左のCATEGORIES欄の該当部分をクリックすると、カテゴリー毎に、広津もと子の見解を見ることができます。また、ARCHIVESの見たい月をクリックすると、その月のカレンダーが一番上に出てきますので、その日付をクリックすると、見たい日の記録が出てきます。ただし、投稿のなかった日付は、クリックすることができないようになっています。
2013,09,13, Friday
現在、いじめられるのは誰か、また、それでよいのか? (1)消費税の使い道 1)当初の消費税増税の理由 「少子高齢化を考えた時、財政再建と社会保障の維持のためには消費税増税が必要で、それをやらない政治家は未来に責任を持っていない」とメディアは大々的に批判した。従って、メディアは、その消費税増税の建前と顛末を、ごまかすことなく包括的に国民に報告する義務がある。 2)実際に増えた国民負担 ア デフレ脱却という名の物価上昇による国民負担 金融緩和に依るデフレ脱却と称するコストプッシュ・インフレーションでは、物価上昇分だけ国民の可処分所得は減少する。物価が2%上昇すれば、可処分所得は以前の98%(100/1.02)になり、2%の物価上昇が5年続けば、可処分所得は以前の90%になる。つまり、基準年を2012年として2017年にも所得金額が同じであれば、実質可処分所得は90%になっている。それと同時に、1000万円あった貯金も、5年後の2017年には、900万円の価値になっているというわけだ。 イ 消費税増税による国民負担の増加 3%の消費税増税を行えば、購入者にとっての物価は3%上がるため、可処分所得が3%減ったのと同じ効果になる。2017年に今より5%の消費税増税が行われているとすれば、基準年2012年と比べて、収入金額が同じ人は、アと合わせて2017年の実質可処分所得は約85%(90-5)になっている。従って、2%の物価上昇が5年間続き、その時に消費税が10%になっていれば、*3の人たちをはじめとして、収入の全額を支出している人は、収入の15%が、現在より負担増になっているのである。 ウ 国の歳出はどうか *1、*2によれば、①安倍首相は国の財政悪化を受け、来年4月に消費税率を5%から8%に予定通り引き上げる方針を固め ②10月1日に増税方針と経済対策を同時に表明して財政再建とデフレ脱却を両立させる姿勢を示す構えであり ③消費税率の上げ幅である3%のうち2%分(1%あたり2.7兆円)に相当する5兆円超を経済対策にあてるよう関係閣僚に指示した とのことである。③は、実質的な負担増を1%程度に抑えて景気の腰折れを防ぐ狙いだそうだ。 そして、消費税増税分の大半は、景気対策という名目で、i)住宅ローン減税、ii)5千億円以上の設備投資減税と補助金、iii)賃上げ実施企業の減税、iv)法人実効税率引き下げ、v)固定資産税の減免 等に支出されるということだ。また、家計の負担軽減策は、住民税非課税世帯(約2400万人)に1人当たり1万円の現金を給付する案を軸に検討しているとのことである。 しかし、*4のように、高校無償化に所得制限を設けたり、医療・介護の利用者負担を増やしたりしているため、社会保障給付は削減される。これでは社会保障は負担増・給付減となっておかしいため、メディアをはじめとして消費税増税キャンペーンを張った人たちは、全体を見据えた論理的な説明を、責任を持って行うべきである。 エ その結果、金融緩和と消費税増税で何が起こるか ア~ウの結果、金融緩和と消費税増税で、一般国民の実質可処分所得や預金が、2017年には85%となり、国民負担が収入の15%分増えている。また、景気対策としてなされる歳出は、その殆どが社会保障とは関係のない支出であるため、貧しい国民の所得や財産が、国と企業に移転されることになる。 ウのii)5千億円以上の設備投資減税と補助金及びvi)固定資産税の減免は、企業の設備投資を優遇し、固定資産の保有税を下げて新規設備投資を促すということだろうが、企業が日本国内で新規設備投資をして意味があるのは、製品が日本国内で売れて利益が上がる場合のみであって、税金が安くなったからといって、売上があがる目途も立たないのに新規設備投資を行う企業はない。また、iii)賃上げ実施企業の減税については、一時的に減税してもらってできる賃上げはその減税の範囲内であり、需要がなければ売上があがらないため、企業は、人員削減と低賃金化せざるを得ないのである。 