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2014.12.28 原発の本当のコスト及び電力需要者・住民の選択権 (2014年12月29日追加あり)
     
   *2-1より     *3-3より     *5より   フクシマ汚染地図 

(1)経産省は、安全でもないのに原発再稼働に向けて圧力をかけていること
 *1-2のように、関電高浜原発3、4号機(福井県)の審査書案を了承したことを受け、原子力規制委員会の田中俊一委員長は12月17日の記者会見で「稼働への条件を満たしているか審査したが、イコール事故ゼロかというと、そんなことはない」と述べている。田中委員長は九電川内原発1、2号機の審査書案を了承した今年7月にも、「安全とは私は申し上げない」と述べているにもかかわらず、政府及び政治家は、「規制委が安全性を確認した原発については再稼働を進めていく」と言っているわけである。これは、事故時の責任をお互いに相手に押し付けて回避する体制をとったことを意味し、国民の命や環境への配慮は不在の姿勢である。

 また、*1-1、*1-3のように、経産省は、再稼働に必要な立地自治体の同意を促すため、原発立地自治体の電源3法交付金を、再稼働した自治体に発電量に応じて重点的に配分し、老朽原発の廃炉後に新しい原子炉を設置するリプレースに触れるなど原発に積極姿勢を打ち出しているが、これはエネルギー基本計画の「原発依存度を可能な限り低減させる」に逆行しており、新エネルギーの発展を妨げる。

 確かに原発が稼働していないのに電源3法交付金を渡すのは不合理だが、原発は、稼働していなくても一歩間違えばフクシマのように大爆発する可能性の高い使用済核燃料を原子炉の近くに大量に保管しているため、使用済核燃料の早急な処理と処理を終えるまでの期間の危険手当は必要だ。そして、このように安全でも低コストでもない原発にしがみついて再稼働させるのは誰にとってもマイナスであり、電源3法交付金を交付するよりも、次のエネルギーに進むためのインフラ整備や消費税の地方税移管を行った方が、原発立地自治体にとっても日本経済の活力にとってもプラスである。

(2)本当の原発発電コストは、決して安くないこと
 *2-1のように、原発の発電コストは世界的には1キロワット時当たり平均14セント(約15円)で、太陽光発電とほぼ同じ、陸上風力発電や高効率天然ガス発電の8.2セントと比べるとかなり高いという試算を、エネルギーの調査機関である米国のブルームバーグ・ニュー・エナジー・ファイナンス(BNEF)がまとめた。日本政府は、原発の発電コストを2004年に1キロワット時当たり5.9円と試算し、フクシマ原発事故後、これを「コスト等検証委員会」で見直して、事故対策費などを含て8.9円と試算し直した。しかし、ブルームバーグ・ニュー・エナジー・ファイナンスの1キロワット時当たり14セント(約15円)には、事故対策費は含まれていないのである。このほか日本では、税金から支出する地元対策費、廃炉費、使用済核燃料の処分費なども含んでおらず、原発の発電コストは実際よりもかなり低く表わされている。

 なお、再生可能エネルギーの発電コストは、地熱(6.5セント)、小水力発電(7.7セント)、陸上風力(8.2セント)、石炭火力(9.1セント)、天然ガス火力(8.2セント)で、太陽光発電も近年コストが下がって14.9セントとなっているのだ。日本では、海外に比べて高価な国内製機器が使われることから太陽光発電は32.9セントと高いが、BNEFは「安い輸入機器の利用を拡げればコストは低下する」としている。また、風力発電も、日本は機器のコストが高く、稼働率は欧米に比べて低いため、19セントと割高なのだそうで、これらが改善すべき問題だ。

 それにもかかわらず、*2-2のとおり、再来年に導入される電力市場自由化に向け、経産省は総合資源エネルギー調査会原子力小委員会で、原発による電力を、一定期間、固定価格で買い取る新しい原発優遇策を検討しているそうだ。これは、「原発はコストが安い」というふれ込みに反し、新時代に対応して未来を切り開くカネの使い方でもなく、今後の日本経済には全くプラスにならない。私も、原発は、それを作ると他の産業が育たず、公害のない低廉なエネルギーを供給して経済を発展させるというスタンスから全く程遠いものだと考えている。

(3)過酷事故のコスト
 *3-1に書かれているように、東電はフクシマ原発事故の賠償に必要な資金として、政府の原子力損害賠償・廃炉等支援機構から総額4兆5337億円を受け取り、その内容は、被災した宅地、建物、家財道具の賠償、原発事故で収入が減った人への賠償、農作物の風評被害の補償などだそうだ。なお、「実害がない」と証明されたわけでもないのに、「風評被害だ」と決めつけるのは恣意的かつ意図的である。また、東電はこれとは別に、政府から原子力損害賠償法に基づいて、合計で4兆5319億円の賠償金をもらっているそうで、これは消費税2%分の1年間の税収に当たるが、原発事故の被災者がいるため、その補償額は節約できず、国民の税金が湯水のごとく使われているのだ。

 また、まだ補償していないが、*3-2のように、事故直後の検査では「異常なし」だった子供4人が、2巡目の検査で「がんの疑い」とされ、1巡目で、がんの診断が「確定」した子どもが8月公表時の57人から27人増えて84人に、がんの「疑い」は24人(8月時点で46人)にになったことも新たに判明したそうだ。福島県立医大は、「事故による放射線の影響ではない」ということにしたがっているが、事故後に生まれた子どもは罹患率が0であるため、その言い分は無理があろう。

 さらに、原発は、地域住民だけでなく、*3-3のように、作業員にも常時被曝を強いているのであり、フクシマ原発事故では、4号機の核燃料は何とか取り出せたものの、1~3号機は高線量で作業員が近づくことすらできず、除染にも限界がある。そして、これらは後ろ向きの技術であり、カネの使い方なのだ。このような中、「東電は百分の一に汚染が減ると期待したが、五分の一程度までしか下がっていない」などという、原子力業界特有の恐ろしい楽観主義がまた出てきている。

