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2015.4.9 大手電力会社の立場に立ち、温室効果ガスの削減を口実として、それより公害の多い原発維持の論理を展開するのは、もうやめるべきである。 (2015年4月10、11、12、24日に追加あり)
        
世界のCO2排出量  国別総排出量    日本の         日本の   
            一人当たり排出量  部門別排出量   部門別排出量推移

   
     *1-3より       *1-1より    *2-1より    再生エネ&水素社会  

(1)2030年に2013年比で温室効果ガス(CO2)20%削減は目標が小さすぎる
 世界のCO2排出量は上の段の一番左の図で、国別総排出量と国別一人当たり排出量は二番目の図である。アメリカは総排出量・一人当たり排出量ともに大きく、中国・インドは一人当たり排出量は小さいが人口が多いため総排出量が大きい。日本・ドイツは、先進国の中では総排出量が比較的小さい。

 しかし、日本の部門別排出量を見ると、①エネルギー転換部門39% ②産業部門26% ③運輸部門17% が大きい。そのため、2030年(今から15年後)までであれば、運輸部門をすべて自然エネルギー由来の水素燃料と電気自動車に変え、③からはCO2を排出しないようにすれば、まず17%のCO2削減が可能だ。また、①のうちの発電もLNG以外は全て自然エネルギーに変えれば、原発を再稼働しなくても10%くらい(39%X電力への使用割合X40%)は排出されなくなる。さらに、産業部門も半分を水素に変更すれば13%(26%X50%)の抑制ができるため、全部で約40%のCO2削減ができる筈だ。

 こう書くと、「責任政党は、そのような実行不可能なことは言わない」などと言う人がいるが、電気自動車や燃料電池車は、このために1995年頃から開発し始めて既に実用化済であり、自然エネルギーや水素燃料による発電システムも使用開始の目途がついているのだ。そのため、目標を立ててやるかやらないかが現在の政治責任であり、これを2段目の「再生エネ&水素社会」のイメージのように実行すれば、日本のエネルギー自給率は100%以上となって、海外に燃料費を支払わなくてもすむわけである。

 そのため、*1-3で、2009年9月に鳩山首相が「あらゆる政策を総動員して25%削減する」と言ったのが、目標として最も妥当だったと、私は、当時から思っていた。

(2)原発再稼働は不要である
 *1-1の「経済産業省と環境省が案を詰め、再生可能エネルギーのてこ入れや原子力発電所の再稼働を前提に、2030年までの温暖化ガス排出量を2013年比で20%前後削減する目標を打ち出す実現可能な目標として国際社会に示す」というのは、現状維持を前提としているため、全く話にならない。

 なお、原発再稼働論者は、*1-2のように、必ず「原発が稼働しなければ国民負担が大きい」という嘘を言うが、原発のコストは、何度も記載してきたとおり、原発立地自治体への交付金、防災費用、廃炉費用、最終処分費用、事故処理費用のすべてを含み、運転費用だけではないことを忘れてはならない。

(3)自民党の原子力政策とエネルギーミックスの非妥当性
 *2-1のように、自民党の原子力政策・需給問題等調査会が2030年の望ましい電源構成として、「原子力、石炭火力、水力などの“ベースロード電源”の比率を東日本大震災前の水準である約6割に引き上げるよう提言した」とのことだが、これは、何も考えずに経産省主導で従来のやり方を踏襲した姿だ。また、「安定的に発電できるのは、原子力、石炭火力、水力しかない」としているのも、フクシマ原発事故に正面から向き合って反省していない姿勢である。

 また、*2-2では、環境省が「2030年の再生エネ比率は、24~35%になると推定」し、宮沢経産相が「技術的な制約やコストの課題など実現可能性について十分考慮されていない」としているが、実際には、再生エネよりも原発の方が、技術、コスト、環境汚染などへの課題は解決していない。

 そのような中、*2-3のように、佐賀新聞社が佐賀県議選候補者に、玄海原発再稼働の地元同意範囲についてアンケート調査したところ、立地自治体だけでは「不十分」とした候補者が4割で、自民現職は明確な範囲を答えなかったそうだ。しかし、今後の原発の存廃と玄海原発の再稼働では、自民現職が「安全性確保を前提に、重要なベースロード電源と位置づけ、原子力規制委が新規制基準に適合すると認め、住民理解が得られた原発は再稼働を進める」という自民党及び政府の方針を踏まえた考えを示し、全体では6割が「廃止すべきでない」、7割が「再稼働を容認する」という情けない結果だったそうだ。

