのでしょうか?
森下: 第1世代でどの程度効果があるのかは分かりませんが、パンデミック用のワクチンの開発では、どうしてもそうした問題が起こります。また、仮に第1世代のワクチンを投与したときにできる抗体が少なかったとしても、ある程度の効果を見込んで接種を進めていくことになると思います。また、効果が思うように出なくても、バックアップとして準備している第2世代のDNAワクチンがあります。第2世代の開発は、2021年の前半に間に合えば良いかなというくらいです。
— 世界中で開発が進められていますが、日本のワクチンはどういった立ち位置なのでしょうか?
森下:モデルナやイノビオなど、アメリカの企業ではすでにヒトでの臨床試験に入っているところもあります。ただし、アメリカで仮にうまくワクチンができたとしても、それが日本にやってくるまでには時間がかかります。まずは、自国が優先になるはずです。加えて、仮に技術を提供してもらい日本で同じものをつくろうとしても、まったく同じ結果にはなりません。そういう意味では 複数のワクチンを並行して開発し続けるしかないと思います。少なくとも、自国でパンデミックに対応できる体制を整備しないといけません。

*3-3:https://www.bbc.com/japanese/52540664 (BBC 2020年5月5日) ワクチン開発で世界が協力、8500億円拠出 マドンナさんも
 新型コロナウイルスに対するワクチンや治療薬開発に向けた国際会議が4日開かれ、参加者らが総額80億ドル(約8500億円)以上の拠出を約束した。欧州委員会の呼びかけで行われた会議には30カ国以上が参加。国連や慈善団体、研究機関なども支援を発表した。欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長は、これらの資金が前例のない国際協力の端緒になると説明。一方で、資金はさらに必要になるだろうと警告した。この会議は欧州委員会のほか、イギリス、カナダ、フランス、イタリア、日本、ノルウェー、サウジアラビアが共同で主催。一方、アメリカとロシアは参加しなかった。昨年12月に新型ウイルスが発生した中国は、EU大使が代表として出席した。欧州連合(EU)によると、今回集まった資金のうち44億ドルがワクチン開発に、20億ドルが治療研究に、16億ドルが検査キットの製造に充てられるという。会議では、欧州委員会とノルウェーが共に10億ドルずつの拠出を約束。フランスとサウジアラビア、ドイツはそれぞれ5億ユーロ(約580億円)を、日本は850億円以上を支援する。また、米歌手マドンナさんも110万ドルの寄付を約束したという。開会の演説でフォン・デア・ライエン委員長は、「真の国際的な挑戦」のために誰もが資金を拠出すべきだと呼びかけた。「5月4日という日は世界中が協力した日として、新型ウイルスとの戦いの転換点になるだろう」。「協力者はたくさんいるが、目標はひとつ、このウイルスを倒すことだ」。ボリス・ジョンソン英首相も、専門知識を「共有すればするほど」、科学者はより早く「ワクチン開発に成功するだろう」と語った。自身もCOVID-19に感染し、一時は集中治療を受けていたジョンソン首相はこの席で、イギリスが3億8800万ユーロ(約515億円)を拠出すると発表した。共同声明で各国首脳は、今回の支援は「科学者と規制当局、産業と政府、国際機関、慈善団体、医療の専門家らによる前例のない国際協力の端緒になる」と説明。「世界が世界全体のためにワクチンを開発できれば、21世紀を象徴するグローバルな公益となるだろう」と述べている。この国際会議では、世界保健機関(WHO)の活動を支持する署名も行われた。WHOをめぐっては、アメリカが批判を強めている。
●ワクチンの実用化は来年半ばか
国連は、これまでの生活を取り戻すにはワクチンが不可欠だとしている。現在、世界各地でワクチンの開発プロジェクトが進められている。しかし多くの支援をもってなお、どの開発が成功し、効果を出すのかを見極めるには時間がかかる。専門家の大半は、ワクチンの実用化は、新型ウイルスが初めて確認されてから12~18カ月後に当たる2021年半ばごろになるだろうとしている。

<治療薬>
*4-1:https://www.nishinippon.co.jp/item/n/607425/ (西日本新聞 2020/5/11) アビガン投与「福岡県方式」構築 47機関、医師判断で早期対応可能に
 福岡県医師会は11日、新型コロナウイルス感染症への効果が期待される新型インフルエンザ治療薬「アビガン」を、主治医が重症化の恐れがあるなどと判断した場合、軽症でも早期投与できる独自の体制を整えたと発表した。県内47の医療機関が参加を表明しており、県医師会は「『福岡県方式』の構築で新たに投与できる患者はかなり多く、影響は大きい」としている。アビガン投与には、藤田医科大(愛知)などの観察研究への参加が必要。県医師会が一括して必要な手続きを行ったことで、これまで未参加だった27機関が加わり、計47機関で投与できるようになった。今後も増える見通し。主に重症や中等症の患者に投与されていたが、「主治医等が重症化の可能性を憂慮する患者」を対象に明記したことで、主治医が必要と判断すれば軽症でも早期投与が可能としている。投与には入院が必要という。ただ、アビガンは動物実験で胎児に奇形が出る恐れが指摘され、妊婦や妊娠の可能性がある人などには使えない。肝機能障害などの副作用も報告されており、患者への十分な説明と同意が必要となる。新型コロナ感染症の治療薬としては、厚生労働省が7日、米製薬会社が開発した「レムデシビル」を国内で初承認。安倍晋三首相はアビガンについても今月中に承認する意向を示している。

*4-2:https://digital.asahi.com/articles/ASN563RVMN55UHBI03L.html (朝日新聞 2020年5月6日) コロナ感染歴ある子どもに「川崎病」症状 欧米で相次ぐ
 新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、子どもに多い原因不明の難病「川崎病」に似た症例の報告が欧米で相次いでいる。多くが新型コロナの感染歴があり、大人でも似た症状の人がいる。新型コロナとの関連が指摘されている。米ニューヨーク市の保健局は4日、2~15歳の15人で「多臓器炎症型疾患」が確認されたと発表した。川崎病に似た症状で、高熱や発疹、腹痛、吐き気、下痢などがみられたという。そのうち10人が新型コロナのPCR検査や抗体検査で陽性が判明し、感染歴があることが分かった。いずれも亡くなってはいない。同じような症例は、英国やフランス、スペイン、イタリアなど欧州で相次いで報告されている。免疫の過剰反応で、血管に炎症が起き、血栓ができやすくなる。新型コロナに感染した大人からも見つかっている。世界保健機関(WHO)の感染症専門家マリア・ファンケルクホーフェ氏は、「新型コロナに感染した子どもの多くは症状が軽く、重症化する例は少ない。多臓器炎症を起こす例はとてもまれだ」と指摘。一方、ウイルスとの関連が疑われるため、現場の医師らで遠隔会議を開いて情報交換しているという。川崎病は1967年、旧日赤中央病院(東京都)に勤めていた小児科医の川崎富作さんが初めて報告した。全身の血管に炎症が起きる。疫学的にはアジア系、とくに日本人に多いとされている。日本での全国調査(2018年)では、患者の割合は0~4歳の人口10万人のうち360人程度で、致死率は0・03%となっている。遺伝的要因のほか、流行に地域性や季節性があるため、細菌やウイルスなどの感染が原因との説がある。

*4-3:https://doctorsfile.jp/medication/255/ (敗血症 2019/12/12) 順天堂大学医学部附属浦安病院 血液内科長 野口雅章先生
●概要
 感染症がきっかけとなって起きる、二次的な症状。具体的には、何らかの感染症を起こしている細菌などが増殖して炎症が全身に広がり、その結果、重大な臓器障害が起きて重篤になっている状態。敗血症を引き起こしたもととなる原因を見つけ、その治療を早期に開始しなければ、命に関わる危険もある。どんな感染症でも敗血症を起こす引き金になる可能性があり、特に、免疫力がまだついていない乳幼児や、高齢者、糖尿病などの慢性疾患やがんなどの基礎疾患がある人や、病気治療中で免疫力が低下している人は、感染症から敗血症を起こすリスクが高い。
●原因
 原因となる細菌として代表的なものに、連鎖球菌、ブドウ球菌、大腸菌、緑膿菌などが挙げられる。こうした細菌に感染することで、皮膚の化膿、肺炎などの呼吸器感染症や肝臓、腎臓、腸などの感染症など、さまざまな感染症が最初に起き、免疫力が低いとそこから敗血症が起きやすくなる。また、細菌だけでなく、インフルエンザウイルスなどのウイルスやカビなどの真菌、寄生虫などによる感染症も原因となり得る。カテーテルを挿入することによる尿路感染や、人工関節などを使用している場合も注意が必要。この他に、白血球の中の一種である好中球(こうちゅうきゅう)が減少する「好中球減少症」の状態だと、感染症にかかりやすくなり、敗血症を起こす可能性が高まる。好中球減少症は、遺伝性による先天的なものと、後天的なものがあり、抗がん剤による化学療法を受けているがん患者にもよく見られる。
●症状
 敗血症では何か1つの症状や兆候が出る、というようなことは基本的にはなく、障害が起きている臓器によって、さまざまな症状が起きる。初期の主な症状としては、悪寒を感じたり、全身のふるえや発熱(高熱になることが多い)、発汗などが見られたりすることが多い。症状が進行すると、心拍数や呼吸数の増加、血圧低下、排尿困難、意識障害などが生じてくる。重症化してしまうと、腎不全や肝不全といった臓器不全、敗血性ショックを招き、命を落とす危険が高まる。また、皮下出血が見られる場合は、播種性(はしゅせい)血管内凝固症候群(DIC)を併発した可能性があり、やはり重篤な状況である。
●検査・診断
 敗血症の原因となっている感染症を確認するために、胸部エックス線や全身CT検査などの画像診断を行う。また、血液検査や原因菌を特定するための培養検査も実施する。ただし、感染症治療のために抗菌薬が用いられている場合は、菌を培養できない可能性もある。感染症があり、その上で、意識障害がある、収縮期血圧が100mmHg以下、1分間の呼吸数 22回以上、の3つのうち、2つの要件を満たしていれば、敗血症の可能性が高い。確定診断のためには、さらに臓器障害の程度を調べる必要がある。
●治療
 感染症の原因となっている病原体を早急に特定して、治療を開始する。薬物治療であれば、細菌の場合は抗菌薬、ウイルスの場合は抗ウイルス薬、真菌の場合は抗真菌薬、寄生虫の場合は抗寄生虫薬を用いる。感染症の状態によっては、外科的治療が必要になるケースも。症状が進行している場合は、検査結果が出る前(原因菌が判明する前)から、抗菌薬を投与する場合も多い。その際、原因菌によって薬剤に耐性があることもあるため、どの抗菌薬を用いるかは、よく検討する必要がある。敗血性ショックが起きている場合は、血圧を上げるために大量の輸液や昇圧薬を点滴投与する。同時に酸素吸入や人工呼吸器を使って、高濃度酸素を投与するなどの全身管理を行う。この他、人工透析や、血糖値を下げる必要があれば、インスリン静脈内注射を行うなど、状況に応じた治療が行われる。
●予防/治療後の注意
 発見が遅れるほど死亡リスクが高まり、助かった場合でも後遺症が残ることが多い。後遺症は、治療後数週間を経てわかることもあるため、注意が必要。後遺症が出た場合は、それぞれの症状に応じて、リハビリテーションを行う。予防のために、乳幼児、高齢者や慢性疾患、がんなどの病気治療で免疫機能が低い人は、まず敗血症につながる感染症を起こさないことが重要となる。手洗いやうがいをこまめにして、風邪をひかないようにしたり、必要であればインフルエンザなどのワクチン接種を受けたりするなど、感染症にかかるリスクをできるだけ排除するようにしたい。

<教育>
*5-1:https://www.u-tokyo.ac.jp/ja/about/president/COVID-19-message-3.html (2020年4月21日 東京大学総長 五神 真) 新型コロナウイルス感染症に関連する対応について、総長メッセージ
●新型コロナウイルス感染症(COVID-19)緊急対策のために
 現在、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が、世界規模で爆発的に拡大しています。国内においても都市部を中心に患者が急増し、終息の見込みは立っておりません。特に海外では医療崩壊により十分な医療が受けられない状態に陥るケース等も発生し、これまでに例をみない被害が生じています。そうした困難を前に、現場で過酷な診療業務に就いている方々に、心からの敬意と感謝の意をお伝えしたいと思います。東京大学では、すべての構成員の健康を最優先するとともに、学生の学びの機会を確保するため、オンライン授業への全面的な移行を進めました。その一方で、学生それぞれの接続環境によって不公平が生じないよう対策を講じています。なによりも東京大学の学生には自立した個人として、その行動が他者や社会に与えることの自覚をもち、他者への思いやりを大切にすること、そしてこの危機は必ず終息するということを忘れず、焦らず、希望を持ち、諦めないことを伝えています。感染拡大を阻止するためには、治療薬やワクチンの開発等を進めることも喫緊の課題です。本学の研究力を活かして、治療に寄与する薬剤の同定や検査技術の開発さらには疫学的解析など様々な分野で研究・開発を進めています。これまでにも感染阻止の効果が期待できる国内既存薬剤を同定したことを発表するとともに、東京大学ではPCR検査を迅速に行うことのできる検査機器の導入、コロナ対応ICUの整備、中等症患者に対応する病棟の開設など、全診療科の医師・看護師が参加しての医療体制の充実を図ってきました。しかしながら、現時点で速やかに実行すべき取り組みは、これにとどまらず広範囲にわたります。ここに挙げた学習環境の整備や、医療体制の更なる充実はもちろんのこと、例えば財政的基盤が脆弱な東大発ベンチャー企業の支援等、それ以外にも多数考えられます。それらに対応するには、さらに充実した財政的下支えが必要不可欠です。いま、この未曾有の難局にあたり、東京大学は、開学140年にわたる知の協創の拠点として、世界最高水準の学問の叡智を結集させ、この人類の新たな脅威に全力で立ち向かう所存です。再び、安心して暮らせる日常を共に、一日も早く取り戻すべく、皆さまのご支援をお寄せいただきますよう、お願い申し上げます。

*5-2:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/522135 (佐賀新聞 2020.5.13) <新型コロナ>14日、佐賀県内の学校再開 「3密」回避に苦慮
 新型コロナウイルスの感染防止のため休校していた佐賀県内の県立学校や各市町の小中学校などが14日から、再開される。学校現場や教育委員会は、水泳の授業を中止するなど感染予防の対策を強化しているが、集団生活を送る上で密集などの「3密」を避けることは限界があり、難しい対応が迫られる。県教育委員会は、文部科学省のガイドラインに沿って換気の徹底や人数を分けた学習の検討など、再開後の感染防止対策を文書で通知した。児童生徒と教職員がマスクを着用することを明記し、給食では机を向かい合わせにせず、会話も控える。感染防止を理由に自主的に休む児童生徒は欠席扱いにしない。これらの特別措置の期限について県教委の担当者は「感染状況の見通しが立たず、当面続ける必要がある」と話した。文科省のガイドラインでは、児童生徒同士の座席を1~2メートル離すことが望ましいとしているが、40人規模の学級を抱える大規模校からは「空き教室がほとんどなくて距離を確保するのは難しく、マスク着用や換気の徹底をやるしかない」との声が漏れる。授業を20人以下で行う方針を示す武雄市は「各校で、できる限りの対応を考えているが、教員数の問題もあり、全授業での実施は難しい」としている。小城市や西松浦郡有田町などは水泳の授業について「更衣室が密集状態になり、換気も難しい」と中止を決めた。音楽では合唱や合奏を避けて鑑賞を先行させたり、家庭科の調理実習を年度後半にずらしたりするなど、各校で計画の変更を余儀なくされている。登下校時に密集する玄関やクラス単位で一斉となる教室の移動にも学校現場は気をもむ。杵島郡大町町では、保護者の意見を踏まえて集団登校を小学部と中学部で分ける。スクールバスを運行する多久市は、学校再開初日に乗車場所で座席の間隔を開けて利用するよう指導する。グループ学習など対面での学習活動も避けなければならず「密を避ける授業では話し合いなど『対話的学び』ができなくなる。これまでと違う形の授業で充実できるかどうかが心配」(大町町教委)との指摘も上がっている。

*5-3:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200511&ng=DGKKZO58922190Q0A510C2MM8000 (日経新聞 2020.5.11) 教室から消えた13億人 窮地が促す学び改革 コロナ、出口は見えるか(4)
 「多くの生徒らの学習が遅れている。学校再開の決定は簡単ではないが対応を急ぐべきだ」。国連教育科学文化機関(ユネスコ)のアズレ事務局長が4月末、声明で訴えた。新型コロナウイルス対策の全国的な休校は177カ国・地域で続き、全世界の72%、約13億人が登校できていない。学力格差への懸念が各国で強まる。11日から段階的に学校を再開するフランスのブランケール教育相は「休校を続けすぎると(自宅の学習環境の違いで)格差を助長する」と強調。小学校は1学級15人以下とし、校内の動線を決め接触を減らすなどして感染を防ぐ。オンライン(遠隔)授業が広がる米国では、インターネット環境が整わない家庭の子どもの学習支援で官民が連携する。カリフォルニア州はグーグルからパソコン4千台の提供を受け、生徒に配った。中国でもオンライン会議システムを使った授業が拡大中だ。ネット通販大手、アリババ集団のシステムの利用実績は約14万校、1億2千万人規模に上る。4月22日時点で小中の95%、高校の97%が休校していた日本。自宅学習は紙の教材が中心で、公立小中高校など約2万5千校の95%は同時双方向のオンライン指導ができていない。「子どもの勉強習慣がなくなってしまった」。夫と共働きの東京都内の女性(40)は焦りを募らせる。小5の次男が通う公立小は2週間に1度、宿題の進み具合を報告させるだけ。一方、私立中に通う長男は遠隔学習で以前と同じ時間割で勉強を続けている。足踏みの背景には教育のデジタル化の遅れがある。経済協力開発機構(OECD)の2018年調査によると日本の15歳生徒の8割が学校でデジタル機器を利用していない。学校の情報化を怠ってきたツケが出た形だ。出口に向けては重層的な戦略が要る。感染予防を徹底しての学校再開と再休校に備えた遠隔学習の環境整備は不可欠だ。政府内では学習の遅れを取り戻し、学事暦を国際標準に合わせる策として「9月入学・始業」の論点整理も進む。移行には課題もあるが、社会全体でグローバル化に向けた方策を抜本的に議論する好機だ。米ブルッキングス研究所などは学校や大学の4カ月間の休校により、若者の生涯収入減少などを通じて米国が将来的に被る経済損失が2.5兆ドル(250兆円)、年間国内総生産(GDP)の12%に上ると試算する。各国はこうした事態を懸念し、教育の再構築を進める。韓国は休校中、小中高生に情報端末など28万3千台を貸与。低所得世帯の約17万人にはネット通信費を支援した。緊縮財政で教育予算を削ってきたイタリアも遠隔教育の推進に8500万ユーロ(97億円)の予算を確保した。「危機をチャンスに変えたい」とアゾリーナ教育相。日本も社会総がかりで学びの保障に取り組む覚悟が要る。

<新型コロナの検査及び診療体制は憲法第25条違反である>
PS(2020年5月14日追加):*6-1のように、大相撲の力士、勝武士(28歳)が新型コロナに感染して体調が悪化し、4月4日頃から38度台の高熱が続いたが受入先医療機関が見つからず、4月8日夜に咳をした時に出るたんに血がまじる症状が出て初めて都内の病院に救急搬送されて入院でき、4月10日にPCR検査で陽性と確認され、4月19日からICUに入って、5月13日未明に多臓器不全で死去されたそうだが、このような人は多いだろう。
 このような診療の遅れについて、日経新聞は、*6-2のように、「①新型コロナウイルスの専門外来への窓口である帰国者・接触者相談センターのパンク状態が続いているから」「②国が相談の目安を緩めて負荷が増す恐れもある」「③帰国者・接触者相談センターで担当している看護師は、1日約2500件の電話のうち回線の制限から対応できるのは約500件までで、厚労省が5月上旬まで『37.5度以上の発熱が4日以上』等と設定していた相談目安に合致するので詳しく症状を聞く必要があると判断したのは10件ほどで、実際にPCR検査を勧めたのは1日平均3件だった」「④大半の相談はごく軽い微熱など殆ど症状がない状態で、取ることすらできない電話の中に数十人、すぐに検査が必要な人がいるのではないか」「⑤政府の専門家会議は5月4日にPCR検査の件数が十分に伸びていない理由として相談センターの業務過多を指摘し、人員の強化を訴えた」「⑥聖マリアンナ医科大の国島教授が、相談に対応できる保健師や看護師はとにかく人手不足なので、自動応答システムを使った相談の仕分けなどで、業務を効率化していくことも検討すべきだ」などと書いている。
 しかし、仕事を引き受けた以上は、①②③④のように人手不足だから命にかかわ電話の500/2500(20%)しか取れず、厚労省の目安に従って機械的に振り分けた結果、検査に至ったのはそのうち3/500(0.6%)しかなかったというのは、保健所や相談センターを通したのが間違いだったことを示しているにすぎない。従って、⑤のような焼け太りは許されず、そもそも⑥は、保健師や看護師には診断する資格や権限はないため、厚労省の目安に従って保健師・看護師・事務職などが検査の要否を判断すること自体が違法行為なのである。
 そのため、厚労省の指示は、違法行為であるだけでなく、国民の生存権を脅かしている上、国が社会保障や公衆衛生の向上・増進に努めなければならないとする日本国憲法第25条(*6-3参照)に違反している。そして、この大失敗の結果は、むしろ現場医療従事者の感染リスクを拡大させて苦労を強い、一般国民にも生命及び経済活動の両面で大きな迷惑をかけたため、この仕組みでPCR検査が遅れて重症化した人や亡くなった人の家族は、集団訴訟して実態を白日の下に晒すくらいでないと、今後も厚労省はじめ行政の態度は変わらないと思う。
 なお、このように検査が拒まれ、まともな医療も受けられない中で、埼玉市はじめ各地で、*6-4のような「こころの相談窓口」が設置されたのには呆れた。何故なら、病気になっても診療してもらえない不安や経済停止で経営破綻しかかっている事業者の不眠は、心が正常に働いている証拠であって異常ではないからで、その“処方箋”は、犠牲者が心理の専門家に相談して心理分析してもらうことではなく、病気になったら受診できる医療体制を復活し、緊急事態宣言の解除や足りない資金の補助・融資を行うことだからである。

*6-1:https://digital.asahi.com/articles/DA3S14475075.html (朝日新聞 2020年5月14日) 28歳力士、コロナで死去 勝武士 20代以下の死亡、国内初
 大相撲の三段目力士、勝武士の末武清孝さん(28歳、山梨県出身、高田川部屋)が新型コロナウイルスに感染して体調が悪化し、13日未明に多臓器不全のため死去した。日本相撲協会が発表した。協会は同日、過去の感染歴を調べる抗体検査を、約1千人いる親方、力士、裏方ら協会員の希望者全員に実施する方針も明らかにした。検査を終えるには、約1カ月かかる見通しだ。厚生労働省によると、20代以下が死亡するのは国内で初めて。新型コロナウイルス感染で亡くなったのは角界では初で、国内の主立ったプロスポーツの選手でも初めてとみられる。協会によると、勝武士は4月4日ごろから38度台の高熱が続いたが、受け入れ先の医療機関が見つからなかった。都内の病院に入院できたのは、せきをした際に出るたんに血がまじる症状が出て救急搬送された同8日の夜だった。協会は「都内の医療機関がひっぱくした時期と重なってしまいました」としている。この際に受けた簡易検査では陰性と判定されたが、同10日にPCR検査で陽性と確認され、同19日から集中治療室(ICU)に入っていた。複数の関係者によると、糖尿病の基礎疾患があったという。葬儀などは未定。勝武士が所属する高田川部屋では、師匠の高田川親方(元関脇安芸乃島)らも感染が確認されたが、いずれも軽症ですでに退院している。

