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2012.12.18 年金制度改革について
     
        1930年、1950年、1970年、2000年の人口ピラミッド

 *1で述べられているように、わが国の公的年金制度は、1961年に完全積立方式でスタートし、初めは年金掛金を自分の老後のために積み立てていたのだが、年金資産の不足から給付改定の都度、なし崩し的に賦課方式の考えをとり入れた修正積立方式となり、いつのまにか現役世代が高齢者を支えるという賦課方式に変更されたものである。そして、1986年度から、それまでは積立が必要だったサラリーマンの専業主婦が、3号被保険者として年金掛金を免除された。

 そのため、現在、日本の公的年金は修正積立方式で、賦課方式と積立方式の中間に位置する方式と言える。この場合、人口構造の変化という環境下で、どのような影響が出るかをまとめると、以下のとおりだ。(http://www2.ttcn.ne.jp/honkawa/1550.html参照)
① 1950年の人口ピラミッドを見ればわかるとおり、わが国は、第二次世界大戦が終わってすぐベビー
  ブームとなり、その頃は、子どもの数は4~5人が普通であり、衛生環境、栄養の改善、医学の進歩
  ・普及等があって、前よりも乳児死亡率が低下したため、一学年の子ども数が増えて団塊の世代と
  言われる層ができた。
② その後、国が子どもの数を2人とする家族計画を普及させたため、次第に一学年の人口が減ってい
  る状況が1970年の人口ピラミッドで読める。また、1970年と2000年の人口ピラミッドに現われて
  いる下の出っ張りは、団塊の世代の子どもたちである。そして、戦後、女性の高学歴化や社会進出
  が進んだ一方で、子育てのインフラは不十分であったため、合計特殊出生率は、1975年の2.0から
  2011年の1.39まで漸減している。
③ つまり1985年の人口ピラミッドを見れば、少子高齢化する現在の状況は十分に見通せた筈なのだ
  が、厚生労働省は、ここで年金を修正賦課方式に変更した上、サラリーマンの専業主婦を3号被保
  険者として年金掛金を免除した。この1985年は、最初の男女雇用機会均等法が成立した年である。
④ そして、現在の人口ピラミッドでは、団塊の世代が年金掛金を支払う側から、受け取る側になりつつ
  あり、65歳以上の人口が増加して、15~64歳までの生産年齢人口が相対的に減少している。そし
  て、1999年では、一人の高齢者を65歳未満の国民5人で支えていたが、2015年には一人の高齢
  者を3人で支えなければならず、その結果、年金掛金は大幅アップ(厚生年金の保険料率は、現在
  従業員の月給の17.35%だが、2025年には34.3%)しなければ現在の給付金を維持できないと
  言われている。しかし、これは、1985年の段階で明らかに予測できた合計特殊出生率の低下や
  将来の人口構成の原因を考えずに政治を行ってきた「失政のつけ」なのである。
⑤つまり、保育所、学童保育、家事サービスなど、女性が社会で仕事をするにあたって必要なインフラ
  の整備がなされなかったため、女性にとっての出産・子育ては仕事を中断して生涯所得を大きく減
  らす原因となり、戦後のベビーブームという特別な事情の収束以上に、少子化が進んだのである。
  この結果、保険料の支払いと年金給付の受取総額に世代間較差が広がると言われているが、悪い
  のは原因分析をして正しい政策を作るということをしなかった失政であり、年金給付を受ける世代
  ではない。

 そのため、一般に言われているように、年金給付を減らして掛金を増やすという“痛みを伴う改革”をすることが解決法かというと、決してそうではない。なぜなら、こうなった原因をきちんと分析して、その原因を無くし、無くせないものについては解決案を出すという当然のことをせず、“痛みだけがあって改善のない算術的な変更”をしても、今後とも規模を拡大して同じ失政が続くだけだからである。つまり、負担増と給付減しか思いつかない人には、改善はおろか、改革など、とてもできないということだ。