 NHKは、2014年12月21日になって初めて、*3-4のように、フクシマ原発事故で放射性物質が大量放出され、事態が深刻であることを報道した。しかし、「①放射性物質は、核燃料のメルトダウンや水素爆発が相次いだ事故発生当初の4日間ではなく、その後に全体の75%が放出され汚染を深刻化させていたことが分かった」「②放射性物質の大量放出がなぜ長期化したのか原因不明」などと、これまで大量放出を報道しなかったことを正当化している。

 しかし、私がこのブログの2011.7.27に書いたとおり、2011年7月27日の衆院厚生労働委員会参考人質疑で、参考人として招かれた児玉教授(東大先端科学技術研究センター教授 東京大学アイソトープ総合センター長)が、「3月15日に、我々最初に午前9時ごろ東海村で5μシーベルトという線量を経験しまして、それを第10条通報という文科省に直ちに通報いたしました。その後東京で0.5μシーベルトを超える線量が検出されました。これは一過性に下がりまして、次は3月22日に東京で雨が降り、0.2μシーベルト等の線量が降下し、これが今日に至るまで高い線量の原因になっていると思います」と話し、この話と一致するデータが、スイス気象台のHPやドイツの放送で、当時から流れていた。

 事故が起きてから放出された47万テラベクレルという量の放射性物質は、住民や作業員の命と健康に大きな影響を与えることが明らかだ。そのため、知らなかったという言い訳や放送したという言い逃れが重要なのではなく、被曝を回避するために必要な情報を開示して住民の対応に資したのか否かが、最も注目すべき大切なことである。

(4)隠された川及び海洋の汚染
 *4-1のように、フクシマ原発事故で汚染水が連続して海に流され続け、*4-2のように、 米国カリフォルニア州の沿岸部でさえ、フクシマで放出された放射性セシウムが海水から検出される状態になっているが、今後は、フクシマの敷地内で汚染水漏れなどの事故が起きた場合に国際的な原子力事故評価尺度(INES)による評価はしないそうだ。その理由は、要するに、原子力事故評価尺度は壊れていない原発を想定しているため、フクシマは桁違いに大きく、とても適用できないからである。

 また、*4-3のように、フクシマ原発事故の影響で、東京都心部を流れる隅田川は全般的に146~378ベクレルと濃度が高く、川が大きく蛇行し流れが緩いため、底土に高い濃度の放射性セシウムがたまり続けるそうだ。一方、荒川は、河口域では1キログラム当たり300ベクレルを超える汚染が確認されるが、さかのぼっていくと濃度が急速に低下し、河口部から約17キロの江北橋(足立区)では100ベクレルを下回るそうで、「水量と流れのある荒川は、放射性物質が一気に河口部まで運ばれたが、隅田川は流れも緩く、大雨で徐々に海に運ばれていくとしても、濃度が下がるには長い年月がかかる」そうである。

 問題は、フクシマ原発事故により、国際的な原子力事故評価尺度を使うことすらできなくなっている状況であるにもかかわらず、海や川の汚染調査はボランティアに任され、国はまともな調査すら行わず、TVメディアは安全性を強調するだけで、汚染を無視してきたという環境意識の低さである。

(5)まだ場所が見つからない最終処分場
 *5のように、フクシマ原発事故で発生した指定廃棄物の最終処分場建設が行き詰まっているが、これは、名水の里である塩谷町のように全く適さない場所を候補地にするからだ。指定廃棄物等はフクシマで帰還困難区域となった場所に集約して徹底管理するのが、最も合理的で汚染を広げない方法だろう。

(6)再生可能エネルギーの普及を阻んで原発に回帰する経産省
     
     透明な膜の太陽光発電       炭素使用の太陽光発電 レンズ使用の太陽光発電
                  <最近の太陽光発電機器>
 *6-1に書かれているように、経産省は再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度を見直し、電力会社が太陽光発電の事業者に対して補償金を払わずに発電の抑制を無制限に要請できるようにし、抑制の対象設備を小規模な家庭用にも拡大するそうだ。このうち太陽光発電の抑制強化が最も大きいが、この太陽光発電をはじめとする再生可能エネルギーの普及こそが、環境を汚さずにエネルギーを国産化し、燃料費として国富が流出するのを防ぐため、アベノミクス第三の矢の大きな担い手なのである。

 そして、このように、イノベーションを好まない人々が、現状維持のためにあらゆる力を発揮して逆噴射するのが、我が国の生産性を下げ、成長率を低くしている最も大きな原因だ。

 なお、*6-2のように、「太陽光発電で作った電気の買い取り価格を、2015年度は初めに1キロワット時あたり20円台に引き下げる」というのはよいと考える。しかし、これは、太陽光に偏らないようにすることが目的ではなく、太陽光はじめその他の再生可能エネルギー発電機器をコストダウンし、その価格を世界標準以下に下げることを目的とすべきだ。

 さらに、*6-3のように、東京都は「水素社会」向けて前進を始め、燃料電池車普及のための水素ステーションを増やす方針とのことで、他の地域も見習えばよいのだが、2020年の東京五輪時に水素ステーションが東京都内で35カ所というのは目標が低すぎるのではないだろうか。また、水素価格の設定がガソリンと変わらない程度なら需要者にとっては利便性が増さないため、余った電力は発電を抑制するのではなく、水素に変えて水素燃料を安くすべきである。

