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2026,01,26, Monday
明けまして、おめでとうございます。今年の冬は、寒いですね。
![]() 2026.1.27山陽新聞 2026.1.21、2026.1.19日経新聞 2026.1.27公明党 (図の説明:1番左の図は、党首討論における各党の党首の主な発言で、左から2番目の図は消費税と安保・エネルギー政策に関する自維連立と中道改革連合の対比だ。また、右から2番目の図は、各党の消費税に関する立場で、1番右の図には、消費税減税による年間減収額の試算とその財源が示されている) (1) 消費税について 1)消費税導入の経緯と国民負担の国際比較 日本の消費税は、名目と実態が異なる税であり、導入の理由として説明された「直間比率是正」「薄く広く」「社会保障の財源」は、いずれも本質ではない。本当の実態は、法人税減税と高所得者の所得税減税の穴埋めとして導入された“消費罰税”であり、逆進性を無視した制度だったのだ。 消費税導入の経緯を詳しく説明すると、1989年(平成元年)4月1日、自民党の竹下内閣によって税率3%で消費税が導入された。それ以前(1940〜1989年まで)の間接税は「物品税」だったが、物品税は「特定の贅沢品に課税する間接税」であり、課税対象は当時の贅沢品・高級品(自動車、宝飾品、電化製品、カメラ、時計、毛皮など)で、税率は品目毎に10〜30%など色々で、生活必需品には課税しておらず、贅沢品の購入に罰を与える税だった。 しかし、1980年代には電化製品や自動車が普及して必需品となり、贅沢品と日用品の境界が曖昧になって、物品税の品目が時代遅れとなったため、ヨーロッパの付加価値(=人件費+利益+償却費)税を参考にして消費税に換え、物品税を廃止したのである。 ここで忘れてはならないのは、日本の消費税は、ヨーロッパの付加価値税(生産活動に対する税)の仕組みを拝借はしたが、付加価値に課税することへの日本企業の反対によって消費税(消費に対する税)に変貌したため、消費者の消費に罰を与える税になってしまったことである。そのため、消費税が景気を悪くし、先進的な製品の普及を邪魔したことは決して否定できない。 また、ヨーロッパの付加価値税は、万年赤字にしている企業からも税を徴収するために制度化されたものだが、日本は、第2次世界大戦後、シャウプ勧告によって米国と同じ直接税中心の国となり、源泉徴収によって徴収が確実に行なわれ、厳格な税務調査によって、直接税の徴収効率が世界最高レベルである。その上、直接税の方が負担力に応じて課税できるという大きなメリットがあり、利益が少なければ課税が少ないというビルトインスタビライザー効果も持つため、直間比率是正は改悪であり、不要だったのである。 にもかかわらず、「薄く広く」とか「直間比率のバランス」などと言って消費税を導入したが、それは法人税減税のための口実であり、消費税を導入するための方便にすぎなかった。これらの経緯は、1980年代の税制調査会議事録や当時の委員の証言から明らかになっているが、自民党内にも記録がある筈である。 企業の国際競争力の視点からは、法人税率を下げる必要はあったと思う。しかし、その財源は、時代遅れになった租税特別措置の廃止や公会計の導入による歳出効率性の合理的な判断によって、無駄使いを徹底的に排除することであって、直間比率の変更ではなかった。しかし、これを怠って安易に消費者に対して増税を行なったわけである。 個人の所得税の最高税率は、1980年代(消費税導入前)には70%であり、地方税(住民税)の最高税率は都府県民税5%、市町村民税13%の合計18%だったため、高所得者は合計88%もの税を支払わなければならず、税が頑張って働き稼いだことに対する罰のようなものになっていた。そのため、消費税で穴埋めしてこれらを下げることが意図されたが、その時には、低所得者ほど負担の重い消費税の「逆進性」に対する批判が無視された。 なお、「国税(中央政府)」「地方税」「合計」の所得税最高税率を比較すると、現在の日本(国税45%、住民税10%、合計55%《復興税含まず》)は、欧米主要国のスウェーデン(国税20%、地方税平均32.3%、合計52.3%)、フランス(国税45%、地方税なし、合計45%)、ドイツ(国税45%、地方税なし、連帯付加税所得税額に対し最大5.5%、合計約47.5%)、イギリス(国税45%、地方税なし、合計45%)、アメリカ(国税37%、州税最大13%、市税最大3〜4%、合計最大約50%)で、福祉の行き届いた北欧諸国と同水準の最高税率であって決して高福祉・低負担ではない。 同様に、最高限界国民負担率を比較すると、スウェーデン(最高税率52.3%、社会保険料《労使計》38.4%、合計約91%)、フランス(最高税率45%、社会保険料《労使計》54.9%、合計約100%)、ドイツ(最高税率約47.5%、社会保険料《労使計》38.65%、合計約86%)、イギリス(最高税率45%、社会保険料《労使計》25.8%、合計約71%)、アメリカ(最高税率約50%、社会保険料《労使計》15.3%、合計65%《医療は民間保険依存のため自己負担が高い》)であり、現在の日本(最高税率55%、社会保険料《労使計》31%、合計86%)は、福祉の充実した北欧諸国と同水準である。従って、福祉以外の膨大な無駄使いを排除しなければならないし、できる筈である。 なお、欧州の社会保険料は企業負担が大きな国が多く、例えば、フランスの労使合計54.9%は企業負担が非常に大きいので、そのまま「個人の負担率」に足すと約100%になるが、個人のみの負担率はもっと低い。一方、日本の社会保険料は上限があるため、「税+社会保険料のGDP比」を指す「国民負担率」は低いが、最高限界負担率は高くなって、逆進性があるのだ。 2)消費税は、本当に社会保障に使われているのか? 1989年の消費税導入時の大義名分は、「ヨーロッパ型の税制を参考にした直間比率(直接税と間接税の比率)の是正」だったが、本音は「財源確保」と「税収の安定化」だった。その理由は、直接税(所得税・法人税)は、景気に左右されやすいが、間接税(消費税)は景気に左右されにくく安定的に税収があるからとされている。 しかし、直接税は、所得税の累進課税制度や法人税の利益比例課税を通して、景気が悪い時には税額が減り、景気が良い時に税額が増えるというビルトイン・スタビライザー効果があり、即時に景気変動を調整する機能が備わっているから良いのである。一方、景気に左右されにくいと言われる間接税(消費税)は、景気の悪い時には相対的に重くなり、景気の良いときに軽くなるという税の負担力主義とは逆の効果があるのだ。 これに対し、景気対策として裁量的財政政策をとれば、発動が政治判断になるため対応が遅く、政治コストは増大し、政治にとっては恩着せがましく選挙戦を有利に戦う材料になるものの、国民にとっては何らプラスにならず、社会保障とはむしろ逆の効果になっているのだ。 なお、「消費税は社会保障目的」との説明も、2012年の民主・自民・公明の三党合意で「消費税を“社会保障と税の一体改革”の柱に位置づける」と決め、それから「消費税は社会保障の財源」という説明がされ始めたのだが、消費税は社会保障のための目的税ではなく一般財源であるため、これは、社会保障を人質にして国民を説得するための“後付けの理由”にすぎない。 そして、消費税増税で「社会保障は充実したのか?」と言えば、i)年金支給額は「マクロ経済スライド」という変な制度の導入で実質目減り ii)介護保険料は著しく上昇したが、介護サービスは減少 iii) 医療費の自己負担は増加 iv)75歳以上の窓口負担も引き上げ など、消費税が上がっても、社会保障は良くならず、国民負担だけが増えているのだ。 これらについては、少子高齢化のせいにしたり、世代間対立を煽って自らの判断の誤りをごまかしたりする論調が多いが、少子高齢化は50年前からわかっており、私は30年前に解決策を提示して無視されたので、今だに他のせいにして責任逃れができる政治・行政はない筈である。 3)2026年初頭の衆院解散と各党の消費税の取り上げ方 イ)高市首相の衆院解散と消費税の論点について *1-1-1は、①高市首相は、国民民主党との連立拡大交渉が決裂し、参院での「ねじれ」を解消できず、台湾有事発言を契機とした日中関係悪化も背景に衆院解散を決断 ②現職衆院議員は2024年10月の選挙で当選したばかりで2年半以上の任期を残し、首相は就任以来、物価高対策等に最優先で取り組む姿勢を示していたが、冒頭解散を選んだのは高支持率のうちに解散すれば「自民単独過半数」もあり得るという計算 ③野党が掲げる「消費減税を争点化させない争点つぶし」も ④解散によって新年度予算の年度内成立は困難、軽油税旧暫定税率廃止や自動車税の環境性能割見直しなどの税制改正実施も遅れ ⑤税制関連法案・社会保障改革・「給付付き税額控除」導入に向けた国民会議設置も選挙後に延期 ⑥高市首相は食料品の消費税減税を悲願だったとして公約に掲げる方針を表明したが、周囲には財政悪化や金利上昇への懸念から慎重論が多く、減税を掲げる野党への対抗としての争点つぶしの側面が大 ⑦新党「中道改革連合」が食料品の消費税ゼロの方針を主張 ⑧自民党は消費税減税は時限的措置としつつ、将来的にはタカ派的な安保政策(安保3文書改定、スパイ防止法など)を進める構え ⑨野党や与党内からは「大義なき解散」「経済後回し」との批判噴出 ⑩食料品0税率なら年5兆円の財源不足で、国債増発懸念から長期金利が約27年ぶりに2.275%の高水準に上昇、市場は「財源の議論が不十分なまま減税が進む」ことに警戒 ⑪消費税の一部は地方税源のため、自治体に与える影響も大きく、税収は年金・医療・介護などの社会保障に充てることになっているが、現時点でも財源が足りず、国債に頼っている ⑫今の社会保障水準を維持したまま減税に踏み切る場合は、代わりの財源をどう確保するのかも問われる 等としてる。 また、*1-1-2は、⑬高市内閣支持率は67%と前回75%から8%低下 ⑭食料品の消費税0については、物価高対策として効果がない56%、効果がある38% ⑮消費税は、財源確保のため税率維持59%、赤字国債を発行してでも減税31% 等としている。 このうち、②の首相が就任以来、物価高対策等の政策に最優先で取り組む姿勢を示していたのは本当だと思う。何故なら、現職衆院議員は2024年10月の選挙で当選したため2028年10月まで任期を残しており、2025年10月4日に自民党総裁になった高市首相も2028年10月まで任期があるため、高市首相にとっては、ここで無理に解散してリスクをとるよりも、必要な政策を進めて実績を作った方が無難だからである。 そして、私の記憶では、「解散、解散」と騒いでいたのはメディアの方で、冒頭解散すれば批判するのもメディアであるため、メディアは視聴率を上げるために膨大な国費を使わせてマッチポンプをしているように見える。そして、⑨のように、野党や与党内から「大義なき解散」「経済後回し」との批判が噴出するのも、未だ準備が整っていない時期の不意打ち解散であるため当然であろう。 また、①のうち、参院での「ねじれ」が解消できないのは衆院を解散しても同じである上、高市氏の台湾有事発言は、(私も聞いていたが)曖昧だったことを具体例を挙げて話しただけである。そのため、反対するのなら安保関連法案制定時に、「存立危機事態」の定義を基に反対しなければならなかった筈であり、中国との関係悪化を理由に批判すべきではない。 なお、メディアは、③のように、野党が掲げる「消費減税を争点化させない争点つぶし」などと言うが、⑥のように、女性で生活感のある高市首相が食料品の消費税減税を悲願だったとして公約に掲げる方針を表明したことを私は理解できるし、もちろん自民党内には慎重論と称する消費税減税反対派は多いため、単なる争点つぶしというより総選挙を突破口にしたいのではないかと推測した。 さらに、④のうちの自動車税の環境性能割見直しは、改悪であるため消えた方が良いし、新年度予算や軽油税旧暫定税率廃止は、選挙後、速やかに議論すれば何とかなるだろう。また、⑤のうちの社会保障改革は、1)2)で述べたとおり、日本は既に低負担・高福祉の国ではないため、「少子化が原因」「高齢者と若者の対立」というように、国民を対立させて議論を矮小化するのではなく、本来あるべき姿に変えることを考えるべきである。 そのため、消費税に関しては、私は、⑦の中道改革連合が「食料品の消費税0」を打ち出したのに賛成であり、⑧の自民党の「消費税減税は時限的措置」では足りないと考える。なお、「将来的にはタカ派的な安保政策(安保3文書改定、スパイ防止法など)を進める構え」については、書き始めると長くなるので別の章で記載したい。 メディア(特に新聞)は、消費税減税をすれば、⑩⑪⑫のように「年5兆円の財源不足」「社会保障水準を維持したまま減税に踏み切る場合は、代わりの財源をどう確保するのか」と社会保障を人質にした思考停止の議論を展開するが、これに対する私の答えが、上の1)2)である。 また、⑩の「長期金利が約27年ぶりに2.275%の高水準に上昇した」というのは、物価上昇率と比較すればまだ低すぎ、貨幣の現在価値が将来価値よりも高くなるという金融や経済であってはならない状況なのだ。従って、利子率が上がるのは、当然なのである。 なお、⑪には、消費税の税収は年金・医療・介護などの社会保障に充てることになっているとも書かれているが、もともと高い社会保険料を取っているので、それらがどう使われたのか、社会保障以外に膨大な無駄使いがあるのではないかについて、まず検討すべきであるし、私は、30年前から代替案を出しているのである。 従って、⑬は事実だろうが、⑭⑮については、財務省の意向を汲んだメディアの報道やアンケートの質問の形式を使った誘導の結果だと考える。 ロ)食品消費税0や消費税減税の財源について ← 公会計制度の導入と継続的な事業の選択 現在の日本の「国税(中央政府)」「地方税」「合計」の所得税最高税率(国税45%、住民税10%、合計55%《復興税含まず》)は、1)に記載したとおり、福祉の充実した北欧諸国と同水準であり、最高限界国民負担率(最高税率55%、社会保険料《労使計》31%、合計86%)もまた、スウェーデン(最高税率52.3%、社会保険料《労使計》38.4%、合計約91%)など福祉の充実した北欧諸国と同水準であるため、決して高福祉・低負担ではない。従って、日本の現在の課題は、福祉以外の無駄使いを排除することなのだ。 では、どの歳出が優先順位の高い費用か、無駄使いかを判断するには、日本政府が採用している現在の会計制度は網羅性(全取引が漏れなく仕訳される)がなく、検証可能性(証憑→仕訳→元帳→試算表→財務諸表が辿れる)もないため、まず、国際公会計基準( International Public Sector Accounting Standards、以下“IPSAS”)に基づく正規の複式簿記による公会計制度を導入して発生主義に基づく会計処理に変更することが必要だ。 そして、事業毎(省庁毎だけでなく政府合計も)のフルコストも算出し、事業間の比較ができるよう事業毎の費用対効果を出して、それを次年度の予算編成に利用できるよう、議員や国民が一目で納得できる有価証券報告書のような資料にしなければならない。 こう言うと、財務省は「取引数が膨大だから不可能だ」と反論しそうだが、民間のグローバル企業は、多通貨・多国籍の取引を行い、多国籍の子会社を持ち、数百万件の仕訳があっても、正規の複式簿記で連結決算までを3ヶ月以内に行ない、監査済の有価証券報告書を提出しているのである。また、ニュージーランドや英国は、20年以上も前に国全体の発生主義会計をITで実現しているため、ITやAI時代に、政府や財務省が「できない」と言うのは言い訳にすぎず、それでは内部統制も内部管理も機能しない筈である。そのため、この状態で外部監査をすれば、「内部統制の不備で監査意見表明以前」となり、民間企業なら即上場廃止レベルなのだ。 国が正規の複式簿記を行なって網羅的な資産や負債の台帳を作れば、減価償却・負債性引当金の計算、資産の評価が網羅的に行なわれるため日常的な管理が容易になり、道路・橋・港湾・学校などの公共資産の残りの耐用年数や修繕の必要性等も把握し易い。さらに、年金債務や医療介護の将来負担が財務諸表に載ることによって、国の本当の財政状態がわかるのであり、これが国際基準(IPSAS)なのである。 そして、政府がこれまで挙げてきた「できない理由」は、「AI×公会計×クラウド会計」の組み合わせで一気に解決できる。また、AI自身も、自動仕訳から「国際公会計基準(IPSAS)」に従った有価証券報告書並の資料の作成等は期間内に余裕ででき、「事業のフルコスト(人件費・減価償却・間接費・資産維持費を含む)」計算を完全自動化することも可能だと言っている。 世界で中央政府が国際公会計基準(IPSAS)に基づく「資産・負債・減価償却」などを含む発生主義ベースで財務諸表を作成している公会計導入国は、欧州(イギリス・フランス・ドイツ・オランダ・スウェーデン・フィンランド・デンマーク・ノルウェー・スイス・オーストリア・ベルギー・ポルトガル・スペイン・イタリア)、オセアニア(ニュージーランド・オーストラリア)、北米(カナダ・アメリカ合衆国)、アジア(韓国・インド・インドネシア・フィリピン・マレーシア)、中南米(チリ・コロンビア)、アフリカ(南アフリカ・ケニア・ナミビア・ルワンダ)などである。 にもかかわらず、日本は、未だ中央政府が現金主義で財務書類は“統計を使った疑似発生主義”であるため、発生主義公会計未導入国にあたる。従って、日本政府は、まず国際公会計基準(IPSAS)に基づく「資産・負債・減価償却」などを含む発生主義ベースで事業毎の費用対効果を出して効果の低い事業を削除すれば、皆を納得させつつ、かなりの財源を生み出せる筈である。 ハ)今からでも改善すべき税制・社会保険制度 A) 税制改正 ← 物品税の目的変更・整理・強化 ①酒税とたばこ税について 現在の日本にも「物品税」は存在し、酒税(酒類への物品税)は、ビール70,000円/kL(約70円/L)、発泡酒47,000円/kL、清酒10,000円/kL、ウイスキー370,000円/kLで、酒税は物品税の典型的な後継で贅沢品課税の性格を強く残しており、最新の財務省資料(2023年12月時点)によると1兆1,800億円が一般会計に入っている。 また、たばこ税(たばこへの物品税)は、国税124.1円/20本、たばこ特別税16.4円/20本、地方たばこ税122.44円/20本で、合計約260円/1箱 が税金で、同資料によると9,350億円が一般会計に入っている。 しかし、酒とたばこは生活習慣病や癌の原因の1つであるため、酒税とたばこ税は、その身体にかかる負荷に応じて課税し、医療・介護費に充てるのが妥当であり、そうすれば約2兆円の収入を医療・介護費に充てられる。そして、これは、日本以外の国にもお薦めだ。 ②揮発油税と石油石炭税について 物品税のうちの揮発油税は、国税が48.6円/L、地方税が5.2円/Lの合計 53.8円/Lで、暫定税率を含めれば78.9円/L(53.8+25.1)である。そして、2023年度の揮発油税歳入額は、国税分が1兆7,950億円、地方分が1,920億円である。 なお、暫定税率は2026年度から廃止される予定であるため、2025年度当初予算ベースの暫定税率込みと本則税率のみの金額を示せば、揮発油税の国税分が暫定税率込みで1兆9,760億円、本則税率のみなら約1兆円弱であり、地方分は暫定税率込みで2,114億円、本則税率のみなら約1,700億円程度である。 また、ガソリン・灯油・軽油には石油石炭税がかかり、ガソリン・灯油の本則税率は2,040円/kLだったが、地球温暖化対策特例後の現在は2,800円/kLかかり、石炭は本則税率700円/tだったが、地球温暖化対策特例後は1,370円/tかかって、2023年度の各歳入は、原油・石油製品(ガソリン・灯油・軽油等)分が約 5,000億円、石炭分が約 500〜600億円の総額約 6,000億円弱になっている。 石油石炭税の目的は、1970年代の導入当初は、「石油備蓄のための財源」で、現在ではエネルギー安全保障(石油備蓄)・エネルギー需給構造高度化・地球温暖化対策(CO₂削減)に使われており、2012年以降は「地球温暖化対策税(カーボンプライス)」としての性格が強くなって、CO₂排出削減・低炭素化技術の導入・産業界の脱炭素化支援等に使われているとされる。 しかし、日本の「地球温暖化対策税」のうちCO₂排出量1 tあたりの価格289円/t-CO₂ は、スウェーデン:100〜150ユーロ/t-CO₂、欧州ETS:50〜100ユーロ/t-CO₂と比較すると非常に小さい。これを現在の為替レートで計算すると、スウェーデン:約18,300~27,450円/t CO₂、欧州ETS:約9,150円~約18,300円/t CO₂であるため、日本の289円/t CO₂ は、スウェーデンの 約1/60~1/100、EU-ETSの1/30〜1/60 という極端に低い水準で形だけの骨抜き金額であるため、欧州と同レベルに増税すべきである。 そして、この意識の差が経済構造改革を停滞させ、再エネ普及・産業構造の転換・省エネ投資・国際競争力の低下・低生産性・低経済成長に大きく影響してきたことは、疑いようがない。従って、欧州に習って、石油石炭の燃焼時に発生するCO₂の量を正確に計り、同量のCO₂排出には同金額の地球温暖化対策税を課すのが環境と経済成長を両立させる方法なのである。 そのため、揮発油税・石油石炭税に関する税制改正を行なう際には、揮発油税・地方揮発油税・石油石炭税とその上に消費税(Tax on Tax)がかかる二重課税をなくし、石油石炭にかける税を地球温暖化対策を目的として増税し、すっきりと整理することが必要なのである。 ③航空機燃料税について 日本では、航空機燃料税も18,000円/kL(本則26,000円/kLで、地方空港利用促進等のために軽減中)かかる。そして、その目的は、空港整備特別会計の財源(税収の11/13)と空港関連自治体に譲与しての空港周辺騒音対策(税収の2/13)であり、CO₂の排出量に応じた地球温暖化対策税ではない。つまり、未だ大部分を空港整備に使っている点が開発途上国体制のままなのである。また、その負担者は空港を利用する航空会社であり、国際便は国際慣行で非課税であるため、国内線のみに課税されているのだ。 しかし、実際には、日本でも必要な空港は既に整備済であり、今後の維持管理費は交通機関の1つとして、一般会計と利用料で賄うべきである。また、航空機を交通機関の1つと認識すれば、国際慣行と同じくインフラ整備は非課税にすべきで、鉄道や道路との便利な連結も不可欠だ。 そして、CO₂を排出する航空機燃料にも、欧州と同じく同量のCO₂排出には同金額の地球温暖化対策税を課すのが、環境性能の良い航空機を普及させ、同時に生産性を上げて経済成長を促すのに都合が良く、化石燃料に補助金を出すのは逆効果になるわけだ。 ④自動車関連税について 日本の自動車税は、国税と地方税を課税タイミング別に記載すると、下の表のとおりだ。 課税のタイミング 国税 地方税 購入時 自動車重量税、消費税 自動車税・軽自動車税(環境性能割) 保有時(毎年) なし 自動車税・軽自動車税(種別割) 車検時 自動車重量税 なし 走行時(燃料) ガソリン税、LPG税、消費税 地方揮発油税、軽油引取税 このうち、購入時に支払う自動車重量税は、「道路損傷負担」という名目で車両重量に応じて課税されるが、実際には道路損傷との対応関係の実証がなく、車両への物品税的性格である。また、購入時にかかる消費税は、車両本体価格に10%課税される。また、購入時に支払う地方税(都道府県税・市町村税)の自動車税・軽自動車税(環境性能割)は、環境性能に応じて0〜3%課税される。 自動車保有時にかかる税は、自動車税が都道府県税で種別割かつ排気量(例:1,000cc以下:29,500円、1,001〜1,500cc:34,500円など)に応じて毎年課税、軽自動車税も種別割で市町村税として毎年課税である。これに加えて、車検時には、国税の自動車重量税が、購入時と同様、重量に応じて課税される。 また、走行時にかかる税は、国税のガソリン税(揮発油税)が48.6円/L、地方揮発油税が5.2円/L(地方税)の合計53.8円で、暫定税率25.1円/Lも入れると78.9円/Lの税金がかかっていたが、暫定税率部分はその名称は廃止されたが、税率水準は現在のところ実質的に維持されている。そして、これらの殆どは道路財源とされ、地球温暖化対策目的ではない。なお、LPG税は、国税で税率17.5円/kg、軽油引取税は(地域差はあるが)約32.1円/Lで地方税である。 そして、租税法の原則を歪めるのが、本体価格+国税+地方税+暫定税率の合計に消費税10%をかけるTax on Taxの問題であり、税に税をかけることは、通常はないのである。 諸外国の自動車税制と比較すると、欧州(EU)はCO₂排出量ベースの課税が主流で、購入時:CO₂排出量に応じた登録税、保有時:CO₂排出量・燃費・排気量に応じた年次税、走行時:燃料税(ガソリン・軽油税は日本より高い)、環境目的が明確で、EV優遇が大きいのが特徴だ。 日本は長く道路財源として自動車税を課税してきたが、その割には、いつまでたっても狭い道路が改修されず混雑が続き、国民の時間を待ち時間として奪うことによって生産性を低くしている。そして、これは、自動車税を道路財源として国交省の裁量に任せてきたことの限界だろう。 そのため、税体系を「CO₂排出量ベース」に一本化し、欧州と同様、同じCO₂排出には同じ多額の税負担という原則に統一して、排気量課税は廃止、重量税も廃止、環境性能割はCO₂ベースに統合、石油石炭税は欧州並み炭素価格への引き上げを行い、税からも動機付けを与えて低燃費車やEVの普及・産業構造転換・再エネ投資を進めるのが良いと考える。 ⑤電源開発促進税(電気への物品税)について 電源開発促進税は、電源開発促進税法に基づき、一般送配電事業者が販売する電力量に応じて徴収する国税であり、税抜で0.375円/kWhを電気料金に上乗せして、最終的には電気の需要家である国民が負担するものである。 電源開発促進税の名目は「発電施設の促進・安全確保」だが、実態は「発電所立地自治体への迷惑料としての交付金+電力政策の財源」で、税率0.375円/kWhに消費税をかけたTax on Taxの0.413円/kWhを電気料金に上乗せして徴収し、電気利用者である国民が負担しているのだ。 その電源開発促進税の配布額の大きな自治体は原子力発電所の立地地域で、国が公開している最も近い年度である2014年度には、福井県235億円・青森県154億円・新潟県130億円・茨城県92億円・福島県:84億円・佐賀県62億円・北海道:52億円・島根県:51億円・愛媛県:38億円・鹿児島県:29億円の合計(都道府県+市町村)約800億円が交付されている。 そして、原子力発電所への配布は、水力発電所よりも圧倒的に大きく、太陽光や風力等の再エネは電源立地地域対策交付金0であるだけでなく、再エネ賦課金(FIT)をさらに国民が負担しており、2023年度の再エネ賦課金総額は約3.7兆円にものぼるのである。 従って、安価な再エネを普及させて、原子力発電所を減らせば減らすほど電源開発促進税が減る上、化石燃料も使わなくなれば化石燃料の資源国に支払っていた資金が国内で廻るようになり、同時に地球温暖化対策にも資するわけである。 ⑥ゴルフ場利用税(ゴルフ場利用に対する物品税)について ゴルフ場利用税(地方税)について総務省が説明する課税理由は、ゴルフ場の開発許可・道路整備・防災・廃棄物処理等の自治体が行なう行政サービスへの応益負担と、ゴルフ利用者の担税力に基づく贅沢税(ゴルフ場利用料金は他のスポーツ施設よりも高額)である。 そして、税収の70%が市町村に交付されてゴルフ場立地自治体の財源となっており、1989年の消費税導入時に娯楽施設利用税は廃止されたにもかかわらず、担税力があるとしてゴルフにだけ残った物品税(贅沢税)である(野球・テニス・サッカー等にはない)。また、「ゴルフ場利用料+ゴルフ場利用税」に対して消費税10%がかかるため、“Tax on Tax”にもなっている。 ゴルフ場利用税の税率は、平日の非会員料金・ホール数・芝の状態などによって都道府県が1級〜12級までの等級を決め、1級の1,200円/日~12級の350円/日まで等級に応じて税額が決まるそうだ。そして、2021年度の市町村別交付金ランキング(税収が多い順)では、1位:市原市(千葉県)6億7,934万円、2位:三木市(兵庫県)5億6,960万円、3位:甲賀市(滋賀県)3億9,472万円、4位:豊田市(愛知県)3億6,952万円、5位:神戸市(兵庫県)3億6,468万円となっており、ゴルフ場の多い自治体ほど税収が多い。 これを他国のゴルフ課税と比較すると、アメリカにはゴルフ場利用税のような「プレー1回ごとの税」は存在せず、通常の売上税(Sales Tax、州税) のみがかかり、州によってはスポーツ施設は非課税でさえある。また、イギリス・フランスにもゴルフ場利用税はなく、プレー料金に20%の付加価値税のみがかかり、イギリスの会員制クラブには「非営利扱い」で付加価値税免除のところもある。ドイツもゴルフ場利用税はなく、プレー料金に19%の付加価値税がかかるのみであり、オーストラリアは付加価値税が10%なのである。 従って、(私はゴルフをしないので関係ないのだが)“ゴルフだけにゴルフ場利用税という特別税をかけるのは日本だけであり、これを贅沢として特別扱いしている点で日本の文化やスポーツに対する後進性が感じられる。現在の日本は、観光立国を目指しているのだから、イギリス・フランスのように、付加価値税(消費税ではない)の税率を20%に高くすることはあっても、とれるところからぶんどるような不透明でご都合主義の税制はやめるべきである。 ⑦結論 消費税に関しては、物価高騰対策ではなく(これは金利引き上げで対応すべき)、逆進税の廃止のために、まず、食料品に対する税率を0にすべきだ。その理由は、貧しい人ほど、エンゲル係数(家計の消費支出に占める食料費の割合)が高いからで、食料費は「家庭が購入した飲食料品の支出(外食も含む)」であり、消費支出は「住居費・光熱費・交通通信費・教育費・食料費等の日常生活のために実際に支出した金額」である。 そして、国際公会計基準(IPSAS)に基づく正規の簿記の原則に従った公会計制度を導入し、発生主義に基づく会計処理に変更して、継続的に事業評価を行なっても、なお財源が足りなければ初めて、欧州の付加価値税と同じ間接税を導入すべきなのである。この会計は、先進国なら何処の国でも、民間企業でもやっていることなので、日本政府だけできないとは言わせない。 なお、欧州の付加価値税は、欧州で買い物をしたことのある人なら誰でも知っているとおり、インボイス方式を採用して複数税率を使っており、付加価値税分を消費者に転嫁するか否かは各企業の判断である。そして、日本の消費税も、既にインボイス方式を採用して複数税率を使っているため税率変更は簡単で、これもできないとは言わせない。 そして、複数税率を使って消費税を付加価値税に衣替えする場合には、逆進性の排除のため、食料品に対する税率は0、日常遣いの衣類・家具・サービスは10%、毛皮・ゴルフ・高級ホテルへの宿泊等の贅沢に分類できるものは20%というように税率を変更し、消費者に転嫁するか否かは企業に任せればよいのである。 ただし、現在も、物品税として徴収される酒税は、「アルコール度数×税率」で計算されるものが多く、度数が高い酒ほど税額が高くなるのは良いが、この税率の勾配は徹底し、徴収された税は確実に医療・介護に使うべきである。また、たばこ税は、紙巻きたばこで約16.5円/本(1箱20本で約330円)が税であるため、1箱600円の約63%が税であるのもまあ良いが、ここで徴収された税も、同様に医療・介護に使うべきだ。 さらに、揮発油税・石油石炭税・航空機燃料税等の化石燃料税は、環境税としてCO₂排出量に比例させて一本化し、同量のCO₂排出には同じ金額の欧州と同程度の高税率を課すべきである。 そして、国際線の航空機燃料税・国際海運の燃料税・鉄鋼業の原料炭・セメント製造用の石炭・沖縄の発電用石炭など免税になっているものがあるが、国際条約によって免税になっている国際航空・国際海運の燃料税は、地球温暖化対策のために国際条約を変更して課税すべきだ。 また、産業保護として続いてきた鉄鋼業の原料炭に対する免税も速やかに廃止して課税し、水素還元への変更を促すべきであり、セメント製造用石炭や沖縄の発電用石炭もCO₂の排出量に応じて課税すべきである。そして、これらを含めてすべての化石燃料税を炭素税に統合すれば、税制が透明で公平になる上に、エネルギーの効率化によって産業界も十分に吸収可能な筈である。 従って、このようにして徴収した税は、省エネ設備の導入や再エネ設備・送電線の充実に補助金として使えば、その場限りの負担減ではなく継続的にコストダウンができ、エネルギー安全保障にも資し、生産性が上がり、イノベーションを通じて経済成長を促す。私は、これを1995年前後から提案していたのだが、女性の長期的視野の科学的発想を「理想論」「非現実的」などと軽視してイノベーションを拒んできたことが、日本の実質低生産性・実質低賃金・実質低成長の原因であり、世界に遅れた原因でもあるのだ。 