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2013,02,26, Tuesday
SPEEDIにそれぞれの地点の実測値を入れれば、より正確なデータが導き出せた筈にもかかわらず、何故*1のようなことが起こったのか?福島県原子力安全対策課の担当者の言い訳を見ると、①放射性物質の拡散が県民の命や健康に与える影響を、他の仕事を優先して考慮しなかった ②日頃からSPEEDIの仕組みも理解していないため使えなかった ③原発事故の影響を小さく見せたいという空気に影響された という原発立地地域の担当者にあるまじき原因が垣間見える。そして、これらは、物理学や生物学に疎く、周囲の空気を読んで行動する大多数の文科系の特徴でもあるが、それでよいのだろうか。
また、*2のように、放射性物質を含む瓦礫は「焼却してしまえば、燃えてなくなる」と考えるのも、文科系の人の発想である。本当は分子はなくならないため、気体や粒子となって広く拡散し、さらに集めにくくなって被害を大きくする。そのため、放射性物質は閉じ込めるのが原則だが、ごり押しして焼却したがる人がおり、それに反対する人を「理解せずに不安に思っている人だから、丁寧な説明で不安を払拭させる」と言うのである。実際には、理解していないのは、焼却したがっている人であるにもかかわらずだ。 そういう調子だから、*4のようなことが起こっているにもかかわらず、それは報道されず、*3のように日本製品から大気中の通常の基準値を上回る放射線量が検出されて、せっかく作った日本製品の安全性やブランド力を低下させている。少しわかっている人なら、物理の原則から導かれる論理に基づき、測って返品しているのだから、日本の行政やメディアが、*5のように、国際基準を無視して、「風評被害がいけない」と主張すればするほど、日本人及び日本製品全体が信用をなくすのである。 こういうのは、常識程度の物理、生物、化学の知識があれば、すぐわかることである。しかし、日本の文科系の人材は、入試科目にないためか、高校でこれらの分野をあまり勉強せず、大学でも全く勉強していない人が多い。特に、私立大学の文科系学科は理数系科目が全く入試にないためか、理数系の知識があまりないが、卒業生は立法・行政・司法・メディアや民間企業のマネジメントに多くいるのだ。 ではどうすればよいのかと言えば、高校や大学の教養程度の知識は、理科系・文科系にかかわらず、どちらも常識として持っておかなければならないものであるから、私立大学でも文科系学科の入試に国公立大学並みの理数系科目を課し、高校でしっかり勉強させることが必要だと考える。また、大学は、文科系・理科系をあまり早くから分けずに、どの進路に進む生徒にも、考えるためのツールとなる学問は、しっかりと教えておくことが必要だ。 *1:http://mainichi.jp/select/news/20130222k0000m040137000c.html (毎日新聞 2013年2月22日) 福島第1原発:ベント前 放射性物質の拡散 データは放置 東京電力福島第1原発事故による放射性物質の拡散が、これまで考えられていたより早く11年3月12日早朝から始まっていたことが、福島県の観測データで裏付けられた。しかし、県がモニタリングポストの解析を終えたのは、政府や国会の事故調査委員会が最終報告書をまとめた後。現在進行している県民健康管理調査にも、このデータは反映されていない。被災者の健康に直結する「命のデータ」は事実上、放置されてきた。 福島県によると、津波で流されなかったモニタリングポスト20基のデータ回収を始めたのは、東日本大震災から約1カ月後の11年4月。19基を同7月までに回収し、一部の解析に着手した。しかし、残る1基を回収し全解析を終えたのは、最初の回収から約1年5カ月後の昨年9月下旬だったという。この間、政府や国会の原発事故調査委員会が相次ぎ発足し、事故原因の究明にあたった。両委員会は昨年夏、最終報告書をまとめたが、県のデータの存在を把握しないまま解散したことになる。政府事故調の元メンバーで同県川俣町の古川道郎町長は「政府事故調で検証されなかった新事実だ。なぜ解析がこんなに遅れたのか。事故の検証は終わったとは言えない。継続的な検証態勢を整備すべきだ」と憤る。一方、このデータは11年6月に始まった県民健康管理調査にも活用されていない。この調査は、県民から震災当時の行動記録の提出を受け、被ばく線量を推計する。今回明らかになったデータは、事故初期の「実測値」にあたるが、当時の線量はこれまで、SPEEDI(緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム)で予測した線量が使われてきた。県立医大は「県の解析データを使うか使わないかは、議論している最中だ」としている。 福島県原子力安全対策課の担当者は毎日新聞の取材に「県内全域の放射線調査など他業務に忙殺され、結果的にデータ解析が後回しになった。大変申し訳なく、ただただ謝るしかない」と謝罪している。これに対し、国会事故調に県民代表として参加した同県大熊町民の蜂須賀礼子さんは「県民の健康を真っ先に考えたならば、急いで解析されるべき『命のデータ』のはずだ。福島県の対応は(原発被害を受けた)県民として恥ずかしい限りだ」と話した。 *2:http://www.minyu-net.com/news/news/0225/news5.html (2013年2月25日 福島民友ニュース) 村、説明会を継続へ 鮫川・焼却実証施設建設 環境省が鮫川村青生野地域に建設を進めている放射性物質を含む稲わらなどの農林業系副産物の焼却実証実験施設について、同村の大楽勝弘村長は、24日までに地元住民を対象に開いた説明会で「今後も住民に理解を求めていく」として、説明会の開催を継続する考えを示した。