 一方、*2-4のように、憲法で原発建設を禁じるオーストリアが、英政府の原発補助金支出を欧州連合(EU)が認めた決定に対し、「市場競争を歪める」として5月にもEU司法裁判所に無効確認の訴訟を起こすそうだ。私も、「原発はコストが安く、安定電源だ」などとして再稼働しようとするのであれば、補助金は廃止して公正な市場競争を行うべきだと考える。

*1-1:http://www.nikkei.com/article/DGXLASDF08H1C_Y5A400C1MM8000/?dg=1
(日経新聞 2015/4/9) 温暖化ガス、20%削減 30年目標に政府調整、13年比で
 政府は2030年までの温暖化ガス排出量を、13年比で20%前後削減する新たな目標を打ち出す方向で調整に入った。6月上旬にドイツで開く主要7カ国(G7)の首脳会議(サミット)で表明する見通し。温暖化対策を巡る国際交渉での欧米の動向を踏まえ、再生可能エネルギーのてこ入れや原子力発電所の再稼働を前提に実現可能な目標として国際社会に示す。経済産業省と環境省が案を詰めている。外務省や首相官邸と調整し、今月下旬にも電源構成(ベストミックス)と温暖化ガスの削減目標に関する有識者会議にかけた上で、正式に政府案としてまとめる。温暖化の国際交渉では、各国が年末にパリで第21回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP21)を開く。そこでは、先進国に排出削減を義務付けた京都議定書に代わり、すべての国が参加する新たな枠組みで合意をめざす。国連は各国に20年以降の削減目標の提出を求めており、米国や欧州連合(EU)は今年3月に提出した。削減目標のベースとなる30年時点の望ましい電源構成について、経産省は二酸化炭素(CO2)を排出しない太陽光や風力などの再生可能エネルギーの割合を現状の10%程度から30年に23~25%前後に拡大。原子力の比率も停止中の原発の再稼働を前提に2割を確保する方向で調整している。CO2を大量に出す石炭、液化天然ガス(LNG)、石油の火力発電は5割半ばと、現状の約9割から大幅に減る見通しで、それだけで温暖化ガスの削減は13年比で10%台半ばとなる。これに省エネ対策の効果などを上乗せし、20%前後の削減をめざす。各国が提示している削減目標に、遜色ない水準にしたいと政府は考えている。当初は削減目標の基準年を米国と同じ05年で検討していた。東京電力福島第1原子力発電所事故に伴い、全国の原発が停止して温暖化ガスの排出が増えている13年を基準にすることで、20%前後の温暖化ガス削減が実現する面もある。米国の目標は05年比26~28%削減、EUは1990年比40%削減。政府関係者によると、これらを13年比に直すと米国は約2割減、EUは3割弱の減少となり、日本が示す20%前後の目標に近づく。温暖化問題は、過去に大量のCO2を排出してきた先進国の責任が重いとされ、新たな枠組みで合意するには日本も欧米並みの負担が必要とされる。日本は97年に京都議定書で、08~12年に90年比でCO2排出量を6%減らす目標を国際社会に示した。その後、09年に民主党の鳩山由紀夫首相(当時)が国連の気候変動サミットで20年までの目標として、90年比で25%削減すると表明。東京電力福島第1原発事故による原発停止を受け、13年に石原伸晃環境相(同)が05年比3.8%削減とする目標に実質的に引き下げた。関係各省は13年を軸に各国の目標を比較・検証する方向だが、14年とする案もある。ただ基準年は米国は05年、EUは90年と異なっており、大震災後の日本の環境変化について、国際社会の理解が得られるかが焦点だ。安倍晋三首相は第1次内閣の07年に「50年までに世界の排出量を半減する」との長期目標を示して国際的な議論を主導した。経済成長と国際交渉への貢献、地球環境への配慮という観点から削減目標でさらなる上積みが可能か、関係各省で詰める。