B) 社会保険料の改正について 今回の衆院選で、各党が物価高対策として消費税減税・廃止を公約していることに対し、*1-3は、経済界は①財源を示さない消費税減税は無責任 ②日本商工会議所の小林会頭は、財政悪化や円安進行などに懸念を示し、「責任を持った財政政策をお願いしたい」 ③経団連の筒井会長は「代替財源の明確化が必須」「市場の信認維持と社会保障の持続性の確保が消費減税の実施の大前提」、法人向け租特(研究開発・賃上げ促進など)は投資促進に不可欠として「租特見直しによる法人減税縮小を強く警戒」 ④経済同友会の山口代表幹事は「メリットとデメリット、リスクが共有されず(論戦が)進むことに危機感」 とし、労働界は⑤連合の芳野会長が「財源がどうなるのか気がかり」 と記載している。 また、⑥自民党と中道が掲げる食料品消費税率0の実現で税収は毎年約5兆円減、国民民主党の一律5%への引き下げなら毎年約15兆円源 ⑦与党は租税特別措置(以下“租特”)と呼ぶ政策減税や補助金の見直し等を財源に想定 ⑧財務省によると2023年度の法人関係の租特の減税額は約2.9兆円 ⑨経団連の筒井氏は「法人に関わる租特は投資促進のために重要なものがあり、成長戦略と物価高対策の整合性はしっかり議論したい」とし、経済団体幹部は「租特見直しによる法人減税の縮小は看過できない」とする ⑩財源なき消費減税は金融市場にも悪影響を与え、2026年1月には財政悪化の懸念を背景に長期金利が27年ぶりの水準まで上昇 ⑪日本国債と円売りが膨らめば、企業の資金調達や輸入のコスト増 ⑫消費税は法人税と比べて景気に左右されにくく、社会保障制度の安定財源 ⑬2012年に民主・自民・公明の3党がまとめた社会保障と税の一体改革は消費税率を5%から10%に引き上げて年金・医療・介護等に充てることで合意 ⑭一段と少子高齢化が進むなか、経済界は社会保障制度のさらなる改革を訴える とも記載している。 このうち、⑥の「食料品消費税率0の実現で消費税収が毎年約5兆円減」については ⑦⑧のように、与党・財務省の古い租特や補助金の見直しを第1の財源に想定するのが合理的だ。そうすれば、約2.9兆円全額ではないかも知れないが、上に記載したように、化石燃料税をヨーロッパ並みの環境税に衣替えして地球温暖化対策に資する製品の社会実装のための補助金に当てれば、⑨の経済成長はむしろ促される。 また、⑩は「2026年1月の金利が27年ぶりの水準まで上昇して金融市場に悪影響を与えた」などと記載しているが、2025年12月の物価上昇率が2.1%であるため、名目短期政策金利0.75%の実質金利は-1.35%(0.75% - 2.1%)であり、10年国債利回り(長期金利)の名目金利2.29%の実質金利は0.19% (2.29% - 2.1%)に過ぎない。他の先進国は、下の表のとおり、実質短期金利+0~1%台、実質長期金利+0.7~1.6%台であるため、日本だけが実質長期金利も実質短期金利も他国と比較して異常に低いのである。 国 政策金利 物価上昇率 実質短期金利 名目10年国債利回り 実質長期金利 日本 0.75% 2.1% −1.35% 2.251% +0.15% 米国 3.5〜3.75% 2.7% +0.8〜1.05% 4.282% +1.58% ユーロ圏 2.0% 1.7% +0.3% 2.866% +0.77% 英国 3.75% 3.4% +0.35% 4.557% +1.16% カナダ 2.25% 約2% +0.25% 3.436% +1.44% オーストラリア3.85% 3.8% +0.05% 4.839% +1.04% 注:物価上昇率は、国によって直近の2025年12月もしくは2026年1月を使用 つまり、今でも国民にはマイナス金利や0近傍の金利で損をさせながら、企業の金利負担を軽くして企業を優遇している異常な状態なのである。そのため、⑪のように、この金利で「企業の資金調達や輸入のコスト増」などと言うようなら、どうしようもない企業と言わざるを得ない。 そして、実は、バブル期も同じく実質金利がマイナスか0近傍で、企業は借金をした方が儲かる構造であったため、借金による投機で失敗し、それを税金で国民が尻拭いしたのである。そのため、同じことを繰り返すこと自体が進歩がない。 なお、⑫で書かれている「消費税は法人税と比べて景気に左右されにくい」という性格は、(1)1)2)に記載したとおり、景気が悪くなって所得が減った時に税率(税額/所得)が高くなる逆進性を持つ一般財源ということである。そのため、⑬⑭のように、「社会保障と税の一体改革として、消費税率を10%に引き上げ、年金・医療・介護等に充てることで合意した」というのは、質の悪い合意であるし、本当にそうなっているかも検証を要する。 その上、経済界は、③のように、経団連の筒井会長が「代替財源の明確化が必須」「市場の信認維持と社会保障の持続性の確保が消費減税の実施の大前提」とし、その上で「租特見直しによる法人減税縮小を強く警戒」しているのだから、我儘にも程がある。 経済界は、さらに、①②④⑤のように「財源を示さない消費税減税は無責任」「財政悪化や円安進行に懸念」と言い、労働界も、⑤のように「財源が気がかり」と言い、⑭のように、少子高齢化を理由に社会保障制度のさらなる改革を訴えているのだから、本当に社会保障制度の安定財源を求めているのなら、消費税のような一般財源ではなく社会保険料を上げるべきである。 ちなみに、ヨーロッパでは、社会保険料の負担が企業2/3、被用者1/3である。その根拠は、社会保険によって労働力を再生産するのだから、それによって利益を享受する企業が、より大きな割合でそのコストである社会保険料を負担するのは当然という発想からだ。 日本では、現在、ざっくり 60兆円規模の社会保険料が支払われており、企業と被用者がだいたい1/2づつ支払っているため、企業負担30兆円、被用者負担30兆円となっている。この総額を変えずに企業負担2/3、被用者負担1/3に変更すれば、企業負担40兆円(+10兆円)、被用者負担20兆円(-10兆円)となって被用者の手取りは確実に増える。 さらに、少子高齢化で社会保障サービスが増えることを前提として、75兆円規模の社会保険料を徴収すれば、企業負担50兆円(+20兆円)、被用者負担25兆円(-5兆円)の負担となる。しかし、少子高齢化で人手不足の現在、企業はAI等を導入することにより人手を3/5に減らして生産性を上げることは容易であろうし、減らされた人も他の人手不足企業に移動すれば、より付加価値の高い仕事に移ることができるため、日本全体ではさらに増収になる。 そうすれば、⑥の国民民主党の毎年約15兆円減でも、社会保障を犠牲にすることなく達成できるということだ。 4)金融緩和と積極財政による静かな国民負担増 日経新聞は、*1-2で、①高市首相の1月23日衆院解散・1月27日公示・2月8日投開票は戦後最短16日間の日程、小選挙区289、比例176計465議席 ②高市首相は、i)積極財政を問う選挙 ii)「改革をやり切るには政治の安定が必要」と信任選挙の位置付け iii)「高市早苗が首相でいいのかを国民に決めていただく」と進退をかけた政権選択選挙を強調 iv)連立(自民+維新)の勝敗ラインは与党過半数と主張 v)「責任ある積極財政」「安全保障政策の強化」などの新しい経済財政政策・重要政策の大転換と説明 ③i)食料品の消費税を2年間0にする方針を表明(維新との連立合意に明記、自身の悲願とのこと) ii)財源は補助金見直し・租特の整理・税外収入等を例示 iii)特例公債に頼らないと明言 iv)(それでも)「財源の詳細は明示しなかった」と ④i)解散により、2026年度予算案の年度内成立困難 ii)関連法案の年度内成立や暫定予算の計上で「高校無償化」「給食無償化は2026年4月開始を目指す」 ⑤社会保障・財政運営は、i)債務残高対GDP比の引き下げを掲げて財政の持続可能性を強調 ii)行き過ぎた緊縮を終わらせる iii)予算編成のあり方を見直し、複数年度で財政出動を可能にする仕組みの構築 iv)危機管理投資・成長投資を柱に据える v)物価高に苦しむ中低所得者の負担を減らすため、社会保障改革を議論する超党派の「国民会議」で制度設計を進める ⑥外交・日中関係は、i)台湾有事発言を契機に日中関係が悪化 ii) 政権基盤を強化し外交に取り組む姿勢 iii)中国側と意思疎通を継続し、国益の観点から冷静に対応 としている。 今は、既に2月8日投票日の前日なので、①、②iv)、④i)の解散による2026年度予算案の年度内成立困難を論じても仕方がないが、メディアがよく使う②ii)の「政治の安定」や「ポピュリズム云々」という言葉は、国民生活を犠牲にするような国民に不利な改革を省庁よりで押し進める場合に多く用いられるため、民主主義に反する。 その法的根拠は、日本国憲法の「前文:国政は、国民の厳粛な信託によるものであつて、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受する」「第41条:国会は、国権の最高機関であつて、国の唯一の立法機関である」という国民主権の原則であり(https://laws.e-gov.go.jp/law/321CONSTITUTION?tab=cited参照)、前回の多様な政党のバランスは、国民の意思そのものだったと思うからだ。従って、メディアの仕事は、国民が正確な情報を基に判断できるよう、意図の入らない正確な情報を伝えることである。 また、②iii)のように、建前に拘わらず、「首相が交代して支持率が高いうちに解散総選挙をするべき」という判断になる理由は、正面から政策を議論して、議論を高見に押し上げるのではなく、女・金・不祥事等の法的には罪に当たらない軽微な事象を探し出して取り上げ、ネチネチと人格攻撃をするからであり、この行為は、一生をかけて信用を築き上げた人にとっては人格権の侵害や人権侵害であると同時に、社会にとっては、有為な人材を失ったり、短期間で首相が交代したりするため、国益にもならない。 なお、②のi) とv)に積極財政については、これまでのように、金融緩和による円の増発と国債発行でこれを行なうのであれば、物価の尺度である円の価値が下がって物価は上昇するが、生産性は上がっていないため賃金上昇が物価上昇に決して追いつかず、結果として実質賃金が下がるだけである。また、円の価値が下がるので、円安・株高(株式の価格を円で計っているだけであるため)になり、預金の価値も下がるのである。 ちなみに、物価上昇率が 1%・2%・3%・4% の場合の10年後・20年後・30年後の物価水準と、現在1,000万円の預金がある人の10年後・20年後・30年後の購買力を下の表に示すと下のとおりで、2%の物価上昇が20年続けば物価水準は1.486倍になるため、貯金の価値は7割以下の約673万円になる。また、同様に、4%の物価上昇が30年続けば物価水準は3.243倍になるため、貯金の価値は約309万円と1/3を大きく下回るのである。 *物価水準(現在=100 とした場合) 年数 1%上昇 2%上昇 3%上昇 4%上昇 10年後 110.5 121.9 134.4 148.0 20年後 122.0 148.6 180.6 219.1 30年後 134.8 181.1 242.7 324.3 *現在の1000万円の預金の購買力 年数 1%物価上昇 2%物価上昇 3%物価上昇 4%物価上昇 10年後 約905万円 約820万円 約745万円 約675万円 20年後 約820万円 約673万円 約553万円 約456万円 30年後 約740万円 約552万円 約412万円 約309万円 つまり、物価上昇で国や企業が増収になった分は、国民が債権や預金の目減りという形で、国会を通さずに所得移転されて負担しているのであり、これは老後資金を貯めていた高齢者を直撃している。そのため、世界の中央銀行の役割は、イ)物価の安定(金利操作によって通貨の価値を維持し、国民の財産を守ること) ロ)金融システムの安定 ハ)決済インフラの運営 になっているのであり、中央銀行は政府から独立しているのだが、日本銀行の場合は財務省べったりで物価安定機能がなく、これが政府のやりたい放題を許しているわけである。 日本にはインフレ政策で政府の過剰債務を精算してきた歴史があり、それは、i)第2次世界大戦後の戦費と敗戦処理で国家財政が破綻寸前だった時期 ii)石油ショック後の産業構造変革に伴うバブル期(雇用維持目的) iii)現在(放漫財政によってできたGDP2倍超の政府債務を目減りさせる目的) であり、政府の責任の付けを密かに国民にまわしているものである。 そのため、②v)の「責任ある積極財政」のうち「責任ある」の具体的な意味は不明だが、「安全保障政策の強化」と称して役に立たない歳出を増やすのは止めてもらいたい。 しかし、③i)の「食料品の消費税を2年間0にする」という方針は、(1)の1)2)3)に記載したとおり、2年間に限らず可能だ。また、③ii)のように、財源を補助金の見直し・租特の整理・税外収入等から最初に捻出するというのも適切であり、iv)のように、これでも「財源の詳細を明示していない」とするのは、社会保障と財源を盾にした否定の態度にすぎない。 なお、私は、政府が思考停止して賦課課税方式をとり続けたために国民に予定外の負担を強いている年金制度を、発生主義である積立方式に変更する原資として、③iii)の特例公債を発行するのであれば、それは特定の世代に二重の負担をかけないために当然であって問題ないと考える。そして、正当に年金が支払われるようになれば、それだけ消費が増え、高齢期のニーズが明らかになるため、高齢化社会で必要になる製品やサービスが開発され、GDPも増加する。そして、人口動態統計を見れば明らかなように、世界が後追いで高齢化社会に突入するのだ。 また、③ii)の「高校無償化」については、入学する高校は親や生徒に選択権があるため、私立高校まで実質無償化する必要はないと思うが、「給食無償化」は国民の栄養に関する知識や食文化の底上げとなる食育であるため、2026年4月に全国で開始すべきだと考える。そして、給食の時には、栄養教諭が、今日の給食の栄養バランス・産地・食料自給率などについて、学校放送で説明すれば良い。 これらにより、⑤i)の債務残高対GDP比の形だけではない本質的な引き下げが進み、ii)行き過ぎた緊縮でもなく、放漫でもない必要な歳出に変えるべきである。そのため、⑤iii)については、(1)3)ロ)に書いた公会計制度の導入と継続的な事業評価を行なうしかないのである。 従って、⑤v)の社会保障改革を議論する「国民会議」では、(政府のこれまでの失敗を隠さず)国民に負担増・給付源を強いない制度設計が求められるが、これまで書いてきたとおり、これは他国では当然行なっていることであり、可能なことである。 最後に、⑤iv)の危機管理投資は、首都直下型地震その他の災害に備えて必要であり、それを行なうことが成長投資に繋がるようにしなければならない。しかし、同時に、⑥の日中関係では、これまでやってきたように、データによる根拠もないのに中国人を差別して中国政府を煽ることなく、i)の台湾有事に備えて必要な準備はしながらも、iii)のように中国との意思疎通は行なって国益を害さないようにすべきだ。 ⑥ii)については、相手国にとっては、毎年のように首相が交代する国の首相と意思疎通を行なっても時間の無駄であるため、メディアは、世界の中での日本の外交も考慮して発言するよう注意されたい。 (2)日本の低成長・低生産性・低実質賃金の原因は同根である *2-3は、①i)日本は「失業率が低く、人手不足」と言われるが、労働生産性は他のG7諸国に比べて低く、伸び率も極めて緩やか ii)日本は、就業者一人の生産するGDPが低い iii)米国並みの生産性なら就業者の4割超が不要 iv)日本を除くG7(G6)の平均と比較しても35%以上過剰 iv)日本が他の先進国並みの労働生産性を実現できれば、かなりの労働力を他の生産用途に振り向けられる ②日本は日本型雇用システム(終身雇用・無限定正社員)で、潜在的な過剰雇用を抱えている ③企業は固定費削減のため、i) 正規雇用を抑制して非正規雇用を拡大して正規6:非正規4の割合 ii) 非正規は賃金が低く、正規への移動困難 ③安価な非正規労働に依存して、自動化・高度設備投資が進まない ④結果、低生産性が固定化し、i)賃金は上がらない ii)物価上昇とともに実質賃金が下がる iii) 2024年の人手不足倒産は過去最高 ⑤雇用制度が生産性向上と賃金上昇を抑え込む構造 としている。 上の①④⑤は事実であり、「人手不足の背景は高齢化と人口減少」として「生めよ増やせよ論」を掲げている政党もあるが、1990年代後半以降は生産年齢人口とされる「15歳~64歳人口」は減少したものの、女性や高齢者(65歳以上)の労働参加率が上昇して労働力人口は増加し、むしろ雇用維持目的として景気対策のバラマキを行なうことの方が多かった。 しかし、人手不足なら、まず雇用維持目的の景気対策は止め、高学歴化・長寿化している中、生産年齢人口の定義を「15歳~64歳人口」から「18歳~74歳人口」に改めた上で、労働法で護られない③のような非正規労働を禁止すべきである。そうすれば、労働者のキャリアの継続や成長を妨げる非正規労働がなくなり、労働市場の「二重構造」が解消されて、年金・医療・介護等の社会保険の支え手が増えて社会保障財源が改善する。 ただし、企業が潜在的過剰雇用を抱えず人手不足企業に人材が流れて人材配置が最適化されるためには、②の日本型雇用システム(終身雇用・無限定正社員)を終わらせる必要がある。そのためには、中途退職者や中途採用者が不利にならないように転職市場を充実させ、転職する際には昇進して賃金が上がるようにして、移動者が損をしない仕組みにしなければならない。 そのような中、*2-1は、⑥2025年は3%を超える物価上昇が続き、賃上げが追いついていないため、2025年11月の実質賃金は11カ月連続のマイナス ⑦経団連など経済3団体が開いた新年祝賀会では経営トップから2026年も5%を超える賃上げ方針の表明 ⑧春季労使交渉では、前年の賃上げ率5.25%(連合集計)と同等か上回る水準の達成が実質賃金のプラス定着に欠かせない 等としている。 また、*2-2は、⑨日本生産性本部が2025年12月22日に発表した2024年の労働生産性の国際比較で、日本の労働生産性/時間は約9,400円(OECD平均は$79.4《12,466円=157円/$x79.4$》・1位はアイルランド$164.3《25,795円=157円/$x164.3$》)であり、日本はOECD加盟国38ヶ国中28位・先進7か国最下位 ⑩生産性が上がれば経済成長や豊かさに繋がる 等としている。 それでは、⑦⑧のように、2026年も5%超の賃上げを行なえば、⑥の実質賃金がプラスになるのかと言えば、それを価格転嫁すれば物価も上がるため、実質賃金プラスはおぼつかない。 そのため、⑩のように、生産性を上げて賃金上昇を吸収しなければならないのであり、それを継続的に行なってきた先進諸外国は、⑨のように、労働生産性/時間が上がって、日本を引き離しているのである。 (3)外国人労働者と外国人差別 *3-1~*3-5は、①政府は外国人政策の受け入れを厳格にする方向にカジ ii)理由はi)一部の外国人による違法行為・ルールからの逸脱・在留資格審査・現場就労の運用・医療費未払い・土地取得等への問題視 iii)社会保険料未納付対策や土地取得管理に取り組む省庁横断の組織も作った iv)しかし、「何がどれほど問題か」の定量的把握はない ②経済・産業は、i)自動車産業は2040年に外国人比率を現在の約3倍にしないと生産維持不可 ii)地方・中小企業ほど外国人依存度高 iii)厳格化は労働力不足をさらに悪化 ③若年層・社会保障への影響では、i) 20代人口の約1割が外国人 ii)外国人の社会保険加入により年金財政は改善 iii)外国人は「負担」ではなく「支え手」 ④国際比較では、i)米欧は反移民が強まるが、韓国・台湾は受け入れ拡大 ii)日本は競合国として意識され、人材争奪で不利になる ⑤差別・排外主義が拡大し、具体的にはi) 政策議論と混在してSNSで感情的・差別的言説拡散 ii)教育や子ども政策にまで「優遇」批判 iii)共生に向けた丁寧な説明と支援が不可欠 としている。 上の①i)ii)については、「外国人=治安悪化」という単純化が、メディアを通じて大げさに流通していること自体が問題である。何故なら、「外国人観光客」と「外国人就労者」は全く別の背景を持つ人であるため、観光客・短期滞在者・就業者・永住者を区別せずに一括りで語ること自体が間違いだからである。また、観光客のマナー問題・技能実習生の労働問題・留学生のアルバイト問題・就業者や永住者の生活問題などを一括して「外国人問題」として扱って話をすると、原因究明ができないため、問題解決もできない。 また、「外国人観光客」は、観光立国を標榜して外貨を稼いでいる日本にとっては大切なお客様であり、「外国人就労者」は、日本の社会保険にただ乗りしているどころか、生産年齢人口の減少と特定業種の著しい人手不足を穴埋めをしながら真面目に働いて、②③のように、日本社会の「負担」どころか、むしろ日本社会の「支え手」になっている人である。 さらに、「外国人犯罪」の中には、入管法違反という行政法規違反が大量に含まれており、在留期限切れ・資格外活動・技能実習制度の違反など「働いたら違反」「転職したら違反」という世界でも厳しい(珍しい)規制違反が多く含まれるのである。その上、外国人の場合は分母を示さず件数のみを示して「外国人増→治安悪化」と報道するのだ。 しかし、殺人・強盗・オレオレ詐欺・投資詐欺・高齢者や弱者を狙った搾取・企業ぐるみや組織ぐるみの不正など、日本人が主体になって起きている「日本人による犯罪」は「日本人→治安悪化」とは言われないため、日本人と外国人の間には、不公平なダブルスタンダードがある。 つまり、「犯罪」の中身や軽重を分析せずに、不法残留・資格外活動・在留期限超過・就労資格違反等の入管法違反を、殺人・強盗・詐欺などと同列に扱って、「外国人の犯罪増」と報道することに歪みがあるのであり、政府や議員(候補者も含む)がデータをとって確かめることもなく、これを政策に落とし込もうとすること自体が重大な問題なのである。 また、法務省の「犯罪白書」等による分析では、外国人が治安悪化の主因という事実は確認されておらず、来日外国人による検挙件数は2023〜24年に増えてはいるが、これは在留・来日外国人数が急増したことによる「件数の増加」であって犯罪率の増加ではないとされている。 そのため、本来は、①iv)のように、イ)どういう犯罪を ロ)どの国の人が ハ)どういう割合で 二)なぜ犯したのか について、日本人と同じく職種別・年齢別・社会的背景別にデータを示し、原因究明して改善するために議論すべきであり、日本政府や議員(候補も含む)が、データを確認することもなくメディアの印象操作に踊らされて外国人政策を厳格にし、⑤のように、外国人差別や排外主義を煽っているのは、②④のとおり、全く国益にならない。 なお、日本国憲法は「第22条:何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する」「第31条:何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない」「第17条:何人も、公務員の不法行為により、損害を受けたときは、法律の定めるところにより、国又は公共団体に、その賠償を求めることができる」等と定めており、これらの条文は、「日本国民」を主体とした条文と異なり、外国籍の人にも適用される。 そして、以下に、A.労働人口に占める「外国生まれ労働者」の割合(上位20か国)と、B.人口に占める「移民(外国生まれ)」の割合(上位20か国)を示すと、日本の「外国生まれの労働者/労働者」は2.5%でOECD 38ヶ国中最下位(38位)、移民/人口は2.4%で世界で150位前後であるため、日本は外国生まれの労働者や移民の比率が極端に低い国であると言える。しかし、第1次・第2次・第3次産業が存在できるためには、自動化だけでなく人件費の安さも必要であるため、日本で外国人の受け入れを厳格化するのは30~50年早いのだ。 A. 労働人口に占める「外国生まれ労働者」の割合(上位20か国) OECD “Foreign born share of labour force” (湾岸諸国はデータがないため除外) 順位 国名 外国生まれ労働者の割合 1 ルクセンブルク 47% 2 スイス 33% 3 オーストラリア 32% 4 ニュージーランド 31% 5 カナダ 28% 6 イスラエル 25% 7 オーストリア 22% 8 スウェーデン 21% 9 アイルランド 20% 10 ドイツ 19% 11 ノルウェー 18% 12 アメリカ 17% 13 イギリス 17% 14 ベルギー 17% 15 オランダ 15% 16 フランス 14% 17 デンマーク 13% 18 スペイン 13% 19 イタリア 11% 20 ポルトガル 10% B. 人口に占める「移民(外国生まれ)」の割合(上位20か国) UN DESA “International Migrant Stock 2023” 順位 国名 移民(外国生まれ)の人口比 1 アラブ首長国連邦(UAE) 88% 2 カタール 75% 3 クウェート 72% 4 モナコ 67% 5 シンガポール 46% 6 バーレーン 52% 7 ルクセンブルク 47% 8 リヒテンシュタイン 43% 9 アンドラ 42% 10 サウジアラビア 38% 11 オーストラリア 30% 12 スイス 29% 13 カナダ 23% 14 ニュージーランド 22% 15 オーストリア 19% 16 ドイツ 18% 17 スウェーデン 20% 18 アイルランド 18% 19 ノルウェー 17% 20 イギリス 14% (4)成長産業である医療・介護に対して吹かせている逆風 ![]() 国立がん研究センター メットライフ生命 日本腎臓学会 (図の説明:左図は、年齢階級別癌罹患率で、55~59歳から増え始め、75~79まで指数関数的に増えてそれ以上では高止まりしている。また、中央の図は、心疾患の年齢階級別総患者数で、これも40~49歳から増え始めて70~79歳《段階の世代の年齢》でピークに達し、その後は減っているが、これは人口の母集団が少ないからである。右図は、年齢階級別CKD《慢性腎臓病》患者の頻度であり、これも40~49歳から増え始めて指数関数的に増える) ![]() Gen Med 厚労省 (図の説明:左図は、日本の高齢者人口及び割合の推移だが、白が80歳以上・水色が75~79歳・青に白点が70~74歳・紺色が65~69歳で、次第に高齢者の割合が増えていることがわかる。そのため、上の罹患率と合わせて考えれば、医療費・介護費は次第に増えるのが当然であり、その増加を抑制すれば、1人あたりのサービスは低下するのである。また、右図のように、日本の人口は高齢者の割合が増加するため、高齢者のニーズに合った財やサービスを提供していれば、後から追いついて同じ状態になる他国へのグローバルな展開が期待できる) 1)社会保障のあるべき姿 日本国憲法は、25条で「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」を定めているため、医療費や介護費の負担が生活費を圧迫して、健康で文化的な最低限度の生活すら維持できなくなれば、それは憲法違反である。また、13条で「個人の尊厳と生命の尊重」を定めているため、医療や介護へのアクセスを奪うことは、生命の尊重に反する。さらに、高齢者や低所得者に過度の負担を集中させるのは差別であるため、14条の「法の下の平等」にも反するわけである(日本国憲法 https://laws.e-gov.go.jp/law/321CONSTITUTION?tab=cited 参照)。 そのような中、2023年5月29日、GemMedは、*4-1のように、①岸田文雄内閣は「異次元の少子化対策」の財源として、i)医療・介護費の削減(診療報酬・介護報酬のマイナス改定 ii)社会保険料の上乗せ を打ち出した ②医療・介護費を削ればサービスの質が低下し、結果として費用増大に繋がるため、日病協は「社会保障内での付け替え」に強く反対 ③三師会(日本医師会、日本歯科医師会、日本薬剤師会)・日本看護協会・四病院団体協議会(日本病院会、全日本病院協会、日本医療法人協会、日本精神科病院協会)・全国医学部長病院長会議・全国老人保健施設協会・全国老人福祉施設協議会・日本認知症グループホーム協会が連名で、i)2024年度の次期診療報酬・介護報酬改定では『人件費高騰』『物価・光熱水費の高騰』等にも対応しなければならないことは明白で、医療費・介護費削減論が出ていること自体が危機 ii)こども・子育て・少子化対策は極めて重要だが、その財源捻出のために病や障害に苦しむ方々のための財源を切り崩してはならない iii)「少子化対策の財源は別途・恒久的に確保すべき」 と声明 ④高齢者救急医療も救急搬送患者には急性期機能による検査・処置が必要で、急性期入院が不要と判断された場合にのみ「下り搬送」を検討すべきであり、安易に「高齢者救急は地域包括ケア病棟や回復期リハビリ病棟で対応すればよい」などと考えてはならない ⑤病院への介護職配置は介護職の「奪い合い」の懸念はあるが、i)看護職の本来業務への専念 ii)寝かせきり防止 iii)介護職自身の意識・社会的認知度の向上 iv)全体として処遇改善への波及効果 があるので制度化に意義 ⑥10~20年先を見て医療・介護で必要な介護職員配置を明確化し、両分野が連携して育成・確保を進めるべきであるため、JCHO(Japan Community Health care Organization:地域医療機能推進機構)で、DPCデータ(Diagnosis Procedure Combination:診断群分類データ)を用いて実態把握を実施中 ⑦病院薬剤師の必要数も、病院機能毎にデータに基づいて提言予定 ⑧医療費削減となれば、病院(病棟)への介護職員配置などは難しくなる としていた。 このうちの①③ii)は、保険の論理として完全に正しい。また、②も、人口構成の変化から見て当然の主張であり、社会保障内で付け替えることしかできないのなら、国会議員による内閣の存在意義はない。 また、③i)のように、医療・介護も人件費高騰や物価・水光熱費の高騰等に対応しなければならないため、2024年度の次期診療報酬・介護報酬改定に医療費・介護費削減論が出ていたこと自体が、医療・介護をターゲットにした常識外れの議論である。 ③iii)については、少子化対策の中にも行きすぎもあれば、本当に必要だが未達成のものもあるが、財源については、憲法第26条第2項で「すべて国民は、法律の定めるところにより、その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負ふ。義務教育は、これを無償とする」と定められているのだから、当然、一般財源から拠出されるべきである。 さらに、④のように、「高齢者救急は地域包括ケア病棟や回復期リハビリ病棟で対応すればよい」という主張については、誰のどんな病気であっても、初期診断を誤れば誤った治療をして病気を悪化させるだけであるため、高齢者救急医療も急性期の検査・処置は必要不可欠で、急性期入院が不要と判断された場合にのみ「下り搬送」を検討すべきことは当然である。 なお、⑤iのi)ii)iii)についても、医療行為が終わったからといって、患者を家に帰せば直ちに1人で生活できるわけではないため、病院内での介護や家に帰った後の訪問介護は必要不可欠である。そして、その判断を医師が行なうのは合理的な医療行為であるため、病院への介護職の配置が介護職の「奪い合い」にならないよう、⑥のように、10~20年先を見据えて医療・介護で必要な介護職員の配置を行なうべく、介護職の育成・確保を進めるべきなのであり、そうすることで入院日数を減らすこともできるわけである。 政府やメディアは、社会保障と言えば財源を問題にするが、これは憲法に定められた福祉であるため、社会保険料で足りない部分は一般財源から出すのが当然である。また、⑦の病院薬剤師の必要数も病院機能毎にデータに基づいて確保し、⑧のように、議員が医療費削減ばかりを提唱しないことが重要である。 しかし、これらの正当な提言に対し、2026年2月現在の状況は、イ)訪問介護の基本報酬(2%以上引き下げ実施済) ロ)高齢者の外来特例の縮小(決定済)・OTC類似薬の給付縮小(決定済、2027年3月から実施) ハ)高齢者の医療窓口負担(1〜2割→3割、検討中) 二)高額療養費の上限引き上げ(4〜38%、2025年12月決定済) ホ)介護保険の2割負担対象拡大(検討中) へ)診療報酬抑制(2026年度は政治的にプラス改定だったが、財務省は2028年度改訂での抑制を強く主張) ト)医療・介護の給付範囲縮小(食品類似薬など「通常の食事で代替可能」なものを給付外へ、検討中)なのである。 そして、イ)の2024年度の改定による訪問介護の基本報酬2%以上引き下げの結果、i)訪問介護の倒産が3年連続で最多を更新し ii)介護事業所0の自治体が115町村と急増し iii)介護空白地帯が拡大して、既に地域包括ケアの根幹が崩れ始めているのだ。 また、へ)の診療報酬は、医療機関・薬局向けの物価高・人件費高騰に対応する報酬の引き上げが限定的だったため、実質はマイナス改訂となり、医療機関・薬局の収支悪化が進行している。 既に決定済の、ロ)高齢者の外来特例の縮小、二)高額療養費の上限引き上げが実施された場合、一人暮らしで扶養なしの人が、手取り月収から医療費上限を長期間にわたって支払った場合の支払い後の生活費は下のようになり、実質的に医療を受けられない状態に陥るため、高額療養費制度が意味をなさないため、以下に具体的な計算例を示す。 (A)現役世代の場合 現役世代の場合の前提を、所得階層別の手取り月収(一人暮らしで扶養なし)、医療費上限を支払うとして医療費支払い後の生活費を計算すると、下の表のとおり、制度改定後は、生活が成立しなくなる層が明確に増え、高額療養費制度がセーフティネットとして機能しなくなりことがわかる。ただし、前提は、「手取り月収=月収―(所得税+住民税+社会保険料)」、高額療養費は70歳未満の一般区分、2026年8月:7%増、2027年8月:7〜38%増(中間層が最大)、「生活費残額=手取り月収 − 医療費上限」 として計算している。 ① 年収 650〜770万円(中間層:最大38%増の層)の場合 項目 2023年 2026年8月 2027年8月 手取り月収 約38〜44万円 同左 同左 医療費上限 80,100円 約85,700円 110,400円 支払い後の生活費 約30〜36万円 約29〜35万円 約27〜33万円 ●生活可能性 → 家賃12万円+食費4万円+光熱通信3万円=19万円 → 残りは 8〜14万円 → 単身でもギリギリで、貯蓄は困難。 ② 年収 770〜900万円(上位中間層)の場合 項目 2023年 2026年8月 2027年8月 手取り月収 約45〜52万円 同左 同左 医療費上限 167,400円 約179,100円 約200,000円 支払い後の生活費 約28〜35万円 約27〜34万円 約25〜32万円 ●生活可能性 → 手取り50万円の人が20万円を医療費に払うと、残りは30万円 → 家賃12万円+生活費7万円=19万円で、11万円しか残らない ③ 年収 900〜1160万円(高所得層) 項目 2023年 2026年8月 2027年8月 手取り月収 約55〜70万円 同左 同左 医療費上限 167,400円 約179,100円 約210,000円 支払い後の生活費 約38〜53万円 約37〜52万円 約34〜49万円 ●生活可能性 → 負担は重いが、病気でもこの所得が続けば、生活破綻には至らない。 ④ 年収 370〜650万円(一般的な現役層) 項目 2023年 2026年8月 2027年8月 手取り月収 約23〜38万円 同左 同左 医療費上限 80,100円 約85,700円 約90,000〜95,000円 支払い後の生活費 約15〜30万円 約14〜29万円 約13〜29万円 ●生活可能性 → 年収400万円(手取り25万円)の場合 → 医療費9万円 → 残り16万円 → 家賃8万・生活費7万で 1万円しか残らない → 実質的に生活破綻ライン ⑤ 年収〜370万円(低所得層) 項目 2023年 2026年8月 2027年8月 手取り月収 約15〜23万円 同左 同左 医療費上限 57,600円 約61,600円 約65,000〜70,000円 支払い後の生活費 約9〜17万円 約8〜16万円 約8〜15万円 ●生活可能性 → 家賃7万円・生活費6万円で 13万円必要 → 手取り15万円の人は、医療費7万円払うと生活費8万円 → 完全に生活不能 ⑥ 住民税非課税(最貧困層) 項目 2023年 2026年8月 2027年8月 手取り月収 約10〜13万円 同左 同左 医療費上限 24,600円 約 25,600〜25,900円 据え置き 支払い後の生活費 約7〜10万円 同左 同左 ●生活可能性 → 家賃7万円で 生活費がほぼ0で、医療費を払うと生活がきない (B)高齢者の場合 高齢者(単身)の場合は、「手取り月収=月収―(所得税+住民税+社会保険料)、収入は主に「公的年金+その他所得」、高額療養費は「入院+外来」のある月は両方を足した上限、「外来のみ」の月は、70歳以上の外来特例を採用し、2026年8月:7%増、2027年8月:7〜38%増(所得区分細分化)、「生活費残額=手取り月収−医療費上限」を前提として、医療費支払い後の生活費を計算している。 しかし、そもそも、家賃や水光熱費が異なるわけではなく、高齢になるほど医療費や介護費が多くなるのに、現役世代は年収0〜370万円が低所得層とされ、高齢者は年収 200〜370万円が“中間層”、年収 370万円以上は“比較的裕福”とされること自体が、憲法14条の「法の下の平等」に反して差別的であり、生活実態にも合っていないのである。 <入院+外来> ① 年収 200〜370万円(高齢者“中間層”) 項目 2023年 2026年8月 2027年8月(細分化後) 手取り月収 約16〜20万円 同左 同左 医療費上限(入院+外来)44,400円 47,500円 約50,000〜60,000円台 支払い後の生活費 約11.6〜15.6万円 約11.3〜15.3万円 約10〜14万円台 ●生活可能性 → 家賃7万円•食費4万円•光熱通信2万円で13万円必要 → 2027年以降は生活不能層が多数発生 ② 年収 370〜650万円(現役並み所得Ⅰ) 項目 2023年 2026年8月 2027年8月(細分化後) 手取り月収 約22〜30万円 同左 同左 医療費上限(同上) 44,400円 47,500円 約50,000〜70,000円台 支払い後の生活費 約17.6〜25.6万円 約17.3〜25.3万円 約16〜24万円台 ●生活可能性 → 生活は可能だが、介護費・家賃が高い地域では赤字の可能性 ③ 年収 650〜770万円(現役並み所得Ⅱ) ※ 現役世代で「最大38%増」とされた層に相当 項目 2023年 2026年8月 2027年8月(細分化後) 手取り月収 約30〜35万円 同左 同左 医療費上限(同上) 44,400円 47,500円 約60,000〜80,000円台 支払い後の生活費 約25.6〜30.6万円 約25.3〜30.3万円 約23〜29万円台 ●生活可能性 →家賃12万円・食費4万円・光熱通信3万円=19万円 →残り 4〜10万円、単身でもギリギリ ④ 年収 770〜900万円(現役並み所得Ⅲ) 項目 2023年 2026年8月 2027年8月 手取り月収 約35〜40万円 同左 同左 医療費上限(同上) 57,600円 61,500円前後 約70,000〜90,000円台 支払い後の生活費 約29.4〜34.4万円 約29〜34万円 約27〜33万円台 ●生活可能性 →生活は可能だが、介護費が重なると赤字の可能性 ⑤ 年収 900万円以上(現役並み所得Ⅳ) 項目 2023年 2026年8月 2027年8月(最大38%増) 手取り月収 約40〜50万円 同左 同左 医療費上限(同上) 80,100円 85,700円前後 約100,000円前後 支払い後の生活費 約32〜42万円 約31〜41万円 約30〜40万円 ●生活可能性 →生活は可能だが、介護費・家賃が高い地域では負担感は大きい ⑥ 年収〜200万円(低所得の高齢者) 項目 2023年 2026年8月 2027年8月 手取り月収 約12〜14万円 同左 同左 医療費上限(同上)15,000〜24,600円 据え置き 据え置き 支払い後の生活費 約9.5〜12万円 同左 同左 ●生活可能性 →家賃7万円・食費4万円=11万円で、ほぼ生活不能 ⑦ 住民税非課税(最貧困層) 項目 2023年 2026年8月 2027年8月 手取り月収 約10〜13万円 同左 同左 医療費上限(同上)24,600円(or15,000円)約 25,600〜25,900円 据え置き 支払い後の生活費 約7〜10万円 同左 同左 ●生活可能性 →家賃7万円で生活費0、医療費を払うと生活ができない <外来特例(外来のみの場合)> ① 年収 200〜370万円(高齢者の“中間層”とされる) この層が最も影響を受ける。 項目 2023年 2026年8月 2027年8月 手取り月収 約16〜20万円 同左 同左 医療費上限(外来) 18,000円 約19,300円 28,000円 支払い後の生活費 約14.2〜18.2万円 約14.1〜18.1万円 約13.2〜17.2万円 ●生活可能性 → 家賃7万円・食費4万円・光熱通信2万円で、13万円必要 → 2023年は、生活費だけでも不足気味 → 2027年以降は「医療費を払うと生活が成立しない」層が多数発生 ② 年収 370万円以上(比較的裕福とされる高齢者) 項目 2023年 2026年8月 2027年8月 手取り月収 約22〜26万円 同左 同左 医療費上限(外来) 18,000円 約19,300円 28,000円以上 支払い後の生活費 約20〜24万円 約19〜23万円 約18〜23万円 ●生活可能性 → 生活は可能だが、余裕はない → 介護費・家賃が高い地域では赤字の可能性 ③年収〜200万円(低所得の高齢者) 項目 2023年 2026年8月 2027年8月 手取り月収 約12〜14万円 同左 同左 医療費上限 15,000〜24,600円 据え置き 据え置き 支払い後の生活費 約9.5〜12万円 同左 同左 ●生活可能性 → 家賃7万円・食費4万円で、11万円必要 → 手取り12〜14万円で医療費を払うと、ほぼ生活不能。 ④ 住民税非課税(最貧困層) 項目 2023年 2026年8月 2027年8月 手取り月収 約10〜13万円 同左 同左 医療費上限 24,600円(or15,000円) 据え置き 据え置き 支払い後の生活費 約7〜10万円 同左 同左 ●生活可能性 → 家賃7万円で 生活費がほぼ0 → 医療費を払うと 食費や光熱費も残らない 2)社会保障に関するメディアの取り上げ方 ![]() 2025.2.1JBPress 2025.10.24読売新聞 2026.1.23日経新聞 (図の説明:左図のように、食料価格の指数は、2020年を100とすれば2025年は120であり、5年で20%も上昇している。また、中央の図は、価格変動の激しい生鮮食料品を除く総合消費者物価指数の前年同月との比較であるため、一見小さく見える。そして、右図が、やはり生鮮食品を除いた消費者物価指数の前年との比較である) A)診療報酬の改訂について *4-2-1は、「診療報酬『3%ありき』政治の圧力、厚労省案丸のみ」と題して、2026年度の診療報酬改定案が12月24日に決まり、①i)医療従事者の人件費等の本体部分は3.09%の大幅引き上げ ii)「医療報酬+薬価」の全体では2.22%のプラス改定 iii)この改定で国費は約 1300億円増 iv)医療費が2%増えれば現役世代らの保険料負担は年5000億円ほど増えるため、報酬を野放図に伸ばすだけでは賃上げが消費に回る流れを妨げる v)財務省は「国民負担増」を懸念 ②政治は、i)高市首相・上野厚労相・片山財務相が首相官邸で調整 ii)日本医師会や自民党厚労族の圧力で厚労省が3%以上の引き上げを要求 iii)財務省は当初1%台を想定していたが、最終的には厚労省案に決定 ③背景は医療機関の経営悪化で、i)物価上昇・賃上げ圧力 ii)病院の深刻な赤字(特に、大学病院の赤字拡大) iii)医療現場からの「経営がもたない」との声 ④i)財務省は、50兆円に迫る医療費の1/2分は保険料で賄うため当初は野放図な財政運営はしない方針 ii)改定率が上がれば社会保険料にも上げ圧力 iii)保険制度を所管する厚労省は3%台の引き上げありきで動いた iv)自民党本部で開催された緊急集会での政治圧力で財務相自身も「3%に近づけるべき」と発言 ⑤厚労省は、i)物価上昇や賃金上昇を踏まえて1%台では医療機関経営の逼迫解消不可 ii)族議員や医師会に試算資料を提示して3%超の改定を説得 ⑥i)自民党と日本維新の会は連立合意書で現役世代の保険料負担の引き下げを目指すと明記 ii)診療報酬を伸ばすだけでは制度が持続せず iii) 「OTC類似薬」の患者負担見直しは2027年3月から上乗せ料金を徴収する方針が決まったが、自民党や患者団体らの反対で保険適用除外にはならず改革効果が萎んだ iv) 支払い能力のある高齢者らの負担引き上げ等の改革が不可欠 としている。 イ)医療機関の経営悪化について *4-2-6のように、全国消費者物価指数(2020年=100)は、値動きの大きい生鮮食品を除く総合が111.6となり、前年同月比で2.7%上昇しているが、前年も2~3%上昇しているため、直近2年間の累計で約5~6%上昇している。従って、診療報酬改定は2年に1度であるため、2年分の物価上昇率を反映させなければ足りない。また、薬価の改訂は毎年行なわれるため、1年分の物価上昇率を反映させれば足りる。 そのため、①i) ii)については、物価が直近2年間で6%近く上昇していることを反映すれば、それに応じた人件費上昇や仕入れ価格上昇があることを考慮して、診療報酬は3.09%引き上げても物価上昇の半分程度しかカバーしておらず、大幅な不足である。一方、薬価は1年分で2.7%上昇させなければ実質目減りであるため、「医療報酬+薬価」全体で2.22%のプラス改定では実質マイナス改定であり、ただでさえ苦しい経営にさらなる犠牲を強いていることになる。 また、①iii)の「改定で国費約 1,300億円増」や①iv)の現役世代らの保険料負担年5,000億円増というのは、約50兆円に達している医療費のそれぞれ0.26%と1%にすぎないため、物価上昇分すら吸収していないことがわかる筈であり、賃上げを叫びながら医療従事者には実質賃下げを強いている点が自己矛盾である。さらに、①v)のように、財務省は「国民負担増」を懸念しているそうだが、このように医療従事者の犠牲は全く厭わない態度では、保険診療を行なう医師の志望者が減るのも無理はなく、日本の医療崩壊は静かに近づいていると言わざるを得ない。 従って、②ii)・④iii) iv)・⑤i) ii)のように、日本医師会や自民党厚労族・厚労省が3%以上の引き上げを要求したのは当然であり、それでも少なすぎるのだが、この交渉を「圧力」と呼び、いかにも不当であるかのように記載している点に、メディアの悪意ある印象操作が感じられる。また、その結果を受けて、②i)のように、高市首相・上野厚労相・片山財務相が首相官邸で調整したことも当然で、②iii)の財務省の1%台どころか、厚労省の3.09%案でも改定率が低すぎる。 なお、③のような医療機関の経営悪化の理由の1つは、③i)の物価上昇率や賃上げに診療報酬の改定率が遠く及ばないことがある。しかし、それに加えて、診療報酬は1989年の消費税導入当初から「非課税取引」とされ、仕入れ税額控除ができないため、医療機関は医療材料・薬剤・設備・電気・ガス・水道・建物に含まれる消費税を全負担しなければならず、それが積み重なって現在に至っていることも大きい。 消費税の計算方法は、「課税取引は仕入れ税額控除可能」「非課税取引は仕入れ税額控除不能」であり、非課税取引である医療サービスを提供した場合には、仕入れ税額控除ができないのである。そのため、病院が全負担している消費税の具体例は、MRI・CT等の高額医療機器(数億円/台)で、消費税10%の現在は数千万円の消費税負担を控除できずに病院が全負担し、薬剤や医療材料も仕入れ時には消費税を支払わなければならないが、診療報酬では薬剤料は「非課税」で仕入れ時に支払った消費税を控除できず、病院が全負担している状態なのである。 そのため、消費税率が10%に上がった現在、③ii)のように、病院が深刻な赤字になるのは当然であり、特に、高度な設備を備えて検査を充実している基幹病院ほど赤字が拡大し、③iii)のように、どの医療現場からも「経営がもたない」という声があがるのである。 そして、本来は、「消費税分は診療報酬改定で補填する」という建前ではあるが、実際には、このように、補填率は物価上昇・賃上げ圧力・消費税上昇に遠く及ばないのだ。そのため、これらを解決する方法は、a)1989年の消費税導入当初から言われていたとおり、医療サービス(診療報酬)も「消費税の課税取引にして0税率(=免税取引」にする b)寡占状態でいつまでも高止まりしている医療機器等の市場を競争市場にして安価にする などである。 ロ)医療保険制度のあり方 ④i)のように、財務省は「50兆円に迫る医療費・・」等としているが、医療・介護は、日本国憲法25条・13条・14条に定められた国民の命を守る最後の砦であるため、野放図な財政運営はしなくても、医療・介護を崩壊に導くような財政運営をして良い筈はない。それどころか、時代遅れの80兆円もの米国投資の方が、国民のためにならず2桁多いのである。 また、④ii)の「改定率が上がれば社会保険料にも上げ圧力」については、ヨーロッパのように雇用者と被雇用者の負担割合を3:2に変更すれば良い。ただし、この時、会社員・公務員などの被雇用者が加入する健康保険(協会けんぽ・健康保険組合・共済組合)と、自営業者・フリーランス・無職・退職者などが加入する国民健康保険の加入者間に不公平が生じないよう、国保の保険料も自己負担は1/3とし、国保が所得に対して割高になりやすい仕組みは改めるべきである。 ハ)自民党と日本維新の会は連立合意書について ⑥i)iv)には、「自民党と日本維新の会は連立合意書で現役世代の保険料負担の引き下げを目指す」「支払い能力のある高齢者らの負担引き上げ等の改革が不可欠」などと書かれているが、医療保険はすべての人が世話になる保険制度であり、人間の一生を展望すれば、健康な時には働いて保険料を多く払い、病気になったら保険で全額負担を回避しながら安心して医療を受けられるようにするための保険制度(ここが重要)であり、所得再配分のツールではない。そして、現在の高齢者も、在職時には多くの保険料を支払ってきたのだ。 また、⑥ii)は、「診療報酬を伸ばすだけでは制度が持続しない」としているが、まず、消費税に関する不公平を無くし、物価や賃金の上昇に見合った診療報酬の引き上げをしなければ、日本が誇っていた医療制度も崩壊する。 ⑥iii)の「OTC類似薬」への変更は、全く同じ成分が含まれているわけではないため、医療を知らず、財政のみの単純すぎる論理で動いている政治から強制されてするものではないと思う。 二) 高額療養費制度の改悪について ![]() 2026.1.27時事 2026.1.27日経新聞 2024.12.25毎日新聞 (図の説明:左図が、2026年2月の衆院選の各党の公約だったが、社会保障について前面から主張した政党はなかった。中央の図が、社会保障だけを取り出した公約だが、与党はじめ担当者の賃上げと現役世代の保険料負担引き下げばかりを主張する政党が多かった。しかし、社会保障は、何らかの事情で働けない人のためのサービスであり、誰もが人生のどこかで遭遇する事態であることを忘れてはならない。右図は、70歳未満の人の高額療養費制度上限額の変更だが、(4)1)に事例で記載したとおり、医療費支払後に生活不能になる人が多く、医療保険のセーフティ・ネット機能が失われかけているのだ) 「高額療養費制度」とは、病気になっても生活が破綻しないためのセーフティネットであり、医療費自己負担額/月に所得区分別の上限を設けて、超過支払分を公的に補填する制度である。 この制度の意義は、a)中間層でも医療費の支払いで貯金が消えたり b)低所得層が治療を諦めたり、医療貧乏になったり c)働き盛り世代でも病気をすれば生活が破綻したり というような医療費に起因する生活崩壊を防ぐことであり、これによって重篤な疾病や長期の治療で発生する高額の医療費を公費で補填し医療へのアクセスを保障して、憲法25条に基づく「生存権」と同13条の「個人の尊厳と生命の尊重」を担保しているものである。 そのような中、*4-2-2は、「高額療養費制度改革で患者負担上限を4~38%上げることになったが、医療費の自然増が大きく1600億円の圧縮では現役世代の負荷が重い」という趣旨で、①高額療養費制度見直し案は、i)現行の自己負担上限を2027年8月までに4~38%引き上げ ii)住民税非課税層は2026年8月に上限/月を4~5%程度引き上げ iii)その他の層は4つの所得区分を2027年8月に各々3つに細分化して12区分とし、2027年8月までに7%ずつ引き上げて最大38%引き上げ ②i)現役世代の保険料負担圧縮効果は累計1600億円程度で石破前政権の当初案3700億円から半減 ii)患者団体への配慮で改革は大きく萎んだ ③現在、5つある所得区分で2026年8月に上限/月を住民税非課税層は4~5%、それ以外は7%ずつ引き上げ ④住民税非課税を除く4つの区分は、2027年8月にそれぞれ3つに細分化して12区分とした上でさらに限度額を引き上げて、現状より7~38%の引き上げ ⑤2027年の細分化で新たにできる年収約650万~770万円の区分の患者は引き上げ幅が最も大きく現在の8万100円から11万400円へ38%上がる ⑥毎月上限引き上げで負担増となる患者を配慮して、2026年8月に所得区分に応じて18万~168万円の「年間上限」を設ける ⑦i) 70歳以上の一部が使える「外来特例」の負担も1万8000円/月から段階的に2万8000円/月に引き上げ ii) 「通い放題」となる制度が医療費を膨らませる一因になっているとの指摘があったため iii)健康寿命の伸びを踏まえて、今後、対象年齢引き上げも検討 ⑧市販薬と成分や効果が似る「OTC類似薬」に2027年3月より患者に薬剤費の1/4を追加負担(保湿剤ヒルドイド・うがい薬イソジン・抗アレルギー薬アレグラ等) ⑨「通常の食事で代替可能」な食品類似薬は2026年6月から保険給付外 ⑩後発医薬品が普及した薬で、先発薬を希望する場合の負担を引き上げ ⑪i)介護保険 2 割負担の拡大は年内結論を見送り ii) 27年度の新介護保険事業計画までに結論 等としている。 (4)1)のA)B)でも示したとおり、①i)ii)iii)や③④⑤の改定のように、財務省が「国費を増やしたくない」「社会保険料の上昇を抑えたい」「医療費の自然増を抑制したい」とのみ考えて「高額療養費の強化」を嫌うと、医療費支払後に生活できなくなる層が増えて「高額療養費制度」が機能しなくなる上、制度を複雑怪奇にして予見可能性を低めれば、医療保険制度の信頼性そのものを失う。 そして、そこまでわかりにくくして節約しても、②i) ii)のように、本当に生と死の狭間にある患者団体への配慮は欠かせず、現役世代の保険料負担圧縮効果は累計1600億円程度なのである。しかし、医療保険は(厚労省の資料にも明記されている通り)病気になった時に生活が破綻しないための制度であるため、「高額療養費制度」はしっかり機能させて、医療費を支払った後でも、憲法25条で保証された「健康で文化的な最低限度の生活」は営めるようにしなければならないのである。 なお、⑥の2026年8月に所得区分に応じて設けるとされる「18万~168万円」の年間上限はあった方が良いのかも知れないが、「年収 900〜1160万円」の高所得層とされる人でも、手取り月収は「約55〜70万円」にすぎず、扶養家族がいれば負担はさらに重くなる上、病気になってもこの所得が続くとは限らない。そのため、「高額療養費制度」の上限を、むしろ14万円/月(168万円/12ヶ月)程度に下げて、年間上限を止めた方が良いと思われる。 もし、セーフティネットとして機能できるように、「高額療養費制度」の上限を十分に低くすれば、⑦i)ii) iii)の70歳以上の一部が使える「外来特例」も不要になる。つまり、病院に行く度に診療報酬を支払い、上限に達した人は支払わなくて良いか、払い戻しを受けるようにすれば良いのである。近年は、高齢者にも集う場所が増えたため、病気でもないのに病院に行きたい人はいないだろう。 さらに、⑧の「OTC類似薬」への変更、⑨の「“通常の食事で代替可能”な食品類似薬」は2026年6月から保険給付外、⑩の後発医薬品が普及した薬の先発薬希望追加負担などは、病状に応じて医師が判断すべきであり、政治や行政が負担を変更して強制すべきではない。そして、優秀な人材が医師にならなければ、その医療判断が的確でなく誤ることになるのだ。 最後に、⑪i) ii)のように、介護保険 2 割負担への拡大は年内の結論を見送るそうだが、医療と介護は一体として必要とされ提供されるものであるため、両者を合計した「高額療養費制度」の上限を十分に低く抑えるべきなのである。そうすれば、介護保険 2 割や3割負担への拡大が患者の生活を圧迫することはないため、「高額療養費制度」の上限低下が自己負担割合上昇のための必要条件になる。 ホ)医療において、「やるべき効率化」と「やるべきではない“効率化”」について ![]() すべて、2026.2.16日経新聞より (図の説明:左図は、2035年に384万人/日の労働力が不足するという推計であり、これによって雇用維持のための経済対策は不要で、無駄を省き、自動化を進めることが可能になる。そして、最も人手不足が深刻になるのは労働集約型の第三次産業で、医療福祉もこの中に入る。そのため、負担増・給付減をすれば良いのではなく、右図のように、先端機器を使って生産性を上げ、それでも不足する人手は高齢者や外国人で賄うのが合理的ということになる) 医療で「やるべき効率化」は医療の質を上げて生活の質(=Quality of Life、以下“QOL”)を向上させながら無駄を省く効率化であり、これまでは、医療も他の産業の技術進歩と関係しあいながら進んできたと言える。しかし、近年は、政治・行政・メディアが、的外れの「少子化」「財政の論理」を振り回して医療の質を落として不便を増すことを“効率化”と呼んでいる側面が大きいため、その負の効果を事例を上げて指摘する。 *4-2-3は、①中央社会保険医療協議会が2026年度診療報酬改定の個別サービス見直し内容をまとめた ②診療報酬のうちの医療サービスの公定価格で診察・手術等医師らの技術料に当たる本体部分は原則2年に1度改定 ③改定の基本構造は、i)2026年度診療報酬改定は「インフレ・賃上げ対応」 ii)本体改定率は+3.09%(厚労省が示した具体例:20代で喉の痛み等で外来受診した場合、医療費総額は3,860円と120円上がり、現役世代の窓口負担割合は3割なので負担額は1,158円と36円上昇) iii)改定内容は医療機関のコスト増を患者負担に転嫁 ④具体的患者負担増は、i)「物価対応料」を新設して初診・再診に1日20円上乗せ ii)急性期病院向けに最高1万9,300円/日と従来の入院基本料より高額な報酬を設定 iii)賃上げ対応のベースアップ評価料を拡充(初診:170~230円、再診:40~60円) ⑤医療機関支援の特徴は、i)急性期入院料などの基本料底上げ ii)人口減少下でもサービス水準維持 iii)結果として医療費総額は2026年度に2%超増加(単純計算で窓口負担を年1400億円、保険料負担を5000億円以上押し上げ) ⑥効率化に関する記事の問題定義は、i)医療DXや後発薬処方による引き下げを加味しても負担増 ii)人口減少下でのサービス維持に向けた手厚い支援が目立つ iii)健康保険組合連合会などは、幅広い不調を最初にみるかかりつけ医のより厳格な制度の運用を求めたが、今回の改定では「報告が十分集まっていない」という理由で小幅改正 iv)標準的な薬物治療を決めた「地域フォーミュラリ」の実施も全国展開が進めば年10兆円を超える薬剤費の圧縮効果があるが、努力義務どまり v)患者の安全性を確保しつつ医療費を適切に見直すにはデータに基づく議論が欠かせないが、今回の改定率は政治的判断が優先され、どこまで根拠に基づく引き上げ率だったか疑問 vi)高齢化と高額薬剤の開発加速などで医療費は一段の膨張が予想され、支え手である現役世代は細っているため、メリハリを欠いた改定を続けている余裕はない 等としている。 また、*4-2-4は、⑦i)病気やけが直後の治療を担う急性期の医療提供体制を集約する目的で急性期医療を実績ある病院に集約 ii)実績の定義は、救急搬送が年2000件以上、全身麻酔手術が年1200件以上あることで高齢者救急は入れない ⑧i)実績が豊富な病院向けには既存入院料より高額な「急性期病院一般入院基本料」を新設 ii)高齢者救急やリハビリ中心の病棟を持つ病院は届け出を認めない iii)難易度が高く集中的な治療は体力が低下した高齢者には実施しにくいため ⑨i)新設する入院料は、看護職員を手厚く配置する病院の額を高くする(患者7対看護師1の配置なら1万9,300円/日請求可) ii)救急搬送が年1500件以上か年500件以上で全身麻酔手術が年500件以上の病院は、患者10対看護師1以上の配置で1万6,430円請求可 ⑩看護職・リハビリ職・栄養士・臨床検査技師を患者25人につき1人以上追加配置すれば報酬上乗せ ⑪背景は、i)少子高齢化による急性期需要の減少 ii)働き手世代が減って医療従事者不足 iii)患者や医師を集約して修練できる環境を整える 等としている。 診療報酬については、③ii) iii)の具体例「20代で喉の痛み等で外来受診した場合、医療費総額は3,860円だが、120円上がって現役世代の窓口負担は36円上昇」と書かれているが、「喉が痛い」からと言って風邪とは限らないため、検査もせずに薬を処方して良いわけではない。 そのため、最初にしっかり検査をして病名を診断することが重要なのだが、その検査と診断技量の値段の合計が、現在は3,860円で120円上がっても3,980円(牛肉400g・寿司1人前・タクシー約10km移動と同じくらいの値段)であるため、窓口負担が36円上がると言って問題にする方がおかしい。私は、その初診費は、5,000~6,000円で良いと思うし、保険診療の歯科診療費があまりに安くて驚いたこともあるのだ。 また、②のように、診療報酬のうち医療サービス本体部分の改訂は2年に1度であるため、2026年度診療報酬改定は、1)イ)③に記載したとおり、④i)の「インフレ・賃上げ対応」すらできていない。また、④iii)のように、賃上げ対応のベースアップ評価料を拡充するそうだが、安すぎる基本料を設定したまま、「物価対応料」「賃上げ対応」だけを特別に抜き出して初診・再診料金を10~100円/日単位で上乗せしても、制度を複雑にするだけで効果は薄いと思われる。 さらに、④ii)・⑤i)・⑧i)ii)のように、急性期病院向けに最高1万9,300円/日と従来の入院基本料より高額な報酬を設定し、その条件を⑦i) ii)のように「病気やけが直後の治療を担う急性期の医療提供体制を集約」「実績の定義は救急搬送が年2000件以上、全身麻酔手術が年1200件以上」「高齢者救急やリハビリ中心の病棟を持つ病院は入れない」とし、高齢者救急を入れない理由を、⑧ii)iii)のように、「難易度が高く集中的な治療は体力が低下した高齢者には実施しにくい」からと説明し、背景を、⑤ii)・⑪i)のように、「少子高齢化による急性期需要の減少」と⑪ii)iii)の「働き手世代の減少による医療従事者の不足、患者や医師を集約して修練できる環境を整える」「人口減少下でもサービス水準維持」などと説明している。 しかし、(4)の最初の図で示したとおり、癌・脳血管疾患・心臓病などは高齢期に指数関数的に増えるため、高齢者の増加とともに手術やリハビリを含む高度医療のニーズも増え、それと同時に、人口が減る若年世代の急性期医療のニーズは減って、急性期需要の疾患構成が変化するのである。そして、「難易度が高く集中的な治療は体力が低下した高齢者には実施しにくい」などというのは、①の中央社会保険医療協議会には、医療や公衆衛生の本物の専門家が入っていて発言権があるのか疑問に思われるくらい、実態からかけ離れている。 そのため、「少子高齢化による急性期需要の減少」とは、どういう疾患を指しているのか具体的に示してもらいたいし、「医療従事者の不足」は自己犠牲を伴って保健医療を行なっても報酬で報いられないことが大きな原因であるため、「少子高齢化による働き手世代の減少」とは正比例以上の関係があるだろう。 さらに、「患者や医師を集約して修練できる環境を整える」と言っても、これからニーズが増える高齢者救急を除けば「救急搬送が年2000件以上、全身麻酔手術が年1200件以上」などという条件を満たせる病院は少ない上、1つの疾患の治療で手術・看護・リハビリ・介護は一体になっているため、それをどこかで切れば総合病院としての機能を失う基幹病院が少なくない。従って、必要な人に、適切な医療・介護を届けるための医師の訓練もできなくなり、医療サービスの水準維持どころか、むしろ質・量ともに維持できなくなる。 なお、新設する入院料は、⑨i)ii)のように、看護職員を手厚く配置する病院の額を高くし、⑩のように、看護職・リハビリ職・栄養士・臨床検査技師を患者25人につき1人以上追加配置すれば報酬を上乗せするそうだが、*4-2-6のように、AIに判断を補助させることのできるロボットもできているため、人手不足緩和の切り札になるかもしれない。 例えば、医療への応用例を挙げると、AIを使った問診をすることで、症状から考えられる病名をリストアップして必要な検査を指示し、その検査結果から病名をさらに絞り込み、CT・MRI・レントゲン写真などの画像があればAIが画像読影で一次スクリーニングを行って、さらに病名を絞り込むことによって、医師の診断誤りを防ぎながら診断のスピードを向上させることによって、人手を少なくしながら外来の回転率を上げる方法がある。 また、ロボットに案内をさせたり、体温・脈拍・呼吸数・血圧・酸素飽和度などのバイタル測定や検体搬送・夜間巡回・掃除などをロボットにさせれば、看護師はじめ医療従事者が医療行為に集中して時間を割くことができ生産性が上がる。そのため、単純に看護職・リハビリ職・栄養士・臨床検査技師の人数を増やせば報酬を上乗せするのもいかがなものかと思う。むしろ、AIを道具として使いこなせる人材を、医療従事者として招き入れることが重要ではないだろうか。 