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2013,12,03, Tuesday
東京新聞より 2013.12.3日本海新聞 (1)共謀・教唆・そそのかし・扇動の明確な定義と範囲は何か? 特定秘密保護法案では、*1、*2のように、「共謀」「教唆」「そそのかし」「扇動」も刑罰の対象になるが、それならば、これも明確な定義と範囲の確定が必要だ。何故なら、こじつけようと思えば、どうにでもこじつけられるようなことで刑罰の対象になっては、法治国家とは言えないからである。 (2)「特定秘密情報」を漏らしたとして罪に問われたら、どうやって無罪を立証できるのか? *1に記載されているとおり、「特定秘密情報」を漏らしたとして罪に問われたら、法廷でその内容が示される可能性は低いため、被告人は、「本来、秘密にすべきことではない」「基本的人権の侵害だ」というような反論も立証もできず、処罰されることになりかねない。極端に言えば、検察は、根拠がなくても逮捕して処罰させることができるようになるのだ。これは、実質的に、国民が公正な裁判を受ける権利を無視する法律であり、決して通してはならない。 (3)秘密指定に関する第三者のチェック 私は、仮に法案が成立したとしても、国会が委員会を作って秘密指定の妥当性に関するチェックを行うべきだと考えるが、この法律では、「第三者のチェック」は、首相が、首相の指揮監督とは別の観点から、第三者的なチェックをしていくということになった。しかし、行政機関の長であり、秘密指定をする最高責任者である首相が、同時に第三者としてチェックするというのは論理矛盾がある。 また、内閣に情報監察を行う機関を設け、首相に進言して運用の妥当性を的確に判断できるようにする第三者機関を設けるとも言われている。しかし、第三者機関の委員は非常勤で、行政に都合の良い発言をする人を指名することができるのに、有権者の付託を受けている国会よりも第三者機関の独立性の方が信頼できると考えるのはおかしい。 (4)「テロ」の拡大解釈で自由な民主主義国は風前の灯 *3、*4に書かれているように、法案の「テロ」の解釈については、条文を素直に読めば、人を殺傷する目的がなくても「政治上その他の主義主張に基づき、国家もしくは他人に強要する活動」がテロとなり、次の首相になるかも知れない石破氏の主張はこの解釈と同じだ。また、日弁連も同じ解釈をしている。 そうすると、政治的な主張を声高に表明する行為もテロリズムとなり、公安当局はこの法律のお墨付きを得て、さまざまな市民活動を監視しやすくなる。つまり、テロの定義を曖昧にして拡大解釈を可能にしておくと、日本は、自由な民主主義国とは程遠い状況になるのである。 (5)「知る権利」は主権在民(民主主義)の礎だから *5に書かれているように、横浜市でも12月1日に市民がデモ行進し、「国民の知る権利を守れ」と声を上げたそうだ。主権在民が機能するためには、真実を知って選択できなくてはならないからである。行進前には、JR桜木町駅前でデモ参加者が集会を開き、大学教授や横浜弁護士会副会長をはじめとする弁護士ら十三人が法案の問題点を指摘したそうだが、このように、よくわかっている普通の人たちがこぞって反対しているのが、この特定秘密保護法案なのである。 *1:http://www.asahi.com/paper/editorial.html?ref=com_gnavi (朝日新聞社説 2013年 12月 2 日) 秘密保護法案―裁きを免れる「秘密」 特定秘密保護法案には、裁判の公正さの観点からも、大きな懸念がある。「特定秘密」とされた情報を漏らしたり、取得したりしたとして罪に問われたら、どうなるのだろう。裁判では、その情報が本当に秘密とすべきものかどうかが争点になる可能性が大きい。だが、法廷で情報そのものが示される可能性はほとんどない。何が問題か分からないまま、処罰されることになりかねない。共謀や未遂のケースでは、どんな秘密にかかわって罰せられるのか、被告自身が分からないという事態さえ考えられる。 国会の審議で政府は、秘密の内容を具体的に明らかにする必要はないと説明した。秘密の種類、性質、秘密指定の理由などを示せば、秘密に値することは立証できるというのだ。しかし、秘密指定について第三者のチェックがないしくみでは、本来、秘密にするのが適当でない情報が含まれるおそれは強い。種類や性質といった形式的な説明で済む話ではない。たとえば、政府にとっては公になることが不都合な秘密であっても、社会全体の利益を考えれば、国民に広く共有されるべきものかもしれない。その情報を漏らしたり取得したりした行為は、それが社会にもたらした損害と利益に照らして、処罰が必要かどうか検討されるべきである。