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2013,07,12, Friday
各紙で、*1のような「『民法900条4号ただし書き(*2参照)』の規定は婚外子差別であり違憲だ」という感情的なプロパガンダが行われたが、私は、「出生は子の意思や努力では変えられないが、それを理由に婚外子の相続分を同じにすべきだという結論には飛躍があり、違憲ではない」と考える。何故なら、被相続人である父親が子の相続分を同じにしたいと考えれば、遺言、生前贈与など、生前にとれる選択肢があったからである。 さらに、*2の該当条文、民法900条4号ただし書きの「嫡出でない子の相続分は、嫡出である子の相続分の二分の一とし」という部分が問題にされているが、同時に「父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹の相続分は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹の相続分の二分の一とする」とも書かれており、婚外子を差別する規定にはなっていない。この部分は、その相続財産を形成した親の子でない場合に、相続分を他の兄弟姉妹の2分の1にするという意図であり、法律婚の夫婦が形成した財産も、父親が形成した分に当たる2分の1の割合では婚外子にも相続権があるとされているのである。連れ子も同様で、これは、自分のDNAを引き継ぐ子に遺産を相続させたいと思う人間の本能を反映した妥当な規定と言えよう。 そして、民法900条の1号、2号、3号を合わせて見れば、相続財産が一部は先祖から引き継がれ、残りは相続発生時点の法律婚の夫婦によって築かれたものだという前提がある。しかし、現代では、いろいろなケースがあるため、正確な相続分を算定するためには、①先祖から引き継いだ財産はいくらか(←直系尊属や被相続人の兄弟姉妹に配分する合理性がある) ②夫婦で築いた財産はいくらか(←配偶者とその子で配分すべきである) ③夫か妻の一方で築いた財産はいくらか(←誰に配分するかは本人の自由である) を、正確に計算して関係者に配分すべきだろう。これに、4号のような複雑な家族構成を加味する必要があるわけだ。 しかし、相続時の配分額を正確に計算するにあたっては、妻の働きに金銭換算されないものが多く、妻の働きは過小評価され、そのため夫名義となった財産を妻が相続する場合でも、小さな金額で贈与税や相続税がかかったり、子がいない場合には財産形成には何の関係もなかった直系尊属や兄弟姉妹への相続が発生したりすることの方が、法の下の平等に反する憲法違反である。故に、*1のような新聞発表は、「婚外子でも何でもいいから、とにかく産めよ、増やせよ」というプロパガンダのようで、感心しない。 *1:http://www.asahi.com/paper/editorial.html?ref=com_gnavi#Edit1 (朝日新聞 2013年 7月 11 日) 婚外子差別―是正の機会を逃すな 生まれついた巡り合わせによる差別をこれ以上、放っておいてはいけない。結婚していない男女間の子の相続分を、結婚した夫婦の子の半分にする民法の規定は憲法にかなうのか。最高裁がきのう、大法廷で弁論を開いた。違憲の判断や、判例を変えるときは大法廷でしかできない。最高裁はこの規定について、18年前に合憲とする決定を出したが、今回はその判断を改める可能性が大きくなっている。理不尽な差別をただす機会を逃してはならない。この規定は「家」制度をとる明治時代の旧民法から引き継がれた。法律婚の尊重と婚外子の保護のバランスを図ったものだと説明されてきた。しかし、出自は本人の意思や努力で変えられず、それを理由に差別するのは筋違いだ。家族のあり方や価値観が多様になった現代社会には通用しない。問題は、経済的な相続だけにとどまらない。婚外子が婚内子より社会の立場上、劣っているかのような差別の土壌をつくってきた面もある。相続はこの規定通りにしなくてはならないわけではなく、実際には家族ごとの意思で配分されている。だとしても、法律が当事者の判断に先んじて子どもを区別する必要はない。 同様の規定をもっていたドイツやフランスなども法改正しており、先進国では日本だけが残った。国連の人権機関は、国際基準に反するとして政府に繰り返し勧告してきた。改めて問われるのは、問題を放置してきた国会の怠慢だ。法務省は96年、相続差別をなくす民法改正の要綱案をまとめた。だが一部国会議員が「男女の婚外関係を促すことになる」などと反対した。法案提出もされず棚上げされてきた。95年の最高裁の合憲判断には15人の裁判官のうち10人が賛成した。だが、その10人のうち4人は補足意見で、立法による解決への期待を述べた。その後の判断でも、小法廷が補足意見で法改正を促してきた。国会のだらしなさは、一票の格差をめぐる問題でも見飽きた光景だ。裁判所に違憲と言われないと動けない、言われても動きが鈍い。そんな国会では、正義を実現できる代表機関とは言いがたい。最高裁が法令を違憲としたのは戦後8件しかない。だが、少数者である婚外子の声は小さくとも、法の下の平等という重い価値が問われている。もはや司法による救済しかないのではないか。 *2:http://law.e-gov.go.jp/htmldata/M29/M29HO089.html#1005000000003000000002000000000000000000000000000000000000000000000000000000000 民法 第900条 同順位の相続人が数人あるときは、その相続分は、次の各号の定めるところによる。 1 子及び配偶者が相続人であるときは、子の相続分及び配偶者の相続分は、各二分の一とする。 2 配偶者及び直系尊属が相続人であるときは、配偶者の相続分は、三分の二とし、直系尊属の相続分は、三分の一とする。 3 配偶者及び兄弟姉妹が相続人であるときは、配偶者の相続分は、四分の三とし、兄弟姉妹の相続分は、四分の一とする。 4 子、直系尊属又は兄弟姉妹が数人あるときは、各自の相続分は、相等しいものとする。ただし、嫡出でない子の相続分は、嫡出である子の相続分の二分の一とし、父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹の相続分は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹の相続分の二分の一とする。
| 人口動態・少子高齢化・雇用 | 11:40 AM | comments (x) | trackback (x) |
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