(1)年金積立金にマイナスの影響を及ぼしたものは何か
①年金積立金の運用差損
  運用利率の前提は5.5%であったが、不景気と景気回復目的の金融政策により市場金利が低かっ
 たため、平成22年度の実際の運用実績は、マイナス0.26%であり、年金積立金の自主運用開始(平
 成13年度)からの平均では、1.57%となっている。つまり、運用利率の実績は、前提を大きく下回らざ
 るを得ない状況だったのである。
②運用の失敗
  運用益を上げることを目的として年金資産を運用したのではなく、このブログの2012年4月4日及び
 5月5日に記載したとおり、他の目的で運用したため運用損が大きかったのだが、少なくとも元本を
 維持しなければならない年金資産についてこのような運用をするのは、御法度である。
③運用・管理における無責任な意識
  「年金掛金の徴収漏れ」、*2のような「消えた年金」、「年金積立金の年金原資以外への流用」等
 が多発したように、当然の徴収行動や資産の運用・管理をしていない無責任さがあった。
④わが国におけるあるべき年金積立金の計算方法の未熟と年金給付以外への支出
  わが国では、*3の退職給付会計と同じ方法で年金債務を正確に認識し、必要な積立金を計算し
 て足りない分を認識するということがなかったため、入ってきたキャッシュを湯水のように使い、年金
 資金とするべき収入で高額な固定資産を購入し、利益を上げられずに二束三文で売却するなど、年
 金給付以外へのロスが大きかった。それによって潤ったのは誰かについても、忘れてはならない。

(2)わが国の年金制度が不備だった世代への配慮
 1961年に完全積立方式でスタートし、人々が自分の老後のために掛金を積み立てていた時代に積立てなかった人や積立金額の低い人への配慮は必要である。なぜなら、その人たちにとって、すさまじい勢いで進んだ核家族化や物価上昇は想定外だっただろうし、自分の親は年金に頼らずに世話をしただろうし、わが国の年金制度も未成熟だったからである。この人たちへは、むしろ0階を作って最低保証年金を支給すべきだと、私は思っている。

(3)積立方式への移行
 私は、すべての世代が公平・公正な負担と給付になるためには、人口構成に関わらず、自分たちの世代が掛けた金額に見合った給付を受けられる積立方式に戻るのがよいと考える。そして、日本の公的年金制度は、最初は完全な積立方式であったものが、年金資産の不足から給付改定の都度、賦課方式の考えを入れ、現在、修正積立方式と呼ばれているものになったのであるから、賦課方式へぶれた部分をもとの積立方式に戻すだけのことである。そのためには、(1)の①~④の原因を取り除き、*3の退職給付会計(これに物価上昇率も考慮する必要があろう)と同様の方法で年金債務残高を正確に認識し、必要な積立金を計算して不足分は国債を発行し、50年くらいで返済すべきである。なぜなら、人口構成の変化や年金資金の不足は国民の責任ではなく、厚生労働省とそれを指示・監督すべきだった政治の先見性のなさに起因するものだからである。そのため、今後は、年金にも公認会計士の外部監査を導入し、掛金の徴収、運用、年金の支払い、積立金の金額についてチェックさせるべきである。

(4)人口構造の変化や長寿命化への対応
 人口構造の変化や長寿命化によって生じた人口ピラミッドのいびつさを無くすことはできないが、①失業を無くす ②女性が働きやすい環境を作り、女性を正規の労働力に組み込む ③外国人労働者を雇用する ④ロボットなどの先端技術で生産性を上げる ⑤正規労働者が当たり前の、皆が年金掛け金を支払う社会を作る ⑥国民年金にも所得比例部分を作る ⑦健康寿命が延びた分は、生産年齢人口に加える など、保険料を支払う裾野を広げる方法は多い。

 それにもかかわらず、老人と若者を対立軸として、「消費税を上げるのが責任ある政治だ。」「決断できる政治を」などと言っているのは、何でもいいから消費税を上げることが目的の議論にすぎない。

*1:http://diamond.jp/articles/-/9355 (積立方式で始まったはずの年金制度は、なぜ途中から賦課方式と説明されるようになったのか?)
(ポイント)「年金の問題は、人口構造の変化に起因する部分がきわめて大きい」と言われる。日本の人口構造が大きな問題を抱えているのは、間違いない事実である。高齢者が増加する半面で若年者が減少するから、年金収支の悪化は、避けることができない。マクロ経済スライドも、この問題への対処として考えられている。ところで、年金をめぐる議論は、「人口高齢化が進めば年金財政は悪化する」ということを自明の理として受け入れている。そして、「人口高齢化は現実に進行しているのだから、これに対して保険料引き上げや給付の削減などの措置がなされるのはやむを得ない」と考えられている。
 しかし、積立方式ならば高齢化は年金の問題を引き起こさない。つまり、「人口高齢化が進めば年金財政は悪化する」というのは、自明の理ではない。なぜなら、年金の財政方式としては、「積立方式」と「賦課方式」がある。「積立方式」は、若い現役時代に納付した保険料を積み立て、運用益も加えた額を老後に年金として給付する仕組みである。私的年金の場合には各個人ごとに収支が均衡化するように保険料と年金額が設定されるが、公的年金の場合には、ある年齢階層(あるいは数年間の年齢階層)で収支が均衡するように制度が設計される。これに対し、「賦課方式」は、現在働いている現役の人から保険料を徴収し、現在の高齢者に年金を給付する仕組みである。各年度(あるいは数年間)で収支が均衡するように制度が設計され、人口高齢化を引き起こす原因としては、平均余命の伸長と少子化(出生率の低下)がある。