情報の中身の吟味は不可欠だ。 秘密というにはあまりに取るに足らない情報にかかわって、起訴されることもあるかもしれない。秘密指定したことの行き過ぎが問われないまま、処罰することは許されないだろう。特定秘密を証拠として調べる必要があるかどうかを検討するため、非公開の手続きで、裁判所が検察側に秘密の提示を命じる可能性はある。検察側はそれさえ応じないのではないか。通常の事件なら、このような命令に検察側は対応するのが原則だ。しかし特定秘密をめぐる事件では、秘密を出さないことが有罪の立証よりも優先されかねない。歴史を振り返れば、秘密保護に伴う罰則のねらいは、違反者を有罪にすることより、むしろ政府が秘密にしたい情報に近づこうとする行為を威嚇し、萎縮させるところにあった。有罪に持ち込めなくても、疑わしい人物を逮捕し、捜索、取り調べをするだけで、一定の目的は果たせる。そのような性格が今回の法案にすけて見える。適正な刑事手続きにもたらす影響はあまりに大きい。 *2:http://www.shinmai.co.jp/news/20131202/KT131130ETI090005000.php (信濃毎日新聞 2013年12月2日) 秘密保護法 会期末へ 拙速審議は許されない 臨時国会は会期末まで1週間を切った。政府与党はこの国会中に特定秘密保護法案を成立させる構えでいる。法案は先週から審議の場を参院に移している。政府は衆院と同様、国民の「知る権利」が損なわれないかといった疑問に答えることができていない。このまま成立へと向かうことは容認できない。法案にはほかに、▽政府の勝手な判断で秘密指定できる▽半永久的に隠し続けることも可能―といった問題がある。こうした問題への掘り下げは、参院の審議でも不十分なままだ。 森雅子担当相は迷走答弁を続けている。例えば公務員と報道関係者の接触をめぐる規範新設についての受け答えである。委員会で「規範の新設を検討する」と述べた翌日には「報道機関を萎縮させる。規範を作ることは難しい」と発言。同じ日の午後になると委員会で「さまざまな観点から検討する」と答えている。答弁が首尾一貫しない背景には、法案が生煮えのまま国会に提出された事情がある。 参院審議では、自公の与党と野党のみんなの党、日本維新の会との間で行われた修正協議のいいかげんさも露呈した。運用をチェックする第三者機関について、自民党の担当者は「内閣に情報監察を行う機関を設け、首相に進言して(妥当性を)より的確に判断できるようにする」と答弁した。チェックは首相指揮権の範囲内、との考えだ。これに対し維新の担当者は「首相の指揮監督とは別の観点から第三者的なチェックをしていきたいとの趣旨だ」と述べている。第三者機関の独立性はチェックの信頼性に直結する。見過ごせない食い違いだ。「しっかりチェックする」と言われても、これでは信用するのは難しい。政府が第三者機関のモデルとする米国の情報保全監察局も態勢は貧弱で、増え続ける機密に追いついていないのが実情という。 衆院の採決ではみんなの党が賛成に回り、野党の足並みの乱れを印象づけた。みんなを含む野党7党の参院国対委員長は先日、徹底審議を行うことで合意している。合意の通り一致して法案の欠陥を追及してもらいたい。参院は「熟議の府」「再考の府」とも呼ばれる。衆院と同様に、数の力の横行を許すようでは、参院の存在意義も問われる。 *3:http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2013120202000113.html (東京新聞 2013年12月2日) 「殺傷目的以外でもテロ」 拡大解釈に現実味 国民の「知る権利」を侵害する恐れがある特定秘密保護法案をめぐり、自民党の石破茂幹事長がブログで、市民団体らのデモ活動をテロとみなした。憲法が定める「表現の自由」に基づく市民の政治への訴えを犯罪と同一視する言葉が政権中枢から出たことで、法案が成立すれば国民の権利が抑圧されるとの懸念は現実味を増した。石破氏は、安倍晋三首相を支える自民党ナンバー2の幹事長で、影響力は絶大だ。一日になって、デモを「テロ」と例えたブログの表現は撤回を表明したものの、抗議活動を危険視する姿勢までは改めなかった。法案では「テロ防止に関する情報」も特定秘密の対象としている。漏えいをめぐっては、漏らした公務員だけでなく、そそのかしたり扇動したりした市民も厳罰対象となる。法案の「テロ」の解釈について、森雅子内閣府特命担当相ら政府側は「人を殺傷し物を破壊するための活動」と説明している。だが、条文の解釈によっては、人を殺傷する目的がなくても「政治上その他の主義主張に基づき、国家もしくは他人に強要する」活動がテロとみなされる、と指摘する専門家は少なくない。