左のCATEGORIES欄の該当部分をクリックすると、カテゴリー毎に、広津もと子の見解を見ることができます。また、ARCHIVESの見たい月をクリックすると、その月のカレンダーが一番上に出てきますので、その日付をクリックすると、見たい日の記録が出てきます。ただし、投稿のなかった日付は、クリックすることができないようになっています。
2015,02,03, Tuesday
*2-1 *2-3 2015.1.31 2015.1.21 2015.1.26 2015.1.19 日本農業新聞 日経新聞 日本農業新聞 日本農業新聞 (1)現在の農協中央会の監査について *3-1に、「①中央会監査制度は、農協法第73条の22、第37条の2の規定等に基づき、1052年(昭和29年)の農協法改正による中央会設立以来実施している監査で、農業協同組合監査士を中心として実施しており、公認会計士等も従事していた」「②1996年(平成8年)の農協法改正で農協中央会の決算監査が導入され、平成14年にJA全国監査機構が設立され、都道府県中央会と全中の監査事業を統合して全JAを毎年監査する体制を整えた」と記載されている。 また、*3-2の農協法には、「JA全国監査機構が農協の監査を行う」と規定されており、これが、現在の農協監査だ。 (2)全中監査廃止論について *2-1、*2-2のように、政府内で単位JAに対する全中監査の廃止案が出ており、西川農相も全中監査を公認会計士による監査にすべきだとの方針を示しているが、これに対し、JA全中の萬歳会長は、「①2007年には当時の若林農相が、全中監査は有効に機能し、公認会計士監査と置き換えられないと評価した」「②(全中)監査の廃止が農家所得の増大にどのような関連があるのか理解しかねる」と疑問を呈し、全中監査の維持と中央会の農協法上への位置付けを求めており、私も、変更方針を示すのなら、「変更により、誰にとって、何故、よりよくなるのか」という根拠を示す必要があると考える。 そして、私は、1996年の農協法改正による農協中央会の決算監査は、JA全国監査機構という組織を設立して行うよりも監査法人が監査した方がよかったとは思うものの、1996年の改正で農協組織はかなり現代的なものになったと認識している。ただ、農協のみを監査するJA全国監査機構が、農協から完全な独立性を保ち、マンネリ化しないで監査を続けることができるか否かについては疑問があるが、この点は、会計検査院による国の監査と同程度だ。 しかし、*2-2で、「①公認会計士による監査に移行すれば、JAの経営改善に役立つ業務監査の機能を失う」「②さまざまな業務に関する知識に加え、協同組合を熟知している人による監査が欠かせない」と言われている点については、①については、公認会計士監査だけでは確かに業務監査は行わないため、監査役監査や内部監査のようなスタンスでJA全国監査機構による監査も残すべきだと思うが、公認会計士は銀行、生保、製造業など多業種の監査を行っており、その業種を熟知した人が監査担当者になり、その人は同業他社の状況も知っているため、同業種を横に比較した有益なアドバイスもできるという理由で、公認会計士監査も入れた方が有益だと、私は考える。 また、②については、公認会計士は、社会福祉法人、学校法人等の監査も行っており、農協監査をするからには、(いろいろな形で)協同組合や農業に関する知識を得て監査するため、心配はいらない。 しかし、私は、*2-2、*2-4に書かれているとおり、農業者の所得向上や地方創生に、JAは大きな役割を果たしているため、JAを弱くしたり、壊滅させたりすることが目的の変更は、決してすべきではないと考えている。 このような中、*2-3に、「農水省はJA全中による単位JAの監査を廃止する意味を説明できず、改革ありきの改悪になりそうだ」と記載されているが、本当によい改革にするには、JA全国監査機構の組織を簡素化して監査を残した上で、公認会計士監査を入れるのがよいと、私は考える。