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2014.7.18 原発は、無責任と無駄遣いの温床である (2014年7月19日、20日、21日、24日、25日、26日、27日、28日に追加あり)
       
     *1-1より           *3-1より    2014.7.17日経新聞より

(1)原発の新規制基準の問題点
 *1-1に書かれているとおり、原子力規制委員会が7月16日、九電川内原発1、2号機(鹿児島県)が原発の新規制基準を満たしているとする審査結果案を了承したが、事故収束に当たる作業員を守る作業拠点は建設中で、フィルター付きベント設備や、テロに備える第二制御室も未完成で、これらがない段階でも安全性は保たれると判断した。また、米国では、避難計画が機能することが稼働の条件とされるが、規制委は、各自治体が作る避難計画が妥当かどうかは「権限外」として審査していないそうだ。

 しかし、原子力規制委員会の田中委員長は2014年7月16日の記者会見で、*1-3のように、九電川内原発1、2号機(鹿児島県)について「基準への適合性を審査したが、安全とは申し上げない」とした。それならば、監査と同様、①どういう基準に従って審査した結果 ②上のような限定付きで適合を認めた ということを、明確に審査意見書に記載して署名すべきである。

 安倍政権は、*1-2のように、エネルギー基本計画で、新基準を「世界で最も厳しい水準」と明記し、「世界一厳しい新基準で、原子力規制委員会が安全確認したら再稼働する」としていたのだから、限定付きの審査意見に基づき、「世界一厳しい基準だったか」「審査を通れば、再稼働できる状態か」について、再度、判断し直すのが筋である。

(2)再稼働に関する責任回避の構図が見えた
 原子力規制委員会の田中委員長は、*1-3や*2-1に書かれているように、「安全だということは、私は申し上げない」「再稼働は、事業者、地域住民、政府の合意でなされる」と述べている。これにより、提出書類の分量、審査時間の長さ、既に行ってしまった無駄な工事とは関係なく、原発の安全性は担保していないため、再稼働された原発が事故を起こしても、原子力規制委は責任をとらずにすむ。

 また、*2-1のように、安倍政権は、「再稼働に向けて政府一丸となって対応し、できるだけ早く実現したい」としながらも、判断の責任は規制委や電力会社に丸投げしているため、再稼働された原発が事故を起こしても責任をとらなくてすむ。さらに、*2-2で、「立地自治体の理解を得て、再稼働を進める」としているため、再稼働された原発が事故を起こすと、その責任は、規制委、立地自治体、電力会社になる。しかし、フクシマの事例でわかるとおり、原発事故の責任などとれる人はいないため、事故時の損害賠償は、結局、国民負担になる。
 
 さらに、*2-3に書かれているように、経団連、日本商工会議所、経済同友会の経済3団体は、足並みを揃えて、「原発を減らして、低炭素社会にどう向き合うのか」などとまだ言っており、原発停止に伴う電力業界の収益状況や電力料金のことしか考えていないが、これについては、2014年5月26日にこのブログに掲載した大飯原発運転差止請求事件判決で、既に結論が出ている。

(3)人命よりも電力会社の経営優先の構図が見えた
 (1)(2)の状況でも、*3のように、原子力規制委が九電川内原発1、2号機に事実上の「合格」を出したとし、九電幹部は「再稼働に向けてようやく先が見えてきた」と安堵したそうだ。電気事業連合会は、「他の原発の効率的な審査につながることを期待する」と歓迎し、リスクを踏まえた責任回避が、赤字経営に陥った電力会社を救うために行われていることが明らかである。それでよいのだろうか。

(4)原発地元の反応
 *4-1のように、川内原発「合格第1号」は、住民の避難がなおざりにされている。そして、原発の地元は、「国は防災対策を自治体に丸投げせず、自ら担うべきだ」として、責任を国に押し戻そうとしている。つまり、全体として責任回避の連結環になっているのだ。

 また、*4-2のように、フクシマ以降、原発の地元は、立地自治体だけではなく、原発から30キロ圏内だけでもなく、250キロ圏内であることが明らかになっている。

 そして、*4-3のように、「原発から半径30キロ圏にある医療・福祉施設の9割超は、入院患者や入所者の避難計画が未策定で、在宅のお年寄りなどの移動方法や避難先での医療・ケアの確保も見通せない」「原発再稼働の責任は、国が許可するので国がとるべきだ」とされている。しかし、国が責任をとれば、原発事故時は反対した国民も含めて、国民の税金が支出されるが、国民はそれでよいのだろうか?

<新基準の問題点>
*1-1:http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2014071702000146.html (東京新聞 2014年7月17日) 川内原発再稼働「適合」 「厳格審査」に穴
 原子力規制委員会は十六日、九州電力川内(せんだい)原発1、2号機(鹿児島県)について、原発の新規制基準を満たしているとする審査結果案を了承した。安倍政権は再稼働への動きを加速させるが、事故対策の一部は未完成で、火山想定などの甘さも指摘されている。事故時に周辺住民が安全に避難できることは最重要の対策だが、審査対象になっていない。世界最高水準どころか「欠落」の多い審査といえる。新基準について、安倍晋三首相は「世界で最も厳しい」と繰り返してきた。十六日、規制委が新基準による初の合格判断を示したことを受け、田中俊一委員長は「(川内原発の安全性は)ほぼ世界最高レベルと思っている」と強調した。だが、川内原発の審査結果案を見ると、本当に世界最高水準の基準による、厳しい審査が行われたのか疑問が多い。非常用電源や冷却設備はそれなりに充実され、事故が起きる可能性は下がったかもしれない。しかし、いざ事故が起きたときに事故収束に当たる作業員を守る作業拠点は建設中で、当面は代替の建物を使う。狭くて水道もなく、トイレも仮設だ。作業員が放射能を浴びた場合、シャワーで洗い流して除染するのが通常だが、川内原発ではウエットティッシュで拭く想定になっている。そんな状態にもかかわらず、規制委は妥当と判断した。放射性物質の放出を千分の一程度に抑えながら、格納容器内の水蒸気を抜いて圧力を下げるフィルター付きベント(排気)設備や、テロに備えて通常の制御室が使えなくなった場合に原子炉の冷却を続けられる第二制御室も未完成だ。規制委は、これらがない段階でも一定の安全性は保たれると判断した。事故時に原発周辺の住民が安全に避難できることは最も重要な対策の一つだ。米国では、避難計画がきちんと機能することが稼働の条件とされるが、規制委は避難基準などの指針は定めたものの、各自治体がつくる避難計画が妥当かどうかは「権限外」として審査していない。

