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2012,12,01, Saturday
2006年の夏、佐賀県の私立高校の先生から「私立高校の学費は高いので、子どもが3人いると全員は高校に進学させられないから何とかして欲しいと父母から言われている」という陳情があった。地方の場合、県立高校に入れないから私立高校に行く人が多いので、私立高校を選択している子どもの親が、県立高校を選択している子どもの親より裕福だとは限らず、経済的にはむしろ苦しい場合が多いとのことだった。そこで、佐賀県庁の担当者に確認したところ、「県立高校にやっても、塾までやらなければならないから大変ですよ」と、こちらからも陳情された。
現在、高校の進学率は95%以上であるし、勉強しておくべき知識も増えたことから、高校までは無償化して、孤児も含め、進学したい人はできるようにすべきだと思って準備し、2006年12月に教育基本法が改正されて(*3)、民主党政権の2010年になってから公立高校授業料無償化と私立高校就学支援金支給制度が実現した(*1)。大学は、奨学金をもらって自分で行くことにしたが、どうだろうか。 これは、子育て世帯を助け、教育費が子どもの数のネックになるのを防いで少子化を止めるとともに、基礎学力がなければ普通の労働者としても質が高いとは言えないので、わが国産業の基礎となるものである。例えば、雪印乳業大樹工場製の乳製品集団食中毒事件のような場合、一般の工員でも、「こうしたら食中毒が起こるから、自分はここで周りの注意を喚起しなければならない」と考えて周りに警告を発することができるためには、初歩的な生物学と物理学の知識が必要であるのを見ればわかる(*4)。 それにもかかわらず、*2のように、わが国では、「詰め込み教育」の反対として「ゆとり教育」政策が採られ、その結果として、公立の学校では十分な知識が得られないため、親が子どもを塾に通わせたり、私立の学校に入れたりすることで、一部で何とか学力を維持しているという状況なのである。しかし、それでは教育の機会均等にはならず、親の負担も大きい上、貧乏が世代間で引き継がれることになってしまう。 そのため、「学力向上」「総合力の育成」「落ちこぼれ防止」をすべて実現するためには、*3のイギリス(イングランド)の事例のように、日本でも小学校の入学年齢を5歳とし、時間的ゆとりを持って必要な学習は繰り返し行うことにより、落ちこぼれを出さずに十分な教育を行うことを、私は提案する。また、質の高い保育・学童保育を整備し、その時間にも、予習・復習をさせたり、農林漁業、食育や料理、自然や社会に接するなど、多面的な経験をする機会を与えるのがよいと思う。そのための人材は、教師の資格を持ちながら就職できない若者や、定年退職したが元気で経験豊富な元教師など、いくらでもいる。 そして、義務教育を5歳~18歳までとして無償化し、保育や学童保育を1割負担くらいで行えば、現物給付で子育て世代を支援することになり、多額の現金給付よりも確実に子どもの教育のために使われると思う。また、4歳以下の子どもも、環境の良い保育園で、教育しながら預かるべきである。女性が普通に働いている現在、保育や学童保育は、子どもの居場所として必要なだけでなく、子どもにとってはふるさとの情景や思い出として心に刻まれ、その後の精神構造や人生に大きな影響を与えるものであるため、質・量ともに充実した保育や学童保育の整備を速やかに行うことが必要だと、私は思うのである。 さらに、義務教育では、無償か1割負担くらいで、栄養・味覚・視覚において充実した給食を与えることも、両親の育児にとっては大きな助けとなり、子どもに栄養学や食文化を教えるよい機会ともなる。また、1日に一回、しっかりとした食事を与えておけば、家庭で満足な食事を与えられない子どもでも、何とか育つことができる。 最後に、子育てに関する財源も、何に使われるかわからない消費税より、「子育て保険(仮名)」を創設して歳入と歳出をガラス張りにし、公認会計士監査をして、徴収漏れや目的外支出を無くし、不足分は税金から補填することにした方が、確実に目的の社会保障に使われて、安心できそうだ。 *1: http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%AB%98%E6%A0%A1%E6%8E%88%E6%A5%AD%E6%96%99%E7%84%A1%E5%84%9F%E5%8C%96%E3%83%BB%E5%B0%B1%E5%AD%A6%E6%94%AF%E6%8F%B4%E9%87%91%E6%94%AF%E7%B5%A6%E5%88%B6%E5%BA%A6 高校授業料無償化・就学支援金支給制度 高校授業料無償化・就学支援金支給制度は公立高等学校などの授業料を無償化し、また私立高等学校などに就学支援金を支給して授業料を低減することを目的とした制度であり、日本で2010年度から実施されている。根拠法令は公立高等学校に係る授業料の不徴収及び高等学校等就学支援金の支給に関する法律であり、この法律の略称は高校無償化法である。 *2:http://100.yahoo.co.jp/detail/%E3%82%86%E3%81%A8%E3%82%8A%E6%95%99%E8%82%B2/ ゆとり教育 [ 日本大百科全書(小学館) ] (ポイント)1976年(昭和51)、教育課程審議会(1950設置、2001中央教育審議会に統合)は、授業についていけない子どもが多いのは、学習内容が過密なためであり、これが不登校の増加や授業が荒れる原因になっているという考えのもと、「ゆとり教育」の必要性を説くようになり、ゆったりと授業を受けられるように、教材を削減する答申を出した。1989年(平成1)、教育課程審議会の答申を受けた文部省(現文部科学省)は、ゆとり教育の導入を狙いとした教育課程の改訂を発表し、この新しい教育課程は、教材の「3割削減」と受け止められて、社会的な反響を巻き起こした。さらに、2002年度(平成14)から、学校の完全週5日制が実施されることになり、年間授業日数は202日程度になった。 その結果、小学6年生の総授業時間数は、1968年度(昭和43)の年間1085時間から、89年度の1015時間を経て、98年度には945時間と、30年の間に140時間減少している。また「総合的な学習の時間」も導入されており、その分だけ「教科」の時間が減った。国語を例にすると、1968年度には245時間あった授業が、89年度の210時間、98年度の175時間へと、70時間も授業時間が減少している。 *3:http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A4%E3%82%AE%E3%83%AA%E3%82%B9%E3%81%AE%E6%95%99%E8%82%B2 イングランド(イギリス)の教育制度 イングランド(イギリス)では、無償の就学前教育が行われている。2~4歳向けの保育園(nursery school)、4~7歳向けの幼稚園(infant school)に併設された保育学級(nursery class)があり、義務教育は、小学校(primary school)が5歳から始まる。 *3:http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H18/H18HO120.html 教育基本法 (平成十八年十二月二十二日法律第百二十号) 抜粋 教育基本法(昭和二十二年法律第二十五号)の全部を改正する。 第一章 教育の目的及び理念 (教育の目的) 第一条 教育は、人格の完成を目指し、平和で民主的な国家及び社会の形成者として必要な資質を備えた心身ともに健康な国民の育成を期して行われなければならない。 (教育の目標) 第二条 教育は、その目的を実現するため、学問の自由を尊重しつつ、次に掲げる目標を達成するよう行われるものとする。 一 幅広い知識と教養を身に付け、真理を求める態度を養い、豊かな情操と道徳心を培うとともに、健やかな身体を養うこと。 二 個人の価値を尊重して、その能力を伸ばし、創造性を培い、自主及び自律の精神を養うとともに、職業及び生活との関連を重視し、勤労を重んずる態度を養うこと。 三 正義と責任、男女の平等、自他の敬愛と協力を重んずるとともに、公共の精神に基づき、主体的に社会の形成に参画し、その発展に寄与する態度を養うこと。 四 生命を尊び、自然を大切にし、環境の保全に寄与する態度を養うこと。 五 伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛するとともに、他国を尊重し、国際社会の平和と発展に寄与する態度を養うこと。 (生涯学習の理念) 第三条 国民一人一人が、自己の人格を磨き、豊かな人生を送ることができるよう、その生涯にわたって、あらゆる機会に、あらゆる場所において学習することができ、その成果を適切に生かすことのできる社会の実現が図られなければならない。 (教育の機会均等) 第四条 すべて国民は、ひとしく、その能力に応じた教育を受ける機会を与えられなければならず、人種、信条、性別、社会的身分、経済的地位又は門地によって、教育上差別されない。 2 国及び地方公共団体は、障害のある者が、その障害の状態に応じ、十分な教育を受けられるよう、教育上必要な支援を講じなければならない。 3 国及び地方公共団体は、能力があるにもかかわらず、経済的理由によって修学が困難な者に対して、奨学の措置を講じなければならない。 第二章 教育の実施に関する基本 (義務教育) 第五条 国民は、その保護する子に、別に法律で定めるところにより、普通教育を受けさせる義務を負う。 2 義務教育として行われる普通教育は、各個人の有する能力を伸ばしつつ社会において自立的に生きる基礎を培い、また、国家及び社会の形成者として必要とされる基本的な資質を養うことを目的として行われるものとする。 3 国及び地方公共団体は、義務教育の機会を保障し、その水準を確保するため、適切な役割分担及び相互の協力の下、その実施に責任を負う。 4 国又は地方公共団体の設置する学校における義務教育については、授業料を徴収しない。 (学校教育) 第六条 法律に定める学校は、公の性質を有するものであって、国、地方公共団体及び法律に定める法人のみが、これを設置することができる。 2 前項の学校においては、教育の目標が達成されるよう、教育を受ける者の心身の発達に応じて、体系的な教育が組織的に行われなければならない。この場合において、教育を受ける者が、学校生活を営む上で必要な規律を重んずるとともに、自ら進んで学習に取り組む意欲を高めることを重視して行われなければならない。 (私立学校) 第八条 私立学校の有する公の性質及び学校教育において果たす重要な役割にかんがみ、国及び地方公共団体は、その自主性を尊重しつつ、助成その他の適当な方法によって私立学校教育の振興に努めなければならない。 (幼児期の教育) 第十一条 幼児期の教育は、生涯にわたる人格形成の基礎を培う重要なものであることにかんがみ、国及び地方公共団体は、幼児の健やかな成長に資する良好な環境の整備その他適当な方法によって、その振興に努めなければならない。 (施行期日) この法律は、公布の日から施行する。 *4:http://www.sydrose.com/case100/132/ 雪印乳業大樹工場製の乳製品集団食中毒事件 1.直接原因 大樹工場の停電:停電により製造ラインが止まったが、その対応ができず、回収乳の加温状態が長引いて黄色ブドウ球菌が増殖、 エンテロトキシンA型毒素が発生した。この毒素に汚染された乳材料から乳製品が製造され、食中毒が起こった。 2.主原因(組織的原因) ①停電により製造ラインが止まったが、その対応ができず菌増殖、毒素が発生した乳材料が、本来 廃棄処分すべきが、製造に回された。 ◆現場の衛生管理の知識が徹底していなかった。 ◆現場の危機管理意識の欠如、停電時のマニュアルなし ②停電などで製造工程が止まった際の菌の増殖防止や、工場の再稼動手順や製品検査、廃棄基準 等を決めたマニュアルは作成されていなかった。 ③製造された脱脂粉乳の細菌数が同社の安全基準を上回り、本来廃棄処分すべきにもかかわらず 「加熱殺菌すれば安全」 と判断し、細菌数が規格を上回った製品を原料に再利用し、新たに脱脂 粉乳を製造、大阪工場に出荷した。 ◆工場長をはじめ従業員はエンテロトキシンに関して熟知していなかったばかりか、「細菌から発生 する毒素は加熱しても毒性を失わない」という基礎知識が欠落しており、職場は食品衛生の基本 的な認識が薄らいでいた。 ◆社内基準が遵守されていなかった。基準マニュアルは、作っただけで形骸化していた。 3. 食中毒の被害拡大原因(組織的原因) 食中毒が発生した後に製品の回収、社告の掲載、記者発表などが遅れ、食中毒の被害が拡大した。 ◆最初のミスは、被害の兆候を「通常の苦情、問い合わせ」と判断したこと、集団食中毒に発展する という意識が全くなかった。 ◆ブランドが傷付くことを恐れ、漫然と時を過ごした危機管理の甘さ、回収、社告の掲載、記者発表 等対処の遅れ。経営トップが決定に関与しない責任体制、リーダーシップの欠如。 ◆責任逃れからくる事実の隠ぺい、情報伝達の不手際
| 教育・研究開発::2012.4~2013.10 | 10:12 PM | comments (x) | trackback (x) |
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