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2012.11.17 日銀の金融緩和・インフレ政策と1997年日銀法改正の意味 (2012年11月20日追加あり)
 2012.2.24にも書いたように、「デフレ脱却のためにインフレ目標を作り金融緩和をする」という政策は、いくつかの政党がマニフェストに入れようとしているが、そもそも、日銀法二条(*1)で、「日本銀行は、通貨及び金融の調節を行うに当たっては、物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資することをもって、その理念とする。」と定められている。その理由は、通貨の安定を通して国民の財産を保護することも日銀の役割だからだ。

 そして、*2の1997年日銀法改正は、物価の安定と日銀の独立性向上のために、(私発で)行われたものだが、この改正が必要だった理由は、旧日銀法は、1942年に制定された国家総動員法に基づく戦時色の強いもので、日銀が大量の通貨を発行することにより物価を上げ、債務者の債務(例:国の国債発行残高、企業の社債や借入金残高など)と債権者の債権(例:国民が所有している国債残高、銀行預金残高など)の価値を目減りさせることができるものだったからだ。

 つまり、デフレを脱却させてインフレにすると、①給料や年金は物価上昇より遅れてしか上がらないため、人件費を安く抑え、年金支給の負担を軽くすることができる ②債務者の債務と債権者の債権を目減りさせることによって、国や企業の借金返済を楽にすることができる という国民の収入や資産を犠牲にして政府や企業が儲かるという効果があるのだ。また、わが国のバブル期に、日銀が過度の金融緩和を行った結果、正当な事業への行き場を失った金が、土地や海外資産への投資に集中してバブルを引き起こし、それがはじけた後に、わが国が20年もバブルの後処理のために苦しんだことは記憶に新しい。

 確かに、経済学にはマネタリズムがあり、「現在の日本は需要不足だから、日本銀行が金融緩和を行えば、日銀→市中銀行→企業のルートでマネーが行き渡りデフレを脱却できる。」と説く人は多い。しかし、経済学の理論には限界があり、それは、技術進歩や日本及び世界情勢の変化をすべて与件として無視し、与件がかわらなければ、どうして景気を回復させればよいかという命題を解いていることだ。また、企業がわが国で投資を増やすには、作れば売れる最終需要がなければならないが、上の理論の企業の後に続くべき「企業の投資需要の増加⇔最終需要の増加」はないのだ。

 現在の世界情勢は、新興国が工業生産に参入したことで、安くて質もそこそこによいものが手に入るようになっているため、収入の目減りした人は、購入する数量を減らすか、より安い新興国産のものを買う選択をするほかない。そのため、わが国の最終需要は減少調整され、国内での企業の投資が進まないため、金融緩和によって国内総生産が増加することはないだろう。さらに、わが国は、環境をはじめとする技術進歩を経済に取り入れる決断が遅かったり、技術進歩を取り入れた魅力ある製品は、価格が非常に高く設定されたりするため、国内製品への買換需要が発生しにくいという現状もある。

 これらの状況があるにもかかわらず、何故、このような政策になるのかについては、大学教育や人材配置の影響が大きいと思うが、*3、*4も読まれた上、皆さまの判断にお任せしたい。

*1:http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H09/H09HO089.html  日本銀行法
第一章 総則
(目的)
第一条  日本銀行は、我が国の中央銀行として、銀行券を発行するとともに、通貨及び金融の調節を行うことを目的とする。
2  日本銀行は、前項に規定するもののほか、銀行その他の金融機関の間で行われる資金決済の円滑の確保を図り、もって信用秩序の維持に資することを目的とする。
(通貨及び金融の調節の理念)
第二条  日本銀行は、通貨及び金融の調節を行うに当たっては、物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資することをもって、その理念とする。
(日本銀行の自主性の尊重及び透明性の確保)
第三条  日本銀行の通貨及び金融の調節における自主性は、尊重されなければならない。
2  日本銀行は、通貨及び金融の調節に関する意思決定の内容及び過程を国民に明らかにするよう努めなければならない。
(政府との関係)
第四条  日本銀行は、その行う通貨及び金融の調節が経済政策の一環をなすものであることを踏まえ、それが政府の経済政策の基本方針と整合的なものとなるよう、常に政府と連絡を密にし、十分な意思疎通を図らなければならない。
(業務の公共性及びその運営の自主性)
第五条  日本銀行は、その業務及び財産の公共性にかんがみ、適正かつ効率的に業務を運営するよう努めなければならない。
2  この法律の運用に当たっては、日本銀行の業務運営における自主性は、十分配慮されなければならない。