*1-2:http://digital.asahi.com/articles/ASG7J45T4G7JUSPT003.html?ref=reca
(朝日新聞 2014年7月17日) 原発再稼働を問う―無謀な回帰に反対する
 原発事故が日本の政治と社会全体に投げかけた広範な問いはまだ何も答えられていない。ところが再稼働をめぐる議論はいつの間にか、原発の性能をめぐる技術論に狭められた。事故が起きた時の政府や自治体、電力会社の対応や、避難計画のあり方など、総合的な備えはほとんど整っていない。このままで原発を再び動かそうというのは暴挙である。いまだに収束できない事故から何も学ぼうとしない無責任な態度というほかない。原子力規制委員会が九州電力の川内(せんだい)原発1、2号機(鹿児島県)について、新規制基準を満たすとの審査書案を出した。1年前に新基準ができて初めてのことだ。意見公募など手続きはまだあるが、規制委による審査は実質的にヤマを越えた。安倍政権は「規制委の専門的な判断にゆだね、安全と認められた原発は再稼働する」と繰り返している。あたかも規制委の審査が原発の安全確保のすべてであるかのように。現実は違う。あまりに多くの問題点が置き去りにされている。規制委の権限が及ぶ範囲にも、その外側にも、である。このままでは、原子力規制のあり方を多少改めた以外、ほとんど何も変わらず、日本は原発依存に逆戻りしかねない。
■世界一と誇張するな
 安倍政権はエネルギー基本計画で、新基準を「世界で最も厳しい水準」と明記した。閣僚や自民党幹部もたびたび「世界一厳しい新基準で安全確認できたら、再稼働する」と口にしてきた。誇張が過ぎ、原発の安全神話を復活させかねない言動だ。確かに新基準は、地震や津波への設備対策を以前より厳しく求めている。だが、それは有数の地震国である日本の特徴を反映したに過ぎない。事故が起きるおそれを数字で表す手法は、欧米では広く採り入れられているが、新基準はそこまで徹底していない。川内原発で注目された火山噴火対策については、火山学者が疑問を投げかけるなか、手探りの火山監視で対応できるという九電の主張を追認した。本質的に重要なのは、新基準への適合は決して「安全宣言」ではないということだ。規制委の田中俊一委員長は「新基準では事故は起きうるという前提だ」と強調してきた。すなわち、事故対策は規制委だけでなく、電力会社や政府、自治体や住民も本気で考えるべきだと訴えてきたのだが、その多くが手つかずのままだ。
■重要課題が手つかず
 何より、事故の際の避難で、現実的な計画が描けていない。規制委が示した原子力災害対策指針を基に、地元自治体がつくることになっている。いきなり難題を突きつけられた形の自治体側は戸惑っている。原子力政策を国策だとしておきながら、政府はなぜ、避難を自治体に丸投げするのか。再稼働の条件に、避難計画は含まれていない。このまま計画の見通しなしに自治体が安直に再稼働に同意しては、政府も自治体も住民の安全を守る責任を果たしたとはいえまい。置き去りのままの重要課題はほかにもたくさんある。3年前の事故が浮き彫りにした課題を何度でも思い返そう。過酷事故、とくに原発密集地での事故は、おびただしい数の住民を被曝(ひばく)の危険にさらし、膨大な土地を放射性物質で汚しかねない。なのに複数原発が集中立地している問題は、規制委でもまともに議論されていない。防災の重点区域が「おおむね30キロ圏内」に広げられたのに、再稼働への発言権は立地自治体だけでいいのか。福島第一原発の吉田昌郎所長(故人)の証言「吉田調書」では、幹部職員の一時離脱が明らかになった。破局の瀬戸際の対応は電力会社任せでいいのか。
■もっと深い議論を
 根本的な問題は、日本社会が福島第一原発事故を十分に消化していないことだ。関係者や組織の責任を具体的に厳しく追及することもなく、かといって免責して事故の教訓を徹底的に絞り出すこともしていない。未公開の吉田調書に象徴されるように、事故の実相は国民に共有されていない。3年前、私たちの社説は「原発ゼロ社会」を将来目標とするよう提言した。幸いなことに、原発がすべて止まっても大停電など混乱は起きていない。関西電力大飯原発の運転差し止めを命じた福井地裁判決は、「原発停止は貿易赤字を増やし、国富流出につながる」という指摘に対し、「豊かな国土に国民が根を下ろして生活していることが国富だ」と断じた。原発を含むエネルギー政策は経済の観点だけでは語れない。人間と自然の安全を長い未来にわたってどう確保するのか。放射性廃棄物の処分問題も含め、広く深い論議を抜きに原発再稼働を進めてはならない。

*1-3:http://www.47news.jp/CN/201407/CN2014071601001601.html
(47ニュース 2014.7.17) 川内原発、審査で安全性担保せず 原子力規制委員長
 原子力規制委員会の田中俊一委員長は16日の記者会見で、九州電力川内原発1、2号機(鹿児島県)が再稼働の前提となる審査に事実上合格したことについて「基準の適合性を審査した。安全だということは申し上げない」と述べ、審査は必ずしも原発の安全性を担保したものではないとの認識を明らかにした。地元首長は安全と受け止めており、再稼働に向け地元が受け入れを判断する際に認識の差が課題となりそうだ。田中氏は会見で川内原発について「一定程度安全性は高まったことは評価するが、これはゴールではない。九電はますます努力する必要がある」と説明した。