(7)総選挙で原発や電源構成は争点になっていたか
 総選挙では与党が大勝し、「信任を受けた」として原発推進政策がさらに進んでいるが、*7のように、与党候補者の大半が市民団体「脱原発法制定全国ネットワーク」の原発再稼働の賛否を尋ねたアンケート調査に回答しなかったのだから、与党は原発再稼働の争点化を回避していたと判断できる。

<安全ではないのに原発再稼働に前のめりの経産省>
*1-1:http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2014122201001363.html
(東京新聞 2014年12月22日) 原発再稼働の自治体に重点配分 電源交付金、停止は削減方針
 経済産業省が、原発が立地する自治体を対象とする電源3法交付金について、原発が再稼働した自治体に重点的に配分する方向で検討していることが22日、分かった。原発事故後、停止した原発についても稼働しているとみなして一律に配分しているが、2016年度にも重点配分を始める。24日の総合資源エネルギー調査会原子力小委員会で示す中間整理で「稼働実績を踏まえた公平性の担保など既存の支援措置の見直し」という表現で、原発の発電量に応じて配分する必要性を明記する。再稼働に事実上必要な立地自治体の同意が得やすくなる効果が見込まれる。

*1-2:http://mainichi.jp/select/news/20141218k0000m040098000c.html
(毎日新聞 2014年12月17日) 高浜原発基準適合:田中委員長「イコール事故ゼロでない」
 関西電力高浜原発3、4号機(福井県)の審査書案を了承したことを受け、原子力規制委員会の田中俊一委員長は17日の定例記者会見で「稼働への条件を満たしているか審査した。イコール事故ゼロかというと、そんなことはない」と述べた。田中委員長は1例目の九州電力川内(せんだい)原発1、2号機(鹿児島県)の審査書案を了承した今年7月にも「安全とは私は申し上げない」と述べ、政府の「規制委が安全性を確認した原発については再稼働を進めていく」という方針と異なるため物議を醸した経緯がある。高浜原発の審査書案了承までは約1年5カ月かかった。当初は半年程度とされていた審査が長期化したことについて、田中委員長は「(関電は)従来の安全対策で十分という意識から抜けきれず、時間を取ってしまった」と指摘した。

*1-3:http://www.47news.jp/CN/201412/CN2014122401001795.html
(47ニュース:共同通信 2014/12/24) 将来の原発維持に積極姿勢 経産省小委の中間整理
 経済産業省は24日、総合資源エネルギー調査会の原子力小委員会を開き、原子力政策の課題を示す「中間整理」をまとめた。老朽原発の円滑な廃炉を促す一方、廃炉後に敷地内に新しい原子炉を設置する建て替え(リプレース)に触れるなど、将来の原発維持に向けた積極姿勢を打ち出した。政府は示された課題を踏まえ、電力自由化や将来の電源構成の策定も念頭に、具体的な政策の検討に入る。しかし政府のエネルギー基本計画で示した「原発依存度を可能な限り低減させる」方針とは逆行しており、世論の反発も招きそうだ。
(ニュースの言葉)
☆エネルギー基本計画(2014年4月11日)エネルギー政策基本法で政府に策定が義務付けられた、国の中長期的なエネルギー政策の指針。おおむね3年ごとに見直し閣議決定する。電力やガス、石油などエネルギー企業の投資計画にも大きな影響を与える。民主党政権は2010年策定の計画で、地球温暖化防止の観点を重視し二酸化炭素の排出が少ない原発の新増設方針を明記した。原発事故で民主党政権は原発ゼロ方針に転換し基本計画の見直しに着手したが、作業途上で自民党政権に交代した。
☆総合資源エネルギー調査会(2011年10月3日)2001年に設置された経済産業相の諮問機関で、資源エネルギー庁が所管。委員は経産相が任命する。鉱物資源やエネルギーの安定的で効率的な供給の確保や、適正な利用の推進などについて審議する。エネルギーの需給政策について長期的な方向性を示す「エネルギー基本計画」を政府が変更する場合には、経産相が調査会の意見を聞くことが法律で決められている。

<電源別発電コスト>
*2-1:http://www.47news.jp/smp/47topics/e/257032.php (47News 2014/9/17) 【原発の発電コスト】原発の電力、風力より高い 太陽光とも同レベル 米企業系調査機関が試算
 原発の発電コストは世界的には1キロワット時当たり平均14セント(約15円)で太陽光発電とほぼ同レベル、陸上風力発電や高効率天然ガス発電の8・2セントに比べてかなり高いとの試算を、エネルギー問題の調査機関として実績のある米国企業系「ブルームバーグ・ニュー・エナジー・ファイナンス」(BNEF)が16日までにまとめた。東京電力福島第1原発事故後の安全規制強化もあって建設費や維持管理にかかる人件費などが世界的に高騰していることが主な理由。再生可能エネルギーのコストの低下が続く中、原子力の優位性が薄れていることを印象付ける結果となった。2004年の日本政府による試算では、原発発電コストは1キロワット時当たり5・9円だった。BNEFは、原子力やバイオマス、地熱、水力など23の発電手法について、14年上期時点の世界各国の設備費、燃料費、資金調達に必要な債務費などを調べ、施設の耐用年数などでならしたコストを算出した。炉心溶融などの深刻な事故を防ぐための対策強化が求められるようになった結果、原発の発電コストは近年上昇しており、設備利用率を92%と高く見積もっても1キロワット時当たり14セントとなった。地熱(同6・5セント)、小水力発電(同7・7セント)、陸上風力(同8・2セント)などの再生可能エネルギーに比べてかなり割高だった。石炭火力は9・1セント、天然ガス火力は8・2セントだった。原発コストには、放射性廃棄物処分のために電力会社が積み立てている費用を含むが、廃炉費用は含んでいない。太陽光発電は近年、発電コストが下がって14・9セントとなっている。日本では、海外に比べ高価な国内製機器が使われることから32・9セントと高いが、BNEFは「安価な輸入品機器の利用拡大で、コストは低下傾向にある」としている。風力発電も日本は機器コストが高く、稼働率が欧米に比べて低いため、19セントと割高だった。BNEFは、米国大手情報サービス企業「ブルームバーグ」の傘下。原発の発電コスト 日本の原発の発電コストは2004年の政府の審議会の試算で1キロワット時当たり5・3円とされ、他の電源に比べて有利だとされてきた。だが、東京電力福島第1原発事故後に政府の「コスト等検証委員会」で見直しが行われ、事故対策費などを含めると最低でも同8・9円と試算された。今回のブルームバーグ・ニュー・エナジー・ファイナンスの分析は、同委員会の試算手法とは異なり、事故対策費用などは含んでいない。