*2:http://www.publicchoice.jp/takahasi.htm 
「改正日銀法と中央銀行の独立性」 高橋 智彦(ニッセイ基礎研究所)
(ポイント)改正日本銀行法(以下―日銀)は1997年6月11日に参議院本会議で成立し、1998年4月1日より施行されている。旧日銀法は1942年に制定された戦時色の強いものであったが、独立性、透明性を軸に半世紀ぶりに全面改正された。改正の重要な視点である独立性は、極めて公共性の高い問題である。
(改正のポイント)
日本銀行の目的、独立性、透明性・説明責任、プルーデンス政策、金融調節等
 ①政策目的:日本銀行の目的を物価の安定を理念とする通貨、金融調節・信用秩序維持を明記
 ②独立性:主務大臣の一般的業務への命令権を廃止、政策上の意見相違を理由とする役員の
   解任の禁止、政策委員会を改革し、業界代表方式を廃止、総裁1名、副総裁2名、審議委員
   6名の計9名。政府委員は2名とし、政策委員会での議決権はもたないが、議案提出権、議決
   延期請求権を持つ。予算については大蔵大臣の認可を要する点で旧法と同じ。
 ③透明性・説明責任
 ④プルーデンス政策
 ⑤金融調節等

*3:http://www.sankeibiz.jp/macro/news/120521/mca1205211009002-n1.htm (サンケイビズ 2012.5.21)【日曜経済講座】浮上する「日銀法改正」 インフレ目標で脱デフレ義務づけ
 日銀にとってみればまさに薮(やぶ)から棒、とでも言うべきか。消費増税法案をめぐる与野党のせめぎ合いの中から、日銀法の改正案が飛び出す雲行きだ。現行日銀法は1998年4月に施行された。日銀が80年代後半、ワシントンの意向を受けた大蔵省(現財務省)の圧力に屈して超金融緩和政策を長引かせたために、株や不動産のバブルを膨張させたという反省から、同法は日銀に対し、政治や政府からの高度の独立性を保障した。ところが、日本はこの98年から物価が継続的になだらかに下がる慢性デフレ病にかかった。2008年9月の「リーマン・ショック」からは悪化し、治る見通しが立たない。「物価安定」を日銀の判断に委ねていては、デフレからいつまでも脱出できないという批判が強く出るようになった。
■疑われる「本気度」
 改正案の要点は、日銀政策の「目標」と「手段」を明確に分ける。金融政策をどう運営するかは日銀の判断だが、目標については、政府と共有するか、政府や国会の意向に沿うようにする。そして日銀に明確な「インフレ目標」値を持たせ、達成を義務付ける。日銀は伝統的に「物価上昇率ゼロ%台」をめざし、インフレを極度にまで警戒してきた。2010年秋以降は「同1%程度」を内部での「理解」と説明するようになったが、目標値とするのを拒否してきた。米連邦準備制度理事会(FRB)がこの1月下旬に「インフレゴール(目標)」を打ち出すと、急遽(きゅうきょ)2月14日に「1%の消費者物価上昇率のメド」を決定し、市場を驚かせ、円高に歯止めをかけた。が、その後市場から「本気度」を疑われる始末で、4月後半にはその効力が失(う)せた。