*6-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200514&ng=DGKKZO59037720T10C20A5CR8000 (日経新聞 2020.5.14) コロナ相談窓口なお激務、症状と関係ない電話4割  検査の目安緩和で負荷増も
 新型コロナウイルスの専門外来への窓口である帰国者・接触者相談センターのパンク状態が続いている。全国の電話相談の件数はピーク時から減少しているものの、負担の大きい自治体からは「必要な電話が見逃されている」と不安の声が上がる。国が相談の目安を緩めたことを受け、負荷が増す恐れもある。専門家は体制強化や業務の自動化の整備を訴えている。「あんたに検査を受けられない人の気持ちが分かるのか」。北海道のある自治体の相談センターには、辛辣な言葉を浴びせる電話がしばしばかかってくる。担当する看護師によると、1日にかかってくる約2500件の電話のうち、回線の制限から対応できるのは約500件まで。厚生労働省が5月上旬まで「37.5度以上の発熱が4日以上」などと設定していた相談目安に合致するとみて、詳しく症状を聞く必要があると判断したのは10件ほど。実際に専門外来でのPCR検査を勧めたのは1日平均3件だった。この看護師は「基準に合致しない人でも不安を感じていることには変わりなく、検査が必要ないと言ってもすぐには納得してもらえない」と話す。大半の相談はごく軽い微熱などほとんど症状がない状態で、むしろ「取ることすらできない電話の中に数十人、すぐに検査が必要な人がいるのではないか」とみている。相談センターの受け付けは毎日24時間。常勤者の1人当たりの勤務は1日8~16時間で週5日間程度に及ぶ。しかも、残業が1時間ほど必要な日がほとんどだ。「帰宅しても疲れで食事すらできない日もある。心身ともに限界に近い」。厚労省は5月8日、診察やPCR検査を受ける際の「相談・受診の目安」を改めた。37.5度以上などとした従来の目安を削除した上で「息苦しさ、強いだるさ、高熱」といった症状がみられた場合はすぐに相談するよう求めている。感染者の見落としをなくして感染の再拡大を防ぐのが狙いだが、北海道地域保健課の担当者は「今後、相談センターの対応業務が増加する懸念がある」と話す。厚労省の公開資料を分析すると、全国のセンターで相談を受けた電話は、4月の1日平均で約2万3千件。直近は減少傾向にあるものの、一般的な質問など症状と関係のない相談が全体の4割近くを占め、実際に専門外来の受診に至るのは7%にとどまる。厚労省は一般的な相談の窓口を別に設けるといった体制強化を自治体に求めているが、一筋縄ではいかない。4月から一般相談窓口を開設した東京都では、一般窓口が開いていない深夜から朝に相談センターに電話が集中する。夕方以降の時間帯に200件前後で推移していた相談件数は、10日には約340件まで増加。都の担当者は「目安が変わった影響もあるだろう。質問の内容も広がり、1件あたりに応じる時間も体感的に長くなったと負担を感じる職員もいる」と明かす。政府の専門家会議は5月4日、PCR検査の件数が十分に伸びていない背景のひとつとして、相談センターの業務過多を指摘。改めて人員の強化を訴えた。聖マリアンナ医科大の国島広之教授(感染症学)は「相談に対応できる保健師や看護師はとにかく人手不足。チャットボット(自動応答システム)を使った相談の仕分けなどで、業務を効率化していくことも検討すべきだ」と指摘している。

*6-3:https://kotobank.jp/word/%E6%97%A5%E6%9C%AC%E5%9B%BD%E6%86%B2%E6%・・ より抜粋
日本国憲法第25条
1 すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。
2 国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。

*6-4:https://www.city.saitama.jp/002/001/008/006/013/002/p072196.html (埼玉市 2020年5月1日) 新型コロナウイルス感染症の拡大等に伴うこころのケアについて
 新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、わたしたちの生活にも大きな影響が出ています。環境の変化や先の見えない状況、行動の不自由さなどの中で、ストレス状態が長く続くと気持ちやからだや考え方に、様々な変化(反応)が起こりやすくなります。こうした反応は「誰にでも起こりうる自然な反応」ですが、長引くことで不調のきっかけになることもあります。(以下略)

<検査とワクチン開発>
PS(2020年5月16、18日追加):*7-1のように、東京などの8都道府県を除く全国39県で緊急事態宣言が解除されたが、8都道府県も専門家の見解を踏まえて31日を待たずに21日に解除することもあり、その条件は、①1週間当たりの新規感染者が10万人あたり0.5人以下に低下したかどうか ②医療体制 ③検査体制の整備 などを目安に判断するそうだ。が、日本は、*7-2のように、PCR検査を徹底して行い1日数千人単位で感染者が出た欧米諸国と異なり、3月から5月15日に至るまで検査数を著しく制限しているため、現在も正確な感染者数はわからず、偽の安心に陥っている可能性がある。
 ただ、原発事故後の東北・関東では、放射性物質や花粉などの有害物質を吸い込まないために、マスクをしたり、空気清浄機をつけたりする人が多く、また、上下水道が整備され、国民全体として栄養状態がよく、衛生意識も比較的高く、室内に入る時は靴を脱ぐことなどから、他国よりも感染拡大が防げたかも知れない。そのため、罰則付のロックダウンでなければ効果がないということはなかった。
 このようにPCR検査数が足りない中、*7-3のように、新型コロナの大規模抗体調査を来月から複数自治体の住民を対象に1万人規模で実施して地域の感染状況を把握するというのは興味深い。しかし、これとは別に医療関係者は優先的に抗体検査をした方がよいし、東京や東北地方だけでなく日本中で大規模に行った方がよい。また、同じ県に住んでいても、都市部と農村部・年齢・性別などによって感染率が異なるだろう。なお、昨年採取した血液も一定割合で陽性となるそうだが、本当は昨年も無症状の感染者がいたか、風邪など同種のコロナウイルスにも反応しているのではないか?
 米トランプ政権は、*7-4のように、開発期間を大幅に縮めてワクチン開発を行うそうで、未感染の人に抗体(免疫)を作るにはワクチンの接種しかなく、開発に成功すれば世界でニーズがあるため、経済に関する感性がよいと思う。WHOは、5月5日時点で開発中のワクチンが100種を超え、ヒトへの臨床試験が始まったのが8種類あるとしている。また、IMFは、2020年の世界経済の成長率予測を1月にプラス3.3%と見込んでいたが、新型コロナ感染拡大後にマイナス3%へ引き下げ、日本の経済規模に匹敵する約500兆円の経済損失が生じたそうだ。このうち1%にあたる5兆円でもワクチンの開発に充てていたら損失を回避できたため、日本の「新常態」では、医療体制・検査体制の充実やワクチン・治療薬の研究開発投資が求められるのである。
 なお、*7-5のように、福岡市教育委員会は、5月15日、市立小・中・特別支援学校の夏休みを8月7~19日の13日間とし、授業時間を短縮して授業のこま数を最大7時間に拡大するなどして、臨時休校による学習の遅れを解消させるそうだ。これは、他の地域でも参考になるが、夏休みを短くするには教室にエアコンを設置することが不可欠になるため、フィルターや殺菌機能のついた空気清浄機能付エアコンの新製品が望まれる(これも、世界にニーズがある)。
 また、*7-6に、「①新型コロナ感染症にかかった多くの重症患者にとって最大の脅威はコロナウイルスそのものではなく、人体がウイルスと闘うために立ち上げる免疫システムだ」「②免疫システムは病原体から体を守るために不可欠だが、健康な細胞を傷つける激しい凶器にもなる」「③このサイトカインストームは過剰な炎症を引き起こす免疫システムの暴走である」「④そのため、免疫反応を抑制する必要がある」等と書かれているのには、私は賛成できない。
 何故なら、①は、治療の遅れを本人の免疫システムのせいにするもので、②は、ウイルスが侵入した細胞は健康な細胞でないため免疫は細胞ごと攻撃せざるを得ず、③の、身体中で炎症を起こしているのは、重症化して身体中で細胞がウイルスに侵され、ウイルス自体もどこにでもいる状態だからだ。そのため、④の、免疫システムの“過剰”な暴走だとして免疫反応を抑制するのはウイルスの激しい戦闘中に味方の免疫細胞(兵士)に戦闘中止の命令を出すのと同じである。
 従って、「サイトカインストーム」は新型コロナ感染症の人が亡くなる原因というより、亡くなる直前の激しい戦闘であり、「サイトカインストーム」がエボラ出血熱・インフルエンザ・マラリア・エリテマトーデス・特定の種類の関節炎などでも起こる新型コロナ特有のものでないのは、自衛軍に敵の侵入を知らせる警報だからで、新型コロナの「サイトカインストーム」も不必要に警報が鳴っているのではなく、敗血症になる寸前の激しい戦闘命令なのだろう。そして、血管が大量の免疫細胞で詰まるのは、闘って死んだ免疫細胞の山であり、患者を死に至らしめるのは、サイトカインストーム自体ではなく敗血症やウイルスによる血管を含む多臓器不全が原因だ。そのため、免疫が感染症と闘っている時に免疫反応を抑制するのは逆で、「サイトカインストーム」など起こさないうちに、ウイルスそのものを退治する抗ウイルス薬(援軍)や他の細菌の増殖を抑える抗生物質(援軍)を使うべきだと、私は思う。

   
  2020.5.11   2020.5.5     2020.5.2朝日新聞     2020.5.13 
  東京新聞    中日新聞                    東京新聞

(図の説明:1番左の図のように、2020年5月14日に全国の39県で緊急事態宣言が解除され、解除条件も示された。そして、左から2番目の図のように、専門家会議が「新しい生活様式」を示しているが、一部には普段から考慮しておくべきものがあるものの、人が生活する上で長く続けることが困難なものもある。厚労省の専門家会議が意図しているのは、右から2番目の図の第2波の山を先に延ばして低くすることだが、これはウイルスに対する消極的防衛にすぎず、弱い人がいつか感染して亡くなるのを排除することができない。ゲームチェンジして攻めに転じるには、検査と治療・ワクチン接種が必要だが、日本政府はこれには消極的で、外国がやっているのを見て少し真似している程度であるため、先進国の政府とは言えないのだ)

*7-1:https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2020/05/39821.php (Newsweek Japan 2020年5月14日) 緊急事態宣言、全国39県で解除 東京など8都道府県も可能なら21日に解除=安倍首相
 安倍晋三首相は14日夕に会見し、東京など8都道府県を除く全国39県で緊急事態宣言を解除すると正式発表した。8都道府県についても21日にも専門家の見解を踏まえ、可能であれば緊急事態宣言の期限である31日を待たずに解除する意向を示した。解除に当たっては1週間当たりの新規感染者が10万人あたり0.5人以下に低下したなど医療体制、検査体制を目安に判断したと説明。39県は今後、感染者の小集団(クラスター)対策で感染拡大を防止できるとの判断を示した。もっとも、解除された地域でも、外出自粛は要請しないが「人との接触は減らして欲しい。県をまたいだ移動も控えて欲しい」と訴えた。

*7-2:https://newsphere.jp/national/20200324-2/ (Newsphere 2020.3.24) なぜ日本の感染者は少ないのか……海外が見る「日本の謎」 新型肺炎
 世界中で感染者が急増している新型コロナウイルスだが、1日数千人単位で感染者が増えている欧米諸国に比べ、日本は数十人程度と少ない。検査の数を制限し、感染の実態が明らかにされていないという見方が海外では圧倒的で、今後は感染者が急増するのではないかと指摘されている。
◆異常に少ない検査数 日本の説明は理解されず
 日本の感染者数は1110人(3月23日時点)となっている。ブルームバーグは、日本は中国以外で最も早く感染が広がった国の一つなのに、先進国のなかでは最も影響を受けておらず、公衆衛生専門家も首をかしげていると述べる。海外のほとんどのメディアや専門家が「日本の謎」の理由として、検査数が少ないことを上げている。ビジネス・インサイダー誌は、カナダのマニトバ大学のジェイソン・キンドラチュク准教授の「検査しなければ感染者の見つけようがない」という言葉を紹介し、日本が検査能力の6分の1しか検査を行っていないと指摘している。日本は医療機関に過剰な負荷をかけないために検査を絞ると説明しており、国民には症状が出るまで家にいるよう求めている。この対応は、27万人に検査をして感染拡大を阻止した韓国の対応と比較されており、WHOを含め海外では韓国式がお手本と評価されている。ビジネス・インサイダー誌の記事が出た時点では、日本で検査を受けたのは1万6484人ほどだ。これは7600人当たり1人という検査数で、韓国の185人当たり1人に比べ、著しく低くなっている。
◆文化が幸い? 感染防止に貢献か
 そもそもダイヤモンド・プリンセス号の処理もできなかった日本が上手くやれているはずはないという辛らつな意見も聞かれるが、日本がある程度感染を抑えているという見方もある。中国に近いため、まだ制御可能な時期から危機感があり、消毒剤やマスクなどが売れて、国民が公衆衛生を守る基本ステップを受け入れたことが貢献したのではないかと見られている。アメリカの科学ジャーナリストのローリー・ギャレット氏は、少数の感染が制御可能な限定された地域で起こっていることが幸いしているのではないかと述べている(ブルームバーグ)。ビジネス・インサイダー誌は、もともと日本文化においては他国よりも社会的距離が遠いこと、以前から病気やアレルギーのある場合はマスクをする習慣が根付いていたことが、感染の拡大を防いだのかもしれないとしている。
◆検査なしでは実態わからず 偽の安心を懸念
 キンドラチュク准教授は、文化的な影響を否定はできないが、それだけでは説明できないと考えている。感染者数の少なさは「偽の安心感」だとし、日本ではまだ最も弱い人々への感染が広がっていない可能性があると述べる。この層に広がれば、あっという間に感染は拡大すると見ている(ビジネス・インサイダー誌)。英キングス・カレッジ・ロンドンの教授で、元WHOの政策チーフ、渋谷健司氏は、日本では集団感染のクラスター潰しに集中した結果、感染が封じ込められたのか、まだ見つかっていない集団感染があるのかのどちらかだと述べる。どちらも妥当だとしながらも、日本は爆発的感染を迎えようとしており、封じ込めからピークを遅らせる段階にもうじき移行すると予想している。検査数に関しては、増えてはいるものの十分ではないという認識だ(ブルームバーグ)。これまで感染者が少なく、何とか持ちこたえてきた日本の新型コロナウイルス対策だが、3月下旬から感染者が急増している。日本は検査数を絞ったクラスター叩きを戦略としてきたが、もう限界だという見方が海外では優勢だ。政府は感染拡大を受け緊急事態宣言で市民の外出や店舗などの営業自粛を求めているが、罰則つきの欧米式ロックダウンではないため、効果に疑問の声が出ている。
◆感染が抑えられてきた日本 いまは危険水域に
 海外メディアは、日本は感染の第一波の悪化を何とか回避してきたという見方だ。もっとも明白な理由は指摘されておらず、さまざまな憶測が飛び交っていた。米ABCは、予定通りの五輪開催のために、政府が数字を抑えようとしていたという噂を紹介している。米ウェブ誌『Vox』は、政府が肺炎患者に十分なコロナウイルス検査をしていない可能性もあると指摘。一方で、日本はもともと挨拶としての握手やハグ、キスなどが少ない文化だったこと、マスクの着用が浸透していたこと、早めに大型イベントの自粛や学校休校などの社会的隔離措置が取られたことなどが功を奏したとも見ている。こういった日本独特の理由が感染を遅らせたという認識が海外メディアには共通だ。

*7-3:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/523140 (佐賀新聞 2020.5.15) コロナ抗体調査1万人規模実施へ、厚労省、地域で感染の広がり把握
 加藤勝信厚生労働相は15日の閣議後記者会見で、新型コロナウイルスの大規模抗体調査を、来月から複数自治体の住民を対象に1万人規模で実施すると表明した。抗体検査は、感染から一定期間たった後に体内にできる抗体を、少量の血液から検出する方法。現在主に使われているPCR検査より簡単で、短時間で結果が出る。抗体は感染直後には検出が難しいため、診断目的ではなく、過去の感染歴を調べて地域での感染の広がりを把握する使い方が想定されている。東京都と東北地方で献血された血液の抗体を試験的に調べたところ陽性率は東京の500検体で0・6%、東北6県の500検体では0・4%だった。ただし、抗体がある可能性が低い昨年採取した血液も一定程度の割合で陽性となっており、誤って陽性と判定される例が含まれていると考えられているという。

*7-4:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200514&ng=DGKKZO59065040T10C20A5MM8000 (日経新聞 2020.5.14) 待望のワクチン開発 未来への投資、今こそ コロナ、出口は見えるか(6)
 「オペレーション・ワープ・スピード」。米トランプ政権が打ち出したワクチン開発の新戦略だ。第2次世界大戦中の「マンハッタン計画」にならい、企業や政府機関を総動員。通常は数年かかる開発期間を大幅に縮める。3日、トランプ大統領はテレビ番組で「年末までにワクチンが手に入る」と説明。全国民分の数億本を供給する目標を掲げた。ワクチンは体の免疫反応を引き出し、ウイルスの感染を阻む。感染拡大を抑えつつ行動制限を緩めるには、免疫を持つ人を増やすしかない。開発の行方が世界経済の命運を握る。世界保健機関(WHO)によると5日時点で開発中のワクチンは100種類を超える。ヒトへの臨床試験(治験)に進んだのは8種類ある。今やワクチンを誰もが待ち望む。だが、感染症対策はワクチンが最後の砦(とりで)になると分かっていながら、今までは危機意識が低かった。「コロナのようなRNAウイルスはリスクが高い」。2年前、米ジョンズ・ホプキンス大学はワクチンの備えを訴えた。パンデミック(世界的大流行)に対抗する技術の芽はあった。ウイルスのRNAやDNAといった遺伝物質を合成し、体に投与して免疫を高める方法だ。ウイルスの培養がいらず、4~5年かかるワクチンの開発期間を大幅に短縮できる。米モデルナや独ビオンテックは、1カ月程度でワクチン候補を作る技術を持つ。ワクチンを供給するグローバルな生産設備や国際拠点を2年前から準備しておけば、直ちに製造に取りかかれたかもしれない。ところが各国の予算は少なすぎた。日本経済新聞社が出資するアスタミューゼ(東京・千代田)が日米英中の感染症関連の研究開発予算(2018年)を調べると、米国は75億ドル(8000億円)、中国は53億ドル(5600億円)、英国は5億8000万ドル(620億円)、日本は5億3000万ドル(560億円)だった。「今後、世界で1000万人以上を殺すなら、それはミサイルではなくウイルスだ」。米マイクロソフト創業者のビル・ゲイツ氏は15年の講演会でこんな言葉を残した。国際通貨基金(IMF)は、20年の世界経済の成長率予測を1月にプラス3.3%と見込んでいたが、新型コロナの感染が拡大した後にマイナス3%へ引き下げた。単純計算で日本の経済規模に匹敵する約500兆円の経済損失が生じる。1%にあたる5兆円でもワクチンの開発に充てていたら、損失を回避できたはずだ。新型コロナ収束後の「新常態」では、まず感染症を甘く見た過去との決別が必要だ。ワクチン開発や治療、検査体制の確立で各国は連携し、どんな感染症にも立ち向かえる国際協調の枠組みを整えるべきだ。今こそ未来への投資が求められる。

*7-5:https://www.nishinippon.co.jp/item/n/608716/ (西日本新聞 2020/5/16) 小中学校の夏休み13日間に 福岡市、授業時間は10分短縮
 福岡市教育委員会は15日、市立の小中、特別支援学校について今年の夏休みを8月7~19日の13日間とすることを明らかにした。当初予定した7月22日~8月26日(36日間)から大幅に短縮した。また、授業時間を10分短くして小学校は35分授業、中学校は40分授業に変更。1日の授業こま数を最大7時間に拡大するなどして、臨時休校による学習の遅れを解消させる。学校が再開する21日から27日までは学年別に分散登校。28日から各クラスを2グループに分けて交互に登校するが、同じ地域の子どもが同じ日に登校できるよう配慮する。入学式は新入生の人数によって時間帯をずらすなど各学校で工夫。全校生徒が通常通り登校する全面再開は未定という。授業は前年度の未履修分から実施。国語、算数・数学など主要教科を優先させ、ほかの教科の一部学習内容は次学年に持ち越すことも容認する。土曜授業は隔週で行い授業時間の確保を図る。感染防止策としては、児童生徒の机の間隔を1~2メートル空けるほか、毎朝の検温を徹底。小学校では当面、遊具の使用を禁止する。市教委ではほかに、冬休みの短縮やプール授業の見合わせも検討している。

*7-6:https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/20/051100281/ (National Geographic 2020.5.12) コロナ患者、本当にこわい「免疫システムの暴走」、人体が立ち上げる“戦闘部隊”、サイトカインストームとは
 新型コロナウイルス感染症にかかった多くの重症患者にとって、最大の脅威となるのはコロナウイルスそのものではない。人体がウイルスと闘うために立ち上げる“戦闘部隊”だ。免疫システムは病原体から体を守るために不可欠だが、時に健康な細胞を傷つける激しい凶器にもなる。免疫反応が暴走する例の一つが、過剰な炎症を引き起こす「サイトカインストーム」だ。集中治療や人工呼吸器を必要とする場合を含め、新型コロナウイルス感染症の最も重篤な事例において、この現象が起こっているのではないかと考えられている。サイトカインストームは「新型コロナウイルス感染症にかかった人が亡くなる原因として最も多いものの1つ」と話すのは、米国ボストン市、ブリガム・アンド・ウィメンズ病院のアナ・ヘレナ・ジョンソン氏だ。臨床医や研究者たちは、現在も、サイトカインストームがどれほどの頻度で生じているのか、何がそれを引き起こすのかについて調べているところだ。こうした過剰な免疫反応は、新型コロナウイルス特有のものではないため、既存の治療法の中で有効だと思われるものの目星はついている。こうした治療法を他の治療薬と合わせれば、回復のスピードを早められるうえ、科学者たちがワクチンの開発を急ぐ間に致死率を下げられるかもしれない。「それが、このパズルの鍵のようなものです」と、米ワシントン大学の免疫学者マリオン・ペッパー氏は言う。
●免疫システムの暴走
 人間の体には、侵入した者を発見し退治する方法が用意されている。サイトカインは、こうした防御反応を調整するにあたり極めて重要なタンパク質だ。体の防衛軍を結集するために細胞からサイトカインが放出されると、極小の防犯アラームのような役割を果たし、免疫システム全体に侵入者の存在を知らせる。通常は、サイトカインの情報伝達によって免疫細胞および分子が感染箇所に動員される。防衛軍を動員する過程で、複数の種類のサイトカインが度々炎症を引き起こす。当該箇所での脅威が小さくなり始めると、サイトカインによる情報伝達は止まり、防衛軍は撤退することになるのが普通だ。しかし、サイトカインストームが起こると、「免疫システムが狂ってしまう」と話すのは、米コロンビア大学のウイルス学者アンジェラ・ラスムセン氏だ。サイトカインのアラームは止まるどころか鳴り続け、不必要に兵士を集め続けて、病原体そのものよりも体にダメージを与えてしまうことがある。たった一人の暗殺者を捕らえるために大軍を送るようなものだ。しまいには体全体が戦場と化してしまう。サイトカインストームが起こると、血管が大量の免疫細胞で詰まって交通渋滞のようになり、臓器に酸素や栄養分が届かなくなってしまうことがある。また、感染した細胞に向けられたはずの毒性を持つ免疫関連分子が、血管から漏れ出て健康な組織を損傷してしまうこともある。場合によっては、こうした分子の渦が呼吸困難を引き起こす。サイトカインストームが止まらない限り、患者は組織を損傷し、臓器不全を起こし、そして究極的には死に向かうことになる。サイトカインストームは症状が表れてから最初の数日間で全身に広がり、驚くほどの速さで勢いを強めていく。こうした状態になるケースとしては、二つのシナリオが考えられる。一つは、免疫システムが新型コロナウイルスを体から駆逐し損ねて、サイトカインがとめどなく放出されることになってしまう場合。もう一つは、感染が収まってからもサイトカインが放出され続ける場合だ。
●“嵐”を制御する
 サイトカインストームは様々な病気で見られる。エボラウイルス病(エボラ出血熱)、インフルエンザ、マラリア、エリテマトーデス、特定の種類の関節炎などだ。症状は人によって異なり、新型コロナの重症例における特徴もまだつかめていない。どういう人で起きるのかも定かではないが、遺伝的要因と年齢はいずれも関係がありそうだ。とは言え、サイトカインストームはある程度知られているものなので、対処法が開発されている。現在は新型コロナウイルス感染症における効果が検証されているところだ。注目が集まっているのは、重症患者において高濃度で見られるインターロイキン6(IL-6)と呼ばれるサイトカインだ。これに対する効果を期待されている治療薬の一つに、免疫細胞のIL-6受容体をブロックし防犯アラームが聞こえない状態にする、関節炎用のトシリズマブという薬がある。初期の複数の報告は、トシリズマブには効果があるとしている。米ネブラスカ大学医療センターの感染症専門医ジャスミン・マーセリン氏によれば、トシリズマブを投与された重症患者たちはその後回復するようだ。しかし、これまでに行われているのは事前に計画された臨床試験ではなく、その場その場でトシリズマブを投与された患者を追跡するものに留まると言う。トシリズマブを投与された患者を投与されなかった患者と比較しない限り、新型コロナウイルス感染症に対してどれだけ効いているのか、確かな結論を導くことは難しい。「投与なしに自力で回復していたかもしれませんから」とマーセリン氏は話す。現在、答えを出すために、対照群(臨床試験において、研究中の新しい治療を受けない群)を含めた臨床試験が世界で何十と行われている。たとえばフランスで進行中のものでは、64人の「中等症から重症」の患者にトシリズマブが投与され、通常の治療のみの65人と比較して、最終的に致死率および人工呼吸器の必要性が低くなることがわかってきている。
●生死を分ける治療のタイミング
 炎症が起こる前にそれを抑える方法もありかもしれないと話すのは、米マサチューセッツ大学医学部の免疫学者、ケイト・フィッツジェラルド氏だ。治療薬としては副腎皮質ホルモンや、やはり関節炎治療薬であるバリシチニブなどがある。いずれも細胞が様々な種類のサイトカインを生成するのを止める。ほかにも、他の病気の治療法として臨床試験が行われているものに、機械で血中からサイトカインを取り除き、サイトカインストームの終結を早めるという方法がある。だが、死に至るウイルスを前にしているとあって、免疫反応を抑制する治療法に対して専門家たちは慎重になっている。「こうした治療法のリスクは、真逆の方向へ行ってしまいかねないことです」と、マーセリン氏は話す。たとえば、免疫を抑制しすぎると、新型コロナウイルスと闘うことができなくなったり、他の細菌や真菌などの病原体が加わるかもしれない。新型コロナウイルス感染症関連での死亡例において、こうした危険な感染が原因となったものは少なくない。ラスムセン氏によると、治療のタイミングも重要だ。サイトカインをブロックする治療薬の投与が早すぎれば、ウイルスが「暴走する」ことがあり得る。しかし、待ちすぎれば、患者を救うには遅すぎた、ということになりかねない。生死を分けるそのタイミングがいつなのかを示唆する研究はある。IL-6による防犯アラームを聞こえなくするケブザラという治療薬は、人工呼吸器や集中治療を必要とする「重篤」な患者には効果がありそうだが、一段階下の「重症」レベル以下の患者には、特に効果はないようなのである。
●新型コロナウイルス感染症へのワンツーパンチ
 専門家たちは、サイトカインをブロックする方法は、ウイルスそのものを狙う抗ウイルス薬と組み合わせた時に最も有効かもしれないと考えている。「免疫反応にばかり注目して、その原因となっているものを見ないのでは進展しないでしょう」とマーセリン氏は言う。先週、米国立アレルギー感染症研究所は、新型コロナウイルスの自己複製能力を弱めるレムデシビルという抗ウイルス薬が、新型コロナウイルス感染症からの回復をある程度早めるようだとの予備的な調査結果を発表した。現在、レムデシビルと組み合わせて臨床試験が行われているサイトカインストーム治療薬とのコンビネーションで、さらに成果が出るかもしれない。しかし、この戦術が万全だというわけではないと、マーセリン氏は言う。治療薬同士が干渉して効果を打ち消してしまったり、場合によっては患者の容体を悪化させることもあり得る。臨床試験が続く間もパンデミックは広がっており、「結論に飛びつきたくなるものです」とジョンソン氏は話す。「しかし、証拠が出るのを待たなければなりません。毎週毎週、新しい事実が判明するのです」