<責任回避の構図>
*2-1:http://digital.asahi.com/articles/DA3S11247549.html (朝日新聞 2014年7月17日) (時時刻刻)規制委、見切り合格 川内原発再稼働へ 「安全とは言わぬ」審査に限界
 原発が再び動き出す。東京電力福島第一原発事故の教訓から国の基準や審査は厳しくなったが、再稼働の責任の所在もあいまいだ。安倍政権は原子力規制委員会の判断を強調し、矢面に立つことを避けながら、成長戦略の実現に向け再稼働を進めようとしている。「安全だということは私は申し上げません」。九州電力川内(せんだい)原発の審査書案の公表後、規制委の田中俊一委員長は、審査を通ったとしても事故のリスクは残ることを認めた。さらに「再稼働は事業者、地域住民、政府の合意でなされる」と述べ、規制委は原発が新基準を満たすかどうかだけを判断することを強調した。福島の事故を踏まえ、新基準は事故を前提にした基準へ大きく転換。「起こらない」とされてきたメルトダウンなど重大事故への備えを義務づけた。以前に比べて、審査も厳しくなった。川内は60回の公開審査をし、非公開の実務的審査は1900時間に及んだ。「これじゃあ、何も変わらないじゃないですか」。昨年11月の審査会合では、地震想定を従来並みにとどめた九電に、地震学者の島崎邦彦委員長代理が厳しく指摘する場面もあった。原発では、東日本大震災前からたびたび想定を超える地震の揺れが観測されてきた経緯がある。「これまでの反省をどの程度考えているのか」。他の原発にも軒並み見直しを迫った。設備面でも、最新鋭の北海道電力泊原発3号機ですら、事故時の冷却用の配管が基準を満たさないとして大規模工事を余儀なくされた。ただ、新基準は「新しい原発なら時間と金さえかければクリアできる」(電力会社幹部)といい、高すぎるハードルではない。今ある原発への適用を念頭に作られ、福島のように1カ所に多数の原子炉があってもいいかなど、存廃にかかわる論点は先送りされた。重大事故時の手順も、あくまで想定に過ぎない。審査では、集団食中毒が起きても作業員が確保できるかまで確認したが、思い通りにいくかはわからない。テロなどで原発を操作できなくなった場合の「第2制御室」など5年間猶予されている設備もある。審査は目に見える問題に集中しがちだ。福島第一原発では津波や水素爆発など、軽視されてきた部分のほころびが事故拡大を招いた。田中委員長も「これで人知を尽くしたとは言い切れない」と認める。規制委は、福島の100分の1の放射性物質が放出されるような事故が起きる頻度を、1基あたり100万年に1回以下に抑えることを目標とする。ただ、実際にどれだけの頻度で事故が起きるかを審査書案で示したわけではない。川内原発は巨大噴火に襲われるリスクも指摘され、火山の専門家から「本来建ててはいけない場所」との声も出る。日本学術会議で事故の教訓をまとめた矢川元基・東京大名誉教授は「事故が起きるとこうなるという情報や、リスクを示し、国民みんなで議論しなければならない」と指摘する。
■政権、反省より成長戦略
 安倍政権は再稼働の責任を規制委や電力会社に丸投げするが、「本心」は異なる。安倍晋三首相は昨年5月、国会審議で「再稼働に向けて政府一丸となって対応し、できるだけ早く実現していきたい」と明言。規制委の基準を「世界で最も厳しい基準」と扱い、速やかに再稼働を進める方針だ。13日投開票の滋賀県知事選では、「卒原発」を掲げた三日月大造氏が接戦を制したが、政府高官は「再稼働はやる。原発再稼働はそんなに悩んでいない」。審査が順調に進んでも、再稼働は10月が最速で、夏場の電力需要のピークには間に合わない。だが政権が急ぐ理由は他にある。「原発が稼働していないことによって、4兆円近い国富が毎年海外に流れている。国内で企業が安心をして活動を行うには安定したエネルギーが必要だ」。菅義偉官房長官は16日の会見でそう説明した。原発停止による化石燃料の輸入増大が貿易赤字を拡大させ、電力料金の高止まりが製造現場の海外流出を加速する――。政権は「廉価で安定した電力」が、アベノミクスの成長戦略実現の前提として不可欠だと強調する。ただ、国民の反発が根強い再稼働は、政権運営の打撃になりかねない。再稼働に必要な地元同意の「範囲」もあいまいだ。鹿児島県の伊藤祐一郎知事は、県知事と立地自治体の薩摩川内市長、地元議会の判断とし、他の自治体は不要としている。福島では周辺にも被害が広がったが、周辺をめぐる議論は進んでいない。政権は、規制委の次期委員に、原発推進を担ってきた元日本原子力学会長の田中知・東京大教授を選んだ。政財界から不満があった島崎代理は交代させる。政権には事故の反省もあるが、再稼働への焦燥感の方が強い。政府高官は語る。「川内と同型の(加圧水型炉の)原発の再稼働は早いだろう」

*2-2:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20140717&ng=DGKDASFS16012_W4A710C1MM8000 (日経新聞 2014.7.17) 首相「地元理解得て再稼働進める」
 安倍晋三首相は16日、原子力規制委員会が川内原子力発電所1、2号機(鹿児島県)の安全審査合格を内定したことについて「一歩前進だ。原子力規制委が審査し、安全だと結論が出れば、立地自治体の理解をいただきながら再稼働を進めたい」と述べた。視察先の宮城県東松島市で記者団の質問に答えた。

*2-3:http://qbiz.jp/article/42186/1/
(西日本新聞 2014年7月18日) 経済同友会、「縮原発」転換へ 川内「合格」引き金
 経済同友会は17日、仙台市で開いた夏季セミナーで、原発依存度を下げる「縮原発」方針の見直しを検討することを決めた。原子力規制委員会の審査を受けている九州電力川内原発1、2号機(鹿児島県薩摩川内市)の「審査書案」が16日に了承されたこともあり、原発活用を推進する路線に転換する。同友会は東京電力福島第1原発事故後の2011年夏、老朽化した原発を順次廃炉にして再生可能エネルギーの推進を目指す「縮原発」方針を掲げ、政府にエネルギー基本計画の見直しを求めてきた。同友会が原発推進路線に転じることで、経団連、日本商工会議所とともに経済3団体が足並みをそろえることになる。企業経営者など約30人が参加したセミナーでは、「原発を減らして、低炭素社会にどう向き合うのか」などと原発の必要性を訴える声が続出。長谷川閑史代表幹事は「当時は(原発の)再稼働が難しく、縮原発でいかざるを得ない状況だった」と述べた。福岡経済同友会代表幹事を務める九電の貫正義会長も出席し、原発停止に伴う電力業界の収益状況などを報告。会場で取材にも応じ、いち早く「合格」が見えた川内原発の審査について、「ありがたいが、(同意が必要な)地元がどこまでなのかという問題もあり、まだまだ先がある」と述べた。