説明会は冒頭以外、非公開となり、説明会後、報道陣の取材に応じた大楽村長は同施設建設への説明が不十分だったとした上で、あらためて「住民の理解が得られなければ稼働させない」と強調。「丁寧な説明で不安を払拭(ふっしょく)させたい」とした。また、同省の山本昌宏廃棄物対策課長は緊急対策マニュアルがほぼ完成していることを明らかにした。一部の参加者からは、健康や放射性物質の拡散を懸念する質問があったという。説明会は23日、同村の青生野集落センターで開いた。 *3:http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2013022201001919.html(東京新聞 2013年2月22日) ロシア、364物品を日本に返送 昨年、極東税関 【ウラジオストク共同】ロシア極東税関のパシコ局長は22日、2012年の1年間に日本から持ち込まれた中古車や自動車部品など400物品から大気中の通常の基準値を上回る放射線量を検出し、うち364物品の輸入を認めずに日本に返送したことを明らかにした。共同通信の取材に答えた。400物品の日本の積み出し港は小樽、新潟、富山、横浜、大阪など各港という。今年に入っても42物品から基準値を超える放射線量が検出され、うち18物品のロシアへの輸入が禁止された。 *4:http://www.asahi.com/national/update/0220/TKY201302200472.html (朝日新聞 2013年2月21日) 福島第一原発、消えぬ汚染 4号機建屋内部を同行取材 東京電力福島第一原発事故からまもなく2年。朝日新聞記者が20日、原子力規制庁の検査官に同行し、爆発事故を起こした4号機の原子炉建屋の内部に入った。廃炉作業が進むものの、爆発で飛び散ったがれきがいまだに散乱し、いたるところに事故の爪痕が残っていた。4号機は東日本大震災当時、定期検査で停止中だった。しかし、炉心溶融事故を起こした3号機から水素が配管を伝って流れ込み、爆発が起きて建屋が吹き飛んだ。冷却できなくなった燃料プールの水が干上がって核燃料がむき出しになり大量の放射性物質がまき散らされるのではないかと、一時は世界中を揺るがした。事故後に建屋の外に据え付けられたエレベーターで、オペレーティングフロアと呼ばれる最上階に上がった。昇る途中、爆風で吹き飛んだコンクリート片がそのままになっているのが見えた。事故が起きた直後とほとんど変わらない状態だという。 *5:http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20130224-OYT1T01073.htm (2013年2月25日 読売新聞社説) 原発風評被害 放射能の基準から考え直せ 放射能の安全基準について政府は根底から考え直すべきだ。政権交代はその好機と言えよう。消費者庁が、東京電力福島第一原子力発電所事故による風評被害の対策を強化する。森消費者相は、「民主党政権は消費者の不安を募らせた」と述べ、具体策の検討を指示した。 福島県産の農産物は、検査で安全を確認し出荷されているが、価格を安くしなければ売れない。流通量もなかなか増えない。森氏が、「安全基準への疑問や不安があると思う」と指摘したのは、もっともである。野田政権は、食品中の放射能基準を海外より厳格化した。政府の放射線審議会は、弊害が出ると警告したが、小宮山厚生労働相(当時)が政治的に押し切った。その結果、基準超過が増え、食品の信頼回復は進まない。過去の核実験の影響としか考えられない放射性物質が検出され、出荷停止となった野生キノコもある。問題なのは、野田政権が年1ミリ・シーベルトの被曝(ひばく)線量を安全と危険の境界線としたことだ。年1ミリ・シーベルトは法的に放射性物質を扱う施設の管理基準に過ぎないのに、この線引きを食品基準にも適用した。 国際放射線防護委員会(ICRP)も、年1ミリ・シーベルト以下が望ましいとしている。ただ、野田政権との違いは、これを超えても直ちに危険とは見なさないことだ。ICRPは総量で100ミリ・シーベルトまでなら明確な健康影響は検出できないとの立場だ。ICRPが考える1ミリ・シーベルトは、安全性に余裕を見込んだ数値で、合理的に達成できるなら、との条件も付く。世界には、大地などから年10ミリ・シーベルトの放射線を浴びる地域がある。病院の放射線診断で1回に約7ミリ・シーベルト被曝することもある。1ミリ・シーベルトでの線引きは、16万人近くの避難者の帰還を遅らせる要因にもなっている。ICRPは、被災地の復旧過程では、年20ミリ・シーベルトまで許容し、可能な範囲で年1ミリ・シーベルト以下にするとの考え方を示している。だが、細野環境相(当時)は、1ミリ・シーベルト以下への除染を強調した。ICRPの考え方は、住民の生活確保と除染の両立だが、除染が偏重される結果となった。政治の誤ったメッセージと言えば、泉田裕彦新潟県知事も同様だ。柏崎市、三条市が岩手県のがれきを一般ごみとして処理したことを「犯罪行為」と非難した。しかし、がれきの放射能は県内のごみと変わらない。首長が風評被害を増長させては困る。
| 教育・研究開発::2012.4~2013.10 | 12:25 PM | comments (x) | trackback (x) |
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