*4:http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20121030-00000166-reut-bus_all
(ロイター 10月30日) 焦点:日銀追加緩和の効果に厳しい評価、共同文書が思惑呼ぶ
 日銀が打ち出した追加緩和や貸出支援策の効果に対し、エコノミストの評価は厳しい。市場の期待に精一杯応えようとする努力はうかがえるものの、物価目標の達成や貸出増加を通じた経済活性化は実効性が期待できそうにないとの声が広がっている。それよりも市場関係者の関心を引いたのは、「デフレ脱却への取り組み」と題した政府と日銀の共同文書。政府と日銀の事実上のアコード(政策協定)だとして、政府が日銀に一段の追加緩和を迫るとの見方もあるが、逆にデフレ構造を変える自覚を政府に迫るもの、日銀法改正などの圧力をかわすために日銀が政府に手厚い配慮を示したもの、といった解釈も浮上している。
<自他ともに認める「緩和効果期待できず」>
 今回の追加緩和策自体は市場の予想の範囲内として、サプライズととらえる声は聞かれなかった。それでも新たに設けた貸出支援策や、デフレ脱却をアピールするための日銀・政府の共同声明も発表し、それなりに努力の余地もうかがえた。ただし、それらが実際にデフレや実体経済の回復につながるとの評価はほとんどない。資産買入の増額は、もはや追加緩和をアピールするための増額としての意味しかなくなりつつある。実体経済や物価に効果があるわけではないのはもはや周知の事実で、みずほ証券チーフマーケットエコノミスト、上野泰也氏は「日銀は、景気は弱含みとなっていると現状判断を下方修正した。だが、今回の追加緩和が景気や物価に対して有する刺激効果は、直接的にはほとんどない」と言い切る。日銀自身、超低金利下でこれ以上の金利低下が経済を刺激する効果がほとんどないことは認識している。効果があるとすれば、景気状況に合わせて中央銀行がきちんと動くという信頼感、そして企業や市場の間に安心感を醸成するという程度だが、それも重要という立場だ。
<14年度の物価見通しは相当強気>
 実効性なき追加緩和を織り込んだところで、1%という物価目標は政策効果では達成できそうにない。今日発表された「展望リポート」では14年度の物価見通しも0.8%の上昇にとどまり、1%には届かない。それでも「着実に1%に近づいていく」と表現した背景には、国際商品市況の上昇や海外経済の持ち直しといった外部要因を前提にしている面が大きい。エコノミストからはそうした外部要因が実現したとしても、見通しは上方バイアスがかかっているとの見方が目立つ。伊藤忠経済研究所・主任研究員の丸山義正氏は「日銀の14年度のインフレ率見通しは相当に強気なもの。消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動も踏まえれば、14年度のインフレ率は、消費税率引き上げの影響を含まないベースで2013年度よりむしろ低下し、ゼロ近くにとどまる可能性が高い」と指摘する。白川方明総裁は会見で、木内昇英委員と佐藤健裕委員が、14年度に「1%に近づいていく」との表現に反対したことを明らにした。展望リポートで示された見通しが、必ずしも政策委員の間で共有されたものではないことがうかがえる。
<政府と日銀の共同文書、多様な解釈>
 日銀は今回、新たな貸出支援策も打ち出した。貸し出しを増加させた金融機関が、同額の資金供給を受けられる制度で、すでに海外の中央銀行が導入している。ただ、金融機関の貸し出しが伸びないのは資金不足のせいではなく、企業の資金需要が低迷していることが主因であることは、日銀も承知している。こうした新制度をあえて導入した点に、日銀の苦しい立場が透けて見えるというのが、エコノミストのもっぱらの評価だ。日銀が並べた多種多様なメニューの中で、エコノミストや市場関係者の注目を最も集めたのは、政府と日銀が共同で発表した「デフレ脱却に向けた取り組み」の文書だった。決定会合に出席した前原誠司経済財政担当相は、この共同文書を「政府・日銀の一体的な取り組みがこれにより担保される」として評価。ゴールドマン・サックス証券は「政府と日銀の政策的アコードへの第一歩」と、消費税引き上げに向けて日銀への圧力がますます強まる材料と見ている。一方で、逆に政府に対する圧力が強まるとの見方もある。RBS証券は「日銀が金融環境を緩和的に維持した上で、政府がデフレを生みやすい経済構造を変革するという、役割分担が明確になった」と指摘。日銀側は十分に役割を果たせていると受け取れる内容だとし、「従来の枠組みを超えた劇薬的な金融政策がとられる可能性は大きく低下した」としている。第一生命経済研究所・主席エコノミストの熊野英生氏は「日銀側にも思惑がある。外債購入やインフレターゲット、総裁の責任論といった厳し内容を盛り込んで日銀法を改正されたくはない。だから、野田首相が率る官邸に対して120%の協力をした」と解釈している。


PS(11月20日追加):但し、東日本大震災からの復興、次に起こりそうな災害への準備、エネルギー政策変更のためのインフラ整備、基地の再編(*5参照)やその後のまちづくり、古くなった既存インフラの更新など、今、国がやらなければならない本当に必要なことも多いので、そのための財政支出をしてその需要を充てるのであれば、需要増加があります。そのため、建設国債を発行してこれらに資金を充て、その分を金融緩和するのはよいと思います。そして、それにより雇用は創出されるでしょう。しかし、何百兆円もの金額が先に決まっている、景気と雇用対策だけが目的の、何でもありのばら撒きに税金を使ってインフレにし、消費税を引き上げるのは許されません。

*5:http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2012112001002129.html
(東京新聞 2012年11月20日)沖縄・普天間で1万人デモへ 「基地と共存できぬ」
 米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)への新型輸送機MV22オスプレイ配備や、相次ぐ米軍人の事件に抗議し、沖縄県の市民団体などが20日、12月23日に普天間周辺でデモをすることを決めた。1万人以上の参加を目指す。沖縄県では、10月のオスプレイ配備による県民の強い反発の中、集団強姦致傷容疑や中学生への傷害容疑などで米軍人が逮捕、起訴されたり、書類送検されたりする事件が続いている。デモの事務局の「沖縄平和運動センター」の山城博治事務局長は「県民を挑発するように事件が起きている。米軍基地と県民の生活が共存しえない状況だ」と開催理由を説明した。

| 経済・雇用::2012.9~2013.6 | 01:59 AM | comments (x) | trackback (x) |

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