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2013,12,11, Wednesday
(1)特定秘密保護法の成立とその危険性 *2に記載されているとおり、機密の漏洩に厳罰を科す特定秘密保護法の成立を受け、政府は特定秘密の内容をチェックする機関の設置を表明したが、それは、本来は、政府・行政から独立した第三者が監視する仕組みを設けることだった。 しかし、実際には、内閣官房への「保全監視委員会」の設置と、内閣府への「情報保全監察室」「独立公文書管理監」の設置であり、行政内部の身内にポストを増やしただけに終わっているため、国会にも「安全保障に支障を及ぼす」と言えば、資料を出さなくてすむ。そして、漏洩事件の裁判でも、裁判官に特定秘密を見せなくてよくなるため、行政に権力が集中して、三権分立が形骸化する。 そのため、*4のように、成立前にも反対意見や反対運動が多かったし、成立後の現在でも、*3のように、秘密保護法の撤廃を求めて緊急集会やデモが行われ、また、*5のように、多くの刑法学者が反対しているのである。 (2)特定秘密保護法における罰則の異常性 特定秘密保護法は、その罰則においても異常性がある。例えば、第23条において、「①特定秘密の取扱いの業務に従事する者がその業務により知得した特定秘密を漏らしたときは、10年以下の懲役に処し、又は情状により10年以下の懲役及び1,000万円以下の罰金に処する。特定秘密の取扱いの業務に従事しなくなった後においても、同様とする。」と規定されている。しかし、「1,000万円以下の罰金」というのは、他の法律では見たことがない高額であり、まず、他の罪とのバランスがおかしい。 また、「②当該提供の目的である業務により当該特定秘密を知得した者がこれを漏らしたときは、5年以下の懲役に処し、又は情状により5年以下の懲役及び500万円以下の罰金に処する。」等とも規定されているが、①では、特定秘密の取扱い業務に従事する者がその業務により知得した特定秘密を漏らしたときは、取扱いの業務に従事しなくなった後でさえ1,000万円の罰金が課されるのに対し、②では、当該提供の目的である業務により当該特定秘密を知得した者がこれを漏らしたときは、量刑・罰金とも①の半分になるというのがおかしい。何故なら、①と②は、同様に職務担当者の秘密漏洩だからである。 さらに、第25条等で、上記の犯罪に関し、共謀・教唆・煽動した者も、5年以下の懲役に処すると規定されているが、「共謀」「教唆」「煽動」の定義が明確でないため、どんな行為でもそれに当たると判断される可能性がある。このように、特定秘密保護法は、行政の都合によって、行政に都合の悪い人を、意図的に重罪に陥れて排除することができる法律なのである。 (3)今度は、共謀罪創設 ?! (2)でも記載したように、特定秘密保護法は、「共謀」「教唆」「煽動」した者を5年以下の懲役に処するとしているが、「共謀」「教唆」「煽動」の定義は明確でない。これに加え、*1のように、実行行為がなくても謀議に加われば処罰対象となる「共謀罪」の創設を盛り込んだ組織犯罪処罰法改正案を来年の通常国会に提出する方向で検討に入ったそうだが、謀議に加わったことはどうやって証明するのだろうか? 盗聴などが盛んに行われるのかもしれないが、盗聴では、その会議の中でのその人の役割(推進していたのか、止めていたのか、黙って別のことを考えていたのか、寝ていたのか)はわからない。また、密告や自白は、動かぬ証拠がないため、意図的なものになりやすい。とにかく、共謀罪が適用されれば、盗聴や密告を含む国家の監視が正当化され、国民の言論の自由が阻害されることは明らかである。 *1-1:http://www.saga-s.co.jp/news/global/corenews.0.2594906.article.html (佐賀新聞 2013年12月11日) 政府、共謀罪創設を検討 / 組織犯罪処罰法改正で 政府は10日、殺人など重要犯罪で実行行為がなくても謀議に加われば処罰対象となる「共謀罪」創設を盛り込んだ組織犯罪処罰法改正案を来年の通常国会に提出する方向で検討に入った。