*1-2:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20150319&ng=DGKKZO84541300Y5A310C1KE8000 (日経新聞 2015.3.19) 2030年の電源構成(下)過大な省エネは国民負担、原発比率20%以上に、成長維持へ電力価格抑制 野村浩二 慶応義塾大学准教授(1971年生まれ。慶大博士。専門は応用計量経済学、経済統計)
<ポイント>
○省エネと電力価格の上昇はコインの両面
○過大な省エネは電力需要の過小推計導く
○電力価格高騰は生産縮小、経済停滞を招く
 米国に比べて2倍以上の電力価格負担を強いられている日本の消費者が、さらに価格上昇を受け入れる余地はあるのだろうか。福島原発事故を受け、稼働を止めた原発を補うため化石燃料依存度は88%に達し、電力価格は現在までに35%上昇している。経済産業省は長期エネルギー需給見通し小委員会を設置し、2030年における電源構成について検討している。需給見通しには電力価格上昇の抑制は当然に織り込まれると思われるかもしれない。しかし、過去の政府試算では電力価格上昇はきわめて大きいものだった。12年、民主党政権下のエネルギー・環境会議では、国民に提示されたすべての選択肢で、30年における電力価格は60%から2倍以上の上昇となっていた。なぜこれほどの上昇となるのか。一般には再生可能エネルギーの増加の影響とみられがちだが、実際には省エネ拡大の影響の方が大きい。省エネ(省電力)と電力価格上昇はコインの両面である。省エネは、その多くが省エネ技術を体化した資本財の導入によって実現される。そして資本の更新時期を迎えたとき、追加的に大きな費用負担のないままに、新しい省エネ技術は緩やかに経済体系に組み込まれていく。市場経済において、省エネを加速するためには、企業や家計において合理的な投資機会となるよう、その背景に電力価格の上昇が必要となる。言い換えれば、将来の電力価格水準をターゲットとすれば、それに対応して実現可能な省エネ量の水準はおのずと定まる。政府は電力消費者の負担とせずに、補助金や直接規制により省エネを推進してきた。しかし、そうした安易な政策手段による隠れた費用も結局は国民の負担となる。省エネへの負担を余儀なくされた企業では、生産コストはトータルで上昇し、国際競争力を喪失していく。家計では教育や健康への投資が阻害される。一般的に資本財価格は相対的に低下する傾向にあり、将来の電力価格が安定的でも、市場経済においても省エネ技術は時間をかけて導入されていく性質のものである。政策によって得られるのは、少しばかりの「前倒し」効果にすぎない。非合理的な選択は、最終的にだれの負担になろうとも、一国経済の成長力をそぐことになる。政府はこの20年以上、コスト負担を顧みることなく、省エネ努力を数量的に積み上げることに腐心してきた。省エネの過大推計は、電力需要の過小推計を導く。そして二酸化炭素(CO2)排出量を小さく、電力構成における再エネ比率を大きく見せる。ゆえに理想的な政策目標に近づけるには、禁断の果実となる。図は日米両国における需要見通しについて、1990年代後半からの予測値と実績値の推移を示している。日本では少しの需要減少を契機に、その減少トレンドを引き継ぐように省エネが過大に推計されている。前政権の見通しを上回らないよう、過去の過大推計は将来の更なる過大推計の布石ともなる。そうした推計値は、リーマン・ショックや震災で生産が大打撃を受けた実績と皮肉にも近似した。その近似を根拠として、30年に向けて年率1.7%という高い経済成長率の想定のもとでも、省エネ努力の積算はきわめて大きなものとなっている。しかし震災後の生産縮小によらない電力需要の減少は、その多くが省エネの「前倒し」によるものであり、30年時点で残る省エネ効果はわずかであると考えられる。対照的に米国での見通しは合理的である。参照ケースは将来の予測値としての機能を果たしている。09年には大きく縮小しその後も停滞しているが、将来の需要は再び過去の成長率へと戻る見通しである。最良技術導入ケースでも増加が見込まれている。求められる需要見通しは、企業が中長期の事業計画を構築しやすいよう現実性の高いシナリオであり、経済合理性を度外視した積算ではノイズでしかない。電力需要の過小推計のもとに電力供給が計画され、もし将来に想定を上回る需要が現実化したとき、コインの表面(数量側)から見れば電気使用制限か停電、あるいは老朽火力の発電増加などでCO2排出量が膨らんで海外から排出枠を購入するという負担を余儀なくされる。コインの裏面(価格側)から見れば、需要を大幅に減少させるため、筆者の試算では電力価格の倍増が必要となる。その結果、日米の需給見通しに基づけば、日本の電力および炭素排出の価格は30年にはともに米国の5倍もの水準になってしまう。とても経済成長と両立するシナリオではない。電力価格の倍増への懸念は絵空事ではない。エネルギー政策で先行している欧州諸国では、21世紀に入り軒並み倍増した。イタリアは欧州連合(EU)の電力自由化指令が国内法化された99年を転機として急速な電力価格上昇に見舞われ、13年には3倍、消費者物価指数で除した実質価格でも2.3倍へと高騰した。産業ごとの成長率と生産コストに占める電力依存度はほぼ無相関だったが、高騰後は強い負の相関が見られる。窯業土石、ゴム製品、パルプ紙製造業など、一国平均よりも年率で3~4%ほど成長率が低い。電力価格倍増は、輸入財への代替や海外への生産移転などを通じて、国内の産業構造を大きく変えてしまう力をもっている。その結果、80%近く石炭火力に依存する中国や、過剰な再エネ負担なしに安定した電力価格を保つ米国へのシフトをもたらした。21世紀に入ってイタリアの経済成長率はほぼゼロで、先進諸国で最低となった。電力価格高騰による生産縮小は、一定の仮定に基づく積算でみれば年率0.15%ほどの成長率の低下要因と解される。これを日本経済の将来見通しに適用すれば、30年の断面では国内総生産(GDP)の約2.2%の下落となり、それまでに失う所得の総額は100兆円近い。日本が同じ轍(てつ)を踏んではならない。再エネは系統対策コストを含まずとも、経済性のある事業は限られ、ほとんどは政策支援なしに成り立たない。再エネの固定価格買い取り制度(FIT)による賦課金総額は15年度に1兆円を超えると言われるほど膨大となった。一部が期待した経済効果も無残なものである。導入前には30%程であった太陽電池の輸入シェアは、一気に80%近くまで上昇した。年率20%ほどで下落していた太陽電池の輸入価格は、導入後の13年初めには(外貨建てでも)プラスに転じ、過度な価格競争に陥っていた中国企業が大きく一息ついただけである。FITは買い取り価格を固定してしまうことで企業の競争を阻害し、価格低下を阻む引力にすらなる。価格上昇を抑制するためFITからの出口戦略の構築を急ぎ、再エネの目標値は20%ほどまでとして中長期的に整備していくことが現実的であろう。電源構成の見通し策定は、エネルギー政策における停滞を前進させる指針の役割も担う。エネルギー安全保障と低炭素、そして経済成長と両立する電力需要に対応できるベースロード電源として、原発の役割は依然として大きい。安全性と効率性の向上のため、原発のリプレースも将来の選択肢である。原子力は20%以上を目標とすべきである。残りは石炭と天然ガスの間の民間企業による選択である。原子力と再エネの適切なシェアの維持は、自由化による価格上昇リスクの抑制のためにも有益であろう。