さらに、⑤iii)は、それでも医療費総額が2026年度2%超増加で、保険料負担が5000億円以上押し上げられるなど記載しているが、それらは、(1)3)ハ)A)①に書いた酒税・たばこ税の医療費への付け替えや、(1)3)ハ)B) に書いた社会保険料の値上げと企業の2/3負担への変更等で、十二分に賄える金額である。 つまり、これら新聞記事は、医療の効率化に間して、⑥ii)のように、「人口減少」を理由とした支援の削除を声高に求めているのだが、医療先進国であるドイツと比較して人口構成は下の表のようになり、日本が突出して生産年齢人口割合が低いわけでも、人口が少ないわけでもない。また、ドイツは、移民流入の影響で65歳未満が比較的厚いのだそうだ。日本はどうか? 指標 ドイツ 日本 総人口(2024) 84.55百万人 123.8百万人 15–64歳人口 52.7百万人 72.9百万人 比率(15–64) 62.3% 58.9% 15–69歳人口 58.3百万人 80.9百万人 比率(15–69) 68.9% 65.4% 15–74歳人口 63.2百万人 88.5百万人 比率(15–74) 74.8% 71.5% なお、⑥i)の「後発薬の強制的処方による引き下げ」や⑥iv)のような「標準的な薬物治療の実施義務化で薬剤費を圧縮」も求めているが、前にも述べたとおり、先発薬と後発薬の成分は全く同じではないこと、日本の場合は、癌治療に化学療法を標準治療として免疫療法を退けるなど、必ずしも科学的でも先進的でもなく、産業振興にも資さない選択がしばしば行なわれるため、私は、標準治療を決める際にQOLを高める以外の不純な動機があって信用できないと思っている。 また、⑥iii)の「幅広い不調を最初にみる「かかりつけ医」という定義も、最初こそ検査を徹底して誤りのない診断をしなければならないため、強制するのは問題である上に、「かかりつけ医」と称する家庭医の底上げがその必要条件である。 従って、⑥v)の患者の安全性を確保しつつ医療費を適切に見直すにはデータに基づく議論が欠かせないというのには賛成だが、⑥vi)のように、支え手である現役世代が細ったことを理由として、実態にそぐわない改訂をするのは、有害無益でしかないのだ。 さらに、*4-2-5は、中央社会保険医療協議会の2026年度診療報酬改定の答申で、⑫i)地域の診療所が大病院から患者の紹介を受けると初診料に600円を上乗せできる仕組みを6月導入 ii)診療所や病床数200床未満の中小病院が大学病院などから紹介を受けた場合が対象 iii)患者は1〜3割(60~180円)の窓口負担増に ⑬i)病状が安定した患者は地域の「かかりつけ医」が担当し、大病院はより重い患者に専念する役割分担を促す ii)病院の待ち時間短縮や勤務医の負担軽減等に繋げる ⑭i)大病院と診療所の役割分担では、紹介状を持たずに大病院を受診した患者から窓口負担とは別に特別料金をとれる仕組みが既に存在 ii)かかりつけ医が患者の幅広い不調をまず診察し、必要に応じて大病院に紹介する仕組みを促してきた iii)新たな報酬制度で、大病院が診た患者でも回復したり症状が落ち着いたりすれば経過観察等は地域の診療所に引き継ぐ「逆紹介」の流れをつくる 等としている。 上の⑫i) ii)の「地域の診療所や中小病院が大病院から患者の紹介を受けると初診料に600円を上乗せ」というのは、大病院で治療を受けて急性期を脱し、慢性期に入ったり、リハビリ中心になったりした患者を、患者の家の近くの中小病院や診療所に紹介する場合だろうが、それに600円の上乗せは不要であって、それよりも基本の診療報酬を上げるべきだと思う。そのため、私は、⑫iii)のように、ただでさえ安い診療報酬が60~180円上昇するのが問題という主張には与しない。 また、最初の診断が重要であるため、私も、⑭i)のように、「紹介状を持たずに大病院を受診して窓口負担とは別の特別料金をとられた」ことがあり、おかしいと思った。しかし、病状が安定した後の患者を、⑬i)のように地域の「かかりつけ医」等に振り分けて、大病院がより重い患者に専念するのは合理的だろう。 ただ、⑬ii)の病院の待ち時間短縮や勤務医の負担軽減等に繋げる方法は、医師・看護師・検査技師・リハビリ・栄養士等の作業を棚卸しして、資格のいらない仕事は他の人・AI・ロボット等に任せ、医療従事者は医療行為に専念できるようにするのが最も生産性を上げる方法である。 ⑭ii)の「かかりつけ医が患者の幅広い不調をまず診察して、必要に応じて大病院に紹介する仕組み」は、かかりつけ医が長く患者と付き合っているため患者の生活実態を知っており、本当に幅広い診察ができ、迅速に検査して結果を出せる場合には有効だが、そうでない場合は誤診のリスクが高まる。そのため、⑭iii)の逆紹介は、急性の症状が落ち着いたり、慢性化したりした患者の経過観察に留めるべきだと考える。 つまり、最初に地域の基幹病院である大病院で全体を把握して貰うのが、誤診リスクを下げ、治療効率を上げる方法である。具体的に、心停止は1分遅れるごとに救命率が大きく低下し、脳卒中や心筋梗塞も時間との闘いであるため、基幹病院は、どこに住んでいても急性期には何らかの方法(救急車・ドクターヘリなど)で15分以内にアクセスできる距離にあり、基幹病院はそれらの急性期医療に対応できる専門医を配置しているという医療圏の再設計が必要なのである。 また、日本政府は、しばしばDXとして医療データの活用を促すが、それには個人情報保護が前提となるのであり、漏洩・二次利用の不透明さ・匿名化の不十分さ・保険や雇用への影響の懸念等があれば国民の信頼を失う。しかし、日本の場合は、同意の形式化・委託先管理の甘さ・目的外利用の問題が繰り返されているため、データの匿名化・分散型管理・利用目的の明確化・利用履歴の本人への開示・漏洩時の罰則強化・第三者による監査などによる個人情報保護の徹底が制度設計の前提となり、これなしのDXは「効率化」ではなく「リスクの拡大」になる。 B)介護について イ)あるべき介護保険制度 介護もまた、医療と同様、全ての人がお世話になる制度であり、介護保険制度は自分自身をはじめ祖父母・親・子・孫等の身近な人が要介護や要支援状態になった時に、自らが仕事を辞めたり、休んだりせずに介護してもらえる重要な制度である。 つまり、介護は出産・育児期を含む全年齢層で必要なサービスであるため、ドイツのように0歳から介護保険制度に入れるのが合理的であり、日本のように、年齢を境にして分断し続けていれば、40歳以前は障害者総合支援法による支援しか受けられず、40歳~65歳では老化に起因する特定の疾患だけしか介護が受けられず、65歳以上は介護しか受けられないなどという給付と負担の不公平を温存し続けることになる。 なお、複数の子を持つ場合や障害児を持った場合の出産・育児期の介護サービスは、現在は親(特に母親)が無理をして自分で行なっているが、これも介護サービスの対象にすれば、少子化対策の1つになる。しかし、現在の制度では、介護保険料の支払いを回避するために、企業が40歳以上を中心にリストラする問題すら発生している状態なのだ。 主要国の介護制度を比較すると、下の表の通りだ。 ●介護保険に社会保険方式を採用している国 国名 導入時期 負担者 負担額の計算方法 給付方法・特徴 日本 2000年 40歳以上のみ(注1) (注2) (注3) ドイツ 1995年 全世代(就労時から徴収) (注4) (注5) 韓国 2008年 全世代(健康保険加入者全員)(注6) (注7) オランダ 1968年 全世代(注8) (注9) (注10) 注1:国際的に例外的で世代間の不公平が大きい。 注2:40-64歳は医療保険に上乗せして労使折半、65歳以上は年金天引き。所得比例。 注3:ケアプランに基づく現物給付。65歳以上は要介護・要支援認定を受ければ原因を問わず 給付、40〜64歳は老化に起因する16の特定疾病に限定65歳以上の疾病、40-64歳の 老化に起因する疾病にのみ給付で国際的に例外的な制度。世代間の不公平が大きく、 企業は40歳以上の雇用者のみコスト増で、リストラの動機付けになっている。 注4:所得比例(約3.4%で労使折半)。子供がいない被保険者には割増負担あり。 注5:(老化に限らず事故や障害など)原因を問わず、認定されれば全年齢(0歳でも)で 給付対象。現物給付・現金給付・その混合の選択制(現物・現金・混合)。 注6:健康保険料に一定割合を乗じて算出。現物給付。 注7:原則65歳以上だが、日本と同様、老化に起因する若年受給も認める。しかし、これに よって韓国でも「障害福祉との分断」が日本と同様に課題となっている。 注8:2015年の改革で、重度介護《社会保険》と軽度介護《税・自治体》に分離。 注9:所得に応じた社会保険料として一括徴収。 注10:現物給付、または個人予算による現金支給の選択制。 ●税方式(一般財源)を採用している国 国名 導入時期 負担者 負担額の計算方法 給付方法・特徴 スウェーデン 1940年代〜段階的 全世代 所得税・地方税(注11) (注13) デンマーク 1950年代〜 全世代 所得税と地方税 (注14) ノルウェー 1960年代〜 全世代 国税と地方税 (注15) 英国 1948年〜 全世代 国税と地方税(注12) (注16) 注11:高税率だが、高負担・高福祉。 注12:所得比例 注13:全年齢対象。自治体が提供。利用料には所得に応じた「負担上限(キャップ)」がある。 注14:「自己決定」の尊重。24時間体制の在宅ケアが充実。施設新設を禁止し住宅での介護を 徹底。自治体がサービス提供。 注15:在宅介護・施設介護とも公的提供。所得に関わらず、必要な人に必要なサービスを提供。 注16:地域差が大きいが、基本は税方式で現物給付。 この国際比較表からわかるように、介護制度は医療制度と同様に、国民が生涯を通じて安心して暮らすためのインフラであり、他国は社会全体でそれを支える設計が基本であるにもかかわらず、日本だけが「40歳以上のみ負担」「65歳以上の疾病、40-64歳の老化に起因する疾病のみ給付」と制限し、企業に40歳以上の雇用者に対してのみコスト増を強制しているため、給付が不十分な上、40歳以上をリストラする動機付けになっているのである。 例えば、ドイツ・韓国は、医療保険と連動させて全世代が介護保険に加入し、オランダは税と保険料で全世代が加入する。また、北欧・英国は税方式で全年齢が加入・負担し、日本だけが、40歳以上だけで財源を負担し、利用できるサービスも年齢で分断しているため、世代間の公平・公正が全くないのだ。 従って、日本の制度は、i)就労時から徴収する ii)0歳から年齢を問わず認定されれば給付対象にする iii)障害福祉と統合して全年齢に希望するサービスを給付できるように変える ことが、介護制度の理念であり、先進国のスタンダードに近づく作業でもある。 なお、仮に20歳から徴収を開始した場合の1人あたりの保険料負担は、厚労省の過去の試算や現在の加入者数・給付額のバランスに基づくと、下の表のとおり、月額で約1,000円〜1,500円程度下がると推計されている。 項目 現行(40歳〜) 拡大後(20歳〜) 差額(軽減額) 対象者数 約4,000万人 約6,000万人 約2,000万人増 月額保険料(目安) 約6,276円 約4,800円〜5,200円 ▲約1,000円〜1,500円 また、現在、65歳になった障害者が、それまで使っていた障害福祉サービスから介護保険サービスに強制的に切り替えさせられる「65歳の壁」が大きな問題になっているが、「介護」と「障害」を統合すべき理由は、下の表のとおりである。 メリット 内容 制度のシンプル化 年齢で窓口や法律が変わる無駄を省き、「支援が必要な状態かどうか」 だけで判断できる。 若年層の救済 20代での不慮の事故や難病時、介護保険の充実したリソース(訪問介護 や施設など)をスムーズに利用可能になる。 ロ)現在、行なわれている“改革”の議論 *4-3-1は、①i)介護サービス利用料2割負担対象者拡大の厚労省案は、所得280万円(現在)以上の介護料金2割負担の基準を260万・250万・240万・230万円に引き下げる4案 ii)それによる介護保険料の圧縮効果は40~120億円 iii)収入や預貯金のある高齢者の負担を増やし、現役世代の保険料を軽くするのが目的 ②現状の介護保険で利用者の自己負担は原則1割で、単身世帯で年金収入とその他の所得が計280万円以上の場合は2割、現役世代並み所得の人は3割 ③下げ幅最大の230万円で2割負担対象者が33万人増え、介護給付費約240億円、保険料約120億円、国費約60億円を圧縮可 ④i)激変緩和措置として、当分は月7000円の負担増加の上限額を設ける案も ii)預貯金額が一定額(例:300万、500万、700万円など)以下の人は1割負担を維持する方向 としている。 また、*4-3-2は、⑤訪問介護事業所の倒産件数が 2025年11月時点で85件に達し、3年連続で過去最多更新 ⑥i)人手不足による人件費や求人コスト増・ガソリン代や電気代など運営コスト上昇・介護報酬減額に起因した業績悪化が目立ち、零細から中堅にまで倒産が広がっている ii)厚労省が3年に1度行う2024年度の介護報酬改定は、介護職員の処遇改善を目的に全体の報酬は引き上げ、訪問介護の基本報酬は2%以上引き下げ ⑦i)倒産原因は売り上げ不振が8割超で、経営基盤の弱い従業員10人未満の小規模事業者に集中 ii)施設等を含む介護事業者全体の倒産件数も11月末時点で161件となり、この時期として過去最多 としている。 さらに、*4-3-3は、⑧2024年度の訪問介護基本報酬2%引き下げで、過去最多ペースの介護事業者の倒産が続き、その半数を訪問介護が占める ⑨特に地方や小規模事業者の撤退が目立ち、事業所が一つもない自治体が1年間で2割増えて115町村となった ⑩利用者の約7割が自宅介護を希望し、要介護3以上を対象にした調査でも訪問介護を受ける7割の人が施設への入所を希望していないが、訪問介護の担い手不足と採算悪化で訪問介護事業所が1つもない自治体が増えている ⑪施設系サービスは増える一方、地方や小規模な訪問介護の撤退が顕著で和歌山・滋賀・熊本・高知などで倒産が目立つ ⑫政府の高齢者が住み慣れた地域で医療・介護・生活支援サービスを垣根なく利用できる「地域包括ケアシステム」の要の1つである訪問介護が崩壊すれば、その根幹が揺らぐ ⑬サービスの担い手として自治体の関与を増やすのも一つの選択肢 等としている。 そして、*4-3-4は、⑭介護職員の平均月給は27万円弱で、全産業平均の34万円強より約7万円低く、差が拡大中 ⑮i)政府は原則3年毎の介護報酬改定や補助金で処遇改善を後押ししたが効果に限界 ii)報酬体系見直しや生産性向上を促す抜本改革が不可欠 iii)業界は「人材確保のためイメージアップや外国人活用に取り組んでいるが、低賃金が解決しないと意味がない」と危機感 ⑯i)政府は25年度補正予算で介護職員の賃上げや職場環境改善支援のため1,920億円を計上し、2025年12月~2026年5月にかけて職員1人あたり月最大1万9,000円を補助 ii)2026年6月は介護報酬を臨時で2.03%引き上げ、うち1.95%を処遇改善に充てる ⑰i)訪問介護は出来高制 ii)厚労省の推計で2022年度の介護職員数215万人を維持しても2026年度に25万人、2040年度には57万人不足 iii)訪問介護報酬は出来高制で人口減少が進む地域で収益を確保しづらく、厚労省は2027年度にも過疎地の事業者に月単位の定額報酬制を導入する方針を示した iv)事業者が必要なサービス提供を控える懸念もあり、委員から「利用者の視点から納得が得られるサービス体系として構築できるのか」との慎重論も ⑱i)中小・零細事業者の多い介護業界は投資体力に乏しく、処遇改善と同時に取り組むべき生産性向上の努力が不十分 ii)ロボット等のテクノロジー活用や家事代行等の保険外サービスを組み合わせて提供する取り組みが重要 としている。 a)介護サービスのニーズについて 上の⑤⑥ii)⑧⑨⑭⑪のように、厚労省が3年に1度の2024年度介護報酬改定で、全産業平均より約7万円低い介護職員全体の報酬を1.59%引き上げたが、訪問介護の基本報酬は(何故か)2%以上引き下げたため、施設系サービスは増えたが、地方や小規模訪問介護の撤退が顕著であり、訪問介護事業所が1つもない自治体が115町村にもなったそうだ。 つまり、⑥i)のように、人手不足による人件費高騰や求人コスト増・ガソリン代や電気代など運営コストの上昇・介護報酬の減額に起因した業績悪化等で零細から中堅まで倒産が広がっており、この引き上げ幅では全く足りないわけである。 そこで、政府は、⑯i) ii)のように、2025年度補正予算で介護職員の賃上げや職場環境改善支援のため1,920億円計上し、2025年12月~2026年5月に職員1人あたり月最大1万9,000円補助し、2026年6月にも介護報酬を臨時で2.03%引き上げ、うち1.95%を処遇改善に充てるそうだが、それでも全産業平均より約7万円も低い介護職員全体の平均は差が広がるばかりなのだ。 そして、⑦i) ii)のように、倒産原因は売り上げ不振が8割超だそうだが、要介護者から見れば必要な介護すら受けられていないのが実情である。例えば、(私の母の例だが)訪問介護の職員は、50分以内で掃除・洗濯をして10分で次の家に移動しなければならないため、要介護者が日常使う場所(トイレ・風呂・居室)のみしか掃除できないのだ。そのため、⑱ii)のように、家事代行等の保険外サービスも組み合わせてサービスを提供できるようにするのは良い案だと思う。 なお、⑩のとおり、利用者の約7割が自宅介護を希望しており、要介護3以上を対象にした調査でも訪問介護を受ける7割の人が施設への入所を希望していないのに、(所得と比較して高い)介護保険料を支払っているにもかかわらず、希望する訪問介護を受けられない自治体が増えるのである。しかし、介護利用者の多くが自宅介護を希望するのには、訳があるのだ。 それは、居宅を離れて施設に入り、何もさせない、家族や友人にも会わせない という状態が続けば、刺激がなくなるため短期間で認知症に至ったり、身体が衰えたりするのは必然だからである。従って、デンマークで「自己決定」を尊重し、24時間体制の在宅ケアを充実させて、施設の新設を禁止したのは意味がある。 ただし、デンマークでは自治体がサービスを提供しているそうだが、日本は、地域によって年齢構成が大きく異なり、高齢者割合の高い地域が財源や介護サービスの提供を完結するのは不合理であると同時に不公平でもある。そのため、⑬のように、サービスの担い手として自治体の関与を少し増やすのは良いが、国の主体的な補助が欠かせない上、保険外サービスを組み合わせることによって利用者の本当のニーズを把握していくことも重要なのだ。 従って、⑫のように、要介護者が住み慣れた地域で前と同じように生活できるよう、政府が医療・介護・生活支援サービスを垣根なく利用できる「地域包括ケアシステム」を進めているのは良いと思うが、訪問介護という重要なインフラが崩壊すれば、それが不可能になることを忘れてはならない。 b)介護を担当する人材の確保について 各国の統計機関(日本の厚労省、ドイツ連邦統計局、韓国統計庁など)およびOECDのデータに基づく、介護従事者と全産業平均賃金の比較表は下の通りだ。 <介護従事者と他産業の平均賃金比較> 国名 介護従事者の平均月給 (A) 全産業の平均月給 (B) 賃金の割合 (A/B) 日本 約27.0万円 約34.1万円 約79.2% 注1 ドイツ 約3,400€ (約55万円) 約4,100€ (約66万円) 約82.9% 注2 韓国 約230万₩ (約26万円) 約390万₩ (約44万円) 約59.0% 注3 オランダ 約3,200€ (約52万円) 約3,800€ (約61万円) 約84.2% 注4 デンマーク 約25,500Kr (約56万円) 約28,000Kr (約61万円) 約91.1% 注5 注1:公定価格の報酬で格差拡大中 注2:近年、介護職の最低賃金を大幅引き上げ 注3:急速な高齢化に対し、低コストな労働力(高齢女性・外国人等)に頼り、格差が大きい 注4:専門職としての地位が高く、待遇が比較的良い 注5:税方式で公務員に近い扱いのため、他産業との格差が小さい ⑮i)のように、政府は原則3年毎の介護報酬改定や補助金で介護職の処遇改善を後押ししたが、他産業との差に対して微修正で人手不足対策として限界があるため、⑰ii)の2026年度に25万人、2040年度には57万人不足は、このまままでは解消されないだろう。そのため、⑮ii)のとおり、報酬体系の見直し・生産性の向上・外国人の活用等は必要不可欠である。 報酬体系の見直しは、⑰i)iii)iv)のように、訪問介護報酬を出来高制から月単位の定額報酬制に変更し効率よく働いて良いサービスを提供する動機付けを奪うのではなく、ドイツのように資格の有無に応じて最低賃金を決定し、「介護は他の仕事より付加価値の高い大変な仕事である」と国が制度で認めて介護職のイメージアップに繋げることが必要だ。ちなみに、ドイツは、2024年に介護職の最低賃金(専門資格者)は時給19.50ユーロ、介護職の最低賃金(無資格者)は時給15.50ユーロと、一般の法定最低賃金の時給12.41ユーロよりも高くなっている。 このようにして、専門職としての介護職の地位が向上すれば、介護職が「選ばれる職業」になるため、日本人職員の質と量を確保でき、テクノロジーを使いこなせる人材も増えて生産性が向上する。さらに、資格の有無によって賃金を変えれば、国籍ではなく努力によるキャリアアップが期待できるため、外国人雇用による人材確保も容易になるだろう。 なお、⑱i)ii)は、「中小・零細事業者の多い介護業界は投資体力に乏しく、生産性向上のためのテクノロジー投資ができない」としているが、テクノロジーで代替すれば、労働集約的な介護業界の人件費を節減でき、これが1人あたりの生産性向上に繋がるのだ。 そのため、安くはない機器の代金をどれだけの期間で回収できるかを、AIでシミュレーションしてみたところ、下のとおりだった。 <計算の前提条件> ・介護従事者の平均賃金は月給 27万円で、社会保険料等の事業主負担分を含めると、 企業コストは月額約 31万円であるため、年間 372万円 ・機器の値段は、1,000万円・3,000万円・5,000万円の3ケースでシミュレーションし、 人手が5人から3人に2人分削減できたと仮定 ・削減できる年間人件費は、744万円/年(=372万円x2人) <投資回収期間のシミュレーション> *投資額(機器代金)を、削減できた人件費(年額744万円)で割って算出 投資額 削減人件費(年額) 投資回収期間(ROI) 1,000万円 744万円 約 1.34 年 (1年4ヶ月) 3,000万円 744万円 約 4.03 年 (4年1ヶ月) 5,000万円 744万円 約 6.72 年 (6年9ヶ月) なお、現在、現場で導入が進んでいる主要な機器の相場は、下のとおりだ。 ・介護記録・AI音声入力システム: 約200万円〜500万円 記録業務の時間を削減し、残業代を減らす効果がある。回収期間は数ヶ月〜1年程度。 ・見守りセンサーシステムの全室or要介護世帯全戸導入: 約500万円〜1,000万円 夜間の巡回回数を大幅に減らし、夜勤人数削減可能で、回収期間は約1年未満。 ・移乗支援ロボット(複数台導入): 約3,000万円 抱え上げ等の重労働を減らし、腰痛離職を防ぐとともに、力のない職員でも2人で 行っていた移乗を1人で行えるようにする。回収期間は約4年。 これが、中小・零細事業者に壁となる理由は、手元資金が乏しく1,000万円以上の初期投資を賄う余裕がない、ロボットの耐用年数が5年前後であるため回収期間が4〜6年では元が取れないリスクがある、導入してもすぐにはスタッフが使いこなせず一時的に業務量が増える可能性がある などだそうだ。 従って、「ICT投資補助金」を作ったり、機器の価格を下げたり、フランチャイズ化して小規模事業者を経営統合し共同投資したりするのが効果的であろう。そして、テクノロジーで浮いた人員を、要介護者のニーズに合ったより丁寧なケアに振り向け、生産性向上を達成しながら売上と利益を増やすことが重要である。 c)介護サービスを供給するための財源について *4-3-1は、①i)介護サービス利用料2割負担対象者拡大の厚労省案は、所得280万円(現在)以上の介護料金2割負担の基準を260万・250万・240万・230万円に引き下げる4案 ii)それによる介護保険料の圧縮効果は40~120億円 iii)収入や預貯金のある高齢者の負担を増やし、現役世代の保険料を軽くするのが目的 ②現状の介護保険で利用者の自己負担は原則1割で、単身世帯で年金収入とその他の所得が計280万円以上の場合は2割、現役世代並み所得の人は3割 ③下げ幅最大の230万円で2割負担対象者が33万人増え、介護給付費約240億円、保険料約120億円、国費約60億円を圧縮可 ④i)激変緩和措置として、当分は月7000円の負担増加の上限額を設ける案も ii)預貯金額が一定額(例:300万、500万、700万円など)以下の人は1割負担を維持する方向 としている。 このうち①i) ii) iii)の介護サービス利用料2割負担対象者を現在でも高くはない所得280万円から230万円まで引き下げ、介護保険料を40~120億円圧縮する厚労省の4案は、単なる弱者への負担増であり、その他の無駄使いの排除と比較して2桁小さな節約効果しかない。従って、省毎の縦割り(縄張り)を廃して無駄使いを排除することが、最も重要なのである。 その上、①iii)の収入や預貯金のある高齢者の負担を増やすとして、その預貯金額を、④ii)のように、300万円・500万円・700万円などとしているが、それらの預貯金で何年生活できるかを試算してみたところ下のとおりで、介護費が上がると生活可能年数はさらに短くなるのだ。そのため、今でも40歳未満は介護保険料を支払っていないなど軽すぎる現役世代の保険料をさらに軽くすることを目的とするなど、とんでもない話である。 <貯蓄別・老後生活可能期間のシミュレーション> (基礎年金のみ受給・一人暮らし・介護サービス利用ありの場合の月額支出) 費目 首都圏(都市部) 地方都市 備考 住居費(家賃等) 60,000円 35,000円 注1 生活費(食・光熱等) 90,000円 85,000円 注2 介護費(自己負担) 20,000円 20,000円 注3 支出合計 (A) 170,000円 140,000円 基礎年金 (B) 68,000円 68,000円 注4 毎月の赤字 (A-B) ▲102,000円 ▲72,000円 注5 注1:首都圏は築古ワンルーム、地方は公営住宅を想定 注2:地方は光熱費がやや高い 注3:要介護2で1割負担を想定 注4:令和6年度の満額給付を想定 注5:貯蓄からの切り崩し額となる <生活可能期間(=貯蓄が何年持つかの実態)> 貯蓄額 首都圏(月▲10.2万) 地方都市(月▲7.2万) 結果 300万円 約 2年 5ヶ月 約 3年 5ヶ月 注6 500万円 約 4年 1ヶ月 約 5年 9ヶ月 注7 700万円 約 5年 8ヶ月 約 8年 1ヶ月 注8 注6:どちらも1回目の更新(2年)で底を突く 注7:地方でも6年持たず、70代前半で破綻 注8:700万あっても首都圏では6年持たない その上、②のように、現状でも介護保険利用者の自己負担は原則1割で、単身世帯で年金収入とその他の所得が計280万円以上の場合は2割、現役世代並み所得の人は3割である。 また、③のように、下げ幅最大の230万円で2割負担対象者が33万人増え、介護給付費約240億円、保険料約120億円、国費約60億円を圧縮可等としているが、④i)の激変緩和措置7000円/月を設けたとしても、政府が「2割負担」の対象に広げようとしている年収230万円〜280万円の層が実際にどれほど過酷な状況にあるかは、手取り額を見ればわかる。つまり、医療と介護(要介護2)を併用している単身世帯の場合の月々の負担は下の表のようになるのだ。 <医療・介護合算後の自己負担限度額と手取り額の比較> (70歳〜74歳/単身・年金受給者モデルで、医療・介護を上限まで利用した場合) 所得区分 年収(額面) 月間手取り額 医療介護の月上限 手取りに占める負担率 一般所得 156万円 約12.3万円 4.6 万円 約 37 % 現役並みⅠ 370万円 約25.4万円 5.5 万円 約 21 % 現役並みⅢ 1,160万円〜 約69.2万円〜 17.6 万円 約 25 % この表からわかるように、年収156万円(月収13万円)の層であっても、医療・介護を併用すれば、現状でも手取り額の約37%がその支払いに消える。さらに、政府案では、預貯金300万円〜700万円があることを理由に「2割負担」へと引き上げようとしているが、手取り月12万円そこそこの生活から月々4万円以上の医療・介護費を払えば、先述のシミュレーションの通り、数百万の貯蓄などあっという間になくなるのである。 つまり、今の政府の議論は、「資産があるから負担できる」という生活を無視した欺瞞に満ちた論理であり、中間層を「老後破綻」に加速させているのである。 そのため、財源は、高齢者のわずかな生活費や貯蓄を削って作るのではなく、日本だけが例外的に維持している「介護保険の40歳分断」を撤廃して全世代が負担するよう改めること、社会保険料の負担割合をヨーロッパと同様「企業2:雇用者1」に変更すること、集めた社会保険料を目的外使用することなく管理を厳密にすること等で作るべきであり、誰もが貯蓄の残高を気にせず適切な医療・介護を受けられる社会インフラを構築することが必須なのである。 D)ケアマネージャーの仕事について *4-4は、「ケアマネジャーは、2000年に始まった介護保険制度と同時に導入された専門職で、資格を取得するには、看護師か社会福祉士の国家資格と5年以上の実務経験が必要であり、都道府県が試験と研修を実施する。介護保険法はケアマネの役割について『市町村、事業者、介護施設などとの連絡調整を行う』と規定しており、ケアプランが適切かどうかを確認するために、月に1度の訪問等を法定業務とし、報酬は介護保険から支払われ、相談による利用者負担はない」と記載している。 また、介護保険法第1条は「『加齢に伴って生ずる心身の変化に起因する疾病等により』要介護状態となり、入浴・排せつ・食事等の介護及び機能訓練・看護・療養上の管理・その他の医療を要する者について、これらの者が尊厳を保持し、その有する能力に応じて自立した日常生活を営むことができるように、必要な保健医療サービスや福祉サービスに係る給付を行うため、国民の共同連帯の理念に基づき介護保険制度を設け、その行う保険給付等に関して必要な事項を定め、もって国民の保健医療の向上及び福祉の増進を図ることを目的とする」と定めている。しかし、要介護や要支援になった全世代の人が介護保険制度を利用できるためには、「『加齢に伴って生ずる心身の変化に起因する疾病等により』という部分は削除しなければならない さらに、介護保険法第2条は、「1項:介護保険は被保険者の要介護状態又は要支援状態(以下“要介護状態等”)に必要な保険給付を行う。 2項:保険給付は要介護状態等の軽減や悪化防止に資するように行われ、医療との連携に十分配慮して行わなければならない。 3項:保険給付は、被保険者の心身の状況や置かれている環境等に応じ、被保険者の選択に基づいて適切な保健医療サービス・福祉サービスが多様な事業者や施設から総合的・効率的に提供されるよう配慮しなければならない。 4項:保険給付の内容と水準は、被保険者が要介護状態となった場合も、可能な限り居宅で、その有する能力に応じて自立した日常生活を営むことができるよう配慮されなければならない」としており、まさに介護保険制度の理念を明確に述べている。 そして、介護保険法は、ケアマネージャー(介護支援専門員)に関して、第7条5項で「要介護者等からの相談に応じ、要介護者等がその心身の状況等に応じて適切な居宅サービス・地域密着型サービス・施設サービス・介護予防サービス・日常生活支援総合事業等を利用できるよう、市町村・居宅サービス事業を行う者・地域密着型サービス事業を行う者・介護保険施設・介護予防サービス事業を行う者・日常生活支援総合事業を行う者等との連絡調整等を行う者で、必要な援助に関する専門的知識や技術を有し介護支援専門員証の交付を受けた者」と規定している。 第7条5項によれば、ケアマネージャーとは、要介護者等ができるだけ居宅で自立した日常生活を送れるよう、必要な援助に関する専門的知識や技術で必要なサービスに繋ぐ専門職なのだ。 しかし、*4-4は、①i)ケアマネの数は 2018年度の19万人をピークに、2023年度は18.5万人となって不足が深刻 ii)受験資格厳格化で2025年度の受験者数は 5万人と20年で6割減少 iii)要介護認定者は 2000年度の約3倍(708万人)で需要が急増 ②ケアプランの作成や事業者・医療機関との連絡調整がケアマネの主たる仕事だが、生活保護申請や成年後見人探しなど業務外の事を引き受けることも ③i)家事手伝い・買い物・通院同行・医師説明の代行・行政手続き・成年後見人探しなど本来業務ではない「シャドーワーク」が常態化 ii)制度上の業務ではなく無報酬のボランティア iii)本来業務(ケアプラン作成・調整)が疎かに ④ケアマネ業界団体の2023年調査で「賃金・処遇の低さ」「業務範囲の曖昧」「仕事量の多さ」という不満が多かった ⑤2024年調査では 17.9%が「辞めたい」 と回答し、理由の 8割が「業務負担の重さ」 ⑥厚労省の中間整理は、i)シャドーワーク(片付け・買い物・徘徊捜索など)を 「地域課題」 と位置づけ ii)市町村が主体となってケアマネ業務から切り離す方向 iii)地域包括支援センターの役割強化 iv)実務経験要件を 5年から3年 に短縮する受験資格緩和案 ⑦2025年度補正予算(14億円)で、i) ケアマネ相談窓口設置 ii)身の回りの世話などを担う「受け皿」づくりを都道府県が実施 iii)国が費用の2/3を負担 ⑧自治体は、i)川崎市は市職員とケアマネの定期連絡会設置 ii)シャドーワーク解消を議題に労働環境改善を検討 ⑨専門家の淑徳大・結城教授の指摘は、i)利用者が「介護相談」と「日常生活の相談」を混同 ii)ケアマネの役割が社会に十分理解されていない iii)役割の周知と待遇改善が不可欠 等としている。 