<先端技術を普及させる理系教育の重要性>
PS(2020.5.17追加):*8-1・*8-2・*8-3のように、新型コロナの影響で世界の新車市場が壊滅的な状況に陥るなか、EU域内で始まった環境規制によってEVは欧州で健闘し、2020年1~3月の欧州18カ国のEV販売台数は前年同期から6割増えたそうだ。
 EVは、*8-4の日産自動車がゴーン社長の下、世界で最初に日本で開発され市場投入されたEVだ。しかし、最初からメディアにはEV批判が多く、最後は、このブログの2018年12月4日・2019年4月6日に記載した通り、「ゴーン氏の報酬が高すぎる」「姉や妻に疑惑がある」等のいちゃもんをつけて検察に介入させ、ゴーン氏の名誉を剥奪して刑事被告人に仕立て上げたのだ。このような妨害をせずに、ゴーン氏のやり方でEVに重点を移して世界で勝負すれば、3年で3割超も販売台数が減ることはなく世界で勝てたのに、今では「過剰な生産能力を削減する」「スペイン工場を閉鎖する」等の日本でゴーン氏が行った以上の人員整理を行う羽目になった。そして、これは、検察の介入が始まった時から予想できたことであるため、経営に介入して起こった失敗の原因をコロナでごまかすことができたのは、経産省にとって幸いだっただろう。
 このように、環境問題も認識できずに環境規制を疎かにし、それをクリアするツールであるEVのトップランナーを叩き続けてつぶしている日本の政府・メディアは、見識が低く、そのため将来を見通せず、大きなビジネスチャンスを失わせた。そして、これは、まともな理系教育を受けていない文系“(自分でそう思っている)エリート”が、理念なき利害調整に走って先端技術を殺した一例にすぎないため、高校まではすべての人への充実した理系教育が必要なのである。

*8-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200517&ng=DGKKZO59215560W0A510C2EA5000 (日経新聞 2020.5.17) 欧州でEV販売快走 1~3月6割増 コロナ禍でも勢い
 新型コロナウイルスの影響で世界の新車市場が壊滅的な状況に陥るなか、欧州で電気自動車(EV)が健闘している。2020年1~3月の欧州18カ国のEV販売台数は前年同期から6割増え、販売台数に占めるシェアは5%に近づいた。域内で始まった環境規制もあり、EVが浸透する「新常態」が生まれる可能性がある。「(EVなどの投入計画は)予定通り。妥協は一切しない」。独BMWのオリバー・ツィプセ社長は5月上旬の記者会見で訴えた。同社はハンガリー工場の新設延期などコロナ禍で緊縮に動くが、23年までに25車種のEVとプラグインハイブリッド車(PHV)を投入する方針は堅持し、投資にメリハリをつける。背景にあるのは好調な販売だ。BMWの1~3月のドイツでのEV・PHVの販売は前年同期から5割伸びた。これは全体の傾向でもいえる。欧州自動車工業会(ACEA)が12日に発表した欧州主要18カ国の1~3月のEV販売台数は12万7331台と前年同期比で57%増えた。欧州連合(EU)が20年から段階的に導入した新しい二酸化炭素(CO2)排出規制も影響しているが、新型コロナの影響で新車市場全体が27%減となるなか好調さが際立つ。

*8-2:https://www.nikkei.com/paper/related-article/?R_FLG=1&b=20200517&be=NDSKDBDGKKZ・・ (日経新聞 2020.5.17) 欧州EV販売1~3月57%増
 欧州自動車工業会(ACEA)は12日、欧州主要18カ国の2020年1~3月の電気自動車(EV)販売台数が12万7331台と前年同期比57%増えたと発表した。新型コロナウイルスの影響で新車市場全体が27%減となるなか、好調さを維持した。シェアは2.5ポイント上昇し4.6%に達した。

*8-3:https://www.nikkei.com/paper/related-article/?R_FLG=1&b=20200517&be=NDSKDBDGKKZ・・ (日経新聞 2020.5.17) 欧州、電動車シェア10%に 21年予測 各社、EVシフト競う
 フォルクスワーゲン(VW)のお膝元である欧州は、世界でも環境意識が高く、二酸化炭素(CO2)の排出規制も厳しい。電気自動車(EV)の販売も急増しており、VW以外の主要メーカーもEVシフトを競っている。欧州自動車工業会(ACEA)によると、西欧17カ国の2019年1~6月のEV販売台数は前年同期から9割増え、シェアは1ポイント上がって2%になった。新車販売全体が前年割れする中で好調さが目立つ。環境シンクタンクのT&Eは9日、20年の欧州連合全域のEV・プラグインハイブリッド車(PHV)の販売台数が100万台に達するとの予測を発表した。18年の合計シェアは2%だったが、20年に5%、21年には10%まで増えるとみる。T&Eのユリア・ポリスカノバ氏は「自動車大手がようやく腰を上げた。今後1、2年で高品質や低価格のEVが登場する」と背景を説明する。ダイムラーは10日、フランクフルト国際自動車ショーで、旗艦車「Sクラス」のEV版として「EQS」のコンセプト車を発表した。記者会見でオラ・ケレニウス社長は「自動車産業が急激に変わっており、全力で変革を進める」と話した。同社は22年までに欧州の自動車生産でCO2排出実質ゼロ、30年までに販売の半分以上を電動化モデルとする目標を掲げる。

*8-4:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200516&ng=DGKKZO59206570V10C20A5EA5000 (日経新聞 2020.5.16) 日産、過剰生産力にメス 2割減へ 欧州で不振、誤算重なる
 日産自動車は世界の工場を対象に過剰な生産能力を削減する。3年後をめどに現在の年約700万台から2割程度を減らす方針だ。スペイン工場を閉鎖する調整をするなど、生産体制再編の主な舞台は欧州になる。「今回の生産体制見直しの柱は欧州だ」。日産幹部はこう語る。日産は5月下旬に新たな中期経営計画を発表する予定だ。内田誠社長兼最高経営責任者(CEO)ら新経営陣がいち早くメスを入れることを決めたのが、欧州だ。商用車などを造るスペイン工場の生産能力は年約20万台で、稼働率は3割程度にとどまる。同工場で手掛ける車種は、提携先の仏ルノーの工場に生産を移管する。一方、年約50万台の生産能力を持ち日産にとって欧州で最も大切な拠点である英国工場では、ルノー車の生産を始める方向で詰めている。19年度の生産台数はフル稼働にははるかに及ばない32万台にとどまった。ルノーと一体で欧州での生産体制を見直し、日仏連合全体で効率化する。欧州では不振が続く。ピーク時の16年度は多目的スポーツ車(SUV)を中心に約78万台を販売した。だが、19年度は52万台と3年で3割超も減った。ナカニシ自動車産業リサーチの中西孝樹代表は「トヨタ自動車のハイブリッド車のような武器を持たない日産は欧州でシェア争いに敗れてきた。地元メーカーとの優劣も鮮明で事業の縮小は避けられない」とみる。これに3つの誤算が重なった。まず英国の欧州連合(EU)からの離脱(ブレグジット)だ。英国工場は約7割を欧州大陸に輸出する。今後の交渉次第でEU向けに関税がかかり、価格競争力が低下する懸念がある。新型コロナウイルスの感染拡大も想定外だった。外出規制で3月の欧州の販売台数は、前年同月比51%の大幅減だった。3つ目はルノーとの協業が、日産にメリットがある形で進まないことだ。例えば16年にルノーの仏フラン工場で委託生産を始めた小型車「マイクラ」(日本名マーチ)。当初は日産のインド工場で造り、欧州に輸出する計画だった。予定が変わった表向きの説明はコスト削減だが、日産側には「ルノーの工場の稼働率を上げるために生産を持っていかれた」との不満がある。日産は元会長のカルロス・ゴーン被告の掲げた拡大戦略と決別し、全販売台数の7割を占める日米中の3市場に投資などを絞り込んで経営を再建する。欧州の生産体制の見直しは新生日産の試金石になる。

<行政は、新型コロナ蔓延を利用したITによる監視社会への移行を意図している>
PS(2020年5月19日追加):速やかに治療すれば入院期間が短く医療崩壊は起こらないため、検査せずに、治療薬の承認を遅らせ、ワクチン開発に消極的で、クラスターを追いかけて差別を助長する公表ばかりしているので変だと、私は思っていた。そして、*9-1のように、携帯の位置情報や検索キーワードの履歴から集団感染の発生をつかむためとして、総務省・内閣官房・厚労省・経産省が、4月31日にNTTドコモなどの携帯電話大手3社・米グーグル・ヤフーなどIT大手6社に対して保有するビッグデータを新型コロナ対策に提供するよう要請したことを知って、行政は、新型コロナを利用してITによる監視社会に道筋をつけたいのだとわかった。しかし、「集団感染の発生を封じ込める必要性」といっても、このシステムは選挙妨害・捜査・しつこい広告など何にでも使えるため、国民は、個人の自由とプライバシーを侵害し、監視社会への入り口となる(マイナンバーカードを見よ)このシステムに反対した方がよいと思う。
 また、*9-2のように、厚労省は8300万人という歴史的な規模で、新型コロナ対策のための簡単な全国健康調査を行って、「37度5分以上の発熱が4日以上続いているか否か」を重視させる誤ったキャンペーン行い、ITはプライバシー管理に弱いのに遠隔診療・AIドクター・医療ビッグデータの活用を、これを機会として強引に進めようとしている。
 そして、*9-3のように、「①徹底した検査が、早期のウイルス封じ込めに成功した韓国の感染症対策の柱のひとつになった」「②韓国は接触者の追跡にビッグデータを活用し、クレジットカードの利用履歴や携帯電話の位置情報をもとに感染者の移動経路を明らかにした」「③韓国は、携帯電話会社の位置情報と患者のカード利用履歴から、感染者と接触した人を全員追跡して隔離する態勢を整えている」「④韓国の世論は感染拡大阻止のためなら個人のプライバシーが犠牲になっても良いという回答が多い」などとして、人権に関しては後進国である韓国や中国に追随することを奨励しているわけだ。
 しかし、*9-4は、もう少しまともに、「⑤ヨーロッパ各国の研究者が横断的に協力して開発した、EUのプライバシー保護規制に準拠した接触者追跡システムを発表した」「⑥感染者の行動追跡などの極めて私的な事柄を第三者に開示することを強いるたに、接触者の追跡と正当化されるが、正当化されることと、それが適当か、あるいは期待どおりに機能するかは別問題」「⑦監視化する世界にするのか」「⑧人権は尊重されなければならない」などを検討している。が、そもそも新型コロナへの感染を早期発見・早期治療できるようにすれば、プライバシーの侵害・移動の制限・それに対する巨額の補助金支給などを行わなくてすむので、そこに全力を集中すべきなのである。

*9-1:https://digital.asahi.com/articles/ASN3074G1N30ULFA02B.html (朝日新聞 2020年4月1日) 総務省、携帯・IT大手にビッグデータ要請 コロナ対策
 総務省などは31日、NTTドコモなど携帯電話大手3社や米グーグルやヤフーなどIT大手6社に対し、保有するビッグデータを新型コロナウイルスの感染対策のために提供するよう要請した。携帯の位置情報を使った人の移動データや検索キーワードの履歴から、集団感染の発生をつかむことなどに役立てる考えだ。首都圏を中心に感染者が急増する中、集団感染の発生を封じ込める必要性が高まっている。提供されたデータを分析し、外出自粛要請などの対策の実効性を検証することも期待できるという。その他のデータについても「利用可能なものは積極的にご提案いただきたい」(総務省)としている。高市早苗総務相は同日の閣議後会見で、「感染拡大防止策のより効果的な実施が可能となる」と強調した。同省のほか、内閣官房、厚生労働省、経済産業省が連名で要請した。

*9-2:https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200415/k10012388211000.html (NHK 2020年4月15日) “ビッグデータ”でコロナと闘う
 「いま発熱はありませんか?」。ITを駆使して8300万人もの人々に健康状態を問いかける。そんな前例のない大規模な調査が行われている。新型コロナウイルスの対策に必要な“ビッグデータ”の収集。感染リスクを抱えているのは、どんな職業の人で、どこにいて、どんな予防策をとっているのか。寄せられた大量のデータを分析することで、感染拡大の抑止にどのような対策が有効なのか、その道筋が見えてくるという。私たち一人ひとりが持つ情報の集積、ビッグデータは、猛威を振るう新型コロナウイルスに打ち勝つ有効な武器となるのか。
●歴史的な規模の調査
 先月31日から始まった厚生労働省の新型コロナウイルス対策のための全国健康調査。全国で8300万人という通信アプリ「LINE」のユーザーに直接呼びかけ、いまの健康状態などを聞き取っている。質問項目は、「いまの健康状態」「年齢」「性別」「住んでいる地域」「感染の予防行動」などいくつかの簡単なもの。調査にあたって、厚労省は、集めたデータは感染者の集団=クラスターの対策のための分析だけに使用し、個人のプライバシーが特定されないよう加工を行うとして、広く協力を呼びかけた。これまでに寄せられた回答は、およそ2500万人分。国民のおよそ5人に1人が回答した計算になる。回答は自主的な申告だが、感染リスクに関する重要なデータが明らかになってきた。37度5分以上の発熱が4日以上続いていると答えた人が、全国で約2万7000人に上ったのだ。都道府県ごとに見ると、沖縄県がもっとも高く、次いで東京都、北海道、大阪府が全国平均を上回っていた。国の緊急事態宣言が出されていない自治体でも、発熱を訴える人が数多くいることが分かった。さらに、発熱を訴えている人を職業別のグループで分類したところ、▽飲食店や外回りの営業など長時間の人との接触や密集を避けるのが難しい職業のグループでは0.23%と全体の平均の2倍余りに上っていた一方、▽在宅で家事や育児をする人など人との接触を避けることが比較的容易なグループでは0.05%と、全体の平均の半分以下の割合となっていた。これらの傾向から、日頃の行動で「社会的な距離を保つこと」「密閉・密集・密接のいわゆる3密を避けること」が感染リスクを下げるうえで重要であることが、データで裏付けられるかたちになった。発熱を訴えている人が、直ちに新型コロナウイルスに感染していることを示しているものではない。それでも、現状では希望した人すべてがすぐに感染の有無を調べる検査を受けられるわけではない中で、ウイルス感染の可能性のある人がどれくらいいるのか、どんな傾向があるのかが分かったのは初めてだ。
●自粛要請 その裏側にもデータ
 LINEを通した健康状態の聞き取り調査は、国に先立って一部の都府県で始まっていた。自治体の調査では、健康状態の聞き取りだけでなく、回答された内容にもとづいて、新型コロナウイルスの感染の可能性があるかどうかや、相談窓口への連絡の必要性などを自動のチャットで回答する仕組みになっている。もっとも早く3月上旬に導入した神奈川県では、県民20万人のビッグデータの分析結果が、知事が「不要不急の外出の自粛」を呼びかける根拠の一つとなった。その分析データも、発熱を訴える人の割合だった。ことし2月末から3月中旬まで、日ごとの発熱していると答えた人の割合は横ばいだった。しかし3月20日からの3連休のあと、その割合が急激に増えていた。そして、感染が確認された人の数も、それに伴うように増え始めていた。これに、県内の人出のデータを重ねると、3連休では行楽地への人出が増加しており、自粛ムードが緩んでいたことが見て取れる。神奈川県は、そのことが感染拡大につながった可能性があると考え、「不要不急の外出の自粛」を呼びかけたのだ。
●専門家が語る“データの力”
 LINEと国や自治体を結んで、ビッグデータを利用した調査や健康サポートのシステムを作り上げたのが、医療政策を専門とする慶應義塾大学医学部の宮田裕章教授だ。クローズアップ現代+にゲスト出演している宮田教授は、新型コロナウイルスの流行の兆しが見えていたことし2月下旬、ビッグデータの活用がいかに不可欠かを指摘していた。
*慶應義塾大学医学部 宮田裕章教授
 「もしこのまま感染がおさまらなかった場合に、どういった対策を打てばいいのか、判断の根拠になるものがない。患者だけでなく、自宅に待機している潜在的な患者も含めてエリアごとに把握しながら対策を考えないといけない」。 その後、宮田教授はLINEや厚労省と協議を重ね、調査の実施へとつながっていった。感染拡大の収束がまだ見えない中、データを活用することの重要性は今後さらに高まっていくと話す。
*宮田教授
 「今後もしオーバーシュート(感染爆発)が発生するとしても、症状を訴えている人の情報をより早く集めることで、どれくらいの患者が発生しうるのか、それに備えるための現場の準備につなげることができる。データを蓄積しながら判断を重ねて、人々に還元していく、これがいちばん大事です」
●IT企業もビッグデータを提供 
 LINE以外にも、新型コロナウイルスへの対策にビッグデータを役立てようという動きは、いくつかのIT企業の間で広がっている。グーグルは、地図アプリで集めた匿名のビッグデータを使って、新型コロナウイルスの影響を受けて世界各国の人々の活動がどれほど変化したかを、今月3日からブログで公開している。それによると、3月の1か月間の人々の活動量は、厳密な都市封鎖が行われたフランスでは大幅に減少した。一方、日本では駅など交通機関への人出は減少したものの、娯楽施設への人出は、3月下旬にかけての桜の開花や3連休のタイミングで増加していた。また、IT大手ヤフーでも、アプリを通じて匿名で提供を受けた人々の位置情報や購買履歴、検索ワードなどのビッグデータを厚労省に提供すると発表していて、分析の結果が対策に活用されることが期待されている。
●AI・ビッグデータがもたらす未来の医療
 日本以上に新型コロナウイルスの感染が広がっているイギリスでは、ビッグデータとAIを活用したサービスが、急速に普及している。イギリスのベンチャー企業「Babylon Health(バビロン・ヘルス)」が運営するAIを使った遠隔診療サービス「AIドクター」は、国の保険が適用され、すでに80万人以上が登録している。ことし2月には、新型コロナウイルスの診断プログラムが追加された。利用者は、スマートフォンやパソコンによるチャットで、AIに対して現在の体調や症状を申告する。すると、AIが自動で質問を投げかけて生活習慣や持病などを聞き取り、可能性のある病名を回答するという仕組みだ。24時間365日、待ち時間なく利用することができ、チャットの開始から可能性のある病名の回答までわずか数分ですむ。医療費がほぼ無料のイギリスでは、軽い症状でも人々が病院に頼るため、受診できるまで最大2週間かかることもある。このAIドクターが、医師に代わって最初の診断を担うことで、病院に駆けつける人を減らすことができ、今回の新型コロナウイルス対策でも医療現場を支える役割を果たしているという。
●AIの可能性
 AIドクターを支えているのが、患者の症例などの膨大な医療ビッグデータだ。AIは、データの分析・学習を重ねることで診断の精度を高め続けていて、ある医療テストでは、AIドクターの診断の精度が人間の医師を上回ったという結果も出ているという。さらに、カメラに映った患者の表情をAIが読み取ることで、患者自身も気付かない病気の兆候を見つけ出す試みなども行われ、新しい医療の可能性も示している。
*バビロン・ヘルス 最高医療責任者 モブシャー・バットさん
「ビッグデータを用いた医療は、今のような集団感染が起きた時こそ本領を発揮する。AIドクターを使えば、対面による感染リスクを減らしてサポートができる。世界中の国がこれを医療に導入するまでそれほど長い時間はかからないだろう」
このAIドクターは、イギリスだけでなくアフリカなど世界17か国で導入されていて、日本でのサービス開始も検討されているという。
●一人ひとりのデータが未来を支える
 大きな可能性を持つ医療ビッグデータの活用。しかし、一人ひとりの健康状態や病歴などは、最も厳密に管理されなければならないプライバシーデータ=個人情報でもある。集められたデータが目的外に流用されたり、外部に漏えいしたりすることはあってはならない。この点に関して、宮田教授は、データ活用には「信頼」が重要だと指摘する。
*宮田教授
 「皆さんから多くのデータを集めるためには、信頼される形でデータを使うことが必要。データの十分な管理がなされているか。公共の利益のために使われているか。第三者機関の監視や複数の機関が関わることで、信頼を高める仕組みを作る。データは誰かが持っているだけでなく、共有することによって価値が高まっていく。ひとりのデータがみんなのために役立てるだけではなく、そのデータが、結局、一人ひとりを支える仕組みを作ることによって社会そのものをいい方向に向けていきい」
 厚労省のLINEを使った調査は、これまでに3回行われ、今後も続けられる予定だ。合わせて行われている自治体の健康サポートでは、長期にわたって健康状態をフォローすることで、今後、回復に向けた医療ケアにつながるような分析も可能になるのではないかと期待されている。統計的な分析やAIによる解析によってより高い価値を産み出すビッグデータ。うまく活用すれば、私たちが新型ウイルスに対して立ち向かう大きな武器となるはずだ。ビッグデータとコロナウイルスについては、15日(水)午後10時放送予定のクローズアップ現代+で詳しくお伝えします。

