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2015.1.13 農協が岩盤規制なのではない。 ← 佐賀県知事選挙と政府の農協改革のおかしさから (2015年1月14日に追加あり)
     
      *2-1より      2014.11.20日本農業新聞  2014.7.31日本農業新聞

(1)佐賀県知事選では改革が否定されたのではなく、自民党の“改革”方針が悪すぎるのだ
 *1-1に書かれているように、自公の推薦を得た元武雄市長の樋渡氏に対し、佐賀県民は元総務官僚の山口氏を立て、農協が中心となって佐賀県知事選に勝利した。私は、この記事で、「政権側の方が、規制改革色が強い」「切り込む官邸」としているのは間違いだと考える。何故なら、政権が主張する“農協改革”は、TPPに反対している農協の力を弱め、TPPを導入して現在の農業者を農業から撤退させ、食料自給率を下げる“改革”の名に値しないものだからである。

 また、政府の規制改革会議は、上図のように、①全国農業協同組合中央会を農協法で位置づける必要はない ②地域農協の監査権を公認会計士の会計監査で代替する ③経営指導権を法律で位置づける必要はない 等としている。①③は、法律で位置づけなくても、農協内の社内規定で明確にすればよいが、②は、公認会計士監査に替えるにしても、公認会計士監査は内部統制に依拠する上、業務監査は行わず、地域農協毎に公認会計士監査を行えば全体としてはかえって費用がかさむため、現在の内部監査の規模は縮小した上でこれを残し、全体を公認会計士に監査してもらった方がよいと考える。また、④の意見具申は、法律で位置づけなくてもどの業界もやっているので、実質的な変更はないだろう。

 しかし、佐賀県は、私が公認会計士として国内、国外の多くの製造業・サービス業を見てきた目で、衆議院議員時代に地元の農協を廻って農業におけるブランド化やコスト削減に関するアドバイスを行い、中央の政策に関する情報を農協や地元自治体に送り続け、農協が先頭に立ってそれを実践してきた経緯がある。そのため、佐賀県の農業は、日本で一番進んでおり、それには農協の実績が大きく、東北などの他地域とは異なる。そして、政府の方針の方が盲目的なところがあり、政府の農業改革よりも佐賀県の自治体と農協が進めてきた農業改革の方が、地に足をつけて進んでいるのだ。

 そういう経緯があるため、*1-1のように、佐賀県知事選では、自ら改革を進めてきたという自負のある農協が、政権側が擁立した前武雄市長の樋渡氏を応援せずに、元総務官僚の山口氏を立てて、*1-2、*1-3のように勝利したのはもっともなのである。従って、これを、「改革に切り込む官邸が悪い岩盤である農協に敗北した」と解説するのは、失礼だと思う(これも表現の自由だと言うのか?)。

 なお、*1-4のように、政権幹部は、「政策では支持されたが、候補者で支持されなかった」「今後も農業改革などに変更はない」などとしているが、正確に分析すれば、佐賀県は衆院選では、小選挙区と比例代表で、自民党・民主党の両方の候補者を通しており、与党が一方的に勝利したわけではない。しかし、知事選では、①衆院選後の政策や農協改革にたまりかねて農業団体が他の候補者を探してきて支援した ②樋渡氏は自民党の言う“改革(改悪も多い)”を推進する候補者だった ③樋渡氏はその逆風をはね返すほどには人間的に信用されていない面があった などが敗因だと考えている。

(2)農協が岩盤規制なのではない
 *2-1や*2-2で日経新聞は、「政府は、JA全中の指導・監査権を3年で全廃して任意団体に転換し、JAグループ内でのJA全中の強制力をなくす」と書いているが、私は法的強制力がなくても、ある程度の大きさのエリアをまとめて経営指導や内部監査を続けるのが、全中にとっても農協にとっても経営合理性があると考えている。

 また、「地域農協や農家が農産物の価格やサービス、流通経路を自由に競い合えるようにする」とも書かれているが、現在は20年前と異なり、自由に競い合って勝てる農家は既にそうしているのだ。そして、それをやれない零細な経営主体が農協に集まって地域ブランドを作り、地方自治体もこれを応援しているのである。何故なら、このような零細な経営主体は、放っておくと皆が同じ物を作って過当競争になり、共倒れになって市場の失敗が起こるからである(これは経済学のイロハで他国でも同じ)。