<人命より電力会社の経営優先の構図>
*3:http://qbiz.jp/article/42105/1/
(西日本新聞 2014年7月17日)  九電「やっと先が見えてきた」
 原子力規制委員会が川内原発1、2号機(鹿児島県薩摩川内市)の審査書案を了承したことを受け、九州電力の社内には「再稼働に向けてようやく先が見えてきた」(幹部)と安堵(あんど)感が広がった。審査には想定より大幅に時間がかかったが、2基の再稼働が実現すれば、赤字続きの経営は改善に向かう。九電は玄海原発3、4号機(佐賀県玄海町)も含めた審査対応に引き続き全力を挙げる方針だ。東日本大震災後の原発停止に伴う火力発電燃料費の増大で、赤字経営に陥った九電。昨春には33年ぶりとなる抜本的な電気料金値上げを実施したが、川内、玄海の4基の再稼働が想定より遅れ、赤字をカバーできない状況が続いている。2014年3月期は、人件費も含め大規模な経費削減に取り組んだが、960億円の連結純損失を計上し3年連続の最終赤字。財務状況も急速に悪化しており、8月には政府系の日本政策投資銀行に議決権のない「優先株」を発行して1千億円を調達する異例の資本増強策に踏み切る。しかし、川内の2基が再稼働すれば、九電の年間収支は約2千億円改善する見込み。「川内だけでなく、玄海も動かないと黒字化は難しい」(九電幹部)とされるが、電気料金の再値上げは当面回避するとみられる。玄海の2基が今月の審査会合で、耐震設計の基になる基準地震動が固まり、審査の大きなヤマを越えたのも九電にとっては好材料。九電は川内に続いて玄海を再稼働するシナリオを描くが、川内の再稼働までには地元同意手続きなどのハードルが残る。九電幹部は「川内の再稼働までにあとどれぐらいかかるのかが見えないと、玄海の再稼働も見通せない。地元同意の手続きでは、国が前面に立ってほしい」と話した。
◆安全確保に万全
 九州電力のコメント 当社としては今後とも、原子力規制委員会の審査に真摯かつ丁寧に対応するとともに、さらなる安全性・信頼性向上への取り組みを自主的かつ継続的に進め、原発の安全確保に万全を期していく。
◆電力各社も期待
 原子力規制委員会は16日、九州電力川内原発1、2号機(鹿児島県)に事実上の「合格」を出し、同原発は秋以降に再稼働する見通しとなった。電力各社は原発の長期停止による収支改善の遅れに焦りを募らせており、自社の原発審査の加速に期待を強めている。電気事業連合会は「他の原発の効率的な審査につながることを期待する」と歓迎した。新規制基準は昨年7月に施行され、審査は当初、半年程度で終了するとみられていた。しかし規制委が、電力会社の津波や地震対策の審査に厳しく臨んだこともあり、最初の審査申請から1年が経過。電力各社はいら立っていた。各社が再稼働を急ぐ背景には、火力発電所の燃料費が膨らみ、業績悪化に歯止めがかからない現状がある。2014年3月期連結決算の経常損益は6社が赤字を計上。合計の赤字額は前期の3分の1程度に縮まったとはいえ、依然として4359億円と巨額だ。
■川内原発 九州電力が鹿児島県薩摩川内市に所有する加圧水型軽水炉(PWR)。1号機(出力89万キロワット)は1984年に営業運転を開始し、7月4日で30年を経過した。2号機(同)は85年から稼働。福島第1原発事故後、1号機は2011年5月、2号機は同年9月から停止中。通常運転時は社員300人強、協力会社の従業員は約800人が従事する。隣接の敷地に13年度に着工する予定だった3号機(出力159万キロワット)は、鹿児島県知事が「建設の手続きの凍結」を表明している。

<原発の地元>
*4-1:http://mainichi.jp/select/news/20140716k0000e040246000c.html
(毎日新聞 2014年7月16日) 川内原発:「合格第1号」住民避難なおざりに 規制対象外
 九州電力川内原発が事実上、原発の新規制基準への「合格第1号」となったが、クリアしたのは設備面でのハード対策に過ぎない。新規制基準と住民避難などの防災対策は、原発の安全確保の「車の両輪」(田中俊一・原子力規制委員長)だが、原子力規制委員会の安全審査では前者を厳しくチェックする一方、後者は規制の対象になっていない。国際原子力機関(IAEA)は、原発事故へ対処する国際基準として「深層防護」と呼ばれる5層にわたる多重的な安全対策を定めている。想定外の事故が起きても住民の被ばくを防ぐ「最後のとりで」である第5層の防災対策は、米国では規制の対象だ。原発を稼働する前にNRC(米原子力規制委員会)の認可を受ける必要がある。だが日本では、東京電力福島第1原発事故後も、第5層の防災対策は依然として対象外だ。住民の避難方法や避難場所などを定める地域防災計画や避難計画は、災害対策基本法に基づき自治体の責任で策定し、政府は策定を「支援」するだけ。川内原発では防災対策の対象となる半径30キロ圏の全9市町が策定を終えたが、規制委を含めた政府は計画の実効性を一切チェックしないままだ。規制委幹部は「国が自治体の業務に口を出すことは立場上できない」と繰り返すが、原子力行政に詳しい吉岡斉・九州大教授は「規模の小さい自治体が独自に対処できる問題ではなく、規制に組み込む法改正が必要だ」と指摘する。福島第1原発事故では、放射性物質の拡散情報が住民に伝わらず、入院患者など災害弱者の避難も遅れ、多くの被ばくや関連死を招いた。原発が国策民営で進められてきたからこそ、国は防災対策を自治体に丸投げせず、自ら担うべきだ。事故の最大の教訓の一つである防災対策を「置き去り」にしたままの再稼働は住民の理解を得られまい。

*4-2:http://qbiz.jp/article/42177/1/
(西日本新聞 2014年7月18日) 九電川内原発の再稼働へ 熊本県知事、30キロ圏外にも「説明を」
 熊本県の蒲島郁夫知事は17日の定例記者会見で、九州電力川内原発1、2号機(鹿児島県薩摩川内市)が10月以降に再稼働する見通しとなったことについて「原発から30キロ圏内の住民でなくても敏感になっている状況」とし、再稼働に当たって「政府は、九州全体の人が納得いくような説明をする必要がある」との見解をあらためて示した。県によると、川内原発から半径30キロの緊急防護措置区域(UPZ)に県内は入らないが、水俣市などが約40キロに位置している。また、公害健康被害補償法(公健法)に基づく水俣病の認定申請中であることから、水俣病被害者救済法の救済策に応じなかった人たちを対象に、環境省が何らかの救済措置が取れないか検討すると表明したことに対し「県としてしっかり見守っていく。環境省から県に提案や要望があれば当然、反応していきたい」と述べた。

