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2013,07,21, Sunday
(1)選挙権は権利か義務か 結論から言って、選挙権は義務ではなく権利であり、権利を放棄するのは自由なのである。そのため、*2のように、若者の投票率が低いから若者にとって便利なツールを使って若者の気に入るようなメッセージを出すというのは、国民を平等な有権者として扱うべき選管の行動としては感心しない。千葉県の前回の参院選での20代の投票率は33.27%で60代の半分以下だったそうだが、それは、若者に問題意識や選挙権があることへの感謝の気持ちがないからではないだろうか。 普通選挙による選挙権は、戦後初めてすべての国民に与えられたものであるため、高齢者はその権利を大切にして行使するのであり、“若者”は、選挙権が自分に与えられた権利であることも忘れて、晴れると選挙より行楽に出かける人が増えるという状況なのである。これは、メディアの日頃からの政治報道の仕方や教育における政治の取り上げ方にも責任があるだろう。 (2)しかし、問題意識のある若者は行動している TPP参加に関し、農業は農家、ISD条項や憲法は弁護士が行動している。政治は、まさに国民生活と直結するものであるため、その問題に関係のある人が行動を起こし、他の人にその問題意識を広めるのが自然だ。そして、あることに関して行動を起こすと、その原因となっている本質的な問題点や他の分野に関する問題も見えてくるため、行動を起こした人にとってもよい経験となる。私の場合は、公認会計士として年金制度・会計制度・税制、女性として女性差別や保育・介護に問題を感じて変えようとし、その他の問題にも入って行った経緯がある。 (3)厚生労働省の調査は正しいか? *3の佐賀新聞記事は、知り合いの宮崎勝さんのものだが、「2009年度の厚生労働省の調査では、年齢が高い層ほど『社会保障の水準を引き下げて、従来通りの負担を維持、もしくは負担を減らすべき』と考える割合が高くなっている」等々書かれており、高齢者福祉削減の根拠としている。しかし、省庁の調査が政策実現のための誘導になっているのは、どの省庁を見ても明らかであり、佐賀新聞であれば、佐賀県の実態を正確に調べて報道すべきだ。 私は、衆議院議員をしていた期間、社会調査も兼ねて地元佐賀三区を一軒一軒挨拶廻りし、在宅の人とは話をし、懇談会も多く行ったので、生活状況や要望がわかった。一人きりになった老人が、「電気代を節約して、孫が来た時以外は、クーラーをつけない」と言っていたり、「船賃が高いからあまり病院に行けない」という離島の老人がいたりした。年金は、月に3万円程度ということだった。また、呼子朝市で魚を売っていたおばあさんからは、「消費税だけは、絶対に上げんどいてね」と言われた。一般の高齢者や消費者が本当はどういう生活をしているのか、消費税を上げて高齢者の社会保障の水準を引き下げると、公平・公正になるのか、自分で廻って調べてみるべきである。 「親孝行」という言葉はあっても「子孝行」という言葉はない。その理由は、生物は、自分のDNAを残すために、本能的に子を大切にするが親は大切にしないため、人間は、文化として「親孝行」という道徳を持ったのだそうである。他の生物を観察すると、それは、もっとあからさまである。しかし、この頃、少子化を理由に、人間の道徳がないがしろにされてきており、どこか狂っていると思う次第である。 *1:http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=22020 (日本農業新聞 2013/7/4) 反TPPで弁護士決起 今月中に組織設立 東京、大阪、名古屋市で活動する弁護士らは、今月中に「TPPに反対する法律家の会」(仮称)を立ち上げる。TPPで非関税分野の問題点となる投資家・国家訴訟(ISD)条項について法律家の視点から分析することが目的。国家主権に関わる懸念事項を市民に分かりやすく周知し、TPP反対の世論形成を進める。全国に賛同者を募り、会員数は少なくとも数百人規模になると見通しており、同会事務局は「TPPの本質を理解し、戦う弁護士を増やしていく」としている。同会は、日本弁護士連合会憲法委員会副委員長を務める名古屋市の川口創弁護士が組織化を提案し、大阪市の杉島幸生弁護士、名古屋市の岩月浩二弁護士らと月内の設立を目指し、準備している。都道府県弁護士会会長を務めた有力弁護士らに幅広く参加を呼び掛け、TPPへの態度を明らかにしていない日本弁護士連合会へ働き掛けたい考えだ。杉島弁護士は「それぞれ精通する分野を結集し、世論形成に生かしていきたい」と説明する。 *2:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20130720&ng=DGKDASDG19051_Q3A720C1CC0000 (日経新聞 2013.7.20) あす投票へ行こう 選管も「最後のお願い」 - 散髪中に「選挙でしょ」 メールで「若者が主役」 参院選投票日が翌日に迫った20日、各地の選挙管理委員会は投票を呼び掛ける「最後のお願い」を繰り広げた。