*2-2:http://digital.asahi.com/articles/DA3S11498456.html?_requesturl=articles%2FDA3S11498456.html&iref=comkiji_txt_end_s_kjid_DA3S11498456 (朝日新聞 2014年12月9日) (思想の地層)本当のコスト 何のための原発保護か 小熊英二(歴史社会学者)
 原発の新たな優遇策が検討されている。経済産業省の総合資源エネルギー調査会原子力小委員会で議論されている差額決済契約(CFD)がそれだ。CFDはイギリスで導入された制度で、固定価格での電力買い取りを一定期間保証するものだ。買い取り価格は使用済み核燃料処分や廃炉など、将来費用も含む総コストを勘案して算出される。イギリスで適用が合意された原発は一つだけで、買い取り基準価格は1キロワット時15円ほど。陸上風力発電より高値で、保証期間も35年と長い。原発は初期投資が大きく、市場経済ではコスト回収が保証されない。日本でも再来年に導入される電力市場自由化にむけ、CFDをはじめ、原発保護政策が検討されているのはそのためだ。だがこうした政策を導入することには、様々な異論が出ている。第一に、買い取り価格が電力料金に転嫁され、消費者の負担が増える可能性が高い。報道によると「(日本で)原子力CFDを既存の原発に適用すれば賦課金総額は年間3兆円を超える計算で、現在の電力料金の代替燃料費負担とほぼ同額」である。ある大手製造業幹部は「原発建設にかかわっている企業ならともかく、料金が割高になるのなら原子力発電を再開するメリットはない。もしもCFDが導入されたなら、自家発電量を大幅に引き上げるしかない」と述べている(「原発の『本当のコスト』が見えてきた」選択12月号)。
     *
 第二に、決定過程が不透明である。検討が行われている原子力小委員会には、専門委員として電力会社および原子力事業者が出席している。福島原発事故後に実施されていた審議会のビデオ中継はなくなり、第6回会合までは音声データすら公開されていない。第7回以降は音声のみ公開されたが、「議事録を掲載するまでの暫定的な提供」とされている。中継での公開が行われない理由として、委員長は「この場で意見を言いにくいという方がいらっしゃる」と述べている(大島堅一「さらなる原子力保護政策は許されるか」世界12月号)。
     *
 第三に、こうした政策では、経営努力をしない電力会社の方が有利になる。これも報道によると、中部電力は以前から火力発電の効率化を進め、東京電力も福島原発事故後は「火力部門を成長の柱に立てることになった」。両社は燃料部門を統合し、LNGの国際調達価格を削減することも模索している。それに対し関西電力は、依然として旧来の原発重視を変えず、「原発と心中」する路線をとっているという(特集「電力再編」週刊ダイヤモンド10月11日号)。旧態依然の経営方針を優遇し、新時代に対応する努力に報いない政策では、未来は開けない。合意のない不透明な保護政策は、依存を生み、健全な努力を損なう。茨城県東海村前村長の村上達也氏は、原発が地域にもたらす弊害として、「みんな努力しなくなる」ことを挙げている。「例えば衣料品店、村民の方を向いてません。作業着とか靴とか、原発作業員用のものを仕入れて売ればいい」。「旅館もそう。原発作業員向けだから、雑魚寝で風呂は共同なんだよ」。「個室にするとか、部屋を改装しなきゃダメだって言っていたんだけど、やらない。『改装なんていい。作業員が来るから』ってみんな言いますよ」。結果として「原発を作ると他の産業は育たない」という(村上達也「原発のメリット? デメリットだらけの疫病神だ」ダイヤモンドオンライン2月6日)。衆院選の公示前日の党首討論で、安倍首相は「国民がもう原子力発電は懲り懲りだと思われるのも当然だ。同時に安定的に低廉なエネルギーを供給していく責任がある」と述べた(本紙朝刊12月2日付)。「低廉」ではないことを電力会社と経産省が事実上認めたいま、首相に原発保護が必要なのかを語ってほしい。

<過酷事故のコスト>
*3-1:http://www.yomiuri.co.jp/economy/20141224-OYT1T50082.html
(読売新聞 2014年12月24日) 賠償資金受け取り、総額4・5兆円に…東電
 東京電力は24日、福島第一原子力発電所事故の賠償に必要な資金として、政府の原子力損害賠償・廃炉等支援機構から755億円を受け取ったと発表した。資金の受け取りは35回目で、総額は4兆5337億円。被災した宅地や建物、家財道具の賠償や、原発事故で働けなくなって収入が減った人への賠償、農作物の風評被害の補償などにあてる。東電はこれとは別に、政府から原子力損害賠償法に基づき、1200億円の補償金を受け取っている。19日までに支払った賠償金は約4兆5319億円となっている。

