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2013,10,30, Wednesday
2013.10.28東京新聞 2013.9.27朝日新聞 (1)再生可能エネルギーは、何故、今まで普及しなかったのか *1に、九州・沖縄・山口9県の知事でつくる九州地方知事会議が、再生可能エネルギーの利用について国の規制緩和を求める決議を採択したと書かれており、このように問題点を洗い出して、必要な規制緩和、電力自由化、電力市場独占の廃止を求めていくことは重要だと思う。ただ、農地の転用は、むやみに行って食料自給率を下げないようにしてもらいたいし、「電気さえ起こせばよい」という発想で、低周波による人間に対する被害や景観の悪化がないようにすべきである。 なお、今まで、再生可能エネルギーの普及が抑えられてきた理由は、送電線が電力会社に帰属し、電力会社の裁量で送電拒否を行うことができたからである。そのため、発送電分離は必要不可欠だ。 (2)発電するのに、原子力の代替は天然ガスしかないと考えるのは科学的レベルが低い *2の電気事業連合会の電力レポートは、「我が国の原子力発電所の大半が停止し、その電力供給低下を埋めるために火力発電所をフル稼働させ電力の安定供給をかろうじて確保しているが、その結果、火力発電用燃料の輸入増加による供給コストが大幅に上昇し、2012年の貿易赤字が過去最大の6兆9000億円を上回った」「原子力発電を順次利用停止した時、CO2排出抑制のため、不足となる電源をすべて天然ガス火力で賄う場合・・・」と書いている。 要するに、電気事業連合会は、①原子力に代替するエネルギーは輸入火力しかない ②火力発電用燃料の輸入増加による供給コストで貿易赤字が過去最大の6兆9000億円を上回った ③火力発電は、CO2の排出も問題である としているが、これは、政府と独占企業による原発再稼働のための論理だ。何故なら、私が、このブログの2012.7.15に「環境・脱原発・増税なき財政再建・経済成長を同時に実現する方法はある」等で記載したように、全体を総合的に考えれば、より賢明な方法があるからだ。 さらに、ドイツのように、再生可能エネルギーを2000年頃から準備して普及し始め、国内産のLNGを開発していれば、国産のクリーンエネルギー資源で発電できるため、CO2の排出量目標を達成できた上、火力発電用燃料の輸入増加で貿易赤字が過去最大の6兆9000億円を上回ることもなく、国富の多大な海外流出を心配する必要はなかったのである。しかし、経済産業省は、日本は資源のない国であるとして、「安いから(!?)」という理由で、どうしても輸入燃料を買うことに固執してきた。 (3)それでは、原発のコストは本当に安かったのか *3によれば、「東京電力福島第1原子力発電所周辺の除染・賠償費用を国が分担する見通しになり、その廃炉、汚染水、除染、中間貯蔵施設まで負担すれば10兆円規模に膨らむ可能性がある」とのことである。さらに、廃炉、中間貯蔵施設、最終処分場などは、福島第1原子力発電所のみが必要とする費用ではなく他の原発でも必要となる費用であり、福島第1原子力発電所事故の後始末も本当に10兆円で収まるか否か不明だ。仮に、全体で30兆円かかるとしても、消費税1%(約2兆円)分の15倍である。 つまり、私が、このブログの2012.9.2を始めとして、原発のカテゴリーにずっと書いてきたとおり、原発のコストは安いどころか膨大であり、他の発電方法の方がバラ色なのである。 (4)健康診断、食事管理、個人線量把握は、除染にかわる「対策」になるのか *3には、「除染そのものの効率化も欠かせず、除染は放射線量から身を守る一つの手段にすぎないため、健康診断、食事管理、個人線量把握など多くの対策を組み合わせるほうが現実的だ」と書かれている。しかし、健康診断は必要ではあるが、癌や白血病などが発症・進行していないかどうかをチェックする手段にすぎず、健康診断をしたからといって、なってしまった病気を治せるわけではない。 また、食事管理は、放射性物質を含まない食事をするために重要だが、このブログの2013.10.26に記載したとおり、わが国の安全基準は緩く、外部被曝と内部被曝の両方の影響が重なることを加味しておらず、すべての食材を測っているわけでもないし、特に海産物の測り方は甘い。 さらに、個人線量の把握は重要だが、事故直後から線量の計測を始めておかなければ、累積線量は把握できないため、事故後、すぐに住民に線量計を渡すくらいのことは、国としてやるべきだったし、できた筈だ。そして、そもそも、国や地方自治体が、空間線量だけではなく、地表や線量の高くなりやすい箇所を測っていないのは、本気で放射線防護をしようとしていないからであり、二の句がつげないのである。 *1:http://qbiz.jp/article/26121/1/ (西日本新聞 2013年10月29日) 再生可能エネ規制緩和を要求 九州知事会議が決議 九州・沖縄・山口9県知事でつくる九州地方知事会議が28日、佐賀市で開かれ、地熱や太陽光、風力発電といった再生可能エネルギーの利用について国の規制緩和を求める決議を採択した。温泉が多く日照時間が長い九州の特性を生かし、エネルギー資源の円滑な活用を図る狙い。九州地方知事会長の広瀬勝貞大分県知事は「再生可能エネルギーは九州で一番ホットなテーマ。経済界とともに利用と産業化を推進したい」と述べた。具体的には、国立・国定公園で地熱発電を行う際の許可基準の明確化▽太陽光発電に使う土地の農地転用の許可基準緩和▽風力・洋上風力発電を実施する際の環境影響評価の手続き迅速化−などを求める。地方分権改革の推進など他の決議とともに11月、国に提出する予定。会議ではほかに、70歳まで現役で働ける社会づくりを9県で連携して進めることを福岡県が提案し、就業支援策や国への提言内容を検討する研究会を設置する方針を確認した。 *2:http://www.fepc.or.jp/library/report/__icsFiles/afieldfile/2013/02/14/report_20130214.pdf#search='%E7%99%BA%E9%9B%BB%E7%94%A8%EF%BC%AC%EF%BC%AE%EF%BC%A7' (電力中央研究所電気新聞ゼミナール 2013年2月4日) 電気事業連合会:電力レポート 「天然ガス火力発電は原子力発電を代替することはできるか?」。東日本大震災により、我が国の原子力発電所の大半が停止している。原発の停止による電力供給低下を埋めるために、天然ガスを中心とする火力発電所を緊急的対応措置としてフルに稼働させ、電力の安定供給をかろうじて確保しているのが実情だ。だが、その結果として火力発電用燃料の輸入増加による供給コストの大幅な上昇、2012年の貿易赤字が過去最大の6兆9000億円を上回るという、日本経済や国民生活に大きな影響を及ぼしている。ここでは、中長期的な視点から原子力発電を順次利用停止したとき、CO2排出抑制のため、不足となる電源をすべて天然ガス火力で賄う場合に生じる課題について考えてみたい。(以下略) *3:http://www.nikkei.com/article/DGXNASFS2803K_Y3A021C1EA2000/ (日経新聞 2013/10/29) 膨らむ除染・賠償、10兆円規模に 東電の負担限界 国が一部負担、財源はこれから 東京電力福島第1原子力発電所周辺の除染費用を国が分担する見通しになったことは、すべての事故処理や賠償の費用を東電が負担する仕組みが限界にきていることを示す。だが、国費投入には与野党に異論も根強い。財源も固まっておらず、今後の議論には曲折もありそうだ。除染費用のすべてを東電に請求する現行の枠組みを見直す根拠として、政府関係者が着目したのは除染特措法45条だ。「国は費用の支払いが円滑に行われるよう必要な措置を講ずる」。政府・与党はこの条文を活用し、国が費用を分担する仕組みの導入を探っている。背景にあるのは、事故処理や賠償の負担で行き詰まりつつある東電の経営問題だ。東電はすでに3兆円の賠償を支払ったが、賠償額はさらに膨らむ見通し。賠償資金は国が無利子で貸しているが、東電が利益から将来返済する。廃炉、汚染水、除染、中間貯蔵施設まで負担すれば10兆円規模に膨らむ可能性がある。東電の試算によると、10兆円の返済には46年かかる。巨額の負担にあえぐ東電をそのまま放置すれば、汚染水対策や除染で後手に回る状況が続きかねない。浮上してきた案は、計画済みの除染は「賠償」として東電が、追加で発生する除染や中間貯蔵施設の建設費用は「復興」として国がそれぞれ負担する仕組みだ。 国が負担する際の財源はハッキリしない。電源開発促進税などを原資とするエネルギー対策特別会計で少しずつ払う案が有力だが、収入が年1兆円しかないエネ特会の負担は軽くない。電源開発促進税を増税すれば電気料金上昇につながる。除染そのものの効率化も欠かせない。被災地では「除染で追加被曝(ひばく)線量が年1ミリシーベルトに下がるまで帰還できない」との声があるが、除染は放射線量から身を守る一つの手段にすぎない。健康診断、食事管理、個人線量把握など多くの対策を組み合わせるほうが現実的だ。今後は原子力損害賠償法の見直しも課題として浮上する可能性がある。米国やフランスでは事故を起こした事業者の負担の上限が法律に明記されている。日本の原賠法は事業者の負担が青天井なうえ、規制する側の国の責任もあいまい。安倍晋三政権は安全性を確認した原発を動かす方針。今の原賠法のままでは電力会社が大きなリスクを背負ったまま再稼働を迫られる点も見逃せない。 PS:*4の2015年をめどに全国規模で電力需給を調整するという「広域系統運用機関」は、地域独占を経済産業省主導の独占に変えるにすぎない。また、2016年を目途に電力小売りへの参入を全面自由化するのはよいが、この時点で「発送電分離」ができていなければ、電力小売り参入自由化は、お題目だけとなる。さらに、2018~2020年を目途に大手電力の発電部門と送配電部門を別会社化するだけで資本関係が切れていなければ、新電力が自由に電力小売りに参入することはできないため、意味のある「発送電分離」にならず、電力改革はできない。 *4:http://qbiz.jp/article/26248/1/ (西日本新聞 2013年10月30日) 電力改革法案が審議入り 今国会で成立見込み 電力システム改革に向けた電気事業法改正案が30日、衆院経済産業委員会で審議入りした。改正案は先の通常国会で成立直前まで審議が進んだが、時間切れで廃案になった。衆参両院の「ねじれ」が解消した今国会で早期成立が見込まれる。電力改革は、大手電力による地域独占体制を見直して新規事業者の参入を促し、競争を通じて電気料金の値下げやサービス向上につなげる狙いがある。改正案では改革の第1段階として、2015年をめどに全国規模で電力需給を調整する「広域系統運用機関」を設立する。広域系統運用機関は電力不足を起こさないため、ある地域の需給が厳しくなった場合、他の地域の電気事業者に発電量の積み増しや電気の融通を指示する権限を持つ。改正案の付則には、16年をめどに電力小売りへの参入を全面自由化し、18〜20年をめどに大手電力の発電と送配電部門を別会社化する「発送電分離」を実現するまでの改革工程を明記した。
| 資源・エネルギー::2013.10~2014.10 | 03:43 PM | comments (x) | trackback (x) |
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