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2013,06,05, Wednesday
事実として、領有権問題の棚上げ合意が存在したとしても、いつまで棚上げするかが重要なのである。1972年当時は、まだ、終戦後27年しか経っておらず、当時の田中角栄首相と周恩来首相は、日中国交正常化を目的として会ったのだから、問題となりそうな領土問題を棚上げしたのは当然である。 しかし、現在は、その日中国交正常化が実現してから41年が経過し、終戦からは68年が経過して、日中両国の状況は変った。今の時点で、田中角栄首相と周恩来首相が尖閣諸島の領土問題を話し合ったとすれば、二人とも「領土問題を棚上げしよう」とは言わなかった筈である。 そのような中、野中氏が「領土問題を棚上げする日中合意があった」とのみ言うために中国に行ったとすれば、国益に反し、不可解だと思った。もちろん、それに対する日本政府の「書面に書かれていないので、そういう話はなかった」と言うのは、中国にさらなる不信感を与える不誠実なもので、「その時は棚上げしたが、もうはっきりさせるべき時である」と言う方が、お互いの信頼を損ねず次に繋がると考える。 *1:http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2013060502000129.html (東京新聞 2013年6月5日) 「日中が尖閣棚上げ」発言 野中氏「撤回しない」 野中広務元官房長官は四日、帰国後に関西空港で記者団の取材に応じ、沖縄県・尖閣諸島をめぐり「領土問題を棚上げする日中合意があった」とした自身の発言について「私はそれを言うために(中国に)行ったのだから、発言の撤回などしません」と話した。野中氏は「尖閣諸島をめぐるわが国と中国の対立は国民に異常な不安感を与えている」と主張。「政府がそれ(棚上げ)を無視しているから対立がある」と述べた。発言が中国に利用されるのではとの指摘については「利用されたくないし、中国もそうは思っていないと思う」と反論した。 <日中国交正常化交渉と尖閣問題> 1972年9月、当時の田中角栄首相は北京を訪問し、中国の周恩来首相と国交正常化交渉に臨んだ。日本側の記録によると、田中氏が沖縄県・尖閣諸島に言及したのに対し、周氏は「尖閣問題は今回話したくない」と提案。これに続く田中氏の発言は記載されていない。一方の中国は田中氏が提案に「分かった」と返答したとして「領有権問題の棚上げ合意は存在する」と主張している。 PS(2013/6/6追加):あの状況で棚上げに合意したとすれば、領有権問題の存在に合意したことになるのか、私は疑問に思いました。物事は、一度には改善できないので、徐々にやるのが普通だからです。 *2:http://www.nikkei.com/article/DGXNASFS05048_V00C13A6PP8000/?dg=1 (日経新聞 2013/6/6) 尖閣「棚上げ」論で応酬 野中氏発言に政府反発 1972年の日中国交正常化の際、沖縄県の尖閣諸島の領有権問題を棚上げする共通認識があったとする野中広務元官房長官の発言に政府が強く反発している。背景には「領有権問題の存在を認めること」を日中首脳会談開催の条件にし棚上げ合意の受け入れを迫る中国と、それを拒む安倍政権のせめぎ合いがある。中国側に両国関係の改善へ向けた思いがあるとの見方も浮上している。「野中さんは田中角栄元首相(から聞いた)と言っていたが、40年前の伝聞で聞いたこと。確たる根拠も示さず、招待された中国でわざわざ発言することに非常に違和感を覚える」。菅義偉官房長官は5日の記者会見で、野中氏の発言を批判した。「棚上げや現状維持を合意した事実はない。(領土)問題は存在しない」と両国間の合意の存在も否定した。野中氏ら超党派議員団は昨年訪中する計画だったが、同9月の尖閣国有化を受けて見送っていた。中国側の招待で再調整が本格化したのは今年5月中旬ごろ。議員団関係者は「急な話だった」と説明する。そのころ中国は日中韓首脳会談の開催を断るなど強硬姿勢を続けていた。日中首脳会談などハイレベル交流の再開条件として、中国は「尖閣での領土問題の存在を認めること」を提示していた。日中関係筋によれば、最近「棚上げ合意を受け入れること」との条件に変えたという。尖閣問題で日本から譲歩を得られなければ、中国指導部は国内で弱腰批判を浴びかねない。間接的に領土問題の存在を認めればいい「棚上げ合意の確認」は、中国側にしてみれば関係改善に向けた「誘い水」だった。だが、日本には受け入れられない内容だ。安倍晋三首相は5月11日、米外交専門誌、フォーリン・アフェアーズのインタビューに対し「尖閣問題を棚上げすることに、我々が同意したことは一度もない。過去にそう合意していたと主張することは、まさに嘘を言っていることになる」と強く否定した。中国外交筋は、5月16日付で電子版に載った同発言に「非常に驚き、今後の対応に困惑した」と説明する。公明党の山口那津男代表が1月の訪中前に「将来の知恵に任せることは一つの賢明な判断」と事実上の棚上げ論に言及するなど、安倍政権に一定の柔軟姿勢への期待があったためだ。野中氏の発言をきっかけに尖閣を巡る日中間の応酬が再燃したことで、首脳間交流の再開が一層遠のく可能性もある。
| 外交・防衛::2013.1~2014.8 | 01:26 PM | comments (x) | trackback (x) |
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