石破氏の主張もこの解釈と同じで、テロの定義が拡大する恐れがある。森氏は法案について国会審議だけを担当しており、成立後の役割は決まっていない。法案成立後、政権の意向で森氏の説明が覆る可能性がないとは言い切れない。石破氏は講演で「周りの人が恐怖を感じるような音で訴えること」を批判した。「恐怖を感じた」という不明確な基準で、デモがテロ扱いされる解釈にもつながる。石破氏は、自分たちに向けられた平和的な方法による主張を「テロ」と切り捨てた。法案が成立すれば、原発反対のデモを含め市民の訴えを、政権が「テロ」とみなして監視し、取り締まりをしかねない。 *4:http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2013120202000121.html (東京新聞社説 2013年12月2日) 秘密保護法案 思想への介入を許すな 特定秘密保護法案は副作用が極めて強い法案だ。「特定有害活動」など意味のあいまいな言葉を用い、公安当局などが活動しやすい状況をつくっている。国民の思想分野まで介入しないか心配だ。「国家には秘密がある。だから、秘密を守る法律が必要だ」と、単純に考えてはいけない。現在も秘密を守る法律は存在し、新たな法律をつくらねばならない切迫した事実が存在しないからだ。しかも、国民の「知る権利」をより窮屈にし、人権侵害などを引き起こす恐れのある、“欠陥法”をわざわざ制定すべきでない。情報の漏えいを防ぐならば、行政機関が管理を徹底する仕組みを充実させれば済む。国民に権力を向ける法案など不必要なのだ。 国家は初めから秘密を握っているのではない。米軍などからもたらされたり、外交ルートを通じる秘密もある。この法案は、国内の情報収集を活発化するという性質も帯びている。それを担うのが、公安当局などだ。特定有害活動とテロの防止の項目が設けられているのは、そのためだ。前者はスパイ活動を指すと説明されるものの、条文の中には「その他の活動」という文言が入っている。定義を意図的にあいまいにしているのだ。 テロの定義は、人の殺傷や施設の破壊だけではない。「政治上その他の主義主張に基づき、国家若(も)しくは他人にこれを強要」する活動も含まれる。少なくとも、条文の表現はそう読める。日弁連も同じ解釈をしている。そうなると、政治的な主張を声高に表明する行為も、テロリズムとなってしまう。国民の思想分野にも国家が介入しうる、異様な法案といえよう。公安当局がこの法律のお墨付きを得て、さまざまな市民活動を監視することは十分に考えられる。刑事警察は事件の発生から動き始めるが、公安警察は事件性の予知だけで情報収集をする。 在日イスラム教徒の日常生活を詳細に調べた文書がインターネット上に流出した事件があった。警視庁が作成したとみられている。「国際テロ関連文書」とされるが、テロリストとは全く無関係の人々の個人情報が丸裸にされていた。こんな情報収集はプライバシー侵害そのものではないか。非合法の監視手法を合法化しうる危険性が極めて高い法案だ。「官憲」が強権を振るった、暗い時代を思わず想起する。 *5:http://www.tokyo-np.co.jp/article/kanagawa/20131202/CK2013120202000146.html (東京新聞 2013年12月2日) 「知る権利守れ」 横浜で市民350人デモ行進 参議院で審議中の特定秘密保護法案をめぐり、成立に反対する横浜市民らが一日、同市中区のみなとみらい地区でデモ行進し、「国民の知る権利を守れ」と声を上げた。「秘密保護法案絶対反対!」などと書かれたプラカードを持った約三百五十人が参加。ワールドポーターズ前から象の鼻公園まで、約二・六キロを一時間かけて行進した。四歳の長女を連れて参加した同市磯子区の主婦(36)は「子どもに『なぜこんな社会になったの』と聞かれて、答えられない親にはなりたくない。真実を知り、選べる社会にするため、せめて自分の意思を示したい」と力を込めた。行進前には、JR桜木町駅前でデモ参加者が集会を開き、大学教授や弁護士ら十三人が法案の問題点を指摘。横浜弁護士会副会長の本田正男弁護士は「悪夢でも見ているような法案だが、危険性の認識が国民全体に浸透してないのではないか不安がある。地道に訴えることが大切」と説いた。
| 民主主義・選挙・その他::特定秘密保護法関係2013.10~12 | 08:24 AM | comments (x) | trackback (x) |
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