*4-3:http://qbiz.jp/article/42087/1/
(西日本新聞 2014年7月17日) 避難になお不安 原発の「地元」は
 原子力規制委員会は16日、九州電力川内原発(鹿児島県薩摩川内市)の安全対策を事実上「合格」とした。再稼働に向けた手続きが大きく進んだ形だが、原発から半径30キロ圏にある医療・福祉施設の9割超は、入院患者や入所者の避難計画が未策定。在宅のお年寄りなどの移動方法や、避難先での医療・ケアの確保も見通せない。備えが整わないまま“見切り発車”にならないか。関係者は不安と焦りを募らせる。「再稼働が現実味を帯びるにつれ、不安が膨らんできた」。同県いちき串木野市の主婦(61)は、母親(84)の介護の手を止めて訴えた。母親は認知症で、介護の必要性が最も高い要介護5。会話はできず、車いすのためトイレ、入浴、食事などは手助けが必要だ。主婦は仕事を辞め、原発の南東20キロの自宅で付きっきりで世話している。市の計画では、在宅の障害者は家族と避難する。母親は、主婦が自家用車で同県指宿市の小学校に連れて行くことになるが、渋滞がなくても2時間半かかる。母親が避難所の共同生活に耐えられるとは思えない。福島の事故では避難先で死亡した患者が少なくなかった。考えるほど「避難しない方がいい」と思う。しかし、家に残っても介護用食材やおむつは手に入るのか。医者は来てくれるのか。そして、どのくらい被ばくするのか。不安は尽きない。夫(64)は九電の関連会社員で県外に単身赴任中。「原発が動かず会社の経営は苦しい」と漏らしていたが、主婦は市民団体の再稼働反対署名に応じた。関係自治体によると、30キロ圏内で、同じように自宅で暮らす高齢者や障害者などは約1万4千人に上る。原発から東に8キロ。薩摩川内市の特別養護老人ホームは県の指導で6月下旬、鹿児島市と同県姶良市の老人ホーム2カ所に移転する計画を作った。入所65人全員が自力で動けない。避難には車いすごと積める福祉車両が32台必要だが、施設に4台しかなく、ピストン輸送すれば職員に何度も被ばくを強いる。「どう対応すれば…」。男性事務長(61)は黙り込んだ。原発の南東22キロにある同県日置市の病院は、入院患者の避難計画作りを始めた。「うちは安心、とアピールしたい」と担当者(62)。策定がセールスポイントになるほど、避難への不安は強い。30キロ圏にある244の医療・福祉施設のうち、事故時の避難先が決まったのは10キロ圏の17カ所のみ。定員1万529人の92%は未定のままだ。
◆「経済に活気」/「拙速だ」 住民に賛否
 九州電力川内原発が立地する鹿児島県薩摩川内市では、再稼働に伴う経済活性化への期待と、根強い反発の声が交錯した。「待ちに待った日が来た。きょう(原子力規制委員会の審査に)合格したのなら明日にでも再稼働してほしいくらいだ」。市ホテル旅館組合の福山大作組合長(63)は手放しで喜んだ。市内72団体でつくる「市原子力推進期成会」会長を務める川内商工会議所の山元浩義会頭(71)は「早期に再稼働し、地域経済の活性化と雇用の安定確保につながることを期待する。今後も原発と共存共栄していく」と強調した。薩摩川内市の岩切秀雄市長は「(再稼働に向けた手続きは)大詰めを迎えた。最終的に厳しい基準をクリアすれば、安全と理解している」と語った。一方、地元の脱原発団体など9団体のメンバー約30人は16日、川内原子力規制事務所を訪れ、規制委の田中俊一委員長宛ての抗議文などを提出した。川内原発建設反対連絡協議会の鳥原良子会長(65)は「国は九電の言い分だけを聞いて、住民の側に立っていない。川内が動けば後はずるずるといってしまう。全国の知恵を集め必ず止めたい」と力を込めた。鹿児島市の繁華街・天文館でも同日夕、県内の反原発団体でつくる「ストップ再稼働! 3・11鹿児島集会実行委員会」が抗議集会を開催。荒川譲共同代表は「規制委の基準に適合したからといって、事故の可能性がないわけではない」と訴えた。チラシを受け取った市内の主婦内田英子さん(54)は「十分な避難計画が策定されていないと聞く。再稼働に向かうのは拙速だ」と話した。
◆「避難対策 国関与を」 全国知事会議提言
 佐賀県唐津市で開催していた全国知事会議は最終日の16日、原発事故時の避難対策に国が積極的に関わるよう求める提言をまとめた。県境を越える広域避難の際、国が避難先を調整したり、大規模な備蓄施設を整備したりすることを要望している。佐賀県の古川康知事は会議後、九州電力玄海原発(同県玄海町)の事故に備えた避難計画について「詰めれば詰めるほど課題が出てくる。国も防災に関与してほしい」と述べた。原子力規制委員会が川内原発の「審査書案」を決定したことについては「時間をかけて審査した結果だ。玄海原発も慎重に客観的に審査してほしい」と語った。
◆審査の動向注視
 伊藤祐一郎鹿児島県知事のコメント 今後、(原子力規制委員会の)審査は継続されることから、その動向を注視するとともに、九州電力においては、安全確保に適切な対応をお願いしたい。
◆再稼働、責任は国に 岩切・薩摩川内市長 一問一答
 原子力規制委員会で審査書案が了承された16日、鹿児島県薩摩川内市の岩切秀雄市長は記者会見し「大詰めを迎えた。再稼働の責任は国にある」などと語った。主な一問一答は次の通り。
−再稼働に向けて大きな節目を迎えたが、心境は?
 「いろいろな手続きの関係では大詰めを迎えたと思っている」
−申請してから1年たってまとまった。時間的にはどう思うか。
 「厳重な審査基準を作って、厳重な対応をされたわけでやむを得ないと思う。そのことがかえって大前提とする安全につながるのではないか」
−審査書案がまとまったので川内原発は安全という判断か。
 「厳しい審査基準をクリアしなければ次に進まないとずっと申し上げており、そのように理解している」
−再稼働の責任の所在はどこにあると思うか。
 「それはもう国がとるべきだと思っている。国が許可するわけですから」
−再稼働に対する市長の認識は、2年前の市長選で市民の信託を受けているという考えでいいか。
 「はい、再稼働をすることについてはですね。しかし、それは安全が大前提であり、それに基づいて判断する」
−再稼働の是非の判断時期は?
 「厳しい審査基準をクリアし、国が市民に説明した後、議会の意向を聞いて判断したい。スケジュール的にいつどうなるかは皆目見当がつかない」


PS(2014.7.19):*5のように、麻生財務相の弟である麻生九州経済連合会会長や石原JR九州相談役から料理屋でごちそうになりながら要請されれば、安倍首相は「何とかする」と答えるしかないのかもしれないが、原発事故で損害を受けるのも、原発事故の危険性がよくわかっているのも、この3人ではない。また、菅官房長官は「安全性は規制委の判断」としているが、規制委の田中委員長は、「安全だとは、言わない」と明言している。どうするつもりだろうか。

*5:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20140719&ng=DGKDASFS18024_Y4A710C1EE8000 (日経新聞 2014.7.19) 川内再稼働 首相「何とかする」
 安倍晋三首相は18日夜、福岡市内の日本料理屋で麻生泰九州経済連合会会長、石原進JR九州相談役らと会食した。石原氏らは原子力発電所の早期再稼働を要請。会食後に取材に応じた石原氏によると、首相は原子力規制委員会が新たな規制基準を満たすと認めた九州電力川内原発1、2号機(鹿児島県)について「川内(原発)は何とかしますよ」と答えたという。安倍政権は規制委が新基準に適合すると認めた原発は再稼働を進める方針。菅義偉官房長官は16日の記者会見で「安全性は規制委に判断を委ねている。個々の再稼働は事業者の判断で決める」と述べていた。


