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2013.4.14 環太平洋連携協定(TPP)参加の問題について – 特に、医療・農業の視点から
       
        りんごの花              梨畑              洋ナシの花
(1)日本は、“強い”製造業だけを伸ばせばよい国か
 *1のように、日経新聞及び経済産業省は、「競争力が弱い産業を保護することが、最優先の国益ではなく、海外市場を舞台に、強い産業をさらに伸ばし、新しい成長産業を生み出す仕組みを築くことこそが最も重要な国益である」として、「高い水準の自由化を目指すTPPの「純度」を、これ以上落としてはならない」と主張してきた。しかし、これは、農業に関する知識がなく無責任な主張であり、さらに、自由貿易のみしか奨めていない点で、時代遅れの暴論である。
 日本は、シンガポール等とは異なり、1億2000万人が暮らす大国であるため、食料・エネルギーを他国に依存しきっていては、食料・エネルギーの輸出国から足元を見られ、製造業もやっていけなくなる。これは、すでに原油やレアメタルで経験済みだ。しかも、これから地球人口は増加し、食料・エネルギーの価値は高くなるため、農林漁業や鉱業などの第一次産業は、育成すべき重要な産業なのである。そして、現在、これらを支える技術の発展も著しい。
 *1には、「エゴが出やすい2国間協議にとらわれすぎず、TPP交渉でのルールづくりに集中すべきである」とも書いてある。しかし、世界は、日本のエゴを通してくれるような甘い所ではない。その中で、二国間で不可能な交渉は、(親戚同士の)多国間が相手になれば、もっと交渉しにくいことを知って、ものを言うべきである。

(2)TPPの医療における問題点
 *2に、「がんに有効な新しい治療法が世界各国で開発されているが、国内で未承認の抗がん剤による治療は公的な健康保険が適用されない。未承認の抗がん剤を給付対象とする民間の医療保険もなかった。抗がん剤保険は、抗がん剤や、その副作用に対する治療技術が進歩し、入院をせずに通院でがん治療を受ける患者が近年増加していることに対応したものだ」と書かれているが、これは事実だ。
 しかし、問題は、TPPにより、このような状況が放置され、また、先端医療は健康保険の適用外とされ続けて、先端医療を受けたければ、私的保険に入っていなければならないという状況になることである。これにより、保険会社は喜ぶかも知れないが、医療も金次第という状態になり、国民皆保険があっさり崩れてしまう。本来、外国で承認されている薬は、日本でも素早く承認し、国民健康保険の適用対象として国民の命や健康を守るべきなのだ。そうしなければ、国民健康保険料を支払っても、国民皆保険で守られていることにはならない。

(3)TPPの農業における問題点
 *3のように、19道県が農林水産業に対するTPPの影響を試算したところ、全道県で生産額が減少し、千葉、茨城などでは牛乳・乳製品で、生計を立てられる農家がゼロになることを意味する「全滅」と判定されるなど、大きな影響が出ることが浮き彫りになった。農林水産物の減少額を最も多く想定したのは北海道の4,762億円で、道の農業産出額の約47%に達する。鹿児島、宮崎、茨城、栃木、千葉、岩手を含めて計七道県が約3~4割にあたる1,000億円以上減少するとした。
 つまり、日本の食料生産基地である北海道、九州はじめ各地で、TPPにより農業が壊滅的打撃を受けると言っているのである。これにより、農業に関連して発展してきた製造業やサービス業も打撃を受け、地方経済は疲弊するが、これを少数の強い工業製品の輸出が増えれば代替できると考えているのなら、計算が弱すぎる。

(4)では、どうすればいいのか
 これまでのメディアの報道を見ていると、1)官が作った政策を、2)政治家が追認して実行し、3)記者クラブメディアを総動員して、それがよいことであるかのように広報し、国民を納得させるという、いつものメンバー内のやり方は、既に行き詰っている。
 そのため、*4のように、「TPP参加交渉からの即時脱退を求める大学教員の会」が設立され、文系・理系を問わず多様な分野の大学教員867人が参加し、全国の大学教員が連帯して広範なTPPの危険性を国民に情報発信していく決意を表明した」のは嬉しいことだ。
 そして、「TPP推進派との公開討論や政府の影響試算の分析・検証、各国の事情に配慮したアジアの柔軟な経済連携のルール作りなどを研究し、交渉脱退を求める運動につなげる」そうだが、是非、そうして欲しい。政府の影響試算などは、原発のコストと同様、結果を導くために作られたものにすぎないため、専門家の目、科学の目で分析すれば、すぐに崩れ去るものである。