*3-2:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20141224&ng=DGKKZO81242910U4A221C1CR8000
(日経新聞 2014年12月24日) 事故直後「異常なし」の子供4人、がんの疑い 2巡目検査
 福島県の子供を対象に東京電力福島第1原発事故による放射線の影響を調べる甲状腺検査で、事故直後の1巡目の検査では「異常なし」とされた子供4人が、4月から始まった2巡目の検査で甲状腺がんの疑いと診断されたことが23日、関係者への取材で分かった。25日に福島市で開かれる県の検討委員会で報告される。調査主体の福島県立医大は確定診断を急ぐとともに、事故による放射線の影響かどうか慎重に見極める。検査の対象は1巡目が事故当時18歳以下の約37万人で、2巡目は事故後1年間に生まれた子供を加えた約38万5千人。1次検査で超音波を使って甲状腺のしこりの大きさや形状などを調べ、程度の軽い方から「A1」「A2」「B」「C」と判定し、BとCが血液や細胞などを詳しく調べる2次検査を受ける。関係者によると、今回判明したがんの疑いの4人は震災当時6~17歳の男女。1巡目の検査で「異常なし」とされていた。4人は今年4月からの2巡目検査を受診し、1次検査で「B」と判定され、2次検査で細胞などを調べた結果「がんの疑い」と診断された。また、1巡目で、がんの診断が「確定」した子どもは8月公表時の57人から27人増え84人に、がんの「疑い」は24人(8月時点で46人)になったことも新たに判明した。

*3-3:http://www.tokyo-np.co.jp/article/feature/nucerror/list/CK2014122102100005.html (東京新聞 2014年12月21日) 【福島原発事故】1~3号機、阻む高線量 福島4号機、核燃料取り出し終了
 東京電力は20日、福島第一原発4号機のプールに残っていた核燃料4体(未使用)の取り出し作業を報道陣に公開した。事故当時、大量の使用済み核燃料が残り国内外を震撼(しんかん)させた4号機。昨年11月から71回に及ぶ作業が続き、プールは空になった。これで課題の一つは解決されたが、建屋内の放射線量が高い1~3号機を含めた全体の廃炉に向けた作業は続く。前日まで二十六体が残っていたが、別の輸送容器で二十二体が運び出され、最後の四体がプール内で容器に詰められていた。この日公開されたのは、建屋に併設された取り出し用骨組みのクレーンで、四体の入った容器をプールから引き上げる作業。クレーンはプール上に移動し、容器をつかんでゆっくりと上げた。作業員十数人が容器を拭いたり、シートを広げて水滴が落ちないよう保護したりし、容器は三十メートルほど南の除染場に到着。作業は約四十五分で終わった。今後、容器は除染し、ふたを閉めた後、別のクレーンで地上に下ろされ、6号機プールに移される。これが済めば、千五百三十五体あった核燃料はなくなり、4号機のリスクは実質的になくなる。福島第一の小野明所長は「作業員の努力のたまもの。気を緩めず、廃炉を進めたい」と話した。
◆残る難題 除染に限界
 4号機の危険性は取り除かれたが、1~3号機には、炉内に溶け落ちた核燃料、プールには計千五百七十三体が残る。作業できるようどう放射線量を下げ、どう取り出すのか。検討課題は山積している。正念場はこれからだ。比較的早く取り出しに入りそうなのが3号機。建屋上部に積み上がっていたがれきはほぼ除去された。二〇一五年度中の取り出し開始を目指す。しかし、プールのある五階の線量はいまだ高い。床のコンクリートを削り、高圧洗浄し汚染は減ったが、放射性物質は深く床に染みこんだ。東電は百分の一に汚染が減ると期待したが、五分の一程度までしか下がっていない。除染には限界があり、鉛による遮蔽(しゃへい)など追加策が必要になる。1号機は一七年度から取り出す計画だったが、建屋カバーの解体が遅れたこともあり、二年ほど延びることになった。建屋が健全だった2号機は汚染蒸気が充満し高濃度に汚染が残る。高い所だと毎時八八〇ミリシーベルトもある。建屋上部を解体する方向だが、具体策の検討は二年後という。 (荒井六貴)

*3-4:http://www3.nhk.or.jp/news/genpatsu-fukushima/20141221/1836_osen.html (NHK 2014年12月21日) 東京電力 福島第一原発事故 関連ニュース、危機後の大量放出で汚染深刻化
 東京電力福島第一原子力発電所の事故で放出された放射性物質は、核燃料のメルトダウンや水素爆発が相次いだ事故発生当初の4日間ではなく、その後に全体の75%が放出され汚染を深刻化させていたことが、日本原子力研究開発機構の分析で分かりました。政府などの事故調査はこの時期に何が起きていたかを解明しておらず、専門家は「放射性物質の大量放出がなぜ長期化したのか、原因の解明が求められる」と話しています。福島第一原発事故の規模は、放射性物質の放出量からチェルノブイリ原発事故と同じ「レベル7」とされていますが、放出の詳しい全体像は明らかになっていません。日本原子力研究開発機構の茅野政道所長代理らの研究グループは、原発周辺などで観測された放射線量の新たなデータを集め、大気中への放出状況を詳しく分析しました。その結果、事故が起きてから放出がおおむね収まった3月末までに放出された放射性物質の量は47万テラベクレルと推定され、このうち、核燃料のメルトダウンや水素爆発が相次いだ3月15日の午前中までの4日間の放出量は全体の25%で、むしろ、その後の2週間余りで全体の75%を占める大量の放出が続いていたことが分かりました。さらに、当時の気象条件を基に拡散の状況を解析したところ、15日の夕方から深夜にかけて起きた大量放出で、今も帰還困難区域となっている原発周辺の汚染が深刻化していたほか、20日の夜から翌日にかけての放出が関東地方など広範囲に広がり、一部の水道水の汚染などにつながったとみられることが分かりました。今回の分析結果は、事故の進展を食い止められず危機的状態とされた当初の4日間のあとも放射性物質の大量放出を抑え込めていなかったことを示していますが、政府などによる事故調査は当初の4日間に重点が置かれ、その後の放出の原因については解明されていません。茅野所長代理は、「今後の原発事故の防止や事故の早期の収束のためにも、なぜこのような放射性物質の大量放出が長く続いたのかを解明していかなければならない」と話しています。