争点が見えづらかった選挙戦。しかも投票日は小中学校が夏休みに入って最初の週末と重なる。理髪店や携帯電話会社など民間とタッグを組んだ作戦を展開し「選挙も忘れないで」と訴えた。(中略)投票率が低い若年層にターゲットを絞ったのは千葉県選管。「明日投票日です!」。20日午前からNTTドコモ、ソフトバンクモバイルと連携し、県内の20代の携帯電話加入者約12万9千人にメールを送る。決めぜりふは「さあ行こう 今日はあなたが 主人公」。同県の前回参院選での20代の投票率は33.27%と60代の半分以下。選管担当者は「携帯メールなら若者が必ずチェックしてくれるはず」と願う。(中略)今夏の最高気温が39度を超えた山梨県。甲府市選管は市内の投票所のうち、熱が籠もりがちな5カ所に扇風機を置いて、職員や投票に来た人の熱中症防止に努める。“適温”だと行楽に出かける人も増える。横浜市選管の職員は「投票日の気温は20度台後半、天気は曇りが好ましい」。海や山に家族で出かける前に投票してもらおうと、都選管は19日、「期日前投票は20日まで行っています」とツイッターでつぶやいた。 *3:http://www.saga-s.co.jp/news/ronsetu.0.2511396.article.html (佐賀新聞 2013年7月20日) 参院選・世代間格差 シルバー民主主義を超えて 少子高齢化が進み、有権者全体に占める高齢者の割合が増えている。高齢者の意見が反映されやすいこの政治状況は「シルバー民主主義」と呼ばれている。言い換えれば若い世代の声は届きにくい。参院選の投票日を前にこの現象を考えてみたい。戦後のベビーブームで生まれた「団塊の世代」が成人した1969年当時は、65歳以上の高齢者約700万人に対し、20代は3倍の約2千万人もいた。だが先月の人口推計では、20代は高齢者の半分にも満たない。30代を加えてもなお高齢者の方が多い。しかも投票率が高齢者は若年層に比べて高い。昨年12月の衆院選で投票率を年代別にみると、総務省の抽出調査で20代37・89%、30代50・09%に対し、60代74・93%、70代73・92%と政治参加に積極的だ。この傾向は今に始まったことではないが、若年層にしてみれば人数が減っている上、投票率が低ければ影響力はさらに低くなる。 シルバー民主主義で語られる一例が、2006年に成立した医療制度改革関連法だ。70~74歳の医療費の窓口負担を08年に1割から2割に引き上げることを決めていた。だが当時の自公連立政権、続く民主党政権は1割の特例措置のまま据え置いた。与党に返り咲いた現政権も同じだ。引き上げれば高齢者の反発を招き、票を大きく失うと心配したからだと言われる。この特例措置のために毎年度2千億円を手当てしている。社会保障費は主に高齢者向けに使われている。人口構成に合った使われ方と言えるし、多数決で決める民主主義国家であれば、多数が好む政策が採用されるのは当然ではある。だが膨らみ続ける国の借金残高は1千兆円が目の前で、社会保障の公的負担は毎年1兆円ずつ増加している。公的年金制度のように世代間で助け合う仕組みでは、少子高齢化が進むほど現役世代の負担は重くなり、世代間の不公平が生じる。社会保障サービスを抑制し、増税など負担を上げることは避けられず、制度改革を先送りする政治は許されない。若年層が年を取っても、現在の高齢者と同水準のサービスを受けられそうにはない。働き方も終身雇用が望めない不安定な非正規雇用が増えている。就労環境が改善されたり、社会の支えが拡充されなければ、少子化の歯止めとなる出産・子育ては難しい。 高齢者も自分のことばかり考えているわけではないだろう。やや古い09年度の厚生労働省の調査では、年齢が高い層ほど「社会保障の水準を引き下げて、従来通りの負担を維持、もしくは負担を減らすべき」と考える割合が高くなっている。持続可能な社会保障でなければ、自らの生活が脅かされる。世代間で痛み分け、協調することが大事だ。2060年の将来推計人口では、4割が65歳以上になると出ている。現状のままでは「何をしていたのか」と子どもたちから断罪される時がやがて来る。これから生まれる世代のことも考え、どう負担を分かち合うか。有権者にとって耳の痛い政策をどれだけ語っていたかも投票先を選ぶ参考材料になるだろう。佐賀県内では20代の投票率全国一を目指す取り組みがある。若い世代にも1票を無駄にすることなく投じてほしい。(宮崎勝)
| 年金・社会保障::2012.4~2013.7 | 04:40 PM | comments (x) | trackback (x) |
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