国民の可処分所得を下げて需要を減らし、旧来型の企業を守っていれば、新しいことは起こらず需要も減るため、民間企業の新規設備投資は増えない。そのため、新規設備投資は政府が担わざるを得ないことになるが、政府の選択は、有効性・効率性が低く、市場の選択よりも時代遅れの場合が多いのが問題なのである。また、iv)法人実効税率の引き下げは、利益の上がった企業にのみ意味があるものであり、現在、わが国の法人税率は、先進国間の比較では高くないので不要であろう。 (2)国民の基礎教育を軽んじ、スポーツは奨励するが勉強は奨励しない日本の行く末 *5では、「夢を持つ子供、増えれば」と柔道の松本選手がオリンピック招致を歓迎して述べているが、招致の是非はともかく、夢がスポーツだけで、自分でもの考える知識がなく、単純なルールに従って集団行動をとるだけの人間は、21世紀にはロボットで代替され、有用な労働力になれない運命にあるだろう。そして、有用な労働力になれない人が増えれば、生産年齢人口内でも、少ないエンジンで大きな車体を動かさなければならない事態になり、一人当たりのGDPが下がって貧しくなる。 従って、学ばなければならない知識が増えた現在では、*4のように、高校までは義務教育と同じと考えて無償化し、大学、大学院も給付型奨学金を充実するのが、全員のためになると思う。仮に親の所得が多くても、子どもの教育には不熱心だったり、子どもの希望と異なる選択を強いたりする場合もあるため、子どもへの給付であることを徹底して、親の所得による制限は設けない方がよいと考える。 (3)日本の経済学者について 1)フリードマンの貨幣数量説 日本の経済学者は、ミルトン・フリードマンの貨幣数量説「MV=PY(M:貨幣供給量、V:貨幣の流通速度、P:価格水準、Y:産出物の数量)」により、日銀が貨幣供給量Mを上げると、貨幣の流通速度Vが一定であるとすれば、価格水準Pが上がることを重視し、その結果、金融緩和がなされた。 しかし、貨幣量が増えただけでは、景気が良くなったという錯覚により、一時的に産出物の数量Yも上がるかも知れないが、産出物の数量Yの増加は、購買力や必要性から出る需要がなければ長くは続かないため、長期的には調整される。また、国民負担が増えれば、国民の購買力が落ち需要は減少する。 なお、金融緩和しても、貸出先がなければ、貨幣の流通速度Vが下がるか、わが国のバブル時代及び*6のように、あぶく銭となって投機等で消えることにより調整される。 2)ケインズ経済学 国民負担を上げれば、国民の需要はその分だけ下がる。「ケインズ経済学」では、有効需要は市場メカニズムに任せた場合には不足することがあるが、これは減税・公共投資などの政策により投資を増大させるように仕向けることで回復可能であるとし、現在、日本政府が行おうとしているのはこれである。 3)これらの理論の中で不足しているもの ①外国で作られたマクロ経済学の理論に基づいているだけで、社会学的調査をして日本の需要と供給 の行動分析をした理論に基づいているのではないため、理論に実証性がない。 ②単純な公式上に出てこない要因は、すべて与件となっており、全体としてのよりよい解決策が考えら れていない。例えば、国民の教育水準や意識の変化、環境政策による新しい需要の創出、技術進 歩、国内資源開発の可能性、今まで使っていなかった資源の資源化などのイノベーションは考慮さ れていない。 ③人口動態、平均寿命、地球での人類のポジションの変化など、大きくて長い潮流を見る視点もない。 4)では、どうすればよいのか 経済学を専攻する人は、多くが文系であり、経済学の中で駆使される数学や統計学を理解する基礎がないため、簡単な数式や”権威ある”他者の意見の暗記で勝負しており、臨機応変にすべての要素を考慮して結論を出すということをしていない。しかし、経済学者は、疫学、社会学で行っているような個の行動を基に統計学を使って多変量解析し、原因分析して最適解を出す能力が必要であり、それには、これから起こるイノベーションも理解できなくてはならない。そのため、経済学部は、数学、理科を必修とする理科系から学生を採り、科学的に調査研究させる授業をする必要があると思う。 *1:http://qbiz.jp/article/23444/1/ (西日本新聞 2013年9月12日) 消費税、来年4月に8% 安倍晋三首相が、来年4月に消費税率を5%から8%へ予定通り引き上げる方針を固めたことが12日分かった。増税による景気腰折れを防ぐ経済対策は、税率上げ幅3%のうち2%分に当たる5兆円規模とする方向。今月末にかけて政府が具体策をまとめ、首相は10月1日に増税方針と対策を同時に表明して、財政再建とデフレ脱却を両立させる姿勢を示す構えだ。景気関連の指標が軒並み改善し、消費税増税法の付則で税率上げの条件となっている「経済状況の好転」がほぼ確認されたと判断した。2020年夏季五輪の東京開催が決まり、経済効果が期待できることも増税判断を後押しした。国の財政悪化を受け、政府、与党でも増税を容認する意見が大勢を占めていた。政府関係者によると、首相と菅義偉官房長官、麻生太郎財務相、甘利明経済再生担当相らが10日に官邸で消費税増税を協議した際、麻生氏が5兆円規模の対策を提案。甘利氏はその半分以上を減税で実施するべきだと主張し、総額の上積みが可能かどうかも含めて両大臣を中心に詰めることになったという。 首相ブレーンの本田悦朗内閣官房参与は、景気に配慮して増税の延期や税率の上げ幅を年1%ずつにする案を主張している。税率2%分を経済対策の形で国民に還元する案が浮上したのは、実質的な上げ幅を本田氏らが主張する1%に近づけ、景気への影響を少なくする狙いがある。首相は10日の閣僚懇談会で経済対策を今月末をめどにまとめるよう指示。柱は低所得者の負担軽減策で、1人当たり1万円を給付する案を軸に調整している。住宅ローン減税を補完するため、住宅購入者に最大30万円を給付する措置も実施。与党で議論している設備投資減税や、賃上げを実施した企業への減税措置の拡充も検討する。9日に発表された4〜6月期の実質国内総生産(GDP)改定値は年率換算で前期比3・8%増と高い伸びを示し、麻生氏や甘利氏も増税に向けた環境が整ってきたとの認識を示していた。 *2:http://www.nikkei.com/article/DGXNASFS1202F_S3A910C1MM8000/?dg=1 (日経新聞 2013/9/13) 14年度にも法人税率下げ 経済対策は5兆円超 政府は2014年4月に消費税率を8%に引き上げることを前提に、法人税の実効税率を14年度にも引き下げる調整に入った。安倍晋三首相は経済対策を5兆円超とするよう関係閣僚に指示した。消費税率の上げ幅である3%のうち2%分(1%あたり2.7兆円)に相当する。実質的な負担増を1%程度に抑えて景気の腰折れを防ぐ狙いだ。 首相は成長戦略の一環として、主要国に比べて高い法人実効税率(約38%)の引き下げに意欲を示す。14年度までの3年間は東日本大震災の復興特別法人税として法人税額の10%を上乗せ課税しており、同税の1年前倒しでの廃止も視野に入れる。廃止すれば、法人実効税率は2%強下がる。ただ被災地の反発が予想されるため、自民党税制調査会では「法人実効税率下げは15年度以降の中期的な課題として検討すべきだ」との声も強い。 対象を限定した法人向け減税では、自民党税調が賃上げや設備投資を促す法人減税の拡充や固定資産税の減免などの検討を本格化しており、月内にも具体策をまとめる。設備投資に関しては、減税と補助金を合わせた対策規模を5千億円以上とする方向で調整する。 経済対策は来年度前半に予想される駆け込み需要の反動に備えた家計や企業の負担軽減策が柱となる。麻生太郎副総理・財務相と甘利明経済財政・再生相を中心に9月中に骨格案を取りまとめ、消費増税の最終判断の材料として首相に示す。 首相はデフレ脱却の実現が消費増税で遠のかないようにするには、国民の実質的な負担増を和らげることが不可欠との認識だ。財務省は2兆~3兆円の財政支出であれば国債を追加発行せずに対応可能と主張してきたが、首相官邸は大幅な上積みが必要と判断した。 家計の負担軽減策では、低所得層向けの簡素な給付措置として住民税非課税世帯(約2400万人)に1人当たり1万円の現金を給付する案を軸に検討している。所得税を支払っている世帯にも時限減税や給付金の形で負担増を和らげるべきだとの声もある。 首相は消費増税について10月1日に日銀が発表する9月の全国企業短期経済観測調査(短観)などを分析したうえで最終判断する。