何故なら、全中の監査部門(JA全国監査機構)には内部監査や業務監査をさせ、外部監査として公認会計士監査を導入すれば、今までの業務監査は十分に行われた上、独立した第三者による監査もできるからである。 私は、これにより農協の会計制度を一般会社並みにして組合員のリスクを抑え、同業他社と比較した有益なアドバイスにより農家の所得向上を図ることができると考える。また、JA全中は「公認会計士が中山間地や離島などに足を運んでまで監査をするのか」と疑問視したそうだが、公認会計士は適正意見を出せるようにするために批判的機能だけではなく指導的機能も重視しており、必要なら離島や山間部はおろか外国にでも行き、大企業並みの質の高い監査をすることができるということを述べておきたい。 (3)その他の変革について *1-1のように、「①全国農業協同組合連合会(JA全農)を株式会社に転換することを可能とする」「②准組合員の利用規制」は、 ①については、農協がやりやすく組合員の意欲と所得が上がる方法を選択できるようにするのが筋であって、決して株式会社化が目的であってはならない。 また、②については、准組合員も農協に貢献している以上、農協は、準組合員から見放されては、地方創生の核になるどころか、やっていけなくなる。そのため、農業の現状を知らず、農業が衰退しても責任をとるつもりのない外部が口出しすべきではない。 なお、*1-2、*1-3を見ると、この農協改革法案の目的は、全国の農協を指導・監査する全国農業協同組合中央会(JA全中)の権限を縮小することのようだが、そのようなよこしまな理由の改革(改悪)は行うべきではない。また、農業主体は、経団連の構成企業と異なり、農協のリーダーシップで生産や品質管理等の面で助けられていることが多く、農産物の価格やサービス、流通経路は既に自由に競い合っているため、“改革”を提唱している人の事実認識の方が、20年も時代遅れで支離滅裂なのである。 (4)自己改革が重要 (1)(2)(3)に書いた理由で、農協改革は、日本の質の高い農業を伸ばすというスタンスの人のアドバイスを受けながら、現状を知っている農協が主体になって行うのがよいと考える。 *1-1:http://qbiz.jp/article/54793/1/ (西日本新聞 2015年1月29日) 農協改革の骨格、来週決着へ 政府・自民党、議論大詰め 政府と自民党は農協改革の骨格に関して、来週中の決着を目指していることが29日、分かった。2月12日に予定している安倍晋三首相の施政方針演説に反映させたい考えで、同月6日に演説内容を閣議決定する必要があるためだ。農協改革をめぐる議論は大詰めに入る。農林水産省は30日に自民党の農協改革会合で、全国農業協同組合連合会(JA全農)を株式会社に転換することを可能とする規定など、議論が収束しつつある項目について法案に盛り込む方針を説明する。一方、全国農業協同組合中央会(JA全中)の在り方や、農家以外でも農協事業を利用できる准組合員の利用規制といった賛否が割れている論点に関しては、方向性を明確にしない見通し。今後、自民党内の議論を見極めながら案を示す。自民党が29日に開いた会合では、これまでの与党の議論とJAグループの意見を整理した。JA全中の在り方と准組合員の利用規制で考え方に開きがあるとして、今後、重点的に議論をする見通しとなった。公明党も29日、農林水産部会を開催。農協監査を公認会計士監査へ移行する政府方針に関して意見聴取した。JA全中は「公認会計士よりJA全中のほうがふさわしい」と主張した。会合後、石田祝稔部会長は「公認会計士が中山間地や離島などに足を運んでまで監査をするのか」と記者団に語り慎重な検討を求めた。有村治子規制改革担当相は29日、皆川芳嗣農水次官を大臣室に呼び「規制改革会議による提言の趣旨が最大限発揮されるよう努力してほしい」と要請した。規制改革会議は昨年11月、JA全中を一般社団法人に移行することなどを求めた。 *1-2:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20150121&ng=DGKKASFS20H2A_Q5A120C1PP8000 (日経新聞 2015.1.21) 農協改革法案の議論に着手 「JA全中縮小」で攻防 自民作業部会が初会合 自民党は20日、安倍晋三首相が掲げる農業協同組合(農協)改革の法案を検討する作業部会の初会合を開いた。最大の焦点は全国の農協を指導・監査する全国農業協同組合中央会(JA全中)の権限縮小。与党内には統一地方選を前に農業票離れを懸念する慎重論が根強い。同部会がまとめる骨格をもとに政府は関連法案を作成し、3月までの国会提出を目指す。自民党本部で開いた初会合には100人以上の党所属議員が出席し、JA全中の改革案に反対意見が相次いだ。22日にはJA全中を呼んで意見を聴取し、早期に党の意見のとりまとめに入る。「農協には地方創生の核になってもらわないといけない」。稲田朋美政調会長は20日、党本部での役員連絡会で強調した。同氏は「このままでは大切な農業が衰退する」と主張する首相と歩調を合わせる改革推進派だ。JAの組織見直しを通じて農業を成長産業へてこ入れしたい思いがある。稲田氏が特に関心を寄せるのが、JA全中による強制的な監査権の廃止だ。JA全中を経団連などと同じ一般社団法人と位置づけ、地域農協の自主性を高める。農協や農家が農産物の価格やサービス、流通経路を自由に競い合えるようになる。地方選出議員ら慎重派はJA全中の縮小に反発する。作業部会では「監査をなくせばどうして農家が良くなるか説明できていない」など批判が噴出。「農協法で位置づけるべきだ」と一般社団法人化に反対する意見が出た。「地方の切り捨てにつながる。地方創生に逆行する」との声もあった。懸念するのは春の統一地方選や来夏の参院選での農業票離れだ。11日の佐賀県知事選では農協改革も争点となり、農協が支援する候補に与党推薦候補が敗北した。一方、官邸は農業政策を岩盤規制と位置づけ、首相も「抵抗勢力との対決」の構図を打ち出している。 *1-3:http://www.nikkei.com/paper/related-article/tc/?b=20150124&bu=BFBD (日経新聞 2015.1.24) 農協改革法案の議論に着手 「JA全中縮小」で攻防 自民作業部会が初会合 自民党は20日、安倍晋三首相が掲げる農業協同組合(農協)改革の法案を検討する作業部会の初会合を開いた。最大の焦点は全国の農協を指導・監査する全国農業協同組合中央会(JA全中)の権限縮小。与党内には統一地方選を前に農業票離れを懸念する慎重論が根強い。同部会がまとめる骨格をもとに政府は関連法案を作成し、3月までの国会提出を目指す。自民党本部で開いた初会合には100人以上の党所属議員が出席し、JA全中の改革案に反対意見が相次いだ。22日にはJA全中を呼んで意見を聴取し、早期に党の意見のとりまとめに入る。「農協には地方創生の核になってもらわないといけない」。稲田朋美政調会長は20日、党本部での役員連絡会で強調した。同氏は「このままでは大切な農業が衰退する」と主張する首相と歩調を合わせる改革推進派だ。JAの組織見直しを通じて農業を成長産業へてこ入れしたい思いがある。稲田氏が特に関心を寄せるのが、JA全中による強制的な監査権の廃止だ。JA全中を経団連などと同じ一般社団法人と位置づけ、地域農協の自主性を高める。農協や農家が農産物の価格やサービス、流通経路を自由に競い合えるようになる。地方選出議員ら慎重派はJA全中の縮小に反発する。作業部会では「監査をなくせばどうして農家が良くなるか説明できていない」など批判が噴出。「農協法で位置づけるべきだ」と一般社団法人化に反対する意見が出た。「地方の切り捨てにつながる。地方創生に逆行する」との声もあった。懸念するのは春の統一地方選や来夏の参院選での農業票離れだ。11日の佐賀県知事選では農協改革も争点となり、農協が支援する候補に与党推薦候補が敗北した。一方、官邸は農業政策を岩盤規制と位置づけ、首相も「抵抗勢力との対決」の構図を打ち出している。 <自己改革が必要> *2-1:http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=31654 (日本農業新聞 2015/1/16) 自己改革実現求める 監査廃止論で全中会長 JA全中の萬歳章会長は15日の記者会見で、政府内で単位JAに対する全中監査の廃止案が出ていることについて、「JAグループでは混乱している」と懸念を示した。自民党が 衆院選の公約で農協改革について「議論を深める」としていることから、JAグループがまとめた 自己改革の実現へ、同党への働き掛けを強める考えも示した。西川公也農相は9日の記者会見で、全中監査を公認会計士による監査にすべきだとの方針を示している。一方で萬歳会長は、2007年には当時の若林正俊農相が、全中監査は有効に機能し、公認会計士監査と置き換えられないなどと評価してきた経緯を説明。政府の評価が急 激に変わったことに、不信感を示した。また、西川農相が農協改革の目的に農家の所得増大を掲げていることを指摘。「(全中)監査の廃止が農家所得の増大にどのような関連があるのか理解しかねるとの声がJA現場にはある」と疑問を呈した。JAグループは昨年11月にまとめた自己改革で、全中監査の維持に向け中央会を農協法上に位置付けることを求めている。自民党は農協法改正案の骨格を2月上旬にもまとめることを目指し、来週から議論を本格化させる。萬歳会長は「理解を得られるよう最大の努力をしていく」と述べた。萬歳会長はまた「政府が掲げる地方創生には、地域インフラとしてのJAの機能を最大限活用することが必要だ」と指摘。准組合員を農業や地域を支えるパートナーとして積極的に位置付け、JAが総合事業を展開する必要性を訴えた。 *2-2:http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=31705 (日本農業新聞 2015/1/20) 監査 事業熟知が欠かせぬ 全中の指摘有益 群馬・JA佐波伊勢崎 農協改革をめぐる与党内の議論が今週から本格化する。政府は「農業の成長産業化」を改革の目的に掲げるが、その実現に向かっていくのか疑問視する声がJAから上がっている。JA事業の発展に結び付く改革には、どんな視点が必要なのか、現場の取り組みを通じて報告する。農協改革の焦点として浮上する監査制度の問題に対し、JA全中(JA全国監査機構)による監査の重要性を訴える声は多い。公認会計士による監査に移行すれば、JAの経営改善に役立つ業務監査の機能を失うからだ。「さまざまな業務に関する知識に加え、協同組合を熟知している人による監査が欠かせない」。群馬県のJA佐波伊勢崎の小内敏晴統括常務は、全中監査を支持する。監査におけるヒアリングや講評などは「JA経営の参考になり、安定した経営ができる」(小内統括常務)というのが理由だ。全中監査は農協法に基づくもので、会計監査に加え、日常の業務が正しく行われているか点検する業務監査を行う。JAは、市場出荷に加え、北関東で最大級の規模を誇る「からかーぜ」をはじめとしたJA農畜産物直売所を通じ、消費者に安全・安心な農畜産物を提供している。農産物の生産履歴記帳推進と適正農薬使用運動に取り組む。トレーサビリティー(生産流通履歴を追跡する仕組み)システムも活用。農家組合員のために営農指導を展開する。業務監査は不祥事防止、人事ローテーション、営農指導日誌の確認、農薬の取り扱いなどJA事業全般を法令や定款、諸規則に照らしてみる。農業の全体的な環境を把握し、協同組合原則なども踏まえ、JAがどう事業運営しているかを確認するものだ。JAが協同組合として運営されているかも点検するため、全国監査機構群馬県監査部は「組合員が座談会や支所運営委員会などで挙げた意見をJAの理事会に報告し、JAの事業活動につなげているかを確認する」と説明する。農業者の所得向上や地域コミュニティー維持のため、JAは適正規模での農地集積、地場産を販売する直売所に力を入れる。地域のニーズに応える葬祭場の運営も、大きな役割を果たしている。