*9-3:https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/20/051400292/ (National Geographic 2020.5.14) 新型コロナ、韓国はいかに感染爆発を食い止めているのか、大量の検査実施とビッグデータを活用した接触者の追跡が奏功
 韓国ソウル市にあるH+(エイチ・プラス)ヤンジ病院の駐車場に設置された新型コロナウイルス臨時検査場は、外から見ると普通のプレハブ住宅とあまり変わらない。だが、そのなかには真新しい透明のプラスチック板に囲まれたブースが4つ置かれ、危険な病原体を扱う研究室にあるように、プラスチック板に開けられた穴にゴム手袋が取り付けられている。患者はブースに入ると、プラスチック板の反対側にいる医師とインターコムを通じて会話し、手袋をはめた医師が患者の鼻と喉から検体を採取する。患者と医師が直接接触することはない。ブース内は陰圧状態が保たれていて、ウイルスを含んだ飛沫がブースの外に漏れ出ないようになっている。検体の採取が終わったら、防護服を着た職員がブース内を消毒し、ゴム製のワイパーでプラスチック板を掃除する。韓国全土に設置された同様のウォークイン式検査場は、大量で迅速な検査実施を可能とし、早期のウイルス封じ込めに成功した韓国の感染症対策の柱のひとつになっている。このほかにも、人口5100万人の韓国は接触者追跡にビッグデータを活用し、クレジットカードの利用履歴や携帯電話の位置情報をもとに感染者の移動経路を明らかにした。韓国の世論調査では、感染拡大を阻止するためなら個人のデジタルプライバシーが犠牲になっても良いという回答が多数派を占めている。当局は厳しい社会的距離政策を推進したが、その多くは自粛要請にとどまり、バーやレストラン、映画館の強制的な閉鎖措置は取られなかった。その韓国でも、コロナウイルスの流行が完全に終息したわけではない。最近になって複数のナイトクラブで集団感染が発生し、5月13日の時点で新規感染者は119人に増えた。それでも、韓国政府の対応は世界のお手本となるだろう。ここまで来るのは、簡単なことではなかった。
●過去の感染症から学んだ韓国
 韓国の迅速な対応は、過去の感染症から学んだことによる。2015年に流行したMERS(中東呼吸器症候群)により、韓国では186人が感染し、38人が死亡した。流行が終息してすぐに、韓国議会は接触者の追跡を包括的に実行できるよう法律を策定し、感染者と接触した人を全員追跡して隔離する態勢を整えた。衛生当局は、クレジットカード会社に対して患者のカード利用履歴を、携帯電話会社に対しては位置情報を要請する権限が与えられた。さらに、それをもとに再現された感染者の行動経路が、本人の名を伏せて公開される。人々はこれを見て、その経路上で自分が接触したかどうかを確認できる仕組みになっている。韓国では当初、毎日のように数百人の感染が報告され、ピークに達した2月29日には、主に大邱(テグ)市の宗教団体での集団感染により、909人の感染者が出た。だが接触者の追跡と大量の検査のおかげで、制御不能になる前に初期の感染者増加をなんとか抑え込むことに成功した。その後も同じ戦略によって、教会やゲームカフェ、コールセンターでの集団感染を早期に封じ込めた。4月15日、韓国は総選挙を実施し、2900万人がマスクと手袋を着けて投票に出かけた。投票所では全員の体温を測り、発熱している人を選別した。この選挙による感染者はひとりも報告されていない。韓国のデータ収集は、一部の国からは患者のプライバシー侵害だと言われるかもしれないが、韓国国民からは広く支持されている。ソウル大学公衆衛生大学院が3月4日に実施した調査では、1000人の回答者の78%が、ウイルス封じ込め対策を強化するためなら人権の保障が多少受けられなくても仕方がないと回答した。過去の流行の経験からも、国民は政府の正式なガイドラインが発表される前から外出自粛を始め、外ではマスクを着けるようになっていた。そして何よりも、韓国は2015年のMERS流行後、診断検査能力の拡充に乗り出していた。米国は疾病対策センター(CDC)の開発した検査キットに頼っていたが、韓国は民間企業を活用した。今年1月下旬、政府は国内のバイオテク企業に検査キットの開発を要請し、それから1カ月以内には1日1万件の検査を実施していた。韓国のバイオテク産業は近年急成長し、パンデミックが始まったころには既に増産の態勢が十分に整っていたと、ソウルの南、板橋(パンギョ)にあるTCMバイオサイエンス社の最高経営責任者トーマス・シン氏は言う。「ここ5年間で、韓国では多くのバイオテク企業が生まれました」。TCMも政府の要請に応じてキットを開発し、4月に食品医薬品安全処の認可を受けた。シン氏は、検査キットの開発は企業経営の観点からは必ずしも簡単な決断ではなかったと話す。新しい感染症は予測が難しく、早期に封じ込められれば初期開発費が回収できなくなってしまう。しかし、韓国はウイルス発生源である中国と強いつながりがあったため、韓国が中国と同じ状況に陥るのは時間の問題だと、TCMは考えた。さらに、世界市場でもビジネスチャンスが生まれるだろうと予測した。これまでのところ、同社は260万ドル(約2億7700万円)相当のキットを出荷している。(以下略)

*9-4:https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20200423-00071905-gendaibiz-pol&p=5 (Yahoo 2020/4/23) 新型コロナで世界が苦悩する「監視・プライバシー」をめぐる難題
●コロナ対策とプライバシーの問題
 新型コロナ対策のために、日本でもパーソナルデータの利用や接触者追跡のシステムの導入に向けた動きは本格的に始まろうとしている。4月1日の新型コロナ感染症対策専門家会議の見解で、「パーソナルデータの活用」「アプリ等を用いた健康管理」が言及され、6日には、内閣官房で「新型コロナウイルス感染症対策テックチーム」のキックオフ会議が開催され主要なIT事業者や移動通信会社、団体が参加している。世界的な流れも、プライバシーへの介入をなるべく少なくした接触者追跡のためのアプリ導入に向けた動きが進む。3月31日にはヨーロッパ各国の研究者が横断的に協力して開発した、EUのプライバシー保護規制に準拠した接触者追跡システムを発表。4月10日には、アップルとグーグルがスマートフォンを使った接触者追跡技術の共同開発を発表し、技術文書のドラフトをリリースした。4月13日には、日本でも民間団体による接触者追跡アプリの開発を待って政府が実用実験を行うことが報道された。感染症対策は、個人情報やプライバシーの問題と、社会的な必要性との間で慎重にバランスをとることが求められる分野だ。感染者の行動追跡はその典型で、どこへどのような手段で行き、誰と会ったかなどは極めて私的な事柄だ。通常、第三者に開示することを強いられるものではないが、接触者の追跡のために情報収集が正当化される。しかし、正当化されることと、それが適当か、あるいは機能するかは別問題だ。どのような個人情報をなぜ収集するのか、収集された個人情報をどのように利用し、誰に提供され、あるいはどこまで誰に開示されるのかなど、プロセスの透明性が確保され、適切な管理と規制のもとに置かれていなければ、信頼性を欠くからだ。また、「知りたい」「知っておきたい」ではなく、私的領域に介入してまで収集する必要性があることへの理解と、提供したことにより発生する不利益(接触者の隔離による社会生活上の制約など)に対する手当の両方が、本当に機能させるには不可欠だろう。今、感染症対策の伝統的手法に加えて、私たちが日々利用しているスマートフォン、SNS、アプリ、検索エンジンなどの利用により蓄積される位置情報や利用履歴などの個人データの利用や、情報技術を使った接触者追跡などの利用が加わりつつある。政府に法的な権限や根拠を手当てすれば、信頼性や透明性、そして発生する不利益への手当てを欠いたとしても、感染症対策としてデータの収集・利用は可能となるが、それで果たして良いのかが問われている。新型コロナの感染急拡大により、新たなツールやデータの収集・利用方法の開発・実装とすでにある個人に関する情報の提供・利用――技術的イノベーションと個人の私的領域への介入――が急速に、かつ同時並行的に進んでいる。こうした中で、感染症対策という非常時の手段として、どのような条件でどこまで正当化できるのかが今、問題になっている。新型コロナ対策として、個人情報やデータの利用について世界ではどのような取り組みが行われ、何が課題・問題になっているのかをまずはまとめたい。
●データを活用した対策の効果は…
 人の日常がデジタルの痕跡で残るようになり、従来とは異なる方法で感染者の監視・管理、接触者の追跡を行おうとする試みは以前からある。2014年に主にシエラレオネ、リベリア、ギニアで発生したエボラ出血熱の地域的流行が、最初にデジタル情報を本格的に使った感染症対応といわれている。この時、携帯通話データなどの個人情報が、国際的な官民援助機関の要求により通信事業者から提供されたものの、様々な問題を引き起こした一方で、感染予測に役立ったという根拠はなく、感染症対策としての効果が薄かったという検証結果も報告されている。報告では、ツールやシステムの開発の方が成果がわかりやすいので資金がつきやすく、独自のものが乱立しがちになること、それらは十分な評価・検証されずに実験的に投入されること、データを得ても効果的な対策ができなかっただけでなく、データは特定のツールやデバイスのユーザーに偏るため、脆弱で最も支援が必要な人ではなく、支援が必要ない人を支援する結果になる可能性があることなどが指摘されている(なお、この時の経験をもとに、人道支援分野では倫理的にかつ責任ある個人データの扱いが議論され、国連やWHOの方針等にも反映されている)。当時よりも個人データの集積・利用が進み、またエボラ出血熱のような一部地域での流行ではなく、新型コロナウイルス感染症は世界的流行となった。その中で、個人データの利用・提供とツールやシステムの開発・導入は様々なレベルで加速している。これらは主に、以下のようなものに分けることができる。この中で最も論争となっていることの一つが、位置情報の扱いだ。
 (1)感染者の行動履歴を携帯の位置情報のほか監視カメラなどから特定(中国、韓国、
   イスラエルなど)
 (2)アプリを義務的導入、一部地域で人々の行動監視(中国)
 (3)無症状・軽症の陽性者の自宅隔離監視ツール(台湾、韓国、オーストラリアの一部
   の州など)
 (4)匿名加工した位置情報の提供(アメリカ、ドイツなど)
 (5)匿名加工した健康管理アプリのデータの提供(ドイツなど)
 (6)ブルートゥースを使った接触者追跡アプリ
 (7)統計情報の提供
 (1)~(3)は、感染者や接触者に対して介入的に位置情報含む個人情報を収集・管理・行動を制限するもの、(4)、(5)はビッグデータの利用で位置情報や健康情報というセンシティブな情報を吸い上げるものだが(5)は任意のアプリ、(6)は個人の自発的意思によって使うものだがプライバシーへの介入が制限的と言われているが議論のあるものだ。(7)は個人への直接の関与・介入はないが、個人のセンシティブな情報の集積であるので目的を限定する必要があり、かつバイアスや差別を排除した利用をしないと政策判断を誤る可能性のあるものだ。
●監視化する世界?
 少し具体的に見ていくと、中国は既存の社区(コミュニティ)に分割した社会管理システムによる住民同士の相互監視と、情報システムを利用した監視システムの両面で住民を管理している。ニューヨークタイムス紙によると、感染拡大が明らかになると中央政府が地方政府に対策を求めた後、居住委員会や自治体が相互に競い合って住民の移動に関する独自の極端なルールを作り、相互監視が強化されているという。フォーリン・アフェアーズ誌によれば、100万人以上が地元で監視活動を行い、それに加えて、既存のAIを用いた顔認証システムの利用、スマートフォンアプリを義務化し、人に色分けしたタグ付けをして移動範囲の制限等を行っている。韓国は、2015年のMERS(中東呼吸器症候群)の流行時に感染者の訪問先を隠したと批判されたことで、感染症法が大幅に改正され、感染者の移動履歴などの詳細情報が公開されるようになった。また、接触者追跡のための聞き取り調査に加え、監視カメラ映像、クレジットカード使用歴、GPS情報を使っている。中国もシンガポールも、同じ手法で追跡調査を行っている。MITテクノロジー・レビュー誌によると、韓国では感染者が2メートル以内にいた、あるいは咳をしたときに同じ部屋にいると、「接触者」とされ、2週間の自己検疫が命じられ、移動が法的に禁じられる。接触者はアプリか電話で毎日の健康状態を報告し、移動した場合は警報が本人とケース担当者に送信される。2月26日に感染症予防法などの改正法案が成立し、入院や隔離措置に違反した場合の罰則を強化するなどしている。イスラエルは、安全保障局が裁判所の命令なしに個人の電話を追跡できる権限をネタニヤフ首相が承認。テロリストに対する監視方法を新型コロナ感染者の追跡に利用している。また、3月22日に接触者追跡アプリHamagenの提供をはじめた。アプリユーザーの位置情報と、陽性診断前14日間の感染者の位置情報を相互参照し、一致した人に対してどのような対応をすべきかを通知する保健省へのリンクが送信され、保健省にも報告がされる。ロイター通信によると、イスラエル国防省は、スパイウェア会社が作成した携帯電話から収集されたデータを分析するソフトウェアを使って、感染が疑われるものを特定して検査を計画している。感染者数の増大とともに、国防大臣は感染の可能性のある接触者の追跡にはもはや位置情報の追跡は効果的ではないと述べたという。位置情報を利用しているものには、陽性でも無症状者や軽症者の自宅検疫監視ツールがある。BBCによると、台湾では、自宅検疫を命じられた者は「Electric Fence」を起動してスマートフォンのデータが追跡され、外出すると連絡を受けた警察や地元当局が15分以内に対応。携帯電話の電源が切れていた場合は、自宅まで警察が来る。ポーランドでは、14日間の自宅での自己検疫を確実に行うためのアプリを公開。最初にセルフィーで写真を登録し、定期的に位置情報とともにセルフィーを送る要請が届き、20分以内に送信できないと警察により警告され、従わなかった場合は罰金が科される。自己検疫対象者は、アプリをダウンロードして使用するか、警察の訪問を受けるかを選択しなければならない。また、位置情報ではないが、ロイターによると、ロシアは帰国・入国者すべてに2週間の自己検疫を求めており、モスクワ警察は顔認証技術を使用し、200人以上の自己検疫対象者を違反者として取り締まったという。匿名加工した位置情報の提供を受けているのが、ドイツ、オーストリア、ベルギー、イタリア、スイス、スペイン、ポーランドなどだ。イギリスでも通信事業者などと協議中と伝えられているほか、欧州委員会はヨーロッパ通信大手事業者に対して、欧州委員会として利用法を管理するため、数億人分になる匿名化及び集計された域内の携帯電話のメタデータの共有を要請したと報じられた。アメリカも匿名化した位置情報の提供を受けているとされるが、通信事業者ではなく広告事業者がアプリを通じて収集したもののようだ。広告事業者の活動自体が不透明であり、位置情報の収集方法に疑義があるため批判の対象になっている。
●位置情報以外で接触者を追跡する方法
 そして今、もっとも導入が広がりそうなのが、位置情報以外で接触者を追跡する方法だ。シンガポール政府は、3月20日にスマートフォン向けのアプリTraceTogetherの提供を始めた。GPSやwifiはどこにいるかという位置情報を示すが、Bluetoothは例えば接続するイヤホンなどの機器との距離がわかるので、同じアプリを入れた機器同士の距離を計測して記録する。アプリストアから自分の意思でダウンロードし、起動して携帯番号を登録する必要があり、これが政府の管理するサーバーに登録されIDも自動生成され一元的に管理される。Bluetoothをオンにしておき、同じアプリの入ったスマホが近くにあると、(1)タイムスタンプ、(2)Bluetoothの信号の強さ、(3)機種、(4)一時的なID(定期的に変更される)の4情報が交換され、それぞれのスマホに記録される。TraceTogetherのウェブサイトによると、これらの情報は外部には送信されず政府が管理しないとされ、接触情報が使われるのはアプリのユーザーが感染した場合。本人の同意で保健省の職員がアプリ内の暗号化された情報を政府のサーバーにアップロードして解読し、過去21日間に2メートル以内に30分以上いた接触者を特定し、追跡担当者から接触者に電話をする。電話を受けて本人が同意をすると、その情報もアップロードして解読するという。誰が感染者か、接触者であるかは双方に伝えられないともしている。(なお、現在、TraceTogetherはオープンソースとなっているが、それより前にリバースエンジニアリングとユーザーのトラフィックを検証した結果として公表されているレポートによると、アプリがデータを政府のアプリケーション分析プラットフォームに送信していたという報告もある)。21日間経つとデータが消去され(ただし、この自動消去は4月8日のアップデートで実装されたので、アップデートしていないと21日を超えてデータが残る可能性がある)、Bluetoothをオフにすると記録は停止、アプリを削除すると蓄積されたデータと一元管理されているIDなどの情報も削除されるという。いつでも自分の意思で利用を停止、データ利用の撤回ができるとして、シンガポール政府は国民に利用を推奨し普及をはかっている。
●ヨーロッパで起きていること
 ヨーロッパでは8ヵ国130人以上の科学者などが、EUの個人データ保護規則であるGDPRに準拠したプライバシーを保護した汎ヨーロッパの接触トレース(Pan-European Privacy-Preserving Proximity Tracing:PEPP-PT)技術の設計・開発に共同で取り組んでいると4月1日に発表した。このプロジェクトでは、Bluetoothを利用したもので、各国や民間でそれぞれのアプリを開発・使用するのではなく、EU域内での技術の標準化し、国が識別でき、各国の公衆衛生などのプロセスで機能する特徴を備えるものとされる。アプリの匿名化したユーザーIDは中央で一元的に管理され、感染が確認されるとスマートフォンに蓄積された接触情報が中央サーバにアップロードされて解読され、接触者に連絡するものになるという。プロジェクトメンバーにフランス国立情報学自動制御研究所が含まれ、フランスはPEPP-PTを用いたアプリの準備を表明している。別のイニシアティブもあり、ヨーロッパの7つの研究機関の約25人の研究者によって設計された分散型プライバシー保護接近トレース(DP-PPT)が発表された。PEPP-PTとは異なり、アプリユーザーの仮名IDは中央に一元的に保存することを要求しない。より、国家による監視システムへの転用などをしにくくするためという。これとは別に、イギリスでも接触者追跡のためのアプリの導入を現在検討している。さらに冒頭に述べた通り、GoogleとAppleは共同で接触者追跡技術の共同開発を表明した。4月8日に欧州評議会は、新型コロナ対策として汎ヨーロッパの接触者追跡アプリと、匿名化及び集計された携帯の位置情報データを利用による新型コロナウイルスの展開のモデリングと予測を二本柱とした勧告を採択しており、方向性は作られつつある。
●人権は尊重されなければならない
 こうした世界各国の前のめり気味な動きに対する警戒感や問題点の指摘が、市民社会や研究者などから表明されている。もちろん、新型コロナ対策を効果的に行い、人の命を守る必要があることについて異論を唱える人はおらず、情報やツールがあれば解決するという単純化がもたらす深刻な副作用を懸念している。その懸念に対し、WHOの3月30日の定例記者会見で、健康関連の緊急事態対応を統括するマイケル・ライアン氏は、個々の市民に関する情報の収集や位置情報の追跡には、常に非常に深刻なデータ保護、人権の原則が関係していること、開発されるすべてのものが可能な限り最も慎重な方法で行われ、個人の自由や権利の基本原則を超えないようにしたいと述べている。電子フロンティア財団(Electronic Frontier Foundation; EFF)やプライバシー・インターナショナル(PI)など、プライバシーと市民的自由の問題に取り組むNPOは、早くからこの問題に対して警告し、問題点を繰り返し指摘してきた。4月2日には人権・デジタル権の問題に取り組む世界各国100以上のPIを含むNPOが連名で、新型コロナの世界的流行に対して電子的監視テクノロジーの使用には人権が尊重されなければならない旨の声明を出した。声明では、プライバシー権や表現・結社の自由といった権利に対する脅威となるため、新型コロナ対策のための国の取り組みが、電子的監視テクノロジー能力の大幅な拡張のための口実になってはならず、現在のような非常事態であっても、政府が個人や住民監視に電子的テクノロジーを用いる場合は厳格に人権を保障して実行することを求めた。また、政府が電子的監視テクノロジーを用いる場合には、適法かつ適切な方法でなければならないこと、例外的に監視権限を強化する場合はその期限を明確にすること、健康情報を含む個人データの収集・保存・集計を強化する場合は、新型コロナ対策のみに用いること、ビッグデータやAIを含む新型コロナ対策のためのいかなる電子監視テクノロジーの利用による差別や排除のリスクを踏まえることなどを求めている。EFFは、新型コロナ対策のための手段として電子的監視を含む新たな管理権限を政府が要求する場合、政府にはその手段が新型コロナ対策に効果的であることを示したか、有効性が示せた場合、その方法がどのくらい市民的自由を侵害するのか、そしてその侵害が過度でないとすると監視手段にはセーフガードがありそれが機能するかということを明らかにすべきだとしている。そして、アプリなどによる監視は個人の任意の同意による必要があること、個人情報は必要最小限収集・保存し、利用目的を明確かつ明らかにすること、情報セキュリティの透明性が必要であること、システムの設計段階でプライバシー保護を組み込むこと、立法府が関与し政府のプライバシー影響評価とポリシーへの市民のインプットを検討すること、監視プログラムの詳細を可能な限り公開し透明性を確保すること、バイアスを排除すること、市民の思想、信条、表現及び結社の自由をターゲットにしてはならないこと、安全措置の違反があった場合に訴訟ができること、有期限の手段とすることを求めた。こうした意見や声明が出される背景には、個人データを含むデータの取得や利用、テクノロジーの利用が、どこまで効果があるのかが明確ではないまま、悪化する状況に対応するため実験的に行われており、その結果として新たなシステムや権限を政府が獲得していくことになりかねないことへの懸念がある。例えば、ヨーロッパで取得が進む匿名化した位置情報については、データの加工には24~48時間かかるため、政府が取得してもビックデータ分析にほとんど役立たず、ヒートマップの方が有効で、また匿名化しても位置情報を使って15の人口統計的特性で99.98%の個人を特定できたという、インペリアルカレッジとルーヴェン・カトリック大の研究結果があるとの指摘がある。また、シンガポールが導入し、日本を含む世界各国で導入に向けた検討・準備が始まる接触者追跡アプリについても有効性には疑問が示されている。ビジネスインサイダーによると、オックスフォード大のビッグ・データ研究所は接触者追跡アプリについて有効だとの研究結果を発表したが、どのくらいアプリのユーザーが広く広がるか、そもそも検査が幅広く行われているか次第であり、また、アウトブレイクの早い段階で使用されることに効果があるという。また、アプリはすべての感染可能性を記録しているわけではなく、ユーザーに誤った安心感情を作り出す危険があるとしている。また、WIRED誌には、感染症対策ではたまたま飛行機に隣に座っただけの人も含めて個人情報が補足され、疾病管理データベースなどに登録されるなど、多くの人の情報が含まれる可能性があるが、そのデータがいつまで利用されるのかは明らかではなく、また利用が停止されることを多くの人が信じていないと研究者の指摘がある。また、ある時点で接触者追跡は接触者が多くなりすぎて実行不可能となるともしている。追跡者接触アプリを導入すると、従来より多くの接触者が機械的に特定され、たまたま居合わせた人など広範囲かつ大量に個人情報が収集されて保存、利用される可能性がある。そうした場合にいつまでどのような利用目的で個人情報を保有するのか、目的外利用は行われないのか、そして多くの接触者にどう対応するのかといったことの準備が必要であることは明らかだろう。

<RNAウイルスに対する安価なワクチン・治療薬>
PS(2020年5月20日):新型コロナに関して、現在は必要な検査も受けられず治療薬もない状態であるため、21世紀の医療が期待できない。そのため、私は、医者いらずのアロエやヨーグルトを飲む伝統的な方法をとっているが、これが意外と効いている。そのため、新型コロナのようなRNAウイルスが細胞に感染することを利用して、乳酸菌(麹菌でも可)に感染させ、生き残った乳酸菌株でヨーグルトを作れば、RNAウイルスに対するワクチンや治療薬の働きをするヨーグルトを安価に作れるのではないかと思う。ちょうど、*10-1のように、コロナ禍で牛乳が余るくらいに牛乳の生産能力はあるため、(すぐに需給調整したり、国の補助金に頼ったりするのではなく)付加価値の高い製品を作ることを考えた方が賢明であるし、牛乳はいろいろなやり方で使えるのである。
 さらに、*10-2のミドリムシも健康食品になっているが、新型コロナに感染させた後に生き残った株を増やせば、それには抗原や抗体を含ませることができ、(燃料としては高すぎるが)治療薬やワクチンとしてならアフリカでも使える安価なものを作れるのではないかと思う。

*10-1:https://www.agrinews.co.jp/p50774.html (日本農業新聞論説 2020年5月13日) コロナ禍酪農危機 一丸で生乳需給調整を
 新型コロナウイルス感染拡大に伴う緊急事態宣言の長期化で、生乳の需給緩和が重大局面を迎えている。特に主産地・北海道での生乳処理が限界に近づき、処理不可能乳が出かねない危機的状況だ。生乳需給調整へ酪農、乳業、行政が一体となり難局を乗り切るべきである。コロナ禍による急速な需要減少は、生乳生産全体の6割近くを占める北海道で深刻な事態を招いている。Jミルクは「ミルク・サプライチェーン(供給網)が寸断され、酪農・乳業界に大打撃を与えかねない」と懸念を募らせる。一方で、こうした現状が消費者に伝わりにくい実態にあるのも事実だ。家庭内需要に限れば、牛乳は前年対比で2桁伸び、乳製品消費も堅調だ。江藤拓農相をはじめ関係者挙げて牛乳・乳製品の消費拡大を呼び掛け効果も出てきた。だが問題は、「生クリーム、バターをはじめ生乳全体の半分近い業務用需要の落ち込み量をカバーできない」(Jミルク)点だ。例えばバターは家庭需要が好調だが、全体の2割にすぎない。生乳は全国で毎日約2万トン生産される。ホクレンをはじめ各指定生乳生産者団体は懸命の配乳調整を続けているが、行き場を失った大量の生乳をどう処理、販売していくのか。コロナ禍で既に欧米各地では生乳廃棄が相次ぐ。外出自粛で外食など業務用需要が大幅に縮小する一方、北海道の生乳生産は5月後半からピークとなる。5月の全国生乳生産見込みは65万トンで、前月に比べ2万5000トンも多い。全国の大半の小中学校休校継続で、学校給食向け生乳の道外移出も激減。需給の調整弁となるバター、脱脂粉乳を製造する道内の乳製品工場での処理能力を超えた生乳が供給されつつある。現在、製造余力のあるチーズ工場に生乳を振り向けるなど綱渡りの需給調整が続く。4月下旬、関係者は相次ぎ記者会見を行った。生乳需給が重大局面を迎えていることの危機感からだ。道内の生乳生産量が最も多い5、6月を過ぎれば需給は好転に向かうとの見方も強い。それまでの間に、需給調整と消費拡大を強力に進め、どう難局をしのぐかが最大の課題だ。国内酪農は、都府県の生産基盤弱体化が深刻で、需要が生産を常時上回る状態が続いてきた。始動した新たな酪農肉用牛生産近代化方針(酪肉近)でも、基盤強化と着実な増産実現が焦点となった。乳牛増頭で増産基調を維持しながら、コロナ禍の中で需給調整を徹底し、国内酪農を守らなければならない。関係機関は、月末にも直近情勢を踏まえた生乳需給見通しの具体的数字を示す。脱粉は需要低迷から在庫が過去最高水準に積み上がっている。農水省が1月に示した今年度の脱粉輸入枠は4000トン(製品換算)だが、当初から過大な数字との指摘が出ていた。今の生乳需給重大局面の中で、同省が輸入量の修正に踏み切るか注目したい。