首相が判断すれば、政府は11月をめどに今年度補正予算の編成に入り、経済対策の内容や規模を確定。来年の通常国会に補正予算案を提出する方針だ。 *3:http://www3.nhk.or.jp/news/html/20130911/k10014444161000.html (NHK 2013年9月11日) 震災避難者の8割超 生活費増 東日本大震災と東京電力福島第一原子力発電所の事故のあと、福島県を離れて避難生活を送っている人を対象に支援団体が行った調査で、8割を超える人が震災前と比べて生活費が増えたと答えていることが分かり、支援団体では、「避難者の生活不安は強まっている」と指摘しています。この調査は、ことし3月から4月にかけて、福島県から東京都と埼玉県に避難している人たちを対象に、被災者の支援団体が郵送で行ったもので、全体の12%にあたる499人から回答を得ました。このうち震災後の職種の変化をみますと、正社員の数は、震災前の半分以下に減少しました。また、無職の人は震災前の2.3倍に増えました。その一方で、生活費については、81%が「増加した」か「どちらかというと増加した」と答えていて、支援団体では、「避難者の生活は、決して安定したとは言えず、逆に不安は強まっている」と指摘しています。福島県双葉町から埼玉県加須市に避難している鵜沼友恵さん(38)は、震災後、職を失ったうえに、茨城県日立市で働く夫と離れて暮らすようになり、光熱費などの生活費や夫に会いに行く際にかかるガソリン代などの負担が増えているといいます。鵜沼さんは、「この先、どうしてよいか分からないまま2年以上過ぎたので、ますますつらくなっています。自分のライフプランが全然立てられないのは、精神的にきついです」と話しています。 *4:http://www.the-miyanichi.co.jp/contents/index.php?blogid=5&catid=15 (宮崎日日新聞社説 2013年9月8日) 高校無償化に所得制限 ●人材育成へ国庫負担継続を 自民、公明両党は高校授業料無償化の対象を世帯年収910万円未満とする所得制限を設けることで合意した。秋の臨時国会に高校無償化法改正案を提出し、2014年度実施を目指すという。当時の民主党政権が導入したとはいえ、無償化は定着してきたと言っていい。日本の将来を支える人材育成のための教育に今更所得制限を設けることは疑問だ。特に本県のように高校卒業後は県外の大学や専門学校等へ多くの生徒が進学する地方では、所得の多い一部の家庭でも教育費の負担は増えることになる。自宅から通える大都市との教育費の差は現在でも甚しく、地方の視点からも無償化は継続すべきだ。 ■線引きで財源を捻出■ 高校授業料無償化は、公立高校の授業料を国庫から負担する制度で所得制限も設けていない。国立、私立、高等専門学校の生徒には、高等学校等就学支援金として授業料について一定額(年額11万8800円)を支給し、さらに保護者の所得に応じて一定額加算されている。自民党は所得制限のない無償化を「ばらまきだ」と批判、7月の参院選でも所得制限導入を打ち出していた。線引きについて自民党は900万円、公明党が930万円を主張していたが、双方歩み寄って910万円に落ち着いた。この結果、無償化の対象は約358万人から約280万人に減り、約22%が対象から外れる。年間約490億円の財源が捻出される見通しだ。財源は、返済義務のない給付型奨学金の創設や、私立高校生への就学支援金の拡充などに充てられる。だが、こうした捻出方法は本来の姿ではない。「取りやすいところから取る」という安易な方法を教育に導入するのは間違いだ。 ■大都市とは違う環境■ 日本は、世界人権宣言の内容を踏まえて条約化した国際人権規約を1979年に批准した。規約の中では教育に関わる権利を規定しているが、日本は中等教育(中学・高校)と高等教育(大学など)について「無償教育の漸進的導入」の規定適用を受け入れてこなかった。批准から33年後の昨年9月、やっと適用を受け入れ、高等教育まで無償化に向けて努力することを世界に表明した。高校無償化で一足先に国際人権規約の規定を実現したのに、所得制限の導入は時計の針を戻すことになってしまう。高等教育機関が少なく多くの人材が県外に流出する本県では、現在でさえ家庭は仕送りに多額の出費を強いられている。