このうち②については、「ケアプランの作成や事業者や医療機関との連絡調整がケアマネの主たる仕事」としており、これは現在の介護保険法第7条5項に規定されていることだが、そもそも日本の介護保険法で規定されているケアマネージャーの仕事範囲は他国と比較して狭すぎ、他国のケアマネ・ケースマネ・ソーシャルワーカー・ケアコーディの役割を比較すると、下の表のように、日本だけが「介護サービスの調整」のみに業務を限定しており、国際標準は、ケースマネ・ソーシャルワーカー等が医療・介護・生活困窮・住宅・後見・障害福祉・家族問題・就労支援生活全体の支援を一体で扱うのである。 その理由は、困っている人の相談に乗って数ある社会保障制度のうち何を使うのが適切かつ合理的かをアドバイスし、必要な社会保障に繋ぐのがケースワーカー・ソーシャルワーカー等の仕事であり、下の表のように、生活保護申請・成年後見人探し・児童福祉・家族問題などの生活支援総合窓口としての役割が広いからで、そのための教育も受けているのだ。 国 呼称 主な役割・医療連携・生活困窮・福祉制度への接続 日本 ケアマネジャー 介護保険サービスの調整、ケアプラン作成。 医療連携は限定的、生活保護・後見・障害福祉 への接続は“本来業務ではない”とされ、縦割りで 世界で最も役割が狭く、生活全体を扱えない。 ドイツ ケースマネージャー 介護・医療・福祉・就労支援を一体で調整 医師・看護師と密接に連携。生活保護・障害福祉・ 住宅支援など全て接続可能で、「生活全体のマネ ジメント」が基本。 スウェーデン ソーシャルワーカー 生活困窮・介護・医療・住宅・家族問題を 包括支援。地域医療チームに常駐して生活保護・ DV・精神保健・高齢者支援すべて担当。生活支援 の総合窓口。 デンマーク ケアコーディネーター 医療・介護・福祉の統合ケア。在宅医療チームと一体 生活困窮支援・就労支援も担当。「ワンストップ 窓口」が徹底しており、利用者は制度を意識しない。 英国 ソーシャルワーカー 介護・医療・精神保健・児童福祉を統合的に支援。 GP(家庭医)と常時連携。生活保護・住宅支援・ 後見制度も担当。“生活全体のケースマネジメント”。 米国 ソーシャルワーカー 医療・介護・保険・生活支援を統合。病院内に常駐し 医師と連携。生活保護(Medicaid・住宅支援・後見 制度)も担当。生活支援中心。 なお、介護保険制度は私が言い出してできた制度で、私は1975年頃に大学で習ってケースワーカーやソーシャルワーカーをイメージしていたのだが、できあがった制度における日本のケアマネは、世界で最も狭い専門職となってしまった。その理由は、財務省は制度を使い易くして給付費が増加することを嫌い、厚労省は医療・介護・福祉を縦割りのままにして担当部局を増やすことはあっても減らしたくないと思っているからだ。 しかし、社会保障とは、日本国憲法25条「1項:すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。2項:国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない(https://laws.e-gov.go.jp/law/321CONSTITUTION 参照)」に基づいて、国民の社会福祉や公衆衛生を向上させるためにある制度であり、社会保障サービス提供者の雇用を確保するために作った制度ではないため、日本で語られている社会保障制度維持に関する議論は方向性が間違っていることが多い。 この観点から見ると、③i)のうちの行政手続きや成年後見人探しは、「シャドーワーク」ではなく、堂々と本来業務にすべきサービスであり、通院同行・医師説明の代行・家事手伝い・買い物などは、訪問看護師・訪問介護士の本来業務として繋ぐ先があるべきであって、それがなければ国民は自宅で健康で文化的な最低限度の生活を営むことはできないのである。そして、そうなれば、③ii)のように、「制度上の業務でないため、善意で無報酬のボランティアをする」などということはなくなり、③iii)のケアプランの内容も変わるのである。 にもかかわらず、④⑤のように、ケアマネ業界団体の「賃金・処遇の低さ」「業務範囲の曖昧さ」「仕事量の多さ」「業務負担の重さで辞めたい」という調査を理由として、⑥i) ii)のように、厚労省がシャドーワーク(片付け・買い物・徘徊捜索など)を 「地域課題」 と位置づけてケアマネ業務から切り離すのでは、ますます理念から乖離してわかりにくくなる。つまり、⑥iii)の地域包括支援センターが何をするのかは私も知らないのだが、ソーシャルワーカーに相談すれば、さっと必要なサービスが紹介されるようでなければならないのだ。 現在は、介護保険制度が2000年4月に始まって既に26年も経過しているため、これまでに改善を続けて必要な人材や業務担当者は育成していなければならない。そのため、今更、人材がいないとか足りないなどと言っているのは努力欠如の言い訳にほかならず、このように新しいことを骨抜きにする状況こそが日本経済停滞の原因なのである。 なお、公認会計士は、2006年の改革以降、「短答式+論文式」の公認会計士試験合格後(合格率10%前後)、3年間の「実務補習&業務補助」を経て修了考査に合格すれば、公認会計士登録できるようになった。そのため、必要な知識を確認する試験さえあれば、その後の実務経験要件を、⑥iv)のように、5年から3年 に短縮しても良いと思うが、資格である以上、必要な知識の確認を行なう試験は必要であり、これは、国籍・年齢・性別・学歴にかかわらず公正・公平に行なうべきである。 そのため、⑦i)や⑧i)の既存の仕事配分を前提にした「ケアマネ相談窓口設置」では根治にほど遠いと思われる。また、ii) iii)のように、介護サービスを細切れにして国が費用の2/3を負担し、身の回りの世話を担う人の「受け皿」を作ってさらに無駄使いを重ね、わかりにくさを増すよりも、既存の介護や家事支援サービスを簡素化して充実した方がずっと良い。 なお、⑧ii)のように、「シャドーワーク」という言葉が頻繁に出てきたが、その「シャドーワーク」を男性と同じかそれ以上に働いている女性に押しつけてきたのが日本である。つまり、「シャドーワーク」とは、大変であるにもかかわらず、報酬が支払われず、それをやったことに対する敬意も払われない馬鹿馬鹿しい仕事なのだ。従って、それらをきちんと報酬が支払われる馬鹿馬鹿しくない仕事にし、頼み易いようにするのが、本当に必要なことなのである。 結論として、⑨i)のように、“専門家”と称する結城淑徳大教授が「利用者が『介護相談』と『日常生活の相談』を混同している」と言っておられるが、生活保護・後見・障害福祉・児童福祉・介護・生活支援・家事サービスなどの生活に関する相談窓口をソーシャルワーカーに統合し、ソーシャルワーカーが必要な知識を持って社会保障サービスに繋ぐのが本筋である。 そのため、⑨ii)iii)のように、「ケアマネの役割が社会に十分理解されていない」というのは、介護保険法を変更することによってケアマネをソーシャルワーカーに変更し、必要な知識・経験を持たせて、それに見合った待遇改善をすることが必要なのだ。 ・・・参考資料・・・ <衆院解散と消費税> *1-1-1: https://digital.asahi.com/articles/DA3S16385291.html?iref=pc_shimenDigest_sougou2_01 (朝日新聞 2026年1月20日) 予算後回し、独断解散 連立拡大が頓挫・日中関係悪化 衆院選 高市早苗首相が衆院解散を表明した。連立拡大交渉の行き詰まりや対中関係の悪化に直面し、高支持率のうちに局面打開を図るための異例の冒頭解散の決断。野党各党が打ち出している消費減税への前向きな姿勢には争点つぶしの思惑も透けて見える。19日夕。官邸で記者会見に臨んだ首相の背後には、普段の青色でなく、赤色のカーテンがかけられた。赤いカーテンは2005年に郵政解散をして圧勝につなげた小泉純一郎元首相の会見の時と同じ。政権幹部は「小泉氏にあやかって、情熱を示す狙いがあった」と明かす。「信なくば立たず。重要な政策転換を国民に示し、その是非について堂々と審判を仰ぐことが、民主主義国家のリーダーの責務だ」。その首相が会見で、冒頭解散の理由として強調したのが、自民党と日本維新の会の連立政権の政策について国民の信を問う、という論理だった。ただ、複数の官邸関係者によると、首相が解散を決めた最大の理由は、年明けの段階で国民民主党との交渉が行き詰まったことにあるという。参院では過半数割れの「ねじれ国会」が続き、政権基盤は脆弱だ。首相は国民民主との連立拡大を模索したが、年明けに国民民主側から「政策面で受け入れられない要求」(首相周辺)があったことで、解散によって自民議席増を目指す判断に傾いたという。自身の台湾有事答弁で悪化した日中関係も解散の理由の一つだったという。中国側は経済的威圧策を相次いで発表し、高市政権への攻撃を強める。首相周辺は「政権が安定すれば中国側の見方も変わる」と語り、衆院選勝利で強い政権基盤を作ることで、対中関係の局面打開を図る狙いもあったと明かした。ただ、そもそも首相は就任以来、物価高対策などに最優先で取り組む姿勢を示していたため、政権内の見方は新年度当初予算成立後の解散が主流だった。にもかかわらず、冒頭解散を選んだのは、現在の高支持率のうちに解散すれば「自民単独過半数」もあり得るという計算が働いたからだ。首相側近は「大事なことは、いつなら自民で『単独過半数』を取れるかだった」と語った。首相は政策を実行するために国民の信を得る必要があると訴えたが、政権存続を図ることを最優先にした「経済後回し解散」(国民民主の玉木雄一郎代表)との批判は免れそうにない。首相は、解散のタイミングについて「経済運営に空白を作らない万全な態勢を整えた上での解散だ」と説明。だが、首相が進めようとしてきた様々な政策の策定に遅れが生じるのは必至だ。新年度当初予算案は、年度内成立は困難となった。軽油の旧暫定税率や自動車を買うときの税(環境性能割)の4月1日での廃止を盛り込む税制関連法案も、年度内に成立しなければ、予定通り実施できなくなる可能性がある。社会保障制度改革の議論にも影響が出る。首相は中低所得層への支援のための「給付付き税額控除」の導入に意欲を示し、政府と与野党で議論する「国民会議」を1月に設置すると表明した。だが首相は会見で「解散によって日程に多少の変動はあり得ると思う」などと述べ、設置が選挙後になる見通しを示した。現職衆院議員は24年10月の選挙で当選したばかりで2年半以上の任期を残す。野党側から「予算の年度内成立をあきらめてまで(解散を)やる意義がどこにあるのか。大義なき解散、政局優先の解散だ」(公明党の斉藤鉄夫代表)との批判が渦巻く。 ■消費減税、「争点つぶし」狙う スパイ防止法、保守派の「宿願」 首相は会見で、食料品の消費減税について「私自身の悲願でもあった。自民の中でも意見が分かれていたが選挙公約にも掲げる」と意欲を示し、検討の加速を表明した。政権幹部によると、減税と現金給付を組み合わせて中低所得層を支援する「給付付き税額控除」が実現するまでの時限的な消費減税について、首相は周囲に度々、意欲を漏らしていた。だが、積極財政を掲げる首相の就任後、財政悪化への懸念などで長期金利の上昇や円安が進行。消費減税まで打ち出せば市場の懸念はさらに広がる恐れがあった。「消費減税を打ち出すのはやめたほうがいい、と首相をいさめていた」。ある政権幹部は、最側近の木原稔官房長官を含めて首相周辺では慎重な意見が多かったと明かす。それでも首相が会見で表明した背景には、「争点つぶし」の狙いが透ける。すでに新党「中道改革連合」が食料品の消費税ゼロの方針を主張。自民内には、野党が一斉に消費減税を掲げるなかで減税を打ち出さずに大敗した昨年の参院選の記憶が広がっていた。自民中堅議員は「参院選は自民だけが守りの選挙だった。今回は踏み込んだほうがいい」と歓迎する。官邸幹部は「100%やるとは言っていない。だがこれで、消費減税は選挙の争点にならない」と周囲に語った。首相が過去に大敗の要因となった消費減税の争点化を避けたのは、選挙での大勝で、持論であるタカ派色が強い政策を進めたいためだ。首相は会見で「国論を二分するような大胆な政策改革」への意欲を繰り返し示した。安全保障面では国家安全保障戦略といった安保3文書の前倒し改定などを挙げ、「自らの国を自らの手で守る、その覚悟のない国を誰も助けてくれない」と訴えた。スパイ防止法を含めたインテリジェンス強化策も列挙し、「すべてが急がれる」と主張した。特に「スパイ防止法」は過去にも国会に提出されたが、国民の日常生活なども広く処罰の対象になりかねないなどと反発を受けて廃案になった保守派の「宿願」でもある。右傾化する日本への危機感を新党が表明しているがどう受け止めるか――。会見で記者から問われた首相はこう言い切った。「決して右傾化などではなく、普通の国になるだけだ」 ■財政悪化の懸念、市場警告 長期金利上昇、一時2.275% 仮に食料品の消費税がゼロになれば年5兆円の財源が失われ、財政悪化は避けられそうにない。すでに金融市場では、国債(借金)が増発されるとの懸念から、国債が売られて金利が上昇。与野党がそろって掲げる大規模な減税について、警告を発している。19日の東京債券市場で長期金利の指標となる新発10年物国債の利回りが上昇(債券価格は下落)し、一時、前週末16日より0・090%幅高い2・275%をつけた。日本相互証券によると、1999年2月以来、約27年ぶりの高水準となる。長期金利は昨年10月に高市氏が自民党総裁に就いてから上昇を続け、この日は一段と上がった。首相は「責任ある積極財政」を掲げ、消費減税に慎重な発言を重ねてきた。もともとは食料品の税率をゼロにするべきだと訴えていたが、昨年10月の自民党総裁選では持論を封印。レジの改修などに時間がかかるとして「物価高対策として即効性はない」と主張を転換していた。それが19日の会見では減税について「私自身の悲願だ」と強調。公約に掲げると明言した。総裁選後に日本維新の会と結んだ連立合意書に沿った内容にとどまるとはいえ、選挙をきっかけに自民も減税に傾いていることが鮮明になった。財源やスケジュールは今後検討するという。ただ、金融市場を意識して、「特例公債(赤字国債)に頼ることなく、財源がどうあるべきかよく相談する」とも述べた。例として、企業への特例的な減税「租税特別措置」や、補助金を縮小することなどを挙げた。一方、首相は昨年の臨時国会で野党から消費減税を迫られても退けてきた。立憲民主党の安住淳幹事長は19日の会見で「ブレている。蛇行している」と批判した。その立憲と公明党が立ち上げた新党「中道改革連合」は、食料品の税率を恒久的にゼロにすると主張する。国民民主党は、参院選と同じく税率を一律5%まで引き下げると訴える。自民も含めて主要政党が消費減税を掲げる構図となり、減税が現実味をおびている。消費税の一部は地方の税源のため、自治体に与える影響も大きい。税収は年金、医療、介護などの社会保障に充てることになっているが、現時点でも財源が足りず、国債に頼っている。今の社会保障の水準を維持したまま減税に踏み切る場合は、代わりの財源をどう確保するのかも問われる。三菱UFJモルガン・スタンレー証券の植野大作・チーフ為替ストラテジストは「選挙が終わるまでは長期金利への上昇圧力が続くと思われる。選挙前に財源の議論はしにくく、選挙後の政権が財源などをどう示すかが重要となる」と話す。 *1-1-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20260126&ng=DGKKZO93984580V20C26A1MM8000 (日経新聞 2026.1.26) 食品減税「物価に効かず」56% 日経世論調査 高市内閣支持67% 日本経済新聞社とテレビ東京は23~25日に世論調査を実施した。高市早苗内閣の支持率は67%と2025年12月の前回調査の75%から8ポイント低下した。内閣を「支持しない」は26%で、前回の18%から8ポイント上昇した。10月の内閣発足後、初めて内閣支持率が7割を割った。自民党と日本維新の会の連立与党、立憲民主党と公明党による新党「中道改革連合」などは衆院選(27日公示・2月8日投開票)で食料品の消費税率ゼロの検討や実現を公約に掲げる。物価高の緩和を狙う。今回の調査で、食料品の消費税率ゼロが物価高対策として「効果があるとは思わない」との回答が56%を占めた。「効果があると思う」の38%を上回った。消費税のあり方に関して「財源を確保するために税率を維持するべきだ」と「赤字国債を発行してでも税率を下げるべきだ」のどちらに考え方が近いか聞いた。維持が59%と多数で、減税は31%にとどまった。高市内閣を支持する理由のトップは「人柄が信頼できる」(39%)、2位は「指導力がある」(36%)だった。支持しない理由は「自民党中心の内閣だから」(41%)が最も多く、「政府や党の運営の仕方が悪い」(30%)が続いた。政党支持率は自民党が42%(前月37%)、中道8%(前月は調査せず)、国民民主党7%(前月9%)、参政党6%(同5%)、維新5%(同7%)となった。結党からまもない中道は立民、公明党という回答を合算すると11%になる。特定の支持政党を持たない無党派層は19%(同23%)だった。調査は日経リサーチが23~25日に全国の18歳以上の男女に携帯電話も含めて乱数番号(RDD方式)による電話で実施し977件の回答を得た。回答率は42.1%。 *1-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20260120&ng=DGKKZO93862010Q6A120C2MM8000 (日経新聞 2026.1.20) 衆院選、来月8日投開票 首相「23日解散、積極財政問う」、食品消費税2年ゼロ 財源詳細示さず 高市早苗首相は19日、首相官邸での記者会見で、通常国会の召集日となる23日に衆院を解散する意向を正式に表明した。衆院選の日程は27日公示―2月8日投開票となる。積極財政など主要政策の実現に向けて「改革をやりきるには政治の安定が必要だ」と強調した。食料品を2年間、消費税の対象にしない考えを示した。首相は自民党と日本維新の会の連立政権の枠組みに関し、勝敗ラインを「与党で過半数」と設定した。「高市早苗が首相でいいのかどうかを国民に決めていただく。首相としての進退をかける」と述べ、政権を選択する選挙であると訴えた。衆院選は2024年10月以来で1年4カ月ぶり。小選挙区289、比例代表176の計465議席を争う。解散から投開票まで16日間と戦後最短の短期決戦となる。4年間の衆院議員の任期折り返し前の解散となる。「責任ある積極財政」や安全保障政策の強化を挙げ「新しい経済財政政策をはじめ、重要政策の大転換だ」と説明した。「国民に正面から示し、是非について堂々と審判を仰ぐことが民主主義国家のリーダーの責務だ」と強調した。解散によって26年度予算案の年度内成立が困難となった。首相は「暫定予算の編成が必要になるかもしれない」と言及した。政策の推進が後回しになっているのではないかとの批判を念頭に「経済運営に空白を作らない万全の体制を整えたうえでの解散だ」と反論した。そのうえで関連法案の年度内成立や暫定予算の計上で、高校の無償化や給食無償化は26年4月からの開始をめざすと言明した。「むしろ選挙で国民の信任を賜ることができたら、その後の政策実現のスピードを加速できる」と訴えた。消費税減税を巡って、維新との連立合意文書に明記したことに触れ「私自身の悲願だ」と唱えた。財源の詳細は明示しなかった。「補助金や租税特別措置の見直し、税外収入などといった歳出・歳入全般の見直しが考えられる」と例を挙げた。特例公債に頼らないと明言した。物価高に苦しむ中低所得者の負担を減らすため、社会保障改革を議論する超党派の「国民会議」で制度設計を進める意向を示した。5日の年頭記者会見で1月中の開催を明言したものの、衆院解散・総選挙のためにめどがたたなくなった。「財源やスケジュールの在り方など実現に向けた検討を加速する」と話した。債務残高の対国内総生産(GDP)比を引き下げ、財政の持続可能性を実現すると主張した。「具体的で客観的な指標を明示しながらマーケットからの信認を確保していく」と語った。積極財政に関し「行き過ぎた緊縮志向、未来への投資不足、この流れを高市内閣で終わらせる」と語った。予算編成のあり方を見直し、複数年度で財政出動を可能にする仕組みの構築に意欲を示した。危機管理投資や成長投資を柱に据えた。衆院選を経て政権基盤を強化し、外交に取り組むとも話した。日中関係は首相の台湾有事を巡る発言をきっかけに急激に冷え込んだ。首相は日中関係の打開に向けた対応を問われ「選挙結果による影響を予断することはしないが、中国側とは意思疎通を継続しながら今後も国益の観点から、冷静に適切に対応をしていく」と強調した。 *1-3:https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA297F20Z20C26A1000000/ (日経新聞 2026.2.3)財源なき消費税減税、経済・労働界が懸念 法人減税の縮小に警戒感 衆院選で各党が公約に掲げる消費税減税に対して経済界と労働団体が懸念を強めている。減税分の代替財源は明示されず、財政悪化を不安視して金融市場は不安定な状態が続く。経済界は財源確保策として浮上する法人減税の縮小への波及を警戒する。「消費減税は非常に慎重に検討すべきだ」。日本商工会議所の小林健会頭は3日の記者会見で苦言を呈した。財政悪化や円安進行などに懸念を示し「責任を持った財政政策をお願いしたい」と注文した。経団連の筒井義信会長も安易な消費減税に釘を刺した。衆院選が公示された1月27日の記者会見で消費減税について「代替財源の明確化が必須だ」と指摘した。「市場の信認維持と、社会保障の持続性の確保が消費減税の実施の大前提でなければならない」と強調した。今回の衆院選では消費税の減税や廃止などを大半の与野党が公約に掲げた。対象や下げ幅、期間で違いはあるものの物価高に対応した家計支援と位置づける。ただ、減税に必要となる具体的な財源は示していない。経済同友会の山口明夫代表幹事は「メリットとデメリット、リスクが共有されず(論戦が)進むことに危機感を感じている」と指摘した。連合の芳野友子会長は「財源がどうなっていくのかがとても気にかかる」と話す。自民党や中道改革連合が掲げる食料品の消費税率ゼロが実現すると税収は毎年約5兆円減る。国民民主党が主張する一律5%への引き下げでは約15兆円が必要となる。与党は租税特別措置(租特)と呼ぶ政策減税や補助金の見直しなどを財源に想定する。経済界は代替財源として挙がる租特見直しを警戒する。経団連の筒井氏は「法人に関わる租特は投資促進のために重要なものがある。成長戦略と物価高対策の整合性はしっかり議論していきたい」と強調する。財務省によると、2023年度の法人関係の租特の減税額は約2.9兆円だった。法人向けでは研究開発や賃上げ促進などの租特がある。経済団体幹部は「租特見直しによる法人減税の縮小は看過できない」と話す。財源なき消費減税は金融市場にも悪影響を与える。1月には財政悪化の懸念などを背景に長期金利が27年ぶりの水準まで上昇した。日本国債と円の売りが膨らめば、企業の資金調達や輸入のコストが増える。今後本格化する26年の春季労使交渉にも冷や水となりかねない。三菱UFJリサーチ&コンサルティングの小林真一郎主席研究員は「金利上昇と円安が一段と進めば、景気を悪化させる引き金になりかねない」と話す。消費税は法人税と比べて景気に左右されにくく、社会保障制度の安定財源でもある。12年に当時の民主、自民、公明の3党がまとめた社会保障と税の一体改革は消費税率を5%から10%に引き上げ、年金や医療・介護などに充てることで合意した。一段と少子高齢化が進むなか、経済界は社会保障制度のさらなる改革を訴えている。三菱UFJリサーチ&コンサルティングの小林氏は「消費税という安定財源を放棄するとなれば社会保障制度そのものを長期的に維持できるかという不安が生じる」と指摘する。 <日本の低成長・低生産性・低実質賃金の原因は同根である> *2-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20260109&ng=DGKKZO93657950Y6A100C2EP0000 (日経新聞 2026.1.9) 実質賃金11カ月連続減少 政府、来年度プラス予測、補助金など政策効果、楽観はできず 円安で物価上振れリスク 2025年11月の実質賃金は11カ月連続のマイナスとなった。25年は3%を超える物価上昇が続き、賃上げが追いついていないためだ。政府は電気・ガス代への補助復活といった政策効果で26年度はプラスに転じると見込む。円安を踏まえた食料品の値上げなどで物価が上振れすれば、マイナス圏に戻るリスクは残る。厚生労働省が8日発表した25年11月の毎月勤労統計調査(速報、従業員5人以上)によると、物価変動の影響を除いた実質賃金は前年同月比で2.8%減だった。賃上げ定着で基本給にあたる所定内給与は25年は2%前後の増加を維持しているものの、物価上昇率を下回る状況が続く。インフレには鈍化傾向もみられる。25年12月の東京都区部の消費者物価は生鮮食品を除く総合指数が前年同月比2.3%上昇と25年3月以来の2.5%割れとなった。26年1~3月に復活する電気・ガス代への補助や、ガソリン税の旧暫定税率廃止の効果で今後の伸びはさらに抑えられる見通しだ。第一生命経済研究所の新家義貴氏は電気・ガス代補助などが2、3月の物価上昇率を0.5ポイントほど押し下げると分析する。実質賃金の計算に使う消費者物価指数(持ち家の家賃換算分を除く総合)は25年の3~4%台から2%程度になり、名目賃金の増加が今のペースを維持すれば、26年前半に実質賃金はプラス圏に浮上するとみる。明治安田総合研究所は消費者物価の総合指数を使って算出する方式の実質賃金が25年12月にプラスになると予想する。この方式は従来方式より数値がわずかに高くなる傾向がある。26年1月はマイナスに戻るものの2月は0.0%、3月は0.1%とゼロ付近ながらもプラスが続くと見通す。政府は26年度予算案の前提として25年12月に発表した経済見通しで、国内総生産(GDP)のもとになる国民経済計算と消費者物価の総合指数ベースの実質賃金が26年度に1%程度のプラスになると予測した。インフレ率は1.9%に鈍化するとのシナリオを描く。高市早苗首相も5日の年頭記者会見で実質賃金について「1.3%の伸びを見込んでいる」と説明した。「こうした明るい動きを政策の力で、さらに力強いうねりにする」と語り、責任ある積極財政の必要性に言及した。実質賃金がプラスで定着すると楽観しにくい状況もある。例年、年度初めの4月に食料品の値上げをする企業は多い。新家氏は「円安を理由とする値上げに踏み切り、食料品の物価が再び高騰する可能性もある」と指摘する。円相場は25年12月に一時1ドル=157円台に下落し、足元でも156円台後半で推移する。物価変動の影響が出にくいマンション家賃などにも上昇傾向があり、今後のインフレ圧力になる。不確定要素の残る物価動向をはねのけて実質賃金をプラスにするには、さらなる賃上げが絶対条件になる。連合は26年の春季労使交渉(春闘)で基本給を底上げするベースアップと定期昇給を合わせた賃上げ率を全体で5%以上とする目標を掲げる。経団連など経済3団体が6日に開いた新年祝賀会では経営トップから26年も5%を超える賃上げ方針の表明が相次いだ。例年3月に集中回答日を迎える春季労使交渉の結果は5月分の統計から順次反映され始めるとされる。前年の賃上げ率5.25%(連合集計)と同等か上回る水準の達成が実質賃金のプラス定着に欠かせない。 *2-2:https://www.yomiuri.co.jp/economy/20251222-GYT1T00325/ (読売新聞 2025/12/22) 日本の労働生産性28位に後退、先進7か国で最下位…デフレやコロナ禍で経済の低成長続く 日本生産性本部が22日発表した2024年の労働生産性の国際比較によると、日本の1時間あたりの労働生産性は前年比1・5ドル増の60・1ドル(約9400円)だった。経済協力開発機構(OECD)加盟38か国のうち28位で、前年の26位から2年ぶりに順位を落とした。労働生産性は、働く人が一定の時間内でどれだけのモノやサービスを生み出すかを示す指標で、生産性が上がれば経済成長や豊かさにつながるとされる。日本は従業員数が増えたものの、24年の名目成長率がプラスとなったため、生産性は微増となった。OECDの平均は79・4ドルで、1位はアイルランドの164・3ドルだった。日本は1970年以降、20位前後を維持してきたが、物価の下落が続くデフレやコロナ禍などで経済の低成長が続き、ここ数年は順位を下げている。先進7か国では米国の4位(116・5ドル)が最高で、日本は最下位だった。 日本生産性本部は「賃上げの定着やDX(デジタルトランスフォーメーション)など改善の余地がある」とした。 *2-3:https://www.jcer.or.jp/j-column/column-saito/2025023.html (日本経済研究センター 2025/2/3) 本当に人手不足と言うべきなのだろうか?―低生産性の背後にある潜在的過剰雇用を考える 【人手不足と低生産性の併進】 日本は人手不足にあると考えられています。確かに失業率は低く、企業は人手の確保に苦労をしています。特に中小企業は、人手の確保に成功すれば問題ありませんが、成功しないと経営危機に落ちる可能性が高まります。実際、2024年の人手不足倒産は過去最高を記録しています(帝国データバンク)。人手不足の背景には高齢化・人口減少があると考えられています。1990年代後半以降、生産年齢人口(15歳~64歳人口)は減少しています。これまでは、女性や高齢者の労働参加率が上昇してきたため、労働力人口はかろうじて増加を続けてきましたが、労働需要も底堅く推移しているため、労働市場は逼迫した状態が続いてきました。近年の賃金引上げの機運も、こうした状況を反映しているものと考えられます。しかし、日本は本当に人手不足なのでしょうか。そのような疑問を呈するのも、一方で人手不足と言われながら、他方で日本の労働生産性が低いという事実があるからです。どういうことなのか、以下で説明をしたいと思います。 【低生産性と過剰雇用】 第1図は、日本を含むG7の国々の労働生産性を購買力平価ベースで比較したものです。 これを見ると、日本の労働生産性は、他のG7諸国に比べて低いだけでなく、その伸び率も極めて緩やかであることが分かります。このままで行くと、ますます日本と他の先進国の差が広がっていくことになります。労働生産性が低いということは、就業者一人当たりが生産するGDPが低いことを示していますが、別の見方をすると、日本では同じGDPを生産するのにより多くの就業者を要しているということになります。そこで、仮に同じGDPを生産するのに米国と同じ就業者数で足りたとします(つまり米国と同じ労働生産性で生産することができたとします)。そうすると、第2図が示しているように、現在の就業者数の4割以上が潜在的に過剰という計算になります。米国と同じ就業者数ではなく、日本を除くG6の国々の加重平均の就業者数を必要としたとしても(つまりG6を同じ労働生産性で生産することができたとしても)、35%以上が潜在的に過剰という結果になります。これを見ると、日本が他の先進国並みの労働生産性を実現できていれば、かなりの労働力を他の生産用途に振り向けられることが分かります。そうであれば、人手不足とは到底言えないように思われます。 【潜在的過剰雇用の背景にある終身雇用制】 ではなぜ日本は、このような潜在的な過剰雇用を抱えているのでしょうか。その背景には、現在の日本に特有な雇用システムがあるように思われます。日本の雇用システムの特徴の一つは、終身雇用制です。終身雇用制の下では、新卒で会社に入ると、定年までの雇用が保証されることになります。しかし、それと引き換えに職務、勤務地、労働時間については雇用主である企業の意向によって決められる(いわゆる「無限定正社員」になる)ことになります。このような制度は、企業からすると柔軟に雇用者を活用できたので、高度成長期のような環境にあっては企業の業績を高めるのに大いに役立つことになりました。しかし、新興国や発展途上国との価格競争が激化してくると、終身雇用制が逆に企業の重荷になってきて、固定費を抑制するためにも人件費を引下げることが求められるようになってきました。そのため、終身雇用制の下にある正規雇用の規模は極力抑制し、その代わり、景気循環に合わせて調整が容易な非正規雇用が拡大するようになってきました。