*10-2:https://digital.asahi.com/articles/photo/AS20200213002231.html (朝日新聞 2020年2月13日) 航空機バイオ燃料、熱い視線 国内でも開発、コスト課題
 藻の一種に含まれる油脂やごみなどを原料とする「バイオジェット燃料」を、航空機燃料に導入する動きが進みつつある。地球温暖化を防ぐため、世界が二酸化炭素(CO2)削減に取り組むなか、大量のCO2を排出する航空業界も対応を迫られている。日本で普及するには安定供給とコスト削減がカギになる。
■原料にミドリムシ、木のチップ、衣料品…
 横浜市鶴見区にある、微細藻類のミドリムシを原料に使った健康食品などで知られるユーグレナ(東京都)が運営するバイオ燃料製造プラント。ここでミドリムシからとれる油脂や廃食油を原料に、航空機やバスなどで使える燃料をつくる実証試験が進められている。植物のように光合成で栄養分を体内にためるミドリムシは、周囲に酸素がないと細胞内に油脂を蓄積する性質がある。この油脂を燃料の原料として活用する。2018年秋に竣工(しゅんこう)したプラントは敷地面積約7800平方メートル、年間125キロリットルの燃料の製造能力がある。1月、このプラントの技術が、燃料を民間航空機に導入するのに必要な国際規格を満たすと認められた。同社は今春の初出荷を目指す。ネックは製造コスト。実証プラントを製造工場としても使う前提で、計算上1リットルあたり1万円になる。普及には同100円ほどにする必要があるという。同社バイオ燃料事業課の江達(こうたつ)課長は「コストの7~8割を占める原料をいかに安く手に入れるかがポイントになる」と話す。ミドリムシを安定、大量培養するため、同社は温暖で日射量が多いインドネシアやコロンビアで試験する計画を進める。国産バイオジェット燃料の普及に向けて、経済産業省と国土交通省は15年、検討委員会を設置。東京五輪・パラリンピック期間中にバイオジェット燃料を混ぜた燃料を使った飛行を目標の一つに掲げ、官民で議論してきた。ユーグレナも今年9月までの有償飛行実現を目標に掲げる。ユーグレナ以外にも、三菱日立パワーシステムズなどは木のチップなど木質系バイオマスを原料とし、液体燃料を作り出す技術を開発。ベンチャー企業グリーン・アース・インスティテュート(GEI)などは、回収した衣料品を糖に変えて菌の力でアルコールにしてから燃料にする。
■CO2排出減へ、供給足りず
 温暖化対策として脱炭素の動きが加速し、欧州では航空機を使わず、CO2排出がより少ない鉄道で移動する「飛び恥」という動きも生まれる中、航空業界も対応を急いでいる。国際民間航空機関(ICAO)は、国際線を運航する航空会社に、21年以降、CO2排出量を増やさない目標を課す。より燃費の良い機種への変更、燃料を節約できる運航方法の導入などとともに、化石燃料の代わりにバイオジェット燃料を使うことは、排出量を減らす一翼を担う。昨年11月までに世界21カ国の空港からの商業飛行の実績がある。日本航空と全日本空輸の大手2社だけでも1年に航空機から出るCO2は計約2千万トンにのぼる。日航は、09年に仙台などの上空で、17年には米シカゴ―成田便でバイオジェット燃料を含む燃料による試験飛行を実施。今年、GEI社の国産バイオジェット燃料を使うチャーター飛行を目指す。日航戦略グループの亀山和哉マネジャーは「CO2削減を長いスパンで考えている。バイオジェット燃料の調達は経営的にも大きな意味がある」と話す。全日空はユーグレナの実証プラントに協力するほか、国内外の燃料メーカーから供給を受ける体制を築く。全日空企画部の杉森弘明マネジャーは「(バイオジェット燃料など)持続可能な航空機燃料の導入は欠かせないが、生産量は世界的にもまだ少なく取り合いになっている」と言う。

<分散型エネルギー・自給率の向上と地方創成>
PS(2020年5月21日追加):日本政府が行っている大きな無駄遣いに原発の維持があり、原発を持つ大手電力会社の都合で、豊富な自然エネルギー(太陽光・風力・水力・潮流等)による発電が進まず、分散型エネルギーも進まず、エネルギー自給率は低く、環境負荷は大きいままだ。その上、自然エネルギーの豊富な農林漁業地帯にエネルギー代金を還流させずに、海外にエネルギー代金を大盤振る舞いで支払い続けているのだから、これほど馬鹿なことはない。
 そのような中、*11-1のように、東京新聞(中日新聞東京本社)は、本社編集部門のフロアで使用する電力(年間約百万キロワット時)を再生可能エネルギーに切り替えたとみなす「グリーン電力証書」購入し、編集部門が使用する照明・空調・記者やデスクの端末などに使う電力に再生可能エネルギーを利用したことになったそうだが、本当は東京の現場で取材する記者以外は東京にいる必要がなく、編集局・技術局・東京中日スポーツ総局・電子メディア局の管理部門や経理・総務・人事部門は、土地代が安くて豊かに暮らせる地方にオフィスを持ち、ITを使って分散型ワークをした方が早い上にコストが安い。例えば、社内だけで使う非公開のHPに、取材した記者が記事の原稿をジャンル毎に次々とアップし、それを編集者が編集して校正すれば、皆がどこにいても瞬く間に仕事ができる。また、英文で出したい記事は、インドオフィスの人に翻訳・編集をしてもらうと、(時差があるので)日本の夜中に安い賃金で働いてくれ、半日遅れで(欧米ではその日のうちに)英文の記事を出せるのである。
 そして、*11-2のように、地方もテレワークを導入して地方の拠点で都市圏の仕事を行えるよう、企業のオフィスを誘致できる拠点を整え始めている。企業にとっては、自然災害の発生リスクが小さな場所に多くのものを置いた方がリスクが小さい上に土地代が安く、地方も過疎にならないので助かるわけである。
 なお、*11-3のように、日本では、耕作放棄地が増えて生産基盤が弱体化し、1965年に7割を超えていたカロリー換算の食料自給率がたった37%に落ち込み、自国民を飢えさせながら食料を輸出する国はなく品質が保証されるとも限らないため、「食の安全保障」が乏しくなった。その上、マスクさえ中国に依存しているのでは、日本から輸出する製品がなくなるのは遠い先の話ではないと思われる。

*11-1:https://www.tokyo-np.co.jp/article/release/CK2019110802000196.html (東京新聞 2020年5月1日) 再生エネ電力で新聞編集します 本社「グリーン証書」取得
 東京新聞(中日新聞東京本社)は、本社編集部門のフロアで使用する電力(年間約百万キロワット時)を、再生可能エネルギーに切り替えたとみなす認証を取得しました。再エネを調達したと認める「グリーン電力証書」を購入して、火力や原発などではない再エネ由来の電力により、環境にやさしい新聞編集を目指します。グリーン電力証書は「日本自然エネルギー社」(東京)が発行しています。同社は国内で太陽光やバイオマスなどの再生エネ事業を手掛ける四十九発電所(計約三億キロワット)に発電委託。その発電量に見合った二酸化炭素(CO2)を削減したとみなして、環境を守ることに貢献したとする「証書」を売り出しています。第三者機関の日本品質保証機構が証書の価値を認証しています。東京新聞は十一月から、編集部門が使用する照明や空調、記者やデスク端末などに使う電力量に見合った証書(バイオマス発電)購入を開始しました。これにより編集作業の電力はバイオマスを使ったとみなされます。きょう八日朝刊の紙面から証書のロゴマークを掲載します。
◆環境保護重視、広がる購入 139社・団体がグリーン証書
 「グリーン電力証書」は、国内の企業で購入の動きが広がっている。再生可能エネルギーを利用したとみなされる仕組みを使い、環境保護の取り組みに積極的だと打ち出すのが狙いだ。背景には、企業の再エネ利用や二酸化炭素(CO2)削減の姿勢に対し、市民や機関投資家らの目が厳しくなっていることがある。証書発行を手掛ける日本自然エネルギー社によると、国内でグリーン電力証書を年間契約しているのは、トヨタ自動車や順天堂大医学部附属練馬病院など百三十九社・団体。年間契約電力量は計約二億五千万キロワット時に上る。味の素AGF(東京)はグリーン電力証書を購入することによって、一八年三月末から本社と営業拠点で使用する電力のすべて(約八十万キロワット時)を再エネでまかなっている形。アサヒビールは証書を通じ、主力商品スーパードライ(三五〇ミリリットル缶)の製造に風力発電とバイオマス発電を活用している。国内外の機関投資家は近年、「ESG(環境・社会・企業統治)投資」と呼ばれる考え方を重視し、環境保護や地球温暖化防止に積極的に取り組む企業に投資する姿勢を強めている。だが、多くの企業にとって自前の再エネ発電設備を持つのは難しい。そのため、グリーン電力証書などを活用して間接的に再エネ普及の促進に努めている。
     ◇
 東京新聞(中日新聞東京本社)が購入するグリーン電力証書は年間百万キロワットで、本社編集局、技術局、東京中日スポーツ総局、電子メディア局のフロアで一年間に使用する電力の総量分に相当します。

*11-2:https://www.agrinews.co.jp/p50842.html (日本農業新聞 2020年5月20日) [新型コロナ] 進むテレワーク導入 地方拠点で都市圏の仕事 北海道で誘致盛ん
●大学多数、災害同時発生リスク少で注目
 新型コロナウイルスの感染を防ぐため注目されている、在宅勤務などの職場以外で仕事する「テレワーク」。北海道では、企業のサテライトオフィスを誘致できる拠点を整えて、地域に人を呼び込む動きが以前から活発だ。先進地域の北見市では東京のIT企業が拠点を構え、学生にテレワークの体験の場を提供。ニセコ町では旧でんぷん工場を改装した施設が注目を集める。同市の担当者は今後、東京で働く必要性を考え直す企業や人が増えると予想、新たなニーズを地域の活力にと期待する。
●学生を地元に…インターン重視 北見市
 道内の自治体は、東京と同時に災害が起こるリスクの低さや大学の多さなどを背景にテレワークに注目。インターネット環境を整えた施設を設けるなどで企業や個人を呼び込んできた。道によると、道内35市町村がテレワークできる拠点を設置。2018年度末時点で、首都圏のIT企業を中心に64企業が道内にオフィスを開設しており、徳島県と並んで全国1位の数だった。全道に先駆けテレワークを軸に企業誘致を進めてきた北見市。地元の北見工業大学と連携し、IT企業の誘致にも力を入れ、20年5月時点で、東京に本社を置くジモティーなどIT企業4社が同市内に自社で拠点を持つ。うち3社は15年から総務省が始めた「ふるさとテレワーク推進事業」を活用して同市を訪れた。同事業を活用した地域数は15年度の15から19年度で58に増えた。同市の中心商店街に設置したサテライトオフィスには、テレビ会議システムやWi―Fiを完備する。このオフィスを事務所として使ったり、一時的に利用したりする人は年間延べ3000人。地方に拠点がない企業の「出張所」としてもニーズが高い。同市で現在力を入れているのが、同市外に進学した大学生を誘致した4企業などに就職を促すことを目的にした「ふるさとインターンシップ」だ。帰省費用は同市が負担し、東京の企業の仕事をテレワークで3日間、体験してもらう。2017年に始め、3年間で25人の学生が参加。市工業振興課の松本武工業係長は「地元の学生は北見には仕事がないと漠然と思っている。北見でも東京と同じような仕事ができると伝えている」と話す。市民に知ってもらう機会も設ける。東京に子どもがいる50、60代の親に、盆や正月の前に説明会を開く他、ちらしを配る。帰省した子どもに「テレワークについて伝えてほしい」と呼び掛けてもらう作戦だ。松本係長は今後、新型コロナウイルスの感染拡大でテレワークが注目され、社会全体で勤務形態が多様化すると、地方移住が進むのではないかと予想する。「東京に会社があるため仕方なく(都心に)住んでいる人もいただろうが、本当に会社に行く必要があるかを考え始めると思う。その時に北見市が選択肢に出てきてほしい」と話す。
●観光+αの力に ニセコ町
 スキーなど世界的な観光地・ニセコ町は、国内外からの長期滞在者向けに仕事もできる場所をつくろうと、地域の交流施設「ニセコ中央倉庫群」にテレワークできる環境を整えた。JAが所有していた倉庫やでんぷん工場を町が改修し、観光だけではなく仕事でも人を呼ぶ込む拠点にした。旧でんぷん工場には作業室、倉庫にはプロジェクターなどを整備した。19年度の利用者は延べ434人で、年々増加している。同倉庫群では、4月から地域おこし協力隊が企画したお菓子「NISEKO農OKAKI」を発売。同工場をかたどったパッケージには農業の歴史が書かれ、利用者に施設を紹介している。総務省は、企業のテレワーク導入の利点として優秀な人材の確保やコスト低減などを説明する。東京が本社の企業に勤め、同施設を利用する30代の男性も「賃貸で事務所を借りるよりも柔軟に動ける」と話す。

*11-3:https://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2020051802000116.html (東京新聞社説 2020年5月18日) コロナと食料 農業再生は「安全保障」
 田植えの季節。「密」とは無縁の空の下、粛々と作業が進む。この風景が消えていき、耕作放棄地が増えている。グローバルなモノの流れが突然止まる「コロナの時代」。農業再生は急務である。国連の世界食糧計画(WFP)は、新型コロナウイルスの影響で、食料不足に陥る人が激増すると予測する。ただでさえ温暖化の進行で、高温による大規模な森林火災や干ばつが頻発し、穀物生産や畜産が、深刻な打撃を受けている。その上に、コロナ危機の拡大による物流の停滞や、農作業の人手不足などが重なって、世界全体の飢餓人口は今年、二億六千五百万人に上り、昨年から倍増する恐れがあるという。まず直撃を受けるのは、気候変動の影響を受けやすく、食料を輸入に頼るアフリカなどの途上国には違いない。だが、輸入依存は日本も同じ。一九六五年には七割を超えていたカロリー換算の食料自給率は37%に落ち込んだ。半分以上を輸入に頼るということだ。現政権は「成長戦略」の名の下で、高級農産物の輸出拡大を念頭に、農業の大規模化、効率化には力を注ぐ。しかしその陰で、農家全体の高齢化は進み、耕作放棄地は増える一方だ。生産基盤の弱体化は止まらない。コロナ禍の拡大に伴って、ロシアなどが穀類などの輸出制限に踏み切った。世界貿易機関(WTO)は、自国の食料不足が危機的状況に陥った場合には、輸出を止める権利を認めている。「ほとんど影響は出ていない」と農林水産省は言うものの、温暖化が進行し、ウイルスとの“共存”を強いられる時代である。これからも、必要な時に必要なだけ、食べ物を売ってもらえる保証はない。例えばかつて、牛海綿状脳症(BSE)の流行で牛丼が姿を消した。今、コロナのまん延する米国で食肉の生産が減少し、豚肉の輸入に支障が出始めている。中国からの野菜輸入も一部途絶えた。海外依存リスクの顕在化-。コロナ禍の教訓だ。極端なマスク不足も極端な海外依存が原因だった。農産物は自然の恵み。マスクのように、すぐには増産に転じられない特殊な商品だ。農業再生は“危急重要”の課題である。このごろ盛んに「食の安全保障」と言う。それが国民の暮らしを守るということならば、核心は豊かな田畑を守るということだろう。コロナ危機を、いびつな成長戦略をただす転機にしたい。

<新型コロナの感染率と致死率について>
PS(2020年5月22、24日追加):*12-1のように、東大の児玉名誉教授らの研究グループが、都内の医療機関で5月1、2日に採取された血液を使って新型コロナの抗体の有無や量を調べたところ、500人分という検体の少なさはあるものの0.6%が陽性で、東京都の人口(約1400万人)から計算すると都内の人のうち約8万人に感染歴があると推計されたそうだ。そのため、*12-2のように、東京、大阪、宮城で抗体検査を1万人規模で実施するのは、「今後の感染拡大防止策」に役立つとともに、より正確な感染者数の把握ができる点で興味深く、北海道や九州でも行えばよいと思う。
 この新型コロナ致死率(死亡者数/感染者数)は、*12-3のように、全世界平均4.2%、イタリア・イラン6~8%前後、ドイツ0.2%以下、韓国1.1%と、各国で大きな差があるとされている。しかし、日本を例にとれば、①PCR検査の不備により新型コロナの死亡者がすべて把握されたわけではない ②感染者数も正確には把握されていない という理由で、致死率の値は実態とは異なり、国間の比較もできないと思う。そして、この新型コロナの致死率は、抗体検査を行って分母の全感染者数を把握すれば下がるし、しっかりPCR検査を行って他の死因に分類されていた死亡者を新型コロナの死亡者と認定すれば上がるものである。(参考:2020年5月22日現在、新型コロナの国内で確認されている感染者数は16,577人、死者数は814人)
 そのため、*12-4の「③人口100万人当たりの死者は米英で300~500人に対し、日本は約6人で大きな差がある」「④生活様式や医療格差だけでは説明できないと考え、人種ごとに異なる遺伝子によって免疫応答に違いが生じているとの仮説を立てた」「⑤患者の遺伝子解析を通じて解き明かそうというプロジェクトが始まり、特に注目しているのが免疫反応の司令塔の役割を果たすHLA(ヒト白血球抗原)である」「⑥ウイルスの遺伝子解析だけでは『半分』しか調べたことにならず、人間の遺伝子も解析することでワクチン開発を補完できる」「⑦新型コロナ感染症への抵抗性に関わる遺伝子が見つかれば、健康な時から血液検査でリスクを判定したり、ワクチンや治療薬の開発に貢献したりできる」という研究は21世紀風ではあるものの、その前に国毎に異なっている新型コロナの致死率の計算を揃える必要があるわけだ。
 私の個人的見解では、人種差よりも栄養格差・衛生環境格差・生活様式の差・医療水準の差の方がずっと大きく、人間の世代交代よりもウイルスの世代交代の方が比較にならないくらい早い(=進化しやすい)ため、初期に広がったウイルスよりも後から広がったウイルスの方が弱毒性で人を死に至らしめない方向に進化しているだろう(理由:そうでないウイルスは、次次と感染して生き残ることができないから)と推測できた。
 なお、PCR検査の陽性率も、*12-5のように、地域によって異なる把握方法をとっており、正確でもないため、民間の検査件数も含めて正確に計算すべきだ。国内で統一して陽性率を把握すると、同じような生活様式の国民間での陽性率の違いがわかり、WHOが世界で統一した基準を示して陽性率・死亡率を把握すると、栄養状態・生活環境・文化の異なる国民間での陽性率・死亡率の違いがわかるため、感染症に強い生活様式を割り出すことができる。それでも、PCR検査だけでは、感染を疑って検査した集団だけを検査するため陽性率が高く出るので、過去の感染歴を調べる抗体検査も重要なわけである。なお、数字を見るのは人を見ないということではなく、状況を定量的に把握する手段なのだ。


  2020.4.3    2020.5.14  2020.4.20    2020.4.3Yahoo  2020.5.24
  朝日新聞     朝日新聞   東京新聞               朝日新聞

(図の説明:1番左の図が国別致死率だが、国によって感染者数と死亡者数の網羅性が異なるため、厳密には比較できない。左から2番目の地域別を見ると、都市部の方が密であるため感染しやすいらしく、都市部に感染者が多く特定警戒区域になっている。中央の図の東京都男女別感染者の割合は、30~70歳では男性が多く、仕事の都合で閉じこもりにくいのではないかと思われる。しかし、80代になると女性の割合の方が高く、この世代は生存者そのものに女性が多いからだろう。右から2番目の図は、PCR検査と抗体検査の比較だが、症状のない感染者数も把握するには抗体検査が不可欠だ。1番右の図は、現在使われているPCR検査の陽性率の計算だが、算入されていない患者や二重・三重にカウントされている患者がおり、不正確になっている)

*12-1:ttps://www.jiji.com/jc/article?k=2020051500892&g=soc (時事 2020年5月15日) 東京大などのグループは15日、東京都内で採取された500人分の検体を使って新型コロナウイルスの抗体検査をしたところ、0.6%に当たる3人が陽性だったと発表した。都の人口に当てはめた場合、都内の8万人に感染歴があると推計される。 東大の児玉龍彦名誉教授らの研究グループは、都内の医療機関で5月1、2日に採取された血液を使い、抗体の有無や量を調べた。10代から90代の男女500人分のうち、20代と30代、50代の男性3人に陽性反応が認められた。児玉名誉教授は「きめ細かい対策のために、感染の危険性が高い職種などを知る必要がある」として抗体検査の必要性を指摘した。抗体は以前にかかった感染症と同じウイルスが再び体内に侵入した場合、体を守る特殊なタンパク質で、過去の感染歴を知ることができる。

*12-2:https://www.jiji.com/jc/article?k=2020052200403&g=soc (時事 2020年5月22日) 東京、大阪、宮城で抗体検査 1万人規模、新型コロナ感染状況調査―厚労省
 加藤勝信厚生労働相は22日の閣議後の記者会見で、新型コロナウイルスに対する抗体をどの程度の人が持っているか調べるため、東京、大阪、宮城の3都府県で、計1万人規模の抗体検査を実施する方針を発表した。6月初旬から開始する予定だ。抗体を調べれば新型ウイルスへの感染歴が分かり、日本全国の感染状況推計に役立つ。加藤厚労相は「今後の感染拡大防止策の検討に活用していきたい」と述べた。

*12-3:https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2020/03/post-92844.php (ニューズウィーク 2020年3月25日) 新型コロナ致死率に各国で大きな格差──イタリアでは8.3%
<全世界の致死率は4.2%だが、国によって数値には大きな開きが見られる。その要因とは?>
 新型コロナウイルス感染者数は3月19日までに全世界で23万人を突破し、死者数は9840人に達した。全体の致死率は単純計算で4.2%に上るが、イタリアやイランでは致死率が6~8%前後と高く、ドイツでは0.2%以下となるなど、各国で大きな開きがある。初期に感染者数が急増しながらも致死率が1.1%に抑えられている韓国は、検査と隔離政策を徹底。また、喫煙率が男性に比べて格段に低い女性が、男性より多く感染していることも、致死率を抑えた原因の1つとみられる。

*12-4:https://digital.asahi.com/articles/ASN5P5KCKN5PUCFI003.html?iref=comtop_8_07 (朝日新聞 2020年5月21日) なぜ人種で差 コロナ重症化、遺伝子解析で探る研究開
 新型コロナウイルス感染症が重症化する仕組みを、患者の遺伝子解析を通じて解き明かそうというプロジェクトが始まった。人口100万人当たりの死者は米英で300~500人なのに対し、日本では約6人で大きな差がある。研究グループはこの差が生活様式や医療格差だけでは説明できないと考え、人種ごとに異なる遺伝子によって免疫応答に違いが生じているとの仮説を立て、ゲノム解析で確かめることにした。重症化因子が判明すれば、今後のワクチン開発に生かせるという。東大や阪大、京大など7大学の研究者と研究機関などが参加。日本医療研究開発機構(AMED)から研究資金を得た。国内の約40の医療機関と連携、無症状から重症者まで、少なくとも600人の血液を調べ、9月までに報告をまとめる。慶応大の金井隆典教授が研究責任者を務める。特に注目しているのが、免疫反応をつかさどる司令塔の役割を果たすHLA(ヒト白血球抗原)。これを重症患者と無症状患者とで比較し、重症患者に特有の遺伝子を見つける。欧米でも進む同種の解析結果と照合すれば、日本人の死者数が少ない原因の解明にもつながるとしている。遺伝子解析が専門で東京医科歯科大特命教授の宮野悟・同大M&Dデータ科学センター長は「ウイルスの遺伝子解析だけでは『半分』しか調べたことにならない。宿主である人間の遺伝子も解析することでワクチン開発を補完できる」と話す。新型コロナウイルス感染症への抵抗性に関わる遺伝子が見つかれば、健康な時から血液検査でリスクを判定したり、ワクチンや治療薬の開発に貢献したりできるという。遺伝子と感染症には密接な関係があり、エイズウイルスに耐性を持つ遺伝子変異や、インフルエンザや肺炎に対して免疫が働かなくなる遺伝子病が見つかっている。かつてのシルクロード周辺に住む民族がかかりやすいベーチェット病など、遺伝子の違いによって、特定の病気になりやすい民族があることも知られている。