大学などが集中する大都市とは環境が違っているのだ。「所得が多いから負担は当然だ」という与党の考えは地方のことが考慮されていない。日本は先進国の中でも教育への公的支出は最低水準にある。国が教育へ投資して国民の教育費の負担軽減を図ることが、次代の日本の発展につながるはずだ。 *5:http://digital.asahi.com/articles/TKY201309080052.html?ref=com_top6_1st (朝日新聞 2013.9.8) 「夢を持つ子供、増えれば」 柔道・松本薫 ロンドン五輪柔道女子57キロ級金メダルの松本薫(フォーリーフジャパン)は、「いま、夢を持てない子どもたちが多くなっていると聞きます。東京に五輪が来ることで、夢を持つ子供が1人でも増えればいいな、と思う」と願った。自身も小さい時は明確な夢を持てずに悩んだ。「ケーキ屋になりたい、とかそういうのはあったけど、いつもコロコロ変わっていて。いつか私は路頭に迷っちゃうんじゃないかって思ったときもありました」。それでも、中学生の時に本格的に柔道をはじめ、「五輪に出たい」と夢が定まった。指導方法が合わず、高校で転校を経験するなど悪戦苦闘しながら、世界の頂点に立った。ロンドン五輪で明確に覚えているのは、選手村の空気の流れだという。「緊張感と、ついにここまで来たんだ、という喜びが混じっていた。独特の空気感でした」。その空間を共有した他競技の選手との交流は、いまも続いている。2020年まで現役でいられるかは分からないが、「東京五輪で、アスリートの夢を日本のみんなと共有出来れば、本当にすごいと思います」。7年後に思いをはせ、黒目をきらきらと輝かせていた。 *6:http://digital.asahi.com/articles/TKY201309150272.html?ref=pcviewpage (朝日新聞社説 2013年9月16日) 危機から5年 マネー頼みの矛盾なお 「100年に一度」の大不況を引き起こした米大手証券リーマン・ブラザーズの破綻(はたん)から15日で5年がたった。震源地の米国経済は徐々に回復してきたが、一方で新興国の経済は変調をきたしている。なによりマネー資本主義の矛盾があらわになり、低成長と雇用喪失が世界中に格差と貧困を拡散させた。この難題を克服する手立てはあるのか。世界は、なお手探りのままだ。 振り返れば、リーマン危機にとどめを刺される形で住宅バブルがはじけた米国と、対米投資の多い欧州で金融危機と経済収縮の連鎖が起きた。さらに、欧州では銀行救済にギリシャの財政粉飾が重なり、財政と金融の複合危機に発展する。ここを支えたのが新興国の内需拡大、とくに4兆元(約60兆円)の景気対策を打った中国だった。ところが、それが不動産バブルや過剰な投資を加速させ、中国内の金融システムを揺さぶる懸念が生じている。米中間でバブルがリレーされていたと見ることもできる。中国の金融安定には銀行への資本注入なども必要になろう。バブルの調整が急激で深刻になれば世界が動揺する。国際社会との協力が求められる。 先進国が頼った金融緩和の後始末も難しい。米国の量的緩和で新興国へあふれ出たマネーは逆流しつつある。米連邦準備制度理事会(FRB)は、緩和縮小でバブル防止に筋道をつけたいようだが、世界全体への目配りも欠かせない。世界経済はいびつさの度合いを深めている。とりわけ企業収益や株価の回復と、雇用の低迷とのギャップが際だつ。グローバル競争の激化が、人件費を減らして収益をあげる流れを加速させている。ことに先進国では、産業界が雇用を創出し、生活水準を底上げする機能は衰えるばかりだ。格差や貧困を是正するのは、所得の再分配を担う政府の仕事だが、どの国も財政に余裕はない。これで本当の経済再生は可能なのか。前向きな動きとして注目されるのは、ユーロ加盟の有志国が導入を決めた金融取引税だ。危機の処理コストを金融界に負担させ、同時に過剰な投機も抑える狙いがある。グローバル企業の国境をまたいだ税逃れ対策で、各国が結束する機運も生まれている。マネーの流れに網をかけ、地に足のついた経済構造をつくるために、世界は足並みをそろえなければならない。
| 消費税増税問題::2012.8~2014.11 | 04:23 PM | comments (x) | trackback (x) |
|
PAGE TOP ↑