国際協同組合同盟(ICA)のバンセル理事は昨年秋、日本政府の規制改革の動きを懸念して来日し、同JAを訪れた。その際、バンセル理事は「葬祭事業は単なるビジネスではない。多くの協同組合は葬祭事業を行っている。直売所とともに、『地域へのかかわり』という協同組合原則の実践を感じた」と述べている。同JAは、県中央会が開く専門知識取得や人材育成などの研修に職員を積極的に参加させている。外部コンサルタントを活用するより費用が抑えられる。こうした機能は組合員や地域のために有益だとJAは認める。一方で、監査の結果、JAに課題が見つかれば中央会から改善を求められる。ただ、それは政府などが言うようなJAの活動を阻害するものではない。「経営方針を判断するのは実務者であるJAだからだ」。小内統括常務は、そう断言する。 *2-3:http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=31779 (日本農業新聞 2015/1/26) 農協改革 ヤマ場の議論へ 説明一貫せず 監査で農水省 政府・与党の農協改革をめぐる議論は、今週後半に農水省が農協法改正案の検討状況を示し、ヤマ場を迎える。焦点はJA全中による単位JAの監査。政府は廃止を検討するが、改革の目的である農家の所得向上との関連性は明確に説明できていない。改革ありきの改悪にならないか――。慎重な検討が求められる。農水省は30日にも、自民党農協改革等法案検討プロジェクトチーム(PT、吉川貴盛座長)に農協法改正案の検討状況を示す。政府は3月中に同案を通常国会に提出し、「改革断行国会」(安倍晋三首相)の象徴としたい考え。このため2月上旬には法案の骨格を固める方針で、ごく短時間で決着を図る恐れがある。政府は昨年6月の与党取りまとめで「農協系統組織内での検討も踏まえて」結論を得るとした中央会制度の在り方をめぐり、(1)全中による単位JAへの監査の義務付け廃止(2)公認会計士監査の導入(3)全中の監査部門(JA全国監査機構)の独立――などを検討する。だがこれまでの与党内の議論では慎重論が続出。特に、「農家の所得向上にどうつながるのか」と疑問視する意見が多い。これに対し、政府の答弁はあいまいで一貫しない。西川公也農相は13日の衆院農林水産委員会で「(全中監査の廃止で)自由度を高めていかないと(所得を)上げようがない」、16日の記者会見では「(公認会計士監査導入で)経営の自由度を高める」と述べ、「全中監査がJAの自由度を縛る」との見解だった。だがJAグループなどが「そんな実態はない」と指摘すると政府は答弁を転換。菅義偉官房長官は20日に「(全中監査の)結果として、農協役員に経営者としての自覚、責任感が薄くなりがちだ」と述べた。「中央会におんぶに抱っこになっているからJAが育たない」(政府関係者)との理屈に変わったのだ。ただ、この答弁にも「監査は経営者としての自覚や責任感を高めるために行うもの」(自民党農林幹部)など、批判が出る。同党PTの議論では、JA組合長経験者らから「現行の全中監査を受けていても、先進的な取り組みは可能だ」との意見も相次いだ。与党内には「改革が必要な理由を説明できないと、現場で機能しない」(別の自民党農林幹部)との指摘もある。西川農相は23日の記者会見で「与党の議論を待ち、よく相談しながら進めていきたい」と述べており、政府・与党間での丁寧な調整が求められる。 *2-4:http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=31857 [農協改革 首長に聞く 4] 地方創生つながらぬ 農家、地域住民 利便性が低下 茨城県行方市長 鈴木周也氏 (日本農業新聞 2015/1/30) JAは地域に根差し、総合事業で地域を守っている。農協改革の議論は、協同組合のあるべ き姿を根底から崩すものだ。政府が訴える「地方創生」につながるのかという点でも疑問がある。地域の声を置き去りにした金融、共済部門の分離議論などは時期尚早だ。