*12-5:https://digital.asahi.com/articles/ASN5R66BNN5DPTIL02F.html?iref=comtop_8_04 (朝日新聞 2020年5月24日) 陽性率の計算、地域でバラバラ…専門家「正確にすべき」
 新型コロナウイルスで注目されている陽性率は、全国的に統一された計算法が存在しない。感染の有無を調べるPCR検査を受けた人に占める陽性者の割合だが、地域によって民間による検査件数を含めなかったり、同じ人が複数回検査した際の扱いが違ったりしている。政府の専門家会議も問題視。統一を求める声があがっている。陽性率は感染状況を把握する上での重要な指標と位置付けられているが、計算法に違いがある。主に①民間病院などによる検査を集計に含むかどうか②退院時の陰性確認検査などを含むかどうか――の2点だ。今も緊急事態宣言の対象となっている北海道と首都圏の4都県、21日に解除された近畿3府県でも対応はバラツキがある。東京都は当初、行政が行う検査だけを集計。民間病院などによる検査は把握していなかった。そのため陽性率も公表してこなかったが、民間分も含めて集計するように改め、今月8日に初めて陽性率を発表した。退院時の陰性検査を除き、16~22日は1・3%だった。神奈川、兵庫の両県は現在も民間分を集計していない。千葉県は民間の検査機関から提供してもらったデータに陰性検査が含まれているため、いまは民間分を集計対象外としている。陰性検査を除いて集計に加える方向で準備をしているという。大阪府と京都府は、民間検査を含めている。埼玉県は当初、ほかの自治体と異なり、県が運営する保健所13カ所分と民間分だけを集計していたが、今月15日から政令指定市と中核市が運営する保健所4カ所分も加え、県内全体の陽性率を出している。北海道では、いまのところ民間の検査はしていないという。8都道府県はいずれも、退院時の陰性検査は含めていないが、厚生労働省によると、陰性検査などを陽性率に含めている県はほかに20近くあるという。統一された基準はないが、政府の専門家会議の尾身茂副座長は「行政による検査だけだと分母が少なくなり、民間の検査も加われば分母は正確になる。入院患者は(陰性検査を含めて)何回も検査するため、ダブルカウントすれば分母が過大になってしまう」と指摘。①は全体像を把握するために集計に含めるべきで、②は陽性率とは関係ないため含めるべきではないとの立場だ。計算の仕方によって、どれぐらいの誤差があるか公表されていないが、地域によって差があり、厚労省は国内の正確な陽性率を把握しきれていない。政府の専門家会議は14日、新型コロナウイルス感染症対策の状況分析・提言で「都道府県の状況を比較できるようにすることが重要」と問題提起した。
●専門家「PCR検査だけでは不十分」
 陽性率の計算法を統一しても、それだけでは不十分との指摘もある。東京大公共政策大学院の鎌江伊三夫特任教授(医療政策)は「感染を疑って検査した集団での陽性率には統計学上の偏りがある。検査数が少ない問題もあるため、信頼できる数値を導き出すことができない」とする。厚労省は13日、「抗原検査」の検査キットを承認した。この検査は数時間かかるPCR検査に比べて精度は下がるが、30分程度で感染しているかどうかが分かるため検査体制は拡充されそうだ。過去の感染歴を調べる「抗体検査」についても、来月にも1万人規模で実施する予定だ。鎌江氏は「PCR検査だけでなく、抗原検査や抗体検査も合わせて対象範囲を広げれば、市中でどれだけ感染が広がっているか推定できる。政府は、その算出ルールと調査システムを急いで作る必要がある」と指摘する。

<遅ければ置いて行かれるだけであること>
PS(2020年5月23日追加):*13-1のように、新型コロナウイルスに関する政府専門家会議の脇田座長(国立感染症研究所長)は、5月20日の衆院予算委員会で、「①感染を予防するワクチン開発の時期は年を越える」「②その先、どの程度で可能になるか現時点で答えるのは難しい」「③ワクチンは有効性に加え安全性の確保が重要で、副作用の有無を見極める必要がある」「④日本と海外のどちらが先にゴールにたどり着けるか分からない」と述べた。また、日本のメディアも、「⑤ワクチン開発には数年かかる」「⑥少なくとも、来年以降だ」などと、まるで遅いことがよいことであるかのように偉そうに言っていて鼻についたが、「意志なきところに成果は出ない」というのが人間界の原則だ。
 一方、英製薬大手のアストラゼネカは、*13-2のように、5月21日、英オックスフォード大学と開発する新型コロナウイルスのワクチンの10億回分の生産体制を整え、4億回分の受注契約は既に結び、今年9月には供給を始めると発表した。これについて、日本のメディアは「⑦世界でワクチンの開発競争が激しくなる中、自国分の確保を優先する動きがあり、公平な普及のあり方が課題となっている」などと述べているが、意志を持って全力で開発するというリスクをとった国が、いくらで誰に供給するかは自由であり、妨害こそすれ協力しなかった人が成果配分には「公平性」などと口出しするのは論外である。
 さらに、5月23日には、*13-3のように、「⑧ワクチン量産には多額の費用がかかり、欧米では開発のゴールを前に早くも量産技術を競い合うが、日本勢は出遅れ感が否めず政府が供給能力の強化に乗り出す」「⑨ワクチンは参入障壁が高い医薬品」「⑩世界のワクチン市場は米ファイザー、メルク、英グラクソ・スミスクライン、仏サノフィで8割以上を占める」「⑪寡占の背景には各社の豊富な供給能力にあるとされる」と記載しているが、日本は欧米より早く新型コロナが流行したため、⑧はやる気のなさの証明に過ぎず、このようなビッグチャンスに政府が資金を出さなくては生産できないことが情けないのであり、⑨⑩⑪は、これらの結果にすぎない。従って、もう一度書くが、マスクは中国、ワクチンは欧米依存では、日本から他国に輸出するものがなくなるのは時間の問題なのである。

 
    2020.5.17朝日新聞            2020.5.20産経BZ

(図の説明:左図のように、国内外のワクチン開発状況は、2020.5.17に朝日新聞が報道し、2020.5.20にはそのうち主なものについて産経BZが報道している。にもかかわらず、「ワクチン開発には数年かかる」「早くて来年」などと言っているのは、認識不足も甚だしいのだ)

*13-1:https://mainichi.jp/articles/20200521/ddm/012/040/070000c (毎日新聞 2020年5月21日) 新型コロナ 「ワクチン開発 越年」 専門家会議座長「安全性重視」
 新型コロナウイルスに関する政府専門家会議の脇田隆字座長(国立感染症研究所長)は20日の衆院予算委員会で、感染を予防するワクチン開発の時期について「年を越えると思っている。その先、どの程度で可能になるか現時点で答えるのは難しい」と述べた。諮問委員会の尾身茂会長は、8都道府県で継続している緊急事態宣言に関し「仮に解除されても、(新規の感染)報告者数ゼロが短期間続いたとしても、見えない感染が続いていると考えるべきだ」と注意を促した。脇田氏は、ワクチンは有効性に加え安全性の確保が非常に重要で、副作用の有無を見極める必要があると指摘した。「日本と海外のどちらが先にゴールにたどり着けるか分からない」とも語った。

*13-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200522&ng=DGKKZO59440450S0A520C2MM0000 (日経新聞 2020.5.22) 英アストラゼネカ、コロナワクチン9月に供給へ 
 英製薬大手のアストラゼネカは21日、英オックスフォード大学と開発する新型コロナウイルスのワクチンについて、10億回分の生産体制を整えたと発表した。4億回分の受注契約を結んでおり、9月にも供給を始める。世界でワクチンの開発競争が激しくなる中で自国分の確保を優先する動きがあり、公平な普及のあり方が課題となっている。同社は米生物医学先端研究開発局(BARDA)から10億ドル(約1070億円)の支援を受けたことも明らかにした。英フィナンシャル・タイムズによると同社が受注した4億回分のうち、およそ3億回分は米国向けになるという。アストラゼネカは英国政府ともワクチンの9月からの供給に向けて協力している。

*13-3:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200523&ng=DGKKZO59490600S0A520C2EA2000 (日経新聞 2020.5.23) ワクチン量産 設備が壁、特殊な技術 欧米勢が先行 日本、資金支援を検討
 新型コロナウイルスの予防ワクチンの実用化に向け欧米企業が普及のカギを握る量産体制の整備に動き出した。英医薬大手アストラゼネカが21日、英オックスフォード大学が開発したワクチンを年間10億回分供給できる体制を整えたと発表。米新興のバイオ企業モデルナも同規模の大量供給の体制を構築する。ワクチン量産には多額の費用がかかる。欧米では開発のゴールを前に早くも量産技術を競い合うが、日本勢は出遅れ感が否めず政府が供給能力の強化に乗り出す。アストラゼネカが量産するのは、オックスフォード大学が手掛ける開発スピードの速い最新ワクチンだ。量産工程には遺伝子を組み換えたウイルスを大量培養する装置やウイルスが外部流出しないように高度に衛生管理された施設が必要。アストラゼネカは設備を改良するなどして9月からの供給に備えるもようだ。
●数百億円が必要
 大量生産するワクチンの品質検査体制も欠かせない。充実した設備・体制は大手に限られる。オックスフォードが自前で大規模生産を進めると数百億円単位の投資費用がかかり、量産開始まで1~2年はかかる。バイオスタートアップ企業のモデルナも年10億回分の大量供給を実現するため、今月1日にスイスのロンザとの提携を発表した。治験用の小規模な生産設備を持つが、モデルナに量産できる設備はない。モデルナが手掛けるRNAワクチンは鶏卵や動物細胞などでウイルスを増やす従来型のワクチンと異なり、一般的な化学物質と同様に化学合成で作る。開発時間を従来型に比べて短縮できる。物質の仕組みは単純だが、量産は技術の蓄積がないと難しい。血液中で分解されないような製剤化技術や、成分を均質に保つには特殊な技術が必要だからだ。モデルナは量産に向け医薬品受託製造会社であるロンザの設備を活用する。モデルナはロンザへの製造技術の移転を6月中にも終え、7月にも試作品の生産を始める。現在、RNAワクチンを商業生産するノウハウを持つのは、モデルナと独ビオンテック、独キュアバックの3社とされる。ビオンテックは量産化で米ファイザーと組む。
●大手4社で8割
 ワクチンは参入障壁が高い医薬品だ。世界のワクチン市場は米ファイザー、メルク、英グラクソ・スミスクライン、仏サノフィで8割以上を占める。4社は主に従来型ワクチンを開発・生産し、寡占の背景には各社の豊富な供給能力にあるとされる。ワクチンの成分は特許で公開されているが、量産化には膨大な投資とノウハウが必要だ。ワクチン事業の競争力は開発技術だけでなく、供給能力も握る。欧米各国は量産技術を評価して各社のワクチン計画に資金支援する。アストラゼネカ・オックスフォード大学のワクチン計画には英政府が約27億円の助成金を出しているが、このほど米生物医学先端研究開発局(BARDA)から約1070億円の支援を受けたことも明らかになった。オックスフォードのワクチンを年4億回分から同10億回分に引き上げることができたのもBARDAの資金が支えたとされる。BARDAはオックスフォードと同様のワクチンを開発するジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)と約1000億円の設備費用を折半する。開発の成功メドがつく前から量産まで視野に入れて、米国向けにコロナワクチン確保を急ぐ。新型コロナワクチンの実用化で欧米勢と競う中国。政府と関係の深いバイオ企業や研究所でワクチン治験が実施されている。すでに有効性を確認する治験まで進んでいるワクチンもあり、最短で今秋の実用化を目指す。ただ、中国勢のワクチン量産化に向けての技術・ノウハウについては「公開情報がなくどれだけ供給されるかも不明」(国内医療関係者)。一方、日本でワクチンを供給できる企業は、武田薬品工業やKMバイオロジクス、第一三共、阪大微生物病研究会などに限られる。今回のコロナに対応するRNAなど最先端のワクチンを量産する企業はまだない。RNAワクチンでは第一三共が東京大学医科学研究所に開発で協力するが、量産体制について明らかにしていない。大阪大学発のバイオ企業アンジェスが進める新型コロナワクチンの量産は主にタカラバイオが担う。年間20万人分のワクチン開発の準備を進めているが、モデルナやオックスフォードのワクチンの0.02%にとどまる。政府もパンデミックに対応する製造技術の開発支援を進めてきたが、最先端のワクチンの量産への取り組みは遅れていた。ただ、ここにきて世界で新型コロナワクチンの量産化に向けての動きが相次いでいるのを受け、日本政府は国内企業がワクチンを大規模に生産できるように資金支援する検討に入った。「(ワクチンは)開発できるかより、生産しなくてはならないワクチンの量を懸念すべきだ」(サノフィのポール・ハドソン最高経営責任者=CEO)。欧米企業・政府関係者の間では、新型コロナワクチン実用化の議論での焦点は、開発からいち早く大量供給できる能力に移りつつある。量産化に向けた新型コロナワクチンの供給体制について議論を日本でも深める必要がある。

<米国と中国について>
PS(2020年5月26日追加):*14-1・*14-3のように、中国政府は、「香港の民主化運動を抑制するには『強力な措置』が必要だ」として、香港基本法の付属文書に中国の国家安全法を追加する形で香港に国家安全機関を設立することなどを全人代で決めつつあるため、香港の人権や自由は中国本土並みに制限される恐れがあり、香港の「一国二制度」は危機に直面しているそうだ。これに対し、*14-4のように、当局が集会に先駆けて ①集会が無許可である ②新型コロナに関連した条例で8人超の集会が禁止である と警告したのに、大勢の民主派のデモ参加者らが集結し、警察は催涙弾と放水銃を発射して40人が逮捕されることとなって、新型コロナにより政治集会やデモも危険な行為となってしまった。
 また、*14-2・*14-3のように、台湾は、2009年から8年連続でオブザーバーとしてWHO総会に参加してきたが、2017年以降は中国の圧力で出席できず、今年は米国の下院議員205人がWHO総会に台湾をオブザーバーとして招くよう求める連名書簡をWHOのテドロス事務局長宛てに送付し、チェコにも台湾支持の動きがあったが、やはり実現しなかった。ここで、欧米諸国は本気で人権・自由・民主主義を護るための闘いに入ったと思われるが、日本の多くのメディアは、*14-5のように、「米中が結束するのが最良の防疫策だ」など米国が中国と仲良くしさえすればよいという論調で、「自由や民主主義は、自ら護らなければなくなるものだ」という発想に欠けていると思う。
 なお、WHOへの貢献は、下の図のように、資金拠出だけでも米国が飛びぬけており、その他の貢献も加えると欧米諸国の貢献が大きいが、現在のGDPから考えると中国はじめ貢献の小さすぎる国は多い。そのため、トランプ米大統領がWHOに書簡を送り、拠出金の恒久停止や脱退まで示唆して中国からの独立を要求したのは交渉のやり方として十分あり得ることで、何でもトランプ米大統領の性格のせいにすればよいという論調は考えが浅い。

   
 2019.11.12朝日新聞   2019.11.28毎日新聞  2020.4.13    2020.5.21
                          朝日新聞     毎日新聞

(図の説明:1番左の図のように、2020年1月11日に台湾総統選で当選した蔡氏は、中国が打ち出す「一国二制度」による中台統一を拒絶し、台湾への武力行使を断念するよう中国共産党及び中国政府に呼び掛けた。米国のトランプ米大統領は、左から2番目の図のように、2019年11月27日に香港の人権と自治を擁護するための「香港人権・民主主義法案」に署名し、米国で同法を成立させた。そして、右から2番目の図のように、WHOは確かに中国寄りで、今年の総会には台湾のオブザーバー参加も認めなかったが、台湾は中華民国という独立国であるため、中国の方が内政干渉の無理な主張をしている。そのため、1番右の図のように、すべての国は、独立国が世界機関に代表を送ることに反対すべきではないだろう)


   2019.6.4朝日新聞         2019.4AFP      2020.3.31FS

(図の説明:左図のように、中国と米国は力で押しあっているが、日本は民主主義国で領土問題もあるため、まるで第三者ででもあるかのように米国を批判するのはおかしい。また、中国の軍事支出は米国より小さく見えるが、人件費や物価が安いため実質では米国より大きいだろう。なお、中央と右の図は、各国のWHOへの拠出金はじめ人材での貢献度を示しており、第二次世界大戦直後と現在ではGDP比が大きく異なるため、成長した国はGDPに応じて負担すべきだ)

*14-1:https://digital.asahi.com/articles/ASN5Q42L8N5QUHBI00S.html (朝日新聞 2020年5月22日) 中国、香港に国家安全法適用へ 一国二制度の重大危機
 中国政府は22日、香港での反政府活動を取り締まるための新たな治安法制の整備に着手した。香港に中国の国家の安全を守る機関を設立することなどが柱。昨年来の抗議デモなど香港で強まる動きを封じる狙い。香港で保障される人権や自由が中国本土並みに制限される恐れがあり、「一国二制度」は重大な危機に直面している。北京で22日午前に開幕した全国人民代表大会(全人代、国会に相当)で「香港での国家の安全を守る法制度の整備」が提案された。李克強(リーコーチアン)首相は政府活動報告で「憲法によって定められた責任を香港政府に履行させなければならない」と指摘した。香港基本法の付属文書に中国の国家安全法を追加するかたちで、同法を香港で適用する。香港政府トップの行政長官に対し、国家安全に関する教育の強化などを義務づける。香港メディアによると、提案は全人代の審議を経た後、全人代常務委員会が8月にも施行を決定するとの報道もある。香港基本法は、国家分裂や政権転覆の動きを禁じた「国家安全条例」の制定を求めるが、市民の反発で頓挫。しびれを切らした中国側が直接介入に踏み切る形となる。香港の民主派は「一国二制度が崩壊する」と強く批判している。昨年来のデモで中国への反発が高まるなか、市民感情をさらに刺激するのは確実で、香港の政治危機は深刻さを増しそうだ。

*14-2:http://japan.cna.com.tw/news/apol/202005150007.aspx (CNA 2020/5/15) 台湾のWHO参加めぐり米議員205人が連名書簡 チェコでも台湾支持の動き
 米の下院議員205人が、今年の世界保健機関(WHO)総会に台湾をオブザーバーとして招くよう求める連名書簡をWHOのテドロス事務局長宛てに送付したのを受け、外交部(外務省)は15日、心からの歓迎と感謝を表明した。書簡では、新型コロナウイルス対策における台湾の対応について触れ、台湾をWHOに迎え入れる行動に価値があることを証明しているとした上で、台湾がWHOのネットワークに入れずにいることや、台湾の統計資料が誤って中国のデータとして取り扱われていることを指摘。また、中華人民共和国を「中国」の代表だと承認した国連総会2758号決議やWHO総会25.1号決議にも言及し、これらの決議はいずれも、北京に台湾人民を代表する権利を与えていないと強調している。13日に送付された。発起人は、親台派の議員連盟に所属するスティーブ・シャボット議員(共和党)、アルビオ・シラズ議員(民主党)とジェリー・コノリー議員(民主党)。リズ・チェイニー共和党会議議長や外交委員会のエリオット・エンゲル委員長(民主党)らが署名した。
▽チェコ上院の2委員会でも台湾支持の決議
 チェコ上院の外交・国防・安全保障委員会と衛生・社会政策委員会で13日、WHO総会に台湾を招くようテドロス事務局長に提言するとともに、チェコ政府に台湾のWHO参加を支持するよう求める決議案がそれぞれ可決された。外交部が14日に明らかにした。同部は、チェコ議会の委員会で近年このような決議が可決されたことはなく、大変意義深いとし、深い感謝を表明した。その上で、WHOが特定加盟国の政治的操作に振り回されず、各界の声に耳を傾け、科学的見地に基づいて実務的に対応することに期待を寄せた。WHO総会は18日からテレビ会議の形式で開催される。台湾は2009年から8年連続でオブザーバーとして参加してきたが、17年以降は中国の圧力により出席できない状態が続いている。今年も招待状は届いておらず、参加の見通しは立っていない。これについてWHO側は、加盟国間の「政治的な共通認識が不足している」ためと説明している。

*14-3:https://www.afpbb.com/articles/-/3284462?cx_part=related_yahoo (AFP 2020年5月23日) 【解説】渦中の香港国家安全法、その内容と中国の思惑は?
中国の全国人民代表大会(National People's Congress、全人代、国会に相当)が提案した香港での国家安全法導入について、米国や同市の民主派は香港の自由への攻撃だと非難しており、経済中心地の同市で抗議運動が再燃する恐れが出ている。
■中国はなぜ導入に動いたのか?
 香港の「ミニ憲法」である基本法の第23条では、中国政府に対する「反逆、分離、扇動、転覆」を禁止する国家安全法を制定することが定められている。香港は長年にわたり同法の導入を試みてきたが、昨年同市をまひ状態に陥らせた民主派デモによってこの問題の緊急度が増し、中国政府の行動へとつながった。全人代で実際に立法を担う常務委員会の王晨(Wang Chen)副委員長は22日、香港民主化運動を抑制するには「強力な措置」が必要だと警告した。
■香港市民の意見は?
 香港基本法第23条は、香港市民が大切にしている表現や報道の自由などの権利剥奪につながることが懸念され、これまで施行されてこなかった。こうした自由は中国本土では認められておらず、香港では1997年の英国による中国への同市返還前に結ばれた合意で保護されている。2003年には同条項の施行が試みられたが、50万人が参加する街頭デモが発生し、見送られた。中国政府は、香港の立法会(議会)を迂回(うかい)し、国家安全法を直接制定する権限を全人代に与えようとしている。
■今後の展開は?
 法案は全人代最終日の28日に採決され、来月に再び開かれる会議で詳細が詰められる見通し。常務委員会の王副委員長は、香港での新法施行はその後になるとしており、同市では抗議デモがさらに激化する可能性がある。昨年の騒乱のきっかけとなった大規模デモを主催した市民団体「民間人権陣線(Civil Human Rights Front)」のリーダー、岑子傑(ジミー・シャム、Jimmy Sham)氏は香港市民に対し、再び数百万人規模の街頭デモを行うよう呼び掛けた。
■「一国二制度」はどうなる?
 民主派議員らは、同法の制定について、中国への返還後の香港での高度な自治を認めた「一国二制度」の終わりを意味すると主張している。民主派議員の陳淑莊(Tanya Chan)氏は、同法は「香港での『一国一制度』の正式施行を感じさせるものだ」と警鐘を鳴らした。

*14-4:https://www.afpbb.com/articles/-/3284632 (AFP 2020年5月24日) 香港で「国家安全法」めぐる抗議デモ、警察は催涙弾発射
 香港で24日、中国が先週提案した「国家安全法」に抗議するため、大勢の民主派のデモ参加者らが集結したところ、警察が催涙弾と放水銃を参加者に向けて発射した。ここ数か月で最も激しい衝突となった。中国の全国人民代表大会(National People's Congress、全人代、国会に相当)に議案が提出された「国家安全法」は中国政府に対する「反逆、分離、扇動」を禁止しようとするもの。香港では昨年、数か月にわたる大規模な反政府デモが繰り広げられ、時には暴力沙汰に発展。中国政府は、異論を容認しないと何度も警告していた。香港が大切にしてきた自由に終止符を打つ法案だとして民主派が警鐘を鳴らす中、繁華街の銅鑼湾(Causeway Bay)と湾仔(Wan Chai)に大勢の人々が集結し、スローガンを叫んだ。一部のデモ参加者はマスクを着用し、警察車両を阻止しようと仮設のバリケードを設置した。集会に先駆け当局は、集会が無許可であること、新型コロナウイルスに関連した条例で8人超の集会が禁止であると警告。その後機動隊が配置された。集会の参加者が膨れ上がる中、警察は催涙弾や催涙スプレーを使用しデモを散会させようとし、その後は放水砲や装甲車が配備された。その一方、デモ参加者は昨年行われた数多くのデモと同じ手法を用い、警察に向かって傘など物を投げつけた。警察は40人を逮捕したと発表している。