 さらに、地域の農産物(例えば、肉、野菜、果物等)は既に競争しており、JAが独占販売しているわけでもない。また、これまでの農家がなくなって株式会社が作ったものや外国産ばかりになれば、日本の消費者のためにではなく利益追求のために農産物が作られるため、日本の消費者はむしろ、有機農業で土づくりからこだわった自然派の農産物のような優良な農産物を選択するチャンスがなくなる。

 なお、農協は、零細農家や兼業農家などの規模の小さい農家だけの集まりではなく専業農家も入っており、農家が作った農産物の検品・販売・会計処理を請け負ったり、農家に肥料や農機具などの資材を販売したり、繁忙期の労働力を手配したり、情報を提供して技術進歩を先導したりもしている。そして、農産物の半分は農協を通さずに販売されているのであり、現在は、それも自由にできるのだが、それにもかかわらず半分が農協経由になっているのは、農協に包括ケアしてもらった方が生産に集中しやすいと感じる農家が多いからである。

 また、「農家には、農協のサービスはどこも画一的で、手数料も割高だといった不満も多い」と記されているが、そう感じる農家は農協を使わない方法をとればよく、近年は資材の専門店や農産物を直接仕入れるスーパーも多い。そのため、農協を弱体化させるのではなく、そちらを頑張らせるべきなのだ。

 このように、環太平洋経済連携協定(TPP)交渉を進めるために、かなり前の実態から見た論理づけがなされているが、農協を弱体化させることを目的とする法律を通しても、農協経営は効率化するどころか非効率となり、それに伴って農家も弱り、国際競争力を高めるどころか弱めることになる。また、政府関係者が「地域農協が商品開発や輸出強化で自由に競争できるようになる」と指摘しているとのことだが、国際競争をする時には、地域農協は競争するより協力して、よりよいブランド品をまとまった量で生産しなければ、外国に太刀打ちすることはできない。

 なお、「JA全中は監査代などで地域農協などから毎年80億円程度の負担金を集めており、任意団体になれば負担金がなくなり、地域農協の自由度が高まる」と書かれているが、監査のみでそれほどの金額がかかるわけはないため、他のサービスも行っているのを分けずに書いているのではないだろうか。ここは、私が分析すればBestな案を出せると思うが、現在、それを分析する立場にないのが残念である。

 また、*2-1、*2-2の日経新聞記事は、「商社サービス機能を持つ全国農業協同組合連合会(JA全農)は、株式会社に転換できることを明記する」とし、*2-3では日本農業新聞が反論しているが、株式会社にしさえすれば問題が解決するかのような株式会社への盲信をしているのは問題である。生産資材は、大規模な主体が交渉した方が安価に仕入れることができるが、これまでは農業中心ではなく、製造業中心に補助金を見越した価格設定がなされていたため、値段が高い割に粗末だったのだ。

 そのような中、*2-2のように、全中を廃止したり、農協の力を弱めたりすることが目的の“農協改革”に、約700の地域農協を束ねる全国農業協同組合中央会(JA全中)が対決姿勢を鮮明にしたのは当然である。改革は、壊すことを目的とするのではなく、よりよくすることを目的として行うべきだ。私は改革派であって守旧派ではないが、「改革」とは、常時よくなる方向へ向かって行い続けるべきものであり、それは改悪することでは決してないと断言しておく。