*1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20130413&ng=DGKDZO53927250T10C13A4EA1000
(日経新聞社説 2013.4.13) TPP交渉 これからが国益高める本番だ
 環太平洋経済連携協定(TPP)をめぐる日米間の事前協議が決着し、日本の交渉参加が事実上、決まった。新しい貿易・投資のルールを築く作業に、ようやく加わることができる。安倍晋三首相は「国家百年の計だ」と意気込みを語った。これからが本番である。現在11カ国が加わる交渉は、既にかなり進んでいる。大枠合意の目標期限は10月だ。多くの時間は残されていない。駆け足で追いつかなければならない。交渉の入り口に立つまで、これまで日本の政治は遠い回り道をしてきた。これ以上、時間を無駄にしないために、日本が通商政策で追求すべき国益とは何かを、しっかり認識しておく必要がある。
 国内市場に聖域を設け、競争力が弱い産業を保護することが、最優先の国益ではないはずだ。海外市場を舞台に、強い産業をさらに伸ばし、新しい成長産業を生み出す仕組みを築くことこそが最も重要な国益である。
 最短で3カ月後の正式参加までに、ルールづくりはさらに進むだろう。日本企業と日本人が力を発揮するために、どのような通商ルールが必要なのか。短期間で交渉に反映させるために、官民をあげて知恵を絞らなくてはならない。日米事前協議の合意は、日本の交渉参加に反対する米自動車業界の要求を色濃く反映した内容となった。米国側の関税削減を先送りし、技術の基準や流通制度などについて、TPPとは別に日米間で交渉を続けることが決まった。投資や検疫など様々な非関税障壁についても、日米2国間の枠組みで交渉する。米国は1990年代に経験した日米構造協議、包括経済協議を念頭に、2国間の枠組みを使って日本に市場開放の圧力をかけるつもりだろう。日本の参加表明が遅れたため、米国からの注文が増えた印象はぬぐえない。日本が聖域の論議を持ち出した影響で、米国や他の交渉国で保護主義的な主張が息を吹き返すのも心配だ。高い水準の自由化を目指すTPPの「純度」を、これ以上落としてはならない。新設する日米の枠組みが過去の日米協議と本質的に異なるのは、一方的制裁を定めた米通商法の効力が失われている点だ。対立的にせず、対等な立場で、是々非々で議論できるはずだ。米国の個別業界のエゴが出やすい2国間協議にとらわれすぎず、TPP交渉でのルールづくりに集中すべきである。

*2:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20130410&ng=DGKDZO53777170Z00C13A4PPD000
(日経新聞 2013.4.9)抗がん剤治療の保険続々 国内未承認の薬も対象に
 がん患者が受ける抗がん剤治療を対象にした保険や特約が充実してきた。抗がん剤によるがん治療を受ける患者が増えるなか、保険会社は顧客の要望に応えて商品のラインアップを増やしている。最近では、未承認の抗がん剤まで対象とする保険も登場している。国立がん研究センターによると、がんの3大治療法である手術、放射線、抗がん剤のうち、抗がん剤治療を受ける患者は約4割にのぼる。抗がん剤の開発が進んでいることが背景にある。
 東京海上日動あんしん生命保険の「抗がん剤治療特約」は、通院や入院を問わず抗がん剤治療を受けたときの費用を給付対象とする。受け取れる金額は月5万円と10万円の2パターンから選べる。アフラックも「生きるためのがん保険デイズ」で、入院しなくても抗がん剤治療費用を保障するプランを販売している。オリックス生命は2012年6月に「がん通院特約」を発売した。抗がん剤、放射線治療などで通院した場合は日数の限度なく給付金が支払われる仕組みだ。ソニー生命の「抗がん剤治療特約」は給付金額を月5万~15万円から1万円ごとに選べる。住友生命は3月、がん保障特約「がんPLUS」を発売した。医師ががん治療の目的に使用する抗がん剤を、公的医療保険の適用外となる未承認の場合でも給付対象としている。将来誕生する新薬も対象に含まれる。通院による治療にも適用される。
 がんに有効な新しい治療法が世界各国で開発されているが、国内で未承認の抗がん剤による治療は公的な健康保険が適用されない。未承認の抗がん剤を給付対象とする民間の医療保険もなかった。抗がん剤保険は、抗がん剤や、その副作用に対する治療技術が進歩し、入院をせずに通院でがん治療を受ける患者が近年増加していることに対応したものだ。厚生労働省によると、外来での抗がん剤治療の実施は11年に14.1万件に達し、05年の2.3件人から約6倍に増えている。

