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2012,11,22, Thursday
現在、強力にTPPを推進しているのは、*1のとおり、経済産業省とその傘下にある工業の製造業だ。日本は、第二次産業の振興には成功したため、日本国内での円高・人件費高・人材難を除けば国際競争力があるが、そのような企業は、円高・人件費高・人材難を避けて、すでに外国に子会社や合弁会社を作り、現地で生産・販売しているため、TPPに参加するか否かは、さほど重要ではないと思われる。
一方、第一次産業(農業、林業、水産業、鉱業)は、戦後の近代化、工業化の中で打ち捨てられ、経営を合理的に行う尺度たる会計基準も存在しない産業である。実際、私は、わが国には農業、鉱業の会計基準すらなく、国際会計基準にはきちんとした基準があり、その内容が合理的であるのに驚いたことがある。この事態は、その産業が、その国でどれだけ重視されてきたかの尺度でもあり、経営に差がつくのも当然であるため、TPPとは関係なく、わが国でも急いで改善しなければならないことだと思っている。 そして、これから人口過剰になる地球を考えた時、希少価値を持つ製品は、新興国でも次々と大量生産できるようになった工業製品ではなく、食料・エネルギーだ。そのうち、食料の生産をする農業がTPPでは打撃を受け、日本政府は、“競争力のある”農業製品以外は、捨ててもよいという時代錯誤の判断をしようとしている。が、農業で、世界で勝負した時、“競争力のある”製品となるのはどういうものだろうか? 例を挙げれば、ハウスで液肥を使って大量生産された形だけはよいが栄養価の低いトマトや、手をかけて育てたが日本人でも買えないような高価格に差別化されたブランド農産品ではないだろうか? しかし、農業に求められるものは、①有機肥料等による生産で、国民に、安全で美味しく栄養価の高い食料を提供すること ②自然と向かい合って生産することにより、食料生産しながら環境を守ること などの多角的機能である。そのため、これで競争力を持つように努力はしなければならないが、それが、化学肥料等で大量生産された農産物より価格競争力があるとは思えず、次第に真心をこめた品質の高い日本の農産物の方が淘汰される運命になりそうだ。そのため、TPPに参加すれば、日本国民にとっては不利である。一方、アメリカにとっては有利であるため、アメリカは進めたいのである。 また、科学技術の背景も変った。今では、化学・工学だけでなく、生物学やDNAの研究が進み、生物の形質自体を人間が操作するツールが増えたため、①品種改良の時間が短縮された ②過去には思いもよらなかった品種改良ができるようになった などの変化がある。例えば林業における木材では、花粉の出ない杉もできており、木目の美しさ、硬さ、成長の早さなどを品種改良すれば、家具や家を作るのに適した木材や、紙を作るのに適した木材など、材料自体を進歩させることもできるだろう。 農林漁業は、国内的に、これらの改善が終わって、本当の意味で国際競争に勝てるようにならなければ、TPPで国際競争すれば、深刻な事態になると思う(*2、*3参照)。そのため、大メディアでも、正確に問題点を取り上げて、指摘すべきである。 *1:http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2011&d=1103&f=politics_1103_007.shtml (Searchina 2011/11/3) TPP交渉 早期参加が国益に 枝野経産大臣 枝野幸男経済産業大臣は、2日午後4時過ぎから経済産業省内で開かれた内閣官房主催のTPP協定交渉に関する討論会に出席し「(TPP交渉に参加するかどうか)時間をとれるなら最大限時間をとって議論すべきだと思うが、あまり遅れると、日本はこのルールに入るのか、入らないのかの選択を迫られることになる」と語り、選択を迫られる段階で無く、ルールづくりの段階で交渉参加していくべきとの考えを示した。 また、「TPP参加が農業や漁業に深刻な影響を与えるのは明らか」として参加に反対している加藤好一生活クラブ連合会長が「東京新聞はAPECでも手遅れという記事を載せていたが」と枝野大臣に向けたのに対し、枝野大臣は「(手遅れというのは何を根拠にしているのか分からないが)ルールづくりにコミット(参加)するには遅いことは間違いない。早ければ早いほど(ルールづくりに)コミットできる」と早期参加が国益につながるとの考えを述べた。特に、枝野大臣は「市場原理の行き過ぎの中で、最低限のルールをつくっていこうとしている。だからこそ、日本の考えを織り込んでいく必要がある」とも語った。 