<佐賀県知事選で示した農協の意志>
*1-1:http://www.asahi.com/articles/DA3S11536527.html
(朝日新聞 2015年1月6日) 政権・農協、佐賀知事選で激突 規制改革めぐり攻防
 安倍政権と自民党の支持団体である農協が、佐賀県知事選(11日投開票)を舞台に火花を散らしている。政権側が規制改革色の強い前同県武雄市長を擁立したのに対し、農協側は元総務官僚を担いだ。背景には、規制改革の象徴として政権が取り組む「農協改革」をめぐる攻防がある。
■切り込む官邸、地元が対抗
 「自信と責任を持って推薦しました」。前佐賀県武雄市長の樋渡啓祐氏(45)の集会では、安倍晋三首相がこう語る映像が流れる。政権を挙げて樋渡氏を推す、という演出だ。これまでも、菅義偉官房長官や竹下亘復興相らが応援に駆けつけ、5日には自民党の谷垣禎一幹事長が同県伊万里市の演説会に出席。「樋渡氏は武雄市長として、ツタヤで図書館をうまく活性化させたりした。あるいは(ハーブの一種の)『レモングラス』なんて、その辺にあるものをブランド品にしてしまう。こういうことがないと地方創生はうまくいかない」と持ち上げた。稲田朋美政調会長も8日に応援に入る。特に、首相の最側近である菅氏は樋渡氏の支援に力を入れる。市長時代、地元医師会の反対を押し切り、市民病院の民間移譲を進めるなどした姿勢が、アベノミクスの規制改革の方向性と一致すると評価。農業でも、レモングラスを農協を通さずに販売しており、菅氏は「樋渡氏は改革派で押し出せる」と周囲に語る。しかし、そうした樋渡氏の手法に、農協など業界団体などを中心に自民党の支持組織は警戒感をあらわにした。地元農協の政治組織「県農政協議会」が主導し、一部の自民党県議や県内の首長と擁立したのが元総務官僚の山口祥義氏(49)だ。県農政協議会の中野吉實(よしみ)会長は、JAグループの中核、全国農業協同組合連合会(JA全農)会長を務める。佐賀では、2007年参院選で民主党に敗れるまで自民が20連勝。正組合員約5万5千人のJAグループが、保守王国・佐賀を支えてきたという自負もある。農協と関係の深い自民党農林族議員の一人は「知事選の結果が、農業改革に突き進む安倍政権への牽制になる」ともくろむ。政府の規制改革会議は昨年5月、農協法で地域農協の指導などが認められている全国農業協同組合中央会(全中・万歳章会長)の「廃止」を提案。党農林族議員が猛烈に巻き返し、「廃止」の表現を撤回させた。これに対し、推進派は昨年10月、稲田氏のもとに「規制改革推進委員会」を設置。族議員に対抗する場をつくった。衆院選で議論は中断したが、今月中にも再始動する予定で、政権と農協は再び激突することになる。安倍政権が掲げる農協改革とこれに対する懸念。農協改革が隠れた争点になる中、山口氏は3日に伊万里市で開いた総決起大会で「農協は団結して佐賀の農業をつくってきた。守るべきものは守らなければならない」と訴えた。
■「勝っても負けてもしこり」
 知事選の選挙結果は、国政に少なからず影響を与えそうだ。安倍政権は樋渡氏が勝てば、農協の発言力は低下し、農協改革に弾みがつくとみる。官邸幹部は「自民党守旧派が山口氏に乗るのなら、一緒につぶすしかない」と闘争心を隠さない。一方、農協側が推す山口氏が勝てば、農協の組織力を見せつけられる結果になる。今春の統一地方選や来夏の参院選をにらみ、自民党内や地方組織から、支持団体である農協の改革に懸念の声が噴き出す可能性がある。党幹部の一人は「農協改革が『農協つぶし』と受け取られてはならない」と指摘。樋渡氏の応援で現地入りしたベテラン議員でさえ、「このままでは勝っても負けてもしこりが残る」と心配する。政権の目指す農協改革に党内外の反対が強まれば、政権が掲げる規制改革による成長戦略の失速につながる可能性もある。農協グループの司令塔である全中の中にも、知事選での激突で政権と抜き差しならない関係になることを心配する声がある。JAグループ幹部の一人は「衆院選が終わり、これからの自分たちの防御のことで精いっぱいだ」と話す。
 飯盛良隆(いさがいよしたか) 44 無新 農業
 樋渡啓祐(ひわたしけいすけ) 45 無新 [元]武雄市長 〈自〉〈公〉
 山口祥義(やまぐちよしのり) 49 無新 [元]総務省室長
 島谷幸宏(しまたにゆきひろ) 59 無新 九大院教授
 (届け出順、敬称略。〈 〉内の政党は推薦。年齢は投票日現在)