中央会の監査は会計だけでなく、農業経営など業務も監査、指導する。合理性を追求する株式会社の公認会計士監査とは相い れない。中央会の意義や監査制度などは、時代に合わせて変えていく必要はある。しかし、地域の人々が置き去りにされ、損をするような改革であってはならない。そのためにも、中央会にはJAや連 合会への情報提供や支援を強化してほしい。地方でも兼業農家やサラリーマンが増えている。それに伴う准組合員の増加は、必然的なもの。農家以外の地域住民にとって、JAが提供するさまざまなサービスは、今や日常生活に欠かせない。こうした事業形態を脅かすようなことがあってはならない。JAにはぜひ農家や地域のための組織であり続けてもらいたい。信用、共済事業も分離する意味がどこにあるのか理解できない。以前、JA共済連茨城に勤務していた経験から考えても、JAが農家の生活プランニングを提案するためには収入や経営リスクのバランスなど、総合的に考える必要がある。政府が進める農協改革は、JAから総合性を奪うだけであり、農家、地域住民の利便性が下がるのではないか心配だ。地方では産業といえば農業。地域活性化、地方創生の鍵は農業であり、それを担うのがJAや農業法人だ。行方市も農業に頼っており、企業との連携、市外消費者へのPR、農作物の高付加価値化による農家所得向上が重要となっている。改革は、地方がそれぞれのやり方で進めていくべきものだ。地元のJAなめがたは、サツマイモの加工品などを全国展開する会社と協力し、加工施設を造るなど6次産業化を進めている。JA青年部による異業種との人的交流も盛んで生産・販売力の強化に力を注いでいる。今後、JA青年部や女性部などが独自の目線で情報発信することが、地域活性化には必要となる。JAはもっと過疎集落などに目を向け、営農、金融、共済の総合事業の強みを柔軟に活用し、地域活性化につなげてほしい。JAの可能性はまだまだ大きい。市としてもJAと協力し、地域活性化に取り組みたい。 <プロフィル> すずき・しゅうや 1971年行方市生まれ。東京農業大学卒業後、94年から2011年までJA共済連茨城に勤務。野菜などの食品加工業を営む傍ら、11年に行方市議会議員。13年から現職。 <農協法について> *3-1:http://www.zenchu-ja.or.jp/kansakikou/audit.html (要点のみ)中央会監査制度・農業協同組合監査士とは ■農業協同組合中央会監査制度とは 農業協同組合法第73条の22、同第37条の2の規定等に基づく監査で、昭和29年の農業協同組合法改正による農業協同組合中央会設立以来、実施しています。その監査は、国家資格である「農業協同組合監査士」を中心として実施しており、公認会計士等も従事しています。中央会は個々の農業協同組合から独立した別法人であり、中央会監査は外部監査に分類することができますが、財務諸表等証明監査だけでなく、指導監査(業務運営監査)も実施しています。 また、中央会監査制度は、協同組合運動の盛んな諸国にしばしば見られる制度であり、日本の中央会監査制度もドイツの制度に学んだものです。 ■農業協同組合監査士とは 農業協同組合監査士とは、農業協同組合法第73条の38により定められた資格で、中央会が組合の監査を実施するために置かなければならないとされています。農業協同組合監査士は、5科目の学科試験(監査論・会計学・簿記・農協制度(農協法・農業協同組合論)・関係法(法人税法・民法))に合格し、1年間の監査実務経験に加えて、所定の講習や論文試験、2年間の組合指導等の実務経験の条件を満たした後に選任されます。農業協同組合監査士は、農協界において農協会計・農協法の専門家として認知されており、広く社会で活躍しています。 ■再興期:昭和29年~ 戦後発足したばかりの農協は、政府のインフレ抑制政策(ドッジ・ライン)で生じたデフレ不況によりたちまち経営困難に陥り、農林漁業協同組合再建整備法に基づいて政府の援助を受けて経営再建をすすめることになります。