*14-5:https://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2020052302000149.html (東京新聞 2020年5月23日) WHOと米中 結束が最良の防疫策だ
 世界保健機関(WHO)が、米国と中国の対立で揺れている。新型コロナウイルスの世界規模での感染は止まっていない。各国が結束することこそが、最良の防疫策であることを再認識すべきだ。トランプ米大統領は「中国の操り人形」と呼ぶWHOに書簡を送り、中国からの独立を要求。三十日以内に実現しない場合、拠出金の恒久停止や脱退まで示唆した。初動が遅れた自らの責任を転嫁する姿勢が露骨だ。これに対して中国の習近平国家主席は、WHO総会のテレビ会議に出席して釈明。WHOの新型コロナ対応に関する独立・包括的な検証を求める決議にも賛成した。しかし検証の実施時期については「流行終息後」(習主席)とするだけで具体的に触れなかった。逆に習主席は「世界の公共衛生に協力する」として国際社会への大規模な援助を約束したが、これでは自国への批判をかわすのが狙いといわれても仕方ない。総会への台湾のオブザーバー参加問題も、米中の摩擦が影を落とした。「一つの中国」の原則にこだわる中国の反対で、参加が見送られた。台湾は感染防止で卓越した成果を上げ、世界の注目を集めている。過去に参加していた実績もある。多くの加盟国が参加を支持しており、当然認められるべきだ。確かに、中国とWHOとの関係や、一連の対応について、多くの国が不満と不信感を抱いている。しかし今は、世界が直面している危機的な状況を脱することを、最優先の課題にすべきだ。状況はロシアや南米、中東で依然として深刻だ。ブラジルでは感染が急拡大し、医療崩壊の瀬戸際に追い込まれている。WHOの弱体化は、国際機関に頼るしかない途上国や、弱い人々の救済遅れに直結する。総会でドイツのメルケル首相は、「どの国も一国では、この問題を解決できない」と、結束の重要性を訴えた。米中の指導者は、この言葉をかみしめてほしい。まずは、各国がウイルスとの戦いで得た教訓を分け合い、協力しあうことが大切だ。例えば、ウイルスの特性や感染経路、治療から得られた医学的な知見などだ。さらに百十以上の開発プロジェクトが進んでいるというワクチンに関する情報を、各国が共有することも急がれる。日本政府には、米中の緊張緩和と国際協調実現のため、積極的に動くことを望みたい。

<日本で新型コロナの流行や死者数が抑制できた理由>
PS(2020年5月27、28日追加):*15-1のように、WHOのテドロス事務局長は、日本が緊急事態宣言を全面解除したことを受けて「新規感染者が大幅に減少し、死者数増も抑えられている」として、対策が「成功」したと評価されたそうだ。
 しかし、*15-2は、「①欧米メディアは、強制力のない外出自粛やPCR検査数の少なさにもかかわらず日本で感染が広がらなかったことに注目し、『不可解な謎』と報じている」「②オーストラリアABCは、公共交通機関の混雑、高齢者人口の多さ、罰則を伴わない緊急事態宣言は大惨事を招くためのレシピのようなもので、この死亡率の低さは奇跡に近い」「③日本は人口10万人当たり感染者数が13・2人で、G7のうち最も感染拡大の速度を抑え込んだ」「④日本の検査数は最少の人口10万人当たり212・8件で、最多イタリアの約4%しかなかった」「⑤10万人当たり死者数は、アジア・オセアニア地域の多くの国が日本の0・64人より少なかった」「⑥初期の水際対策が奏功した台湾の累計死者は、10万人当たり0・03人だった」と記載している。
 このうち、①④については、確かに検査数が少なく、新型コロナによる死者が他の死因に分類されている可能性が大いにあるが、超過死亡率を単純に全て新型コロナによる死者としてカウントしても死者数は少ない。また、水際対策は失敗したため、⑥のように、台湾よりも感染者・死者が増えた。つまり、厚労省が行った政策は、(意図的か過誤かはわからないが)検査数を増やさず、治療薬を承認せず、ワクチン開発も遅らせて、日本の能力を十分に引き出さない方向だった。そのため、国民はそれに気がつき、罰則を伴わない緊急事態宣言の中で自己防衛のために自主的に引きこもり、②③⑤の結果を得たのだ。そして、これができたのは、政府の優れた政策や幸運のおかげではなく、日本人の日頃からの栄養状態・生活習慣・清潔志向・上下水道などインフラの普及・除菌洗剤の使用など、生き残って増殖し感染するウイルスを減らす方向への努力が実を結びやすい環境にあったからだと思われる。
 なお、*15-3のように、新型コロナ感染死には把握漏れがあり、「超過死亡」が200人以上だと言われているが、「超過死亡」の分析に必要な日本政府の月報公表は2カ月遅れで、これも欧米の対応との間に差が出ており、欧米メディアは公開データに基づいて、死亡数は新型コロナで死亡したと報告された数より5~6割程度多く超過死亡があると分析しているそうだ。
 このような中、*15-4に、中央大学大学院戦略経営研究科教授の真野医師が、日本の新型コロナ対策が諸外国に比べて決して万全ではないのに死亡者が少なかった理由を、「⑦日本では救急車のたらい回しなどの問題はあったにせよ、医療崩壊が起こらなかった」「⑧日本は病院ベッド数が多く、医療キャパシティーが大きい」「⑨医療者のモチベーションが高い」「⑩高齢者施設における死亡者が少ない」「⑪病院が高齢者施設の代わりをしていることも多く、医療と介護連携が行われて、老健には医師が常駐し、介護老人福祉施設・高齢者対応集合住宅には医師が定期的に訪問診療している」「⑫医療崩壊を起こさずにピークアウトした韓国は、高齢者対応施設を36.1%増加させ、中でも療養病床を急速に増加させていた」と書いておられる。確かに、高齢者が介護施設で栄養バランスのよい食事を摂り、清潔な暮らしができて、医療介護の連携が進んでいるのは、日本の死亡者数を減らした大きな要素だろう。
 なお、知事会が、*15-5のように、「①第2波、第3波に備え、陽性かどうかを判定するPCR検査の強化や、ワクチンの早期実用化などが必要」「②第2波に適切に対処するには、これまでの新型コロナ対策を総括する必要がある」「③法制度も含め環境を整備するよう求めた」ところ、西村担当相は2020年度第2次補正予算案で自治体向け臨時交付金を2兆円増額したことに言及されたそうだ。しかし、これは、①②③の要請に対する的確な答えではなく、金をばら撒いてはぐらかしており、その金は西村氏のポケットマネーではなく国民の血税だ。そのため、最小の金を的を得たことに使ってもらいたい。
 また、*15-6のように、新型コロナ対策を検討してきた政府専門家会議の議事録を厚労省が作成していないとのことだが、この回答は開示できるような内容でないことを意味している。そして、これは、今後の日本の医療・介護はじめ社会保障全般に関する自民党・内閣官房・厚労省・財務省の考え方を示しているため、決して疎かにすべきではなく、人の命にかかわることに関して誰がどういう発言をしたかも重要で、議事録を公開させるべきだ。

    
  2020.5.24朝日新聞   2020.5.1東京新聞     2020.5.24朝日新聞 

(図の説明:左図は、ニューヨーク市内の新型コロナによる死者数と超過死亡数、中央の図は、米国の他の州の新型コロナによる死者数と超過死亡数、右図は東京都内の見逃された死者数だが、日本も米国のように速やかにデータを集めて状況分析できるようでないと、次の政策に活かせないわけである)


      *15-4【表1】           *15-4【表2】

(図の説明:左図のように、日本の介護ベッド数はスウェーデン・ベルギーの半数以下で、65歳以上100人に占める介護従事者数は、ノルウェー・スウェーデンの半数以下だ。そして、日本の新型コロナによる高齢者施設死亡者数は50人と著しく低いが、新型コロナ死亡者数を正確に把握すれば現在の10倍《500人》になるとしても、スウェーデンの630人とあまり変わらない)

*15-1:https://www.tokyo-np.co.jp/article/world/list/202005/CK2020052602000260.html (東京新聞 2020年5月26日) <新型コロナ>「日本の対策は成功、第2波に注意」 WHOが評価と警鐘
 世界保健機関(WHO)のテドロス事務局長は二十五日の記者会見で、日本が緊急事態宣言を全面解除したことを巡り、新規感染者が大幅に減少し死者数増も抑えられているとして対策が「成功」したと評価した。日本が今後も感染経路の特定などに注力する姿勢を示したことも称賛した。一方、WHOで緊急事態対応を統括するライアン氏は、中南米や南アジア、アフリカでは感染拡大局面にあるとして「われわれはまだ第一波の真っただ中にいる」と警告し、世界全体では依然厳しい状況が続いていると強調。日本や欧州などで感染拡大の鈍化に成功した国々を評価しつつも、外出制限などの解除により第二波が生じる可能性があると警戒を呼び掛けた。WHOで新型コロナの技術責任者を務めるバンケルコフ氏は、インフルエンザのように冬になると再燃するという説に関し、今のところ根拠はなく「季節に関係なく、人々が密集すると感染が起きる」と強調した。

*15-2:https://digital.asahi.com/articles/ASN5V3CQQN5TUHBI00S.html?iref=comtop_8_01 (朝日新聞 2020年5月26日) 「不可解な謎」 欧米メディアが驚く、日本のコロナ対策
 日本は新型コロナウイルスの流行抑止に成功していたのだろうか。各国のデータを分析し、人口10万人当たりの感染者数や検査件数、死者数を比べた。当初は日本の検査体制や、強制力のない緊急事態宣言の効果を疑問視していた欧米メディアは、現在の状況を驚きとともに伝えている。朝日新聞は主要7カ国(G7)について、それぞれ10万人当たりの累計感染者数と感染の有無を調べる検査件数を比較した。検査件数は各国の政府発表に基づいた。米国は各州の発表をまとめた民間の集計値を用いた。また、累計死者数は、世界的にみて比較的被害が抑えられているアジア・オセアニア地域の国々を選び、10万人当たりの人数を比べた。この結果、日本はG7で、10万人当たりの感染者数が13・2人で最も少なかった。一方、検査数も最少の212・8件で、最多のイタリアの約4%だった。英国は1日20万件の検査をめざし(日本の目標は1日2万件)、自宅などへ約80万件分の検査キットを郵送している。実際に個人が検査したかが不明なため、今回の比較時に郵送分は含めていない。ただ、含めた場合は1・5倍近い5013・0件まで増える。また、10万人当たりの死者数は、アジア・オセアニア地域の多くの国々で日本の0・64人より少なかった。たとえば、初期の水際対策が奏功した台湾の累計死者は7人で、10万人当たりでは0・03人だった。英オックスフォード大に拠点を置き、各国の感染データなどを集計している団体「Our World in Data」によると、日本は5月23日時点で100万人当たりの感染者数が世界208カ国・地域のうち多い順から136番目。同じく死者数は94番目だった。中東を除いたアジア地域で日本よりも死者数が多かったのはフィリピンとモルディブだけだ。一方、欧州疾病予防管理センター(ECDC)がまとめた各国データを朝日新聞が集計したところ、日本は、G7の中で最も感染拡大の速度を抑え込めていた。感染者が人口1千万人当たり1人以上になってからピークに達するまで、米国やフランス、ドイツが35日前後だったのに対し、日本は52日だった。また、G7で1日当たりの新規感染者数の推移をみると、最も多かった時期で、米国やイタリアは1千万人当たり900人を超えていたが、日本は50・9人(4月17日)だった。新型コロナウイルスを抑え込んだかに見える日本の状況を、海外メディアは驚きと共に伝えている。強制力のない外出自粛やPCR検査数の少なさにもかかわらず、日本で感染が広がらなかったことに注目し、「不可解な謎」「成功物語」などと報じている。
●何から何まで間違って…でもなぜ日本の感染拡大は広がらなかったのか、欧米メディアが注目しています。専門家はどう考えるのでしょうか。
 米誌フォーリン・ポリシーは日本の新型コロナ対策について「何から何まで間違っているように思える」と指摘した上で、それでも現状は「不思議なことに、全てがいい方向に向かっているように見える」と伝えた。「中国から大勢の観光客を受け入れてきたことを考えると、この死者率の低さは奇跡に近い」「日本がラッキーなだけなのか。それとも優れた政策の成果なのか、見極めるのは難しい」との見方も示した。
「不可解な謎」と題した記事を配信したのは、オーストラリアの公共放送ABCだ。公共交通機関の混雑ぶりや高齢者人口の多さ、罰則を伴わない緊急事態宣言を「大惨事を招くためのレシピのようだった」と表現。「日本は次のイタリアかニューヨークとなる可能性があった」と指摘した。海外ではこれまで、英BBCが「ドイツや韓国と比べると、日本の検査件数はゼロを一つ付け忘れているように見える」と報じるなど、日本のPCR検査数の少なさを疑問視する報道が相次いでいた。米ブルームバーグ通信はこの点について、「第1波をかわしたのは本当に幸運」「(第2波が来る前に)検査を1日10万件できるように準備しなくてはならない」という専門家の話をまとめた。英ガーディアン紙は「大惨事目前の状況から成功物語へ」とのタイトルで、日本人の生活習慣が感染拡大を防いだとの見方を伝えた。マスクを着用する習慣▽あいさつで握手やハグよりお辞儀をする習慣▽高い衛生意識▽家に靴をぬいで入る習慣などが、「日本の感染者数の少なさの要因として挙げられる」と指摘している。日本の専門家もこうした日本人の文化や習慣が感染拡大を防いだ一因とみる。東京医大病院渡航者医療センターの浜田篤郎教授(渡航医学)は「日本人の清潔志向とマスク文化が、第1波の抑え込みに一定の役割を果たした可能性がある」と話す。一方で、第1波を免れた分、第2波の拡大が懸念されるとして注意を呼びかける。「感染者が少なかったということは、免疫を持つ人が少ないということ。第1波より感染者が増える可能性がある」という。PCR検査数の少なさについては「やらなかったのではなく、できなかった」と指摘。「検査数を増やせば、症状が軽い陽性患者も出る。当初は宿泊施設での患者の受け入れもできず、病院で収容していたら間違いなく医療崩壊していた。第2波が来るまでに患者の収容体制などを整え、検査数を増やせるよう準備しておく必要がある」と話す。

*15-3:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO59508030U0A520C2NN1000/ (日経新聞 2020/5/24) コロナ感染死、把握漏れも 「超過死亡」200人以上か 、東京23区2~3月 必要な統計公表遅く、対策左右も
 新型コロナウイルスの感染が拡大した2月中旬から3月までに肺炎などの死亡者が東京23区内で200人以上増えた可能性がある。同じ期間に感染確認された死亡数は都全体で計16人。PCR検査で感染を確認されていないケースが潜み、把握漏れの恐れがある。こうした「超過死亡」の分析に必要な政府月報の公表は2カ月遅れで、欧米の対応と差が出ている。肺炎などの死亡数は、国立感染症研究所が「インフルエンザ関連死亡迅速把握システム」に基づき、公表している。集計では各保健所が死亡診断書の死因のうち、インフルエンザか肺炎を含む死亡数を入力する。感染研が過去の流行状況から推定した「流行なしの死者数」と比較し、統計的な誤差を超えた場合に超過死亡と判断する。すべての死因で比較すると、外出自粛などの対策による交通事故死や自殺の増減を含め、流行と対策が社会に与えた影響を総合的に推定できる。国際比較の指標にもなる。現時点の公表データによると、超過死亡は2月17日の週から3月下旬まで5週連続で発生。流行がなかった場合を50~60人上回り、計200人を超える。感染研が定義する「統計的な誤差を上回った死者数」という超過死亡数でも5週連続で20~30人程度に上る。実数は公表していない。超過死亡は19年後半も発生。インフルエンザの流行が早く、東京都で12月上旬に流行が拡大した影響とみられる。年明けには終息しており、再び超過死亡が発生した2月中旬以降は新型コロナが影響した可能性がある。感染研は「集計は例年、インフルエンザの流行が終わる3月末の死亡日までが対象。入力期限の5月末以降でないと今シーズン全体の分析はできない」としている。世界保健機関(WHO)は感染症の影響を分析する指標として超過死亡を推奨している。肺炎以外を含む総死亡数は厚生労働省が人口動態調査で死亡数などを毎月集計。都道府県からの報告は省令で「翌々月の5日まで」と定められ、公表は約2カ月後だ。検査未確認の死亡数が増えたとみられる4月分の公表は6月下旬になる。集計が遅いのは、届け出の電子化が進んでいないこともある。手書きの死亡届を受けた市区町村は電子システムに入力して保健所に送付するのに「一定の期間が必要」(同省)なためだ。欧米では迅速な死亡数の集計・公開が進む。3月以降、感染が急拡大した米ニューヨーク市は、死亡数をリアルタイムで把握する電子統計報告システムを開発した。市保健当局によると、WHOがパンデミックを宣言した3月11日から5月2日までの全死亡数は3万2107人。過去5年と比較し、2万4172人を超過死亡と推定。この間に1万8879人が検査などで感染を確認されており、残り5293人(22%)も「直接か間接的にパンデミック関連で死亡した可能性がある」と発表している。欧米メディアは公開データに基づき、死亡数は新型コロナで死亡したと報告された数より5~6割程度多く、超過死亡があると分析している。英医学誌ランセットは「週単位で超過死亡を把握することがパンデミックの規模を評価して適切な対策を打ち出すために最も必要」と指摘する。第2波に備え、検査の拡充や感染症に応じた医療態勢の強化だけでなく、データの公開が不可欠。横浜市立大学の五十嵐中・准教授(医療経済)は「迅速にデータを収集・公開し、民間とも連携し対策に役立ててほしい」と訴える。
■超過死亡 感染症が流行した一定の期間の死亡数が、過去の平均的な水準をどれだけ上回っているか示す指標。インフルエンザの流行を評価するために開発された。肺炎など直接関連する死因で比べると、持病で死亡して医師が感染を疑わずに検査していないケースも含め流行の影響を推定できる。

*15-4:https://diamond.jp/articles/-/236988 (Diamond 2020.5.13) 日本のコロナ死亡者が欧米より少ない理由、高齢者施設クラスターの実態 (真野俊樹:中央大学大学院戦略経営研究科教授、多摩大学大学院特任教授、医師)
 新型コロナウイルスの感染拡大は日本も徐々にピークアウトしてきているように見える。このまま外出自粛が守られて順調に行けば、懸念された医療崩壊もなさそうだ。一方、時々話題に出るのが介護崩壊だ。日本の新型コロナ対策は諸外国に比べ、PCR検査不足の問題をはじめ決して万全なものとはいえない。それでも死亡者が少ない理由は何か。医師(日本内科学会総合内科専門医)であり、かつビジネススクールで教える筆者が、日本の医療・介護制度から、その理由を指摘する。(中央大学大学院戦略経営研究科教授、医師 真野俊樹)
●日本は海外に比べ、高齢者施設での死亡者が少ない
 「緊急事態宣言」は5月末まで延長されることになったが、日本全国の死亡者数や感染者数は減少傾向にあり、日本も諸外国同様に新型コロナウイルスの感染がピークアウトをしてきたように思える。ここで、なぜ日本で死亡者数がこんなに少なかったのかを考えてみたい。よくメディアで話題になる医療崩壊とは、「患者が医学的な必要に応じ入院できないことなど、あるいは医師による適切な診断・治療を受けられないこと」を指す。具体的にはアメリカやイタリア、ベルギーといった国で起きているように、1日の死者が何百人、何千人という状態で、通常の医療的措置が成り立たない状態である。つまり、日本では、救急車のたらい回しなど新型コロナウイルス以外の重症疾患対応でいくつかの問題などがあるにせよ、医療機関は適切な医療を行える状況にあるので、医療崩壊は起きていないと考えられる。日本で医療崩壊が起きない理由として、『コロナで絶体絶命のイタリアと違い、日本で死者激増の可能性は低い理由』の記事で、「日本は病院ベッド数が多く医療キャパシティーが大きいこと」、そして「そこで働く医療者のモチベーションが高いこと」を指摘した。一方、海外の死亡者数が多い理由は、医療キャパシティーが少なく、医療崩壊が起きたためと指摘させていただいた。今回は、なぜ日本で死亡者が少ないのかについて、もう一つ気がついたことがあるので、それを報告したい。それは「高齢者施設における死亡者数」の差である。知られているように新型コロナウイルスは、高齢者の死亡者数が多い。つまり、高齢者施設でのクラスター発生は相当数の死亡者を生み出してしまう。米国では、高齢者施設がクラスター化している例の報告が多い。報道によれば、全米の死者の5分の1を占める約7000人に上るという。日系人も多く入居し、安部首相夫人が訪問したことでも有名で、筆者も訪問し調査をさせていただいたことがある、ニューヨーク・マンハッタン北部の高齢者施設「イザベラハウス」(写真)では、98人もの死者が出た。高齢者施設の1日の死者としては過去に例を見ない人数で、このうち46人は新型コロナウイルスの感染が死因で、残り52人は「その疑いがある」とされている。また英国では、毎日発表している死者の集計方法を4月末に変更し、高齢者施設などで亡くなった人の数も含めるようにした結果、死亡者数が急増した。
●高齢者施設の感染は、隠すことができない
 海外での介護の現状を見てみよう。表1にあるようにヨーロッパは介護関連施設(細かくはいろいろ区分があるが本稿では高齢者施設とする)が充実している。そして北欧では介護従事者の数も多い。高福祉国家の面目躍如といったところであろうか。
【表1】
介護事情の国際比較
 さて、日本での高齢者施設死亡者数はどうか。日本では表2にあるような高齢者施設死亡の統計がないので、時々話題になる新聞記事などのデータから追うしかない。
【表2】
 4月下旬の報道によれば、千葉では、新型コロナウイルスに感染して死亡した約半数の17人が高齢者施設の入居者だったという。群馬県伊勢崎市では、入居者・職員ら関係する67人が感染し、15人が亡くなった有料老人ホーム「藤和の苑(その)」(人数は5月1日現在)の例がある。しかし、ほかの県では話題にならないし、千葉のケースはどちらかといえば対策が不十分であった時期のものだ。何が言いたいのかと言えば、高齢者施設の感染は隠すことができないので、それが諸外国ほど話題になっていないのは間違いないということだ。そして、表1、2を見比べてもらえばわかるように、福祉国家として多額の介護費用を投入し、施設数も多く、さらに介護者数が多い北欧諸国でも、高齢者施設での死亡者が多い。一方、欧州で対応がよかったとされるドイツでは高齢者施設の死亡は相対的に少ない。これは、医療のキャパシティーと異なり、介護のキャパシティーが大きいことと、感染による死亡者数が無関係であることを示す。死亡者の多寡にはほかの理由があるはずだ。ここで筆者は、「1000人当たり(2017)介護ベッド数(うち病院)」の病院の比率に注目した。日本は制度上、病院が病気のみならず、高齢者のケアも行うというスタイルを取っていた。一時期批判されたが、「社会的入院」のように、高齢者が長期入院して生活を病院の中で行うということもあった。もちろん、これは病院の本来の機能からいえば必ずしも適切とはいえず、介護保険が導入され、徐々に改善されつつあった。
●病院が高齢者施設を代替した「特殊性」
 さて、以前の記事『コロナで絶体絶命のイタリアと違い、日本で死者激増の可能性は低い理由』では、日本で医療キャパシティーが多い理由として、日本の病院が十分に効率化されておらず、その途中であるということを指摘させていただいた。それと同じことがこの場合も言える。すなわち、病院が高齢者施設の代わりをしているのは「日本の特殊性」ということになる。表1を見ていただくと分かるが、海外に比べ、日本は病院以外の高齢者施設が少ない。世界一高齢者の比率が高い国でなぜこれが成り立っていたかというと、病院に高齢者が入院していたからである。すなわち、病院が高齢者施設の代わりをしているのは「日本の特殊性」ということになる。さらにいえば、急速な高齢化に伴い高齢者施設を増やしており、かつ日本の医療保険制度や介護保険制度を見習っている韓国でも同じように、病院が高齢者施設を代替している。ちなみに韓国も日本と同様、人口当たりの死亡者数が少ない。もちろん、在宅医療にシフトするという話もあるが、高齢者が病院に入院していないことの欠点は何であろうか。今回の新型コロナウイルスの感染爆発でわかるように、やはり、海外のように介護者中心でケアをしていると、感染症対策はおろそかになりがちだ。アメリカなどではスキルドナーシングホームといわれる高齢者施設には、医師や看護師はある程度関与するが、通常の高齢者施設であるナーシングホームなどへの関与は少ない。ここで、なぜ日本の病院の機能が諸外国と異なっているのか、病院の歴史から考えよう。病院(ホスピタル)の語源は「ホスピタリティー」であり、さらにこのホスピタリティーの語源は巡礼者に対してサポートを行っていた「ホスピス」から始まっている。つまり巡礼者が怪我や病気をした時のサポートを行う場、急性期の病院機能が中心であった。現在でも「ホスピス」は療養、そこから分化した「ホスピタル」は急性期医療を専門に行っている。ちなみに、日本ではホスピスの数は少ない。海外の病院は、巡礼者が目的を果たすためにそそくさと立ち去るのが通例であった。宗教的な病院が多いのも歴史的な背景として考えられる。アジアには巡礼のような概念はなく、日本においては病院機能というのはあくまで病めるものに対するサポートであり、病めるものが必要とする機能を全て提供するという視点に立っている。歴史を振り返ってみても、江戸時代の「赤ひげ」医師で知られる日本最古の国立病院とでもいうべき小石川療養所などは外科的な治療も行ったが、やはり薬を処方するという内科的な対応(本道といっていた)が中心だった。そのため平均在院日数も長かった。このように病院の機能が異なっていたのが「日本の特殊性」とされ、それを是正していこうというのが近年の流れであったのはすでに別の論説(『コロナで絶体絶命のイタリアと違い、日本で死者激増の可能性は低い理由』)でも指摘したとおりである。このような背景に加え、老人の医療費自己負担額が極めて低かったこともあり、患者が望む間は、病院で面倒を見るという社会的入院という事象が生まれた。
●介護保険導入10年以降で、医療と介護の連携が進んだ
 こういったこともあり、日本では高齢者用施設の数がなかなか増えなかった。現在では社会的入院はほぼなくなったとはいえ、病院に多くの高齢者が入院している。変化が起きたのは2000年に介護保険が施行されてからであるが、一気に高齢者施設数が増えたわけではないし、導入当初は介護と医療は分断していたが、近年では「医療介護連携」が叫ばれ、医療と介護の連続性が比較的保たれている。そして、新型コロナウイルス感染においては、それが幸いした。例えば、介護老人保健施設(老健)には医師が常駐しているし、特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設)においても契約している医師がおり、定期的に診察に訪れる。その他の高齢者対応の集合住宅も同様に定期的に訪問診療が行われるなど、医療の役割が充実している。おそらく日本の高齢者施設に新型コロナのクラスター感染が少なく、死亡者数が少ない理由は、介護施設従事者が必ずしも得意ではない感染管理に対して、医療従事者からのアドバイスがあったことが大きいのではなかろうか。ちなみに、医療崩壊を起こさずにピークアウトした韓国は、近年の急速な高齢化に伴い、高齢者対応施設を36.1%増加させているが、その中で療養病床を急速に増加させ、高齢者対応に占める病院の割合は60%以上と世界最大である。前回の論考では、医療キャパシティーが日本では大きかったことを、医療崩壊が起きにくい理由として記載したが、同じように、日本では医療介護連携が進んでいることを日本の死亡者を減らしている理由と主張したい。なお、日本同様に死亡者数が少ない東南アジアのデータはあまりないが、前掲表2のようにシンガポールでは日本同様に高齢者施設での死亡が少ない。高齢者対応が発展途上の国なので、直接関係があるかどうかは検証の必要があるが、シンガポールは、国土をエリアにわけて、それぞれで医療介護連携の仕組みを構築している。もう1つは、スウェーデンなどで見られるように、日本に比べると、欧米では高齢者施設から病院への搬送が少ないことが想像される。私が訪問調査した時も、「高齢者施設では発熱くらいでは、病院に搬送しないのが普通」との説明を受けた。もちろん日本では、一時的な発熱はともかく、何日も発熱が続けば、肺炎などを疑って搬送されるケースが多い。また、海外では総じてICU(集中治療室)への入室基準が厳しく、特に北欧などでは、高齢者はICUで治療を受けることが難しい。以上、筆者は、高齢者施設クラスターが少ないことが日本での、コロナ感染による死亡者が少ない理由の一つだと考える。高齢者施設クラスターは非常に危険であるが、日本の医療は、海外と比べても間違いなく安心できる体制になっており、一部で懸念されている介護崩壊も起きないだろう。しかし、今回の死亡者数が少ないという成果が偶然や奇跡といわれることなく、戦略的に医療介護分野の再編成を考えることも重要かもしれない。