*1-2:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/144467
(佐賀新聞 2015年1月12日) 樋渡氏「私の力不足」 改革派、夢絶たれる
 「改革派首長」の次なる挑戦が絶たれた。樋渡啓祐さん(45)の事務所に「山口氏当確」の報が入ると一瞬にして静まり返り、重苦しい雰囲気になった。武雄市長時のユニークな政策で抜群の知名度があったものの、県農政協議会を中心とした強大な組織力に立ちふさがれてあと一歩届かなかった。樋渡さんは「私の力不足が今回の結果を招き、申し訳ありません」と深々と頭を下げた。事務所では県連会長の福岡資麿参院議員や古川康衆院議員ら4人の国会議員も並んで、支持者を前に頭を下げた。福岡会長は「私たちの力が及ばず、責任の重さを受け止めている」と苦渋の表情を見せた。教育改革を武雄市で進める樋渡さんは「投げ出し」の批判覚悟で市長辞職と知事選挑戦を決断した。自民党の推薦を受けたものの、保守分裂が起こり、自民の有力団体の県農政協が元総務官僚の候補を応援する事態に。党本部も乗り出して官房長官や幹事長らが続々と応援に駆け付けるなど国政選挙並みの態勢がとられた。一方で党本部の露骨な介入に反発も強まり、相手陣営の結束を誘引した。前知事の古川衆院議員との運動で「後継者」をアピールし、民間と連携した改革の実績や即戦力も示して訴えたものの、相手候補の猛追を止められなかった。武雄市を全国区の知名度に押し上げた情報発信力も、市長時代の政治手法や言動に対する批判の声にかき消された。最終盤に「潮目が変わった」と振りかえる樋渡さん。「佐賀を良くしたいという政策を訴えたが、思いが届かなかった」と淡々と語った。

*1-3:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/144469
(佐賀新聞 2015年01月12日) 山口氏歓喜の輪 「佐賀のことは佐賀で決める」
■「県民党」激戦制す
 「佐賀のことは佐賀で決める」。自公政権が国政選挙並みに幹部を送り込んだ異例の知事選を制した元総務省過疎対策室長の山口祥義(よしのり)さん(49)。歓喜の渦の中、「県民一人ひとりの力がどれほど強いか、日本中に示した」とつぶれた喉で叫んだ。事務所には、自民党の推薦する樋渡啓祐さんの政治手法に反発するJAグループ佐賀の政治団体・県農政協議会や多くの首長、地方議員ら約300人が詰め掛け、「ヤマグチ」コールで新知事を迎え入れた。何度も万歳して喜び合った。選挙戦を通じ、旗印に掲げたのが党派の垣根を越えた「県民党」だった。反樋渡の一点で、民主党議員や連合佐賀も参戦。集会では過去の選挙でしのぎを削った者同士が席を並べた。国対地方の構図は「佐賀の乱、佐賀の百姓一揆だ」(与党筋)と注目を集めた。中でも県内最大の政治団体である農政協は「かつてないほど死に物狂いで動いた」(幹部)。集落単位に張り巡らされた2千数百の生産組合の末端まで指示を下ろし、圧倒的な動員力で決起大会の会場を毎回、満杯にした。それでも、立候補表明が告示9日前と出遅れ、知名度不足をばん回できないまま、各報道機関の情勢分析でも苦戦が伝えられた。事務所開きでは司会に名前を「よしひろ」と間違えられ、陣営幹部も「先ほど本人とお会いしたばかり」と繕うほどだった。もともと地方自治や防災対策の経験が豊富で、誰とでもすぐに打ち解ける明るい性格。陣営内での認識も反樋渡の「みこし」から、「この人に知事になってほしい」へと変化していった。最終盤の県都決戦では大半の佐賀市議らが「自分の選挙でも記憶にない」ほど汗をかき、大逆転で勝利をもぎ取った。出馬を決意したのが昨年12月12日。1カ月前は無名の官僚が佐賀県知事になった。「奇跡の30日間だった。県民一人ひとりの声に耳を傾け、現場目線で改革を進める。選挙が終わればノーサイド」。山口さんは持ち前の気さくな笑顔で支援者らと抱き合った。