*1-3:http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BA%8C%E9%85%B8%E5%8C%96%E7%82%AD%E7%B4%A025%25%E5%89%8A%E6%B8%9B (Wikipedia)
●歴史
・2009年 民主党が衆議院選挙においてマニフェストに排出権取引・環境税の導入などによる25%削減を明記
・2009年9月7日 民主党の鳩山由紀夫代表が東京都内のシンポジウムにおいて「あらゆる政策を総動員して実現を目指していく」と発言、世界に注目される
・2009年9月22日 鳩山由紀夫首相がニューヨークの国連本部で開かれた国連気候変動サミットにおいて演説内で温室効果ガス25%削減を発言。日本メディアは注目するも、欧州メディアにはまったく注目されず。オバマ大統領の演説ではCO2削減についてブラジルや中国に言及するも日本には言及せず。
・2009年9月30日 鳩山由紀夫首相が関係閣僚へ温室効果ガスによる影響の試算のやり直しを指示
・2009年10月19日 国内総生産(GDP)が05年から20年に約21%成長することを前提とした場合、日本の2020年の温室効果ガス排出量を国内対策だけで1990年比25%減らし、光熱費の上昇を見込んでも、世帯当たりの可処分所得は経済成長などに伴い05年に比べて76万円増えるとの試算が、前政権(麻生政権)による削減中期目標の検討過程でまとめられていたことが中日新聞社によって報道された。
・2012年1月 温室効果ガス25%削減の撤回を表明
・2012年12月28日、再び政権与党となった自由民主党の茂木敏充経済産業大臣は、民主党政権が掲げた「2020年の温室効果ガス排出量を1990年比25%削減する」とした国際公約について、見直す方針とした[10]。2013年1月25日には安倍晋三首相が、温室効果ガス25%削減目標について、ゼロベースでの見直しを指示した。
・2013年10月 安倍首相と閣僚との協議で、2005年(Co2=129300万トン)比で日本のCo2の排出量をマイナス6%-7%を目標という考えを示した。
●対象となりうる業界
  製紙業界・出版業界
  石油業界・鉄鋼業界
  自動車業界
  発電業界