第3図が示す通り、現在、正規雇用と非正規雇用の割合がおおよそ6:4になるところまで非正規雇用が増加してきています。 【非正規雇用需要の相対的高まり】 こうした状況にあっては、景気拡張局面において雇用を拡大させる必要が生じた時でも、正規雇用の採用は極力抑え、非正規雇用の増加で対応することが中心になります。例えば、近年の有効求人倍率を見ると、第4図が示しているように、正社員よりパートタイマーの有効求人倍率が高くなっています。こうした労働需要の強さの違いは、賃金上昇の違いにも表れています。近年、賃金上昇の欠如が問題になってきましたが、賃金を正社員とパートタイム労働者に分けて見てみると、決して賃金に動きがないわけではありません。第5図を見ると分かるように、正社員の賃金の伸びが低迷しているのに対して、パートタイム労働者の賃金は高い上昇を示してきているのです。これは、正社員に比してパートターム労働者への需要が強いことを示しています。 【正規雇用内の賃金変化】 実は、正社員の賃金も、詳しく見ると、大きな変化があることが分かります。第6図では、大学・大学院卒の男性正社員の所定内給与を例に取り上げていますが、このうちの左図を見ると年齢層別の賃金プロファイルがフラット化していることが分かります。しかも、右図が示しているように、最近5年間で見ると、新卒の初任給が増加しているのに対して、新卒以外は、勤続年数が高くなるにつれて賃金上昇率が低下し、45~49歳と50~54歳層ではマイナスにもなっていることが分かります。これは、雇用者への需給関係を反映していると考えられます。新卒市場では、企業間で採用に向けた競争が激しくなっているため、「売手市場」となっており、賃金が上昇しているのに対して、一旦採用されると、転職市場が限られているために一種の「需要独占」状態になり、「買手市場」となることから、賃金引上げのインセンティブが弱いものになっているのです。 【日本の労働市場における「二重構造」】 このような正規雇用と非正規雇用の間の構造的な違いは、「労働市場の二重構造」といわれる現象に対応しているように見えます(石川・出島 1994、玄田 2008、鈴木 2018、山口 2017、黒住他 2023)。しかし、労働市場が「二重構造」化しているといえるためには、単に二つの市場で労働需給や賃金形成のあり方が違うというだけでなく、両者の間の流動性が限定されているということが重要です(Dicken and Lang 1985)。その点を見ようとしたのが第7図です。これを見ると、非正規雇用者が転職する場合、正規雇用者になるケースは極めて限られており、行き先としては主として非正規職となっていることが分かります。このような限定的な流動性についてはかねてより確認されてきており(相澤・山田 2008)、いったん非正規雇用になると、その先は「行き止まり」ともいえるような状況にあるようです(四方 2011)。 【非正規雇用の増加がもたらす低生産性】 日本における非正規雇用は、雇用が不安定であるばかりでなく、賃金水準が概して低いという問題があります。第5図でも見たように、近年、非正規雇用者の賃金上昇は比較的高いものがありますが、それでも非正規雇用の正規雇用に対する賃金水準は低いものに止まっているのは第8図が示している通りです。そしてそのことが、マクロ的な影響をもたらしている可能性があります。低賃金の非正規雇用者が相対的に増加すると、それに依存することができるので、高度な技術を体化した設備への投資が遅れる可能性があります。一般的には技術進歩は外生的に決められ、それにしたがって、高いスキルを持った労働者への需要が高まると考えられていますが(スキル偏向的技術進歩)、逆に労働者のスキルによって選択される技術が変わってくるという側面もあるのです(Directed technical change: Acemoglu 2002)。技術の選択においてこうした側面があることは、外国人労働者の増加の影響に関連して、米国(Lewis 2012)の他、日本(中村他 2009)でも見られることが報告されています。最近の労働力人口が女性や高齢者を中心に増加しているということは冒頭でも紹介しましたが、女性や高齢の増加は主に非正規雇用としての増加を意味しています。非正規雇用者は概して低スキルの職務に従事していることを考えると、こうした非正規雇用者の増加が技術の高度化を抑制し、日本の低生産性を支えているということも言えるのかもしれません。 【結びにかえて】 高齢化・人口減少が将来的に経済成長の制約要因になることは確かです。そのことを念頭に、様々な手を打って経済成長を維持するための方策をとっていくことが必要です。そのうちの一つとして、現在の労働生産性を他の先進国並みの労働生産性へと引き上げることがあります。このことは、既に他の先進国で実現されている以上、新たな技術進歩を必要とするわけではありません。労働生産性を低く抑えている要因を取り除くことができれば実現できるはずです。もしそれが実現できれば、高い労働生産性を実現できるだけでなく、新たに顕在化することになる過剰労働力に新たな成長産業で活躍してもらうことによって、現在の「人手不足」を突破し、経済規模を拡大することも可能になります。ただし、それに際して大きく立ちはだかるのは、現在の潜在的過剰雇用をもたらしている現在の雇用システムです。これを改革することで潜在的な過剰労働力を解き放つことを考えなければなりません。それを行うことは決して容易なことではありません。しかし、それに取り組まないことには、現在の閉塞状況を打開する道はないように思われます。 *参考文献 Acemoglu, Daron. 2002. “Why Do New Technologies Complement Skills? Directed Technical Change and Wage Inequality.” The Quarterly Journal of Economics 113(4): 1055-89. Dickens, William T., and Kevin Lang. 1985. “A Test of Dual Labor Market Theory.” American Economic Review 75(4): 792-805. Lewis, Ethan G. 2012. “Immigration and Production Technology.” Annual Review of Economics 5: 165-191. 相澤直貴・山田篤裕(2008)「常用・非常用雇用間の移動分析」、三田学会雑誌、 101(2)、33-63。 石川経夫・出島敬久(1994)「労働市場の二重構造」、石川経夫編『日本の所得 と富の分配』、(東京大学出版会)、169-209頁。 黒住卓志・杉岡優・伊達大樹・中澤崇(2023)「わが国におけるフルタイム労働者の異質性と賃金上昇 等 <外国人労働者と外国人差別> *3-1:https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA182FC0Y5A111C2000000/ (日経新聞 2026年1月3日) 外国人材受け入れ、どう向き合う 拡大路線を転換へ 政府は1月中にも外国人政策の基本方針を示し、受け入れを厳格にする方向にカジを切る。これまでは人手不足の深刻化を背景に「選ばれる国」をめざしてきた。高市早苗政権は国民の間で不安が高まっているとして、これまでの拡大路線にブレーキをかけるとみられる。 ●急増に不安感、厳格化へ 2025年11月、首相官邸で「外国人の受入れ・秩序ある共生社会実現に関する関係閣僚会議」の初会合があった。「一部の外国人による違法行為やルールからの逸脱に対し、国民の皆様が不安や不公平を感じる状況が生じている」。首相はこう述べ、在留資格審査の厳正な運用やオーバーツーリズム対策の強化などを指示した。日本政府は約30年にわたり外国人労働者の受け入れを拡大してきた。1990年に在留資格「定住者」を創設し、南米などの日系人が日本で働く道を整えた。93年に技能実習制度をつくり、技能・技術を学んでもらうとの理念のもと中小企業が雇用できるようにした。2019年に人手不足対策の在留資格「特定技能」をつくり、さらに積極姿勢を打ち出した。建設、製造、農業、介護などの現場で非熟練の外国人を雇用しやすくした。在留外国人は25年6月時点で395万人と10年前の1.8倍に増えた。ネットなどで不安の声が広がり「日本人ファースト」を掲げる参政党が支持を拡大してきた。石破茂前政権は参院選を目前にした25年7月に厳格姿勢を打ち出した。社会保険料の未納付対策や土地取得の管理に取り組む省庁横断の組織をつくった。政府は12月、技能実習に代わり27年に始まる「育成就労」の受け入れ上限を43万人、特定技能は81万人とする方針を示した。今後、焦点となるのが高度人材向けの在留資格「技術・人文知識・国際業務」の扱いだ。25年6月時点で45万8000人おり、来日が拡大している。政府は従来、「積極的に受け入れる」との立場だった。現状は本来禁止されている製造や飲食・宿泊といった現場作業に就く例が少なくない。出入国在留管理庁は運用の厳格化とともに上限設定の是非を検討している。少子高齢化の進展によって、特に地方で働き手の確保が難しくなっている。全国知事会は11月の共同宣言で排外主義への懸念を示して「外国人の持つ文化的多様性を地域の活力や成長につなげる」とうたった。地方の中小企業は自民党の重要な支持基盤でもある。貴重な働き手を失いかねない施策は取りづらい面もある。そもそも政府が問題視する「違法行為やルールからの逸脱」が何を指し、どれほどあるかは明確でない。国の有識者会議の構成員でもある田村太郎・ダイバーシティ研究所代表理事は「今まで政府は在留外国人の実態を把握して支援しようとする姿勢が希薄だった」と指摘する。まずは詳細な現状を把握し、データに基づいて政策決定を進めていくことが求められる。 ●韓国・台湾は受け入れ強化 米欧では反移民の動きが強まる半面、アジアは国境を越えた労働移動が拡大している。新興国の若者が自国で好待遇の職に就くのは難しく、国外にチャンスを求める動きが強まる。少子化や人手不足に悩む韓国や台湾などが受け入れを拡大しており、人材争奪が激化している。反移民の動きが顕著なのは米国だ。トランプ大統領の第2次政権が2025年1月に発足して以降、移民・税関捜査局(ICE)が全土で不法移民を摘発し、国外送還する動きを強めている。高度専門職や留学生向けの査証(ビザ)発給も厳しくした。英国も厳格化を発表した。永住権申請に必要な期間を延長するほか、留学生が卒業後に滞在できる期間を短縮することにした。難民は母国に戻れないかを定期的に審査して、一定の財産のある人には滞在費の負担を求める。ドイツはシリア難民を国外追放する案が浮上する。25年8月時点で95万人いる。極右政党に国民の支持が流れることを警戒する。アジアは様相が異なる。アジア開発銀行研究所(ADBI)などの報告書によると、アジア新興国からの移住労働者は24年に647万9000人に上った。新型コロナウイルスの影響が薄れて急増した23年の694万4000人よりは少ないが、コロナ前を大幅に上回っている。背景には若年層の失業がある。国際労働機関(ILO)によると、東南アジアや南アジアでは若年失業率が10%前後に達する。高技能職の求人数が限られ、学歴があっても仕事にありつけない。以前から主要な出稼ぎ先だった中東湾岸諸国やシンガポール、マレーシアなどのほか伸びているのが東アジアだ。三菱UFJリサーチ&コンサルティングの加藤真氏によると、韓国は外国人労働者が25年5月時点で110万9000人と前年比9.8%増えた。非専門職向けの「雇用許可制」の受け入れが目立つ。21年に5万人程度だった年間の受け入れ上限を3年で3倍に拡大した。25年は前年より減らして13万人としたが、なお高水準だ。24年9月に専門・熟練外国人労働者10万人を5年以内に追加確保する方針を示した。在留期間の上限がなく、永住申請や家族呼び寄せが可能な在留資格への変更について上限人数を年々拡大している。台湾の外国人労働者数は24年12月に80万2000人となった。25年5月に農業の受け入れ上限を1万2000人から2万人に拡大したほか、インドと覚書を締結してインド人の労働者の受け入れを決めた。技能レベルが中程度の労働力の不足に対応するため、非熟練の労働移民をスキルアップさせるプログラムを22年に導入し在留者が急増している。導入にあたっては日本の特定技能制度が参考にされた。加藤氏は「日本が競合先として意識されている」と指摘する。 *3-2:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/1624624 (佐賀新聞 2026/1/3) 20代外国人比率9・5%、10年で倍、社会保障の支え手に 日本国内の20代人口に占める外国人住民の比率が2015年の4・1%から急速に上昇し、25年には9・5%に達したことが3日分かった。少子化で日本人の若年層が大幅に減少する中、外国人は労働だけでなく社会保障の支え手として存在感が高まっている。20代の外国人住民数は10年間で倍増した。海外人材受け入れ制度「育成就労」の新設などを背景に、さらに増える公算が大きい。地域社会定着に向け、日本語学習や専門技能習得への支援が課題となる。15年と25年の住民基本台帳人口を共同通信が分析した。20代の日本人が10年間で103万人減って1164万人となったのに対し、20代の外国人は68万人増の122万人だった。全年代合計の3・0%を上回って突出し、若年層では外国人1割社会が到来しつつある。20代外国人の男女別の比率は、男性が10・1%で女性は8・9%。都道府県別では、群馬の14・1%が最も高く、岐阜、茨城が続いた。12都府県で1割を超えた。政府は昨年12月、27年度開始の育成就労に関し、2年間で約42万6千人を上限に受け入れる案を有識者会議に提示した。労働力不足を外国人で補う流れが強まっている。外国人住民の3分の2は30代以下だ。原則、日本の社会保険制度に加入するため、政府は年金財政について外国人が多いほど収支は改善すると推計する。昨年、福岡資麿厚生労働相(当時)は「支え手の増加につながり、年金財政や将来の給付水準にプラスの影響がある」と国会で答弁した。25年6月末時点の在留外国人統計から全年代の出身国・地域を調べると全国的には中国出身者が90万人で最も多く、66万人のベトナムが続いた。中国出身者は首都圏に集中する。33道県ではベトナム人が最も多い。ベトナム政府が送り出しを推進し、日本の各地が受け入れた。出身国・地域の上位は東南アジアと南アジアの国が目立ち、主に若年層が入国している。外国人には技能試験と日本語試験で習熟度を測る枠組みがある。文部科学省は「専門家による日本語教育のニーズが高まっている」(担当者)として、日本語教員の国家資格を24年に新設し、教育の質の向上を目指す。技能・日本語試験 特定技能の在留資格で即戦力人材として入国する外国人は原則として、仕事の技量を測る技能試験と日本語試験に合格する必要がある。技能試験は介護、建設、農業など分野ごとに出題範囲を定めて実施している。日本語能力試験はN1~N5の5段階がある中、基本的な言葉を理解できるN4レベルが要件となる場合が多い。技能実習に代わって2027年度に始まる育成就労制度で働く外国人は、最も易しいN5レベルの日本語能力が求められる見通し。分析の方法 日本国内の年代別の外国人住民比率は、総務省が公表した2015~25年の1月1日時点の住民基本台帳人口を調べた。20~24歳、25~29歳など5歳ごとの年齢階級の公表データを基に、10歳ごとに再構成した。外国人住民比率は日本人と外国人を合わせた総計住民数を分母、外国人住民数を分子に置いて計算した。各都道府県に在留する外国人の出身国・地域順位は、在留外国人統計の25年6月末時点のデータを分析して算出した。 *3-3:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20260114&ng=DGKKZO93736340T10C26A1TB3000 (日経新聞 2026.1.13) 〈α-20億人の未来〉自動車立国、外国人が命綱、2040年、受け入れ3倍で生産維持 勤務環境改善待ったなし メードインジャパンの象徴が変わる。α(アルファ)世代の多くが社会人になる2040年、日本の自動車産業は外国人労働者なしでは回らなくなる。工場などで働く外国人を現在の3倍の3割近くまで高めないと今と同規模の生産量を維持できない。独自に算出した「Made in ジャパニーズ指数」から自動車立国の未来図が浮き彫りになる。指数は車産業(輸送用機械器具製造業、一部に鉄道関連含む)の労働者(約100万人)に占める外国人の割合を示す。高いほど外国人への依存が高まることになる。厚生労働省や国際協力機構(JICA)の資料をもとに試算した。時系列で振り返り、未来も予測する。 ●出稼ぎブーム 日本が外国人労働者の受け入れを本格化したのは1990年代だ。90年に出入国管理法を改正し、南米などに住む日系人を主な対象として就労に制限のない在留資格「定住者」を設けた。日系ブラジル人やペルー人の間で「デカセギ(出稼ぎ)」がブームとなり、07~08年ごろまで増加した。技能実習制度も93年に始まった。08年、車産業で働く外国人は4万人に達した。指数は4まで上がった。だが、秋に起きたリーマン・ショックによって多くの労働者が職を失い、帰国した。技能実習生では中国の経済成長に伴って中国人が減る一方、ベトナム人やネパール人が増え、国籍が多様化した。23年、外国人労働者は204万人と初めて200万人を超えた。08年の4倍以上だ。車産業の外国人も10万人近くまで増加して2倍になった。指数は9まで高まった。座席周りの部品をつくる鈴木鉄工(愛知県西尾市)は390人の従業員のうち8割弱が外国人だ。鈴木明香社長は「真面目に働いてくれるのであれば国籍は問わない。班長や課長などの役職にも就いてもらう」と語る。トヨタ自動車の供給網を外国人が支える。都道府県別で外国人労働者の比率をみると、車の関連産業が集積している地域に多いことがわかる。最も高いのは東京(7%)だが、群馬(6%)や愛知(5%)、静岡(4%)、岐阜(4%)が続く。製造品出荷額が大きい地域ほど比率が高く、メードインジャパンはすでにメードイン「ジャパニーズ」ではなくなりつつある。 ●97万人も不足 40年、指数を27まで高めないと日本の車産業は維持できない。外国人抜きでは4台に1台が造れない計算になる。JICAによると、40年に外国人労働者は国内の全産業で688万人必要になる。日本の経済力は低下しており、他国との人材争奪戦に勝ち抜けず、97万人が不足する見通しだ。愛知県豊田市にある保見団地。6200人の住人のうち6割が外国人だ。α世代と親に話を聞くと、長時間労働など車産業で働く厳しさを訴える声が目立った。ペリニデ・オリベイラ・ミレラさん(8)の父は車部品工場で働く。将来は「たくさん勉強して日本で医者か先生になりたい」。母のタイラさんは「娘にはつらく厳しい製造業では働いてほしくない」と話す。ラミレス・レイソさん(12)の母、エリカさん(43)も車関連の工場で働く。サッカー選手になりたいと言う息子に「大変だから私と同じ思いをしてほしくない。車関連よりもっといい仕事に就いてほしい」と語る。摩擦を恐れて異文化を拒むことはもちろん、共生に向けて労働環境の改善も進めないと国は豊かにならない。 *3-4:https://www.jiji.com/jc/article?k=2026020300696&g=elc&ref=2024syu (時事 2026年2月5日) 外国人受け入れ規制、迫る維・参 自民言及せず、中道慎重―高市政権を問う「外国人政策」【2026衆院選】 外国人政策を巡り、日本の人口に占める外国人割合に上限を設ける「受け入れ規制」の是非が、衆院選(8日投開票)の争点に浮上している。政策見直しを掲げる各党の中で、日本維新の会や参政党などが必要性を主張する一方、自民党は言及していない。中道改革連合は慎重姿勢を示す。政府は1月、外国人政策の基本方針をまとめた「総合的対応策」を決定。日本国籍取得の要件厳格化や医療費不払いの対策強化、土地取得の法的ルール整備などを盛り込んだが、受け入れ規制は今後の検討事項にとどめた。出入国在留管理庁によると、2025年の外国人入国者数(速報値)は4243万人と過去最多を更新。国立社会保障・人口問題研究所は、70年に外国人比率が1割を超すとの推計を発表している。国内の外国人が急増する状況を踏まえ、維新は「上限設定」を「本丸」と位置付け、参政も「受け入れ総量の厳格化」を提起。日本保守党は「移民はいったんストップ」と訴える。自民公約は、政府の総合的対応策を踏襲した内容で、受け入れ規制には触れなかった。深刻な人手不足を背景に、受け入れ拡大を望む経済界などに配慮したとみられる。国民民主党は防衛施設周辺以外も対象とした「外国人土地取得規制法」の制定を打ち出す。チームみらいは入国税や非居住外国人の固定資産税を引き上げると提案。減税日本・ゆうこく連合は「ルールを守らない外国人に厳しく対処する」としている。これに対して中道、共産、社民各党は共生社会の実現に力点を置く。中道の野田佳彦共同代表は総量規制について「時期尚早ではないか」と指摘。「多文化共生庁」の設置などを検討する考えを示す。共産、社民は「差別や排外主義に反対」の立場を強調する。れいわ新選組は外国人の権利を侵害するような「移民政策」に反対している。SNS上でも外国人政策への関心は高い。分析ツール「ブランドウォッチ」でX(旧ツイッター)の投稿を検証すると、「移民」を含むポストが首相の衆院解散表明の前後から急増。参政や保守の支持層によるとみられる「自民は移民推進」との投稿も目立つ。 *3-5:https://mainichi.jp/articles/20260113/ddm/013/100/012000c (毎日新聞 2026/1/13) 高校無償化、外国籍生徒も対象に 制度厳格化もくすぶる「優遇」説 2026年度からの高校授業料無償化の対象に、日本への定住が見込まれる外国籍の生徒も含まれることになった。親の仕事の都合などで日本にやってきた子どもたちの支援に携わる関係者は歓迎する一方、無償化の対象についての議論の過程では、交流サイト(SNS)で「外国人の優遇では」といった投稿が散見された。政府が外国人政策の厳格化を進めるなか、こうした感情的な言説への懸念は強まっている。 ●定住、所得制限も設定 「今後は私立も含めてもっと子どもたちの選択肢が増えるのではないかと思います」。桃山学院大人間教育学部のオチャンテ・村井・ロサ・メルセデス准教授(社会学)は、新たな高校無償化の枠組みに安堵(あんど)の表情を浮かべた。自民、日本維新の会、公明の3党の合意内容によると、既に実施されている公立高校の実質無償化に加え、26年度から所得制限をなくし、私立全日制では45万7200円を上限などとする就学支援金が支給される。焦点となっていた外国籍の生徒は、定住が見込まれる場合は対象に含まれることになったが、所得制限を設けた上で上限額は25年度までの39万6000円に据え置かれる。一方で外国人学校を支給対象とする現行制度を廃止。「留学」の資格で滞在し、定住を見込めない生徒も対象から外す。ただ、いずれも保護者の収入要件を設定した上で、外国人学校については現行と同等の支援を講じるほか、留学生についてもグローバル人材確保の観点から新たな支援策を検討するとしている。つまり、一部の外国籍生徒に対しては現行制度よりも支給要件が厳格化されたことになる。オチャンテ准教授は次のように注文する。「さまざまな制度を厳格にすることが戦略として取られるのは理解できるが、子どもに関わる制度や教育においてはなるべく差が生じないよう、『誰一人取りこぼさない』という精神を大切にしてほしい」。日系4世のオチャンテ准教授は、1996年に15歳でペルーから三重県伊賀市に移住して中学3年に編入し、定時制高校を経て大学、大学院と進学した経歴を持つ。現在も伊賀市在住で、多文化共生や子どもらの支援活動に取り組んでいる。 ●多様化する子の背景 近年、外国につながる子どもたちの背景や環境は多様化していると指摘する。「日本生まれ、日本育ちの子も増えている一方、かつての私のように日本で仕事をしていた親に呼び寄せられて来日する子どもの中には、近くに日本語指導を受けられる拠点や夜間中学がない場合もある」。ゼロから日本語を習得するには相当時間がかかり、高校受験の壁は高くなる。さらに「学齢(15歳)超過のため、中学に入れなかったりする場合もある」という課題もある。文部科学省の学校基本調査によると、25年度に外国籍の高校生は国公立で約1万3000人、私立で約7800人が在籍する。増えてはいるものの、いずれも生徒全体の1%に満たない。学齢超過で学ぶ場のない若者の高校進学を支援する認定NPO法人多文化共生センター東京によると、在留外国人数などから、国内の外国人の高校進学率は4割程度だと推定され、高校生全体の約99%よりも大幅に低くなっているという。高校入学に関する情報の不足や外国人生徒向けの入学特別枠の少なさといった問題が背景にあるとみられる。こうした外国人の若者が将来、日本で活躍するための課題は山積している。外国人の高校生の中退率は8・5%と、高校生全体の1・1%に対して高い。さらに日本語指導が必要な高校生の非正規就職率も38・6%と高い水準だ。多文化共生センター東京の石塚達郎代表理事は「外国につながる子どもが社会で活躍するための学びの機会が少ないことは社会にとっても大きな損失だ」と指摘する。オチャンテ准教授は「正規で就職しようと思った時にはやはり日本語を習得しないと始まらず、高卒資格も必要。しかしせっかく高校に入っても中学までのような日本語指導が受けられず、授業についていけずに中退してしまうケースは少なくない。無償化の拡大で、私立高でも日本語指導を充実させるような動きに期待したい」と強調する。オチャンテ准教授は自身の来日当初を「ペルーにいたころは大学進学も視野に入れていたが、日本語が全くわからず、自己肯定感がすごく低かった。進学を考えるような余裕はなかった」と振り返る。転機となったのが定時制高校で過ごした4年間だった。「日本語指導専門ではないが、とても熱心な先生がサポートしてくれた。ディベートの授業を通して自分の意見をなんとかして相手に伝えようとする力が身についた」。徐々に自信が持てるようになり、周囲に大学進学の希望を伝えるとパンフレットを渡されるなど情報が集まり、研究者の道が開けたという。「それまでは日本に来たのも親の仕事の都合で、自分の意思ではなかった。私にとっての高校は自分自身が将来こうなりたいと初めて思えた場所で、将来への扉を開いてくれた場所だった」と感謝する。 ●SNSに批判的投稿 外国籍の生徒の一部を高校無償化の対象とする方針が報道されて以降、X(ツイッター)上では「日本人が納めた税金で外国人ばかりを豊かにしようとする理由は何?」「必要なら親が稼げばいいし、無理なら帰国すればいい」などと批判的な投稿が相次いだ。オチャンテ准教授は「国内では観光客の急増によるオーバーツーリズムの問題なども起きており、それらが混ざって人々の不満につながっていると感じる。不満を表明すること自体には反対しないが、社会や地域のために一生懸命取り組んでいる外国籍の住民らと交流する機会がない中で生まれてしまう考えだと感じる」と分析する。外国人への不満をあおるような感情的な言説には注意が必要だと説く。「欧米でも同じような動きがあり、日本固有の話ではない。子どもたちがデマを含む情報を信じて子ども同士で傷つけるような発言をしないよう、学校でも意識しなければならない」 <成長産業である医療・介護に対して吹かせている逆風> *4-1:https://gemmed.ghc-j.com/?p=54313 (GemMed 2023.5.29) 少子化対策は「医療・介護費削減」でなく、別途財源を確保せよ!病院への介護職配置は長期視点で検討を!—日病協 「異次元の少子化対策」の財源について、一部を医療・介護などの社会保障費改革で捻出し、一部を社会保険料へ上乗せして確保する議論が行われているようだ。しかし、高齢化が進む中で医療・介護費の縮減を行えば「質の低下」に繋がる。「社会保障制度内での財源の付け回し」ではなく、別途財源を確保して少子化対策を進めるべきである。5月26日に開かれた日本病院団体協議会の代表者会議で、こうした議論が行われたことが、会議終了後の記者会見で山本修一副議長(地域医療機能推進機構理事長)と仲井培雄会長(地域包括ケア病棟協会会長)から明らかにされました。近々に日病協としてのアクションを起こす構えです。 ●医療・介護分野が連携し、10年先、20年先を見て介護職員の育成・確保を 岸田文雄内閣では「異次元の少子化対策」を行う考えを打ち出しており、その財源について「一部を医療・介護などの社会保障費改革で捻出し、一部を社会保険料へ上乗せして確保する」案が浮上しきています。前者の「医療・介護などの社会保障費改革」とは、つまり「診療報酬・介護報酬のマイナス改定」などに代表される「医療費・介護費の削減」を意味します。この削減した財源を各種の少子化対策費に充当するものです。この点について日病協代表者会議では「社会保障制度の中で財源の付け替えをしているだけである。少子化対策が必要かつ重要で、進めることには大賛成であるが、財源については別途の調達が必要ではないか。医療費・介護費の削減は医療・介護サービスの質低下につながり、かえって医療費・介護費の増加につながってしまう。2024年度の次期診療報酬・介護報酬改定では『人件費の高騰』や『物価、光熱水費の高騰』などにも対応しなければならないことは明白であり、医療費・介護費削減論が出ていることに強い危機を覚える。日病協としてアクションを起こすべきである」旨で認識が一致。近々に山本議長・仲井副議長を中心に「アクション」の内容を具体化することになります。この点、5月25日には三師会(日本医師会、日本歯科医師会、日本薬剤師会)・日本看護協会・四病院団体協議会(日本病院会、全日本病院協会、日本医療法人協会、日本精神科病院協会)・全国医学部長病院長会議・全国老人保健施設協会・全国老人福祉施設協議会・日本認知症グループホーム協会が連名で「こども・子育て、少子化対策は極めて重要であるが、その財源捻出のために、病や障害に苦しむ方々のための財源を切り崩してはならない」との声明を示しています。6月上旬の、いわゆる「骨太方針2023」において少子化対策財源確保に関する考え方が固められることになり、今後の動きに要注目です。また、5月26日の日病協代表者会議では、次のような点についても意見共有が図られました。 ▽「高齢者の救急医療」について、安易に「地域包括ケア病棟や回復期リハビリ病棟等で対応すればよい」との方向で議論を進めてはならない。救急搬送患者には、一定の急性期機能をもとに必要な検査・処置などが行われる必要があり、その後に「急性期入院が必要な程度ではない」と判断されれば、いわゆる「下り搬送」を考えるべきである(関連記事はこちらとこちら(中医協総会)) ▽病院(病棟)への介護職配置について、「介護職の奪い合い」を懸念する声もある。頷ける部分もあるが、病院(病棟)への介護職配置を制度化することで、「看護職員が本体の看護業務専念できる」「『寝かせきり→寝たきり』の防止つながる」ほか、介護職員自身の意識や社会的な認知度も変わり、全体としての処遇改善なども期待できる。10年先、20年先を見て「医療・介護のそれぞれでどの程度の介護職員配置が必要であるのか」(現在、山本議長が理事長を務める域医療機能推進機構(JCHO)でDPCデータをもとにした「高齢者医療における介護業務の実態」把握を行っている)を明確にし、医療・介護が連携して介護職員の育成・確保に努めるべきである(関連記事はこちら(医療・介護意見交換会)とこちら(日慢協会見)) ▽病院薬剤師の確保に向け、「どういった機能を持つ病院で、どの程度の薬剤師が必要となるのか」を把握し、そのデータに基づく「提言」を6月に固める(関連記事はこちら) 上述の財源問題とも深く関連する事項であり(医療費縮減となれば、病院(病棟)への介護職員配置などは難しくなる)、今後、日病協でも「改定財源」と「改定内容」との双方をにらんだ議論・検討が続けられます。 *4-2-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20251225&ng=DGKKZO93436510U5A221C2EA2000 (日経新聞 2025.12.25) 診療報酬「3%ありき」政治の圧力、厚労省案丸のみ、財務相自ら接近 全体では2.22%プラス改定 2026年度の診療報酬の改定案が24日、正式に決まった。医療従事者の人件費などに回る本体部分が3.09%と30年ぶりの大幅な引き上げに至った内幕を探った。数字が事実上固まったのは19日。高市早苗首相と上野賢一郎厚生労働相、片山さつき財務相が首相官邸に集まった。日本医師会や自民党厚労族の意向を受けた厚労省が3%以上の引き上げを求める中、財務省は1%台で調整していた。通常は両者の綱引きの末に中間地点をにらんで落としどころを探るが、首相が決めたのは厚労省が提示した通りの3.09%だった。本体部分の報酬改定は2年に1回実施される。今回は物価上昇率が2%超で推移し賃上げ機運も高まるなか、医療機関の経営逼迫を訴える声が例年より強まっていた。財務省側は政権の医師会に対する配慮を早くから感じていた。11月下旬に閣議決定した経済対策を裏付ける2025年度補正予算で、厚労省は医療機関や薬局向けの物価上昇対応分として3000億円を要求。