*1-4:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/144748
(佐賀新聞 2015年1月13日) =知事選= 政府与党「政策は支持された」
■敗因検証求める声も
 11日の佐賀県知事選で自民、公明両党の推薦候補が、農業団体が支援する候補に敗れたことについて、政府与党の幹部らが12日、相次いで言及した。安倍政権が取り組む農協改革や、4月の統一地方選への影響を否定する一方、敗因の検証を求める声も上がった。甘利明経済再生担当相は、首相官邸で記者団に「政策では支持されたが、候補者で支持されなかったというのが今回の結果だと思う」と述べ、安倍政権が進める農協改革への影響はないとの見方を示した。甘利氏は「アベノミクスは衆院選で支持された」として、政権の経済政策が知事選での敗因ではないと強調。環太平洋連携協定(TPP)交渉への影響についても「ありません」と否定した。自民党の稲田朋美政調会長は「農協改革にブレーキがかかることはない」と記者団に語った。二階俊博総務会長は記者会見で「衆院選で勝ったから、他は取りこぼしても良いとはならない。なぜ勝てなかったか考えるべきだ」と指摘した。公明党の山口那津男代表は、官邸で記者団の質問に「佐賀のいろいろな要因があり、地域の特性に応じた選挙が展開されるので、統一地方選に特に影響はない」との見方を示した。農協改革に関しては「いろいろな声がある。謙虚に受け止め今後に生かすことが重要だ」と述べた。

<農協が岩盤規制なのではない>
*2-1:http://www.nikkei.com/article/DGXLASFS30H5V_T00C15A1MM8000/
(日経新聞 2015/1/4) JA全中の農協指導権「全廃」案 政府、任意団体に
 政府は今月始まる通常国会に提出する農業協同組合法改正案の骨格を固めた。全国の農協組織を束ねる全国農業協同組合中央会(JA全中)の指導・監査などの権限を3年で全廃して任意団体に転換する。JAグループ内でのJA全中の強制力をなくし、地域農協や農家が農産物の価格やサービス、流通経路を自由に競い合えるようにする。消費者も安価で魅力的な国産品を買える可能性が高まる。JA全中の下部組織である地方中央会は原則5年、最長10年以内に任意団体に変える。JA全中を岩盤規制の象徴と見なしてきた安倍晋三政権は農協法改正案の骨格を1月にも与党に示し、今春をめどに改正案を国会に提出したい考えだ。地域農協は零細農家や兼業農家など生産規模の小さい農家の集まりで、全国に約700ある。農家が作った農産物の販売を請け負ったり、肥料や農機具などの資材を農家に販売したりする。地域農協の頂点に立つのがJA全中で、都道府県ごとに設けた地方中央会を通じて統制している。全国の農家が出荷したコメや野菜などの農業総産出額約8兆5000億円のうち、約半分は農協経由で、JAグループの価格影響力は強大。ただ農家には「農協のサービスはどこも画一的で、手数料も割高だ」といった不満も多い。環太平洋経済連携協定(TPP)交渉を背景に強い農業の確立が急務になるなかで、改正案は農協の経営を効率化させ、国際競争力を高める狙いもある。改正案には、指導・監査権や、行政に意見を述べる建議権などJA全中が持つ法的権限を3年後にすべてなくし、ほかの業界団体と同じ一般社団法人や法的権限のない農協の連合会に転換させる内容を盛り込む。政府関係者は「地域農協が商品開発や輸出強化で自由に競争できるようになる」と指摘する。JA全中は監査代などで地域農協などから毎年80億円程度の負担金を集めている。任意団体になれば負担金がほぼなくなり、地域農協の自由度が高まる。政府内には、負担金を使ったTPP交渉や企業の農業参入などの反対運動を封じることができるとの思惑もある。地方中央会は原則5年で任意団体に転換。農相が認可すれば、さらに5年の猶予期間を設ける。今春の統一地方選を前に与党内に「選挙戦で集票マシンとして機能する地方中央会は残すべきだ」との声が強いためだ。商社サービス機能を持つ全国農業協同組合連合会(JA全農)は、株式会社に転換できることを明記する。当面は地域農協が出資する状態を維持するが、将来は経営合理化につながる農協外からの出資受け入れに含みを持たせる。合理化で生産資材などの価格が下がれば、生産者の競争力が高まるとの期待がある。企業や農家でつくる農業生産法人への企業の出資比率も原則25%から50%未満に引き上げ、企業の参入障壁を低くする。