PS(2014.7.20追加):原発事故の際には、立地自治体だけでなく周辺自治体も被害を受けるため、*6-1のように、人口の半数以上が再稼働に反対している自治体もある。また、*6-2では、再稼働に意見を反映させるべき自治体の範囲は、「30キロ圏」の48市町が、「立地自治体のみ」の18市町村を上回っている。そのほか、「安全対策、避難対策のため30キロ圏より広げた方が良い」という意見の市町村もあり、もっともだと考える。

*6-1:http://mainichi.jp/select/news/20140719k0000m040151000c.html
(毎日新聞 2014年7月18日) 川内原発:「周辺住民の意見も聞け」反対署名、半数超
 川内原発から南に約8キロ。鹿児島県いちき串木野市羽島地区は東シナ海に面した半農半漁の小さな集落だ。6月初旬、地区に住む元教員の冨永優(まさる)さん(83)は、隣の薩摩川内市にある川内原発の再稼働に反対する署名用紙を手に、集落を一軒一軒訪ねていた。旧川内市に原発計画が浮上したのは1960年代。旧串木野市の羽島地区では反対の声が強く、冨永さんは仲間と川内市内で反対運動を繰り広げた。「海が汚染されると思った。『原子力の平和利用』と言われたが安全だとは思えなかった」。頭にあったのは、54年にアメリカの水爆実験で被ばくしたマグロ漁船「第五福竜丸」事件のことだった。周囲には漁業で生計を立てている人も多く、人ごとと思えなかった。しかし、84年に1号機の運転が始まり、串木野市民も雇用などで恩恵を受けるようになると、いつしか原発反対の声を上げる人たちは減っていった。再び表立って反対の声を上げる人たちが増えてきたのは、福島第1原発事故の後だ。「絶対再稼働はいかんぞ」。用紙を手渡すと、そう言いながら署名する人たちがいた。原発からいちき串木野市までは最短で約5キロ。有志によって集められた署名は、同市の人口(約3万人)の半数を上回る1万5464人分に上り、6月24日、市長宛てに手渡された。だが、市民の過半数が反対しても、現状では同市が再稼働判断に関与できそうにない。再稼働に前向きな伊藤祐一郎知事が県と薩摩川内市の同意で足りるとの姿勢を崩していないからだ。福島の事故は、被害が立地自治体にとどまらないことを明らかにした。「なぜ再稼働を急ぐのか。周辺住民の意見も聞くべきだ」と冨永さんは憤る。

*6-2:http://mainichi.jp/select/news/20140719k0000m040046000c.html
(毎日新聞 2014年7月18日) 原発再稼働:48市町、地元同意範囲は「30キロ圏」
 毎日新聞が国内全16原発の30キロ圏の市町村に実施したアンケートで、再稼働に意向を反映させるべき市町村の範囲を尋ねたところ、「30キロ圏」と答えたのは48市町で、「立地自治体」とした18市町村を上回った。また再稼働にあたり、計40市町村は国が責任を持って判断すべきだとした。毎日新聞は6〜7月、30キロ圏の全135市町村に聞き、134市町村が回答した。政府は原発の再稼働に必要な地元同意の範囲を示していない。九州電力川内原発1、2号機については、実質的な再稼働の判断は電力会社と立地自治体に委ねられる状況となっており、政治判断はしない方針。アンケートでは、範囲を「30キロ圏」と答えた48市町のうち36市町は、30キロ圏が避難計画作成など防災対策を重点的に充実すべきだとされるUPZ(緊急防護措置区域)であることを理由に挙げた。68市町村は「その他」「無回答」だった。
◇原発30キロ圏市町村が再稼働に意向を反映させるべきだと考える範囲と主な理由
【立地自治体のみ】
<東北電力東通>(電力事業者と立地自治体が結ぶ)安全協定に基づく事前了解を必要とするのは立地自治体のみ(青森県六ケ所村)
<北陸電力志賀>原子力政策の進展には立地自治体の理解が不可欠(石川県志賀町)
<四国電力伊方>誘致したのは立地自治体。広域の意見は県で集約される(愛媛県伊方町)
【30キロ圏】
<東京電力福島第2>原発事故の影響は立地自治体のみならず広範囲に及ぶ(福島県双葉町)
<中部電力浜岡>原発事故が発生した場合、危険を伴うことが予想される(静岡県袋井市)
<関西電力大飯、高浜>立地自治体と同様に大きな被害が及ぶ恐れがある(京都府綾部市)
<九州電力川内>法的な枠組みはなくても、少なくとも防災対策重点区域であるUPZの意見は聞くべきだ(鹿児島県いちき串木野市)
【その他】
<北海道電力泊>原発の安全対策、住民の避難対策を考えると30キロ圏より広げた方が良い(北海道仁木町)
<東北電力東通>範囲を広げすぎると意見の収拾がつかなくなることを懸念(青森県むつ市)


PS(2014.7.21追加):日経新聞は、①原発再稼働できないことが経済成長のアキレス腱になっている ②電力会社が瀬戸際で、行政の姿勢に翻弄されると監査法人も困る ③金融危機に相似 ④電気料金28%上昇 など、またまた脅し文句を使って原発再稼働を推進しようとしている。
 しかし①については、このブログの2014.6.19に記載したように、電力自由化と再生可能エネルギーを進めれば、新しい街づくりや産業のイノベーションが可能であるため、有意義な経済成長ができる。また、2014.5.14のブログに記載したとおり、大飯原発運転差止判決は、関西電力に対して「人格権(人権)は、経済成長とは比較すべきものですらない」としている。そのため、日経新聞記者は、その判決内容を理解した上で記事を書くべきだ。
 また②については、電力会社が瀬戸際なのは、お上頼みの経営体質で経営努力の方向が違うことが原因であり、引き合いに出されている監査法人は、真実が開示されていれば問題はなく、そうでなければ問題であるため、日経新聞記者は、監査について書く以上、会計や監査を理解した上で書くべきだ。
 さらに③については、「今後は、原発を電源としない」と決定すれば、このように我田引水の無理な論理を使わなくても、次の方針を決定できる。
 最後に④については、電気料金の値上がりは、政府(経産省)が、いつまでも日本を資源のない国と決めつけてエネルギーの自給を図らず、電力会社には総括原価方式をとらせてコスト意識もなくすべてを高値買いさせてきたことが原因であるため、これこそが改革すべきことである。