<隠された川及び海洋の汚染>
*4-1:http://www.tokyo-np.co.jp/article/feature/nucerror/condition/list/CK2014121302000127.html (東京新聞 2014年12月13日) 海に除染水 不安の声
 東京電力福島第一原発では六~十二日、建屋周辺の井戸(サブドレン)から除染した地下水を海に流す計画について、東電と経済産業省が、地元漁業者に二度目の説明会を開いた。過去五回の除染試験で放出基準を下回ったと報告したが、参加者からは不安の声が続出。理解は得られていない。原子力規制委員会は、敷地内で汚染水漏れなどの事故が起きた場合、今後は国際的な原子力事故評価尺度(INES)による評価をしない方針を決めた。福島第一の事故は、INESの尺度で七段階中最悪の「レベル7」と評価されている。尺度は壊れていない原発を想定しており、個々の事故・トラブルを機械的に評価するのは「混乱を生む可能性がある」のが理由という。

*4-2:http://www.asahi.com/articles/ASGCH23ZLGCHUHBI003.html
(朝日新聞 2014年11月15日) 米沿岸で福島原発からの放射性物質を初検出 研究所発表
 米カリフォルニア州の沿岸部で、東京電力福島第一原発事故で放出された放射性セシウムが海水から検出されたと米ウッズホール海洋研究所が発表した。米国での検出は初めて。非常に微量で人体への影響はないとしているが、原発事故から約3年半かけて太平洋を渡ったことになる。同研究所は、ボランティアの協力を得て海水を採取してきたが、8月にカリフォルニア州北部で採取した海水から放射性セシウム134が検出された。セシウム134は通常自然界では検出されず、半減期が2年のため、原発事故時のものと考えられるという。検出したのは1立方メートルあたり2ベクレル以下と、米政府が定める飲料水基準の1千分の1以下の値で「人体にも海洋生物にも影響する値ではない」としている。カナダ西海岸では今年2月に微量を検出したとの研究者の報告があったという。海流の流れ方は複雑なため、放射性物質の拡散の仕方や量の予測にはばらつきがあり、「2、3年後にセシウム値が上がるとの予測もある」としている。

*4-3:http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2014121902000133.html (東京新聞 2014年12月19日) 福島事故 放出セシウム 隅田川底土 続く蓄積
 東京電力福島第一原発事故の放射能汚染問題で、本紙が新たに東京の都心部を流れる隅田川の底土を調査したところ、かなり高い濃度の放射性セシウムが長期的にたまり続ける可能性の高いことが分かった。川は大きく蛇行し、流れが緩いことが大きく影響しているとみられる。本紙は首都圏の湖沼や東京湾、福島県の農地などで汚染の調査を続け、今回が六回目。十月から十二月にかけ、隅田川最上流部の岩淵水門(東京都北区)から日の出桟橋(港区)まで八地点(橋では左右両岸)で底土を採取。荒川は九月に実施した河口部に加え、埼玉県秩父市まで採取した。底土は乾燥させた後、それぞれ八時間かけ、セシウムの放射能濃度を測定した。その結果、荒川は河口域で一キログラム当たり三〇〇ベクレルを超える汚染が確認されたが、さかのぼっていくと濃度が急速に低下。河口部から約十七キロの江北橋(足立区)では一〇〇ベクレルを下回り、もっと上流部では五〇ベクレルを下回るレベルだった(詳細は分析中)。一方、隅田川は一四六~三七八ベクレルと全般的に濃度が高く、浅草周辺などの中流域が高かった。水がよどみやすい蛇行部の内側は濃度が高くなる傾向も確認された。測定結果について、独協医科大の木村真三准教授(放射線衛生学)は「水量と流れのある荒川は、放射性物質が一気に河口部まで運ばれた。隅田川は流れも緩く、大雨で徐々に海に運ばれていくとしても、濃度が下がるには長い年月がかかる。今後は半減期が三十年と長いセシウム137が汚染の中心となる。市民が底土に触れる機会は少ないだろうが、水がよどむ部分や河口域がどうなっていくのか、監視が重要になる」と分析した。

<まだ場所が見つからない最終処分場>
*5:http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2014121102000270.html
(東京新聞 2014年12月11日) 最終処分場建設 行き詰まる議論 反発強く候補者明言せず
 東京電力福島第一原発事故で発生した指定廃棄物の最終処分場建設が行き詰まっている。候補地の反発が強く、打開策を見いだすことが難しいためだ。衆院選でも与党候補が賛否を明言しないなど議論は深まらない。地元住民からは「争点とならず、がっかりしている」とため息が漏れる。「ご心配を掛けているが、私は発言を慎んでいる」-。栃木県の建設候補地となった塩谷町を選挙区に抱える自民党現職閣僚は、公示日の二日、さくら市での演説で慎重な言い回しに終始した。同じ選挙区の民主党候補は建設反対の立場を強調、指定廃棄物は福島県の原発周辺に集約すべきだと主張する。ただ発生した県内で処理する方針は民主党政権時代に決めたもので、福島県は一貫して受け入れない意向だ。共産党候補は選定の白紙撤回を訴える。塩谷町は七月に最終処分場候補地に選ばれて以来、風評被害などへの不安から住民ぐるみで反対運動を展開中だ。候補地の近くに名水百選に選ばれた「尚仁沢(しょうじんざわ)湧水」があり、見形(みかた)和久町長は「これだけの自然を壊すことに賛成の町民はいない」と国の選定に憤る。望月義夫環境相は県内処理の方針を見直さない意向を表明しており、各地に仮置きされた指定廃棄物の行く先に見通しは立たない。宮城県では栗原市と大和(たいわ)町、加美町が候補地に挙げられた。環境省は十月、候補地を一つに絞るため現地調査に乗り出したが、住民が道路をふさぐなどしたため中止に追い込まれた。積雪がある間は着手できず、計画は大幅に遅れる見通しだ。宮城県内の選挙区でも、処分場建設問題の論戦は盛り上がらない。加美町で反対運動に加わっている男性会社員(56)は「足元で反対運動が起き、明確な意思表示がしにくいのだろう。選挙結果がどうなっても、反対に向けた長い戦いは続く」と話す。茨城、群馬、千葉の各県でも最終処分場を新設する予定だが、いずれも候補地の選定が進んでいない。