*3:http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2013041290065607.html
(東京新聞 2013年4月12日) TPP 19道県が農林水産業試算 乳製品「全滅」
 政府が環太平洋連携協定(TPP)に参加した場合を想定し、十九の道県が地元の農林水産業への影響を独自に試算していることが本紙の調べで分かった。全道県で生産額は減少。千葉、茨城などでは牛乳・乳製品で、生計を立てられる農家がゼロになることを意味する「全滅」と判定されるなど、大きな影響が出ることが浮き彫りになった。十九道県で計一兆六千億円減る計算で、他の二十八都府県も含めれば、総額で三兆円減少するとした政府試算を上回る可能性が高い。政府は三月十五日、安倍晋三首相がTPP交渉参加を表明した際、農林水産業への影響試算を公表。
 十九道県は、これを受けて独自に試算を行った。政府試算と同様に、交渉参加十一カ国との関税が即時撤廃されて、米国などから安い農産品が輸入されるという前提で計算。ただ、地域の生産量や競争力をほとんど考慮していない政府試算と違い、各道県が県内の状況に合わせて独自に評価した。農林水産物の減少額を最も多く想定したのは北海道の四千七百六十二億円で、道の農業産出額の約47%に達する。鹿児島、宮崎、茨城、栃木、千葉、岩手を含めて計七道県が約三~四割にあたる一千億円以上減少するとした。政府試算は各品目がTPP参加により生産が減少する率を一つの数字に統一して計算した。例えば牛乳・乳製品は減少率45%と計算したため、消費者の人気や品質の差が与える影響が、数字からは見えなかった。減少率を個々に割り出した十九道県の調査では、茨城、栃木、千葉など十一県は牛乳・乳製品を「全滅」と判定。外国から安い価格の加工乳が入り、そこから乳製品をつくるようになるため、壊滅的なダメージが出ると予測されている。一方、政府が70%減とする豚肉は、生産額日本一の鹿児島が減少率を45%としたのに対し、滋賀や高知は「全滅」と試算した。

*4:http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=20308
(日本農業新聞 2013年4月11日) 大学教員867人 反TPPで結束 国民に危険性発信
 「環太平洋連携協定(TPP)参加交渉からの即時脱退を求める大学教員の会」の代表者6人は10日、東京・永田町の参院議員会館で記者会見を開き、全国の大学教員が連帯して広範なTPPの危険性を国民に情報発信していく決意を表明した。文系・理系問わず多様な分野の大学教員867人が9日までに同会の趣旨に賛同。TPP推進派との公開討論や政府の影響試算の分析・検証、各国の事情に配慮したアジアの柔軟な経済連携のルール作りなどを研究し、交渉脱退を求める運動につなげる考えだ。
 TPPの危険性が国民に理解されていないとして東京大学の醍醐聰名誉教授ら17人が呼び掛け人となり、交渉参加阻止を目指す大学教員の組織化を提案。安倍晋三首相による3月15日の交渉参加表明の撤回と、事前協議の即時中止を求める要望書を掲げて同月28日から賛同人を募り、2週間足らずで経済、国際、地域論、社会学、教育、医療、物理、化学など800人を超える広範な分野の大学研究者が趣旨に同意した。要望書は9日、政府に提出した。記者会見では、交渉参加表明と併せて政府が公表したTPP参加の影響試算の分析に加え、農業経営者や流通・加工など関連産業の事業者の所得や、地方財政への影響などを独自に試算する考えを示した。また交渉参加国との事前協議について政府に情報公開を求め、内容を分析し発信する。醍醐氏は「ほぼ全領域を網羅した研究者がTPPの危険性を指摘している。研究を基に理解を呼び掛け、情報を発信する社会的使命を大学の研究者は持っている」と同会の意義を強調した。
 また、横浜国立大学の萩原伸次郎名誉教授は「さまざまな場面で賛同者を広げ、交渉脱退への道筋をつくる」と述べた。慶応義塾大学の金子勝教授は「交渉参加は日本の法体系の根本を揺るがしかねない問題だ。不正確な情報を正し、公正に検証し、冷静な議論を深める」と指摘。東京大学大学院の鈴木宣弘教授は「TPPではなく、柔軟で、均衡ある発展、住民の幸せにつながるアジアの経済ルール の方向性を示したい」と話した。

| 環太平洋連携協定(TPP)::2012.11~ | 07:08 PM | comments (x) | trackback (x) |

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