財務省の査定は1000億円台だったが要求すら超える4300億円で決着した。診療報酬をめぐり片山財務相と上野厚労相は12月11日に1回目、同16日に2回目の閣僚間協議をした。片山財務相は厚労省側に「野放図な財政運営はしない」との姿勢を示した。補正予算の歳出額がコロナ禍後で最大となり、長期金利が上昇するなど財政リスクが懸念されていた。それでも次第に引き上げ重視の機運が高まっていった。片山財務相は周囲に3%に近づけるべきだとの考えを隠さなくなり、1%台とする財務省案を念頭に「このままでは請け負えない」と発言するようになった。外圧も強まっていた。「財務省をねじふせる」。18日に党本部で急きょ開催された緊急集会で田村憲久元厚労相がこう挨拶した。目の前には医師会の松本吉郎会長の姿があった。大幅プラス改定を求める決議をまとめると、首相官邸に決議書を直接持ち込んだ。厚労省幹部は「これほど物価や賃金が伸びている中で1%台を提示するということは、残りは医療機関の経営努力でどうにかしろという意味なのか」と財務省の姿勢に疑問を示していた。財務省も医療機関の経営状態を改善する必要性は認めるが、必要以上の引き上げは国民負担の拡大につながると懸念する。50兆円に迫る医療費の2分の1は保険料でまかなう。改定率が上がるほど、社会保険料に上げ圧力が働く。保険制度を所管する厚労省は3%台の引き上げありきで動いた形跡がある。族議員らに対し、病院の赤字解消などに3%強の改定率が必要とする試算を提示して回った。財務省は、売上高にあたる医業収益から費用を引いて上昇率を小さく見せながら、費用を別に示す厚労省資料について「ダブルカウント」があるなどと問題視した。こうした批判を踏まえ、厚労省は「必要な改定率」を日ごとに差し替えた。議論の前提がめまぐるしく変わり、閣僚経験者は「何が正しい数字なのか分からなくなる」と話した。財務省幹部は「根拠に基づき議論できなかった」と振り返る。医師会は自民党の有力な支持団体だ。発足間もない高市政権が距離を取るのは難しい。財務省幹部は「片山氏は高市政権の重要閣僚として、改定率を上げることが長期政権につながり最善と考えたのだろう」と漏らす。医師らの人件費に回る本体部分と処方薬の価格である薬価を合わせた全体で2.22%のプラス改定となり、26年度の国費を1300億円弱押し上げる。26年末段階でインフレや賃金上昇が想定より上振れ・下振れした場合は27年度分の上乗せや減額も含めて対応する。自民党と日本維新の会は10月に結んだ連立合意書で、現役世代の保険料負担の引き下げを目指すと明記した。市販薬に似た成分や効果がある「OTC類似薬」の患者負担見直しは27年3月から上乗せ料金を徴収する方針が決まったものの、自民党や患者団体らの反対で維新が当初訴えた保険適用除外には至らず、改革効果はしぼんだ。診療報酬の総額である医療費が2%増えれば、現役世代らの保険料負担は年5000億円ほど増える。報酬を野放図に伸ばすだけでは、賃上げが消費に回る流れを妨げかねない。支払い能力のある高齢者らの負担引き上げなどの改革を進めなければ、医療保険制度の持続はおぼつかない。 *4-2-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20251225&ng=DGKKZO93435320U5A221C2EP0000 (日経新聞 2025.12.25) 高額療養費、しぼむ改革 患者負担の上限4~38%上げ、圧縮効果、当初案から半減 現役世代の負荷なお重く 患者の医療費を一定額に抑える高額療養費制度の見直し案が24日固まった。1カ月の自己負担の上限額を2027年8月までに今より4~38%引き上げる。現役世代らの保険料負担の圧縮効果は累計1600億円ほどで、石破茂前政権時代の当初案から半減する。患者団体への配慮で改革は大きくしぼんだ。上野賢一郎厚生労働相と片山さつき財務相が24日、26年度予算案の閣僚折衝で合意した。いま主に5つある所得区分について、まず26年8月に1カ月の上限を引き上げる。住民税非課税の層は4~5%、それ以外は7%ずつ上げる。住民税非課税を除く4つの区分を27年8月にそれぞれ3つに細分化して12区分とした上でさらに限度額を上げる。現状より7~38%の引き上げとなる。住民税非課税の人は26年8月以降は据え置く。27年の細分化で新たにできる年収約650万~770万円の区分の患者は、引き上げ幅が最も大きい。11万400円と、いまの8万100円から38%上がる。高額療養費制度では、がんや難病などで長期療養中の患者の負担を抑える「多数回該当」と呼ぶ制度がある。1年に3回、月額上限を超えたら4回目以降は下げる仕組みだ。毎月の限度額引き上げで対象から外れる患者の負担増を考慮して、26年8月に「年間上限」の仕組みを設ける。所得区分に応じて18万~168万円に設定する。70歳以上の一部が使える「外来特例」も負担を引き上げる。例えば年収がおよそ200万~370万円の患者だと今は月1万8000円を払えば何度でも通院できる。2年後に2万8000円となるよう段階的に上げる。「通い放題」となる制度が医療費を膨らませる一因になっているとの指摘があった。健康寿命の伸びを踏まえ対象年齢の引き上げを26年度以降に改めて検討する。もともと高額療養費制度の見直しは、石破前政権が24年末に公表した。患者団体の強い反発を受けて最終的に全面凍結に至った。政府は今回の改革で保険料負担を累計1600億円ほど圧縮できると見込む。石破政権時代の当初案は3700億円だった。高齢化で医療費が一段と膨らんでおり、現役世代の負担軽減につながるか不透明な面もある。24日の閣僚折衝では市販薬と成分や効果が似る「OTC類似薬」について、27年3月から患者から上乗せ料金を徴収する方針も決まった。77成分(約1100品目)は患者に薬剤費の4分の1を追加負担させる。保湿剤のヒルドイドやうがい薬のイソジン、抗アレルギー薬のアレグラなどが対象になる見通しだ。栄養保持を目的とした食品類似薬も26年6月から保険給付の扱いを変える。通常の食事で栄養を補給できる患者が食品で代替できるものを使った場合は給付を外す。後発医薬品が普及した薬の先発薬を希望する患者から上乗せ料金をとる制度も同時期に負担割合を引き上げる。こうした政策で累計1000億円の保険料負担の抑制を目指す。介護保険制度改革では、利用料の2割負担の対象者拡大について年内に結論を出すのを見送ると正式に決めた。閣僚折衝の合意書で、27年度から始まる新たな介護保険事業計画の前までに「結論を得る」と記すにとどめた。 *4-2-3:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20260214&ng=DGKKZO94412460T10C26A2EA4000 (日経新聞 2026.2.14) 医療効率化、踏み込み不足 インフレ転嫁で患者負担上げ、6月から初診時20円、賃上げ分は170円以上 診療報酬改定 中央社会保険医療協議会(厚生労働相の諮問機関)は13日、2026年度診療報酬改定を巡り、個別サービスの見直し内容をまとめた。初診で20円、再診は30円の引き上げをするなど、インフレに直面する医療機関の経営コストを患者に転嫁する。窓口負担や保険料の上昇を抑えるには、医療の効率化に向けた一段の改革が欠かせない。「物価や賃金が緩やかに上昇し続ける社会経済情勢の変化に対応しつつ、人口減少が進む中で質の高い医療を提供していくという例年にない難しい課題があった」。13日に答申を受け取った上野賢一郎厚労相はこう語った。新しい報酬は6月に反映する。診療報酬は医療サービスの公定価格で、診察や手術など医師らの一つ一つの技術料に当たる本体部分は原則2年に1度改定する。今回の改定は、インフレや賃上げで経営が逼迫する医療機関に、どれだけ対応の原資を確保するかが最大のテーマだった。政府は25年末に本体部分の総額を3.09%と30年ぶりの引き上げ幅とすることを既に決めていた。中医協の答申で、具体的にどう配分するかが焦点だった。まずインフレや賃上げに対応できるよう基本料を見直す。初診料は2910円で据え置くものの、再診料は760円と10円引き上げる。入院基本料も例えば救急搬送や手術に対応する「急性期一般入院料」で最も高いもので1万8740円と1860円上げる。今回からインフレ対応分として初・再診に上乗せする「物価対応料」ももうける。初・再診には1日あたり20円を上乗せする。急性期一般入院料で最も高いものは580円上乗せになる。無条件で算定でき、実質的には基本料金の底上げといえる。既存の賃上げ対応分も引き上げる。看護師らの基本給や毎月の手当に使い道を限った「ベースアップ評価料」について、初診は1日あたり最低170円、再診は40円取れるようにする。地方厚生局に算定を届け出た医療施設が取れる。25年度以前から取っていた医療施設は、従来分も加味して初診は230円、再診は60円とれる。患者にとってはどのケースでも最低170円、40円の値上げとなる。厚労省が示した具体例では、例えば20代で喉の痛みなどで外来受診した場合、医療費の総額は3860円と従来比で120円あがる。現役世代の窓口負担割合は3割なので、負担額は1158円と36円の値上げとなる。医療デジタルトランスフォーメーション(DX)や後発薬に関する処方の報酬統合や引き下げを加味しても負担増となる。ほかにも急性期病院向けに1日あたり最高1万9300円と従来の入院基本料よりも高額な報酬をもうけるなど、人口減少下でのサービス維持に向けた手厚い支援が目立つ。踏み込み不足や次の改定に残した課題も多い。例えば幅広い不調を最初にみるかかりつけ医に関しては、健康保険組合連合会など支払い側は25年4月に始まった「かかりつけ医機能報告制度」と連動させ、より厳格な制度の運用を求めていた。今回の改定では制度開始から間もなく報告が十分集まっていないとの理由で、生活習慣病の管理に関わる報酬で診療データの提出を促すなどの小幅改正にとどまった。標準的な薬物治療を取り決めたリストと使用に関する指針を定める「地域フォーミュラリ」と呼ぶ取り組みの実施も、後発薬の安定使用を評価する報酬の要件の一つとして初めて盛り込んだ。全国展開が進めば年10兆円を超える薬剤費の圧縮に効果を発揮すると期待されるものの、努力義務どまりで実効性は見通せない。今回の改定率は政治的な判断が優先された面が強く、どこまで根拠に基づく引き上げ率だったかは疑問が残る。薬価の圧縮を加味しても26年度の医療費は2%超膨らむ。単純計算で窓口負担を年1400億円、保険料負担を5000億円以上押し上げる。患者の安全性を確保しつつ医療費を適切に見直すにはデータに基づく議論が欠かせない。高齢化と高額薬剤の開発加速などで医療費は一段の膨張が予想される。支え手である現役世代は細っており、メリハリを欠いた改定を続けている余裕はない。 *4-2-4:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20260214&ng=DGKKZO94412670T10C26A2EA4000 (日経新聞 2026.2.14) 急性期の医療体制を集約 病気やけがの直後の治療を担う急性期の医療提供体制を集約する。救急搬送の受け入れや全身麻酔の手術などの実績が豊富な病院向けに、既存の入院料よりも高額な「急性期病院一般入院基本料」を新設する。高齢者の救急搬送の受け入れやリハビリ、在宅復帰支援などの病棟がある病院には届け出を認めず、病院ごとの役割分担を促す。難易度が高く集中的な治療は体力が低下した高齢者には実施しにくい。少子高齢化で需要の減少が見込まれる。働き手世代が減り、医療従事者も不足する。患者や医師を集約し、修練できる環境を整える。新設する入院料は看護職員を手厚く配置する病院の額を高くする。患者7人につき1人以上の看護職員を配置する病院は入院1日あたり1万9300円を請求できる。救急搬送が年2000件以上、全身麻酔手術が年1200件以上あることなどを条件にする。患者10人につき1人以上の看護職員を配置している医療機関は1日あたり1万6430円を請求できる。救急搬送が年1500件以上か、年500件以上で全身麻酔手術が年500件以上あるのが条件となる。看護職員や理学療法士などのリハビリ職、管理栄養士、臨床検査技師を患者25人につき1人以上追加配置している場合は報酬を上乗せできる。 *4-2-5:https://www.nikkei.com/paper/related-article/?b=20260214&c=DM1&d=0&nbm=DGKKZO94412460T10C26A2EA4000&ng=DGKKZO94412500T10C26A2EA4000&ue=DEA4000 (日経新聞 2026/2/14) 大病院から患者紹介 診療所、初診料600円上乗せ 地域の診療所が大病院から患者の紹介を受けると、初診料に600円を上乗せできる仕組みが6月に始まる。病状が安定した患者は地域の「かかりつけ医」が担当し、病院はより重い患者に専念する役割分担を促す。病院の待ち時間短縮や勤務医の負担軽減などにつなげる。中央社会保険医療協議会(厚生労働相の諮問機関)が13日まとめた2026年度の診療報酬改定の答申に盛った。診療所や病床数(入院用ベッド)が200床未満の中小病院が、大学病院などから紹介を受けた場合が対象になる。患者は600円のうち1~3割分の窓口負担が増える。大病院と診療所の役割分担を巡っては、紹介状を持たずに大病院を受診した患者から窓口負担とは別に、特別料金をとれる仕組みが既にある。かかりつけ医が患者の幅広い不調をまず診察し、必要に応じて大病院に紹介する仕組みを促してきた。新たな報酬制度によって、いったん大病院が診た患者でも、回復したり症状が落ち着いたりすれば、経過観察などは地域の診療所に引き継ぐ「逆紹介」の流れをつくる。 *4-2-6:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20260216&ng=DGKKZO94428800V10C26A2TB2000 (日経新聞 2026.2.16) ロボットであなたも「50人力」 AI進化、1人複数台操作、サイバーエージェント、21日から実証実験 サイバーエージェントやパナソニックホールディングス(HD)が1人で複数台のサービスロボットを操れるシステムの開発を進めている。人工知能(AI)に判断を補助させることで人間1人が動かせるロボットの数を飛躍的に増やす。八面六臂(ろっぴ)の活躍をするロボットが、人手不足解消の切り札になるかもしれない。「8番エレベーターがメンテナンス中なので、道案内から外します」。館内を動き回るロボットからの情報を基に、AIが人間に報告。スマホの表示を見た指示役の人間が「OK、9番もなので外しておいて」と返答する。以降、来館者にはメンテナンス中のエレベーターを除いた道順が示される――。 ●人は想定外のみ サイバーエージェントがアンドロイド研究の第一人者として知られる大阪大学の石黒浩教授の研究室と研究を進めるのは、1人で複数台を同時にみられる接客ロボットシステムだ。お店の場所や混雑状況などよく聞かれる質問にはAIが応じ、人間は想定外の問い合わせにのみ対応する。 人間からの指示を学習し、AIだけで対応できる状況を増やすことで操作できる台数が増やせる。21日から3月8日まで複合商業施設のアジア太平洋トレードセンター(大阪市)で実施する実証実験では、人間1人の下に固定型の接客ロボットと施設内を巡回して情報収集する移動型ロボットを計15台置き、館内の案内や巡回を任せる予定だ。プロジェクトを率いるサイバーエージェントAI事業本部の馬場惇主任研究員は「2030年をめどに、最大50台同時操作の実現を目指している」と話す。人間と、実務を担う調整役AI、接客ロボットで構成される現在のモデルでは、1人で同時にみられるのは10~20台ほど。学習を進めて調整役AIを増やし、人間の役割をAIの評価に専念すれば、1人で50台以上を並行して管理することも可能になると馬場氏はみる。28年中にはドバイ未来財団と協力し、日本国内とドバイ空港などで100台規模のロボットを同時操作する大規模実験をする計画だ。少子高齢化を背景に、人手不足は進む。パーソル総合研究所と中央大学の推計によると、35年には国内で384万人分の労働力が不足する見通し。中でもサービス業は深刻で、1日あたり115万人分の労働力に相当する532万時間分が不足すると予想されている。人間1人が払える注意力には限界があるため、配送や清掃、接客などをするサービスロボットは1人で操作するのは数台が限界だった。状況を変えたのはAIだ。人間の判断を補佐するようになったことで、同時に操作や監視ができる台数が一気に増えた。パナソニックHDは1人で最大10台の宅配ロボットを遠隔監視する実証実験を進めている。歩道と車道の境界の検知などオペレーターの業務の一部をAIが補助し、1人が同時に運用できるロボットの台数を増やした。まずは4台での実用化を想定し、需要が大きければ同時に運用する台数を増やす予定という。TOPPANHDは1月、異なる種類のロボットを一元制御するシステムの販売を始めた。現実世界の情報を仮想空間内に再現する「デジタルツイン」の技術を使い、ロボットの場所や動きを1つのシステム上で把握できる。ロボットの動きはほぼ自動化されており、トラブルがあったときだけ人間が対応する。これまでに「羽田イノベーションシティ」(東京・大田)内で清掃ロボットの実証実験を実施したほか、TOPPANのオフィスでは同時に6台のロボットがコーヒーや郵便物を運ぶ。TOPPANデジタル事業推進センターの志賀敦課長は「理論上は何台でも動かせる」と話す。 ●障害者雇用にも 働く場所に制約がない複数ロボットの操作は、家から出るのが難しい高齢者や障害者らの働きやすさにもつながる。志賀氏は「システムが人の作業を補助してくれるので、ハンディキャップがある人でも働きやすい」と指摘する。サイバーエージェントの馬場氏は「例えば人材プールの中から『今日働ける人』に遠隔で操作を担当してもらうことができる。スマホなどで指示を打ち込む形なので、対人関係が苦手な人でも操作しやすい」と話す。うつ病などの精神障害を抱える人が増える一方で、外出や対人関係にストレスを感じたり、日々の体調に波があったりといったマネジメントの難しさから採用は進みづらかった。政府は企業に対して従業員の2.5%にあたる障害者を雇用するよう義務付けているが、25年時点で54%が未達だ。26年7月には法定雇用率が2.7%に引き上げられる。多様な人材が活躍できる場を用意することは企業にとってもメリットは大きい。誰もが働きやすくなる未来に向けたテクノロジーに期待が集まる。 *4-2-7:https://www.yomiuri.co.jp/economy/20250919-OYT1T50036/ (読売新聞 2025/9/19) 8月の消費者物価指数は2・7%上昇、9か月ぶりに3%下回る…食料は3か月連続で8%台 総務省が19日発表した8月の全国消費者物価指数(2020年=100)は、値動きの大きい生鮮食品を除く総合が111・6となり、前年同月比で2・7%上昇した。上げ幅が3%を下回るのは、2024年11月以来9か月ぶり。電気・ガス料金の政府補助が8月支払い分から反映されたほか、コメ類を含む食料の値上がり幅が前月より縮小したことが影響した。上昇は48か月連続。品目別では、生鮮食品を除く食料は前年同月比8・0%の上昇で、3か月連続で8%台の伸び率となった。上昇率は前月の8・3%から縮小し、24年7月以来、1年1か月ぶりに鈍化した。コメ類は前年同月比69・7%の上昇で、前月の90・7%上昇から鈍化した。チョコレートやコーヒー豆は50%近い上昇で、おにぎりや鶏卵は10%以上上がった。エネルギーは前年同月比3・3%の下落で、前月の0・3%下落から下げ幅を拡大した。政府補助が反映されたことで、電気代は7・0%、都市ガス代は5・0%、それぞれ下落した。一方、ガソリンは0・6%上昇した。家計の実感に近い生鮮食品を含む総合は112・1で、前年同月比2・7%の上昇だった。 *4-3-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20251129&ng=DGKKZO92897420Z21C25A1MM8000 (日経新聞 2025.11.29) 介護保険料40~120億円圧縮 厚労省、2割負担拡大へ4案 現役負担軽く 介護サービス利用料の2割負担の対象者拡大に向けた厚生労働省案が28日分かった。いま280万円とする所得基準を260万、250万、240万、230万円にそれぞれ引き下げる4案があり、介護保険料の圧縮効果は40億~120億円を見込む。収入や預貯金がある高齢者の負担を増やし、現役世代の保険料を軽くする。12月1日に開く社会保障審議会(厚労相の諮問機関)の介護保険部会で示す。現状の介護保険は利用者の自己負担は原則1割で、単身世帯で年金収入とその他の所得が計280万円以上といった場合は2割、現役世代並みの所得がある人は3割を負担する。4案のうち下げ幅が最大の230万円なら2割負担の対象は33万人ほど拡大する。介護給付費をおよそ240億円、保険料を120億円、国費を60億円圧縮できる。下げ幅が最も少ない260万円のケースだと対象拡大は13万人にとどまる。給付費と保険料、国費の圧縮効果もそれぞれ80億円、40億円、20億円まで縮む。激変緩和措置として、当分は月7000円の負担増加の上限額を設ける案も示す。預貯金額が一定額以下の人は1割負担を維持する方向だ。単身世帯の場合、預貯金が300万、500万、700万円の3つのケースを例示する。たとえば所得基準を280万円から240万円に引き下げた場合、新たに26万人ほどが2割負担の対象となる。預貯金額が500万円以下の人に適用するケースだと、12万人は1割負担で据え置きになる。厚労省はかねて2割負担の対象拡大を検討してきたものの、自民党や関係団体などの反発で過去3度結論を先送りにした。政府は6月に決めた経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)に「25年末までに結論が得られるよう検討する」と明記した。 *4-3-2:https://digital.asahi.com/articles/DA3S16356478.html (朝日新聞 2025年12月3日) 訪問介護、広がる倒産 零細から中堅業者まで 3年連続最多 2025年の訪問介護事業者の倒産件数が、11月時点で過去最多を更新したことが東京商工リサーチ(TSR)の調査でわかった。人手不足や、介護報酬(介護サービスの公定価格)の改定を背景に、合理化が難しい中・小規模の訪問介護事業者を中心に、経営環境が厳しさを増しているとみられる。TSRによると、訪問介護事業者の倒産件数は11月末時点で85件に達し、過去最多だった24年の81件を上回った。23年から3年連続での最多更新となる。倒産の原因は、売り上げ不振が71件で全体の84%を占めた。従業員10人未満が74件、負債額1億円未満が76件と、いずれも9割近くを占め、小規模事業者の倒産が多い。ただ、負債額1億円以上の倒産も9件あり、前年から2件増えた。施設などを含む介護事業者全体の倒産件数は11月末時点で161件となり、この時期として過去最多となっている。調査を担当したTSR情報部の後藤賢治課長は「人手不足や介護報酬減額に起因した業績悪化が目立ち、零細から中堅にまで倒産は広がっている」と分析する。要因の一つとして指摘されているのが、厚生労働省が3年に1度行う介護報酬改定だ。24年度には介護職員の処遇改善を目的に全体の報酬は引き上げられた一方、訪問介護の基本報酬が2%以上引き下げられた。介護報酬引き下げは、事業者にとって収入減の打撃となる。さらに深刻な人手不足を背景にした人件費や求人コストの増加、ガソリン代や電気代など運営コストの上昇といった複合的な要因により、経営が圧迫されている。 *4-3-3:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20251211&ng=DGKKZO93143860Q5A211C2EP0000 (日経新聞 2025.12.11) 介護が届かない日(上)自宅ケアかなわぬ未来 過去最多の介護倒産、訪問型ゼロの町村2割増 過去最多ペースの介護事業者の倒産が続いている。その半数ほどを訪問介護が占める。特に地方もしくは小規模事業者の撤退が目立ち、事業所が一つもない自治体は1年間で2割増えて115町村となった。多くの人が住み慣れた自宅でのケアを望んでいるが、それが届かぬ未来が迫っている。「家が一番良いです」。高知県四万十市の中心部から車で20分ほどの山あいに一人で暮らす西尾清子さん(94)は笑顔で話す。週に5日、市内の訪問介護事業者「あらたケアサービス」のスタッフが自宅を訪れて食事を作ったり、入浴を補助したりする。おいの勧めで通所介護(デイサービス)を試したがなじめず、5年前から訪問介護を受け始めた。2年前に利用していた事業所が廃業し、あらたケアサービスに切り替えた。おいの茶畑守冨さんは「代わりの事業者が見つからなかったら、私自身が介護にかかりきりの生活になった」と話す。2005年創業のあらたケアサービスは介護スタッフ15人ほどの中規模事業者だ。経営は年々悪化し、24~25年期は創業時以来初の赤字だった。24年度に訪問介護の基本報酬が2%ほど引き下げられたことが影響した。移動に必要なガソリンや光熱費の高騰ものしかかる。人手不足が深刻で、介護スタッフの半数は70代だ。荒川泰士社長は「団塊の世代の介護需要は増えるが、人手の確保が難しい。5年後も見通せない」と打ち明ける。様々な統計を分析すると、地方の訪問介護網の苦境が深まっていることがわかる。東京商工リサーチによると、24年度の介護事業者全体の倒産件数は179件。10年前に比べて約3倍に増え、比較可能な00年度以降で過去最多だった。そのうち86件(48%)が訪問介護で、従業員10人未満の小規模事業者が8割を占めた。都道府県別に65歳以上人口あたりでみると、和歌山、滋賀、熊本、高知などで多い。訪問介護事業所が一つもない自治体も増えている。厚生労働省公表の6月末時点の事業所一覧をもとに集計すると、25年に事業所がゼロの自治体は32都道府県の115町村。24年の97町村から2割増えた。22年は92町村、23年は96町村でここ1年間の増加が顕著だ。高知県で4町村、北海道は3町村増えた。群馬、長野、岡山、熊本はそれぞれ2増えた。すべての事業者が痛んでいるわけではない。厚労省の23年の事業所数の調査によると、食事や入浴介助など施設内でサービスを提供する「特定施設入居者生活介護」の事業所数は5869と10年前から4割増えた。訪問介護も全国でみれば前年比1.3%増と微増だ。25年も24年を上回るペースで倒産が続く。業態や地域間の差を残したまま、「介護空白地」が広がる可能性がある。厚労省が16年に全国の40歳以上を対象にした調査によると「自宅で介護を受けたい」と答えた人の割合は7割にのぼった。最近の要介護3以上を対象にした調査でも訪問型サービスのみを受ける7割ほどの人が、施設系の入所を「検討していない」と答える。政府は高齢者が住み慣れた地域で、医療や介護、生活支援のサービスを垣根低く利用できる「地域包括ケアシステム」の構想を掲げてきた。自宅で介護を受けられる訪問介護はその要の一つ。倒産が増え続ければ、仕組みの根幹が揺らぐ。高齢者福祉に詳しい東洋大の早坂聡久教授は「00年に始まった介護保険は民間事業者の力を生かして全国にきめ細かい介護網を整備する設計だ。効果はあったが、採算が取れずサービスを維持できない地域が出てきている。サービスの担い手として自治体の関与を増やすのも一つの選択肢だ」と指摘する。 *4-3-4:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20260220&ng=DGKKZO94536210Z10C26A2EP0000 (日経新聞 2026.2.20) 介護職の低賃金、改善遠く 全産業平均より7万円安 補助金効果に限界 介護職員の賃金が伸び悩んでいる。業界の労働組合が1月に公表した平均月給は27万円弱とフルタイムの一般社員より7万円低く、差は拡大傾向にある。政府は原則3年ごとの介護報酬改定や補助金で処遇改善を後押ししてきたが、効果に限界がある。報酬体系の見直しや、生産性向上を促す抜本改革が欠かせない。UAゼンセン日本介護クラフトユニオンによると月給制の介護職員の残業代などを除く平均賃金は2025年7月時点で26万9194円だった。厚生労働省の25年の賃金構造基本統計調査ではパートタイムなどを除く全産業の労働者の平均賃金が月34万600円だった。介護職との差は拡大が続いており、25年は7万1406円と前年から6717円広がった。同ユニオンの染川朗会長は「人材確保のためイメージアップや外国人の活用に取り組んでいるが、低賃金が解決しないことには意味がない」と危機感を示す。産業界全体では大幅な賃上げが続く。連合集計による春季労使交渉(春闘)での賃上げ率は24年、25年と2年連続で5%を上回った。連合は26年交渉で3年連続5%以上の実現を掲げる。前回24年度の報酬改定は全体の改定率1.59%のうち0.98%分を職員の処遇改善に充てたものの十分な賃上げにつながったとはいえず人手不足に歯止めがかからない。政府は25年度補正予算で介護職員の賃上げや職場環境改善を支援するため1920億円を計上した。25年12月~26年5月にかけて職員1人あたり月最大1万9000円を補助する。26年6月には介護報酬を臨時で2.03%引き上げ、うち1.95%を処遇改善に充てる。厚労省の推計では22年度の介護職員数215万人を維持しても26年度に25万人、40年度には57万人が不足する。特に訪問介護の報酬は出来高制で人口減少が進む地域で収益を確保しづらい。厚労省は社会保障審議会(厚労相の諮問機関)の介護保険部会で27年度にも過疎地の事業者に月単位の定額報酬制を導入する方針を示した。事業者が必要なサービス提供を控えるといった懸念もあり、委員から「利用者の視点から納得が得られるサービス体系としてうまく構築できるのか」との慎重論も出た。業種別の最低賃金の導入を求める声もある。石破茂前首相は25年3月の参院予算委員会で、国民民主党の議員への答弁で「政治主導で判断する」と答えた。当時連立与党の自民党と公明党の両幹事長が導入を検討する方針で一致した。高市早苗政権になり公明党が連立離脱した。議論の進展は見通せない。中小・零細事業者の多い介護業界は投資体力に乏しく、処遇改善と同時に取り組むべき生産性向上の努力が不十分になりやすい構造がある。ロボットなどテクノロジー活用や、家事代行のような保険外サービスを組み合わせて提供するといった取り組みが重要になる。 *4-4:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20260212&ng=DGKKZO94352140R10C26A2CM0000 (日経新聞 2026.2.12) ケアマネ「影の仕事」重く 担い手不足、受験者も減、家事や通院同行、行政手続き… 専門家「役割周知を」 介護サービス利用の計画を作るケアマネジャー(介護支援専門員)のなり手不足が深刻化している。背景の一つが、家事の手伝いや通院の同行など本来の役割を超えた「影の仕事(シャドーワーク)」の常態化。要介護者が増え続けるなか、問題を放置すると離職にもつながりかねず、国や自治体が対策に乗り出している。「できるだけ引き受けないようにしたいが、目の前に困っている人がいると放っておけなくて……」。岡山県倉敷市に拠点を置く社会福祉法人で働くケアマネの男性職員(41)はため息をつく。担当する利用者は40~50人。介護サービスの計画(ケアプラン)作成やサービス事業者、医療機関との連絡・調整が主な仕事だが、生活保護の申請といった行政手続きや成年後見人探しなど業務外の頼まれ事を引き受けることもあるという。「介護現場は個々のケアマネの責任感に依存しているのが実情だ」と明かす。本来の業務範囲を超えた、こうした「シャドーワーク」に追われるケアマネは少なくない。埼玉県で働く50代のケアマネの女性は、医療機関の受診を拒む利用者を説得し通院に付き添ったり、家族に代わって医師の説明を聞いたりすることも多い。いずれも断り切れずに引き受けた無報酬のボランティア。「やるべき仕事に十分な時間を割けない」と訴える。国内の65歳以上は3600万人を超え、人口の3割を占めるようになった。要支援・要介護の認定を受けた人は2023年度末時点で708万人と00年度から約3倍に増えた。介護ニーズが高まる一方で、ケアマネの従事者数は減少傾向にあり、18年度の約19万人をピークに、23年度は18万5000人となった。専門性の向上を目的に受験資格が18年度から厳格化され、介護福祉士など特定の国家資格の保有者などに限定されたのが一因とみられ、25年度の全国の受験者数は5万人と過去20年で6割減った。ケアマネの業界団体「日本介護支援専門員協会」(東京)が在宅介護サービス事業所の代表者ら約1000人を対象に実施した23年調査によると、採用が困難になっている要因として、賃金や処遇の低さに関する指摘などとともに「業務範囲があいまい」「仕事量の多さ」といった不満が目立った。ケアマネがシャドーワークに追われると、離職につながったり、適切なケアプランをつくれなくなったりする状況が懸念される。同協会の24年調査では17.9%がケアマネを辞めたいと答え、そう思う理由について複数回答で質問したところ8割が「業務負担の重さ」を挙げた。問題を受け、国や自治体は対策に動いている。