<再生可能エネルギーの普及を阻んで原発に回帰する経産省>
*6-1:http://www.hokkaido-np.co.jp/news/editorial/581748.html
(北海道新聞社説 2014.12.21) 再生エネルギー 原発依存が普及を阻む
 電力5社が太陽光発電の新たな受け入れを中断していた問題を受け、経済産業省は再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度の見直し案を発表した。電力会社が太陽光発電の事業者に対し、補償金を払わずに発電の抑制を無制限に要請できるようにし、抑制の対象設備を小規模な家庭用にも拡大する内容だ。電力5社のうち、北海道、東北、九州の太陽光発電の受け入れ可能量は、国の認定を受けた設備の半分程度にすぎない。発電の抑制強化を受け、5社は受け入れを再開する見通しだが、事業者は買い取ってもらう量が減り、採算が悪化して計画の変更を迫られる恐れもある。価格面で優遇され、建設が容易な太陽光の急増は当初から予想されており、事態を放置してきた経産省の責任は重大だ。今回の見直しで、発電の抑制方式を1日単位から時間単位に改め、事業者に通信装置の設置を義務付けて遠隔制御を可能にする。天候に左右される太陽光や風力の活用にはきめ細かな制御が前提で、欧州各国では、こうした仕組みは常識だ。対応が遅く、場当たり的と言わざるを得ない。何より、再生エネを普及させるには、明確で高い導入目標と、将来の電源構成比率が不可欠だが、一向に示されない。これなくしては、事業者は展望を持てず、投資をためらうだろう。政府のエネルギー基本計画の再生エネ比率は、2030年に約2割を上回るという極めてあいまいな表現にとどまっている。2割は東日本大震災前の前回計画と同様のあまりに低い水準だ。しかも前回が原発比率を約5割としていたことを考えれば、非現実的とさえ言える。電力会社の再生エネ受け入れ可能量の妥当性にも疑問がある。電源構成比率の議論が先送りされているにもかかわらず、電力各社は保有する原発の稼働を前提に可能量を算定している。これでは、再生エネの導入を最大限加速し、原発依存度を可能な限り低減させるとの政府方針とはあべこべに、原発依存度に合わせて再生エネの枠を絞るようなものではないか。再生エネを「最大限」活用するには、送電網を拡充して受け入れに十分余裕のある大都市圏に送電する必要がある。送電網増強の議論を置き去りにして根本的な解決は図れない。政府の怠慢は目に余る。

*6-2:http://www.nikkei.com/paper/related-article/tc/?b=20141224&bu=BFB (日経新聞社説 2014.12.24) 太陽光価格、20円台に、企業向け買い取り、3年連続下げ 再生エネ偏り是正
 経済産業省は企業が太陽光発電でつくった電気について、電力会社が買い取る際の価格を引き下げる。来年1月から第三者委員会が価格の決定に向けた議論を始め、2015年度は初めて1キロワット時あたり20円台になる見通しだ。3年連続の引き下げで、再生エネルギーの普及が太陽光に偏らないようにする。一方、九州電力と東北電力は来月から太陽光の買い取り手続きを再開する。再生エネの固定価格買い取り制度は12年7月に導入した。再生エネでつくった電気を決まった価格で買い取ることを電力会社に義務づけている。買い取り価格は年度ごとに、有識者がメンバーの調達価格等算定委員会が発電設備導入に伴うコストなどを踏まえて決める。主に企業が参入する出力10キロワット以上の太陽光の価格は13年度、14年度も下げている。太陽光の買い取り価格を下げるのは、政府が認定した再生エネ設備の9割を占めるほど、導入が増えているためだ。経産省は「導入量も考慮した価格算定のあり方を検討すべきだ」との意向を第三者委に伝え、引き下げ方向の検討を促す。価格を引き下げることで、導入が遅れる地熱や中小水力の比重が高まるように誘導する。発電出力が小さい住宅用の太陽光は電力会社が受け入れやすく、災害にも強い利点がある。経産省は住宅用を優先して導入する方針を示し、第三者委も買い取り価格を引き下げるかどうかを慎重に議論する。経産省は18日、認定済みの再生エネを電力会社がより多く受け入れられるようにするため、太陽光などの発電を制限しやすくする新ルールを発表した。無補償で制限できる対象を500キロワット未満に広げ、時間単位で制限できるようにする。買い取り価格が決まった後も設備費が下がるまで発電を始めず、不当な利益を得ようとする事業者らへの対処方針も示した。省令を改正し、15年1月中旬以降に新しい仕組みを導入する。経産省の対応策の公表を受け東北電力は地熱と水力などの買い取り手続きを18日に再開し、来年から太陽光も再開する方針だ。九州も近く地熱などの手続きを再開する。発電制限を頻繁に求められると事業の採算が合わなくなる可能性があり、参入にリスクを伴う。九州電力管内で太陽光発電を手掛ける再生エネ事業者は「現状ではやむを得ない」とため息をつく。福島県の再生エネ事業者は「仮に2カ月の間制限されたら利益がなくなる。稼働率を勝手に電力会社に決められたら売電益を見通せなくなる」と憤った。