この様な中で、強力な指導組織の確立が要請され、昭和29年農協法の改正により、農業協同組合中央会が設立され、監査事業の実施が法律に定められます。現在の農協中央会監査制度のはじまりです。農業協同組合監査士もこの時法律で定められます。この後、都道府県中央会は単位農協、全中は連合会、という分担で監査事業が進められます。監査体制は当初は弱体でしたが、次第に整備が進み、年間に全体の30%程度の組合の監査を実施するようになります。 ■変革期:平成元年~ これまでの中央会監査は、会計監査を中心としながらも、指導監査であり、監事監査機能の補完的な側面を強く持っていましたが、平成元年には農林水産省経済局長通達により、信用事業を行う組合の決算証明監査を開始します。さらに、平成8年には農協法改正により法律に基づく財務諸表等証明監査を実施することとなる等、中央会監査の公共性は高まり、またその性質を大きく変えることになります。こうしたなか、中央会監査の体制強化・質的向上を図るために、平成14年にはJA全国監査機構を設立し、都道府県中央会と全中の監査事業を統合し、総合JAについては全JAを毎年監査する体制を整えるに至ります。 *3-2:http://www.houko.com/00/01/S22/132.HTM#s3.2 (農業協同組合法 要点のみ) 第37条の2 次に掲げる組合(政令で定める規模に達しない組合を除く。以下この条及び次条において「特定組合」という。)は、第36条第2項の規定により作成したものについて、監事の監査のほか、農林水産省令で定めるところにより、全国農業協同組合中央会(以下この条及び次条において「全国中央会」という。)の監査を受けなければならない。この場合において、監査を行う全国中央会は、農林水産省令で定めるところにより、監査報告を作成しなければならない。 一 第10条第1項第3号の事業を行う農業協同組合 二 農業協同組合連合会【令】第2条の4 【則】第153条 《全改》平17法0872 特定組合の監事は、全国中央会に対して、その監査報告につき説明を求めることができる。《全改》平17法0873 全国中央会は、第1項の監査について任務を怠つたときは、特定組合に対し、これによつて生じた損害を賠償する責任を負う。《全改》平17法0874 全国中央会が第1項の監査に関する職務を行うについて悪意又は重大な過失があつたときは、全国中央会は、これによつて第三者に生じた損害を賠償する責任を負う。《全改》平17法0875 全国中央会が、監査報告に記載し、又は記録すべき重要な事項について虚偽の記載又は記録をしたときも、前項と同様とする。ただし、当該全国中央会が当該記載又は記録をすることについて注意を怠らなかつたことを証明したときは、この限りでない。《全改》平17法0876 全国中央会が特定組合又は第三者に生じた損害を賠償する責任を負う場合において、特定組合の役員も当該損害を賠償する責任を負うときは、これらの者は、連帯債務者とする。《全改》平17法0877 第1項の監査を行う全国中央会については、第35条の5第2項並びに会社法第381条第3項及び第4項、第397条第1項及び第2項、第398条第1項及び第2項並びに第7編第2章第2節(第847条第2項、第849条第2項第2号及び第5項、第850条第4項並びに第851条を除く。)の規定を、特定組合については、同法第439条の規定を準用する。この場合において、同法第381条第3項及び第4項中「子会社」とあるのは「子会社等(農業協同組合法第93条第2項に規定する子会社等をいう。)」と、同法第397条第1項中「取締役」とあるのは「理事又は経営管理委員」と、同法第398条第1項中「第396条第1項に規定する書類」とあるのは「農業協同組合法第36条第2項の規定により作成したもの」と、同法第439条中「第436条第3項の承認を受けた計算書類」とあるのは「農業協同組合法第36条第6項の承認を受けた貸借対照表、損益計算書その他農業協同組合又は農業協同組合連合会の財産及び損益の状況を示すために必要かつ適当なものとして農林水産省令で定めるもの」と、「法務省令」とあるのは「農林水産省令」と、「前条第2項」とあるのは「同法第44条第1項」と、同法第847条第1項及び第4項中「法務省令」とあるのは「農林水産省令」と読み替えるものとするほか、必要な技術的読替えは、政令で定める。 