*15-5:https://www.tokyo-np.co.jp/article/31691?rct=politic (東京新聞 2020年5月28日) 知事会、第2波に備え検査強化を 西村担当相に対策の充実を要請
 全国知事会長の飯泉嘉門徳島県知事は28日、西村康稔経済再生担当相とオンラインで会談し、新型コロナウイルス対策の充実を申し入れた。第2波、第3波に備え、陽性かどうかを判定するPCR検査の強化や、ワクチンの早期実用化などが必要としている。西村氏は2020年度第2次補正予算案で自治体向け臨時交付金を2兆円増額したことに言及。各自治体への配分額に関し、リーマン・ショック時に創設した交付金よりも多くなるよう「工夫をしたい」と述べた。申し入れは、第2波に適切に対処するには、これまでの新型コロナ対策を総括する必要があると指摘。法制度も含め環境を整備するよう求めた。

*15-6:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/528181 (佐賀新聞 2020.5.28) コロナ専門家会議、議事録作らず、歴史的事態検証の妨げに
 新型コロナウイルス対策を検討してきた政府専門家会議の議事録を政府が作成していないことが28日、分かった。共同通信の情報公開請求に、事務局である内閣官房が回答した。議事の概要と資料は公表されているが、各出席者の詳細な発言は記されておらず、対策検証の妨げになる可能性がある。政府は3月、新型コロナ問題を「歴史的緊急事態」に指定し、将来の教訓として公文書の管理を徹底することを決定。安倍晋三首相は「適切に、検証可能なように文書を作成、保存していると認識している。今後さらなる徹底を指示する」と強調していた。消極的な政府の開示姿勢に、専門家会議の委員からも疑問の声が出ている。専門家会議は、政府の対策を考える上で医学的な観点から助言をするために2月に設置。感染症や公衆衛生の専門家、法律家らが委員となった。国内の感染状況を分析した結果や、密閉、密集、密接の「三つの密」を避けることなど、求められる予防策を提言してきた。これまで14回開催されたが、全て非公開だった。共同通信が3月、内閣官房に対して、第1回~第6回の議事録などを情報公開請求したところ、5月に「作成および取得をしておらず保有していないため不開示とした」との通知が返ってきた。7回目以降の議事録についても作成していないという。現在、首相官邸のウェブサイトには第6回までの議事概要と資料は公開されているが、どの委員がどのような発言をしたのかは分からない。内閣官房は「(行政文書の管理に関する)ガイドラインに基づいてきちんと記録は残した」と説明している。一方で会議の委員からは「誰がどういう発言をしたかには責任を持ったほうがよい」など議事録の公開に前向きな意見が出ている。

<専門家会議の判断と経済について>
PS(2020年5月30日追加):*16-1のように、5月29日、専門家会議は、国内の新型コロナ感染拡大に関するこれまでの国の対策への評価を公表し、「①クラスターの発生を防ぐ対策は、感染拡大を防ぐ点で効果的だった」「②3密(密閉、密集、密接)になると感染者が多く発生していることを指摘し、市民に対策を訴えることができた」「③緊急事態宣言は、人々の接触頻度を低くし、移動を抑えたため、地方への感染拡大に歯止めがかかった」「④3月10日頃までは全国で50人以下だったが、その後急増」「⑤3月以降の感染拡大は、欧州などからの旅行者・帰国者を通じて各地に広がったウイルスによる可能性が高い」「⑥専門家会議にデータを提供している西浦北大教授(理論疫学)は『特定業種の休業要請がどれだけ効いたかは、この後明らかにしていきたい』と語られた」そうだ。
 このうち、①のクラスター追跡は、特定の集団感染(クラスター)だけが存在する第一段階では意味があるが、市中に蔓延して満員電車や職場で普通に感染するようになった第二段階では職業差別を生じさせる以外には効果が薄い。つまり、第二段階では、PCR検査等の検査を増やして早期発見し、患者の重度に応じてホテルや病院に隔離して感染を防ぎつつ、根本的な治療を行うことが必要だったのだ。しかし、⑥の西浦北大教授はじめ専門家会議は、東京・大阪の職場や通勤状況、ホテルの収容能力、検査方法や治療薬の開発・承認には考えが至らず、緊急事態宣言と休業要請ばかりに感心があったため、犠牲が多く高くついたのである。また、②は感染症予防の常識であり、通常は感染した人を他に感染させなくなるまで隔離し、日本全国で③に至ることがないようにするものだ。さらに、④⑤は、旅行者・帰国者を検査したり、14日間隔離したりするなどの適切な入国管理を行えば防げた筈である。
 このように、必ずしもうまくいかなかった意思決定は、その原因を正確に突き止めて改善する必要があるが、*16-2のように、コロナ専門家会議は議事録を作成していないとされ、誰の提案で空気(方針)が決まったのかを国民は知ることができない。役人と違って専門家は、「⑥自分の発言に責任を持つので開示したいか、どちらでも構わない」「⑦率直に議論する場合でも専門性を活かして責任を持って言うので、発信者が特定された方が他の人の意見と自分の意見がごっちゃにされずよい」「⑧確定的に言えない場合は、そういう言い方をする」ため、発言者がわからない議事概要は誰にとっても不十分なのである。私もこのような事態に関する公文書は国民共有の歴史的資源であり、いろいろな方向からの研究材料でもあるため、それこそEvidenseに基づいて議論し、公表すべきだと考える。
 なお、緊急事態宣言と休業要請により雇用が逼迫し、非正規社員が雇い止めになったり、中小企業・個人企業が倒産したりなど経済がひどい状況になった。そして、それを食い止めるための補助金で数十兆円も支払うことになったが、もらう人ばかりでは計算が合わないため、誰がどのような形で負担し、その副作用がどう出るかも明確にしておくべきだ。

  
   2020.5.29朝日新聞       2020.3.31東京新聞    2020.5.23佐賀新聞

(図の説明:左の2つの図のように、専門家会議は「緊急事態宣言は、抑制には貢献した」としているが、そのEvidenseも議論の過程も示されていない。しかし、この緊急事態宣言による休業要請によって、雇い止めにあった非正規労働者や破綻した中小企業・個人企業も多いので、効果と犠牲を比較考量して、犠牲の少ない方法を探すべきなのである)

*16-1:https://digital.asahi.com/articles/DA3S14494894.html (朝日新聞 2020年5月30日) 感染ピーク、緊急事態宣言前 専門家会議「抑制には貢献」
 国内の新型コロナウイルスの感染拡大について、政府の専門家会議は29日、これまでの国の対策への評価を公表した。緊急事態宣言は感染の抑制に貢献したとする一方、感染のピークは4月1日ごろで、宣言前だったことも明らかにした。感染が再び広がることを見据え、現時点の評価を行い、今後に生かす必要があると判断した。専門家会議はこの日まとめた提言で、クラスター(感染者集団)の発生を防ぐ対策は、感染拡大を防ぐなどの点で効果的だったと分析。3密(密閉、密集、密接)の条件がそろうと感染者が多く発生していることを指摘し、対策を市民に訴えることができたとした。4月7日に最初に出され、その後対象が全国に広がった緊急事態宣言については、人々の接触頻度が低いまま保たれ、移動も抑えられたため、地方への感染拡大に歯止めがかけられた、とした。実際にいつ感染したのか新規感染者の報告から逆算して推定したところ、ピークは4月1日ごろで、緊急事態宣言の前に流行は収まり始めていた。休業要請や営業自粛が都市部で早くから行われていた効果や、3密対策を含めた市民の行動の変化がある程度起きていた、と理由を推察した。会議のメンバーからは「結果的に宣言のタイミングは遅かった」との声もある。
■3月、遅れた水際対策 危機感は浸透
 専門家会議が推定感染日でまとめた患者数の推移をみると、3月10日ごろまでは全国で50人以下だったが、その後急増した。3月以降の感染拡大は、国立感染症研究所の調査によると、欧州などからの旅行者や帰国者を通じて各地に広がったウイルスによる可能性が高い。日本の当時の水際対策について、専門家会議の提言に詳しい分析はない。関西空港近くにある特定感染症指定医療機関のりんくう総合医療センター(大阪府泉佐野市)の倭(やまと)正也・感染症センター長は「3月中旬には海外からの持ち込みで広がったとみられる感染経路の追えない患者が増え、満床だった。感染が広がり始めた欧州からの便などの渡航制限は早くかけるべきだった」と指摘する。感染はその後どう推移し、減少に転じたのは何が影響したのか。多くの人が外出したと言われる3月20~22日の3連休を経て、東京都の小池百合子知事が不要不急の外出自粛を要請したのは25日。この日の推定感染者は約500人。さらに増えて数日後にピークに達した。30日、お笑いタレントの志村けんさんが肺炎で亡くなったと報道された。このころ都内の主要駅で人出が大きく減り始める。入国拒否が73カ国・地域に広がることが決まったのは4月1日。推定感染日でみた感染者数はこの日ごろをピークに減少に転じ、緊急事態宣言でさらに減っていった。東京大の広井悠准教授(都市防災)は「私たちの調査では3月中旬ごろから高齢者を中心にプライベートな外出を控えるようになった。五輪の延期や志村さんの死去などもあり、徐々に人々の危機感が高まっていたのではないか」と話す。29日夜の会見で、専門家会議にデータを提供している西浦博・北海道大教授(理論疫学)は「特定の業種の休業要請がどれだけ効いたかは、この後明らかにしていきたい」と語った。

*16-2:https://mainichi.jp/articles/20200529/k00/00m/010/214000c (毎日新聞 2020年5月29日) コロナ専門家会議「議事録」作成せず 菅氏「発言者特定されない議事概要で十分」
 菅義偉官房長官は29日の記者会見で、新型コロナウイルス感染症対策を検討する政府専門家会議の議事録を残していないと説明した。発言者が特定されない形の「議事概要」で十分だとし、発言者や発言内容を全て記録した議事録は作成していないとした。政府は今年3月、新型コロナウイルスを巡る事態を、行政文書の管理のガイドラインに基づく「歴史的緊急事態」に指定し、将来の教訓として通常より幅広い文書の作成を行うと決めていた。ガイドラインは会議の性質に応じ、①発言者や発言内容を記載した議事録などの作成を義務づける「政策の決定または了解を行う会議等」と、②活動の進捗(しんちょく)状況や確認事項などを記載した文書を作成する「政府の決定または了解を行わない会議等」に分けている。菅氏は会見で、専門家会議は②に該当するとし「ガイドラインに沿って適切に記録を作成している」と述べた。発言者を記載しない理由は「専門家に率直に議論いただくために、発信者が特定されない形で議事概要を作成、公表している」とした。西村康稔経済再生担当相は29日の会見で「1回目の専門家会議で、発言者を特定しない形で議事概要を作成すると説明し、理解をいただいた。終了後の記者会見で丁寧に説明しており、検証には会見録も使える」と語った。これに対し会議メンバーの岡部信彦・川崎市健康安全研究所長は「事務局が『議事概要を出す』と答えたので、ああそうですねということで終わった。(賛否の)手を挙げたわけじゃないから分からないが、全てではないが別に発言者名が出ても構わないというのが委員の意見だと思う」と記者団に語り、「僕は自分の発言に責任を持ちたいから発言は出ても構わない」と述べた。会議座長の脇田隆字・国立感染症研究所長は29日夜の会見で「一番大事なのは我々がどのように議論し、考え、どのような提言を政府にしているかを(記者会見などで)しっかり伝えることだと思う。議事録に関しては政府がお決めになっていることだ」とした上で、公開について「個人的にはどちらでも構わない」と言及。尾身茂副座長は同日の会議でメンバーから政府に公開検討を求める声があったと説明し、「政府が決めて名前を出すということになれば私自身は全然問題ない」と述べた。これに関し、立憲民主党の枝野幸男代表は党の会合で、東日本大震災に官房長官として対応した際に、政府の会議の議事録を作成していなかったことを当時野党の自民党や公明党に批判されたことに触れ、「9年前の指摘をそっくりそのままお返ししたい。今回はちゃんと記録を残せと、あらかじめこちらから指摘したのに、こんな大事な記録が残ってないのはとんでもない話だ」と批判した。国民民主党の玉木雄一郎代表も記者団の取材に「歴史に対する背信行為だ。公文書は国民共有の資源だという認識を現政権は著しく欠いている」と語った。

PS(2020年5月31日追加):*17-1のように、東京都と北九州市で新型コロナ感染者が増加しており、西村氏が市中で感染が広がっている可能性を指摘されたそうだが、北九州市の場合は、*17-4のように、PCR検査を増やしたため確認される感染者が増加したものだ。つまり、徹底的に検査すれば潜在患者が確定患者になり、見た目の感染者数が増えるため、背景の把握が重要だ。
 また、*17-2のように、熊本市は、3~5月に発生した新型コロナウイルスの三つの感染集団に関するゲノム解析で、2つは欧米系統のウイルスが福岡経由と関西経由で持ち込まれ、もう1つは海外から直接入ってきた可能性が高いことを感染者20数人分のゲノム解析で把握したそうだ。これは、現在だからできる技術で、それなら、どちらの方が症状が激しく、それには遺伝子のどこが変異したのかも知りたいものである。
 さらに、*17-3のように、米国の2020年産トウモロコシの価格が、①記録的な豊作 ②自動車の利用減少による燃料向け需要の低迷 ③品種更新 などにより若干下がり、今後10年は低迷が続くそうだが、私は食糧にも困っている人が多い時代に、トウモロコシから燃料を作る必要は全くないと前から思っており、むしろWHOが買い上げて食料不足の地域に配った方が免疫力を回復できると考える。なお、トウモロコシにユーグレナを混ぜると、安価に必要な栄養素を全部とれるようだ。

*17-1:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/529057 (佐賀新聞 2020.5.30) 西村氏、コロナ感染増加に危機感、東京と北九州、防止策徹底求める
 西村康稔経済再生担当相は30日の記者会見で、東京都と北九州市で新型コロナウイルスの感染者が増加していることについて「いずれも週単位でも増加傾向にあるので危機感を持って見ている」と警戒感を示した。緊急事態宣言は全国で解除されたが、感染者は引き続き発生するとして感染防止策の徹底を求めた京都では30日、感染者が新たに14人報告された。都内の感染者は累計で5231人となった。今月25日の緊急事態宣言解除後は再び微増の傾向を示し、翌26日からは29日の22人を最多に5日連続で2桁の水準。直近7日間の1日当たりの平均は約13・4人となった。死者は新たに2人が判明し、累計は304人。北九州市では新たに16人の感染が確認された。市では23日から感染者が再び増え始め、この8日間で計85人。新規感染者数は前日より減ったが、3日連続で2桁となった。福岡県内の感染者は計741人。西村氏は、北九州市では感染経路が追える感染者が一定程度いる一方で、「市内に(感染者が)散らばっている」として市中で感染が広がっている可能性を指摘した。

*17-2:https://www.nishinippon.co.jp/item/n/612602/ (西日本新聞 2020/5/30) 熊本市の感染集団に3ルート 福岡、関西、海外…ゲノム解析で推定
 熊本市で3~5月に発生した新型コロナウイルスの三つの感染集団に関するゲノム(全遺伝情報)解析で、二つは欧米系統のウイルスが福岡経由と関西経由に分かれて持ち込まれ、一つは海外から直接入ってきた可能性が高いことが29日、同市への取材で分かった。ウイルスが海外や大都市から地方に飛び火し、感染者周辺でさらに広がる構図が浮かぶ。福岡ルートの感染集団は、70代の男性医師(5月9日死亡)ら計12人。医師と同居していた妻や、立ち寄り先の「接客を伴う飲食店」関係者、乗車したタクシーの運転手、受診した病院の医療スタッフに感染が広がった。市は、感染者二十数人分の検体のゲノム解析を国立感染症研究所に依頼。その結果、医師ら計12人の検体のゲノム配列が一致し、福岡の感染グループとも共通していたことから、福岡から熊本への感染経路が推定できるという。関西ルートとみられるのは、馬肉料理店の経営者家族や従業員の計4人。海外からの直接ルートは温浴施設利用者ら計5人。市関係者は「関西や海外から訪れた人が熊本にウイルスを持ち込んだ可能性がある」とみている。一方、感染が判明して入院し、退院後に再び陽性となった女性のゲノム解析も依頼していたが、試料の不足で判定不能だった。体内に残ったウイルスの「再燃」か、別ルートで再感染したのかは解明できなかった。

*17-3:https://www.agrinews.co.jp/p50933.html (日本農業新聞 2020年5月30日) [新型コロナ] 米国産トウモロコシ 価格下落の見込み 記録的豊作や燃料需要低下 配合飼料に好影響も
 米国の2020年産トウモロコシの価格が下落する見通しになっている。記録的な豊作の予想。さらに新型コロナウイルスの影響で自動車の利用が減少し、燃料向けの需要も低迷しているためだ。相場が元に戻るには数年かかる見込みという。米国産トウモロコシを原料とする日本の配合飼料価格に影響する可能性もある。米国穀物協会は29日、日本と韓国、中国、台湾のユーザー向けにオンラインでセミナーを開催。米国のコンサルタント会社「プロ・エキスポート・ネットワーク」の代表が20年産トウモロコシの需給見通しを報告した。それによると、5月24日時点で播種(はしゅ)の進捗(しんちょく)率は88%と順調。品種更新の効果などもあって単収も増加を予想する。このまま順調にいけば、155億ブッシェル(1ブッシェル=約25キロ)の記録的な生産量になる。昨年は天候不順の作業遅れによって、生育期間が十分に確保できず、前年度比5%減の約136億ブッシェルだった。一方で、需要は弱まっている。報告によると、新型コロナウイルスの影響で、米国では自動車燃料の需要が減少。これに伴い燃料向けトウモロコシの需要も落ちている。米国ではトウモロコシから作るエタノールがガソリンに10%ほど混ぜられている。原油価格低迷も、燃料向けトウモロコシの需要が伸びない要因となっている。28日の米ニューヨーク原油(7月限)先物は1バレル33ドル71セントで前年より43%も下落している。消毒用エタノール需要の伸びに期待はあるが、失業者の増大、在宅勤務の慣れ、大規模な集会の減少などから燃料需要は回復に時間がかかるとみられる。その結果、トウモロコシ価格は「若干下がることが予想される」「この先も10年は低迷が続く」などとした。5月28日時点のシカゴ先物相場(7月限)は1ブッシェル当たり3ドル28セントで、1年前より22%安い。

*17-4:https://www.nishinippon.co.jp/item/n/612812/ (西日本新聞 2020/5/31) 北九州モデルで「第2波」対抗へ 濃厚接触者全員にPCR検査
●感染者の早期発見を優先
 新型コロナウイルスの感染が再拡大している北九州市は、PCR検査の対象を無症状の濃厚接触者にまで拡大し、クラスター(感染者集団)の追跡によって感染者を可能な限り絞り込むなど「第2波」(北橋健治市長)の一日も早い収束に懸命だ。目指すのは感染経路不明者を減らしつつ、早期発見で把握した感染者を治療、周りに接触させないことで拡大を抑え込む「北九州モデル」の確立。第2波は、人口密集地を発火点に都道府県レベルに広がることも想定され、それを「点」に抑え込めるかが今後の課題となってきている。同市のPCR検査数は30日136件、29日160件、28日が117件。これ以前の100件超えは4月15日までさかのぼる。再び感染者が出た今月23日から8日間で濃厚接触者は計404人となり、このうち30日までに290人のPCR検査が終了し、53人の陽性が判明した。市は従来、濃厚接触者のPCR検査については有症者に限り、症状がない人は経過観察としていた。無症状を含む全ての濃厚接触者の検査に踏み切ったきっかけは、第2波の発表初日となった23日。「市内で感染再発」の情報を受け、各医療機関が救急搬送で運ばれたコロナと無関係の患者を念のため調べたところ、次々と感染が発覚した。その一つ、門司メディカルセンター(門司区)では医療スタッフのクラスターが確認された。検査対象を広げれば、確認される感染者数も増えることは想定され、対外的に「市内で感染が広がっている」との印象を与えることは市も覚悟の上だ。30日まで8日間の感染者は経路不明32人を含む85人と増加の一途だが、北橋市長は「第2波の中、日本で初めて早期発見、早期治療のため全員を検査している。無症状の陽性者も多く出るが、短期決戦で収束させるには必要だ」と強調する。新型コロナウイルス感染症対策専門家会議構成員で東北大の押谷仁教授は「地域の中で感染が検出されないまま、伝播(でんぱ)が続くことがあり得る」のが、この感染症の特徴の一つとみており、「それが突然、顕在化してきた」と分析する。一方、感染経路不明者の割合は30日までの8日間で約37%と、27日までの約77%(22人中17人)から半減。濃厚接触者の比率が高まってきたためで、市の狙い通り感染者の「早期発見」が進んでいるともいえる。今後、同市以外でも第2波が襲来する恐れは十分にあり、押谷氏は「地域の中で隠れてしまっているクラスターや感染連鎖をいかに早く検知していくかが課題だ」と指摘する。

| 経済・雇用::2018.12~ | 12:49 PM | comments (x) | trackback (x) |

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