*2-2:http://www.nikkei.com/article/DGKKZO79398060X01C14A1EA2000/?bu=BFBD (日経新聞 2014/11/7) JA全中、農協改革で政府と対立鮮明 独自案を公表 経営指導権の維持狙う
 安倍晋三政権が掲げる農協改革に、約700の地域農協を束ねる全国農業協同組合中央会(JA全中)が対決姿勢を鮮明にしている。JA全中は6日、自ら組織改革案を公表したが、各農協を指導する監査権限などを従来通り維持する方針を強調した。政府・与党は年末までに農協改革案をまとめるが、JA全中は自民党農林族を取り込んで巻き返しており、調整は難航しそうだ。農協の多くは農家からの農産物の買い取り価格や経営指導が画一的で、企業の農業参入にも否定的だった。政府は成長戦略で農産物輸出の拡大などを掲げ、大胆な農協改革を迫っている。中でもJA全中の全国一律の経営指導に問題があるとみていた。JA全中の万歳章会長は6日の記者会見で「自らの組織改革を自らの手でやり遂げるという決意でまとめた」と述べた。全中が公表した自己改革案は「新たな中央会は農協法上に措置することが必要」と明記した。首相は10月3日の衆院予算委員会で「農協法に基づく現行の中央会制度は存続しないことになる」と明言しており、両者の考えは真っ向から対立することになる。安倍政権は農協法で定めた全中の位置づけを廃止し、経団連などほかの業界団体と同じ一般社団法人への転換をめざす。各農協が独自の経営判断で農産物の開発や流通ルートの開拓に取り組むようにする。農協が監査代の対価などとして全中に支払う年間70億円程度の「負担金」もなくなり、経営の自由度は増す。だが全中は6日の改革案で経営指導権は「経営相談」に名称変更するものの、農協法で制度を存続する方針を盛り込んだ。社団法人化も見送った。農林水産省幹部は「政府と隔たりが大きい」と困惑する。安倍政権には農協改革に熱心な菅義偉官房長官らがおり、強硬姿勢を崩さない。来春には統一地方選を控え、自民党内には農協の集票力に期待がなお残る。「岩盤規制」の突破を掲げる安倍政権の改革姿勢を問われることにもなり、年末に向けて議論は波乱含みだ。