第73条の38 第73条の22第1項第2号の事業を行う中央会には、組合の監査に当たらせるため、農業協同組合監査士を置かなければならない。《改正》平13法0942 農業協同組合監査士は、農林水産省令で定める資格を有する者のうちから選任しなければならない。【則】第222条 《改正》平9法1023 農業協同組合監査士の選任及び解任は、会長が副会長及び過半数の理事の同意を得てこれを決する。4 第1項の中央会は、その行う組合の監査に関し公認会計士又は監査法人が公認会計士法(昭和23年法律第103号)第2条第1項又は第2項の業務を行う旨の契約を、公認会計士又は監査法人と締結しなければならない。 第73条の22 中央会は、その目的を達成するため、次に掲げる事業を行う。 一 組合の組織、事業及び経営の指導 二 組合の監査 三 組合に関する教育及び情報の提供 四 組合の連絡及び組合に関する紛争の調停 五 組合に関する調査及び研究 六 前各号の事業のほか、中央会の目的を達成するために必要な事業《改正》平13法0942 中央会は、組合に関する事項について、行政庁に建議することができる。3 中央会は、組合の定款について、模範定款例を定めることができる。 PS(2015.2.4追加):JA全中による単位JAの監査制度については、*4のように、①監査の「選択制」 ②全中の監査部門であるJA全国監査機構の分離・独立 が議論されているそうだ。①のケースは、地域農協がある程度以上の規模でなければ高くつくが、地域によって異なる地形や気候を反映した生産物に応じた多様なアドバイスを公認会計士から受けることができ、その後、農協間で情報交換できるメリットがある。②のケースは、JA全国監査機構が監査法人として独立し、これまでと同じような監査を行うことになるだろう。しかし、農協の力を弱めたり、解体したりするためというような不純な動機で行う変更は、改革ではなく改悪であり、決してやってはならないことである。 *4:http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=31912 (日本農業新聞 2015/2/3)農協改革 監査分離の影響検討 6日まで協議詰め 政府、自民 政府、自民党は2日、大詰めを迎えている農協法改正に向けた議論を続けた。同党農林幹部らで、JA全中による単位JAの監査制度について集中的に協議。監査の「選択制」や、全中の監査部門であるJA全国監査機構を分離・独立させた場合の影響も含め、さまざまな可能性を慎重に探ったもようだ。これまでの同党農協改革等法案検討プロジェクトチーム(PT、吉川貴盛座長)の議論では(1)監査を含むJA中央会の事業(2)中央会制度の在り方(3)准組合員の事業利用規制の是非――をめぐって調整が難航。同日は1日に引き続き、吉川座長や林芳正農林水産戦略調査会長ら一部の農林幹部による「インナー会議」で、農水省幹部を交えて課題を検討した。関係者によると、同日は監査制度について集中的に議論した。「監査を含め、中央会が行う事業を固めないと、中央会制度の在り方の議論には入れない」(同党農林幹部)ためだ。党内議論や西川公也農相の考えなどを受け、全中監査と公認会計士監査の「選択制」や、JA全国監査機構を監査法人として独立させた場合の影響なども検討したという。インナー会議は3日以降も連日開き、詰めの議論を行う。政府、自民党は、安倍晋三首相が12日に行う予定の施政方針演説に農協改革の方向性を反映するため、同演説を閣議で決める6日までの決着を目指している。
| 農林漁業::2014.8~2015.10 | 05:22 PM | comments (x) | trackback (x) |
|
PAGE TOP ↑