*6-3:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20141219&ng=DGKKZO81079940Y4A211C1L83000 (日経新聞 2014.12.19) 都「水素社会」向け前進、燃料電池車普及へ供給基地 五輪時35カ所目標
 東京都で排ガスのないクリーンな「水素社会」を目指す官民の取り組みが動き出した。18日に都内第1号の商用の水素ステーションが練馬区で誕生。15日に世界で初めて発売された燃料電池自動車(FCV)の普及を支える拠点となる。舛添要一知事は水素社会を2020年五輪のレガシー(遺産)にする方針を打ち出しており、補助金も出して整備を促す。練馬区の「練馬水素ステーション」は、東京ガスが既存の天然ガススタンドに併設して整備した。商用ステーションとして国内3カ所目だが、関東地方では初めて。事業費は公表していないが、国から最大1億9千万円の補助を受ける。水素の供給価格はFCVの納車が本格的に始まる年明けにも決める。東京ガスは「ユーザーに受け入れられる価格設定が重要」として、ガソリンと変わらない水準を目指すという。水素ステーションはFCVに欠かせないインフラ。ただ普及初期は利用台数も少なく、採算は厳しい。標準的な建設コストもガソリンスタンドの約5倍の5億円程度かかるとされる。このため経済産業省は標準的なケースで2億2千万円を補助する制度を2013年度に創設。都も歩調を合わせ1億8千万円の補助金を出し、事業者負担をガソリンスタンド並みに抑える。都議会に提出した14年度補正予算案に21億円を計上、当初10カ所の導入支援を想定している。都は自動車メーカーやエネルギー企業などを集めた官民の会議で「水素社会」実現の数値目標も定めた。五輪のある20年に都内でFCV6千台、水素ステーションは35カ所とする。25年には10万台、80カ所に増やす。ここまで拡大すれば、10分程度の走行時間でステーションに到達できるようになるという。都によると14年度末までに水素ステーションは合計4カ所に増える。JX日鉱日石エネルギーが八王子市と杉並区、岩谷産業が港区に開く予定だ。板橋区、千代田区、大田区でも計画があるという。東京ガスは荒川区など2カ所の研究開発用ステーションの商用転用も検討する。舛添知事は18日の都議会での答弁でも水素ステーション誕生に言及。「スピード感をもって、水素社会の実現に向けて我が国をけん引していく」と強調した。

<総選挙で原発や電源構成は争点になっていたか>
*7:http://www.saga-s.co.jp/news/national/10202/134917
(佐賀新聞 2014年12月11日) 与党、原発争点回避か、候補者調査に大半回答せず
 市民団体「脱原発法制定全国ネットワーク」などは11日、衆院選の小選挙区候補者に原発再稼働の賛否を尋ねたアンケート結果を公表した。反対が大半を占めたが、再稼働推進の自民党と、容認姿勢の公明党の候補者はほとんど回答せず、同ネットワークは「与党が原発の争点化を避ける姿が浮き彫りになった」としている。アンケートは全候補者のうち、連絡が取れない3人を除く956人を対象に実施。10日までに360人が回答した。再稼働反対が319人と最も多く、賛成は24人だった。賛否を二択で尋ねたが、その他が17人いた。


PS(2014年12月29日追加):“風評被害”と決めつけられると、「食品中の放射性物質に関する基準が甘くなり、全数検査をしているわけでもなく、検査値の表示もしてないため、需要者は生産地で選んで用心する権利がある」と思うが、確かにフクシマ原発事故で栃木県・群馬県の野菜や宮城県の水産物の売り上げは落ちたと考えられる。そのため、「食べて協力」と強制するのではなく、東電から損害賠償を受けるのが筋だ。

*8:http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2014122902000119.html
(東京新聞 2014年12月29日) 茨城の農家、集団請求へ 原発風評被害、賠償継続を
 東京電力福島第一原発事故による風評被害で売り上げが落ちた茨城県西部の野菜農家約二百五十人が、東電の損害賠償の継続を求めて来年三月にも、原子力損害賠償紛争解決センターに裁判外紛争解決手続き(ADR)を申し立てることが分かった。農家による集団申し立ては異例。申し立てを準備しているのは、坂東市や境町、八千代町などでキャベツ、レタス、ネギ、白菜などを生産する野菜農家。原発事故後、東電から賠償金を受け取っていたが、「事故から相当期間が経過し、業績が回復した」などの理由で二〇一三年三月分を最後に賠償を打ち切られていた。窓口となっている原発被害救済茨城県弁護団によると、今回のADRで求めるのは、打ち切り後の一三年四月~今年六月の一年三カ月分の損害賠償。請求総額は十数億~二十億円規模になる見通しだ。茨城県による定期的な検査では一二年以降、県産野菜から放射性セシウムは検出されていない。だが、農家からは「原発事故後に値下がりした地元野菜の価格はまだ戻っていない」といった指摘がある。茨城県の農家らに対する東電の損害賠償打ち切りは一三年秋に二十数件が表面化。橋本昌知事は「不利な条件下で事業者は必死に取り組んでいる」と批判したが、東電側は争いがあればADRで和解する意向を示していた。
<裁判外紛争解決手続き(ADR)> 福島第一原発事故の訴訟を起こさず、損害賠償を東京電力に請求する手続きの一つ。国の原子力損害賠償紛争解決センターに申し立て、受理されると、弁護士などの仲介委員が双方の主張を聞いて和解案を提示する。

| 原発::2014.10~2015.3 | 03:20 PM | comments (x) | trackback (x) |

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