*2-3:http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=31440 
(日本農業新聞 2014/12/29) 良識ある自民党議員へ期待 株式会社 盲信を正せ 評論家・ノンフィクション作家 関岡 英之
 年明けの通常国会は、農協法改正問題で波乱含みとなるだろう。JA全中が現状通り同法上の組織として存続できるかどうかが最大の焦点だ。一部報道によると、政府原案には全中の一般社団法人化が盛り込まれるという。規制改革会議の農業ワーキンググループは、5月に公表した「農業改革に関する意見」で中央会制度の廃止を提言した。これに対し自民党内から異論が噴出したため、6月に閣議決定された「規制改革実施計画」では「新たな制度に移行する」という表現に弱められた。
●中央会廃止狙う
 しかし安倍総理は10月3日の衆議院予算委員会で「農協法に基づく現行の中央会制度は存続しないことになる」と明言していることから、同法改正の真意が中央会制度の「廃止」にあることは明白である。全中から監査権限を奪い、民間企業と同様、単協にも公認会計士の会計監査を受けさせることが狙いの一つだろう。それ以外にも、全農の株式会社化、単協・連合会の分割・再編や株式会社等への移行、民間企業の経営経験者の理事会参入、単協の信用事業を農林中金へ移管した上で農中・全共連を株式会社化するなどといった規制改革会議の提言が実現する可能性も排除できない。これら一連の“改革”案に通底しているのは、協同組合の存在否定と民間企業への盲信だ。だが、農協を解体して株式会社化すれば、我が国の農業が抱える複雑な問題が一挙に解決できるなどというのは、控えめに言っても誇大妄想である。よく目を開けて、大企業の経営者たちの情けない実情を見てみるがよい。ひたすら内部留保を溜(た)め込むだけでリスクテイクする気概もなく、賃上げや国内投資に踏み切ろうとしない。自動車会社は内外でリコール騒ぎを繰り返し、家電メーカーは新興国企業の追い上げになすすべもない。銀行は不良債権の山を築いて国民の血税で救済される体たらくで、いまだに預金者へまともな利息を払わない。東証一部上場企業に14年間勤務した経験のある筆者は断言できるが、株式会社を万能の救世主として神聖視するなど愚の骨頂である。
●問題をすり替え
 そもそも、農家の高齢化や後継者難、耕作放棄地の増加など、農業の衰退を全て農協のせいだと決め付けるのは、事の本質から国民の目をそらすことを狙った問題のすり替えだ。我が国の農業が長年にわたって苦境に陥ってきたのは、米国の貿易自由化圧力がもたらしたものであることは誰でも知っている。だが、政府の役人やマスコミはこの歴然たる事実を見て見ぬ振りを決めこみ、国民の目を誤魔化(ごまか)そうと躍起になっている。政府とマスコミ、背後に控える財界は「農業が衰退したのは農協が悪いからだ」と居丈高に叩(たた)く。それはまるで、子どもを真冬に裸でベランダに放置しておきながら、「衰弱したのはお前が悪い子だからだ」と子どもを虐待する鬼畜のごとき理不尽な言い草ではないか。良識ある自民党議員の奮起を期待したい。
<プロフィル> せきおか・ひでゆき
 1961年東京都生まれ。早稲田大学大学院修士修了。年次改革要望書による米国の内政干渉を解明した『拒否できない日本』、TPPに関する『国家の存亡』、『TPP黒い条約』『検証アベノミクスとTPP』など著書多数。


PS(2015年1月14日追加):*3をはじめとして、1月11日の佐賀県知事選を取り上げた記事は多いが、これを「佐賀の乱」と例えるのは、意味もなく歴史の知識を遊んでいるだけであり適切でない。何故なら、佐賀の乱は明治政府内の意見対立だが、今回の知事選は主権在民にのっとって行われた国民の意志表示だからだ。なお、現在は、殆どが改革派であり、「どう変えるか」に焦点が移っている。その点、樋渡氏は、ツタヤと組んで市立図書館を刷新したが、ツタヤと市立図書館のとり合わせには疑問を感じた人もいたし、市民病院は黒字ならいいというものでもないため、民間移譲がBestな選択だったかどうかは疑問だ。また、(岩盤の?)地元医師会の反発を押し切ったからよいことをしたというものでもなく、武雄市を挙げて、まじめに医療改革の内容と方法を問うた闘いであったため、新聞記者も勉強して報道の質を向上させてもらいたい。