政府関係者が明らかにした。共謀罪が広く適用されれば、国による監視が強化される恐れがある。機密漏えいに厳罰を科す特定秘密保護法に続く国権強化の動きといえる。秘密法成立で言論・情報統制が強まる不安が広がっているだけに、論議を呼ぶのは確実だ。政府は、2020年の東京五輪開催に向けてテロ対策の必要性が高まったと判断している。 *1-2:http://www.shinmai.co.jp/news/20131212/KT131211ETI090007000.php (信濃毎日新聞 2013年12月12日) 共謀罪 内心の自由を侵さないか 人を殺傷するテロ行為を未然に防ぐこと自体に異論はない。ただ、テロに限らず話し合っただけで処罰の対象にするのは行き過ぎだ。権力の意図的な運用を可能にし、憲法が保障する内心の自由を侵す恐れがあるからだ。組織犯罪処罰法に「共謀罪」を新設する動きが表面化した。菅義偉官房長官はきのう午前の会見で「まだ決めていない」としたが、政府関係者は同法改正案を来年の通常国会に提出する方向で検討に入ったことを明らかにしている。この法律は、組織的に実行された犯罪の刑を重くすることなどを定め、2000年に施行された。テロ行為だけでなく、市民団体のデモや「人間の鎖」などに適用される可能性がある威力業務妨害なども対象だ。国連は同年、国際組織犯罪防止条約を採択し、参加国に共謀罪の創設を求めた。条約に署名した日本政府は03年以降、同法改正案を3回、国会に提出。日弁連や野党などが強く反対し、いずれも廃案になった。 特定秘密保護法案にも共謀罪が盛られた。実際に秘密をつかんでいなくても、何とか得ようと話し合っただけで処罰される場合がある。しかし、この問題は国会でほとんど議論されないまま法案は強行採決され、成立した。これを機に、政府は20年東京五輪のテロ対策を理由にして組織犯罪処罰法にも共謀罪を広げる考えのようだ。 意思を通じ合ったというだけで処罰する手法は戦前、戦中に反政府的な考えを持つ人の弾圧に使われた。治安維持法の「協議罪」を多用して、何も実行していない人たちを次々に取り締まった。共謀罪にはこうした危険性が付きまとう。日本の刑事法は、犯罪の実行行為があって初めて罰することを原則とする。例外として未遂や予備(準備)といった罪があるが、共謀はさらに実行から遠い段階だ。しかも物的証拠がないので自白偏重になりやすい。現行の組織犯罪処罰法にも未遂や予備の罪はある。共謀罪を検討するなら、これらの罪では対応できない合理的根拠を示すべきだ。 気を付けなければいけないのは、共謀罪を盛った特定秘密保護法も改正自衛隊法も、自首による刑の免除や減軽の規定をセットにしていることだ。捜査側が、罪に問わないことを理由に密告の奨励や協力者工作をしやすくなる。共謀罪には監視社会をつくりだす危険性もある。 *2:http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-216465-storytopic-11.html (琉球新報社説 2013年12月10日) 秘密監視機関 国の暴走の歯止めにならぬ 機密漏えいに厳罰を科す特定秘密保護法の成立を受け、政府は特定秘密の内容をチェックする機関の設置を表明している。しかし政府が秘密指定の妥当性を監視する仕組みとして、複数の機関やポストの新設を次々と打ち出したのは、5日の採決直前だった。国民の知る権利や表現の自由を侵害する法律を通す作業は、あまりにずさんで稚拙だった。法案審議で争点となったのは政府による秘密指定を「政府の外」から監視する仕組みを設けることだったはずだ。行政による恣意的な秘密指定を防ぐ必要性から、野党の一部が独立した公正な立場の監察機関の設置を求めていたのもこのためだ。しかし政府が表明したのは内閣官房への「保全監視委員会」、内閣府への「情報保全監察室」と「独立公文書管理監」の設置だ。全て行政内部、身内だ。 保全監視委員会は警察庁長官や外務、防衛両省の事務次官らで構成され、情報保全監察室は外務、防衛両省の職員ら20人規模の組織だ。