枝野大臣は農業の国際競争力について「競争力という言葉は変えた方が良い。安いものを沢山つくることが競争だという(昔の)イメージがあるから」とし、「高いけれどもいいものを売る」という付加価値の高い商品づくりと第2次産業の技術と農業をやる人とをつなぐことの重要性などについても語った。 TPP討論会は下村健一内閣官房審議官が司会をつとめ、枝野大臣、加藤氏、新浪剛史ローソン代表取締役社長が日本の経済活力をいかに高めるか、農業の競争力強化、アジア・太平洋地域のルールづくりをテーマに1時間を超えて議論し、ネットでライブ中継された。加藤氏はTPP参加は日本の農業の競争力を高める良い機会になるとした。又、農業に産業界が資金やノウハウを支援、サポートしていくことの重要性も語った。 *2:http://www.niigata-nippo.co.jp/opinion/editorial/ (新潟日報社説 2012/11/17) TPP 国益にかなう議論必要だ 衆院が解散された。12月4日公示、16日投開票の衆院選で、争点となる重要課題は多い。 各党、候補者が今回初めて姿勢を問われるのが、環太平洋連携協定(TPP)交渉参加問題である。野田佳彦首相が自ら、解散直前に争点化に意欲を示した。昨年11月に交渉参加に向けて関係国との協議に入る方針を野田首相が示してから、1年が過ぎた。だが、この間、議論はほとんど進んでいない。推進派、反対派の主張は対立し、真っ二つに割れたままだ。是非を論じようにも、メリットとデメリット、具体的な影響など判断材料が国民に十分に提示されているとは言い難い。論戦を通じ、国民的論議を深める機会にしなければならない。 最大の焦点が農業分野であり、農業県の本県でも関心が高い。貿易自由化の影響が懸念され、基盤強化へ抜本対策を示すことが不可欠だ。政府は昨年、規模拡大を柱とした農業再生策をまとめた。だが、これで果たしてTPPに対応しきれるのだろうか。目玉の農地の集約化一つとっても、はかどっていない。政府は水田農業の規模を1戸当たり20~30ヘクタールに拡大する目標を掲げたが、実現性には疑問符が付く。農地を拡大すれば将来展望が開ける環境にもない。長期にわたるコメの生産調整(減反)、需要減、価格低迷、高齢化…。農政の構造的な歪みが露呈している。これまで繰り返してきたような場当たり的、小手先の策では、自由化の荒波に到底太刀打ちできまい。TPPを争点とすること自体に、何ら異議はない。ただ、野田首相の立ち位置はどこにあるのか。自民党を揺さぶる対立軸にしようというだけのことなのか。民主党のマニフェスト(政権公約)原案に「交渉参加を表明」と盛り込んだが、党内で反対論は根強く離党者も出た。交渉参加は経済界からは支持されるだろうが、農業団体などは強く反発している。 TPPを主導してきた米国のオバマ大統領が再選された。交渉参加で日米関係をより強固なものにしたいとの思惑もあろう。日本が議論を先送りしているうちに、メキシコとカナダは正式にメンバー入りを果たした。交渉入りには、参加国との事前協議で承認を得なければならない。日本は、米国との事前協議に関する調整が難航している。米国は日本の参加を認める条件として自動車、保険、牛肉の市場開放を求めている。政局に絡めた「駆け込み」で決めることはできない。賛成、反対だけで論じられるものではない。国益に沿った通商戦略を描くことだ。最善の道に導くのは、政治の役割にほかならない。 *3:http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2012111501001758.html (東京新聞 2012年11月15日) JA全中が都内で反TPP集会 1500人が参加 JA全中が開いたTPP交渉への参加表明に反対する集会=15日午後、東京都千代田区 全国農業協同組合中央会(JA全中)は15日、環太平洋連携協定(TPP)交渉への参加表明に反対する集会を都内で開き、組合員ら約1500人が参加した。JA全中は関税の撤廃は日本農業に壊滅的な打撃を与えるとして、交渉への参加反対を衆院選で候補者や政党を支援する条件としている。自民党の大島理森前副総裁はあいさつで「例外なき関税の撤廃に党として明確に反対する」とTPPへの慎重姿勢をあらためて示した。民主党から出席した一川保夫幹事長代理は、TPPの議論を契機に農業の重要な役割を国民が理解しつつあるとし、「チャンスと捉え農業強化の施策を構築していく」と語った。
| 環太平洋連携協定(TPP)::2012.11~ | 11:28 AM | comments (x) | trackback (x) |
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