*7:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20140721&ng=DGKDASFS17H1I_Y4A710C1MM8000 (日経新聞 2014.7.21) 成長のアキレスけんに
 「成長戦略のマイナス要因であることは間違いない」。17日夕、甘利明経済財政・再生相が漏らした。原子力発電所の再稼働の遅れについて記者会見で問われた時のことだ。東日本大震災後に電気料金は産業用で3割、家庭用で2割上がった。原発の停止により石油や天然ガスの輸入を大幅に増やしたからだ。再稼働が進まなければ「産業用の電気料金は震災前より5割上がる」と甘利氏は警戒する。
●電力、瀬戸際に
 昨年9月から続く原発ゼロ。電気料金上昇は、投資拡大や賃上げの勢いを鈍らせ、時間とともに経済への影響が深まる。第一生命経済研究所の試算によると、原発ゼロは1年目に0.2ポイント実質経済成長率を下押しするが、2年目には0.4ポイント、3年目には0.5ポイントと影響が拡大する。日本経済は4月の消費増税による落ち込みを乗り越えつつあるが、足腰は強くない。来年10月に消費税率を再び上げるかの決断も迫る。電気料金上昇はアベノミクスのアキレスけん。政府関係者は「再値上げよりリストラを」とけん制するが、電力会社の経営も瀬戸際に追い込まれつつある。 「現状のまま来年4月1日を迎えるなら繰り延べ税金資産の計上は難しい」。関西電力の関係者は今春、公認会計士との勉強会でこんな厳しい指摘を受けた。繰り延べ税金資産は払った税金が将来戻ってくると見込んで計上する会計上の資産。黒字見通しでなければ計上できないが、関電は2014年3月期まで3期連続の最終赤字だ。5000億円の繰り延べ税金資産の計上を認められなくなれば自己資本比率は15%から1ケタ台に落ち、資金調達も難しくなりかねない。「あの時と似ている」。シティグループ証券株式調査部の野崎浩成マネジングディレクターは03年の金融危機を思い出す。当時、りそなグループが資本不足に陥った原因は、会計士が同社の繰り延べ税金資産の計上に厳しい見方を示したことだ。旧あさひ銀行(現りそな銀行)出身の野崎氏は「当時は金融行政がものすごく動いていた。監査法人は行政の姿勢に翻弄された」と振り返る。電力会社の繰り延べ税金資産の計上にも再稼働や値上げの行政判断がからむとみる。
●金融危機に相似
 金融行政が揺れ動いたようにエネルギー政策の腰も定まらない。4月のエネルギー基本計画は、原発は「重要な電源」とする一方、「依存度を低減する」とした。電力危機は金融危機との相似形を描く。16年の電力小売りの全面自由化をにらみ、経済産業省は有識者会議で「自由化と原発の両立」を検討し始めた。欧米では自由化で競争が激しくなると初期投資がかさむ原発の新増設が難しくなったためだ。電気事業連合会の八木誠会長(関西電力社長)は「新たな官民の役割分担を検討してほしい」と語る。足元で再稼働を進めつつ、将来の原発をどう位置付けるか。国は難しい2正面作戦を迫られている。
●電気料金28%上昇
 2010年度から13年度に全国平均の電気料金は企業向けで28.4%、家庭向けで19.4%上がった。
 エネルギー問題研究班が担当しました。


PS(2014.7.24追加):①原発が立地する自治体への年間約1000億円の交付金 ②廃炉費用の一部 ③廃炉後の交付金(?) ④使用済核燃料保管費用 ⑤事故後の処理費 なども、全国民が負担している原発のコストである。それでも、原発は安価なエネルギーと主張して継続していくつもりだろうか。

*8:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20140724&ng=DGKDASDF23H0I_T20C14A7PP8000 (日経新聞 2014.7.24) 原発廃炉の促進策を検討 経産省、地元が倒産増懸念
 経済産業省は古い原子力発電所の廃炉を促す方策の検討に入る。23日に開いた原発をめぐる有識者会議で、老朽原発が立地する自治体から「廃炉で関連企業の倒産が増える」といった懸念が表明されたためだ。国から自治体への交付金の拡充などが焦点となる。年内にも具体策を詰める。古い原発の廃炉問題は2015年にヤマ場を迎える。国内には1970年代に運転を始めた原発が12基ある。特に古い日本原子力発電敦賀原発1号機(福井県)はじめ7基が運転続行するには、15年7月までに原子力規制委員会に申請しなければならない。老朽原発に対する規制委の審査は普通の原発より厳しく、電力会社にとっては安全対策の投資額も大きくなる。今後は老朽原発の廃炉を決める電力会社が相次ぐ見通しだ。現在、原発が立地する自治体には、国が年間で計約1000億円の交付金を配っているが、廃炉すると交付はなくなる。23日の会議には敦賀1号機が立地する福井県敦賀市の河瀬一治市長が出席し、「今まで国策に協力してきて、廃炉になったら(支援が)終わりでは困る」と訴えた。敦賀市と、関西電力美浜原発が立地する福井県美浜町では、東日本大震災後の原発停止により、宿泊や飲食の売上高が計約5.8億円減ったという。敦賀市はじめ原発の立地自治体は、廃炉後の交付金減少を穴埋めする財政支援や、企業誘致のための優遇策を求めた。交付金の財源となる国の電源開発促進税は余力が乏しいため、経産省は慎重に支援策を検討する。


PS(2014.7.25追加):*9のように、やはり凍土壁はできず、トンネルの穴から氷1日5.4トン、ドライアイス1日1トンを投入するそうだが、自然界を流れている地下水の分量は膨大であるため、水道を開放して風呂おけをあふれさせながらコップ一杯の氷やドライアイスを加えているようなもので、事前にこれを計算すらできず、湯水のように金を使って、*10のように、東電への支援は5兆円(消費税年間税収の2.5%分)を突破したのは、わが国の技術者及びその周囲の重大な問題点である。なお、*10には、「今回の追加援助は作物の風評被害の賠償期間延長に対応するのが主な目的」とも書かれているが、食物に人工の核種を含んでいればそれを食べた人は内部被曝するため、風評被害か実害かについては、その科学的根拠を示した上で言葉を選ぶべきで、「わからないから実害は無い」とするのは非科学的すぎる。