<エネルギーミックス>
*2-1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20150408&ng=DGKKZO85414030Y5A400C1EA1000 (日経新聞 2015.4.8) 
自民、原発比率 明示せず 安定電源引き上げを提言 党内に異論も
 自民党原子力政策・需給問題等調査会の額賀福志郎会長は7日、首相官邸で安倍晋三首相に2030年の望ましい電源構成案を提言した。安定的に発電できる原子力、石炭火力、水力などの「ベースロード電源」の比率を東日本大震災前の水準である約6割に引き上げるよう求めた。原発の稼働停止で電気料金は上がっており、家計や企業の負担軽減をめざすが、党内には異論もある。首相は「安全第一を基本原則に、安定供給が大切だ。国民生活や中小企業が成り立っていく上で電力料金の抑制は必要だ」と強調した。提言はベースロード電源に関して「欧米の多くの国で、漸減傾向にあるが現状6割以上となっている比率について、国際的に遜色のない水準を確保すること」とした。
■「6割」確保の表現消える 当初はベースロード電源の比率を「6割程度」確保すると明記する考えだった。比率の明示はないが、原発が2割程度、石炭が3割程度になるのが念頭にあるため、党内の一部から異論が出て、最終的に玉虫色の表現になった。11年の震災の後に原発が止まり、液化天然ガス(LNG)や石油といった燃料の調達コストが高い発電が増えた。震災前より家庭向けの電気料金は19%、企業向けは28%上がった。原発の立地自治体では、関連産業への波及も含めて再稼働を求める声がある。原発の再稼働が容易ではないなか、石炭の比率が増すことへの懸念も一部に広がった。「温暖化ガスの排出が増えれば国際舞台で恥をかくのは首相だ」と閣僚経験者の一人は語る。欧米各国は将来的にベースロード電源の比率を下げるとの指摘もあり、国際的な潮流に逆行するとの声も上がった。太陽光や風力など再生可能エネルギーの比率を上げるべきだとの意見もあるが、再生エネについては固定価格買い取り制度による家計や企業の電気料金の値上がりも懸念される。政府は再生エネの比率を原発よりも高くする方針で、今は全体の10%程度の割合が25%程度まで増えれば、電気代への上乗せ額は15年度の年5688円では済まなくなる見通しだ。
■排出削減目標の前提に 30年の電源構成は、今年末の第21回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP21)に向け、政府が温暖化ガスの排出削減目標を決める前提にもなる。首相は6月のドイツでの主要7カ国(G7)首脳会議(サミット)で日本の目標を説明する考えだ。菅義偉官房長官は7日の記者会見で「党の提言もふまえ、できるだけ速やかにエネルギーミックス(電源構成)をまとめたい」と語った。政府内ではすでに原子力を2割以上とし、ベースロード電源で全体の6割程度を確保する方向で議論が進んでいる。

*2-2:http://news.goo.ne.jp/article/mainichi/business/communications/mainichi-20150408k0000m020116000c.html (毎日新聞 2015年4月7日) <再生エネ比率>宮沢経産相、環境省試算を批判
 宮沢洋一経済産業相は7日の記者会見で、2030年の総発電量に占める電源ごとの割合(電源構成)をめぐり、再生可能エネルギー比率を最大35%まで拡大できるとする環境省の試算を「技術的な制約やコストの課題など実現可能性について十分考慮されていない」と批判した。環境省が三菱総合研究所に委託した試算は、30年の再生エネ比率が24~35%になると推定した。35%の場合、電力大手10社がそれぞれの地域で独自に行っている電力の過不足調整を、東日本と西日本の2地域(沖縄を除く)に統合し、地方で余った再生エネ電力を都市部に流すことや、蓄電池を最大限導入することを前提にしている。一方、経産省は再生エネ比率を20%台半ばとする方向だ。当初は3割程度まで拡大できるか検討したが、電力会社間の送電線の増強に数兆円規模のコストがかかり、過不足調整の地域を二つにするなどの対策は実現性が低いと判断した。宮沢氏は会見で、環境省の試算を「電源構成を決める議論で用いることはなかなかできない」と一蹴した。環境省は地球温暖化対策を推進するため、09年度から毎年、再生エネの導入可能量を試算している。今回の試算も「電源構成の策定を目的にしたものではない」と説明。望月義夫環境相は同日の記者会見で「環境省として技術やコストは試算できていない」と認めつつ、「CO2削減を考え、(経産省と)折り合いをつけなくてはいけない。最大限(比率を)増やす方向で頑張りたい」と述べた。

*2-3:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/175082
(佐賀新聞 2015年4月9日) 県議選候補者アンケート(下) 玄海原発再稼働の地元同意範囲
■立地自治体だけ「不十分」4割 ■自民現職、明確な範囲答えず
 玄海原発(東松浦郡玄海町)再稼働を判断する際の「地元同意の範囲」について、佐賀県議選立候補者48人へのアンケートで、隣接や30キロ圏内の自治体への配慮を求める意見を含め、約4割が立地自治体(玄海町と県)だけでは不十分と回答した。統一見解で回答した自民現職27人(無所属1人を含む)は、明確な範囲は答えず、国の動向を注視する考えを示した。地元同意の範囲をめぐっては、7月の再稼働を目指す川内原発の場合、鹿児島県と立地する薩摩川内市だけで「同意」とされた。ただ、全国の原発では、30キロ圏内の自治体などから同意の範囲に含めるよう求める声も上がっている。アンケートでは、無所属や共産、社民現職ら8人が「不十分」と回答した。さらに「どちらともいえない」と答えた12人のほとんどが、「立地自治体だけの問題ではない」(自民新人)「30キロ圏内の意見も聞くべき」(公明)「説明や配慮が必要」(民主)「幅広い理解を得る必要がある」(無所属)など、何らかの対応が必要としている。原発に関する県独自の専門家組織は、8人が「必要」と答えた。「どちらともいえない」の7人の中には、「同じ判断基準の組織は不要だが、地域性に着眼した議論ができるならあっていい」「周辺県と連携した専門チーム」(自民新人)などの意見もあった。30キロ圏内の自治体が策定している避難計画の実効性に関しても、「計画通りにいくとは思えない」「現実的ではない部分がある」などの指摘が多く、改善を求める意見が多かった。今後の原発の存廃と玄海原発の再稼働では、自民現職が「安全性確保を前提に、重要なベースロード電源と位置づけ、原子力規制委が新規制基準に適合すると認め、住民理解が得られた原発は再稼働を進める」と政府方針を踏まえて考えを示した。全体では6割が「廃止すべきでない」とし、7割が再稼働を「容認」するだった。

