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2013,07,04, Thursday
(1)報道のどこが、おかしかったのか?
*1の報道は、「体性幹細胞治療を使った再生医療は危険で、iPS細胞を使ったものなら夢の医療だ」というメッセージが含まれていたので、異常さを感じた。何故なら、iPS細胞は、もともと持っていなかった遺伝子を加えているので癌細胞になりやすく、体性幹細胞治療は、全く自分の細胞であるため、癌化することなく置かれた場所の組織になり、より安全な筈だからである。 しかし、体性幹細胞治療は危険だという結論を導いた背景には、*1のように、体性幹細胞治療を使った再生医療は、美容整形や難病治療のため注射で身体に注入し、毛細血管が詰まった事例を出していた。一方、iPS細胞の場合は、*2のように、シート状の細胞に育てて患者の傷んだ部分と入れ替えるとのことだった。 治療の比較を行うに当たり、ここで犯した大きな間違いは、その他の条件を同じにしていない点である。もし、体性幹細胞を使ってシート状の細胞に育て、患者の傷んだ部分と入れ替えれば、本人の細胞そのものであるため、iPS細胞のように癌化する恐れはなく、iPS細胞より安全に置かれた場所の組織になるだろう。 (2)何故、メディアは、そうなるのか? 私の経験からすると、メディアは非常に権威主義であり、すでにノーベル賞をもらったものや政府が援助しているものを推奨したがる。これは、メディアの中に、文科系の人が多いせいだろうが、それにしても、報道して大きな影響を与える以上、科学的・医学的にしっかりとした監修をしておくべきだ。 (3)歪んだ報道の結果、どうなるか? 体性幹細胞や類似の体細胞を使う、より安全な治療方法も次々と工夫されてくる中、iPS細胞のみに固執して他を貶めていると、他の再生医療研究をやっている研究者はやりにくくなり、馬鹿らしくなって、アメリカなどの外国で自由に実績を挙げてくるようになる。研究者はこのレベルなのであり、そのような人材はもちろん少ない。そうやって、日本から重要な先進的人材が流出し、特許権も外国で発生するようになるのである。従って、意図的な報道は厳に慎み、Fairにしなければ、研究者の幸福にも国益にも繋がらない。 *1:http://www.nhk.or.jp/gendai/kiroku/detail_3370.html (NHK 2013年6月25日) 追跡 再生医療トラブル ~体性幹細胞治療の闇~ 病気やケガで故障した組織や臓器の機能回復を目指す「体性幹細胞治療」。患者のお腹の脂肪から幹細胞を採取し、静脈に注射で戻す再生医療の一ジャンルだ。大学病院などで臨床研究が行われている段階で、効果や副作用がはっきりしていない“未知の医療”にも関わらず、法的な規制がないため自由診療の下、全国の美容整形や難病治療を行うクリニックで実施されている。規制のない日本に海外のバイオベンチャーが患者を送り込み治療を行うケースも急増。患者が死亡したり失明したりするケースも出ており、再生医療学会は警鐘を鳴らしている。こうした中、国はついに先月、幹細胞治療に規制をかけるための法案を提出した。知られざる体性幹細胞治療の実態を取材、トラブルを防ぐために何が必要か、考える。 *2:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20130627&ng=DGKDASGG2601T_W3A620C1MM8000 (日経新聞 2013.6.27) iPS、初の患者治療 厚労委が研究承認-目の難病向け 来夏メドに細胞移植 厚生労働省の審査委員会は26日、理化学研究所などが申請していたiPS細胞を使う臨床研究計画を承認した。目の難病になった患者が対象で、2014年夏をメドにiPS細胞を使った初の治療が国内で始まる。京都大学の山中伸弥教授が人のiPS細胞を開発してから6年あまりで、同細胞を使う再生医療が実現に向けて大きく動き出した。臨床研究は理研の高橋政代プロジェクトリーダーと先端医療振興財団(神戸市)などが計画し、今年2月に厚労省へ申請した。目の網膜の病気で失明の恐れもある「加齢黄斑変性」という難病が対象で、日本人に多い「滲出(しんしゅつ)型」の患者に実施する。物がゆがんで見えたり視野の中心部が暗く見えたりする。国内に70万人の患者がいるとされ、根本的な治療法はない。同日開いた厚労省の審査委員会は国の指針に基づいて審査し、安全性や倫理面で問題はないと結論づけた。ただしiPS細胞ががんを起こさないことなどを確認するとの条件を付けた。7月中旬に厚生科学審議会(厚生労働相の諮問機関)の科学技術部会で審議に諮って厚労相に答申。理研などが臨床研究を実施する。実質的な審査は今回で終わった。iPS細胞の臨床研究が承認されたのは世界で初めて。高橋プロジェクトリーダーは「正式な通知を受けていないので詳細は分かりませんが、慎重かつ迅速に審査していただいた。(委員会から出た)条件については詳細を確認した上で対応したい」とのコメントを発表した。研究は同財団の先端医療センター病院(同市)と神戸市立医療センター中央市民病院が連携して手がけ、8月にも患者の治療に向けた準備を始める。患者の中から50歳以上で既存の薬が効かず、眼鏡などで矯正しても視力0.3未満などの条件を満たした6人を選ぶ。患者自身の皮膚などの細胞からiPS細胞を作った後、シート状の網膜細胞に育て患者の網膜の傷んだ部分と入れ替える。皮膚細胞からシートを作るには約10カ月かかるため患者の目に移植する治療は来夏になる見込み。治療を受けた患者は視力の大幅な回復は難しいものの、病気の進行は抑えられ、失明は避けられると期待される。今回の臨床研究は安全性を最優先して進める。移植してから1年間は1~2カ月に1度の頻度で検査し、その後も3年間は経過を観察する。iPS細胞はがん細胞になる可能性が指摘されているが、目はがんになりにくいとされている。万が一、がんになってもすぐに診断でき、治療も比較的容易であることなど患者の安全面を配慮した。
| 科学・医療 | 06:04 PM | comments (x) | trackback (x) |
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