*9:http://www.tokyo-np.co.jp/article/feature/nucerror/list/CK2014072402000130.html (東京新聞 2014年7月24日) 氷5トン超 毎日投入 福島第一 難航する凍結止水作業
 東京電力福島第一原発の地下トンネルにたまる高濃度汚染水の抜き取り作業が難航している問題で、東電は二十八日から、トンネルに毎日五トン超の氷やドライアイスを投入する。汚染水の温度を下げ、2号機タービン建屋とトンネルの接続部に氷の壁ができやすくする狙い。タービン建屋との水の行き来をなくしてトンネル内の汚染水を抜かないと、再び重大な海洋汚染を引き起こす危険が残る。これまでの計画では、トンネル内に粘土などを詰めた袋をいくつも置き、凍結液を循環させて袋や周辺の水を凍らせて止水し、汚染水を抜いてトンネルをセメントで埋める予定だった。ところが四月末に凍結作業が始まって以降、一部しか凍らなかったり、凍った部分が溶けたりと不安定な状態が続いている。全体が壁のように凍らないと止水できないため、原子力規制委員会が代替策の検討を指示していた。二十三日に開かれた規制委の専門家会合で、東電は現状の汚染水の水温(一五度)を五度まで下げられれば、全体が凍るとの試算を示した。トンネル上部の穴から氷を一日五・四トン、ドライアイスも一トンを投入することで水温が十分に下がり、凍結液を循環させる管も四本増やすことで達成できそうだとする。それでも凍結しない場合は、袋同士が密着していない部分にセメントなどを流し込んで隙間を埋める作業を、八月下旬から実施。ただセメントが固まれば元に戻せなくなるため、東電はあくまでも最終手段にしたい考えだ。検討会で規制委の更田(ふけた)豊志委員は東電側に「氷の投入という極めて原始的な方法だが、やれることは何でもすぐにやってほしい。お盆のころには結果が分かると思うので、朗報を聞きたい」と話した。

*10:http://www.tokyo-np.co.jp/article/feature/nucerror/list/CK2014072402000131.html (東京新聞 2014年7月24日) 東電支援5兆円突破へ 原賠機構に追加申請
 東京電力は二十三日、福島第一原発事故の被害者への賠償のため、原子力損害賠償支援機構に対し、五千百二十五億九千五百万円の追加支援を申請したと発表した。申請通り認められた場合、機構による支援額は五兆三千十四億三千九百万円となる。今回の追加援助は、作物の風評被害の賠償期間延長に対応するのが主な目的で、このための資金として三千三百八十億円を計上した。このほか住宅修繕や引っ越し費用の賠償の新基準への対応で千六十億円。墓石の修理費用も新たに盛り込んだ。山林などへの賠償方法が今後決まる見通しで、機構による支援額はさらに膨らむ可能性が高い。


PS(2014.7.26追加):離島は再生可能エネルギーの宝庫であるにもかかわらず、*11のように、電力会社の意思で契約を中断もしくは制限でき、その上で、「太陽光発電は基幹エネルギーにはなれない」などと言っているのだ。そのため、発送電分離は必要不可欠で、送電は、発電とは中立の機関が行うべきである。

*11:http://qbiz.jp/article/42679/1/
(西日本新聞 2014年7月26日) 九電が離島の再生エネ契約中断 対馬など、需給崩れ停電の恐れ
 九州電力は25日、長崎の壱岐、対馬など、長崎、鹿児島両県の六つの離島で、再生可能エネルギー発電の固定価格買い取り制度に基づく新規契約を1年程度中断すると発表した。太陽光発電などの導入が進み過ぎれば、大規模停電が生じる恐れがあるためとしている。九電管内では初めての事態で、各家庭の太陽光発電も対象となる。中断するのはほかに鹿児島県の種子島、徳之島、沖永良部島、与論島。他の離島でも、買い取り申し込みが一定に達すれば同様の措置を取る。電力の安定供給のためには需要と供給のバランスが取れていることが必要で、太陽光などの電力買い取りが増えると、供給が過剰になり、停電する恐れがあるという。九電によると、太陽光(出力10キロワット以上)の売電価格が4月に1キロワット時当たり36円から32円に引き下げられるなどしたため、3月中に契約しようと九電への申し込みが殺到。買い取り量が、九電が安定供給のために設けた目安を超える恐れが出てきた。九電は申し込み済みの設備についても出力抑制などを交渉する方針。蓄電池を設置するなど、出力調整に配慮した施設については個別に協議に応じる。固定価格買い取り制度は2012年7月にスタート。家庭や企業が太陽光や風力などで発電した電力を国が決めた価格で電力会社が買い取るよう義務付けた。買い取り価格が高く設定された太陽光が増え電力の安定供給維持が課題となりつつある。


PS(2014.7.27追加):*12には、「事故直後に1号機4階で水が出ていたという作業員の証言は国会事故調の調査で発言を強要するようなことが行われたと聞いている」という北大教授奈良氏の発言が書かれているが、これは、フクイチで津波以前に地震で使用済核燃料プールが壊れて水が漏れたという事実を示すため、日本全国の原発を廃炉にせざるをえなくなる重要な部分だ。

*12:http://mainichi.jp/select/news/20140726k0000e040160000c.html
(毎日新聞 2014年7月26日) 原子力規制委:不適切発言の10秒間、公開動画から削除
 原子力規制委員会は25日、東京電力福島第1原発事故の原因を調べる検討会で、出席していた外部有識者に不適切な発言があったとして、ホームページで公開している会合の動画から発言部分の音声を消去したことを明らかにした。検討会は18日に開催され、消去されたのは奈良林直・北海道大教授の発言。事故直後に1号機4階で水が出ていたという作業員の証言で、国会の事故調査委員会と規制委の聞き取りで異なっていた点について、奈良林教授は「国会事故調の調査で発言を強要するようなことが行われたと聞いている」と述べた。これに対し、国会事故調の元委員から22日、規制委に対し「発言に根拠がない」などと指摘があり、規制委は同日、動画公開を一時中止。奈良林教授も「不適切な発言とも取られかねない」として削除を要請した。このたため、規制委は23日、当該の約10秒間の音声を消し、「発言者から議事録より削除したい旨連絡があった」と注釈をつけて公開した。


PS(2014.7.28追加):*13 に書かれているとおり、新規制基準は住民の安全を保障していないが、それでも命とこれまで積み上げてきた全財産を犠牲にして原発再稼働に同意するか否かは、過酷事故時に被害を受ける全地域の住民で意思決定すべきである。

*13:http://www.saga-s.co.jp/news/national/10208/87998
(佐賀新聞 2014年7月27日) 原発再稼働「強行」と批判、菅元首相、松山で講演
原発再稼働「強行」と批判
 菅直人元首相が27日、松山市内で講演し、原発再稼働の動きについて、原子力規制委員会の新規制基準が住民の命や避難を対象にしていないと指摘した上で「安倍政権は、規制委の審査を満たせばよいとして強行しようとしている」と批判した。菅元首相は、九州電力川内原発(鹿児島県薩摩川内市)が新規制基準を満たしたことに対し「規制委の審査は、付近の住民の命が本当に大丈夫か、安全に退避できるかなどの重要なことが抜けている」と述べた。講演で菅元首相は、東京電力福島第1原発事故の発生後、原子炉への海水注入をめぐる東電とのやりとりなどを約30分にわたり説明した。

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