*2-4:http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2015040401001563.html
(東京新聞 2015年4月4日) 英原発補助金めぐり提訴へ オーストリア、EU相手に
 【ウィーン共同】英政府の原発補助金支出を欧州連合(EU)が認めた決定に対し、憲法で原発建設を禁じるオーストリアが「市場競争をゆがめる」と反発、5月にもEU司法裁判所に無効確認の訴訟を起こす。英政府は「内政干渉」(キャメロン首相)と主張、対抗措置を警告したとも報じられ、両国の外交戦に発展しそうな気配だ。「われわれは誰の脅しにも屈しない。持続可能でも、再生可能でもない原発への補助金には明確に反対する」。オーストリア首相府の担当者は共同通信の取材にこう強調した。


PS(2015.4.10追加):*3のように、NHKは、「東電の福島第一廃炉責任者が、廃炉作業の見通しに関する悲観的な見通しを驚くほど率直に語った」とワールドニュースで海外には報道したが、国内ではそれを報道していない。そのため、NHKは海外向けには「報道した」というアリバイを作り、国民はその深刻でアホらしい内容を知らないのだ。これは、馬鹿者の悪知恵としか言いようがない。
       
        上              上           一方で2015.4.6日経新聞より
        上              上      2030年のエネルギーミックスで原発20%以上 
http://www3.nhk.or.jp/nhkworld/english/news/features/201503312108.html より

*3:http://financegreenwatch.org/jp/?p=50971 (Finance GreenWatch 2015年4月8日) 東電・廃炉責任者が悲観的な見通しを語るも、NHKは国内では報道せず
NHKが、東電・福島第一廃炉推進カンパニー社長・増田尚宏氏に、廃炉作業の見通しについて
インタビューしています。
「東電・廃炉推進トップが語る」 (NHKワールドニュース 2015/3/31)
http://www3.nhk.or.jp/nhkworld/english/news/features/201503312108.html
以下、増田氏の回答を引用します。
—–(引用ここから)——
(Masuda)
We have no idea about the debris. We don’t know its shape or strength.
We have to remove it remotely from 30 meters above, but we don’t have that kind of technology yet, it simply doesn’t exist.
溶融燃料についてはわからない。形状や強度は不明。30メータ上方から遠隔操作で取り除く必要があるが、そういった種類の技術は持っておらず、存在しない。
(Masuda)
We still don’t know whether it’s possible to fill the reactor containers with water.
We’ve found some cracks and holes in the three damaged container vessels,
but we don’t know if we found them all.
If it turns out there are other holes, we might have to look for some other way to remove the debris.
格納容器を水棺にするのが可能かどうかまだわからない。壊れた格納容器3基にヒビ割れや穴をいくつか見つけたが、それで全部かどうかわからない。ほかにもあれば、がれきを取り除く他の方法を見つけなければならない。
(NHK)
The government wants that work to begin in 2020.
I asked Masuda how confident he is that he hit the target. His answer was surprisingly candid.
政府は廃炉作業を2020年に始める意向だ。増田氏にそれについてどれだけ確信があるか尋ねた。彼の回答は驚くほど率直だった。
(Masuda)
It’s a very big challenge. Honestly speaking, I cannot say it’s possible.
But also I do not wish to say it’s impossible.
それは非常に大きなチャレンジだ。正直に言って、私はそれが可能だと言えない。でも不可能だとも言いたくない。
(NHK)
I also asked Masuda what he needs most for the operation to succeed.
増田氏に、成功させるためには何が一番必要かと聞いた。
(Masuda)
That’s hard to say. but probably experience.
How much radiation exposure can people tolerate?
What kind of information do the residents in the area need?There is no textbook to teach us what to do.
I have to make decisions every step of the way.
And I must be honest with you I cannot promise that I will always make the right decision.
言うのは難しいが、おそらく経験だろう。どのくらいの被ばく線量なら許容されるのか?周辺住民ににはどんな情報が必要なのか?どうすればよいか教えてくれる教科書はない。私は、ステップごとに決定を下さなければならない。正直に申し上げて、私が正しい決定をするということは約束できない。
—–(引用ここまで)——
増田氏は、極めて悲観的な見通しを語っています。NHKはこのインタビューを海外に報道したのに、国内では全く報道していません。国内の視聴者の受信料で番組を制作しているのに、都合の悪い情報は国内には一切報道しない。NHKは、東電の広報かと言いたい。極めて悪質な、ふざけた会社です。受信契約を解約する人が激増しているのは当たり前でしょう。