厚生労働省の有識者会議が24年12月に公表した中間整理によると、部屋の片付けや買い物支援、徘徊(はいかい)時の捜索などを「地域課題」と位置付け、ケアマネが本来の業務に注力するために市町村が主体となって対応するよう求めた。なり手を確保するため、厚労省は実務経験の要件を5年から3年に短縮する案を検討しているほか、業務負担の軽減に向け、25年度の補正予算に関連経費として14億円を計上。ケアマネからの相談窓口の設置や要介護者の身の回りの世話などの業務を請け負う受け皿づくりなど、都道府県が講じる支援策の3分の2を負担するとした。川崎市では、市職員とケアマネが定期的に意見交換を重ねる連絡会が開催されている。シャドーワークの解消も議題の一つで、市担当者は「人材が限られるなか、労働環境を改善できるよう検討を続けたい」と話す。淑徳大の結城康博教授(社会福祉学)は「利用者が介護の相談と日常生活の相談を混同していることが多く、本来業務の内容が十分に理解されていない」と指摘。ケアマネの役割を周知するとともに、待遇改善によって離職を防ぐ取り組みが欠かせないとしている。 ▼ケアマネジャー 2000年に始まった介護保険制度とともに導入された専門職。資格を取得するには、看護師や社会福祉士などの国家資格と5年以上の実務経験が必要で、都道府県が試験や研修を実施する。 介護保険法はケアマネの役割について「市町村、事業者、介護施設などとの連絡調整を行う」と規定し、ケアプランが適切かを確認するため、月に1度の訪問などを法定業務としている。報酬は介護保険から支払われ、相談による利用者負担はない。税になれば業界再編に加えて、利益率の高い医薬品で稼ぎ、割安な食品を販売してきたドラッグストアのビジネスモデルに影響を与える可能性もありそうだ。 <方向性を誤って昔帰りしたがる日本> PS(2026年3月7、9日追加):*5-1-1は、①東電柏崎刈羽原発再稼働後の政府は、原発建て替えに照準 ②政府は様々な支援策を用意するが、さらなる後押しを求める電力会社と綱引き ③建設費高騰(欧米は1基2兆円超)で民間企業単独投資は限界 ④「長期脱炭素電源オークション」で固定費を20年間保証する制度があるが、電力会社は費用上振れや収入不透明を懸念 ⑤鹿児島県薩摩川内市で大規模AIデータセンター建設計画があって電力需要増から「川内3号機の凍結解除に繋がるのでは」と期待する人もいるが、建設に20年かかるためDC需要には間に合わない ⑥政府は電力会社が建て替えに踏み切れるよう支援策を拡充し、2023年度には原発など「脱炭素電源」の建設を支援する「長期脱炭素電源オークション」を開始したが、電力会社は「支援不十分」「費用上振れリスク大」と慎重 ⑦高橋法政大教授は「電力自由化したが発電市場で競争が働かず、安定供給できないとして政府は原発への支援を強化するが、もともと強い大手電力10社への支援は競争をさらに阻害する。原発の立地地域向けの交付金等の支援はすでに盛りだくさんで、その上新増設のためにより魅力的な条件を重ねて事業者側と綱引きしているが、大手電力への支援強化は競争を阻害し、消費者には負担増」としている ⑧矢島電力中央研究所名誉シニアアドバイザーは「原発は計画から廃止までの総事業期間が100年、高レベル放射性廃棄物への長期的対応も求められて事業リスクが大きく電力自由化とは相いれないため、英国のように総括原価方式に近い制度設計が必要。脱炭素推進やエネルギー安全保障とのバランスを踏まえて慎重な検討が必要」 等としている。また、*5-1-2は、⑨米国・イスラエルによるイランへの軍事攻撃後、原油価格などの高騰を受けて輸入エネルギーに依存する国の通貨がとりわけ売られた ⑩韓国ウォンが最大約3%下落、ユーロ約1.8%、円・英ポンド約1%安、インドルピー(0.8%) ⑪日本は輸入原油の95%を中東に依存し、ホルムズ海峡閉鎖の影響で円安 ⑫米国はシェール革命でエネルギー純輸出国に転じたため、原油高はドル高要因 としている。そして、2026年3月6日の*5-1-3は、⑬EUが脱炭素分野の域内生産を優遇する法案を発表し、i)EV・太陽光・風力・蓄電池・水素・低炭素鉄鋼・レアメタル等の環境技術を支援 ii)補助金や公共調達の条件として、一定の域内生産比率を要求 iii)中国製品排除を狙った保護主義色が強い ⑭中国製品排除と欧州産業競争力強化が目的 ⑮補助の対象となる「域内」はEU加盟27カ国とノルウェーなど欧州3カ国を含む欧州経済地域(EEA) ⑯フランスのマクロン大統領は「欧州でもっと多くの製品を作る必要がある」と語り、メード・イン・EU規定の策定に動いた ⑰英国・トルコに工場を持つ自動車メーカーや北欧・チェコなどが反発し、EVは車載電池を除いた部品の70%を域内生産することが補助の条件に としている。 このうち、⑬i)ii)iii)・⑭⑮⑯のように、EV・太陽光・風力・蓄電池・水素・低炭素鉄鋼・レアメタル等の環境技術を支援する補助金を出し、公共調達の条件として域内生産比率を要求するのが、環境と技術の両立を図って域内の産業競争力を強化するための正解であり、これは、フクイチ事故後、明白になっていることである。しかし、価格競争力や人材競争力の問題で既に他国で生産開始している企業は、⑰のように反発するだろうが、自国の競争条件も次第に改善していかなければ産業が空洞化して技術も雇用も失い、社会保障すらできなくなるのは時間の問題だ。 にもかかわらず、日本は、⑪のように、ホルムズ海峡が閉鎖されれば大変なことになることがわかっていながら原油の95%を中東から輸入し続け、⑨⑩のように、原油価格高騰で貿易収支悪化が予想されて円安になり、反対に、エネルギー純輸出国の米国は、⑫のように、原油高でドル高になったのだ。そして、日本は南鳥島近海のレアメタルやメタンハイドレートなど自給可能な資源ポテンシャルを世界最大級に持ちながら、それらを今まで開発せずに国富を流出させ続けて高い資源を買い、地球環境を悪化させ、国民を貧しさせながら“資源外交”をしてきたのだが、こんなのは馬鹿しかやらない外交である。 さらに、フクイチ事故の1度の失敗だけでは懲りず、政府は、①②③⑥のような支援策を用意して原発建て替えを促しているが、つい先日まで「原発は安い電源である」と言っていたのだから、原発建設から廃炉・放射性廃棄物の処理・事故時の補償まで一切を国の支援なく市場競争で行なうべきであり、原発支援なら商業用でも財源を問わないというのは矛盾した話だ。また、東日本大震災前後から地震や火山噴火が多くなっている日本では、④の「長期脱炭素電源オークション」にも私は反対であるし、⑤の鹿児島県薩摩川内市は大正噴火級の桜島大噴火が起れば風向きによって数cm〜数十cmの降灰(鹿児島市中心部は1m)が想定される上、大規模AIデータセンター建設計画があっても原発建設には最低20年はかかるため需要には間に合わない。 従って、⑦の高橋法政大教授の「電力自由化したが発電市場で競争が働かず、安定供給できないとして政府は原発への支援を強化するが、もともと強い大手電力10社への支援は競争をさらに阻害する」というのに賛成で、公平な自由競争さえできていれば、日本でも再エネが最安値の電源であり、分散発電で安定供給とセキュリティーを両立できていたことは間違いない。⑧の矢島電力中央研究所名誉シニアアドバイザーは原子力村の人らしく、昔帰りの総括原価方式(電力会社はコストをすべて料金に転嫁できるため、コスト削減のインセンティブが働かない)を推奨しておられるが、これでは消費者に電力会社選択の余地がなくなって電気料金を高止まりさせるため、2016年の電力小売り全面自由化に伴って原則廃止したのだ。 そのような中、*5-2-1は、⑱日本の再分配制度には2つの欠陥があり、i)中低所得の子育て世帯の負担が重い ii)負担能力がある高齢者が低負担になっている ⑲社会保険料は所得に対する逆進性があり、i)年金・医療・介護は公的保険であるため応能負担も入っているが、保険料に上限が設けられ所得が多くても一定額まで ii)中低所得者の負担が重い iii)少子高齢化で高齢者の医療・介護を支える費用が膨らみ、減る現役世代の保険料に上乗せされて世代間で給付と負担の不均衡 iv)民間自動車保険で考えてみると、保険料は事故の確率と補償金額から計算され、加入者が裕福か低所得かによって負担額は変わらない ⑳解決はi)高齢化に伴う費用増を「保険料ではなく公費(消費税)」で賄う ii)基礎年金国庫負担割合を1/3分から1/2に上げた2009年度の改革が好例 iii)消費活動は保有資産も含めた家計の状況を反映するため、所得は少ないが資産のある高齢者も応能負担する iv)消費税は社会保険の適用対象外で事業主負担がない中小・零細事業所も納めるため、すべての個人・法人が少子高齢化を乗り切るための痛みを分かち合う形 v)新政権が消費税率の引き下げに踏み切れば構造改革が止まる ㉑代替策は、i)資産を厳密に勘案した負担の枠組みなど余力のある高齢者に負担増を求める代替策が急務 ii)給付付き税額控除は有力だが、年金受給者を給付対象に含めたり、所得税増税等の現役世代負担増で財源を賄ったりすれば「再分配の欠陥」をかえって広げる 等としている。 このうち、⑱ii)及び⑳ii)のように「負担能力がある高齢者が低負担」「年金受給者を給付付き税額控除の給付対象に含めたり、所得税増税等の現役世代負担増で財源を賄ったりすれば再分配の欠陥をかえって広げる」というのは、高齢者を一括りにして負担能力があるかのように記載している。しかし、年金というフローの所得がいくらで、資産というストックがどういう種類でどれだけあるかを把握していなければ、単に高齢者からむしり取ることを目的とした高齢者いじめになる。そのため、こういうことを言う人は、自分は高齢になることはなく、両親や祖父母も年金や医療・介護保険を利用することはないと思っているのだろうが、⑱i)や⑲iii)のように、「中低所得の子育て世帯の負担が重い」とか「少子高齢化で高齢者の医療・介護を支える費用が膨らみ、減る現役世代の保険料に上乗せされて世代間で給付と負担の不均衡」としていることについては、現在は児童手当や高校までの教育無償化が充実してきたため、その上にフローの所得がいくらあれば「中低所得の子育て世帯の負担が重くならない」と言うのかも、数値を出して正確に比較しなければ不公平で不公正な結論になる。 なお、⑲iv)は、民間自動車保険で考えてみたそうだが、自動車保険は損害保険であるため事故の確率と補償金額から保険料が計算される。しかし、医療保険や介護保険は、生命保険(医療保険・介護保険を含む)の計算方法に近くあるべきで、保険で保証される確率の低い時期から継続して入っていることによって、保険料を低く抑えてリスク管理できるものなのだ。従って、働き盛りの健康な時期に保険の使用より保険料の支払いの方が多いのは当然であり、それがなければ誰もが高齢期の準備として最悪の場合に必要となる額の満額を貯蓄で備えなければならない。 また、⑲i)ii)のように「年金・医療・介護は保険料に上限が設けられ所得が多くても一定額まで」「中低所得者の負担が重い」というのは事実で、確かに社会保険料は所得に対する逆進性があるが、この解決策は、社会保険料を支払っている人やこれまで支払ってきた高齢者にさらなる消費税を払わせて逆進に逆進を重ねることではなく、社会保険の適用対象外である人や事業所を適用対象にしたり、公的保険の応能負担部分を増やしたりすることであろう。さらに、私は⑳ii)の基礎年金国庫負担割合を1/3分から1/2に上げた2009年度の改革は、厚生年金の被用者負担部分が1/2であることから公平性の担保であり、もし被用者負担部分を1/3にするのであれば、基礎年金の国庫負担割合は2/3にすべきだと考える。 従って、⑳i)iii)のように、「高齢化に伴う費用増を保険料ではなく消費税で賄う」という解決策は、特定の人に二重負担・三重負担を強いる上、逆進に逆進を重ねる不公正な変更である。それに加えて、⑳iv)のように、「(それまで支払った全てを無視して)すべての個人・法人が少子高齢化を乗り切るための痛みを分かち合う」とか、⑳v)のように、「新政権が消費税率の引き下げに踏み切れば構造改革が止まる」などという既に破綻している論理を繰り返すのは、新聞の購読料の消費税率が8%で週刊誌などと比較して優位な競争ができているからではないのか。そのため、私は、食料よりも新聞の方が生活必需品であるわけがないため、新聞購読料の消費税を10%にすべきだと考える。加えて、㉑i)は、「資産を厳密に勘案した負担の枠組みなど余力のある高齢者に負担増を求める代替策が急務」などとしているが、固定資産税・相続税以外で資産そのものに恒常的に課税する国はごく少数で、医療・介護などの社会保障給付に微々たる資産を考慮する国も少なく、諸外国の資産課税対象は“富裕層”に限定されており、評価方法は明確で、高齢者の自宅などは保護され、生活資産まで含めて高齢者をターゲットにする発想はないのだ。 また、*5-2-2は、㉒DGは「非課税」である処方薬の仕入れにかかった消費税を食品等の課税売上比率に応じて控除できる ㉓i)処方薬は原則非課税だが一部課税取引もあるため「共通対応」扱い ii)共通対応は「課税売上比率×仕入税額」を控除可 iii)課税売上(食品・日用品)が多いほど控除額大→ドラッグストアが有利 ㉔i)食品非課税→課税売上比率低下→控除額減少→調剤部門の利益減少 ii)例:課税売上比率が8割→6割、控除額:112億円→84億円、28億円の減益 ㉕これまでの業界再編(調剤薬局買収)のメリットが薄まり、業界再編の機運低下の可能性 ㉖理由:i)ドラッグストアは調剤薬局を買収して課税売上比率を高め、控除額を増やすというメリットがあった ii)食品非課税化で食品比率が高い企業ほど不利に iii)利益率の高い調剤部門の収益悪化は、ビジネスモデル全体に影響 等としている。 このうち㉒と㉓i)ii)は正しいが、㉓iii)のうち、「ドラッグストアが有利」としている部分は誤りだ。何故なら、㉓ii)の式で示されているとおり、仕入税額控除は課税売上に対する仕入れに関して行なうもので、もともと課税売上でない保険医療処方薬の仕入税額を控除すること自体が不公正な租税回避行為に当たるからだ。また、食品の消費税率を0にするというのは、非課税にするのではなく0税率にすべきということであるため、売上に消費税がかからなくても仕入税額は控除できる。そのため、㉓iii)や㉔i)ii)は、飛躍を含む反対のための反対であり、㉕㉖は不法行為(消費税法30条違反)をすることによって益税を捻り出しているにすぎない。 そして、本質的には、現在の消費税制は病院・介護施設・処方薬について仕入時に支払った消費税を誰にも請求できず、控除も受けられずに自腹で被る損税としているのが悪いのであるため、非課税から0税率に変更することによって、この状態を変えなければならないのだ。その理由は、「0税率」と「非課税」との間には、下の表の違いがあるからである。 区分 売上の消費税率 仕入時の消費税の税額控除 結果 非課税 課税なし できない(保険診療・介護・処方薬) 損税が発生 0税率 0% できる(輸出など) 仕入れ分は還付 つまり、保険による医療・介護・処方薬は「非課税」とされているが、これは優遇ではなく、ドラッグストアだけではなく病院や介護施設がMRI・CT等の高度医療機器・検査薬・施設改修を行う際にも仕入れで支払った消費税が一切控除も還付もされず、現場の「持ち出し」となる制度なのだ。そのため、投資をして良質な医療を提供しようとする病院ほど経営が苦しくなるこの構造を変えるには、保険による診療・介護・処方薬を「0税率」に転換して仕入れ税額を全額還付対象にすべきなのである。 *5-1-1:https://digital.asahi.com/articles/DA3S16415451.html (朝日新聞 2026年3月4日)(東日本大震災15年)原発リプレース、政府は秋波 建設費など保証・エネ基を改定…後押し 東京電力柏崎刈羽原発(新潟県)が再稼働し、政府が次に照準を合わせるのが原発の建て替え(リプレース)だ。政府は様々な支援策を用意するが、さらなる後押しを求める電力会社との間で綱引きが続く。建設費も大幅に膨らむとみられ、民間企業が原発を建設・運営することへの限界も指摘されている。 ■「川内3号機」地元に期待の声 鹿児島県薩摩川内市で国内最大級のAIデータセンター(DC)の建設計画が持ち上がっている。台湾のベンチャーキャピタルなどによるもので、九州電力の火力発電所の跡地につくるという。地元の一部では別の期待が膨らんでいる。ある市議は「3号機の計画が動き出すのではないか」と受け止めた。3号機とは、近くにある九電川内原発で増設する予定だった原子炉のことだ。2011年3月の東京電力福島第一原発の事故後、当時の知事によって凍結された。なぜ、その二つが結びつくのか。DCは膨大な電気を消費する。それを賄うために3号機を建設するのではないか。そんな見方が出ていた。きっかけは、九電が昨年5月に公表した経営ビジョンにある。35年を見据えたもので、「次世代革新炉の開発・設置の検討」と盛り込んだ。それを後押ししたのが、政府が昨年2月に閣議決定した新しいエネルギー基本計画だ。同じ電力会社なら別の原発の敷地でも、廃炉した分だけ原子炉をつくれるとした。九電は玄海原発(佐賀県)の2基の廃炉を決めており、敷地に余裕がある川内原発での増設が有力視されている。ただ、原発の建設には20年はかかるとされ、DCの完成には間に合いそうもない。九電幹部は「時系列が合わない」という。現在の塩田康一知事も「状況が大きく変わっているわけではないので、引き続き3号機は凍結ということになる」と話す。だが、DCの建設は産業振興につながり、電力の「消費地」の側面も濃くなる。増設に向けて地元の理解につながるとの見方もある。別の幹部は「(3号機とDCの計画は)つなげようと思えば、つながる話だ」。 ■巨額費用、電力「支援不十分」 福島原発事故後、原発の安全性に対する規制が強化された。それに伴って原発の建設費も高騰。欧米では1基あたりの建設費が2兆円を超す。日本では2016年に始まった電力小売りの全面自由化で、発電にかかるコストをすべて織り込んで電気料金を設定する「総括原価方式」が見直され、巨額の投資回収のめどが立たなくなった。政府は、電力会社が建て替えに踏み切れるよう支援策を拡充してきた。23年度には、原発など「脱炭素電源」の建設を支援する「長期脱炭素電源オークション」を開始。収益の9割を還付することを条件に、建設費や人件費などの固定費を原則20年間、保証する制度だ。ただ、電力会社からは不十分だとの声が出る。関西電力は美浜原発(福井県美浜町)の建て替えに向けた調査を始めたが、森望社長は昨年の記者会見で「費用の上振れや(将来の)収入の不透明さがあることは否めない」と強調。関電幹部は「国の制度が、物価や金利も変化している時代にマッチするかどうかを吟味しないといけない」と慎重な姿勢だ。九電の西山勝社長も、資金調達など課題が残っているとして「投資を決定する時期ではない」とする。支援の原資は電力の小売会社が消費者から集める。拡充すれば消費者の負担増につながる可能性がある。経済産業省の幹部は「(国民から)信頼を得られるか、難しいバランスだ」と話す。 ■支援より競争加速の方策を 高橋洋・法政大教授の話 電力自由化はしたものの、発電市場では競争が働かない、安定供給できないとして、政府は原発という特定電源への支援を強化している。だが、もともと強い大手電力10社への支援は競争をより阻害する。原発の立地地域向けの交付金など、支援はすでに盛りだくさんだ。そのうえ新増設のため、より魅力的な条件を重ね、事業者側と綱引きしているように見える。その結果、消費者負担の増大となるおそれがあり、大手電力への支援ではなく、競争を加速する方策を講じるべきだ。 ■脱炭素など踏まえ検討必要 矢島正之・電力中央研究所名誉シニアアドバイザーの話 原発は計画段階から廃止までの総事業期間が100年に及ぶうえ、高レベル放射性廃棄物への長期的な対応も求められる。事業リスクが大きく、本来、電力自由化とは相いれない。日本で新設するには、英国のように総括原価方式に近い制度設計が必要となるだろう。競争市場の例外とすることへの批判も予想されるが、脱炭素の推進やエネルギー安全保障とのバランスを踏まえ、慎重な検討が求められる。 *5-1-2:https://digital.asahi.com/articles/DA3S16417746.html (朝日新聞 2026年3月7日)エネルギー輸入国、売られる通貨 日本・欧州・インド、イラン攻撃後に対ドル下落 米国とイスラエルによるイランへの軍事攻撃後、各通貨が対ドルで下落している。「有事のドル買い」が進んだことに加え、原油価格などの高騰を受け、輸入エネルギーに依存する国の通貨がとりわけ売られている。 ■韓国は下落幅3%に迫る 米東部時間5日夕(日本時間6日朝)時点の各通貨の対ドル為替相場を、攻撃直前の先月27日と比べたところ、下落幅が3%に迫ったのが韓国ウォンだ。3日は一時1ドル=1500ウォン台と2009年以来の安値まで落ち込んだ。ユーロは約1・8%、円と英ポンドは約1%安くなった。インドルピーは約0・8%の下落だったが、ロイター通信によると、インド中央銀行は変動を抑えるため、ドル売りの為替介入を実施したとみられるという。戦争などの非常事態では、基軸通貨で国際的な信認があるドルは資金の逃避先になりやすい。ただ、今回目立つのは、エネルギーの国外依存度が高い国ほど、通貨が売られていることだ。原油や天然ガスなどの輸入額から輸出額を差し引いた「エネルギー貿易収支」の赤字額が、国内総生産(GDP)に対してどれだけ大きいかを英調査会社キャピタル・エコノミクスが算出したところ、突出して高かったのが韓国だ。エネルギーを外国に頼る経済構造への不安に加え、原油価格の急騰で対外的なドルの支払いが増えることも、ウォン安を加速させる。やはり域外のエネルギーに依存する欧州のユーロも下落しやすい。天然ガスは一時標準価格が5割上昇し、貿易収支の悪化が通貨安を招いている。日本は輸入原油の95%を中東に頼るが、要衝ホルムズ海峡が事実上閉鎖され、タンカーが通れなくなっている。27日時点の円相場は1ドル=156円台前半だったが、5日時点では157円台半ばで、1円50銭ほど円安ドル高が進んだ。対照的に、エネルギー収支が黒字の資源国は、通貨の下落が比較的抑えられているケースもある。カナダドルの下落率は0・2%台だった。米国は「シェール革命」を経てエネルギーの純輸出国に転じた。危機時には米国産エネルギーの需要が高まり、価格の高騰はエネルギー生産企業を潤す。加えて、原油高騰が米国のインフレを加速させ、利下げが遠のくとの観測もドル高を支えている。 *5-1-3:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20260305&ng=DGKKZO94798420V00C26A3MM8000 (日経新聞 2026.3.6) EU、域内生産を優遇 法案発表 EV・再エネに補助金 欧州連合(EU)執行機関の欧州委員会は4日、域内の環境技術を支援する法案を発表した。電気自動車(EV)や太陽光・風力発電などの脱炭素分野が対象で、支援の条件として一定比率を域内で生産することを求める。EUの産業促進法(IAA、総合2面きょうのことば)は安価な中国製品を排除し、欧州の産業競争力を強化することを狙った保護主義的な色合いが強い。EUに加盟していない英国やトルコに工場を持つ自動車メーカーのほか、ドイツや北欧などが難色を示している。EVや太陽光・風力発電のほか、蓄電池、水素、低炭素鉄鋼の製造、レアメタルやリチウムなど重要鉱物の採掘・加工・リサイクルなどの環境技術が対象となる。EUや加盟国が補助金を支給したり、公共調達の条件にしたりすることで産業振興を後押しする。中国企業の排除を念頭に、世界生産能力の40%以上を持つ国からの1億ユーロ(約180億円)を超える域内投資について「IAAで条件を規定する」とした。日本や英国などEUの友好国についても「欧州企業に技術を開放していないと判断すれば市場アクセスを拒否する」と指摘した。焦点となっているのが「メード・イン・EU」規定だ。一定の域内の生産比率を満たした製品・素材のみが補助の対象となる。法案では、EVについては金額ベースで部品の70%、低炭素アルミニウムは25%といった基準が盛り込まれる。法案は25年12月の発表予定だった。3度の延期を繰り返し、今回も直前まで議論が紛糾した。メード・イン・EUの解釈を巡って加盟国間で意見の相違があったためだ。補助の対象となる「域内」はEU加盟27カ国とノルウェーなど欧州3カ国を含む欧州経済地域(EEA)を指す。フランスのマクロン大統領は「欧州でもっと多くの製品を作る必要がある」と語り、メード・イン・EU規定の策定に動いた。一方、北欧やチェコなどは「補助条件の限定は投資を阻害しEUの国際競争力を損なう」として対象国を広げるよう求めている。域外に製造拠点を持つ企業もあるためだ。英国やトルコに組み立て工場を持つ自動車メーカーも反発している。こうした事情を受けてEUは、EVの域内生産比率の基準を車載電池を除いた部品に適用した。法案は今後、欧州議会と閣僚理事会の審議をへて採決する。加盟国や産業界からの反発は根強く、規定の内容は今後変更となる可能性がある。 *5-2-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20260214&ng=DGKKZO94416750U6A210C2MM8000 (日経新聞 2026.2.14) 点検 日本の選択(5)消費税減税の本質 再分配の欠陥に向き合え 日本の再分配制度には2つの欠陥がある。1つは中低所得の子育て世帯の負担が重いこと。もう1つは負担能力がある高齢者が低負担になっていることだ。高市早苗政権はこの2つを同時に解決する再分配の方程式を解く必要がある。社会保険料には所得に対する逆進性がある。病気や寝たきり、長寿といった、誰もが直面しうる事態に備えて互いに支え合う共助の「参加料」だからだ。民間の自動車保険で考えてみると分かりやすい。保険料は事故にあう確率と補償する金額からはじかれ、加入者が裕福なのか、低所得なのかによって負担額が変わることはない。 ●保険料に逆進性 年金や医療、介護は強制加入の公的保険なので、所得によって各人の保険料に差をつける応能負担の考え方も入ってはいる。特に生活保護や住民税非課税の世帯は大きく減免される。 だが高所得者だからといって受益とかけ離れた保険料を求めれば、共助に参加する意味が薄れ、貯蓄や民間保険の活用など「自助で十分」と思う人が増えかねない。このため保険料には上限が設けられ、所得が多くても一定額で打ち止めになる仕組みになっている。そしてその裏返しとして生活保護などの対象にならない中低所得者も相応の負担を求められている。問題は少子高齢化でこの逆進性が強まっていることだ。高齢者の医療や介護を支える費用が膨らみ続け、減りゆく現役世代の保険料に上乗せされる。世代間でみた給付と負担の不均衡が広がり、中低所得層、とりわけ支出がかさむ子育て世帯の苦境が深まっていく。この構造にメスを入れるには、高齢化に起因する費用増の部分に保険料以外の財源、すなわち公費を投入して、保険料への依存度を下げる必要がある。 ●止まる構造改革 歴代の政権が消費税を社会保障の公費財源と位置づけ、政権の命運を賭けてでも税率を引き上げてきたのは、国債発行による将来へのツケ回しを回避するだけでなく、負担の構造改革に資するからだ。基礎年金の国庫負担割合を3分の1から2分の1に上げた2009年度の改革が好例だ。消費活動には保有資産も含めた家計の状況が反映される。消費税にも逆進性はあるが、社会保障の財源に組み込んでいけば、所得は少ないが資産がある高齢者に「能力に応じた負担」を求めることができる。消費税は社会保険の適用対象外で事業主負担がない中小・零細事業所も納める。すべての個人、法人が少子高齢化を乗り切るための痛みを分かち合う形になる。新政権が消費税率の引き下げに踏み切ればこうした構造改革の歩みは止まる。資産を厳密に勘案した負担の枠組みなど、余力のある高齢者に負担増を求める代替策が急務となる。所得税制に給付金の仕組みを組み込む給付付き税額控除は、中低所得層を救う有力案なのは確かだ。ただし年金受給者を給付対象に含めたり、所得税の増税など現役世代の負担増で財源を賄ったりすれば「再分配の欠陥」をかえって広げかねない。少子高齢化の構造を見据えた設計が要る。 *5-2-2:https://www.nikkei.com/article/DGKKZO94384900T10C26A2BZ0000/ (日経新聞 2026年2月13日) 消費減税論、ドラッグストア揺らす、食品ゼロ、薬の税制メリット薄まる計算 8日に投開票された衆院選で多くの党が公約に掲げた「食品の消費税ゼロ」が、ドラッグストア各社の戦略に影響を与える可能性がある。食品が非課税になると処方薬に関連する税控除が減り、調剤部門の収益が悪化するためだ。ドラッグストアによる調剤薬局の買収は税控除を見込んだ側面もあるとみられ、業界再編の機運が低下するとの見方も浮上している。 ●「共通対応」の概念 一般的にドラッグストアは食品や日用品の物販が大規模になるほど処方薬(医療用医薬品)の仕入れ時の税が控除されやすい仕組みがある。消費税の課税対象外となる取引は「非課税取引」に区分され、仕入れ時に支払った消費税は控除できない。保険診療に伴う薬の販売も非課税取引だ。これだけだと事業者は薬を仕入れる時には税を払い、販売する時にはいったん負担した税を受け取れない不公平が生じる。そこで国は処方薬の公定価格に仕入れ時の消費税負担分を上乗せして設定し、補填している。さらに課税と非課税の間の扱いと言える「共通対応」という概念が加わる。この共通対応が税控除のカギと言える。運用上、処方薬の仕入れに関する消費税は、共通対応で計算する。処方薬は原則として非課税取引でも、自費診療や薬局間売買などのように、ごく一部は課税取引で売る場合がある。それなら薬の仕入れは「非課税取引にも、課税取引にもつながりうる」という区分(共通対応)にしようというわけだ。共通対応になると、仕入れ時に支払った消費税のうち、総売上高に占める課税対象の売り上げにあたる「課税売上比率」を乗じた分だけ、税が控除できる。すると結果として食品や日用品のような課税取引の比率や金額が大きな事業者(ドラッグストア)ほど、恩恵が大きくなる。 ●「非課税」なら不利 食品の消費税をゼロにする場合、「免税」か「非課税」の2つの手法が想定される。仮に食品の消費税が非課税になると、課税売上比率が下がり、処方薬の仕入れ時に支払った消費税の控除率も低下する。結果として調剤部門の収益性が悪化する。例えば年間売上高で1兆円、そのうち食品と調剤の売上高がそれぞれ2000億円のドラッグストアA社があるとする。またA社は処方薬を販売時の7割にあたる1400億円分仕入れていると仮定してみる。調剤売上高は全て非課税、その他は課税とすると、1兆円から2000億円を差し引き、課税売上比率が8割となる。消費税負担は10%の税率により140億円だが、共通対応で計算できるため、課税売上比率の8割にあたる112億円が控除できる。ところが消費税ゼロが実施され、食品が非課税になれば課税売上比率は6割に下がり、税控除額は84億円に減る。28億円の差額が生まれる形だ。 ●M&A戦略に影響も 調剤部門の収益の悪化はドラッグストアのM&A(合併・買収)戦略にも影響を及ぼす可能性がある。これまでドラッグストア各社は調剤薬局の買収に意欲的だった。スギホールディングス(HD)は2024年に売上高2000億円超の調剤薬局大手、I&Hを買収した。ツルハHDの鶴羽順社長も「調剤薬局チェーンを買収する可能性はもちろんある」と話す。調剤薬局の専業各社はドラッグストアに比べ食品などの扱いが少ない。課税売上比率が低く、消費税控除の恩恵をあまり受けられていない。ドラッグストアが買収し、「課税売上比率の高い企業による一つの事業」という扱いになれば、税控除額が大幅に増え、収益性が改善する。ドラッグストアは高い買収額を提示しやすく、買収される調剤の株主にとってもメリットがあり再編の誘因になっていた。スギHDはI&Hを25年3月に中核子会社のスギ薬局に吸収させた。これは「税控除のメリットを享受するための対応だ」(調剤薬局大手幹部)との見方がある。スギHDは「合併後に控除額は増加しているだろう」としつつも「合併の目的は両組織の重複機能を削減し、販管費の効率化やガバナンスを強化するためだ」と説明する。一橋大学の野間幹晴教授は食品が非課税となった場合に「食品比率にもよるが、ドラッグストアが調剤薬局を買収するメリットが減る。短期的には業界再編にもネガティブ」と指摘する。ドラッグストア各社は来店機会を増やすために食品と調剤部門を強化してきた。ウエルシアHDはツルハHDとの経営統合前の25年2月期の連結売上高1兆2850億円に対し、食品の比率は23%強、調剤が22%を占める。クスリのアオキHDは25年5月期の連結売上高に占める食品比率が51%まで高まっている。ある中堅ドラッグストアの幹部は食品の消費税が非課税になれば「売上高全体に占める食品比率が高ければ高いほど減益要因となるリスクは高まる」と指摘する。食品の消費税が非課税になれば業界再編に加えて、利益率の高い医薬品で稼ぎ、割安な食品を販売してきたドラッグストアのビジネスモデルに影響を与える可能性もありそうだ。
| 主に衆議院議員時代の活動 | 01:47 PM | comments (x) | trackback (x) |
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