秘密指定の適否を検証するものだ。独立公文書管理監は審議官級を充て、公文書の廃棄の可否を判断する。官僚組織による秘密指定を身内の官僚が精査するのだから、茶番劇というほかない。こんな組織やポストがいくら設置されても「官僚による官僚のための情報隠し」(民主党の海江田万里代表)に歯止めがかからないのは明白だ。政府は3組織とは別に、報道や専門家ら有識者による「情報保全諮問会議」も設置する方針を示すが、この組織は具体的な特定秘密はチェックできない。これではお飾り、絵に描いた餅だ。国会も蚊帳の外に置かれる。国会の秘密会から求めがあれば、行政機関の長は特定秘密の提出が義務づけられている。しかし「安全保障に支障を及ぼす」と一言いえば、出さなくていい。漏えい事件の裁判でも裁判官に特定秘密を見せなくてもいい。政府の暴走を止める手段はない。あまりにも危険な法律だ。 国連のピレイ人権高等弁務官は同法について「日本の憲法や国際人権法が定める情報へのアクセス権や表現の自由に対する適切な保護規定を設けずに、法整備を急ぐべきではない」と述べ、政府と立法府に対し、国内外の懸念に耳を傾けるよう促した。安倍政権はボタンの掛け違いを認め、この法律をいったん廃止し、立法の是非を国民に問い直すべきだ。 *3:http://www.nnn.co.jp/news/131210/20131210001.html (日本海新聞 2013年12月10日) 秘密保護法の撤廃求め 米子で緊急集会とデモ行進 特定秘密保護法が6日国会で成立したのに抗議し、鳥取県米子市内で9日、同法の撤廃を求める緊急集会とデモ行進があった。参加者がJR米子駅前の目抜き通りを歩きながら、強行採決に踏み切った安倍政権への批判と同法の撤廃を訴えた。市民団体「平和・民主・住みよい米子をつくる会」が他団体や市民に呼び掛けて実施。約60人が集まった。参加者は米子市文化ホール前広場で気勢を上げた後、米子商工会議所前までの約1キロをデモ行進。「秘密保護法撤廃」と書かれたプラカードを掲げながら、「秘密保護法は憲法違反」「安倍内閣は総辞職せよ」などとシュプレヒコールを繰り返した。同会代表世話人の1人、大谷輝子さん(77)は「署名運動をした際も賛同してくれる市民が多かった。あの戦争の暗黒時代を再現させることがあってはならない」と話した。 *4:http://digital.asahi.com/articles/TKY201312030244.html?iref=comkiji_redirect (朝日新聞 2013年12月3日) (新ポリティカにっぽん)秘密保護法案、いまこそ再考を 世の中もこの法案の危うさにじっとしていられないということだろうか、街に「反対」の声が響く。国会会期末は6日、圧倒的多数の与党と「すりより野党」によって成立してしまうのかどうか、特定秘密保護法案の参院審議が大詰めである。 ■「平和」掲げる公明党が、なぜ? それにしても、いったい公明党は何を考えているのだろうか。「平和」の党であることを誇りにしていたのに、「戦争」がちらつく法案にかくも血道をあげるなんて。11月26日、この法案が自民、公明の与党とみんなの党の賛成で衆院を強行通過したその夜、明治大学で行われたジャーナリストのリレートークに参加した私は公明党への疑問を呈した。それが伝わったのか元参院議員の平野貞夫氏から電話がきた。「1985年、中曽根内閣のときのスパイ防止法案に一番強く反対して廃案に追い込んだのは公明党でしたよ。こんどの秘密保護法案は、そのスパイ防止法よりも戦前の治安維持法よりもタチが悪い」。平野氏は衆院事務局に長く勤め、かつては公明党の相談にも乗り、参院議員になってからは小沢一郎氏の知恵袋として有名である。ムムム、希代の悪法、治安維持法よりタチが悪いって? 公明党の母体である創価学会は戦前、治安維持法によって弾圧された歴史がある。初代会長牧口常三郎と2代会長の戸田城聖は、国家神道の「神札」受け取りを拒否して、「国体」すなわち天皇制国家を否定する不穏分子として投獄され、1944年11月18日、牧口は獄死した。