*2:http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2012120902000101.html
(東京新聞 2012年12月9日) 未解明なお2222万件 「消えた年金」衆院選で埋没
 旧社会保険庁のずさんな管理で「消えた」年金記録五千九十五万件のうち、四割超の二千二百二十二万件がなお持ち主不明となっている。政府はこれまでに三千五百六十九億円を対策費に投入したが、全面解決のめどが立たないまま暗礁に乗り上げており、衆院選後の政治情勢によっては取り組みがあいまいになる可能性もある。保険料を納めたのに本人の記録に結び付いていない五千九十五万件の存在が発覚したのは二〇〇七年。同年の参院選で当時の安倍政権は大敗を喫し、民主党はその勢いのまま〇九年衆院選で政権交代を果たした。
 民主党政権は記録回復を「国家プロジェクト」と位置付けて作業に取り掛かったものの、今年九月時点で解明できたのは六割弱の二千八百七十三万件止まり。うち千六百六十六万件(千三百九万人分)が基礎年金番号に統合済み、千二百七万件は死亡者などの記録と判明した。ただ解明分の多くは国民の関心が高かった〇八年前後に集中、ここ数年はペースが鈍っている。残りの四割超は、日本年金機構が記録確認のために受給者・加入者に送った「ねんきん特別便」で呼び掛けても回答がなかった九百二十四万件や、持ち主の手掛かりさえつかめない九百六十二万件などで、解明は容易ではない。一〇年秋からはコンピューター上の記録と、その「原簿」に当たる手書きの紙台帳の全件照合を進めているが、費用対効果の観点から見直しを求める声が上がっている。
 年金機構は来年一月末、インターネットで自分の記録を調査できる「ねんきんネット」を活用した記録確認キャンペーンを始める。だが持ち主自身が自主的に記録を探す仕組みのため、全件解明につながるのかは疑問だ。新政権は年金記録問題を引き継ぐことになるが、衆院選では原発や消費税増税、環太平洋連携協定(TPP)など他の課題に押されて争点にならず、完全に埋没した格好になっている。年金記録に詳しい社会保険労務士は「残った記録の多くは手掛かりになる情報が不完全。記録問題への関心も低下し、解決は難しい。どこかで見切りをつけるべきだ」と指摘。与野党内にも収拾策を練るべきだとの意見があるが、現在も月数万件単位で記録が回復しており、幕引きが難しい。

*3:http://diamond.jp/articles/-/8680 (企業の退職給付会計)
 会計ビッグバンで、2000年4月以降に始まる年度から退職給付会計が導入された。これは、将来、退職する従業員に支払わなくてはならない退職給付(退職一時金・企業年金)額を、その費用を発生した期に正確に把握して積み立てるための会計処理である。IFRS(国際会計基準)では前から行われていたが、日本では、民間企業で2000年4月以降に始まる年度から始まったわけである。

*4:http://www.hokkaido-np.co.jp/news/dogai/427805.html
(北海道新聞 12月17日) 年金免除が過去最多の438万人 11年実態調査、震災が影響
 厚生労働省は17日、国民年金の加入者1737万1千人のうち、収入が低いために保険料納付の全額免除か猶予を申請して認められた人が、2011年3月末時点で過去最多の438万5千人に上ったとの実態調査結果を発表した。加入者の25%に相当し、08年の前回から26万3千人増加。東日本大震災で被災した人の申請が多かったことが影響した。全額免除が24万6千人増の229万人のほか、「学生納付特例」の納付猶予が171万4千人、20代の低所得者の支払いを猶予する「若年者納付猶予」が38万1千人だった。将来的に低年金になる恐れがあるとして厚労省は追納を呼び掛けている。

| 年金・社会保障::2012.4~2013.7 | 09:38 AM | comments (x) | trackback (x) |

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