*3:http://www.asahi.com/paper/editorial.html
(朝日新聞社説 2015年1月14日) 自民の敗北―佐賀の乱で見えたこと
 地方選には地域固有の事情が反映する。それを安易に国政に結びつけるべきではないにしても、安倍政権にとっては痛い結果だったに違いない。前知事の衆院選立候補に伴う11日の佐賀県知事選で、元総務官僚で新顔の山口祥義(よしのり)氏が当選した。衆院選で大勝した自民、公明両党推薦の樋渡(ひわたし)啓祐・前佐賀県武雄市長らを破っての「番狂わせ」である。知事選では、県内にある九州電力玄海原発の再稼働や、自衛隊のオスプレイ佐賀空港配備といった問題よりも、政権が進める農協改革をめぐる「政権対農協」の争いがクローズアップされた。政権が支援する樋渡氏に対し、改革に否定的な地元農協などが反旗を翻す形で山口氏を推したからだ。2006年から武雄市長を務めた樋渡氏は、レンタル大手ツタヤの運営会社と組んで市立図書館を刷新、全国的な注目を集めた。また、地元医師会の反発を押し切っての市民病院の民間移譲なども進めた。市長としての行動力に高い評価を得ると同時に、強引な手法への批判もまた根強かった。農協改革など規制改革に力を入れる政権が樋渡氏を全面的に支援したのは、「改革派」の側面を買ったからだ。農業県の知事選を制すれば、抵抗が大きい農協改革にも弾みがつくとの狙いだ。しかし、地元の側には、農協改革だけでなく、中央主導のトップダウンで知事選を仕切ろうとした政権のやり方への反発も強かったようだ。日本の農業が行き詰まりつつあるのは明らかだ。農政とともに農協の改革は避けられないという政権の意図はわかる。一方で、改革を進めようとすれば摩擦が生じる。突破するには強いリーダーシップが必要だとしても、同時に指導者の考え方を丁寧に説明し、議論を通じて異論をすくいとっていくプロセスもまた欠かせない。原発再稼働が問われた滋賀県、米軍普天間飛行場の県内移設が争点になった沖縄県。昨年来、自民党が支援する候補が敗れた知事選を振り返ると、いずれも地元の意思よりも「国策」を優先しようとする政権の姿勢が拒否されたという構図が浮かび上がる。4月の統一地方選を控え、安倍首相はきのうの党役員会で「敗因分析をしっかりしたい」と述べた。今回の結果を、農協改革の是非という狭い枠組みだけでとらえるべきではなかろう。問われたのは、民意に対する安倍政権の姿勢そのものだ。


PS(2015/1/14追加):私も、今回の農協改革は、農業所得向上にも食料自給率向上にも結び付くようには思えず、何のためにやっているのか不明確だと思うので、農協改革をしようとする人は、それらを理路整然と説明すべきだし、その論理は改革をしようと思った時にはわかっているのが当然であって、聞かれて初めて考えているようでは話にならない。しかし、「(公認会計士監査の方が監査する側の)権限が強くなり、厳しく見ていく方に働くのではないか」というのは、「監査は、まあまあの方がよい」という前提に立っているが、それでは監査の目的が達せられず、単なる無駄遣いになってしまうのである。

*4:http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=31619
(日本農業新聞 2015/1/14) 農協改革 目的見えず 閉会中審査 野党が追及 衆院農水委
 衆院農林水産委員会は13日、閉会中審査を開いた。農政での最大の課題に浮上している農協改革をめぐり、野党側は政府が目指す農業所得向上にどう結び付くのか見えず、目的がはっきりしないと追及したが、政府側からは明快な答弁はなかった。農協改革の目的は何か、来週から本格化する政府・与党内の議論でもあらためて論点の一つとなりそうだ。政府は今春に農協法改正案を国会に提出する方針。政府・与党内の議論が今月下旬から本格化する見通し。政府は農協改革の目的を「農業所得の向上」と位置付け、焦点となる農協監査では「JA全中の強制監査権限はなくす」として単位農協が全中による監査を受ける義務付けをなくし、公認会計士による監査の導入を検討している。この日の委員会で民主党の玉木雄一郎氏は「強制権限を取れば、なぜ農家の所得が増えるのか。この強制権限の有無と所得増大、このことの因果関係がいまひとつよく分からない」と政府の見解をただした。西川農相は「身内が身内を監査するという状況を脱して、自由な発想でやるけれども、公認会計士などでしっかり監査しましょうと(いうこと)」「とにかく(単協の経営の)自由度を高めていきたいという考え方」などと説明した。ただ、玉木氏は「今の答弁を農家が聞いて、なぜJA全中の強制監査権限を外せば所得が増えるのか、今のままだとなぜ所得が増えないのか分からない」と反論。「むしろ(公認会計士監査の方が監査する側の)権限が強くなり、厳しく見ていく方に働くのではないか」とも指摘した。農協監査に公認会計士監査を導入することをめぐっては、現行の会計・業務一体の監査ができなくなり、費用負担も大きく増すなど問題が多い。この日の委員会では維新の党の村岡敏英氏も農協改革を取り上げ、農業関係者の不信が高まっていると指摘。「農協関係者の思いを把握しないで改革は進められない」とし、十分な話し合いを行った上で、現場の意向を踏まえるよう政府に迫った。

| 農林漁業::2014.8~2015.10 | 12:24 PM | comments (x) | trackback (x) |

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