PS(2015.4.11追加):*4のとおり、電源別発電コストは、技術進歩や普及の程度で異なるため、名古屋大大学院教授、高村ゆかり氏の「原発など特定の電源を基幹電源と位置付ける考え方自体がなくなる」「ドイツでは安い再生エネが増えて電力の価格が下がっている」というのはそのとおりだと思う。また、環境省の試案根拠だけでなく、意図的な仮定と都合のよい不明事項が多すぎていかがわしい自民党、経産省、政府の試算根拠も明確に示すべきだ。

   
   2015.4.5NHKより     2015.4.8東京新聞より   2015.4.8    電気軽トラック 
                  原発がミサイル攻撃された場合  朝日新聞より   (実用化済)
*4:http://www.tokyo-np.co.jp/article/economics/news/CK2015041102000126.html
(佐賀新聞 2015年4月11日) 「原発比率2割」異論続々 有識者「事故なかったような議論だ」
 経済産業省は十日、二〇三〇年に目指す再生可能エネルギーや原発など、電源種類別の発電比率を検討する有識者会合を開いた。自民党と経産省が原発で二割程度を賄うことを念頭に水面下で比率案を調整していることに対し、出席者からは「福島(の原発)の事故がなかったかのような議論だ」などの異論が相次いだ。自民党の額賀福志郎元財務相は経産省と足並みをそろえて原発、石炭火力、水力、地熱の「ベースロード(基幹)電源」を、現在の四割から震災前の六割程度に戻す提言を七日に安倍晋三首相に渡した。これは原発で二割程度を積み増すことが念頭にある。太陽光など再生可能エネルギーは、20%台半ばに抑える方向だ。十日の会合では、この提言に対し、東京理科大の橘川武郎(きっかわたけお)教授が、あらためて「将来に向けて大きく考え方を変え、再生エネを30%まで高めて原発は15%に抑えるべきだ」と主張した。また名古屋大大学院の高村ゆかり教授は、欧米では再生エネの増加とともに基幹電源の比率が減少している傾向を解説。「原発など特定の電源を基幹電源と位置付ける考え方自体がなくなりつつある」と話し、基幹電源の名の下に原発を重視する自民党と経産省をけん制した。その上で「ドイツでは安い再生エネが増えて電力の価格が下がっている」とも指摘した。環境省は三〇年に再生エネの比率を最大35%まで高められると試算したが、自民党と経産省は実現性に否定的だ。これについて全国消費者団体連絡会の河野康子事務局長は環境省の出席者に「(試算の)根拠を示してほしい」と要望。経産省に対して電源種類別の発電比率を検討する際の検討材料から環境省の試算を安易に外さないよう、くぎを刺した。次回の会合で経産省は基幹電源についての考え方を整理し、環境省は試算の詳しい根拠を示す。


PS(2015年4月12日追加):*5のとおり、原子力、石炭、水力、地熱をベースロード電源とし、それを隠れ蓑にして原発比率を高めようという意図がありありだ。しかし、「発電コストが安い」という理由で原子力をベースロード電源に入れるのなら、今後、原発に税金で補助金を出したり、フクイチ以後の事故に国の責任で補償したりすることは無用であり、他の電源と同様、すべて原発企業の責任で行うべきである。また、「どの電源による電力を使うか」については、このブログの2011年6月21日に記載したとおり、ユーザーが正しく選択できるよう、電源毎に別会社にして正確に原価計算・利益計算を行うべきである。