今年のその日、牧口を偲(しの)ぶ70回忌法要が行われ、池田大作名誉会長はメッセージで、牧口の死をもたらしたのは「権力の魔性」と述べている。池田氏は著書「人間革命」第1巻で治安維持法についてこう書いている。「共産党弾圧のためのこの立法は、無数の故なき罪人をつくった」「次第に、ただ軍部政府を守るための弾圧法と化していった」「信教の自由が(大日本帝国)憲法に保障されていたにもかかわらず、この悪法のために、会長牧口常三郎は獄中で死ななければならなかった」「権力者の自分勝手な考えによって裁かれるべきではない」。 これらの記述からうかがわれるのは、悪法は自己増殖するということである。治安維持法は、初めは「国体の変革」と「私有財産否認」をめざすもの、つまり共産党をターゲットにして、作家小林多喜二を築地署で惨殺したりした。しかし、次第に対象を拡大して漸進思想の教授らを大学から次々と追放し、さらには当時、有力だった大本教を「天皇に代わってみろくの世をめざす」邪宗として殿堂をダイナマイトで破壊し、蔵書8万4千冊を焼却するなどの宗教弾圧に発展、ついに創価学会にも累が及んだ。池田氏は「すべての立法の意図を、われわれは改めて吟味する必要がある」と書く。特定秘密保護法案しかり。いったい公明党の議員諸兄は、「人間革命」をちゃんと読んでいるのだろうか。 ■法案通せば、「議会政治の葬式」に ところで平野さん、特定秘密保護法案が治安維持法よりタチが悪いというのは、具体的にはどういうこと? 「罪の内容が明確でない。『安全保障』というあいまいな概念のもと、何が『特定秘密』か、結局は官僚が選び出す。経済、エネルギー、食糧も安全保障だといって、いくらでも対象が広がっていくよ」。治安維持法は「国体」を持ち出せばみんなひれ伏した、こんどは、そこのけそこのけ「安保」が通るということですかね。「国体」よりはるかに広い範囲で罰せられることになりそうだなあ。「いまや、情報は米や水や空気と同じなんです。しかも、ほとんどの情報は公権力がかかわる。『知る権利』というのは、単に報道の自由ということと違って、国民の生活の権利なんだ。マスコミの認識も、まだ浅い」。 国会議員もわかっているのかな? 「何が特定秘密かわからないのだから、国会議員の国政調査権も萎縮させますよ。これは政治家に対する官僚の逆襲だな。官僚の無駄遣いや天下りが批判されているから、官僚が情報を独占管理すれば、逆に政治をコントロールできるという腹でしょう」。平野氏は高知県の出身。自由民権のふるさとといわれるこの地では、明治の昔、「高知新聞」が発禁になって「新聞の葬式」を催した故事がある。会葬者はなんと5千人を超えた。平野氏は危惧する。「特定秘密保護法案を通せば、それは議会政治の葬式になる」。安倍総理大臣、中国が防空識別圏などと持ち出してくるから、何かと心配なのはわからないでもない。しかし、コトは民主主義の根幹にかかわる。秘密のヨロイを着た息苦しい国家はよくない。将来、悪用する権力者が現れないとも限らない。ここは踏みとどまって再考しないか。 *5:http://digital.asahi.com/articles/SEB201312110002.html?iref=comkiji_redirect (朝日新聞 2013年12月11日) 刑法学者23人、秘密法廃止求める抗議声明 13日に公布される特定秘密保護法について、刑法学研究者23人が11日、速やかな廃止を求める抗議声明を発表した。声明は(1)何が特定秘密かが極めてあいまいで罪刑法定主義の原則に反し、違憲と言わざるを得ない(2)特定秘密の内容が明らかにされないまま公判が開かれれば、憲法82条の裁判公開原則に反する、などと刑事法の観点から問題点を指摘している。声明の呼びかけ人の代表は村井敏邦・一橋大名誉教授ら2人で、九州大、北海道大、大阪大などの教授や弁護士らが名前を連ねている。
| 民主主義・選挙・その他::特定秘密保護法関係2014.1~ | 01:43 PM | comments (x) | trackback (x) |
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