*5:http://mainichi.jp/opinion/news/20150412k0000m070110000c.html
(毎日新聞社説 2015年4月12日) 電源構成 原発回帰が透けている
 あの原発過酷事故をなかったことにしたいのだろうか。経済産業省が2030年の日本の電源構成について、「ベースロード電源6割」を打ち出した。自民党の調査会も同様の提言をまとめている。政府によればベースロードは発電コストが安く安定して発電できる電源で、原子力、石炭、水力、地熱を指す。経産省は現時点で原発比率を明示していないが、水力・地熱が簡単には拡大できず、石炭は温暖化対策の観点から抑制が必要であることを考えると、引き算で「原発20%以上」となる可能性が高い。この数字が原発回帰を示していることは明らかだ。事故後に決まった「原則40年廃炉ルール」を守れば、国内の全原発を再稼働させたとしても30年の原発比率は15%程度。20%以上とするには、多くの老朽原発の稼働期間を60年まで延長するか、原発の建て替え・新増設が必要になる。統一地方選への影響を考慮し、ベースロードを隠れみのに原発比率を決めようとしているのだとしたら、姑息(こそく)な話だ。そもそも、「ベースロード6割」に特段の意味があるわけではない。欧米では今後、その割合が低下していくとの予測や、ベースロード電源という考え方自体が時代遅れとの指摘もある。欧米では、まず再生可能エネルギーを優先的に活用する流れができてきている。ひとたび事故が起きれば何年も動かせない原発を、「安定供給できる電源」と言えるのかという疑問もある。経産省は再生エネの比率についても20%台半ば(水力を含む)を検討しているというが、これも政府方針の「最大限の導入」からはほど遠い。太陽光や風力の拡大には送電網の増強などに高コストがかかるためというが、まずは、既存の送電網を再生エネのために有効活用できるよう制度を改善することが先決だ。将来に向けては、事実上破綻している核燃料サイクルや、温暖化対策に逆行する石炭火力への投資分を送電網の拡充にふり向けられる仕組みも考えるべきだ。負担が増えても再生エネを選びたい国民はいるはずで、それを可能にするためにも透明性のある議論が不可欠だ。環境省は30年の再生エネの割合を最大35%まで拡大できるとの委託研究の試算を公表している。この試算をめぐっては技術的制約やコストなどの検討が十分かについて見方がわかれているが、経産省は門前払いするのではなく、公の場で議論してほしい。原発にしても再生エネにしても、正面からの議論を避けているとすれば、政府が決める電源構成に国民の理解は得られない。


PS(2015年4月24日追加):このように、「発電時に二酸化炭素を出さない」という理由をつけて、温室効果ガス削減の名目で、原発の割合を2030年代に20~22%(東日本大震災前と大差なし)とするのは、「公害を出さず、国民の生命・財産を守る」という最も重要な意欲に欠けており、頭が休んでいる。

  
        *6より             経産省上       2015.4.23NHK  
                (LNGをベースロード電源に入れないのもおかしい)

*6:http://digital.asahi.com/articles/DA3S11721337.html
(朝日新聞 2015年4月24日) 温室ガス削減「25%程度」 政府原案提示へ 2030年目標
 政府は23日、2030年の温室効果ガスの削減目標について、現状から25%程度の削減を目指して調整に入った。安倍晋三首相の指示も踏まえて、近く数値を定める。前提となる電源構成(エネルギーミックス)の割合は、原発を「20~22%」、太陽光など再生可能エネルギーを「22~24%」とする方針だ。
■電源構成、原発20~22%
 関係閣僚がこの日、首相官邸に入って協議した。首相の指示を経た後の週明けにも、環境省と経済産業省の専門家会合に政府原案として提示し、6月のG7サミット(主要7カ国首脳会議)までに決める。環境省と経産省で調整している目標案によると、前提となる30年の電源構成は、発電時に二酸化炭素を出さない原発と再生エネの合計で発電量の44%、排出量が少ない天然ガス火力が27%、石炭火力が26%、石油火力が3%。これらにより、エネルギー起源の二酸化炭素排出量は13年比で計算すると20%程度の削減になる見込みだ。ここから25%程度の削減を目指して、森林による二酸化炭素の吸収や代替フロン対策などを積み上げることなどで調整する。これまで、経済への影響を心配して当初10%台の削減としていた経産省と、国際社会で責任を果たすには30%近い削減が必要だとする環境省で主張に開きがあった。20%台半ばであれば、実現可能で意欲的な数字になると判断した模様だ。削減の基準となる年については従来の05年とする案と、原発停止後に排出量が増えた13年とする案があるが、削減率の差は0・6ポイント程度で、国際交渉への影響を見定めながら最終判断する。国際社会は、京都議定書にかわる、すべての国が参加する新しい枠組みを作るため、今年末にパリで開かれる国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP21)での合意を目指している。新しい枠組みでは、各国が温室効果ガス削減などの自主目標案を事務局に登録することになっている。すでに提出している主な国・地域のほとんどは30~50%の範囲にあり、この中では日本の目標は見劣りしかねない。

| 環境::2012.12~2015.4 | 03:55 PM | comments (x) | trackback (x) |

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